吸血大殲27夜 ――Lunatic Dance――
AKの暗く深い銃口があたしに向けられた。
その闇の奧には真紅の瞳。儚く、虚しい色をした真紅の瞳。
そんな瞳を見て、ふと気が付く。
(そういえば、どうしてあたしは殺し合いなんてしているんだ?)
間を置かず、銃声。それは3度鳴り響く。
次瞬、飛び散る鮮血。その鮮血の網から抜け出すかのように吹き飛ぶ指。――――そう、指だ。
AKの銃口とあたしの眉間を線で結び、その一直線上に『遮蔽物』を置いた。
それはあたしの左手。
――――オルゴールの優しい音色が聞こえる――――
と、その左手にしっかりと握られた真鍮製のオルゴール。
肉を抉り、オルゴールに弾かれた3発の銃弾は跳弾と化してあたしの指を持っていく。
良いよ。指くらいあげるよ。冥土の土産って奴さ。あんた等とは、一応姉妹なんだからね。
そして、この音楽が……鎮魂歌。
「な〜んで、オルゴールなんかで突撃銃の銃弾がはじかれるのかな〜? そう思わない?」
吸血鬼は答えない。今現在、20発程の銃弾を浴びている彼女に、答える術は無い。
あたしの右手には同じAKライフル。空薬莢と銃弾を現在進行形で吐き出して、元気に活動中。
ついでに、足下には吸血鬼の亡骸。
「それは愛の力だからだよ。 It is L・O・V・E power オーケー?」
マガジンに残った最後の一発を吐き出して、AKの咆吼は止んだ。
だけど、オルゴールの音色はまだ止まらない。どうやら、まだ鎮魂歌を止めるわけにはいかないらしい。