ウピエル&ツァーレンシュベスタンvsファントム達
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背中に、焦げる様な容赦のない殺気。
しかし、エレンはまるでそれを予期していたかの様に、
アハトの喉にナイフを残したまま身を翻す。
そう、敵の敵は味方ではない。
自分達…いや、自分にとっては。そして、キャルにとっても。
お互いは「共通の敵」を有しているだけの存在に過ぎない。
だからこれは、自分達に最も相応しい挨拶なのだ。
言葉ではなく、銃弾を交わすこの挨拶こそが。
眼前で黒髪の少女、アハトが倒れる。
―――そして、それきり動かなくなった。
『まず、一人』
現在、エレンをターゲットとして捕らえているのは、フェンフとノインのコンビ。
二人は見事な連携を見せ、次第にエレンを追い詰めていく。
流石に拳銃一丁では、不利は否めない。途中で放り出したAKの場所までは
まだ少し距離が有る。
一人で辿り着くのは、分が悪過ぎる。
ならば――
エレンが巡らせた視線の先には、フィーアと銃撃戦を繰り広げるキャルの姿があった。
「今度は、こちらが利用させてもらうわね」
姿勢を低く保ちながら、エレンは徐々に場所を移動する。
ツァーレンシュヴェスタンの二人が自分を狙う射線の先に、キャルが来る位置へと。
このまま行けば、嫌でもキャルは応戦せざるを得ないだろう。
「じゃあ、援護お願い」
望む位置へと到達した瞬間、キャルに向かって小さく呟くと
エレンは遮蔽物の影から飛び出し、ライフルへと向かい駆け出した。