前スレ>532
熱かった。血が滾っていた。
怒りが、嗤いが止まらなかった。
――――声が聞こえた。
気付いたら、押し倒されていた。
続いて銃声。
覆い被さるようにして、伏せていた東洋人の肩から赤い液体が弾ける。
生暖かいそれが、あたしの顔に数滴掛かった――――
男が何かを言っている。
感情?
冷静?
そうか、玲二か……ずっと、ずっと会いたかった。
日本で会って以来だね。玲二……。
ゴリ
これは何の音か?
S&Wの銃口を、玲二のこめかみに押し当てた音だ。
もちろん、あたしのな。――――良い音だろう?
「玲二、玲二、玲二。―――あの時、言わなかったかい? 『次に会ったら必ず殺す』ってさァ」
嬉々とした笑みを浮かべながら、死神の表情で言葉を続ける。
「――――それはまた今度ってことにしておいてやるよ」
銃口をこめかみから離すと同時に、玲二の身体を突き飛ばす。
あたしは駆けた。
逃げるときに、邪魔になると判断して捨てたAUGライフルへと。
ジャケットの裏には、まだ銀の銃弾が詰まったマガジンが二本ある。
あれなら、あの半端者を瞬殺できるはずだ――――
あたしは遮蔽物などに隠れせずもせずに、一心不乱に駆けた。
このままでは、銃の的だ。
(分かっているよな、玲二、アイン――――あんた等がやるべきことをさァッ!)
足と腹に受けた銃弾は、今でもそこから大量の血液を奪っている。
全速力で駆けているつもりでも、常時の半分のスピードでも出ていないだろう。
だけど――――辿り着く。だから玲二……援護を頼むぜ!!