吸血大殲 25章『Memory Of MoonBlood』
ウピエルVSファントム
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劇場の傍らから銃声が響く。玲二とは別の人間が発砲したようだ。
ツヴァイの相棒の、アインと言う一人目のファントムだろう。
バックアップのつもりだろうか?
突然襲いかかってきた弾丸を軽々と避ける。
傍目には余裕を持って歩いてるように見えるが、その弾丸の1発1発の隙間を縫うように身体を運んでいる。
異常なさっきに充てられた為か、一瞬反応の遅れたツヴァイの弾丸を余裕を持ってかわす。
反応の遅れを補って余りあるその射撃の精度、連射のタイミング、走り出す方向の選択と速さ。
どれをとっても素晴らしい技量と言える。
だが、あくまで人間の範疇で、だ。
当然ウピエルは人間では無い。この程度の銃撃は避けられて当然だ。
「殺る気は充分見たいじゃねぇか!!OK!楽しもうぜ兄弟!」
吸血鬼はそう叫び、軽く駆け出した。
否、軽く駆け出したように見えた。
だが、それは短距離走の世界記録を軽く塗り替えるほどの速度を伴っていた。
軽くギターを爪弾き、クラシック調の、重厚ながら美しい旋律を持つ音楽を奏でる。
ギターとステァーAUGアサルトライフルが一体化した、それは異様なギターだ。
異様なギターの奏でるその音楽は、クラシック調から激しいリズムを持つメタルへと変り、やがて吸血鬼が歌い出す。
「♪I've been looking so long for you now you won't get away from my grasp
♪You've been living so long in hiding in hiding behind that false mask!!」
流れ弾に撃ち砕かれる客席を横切り舞台へと無造作に歩みながら、朗々と歌い上げる。
「♪And you know and I know that you ain't got long now to last
♪Your looks and your feelings are just the remains of your past」
だが、それはジグムンド・ウピエルの歌ではない。
「♪You're standing in the wings, there you wait for the curtain to fall
♪Knowing the terror and holding you have on us all !!」
それは、今しがたツヴァイが演じて見せた曲目。それをモチーフとした曲。
「♪Yeah I know that you're gonna scratch me and maim me and maul
♪You know I'm helpless from your mesmerizing cat call !!」
ウピエルが悪意を込めて歌うそれは、アイアン・メイデンの『Phantom Of The Opera』・・・『オペラ座の怪人』だ。
歌声と演奏に銃声が重なり、異常な音楽を奏でる。
その中に、新しい銃声が混じる。
サポートに回るアインに3発、こちらに立ち向かうつもりらしいマント姿の怪人・・・オペラ座の怪人に扮するツヴァイに6発。
旋律に合わせたかのようなリズムで連射された5.56mmの弾丸が、
その無造作な撃ち方に反し、正確な弾道で二人に襲いかかる。
だが、吸血鬼は更に3発撃った。
座席の間に隠れてこちらを伺う、3匹目の獲物に向けて。