ウピエル&ツァーレンシュベスタンvsファントム達
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吸血鬼と化した二人の少女と銃撃を繰り広げながら、エレンは館内の状況を再確認する。
玲二はウピエルの攻撃を一人で受け持ち、さらにロビーへ誘い出そうとしている。
キャルは、何か考えが有るのか、傷付いた体を引き摺る様にして、
遮蔽物の無い通路に駆け出していた。
しかし、あのスピードでは、自らマトになりに行く様なものだ。
「なんて無茶を……」
思わずエレンの口からそんな言葉が漏れる。
だが、言葉と同時にエレンの体も動いていた。
左手に構えていたナイフを口に咥えると、空いた左手で腰の手榴弾を取り出す。
ナイフの切っ先にリングを引っ掛けピンを貫き、前方の二人目掛けて投げつける。
しかし、吸血鬼と化し人間には不可能な反射速度を持ったノインは
手榴弾がエレンの手から離れた瞬間、正確にそれを打ち抜いていた。
直後、館内は再び閃光に包まれた。
閃光手榴弾を放ると同時に、”目を閉じたまま”駆け出していたエレンは
脳裏に焼きつけておいたフェンフとノインの立ち位置へ357マグナム弾を撃ち込む。
そのまま足を止めることなく二人の間を一気に駆け抜けると、
キャルを狙っていた残る二人の少女へと肉薄する。
閃光が止む。
瞳を開いたエレンの眼前に、大写しになるアハトの姿。
咄嗟に鈍器として振るわれたライフルのストックを掻い潜り、
駆け抜けざま、相手の喉目掛け左手に握り直したナイフを打ち込むエレン。
鮮血が、シャワーのようにエレンの左手を濡らした。