吸血大殲 25章『Memory Of MoonBlood』
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――――アインと視線が合った。
茶色い瞳。
そうだ、こいつの瞳には色がある。――――アインじゃない。
こいつの瞳には色がある。
あたしの知っているアインの瞳は……
色が無かった
東の国で奴と会ったときには色が無かった。
透明だった。無色透明、水の如しだった。
なのに、なのに……
――――この数年で、彼女に色が現れた。
――――この数年、彼と一緒にいたから……。
奴の声が耳に届いた。何を勘違いしたのか、随分と素っ頓狂なセリフだ。
苛つく。熱い。
血が、汗が、身体中の体液が一瞬で沸点を超えてしまったかのようだ。
これが――怒り。
久方ぶりの――猛り。 ――――――――ッ!
「ク――――ハ――――」
熱い。熱いぜェ。身体が熱い。ハハ、熱いなァ。
右脇腹と左足が特に熱い。火傷しちまいそうだ。
次瞬、閃光が視界を包んだ。
その光の流れに合わせるかのように、ジャケットの両袖から拳銃が飛び出す。
硬いグリップの感触を確認するより先に、二つの黒い銃口を光の海へと突き向けた。
同時、
「テメェは誰に喧嘩売ってるか分かってるのか!!
こっちの話にいちいちシャシャり出てくるんじゃねぇよ、モヤシ野郎がッ!!」
とにかく引き金を絞りまくった。翡翠色の瞳は光しか写さないけど、
3番目のファントム特有の勘があらゆる計算を瞬時にこなしてくれる。
あたしはそれに従って撃つだけだ。
奴の運動能力も計算に入れ、奴が動き回りそうなところを片っ端から撃ちまくる。
光の中を駆けながら、とにかく撃った。何度何度も引き金を引いた。
血が、どんどんと抜けていくのが分かる。
だけど、身体の滾りは――止まることを知らなかった。