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一度目の驚愕。
距離を置いて撃ち合っていた吸血鬼が原形をとどめない程に弾けた。
だが、弾いたのは銀の銃弾では無い。
(――――――――味方で視界を塞ぐ盾を作りやがった……!!)
二度目の驚愕は一瞬。貫かれた吸血鬼は死んだ。電撃が身体を駆け抜ける。
しかし、そんな自分勝手な驚愕を見届けてくれるお人好しな銃弾等は存在しない。
吸血鬼を貫いた弾丸が勢い削がれずに神速で襲いかかる。
死、
「――――ッ!?」
を覚悟する暇も無く、三度目の驚愕が訪れる。
アイン、なぜ――――
――――貴方が死ぬと、玲二が悲しむ――――
玲二? 玲二って、玲二かい? あんた、こんな時にまで玲二のことを――――
直感。稲妻のように頭のなかでそれが閃く。
そう、それがアインとドライの差。
あの日、あの地で決別を決めた。あたしは吾妻玲二と決別を決めた。
ファントム・ドライは吾妻玲二という男がいなくても、生きていけるのだ。
だけどアインは……ファントム・アインは――――
(――――玲二無しでは生きられない……)
これが差。絶大な差。埋められない差。
ドライに取っての玲二は、もはや『絶対』では無くなっているのだ。
……あたしは薄く笑みを浮かべると、自分を庇った少女に語りかける。二度目の驚愕。あれは大きい。
「アイン、あの蜂の巣にされた女。あいつロシアン弾で死にやがった。つーことは、通常弾でもあいつら殺せるってことだ」
銀の銃弾はもう無い。
腰のホルスターに刺さっている二丁のガバメントを引き抜き、両手に持つ。
合計18発。だが、これで仕留めるわけじゃない。こんな豆鉄砲じゃあいつ等は殺れない。
狙いは――――撃ち殺された吸血鬼が持っていたAK。あれなら殺れる。生中継で証明済みだ。
「アイン、あんたはもう使いもんにならねぇ。そこで寝てな」
銃声。二匹の死神に向かって二つの銃口が吠える。
同時、疾走。
(殺ってやる――――アイン……あたしはまだ負けてねぇぞ!!)