吸血大殲27夜 ――Lunatic Dance――
銃弾が血塗られた壁を抉る。
血の匂いは足元に移動している。
銃口を下に向けた瞬間、強烈なボディブローがウピエルの身体を宙に浮かせた。
デザートイーグルから吐き出された.50AE弾が4発。
ツヴァイの放った弾丸だ。
この至近距離では射撃の瞬間を認識し損ねれば避けようが無いし、ツヴァイも外しようが無いだろう。
ヘヴィ級ボクサーのパンチなど問題にならない衝撃がウピエルの肉体を弾き飛ばす。
肩口に1発、腹に2発、胸に1発、4発の銀の弾丸は確実に命中し、肉体を破壊する。
弾き飛ばされるままに宙を舞い、空中で後転して着地する。
一気に数mの距離が開いた。
追撃を防ぐために軽くサイドステップしつつ、肉体の状態を確認。
肩口。これは大した事はない。鎖骨が砕かれているが、無理矢理動かすことは可能だろう。
腹の痛みを確認する。胃袋が破裂している。多分、腸もズタズタだ。
胸の傷は。左肺はもう役には立たない。いや、それどころか・・・
「ガハァッッ!!」
血の塊を吐き出す。吐き出しながらさらに追い打ちをかけようとするツヴァイを捉え、銃爪を引く。
意識が朦朧としてくる。
怒りと憎悪と快楽に脳髄を灼かれていた時でさえ片時も休む事の無かった、冷徹な闘争の思考が揺らいでいる。
だが、その霞む意思を叩き起こし、狙点を合わせ、フルオートの――秒間10発の狙撃がツヴァイを襲う。筈だった。
数発の銃声、直後に弾切れを示す乾いた金属音。1秒と続かず、銃撃は終った――