吸血大殲27夜 ――Lunatic Dance――

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221エレン ◆Elen1cxc
ウピエル&ツァーレンシュベスタンvsファントム達
>220 続き
      
 そして今、ホール内の静寂を切り裂き、鋼の獣が疾走する。
 その背には、黒髪の小柄な少女が猛獣使いのように跨がっていた。
 獣は、一つ目のヘッドライトを煌めかせ、1170cc 4ストロークエンジンの咆哮を上げ、
舞台袖から舞台上へと一気に駆け上がる。
 エレンの華奢な身体が、300kg近い大型の車体を、文字通り手足の様に操っていた。
 
 その車体の右側面には、BMW特有の左右に張り出した水平対向二気筒エンジンの
上に乗せるようにして、ある装備が備えつけられている。
 
 それは、バイクの全長よりも長い、先端を鋭く削った丸太。
 
 
   最も原始的で、最も無骨な対吸血鬼用決戦兵器―――木杭。
 
 
 BMWは悲鳴のようなスキール音を上げると、その木製の牙を
女吸血鬼の一人に無理矢理向けた。
 肘が擦れるほどバンクさせた車体を起こす。その軌跡を追う様に、エレンの傷口から
血が赤い筋を描く。
 車体を起こしきると同時に、アクセルを煽ったままクラッチを繋げる。
 4ストローク水平対向2気筒4バルブエンジンが、心臓が、互いに激しいビートを刻む。
 巨体から響くエンジンの咆哮は意外に小さい。だがその内には、爆発的なパワーが秘められている。
 そしてそれは、乗り手であるエレンにも同じことが言える。
 
 バイクはそのまま舞台の上を滑走路の様に疾走すると、標的目掛け、一直線に飛び込んでいった。