ウピエルVSファントム 導入
>322 >394-395 >396
オペラ座に拍手が響く。
観客席からの称賛の拍手。舞台で行われた素晴らしい演し物に対する拍手。
銃声と硝煙、そして鮮血によって演出された、一瞬の襲撃/終劇。
それは幾分の無駄もなく、鮮やか過ぎる、芸術性すら帯びた暗殺。
その見事な腕に対し、惜しみない称賛の拍手が送られていた。
それは、一部始終を見届けた、たった一人の観客からの拍手だった。
「ブラボー!!見事な腕前じゃねぇか・・・流石はかの御高名なファントム様だ!」
拍手に込められた掛値無しの称賛に反し、声に出された称賛にはあからさまな嘲笑が含まれていた。
血腥い眼前の光景を前に、称賛と嘲笑の入り混じった二律背反な笑みを浮かべる男。
ひとしきりの拍手を終えると、舞台で呆気に取られた役者の方を見据え、宣言する。
「ここで演し物は終りなんだろうが・・・観客としてはアンコールを要求するぜ。この位じゃぁ・・・足りないからなぁ!!」
それは、舞台への乱入宣言。
これから始まる演目は観客無しの即興演劇。
阿鼻叫喚と血風血雨が歌う鮮血の歌劇(オペラ)だ。
「さァ・・・アンコールには俺も混ぜてもらおうか・・・始めようぜェ!悲鳴と絶叫と銃声の舞台を!!」
乱入者は叫ぶ。その口元に長く鋭い牙を覗かせて笑いながら。