吸血大殲28章『仄き鮮血の舞踏』

このエントリーをはてなブックマークに追加
ウピエル(&ツァーレンシュヴェスタン)VSファントム
 
>4
 
ノインには目の前の女が何か言っているが聞き取れなかった。
憎しみはあふれんばかりに湧き上がってくるが、
何故か足は前でなく後ろに進む。
 
―――ああ、私は何をしているんだろう?
 
―――誰かが側にさっきまでいたような気がするのに。
 
突然、彼女は転倒した。
BMWのタンクから流れ出るガソリンに足を取られたのだ。
 
したたかに腰を打ち付けたが、痛いとも何とも思わない。。
ただ、杭に引っ掛かった白い布地が彼女を手招きしているように思えた。
 
(ああ、そうだ… フュンフ…)
 
お互いに本名も知らないが、そんな事は些細な事に過ぎない。
身も心も結ばれた相手と引き裂かれて永遠に生きるのは、
永劫に続く拷問と同じ事だろう。
 
(違う相手に殺されても…… あなたと同じ所に行けるのかしら?)
 
ドライの放った弾丸が火花を散らす。
火炎が…床を、ノインの身体を、フュンフの着ていた服を舐める。
 
 
一瞬後れて、引火したガソリンタンクが轟音を轟かせた。
 
もっとも―――吸血鬼に魂があるとするならだが―――ノインの魂は既に
先に逝ったフュンフと同じ所へ堕ちていた。
 
 
               (ノイン死亡、ツァーレンシュヴェスタン全滅)