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(チッ、殺し損なったか。まぁ、本気で当たるとは思って無いけどさ)
空になったマガジンが床を叩く。
あと一本―――30発だ。
無駄弾はもう撃てない。奴等を殺す方法が、これ以外に思い浮かばないからだ。
逆に言うと、この銀の弾丸さえ当てれば、殺せる。
だけど、当たらない。当たらなければ、殺せない。
(クソッ、相手は一匹だぞ! こいつさえ殺れば……!!)
残りの二匹の集中は、アインに向いている。
こちらに撃ち込んでくる一匹を殺れば、逃げることもできる。
「――しょうがねぇなァ! 大サービスだ! テメェに一発200jの銃弾三十発くれてやるぜ!!」
来い。本気で、だ。
今までのように適当なことやってると、あんた死ぬぜ?
本気で、死ぬ気で、来い。あんなモヤシ野郎の事なんか忘れろ。
テメェの親玉はサイスだ。だから、サイスの教えを思い出せ――――
身を閃かせて、疾走。その一瞬の間に、マガジンをアゥグに叩き込む。
そして―――跳躍。器用に座席の背もたれに立つ。
同時、渇いた連続音。アゥグだけじゃない。向こうも発砲している。
ハハ――おもしれぇ! どっちが先に当たるのかねぇ!
『――――じゃあ、援護お願い』
はい?
見ると、視界の先に二匹の女。
(マジか?)
銃口の切っ先は変えられない。
今、少しでも眼前の吸血鬼から逸らすと、途端に蜂の巣になるだろう。
だけど、アゥグ=ライフル以外の武装は拳銃しか無い。まさか、拳銃で殺り合うわけにもいくまい。
ファントム・ドライは戦慄した。何年振りだろうか?
もう、永いこと忘れていた感情。
このままだとアインも、ドライも――――死ぬ。