吸血大殲 第31章 夜を往くモノ――Night Walker

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365モーラ(M) ◆Mora/x/c
ウピエルvsファントム
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 ……目前で起こった信じられない奇跡。
 モーラはハンマーを置いて駆け寄り、二人の息を確かめる……。
 
「……生きてる」
  
 だが二人共大量の血液を失い、身体も徐々に冷え初めていた。
 早く輸血をしないと、助からない。
 すぐさまフリッツに連絡を入れるモーラ…… やや有ってフリッツの返事が有り、
 大至急ハマーから輸血セットを持って来て欲しいと頼んだ。
 
「……それにしても」
 
 折り重なる男女をちらりと横目で覗き見て、モーラは初めて純白の頬を薔薇色に染める。
 宿敵、吸血鬼とその犠牲者…… そう言った割り切りが消えた後で、青年の逞しい身体と
 少女のたおやかな肢体を意識すると、そこにはあまりにも扇情的な光景が残されていた。
 
「……目の毒よね……これは」
 
 ゆっくりと辺りを見回して、楽屋へのドアが有るのを確認すると……
 モーラは中から舞台用の衣装を引っ張り出した。
 
「……う〜 うぅぅぅ〜〜」
 
 一体、何だって私がこんな事を……と思いながら、ぎこちない手つきで二人に着せ始める。
 ようやく、直視できる状態になった頃、フリッツが緊急用の輸血セットを持って現れた。