ウピエルvsファントム
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ナハツェーラーとウピエルを追って、モーラとフリッツはそのオペラ座に来ていた。
しかし、内部で突然始まった戦闘に状況が把握できず、完全に出遅れてしまった。
銃声が聞こえなくなって、初めてモーラとフリッツはロビーへと侵入する。
ロビーには散乱するガラスの破片と従業員達の死体、地下への階段から吹き上げた様な
爆発跡が生々しく、まるで戦場の様相を呈していた。
「私は地下を調べる ……あなたはホールの方を。
生存者が居るかも知れない、“犠牲者”も……」
相棒は一言、「……あいよ」と答え、M4カービンとボウガンを組み合わせた奇怪な銃
……ウィッチハンターを手に、ホールへと向う。
「気をつけて……」
“犠牲者”とは同時に“吸血鬼”に他ならない。 相棒の背中に声をかけて、モーラは
愛用の巨大なスレッジハンマーを手に、慎重に地下への階段を下る。
そこでモーラが見た物は、今正に少女の血を啜り続けている青年の姿……。
――――― 遅かった。 ―――――
しかし、今すぐ吸血鬼を滅ぼせば、少女だけは助けられるかも知れない。
……そう判断して覚悟を決め、スレッジハンマーを構える。
二人に向って駆け出そうとするモーラ、だが突然目の前で吸血鬼の身体が力尽きた様に
不自然に弛緩する。
「……?」
モーラにさえ、しばらく何が起こっているのか理解できなかった。
青年の牙が、ゆっくりとその大きさを失い、ただの犬歯へと戻っていく……。
つい先程までその牙が刺さっていたであろう、少女の首筋……
そこに有った二つの傷跡が見る間に小さくなり、消えてゆく……。
そして青年の首筋に穿たれたそれすらも、徐々に薄くなり、
……やがて完全に消え失せて、跡形も無くなってしまった。
――――― 血盟が……解けた? ―――――