吸血大殲 第31章 夜を往くモノ――Night Walker
ウピエルVSファントム
>127
まだ・・・意識がある。
致命傷に近いドライの喉に牙を立て血を啜る。
放っておいても溢れ出す血液を、牙を立てた傷からドライに与える。
これは、子を為す行為。
新たな眷属を生む行為だ。
そして、それは無駄な行為だ。俺はもう死ぬのだから。
何故、俺はそんな事をする?
さっきだって・・・何故、ツヴァイを殺さなかった?
ここに来て、心に引っ掛かっていた疑問が氷解した。
俺は、もう死ぬ。だが、まだ闘い足りない。まだ殺し足りない。
もっと、もっと、もっともっともっともっとっともっと闘いたかった。
もっともっともっともっとっともっともっともっともっともっとっともっと殺したかった。
だから、俺はファントムの、ツヴァイの、ドライの血を啜る。
吸血鬼になるか、俺の死によって人に戻るか、どちらにせよ2人は存える。
そして、どちらにせよファントム達は殺すだろう。これからも、数え切れないくらい。
彼等は、この世の地獄の泥濘を這い廻り、生きるために殺しつづけるしかない、そう言う存在だからだ。
そこに愉しみを見出すかどうかの差はあれども、奴等は俺の同類なのだ。
僅かばかりの間、吸血鬼の血を得ることで、ドライがどの程度生き長らえられるだろうか。
僅かで良い。後少し。ドライが再び死の淵から這いあがるまででいい。
その間だけ・・・灰になるのを、待ってくれ。
最後の力を使い、口を開く。
「クソ・・・残念だが・・・俺はここまでだ・・・だから・・・貴様はまだ死ぬな。俺の代りに殺せ。死ぬまで・・・殺し続けろ・・・!!」
意識が残っているかどうかもさだかでは無いドライに呼びかけ、そこで俺の意識は途切れた。
顔には、凄絶な笑みを浮かべたまま。
ドライは、死の淵より這いあがることが出来たのだろうか。俺の代行者になり得るだろうか。
意識と共に全ての疑問、懸念、未練は消え─――――――――――――――――
そこにはただ、一塊の灰が残った。