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今回のターゲットは、ヴォルフガンク=ナハツェーラー。
燦月製薬本社に出入りする謎の老人……。
素性不明。
過去の経歴不明。
そんな奴が、どうしてサイスと接触を持つようになったのか分からないけど……。
まあ、仕事だ。文句は言わない。あいつを殺る。それが全て。
ふと、サイスとの会話を思い出す。
彼は、ドライにあまり多くは語らない。
放任主義……という奴なのだろうか。
こと暗殺に関しては、ターゲットを教えてあとはドライの好き勝手にやらせている。
そんな彼が、珍しく言葉を挟んだ。
―――世の中には、人に似て非なるものが存在する―――
―――彼等は人では無く、人のように死ねない―――
―――だが、ファントムを名乗る者なら、殺せなければならない――
そして、彼は銃弾の詰まった四角いパックを手渡した。
―――急な事態故に、100発しか手に入らなかったのだが―――
銀の銃弾。
しかも、細かい文字がビッシリと書き込まれている。
なんだこれは?
―――これを心臓に叩き込むのだ、良いか、心臓だ―――
うるせぇ。分かったからグダグダ言うんじゃねぇ。
それで話は終わった。サイスは、終始笑わなかった。