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足下を、首筋を、銃弾を飛び交う。床が弾け踊り、白い壁が踊り弾ける。
だけど――――死なない。
弾は一発も当たらない。命の炎は揺らめきもしない。
器が違う。銃弾なんかで、死ねるかっつーんだ。
同時、閃光。またまたホールは閃光に包まれる。
だが、駆ける足は止まらない。これは援護だ。恐らくアインの。
(……気に入らねぇな)
ま、だけど今回は勘弁してやる。認めたくないけど。信じたくないけど。
「――――あんたのお陰で、これを手にできてんだからなぁッ!!」
頭から突っ込むように跳び、床のアゥグライフルを掴み取る。
同時、空になったマガジンを廃棄。変わりに銀の弾丸が詰まったマガジンを押し込む。
流れるような動作でアゥグライフルに命を吹き込んだ。
もう、これはただの兵器じゃない。テメェ等の臭ぇ命を刈り取る、死神だ。
撃鉄を起こし、両手でしっかりと構える。
まずは手前の馬鹿からだ―――二人……いや、三人か。
アインだ。二人相手にナイフで鮮やかな血飛沫を上げさせてやがる。。
だけど、近付きすぎだ。あの距離じゃ、流れ弾や跳弾が当たる可能性がある。
この銃弾は殺傷性が極端に高い。一発でも当たれば致命傷だ。
アイン、アイン、アイン。――――ファントム・アイン――――
最強の死神。玲二と共に生きる女。玲二の――――
「――――――――あばよ」
心の中に、氷の死神と炎の狂犬が住んでいた。
氷のように冷たい表情が言葉重ね、炎のように燃え上がる瞳が狙いを付ける。
燃え上がる激情をチャンバーに詰め込み、氷の精神が引き金を――――
引いた。
渇いた連続音が、ホールを埋め尽くす。
ファントム・ドライは、――――笑っていた。氷のように、だが、燃え上がる表情で。