吸血大殲27夜 ――Lunatic Dance――
ウピエル(&ツァーレンシュヴェスタン)VSファントム
>402
半身を失ったような喪失感―――
否。
身体中の全てが抜け落ちるような感覚を、ノインは味わっていた。
自分だけが世界から取り残されてしまったような気さえする。
永遠の命は祝福の筈だった。
愛する者と永遠に生きていくつもりだったのだから。
独りで生きていく事など、完全に脳髄から抜け落ちてしまっていた。
哀しいと感じないのは、心が感じる事を拒否しているのだろうか。
それとも……吸血鬼の心とは、こういうものだろうか。
数瞬後。突然スイッチが切り替わったかのように、ノインの心に憤怒が湧き起こる。
それでも、表情にその怒りが出る事は無い。
彼女が感情を見せる相手は、この世にたった一人だったのだから。
その相手がいない今、彼女の感情が表面に出る事も行動に影響する事もない。
冷徹に、冷酷に、冷静に…… ただ獲物を狙うだけの機械にも等しい。
アインとの距離は遠くなっている。最初にしとめるのはドライの方だ。
遊び弾も牽制も無い。遮蔽を考る事すらもしない。
AKの銃口は、一直線にドライの額に向けられている。
ドライの金髪にフュンフの面影を見る事すらなく、引き金は絞られた。
心臓でなく額を狙ったのは、ノインなりの追悼であったかもしれない。