吸血大殲27夜 ――Lunatic Dance――
ウピエルVSファントム
>414
ツヴァイが、抱きよせる様に左腕を俺の背中に廻す。
優しく抱き寄せる様にも見えるが、失血と痛みで力が入って居ないだけだろう。
その手に握られているのは、ピンを抜いた手榴弾。ツヴァイはそれを俺の背中に押しつける。
ピンから信管へとつながる導火剤の燃える匂いが俺の意識を覚醒させる。
ツヴァイの腕を振り払う。俺の背後に落ちる手榴弾。
刹那――
逃げる暇も無く、手榴弾は爆発した。
銀の弾丸で傷ついて脆くなっていた左腕が吹き飛んだ。
顔面に火傷と裂傷。背中の肉は半ば削げ落ち、左肩は大きく抉れている。
全身に破片が突き刺さり、激痛が前身を駆け巡る。
最後の最後まで、やってくれたぜ・・・
俺が盾になってしまったせいで、ツヴァイの肉体は意外なほどに手榴弾の影響を受けていない。
全身から、排除できる破片は引き抜き、抉り出す。ツヴァイに向かって自分でも何を言っているか判らない悪態を呟きながら。
再生の速度は目に見えて衰えだしている。これだけのダメージから、特に銀の弾丸の傷から立ち直るのはまず無理だ。
だが、まともに動けるようになるまで、俺は動かなくなったツヴァイに悪態を吐き続けた。
どのくらいの間そうしていたのか、自分でもわからない。
傷ついた肉体は多少の時間が過ぎてもやはり傷ついた肉体でしかない。
地獄のような痛みを堪え、朦朧とする意識と襤褸屑同然の肉体を叱咤して立ちあがった。
横たわるツヴァイに背を向け、残る二人の獲物に向かう。
心臓が鋭い痛みを発した。夜の終りが、狩り・・・いや、戦いの終りが近いのだろう。
俺は後どのくらいの間、戦士として、狩人として、怪物として動く事が出来るだろうか。恐らく、さほど長時間は持たない。
だが、例え短時間でも、俺はまだ動ける。
俺はまだ戦える。
なら、戦い、殺し、奪い、貪り食らう。
夜の終る、その時まで。