吸血大殲 第31章 夜を往くモノ――Night Walker

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横島忠夫 vs ジュヌヴィエーヴ=コトフォード 
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手応えあった。
何かが潰れる音。
ジュネは口元だけでニタリと笑いそのまま拳を振り抜いた。

しかし

横島は確かに吹き飛んだ。そして――――横島の手元には

「棒・・・?」

ジュネが殴ったと思われた物は横島本人ではなく、へし折れた何かの棒切れのような物だった。
いや、今では『棒だったもの』と言った方がいいだろう。
横島はその棒を使いジュネの攻撃をまんまとかわした訳だ。

舌打ちをして振りぬいた拳を見つめるジュネ。
そこには感情の無い瞳の中に徐々に生まれつつある殺意のような物があった。


先の攻撃で舞いあがった塵も地面に戻り、視界も戻ってきた。
そして、ジュネも目標に向かって歩き出す。
コツリコツリとブーツの足音を響かせながらゆっくりと近づいていく。

目元が長い黒髪で隠れて表情は見えない。だが、口元を歪ませ笑っていることは確かだ。
何ゆえ戦う人形と化しているジュネが笑っているのかは分からない。
今、戦っている事が愉しいのか。それとも苦戦を強いられている窮地が愉しいのか。
それは横島にも、

そして――――笑っている本人でさえも分からない。