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燃え上がる炎に照らされながら、あたしは考える。
少女は、あたしの問いには答えてくれなかった。彼女達の親の名前。
あの少女達には、二人の親がいる。
彼女達を暗殺者として育て上げた、サイス・マスター。
彼女達を吸血鬼として育て上げた、吸血鬼。
どちらが立派な親かは分からない。多分、どちらも最低な親だろう。
だけど、サイスは死んだ。ツァーレンシュヴェスタンも全員死んだ。
なら、あのモヤシ野郎も死ぬべきだ。あいつだけ生きてるのは、なんか変だよ。
それに、オルゴールはまだ止まっていない。
ということは、まだこの鎮魂歌を聞かせたい相手がいるってことだ。
ツァーレンシュヴェスタンが全滅した今、残る相手は――――
「チッ、あのモヤシ野郎……玲二相手にしてまだ生きてるのか」
となると、あの吸血鬼の相手を引き受けた玲二は、どうなったんだろうか。
死んだかな? それとも逃げたのかな? ま、どうでも良いさ。
玲二が死んで、悲しむのはアインの仕事だ。あたしは、あいつに流す涙はもう持っていない。
あたしが出来ることと言ったら、殺すだけ。
さあ、速く来てくれ。あたしはあんたと違って不死身じゃないんだ。
このままだと、あんたが来る前に出血多量で死んじまう。そんなのはつまらねェ。だから、来い。
場所が分からない? 馬鹿言うな。このオルゴールの音色が道標だ。
この音源を求めて、歩け――――
バックに眩しいほどの炎を背負いながら、あたしは待ち続ける。