吸血大殲 25章『Memory Of MoonBlood』

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663エレン ◆Elen1cxc
ウピエルvsファントム達
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 館内に爆発音が響く。
 それは玲二が撃ったグレネードであることをエレンは瞬時に理解した。
 彼をフォローすべく、乱入してきたツァーレンシュベスタンへと銃口を向ける。
 同時にこちらへと向かう二人―フェンフとノイン―の銃口から5.45mm弾が吐出される。
 照明の落ちた館内にマズルフラッシュが煌めき、轟音が鳴り響く。
 交錯する射線。
 その中、ツァーレンシュベスタンの弾丸はエレンを捕らえることはできなかったが、
エレンの銃弾は、確実に二人の急所へと撃ち込まれていた。
 
 音を立て崩れ落ちる二人の少女。
 それを確認したエレンは、玲二達を援護すべく振り返る。
 同時に、背後に生まれる殺気。
 
 銃声と、エレンが客席の隙間に飛び込んだのは同時だった。
 
 飛び込んだ客席の隙間からエレンが背後を覗き見た先に存在したのは、
体に深い虚を穿ちながらも、ライフルを構えこちらに迫り来る、二人の少女の姿であった。
「……吸血鬼…」
 エレンの心に、ほんの僅かな感慨が浮かぶ。
 彼女たちは本当に戻れない場所まで行ってしまった。
 だとすれば、自分にできることは――
 
 弾の切れたイングラムをその場に放置。
 撃ち尽くしたコルトパイソンの弾倉から空薬莢を吐出し、弾丸を最装填する。
 空いた左手で、肩口に吊っておいたナイフを引き抜く。
 
「殺してあげる。それで、貴方達の悪夢は終わる――」