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できるだけ余裕の表情を取り繕って、あたしは振り返る。
内心、かなりドキリとしたが、どうやらこいつは存外に芝居がかかった行いが好きらしい。
確かにかなりクールな演出だ。今度、あたしもやってみよう。
そんなどうしようも無いことが考えている間にも、吸血鬼の口は流暢に動く。
お喋りな奴だ。ヤジの一つでも飛ばしてやろう。
そう思い口を開きかけた直後、
轟音
吸血鬼が床を貫くかのような踏み込みと同時に、銃弾の如く迫り来る。
「――――ッ!?」
かなりの距離が空いていたはずなのに、その距離を一瞬で半分も詰めやがった。
こいつにとってのこの距離は、一呼吸であたしの懐に潜り込める距離なんだ。
寒気を憶えるよりも速く右腕が跳ね上がると、そのまま戦慄する己の感情をうち消すかのように発砲。
放たれた銃弾は計4発。 全弾命中する軌道だ。
無論、吸血鬼が避けようとしなければ、の話だが――――
なら、避けたらどうするか。避けたところにも銃弾を置けば良い。
吸血鬼はこの4発の銃弾をどう捌き、どう避けるか……。
高速の計算処理が、あたしの脳内で行われる。
吸血鬼が歩む軌跡、未来視とも言えるその線が、あたしの頭の中で無限に広がっていく。
次瞬、
――――見えた!
無限の広がりが広がりきるまえに……再度、二回引き金が絞られる。
実質、6連射と言える射撃が、必殺の思いを胸に秘めて吸血鬼を襲う。
あたしは、少しだけ……ほんの少しだけ、勝利の予感を感じた。