吸血大殲27夜 ――Lunatic Dance――
ウピエル&ツァーレンシュベスタンvsファントム達
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狙い過たず、木杭はフェンフの胸板を貫いていた。
そのまま着地したバイクは、著しく重量を増し沈みこんだフロントサスの反動で
再度フロントを跳ね上げ、串刺しにした女吸血鬼を掲げながら、ホールの通路を爆走する。
一瞬にしてホールを横切り、出入り口の防音扉目掛けて飛び込むと、再び激突音。
木杭を扉に食い込ませたバイクは、開く扉に引き摺られるように、
扉の蝶番を支点として僅かに後輪を滑らせるが、直後、想定値を遥かに上回る
負荷をかけられた扉が、派手な音を立てて壁から引き剥がされる。
しかし、一度スリップしたバイクを立て直すには、BMWは重すぎ、
エレンは軽過ぎた。
スリップした後輪が、残った扉を直撃する。
そのまま蹴り跳ばす様に残った扉も引き剥がすと、車体はバランスを崩したまま
ロビーへと、耳を塞ぎたくなるような破戒音を撒き散らしながら転がり出る。
反動でシートから放り出されたエレンの体は、勢いよく床を滑り
売店のガラスケースへと背中から飛び込んでいった。
静寂と諸共に砕けるガラスの音が、ロビーに響き渡る。
痛みを堪え、エレンがなんとか顔を上げた時、木杭からフェンフの姿は消えていた。
ただ、そこには一握りの灰が残るのみであり、それも空調の風に吹かれ
やがて姿を消した。
「あと……一人……」