吸血大殲 第32章 〜薔薇の月に血の涙

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このスレは、吸血鬼や狩人、あるいはそれに類する者が闘争を繰り広げる場である。
無論、闘争だけではなく、名無しの諸君の質問も随時受け付けておる。
気軽に質問をして欲しい。
なお、新規の参加者は下記の『吸血大殲闘争者への手引き』でルールに眼を通した上で、
テンプレを用いて自己紹介をせよ。
テンプレは>2を参照するがよい。
 
■『吸血大殲闘争者への手引き』
http://www.geocities.co.jp/Milkyway-Orion/4504/vampirkrieg.html
 
■専用JBBS(闘争の打ち合わせなどはこちら)←旧板
http://jbbs.shitaraba.com/game/163/vampirkrieg.html
 
■専用ふぁるがいあBBS(雑談・闘争の打ち合わせなどはこちら)←真板
http://fargaia.hokuto.ac/html/vampbattle/index2.html
 
以下は、関連リンクである。
 
■参加者データサイト『吸血大殲 Blood Lust』(左手作成・過去ログも全てこちらにあり)
http://members.tripod.co.jp/humituki5272/taisen/index.html
 
■『闘争記録保管所』(緑川淳司作成・各闘争ごとに整理された記録)
http://members.tripod.co.jp/tajuunin/taisen.html
 
■吸血大殲本家サイト
『From dusk till dawn』
http://www.uranus.dti.ne.jp/~beaker/
 
『戦場には熱い風が吹く』
http://ha7.seikyou.ne.jp/home/hagane/index.html
 
■前スレ
吸血大殲31章 夜を往くモノ――Night Walker
http://cocoa.2ch.net/test/read.cgi/charaneta/1025406070/
 
■太陽板の質問スレ
吸血大殲/陰 其の15 混沌屋敷『眩桃館』地下 〜大殲資料の間〜 
http://www.alfheim.jp/~narikiri/narikiri/test/read.cgi?bbs=TheSun&key=1021881487
 
■吸血大殲専用チャットルーム入り口
http://www6.tkcity.net/~zap_zero/
 
■感想スレッド(闘争の感想などはここに)
真・吸血大殲感想スレッド
http://fargaia.hokuto.ac/html/test/read.cgi?bbs=vampbattle&key=1019409630
出典 :
名前 :
年齢 :
性別 :
職業 :
趣味 :
恋人の有無 :
好きな異性のタイプ :
好きな食べ物 :
最近気になること :
一番苦手なもの :
得意な技 :
一番の決めゼリフ :
将来の夢 :
ここの住人として一言 :
ここの仲間たちに一言 :
ここの名無しに一言 :
3ユージン:02/07/08 20:05
ユージンvs暗黒騎士ガウザー 導入
 
「さて、残念だが」


 ――足音が響く。


「おまえには死んでもらわなければならない」


 ――渇、割と。


 少女の怯えは臨界に達していた。
 両足は震え腰は抜け、身体中が軟体動物のように脱力しているのに
肩の強張りだけが針金のように抜けない。
 頭の中から脳が抜け落ちたようにあたりが真っ白で何も見えない聞こえない。
 そのくせ追いかけてくる、あの眼、あの声。あの跫。


「指示が変わって、不要なMPLSは全員消去ということになった」


 逃げなければいけない――でも、どこへ。
 逃げなければいけない――でも、どうやって。
 逃げなければいけない――でも、なにから。


 ――かつ。


 止まる足音。
 かざされる手の気配。


 
 ああごめんなさい、ごめんなさい許して許してください。かみさま、どうか神様たすけ



 ひゅっと風切り音。
4黒岩省吾 ◆sChIjITA :02/07/08 20:06
>3 vs合成人間
 
疾風を纏って放たれた手刀はしかし、途中で止まる。
俺がその手を掴み、止めたのだ。
 
「・・・・・・行け」
 
怯え切った表情を見せている少女に、俺は突き放すように告げる。
足を震わせながらも、彼女は立ちあがり、よたよたと俺達から離れていく。
 
MPLSと呼ばれる、特殊能力者。
東京都知事である俺は、彼らの調査を始めていた。
貴重なサンプルを、今失うわけにはいかない。
 
「何をしている?」
 
少女が立ち去ったのを確認すると、俺は掴んだままの腕の持ち主に問い掛ける。
彼から感じられる、妙な殺気。
この殺気は人間の物ではない。
 
そして、彼の動きを止めた俺もまた―――――――
ヒトでない事に気づかれてしまったようだ。
 
5ユージン:02/07/08 20:07
>4 vs黒岩省吾


ち、面倒くさい相手だ。
ユージンはそう思った。都知事黒岩省吾。
「何故ここにいるのか」「どうして自分の手刀を止めたのか」
この二つの問いを凍結させて、まず最初に思考した。面倒くさい相手だ。
消すと、一騒ぎ起こるのは間違いない。


――だが、だからといって、見過ごすわけにもいかない。


「あなたは何も見なかった。何もしなかった。そして何も知らない」

ぼそぼそと、されどはっきりと通告する。

「そうすれば――命だけは助けてやる」

掴まれたあたりに浮かぶじっとりとした熱。
なんということはない――このまま掴んだ手を焼いてやることだって可能なのだ。

6黒岩省吾 ◆sChIjITA :02/07/08 20:08
>5 vs合成人間

「フッ・・・・・・」
 
少年にしか見えない相手の勧告に、俺は薄く笑う。
そのまま、俺は手にした腕を強く捻りあげ、壁に叩きつける。
 
「そういうわけにはいかんな、俺は知事だぞ?」
 
言いながら、片頬を深く、鋭く持ち上げる。
もっとも、その目は笑っていなかったろうが。
 
「都民の安全は、確保しておかねばな・・・」
 
所詮、建前でしかない言葉を俺は吐く。
ダークザイドと呼ばれる、滅びかけた闇の種族。
それが俺の正体だった。
7ユージン:02/07/08 20:09
>6 vs都知事


「……何故おまえが助ける。わからないな……」

 ――どうしようもないだろう。
 原始的な説得に入るより他ない。結末が死に繋がろうとも、それで結果は出る。

「『ダークザイド』は、人間の天敵じゃなかったのか?」

 言い放つと、体内に軽く熱を入れる。トップギアで走り出す左手が
右手を拘束する黒岩の腕、その肘関節を逆方向に突き上げる――折れたか?
感触はいまいち曖昧だったが、気にせず肘を肋骨の六番七番の間に叩き込む。
しばらく眠っていてもらおう。
8黒岩省吾 ◆sChIjITA :02/07/08 20:09
>7 vs合成人間
 
「『ダークザイド』は、人間の天敵じゃなかったのか?」
 
その言葉に俺は、思わず目を見開く。
頭が、くらりとする。
 
戸惑った瞬間、逆方向に動かされた関節が悲鳴を上げた。
その痛みが俺を覚醒させ、折られない内に素早く手を放す。
が、腕に疾った痛みは痺れとともに熱く残留する。
 
さらに、風を切って迫る肋骨を貫かんばかりの肘。
咄嗟に身を捩り、俺はその剃刀のような肘をかわす。
その一撃はわずかに背広を掠め、背広の生地を「切り裂いた」。
 
何故、こいつは俺をダークザイドと知っている。
その疑問、一点の染みのように俺の思考に張りついている。
 
「MPLSは、俺にとって貴重なサンプルなんでね。今失うわけにはいかん」
 
俺はしかし、再び余裕ぶった笑みを浮かべてそう言って見せる。
視線を一瞬、背広の傷に移す。
 
「それより・・・この背広のお礼をさせてもらわなければ、な」
 
そう言うと俺は、疾風とともに奴に指を付きつけた。
 
「知っているか!?
世界で初めてのジャケット、つまり背広は、
1787年イギリスのセービロードにある小さな洋品店で作られた。
それからあっという間にイギリス紳士の間に広まったという・・・」
 
薀蓄を語ると、俺は眼前へと手を翳す。
 
「ブラックアウト!!」
 
その言葉とともに、俺は蒼い闇の鎧に肉体を変貌させる。
本来の姿、「暗黒騎士ガウザー」に。
 
9ユージン:02/07/08 20:10
>8 vsMr.薀蓄


(……MPLSという呼称を知っているのか)
 統和機構の存在すら裏の裏だ。知るものはほとんどいない。
 それを知っているだけでも、この男は充分に危険だった。


 ――それより。


「安心したよ」

 サンプル――
 今、この男はサンプルと言った。
 ユージンは笑った。
 肝が竦むような笑いだった。

「心置きなくおまえを殺せそうだ」

 黒岩は変身したが、この程度は知識として知っている。ユージンは異形に向き直ると
黒岩の視覚の盲点に滑り込み、そこから屈んで跳んだ。消えたようにしか見えないはずだ。
足元から、貫手を腹部に突き上げる。
>9 vs合成人間
欠けた月を寝かせたような、鋭い笑み。
その笑みから伝わる、俺を撃ち貫かんばかりの冷たい殺意。
 
それを感じて、俺も仮面の奥で深く笑みを浮かべる。
 
奴の姿が突如、眼前から消失する。
死角から、疾風とともに抜き手が俺の腹部を襲う。
 
かすかだが、しかし殺気を殺し切れていない一撃だった。
殺気に合わせて俺は二の腕を振るい、奴の腕を止める。
 
「フッ、怒ってでもいるのか?」
 
腕を大きく捌くと、俺は間合いを詰める。
次の瞬間には、胸元を貫くような蹴りを撃ち込む。
 
「あんたもあの『サンプル』を殺そうとしていたんだろう?」
 
玩ぶような口調で、俺はそう言ってみせる。
その言葉と同時に、顎を狙って右の正拳を繰り出した。
11ユージン:02/07/08 20:11
>10 vstheスーツ
 
 
「『怒る』だって? ……ひどい勘違いだな」
 
 飛んできた拳をアームブロック。攻撃の機を逃したと見て、半歩だけ身を引いた。
 せせら笑いながら、次はどこを攻めようかと考える。
 右か、左か。
 
「ただ――もういないだけだ」
 
 飛んだ。
 鎧のせいで手刀では攻めが狭まる。ならば衝撃で気絶させるほうが楽だ。
そう思考すると、黒岩の側頭部に爪先を抉るように叩き込む。

>11
vs合成人間
鞭のように足がしなり、風とともに蹴りが来るのを感じる。
硬質の音が、響く。
咄嗟に出した肘が、蹴りを受け止めた音。
 
「もう、いない?」
 
蹴り足を弾き飛ばすと、俺は問いかける。
それと同時に背の剣を抜き放つ。
 
「あの、少女のことか?」
 
なんでそんな事を問うたのか。
自分でもよくわからなかった。
疑問を持ちつつも、しかし攻撃の手は休めない。
 
刀の背に二の腕を添え、片手突きを放つ。
空間を射ち貫いて、剣光が奴の肩口に迫る。
 
13ユージン:02/07/08 20:12
>12 vs暗黒騎士
 
 
 剣先をわずかに身を屈めてかわす。
 なめられたものだ。急所以外を狙ってぼくを止めるつもりだとは。
 
「ぼくが好きだった人たちはもういない……それだけだ」
 
 そのまま掌底を顎に叩き込む。ほとんどカウンターのタイミングだ。脳味噌が
ミキサーされる衝撃。ただでは済まない。
 
「おまえはあっさりとみんなを処分した統和機構の連中と同じだ。
 それだけで簡単に人間をサンプルとしか見なくなったぼくと同じだ。
 だから、躊躇しない」
 
 とんだ勘違い野郎だ。あんな女はどうだっていい。どうだっていいんだ。
それすらわかってないのに、そのくせずかずかと内面に踏み込んでこようとする。
 理解してないのか、こいつ。自分は殺されようとしているんだぞ。
 
 まあいい。もともと話すことなどなかったのだ。このまま「消去」してやる。
 ユージンは脇腹に向けて手刀を疾らせる。
>13 vs合成人間
 
顎に、掌打が決まる。
脳に伝わる、意識ごと吹き飛ばすような衝撃。
視界が、揺らぐ。
 
しかし、それほどの一撃でも、俺を倒すには至らない。
俺はよろめく足に力を込め、大きく仰け反った体を引き戻した。
 
奴は何かを押し殺すように、殺意を告げる。
それと同時に、脇腹へと裂くような手刀が来る。
 
「ふん、他人など・・・所詮利用するべき駒に過ぎん」
 
言いながら、俺はその一撃をかわすべく、わずかに身を逸らす。
が、痛みは薄く疾駆する。
その手刀が、鎧の表面を切り裂いたのだ。
 
そう、俺は何もわかってはいない。
人間界の知識をいくら身に付けても、人の内面だけは。
ダークザイドである俺には、わからない。
 
だから、問う。
 
「お前はそんなもののために、自分を捨てたのか?」
 
俺は奴の胸元に、払うように刃を振るっていく。
その勢いを殺さず、さらに回し蹴りを放つ。
15ユージン:02/07/08 20:14
>14 vs都知事
 
 
「うるさい……いちいち!」
 
 逆に踏み込み、刃の間合いに身をおく。
 迫りくる白刃を腕で真っ向から受け止めると、骨で刀身を食み、掌より噴出した血を
払い飛ばして目潰し。続き疾る蹴り足を掻い潜り、軸足を払って転倒させる。
 
「自分を捨てた? はっ、笑わせるなよ。これが本当のぼくだ。
 合成人間ユージンだ」
 
 冷血で救い難い、人外の異物。
 もともと人間と馴れ合うようには出来ていない。
 そうとでも思わなければ、この胸の重みに耐えられない。
 
「そうとも……他人は、道具だ」
 
 我慢ならない。
 このまま蹴り潰してやる。

>15 vs合成人間
 
鉄槌のように振り下ろされる足を、俺は身を捻ってかわす。
 
「ああ、それでいい。人間など・・・信用できんからな!」
 
自分に言い聞かせるように、俺は告げる。
 
俺は倒れたまま奴の右脇腹を蹴り上げ、その反動で立ちあがる。
間髪入れず、その脇腹から左の肩へと、逆袈裟に跳ね上げるような斬撃を送る。

17ユージン:02/07/08 20:15
>16 vs暗黒騎士


 ちっ……
 予想以上の速さに舌を巻く。上体を斜めに抜ける切断面。痛覚をキック。
データより遥かに強い。かなうか――否、それは問題じゃない。
 殺すか、殺されるかだ。

 右へ飛ぶ。
 それを追う黒岩を嘲笑うように壁を蹴って左へ。
 さらに切れるほど両足を撓めると突撃。三度の打撃を加えて空中で体を支えなおすと
再度の攻撃でバランス調整。反転して今度は黒岩の背後に着地。傷から噴出した血が
未だ宙で奴の視界を悪くしている。
 機はここだ。
 鎧の隙間めがけ、絶え間なく手刀を突き入れる。一撃一撃が致死の攻撃でありながら
これはすべてフェイント。決まらなくても、次手で詰みだ。
 左手が奴の死角で、小さなナイフを引き抜く。
>17 vs合成人間
お前も、所詮受け入れられないか。
人と人でないものでは。
 
胸に、白くかすかに去来する失意。
次の殺意が、それを黒く塗り込めた。
背後に回った奴に、振り向きざま、抉るような肘を放つ。
 
次々と繰り出される手刀を、俺は尽く捌いていく。
常人ならその一撃だけでも殺しうる連撃だが・・・何か違和感がある。
何か仕掛けて来る気か。
 
自分の勘に従い、俺は軽く後ろに跳んだ。
着地と同時に、俺は刀の切っ先を奴に向ける。
刀身が太陽を照り返し、鋭い光の線が広がっていく。
 
その仕掛けを出す前に・・・倒す。
俺の腕が、剣先を銃弾の如くに撃ち出した。

>18 vsガウザー


 切っ先が肩口を捉える異音。骨が砕け、肉の筋を裂いていく。
 その痛みに耐えて――ユージンはなお、顔を歪める。
 それが笑顔か泣き顔かなど、意味がないことだろう。

「間合いを空けてくれたこと……感謝するよ」

 ナイフが光に溶けるように跳ね上がる銀光。
 ただし、向かう先は血に濡れた騎士ではなく――

「ふふ、知っているか? 人間の血液は食塩水だ……電気をよく通す」

 ――直上、高圧電流線。

 切り口のフリーフォール。死を招く黒い蛇。
 毒に濡れた牙が、返り血に赤く染まる黒岩に襲い掛かり、



 ばぢん、



 と、はじけた。

20ユージン:02/07/08 20:18
>18 vsガウザー


 切っ先が肩口を捉える異音。骨が砕け、肉の筋を裂いていく。
 その痛みに耐えて――ユージンはなお、顔を歪める。
 それが笑顔か泣き顔かなど、意味がないことだろう。

「間合いを空けてくれたこと……感謝するよ」

 ナイフが光に溶けるように跳ね上がる銀光。
 ただし、向かう先は血に濡れた騎士ではなく――

「ふふ、知っているか? 人間の血液は食塩水だ……電気をよく通す」

 ――直上、高圧電流線。

 切り口のフリーフォール。死を招く黒い蛇。
 毒に濡れた牙が、返り血に赤く染まる黒岩に襲い掛かり、



 ばぢん、



 と、はじけた。
>20
 
氷の錐を思わせる感覚が、俺の心臓を貫いた。
俺の全身を撃ち貫く電流。
落ちかけた膝を、地に剣を突き立てて支える。
 
軽く舌打ちする。
だが、俺も暗黒騎士とまで呼ばれた男。
この程度のダメージなど。
 
地面に刺さった刀を踏み台にして、俺は奴の頭上を飛び越える。
先とは逆に、こちらが敵の背後に回る。
そのまま相手の頭部へとニ連続で高く蹴りを放った。
22ユージン:02/07/08 20:20
>21
 
 生きているはずがなかった。
 だから、わずかに気が弛んだ。

 そして、それを見逃す相手でもなかった。

 つい今しがたの電撃などまるで意に介さない、曲芸めいた跳躍。気づいても遅い。
二度の足刀が重い響きで側頭部に食い込む。空中に浮き、回転し、視界が捩れ、
涙で目が霞み、うなる耳鳴り。遠くから聞こえる。
 路面にぶつかり、二度跳ねた。三度目の激突を、瞬時に回復させたバランスで
無理矢理に食い止める。四肢をふんばって衝撃を殺す。ぐらつく世界。吐き気がする。
痛い。どろりとした感触。耳の奥から黄色い液体が垂れてきた。指先でねとつくそれを
服で拭い取る。今のはなんだ? 奇妙に怖い。いっそ血ならよかったのに。


 割れた聴覚が、低い音波を察知する。


 振り返った。
 女が――いた。
 口元に手を当て、呆けたような視線をこちらに注いでいる。肩がふるふると小刻みに
震え、その速度は次第に速くなっている。今の声は――息を呑んだ音、か。やばい。
腹部の緊張が限界だ。頬が引き攣ってどこか笑うようにすら見える。呼吸し、
空気をため、裂けるような振動をその喉から――!


 放つ寸前。
 その喉を潰して塞き止めた。


 ――見られた。
 明らかな失態だ。暗殺の現場を咎められるなど、合成人間ユージンにはありえない。
女が肺から吐く行き場のない空気がひゅーひゅー音をたてている。辻希美は――
生きていれば、女と同じ年齢ぐらいだろうか。見られた。
 殺さなければならない。
 妙に胸が熱い。しくしくと頭痛がする。嘔吐したくてたまらない。腕の筋肉が震える。
 脳裏ばかりが凍てつくほど冷静だ。
 女を並外れた膂力で掲げると、抵抗を許さないように首を締めながら黒岩に突撃。
もはや反撃以外の余地を残さない速度だが、こちらの手には盾がある。

>22
vs合成人間
まだ、電流の衝撃が残っている。
精神と肉体とが遊離しているように、全身が重く、思い通りに動かない。
必死に顔をあげ、迫ってくる敵に向き直る。
 
ざっと音を立てて、俺は地面に刺さった刀を抜いた。
流れるような動きで閃光にも似た突きを繰り出す。
目撃者の女を盾にしているようだが、そんな無意味なことはない。
女1人、刺し貫くだけの腕はある―――――――
 
が、俺の突きは中途で止まった。
何故だ?
自分への疑念が脳裏に生まれる。
 
その疑念に精神を支配させないに、俺は素早く動いた。
剣を背の鞘に収め、女の喉を捕えている奴の腕を、握り潰さんばかりに掴み取る。
その状態から間合いを詰め、顎元へと裏拳を飛ばした。

24ユージン:02/07/08 20:21
>23
 ――そして、黒岩は吐瀉混じりの血塊を吐き出したが。
 ユージンの喉は潰れて応えられなかった。


 黒岩の咬手は華奢な手首を造作もなく食み砕き、
 追い打つ手の甲は細い喉を容赦なく叩き潰した。
 両者は女ひとりを狭間に置いて隙間なく密着し、
 
 故に、黒岩には、女の腹を裂いて突き出したユージンの貫手を避ける術がなかった。
 
 貫通した腕が抜けると、崩れ落ちる黒き鎧。それすらも消え、スーツ姿に戻っていく。
 ぐずぐずの喉がひいひいと風を鳴らす。
 ユージンはただ、ごく冷えた目で、血だまりに伏す男の目を見つめた。

25黒岩省吾 ◆sChIjITA :02/07/08 20:22
>24
女を助けに入った手は、何の意味もなさなかった。
貫手が女の体を破り、俺の腹に食い込んでいる。
重く鈍い、溶けた鉛が腹に詰められたような痛み。
喉に登る血にせき止められ、呼吸すら満足にならない。
 
俺と奴の間で、すでに息絶えている女の顔が、わずかに見る。
全く見覚えもない顔。
しかし、ほんの一瞬だけだが―――――――
 
その顔が、南エリという女に重なってしまったのだ。
俺が、初めて、そして唯一愛した・・・人間の女に。
 
別人と言うのはわかりきっていたのに。
人間そのものへの感情が、かすかにあるということか。
自分でも自分がさっぱりわからない。
俺はただ、渇いた笑いをあげるだけしかできなかった。
26ユージン:02/07/08 20:23
 >25
 あとずさる。
 あとずさる。
 壁面に背が触れた。

 ぬめる光沢ばかり、指先から滴る血が、同じく血だまりへと落ちて、静かに波紋を残す。

 あとずさる。
 あとずさる。
 背が壁で擦れて痛い。

 パイプに耳をあてる。脈打つように水が流れている。
 殺した。確かに殺した。
 黒岩は――あの女を盾に突っ込む瞬間、確かにぼくを殺したのだ。
 ただ、それを彼は躊躇い、
 ぼくは躊躇わなかった。
 そして、彼は死に、ぼくは生き。
 それは、絶望したものと、迷うものの差だったのかもしれない。

 あ と、ず、さる。
 あと/ず-さる。
 
 ああ;あ」と、とととととと+=”()’ず。さる?





 それは、合成人間ユージンの、最初の「殺人」への感想で。
 背を折って、胃に残っていた全てを吐き出した。
 もともと、何が詰まっているでもなかった腹腔からは、
 信じられないほどの汚濁が撒き散らされて、

 異臭と、そして啜り泣くような風の音ばかり、そこに漂っていた。

27黒岩省吾 ◆sChIjITA :02/07/08 20:27
ユージンvs暗黒騎士ガウザー、レス番纏めだ。 

>3>4>5>6>7>8>9>10>11>12>13>14
>15>16>17>18>20>21>22>23>24>25>26
 
感想などあれば、こちらに頼む。
http://fargaia.hokuto.ac/html/test/read.cgi?bbs=vampbattle&key=1019409630

 
28イーヴァ(M):02/07/08 20:32
御神苗優 VS イーヴァ(M)
『たどりきて たどりつかず』

ルークが殺された。

わたしの心はくらい闇の中に沈んでゆく。
それは生きたままに半身をもぎ取られた絶望感と虚無感。
世界が緩慢に死んでいく。崩壊する。跡形もなく消え去っていく。
色の消えたモノクロームの世界。白と黒。光と影。

「……ルーク?」
何も無い虚空に呼びかけてみても、当然返事は返ってこない。
EVA-RES(01): ……ルーク? EOS
何も無い虚空に電波を飛ばしてみても、当然返事は返ってこない。

突然、重力が何倍にも増して、わたしはソレに押しつぶされそうになる。
わたしは呆然と地面に膝をつく。
ルークの身体は装甲のひとかけらも残さず持っていかれてしまった。
わたしには、ほんの一部でさえも残してやらないというのだろうか。

わたしにはルークしかいないのにわたしにはルークしかいないのにわたしにはルークしかいないのに
わたしにはルークしかいないのにわたしにはルークしかいないのにわたしにはルークしかいないのに
わたしにはルークしかいないのにわたしにはルークしかいないのにわたしにはルークしかいないのに

プログラムがエラーを起こし、両手で顔をかきむしる。
皮膚が裂け血の色をした液体が流れだす。
肉のような何かを抉り、擬似血液があたりに飛び散る。
地面に倒れ伏し、意味もなく壊れたようにのたうち回る。
わたしは地面に頭を叩きつける。何度も何度も叩きつける。
わたしは地面に頭を叩きつける。何度も何度も叩きつける。
わたしは地面に頭を叩きつける。何度も何度も叩きつける。
額が割れ、いっそう血が流れ出す。

0と1で出来た頭脳のなかで0と1ではない何かが叫ぶ。
なんだろうこれは。この身を焼きつくしょいそうに熱いなにかは。
それはひどくわたしを蝕む。
大切なものを失うことがどれほど絶望的に恐ろしいことなのか初めて理解した。
そう、はじめて理解した。
視界がぐるぐる回って堕ちてゆく。わたしはくるくる回って堕ちてゆく。

沈んでいく太陽の光を浴びながら、赤い液体に全身をぬらしながら、
時間をひずませるような、光を歪ませるような、そんな声でわたしは絶叫した。
29イーヴァ(M):02/07/08 20:32
御神苗優 VS イーヴァ(M)
『たどりきて たどりつかず』
>28

あれから2年の月日が経った。
時が心を癒してくれるなんてそんなのは嘘だ。
積もり積もった時が心にもたらすのは、暗く冷たい淀んだ憎しみをはぐくむことのみ。
憎しみという名の種をまかれた心は
時間という養分を貪欲に吸い込んで歪んだどす黒い大輪の花をさかせる。

心?
そこでわたしは自分を嗤う。
そんなもの始めから無い。
わたしにあるのはプログラム通りの反応を返す虚ろな精神の模倣だけだ。
悲しみなんて無い。憎しみなんて無い。喜びなんて無い。郷愁なんて無い。
だが、それならば、このわたしの中にある蒼く昏く冷たく熱い得体の知れないモノはなんだろう。
これは心ではないのだろうか?

……どうでもいい、か。そう、そんなことはどうでもいい。
これが心であろうと無かろうと、大切なものには違いない。
この昏いナニカがあるからこそ、わたしはこうして生きていける。
ヤツを殺すそのときまで、わたしは迷わず生きていける。
30イーヴァ(M):02/07/08 20:33
御神苗優 VS イーヴァ(M)
『たどりきて たどりつかず』
>29

500mほど離れたところにアーカムのビルを見つけると、わたしは車を止め運転席から外に出た。
全天候型のマントをはおり、合皮製のツナギを身に付け、大きなゴーグルで顔の半ばまで隠した格好。
怪しいといえば怪しすぎるけど、どうせすぐに熱光学迷彩を施すのだから、まあ関係ないか。

ふとサイドミラーに移る自分の姿に目をとめた。
無理やり増設した数々の部品。
強引に埋め込んだ機械のせいで、所々引き攣れた、醜い傷痕の刻まれた皮膚。
ひどく醜悪だ。ツナギのジッパーを首まできちんと上げて、マントの前を閉めそれを隠す。

変化は外側だけじゃない。
全身に重り(ウエイト)でもくくりつけたように身体が重い。
熱い身体が爛れそうなほどに熱い。寒い凍てつき腐りおちそうなほどにひどく寒い。

理由は解っている。それは不適応のせいだ。
規格の合わない闇パーツをいくつもいくつも使ったせいで、わたしの身体には『歪み』が生じているのだ。
今はマイクロマシンを使って免疫系をごまかしごまかし動かしているけれど、
近い未来、そう遠くないいつか。
わたしは活動を永久に停止するだろう。
だけど、だけどその前に。わたしからルークを奪ったあいつをこの手で必ず


          こ ろ し て や る ! ! 
31イーヴァ(M):02/07/08 20:34
御神苗優 VS イーヴァ(M)
『たどりきて たどりつかず』
>30

高ぶった気分をなんとか強引に静める。
最近はこんな風に擬似人格が自分でも制御できない『感情』をエミュレートする。
そろそろ本当に最期が近いのだろう。だけどその心配も今日で終わりだ。
『感情』の残滓を振り払い、わたしはアーカムのビルに目を向ける。

下調べは全部終っていた。
いまこの支部に残っている戦闘員は、御神苗優を除いては一般の私兵が6人のみ。
今までで最大のチャンス。そしておそらくこれ以降でも。
そしてなにより。
これ以上我慢するなんてわたしの『心』ができそうもない。

電波(ワイヤレス)で車に搭載したGZK(人工知能)に接続。

EVA-RES(01): ――始めるわよ。 EOS
GZK-RES(01): 諾。 EOS

電子戦用に特化されたAIが車に積んだ通信機械を使い衛星に接続する。
それを経由してアーカム支部屋上のアンテナから内部に侵入開始。
多少の抵抗は感じたけれど、防壁を強引に突き破りビルの制御系を一気に掌握する。
もちらんこれではすぐに気付かれて回線を遮断されってしまう。
だからその前に、全システムを強制的にダウンさせる。
命令をだすのと同時に、アーカムビルについていた電気が一つ残らず消え去るのが見えた。
回復までの時間はおそらく30分ほど。それだけあれば十分だ。

フォアエンド操作し初弾を薬室に送り込む。
景気のいい「ガシャン」という音が辺りに響いた。
それを聞いてわたしはひどく楽しい気分になる。

光学迷彩を施した。
みるみるうちにわたしの身体が透明になっていく。
それを確認するとわたしはビルへ向けて走り出した。

今日はルークの追悼式だ。

タ ク サ ン タ ク サ ン 殺 シ テ ア ゲ ヨ ウ 。
32御神苗優 ◆OminaeNo :02/07/08 21:44
『たどりきて たどりつかず』〜御神苗優vsイーヴァ(M)
>28-31
 
あの事件の引鉄は、今から二年ほど前のことだった。
アーカムはトライデントが超古代遺跡の遺産を運搬する、
という情報をキャッチした。
しかもブツは相当の大物。当然、警備も堅いわけで。
俺たちスプリガンが借り出された。
今回、借り出されたのは俺とティア。
運搬チームを襲撃した俺たちの前に現れたのは、
昆虫にも似た、異形の戦闘人形。
 
その闘争は、激闘と呼ぶにふさわしいものだった。
ニードルガン、モノフィラメントウィップによる中、遠距離での攻撃、
近距離では頭部から生えた牙で敵を引き裂かんとする。
それだけならまだしも、敵はとんでもねぇ速さで動くというおまけ付だ。
正直、ティアが居なかったら俺のほうがヤバかった。
魔術ってなぁ偉大だねぇ、とつくづく思ったよ、あの時は。
その時、その人形には連れが居た。
年恰好は10歳前後の女の子だ。何で一緒に居たのかはわからねぇ。
彼女は、異形の人形が倒されたのを見ると、
果敢にも俺たちに向かって飛び掛ってきた。
しかし、少女の力じゃさすがにどうにもならねぇ。
すぐに取り押さえた。が、結局殺さなかった。
いや、殺せなかった。
彼女を逃がすために、一台だけトラックを残し、
俺たちは遺産とともにその場を去った。
 
あれから二年が経ち、あの時の記憶も風化した。
俺も何個ものミッションを重ね、幾度も死線をさまよった。
そして――その日がきた。
俺自身は忘れていた。その日が、あの人形の命日だということを。
 
その日、俺はとあるミッションのため、アーカムバンコク支部に来ていた。
銃器関連のチェックを終え、出発しようとした矢先――
突然、全フロアの電源が落ちた。
すぐさま予備の電源に切り替わり、すぐさま人工の明かりが室内に満ちる。
だが、俺は嫌な予感がした。
愛用のG3A3を手に取り、予備マガジンをラックに二本捻じ込む。
そしてナイフを腰に刺すと廊下へと出た。
すでに数人の警備員が原因究明の為、地下の発電室に向かったらしい。
俺もその後を追い、電源室へと向かった。
 
それが、人形の追悼式の静かな幕開けだった。
ジョナサン・ジョースターvs両儀織 導入
 
街で、奇妙な殺人事件が続いていた。
切り裂きジャックすら凌駕しかねない凄惨な事件。
ツェペリさんの元で波紋の修行を続けていたぼくの耳にも、その事件の噂は入ってきた。
 
ひょっとすると、ディオが関わっているかも知れない。
紳士として、見過ごすわけには行かなかった。
 
ぼくはスピードワゴンとともに、夜の街の調査に訪れていた。
瘴気とも言えるような独特の大気が、夜の街を覆っている。
月は蒼く、その瘴気を受けて歪んだ輝きを見せている。
 
その路地裏に入った途端、奇妙な殺意をぼくは感じた。
あかいあかい血溜まり。
かつて人だったモノの、残骸。
 
その前に、その人物は立ち尽くしていた。
 
「てめえ!なんてことをしやがった―――――ッ!!」
 
止める間もなく、スピードワゴンが怒りの雄叫びとともにその人物に駆け寄っていった。

34両儀 織 ◆ORihiMeM :02/07/08 21:52
ジョナサン・ジョースターvs両儀織 導入の弐
>33
 
 路地裏。
 真昼であっても薄暗く、陽の恩恵を十分に受けられぬ場所。
 其処に、ゆらりと立つ人影が一つ。
 ソレは白地の着物に朱の斑点を散りばめて、足下にあるヒトの欠片を凝視していた。
 口元を歪に吊り上げ、蠢くモノの全くない"死"の満ちた空間に佇み虚空を見上げる。
 
 途端、雲が途切れ、月の灯りが世界を照らした。
 
 
      ―――――それは、辺り一面に広がる
                  
                
                紅い、朱い。大海のような水たまり―――――
 
 
 手にしたナイフをつたう残滓。
 ぽたり、と落ちたひとしずくが、
 ぴちゃり、と幾つもに別れ飛び散った。
 
 
 不意に、辺りが蠢き始める。
 轟き渡る咆哮。
 男がおかしな帽子を頭にのせて、オレに向かって駆け寄ってきた。
 
 間合いを合わせ、吸い込ませるように、膝を男の腹に打ち込んだ。
 崩れ落ちてゆく男の身体。
 ソレを気にもとめずに、オレは後ろに居る巨漢を一瞥した。
35イーヴァ(M):02/07/08 22:07
御神苗優 VS イーヴァ(M)
『たどりきて たどりつかず』
>32

システムをダウンさせる直前、最後に確認した時点で御神苗優がいたのは5階だ。
でも、その場に止まることはないだろう。きっと原因を究明するために地下の発電室へ向かうはずだ。

1人目。
入り口から入ってすぐに出会った。
全然気付かずに近づいてくるのでナイフを無造作に首筋に叩き込んだ。
痙攣する敵の手からH&K53がこぼれ落ちる。
わたしはショットガンをマントの下に収め、床に落ちたH&K53を拾い上げた。
ボルトを操作。排莢口から勢いよく弾丸が飛び出す。
もったいない。拾い上げてきちんと弾倉に戻しておく。
―――――ルークと二人で旅していたころの影響で、わたしは今でも貧乏性だ。

2人目。
階段を降りている最中に出くわした。そっと近づき、後から腎臓を一突き。
そのあと首筋を刃で軽くなでてあげた。
にんげんて脆いなぁ。

3人目。
廊下で追い越しざまに首を凪いだ。なんだ、ひどくあっけない。

4人目。
真正面から心臓を刺した。それなのに死ななかった。

何で!?何で死なないの!?
36イーヴァ(M):02/07/08 22:08
御神苗優 VS イーヴァ(M)
『たどりきて たどりつかず』
>35

わたしは思わず呆然とする。
敵は一瞬あっけにとられた後、狙いもつけずにあたり一面に銃を乱射した。
数発が防弾処理されたわたしのマントの表面を擦っていく。
わたしは驚愕から立ち直ると、銃を構え苛立ちと憎しみを込めて銃爪を引き絞った。
死なないのなら死ぬまで銃弾を叩き込んでやる!

敵は銃弾に全身を穿たれて、狂ったような踊りを踊る。
なのにまだ死なない。あんな穴だらけになっているのに。
―――――なんてしぶといんだろう。

ふいに恐怖と、どす黒い感情がこみあげてきた。
弾切れになった銃を投げ捨て、予備のナイフを抜き放つ。
体当たりをして敵を押し倒すと、その顔面に何度も何度もナイフをつきたてた。

何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も
何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も
何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も
何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も

やっと動かなくなった。
返り血でべとべとになった顔をぬぐい、わたしは何度も大きく肩で息をする。
……そんな必要はぜんぜんないのに。

わたしは震える足に力を込め立ち上がる。予定よりは早くなったけどもうここで仕掛けるしかないか。
ナイフをぬぐい、2本とも鞘に収める。
そしてマントの下から手榴弾を取り出すと、ピンを抜いて死体の下に仕掛けた。
これで死体を動かせばピンが外れて爆発だ。……こんな手にかかるとは思ってないけど。

わたしはホルスターからショットガンを取り出すと、急いでその場をはなれる。
少し離れた物陰で待機。姿が見えないといっても用心するに越したことはない。
……あとはヤツが来るのをただ待つだけだ。
この距離で散弾なら、いくらわたしでも外しはしない。

―――――さあ来い。ルークのカタキをとってやる。
37結城小夜 ◆YatatCS. :02/07/08 22:22
>前スレ371
閖(M)vs結城小夜
 
振り下ろされた御幣が閖の頭を打ち砕く。
それは、氷で出来た虚像だったのだが。
 
「迂闊!」
 
小夜は、着地と同時に閖の姿を求める。
雷光が、小夜を打ち据えた。
 
思わずその場に崩れ落ちる。
 
「おのれ……」
 
震えながら立ち上がった。
傷は負ったが、まだ戦える。
 
「いくら貴女が詭弁を弄して私を謀ろうとも、無駄です。」
 
紙人形を取り出す。
 
「私は、世界の免疫機構。人類の敵に対する最後の防壁。」
 
念をこめる。
 
「……ヤタ!」
 
式神が、人類の味方たる一柱が、閖めがけてその嘴を向ける。
あらゆる悪をついばむ嘴が、迫る。
38御神苗優 ◆OminaeNo :02/07/08 22:30
『たどりきて たどりつかず』〜御神苗優vsイーヴァ(M)
>35-36
 
「な・・・・・・・!?」 
 
エレベーターの扉が開ききるのももどかしく、
ホールに飛び出した俺の眼に飛び込んできたのは、
力なく床に倒れた警備員たちの姿だった。
一人は首を半ば断ち斬られ、
ある者は体を蜂の巣にされた上ナイフでめった刺しにされ、
床に赤い水溜まりを作っている。
そのうちの一人がぴクリと動いた。
 
「おい、大丈夫か!」
 
俺は近づき、そいつを抱き起こそうと体を持ち上げた。
ピン、という間抜けな音が耳に届く。
そして――爆発。
周囲に肉片を撒き散らし、血の噴水が噴出する。
鼻には肉が焦げる嫌な臭い。
体の下に手榴弾を置いてやがったのか!
気づいたときには、俺は爆風に飲まれ、
エレベータの扉にたたきつけられていた。
思い切り頭を打ち、さすがに少し朦朧と仕掛ける。
 
爆発に反応したのだろう、天井に備え付けられたスプリンクラーが、
室内を洗い流すように水を吐き出し始めた。
俺はそれを顔に浴びながら、見えざる敵への対応を考えていた。
39鈴鹿御前 ◆Y4SUZUKA :02/07/08 22:40
鈴鹿御前 vs チェカラク

前スレ>406 >409(前スレ分、レス番の纏めは>410)

 虹色の壁の向こう──そこは、明らかに人の手が加えられた通路だった。広い。
 無数に枝分かれし、分岐する洞穴の壁は、近代建築もかくやというばかりの精度で均され、磨か
れている。
 鬼の発する鬼気を頼りに、その複雑な迷宮を歩む。
 私が追っている鬼のものとは異質な、何者かの気配と、奇妙な暖かさを帯びてきた空気。
 それらは、洞窟の奥へと進むにつれて、どんどん強まっていく。

 全身にじっとりと汗が浮かび、不快感を覚え始めた頃、曲がり角の向こうに光が見えた。鬼の気
配は、もう間近に迫っている。
 額から流れる汗を拭い、その元へと向かおうとした、その瞬間──向こう側から、凄まじい声が
した。

「あああ!」「あああ! やっと!」

 何かを見いだしたような喜びと、それでも決して癒されない絶望。それらを、二つながらに含ん
だ、あまりにも異質な声だった。
 不吉な予感に駆られ、足が速まる。
 角を曲がった私が見たのは──人の形をした炎と、その足元に散らばる、僅かばかりの真っ白な
灰だった。
 かすかに漂う鬼気の残滓が、その灰がほんの数分前まで、鬼の姿を取っていたという事を教えて
いた。

 ──ふと、遠い昔に聞いたある伝説を思い出した。


 村に流行った疫病を祓ってくれ、との願いに応え、召喚された<火の神>は、疫病ばかりでなく村
や人々をも焼き尽くそうとしたために、旅の僧侶の法力によって封じられ、幽閉された、と。


 伝承を信じる限り、<火の神>は典型的な『荒ぶる神』だ。
 機嫌を損ねれば、文字通り烈火の如く怒るだろうが、こちらから敵意を向けない限りは、敵対行
動を取ることはあるまい。

「神の眠りを損ねるつもりはない。そちらが何もしなければ、今すぐ立ち去るわ」

 両手を広げ、穏やかな口調で呼びかけた。
40閖(M):02/07/08 22:52
>37
少女の力は危険ではあったが、まだ対処できる。
まったく、柄にもなく私は熱くなっているようだ。

苦笑を一つして少女が起き上がるまで周囲にある雪だるまにもたれて待つ。
「詭弁かしら?無駄と分っても何度も繰り返すのは、人の宿命ではなくて?」
 
少女と距離を保ちながら続ける。

「たしかに、防壁は必要だわ。
 でも、それは…自分を持たない存在であってはならないわ。
 貴女は本当に人の営みを知っていると言えるの?」

この帝都に溢れている妖気はただ事ではない。
私が少しの精気を喰らうだけでこうしていられるのが何よりの証だ。
少女が、この危機に立ち向かえると言うのなら……。

鴉が少女の持つ紙人形から生まれる。
危うい所で避け、雪だるまの中身ごと鴉は砕いて再び私に迫る。

「あらあら、人類の敵を滅ぼす為なら個人なんてどうでもいいのは本当だったわね…。
 目の前の一人すら救えないものが、たいした事だこと…」

雪だるまの中身だった者に軽く瞑目しつつ少女を嘲る。
41イーヴァ(M):02/07/08 22:55
御神苗優 VS イーヴァ(M)
『たどりきて たどりつかず』
>38

そして、ついにヤツが現れた。
御神苗優。

や っ と 見 つ け た 。

憎悪が、胸の中の黒い炎が、このわたしの身体を焼き尽くさんばかりに強くなる。
ああ、今すぐにでも、この瞬間にでも銃爪を引きたい。
わたしは歯を食いしばってソレに耐える。
だめだ、まだダメだ。確実にしとめなくちゃいけない。絶対に殺さなくちゃいけない。
だから、まだ、あと少しだけ、耐えるんだ!

葛藤するわたしの視線の先で、駆け足で御神苗が死体に近づいていく。

スリング(負皮)とショットガンの間に腕を入れ、それを二の腕まで通す。
わたしはそのままゆっくりと射撃姿勢をとる。
ピンと張るスリング。
こうやってしっかりと固定して少しでも命中精度を上げる。
もちらん肩に銃床を押し付けてしっかり固定することも忘れない。
銃把を握る手に力を込める。慎重に安全装置を外す。

さあ来い!早く早く早く早く!!

そしてヤツが罠にかかった。
42イーヴァ(M):02/07/08 22:55
御神苗優 VS イーヴァ(M)
『たどりきて たどりつかず』
>41

やった!かかった!!
思わぬ幸運にわたしはかみさまに深く感謝する。

吹き飛ばされれエレベータの扉にたたきつけられるヤツの体。
わたしはそれを見てうっすらとしたわらいを浮かべる。
……これなら確実に銃撃できる!
お前は、オマノイノチハワタシノモノダ、もう絶対に逃しはしない。
そしてわたしはゆっくりと、銃爪を引き絞った。
43結城小夜 ◆YatatCS. :02/07/08 23:13
>40
「……堕ちた巫女め」
 
小夜は、そう呟いて懐から御符を取り出す。
そして、そのまま投げつけた。
 
「言った筈。私は一要素だと。」
 
駆け出す。
再び御符を取り出し投げる。
 
「今の私は、システム。システムに自我は不要。」
 
横っ飛びにはね、さらに御符を投げる。
 
「そして、そのシステムとはあしきゆめに知らしめる事。」
 
ぐるりと閖の周りを回るようにさらに跳ねる。
 
「何者も、いかな手を使おうとも、人を絶望させる事は出来ないのだと。」
 
片足を軸にぐるりと回った。
両手で、御符を構える。
 
「その者の恨みつらみは、私の死でもって贖罪とさせて貰う。」
 
両手の御符を投げつけた。
閖を包み込むように、御符が迫る。
44御神苗優 ◆OminaeNo :02/07/08 23:16
『たどりきて たどりつかず』〜御神苗優vsイーヴァ(M)
>41-42
 
天井を向き、対応策を考えていた。
ふと、視界の隅で不自然な水しぶきが上がっているのに気づいた。
それは、ちょうど人が半身をのりだすような形で――敵か!? 
 
俺が身を起こしその場から跳び退くのと、
銃声が響いたのはほぼ同時だった。
さっきまで俺が凭れていたエレベータの扉はひしゃげ、
もはや二度とあかねぇまでに歪んじまった。
 
だが、これで敵の居場所もわかった。
光学迷彩つけてるようだが、このスプリンクラーの雨の中じゃ、
意味なんかなくなっちまうぜ!
俺はアサルトライフルの安全装置を解除すると、
発砲された場所へ向けて引鉄を引いた。
45<燃える神>チェカラク:02/07/08 23:28
鈴鹿御前vsチェカラク
>39
 
「だが、余は食らわねばならぬ」
 人の姿をした炎から、興奮と諦観、理知と狂気のいり混じった声が発せられた。
「<燃える神>チェカラクは食らわねばならぬ!」
 再度の絶叫が、通路の焼けるような空気を震わせた。
 揺らめく炎で形作られた足が、鈴鹿のほうへと一歩踏み出す。「余はつい先ほど、一匹のケモノを食らった。だが、足りぬ!余の飢えは満たされぬ!
そして、残された食物は汝しかない!」
 燃える両手を突き出し、チェカラクはさらに一歩、足を進めた。  
46イーヴァ(M):02/07/08 23:32
御神苗優 VS イーヴァ(M)
『たどりきて たどりつかず』
>44

外した!?この距離で!!
おどろきのあまりわたしは硬直した。その一瞬の隙をつき無数の銃弾がわたしのからだに叩きこまれる。

痛い!痛い!痛い痛い痛い痛い!!

あまりの苦痛に泣きそうになりながらも、声がでるのだけは何とか耐える。
マントもツナギも防弾処理されているから、弾が貫通することはない。
でも、それでも音速を超えた鉛弾の衝撃は泣き出しそうなほどの痛みをわたしの身体にもたらす。
無意味な信号に全身が痙攣し、陸にあがった魚の様に無様にのたうち回る。

見えないのに何でこんな正確なしゃげきができるのよ!!
!?……スプリンクラー!まずい、これじゃ丸見えだ!!

どうしよう!?
わたしは混乱のあまり思わずその場に座り込みそうになる。

落ち着け!落ち着くんだ!!
正面からあたっても絶対に勝ち目はない。
震える足に力を込め立ち上がる。ここにいるのはまずい。早く逃げないと。

わたしは、ショットガンを構えると弾倉に残った装弾を一呼吸で連射。
そしてマントの下から手榴弾を2つ取り出し、ピンを抜いて軽く投げた。
同時に身を反転し全力で走り出す。

逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろにげろにげろにげろにげろ!!

わたしは心の中で悲鳴をあげながら、急いでその場を後にした。
47鈴鹿御前 ◆Y4SUZUKA :02/07/08 23:54
鈴鹿御前 vs チェカラク

>45

 私の見立ては、どうやら甘かったようだ。
 長く封じられていた<火の神>──<燃える神>チェカラクと名乗ったそいつは、想像以上に貪欲な
神だったらしい。
 絶叫しながら足を踏み出し、燃える両腕を伸ばしてきた。

 その様子を見て、私は説得という考えを捨てた。
 もちろん、大人しく掴まれるつもりも、まして喰われるつもりもない。
 だが、この場所で闘うのは危険だ。ここはあまりに狭すぎる。
 このような閉鎖空間で闘い続ければ、奴の発する熱によって、遠からず体力を奪い尽くされてし
まうのは、目に見えている。

 飛び退いて紅い抱擁を避けると、私は<燃える神>に背を向け、入口目指して走り出した。
 ここへとやってくる際に、目印は残してある。迷宮で迷う心配はなかった。
 幸い、洞窟の周りには木々は少なかったと記憶している。ならば、できるだけ広い場所で闘うの
が得策だろう。
48御神苗優 ◆OminaeNo :02/07/08 23:54
『たどりきて たどりつかず』〜御神苗優vsイーヴァ(M)
>46 
 
音速を超えた7.62mの弾丸が、敵の体に叩き込まれていく。
だが、血も何もでねぇとこを見ると、
おそらく防弾処理されてるんだろう。
防弾処理つったって、鎧を着てるわけじゃねぇから、
衝撃までは殺せない。ハンマーで殴りつけられたような痛みが全身を襲ってるはずだ。
にも拘わらず、声一つも上げないとは、たいした精神力だ。
 
すぐさま第二射を撃ち込もうと引鉄を引きかけたとき、
マズルフラッシュの閃光が立て続けにおこる。
顔をやられちゃさすがに俺も死んじまう。
慌てて頭に腕をかざした。
 
体に散弾の雨が所狭しと降り続く。
(い、痛ぇーーーーーっ!!)
激痛に顔を歪ませる。ぴちゃぴちゃと水面を叩きながら、
足音は非常階段の方へと移動していく。
逃がすか!すぐさま後を追おうとした矢先に――
パイナップルが二個、宙を舞っていた。
 
「ちょ、待・・・・・・!?」 
 
俺は手近にあったドアをあけると、其処へ飛び込む。
そのちょっと後、廊下を爆風と業炎が嘗め尽くした。
間一髪・・・・・・なんとか助かった・・・・・・
だが、心休めている時間はねぇ。
見えぬ敵を追い、すぐさま俺は廊下に飛び出し、非常階段へと向かった。
49ヴァルダレク伯爵(M):02/07/08 23:58
Nameless Kresnik vs Count Vardalek
“The Party Of The Children Of Night”
前スレ
ttp://cocoa.2ch.net/test/read.cgi/charaneta/1025406070/l50
>404
 
 噛み千切られる前に自分で腕を斬り飛ばし、狩人は塔の下へと落ちて行く。
 吸血鬼は不興げに唸った。取り合えず口中に残った腕を飲み込まんと喉を収縮させる。
 咽喉部の鱗が二の腕の形に膨れた途端。
 閃光と爆音と、ついでに臓腑を口から噴き出して吸血鬼は四散した。
 躯は爆風で更に細切れに裂かれ、毒々しい飛沫となって城壁に振り撒かれる。
 
 爆発が吹き飛ばしたのは吸血鬼だけではない。ついでに半ば以上倒壊した外塔の上部をも、
跡形もなく爆砕させていた。
 
 爆音の余韻が消えた頃、血風に染め上げられた瓦礫で一つの現象が生じつつあった。
 紅い染みが流れて行くのである。へばりついた肉が這いずって行くのである。
 上から下へと云う物理法則を無視し、あまつさえ異常なスピードを以って。
 血色の支流は別の支流と重なって太さを増し、跳ねる小さな肉片は寄り添って肉塊と為る。
 全ては一つの方向へ向かっていた。
 城壁の上に転がった吸血鬼の、奇跡的と云うべきか、これだけは原型を留めた頭部へと。
 そう、それは確かな意思持てる行動と云えた。
 首の元で合した血汐と肉は互いに求め合う様にこねくり合い、蠢き合い、そして――。
 
 口から長い舌を垂らし、呆けた表情を見せる首を戴き肉全体が盛り上がる。
 吸血鬼は元の異容を取り戻しつつあった。
50横島忠夫 ◆.TadAo.Y :02/07/09 00:01
横島忠夫 vs ジュヌヴィエーヴ=コトフォード 
まとめ> 
http://cocoa.2ch.net/test/read.cgi/charaneta/1025406070/419
 
前スレ>
http://cocoa.2ch.net/test/read.cgi/charaneta/1025406070/416
http://cocoa.2ch.net/test/read.cgi/charaneta/1025406070/417
 
 霊気の爆発を乗り切り、ジュネさんは跳ねるように体を切り返してきた。 
 効いてない? 乗り切られた?  
 
「ま、まだ。まだまだだってのかよ」 
 
 堪らず、悲鳴じみた声が零れた。 
 強い、なんつーか見かけと全然合わない出鱈目な強さだ。 
 
 数メートルの距離が、一瞬のうちに詰まって迫る。 
 ドレスの裾を風に靡かせ、魔の足を踏み、地を撃って飛ぶ。 
 美女の弾丸! 
 何故だ、嬉しいのに・・・嬉しいハズなのに・・・ちっとも嬉しくない!
 
 泣き言を吐きつつも、逆手に構えた霊符を振り戻す腕に合わせて疾らせた。  
 合わせて数百万の負債だが、背に腹とか命とかは変えられない。 
 涙を飲んで金と無事を惜しみつつ、投擲――――――出来なかった。 
   
 女性には、札を、放つべき、魔が、無かった。  
   
 細腕を突き出し、ただの拳を俺に向ける。 
 そんなジュネさんと目が合って・・・思考が、止まった。 
 
 
 ――――――ジュネさんは、嗤っていた。 
51横島忠夫 ◆.TadAo.Y :02/07/09 00:02
>50 の続き。 

 何故?   歪な笑みは優しげなジュネさんを塗りつぶして、禍々しく染め上げる。  
 どうして? 吊り上がる口元、何処も見ていないような空虚な瞳、やや下がる眉。 
 俺は――――そこまで、俺は、拙いコトしましたか―――――――― 
 
「ご、ゴメンナサイ、許してぇ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!」 
 
 拳が突き刺さる。 
 霊波の楯が、それを受け止める。 
 呆気なく、腕ごと吹き飛ばされる。 
 体が飛ぶ。 
 転がる、転がる、転がる。 
 
 石畳をだいぶ転がされて、ようやく俺の体は止まった。 
 意識が途切れ途切れに、なる。 
 腕が重くて、動かない。 
 息をする度に喉が絡まり、詰まる。 
 
 や、やばい、ぞ。 
 見た目以上の、腕、力・・・・・・し、死ぬ。死んで、しまう・・・! 
 起き上がろうとするが、全身に痛みが走った。 
 脳がどれだけ声を荒げても、筋肉が骨が神経が、命令を拒絶する。 
 
 命がけでもダメでした、だから許して。 
 そのくらいの言い訳は通りそうだ――――恐らく、通じないだろうけど。 
 
「じぇ、じぇね、さん――――」 
 
 小声で名を呼ぶ。 
 
「ジェネさんは、いったい――――」 
 
 噎ぶような息を押さえ込みつつ、なんとか言葉を捻り出す。 
 
「俺を、どうしたいんだ?」 
 
 弱音とも弱気とも取れる言葉。 
 ああ、やばい! 俺、今、とっても挫けてます!  
52イーヴァ(M):02/07/09 00:07
御神苗優 VS イーヴァ(M)
『たどりきて たどりつかず』
>48

わたしは自分のまぬけさ加減に憤りといいようのない脱力感を覚える。
――――――――なんでこーなるかなー。

それでも走りながら再装填。まだわたしは死にたくない。
階段で敵とはちあわせた。八つ当たり気味に銃爪を引く。
頭を吹き飛ばされてくずれおちる敵。
子供みたいに若かったが、そんなのは全然気にしない。

わたしはさらに上にあがっていく。

とちゅう廊下の片隅で銃をかかえてうずくまっている人を発見。
なさけないなぁ!
また八つ当たり気味に苛立ちを込めて銃爪を引く。
一瞬の後、頭欠になる敵の体。

それを視界の隅で確認しながらわたしは最大速度で思考をめぐらす。
正面からやっても勝ち目はない。何か手をかんがえないと……。

そしてわたしはさらに上へと逃げていった。
53閖(M):02/07/09 00:14
結城小夜VS閖
>42
「堕ちた?そうかもね」
山を汚すものに祟りをなし、気まぐれに過ごした千年の日々。
寝ても醒めてもと言うほどではないが、
あの者のことを思い出さない日はなかった。

―――堕ちきっている?何を今更…。あの者に出会うために…。

少女の投げた護符を冷気で退ける。
退けきれなかった一枚が張り付いて私の肌を焼く。
巫女装束を脱ぎ捨てて、第二弾の符を避ける。

「恥じらいがないのもいけないのだけどね…」
ククッと笑い、雪だるまを霊符にぶつける。
意識のない者にはさほど効果はあるまい。

こんな時に昔を思い出すなんて…。
苦笑したまま、少女の声を聞く。

『その者の恨みつらみは、私の死でもって贖罪とさせて貰う。』

途端に…私の中で何かが弾けた。
吹雪を呼び、最低限身を護りながら少女へと迫る。
霊符が身を焼こうとも気にならなくなっていた。

少女の頬に平手を打つ。
何の霊力も込めていない、ただそれだけの平手。

「死ねばそれで済むと思っているの?
 それで全てが解決?
 ――――ふざけるんじゃないわ!」

あまりにも無責任、あまりにも情けない。
あの凛とした目は純粋さ故なのだろうが、
純粋さ故に思考を止めているのがあまりにも腹立たしかった。
54ロン(M):02/07/09 00:21
「偶(タマタマ)狂疾ニ因ッテ殊類ト成ル」〜 ロン VS 孔濤羅 導入

 この、湿った洞窟のなかで瞑想を始めてから、どのぐらいになるだろうか。
 殺すことに嫌気を覚え、殺すことしかできぬ自分に嫌気を覚えて、
 何より殺戮を振りまかずにいられない、己の獰悪なまでの獣性を抑えようと篭り始めて・・・
 分からない。もう、数年が過ぎたようにも感じていた。

 里にはいっさい下りず、週に一度、わずかな穀類を口にする以外は水だけの生活。
 遥か昔の師の教えのままに、静かに自分を抑え、深山の澄んだ大気に己を同調させつづけ、
 しかしそうして浮かび上がるのは、己の奥底、本能と変わらぬ深みに潜む人食い虎。
 ロンにできるのは、腫れ物を扱うように、それを刺激しないこと。
 狂おしいまでに求めて、結局、分かったのはただそれだけだった。

 もはや、これを抑えつけるのは不可能なのかと、ロンは思っていた。
 同時に、こうしてまるで石のごとく、人知れず朽ちていくことに、奇妙な誘惑を覚えてもいた。
 自分には、それがふさわしいのではないか、と――

―――――――――――・・・

 ふと、拡散した意識の表層に引っかかるものを覚えて、ロンは若干、そちらに注意を向けた。
 人の立ち入らぬこの山に入ってきた人間。
 そしてその人間の放つ、秘めた刃のごとき気配に、久々に人間らしい興味を覚える。

 その気配は、まっすぐに、自分のほうに向かってきているのだった。
55孔濤羅 ◆SHIDEN1o :02/07/09 00:22
「偶(タマタマ)狂疾ニ因ッテ殊類ト成ル」〜 ロン VS 孔濤羅
>54
 
一足踏み出すごとに、さくり、さくり、と音が鳴る。
見渡せば大地は色とりどりの落葉に覆われていた。
山中の清冽な空気が肺腑に染みる。
 
だがそれらを見ても濤羅の心にはなんの変化もなかった。
胸にあるのは身を焦がさんばかりの怒り。ただそれだけだ。
 
ともすれば放散しそうになる殺気を押さえつけて濤羅は歩いている。
これから対するのは怒りにまかせて剣を振るって勝てる手合いではない。
武術の四流派において功を成し、数々の修羅場を踏み、屍の山を築いた男。
 
ジン・ロン。その名は黒社会で轟いて久しい。
 
濤羅は何度かロンと顔を合わせたことがある。
副寨主となった豪軍の護衛として、ロンが雇われていたからだ。
学者じみた物静かな風貌の中に恐るべき獣性を秘めた男。
それが濤羅のロンに対する第一印象だった。
 
龍が戴天流と同じく、内家に属する形意拳を修行していたこともあり、
以後濤羅は浅からぬ親交をロンと結ぶことになった。
しかしはじめて顔を合わせたときの人物評は
決して変わることはなかった。
 
 
 
歳経た楓の大木を過ぎたところで、濤羅は足を止めた。
視線の先にあるのは斜面にぽっかりと口をあけた洞窟だった。
 
濤羅はそこに立ち止まったまま動かない。
ただ押さえつけていた殺気を少しだけ解放した。
左手に持った倭刀から冷気がじわじわと染み出す。
 
ロンほどの手練なら気付くはずだ。
だから今は待てば良い。
調息し、内気を練り、濤羅はただそこに立ち続けた。
>前スレ405 アセルス(半妖ED後)&玖珂光太郎VSラルフ・グルトVSフォルテッシモ
 
吸血衝動を抑えつつ逃げ続ける。
だけど・・・私たちの足で逃げきれられるはずもなかった。
 
背後から轟音が襲う。
文字通り・・・こちらに向かって轟音が襲ってくる。
いやな予感がして繋いでいた手を放した瞬間―――
 
「うああ・・・っ」
 
放した腕に一筋の、だが深い傷が刻まれた。
もちろん、すぐに再生を始めるが・・・ひどく、血が流れた。
 
「っ・・・はぁ・・・はぁ、はぁ・・・」
 
剣を杖代わりのようにしながら、荒れた息をつく。
・・・走ったからじゃない、痛い・・・ことは痛いけど、そのせいだけでもない。
 
ただ、ただ―――喉が、喉が乾く―――
 
私はもう逃げることなく、そのまま待ち続けることにした。
あの男を・・・私が今欲しいものをたくさん持ってるあの男を・・・
57ロン(M):02/07/09 00:25
「偶(タマタマ)狂疾ニ因ッテ殊類ト成ル」〜 ロン VS 孔濤羅
>55

 自分に向けられた殺気。
 それに応じ、己の意識が浮上していくのを感じる。

 ロンは、深い深い眠りから目覚めるかのように、ゆっくりとその両眼を開いた。
 正気に戻ってみれば、この"気配"に覚えのあることに、ロンは気づいた。
 これは、確か・・・

 趺坐を解き、傍らに無造作に転がしてあった棍をもって、ロンは立ち上がった。
 呼び出しに、応じなければならない。
 外の明るい日差しに目を細めながら、洞窟を出る。

 気配の主は、なるほど、その気配通りの外見をしていた。
 黒いコート。鋭い眼光。手にもった倭刀に、持ち主の本質が表れているようだ。
 鋭く冷たく、他者を切り裂かずにいられない刃を、内に秘めた男。
 その刃が一端抜き放たれればどうなるか、それは、想像に難くない。

 やつれた。それが、久々にあった旧友の、印象だった。

 孔濤羅(コン・タオロー)。
 青雲幇にて、「紫電掌」の二つ名と共に恐れられた凶手。

「久しぶりだな・・・」
 再会を喜ぶ一方で、来訪の理由を訝しがりながら、ロンは言った。
 無言のまま、昏い視線を向けつづける濤羅。
 先を促すように、ロンは続く言葉を飲み込み、沈黙した。
58御神苗優 ◆OminaeNo :02/07/09 00:41
『たどりきて たどりつかず』〜御神苗優vsイーヴァ(M)
>52
 
階段にたどり着くと、俺は大急ぎで階段を登っていく。
一段飛ばしにのぼるのももどかしく感じる。
待ってろよ、今すぐ追いついてやる!
 
階上から立て続けに二発、銃声がした。
ちっ、また殺られたか!
今まで以上の速度で階段を登っていく。
これ以上、殺させてたまるか!
59イーヴァ(M):02/07/09 00:44
御神苗優 VS イーヴァ(M)
『たどりきて たどりつかず』
>58

考えろ!

走りながら思考をめぐらせ、あたりを見回す。
どうせあれじゃあ大した足止めにはならない。これじゃあすぐに追いつかれる。
捕まってそして殺されちゃう。
――――――――ルークみたいにコロサレル。

使えそうなもの!何かあたりに何か使えそうなものはないの!!

私は必至に周りを見回す。そして廊下の片隅に無造作に置かれたソレに目をとめた。
消火器!!
わたしは消火器を掴むと、近くの部屋のドアを開け中に転がりこんだ。

どうやらそこは少し小さめの雑務室らしい。
わたしはすぐさま、マントの下からプラスティック爆薬を取り出し、消火器に張りつける。
そしてそれに電波信管をセット。
すぐには目に付かない場所にそれをそっと置いた。

さあ、はやく隠れなくちゃ……向こうはこちらの体格を知らないはずだ。
わたしは手足を縮め机とロッカーの間の僅かな隙間にもぐりこむ。
そしてショルダーホルスターから銃身を切り詰めた上下二連式のショットガンを抜き取る。
手に持っていたショットガンは弾を詰めなおして机の下に押し込める。
一瞬でいい。一瞬の隙さえ作れば、わたしはそれに全てを賭ける。
そしてわたしは息を殺してヤツが来るのをじっと待った。
60<燃える神>チェカラク:02/07/09 00:46
鈴鹿御前vsチェカラク
>47

 鈴鹿御前は<燃える神>に背を向け、走った。 
 チェカラクは炎の閃く素早さで、彼女を追った。
「止まれ、人間よ!無駄だぞ!<混沌>のチェカラクから逃げきれはしない!」
 鈴鹿の背後の空気が、燃えるように熱くなったと思うと、炎の指が彼女の背中をかすめた。
 服の焦げる匂いは、たちまちのうちにチェカラクの放つ熱気に散らされる。
 
 鈴鹿はいくつもの角を曲がり、いくつもの通路を直進した。
 チェカラクは正確に、彼女に追いすがる。
 やがて、虹色に輝く壁が見えた。
 この迷宮の入り口まで、戻ってきたのだ。
61結城小夜 ◆YatatCS. :02/07/09 00:48
>53
結城小夜VS閖
 
閖が、御符の波を掻き分けるように迫る。
己の身が焼けるのも構わず。
 
「よもや、策もつきましたか」
 
さらに、御符を投げつける。
 
だが、止まらない。
 
閖はただひたすらに御符を掻き分け、迫る。
 
 
そして。
 
 
小夜の顔を叩いた。
閖の瞳に、怒りが浮かぶ。
 
小夜は体勢を崩しかけて、持ち直した。
感情の無い視線が閖を見据える。
今、小夜と閖の間には距離は無い。
 
勝機。
ただ一瞬訪れた、確実に相手に止めをさせる一時。
 
「勝負!」
 
御幣を、閖の胸元へ突き立てる。
62孔濤羅 ◆SHIDEN1o :02/07/09 00:58
「偶(タマタマ)狂疾ニ因ッテ殊類ト成ル」〜 ロン VS 孔濤羅
>57
 
投げかけられた言葉には親愛の情が込められていた。
 
久しぶりに顔を合わせるロンは、ずいぶんと痩せてみえた。
しかしそれ以外は何も変わらない。
侠客にしては珍しい知性を備えた顔立ちも、猫科の肉食獣のような
しなやかな振る舞いも。
 
だから濤羅は望んだ。
ロンの、無為な流血を好まぬ性も変わっていないことを。
おのれの知る情報を、根拠のない戯言として片付けてくれることを。
 
そのためにはまず問わねばならない。
ロンの視線に答えるように、濤羅の口が開かれた。
 
「1年前、陽澄湖の畔の孔家の私邸に賊が押し入った」
 
その声はひどく冷たかった。語尾は押し殺された怒りに震えている。
 
「使用人は悉く殺され、留守を守っていた孔瑞麗はその後行方が知れない」
 
左手に持った倭刀の柄が、知らぬうちに込められた握力に悲鳴を上げる。
 
「手を下したのは青雲幇の香主、樟賈寶、朱笑嫣、呉榮成、斌偉信……」
 
そこで言葉に詰まったのは、濤羅自身まだ信じられないからだ。
まさか、あの男がこのような凶行に及ぶなどと。
 
「副寨主の劉豪軍もいたという噂もある」
 
食いしばった歯の間から搾り出すようにして濤羅は口にした。
そのあとの言葉は滑らかに口をついて出た。
 
「あんたはその場にいたはずだ、ジン・ロン。あんたは豪軍の護衛だったんだからな」
 
濤羅は問うた。
ほとんど懇願するような目だった。
 
「教えてくれ。あの夜孔家の桃園で何があったのかを」
63御神苗優 ◆OminaeNo :02/07/09 01:00
『たどりきて たどりつかず』〜御神苗優vsイーヴァ(M)
>59 
 
ドアが開く音が聞こえた。
俺は急いで歩を進める。
・・・・・・どうやら、この階に逃げたみたいだな。
取っ手についた水滴が、それを物語っていた。
 
俺は慎重にドアを開けると、中へと歩を進める。
すでに度重なる発砲で、一般の研究員たちは粗方逃げたんだろう。
中は気味悪いくらいの沈黙に支配されている。
床に残る水滴を頼りに足取りを追う。
それは一室のドアへと消えていた。
 
ふん、此処に逃げ込んだわけか。
頭隠して尻隠さず、ってなとこだな。
俺は扉を開けると、とびらに背をつけ、中に呼びかける。
 
「おい、此処に逃げ込んだのは分かってるんだ。
 あんたの狙いが何なのかは知らねぇが、武装解除すりゃ命だけは助けてやる。
 今すぐ投降しろ!」
 
逃げ込んだのが分かっただけで、以前奴は光学迷彩で身を隠してる。
注意するに越したことはねぇ。俺はどこからの攻撃にも対処できるように、
慎重に歩を進めていった。
64イーヴァ(M):02/07/09 01:06
御神苗優 VS イーヴァ(M)
『たどりきて たどりつかず』
>63

ヤツがゆっくりと室内にはいって来た。
わたしは緊張に包まれたまま、僅かな隙間でじっと待つ。
あとすこし。あと少しだ。
そしてついにヤツが攻撃できる距離まで近づいた。

いまだ!

わたしは電波を信管に向けて送信した。
次の瞬間、消火器が白塵をまきあげて爆発する。
部屋の中が白く染まり、一寸先も見えなくなる。

奴のいた場所は覚えている。
わたしは隙間から飛び出し、心の中で絶叫しながら、至近距離からヤツに向けて銃爪を引いた。

死んじゃえぇぇぇぇぇぇっ!
65ロン(M):02/07/09 01:16
「偶(タマタマ)狂疾ニ因ッテ殊類ト成ル」〜 ロン VS 孔濤羅
>62

「桃園・・・」
 ロンが返せたのは、その言葉だけだった。

 濤羅に妹がいると聞いたことはある。溺愛ぶりも、彼の言葉の端々から読み取れた。
 それだけに・・・・
 それだけに、ショックだった。

 ロンの口が、勝手に言葉をつむぐ。
「劉将軍は確かにその場にいた――」

 ちらと見えた、桃が美しかった。
 中で何が起こったかは知らない。
 劉将軍は、中での護衛を断った。表で待て、と。ロンにそれを断る理由は無かった。

 護衛として、遠くに桃の木を眺めながら、待ちつづけた夜のことを、ロンは思い出していた。

 やっとの思いで、ロンは言った。
「中で何があったかは、――――知らぬ」

 そう言って、視線を逸らした。
66鈴鹿御前 ◆Y4SUZUKA :02/07/09 01:16
鈴鹿御前 vs チェカラク

>60

 背中を、炎がかすめた。
 一瞬振り返ると、<燃える神>は予想以上の速度で追いすがってくる。追いつかれることはないが、
かといって引き離すのも不可能だ。
 奴の熱気に押されるように、更に速度を上げた。

 すぐに、あの虹色の壁が見えてきた。
 が、そこを潜ろうとした時だった、予想外の事態が起こったのは。
 入る時は何の抵抗も見せなかった壁が、私の通過を拒んだのだ。奇妙な弾力と共に、身体が弾き
返される。
 大通連を抜き、斬りつけたが、僅かに食い込むのみ。

──しまった! この壁が、<燃える神>を外に出すのを阻んでいたんだ!

 間近に迫った熱気に、振り返る。
 奴は、もうすぐそこまで来ていた。もはや逃げ道はない。

「私を喰ってしまえば、ここから出ることは永遠にできなくなるわ。
 ここに入ってきた私が、出る方法をも知っているとは、思わない?」

 嘘だ。この壁を越える方法など、もちろん知らない。
 だが、今は少しでも時間が欲しい。闘う体勢を、整えたい。
67御神苗優 ◆OminaeNo :02/07/09 01:18
『たどりきて たどりつかず』〜御神苗優vsイーヴァ(M)
>64
 
「うおう!!」 
 
突然、室内に巻き上がる白い粉塵。
ホンの少し先すら見えないその中で、
背後から銃声を聞く。続いてスレッヂハンマーで殴られたような衝撃を背中に受ける。
ち、しくった、これが目的か・・・・・・
 
床を転がりながら、なんとか膝をつく。
やってくれたな、こんにゃろ!ただで帰れると思うんじゃねぇぞ!
 
「これでも喰らえ、この野郎!」 
 
俺はライフルを弾倉尽きるまでぶっ放すと、
空の弾倉を捨てすぐさま交換する。
敵の野郎だって、そう簡単に死にゃしねぇはずだ。
反撃の準備は整えておかなきゃな。
68名無しクルースニク:02/07/09 01:31
Nameless Kresnik vs Count Vardalek
“The Party Of The Children Of Night”
>49
 
 背の鈍痛に、意識が反応した。
 気絶していた。
 無様だが、事実。1秒か10秒か100秒か1日か――
 主塔の頂点から落下した身体は、最上階付近のテラスに引っ掛かっていた。
 ともあれ、天使が微笑んだような僥倖だ。
 激痛に押されて、左手を見た。有るべき所に在る筈のその腕は無く――代りに、
断面からの出血で、1分も経っていない事が知れた。
 ……はは――上等。やるモンだ。大したモンだよ、俺のカラダ。
 存外に頑丈な体とハッキリした意識を賛美して、テラスに背を押し付けながら
立ち上がる。
 見上げる頭上、塔の頂上が完全粉砕されているのが確認できた。
 アレで生きてられる奴は――そのまま視線を塔の下に向けて、思考が飛び掛けた。
 
「全く、よ……生き汚な過ぎるぜ、テメエは……」
 
 城壁の上、細い足場の其処に――ヴァルダレクは、在った。
 微動を繰り返す肉片同士が、這うように寄り合って癒着する。露出した赤黒い肉と薄汚
れた黄色い脂肪とが寄り有って、その表面を皮膚が覆って行く。砕けた骨が競り上がる
様に再構築されて行く。がぱりと開いた胸郭の中で、心臓がびくびくと蠕動する。
 解らない。どんな理屈でコイツは生きてる? 解らない。どうやったら細胞レベルから
復元出来る? 解らない。どうやったらコイツを殺す事が――
 解っている事が、一つだけ有った。
 
 ――俺の思考は、もう死んでる。
69名無しクルースニク:02/07/09 01:41
Nameless Kresnik vs Count Vardalek
“The Party Of The Children Of Night”
>68
 
 だって――マトモな思考は、出来そうに無い。
 
 世界にコイツが存在するようなスペースは無い。世界は厳正だ。
 コイツが生きていて良い理由なんて何処にも無い。理は厳粛だ。
 主の御名の元に――そこまで思って、苦笑を浮かべた。
 主の? 違う。結局俺が許せないだけだ。シスターを害された事が、自分の手で
終わらせたその命が、殺された仲間が。奴を殺したい。バケモノを終わらせろ。
 何だ。……はは、結局私憤か。否――でも。俺は。
 何が何でも、コイツを殺す。
 
 殺戮セオリーの通用しないバケモノ。特殊部隊のマニュアルを読んでみろ。「バケモノの
殺し方」――有るか? そりゃあ良い。隊員全員に配布しろ。家庭に一冊、聖書の隣に置
いておけ。編集作業でも写真撮影でも実技でも手伝ってやる。無理だ。そんな物は無い。
殺さないと殺される、自然災害級の暴威。どうして生かしておく必要が有る? 連中が虐げ
られた人間の悲しみを理解した事が有るか? 有る訳が無い。連中は何故ならバケモノだ
から。俺は人だから。俺は神父だから。
 俺は人を守る。だから殺す。バケモノは――死ね。
 片手でグロックを抜いてサイトに肉片を捉えて、その無意味さに即座に思い当たった。
 
 再生。ショットガンでも同じだ。グレネードは尽きた。ああ、部屋でバラ撒き過ぎたか畜生。
考えるな。無駄だ。別の方法を模索しろ、早く、今直ぐ――テラスの周囲を見回した。瓦解
しかけた壁。薄汚れた通路。元来護りに備えて造られている塔の内部は、重々しい雰囲気
に満ちている。有る物は――剣に槍。……何て時代錯誤。時代錯誤。関係無い。そんな事。
70<燃える神>チェカラク:02/07/09 01:44
鈴鹿御前vsチェカラク
>66

 鈴鹿の言葉に、チェカラクはかぶりを振った。
 小さな炎の舌が床に垂れ落ちる。
「入り口を開く方法はたったひとつ、余の死によってのみ。かつて人間の姿をとった<法の神>が
余をここに幽閉したとき、そう定めたのだ。
たとえ入り口を破ることができたとしても、それは余の死を招く。
ゆえに、人間の娘よ、余は汝を!汝を!」
 諦めきった力なき声は、炎の轟音にも似た声へと変わった。
「余は生きるために、生き続けるために、汝を食らう!」
 チェカラクは燃える両腕を、鈴鹿へと差し伸ばした。 
71名無しクルースニク:02/07/09 01:47
Nameless Kresnik vs Count Vardalek
“The Party Of The Children Of Night”
>69
 
 這い擦る様に立ち上がって、立て掛けられた槍を手に取った。残った上腕部と歯で槍を押
え付ける。右手でスイッチナイフのブレードを起こす。聖句を彫り込む。丹念に素早く、自分
に出来る限りの聖別を――主よ、此処まで俺を導いて頂いた事に感謝します。貴方こそは
我が御主、貴方こそは我が剣、貴方こそは我が盾、貴方こそは我が力――もう一本槍を引
き抜いて、チェーンで歪にクロスさせてに縛り付ける。
 即席の、巨大十字架の完成。
 取って返して、ヴァルダレクを見下ろした。尚も再生は続いている。
 早く殺さなければならない。今、すぐに。
 
 十字を抱え、縁に這い上がった。眼下には再生を開始しつつあるヴァルダレク。
 目測がズレる。防弾ガラス越しにターゲットをワンホールショットする位には難しい。
 反面――心は、漣一つなく、静かに凪いでいた。
 狙いを定める。恐怖は無い。後悔も無い。
 
「詫び続けろ、ヴァルダレク。無垢なる魂に。お前が食い荒らした霊達に。
 ……地獄の釜の底で、永遠に――」
 
 ――主よ、この世界に平和を。迷える小羊達に救いを。
 俺の命が、貴方の振るう雷の欠片でありますように。
 父と子と聖霊の御名の元に――
 
「今度こそマジで終れ――クソ野郎」
 
 縁を蹴った。全身が奇妙な浮遊感に包まれる。意識を下に向けた。
 ――剥き出しで蠕動する心臓。
 ただ、その一点を目掛け――月光を浴びた十字架は、飛翔する。
72孔濤羅 ◆SHIDEN1o :02/07/09 01:49
「偶(タマタマ)狂疾ニ因ッテ殊類ト成ル」〜 ロン VS 孔濤羅 導入
>65
 
願いは叶えられなかった。
視線を外したロンを見つめる濤羅の目が絶望に彩られる。
膝から力が抜けかかるのをかろうじてこらえた。
脳裏に瑞麗の、豪軍の、そして幇会の仲間たちの顔が次々に浮かんで消える。
 
武術を学ぶものとして、何より幇会につくす者として、
幇会の仲間とは幾度となく酒を酌み交わした。
だからこそ許すことはできない。
仲間たちの暴虐を。
友と信じた男の裏切りを。
 
「……あの夜、あの桃園にいた者は、一人残らず斬る」
 
復讐の宣言。自分でも驚くほど冷えた声だった。
ところがそれに反して倭刀を握った左手はわなわなと震えている。
 
「もう俺は貴様を友とは思わん。
 貴様は妹を手にかける片棒を担いだ。
 例え知らずにしたこととはいえ、許すことはできん」
 
倭刀が逆手に引き抜かれ、鞘は投げ捨てられた。
刀身が胸元で水平に構えられる。
棍で刀身を絡め取られることを警戒した構えだ。
 
「立ち会え、ジン・ロン。
 それともおとなしく手にかかるか?」
73イーヴァ(M):02/07/09 01:53
御神苗優 VS イーヴァ(M)
『たどりきて たどりつかず』
>67

わたしの全身に7.62mmの弾丸が叩き込まれていく。
そのうち数発があっけなくツナギを貫通しわたしの体内に食い込んでくる。
着弾の衝撃でわたしの身体は背後へとふきとばされる。
ちょうど真後ろにあったドアから廊下にはじき出され、わたしは廊下に放りだされた。

わたしの身体は、自動的に「苦痛」の表現を始める。
のどの裂けそうな悲鳴をあげ、空をかきむしるように身をもがく。
思わず自閉症モードに移行したくなるほどの苦痛。
回路を遮断し、胎児の状態へと逃げ帰る。それはなんて素敵なことだろう。
このまま壊れてしまえばどんなに楽だろう。
―――――それはひどく甘美な誘い。

でもだめだ。わたしにはやらなくちゃいけないことがある。
それでも苦痛はこらえきれない。

あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛

声にならない悲鳴をあげながらわたしはその場にへたりこむ。
それでも最後に残ったひとかけらの闘志がわたしに銃をかまえさせた。
ショットガンを回収している余裕なんて全然なかった。
だからふともものホルスターからリボルバーをぬいてかまえた。

あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛

そしてわたしは悲鳴をあげながら無我夢中で銃爪をひきつづけた。
74ロン(M):02/07/09 02:07
「偶(タマタマ)狂疾ニ因ッテ殊類ト成ル」〜 ロン VS 孔濤羅
>72

 もはや、激突を避ける道は残されていない。
 濤羅の気性を知ればこそ、ロンにはそれが良くわかる。
 
「できることなら・・・」
 ロンはそこで言葉を飲み込んだ。
 続きを口にするのは、ひどく女々しいことだったからだ。
 わずかに躊躇い、それでもロンは、口を開いた。

「できることなら、お前とは怨讐とは関わりの無いところで立ち合いたかった」
 その一言で感傷を断ち切る。

 ロンは棍を流れるように振り回し、半身の構えからその切っ先を、
 ぴたりと、寸分の狂いも無く孔濤羅の喉へと向けて構えた。
75鈴鹿御前 ◆Y4SUZUKA :02/07/09 02:10
鈴鹿御前 vs チェカラク

>70

「くっ……!」

 やはり、そうだった。
 この虹色の壁は、<燃える神>が死なない限り、決して消えることはない。
 つまり、それは<燃える神>をこの手で殺さない限り、私もまた、ここからは出られない事を意味
している。
 そもそも、他に壁を破る方法があれば、既に目の前の炎人が試している筈だ。

 迫る両腕を、素早く横に移動して躱した。燃える腕が捉えたのは、私の残像のみ。
 擦れ違い様に、大通連を奴の胴へと送り込んだ。

「一つ誤解しているわ。私は人間じゃない──鬼よ」
76御神苗優 ◆OminaeNo :02/07/09 02:13
『たどりきて たどりつかず』〜御神苗優vsイーヴァ(M)
>73
 
乱射した何発かが当たったらしい。
悲鳴をあげながら転がっていくのが分かった。
その悲鳴の声はあまりにも痛々しい・・・・・・そう、まるで子供みたいな・・・・・・
 
まぁ、子供だろうとなんだろうと、取り押さえなきゃ話にならねぇ。
俺は廊下に出た奴向けて駆け出す。
何度ものノズルフラッシュ。それとともに、体に弾丸が食い込んでいく。
さすがにこう、何発も喰らえば体のほうが悲鳴を上げる。
口内にあふれる鉄の味を味わいつつ、俺は侵入者むけて飛び掛り、
床へ押さえつけた。
 
「神妙にしやがれ!これ以上の抵抗は無駄だ!」
77イーヴァ(M):02/07/09 02:18
御神苗優 VS イーヴァ(M)
『たどりきて たどりつかず』
>76

ヤツがわたしのからだにのしかかってくる。
その光景にむかしわたしの身体を切り刻みもてあそんだ男たちの様子がかさなった。
四肢を切断され、芋虫のように転がされ、その肉を喰われた記憶がさまざまと思い返される。
あの時の恐怖が再来する。
瞬間的に恐慌に襲われ、わたしはナイフを抜きでたらめに振り回した。
78ヴァルダレク伯爵(M):02/07/09 02:20
Nameless Kresnik vs Count Vardalek
“The Party Of The Children Of Night”
>71
 
 脈打つ筋肉が絞られ腕を形作る。その数六本。
 内二本は肘から別れて二股であり、八本指の残りは肩口から腐れ落ちた。
 腹部から突き出た尻尾が揺れる。臀部で開いた眼は四つ。
 まだ塞がっていない胸の穴は尖った歯を持つ口になった。
 躯全体は何処からか判らない出血で真っ赤だ。
 再生しながらそれ以上の速度で崩壊している。
 
 闇の神経繊維を出鱈目な脳電流が駆け抜け、異形の大脳辺縁系で渾沌の情動が発現する。
 狩人が加えた猛撃の数々は長生者の再生機能を大幅に凌駕し、ついに代謝全般を狂わせていた
のであった。
 
 左右ばらばらに動く両眼では無く、舌の先が割れて出来た単眼が狩人を捉えた。
 口から――果たして元々あった口か、既に各部五箇所にある口か、最早確認出来ないが――
歌声が洩れた。
 低音で高音な闇色の旋律。灼熱で同時に極寒な夜の子らの詠。
 
 剥き出しの心臓の音が外部まで響く。
 ヴァンパイアは両手を掲げた。爪が尖る触腕がうねる手が生え脚が生えそれら全てが腐れて生まれて
また腐れて、そして。
 
 長い長い牙が光った。
79御神苗優 ◆OminaeNo :02/07/09 02:22
『たどりきて たどりつかず』〜御神苗優vsイーヴァ(M)
>77 
 
ただ出鱈目に、無闇にナイフを振り回す相手。
その切っ先が頬を掠める。
温かい血がじわじわとあふれ出てくる。
 
「だぁ!いちいち暴れるんじゃねぇ、このスットコドッコイ!」 
 
俺は手首をつかんで、無理やりナイフをもぎ取った。
 
「さぁ、吐いてもらうぜ・・・・・・どこの手の者だ、お前?」
80イーヴァ(M):02/07/09 02:31
御神苗優 VS イーヴァ(M)
『たどりきて たどりつかず』
>79

あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛

悲鳴はいつしか絶叫へとかわりわたしは夢中で殴りかかる。
ヤツは何か行っているけどわたしの耳には入らない。
はやくにげないとはやくにげないとまた切り刻まれてたべられちゃう。
わたしはなんどもなぐりかかる。
体をねじりなんとかぬけだそうとしながらわたしはただもがきつづける。

あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛
81御神苗優 ◆OminaeNo :02/07/09 02:40
『たどりきて たどりつかず』〜御神苗優vsイーヴァ(M)
>80
 
押さえつけた奴は、もはや絶叫といっていい声を上げながら、
殴りかかってくる。
な・・・・・・人間離れした力に、当たった箇所がきしみをあげる。
 
「そういうことかい!手前、サイボーグか!なら遠慮しねぇぞ!」 
 
俺もまた顔と思しき場所に拳を叩き込む。
上になり、下になり、組みつ組まれつ床を転がる。
どれくらい殴りあったのだろう・・・・・・少しずつ相手の抵抗も緩くなってきた時。
 
俺の拳が外れた。と、同時に、二人を支えていた壁が崩落。
支えを失った体は、地表へ向けて自由落下を始める。
俺は組んでいた体を突き放すと、落下に備え体を丸めた。
82イーヴァ(M):02/07/09 03:03
御神苗優 VS イーヴァ(M)
『たどりきて たどりつかず』
>81

わたしの顔にこぶしが叩き込まれる。

「がばっ゛!」
衝撃で肺の中の空気がすべてはきだされる。脳が揺れしかいが歪む。
とんでもない量のエラーがかえってきた。
死んだ回路を次々と切り離し、バイパス。
半秒ほどで死んだ半身を回復する。
そのとき既にヤツはこぶしを振りかぶっていた。

わたしのかおにおなかにヤツの拳が連続して叩き込まれる。
その一発一発がわたしのからだを蹂躙してゆく。
折れた肋骨フレームが内蔵に突き刺さり、あまりの苦痛に意識が飛びそうになる。
立て続けにおこる無数のエラー。
ぼろぼろになっていく体。
壊されていくこの身体。
すがすがしいまでの崩壊感。
もうこの体が動いているのが自分でもとても不思議だ。

どれくらいの時間がたったのだろうか。突然身体にかかる重さが消失した。
心地よい開放感。
ああ、わたしはいま落下しているんだ。
そしてわたしは地面に叩きつけられた。
83イーヴァ(M):02/07/09 03:04
御神苗優 VS イーヴァ(M)
『たどりきて たどりつかず』
>82

視界が徐々に戻ってくる。
わたしはそっと目をあけた。
そのとき目に入ったのは、油断なくわたしを見るヤツの姿。

84イーヴァ(M):02/07/09 03:05
御神苗優 VS イーヴァ(M)
『たどりきて たどりつかず』
>83

「やだあっ!!やだあ――――――――――――っ!!ばかあ――――――――――――――――っ!!
 やめてよこないでよちかづかないでよ!ひどいんだから!それ以上近づいたらひどいんだからーっ!!」

わたしは幼児のように泣き喚きながら、ヤツから離れようと身を引きずりながら後ずさる。
けれど背中が壁に突き当たり、もうそれ以上逃げられない。
背中を丸めて縮こまる。頭を抱えてうずくまる。

痛い痛いよ。
何でわたしがこんな目に会わなくちゃいけないのよ。
助けてたすけてよルーク。

苦痛と恐怖に押しつぶされ、頬を涙でべとべとにぬらしながら、わたしは赤ん坊の様に泣き続ける。
悲鳴をあげ続ける口は閉じることが出来ず、だらだらとよだれを垂れ流す。

それでもルークは助けに来ない。もちろんルークは助けに来られない

る ー く ?

そうだ、そう。ルーク、だ。
わ、た、し、は、る、ー、く、の、か、た、き、を、と、ら、な、い、と。

           そ う だ

わたしは、まだ、こんな所で、死ぬわけには、いかないんだ!!
奴らを、殺すまで、わたしは、死ねない!!

わたしは残った勇気と力を振り絞り、頭を上げてヤツを睨む。
右手を地面について上体を起こす。
手首の少し上で折れ曲がった左手を使い奴に向けて這いずって行く。
全身の傷口からしゃれにならないほどの擬似血液が流れ出続けている。

それでもわたしは這いずって行く。

腹部の傷口から、内圧によって臓器(パーツ)がはみ出していく
臓物を床にぶちまけながら、わたしはヤツに向かってゆく。
垂れ下がった腸を身体にまとわりつかせながら、わたしはただ這ってゆく。
壊れたカラダが少しづつやつに近づいてゆく。
近づいてどうするかは自分でもわからなかった。でもただ、ただわたしはヤツにむかって這いずってゆく。

突然、負荷のかかっていた肘がくだけ、また上体がくずれおちる。
何とか上体を起こそうと、もがき続けるけど無理だった。
だんだん目の前が暗くなっていく。

――――――――ああ、ここまでか。

ごめんルーク。カタキ……とれなかった。

そしてわたしは活動を永久に停止した。
85御神苗優 ◆OminaeNo :02/07/09 03:24
『たどりきて たどりつかず』〜御神苗優vsイーヴァ(M)
エピローグ
>82-85
 
地表近くで俺は何とかバランスを取り、無事に着地することが出来た。
だが、多少の無理な体勢だったためだろう、片足を少々捻ったみたいだ。
足首がじんじんと熱くなる。
 
俺は周囲を見渡した。そして、俺は地面にうずくまっている奴を見つけた。
すでに光学迷彩を施していたらしいコートははだけている。
その顔を見て、俺ははっとした。
二年前の少女――それが、あの時のままの姿で、そこに居たのだ。
・・・・・・敵討ち、っていうわけか。
 
俺の姿を見て、悲鳴を上げながら逃げ、胎児のように丸まっていた少女が、
突然顔を上げた。その瞳には再び闘志が、憤怒が燃え上がっていた。
 
もはや体の損傷が激しく立つことも出来ない。
にもかかわらず、彼女は俺に向かってきた。
二つの腕で這いながら。臓物をずるずると引きずりながら。
腹から、頭から、ありとあらゆる傷口からあふれでる血で道を作りながら。
 
だが、その歩みは少しずつ、少しずつ遅くなっていく。
同時に、瞳の輝きも薄れていき。
やがてその体は運動を停止した。
 
俺は、それをただ眺めているしか出来なかった。
断罪されるべき俺はこうしてのうのうと生き延び、
断罪するべき少女は、俺の手で命を落とした。
だが後悔はしない。してたまるか。
俺が目にしたあの光景をもう二度と繰り返させないために。
同じような悲劇を、もう誰にも繰り返させないために。
俺が、自分で選んだ道なのだから。
 
俺は少女に近寄り、そっとそのまぶたを閉じさせた。
そしてそのまま少女の亡骸を抱えると、寺院へ向けて足を向けた。
せめて、この少女の魂が、あの人形とともに永遠に居続けることを祈りながら――
 
         終劇
86イーヴァ(M):02/07/09 03:28
御神苗優 VS イーヴァ(M)
『たどりきて たどりつかず』
レス番まとめ

>28 >29 >30 >31 >32 >35 >36 >38 >41 >42 >44 >46 >48 >52
>58 >59 >63 >64 >67 >73 >76 >77 >79 >80 >82 >83 >84 >85

魂のないわたしは死んだらどこにいくんだろ〜ね。
どこにもいけないのかな?
87馬呑吐 ◆TUNtujd6 :02/07/09 13:54
ベルガー&ヘイゼルvs馬呑吐 『吸血海殲外伝』導入
(註:この闘争は第三十章で開催された『吸血海殲』と同じ時系列・場で起こった物語です)
 

 銃声と硝煙、血と叫喚、何よりむせ返る程の死の香り。
 それらが渾然一体となり、また新たな闘争を紡ぐ決戦の地――英国はダベンポート港である。
 死者と生者と、そしてそれ以外が相撃つ魔戦場は、今将に終局を迎えようとしていた。
 
 黒い軍装の一団が進軍する。教皇庁に悪名名高い異端審問局の兵士たちである。
 そこかしこに溢れたグール共を片端から殲滅して行く。
 統率者の大半を失った生ける屍たちは、為す術も無く叩き潰されていった。
 
 街を抜け、先陣が軍港内へ突入した。あちこちから銃声は響いているものの、概ね戦火は
収まりつつある。
 ふと、何人かの兵士が顔を上げた。何かが大気を切り裂く音。
 それは次第に近付いて来る。
 突如、兵士たちの一角が爆発した。いや、それに等しい衝撃を受けて吹っ飛んだのである。
 何処から飛来したのか、それは回転する一個の球であった。直径は二メートルもない。
 白い怪球は猶も兵士たちを吹き千切りながら軍港内を突進した挙句、急上昇した。
 半壊しかけた倉庫の屋根にちょこん、と載る。ほどける様に球は崩れた。
 中から現れたのは太目の中年男である。顔立ちから察するに中国人らしい。
 黄色いスーツにネクタイ、ソフト帽を纏い、サングラスをかけている。
 白い球体の名残は、首に回した同色のマフラーのみだ。
 
「戦力の逐次投入は何ヨリの愚策と云うものダガ……ま、遅れたノハ私なのだがナ」
 
 両頬で撥ねる筆先状の髭を撫ぜて怪人――馬呑吐は呟いた。下方から即座に向けられる銃口にも
怯む様子は無い。
 鬱陶しげにそれらを見下ろし、軽く右の親指と中指を弾いた。
 それに呼応するかの様に、周囲の建物の影から内部から大量のが吐き出される。
 SMGと鉄の盾で武装した『最後の大隊』の手勢、グールの兵団が。
 
「五十年カケテ、こんな低俗な僵尸を造るダケとはナ。全く以って下らん……」
 
 首を振る馬の眼下で一斉に銃火が閃き、新たな死が大量生産され始めた。
88ベルガー&ヘイゼル:02/07/09 14:05
ベルガー&ヘイゼルvs馬呑吐 『吸血海殲外伝』
>87

人が倒れていく、命無き者の銃弾によって
が、そんな中倒れない、それどころか跳んでくる弾を斬っている者がいた

≪弾などに運命は砕く事などできない≫

その黒衣の男は横にいる赤い服を着た女
まったく似合わない長剣を構えている女に向かい言った

「銃声がしたから来てみれば・・・イキナリこれか・・・やはり受けるべきじゃなかったな」

「何言ってるんです?ベルガーさんの故郷の危機なんですよ」

「俺がこっち離れたのは、1次大戦中、もう随分前だ…っと」

また跳んできた弾を男は自分が持つ黒い刃の剣で切断していた
89馬呑吐 ◆TUNtujd6 :02/07/09 14:22
ベルガー&ヘイゼルvs馬呑吐 『吸血海殲外伝』
>88
 
 銃声が不自然な形で途切れた。馬は首をその方向へ回す。
 剣を携えて立つ双影をサングラスに映し、冷笑した。
 
「ふん、まだ向こうにも戦力が残っていたカネ」
 
 自動的にうねくったマフラーが馬の躯を取り巻く。再び白い怪球が出現した。
 間を置かず、跳躍。
 球は美しい放物線を描いて夜空へ翔び、そして落下する。
 大地は揺れた。
 
 黒と赤の男女目掛け回転し、怪球は驀進する。 
 夜闇を穿ち、グールの群れもついでに踏み潰しながら地上を馳せた。
90ベルガー&ヘイゼル:02/07/09 14:53
ベルガー&ヘイゼルvs馬呑吐 『吸血海殲外伝』
>88
 
攻撃が止まりグールどもを片付けようとしたその時
正面の倉庫の屋根の方から声が聞こえたような気がした

「ん?先の方に誰かいるのか、視えるかヘイゼ・・・なんだあれは?」

ベルガーがヘイゼルに問おうとした瞬間
大地が揺れ、正面からグールを潰しつつ白い球がやってきている

「ヘイゼル力貸せ、あれを弾く」

ベルガーは黒い刃の剣―――強臓式武剣『運命』を構えつつ言う

ヘイゼルはうなずきつつ思いを詞(テクスト)に変えた

≪救世者は運命に力を≫

その詞に合わせ、黒い刃は厚く、そして長くなる

「とりあえず、飛んでいけ」

≪運命に弾けぬものなどない≫

球と『運命』がぶつかり合い…球のほうが弾き飛ばされ倉庫の壁にめり込む


アセルス(半妖ED後)&玖珂光太郎vsラルフ・グルトvsフォルテッシモ
>前スレ362、377、405
>前スレまとめ424
(ttp://cocoa.2ch.net/test/read.cgi/charaneta/1025406070/424)
>56

「なかなか頑丈な方々ですなあ」

爆発の中、よろめきながらもお互い差さえあって立ち上がった少年と少女に対し、
男は素直な感想を漏らす。

「しかし二人・・・ですか。・・・ふむ?」

もう一人はいまだ瓦礫の下の埋もれているのだろうか?
それともあるいは・・・・・・。
男の意識が一瞬逸れた。
その隙を突いて響く裂帛の気合。式神が再び虚空に姿を現した。
そして振るわれる式神の包丁。
男の顔面を狙ったそれは、掛けていたサングラスを断ち割り、額から鼻梁へ斜めに赤い筋を刻み込む。

ダン!

次の瞬間、男の踵が式神の側頭部に叩き込まれていた。
続いて向けられる義腕の仕込銃。

「・・・逃げられましたか。まあいいでしょう」

式神の姿は、すでに掻き消えていた。少年と少女、二人の姿も。
だが狩人の耳は敏感だ。爆発後の静寂の中で遠く響く不揃いの足音を逃すはずもない。

「逃がしませんぞ?」

顔面を濡らす血を袖で拭い取り、男は銃を構えなおした。

振動。

建物が軋み、音を立てて爆ぜる。
歩調を速め、舞い上がる土煙の先へと急ぐ。
すると・・・

廊下が割れていた。
二人の姿は見当たらない。ただし、血痕が半開きになっている、奥の扉の向こうへと続いている。
そして、何かが蠢く気配。
間違いない。二人は―――少なくとも、どちらか一人は―――この扉の向こうにいる。

「かくれんぼは、楽しめましたかな!?」

銃声。
92馬呑吐 ◆TUNtujd6 :02/07/09 15:49
ベルガー&ヘイゼルvs馬呑吐 『吸血海殲外伝』
>90
 
 黒い一刀。只それだけが寄せ来る怒涛を跳ね返した。
 怪球は弾かれ、背後の倉庫へ叩き込まれて轟音を発する。
 
 壁をぶち抜かれた倉庫からは粉塵が立ち昇っている。
 グール共は主人が消えたのにも頓着せぬ様子で、銃口を二人に向けたままだ。
 と、濛たる煙は二つに割れた。
 純物理的に両断された噴煙の中から馬は姿を現した。足音を響かせ、ゆっくりと歩を進める。
 特に外傷は見られない。右手に握るのは白いマフラー。
 この一振りが噴煙を払ったのか。
 サングラスの向うで馬の眼が細まった。
 
「――妙な呪言を使う。
 機我一体と為りて現界の事象そのものに干渉する、と見たが」
 
 足を止め、軽くスーツの埃を払う。余裕に満ちた態度である。
 
「どうやら君らもこの国の機関の人間ではないようだ。
 何処ぞに雇われたかね、この私と同じくな」
>56>91
 唐突にとん、っと突き押された次の瞬間、宿屋全体がビシッ、という大き
な音を放ち、さっきまで繋がれていた腕の辺りに向けて、凄まじい衝撃波
が襲い掛かる。俺は衝撃波に吹っ飛ばされて、無様にごろごろと床を転が
った。

 見れば、女は腕からだらだらと血を流しながら、苦しそうにその顔を歪め
ていた。対して、俺は無傷で、今ここでこうやって無様に転がっているだけ
だ。つまり。俺は女を助けるつもりが、逆に助けられたって事になるワケか。

 くそっ、何が助けるだ、馬鹿野郎が。逆に助けられてたら世話ねえだろ!

 廊下から足音が近付いてくる。多分、あの悪党面だろう。さっさと立ち上
がってあいつの所に行ってやらなけりゃならなかった。一度や二度の失敗
で諦められる状況じゃなかったし、俺自身、諦めるなんて死んでもご免だっ
たから。

 だけど、それも難しいかもしれなかった。
 何故なら。
 俺の転がった先には、紫色の服に身を包んだそいつがいつの間にか立
っていて、俺の方を鋭い目付きで見下ろしていたからだ。
94樟賈寶 ◆avKONGOU :02/07/09 20:15
上海魔獣境〜スプリガンvs樟賈寶
 
>http://cocoa.2ch.net/test/read.cgi/charaneta/1025406070/415
 
「ほざくな小僧!! 全くの生身で一体何が出来るってんだ?」
 
 樟賈寶には判らない、判る筈も無い。
 
「内功が何だってんだ、所詮力が無きゃあ俺は倒せねえ。
 歴戦の兵士だって俺がちょいと力を出せば簡単に倒れちまう」
 
 ゲハゲハと品の無い嘲笑をあびせかけ。
 
「最後はヒゲのおっさんと同じ運命だぜぇ」
 
 スプリガンの動きとパワー、そして衝撃に耐えた事、各種センサーの反応からも
 奴が着ているのは強化服の一種に間違い無い。
 それを失った奴がなぜここまで自信満々で居られるのか?
 
「おつむが逝かれたってなら幸せなうちに、仲間の所に送ってやるぜ!」
 
 再び容赦の無い必殺の【阿修羅憤怒弾】AMスーツを引き裂いたそれよりも更に
 手数を増した無数の拳撃。
 
「死にやがれぇぇぇぇ!!」
 
 拳撃の生み出した大気の衝撃同士が干渉して爆発の様な轟音が起こる。
 その威力は亜音速のロケット弾が一斉に放たれたに等しい。
横島忠夫 vs ジュヌヴィエーヴ=コトフォード
>50>51

横島を殴り飛ばした時。
ジュネは嬉しくは無かった。
そして、悲しくも無かった。

只、目的に近づいた事が嬉しかった。


ジュネの放った攻撃で、横島は無様に地面を転がる。
それに追い討ちをかける訳でもなく、ただ黙ってその様子を見ていた。
ジュネは横島の反撃を恐れていたのだ。
ジュネにとっては横島はパンドラボックスのような存在。
開けるまで、そして開けた後も何が飛び出して来るのかまったく検討もつかなかった。
今の攻撃にしても、ジュネは確かに急所を狙って攻撃した。
しかし、横島はそれは再び不思議な力でそれを阻止したのである。

ジュネは警戒しながらもゆっくりと横島に近づく。
再び不思議な力で何かをされる恐れもある。だから、その為に悪魔を自身に降ろす準備は決して怠らない。
冷たい石の道にジュネのブーツの音が再び木霊する。
その音は規則正しく、ゆっくりと、そして軽やかにリズムを刻む。
それは、これから倒されるであろう敵に向けた葬送曲を奏でるかのようでもあった。

しかし、そのリズムも横島の一言で停止する。
横島は痛々しいその体をふらふらになりながらも持ち上げ、戦意を失いつつも
芯を残した瞳で此方を見つめ、ジュネの耳に届くかもわからないような小声で呟いた。

『ジェネさんは、いったい―――― 俺を、どうしたいんだ?』

その言葉を聞いてジュネは小さな溜息を一つ吐き、そして横島の必死の声を嘲うかのごとく
にっこりと微笑みながら答えた。
その言葉には嘘偽りはまったくない。
ジュネの本心だった。

「別に貴方をどうしようとは思っていません。ただ―――――」

玩ぶ様に一間置いて、呟く。


ジャックがそう言うんですもの―――――しかたありませんよね―――


ジャックが告げたのは敵の足止め。
しかし、ジュネが考えるのは足止めすなわち    

―殲滅―

敵の無力化だった。

ジュネは人の心がわかる人間。
それはジャックがいてこそ生まれる心。

が、今の彼女は只のただの人形だった。
横島忠夫 vs ジュヌヴィエーヴ=コトフォード
95の続き

人の形をした、心無き人形が横島へと再び足を進める。

それは横島にとってどれほどの恐怖だったのだろうか。
ジュネには分かる由もなかった。

戦慄の表情を浮かべた横島に何の感情も抱かぬまま、襟首を掴み上げ拳を振り上げる。
ジュネは無表情のまま横島に呟く。

「アレから手を引く事を拒絶した時から、貴方の運命は決まっていました」

淡々と作業を続ける作業用機械の様に無機質で、そして一切無駄の無い鮮麗な動作で
横島の鳩尾をえぐる様に拳を突き上げる。
苦悶の表情を浮かべ、そのまま崩れ落ちる横島を伽藍の瞳がそれを見つめていた。
そして、ジュネは最後の作業に入るべく再び詠唱を始める。

「其は骨を包み肉を包み。其は気を裂き岩を砕く者―――」

迷いの無い物ほど恐ろしい物はない。
何故ならば


自分のしていることが善とも、そして悪とも感じないのだから―――



詠唱が終わった時。
ジュネは横島の両足を砕く為、悪魔の拳を振り下ろした。
97ヌアラ ◆tRUNEwlE :02/07/09 21:54
>http://cocoa.2ch.net/test/read.cgi/charaneta/1025406070/422

 世界の各所に散らばり、また、その全てを身体に宿した者は、世界の王
としてその時代に君臨すると言われる24の聖痕。それらは、その所有者に
絶大なる力を与え、時には死んだ人間すら蘇らせる事を可能とする。

 今、ミアが行った行為は、つまるところそれだった。自分の持つ聖痕を星
川翼に移し、彼に聖痕の力を宿して死の淵から救う、という物だった。

「生命の聖痕を干渉させ、蘇らせたか………くだらぬ事を。いくら足掻こうと
 も、結果は変わらぬよ」

 ヌアラはそう言い放つと、一瞬の間意識を集中した。次の瞬間、虚空に
巨大な火球がいくつも現われる。
 彼の持つ創造の聖痕は、空気中のエーテルを物質に変換する魔法の
使用を可能にするのである。

 ヌアラが軽く手を振ると、その火球は星川翼に向けて殺到した。
ジョナサン・ジョースターvs両儀織 
>34
 
夜の瘴気を打ち貫く刃。
そんな連想をさせる、その人物の視線。
 
闇に紛れて男女の区別もつかないのに、その冷たい視線だけがひしひしと感じられる。
殺意に満ちた視線が。
頬に一筋、汗が流れるのを感じる。
 
スピードワゴンが倒れようとしなければ、ぼくはその目に飲まれていたかもしれない。
地面にぶつかる寸前で、ぼくは彼の体を支えた。
 
真紅に咲き誇る、花のような物が目に入る。
人の死体。
しかし、生命のない花の美しさは、ぼくには理解できない。
 
「これは・・・君がやったのか?」
 
死者へと悼みの視線を投げかけつつ、ぼくはその人に問うた。
99閖(M):02/07/09 22:09
結城小夜VS閖
>61
『もはや策も尽きましたか』
索なんてどうでもいいほどに私の中にガラでもない衝動が走っていた。

少女のその考えがあまりにも悲しすぎた…。

少女の祓え串が私の胸元に深く突き立つ。

―――まったく、バカね。

彼女との距離は無く、私に手はあまり残っていない。
ただ、これだけは、言って置きたかった。

「伝説はね、人の心を知る者だけが作れるのよ。
 今の貴女には何も護れないし何も作れない。
 闇雲に、この怪異を広げるだけだわ…」
 
氷雪を巻き起こし、雷光を幾条も周囲に撒く。
その隙に少女から離れ、私は裏通りに居た。
少女に死に顔を見せたくなかったのもある。

息も絶え絶えになりながら、もう何も見えない目で空を仰ぐ。
体のあちこちが崩れ、消え去ろうとしている中。
恋に、愛に狂った私が見た幻なのだろう。
そこには、ありえたかもしれない世界が見えた。

そこで私は旧知の術者の孫と共に生き、お節介をしたり。
あの者と再会したり、人に生まれ変わったり…。

「まったく、らしくないわね…。ユキオンナが熱くなるなんて…」

そうして真夏の夜に雪が残れないように、私は消えた。

閖【死亡】
100星川翼 ◆KaSYAyFU :02/07/09 22:24
>97
 
 飛来する夥しい数の火球。
 それを目にしても彼は一歩も退くことなく、剣を突きつけるようにして構えた。
 どうやら『貫目』の能力も強化されているらしい。
 全て、目で追える。
  
 剣を振るうと、ひゅん、と風を切る音が一度鳴る。
 それだけで火球は微塵に刻まれ、威力の殆どを失って霧散。
 二度、三度。
 指揮棒を振るうように優雅に、滑らかに。
 サン・テグジュペリは何度も虚空を滑り、火球を切り刻んだ。
 
(全然疲れが無い―――)
 
 霊力で構成した刃は羽のように軽いが、維持するだけでかなりの力を消耗する筈だ。
 だが今のところ疲労感は感じない。
 これなら、行ける。
 
「それじゃ、見せてあげようかな。愛の力って奴をね」
 
 光が瞬く。
 神速の突きは常人が視認出来る速度を遥かに超えている為、そうとしか見えないのだ。
 まだまだ、内側から力は湧き上がって来る。
 瞬きは徐々に回転速度を上げ、間隔が短くなってゆく。
 しかもその刺突は全て破砕点を狙っている―――
 
 これはもはや、無数のライフル銃で一斉に狙撃されるのに等しい攻撃であった。
101結城小夜 ◆YatatCS. :02/07/09 22:33
>99
結城小夜VS閖
 
御幣が、閖の胸元に突き刺さる。
彼女の身体に走る、ひび。
 
「愚かな。戦いのさなかに隙を見せるとは。」
 
閖を見据えると、そのまま後ろに跳ねる。
 
豪雪と、雷光が辺りを覆い尽くした。
 
「………悪あがきを!」
 
風雪と雷光が消えた時、そこから閖の姿は消えていた。
残る雪が、明け始める7月の日の光を浴びて、溶ける。
 
「逃しましたか。」
 
だが、追う必要が無いと言う事を小夜は知っていた。
もはや、あの傷で生き残る事は出来まい。
 
街頭時計が7月23日、5時27分を指し示す。
 
「この、気配は。」
 
小夜の前に、軍隊と思わしき者達が姿を見せる。
 
「軍隊……?」
 
「違う…あしきゆめがとりついているわ…」
 
表情がこわばる。
 
御符を構える。
ヤタが、その肩にとまった。
新たな敵を前に、小夜は閖とのやり取りを記憶から封じる。
 
「新しい敵を検出しました。これより排除を開始します」
 
決戦存在が、走る。
102閖(M):02/07/09 22:37
結城小夜VS閖
闘争纏めよ。
前スレ分
http://cocoa.2ch.net/test/read.cgi/charaneta/1025406070/420

今スレ分
>37>40>43>53>61>99

エピローグ:>101

やれやれ、熱くなりすぎて溶けちゃったわ…。
感想があったらこちらのアドレスによろしくね。
http://fargaia.hokuto.ac/html/test/read.cgi?bbs=vampbattle&key=1019409630
103ロン(M):02/07/09 22:46
「偶(タマタマ)狂疾ニ因ッテ殊類ト成ル」〜 ロン VS 孔濤羅
(>74を訂正)
>72

 濤羅の絶望は、よく、分かった。
 ロン自身も、十年以上も前にただ一人の妹を亡くしていた。

 だが、分かったからといってなんの救いも無い。
 いや、その想いを理解できるが故に、もはやほかに道が無いこともまた、
 ロンには分かってしまっていた。

 もはや――

「できることなら・・・」
 続きを口にするのを躊躇った。
 今となっては、ひどく女々しい言葉だった。
 わずかに躊躇い、それでもロンは、口を開いた。

「できることなら、お前とは怨讐とは関わりの無いところで立ち合いたかった」
 その一言で感傷を断ち切る。

 ロンは棍を流れるように振り回し、半身の構えからその切っ先を、
 ぴたりと、寸分の狂いも無く孔濤羅の喉へと向けて構えた。
104孔濤羅 ◆SHIDEN1o :02/07/09 23:01
「偶(タマタマ)狂疾ニ因ッテ殊類ト成ル」〜 ロン VS 孔濤羅
>103
 
怨恨。
それさえなければこの立ち合いはどれほど心踊るものだったことか。
殺戮に興じるのではない。
血に酔うのでもない。
おのれの学んだ技を十全に使う。それはおよそ武芸者全てに共通した喜びだ。
 
衰えていないな。
 
棍の動きを見て、濤羅はそう思う。
振り回し構えた姿は剛。しかして内に柔を秘める。
ロンの功夫がそれだけで窺い知れた。
 
それきり濤羅は考えるのを止めた。
達人の取る棍は槍にも劣らぬ。
無駄な思考は四肢の動きを邪魔するだけだ。
 
互いに内家の使い手同士。となれば勝敗を決するのは積んだ功と丹田の充実である。
濤羅は呼吸によって気を導き、全身に内力を満たした。
意識が透明になり、かわっておのれを取り巻く万物をまるで鏡のように映しだす。
 
風が吹く。
楓の葉が、また一枚落ちる。
その色は恐らく血のような赤。まるでこれからの死闘を暗示するかのような。
 
先に動いたのがどちらか、それはわからない。
濤羅にもロンにも明らかにするつもりはない。
二人の侠客は風を捲いて走り出した。
おのれの必殺の間合に、相手を捕らえるために。
105ヌアラ ◆tRUNEwlE :02/07/09 23:15
>100
 それまでとは格段に違う星川翼の動きは、確実にヌアラを捉えてはい
たものの、やはり、技量ではヌアラの方に分があった。

 この世界では、聖痕の数とその存在の力は絶対的である。
 星川翼が聖痕を一つしか持たないのに対し、ヌアラはそれを三つ、その
身体に宿していた。この差と言う物は、一足飛びに埋まる物ではないのだ。

 ヌアラは巧みに星川の突きを受け、流し、払い続けた。
 だが、今や誰の目にも、その顔に先程までと同じような余裕の表情を
確認する事は出来なかっただろう。事実、ヌアラは真剣になっていた。

 速いのだ。とにかく、圧倒的なまでのスピード。
 しかも、それは今も加速を続けており――――――

 血が、宮殿の床に飛び散った。

 ついに、星川翼のスピードはヌアラの処理能力を超え、その身体の破
砕点に剣を突き立てることに成功したのだ。

 ヌアラは刺し込まれた左肩から血を流しつつも、それでもなお、虚空に
火球を創造する。それを放つと同時に、残された右腕に持つ槍を構え、
星川の身体を薙ぎ払った。
106ロン(M):02/07/09 23:24
「偶(タマタマ)狂疾ニ因ッテ殊類ト成ル」〜 ロン VS 孔濤羅
>104

 濤羅を見、その手にした刃を見、その凄みを肌で感じる。
 あの切っ先を見誤ったとき、そのときが、自分の死だ。

 走る。
 走りながら、どちらからともなく間合いを詰めてゆく。
 棍の間合いは刀より長い。それを利し、ロンは先手を取った。
 放たれた一撃は、初手から苛烈極まりなく。

 強烈な踏み込み。
 鋭い呼気と共に突き込まれた棍の先端は、空を噛み破って濤羅の胸元に迫った。
107名無しクルースニク:02/07/09 23:31
Nameless Kresnik vs Count Vardalek
“The Party Of The Children Of Night”
>78
 
 欠損した筈の左手に、陽炎の様に感覚の残滓が残る。凭れ掛かるように抱いた十字の
槍に身を預け、意識と身体は下へ下へと降下して行く。
 落下地点、城壁の真上、目標は再生する肉片=ヴァルダレク。
 生物としての形を失ったバケモノは――寧ろ哀れ。
 
 地面が迫る。アメーバのように広がったヴァルダレクの身体が迫る。
 大口を開けたヴァルダレク。――知るか。
 鋭い牙。――知った事か。
 落下の勢いに脳が叫びを上げる。
 吹き千切られる思考が、ブツ切れで意識を流れた。
 
[――俺は/今/この場で/コイツ/を/確実に/この/世か/ら/消滅させ/る。
 ――――――――――――――――――――――死/ね] EOF
 
 目の前のクズを消し去る為のプログラムが、脳から全身へとロード。
 相対距離は、あっという間にゼロへと加速開始。
 
 10メートル。
 腕だか牙だか解らなくなった触手が、一斉に蜂起する。無数の口が、奇妙な詩を
口ずさむ――耳障りだよ、この野郎。
 触手が体に振れ――槍の十字架が、片端から切り裂いて焼き払った。
 螺旋に風を巻き込んで加速するデキソコナイの十字架が、デキソコナイの触手を
引き千切って降下。跳ねるように触手は吹き千切られて、腐った血と一緒に背後に
飛んで行く。
 体液が顔に掛かる。肉が跳ね飛ぶ。聖句が焼く、腐った肉の臭い。
 
 5メートル。
 触手の抵抗を粗方薙ぎ払った。ヴァルダレクの眼光が全身を射抜く。
 狂気の塊の瞳との、僅かな邂逅。
 思う。
 
 ――何て無様な姿だ。
 
 業に泣く事もなく、憤激に湧く事も無く、ただ、理由も無く殺して喰らい続ける。
 理由無き捕食。意思無き殺戮。本能だけで生き延びる、呪われたヌケガラ。
 哀れ。
 ただ――同情する気は、微塵も無い。
 
 2メートル。
 顔が伸びて来た。右手で十字の上部を強く握り、全体重を下方へと押し掛ける。
 そして、これで。
 
 ――終わり、だ。
 
 一メートル――0。
 ずん。鈍い手応え。腐汁が飛び散る。濁った血が跳ね飛ぶ。
 落下の衝撃に全身が麻痺して行く感覚の中、叩き潰した心臓の感覚だけが、両の掌に
残っていた。
>93 vs光太郎
>56>91 アセルスvsラルフ

 少年がフォルテッシモの存在に気付いたとき、既に彼は行動を開始していた。
 それは右手をポケットに突っ込むだけという、警戒にすら価しない行動だったのだが……。

「ハンターと吸血鬼の勝負か。結果は分かっているとは言え、なかなかの名勝負になりそうだ」

 言い終えると同時。
 少年が膝をついている床に、少年を中心に半径1メートルほどの五角形の亀裂が疾る。

「戦場を移動する。ここで俺が派手に動くのは、余り誉められることではないからな」

 彼が自嘲混じりの独り言を漏らした頃には、少年が膝をついていた床は抜け落ちていた。
 少年もまた、それに続いて1階へと強制的に落下させられる。
 その様子を確認すると、フォルテッシモの瞳が別の“ヒビ”を捉えた。

「……さて」

 ポケットという狭き部屋の中で、何かを抉るように人差し指が動く。
 フォルテッシモの右手がポケットの中で動いたかと思うと同時、
 彼が立っていた床にも無数の亀裂が疾り、フォルテッシモごと階下へと落下していった。
109孔濤羅 ◆SHIDEN1o :02/07/10 00:00
「偶(タマタマ)狂疾ニ因ッテ殊類ト成ル」〜 ロン VS 孔濤羅 導入
>106
 
長物は懐に飛びこまれると扱いに窮する。
故に対処は簡単、と人は言う。
 
しかしそれは相応の使い手と立ち合ったことのない者が言う台詞だ。
実際に対してみればそれがいかに困難かは一目瞭然だ。
相手は木偶の坊ではない。
考え、動く人間だ。
 
胸元に水平に刀身を置いた濤羅の構え。
棍に切っ先を押さえられないのも狙いのひとつだが、
相手の攻撃に我が身を晒すこの構えを取ったのにはもう一つ理由があった。
 
空気に軌跡を残しそうなほどの勢いで棍が迫る。
紫電の突きに対して、濤羅は前に出た。
 
防御に不向きな構えを取ったのは相手の攻撃を誘うため。
その機に乗じて間合を詰める。
 
後手に回ったうえで相手を制することこそ内家の得意とする戦法だ。
逆手に持った倭刀で突きを受け流しつつさらに踏みこむ。。
ついで横殴りの斬撃がロンの喉を狙って放たれた。
110御神苗優 ◆OminaeNo :02/07/10 00:03
上海魔獣境〜スプリガンvs樟賈寶
>94 
 
奴は下品な笑い声を浴びせながら、
再び音速の拳の雨を降らせる。
奴は判ってねぇ。
さっきより手数を増やしても。
たとえ拳速を増やしても。
体を機械に換えたとしても。
どうしても辿り着けない境地があることに。
 
「0と1の世界に住んでるお前にはわかんねぇだろうけどな・・・・・・
 この世の中、そんなに単純じゃあねぇんだよ!」 
 
轟音の中、複雑に絡み合う拳の雨の中、
俺はその間隙を流水の如くに縫う。
その度に右手のナイフが閃き、奴の腕の傷が増えていく。
 
「ふん!お前の攻撃のパターンはわかった・・・・・・もうお前の攻撃は通用しないぜ」
Nameless Kresnik vs Count Vardalek
“The Party Of The Children Of Night”
>107
 
 天より舞い降りた断罪の御使いが、持てる刃で闇の中心を貫いたその時。
 吸血鬼の躯全ての蠢動は止んだ。
 
 聖なる鋼が邪悪なる肉体を灼き、十字の槍が突き立つ疵から静かに白煙が上がる。
 疵口から鮮血、と云うには濁った血が溢れ出し、そして筆舌に尽くし難い腐臭が立ち込めた。
 血汐は尽きない。後から後から際限も無く流れ、躯を滴り落ち城壁を汚して更に流れる。
 吸血鬼がその長生において飲み干し、己が糧として来た血、一つの海にも等しい蓄えが全て
放出されているのだ。
 
 数十の触手が力なく垂れ下がる。
 長生者の終焉の形、即ち灰化は起きない。異常な生命力の最期の抗いであった。
 半ば溶けかけた眼球から光が、顔からは表情が完全に消える。
 静謐とさえ云える、その貌。
 食欲肉欲独占欲、ありとあらゆる歪な本能に充ちた精神も、滅却に際しては寂滅の昇華を為す
のであろうか。
 人間と同じく。
 
 それに答え得る者は既に現世から飛び去りつつある。
 呪われた魂の行く先は、それこそ知る者も無く。
 
 吸血鬼・ヴァルダレク伯爵は此処に真の死を迎えて滅んだ。
鈴鹿御前vsチェカラク
>75
 
 胴に一太刀を受けたチェカラクの姿が、大きく揺らぐ。
 炎の眼が、大通連を、ついで鈴鹿を見据えた。
「鬼と?では汝は、先ほどのケモノの同類か。確かに、ただの人間に余を傷つけることなどできぬからな」
 炎の顔には考え込むような表情が現れ、その声はいくらか弱々しいものとなった。
「汝の剣もただの鉄、ただの刃ではないな。余に、<混沌>のものどもに、抗する力を秘めておる」
 
 チェカラクは幽閉されて以来、初めて、自らを倒しうる力と武器を持った存在に出会ったのだ。
 <燃える神>に死を与えることが可能な刃を、半ば畏怖の、半ば期待の眼差しで見つめる。
 
「だが、同じこと!人間であろうとなかろうと、チェカラクは汝を食らう!」
 突如、チェカラクの表情と声は、もとの猛々しいそれへと変わった。
 掌から、輝く炎でできた人間の身の丈ほどもある大剣が現れた。
 チェカラクは炎の大剣を振りあげると、鈴鹿の頭頂めがけて叩きつけた。
113樟賈寶 ◆avKONGOU :02/07/10 00:33
上海魔獣境〜スプリガンvs樟賈寶
>110
 

 【阿修羅憤怒弾】の攻撃が命中すると見えた瞬間、スプリガンの姿が消えていた。
 
「チッ!」
 
 しかし対人レーダーの反応を追えば、敵の位置は容易に知る事ができる。
 左にかわしたと知るや否や、樟賈寶は【左穿花手】の掌打を打ち込んでいた、しかし……
 
「なにぃ!?」
 
 相手の隙を捕らえた必殺の掌打と見えたそれを、スプリガンは寸前で見切り、手にした
 ナイフで切りつけてくる。 そしてその刃は巨大な鋼鉄の腕の指を易々と切り飛ばした。
 
「何だ、何なんだテメーわぁ!?」
 
 樟賈寶は驚きながらも、不安定な体勢から無理矢理【闖少林】の37手を叩き込む。
 しかしスプリガンは亜音速の拳打を全て寸前でかわしていく。
 そして振られた刃は確実に左マニピュレータの油圧パイプを切断していた。
 左腕の肘から先はもう動かす事ができない。
 
「うわああああぁぁぁ!!」
 
 遂に恐慌に陥った樟賈寶は動かない左腕を横殴りに叩きつけつつ、右腕で【丹鳳朝陽】の
 一撃を叩き込む。
114鈴鹿御前 ◆Y4SUZUKA :02/07/10 00:46
鈴鹿御前 vs チェカラク

>112

 私の一撃は、確かに<燃える神>にもダメージを与えたらしい。その姿が、一度大きく揺らいだ。
 が、まだこの程度では、奴を滅ぼすには程遠いらしい。

 <燃える神>の掌から、大剣が伸びた。その刀身は炎でできている。
 私の頭上に翳したそれを、唸りを上げて振り下ろしてきた。先程追いかけてきた速度から容易に
想像できた事ではあったが、やはり速い。
 咄嗟に躱した私のすぐ側を、炎の剣が通り抜けた。ジリッという音がして、逃げ遅れた髪が僅か
に焦げる。

「大通連に斬られて、無事な者などいないわ。例え、神であろうとね」

 声は、チェカラクの後ろから聞こえた。奴が反応して振り返る前に、私は更にその側方へと回り
込んでいる。
 奴の動きは確かに速いが、それでもスピードではまだ私に分がある。
 <燃える神>の死角、低い位置から、刃が跳ね上がった。
 剣を持つ腕を狙い、立て続けに刀を振るう。不定形の炎を斬るには、一度では無理だ。ならば、
数を重ねて、徹底的に散らすまで!
115ロン(M):02/07/10 00:54
「偶(タマタマ)狂疾ニ因ッテ殊類ト成ル」〜 ロン VS 孔濤羅
>109

 外れたと見るや、即座に棍を引き戻す。
 すると間合いに入り込んだ濤羅、その斬撃を、引き戻した棍で上へ流し――

 体勢を立て直さんと退がるロンに、続けざまの残撃が襲った。
 うねくる蛇のごとく、その操り手を討たんとせめぎ合い、絡み合う棍と刀。
 倭刀の鎬と棍の背が擦れ合い、耳障りな音を立てて拮抗する。

 分が悪かった。倭刀の間合いから抜け出る隙が無い。
 一撃を棍で真っ向から受けながら、ロンは逆に前に出た。
 把持した指を切り落とさんと、棍の背を滑る倭刀。
 瞬間、掌を開いてそれをやり過ごすと、逆端で濤羅の足を払う。
116御神苗優 ◆OminaeNo :02/07/10 01:07
上海魔獣境〜スプリガンvs樟賈寶
>113
 
打つ手打つ手がことごとく外れる恐怖。
ましてやその相手がスペックの上から言えば圧倒的に下の相手からとあっては、
それは何倍にも膨れ上がる。
 
奴はすでに半ば恐慌状態に陥ってる。
にもかかわらず拳を振るってくるのは、拳法家の性か。
 
すでに肘から先は動かない左腕を振るってくる。
あたれば当然命はねぇ。
更に追い討ちの如く迫る右のストレート。
88mm砲並の威力のアレを喰らえば、
やっぱりミンチは確定だ。
もっとも、それは当たればの話だが。
 
俺は跳び上がり、左腕に両足を乗せる。
そして、腕の威力をも利用して再度飛翔!
スワンダイブ風に飛んでいる俺の頭の下を右の拳が通過する。
驚愕する奴の顔を見ながら、俺は奴の肩口でナイフを一閃させた。
そのまま俺は後方へと着地する。
 
着地した俺の音に反応するかのように、
奴の機械の右腕が、轟音をたてて床に落ちた。
 
「手前の自慢してた拳法も、出す前はスキだらけだぜ!!
 さて・・・・・・手前にやられた仲間の借り、きっちり反させてもらうぜ?」
鈴鹿御前vsチェカラク
>114
 
 大通連による連撃がチェカラクの腕をえぐるたびに、小さな炎が床に散り、消えていく。
 苦痛の呻きをあげた神が振り回す大剣は、石壁と床を焼くが、鈴鹿の身体を捉えるには至らない。

 だが、鈴鹿の神速の動きも少しずつ鈍っていく。
 チェカラクの全身から発せられる凄まじい熱が、刀身を伝わって手に伝わる恐ろしいほどの熱が、
彼女の身体から水分を、体力を奪っていった。
 <燃える神>はただ近くにいるだけでも、あらゆる生物に苦痛を与える存在なのだ。
 それは、人間の世界に呼び出されるべきものではなかった。
 永久に、<上方世界>に留まっておくべきものだったのだ。
 召喚は人間にも、神自身にも、災厄と苦痛しかもたらさなかったのだから。
 <燃える神>は、絶望と飢餓の、苦痛に満ちた生をなお続けるために、眼前の少女を食らおうとしていた。
 
「余に逆らうな、娘よ!神の食物になるは名誉ぞ!」
 その叫びとともに、チェカラクの手の中で剣がぐにゃりと歪んだ。
 炎の刃は、幾つもの紐のような姿に変わった。
 それは、炎の鞭、十本以上の鞭の束だった。
118樟賈寶 ◆avKONGOU :02/07/10 01:32
上海魔獣境〜スプリガンvs樟賈寶
>116
 
「バ……バカ、な……」
 
 樟賈寶は切り落とされた右腕を遠くに見ながら硬直していた。
 この両腕で樟賈寶はあらゆる敵を打ち倒し、青雲幇の香主の座を手にしたのだ。
 それが目の前の生身の少年の、一振りのナイフによって打ち砕かれたのだ。
 
「お……俺は呉榮成から依頼された仕事をやっただけだ、
 仲間を殺ったのは、仕方なかったんだ、こいつらさえ抵抗しなけりゃ命までは
 取ったりしねえ……」
 
 恥も外聞も捨て、樟賈寶は続ける。
 
「あんたも、降参した相手まで殺したりしねーよな…… そうだろ、無理して戦ったり
 しなきゃ命までは取らねーだろ、普通…… 」
 
「俺……俺だってそうなんだぜ」
 
 少年から後ずさりながら樟賈寶は青ざめていた。

119孔濤羅 ◆SHIDEN1o :02/07/10 01:47
「偶(タマタマ)狂疾ニ因ッテ殊類ト成ル」〜 ロン VS 孔濤羅 導入
>115
 
逆手で握っていることで通常よりも狭い倭刀の間合を保ちながらの攻防は
当然濤羅に分がある。
それでもしのぐロンの力量は並大抵のものではない。
 
軽妙にして重厚、大胆にして精緻な内家の術の限りを尽くし、
既に手数は四十を数えた。
 
斬撃を捌いて踏みこんでくるロン。
放たれる足払いを、濤羅は狙われた足を持ち上げて強引にかわす。
 
その足を下ろしつつ前に踏み込む。
双方の踏みこみで極限まで詰まった間合の中、濤羅は靠を打った。
120御神苗優 ◆OminaeNo :02/07/10 01:47
上海魔獣境〜スプリガンvs樟賈寶
>118
 
奴の一言が、俺の心の琴線をかき乱した。
 
「仕方なかった、だと・・・・・・?」 
 
俺は一歩、また一歩と奴に近づきながら続ける。
 
「ふざけるんじゃねぇ!手前に都合のいいことばっか言ッてるんじゃねょこの野郎!」 
 
ナックルガードの部分で奴の頬を思い切り殴りつける。
 
「さっきまで喜んで人殺しといてそれか!どこまで性根腐ってやがんだこのゴロツキがぁ!!」 
 
すでに奴に戦意は失せている。でも、俺は奴への攻撃を止められなかった。
顔を殴りつけ、腹を蹴り付け、それでも足りず、全身を殴打した。
男は見るも無残な面貌になって蹲っている。
 
「行けよ・・・・・・・俺の気が変わんねぇうちに、どこへでも行きやがれ!!」 
 
俺はそう叫ぶと、奴に背を向け、歩き出した。
こんな反吐の出るような野郎と、一分たりとも一緒に居たくなかったから。
>91>93>108 アセルス(半妖ED後)&玖珂光太郎VSラルフ・グルトVSフォルテッシモ
 
半開きになってたドアから、声と共に銃声が轟く。
むしろ待ちわびていたといってもいいその音を合図に、私の体は
跳ねるように動いた。
 
廊下を駆け抜ける―――扉の向こうのあの男に向かって。
弾丸が床に、壁に・・・そして私の体に穿たれる。
あちこちから血が噴き出す・・・でも痛みには構わない。
そんなものよりも、この渇きのほうがより苦しい。
もう耐えられない、早く血を見たい。
この喉を、人の命を司る赤い液体で満たしたい。
―――私を殺そうとする、あの男の血で!
 
駆け抜けたまま、剣を振り上げる。
そして間合いに入るや否や・・・私の意志を汲み取った刃を、男めがけて振り下ろす!
 
・・・視界を掠める自分の髪はすでに、いっそ曇りないほどに蒼く透き通っていた。
122樟賈寶 ◆avKONGOU :02/07/10 02:01
上海魔獣境〜スプリガンvs樟賈寶
>120
 
 スプリガンが背中を向けて歩き出した瞬間、樟賈寶はほくそえんだ。
 
(甘めーよ小僧……)
 
 殴られ様が蹴られ様が樟賈寶は痛みを感じたりはしない、結局最後に生きて
 いる者の勝ちなのだ。
 
 音も立てず樟賈寶の脚が動き瞬く間に距離が詰まる。
 
(この距離なら外しはしねぇ)
 
 両腕を封じられた樟賈寶がくり出したのは、スプリガンの後頭部への頭突き!
 超合金製の耐爆容器となっている戦闘サイボーグ頭蓋が命中すれば、生身の
 頭部等ボウリングの玉をぶつけられたスイカのような物だ。
123鈴鹿御前 ◆Y4SUZUKA :02/07/10 02:08
鈴鹿御前 vs チェカラク

>117

 大通連が、何度となく奴の身体を切り裂き、抉り取っていく。
 <燃える神>の大剣は、目まぐるしく動き回る私を捉えきれず、空を斬り続ける。
 確かに、手傷は与えている。
 一太刀浴びるごとに、チェカラクが発する苦悶の叫びが、その証拠だ。
 明らかに、押しているのは私だ。
 だが、体力を消耗しているのも、また私の方だった。

 喉が渇く。
 息が切れる。
 止めどなく流れる汗は、まるでどんどん失われていく、私の体力を象徴しているかのようだ。
 何度となく<燃える神>を斬ったことで、刀身は熱せられ、それを握り続ける両手は、既に酷い火
傷を負っていた。
 だが、刀を手放すワケにはいかない。唯一の命綱を放り出しては、待っているのは死のみだ。
 僅かに動きが鈍ったところを、大剣が腕をかすめた。服に燃え移った火を、慌てて消し止める。

「余に逆らうな、娘よ!神の食物になるは名誉ぞ!」

 そう叫んだチェカラクの持つ大剣が、不意に形を変えた。
 剣から、鞭に。その先端は、10本以上に枝分かれしている。

──あれに捉えられるのは、拙い。

 考える余裕もあらばこそ。
 土煙を上げて疾走、私は今までにも増して苛烈な攻撃を、<燃える神>に対して仕掛けていた。
 恐るべき武器ならば、使う余裕を与えないまでだ。
124御神苗優 ◆OminaeNo :02/07/10 02:16
上海魔獣境〜スプリガンvs樟賈寶
>122
 
背後から迫り来る殺意。
俺は右方向へ回転するように振り返って奴の頭突きを避ける。
そのままの勢いで、奴の首筋にナイフを突きつけた。
 
「言ったよな、俺の気が変わんねぇうちに消えろって。
 悪いな、気が変わったよ。死んであの世でわびて来い」
 
俺はナイフに力をこめた。
バターにナイフを入れたような感じで首にそれは吸い込まれ、
床に奴の首がごとりと落ちた。
125樟賈寶 ◆avKONGOU :02/07/10 02:38
上海魔獣境〜スプリガンvs樟賈寶
>124
 
 樟賈寶の首が有った場所から鮮血が噴出し、その全身を紅に染めていく。
 頭部を失っても人工心臓は動きつづけ、人工肺やその他の生命維持の為の器官に
 残された血液を、すべて頚動脈へと送り出しつづけた。
 
 ジャイロにも異常をきたしたのか、胴体が地響きを立てて倒れ込む。
 
 何が起こったか樟賈寶には判らなかった。
 カメラモニターの電源が切れ視界が無くなり、神経に接続された全てのセンサーから
 応答が無い。
 
 やがて酸素を失った脳が苦痛を感じる間も無く意識を失い、ゆっくりと生体としての
 機能を失いはじめ、二度と目覚める事は無かった。
 
 
                                            樟賈寶、死亡
>108>121
 そいつが腕を振るった瞬間、がくん、と大きく足場が下がった。
 刹那の浮遊感。
 次の瞬間、俺はわけもわからないまま床に叩き付けられていた。

 俺は受身を取ってショックを和らげると、すぐさま体制を整える。
 俺とは違って、すたん、と華麗に着地したそいつを睨み付けながら、ショ
ックでまた口から溢れ出した血を拭った。

「一体何考えてやがる。わりぃけど、俺は急いでんだ。さっさとどいてくれ」

 だが、俺のそんな言葉にも、そいつは何処か楽しむような笑みを顔に
張り付かせて、一向にどこうとはしなかった。
 
 あいつは相当しんどそうだった。さっさと上にもどらねえと、あの悪党面
に殺されちまうかもしれねえんだ。こんな所で足止め食ってる暇はねえ
ってのに………くそっ!

「そうかい………なら、テメェをぶっ倒してでも進むだけだ!」

 俺は苛立ちながらそう吐き捨てると、懐から符を何枚か取り出して、男
に向かって投げつけた。撒き散らされた符は男の周囲をひらひらと舞う。

 一瞬後に起こる爆発。

 俺は拳を握り締めると、その爆発に合わせるように男に向かって殴り
かかった。
>126  光太郎
>121 アセルス

 宙を舞い踊る札を怪訝な表情で見つめたときには、全てが遅かった。
 二度目の爆発が、宿を揺るがす。
 一度目のそれより規模自体は小さいが、殺傷能力だけを考えるとこちらが上か。
 砕け散るロビーのカウンター。その破片に粉砕される皮のソファと安物の絨毯。
 少女がチェックインしてから10分と経たずに、この宿は壊滅した。
 しかし、攻撃の対象であったフォルテッシモは―――

「そうか、お前もあの女が牧師に勝てるとは思えんか」

 爆心地から立ちこめると煙と、飛散した火炎。
 それらはまるで、見えない壁にでも阻まれているかのように、彼を避けていた。
 煙を切り分け、炎を遮断し、フォルテッシモは少年へ向かって歩み寄る。無論、無傷だ。
 が、

 煙の中から姿を現したフォルテッシモの瞳に一番最初に写ったものは、少年の拳だった。
 同時、少年の鋭いとも重いとも言えない拳を、フォルテッシモは目の前に突き出しだ左手で受け止める。
 ぱん、と軽い音がロビーに響くと彼の左手が反動で吹っ飛ぶが、それを筋肉で無理矢理押し止めた。

「俺もそう思う。だが、お前には関係の無いことだ。死ね」
 
 握りしめられた拳。それに対し、少年がアクションを起こす前に彼は動いた。
 フォルテッシモの右拳が、空気を抉る。
 腰の回転も、拳の握りもなっていない。避けるにすら価しない素人パンチだ。
 
 だが、これに当たったら死ぬ。掠っても死ぬ。そのことに気付かねば、この少年は死ぬ。
128横島忠夫 ◆.TadAo.Y :02/07/10 05:37
横島忠夫 vs ジュヌヴィエーヴ=コトフォード 
>95 >96  
 
 微塵の迷いもなく、ジュネさんは俺を壊す。 
 一時の優しさがまるで儚き幻想か何かだったかのように。 
 俺は無力に掴まれ殴り飛ばされ、体をくの文字に曲げて転がって、吐き出した。 
 
「ジュネ、さん・・・」 
 
 ああ、なんか色々音を立てて崩れていく。優しげな印象とか、綺麗なドレスとか、幻ですか?  
 ち、畜生ッ! 純情な青少年の心を弄びやがって・・・い、いかん、涙が出てきた。 
 
「ジュネさ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん!」 
 
 再び、訳もなくその名を叫ぶ。  
 そこへ、鉄槌が音を立てて振り下ろされ―――― 
 
「ちっく、しょぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおお!」   
 
 咄嗟に、体が動いた。
 右手が危機に反応し、「栄光の手」を生む。 
 地を掴んだまま、霊波を注入――――――増幅された霊波は「栄光の手」を矢の如く伸ばした。 
 俺の体はバネ仕掛けの人形ように跳ね上がり、「手」に誘われて大空へと舞う。 
 眼下に広がるは煉瓦の街並み、霧の都市、そしてジュネさん。 
 悪魔の腕を翳す女性が、しばし呆然と俺を見上げていた。 
 
 必要な呼吸は三つ。 
 それを全て叩き込めば俺の勝ち。 
 しくじれば、俺の負け。 
129横島忠夫 ◆.TadAo.Y :02/07/10 05:37
>128 の続き。 
 
 鋭角な放物線を描いた俺の体は頂点を越え、落下を開始。 
 落下の目標地点は当然、ジェネさんの上。体を捻り、切り札を手に忍ばせて、頭から突っ込む。 
 向こうもそれはしっかりと見えているようで、ジュネさんは塔の如き悪魔の腕を突き出した。 
 
 体が落ちる。 
 腕を繰り出す。 
 魔の影に向かって落ちる。 
 拳が威を持って迫る。 
 落ちる、落ちる落ちる落ちる。 
 迫る、迫る迫る迫る。 
 
 空白の数瞬が流れ――――――俺の最後の賭は、火蓋を切られた。 
 
 一つ! 
 抉り込む巨大な拳を霊符によって弾き飛ばす。霊体構造が破壊され腕は粉々に砕けたが、 
 見る間に再生を始めた。無防備な、ジュネさんの体を残して。 
 
 二つ! 
 消された右腕に応じて動き出した左腕へ、「栄光の手」を伸ばす。 
 持ち上がるはずの肩口を霊波の腕で押さえられ、微かにその挙動が止まった。 
 
 三つ! 
 右手に最後の切り札――――たった一個の文珠を握り、念を込める。 
 これをミスれば俺に待つのは死、ばかり。ありったけの執念と狂気を込めて、言霊を紡ぐ。 
 完成した文珠を、言霊を、作り上げた道に沿って・・・ジュネさんの口目掛け、放った。 
 
 『恋』の文珠を。 
 
 く、くっくっくっ・・・・・・これで万事おっけい! 
 我ながらなんて、なんてナイスな解決法なんだ〜!
130星川翼 ◆KaSYAyFU :02/07/10 14:26
>105
 
 超高速の突きが破砕点を捉えても、まだまだ油断は出来ない。
 それは、底無しの化物を何度も相手取った事があるからこそ分かる直感であった。
 
 力の過信は出来ない。
 例え自分が特殊な能力を持っていて、それが強化されているとしても。
 
 火球を見もせず、一息で微塵に刻む。
 こちらは大した事は無い。真に恐ろしいのは薙ぎに来ている槍だ。
 今の状態での『貫目』を持ってしてもギリギリ姿が見える速度。
 イチかバチかの賭けに、出るしか無かった。
 
(さて、間に合うかな?)
 
 こんな時にも胸中で微笑を浮かべつつ、翼は素早く屈む。
 伏せるように、地面にギリギリまで深く身を沈める。
 細身でしなやかな身体が可能にした、曲芸とも呼べる動き。
 槍は空を引き裂く轟音だけを響かせて翼の頭上を通り過ぎて行った。
 
 身体のバネを利かせて即座に跳ね上がる。
 同時に振り上げられた細剣はヌアラの体を浅くではあるが切り裂いてゆく。
 刃が胸の辺りに到達。
 
「パルス!」
 
 叫びがそのまま炸裂したかのような衝撃が、ヌアラの内部で弾けた。
 霊力を衝撃波に変換しての攻撃を、傷口に叩きつけられたのだ。
 
 翼はその衝撃を活かしてダンスのステップを踏むように後退。
 油断無く、再び細剣を腕の延長であるかのように構えた。
鈴鹿御前vsチェカラク
>123
 
 放たれた矢のごとき勢いで駆ける鈴鹿に、燃える鞭が振るわれた。
 何本もの紐状の炎が空気を焼き切りながら襲いかかり、あるものは床を打ち、
あるものは壁に火の粉を散らした。
 チェカラクの一撃はほとんど空振りに終わり、鈴鹿の体に届いた炎はわずか一本、
彼女の左肩に軽く触れたものだけだった。
 
 しかし、ただそれだけの事で、彼女の肩の辺りの服地は焼失し、肉の焦げるおぞましい臭いが
通路に立ちこめた。
 苦痛に顔を歪めながらも、鈴鹿御前の疾駆は止まらず、チェカラクの燃える手に、ついで燃える肩に
大通連で斬りつけた。
 <燃える神>の悲痛な叫びが、焼けた空気を振るわせる。

 彼は自らの無力さを嘆いていた。
 本来の力があれば、とうの昔に鈴鹿は灰へと変わっていただろう。
 しかし、数百年に渡る幽閉とそれに伴う凄まじい飢餓は、チェカラクの力を見る影もないほどに
衰えさせていたのだ。
 彼は自らの境遇も嘆いていた。
 人間の呼び出しに応じて現れ、助力を与えたその報いは永久の虜囚となり果てること。
 ここで鈴鹿を食らい命を繋いでも、待っているのはいつ果てるとも知れぬ獄舎の日々。
 それでもチェカラクは、生き続けることを望んでいた。
 
「いと力強きものよ、余は諦めはせぬ!汝を貪り食らうのだ!」
 鞭を放り出して両腕を延ばし、熱に体力を奪われて動きの鈍った鈴鹿を捕らえようとする。
「生きるために!食らわねばならぬ!」
132ヌアラ ◆tRUNEwlE :02/07/10 17:23
>130
 身体のいたる所から血をだらだらと垂れ流しながら、ヌアラは考える。
 無駄なことを、と。

 今、星川翼は押しているように見える。だが、それは見かけだけの事だ。
 ヌアラは、十字を背にし、王殺しの槍と呼ばれる特別な槍でその身を貫
かれ無い限り、決して滅ぶ事は無い。そして、その槍は今、彼の手元にあ
るのだ。

 ヌアラは、剣を構えていかにも「絶好調」といったような表情を浮かべる
星川翼の周囲を取り巻くように、黒い壁をイメージする。それはたちまち
現実となり、翼と外界とを遮った。同時に、壁ごと翼の身体を貫かんと、
手に持った槍をしごきだす。

 動きが速いのならば、動けなくしてやればいい。実に単純な事であった。
133星川翼 ◆KaSYAyFU :02/07/10 19:55
>132
 
 突然周囲に構成された黒い壁。
 視界とフットワークが、これで完全に殺された。
 だが、『貫目』の能力で槍を突き出す予備動作は見えた。
 
 後は、勘だけが頼り。
 
(ええい、もう―――どうにでもなれっ!!)
 
 破れかぶれで右へ大きく体を捻る。
 避けれるかどうかは分からないが、止まっているよりよっぽどマシだ。
 
 そして脇腹を鋭い痛みが抉った。
 読みが少し甘かったか、それとも向こうの予測の内か。
 小さく舌打ちした後、サン・テグジュペリで壁を切り崩して脱出。
 
 壁の外に立っているのは、満身創痍と言って差し支えない様相のヌアラ。
 だが倒れる気配は一向に見えない。
 脇腹の傷を押さえつつ、思考を巡らせる。
 
(そうだ、アイツは普通の攻撃じゃ死なないんだった)
 
 事前にミアから聞いた情報を思い出す。
 奴を滅ぼす方法は―――
 
(なんだっけ?)
 
 キスの余韻で有頂天になって、すっかり忘れていた。
134御神苗優 ◆OminaeNo :02/07/10 21:31
上海魔獣境〜スプリガンvs樟賈寶
エピローグ
>125
 
奴の目が輝きを無くす。
首からは噴水のように血が出てるが、これもその内止まるだろう。
気づけば、
外はパトカーや救急車、消防車なんかのサイレンがやかましく響いてる。
 
まぁ、これもガス爆発かなんかとして処理され、
公表されるんだろう。
あの髭もじゃのマックスも逝っちまった・・・・・・
あんなに、いいおっさんだったのに。
その存在もきっと、闇の中へと抹消されちまう。
この稼業やってりゃ、仕方ないことだけど。
それが残るのはただ、俺たちの心のアルバムだけ――
 
また、忙しくなるな――
だが、青雲幇への圧力や警察関係への折衝は他の奴の仕事だ。
 
死体を一瞥すると、俺は歩き出す。
今はただ・・・・・・身に降りかかった血を、汗を洗い流したい。
そして、出来うるならば清潔なベッドの上で眠りたい。
今日起こったこの出来事を、記憶の中から消し去るために――
俺は血塗れのナイフから血を払うと、一人、その場を立ち去った。
 
上海魔獣境、終演 
135樟賈寶 ◆avKONGOU :02/07/10 22:18
上海魔獣境〜スプリガンvs樟賈寶
 
闘争纏めだぜ。
 
前スレ
>http://cocoa.2ch.net/test/read.cgi/charaneta/1025406070/418
 
今スレ
>94 >110 >113 >116 >118 >120 >122 >124 >125 >134
 
ちっ……。
なんだって俺が生身の人間なんかに刻まれなきゃなんねーんだ?
アルクェイドVSクレイグ・スティルソン

その日の遠野志貴は、何処かおかしかった。
アルクェイドのマンションについた後、むっつり黙り込んでテーブルの真ん中をずっと睨みつけている。

「……どうかしたの?」

「大事な話があるんだ」

どこか深刻そうな言葉の調子に、アルクェイドが「なになに?」と身を乗り出す。
志貴は顔を上げ、虚ろな目をアルクェイドに向ける。

二人の目が合う。
アルクェイドのニコニコとした目。
遠野志貴の、生気の無い目。

一瞬後、遠野志貴の頭がゴツ、と重い音を立ててテーブルにぶつかった。


―――――頭部だけが。
代わりに生えたのは、巨大な機関銃の銃身。


呆気に取られたアルクェイドには、至近距離からの不意打ちを避けられなかった。
137鈴鹿御前 ◆Y4SUZUKA :02/07/10 23:22
鈴鹿御前 vs チェカラク

>131

 光陰の勢いで駆ける私を捉えきれず、炎の鞭は悉く壁を、床を叩き、火花を散らす。だが、最後
の1本が、肩口を僅かにかすめた。
 たったそれだけの事なのに、服はあっさりと燃え尽き、ジュッという音を立て、肉が焦げる。

──この鞭の威力、さっきの大剣の比じゃない。直撃すれば、恐らくは……

 軽く頭を振り、不吉な考えを追い払った。
 苦痛に顔が歪むのを意識しながらも、なおも速度を上げ、疾駆する。私が奴に勝る点があるとす
れば、それはこのスピードだ。足を止める事は、即ち死を意味する。
 <燃える神>の腕に、肩に、立て続けに太刀を浴びせた。チェカラクの上げる苦痛の叫びが、燃え
る回廊を充たし、その姿が大きく揺れた。

 私の膝から力が抜けたのは、その時だった。
 チェカラクの発する熱によって奪われた体力が、限界に来ていたのだ。
 脚全体がガクガクと震え、その場に膝を付いてしまう。
 その隙を、<燃える神>が見逃す筈はなかった。

「いと力強きものよ、余は諦めはせぬ! 汝を貪り食らうのだ!」
「生きるために! 食らわねばならぬ!」

 叫びながら鞭を投げ捨て、その両腕を伸ばして掴みかかってくる。
 震える脚を叱咤し、横っ飛びで差しのばされた腕を躱した。
 だが完全には躱しきれず、再び左腕を焼かれた。地面を転がるうちに火は消えたが、腕の火傷は
重度だ。むき出しの腕は真っ赤に火膨れし、もはやこれ以上刀を握る事はできそうにない。

「あなたが、生きるために私を喰らうというのならば、私は──生きるために、あなたを斬る」

 呟きは、壁に弾かれた。
 転がった勢いのまま、壁を蹴って跳んだ私の姿は、既に天井近くの高さにあった。
 真上からの一閃──狙うは、奴の脳天。
>136 アルクェイドVSクレイヴ・スティルソン
 
 目の前が、めまぐるしく移り変わる。
 志貴、生気のない目、落ちる首、銃身、銃口、そして――銃声とマズルフラッシュと銃弾。
 その現実の遷移に、アルクェイドの心は一瞬反応が遅れた。
 必死に両手で頭部をかばう。
 
 暴力が吹き荒れ、両腕に無慈悲な爪を立てる。
 血が、肉片が吹き飛ばされていく。
 腕の隙間をかいくぐって、数発の銃弾が頭部を抉った。
 ぐらりと、血に染まった体が傾ぐ。
 
 刹那。
 
 腕の隙間、傾いだ体の奥。
 朱い、朱い瞳が金色に変わり――。
 千切れそうな腕が閃く。
 
 機関銃が鉄塊に変わり、その志貴のマネをしていた何かを肉塊に……はならなかった。
 それは鉄や機械をバラ撒いて粉々になっていく。
 つまり、生物ではない、ロボットやアンドロイドの類という事か。
 
 ――――なんて、不遜。
 
 そう、不遜だ。
 志貴の姿を真似て自分を襲うなどとは。
 金色の瞳が、ギリと凶っていく。
 
「何のつもりか知らないけど、まさかこれでおしまい?」
 
 冗談ではない、これで終わらせてなるものか。
 自らの所行を悔いてもらわなければならないのだ、コレをやった者には。
 まずは十指を一本ずつ捻り、折り、千切る。
 その次は四肢を一本ずつ同じように。
 次には胸をかっさばいて肋骨を一本一本引き抜いてやる。
 それでまだ生きているのなら、内臓の一つ一つをじっくりと時間を掛けて潰してやる。
 何処まで生きていられるか見物だ――!
 
「早く出てきなさい、生きていることを後悔するくらいじっくりと殺してあげるから」
 
 殺気で、空気が冷えていく――。
 生者の存在を否定するかのような空気、それを発するのが朱に染まった白。
 アクセントの金色が、凶悪な光を放っていた。
>138 アルクェイドVSクレイグ・スティルソン

パチ、パチ、パチ。
おざなりな拍手。

即座に振り向いた女の表情は一変していた。
その視線は雄弁に語っている。
お前は敵ではない。ただの獲物だ、と。

(コチラが本性か。……化け物め)

内心の畏怖は、表には出さない。
ソファに深く腰掛けてくつろいだ姿勢で、
顔に装着していたアンドロイドの遠隔操作装置をポケットにゆっくりとしまった。
そして勝手にいれたコーヒーを啜る。

いい豆だ。ふぅ、と溜息が自然に出た。

そして、人を虫ほどにも見ていない超越者に対して、にっこりと笑いかけてみる。

「初めまして。アルクェイド・ブリュンスタット嬢。私はクレイヴ・スティルソン。
 ……貴女を捕まえに来た」

ひょいと懐から拳銃を取り出し、照準する。

「素直に従ってもらえると嬉しいのだが」

彼女も笑った。
最高の彫刻家が渾身の力で掘り出したような、美麗な表情。
ただ一つの瑕は、そこに殺意以外の感情が存在しないこと。
>139 アルクェイドVSクレイヴ・スティルソン
 
 ――馬鹿げたことを。
 
 そんな言葉に取り合うつもりも、取り合ってやる義理もない。
 何を考えているのか知らないが、真祖をどうにかできるとでも思っているのだろうか?
 ……なら、教えてやらなければなるまい。
 
 それがどれほど無謀で、愚かで、不遜な行為であるかを。
 
 自分に向けられた銃口など、恐くはない。
 銃で自分を殺すことなど不可能なのだから――たった一挺を除いては。
 事実、先ほど機関銃に抉られた腕と頭部は、既に半ば以上の再生を終えている。
 現代の兵器に、真祖を殺しきる事などできるモノか。
 
「悪いけど、他を当たってくれるかしら?」
 
 腕に、凶器とすらいえる腕が弓引かれる様に力を蓄えていく。
 引き絞られたそれは、解放と殺戮をじっと待っている。
 
「もっとも、あなたはここで死ぬけれど」
 
 男の余裕が気に入らなかった、自分の後ろにいたことが気に入らなかった。
 それもすぐに消え去るだろう、男の死によって。
 
 爪が閃く、神速の爪が。
 男の頭部めがけて、後ろのソファごと貫く勢いで。
 アルクェイドは確かに夢想した、砕ける頭と、血に染まって舞うソファの羽毛を。
>140 アルクェイドVSクレイヴ・スティルソン

交渉は決裂……いや、交渉と言えるようなものではないか。
これはただの戦闘前の戯言。
彼女と語るには、やはり血でなければなるまい。


相手の攻撃の気配を待っていては間に合わない。
彼女が言葉を切る直前、後ろに向けて転がった。
クレイヴの身体が、ソファを『貫いて』床に沈む。

ソファが吹き飛ぶ音にクレイヴは闇の中で笑う。


再度、今度はキッチンの『壁』から部屋の中に入る。

「せっかちだな……。私は物質透過能力者。いわゆるエスパーでね。
 固体を液体と同じように扱うことが出来る。
 こんな風に」

台所に一本だけ飾ってあった花を抜き出し、くわえて、頬から抜き出す。
更にくるくると手元でまわし、挑発を続けた。

「別に彼……トオノ、だったかな?彼の頭に銃をつきつけて交渉しても良かったのだがね。
 正直に言うと、好奇心が勝ったな。『人間外』の存在という奴を見るのは初めてだから、
 君に私という『人間』の力が通じるかどうか、試してみたくなった」 

ひょいと花を投げ捨てると、再び壁の中に沈む。

「さぁ、遊ぼうか」

完全に沈みきるまえに、銃弾を放つ。
効果が無いのは承知の上で。
>141 アルクェイドVSクレイグ・スティルソン
 
「――へえ? ずいぶんとでたらめな能力ね」
 
 言葉の余裕と裏腹に、アルクェイドは考えていた。
 果たして、この能力の前に対抗する手段が自分にあるだろうか、と。
 肩口に命中した銃弾のことは気にもならない。
 
 一発、一発でいい。
 攻撃を命中させることさえできれば倒せるだろう。
 しかし、どうやって?
 
 とりあえず、常に透過状態というワケではなさそうだ。
 そうでなければ、ソファに座っていられなかっただろうし、いろいろと不便だろう。
 つまり、不意さえ突ければ攻撃を命中させることも不可能ではないと思う。
 だが、それも現状では難しい。
 むしろ、こちらが不意を打たれないようにしなければなるまい。
 敵は何処から襲いかかってくるか分からないのだから。
 
 全方向に注意を払いながら、じっと相手の動きを待つ。
 何処だ? 何処から来る……?
>142 アルクェイドVSクレイグ・スティルソン

誘いは無視された。挑発にのって迂闊に接近するほど間抜けな相手ではないらしい。

(では、私から行くか。……こういう使い方にはどうするかな?)

床下を通って、標的の真下に移動する。
これからやることは単純。

足を掴んで引き摺りこむ。
ただそれだけ。
そしてそれが致命の攻撃になる。

物質と同化してしまえば、普通の人間はショック死だ。
どんな人間の内臓も神経も、コンクリートが同化した後で動けるほどタフでは居られない。
そして、例え相手が銃弾をものともしない化け物でも、
コンクリートと同化した足をあっさりと再生させることは出来まい。

あっさりと柔らかい足首を握った手応え。
……これで終わり、か?
>143 アルクェイドVSクレイグ・スティルソン
 
 ――来た、来たがその手はあまりにも予想外だった。
 床の下から、足首を掴む手。
 瞬時にその狙いを察し、回避に移る。
 だが、ほんの僅かの予想外が判断を鈍らせた。
 
 行動を起こす前に、既に足首が床の中へと沈み込んでいる。
 ここで回避へ移るとどうなる?
 ただ、抜けるだけ? それとも、足首が千切れる?
 ――考えている暇はない、考えている間に手遅れになってしまう。
 決断し、跳躍する事で戒めから抜けようと行動した。
 残った片足だけで床を蹴り、引き抜こうと試みる、全力で。
 
 その跳躍は足首が沈み込んだ床からの抵抗を受けて……止まらない。
 肉が、骨が、腱が、血管がブチブチと千切れていく。
 最後の抵抗を見せる足首を、耳障りな音と共に振り切ってその場から飛び退いた。
 少し離れた場所へと着地した後、危うくバランスを崩し掛けて膝立ちになる。
 失った足首の切断面を見て、顔をしかめた。
 これは、予想以上にやっかいだと現状を認識する。
 
 まず、床や壁、天井から離れなくてはならない。
 引きずり込まれては拙いからだ。
 それに適した場所……。
 どうするか一瞬だけ逡巡した後、ガラス張りのテーブルの上へと跳躍した。
 音もなく着地し、思考する。
 
(どうしよう? あいつの能力は――)
 
 固体を、液体の様に扱えるとあいつ自身は言っていた。
 ならば……?
 
 一つの仮説を立て、それを実行する機会を探る。
 まずは、あいつをいぶり出さなくては。
 
「不意打ちだけが能ってわけかしら? だけど、そうやって逃げ回ってても……」
 
 アルクェイドの視線が向いていた方の壁が砕け散った。
 空想具現化による圧縮空気弾の仕業だが、果たしてそれにあいつが気付いたかどうか。
 ことさらに不敵な笑みを浮かべながら言葉を紡ぐ。
 
「こうやってれば、いずれはあなたの逃げ場もなくなるわ。それとも、モグラ叩きでもする?」
 
 さあ、挑発に乗れ――。
 そう念じながら、また適当な壁を砕く。
 我慢比べ、、あいつは何処まで乗ってくれるか……?
>144 アルクェイドVSクレイグ・スティルソン

手の内に残った足首。

確かに、彼女にとっては足首がコンクリートと混ざり合った状態よりも、
完全に千切れてしまっていた方が再生はしやすいのだろう。

躊躇なく自らの身体の一部を切り捨てられる。
それは人間と全く違った論理でもって動いてる、怪物の思考だ。
彼のように能力によって人間を超えたのではなく、
心の芯から人間とは『違う』モノ。

だからこそ、捻じ伏せる価値がある。


頭上ではモノを砕く音。遮蔽物を破壊して、不意打ちを防ごうという腹か。
だが、甘い。彼女は適当にモノを砕いているつもりだろうが、その破壊は明らかに一点を中心としている。

(……テーブルの上に乗っていれば安全、か?私の能力を理解していないようだな)

含み笑いをして、再度真下に移動。
そう。今度はテーブルが沈み始める。

彼女の部屋には、上に乗れるようなモノが少ない。
それはつまり、この部屋での我慢比べならば絶対に負けない、ということだ。
>145 アルクェイドVSクレイグ・スティルソン
 
(しまった、その手があったわね)
 
 沈みゆくテーブルを、何処か冷静に見つめながら思考する。
 このテーブルがなくなれば、もはや逃げ場もなくなってしまうだろう。
 しかも、相変わらずあいつはその姿を見せていない。
 
(卑劣な奴――)
 
 言っても無駄だと知っているから、心の中で毒づいた。
 しかし、とにもかくにも埒があかない……。
 このままでは、どう考えても向こうが有利だろう。
 仮説を立てても使えないのでは無駄に終わってしまう。
 
(しきり直し、ね……)
 
 仕方がない、現状ではまったく歯が立たないといっても過言ではないのだから。
 ここは一度退こう、部屋の中で戦うのは無謀だ。
 
 テーブルを蹴り、窓めがけて突っ込む。
 派手な破砕音をさせながら、ガラス片を伴ってアルクェイドが外へと飛び出した。
 六階からの激突と衝撃に備え、体を丸める。
 数秒の落下感覚の後、地面に叩きつけられる感触。
 そのまま地面を転がるに任せて衝撃を殺した。
 
 すぐさま立ち上がり、自分の部屋を見上げた。
 憎々しげな瞳を隠そうともせずに。
 屈辱、だった。
 
「必ず、必ず殺してあげる……!」
 
 しかし、これからどうする?
 誰かの助けを借りるか?
 志貴なら、あるいは壁の中を移動するあいつの死が視えるかもしれない。
 
 ――いっそ、ここからあのマンションを消し飛ばすか?
 
 半ば本気でそんな事を考えながら、次の手を模索する。
 そもそも、地面に潜っていたあいつは外界を認識していたのだろうか?
 もし、していなかったとしたら、しばらくは自分が去ったことに気付かないだろう。
 とはいえ、ガラスの破砕音くらいは聞こえたかもしれないが。
 
 考えた末に、しばらく様子を見ることにした。
 十分待つ、それで動きがなければ志貴を呼びに行こう。
 もし動き出せば、そのときは……。
 
(今度は、逃がさない)
 
 どんな小さな、針の穴の様な隙すらも見逃さない。
 その穴に勝機をねじ込むための準備を脳裏に描く。
 空想具現化のための精神集中――。
 仮説が正しければ、これが決め手になるはずだ、正しくなければ本当に手詰まりだが
>146 アルクェイドVSクレイグ・スティルソン

さて。
背広のポケットに軽く手を当て、考え込む。

彼女は逃げたのか?
テーブルは完全に沈みきり、彼女が他の場所に飛び移った様子も無い。
聞こえたのは、ガラスの砕ける大きな音だけ。

(飛び降りたのか……6階から?)

今更驚くようなことではないか。苦笑が出た。
問題は、彼女がただ逃げるような相手ではない、ということだ。
当然追撃も予想して待ち構えているだろうし、
仲間や……可能性は低いが、司法組織を介入させてくる可能性もある。

そして小さくない問題がもう一つ。
『物質の中に潜ったままでは、アルクェイドの姿を見ることが出来ない』のだ。
つまり離脱したアルクェイドをただ地面に潜って追撃するわけにはいかないということだ。
厄介な状況だ。……仕方あるまい。
予め用意しておいた装備を取る為に、屋上に向った。


―――五分後

短機関銃を両手に構えて、クレイヴ・スティルソンはマンションの入り口を出た。

油断なく辺りを見まわし―――――――――――――居たッ!
>147 アルクェイドVSクレイグ・スティルソン
 
(来たっ――!)
 
 二丁機関銃を携えて現れたあいつを視認する。
 向こうもこちらに気付いているらしい――何の障害物もないのだから、気付かない方がおかしいが。
 この時を待っていたのだ……!
 
 集中していた意識を解放し、現実を望むように上書きする――。
 真祖が真祖たるゆえんである空想具現化(マーブル・ファンタズム)。
 その変容は、あいつの周辺に忽然と現れた。
 
 それは、煮えたぎる油。
 アルクェイドが立てた仮説、それは――。
 
「固体は透過できても、液体はどう!?」
 
 数百度に熱せられた大量の油が、あいつへと一斉に降りかかる――!
>148 アルクェイドVSクレイグ・スティルソン
 
機体とリンクしていた左眼の視界がノイズに覆われた。
各部センサーは、高温の液体によるダメージを警告と共に報告。
元々擬態するために、強化ヒフが使われていない機体だ。
防御能力はたかが知れている。
予想通り、間を置かずにシステムが全てダウンした。

そう。クレイヴ・スティルソンは
―――――クレイヴ・スティルソンの姿を模したアンドロイドは―――――
アルクェイド・ブリュンスタッドの攻撃により完全に破壊されたのである。

彼女にとって致命的な隙を作り出す囮として。


アルクェイドの背後の地面から飛び出し、右手に握った改造手榴弾を体内に突き込む。
肉と鉄が同化する手応えに、にぃ、と冷たく笑った。
振り向いた彼女の焦った顔に満足して、再び地に潜る。
神速の爪が頭を貫いたが・・・・・・既に予想済みの行動だ。
透過してしのぐことなど、雑作無かった。

そして完全に体を潜り込ませ終わった瞬間、地面を叩く激しい衝撃を感じた。
>149 アルクェイドVSクレイグ・スティルソン
 
「――――――――!!」
 
 全てを理解したときにはもう遅かった。
 振るった腕も空しくあいつの体をすり抜ける。
 そして、アルクェイドの中に文字通りの爆弾を残して地面の中へと消えた。
 
「あなたなんかに―――――――!!」
 
 その叫びは、続く爆発音にかき消された……。
 
 
 
 そこに残ったのは倒れ伏した下半身と、左脇下から袈裟懸けに切り上げられたかのような上半身のみ。
 無惨な爆発の痕を晒している断面からは、内蔵がはみ出して地面にシミを作っている。
 驚愕の表情が刻まれたその頭部は、何処を見ているのか判別ができない。
 
 ――――痛い。
 
 人間にここまでこっぴどくやられたのは久しぶりだ。
 志貴の直視の魔眼は、とりあえず例外とする。
 
 ――――痛い、痛い。
 
 再生に、どれだけの時間が必要になるだろう?
 とはいえ、一日は掛からないだろうが。
 
 ――――痛い、痛い、痛い、痛い。
 
 あいつが、地面から出てきた。
 死んでいるのを確認しようと言うのか、こちらへと歩いてきている。
 
 あいつが、あいつが、あいつが、あいつが、あいつがあいつがあいつがあいつがあいつがあいつが。
 
 あいつがあいつがあいつがあいつがあいつがあいつがあいつがあいつがあいつがあいつがあいつが
 あいつがあいつがあいつがあいつがあいつがあいつがあいつがあいつがあいつがあいつがあいつが
 あいつがあいつがあいつがあいつがあいつがあいつがあいつがあいつがあいつがあいつが――!!
 
 ――人間が、この身を汚すなどという不遜、許し難い。
 
 一瞬頭を掠めたそれは、一体誰の思考なのか。
 
 今まで死んだように動かなかったアルクェイドの上半身、その頭部が男の方へと向き直った。
 金色の瞳は、何処までも何処までも何処までもまっすぐに男だけを見据えている。
 その光は、アルクェイドのそれのようでいて、そうでないように見える。
 
 口が、動いた、ただ一言を紡ぐために。
 
「死ぬがよい」
 
 言葉が引き金だったかのように、すぐそばまで来ていた男の目前が爆ぜた。
>150 アルクェイドVSクレイグ・スティルソン
 
ケリはついた。
後は頭部を石とでも融合させてしまえば、今回の任務は終わりだ。
不気味な土産を想像し、更に自分がその土産を持たなければならないことに思い当たってゲンナリする。

それはごくわずかな気の緩み。
だが、油断は真っ当に報われた。



爆発はクレイグの体を焼き、肉を引き裂いた。
地面に投げ出され・・・・・・反動で転がらずに、そのまま沈み込む。

受けたダメージを確認しようとして、途中で投げ出した。
もう感覚が壊れていた。痺れとも痛みとも判断できない感覚が、体の表面を、体内奥深くを蝕んでいる。
土と同化したために、出血こそいくらか抑えられる。
だが・・・・・・助かるまい。

死を前にしても、恐怖は無かった。ただ静かな納得だけがあった。
人は死に、殺される。今度は俺の順番が来たというだけに過ぎない。
土に帰る事が出来るのだ、人殺しの俺にしてはかなりマシな最後だろう。

それでもたった一つだけ、心残りはあった。
組織の命令で人間を殺し続けた自分にとっての、たった一つの拠り所。

(すまん、エリカ。おみやげ、持って帰れない・・・・・・)

最後に脳裏に浮かんだのは、NYで帰りを待つ、たった一人の妹の泣き顔だった。
>151 アルクェイドVSクレイグ・スティルソン エピローグ
 
 ずる……ずる……ずる。
 
 上半身だけのアルクェイドが、左腕だけで地面を這っている。
 離ればなれになった自らの下半身を求めて。
 吐息は荒く、視線は虚ろ。
 それでも、半身を求めて、無様に片腕で這いずり回る。
 
 ずる……ずる……ずる。
 
 傷口からはみ出した内臓が、通り道に血とそれ以外の体液混じりの跡をつける。
 まるで、ナメクジが這った跡みたいだと、胡乱な頭で考えた。
 もっとも、その思考のほとんどは痛みとノイズのような何かに支配されていたが。
 
(何が、あったのか、よく、思い出せないや……)
 
 覚えているのは、爆砕した自分自身と、痛みと憎悪に塗りつぶされた自分。
 次に記憶が戻った時には、吹っ飛びながら地面へと消えていく男が視界にいた。
 細部を確認できる余裕などなかったが、致命傷であることくらいは分かった。
 一体、何が起こってそうなったのか、はっきりと覚えていない。
 ただ、アレは自分が――この身が――やった事だとは朧気に自覚していた。
 
 ずる……ずる……ずる。
 
 泣けてくるほどに、体が前に進まない。
 痛い、血が少ない、地脈の供給も遅々として進まない。
 
 ――自分は、惨めだ、とてもとても惨めだ。
 
 思わず、涙が出そうになった。
 地を舐めている現状に、地を舐めている自分自身に。
 
 ずる……ずる……ずる。
 
 別れた半身を求めてアルクェイドは地を這う。
 痛みとノイズの片隅に、ほんの僅か思い浮かんだ名前、それは――。
 
「志貴……痛いよぉ……」
 
 誰にも聞こえないと思われるほど小さく、力無い呟き。
 おそらく、言った本人の耳にさえ届いていまい。
 だが、それでも。
 
 その言葉は、我慢していた涙の堰を切った。
 頬を、涙が伝う。
 悔しいのか、痛いのか、おそらくはその両方。
 
「志貴……志貴ぃ……」
 
 地を這い、血を流し、涙を流しながら、壊れた人形の様に、一心にその名を繰り返し呼び続ける。
 そこまで志貴を求めながら、同時に無様な姿を志貴に見られたくないという相反した思いもあった。
 そんな思いを自分でも理解しているのか否か、悲痛な呟きは未だ止まることを知らなかった。
 
「し、き……」
153遠野志貴 ◆MURDERt. :02/07/10 23:41
>152 アルクェイドVSクレイグ・スティルソン エピローグ2
 
 その日、俺は補習に出ていたせいで、下校時間を大幅に遅らせてしまった。
 最近いろいろあるせいで、成績が落ち気味なのを見て、担任が先手を打って
きたというわけ。
 ……もしかすると、一緒に補習を受けた有彦が逃げ出さないようにするため、
という事もあったのかもしれない。
 
 校門を出ると、違和感に気付いた。
 いつもなら文句をまくし立てながら俺に近付いてくる、あいつがいない。
 胸騒ぎがする。
 後から一緒に夕飯を食べに行こうと言ってきた有彦を放って、俺は走り出した――。
 
 
 ――ひどい有様だった。
 あたりに血と肉が飛び散り、平凡な街角に極彩色の模様を付け足している。
 そして、その中に――いた。
 
 叫び出したくて、駆け出したくて、押さえきれない感情を無理矢理押さえつけ、
辺りの気配を探る。
 
 ……敵の気配は感じられない。
 
 その時俺には確かに聞こえた
 か細い、でも心の底からの声。
 
『し、き……』
 
 ――俺を求めている。
 
「アルクェイド!」
 
 俺は叫んで駆け出した。
 上半身だけになって、地を這いながら、泣いているアルクェイドを抱きかかえる。
 
「話すな!」
 
 何かを言おうとしたアルクェイドを黙らせる。今のアルクェイドは、話すだけでも
苦痛なはず。
 
「大丈夫……なはず無いよな。再生はできるか?」
 
 アルクェイドが頷いた。
 
 アルクェイドは死なない。
 そうわかった瞬間、俺はアルクェイドを抱きしめていた。
 俺の腕の中でアルクェイドは一瞬だけ身を固くしたが、すぐに力を抜いたのがわかった。
 俺は腕の力を緩めて、アルクェイドを再び見る。
 アルクェイドは気絶していた。俺の腕の中で、安心してくれたのだろうか――。
 
 俺は冷静になって考える。
 ここにいてはまずい。アルクェイドの部屋にいても安心できない。
 今日は俺の家に連れて行こう。秋葉に何か言われるかもしれないが、構うものか。
 しばらくはずっと一緒にいるんだ。
 
 二度とこんな目に遭わせはしない。
 俺はそう決意して、アルクェイドを再び抱きしめた――――。
154名無しクルースニク:02/07/10 23:43
Nameless Kresnik vs Count Vardalek
“The Party Of The Children Of Night”
>111
 
 無我夢中で力を込め続けた右手越しに、抵抗の消失が確認出来た。
 行動の停止を確認――これで、全て。
 
 ――全て、何が終わりだ?
 
 手緩い。
 超絶の再生能力。人外の悪夢。最後の不死者の王族。
 確実に殺さなければ、如何しようもない。
 さあ、止めを――そこで体力の限界に気付いた。相手はヴァルダレク。憎むべき
吸血鬼。何を戸惑う。やれ。身体の限界? クソ喰らえだ。
 体がイカレようと弾け飛ぼうと、
 
「――テメエは、虚無の地獄行きだ」
 
 鼓動を停止したヴァルダレクに圧し掛かったまま、青年は肉隗の首筋に右手を突き入れ
る。腐った肉の中へ何の抵抗も無く、指先はあっさりと侵入した。
 何を考えていたのだろう/何も考えていなかったのかもしれない。
 目的――/――殺意。
 何がやりたかったのだろう/それだけは――多分明白。
 
 容赦なんてのは欠片も無く、躊躇みたいな物は片鱗も無く、後悔は抱きもせず――
 青年の身体が、白い炎の柱と化した。突如として闇を縫い上げた白の火柱は、周囲
で燃え上がる焔達を完全に押さえ込んで、絶対的な存在感を築き上げる。
 それは、生命を糧にした終焉の焔だ。
 ヴァルダレクの体の表面が、一瞬で焼き崩れて灰に変容する。牙も爪も覆い尽くし、
白の火炎が全てを焼いて行く。
 ヴァルダレク所か城壁すら焼き尽くし――柱は、突如として消失した。
 焼け崩れた城壁の上、一人佇む青年が膝から崩れ落ち、そのままバランスを崩す。
白の周囲は、深く広い巨大な堀。
 バランスを取る等と言う抵抗は見せず、その体は――奈落へと落ちた。
 
 虚ろな意識もろとも、身体は落ちて行く。水音。水飛沫を見上げた所で、瞼は閉じた。
 疲れた。
 意識がくるくると回る。
 遠く遠く深く暗い澱の底、意識の声は、酷く虚ろ。
 死、とは――結局、この事を差すのだろうか。違う。それは状況と個人の――いや、
そんな事はどうでも良い。
 何故だろう。辛くないのは。
 連中を殺し尽くせたから。ヴァルダレクを殺せたから、仇を討てたから――?
 何だ、随分と自分勝手。生贄気取りで世界を救う? 冗談じゃない。俺は、俺の意思で、
この目的を、主の意思を、何より――――
 ……何だ。そんな簡単な事、か。
 最後に、手の中で息を引き取ったシスターの顔が思い浮かんだ。
 仇――自分勝手だけど、打ったよ。いやいや、そんなのじゃない。もう、被害は出ない。
誰も苦しまない。ああ、中には一人男の子が居てね、多分、あの子も逃げられ――
 ……ちょっと早い再開――歓迎してくれると、嬉しいんだけど。
 イヤかな。やっぱり、俺なんかじゃ。……困ったな。堅い事言わないで――
 
 暗転。
155名無しクルースニク:02/07/10 23:48
Nameless Kresnik vs Count Vardalek
“The Party Of The Children Of Night”
>154
 
 目覚めは、激痛と――無骨な顔に迎えられた。
 天国or地獄を目の前にいるもので判断するなら、間違い無く後者だ。
 
「お目覚めか、お姫様」
「……あー」
「体は動くか? 意識は――しっかりしてるか、おい」
「此処は――」
「天国だ」
「……地獄か」
「いいや、天国だ」
「主よ、俺は間違っていたのでしょうか。悪魔が居ます、何故だか目の前に――」
「――怒るぞ、本気で」
 
 空は黒く、背中の感触は堅い。振り返れば、背後は燃え行く忌城の跡地。
 濡れ鼠の身体は、目の前のジャック=クロウも同じだった。
 ままならない体で立ち上がって倒れ掛け、そのままクロウに抱き止められた。
 
「ったく……水飛沫が上がるのを確認しなきゃ、今頃お前は暗い暗い水の底だよ」
「大正解だな、俺は水神になってこの国を見守るんだ」
「……精霊じゃないのか?」
「俺の国じゃそうなんだよ」
 
 そうかよ、と呆れたように言って、クロウは欠損した左手に目を移す。
 
「……で、お前。その腕は」
「叩き切った。敵の親玉と道連れ。万歳オレ凄いねオレ?」
「痛くないですか。マゾですかお前は。前頭葉切ったりしますかひょっとして?」
「……痛いっての、バカ。くそ、あー、畜生。茶碗持てねえぞ、コレじゃ」
「介護してやる、安心しろ」
「全力で遠慮する。国に帰れ」
「……帰るぞ? このまま」
「嘘ですスイマセン運んで下さいクロウさん」
 
 全く――と肩を竦め、クロウは首を背後へと向けた。
 暗い夜の闇の中、クロウの影に隠れていた更に小さな影が小さく動く。
 
「――お前の恩人だよ。言われなきゃ、城の中を捜してた」
「ぁあ? ……あー、ああ、そっか」
 
 影に隠れるように立っていた少年が、おずおずと青年の前に歩み出た。欠損した
左手を一瞥して、顔が一瞬で泣き崩れる。
 青年は苦笑半分で隻腕を伸ばし、少年の頬にそっと触れた。
 
「有り難うな。……お陰で助かった。
 ソレと――もう大丈夫だから。これから、ずっと。もう――」
 
 もう、何も――恐怖に怯える必要は無い。
 このまま意識が永遠に落ち込んだとしても、それは変わらない事実だから。
 再度薄れる意識の中、少年を抱き止めて――意識はブザマに暗転。
 ただ――今度は。
 悪い気だけは、しなかった。
156名無しクルースニク:02/07/11 00:09
Nameless Kresnik vs Count Vardalek
“The Party Of The Children Of Night”
>155
 
 穏やかな風が、雲を緩やかに運んでいた。捧げられた花束が小刻みに揺れては花弁を
散らす。
 街郊外の墓地の一角、人の気配の失せた昼の一時――
 ――片膝を付いた隻腕の黒衣が、静かに祈りを上げていた。
 
「……君の魂が、永久に安らかでありますように。
 主の御傍に常に有りますように――」
 
 祈りを終えて振り返った其処に、長身の偉丈夫が憮然と立っていた。
 青年は片眉を上げ、バランスの取り辛くなった肩を竦める。
 
「帰ってなかったのか。……ヒマか? ローマは」
「随分と――肩入れするな」
「ペシミストなんでね」
「最悪の冗談だ」
「冗談だよ」
 
 青年は膝に付いていた土を払って立ち上がる。
 墓地を一瞥してから、蒼穹を見上げた。
 
「あの子の魂は、間違い無く主の御許に有るんだから」
 
 その通りだ、とクロウは墓に向けて静かに祈りを上げ始めた。
 祈りが終わるのを待っていた――訳でも無いが、青年はクロウが振り返るまで、静かに
空を見上げていた。
 振り返ったクロウは、青年の隣に並んで呟く。
 
「これから、どうする気だ?」
「帰る。……暫く引っ張り出すなよ」
「ローマに来て貰わんと困るんだがな。報告も――お前の腕も」
「義手でも作るさ。……造れるか、そっちで?」
「武器でも付けてやろうか?」
「……こっちで付けるあー、とりあえず、空港まで送れ。運転が困るから」
「……図々しい――ああ、それと」
「あ?」
「あの子供。……「有り難う」だとよ」
「……ソイツは――何よりだ」
157名無しクルースニク:02/07/11 00:11
>156
 
 苦笑しながら言うクロウとの会話を打ち切って、青年は歩き出す。
 ランドローバーの助手席に座った所で、クロウが不意に口を開いた。
 
「なあ」
「何だよ王子様」
「……オレが王子ならブラッド・ピットはアドニスだな」
「それで、何だよ」
「……俺達の終わり方ってのは、決ってるんだろうな」
「だろうな。けど、ソレが俺達だ」
「後悔した事は?」
「ある訳ないよ」
「――全く同感だ」
 
 狩人達は、街を去る。
 
 私憤。私怨。怨恨。殺意。
 無様に踊って、冷酷に狩り続ける。何も迷う事など無く、ソコに感情が挟まれる余地
など微塵も無い。
 けれど。
 ――汚れた感情が、この街を救えたのなら。
 もし、救えたのなら。
 俺は――まだ、このままで。このまま、この生き方で。
 
 ――生きていたい、と思った。
 
 ……もう少し、再会は後回しになりそうだ、シスター。
 俺は、もう少し――もう少し、剣のままで。
 
 
 When a strong man armed keepth his palace,his good are in peace.
  
 Lord, make me an instrument of Thy peace Where there is hatred, let me sow love;
 Where there is injury, pardon Where there is doubt, faith;
 Where there is despair, hope Where there is darkness, light;
 Where there is sadness, joy.O Divine Master, grant that I may not so much seek
 To be consoled as to console,To be understood as to understand,
 To be loved as to love For it is in giving that we receive;
 It is in pardoning that we are pardoned;
 It is in dying that we are born to eternal life――
 
 
 Nameless Kresnik vs Count Vardalek “The Party Of The Children Of Night”→End.
鈴鹿御前vsチェカラク
>137
 
 鈴鹿の振り下ろした刃は、狙い過たずに<燃える神>の頭頂に食い込んだ。
 大通連を通じて、手が燃えだすかと思われるほどの熱気が、彼女の身体に流れ込む。
 チェカラクに刃を叩き込んだ勢いそのままに、床に墜落した鈴鹿の手に、大通連はなかった。
 すでに限界を越えるほどの火傷を負った手は、刀を握ることを拒否してしまったのだ。
 主に僅かに遅れて、チェカラクに食い込んでいた大通連が床に落ち、がちゃりと音をたてた。
 
 獲物は抵抗する術を失った。
 <燃える神>の勝利は、まさに目前に迫っていた。
 だが、チェカラクもまた、限界に達していたのだ。
 二つに断ち割られた炎の顔が、元通りの姿に戻ろうとするが、再びぱっくりと割れてしまう。
 その顔には、深い絶望の表情が現れはじめた。
 その全身の炎は明るさを失い、その動きは瀕死の病人のように緩慢なものだった。
 
 チェカラクは弱々しくなった腕を、倒れ伏した鈴鹿へと差し出した。
 失われつつある命を取り戻すために。
アセルス(半妖ED後)&玖珂光太郎vsラルフ・グルトvsフォルテッシモ
>121

「だいぶ渇いているようですな。苦しいですか? 口惜しいですか?」

銃弾をものともせず一直線に突っ込んでくる半魔の少女に正対し、男は銃を投げつけた。
少女がそれをかわし、唐竹に斬りつけて来たところで、

「ですが、私の血は差し上げません。そこでおとなしく渇いていきなさい」

交差するように、男の爪先が少女の手の甲へと突き刺さる。
そのままバックステップで距離を取り、仕込銃の弾丸を交換。

「接近戦は苦手なんですが・・・。仕方ありませんな」

軽い炸裂音。
そして、義腕から伸びる光剣。

「さて、ダンスの準備は万全ですかな?」

大きく振り上げられた光剣が、少女の喉元目掛けて襲い掛かった。
160鈴鹿御前 ◆Y4SUZUKA :02/07/11 01:23
鈴鹿御前 vs チェカラク

>158

 私の一刀は、間違いなくチェカラクの頭を両断していた。
 だがその瞬間、大通連を伝わった熱気が、私の手を灼いた。
 あまりの熱さに怯み、受け身も取れずに落下した私の手には、既に大通連はなかった。頭を縦に
割られ、苦悶する<燃える神>の向こうに、それはあった。

 どちらにしても、もはや刀を握る事は不可能だった。炎に嬲られた左腕だけでなく、今や右手も
火膨れに覆われ、少し動かして空気に触れるだけでも激痛が走る。
 体力も、もはや限界だった。
 息をする度、熱された空気が肺を灼く。
 滴り落ちる汗が、視界を塞ぐ。目が霞む。

 揺らめく視界を、チェカラクが伸ばしてくる腕が圧倒した。
 その動きは酷く緩慢で、いつもならば造作もなく躱せるだろう。だが、今の私には、地面を無様に
転がって避けるのが精一杯だった。
 背中を、またも腕がかすめる。肉が焼ける。背骨を貫くような激痛が走り、一瞬気が遠くなる。
 意識を必死に繋ぎ止め、何とか立ち上がった。

 奴の耐久力も既に限界だという事は、明らかだ。あと一刀浴びせることができれば、私の勝ちだ。
 だが、この腕では刀を握る事はできない。
 ならば、どうする…?

 続いて伸びてくる腕を、震える脚に活を入れて躱す。足は、地面に転がる大通連へと向いていた。
 刀を、脚ですくい上げる。宙に浮いた大通連の柄を、口で押さえた。まだ熱を失わないそれは酷く熱いが、もはやそのような事は意識の外にあった。

 そのまま、チェカラクへと突進する。
 伸びてきた腕がまたも体をかすめ、どこかが焼けるが、その痛みも強制的に意識から閉め出した。
 擦れ違い様、銜えた大通連で<燃える神>の胴を横薙ぎにした。

 これが──最後だ。
 そのまま、倒れ込む。
 口から離れた大通連が、ガランという音を立てて転がった。
 振り返って自分の行動の結果を見る余力は、私にはもはやなかった──
鈴鹿御前vsチェカラク
>160
 
 胴を切り裂かれたチェカラクの燃える姿が、ぐらりと揺らいだ。
 その場に膝をつき、やがて前のめりに倒れる。
 全身を構成する炎はみるみる明るさを失っていき、その大柄な姿さえもが縮んでいくように見えた。
 
「余は、敗れたのか」
 猛々しさ、絶望、憎悪、飢餓、狂気、それらがすっかり抜け落ちた、澄んだ穏やかな声音で神は言った。
「これが死か。これで余は解放される。この呪わしき獄舎から、永劫の幽閉から」
光を失いかけた炎の瞳が、床に倒れた鈴鹿を見つめた。 
 
「さらばだ、汝、力強き鬼の娘よ・・・・・ありがとう」
 
 最期の炎が燃え尽き、<燃える神>チェカラクはこの世界から、いや、すべての世界から永遠に
姿を消した。 
162ロン(M):02/07/11 02:27
「偶(タマタマ)狂疾ニ因ッテ殊類ト成ル」〜 ロン VS 孔濤羅
>119

 わずか、出遅れた。
 濤羅の踏み込みに対抗するだけの、速度が、間が無い。

 一撃を肩で受ける形となり、ロンは逆らわずに後ろに跳んだ。
 離れざまに振るわれた一刀を、半ば浮き上がった体勢で辛くも受け流し、さらに退く。
 突きつけた棍の先でさらなる追撃を牽制し、
 ようようにして倭刀の間合いから抜け出すことに成功する。

 体のあちこちで、刀が掠めた傷が痛みを訴えていた。
 かわしきれなかった、否、致命にならぬと見てあえて掠めさせた刃傷。
 だが、この決着の行方は刹那の先にのみある。
 この男に勝てるならば、腕一本と引き換えにしても惜しくは無かった。


 ゆっくりと側面に回りながら、棍を構え直す。
 突きの構えから、脇、そして濤羅の目から隠すように、体の後ろ側へ。
 濤羅も、自分と同じように呼吸を計っているだろう。
 慎重に、間合いをはかり、相手を計り――

(――――――殺!!)
 棍の間境ぎりぎりで、ロンは殺意そのものを叩きつけた。
 だがそれはフェイントだ。ロンの体はそれに半瞬遅れて間合いに入る。
 濤羅の死角を縫うように、棍が下から跳ね上がってその顎を狙った。
163朱い月 ◆aRCueIdY :02/07/11 02:27
アルクェイドVSクレイグ・スティルソン レス番まとめである。
気を失っておるアルクェイドに代わってこの身が代行しよう。

>136 >138 >139 >140 >141 >142 >143 >144 >145 >146
>147 >148 >149 >150 >151 >152 >153
 
感想はこちらに書くがよい。
http://fargaia.hokuto.ac/html/test/read.cgi?bbs=vampbattle&key=1019409630
164孔濤羅 ◆SHIDEN1o :02/07/11 02:29
「偶(タマタマ)狂疾ニ因ッテ殊類ト成ル」〜 ロン VS 孔濤羅 導入
>162
 
靠によって間合が離れ、勝負は仕切り直しになった。
濤羅は倭刀を持ちなおす。
逆手から順手へ。
誘いの一手は既に使った。
ロンは同じ手が2度通じる相手ではない。
 
倭刀の切っ先がロンの目につけられる。
けれんを廃した、正当な構えだ。
 
一寸刻みで間合を詰める。
感じる。
挙動、呼吸、そして肉の奥に確かに存在する、ロンの“意”を。
 
叩きつけられる殺意。
反射的に濤羅の身体が反応する。
だが“意”とともに現実の攻撃が来たのはその一瞬後。
下からの棍の打ちは顎へと迫る。
のけぞるようにしてかわした。
棍の先端が頬を掠め、皮膚が切り裂かれて血がしぶく。
 
濤羅は後ろに傾いた姿勢を敢えて直さず、身体を右へ捻る。
上体を振りまわすようにして回転しつつ右足を踏みこんだ。
コートの裾が翻り、ロンの視界を覆う。
その陰に隠れて濤羅の左足が跳ね上がる。
 
戴天流の蹴り技、「臥竜尾」
 
コートの陰と、ロン自身が突き出した棍。
二重の死角に隠されて濤羅の踵がロンの脇腹に向けて走った。
>126>127>159 アセルス(半妖ED後)&玖珂光太郎VSラルフ・グルトVSフォルテッシモ
 
今にも男を切り裂かんとしたとき・・・その男の蹴りが
剣を持つ腕に叩き込まれた。
危うく取り落としそうになる所をなんとか持ちこたえる。
 
だけど、そうこうしているうちに男は体勢を整えていた。
義腕から光がまるで剣のように伸びている。
 
・・・そう、私と打ち合おうっていうんだ。
あ、はは、はははははは・・・!
 
「ダンス・・・? はは、それなら―――」
 
喉元目掛けて振り下ろされる光剣。
それをわずかに身をずらし、滑らせるようにこちらの剣を当てて軌道をそらす。
 
「もっと踊って、血を流してよ。
 ・・・喉が渇いてしょうがないんだから!!」
 
 ―――そのまま、がら空きになった男の身へ剣を走らせる!
アセルス(半妖ED後)&玖珂光太郎vsラルフ・グルトvsフォルテッシモ
>165

「そう、ダンスです。主役は貴女。演出は私」

少女の剣が男の脾腹を抉り、宙に大輪の花びらを描き出す。
吹き出た血潮が、少女の腕へぴしゃりとかかった。

妖魔の血と、渇きに支配された少女の剣は、パワー、スピードとともに
はるか人外の域へと達している。
しかし、理性を失いつつあるその剣筋は、粗く単調で、逆に読みやすい。

「赤い靴を履いたまま、踊り狂いなさい。飢えも乾きも皆忘れて」

男の光剣が横一文字に閃いた。続いて旋回する男の身体。
少女の肩口めがけて、男の踵が打ち付けられる。
そして、その右手に何時の間にか握られている短機関銃。

轟!!

「――――――永遠に」
生命樹に捧げる協奏曲 〜南武公&操vs如月蘭
Nizah ―――そは祝福されし音の世界―――
31章>125
ttp://cocoa.2ch.net/test/read.cgi/charaneta/1025406070/125
 
Side:Takemasa
 宙に舞う青年は――――振夜の来訪者。
 俺の心の弱さが呼んだ、異邦のもの。
 だけど、俺はもう迷わない。
 
 俺を抱きしめてくれる、冷たいけれど暖かい操さん。
 くだらないガラクタばかり集めてくるけれど、憎めない小父さん。
 いつもいつも口うるさいけれど、いつも俺のことを気遣ってくれる真由子。
 
 なくしてしまったものよりも、今あるものを大事にしたいから。
 昨日ではなく、明日を見たいから。
 
 公園を、音の結界が包む。
 もう、出ることは出来ない。
 ――――彼を、倒さない限り。
 
「夢はもう消えた。代償は払わない。俺は、操さんと一緒にここから帰る。絶対に!」
 
 決意を込めた目で、青年を睨み付ける。
 手の中には忌まわしい魔書。でも、それが今、何よりの力となる。
生命樹に捧げる協奏曲 〜南武公&操vs如月蘭
Nizah ―――そは祝福されし音の世界―――
>167 続き
 
Side:Misao
 一瞬、音が消えた。
 そして公園の周りを覆う魔力。
 
(来訪者の『王国結界』か!)
 
 これで、退路は断たれた。
 残るすべはただ一つ、来訪者を倒すことのみ。
 そのことは、武公様も気付かれているはず。
 
 だが、それは決して簡単ではない。
 音を媒介とした『奏咒(ヴォイス)』の使い手たる来訪者は、並の術者などを遙かに凌ぐ魔術の使い手。
 しかも、公園全体を『王国結界』で覆うなど、この来訪者の力はかなりのものだ。
 如何に魔書の中の魔書『マリオノール・ゴーレム』の所有者と言えども、迷いや逡巡、恐れと言った心の揺らぎは死に繋がる。
 
 そっと、腕の中の武公様を見る。
 眼光鋭く、来訪者を睨み付けるその姿からは、心の揺らぎは感じられない。
 
(――――弱気になっていたのは、私の方ですか)
 
 主たる武公様が烈気を以て抗すならば、僕たる私はその意を示すのみ。
 
『おお太陽よ! 真美(テイフエレト)は魂を監視する心臓なり!』
 
 第五の神性呪文を詠唱。
 『マリオノールゴーレム』から、ずるりと一体の人形が現れる。
 月琴を手にした人形が、爪弾くのは妙なる調べと――――絶対の死。
 月琴から、魔力を込めた矢が三本、奔る。
 
 それと同時に、武公様を地面に降ろして、宙に舞い、呪文を詠唱。
 
『深き基層(イエソド)を母胎(ラクヘス)に聖合せしむるがゆえに!』
 
 第二の神性呪文。
 私の額に六芒星が浮かび上がり、両手が光を放つ。
 それと同時に鋼糸での攻撃。だが、先ほどとは違う。
 呪文によって強化された鋼糸が、来訪者を切り裂かんと飛ぶ。
169如月蘭(M):02/07/11 14:37
生命樹に捧げる協奏曲 〜南武公&操vs如月蘭
Tephereth ―――天国に届かぬ翼―――
>167 >168

「それが返答か、少年。剛毅だな」

結界を貫いて輝く満月を背に、青年は優雅に腕を振るう。
かき集められた空気の塊が圧縮され、地上に打ち付けられた。

巻き起こる土煙を切り裂いて、三本の音矢が飛来する。
さらに、間を縫うように迫り来る人形の鋼糸。

魔力に支えられた音矢と鋼糸が、青年を貫いた。


―――青年の、コートだけを。


『風を司りし偉大なる我が剣(ソード)よ・・・』

背後から響く詠唱。

『偏執(パラノ)を現す9(ノウェム)を紡ぎ、我が憂愁の矢を放て・・・』

『奏咒』と呼ばれるその能力の中でも、はっきりと口に出して行われるそれは
非常に威力の高いものとなる。

「躊雷轟撃(ライトニング・ロー)!!」

イオン化された大気の溝を辿って、大量の電流がレーザーの様に襲い掛かった。
170ベルガー&ヘイゼル:02/07/11 16:28
ベルガー&ヘイゼルvs馬呑吐 『吸血海殲外伝』
>92

『救世者』の仮発動によって能力の上がった『運命』で弾いた白球が
倉庫の壁を打ち抜き粉塵をあげた

「ま、何かは知らないがとりあえずな」

警戒したまま打ち抜いた壁の先を見るベルガー
すると1本の布のような物で粉塵が払われる、そして中から現れた黄色いスーツの男

「派手ですねー、ベルガーさん」

思いっきり場違いなことを言うヘイゼルの頭を抑えつつ相手の方を見続ける
サングラスの男はこちらに向かいこう言った

「どうやら君らもこの国の機関の人間ではないようだ。
何処ぞに雇われたかね、この私と同じくな」

相手の言葉を聞き、黒衣の男は自分が依頼された時の事を思い出していた
171ベルガー&ヘイゼル:02/07/11 16:30
ベルガー&ヘイゼルvs馬呑吐 『吸血海殲外伝』
>170

独逸ボルドーゾン、異族達の村
その中にある一件の小屋の中で今4人の人間
いや3人の人間と1体の自動人形がテーブルを挟んで会話していた

「と言う事でー、G機関と反独隊からの依頼。受けてくれるわよねぇ」

ヘイゼルから受け取った珈琲を飲みつつ言ったのは
そのG機関の長であるレーヴェンツァーン=ネイロルだった

「おいおい、話聞いてると今だに戦争続いてると思っている
世界で2番目の戦争狂が英国に攻めましたのでどうにかしてくださいって言うことだろ?」

ベルガーは女を見ながら言う

「ええ、かなりヤバイやつよ多分2番じゃなくて1番の戦争狂」
「それと・・・後はうちの人間に期待するのはだめよーみんな別の任務中
彼、シュバイツァー大尉がここにいないのもそのため」

お代わり頂戴とカップをヘイゼルに渡しながら答えるレーヴェンツァーン

「無茶を言ってくれるなぁ何人いるかもわからん相手に俺ら2人で相手しろと」

ベルガーは睨みつつお代わりを受け取る女に聞く

「その点は大丈夫だと思う。どうやら英国のウチ見たいな所が動いてるみたい
2人きりって事はないわよ・・・で受けてくれるでしょ?」

「俺が世界で2番目に厄介事が嫌いな俺にそんな事聞くな。パスだ、パス」

「あら・・・いいの?あなた達の借金こっちで受け持ってあげるのが報酬なんだけど」

それを聞いて動きを止めるベルガー

「大型重騎『黒獅子・改』これの製作料、たしか800回ローンだったはずですな
報酬はこれの肩代わりで如何でしょうか?」

レーヴェンツァーンの横に立つ初老の男、ベルマルク=フィーアは言う

「拒否できないわよねー、一生掛けても返せない借金返せるチャンスですもの」

にっこり笑いながらG機関の長はこっちを見て言った

「・・・まいった、受けりゃいいんだろ、受けりゃ。で、どこに言ったらいいんだ?」

テーブルにつっぷしながらベルガーは聞いた

「英国、ダベンポート海軍基地。向かっている間に英国には話通しておくからよろしくね」


「雇われたんじゃないな・・・ある意味脅されたんだ」
苦笑しつつベルガーはスーツの男に答えた
172馬呑吐 ◆TUNtujd6 :02/07/11 16:45
ベルガー&ヘイゼルvs馬呑吐 『吸血海殲外伝』
>171
 
 躯の周囲をマフラーが一巡する。馬は云い捨てた。
 
「余計下らんな。愚物にかかずらっている暇は無い」 
 
 間髪入れずに大地を蹴り、風を呼んで疾走。一息に距離を詰める。
 妖布がはためく。
 変幻自在の刃と化すマフラーはまた、相手の撃ち込みを金剛不壊の盾と為って防ぐのである。
 正しく攻防一体の旋風が、対する二人に吹き付けた。
>127
 そいつは、不自然な攻撃だった。雰囲気に反して、そこら辺のチンピラ
でももうちょっとましだろうと思えるようなパンチを、無造作に放っただけだ。

 いつもなら、こんなパンチは避けもしないで、そのまま殴りかかる所なん
だが、どんな攻撃でも今の状態で食らえば厳しいだろうし、何より、こいつ
の雰囲気に何処か不気味な物を感じていた事もあって、俺はそのパンチ
を身を捻ってかわした。

 次の瞬間、俺は自分の目を疑った。
 その空間に漂っていた濃厚な煙が、ぼこっ、と言う音でも聞こえてきそう
な勢いで、一瞬のうちに霧散したからだ。それはまるで、そこだけ空間を抉
り取られたみたいな………
 
(そうか………そういうことかよ)

 それなら、いきなり壁が吹っ飛んだのも、床が抜けたのも、今の爆風の
中にいたにも関わらず傷一つ無いのにも、全部納得がいく。
 こいつは、ちょっと信じられねえんし、どうやってるのかもわからねえが、
空間を抉り取るとか、それに似たような事が出来るてワケだ。

(こいつはちょっと不味いかも知れねえな……)
 
 ちょっとばっかり不安が胸を掠めるが、だからって怯えててもしょうが
ねえ。

 俺は机を蹴り上げて、そいつに向かって吹っ飛ばすと、立て付けの悪く
なった扉を蹴り開けて、二階へと繋がる階段がある狭い廊下へ飛び出した。

 別に机に何か期待したワケじゃねえけど……注意を逸らすくらいは出来
るだろ。
戦士たちの決勝前夜 〜ミア・フォーテー&星川翼vsヌアラ王
>133
 
(ボケてる場合かっ!!)

『相棒』の頭の中で、私はそうわめいた。
と言うか、勝手に殺すな!

(初代アス・ラン王ヌアラは女神ダーナの祝福を受けたヴォルグに
十字架にかけられて王殺しの槍で殺されたって言ったでしょ!)

ここに来る前にちゃんと打ち合わせしておいたのに・・・。
いや、私もさっきまですっかり忘れてたけど。

(とにかく槍を奪うから、協力しなさい!)

叱り付けておいて、『相棒』とともにヌアラ王の直前まで近付き、
眼前で『相棒』から分離して、王の腕を切りつける!

「もらった!」
175鈴鹿御前 ◆Y4SUZUKA :02/07/11 19:31
鈴鹿御前 vs チェカラク エピローグ

>161

 夢を見た。
 昔々、とある山村で起こった、悲しい出来事の夢を。


  疫病に襲われた村。村人達は、次々と病に倒れて、死んでゆく。
  最後の頼みだった。文字通りの、神頼み。
  召喚され、疫病を祓った神は、代償としての供物を要求した。
  彼自身にとっては当然のそれは、しかし村人にはあまりに意外で、残酷だった。

  村を焼き尽くし、そして村人達の命をも焼き尽くそうとする、荒ぶる神。
  その神に対し、村人達はあまりにも無力だった。疫病に対し、何の手立てを講ずる事もできな
 かったのと、全く同様に。
  だから、旅の僧侶によって神が封じられた際も、彼らは罪悪感を抱くことはなかった。
  ただ憎み、恐れ、封印の地を忌まわしき場所だといって禁域とした。
  一方的に呼び出され、封じられた神の心中がいかばかりか、顧みる者はいなかった。
  その話も、やがておとぎ話として忘れられ、神のことを知る者は、誰もいなくなった。


 目が覚めた。
 頬に当たる床の感触が、酷く冷たい。
 床だけではない。辺りの空気は、既にすっかり冷え切っていた。

 一体どれくらいの間、気を失っていたのだろう?
 全身に走る激痛に耐えながら身を起こし、辺りを見渡す。
 迷宮の出口を塞いでいたあの虹色の壁が、消失していた。

──そうか、あの神は、消えたのか。

 <燃える神>は、救われたのだろうか。
 気を失う直前、チェカラクの声がしたのを、覚えている。
 それまで纏っていたあらゆる負の感情の抜けきった、ひたすらに穏やかな声だった。
 あの声が、彼の本性だったのだろうか。
 だとしたら、罪深いのは<燃える神>ではなく──

 頭を振って、その考えを追い払う。
 自分の中で、遠い昔に封じたどす黒いモノが、出口を求めて蠢いたような気がして、酷く怖かっ
た。
 哀れな神に最後の祈りを捧げると、私は足早に、その場を後にした。


 私が振り払い、その場に落としていった声。
 それは─────


                     ─────本当に罪深いのは、人間ではないのか?
176鈴鹿御前 ◆Y4SUZUKA :02/07/11 19:33
鈴鹿御前 vs チェカラク レス番纏めよ。

31章 >372 >374 >375 >376 >406 >409
32章 >39 >45 >47 >60 >66 >70 >75 >112 >114 >117
   >123 >131 >137 >158 >160 >161 >175

感想等、こちらにいただければありがたいわ。
http://fargaia.hokuto.ac/html/test/read.cgi?bbs=vampbattle&key=1019409630

私は、人間を正しいと思ってきた。でも、もしかしたらそれは……
177星川翼 ◆KaSYAyFU :02/07/11 19:44
戦士たちの決勝前夜
>174
 
「のわたぁっ!?」
 
 今までの緊迫した表情があっさり崩壊。
 翼は突然素っ頓狂な声を上げて、仰け反った。
 頭の中での鋭いツッコミは耳元で叫ばれるよりよっぽど響く。
 
(あー、そういえばそんな事を聞いたような聞かなかったような……)
 
 おぼろげな記憶を引っ張り出す。
 元はと言えば口説くのに夢中で話を全く聞いていなかった彼が悪いのだが。
 
(お任せあれっ!)
 
 やるべき事は一つ。
 ヌアラを倒して生きて返る。
 無論、二人で。
 
 と、勝手に彼女を恋人に仕立て上げ、地を蹴って接近。
 分離のタイミングに合わせて剣は縦横無尽に踊り、刃の幕を作り上げる。
 合体が解けた今では、霊力の刃を維持するのも辛い。
 
 だが今はヌアラを倒すチャンス。
 苦しむ顔は微笑で隠し、翼はヌアラを牽制する事に努めた。
横島忠夫 vs ジュヌヴィエーヴ=コトフォード 
>128>129

ジュネが殴ったのは横島では無く、地面に広がる石の道路だった。
振り落とした拳の先には硬い石の感触だけが伝わり、横島の姿は愚か気配さえも
その場から消えていた。

瞬間移動?
冗談などではなく、ジュネは本気でその可能性を考えていた。
これまで様々なことをやってのけた横島なのだ。瞬間移動など造作も無い事・・・そんな風に考えていた。

悪魔の拳で殴った石の道路はその凶悪な力で、硬い石がまるで
ゼリーを叩き潰した様に周りに小さな破片を飛び散らせる。
ジュネは辺りを見まわす。
しかし、横島の姿は相変わらず見えず、何時攻撃されるか分からない恐怖がジュネを襲う。
右の壁にも、自分の背後にも居ない。
ふと屋根の上に目をやるがそこにも横島の姿は見えなかった。

一体何処に居る?


その答えは、空の上だったことに気が付いたのは約3、4秒後のことだった。

横島が空の上に浮かんでいる。

あまりの出来事に横島を追撃する事さえ忘れ、ただぼぉっとその姿に魅入ってしまった。
空に浮かぶ横島を映し出すジュネの瞳の中は横島が魔法使いのような姿で映し出されている。
元来、魔法と言うものは不可能な事を可能にする手段の事だ。
その意味では自分が知らない未知の能力も魔法と同じなのではないだろうか。


ジュネには横島がその様に見えたのだ。

横島が落下して来る事で、自分が戦闘中だと言う事に気が付かされる。
くどいようだが、相手が何んだろうがジュネには関係無い。
ただ、自身の目的を達成するのみ。
それが霊能者だろうが魔法使いだろうと。


拳を思いきり振り、先ほど地面をこなごなに打ち砕いた悪魔の手が空中の横島を打ち砕かんと襲い掛かる。


――――――!!


それから先はあまり早くて何が起こったかはジュネの記憶は曖昧にしかわからない。


179東出立(M):02/07/11 22:02
東出立vsクリストファー・ニューバート

「・・・終了。お宅、弱いな」

足元に某企業のエージェントを踏みつけておいて、青年は裾の埃を軽く打ち払った。
この街では、各企業間での競争が激しい。後ろ暗い事を専門に行う社員がいるのが、むしろ当たり前であった。

青年の名は東出立。日系企業ジャス・バドスのエージェントである。
コードネームは「Wooden-face(マヌケヅラ)」。その由来は―――

「っと、お客さんか」

背後からぶつけられた殺気に後ろを振り返る。
そこには、企業ビルが立ち並ぶこのストリートには場違いな格好をした、一人の男がたっていた。



・・・ちなみに・・・「ぐえ」、と言う音が聞こえた気がしたが―――まあ、気にはするまい。
横島忠夫 vs ジュヌヴィエーヴ=コトフォード 
178の続き

ジュネが覚えているのは
まず、自分が放った拳を強力な霊気を纏った札で跳ね返された。
その際に、自分の体が無防備になり、咄嗟に左手で相手の攻撃を未然に防ごうとする。
が、それもまた横島の何かの力によって左腕は掴まれ、身動きが取れなくなった。

それから先はジュネは何も覚えてはいなかった。


ここからは、近くの民家の屋根で自らの助手の安否を心配しながら
戦いを覗き見る第三者の視点である。

横島忠夫 vs ジュヌヴィエーヴ=コトフォード 
180の続き

2人は一瞬だったが、誰もが見たら息を飲まずには居られないような
凄まじい空中での攻防戦を繰り広げた。
そして、一時の決着がつき、二人とも勢い良く地面に叩き付けられた。
とは言っても、空中から落ちてきた少年の巻き添えを食ってジュネは倒されてしまった訳だけれど。

見ればなんだか、世間一般で言う『良い雰囲気』と言う物がそこら中に漂っている。
何せ、屋根の上に居る僕にだって分かるくらいなんだから。

要するに、少年がジュネに覆い被さる様にして起きあがった訳だ。
良く見ればどうやらジュネの様子がおかしい。
顔を赤らめ、少年のから目を逸らし、もじもじしている。
こんな事は有るはずがない。

覆いかぶさる様になった状態で動揺するような子じゃないし、
今まで死力を尽くし戦っていた相手をほんの数秒で相手のことを意識するような子でもない。
そこで直感した。

(『魅了』使ったな、コイツ)

少年の表情はしてやったりの顔をしていた。
それよりも、下心見え見えの顔の方が目立ったりする。
誤解されない内に言うが別に嫉妬しているわけではない。
これはこれで面白そうだと思っただけの話。
そうこうしている内にジュネの方から横島に抱きつく。

ほら、こんな積極的な彼女なんて今くらいしか見れないからね。

抱き付かれた少年はふくよかな彼女の胸に顔を埋め、至福の表情を浮かべていた。
だが、その表情も数秒後にすぐさま苦悶の表情に変わる。
幸せそうな顔も、どんどん赤くなって行き、終いには青くなってしまっている。

耳を済ませば―――ベキベキと言う何かが折れるような音。

一瞬、このまま幸せを感じたまま見殺しにしてしまおうかなんて残酷な考えが浮かんだのだが
死なれる前にやっておかねばならないことがあるので、その考えは自らの心の闇に封印しておいた。

僕はパチンと自分の指をならし、ジュネに掛かっている『魅了』らしき術を解いてやる。
そして、苦しみから開放された少年は指を鳴らした僕の姿に気が付き、屋根の方を見上げた。
そして、自分もとりあえずは挨拶。


「初めまして、僕はジャック・セトフォード・ラーカイルと言う者です」

『以後御見知りおきを』と言うようなセリフを言わなかったのは
これからもう会うこともないだろうと感じたからだった。
東出立VSクリストファー・ニューバート
 
>179 
   
 一人の男が路地裏に現れた。金髪碧眼。欧米人である。
オフィス街ではジーンズにジャケットという姿は多少浮いている。
 
 彼の名はクリストファー・ニューバート。傭兵だ。
某企業の依頼を受けあるエージェントが持つ機密の奪取を請け負ったのだが…
 
 「…先客があったようだな」
 
 この街は特に企業間の戦いが激しい場所である。
諜報、工作、陰謀、どれもありふれた物だ。
 
 そう、これから始まる戦いも……
 
 「なら話は早い……行くぞ」
 
 クリストファーは東出立の方に無造作に歩き出す。
183東出立(M):02/07/11 22:26
東出立VSクリストファー・ニューバート
>182

「こっちは遠慮したいんだが・・・」

迫ってくる男に対し、こちらも構えながら
静かに相手に歩み寄る。
できれば無視していきたい所だが―――流石に、アタッシェケースを持ったまま
相手から逃げ切るのは不可能だろう。

「・・・・・・となると」

先手必勝だ。

相手の眼前でいきなり横の壁に向かって跳び、三角跳びの要領で相手の背後へ回りこむ。
種痘が、首筋めがけて閃いた。
184ロン(M):02/07/11 22:35
「偶(タマタマ)狂疾ニ因ッテ殊類ト成ル」〜 ロン VS 孔濤羅
>164

 捻られた上体、翻る外套の裾。
 視界を奪われる寸前に見えたあの体勢。十中八九、蹴りだ。斬撃や刺突は無い。
 否、あの体勢からの斬撃や刺突ならば、一瞬先じる自信があった。

 順序だてて判断したわけではない。
 勘と経験が、考えるより早くロンを踏み込ませていた。
 コートの暗幕は裏表、濤羅自身にとっても死角。
 そこに、勝機がある。

 棍の手元の端でコートを絡め、引く。
 わずか浮き出た濤羅の体。迷わず、最後の一歩を踏み込む。
 同時に脇腹に食い込む、おそらくは蹴り。
 その衝撃に耐えながら、ロンは左掌を、濤羅めがけ突きこんだ。
東出立VSクリストファー・ニューバート
>183
 
 壁を蹴って背後に回り込む東出立。
クリストファーはそのままの勢いで前方にダッシュ。手刀は空を切る。
 
 ――――早いな。企業のエージェントも馬鹿には出来ないか。
 
 素早く反転し懐から短針銃を抜く。
通常の銃では音が響くし、跳弾もある。
だが高圧の炭酸ガスで数十本の針を発するこれにはそれがない。
このような場所で用いるには最適の銃器である。
 
 抜き撃ち同然でクリストファーは引き金を引く。
猛毒を塗られた針が東出立に速やかな死を与えるべく殺到した。
 
 
 足下でカエルが鳴くような声がしたが………気にするほどの物ではないだろう。
186東出立(M):02/07/11 22:49
東出立VSクリストファー・ニューバート
>185
 
放たれた無数の針が、思い切り顔面に命中した。
体が後方に泳ぎ―――
針が突き立ったままの『顔』がぽろりと落ちる。
これが、彼のコードネームの由来。
彼の顔を覆う特殊なマスクは、銃弾を弾くだけの強度がある。
新たに現れた顔に、予備のメガネを掛けながら、相手に向かって走りよる。

腰から抜かれた鉄扇が開き、銃を握っている手へと振り下ろされた。
187クロウ ◆DsxKUROU :02/07/11 22:52
姫園れい子vsクロウ

導入1

150年ほど前、記憶を失ったまま目覚めた時から独りきりだった。
枕元にあったのは朱塗りの鞘に収められた一振りの太刀と、何かの入ったコップ。
何が入っているかは、辺りに満ちた匂いで直ぐに判った。

 ・・・人の、血。

判っていて、貪る様に飲み干した。
粘る液体が食道を滑る。胃の底から熱が広がっていく。

そう、目覚めて最初にした事は人間の血液を飲む事で、
目覚めて最初に知ったのは自身がそれを美味いと感じる事だった。

なぜ、人の血を好むのか。傷が、瞬く間に癒えるのか。
何度も考えた。が、自分の名前さえ判らないのに、そんな事は判らない。
漠然とした不安と拭い去れない孤独感は大きくなるばかりで、
心が押しつぶされそうだった。


――何時からだろう?
最初の百年の内は数年に一度で良かった。
それが年に一度になって、半年に一度になって。
回数は加速度的に増え、今では二日に一度だった。
理由?どうでもいい。何だって構わない。
なぜなら『食事』はとても楽しくて、心踊るものだから。
衝動を押さえていた頃が馬鹿らしく思えるほどに。

さあ、今夜も食事に行こう。
188クロウ ◆DsxKUROU :02/07/11 22:54
姫園れい子vsクロウ

導入2

「は、あ、はっ、ははっ・・・」

目の前には気を失って倒れている妙齢の女性。
美しい黒髪が気に入ったから今日の食事にすることにした。
太刀で胸元から臍まで軽くなぞり、服と、その下の皮膚を浅く切る。
目を覚まし、叫び声を上げようとする女の掌を刺した。
表情が苦痛に歪み、叫び声が悲鳴に変わる。

 思った通り、良い顔をするな。

はは、と小さく笑いが漏れた。
掌の傷から零れる血を舐め取りながら、肉切り包丁を出す。

脇腹を切った。苦痛に身を捩る様は、なかなか美しかった。
太腿を刺した。白い肌に這う紅い色彩は酷く刺激的だった。
右眼を抉った。丸い眼球は、噛むといくらの様に弾けた。

 ちゃんと鳴いてくれよ。

気を失う度に一枚づつ爪を剥いでやる。
手足の爪だけでは足りなくなって右手の人差し指と中指を折った時に、
そろそろ限界が来ているらしい事に気付いた。

内臓を傷付けない様に腹部を縦に開いた。
疵口に口を当てて溢れだす紅い液体を飲み、中身を引きずり出して、食う。
肝臓は中々の珍味だ。心臓はこりこりして噛み応えがある。
腸は流石に中身が入ったまま食う気にはなれない。乳房は割といける。

「ふうっ・・・」

愉しい。美味かった。久々の良い食事だった。
路地裏に入ってくる足音を聞き逃すほどに。
189姫園れい子 ◆/1ZombIE :02/07/11 22:58
姫園れい子vsクロウ

>187-188

【これより遡ること一日ほど】

「君に来てもらったのはほかでもない、『仕事』だ」

あたしをわざわざ呼びつけたのは警視庁捜査一課の刑事・福部だ。彼はあたしが何者か知っている。

―――”ゾンビ屋”だと。

そう、あたしの生業は『ゾンビ屋』。死者に一時の生を与え、死によって閉ざされた真実の扉をこじ
開ける。警察があたしを呼ぶのは、犯人の手がかりを犠牲者本人から聞きたい時。

そんな非科学的な、と人は言う。でも、あたしはそれでいくつもの事件を解決してきた。
しかし、今度の事件はそんな中でも、とびきり最悪に近い代物だった。

「うえっ……何よこれ」

あたしの眼前にあるのは女性の死体。死体ならあたしは見慣れてる。親しい友達が、仲間が目の前で
無残な肉片に変わるのだって何度も見てきた。
でも、この死体を作った奴はとびきりのクレイジーだ。
生きたまま全身を切り刻み、まだ生きている犠牲者の眼球を、内臓を、肉を食らい――

「暴れるかもしれないから鎖で縛っといて」

あたしは検死官に指示を出すと、左手をかざす。掌の魔法陣の形のあざは「ゾンビ使い」の証。

「魔王サタンよ余の願い聞き入れ給え、この死せる者が飲み込みし真実を聞き遂げるため――
     そなたの偉大なる力もて、一時の息吹を与えられんことを……!!」

次の瞬間、死者がただの穴と化した目をかっと見開き、歯をがちがちと噛み鳴らす。
普通、殺された死者は殺した者への激しい憎悪を剥き出しにする。それがゾンビの性質。
しかし、この死者は違っていた。

「ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ、殺さないで食べないでいやいやいやいやいやいやいやいやいやいや」

死してなお、恐怖に怯える。あたしはこの手の犠牲者の場合の犯人に心当たりがあった。
―――そう、人ではない者。

「これは警察の手におえる相手じゃないわね……アフターケアまで依頼に含めるならあと200万」

「無茶を言うな姫園れい子、だいたいその手におえない相手って何なんだ」

「怪物、よ。人狼か吸血鬼だか知らないけど、その類」

**********************************

こうして、あたしは命がけの仕事とひきかえに200万円をせしめたわけで。

そして―――見つけた。
190クロウ ◆DsxKUROU :02/07/11 23:00
姫園れい子vsクロウ

>189

硬い靴底がアスファルトを叩く音。
リズムを刻みながら、近づいてくる。
食後の至福の時間は、その音で終わりを告げた。

 せっかく人が――面倒な。

見られたのなら、殺しておかないと。
路地裏の通りに面した方を振り向きながら立ち上がる。

真紅の髪の毛と、同じ色のセーラー服とロングブーツ。手には細身の直刀。
中々奇抜な格好をした少女が、こちらに冷たい視線を送っていた。
酷く場違いだ。そう、思った。
ここにこそ相応しい。そうも、思った。

「何でここに?・・・いや、何ででも良いか。
 それにしても変わってるな、あんた。これを見た奴は大抵悲鳴を上げたりするんだが。
 ――気に入ったよ。美味そうだしな」

肉切り包丁を仕舞って、改めて太刀を握る。

「決めた。次は、あんたにしよう」

世間話をするような軽い口調で、言った。
191姫園れい子 ◆/1ZombIE :02/07/11 23:03
姫園れい子vsクロウ

>190

あたしは仕事柄、化け物と対面するのは日常茶飯事だ。
しかし、こいつはヤバい。とびきりに。あたしの勘がそう告げていた。

でも、ここであたしは退くわけにはいかない。金のため?それもある。
……しかし、代々『ゾンビ屋』をやってきた姫園家の家訓。

『ゾンビ屋にはある程度の良心が必要である』

だから、あたしは無差別に人間を食うこの化け物を許すわけにはいかないんだ。
手にした剣を構え臨戦態勢を取りつつ、左手をかざす。

「来い…!百合川っ!!」

地面が突然沸き立つと、両腕に革製のナックルガードを着けた少女が飛び出す。
その肌の色は青白く、眼は虚ろな光をたたえている。しかしその動きは俊敏で、眼前の男への
敵意に満ちたファイティングポーズを取る。

そう、これがあたしの召喚するゾンビ、百合川みどりだ。

 +百合川みどり+
 殺人鬼百合川サキの妹。脳に受けた障害が元で異常発達した運動神経と怪力を持つ。
 姫園れい子とはある事件で関わるが、れい子の目の前で非業の死を遂げた。
 今はれい子を守る忠実なゾンビである。

「さあ、観念しなさい!!」
>173 vs光太郎
>159>165>166 ラルフvsアセルス

 眼前に敵が迫っているにも関わらず、繰り出した拳の行方を凝視している少年。
 少年は気付いたのだ、フォルテッシモの“能力”を。
 生きてる間に、彼の能力を知ることができる者は滅多にいない。
 そういう意味では、少年は間違いなく強かった。少なくとも、この闘争狂を愉しませる程度には。

(今日の俺はなんて運が良いんだ。ここまで俺を愉しませてくれる奴を二人も相手に出来るなんて―――)

 少年の蹴り上げた机がフォルテッシモに襲いかかる。
 それを空間ごと真っ二つに切り分けると、フォルテッシモは少年がいるはずの位置に目を向けた。
 が、そこには誰もいない。瞳に写るのは開け放たれた木製の扉のみ。
 
「貴様ァ!」

 フォルテッシモは一足飛びで扉を潜り抜けると、薄暗い廊下に躍り出た。
 耳に届く足音はかなり遠い。もはや、彼の間合いから完全に抜け出している。
 
「そこまであの女が気になるというのか。……この俺との勝負より、あの女がッ!」

 彼は叫びながらも駆けている。だが、目指すところは少年の背中では無い。
 さきほどまで少年と相対していたロビー、牧師と少女が踏み締めている床の真下。
 
「ならば、あの女を殺して俺との戦いに集中させてやる!」

 ロビーの適当な位置で立ち止まると、フォルテッシモは天井を睨み据えた。
 次瞬、天へと突き出される白い腕。その動きに続くかのように天井に無数の亀裂が走る。
 
 しかし、それだけでは終わらない。今度は無言で突き上げた右腕を、そのまま床へと薙ぎ降ろしたのだ。
 天井の亀裂が波のように一方向に広がっていく。引き裂かれた空間の悲鳴が、刃となって天井を貫いたのだ。            
東出立VSクリストファー・ニューバート
>186 
 
 「――――――――!?」
 
 短針を受けた東出立の顔が文字どうりの意味で外れる。
流石のクリストファーもこれには驚きを隠せなかった。
 
 そして、即座に間を詰める東出立。その手には扇が握られている。
およそ武器と呼べるような代物ではないが……
 
 クリストファーは短針銃から手を離し引っ込める。
理由はない。単なるカンである。
これだけの腕前の持ち主がただの扇を使うとは思えないというのもあるが。
 
 銃と扇がぶつかり、鈍い金属音が響く。あの扇は金属製だったらしい。
地に落ちた短針銃はひしゃげている。使い物にはならないだろう。
 
 「――――なかなか面の皮が厚いようだな」
 
 クリストファーは真顔で冗談を言いながら間合いを詰める。
ほぼ零距離…武器が使える距離ではない。
 
 そのまま腕で首を捕らえようとする。
挟み込んで捻ればそれだけで首の骨は折れる――――幾ら面の皮が厚かろうが関係ない。
194クロウ ◆DsxKUROU :02/07/11 23:06
姫園れい子vsクロウ

>191

間合いを詰めようとした瞬間、少女の一声と共に地面から人間が生まれた。

 いや、あれは――

違う。何処かは判らないが、恐らく。
何か人間以外の物だと感覚が告げていた。

「・・・あんたも普通の人間じゃないのか?」

声を掛けた紅い少女は嫌悪感も露に手にした剣を構え、
地面から生まれた少女は更に判りやすい敵意を叩き付けてくる。
面白いな、ますます気に入った。
なら、少し遊ぼうか。だったら――

 取り敢えず、不味そうな方は殺すか。

剥ぎ取った女性の服を足を掛け、百合川と呼ばれた少女に向けて蹴り飛ばす。
更に、宙を舞う服を巻き込む様に太刀の鞘を顔面に向けて飛ばす。

ここまではフェイク。
蹴り飛ばしたそれらに勝るとも劣らないスピードで間合いを詰めて放つ本命は、
深く腰を落とした下段の構えからの両膝を狙った右薙ぎの一閃。

「あんたはお呼びじゃないんだ。興味も湧かないしな。死んでくれよ」
195姫園れい子 ◆/1ZombIE :02/07/11 23:11
姫園れい子vsクロウ

>194

男の膝狙いの一撃。しかしそれは空を切っていた。
百合川は、飛び道具を「宙に飛ぶ」ことで回避していたのだ。

あっ、と見上げた男の顔面に、ショートブーツの飛び蹴りが叩き込まれる。
並みの人間なら一撃で首が180度回転するような代物だったが、男は大きく吹っ飛びながらも
態勢を立て直して着地する。

なおも油断なく拳を構える百合川の背後で、あたしは剣を突きつけて叫ぶ。

「勝負に及んで鞘を捨てるとは……小次郎敗れたり!!」

くう〜っ、一度これ言ってみたかったのよね。

しかし、あたしの決め台詞を待たずに百合川は脇を締めたボクシングの構えでダッシュする。
左のジャブで牽制して右のストレート、目にも止まらぬコンビネーションが男を襲う。
196東出立(M):02/07/11 23:16
東出立VSクリストファー・ニューバート
>193

「お陰様で、ね」

相手の武器を叩き落して懐へ、パターンとしては悪くない。
もっとも、相手に接近戦での心得がないことが条件だが。

残念ながら、向こうにはその心得と言うものがあったようだ。
腕が、首に絡みつく。

「マズ・・・・・・!!」

不利を悟り、すばやく鉄扇を手放して自分のネクタイを引き抜く。
そのまま相手の首に巻きつけて―――

金具に繋いだバッテリから電流を流せばジ・エンドだ。
197クロウ ◆DsxKUROU :02/07/11 23:18
姫園れい子vsクロウ

>195

軽く、そう見えた跳躍で少女は自分の身長ほども垂直に飛び、攻撃は全て外れた。
間髪入れずにブーツの底が顔面にめり込む。

「がっ・・・」

三メートルほど宙を舞い、一メートルほど地面を転がる。
予期せぬ反撃に、入りかけだったスイッチが入った。

 この・・・!!

不愉快な。
大人しく食らえよ。
オーソドックスなボクシングスタイルで突っ込んでくる少女に叩きつけるのは、
視線に乗せた純粋な殺意。

 速いな。

目にも止まらないくらいだろう――只の人間には。
半歩分下がった顔の前を、届かなかった左拳が戻っていく。
そこから更に一歩分後退。
顔面を狙っている右拳に真っ向から剣を叩きつける。
198姫園れい子 ◆/1ZombIE :02/07/11 23:20
姫園れい子vsクロウ

>197

さすがに化け物だ。
普通なら反応する間もなく顔面を柘榴にされている百合川のコンビネーションをスウェーで
かわして剣を合わせてくるとは。
でも、百合川はひるまない。ゾンビは痛みを感じない、傷つくことを恐れない。
右拳に剣が食い込み、断ち割る。しかしそのまま右腕を捻り、男の剣を止めて―――

百合川の左の鉄拳が、男の側頭部に炸裂した。

しかしまだ終わらないだろう。あたしは剣を構えながら、男の殺した犠牲者の元へ歩み寄る。
さぞ無念だったろう、悔しかったろう。その恨みと憎しみを、あたしなら解放できる。
199クロウ ◆DsxKUROU :02/07/11 23:22
姫園れい子vsクロウ

>198

カウンターで合わせた刀が拳を割り、肘まで二つにした所で止まった。

 ち。

動きが止まり、右の側頭部に衝撃。
フルスイングのハンマーが直撃したかのような威力に意識が弾き出されかかる。
到底、細腕から生み出されたとは思えない。

「痛てえな」

唇を噛み締めて堪え、左腕を動かす。
抜いた肉切り包丁を右腕に突き刺し、絡め取られている刃を解放する為に抉る。

視野が狭窄して、思考が収束した。
目の前の物を破壊する。
その一点に。

・・・その刹那、紅い髪の少女の事は意識の外にあった。
200姫園れい子 ◆/1ZombIE :02/07/11 23:26
姫園れい子vsクロウ

>199

百合川の右腕はナックルガードごと縦に断ち割られ、さらに包丁まで突き刺されている。
ごりっ、と肉と骨をえぐる音。しかし痛みを感じないゾンビは、何の感慨も見せずにボディへ左アッパーを
ぶち込み、さらに前蹴りで男を突き放す。
べろんと半身が垂れ下がった右腕を振ると、肉切り包丁が音を立てアスファルトの路面に落ちる。

―そして、あたしは左手の魔法陣をかざし高らかに叫ぶ。

「魔王サタンよ余の願い聞き届け給え!!そなたの偉大なる力もて、この死せる者に一時の息吹を!!」

さらにあたしは呪文を続ける。

「死者よ、復讐するは余にあらず!己の命を理不尽に奪われしその恨み晴らしたくば………
  ………………その者の血肉を浴びて笑むがいい!!そして命無き者に許しを乞うことならず!!」

次の瞬間、男に食い散らかされた哀れな女性の屍がむくりと起き上がった。
虚ろな眼窩から血涙を流し、開かれた腹から腸を振り乱して、そして砕かれた右手で落ちた包丁を掴み。

「おおおおおぉぉぉぉぉぉぉぅまえををををををころしてやるぅぅぅぅぅぅぅぅ」

百合川と睨み合っていた男の背後から、絶叫と共に彼女は包丁を握り締め突進した。
肉に何かが突き刺さる鈍い音がする。

あたしがやったのは死者の蘇生、そしてその恨みの感情を増幅させること。
化け物に殺された恐怖すら凌駕する怨念と憎悪の爆発――普段のゾンビ製造では禁じ手だ。
さあ、己の殺した犠牲者に噛み裂かれて死ね………!!
201クロウ ◆DsxKUROU :02/07/11 23:27
姫園れい子vsクロウ

>200

おかしい。ここまでやっても怯む気配すらない。
思考の間隙を縫った拳が右の脇腹を叩き、肋骨が何本か圧し折れる。
続けて迫るのは右の前蹴り。

 ・・・!!

まともに食らったら拙い。
刀の柄尻を全力で足の甲に叩きこむ。
それでも衝撃は筋肉を抜け、内臓を揺らした。
間合いが開いて多少余裕が出来た時聞こえたのは、朗々と響く紅い髪の少女の声。

 何を――?

澄んだ音を立てて自分の脇を抜けた包丁を目で追って気付いた。
虚ろな眼窩から赤い涙を流す、新しい人影に。

「っっ!!」

腹部に食い込む冷たい鋼の感触。
痛い。熱い。痛い。――だがその程度では死なない。死ねない。
腸が零れ出している腹の裂け目に左手を突っ込み、探る。
あった。背骨を掴んで、捻り折る。
支えを失って大きく揺らめいた頭を血に塗れた左手で掴み、右手の刃を首に当てる。
鍔元から切っ先まで使って、引き切った。
手に残った頭部を紅い髪の少女に放り投げる。

「大人しくしてろよ。すぐ終わる」

『食事』の犠牲者の女性の身体を蹴り剥がし、腹に埋まった包丁を抜く。
改めて百合川と呼ばれた少女に向き直った。
202姫園れい子 ◆/1ZombIE :02/07/11 23:30
姫園れい子vsクロウ

>201

「ぶっ殺死ろすぅぅぅぅぅぅぅぅ」

がちがちと歯を噛み鳴らし、あたしが蘇らせた死者の首があたしに飛んで来た。
とりあえずは一矢報いたんだ、あたしはそう思い首を地面に置いてやった。

で、勿体ぶって百合川に向き直った男だけど、視界にはもういなかった。当たり前だ。
あの百合川みどりが、あれだけの隙をもらってそのまま待ってるものか。
虚空に飛び、電柱を蹴り折って反動をつけての三角蹴りが男の背後から襲いかかる。
着地した瞬間に追い討ちの左裏拳、そして半分に裂けた右腕で構わずに正拳突きを顔面に。
威力に耐えかねた百合川の腕がぐしゃりと潰れて肉片を撒き散らすが、痛みを感じない百合川に
とってはどうだっていいことだ。ただ、目前の相手を肉片に変えるまで――

「よし!そのまま引き裂け!叩き潰せ!!」

あたしは百合川に命令する。確かに右腕の肘から先は挽き肉になり、右足の甲もブーツがひしゃ
げているが、ゾンビはそれしきで音を上げたりしないのだから。
東出立VSクリストファー・ニューバート
>196
 
 東出立が自らのネクタイを解きクリストファーの首筋に巻き付ける。
確かにネクタイは首を絞める武器になりうるが……絶対にクリストファーの方が早い。
 
 ――――おかしい……判断ミスか?
 
 内心でいぶかしむクリストファー。それでも腕の力は緩めない。
だが、その疑問に対する答えはすぐに明らかになった。
 
 東出立の手の内にある仕掛け。そして小型のバッテリー。
ネクタイは絞めるための道具ではない。相手をスタンさせるための道具だったのだ。
 
 ――――拙い!
 
 だが、腕を放すことは出来ない。
こっちの体制が崩れ、相手から痛打を食らうことにもなりかねない。
ならば――――どうする。
 
 クリストファーは首をホールドしたまま体を反転。
体を落とし、肩に東出立の体を乗せて――――一気に投げる。
流れるような一連の技、いわゆる首投げである。
 
 タイミングは微妙――――どちらが早いか。
204クロウ ◆DsxKUROU :02/07/11 23:32
姫園れい子vsクロウ

>202

足の甲への打撃が効いたのか、僅かに精彩を欠く動き。
お陰で何とか左腕で受ける事が出来たものの、腕全体が軋むほどの衝撃。
続けざまの裏拳に首が悲鳴を上げ、がら空きの左頬を自らの剣で裂いた骨が抉る。
左膝に正面から蹴りを入れて、その隙に距離を取った。
赤に塗れた顔面を左手の甲で拭い、付いた血を舐める。
自分の血に混じった異質な味は――

「・・・不味いな。まるで死人の――
 そうか、理屈は判らないがあんた死人を使うんだな?」

首を飛ばした女性は勿論、恐らくはあの少女も既に死んでいる。
そう考えれば怯まない理由が判る。
死人は二度は死なない。痛がりもしない。

 肉体を徹底的に破壊するしかないか。

しかし、少々厄介な相手なのも確か。ここは一つ絡め手で行こうか。
正面を向いたまま、ノーモーションで紅い髪の少女に包丁を投擲。
白銀の光と化したそれは腹部へと吸いこまれていく。
思いのほか損傷が大きいのか、左腕に鋭い痛みが走る。

当たっても当たらなくても構わない。
狙いは他にある。

 今!!

百合川という少女の意識がそちらに流れた瞬間全力で移動。
右足に向けて刀を振るった。
205孔濤羅 ◆SHIDEN1o :02/07/11 23:33
「偶(タマタマ)狂疾ニ因ッテ殊類ト成ル」〜 ロン VS 孔濤羅 導入
>184
 
コートの裾がぐい、と引かれる。
片足の濤羅はそれに抗う力が無い。
同時にロンが前に出る気配。
 
ぞくり、と濤羅の項の毛が逆立った。
懐に飛びこまれ、背中を取られた。
次に来るのは致命の一撃。
崩れたこの体勢ではかわすのは不可能。
 
濤羅は瞬断した。
こうなっては互いの一撃、どちらが速いかの勝負しかない。
強引にでも己が攻撃を加え、ロンのそれの威力を削ぐのみ。
 
強引に身体を捻る。倭刀を身体に沿わせる。
ロンが視界に入った。
すでにロンの左掌は突きの動作に入っている。
だがそれはこちらも同じ。
濤羅は左脇の下から倭刀を突き出す。
 
倭刀と腕。刺突と掌勢。
二つの異なる技が交差した。
206姫園れい子 ◆/1ZombIE :02/07/11 23:34
姫園れい子vsクロウ

>204

気付かれたみたいだ。ゾンビ使いは本体を殺せばいい、と。
あたしめがけて包丁が白銀の矢となって飛ぶ。

『南無三!!』

しかし百合川の反応速度はそれを上回る。
ゾンビは瞬時にあたしの盾となり包丁を自分の腹で受ける。そして脚へ斬りかかる刃を抜いた
包丁で受け止めた。

しかし鍔競り合いは両腕と片腕では百合川が不利だ。鈍い音を立てて包丁が折れ、斬撃を受けて
百合川の左上腕の肉が浅く裂ける。

「ちいっ!!」

あたしは思わず動いていた。人間相手なら、あたしの『体』の覚えている剣術はかなり強い方だ。
しかし化け物相手に通じるかは分からない。でも、構わずに全身で突きを叩き込む。

一撃目は奇襲だったせいか相手の胸をざっくり貫いた。しかし二撃目はあっさり受け止められ、
蹴り倒され地面に転がる。鉄錆の味が口の中に満ちた。
ぶざまに路面を嘗めているあたしは見た――あの化け物のかかとに、さっき置いた犠牲者の首が
がぶりと噛みついたところを。
207クロウ ◆DsxKUROU :02/07/11 23:39
姫園れい子vsクロウ

>206

いい加減とんでもないな、まったく。
あれに反応した上、刀を受け止めて見せるとは。
だが、押し切れる。そう思った瞬間。
先ほど腹部で感じた感覚が、左胸で。
肋骨の間を抜けて肺に孔を空けた。

「がふっ・・・」

呼気に紅い物が混じる。
二撃目を受け流し、蹴り飛ばして百合川に向けて畳み掛けようとした時、今度は右の踵。
あっさりと靴を食い破り、歯が肉に食いこむ。
いちいち引き剥がしている暇は無い。
噛み付かれた右足で百合川に回し蹴り。ガードされたがそれで蹴り剥がす事が出来た。
間を与えずに相手の右に回り込みながら執拗に右足を狙う。

肺が塞がるにはもう少し掛かる。
取り敢えず、それまでは時間を稼ぐ。
斬撃が当たれば僥倖だった。
208姫園れい子 ◆/1ZombIE :02/07/11 23:40
姫園れい子vsクロウ

>207

「ぎちぎちぎちぎち」

犠牲者の首は、振り飛ばされざまにあの化け物の踵の腱を食いちぎっていた。
あいつは自分の動きが落ちてることにまだ気付いてない……。

あたしは、なんとか立ち上がる。さっきの蹴りで肋骨がイカれたかどっかの内臓が破裂したかも
知れないが、このチャンスを逃したら元に戻ってしまう。じくじくと傷が再生しているのが見て
取れたからだ。
あいつは、右腕の使えない百合川の攻撃の死角に回って右足狙いを繰り返す。いくらゾンビでも
一箇所だけをしつこく潰されたら戦闘能力がなくなってしまう。まずい。

「うわぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

剣を腰だめに構えてぶつかるように突進。オーバーアクションのあたしの一撃は、いとも簡単に
弾かれた。剣を取り落とし、態勢を崩したあたしを斬り伏せようとする化け物の刀が――来ない。
百合川が、左腕と肘から先のない右腕で化け物をがっちり背後からホールドしていた。
そして、そのまま強引に反り投げる。

「うわ……カール・ゴッチもびっくりね」

あたしは血を吐きながら感嘆する。
プロレス技の芸術、ジャーマンスープレックスホールドがアスファルトの路面に炸裂した。
人間をたやすく引き裂く百合川のバカ力で、硬い舗装道路に頭から落とされたのだ。

『立ってこないでよ……』

あたしはそう願いながら身構えた。失血のせいか足が震える。
209クロウ ◆DsxKUROU :02/07/11 23:43
姫園れい子vsクロウ

>208

浮いた。
正確には持ち上げられた、だ。
後方に上体が流れる。
叩きつけられたら頭が柘榴になるのは目に見えていた。
空いている左腕を後頭部に回してその瞬間に備える。

肉が拉げ、骨が砕ける音。
壊れかけの腕が、終わった。
世界が揺れている。吐きそうだ。
腕が痛い。胸が痛い。腹が痛い。
誰の所為だ。誰の、誰の、誰の――

「お前か?お前だな?この。この。この。この。この・・・
 このこのこのこのこのこのこのこのこのこの!!」

自分が下敷きにしているもの。
それに右手の刀を突き刺す。
何度も。何度も、何度も、何度も、何度も。

絡み付いている腕を振り払って立ち上がろうとして、バランスを崩した。
刀に縋って何とか体を支える。
このダメージを癒すには、血が必要だった。
210姫園れい子 ◆/1ZombIE :02/07/11 23:44
姫園れい子vsクロウ

>209

あいつの刃がでたらめに振るわれる。不安定な状態での突きだけに、致命的な破壊には至らない
がそれでも百合川の上半身は切り傷だらけだ。白いシャツも裂け、血色の悪い肌が露わになって
いる。あたしだったら恥ずかしくてやってられないだろう。

しかし、効いている。ぶざまにふらついて剣を杖代わりにしているじゃないか。
百合川も足のダメージがなければ速攻でとどめを刺しに行けただろうが、右足の損傷が大きいせい
か態勢を立て直すのに時間がかかっている。

かく言うあたしも、手足が鉛でも詰まったように重い。口の中は吐いても吐いても血反吐だらけだ。
――血。あいつの冷たい視線が、あたしの流す血に釘付けにされている。

そうか、あいつは今血に飢えている。

「………来なさいよ!!血が欲しいんでしょ!!」

あたしは、口の中の血塊を吐いて叫ぶ。百合川は、ふらつく足を引きずって別方向に駆ける。
奴があたしに突進してきた瞬間、横あいから百合川が投げつけたのは、通りから引き抜いた交通
標識だった。巨大な鉄槍が、化け物を昆虫採集よろしく串刺しにせんと唸った。
211東出立(M):02/07/11 23:45
東出立VSクリストファー・ニューバート
>193
 
相手の体勢が微妙に変化した。
続いて、こちらの体のバランスが強引に崩される。

スイッチは・・・間に合うか!?

ダン!

「ぐえ!?」

少々間に合わなかったようだ。
妙にボコボコした、生暖かい地面に叩きつけられる。
なにかっを轢き潰した時のような声? きっと気のせいだろう。

相手の首には、まだネクタイが引っかかったままになっている。
一方、バッテリは己の手の中だ。

「・・・流石にちょっと不味い、かな?」

相手は立っていて、こちらは転がされている。
殺気よりもさらに不利だ。
もっとも、ここで諦めるつもりはさらさらないが。

「サラリーマンは、仕事に命をかけるのさ♪」

もう一枚の鉄扇を抜き、軽く振る。
ジャラ、と先が伸び上がり、ネクタイの金具に向かって奔った。
手元のバッテリは、鉄扇につなげられている。

スタン作戦、第二段である。
212クロウ ◆DsxKUROU :02/07/11 23:47
姫園れい子vsクロウ

>210

 血・・・

紅くて甘い、温かい血を――
それは、直ぐそこにある。
衝動が、肉体の苦痛を超えて突き動かした。

身体が泳ぐのも気にせず刀を振りかぶる。
だが、それが振り下ろされる事は無かった。

風を切って飛んできたのは即席の槍。

折れた肋骨を更に折って。
右の肺に丸い孔を空け。
心臓と胃を半ばから削り取って。
左の肺を内側から突き破って。
肉を押し切りながら身体の左側に抜けて。
ビルの壁と槍に挟まれた左腕が丸く斬り抜かれて。

槍は身体を横に貫いてなおビルの壁面を穿つ。
出来あがったのは、異形の速贄だった。

「・・・・・・」

声が出ない。
動けない。
力が抜けていく。
振り上げた右腕がゆっくりと降り、手から抜け落ちた刀が乾いた音を立てた。
213姫園れい子 ◆/1ZombIE :02/07/11 23:49
姫園れい子vsクロウ

>212

エピローグ

百合川の放った交通標識が、あの化け物の墓標となった。『止まれ』だったのは何かの皮肉だろうか。
あいつが微動だにしなくなったのを見届けて、あたしは小さくガッツポーズをすると、そのまま膝をついて
前に倒れた。ひんやりとした路面が気持ちいい。

前歯の無くなった口を恨みがましく開け閉めしている女性の首が視界に入る。

「魔王サタンよ……この者に永遠の安らぎを……」

ここまで言い終えてあたしは意識を失った。

次にあたしが目を覚ましたのは病院のベッドの上だった。
肋骨12本が折れて肺が破れ、あと少し遅かったらショック死していたのだという。

結局この事件は身元不明の変質者による通り魔殺人として処理された。
入院費その他もろもろで仕事料金の半分ほどが消し飛んだが、それでも手取りは100万円。
しばらくは病院暮らしだが、たまにはこうしてのんびりするのもいいだろう。

そしてあたしは見舞いに持って来させたラムレーズンアイスをじっくり味わう。
死んでいたらこの至福の時間はなかったなぁ、と思いつつ。


=了=
214クロウ ◆DsxKUROU :02/07/11 23:52
姫園れい子vsクロウのレス番纏めだ。

>187 >188 >189 >190 >191 >194 >195 >197 >198 >199 >200
>201 >202 >204 >206 >207 >208 >209 >210 >212 >213

感想が有るのならここだな。
http://fargaia.hokuto.ac/html/test/read.cgi?bbs=vampbattle&key=1019409630

ち、美味そうだったんだが・・・
東出立VSクリストファー・ニューバート
>211
 
 相手は転がっている。この機を逃す訳にはいかない。
クリストファーは一気に間合いを詰める。
転がっている今なら足で踏みつけるだけでもケリはつく。
 
 それ故の油断……だったのだろうか。
 
 東出立の手に音もなく現れるもう一つの鉄扇。
金属が擦れる音を立てて一気に伸びる。
 
 その鉄扇の先端がネクタイの仕掛けに触れて……
 
 ――――ばぢッ!
 
 弾ける電光。クリストファーの体から力が抜ける。
そのまま東出立に覆い被さるようにして倒れた。
それでもその手がアタッシュケースに触れていたのは流石と言うべきか。
 
 だが――――歴戦の傭兵であるクリストファーがこれ程あっさりやられる物なのか……
 
 それに答えるのは更に後の話になる。
216孔濤羅 ◆SHIDEN1o :02/07/12 00:05
「偶(タマタマ)狂疾ニ因ッテ殊類ト成ル」〜 ロン VS 孔濤羅 導入
>184(>205変更)
 
コートの裾がぐい、と引かれる。
片足の濤羅はそれに抗う力が無い。
同時にロンが前に出る気配。
 
ぞくり、と濤羅の項の毛が逆立った。
懐に飛びこまれ、背中を取られた。
次に来るのは致命の一撃。
崩れたこの体勢ではかわすのは不可能。
 
濤羅は瞬断した。
蹴り足を曲げ、強引に踵をロンに打ちつける。
無論懐に飛びこまれた状態で本来の威力は望めない。
だがこの蹴りの狙いは別にある。
 
ロンの脇腹を踏み台にして濤羅は跳躍した。
その身体はロンのリーチを逃れ、次の瞬間には濤羅は、
おのれの左脇の下から倭刀を突き込んでいた。
殺意を込めて、倭刀が走った。
217東出立(M):02/07/12 00:18
>215

「・・・・・・終わったかな?」

倒れた相手の頬を軽き叩いて反応を確認する。
・・・一応、大丈夫そうだ。いや、狸寝入りしている可能性はあるが。
何はともあれ、転がってるアタッシェケースを掴み取る。

「これをお仕事なんでね。恨みっこは無しで行こう」

微妙に段差の多い路地を抜け、社の方へ帰還する。
彼にとっては、それなりにハッピーなエンディング。


・・・だが、どんでん返しがまだ待っていた。
東出立VSクリストファー・ニューバート
>217

 東出立が去ってから正確に3分。
クリストファーは何事もなかったかの様に起きあがる。
東出立が疑った通り擬態だったのである。
 
 そして、それに合わせて電子音が鳴る。通信機だ。
クリストファーは懐から通信機を取り出し応答する。
 
 『クリストファーだ』
 
 通信機の向こうから聞こえるのは部下の声……サワキと言ったか。
 
 『あー、大尉ですか? 猫の鈴はキッチリ鳴ってますよ』
 
 猫の鈴、すなわち先程の戦いの中でアタッシュケースに取り付けた複数のビーコンである。
 
 『わかった。部隊をポイントFに集めろ……これからが本番だ』
 
 クリストファーの雇い主が求めたのは東出立が持っていたアタッシュケースではない。それに関連した別の物である。
そしてそれはアタッシュケースと同じ場所に保管される。その場所を知るためのビーコンだ。
 
 クリストファーが率いる十数人からなる小部隊が
東出立の所属する会社ビルに襲撃を仕掛けたのはそれからキッチリ1時間後のことである。
 
 ――――オフィス街の夜はまだ終わらない。
東出立vsクリストファー・ニューバートの纏めだ。
 
>179 >182 >183 >185 >186 >193
>196 >203 >211 >215 >217 >218

依頼はまだ終わっていない。
この後のミッションはしかる後に公開されるかもしれない。
――――保証はないがな。
220ロン(M):02/07/12 01:10
「偶(タマタマ)狂疾ニ因ッテ殊類ト成ル」〜 ロン VS 孔濤羅
>216

 刹那――
 捉えたと思った左掌は空を切り、次の瞬間、倭刀が左胸を抉っていた。

 がらり、と、棍が地面に転がった。
 肺を抉られ、気管から込み上げる血。
 咳き込んだロンの口から、鮮血が溢れる。

 己を貫いた刃に左手を伸ばし、それを、掴む。
 震える指先が刀身にかかり、そして、握り締められた。
 切れた手のひらからあふれ出る血。

 ロンの奥底深く、ずくり、と蠢く気配。

 耐えていたのは、痛みではなく。

「・・・・・るな・・・出るな! お前の出る幕じゃ無い!」

 気配が膨れ上がる。
 血に塗れた、生々しい、原始の生命のごとき圧倒的な存在感。

 呻きが唸りになり、唸りは咆哮と化す。
 その高まりと共に、瞬く間に、その腕、顔を、全身を獣毛が覆い尽くし――
 ロンの体躯が、一回り膨れ上がる。
 黄色と黒のまだらの毛皮と、人ならざる顔。

―――――虎。否、二足で立ち上がる様は虎人と呼ぶべきか。

 解放の喜びに、虎はひときわ高く、咆哮を上げた。
 大地を震わし、山全体を響き渡る凄まじい咆哮。
 傷口が広がることなどまるで頓着もせず、刀を己が左胸から引き抜き――
 濤羅ごと、それを放り投げた。
>166>173>192 アセルス(半妖ED後)&玖珂光太郎VSラルフ・グルトVSフォルテッシモ
 
「は・・・はぁ・・・っ」
腕にかかった鮮血に、思わず舌を這わせようとしてしまう・・・
そしてその一瞬が、男の次の攻撃への反応を遅らせた。
 
閃く、男の光剣。
命中こそしなかったものの・・・瞬間、目が眩んだ。
・・・肩に一撃食らい、それが男の蹴りによるものだと認識したときには―――遅かった。
 
轟く炸裂音。
無数に走る、衝撃。
―――男の機関銃が、私の体を抉った。
今度は逆に、私の紫色の血が男に降り注ぐ。
 
 
痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い。
痛みと血の渇きで頭が熱くなる。早く殺せと血が叫ぶ。
そのまま、私はその声に従って・・・
 
瞬間。
 
                     床が割れた。
 
ひびがいくつも入り、廊下を衝撃が駆け抜ける。
慌てて飛び退くも、そのおかげで男とは離れてしまう。
 
一体何事か、全く事態が掴めないまま・・・廊下の端まで飛び退いたとき。
不意に、聞き覚えのある声が聞こえた。
 
・・・あの、少年。
そばにある階段から駆け上がってきている。
 
思わず、嬉しくなった。
だって・・・私に血を与えに来てくれたのだから。
あまりの出血と疲れにへたり込みながらも、顔はほころぶ。
そのまま、少年に向かって微笑みかけた・・・
(>221は無し、訂正・・・)
>166>173>192 アセルス(半妖ED後)&玖珂光太郎VSラルフ・グルトVSフォルテッシモ
 
「は・・・はぁ・・・っ」
腕にかかった鮮血に、思わず舌を這わせようとしてしまう・・・
そしてその一瞬が、男の次の攻撃への反応を遅らせた。
 
閃く、男の光剣。
命中こそしなかったものの・・・瞬間、目が眩んだ。
・・・肩に一撃食らい、それが男の蹴りによるものだと認識したときには―――遅かった。
 
轟く炸裂音。
無数に走る、衝撃。
―――男の機関銃が、私の体を抉った。
今度は逆に、私の紫色の血が男に降り注ぐ。
 
 
痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い。
痛みと血の渇きで頭が熱くなる。早く殺せと血が叫ぶ。
そのまま、私はその声に従って・・・
 
瞬間。
 
                     床が割れた。
 
ひびがいくつも入り、廊下を衝撃が駆け抜ける。
慌てて飛び退くも、そのおかげで男とは離れてしまう。
 
一体何事か、全く事態が掴めないまま・・・廊下の端まで飛び退く。
ちょうど横に、下へと続く階段が見えた。
そしてそちらからも、激しい音が響いている。
あの少年が戦ってるんだろうか・・・
 
・・・く、ああ・・・また喉が渇く。
きっとあの少年を思い出したからだ―――彼の流した、血を。
 
ああ、血が、血がほしい。もう・・・狂えるほどに。
あの男の血を、あの少年の血を・・・早く、早く。
 
全身が脱力し、へたり込みながらも・・・口元は歪み、舌は勝手に、自分の牙を舐めていた。
すでに自制という言葉など、私の脳内には、無かった・・・
223両儀 織 ◆ORihiMeM :02/07/12 10:26
ジョナサン・ジョースターvs両儀織
>98
 
 男の巨躯からは目を離さず、指先で血に濡れた刃をなぜる。
 あふれるような血液が、削がれるように零れ落ちた。
 
 男を見据える目を閉じて、ただゆっくりとこの時を味わう。
 自身に掛けられた問いも忘れ、呆けたように立ち尽くした。
 
 そして、数瞬の時が過ぎ―――
 
 瞳を伏したまま顔を向け、それからオレは口と眼を開いた。
 
「別に……そうだとしたら、どうだっていうんだ?」
 
 男に手にしたナイフを付きつけ、オレはにやりと笑って見せた。
ジョナサン・ジョースターvs両儀織
>223
 
霧は一段と深く、その中に凛とした声が響いて来る。
男のような口調だが、声質は少女のものだった。
 
「だとしたら……」
 
じりっ、と一歩間合いを詰め、ぼくは言う。
ナイフの切っ先は、的確にぼくを捉えている。
 
「君を見過ごすわけにはいかない。おとなしく警察に行くんだ」
 
女性だとしたら、いや、男だとしてもなるべく傷つけたくはない。
しかし、霧に混じった殺意はその濃度を高めていく。
知らず、ぼくの体は構えを取っていた。
>192
「まあまあ、そう慌てんなって。俺は逃げも隠れもしねえよ」

 俺は、廊下の奥から、馬鹿みたいに叫びまくってるそいつに声を掛けた。
 そいつは、その声に振り返って俺のほうに気がつくと、さっきのマジ切れ
したような表情を一変させて、元のにやついた笑みを浮かべながら、ゆっ
くりとこっちに歩いてきた。

 もうちょっと……あと少しだ……良し。

 俺はそいつが廊下に入ってきたことを確認して、おもむろに話し始める。

「そう、俺は別に逃げたわけじゃねえんだ。お前を倒すためにここまで来
 ただけなんだよ。ああ、そう言えば………」

 一旦そこで言葉を区切って、そいつの後ろの扉を指差す。

「お前の後ろにあるそのドア、念入りに調べたか? 罠を張られた可能性
 は? もしかしたら、何か仕掛けてあるかも知れねえぜ」

 その言葉に、そいつが反応したその一瞬。
 俺は印を切って、ドアとその周辺に張った符を、一気に爆発させた。

 これであいつを倒せるなんて思ってねえが、それこそ一瞬気を逸らせる
だけでよかったんだ。あれは、そのためだけに張ったんだから。

 爆発と同時に、男に向けて走り出す。
 走りながらポケットに手を突っ込んで、どこぞの工事現場からくすねて
手を加えてやったダイナマイトを取り出した。その導火線を短くちぎって、
それに火をつけ放り投げる。2……1……爆発。

 ダイナマイトは爆発と同時に、大量の符を撒き散らした。
 それこそ、狭い廊下じゃ視界も完全に遮られるほどの、大量の札だった。
 
 俺はその爆風の中を突っ切って、駆けた。
 札が大量に舞い散る中、その嵐を突き破ってそいつに向かって拳を伸ば
す。

 上手くいってくれよ、と心の中で成功を願いながら。
226ベルガー&ヘイゼル:02/07/12 14:18
ベルガー&ヘイゼルvs馬呑吐 『吸血海殲外伝』
>172

「下がれ、ヘイゼルっ!」

布を武器に突っ込んで来る男を見て叫ぶベルガー

《運命はつながりを断つものなり》

相手の布と『運命』がぶつかり合う…が斬れない

「ほう…『運命』の仮発動で斬れない布か・・・何でできてるんだそれ?」

サングラスの奥にある相手の眼を見つつ聞く
227馬呑吐 ◆TUNtujd6 :02/07/12 14:49
ベルガー&ヘイゼルvs馬呑吐 『吸血海殲外伝』
>226
 
 切り結んだ黒剣と布刀の向うから馬は答えた。
 
「秘道密儀も知らぬ西欧の俗徒に話して聞かせても、所詮判るまいよ」
 
 嘲笑を含んだ一声ごと、横殴りに押した布刀が数瞬の膠着を崩した。
 鍔競り合いを弾いたマフラーは握った右手で一筋に、まるで鶺鴒の尾の様に伸びる。
 生じた長刀を、馬は黒衣の男目掛け真っ向から振り下ろした。
 
 斬撃を放ちながら、馬はちらと横目を脇に向けた。
 剣戟の渦中を取り巻く無言の銃口は、全て二人の男女に向けられている。 
228ベルガー&ヘイゼル:02/07/12 15:23
ベルガー&ヘイゼルvs馬呑吐 『吸血海殲外伝』
>227

数瞬の膠着、しかし相手は無理やり鍔迫り合いを中断
ベルガーの『運命』が弾かれる

「ちぃ!」

バックステップで避けようとするが相手の間合いが伸びたため避けきれない

「私の周りに漂う二百八万の遺伝詞達、風の中咆哮するもの達よ。届いていますか!?私の遺伝詞の声が!」

後方よりヘイゼルの声が響き
ベルガーと男の間に1羽の鳳が割って入る

「行きなさい!」

ヘイゼルの命令により鳳は相手のほうに突っ込む
アセルス(半妖ED後)&玖珂光太郎vsラルフ・グルトvsフォルテッシモ
>192 >222 >225

「ふむ、苦しそうですな。ですが、慈悲など与えませんぞ?」

体をおいり曲げ、うつむいた格好でこちらを見上げる少女を見下ろし、男は静かに足を進める。

「どれほどの神を掻き集めても、貴女は永遠に救われんでしょう。己が身の罪ゆえに」

目の前で立ち止まり、短機関銃を掻き消す。懐から聖水を取り出して周囲に振りまき、場の聖別。
祈りに似た、力ある言葉が朗々と響く。

「―――もっとも、救われんのは私も同じでしょうが・・・。では、さよならです」

仕込銃の先から伸びている光剣が排出された。続いて、そこに聖別された銀の弾丸が込められる。
義腕がまっすぐ持ち上げられ――――


視界が、一転した。


壁が、床が天井が軋み、撓み、そしてひび割れる。
床が幾つか欠けて階下へと抜け落ちた。

「・・・・・・間違いありませんな。あの少年、生きていましたか」

緊張感が途切れた事により、脇腹の傷が痛み出した。
男の視界の内に、既に少女の姿はない。
男はその場に腰を下ろすと、傷口周りを聖水で洗い、
引き裂いたシャツの袖を当てて縛り付け、止血をする。

「さて、どういたしましょうかな?」

このまま追っても、また邪魔が入らないとは限らないだろう。
階下から響く爆音が、それを物語っている。

―――ならば。
手段は唯一つ、一網打尽だ。

崩れかけの床の上を慎重に移動しながら、爆発のあった辺りへと足を動かす。

右手のうちに、散弾銃を握り締めて。
230馬呑吐 ◆TUNtujd6 :02/07/12 16:15
ベルガー&ヘイゼルvs馬呑吐 『吸血海殲外伝』
>228
 
 美女の言葉によって見出された鳳が馬に襲い掛かる。
 
「ぬ、この速さで五行の素を有為とするか!」
 
 即座に布の形を取り戻したマフラーがうねり、空中で方向転換した。鳳を迎え撃つ。
 幾重にも巻きつき、羽ばたく翼ごと全身を拘束した。
 絡みついた布の中で鳥は暴れ回る。その抵抗を断ち切らんと、馬は左手を布に添え引き絞った。
 収縮する妖布が鳳を圧殺せんとする。
>225 光太郎
>222>229 アセルスvsラルフ

「貴様は俺を少し舐めすぎてはいないか?」

 爆風を背中に浴びながらも、フォルテッシモは不適に言う。背後の爆発など、気にも掛けてもいない。
 まるでその爆発は、彼にとって“相手にする価値も無い”と言わんばかりの態度だ。

「この俺が、お前のあからさまな挑発に気付かず、ノコノコと野良犬のように廊下に出てきたと、
まさか本気で思ってはいないだろうな?」

 爆風に続いて彼の背中に襲いかかる扉の破片と火炎、そして衝撃波。
 だが、彼は微動だにしない。あれほどの衝撃を受けているのに、姿勢すら崩さない。
 爆発の衝撃が届いていないかのように直立している。
 
「良いか? 俺があえて貴様の挑発に乗ったのはな、乗っても乗らなくても結果は同じなら、
お前の最後の足掻きを見てみたかったからだ!」

 ここに来て、彼は始めて姿勢を崩した。背後の爆発の衝撃はもはや完全に通り過ぎている。
 フォルテッシモの瞳が捉えているのは、頭上を舞うダイナマイトだ。
 そして、それが爆発した瞬間に撒き散らされる大量の護符。
 
「しかし、どうやら貴様という男を買い被り過ぎたようだな。この程度か。お前の“足掻き”ってーのは、
本当にこの程度なのか? こんな児戯で、本当に俺に勝てると思ったのか?」

 崩した姿勢―――ダラリと力無く垂らした四肢が弾けるように動く。
 同時、今度は本当に弾けた。空間が、爆炎、護符、そして少年ごと弾け飛んだのだ。
 
 フォルテッシモは見た、全身から血飛沫を撒き散らしながら吹っ飛んでいく少年の姿を。
 そして確信する。己の勝利を。
232横島忠夫 ◆.TadAo.Y :02/07/12 21:31
横島忠夫 vs ジュヌヴィエーヴ=コトフォード 
エピローグ
>178 >180 >181 
 
 ――――――――――そして。 
 
 俺たちGS美神除霊事務所の面々は、飛行機で大西洋を越えていた。 
 なんでも、アメリカに行って例のモノを売りさばくそうだ。旧家を脅かしていたヤバゲなブツを 
 即座に転売しようって腹づもりらしい。ニヤニヤと、ファンが減りそうな笑みを浮かべながら、 
 隣の座席で美神さんは、例の物体を弄んでいた。 
 
 そう、あの男――ジャックとかいったっけ――は、やたら簡単にアレを返してくれたのだ。 
 代わりにジュネさんの文珠は解除され、連れて行かれてしまったけど・・・・・・ 
 ま、目的は達成したから良し。こうして生きていられるだけでも、めっけもんだ。  
 
 でもやっぱり。惜しかったなぁ〜、ジュネさん。 
 せっかく仲良くなれたのに、それに上手く行けばあのまま・・・あのまま・・・! 
 ふくよかな胸の感触を思い出しつつ、俺の顔は自然と笑顔に――――ぐ、ぐふふ。 
 
「楽しそうな旅行で良かったですねぇ、横島さん」 
「――――――――はっ、お、おキヌちゃん?」 
 
 隣に座るおキヌちゃんが零下の冷たさ、汚物を見るような目線で睨んでいた。 
 まさかまた・・・声に出てましたかっ!?  

「いや、これは――――」  
「あ、ああ、ああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!」 
 
 俺の弁明を切り裂くような、どでかい悲鳴。 
 それは俺のもう一方の隣・・・つまり、美神さんの絶叫だった。 
  
「横島ぁ! あんた、何を掴まされた!」 
 
 伸び来る腕が襟首を掴み、ガクガクと俺の頭を振る。 
 
「な、何がっすかっ!」 
「女の色香に誑かされて、騙されたなっ!」 
 
 そう言って突き出すのは、もう一方の手。 
 左手には例のブツが握られ・・・握られて・・・ぐしゃりと形を歪めて・・・潰れていた。  
 美神さんの腕力で呆気なく潰れって、そりゃ変だな。これは、ひょっとして・・・ 
 
「――――偽物?」 
 
 沈黙は、明らかに肯定の意志を示していた。 
 それはもう、反駁の余地がないほどに。
233横島忠夫 ◆.TadAo.Y :02/07/12 21:32
横島忠夫 vs ジュヌヴィエーヴ=コトフォード 
エピローグ
>232 の続き。 
 
「ねぇ、横島クン」 
 
 突如、美神さんの声色が柔らかくなった。 
 優しげな笑みを浮かべて、軽く小首を傾げる。 
 
「な、なんでしょう、美神さん」 
「死んで」 
 
 表情も仕草も声もそのままに、キッパリ言い捨てられました。 
 必死に目線で助けを求めるけど、頼みの綱のおキヌちゃんもそっぽを向くばかり。 
 俺は襟首を引かれ、抵抗も許されずにジャンボジェットの扉の前へ・・・  
 
 これは――――――――――ヒモなしバンジーですか? 
 
「ちょ、ちょっと、待てっ! 気圧がっ、高度がっ・・・」 
「五月蠅いッ! ガタガタ言わず死んでこいっ!」 
 
 吸い出されました。 
 飛びました。 
 落ちました。 
 まだまだ、先は長そうです。 
 
「何故だぁ! 俺が、俺が一体何をしたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああ!」  
 
 ドップラー効果を残しつつ、俺の体は蒼い海へと消えていきました。 
 
 追伸。 
 大西洋はやたら冷たくて、海流が早くて、広かったです。
横島忠夫 vs ジュヌヴィエーヴ=コトフォード 
エピローグ
>232>233

英国のとある街のとある場所。
そこに大きくもなく小さくもない、何の変哲もない普通の家に魔法使いとその助手は住んでいる。
魔法使いと言う物は何も特別な場所に住んでいるわけではない。
意外にもお隣りさんに住んでいたりする物なのだ。
その中ではキライな野菜と格闘をしている魔法使いの青年がいた。

「ダメですよ。それを食べるまでは自室には返しませんから」

と、ジュネ。
彼女は上に何も残っていない食器だけを片付けて行く。
そうすると残るのは只一つの食器。
こうしてジャックを見てみるとキライな物を食べられずに昼休みを潰して辛い思いをしている子供の様に見える。

「なんだか母親みたいな事を言うんだだね、君は」

頬杖をテーブルの上に付き、フォークをぷらぷらさせながらジャックは
ぼそっと呟く。

「何か言いました?」
「いや、何も・・・。所でジュネ、昨日の戦闘の傷は治った?」

ジャックは別の話題を振り出す。
傷なんてものは一日で治るような物ではないのはジュネにも話題を振った
ジャックにも分かってはいるが、話を逸らす為に必死なジャックにはそんな事を考えている余裕はなかった。
ジュネは片付けた食器を台所でスポンジを使って器用に洗いながら答える。

「私に傷はありませんよ。向こうの方がダメージが多いくらいですから」
「そうだろうね・・・彼、ふらふらだったもの」

苦手なブロッコリーをフォークで突つきながらジャックは答える。

「それよりもジャック」

ジュネが後ろを見ずに食器洗いを続けながら話を話で切る。

「アレ、どうして素直に返しちゃったんですか?」

そう、昨日からジュネがずっと聞きたかった事。
昨日手違いで手に入れてしまった、ジャックが前からずっと欲しがっている物の一つの例の『物』。
ジュネが気を失っている時にすんなりと横島に返してしまったのだ。
相手から何も『貰わない』まま。

ジャックの性格からして手に入れたものを素直に返すのはどうも怪しい。
何か裏でもあるのだろうか?それとも、アレを持っている事で不幸が自分に舞い降りるとか。
昨晩からそんな事ばかり考えていたジュネ。

ジャックは椅子の背もたれにだらりと寄りかかると天井を見つめながら

「ああ・・・アレね」

実につまらなそうに答えた。

「渡したアレ、贋作だよ」
横島忠夫 vs ジュヌヴィエーヴ=コトフォード 
エピローグ
234の続き

がっしゃ〜ん
切り裂くような金属音が部屋中に木霊する。
ショックのあまり、ジュネが洗っていた食器を地面に落としてしまってそれが割れる音だ。
ジュネは何か言いたげに口をぱくぱくとさせているが何を話していいのか、頭がパニック状態で
口には出てこない。
その状態を見て、おもしろいねー、とジャック。

そして、数秒して少し落ち付いたジュネはとりあえず聞きたい事を決め、ジャックに質問した。

「じゃあ、アレが偽者だったって言うのなら、本物はどこにあるんですか?」
「さぁ?」

予想外の答えにまたもや混乱するジュネ。
それを見て、メンドクサそうに頭をぽりぽりかき溜息を付く。
どうやらジャックは説明する気になったようだ。

「いいかい?ジュヌヴィエーヴ。今回の件では最初から本物なんて何処にも無かったんだよ」
「と、いいますと?」

ジュネは頭に『?』を浮かべながら質問する。

「詰まりだ。あの家にあった例の『物』アレ自体が贋作だったんだよ」

あの家にあったアレ。
実はアレも本物ではなく、偽者なのだ。
本物の『物』は自分達の知らない別の場所で存在はしているが、今回の騒動には
まったく関係の無い場所にある。
そして、ジュネ達は、その家にあった『物』の贋作を本物と思いこみ、騒動を起していた訳だ。
今頃は飛行機の中で壊れちゃってるんじゃない?と冗談のつもりでジャックが言ったが、
それが本当だった事は本人は知る由も無い。

横島忠夫 vs ジュヌヴィエーヴ=コトフォード 
エピローグ
235の続き


「じゃあ・・・じゃあ!」

何を質問すれば自分は理解できるのか、それを考えジュネは思考をめぐらせる。

「最初に禍禍しい気配を感じたって言うあれはどうなるんです?ジャックの勘違いだって言うんですか?」

ジャックはむっとしながらもどこか愉快げにジュネの質問を聞く。
何故なら、相手のわからない問題を出すのは出題者にとってとても愉快な事だし、
その逆はとても不快なものなのだ。
ジャックはにやにやしながらその質問に答える。

「それはきっとあの家自体から放つ魔力の所為じゃないかな?あの老夫婦が悪魔だった・・・とかね」

ぽかんとその言葉に聞き入るジュネ。
その好きにキライなブロッコリーをゴミ袋に入れようとするジャック。
それをすかさず手で押さえ、ぎりぎりとその手を握り、元ある食器へと
ジャックの手と野菜を戻した。
何だかんだ言いながら、こう言う風にさりげない戦闘を繰り広げているのは
神業なのではなかろうか。

「あ」

思い出した様にジュネが呟く。

「ジャック、結局『アレ』ってなんなんですか?」

もっともわからない物、アレ。
ジャックは握られた手を痛そうに擦りながら言う。



――――ああ・・・『アレ』ね、『アレ』は――――――


ひとまずここで魔法使いの青年とその助手のお話はおしまい。
また会う時は、何処かでジャックが面白そうな事を見つけた時だろう。



END
「ちょ、ちょっと美神さん! いくら横島さんでも、飛行機から落ちたら・・・」 
「落ちたら?」 
 
 恐る恐る声を出す黒髪の少女に、イケイケボディコンのクソ女は素っ気なく聞き返した。 
 
「え? ええっと、さすがに死んじゃうんじゃないかと・・・」 
「死ねば?」 
 
 凍り付く一瞬。 
 だがそれも束の間、すぐに美神は髪を振り乱して叫び出す。 
 
「たとえあいつが死んでも、旅費とお札代と神通棍の修理費は返ってこないの! 
 赤字、赤字が〜!」 
(こ、この人は・・・) 
 

「あ。え〜っと、こちらが横島さんとジュヌヴィエーヴさんの闘争のまとめです」  
 
前スレ分 
 http://cocoa.2ch.net/test/read.cgi/charaneta/1025406070/419

今スレ分 
 >50 >51 >95 >96 >128 >129 >178 >180

ジャック・セトフォード・カ−ライル、乱入 
 >181 
 
エピローグ  
 >232 >233 >234 >235 
 
「よろしければ、こちらに感想などお願いしますね」 
 http://fargaia.hokuto.ac/html/test/read.cgi?bbs=vampbattle&key=1019409630 
238氷室キヌ(M):02/07/12 22:47
「訂正・・・ごめんなさい」 

前スレ分 
 http://cocoa.2ch.net/test/read.cgi/charaneta/1025406070/419

今スレ分 
 >50 >51 >95 >96 >128 >129 >178 >180

ジャック・セトフォード・カ−ライル、乱入 
 >181 
 
エピローグ  
 >232 >233 >234 >235 >236
239孔濤羅 ◆SHIDEN1o :02/07/12 23:11
「偶(タマタマ)狂疾ニ因ッテ殊類ト成ル」〜 ロン VS 孔濤羅
>220
 
なんだ?
 
これは、なんだ?
 
宙に舞いながら濤羅は思う。
 
圧倒的な力。
もはや内家も外家もない。技でもない。
それは純粋な力の権化だった。
 
己の身体が大地に叩きつけられたことにも濤羅は気付かない。
立ち上がり倭刀を構えていたことにも、虎人と化したロンに向けて
走り寄っていたことにも気付かなかった。
 
咆哮が腸を震わせる。
ロンの変容への疑問、混乱。
全身の毛が逆立つような恐怖。
それを覆い尽くさんばかりの殺意。
殺意を支える怒り。
それら全ての根底にある冷えきった憎悪。
 
しかしそれら感情は剣を取った瞬間に消えうせ、
身も心も全てが剣に捧げられる。
斬ると思わず、受けると思わず。ただ意識の埒外で剣が自ら踊るのみ。
 
発する剣気に梢は揺れ、楓の紅葉がはらはらと落ちる。
取った構えは「竜牙徹穿」
間合に入るや濤羅は戴天流の64套路の全てを一気呵成に繰り出した。
240ロン(虎人)(M):02/07/13 00:01
「偶(タマタマ)狂疾ニ因ッテ殊類ト成ル」〜 ロン VS 孔濤羅
>239

 それは、本来なれば荒ぶる自然の化身、神仙と崇められたモノだったのかもしれない。
 だが、今のロンには、ロンの化身した虎人には、神々しさなど微塵もありはしなかった。

 殺し、喰らう。
 自然の帰結としてではなく、己が望みから殺戮を行う。
 それは、ロンという人間の本性か、
 あるいは、虎の本能が人の奥底で抑圧され続けたがゆえの歪みか。
 そこに、一見して物静かだった男の面影は微塵も無い。

 地を蹴って己に迫る黒い影を、虎人の目が捉える。
 殺すことでしか己を証明できぬ存在に、与えられた生贄と、虎は思ったものか。
 人のように笑ったその顔は、ひどく、不気味だった。

 剣舞のごとく、繰り出される白刃。
 その最初の一太刀を、虎は慌てるでもなく待ち構え、あろうことかその前腕で受けた。
 強靭な皮膚、獣の剛毛、そして捻りが倭刀を受け流す。

 その両腕の爪で濤羅の剣と互角に渡り合いながら、人虎はじわりと間合いを詰める。
241孔濤羅 ◆SHIDEN1o :02/07/13 01:01
「偶(タマタマ)狂疾ニ因ッテ殊類ト成ル」〜 ロン VS 孔濤羅
>240
 
連環套路に含まれた、斬撃と刺突が雨のごとく切れ目無く降りかかる。
しかし野獣の毛皮は並の斬撃を通さず、爪は刺突の悉くを弾く。
 
その間もロンはじりじりと間合を詰める。
間合が素手のそれに入ったとき……それこそが最も危険な時だ。
人外の膂力は例え内家武術を修めているとはいえ、素手で応じるには
危険に過ぎる。
 
濤羅はじりじりと後退する。
後退しながら調息、閉息、内気の過程を経て気を練りあげる。
それに吊り込まれるようにしてロンも前に出る。
濤羅の下がる速さは次第に増し、それに伴ってロンの速度も上がる。
このまま速さが上がれば、付いて来れなくなるのは濤羅の方だ。
 
だからその前に……
 
下がる速度が己の為し得る限界まで来た所で濤羅は仕掛けた。
足を踏みかえ逆に前に出つつ「放手奪魂」
もう何度目かわからぬ袈裟懸けの斬撃を放つ。
しかしこれまでと違い、内力の込められた一撃には戦車の正面装甲すら
断ち切ってのける威力がある。
 
“受けろジン・ロン! 俺の怒りを、憎悪を……”
 
剣を取ってよりこれまでの内でただその一瞬のみ、
濤羅の斬撃は憎悪で染め上げられた。
242ロン(虎人)(M):02/07/13 01:47
「偶(タマタマ)狂疾ニ因ッテ殊類ト成ル」〜 ロン VS 孔濤羅
>241

 虎人の両爪と、倭刀の乱舞。
 己の殺意を相手が流す。相手の害意を跳ね除ける。その繰り返し。
 こうすることでしか他者と関われないモノの、不毛な会話。

 さあ、どうする、と虎は無言のうちに問い掛ける。
 一歩、また、一歩。
 あとわずか、あとわずかで、この爪がお前を引き裂く。
 この牙がお前を噛み破る。
 さあ――どうする?!

 それに答えるように濤羅から返った答えに、虎人は歓喜した。
 研ぎ澄まされた気、斬撃、そして憎悪。
 どうあってもお前を殺す、そんな、強烈な情念。それを真っ向から受ける。

――咆哮。
 常人ならそれだけで気死しかねないほどの獰猛な気迫。
 研ぎ澄まされた濤羅の一撃は突き出された左腕を切り飛ばし、
 しかし虎の気迫に押し返され、勢いを失って肩口に食い込む。

 狂喜のまま、虎は濤羅の肩口にかぶりついた。
243孔濤羅 ◆SHIDEN1o :02/07/13 02:28
「偶(タマタマ)狂疾ニ因ッテ殊類ト成ル」〜 ロン VS 孔濤羅
>242
 
牙に貫かれた肩口に、最初に感じたのは野獣の吐息だった。
次に感じたのは温度。
熱がじわじわと肉に食い込んでいく。
途中から熱は痛みに変わり、肩口全体に広がった。
 
「があッッ!!」
 
濤羅の口から獣のような叫びが漏れた。
 
ロンはそのまま濤羅に圧し掛かる。
濤羅は地面に倒された。
ロンの体重で肋がみしりと軋み、ごう、と荒い息を吐く。
その間も突き立った牙は抜けることは無い。
ますます深く食い込んでゆく。
 
濤羅は倭刀を逆手に持ち替えた。
先ほどの調息で蓄積した内力はまだ体内に残っている。
それを倭刀の切っ先に込め、ロンの脇腹に突き刺し抉った。
もはや太刀筋も何も無い。
生きるために足掻く。それは生物が等しく持つ原初の本能だった。
244ロン(虎人)(M):02/07/13 03:18
「偶(タマタマ)狂疾ニ因ッテ殊類ト成ル」〜 ロン VS 孔濤羅
>243

 腕を切り飛ばされ、脇腹を抉られ・・・

 その痛みに、滾る。
 生きるための本能が、殺意を、闘争心を増幅するのが心地よい。

 濤羅の背に右腕をまわす。
 締め付け、締め上げ、軋む骨。

 その音を聞きながら、さらに深く、牙を埋め込んだ。
 抉り、噛み裂き、この獲物を絶命させんと、己が血肉に化さしめんと。
245孔濤羅 ◆SHIDEN1o :02/07/13 04:04
「偶(タマタマ)狂疾ニ因ッテ殊類ト成ル」〜 ロン VS 孔濤羅
>244
 
呼吸が、出来ない。
過剰な運動を強いられていた身体は酸欠状態。
人ならぬ力で締めつけられ、意識はかすみ、視界が暗くなる。
 
突きたてた倭刀をこね回す。
離せと念じながら抉りこむ。
しかし痛みは野獣を猛り狂わせるだけ。
噛まれた肩が激痛を伝えた。
さらに深くつきたてられるロンの牙。
抉り、引き裂く虎の顎。
 
その痛みに意識を向けた。
今は痛みだけが、己を駆り立て生へと繋ぐ唯一の縁。
それが獣の性であると、濤羅自身は気付いていない。
 
丹田には先の呼吸で練ったわずかな気が残るのみ。
失神寸前の身体はろくな力を発揮できない。
それらを掻き集めた。
 
右手は倭刀の柄から離れ、腕がのろのろと持ち上げられる。
伸ばされた指は一本きり。
これが最後の一撃だ。
 
その時ついに肩の肉が食いちぎられた。
ピンク色の筋肉が覗き、真っ白い骨があらわになる。
それもわずかの間のこと。
次の瞬間には血の赤が、ピンクも白も塗りつぶす。
濤羅の意識が真っ白になる。
 
「死ねええぇぇぇぇぇ!!」
 
我知らずあげた雄叫びがあたりの木々を震わせる。
残る内力ありったけを込めた人差し指が、ロンの顔面へ耳の穴へ、
その奥の脳へと向かって走った。
>231
 そいつが腕を振るった瞬間。例えようも無い衝撃が、俺の身体を吹き飛
ばした。全身に力が入らない。その瞬間、俺の身体は俺のものじゃなくな
ったような気がした。

 それでも、かすかに残った自由を使って、ゆっくりとそいつに話し掛ける。

「俺は…俺は別に、札に紛れて拳を出せば、お前を殴り飛ばせるなんて微
 塵も思ってなかった…ただ、お前の視界を防げれば、それでよかったんだ。
 札も、炎も、そして俺自身も、お前の目くらましにになれば、それで十分だ
 ったんだ……」

 そいつは、この土壇場での俺の独白に、怪訝そうな表情を浮かべた。

 そう、本当にそれだけでよかったんだ。一番の心配事は、こいつが「それ」
にもしかしたら気付いているんじゃないか、って事だった。だけど、今の怪訝
そうな顔を見て、その心配も無くなった。

 こいつはまだ、気付いていない。

 とうとう膝から力が抜け出し、もう立っている事も出来なかった。
 ぐらり、と一瞬ふらついて、ゆっくりと俺の身体が床に向かって崩れ落ち
る。そして、こいつは多分見たはずだ。俺の背後に寄り添って立つ、肉切
り包丁を持ったその女性に。

 俺はにやりと口元を歪めながら、ゆっくりとその名前を口にする。

「頼んだぜ………ザサエさん………GO………!」 

 その号令を聞くや否や、彼女は弾かれたように動き出した。
 舞い散る札の中、ぽっかりと開いたそこを避け、今や驚愕の表情を浮か
べるそいつに肉薄する。

 その右手に持った肉切り包丁が、虚空に銀線を残した。
ハーケンクロイツの亡霊 〜矢神遼VSアドルフ・ヒトラー〜
 
 朝の海辺を歩く、一人の青年。
 金髪碧眼、造化の神が『美』をのみ意図して作り出されたかのような容貌。
 
 朝の光が照らし出す中、彼の前に一人の少年。
 彼とは対照的に、眼鏡を掛けた、平々凡々とした少年。
 
 だが、その手にしたもののみが異質。
 赤い、波形の鞘に収まった短剣。
 異国風でいて、何処か懐かしいそれ。
 
 青年の歩が止まる。
 そして、十年来の友人に出逢ったかのような顔を、少年に向ける。
 対する少年は無言。
 どこか緊張した面持ちで、それでも真っ直ぐに青年を見つめながら。
 
「来たか・・・思ったよりも遅かったな、矢神遼くん」
 
 驚いた顔で、青年を見つめる少年――――矢神遼。
 その様子をくすくすと笑いながら、見つめる青年。
 
「あなたの持つ、遺産を渡してください」
 
「断る」
 
 矢神の言葉を、にべもなく断る青年。
 そして、それでもなお真っ直ぐな瞳で自分を見つめる矢神を、どこか眩しそうに見る青年。
 
「今度は、キミが『因果の輪』の最後のピース、と言うことか」
 
 しかし、あくまで不遜に言い放つ青年。
 その態度には、一片の揺らぎもない。
 
「キミを倒すことで、ボクの『因果の輪』は完成する」
 
 まるで、宣誓するような言葉。
 否、それはまさに宣誓。
 
 ――――そう、世界の命運を分ける闘争、その始まりの宣誓。
248矢神遼(M):02/07/13 19:44
>247 ハーケンクロイツの亡霊 〜矢神遼VSアドルフ・ヒトラー
 
 その話を初めて聞いた時は、よくあるゴシップの類だと思った。
 実際、よく聞く噂話だ、アドルフ・ヒトラーが未だ生きているなどとは。
 しかし、矢神遼をはじめとする者達――イェマドを知る者達――はそれが噂話でない事を突き止めた。
 実際、あの時期のナチスドイツでも裏次郎は暗躍していたのだ。
 不老不死を、千年帝国を願う者達に超文明の力をバラ撒き、堕落させるために。
 
 その中に、アドルフ・ヒトラーを不老不死にする遺産があったとしても何ら不思議はあるまい。
 あるいは、守護神を一つ相続しているという可能性すらある。
 存在と非存在の落差からエネルギーを取り出し、所持者を守る守護神。
 それがあれば、文字通り不老不死が約束される。
 そして、もしその仮定が真実であればこれほど厄介な事はない。
 事実上無限のエネルギージェネレータである守護神、その力は攻防にも隙がない。
 
 だが、それでも。
 歴史の闇に消えたはずの独裁者を許せない少年がいた。
 彼のやったことを、やらんとしていることを許せない少年がいた。
 
 そして、矢神遼はアドルフ・ヒトラーと対峙している。
 ここに至るまでに多くの戦いがあった。
 鈎十字の悪夢に冒された狂信者達、そして現れる裏次郎。
 遺産をバラ撒き、今世の人類を破滅させることとザンヤルマの再来を望む歪んだ歴史学者。
 彼は、アドルフ・ヒトラーの不死に自分が関知していないと言い残していった。
 では、史上最悪の独裁者はどのようにして不老不死を為したというのか……?
 それを確かめ、そして彼を止めるために遼は今この場に立っていた。
 
 簡潔な拒絶を示すアドルフに、しかし遼は焦らず、地道に言葉を繋ぐ。
 
「あなたのその力は誰から得たんですか? そして、その力で何をして、何をしようとしてるんですか?」
 
 気の弱そうな少年は、しかし瞳に不似合いなほどの意志の力を込めて独裁者を見つめ続ける。
 そうすることで、彼の全てを見透かそうとするかのように。
 
「あなたの為したいことに、そんな力が必要なんですか?」
249ルスヴン卿(M):02/07/13 22:56
永きに渡った戦いも、これで終幕と云う事のようだ。
いずれ一括して纏めたものが何処かに上がるだろうが、取り合えず此処にレスを纏む。
 
Nameless Kresnik vs Count Vardalek
“The Party Of The Children Of Night”

二十八章
>468 途中経過纏め

二十九章
>465 途中経過纏め

三十章
>74 途中経過纏め

三十一章
>414 途中経過纏め

三十二章
>49 >68 >69 >71 >78 >107 >111 >154 >155 >156 >157
 
 
観客たる方々には千句の謝辞を、そして白き狩人氏には万雷の拍手を。
ウー大殲導入
 
仕事は簡単。ロボットのガキをさらってくるだけ。
ちょろい仕事。こんなのはその辺のチンピラにだってできる。
 
だが選ばれたのは俺ほか1名。
しかも俺は万が一の保険と来た。正直、気に入らない。
 
だがそれさえ除けば、後は文句のないヤマだ。
報酬は十分。必要経費はあちら持ち。
別の組織が同じターゲットを狙ってるって情報もあるが、
殺せば良いだけだ、問題ない。
 
後は何にもなし。
ボディガードも警官隊もSWATもFBIもなし。
文句をつけたら神様にどやされる。
なんと言っても、ショーの舞台は教会なんだから。
ウー大殲導入
 
仕事は簡単。ロボットのガキをさらってくるだけ。
ちょろい仕事。こんなのはその辺のチンピラにだってできる。
 
だが選ばれたのは俺ほか1名。
しかも俺は万が一の保険と来た。正直、気に入らない。
 
だがそれさえ除けば、後は文句のないヤマだ。
報酬は十分。必要経費はあちら持ち。
別の組織が同じターゲットを狙ってるって情報もあるが、
殺せば良いだけだ、問題ない。
 
後は何にもなし。
ボディガードも警官隊もSWATもFBIもなし。
文句をつけたら神様にどやされる。
なんと言っても、ショーの舞台は教会なんだから。
252イーヴァ ◆OCEg7EVA :02/07/13 23:03
ウー大殲導入
 
古びた教会。わたしの他には誰もいない。
見上げればうっすらと埃の積もった安っぽいステンドグラス。
古色蒼然としたイエス・キリストが苦悶の表情でわたしを見下ろしている。
 
今さら神様に祈るでもないけど……とわたしは思う。
願わくば、ルークが無事に帰ってきますように………。
 
今回のセーフハウスは教会。
教会、それは否応も無くあの夏の日々を思い起こさせる。
あの時ルークは生と死の狭間を綱渡りするような危険に遭い、それでもなんとか帰ってきてくれた。
古来歴史は繰り返すという。
あの時と同じように、今回もルークの身に何か良くないことが起きるんじゃないか。
あの時はわたしの元に帰ってきてくれたけど、もしかしたら今回は……。
 
そう確かに歴史は繰り返す。
しかし、イーヴァは気付いていない。
あの時、あの夏の日に生と死の狭間を綱渡りしたのは何もルークだけではなかったことに。
イーヴァ自身もまた、いやルークよりも遥かに死に近い場所に居たことを。
ウー大殲導入(>251続き)
 
ホテルの部屋で目が覚めた。
一緒に寝ていた女を帰し、ルームサービスで朝食を取る。
煙草を深し、コーヒーを啜った。
気分はいい。最高の朝だ。
 
シャワーを浴びて着替えた。
ワインレッドのシャツに黒のズボン。
上にズボンと同じ色のコートをはおって
サングラスはシャツの胸ポケットへ。
 
忘れちゃいけないのがクラッカーだ。
身体の前に一丁、腰の後ろに二丁。
ベルトにホルスターでくくりつけた。
もちろん予備弾倉はたっぷりと。
 
最後にターゲットの写真を取り出して眺めた。
額にバーコードの刻まれた、泣き虫な目をした女の子。
あと5年経てば食べごろのピーチになる……と考えて、
相手がロボットだという事を思い出した。
口元を緩ませ、声をあげて笑った。
 
写真を握りつぶして捨て、部屋を後にする。
ホテルの廊下でサングラスをかけて外へ出た。
とりあえずは、親愛なるミスターリーの御手並みを
拝見するとしよう。
さあ、ショーの始まりだ。
 次の標的だと手渡された写真をもう一度観る。
 ため息と熟慮の繰り返しをしても、何の解決にもなりはしない。
 そう理解してはいるものの、あどけない少女が映っている写真を
観て――酷く胸が痛んだ。
 頭を横に振ってその考えを消し飛ばす、馬鹿な……彼女は人間ではない、
ただの機械、ただのロボットに過ぎない。
 簡単な依頼だ。
 彼女を攫ってクライアントに渡す、その後は、俺の知ったことじゃない。
 所詮ロボットだ、どうなろうが知ったことか。
 所詮、ロボット。
 口に出して繰り返した。

 写真の裏には彼女の居場所が走り書きされている。
 ――移動されては困る、急がなければ。
 洋服ダンスからいつものように目立たない色のスーツとコートを取り出す。
 武器もいつもの通り、シンプルにベレッタを選んだ。マシンガンもサブマシンガンも
グレネードも不要だろう。
 弾丸を一つ一つ弾倉に込める、漢字で「死」と刻印された弾丸、
必ず殺す、というただのおまじないだ。深い意味はない。
 ……ロボットか。
 ロボットというのは心臓に弾丸を撃って果たして効果があるのだろうか?
 ……脳天に弾丸を撃ち込めばいいのか? やはり脳に当たるものは頭に
あるのだろうか?
 そんな事をぼんやりと考える。


 ――これが終われば俺は解放される。


 準備はできた。最後にコートを着、内ポケットに写真を差し込んだ。
 いつもやっている事をいつものように済ます、ただそれだけ。
 さて――逢いに行こうか。
 イーヴァという少女に。
『ウー大殲』 銃使徒シモン(M) 導入
  
 
空港についたのは30分前。 
そろそろこちらの支部より迎えの車が到着する頃だ。 
 
黒い、大型のトランクを傍らに置き、男はじっと迎えの来るのを 
待つ。 
おそらくは北欧系だろう、淡い色の髪にがっちりとした顎を持つ、 
中年に差し掛かったばかりの男。 
広い肩幅を黒い僧服に包み、その姿には一分の隙も感じさせない。 
不動の姿勢のまま、空港前の駐車場に立ちつくしている。 
  
 
任務が下されたのは3日前。 
内容は「『イーヴァ』と呼称される少女型ロボットの確保、 
及び《ストール》本部への輸送」。 
 
本部からの情報によると、この少女型ロボットには 
『Emuration Grade 7』と呼ばれる特殊な技術を用いられているらしく、 
今後の研究に於いて重大な意味を持つということだ。 
資料に添付された写真には、10代前半とおぼしき少女の姿。 
特徴として、額にプリントされたバーコード。 
 
《銃使徒》シモンは、謹んで拝命した。 
命令を忠実に実行するのが、《銃使徒》の使命である。  
 
同行するはずだった銃使徒マッテヤが前回の任務中に負傷していなければ、 
あの男は不必要なまでにこの少女、いやロボットを傷つけているはずだ。 
そして、それは銃使徒シモンの好むところではない。 
今回は単独任務であることに、些か安堵を覚えなくもなかった。 
 
 

迎えの車が到着し、地区担当の神父の出迎えを受ける。 
支部の教会へと向かう車中での説明によると、 
件の少女、否『少女型ロボット』は無人の教会に隠れているらしい。 
《ストール》の影響下にないために捜索に手間取ったことを 
不必要なまでに詫びてくる神父は、次にただならぬ事を口にした。 
 
「ふむ・・・・・・つまり他にも彼女を狙う勢力が存在する、 
そういうことだな」 


【ウー大殲】 イーサン・ハント 導入
 
 
――――おはようハント君。
 
 いつもと同じサングラス型のメッセージ端末。
いつもと同じ任務の指令……
 
 ただし、高度三万フィートからのスカイダイビングの途中でなければだが。
 
「いつもながら……どうやって見つけだすのやら」
 
 イーサン・ハントは苦笑を漏らす。
 
 ――――さて、今回の任務だが、君にはEG7と呼ばれる人間型ロボットを回収……いや、保護してもらう。

 その声と同時にサングラスに今回の目標の姿が映し出される。
見た目は人間の少女と一緒だ。これがロボットだと言われても正直戸惑いは隠せない。
 
 ――――EZO社の開発したほぼ完全なヒューマノイド。これを狙って多数の組織が動き出している。
 
 ――――君にはそれらを出し抜いて彼女を回収、指示するポイントまでの搬送を頼みたい。
 
 ハントは納得した様子で頷く。
ここまで人間に近いロボットならば求める連中も多岐に昇るだろう。
いくらでも使い道は存在する。
 
 ――――彼女の居場所は既に判明している。だが、今回の任務の性質上、多くの人員を投入するのは避けたい。
よって、君一人で任務を行ってもらうことになる。
 
 ――――例によって、君が捕らえられる、もしくは殺害されたとしても当局は一切関知しない……健闘を祈る。
 
 単独での任務は珍しくもないし、その後のはいつもの決まり文句だ。
 
 ――――なお、このメッセージは自動的に消滅します。
 
 既に聞き飽きた感のあるマシンボイス。
ハントは慣れた様子でサングラスを投げ捨てパラシュートのワイヤーを引く。
 
 大きく開いたパラシュート。
その遙か下方でサングラスは閃光を発し……消滅した。 
 
 
 それじゃあ――――ミッション開始だ。
257ビリー・龍 ◆lOnGFAng :02/07/13 23:13
『ウー大殲』導入

「やれやれ、物騒な話だぁよ」

 何の気なしに受けた少女を探せという依頼。
 どういう少女なのか、気が付けば物騒な連中が山ほど関わってきやがった。

 ぼやきながら、俺はいつものリボルバーの弾丸を確認した。
 この教会に目当ての少女――イーヴァと言った――がいるのは突き止めた、が――
 銃を懐に戻す。

 周囲を観察する。
 俺は身を低く、世の闇に紛れるように教会に忍び寄っていった。
258シグモンド ◆ZyGunDog :02/07/13 23:20
【ウー大殲】導入

朝から憂鬱な気分を引きずり、オレはシャワーを浴びる。

オレはハンターだ…。『狩り』の対象はバケモノども。

この近辺に狩りの対象、バケモノの情報を掴んだが…。
昨日だけでも二十件がガセだった。
まったく気が滅入る話だ。

なおかつチャイナタウンで一番飯がマズイホテルに泊まっちまった。
ロビーに下り朝食を取ろうとした時、爺さんに引っかかっちまった。

ここしばらく朝から炒飯を食っていて奇妙な爺さんだと思ったが…。
どうやらボケちまっていて自分で引っくり返した炒飯を、
オレがこぼしたと思っているらしい。

泣きながらじいさんはひっくり返った炒飯を喰い、
「俺たち中国人は米に育てられたようなものだ
 お前に一片でも良心があるなら米に謝れっ!」
 
と抜かした。

―――まったく気が滅入る話だ。

構わずにカウンターへ行き、伝言を受け取る。

途端に憂鬱な気分が吹っ飛んだ。

『―――探し物、教会にあり』

笑みをこぼしながらオレは荷物を持ってチェックアウトする。

「まったく、これで少しは気が晴れればばいいんだがな…。
 ああ、そこのじいさんの食事代は俺が持っておく。
 チェックアウトのついでに頼む」

――――さあ、狩りの時間だ。
259名無しクルースニク:02/07/13 23:21
『ウー大殲』導入
 
 ――頭が痛い。
 アイスの食べ過ぎでも、調子に乗って泳いで風邪を引いた訳でも無い。
 結局の所――この服を着てこの男と向かい合っている時点で、ロクな事である訳がない。
 夜半のファミレスで顔を付き合わせている偉丈夫の名前を、ジャック=クロウと言う。
 予想は奇しくも大当たり。万歳、凄いね――クソッタレ。
 
「……で、キャスター=トロイか」
「そうなるな、だが――」
 
 続けようとしたクロウの鼻を挫くように、青年は一言で言い切る。
 
「知るかよ。――悪人には法の裁きを。でなきゃ、コナー達に任せとけよ。
 第一、そんなモンはFBIかCIAの領分だろうが?」
 
 悪人が死ぬのは当然。死んだ後は煉獄から地獄のフルコース。必然。だが、それを行うの
は人間であり、人の法を持ってそれを断罪するのも、当たり前と言えば当たり前――目の前
に現れれば始末するにしろ、好き好んで口出しするつもりは、
 
「普通なら、な。――ソイツは別件だ」
「――はあ?」
 
 吸血鬼。
 
 クロウが発したその一言に、青年の眉が神経質そうに歪む。
 吸血鬼。姿を隠し、飄々と生き延びる化け物。個体名、「ロングファング」。
 ――あぁ、センス最悪。
 自分で付けたのだろうか。付けられたのだろう。個体の特徴だけを的確に表した破滅的センス
に心の中で「凄えよソレ」と賞賛を送り、蝋燭のように燈った殺意が徐々に拡大して行くのをハッ
キリと自覚した。
 
 製作時間が長いチョコレートパフェを注文したのは、多分失敗だった。
 
 耳障りな電子音に、青年はクロウへと視線を移す。
 ボリュームを落としながらも苛立ったような怒声を電話の相手に向けながら、クロウは携帯の電
源を切ってテーブルに叩き付けた。
 
「チッ、予定外だ――キャスターがもう動いてる」
「……あー、つまんねえ事になったな」
「飛びっきりにな」
 
 席を立った青年の背に、クロウが小さく呼び掛けた。
 振り返る青年へと小さな塊が放られる。反射的に受け取ってから訝しげに手の中を確認して
眉を潜めた。
 
「……あ?」
「外に俺のドカが置いてある。――使え」
 
 青年は一瞬、鳩が豆鉄砲を食らった様な顔をして、瞬きしながら苦笑する。
 一言。
 
「……うわ、似合わねぇ」
「ほっとけ」
260名無しクルースニク:02/07/13 23:21
>259
 
 ……朝から厭な予感は、していたのだ。
 別に予想外でも何でもない。予定外にイラ付くだけ。
 ただ――キャスターの目的を聞いて、苛立ちは限界に近くなっている。意識が煮える。頭蓋の
中が沸騰する。
 
 ……10歳前後の少女を狙ってる――?
 孤児院の少女の顔が思い浮かんだ。
 ……吸血鬼にも外道にも、纏めて速やかなる死を。
 ――急がないと、ダメだ。
 サイドスタンドを跳ね上げてセルを回した。
 夜の闇に紛れた漆黒のドゥカティ Monster S4が、低い唸りを上げて息吹を返す。
 袖越しに伝わる振動が、一回毎に神経を刺した。
 叫ぶ意識。
 曰く、「殺せ」「消せ」「始末しろ」――全く同感。
 
 コーナーを滑るように駆け抜けながら、思考する。
 目的は吸血鬼、「ロングファング」の完全殲滅。オマケに付いて来た目的は、テロリスト、キャスター
=トロイの殺害――暗殺。それに付随する、少女の保護。繰言のように呟きながら、青年は歪みなが
ら背後へと飛んで行く光景の中を加速して行く。
 
 ただ――急げと。
261ラルヴァ ◆LARVAIdY :02/07/13 23:23
>ウー大殲 導入
 
情報屋のハシゴなどするものでは無い。
金銭的な面もあるが、その中に一人でも口の軽いものが居れば全てがご破算だ。
 
武装を整えながら、柄にも無く感慨にふける。
本当にあの「ロングファング」が来るのだろうか?
まあいい。行ってみさえすれば答えはでる。
 
 
バイクはかなり遠くに停めた。
相手の五感はどのくらい鋭いか見当もつかない。
 
H&K MP5K A4の装弾をもう一度確認する。
使い込んでいない銃だが、いつもの弾数では相手には不安が残る。
 
銀の弾頭にもかなりのキャッシュが必要だった。
無駄にならなければいいのだが―――
 
その瞬間、いくつかの銃声が耳に届く。
スタートの合図にしては多すぎるが、走り出す準備は万端だ。
 
私は、建物の陰を伝うようにしながらその教会に向けて近づいていった。
262701部隊の女(M):02/07/13 23:53
 『ウー大殲』
 
 
 750ccのバイクが、教会の傍に横付けされた。ヘルメットを脱ぎ捨てた
乗り手の、ロングソヴァージュの髪があふれる。静か且つ確かな足取りで
件の教会に近づき、ボウガンで屋根の上の十字架にロープを巻きつける。
それをそのままベルトのウインチに直結。僅かな機械音と共に、女の身体は
地面を離れた。
 
 ステンドグラス越しに目標を確認。情報通りの少女型ロボット。
周りに、任務の障害となるであろう者も多数存在。天窓を突き破る準備を整えたまま、
好機を待つ。
 
 女に、焦りは無い。
 ウー大殲 イーヴァとの邂逅

 その町外れの教会は分不相応なほど大きく、相応に古びていた。
 尖塔の十字架がわずかばかり傾いでいる、そのわずかなズレが俺を少々苛立たせる。
 カツン。
 カツン。
 カツン。
 足音が教会の中に吸い込まれていく。ゆっくり、ゆっくりと。

 ――目当てのロボットは祈りを捧げていたらしい。
 埃がうず高く積もったチェアに座る、隣のロボットが俺を見上げた。
 まずサングラスを視られた、ソレの視線はサングラスの中を見通すように
訝しげに細められる。
 次にコートの中の拳銃を見て、訝しげだった表情がわずかばかり恐怖に歪んだ。
 咄嗟に走り出そうとしたロボットの左手を握り締める。
「離して……っ!」
 暴れる彼女の力はいかにも普通の少女じみたものだった。
 拍子抜けする。
 もっとこう……ターミネーターのようなものを想像していたのだが。

「……分解されるのなんてゴメンよ!」
 その言葉に一瞬俺は凍りついた。その隙を突いて彼女が掴んだ腕をするりと
抜けて、十字架の背後にその身を隠す。
 慌ててその後を追う、巨大な十字架の背後に“少女”は怯え切った瞳でこちらを
見つめていた。
「分解されるのは、嫌」
 もう一度ゆっくりと言い直した。
 ……。
 ……。
 ……。
 ため息。
 俺は彼女に話しかけた。
「ここは危ない、今すぐ逃げ――」
 ――迂闊にも、背後の扉が開いたことにすら気付かなかった。
 かつん。
 かつん。
 かつん。

 どうやら、俺と同種の死神がやってきたらしい――。
264イーヴァ ◆OCEg7EVA :02/07/14 00:23
ウー大殲導入
 
ルークは言った。
万が一セーフハウスが発見されるようなことがあっても、下手な抵抗はしないで。
大丈夫、例えイーヴァが捕まってもすぐに助けに行く。
 
そんな言葉は危機が現実になった瞬間、頭の中から綺麗に消え去った。
半ば以上パニックに陥って逃げた十字架の後ろ。
……ここに逃げ道なんて無いのに、と頭の片隅でやけに冷静な声が響く。
 
ふと、気付いた。
十字架のはさんで見つめるサングラスの向こうの瞳はやけに悲しげで……。
だからだろうか、急速にパニックが収まっていく。
「分解されるのは、嫌」
そんな言葉が口をついて出る。

名も知らぬ男の瞳に揺れる、逡巡。
長い長い一瞬の後、溜息と共に聞こえた言葉は意外なものだった。
「ここは危ない、今すぐ逃げ――」
 
もしかしたら何事も無く終わるかもしれない、という虫の良い願いは新たな靴の響きに踏みにじられた。
頭の片隅でやけに冷静な声は皮肉っぽく囁く。
ここに逃げ道なんてないのに、と。
ウー大殲
>263>264
 
おお、主よご照覧あれ。
実に素晴らしい隣人愛です。
ミサ曲の一つも口をついて出るというもの。
曲名は確か……そう「平和の賛歌」
 
 Agnus Dei,qui tollis peccata mundi:
 (神の子羊、世の罪を除きたもう主よ)
 
 miserere nobis.
 (われらをあわれみたまえ)
 
両手を広げ通路を歩く。
足下には鳩がうろついてる。
踏みつぶさないように注意しないと。
鳩は平和の象徴だ。
 
 Agnus Dei,qui tollis peccata mundi:
 (神の子羊、世の罪を除きたもう主よ)
 
 miserere nobis.
 (われらをあわれみたまえ)
 
 Agnus Dei,qui tollis peccata mundi:
 (神の子羊、世の罪を除きたもう主よ)
 
 dona nobis pacem.
 (われらに平安を与えたまえ)
 
歌が終わる頃には、俺は二人の目の前に。
あっけに取られてるイーヴァと警戒の色をあらわにするジョン・リー。
二人に向かってにっこり笑うと口を開いた。
 
「ブラボー。
 全く素晴らしい隣人愛だ。神の家にふさわしい。
 ブラボー。
 良いものを見せてもらった」
 
そこで一旦口を閉じ、口調は真剣に、顔には笑みを残して続ける。
 
「だが、ジョン。
 仕事は最後まできちんと果たすべきじゃあないか?
 そんなんだから俺みたいな“保険”までクライアントは
 かけなきゃならない。
 もっと真面目に仕事をこなしたらどうだ!?」
 
言いざまに腰の前に挿したスチェッキンを引き抜き、突き付けた。
 ウー大殲
 >263 >264 >265 対キャスター・トロイ

 キャスター・トロイ……か。
 どうやら、俺の後ろに隠れているらしい彼女は余程重要な存在らしい。
 元CIAでテロリストでサイコな殺し屋を引っ張り出してきてまで、か。
 分解。
 ロボットに果たして痛みがあるのかどうか、それは俺には分からない。
 俺に分かるのは、彼女が怯えるほど嫌がった、それだけだ。
 ――全く、どうしようもない、奴め。
 けれど。

「分からん、だがこれだけは言える」
「お前に彼女は渡さん」


 こちらも抜きの早さにはそれなりに自信がある。
「オイオイ、機械に惚れ込んじまったのか? 冗談だろ」
 俺の言葉はトロイの虚を突いた――トロイが目を困惑に瞬かせた瞬間、
ベレッタを片手で引き抜いて彼に突きつけていた。
 撃鉄を起こすカチリという音が、トロイのヘラヘラした表情を塞いだ。
 困惑とそして次第に入り混じる憎悪の瞳。
「……まさか、本気か?」
「嘘だと思うなら――試してみろ」
 ニヤリ、とトロイが笑った。
 俺はニコリともできなかった。
 そんな余裕を持てるほど、今の状況はのんびりしたものではない。
 相手の銃はスチェッキン、20発の弾丸を雨霰のようにばらまくとんでもない拳銃だ。
 だがしかし、


 トロイも、俺も、引き金を引けなかった。


 ……ごくり、と生唾を飲んだのは俺か? それともトロイか?
 ゆっくりとトロイが近づき、それに俺も合わせて歩み寄る。
 彼のスチェッキンが俺の頭に当てられ、俺のベレッタは彼の顔面に真っ直ぐ狙いを定めていた。


 ――さて、どうなる?
『ウー大殲』
>264>265>266 


「・・・ふむ、先客か。 
 情報の遅さにはいつも苦労させられるな・・・」

件の教会の扉は既に大きく開かれている。 
中には男が二人。
・・・・・・一人は東洋人、もう一人は・・・・・・ 
 
「・・・・・・テロリスト、キャスター・トロイか・・・」

その奥には例の『少女型ロボット』。
二人の男達は銃を突きつけあっている。

・・・・・・この状況は、果たして? 

「些か、神の家には似合わん光景だな」

ベンチの列の真中を悠然と歩く。
右手には、黒いトランクケース。
それを足許に置くと、両手を二人に向ける。

その右手には、銃使徒の象徴たるべき『聖銃』。
左手には、小型拳銃『ワルサーPPK』。 

手に余るほどの巨大な拳銃と、手の中に隠れるほどの小さな拳銃。
銃口をポイントしたまま、二人の男に語りかける。


「済まないが、私はそちらの少女に用があるのでな」
 
【ウー大殲】
>264-267
 

 ――――さて、困った。
 
 ハントは内心頭を抱えていた。
目標が隠れているらしい教会まで来たのだが……既に先客が大勢居た。
どうやら今回は完全に出遅れたらしい。
 
 目標と接触する前に先客と鉢合わせしたのも拙かった――――それを回避できるほど広い教会でもないが。
しかも既に銃を抜いている相手、それに反応してハントも反射的に銃を抜いてしまった。
おかげで現在は複数入り乱れて銃を突きつけ合ってる状態……睨み合いだ。
 
 両手に持っているのは愛用のベレッタF92。既に初弾は装填してある。
 
 ――――動けない。
 
 一歩でも動いた瞬間にこの教会は鉄火が入り交じる戦場と化すだろう。
かといって……既に話し合えるような状態ではない。
 
 銃を構え油断無く視線を巡らしながら蟻よりもゆっくりとターゲットの方に近寄る。 
ハントの額から汗が滴る……まだか。
 
 完全な膠着状態である。
 
 何か……きっかけさえあれば……
269ビリー・龍 ◆lOnGFAng :02/07/14 01:16
【ウー大殲】
>264>265>266>267>268

「なんでぇ、お宅ら皆、そこの娘に用があんのか?」

 一人を盾に取るような位置に、別の一人にエンチャントマグナムを突きつけ。
 別に好きで気を引いたわけじゃない。
 こうでもしなきゃ、真中の娘から注意を逸らせなかったからだ。

・・・・ついでにいえば、俺は少々、頑丈にできてる。

 いくつかの銃口が俺の方を向くのを感じながら、続ける。
「俺も実は、少々そこの彼女に用があるんだ、生きている彼女に、ね・・・」

「悪いが、物騒な用のお方は席を外してくれんか?」

・・・どうあの娘をかっさらってここを抜け出すか。
 やれやれ、難儀なこった。
ウー大殲
>266>267>268>269
 
ああ、サイコーだ。
パーティーは盛況。クラッカーはたっぷり。
派手に騒げる。
サイコーの仕事だ。
 
左手に持つのは金色に輝くスプリングフィールド。
西部劇みたいな二丁拳銃でジョンと、後からやってきた聖職者さんに狙いをつける。
 
イーヴァがわずかに身動きする。
みんなの注意がそっちにそれる。
 
馬鹿が。
ロボットなんぞ後から押さえりゃいいだろうが。
 
後ろに倒れこんで自分につけられた狙いを外す。
そして教会にいるやつら全てに向けて弾をばら撒いた。
ウー大殲(>270修正)
>266>267>268>269
 
ああ、サイコーだ。
パーティーは盛況。クラッカーはたっぷり。
派手に騒げる。
サイコーの仕事だ。
 
右手に持つのはスチェッキン。
左手に持つのは金色に輝くスプリングフィールド。
西部劇みたいな二丁拳銃でジョンと、後からやってきた聖職者さんに狙いをつける。
 
イーヴァがわずかに身動きする。
みんなの注意がそっちにそれる。
 
馬鹿が。
ロボットなんぞ後から押さえりゃいいだろうが。
 
後ろに倒れこんで自分につけられた狙いを外す。
そして教会にいるやつら全てに向けて弾をばら撒いた。
ウー大殲
>267 >268 >269 >271

 ――やれやれ、次から次へと闖入者だ。
 続々と神の御前に登場してくる、その癖銃弾で静寂を切り裂くこともせず、
次々と思い思いの人間――あるいは、人間外の者に――手持ちの武器を突きつけている。


 ――視線の交錯
         殺意の瞳――
 ――味方はいない
         周りは全て敵――
 ――彼女を護れ
         彼女を奪え――


 口火を切ったのは、トロイだった。
 スチェッキンが火を吹いて辺り一面に銃弾を撒き散らす。
 咄嗟の判断で、俺は横の長椅子の背を蹴って空中へ跳ねると、
イーヴァの元へごろごろと転がった。
 しゃがみ込んでいた彼女の肩を掴んで床に伏せさせて、背中を覆うように被さる。
 銃弾
   怒号
     悲鳴
       ――錯綜する。
 周りを見た、障害となってくれそうな頃合の教壇が一つ。
 神父が説教するあの台だ、イーヴァを掴んで放り込み、その後に続いて入り込んだ。
 所詮木材に防御効果が期待できるはずもないが、少なくとも狙いは付けにくくなる。
「使えるか?」
 落ち着いたところで彼女にコートの中のベレッタを見せて尋ねてみた、少女が頷い
たのを見て、一丁を投げ渡す。
「君をここから脱出させる、いざという時はそれで何とかしろ」
 そう言って、俺は再び混乱の戦場へ飛びこんだ。
273イーヴァ ◆OCEg7EVA :02/07/14 02:44
ウー大殲
 
>267 >268 >269 >270 >272
 
それはホンの微かな、それこそ膝を叩いて脚が上がるのと同じ反射的な動きだった。
しかし、凪いだ水面を震わすには十分すぎる動き。
あまりにも危ういバランスはあっけなく崩れた。
電子脳の奥深く、0と1で構成される本能が喚きたてるよりも速く、何か大きな影が覆いかぶさってくる。
わめく暇も与えられずに首根っこをつかまれると、説教台に放り込まれる。
気がつけばあのサングラスの男に一丁のべレッタを見せられていた。
使えるかという問いに半分以上本能でコクコクと頷く。
サングラスの男はわたしにべレッタを渡すと説教台を飛び出していった。
 
何時までも呆然としているわけにはいかない。
泣き虫な瞳をしたEG7の、血も涙も無い荒野で生き抜いたやくざな30年は、周囲の状況を可能な限り理解しようとする。
第一に、わたしは複数の組織に狙われていること。
第二に、それらの組織は互いに反目しあっていること。
第三に、刺客の技量は確実にわたしのそれを上回っていること。
第四に、少なくとも一名はわたしの身の安全を確保しようと行動していること。
第五に、真の意味での救援、ルークの到着は間に合わないであろうこと。
 
状況を理解することで得られた答えは、可能な限り無駄な行動を避け事態の変化を待つ、だった。
やくざな歳月を潜り抜けたといっても、それがEG7の限界。
カタカタと小さく震える少女を守っているのは説教台のあまりにも頼りない板だけだ。
274ビリー・龍 ◆lOnGFAng :02/07/14 02:50
【ウー大殲】
>271>272

 引き金にかかった筋肉の動き。それに反応して俺は飛んでいた。
 かわしたつもりで、しかし、右足を数発抉られる。
 さすがに、人の身では辛い。

 びっこを引きながら退避、ようやく起き上がって周囲を見回し――
 少女――イーヴァに向かう人影。
 それに気をとられた瞬間、俺の体に無数の銃弾が食い込んでいた。

(クソッたれ――――)
 自分を背中から撃った相手を見極めようとして、俺はそのままぶっ倒れた。
 依頼人と少女にゃ悪いが、私立探偵はこれでお陀仏、だ。
 義理は・・・ま、一応果たしたことにしてもらおう。
【ウー大殲】 
>271-273


 ――――始まった!
 
 口火を切ったのは金色の銃を持つ男――――トロイである。
右手に持ったスチェッキンを乱射する。
 
 ハントは教会の床を転がりながらそれを避ける。
同時に両手のベレッタをトロイに向かって乱射。
当てる意図はない。単なる牽制だ。
 
 ターゲットは……いた。
もっともターゲットの近くにいた男――――ジョンによって台の陰に放り込まれている。
あの男はターゲットを傷つける意図はないようだ。
 
 ならば……一刻も早くターゲットの元に行き確保しなければ。
説教台は木製だ。盾とするにはあまりにも心許ない。
 
 ハントは一気にダッシュ。
そして、ターゲットを狙う相手に牽制の射撃。
 
 目的地までは――――まだ遠い。
【ウー大殲】
>271-275


微妙に保たれた均衡は、長続きはしないものだ。
スチェッキンを乱射する、トロイ。
少女を説教壇に押し込む、東洋人。
それが、合図となる。

人影が、交錯する。

足許にあるトランクケースを後足で蹴り倒し、そこに背を預ける。
両手の銃をポイントしたまま、
滑る。 
 
銃撃。
銃撃。
銃撃銃撃銃撃銃撃。

やおら立ち上がった赤いジャケットの男に弾着を確認する。

――――チッ。
口の中で密かに毒付く。
銃使徒らしからぬ結果に些か不満を覚えるが、
乱戦では位置取りが最も重要になる。

説教壇の反対側、扉のすぐ側。
ベンチ最後尾にたどり着いたところで残弾確認。
バックアップ用のワルサーに予備弾倉はない。
ホールドオープンしたままのワルサーを投げ捨て、
身を翻して起きあがる。

空いた左拳をトランクに叩き付ける。
中には、モーゼルM712。
四角い機関部と、突き出した銃身、銃把。

「ブルームハンドル」の異名を持つそれを左手に、目標確保に向かう。
場所は、説教壇下。

277701部隊の女(M):02/07/14 03:40
>273 少女型ロボット
 
 眼下で銃撃戦開始。最初の掃射が落ち付いた所で、目標真上の天窓を蹴破る。
飛び降りざまサブマシンガン2丁の連射。近くの黒コート(>272)に弾丸を浴びせながら
目標の隣に着地。衝撃で足が痺れたものの、予測の範囲内。
 
 マシンガンを捨てて空にした左手を、手錠で目標と繋ぐ。素早くベルトのウインチを再作動。
吊り上げ限界180kgのそれが屋根の上の十字架に繋がるワイヤーロープを巻き取り、
女は少女ごと床を離れた。目標と繋がったまま右手で弾丸をばら撒きつつ、
そのまま天井からの離脱を図る。
 
 女に、躊躇は無い。
ウー大殲
 
わいの名はニコラス・D・ウルフウッド。
流しの牧師やっとる。
牧師やっとるだけではあれへんけどな。
まぁ、こんな時代や。俺みたいのんでもなかなか需要はある。
 
その日も、わいは酒場で人々の懺悔を聞いたあと、
お祈りの一つでも一つでもしよか思て教会へと足を向けた。
そして扉を開けたとき・・・・・・中は地獄のような喧騒で満ちとった。
そしてその中でブルブル震えとる小さな女の子。
 
「お前ら、こんなとこで何しとんねん!しかも女の子まで巻き込んで・・・・・・ 
 いい加減にせいよ!」 
 
わいは背中にかついだ巨大な十字架を縛り付ける革紐を解く。
バンドで結わえつけられたソレから解き放たれた下から現れたのは、
白銀に輝く十字架。
わいはラックをスライドさせてハンドガンを一丁取り出すと、
十字架を盾にしつつ、女の子の元へ向かった。
ウー大殲、ハインケル乱入
 
(まったく、冗談じゃない)
 
 ブツブツと愚痴たれながら、ハインケルは教会へと歩いていく。
 局長からのお達しで、イスカリオテ傘下の教会を調べて来なければならなくなった。
 何やら、その教会を中心に不穏な動きがあるとかで。
 しかも、その中心にいるのがたった一人――否、たった一体の少女型ロボットだと言うからお笑いだ。
 
「クソったれ、ロリコンやら人形フェチやら――私の知ったこっちゃないっての」
 
 未だ文句を垂れ続けるハインケル。
 それもそのはず、今日は本来なら非番のはずだったのだ。
 それが、人手が足りないとかで無理矢理局長命令で駆り出されたのだから無理もない。
 
 頭の中で、にやにやしながらご愁傷様、と述べてくれた由美子の表情を思い返す。
 ……余計気分が悪くなった。
 いらいらを募らせながら、教会の入り口の前に立つ。
 既に中からは銃声、絶叫が響き渡ってきていた。
 
「おーおー、お盛んだねぇ、神の御前で騒いじゃいけないって習わなかったのかね?」
 
 不機嫌な表情をさらに嫌悪に歪めて、手を入り口のドアに掛ける。
 一息に両手で押し開ける。
 
 教会の内部に、バァン! とドアの開く音が響き渡った。
 
「我らは神の代理人――」
 
 両手を懐に突っ込み。
 
「神罰の地上代行者――」
 
 引き抜く。
 
「我らが使命は、神に逆らう愚者をその肉の最後の一片までも絶滅すること――」
 
 両手には、二挺の拳銃。
 その冷たい光を放つ銃口の双眸が、教会内部を油断なく舐め回し――。
 
「Amen!」
 
 祈りの言葉と共に死の絶叫が銃口から解き放たれた。
 
「ここはイスカリオテ機関の管轄下だ! ドンパチしたけりゃちゃっちゃとどっか行け!」
 
 警告の言葉を吐きながら、裏腹の死をまき散らし続ける。
 銃声と硝煙が巻き起こり、床に落ちる空薬莢がでたらめでリズミカルな金属音を刻んだ。
 
 神罰の地上代行者が、硝煙を纏って教会を征く。
280シグモンド ◆ZyGunDog :02/07/14 03:50
『ウー大殲』
 >273 イーヴァ>274 ビリー>275 ハント>276 シモン>277 701 
 >278 ウルフウッド>279ハインケル

チャーターした車に乗ってやってきてみれば銃声がして鳩が飛び交っていた。
出遅れたらしく、教会の中ではドンパチが始まっていた。

「ちっ、始まっていたか…。
 気が早い奴らばかりだ…」

ギターケースにしまっていた火竜両儀筒を出し、サブアームのP90に弾を詰め込んでゆく。
歌でも歌いたい気分にかられたが、自重する。
ビジネスは静かに行こう。

そう思いながら教会の横の壁を火竜両儀筒でふっ飛ばす。

―――訂正。時には柔軟な思考も必要だ。

「さて、狩猟解禁だ…愉しく行こうぜ?」
サングラスをクィっとあげながら近くにいた奴に笑いかける。

景気付けに一番手強そうな奴らが固まっている所にP90をぶっ放す。

一網打尽にするつもりが、運の悪い奴にしか当たらず逆に分断させる羽目になっちまった。
281ラルヴァ ◆LARVAIdY :02/07/14 03:53
ウー大殲
 
>274 ロングファング
 
教会の正面入り口に走る。
無謀なようだが、一番内部が見やすい入り口選んだ。
内部の事がわからない事には戦略の立てようがない。
 
ふと、私と同じように教会に向かう男が目に入る。
黒髪のその男はカソックを着て、十字架を下げていたが
祈りを捧げるには少し時間が遅い。
身のこなしも、尋常のものでは無い気がする。
 
だが素性はともかく、銃撃戦に神父を巻き込むのは不味い。
それは、神を信じるかどうかではなく、私自身の気持ちの問題だ。
 
「貴方… ここは戦場になるわ。命が惜しければ立ち去りなさい」
 
手の中のSMGを見せる。
―――? あまり動揺が見えない―――?
 
「ついでに、正義が勝つように神様に祈っててくれると嬉しいんだけど」
 
 
……私が正義の味方かどうかは、それこそ「神のみぞ知る事」だが。
ウー大殲
>272-274>276
 
銃声が響き渡った後の奇妙な静寂。
それもつかの間。
パーティーに飛びこみの客(>278>279>280)が来やがった。
とりあえず椅子の陰に隠れて銃弾をやり過ごす。
 
イーヴァに向けて走る人影(>275)に反射的に撃ちこんだ俺の視界に
飛びこんできたのは天井から降りてくる人影(>277)
そいつが再び上にあがろうとした時、イーヴァの身体がその腕の中にあった。
 
くそったれ、よこから掻っ攫う気か。
 
目の届かない所へターゲットが行くのはまずい。
 
左手のスプリングフィールドをワイヤーに向けて発砲。
こいつは自分の手の延長のように使いこなせる銃。
狙いは違わずワイヤーをぶっちぎった。
283イーヴァ ◆OCEg7EVA :02/07/14 04:28
ウー大殲
 
>277 >282
 
説教台の頼りない暗闇を切り裂き、頭上から硬質の音が響き、それがガラスの割れる音だと気がついたときにはもう遅い。
目の前には白いロングコート、黒く長い髪の女。
左手首に微かな痛み。
見れば手錠でロングコートの女の左手に繋がれている。
 
女の顔を見る間もなく腕をつかまれると、程なくした足が宙に浮き、左腕に全体重がかかる。
見上げる視線の先にはサブマシンガンで死をばら撒く女。
機械的にマシンガンを撃ち続けるその姿がたまらなく恐ろしくて、まだ自由に動く右手を滅茶苦茶に振り回した。
視界を掠める、黒い何か――ベレッタ。
ろくすっぽ照準も合わせず、縋るように引き金を引き続ける。

理性は囁く……今ここで弾丸を全て使い切ってしまうのは愚かな振る舞いだ、と。
だが、その声はあまりにもか細く小さく、跡形もなく本能の絶叫に飲み込まれてしまう。
そして、全ての弾丸を撃ちつくしたころ、唐突に左手の痛みも重力の戒めも解ける。
視界の端でちぎれたワイヤーが蛇のように空中をのたくるのが見えた。
284701部隊の女(M):02/07/14 04:40
 『ウー大殲』
 
>283 少女型ロボット
 
 胴に食い込んだ十六発の弾丸。哀れな少女の反撃。それでも女は衰えない。
 
 が、予想を上回る(>279>280)高密度の弾幕。無法な手術と薬物で強化された女の身体が、
有りうべからざる悲鳴をあげる。白いコートが食い破られ、なおも弾丸が
次々と突き刺さる。女と少女を吊り上げるワイヤーロープが(>282)切れた。
 
 少女を緩衝材にして着地、さらにそれを盾に壁際に後退。右手のマシンガンも捨て、
コートに手を突っ込む。
 
 2つの手榴弾。女でも扱いやすい小型で、爆発力より破片で殺傷する対人用。
歯でピンを纏めて引き抜いてワイヤー切り男に投げ、更にオートマチックを抜き撃つ。
 
 女に、痛みは無い。
285キャスター・トロイ(M):02/07/14 05:17
ウー大殲
>283>284
 
よく見りゃイーヴァもしっかり反撃してる。
こりゃあ要注意だな。
 
と、そこへ投げつけられる手榴弾。
しかも二つ。
豪勢だねえ、と感心してばかりじゃいられない。
 
起きあがって前に飛び出す。
空中で発砲。
右手のスチェッキンで弾幕。ジョンを牽制。
左手のスプリングフィールドでイーヴァと彼女を捕まえた女の足を撃ちぬく。
絶叫を上げてうつ伏せに倒れるイーヴァ。
その上に圧し掛かる女。こちらは無言。
 
地面に転がる。
背後で爆音。手榴弾がようやく破裂したらしい。
鼓膜が破れるかと思った。
 
そのまま止まらず二人のそばまで転がって前進。
三人並んで寝そべった。
 
イーヴァを捕らえた女に右手のスチェッキンでまず銃撃。
一発撃った時点でスライドがホールドオープン。
すかさず左手のスプリングフィールドで、弾倉が空になるまで
弾を撃ちこんでやった。
286701部隊の女(M):02/07/14 05:22
 『ウー大殲』
 
>285 ワイヤー切り男
 
 投げつけた手榴弾が炸裂するより早く、足が砕ける。
痛みは無い。が、少女に引き摺り落とされるように転倒。
 
 爆音を背景に転がり来る男に、オートマチックを連射。男からの応射。
起き上がる時間すら惜しんでの銃撃戦。続けざまに叩きつけられる銃弾。
筋肉組織が千切れ、血が噴出し、骨が砕ける。それでも雨は降り注ぐ。
それが丁度四十発に達した時、女の銃が床に落ちた。
 
 失敗は死と同義。それは分かり切った事。覚悟の必要すら無い。
 
 女に、後悔は無い。
 
 
 
 ……はずだった。が、その口から漏れた言葉
 
 「……きょう、か、ん」
 
 死を前にして蘇ったもの。あの日、海の真中に捨てた筈の感情が女の胸を掴んで揺さぶる。
理屈に合わない力を振り絞って、女は最後の言葉を吐いた。
 
 「あな、たが……すき、で、し、た……」
 
 
 (701部隊の女、死亡。本名、生年他不詳)
 
287:02/07/14 10:55
(ウー大殲:乱入) 
 
 銃声が折り重なるように鳴り響く。 
 静謐が打ち崩されて久しい教会の中、鳩が一羽、辺りを見渡した。 
 酷く慌ただしい。 
 踏み鳴らされる靴、鉄とオイルと硝煙の匂い、足下を充たす赤い血溜まり。 
 かつての平穏を崩され、ここは彼らにとって済み良い場所ではなくなっていた。  
 暗く湿った大気を掻き分け、その重い翼をはためかせる。 
 
 時は、来た。 
 全てに精算を与え、この地から舞い上がる時が。
 
 生み出された風は埃を散らし、編み上げられた揚力は白い体を空へと誘う。 
 羽音が硝煙と炸薬を掻き消して、しばし辺りを充たした。 
 夜の暗い空目掛け、彼は教会の大気を疾る。 
 ただただ、羽音ばかりを響かせて。 
  
(鳩が一羽、飛び去った)
288:02/07/14 11:16
(ウー大殲:乱入)

 白い羽が、宙に舞う。
 鳴り響く銃声と硝煙の臭い。
 危機感を刺激するそれらの環境に耐え切れなくなった鳩が飛び立ったのだ。
 
 羽は地に向かって落ちる。
 
 
 轟音に揉まれ。
 硝煙に塗れ。
 羽は翻弄される。
 
 
 だがそんな羽の事など鳩達にとってはどうでも良い事だった。
 全く見通しの利かない夜空は恐ろしい。
 それ以上に、地上の鉄火入り乱れる闘争の場は恐ろしい。
 
 救いを求め、鳩達は神の御許から飛び去った。
 
(鳩が何羽も、教会の外へ向かって飛び出した)
アルカード(M)VSアーカード(M)

夜空に高く、月がひとつ。
満月だ。何の文句も付けようのない。
淀みひとつ無いその空を仰ぎ、いい月だ――と、彼が言った。

そこに佇むのは二つの人影。ぼんやりと浮かび上がるその姿は、ほとんど同じもののように
見える。

赤と黒。
そんなもので構成された両者は、お互いに同種の感情をその表情に浮かべて、同時に一歩
を踏み出した。それが誰かなんて事は、端から頭の中にない。わかっているのひとつだけ。

――目の前にあるのは、自分と同じ化物である。

ならやることは簡単だ。

振り出した獲物の金属音が、ひとつとなって奏でられる。この場所には二人だけ。
邪魔はいない。思う存分踊り狂おう。

さあ――――闘争の時間だ。
290アルカード(M):02/07/14 13:53
アーカード(M) vs アルカード(M) 
>289 
 
 霧深い街中に一つ、靴の音が響く。 
 ロンドン郊外、煉瓦とタイルのヴェールが外れかけたここに、一つの影が差した。 
 赤のコートと黒い髪、肩に長物を構える男――――――いや、一匹の吸血鬼が。 
 
 靴の音が響く。 
 古く固められた皮が石の畳を踏み、体を前に蹴り出す。 
 微かに積もる砂を散らし、鉄と煉瓦が身を打ち合わせ、耳障りな高さを奏でた。 
 その中にあって吸血鬼、アルカードは足を進める。 
 何があるのか、何を求めるか、知った事ではない。  
 
 ただ、歩く。 
 ただただ、歩く。 
 ひたすらに靴を鳴らし、銃を揺らし、コートを風に乗せて。 
 
 
 ――――ふと、その音が止まった。
 
 
 ビルとビルの狭間、辻の行き着く所。 
 大気が淀む死んだような街にあって、道と道が交錯する点。 
 そこに、影を見た。 
 赤いコート、黒い長髪、同じ顔を持ち同じように嗤う吸血鬼を。 
 
 
「よう」 
 
 
 短く、一言。 
 それ以外、必要なモノなど無かった。 
 後は銃を構え、照準に互いを捉え、撃爪を引く。 
 全ての音は銃声に乗っ取られ、夜と月と街は硝煙に支配された。
  
 
「楽しもうぜ、不死の王(ノーライフキング)」
アーカード(M) vs アルカード(M) 
>290

く……くはっ。
はっ、はははははは………

銃声は聞こえなかった。意識を埋め尽くしているのは、壊れたような自らの笑いと、肉体を
突き抜ける銃弾の威力だけ。
聖別された白木の杭の一撃は化物そのものである彼の肉体を焼いていく。

苦痛。

だが――それすらも歓喜。


突き刺さった杭を力任せに引き抜きながら、それ――アーカードと呼ばれる化物は何事も
なかったかのようにその場にある。初期位置から大幅に後退していることだけが、攻撃を
受けた証として残るのみ。

次瞬、轟音。
それを置き去りにして、アーカードは一息に目前の化物――アルカードへと跳躍する。

手にした獲物は、.454カスール改造弾使用銃。
月光を浴びて鈍く銀色に光るそれを振りかざし、狂ったようにその悪魔的な威力を持つ弾丸
を続けざまに吐き出させていた。
292アルカード(M):02/07/14 14:34
アーカード(M) vs アルカード(M) 
>291 
 
 楽しもうぜ―――――― 
  
 大口径の銀が体を撃ち抜き、爆ぜる。 
 肉が千切れ骨が断たれ血が噴き出し、体が跳ねる。 
 
 不死の王―――――― 
  
 コートに穴を穿ち、赤に赤を重ねて塗り込め、石の上を転がる。 
 ただ一つの台詞を吐き終える前に、吸血鬼は地に朱の痕跡を残して、無様に伏せていた。 
 灼熱の鉄を捻り込まれたかの如く、体が灼け燃え苦痛を訴える。 
 
「ク」 
 
 その苦痛さえも愛おしい。 
 
「クハ」 
 
 全身の細胞に歓喜が注がれ、繋ぎ紡ぎ再び身へ戦えと奮い立たせる。 
 
「クハハハハハハハハッ――――――」 
 
 血みどろの腕を上げる。 
 手にはライフル。白木のクイをケズリ装填し、吸血鬼を狩るために調律された長物。 
 目には敵。その姿を瞳ならざる目で見据え、撃爪を引けと命じ続ける。 
 口には狂気。止まることなく止むことなく嗤いが込み上げ続けた。 
 
 銃声、嗤い、排筴、装填、嗤い、銃声、嗤い、排筴、嗤い、装填、銃声―――――― 
 
 三つのクイが写し身の如き吸血鬼へ、アーカードへと伸びる。 
 化物は飛び上がりつつ、.454カスールの凶弾を放ち続ける。 
 着弾の度に爆ぜ、千切れ、血溜まりに沈む。それでも嗤い撃爪を引き薬筴を捨てた。 
 
 深い闇に赤が混ざり、どんどんと崩れ行く。崩れる側から復元し、再生し、繋がる。 
 鋼の銃身を朱に濡らしたまま、アルカードは、アーカードを、その殺意で射抜いていた。
アーカード(M) vs アルカード(M)  〜DanceDanceRevolution〜
>292

血を吹き上げながら崩れ落ちるそれを見据えつつも、アーカードの銃撃は止むことはない。
否、さらなる苛烈さを伴ってアルカードへと指向される。
左手に浮かび上がるもう一つの狂気――対化物戦闘用13mm拳銃「ジャッカル」。

"Jesus Christ is in the Heaven now."
そんな文句を刻み込まれた漆黒の銃身から、次々に化物を狩り殺すために生み出された
銃弾が解放されていく。

アーカードは嗤ったままだ。だが、それは敵を仕留めたが故の笑いではない。
まだだ。この程度ではまるで足りない。私もお前も、まだ満足していない――そうだろう?
まだ夜は始まったばかり。まだダンスは始まったばかりだ。

さあ早く起きあがれ。血を振りまき。握ったままの銃を持ち上げ。
その殺意を、この私に示してみろ。さあ、早く――――!

それに答えるように、鮮血にまみれたままのアルカードから、聞き慣れた、心地よい声がわ
き上がる。

迫る杭の群れ――だが避けるような無粋なまねはしない。
そのすべてを身体に引き受け、同時に引き裂かれ。吹き飛ばされつつも、銃から迸る轟音
は止めどなく夜へと響き渡る。

だんっ――!

着地。
血にまみれ、声のないままに嗤い続けるアーカード。
その眼前には、同じように嗤い続けるアルカードの姿だ。
絡み合う視線。お互いに、ニイ……と、さらにゆがんだ物を表情に浮かべ。
アーカードは、力任せに振りかぶった拳をその化物へと叩き込んでいた。
294アルカード(M):02/07/14 15:55
アーカード(M) vs アルカード(M)  〜DanceDanceRevolution〜
>293 
  
 闇が裂ける。 
 互いの体を何処までも朱に染め、何処までも細かく砕き、それでもなお撃ち合う。 
 銀が、白木が。血を肉を飽きる事なく求め、食い散らかし、互いを紅蓮と燃やす。 
 
 吸血鬼は嗤った。 
 応じるように嗤い、嗤い、嗤う。 
 鏡合わせの狂笑をあげ、二匹の吸血鬼は腕を振り上げた。  
 
 銃を捨てる。 
 長物が重い音を立て、誰のモノか知れぬ血溜まりに沈んだ。 
 灼けた銃身が淡い煙を上げ、酷く不快な焦げる匂いをあげる。 
 鼻腔の奥を伝わる刺激は脳髄まで駆け上がり、また揺さぶった。 
 
 
 ――――それが、堪らなく愉快だ。 
 
 
 白い手袋が小さな悲鳴を上げる中、拳を固く握った。 
 アーカードが拳を突き出す。合わせて、拳を叩き込む。  
 脇を抜け絡ませ合い拳が駆け、コートを摺り合わせながら上り詰める。 
 
 そして、重き吸血鬼の槌はその顔面を捉えた。 
 同じ拳、同じタイミング、同じ呼吸、同じ堅さ、同じ強さ。 
 何もかも同じの拳が互いの顔を、顎を砕く。 
 
 
 ――――クハッ、クハハハハハハハハハハハッ―――― 
 
 
 可笑しかった。
 耐えられない程に、溢れ出す程に、止めどない程に。 
 脊椎さえもふるわす衝撃を哄笑と共に受け止めると、アルカードは次の拳を叩き込んだ。
アーカード(M) vs アルカード(M)  〜DanceDanceRevolution〜
>294

顔を砕き顎を砕き肋を砕き。
そしてまた、それを為した拳を砕き。
砕けた先から再生し、そして治癒を待たずに振るわれる拳は、また砕き、そして砕かれ――
終わりのない輪舞のごとく営々とその連鎖が続いていく。

溢れる哄笑は、どちらが放っているのか――混ざり合い、それすらももはや定かではない。

一撃――――重く叩き込まれたそれを腹部に受けて、アーカードは口から、血液ではない
別の液体をはき出していた。粘着質のそれは、流れ出た血と混ざり合い、さらなる汚濁とな
って彼の身体を汚していく。

音にすらなっていない呻きをこぼしつつ、アーカードは突き刺さったままの彼の腕に手をか
ける。砕けたサングラスの向こうから覗く双眸は、深紅に染まり――細く、アルカードを見据
えた。砕けたはずの拳を包む手袋は、奇妙にもその白さを保ったまままだ。
その甲に浮かぶ文様――魔法陣が、何かに応ずるように静かに、うっすらと明滅している。

屈み込むように、吸血鬼に顔を寄せるアーカード。
瞬間――見開かれた眼が、二筋の光となって夜を踊る。
冗談のように、巨大に裂ける口腔を彩るように、凶器そのものと言った牙が、月光を受けて
輝いている。
爆発させるように上体をのばした彼は、アルカードの腕を捻りながら、彼の首筋めがけて、
その牙を埋めようとしていた。
296アルカード(M):02/07/14 17:31
アーカード(M) vs アルカード(M)  〜DanceDanceRevolution〜
>295 
 
 体をへし折り、吐瀉物をぶちまけ、臓物がひっくり返る衝撃に血を撒き散らしながら、 
 吸血鬼は喉だけで笑う。声にも満たない呻きじみた絶笑は、呼気が尽きても溢れ続けた。 
 人間を擦り潰し撒いたよりも大量の血が、煉瓦とタイルの街並みを埋め尽くす。 
 再生すらも忘れ、体を打ち合わせる。ひしゃげ砕けもげる音がしばし、辻を充たした。 
 
 そんな中でも脳裏だけはクリアに晴れ渡り、暗い双眸は吸血鬼を映し続ける。 
 腕を振り上げ拳を放ち、拳を撃ち込まれ体が歪み曲がる様を。 
 
「ふ、ふははははは・・・・・・」
 
 赤の双眸が闇を裂き、眼前へ疾る。二本の牙が吸血鬼の血を求め、首筋へ――――   
 衝撃と捻りに耐えきれなくなった右腕が、折れ、握り潰され、ねじ切られる。 
 落ちた腕は軽く跳ねると音もなく横たわり、瞬く間に爆ぜて消えた。 
 大気を震わせ、水と風と霧へと代わり、闇に紛れる。 
 
「やるねぇ。さすがはアーカード、HELLSINGの鬼札だ」 
 
 精気の欠ける白い首筋へ、白の牙は埋められた。 
 
「酷く。ああ、酷く愉しい」 
 
 応じるように答えるように、アルカードもまた、方の首筋へ牙を撃ち込んだ。 
 深く、深く噛み付き牙を埋めると――――――――喉笛を食いちぎった。 
 顔が朱に染まり、口元には肉が残る。それを砕き、咀嚼し、嗤う。 
 喉笛の牙を意に介することなく、吸血鬼は抑えきれない衝動を嗤い続けた。 
アーカード(M) vs アルカード(M)  〜DanceDanceRevolution〜
>296

肉を食いちぎる鈍い音。
それは、お互いの喉笛からほぼ同時に発せられる。
喉の半分近い部位を喪失した2匹の吸血鬼は、ふらつく足下を無視するように、口腔へと取
り残された肉を咀嚼する。その味の――なんと甘美なことか。

彼を喜ばせるのは肉の味ではない。
彼をいきり立たせるのは血の味ではない。
それらをもたらす闘争の味こそが彼が求め――そして、彼を酔わせて止まないものだ。
顎が動くごとに喉元から大量の血液があふれ出し、身体をさらに赤く染める。

唐突に、脱力したように彼の肩ががくりと下がった。
同時に頭を垂れ、その一瞬だけ、すべてが凍結したような……そんな錯覚さえ受ける。
ややあって。アーカードから、ひゅうひゅうと言う奇妙な音の混じる、そんななにかが聞こえ
てくる。壊れた喉を振るわせながら発せられる嗤いは、もはや嗤いとしての意味をなさず。
だがそれ故に、彼が心底嗤っているのだと、彼らを睥睨する満月にまで知らしめている。
愉しい。とても、愉しい。

「だが――まだだ」

ぞわり。
明るい夜の中。それを拒否するがごとく、なにかが――黒いなにかが蠢き始める。
その中で、掲げられた両手の魔法陣だけが、己が存在を主張するがごとく、ひときわ強く
輝いていた。

「まだ……まだ足りない。もっと。もっと。もっとっ!」

―――それは、正しく黒だ。
闇でもなく、夜でもなく。ただただすべてを飲み込む、埋め尽くすために存在する全き黒。
アーカードを中心として発生する――否、アーカード自身から生み出されていくそれは、
世界を浸食しながらもやはり、アーカードを包むようにしてそこにある。
 
「もっとだ――まだ終わりではないぞ、化物。お愉しみは、これからだ――」

言葉とともに、
黒が、弾け。一斉に、アルカードへと殺到する。
298月島亮史:02/07/14 19:08
っと……あ、あれ?
ちょっと変なところに迷い込んじゃったかな?
えーと、僕は月島亮史。こう見えても一応吸血鬼だよ。
争いごとは好きじゃないけど……仕方ない、かな。
下がテンプレだよ。
 
 
出典 : 吸血鬼のお仕事(現在二巻まで発刊中、以下続刊)
名前 : 月島 亮史
年齢 :1000歳以上
性別 : 男
職業 : 工事現場のアルバイト
趣味 : おせっかい……かな?
恋人の有無 : 居ないよ。今は、ね。
好きな異性のタイプ : 出来れば大人しい子の方がいいなぁ。
好きな食べ物 : あーその、えーと……内緒。
最近気になること : 『組織』の事かな……。
一番苦手なもの : 日光とかも怖いけど……泣いてる女の子には適わないな。
得意な技 : 蝙蝠、狼、霧の部分変換かな? 『力』を使うからあんまりやりたくないけど。
一番の決めゼリフ : 「僕はもう人間なんだ。少なくとも表面上は」
将来の夢 : 人間として生きる事……かな。
ここの住人として一言 : と、とりあえず……お手柔らかに。
ここの仲間たちに一言 : (へらへら笑いながら)仲良くしようよ。争う理由なんて無いんだし。
ここの名無しに一言 : うーん、君達が期待してくれるような事は出来ないかも知れないけど、宜しく。
 
 
とりあえず僕は好んで戦ったりしない。
日々を平穏に暮らしたいだけだし……。
あ、カテゴリはDだよ。
途中でお邪魔して悪かったね、それじゃまた……(そそくさと逃げる)
299アルカード(M):02/07/14 19:54
アーカード(M) vs アルカード(M)  〜DanceDanceRevolution〜
>297 
 
 歪む世界、ぶれる姿、何もかもが闇と等しくなり、認識から逃れようとする。 
 喉笛を抉られ倒れ込もうとする頭に瞬く間に血が通い、落ちる事なく復元した。 
 だが、視界はまだ闇に閉ざされたままだ。むしろ黒は濃くなり、広がり、迫り、覆った。 
 
 
 ――――――クロムウェル開放。 
 
 
 理解した時には、アルカードの全ては黒の塊に飲み込まれていた。 
 無限の腕が無限の口が、その体へ掴みかかり食らい付き打ち砕く。 
 赤の帽子は瞬く間に食い尽くされ、コートもボロ切れに成り下がる。 
 骨へ無数の亀裂が走り、肉はそぎ落とされ、赤と白の肉と脂を落とした。 
 吸血鬼の体は既に、原形を留めることなく喰らい尽くされ―――――― 
 
 爆ぜた。 
 
 黒を押し流す一筋の風、重く湿った大気の帯、暗い暗い霧が塊となって、 
 闇の隙間を縫い溢れ出す。瞬く間に広がり漂い群がり集まる。 
 霧が人の姿を、吸血鬼の影を織り上げた。 
 
 
 ――――――アルカード。吸血鬼が元の姿で、そこへ立っていた。 
 
 
 足下に転がるライフルを拾い上げ、闇の末端目掛けて撃ち放つ。 
 トリガー、銃声。 
 トリガー、銃声。 
 トリガー、銃声・・・・・・無数のクイが黒を地へ、煉瓦とタイルへ、縫いつけた。 
アーカード(M) vs アルカード(M)  〜DanceDanceRevolution〜
>299

―――アルカード。
食らいつくしたはずの吸血鬼が、静かにそこに佇んでいる。
何故――とは黒は考えない。起こった現象に対し、ただただ対処するだけだ。
黒から生まれ出でるは無数の異形――狗が。蟲が。押して無数の腕と眼が。
吸血鬼を、再びその内に収めんと殺到する。

だが―――

銃声。
狗が射抜かれ、無形と化した。

銃声。
蟲が射抜かれ、無形と化した。

銃声。
腕が射抜かれ、無形と化した。

銃声。
無数の黒が射抜かれ、次々と無形と化す――――

次瞬。無形が一気に、その新たな形を構築する。
アーカード。全身を赤黒い拘束服に包んだそれは、狂喜の表情とともに――
長く伸びた髪をなびかせて、アルカードに対し、剣にも等しい貫手の一撃を解き放つ。
301浅倉威 ◆OuJA.R9U :02/07/14 20:20
(窓に頭をガンガン叩き付けている)
(額から血を流し、凄惨な笑みとともに振り向く)
 
イライラしてんだ……戦いてぇんだよ。
ここでなら、俺はスッキリ出来そうだ。
 
俺か……? 
俺は神崎士郎とか言う奴の選んだ……潰し合いのための戦士、「ライダー」の1人だ。
仮面ライダー王蛇って名前で呼ばれてるな……。
 
俺は―――――戦ってる時だけ、イライラを忘れられる。
さあ、遊ぼうぜ……。
 
出典 :仮面ライダー龍騎
名前 :浅倉威/仮面ライダー王蛇
年齢 :25歳
性別 :男
職業 :職業じゃねぇが……脱獄犯だ。
趣味 :戦いはいい……ゾクゾクする……。
恋人の有無 :いねえよ……いらねえしな。
好きな異性のタイプ :いらないって言ってるだろ?俺をイラつかせるな……!
好きな食べ物 :カップ焼きそば
最近気になること :ライダー同士の戦い
一番苦手なもの :今はあの龍騎って奴にイラついてるな……。
         ……他人ってのは全部俺をイラつかせるんだが……。
得意な技 :ファイナルベント・ベノクラッシュ
一番の決めゼリフ :「イライラするんだよ……」
将来の夢 : ただ、この戦いを続けることだ……。
ここの住人として一言 :イライラしてんだ……。
ここの仲間たちに一言 :仲間……?いらねえな…俺は自分一人で戦う……。
ここの名無しに一言 : 俺をイラつかせるな!
302アルカード(M):02/07/14 20:44
アーカード(M) vs アルカード(M)  〜DanceDanceRevolution〜
>300 
 
 狂喜。 
 何処までも、ひたすらに、絶える事なき狂気。 
 体を走り、細胞を震わせ、溢れ続ける歓喜。 
  
 脳髄の奥を叩き全身の血液を煮立たせ因子という因子全てに咆哮を撃ち込み奮い立たせる。 
 爪先から生まれた感触が背を駆け上がり指先まで伝わりただ駆けよと命じて刃となれと訴える。 
 脳のそこから紡ぎ上げられた殺意が視神経を伝わり眼光に乗って吸血鬼を貫く槍となる。 
 
  
 後は――――――――刃にとなり、馳せるのみ。 
 
 
 長物を捨てた。再び血溜まりに沈み、銃は熱を忘れ沈黙に隠る。 
 地を蹴った。タイルがひび割れる衝撃を与え、反動に乗る。 
 腕を突き出した。白の手袋越しに貫手が形作られ、死の刃となって奔る。 
 
 朱に染まり、黒の飛礫となったアルカードは、白の刃を放った。 
 赤と黒の拘束服を纏い、白の切っ先を翳すアーカードが吼えた。 
 
 交錯する刹那。
 
 そして――――――アルカードの胸に、その白き死は突き立てられた。  
303名無しクルースニク:02/07/14 21:10
>281 ラルヴァ
 
 マックスターン気味にドゥカティを旋回させ、滑り込ませるように教会の前に留めた。
顔面を叩いていた風が突如として消失し、温い夜気が全身を覆う。
 十字架に突き刺さる幽陽が、煌々と下界を照らし出す。
 シートから跳ねるように降りて、青年は躊躇いもなく夜の教会へと足を向けた。
 小さく深呼吸。排気ガス混じりの夜気が、肺の中を循環する。
 思考は、限界近くまで冴えていた。研ぎ澄まされて剃刀と化した過敏な神経は、知覚の
網に触れた全てへと、等しい敵意を振り撒く。
 だから――必然だった。
 無遠慮に近付いてくる気配に合わせて、右手は懐へと伸びている。
 小さく蠢いた気配。伸びて来るSMGの銃口――ビンゴ、敵。
 ――今。
 気配は直前。耳に飛び込んでくる声は切り捨て、懐に差し込んだ腕は殆ど弾かれたよう
に飛び出して――
 
 息を、飲んだ。
 
 突き付けられたSMGのマズルと交差して、グロックを握った右手は闇の奥、気配の直前へ
と伸びて――標的を補足しながらも動かない。
 拍子抜けな、意識の空白。
 喚起する殺意――それすら忘れて、刹那、意識を奪われた。
 温い風を浴びて揺れる銀の髪の奥、アイアンサイト越しに覗く、夜の闇でも主張を失わない
緋色の瞳が、滾った殺意を霧散させる。
 一瞬所か五秒以上、全身の行動は停止したままだった。
 無様の極み。
 本当なら、双方が5回以上死んでいる。
 ただ、それでも――動けなかったのは。
 
 赤い瞳を見詰めたまま、青年はゆっくりと右手を下ろした。
 意識が「馬鹿かテメエは」と告げる中、ゆっくりと口を開く。
「――貴女――は?」
 馬鹿な事を言っている――ああ、馬鹿だテメエは。好き勝手に撃ち殺されてろ。
 充分以上に自覚しながら、口は言葉を紡いでいた。
アーカード(M) vs アルカード(M)  〜DanceDanceRevolution〜
>302
 
ずん――――
音としては、そんなものだったのだろう。
酷くあっけない感触だけを残して、アーカードの腕は、赤い吸血鬼の胸を貫き。
その向こうに突き出た拳を、彼はゆっくりと握りしめた。
口元に浮かぶのは、深い――深い笑みだ。

「く――はっ。は、ははは、はははははは――――」

堪えきれなくなったように、アーカードの口から押し殺したような嗤いがこぼれ出る。
同時に、その口腔からあふれ出るものが、もう一つあった。

「あはははは。ははははははは――――」

馬鹿のように嗤い続けるアーカード。そして……アルカード。
お互いの口からあふれ出る鮮血が、お互いを貫いている腕を伝わり、等しくその色に染め上
げられていく。

やがて、どちらともなく腕を引き抜き。
力を失ったその身体にあっても未だ嗤い続けながら、、アーカードは力尽きたように、足下に
広がる血の海へと倒れ込んだ。
305ラルヴァ ◆LARVAIdY :02/07/14 21:26
ウー大殲
 
>303 名無しクルースニク
 
グロックを抜くスピードには反応できなかった。
良くて相打ちだったろう。
決して、ただの神父ではない。
 
銃を下ろしてくれた事に、内心感謝する。
話が通じる相手ならば、それはなによりだ。
 
「私は―――信じてくれるかどうかどうかわからないけど
 吸血鬼を追っているのよ」
 
敵意が無い事を見せるために、SMGにセフティを掛け直した。
 
「人殺しをするために銃を握っているわけではないわ」
 
これは一部嘘だ。
吸血鬼信奉者どもは、何人も殺してきた。
かすかな後ろめたさは心の奥にしまっておく。
 
「だから、ここから逃げなさい。もうすぐここは戦場になるから」
 
言い放つと同時に、教会の中に向けて走り出す。
セフティを指で弾きながら、ほんの少しだけ祈りをささげる。
 
 
吸血鬼に悪運を。人間に幸運を。
 
そして吸血殲鬼に……一欠片の慈悲を。 
ウー大殲 >283 >284 >285 >286
 今や教会はオバマビーチもかくやという戦場と化していた。
 次々と男達が乱入し、次々と死んでいく。
 ――あのあどけないとも言える少女は、どうやら相当の重要な存在であるらしい。
 ふぅ、と一息入れて弾丸が切れたベレッタを放り棄て、新しいベレッタをコートから
引き抜く。
 突然、天窓が突き破られた。
 見上げると、そこにはサブマシンガンを乱射してくる奴がいる。
 なるほど、訂正。
 次々と男や女が乱入してくる、という訳か。

 転がって弾丸を避ける、跳ねた弾丸の内の一つが背中を掠った。
 舌打ちして、めくらめっぽう拳銃を撃ち捲くる。
 彼女に当てなければいい、他の奴は全員敵と思った方が分かりやすい。

 女は天井からイーヴァを連れ去ろうとしたが、その試みは失敗したようだ。
 イーヴァが拳銃を至近距離から連射し、繋がれていたワイヤーはトロイの一発で
切断された。
 ホッとしたのも束の間、今度はトロイからスチェッキンの弾丸が襲い掛かってきた。

 慌てて臥せる、頭にあった蝋燭やら燭台やらが派手な音を立てて砕け散った。
 くそ。
 弾丸の音。
 悲鳴。
 少女の。
 ――くそ!
 
 俺は一目散に疾った、俺の疾った後に弾丸が次々と撃ち込まれる。
 知ったことか。
 神父服を着た「男」(>279)が神様だとか口走りながら二挺の拳銃を撃ち捲くる。
 知ったことか。
 相手の方を向きもせずに、こちらもベレッタを乱射した。
 弾丸が肩や背中、脚を掠める。掠っただけだ、命に別状はない。
 先ほど彼女が隠れた十字架に手と足を引っ掛ける、そして一気に説教台の近くに
飛び込む。
 トロイがこちらを見てパニックを起こした、俺はベレッタを迷わず撃ち込む。
 ガチン! 肝心なところで弾切れ。
 トロイは転がって長椅子の陰になり、俺はイーヴァの傍に転がって着地する。
 長椅子の薄い板一枚を隔てたところに、間違いのない敵がいた。
307アルカード(M):02/07/14 21:31
アーカード(M) vs アルカード(M)  〜DanceDanceRevolution〜
>304 
 
 静寂が続いた。 
 何かがごっそり抜け落ちたような空白の時が。 
 一時のような、永劫のような拍が置かれ―――――――― 
 
 
 ふと、それを崩すモノが現れた。 
 
 
 赤い袖口、白い手袋。朱に濡れる大地を掴み、黒と赤の体を起こす。 
 それは血溜まりから身を起こし軽く腕を振ると、ニィと顔を歪めた。 
 吸血鬼だった。 
 闘って闘ってなお闘っても充たされぬ、飢えと渇きに支配された化物だった。 
 それが二匹、倒れたはずの二匹がまた、立ち上がり狂笑をあげる。 
 
 
 ――――愉しい。愉しすぎる。 
 
 
 二匹の化物は、揃って右腕を構えた。 
 白の刃に死を絡め、また心臓を狙って振りかざす。 
 
 静寂は、崩れた。平穏は、消え失せた。残るのはただ一つの闘争の場、だった。 
 
「あああああああああああぁぁぁぁぁぁ――――――――っ」  
 
 咆哮が響き渡る。 
 大気を裂くかのような一閃が、アルカードの腕から繰り出された。
アーカード(M) vs アルカード(M)  〜DanceDanceRevolution〜
>307

繰り出した一撃はお互いの胸を穿つ――
だが、僅かに心臓を逸れたそれは致命傷とはならない。
つまり――まだ。まだ、戦える。戦い続けられる――

「は――――」

開いた口からこぼれる呼気は、歓喜を伴い――
周囲の全てを蹂躙しながらただ目の前の吸血鬼へと意識を注ぐ。

再び溢れ出す黒の群れ。
次々に異形を形作るそれは、一息にアルカードへと肉薄する。白木の杭に、次々に打ち抜
かれていく自らの一部を認識しながらも、アーカードは止まらない。
低い嗤いが周囲を埋め、ただ闘争だけがそこに残る――
アーカード(M) vs アルカード(M)  〜DanceDanceRevolution〜
レス番まとめ
>289>290>291>292>293>294>295>296>297>299>300
>302>304>307>308

くっ……くはっ。
くははははは。あははははは。
まだだ。まだダンスは終わらない――
【ウー大殲】
>276 >277 >278 >279 >280 >281 >282 >鳩 
 
 ――――既に教会は混乱の坩堝と化していた。
 
 弾ける火花、響きわたる銃声。
大小さまざまな口径の弾丸が乱舞する。
 
 さっき弾丸を撃ち込んだトロイがお返しの銃撃を放つ。
ハントは椅子の一つに隠れそれをやり過ごす。
そしてお返しの三連射。 

「チッ、もう何が何やら!」
 
 ハントは舌打ちを漏らす。
この状況ではターゲットの確保どころではない――――しかも、
 
 更に教会の各所から新たなる乱入者……ヤケに神父が多いのは気のせいか?
 
 そんな埒もないことを考えた次の瞬間……教会の壁が爆発。
そこから別の相手(>280)がP90なんて物騒な物を乱射しながら乱入してきた。
ハントはダイブ。椅子の陰から椅子の陰へと移動する。
 
 ――――仕方がない。まずは敵の排除からだ。
 
 ハントはターゲットの確保を一度断念して敵対者の排除に行動を切り替える。
どっちにしろ、この状況からターゲットを連れ出せる奴なんかいやしない。
 
 ――――まずはP90を持ったあの男!
 
 ハントは長椅子から身を起こしP90を持つ男(>280)に二丁拳銃を乱射する。
 
 あの男――――シグモンドは教会の壁を爆砕して入ってきた。
それは強力な爆発物を持っていると言うこと……教会の内部で使われたらひとたまりもない。
 
 同時に長椅子から飛び出し先程天窓から乱入して早々に殺られた女の方(>286)に向かう。
あの女はサブマシンガンを持っていた。手持ちの火器が乏しい現状だ。確保する必要がある。
ウー大殲
>286>306
 
女が死んだのを見て少しがっかり。
全くもったいない。
かわいいピーチ。彼女なら何時間だって食べられたのに。
 
起きあがり油断無く周囲を見まわして状況を確認。
判断結果、教会内部は混乱の極み。
みんなが好き勝手に相手を決めて銃を撃ってる。
これなら、どさくさ紛れにイーヴァを連れ去っても気付かれない、か?
 
そう思ってイーヴァの手を掴もうと見を屈めたその時だ。
ジョンが飛び込んできたのは。
白馬の王子さまか、くそッ。
目の前の長椅子を飛び越え、その陰に隠れる。
 
やつは、ジョンは?
向こう側だ。
俺と板一枚隔てた反対側。
我知らず、くっくっく、と笑いが漏れた。
 
「なあ、ジョン。
 この状況はおれたち二人の関係によく似てないか?
 そう、ちょうどこの薄い板っ切れ一枚で隔てられた今の状況はおれたちの 関係そっくりだ……」
 
スチェッキンを投げ捨て、右手に持ち替えたスプリングフィールドの
弾倉を交換しながらおれは言う
 
「おれとお前は似たもの同士だ。
 銃の使い方を知ってて、殺しがなにより上手い。
 どういう因果か殺しあっちゃあいるが、実の所おれたちの違いは
 微々たるもんだ」
 
スライドストップを外し初弾が薬室に送り込む。
その音を聞きながら、おれは続けた。
 
「おとなしく殺し屋稼業にもどれよ、ジョン。
 似合わんぜ、守るなんてのは。
 あのガキを攫って、クライアントに引き渡そうじゃないか」
312名無しクルースニク:02/07/14 22:39
>305 ラルヴァ
 
 「吸血鬼を追っている」「人を殺したい訳じゃない」――一方的に言い放たれた。
 セレクターをロックして、女性は静かにSMGを下ろす。
 無駄な肉一つなく、ほっそりとモデル然とした身体を包んでいるのは、体のラインも明らかな
漆黒のボディスーツだった。提げられたSMGは如何にもアンバランスで、どこか――美しい
死神を思わせる。
 敵じゃ――ない。
 ……成る程、当然だ。キャスターでもなければ、ロングファングが女という話も訊いてない。
 なら――結論は一つ。
「……くそ――こんな所に、何で」
 歯噛みして、青年は静かに言い放つ。
「――帰って下さい。連中を殺すのは俺達の領分。
 コレ以上関わるなら――死ぬ事になります。ですから」
 
 言って、青年は弾かれたように教会へと駆け出している。
 既に全開済みの扉の正面、聖堂の中に視線を走らせた。
 ――見付けた。
 キャスター=トロイ。肝心の標的は、信者席越しに向かい合う黒コートの男と既に交戦中。横
合いから側頭部に一発入れれば、呆気無く幕――コートの男の脇でがくがくと震えている少女
に視線を移して、上げかけたグロックを留めた。あの男が見方という補償は無い。
 
「……どういうオハナシなんだよ、コレは」
 
 肩を竦めたくなった。
 朧な月明かりの中――一言で言って、三流以下の喜劇か、五流の映画監督が作った、D級
以下のコメディムービーが展開されている。
 キャスター。黒コート。正体不明の神父に、司祭服の女性――知っていた。教皇庁、「神罰執
行機関」のシスター、ハインケル=ウーフー。手当たり次第にマズルフラッシュをブチ撒ける死
神の姿は、何度か見知っている。何をしに来たのか――13課の連中の考える事は一つ。ゴミの
死体を増やす事。
 鼻を、鉄錆めいた臭いが掠めた。
 死臭。周囲に転がる、血袋と化した死体。
 立ち込めた死臭が、温い風に運ばれて聖堂から脱出していく。
 ……何とも最低のストーリー。
 
 視線を正面に移して、それは確信へ。
 仰向けに倒れているのは……ああ、何で――ロングファング?
 滑稽。
 天を一度だけ仰いで、その状況に失笑した。
 成る程、「感染源」の大吸血鬼サマは、クマに襲われても生き残れるだろう。
 死んだフリをする吸血鬼。――フリ?
 
 ――いや。
 
 青年の両手が、霞む程の速度で背へと回されていた。一挙動で抜き放たれた両手のグロックが、
0.1秒で「死体」をポイント。
 
 ――本当に、「消えろ」。
 
 連続するマズルフラッシュが、喧騒の中へと混じって輝いた。
313ビリー・龍 ◆lOnGFAng :02/07/14 22:51
【ウー大殲】
>312

 どうやら死んだフリもこれまでらしい。

 連中が俺の居場所にどういうわけか鼻が効くように、
 俺も連中――狩人にはどういうわけか鼻が効く。
 くせぇ・・・狂信者の臭いだ。
「マクスウェル――もういいぜ」

 言い終わる間もなく向けられる銃口。
 右手の銃の台尻で床を叩き、俺は反動で転がった。
 それを追う弾着、弾着、弾着・・・

(短気なこったぜ、まったく・・・)
 信徒席の影に転がり込む。
 体がどうにも重い。さっき撃ちこまれたタマが効いている。

 席の上から銃口を突き出す。
 R&V92型、50口径エンチャントマグナム。
 標的は神父のナリをした狂信者。
 周囲の銃声を圧し、野太い銃声が教会に響き渡る。
ウー大殲 >305 ラルヴァ >312 名無しクルースニク
 
 片手間に両手の引き金を引き続けながら、辺りを見回す。
 噂のガキは物陰にでもいるのか、姿が伺えない。
 そして、祭壇近くでやりあっている二人。
 壁を派手にぶっ壊して入ってきた奴。
 さらに首を巡らせ――視界に入ってきたカソックの白に理性が漂白された。
 隣にいる雌吸血鬼も、地に倒れ伏したクソ吸血鬼も一瞬にして視界から追いやられる。
 
 クルースニク、人間の皮を被った化物、猊下のお気に入り。
 人間面して同じ神を崇めようとする化物、化物。
 化物、化物、バケモノ――。
 
 今なら、合法的に奴を殺れる。
 そう、この乱戦の中でなら誰が殺ったかなんて知ったこっちゃない。
 例え私の銃弾が検出されたとしても、流れ弾とでも跳弾とでも言えばいい。
 戦場での同士討ち、別に珍しい事じゃない。
 
 自分が狂気に墜ちていく過程を自覚しながら。
 視線はまっすぐに、妙にスローモーに見えるクルースニクを射殺さんとばかりに。
 
 飛び交う銃声、銃声銃声。
 五月蠅い、五月蠅い、五月蠅い五月蠅い五月蠅い五月蠅い!
 腕が自動的に跳ね上がり、横打ちに構えられた拳銃が白をポイントし……。
 
 トリガー、空薬莢が宙を舞う。
 
 トリガー、空薬莢が宙を舞う。
 
 トリガー、空薬莢が宙を舞う――。
 
 あの白いカソックを血に染め上げてやれば、それはどんなに綺麗だろう。
 暴走するアドレナリンに身を委ねながら、狂笑と共に銃弾が白を貫かんとする。
ウー大殲 >311 対キャスター・トロイ

 カチカチとトロイが弾丸を再装填する音が背中越しに聞こえてくる。
 俺もベレッタの弾丸を再装填させる。
 ――ふと、痛みに悶えて怯え切った彼女と視線が合った。
 今や彼女が痛みを感じる、ということを不思議だとすら思わない。
「……」
 なぜか、今までつけていたサングラスを放り投げた。
「これ……?」
「持ってろ」
 この行動にまるで意味はなかった、有るとするならば、それは胸糞悪い
死の予感に逆らったという事なのかもしれない。

「なあ、ジョン」
 ――トロイが突然俺を呼びかけた。

「おれとお前は似たもの同士だ」
 ――黙れ。

「おとなしく殺し屋稼業にもどれよ、ジョン」
 ――殺し屋に戻る、それは一見この上なく魅力的な提案に見えた。
 そうだ、目の前のロボットがどうなろうか知ったことか。
 この仕事が終われば俺は晴れて解放される、そうしたら母と妹に逢い、
一生を平和に、穏やかに暮らす。そのつもりだ。

「断る」
 しかし、俺の口から飛び出るのは強い否定だ。
「お前と俺は確かにほんのわずか違うさ、トロイ。
 俺は走狗(いぬ)でお前は薄汚い豚野郎だ」

「そうかい」
 トロイの声は嬉しそうだった。

 この瞬間、俺のフィールドにはトロイと俺しか存在しなかった。

 激しい勢いで椅子を蹴って座りこんだまま躰を反転させる、
 長椅子で、トロイの姿は見えない。
 けれど、トロイがどういうスタイルでどういう風にこちらに狙いを付けているか、
それは何故か分かった。
 恐らく、俺とまるで同じように銃を構えている。
 逡巡も、恐怖も、哀しみもなく、俺は機械のようにベレッタの弾丸を全弾長椅子に
撃ち込んだ。
 ほぼ時を同じくして、向こう側からも銃弾が襲い掛かって来た。
 座りこんでいた俺に避けられるはずもなく、脚・脇腹・肩に弾丸が叩き込まれた。
316ラルヴァ ◆LARVAIdY :02/07/14 23:16
ウー大殲
 
>312 名無しクルースニク >313 ビリー・龍 >314 ハインケル・ウーフー
 
神父は私を追い越す勢い……いや、実際に追い越していった。
 
『連中を殺すのは俺達の領分』?
教会にも「狩人」がいると噂だけは聞いた事があるが、彼はその「狩人」なのだろうか。
 
 
神父は美しいとも言える動きでグロックを構え、マズルフラッシュで辺りを照らす。
だが、その光は一方向からでは無い。
 
ロングファングとおぼしき男。
狸寝入りをしていたそいつが、一瞬で跳ね起きて反撃を仕掛けてくる。
 
そこまでは予想の内だが、司祭服の女性までもがこちらに銃を向けている。
―――教会がこれほど物騒な場所だとは知らなかった。
 
私の手は、SMGを跳ね上げようとして……一瞬躊躇する。
 
ポジション取りが不味い。
神父のスピードを読み損ねた私は、彼を射線上に入れてしまっていた。
 
「くっ…」
 
その判断の後れは致命傷。
私に残された時間は秒を切っている。
 
 
そして、私が選んだ行動は―――
 
「危ない!」
 
神父をわずかに突き飛ばす事だった。
 
 
私を引き裂く弾丸は、当然ただの鉛玉ではない。
殲鬼になろうとしている身体の再生を、銀の弾が阻害し始めていた。
ウー大殲
>315
 
“そうかい。なら……殺しあいだ!”
 
胸のうちで叫んだ。
アドレナリンが大量に分泌される。
一秒が何倍にも引き伸ばされる。
振り向く。後ろに飛ぶ。
背中で長椅子をなぎ倒しながら銃撃。
左手で腰の後ろからもう一丁のスプリングフィールドを引きぬいてさらに銃撃。
 
最初に弾が当たったのは左肩だった。
弾着の衝撃でおれの身体がくるりと回る。
左手のスプリングフィールドがどこかへ行っちまった。
 
銃撃の途切れた一瞬。その瞬間にジョンの弾丸が無数に降り注ぐ。
腹、胸、肩、腕、お構いなしに。
かけていたサングラスが跳ね飛んでいくのが、何故かゆっくりと視界に焼きついた。
 
銃口が空に向く。
意識に反して筋肉が痙攣し引き金が引かれた。
銃声。たちこめる硝煙の匂い。
そして響く鐘の音。弾が当たったのだと理解した。
 
その鐘は死者への弔い。最後のはなむけ。
もっと鳴らしてくれ。あと12回鳴らしてくれ。
 
「鳴らしてくれよベイビー……ベイビー……」
 
暗転する意識。
薄れていく感覚。
俺は虚無に包まれる。
 
 
                   (キャスター・トロイ:死亡)
318イーヴァ ◆OCEg7EVA :02/07/14 23:24
>284 >285 >315 
まず背中に衝撃を感じた。
思ったよりも遥かに軽いそれに安堵した瞬間、イーヴァの無防備な腹部に女が着地。
酸素が全て吐き出され、あまりの衝撃に視界が黒く沈む。
だが、EG7であるイーヴァはこの程度では意識を失えない。
必死で酸素を取り込もうと浅い呼吸を繰り返す身体が軽々と持ち上げられ、ようやく光を取り戻した瞳が揺れる風景を捉える。
背中には女の身体越しに壁の感触。
女が手榴弾を投げるのを他人事のように眺めた。
 
しかし、爆音が耳を灼きつくすより速く脚に熱い点のようなものを感じる。
それが目の前に飛び込んでくる男が撃ち込んだ銃弾だと気付いたときには、もう痛みのあまり立ってなどいられない。
あっけなく崩れ落ちると貫通した銃弾に脚を砕かれたらしい女がのしかかってくる。
だが、イーヴァはそれどころではない。
痛みに食いしばる歯の間から、呻くような泣き声を押し出す。
どくどくと血色の水を垂れ流す傷口を必死に押さえた。
だが、目から垂れ流される塩水は抑えることは出来なかった。
 
……気がつくと目の前で一人の男が鬼気迫る表情で銃弾の再装填していた。
思い切り唐突にサングラスが放り投げられる。
反射的に右手で受け止める。
サングラスを放ったのがさっきベレッタを貸してくれた男だと気付くのに一瞬の間が必要だった。
持ってろ、と言われる。
何故?、と問う間もなく数え切れないほどの閃光。
銃撃戦というにはあまりにもシンプルな撃ちあいが目の前で展開される。
サングラスをくれた男が幾つもの銃弾をその身に受ける。
もう絶叫するような体力はイーヴァに残っていなかった。
涙が頬を伝う。
319シグモンド ◆ZyGunDog :02/07/14 23:26
>310イーサン・ハント
天窓からやって来た女(>286)が死んだようだが…。
全員サングラスだらけの中で一人流れるように動く男がこちらに向けて弾幕を貼った。
二挺拳銃の乱射に椅子を蹴り飛ばして遮蔽を取る。

「ちっ、まだまだ減ってないとはな!」

一網打尽に出来なかったのは痛い。
教会内で火竜両儀筒はそうそうぶっ放せない。
デカ過ぎる火力というのも考え物だ。

資料の中にあったイーサン・ハント目掛けてP90を片手でぶっ放しながら応戦する。

奴が死んだ女の方に走ったのは―――火器を仕入れる為だ。
マシンガン持ちは厄介なんでな。

>312クルースニク >314ハインケル
視界の中にはカソックが二つ。 
神など信じちゃいないが―――――バチアタリどもめ。

「まったく困ったもんだ。神父様方がドンパチやるなんてな!」

残った片手でSIGSAUERを抜き弾幕の合間にぶっ放す。
説教台近辺(>318)にガキが一人もがいているのが見えた。

本当にロクデナシどもだ…ガキを巻き込むなんてな。
苦笑をしながらガキの方まで向かう。
ウー大殲
>315 >317 
 
ミサ室の中央をわいは軽やかに走る。
女の子は痛みと恐怖で震えとる。
早ういかんと、心がもたへんで!
 
その時、わいの視界の隅で長椅子ごしに撃ち合いしとるおっさんらが見えた。
一人はほぼ即死やったが、もうひとりの方は、
腹とか打ち抜かれてはいるものの、まだ息があるようやった。
どうやらあの子を守ろうとしてたみたいや。
わいはそのおっさんの傍に座り込むと、
おっさんを揺さぶった。
 
「傷は浅いで、しっかりしや!」
321名無しクルースニク:02/07/14 23:39
>313 ビリー >314 ハインケル >316 ラルヴァ
 
 ロングファングの身体が、ビックリ箱のように跳ね起きた。
 ゼンマイ仕掛けのオモチャめいた動きで速射を回避しながら、起き上がり様にハンドガンを
構えている。――大口径。
 腕の動きから射線を予測、トリガーのタイミングで回避。
 口元を歪めつつ、青年は両手のグロックを同時にポイント。
 マガジンに込められた銀の弾丸が、空薬莢の交響曲を奏でて暴れ回る――
 
「――な――」
 
 横合いからの不意の衝撃に、バランスが崩れた。
 前後する銃声――隣で、血飛沫を巻き上げる女性。銀の髪。さっきの――
 
 何を、
 何をして、
 どうして、彼女が――?
 思考を一気に洗い流された。ロングファング殲滅を片隅に追いやって、ロングファングとは明ら
かに別の位置からの射線を認識する。
 彼女の手当てを――遅い。真に助ける事を望むのなら、それは後回し。
 振り返って告げた言葉は、自分でも呆れる程に冷静だった。
 
「……何のつもりですか、シスター」
 
 言葉は、共に主へと仕える同業者に向けられた物だった。
 何のつもり? 何を改めて再確認する?
 あぁ、この状況。この感覚。何を疑うまでもない。シスターに銃を突き付けられてるだけの話。
 呆れ返るほど単純な理屈に、ロジックが壊れた再構築を掛ける。
 
 間違っている、セカイ。
 
 壊れてる。
 だって――じゃあ、俺の右手は、どうしてシスターの額をポイントしてるんだろう。
 白い。
 頭の中が染まって行く。白。白。白。白。構築されて行く、似非の世界。
 イカレてる。嫌だ。銃を下ろしてくれ、シスター。頼むから――
 そうじゃないと、俺は。
 
「…………殺すよ、シスター」
322:02/07/14 23:45
(ウー大殲:乱入) 
 
 驚き、跳ね上がったのが運の尽き。 
 迫り来る鉛の帯はあっけなく白い体に突き刺さった。 
 
 羽根が散る。 
 白の羽根が夜の大気に広がり、辺りの空間を支配した。 
 白、
 白、
 白。 
 何処までも白。 
 
 羽根が落ち、晴れ、再び銃声が戻った時、残るは鳩の残骸のみだった。 
  
(鳩:死亡)
ウー大殲 >315 >317 >318 >320
 まずい……。
 苦痛を感じない。苦痛を感じている内はまだいい、生きていくのに
危険信号が点灯しているという状態だからだ。
 感じない、ということは最早危険信号を打たなくてもいい、という事。
 即ち、

「……だめだな」

 死ぬという訳だ。
 さて……。背後では未だ銃声が鳴り響いている。彼女を連れて逃げること
ができるほど、自分の力を過信できない。
 彼女を見る。
 まだ泣いていた。……まあ、年端もいかぬ少女だ。
痛みをコントロールするのは難しいのだろう。
 俺のように。
 ばたばたと足音が聞こえ、反射的に銃を構えようとする。
 が、握り締めたはずの拳銃は力なく床に滑り落ちた。

「傷は浅いで、しっかりしや!」

 駆け寄ってきた男が、訛りだらけの言葉で俺を揺さぶる。
「いや、いい。自分の体は自分がよく分かっている」
 男の目を見た。
 ……信用しよう。
「それよりこの娘を頼む、安全な場所に、分かるな?」
 イーヴァを抱き寄せて、かつて妹にやったようにそっと顔を撫でてやり、
それから男に彼女を押し付けた。
 男が頷く。
 ハンカチを取り出し、力が抜けても拳銃が滑り落ちないようにしっかりと
右手に縛り付ける。
「……1、2、3で飛び出せ。1、2の……」


「3!」
 俺は立ち上がって、両手のベレッタをこれで最後とばかりに手当たり次第
撃ち始めた。
324ラルヴァ ◆LARVAIdY :02/07/14 23:55
ウー大殲
 
>313 ビリー・龍 >321 名無しクルースニク
 
銀の弾を抉る時間はない。
私は全身を蝕む鈍痛に耐え、立ち上がった。
 
神父は司祭服の女性の方へ向かったらしい。
―――ならば、私は彼の分まで本来の仕事をするとしよう。
 
「ロンフファング!」
 
ロングファングがこちらに向けている馬鹿みたいに大きな銃口を
神父ではなくこちらに向けさせる。
 
「ここは教会よ。貴方や私には相応しく無い場所だわ」
 
同時に、フルオートで両手のSMGから八つ当たりとばかりに銀の弾丸をはき出す。
 
「でも、灰に帰るには丁度いい場所かもね」
【ウー大殲】
>318 >319 >320 >323   
 
 ――――ハントが駆ける。
その後を追うようにP90の高速弾が床や壁に風穴を開けていく。
 
 わずか数メートル……それがヤケに遠く感じる。
飛び交う銃弾も閃くマズルフラッシュもまるでスローモーションだ。
 
 ――――まだか。
 
 シグモンドのP90は確実にこちらを捉えようとしている。
火力が違いすぎる。ベレッタだけでは応戦しきれない。
 
 ――――チュンッ
 
 こんな音が聞こえた……少なくともハントの聴覚には。
太股に掠るように通り抜ける弾丸。皮膚が裂け血が吹き出る。
切るような痛みと共に全ての光景が加速して元に戻った。
 
 思わず転倒しそうになるハント。
それを堪えまるで転げ落ちるように女の死体の元に駆け寄る。
床に倒れながら女の持っていた2丁のサブマシンガンを両手に取る。
 
 上半身を捻りながら二丁のサブマシンガンをシグモンドに向けて発射しようとして……
ハントは己が今居る場所を悟る。

 苦痛に呻く少女。その側にいるジョン・リー、そして神父風の男――――ウルフレッド。
 
 ハントは反射的に右のサブマシンガンを二人の男に向ける。
そして――――左のサブマシンガンはシグモントに。
 
 刹那の睨み合い……長い刹那ではあったが。敵か……味方か。
 
 それを破ったのはジョンの発した声。
 
「1、2の……3!!」
 
 ジョンがベレッタを撃ち放つ。
それに応じてハントもサブマシンガンをジョンに。
 
 全てが動き始めた。
ウー大殲 >313 ビリー・龍 >316 ラルヴァ >321 名無しクルースニク
 
 白が、もうすぐ赤くなる……その様をハインケルは幻視した。
 だが、現実に赤くなったのは黒。
 しかも、雌吸血鬼。
 
「邪魔するな……ッ!?」
 
 吹っ飛ぶ雌吸血鬼の後ろから、歩み出てくる白。
 なるほど、イイ度胸をしている。
 もっとも、女の前でいい格好をしたいだけかもしれないが。
 
「何のつもり? あぁ、そこの雌吸血鬼と一緒にいたモンだからねぇ」
 
 皮肉気に笑みを刻む。
 
「てっきり、猊下のお心に背くつもりじゃないかと思ったんだよ」
 
 油断なく二挺の拳銃を構えながら、一歩、歩みを進めた。
 白の銃口は、小揺るぎもせずに眉間をポイントしている。
 それでも、ハインケルは前へ、前へと歩みを進める。
 
 銃弾が、サングラスを跳ねとばした。
 ハインケルは前へと進む。
 
「殺す? バカ言ってんな。殺すのは私、殺されるのはおまえ」
 
 ハインケルの眼前に白の銃口。
 白の眼前にハインケルの銃口。
 
「バケモノを殺すのは、いつだって人間だ」
 
 互いの銃口が明快に互いの命を奪える場所で、じっと白の目を見つめる。
 ピクリとも動かない二人……動くときがどちらかの死の始まりだ。
327ビリー・龍 ◆lOnGFAng :02/07/15 00:18
【ウー大殲】
>324 ラルヴァ

 <ロング・ファング>、か。古い名だ――
 ニィと笑って、返す。
「お宅みたいないい女と一緒なら、それも悪くないかもな」

 即座に向けられるSMGの銃口。
 やれやれ、口説き文句だったんだが・・・

 SMGの弾着に信徒席が粉砕され、俺は飛び出した。
 横っ飛びに、目指すは反対側の信徒席。
 空中で、赤く光る目に向け、引き金を引く。
 
 一発――上にそれ、


 二発――手前の椅子の背に阻まれ、



 三発――女の肩に着弾。

 同時に俺の脇腹を銃弾が抉り、俺は信徒席の影に再び転がり込む。
 Eマグを排莢、リロード。
 低い姿勢で走り、位置を変える。
ウー大殲
>318 >319 >323
 
『それよりこの娘を頼む、安全な場所に、分かるな?』
 
おっさんはそう言うて、女の子をわいに押し付けた。
もう、こうなったら頷くしかあらへん。
わいは十字架からもう一丁、ハンドガンを取り出し、
バーを引く。これでOKや、後は引鉄を引けばええ。
 
見ると、すでにくたばっとる女と手錠でつながったまんまや。
これじゃ動きにくくてしゃあない。鎖の部分を拳銃でぶち抜く。
 
「えろうすまん、こんな方法で堪忍な」 
 
わいは謝りながら一丁を女の子に渡すと、おっさんの掛け声とともに走った。
目指すはポニーな兄ちゃん(>319)の作った大穴や!
329シグモンド ◆ZyGunDog :02/07/15 00:29
>323ジョン・リー >325イーサン・ハント
カミカゼでぶっ放されたベレッタの弾が右の肩口を抉る。
一瞬停滞するが構わずに走る。
最高にいい気分なんだ。

―――オレよ、痛み程度で止まってくれるなよ?

たどり着いた先にはくたばりぞこない(>323)とさっきのガキ。
バカデカイ十字架を背負った男がイーサン・ハントとにらみ合っていた。

接近に気付いたイーサンが左手でオレにMP9を向ける。
この緊張感がたまらない。

『1、2の……3!!』

感覚が加速して飛んで来る銃弾すら見えた気がした。

「―――ハッ!最高だぜ」

説教台のほうまで横に飛びつつP90とSIGSAUERをイーサンへぶっ放す。
330名無しクルースニク:02/07/15 00:31
>326 ハインケル
 
「――――――――」
 
 目の前に、吸血鬼。この、女は――
 逡巡。
 先までの彼女は? 間違い無い。この人だ。なら――この気配は?
現実を見ろ。戯言を吐くな。お前の頭はどうかしてるのか? この女が吸血鬼。単純でシンプル
で余りにも明確。血が告げてるだろう?
 二刹那の逡巡、愚行。三刹那の躊躇い、情けない。
 殺せ、早く/彼女は、一体――
 馬鹿か、お前は/吐かすな。
 
 ――俺は――俺だ。
 
 故に、意識は正面――「十三課」のシスター=ハインケルへ。
 
 銃口の虚は、互いの額をポイントしている。
 距離は2メートル。回避する方法は皆無。受ける方法は絶無。
 どちらかが僅かに早くトリガーを引き絞った所で、己の頭部を生贄に、互いの頭部
を破壊可能。
 命の綱渡り。陳腐に過ぎるシチュエーション。
 
 久遠に続くかと錯覚した膠着は――意外な程にアッサリと打ち切られた。
 
 ――バケモノ。
 
 最初に会った時――綺麗な髪だな、と思った。微妙に香るのはヤニの匂い。
 ああ、女性がタバコは感心出来ない――違う。
 今――この人は、何と言ったのか。
 イカレてる、この世界が。イカレてる。螺子を巻き過ぎたゼンマイ仕掛けの鳩が、
部品をバラ撒きながら向背の湖へと沈んで行く。
 ……壊さないと。
 俺の――壊れ掛けた世界を、今直ぐ修正しないといけない。
 
「……シスター。俺は今、一つだけ解ってる事が有ります」
 
 つまり――今考えている事実は、呆れ返るほどにシンプル。
 単純過ぎるロジックは、思考へと、一つの答えをトレースする。
 怪訝そうに眉だけを動かしたその双眸へと、青年はシニカルな笑みを投げ掛けた。
 
「――イイ加減、腕が疲れた」
331ラルヴァ ◆LARVAIdY :02/07/15 00:34
ウー大殲
 
>327 ビリー・龍
 
大砲みたいなその拳銃は、着弾の衝撃も尋常ではなかった。
人間の身体のままだったら、殲鬼にもなれずにショック死していたかもしれない。
 
椅子を木っ端微塵にしながらも、私はトリガーを引き続ける。
 
一瞬でホールドオープン。
おそらく一発も当たっていないだろう。
 
この左腕ではマガジンチェンジはしばらくはできない。
舌打ちをしながらも、スーパーレッドホークを抜く。
私の体格には不釣り合いとよく言われるが、吸血鬼相手にはやはり「大砲」が必要なのだ。
 
特大の轟音と共に、信徒席に.454カスール弾を撃ち込む。
 
教会の椅子に鉄板が仕込まれているなどという話は聞いた事がない。
殺傷力は十二分だろう。
『ウー大殲』
>286>310>317>318>319>320>323>328>329


もう一度、状況確認。
天窓を突き破ってラペリング降下してきた女は、既に死んでいる。
その女を撃ったキャスター・トロイも既に死亡。
彼と大立ち回りを演じて見せた東洋人は、致命傷を負いつつも
駆け寄って来た男に少女を預け、カミカゼアタック。

更にそこに飛び込んでくる男は、足許のベレッタMP9を拾い、
既に両手に構えている。

この状況で、障害になりそうなのは・・・・・・
飽くまで冷静に、冷酷に排除を選択。

少女一人を抱えたままでは逃げ足も自然遅くなる。
それよりもMP9を構えた男と、SIGハンドガンとP90の
ポニーテールの男が厄介だ。

二人に向け、左手のモーゼルで弾幕。
しかる後に、『聖銃』にて排除。
行動決定。

「さて、それでは行動開始だな」
ウー大殲 >328 >329

 立ち上がってベレッタを撃つのとほとんど同時に、あちこちで銃弾が錯綜し始めた。
 撃つ者、
 撃たれる者、
 撃とうとする者、
 撃たれようとしている者、
 撃たれた者、
 撃たれなかった者、

 俺は撃たれた者だった。
 イーヴァと、男は撃たれなかった者だ。
 ……なら、それでいいか。

 サブマシンガンの小さな弾丸が無数に俺の躰を犯した。
 ベレッタを放り棄て、最後のベレッタ二挺を引き抜く。
 腕を交差させて、あらん限りの力を振り絞って二人の障害になりそうな
連中に撃ち捲くった。
(やはり、俺もお前と、同類――か)
 最早熱は感じない、痛みはとうにない、冷たさすら存在しない。
 真っ暗闇。
 落ちて行く。
 膝を突いた。
 前のめりにゆっくりと倒れ、床が顔にくっついた。
 一瞬、妹の笑顔とイーヴァの笑顔が重なる。
 後は頼むぞ、名も知らぬ男……。
 そこで俺の意識は途絶えた。

                       ジョン・リー(死亡)
334イーヴァ ◆OCEg7EVA :02/07/15 00:50

ウー大殲 

>323 >328 >333
重い何かが床に落ちる音で我に帰る。
床に転がる拳銃と、とんでもなく大きな十字架を担いだ男が走り寄ってくるのが見えた。
十字架を担いだ男はサングラスをくれた男よ何事か言葉を交わしている。
 
旧知の仲ってわけじゃないみたいだけど……。
 
イーヴァは頭の片隅でそんなことを考えている。
脚の傷は擬似体液が流れすぎて、最早曖昧な痺れとしか感じない。
と、サングラスをくれた男がまたしても唐突にイーヴァを抱き寄せる。
あまりのことに身じろぎすることも出来ないでいると、優しく頬を撫でられる。
思わず覗き込んだ瞳はイーヴァでない遠い誰かを見つめているようだった。
 
十字架を担いだ男は素早くハンドガンをイーヴァに手渡し、女と繋がれた手錠の鎖を銃で打ち壊した。
イーヴァも痺れる脚に精一杯の力を込める。
 
「……1、2、3で飛び出せ。1、2の……」
 
 
銃声が飛び交う中、拡散しそうになる意識を掛け声に集中させる。
 

「3!」
 

引き摺られるようにして壁の大穴を目指して必死に走る。
後ろは振り向かない。
振り向いたら、崩れ落ちてしまいそうな気がしたから。
ウー大殲 >330 名無しクルースニク
 
「あぁ、全く同感だねぇ」
 
 ジリ、ジリと高まっていく緊張感の中、それでも表面上は平静を装って言葉を紡ぐ。
 突き付けた、突き付けられた銃口は互いに動かずに。
 殺意の渦だけが何処までもボルテージを上げていく。
 
「それに、あんたとお見合いしてるってのもいい加減まっぴらだ」
 
 これ以上、一分一秒たりともこのバケモノを直視していたくない。
 吐き気がする、唾を吐きかけたくて、中指を立てたくてしょうがない。
 
 ――引き金に掛かった指を引きたくてしょうがない。
 
 衝動は、あっさりと行動へ移された。
 足に力を込め、床を蹴る。
 横に見える長椅子の向こう側めがけて跳躍しながら、トリガートリガートリガー。
 反撃は、椅子の向こう側に転げ落ちてから返ってきた。
 椅子を抉る銃弾は、しかし決してハインケルには届かない。
 身を隠しながら、椅子から椅子の間を走り、姿を隠す。
 とある長椅子の前で立ち止まり、まずは一息ついた。
 
「大した度胸してやがる……さて、と」
 
 本当に一息だけの時間の後、目前の椅子を改める。
 ……間違いない、この椅子だ。
 
「さてと、最後の仕上げの準備といくか」
 
 ようやく、この手でバケモノを殺せる。
 うれしさのあまり、気が狂いそうだった。
336ビリー・龍 ◆lOnGFAng :02/07/15 00:54
【ウー大殲】
>331 ラルヴァ

 俺の走る傍から信徒席が撃ちぬかれる。
 応射した。二重に響き渡る銃声。
 残弾はラスト5発。

 席が途切れたところで足を止め、膝立ち、精密射撃。
 ジャムる寸前の勢いで一息に発射された弾丸。

 相手の銃弾が頬をかすめ、心臓をはずれて左胸を抉り・・・
 俺の銃弾は、女の持つ銃を弾き飛ばしていた。

 だが、こっちも弾切れだ。
 俺は、壁にあたって跳ね返ったスーパーレッドホークめがけ走った。
 一発ぐらいは残っていろよ、と、祈りながら。
【ウー大殲】
 
>329 >332 >333 >334
 
 ――――全てが加速する。
 
 ジョン・リー、そしてシグモントの銃が唸りを上げる。
襲い来る弾丸、それらは一瞬でハントの左腕を食い破る。
走る激痛、舞い上がる血煙、左手のサブマシンガン――――ベレッタMP9が地に落ちる。
 
 同時にハントの右のMP9も火花を放つ。
ジョンの胴に音もなく吸い込まれる弾丸。
 
 ハントはその結果を確かめる間もなく右手のMP9をシグモントに向けて振る。
トリガーは引きっぱなし。シグモントに襲いかかる数十発の弾丸。
わずか数秒で撃ち尽くされる。
 
 ハントの動きに停滞はない。
弾の切れたMP9を捨て、ジョンの持っていた拳銃を奪い取る。
同時に横に飛んで距離を取る。
 
 横目に逃げようとするターゲットとウルフレッドを捉えるが無視。
現時点で追いかけるのは危険だ。それに逃げてもすぐに探し出せる。
 
 ハントは油断無く視線を巡らす。
敵はまだ居る……こんな所で死ぬつもりはないが……
338名無しクルースニク:02/07/15 01:11
>335 ハインケル
 
 視界の中を、螺旋の起動を描いて弾丸が襲う。
 空間を抉るようにして迫る弾丸――ソレは、読んでる。
 上体を反らすように動かして、風を切る弾丸をやり過ごした。
 信者席の一つへ飛び乗ると同時に、足元の確認もせずに駆け抜ける。
 射線を放ちながら移動する白い風は、漆黒のカソックを纏った死神を補足する為に
直走る。
 信者席の数個を打ち砕き、側廊の壁画を叩き割り――
 両手のグロックが、殆ど同時にホールドオープン。
 
 ノロマな感覚がもどかしい。知覚に着いて来ない。イイ加減にしろ、くそ――
 
 ――バケモノ。
 
 ……ああ、シスター。俺は人間だ。人間なんだ。解るか?
 解らない? 俺を狙った?
 ああ、そう。
 
 何処に起因しているのかも解らない心中の混沌が、殺意をガソリンに変えて、全身を
無理矢理起動させた。
 グロックを交差させて投げ付けつつ、その両手はカソックの袷部分へと走っている。
 信者席越しの射線から逃れると同時に、青年は飛んでいた。
 人間の限界を無視した跳躍力で――教会の全てを見下ろせる高みへと。
 霞む程の速度で走った両手には、ピンを指先に引っ掛けたハンドグレネードが五つ、
左右の手に握られている。ピンを弾きながら全てを信者席へと投擲。
 走る腕は止まらない。
 カソックの内側に吊られた二丁のP−90を引き抜くや、両手は相対距離上のハンド
グレネードと黒いカソックとを捉えている。
 仮面のように無表情に――青年は、小口径の弾雨を撒き散らした。
339ラルヴァ ◆LARVAIdY :02/07/15 01:15
ウー大殲
 
>336 ビリー・龍
 
今夜はよくよく銃を無くす夜だ。
スーパーレッドホークは私の手を離れて宙を舞う。
 
ロングファングはそちらの方へ向かっている。
向こうの大砲は弾切れだろうか?
……お互いに無様な事だ。
 
私は最後の銃、ストライク・ガンと呼ばれる改造45口径を抜く。
同時に、痛む身体を引きずりながら走る。
 
どうやらロングファング程の吸血鬼ともなると
心臓か脳髄を吹っ飛ばさない限り、動きを止める事もできないらしい。
 
 
ゴールにたどり着いたのは同時だった。
 
ロングファングが下から突き上げるように銃口を向ける。
私は振り下ろすように銃口を突きつける。
 
 
銃声は一発のようにも二発のようにも聞こえた―――
340シグモンド ◆ZyGunDog :02/07/15 01:35
>328ニコラス・D・ウルフウッド >334イーヴァ
>333銃使徒シモン      >337イーサン・ハント

バカデカイ十字架を背負った男がガキを逃がす。

――どうやらまだまだ世界には希望が持てそうだ。

もっと希望をもつために生き残らなくてはな。
加速された感覚のまま、P90をぶっ放す。

イーサンがオレにMP9から獣たちを解放する。
死の顎が俺の楯にした説教台を次々に噛み砕く中、
獣の咆哮がやむ。どうやら弾切れらしい。
こちらも弾切れになっちまったらしくP90の弾倉を入れ替える。

「まだだ、まだ終わってくれるなよ?」

バケモノどもめ…。
オレはぞくりとする感覚に従い、ボロボロになった説教台を蹴倒す。
その際説教台に立てかけていた火竜両儀筒が、
先ほど(>319)開けた“出口”の方まで滑ってゆく。
惜しいが今は火力よりも数だ。
 
ガキと連れ立って逃げる十字架の男を逃がす為、
P90をライフルとモーゼルを持った坊主にぶっ放しながらハントにSIGを撃つ。

―――もう、護れないことで悔やむものか。
341ビリー・龍 ◆lOnGFAng :02/07/15 01:37
【ウー大殲】
>339 ラルヴァ

 重なった銃声、左胸で弾ける痛み。

 馬鹿が!――――心臓を、外しやがって。
 二発目を警戒する必要は無かった。
 俺の銃弾は、女の腹部に大穴を穿っていた。

 女の肢体が、俺のほうに倒れこんでくる。
 俺は自然に、その体を抱きとめていた。
 力が抜けていて、なんとも抱きごこちがよかった。
 女の体臭と血臭が、俺を、刺激した。

 と、首筋に痛みが走った。
 遠い昔に味わったきりの、思い出したくも無い感触。
 首筋から、熱が失われていく、小さな喪失感。


 ああ、そうだ――
 この女は、俺と同類だったのだ。

 俺は、左手を動かして女の頭を動かした。
 白い首筋。
 愛しさを込めて、その首に、俺は噛み付いた。
ウー大殲 >338 名無しクルースニク
 
 ――あぁ、ほら、やっぱりバケモノだ。
 だって、あんなに高いところに人間が跳べるワケがないんだから。
 白の両手が疾る、ハンドグレネードがハインケルを取り囲むように降り注ぐ。
 動こうとした瞬間、乱射乱射乱射乱射乱射。
 とっさに身を低くし、自覚した。
 
 死ぬな、と。
 
 ……ならば、ただで死んでやるモノか。
 バケモノ、バケモノ、バケモノ、殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す!
 
 長椅子の座席を乱暴に跳ね上げる。
 この椅子に座った信徒の誰が予想するだろう、自らの尻の下に凶悪な銃器が多数眠っているなどと。
 そこには、二挺の短機関銃、CZE Vz61 "スコーピオン"が黒い光を放っていた。
 乱暴にひっつかみ、セイフティを解除。
 銃口を頭上の白に振り上げ、引き金を絞る。
 二十発*2のサソリの棘が解放され、白に毒を注がんと殺到する。
 
(あぁ、残念だ……とても残念だ)
 
 そう、ハインケルは残念でたまらなかった。
 自分が放った殺意の結果を確かめられそうになかったから。
 何故なら、白が降らした殺意は、ハインケルの全身を余すことなく撃ち貫いていたから。
 右肩、左鎖骨辺り、銃を持つ右腕、左腕、腹、腹、右目、頭頂部、額、右足、右足、左足、左肩。
 手から、ポロリとスコーピオンがこぼれ落ちる。
 そして、それが自分にもたらす死を認識する前に、爆音と白光がハインケルを覆い尽くした。
 圧倒的な何かに飲まれていく意識の端に閃いたのは、聖書の一節、主がカインに告げた言葉。
 
「なぜあなたは憤るのですか、なぜ顔を伏せるのですか。
 正しい事をしているのでしたら、顔をあげたらよいでしょう。
 もし正しい事をしていないのでしたら、罪が門口に待ち伏せています。
 それはあなたを慕い求めますが、あなたはそれを治めなければなりません」
 
 意識が、消えていく……。
 最後に願ったのは、自らの魂が神の御許へと招かれること。
 神のために汚れた両手を、神に許してもらいたいと、消えゆく意識は願った。
 
 
                               ハインケル・ウーフー(死亡)
『ウー大殲』
>328ニコラス・D・ウルフウッド >333ジョン・リー
>334イーヴァ >337イーサン・ハント >340シグモンド


自ら死を覚悟した人間は、時に思いがけない能力を発揮する。
この東洋人の場合もそうだ。

両手のベレッタがまるで短機関銃の如き発射速度で襲いかかる。
左右上腕、及び右脇腹に着弾を確認する。

この身体に銃弾を浴びることも久しくなかったな。

奇妙な感慨を抱きつつ、モーゼルを銃撃。
崩れ落ちる東洋人を後目にベレッタの男、
そしてポニーテールの男に照準をスイッチする。

こちらに向けられた銃口は、ポニーテールのP90のもの。
そちらに左手のモーゼルを向け、右手の『聖銃』はベレッタの男へ。

交差した両腕の先、二挺の銃のトリガーを絞る。 
344ラルヴァ ◆LARVAIdY :02/07/15 01:55
ウー大殲
 
>341 ビリー・龍
 
傷の痛みのせいか、ほんのわずかだけ銃弾がそれた。
一方、ロングファングが握った私の愛銃は、持ち主だった私の腹部に大穴を穿つ。
 
熱い――― そして、ひどく暑い―――
 
わななくように唇を震わせるが、酸素が肺に入ってこない。
そして、酸素よりももっと欲しい物があった。
 
 
喉が…渇く。
そんな私を誰かが抱き留める。
 
誰だろう?
それは酷く優しい抱き方だった。
こんな風に、壊れ物のような扱い方をされるのは何年ぶりだろう。
 
視界は靄がかかったようだったが、私のしたい事は一つだけ。
 
 
私は、ごく自然な動きでその男の喉に牙を突き立てる。
そう。何年も会えなかった恋人が愛を確かめ合うように。
 
お互いがお互いの熱い血脈を感じあっていた……
ウー大殲
>334 >340 
 
女の子はわいの後を精一杯の速さで着いてきとる。
出来るだけ早う此処から逃がさにゃ、あのおっさんに会わす顔があれへん。
その時やった。背後からゴロゴロという音が迫ってきたんは。
 
咄嗟に女の子を抱きかかえ、脇へと転がる。
転がってきたんは馬鹿でかいライフルやった。
これ持ってたんは・・・・・・ポニーの兄ちゃんやったな。
わいは両手に握ったハンドガンをポニーの兄ちゃんに向けた。
 
「一体、何のつもりや!邪魔するつもりやったら、こっちにも考えがあるで!」
346イーヴァ ◆OCEg7EVA :02/07/15 02:49
 
ウー大殲

>337 >340 >343 >345

足が重い。
いつまで経ってもあの穴が近づかない。
体は熱っぽくて、関節はまるで錆び付いたよう。
擬似体液が随分減ってしまったから、せめて酸素を多く取り入れようと呼吸は浅く、速い。
何時まで経っても近づかない脱出口を見るのは止めて、前を行く人の背中だけに集中する。
 
背後からごろごろと言う音。
訝しがる間もなく十字架を担いだ男に抱きかかえられる。
脇に転がったのだろうか、いつもなら何でもないようなホンの少しの衝撃が今は辛い。
 
背後から転がってきたのはとんでもなく大きなライフルだった。
各部に中華風の装飾が施されている如何にも際物っぽい代物。
だが、今はそれに構っている暇はない。
必死に呼吸を整える。
少しでも多く酸素を蓄えるために。
再び走り出すために。
347名無しクルースニク:02/07/15 03:08
>342 ハインケル
 
 熱く焼けた錐が、一瞬で全身を貫いた。デタラメな角度から発射されたデタラメな
弾丸の掃射は、間違い無く全身を衝撃と熱のシャワーで洗っている。
 内臓へと粗方めり込んだ弾丸が赤い緒を引いて、数発が背に抜けた。
 爆風に包まれて散乱する肉片と木片との中へと、バランスを崩したままの身体は、
モノでもあるかのように自由落下して行く。
 視界が、霞んでいた。
 解っている事が、一つだけ――
 
「……存外に――面白い終り方か」
 
 白濁する視界。刻まれる意識。
 がり、がり、がり、がりガリガリ――錆び付いた意識――終局。
 
 詰まる所、この体はコレで終わりなのだ。異端者を殺し、バケモノを殺し、主の御許
で安らげる日が――漸く。
 静かに目を閉じて――視界の端、入り口で出会った女性と、ロングファングが網膜に
飛び込んで来た。
 
 ……安らぐには――残念ながら、早いみたいです、主よ。
 取ったアクションはと言えば、実に単純明快。人間の限界の壁を砕いて、アドレナリ
ンが全身をオーバーロード状態で強制起動させる。
 
「――Gloria in excelsis Deo――et in terra pax hominibus bonae voluntatis――」
 
 解っている事は――二つ在った。
 一つは、自分の終わりが近いという事。もう一つは――ヴァンパイアが残っている
という事。待った。……待て、ソレは駄目だろう、ソレは。ソレは、ダメだ。
 彼女がヴァンパイアだった――ソレは、確かなのだろう。ならば、せめて……自分に
出来る事と言えば、人である終焉を叩き付けてやる事。ロングファングには、ヌケガラの
意識の粛清を。
 ……あぁ、あれ? 三つか。まぁ、良いや。
 
「……Laudamus te.Benedicimus te.Adoramus te.Glorificamus te――」
 
 身体が軋む。
 ――主よ、俺は――このゴミ共を今からブチ殺します。
 
「……Gratias agimus tibi propter magnum gloriam tuam.Domine Deus,
 Rex caelestis, Deus Pater omnipotens……」
348名無しクルースニク:02/07/15 03:09
>347
 
 吐血。血の塊。――あぁ、ホラ、早くしろ。持たない。
 カソックを開いて、ベルトに吊った12個のハンドグレネードと、ポーチに入れた強化
タイプのグレネードを6つ引き摺り出す。銃弾の雨に晒されて誘爆しなかったのは、
主の御加護と天使の置き土産。あぁ、有り難うございます、主よ。
 うろ覚えて歌い続ける歌詞が、朗々と頭蓋の中に響く。
 だけどソレは――多分幻覚で、
 
「……Domine Fili unigenite, Jesu Christe.Domine Deus, Agnus Dei, Filius Patris.
 Qui tollis peccata mundi, miserere nobis.
 Qui tollis peccata mundi, suscipe deprecationem nostram――」
 
 12個のリングに通したワイヤーを、ピンごと一気に引き抜いた。セフティレバーが
景気良く散乱し、体の周囲に散らばる。ポーチのグレネードはそのまま傍らに置い
て――青年は、高い天井を見上げた。
 ステンドグラス越しに差し込む蒼い月明りが、火照った全身を覚ますような錯覚を
与えてくれる。
 何時になく穏やかな月は、ヘカテーじゃないのだろう。ガブリエルの統治する灯りは、
何時になく心地良い。
 
「――Qui sedes ad dexteram Patris, miserere nobis.
 Quoniam tu solus sanctus, Tu solus Dominus,
 Tu solus altissimus, Jesu Christe,cum Sancto Spiritu in gloria Dei Patris――」
 
 一言で言うなら、コレは予定調和の結果。
 一つの悪を消失させる為に戦った、正義の道標。
 後悔は――何一つとして無かった。
 
 最後の最後で、思い出した。
 ……あぁ、しまった。クロウ、ドカ、借りっ放しだ。とりあえず任務完了だから――それで
チャラって事にしとけよ。
 借りパク確定――悪いな、と口の端で笑って、周囲が閃光で包まれるのを自覚した。
 爆炎が広がる。爆音が聴覚を破壊する――終わりだった。
 ふと、言い忘れた事が、一つだけ。
 
「――Amen」
 
 極大の閃光が、フロアの全てを爆炎で席巻した。
【ウー大殲】

>340 >343 >346 >345 >347

 
 ――――相手は三人。
 
 その内の二人が神父なのはどういう因縁か。
ハントには分からない……ただ、当分神に祈りを捧げることはないだろう。
 
 こっちを狙ってるのは2人、シグモンドともう一人の神父――――シモン。
ウルフレッドの方はシグモンドを狙っている。
 
 こっちの銃は一丁。残弾すら確認できていない。
……どちらを先に仕留めるべきか。

 躊躇は一瞬。再び事態は動く。
不意に起こった爆発……教会は今にも崩れそうになる。
 
 シグモンドとシモンが引き金を引くのは同時。それに合わせてハントも動く。
 
 ――――狙いはシグモンド。
 
 一気に間合いを詰める。シグモンドとシモンの銃弾がハントを蹂躙せんと襲う。
避けられない……己の悪運に賭け一気に走り抜ける。
銃弾を体の各所を掠め、或いは弾痕を穿つ。
 
 ――――大丈夫、急所は外れている。
 
 実際にそうなのかどうかは分からない。
だが、ハントはそう思うことで崩れそうになっている体を無理矢理駆動させる。
 
 至近距離……シグモンドの姿は目の前。
ハントはベレッタの弾丸を纏めて叩き込こんだ。
350シグモンド ◆ZyGunDog :02/07/15 03:24
『ウー大殲』
>343銃使徒シモン>345ニコラス・D・ウルフウッド
>346イーヴァ >347>348クルースニク >349イーサン・ハント

『一体、何のつもりや!邪魔するつもりやったら、こっちにも考えがあるで!』
バカデカイ十字架を持った男がそう問う。

モーゼルの斉射に応戦しつつそいつに答える。

「ガキを連れた奴は邪魔だ。とっとと失せろ」

モーゼルから解き放たれた死を招く獣がオレの体を次々と食んで行く。
右膝を打ち抜かれ肝臓をぶち抜かれる。

――――ロクデナシどもめ…。

「さて、もっと続けようぜ。
 ――――――これ以上オレをがっかりさせるなよ?」

P90とSIGSAUERをそれぞれの相手に放ちながら椅子を楯にする。
ハントのベレッタからの獣がコートを突き抜け、オレの肺を貫く。
仰け反った瞬間に僧侶の持つモーゼルから放たれた“死”の獣が、
とうとうオレの心臓に喰らいつく。

「―――――――――スマン…、ビクター…」
 
P90とSIGSAUERの最後の一発まで敵目掛けて撃ちつくすと、
灼熱の炎の中にオレの意識は消えていった…。

シグモンド『死亡』
ウー大殲
>343 >347-348 >349 >350 
 
互いに拳銃突きつけあった膠着状態を破ったンは、
不意に起こった爆発やった。
床を舐める業炎。そして轟く銃声。
 
全てが終わったとき、その場に立ったッとったのは三人。
黒いボディスーツを着た優男と、牧師然としたおっさん、
そしてポニーの兄ちゃん。
その兄ちゃんも、憎まれ口を叩き、神の御許に行ってしもた・・・・・・
拳銃の先で静かに十字を切ると、
わいは後ろの女の子に声をかけた。
 
「どや、息は静まったかいな?――ええか、わいが行け、言うたら穴に向けて一気に走るンや。
 ええな、約束やで?」 
 
どうやら、あの二人は簡単には逃がしてはくれなさそうや。
こうなったらわいが盾になってでも、この子逃がさなあかん。
せやないと、会わす顔があらへんやんか。
 
そして、わいは叫んだ。
 
「今や!行け、嬢ちゃん!」 
 
立ち上がると両手のハンドガンを二人に向け、
引鉄を絞った。もう死なせへん!誰一人、死なせるわけにはいかへんのや!
『ウー大殲』
>345ニコラス・D・ウルフウッド >347-348クルースニク
>349イーサン・ハント >350シグモンド 



背後で二度、爆発が起こる。
爆音と共に揺らぐ教会。

不意に駈けたのは、ベレッタの男だった。
ポニーテールの男との距離を詰める。
それにあわせて両の拳を接近させる。
手の甲が重なり合うほどのグリッピング。

3人の身体を銃弾が互いに蹂躙してゆく。
既に30発を越えるP90の5.7mm高速弾が胸や腹を貫き、
10発を越えるベレッタの9mmパラベラム弾が四肢を食み

モーゼルのボルトが後退位置で止まる。
『聖銃』のスライドがホールドオープンする。


――――――気が付けば今にも落ちてきそうな天井を見ている。


懐に手を伸ばし、トーキーを取り出すと、《処理班》にダイヤル。

「・・・・・・私だ。任務に失敗。以後の処理は任せる。以上だ」

葉巻をくわえ、マッチを探す。
探った懐には、血に塗れたマッチの一箱。
・・・・・・全く、一服すらもできんとはな。

溜息をつきながら、ふと、次の銃使徒に任命されるべき者が誰なのか、
それだけが気に掛かった。

(銃使徒シモン:死亡)
353イーヴァ ◆OCEg7EVA :02/07/15 04:16
 
ウー大殲
 
>347 >348 >351
 
視界が白く染まった。
熱風が顔をなぶり、炎が床を舐める。
爆発が収まるか収まらないかといううちに聞こえ始める銃声。
十字架を背負った男は言った。
 
行け、と。 
 
確認する。
脚は? まだ動く。
呼吸は? 落ち着いている。
バランサーは? 問題なく動作する。
脱出口は? 崩れていない。
経路は? 障害物は認められず。
では、自分にあそこまで走る勇気はあるか? サングラスを強く握った。
 
走る。
今、イーヴァの目は前しか見ていない。
【ウー大殲】
>351 >352 >353
 
 
 残ったのはハントとウルフレッドのみ。
今にも崩落しそうな教会の中で拳銃を乱射するウルフレッド。
対するハントはベレッタを構えたまま動かない。
 
 爆発音、炎上する音、そして銃声。
床に倒れ伏すはこの戦いによって死んだ者達――――火葬の必要はないだろう。
 
 ハントが軽く身をかがめる。
そして――――駆ける。
全身に傷を負ったハントには至近距離からの射撃しかなかった。
 
 ――――2歩、3歩、4歩。
 
 銃弾の中を縫ってハントはウルフレッドに肉薄。
そして、ウルフレッドの正面、その額に銃口を突きつける。
ハントは迷わない――――引き金を引いて、
 
 ――――カチンッ
 
 金属がぶつかる音……ベレッタに最早銃弾は残されていなかった。
そしてハントも…… 

「教会はもう崩れるぞ――――早く彼女の後を追いかけた方がいい」
 
 この言葉を吐いたのは地に倒れ伏すハントだった。
その肉体もまた限界に達したのだ。 
 
 同時に教会が一気に崩れる。
ハントの姿は土と石の中に――――消えていった。 
 
  
 
【イーサン・ハント リタイア】
ウー大殲
>352 >353 >354
 
燃え上がる教会の中、わいは優男と対峙しとった。
両手の拳銃を乱射し、弾幕の雨を降らせる中、
そいつは駆けてきおった。
 
神さんもそういう奴は好きなんやろな、
そいつはその雨の中、勢いも殺さずに突っ込んできて――
わいの額にベレッタを突きつけおった。
だが、奴の体にはわいの拳銃が突きつけられ取る。
そして、お互いに引鉄を引いた。
 
・・・・・・・わいは死なんかった。
すでに、奴の弾倉に弾ははいっとらんかったのや。
 
『教会はもう崩れるぞ――――早く彼女の後を追いかけた方がいい』
 
その言葉を残し、優男は地に倒れ、息を引き取った。
盛大な火葬や――神さん、願わくば、此処で散った魂に、安らぎと祝福を与えんことを――
拳銃の先で十字を切ると、わいは穴へ向けて駆けた。
辛くも美しい、我らが世界へ――
 
    【ウルフウッド・生存】
356イーヴァ ◆OCEg7EVA :02/07/15 05:11
 
ウー大殲

>354 >355
 
走る走る走る。
壁の大穴を抜け、細い路地に至り、突き当たりの塀の前で体内の酸素が尽きた。
仰向けに寝転がって荒く息をつく。
細長く切り取られた夜空から生温かい雨粒が落ちる。
 
目を閉じた。
どこかの通りを車が通る振動。
吹き抜けるビル風。
低く響く地下鉄の轟音。
わたしを呼ぶ十字架を背負った人の声――そう言えば、まだあの人の名前も聞いていない。
控えめなRTR接続。
 
ROOK-RES(001):ただいま。 EOS
 
……おかえりなさい。
 
   【イーヴァ 生存】
ウー大殲のまとめだ。
まさかここまで長くなるとはな。
 
導入
 
>251>253>252>254>255>256>257>258>259>260>261>262
 
睨み合い・教会
>263>264>265>266>267>268>269
 
開かれる戦端
>271>272>273>274>275>276
 
そして鳩が舞う
>287>288
 
乱入者たち
>277>278>279>280>281>282
 
蜘蛛の糸
>283>284>285>286(701部隊隊員死亡)
 
殲鬼たちの邂逅と狂信者。そして狩り
>303>305>312>313>314>316>321>324>326>327>330>331>335>336>337
>339>341>342(ハインケル死亡)>344>347>348(クルースニク自爆)
 
イーヴァ争奪戦
>310>319>320
 
背中あわせ
>306>311>315>317(キャスター・トロイ死亡)>318
 
ある鳩の死
>322
 
脱出行
>323>325>328>329>332>333(ジョン・リー死亡)
>334>337>340>343>345>346>349>350(シグモンド死亡)
>351>352(銃使徒シモン死亡)>353>354(イーサン・ハント死亡)
>355(ニコラス・D・ウルフウッド生存)
 
エピローグ
>356(イーヴァ生存)
 
感想なんかあったらここに頼む。
 
http://fargaia.opt.hokuto.ac/html/test/read.cgi?bbs=vampbattle&key=1019409630
358ベルガー&ヘイゼル:02/07/15 13:43
ベルガー&ヘイゼルvs馬呑吐 『吸血海殲外伝』
>230

ベルガーと男の間に入った鳳が男を襲う中
ベルガーは間合いを取ってヘイゼルの横へ

「すまんな、しかし、そんな暇あったら周りのこいつらどうにかしたほうが相手油断してたぞ」

2人の周りには銃を向けているグールの群れ
しかし、命令がないと動かないのか、唸っているだけでなにもしてこない

「そ、それはそれです。それよりも、急ぎで作ったんでそろそろマズそうです。どうにかしてくださいですの」

急に慌てつつヘイゼルは答える
こいつ考えてなかったなと思いつつ相手の方を見る
見れば男が鳳を布で圧殺しようとしている

「ま、早いとこ決着つけんといらん面倒が起こりそうだからな、俺は世界で2番目に面倒が嫌いなんだ」

そして…走る、狙うは布を持つ右手

《運命は駆け抜けていくものなり》

力は詞になり、ベルガーは黒い刃で相手の右腕を完全に切断した
359馬呑吐 ◆TUNtujd6 :02/07/15 14:20
ベルガー&ヘイゼルvs馬呑吐 『吸血海殲外伝』
>358

 右腕が黒血を飛沫かせ宙に舞う。
 快刀一閃、馬の右腕は見事肩から切り落とされていた。
 重傷のを舌打ち一つに留め、馬は数メートルを飛び退った。
 落下する腕を同じく宙を泳いだマフラーが包み止める。マフラーと腕は主人を追う様に
後に続いて跳ね上がる。
 腕が肩口の切断面に張り付いた。落ちない。
 切断面を巻いたマフラーには血が滲んでいるが、馬の腕は正に手も無く癒着したのである。
 馬は唇を歪めて嗤った。
 
「我らに対する心算なら、せめて銀メッキでも施しておくんだったな。
 どちらにせよ私には効かんがね」
 
 突如、馬の袖から大量の紙吹雪が飛び出した。道教で使われる呪符だ。
 砲弾の速度で射出されるそれらは直ぐに二桁を超し、意思あるが如く宙を走る。
 只二人の生者を避け、グールたちの額に一枚ずつ張り付いた。
 止め処なく呪符を噴出させながら、両手の人差し指と中指のみを立てた「剣指」で矢継ぎ早に印を
描き、馬は呪願文を詠唱する。
 
「現世天地に残念せし奴原よ、血脈に従え、心乾を満たせ、急急如律令!!」
 
 硬質の音が連続して鳴り響いた。
 全てのグールが手持ちの銃器を地面に捨てたのだ。
 両腕を揃えて前方に突き出し、一斉に飛び跳ねて動き出したこれらは、既にしてグールではない。
 馬の呪術によって支配下に置かれ直された僵尸なのである。
 どうあれ生ける屍の軍隊は、二人の男女へと雪崩れ込んだ。
360ベルガー&ヘイゼル:02/07/15 15:41
ベルガー&ヘイゼルvs馬呑吐 『吸血海殲外伝』
>359

血が舞い腕が飛び散る
が相手は平然と腕と一緒に落ちる布で腕を回収何事もなかったかのようにくっ付ける

「オイオイ、人じゃなかったということか」

男と同じくヘイゼルの所まで下がり、呟く
そして、横を向かずヘイゼルに問う

「…風水でアイツが何か視てくれ、今言ってた様に『銀』ってことは化け物系だ」

ヘイゼルは答える

「でも、種族判定なんてわたしにはわかりませんよ、駕発動でもしない限り」

その答えの最中、相手に動きが見えた
男の袖口から大量の符が現れ風に乗って飛び…グール達に付く

「何を?」

ヘイゼルが周りを見た瞬間
グール達の腕から銃器が落ち両腕を揃えて前方に突き出す
そして2人の方にいっせいに飛びかかってくる

「これはっ、呪術?」

ヘイゼルは地面に『純皇』を突き刺すと叫んだ

「地面に宿る千二百万の遺伝詞達!!全ての重みに耐え力の源となるものよ!!聞こえますか?私の声が!!」

「ラ」の声が倉庫の間に響いた
そして別の音も響きだす…地面が揺れている
『純皇』を中心に地面が僵尸を飲み込みつつ沈んでいく

「これで邪魔はなくなりました」
361馬呑吐 ◆TUNtujd6 :02/07/15 15:55
ベルガー&ヘイゼルvs馬呑吐 『吸血海殲外伝』
>360
 
 馬は眼を剥いた。
 突如、鳴動と共に地母神の顎が開いたのだ。足元を掬われた僵尸たちが片端から埋没していく。
 
「派手な術を使うじゃないかね。だが――甘い」
 
 呪文と呪印が夜気に邪悪な刻みを入れる。
 
「朱雀兇変、夜草の歎き! 恨血千年、土中に哭く! 急急如律令!」
 
 赤光が明滅した。
 僵尸たちの額に貼られた符、それに書かれた霊字が一斉に光を発しているのだ。
 ぴた、と剣指が二人を指して止まった。
 
「――爆発!」
 
 カッと見開かれる双眸から絞り出されたかとも思われる一声一過、火炎地獄が現出した。
 猶乱舞する者飲み込まれかけた者、二人の周囲にある僵尸が爆ぜ、紅蓮の熱塊と化したのである。
 巡る焔の流動は死臭を灼き、二人の生者に噴き付けた。
362ベルガー&ヘイゼル:02/07/15 17:00
ベルガー&ヘイゼルvs馬呑吐 『吸血海殲外伝』
>361

「んじゃ、残ったやつは俺が・・・」

崩れる地面の中器用に飛びつつ『運命』で残った僵尸を切断していこうとしたとき
男が動作を交えつつ何かを叫びその瞬間僵尸の符が赤く点滅し始める

「ベルガーさんっ」

ヘイゼルが懐から符を出しつつ叫ぶ

「わかってる」

ヘイゼルの元に戻り、『運命』を構える
その瞬間

「――爆発!」

男の声が聞こえ…周りにいた僵尸が熱塊に変わる
熱により前が見えなくなるが

《運命とは救世者を護るものなり》

詞が響き、剣風によって熱が拡散される

「2重の罠とは、用意周到だが…世界で2番目のコンビである俺らには効かないな」

爆発の中心には薄い膜が張られているヘイゼルの張った防炎の符
その中には2人が平然と立っていた
>357にミスがあったんで修正する。
 
導入
 
>251>253>252>254>255>256>257>258>259>260>261>262
 
睨み合い・教会
>263>264>265>266>267>268>269
 
開かれる戦端
>271>272>273>274>275>276
 
そして鳩が舞う
>287>288
 
乱入者たち
>277>278>279>280>281
 
蜘蛛の糸
>282>283>284>285>286(701部隊隊員死亡)
 
殲鬼たちの邂逅と狂信者。そして狩り
>303>305>312>313>314>316>321>324>326>327>330>331>335>336>338
>339>341>342(ハインケル死亡)>344>347>348(クルースニク自爆)
 
背中あわせ
>306>311>315>317(キャスター・トロイ死亡)>318
 
イーヴァ争奪戦
>310>319>320
 
ある鳩の死
>322
 
脱出行
>323>325>328>329>332>333(ジョン・リー死亡)
>334>337>340>343>345>346>349>350(シグモンド死亡)
>351>352(銃使徒シモン死亡)>353>354(イーサン・ハント死亡)
>355(ニコラス・D・ウルフウッド生存)
 
エピローグ
>356(イーヴァ生存)
364ロン(M):02/07/15 23:14
「偶(タマタマ)狂疾ニ因ッテ殊類ト成ル」〜 ロン VS 孔濤羅
>245

 衝撃。
 それは、熱く、熱く染み渡り――

 虎の体がびくりと一度痙攣し、そして力が抜けていった。
 弛緩した顔から、溶けるように表情が失せる。
 そのまま虎の外観すらも崩れ去り、ロンは人の姿を取り戻した。

 もう何も考えられない。
 狂おしいほどの情念、憎悪も痛みも、そしてひとかけらの喜びも、
 全て薄れ、消え失せていく。

 すでにまるで焦点の定まらぬ瞳が、ただ前方を見つめていた。
 何も考えられない。何も、考える必要が無い。
 それは、ある意味ではこの上もなく平穏であり、
 無表情なその顔は、奇妙に安らかですらあった。
365孔濤羅 ◆SHIDEN1o :02/07/15 23:16
「偶(タマタマ)狂疾ニ因ッテ殊類ト成ル」〜 ロン VS 孔濤羅
>364
 
皮手袋に包まれた指先に、確かに感じた。貫手がロンの脳を貫く感触を。
指を引きぬくと、血と脳漿に塗れた人差し指があらわになった。
 
背中に回されたロンの腕から、力がゆっくりと抜けていく。
ひゅう、と喉を鳴らして、濤羅は空気を吸い込んだ。
荒い呼吸を何度も何度も繰り返す。
噛み裂かれた肩の傷が焼け付くように痛んだ。
 
ふと、胸に感じるロンの重みに異変を感じた。
視線をロンに向ける。
虎に変じた時と同じく、変容は今度も唐突だった。
獰猛な獣の顔が消え去り、その下から人間の顔が現われる。
それはひどく、穏やかな顔をしていた。
 
しばしその顔を眺めたあとで、濤羅はたちあがった。
腹の上からロンの身体が落ちたが、もう見向きもしなかった。
 
鞘を左手で拾い上げる。
傷が痛むが腕は動く。
手も足も一揃い残っている。
ならば立ち止まっている暇はない。
我が身は全て瑞麗のためにある。
瑞麗のためならばこの身など、いくら傷つこうと構わない。
さあ、帰らなければ。
一刻も早く、故郷へ。
 
 
木々の間から月光がそこを照らした時、すでに濤羅の姿はなかった。
残されたものはかつてロンと呼ばれた男の死体と死闘の後を物語る血痕、
そしてそれらの上に降り注いだ紅い楓の落葉、ただそれだけだった。
 
 
                             (終劇)
366孔濤羅 ◆SHIDEN1o :02/07/15 23:18
「偶(タマタマ)狂疾ニ因ッテ殊類ト成ル」〜 ロン VS 孔濤羅
 
>54>55>57>62>65>72>103>104>106>109>115>119>162>164>184>216>220>239
>240>241>242>243>244>245>364>365
 
感想があったらここに頼む
 
http://fargaia.opt.hokuto.ac/html/test/read.cgi?bbs=vampbattle&key=1019409630
俺の名はセス。セス・ゲッコー。
昔はプロの銀行強盗なんてのをやっていた。
“ゲッコー兄弟”と言えば、アメリカじゃちょいと名の知れた悪党なんだぜ。

そんな吸血鬼とはまったく縁が無いように見える俺だが、ある晩、不運なことに会っちまったんだよ。
―――吸血鬼に。

俺はあの腐った虫けらどもを許さねえ。
俺の手で最愛の弟の胸に杭を打ち込ませやがったあのゴミどもを許さねえ。
全部殺して、燃やして、灰にして、その灰を犯してクリントンのモーニングコーヒーの中にぶち込んでやる。
俺はプロだ。嘘は言わねえ。やると言ったら、必ず……やる。

出典 : From dusk till dawn
名前 : セス・ゲッコー
年齢 : 30代
性別 : 男
職業 : 元プロの銀行強盗。今は……本家が更新されるのを待ってくれ。
趣味 : なんだろうな。自分でも分からない。
恋人の有無 :いない。抱く女はそれなりにいるがな。
好きな異性のタイプ :さあな。
好きな食べ物 : 人間の餌ならなんでも良い。豚の餌は御免だ。
最近気になること : ヴァンパイアってのは馬鹿しかなれねえのか?
一番苦手なもの : 馬鹿。愚鈍な屑。イコール吸血鬼。
得意な技 : 拳銃の横撃ち。
一番の決めゼリフ : ルールは俺が決める。
将来の夢 : 特に無し。
ここの住人として一言 : 吸血鬼の息は臭すぎる。近寄らないでくれ。  
ここの仲間たちに一言 : 吸血鬼ハンターや法皇庁、カトリックの皆さんってのは、俺の仲間なのかい?
ここの名無しに一言 : 俺の弟より吸血鬼のほうがイカれているとよな?  『イエス』か『ノー』で答えろ。
フリッツ・ハールマンvsセス・ゲッコー 導入

 吸血鬼とは何か? その答えは夜の繁華街で客取りをする娼婦の数と同じくらいある。

 血を吸う生物。
 夜歩く者。
 不死者。
 邪悪なる者。
 神の愛を受けないゴミ屑。








 ――――化物。
>368  フリッツvsセス

 先に言っておくが、俺ことセス・ゲッコーは別に吸血鬼狩りで生計を立てているわけじゃない。
 あんな臭い商売は俺には向いてねえし、吸血鬼なんて二束三文でしか売れない奴に命を懸けるの御免だ。
 そんな俺がどうして今回の“狩り”に参加したのか?
 答えは簡単明瞭。
 俺の生涯の友、フリッツ・ハールマンと久しぶりにコンビを組めるからだ。
 
 フリッツは俺と違ってプロのハンターだ。
 化物殺しに人生の全てを賭けているイカれた奴だが、俺はそこがまたクールだと思っている。
 そんなあいつが、どうしても吸血鬼狩りの経験がある相棒が欲しいと頼んできた。
 俺はあいつに恩がある。だから、二つ返事で、まるでファーストフードでも買うようなノリで、
狩りに参加することを承諾してやったんだ。無論、取り分は五分五分だぜ。
 
 
 
 
 
 
 狩りの内容は“襲撃”。吸血鬼のたまり場であり、餌場である酒場を襲う。
 時間は夜明けの30分前。
 集合場所は酒場の門前。
 推測される吸血鬼の数は―――約20匹。
 
 どうやら、最高のパーティになりそうだぜ。
 吸血鬼で金を稼ぐのは嫌いだが、吸血鬼を殺すのは大好きだ。
 この俺の弟を殺したあいつらの絶叫を聞くたびに、俺の中でリッチがあの危ない笑みを浮かべてくれるからな。
>370 フリッツvsセス

 永遠に続く荒野の一本道を越えると、そいつはそこで静かに姿を現した。
 ハマーなんてごつい車をバックに背負ってこんな洒落た店に来る奴はあいつだけだ。
 俺は愛車をハマーの脇に止めると、ドアを開け奴の視界の中に入る。
 あいつは相変わらずのニヤけた表情を浮かべながら「よう、相棒」なんて言ってきやがったが、
俺は適当に返事をしてそれを流すと、センスの悪いネオンを光らせる店に視線を送る。
 
「これが奴等の溜まり場か」
 
 ついでに吸血鬼が営業している店ってのは何処も同じ様なセンスをしているんだな、とも思ったが
口には出さない。プロは無駄口を叩かないもんだ。
 俺は相棒との社交辞令を程々に切り上げると愛車のトランクを開け放ち、中からベネリの散弾銃を取り出した。
 ショットシェルを一発一発丁寧に篭めながら、俺は相棒に言う。

「もうすぐ夜明けだ。さっさと仕事終わらせて、平和な朝を満喫しようぜ」

 七発全弾篭め終え派手にコッキングすると、俺は相棒の準備が終了するのを待たずに酒場の扉へと足を向けた。
371フリッツ(M) ◆Fritzmx. :02/07/16 02:52
>370 フリッツvsセス
相変わらずつまらない黒一色の闇の中、
けばけばしいネオンを抱いて立つあの建物が、
俺を震えさせる。
腹の底から沸き上がるそれは、喜びだ。怒りだ。
何より、楽しみで仕方ない。
俺と同じ時間に奴が来た。俺の相棒、友人セス。
ムショ脱獄に銀行強盗。今では夜の狩りだってやる。
・・・・・・イカす野郎だ。
 
セスが散弾銃を担ぐ。俺もカービンのレバーを引きながら、
二人して酒場へ足を踏み入れた。
 
邪魔な客寄せの小男を蹴り飛ばし、扉を押し開く。
中じゃ女どもが客連中にのしかかり、首筋に舌を這わせている。
ハッ、忙しそうだ。
腑抜けた男どもはへらへらしながら体をもどかしそうに震わせる。
ご奉仕とかこつけて、踊り子は今すぐにでも牙を突き立てるだろう。
ったく、オメデタイ連中だ。
 
客や女を押しのけ、カウンターへ。
 
「よぉ、我が友人たち。酒か? 飯か?
 それとも女か? 何でもあるぜ・・・・注文は?」
 
俺とセスは顔を見合わせ、苦笑い。
 
「そうだな・・・・・・・」
 
目線で注文を促す男に。
 
「アンタ等の、首だ」
>371 フリッツvsセス

 開戦のドラムが相棒によって叩かれたことを確認すると、俺は背中に隠していた散弾銃を引き抜く。
 カウンターの男が悲鳴を上げながらボトルの棚に突っ込んで行くのと、散弾銃の銃口から火が噴くの同時だった。
 脂ぎった禿親父の血をこっそりと、そのくせ美味しそうに啜っている売女の背中に一撃。
 轟くカービン銃の連続音に驚き、こちらに顔を向けた娼婦に一撃。
 公平に銀の散弾をくれてやった。
 
 次の瞬間、悲鳴と威嚇の叫びが屋内を満たす。俺はその壮大な声の波に負けじと声を張り上げる。
 
「吸血鬼じゃねえ奴は伏せろていろ! いつまでも馬鹿みてぇ座っていると、その臭ぇ背中撃ち抜くぞ!」

 右脇のおっさんが俺の怒声を聞いたと同時にリボルヴァーを抜き放ち、俺に銃口を向けて来た。
 俺はそれを十数発の散弾の応酬で答えてやる。
 クソッ、今の手応えは人間だ。大人しく伏せてれば危害は加えねぇっての……馬鹿が。
 
 そんなことを考えている間も、手の動きは止まらない。
 数十メートルの距離を軽く跳躍して来た踊り娘の頭を吹き飛ばす。よし、今度は正真正銘の吸血鬼だ。
 それを確認すると俺は再度静かな怒声をあげる。
 
「自分が吸血鬼だと信じている野郎はこっちに来い。神の愛をお前等に平等にくれてやる」

 今度はドアから逃げだそうとしているガキに一発。
 距離が少し離れていたため、拳銃で胸にきちんと撃ち込んでやる。
 しかし……クソッ、こいつも人間だ。恐怖の余り逃げようとしやがった。
 
 冗談じゃねえと腹いせに、牙を剥いて威嚇してくる女の顔に拳銃の残弾全てを撃ち込むと、
弾の尽きた拳銃を投げ捨て、そいつが持っていたマイクを奪い取りそれに声を叩き付ける。

「良いか? ルールは俺達が決める。選択肢は二つに一つ。大人しく身体を丸めて伏せるか、死ぬかだ」

 因みにこれは人間の選択肢だ。吸血鬼に選択肢なんかは無い。黙って死ね。
373フリッツ(M) ◆Fritzmx. :02/07/16 03:15
>372 セスvsフリッツ
 
 軽快な爆音とマズルフラッシュが弾ける。
 銀の合金製の5.56mmは吸血鬼の肢体を突き破り、腕や脚を引き千切り
あたり一面にばら撒く。
 血飛沫が撒き散らされ、残った肉塊が勢いよく燃え上がる。
 糞ッ垂れの奴らがこれまで吸い上げ続けた、貧弱な人間どもの命の炎だ。
 
 こちらに飛び掛る吸血鬼の頭に銃弾を叩き込み、背後の酒樽に蹴り飛ばす。
 そこに撃ち込まれる銃弾。
 吸血鬼は長い髪を勢いよく炎で焼かれ、飛び散った酒の飛沫に誘火させつつ
最後には自ら爆音と共に消し飛んだ。
 
 これだから・・・・・・止められない。
 引き金を引くのを止められない。
 杭を打ち込むのを止められない。
 俺はつくづく―――こいつらが好きだ。
 愛してるぜ、テメェら!
 
「A toast is given to peaceful dawn!!」
 
 歓声を上げながら吸血鬼は燃えてゆく。喜んでいる。俺にはそうとしか聞こえない。
 ばたばたと銃弾との嵐になぎ倒され、吸血鬼は燃え崩れてゆく。
 灰は灰に、塵は塵に。ゲームの終わりは―――夜明けまで。
 
 いつのまにか小舞台の演奏家連中も吸血鬼に変わっている。
 やけくそ気味のトレモロに、炎と銃声が彩りを添える。
 マイクを取って声を張り上げる相棒を背に、俺は片っ端から吸血鬼ども、人間ども、
邪魔な奴らは構わず撃ち殺した。
 
「なあお前ら・・・・・・・・こいつはパーティだぜ!!」
 
 吸血鬼の柔らかな首に銃口を無理やり突き刺し、引き金を引く。
 ボールのように軽々吹き飛び落ちてくる首を、俺は叩き潰しながらそう言った。
>229>231>246 アセルス(半妖ED後)&玖珂光太郎VSラルフ・グルトVSフォルテッシモ
 
・・・ああ、あ、はは、はははは・・・
もう、何がなんだかわからなくなってきたな。
下からは相変わらず凄い音がするし、床はボロボロだし・・・
 
だけど・・・おかげで、ちょっと休めたみたいだった。
傷も少しずつ再生してきている。
でも喉は相変わらず渇いて、渇いて、渇いて・・・
 
不意に、口の中が甘い味に満たされた。
牙を舐めすぎて、舌を傷つけたみたいだった。
傷はすぐにふさがったけど・・・今の私にとってその味は麻薬にも等しかった。
自分の血の味に陶然となる。
 
ふふ、ふふふ・・・くく、はははは・・はは。
もう戻れないんだ、きっと。私はこのまま妖魔になっちゃう。
だってもう、血を求めることに抵抗がなくなった。
というより・・・足りない、この程度じゃ。
もう我慢できない。
 
立ち上がる。
剣を握る。
少しだけ階段を見下ろす。
そして。
 
廊下の角を曲がり、踊り出る!
床が抜けるよりも早く廊下を駆け抜ける!
―――あの男を切り裂いて、血を啜るために!
>373 セスvsフリッツ

 七発目の散弾を蛇のような女に浴びせると、俺はショットガンをバットのように持ち、
襲いかかる吸血鬼の群れへと突っ込んだ。
 フルスイングで打ち返された吸血鬼の頭は、そのまま窓ガラスを突き破り場外ホームラン。
 俺はその結果に満足すると、散弾銃を投げ捨て、懐から拳銃を二丁抜き放つ。
 破られた窓の更に奧、地平線の空が僅かに白んでいる。朝が近い。

 相棒の方は既に俺の数倍は吸血鬼を殺している。こういうときには最高に頼りになる奴だ。
 あいつの“本当”の相棒は更に腕が立つらしいが、一体どんな奴なんだが。きっと鬼のような奴に違いねえ。
 
 ともあれ、夜明けが近いのならもう吸血鬼は外に出れないだろう。
 このままバーの客を吸血鬼化させるのは無意味だ。プロは無駄なことはしない。
 俺は僅かに生き残った吸血鬼達に銃弾をばらまきながらドアの方へと駆けた。
 
「さあ、朝だ! 太陽へ向かって駆けろ! 夜明けまであと30分も無い! 奴等は外に出れねえぞ!」

 ドアの閂を抜き取り、巨大な門を蹴破ると俺はそう叫んだ。
 同時、生き残った人間が雪崩のように押し寄せてくる。
 それに紛れて吸血鬼も逃げようとするが俺がそれを見逃すはずも無く、
片っ端から銃弾のシャワーを浴びて灰となった。
>375 セスvsフリッツ


      ―――― 10 minute year ――――



 硝煙と血の臭いで充満しているそこで立っている生物は、俺と相棒のフリッツだけになっていた。
 殺った吸血鬼の数は二人合わせて27匹。数名の客が感染したようだ。死んだ人間の数は数えていねえ。
 
 ともあれ仕事は終わった。
 俺は崩れ落ちた酒棚からウィスキーを二本拾い上げ、一本を相棒へと投げると残りの一本を口元へ持っていく。
 美味い。勝利の美酒とはこんな安酒をここまで美味しくさせてくれるのか。
 暫く相棒と笑みを交わしながら無言で酒を飲み続ける。今はとにかく勝利に酔いしれたかった。
 
 身体が熱い。
 どうやら、少し酔っちまったようだ。
 少し肩が重い。
 どうやら、疲れているようだ。
 首筋から生温い何“か”の感触が伝わってきている。
 どうやら、傷を負っているようだ――――――――
 










                           !?

 おい、俺は一発も喰らってねえぞ!?
>377  セスvsフリッツ

 首筋に突き立てられた白い牙。背中に寄り掛かる白い肢体。
 流れ落ちる赤い、鮮血。
 
「ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ! クソッ! 離れろ!」

 吸血鬼を背負った姿勢のまま、俺は走り回る。
 まさか生き残りがいたなんて……完璧に油断していたぜ。情けねェ。
 クソッ、離れろって言ってるんだよ。
 
 懐から拳銃を抜き出すと、吸血鬼の腹に数発ぶち込む。同時、吸血鬼の束縛が僅かに緩まる。
 その瞬間を狙って、俺は背中の吸血鬼を背負い投げの要領で床に叩き付け、その醜い顔を踏み潰した。
 吸血鬼が炎を上げて灰となっていくが、今の俺にはそんなことに気を回す余裕は無い。
 
「シット! フリッツ! あの野郎、血を吸いやがった! 弟のように、俺の血を吸いやがった!」
 
 これは拙い。最高に拙いぞ。
 どうする、このままだと俺はあの吸血鬼の仲間入りしちまうぞ。
 そんなのは御免だ。どうする、どうする、どうする……。
 
「フリッツ。お前、プロなんだろ? こういうときはいつもどうしているんだ? 何か対処法はねえのか?」

 俺は自分でも異常だと思うぐらい取り乱しながら、フリッツへと言葉を投げかける。
 

 セス・ゲッコーは気付かない。
 親友フリッツ・ハールマンの瞳が、相棒を見つめる彼の瞳が、酷く冷めきっていることに。
 その瞳は何を見つめているのか。その瞳で何を思っているのか。セス・ゲッコーは気付かない。
 物語は此処から始まる。闘争は、此処から始まる。
 
 
 セス・ゲッコーvsフリッツ・ハールマン 導入→終了
>246 vs光太郎

 フォルテッシモに少年の声は届いていなかった。
 己の服を彩る真紅の返り血も、二回の爆発と、一回の破裂でもはや崩れ落ちる寸前の宿も、彼の眼には届かない。
 フォルテッシモは他の全てを捨て去り、全神経を注いで“それ”を捉えているのだ。
 そして、それほどまでの事をやっても、もう―――間に合わない。

「馬鹿、な……」

  彼の攻撃はまだ終わっていない。未だ、少年の身体を引き裂いている。
  そして、その“攻撃中”という名の“隙”を見出して、彼女は現れた。
  少年が己の命を懸けてフォルテッシモの隙を作ったのだ。
  しかし、

「そこまでして……自分の命を懸けてまでして……お前には一体、何があるというんだ……!?」

 フォルテッシモのように、闘争に全てを賭けているわけでも無い。
 牧師のように、化物狩りに全てを賭けているわけでも無い。
 この少年は、この件に関しては完全に巻き込まれただけの被害者だ。
 覚悟も、信念も無い。なのになぜ、命を捨てられるのか。
 
 事実、少年の傷はかなり重い。恐らく、フォルテッシモがこれから負うであろう傷よりも。

(まさか、あの女のためとでも――――!!)

 肉に刃が食い込む鈍い感触。それは一瞬の煌めき。
 フォルテッシモは神速で繰り出される刃の斬撃を全身に受け、床に、壁に己の血を塗りつけた。
アセルス(半妖ED後)&玖珂光太郎vsラルフ・グルトvsフォルテッシモ
>246>374>378

「おや、まだ動けたんですかな?」

廊下の先から姿を現した半妖の少女に視線を移し、男はゆっくりと立ち上がった。
ボロボロになった廊下を駆け抜け、少女がこちらへと迫る。

次々に抜け落ちていく床の破片が、階下に落ちて規則正しいリズムを刻む。
その様子を尻目に、男は散弾銃の銃口を少女に向けて持ち上げ、

発砲。

一発、二発、三発―――

散弾が宙にばら撒かれる。しかし、少女にはかすりもしない。

四発、五発、六発―――

再装填する時間も惜しい所だと言うのに、相手はまるでこちらの行動を予測したかのように
跳び回って距離を詰めてくる。

七発、八発、九発―――

距離が近すぎる。相手は既に目の前だ。

――――十発目。

至近距離で放たれたのは白銀の弾丸―――

左の義腕の仕込み銃から飛び出した、魔物殺しの切り札だ。
>378
「はぁ……はぁ……」

 廊下の壁を支えにして、何度も転びそうになりながら、ゆっくりと立ちあ
がる。全身から吹き出る俺の血が、びしゃびしゃと飛び散って壁にべっと
りと張り付いているあいつの血の上を、さらに上書きしていった。

(ちっ……目の前が……霞んでやがる……)

 時間をかけてやっと一歩踏み出したところで、がくん、と大きく膝が落ち
る。それでも、何とか壁に全身を預けて、床に倒れこむ事だけはぎりぎり
阻止できた。少しの間時間をとってから、また次の一歩を踏み出す。

 さっきの奴の事は確認もしてない。いや、出来ないっていった方が正し
いのかもしれない。あんな奴の事を確認するくらいなら、その力をあの女
の所に行くために使わなきゃいけなかったからだ。それくらい、俺の身体
に残された力ってのは、もう残りが少なかったんだ。
 後ろから襲ってこないってことは、多分のびてるんだろう。その程度の
認識で十分だった。 

(俺が行くまで……死ぬんじゃねえぞ……!)

 油断すると糸が切れた凧みたいにどこかに飛んで言っちまう意識を必
死で繋ぎとめて、またゆっくりと次の一歩を踏み出した。

 この身体で何が出来るかはわからねえし、それこそ邪魔になるだけか
もしれない。だけど、俺はあいつの事を守るって言った。だから、俺はそ
の俺の言葉を守るためだけに、あいつの所に行かなきゃならないんだ。
381フリッツ(M) ◆Fritzmx. :02/07/16 04:32
>375>376>377 セスvsフリッツ
 
「対処法・・・・一つだけあるぜ」
 
自分でも気付くほどに乾いた眼で、
俺はセス――いや、それ以外の何か、を見つめる。
 
いつも、いつもこうなる。
だから、俺は化物を狩るんだろうな。
だから、俺は化物が嫌いだ。クソ喰らえだ。
だからこそ俺は狩り続けなきゃならない。
いや、俺はこういう狩りが・・・・病み付きなのか・・・・・・?
狩り続けなきゃならない、では無く、止められない。
 
そうだ・・・・・・だから俺は、アンタを殺す。
 
気を落ち着かせにゃならない。
これでもう俺は何も見えない。何も聞こえない。
目の前にいるのはセスじゃない。
 
視界が、朱い。
迷いを、戸惑いを、怒りと殺意が塗り潰してゆく。
ひたすらに赤いのは、きっとこれから俺が奴に流させる
血の色なんだろう。
 
俺は、迷わない。
 
度々寸断しそうになりながらやっと繋がった思考を、
億尾にもみせず俺は表情を一点。
 
 優しくさえ見えるような目つき、
 顔を楽しそうに醜く歪めた笑顔で、
 「俺たちの対処法は、ただ一つだ」
 慌てふためくセスに合わせ、
 「・・・・・・・・・こうするんだよ!」
 俺はセスに銃口を差し向けた。
 
―――銃声は、俺の魂を乾かしてゆく。
    こうして俺は、どんどん喪失っていくんだろう。
    だが、もう痛くはない。
 
俺は、この状況を愉しそうに笑っている自分がいることに安堵した。
今まで俺はこうしてきた。これだから俺は、ずっと闘える。
>381 セスvsフリッツ

 俺がそれにやっと気付いたときは、全てが遅かった。
 相棒の表情、相棒の瞳、相棒の銃口。
 フリッツ・ハールマンは“俺”という男を見ていない。“セス・ゲッコー”という名の男を見ていない。
 あの表情、あの瞳は……。
 
「フリッツ……お前、まさか――――」

 言葉を全て吐き出すことは出来なかった。俺の低く呻くような声は、甲高い激音にかき消される。
 だが、相棒が引き金を絞るのよりも数瞬速く、俺はバーのカウンターを乗り越え身を伏せていた。
 木製のカウンターが破片を撒き散らしながら粉砕していく。俺は必死に身を隠しながらも、フリッツへ言葉を放つ。
 
「フリッツ! やめろ! 撃つのをやめろ! 俺は人間だぞ!」

 首筋から流れ落ちる血が漆黒のスーツを赤く染めている。
 このスーツが完全に朱に染まるとき、俺も完全に――――
 否。大丈夫だ。俺は人間だ。俺はタフだ。絶対……絶対に吸血鬼化になんか変身しねえ。
 
「フリッツ! 聞こえているのかッ! やめろ!」

 返事は無い。銃撃は止まらない。
 もうこのカウンターは限界だ。好き放題に銃弾を貫通させている。遮蔽物の意味が無い。
 しかし、ノコノコ出ていったらそれこそ蜂の巣だ。抵抗しなければ――――
 
「……悪く思うなよ、親友」

 銃弾の雨を縫って、俺はフリッツ・ハールマンの眼前へと躍り出ると、そのままテーブルの影へと向かって跳躍。
 銃弾の洗礼は一向に衰える気配を見せない。フリッツ・ハールマン……そんなに俺を殺したいのか―――
 
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 突き出された二丁の拳銃。俺は相棒目掛けて銃弾を撃つ、撃つ、撃つ。
 俺は生きるために跳ぶ。俺は生きるために―――相棒を、撃つ。 
383フリッツ(M) ◆Fritzmx. :02/07/16 05:26
>382 セスvsフリッツ
 
銃弾を流し込むように撃ち込む。
吸血鬼犠牲者――元はセスだが――という名の、闇の雪崩れ込む穴へ。
 
 狩人は、心を捨てねばならない。
 吸血鬼は、人間でも動物でもない、生命としての異端だ。
 その異端に人間が対抗するには、
 それ相応の代価を支払わねばならない。必ず。
 その代価という物が、俺の場合は、人間の情念そのものだった。
 人間という弱っちい魂をかなぐり捨て、俺は鉄の魂を持たねばならない。
 憎んで、憎んで。怨んで怒り猛り狂い。
 自分という白っ紙を、真っ黒に塗り潰せ。
 殺意が恐怖を塗り潰す。哀しみを憎しみが押し潰す。
 全てが、喜びに変わったその日、俺は化物を狩る化物になった。
 
 その俺がこう言っている。
  セス? そんなのは知るか。奴はもう化けモンだ。殺しとけ。
 本当にいいのか・・・・・・?
  選択肢は一つ。答えは一つだろ。
  なら、すべき事も、一つに違いねえ。
 
気が付いた時には、俺の体は横倒しのテーブルの陰に潜り込んでいた。
セスの銃弾が分厚いテーブルを抉り、いずれ銃弾は貫通する。
不条理に対するには、不条理しかない。
セスを殺さねばならない俺。そんな運命に見せてやる哀しみの姿など無い。
だから、俺は嗤う。友人を殺して嗤う。―――愉しい。そんな不条理。
 
這うようにしてテーブルとテーブルの間を駆けずり回りながら、
俺はセスの頭上近くのシャンデリアに、全弾を叩き込んだ。
 
落ち流れるのは、相棒の血だ。・・・・人間じみた俺の血も、一緒に流せ。
384両儀 織 ◆ORihiMeM :02/07/16 10:11
ジョナサン・ジョースターvs両儀織
>224
 
 警察にいくとかなんとか。
 この男はワケの分からないことを言ってる。
 
「警察って言うのは、普通から少し外れた奴を捕まえるところ。
 だけど、それは本当に外れてるワケじゃない。修正できる僅かな誤差。
 本当に外れている奴はね、裁くことすら出来ないんだ。常識っていうのが、違うからさ」
 
 ありきたりな口上。
 本当はそんなコト、どうだっていいんだ。
 オレは男の動く身体を目掛け、唐突に地を蹴った。
 急速に接近する身体。極微小な時間で二人の距離は零となる。
 
 しゅん、と空を滑る刃が、男の喉元へと迫った。
385馬呑吐 ◆TUNtujd6 :02/07/16 14:33
ベルガー&ヘイゼルvs馬呑吐 『吸血海殲外伝』
>362
 
 平然と炎を無してみせた二人に対し、馬は凶暴な笑みを返した。
 
「容易には近付く事もままならんか。結構々々。
 ちと早いが、ここで起こすとしよう!」 
 
 云い終える前に閃く手指が呪印を描き、発する声明は宙天を渡って鳴り響く。
 
「兇・邪・悪・恨・怨・謀・禍・乱! 八識の毒は鬼角に溜り、以って陽宅は陰宅と成す!
 急急誉主都羅権(よす・とらごん)律令!」
 
 もぞり、と何かが動いた。
 何処か酷く遠く、同時に手を伸ばせば届く程近い所で。
 大地が幽かに揺れた。蠢動に呼応するかの様に、地面そのものが啼き声を上げる。
 有り得ぬ方向から風が吹き荒ぶ。腥い臭いを孕んだ妖風は空気の分子一つ一つを捻れ、歪ませる。
 
 凝る邪気が、天地をこの世ならぬ形へと塗り替えていく。
>384 ジョナサン・ジョースターvs両儀織
ナイフはぼくの喉を狙う牙となって、閃光が走り迫る。
風が裂かれて悲鳴を挙げる。
 
戦わないといけないのか・・・。
運命に歯軋りすると、ぼくは即座に拳を固めた。
その拳は死の臭いがする空間を打ち払い、襲撃者の手首へと叩きつけられた。
刃が逸れると同時に、波紋を体内で練り上げる。
 
ツェペリさんから学んだ、血液の流れと呼吸の産み出す生命の力を。
 
指先に波紋を集中させると、ぼくは相手の額を目指して腕を疾走させた。
この少女らしき襲撃者は人間のようだが、それでも波紋にはショック効果もある!
生命樹に捧げる協奏曲 〜南武公&操vs如月蘭
Tephereth ―――天国に届かぬ翼―――
>169
 
Side:Takemasa
 青年の軽い腕の一振りで、俺がさっきまでいた地面が大きくえぐれる。
 操さんに抱きかかえられて後ろに跳んではいたものの、えぐれた地面のかけらが激しく身体を打つ。
 痛い、けど大丈夫っ!
 
 その間に操さんは跳躍、音矢とタイミングを合わせ、鋼糸を放つ。
 
(っ! 後ろ!)
 
 しかし、その見事な連携を信じがたいほどの速度で躱した青年は、操さんの背後を取った。
 そして呪文を詠唱・・・空気が帯電し、とんでもない魔力が満ちる。
 白色の雷が操さんに向かって走った。
 
(間に・・・合えっ!)
 
「輝ける栄光(ホド)は仮面(ペルソナ)に! 反響する鏡なるがゆえに!」
 
 第三の神性呪文を詠唱。
 地面から巨大な『手』が伸び、操さんに向かう雷をせき止めた。
 しかし、雷は完全に止まらない。
 威力が減衰されはしたものの、未だ破壊的な威力を持った雷が操さんを襲う。
生命樹に捧げる協奏曲 〜南武公&操vs如月蘭
Tephereth ―――天国に届かぬ翼―――
>387続き
 
Side:Misao
 必殺の筈の音矢と鋼糸は、来訪者のコートを貫いただけだった。
 そして背後から、詠唱。
 
(『奏咒』の詠唱!?)
 
 振り向いた私の目に、白い雷と・・・地面より伸びた『手』
 第三の神性呪文!
 だが、雷を完全に阻むには至らず・・・『手』を破壊した雷が迫る。
 
『くっ!』
 
 髪を伸ばし、地面に突き立てる。
 それと同時に、雷が身体を灼いた。
 
『・・・!!!!!』
 
 激痛。だが、耐えられないほどではない。
 なぜなら、威力のほとんどは接地した髪から地面に抜けている。
 『手』と接地した髪による減衰。
 二重の防御は、雷の威力をかなり衰えさせた。
 それでも、それなりの痛手は免れない。だが、まだ私は活動出来る。
 
Side:Takemasa
 
 思わず、操さんの安否を確認しようとして、留まる。
 
(そんな余裕はない・・・操さんなら、きっと大丈夫だ!)
 
 無理矢理自分を納得させ、本を掲げ、唱える。
 
 あらかじめ用意された神性呪文ではなく、自ら読み解いた『埃及の聖刻(ヒエログリフ)』を。
 
「音矢よ砕け!!(シエセル・ゲメゲム)」
 
 第五の神性呪文で召喚されたままだった、月琴を持った人形が、ぴくりと動く。
 ほんの僅かな動き。けれど、それは先程の音矢をも超える、必中の矢を放つ動き。
>383 vsフリッツ

 ――――身体が熱い。どうしようも無く熱い。
 
 
 そのことに気が付いたのは、ガバメントの弾倉を吐き捨て、新しいマガジンを叩き込んだときだった。
 身体の芯から湧き出るような熱さ。内蔵が、骨が、筋肉が燃えているかのような熱さ。
 これは興奮状態だからとか、深手を負っているからとかが原因じゃねえ。
 もっと、もっと特別な“何か”が理由だ。 
 
 ぞくり、と悪寒が背中を駆けた。冗談じゃない。俺は人間だ。吸血鬼になんかならねえ。なるはずがない。
 
 パイソンのシリンダーに弾を篭め終えると、俺はその言い知れぬ恐怖をかき消すために、
二つの銃口を這いずりまわって移動している男へと向ける。
 だが、俺が引き金を引くよりも、フリッツのカービン銃から火が噴き出るほうが数瞬速かった。
 
 軽快な連続音と同時に響くのは、ガラスが粉砕する音。俺はとっさに頭上を見上げる。
 その瞳に写ったものは――――
 
「マジかよ――――」

 安物のガラス細工で仕上げられたシャンデリアが、天井から牙を剥いて降りかかる。
 次の瞬間、床に響き渡る繊細な破壊音。
 木製の床を抉り、己の身体を粉々に砕きながら暴れ狂う光の彫刻をバックに背負いながら、
俺はフリッツが這う床へと向かって跳んでいた。

 俺は宙に浮いている。四肢を投げ出し、悲鳴を上げながら跳んでいる。
 とっさのことで、別の遮蔽物目掛けて逃げるなんて器用なことが出来なかったんだ。
 いまの俺とフリッツの間に、邪魔をする遮蔽物はない。
 やばい。このままだと、正面から全身を晒しての撃ち合いになっちまう――――
 
 しかし、プロってえのは恐ろしいもんだ。考えるより速く、身体が動いちまう。
 俺がフリッツと自分の位置関係の拙さに気付いたときには既に、
俺は床を這うフリッツに向けて引き金を引きまくっていた。
390フリッツ(M) ◆Fritzmx. :02/07/17 02:04
>389 セスvsフリッツ
 
嬉しい。               ・・・・・・。
何が嬉しいのかって?.        ああ。
判ってんだろ?          さあ、な。
 
愉悦が駆け抜ける。【殺せ】、と。
恐れは萎んでゆく。 【殺せ】、と。
殺意は怒りを食い尽くしてゆく・・・・・気怠い、否・・・・
俺は愉しみたい――――(俺は、殺りたくなどない)
 
津波のように込みあがる悦びが、
俺に被さり俺を飲み込み、俺をヒトツの獣の姿にする。
 
「は、は、は、ははっ!」    やはり俺は笑っている。
 
そうして笑った所で、真の俺を押し潰せるはずはない。
いや、これが本当の俺の姿だ。俺達は――――獣だ。
 
まるでカメラのコマ送りのように見える・・・・・セス。
シャンデリアが落ちてゆく。奴と俺の人間としての血が。
セスは飛び上がる。        やはり・・・・ゆっくりと。
色彩感覚が疾うに抜け落ちてしまったのか。 俺には、
全てがモノクロの安いビデオ映像にしか見えなかった。
 
銃弾に銃弾で抗う。             俺達のやり方。
篭めて構えて狙って引く。一発で終わり。一巻の終わり。
人であろうとなかろうと、 それは何時までも変わらない。
 
 だから、俺達は―――――
 
引き金を引く奴の延長上に俺がいる。
俺がいる。カービンが、奴の方を向いている。
引き金を引いた時に、自分の間抜け具合に気がついた。
既に、俺のカービンは死んでいた。  糞ッ!
弾を篭めるよりも先に、奴の銃弾は俺の肩に喰らいつく。
 
頭の中で、何かがはじける音がした。
 
俺の顔にべったりと貼り付いているのは、血でも、死でも
なんでもない。ただの、何処にでもあるような笑みだった。
嬉しくて嬉しくて嬉しくて嬉しくて嬉しくて嬉しくて仕方ない。
五年来の知己と語り合う。        そんな時の笑み。
391留蔵:02/07/17 13:06
だはは、来てやったぜどうだ?
392留蔵:02/07/17 13:10
闘技場を、埋めててやったぜ次はここで、いいか?
393留蔵:02/07/17 13:18
インドア、ポレポレ!
394あぼーん:あぼーん
あぼーん
395あぼーん:あぼーん
あぼーん
396あぼーん:あぼーん
あぼーん
397留蔵:02/07/17 13:20
――――――――― ここまで読んだBY留蔵 ―――――――――
398留蔵:02/07/17 13:21
やべぇやっぱり疲れるよな、難しいよな。改名希望。
399留蔵:02/07/17 13:21
今こそ勇気と正義の証を示すとき!改名キボンヌ
400留蔵:02/07/17 13:22
だだらでらでら?
うん。
           %%%%%%%%%   ________
           6|-○-○ |   / だいたい、「逝って良し」主体のせりふの
            |   >  | < ギコを製品化してどうするつもりだ??お子さまに有害だ!!
            \ ∇ /   |  タカラはどうかしてる!アホだ!! 千葉を製品化しろ!!
     (っ)    ,,,,l ` γ l,,,,,  \________
      \ \/~~.... |。  ~~ヽ
        \,,/ |   |。田}}\ \
       _    |   |。  |  ゝつ
      |\  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\
      |  \               \
      |   | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|
401あぼーん:あぼーん
あぼーん
402あぼーん:あぼーん
あぼーん
403あぼーん:あぼーん
あぼーん
404留蔵:02/07/17 13:25
           ,-〜ー―〜〜、
           /        ヽ
           |/~^^^^^^^^^~ヽ|
           |  _   _ |
          (|--(_・_)-(_・_)--|)
           |   厶、    |
           \ |||||||||||| /  
            |\,,,,;;;;,,,,/|
         _/ | \    /|\_
       / ̄/  | /`又´\|  |  ̄\
┏━<九目ピロシ>━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
┃でもさ、吸血鬼いないじゃん?
┃首謀者である>1って誰よ。>1以外、ここ吸血鬼居ないんじゃない?
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
405あぼーん:あぼーん
あぼーん
406あぼーん:あぼーん
あぼーん
407あぼーん:あぼーん
あぼーん
408あぼーん:あぼーん
あぼーん
409留蔵:02/07/17 13:30
よし俺も闘ってやるよ、だからお前達のスタンド教えて
http://comic.2ch.net/test/read.cgi/comic/1023172649/http://comic.2ch.net/test/read.cgi/comic/1023172649/
http://comic.2ch.net/test/read.cgi/comic/1023172649/http://comic.2ch.net/test/read.cgi/comic/1023172649/
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410留蔵:02/07/17 13:30
ね、あんまりやると痛い?だぜ
411あぼーん:あぼーん
あぼーん
412あぼーん:あぼーん
あぼーん
413あぼーん:あぼーん
あぼーん
414あぼーん:あぼーん
あぼーん
415留蔵:02/07/17 13:38
だから、改名希望。責任者でてコーイ
416あぼーん:あぼーん
あぼーん

            彡三三三川川川ミ
            | \ / ||川||川
            |◎---◎  |||川|
            /  ε     川川
           (∴)〆(∴ヽ 川川
            ヽ 〜     川川l
             ヽ      川川
┏━『留蔵』━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
┃・・・そろそろ、奴等も作戦の失敗に勘付いてきたはず。早晩、次の手を
┃打ってくるだろう。どうしたものか……作戦参謀、何かないかね?
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
418速水 厚志 ◆kEnRaN.Y :02/07/17 13:41
やれやれ。特に恨みはありませんけど、死んでもらいます。
仕方ないんです、これも命令ですから。

(クドラクにサブマシンガン乱射)
419あぼーん:あぼーん
あぼーん
420あぼーん:あぼーん
あぼーん
421両儀 織 ◆ORihiMeM :02/07/17 13:42
ジョナサン・ジョースターvs両儀織
中間纏め

導入>33>34
闘争>98>223>224>384>386
422名も無きクドラク:02/07/17 13:43
>418 
 
………………ヘボァ!!
 
テメェ!! 人が日光浴してる最中に何しやがる!!!
 
(速水にその辺の木を引っこ抜いて投げつける)
>416-420
ああ、どうしよう!あたしの騙りが出てるっ!
424手塚海之(M):02/07/17 13:45
>418 >422 
 
こんな所で闘争など・・・・・・やめろ。
お前たちが争ってどうする!
425頼往凱 ◆RIOTayFs :02/07/17 13:45
>418-423

いいからテメエら纏めて死んどけ。

(金票数十本の投擲と近接してからの斬撃を>428に)
426あぼーん:あぼーん
あぼーん
427名も無きクドラク:02/07/17 13:46
>424 
やかましい!!
元はあっちの馬鹿が売ってきた喧嘩だ!!
 
(木の枝を折って思いっきり投げる)
428あぼーん:あぼーん
あぼーん
429速水 厚志 ◆kEnRaN.Y :02/07/17 13:47
>422
……知りませんよ、そんな事。僕は上から命令されただけですし。
しがない軍人の辛い所ですね。

(木を蹴り飛ばしてさらに銃撃)

>424
邪魔をするなら排除します。
なあそろそろいい加減にしとけ、よ?
431手塚海之(M):02/07/17 13:49
>427 
くぅ・・・・・・止むを得ないか・・・・・・変身!
(近くのファミレスの窓に向かってカードホルダーを差し出し、変身する)
いい加減、夏房の相手はしていられないぜ
>425
くそっ…………なんで、
任務中だってのにこんな事に巻き込まれるんだよ!
 
(金票を短剣で叩き落しつつ、
   仕掛けバネを操作して>425に対しスパイクを打ち出す)
434バドー:02/07/17 13:49
>427>429
いいから黙っておっ死ンでろよFuck off!!

(イングラムを乱射)
435あぼーん:あぼーん
あぼーん
(光学迷彩でその姿は見えない) 
 
…………。
 
(>435を超長距離からライフルで狙撃)
437頼往凱 ◆RIOTayFs :02/07/17 13:50
>429
(>428を両断し)
まずは一匹か…。
いいからテメエも市ね。

そらよ!
(>430を踏み台にして切りかかる)
438あぼーん:あぼーん
あぼーん
439レッドアリーマー:02/07/17 13:50
<433
…邪魔だ。

(口からダークファイヤー発射)
440あぼーん:あぼーん
あぼーん
441頼往凱 ◆RIOTayFs :02/07/17 13:51
>433
ハッ!ヘモグロビン中毒なんだろ?
とっとと死んどけよ。

(スパイクを切り払い、接近して刀を振りかぶる)
442来須銀河(M):02/07/17 13:51
>429
「……言っても無駄だ。任せておけ」
 
(>431にヘビーマシンガンで射撃)
443あぼーん:あぼーん
あぼーん
444ナオミ ◆Might.Go :02/07/17 13:51
取り急ぎ纏めたわ。
完結した闘争のインデックスよ。
 
>27 ユージン vs 暗黒騎士ガウザー
>86 御神苗優 vs イーヴァ(M)
>102 結城小夜 vs 閖
>135 上海魔獣境〜スプリガン vs 樟賈寶
>163 アルクェイド vs クレイグ・スティルソン
>176 鈴鹿御前 vs チェカラク
>214 姫園れい子 vs クロウ
>219 東出立vsクリストファー・ニューバート(M)
>238 横島 vs ジュヌヴィエーヴ
>249 名無しクルースニク vs ヴァンダレク伯爵(M)“The Party Of The Children Of Night”
>363 ウー大殲
>366 「偶(タマタマ)狂疾ニ因ッテ殊類ト成ル」〜 ロン VS 孔濤羅
 
 
以上。
(そそくさと退避)
445あぼーん:あぼーん
あぼーん
「だだだ」「だだだぁぁい」「じょじょじょぶぶ」「だだぁぁ」
(>450にプラズマ発射)
(次弾装填)
 
…………。
 
(>448を狙撃)
>429 
やめろ、一般人も居るんだぞ!
此処で騒ぎを起こせばどうなるか、解かっているはずだ!
 
>433 
飛び道具は使うな!被害が増える!
 
>434 
やめろ!止めるんだ!こんな闘争などに意味はない!
(カードホルダーからカードを取り出し、左手のリーダーに差し込む)
『スウィングベント』
(無機質な声とともに、右手に鞭が出現、イングラム向けて鞭を振る)
449名も無きクドラク:02/07/17 13:53
>429 
……糞が!
分かった……ならこっちも加減無しだ。
 
                             ぶっ殺す!!
(鉄パイプを拾って銃弾をはじき飛ばして殴りかかる)
 
>434 
――――――――ばぼらッ!!

てめーもか……
かまわねぇ。何人でも掛かってきやがれ!!

(速水と纏めて鉄パイプでぶん殴る)
450あぼーん:あぼーん
あぼーん
451速水 厚志 ◆kEnRaN.Y :02/07/17 13:54
>433>434
(蹴り飛ばした木にあわせるように飛んで銃弾とスパイクを回避)
(そのまま木を>434の方に蹴り飛ばしつつ、>433に向かって手榴弾投擲)
452あぼーん:あぼーん
あぼーん
>439
………!!
(炎をすんでの所でよけるが、服が少しこげる)
 
あぶねえな、何しやがる(投げナイフを投擲)
 
>441 
悪いが、まだ死ぬわけにはいかないんでね。
(刀を短剣で受け止める)
454あぼーん:あぼーん
あぼーん
455レッドアリーマー:02/07/17 13:55
>446
偽悪魔が…!

(滑空して火炎弾を連射)
「ににににげ」「にげにげ」「にげちゃ」
 
「「「だぁぁぁぁぁめぇぇぇぇぇ」」」
(>460に火炎球)
457あぼーん:あぼーん
あぼーん
458留蔵:02/07/17 13:56
test
459留蔵:02/07/17 13:57
testtest
アセルス(半妖ED後)&玖珂光太郎VSラルフ・グルトVSフォルテッシモ
レス番まとめ
 
>56>91>93>108>121>126
>127>159>165>166>173
>192>222>225>229>231
>246>374>378>379>380
461フリッツ(M) ◆Fritzmx. :02/07/17 22:15
セス・ゲッコーvsフリッツ・ハールマン レス番纏め
導入>368>369>370>371>372>373>375>376>377
 
セス対フリッツ
>381>382>383>389>390
ヤハベvsジュヌヴィエーヴ・デュドネ 導入T
 
 
 夜半を回っても収まらない熱気の中、涼やかな風が街路を渡っていく。
 
 寂れた路地裏を一人歩む少女を眼にした者がいたら、そう感じたかもしれない。
 背に流された蜂蜜色の髪が切れかけた街灯の明りを反射させて光った。 
 汗一つ掻いている様には見えない。静かな足取りで少女は進んで行く。
 白いサマーセーターに黒のスカート、素足にサンダル履きと至って簡素な出で立ちだ。
 十代半ばの整った顔立ち。だがあどけない印象はない。
 表情の影に、時折ひどく倦んだ様な色彩が刷かれる所為だろうか。 
 落ち着いたと云うより老成したその面。若者によくある浅薄な悟り済ました顔ではなく、
本当に全てを見、全てを為して来たかの様な。
 少女、ジュヌヴィエーヴは目指す場所へ近付きつつあった。
 
 生きていくと云う事は全てに関係する事なのだ、とジュヌヴィエーヴは思う。
 それが死せる生であったとしても、しがらみはどうやっても付いて回るものだ。
 この暑い夜、わざわざ彼女が外出しているのも突き詰めればそれが原因なのである。
>462続き
 
 ジュヌヴィエーヴ自身は今の住いの様な、所謂スラム街の住人たち、取り分け娼婦や
それに類する商売の女たちに共感を覚える事が多い。
 長年隠れ潜み続けて暮らして来たジュヌヴィエーヴにとって、女たちはある種の同胞にも
感じられるのである。
 自然と揉め事を仲裁したり、そこまで行かずとも親身に話を聞く彼女は、近隣の女性の駆け込み寺
の様に認知され、慕われていた。 
 その伝を受け、一時間程前にやって来た隣人の女――近くの劇場に勤めるストリッパーだった――
が持ち込んだのは、実に厄介な難題だった。
 女の恋人、こんな街に生まれる者が辿るお定まりのコースに添って人生を踏み外し、暗黒街に
首を突っ込んだ若者が、抜き差しならぬ事態に陥ったと云うのだ。
 
 街の裏側を牛耳る組織の端にぶら下がったその男は、何を血迷ったのか多額の金を持ち逃げした、
いや、持ち逃げしかけて捕まったと云う。
 放っておけば男は始末されるだろう。見せしめとして、飛び切り残酷なやり方で。
 警察が当てにならないのはよく判っていた。取り合えず話をつけなければならない。
 泣く女をなだめすかし、ジュヌヴィエーヴはアパートを出た。
 
 後少しで連中の溜まり場だ。そう思った時、喉が疼いた。
 唾液を飲み下し、粘ついた口腔の粘膜を舌で探る。
 赤い渇きの周期が近付きつつある。
 口元から零れそうになる牙を押し隠した。人通りはないとは云え、用心は怠らないに限る。
 何より慎重に生きる事が、彼女を今日まで長生きさせたのだから。
 五百年と少々。
464ヤハベ:02/07/18 01:32
ヤハベvsジュヌヴィエーヴ・デュドネ
導入
>462>463
 
 パチン、パチンと乾いた音が、一定の間隔で響く。
 それは爪切りを使う音だ。
 ありふれた、平和な日常の風景を思い起こさせる音。
 しかし、今オレがやっていることは平和な風景と呼ぶにはほど遠い。
 再び、パチンと爪切りの音が響く。
 オレの目の前には、完全に爪を失い血塗れになった、十本の指が並んでいた。
 
「へへへ、これでキレイになったぜ。伸ばしっぱなしじゃ女の子に嫌われちまうからな」 
 椅子に縛り付けられた若い男に向かって、オレはそう囁きかけた。
 男の顔は切り傷と痣で埋めつくされ、できの悪い前衛芸術を思わせるものだった。
 猿轡の僅かな隙間から、か細い苦痛の呻きが洩れ出す。
 ここで猿轡を解いたら、男の口からはどういった言葉が出てくるだろうか。
 謝罪と懇願か、それとも怒りと悪罵か。
 少しだけ興味が涌いたが、試してみる気にはならなかった。
 
「まったく悲しいねえ、オレだって本当は、こんなことしたくないんよ?
お前が悪いんだぜ、ムッシュとキリコちゃんのお金に、手ぇ出したりするから。
お前たちだって悲しいだろ?」
 周りに立つ、修道士姿の男たちがそれぞれ頷く。
 どの顔にも、他人を痛めつけることが好きな人間特有の、残虐な表情が浮かんでいた。
 そういうオレも、同じ表情をしていることだろう。
 
「いや、ホントに。上のお許しさえあれば、せめて楽に逝かせてあげるんだけどねえ」
 そう言いながら、修道士の一人からコルク抜きを受け取る。
「でも、そうもいかんのよ。ま、心配すんな、朝日が昇る頃にゃあ楽にしてやるからよ」
 まだ夜は長い、楽しむ時間はたっぷりある。
 爪切りやコルク抜き以外にも、遊び道具は用意しておいた。
「今は忍耐の時ってワケだ。そうだな、お前さんのために神父さまがお祈りをしてやろう」
 男の右膝に、コルク抜きを突き刺す。
 一筋の鮮血が足を伝った。
「肉なる者は皆、草に等しい」
 コルク抜きを一回転させると、その先端は肉の奥に潜り込む。
「永らえても、すべては野草のごときもの」
 もう一回転。
 男は苦痛に頭を振り、その顔には汗がびっしりと浮かんでいる。
「草は枯れ、花は萎む」
 一気に三回転を加えると、男は気を失った。
 
「おいおい、ありがたいお祈りはちゃんと聞けよ。まったく、最近の連中は堪え性がねえな」
ヤハベvsジュヌヴィエーヴ・デュドネ
>464
 
 薄暗い廊下をジュヌヴィエーヴは歩いていた。
 気が進まない事だが、連れが一人いる。まだ若い男だ。
 修道士の服が全く似合っていない凶暴な顔。痛みに激しく歪み、苦鳴をこぼしている所為ばかり
でもあるまい。
 この建物、組織の連中がたむろする雑居ビルの入り口でたむろしていた一人だ。
 中に入ろうとすると下卑た言葉で下卑た内容を語り、無理やりスキンシップを深めようとして
来たので、ジュヌヴィエーヴとしては丁重にお断りし、水先案内を願った訳である。
 いきなり押し倒そうとして来たそいつの腕を背中に捻り上げ、前に進ませている、とも云えるが。
 
 廊下の先、明りが洩れているドアが見えた。幽かに話し声も聞こえる。
 ジュヌヴィエーヴはその部屋の前に立った。男を押し出す様にしながらドアを蹴破る。
 先ず最初に腥い臭いが鼻についた。思わず喉を鳴らしそうになる。
 椅子に座らされた男。あれがお目当ての人物だろう。
 全身朱に染まった様子を見る限り、既にその残骸かもしれないが。
 周りを囲むのは矢張り僧服の男たちだ。どれもこれも似たり寄ったりの凶悪な面をしている。
 その中でも頭株らしい帽子を被った髭面に向かい、ジュヌヴィエーヴは静かに云った。
 
「夜分に、おまけに勝手に入って来て御免なさい。失礼ついでにいきなりだけれど、
そこの人を返して欲しいの。
 お互い節度を守って取引といきたいわね、ミスタ?」 
>378>379>380 アセルス(半妖ED後)&玖珂光太郎VSラルフ・グルトVSフォルテッシモ
 
次々と飛んでくる銃弾の合間を、私は縫うようにして駆け抜ける。
血への渇望で研ぎ澄まされた感覚が、そんな曲芸まがいのことを可能にしていた。
 
そして距離はどんどん詰まり―――間合いに入った。
求めていたものがやっと得られる。
私は悦びに笑みを浮かべながら、剣を―――
 
「! あ、が・・・」
 
―――剣を繰り出そうとした刹那に響いた轟音。
男の仕込み銃が、私の体に銃弾を叩き込んでいた。
衝撃が体を貫き、焼け付くような激痛が走る。
 
だけど、もうへたり込んでなんかいられない。
何より・・・血が、私の求めるものが目の前にある。
あとは―――ただ、殺せばいい。
 
 
・・・これほどのダメージを受けながらも、それでも、私は、
顔に笑みを貼り付けたまま、剣を袈裟懸けに切り落とした・・・
アセルス(半妖ED後)&玖珂光太郎vsラルフ・グルトvsフォルテッシモ
>380>466

返り血が、少女の全身を斑に染めた。
男の身体が壁へと叩き付けられる。

轟音。

直後、衝撃で床が崩れて抜け落ちた。
砕けた廊下の破片と共に、男の身体が中に投げ出される。
落下。また衝撃。

「カハッ!!?」

口から、血が吐き出された。
斬撃により穴の開いた胃と肺。
砕けた肋骨がそこに、更にダメージを与えている。

意識が混濁する。
だが、それでも男は必死に腕を伸ばした。
戦う意思は、まだ消えていない。

男の腕が、何かを掴んだ。
歪に曲がった、棒状のもの―――愛用の長銃だ。
うつろな表情のまま機械的に、男はこれまで何百回、何千回と繰り返した動作を始めた。
銃弾を装填し、狙いを付け、引鉄を引く。

DAMNNNNNNNNNNNNNNNNNNN!!!!

その銃声は、建物が崩壊する周りの音に比べ、か細く弱いものに聞こえた。
放たれた弾丸は光槍を展開する精霊石弾でも、聖別された銀の弾丸でもなかった。

何の変哲もない鉛弾。
だが、そこには半ば意識を失った状態でなお―――いや、明確な意識がないからこそか―――
そこに込められた意思は苛烈で厳しい。

憤怒も、憎悪も、侮蔑も、憐憫も混じらない、純粋な殺意。
目の前の敵を打ち倒し、否定し、滅ぼさんとする狂気。

必殺の意思を乗せたそれは、黄塵を切り裂き、重力の桎梏を振り切って、一直線に駆け上がる。

生命の起点、心臓を目指して。
468test:02/07/18 11:33
test
469ベルガー&ヘイゼル:02/07/18 13:48
ベルガー&ヘイゼルvs馬呑吐 『吸血海殲外伝』
>385

空気が変わった
そう表現するしかない
男がなにかまた呪文を言った瞬間変わった

「ベルガーさん…空気の遺伝詞が淀んできてます、気をつけてください」

そして『純皇』を構えなおし、詞を詠む

≪救世者は運命のそばに≫

『運命』の刃がまた厚く、長くなる

「さて…何が現れる?」
470馬呑吐 ◆TUNtujd6 :02/07/18 13:54
ベルガー&ヘイゼルvs馬呑吐 『吸血海殲外伝』
>469
 
「カカカ、やわか伸ばしたナマクラ刀、我が深遠なる奥義に何処まで通ずるか、試してみるか小僧!」
 
 地を蹴った馬は逆巻く天へ躍り上がった。宙を流れつ急上昇し、停止する。
 残存する、それでも夥しい僵尸たちは飛び跳ね乱舞し、ある一点、馬の下方に集いつつあった。
 一体二体と折り重なり、各々の躯を積み上げ山を作る。
 季節外れの雪の様に上空から大量の白片が落ちて来る。馬のばら撒く霊符だ。
 降りしきる呪符が屍の小山を覆い、そのまた上から屍が積まれる。 
 ついでに呪声も。
 
「一鬼呵成なるも躯躯転じ、櫃櫃玄なり冀州の野! 急急如律令!」
 
 符の貼り付いた部位で変化が生じた。
 白い符が黒光りする光沢に、あるいは濃緑の肌色に転じていくのだ。
 小山全体が蠢き盛り上がった。いや、立ち上がった。
 すっくと両足で立つシルエットは全長十メートル強の人型だ。但し一面六臂。
 両肩から生える左右三対の巨腕は、それぞれ剣や矛、盾を握っている。
 全身を覆うのは古代中国の様式と思しい甲冑だ。
 そして四個の紅い瞳が下界を睥睨する、その頭部。
 いびつで太い角持つ、それは牛の貌であった。
 
 遥かなる古代、中華の父祖たる黄帝と熾烈な戦いを繰り広げた妖魔怪獣たちの首魁として、
牛頭人身の悪神の名が今日にも伝えられている。
 鉄石を喰らい、初めて剣や鎧などを造ったとされる戦いの神。
 その名を蚩尤(しゆう)と云った。
 
 地響きが上がる。
 神の似姿を取った僵尸の複合体が一歩を踏み出したのだ。
 マフラーをなびかせ巨神の左肩に降り立ち、口の端をひん曲げた馬は愉快そうに笑った。
471ベルガー&ヘイゼル:02/07/18 13:57
ベルガー&ヘイゼルvs馬呑吐 『吸血海殲外伝』
>470
 
「オイオイ、風水っていうのはここまでできるものなのか?ヘイゼル」

目の前に現れた巨大なモノ
重騎より大きい術で作られた物体
大きな牛の化け物が2人の目の前に現れた

「待ってください、私でもこんなに早く組み上げるのは無理なんです」
「符を使ってむりやり組み上げた以上どこかに中心点ができてるハズです、視てみます」

地響き、牛の化け物が男を肩に乗せ動き始める
それを見てベルガーは懐から単一の精燃槽を取り出し『運命』に取り付ける
『救世者』の詞によって長く分厚くなっていた黒い刃がさらに一回り大きくなる

≪運命に大きさなど関係ない≫

「でかけりゃいいもんじゃっ、ないだろうが」

最上段に振り上げ
一気に振り下ろす
一瞬の動作
その時後ろから妙にあせったヘイゼルの声が聞こえた

「えっ?遺伝詞がここを中心に乱れ始めてる。あの時のように」
472馬呑吐 ◆TUNtujd6 :02/07/18 14:03
ベルガー&ヘイゼルvs馬呑吐 『吸血海殲外伝』
>471
 
 地上から湧き上がる黒剣。リーチの差を補って余りある大剣は、文字通りの剣風を伴っていた。
 戦の魔王は咆哮する。
 殆ど炸裂したと云うべき音声で空間を震わせ、膝を折り躯を沈めた。大きく振った右腕が
吹き荒ぶ風を切って地上に薙ぎつけられた。手に持つ大剣と黒い巨刃とが喰い合い、火花を散らせて
止まる。
 逸れた突風が馬のマフラーをはためかせた。
 
「ほう、判るか。黒水の邪気が祝融の火気を剋して行くのを感じるかね。
 如何にも。この地の霊的位相は大幅にずれつつあるのだよ」
 
 驚いた様な女の呟きを聞き逃さなかったのか、馬は蚩尤の肩から声を張り上げた。
 両刃は競り合い、互いに譲らない。
 
「これだけ邪怪と屍の陰気を渦巻かせて大規模戦闘やらかせば当然だが、それだけでは私の目的
には全く足りんのさ。
 よって少々手を入れてやったと云う訳だ。先程の呪と、予め貼っておいた魔陣でね」
 
 含み笑いながら云う馬の手は懐から葉巻を摘み出し、口に咥えた。
 只それだけで火が灯る。
 風の中に紫煙を一つ吐いて続けた。
 
「わざわざ風水を弄って四方位から陰気を凝らせてやったのだ。地下を走る龍脈とて堪るまい。
 滴る悪気に地脈の龍は悶え渇き、汚れた水でも構わず飲まんと大海に走るだろう。
 如かして太極は両儀を堕し、両儀は四象を穢し、四象は八卦を毀つ。
 森羅万象悉くは鬼律に征せらると云う寸法さね」
 
 最前の呪願文、九大地獄の魔王・誉主都羅権(よす・とらごん)へと働きかけた詠唱は、超高圧の
邪気と呪念を龍脈の誘導により指向性を持たせた上、一気に爆縮させる起爆剤だったのだ。
 生じる負の霊威の強大さは、地域的とは云え地獄と現世とを物理的に直結させ得る。
 その結果、ダベンポートに存在する全ての生命は地獄へと崩落して消失し、後に残るのは
凄まじい怨念のみだ。
 馬のやろうとしている事は、一般にこう呼ばれる魔導災害(デモノハザード)であった。
 
 即ち、『奈落堕ち(フォールダウン)』。
 
 澄ました顔で馬は葉巻を吹かす。

「あの連中が持ちかけて来た依頼は、将に渡りに船だった。丁度質量共に揃った呪怨が欲しかった
所でね。
 さて、呪陣はもうじき完成をみる。喜んでくれたまえ。
 君らの魂は実に良い糧になりそうだて!」
 
 蚩尤が再び吼えた。
 左腕の一本が上がる。逆手に握った矛の切っ先を光らせて。
473ベルガー&ヘイゼル:02/07/18 16:27
ベルガー&ヘイゼルvs馬呑吐 『吸血海殲外伝』
>472

「どうして、こう俺達の周りには馬鹿の世界一を決めようとするやつらばかり集まるんだろうな・・・と」

鍔迫り合いをやめ、バックステップで左から来た矛をかわす
そのまま『運命』を構えたままヘイゼルの元へ

「ベルガーさん、あれ使います。時間稼いでください」

ベルガーの方を見ず、化け物と肩に乗る男を見つつ言う
うつむきかげんで表情が見えない

「オイオイ、あの時からまったくやってないのに大丈夫なのか?詞も変わってるはずだろ」

やはりヘイゼルの方を見ず答えるベルガー
少し・・・疲れた感じで答える

「止めないと転輪よりも酷い事になりそうです、
それに・・・あの時決めたとおり『逃げたくない』んですよ、どんな時も」

一息置き

「だから・・・止めます」

正面を向く
その顔は真剣という言葉以外では表せることができなかった

「わかったよ、それじゃあまたその間キミを護ろうヘイゼル・ミリルドルフ」

懐から予め連結されていた単一精燃槽を20個出し『運命』に取り付ける
20個の精燃槽のせいで『運命』は剣というより長槍に見える
そして走りつつ詞を放った

≪運命は救世者と永遠に≫

20ヤードに伸びた『運命』が化け物に向かう
そして・・・

『強臓式義眼”救世者”・駕発動開始』

力強く長い詞が戦場に流れ始めた
474馬呑吐 ◆TUNtujd6 :02/07/18 16:31
ベルガー&ヘイゼルvs馬呑吐 『吸血海殲外伝』
>473

「カカカッ、さっきの台詞をそっくり返すぞ!
 でかきゃいいもんじゃあるまいが!」
 
 巨神の二倍近い黒刃を、全ての干戈が受け止める。
 大地が揺れ、天がどよもす。
 激しく振動する蚩尤の肩で仁王立ちしつつ、馬の剣指が空を刻み、呪を刻す。
 
「鬼眼煌煌、落暉の果て! 怨懊契りて孕むは亡国! 急急如律令! 勅!」
 
 巨神の眼が朱色を濃くする。光は四つの瞳全てで盛り上がり、まばゆい光線となって放たれた。
 地上を閃光が走り抜ける。
 朱の光線が舐めた場所は即座に爆風を上げて炎上した。
 
「勅!」
 
 周囲の地面に建物に、光線は満遍なく注がれる。
 爆発、炎。そしてまた爆発。
 
「勅勅勅勅勅!! はははははッはァッ!」
 
 灼熱地獄が顕現したその時――。
 
≪黒き森の黒き闇───≫
 
「――む、何だ、これは?」
 
 哄笑を止め、訝しげに馬はひとりごちる。
 立ち込める黒煙と炎熱の何処からか響いて来る。
 静かに、空間そのものが語る様な詞(テクスト)。
 
≪深淵にて生まれ 深遠より転輪す 
 疾風を巻きて竜と語り 
 風を読みては詩を朗じ 
 手には力を抱いて逡巡≫
 
 馬の眼は黒衣の青年の背後にある美女を捉えた。
 
「また妙な言霊を捻くるか! させんわ!」
 
 発する怒号に応えるが如く、剣と矛を黒刃に押し付けつつ破壊神の瞳が光る。
ホル・ホース&J・ガイルvsトップガンダー 「異端の銃と真の銃」導入
 
その場にいるのは2人の、奇妙な男だった。
1人は西部劇のスクリーンから飛び出して来たようなガンマン風の男。
もう1人は、漆黒の機械の体に、1つだけの真紅の眼を宿した男。
 
やがて、西部劇のガンマンは口を開く。
 
「おたくがネロス帝国暴魂、トップガンダーさんだな?」
 
ガンマンの手が、銃を握るような形で黒の機械に向けられる。
 
「DIO様の命令だ、ポンコツになって・・・」
 
その手から、銃の形をした精神のイメージ、「スタンド」が顕現する。
 
「もらうぜッ!」
 
その叫びを合図に、銃のスタンド「皇帝」は弾丸を吐き出した。
 
>475
ホル・ホース&J・ガイルvsトップガンダー 「異端の銃と真の銃」
 
「軽いな……!」
 
体を捻り弾丸を回避。
抜刀するかのような勢いでライフル銃を構える。
 
「そんな軽い弾丸で俺を殺せると思うな!!」
 
センサー稼動。
標的の胴体部を照準内に収める。
 
正確無比の狙いで、ライフル弾が放たれた。
ホル・ホース&J・ガイルvsトップガンダー 「異端の銃と真の銃」
>476
 
黒き銃士の銃弾は、胴体を食らう牙と化して、ホル・ホースを襲った。
 
そばの水溜りに、包帯を巻いた怪物が映った。
水の中で、怪物が腕を振るう。
その動きに合わせるように、トップガンダーの銃弾は切り刻まれ、地に落ちた。
 
ホル・ホースの口元が笑みの形に歪んだ。
 
「軽い?ヒヒ、『軽い』だって?そー言った奴の負けだぜッ!」
 
さらに、避けられたはずの弾丸が、旋廻してトップガンダーの背後へ舞い戻ってくる。
弾丸もまたホル・ホースの意志に従う、『スタンド』だった。
 
>477
ホル・ホース&J・ガイルvsトップガンダー 「異端の銃と真の銃」
 
 背後に避けた筈の弾丸の反応をキャッチ。
 高速で振り向き照準を合わせる。
 
 銃弾を銃弾で撃ち落す――――そんな馬鹿げた事を実行しようというのだ。
 
 0.01度にまで至る照準の誤差を一瞬で修正。
 風向き、湿度。
 その他諸々を入れての計算には機械の入る余地の無いものがあった。
 
 『勘』とも呼べるものが。
 
 発砲。
 
 トップガンダーは悠然と振り返る。
 
「軽口を叩くな――――」
 
 再び銃を突きつけ、トリガー。
 轟音が空気を揺らす。
 
「貴様のような殺し屋は好かん」
479ヤハベ:02/07/19 00:19
ヤハベvsジュヌヴィエーヴ・デュドネ
>465
 
 部屋に踏み込んできた少女は、不思議な印象を与えた。
 その整った顔立ちは、悟りすましたような静かな表情を浮かべている。
 キリコのように狂気をはらんだ静けさではなく、年老いた隠者のような静けさだ。
 こういった、年齢不相応の雰囲気を漂わせたタイプはたまらなく魅力的だ。
 オレは一目で、この少女のことを気に入った。
 その後に、少女が何者で、なんの目的でやってきたのかという疑問に思い当たる。
 
 二つ目の疑問は、少女が自ら説明してくれた。
 一つ目の疑問の答も、だいたい想像はつく。
 たった一人で、こんな時間にこんな場所で、こんな男たち相手に素手で向かい合っているのだ。
 見かけからは想像もつかないほどの腕自慢か。
 椅子でへたばっている間抜け野郎に、こんな素敵な知り合いがいたとは意外だった。
 
「かわいい嬢ちゃんの頼みを断りたかねえが、そりゃ無理ってもんだ。
こいつを手放したりしたら、別の女の子に叱られちゃうんだよ」
 片頬を吊り上げながら、言葉を続ける。
「でも、肩を落としてしょんぼり帰ることはない。代わりといっちゃあなんだが、神様が子羊ちゃんたちに
与えたもうた快楽って奴を、たっぷりとプレゼントしてやるぜ」
 言葉を切り、五人の修道士に呼びかける。
「さあ、お前らが快楽の与え手だ。昇天させてやれや」
 五人のうち三人が、下卑た笑いを浮かべながら少女に歩み寄っていく。  
 
 あの少女がどれくらいの腕利きなのか、まずは様子見だ。
ヤハベvsジュヌヴィエーヴ・デュドネ
>479
 
 寄って来る男三人を至極冷静に見据える。
 どの道簡単に云う事を聞く連中でないのは承知の上だ。少々痛めつけてやるのも仕方ないだろう。
 深紅の闘争心が湧き上がる。
 どうあれ、それに価する連中なのは間違いない。
 
 向かって右側の男へ手を捻り上げていた見張りを放る。二人は激突した。
 殆ど吹き飛んで来た様な衝撃に気絶し、並んで崩れ落ちる。
 次に左から飛び掛ってきた男をかわしざま、膝に蹴りを入れる。
 嫌な音を立て、あっさり骨は折れた。
 絶叫を上げてうずくまるそいつを無視し、最後の一人が突っかけてきた右フックを左手で弾く。
 呆然とした様な顔面へ右手。拳は作らず、張り手だ。
 鼻柱から血を流し、物も云わずに男は後方へ、妙にゆっくりと倒れ込んだ。
 
 膝を砕かれた男の呻き声のみが部屋中にこもっている。
 ジュヌヴィエーヴは髭面へ、軽く小首を傾げてみせた。
 
「私も教会に関しては云いたい事は色々あるわ。でも、そう云う格好でこう云う事をするのは、
ちょっと冒涜が過ぎると云うものよ」
481ヤハベ:02/07/19 01:53
ヤハベvsジュヌヴィエーヴ・デユドネ
>480
 
 随分とふざけた光景だ。
 少女がたったひとりで、三人の、正確には四人の大の男を素手で片付けてしまうとは。
 中学生向けの三文小説のような光景だったが、それはまぎれもない現実だった。
 だが、これはまだ予想できた範囲だ。
 この少女には、まだ想像もつかないようななにかがある。
 心中で冷や汗を流しながらも、少女に向かって笑みを崩さずに話しかける。
 
「ほへぇー、こりゃまた随分と腕っぷしの強い嬢ちゃんだなあ」
 さらに、
「オレは神を捨てた男でね。名前、行動、服装のすべてでもって、神を冒涜しちゃうのが趣味なのさ」
と、少女の言葉に返答を返しながら、左右に控える修道士に目配せする。
「元気のいい子は大好きだが・・・・ものには限度ってものがな。足、狙え」
 
 最後のひとことは、修道士たちに向かって出した指示だった。
 二人は僧服の懐からそれぞれ、ラドムとアストラ、やや古風な拳銃を取り出した。
 
 こいつらは人道や人情といったものが、完全に欠如している。
 だから、丸腰の女めがけて発砲することに僅かなためらいも見せない。
 目の前で仲間を殴り倒した女ならば、なおさらだ。
 タイヤがパンクしたような破裂音が、何発か響いた。
 
 これで終わるはずはない。
 お前の「なにか」を見せてくれ。
ヤハベvsジュヌヴィエーヴ・デュドネ
>481
 
 炸裂音が連続した。
 少し舐めていたかもしれない。
 丸腰の、しかも女に対し無造作に発砲すると云うのは、余程根性が座ったプロフェッショナルか、
余程根性が腐った屑かどちらかだ。
 腕前からみて後者なのは間違いない。
 一息で数メートル脇に跳ぶ。だが、間に合わなかった。
 
 焼け火箸を突き刺された様な痛み――随分と前、異端審問官にやられたものだ――が
腿と脛で弾ける。
 そのまま銃火を避けて更に壁際へ跳んだ。
 撃たれた脚はまだ動く。反射速度は流石に落ちているが、行動に支障は無い
 銀で覆われた武器でなければ、自分を疵つける事は出来ても最終的に滅ぼす事は出来ないのだ。
 感じる痛み自体は温血者(ウォーム)であった頃と変わらないが。
 
 発明されてから数世紀、何度か躯に受けた事はあるが、未だにこの武器に対しては慣れない。
 痛みにではなく、設計理念そのものにだ。
 同族を殺傷する時でさえ利便性を求め続ける人に対し、暗澹たる思いに駆られずにはいられない。
 
 尤も今はそんな思考を凝らしている余裕は無かった。
 両脚を踏み締め跳躍。疵口にかかる負担は歯を噛み縛って殺す。
 すう、と空中で両手の爪が伸びた。
 刃と評して遜色ない鋭さと長さを保つ。
 手に生じた武器を振り被り、居並ぶ銃口へ向かって突撃する。
483ベルガー&ヘイゼル:02/07/19 14:54
ベルガー&ヘイゼルvs馬呑吐 『吸血海殲外伝』
>474

20ヤードに伸びた『運命』が化け物と衝突するが

「ちぃ、やっぱ腕が多いのは反則だよなぁ」

そう言いながらさらに柄を持つ手に力を込めるが動かない
一度戻すかと考えたとき、化け物の4つの目が輝き

「おいおい、この展開はもしや・・・」

急いでヘイゼルの直線上に移動
いたってシンプルな詞を放つ

≪運命は救世者の流れを変えさせない≫

閃光
しかし『運命』の仮発動はその光すら弾く

「あぶねー、時間稼ぐ所じゃないな・・・いそいでくれ!!ヘイゼル」

熱気と爆風の中聞こえているかどうかわからないが
ヘイゼルに向かって叫ぶ
その時、周りの空間に詞が放たれた

≪黒き森の黒き闇───≫

「来たか!!さて…相手も気づくし、こっからが本番だな!!」

≪深淵にて生まれ 深遠より転輪す 
 疾風を巻きて竜と語り 
 風を読みては詩を朗じ 
 手には力を抱いて逡巡≫

強臓式義眼『救世者』・駕発動
その起動のためには多くの詞がいる
そして他の駕発動と違い、発動するため詞には定型などない
だから、ヘイゼルが変えた独逸創始記が歌のように流れ
詞は空間に広がっていく

「さて・・・もうひとふんばりだな」

『運命』を持ち直し正面を見る
熱気が消え、煙が流れ、また化け物が見えるようになる

「真正面からばかりだと・・・バカみたいだからな」

ベルガーは一番近くにある腕に向かい走った
484馬呑吐 ◆TUNtujd6 :02/07/19 15:53
ベルガー&ヘイゼルvs馬呑吐 『吸血海殲外伝』
>483

≪隻腕の男は救世者を連れ 月下に二人は大地に戻る
 今宵にて竜は集いて踊り 全ては全ての前途を見る≫
 
 静かな、しかし力強い詞が空間を席巻する中、鋼と鋼が激突した。
 再び火花を咲かせ、盾が黒刃を噛み止めたのだ。
 盾だけで交差を支え、残りの武器は尖端をもたげる。
 
「ふふん。私はね、反則って奴が大好きなのだよ」
 
 突如夜空を風切って迫った鋭い音が、馬の笑いを中断させた。
 続けざまの爆破音が破壊神の胸元から立ち昇ったのだ。黒煙が噴き、巨躯が揺らぐ。
 肩口の馬も体勢を崩した。炎風に煽られソフト帽を何処かへ飛ばされる。叫んだ。
 
「な、何事だ!?」 
 
 放たれ命中した火箭は対艦ミサイル・ハープーンであった 
 沖合いに待機した『タービュレント』、英国艦隊が誇るトラファルガー級原潜が、ダベンポートへ
対艦対地攻撃を開始したのだ。
 刃を受け止めた盾が外れ、蚩尤はよろめきながら後退った。
 ミサイルの直撃である。只で済む筈はない。
 
「ええ、次から次へと儂の邪魔ばかりしおってェ!」
 
 馬の憤怒をものともせず、詞は上下四方にて奏される。 
 
≪風が吹き 夜に吹き 竜が起き 人は動き 竜が鳴く
 北の方から風が生まれ 北の方から道が生まれ
 騎師は騎師として下り 竜は竜として空駆ける
 全ては北の星に至る道 壁を越えるための物語≫
>478
ホル・ホース&J・ガイルvsトップガンダー 「異端の銃と真の銃」
 
トップガンダーの弾丸は、正確にホル・ホースの眉間と、『皇帝』の弾丸を捉えていた。
無謀な試みは、間違いなく成功する―――――はずだった。
 
「シブイねぇ〜っ、全くおたくシブイよ」
 
が、相も変わらずホル・ホースは軽口を叩いてみせる。
そして時代錯誤のガンマンは、先程トップガンダーがやった動きを模した。
自分を襲う銃弾向けて『皇帝』の弾丸を放つ。
意志に従う銃弾は、大した苦もなくライフル弾を撃ち落とす。
 
その言葉に応じるように、『皇帝』の弾丸は再び弧を描いた。
銃弾は自在に動き、ライフル弾を「避けた」。
そして、漆黒の銃士の背へと突き刺さろうとする。
 
>485
ホル・ホース&J・ガイルvsトップガンダー 「異端の銃と真の銃」
 
「面白い」
 
 それだけ言い捨て、トップガンダーは一歩踏み込み、体を半身にする。
 醜い左腕で背後に迫る弾丸をあえて受ける。
 
 この程度、右腕一本あれば事足りる―――
 
 三度、ライフルの銃口でマズルフラッシュが瞬いた。
 連射に向かない筈の狙撃ライフルでの三連射。
 
 しかも、その弾丸の内で狙いを外している物は一つも無い。
487エレン ◆Elen1cxc :02/07/19 23:39
ウピエルvsファントム達 エレン・エピローグ
>http://cocoa.2ch.net/test/read.cgi/charaneta/1025406070/367
 
 
 「―――う……」
 
 エレンの口から小さな呻き声が溢れると同時に
それまでピクリとも動かなかった少女の身体が、ゆっくりと起き上がる。
 
 まだ意識が完全には覚醒していないのか、何処かぼんやりとしたその動作は
着ている衣装と相まって、まるで童話のひとコマの様に見えた。
 
 そのまま、それが自分のもであるのかを確かめるように
右手を目の前まで持ち上げると、二三度ゆっくりと握る。
 
 その動作が引き金になったように、エレンの顔に赤味が徐々に戻ると同時に
寸前の記憶が、フラッシュバックのように襲い掛かってきた。
 
 慌てて周囲を見まわすエレンの視界に、その少年の姿はすぐに飛び込んできた。
 その姿を認めた瞬間、彼女の瞳が僅かな驚愕に見開かれた。
 
 そして、
 
「……無事だったのね、玲二」
 
 ゆっくりと微笑みにかわっていった。
488吾妻玲二 ◆phantom2 :02/07/19 23:41
ウピエルvsファントム、エピローグ
>487
 
 様子を見ていたモーラが、フリッツを誘ってハマーの外に出る。
 フリッツも、モーラの言葉には素直に従って外に出た。
 
「エレン……」
 
 あれだけの事が有ったと言うのに、微笑むエレンに、胸が痛くなる。
 目尻に滲んだ涙は、見間違いなんかじゃない……。
 俺はエレンの、こんな悲しい笑顔が見たかった訳じゃ無い…… 俺は……。
 
 ウピエルが残した最後の言葉が耳に蘇る。
 
『認めたくは無いが・・・俺はもう死ぬ・・・だから・・・俺からの置き土産だ
 俺が死ぬまでにテメェが吸血鬼になるか、人に戻るか・・・
 どちらにせよ、テメェは死なない。この世で、生きる限り殺し続けろ・・・!
 俺の分まで・・・生きて地獄を這いずり回れ! 』
 
 そう、ここは地獄…… ウピエルの呪いは成就され、俺はエレンを傷つけて、
 生き長らえた。
 
 ふと……日本に残してきた美緒の事が頭をよぎる、そしてキャルの怒声も。
 素直になるしかない ……それでも。
 
 迷いは消え、凍りついた両手が動き出し、エレンの身体を包み込む。
 エレンは自然に身をまかせ、むしろ以前より安心したように身を寄せてきた。
 
「エレン…… 君が、好きだ……」
 
 見開かれるエレンの瞳――――。
 抱きすくめられた体に、さざなみのような震えが走る……。
 
 なぜ……こんな形でしか、告げる事ができなかったのか……?
 どうして……もっと早く、告げる事ができなかったのか……?
 愛情も……欲望も……死さえも……エレンと二人なら、きっと……。
 
「君に、ずっと傍にいてほしい。死ぬときまで、ずっと」
 
 潤んだエレンの瞳から、ついに涙が溢れ出る。
 
『わたしは……あなたのものよ』
『わたしを、エレンと呼んでくれる、あなただけの……』
 
「エレン……!」
 
 見詰め合う瞳が、やがて自然に閉じられ……
 ゆっくりと…… 二人の唇が重なり合った……。
 
 
                               Fin
489吾妻玲二 ◆phantom2 :02/07/19 23:48
ウピエルvsファントム、レス番纏め。
 
約100レスにも及ぶ長期戦となった、関係者はお疲れ様。
ちなみにファントム側は、美緒エンド後の設定だ。
 
>http://cocoa.2ch.net/test/read.cgi/charaneta/1020438117/322
>http://cocoa.2ch.net/test/read.cgi/charaneta/1020438117/394
>http://cocoa.2ch.net/test/read.cgi/charaneta/1020438117/395
>http://cocoa.2ch.net/test/read.cgi/charaneta/1020438117/396
>http://cocoa.2ch.net/test/read.cgi/charaneta/1020438117/406
>http://cocoa.2ch.net/test/read.cgi/charaneta/1020438117/423
>http://cocoa.2ch.net/test/read.cgi/charaneta/1020438117/457
>http://cocoa.2ch.net/test/read.cgi/charaneta/1020438117/472
 
>http://cocoa.2ch.net/test/read.cgi/charaneta/1021106839/31
>http://cocoa.2ch.net/test/read.cgi/charaneta/1021106839/36
>http://cocoa.2ch.net/test/read.cgi/charaneta/1021106839/41
>http://cocoa.2ch.net/test/read.cgi/charaneta/1021106839/308
>http://cocoa.2ch.net/test/read.cgi/charaneta/1021106839/344
>http://cocoa.2ch.net/test/read.cgi/charaneta/1021106839/353
>http://cocoa.2ch.net/test/read.cgi/charaneta/1021106839/395
>http://cocoa.2ch.net/test/read.cgi/charaneta/1021106839/416
>http://cocoa.2ch.net/test/read.cgi/charaneta/1021106839/441
>http://cocoa.2ch.net/test/read.cgi/charaneta/1021106839/444
>http://cocoa.2ch.net/test/read.cgi/charaneta/1021106839/481
>http://cocoa.2ch.net/test/read.cgi/charaneta/1021106839/493
>http://cocoa.2ch.net/test/read.cgi/charaneta/1021106839/502
>http://cocoa.2ch.net/test/read.cgi/charaneta/1021106839/531
>http://cocoa.2ch.net/test/read.cgi/charaneta/1021106839/532
>http://cocoa.2ch.net/test/read.cgi/charaneta/1021106839/663
 
>http://cocoa.2ch.net/test/read.cgi/charaneta/1021741941/21
>http://cocoa.2ch.net/test/read.cgi/charaneta/1021741941/32
>http://cocoa.2ch.net/test/read.cgi/charaneta/1021741941/42
>http://cocoa.2ch.net/test/read.cgi/charaneta/1021741941/52
490吾妻玲二 ◆phantom2 :02/07/19 23:49
 
ツァーレンシュベスタンvsエレン&ドライルート
 
>http://cocoa.2ch.net/test/read.cgi/charaneta/1021741941/90
>http://cocoa.2ch.net/test/read.cgi/charaneta/1021741941/263
>http://cocoa.2ch.net/test/read.cgi/charaneta/1021741941/299
>http://cocoa.2ch.net/test/read.cgi/charaneta/1021741941/300
>http://cocoa.2ch.net/test/read.cgi/charaneta/1021741941/301
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>http://cocoa.2ch.net/test/read.cgi/charaneta/1022485313/220
>http://cocoa.2ch.net/test/read.cgi/charaneta/1022485313/221
>http://cocoa.2ch.net/test/read.cgi/charaneta/1022485313/234
>http://cocoa.2ch.net/test/read.cgi/charaneta/1022485313/393
>http://cocoa.2ch.net/test/read.cgi/charaneta/1022485313/402
 
ウピエルvs吾妻玲二ルート
 
>http://cocoa.2ch.net/test/read.cgi/charaneta/1021741941/218
>http://cocoa.2ch.net/test/read.cgi/charaneta/1021741941/311
>http://cocoa.2ch.net/test/read.cgi/charaneta/1021741941/343
>http://cocoa.2ch.net/test/read.cgi/charaneta/1021741941/535
 
>http://cocoa.2ch.net/test/read.cgi/charaneta/1022485313/6
>http://cocoa.2ch.net/test/read.cgi/charaneta/1022485313/28
>http://cocoa.2ch.net/test/read.cgi/charaneta/1022485313/112
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>http://cocoa.2ch.net/test/read.cgi/charaneta/1022485313/380
>http://cocoa.2ch.net/test/read.cgi/charaneta/1022485313/409
>http://cocoa.2ch.net/test/read.cgi/charaneta/1022485313/413
>http://cocoa.2ch.net/test/read.cgi/charaneta/1022485313/414
>http://cocoa.2ch.net/test/read.cgi/charaneta/1022485313/461
 
491吾妻玲二 ◆phantom2 :02/07/19 23:50
玲二とエレン
 
>http://cocoa.2ch.net/test/read.cgi/charaneta/1022485313/462
>http://cocoa.2ch.net/test/read.cgi/charaneta/1022485313/463
>http://cocoa.2ch.net/test/read.cgi/charaneta/1022485313/465
>http://cocoa.2ch.net/test/read.cgi/charaneta/1022485313/466
 
>http://cocoa.2ch.net/test/read.cgi/charaneta/1024151370/311
>http://cocoa.2ch.net/test/read.cgi/charaneta/1024151370/312
>http://cocoa.2ch.net/test/read.cgi/charaneta/1024151370/319
>http://cocoa.2ch.net/test/read.cgi/charaneta/1024151370/454
 
>http://cocoa.2ch.net/test/read.cgi/charaneta/1024844742/56
>http://cocoa.2ch.net/test/read.cgi/charaneta/1024844742/57
 
ツァーレンシュベスタンvsドライ
 
>http://cocoa.2ch.net/test/read.cgi/charaneta/1022485313/425
>http://cocoa.2ch.net/test/read.cgi/charaneta/1022485313/429
 
>http://cocoa.2ch.net/test/read.cgi/charaneta/1023292545/3
>http://cocoa.2ch.net/test/read.cgi/charaneta/1023292545/4
>http://cocoa.2ch.net/test/read.cgi/charaneta/1023292545/5
 
ウピエルvsドライ
 
>http://cocoa.2ch.net/test/read.cgi/charaneta/1023292545/44
>http://cocoa.2ch.net/test/read.cgi/charaneta/1023292545/133
 
>http://cocoa.2ch.net/test/read.cgi/charaneta/1024151370/14
>http://cocoa.2ch.net/test/read.cgi/charaneta/1024151370/72
>http://cocoa.2ch.net/test/read.cgi/charaneta/1024151370/203
>http://cocoa.2ch.net/test/read.cgi/charaneta/1024151370/228
>http://cocoa.2ch.net/test/read.cgi/charaneta/1024151370/438
 
>http://cocoa.2ch.net/test/read.cgi/charaneta/1024844742/39
>http://cocoa.2ch.net/test/read.cgi/charaneta/1024844742/75
 
>http://cocoa.2ch.net/test/read.cgi/charaneta/1025406070/84
>http://cocoa.2ch.net/test/read.cgi/charaneta/1025406070/127
>http://cocoa.2ch.net/test/read.cgi/charaneta/1025406070/144
>http://cocoa.2ch.net/test/read.cgi/charaneta/1025406070/159
 
エピローグ
 
>http://cocoa.2ch.net/test/read.cgi/charaneta/1025406070/186
>http://cocoa.2ch.net/test/read.cgi/charaneta/1025406070/221
>http://cocoa.2ch.net/test/read.cgi/charaneta/1025406070/365
>http://cocoa.2ch.net/test/read.cgi/charaneta/1025406070/367
 
>487
>488
 
感想はこちらに。
 
http://fargaia.hokuto.ac/html/test/read.cgi?bbs=vampbattle&key=1019409630
492ヤハベ:02/07/20 01:03
ヤハベvsジュヌヴィエーヴ・デュドネ
>482
 
 銃弾を脚に受けたにもかかわらず、少女は人間ばなれした速さでこちらに飛びかかってくる。
 彼女の指先で刃を思わせるなにかが煌き、細い腕が、横一列に並んだオレたち三人を
まとめて薙ぎ払うように振るわれた。
 
 ひとりは、握った指ごとラドムを床に落として、甲高い悲鳴をあげた。
 ひとりは、ざっくりと切り裂かれた顔面を抑えながら、床を転げ回った。
 無事だったのは、素早く飛び退いたオレだけだ。
 
「こりゃ驚いたな。嬢ちゃん、どーゆー体してんだよ。あとで隅々まで調べさせてくれや」
 血に染まった少女の爪を見つめながら、オレは言った。
 内心の驚嘆と畏怖、それに期待と愉悦が声にも現れた。
 どうやらこの少女はバケモノの類らしいが、それも、オレにとっては魅力のうちだ。
 まったく、素晴らしい。

 すぐ側にある机の上に無造作に転がしてあった、PPsh41短機関銃に手を伸ばす。
 銃本体と、71発の7.62ミリ弾が装填されたドラムマガジンの重さは、普段ならば心強いことこの上ないが、
この怪物娘相手には多少心許なかった。
 それでも、オレの顔には酷薄な笑みが貼り付いていた。
 さあ、もっともっと見せてくれ。 
ヤハベvsジュヌヴィエーヴ・デュドネ
>492
 
 血臭が立ち込めている。自分の血もだが、今切り裂いた男二人の分だ。
 息が荒い。動悸が早まる。目の前が赤くなる。
 もう渇きを堪えきれない。
 犬歯がせり出した。多分瞳は真紅に染まっているだろう。
 数百年の時を経、長生者(エルダー)と称される一人――ジュヌヴィエーヴ・デュドネは、
吸血鬼の本性を顕にした。
 
 朱色の視界に髭面が機関銃を構える姿が映る。ジュヌヴィエーヴは臆さずに云ってのけた。
 
「遠慮させて頂くわ。身を任せるなら、せめて人は選びたいから」
 
 指を断たれた男がよろめく。啜り泣きながら疵口を押さえ、偶然二人の間に入った。
 咄嗟に男の胸を蹴った。哀れにも男は砲弾の様に吹っ飛び、髭面の方へ叩きつけられる。
 宙を飛ぶ男の影に隠れつつ、ジュヌヴィエーヴは地を馳せた。
494ヤハベ:02/07/20 02:46
ヤハベvsジュヌヴィエーヴ・デュドネ
>493
 
 少女の口元から、異様に発達した犬歯が覗き、その瞳は真っ赤に染まった。
 ようやく何者なのかが解った。吸血鬼だ。
 小説や怪奇映画のなかだけの存在だと思っていたが、彼女は紛れもなく本物の吸血鬼だった。
 オレの胸の上で揺れている十字架をまったく気にしていないことに、釈然としないものを感じながら、
オレはPPsh41を構えた。
 
「このボンクラに、こんな特殊なタイプのコネがあったとはな」
 椅子に座って気絶したままの男を一瞥しつつ、そう毒づいたオレめがけて、指を落とされた修道士が
飛んできた。
「当たるか!」
 そう叫びながら、身をよじって修道士を回避する。
 その陰から姿を現した少女に銃口を向け、引き金を引く。

 オレンジ色の十字型をした発砲炎が閃き、一秒で十五発の7.62ミリ弾が放たれた。
>486
ホル・ホース&J・ガイルvsトップガンダー 「異端の銃と真の銃」
 
3つの銃弾は、的確に急所へと向かっている。
口笛を1つ吹いて、ホル・ホースは懐から酒瓶を取り出す。
 
「出番だぜッ!J・ガイルのだんな!」
 
酒瓶を放り上げて『皇帝』でそれを粉砕する。
破片にライフル弾が映る。
そして次の瞬間には、その場にいないはずの包帯姿の怪物もまた、破片に映り込んだ。
 
怪物は手首から生えたナイフで、銃弾を2つ、素早く叩き落とす。
全く同時に『皇帝』は弾丸を2つ吐き出す。
 
片方は残り1つのライフル弾を撃ち落とし。
もう片方はトップガンダーへと迫る。
それだけなら避けられるかも知れないが――――――。
 
トップガンダーの姿もまた、瓶の破片に映っていた。
それを包帯姿の怪物―――J・ガイルのスタンド、『吊られた男』は、
黒き戦闘マシーンの姿を、破片の中で羽交い締めにしていた。
>495
ホル・ホース&J・ガイルvsトップガンダー 「異端の銃と真の銃」
 
「グ……アッ!」
 
 突然身動きが出来なくなり、弾丸を胴体へと受ける。
 擬似痛覚で感じる身の危険。
 そして――――
 
 限界で感じる、ギリギリの昂揚感。
 
「ク、クク……」
 
 無機質な機械音声の笑い声が零れる。
 間違い無く、トップガンダーはこの瞬間を楽しんでいた。
 
「いいだろう。お前のその銃を認めよう――――」
 
 地面へと狙撃銃を全弾発射。
 立ち込める硝煙と粉塵がトップガンダーの姿を隠す。
 体からふっ、と拘束する力が消えた。
 
 ―――――今だッ!!
 
 地を蹴って跳躍、光を背にした漆黒の狙撃手は粉塵の向こうに見える男に狙いを定める。
 弾帯から弾丸を一発だけ取り出し、ライフルに装填。
 この一撃。この一撃で奴を完全に葬り去る。
 
 弾道計算、狙撃対象の対応予測――――
 
 全てをコンマ一秒以内に収め、発射。

「だが、俺の銃は負けんッ!!!」
 
 必殺の弾丸は、意思を与えられた猛獣の如く標的へと向かっていった。
>496
ホル・ホース&J・ガイルvsトップガンダー 「異端の銃と真の銃」
 
必殺の意志が込められた弾丸。
ホル・ホースは慌てて身を捩って避けようとする。
動いた足が、少し前に「吊られた男」を映した水溜りにはまる。
 
そのぬかるみに足を取られ、ガンマンは大きく後方へと転倒する。
倒れるホル・ホースのちょうど頭の部分に、大きな石が転がっていた。
頭部に衝撃が走り――――――ホル・ホースの意識は、クラッシュした。
 
「ギにゃああああァァァァあああァァァァァ―――――ッ!!」
 
という絶叫を残して。
ヤハベvsジュヌヴィエーヴ・デュドネ
>494
 
 閃く銃火に押される様にして床に倒れ込んだ。
 吸血鬼の生理は銀製でない武器でつけた疵をたちどころに癒す。現に両脚の銃痕は消えつつあった。
 しかし只の拳銃弾と軽機関銃の連射では威力が違う。当然治癒の度合いは遅くなる。
 無論、痛さもだ。喰らわぬに越した事はない。
 
 そのまま転がった。
 床には意識がある者も無い者も、髭面の手下が全員倒れている。
 敵である自分だけ識別して撃つなどと云う器用な真似も出来まい。
 と云うジュヌヴィエーヴの目論みは最前と同じく、些かならず甘かったらしい。
 転がり続ける彼女より先に、床でのたうっていた連中が鉄火の洗礼を浴びた。
 
 絶叫と血汐が巻き起こる。息も絶え絶えの似非聖職者たちが本物の死体に変わっていく中、
ジュヌヴィエーヴは怒るより呆れて躯を捻り続けた。
 この連中にしてこの頭ありと云うべきか。
 銃弾が少し頬を裂く。
 回転する勢いを駆って起き上がった。身を低くし、両手で上半身を防ぎつつ被弾覚悟で
髭面の方へ突っ掛ける。
499ヤハベ:02/07/21 00:53
ヤハベvsジュヌヴィエーヴ・デュドネ
>498

 普通の人間なら、二回か三回は死んで釣がくるだけの銃弾を浴びたにもかかわらず、
少女は思いのほか元気だった。
 床の上を転がる彼女が到達する先めがけて、偏差射撃を行っているつもりなのだが銃弾は当たらず、
黒い僧衣を貫くばかりだ。
 
 強くて頑丈で冷静な、とびきりの美少女。
 まったく、これほどオレの好みをみたすタイプも珍しい。
 なんとしても、オレのものにしたかった。
 それにはまず、動きを止めなければ。
 映画に登場する吸血鬼は、銃で殺されるようなことはなかった。
 ならば、この少女をうっかり殺してしまう恐れはない。
 安心して撃ち込めるわけだ。
 胴体にたっぷりと鉛を詰め込んでやり、手足を切り取ってから持ち帰るのが最善のやり方だろう。
 
腰溜めに構えたPPsh41が、断続的な連射によって心地よく振動した。
ヤハベvsジュヌヴィエーヴ・デュドネ
>499
 
 走りながら躯中に銃弾が噛み付く。
 金髪が幾房か持って行かれ、白いサマーセーターが朱色に塗り直される。
 今度は呻きを堪えきれなかった。
 もう少しだ。あと一、二歩距離を詰められれば。
 
 躯が前のめりになる。
 屈めた体勢を更に崩すのは走り出した時から頭にあった事だが、これはダメージで足がもつれた
のかどうか、自分でもよく判らない。
 サンダルが脱げた。
 激しい動作の所為だけでなく、両手と同じく足の爪もまた鋭い刃と化したからだ。
 手を床につく。それを軸にし半ば倒立した姿勢から足をT字に開脚。
 水車の様に脚を振り回し、爪先の銀光を薙ぎつけた。
501ヤハベ:02/07/21 02:26
ヤハベvsジュヌヴィエーヴ・デュドネ
>501
 
 火を吐き続けるPPsh41を保持した腕に、発砲のそれとは別の種類の衝撃が伝わった。
 目の前で派手に転んだかのように見えた少女の足が、オレの持つ銃に叩きつけられたのだ。
 無理な姿勢から繰り出された蹴りだったが、銃を破壊し、オレの体を数メートル吹き飛ばすのに
充分な威力を秘めていた。
 
 尻餅をついたオレは、バレルジャケットが歪みドラム型弾倉が脱落したPPsh41を
投げ捨てた。
 とっさに武器を求め、首からぶら下げた十字架型拳銃に左手を伸ばした。
 しかし、銃を握ることはできなかった。
 
 オレの左手首は、PPsh41の弾倉を掴んだまま床に転がっていたからだ。
 
 手首から溢れ出す鮮血がイタリア製の服に染み込み、床に小さな池を作り出す。 
「なっ、なんでよ?」 
 我ながら間の抜けた台詞を呟き、目の前の少女、オレの左手を奪った吸血鬼を
ぼんやりと眺めた。
 
 全身がひどく血に染まったその姿は、凄惨ながらも、ため息が出るほど美しかった。
ヤハベvsジュヌヴィエーヴ・デュドネ
>501
 
 冷たい躯を循環し、或いは糧となるべき真紅の流れでジュヌヴィエーヴの全身は彩られている。
 立ち上がりかけてよろけた。目が霞む。
 血液が失われ過ぎたのだ。
 もっと、もっともっと寄越せと、とうの昔に死んだ心臓ががなりたてる。
 いつもの事だが苦しい、辛い。痛みより何より、赤い渇きを堪えられる吸血鬼はいないのだ。
 食餌を取らなくてはならない。それも早急に。
 だが何処に渇きを潤してくれる者がいるだろう。床に転がっているのは只の死体だ。
 尻餅をついて呆然としたままの髭面が目に入った。
 ああ。あそこにいた。
 
 ふらつきながら歩き出した。
 大した距離がある訳ではない。もう目の前だ。
 牙の生えた口を開きかけ、我に返った。
 いけない、今の状態での食餌すれば、確実になりふり構わず全て吸い尽くしてしまう。
 殺すのは避けたい。
 ジュヌヴィエーヴは殺す程人間の血を吸った事は無い。彼女の食餌は至極あっさりしたものだ。
 自分の一族は、吸血鬼は、人類そのものに寄生した正にダニだと、信じて疑わないからだが。
 
 大体相手はもう片腕だ。まともな戦闘能力があるとは思えない。
 思わず拳を握る。爪が皮膚を破り、貴重な体液が僅かに流れ落ちた。
 耐えなさい、と強く強く念じる。耐えなさい、と。
>497
ホル・ホース&J・ガイルvsトップガンダー 「異端の銃と真の銃」

「フ、ン……」
 
 覚束ない足取りでトップガンダーは着地。
 弾丸は外したらしいが―――無様に倒れている男を見るとトドメを刺す気も起こらない。
 
 聴覚センサーが、誰かの息を呑む気配を察知。
 弾丸を込めながらスムーズに照準。
 気配のあった物陰を狙撃。
 壁を破砕しながら進んだ弾丸は物陰の向こうに居た男の頭部を柘榴に変えた。
 どうやら先程までの不可思議な現象は、この男が起こしていたものらしい。
 だが、死んでしまえば何も出来はしない。
 
「全く……下らんな」
 
 吐き捨てるように呟く。
 思うように動かぬ体を引き摺り、孤狼は次の荒野へ向かう。
 永遠に血を求める餓狼は、次の獲物を探して彷徨うのみ。
 
 
 END
ホル・ホース&J・ガイルvsトップガンダー 「異端の銃と真の銃」
>475>476>477>478>485>486>495>496>497>503

これが今回の決闘の記録だ。
……雑魚は撃つ気にもならん。帰らせてもらうぞ。
 
感想があるなら……ここに書くんだな。
http://fargaia.opt.hokuto.ac/html/test/read.cgi?bbs=vampbattle&key=1019409630
505ヤハベ:02/07/21 23:44
ヤハベvsジュヌヴィエーヴ・デュドネ
>502
 
 袖口を絞りあげて、流れ出す血を強引に止める。
 こうすれば少しの間はもつだろう。
 これからの大事な場面で、血が足りなくなって昏倒なんて間抜けな事態はなんとしても避けたい。
 そう、まだこれからだ。
 オレと少女の命がけのダンスは始まったばかり。
  
 見れば少女は、なにやら内心の葛藤とでも戦っているかのような様子で、立ちつくしたままだ。
 その全身からの流血は、早くも止まっていた。
 つくづく化け物、つくづく愛しい、素敵なやつだ。
 オレは彼女の注意を惹かぬよう、座り込んだまま首からさげた十字架に手を、無事なほうの手を伸ばした。
 
 他者から見ればオレの姿はまるで、不死身の少女に腰を抜かし、神の奇跡か悪魔の幻惑かと、
困惑しつつも神に祈ろうとする敬虔な神父にでも見えたことだろう。
 だが、オレが十字架に手を伸ばしたのは神頼みのためではない。
 ただ武器を求めての行動だ。
 十字架の下端を少女に向け、握った指に力を込める。
ヤハベvsジュヌヴィエーヴ・デュドネ
>505
 
 髭面が十字架を手に取るのが見えた。
 格好だけの似非聖職者でも最後にすがるのは矢張りホーリー・シンボルなのだろうか。
 血の渇きを何とかなだめすかす中、ぼんやりと考えた時、気付いた。
 虚ろな黒い穴が自分を睨んでいる。
 銃口だ。
 そう認識するのと飛び退くのは殆ど同時で、銃声が閃いたのはそれより少し速かった。
 胸と脇腹、太腿で新たな真紅の花を咲かせ、ジュヌヴィエーヴは倒れ込む。
 
 再三になるが、この男を甘く見過ぎていたと云い様が無い。
 手首から先を切り落とされて、まだ反撃して来るとは。
 躯が幽かに震えている。血が止まらない。
 今までに受けた疵は粗方塞がりかけていたものの、失血量が多過ぎた。
 治癒力が格段に低下しているのだ。
 喘ぎ声と共にジュヌヴィエーヴは床を這った。
507馬呑吐 ◆TUNtujd6 :02/07/22 00:55
一旦、闘争の記録を整えておくヨ。
 
ベルガー&ヘイゼルvs馬呑吐 『吸血海殲外伝』
>87 >88 >89 >90 >92 >170 >171 >172 >226 >227 >228 >230 >358
>359 >360 >361 >362 >385 >469 >470 >471 >472 >473 >474
 
次スレにて戦いは続く。確と見るがヨイ。
508ヤハベ:02/07/22 01:10
ヤハベvsジュヌヴィエーヴ・デュドネ
>506
 
 十字架型拳銃から放たれた弾は、予想外に効いたようだった。
 あれだけたっぷりと鉛玉を浴びれば、いくら少女が吸血鬼といえども、相当に辛いのだろう。
 
 なんにせよ、これでこの少女を持ち帰ることができるというわけだ。
 永遠に少女の姿のままの吸血鬼。
 オレの愛しい天使であるキリコだって、いつかは醜く老いて死ぬ。
 だが、この少女には老いも死もない。
 オレが死ぬまで、ずっとこの美しさを愉しめる。
 最高だ、まさに理想の恋人だ。
 
 オレは失血と高揚と陶酔で頭がぼうっとしていたが、足取りは確かだった。
 手には男相手の拷問で使うはずだった、手斧を握っている。
 持ち帰りのときに暴れないよう、『加工』しなければ。
 四肢を切断してしまえば、あとは荷物と同じだ。
 さあ、その身を赤く染めた美しい少女よ、オレのものになれ。
ヤハベvsジュヌヴィエーヴ・デュドネ
>508
 
 足音高く髭面が近付いて来る。逃げなくては。
 犬の様に這いずる腕から力が抜ける。ジュヌヴィエーヴの顔が床とぶつかった。
 その途端、電撃の様な痺れが口唇に走った。
 衝突のショックではない。そこら中の死体から流れ出た血が唇に触れたのだ。
 夢中で舌を出し、舐め取った。汚い床板を気にする余裕は無い。
 甘い。
 不摂生な連中の澱んだ血だが、空腹にはこたえられないご馳走だ。
 僅かだが躯に力が戻って来る。
 ああ、もっと、もっと欲しい。
 ジュヌヴィエーヴは身を起こしかけた。
闘争の途中経過よ。
 
ヤハベvsジュヌヴィエーヴ・デュドネ(途中経過纏め)
>462 >463 >464 >465 >479 >480 >481 >482 >492 >493 >494 >498
>499 >500 >501 >502 >505 >506 >508 >509
 
まだ続くわ。もう少し、ね。
511ナオミ ◆Might.Go :02/07/22 02:08
では、改めて。
完結した闘争のインデックスよ。
 
>27  ユージン vs 暗黒騎士ガウザー
>86  御神苗優 vs イーヴァ(M)
>102 結城小夜 vs 閖
>135 上海魔獣境〜スプリガン vs 樟賈寶
>163 アルクェイド vs クレイグ・スティルソン
>176 鈴鹿御前 vs チェカラク
>214 姫園れい子 vs クロウ
>219 東出立vsクリストファー・ニューバート(M)
>238 横島 vs ジュヌヴィエーヴ
>249 名無しクルースニク vs ヴァンダレク伯爵(M)“The Party Of The Children Of Night”
>363 ウー大殲
>366 「偶(タマタマ)狂疾ニ因ッテ殊類ト成ル」〜 ロン VS 孔濤羅
>489>490>491 ウピエル vs ファントム
>504 ホル・ホース&J・ガイル vs トップガンダー 「異端の銃と真の銃」
512天色優 ◆STiGMaE.
やれやれ・・・

中間纏めINDEX

両儀式vsジョナサン・ジョースター >421
最強決定戦 >460
セス・ゲッコーvsフリッツ・ハールマン >461
馬呑吐vsベルガー&ヘイゼル >507
ヤハベvsジュヌヴィエーヴ・デュドネ >510

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吸血大殲 第33夜 夜陰にヒソム陰々の断章
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