吸血大殲 25章『Memory Of MoonBlood』

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481エレン ◆Elen1cxc
ウピエルvsファントム達
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 舞台目指して走るエレン。
 この瞬間、彼女の頭の中では、キャルに対する警戒心はほとんど無くなっていた。
 今彼女の頭に有るのは、たった一つ。ウピエルを殺すことだけ。
 そのために利用できるものが有るのなら、何であれ利用する。
 おそらく、キャルも考えは同じだろう。
 だから、少なくとも今、彼女からの銃撃はない。そう考えての事だ。
 しかしこれは、互いに銃を突き付け合った状態での、ほんの一時の共闘に過ぎない。
 
 だが、それで良いのだ。
 後のことは、生き残ってから考えれば良い。
 それが、この世界で活きていく為の不文律。
 現在ファントムと呼ばれる彼女なら、何よりもそれを理解しているはずだ。
 
 走りながら、イングラムを左手に持ち替えマガジンを交換する。
 スライドを引き射撃準備が整った瞬間、脇のホルスターからコルトパイソンを引き抜き、
右脇の客席を蹴りつけ全力疾走を急停止させると、その反動で180度向きを変える。

 振り向きざま、走るキャルと一瞬目が合った。
 その瞬間、エレンの唇が僅かに動く。
 その呟きは小さく、キャルの耳にまで届いたかは解らない。
 いや、それはそもそも、キャルに告げるための言葉ではなかったのかもしれない。
 ただ、はっきりとした口調で、エレンはこう呟いた。
 
「生き残るわよ」
 
 直後、エレンの背後で爆発的な閃光が生れた。
 左手のイングラムを横倒しに構え、その上にパイソンを握った右手を乗せると
二つの引き金を同時に絞った。