吸血大殲27夜 ――Lunatic Dance――
ウピエルVSファントム
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消火器の粉末による煙幕の中に飛び込み、まず目にしたのは、手榴弾。
迎撃が来るとは思っていたが、見事なまでにドンピシャのタイミングだ。
咄嗟に手榴弾を蹴り落し、そのまま壁を蹴り宙返り。
銀の銃弾で傷ついた脚の筋肉が悲鳴を上げて抗議するが、そんな事も言ってはいられない。
吸血鬼の反射の世界の、極一瞬の出来事だった。
だが、それでも少し遅かった。いくらかの破片と壁に跳ね返る爆風が肉体を押し上げ、再び階段の上へと跳ね戻る。
否、跳ね戻される。
爆風で浮きあがる浮揚感でハイになる。破片の痛みを差し引いても、中々にイイ気分だ。
見事に吹き飛ばされた屈辱に頭は真っ白になる。罠にかけられたのは例え様も無いほど腹が立つ。
ただ歓喜と激怒と狂気に彩られた奇声をあげ、吹き飛ばされるままに上へ跳ぶ。
そのまま天井を蹴り、反転、隕石のような急降下。
階下を過ったマントの影を、銃剣の切っ先で一文字に薙ぐ。
直前、闘争本能と理性とが同時に警告を発する。
目の前の影からは、手負いの人間であるはずのツヴァイが発していないといけない匂い――血臭がしていない。
一瞬遅れて、手応えの無さを銃剣を持った腕が感じる。
そのまま血の匂いのほうへ銃を向け、銃爪を――間に合うか?
――焦燥とも賭けを楽しむ心境とも取れる思いで銃爪を引いた。