ウピエルvsファントム達
>311 続き
その時既に、エレンの右手をそう変えた本人は、彼女の左手へと手を伸ばしていた。
少年は、まるで恋人同士がするように、一度エレンの左手に自らの右手を重ねると、
そのまま自分の眼前へと引き寄せる。そして手を組みかえると、自らの親指の腹を
少女の薬指の根元へとあてた。
―――ポキン
また小気味良い音が小さく響く。
エレンが苦痛の呻きを上げるが、それを気にした様子もなく、
少年はその左手に、優しく頬をすり寄せると、不自然な方向に曲がった薬指を
自らくわえ込んだ。
直後、肉の千切れる音と、骨の砕ける音が響いた。
「―――っっっ!!」
ビクンとエレンの身体が跳ね上がり、声にならない悲鳴が上がる。
彼女が見上げた視界の先には、まず薬指を食いちぎられた自らの左手があった。
『錆付いた音を立てながら、ズレていた精神と肉体がだんだんと融合していく』
なぜ、薬指なのか? エレンの頭に疑問が過る。
親指、人差し指、小指を折られた右手は、完全に手としての機能を破戒されている。
しかしそれに対して、何故左手は薬指なのか?
「……左…手の………薬ゆ……び……?」
そういえば……なにかその指には意味が有った気がした。
確か、その意味を教えてくれた人が居た。
それは………一体、誰だったのだろう………
………………………誰……………………誰……………………誰……………
……………誰……………………誰……………誰………………………………
……………………誰……………………………………誰……………誰………
……誰……………………誰………………………誰……………………………
…………………………誰……………………誰……………………あれは、誰?
ぼんやりと、人の顔が浮かぶ。
『融合を最後まで阻んでいた楔が、音を立てて砕け散った』
「……怜……二……?」
左手の先に、少年の泣き顔があった。