ウピエルVSファントム
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突進しながらドライの状態を確認する。
ツァーレンシュベスタンには、なるべく傷を付けずに、時間稼ぎだけしておけと言っておいたハズだが・・・
どうやらマヌケな出来損ないの肉人形どもは、それさえも出来なかったらしい。
ドライは満身創痍、特に失血が酷い。気力で立っている様だが、気を抜けば今にも倒れそうだ。
だが、殺気は充分。まだ戦えそうだ。少しくらいは――楽しませてくれ!!
ドライが、人間としては最高クラスの反応で拳銃の銃爪を引く。
俺の動きを読んで、素晴らしい弾道計算をしての射撃。
だが。
ツヴァイと決定的に違う点。
自分の能力に絶対の自信を持つ故の失敗なのか。
結局、コイツは俺の『速さ』を理解していない。
どれほど予測しようと、どれほど計算していようと、ドライは銃爪を引いてからの弾道に干渉する術を持たない。
弾丸が発射される瞬間さえ、銃口の向きさえ認識していれば―――見てから反応しても充分に間に合うのだ。
ツヴァイはそれを理解し、手を尽くして発射の瞬間を悟られない様にした。逃げ、隠れ、反撃の機会を覗い、罠を仕掛けた。
ドライは、ただ反射的に反撃した。
だから――
ドライは、ツヴァイに及ばない。最初にツヴァイを選んだのは、間違いではなかった。
怒りと失望を感じつつも、行動に移る。
「遅ぇ!!」
1発目の弾丸を、軽く体を捻って避ける。
2発目の弾丸を、牙で噛み受けとめて見せた。そのまま弾丸を口に含む。
3発目と4発目の弾丸を、銃剣の切っ先で弾き飛ばす。
ここまで来て、ドライの狙いの精度が、反射速度が向上する。
少しだけ、背筋が寒くなった。まだまだスリルを味わう事は出来そうだ。
ぞくぞくする快感に酔いながら、大きく息を吸う。
5発目の弾丸を、ギター部分が受けとめ、
6発目の弾丸。口から弾丸のような勢いで2発目の弾丸を吹き出す。6発目と空中で衝突。叩き落した。
この間、僅かに1.5秒。
完全に格闘の間合い。
銃剣の切っ先が、ドライの持つ拳銃に、いや、拳銃ごと腕を真っ二つにするかのように閃く!