吸血大殲 25章『Memory Of MoonBlood』
ウピエルvsファントム達
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ホールに朗々とした歌声が響き渡る。
客席に一人立ち上がった、レザースーツの男が奇妙なギターを手に
見事な演奏を、伽藍とした客席に披露している。
エレンにとって、音楽や舞台などは馴染みの薄いものであったが、
男の演奏はかなりの腕前であると感じることができた。
しかしその演奏に聞き惚れる余裕もなく、男の手からギターの音色などよりは
よほどエレンには馴染みのある音が響いた。
銃声
咄嗟に伏せたエレンの目の前の客席が、派手な音を立てて弾けた。
続けて舞台に向けての銃声。
更に銃声は、エレンでも、舞台に居る玲二とも異なる方向へ向けて鳴る。
「!?」
自分達と敵以外に誰か居る。
エレンの頭に、新たな警鐘が鳴る。
確かめなくてはいけない。敵の敵が味方であるとは限らない。
エレンはAK74を再びレザースーツの男に向けて放つ。
同時に、客席の影に隠れる様にして走り出す。
三射目の着弾地点が、確認出来る位置へと。