吸血大殲27夜 ――Lunatic Dance――
ウピエル&ツァーレンシュベスタンvsファントム達
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大きく息を吸い、そして吐く。
その一動作で、自らの体の状態を確認するエレン。
吸い込んだ呼吸はスムーズで、どうやら鼻血は出ていないようだ。
同様に、吐いた息からも血の臭いはせず、内臓まで達している深い傷は無いらしい。
ならば、まだ戦闘続行は可能であると、自ら判断を下す。
見れば、キャルはフィーアの屍目掛けて駆けてゆく。
目当ては、彼女が持っていたAKか。そう読んだエレンは、痛む体を無理矢理動かすと
所持していた予備弾倉を外し、床の上をキャル目掛けて思い切り滑らせる。
「それは……まかせるわね……私は……」
エレンは、満身創痍の体を引き摺り舞台を抜け、裏口へと回ろうとする。
既に、残った二人の吸血鬼達は、エレンを驚異とは認識していない。
当然であろう。事実、現状エレンの戦闘能力は皆無に等しい。
そして目指す裏口には、玲二との逃走のために用意したバイクが有る。
そこまで辿り着ければ。
一歩、また一歩と歩を進める度、焼けるような激痛がエレンを襲う。
その一歩一歩が、思考を一片一片真っ白に染めていく。
今、自分が何のために歩いているのか。
既にそれは、エレンにとっても曖昧なものになっていた。