吸血大殲 25章『Memory Of MoonBlood』

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(――――気付かれた?)
完全に不意を打たれた。
男の尋常ならざる動きに唖然としていたのが、完全に裏目に出た。
まさかこの距離で、気付かれるとは……あり得ない。
(なんだ、あいつは何者なんだ!?)
それにあの動き、人間のそれでは無い。銃弾を避けるなんて――――

撃ち込まれた銃弾は、眼前の座席を粉砕した。
男の動きに呆然として、身体が固まっていなかったら、即死だった。

背中に冷たい何かを感じる。
だが、そんな感慨に耽っている暇は無い。
(アイン――――ッ!)
彼女があたしを確認できる位置へ回り込もうとしている。
どうする……どうする……。
(アインと殺り合うか……)
それは良い。昔の因縁は晴れていない。
むしろ願ったりだ。
だが、この現状でそんなことをやっている暇はあるのだろうか?

あの男。
あいつは―――あいつは―――― 一体、何者なんだ!

「クソ……ッ! 何がなんだか……一体何が起こってるんだよ!!」

腰のホルスターからベレッタM93Rを抜き取る。
同時、座席の影から立ち上がり、駆け抜けるアインへ目掛けてフルオート射撃。
数秒でマガジンが空になる。
次瞬、牽制の役目を終了したベレッタを投げ捨て、AUGライフルに持ち帰る。
同時に180°反転。狙いは得体の知れないあの男。
(この銃弾なら―――ッ!)
そう思った時には、既に引き金は引かれていた。

ルーン文字が一面ビッシリ刻まれた5.56mmシルバーチップホローポイント弾。
一発100jは下らないと言われるその銃弾を、フルオートで吐き出した。