吸血大殲27夜 ――Lunatic Dance――
1 :
ドラキュラ・ヴラド・ツェペシュ :
02/05/27 16:41
出典 : 名前 : 年齢 : 性別 : 職業 : 趣味 : 恋人の有無 : 好きな異性のタイプ : 好きな食べ物 : 最近気になること : 一番苦手なもの : 得意な技 : 一番の決めゼリフ : 将来の夢 : ここの住人として一言 : ここの仲間たちに一言 : ここの名無しに一言 :
ふむ……このような所が存在したのですか。 私はぺトレスク。 神に仕え、愛されなかった人々を葬る……この辺りにしておきましょうか。 では、テンプレです。 出典:仮面ライダーSPIRITS 名前:ぺトレスク 年齢:50〜60歳 性別:男 職業:神父 趣味:教会に人を招き、もてなす事 恋人の有無:私を愛してくれるのは、あのお方のみ 好きな異性のタイプ:特にありませんね 好きな食べ物:血のように……紅い酒(ワイン)ですよ 最近気になること:“出来損ない(ミスクリエイション)”の動向 一番苦手なもの:カメンライダー 得意な技:巨大な吸血蝙蝠の改造人間への変身 一番の決めゼリフ:そして死に絶えなさい、愛されなかった人々…… 将来の夢:愛されし民だけを地上に残す事 ここの住人として一言:愛されぬ民よ、悔い改めなさい。 ここの仲間たちに一言:アナタ方もまた、愛されし民。 ここの名無しに一言:神の愛は誰しも受ける権利があります。 カテゴリはCですね。 神に、贖罪の生贄を―――― それでは、またお会いしましょう。
死闘!復讐鬼対アギト! ◆再生アポロガイストvs仮面ライダーアギト◆ 仮面ライダーXとの闘いに敗北したアポロガイストは、黄泉帰った。 Xへの復讐を果たすために・・・・・・ だが、その再生手術は完全ではなかった。 その命が燃え尽きるまでの時間は、後一ヶ月。 体を調整できうる恐らく唯一の人物である川上博士は、 既に己の手で処刑してしまった・・・・・・・ 生き残る方法を模索していた時、彼の目に止まった、一冊のファイル。 それには『アギト能力者の解剖報告書』とあった・・・・・・ 「お前の報告書、興味深く読ませてもらった。詳しい話を聞かせてもらおうか?」 G.O.D.機関秘密警察第一室長室に呼ばれた研究員は、 酷く怯えた様子であったが、彼の機嫌のよさそうな様子に安堵したらしく、 多少どもりつつ、報告を始めた。 『アポロガイスト様。アギトは、賢者の石を体内に生成する事で変身する模様です。 アギト能力者を捕獲し、解剖した結果、変身をしないかぎり、賢者の石は発動できないようです。 また、胸部のモノリスを持たないタイプの場合、自滅する傾向にあるようです』 そこで研究員は一息つくと、追加のファイルを手渡す。 『現在、生き残りのアギトは津上翔一のみ、確認されています。 この結果を得るまでに解剖したアギトからは、 賢者の石とモノリスは得ることができませんでした』 「ご苦労。研究に戻ってよろしい」 研究員が出て行った後、彼はファイルを前にほくそえんだ。 これで、再びXと闘うことが出来る。 この男・・・・・・・津上翔一を殺害し、賢者の石を手に入れることで・・・・・・・
死闘!復讐鬼対アギト!◆アポロガイストvs仮面ライダーアギト◆ >4 レストランアギトでかつて、津上翔一と呼ばれていた青年、 沢木哲也がオーナーシェフとして働いていた。 「最近はあの時のようにアンノウンも出ないし…。平和だなぁ…」 かつての闘争を思い出し、暫し回想にふける。 「葦原さん…、元気かな…?あ、可奈ちゃんそれはおれがやっておくよ」 もう一人のアギトでもある可奈にそう、声をかけつつ手際よくランチの仕込みを済ませる。 その時、客の一人であった白スーツの男が手を上げた。 『すまんが、シェフを呼んでいただけないかな?』 「あ、おれですが・・・・・・」 『君だったか。大変に美味だった。オーダーをもう二つほどしたいが、構わないかな?』 「あ、はい、よろこんで!」 男は微笑を浮かべながらゆっくりと言い放った。 『では・・・・・・沢木哲也、いや・・・・・・アギトと呼ぶべきか。君の賢者の石とモノリスを』 店内に緊張が走る。 闘争 開始!
ウピエルVSファントム 前スレ>535 「ビンゴォ!!」 ツヴァイの腕と脚から血飛沫が飛び、手にした銃が宙を舞う。 「イヤァァァァァッハッハッハァァァァ!!!」 ハイになったまま階段の影に駆け込んだツヴァイを追おうとすると・・・ 吹き出した消火器の粉塵が視界を覆い尽くす。 それにも構わずに力任せに突入しようとするが、バランスを崩し前のめりに倒れそうになる。 腿の筋が言うことを聞かない。 まだ肉の中に銀の弾丸が埋まっているのだ。 突入のタイミングを見失った。 このタイミングを逃した事で、ツヴァイは階段の向こうで迎撃の準備を整えているはずだ。 仕方なく、大腿部の肉を抉り弾丸を穿り出す。腕も同様だ。 ある程度、肉は繋がりかけているが、銀に触れていた部分は僅かたりとも再生していない。 弾丸を抜いてもしばらくは再生しないだろう。 煙が晴れるにはあと数秒かかりそうだ。 また再び突入に丁度良いタイミングが訪れるのは・・・ 「クッ・・・ククッ・・・クハハ、ハァッハッハハハハハハハハッハッハッハハハハァァァ!!」 発作的に笑いの衝動が込上げる。 この俺が、迎撃を警戒してタイミングを伺っている。 何と滑稽で無様な姿だ。 人間でしかないはずのツヴァイと吸血鬼であるウピエルの間には埋めようの無い差があったはずだ。 それが、このザマ。 その姿を見た者が一様に正気を疑うような、紛う事無い狂喜の嗤いをあげる。 ギターを掻き鳴らし、狂ったメロディを響かせる。 そのまま、鈍った足を引きずる様に階段へと飛び込む。 とは言え、人間の限界を軽く超えた動きには違いないが。
死闘!復讐鬼対アギト!◆アポロガイストvs仮面ライダーアギト◆ >5 ―――この人、モノリスを、アギトを知っている!? 津上翔一と呼ばれていた頃の勘が少しずつ、蘇ろうとしていた。 「あのーーー、お客様…。何のお話…」 はぐらかそうとしたが、スーツの男の眼を見て声が止まる。 真実を、己の死期を知り、それに挑む男の眼だった。 「……すいません、ここではなんですから、別の場所へ行きませんか?」 そう言って男を促す。 「あっ、ちょっと待ってくださいね」 男にそう言って可奈に声をかける。 「可奈ちゃん、えーーーと、少し悪いんだけど、おれ、ちょっと出なくちゃいけなくなったんで、ゴメン!お店しばらくお願い!!」 そう、可奈に頼み、男のもとへと行く。 「お待たせしました…。一体、どういう事なんですか? おれ…、あの戦いから…いろんな事を学びました。 戦いは悲しいだけだって…。 それでも…、やるんですか?」 悲しげにそう問う。 「もう一つ…、いいですか?あなたのお名前は?」
死闘!復讐鬼対アギト! ◆アポロガイストvs仮面ライダーアギト◆ >7 目の前の青年は、どうやら覚悟を決めたようだ。 そうでなくては面白くない。一人の戦士として合い対峙し、 その上で獲得したものでなくては、Xに再び対峙する資格すら、今の俺にはない。 「ヒトとしての名は、既に捨てた。何故、そのようなことを聞くのかな?」 俺は静かに口を開く。 「戦士に必要なモノは一振りの剣のみ。そう、俺は信じているのだが」 そして俺は立ち上がる。戦いの場に、此処は相応しくない。 「場所は君の指定に従おう。・・・・・・あぁ、お嬢さん、彼を少しの時間、お借りしますよ。 これだけあれば、迷惑代と食事代に足りるかな?」 俺は懐から札束を一つ机に置くと、店の外へ出るべく歩き出した。
藤井八雲vs閑馬永空
前スレ >480
(途中経過纏めは>534)
ttp://cocoa.2ch.net/test/read.cgi/charaneta/1021741941/l50 美しい音を立てて生じた火花は儚くも散った。
閑馬に被せられた外套の端から、一筋の鉄光がはみ出ている。
三尖刀の突き、三叉に分かれた切っ先を食い止めた妖刀・井上真改蟲殺であった。
外套を投じられてから攻撃を受けるまでの数瞬、閑馬には考えを纏めるだけの余裕があった。
翻って見れば、相手の疵口に蠢く蟲は無く、それでいて上がる白煙の中に致命傷は消えて行く。
この青年は身に血仙蟲を巣食わせた者ではない。
ならば何者か。
外套の向うから、閑馬は静かに断じた。
「一斑即ち全豹を卜す。――血仙蟲に非ずして死なんとは主、化生の輩と見た」
一声、噛み合った刀を捻って弾き、左手で外套を投げ返した閑馬は一刀を走らせる。
行き着く先は刀を持った八雲の手。
鈍く、重い音がした。
数百年の間、戦場を生き抜いて来た必殺の太刀は、八雲の腕を肘込めに断っていた。
血汐を散らせて八雲の二の腕が落下する。
返す閑馬の剣尖が閃く。
切断された手が床に触れる前に、奔騰した閑馬の一刀は八雲の首を刎ね飛ばしていた。
『鋼鉄娘'sVS妖魔の君』 エリ&フィオVSアセルス 「う〜ん、ココ何処なんだろ?」 正規軍情報局所属の補給兵、相川留美は1人で歩いていた。 先行補給部隊の一員である彼女はいつものようにリュックに物資を詰めて支援に向かったのだが『神出鬼没』と呼ばれる程の方向音痴を発揮。 何をどう間違ったのか、今彼女は針の城の前にいた。 ちなみに目的地は南米のアンデス山脈のはずである。 「あ、もしかしたらマルコさん達ここにいるのかも。おじゃましまーす」 それから3日。 「ここか、最後に留美の反応があったのは・・・」 「無事だと、いいんですけど・・・」 情報局特殊工作部隊『スパローズ』最強の二人が針の城の前にいた。 「・・・いくよ」 「・・・はい」
>10 『鋼鉄娘'sVS妖魔の君』 エリ&フィオVSアセルス ・・・その日私は正直、頭を抱えた。 いくら方向音痴だからって・・・なぜこの子はここにやってきてしまったのだろう? とりあえず私は、その子を保護することにした。 侵入者とはいえ、彼女には全く敵意を感じられない。 ・・・まあ、たまにはこういう客をもてなすのも悪くない―――私は、そう割り切ることにした。 三日後。 その日も私は、彼女―――相川留美と名乗った―――とお茶を楽しんでいた。 話してみるとなかなかに面白い子だ。ジーナ達とも早くに打ち解けたようだし。 それに・・・こうしてみると、なかなかに可愛い。 ちょっと遊んでみようか・・・そう思いながら話をしていたとき。 「彼女たち」がやってきた。
死闘!復讐鬼対アギト!◆アポロガイストvs仮面ライダーアギト◆ >8 ―――なぜ、問うのか? 自分でも考える。 「顔を、心を持った人として、戦うべきだと思ったからです。 おれ…、生きるって決めましたから…。 生きるってことは、自分が知ることができる事を知ってそれを背負って、戦い抜くことが生きる事だと思ってます」 ――おれも生きます! おれのために! アギトのために! 人間のために! “闇の力”と戦った時の事を思い出す。 そう、あの時も手探りだった。 いつだってそうなのだが…、知る事を、戦う事を諦めてはならない。 ―――だから、戦う。 その意志を込めて男の眼を見返す。 札束を受け取り、目を白黒させる。 可奈「あ、えーーーと、あの、お客様…、どう…?」 可奈が困惑するのを横目に自分のバイクに乗り、戦う場所まで移動する。 「じゃ、可奈ちゃん、おれ、行ってくるね」 明るく、いつも通りに微笑んで返事を待たずに店を出る。 ―――負けない。おれは…生きる!
『鋼鉄娘'sVS妖魔の君』 エリ&フィオVSアセルス >11 「留美ーっ!! 居るなら返事しなさい!!」 「留美ちゃーん!! どこですかー!!」 あたしは襲ってくる連中を両手に携えた小型ヘビーマシンガンで薙ぎ倒ながら、 フィオは高性能小型ミサイルであたしの撃ち洩らしや隠れていた連中を倒しながら、留美を探して城の奥へ進んでいった。 そこへ、『彼女』は現れた。
死闘!復讐鬼対アギト! ◆アポロガイストvs仮面ライダーアギト◆ >12 俺はスーツ姿のまま、津上青年の駆るバイクの後を、 愛機のカタナで追った。 そして、彼は砕石場へとバイクを進めていく。 なるほど、ここならば他に被害を与えることなく闘える。 この男もまたXと同じ、誇り高き戦士・・・・・・・というわけか。 俺の心は湧いた。俺は幸運だ。 Xのみならず、アギトという戦士と戦う機会を得たのだからな。 やがて、津上青年はバイクを止めた。 俺もまたカタナを彼と対峙するように止めると、ヘルメットを外す。 胸ポケットに刺した黒ハンカチを取り出し、スーツについたほこりを払うと、 再び胸へと戻す。 「俺の名を知りたい、と言っていたな。そこまで聞きたいならば、俺も言わねばなるまいな」 「アポロチェンジ!!」 俺は叫ぶ。そしてその次の瞬間には、白いマントを翻す、黒衣の戦士が現れる。 「俺の名はアポロガイスト。GOD秘密警察第一室長が予言する。 アポロガイストの名誉にかけて―――貴様を倒す!」
ウピエル(&ツァーレンシュヴェスタン)VSファントム
前スレ
http://cocoa.2ch.net/test/read.cgi/charaneta/1021741941/522 http://cocoa.2ch.net/test/read.cgi/charaneta/1021741941/541 より継続
アインがドライをかばう可能性を予測しなかった訳ではないが
それでも、フュンフとノインにはわずかながらの驚きがあった。
彼女達は味方同士ではないはずだ。何故かばう必要があるのか?
傷を負い、機動性を大きく欠いた二人の戦力は
体調万全の一人と死体一つよりも大きく劣る。
アインはもはや戦力外、と彼女たちの頭脳ははじき出した。
あの状態では正確な射撃は望めないだろう。
まずはドライに専念する事にする。
ドライが持ち出したのは45口径。
貫通力は低いが、マン・ストッピング・パワーに優れている。
吸血鬼を相手にするにはまあまあといったところか。
しかし、今更持ち出すと言う事は、弾頭に特殊な加工もしていない筈だ。
1マガジン分程度くらっても、どうという事はない。
こちらへ向かってくるドライに対し、二人は間合いを取り続ける。
自分達の武器は突撃銃だ。拳銃の間合いで闘う事はない。
四肢を狙って、正確な射撃を続ける。
……今のところは、ウピエルの指示に逆らうわけにはいかない。
さらに、時間は彼女達に味方する。
ドライとアインの出血は激しい。
そう長く待たずとも、いずれ意識を失う。
戦闘の歓喜、そして周囲を満たす血の香りに酔っていても
けっして悪酔いはしない。
それはお互いを危険にさらす事になるのだから。
氷で出来た炎の華、二輪―――
人の血を吸う花は、よりそって戦場に咲き誇っていた
>13 『鋼鉄娘'sVS妖魔の君』 エリ&フィオVSアセルス ・・・どこかから響き渡っていた重火器の音。 そして目の前に現れた彼女たち。手には先ほどの音の正体と思しき火気。 その姿に一瞬呆気に取られ・・・すぐに、答えに行き着いた。 ―――侵入者。こんな土足で踏み込むような真似をして・・・ ・・・身の程知らずが、いきがるな。 「貴様ら・・・どこの誰だか知らないが、随分と派手にやってくれたものだな」 テーブルセットの椅子から立ち上がり、私は彼女たちを睥睨した。 ・・・その時だった。留美が彼女たちの名前を呼ぶ声が後ろから聞こえたのは。
藤井八雲vs閑馬永空 >9 高い金属音に続いて、鈍い音が狭い古物屋の中で響く。 閑馬の刀によって切り落された 八雲の右腕と頭部が落下した音だった。 首を切り落されても、なお死ねないというのは最悪の拷問である。 痛みを通り越した刺激が、脳を破壊しかねない火花となって 脳を駆け巡る。 仮に同じ刺激を与えられたら、どんなに訓練された スパイでさえ口を割るだろう。 それでも、「无」たる藤井八雲は意識を保っていた。 頭部と右腕を失った体は、不自然な姿勢で立ち尽くし、 右腕と頭は閑馬の足元の床に、力無く転がっている。 その右手は三尖刀を握ったままであった。 今度こそ仕留めた、とばかりに店を出ようとする閑馬永空。 その時、彼の足元に転がる八雲の頭≠ェ叫んた。 「動けえっっっ!!!!」 信じられないことに、力無く転がっていたはずの八雲の右手が 声に応じて浮き上がり、そのまま閑馬目掛けて跳ね上がる。 驚愕に目を見開いた閑馬の首を、その三尖刀が掻き切った。
死闘!復讐鬼対アギト!◆アポロガイストvs仮面ライダーアギト◆ >14 『アポロチェンジ!!』 白いマントを羽織り、赤い仮面と太陽のような楯を持った、 黒衣の戦士がそこにいた。 その外見に見合って、並々ならぬ決意と闘志を感じる。 『俺の名はアポロガイスト。GOD秘密警察第一室長が予言する。 アポロガイストの名誉にかけて―――貴様を倒す!』 その声を聞き、目を閉じ、大きく息を吸い込んで叫ぶ。 「おれは…、津上翔一、そして沢木哲也。 レストランアギトのオーナーシェフでアギトです! ――――変身!」 腰に変身ベルト、オルタリングが現れ、両脇の赤と青の秘石、 ドラゴンアイを押す。 ――――人類の進化形、アギトの姿がそこに現れる。
>17 藤井八雲vs閑馬永空 剥き切った視界が朱に塗り尽くされた。 白いと云うには薄汚れたシャツは、とうに同じ色に染まっている。 定法では考えられぬ奇襲をかわせず、閑馬の頚動脈は切り裂かれていたのである。 体勢が揺れた。 貫通した胸の疵も、まだ完全には癒えていない。 踏ん張りかけた足は床の鮮血で功を奏さず、する、と滑る。 数人の血で真っ赤な床に、閑馬は崩折れた。 呻きながら前のめりの姿勢を起こし掛ける。 眼が合った。 首を落とされて猶、閑馬に痛打を与えた青年と。 苦笑じみた呟きが洩れる。 「化生、か。己が言、之ほど腑に落ちた事はないぞ」
『鋼鉄娘'sVS妖魔の君』 エリ&フィオVSアセルス >16 踏み込んだ部屋の中にはどうやら親玉らしい女――同性のあたしの目から見ても惚れそうな綺麗な――が居た。 「あ、エリさんとフィオさん。やっほー」 そしてその後ろから顔を出した留美はいつもと変わらない脳天気な声で呼びかけてきた。 「〜〜〜〜〜!!! 何やってのよあんたわっ!! どこをどう間違えばこんなとこに来られるのよこのバカ!!」 心配させられた怒りを叩きつけるかのようにあたしは怒鳴りつけた。妖魔の居城に命がけで乗り込んでいく覚悟がバカみたいだ。 「え、エリちゃん、そんな怒らなくても。 留美ちゃん、まどかお姉さんが心配してますよ。 早く帰りましょう」 あたしと対照的にフィオがやわらかく呼びかける。 「ご、ごめんなさい・・・。あ、アセルスさん。 三日間ありがとうございました。それじゃ、失礼します」 留美は部屋の片隅においてあったリュックを持つとあたし達のほうに向かってきた。 さて、おとなしく逃がしてくれるだろうか・・・。 最悪留美とフィオは逃がさなくては・・・! ヘビーマシンガンを親玉――だろう、多分――に向けたまま留美が来るのを待つ。 1秒がやたらと長く感じた・・・。
ウピエル&ツァーレンシュベスタンvsファントム達 前スレ >522 現スレ >15 大きく息を吸い、そして吐く。 その一動作で、自らの体の状態を確認するエレン。 吸い込んだ呼吸はスムーズで、どうやら鼻血は出ていないようだ。 同様に、吐いた息からも血の臭いはせず、内臓まで達している深い傷は無いらしい。 ならば、まだ戦闘続行は可能であると、自ら判断を下す。 見れば、キャルはフィーアの屍目掛けて駆けてゆく。 目当ては、彼女が持っていたAKか。そう読んだエレンは、痛む体を無理矢理動かすと 所持していた予備弾倉を外し、床の上をキャル目掛けて思い切り滑らせる。 「それは……まかせるわね……私は……」 エレンは、満身創痍の体を引き摺り舞台を抜け、裏口へと回ろうとする。 既に、残った二人の吸血鬼達は、エレンを驚異とは認識していない。 当然であろう。事実、現状エレンの戦闘能力は皆無に等しい。 そして目指す裏口には、玲二との逃走のために用意したバイクが有る。 そこまで辿り着ければ。 一歩、また一歩と歩を進める度、焼けるような激痛がエレンを襲う。 その一歩一歩が、思考を一片一片真っ白に染めていく。 今、自分が何のために歩いているのか。 既にそれは、エレンにとっても曖昧なものになっていた。
藤井八雲vs閑馬永空 >19 「…化生?へっ…心臓刺されて生きてるヤツに、言われたくねえよ…」 それは奇妙な光景だった。 切断されることこそ避けたものの、その首を半ばほど切り裂かれ、 噴き出す血潮にその身を浸して倒れ伏す閑馬永空。 その血走った視線の先に、藤井八雲の頭だけ≠ェ転がっている。 「その鼎について…… あんたの知ってることを話してもらおうか。」 床に溜まった血の池に浮かぶ生首、八雲の首が、 目の前の閑馬に再び口を利いた。 その背後からゆっくりと近づいてくるのは、頭部と右手を欠いた 八雲の身体である。 その胴体に残る左手は、いましがた閑馬の首を掻き切った 己の右手を拾い上げ、接着でも待つように元の位置に押し当てていた。
>20 『鋼鉄娘'sVS妖魔の君』 エリ&フィオVSアセルス 彼女たちの会話を、私は半分呆然としながら聞いていた。 ・・・どうやら彼女たちは、ただ迷い込んできただけの留美を助けに来たらしい。 大方、留美が攫われたのだと勘違いしたのだろう。ゆえに、こんな重装備で侵入してきた。 ・・・で、なんだ? こんな狼藉を働いておいて・・・オチは「誤解でした」か? ・・・ふざけるな。 だったらその誤解・・・現実のものにしてやる! 「・・・留美、ちょっと待って」 場違いなほどに明るい声で暇を告げる留美を引きとめる。 彼女が振り返るのと同時に・・・私は、彼女に抱きついていた。 そして、牙を彼女の首筋に突き立てる。 口中に甘美な味が広がり・・・彼女が、甘い吐息を漏らした。 彼女の血をたっぷり味わった私は、牙を抜いて彼女の顔を少し見つめ・・・侵入者のほうへ向き直った。 「クク・・・これで彼女は私のものだ。 もうひと噛みすれば、晴れて彼女は私の寵姫に・・・吸血妖魔になる」 潤んだ瞳で私を見つめる留美。 そんな彼女と私は、侵入者・・・エリとフィオにどう映ってるか、考えるまでも無い。 「もとより、このまま帰れると思ってはいまい? 留美を妖魔にしたくなかったら・・・私を殺すんだな!」
『鋼鉄娘'sVS妖魔の君』 エリ&フィオVSアセルス >23 『・・・留美、ちょっと待って』 「はい? なんで・・・」 綺麗な女――アセルスが留美を呼び止めた。 あたしは舌打ちして素早く撃とうとしたが、 「なっ!?」 「えっ!?」 アセルスは留美が振り返ると同時に抱きつき、首に牙を突き立てていた。 「は、あぁ・・・」 聞いたことがないような甘い吐息を留美が漏らした・・・。 『クク・・・これで彼女は私のものだ。 もうひと噛みすれば、晴れて彼女は私の寵姫に・・・吸血妖魔になる』 「魅了か・・!」 あたしは歯噛みした。フィオの表情は見えないがあたしと同じ顔をしているだろう。 『もとより、このまま帰れると思ってはいまい? 留美を妖魔にしたくなかったら・・・私を殺すんだな!』 ご丁寧にアセルスは治療法を提示してくれた。 なら、やることは決まっている・・・! 「は、上等ッ!!」 あたしは右にステップして留美をアセルスへの射線上から外し、右手のヘビーマシンガンを撃った。 フィオも高性能小型ミサイル――『エネミーチェイサー』を構えた。アセルスが留美から離れると同時に撃つつもりだ。
>22 藤井八雲vs閑馬永空 首筋で蟲が蠢く。 その動きに疵の治癒を感じながら、閑馬は口を開いた。 「伝え聞く不老不死の一族・三只眼吽迦羅。その紋所である三つ目の印をを刻された諸々の品は、 彼らの聖地『昆侖』に通ずる鍵だと云う。 だから儂は其処へ行きたいのさ。彼らの持つ、不死身の秘術を得る為にな」 首を僅かに捻り、首無くして立つ八雲の躯を見遣る。 「何ゆえ、と聞きたいか。己を誇るつもりは無いが、不死の肉体を既にして持ちながら、と。 どうやら主も死ねぬ身らしい。だから忠告してやるが――」 突如、閑馬の躯が跳ね起きた。 八雲の胴体が反応する前に、一息で立ち上がったその足を、ぴたと転がる首に押し当てる。 「動くと頭を踏み潰す。躯の方はそのまま話を聞いて貰う事だ」 低く笑い、閑馬は話を続けた。 「主が幾つの星霜を閲したかは知らんが、幾百年、このままで生きるのには流石に疲れるのだよ。 一人で生きるのは特に、な。 同じ身上の者が欲しい。時の流れに束縛されぬ、無限の力を持つ者が。 だから儂は『昆侖』へ行く。其処ならば、同じ力持てる者を得られる。 ――待てよ」 閑馬は思い返した様に足元の八雲を眺めた。 「そうだ。別段、主でも構わん訳だな。 来るか、世界を手に入れんが為に」
>24 『鋼鉄娘'sVS妖魔の君』 エリ&フィオVSアセルス 侵入者の一人・・・エリと呼ばれた方がサイドステップと同時に 右手に持ったマシンガンを掃射してきた。 「ふん!」 こちらも同じくサイドステップで、彼女の攻撃をかわす。 銃撃を避けることなど、私にとっては造作もない。 と、同時にもう片方・・・フィオがミサイルを発射するのが見えた。 ・・・小賢しい。 私はあえて避けることをせず・・・不意に、腰の剣を鞘ごと抜き払った。 鞘は狙い済ましたタイミングでミサイルに命中。 ミサイルは軌道を変えられ、天井に炸裂した。 私は爆風に煽られる形で再びサイドステップしながら、エリ達に向かって言い放った。 「ハハハ・・・こんな部屋の中で銃火器を使うとはな。 留美に当たっても知らないぞ?」 嘲笑しながら、態勢を立てなおす。 そして、ちらりと留美のほうを見た。 霞みがかった目をした留美が、わずかに上気した顔でふらふらと歩き始める。 そう、彼女は私のもの・・・ 例えエリ達が彼女を避けて攻撃しようとも・・・留美自身が私をかばう事だってありうる。 果たしてエリ達は、そのときどう反応するのか・・・
『鋼鉄娘'sVS妖魔の君』 エリ&フィオVSアセルス >26 あたしの銃弾はかわされ、フィオのミサイルは弾かれた。 『ハハハ・・・こんな部屋の中で銃火器を使うとはな。 留美に当たっても知らないぞ?』 アセルスの嘲笑があたしを苛つかせる。 留美は留美で魅了されてフラフラしていて邪魔なことこの上ない。 さらにはあたしが銃口をアセルスに向けるとその射線上に立ちはだかる。 (魅了がこんなに厄介な物とはね・・・) 今更ながらに痛感する。 「どうします?」 横でエネミーチェイサーを構えているフィオが小声で話しかけてきた。 「エネミー捨ててコレ使って。あたしが留美とあいつを切り離すからその隙に留美を気絶させて」 左手のヘビーマシンガンをフィオに押しつけるようにして言った。 右手のはアセルスをポイントしているが射線上に留美が居る状態だ。牽制というかなんというか、気休めだ。 「・・・ちょっと酷くないですか?」 左手にエネミーチェイサーを持ち、右手で小型ヘビーマシンガンを受け取りつつフィオ。 「穴だらけになって死ぬよりはマシでしょ。 3、2、1でいくわよ」 有無を言わせない口調で告げ、あたしはカウントダウンに入った。 「3」 左手を顔の前に持ってきて構える。 「2」 首の吸血痕が痛々しい留美が霞のかかっている目であたしを見る。 「1ッ!」 あたしは猛然と走り、左手で留美を薙ぐようにしてどかす。 そして、右手のヘビーマシンガンをアセルスを狙って撃ちまくる!
ウピエルVSファントム >6 粉末消火器の消化剤が視界を遮る中、ウピエルが駆け下りてくる。 手榴弾のピンを抜き点火してから一拍置く、一つ間違えば自爆しかねない危険な行為。 タイミングを取ってウピエルの方向に向けて投擲、再度階段の裏側に身を隠す。 ――――― 空中で爆発する手榴弾! ――――― 狭い地下通路の空間で起こったそれはコンクリート製の階段に身を隠し、耳を塞いだ 体にも衝撃を伴なった圧力として容赦なく襲い掛かる。 破片の直撃こそ受ける事は無いが、遠く無い爆圧に体を丸め歯を食いしばって耐える。 爆風が収まり、爆煙と粉末消化剤が未だ空間を埋め尽くす中、様子を窺う様にマントを 纏った影が現れた。
ジャッジ・デスvsン・ダグバ・ゼバ 前スレッド >538 そこは、まるで畜殺場だった。 血の海が床を覆い尽くし、肉片や五体の各部が散乱していた。 手、足、頭、その他あらゆる人体の残骸だ。 十人以上の人間が、惨たらしい方法で切り裂かれ、貫かれ、引きちぎられたのだ。 犠牲となった者たちは、けっして非力な存在ではない。 最下級の集団とはいえ、人間を凌駕する戦闘能力を誇る種族<グロンギ>の戦士たちだ。 死骸のなかには、獣毛に覆われた腕や、昆虫を思わせる甲殻に覆われた脚が混ざっていることからも、 彼らが人ならざる者であったことを証明している。 この残虐を犯した存在は、広い部屋の中央に立っていた。 痩せ細った長身を黒革のジャンパーで覆った人間らしき姿だったが、その掌は不釣り合いなほどに大きく、 骨ばった長い指の先には、鋭利な刃物のごとき爪を備えていた。 黒いヘルメットと鉄格子状のバイザーで、その容貌はなかば隠されていたが、バイザーの下からは 牙だらけの巨大な口が覗いていた。 怪人物の、その全身は返り血に塗れている。 ヘルメット、ジャンパー、ズボン、肋骨と翼竜を模した左右の肩当て、そのいずれもが赤い飛沫に彩られていた。 部屋に足を踏み入れた白い姿に、黒い魔人が反応を示した。 「裁ァァきの場へッ、よォォォうこそォォォ!」 狂気に満ちたしわがれ声が発っせられる。 「見ィィィよ、こォォの平和な死に顔をォォォ!罪も邪悪も清められたりィィ」 それは、片手で掴んでいた血塗れの生首を掲げた。 「おォォ前もッ、この者達の同胞にィィ加わァァれェェェ!」
おやおや、一体なんてところだ! 地下10階の闇だって、こんなに血の匂いはしないだろうに! ああ、申し遅れました。私はフラック、魔族の道化ですよ。 吸血鬼でない私がここに参るなど我慢ならない者もいましょうが…… ワードナって魔術師の命でここに派遣されましてね。 脅威になりそうな人間を片っ端から殺してこい、だそうで。 人外の方とも利害次第じゃ戦うでしょうが、一応Cカテゴリって事になりますか。 ま、ともかく能力の紹介をさせて頂きますよ。劇場でも予告くらいはあるもんです。 炎のブレス、それと錫杖を使った体術が私の得意技ですな。 いわゆる物理攻撃って奴では、一撃で首を跳ね飛ばしたり、 他にも毒や麻痺や石化と盛りだくさんですよ。 ま、吸血鬼の方にはどこまで効くか分かったもんじゃありませんが。 あとは、新鮮な死体からアンデッドの創造なんて事も出来ます。 しかも私が作ったアンデッドは能力据え置き、 いや無意識の制御が外れる分生前より強力になっています! いやはや、優れものだとは思いませんかね? 耐久面でも、「ある一点」を破壊されない限り、私は不死身です。 ま、能力自慢はこんな所ですかな? 本編はまた後で、と参りましょう。 出典 :ゲーム『ウィザードリィ』+小説『隣り合わせの灰と青春』 名前 :フラック。本名は特に有りませんね。 年齢 :ヴァンパイアロードよりは小僧でしょうが、さて。 性別 :男 職業 :斬ったり、殺したり、刻んだり……ここにはよくいる職種でしょ? 趣味 :アンデッド作りが、最近はちょっと気に入りですね。 恋人の有無 :魂の無い死人は皆恋人ですよ。 好きな異性のタイプ :良く生きてくれる娘、そして良い死に顔をしてくれる娘。 好きな食べ物 :はて、ここ300年ばかし何か食べた覚えが…… 最近気になること :私の攻撃の威力も弱まっているようで……ま、技巧にこりますか。 一番苦手なもの :(舌を破壊されると生きられない事は言えませんな……) 得意な技 :やはり、錫杖での首飛ばしでしょうか? 一番の決めゼリフ :「実に素敵だ! 観客がいいと、私の舞台にますます磨きがかかる!」 将来の夢 :ふむ。分身と言うものを、一度やってみたいですな。 ここの住人として一言 :殺しの数を誇るよりは、殺しの愉しさを誇りたい所で……月並みですかな? ここの仲間たちに一言 :皆さん、どうか良い夜を! ここの名無しに一言 :観客は私の命、お手柔らかにお願いしますよ。
>15>21 疾走する死神。身体がどんどん冷たくなっていく。 足の出血は止まった。痛みも、殆ど感じない。しかし、腹の方は―――― (……やばいぜ、こりゃ) 45口径の弾幕を張りながら、心の中で呻く。 次の瞬間、 (……来た来たァッ!) 跳躍。そのまま観客席の中へと紛れ込む。一寸遅く、降り注ぐ銃弾の嵐。 「――――ハッ、バレバレなんだよ」 ツァーレンシュベスタンのお二人さん、あんた等本当にサイスの秘蔵っ子かい? 奴等、きっとサイスの教えなんて忘れてやがる。 サイスが得意とした暗殺術をまったく用いない。 むしろ、サイスが絶対教えないような奇襲を仕掛けやがる。 ――――ツァーレンシュベスタンは、暗殺者では無くなったのだ。 オーケー。 じゃあ、思い出せてやるよ。あんた等がサイスに教わってきてことをな。 暗殺者の怖さ。ファントムに――――常識は通用しない。 AKの銃声が鳴りやむ。同時、ホールは完全な静寂に包まれた。 アインの気配も、ドライの気配も、無い。僅かに、遠くから銃声とモヤシの怒声が聞こえるだけ。 ホールは、二人の少女の世界になった。
>29 ジャッジ・デスvsン・ダグバ・ゼバ 「ああ、良かった……」 ほう、と安堵の息を吐く。 これで手間が省けた。 弱い奴等を潰していくのは結構面倒なんだ。 そして、何より―――― 立ち込める血臭。 飛び散った肉片。 これらを演出してくれた最高に面白そうな相手が、目の前に居る。 退屈な作業はもう終わりだ。遊ぼう。 手を掲げ、差し出された首に火を点ける。 赤い光が凄惨な暗闇を照らす。 これが僕なりの開始の合図だ。 さぁ、始めよう! とびっきり楽しくて、スリリングなゲームを!!
http://cocoa.2ch.net/test/read.cgi/charaneta/1021741941/549 ◆スミレvs水のエル◆ 『ローラレイ』
高く、高く、声を響かせながら、
腕を裂く胸を裂かれる腹をえぐる脚を折られる。
まるで愛撫のように、私たちはお互いの身体を削りあい傷つけあう。
だがそれは私には致命たりえない。
使い魔に代替された私の身体に、普通の攻撃はいささかの痛痒にもならない。
しかしそれは逆に言えば。
この異形が、使い魔に代替されぬ場所を――私の頭を斬り裂けば、事は一瞬で終わるのだが。
なぜそこを薙がないのか。
声が響く。
偶然ということはありえない。
歌うように慟哭のように。
まるで歌声に退けられるように。
高く高く、全てを切り裂いて。
その場所にだけは矛が近づかない。
声が響く。
―――もしかして、
ふと考える。たぶん的外れな思考。
異形が――この声を私の哀切と思うのならば。
私の哀切を許すのならば。
そのためにこの異形が死ぬのならば。
それはなんて皮肉。
爪が走る。異形の命を削っていく。
それがひどく心に触れて、
私は―――泣いた。
藤井八雲vs閑馬永空 >25 沈黙が狭い古物屋の中を支配していた。 着衣を朱に染め、八雲の頭を足蹴にしたまま、 閑馬永空は再び口を開く。 「姿形こそ違えど、主は儂と同じ時を歩む者と見た。 どうだ。儂と共に世界を手に――」 「遠慮しとくぜ」 踏み据えられた八雲の頭が、閑馬の言葉を遮った。 不意に頭蓋を踏みつける力が強まる。 「オレだって、それなりの修羅場をくぐって来た。 化け物以上にヒデー人間も見てきたさ… …ただ命を奪うのが、好きで好きでしょうがねえっていう、最低の奴等もな」 老朽化した床板が、負荷に耐え切れずに軋みをあげた。 新たな痛みに歯を食いしばりながらも、八雲は続ける。 「さっき、店主を殺したあんたの目。 その最低な連中と同じだぜ。 あんたと世界を取ったところで、ロクなことにはならねえよ!」 言い終わらない内に、頭部を欠いた八雲の身体が宙を走ると、 三尖刀の鋭い切っ先が、今だに蟲の蠢く閑馬の胸の傷口を貫き、 そのまま背中まで突き通す。 さらに三尖刀を握ったまま、八雲の身体は閑馬の脇を抜ける。 自然に胸から入った刀身が閑馬の脊椎を軸に半回転し、 肋骨ごとを肉を断ち切って半身を切り開いた。
◆スミレvs水のエル◆『ローラレイ』 >33 ――声が響く。 切々と響く悲しみの歌が。 互いに削りあい、水を紅に染めるこの戦いで、 水のエルは矛をスミレの頭に向けることは出来なかった。 ――なぜ、歪んだ命であるはずの死徒がこうも美しい歌を歌うのだろうか? それは、己が鯨の超越種であるが故の矛盾。 “闇の力”からの使命と生命としての本能。 湧きあがった疑問を疑問とする事が出来ないまま、矛を振るう。 ただ、この歌を止めたくはないと思いながら。 そして、水のエルは己の死を知る。
>34 藤井八雲vs閑馬永空 黒血を撒き散らし千切れかけた閑馬は、しかし倒れない。 苦鳴と血塊を吐きつつ、構える一刀から力は失われていない。 ふと、その首だけが背後に向けられた。 視線の先、店の入り口に中年の女がいる。買い物に来たのか、近所の人間か。 店内の惨状は十分目に入っているのだろう。開け放した口元が痙攣する。 閑馬が舌打ちをしたのとほぼ同時に、女は絶叫を振り絞った。 即座に床を蹴った閑馬は八雲の胴体へ一閃を見舞う。 ついでに、転がる頭部を蹴り上げる。悲鳴を上げて生ける生首は飛んだ。 それを尻目に、先程取り落とした鼎の包みを引っ掴み、踵を返して走り出した。 入り口で硬直したままの女を突き飛ばし、躍り出た通りを疾走する。 白昼、血刀を手にした兇漢の出現に、人の群れは割れた。 どよめく人々を押しのけ、血染めの剣鬼は脇道へ消えた。
はぁい♪ 初めましてね。 アタシは七荻鏡花。 「夜が来る!」に登場する火者の一人で、サトリの能力者よ。 マナちゃんに続いてだけど、アタシも参戦させてもらうわね。 アタシの戦闘スタイルはペットの蛇蛟(じゃこう:翼を持つ蛇)「チロ」を使ったものになるわ。 チロ自身が攻撃することもあれば、姿を変えて武器になることもあるの。 かわいい、いい子なのよ♪ あとは、サトリの能力ゆえの先読みが命ね。表層意識だけとはいえ、イヤなものまで見えちゃうんだけどね。 じゃ、よろしくね♪
テンプレよ。 名前:七荻鏡花(ななおぎ・きょうか) 年齢:17歳 性別:女性 職業:女子高生♪ あとCFモデルだったりもするわ 趣味:そうね〜、色々とおしゃれするのが趣味かな 恋人の有無:いないわね 好きな異性のタイプ:そうね、知的なタイプがいいわね。 好きな食べ物:甘いもの、ケーキとかね。 最近気になること:やっぱり、姉さんのこと、かな? 一番苦手なもの:・・・クモ 得意な技:チロを使った攻撃 一番の決めゼリフ:やっちゃえ、チロ! 将来の夢:そーね・・・なんてったってアイドルね ここの住人として一言:不慣れな面も多いかも知れないけど、よろしく。 ここの仲間たちに一言:新参者だけどよろしくね。 ここの名無しに一言:不穏当なことを考えるのも禁止よ♪
〜鈴鹿御前vsパンテーラ(M) 『鬼の剣 豹の牙』 導入一〜 『林よりいづる獅子は彼らを殺し アラバの狼は彼らを殺し 豹はその街をねらふ』 『エレミア記』五章六節より 「化け猫にはもう一つのタイプがあり、これが人口の稠密な地域 ですら、時として突然出現し消失する。 このタイプは体が巨大で、どこかしらしなやかな黒豹を思わせる。 それが豹と言う動物など知られていなかった、或いは知られていない 数多くの土地に出現しているのだ。 豹のいない英国でも、この獣がこれまでにたくさん目撃されている」 ジョン・A・キール『四次元からきた怪獣』より 不気味なまでに黒光りするキャデラックが、街中を走っていた。 三面のガラスは濃茶の遮光性の強いものになっており、運転手の顔は 外からは伺えない。 街中を走り回ったあげく、キャデラックは或る高校の校門前で停車 した。 キャデラックの扉が開く。 そこから姿を現したのは、名も知れぬ太古の名匠が黒檀に刻んだ ヴィーナス、或いはシバの女王の宮殿を守護する処女僧のごとき 妖しいまでの美貌を有した黒人女性と、豹の毛皮をまとい 一人は豹の皮を貼ったドラム、もう一人は紫煙を昇らせる香炉を それぞれ手にした二人の黒人男性であった。 彼女達は校門に向けて歩き出した。 黒人女性が歩くたびに、首にかけられたペンダントが揺れる。 そのペンダントに付けられているのは六本指の赤い手を太鼓腹の前で 組んであぐらをかく怪人の小像だ。 それは南米の妖術マクンバの大悪魔オルビアーノの神像であった。
藤井八雲vs閑馬永空 >36 店の周囲が急に騒がしくなる。 すでに周囲は黒山の人だかりであった。 すれ違いざまの閑馬の一閃が、頭部を欠いた八雲の胴体をとらえ、 己の傷と寸分たがわぬ場所を切り裂いた。 八雲の身体がよろめく。 だが続いて蹴り上げられた八雲の頭が壁に跳ね返り、 胴体の腕の中に落下してきた。 両手で頭≠首の上に押し付ける。 実に数分ぶりの身体と頭の再会だった。 このまま首がつながるのを待っていては、 閑馬に逃走を許してしまうと考えた八雲は、 転がっている背負い袋から包帯を取り出して分厚く巻きつけると 地面に残る血の後を頼りに閑馬の後を追う。 集まった野次馬たちは、そのあまりの出来事に しばし呆然と立ち尽くしていた。
鈴鹿御前vsパンテーラ(M) 『鬼の剣 豹の牙』 導入2 >39 「ここだね、非―人類(ノン・ヒューマン)の身でありながら 人間(モータル)の味方をするお馬鹿さんのいるところは」 限りない憎悪と侮蔑をこめた呟きをもらすと、黒人女性と二人の 黒人男性は校門をくぐり、校庭に入っていった。 ちょうど体育の授業を行っていた生徒たちが、校庭に入ってきた 闖入者を怪訝そうに見つめる。 黒人男性の一人が持っていた香炉の紫煙が、まるで意思あるもの のように彼らに向かっていく。 それと同時にもう一人の黒人男性は一定のリズムでドラムを叩き 始めた。 紫煙を吸い込み、ドラムの音を聞いた生徒たちの顔つきが徐々に 呆けたものになっていく。 遠のく意識の中、彼らの耳に囁く声があった。 「よくお聞き、あんた達が今いるところは灼熱のアフリカの大地だ。 弱肉強食の掟が支配する場所だ。そしてあんた達は野獣だ」 その声に、夢遊病者のように立っていた生徒達はゆっくりと頷く。 「よし……分かったら その弱い人間の皮膚を脱ぎ捨てな、そして 歯向かうものに牙を突き立てるんだ!!」 その叫びと共に、生徒たちの体が弾けた。 そして――ハイエナ、ジャッカル、チーター、ライオン、リカオン、 ゴリラ、アフリカニシキヘビなどありとあらゆるアフリカの猛獣達 に変身した彼らは、咆哮と共に校舎へ雪崩れ込んでいった。
鈴鹿御前vsパンテーラ(M) 『鬼の剣 豹の牙』 導入3 >41続き その光景を見つつ、黒人女性は邪悪極まる哄笑を発した。 「ハッハッハ、ちょっとしたサファリパークだね。楽しみな」 紀元前七世紀に繁栄し、トンブクトゥに一大王国を築いたという 謎の種族カリム族の妖術には、人間に強制的に動物霊を憑依させ、 即席の獣人化を促すものがあったという。 彼女が披露したのはその妖術であろうか。 彼女の名はパンテーラ、『最期の審判』を魔王に有利な戦況に導く ために謎の人物アレクサンダー・メルクリウスが結成した魔術的 テロ結社『WORM』(=World Order of Ruin and Massacre 破滅と虐殺の世界教団)に所属し、『イェルサレムの公爵』の位階を有する 黒魔術師である。 今回、WORMの日本侵攻にあたり邪魔なハンターと吸血殲鬼ども を一掃すべしという命令を受けた彼女は、その第一のターゲットを 人間にまぎれて生きる鬼姫――鈴鹿御前に定めたのである。 パンテーラが入ったとき、校舎にはすでに屍山血河が築かれていた。 あちこちで即席の獣人どもの咆哮と犠牲者の悲鳴が響く。 獣人どもと二人の黒人男性を引き連れ、彼らの女王のごとき堂々と した足取りで校舎を進んでいく彼女の歩みがふと止まった。 果たして、廊下の先の教室から現れたのは研ぎ澄まされた日本刀と その得物と同じく研ぎ澄まされた美貌を有する少女――古参の鬼姫 鈴鹿御前であった。
鈴鹿御前 vs パンテーラ(M) 『鬼の剣 豹の牙』 >39 >41 >42 その日の3時限目の授業は、私の苦手な数学だった。 しかも、前日夜更かししてしまった私は、宿題が手つかずのまま、今日の授業に臨んでいた。 そんな時に限って当てられてしまうのは、皮肉というものだろうか。 古参の鬼姫ともあろうものが、数学の宿題に四苦八苦するなど情けない話だが、事実なのだから 仕方がない。 黒板の前でしどろもどろになりながらも数式と格闘し、なんとか答えを導き出そうとしていた、 その時だった。 強く、そしてどす黒い、魔の気配を感じたのは。 背筋に電流を流されたかの如く、体がびくりと震える。手からチョークが滑り落ちて、カランと いう音を立てた。 ──この国のものとはまったく違う、外つ国の魔。しかし、強い。 氷のように冷たい汗を流し、身を震わせる私に、担任の教師は心配げな声をかけてくる。 だが、私がそれに答える前に、階下で悲鳴が湧き起こった。いや、起こったのは悲鳴だけではな い。 これは──こんな場所では決して聞かれない筈のこの声は──獣の、咆哮だ。 反射的に、教室を飛び出す。もはや、教師の制止の声も、耳には入っていない。 廊下を全速力で駆ける。階段を踏む間ももどかしく、一気に飛び降りる。 その間にも、一瞬ごとに悲鳴と咆哮は大きくなってゆく。 私が一階に辿り着いた時、既にそこは阿鼻叫喚の生き地獄と化していた。 アフリカの奥地にでもいるような猛獣たちが、生徒を無差別に襲い、虐殺していく。まるで、質 の悪いホラー映画のようだ。 その奥に、獣人達に守られ、二人の黒人男性を従えて女王の如く振る舞う、女がいた。 ──間違いない、あの女がこの地獄の元凶だ。 確信して、その女の方へと歩み出す。私の手には、既に刀──大通連──が握られている。 冷静さを保とうと努力しながら、女に問いかけた。 「あなた達は一体何者? こんな事をした、目的は?」
>20 『鋼鉄娘'sVS妖魔の君』 エリ&フィオVSアセルス ふらふらと、エリ達の射線上に割って入る留美。 私の身をかばう事に悦びを見出している・・・そんな顔で。 (ふふ・・・そう、もう少し私の役に立っててね・・・) 笑みを浮かべながら、私はエリ達の様子を窺った。 ・・・さすがに、場慣れしているようだ。そうそう隙は見せてこない。 なにやら策を練っているようだが・・・ ―――と、不意にエリが左手を構え突進してきた。 そうして留美を左手で薙ぎ払い、同時にマシンガンを至近距離で乱射してくる! しかし私も同時に動いていた。 銃撃をかわすべく、横へと駆ける。 ・・・横へ? この攻撃・・・僅かに狙いにズレがある。私を倒すためのものじゃない? ―――そういえば、もう一人は!? 駆け抜けながら、視線を走らせた私の目に・・・フィオが留美に掌打を当てるのが見えた。 ふん・・・そういうことか! 私は一旦足を止め、今度はフィオと留美のいるほうへと駆け出した。 エリの放つ弾丸が数発、身体のあちこちをえぐっていくが・・・構わずに走り続ける。 そして、留美を気絶させたフィオの前に割り込み・・・彼女の目を見つめた。 途端、彼女が脱力する。 「・・・ま、確かに常道手段だな。褒めてやるよ。 ・・・ふふ、どんな気分? フィオ・・・」
《ガロン vs 弓塚さつき(死徒27祖)〜導入〜》 それは、わたしがいつもの場所で食事をしているときのことだった。 ―――人影。 ポツリと現れたソレは、わたしの姿を見、立ち止まる。 食事中に来客があることは稀なこと。 大抵が偶然通りかかるだけの人間たち。 ソレらはわたしの姿を見ると怯え、或いは戸惑い、絶叫を上げるものまで居る。 大抵の相手には『処置』をするだけで帰してやるのだが。 今日のお客さまは銀髪の、中国のなんとかいう服を着た男の人。 わたしはお客さまへと顔を向け、いつものように『処置』を施す。 その瞳を、血のように真っ赤に染まった眼で見据えて。
>40 藤井八雲vs閑馬永空 閑馬は足を止めた。流石に肩で息をしている。 滅多矢鱈に裏通りを駆け回り、辿り着いた先はどぶ川のほとりであった。 密集した建物の裏手である。人気は全く無い。 鼎を脇に置き、刀を地に刺した。柄に寄りかかる。 そのまま眼を足下に落とし、苦笑した。 治りきっていない疵口からこぼれた血潮が、過ぎて来た道沿いに点々と垂れている。 こうも目立つ印を振り撒けば、馬鹿でも行く先は知れようと云うものだ。 足音が近付いて来た。 大地から刀身を抜き、一振りする。 建物の間を抜け、風を巻いて八雲が姿を現した。 虚ろな相貌を、閑馬は互いに死ねずの敵へ向けた。
鈴鹿御前 vs パンテーラ(M) 『鬼の剣 豹の牙』 >43 鈴鹿御前の問いかけを聞いたパンテーラの唇がV字形に釣上がる。 鈴鹿御前という存在の一切を否定し、蔑み、軽んじきった邪悪な笑み―― 非―人類(ノン・ヒューマン)のみが浮かべられる笑みだ。 「初めましてだね、人にまぎれて生きる鬼姫スズカ・ゴゼン。 私の名はWORM日本寺院(ジャパン・テンプル)マスター、イェルサレムの 公爵パンテーラだ。あんたも闇に生きるものの端くれならWORMの名前 ぐらい聞いたことはあるだろう? 我らが主、世界の王メルクリウスはこのたびWORMの日本侵攻に際して あんたのような邪魔者を皆殺しにするよう私にお命じになったのさ。 さて、解説はここまでだ。 我ら、世界の王メルクリウスの御名に賭け、地には破壊を、民には虐殺を、 光には闇を!!」 パンテーラが唱えるWORMの聖句が終わるか終わらぬかの内に、 即席の獣人どもは鈴鹿をその爪で、牙で引き裂かんと一斉に襲いかかった。
ジャッジ・デスvsン・ダグバ・ゼバ >32 突然に炎上した頭部を放り出すと、黒い魔人、ジャッジ・デスは高らかに宣告した。 「こォォれよりお前にッ!裁きを下ァァァす」 一歩ずつ間合いを詰めていく。 「お前は有罪ィィィッ!」 両腕を垂らした無防備な姿勢で近づく。 「罪状はッ生存!」 赤く染まった腕を振り挙げた。 「判決はッ死刑ィィィ!」 五つの死の爪が、空気を切り裂いた。
『意思、果つる者の躯』 前スレ>553 「うっわ〜〜〜!!良かったァ!! 服、洗えるッ!!」 少女は服の胸元に手を伸ばそうとして―――はたとその手を止める。 そして、腰をおろす青年を睨み付ける。 「ちょっと………下着も洗うんだからどっか入っててよ…… それぐらい気ィ利かせてよね?」 一瞬、青年の顔に朱がさし、慌てた様子で少女に背を向ける。 それを確認すると、少女は青年から見て影になっている岩を見つけると、 そこへと駆け出していった。 ================================= 「うぅ〜・・・・気持ちいいなァ〜・・・・・・。生き返る気分だわ。」 少女は着ていた服と下着を洗い、岩に干す。 そして、自身も湖で水浴びをはじめた。 白い肌が、水面にゆれる。 「・・・・・・・・・それにしても。」 少女の顔が苦痛にも似たそれを浮かべた。 彼女は思い返す。 『死んでもおかしくない』はずなのに『生きている自分』。 そして――――彼の―――― 「!!!」 ぶんぶんと頭を振る。 そんなはずはない、そんなはずは――――! じゃぶんと水音を立てて、少女の姿が水面から消えた。 「ぷふぁ・・・・・・!」 そして、少し離れたところまで泳ぐと、水面に顔を出す。 水滴が髪から跳ね、肌を伝った。 彼女がその水滴を拭うおうと手を伸ばし・・・・・・その手が首へと触れ―――――そして、彼女は気づいた。 いや。 『 思 い 出 し た 』 というべきか。 彼女は、愕然とソレを撫で確認する。 何度も、何度も、何度も。 「あ・・・・・ぁ・・・・ァァァァァァァァッ!!」 絶望の呻き声をあげる彼女の瞳孔が、きゅぅと、開いた。
『鋼鉄娘'sVS妖魔の君』 エリ&フィオVSアセルス >44 策は成功したと思った。アセルスがフィオと留美の方に駆け出すまでは。 「しまった、フィオ!」 掌打で留美を気絶させたフィオとアセルスの目が合った。 途端フィオが脱力してその場に崩れる。 「あ、あれ・・・わた、し・・・」 「フィオ! しっかりしなさいフィオ!」 マズイ。完全にやられたわけじゃないみたいだけどこれはマズイ。 こういうときは・・・! 「マルコがあんたを待ってるのよ! しっかりしなさい! フィオリーナ・ジェルミ!!」 「マルコ、さん・・・が、待ってる・・・」 いける。あとはほっといても復帰するだろう。多分。 「随分やってくれんじゃない」 あたしはヘビーマシンガンを捨てた。そして背中のショットガンを構える。 「手間かけさせないでもらいたいわね。あんたの相手はあたしよ」 すり足で距離を詰める。射程に入った瞬間にコイツでフッ飛ばす・・!
鈴鹿御前 vs パンテーラ(M) 『鬼の剣 豹の牙』 >47 目の前の女の唇が、三日月型につり上がる。 人間の顔がここまでの悪意を表現できるのか、これ以上はないほどあからさまな、嘲弄の笑み。 パンテーラと名乗った女は、悪意そのものの笑みを浮かべたまま、自らの来意を告げた。 ──つまり、自分達の目的の前に、私のような者は邪魔だから、皆殺す、と。 WORMとかいう組織についてはほとんど知らないが、そんな事はもはやどうでもよかった。 ──私一人を殺すために、わざわざ昼間の学校を選ぶその手口、断じて許さない。 女の号令と共に、彼女の周りに侍る獣人共が、その爪や牙で私を引き裂こうと、一斉に襲いかか ってきた。 だが──遅い。 余裕すら持ってそれらの攻撃を潜り抜け、確実に急所への一撃を送り込んでいく。 そのまま一足に間合いを詰め、女へと肉薄する! 「パンテーラ、とかいったわね。 罪のない大勢の人間を巻き添えにし、殺戮したその罪、今からその身に刻み込んであげるわ!」
藤井八雲vs閑馬永空 >46 閑馬の蟲がいかに傷を塞ごうと、流れ出した血は戻らない。 対して、无≠ナある八雲の流した血は、霧のように変化して再び体内に戻る。 无≠ニの戦いは、長引けば長引くほど不利になるのである。 閑馬の残した血痕を追い、十数分あまり裏路地を駆けるうちに、 八雲の傷は塞がりかけていた。 小さなどぶ川の川岸に、閑馬はいた。 閑馬の流した血の量は、常人ならば貧血で 立っていられなくなるほどである。 それでも閑馬は立っていた。 だが、さすがに先程までの俊敏さは見られない。 「あの世へは一人旅の方が気楽だぜ!」 これで止めを刺さんと、八雲は受けを捨て、 ただ相手の首を切り落すことだけを狙い、三尖刀を横になぎはらった。
涙、果つることなく〜ガロンvs弓塚さつき(27祖) >45 前回負った傷も癒えた俺は、再び狩人の生活へと舞い戻った。 この小さい極東の島国にも、今なお無数の闇の末裔たちが存在している。 この日も、俺は一匹のダークストーカーを狩っていた。 だが、雑魚中の雑魚。人狼にならずとも滅ぼすことが出来るとは・・・・・・ 滾る血を抑えられぬまま、俺は夜の街を歩く。 その時、俺の鼻が脳に信号を送りつける。 嗅ぎ慣れたこの臭い・・・・・・血だ。しかも新鮮な。 俺はその臭いを辿っていく。そして行き着いた先はとある路地裏。 そこには、少女が居た。どうやら、お食事の真っ最中のようだ。 振り返り、深紅に染まった目で俺を見つめる少女。 魔眼か・・・・・・精神に無断でずかずか入り込む魅了を無理やりに押さえ込むと、 俺は彼女に笑いかけた。 「君が製造元だったか。いい加減、グールを増やすようなお痛は辞めたらどうかね、ドラキュリーナ?」
>48 ジャッジ・デスvsン・ダグバ・ゼバ 高々と空中に舞い上がった炎に包まれた首。 それが地上に落ちる前に、僕の姿は変わる。 腰の奥――――そこに埋め込まれた石。 そこから湧き出す力が僕の体を包んでいく。 そこに立つのは純白の戦士。 溢れる力もそのままに、振るわれた爪を腕で迎え撃つ。 爪が腕の肉を引き裂いて深々と突き刺さる。 へぇ、中々いいね。 それじゃ、今度はこっちからだ。 下から突き上げるようにして拳を送り出す。 弾丸の如き勢いで、拳は顎を狙って突き進む。
>52 藤井八雲vs閑馬永空 からりと晴れた青空の下、白光が生じ、また消える。 八雲の猛撃は受け止められていた。 垂直に立てた閑馬の一刀によって。 二つの影は交わり、固まった。 何処かで鳥が鳴いた。 その響きが天に消える前、膠着は解かれ、二人の体勢は動き出している。 川の方へと。 閑馬は薄く唇を歪めた。 「連れない事を云う。殺しても死ねん者同士、共に三途の川巡りと行こうではないか」 閑馬が己が剣を払った瞬刻。 斜めに傾いた二人の躯は水面へと落下していた。 揉み合うどちらかの脚で、鼎の包みをも蹴り込みつつ。
ジャッジ・デスvsン・ダグバ・ゼバ >54 下から突き上げられた強烈な一撃を受け、ジャッジ・デスの躯が宙に浮く。 数メートル離れた床に倒れ込むが、数瞬の後には跳ね起きた。 砕けた下顎、折れた歯の間から、血と腐汁に混じって狂える笑いが洩れ出す。 「抵抗は無駄ァ!死の訪れはァ平等なりィィ!」 ジャッジ・デスはそう叫ぶと、地を這うような低い姿勢で駆け出した。 一気に近づくと、鈎爪で抱擁するかのように左右の腕が同時に振るわれた。
>50 『鋼鉄娘'sVS妖魔の君』 エリ&フィオVSアセルス 別の武器を構えて、じりじりと間合いを詰めるエリ。 私は彼女を見据え、鞘に収まったままの剣を腰で構える。 (3・・・) 距離は少しずつ縮まっていく。 (2・・・) 留美は掌打を受け倒れこみ、フィオはうずくまったまま動かない。 (1・・・) 動くものは私たち二人だけ・・・そして。 (・・・0!) 心の中でのカウントダウン終了と同時に、私は一気に駆け出した。 彼女の武器が火を吹く前に、我が剣でその身を上下に断ち割ってくれる!
鈴鹿御前 vs パンテーラ(M) 『鬼の剣 豹の牙』 >51 鈴鹿の怒りを込めた白刃が未だ薄笑いを浮かべているパンテーラに 突き刺さらんというその時、突然ドラムを持っているほうの黒人男性が その身を白刃に差し出した。 断じて生身の肉体ではあり得ない手応えを鈴鹿の手に残し、彼の首は切り飛ば された。首を失った胴体からは血液ではなく奇怪な無色透明の液体―― エリクサ―がほとばしる。二人の黒人男性は人間ではなくWORMの邪術に よって作られたホムンクルスであったのだ。 名前のごとき豹のごとき身のこなしで後方に飛びすさったパンテーラの口から 聞く者の神経を逆なでする哄笑が発せられる。 「罪も無いだって? 私がちょっと動物霊を憑依させてこいつらの中の獣性を 目覚めさせてやったらこのザマだ。人間も獣も一皮剥けば同じなのさ、 さあ、よく見てごらん!!」 その言葉と共に廊下に倒れ臥していた獣人たちはだんだんと本来の姿――人間 の姿に戻っていく。 パンテーラはその一瞬、鈴鹿の瞳によぎった動揺を見逃さなかった。 香炉を投げ捨てたホムンクルスが四方八方にまがまがしい刃が突き出た凶器―― アフリカ式投げナイフを投擲し、パンテーラは豹の咆哮のごとき叫びと共に 鈴鹿の胃の上部肋骨下――幽門と呼ばれる急所に飛び蹴りを放った。
>56 ジャッジ・デスvsン・ダグバ・ゼバ 「ハハ――――」 悪い夢を見てるみたいだ。 普通死ぬ筈なんだけど……おかしいなぁ。 ああ、そうか、アイツは壊れないんだ。 ならこれは悪夢なんかじゃない。 壊れない玩具を手にした、最高にいい夢だ。 同時に迫る左右の爪。 それを避けずに、脇腹を抉らせる。 イタクテ、タノシイ。 これは夢じゃない。 最高の――――現実だ!! 刺さったままの腕を本来曲がる方向とは逆に曲げてやる。 壊れないなら、どこまでも楽しむ。 なんて、良い玩具なんだろう?
《涙、果つることなく〜ガロン vs 弓塚さつき(死徒27祖)》 >53 ―――わたしの魔眼が、弾かれた!? 自分でもそれほど強いとは思ってなかったけど、予想外。 この男の人は強い意思を持っている。 ただのニンゲンなんかとは、比べ物にならないくらいの。 「だったら、わたしの死者を減らさないで欲しいんだけどなあ……」 笑う男、睨むわたし。 事実、わたしは最低限の死者しか行使してないのに。 ―――なんか、頭にくる 逃がしてあげようかと思ってたけど、止めた。 こんなことするのは久しぶりだけど、貴方がいけないんだから。 一拍、呼吸を置く。 狙うは首。 コンクリートの地面を踏み込み、一気に男へと加速。 首を刺し貫いて――そこからしぶく熱い血を啜ったら、どんなに甘いんだろう。
魔 像 の 十 字 架 麻宮アテナを狙う『鬼』 その導入 同族を殺しすぎた 二桁か? 三桁か? その償いはこの身で贖わなければならない もっとも、それだけ殺したおかげで半端者から一人前になる事ができたのだが その証拠に、骨の欠片は顔からすでに剥げ落ちている ―だが新しい仲間たちはそれだけでは納得できないようだ 「仲間入り」の条件として、半端者どもを殲滅しろとのお達しだ フフッ、そりゃ結構な事だな 当然その中には、青子もいるのだから 今その「デート」の待ち合わせの間、時間潰しでもしようと思って デパートの屋上に来ている あいつとやりあうのであれば腹が減るだろうから、栄養を摂っておく必要がある 他愛のないショーをやっているようだ まぁそのアニメは観ていたような気もするが 牙を向き、腕の力を抜いた 周囲の熱を吸収し、屋上に季節外れの霧がたちこめる
>35 ◆スミレvs水のエル◆ 『ローラレイ』 刻まれた傷が、異形に最期の時を告げる。 ほどけるように、異形はその動きを鈍らせていき、やがて止まった。 矛がその手を離れ、海底に沈んでいく。 後を追おうとする異形の体を抱きとめ、私はそれを海上に運んだ。 月明かり。 嵐の去ったその場所で。 まるで配役を入れ替えたように。 骸になった男を見下ろし。 それを殺した異形を抱いて。 私は、月を仰ぐ。 胸の慯みは消えていた。 私はそれを受け入れていた。 私の与えるものとこの異形の与えるもの。 それが変わらぬものだということを。 最期の瞬間に浮かべるのが笑みか苦悶か。 それは些細な違いでしかないのだと。 だが、それでも求められるのならば―― だから私は。 腕の中の異形に。 たぶん聞くまでもないことを聞いた。 「この最期の瞬間に貴方は……夢見ることを望むかしら?」
涙、果つることなく〜ガロン vs 弓塚さつき(死徒27祖) >60 ドラキュリーナの目がいっそう深紅に染まる。 (やる気だな。まずは小手調べ、といかせてもらおうか) 俺は首を狙いに来る彼女の貫手を身を捻って受け流す。 そして左で手首を掴み、身を崩した彼女の鳩尾目掛け、 右の肘を叩き込む。苦痛に歪む彼女の顔を見ながら、 杭を打ち込む鉄槌のように、左手で肘をさらに叩き込んだ。 「これ以上、あんなくだらぬダークストーカーを増やされても困るんだよ、ドラキュリーナ」
>61 紅丸VS麻宮アテナ 導入 「理香ちゃん、私とうとう買っちゃった!」 「誰とのケンカ?」 「そうじゃなくて! あのワンピースよ、ライトグリーンの」 「ああ、あの¥19.800のショートか」 「金弐萬八千円也よ」 「そりゃ定価でしょうが。で、どうよ?」 「ばっちり、もう最高! 『私ってばもしかして美しい?』だよ!」 「ピンク女みたいなこと言わないでよちょっと…」 と、いうわけで、新しい服を着たときは外に出たくなるのが女心の機微。 次の日曜日に、私は早速ショッピングに出かけました。お金が無いので ショーウィンドー専門ですが。 それでも、休日の街を散策(口の悪い誰かさんに言わせれば『徘徊』)していると、 面白いことに出会うものです。たとえば。 「おジャ魔女どれみキャラクターショー?」 たしか、メンバーが5人もいる魔女っ子だったでしょうか? でも、チラシには 3人の名前しか書いていないところに、そこはかとない風情が…。これはもう、行くしか! というわけで私は、予定を早めてそのままデパートの屋上へ向かったのです。 会場は、急ごしらえのステージの周りにポールを立て、チェーンを張って 仕切っていました。客席は、これまた急遽持ってきたらしい椅子を並べた簡単なつくり。 身長163cmの私より大きな魔女っ子の迫力に圧倒されながらも、ショーは つつがなく進行しているようです。かく言う私も、デパートの屋上、神社のお祭り、 レコード屋さんの店先、はては刑務所等、どこででも歌う身。なんとなく、 彼女たち3人(どれみちゃん、はづきちゃん、おんぷちゃん、だそうです)に 親近感を持ちはじめたとき…。 現れた『彼』。見ただけでわかります。到底、善良な一市民ではありません。 私はさりげなく、バッグの中のお財布から五百円玉をいくつか選び出して、 手のうちに握り込みました。さらに、数秒集中して霊視発動。これなら、 この突然立ちこめた霧の中でも、『彼』が何かするより速く…。
『鋼鉄娘'sVS妖魔の君』 エリ&フィオVSアセルス >57 少しずつ、少しずつ距離を詰める。だが、まだ遠い。 瞬間、アセルスが駆け出した! (しまった!) 不意を突かれて反応が遅れる。即座に撃つが狙いがずれた。 次弾を送り込むべくコッキングするが二発目よりアセルスの斬撃の方が速い。 ショットガンを手放して後ろに跳び辛うじてかわす。 「速い・・・!」 ヘビーマーダーを抜き、あたしは様子を見た。
ジャッジ・デスvsン・ダグバ・ゼバ >59 低くくぐもった音を立てて、ジャッジ・デスの両腕があらぬ方向に捻じ曲がった。 砕けた肘の間接が肉と服を突き破って、露出する。 かたや両脇腹を突き刺され、かたや両腕をへし折られた状態で組み付きあう二人。 数秒間の均衡を破ったのは、ジャッジ・デスだった。 「まァァァだ滅びぬかッ!罪を清ォォめよッ、罪人めェェ!」 痩せ細った姿からは想像もつかない怪力を発揮し、白く輝く鎧を思わせる姿を、強引に押し、振り回す。 ダグバの背中が、金属製のタンクに叩きつけられた。 タンクの薄い外壁はあっさりと破れ、毒々しい色合いの廃液、死の水が両者に降りかかった。
藤井八雲vs閑馬永空 >55 水飛沫が爆ぜる。 どちらが天でどちらが地かも定かではない水の中。 八雲の足が川底に触れた。 立ち上がると、水深は膝より少し上ほど。 荒い息をつく八雲の目の前で、閑馬もまた立ち上がった。 その水の滴る黒髪の間で、昏い双眸がわずかに細められる。 そして唐突に再開される斬り合い。 しかし、それはもはや斬り合いとは呼べなかった。 閑馬の刀が八雲の肩口を切り裂けば、 八雲の刃も閑馬の腸(はらわた)を抉る。 それでも二人の剣は止まるところを知らない。 いつしか川の水は朱に染まっていた。
《涙、果つることなく〜ガロン vs 弓塚さつき(死徒27祖)》 >63 「ぐぅっ」 お腹にめり込む肘、さっきまで吸っていた血が逆流しそうになる。 吐き気をこらえつつも、肩からぶつかり、跳び下がった。 開く間合い。 交錯する視線。 ちょっと、油断しすぎてたみたい。 けどね……次はないから。 姿勢を低くし、足下の石ころを2、3個投擲。 男はそれを、避け、弾く。 その隙に壁を跳ねて、裏手に回りこみ、 相手の背中へとさっきのお返しに右肘を突き立てる。
魔 像 の 十 字 架 麻宮アテナを狙う『鬼』 >64 屋上にある餌どもは動きもせずに佇んでいる 背中から取り出したレミントンM31ショットガンを 腕に持ち前方へ突き出したが ベンチに腰掛ける女に気付いた それなりに判別はつく そちらの方向へショットガンを向ける 周りからの悲鳴はいまだ聞こえない
◆スミレvs水のエル◆『ローラレイ』 >62 満月が青く、海岸を照らす。 さながら、死闘を繰り広げた二人をねぎらうかのように。 はたまた、死した者達を悲しむかのように。 波の音が響く。凱歌のように、手向けの歌のように。 水のエルは静かに己の死を見つめた。 使命を果たせなかったことも、歌が終わらなかった事も、 ありのままに受け入れて。 『この最期の瞬間に貴方は……夢見ることを望むかしら?』 ……夢? エルロードは夢を見ない。 超越生命体は使命を果たせない事を恥じるのみ。 そして、答えを返す。 ―――歌は終わった。 ただ、月の青い夜だった。
>67 藤井八雲vs閑馬永空 揺れ立つ緋色の泡波が止むまで両者は動かなかった。 水面もまた、この季節には有り得ず凍りついたかとも思われた。 その一瞬。 雄叫びを上げて不死人二人は水上に躍り上がる。 ニ条の刃金が掛け違った後、新たな真紅が川面を汚した。 電光と化した閑馬の一刀が、八雲の左足を膝の辺りで切断していたのである。 堪らず水中に倒れる八雲に閑馬は飛びついた。 うつ伏せの体勢を起こそうとする八雲に圧し掛かる。右の刀が陽光を跳ね返す。 返した一刀は背から川底までを貫き徹した。 仰け反る八雲の頭を、空いた左手が冷酷に水中へ押し付ける。 激しい気泡が立ち昇った。 斬っても殺せぬ敵ならば、窒息させ、肺を破らせ息の根を止めるまで。
>59 ジャッジ・デスvsン・ダグバ・ゼバ よく分からない、嫌な色をした液体が降りかかる。 それを浴びながら組み付く異形の者同士。 ひどく現実味を欠いた、凄惨な現実。 ハハ、いいね。 こういうのを待ってたんだよ!! 毒々しい色と血で輝く腕を翻し、肘の刃を振るう。 狙いは、今も脇腹に突き刺さったままの爪。 まずは腕を切り離して自由になろう。 じっくり楽しむのは、それからだ。
涙、果つることなく〜ガロン vs 弓塚さつき(死徒27祖) >68 疾い!? 石礫を投げつけた次の瞬間には、彼女の姿が消えていた。 そして背後に感じる殺気。 振り向くよりも早く、彼女の肘がめり込んだ。 骨のきしむような衝撃と共に地面を転がる。 ふ、ふふふ・・・・・・このドラキュリーナ、出来る。 以前、相対したあのノスフェラトゥ並に。 俺はゆっくりと起き上がる。 「ここまでやるとは思わなかったよ、ドラキュリーナ。 このままでは俺も礼を失する故・・・・・・本気で行かせてもらう!」 その言葉と共に、上体に筋肉が盛り上がり、着ていた服が破け去る。 ヒトの姿から、オオカミの姿へ。 「さぁ、改めて始めよう、ドラキュリーナ。冥府行きの切符、俺が切ってやる!」
>65 『鋼鉄娘'sVS妖魔の君』 エリ&フィオVSアセルス 私が駆け出すと同時に、エリがその手に構えた武器を撃ってきた。 ・・・が、その攻撃は私の脇を掠めるに過ぎなかった。 そのまま勢いを殺さずに抜刀。しかしエリはかろうじて私の斬撃をかわした。 なかなかに・・・やる。 ふと、脇に熱い痛みを感じた。 どうやら先ほどの攻撃・・・あれだけでも僅かながらにダメージを与えてくれていたらしい。 ―――もっとも、先ほどの銃撃で受けた傷とともに、すぐに再生を始めるだろう。 何しろ・・・健康な、可愛い子の血を吸ったばかりなのだから。 新たな銃を抜いたエリと対峙した、ちょうどその時 後ろからかすかに留美の呻き声が聞こえた。 ―――おそらく、目を覚ましかけて上げた呻き声。 そう・・・先ほどの吸血、ちょっとやそっとの量じゃない。 放っておいても、妖魔化は進行していく筈だ・・・ ちらりと、そんなことを考えてから・・・予備動作無しで、今度は腕を狙って斬りつけた。 エリが、こちらの隙に反応するのとほぼ同時に。
ジャッジ・デスvsン・ダグバ・ゼバ >72 輝く刃が一閃し、ジャッジ・デスの左腕が切断された。 断面から濁った血と腐汁が溢れ出し、血と廃液に汚された床に新たな悪夢の彩りを加える。 「うぬゥゥゥ!」 片腕を失ったジャッジ・デスが、もう片方の腕を切り落とされる前に飛び退いた。 「あァァくまで正義の執行にィィ、抵抗するかァァァ」 憤怒に燃える呪いの唸りをあげると、デスは近くの壁面を走る配管を強引に引き剥し、大きく振りかぶる。 「正義のッ裁きを受ゥけよォォォ!」 鉄の管が、投げ槍のごとくダグバに向かって飛来した。
>69 VS怪物 変わる。 変わる。 『彼』は、異形の肉体へ。 (なにをっ!?) 「みんな、にげてえええっ!!」 叫びながらも、怪物の後ろに短距離テレポート。 床についた両手を軸にして回転する超低空の蹴りで、怪物の足下を 両足で薙ぎ払い!
《涙、果つることなく〜ガロン vs 弓塚さつき(死徒27祖)》 >73 男の姿が変わる。 一見して、それは狼。 その二足で立つ狼は、話に聞く狼男……というやつだろうか。 ―――なんだか、とっても、オモシロイ 久しぶりにわたしと同じバケモノに出会えて これなら思いっきり愉しめそう――― きっと、わたしは気づかないうちに笑っていたのだろう。 どうしようもないほど、気分が昂揚している。 わたしはゆっくりと狼男に向けて歩を進める。 「こちらこそよろしくね。 精々面白い殺し合いにしよう? 狼男さん」 わたしはしっかりと目を見据え、微笑みかけながらそう言った。
『鋼鉄娘'sVS妖魔の君』 エリ&フィオVSアセルス >74 お互いの隙を窺う状態で対峙しているところに微かな呻き声が聞こえた。 どうやら留美が目を覚まそうとしているらしい。フィオの掌打が甘かったか、それとも妖魔になりかかっているのか・・・。 呻き声に僅かだがアセルスの意識が逸れた。 (今だ!) 左手のヘビーマーダーを撃とうと腕を上げた瞬間。 「つっあぁっ!?」 左腕を斬られた。 傷口から血が滴る。 痛みでヘビーマーダーを取り落とした。 (何の予備動作もなしに!? 全然反応できなかった!) 深い。かなり痛む。左腕はしばらく使えないだろう。 「ちくしょう・・・!」 じり、とあたしは後退した。
魔 像 の 十 字 架 麻宮アテナを狙う『鬼』 >76 足払いを喰らって地面に這う 普通の人間の体術などとは比較にもならない この女、今何をしたか分からんが只者ではないようだ かと言って、同族でも半端者どもでもないらしい もしや青子と同類か 「ハハッ・・」 自分の考えに思わず大きな声(ただしかなりくぐもっている)での笑みがこぼれた 口に並んだ牙が覗かせる スッと無造作に立ち上がると女に向かって言う 「美味しそうだ」 ショットガンに詰まった6発の00オートを女の方向へ掃射する 正に掃射だ 何せフォアエンドに全く触れる事なく散弾が自動装填され、銃声は殆ど一発分しか しないのだから
>79 VS怪物 怪物が倒れると同時に、後転の連続で跳ね起きながら距離を取ります。 本当に幸いなことに、少なくとも手も足も出ない相手ではなさそうです。 とにかく、みんなが逃げる時間を稼がないと! ああ、でも、みんなの反応が鈍い。鈍いというより、驚きで凍り付いています。 そんな暇があったら…。 「早く逃げて! 逃げてぇっ!」 そして立ちあがった怪物。もれ出た言葉。 『美味しそうだ』 「あげないわよっ!」 私が叫ぶと同時に、怪物の銃口がこちらを向きます。 サイコシールド展開。限りなく一発に近い銃声の連続と共に、 無数の弾丸が目の前で弾けました。
>75 咄嗟に防御するために腕を上げた。 だけどそれは間違いだった。 ぞぶ、と気分が悪くなるような音を立てて鉄が腕へ突き刺さる。 突き抜けた管が手から突き抜けて、てらてらと赤く輝く。 楽しいねぇ、そうだ。 そう来ないと!! 管が伸びた腕を上げて、意識を集中する。 燃えろ。
魔 像 の 十 字 架 麻宮アテナを狙う『鬼』 >80 障壁が女の前に広がり、立ち塞がった 先着の00オートが幾つか弾かれる だが! 全てが防がれたわけでもない 比較的後から発射された散弾はまるで意志を持つかのように、 ―そう実際に意志を持っているのだ― 障壁に当たらぬように弾道を変更すると、 いまだに膠着状態を続けているノロマな獲物に対して 一発につき最低二人以上撃ちぬく形で降り注ぎ、確実に何人かを 切り刻む 細切れにした方が食べやすい そして女に見せ付けるように 肩を竦め、鼻であざ笑った
>82 VS怪物 弾丸が、意志を持つように、私を避けて、突き刺さりました。 子供たちへと。 「な、なぁ…」 体が震えて、胸が裂けそうで、でも声が出なくて。なんで、どうして…。 怪物と、眼が合いました。肩をすくめるポーズ。あなたは、なんで、なんで…。 「なんで私を狙わないのぉっ!! 叫んだときには、飛び込むようにして間合いを詰めながら、掌打を叩きつけていました。 同時に、パワーを破壊エネルギーに変えて、ゼロ距離で直接打撃。 「ふああっ!」 さらに、吹き飛んだ相手を追うように跳躍、空中で一回転。鉄掃腿で鍛えられ、 サイコパワーまで帯びた、大斧も凌ぐ踵を怪物の脳天へ!
魔 像 の 十 字 架 麻宮アテナを狙う『鬼』 >84 連続攻撃か それもそこらの虫ケラあたりになら効くものなのだろうがなァ・・ 頭部に踵を浴びて崩れ去りながらも、そう思っていた 体が床のコンクリートの表面へと溶けていく
>85 VS怪物 「はあっ!」 溶ける身体に、さらにもう一撃。それきり、怪物は床に沁みこんでしまいました。 勝った? いえ、まだです。私の感覚が叫んでいます。 それは、おさまるどころかますます大きく…。 だけど、まずやらなくてはいけないこと。ここにいる人たちの 安全確保。 比較的元気な人には、自力での脱出と避難勧告を頼んで、 私は動けない人を、片端から病院へ飛ばします。 自慢にもなりませんが、私は近辺の病院、消防署、警察署を 極めて鮮明に記憶していました。いまごろ先方では、 突然現れた重症患者の集団に仰天しているでしょうが、 こちらもこれが精一杯。 屋上から人がいなくなったのを確認して、私は空中に 飛びあがりました。なにが、どこからくるのか。 いつでも動けるように感覚を張り巡らせながら、 両手にパワーを収束…。
魔 像 の 十 字 架 麻宮アテナを狙う『鬼』 >86 その頃デパートに、屋上からとてつもない変化が起こりつつあった 外壁に生理的嫌悪感を及ぼす有機的な筋のような物が浮かび上がり 周辺に霧が発生していったのだ 階下に逃げようとした多くの獲物は、全身から力が抜けていくように 感じられた事だろう そしてミイラ化 それに伴う死体の消滅、いや消化 屋上に遺された幾人分かの死体がすでに消失している事に女は気付いているのか? 変化はじわじわと階下へと広がっていく
>87 VS怪獣 (な、なによこれ…) 不意に生まれ、のたうち、張り巡らされる筋。それは屋上全体を覆い、 やがて階下へと…。 「サイコボール!」 両手のパワーをひとつの光球に変えて発射。今や不気味な有機物になった床に、 大穴を空けました。 私は、こんなわけのわからない相手に関わり合うのは絶対に嫌です。嫌ですが。 「…フェニックスアロー!!」 全身にパワーをまとって、空いた穴から突っ込みました。建物の中を調べて、 まだ残っているであろう人たちを助けなくてはいけません。そして、可能なら 内部破壊を。でも、中の人全員を飛ばすことなんて…。 邪魔な壁や床を突き破りながら、生存者や弱点を探します。 けれども、じんわりとまとわりついてくる不安が、汗になって身体を濡らすのを、 私はどうすることもできませんでした。
魔 像 の 十 字 架 麻宮アテナを狙う『鬼』 >88 誰かが穴を開け、「体内」に侵入してきた事は分かっていた そんな事ができるのは、しようとするのは先刻までの女しかいるまい 体内へ入り込んだ物は自動的に「消化」される 男も女も老人も赤児も、ペット屋のウルフに猫、小鳥や魚や小動物も全てだ 何人生き残っていると思っているのやら 何人助けられるつもりなのやら その自動的な消化機構が働き、襲い掛かっていく
>89 VS怪獣 ついさっきまでデパートだったはずの場所を走り回り、動く人を探し、飛ばし、 襲ってくる触手を光の双刀で切り払います。この作業をどれくらい続けているのか。 何人助けたのか。少しずつ、視界と思考が揺らめいてきました。 (うぅ、だれか、助けてよ…) そろそろ、正義の味方が現れてもいいのではないでしょうか。 なんで、私がここまでやらなければいけないのでしょうか。 私は、そんなに強い人間ではないのです。だから、だれか…。 辛くて、苦しくて、悔しくて、涙があふれたとき。 (…かわせないっ!?) まさに”群れ”と表現するしかない触手の束が殺到してきます。 もうだめ。私じゃ。これ以上は。 「ぅやあっ!」 消耗激しいパワーを削り取って、テレポートで脱出。人垣に囲まれた地面に、 大の字に倒れこみました。必死で呼吸を整えようとしますが、 疲労、とくに精神的な疲労のせいで、それもままなりません。 「はぁっ、はあっ、はあっ…」 私は考えます。自分がいちばん得意なのは、”物を動かす”ということ。 たぶんもう、中の人は絶望的。だったらいっそタンクローリーでもぶつければ…。
ウピエル(&ツァーレンシュヴェスタン)VSファントム >21>31 人間の耳は完全な静寂には耐えられないという。 一方、吸血鬼の耳から完全に音を断つ事は不可能だ。 その耳は、生物の呼吸音ですらも捕らえる。 もちろん、他の感覚も優れているのだが、 血の臭いと硝煙に満たされたこの空間では聴覚が優先される。 現在もっとも役に立つ、その感覚に集中―――ただし、フュンフだけが。 周囲を索敵するフュンフをノインがカバーする。 フュンフが何か見つければ、即座に射撃。 自分の感覚に集中している、フュンフをバックアップするのがノインの役目だ。 そして、安全を確保した後にノインが移動。 次に辺りを探るのはノインの役目だ。 リズミカルに、正確に。機械のようにホールをチェックしていく。 自分達以外に動く物があれば、全てが敵なのだ。
『意思、果つる者の躯』 >49 全く…… 服が乾くまでどうするつもりだ……? 周囲に敵意が無いか慎重に様子を窺う、 水中までは判らないが…… 止めても聞きそうに無いな、これは……。 水際に上着を置く、戦いで汚れては居るが彼女の衣服よりはマシだろう。 何か有った時、咄嗟に動ける様にUSP45を抜いて手にしたまま、岩陰に腰を下ろす。 そう…… 今に限った事では無いが誰もあてにはできない。 遠くに水音が聞こえる…………。 「何をやっているんだろうな、俺は…… 」 インフェルノに復讐する、それだけの筈だった。 その決意は鈍っては居ない、それを果せば自分にはやることは無くなる。 ここに居るのは生きた人間ではなく、やり残した事を果す為に機械の様に行動する屍。 それを終えた後何をするのか、全く想像がつかない。 『で、あんたはそいつらに復讐するつもりなんだ。 ひとつ聞くけど。 ―――それで、満足?まぁ、満足ならそれでいいケド。 ただ、私は―――そういうの好きじゃないかな?』 満足か? 満足なんてできる筈が無い。 しかし奴等には報いを受けさせる。 そう…… 必ず。 『私はね・・・・・・ヒトを探してるんだ。 弟なんだけど、ずっと前に生き別れちゃってね。 それからず〜っと『二人』で――――』 そうか…… 彼女には目的が有る。 迷わず前に進める目的が……。 ………だから…… 輝いて見えるのかも知れない。 もし、インフェルノに復讐を終えた後も自分の命が有ったなら、 ガンバリ屋さんの力になれたらいいかも知れないな……。 他人の夢や目的に共感したいだけかも知れない、結局自分は弱い人間にすぎないのだ。 しかし無為に朽ちていくよりは余程マシな生き方だと思えた。 ふと、湿った空気を感じて振り返ると、俺の上着を纏った少女が居た。 無言のまま俺の隣に座る少女、さっきまでの彼女とは違う……。 ―――――――― 危うい ――――――――――。 「どうした……?」 無言で首を横に振り身を寄せてくる、俯いた横顔からは、表情を読み取る事もできない。 その体は冷え切っていて、ひどく頼りなかった。 ・ ・ ・
>91 ファントム・ドライの気配は完全に消えた。 理屈で言うと、ホールからその存在は消失したことになる。 しかし、 (動けない……) 事態は相も変わらず不利だった。一歩でも動いたら、この魔法は解けてしまう。 即ち、ホールという空間に己の存在を表すことになる。 それほどまでに二人の少女は鋭い五感を持っているのだ。 だが、動かなければ奴等を殺れない。逃げられない。 しかし、動いたら見つかる。殺される。 (さて、どうしたものか……) 幸いにも、アインの気配もかき消えている。 本当にこのホールにはいないのでないか? そう思うほどだ。 二人の少女が、黙々と探索を続けている。いつかは、ここも見つかるだろう。 でも、その「いつか」までは時間を稼げる……。 (オイオイ、随分と気弱になったもんだねぇ……ファントム・ドライさんよ?) 真紅のライダースーツを更に紅く染める液体。 あたしは、腹の銃創から溢れる紅い花を眺めながら、静寂の一時を過ごした。
鈴鹿御前 vs パンテーラ(M) 『鬼の剣 豹の牙』 >58 女の首を断ち切らんとした刃は、すんでの所でドラムを持った男によって遮られた。 白刃はそのまま男の首を刎ね飛ばすが── ──この手応え、生身の人間じゃない!? 見れば、切断面から迸るのも、赤い血液ではなく奇妙な透明の液体。 この男達、どうやらパンテーラの使い魔のようなもののようだ。 まさしく豹の如く跳びすさったパンテーラが、高笑いと共に言葉を吐き出した。 それと共に、獣人共の死体に起こった変化を、私は見てしまった。 死体達が、人の姿に戻っていく。校内で見慣れた、生徒達の姿に。 私に生じた、一瞬の動揺。それを見逃すような、目の前の敵ではない。 パンテーラの、腹の辺りを狙った跳び蹴りを、辛うじて回避する。 そこに飛来するのは──もう一人の使い魔が手にした香炉を捨てて投げつけてきた、奇妙に刃の 突き出した投げナイフ。 身を屈めてそれを躱しながら、私は男の懐へと潜り込んだ。避けきれなかったナイフが肩口をか すめ、血がしぶくが、大したダメージではない。 天を切り裂く勢いで振り上げられた白刃は、投擲直後の無防備な体勢の男を、股間から脳天まで 真っ二つに断ち割っていた。
死闘!復讐鬼対アギト! ◆アポロガイストvs仮面ライダーアギト◆ >18 俺の眼前で、津上翔一・・・・・・いや、アギトは黄金に輝く鎧纏し戦士へと変わる。 それを見て、俺は仮面の下でそっと笑みを浮かべた。今回もまた楽しめそうだ。 「では・・・・・参る!貴様の力、見せてもらうぞ!」 俺は叫ぶと右腕につけられし新たなる力――― アポロマグナムをアギトに向ける。 そして、暗くその顎を開く三つの銃口から、 物言わぬ銃弾が放たれる。 それは自らの存在意義を示すべく、 アギト向かって飛んでいく。 これくらいで死ぬようでは話にならんぞ? さぁ、力を見せてくれ、アギトよ!
『意思、果つる者の躯』 >92 「服、ありがとう。」 少女はただそれだけ言うと、再び沈黙する。 静寂―――― 「どう?休めるうちに少し休んだら?」 少女は、そういうとほぅと溜息をつく。 その横顔には、酷く疲れたような――― いや、疲れたと表現するよりも無気力と表現したほうが正しいかもしれない。 そんな表情を浮かべている。 「疲れた・・・・・・少し・・・・・眠る・・・・・・。」 そういうと、彼女は目を閉じ・・・・首を彼の肩に預け、すぅすぅと寝息を立て始めた。 ただ、静かな空間。 ただ、それだけ。
藤井八雲vs閑馬永空 >71 もはや殺し合いですらなかった。 水面を激しく荒立てながら、二人の不死人はただ、 お互いを破壊しようとその死力を尽す。 八雲の背中に馬乗りになり、水攻めの拷問よろしく ドブ川に頭を押し沈めている。 无≠ェいかに不死身でも、酸欠の苦しさは変わらない。 頼みの得物は、足を切断された折に手放してしまっていた。 窒息の苦しさに足掻き続ける八雲の頭を、 全体重をかけて押さえ込もうとする閑馬。 頭を押さえつけるその左手の首から先が、不意に消えた。 八雲の右手甲から伸びた隠しナイフが、 閑馬の手首を斬り飛ばしたのだ。 一瞬の隙を突いて、八雲は閑馬を跳ねのける。 左手を失い、再び水に落ちた閑馬が血走った目を剥いた、まさにその時。 激しく咳き込む八雲の背後で、何かが強い光を放つ。 見れば、数丈ほど下流に沈んでいた三つ目の鼎が、白い光を放っている。 瞬きの間に、それは光の柱となり青天を高く貫いた。
>70 ◆スミレvs水のエル◆ 『ローラレイ』 エピローグ 蒼ざめた月の下、 歌うように慟哭のように、 高く高く啼く、 その美しすぎる異形。 それが求めるモノだと。 私は一目で確信した。 ある噂があった。 真の絶望をもって命を捨てる者の前に現れる水の魔の存在が。 異形が振り返る。 ひどく透明な表情で。 私に向かって手を伸ばす。 その幽玄じみた光景に。 まるで誘われるように私は。 彼女に向かって歩き出した。 歌声が響いていた。 私を送るように悼むように。 高く高く、全てを切り裂いて。 歌声が響いていた。
>78 『鋼鉄娘'sVS妖魔の君』 エリ&フィオVSアセルス 私の剣が、エリの左腕を切り裂いた。 手に持ってた銃を取り落とすエリ。 「ククク・・・先ほどまでの威勢はどうした?」 少しずつ後退していく彼女を、私は剣を突きつけながら挑発する。 「ほら、早く私を殺さないと・・・留美が妖魔になってしまうぞ? ・・・あんなふうに、な」 剣を突きつけたまま、後ろを振り返った。 そこには、ゆっくりと起き上がる留美の姿。 相変わらずふらふらとした足取りで・・・フィオのほうへと近づいていく。 『・・・喉、渇いた・・・』 か細い声で、そう呟きながら。
死闘!復讐鬼対アギト!◆アポロガイストvs仮面ライダーアギト◆ >95 銀に輝く右腕から三つの穴が開く。 アポロンの飛礫がアギトへと迫る。 アギトの身を包むアーマードスキン、パワーシェルアーマーが アームブロックシールドがアポロマグナムを防ぐ、弾く。 ダメージが無いわけでは無い。 事実、パワーシェルアーマーも、アームブロックシールドも罅が入る。 アギトもまた、アポロガイストまで迫っていた。 「行きます!」 右の拳を唸らせ、アポロガイスト目掛けて振るう。
涙、果つることなく〜ガロン vs 弓塚さつき(死徒27祖) >77 「嬉しいことを言ってくれるな、ドラキュリーナ・・・・・・では、手加減なくいかせてもらう!」 俺はそう言い放つと、独特の低い体勢で一気に彼女の懐に飛び込む。 そして腹を裂かんと鉤爪を振るう。 一撃、二撃。だが、稚拙ながらも吸血鬼特有の強力に負かせ受け流す。 ならば・・・・・・真っ二つに裂かれるがいい! 俺は宙返りと共に、鉈のごとき切れ味の蹴りを叩き込む。 これくらいで倒れてくれるなよ、ドラキュリーナ!
死闘!復讐鬼対アギト! ◆アポロガイストvs仮面ライダーアギト◆ >101 ほう・・・・・・直撃を受けて尚、向かってくるか・・・・・・ 及第点だ。戦士としてもなかなかの腕のようだな、アギト! 「だが、まだまだ甘い!」 俺は振るわれる腕をガイストカッターで受け止めた。 重い衝撃が腕に伝わる。なかなかいいパンチだ。 俺の心まで熱くさせてくれるじゃないか。 受け止めた拳を外へ流す。 力のベクトルを変えられたアギトがたたらを踏んだところに、 すかさず前蹴りを叩き込み、間合いを作ると、袈裟斬りにせんと、 剣を一閃させた。
《涙、果つることなく〜ガロン vs 弓塚さつき(死徒27祖)》 >102 伸びる脚が当たる寸前、左の腕で脛を叩く。 ―――ごぎり、と。 酷く、嫌な音がした。 わたしの腕を跳ね除けて、脚はわたしの顎を捉える。 抜ける衝撃、浮く身体。 飛びそうになる意識を、気力で必死に抑えこむ。 痛む左腕、さっきの衝撃で骨が折れたんだろうか。 服の肩で、流れる血を拭い――― 「―――こ、のぉ!」 残る右手による大振りの、横薙ぎの一撃。 そこから更に身体を捻り、左の膝を打ち込んだ。
死闘!復讐鬼対アギト!◆アポロガイストvs仮面ライダーアギト◆ >103 右の拳は楯によって防がれる。 たたらを踏んだ所に前蹴りが叩き込まれ、間合いが開く。 ―――このままでは拙い! 赤のドラゴンアイが輝き、炎の刀、フレイムセイバーが現れる。 アポロガイストの一撃を受け止めると、刀を返して右腕を逸らそうとする。 ―――なんて…、強い。…このままじゃ…。 負けない…!負ける訳には行かない!! 鍔迫り合いに持ち込もうとフレイムセイバーを構え、 間合いを詰める。
『鋼鉄娘'sVS妖魔の君』 エリ&フィオVSアセルス >99 『ククク・・・先ほどまでの威勢はどうした?』 挑発を受けながらじりじりと後退する。 まだ手はあるんだ。挑発になんか、乗ってやらない。 『ほら、早く私を殺さないと・・・留美が妖魔になってしまうぞ? ・・・あんなふうに、な』 不意にアセルスが振り返る。その先には起き上がり、フィオの方へ向かっていく留美の姿。 「・・・喉、渇いた・・・」 妖魔・・・渇き・・・血・・・! 「フィオ! 目を覚ませフィオ!!」 「・・・あれ? え、えと?」 あたしの怒鳴り声で覚醒したらしいフィオはきょろきょろと辺りを見まわし、留美と目が合った。 「応戦しろ! やられるぞ!」 あたしの声が引き金になったのか留美がフィオに襲いかかった。 留美はまだ座り込んでいたフィオを組み伏し、首に食らいつこうとする。 「や、やぁっ! 留美ちゃん! やめて!」 「フィオさん、血、飲ませて・・・」 「やっやだぁっ!!」 必死にもがいて留美を押し返そうとするフィオ。 力のバランスは拮抗しているが人外に踏み出そうとしている上に渇きに襲われている留美が相手ではいずれフィオが負ける。 時間がない・・・! あたしは左半身を前面に出して軽く構えた。左腕が使えないのは痛いがやるしかない!
鈴鹿御前 vs パンテーラ(M) 『鬼の剣 豹の牙』 >94 「う〜るるるるるぅ〜。やるねえ、お嬢ちゃん(バンピーナ)。 御褒美にあんたを一人を殺すのになんでこんな派手な真似をしたのかも 教えてやるよ。 我が主、世界の王メルクリウスに捧げられる血と魂は多ければ多いほど いいんだ。 ましてそれが惨殺されて恐怖と絶望にまみれた若者の魂ともなればいっそう 素晴らしい捧げものとなるからね」 ホムンクルスを一撃で倒した鈴鹿を見たパンテーラの口から、豹の唸り声めいた 含み笑いと共にそんな嘲弄が発される。 大通連を油断無くかまえた鈴鹿に、パンテーラは再度飛びかかった。 鈴鹿の大通連が空中のパンテーラを捕らえた――と見えた刹那、パンテーラは なんと空気のみを足場にもう一度ジャンプしたような形になって鈴鹿の頭上を 越え、その後方に着地した。 振り返る鈴鹿の足元に爪先から滑りこんだパンテーラは、右足を鈴鹿の足の 間で跳ね上げる。 臍下十二センチのあたりに位置する点穴――中曲穴を狙った蹴りだ。 もしまともに決まれば下半身が一次的に麻痺する。
死闘!復讐鬼対アギト! ◆アポロガイストvs仮面ライダーアギト◆ >105 剣が奴にまさに届かんとしたその時、 アギトの体が淡く光る。 次の瞬間、黄金の鎧から紅の鎧に身を変えたアギトが、 紅の剣を手に現れていた。 我が一撃を受け止め、受け流そうとするアギト。 じりじりと間合いを詰めてくる。鍔迫り合いに持ち込むつもりか・・・・・・ 見え見えなのだよ。仮面の下で笑みを浮かべると、 俺は剣をわざと引いた。急激な力の減衰で平衡を失ったアギトを、 ガイストカッターで殴りつける。 そして回転しながらアギトの側方に回り、 回転の勢いそのままにアギト目掛けて雷光のごとき剣を閃かせた。 「これで終わりだ、アギト!」
涙、果つることなく〜ガロン vs 弓塚さつき(死徒27祖) >104 足の先に、顎をかすった感触。 ・・・・・・仕留め切れなかったか・・・・・・ 内心舌打ちをしながら着地しようとしたところへ―― 大ぶりな右腕が襲い掛かってきた。 腕をクロスさせてなんとか受け止めるものの、 その一撃は両の腕を痺れさせる。 なんとか堪えきれたのはウェイトの差か。 しかし、さすがに膝までは防ぎきれなかった。 腹にめり込む衝撃に顔をしかめる。 そして後ろに吹き飛ばされた俺の足元に転がる屍。 ・・・・・これを使わせてもらうか。 俺はその死体の足を拾い上げると、 彼女目掛けて投げつけた。 「さぁ、お遊戯の時間だよ、ドラキュリーナ!」 投げつけると共に跳躍する。 死体で俺の姿は隠れる、この隙に・・・・・ 彼女の背後の電柱を足場に高角度からの飛び蹴りを狙う。
死闘!復讐鬼対アギト!◆アポロガイストvs仮面ライダーアギト◆ >108 鍔迫り合いに持ち込めれば押し切れると思っていたが、 それは相手が楯を持っていなかったらの話だった。 楯に殴りつけられ、回り込まれる。 それは、一瞬の出来事だった。 『これで終わりだ、アギト!』 アポロガイストの叫びを聞いて、反射的に振り向こうとする。 そして右のパワーゴールドで迫る剣を受け止めた。 「まだ…、まだ、負けない!」 闘志が湧き立ち、クロスホーンが開く。
鈴鹿御前 vs パンテーラ(M) 『鬼の剣 豹の牙』 >107 パンテーラが口にした、この虐殺の理由。 お定まりだが、もっとも腹立たしいそれは──単なる、生け贄。 嘲弄と共にそれを語った彼女に向け、振るわれた大通連は空を切った。 怒りのために、私の剣が曇ったのではない。パンテーラは何も無い空を足場に跳ね上がり、私の 攻撃を躱してみせたのだ。 ──今のは、一体!? 慌てて振り返る私の後ろに着地するパンテーラ。低い位置から、鋭い蹴りを跳ね上げてくる。 後方への宙返りで、その蹴りを避けた。一瞬でも遅ければ、彼女の攻撃は確実に私に痛打を与え ていただろう。 着地した瞬間、間髪入れずに低い姿勢からの横薙ぎの斬撃。そのまま、刃を跳ね上げる。 先程の手妻で躱そうとすれば、そのまま両断できる──!
ウピエルVSファントム >28 消火器の粉末による煙幕の中に飛び込み、まず目にしたのは、手榴弾。 迎撃が来るとは思っていたが、見事なまでにドンピシャのタイミングだ。 咄嗟に手榴弾を蹴り落し、そのまま壁を蹴り宙返り。 銀の銃弾で傷ついた脚の筋肉が悲鳴を上げて抗議するが、そんな事も言ってはいられない。 吸血鬼の反射の世界の、極一瞬の出来事だった。 だが、それでも少し遅かった。いくらかの破片と壁に跳ね返る爆風が肉体を押し上げ、再び階段の上へと跳ね戻る。 否、跳ね戻される。 爆風で浮きあがる浮揚感でハイになる。破片の痛みを差し引いても、中々にイイ気分だ。 見事に吹き飛ばされた屈辱に頭は真っ白になる。罠にかけられたのは例え様も無いほど腹が立つ。 ただ歓喜と激怒と狂気に彩られた奇声をあげ、吹き飛ばされるままに上へ跳ぶ。 そのまま天井を蹴り、反転、隕石のような急降下。 階下を過ったマントの影を、銃剣の切っ先で一文字に薙ぐ。 直前、闘争本能と理性とが同時に警告を発する。 目の前の影からは、手負いの人間であるはずのツヴァイが発していないといけない匂い――血臭がしていない。 一瞬遅れて、手応えの無さを銃剣を持った腕が感じる。 そのまま血の匂いのほうへ銃を向け、銃爪を――間に合うか? ――焦燥とも賭けを楽しむ心境とも取れる思いで銃爪を引いた。
>106 『鋼鉄娘'sVS妖魔の君』 エリ&フィオVSアセルス 「ふふ・・・」 悲痛な面持ちで構えるエリを見て、思わず笑みがこぼれた。 「彼女を止めたいか? 救いたいか? ・・・クク」 あまりにも滑稽で、笑いを止めることができない。 怪我をして、もはや戦う力などないだろうに・・・なおも私に立ち向かおうとする。 ―――全く、愚かな。 力が無ければ、誰かを護ることなど―――出来やしないのだから。 それでもなお、止めるというのなら・・・ 「・・・やれるものならやってみろ。 現実を―――教えてやる!」 言い放つと同時に私は間合いを詰め、彼女の鳩尾目掛けて突きを繰り出した。
《涙、果つることなく〜ガロン vs 弓塚さつき(死徒27祖)》 >109 飛び来る物体。 それは、ヒトの形をしたもの。 先ほどまで手の中にあった、わたしの分身となり働くはずだったモノ。 そんな思考が、一瞬の判断を遅らせた。 もう目前まで迫っているソレを避けることは――不可能。 やむなくソレを受け止める。 次瞬、背後からの殺気。 受け止めたソレを、そのままそちらへ軽く放り投げ盾にする。 ―――もう、使い物にならないだろうな…… とか、そんなことを考えながら。
『鋼鉄娘'sVS妖魔の君』 エリ&フィオVSアセルス >113 『ふふ・・・』 『彼女を止めたいか? 救いたいか? ・・・クク』 ああ、笑え。優越感に浸れ。 そして、油断しろ。 そこにつけ込む余地ができる。 『・・・やれるものならやってみろ。 現実を―――教えてやる!』 現実を思い知るのはお前だ。 追い詰められたタンクバスターの力を・・・見せてやる! アセルスの突きを対機動兵器ナックル――『E・アーマー』を着けた右手の甲で止め、払う。 そのまま振りかぶり、 「ああぁぁぁッッッ!!!!!」 思い切り殴り抜く! 正体不明の蒼いスパークを放つ拳がアセルスを強襲する!
死闘!復讐鬼対アギト! ◆アポロガイストvs仮面ライダーアギト◆ >110 一撃必殺の剣は、アギトの肩アーマーに阻まれた。 だが、様子が以前と違う・・・・・・ マスクについた鍬形が大きく開き、 肩アーマーに触れた剣からすら、 奴の力が流入するかのごとき感触さえ覚えた。 「く・・・・・!」 剣を退き間合いを取る。 まさにその時であった。アギトは凄まじい爆炎に包まれたのは。 俺はすかさず周囲に気を配った。 「何者だ、俺と一対一の勝負に水をさす愚か者は!」
涙、果つることなく〜ガロン vs 弓塚さつき(死徒27祖) >114 まさか、死体を再び放り投げるとはな・・・・・・ まったく、楽しませてくれる。いいぞ、存外にいいぞ、ドラキュリーナ! 高角度からの蹴りを阻まれた俺は、 死体を足場に再び間合いを取るように後方へと飛ぶ。 蹴りを受けた死体は、もはや肉隗となって周囲に散らばっている。 ふむ、凄惨になったな・・・・・・死体に残った帰り血を浴びたドラキュリーナを、 俺は美しいと思った。だが・・・・・・狩ることに変わりは無い。 俺は飛び上がると、その鋭い顎をもって彼女を切り裂かんとする。 受ければ、大怪我では済まんぞ、ドラキュリーナ?
>97 藤井八雲vs閑馬永空 水中より迸った光柱は、一直線に天へと立ち昇り―― 次第に集束して、消え去った。 夢霞の如く。 呆然と見入っていた八雲は我に返った様に振り向こうとした。 その時、既に勝敗は決していたと云える。 飛び掛った閑馬の右手が、まだ八雲に突き刺さったままの愛刀を掴んだのである。 そのまま一気に骨肉を押し切る。 最前閑馬に与えられた打撃の再現であった。 血汐と苦悶の声を撒いて刃は抜ける。 首が飛んだ。 再び八雲を斬首し、また返った刃は胴を両断する。 一刀生じて万剣と成り、万剣また一刀に帰す。 剣理極まりし刹刀の赴く所、藤井八雲の五体尽くは残破され果て水面へ没した。 蒼ざめた相貌から荒い息が吐かれる。右手から滑り落ちた一刀を気にする風もなく、閑馬は踵を 返す。 浅瀬へ戻り身を屈める。左手が無いのに苦労しながら、一抱えもある石を持ち上げた。 足を引き摺り、たった今死闘を繰り広げた地点まで戻った。水面を見る。 濁った水とは云え、川底の首や四肢はうっすらと判別出来る。 その頭部に向け石は落とされた。 肉の潰れる音は、随分とくぐもって聞こえた。
なんでフレイムフォームでクロスホーンが展開するんだろう?
アルクェイド・ブリュンスタッドVS鉤道士
『ブラッディムーン・オーバーロード』〜超越者たちと紅い月〜
>
http://cocoa.2ch.net/test/read.cgi/charaneta/1021741941/211 ―― 観測者SIDE ――
「やはり、本物の道士だな…」
『反剋の気』この概念は、ケイオスヘキサやボク等埋葬機関にとっては珍しいのだ。
これは主に東方の陰陽五行の思想に由来する概念だ。
世界を五つの要素に分けて、その法則を理解し操る力在る退魔の術者。
ボク等のような『魔』そのモノの死徒にとっては極めて厄介な連中だが…
受肉した精霊であり、理屈抜きで世界を改変うする力を持つ姫君がどう出る事やら、
……なかなか興味深いな
―― 月の姫SIDE ――
不意に目の前に現れた、子供と紅い道士…、この都市では霊的な特殊性からこの手の
技術が発達しているの事は知識にあるが素直にその手練は見事だと思う。
反剋ね…、世界の理から外れているのはどちらだと思っているのだろう?
そして紅い道士、極自然な微笑み…、それだけに瓦礫の中では異様に浮いている。
何者なのか? 目的は何なのか? 知るべき事はいくらでもある…が、それを聞く気には
ならなかった。
何故って?
本気のわたしを前に、恐れも敵意の感じさせない存在が、ただの人間である筈が無いからだ。
だからと言って、死徒や他の超越種でもないだろう、この相手はあくまで人間だ。
「貴方達に用は無いわ、用があるのはこの奥にいるアカシャの蛇だけ」
この二人に興味は在るが、先ず何よりもなすべき事がある。
ロアの殲滅、この目的を邪魔する者に手加減は必要無い、わたしは世界との同化を開始した。
―― 観測者SIDE ――
外見に変化は無い、だが霊的な知覚を持つ者なら解るだろう。
姫君を中心に、『世界』が急速にその在り方を変えている事が。
想うだけで世界を直接改変する能力、それは『空想具現化』と呼ばれている。
わずか数瞬で、周囲数十メートルまで拡大した領域は今だ何の変化も無い。
だが、その空間は本来持つ筈の無い凶悪な意志を持っていた。
そして……
「終りなさい」
姫君の静かな宣言と共に、その領域は荒れ狂う真空の嵐と化した。
不可視、無音の万の刃が姫君と紅い道士の間にあるモノ全てを消し去りながら突き進む。
このまま進めば、この研究所ごとロアを消し去るだろう。
だけど、この状況に在ってなお紅い道士は表情は動かない。
>115 『鋼鉄娘'sVS妖魔の君』 エリ&フィオVSアセルス 私の剣が彼女を串刺しにする・・・はずだった次の瞬間。 いっそ小気味いい音を立てて―――私の一撃は、弾かれていた。 「な・・・」 必殺の突きを弾かれたことに一瞬、動揺する。 私の剣を止めたそれは・・・蒼くスパークするナックル。 それを着けたエリの拳が、渾身の力を込めて襲い掛かってくる。 なんとか踏みとどまり、その一撃を防ぐべく腕を前に構えた刹那。 ・・・私は大きく吹っ飛ばされ、大音声とともに留美たちの近くの壁に激突していた。 全身が痛む。 体への一撃こそ免れたが、ブロックした右腕は激痛で使い物にならなくなっていた。 それでもなんとか、痛みに耐えて立ち上がり、まだなんとか生きていた左腕で剣を構える。 ・・・笑みは、すでに消えている。 あるのはただ、彼女への殺意のみ。
死闘!復讐鬼対アギト!◆アポロガイストvs仮面ライダーアギト◆ >116 ――負けない!絶対に!生きるためにも! フレイムセイバーの鍔が開かれた状態で両者の間合いが開かれる。 その時、爆炎が両者の間…アギト側に炸裂した。 大きく吹き飛ばされ、土砂がアギトに降り注いだ。 ガマのような、それはキセルを吹かしつつ、 ニヤニヤと笑いを浮かべる。 「これはこれはアポロガイスト様。危のうございましたな」 ニヤニヤ笑いを崩さず、もう片方の手に持っていた爆弾を弄ぶ。 「オレサマは、プロトガマゴエモンと申す者。 GODの悪人軍団の先駆けにてござる。 よろしくお引き立ての程、お願い申し上げる、第一室長殿。 GOD首領様からは、室長様窮地の際は 何をもってしてもあなた様をお守りするよう、命を受け申してな。 いや、ご無事で何より。かーっかっかっかっ」 回りくどいほどの喋りを行う。 土砂に埋もれつつ、アギト、いや、沢木哲也は神…、 “闇の力”の球体に飛び込んだときを思い出す…。 窒息は免れたが…。いまだ夢の中にいた。 ―――おれは、諦めない。決して!みんなの居場所を守りたい!! 決意が闘志となり、意識を取り戻そうとし始める。
《涙、果つることなく〜ガロン vs 弓塚さつき(死徒27祖)》 >117 大口を開き、こちらに食らいつこうとする狼男。 噛みつかれれば、間違い無く食い千切られるだろう。 だったら――― 痛む左腕を無理やり動かし、口の中に突き入れる。 噛み切られる寸前に、狼男の牙を折り、頬の肉をこそげとる。 ―――イタイ、けどこれなら 痛み分け、っていうんだよね、コレ。 笑みが零れる。 痛い筈なのに、なんでこんなに嬉しいんだろう。 見ると、腕から血が滴り、もう半分も繋がっていない。 何、コレ。 なんだ、痛くて当然じゃない。 こんな、ボロボロになってるんだから。 ボロボロになって――しなる腕。 狼男の顔に向けて、裏拳の要領で左の肘から先を振りまわす。 だんだんと、千切れていくのも構わずに。
>118 藤井八雲vs閑馬永空 雑踏の中を、薄汚れた風体の男が歩いて往く。 男を知る者は誰一人とていない。 これまでに過ごした歳月の中にも、これから重ねるであろう春秋の先にも。 不死人・閑馬永空である。 八雲との――閑馬は結局名を知る事は無かったが――戦いの後、疵を癒した閑馬は、手に入れた鼎 を徹底的に調べ上げた。 判ったのは只一つ。何も判らないと云う事だけであった。 血には反応する。だが、それが何を意味するのかは判らない。 鼎が如何にして使う代物なのかは、皆目見当つかないのである。 戦いから数ヶ月を経ても、それは未だ変わらなかった。 だが、閑馬は失望していない。 何せ時間だけは、死に切れない程あるのだから。 それにもう一つ。 閑馬と死闘を演じた、名も知らぬもう一人の不死人。 あの青年があれだけで死んだとは思えない。 同じく『昆侖』を求めるならば、互いの道が交わる事もあるに違いない。 もし生きていたら、だが。 今の閑馬には、それが妙に愉しく思われるのであった。 或いは『昆侖』の地を踏む事よりも。 「その日」を思い描き、閑馬は有るか無しの微笑を浮かべていた。
死闘!復讐鬼対アギト! ◆アポロガイストvs仮面ライダーアギト◆ >122 窮地?今、此奴め、窮地と言ったか? その一言が闘争に水を差されただけで憤っていた俺の怒りに、 火を灯した。それだけでは無い。 首領が、だと?・・・・・・なるほど、そうか。 俺はもはや信用ならんというわけか。 ならば見せてやる。俺の力を。そして奪ってやる。 アギトの力を。 「窮地とな?今の状態が窮地か?・・・・・まぁ、いい。褒美をくれてやろう」 此奴めには、俺が消えたとしか思うまい。 一瞬にして、俺は此奴の目の前に立つと、 体に深々と右の剣を刺し貫く。 驚きに目を見開く此奴に、止めの銃弾を叩き込む。 剣を引き抜き、アギトに振り返るのと、 此奴が大爆発と共にその身を四散させたのは、ほぼ同時だった。 「とんだ邪魔が入った。さぁ、今一度、剣を抜け、アギト!これで死ぬような貧弱な男ではない筈だ!」
涙、果つることなく〜ガロン vs 弓塚さつき(死徒27祖) >123 何!?口に異様な衝撃が走る。 ・・・・・・気づいたときには、口の中に彼女の腕が突っ込まれていた。 そのまま彼女は腕を凪ぐように払う。 牙が折られ、頬の肉がこそげとられる。 激痛にうなり声が漏れる・・・・・・ キッと彼女の見やると・・・・・・笑っていた。 涙を流しながら、彼女は笑っていた。 そして、もはや肉と皮だけで繋がっている左腕を、 ヌンチャクのように扱い、振り回す。 激痛で集中できなかったおかげで何発かいいのを喰らいはしたものの、 その腕をようやく捕らえた俺は、力任せに引きちぎる。 肉の裂ける音共に、その腕は俺の手中に納まった。 「ドラキュリーナよ・・・・・・何故、そこまでして戦う?やり方なら、いくらでもあるだろう?」 俺は手中で左腕を弄びながら、静かに聞いた。
藤井八雲vs閑馬永空 >124 雲ひとつ無い晴天の下で、閑馬永空の残した血の跡を追って来た 警官隊がドブ川を浚っている。 閑馬永空によって十数片に切断された藤井八雲の身体は 流され、その場から少し下流の澱に流れ着いていた。 无≠ヘその名の示す通り、命(無)き者である。 例え毛一本残らず消滅させられたとしても、何度でも蘇える。 いや、黄泉帰る。 流れ着いた肉片同士は既につながり、人型を取り戻していた。 額に巻いていた布は流れ去り、 その額には 『无』 の文字が紅く浮き出ている。 「くそっ……ドジっちまったぜ…」 何事も無かったかのように立ち上がり、 糸のように細い目をいっそう細くして、上流の騒ぎを見つめる。 藤井八雲の命ともいえる三只眼吽迦羅は、 数年前から消息不明だった。 八雲がこの地を訪れたのも、半分は彼女の手がかりを探す為である。 三只眼吽迦羅とその无≠ヘ、命を共にする者。 八雲は彼女を探す旅を続ける。 失った半身を取り戻すために。 傍らを、閑馬の左手が流れていった。
死闘!復讐鬼対アギト!◆アポロガイストvs仮面ライダーアギト◆ >125 大爆音が響く。 決意が闘志となり、消えかかっていた意識が湧き起こる。 『とんだ邪魔が入った。さぁ、今一度、剣を抜け、アギト!これで死ぬような貧弱な男ではない筈だ!』 土砂を払いのけ、沢木哲也としての姿を現す。 「おれは…負けない!生きる!生きて見せます! …アポロガイスト、あなたに勝って!! 変身!!」 再度、オルタリングを腰に出すが…。 今度はオルタリングの中央に竜の爪のようなものが浮かぶ。 闘志を漲らせ、変身する。 アギトは進化する力。 燃え滾る灼熱の姿、バーニングフォームにて、 アポロガイストとの第二ラウンドが今開始されようとしていた。
『鋼鉄娘'sVS妖魔の君』 エリ&フィオVSアセルス >121 (仕留め損ねた!) 手応えでわかる。防御された。 素早く右手をベストの内に突っ込んで手斧を抜き、追い打ちを・・・ 「やだっやめぇ! 痛っ! やああ・・・ふあぁ・・・」 視界の端で、フィオが、血を吸われるのが、見えた。 それがあたし達の明暗を分けた。 気を取られて手斧を投げるのが一瞬遅れる。 アセルスは既に体勢を整えていた。
アルクェイド・ブリュンスタッドVS鉤道士 『ブラッディムーン・オーバーロード』〜超越者たちと紅い月〜 >120 アカシャの蛇―ミハイル・ロア・バルダムヨォンの別名だ―に用が有ると言う美女の気配が、世界との一体化をはじめる。 受肉した精霊に許された力。その力が真空の刃となって荒れ狂うが、鉤道士は動じない。 ただ穏やかに笑みを浮かべるだけだ。 傍らの童子、小雷は慌てて同士のは以後に隠れるが。 「<赤殺花(チーシャーファ)>、出番ですよ」 軽く呟くと、鉤道士の純粋破壊衝動『修羅』をベースに形成された、 肉体制御用の<人造霊(オートマトン)>、太乙改・個体名<赤殺花>が50%の限定で起動する。 同時に、調息を開始。体内に形成された内丹炉に戦闘用の火が入る。 緊張感の無い深呼吸。まるで宇宙その物を呼吸しているかのように、天地の気を吸い、陰陽の気を吐く。 内丹炉の中で、五行が高速で相生相克、莫大な陰陽のエネルギーを生み出し、経絡を通じ全身に気を満たす。 「刃を禁ずれば切ること能わず、急急如律令」 意味にすればそんな呪文を、東方式高速詠唱で圧唱。きゅん、と不思議な音が口から漏れる。 袖口から1枚の呪符が滑るように飛びだし、そのまま真空の刃に飲み込まれ。 「疾(チッ)!」 と言う掛け声と共に弾けて散った。 東方魔術<道>の一種、禁術と呼ばれる術式。天地陰陽の理に触れ、その存在に干渉し無効化する技術だ。 荒れ狂う真空の刃は、その「刃」としての存在意義を禁じられ、最初から何も無かったかのように消えて失せた。 「あまり、穏やかじゃないですね。少々待って頂けると有り難いんですけど」 鉤道士は微笑んだまま、問い掛ける。 困ったような、何処と無く嬉しそうな、しかしやっぱり何の感情も感じられない透明な笑み。 その笑みの下から漏れ出すのは異常な殺気。 並の殺人鬼を100人集めた所で及ばないのではないかと思わせる、純粋にして強力極まる殺気だ。 「そう言う訳には行きませんよね?」 鉤が軽く右手を振ると、そこには一挺の拳銃が握られていた。 R&V.50口径エンチャントマグナム――吸血鬼を狩る為に設計された異常に強力なリボルバー拳銃。 軽く持ち上げ、狙いをつけて、たんたんたん、と銃爪を引く。 なんだか少しうきうきする。修羅を飼い慣らした今でも、銃爪を引くと心が踊る。 呪紋銃身から飛び出した3発の特殊呪化弾頭―被甲赤頭弾(ジャケッテッド・レッドポイント)―が唸りを上げて、 正確無比な弾道で金髪の吸血鬼に襲いかかり、着弾と共に凄まじい爆焔を発した。
>129 『鋼鉄娘'sVS妖魔の君』 エリ&フィオVSアセルス エリが手斧を抜き、振り上げる。 こちらの体勢は、まだ完全には整っていない。 間に合わないか―――思わずそう思った時、それは聞こえた。 ・・・フィオの悲鳴。 ・・・荒く、恍惚に満ちた留美の息遣い。血を啜る音。 そして・・・エリが思わず息を飲んだのが見えた。 慌てて、手斧を投げようとする。 だが・・・もう遅い! 一瞬の後―――私の剣は彼女の右腕を切り飛ばし、 返す刀で彼女を袈裟斬りにした。 返り血が、私の体に降り注ぐ。 すでにフィオの悲鳴は、甘やかな声へと変わっていた―――
『鋼鉄娘'sVS妖魔の君』 エリ&フィオVSアセルス >132 手斧を投げようとした右腕が切り飛ばされた。 そして返す刀で袈裟斬り。血が噴き出し、アセルスを赤く染める。 あたしは倒れた。 視界にフィオと留美の姿が映る。 「死ぬのは、あたしだけか・・・」 視界が暗くなる。 音が聞こえなくなる。 意識が薄れていく。 何も見えない。 何も聞こえない。 何も・・・考えられない。 「人間はみんな・・・ひとりぼっち・・・か・・・」 それがあたしの最後の言葉だった。
>133 『鋼鉄娘'sVS妖魔の君』 エリ&フィオVSアセルス くずおれるエリ。 彼女は最後に留美とフィオを見て・・・ 『人間はみんな・・・ひとりぼっち・・・か・・・』 そんなことをポツリと呟き・・・息絶えた。 私は、そんな彼女を冷ややかに見下ろした。 人間なんて・・・結局は死ぬんだ。 人間なんて・・・ 後ろを振り返り、留美たちのもとへ近寄る。 フィオは、留美に血を吸われて陶然とした表情を浮かべていた。 ・・・彼女たちには、人間をやめてもらう。 この子達は私のもの・・・妖魔として永遠に生きる。 それは・・・素晴らしいことなんだからね、留美、フィオ。 私は微笑みながら、己の吸血衝動に身を任せた――― Dark end.
『鋼鉄娘'sVS妖魔の君』 エリ&フィオVSアセルス レス番まとめ。 >10 >11 >13 >16 >20 >23 >24 >26 >27 >44 >50 >57 >65 >74 >78 >99 >106 >113 >115 >121 >129 >132 >133 >134 ・・・ふふふ・・・
ウピエル(&ツァーレンシュヴェスタン)VSファントム >93 ……フュンフとノインは自分達以外の気配を全く感じなかった。 ドライの呼吸音は、自分達の心臓の鼓動よりも小さな音なのだろうか? ツァーレンシュヴェスタンの生き残り二人―――と言うには語弊があるが―――は、 ほんの少しだけ目を合わせた。 それだけでお互いの意志を通じあわせる。 ノインが射撃を開始する。 セミオートで、流れるような美しい射撃姿勢。 ホールにあった窓は一瞬にして全て撃ち抜かれていた。 夜の冷気が吹き抜けていく。 血の臭いと室内にこもった熱気が、すばやく新鮮な空気と入れ替わっていく。 この新しい空気の中ならば、血臭を嗅ぎ分けるのは容易い。 それがもっとも濃いところに……獲物は居る。 その後は巣穴にこもった狐を狩るような、楽な作業だ。 狐の牙では、血に飢えた狼の喉を咬み切る事などできよう筈もない。
>136 あと三分もせずに、自分の居場所は見つかってしまうだろう。 その時、彼女は死ぬ。 身体が冷たい。さっきまであんなに熱かったのに、今は寒気が止まらない。 意識ははっきりとしているが、その分、身体の寒さを余計に感じてしまう。 寒い……。 (血が……足りなくなって来ているのか……) 情けない。あたしはファントムだろう? こんな、こんな死に方なんて、ありか? (ハハ、あたしらしい死に方じゃないか……) ファントム・ドライの死に場所は、ここだということである。 折角、相応しい死に場所を与えられたんだ。感謝しようじゃないか。 あたしはここ死ぬ。……それで良いだろう? そう、理屈では納得できる。此処までハードボイルドな死に場所なんて滅多無いだろう。 最高じゃないか。なのに……なのにどうして……。 (――――あたしは泣いているんだ?) 死ぬのが嫌なのか? 死ぬのが怖いのか? 違う、違うよ。そんなんじゃない。 あたしはね―――あんな……あんな雑魚共に殺されるのが悔しいんだ!! 次瞬、強烈な気配がホールを包んだ。 つい数瞬前までは無人よりも静かだったこの場が、自己主張の激しい一匹の狼によって食いちぎられる。 その時、ドライの姿はそこには無い 紅い血溜まりを残して、彼女は何処かにかき消えていた。
>90 VS怪獣 人垣。人垣。人垣。十重二十重に群がったこの人たちは、他人の不幸が そんなに楽しいのでしょうか? デパートのなれの果てを、映画でも見るような目で見物し、 疲労で動けない私を指差してひそひそ話。自分たちが無責任に群がっているせいで、 避難にも救助にも大変な障害になっているのに。 (誰のためだと、思ってるのよ) 私ひとりなら簡単に逃げられたのに。バッグも無くさなかったし、 服も駄目にしなくてよかったのに。疲れて目を回すこともなかったし、 こんな目で見られることもなかったのに。 「勝手にしてくださいよ」 考えてみれば、くだらないことです。私は誰かに頼まれたわけじゃないし、 これを仕事にしているわけでもありません。こんな人たちのために 一生懸命になる義務も義理も、私にはないのです。 水がほしかったので、赤い自動販売機によろよろと近づきました。 ポケットに一枚だけ残っていた五百円玉を投入して、2リットル入りの 清涼飲料のボタンを押します。 ……。 ……。 …出てきません。 「この…」 役立たずの赤い箱によりかかって、ぐったりとへたりこみました。 もう駄目。知らないわよ。あなたたちみたいに嫌らしい人たちは、勝手にすればいいんです。 どうでもいいよ。や〜めた。私帰ります。さようなら。せいぜいお気をつけあそばせ。 どうせ無駄でしょうけど。 極めて些細な精神的追い討ちをうけて、私の意識はあまりにも自然に 薄れていきました。
ウピエルVSファントム >112 軽く乾いた音を立てて折れたモップが転がり、纏われたマントが中空に広がる。 異常に気付いたウピエルが瞬時に動き、血臭の源に向き直るや否や発砲。 スクリーミングバンシーが吼え、5.56mmアーマライト弾が空間を切り裂く。 しかし弾痕が穿たれたのは故意に血糊の塗られた壁―――――。 同時にウピエルの足元で立て続けに響く四つの銃声! 仰向けに寝そべった状態から見上げる様に掲げられたデザートイーグル、 ウピエルに触れんばかりに近い銃口から、ボディに向って撃ち上げられた四連撃。 下方に向けて勢い良く打ち付けられた.50AEの空薬莢が四つ、床に跳ねる。 体を捻り、開けた方向に半身を起こしながら更にトリガーを引く頃、ようやく空中の マントが床に触れた。
前々スレ>
http://cocoa.2ch.net/test/read.cgi/charaneta/1020438117/274 前スレ >
http://cocoa.2ch.net/test/read.cgi/charaneta/1021106839/674 >118
ヨコシマ&ロゼット一行 VS G.G.スレイマン
『ボーイ・ミーツ・ガール?』
「イヤじゃボケェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェええええ!」
とっさに、反射的に、考えるよりも早く、俺は叫び返していた。
そりゃもうありったけの大声で。
「やっと、やっと、柔らかくて温かいねーちゃんを、ねーちゃんをゲットしたのに・・・」
そのねーちゃんはさっきからじたばたと暴れるわ凄まじいスラングを連発するはで、
本当に助けるべきだったのか、にわかに疑問が起こってきたが・・・・・・
柔らかくて温かいので、ヨシ!
ひとまず、マジで泣きたくなるような罵詈雑言は忘れる!
―――と、とにかく! 今はスレイマン、G.G.スレイマンが先決!
「死ねと言われて、ハイそーですか、なんて死ねるかぁ!」
キッと、眼光鋭・・・いつもりで、男のツラを見返す。
文珠で動きをしばられ、右手を掲げたままピクリとも動かない姿は、非常に間抜けだった。
間抜けな男の横顔向けて、俺は言葉を矢継ぎ早に繰り出す!
「死ぬならてめぇが死ね、てめぇが! この――――」
思いっきり溜めて・・・
「不健康ヅラ!!」
吐き出す!
「真っ昼間から真っ黒なツラしやがって、テメーは死人か? 少しは陽に当たれ、引き籠もりヤロー」
「だいたいなんだ栄光の手って。それに卵? はっ、なんかどっかで見たよーなのばっかりだな!」
「この、パクリッ!」
思いつく限りの悪口を叩き付ける。その一言その一言にありったけの霊力を乗せて。
表情一つロクに変えられないのか、スレイマンは振り返るでも言い返すでもなく、
間抜け面のままで俺の言葉を受け続けた。
「わははははははははははははははははッ! 貴様には2Pカラーですら生温いわっ!
せいぜい、デバックの漏れで出来たバグキャラがお似合いだぜっ!」
ああ、なんというかスッとする!
これや、こういう展開を俺は待ってたんや――――――――――――――――――!!
片手にねーちゃんを、片手に文珠を、それぞれ抱いたまま、俺はさらに言葉を繋ぐ。
あ。
ちなみに呪力とか言霊とか呼ばれるモノは、第一声ではね除けていた事も付け加えておく。
ヨコシマ&ロゼット一行 VS G.G.スレイマン 『ボーイ・ミーツ・ガール?』 >140 ブラックロッドが私達に苦し紛れとも取れる罵声を浴びせ掛ける。 騒いだって無駄―――― 「あ―――れ?」 どくん、と。 心臓が大きく跳ね上がった。 と同時に、心臓の鼓動が急に弱くなっていくような気がする。 ・・・・・・目の前が・・・・暗く・・・・・? コレ・・・・・な・・・・に・・・・・? ≪ロゼット!!≫ クロノの声がやたら遠くから聞こえる。 やば―――いしきが――――― その時――― 覗き魔が何事か叫んだ―――! 「っ・・・・・はァ・・・・・・。」 同時に気分が楽になる。 ・・・・・・また・・・・・助けてくれた? ≪ロゼット!!≫ そう叫びながらクロノが思わず私のほうへ近寄ろうとする。 結果―――二人の陣形が崩れる!
VSロゼット一行&ヨコシマ 『例えばマリオのマイナスステージのように』 >141 バグ 「クク、この俺が取りそこないの蟲だと?」 「ふん、『お褒めに預かり恐悦至極』とでも言っとくか、ハ、ハ、ハ!―――」 スレイマンは黒い悪魔が移動したことで生じた結界の隙間に <栄光の手>を強引にねじ込み、押し広げ、ずるり、と自らを拘束する檻から抜け出した。 「―――ハ、ならば見せてやろうじゃねぇか、製作者ですら存在に気づかないが故に、 一切バランス調整されてない、この俺様の出鱈目ぶりをな!!」 「あの世で神様とやらに会ったら言っておけ『さっきまでいた世界、 バランス悪いんですけどぉ』ってなァ! ク、クハハハハハッ!!」 哄笑するスレイマンの頭上を、少女を案じた黒い悪魔が、高速で飛行していく。 「させるか、阿呆が!」 スレイマンは一声吼えると<栄光の手>を長く、長く伸長させ、 そして長く伸びたそれを大きく振り払い、中空を行く悪魔を弾き、牽制する。 更に、悪魔が体勢を持ち直す前に【呪弾】を圧唱圧唱圧唱圧唱圧唱圧唱圧唱。 ただし、ロッドの向けられた先は黒い悪魔ではない。 ヨコシマと――――そしてその腕に抱えられた少女に向かって。 『しぇ、しぇぇぇぇっ!』と、どこかの似非フランス人のように叫びつつ、 ヨコシマがまたしても奇妙な動きでその呪弾の群れを回避する。 少女を抱えていることを考えれば、まさに不可解としか言いようが無い。 『いきなり何すんじゃ、ボケェェェッ!!』と、ヨコシマが抗議の声をあげるが スレイマンはそれを無視して黒い悪魔にこう告げた。 「ク、ク、どうした、そこの悪魔、それに小娘。二人とも顔色が悪いぞ?」 「ハ、馬鹿が、バァアァカが、バレバレだぞ! そこの小娘が貴様の命綱なんだろうが!」 その場にいた者達は、スレイマンの半ば透きとおった<栄光の手>の内側で 呪紋が形成され、淡く光る丸い小結界で、形成された呪紋が包まれていく様子 ――【卵】の精製過程――をはっきりと観察することが出来た。 精製された【卵】は、<栄光の手>の内側に貯められ出番を待つ。 その数四つ。それぞれの中身は【切断】【燃焼】【衝撃】【死】。 ―――つまり、単一の手段で防ぐことはほぼ不可能。 「ハ、そこの小娘ぶち殺しちまえば、貴様はさっきのクソガキに戻るってワケだ」 「目障りなんでな、貴様等から始末してやろう」 「止めれるモンなら止めて見ろや! そこの悪魔でも、ヨコシマでもな!」 そして、スレイマンが吼えると共に、多重の死を秘めた<栄光の手>が ヨコシマと、彼に抱えられた少女に向かって振るわれた。
>142 ヨコシマ&ロゼット一行 VS G.G.スレイマン 『ボーイ・ミーツ・ガール?』 お、お褒めに預かり? 神様にあってバランスが悪いんですけどー? ぐ、ぐぞ、こいつ全然堪えてねぇ。むしろ嬉々としてやがる! ドンだけ性格どす黒いんじゃー! そこへまた、呪弾呪弾呪弾! 強化された反射神経で見切り、飛び跳ね、やり過ごす。 つーか、なんの前ふりもなく撃つか、ふつー! 「いきなり何すんじゃ、ボケェェェッ!!」 言い返してもまるで無視。 それよりもあの悪魔――――クロノに注意が行ってるようだ。 なんだ? 俺はもういらんとですか? な、ならこの隙に逃げ出しても・・・! 少しずつ少しずつ、体が後ろへ後ろへと下がる。 ふと、目がパチモン野郎の「栄光の手」へ行った。 そこから微かに漏れる言霊、感じ取れるいずれの文字も必殺で理不尽で。 どうしようもないほどの殺意が、俺の背を焼いた。 防げない・・・護でも楯でも! あの力は防ぎきれないってのか!? 黒い男の顔が俺へ向いた。いや、正確には俺が抱え込むシスターへ。 そいつが手をかざし、栄光の手を矢の如く伸ばして―――――― 今 だ ! 「クソ野郎、これで終いだっ!」 その栄光の手を弾くように、伸びる栄光の手。その内に掴まれる文珠は「断」。 「断」は、迷うことなくその力を発揮し――――――辺り一帯から、呪力と魔力を取り払った。 呪力の塊となった、G.G.スレイマンのその根源を絶つかのように。 ふっと、互いの栄光の手が消えた。
鈴鹿御前 vs パンテーラ(M) 『鬼の剣 豹の牙』 >111 「はっ」 横薙ぎの斬撃を低い気合と共に跳躍し避けるパンテーラ。 しかし空中の彼女目掛けてなおも大通連の刃は迫る。 大通連が彼女に触れようかというその時、パンテーラの服の袖から黒い筋が ほとばしった。 ギン、という明らかに鋼と鋼が相打つ響きがしたかと思うと、パンテーラは 後方に飛びずさっていた。 だがパンテーラの手にあるものは鋼に非ず、黒い縄状の物体であった。 パンテーラが得意そうに言う。 「どうだい? 矢をも通さぬ皮膚を持つダッサングママの黒獅子のたてがみを 寄り合わせ、牙獣チペクゥエの獣油を塗ったもんだ。そんなナマクラじゃ 切れやしないよ」 言い終えたパンテーラの手から放たれた奇怪な黒縄は空中で蛇のごとくしなり、 鈴鹿の大通連に巻きついて奪い取らんとする。
VSロゼット一行&ヨコシマ 『ドメインキャンセラー。略して『ド』』 >143 スレイマンとヨコシマ。 二本の<栄光の手>が絡み合ったその瞬間、 接触した箇所から光があふれ、その光に浸食されるかのように 双方の<栄光の手>が薄れ、消え去っていく。 ―――呪法そのものを中和しているだと! 『断』の文殊の効果が<栄光の手>を手先から辿り、そしてそれを消し去りつつ、 呪法の幹たるスレイマンの体に向かって突き進んでいく。 今や、スレイマンの体の7割以上は身体施呪の影響下にあり、 もはや、呪力の支援無しにはまともに機能しない。 このまま『断』の効果が体に辿り着けば、そのまま倒れ伏すことはまさに必死。 「くそ、くそ、くそ、ふッ・ざッ・けッ・るッ・なァッ!」 スレイマンは罵声と同時に【切断】を己の左肩に向かって圧唱。 身体施呪によって強化された血圧によって、切断面から盛大に血が吹き上がり、 血液と共に体内に侵入した『断』の効果を追い出していく。 だが、文殊の効果の総てを排除することは間に合わず、 呪法の緩んだスレイマンの体はぐらり、と大きく揺らいだ。
>145 ヨコシマ&ロゼット一行 VS G.G.スレイマン 『ボーイ・ミーツ・ガール?』 ブラックロッドの体勢が崩れ、ロゼット達への攻撃が止まる。 僕・・・・クロノはそれを見て思わず安堵のため息をついた。 だが、奴はそれでもなお攻撃の手を止めようとしない。 殺すか―――!? だが、ロゼットの事を思い僕は一瞬躊躇する。 ロゼットは、例え敵だとしても―――人を殺すなんてことは認めないだろう。 けれど・・・・・・・ 例えロゼットに嫌われたとしても―――彼女を失うよりはずっといい!! もう―――大切な誰かを失うのは御免だッ!! ≪おォォォォォォッ!!≫ 僕の腕が硬質化した皮膚に覆われる。 ロゼット ≪貴様なんかに、彼女は殺させないッ!!≫ 僕の爪が、奴の体を貫く! 吹き出る鮮血が、熱い。 ヤクソク ≪それが―――僕の契りだからッ!!≫ もう一本の腕を、同様に奴の体へと突き立てる! ≪終わりだァァァァァァァァッ!!≫ 両腕を、大きく左右へと開く! ぶちぶちという肉を切り裂く不快な感覚を腕が覚え――――― 奴の上半身と下半身が切り分けられる!!
VSロゼット一行&ヨコシマ 『分離っ!』 >146 その手を再度硬質化させた黒い悪魔が、スレイマンに向かって踊りかかってくる。 スレイマンはロッドに祓魔式を込め、悪魔を迎撃――――できない。 『断』の文殊によって作られた隙はほんの一呼吸ほど。 ただ、その隙こそがまさに致命的だった。 ――――ふざけるな馬鹿が、認めんッ! 腹中に熱い物を感じたかと思うと、そのままスレイマンの耳に、 ぶちぶちという、自分の体が引き裂かれる不快な音が届いてきた。 スレイマンは地獄の悪鬼もかくやと言うような表情で、 眼前の悪魔を睨みつける。第三者から見れば、間違いなく スレイマンの方こそ悪魔と見えるだろう。 「ハ」と言う歯切れのいい嗤い声に続いて、 スレイマンは何かを言おうとしたが、 ごぶり、と、口腔からあふれる血の塊に阻害され、明瞭な言葉を結ばない。 体内の熱い感触がやがて下半身の大きな喪失感に変わったと感じたとき、 スレイマンは2個の大きな肉塊となって地面に転がっていた。
>147 ヨコシマ&ロゼット一行 VS G.G.スレイマン 『ボーイ・ミーツ・ガール?』 ご、と小さな音をたてて、胸くそ悪い腐ったツラが地面に転がる。 いつもなら吐き出しそうな血まみれの肉塊を目にしても、不思議と耐えられ・・・耐え・・・ う、ぷ。 なんか酸っぱいモノがこー、喉の奥の方に! 女の子を抱えてる手前、吐き出すわけにもいかず、涙目になりながらそれを飲み下す。 うげ、なんか喉の奥の方がひりひりする・・・ そんな俺の顔を見上げる、金髪のシスター。おっと、そういやまだ抱いたままだったっけ。 気持ち良いものだから、ついつい忘れてた。 名残惜しげに、ちょーっと乳とか揉みつつ彼女を地面に降ろす。 手の中から重みが消えた、喪失感に深い考えを覚えつつ、目を閉じる。 いやー、数ヶ月に渡る長い戦いだった! 途中で収拾つかなくなるかと思ったぞ。 ま、とにかく! これで借金を払い終わった気分で、伏線とか小細工とか考えずに過ごせるわけだ。 心の中で小さくガッツポーズをしながら、 なんか体中がやけに痛かった気もするけど、ま、それはそれ。 晴れ渡る空に匹敵するほど、俺の心は涼やかだった。 ――――――肘を入れられましたが。
>148 ヨコシマ&ロゼット一行 VS G.G.スレイマン 『ボーイ・ミーツ・ガール?』 「クロノ!!」 私は『元の』姿に戻ったクロノに駆け寄った。 (無論去り際に覗き魔に肘撃ちを食らわせて) は――ァ――! 消耗がすこしきついな―――― 私は、たかだか数メートルの距離をぜはぜはと息を切らせながら走りきった。 そんな私を、クロノは苦しげな表情を浮かべて見上げる。 「ロゼット………ゴメン……。でも………。」 「クロノ!!」 ぱ ぁ ん と 乾いた音が響く。 私の右手が、クロノの頬を叩いていた。 「バカ――――! 他に――――方法無かったのは判るけど―――― やりすぎよ――――!!」 私は、ふるふるとクロノの頬を叩いた手を握しめる。 そして――――― がば、とクロノを抱きしめた。 「ろ、ロゼット?!その?!」 「黙ってなさい!ちょっと・・・・このままでいさせて。」 「あの・・・・その・・・・・?!」 「うるさい!兎に角黙ってればいいの!!」 私はぎゅうとさらにきつくクロノを抱きしめた。 その存在を、確かめるように。
VSロゼット一行&ヨコシマ 『復活! フリーザ様(違』 >149 「ク、ハ、まったく、いきなり何しやがる。今の体は結構気に入ってたのによ」 突然、ヨコシマと少女、そして少年の姿に戻った黒い悪魔、三人の背後から声がかけられる。 シスターとヨコシマはぎくり、と、身を震わせると互いに目配せし、 何やら意思の疎通を行った後、そろりそろりと後ろを向き、そして見た。 今や、上半身だけとなったスレイマンが【浮遊】を展開し、 その切断面から内臓をだらりとこぼしながら、 地上一メートルほどの高度に滞空しているのを。 『アンタッ』『お前ッ』 「「それでも人間!?」」 少女とヨコシマの叫びが偶然にも綺麗に重なる。 対するスレイマンは「ハ」と、一声嗤うと . ・ ・ ・ 「たぶんなぁぁッ!!!」と応える。 次いで、失われた左腕を再び霊気で構成し<栄光の手>を形作ると、 それを伸長させ、器用にその<栄光の手>一本で地上に『立ち上がった』。 地に接した肢が一本だけしか存在しないその姿はまるで、案山子のようにも見えなくない。 もっとも、これだけ悪意と殺気を撒き散らしている案山子なら 害鳥などは近づいただけで地上に落下してしまうだろうが。 スレイマンの<栄光の手>は怒りで赤黒く染まり、その内側ではどんどん【卵】が増殖していく。 やがて、<栄光の手>から溢れんばかりに【卵】は増殖し 霊気で形作られた左腕はまるで葡萄の房の様になった。 「ハ、もうこの体は使いモンにならないんでな、俺様自身の体を触媒にして死の呪文を精製した。 たっぷりと、たっぷりと喰らわせてやろう、今の貴様等に防げるか? ええ?!」 「ああ、それと、肝心なこと言うの忘れてたな。 これから殺してやるから大人しく死ね。 もがくな、苦しむな、逆らうな。 屍体は綺麗に残せよ? なんせこれから この俺様が直々に使ってやるんだからな! ク、クハハハハハハハッ!!」 スレイマンの哄笑と共に<栄光の手>は大きく膨れ上がり、その解放の時を待つばかりとなった。
ヨコシマ&ロゼット一行 VS G.G.スレイマン 『ボーイ・ミーツ・ガール?』 >150 肘打ちに揺らぐ視界、そこに浮かび上がるのは度を超えた非常識の塊。 それでも人間!? たぶんなぁぁッ!!! 思考が真っ白に凍てつくような、巫山戯たやり取り。 洒落にならない殺気、殺してやるからな、大人しく死ね。 ドンドンふくれあがる。 死、死、死。 震える。 がたがたがたがた。 膝が嗤って脂汗がだらだらたれる。 足下に水たまりが出来る、そんな感じで。 あ、あは。あはははは・・・ ぶつん。 「のっぴょっぴょーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん!!!」
>138 VS怪獣 おどろくくべきことに、どれみちゃんの正体は理香ちゃんだったようです。 その証拠に今、ピンクのふりふり衣装を着て、ホウキで飛びまわっているでは ありませんか。青い空を。 「り〜かちゃ〜ん!!」 私は、呼びかけました 「ずっとホウキにのってると、お尻が痛くならない〜!?」 理香ちゃん(?)の動きが、かきっと止まりました。次の瞬間、こっちに向かって 猛烈な急降下。 「んなこと考えるのはこの胸かあああっ!!」 「ごめんなさああい!!」 「…ぅいいっ!?」 自分の叫びに驚いて、毛布をはねのけました。 …毛布? まわりをぐるりと見回すと、ここは見覚えのない部屋。ですが、なんとなく 初めてではないような。例えば、この妙に色気のないベッドは…。 (あ、ここ、びょういんなんだ…) なるほど、『謎はすべて解けた』というやつです。ところで、私はなんで 病院にいるのでしょうか? 腕に刺さった点滴針を眺めながら、また考えます。新たな謎。 ひとりの看護婦さんが、入ってきました。綺麗な看護婦さんです。ぐあいはどうかと訊かれたので、 「まあまあです」などと答えました。ところで、私はなんで病院にいるのでしょうか? 「あら、覚えてないの?」 覚えていません。 「あなた、デパートのテロだかに巻き込まれて、ここに運ばれてきたのよ」 なるほど。ふたたび『謎はすべて解け』ました。つまり私は、デパートの…。 ……。 「…しまったぁっ!!」 時計を見ると、あれから1時間と少し。よかった、まだそう時間はたっていません。 頭を振って意識をはっきりさせたあと、針を取り払いました。驚く看護婦さんにお礼を言って、 あのデパートを頭にイメージ。イメージ。イメージ…。 (…だいじょうぶ、いける!)
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VSロゼット一行&ヨコシマ『こんな死に方は嫌だ、やりなおしを――要求すんのはめんどいからヤメ』 >(レス番) 『のっぴょっぴょーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん!!!』 ヨコシマが唐突に、まるで意味の通じない奇声を発する。 対するスレイマンは 「ハ?」 と、随分と間の抜けた返事を返す。 発音こそいつもと同じものの、別段嗤ったと言う訳ではない。 眼前の男の行動が理解できず、聞き返しただけの話だ。 あまりにも理解を超えたヨコシマの行動にスレイマンの思考が、 一瞬、ほんの一瞬だけ停止する。 そして、その一瞬だけで充分だった。 意識の途絶えた一瞬が、呪力のサイクルの断絶を呼び、 溢れんばかりに精製された【卵】は、活性化する暇も無くぱちんぱちんと潰れていき、 呪力によって無理矢理稼動していた心臓、及び身体各部の器官は停止し、 <栄光の手>は、その像をぼやけさせたかと思うと一瞬にして消え去り、 上半身だけとなっていたスレイマンは、どさり、と地面に落下した。 そもそも、肉体的にはもはやただの屍体となった物をスレイマンの 驚異的な魔力と精神力によって無理矢理酷使していただけに過ぎない。 そしてスレイマンは今度こそ、『死んでいる死体』となって大地に転がった。
糞、無様だな。 >154の指定先は>151>153だ
>154 G.G.スレイマンVSロゼット一行&ヨコシマ 『ボーイ・ミーツ・ガール?』エピローグ その場の誰もが今、眼前で起こった光景を理解することは出来なかった。 現在の状況の原因となった奇声を上げたヨコシマでさえ、 ぽかんと大きく口を開けたまま、ただその場に立ち尽くしているだけだ。 ボロ屑の様になったスレイマンの屍体を中心として、あるいは数十秒、あるいは数十分 あるいは数時間、あるいは永遠とも思えるかのような永い永い静寂がその場を支配した。 その静寂は空間の軋む音――<経>の開通する音――によって破られることとなった。 <経>を通過し現れたのは四体の黒い人影。 ―――ブラックロッド。 それは人の形をした秩序の象徴。 四人の黒い男は完全な同期を取りながら、奇妙なステップを踏み、空間を越えて その場に立ちすくむ三人に向かって接近してきた。 やがて、黒い男の一人がフォーメーションを離れ、どこからともなく黒い屍体袋を取り出すと、 スレイマンの屍体を回収し、袋に詰めるとそれを厳重に封印する作業を始めた。 残る三人の男は正三角形のフォーメーションを展開しつつ、 ヨコシマの周囲を取り囲みそして一斉に口をきいた。 「「「 動くな、ヨコシマ・タダオ 」」」 「あっ、あの僕っ、何か皆さんのお気に触ることでもしたんでしょーか?」 引きつり、媚びた笑顔を浮かべつつ、ヨコシマが返答する。 ヨコシマの正面に立つ黒杖特捜官が、代表してこう答えた。 「我々は現在、著しい戦力の減少に見舞われている。君との交戦に よって<コードΩ>を素体とする特捜官を失ったことは大きな損失だ」 次いで、ヨコシマの右側の男が言葉を繋いだ。 「よって、君には我々と共に付いてきてもらうこととなる。 <コードΩ>の抜けた穴は補填されねばならない、少なくとも<Ω>の再生が終了するまでは」 最後に、ヨコシマの左側の黒杖特捜官が告げた。 「ゲアスによって、煩悩は一滴も漏れることなく活用され、君は優秀なブラックロッドとなるだろう。 28時間の精神拘束儀式と64時間の訓練の後に、任務についてもらうこととなる」 「いきなり出てきて勝手なこと抜かすなぁぁぁッ! 俺の、俺の意見は無視ですかっ?!」 ヨコシマは必死の表情で黒い男達に反論。何しろ自分の人生がかかっている。
>156 「ちょっっ、そっ、そのひと、一応私たちを助けてくれたんですけどっ!」 『一応』の部分をやけに強調しつつ、少女は、彼女から見て右側のブラックロッドに詰め寄る。 対する黒い男は、感情らしき物を一切廃した表情と口調でこう答える。 「しかし、罪は清算されねばならない。彼――ヨコシマ・タダオは我々の調べのついている限りで 32件の女子大への不法侵入、並びに猥褻、覗き行為、次いで、67件の女子高への不法侵入、 並びに衣類の窃盗、覗き行為、そして、2件の修道院への不法侵入及び覗き行為に関与している」 『修道院』と言う単語を耳にしたとたん少女の表情は、ぴしり、と硬直した。 しかし、すぐにとびっきりの笑顔に変えたかと思うと、ヨコシマに向かってこう言い放った。 「えーと―――ヨコシマ、さん? じ ゃ あ 、お 勤 め 頑 張 っ て ね !」 「いっ、嫌やぁぁぁあっ! そんな危険な職業に就いたら命なんかいくつあっても 足らんやないかぁぁああっ! ねーちゃんがっ、世界中のねーちゃんが俺を待っ てるんじゃぁぁあっ! 許してッ! 後生やからカンニン、カンニンやァああぁっ!」 涙をだくだく流しつつ、激しい抵抗を見せるヨコシマに向かって、 3体のブラックロッドは声をそろえてこう言った。 「「「ヨコシマ、オリヒメとは何だね?」」」 再び呪式発声。しかも三重唱。トラウマを突きつけられたヨコシマは、 悲鳴を上げつつ完全に硬直した。 そして、カチカチに固まったヨコシマを中心にすえ、3人のブラックロッドは 【馬鹿歩き】のステップを踏み、<経>を通過すると、ヨコシマと共に公安本部へと帰投。 最後に残った特捜官も既にスレイマンの屍体をパックする作業を 終えており、少女に向かってこう告げた。 「今回のことは我々のミスだ。貸しにしておいてくれてもかまわない。 この件に関するマグダラの物的、人的被害はケイオスヘキサの公安局に請求してくれたまえ」 そして、屍体袋を担ぎ上げると、あの奇妙なステップを踏み、あっという間にその場から消えた。 「まっ、待ちなさいよ、悪いと思ってるならお詫びの一つも言ってから帰りなさい、ムキーッ!」 「まあまあ、とりあえず落ち着いてよロゼット、ね?」 「ああ、もう、こんなことならあの覗き魔、もう、2,3発殴っとけば良かったわ!」 「だから、落ち着いてってば」 「うるさいわねっ。 とにかくっ、アンタもっ、私のこと心配させたからおしおきっ!」 「なっ、何でそうなるのさ?!」 そして、騒ぎの終わった通りにはいつまでも、いつまでも 少女と黒い少年の掛け合いが続いたとさ。 おしまい?
魔 像 の 十 字 架 麻宮アテナを狙う『鬼』 >152 麻宮アテナが昏倒してから時間的に前後する― 自らの一部と化した内部の獲物を消化吸収し尽くすのにそれほど時間はかからない 変身を解いてデパートから分離すると衆人環視に降り立った 次に何をしたかと思えば、上着の裾を両手で引っ張ると大きく歯を見せながら笑い、 デパートの崩壊のタイミングにちょうど合わせて 大きく見得を切ったのだ 「絶・好・調!」
鈴鹿御前 vs パンテーラ(M) 『鬼の剣 豹の牙』 >144 パンテーラを捉えようとした大通連が、堅い手応えに阻まれた。 女の袖口から飛び出し、刃を防いだのは、奇妙な黒縄だった。硬度と柔軟性を併せ持った、奇抜 な武器。 その縄が、大通連を絡め取らんと迫る。 だが、縄が巻き付いたのは大通連ではなく──虚空より現れた、人のそれより遙かに太く、逞し い腕だった。 そのまま、頭が、胴体が、脚が、姿を現す。その姿は、まさに巨大な鬼。 常に私に付き従う絶対忠実の使鬼、それが、この鬼の正体だ。 使鬼に命じる。 その怪力を以て、女を腕に絡まる縄ごと引き寄せよ、と。そして、体勢が崩れたところを、大通連で胴を薙ぐ。 この連携──防げるか?
>26章558
http://users.hoops.ne.jp/kf23d/kudoraku.html ――闘争の纏めhtmlだ。
一切合切を焼き尽くす白炎が、絶叫すら飲み込んで雄牛を押し包んだ。
肉の焼ける匂いが充満する。熱量の中にその姿を溶かし――漆黒の雄牛は、その姿を捨てた。
全ての生命を奪い去る聖瀞の炎の中、黒の痕跡は完全に消失して――
――白の内側で、黒が膨張した。
突如として、白の火柱の中から黒い火柱が膨れ上がる。
混じり合って巨大化した灰色の瀑布が、急速な勢いで月夕を染め上げる。
遥か上空の大気すら焼き焦がし――遥か夜の頂上で炎の渦は離れ、一対の巨大な火球へと姿を変えた。
月明りすら飲み込む黒の火球と、月明りよりも眩い白の火球――二人は上昇と下降を繰り返しながら、
闇の中で衝突を繰り返す。
数度目の激突――包み込むように広がった漆黒の波が、完全に白を飲み込んだ。
白の痕跡を消し飛ばし、生物の様に勝鬨を上げて蠕動する火球が、
――内側から炸裂する、無数の光の粒に四散させられた。
夜の闇に白の曲線を描き、無数の光球が四方八方から黒の光球を挟撃する。
無数の光球と化した白炎は、個々の意思を持ったように飛び交いながら黒の炎を貫き、弾き、夜の闇へと還元しながら
光の尾を引いて空を駆け回る。
四散した黒は霧の様に凝縮、無数の黒の火球となって、再び白の元へと駆けた。
衝突。破壊。粉砕――互いを貪り合う相克する光の粒が、殺意と燐火を撒き散らして接触を繰り返す。
無数の光球が、一際大きく上空で弾けた――それは、飽く事も無く続いたダンスのラスト。
大地に降り注ぐ無数の光球が、一点に収束した。巨大な光球は徐々にその輝きを収めて行く。
――血に汚れ、炎に焼かれ、異臭に包まれる土に両手を付いて、青年は荒い息を繰り返す。
ただ、憎かった。それは宿命であり必然であり、ソレを殺す事は一族のサダメだった。
喧伝される伝承を知った訳でもなく、誰かから伝えられた訳でもない。
どんな吸血鬼を引っ張り出しても、自分にとってコレ以上の脅威は無く、コレ以上憎む
者も無い。世界中の魔を殺し尽くしても、コイツが生きていては駄目だと言い切る自信がある。
――血が、叫ぶ。
ブチ殺せ。
コイツだけは―――――確実に。
ジャッジ・デスvsン・ダグバ・ゼバ >81 突然、ジャッジ・デスの躯が炎に包まれた。 「うおォォォォ!?」 火を着けるわけでも、火を放つわけでもない、対象を構成している物質そのものを発火させる、 <グロンギ>の長の恐るべき異能の力だ。 通常の生物ならば、のたうち回ってたちまちのうちに死を迎えることだろう。 しかし、ジャッジ・デスは生物ですらない。 死せる肉、虚ろな骸を操る、殺意と狂気に満ちた悪霊を止めるには、この炎ではまだ足りなかった。 「法をッ!正義をッ!邪ァァ魔できるものかァァァ!」 ジャッジ・デスは動く松明のような姿になりながらも、赤い血に汚れた白い姿に向かって、駆け出した。
【壊れた音色】 七荻鏡花 vs 遠野志貴(死徒) 導入1「邂逅」 それは、凍てつくような冷え込みをみせた、とある冬の夜の出来事。 その日は、新たな道を切り開くための戦いに来ていた。 その日は、いつものように「光狩」と戦いに来ていた。 アルトルージュの手によって死徒化されてから数年、流水を克服した遠野志貴は 自分の戦いを始めるための第一歩として、「反転」してしまった遠野家の遠縁の者を 狩りに来ていた。 秋葉の依頼とかそういう事ではなく、主治医の時南のツテをたどって受けた仕事だった。 一方、七荻鏡花はいつものように「光狩」と思われる人物を倒すために、仲間と共に その人物の屋敷に侵入していた。 二人にとって誤算だったのは、その人物が奇妙な方面に用心深かったことだ。 自分を守るために使ったのは、大小さまざまな罠だったのである。 結果、遠野志貴は見取り図を記憶したはずの屋敷の中で、自分がどこにいるのかを把握 できなくなった。七荻鏡花は仲間とはぐれてしまった。 二人が出会ったのは、そんなときだったのだ。 二人は、奇妙に大きな部屋の向かい合うように配置されたドアを、同時に開いた。 「……」 「……」 にらみ合う二人。しかし、同時に二人は警戒を解いた。 待ち伏せするならもっと器用にやるはず、お互いにそう思ったのである。 相手を警戒させないよう、志貴は慎重に話しかける。 「えーと――やっぱりここの主が目標?」 「――そうね。あなたも?」 「そういう事。仕事でね」 「ふぅん……仕事、ね」 相手が戦闘態勢をとっていない事に、お互いが安堵する。 「ちょっと、提案していいかな?」 「何よ?」 「一緒に行動した方が、生き残れる確率は上がると思うんだけど」 「……そうね」 ちょっとだけ考えると、鏡花は了承した。 「ただ、アタシは仲間がいるから、その仲間と合流するまでよ。いい?」 「ああ、それで構わない」 そこで鏡花は、あることに気付いた。 「そういえば、名前を聞いていなかったわね。アタシは鏡花。七荻鏡花よ」 「ああ――俺は志貴。遠野志貴って言うんだ。よろしく」 ――結局、鏡花は仲間と合流できずに、志貴と屋敷の主を倒してしまった。 そして二人は、その屋敷にほど近い、小さな公園に出る。 「じゃあ、ここでさよならだ」 「そうね。さようなら」 別れの言葉を交わし、同時にきびすを返した。 再び会うことはないだろう――そう思いながら。
【壊れた音色】 七荻鏡花 vs 遠野志貴(死徒) >162 導入2「鏡花」 遠野と別れてすぐ、急いで屋敷の方に戻る。 はぐれちゃったいずみたちと合流しなきゃね。 屋敷まで戻ったアタシは、周囲をぐるりと回る。 ……さすがにもう一度中に入ろうという気は起こらない。 ちょうど裏門のあたりで、仲間の一人、祁答院マコトを見つけた 向こうもアタシを捜していたらしく、こっちに駆け寄ってくる。 「無事だったか、七荻」 「ええ……マコトだけ? いずみたちは?」 「嬢たちなら、中だ。お前を探しに行った」 「あちゃあ……」 悪い事しちゃったな、きっといずみたち、心配してるんだろうな。 こっちを心配して、大慌てで行ったに違いない。 「それはそうと、あの光狩、お前一人で倒したのか?」 「もちろん……と言いたいところだけど、協力者がいたのよ」 「協力者?」 訝しげな顔のマコトに、遠野のことをかいつまんで話す。 ま、少々の誇張は入ったけどね。 ところが、話を聞くマコトの訝しげな顔は変わらない。 それどころか、苦悩するかのような表情に変わって行く。 「……遠野、志貴といったか」 「ええ、そうだけど?」 はっきりしない態度に、少々じれったさを覚える。 「一体なんなのよ!」 「……ソレは敵だ」 ……一瞬、思考が真っ白になる。 あの、遠野が、敵? 驚愕するアタシを見ながら、マコトは言葉を続ける 「遠野志貴は死徒だ。光狩同様、人に仇なす怪物。我ら『火者』の敵」 マコトの声が、遠く聞こえる。 否定したい、だけどできない。 だって、アタシはその言葉が真実だと『悟って』しまったから。 その後、どうしたのか、覚えていない。 いずみたちと合流した事も、帰途に着いたことさえもあやふやだ。 そして、夜が来る。 満天の月の光が地上を照らす中。 あの日別れた公園で、アタシたちは再会した。 ――――背中を預けた友としてではなく、殺し合う敵として。
>163 【壊れた音色】 七荻鏡花 vs 遠野志貴(死徒) 導入3「志貴」 次の日の夜、俺に仕事を紹介してくれた時南先生のところへ行った。 行く前に、報酬がしっかりと払われた事は確認してある。 行ったのは、仕事の報酬がちゃんと支払われたお礼のつもりだった。 お礼を言った後の第一声は。 「ワシは何もしとらんぞ」 だった。 「ちゃんと報酬が出る仕事を紹介してくれたじゃないですか」 「それはお前の父親に感謝するのだな」 「……父親?」 「『七夜』の名前はいまだに有効、そういう事だ。何にせよ、おまえさんは 一人で仕事をこなしてきたのだ、もっと自信をもつといい」 「それなんですが、俺一人じゃないんです」 俺は七荻さんと一緒に戦った事をかいつまんで話した。 話を聞き終わると、時南先生は大きくため息をついた。 「その者は敵じゃ」 「敵!?」 裏返った声をあげてしまった。 「七荻鏡花は、能力を持ち、夜族を狩る『火者』という集団の者。紛れもなくおまえさんの 敵じゃ」 「……」 その後のことはあまり覚えていない。 勝手に「仕事」をしたことを秋葉に怒られたような気がするし、翡翠に悲しまれた気も したし、琥珀さんに注意された気もした。 俺はただ呆然としながら過ごし、朝が近付いたので寝た。 そして翌日。 漠然とした期待と、目一杯の不安を抱えて、俺は小さな公園を訪れた。 一昨日よりも寒く、一昨日よりも空気は凍るほどに透き通っている。 そんな空気を通り抜けた、街灯よりも明るい月明かりに照らされた公園。 熱い缶コーヒーを手でもてあそびながら、俺は待っていた。 確信があったわけではないけど、そんな気はしていた。 ――――静かに現れた七荻さんは、俺に話しかけてきた。 「こんばんは、いい夜ね、志貴」
>164 【壊れた音色】 七荻鏡花 vs 遠野志貴(死徒) 導入4「逢瀬(1)」 挨拶されたので、律儀にも志貴は挨拶を返した。 「ああ、こんばんは。月が綺麗な、いい夜だ」 「そうね。冬空って、月が綺麗だから好きよ」 穏和に応じる鏡花。しかし、少し意地悪な笑みを浮かべる。 「昨日もここに来てたんだけど、いなかったじゃない。探したのよ?」 「ごめん。俺にもいろいろあってね。お詫びに缶コーヒーでも買ってくるよ」 「そうね。なるべく熱いヤツがいいわね。ここ、結構冷えるから」 「わかった。ちょっと待ってて」 そういって、志貴は近くの自動販売機から熱い缶コーヒーを買ってきて、鏡花に渡した。 お互いに缶コーヒーを少し口にしたところで、志貴が切り出す。 「最初に会ったとき思ったんだけど、七荻さんを――」 鏡花が志貴の言葉を遮った。 「待った。こっちが志貴って呼んでるんだから、あなたも鏡花って呼んでいいわよ」 「それじゃ、遠慮なく。俺、鏡花をどこかで見た気がするんだ」 「ん? ああ、――――のCFに出てるからね。それでかしら?」 「なるほど、どこかで見た気がするわけだ。最初は妹の友達かと思ったんだけど」 妹、と聞き、興味津々といったふうに鏡花が尋ねる。 「へぇ、妹さんがいるんだ。ねぇねぇ、どんな子?」 「……美人だけど、素直じゃなくて、俺によく小言を言ってくるんだ」 困った表情を浮かべる志貴に、鏡花が意地悪く言った。 「ふーん。でも、どうせ志貴が色々心配かけてるからじゃないの?」 鏡花が小悪魔のような笑みを浮かべる。 「小言は言われてるうちが花よ」 「……まったくだね。でも」 今度は志貴が意地悪な笑みを浮かべた。 「どうせ鏡花も心配をかけてる相手がいるんだろ?」 「ん。まぁね。姉さんには、心配かけてるかも、ね……」
>165 【壊れた音色】 七荻鏡花 vs 遠野志貴(死徒) 導入5「逢瀬(2)」 そこで、会話が途切れた。 凍てつくような月の光の中、静寂があたりを支配する。 「やっぱり、いるんだな。そういう相手が」 会話を再開したのは志貴だった。 「そして、そういう相手のために、俺達は生きて帰らなくちゃならない」 「ん……でも」 鏡花が応じる。 志貴がそれを受けて、鏡花が口にしなかったことを言葉にする。 「生きて帰れるのは俺達じゃなくて、俺か鏡花のどちらか」 「そうね……ああ、缶コーヒー、ありがとね」 鏡花は頷いた。頷きながら、鏡花は武器であるチロを構える 「じゃ、始めよっか」 「ああ……」 志貴は、眼鏡を外しながら頷き、ポケットからナイフを取り出した。 戦いの始まりを告げるように、『七つ夜』の銘が刻まれた刃の部分が飛び出したときの パチンという音がした。
>160 名無しクルースニク対名も無きクドラク 憎いわけではなかった。奴等との戦いは最高だったが…… 俺の内にあったのは絶望――――そして俺を造りし者への反逆。 クルースニクとクドラクの戦いは必ず同じ結末を迎える。その様に造られたから。 俺が戦い続けるのは定められた法を覆すため。 ――――下らない結末はもう沢山だ!! 意識が覚醒する。 ――――目の前にはクルースニ……ク!? 一気に目が覚めた。反射的に後ろに飛びずさ……脚がもつれてコケた。 チッ、体が重い……やりすぎたか。 変身してる間は意識がトンじまってるから何があったかは覚えていねぇが…… ――――相当派手にやったようじゃねぇか。 体が重い、意識がハッキリしない、再生すらロクに効かない。 だが、それは野郎も一緒だ。ならば――――後は一発勝負。 俺は懐から銃を取り出す。TT-33トカレフ。 別に銃に拘りはねぇ。ただ、野郎よりも早く……それを求めたらこれに行き着いただけだ。 弾は7.62mm……弾速は速いが威力はない……だが、死に損ないの野郎の脳味噌ぶちまけるにはこれで十分。 銃口を野郎に向ける。トリガーに指をかける。 「名残惜しいがこれで最後だ。祈りは済ませたか? なら――――Good Bay」 最愛の兄弟に満面の笑みを浮かべて別れを告げる。 ――――これが、最後だ。
【壊れた音色】 七荻鏡花 vs 遠野志貴(死徒) >165>166 ……ナイフの刃が飛び出す音が聞こえた。 それよりも僅かに早く、チロを変化させる。 「二翼よ、弓となれ!」 その姿は、白い弓。 そしてつがえられるのは、光の矢。 間髪入れずにそれを放つ。 でも、志貴の身体能力なら、せいぜい牽制にしかならないだろうけれど。 目的が牽制なのだから、まあいいんだけどね。 まるで舞うようなステップで、距離を取る。 「鬼さんこちら、手の鳴る方へ……ってね」 近距離でまともにやりあったら、志貴に分がありすぎる。 まずは距離を取らなきゃ!
>152 VS怪獣 つつがなく、現場に到着。相変わらず混乱の渦中にあるようですが、パトカーが何台か 到着して、群衆を近づけないでくれているようです。ありがたいことです。 警察屋さんが近寄ってくるのを手で制して、怪獣の本体を探します。 あの触手をもう一度相手にするのは嫌なので、デパート(だったもの)を外から透視して、 中の様子を探ります。下から順番に、少しづつ、少しずつ…。 「もしもし、ちょっとよろしいですか?」 警察屋さんの声に、透視を中断して振りかえりました。 (あっ!) 反射的に真後ろへの倒れこみ! その瞬間、私の顔ぎりぎりの空気が切り裂かれて、 額の髪を一本、風に散らせます。ひっくり返った勢いそのままで後転、間合いを離しながら 跳ね起きて相手を見据えると、『彼』の姿。あの怪物でなく、最初の人間の姿。 手には、ひとふりの刀。 (ふうううっ…) 左半身を引いて、じりじりと前に出ます。あれだけのことをやって、『彼』は今 なにを考えているのか。考える間にも、勁を繰り、パワーを精錬して…。
>161 ジャッジ・デスvsン・ダグバ・ゼバ 最高だ。 どうにかしてるよ、コイツ。 目の前で炎上しながら突進して来る男。 それを目の前に見据えながらも―――― 仮面の奥で、獰猛な笑みを作る。 最高に素敵な玩具と、踊ろう。 心行くまで。 両手の指を揃え、真っ直ぐに突進。 狙いは――――胸。 指を突き刺した所から一気に引き裂く。 想像するだけで失神しそうだ。 まだまだ、遊びはこれからさ!!
>167 「ハ――ふ、ハ――く、ハハハハハハハハハハッ――」 奴を――殺す力を。 今、この場で。 確実に――――この場で。 神経が震えている。極限まで疲弊した精神が、身体を動かすのを渋っている。 全く――笑える。バカ言うなよ、俺のカラダ。コレ以上の故障は勘弁だ。 ヒトとして最初から故障だらけなら――今位は、動け。今。この瞬間。この目的を成就させる為に なら、俺は命だって―― 震える足を膝立ちに、アキュライズされたオートマチックをショルダーホルスターから引き抜いた。 マガジン内は既にカラ。 複数の口径を詰めたポーチもカラ。マガジンもクリップも残ってない。グロックの銃身は熱で鈍り掛 けているし、リボルバーに合う弾もカラ。……全く――何とも。最高に痒い所にだけ手が届かない。 自らへの嘲笑を浮かべ、青年はポケットに手を突っ込んだ。 「ここまで来て――ソレは無いよな」 震える指先が必死でポケットを探る。焦りが行動を阻害する。落ち着け、今は――今だけは。 視線を闇の奥へと向けたまま、指は必死でポケットを探る。 指先に冷たく触れる、狂熱を冷ます真鍮の感触。一発だけ――残っていた。シルヴァジャケットの ホローポイント大口径。 ――今の今まで続いた下らない螺旋を、ココで完全に破壊する。 疲弊した理性と本能が、体力と精神力の限界を告げていた。互いに枯渇し切った生命を吹き散ら すには、もはや22口径ですら事足りる。 荒い息を吐きながら、口元には狂笑を浮かべて――歯の隙間から搾り出すような笑声は、自分の 耳にまで届いた。 「――は――ハハハハッ――はぁ――コイツで、はぁ――幕引きだぜ」 声が届いているのか、解らない。 マガジンをリリースして、震える左手で握り締めた。口に接触してブレる薬莢がカチカチと泣き喚く。 ――クソ――あぁ、イイから今だけ大人しくしろ。後からブッ壊れても構いやしないから。 ゆっくりマガジンへ押し込んで、グリップに叩き込みながらスライドを引いた。地に触れるほどに下げ られたマズルが、静かに起き上がる。 一発――それ以上は無く、しかし、それ以下では無い。 だから、一発有れば充分だった。
魔 像 の 十 字 架 麻宮アテナを狙う『鬼』 「よう」 街で顔見知りに声をかけるように気楽な口調で話し掛ける 右腕に持った刀を頭上へ変形上段に構えると、 その刀に何やら透明な物が吸い込まれていく 大きく気を吐き、変身せんとした!
ラヴァvsギーラッハ 導入 紅の剣士ギーラッハは、黙々とその時を待っていた。 風は冷たく、空気は乾燥している。 もう、五月だと言うのに辺りの木は丸裸。 眼前にそびえ立つ真紅の鳥居は、己の鎧よりも紅く、 奧に佇む社(やしろ)は、己の牙よりも白い。 (気味が悪い場所だ……) とは、思わない。 そもそもこの男、風景など気にも留めていない。 いや、彼は恐らくこの地が捨てられた神社という事すら気付いていないであろう。 今の彼に取って、この場所とは「奴を待つ場」でしか無いのだ。 奴が現れるのであれば、地獄の門であろうと待つ。 逆に奴が現れなければ、極楽浄土だろうと興味は無し。 奴が現れるか、否か。 それが彼の全てであった。 西洋神魔ラヴァ――――必ず、討つ。
>171 霞む視界の中で、黒い影が起き上がる。疲弊が有り有りと見て取れる、緩慢な動作。 ――条件は、五分。 意識は限界。朦朧とする闇の奥で、黒衣がマズルを向けて来る。 ゴムを巻いたグリップを絞るように握り、右手に被せるようにトリガーガードへと左手を添えた。 照門と照星の一直線上、自分と全く同じ姿勢で同じ行動を起こす黒衣の姿。 2日前に聞いたブルースが頭の中を通り過ぎる。死んだ恋人を抱き締める男の歌。口付けを交わすフレーズ。 最後のフレーズ。愛しい人との決別。 ――受け取れ。 十何年分の全てを。全ての記憶を。全ての想いを。俺の声を抱いて――逝け。 「終わりだよ――コレで、本当に」 呟く。 刹那、絡んだ視線。 そこに意味は見出せない。仮に有ったとしても――もう、それはどうでも良い事だった。 交すのは殺意だけ。互いを認識する要素は実にシンプル。 だって――俺もアイツも、誰よりも互いを理解している。 二対の黒の瞳が、闇の奥に互いを捉えていた。 白と黒の一対のマズルが、互いを照準する。 互いの人差し指が、トリガーに触れる。 全く――同時に、 ――終わりだよ、クドラク。 闇を払ったマズルフラッシュは呆気無いほどに一瞬。 刹那の輝きを振るわせる、乾いた銃声。 硝煙を引いた空薬莢がアーチを描いてゆっくりと――静かに、血に汚れた土の上へと、音も無く落ちた。 高く、遠く、深遠に――輝きを失わないヘカテーだけが、下界を睥睨して嘲っていた。
>173 ラヴァvsギーラッハ 導入 ずっと、ずっと憧れていた。 武人とはかくありたいものだ、と常に思っていた。 彼の戦績を聞く度に、身体に奮えが走った。 己が武功をあげ、賞賛、讃えられる度に 「……まことの武人とは、あ奴のことよ」と思い、天を見上げた。 心の支えですらあった。 ――――――――尊敬していた。 「馬鹿な!? あり得ぬ! あの御方に限って……絶対にあり得ぬ!」 蝋燭の明かりしか無い部屋だが、居座る二人の男に取っては十二分なものだった。 むしろ、紅の騎士が放った部屋を揺るがすほどの怒声のほうが、よほど不自由なものである。 そんな顔をしながら、策士ナハツェーラーは嘆息した。 言葉は綴らない。もう、言うべき事は全て言った。これ以上は悪戯にギーラッハを怒らせるだけだ。 「ラヴァ殿が裏切りだと!? そんな……あり得ぬ! なぜだ!?」 ギーラッハが取り乱していることは本人にも分かっている。 だが、今取り乱さずにいつ取り乱す? 西洋神魔最強の武人として多くのものから畏怖され、羨望の眼差しを受け続けた男……ラヴァが、 まさか盟友とも言える友を斬り捨て、続くラヴァを想い日本に訪れた親友達をも悉く斬り伏せた。 そんなことが果たして果たしてあり得るのであろうか? ナハツェーラーからその報を受けたとき、ギーラッハは信じなかった。 そこでラヴァを疑うことは、それはラヴァという男に対しての侮辱だ、と思ったからである。 だが、こういう時の策士程信じられる者はいない。 続く、 「お前と同じだ、ギーラッハ。奴も狗となったのだよ」 という言葉で、ギーラッハの中の何かが音を立てて崩れ落ちた。 ラヴァの名は、西欧の不死者であれば、知らぬものはいない。それ程の男だった。 気高き心を持ち、それ以上に冷徹な力を持つラヴァは、同じ西欧武人達の誇りですらあった。 言うなれば、アレクサンドル大王やジャンヌ・ダルクのようなものである。 そんな男が……友を斬り捨てるなど……。 それも三銃士のような形だけの友では無い。気高き「絆」によって結ばれた莫逆の友を、である。 策士ナハツェーラーは、部屋を出る前に言葉を残した。 「下手な気は起こすなよ。神魔の監視者美夕の名はお前も知っているだろう。 あれはリァノーンと同じ様なものだ。私達が手出し出来るものではない」 策士にしては珍しく、本心からの言葉であった。 だが、ギーラッハには届かない。単語の羅列としても聞こえもしない。 今、彼の心にあるのは、武人としての「義」を捨てた英雄への憎しみだけだ―――― 紅の騎士ギーラッハは、西欧の武人ラヴァを斬ると心に決めた。
>168 【壊れた音色】 七荻鏡花 vs 遠野志貴(死徒) 鏡花は手にした武器を弓に変化させ、光の矢を放ってきた。 同時にバックステップで俺との距離を離す。 即座に横に跳んで、まずは光の矢をかわす。 横に跳んで着地した際にたわめた膝を、まるでバネのように全力で 跳躍への力へと変えた。 鏡花の『死の線』は既に視えている。 しかし、手にした武器は意志を持っているようだから、単純には狙えないだろう。 俺は、跳躍の角度を地面すれすれにして跳んだ。 着地したのは鏡花の目の前。 バッタのように這い蹲りながら、俺は鏡花の足に向かってナイフを振るった。 狙うは左右の膝のあたりにある『線』。 まずは足を止める。 そうすれば、あの武器も関係なくなるはずだ。
紅の騎士対黒衣の騎士 >173 >175 ――私は、ずっと渇いていた。 西洋神魔界きっての武人、という勇名も、私には何の価値もなかった。幾多の武勲も、 ただの重荷でしかなかった。他の同族が私の噂をするたびに、溜め息ばかりが出た。 交易商人に身をやつし、暗黒大陸に渡りかの地の魔神どもを何体となく屠っては西洋 神魔の橋頭堡を築いたこともあった。 戦っている最中こそ強者との命のやり取りを楽しんでいたが、終わってしまえば空しさ だけが残った。 命を賭けて戦っているその瞬間以外に、私は生きている証を感じたことはなかった。 親友であるレムレスの倒錯への誘いも、美しい従妹・カールアの愛の囁きも、私には 現実味を持って受け止めることが出来なかった。 ――硝子一枚を隔てた、どこか別の世界の事に思えていた。 そんなある日、日本へ渡れとの命を受けた。日本神魔界の監視者を目覚める前に葬り去り、 日本をも西洋神魔の版図にせよ――と。 何でも、相手はまだ年端も行かぬ、ただの人間同様の少女だ。ただし、覚醒してしまえば あらゆる魔にとって致命的な技を使う、という。 だからこそ、万が一のために私が選ばれたのだ。 ―またつまらない武功が増えるだけだ―― しかし、私はあの少女の金色の瞳に魅入られた。彼女の牙が私の喉に突き立てられた 瞬間、私の脳裏によぎったのは失敗の後悔ではなく、初めての充実した感情だった。
>177 それ以来ずっと、私はその少女の傍らに居る。 何も知らない少女に、戦いの技と吸血の宿命を教え、使命を果たす立派な監視者 に育て上げた。 いつしか、少女はわがままで気まぐれで冷酷な私の主人となった。しかし、私は彼 女の傍らにいるその時間が何よりも幸せだった。 一度はそのくびきを離れたが、結局私は再び彼女の「もの」になった。 ―そう、それでいいのだ。 そして。 **************************************************************** 朽ちかけた鳥居の上に、闇から湧くように現れた白と黒の主従。『監視者』 美夕とその従者ラヴァ。 ***************************************************************** 目の前に、二本の刀身を持つ剣を手にした男がいる。噂は聞いていた。 『紅の騎士』ギーラッハ。 元々は人間であった吸血鬼とはいえ、その誇り高い戦い振りは純血の魔族にも 一目置かれていた。 美夕を討ちに来たのか、そう思った。しかし、その眼は射るように自分だけを見て いた。そうか、この騎士は私を討ちに来たのだ。 監視者の走狗になり果てた、かつての勇士の残骸を屠りに。 ならば―― ***************************************************************** ラヴァは、顔を覆う仮面を外す。監視者に仕えし従者の証、裏切り者の烙印。 仮面の下の端正な顔、その瞳は悲しみの色をたたえていた。 美夕は露骨に顔をしかめ、その手に炎の塊をかざす。 「何をやってるの・・・・!さっさとやっつけちゃうんだから!」 いつになくいきり立つ主人を軽く制して、ラヴァは地に降り立った。不機嫌の 極みのような顔で美夕は鳥居の上に座り込むと足をばたつかせる。 「――行きます」 ラヴァの両手の爪が、長く伸びて刃を形作った。
>173 >175 >177 >178 美夕はとても不機嫌だった。――なんでそうなの、心の中で毒づく。 ああいう時のラヴァは、自分の知らない顔をする。変に生き生きとして見えるのが余計に 腹立たしい。 ―あなたはわたしだけを見ていればいい、ほかの相手に感情を向けるなんて許さない― そんな独占欲が、美夕をますます不機嫌にしていく。 二人でさっさと片付けて、誰もいないあの場所で二人の時間を過ごしたいのに・・・。 「ああいう男の人の気持ちって、やっぱりよくわからないわ」
>174 名無しクルースニク対名も無きクドラク ――――遠くでサラサラと風が鳴る。 いや、音を立ててるのは崩れかけてる俺の身体か。 意識が消えかけてる。立ってるのか倒れてるのかすら分からねぇ。 どうして? 決まってる。野郎の弾が当たったからだ。 野郎? そうだ。クルースニクの野郎だ――――少しだけ意識がハッキリした。 俺は野郎と撃ち合って…… 野郎の弾は俺に当たった。遠からず俺は滅びるだろう。 じゃあ、俺が撃った弾はどうなった? クルースニクはどうなった? その答えはすぐに明らかになった。 乾いた土が音を立てる。ゆっくりと、だが、確実にこっちに向かって近づく音。 また――――敗れたか。 勝負はついた。だがそれに対しては何の感慨も浮かばない。 至極当然の結論だからだ。リンゴが上から下に落ちるのと同じくらい当たり前の話。 ――――正義は勝つ。そんなありふれた結論。 俺は……クドラクはそれをひっくり返すために足掻き続けてきた。 当然だ。この世の何処に滅び続けるだけの運命を受け入れられる存在がいるのだろうか。 たとえ何度滅びて、振り出しに戻っても足掻き続けなければならない。 無限に続くコンチェルト。それがクドラクとクルースニクの――――螺旋。 目の前に野郎が居るのが何となく分かる。崩れゆく俺を見て何を感じているのだろうか。 これで終わったと思ってるのだろうか? 全ての螺旋は断ち切られたと考えているのだろうか? ――――それは間違いだ。テメェの神様はそんなに優しくねぇよ。 テメェとはここでお別れだ。だけど、またすぐに会えるさ……そう言う風にできてるんだからな。 俺は片手を上げ、野郎に別れの挨拶をする――――BANG! ――――また、会おうぜ。 だけど―――こう思うときがある。 もしも、このまま滅びることができるのなら――――それは、なんて幸せなことなのだろう ――――と。
>177>178>179 vsラヴァ 武人ギーラッハの目には、怨敵ラヴァしか写らない。 ラヴァの一挙一動を油断無く観察する。 だが、その結果は散々たるもの。己の内に秘める怒りが増大するだけである。 黒衣の騎士はこうして眼前に降り立った。正々堂々一騎打ちである。 ギーラッハが此処に来た理由も、挑まれる理由も問わない。 ただギーラッハの瞳を見つめ、そこから彼の確固たる意思を見つけ戦いを決意した。 天晴れな武者振りである。武人という言葉を体現したら、このような男になるのであろう。 そう思わせるほどに流麗な動きであった。 (だからこそ、辛いのだ……! 憎いのだ……!) いっそ、外道の身に堕ちていてくれれば。 いっそ、監視者の犬畜生に落ちぶれていてくれれば。 ギーラッハは、何の躊躇いも無くラヴァを斬れた。 英雄の亡骸を哀れと思い、この手でその想いを両断させるだけで全ては終わるのである。 が、眼前に相対するこの男の何処が外道であろうか? 狗であろうか? 今、目の前にいる武人はギーラッハの知っている西洋神魔ラヴァである。 ギーラッハが武人として認め、最高の敬意を持っていた西洋神魔ラヴァである。 (それほどの男が……なぜ……!) 悔しさで、涙が出る。ギーラッハの心は裏切られた怒りで一杯であった。 だが、此処は戦場。 此処へ足を運んだのはラヴァの清々しい程の武者振りを確認するためでは無い。 (応、此処に己が立つ理由。それは――――ッ!!) 開眼。同時、周囲の枯れ木に激しいざわめきが起こる。 ギーラッハの身体の芯から噴き出した殺気が、周囲を圧倒したのだ。 その殺気に釣られるように一筋の閃光が、大きい、とても大きい弧を描いた。 大剣ヒルドルヴ・フォーク、ラヴァの間合い外からの渾身の一撃。 必殺の念を込められたその一撃は、ギーラッハの怒りを体現した一撃でもあった。
>180 ――――乾いた音を立てて、宿命の螺旋が砕け散る。 高い月明りが、ぬるい風と共に朽ち掛けた木を撫でていた。 血の臭いを混ぜ込んだ微風は、ただ、ゆるゆると世界を循環している。 全ての幕引きにしてはあまりに呆気無い――ただの一発の弾丸が、十余年にも及ぶ 苦痛の生の果てに漸く交差した運命を吹き散らしたのだから。 肉を削がれたこめかみを抑えて立ち上がり、青年はゆらゆらと歩み出す。 頭は何も考えてはいない。考えられない。疲労と昂揚と虚無感が入り混じった感情が、 爪先から頭頂部までを侵し切っている。 うつ伏せに倒れた黒衣の正面で立ち止まり、青年は崩れるように屈み込んだ。 「――なあ」 青年は問う。 「――これで、終わったんだよな」 答は無い。 倒れ伏す黒衣へと囁き、弾切れの銃口を向けた。 ガチン、と空撃ち一回。ふと、呟く様に、 「――バン」 答は、無い。 もし有るなら――この男は即座に起き上がり、言葉より銃口を向けて来るだろう。 青年は無表情に黒衣へと手を伸ばし、抱き抱えるように引き起こした。 「……答ろよ、オイ」 返答は、無い。 どこを見るでもない視線は瞼の奥に隠れ、左胸に穿たれた巨大な銃創は、明らかな死 を否定し難いレベルで表現している。 それは、誰の目にも明らかな滅亡。 ざあ、と。 掌の中で、崩壊が始まった。 ヒトならざる者の終焉。痕跡すら失せる消失。神に叛逆せし者の、恩寵無き最期。己の 出生さえ嘲うかのように、その体は人の形を失って行く。 ざああああ、と。 足先から抱えていた肩までが、衣服と共に灰と化して闇に溶けて行く。 虚ろな視線で、青年はその光景を見守っていた。 ――不意に。 「――な」 胸から上だけで支えていた腕が起き上がり、青年の鼻先へと人差し指を突きつけていた。 皮肉げに唇を歪めると、囁くような声で、 「――――――バン」 ――それが、本当の最期だった。 黒の双子を侵食する滅びは一気に加速した。笑みを浮かべる口から、髪の一房までも 灰と化し、抱いていた手には、ただただ乾いた灰が残るだけ。 さらさらと、命の残滓が掌から零れ落ちて行く。 掌の中、一握の灰となった宿敵を、青年はただ見下ろしていた。 さわり、と。 ぬるい風が、最期の黒の残滓を奪い去って行った。 「テメエは――最期まで」 言って、青年は苦笑した。 血が憶えていた記憶。白と黒の織り成す灰色の螺旋。 真に輪廻が砕けたのか、解りはしない。 今際に何を残すでもなく、黒の痕跡は灰と散ったのだから。 どちらかが滅びなければ終わらない。滅びても、再生しては繰り返す、永劫の輪廻。 いずれ訪れる破滅を、明日か今日かと待ち続ける毎日――死よりも昏い日常。どんな 結末にしろそこに決着を付けた事に、奴は笑えたのだろうか。 或いは―― 月影に照り輝くのは、白い影。 月――欠け行く月。白く清い月だけが、愉しげに輝き続けていた。
ジャッジ・デスvsン・ダグバ・ゼバ >170 揃えた指先が、炎に包まれた肉に突き立つ。 胸骨が砕ける耳障りな音が響き、肉体が薪のように燃える音と混ざりあった。 しかし、躯を貫くはずのその突きは、途中で停止を余儀なくされた。 ジャッジ・デスが無事なほうの腕で、ダグバの腕を掴んだためだ。 デスは腕を掴むと、その巨大な口を開き躯を前方に傾ける。 鋭い牙が、白い甲殻に覆われたダグバの顔に迫った。
>172 VS怪人 …来た、変身! 「させないわよっ!」 前と同じ、飛びこむように一気に間合いを詰める箭疾歩(せんしっぽ)。 相手の間合いに入る直前に。 両手を、ばちんと合わせました。纏ったパワーがぶつかって、 閃光が弾けます。一瞬の目潰し。一瞬あれば十分! 最後の一歩をじゅうぶんに踏み込んで、腰の回転を加えた右での突き。 その衝撃が消えないうちに、勁を発してゼロ距離打撃。さらに逆足の踏み込みで 肘を突きこんで。 「ふああっ!!」 左から虎爪掌! まったく手を引き戻さず、瞬く間の四連打。 これは、絶対に効いたはず…!
>183 ジャッジ・デスvsン・ダグバ・ゼバ 仮面越しに見えるのは気味が悪いほど、鮮やかに光る牙。 目の前に迫るそれを見てもさほど恐怖は感じない。 むしろ、血が熱くなるのを感じる。 そうだね、やられてばかりじゃ不公平だ。 遊びは両方が楽しまないと。 火花と血を撒き散らしながら、顔面に牙が突き刺さる。 ああ――――結構、痛いな。 仮面を突き破って突立てられた牙は額から血を流させ、視界を紅く染める。 濁った赤の世界。 正面に居るのはその世界に招待してくれる、素晴らしい玩具。 なんて楽しいんだろう? いいのかな、こんな贅沢して。 引き裂いた腕を戻し、両手を頭上で組み合わせる。 大槌にも似た形を作った腕が炎に照らされ赤く輝く。 打ち砕く鈍器が唸りを上げて、肩口に向かい振り下ろされた。
魔 像 の 十 字 架 麻宮アテナを狙う『鬼』 >184 肉の(と言っても地球にはない種類の肉だが)の焼ける匂いをさせながら 女の連続攻撃を喰らいながらも立ち上がった その耐久力、防御力は正にこの世のものではないだろう その表情は先刻から一向に変化しない 冷酷な笑みを浮かべ続けている 雰囲気が変わったかと思えば、空中へ飛んで左腕と一部融合した散弾銃から 女の頭上に00オートの雨を降らせる 弾切れなしのフルオート、さしずめマシンショットガンだ
>182 雑踏のノイズ。昼の光。変わらない――ヒトの街。 その日は朝から、瞼の上からでも網膜を射るような快晴だった。 「――それで、エノクもイリヤも、天使になったんだ」 「ひとが天使になったの?」 「ああ、そうだよ」 右手にパンの詰まった紙袋。左手には大量のペットボトル入りのビニール袋。 黒い衣装は人ゴミの中でも一際目を引いたが、胸元で揺れる十字が、それらの視線を平然と 受け流す要因となっている。 一人の少女を脇に連れた、一見若年の神父だった。 「どうすれば、なれるの?」 「そうだな――一生懸命、神様にお仕えすればね」 少女は首を傾けた。 「どうするの?」 「……頑張ればいいんだよ。自分にできる事をさ」 自分に――出来る事。頑張る。頑張った――俺は。 意識の覚醒は12時間前。白いベッドとシーツの中だった。 教会の人間に回収された荒地では、自分以外の何も無く――大量の血痕と残骸が発見された だけだったらしい。 つまり、自分は生き延びて、奴は滅んだ。それが、残された現実。 砕けた螺旋。途切れたメビウスの輪――全て、終わった。宿命と言う名の輪廻は、既に自分の 世界には存在しない。 寮母に言われての買い物、孤児院に向かう少女と合流しての帰り道。 ふと、自分を見上げる視線に気付いた。 「お兄ちゃん、元気――無いよ?」 「俺が?」 ――まさか。 そんな筈が有る訳が無い。身体と魂を縛り付けていた宿怨を漸く断ち切った。 もうコレ以上――何を迷うと言うのだろう。 「あのね、気付いたの、私が一番最初なんだ。この間からずっと元気ないなって」 ――どうして、そんな。 「そんな筈――――無いんだけどな」 苦笑しながら言って、 青年の脚が止まった。 視線を対向斜線の歩道に向けたまま、呼吸さえ止めてしまったように動かない。 アスファルトよりも黒い瞳は、向かいの雑踏の中の黒い瞳と絡んで停止していた。 「そ――」 ――そんな筈は。 背筋が、凍った。 周囲よりも一際背の高い、痩躯の黒衣。何よりも血の臭いを想起させるその姿は―― 「――!」 「あ、ちょっと、お兄ちゃん!」 両手の紙袋を放り出してガードレールに駆け寄り、車にクラクションを浴びせられた。 慌てて視線を正面に向ける。 走り去る車の波の向こうで、左手をポケットに突っ込んだ黒衣は、人差し指を伸ばした右手をゆっくりと 青年の胸の位置へと持ち上げて、おどけて銃を形作る。 「バン」 唇は――そう言ったように思えた。 巨大なトレーラーが一瞬視界を遮り――もう、そこには誰もいなかった。 とくんとくんと、巡り始める血液を感じた。血管が沸騰して行く。頭を羽毛で包まれるような、 どこかふわふわとした感覚。 ――一人で死ぬのは――イヤって事か。 何故だか――矢鱈に可笑しかった。
>187 足音に振り向くと、両手で紙袋とビニール袋を抱えた少女の姿。取り落とした荷物をごちゃごちゃに 入れ直したらしく、これ以上無いと言うほど重そうな足取りで青年へと歩み寄る。 「うぅ……荷物、これ、重いよお……」 「ああ――悪い。ホラ、貸しなよ」 うん、と少女が青年を見上げる。 「――あ」 「どうした?」 「お兄ちゃん、急に元気になったね」 「……そうかな?」 少女は頬を膨らませる。 「私、嘘なんて付かないもん。付いちゃダメってお兄ちゃんも言って、」 「解った解った――ああ、悪かった。そうだな、嬉しいのか――俺は。全く」 頬に手をやって、唇が吊り上がっているのに気付いた。 声を上げて笑い出したくなるのを堪えて――少女を抱き抱えてそのまま持ち上げる。 「わ。ちょ、ちょっとお!」 「一気に走るぞー、荷物――落とすなよっ!」 「わ、わわわわわっ!」 灰色の螺旋は途切れず――そう、まだまだ自分は、主の御許で戦う理由が有るらしい。 次は、必ず殺すから。 そう考えて――心が弾んだ。アイツはまた、俺と殺し合う。だから、次はちゃんと――目に見える形で。 「殺してやるからな――ハハハハハハハハハハッ!」 互いの事は、誰よりも解っている。だから、ソレは――絶対の約束。 昼の日差しの中、消えた筈の黒の残滓が――何時までも目の奥でチラ付いていた。 ――End→To be continued?
ジャッジ・デスvsン・ダグバ・ゼバ >185 強烈な一撃がジャッジ・デスの肩を打ち砕き、歪な形へと変形させる。 炎に包まれたまま、その牙に白い装甲の破片を食い込ませたまま、デスは床に倒れ伏した。 数秒間、動きを止めていたその躯が唐突に、地を這う蛇のように動く。 先程はダグバの顔面に突き立てた牙を、今度は右足首に深く沈めた。 足首に食いついたまま跳ね起きると、ダグバの躯を勢いよく廃液の詰まったタンクに叩きつけた。 外壁が裂け、再び流れ出す死の水が両者に降り注がれる。 しかし、この廃液はさらに強力な毒性を持っていた。
>186 VS怪人 (またショットガン!?) 空中から、狂った冗談のように速射される散弾。 ですが、こんどはこちらも! 「ええいっ!」 サイコリフレクター。あらゆる飛来物を跳ね返す光の壁。 さっきは客席への跳弾が恐くて使えませんでしたが、空から降ってくるのなら 跳ね返し放題。『彼』もたまには、撃たれる痛さを感じるべきでしょう。 でもまさか、このまま反射攻撃で倒せるはずがありません。 刀で接近戦を挑んでくるか、目標を変えるのか。 また被害者が増えるのは嫌なので、前者であってほしいところですが、 後者ならば私にとっては大チャンス…。 (私の、この嫌らしさ、なんとかならないのかしら…!)
名無しクルースニク対名も無きクドラク、これにて終幕だ。 つき合ってくれた兄弟に感謝。 で、これが今スレ分の纏めだ。 >160 >167 >171 >174 >180 >182 >187 >188
魔 像 の 十 字 架 麻宮アテナを狙う『鬼』 >190 またもや障壁によって遮られる粒弾 いや今度は遮られるどころか己に跳ね返ってきた ―だが、当たる直前でことごとく勢いを失い落下する 無限に弾込めしながら発射し続け、ついに障壁、いや反射壁の死角を見つけ出した 真後ろだ そこに散弾を操り、集中させる この間合いでは、さすがのあの女もなすすべなく終わりだろう・・ 悪くない狩りだった ひき肉と化したであろう屍を喰らうべく、 いまだに埃立ち、視界不明瞭な地面に降り立つ
>181 vsギーラッハ 間合いの外から、大きく振り上げての剣圧による一撃。 一瞬の構えで、ラヴァはそこまで読んでいた。だから、あえて一気に飛び込む。自身も、大鎌と いう扱い辛い得物を得意とするからこそ大きな武器を扱う相手の手の内はよく分かるのだ。 地を這うように飛び込んだラヴァの背後で、空気が爆発するような衝撃が走る。 この局面の読みは、私の勝ちだ。だが、まだこの勝負の先は見えない― ギーラッハの懐に飛び込むや否や、鋭い爪での連撃を繰り出す。大剣の戦いとは対極に、最小 限の動きで一撃のダメージよりも確実性と手数を稼ぐ。あえて見せつけるかのように。 受けるギーラッハも、すかさず剣を構え直してラヴァの爪を捌いて行くが、とにかく速さで押していく 戦い方に反撃の糸口を見出しきれない。 ラヴァもまた、確固たる基本の上に幾多の実戦を重ねたギーラッハの剣技の前に突破口を作れずに いた。こういう相手は、よほどのことがないと崩れたりはしない。かといって攻め手を止めるわけ にも行かない。さあ、どうする? 一見して凄絶な斬り合い。しかしそこにあるのは高度な読み合いだった。
>193 VS怪人 ちりっ。 ”それ”を感じた瞬間、サイコシールド展開。身体を完全に包み込む、 球形の障壁。 「後ろっ!?」 そういえば『彼』は、初戦で弾道をコントロールして見せたのでした。 今の今まで忘れていたのは、嫌らしいことを考えた罰でしょうか。 生存本能に一歩遅れて反応した身体が、地面に這いつくばると同時に、 ものすごい勢いで散弾が殺到してきました。障壁で弾けたそれがアスファルトを砕き、 その下の地面をも抉って激しい土煙。 『彼』が、降り立ちました。近寄ってきます。 視界が奪われても、私は大丈夫。残りの(特に6つ目の)感覚を働かせて、 相手の位置を掴み…。 (油断したわね…) 右手に閃く光の刃が、『彼』の左腕を宙に踊らせました。
魔 像 の 十 字 架 麻宮アテナを狙う『鬼』 >195 ―左腕を斬られた まだ半端者だった頃、今の自分と同じ奴に斬られた事を回想する― だがそれはほんの刹那、刀でそれ以上の傷を負わないように防ぐと 今落とされたばかりの左手を突き刺し、 女の顔面に投げつけ目くらましにした 左腕の切断面に刀の柄を差し込み、ショットガンを拾って背負う そして改めて左から袈裟懸けに斬り付けた
>196 VS怪人 投げつけられた左手(!)をこちらも払いのける間に、相手も素早く武装変更。 腕の切断面に柄を突き入れて襲ってくる姿は、ただただ脅威。 それでも腕を奪ったぶん、攻撃範囲はこちらが広くなり、しかも私は 双刀を使い慣れています。 刃がぶつかり合いました。本来『彼』と私の腕力には歴然たる差があるのでしょうが、 手首の動きもなく、不安定に固定された刀が相手ならば、当たり負けすることはありません。 落ちてくる刀を支える、右の刃。身体をひねりながら同時に。 「やああっ!」 腹筋を避けて鳩尾を狙う、左の刃!
魔 像 の 十 字 架 麻宮アテナを狙う『鬼』 >197 やはり左腕に融合させた刀は使いにくい しかしこの女、技が多彩であるだけでなく技量自体も中々の物 この光の刃も切れ味だけなら己が刀を凌駕している上に その剣術で圧倒してくる 膂力だけでは不利か 逡巡している合間にも女の刃が冴え渡る 胴を突き通る刃 臓器などやられた所で物の数ではないが、これは―? 「カァッッ!!」 苦痛を声に変換し漏らす 女の顔に牙を向き、更にその口の奥から牙がせり出す
>198 VS怪人 『カァッッ!!』 「くちいっ!?」 口の奥からさらに口! 理香ちゃんと一緒に見た、ホラー映画のように! 「…このおっ!」 跳ね上げた右足が、『彼』の顎をまともに捉えました。 そのまま地面に手をついて後方一回転する、背転脚。 (たしかに、あの口は恐い。恐いけど…) 離れたのは失敗でした。私はもう、ショットガンを使わせない間合いを維持しながら、 接近戦で少しずつ体力を削ればいいのですから。いまさら口がひとつ増えたところで…。 乱れた呼吸を整えて、再度接近を。今度は確実に…!
魔 像 の 十 字 架 麻宮アテナを狙う『鬼』 >199 ヤゴのような歯顎を口腔内に明快な音を立てて収納すると、 女へ無造作に歩み寄った 右の拳を女の顔の前に突き出す 顔は止めておこう 下へずらして指を開いていく 信管が作動し、爆風が炸裂する 右の手の平に仕込んでいたグレネードを爆発させたのだ この距離で使えば、本来なら死体も残らないだろうが・・
>200 VS怪人 出たと思ったら引っ込みました。 口が。 ゆらり。 気の揺らぎのまったくない、自然で無造作な動き。 ああ、私もよくやりますね。この動きは。 ちりっ。 シールドを張るのとほぼ同時に爆音。派手に吹き飛ばされました。 「う、ぁあっ、かはっ…!」 なんとか直撃は避けたものの、肋骨が何本か壊れたようです。 痛みに、頭を激しく殴りつけられます。呼吸のたびに吐き気と眩暈がして…。 (うっ…、ううっ…) せめて痛みだけでも止めようと、胸に手をあててショックを与え、 神経を鈍化させました。本格的な治療をするには先方の許可が必要ですが、 そんなものが降りるはずもありません。 なんとか痛みを抑えて。 私はようやく起きあがります。
>189 ジャッジ・デスvsン・ダグバ・ゼバ 音を立てて軋み、砕け散る骨の感触が腕に伝わってくる。 肉がひしゃげるこの感触。 ああ、何時感じてもいいなぁ、この感触は。 ――――? あれ、動かない。 おかしいな……もう壊れちゃったのかな? 一歩、踏み寄ろうとした瞬間に悪寒が走った。 スイッチが切り替わったかのように、活動を再開する奴。 相変わらず、ボロボロなままで動き回る姿はひどく現実味を欠いている。 足元に鋭い痛みが走ったと思った時には、もう放り投げられていた。 流れ出した液体が耳障りな音を立てて体の隅々に痛みを行き渡らせる。 「ハ、ハハハハハハハ!!」 抑えきれない笑いが溢れ出してくる。 楽しい奴だ。最高に楽しい奴だ! 毒液を振り撒きながら、脚を上げる。 頭を踏み潰しても、コイツはまだ生きてるのかな? そんな事をぼんやりと思いながら、脚に力を込め、叩き付ける。
ジャッジ・デスvsン・ダグバ・ゼバ >202 踏み下ろされた足が、ジャッジ・デスの頭を捉えた。 黒いヘルメットに踵が食い込み、後頭部が大きくひしゃげる。 ジャジ・デスは頭が完全に踏み潰される前に、ダグバの足元から転がり出す。 その牙の間には、装甲と肉片が挟まっていた。 炎で焼け焦げ、毒性の廃液で再び焼かれ、肩と肘の関節を破壊され、左腕を失い、 頭が歪んだ、この世のものならぬ凄惨な姿が立ち上がる。 「笑うか罪人よォォォ、快楽はッ罪悪なりィィ!判決、死刑ィィィ」 間接の砕けた腕が、悪霊によって増強された筋肉の力だけで無理に振るわれた。 鋭利な爪が、獲物に襲い掛かる蛇を思わせる動きと速さで、ダグバの首筋に伸びる。
前々スレ>468 天色優vs杉原悠(M) 「……ああ……」 喉元に突きつけられた指先にも構わず、杉原悠は言葉を紡ぐ。 「僕は、もう誰も……何も失いたくなかったんだ。それだけだ」 誰に聞かせるわけでもなく、ただ、ぽつぽつと。 「僕を、認めてくれる、みんなを……」 その身体に、ゆっくりと力が篭る。 「それだけなのに……どうして僕の邪魔をする!?」 叫びと共に、右腕が閃光のごとく走る。 レベリオンの筋力を最大限に生かした手刀が、天色の首めがけて迫る。
シは鬼 シは神 ――――古より伝えられし カミにして神にあらず オニにして鬼にあらず ――――シ 人間は 闇を畏れて鬼と呼び 生を求めて求めて神と呼ぶ
自己紹介 出典之欄 :吸血姫夕維 名前之欄 :那嵬 性別之欄 :男 種族之欄 :“シ”ノ血ヲ引ク不死人 獲物之欄 :銘モ無キ妖刀 必殺之欄 :“シ”ノ血ヲ用イシ妖カシノ技 趣味之欄 :大木ノ葉ニ包マレテ眠ルコト 将来之欄 :己ノ中ニ流レル時ハ無シ 一言之欄 : 『オレは夕維のお守り役じゃねー』 『オレの邪魔だけはするなよ。邪魔したら例え誰であろうと叩き斬るからな』 『大人しくしてろ。黙っている分には痛く無い』 以上也
前スレ>520 黒岩省吾対カーラ 〜闇と灰の狭間〜 輝ける網が、ガウザーの身に食い込む。 意識を飛ばす程の痛み、そして熱。 逃れようとする動きすら封じられ、 押し殺そうとした苦鳴が、荒い息となって漏れる。 ギリッ。 仮面の奥に、歯軋りの音が響く。 多くの物を失い、それと引き換えに手に入れた皇帝の座。 こんな所でそれすら失うわけには行かん。 そのガウザーの思考が、彼の左手を動かす。 雷の網をその手で掴んだのだ。 手を灼く激痛と衝撃を意にも介さず、声を上げる。 「はあっ!」 その叫びとともに、雷の網は引き千切られる。 次の瞬間には、ガウザーの剣が、肩口の辺りに構えられていた。 いつでも、最後の一撃を放てる態勢。 その態勢を取ったまま、ゆっくりと間合いを詰めていく。 次しくじれば、後はない。 必殺の意志とともに、暗黒騎士は歩を進めて行く。
>207 黒岩省吾対カーラ 〜闇と灰の狭間〜 カーラの眼前でガウザーが剣を構える。 必殺の、そして恐らくは最後の攻撃。 ガウザーは大きなダメージを受けている。余力など殆ど無いだろう。 だがそれはカーラも同じ事。 脇腹の傷は塞がることなく今も血潮を流し続ける。 その傷はガウザーと同等……否、その肉体が人間である分カーラの方が不利である。 カーラにも余裕はない。 一撃で決めなければならないのはカーラも同じなのだ。 『全ての物の源よ、万物を構成せし者よ、 我 汝等に自由を与えん、 我 全ての束縛より汝等を開放せん』 カーラが詠唱しているのは分解の魔法。 万物を原子レベルで分解するこの魔法ならガウザーすら葬り去れるだろう。 だがこの魔法は相手に接触しなければならない。 そしてガウザーはそれを許しはしないだろう。 傷ついたとはいえ異界の強壮なる戦士と、 出血によって大幅に運動能力が低下した人であるカーラ――――結果は明らかである。 それを承知で仕掛けたのか? 何らかの策があるのか? それに答える者はなく、ただ来るべき一瞬のための沈黙のみが空間を覆う。
>208 黒岩省吾対カーラ 〜闇と灰の狭間〜 策があろうが、なかろうが、ガウザーには関係ない。 それを動かす前に相手の命を――――――絶つ。 誰にも俺の野望を、止めさせはせん。 必殺の意志を持って、暗黒騎士は剣を振るった。 血に彩られた銀光が、空間を疾駆する。 風が絶叫をあげて、灰色の魔女の首筋へと剣閃が迫る。
>209 黒岩省吾対カーラ 〜闇と灰の狭間〜 ガウザーを狙っても避けられるのが関の山だ。 だが、わざわざ狙わなくても向こうからやってくる物があるのだ。 何処に来るかも分かりきっている。 ならば、それを狙えばいい。 カーラが首を護るかのように左手を上げた。 ガウザーの放った銀光にカーラの掌が触れる。 一瞬――――いや、刹那と言っても良いだろう。 ガウザーの剣が淡い光を放ち原子の塵に還った。 間髪入れずに右手の剣をガウザーの鳩尾に突き入れる。 ――――そして、最後に 「これで終わりだ――――『マナよ、破壊の炎となれ!!』」 カーラから放たれた火球がガウザーに炸裂した。
>203 ジャッジ・デスvsン・ダグバ・ゼバ あちこちガタガタで壊れそうな玩具。 焼け爛れた皮膚と、血で染まった体。 それは何処か――――滑稽にさえ見える。 何か口走っているけど、知ったことじゃない。 続きが出来る喜びで胸が躍る。 さぁ、続きをしよう、早く早く! 爪が閃いたのを見て、僅かに首を逸らす。 だけど、どうやら見切れなかったらしい。 思ったより深く首筋が切り裂かれる。 ハハ、まだまだ楽しませてくれるらしいね。嬉しいよ。 首から流れる血もそのままに、胴体に向かって拳を送り出す。 何処までやったら壊れるか――――試してみよう!
>210 黒岩省吾対カーラ 〜闇と灰の狭間〜 紅蓮の炎が、蒼い黒騎士を包む。 荒い息を吐こうとするが、その呼気すら火に飲まれる。 炎は鎧を舐め尽くし、ガウザーは、「黒岩省吾」としての姿に戻る。 その全身を激痛が覆い尽くし、黒岩は床に倒れ伏す。 倒れた身は、もはや動かない。 世界を、人を、玩び過ぎた代償が来たか。 「ははっ・・・・・・」 知らず、自嘲の笑い声が漏れる。 その笑みのまま、黒岩はカーラへと指を付きつけた。 「知って・・・知っているか・・・」 「世界ではじめての・・・皇帝は・・・皇帝は・・・」 そこで言葉は途切れる。 黒岩の意識は―――――死の闇へと飲まれたのだ。 (黒岩省吾/暗黒騎士ガウザー 死亡)
>212 黒岩省吾対カーラ 〜闇と灰の狭間〜 ――――ガウザーが燃えていく。その野望と共に。 それを見つめるカーラ、その眼には何の表情も浮かばない。 成すべき事を遂行しただけなのだから。 ガウザーの成そうとした事はこの世界の微妙な調和を崩しかねない。 だからまだ芽の内に摘み取った……それだけの話だ。 カーラが片膝を付く。 付いた膝にカーラの血が染み込んでいく。出血のため立つことすら困難なのだ。 カーラが魔法を詠唱する。 一刻も早く傷の手当をする必要があった。 「世界で初めての皇帝国家はわずか3代で滅亡した。 ……全てを制そうとした故にその重さに耐えられなかったのだ」 やって来たときと同じようにカーラの姿は音もなくかき消える。 そして後には、全てを掴もうとした男の亡骸のみが虚しく燻り続けていた。
【壊れた音色】 七荻鏡花 vs 遠野志貴(死徒) >176 牽制のために放った「二翼の弓」はいとも容易く躱された。 それどころか、回避をそのまま攻撃の動作と変え、こちらに迫ってくる。 ……わかっていたけど、出鱈目ね、全く。 とはいえ、志貴とて何も考えずに戦うワケじゃない。 思考があり、その上で全ての行動がある。 そうであれば『サトリ』であるアタシにとって、その攻撃を先読みする事は造作ない事。 ……そう、今志貴はまずアタシの足を潰しに来ている。 その思考が『見える』 そして『見えて』いるのであれば、いなす事は可能。 「四翼よ、刃となれ!」 志貴の斬撃よりも速く、チロを変化させる。 翼を鋭い刃と化したチロで、その斬撃を受け止める。 「志貴、そんな低い姿勢でスカートの中でも覗く気?」 そんな軽口を叩きながら、ナイフを受け止めたチロを支点にして前に跳ぶ。 結果、アタシは志貴の背後に立つ形になった。 無論、そうなれば遠慮はしない。 「六翼よ、槍となれ!」 チロの翼が鋭い槍となって、志貴を背後から襲う!
黒岩省吾対カーラ 〜闇と灰の狭間〜 レス番まとめだ。 >207 >208 >209 >210 >212 >213 暗黒騎士……剣ではなく権に溺れたが故に滅びたか。 騎士として生きることもできただろうに。
>194 vsラヴァ この戦い、己の間合いを制した者が勝つという至極単純な闘争だとギーラッハは睨んだ。 ギーラッハが自慢の膂力でいくら疾くヒルドルヴ・フォークを振り回したとしても、 近接では小回りが利くラヴァの爪には適わない。その逆も然り。 そして、今はラヴァの間合いである。あっさりと懐に潜り込まれてしまった。 この間合いでは防御は出来ても、攻撃に転ずることは出来ない。 ギーラッハの攻撃よりも、ラヴァの攻撃のほうが疾いからである。 (なれば、無理にでも己が間合いにするのみ!!) 紅の甲冑が走る。鋼鉄で包まれたギーラッハの拳が、ラヴァの身体を貫いた。 しかし、ラヴァのほうが疾い。器用にガードし、ダメージを消している。 「甘い! 今度は己が勝ちだ!!」 同時、ラヴァの身体が浮いた。後ろに吹き飛んだのだ。 ラヴァの軽い体重では、重量級であるギーラッハの一撃を逃がしきれない。 (――――勝機ッ!) 再度、ヒルドルヴ・フォークが閃光となりて一筋の軌跡を描く。 ギーラッハの怪力が、片手でヒルドルヴ・フォークを横に薙いだのだ。 ラヴァは未だ空中。その体勢でこの一撃が避わせるものかよ! 「裏切り者の末路は誅殺と知れ!!」 ギーラッハは吠えた。
>214 【壊れた音色】 七荻鏡花 vs 遠野志貴(死徒) 死徒となった俺の速さは尋常じゃない。 それを十分に自覚して攻撃を仕掛けた俺は、鏡花に意表をつかれた。 低く、対処しにくいような軌道で走らせたナイフに、人間とは思えない 速さで鏡花は反応して、受けられたから。 軽口を叩いて、一瞬呆然とした俺を飛び越える鏡花。 俺が慌てて振り向いた瞬間。 ――――激痛。 槍は俺の腹を貫き、肉をえぐり、内臓を傷つけた。 鏡花の武器が槍の形体を解除したため、俺の腹から鮮血が飛び散る。 しかし、その出血もすぐに止まった。 死徒の再生能力。忌まわしき復元呪詛。 今度は鏡花が呆然とする番だった。 「俺は死徒――しかも、27祖の第9位、アルトルージュ=ブリュンスタッドの 死徒だからね。再生もそれなりに早いんだ」 鏡花は我に返って、俺と少し距離をとった。 再生の時間を稼ぐために、少し話してみよう。 「鏡花、言い忘れたことがあったんだ。俺が死んだら俺の家の使用人の 琥珀さんという人に『ごめん。そして、ありがとう』って伝えてほしいんだ」 鏡花は身構えて、俺の様子をうかがっている。 「そして、心当たりの人に『俺から』という事で同じ言葉を伝えて欲しい、とも 琥珀さんに。伝言係にしちゃって悪いんだけど……頼めるかな?」 話している間にも、再生は進んでいる。 ――ただ、血が足りないかもしれない。
【壊れた音色】 七荻鏡花 vs 遠野志貴(死徒) >217 志貴の言葉を聞いて。 それが時間稼ぎだと『判って』なお――――本気で腹が立った。 「アンタ、バカ!? あやまんなきゃいけない相手がいるのに、何でここに来るのよ!」 ――――わかってる。それが、志貴の優しさだって事も。 「残されたものに対して、どうするかなんて決めてから来なさいよ!」 「今さら、殺し合いになってから遺言のつもり?」 「っざけんじゃないわよ!」 ――――彼が他に累の及ばないように、ここに来たのだと。 そのことを『判って』いても。一度堰を切った言葉は止められない。 「ンな事言う暇があったら、ちゃっちゃと逃げれば良かったのよ!」 「それとも何? 一人悲劇のヒーロー面して満足なわけ?」 ――――そして、彼の思いが判ったからこそ。 アタシの腹は決まった。
アグリアスVSアセルス 導入 ―――それは、強い雨の降りしきる夜。 私は、とある修道院の門を叩いた。 「夜分にすみません・・・ちょっと、仲間とはぐれてしまって・・・」 応対に出たシスターに、私はそう答える。 自分でも苦笑してしまうほどに、ありきたりで怪しげな理由。 シスターも、やはり怪訝な表情を浮かべるが・・・すぐに態度を変え 私を迎え入れてくれた。 ・・・わずかに、頬を赤く染めて。 数分後。 部屋をあてがわれた私は、しかしすぐにその部屋から出て 建物内を歩き回っていた。 ・・・否、正確には全く迷わずに、ある部屋を目指していた。 イヴァリース国の王女オヴェリア・・・その部屋にいた彼女こそが、私がここに来た理由だった。 話に聞いたとおりの、可憐な少女。 まだ何も知らない、無垢な少女。 そんな彼女と、私は話をした。 彼女を抱きしめ、耳元で甘く囁き・・・その柔らかな唇に、私の唇を重ねた。 夜の世界に身を委ねたとき、彼女はどんな声で鳴くのか・・・そんなことを考えながら。 ―――さらに、数十分後。 修道院の人間が異変に気づき、その部屋にやってきたとき。 その部屋にはすでに人はなく、 開け放たれた窓から吹き込む雨が、ただただ床を濡らすだけだった―――
ウピエル&ツァーレンシュベスタンvsファントム達 >136>137 時間を、僅かに溯る。 キャルが、ツァーレンシュベスタンと命がけの隠れん坊を繰り広げてい頃、 エレンの気配は、完全にホールから消えていた。 それのそのはず、その時既にエレンはホールの裏口から外に出ていたのだ。 そこには、逃走用に用意した『BMW R1200 C Independent』が止めてある。 傷だらけの身体を無理矢理引き上げるようにして、バイクに跨がった。 キルスイッチだけで止めてあったそれをRUNの位置まで戻すと、 セルスターターを回しエンジンをかける アイドリングを開始したエンジンの力強い振動が、朦朧としていた意識を 水面近くまで引き上げる。 その体勢のまま、ホルスターからパイソンを引き抜くと、シリンダーをあけ 残弾を確認する。 使い慣れたグリップの感触が、嗅ぎ慣れた硝煙の香りが、意識を完全に覚醒させた。 銃をホルスター戻すと、エレンは状況を再確認する。 玲二はウピエルと一対一、キャルは手負いの状態で、一対二の状況だ。 正直、現状は窮地と言って差し支えはない。 更に、相手を倒すために武器を使用しなくてはならないファントム達にとって、 時間の経過は状況を悪化させこそすれ、好転させる可能性は極めて低い。 エレンはほんの数瞬考え込んだ後、車体の右側面にくくりつけてある あるものに一度だけ視線を落す。 そして顔を上げると、アクセルを二三度軽く捻った。 鋼の獣は、その合図に巨体を震わせて応えると、次の合図で勢いよく駆け出していった。
ウピエル&ツァーレンシュベスタンvsファントム達 >220 続き そして今、ホール内の静寂を切り裂き、鋼の獣が疾走する。 その背には、黒髪の小柄な少女が猛獣使いのように跨がっていた。 獣は、一つ目のヘッドライトを煌めかせ、1170cc 4ストロークエンジンの咆哮を上げ、 舞台袖から舞台上へと一気に駆け上がる。 エレンの華奢な身体が、300kg近い大型の車体を、文字通り手足の様に操っていた。 その車体の右側面には、BMW特有の左右に張り出した水平対向二気筒エンジンの 上に乗せるようにして、ある装備が備えつけられている。 それは、バイクの全長よりも長い、先端を鋭く削った丸太。 最も原始的で、最も無骨な対吸血鬼用決戦兵器―――木杭。 BMWは悲鳴のようなスキール音を上げると、その木製の牙を 女吸血鬼の一人に無理矢理向けた。 肘が擦れるほどバンクさせた車体を起こす。その軌跡を追う様に、エレンの傷口から 血が赤い筋を描く。 車体を起こしきると同時に、アクセルを煽ったままクラッチを繋げる。 4ストローク水平対向2気筒4バルブエンジンが、心臓が、互いに激しいビートを刻む。 巨体から響くエンジンの咆哮は意外に小さい。だがその内には、爆発的なパワーが秘められている。 そしてそれは、乗り手であるエレンにも同じことが言える。 バイクはそのまま舞台の上を滑走路の様に疾走すると、標的目掛け、一直線に飛び込んでいった。
>219 アグリアスvsアセルス 闇天の下を、軽快な足音が響き渡っている。 二本足だが人間ではない。 ここ、ファシナトゥールの地では珍しい、チョコボと呼ばれる騎乗用の鳥である。 黄色の羽毛に包まれた巨体を揺らし、地を駆けて来た爪音は止まった。 背に据えられた鞍から一人の人物が地に降り立つ。 軽装の鎧に旅塵に塗れたマントを羽織り、黄金の髪をなびかせた女騎士である。 軍列の先陣を切るに相応しい、戦乙女の如き凛烈たる美貌。 チョコボを辺りの木々に繋ぐと、大海の群青を掬い取ったかの様な双眸が、少し先にそびえ建つ 異形の城を睨む。 即ち、イヴァリース国アトカーシャ王家直属ルザリア聖近衛騎士団の一人、 アグリアス・オークスその人であった。 オヴェリア付きの騎士であるアグリアスが別任務から帰還した時、彼女の主の姿は オーボンヌ修道院から消えていた。 蜂の巣を突いた様な騒ぎが一旦終息し、それから数日を経ても、犯人からの要求は一切なかった。 責任を問われ謹慎を申し付けられる前に、聖騎士と呼ばれた彼女もまた消えた。 出奔したのでは無論ない。己が主君を取り戻す為である。
>222 アグリアスvsアセルス 必死の捜索に何の成果も挙がらぬ数週間の後、アグリアスは一つの情報を得た。 それは遠くファシナトゥールの地に棲む妖魔の伝説である。見目麗しい女性ばかりを好み、 寵姫として愛でる為に攫って行くと云う。 オヴェリア程地位のある少女は稀として、似たような誘拐の事例は幾つか報告されていた。 この話を、アグリアスは信じた。 かくて単身、波涛万里を越えた女騎士は、件の『妖魔の君』アセルスの居城、 『針の城』へと辿り着いたのであった。 「主を、誓いを守れず、何が騎士だ……」 歩みと共に洩れる呟きは低く、足取りと同じ位重い。 嘗て身命に賭けても守ると誓ったものは、アグリアスの手の中から無残に奪い去られていた。 腰に下げた長剣がすらと抜き放たれる。 女騎士の脳裏に浮かぶのは主人の姿である。 年端も行かない身を政争の道具とされるのみならず、今また汚らわしい妖魔の魔手に汚されようとする オヴェリア王女の姿が。 その恥辱を想い、怒りに眩みそうになりながら、アグリアスは歩を進める。 ――オヴェリア様、我が一命に代えてもお救い致します。 心中、剣を捧げた主に呼びかけながら。
>218 【壊れた音色】 七荻鏡花 vs 遠野志貴(死徒) ……まくし立ててくる鏡花。 確かに言う通りかもしれない。だが、俺にも譲れないものがある。 『それとも何? 一人悲劇のヒーロー面して満足なわけ?』 そうか。そんなに俺を何かにしたいのか。 脳髄に熱気がこもる。 魔眼が俺の脳に負担をかけ、壊れていく証。 死徒の再生をもってしても追いつかない崩壊。 鏡花だけに見えていた『線』が。 街灯の柱に、公園のベンチに、地面に『線』が浮かんだ。 イッちまいそうな感覚と共に――――。 ――――セカイに死が満ちる。 そんな俺の口からついて出た言葉。 「そんなにも殺しあいがしたいのか」 ――――だったら。 「いいだろう。――――殺しあおうぜ、鏡花」 瞬間、俺は鏡花の視界から消えた。 俺は人間を遙かに越える死徒の全力でもって、鏡花の斜め後方の街灯に 向けて跳んだ。 瞬時にして両足の裏が街灯を捉える。 そして、即座に街灯から鏡花めがけて跳ぶ。 俺の脚力で鉄の街灯の柱が曲がったようだが、気にしない。 俺の身体は弾丸のごとく加速し、鏡花の首にある『線』に向けてナイフを振るう。 一撃で終わらせてやるよ、鏡花。
鈴鹿御前vsパンテーラ(M) 『鬼の剣 豹の牙』 >159 「ちぃ! 泥臭い使い魔(ファミリア―・スピリット)なんぞ喚起 しやがって!!」 怒りの声をあげるパンテーラの体が使鬼の怪力に引き 寄せられる。その胴めがけて間髪いれずきらめく大通連。 だが間一髪、黒縄を放したパンテーラは雌豹のごとき跳躍力で鈴鹿 と使鬼の頭上を飛び越えていた。 パンテーラが音も無く着地した廊下に滴り落ちる赤い液体――血だ。 いかに彼女といえども鈴鹿の一撃を完全には避けきれず、胴を浅く切り 裂かれたのである。 それを見たパンテーラの目がすう、と細められる。 「やってくれたね、お嬢ちゃん。私に傷をつけるなんざセイジ・シモ―ン 以来だよ、これはそろそろ私も本気を出さなくちゃなるまいね」 その言葉と共に、パンテーラの体が奇怪な変容を開始した。 犬歯が伸び、尻尾が生え、骨格が人類のそれから猫類のそれに変わる。 一瞬後、そこには極上の黒ビロードのごとき艶やかな毛皮と、ブルー サファイアのごとき煌きを放つ双眸を持った黒豹が姿を現していた。 目の前の変化に動ずることも無く襲いかかってきた使鬼を、優美さすら 感じさせる動作でかわし、黒豹は床を蹴った。
vsギーラッハ >216 このまま削り合いで終わるはずもない、ラヴァはそう読んでいた。 しかし大剣の間合いには今のままではならない。そういう場合、自分ならどうするか― 答えは、多少無理をしてでも己の間合いに持ち込み直すことだ。そして、そう来た。 ギーラッハの一撃は、充分に防御のできる程度の疾さではあった。だが、重い。 『くっ!』 と、ギーラッハは剣を構え直す。そうか、ならばあえて死中に活を取るしかない! 吹き飛びながら、ラヴァはでたらめに右の指先から鋼糸を飛ばす。そのうちの何本かは、鳥居に、 そして古木に絡みつく。それを細心の注意で操ると、制動をかけつつ一撃を左手の爪で受ける。 あまりの威力に受けた左手の感覚が一瞬にして痺れて消えるが、そんなことは些細なことだ。 「!!」 右手の鋼糸でその受けた衝撃のベクトルを変える。吹き飛ばされたはずのラヴァは、奇妙な軌道を 描き空に舞う。そして、ギーラッハの斜め背後に飛び込んだ。 「ッ!!」 鋼糸を切り離しながら振るう渾身の一撃がギーラッハの首を薙がんとして襲い来る。
鈴鹿御前vsパンテーラ(M) 『鬼の剣 豹の牙』 >225 続き 黒い獣身が天上まで舞いあがる。 「醜悪(カイツール)よ」 使鬼の頭上を横切りつつ、パンテーラは<邪霊>に属する世界 (セフィロト)の名を振動させた。 飛びまわるパンテーラはさらに「物質主義(キムラヌート)よ」 、「貪欲(ケムダ―)よ」、「不安定(アイ―アップス)よ」と、それぞれ 闇の<地>、闇の<水>、闇の<風>に属する世界の名を振動させる。 「色欲(ツァーガプ)よ」と、パンテーラが闇の<火>に属する世界を唱 えた時、使鬼の頭上には黒い逆しまのペンタグラム――黒魔術の 象徴が完成していた。 「メルクリウス!!」 逆ペンタグラムが完成したのと同時にパンテーラが叫ぶ。 次の瞬間、逆しまのペンタグラムの中心から黒い稲妻が迸り、 使鬼を直撃した。 「お嬢ちゃん、あんたはこんな楽には死なせないよ。 八つ裂きにした後、その心臓をオルビアーノに捧げてやる」 断末魔の叫びをあげる使鬼に眼もくれず、パンテーラは 鈴鹿に向けて落下した。 魔性の鋭さを秘めた鉤爪が鈴鹿を切り裂かんとする。
銃弾が血塗られた壁を抉る。 血の匂いは足元に移動している。 銃口を下に向けた瞬間、強烈なボディブローがウピエルの身体を宙に浮かせた。 デザートイーグルから吐き出された.50AE弾が4発。 ツヴァイの放った弾丸だ。 この至近距離では射撃の瞬間を認識し損ねれば避けようが無いし、ツヴァイも外しようが無いだろう。 ヘヴィ級ボクサーのパンチなど問題にならない衝撃がウピエルの肉体を弾き飛ばす。 肩口に1発、腹に2発、胸に1発、4発の銀の弾丸は確実に命中し、肉体を破壊する。 弾き飛ばされるままに宙を舞い、空中で後転して着地する。 一気に数mの距離が開いた。 追撃を防ぐために軽くサイドステップしつつ、肉体の状態を確認。 肩口。これは大した事はない。鎖骨が砕かれているが、無理矢理動かすことは可能だろう。 腹の痛みを確認する。胃袋が破裂している。多分、腸もズタズタだ。 胸の傷は。左肺はもう役には立たない。いや、それどころか・・・ 「ガハァッッ!!」 血の塊を吐き出す。吐き出しながらさらに追い打ちをかけようとするツヴァイを捉え、銃爪を引く。 意識が朦朧としてくる。 怒りと憎悪と快楽に脳髄を灼かれていた時でさえ片時も休む事の無かった、冷徹な闘争の思考が揺らいでいる。 だが、その霞む意思を叩き起こし、狙点を合わせ、フルオートの――秒間10発の狙撃がツヴァイを襲う。筈だった。 数発の銃声、直後に弾切れを示す乾いた金属音。1秒と続かず、銃撃は終った――
>228はレス番指定忘れだ。 >228に ウピエルVSファントム >139 を追加だ。
>222>223 アグリアスVSアセルス 「・・・敵襲?」 寝所にて、王女様を愛でてやろうとしていたとき 私はしもべからその報告を受けた。 ―――敵は、金色の長髪をたなびかせた美しき女騎士だという。 『・・・アグリアス・・・』 その話を聞いていたオヴェリアが、ポツリと呟いた。 「アグリアス? ふむ・・・面白い。ここに通してやれ。 ―――主君に、会わせてやろうではないか」 私はしもべにそう命じ・・・オヴェリアを抱き寄せた。 クク・・・さあ、早く来い。
鈴鹿御前 vs パンテーラ(M) 『鬼の剣 豹の牙』 >225 >227 再び並外れた跳躍力を発揮し、大通連の刃を逃れるパンテーラ。 が、浅いとはいえ手応えはあった。 しかし、更なる追い討ちを仕掛ける前に、彼女の姿が変容していく。 人の形を捨て、新たに獲得したその姿は、先程までの印象をそのまま形にした獣──ジャングル の優美なる王、黒豹だ。 使鬼の追撃を躱し、天井近くまで跳び上がった豹の口から、奇妙なことに人間の言葉が漏れる。 頭上を飛び交いながら、耳慣れぬ言葉を何度も何度も発声していく。 その回数が5回に達した瞬間──使鬼の頭上に、漆黒の逆五芒星が完成。そこから発生した黒い 雷が、ただの一撃で使鬼を消滅させた。 それに心を動かす間もあらばこそ、黒豹はそのまま私めがけて落下、鋭い鉤爪を振るってくる。 最初の一撃は回避したものの、姿勢を崩したところに、牙による第二撃。躱しきれず、そのまま 床に押し倒される。 肩口に食い込んだ牙が肉を抉り、鮮血が辺りを染めた。このまま首を食い破られれば、命はある まい。 「………っ!」 だが私とて、このままやられるつもりはない。 刀を掴んだままの右拳を、黒豹の腹部に叩き付ける。怯んだところに脚を跳ね上げ、巴投げの要 領で後ろへと跳ね飛ばした。緩まぬ牙が、肩口の肉をいくらか持ち去っていく。 豹との距離を取って跳ね起きると、半身を血で染めながらも刀を構え直した。 ──あの動きを、こちらから動いて捉えるのは困難。なら、向こうが動くのを待って、カウンター を狙う。
【壊れた音色】 七荻鏡花 vs 遠野志貴(死徒) >224 まくし立てるアタシの言葉を受け止めながら、志貴は静かに言った。 『そんなにも殺しあいがしたいのか』 『いいだろう。――――殺しあおうぜ、鏡花』 その言葉と同時に、志貴の姿がかき消える。 いや、消えたんじゃない。認識出来ないほどの速さで動いただけ。 『サトリ』すら追いつかないほどの速さ。 (まさか――――ここまでなんて!) その上、志貴の思考はもはやただ一色に染まっている。 殺すころすコロス殺すころすコロス殺すころすコロス殺すころすコロス殺すころすコロス殺すころすコロス 殺すころすコロス殺すころすコロス殺すころすコロス殺すころすコロス殺すころすコロス殺すころすコロス 殺すころすコロス殺すころすコロス殺すころすコロス殺すころすコロス殺すころすコロス殺すころすコロス 殺すころすコロス殺すころすコロス殺すころすコロス殺すころすコロス殺すころすコロス殺すころすコロス 殺すころすコロス殺すころすコロス殺すころすコロス殺すころすコロス殺すころすコロス殺すころすコロス 殺すころすコロス殺すころすコロス殺すころすコロス殺すころすコロス殺すころすコロス殺すころすコロス 殺すころすコロス殺すころすコロス殺すころすコロス殺すころすコロス殺すころすコロス殺すころすコロス アタシの脳にまで侵食してくるかのような、殺人衝動。 これじゃあ『サトリ』は何の役にも立ちはしない。 そして、斜め後方からその『殺意』が迫る。 振り返ろうにも間に合わない。 『シャー!』 だが、アタシよりも早くチロが反応した。 ナイフから首筋を守るように、翼を展開する。 しかし、死徒としての力を全開にした、志貴の斬撃を完全に押さえ込めるはずもなく、そのまま後方に吹き飛ばされる。 ――――ぬとり、としたものを首筋に感じる。 斬撃が僅かに首筋を裂いたらしい。血が、流れる。 そうか。 これは、殺し合い、なんだ。そう改めて自覚する。 ――――チロを再び変化させる。 「八翼よ、礫となれ!」 チロの翼が展開し、八枚に分かれる。 そして、その八枚の翼から無数の羽が志貴目掛けて飛ぶ。 二翼の弓とは違い、広範囲に及ぶこの攻撃なら、さしもの志貴でも躱せないはず……!
>230 アグリアスvsアセルス 「散れ、木っ端!」 立ち塞がる兵の一人を袈裟掛けに斬り伏せ、アグリアスは叫んだ。 尚も殺到する兵士の群れを前にし、顔の前に剣を垂直に立てる。 両目を半ば閉じ、静かに精神集中の字句を唱えた。 「大気満たす力震え、我が腕をして閃光とならん――」 高らかな音声(おんじょう)と共に、蒼い火噴くが如き両眼が見開かれた。 「無双! 稲妻突き!!」 一剣を雷光の疾さに変えた突きで敵の一角を消し飛ばし、後も見ずにアグリアスは走り去った。 「オヴェリア様ッ!」 寝所と思しき部屋に達し、扉を蹴り開ける。室内に飛び込んだアグリアスの五体は、しかし硬直した。 緑の髪の美少女に抱かれ、半裸のオヴェリアがいた。 その眼には、以前の彼女自身からは考えられぬ程淫らがましい色が浮いている。 蕩けたような面からは、アグリアスが誰かも判別出来ていないとしか思えない。 アグリアスは、変わり果てた主を呆然とした様に見遣った。
>220>221 ―――身体は冷たく芯から冷気が吹き荒れてくる。血は流れ落ち、身体中が酸素を欲しがっていた――― (アイン……いつの間に外へ!?) そして、外へ逃げられたのになぜ戻ってきた!? ましてや、特攻など……どう考えても、あの“ファントム・アイン”が取るべき行動では無い。 アインは死ぬ気だ―――― 窮地に陥ったあたしを救うために、 玲二を泣かせないために、 ファントム・アインは自分の命を省みずに特攻を……。 「――――ふざけるな!」 気付いたら、あたしは駆けていた。もう、何がなんだか分からない。 だが、一つだけ分かることがある。 ――――このままアインにぶら下がってられるかよ!―――― あぁ、そうさ。身体中が冷え切っている。 血が足りない。凍えるように寒いよ。だけどな……これは冷却剤だ。 あたしの心から溢れ出た“怒り”を、“猛り”を、冷ますための冷却剤! もっとだ!――もっと冷やせ! このままじゃ、あたしは――あたしは!! この猛りヲ――怒りヲ……! 抑えきれないじゃないか! どうする――冷却剤だけじゃ駄目だ! ……クククククク――そうか、逃がすか。そうだね。さしずめ『放熱』って所かい? ――良いぜ。この怒りも、猛りも――全部解き放って、身体から追い出してやるよ! 一発の銃声が、あたしの感情に続くかのように鳴り響く。 自分の身体では抑えきれなくなったそれを詰め込んだ一発の銃弾が、解き放たれたのだ。
>232 【壊れた音色】 七荻鏡花 vs 遠野志貴(死徒) 反応したのは鏡花ではなく、鏡花の武器だった。 鏡花の首筋に羽を展開し鏡花を守る。 しかし、俺の勢いまでは殺せなかった。吹き飛ばされる鏡花。 まずい。距離があいてしまった。 鏡花は冷徹なまでに戦士だった。 状況を把握するや否や武器を翼のように展開し、そこから無数の羽根が 俺めがけて飛んでくる。 回避は不能。 かわせない。 そう判断した俺は目を左腕でかばいつつ、鏡花めがけて突進した。 当たるなら、次の攻撃につなげる! 走り始めた瞬間に、無数の羽根は襲ってきた。 かばった左腕はもちろんのこと、肩、腹、腿、至る部分に羽根が突き刺さる。 しかし、灼熱の感覚を伴った激痛に、俺の死徒の身体は耐えた。 すぐに鏡花の目の前に出る。 鏡花が驚きの表情をする前に俺は左肩からぶつかっていく。 「寝てろよ!」 そう叫んで、俺は鏡花を押し倒しにかかった。
>233 アグリアスVSアセルス 「ふふ・・・ようこそ、騎士アグリアス殿」 部屋に入るなり硬直してしまったその女に、私は微笑みかけた。 ・・・傍らにオヴェリアを抱きながら。 「この王女様を救い出しに、ここまで来たわけか。騎士の鑑と言っても過言ではないな。 ・・・だが」 そこで一旦言葉を切り、オヴェリアの首筋に唇を這わせる。 小さく身を震わせ、か細い喘ぎ声を漏らすオヴェリア。 その様子を見やってから、私は言葉を続けた。 「王女様はここが気に入ったようだ。帰りたくないと言っている。 だから・・・お前はお役御免だ」 言いながら立ち上がり、剣を取る。 「これからは私が彼女の騎士になってやる。だから安心して帰れ。 ―――それとも、お前もここに住まうか?」 剣を構えながら、私は言葉を紡ぎ続けた。 ―――アグリアスの表情が怒りに満ちていくのを眺めながら。
【壊れた音色】 七荻鏡花 vs 遠野志貴(死徒) >235 ……驚いた。 八翼の礫を躱そうともせず、志貴はこちらに向かってくる。 礫を受けながらも、その速度は落ちることもなく、志貴は肩からぶつかってくる。 「……かはっ!」 一瞬、息が詰まる。 そして、そのままアタシは志貴に押し倒される格好になった。 志貴のナイフが首筋を狙って来る。 殺意に埋もれた思考の中でも、それは容易に『判った』 振りほどこうにも、死徒である志貴の力は、アタシなどでは抗し得ない。 ならっ…… 「六翼よ、槍と、なれっ……!」 苦しい息のもと、チロを変化させ、志貴の脇腹に突き立てる。
>236 アグリアスvsアセルス 力なく垂れていた剣尖が徐々に上がって行く。 「オヴェリア、さま、に」 途切れ途切れに、ようやくそれだけを搾り出した後。 奔騰した。 「オヴェリア様に何をした下郎ォォォォォォォ!!」 瞬時に沸点を越えた激怒に乗って、一気に妖魔まで肉薄する。その余勢を駆り、アグリアスは 上段からの剣斬を放つ。 騎虎の一刀とは云え、完全に自制を欠いた一撃であった。
>237 【壊れた音色】 七荻鏡花 vs 遠野志貴(死徒) 鏡花の上にのしかかり、左手で押さえつけ、俺はナイフを振り上げる。 鏡花の声に応じて武器が形を変えて俺の脇腹を貫いた。 しかし、耐える。 このまま首の『線』めがけてナイフを振り下ろせば、終わるから。 ――――振り下ろせなかった。 こんな時になって、あらためて確認してしまった。 死徒になっても、俺はやっぱり遠野志貴で。 ――――人殺しが嫌いな殺人鬼なんだと。 出血が多すぎたために、鏡花を押さえつけておけなくなった。 俺は横に転がって、鏡花から離れる。 その時にナイフも手放した。 仰向けに夜空を眺める。 夜空には、ただ独りきりの月がある。 鏡花が立ち上がった。俺にのし掛かられていたから、俺の血にまみれてしまっている。 その鏡花に話しかけた。 「俺、やっぱり人は殺せない」 身体の再生は始まっているが、まだ動くのが辛い。何より、血が足りない。 「生き残りたいんだったら、殺してくれ。血が足りないから、ある程度再生したら 歯止めが利かない。鏡花に襲いかかって、血を吸ってしまう」 月明かりに浮かび上がる鏡花に、笑顔を向けた。 「鏡花を吸血鬼になんかしたくないんだ。頼むよ」 本当に笑っていられたかは、わからないけど。
>前スレ536 エンハウンスVS孔濤羅 意思持つ生物のように、闇が牙を剥き放たれる。 苦痛を力に変えるそれは、目の前の男を跡形もなく消し去る、はずだった。 エンハウンスもそれを疑っていなかった。 だが、エンハウンスの視界は宙に飛ぶ男の姿を闇の端から認めた。 驚愕するいとまもあればこそ、上を振り仰いで男の軌道を追う。 肩を浅く抉った一撃には毛ほどの注意すら向けない。 ――崩れた体勢では次の一撃に対処するのは不可能だ。 必死に姿勢を制御し、何とか、せめて直撃だけは避けようと動く。 しかし、男の動き、一撃はそれを許すほど緩慢ではなかった。 「ガッ……ッ!」 背面から広がる痛みと、それ以外の何か。 その何かはエンハウンスの体を内部から蹂躙し尽くさんとする。 血塊を吐き、地に膝を付くエンハウンス。 薄れゆく意識を必死につなぎ止めようとして……そして叶わず闇へと落ちていった。
ウピエルVSファントム >228 >229 半身を起こしてトリガーを引きながら、体の各所に衝撃が襲うのを感じていた。 胸…… 腹…… 致命的な部分を数発の5.56mm弾が貫通する。 避け様の無い距離、吸血鬼にとってのそれは、より以上に人間にとってのそれ……。 だが銃はウピエルに向けトリガーを引き続ける。 そしてホールドオープンするデザートイーグル―――――。 肺から溢れた鮮血が口から、鼻から溢れるのを感じる。 俺の命がこぼれて行く…………。 ――――― 終わるものかっ! こんな事で終わってたまるか! ――――― エレンが、キャルが、すぐそこに居るんだ、そして日本に帰れば美緒が……。 みんな、俺が守る…… 無理でも何でも最期までやる。 不思議と痛みは全く感じていなかった。
>238 アグリアスVSアセルス 爆発した怒りのままに斬りかかってくるアグリアスの剣を、 こちらも鞘から抜き放った剣で受け止める。 ・・・予想よりも重い一撃だったが、あまりにも単純なその斬撃を防ぐのは造作もなかった。 「クク・・・下郎とは言ってくれるな。 私は彼女に、素晴らしき世界を教えてやっただけだぞ?」 刃を合わせたまま答える。 「人間として一生を終えるより、永遠に美しいまま生きていくのが彼女には相応しい。 ・・・見えるか? 彼女の口元が」 そう言ってアグリアスを促す。 ・・・快楽に蕩けたオヴェリアの口元。 そこに見えるはずだ―――わずかに尖り始めている彼女の犬歯が。
エンハウンスvs孔濤羅 >240 血反吐を吹いて倒れる吸血鬼を見ながら、濤羅は歇歩の姿勢で着地し残心する。 いかに相手が吸血鬼であろうと、そして不屈の執念を持とうと、 先刻までの手傷に加えて五臓六腑の悉くを破壊されてはもはや立ちあがれまい。 止めを、と思い、倭刀を振り上げて、濤羅の手は止まった。 例え吸血鬼とはいえこれから行うのは間違いなく暗殺である。 そこに義などない。 それはかつて青雲幇にいたときに、わずかながらも人を殺める理由となっていた。 だがこの男を殺すのに、その理由は通用しない。 侠客としての己を保っていたもののひとつが消え去るのだ。 これまで敵を前にして揺るぎもしなかった切っ先がぶるぶると震えた。 奥歯が鳴るほど顎を強く噛み、柄を砕かんばかりに握り締めた。 ややあって濤羅は、倭刀を下ろした。 どうしてもこの男を斬る気になれなかったのだ…… 濤羅は倭刀を下ろすと間合いを取り、エンハウンスの回復を待った。
>226 vsラヴァ その一撃は、完全に勝利を確信して繰り出された一撃であった。。 幾ら歴戦の勇者とて、空中に飛ばされた姿勢では回避行動など取れるはずが無い。 そう、踏んでいた。 だが、 (こやつ、己の常識を遙かに超えておるわ……) 背後から迫り来る、強大な殺気に抗する術は無い。 ギーラッハが振り向くよりも、ラヴァの爪が彼の首を跳ね飛ばすほうが明らかに疾い。 ならば、どうする? 前に逃げるか、あるいは身体を捻れば、重傷を負うがまだ救いがある。 逃げの一手……ギーラッハの頭に過ぎる苦肉の策。 (ほざけ! 己に後退の二文字は無い! ましてやこの男を前に、そのような醜態を晒せるものかよ!) それは、騎士道という道に背中を向けた背信者ラヴァへの当てつけであった。 ヒルドルヴ・フォークを柄を両手で握りしめると、 肺に詰まったありったけの酸素を用いてギーラッハは再度吠える。 「ラヴァ! この首はくれてやる! この首を以て無念の想いを抱いて死した貴様の友への供養としろ!」 次の瞬間、跳んだ。 ギーラッハの首がその凄まじい形相を残したまま、宙を舞った。 それに続くかのように、噴水の如く吹き荒れる鮮血。 そして―――― その鮮血を二つに割りながら、真紅に塗れた大剣がラヴァの視界に姿を現した。
【壊れた音色】 七荻鏡花 vs 遠野志貴(死徒) >239 ……空を、仰ぎ見る。いやになるほど綺麗な月。 その月が、志貴のココロの鏡みたいに思える。 綺麗で、純粋。 それも、馬鹿が付くぐらいに。 「……人も殺せないクセに、死徒だなんて」 おかしな、志貴。 でも、だからこそ、志貴。 ゆっくりと、近付く。 怯える小動物に近付くような、そんな感じ。 「あのね、アタシだって、あんたを殺したくなんかないわよ」 微笑みながら、言う。 「血が補えればいいんでしょ?」 「だったら、アタシの血をあげるわ」 「もう、死徒のままでもいいから」 「志貴は、志貴なんだから」 チロの翼で、手首を薄く切る。 じわりじわりと鮮血が滲み、溜まり、零れる。 「でも、気をつけてよ。間違っても、噛んじゃダメだからね」
>243 アグリアスvsアセルス 目線の端だけをオヴェリアに向け、アグリアスの顔面が蒼白になる。 絶望しかけた脳裏で、取り敢えず一時の激情は拭い去られた。 代わりに台頭して来たのは凍てつく様な、それだけに深甚なる怒り。 主君の身体だけでなく、魂まで汚された事に対する怨讐であった。 「永遠に老いず死なず、それがお前のいう素晴らしき世界か」 噛み合った鋼と鋼は微動だにしない。 「憐れ――生の喜びを知らん人外の妖物。 生きとし生けるものの尽くは、いずれ老いて死ぬ。それがこの世の理だ。 その黄金律を単純に嘲笑するお前、許せんより先に憐れといわざるを得ないよ」
>244続き それから暫くして。 うつ伏せになって倒れていたエンハウンスの背中がぴくりと動いた。 右手を地について立ちあがろうとする。 「動くな」 呻き声を上げつつ周囲を見まわすエンハウンスの首筋に倭刀をつきつけつつ濤羅は言う。 「さっさと殺したらどうだ? それとも命乞いでもして欲しいのか?」 不敵に唇を歪めて、エンハウンスは毒づいた。 戦いに際しての腕前といい、死を前にしての度胸といい、表情に出しはしないものの、 濤羅はこの男に素直に賛嘆する。 「別に、ただ聞きたいことがあるだけだ」 ただ、そうとだけ答えて、濤羅は問いを口にした。 「あんた、なぜ戦っているんだ?」 それは己の信じるものに裏切られた濤羅にとって、ひどく重要な問いだった。
>246 【壊れた音色】 七荻鏡花 vs 遠野志貴(死徒) 鏡花が手首を薄く切って、俺の口元に血をたらしてきた。 染み入ってくる血液。 激痛が鈍痛に変わり、やがて消えていく。 鏡花がくれた血によって、再生が早まったのだ。 ゆっくりと起きあがる。 「何で殺さなかったのかって聞きたいところだけど――」 俺は、鏡花を見つめた。 「やっぱり止めておく。聞いても仕方なさそうだからね」 あらためて夜空を見上げた。 相変わらず銀の光で俺達を照らす月が、そこにはある。 「もう終わりだな。お互いに殺せないみたいだし」 月を見上げながら呟いた。 そして、鏡花に視線を戻さぬままに、公園の出口へ向かって歩き出す。 「どこに行くの?」 振り返らずに、鏡花の問いに答える。 「帰るんだよ。家にね……あ、そうそう」 そこで俺は振り返った。 「鏡花のことは忘れる事にするよ」 鏡花は頷く。 「ん。そうした方がいいわね、お互い」 その返事を聞いて、俺は再び歩き出した。 「また逢うようなら、今度こそ殺し合いになっちゃうものね」 という鏡花の言葉を、背中で受け止めながら。
>247 アグリアスVSアセルス 「ふん・・・少しは頭が冷えたと見えるな。 憐れ・・・か」 互いの剣を合わせたまま、騎士の言葉を聞く。 「その言葉、そっくりそのまま返させてもらおう。 愚かな、命限りある者よ。 ―――老いは全てを壊し、死は全てを奪っていく。 美しきものが老いによって見る影もなく醜くなるのは・・・悪夢に等しい」 静かな怒りを漂わせるアグリアスに、淡々と言葉を紡ぎ続ける。 「この世の理? それがどうした。 美を汚していく老いだの死だのを受け入れるお前こそ・・・憐れだよ」 言いながら、わずかに顔を近づける。 「―――お前自身、これほどまでに美しいというのに」
>250 アグリアスvsアセルス 互いの吐息が感じられる程の近さ。 だが怒りつつも、アグリアスの表情は静謐を保っている。 「人の夢と書いて儚いと読む。……確かに人の為せる事はちっぽけだ。 お前のいう美とやらも、それこそ儚いさ。移ろい、すぐに消え果る。 だが、だからこそ人はいとおしい。有限だからこそ、僅かに遺せる輝きは、万古不変にも勝る 煌きを持つ。 貴様が汚したオヴェリア様も、そんな珠玉の魂をお持ちになる方だったのだ」 幽かに、ごく幽かに二条の刀身が揺れた。 刃を動かす“息”と“力”の一致する所を見極めんと、アグリアスは柄を確かめる様に握り直した。 「許さん。オヴェリア様の魂を冒涜した罪、地獄で贖え。もっともお前らにも――」 光芒が撥ね飛んだ。 重なり合った二剣は外れ、両者は崩れかけた体勢を立て直さんとする。 「死んで行く所があるならばな!」 間髪入れずに、アグリアスは妖魔に大剣を薙ぎつけた。
>244>248 エンハウンスVS孔濤羅 倭剣を突き付け、問いを発する男。 しかし、その問いはあまりに重くエンハウンスにのしかかる。 それを語ることは、常に己を揺るがすが故に。 「……聞きたいのか? そうか、なら聞かせてやってもいい」 自嘲の笑みを浮かべながら、過去――まだ人であった過去に思いを馳せる。 そして、話はオモイデが悲劇に変わった瞬間から始まる。 「俺は、死徒――貴様等の言うところの吸血鬼に血を吸われ……しかし"なりきらなかった"」 どういう要因か分からないが、死徒に血を吸われたエンハウンスは完全に死徒とは化さなかった。 それは吸った死徒が二流だったのか、あるいは自身にそのような特性があるのかは分からない。 とにもかくにも、半人半吸血鬼としてのエンハウンスは――。 人と吸血鬼が混じり合った精神状態にオカシクナッタ。 ――そこからの記憶はとても不安定になる。 人と吸血鬼で揺れ動く精神は、その度に記憶の鮮度や印象が変わり、揺らぎに耐え切れず時に欠落する。 その途切れ途切れの記憶の中で、今も鮮明に覚えている記憶。 家族の、友人の首筋に牙を突き立てている自分。 その時感じた愉悦は、今思い出すと吐き気がして自分の牙をヘシ折りたくなる。 そして、自分とよく似た、だけどもっと違うモノ――生ける屍へと変わりゆく見知った顔。 あぁ、コレが自分の眷族かと喜ぶ自分。 そして決定的な瞬間。 意識が僅かに人間へとぶれた時……意識を塗りつぶすのは恐怖、嫌悪、後悔――否、言葉でその感情は表せない。 その声が、自分の絶叫であると気付くまでに数分の時を要した。 次の記憶、自らの手で、生ける屍達を次々と屠る自分。 血塗れの手を振るい、更なる血にまみれていく両手。 カタチをなくして本当に死んでいく見知った顔、顔、顔。 憐憫も同情も後悔もなく、ただ虚ろだけが占める心で、その光景を他人事の様に眺めていた自分。 バックミュージックは、途切れることのない自らの悲鳴だ。 そして吸血鬼の自分は思考する。 何故そんな勿体ないことをしたのだろう、と。 そして人間の自分は思考する。 贖罪は果たされなくてはならない、と。
>252続き 意識が一つになったのはいつの日だっただろうか。 二つの意識を一つとして律する為に、エンハウンスは自分を強固に保つ必要があった。 今でも気を抜けば、精神のバランスは呆気なく崩れて自分を見失ってしまうのだ。 それからの日々は、復讐と贖罪の日々だった。 まずは自分の血を吸った死徒を殺し、魔剣を奪った。 ソイツが死徒27祖と呼ばれる派閥の一柱であると知ったのは後のことだった。 自分がそこに数えられるようになったことも。 そして、第七司教に出会って聖葬砲典を借り受けた。 更に彼女は、エンハウンスにその相反する二つの武器を御する術を与えてくれた。 壊れていく右腕を、腐っていく左腕を律する呪紋書式を。 そこから、エンハウンスの戦い―否、復讐――否、殺戮が始まる。 エンハウンスは決めている。 全ての吸血種を滅した後、自らをも殺そうと。 そう、自らもまた吸血種に他ならず、何よりその両手は生きる事が許されないほどの血に染まっているのだから。 ――それだけ語り終えた後、エンハウンスは一つ長いため息を吐いた。 復讐騎を駆り立てるたった一つの動機。 この話を聞いて男は何を思うのだろうか?
ジャッジ・デスvsン・ダグバ・ゼバ >211 ダグバの放った拳が、ジャッジ・デスの腹にめり込む。 その一撃は手首まで、いや、肘までめり込んだ。 白い装甲に覆われた腕が生命なき肉体を貫通し、砕けた脊椎とちぎれた内臓の欠片が、 床に飛び散る。 それでもまだ、不死の断罪者は倒れない。 「死ィね!滅べェ!果てろォォ!法の!正義の名ァァにおいてェェェ!」 その声にはいまだ変わらぬ、むしろ、より激しく燃え上がった凄絶な狂気と殺意が満ちていた。 「こォれが正義だァァァ!」 ジャッジ・デスの右手の爪が、ダグバの顔面に襲いかかる。 咬みつかれて血の滴る傷口に、黒く輝く瞳に、昆虫の顎を思わせる装甲の隙間に、 砥ぎすまされた刃物を凌ぐ鋭さの爪が捻じ込まれた。
>204 vs杉原悠 指が動かなかった。 どうしても。 「僕は、もう誰も……何も失いたくなかったんだ。それだけだ」 やめろ。 すぐやめろ。そんな言葉。黙れ、黙れ。黙れ黙れ黙れ。 「僕を、認めてくれる、みんなを……」 いますぐやめろ。――頼むから。 がくがく揺れる。視界が真っ暗だ。目の前が白い。 背筋が震えるのが止まらないのに、汗が吹き出るくらい暑い。 おまえの筋肉の動きまで――全部こっちにはお見通しなんだぞ!? 「それだけなのに……どうして僕の邪魔をする!?」 杉原の右腕が弾けるように飛んだ。 なにもかも終わった。絶対に間に合わない。もう全部遅い。 致命的な身体能力だけが電撃のように走りブラックアウト。 みんな――暗い。 杉原の右手は、ついに天色の喉に届かなかった。 死体は残らない。 天色の能力は、そういう能力だから。 ふらふらと屋外に出る。 長い間暗がりにいたせいだろう。強烈な街灯に目が眩んで、思わず壁にもたれた。 まだ足ががくがくする。 何十人と殺してきて――ただの一度だって、こんなことはなかったのに。 重い。 しなだれた身体が、ずるずると壁に擦れて落ちていく。 ぺたんと座り込んで、夜が明けるまで、天色は泣いた。
>254 ジャッジ・デスvsン・ダグバ・ゼバ アカイ。 イタイ。 タノシイ。 ごちゃ混ぜの感情が頭の中で浮かんでは消えて、渦を作る。 恍惚。 ただその一点に収束する為に。 笑い声が喉を灼く。 僕の体は負った傷など気にせずに、限界を超えたまま動く。 ――――壊れた、玩具のように。 拳、肘、脚、膝。 ありったけの打撃を高速で叩き込む。 目の前に立つ玩具を叩き壊す為に。 この楽しさを、ぶつける為に。
257 :
以上、自作自演でした。 :02/06/01 15:00
ジャッジ・デスvsン・ダグバ・ゼバ >256 その一つ一つが人間を即死させる威力を誇る攻撃が、次々にジャッジ・デスの躯に叩き込まれる。 全身の骨が砕け、肉が弾け、血と腐汁が舞う。 「があァァァァッ!」 ジャッジ・デスはその腕にさらに力を込め、ダグバの顔面の傷口をより深く切り裂き、えぐる。 拳を受けた黒いヘルメットが割れ、腐りきった死者の顔が露になった。 「死ィィイねェェェェ!」 デスは、ダグバの首筋に食らいついた。
>258 ジャッジ・デスvsン・ダグバ・ゼバ 首筋への噛み付き。 そこから後の光景は、正に凄惨そのもの。 まず、首を引き千切る。 名伏しがたい絶叫が室内に反響する。 それを気にも留めず肘の刃が何度も閃き体を寸断。 ただの肉塊――――いや、肉片になるまで刻む。 「アハハハハハハハ!!」 笑い声と同時に、床に広がる血と肉の欠片達が炎上。 工場が炎に包まれたとき―――――白い異形の姿は既にその場から消えていた。
ジャッジ・デスvsン・ダグバ・ゼバ >259 燃えあがる工場の炎と黒煙の中から、一筋の異様な煙が立ち昇った。 毒蛇のようにうねり、自らの意思を持つ、死者の顔が浮かんだ煙。 「おのれッ、おのれッ、おォォォのれェェェェ!」 ジャッジ・デスの霊体が発する呪詛の唸りは、もしこの場に聞くものがいたならば、 たちまち恐怖に震えあがるであろう、邪悪な声だった。 「愚ォか者めッ、死者を殺すことなどォォォ誰にもでェェきぬ!ダァァク・ジャッジは 不滅なりィィィ」 そう吐き捨てると、霊体はいずこともなく飛び去っていった。
今回の纏めだね。 中々、楽しかったよ。 ジャッジ・デスvsン・ダグバ・ゼバ 前スレ>583 >29>32>48>54>56>59>72>75>81>161>170 >183>185>189>202>203>211>254>256>258>259>260
傷の男/スカー(M) vs 片倉優樹 導入 ”破壊”の右腕から練成の光が迸る。 その光は腕から手へ、掴む手から顔面へ、叫ぶ顔面から全身へ・・・ 光が体を駆け抜けた時、男の体から鮮血が吹き出した。 苦悶の表情を顔に灼けつけたまま、忌々しき神の反逆者は血に崩れ落ちる。 また一つ、偉大なる神の元へ御霊が帰った。 それはとても、喜ばしい事だった。 だが、辺りが騒々しくなる。どうやら、少しばかり騒がしくし過ぎたらしい。 警察だか軍隊だかが、この通称「傷の男」を捕獲に来たのだろう。 いや、抹殺か。 異能者を刈り続ける神の徒は、国家にとっても目障りな存在なのだから。 気配が近づく。 その数・・・・・・・一つ。 愚かにも、また異能者を使うつもりのようだ。 「裁きを受けに自ら出向いてくるとは・・・今日は佳き日よ!」 軽く体を開き、両手を胸元へ構える。 破壊のための破壊、錬金術の理に反した力を奮うために。
>251 アグリアスVSアセルス 撥ね飛び、体勢が崩れかける。 そこに襲い掛かってくる、アグリアスの大剣。 「はっ!」 何とか体勢を立て直し、その横からの斬撃にこちらも剣を叩きつける。 ぎぃん、という耳障りな音とともに互いの剣がぶつかり、弾き飛ばされる。 「死んで行く所だと? そんなもの、あるわけがないだろう!」 言いながら、剣を・・・魔剣“幻魔”を構えなおし、そして。 「私は、私たちは・・・永遠に生きていくのだからな!」 一気に間合いを詰め、下から掬い上げるような一撃を放つ。
>262 傷の男/スカー(M) vs 片倉優樹 ある日、警視庁刑事部捜査第六課の電話が鳴った。 * * * 優樹はラフな格好で現場に出てきていた。 捕縛の場合、本来ならば捕縛部隊が優樹と同伴で任務を行うのだが 今回は少し事情が違った。 緊急捕縛部隊が一人の男によってほぼ壊滅。 それが六課への電話の内容だった。 始めは殺人の事件で警視庁の刑事課が動き出していたが相手の謎の能力を 確認し、相手を甲種指定生物と判断し、その事件の権限を緊急捕縛部隊に移行。 そして、緊急捕縛部隊が捕縛に乗り出したがそれも無残な結果に終わってしまった。 本来ならば優樹のような怪(アヤカシ)に事件の事を任せたくと言うのが警視庁 と言うよりも人間の考えなのだろうが相手が相手らしい。 ―――触れられただけで体が爆発 それが相手の力。 優樹がその内容を聞いてぞっとしたのは言うまでも無い。
>264 続き 現場にて、優樹は目標を探す為に街を捜索していた。 端から見れば、ただ目的も無く夜道を散歩している様にも見える。 ビルの隙間から風が優樹の体を容赦無く拭き付ける。 散歩の好きな優樹でも誰もいない夜道を目的も無く歩くのは好きではないのだ。 (どうせなら居場所くらい教えてくれても・・) ふと、考えが過ったがすぐに考えを改めた。 それだけ相手が強い、手が付けられない化け物なのだろう。 優樹の脳裏に捕縛部隊が命からがら逃げ出す姿が浮かんだ。 そして、自らの顔を両手で叩き、気合を入れる。 すると、向かい側のビルの前から奇妙な光が差し込んで来た。 その光は美しく、そしてまた、禍禍しくも感じられたが、それは優樹の感覚がそう捕らえただけだ。 光の先には、無残に崩れ落ちる死体と無表情にその情景を眺める一人の男がいた。 優樹は即座に男を目標と判断し、道路を挟んで向こう側のビルの前にいた男に大声で叫んだ。 「すみませーん!貴方に対して捕縛命令が出ています!」 相手の反応は都会とは言え、この夜ではどのような物か判断するのは難しい。 視覚能力を上げ、相手の表情も確認する事ができるが、これから戦闘を行うのに 余計な力を使いたくないと言うのが優樹の考えだった。 「えー、よって私、日本国内閣総理大臣公認甲種指定生物、公認番号010018、 警視庁刑事部捜査第六課所属、片倉優樹巡査部長が貴方の身柄を確保しますので。 よろしくお願いします。」 自分で言って舌を噛みそうな肩書きを述べ、優樹はゆっくりと目標に近づいていった。
傷の男/スカー(M) vs 片倉優樹 >264 >265 意外にも、現れたのは一人の小娘だった。長々と口上を述べながら、無防備に近づいてくる。 余裕があるのか、策があるのか・・・それとも、後ろに軍隊でも控えているか。 だがどちらとしても、スカーの行動は同じ。 近づいて、掴んで、殺す。 それだけ。 「何者であろうと、滅ぼすのみ」 一言、短く吐き出すと大男は夜の街を跳ねる。 靴鳴りを残し、巨躯を風の中に沈めて、自らを矢の如くに変えて。
ハインケル・ウーフーVSロゼット 導入 いつもは平和なはずのマグダラ修道会は、その日騒然としていた。 それもそのはず、イスカリオテ機関からの客人が来たからだ。 元来、ヴァチカンとマグダラが属するカトリックはどうしても相容れない存在である。 両者の交流は唯一つ、女王(クイーン)という楔によってのみもたらされる。 だがそれも、アメリカであるマグダラにはほとんど関係のない話だ。 マグダラの誰もが、その珍客をいぶかしんでいた。 何より、客の要求が「ロゼット・クリストファに会わせろ」であるのが慌ただしさの最大の原因だが。 そのイスカリオテの客人――ハインケル・ウーフーは通された客室のソファにふんぞり返っていた。 顔には、不機嫌なのか上機嫌なのか、何とも言えない表情を浮かべている。 サングラスを掛けた双眸が、じっと出入り口を見つめている。 そのままの姿勢で、ハインケルは三十分間ずっといた。 「……まだか? 一体何時間待たせるつもりよ」 実際には何時間も経っていないが、ハインケルにとってはそんな事はどうでもいい。 とにかく待つのは嫌いなのだろう。 と、部屋の出入り口が開き、その向こうから若いシスターの顔が覗いた。 その顔は写真で何度も確認した、間違いない。 確認と言うよりは、待たされた事に対して自然に言葉が出た。 「ロゼット・クリストファ?」 声に混じる苛立ちを隠さずに、ハインケルは懐に手を差し入れ――拳銃を引っこ抜いて横向きに構える。 相変わらずソファにふんぞり返った姿勢のままで。 その銃口はピッタリとロゼットの眉間にポイントされていた。 「アンタに、悪魔憑きの容疑が掛かっている……申し開きはある?」 その顔には、嘲笑が浮かんでいた。 サングラス越しの目で笑いながら、しかし視線がまっすぐにロゼットを射すくめる。 銃口が、冷たく光る……。
『背徳信者』 >267 「!!」 部屋に入るなり、私に向けて拳銃を向ける女性。 悪魔・・・・・憑き・・・・・・。 クロノか―――! 厳密な意味でみれば私は『悪魔憑き』ではない。 むしろ―――『悪魔使い』に近いのかもしれない。 もっとも、そんな違いは彼女にとってはどっちでもいいことだろうが・・・・・。 クロノはアズと一緒に聖歌隊の仕事に出ている。 少なくとも、クロノが直接的に被害を受ける可能性は無い。 拳銃を突きつけられるという『精神的圧迫感(プレッシャー)』は計り知れない。 こちらが無防備ならなおさらだ。 ≪こくん≫ 唾を飲み込む、 そして、内心の動揺を悟られないよう・・・・・口を開く。 「ココで話さなきゃだめですか? そういう個人的なお話でしたら、もっと開けたところでお話したいんですケド?」 私の背中を、冷たい汗が流れ落ちた。
>266 傷の男/スカー(M) vs 片倉優樹 私が叫んだや否や、男は巨体に似合わぬ俊敏な動きで道路の向こう側にいる 優樹に向かって飛びあがった。 その常識外れの行動に、道路を走っている一般車両が何台も急ブレーキを掛けスリップする。 優樹はため息を付き、この交通の妨害も事件の後に問題にされるのかな、と頭の片隅で考えた。 が すぐに思考を切り換える。 迫り来る男に備え、体の筋肉を戦闘用に増強し、動きやすくする。 聴覚も、普段聞こえないような音もとらえ、視覚は、闇夜の暗い街でも見渡せるような 力までに増幅させる。嗅覚に至っては警察犬にも劣らぬ嗅覚だ。 目の前まで迫って来る男を地面を蹴飛ばし、十メートル近く右へ飛ぶ。 あまり近づいては能力によってやられてしまう。 (でも、近づかないと捕縛できないんだよね) 横に飛んだ後、足で急ブレーキを掛け、男の方へと向き返る。 そして、腰のホルスターから特殊警棒を取り出し、可能な限り長くする。 男からなるべく距離を置いて攻撃するのが一番有効な手だと判断した。 足の筋力増幅(ブースト)開始。 優樹の足は細い足からみるみる二回りほども大きくなり、地面を蹴りあげ男に突進した。 その速度は高速の車とほぼ同等。通常の人間では黙視する事はかなり難しいはずなのだ。 そして、優樹は前にいる男に向かって警棒を突く様に翳し、突進した。
>268 ハインケル・ウーフーVSロゼット 『どっちがよりAMENに相応しい?』 「話し合い? いや、私がしたいのは話し合いなんかじゃあないんだ」 嘲笑は顔から剥がれず、銃口は相も変わらずロゼットを指し示している。 今まで薄く漂っていただけの殺気が、明確な形を取り始めた。 「私は、アンタに神罰を下しに来たんだ……よッ!」 足が、目の前にあったそれなりに値が張りそうなテーブルを蹴り上げて二人の間を遮った。 突然の目くらまし、その勢いで立ち上がりつつ、いつの間にか空いていた手にも拳銃が握られている。 顔に張り付いていた笑みの質が変わり……そして解き放たれる殺意。 「もうネタは十二分に上がってるんだ! ゴチャゴチャ抜かしてるな売女(ベイベロン)!」 途端に放たれる剣呑な銃声と硝煙。 二人の間にあるテーブルを撃ち抜き、砕きながらなおも銃弾はその向こう側――ロゼットへと殺意を向けた。 横に構えられた二挺の拳銃が、見えざる不信心者を睨み付ける。
【壊れた音色】 七荻鏡花 vs 遠野志貴(死徒) >249 エピローグ1「双月」 志貴が去った公園で、一人ベンチに座って空を見上げる。 正直、似合わないことをしたと思う。 でも、不思議と気分は晴れやか。 そうやっていると、息せききった様子で、いずみが現れた。 「……やっと、見つけた」 あー。なんというか、罪悪感。 ちょっぴりきまり悪そうにしていると、いずみはにっこり笑って言った。 「ん、無事でよかった」 ……まったく、この子は。 「敵わないな、いずみには」 「え? 何か言った、鏡花ちゃん?」 「何でもないわよ。じゃ、帰ろっか」 ベンチから起きあがり、いずみと二人、公園の出口へ。 ふと振り仰いだ空には、真円の月。 そして、その横に、微かに映る青い月――――真月。 とうの昔に消えたはずの存在の残滓。 まるで、アタシと志貴の関係のように見えて、少し――――泣けた。 「どうしたの?」 「ん……なんでもない」 そう。 もう逢うことはなくても、アタシたちは夜で繋がっている。 それだけで充分。 (それぐらいはいいよね、志貴?)
傷の男/スカー(M) vs 片倉優樹 >269 ――――早い!? その動きを刹那、見失う。 再び視野に捉えた時には、肉薄する間際だった。 「くっ、うっとおしいものを」 突き出される、棒きれ。人を越えた神速の一打。 けれど、神の僕を滅ぼすには到底、足りなかった。 速度も重みも殺意も、何もかも。 男は受け止めるように右手を構え・・・”練成” 生まれた光に触れると、特殊警棒はたちまち分解して消えた。 目の前に伸びた腕。 スカーはそれを掴まんとさらに右手を伸ばした。
『背徳信者』 >270 「DAM(ちくしょう)!!」 私は反射的にその場から飛びのく! と同時に乱れ撃たれる銃弾の雨、雨、雨! 壁に掛けられていた絵が、棚の上の花瓶が砕け散る! あ〜〜〜!! アレ、昨日私が綺麗に掃除したばっかりなのにッ!! 「問答無用っての?!もう少し穏便にいけないのかしら!!」 やがて、銃撃がやむ。 あたりに漂う硝煙の匂いと紫煙―――― 弾切れ――――?!今ならッ!! 私は、ドアまで一気に飛び退くと、ドアを蹴り飛ばしながら部屋から逃げ出した! ≪ガコォッ!!≫ 蝶番を弾き飛ばし、ドアが外れる! とりあえず・・・・・何処行きましょうか?!
274 :
以上、自作自演でした。 :02/06/01 22:27
>271 【壊れた音色】 七荻鏡花 vs 遠野志貴(死徒) エピローグ2「七夜」 鏡花と戦ってからしばらくして。 相変わらず俺は時南先生を通じて依頼を受けて、仕事をこなすという事を 続けている。仕事は選んでいるから、一気に金がたまるというわけはない。 ただ、かなりの行動の自由を得られそうなくらいには金がたまってきてはいた。 そしてある日、時南先生に依頼していたことが一つあって、俺はその話を聞きに行った。 「そこが七荻鏡花の高校じゃ」 渡されたメモを見る。 「じゃが、そんなことを知ってどうするのじゃ?」 そう問われて俺は苦笑しながら言った。 「命の恩人だから、一度はお礼をしなくちゃいけないから」 その夜早速、鏡花の高校を訪れてみる。 行ったはいいけど、高校全体がなんだか結界のようなものに覆われている。 ……鏡花もよっぽどトラブルに巻き込まれる質みたいだ。 俺も人のことはいけないけど。 眼鏡を外して結界を切り、中に入る。 とりあえず高校入り口の見取り図を見て、鏡花が所属するという天文部へと向かった。 当然のように人はいない。 校舎の反対側から戦闘の音が聞こえる。 ……となれば、やることは一つ。 とりあえず天文部へと入ってメモとボールペンを拝借、短くしたためる。 天文部のドアの間にメモを挟み、俺はナイフを取り出した。 俺の存在を感知したのか、寄ってくる化け物。数は7匹。 「少しでも数を減らしてやらないとな……」 そう呟いて、俺は跳躍した。 ある程度の化け物を片付けた後、俺は高校を後にした。別に会いに行くのが 目的じゃなかったから。 でも。 「売り込みサービスとして数を減らしておきます。今後、助っ人のご用命があれば 『七夜』までどうぞ。蛇を飼っている方の依頼ならば、格安でお受けします」 というメモ書きを見て、鏡花はどう思うだろう?
【壊れた音色】 七荻鏡花 vs 遠野志貴(死徒) 「レス番まとめ」 ・導入 >162>163>164>165>166 ・闘争 >168>176>214>217>218>224>232>235>237>239>246>249 ・エピローグ >271>275 鏡花、初闘争お疲れさま。 そして、生かしてくれてありがとう。
>273 ハインケル・ウーフーVSロゼット 『どっちがよりAMENに相応しい?』 無惨に穴が穿たれたテーブル、だがその向こう側のロゼットは既にそこにはいない。 ドアを蹴破った音と遠ざかる足音を、ハインケルは確かに聞いた。 「鬼ごっこでもしようってかい? まぁいい、せいぜい足掻くんだね」 全弾撃ちきった後の弾倉を排出し、新しい弾倉を銃把に押し込む。 その間、鬼ごっこの鬼よろしく、哀れな犠牲者に与える猶予をカウントダウン。 「10、9、8、7、6……」 正確なリズムで時を刻みながら、着実に装弾作業を終えていく。 全てが完了したその瞬間……。 「……2、1、0」 動き出す足、蹴倒されたドアを踏み越えて廊下へと出る。 数瞬左右を見比べた後、足音が遠ざかった方へと走り出した。 「ははッ、ニゲロニゲロ! どうせ死ぬんだけどね!」 騒然となっているマグダラの廊下を、拳銃を携えて神罰の地上代行者は駆ける。 時折掛かる静止の声も聞かず、ただひたすらに走り続ける。 果敢にも手を伸ばし、体を張ってハインケルを止めようとした者達は、例外なく神の御許へと旅立った。 「さぁ! どこにいるんだ悪魔憑き! 逃げ回ってると犠牲者がドンドン増えるぞ!?」 叫びながら、銃声と共に死をまき散らす。 もはや、マグダラ内部は恐慌を来した者達と相まって地獄絵図の様相を呈していた。
>272 傷の男/スカー(M) vs 片倉優樹 優樹の一撃は男を確実に捕らえ、その攻撃は確実に決定打になる。 並の人間ならば。 男は優樹の一撃を正面で受け、苦悶の表情を一瞬だけ見せたが何も無かったかのように 優樹の警棒を掴み取り一瞬にして光の包まれ、バラバラにされてしまった。 その分解を目の当たりにし、優樹は一瞬戸惑り、その場に立ち止まってしまった。 しかし、その判断が拙かった。 男の右腕が優樹の警棒を持っていた手を掴み、手の間から光が漏れる。 「あああああああああああああ!!!」 優樹は眼を見開き、痛々しい苦痛の表情を浮かべ絶叫した。 膝から崩れ落ち、全身が痙攣。そのダメージの大きさを物語っている。 優樹は即座に破壊された腕の痛覚を遮断し、男から再び距離を取るため後方に全力で 飛びあがった。 「腕・・・もうダメかな」 そう判断した優樹は、破壊された右腕を反対側の左腕で掴み、力の限り引く。 死んだ右腕は肩からミシミシと肉の音を立て千切れた。 ごとりと落ちた右腕からは骨と肉が不規則にミンチにされたような形でどろどろと 流れ出て来る。その情景はまるで中身だけを潰したソーセージの様に見え 引き千切った本人も気持ち悪くなるような物だった。 「さて・・・どうしようかな」 腕の血管を収縮させながら優樹は考える。 常々自らの非力さに悩んでいたが、それを今日再び実感し、気分が鬱になる。 正面からそのまま行けば恐らくまた掴まれ破壊される。 それならば・・・。 優樹は2度目の足の筋力増幅(ブースト)を使い、都会のビルの上へと飛び上がった。 そして、下の男に向かって叫ぶ。 「すみませーん!そこじゃ通行人の方に迷惑なので上に上がってもらえますか〜!?」 その内容と理由はとても間の抜けた物だった。
『背徳信者』 >277 「!!」 私の後ろで、銃撃と悲鳴が交差する。 私…私一人の為に?! 「なんて事―――!!」 コレは・・・・・拙い!! このまま私が逃げ回れば、かえって被害が大きくなる――!! 「こンの・・・・・・・・・!!」 私は、武器への階段を見つけると、そこへと飛び込んだ。 カンカンと乾いた音が響く。 「えっと、これじゃない、これじゃない―――・・・・・あった!!」 そして、ロッカーから機関銃とライフルを一丁ずつ。 それに『アレ』を取り出す。 「効くといいんだけどね?!」 その時、武器庫の入り口に人影が―――!!
エンハウンスvs孔濤羅 >252>253 そうしてエンハウンスの、長い独白は終わった。 時は既に夜明け前、天はその色を黒から群青へと変え始める。 夜は終わり、人の時間がやって来たのだ。 濤羅は剣を構えたまま数歩後退する。 エンハウンスは納得がいかないといった顔で尋ねた。 「どういうつもりだ?」 十分に間合いを取ったと判断すると、濤羅は倭刀を鞘に収めた。 そしてようやく答えた、 「没義道を斬るのが、俺の剣だ」 と。 「あんたはそのことを思い出させてくれた だから殺さん」 そう言って背を向け、歩き出す。 それきり二度と振りかえらなかった。 胸には晴れやかな思いがある。 己の信じる道に踏みとどまれた。 剣の師も、そして瑞麗も、この選択を喜んでくれるだろう。 濤羅はそう信じて疑わなかった。 これは全て、過ぎ去った昔の物語。 孔濤羅が人を捨てて修羅となる前の、ひとつの小さな挿話。 故郷で己を待つものが何か、濤羅は知らない。 知らないが故の幸せに、いま濤羅は浸っていた。
ン・ダグバ・ゼバ VS 横島忠夫&三輪坂真言美 『DANCE In the Moon, Moonlight』 〜導入〜 さぁ、逃げろ逃げろ。 弱い奴が楽しませてくれるのはそれだけだ。 僕はそれをゆっくりと追う。 『ひ……ひぃっ』 恥も外聞も無く、涙と涎を垂れ流して獲物が走る。 遅いなぁ……こんなの…… 地面を蹴って、一息で正面に回り込む。 奴の体が小刻みに震える。 『た、助けてくれ! 殺さないでくれぇっ!!』 アハハ、面白い顔をしてるね。 でももう飽きちゃったからなぁ……死んでいいよ。 僕の掌が獲物の顔面に触れた。 凍りついたように奴の震えが治まる。 何が起こるかは分かっていないだろう。 いや、運命は分かっているかもしれない。 そう、この獲物は――――― 『ぎゃぁぁぁぁぁぁぁっ!!』 耳を覆いたくなるような悲痛な絶叫。 ああ、いい声だ。 突然現れた赤い炎が、青から白へ移り変わり、獲物の体を舐め尽くす。 後に残ったのは、一握りの灰だけ。 今日はこのぐらいにしようかな。 この朽ち果てた建物に獲物を一匹放り込んで追いかける。 中々楽しい遊びだ。 我ながら良い遊びを思いついたものだね。 さて、明日はどんな獲物を連れて来よう――――
ン・ダグバ・ゼバ VS 横島忠夫&三輪坂真言美 『DANCE In the Moon, Moonlight』 横島忠夫、導入 >281 オモチャのような安っぽい音をたてて、霊体レーダー『見鬼くん』がくるくると回った。 くるくると回る一方で、お目当ての相手にはちっとも出会えない。さっきから拾えるのは、 自縛霊や浮遊霊ばっかりで、調査は遅々として進まず・・・・・・ 俺は大いに後悔していた。 もう何時間も歩き続けて、足が棒だ。 おまけに見鬼くんを持つ手は痛いし、腹は減るし、なんか天気は悪いし。 美神さんが逃げ出したのも西条のヤツが悲鳴を上げるのも、納得だ、畜生! 連続失踪事件―――― それだけならありがちだったし、ゴーストスイーパーが出る幕でもない。 だが、偶然見つかった一握りの灰が、事態をややこしくした。 人体発火現象、パイロキネシスと言う超能力で焼き尽くされた被害者のなれの果て。 霊視の結果わかったのは、この件が心霊殺人事件であるという事だった。 雲の隙間から、大きな月がのぞく。 気付けば、すっかり夜も更けていた。 疲れるはず、腹も減るはずだ。見鬼くんを地面に置くと、へたれる体を大きく伸ばす。 こりゃ、今日も空振りかな・・・そんな事を考えながら、軽く体を動かした。 ――――と、頬に冷たいモノが落ちる。 雨!? こんなタイミングで雨かよ! 泣きたくなる気持ちを抑え込みながら、俺は見鬼くんを抱えて走り出した。 強くなる雨足に全身を濡らしながら、俺は雨宿り出来る場所を探す。 幸い、閑散とした界隈だが空き家は多い。今も一つ、廃ビルを見つけた。 俺はアスファルトを打つ水飛礫の音に追われながら、走り込む。 湿り気を帯びてもなお、埃っぽい空気の満ちる廃ビルの中へと。
ン・ダグバ・ゼバ VS 横島忠夫&三輪坂真言美 『DANCE In the Moon, Moonlight』 >282 夜の街を、一人の少女が駆ける。 少女の名は、三輪坂真言美。 様々な能力を持ち、人に仇為すものを討つ『火者』の一人。 その彼女が一人街中を走る、そのわけ。 近頃街を騒がせている連続失踪事件。 その失踪者の一人に、真言美の親友がリストアップされたのは、三日前の事。 それからというもの、彼女は学校が終わると、独自の捜査のために街へ出ていた。 そして、それも既に三日目。 さしたる進展もなく、元気が取り柄の真言美もさすがに疲労の色を濃くしていた。 だが、誰の力を借りるわけにもいかない。 その思いが、そして親友への思いが彼女を突き動かしていた。 ぽつ。 ぽつぽつ。 先程まで煌々と夜を照らしていた満天の月がいつしか翳り、雨が降り出した。 見る間に雨は激しくなり、真言美の身体を濡らす。 「うぁ……これはまずいですよう」 雨に濡れるのがイヤなのと、腰のMDプレイヤーが濡れるのが拙い事を思い、雨宿り出来る場所を探す。 するとすぐに、どうやら廃棄されたらしいビルを見つける事が出来た。 「ラッキー♪ですね」 ちょっぴり自分の運に感謝しつつ、その廃ビルに入る。 ……すぐにその運を呪う事になるとは、露ほども思わずに。
>263 アグリアスvsアセルス 下方より跳ね上がる稲妻を避け、アグリアスは後方へ下がった。 一歩だけだ。 相手の太刀筋と速度を見極め、数センチの間隙を以ってかわす。 如何な凄まじい攻撃も当たらなければ何程の事もない。 逆にその隙に乗じて攻勢に転じる。それが達人たるアグリアスの戦技である。 だが――天空へ飛び去る刀身は鮮血を引いていた。 妖魔の剣速がアグリアスの見切りを上回り、革鎧を切り裂いていたのであった。 苦鳴を咽喉元で塞き止める。 傷は深くはないが、浅くもない。攻撃を返す余裕もまた失われていた。
傷の男/スカー(M) vs 片倉優樹 >278 「上に?」 壁を蹴り、ビルを駆け上った女に男は顔をしかめる。 何を意図しているのか、理解出来なかった。 誘っている? 罠か? いや、あの場に仕掛けるのは効率が悪すぎる。 しばし、思案。 数秒にも満たない間、代行者は足を止めるがすぐに歩き出す。 不遜なまでに大きく、確かな足取り。それは、ビルのすぐ側まで続いた。 右手を伸ばす。 壁に触れる。 そして、振動。 破壊の腕は光を放ち、そのコンクリートの壁に亀裂を入れた。 亀裂は瞬く間に広がり、壁を剥落させていく。 「断る」 一言だけ答えると破壊を進めた。 神の示すべき道を阻むものを滅するのに、なんら躊躇など、要らなかった。
ン・ダグバ・ゼバ VS 横島忠夫&三輪坂真言美 『DANCE In the Moon, Moonlight』 >283 先刻から振り出した雨の雑音の中で、僅かな音の揺らぎを聞き取った。 僕の人間(リント)を遥かに超えた鋭敏な感覚。 それが無ければ、それは察知出来なかっただろう。 今日はここに獲物を追い込むつもりだった。 だけど、まさか向こうから飛び込んで来てくれるなんて―――― 獲物は二匹。 雨宿りのつもりで此処に飛び込んだらしい。 愚かだ。どうしようもなく奴等は愚かだ。 自ら狩場に飛び込んでくる獲物。 なんて愚かで―――愛らしいんだろう。 じゃあ、楽しませてもらおうかな。 身を潜めていた三階の窓から身を躍らせて、地上に降り立つ。 少し、衝撃があったけど気にするほどじゃない。 激しくなってきた雨に打たれながら、獲物の後ろから近寄る。 そして、雷鳴が、轟いた。 稲妻の白い光の中に見えるのは、白い鎧と金の装飾具を纏った戦士の姿。 いや、こういう場合は戦士じゃないな。 僕は狩人だ。狩場に迷い込んだ哀れな獲物を狩る狩人。 緩慢な動きで、一歩を踏み出す。 焦る必要は無い。 彼等は只恐れ、逃げ惑うだけなのだから。
ン・ダグバ・ゼバ VS 横島忠夫&三輪坂真言美 『DANCE In the Moon, Moonlight』 >286 「げ、ほっ。思ったよりも、埃臭いな」 絡みつくような重い空気を掻き分けながら、俺は真っ暗なビルの中を進む。 懐中電灯を取りだして、探索気分で歩く。厚い埃にはくっきりと足跡が残って・・・ ん? 足跡が・・・一つじゃない!? 良く見れば大きさの違う足跡が、いくつか見つかった。 誰かここにいるのか? まさか、怖いおにーさん達の集会場とかじゃないだろうな!? 恐る恐る、恐る恐る、足跡の先をライトで照らしていくと・・・ 「あ?」 長い髪が明かりを反射して、黒く光る。目が合う、大きな眼差しが俺をじっと見据えた。 格好こそラフだけど、間違いなく可愛い女の子―――――― 何故か、ねーちゃんがそこにいた。 「初めましてッ! 俺、横島忠夫って言います!」 数歩分、離れていた距離が瞬く間に零になる。 「ヤな雨だねっ! 大丈夫? 濡れてない? いきなり降られるなんてお互い災難だよなー」 その手を軽く取ろうとした時――――――――閃光がフロア全体を充たした。 光源へ、とっさに振り返る、俺。 浮き出たのは白い甲冑の男、いや、化け物。 これでもかこれでもかと、人間とは違う、異質の雰囲気を発し続ける魔! 装飾具を鳴らしながら、一歩また一歩と廃ビルの中を近づいて来る。 背筋を走る冷たい感触が、脳の奥に潜む霊感が、アラームを一斉に鳴らす。 こいつは敵だ、倒すべき化け物だ! 全身の筋肉が、心の奥に潜む俺が、一斉に体を縛る。 こりゃヤバイ、逃げな死んでまう! ・・・でも、片手には柔らかな女の子の手。 ・・・チクショウ、怖くてもやるしかねぇじゃねーかっ! 霊力が、戦いの雰囲気を感じ取ってにわかに高まった。 それを利用して右手にサイキック・ソーサーを発生させると―――― 「あぁーーーーーーーーー! あれ、あれなんだっ!?」 空の方を指さしつつ、そいつにソーサーを投擲! 輝く霊体の塊が甲冑野郎へ飛んでいった。 当たれば爆発、ただじゃ済まない! これで上手く倒せれば、このねーちゃんも俺に・・・俺に・・・! 「ぐ、ぐふ、ぐふふふふふふふ・・・」
ン・ダグバ・ゼバ VS 横島忠夫&三輪坂真言美 『DANCE In the Moon, Moonlight』 >287 廃ビルの中に入った瞬間。 ぞくり、と悪寒が全身を走る。 まるで、狭間に迷い込んだ時のように。 「光狩……じゃないよね」 突然の事に驚きながらも、身体は冷静にMDのスイッチを入れ、ヘッドホンを耳に付ける。 僅かばかりとはいえ修羅場をくぐった身体は、思考よりもよほど確実な動きをしてくれるものだ。 「とりあえず、明かり明かり……」 ヒップバッグに入れていたはずのペンライトを出そうと、鞄の中をまさぐっていると、声が聞こえた。 「え……他にも人が……」 と思う間もなく、片手を握られる。 数歩分離れていたはずの距離が、一瞬でゼロになっている。 手を握ってきた青年を、何がなんだかよくわからず目を白黒させて見ていると。 彼の背後に白い異形が見えた。 間違いなく、そう間違いようもなく、これはヤバイ。 考えるよりも速く、本能が悲鳴を上げる。 それに促されるように、空いた手でMDを操作し、一曲目を選択。 MDから流れる韻律を追うように、唇が音を生む。 そして、その音と共に、仮想が現実を侵食する。 ――――言霊使い。言葉を以て現実を変容させる能力。 そして、侵食した仮想を現象と変える、最後の一言。 「ファイヤー!」 その叫びと共に真言美の前に、炎が生まれ、一直線に白い異形に向かって飛ぶ。 ――――手はまだ握られたままだが。
ン・ダグバ・ゼバ VS 横島忠夫&三輪坂真言美 『DANCE In the Moon, Moonlight』 男の方は何か空を指差して叫んでいる。 どうでもいい、無視しよう。 意表をついたつもりなんだろうか。 してやったり、という顔で何処からか取り出した光の円盤を投げる。 女の方は何か良く分からない言葉を呟いている。 何のつもりだ? そう訝っていると、気合の込められた声が響いた。 生まれたのは、燃え盛る紅い炎。 それが真っ直ぐに僕の方へと向かってくる。 狩られるだけの弱々しい獲物だと思っていたけど、中々どうして。 存外に――――楽しいじゃないか。 飛来する二つの暴力の塊を正面から受ける。 円盤は胸の生体装甲に触れて、その鋭さを発揮することなく霧散。 炎は瞬時に体を包んだものの、痛みを感じさせてはくれなかった。 少しは期待したのに……何だ、この程度か。 落胆しながら、更に歩く。 体に僅かな揺れも無く、一筋の傷も残さずに。
>289は>288へのレスだ・・・済まないね。
ン・ダグバ・ゼバ VS 横島忠夫&三輪坂真言美 『DANCE In the Moon, Moonlight』 >289 >290 歌のように響く旋律。独特の韻を踏む、発声法――――これは術? 俺の疑念に応えるかのように、女の子のから炎が放たれた。 空中で金の奇跡と交錯すると、たちまち甲冑野郎を火で包み込んだ。 俺の煩悩がたっぷりのったソーサーと、女の子の炎! 思いも寄らなかった多重攻撃。これなら、あんなヤツ一発! それにしても、驚いた。そうは見えないけど、この娘ゴーストスイーパーか? それともまだ見習い? でもまさか、ど素人なんて事は・・・・・・ 握ったままの手をそっと引き、俺は口を開きかけ―――――― だけれど、その問いが発せられる事はなかった。 俺たちの攻撃が、まるで通じなかったから。 サイキック・ソーサーは掻き消され、炎も容易く散らされる。 傷一つ、煤すらも残さずにそいつはまた、歩き始めた。 う、嘘だろ? サイキック・ソーサー喰らって、無傷だなんて・・・! 「や、止めてくれよ、そういう冗談は! た、質悪いな〜」 ははは、と薄っぺらな笑みが浮かんだ。 体が、勝手に後ろへ下がった。 手は、固く握ったままだった。 「だ、駄目やぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああ! もう・・・もう、あかん!」 滝のような涙をこぼしつつ、俺は走った! 戸惑う少女を連れたままで。 に、逃げる以外どうせいっちゅうんじゃ! 世の中不公平じゃ――――――――――――――――――――――――――ッ!!
ン・ダグバ・ゼバ VS 横島忠夫&三輪坂真言美 『DANCE In the Moon, Moonlight』 >291 「嘘っ!」 炎の玉は、白い異形に炸裂したものの、一瞬後には消滅し…… 残ったのは無傷の白い異形のみ。 いかに最下位の術とはいえ、毛先ほどの傷も付けられないとは、完全に予想外だ。 ――――炎系がダメ、って事? じゃあ…… 考えると同時にMDを操作……しようとしたところ、青年が握ったままの手を引き、駆けだした。 「わきゃあぁっ!」 どこか緊張感のない叫びを上げながら、青年に引っ張られる。 頭は混乱の極みにありながらも、身体は至極冷静に動く。 すなわち。 MDを操作して、三曲目を選択。 流れる韻律に合わせて詠唱。 そして現象を呼ぶトリガーワードを叫ぶ。 「真言美ビィィィムッ!」 小規模な雷が、白い異形の身体を灼く。 大した打撃にならずとも、足止め程度にはなるはずだ。 青年に引きずられているという状況でそこまで考えられようはずもなく、ただの偶然なのだが。
ン・ダグバ・ゼバ VS 横島忠夫&三輪坂真言美 『DANCE In the Moon, Moonlight』 >292 自分達の力が通じないと見ると、二匹の獲物は慌てて逃げ出した。 全く、みっともない奴等だ。 でも、いいか。 追う楽しみが出来た。 緩慢な歩みを止めて、強く踏み出そうとする。 その瞬間、光が見えた。 あの女が放ったであろう電撃が体に走る。 多少痺れを感じた程度でダメージは全く無い。 だが、逃げる奴等から一瞬目を逸らしてしまった。 逸らしたのはほんの一瞬。 その一瞬の間に、奴等は建物の奥へと逃げ込んだ。 逃げても無駄だ。 雑音の中で、奴等の息遣いですら聴き取るこの聴覚。 反響する物音を総合する事で、何処に逃げたかは手に取るように分かる。 さぁ、狩りの時間だ。 ―――そこか。 歩き始めてすぐに、奴等の位置は特定出来た。 この壁の向こうか。 拳を叩き付け、一撃で壁を打ち砕く。 そして――――暗闇の中で立ち込める埃越しに、奴等の姿を認める。 「――――見つけた」 歓喜に弾んだ声が、空気を揺らす。
ン・ダグバ・ゼバ VS 横島忠夫&三輪坂真言美 『DANCE In the Moon, Moonlight』 >293 また、その娘は魔法じみた力を放った。紫電が大気を裂き、甲冑野郎の足下を撃つ。 その効果が如何ほどであったかを確かめる暇もなく、俺たちは奥へ奥へと走った。 「ま・・・なみ?」 今、そーやって叫んだような? 「真言美ちゃんっていうのか」 走りながら、訊ねる。 「えぇっ! なんでわたしの名前知ってるんですかっ!?」 「たった今、大声でそう叫んでたやんけっ!」 転けそうになる体を引っ張り起こしつつ、とっさに叫び返した。 それでもその娘――――真言美ちゃんには理解出来ないらしく、頭を捻る。 ・・・天然かい。 ・・・ま、可愛いからいいか。 それはさておいて。 柔らかくてすべすべな手の感触を愉しみながら、俺は周囲に注意をはらった。 今はとにかく、状況を判断する時間が欲しい。 そう、例えば―――― 「真言美ちゃん。君も、ゴーストスイーパーなのか?」 まっ先に浮かんだ、この疑問。 そしてまた、返答は得られずに事態はこじれる。 なんつーかもう、憑いてるんじゃないかってタイミングで。 「見つけた」 異形が歓喜の声を漏らしつつ、俺たちの前に姿を見せた。壁を抉り取って? 数センチのコンクリを片手で割った? こ、こいつ何処まで出鱈目なら気が済むんだ!? ガクガクと、顎が震える。出来る事なら知らん顔して、このまま遠くへ逃げたい! でも・・・でも! 出来るわけねーだろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおッ!!! 泣き出したい気持ちを精一杯抑え込んで、俺は真言美ちゃんと化け物の間に立つ。 背に庇うようにしながら、俺は手の内に文珠を出した。それを前に突きだし、発動! 即座に、刻まれた文字「凍」は絶対零度近い冷風を発生させた。 宙を漂う埃すらも一瞬で凍結し、大気を白く凍てつかせながら霊気が生んだ厳冬が踊る。 炎も冷気も霊力も効かないなら、こいつでどうだっ!!
ン・ダグバ・ゼバ VS 横島忠夫&三輪坂真言美 『DANCE In the Moon, Moonlight』 >294 青年が自分の名前を知っていた。そのことに真言美はひどく驚いた。 まあ、先程自分の名を冠した術を使っているのだから、知られても当然なのだが、そのことにまで思い至らない。 続けて発された青年の問いは真言美を戸惑わせた。 ゴーストスイーパー……オカルト事件の解決を生業とする特殊能力者たち。 しかも「も」ということは、目の前のこの青年もGSだということだ。 しかし、真言美は火者であってGSではない。 そのことをどう説明しようかと考えた時、コンクリートの壁がぶち破られ、白い異形が姿を現した。 それを見て、青年が何やら喚きながら、手にしたピンポン玉のようなものを異形に向かってかざす。 その珠に「凍」という文字が一瞬浮かび、異形を凄まじい冷気が取り巻いた。 ――――一体なに? 目の前で起こっていることが理解しきれず、混乱する。 混乱した真言美の瞳に、白い異形が映った。 ――――嗤ってる。 呵々大笑しているわけでも、笑みの形に唇が歪んでいるわけでもないのに、それが判る。 そして、白い異形に、この冷気がさしたる痛撃を与えていないことも同時に判った。 視認して、認識して、思考するよりも速く、身体が動く。 MDを操作、四曲目を選曲。 詠唱、続けて発現のための最後の一言。 「マジックシュート!」 真言美の目の前に顕れた二つの光が、矢のように白い異形に飛ぶ。 無論、異形との間にいる青年を避けるような軌道を取りながら。
ン・ダグバ・ゼバ VS 横島忠夫&三輪坂真言美 『DANCE In the Moon, Moonlight』 >295 白い風が吹き抜け、体を凍てつかせる。 それを追いかけるようにして飛来する光弾。 避ける術も無く――――いや、避けようともしないで、それを受ける。 威力は意外に大きかったらしい。 僕の肩と胸の装甲を抉り、吹き飛ばしていく。 地面と胴体に紅い染みが出来るが、ただそれだけだ。 吹き飛んだ部分は既に再生が完了。 再び傷一つ無い体が生まれる。 そして、意識を周りの物質に集中。 頭の中でイメージを組み立てる。 分子を高速で振動させ、熱を高めるイメージ――― 周囲の景色が、瞬きする間に、紅蓮の炎に包まれる。
ン・ダグバ・ゼバ VS 横島忠夫&三輪坂真言美 『DANCE In the Moon, Moonlight』 >296 冷気の束が化け物を凍結させる! そこに真言美ちゃんの術が加わって、そいつの体に二つの穴を穿つ! 空いた穴からは鮮血が吹き出して、真っ赤な痕跡を・・・ ――――――血だって? こ、凍ってないのか!? 「凍」も効かないなんて・・・こいつの霊力、どんな桁外れなんだ。 ま、拙いぞ、これ。ひょっとしたら、とんでもなく強いんじゃ―――――― 残滓が埃を凍てつかせ、冷え切る空気と共に鼻腔を凍えさせる。 ライトの光を受けた氷の粒は、暗い廃屋の中でなお、一層強くと煌めいた。 その、光の奥で異形は佇む。 さも、何事もなかったかのように。 喉が鳴る。 膝が嗤う。 背筋が凍る。 肌寒いぐらいなのに、額からは汗が止めどなく零れ、バンダナはたちまち重く湿った。 どうする? どうしたらいい? 困惑する中、甲冑野郎は追い打ちをかけるように火を放った。 いや、ただの火じゃない。この霊波の流れは・・・パイロキネシス! ひのめちゃんが、あの小さな発火能力者が使うのと同じ炎! 「て、てめぇ! やっぱ、あの発火現象の――――――」 炎が、景色になる。 生き物のように蠢く朱の帯は、俺を真言美ちゃんを包み込むように迫った。 しかも、念力で生まれた火は消えにくい。水やら冷気やらでは潰しきれない質の悪い炎・・・ だけどっ! 俺だって、近場で延々と発火現象と戦ってきたわけじゃねーぞ! 幼い、小さな小さな女の子の顔をちょっとだけ思い出しつつ、俺は文珠を取り出した。 「これで消えろっ!」 文珠「鎮」! 霊力の塊が爆ぜると、たちまち辺りは「鎮火」された。 再び聞こえるのは、強くなる一方の雨足と遠雷の響き。 何も残さず消え去った炎を微かに網膜に焼き付けながら、俺はまた文珠を身構えた。 ――――――――いつでも逃げられるように、足だけは軽くしつつ。
ン・ダグバ・ゼバ VS 横島忠夫&三輪坂真言美 『DANCE In the Moon, Moonlight』 >297 冷気と光の矢も、白い異形には大したダメージを与えられなかった。 いや、ダメージも一瞬で回復したと言うべきか。 ――――こんなの、勝てないよ。 絶望感が、心と体を蝕む。 逃げてもどこまでも追ってくるコイツからは、逃げられない。 なら、いっそのこと、ここで果てた方が楽なんじゃないのか。 そんな事まで頭に浮かぶ。 そこへ、いきなりの炎。 「きゃああああああぁぁぁ!!」 周囲が一瞬にして炎に包まれ、熱がちりちりと身体を灼く。 炎は、心さえ焼き尽くすほどに、強く、強く燃えさかる。 そこへ青年の叫び声。 それと同時に炎が一瞬にして消える。 「え?」 あれだけの炎が、一瞬で鎮火した。 これも青年の力なのだろうか。 そんな事をぼうっと考えながらも、身体は動く。 そう、錯乱した頭と同様、身体は混乱したまま走り出す。 ……白い異形に背を向け、この場から逃げ出すように。
ン・ダグバ・ゼバ VS 横島忠夫&三輪坂真言美 『DANCE In the Moon, Moonlight』 >298 ――――へぇ。 僕の生み出した炎が消えるか。 中々面白い手品だね。 理不尽に撒き散らされる力の嵐で、壁は焼け爛れボロボロになっている。 そして対峙するのは――――二人だけ。 僕の発火能力に怯えたのか、女の方は一目散に逃げ出した。 「……逃げないのかい?」 ふざけた調子で、語りかける。 「逃げてもいいよ。待っててあげるから」 仮面の奥に浮かぶのは微笑。 追いかけっこには飽きた。 次は……隠れんぼにしよう。 言って、弾かれたように男の方も走り出す。 暗闇の廊下に響くのはただ奴等の足音だけ。 パパン ドググ グシギ 「1……2……3……」 ゆっくりと、数を数える。 楽しく遊ぶには余裕が必要だ。 逃げる獲物を弄ぶ、余裕が。
ン・ダグバ・ゼバ VS 横島忠夫&三輪坂真言美 『DANCE In the Moon, Moonlight』 >299 「逃げないのかい?」 意外にも、異形の野郎は人間の言葉を喋った。 もしかして人間? いや、格好も放つ霊波もヒトのそれとは違いすぎる。 現にあんなに楽しそな口調で逃げろ言うヤツを、人間なんて思いたくねぇ! 「だったら・・・一生そこで待ってやがれっ!」 じり。 靴の底がコンクリの上を滑って、鳴った。 合わせて俺の体も、少しずつ少しずつ後ろへと下がる。 「動くなよ? 動いたら泣くからなっ!」 恐怖に胸をいっぱいにしながら、俺は振り返って全力で走り出した。 逃げる? そうだよ、悪いか。 こんな化け物、相手になるかよ。 元々、これは美神さんに来た仕事だったんだ。 俺にどうこう出来るレベルじゃなかったんだよ! それを、それなのに、それでも。 「チクショオ――――――――――――――――――――――――ッ!!」 走りながら、叫ぶ。 少し視界がぼやけて、滲んだ。 でも、構わず駆け続ける。 真言美ちゃんを一人にしてられない! 早く、あの化け物より早く見つけなければ。 だから俺は、走り、叫び、光を振り回す。 「真言美ちゃん、どこだぁ!」 靴がコンクリを打つ音、雨粒がアスファルトを打つ音、そしてヤツの呟き。 追い立てられるように俺は、暗く濁った廃屋に彷徨った。
ン・ダグバ・ゼバ VS 横島忠夫&三輪坂真言美 『DANCE In the Moon, Moonlight』 >300 はぁはぁ、はぁはぁ、はぁはぁ、はぁはぁ。 獣じみた息づかいが聞こえる。 それも耳元で。 はぁはぁ、はぁはぁ、はぁはぁ、はぁはぁ。 コワイ、オソロシイ。 何度も転びそうになりながら、必死に走る。 はぁはぁ、はぁはぁ、はぁはぁ、はぁはぁ。 止まったら最後だ。 助かりっこない。 ずだん! ついに足がもつれて、床に転げる。 身を守るものは何もなく、まるで裸になったかのように心細い。 はぁはぁ、はぁはぁ、はぁはぁ、はぁはぁ。 まだ、息づかいが聞こえる。 恐ろしくて、耳を塞ぐ。 はぁはぁ、はぁはぁ、はぁはぁ、はぁはぁ。 それでも、その息づかいは止まなくて。 ……それが、自らの乱れた息づかいだと気付いたのは、ずいぶんと経ってからだった。 周りを、おそるおそる見渡す。 雨の降り続く外からの明かりはなく、廃ビルゆえに室内の明かりもない。 目の前にはのっぺりとした闇だけが広がっている。 まだ恐怖に震える心と体を必死に制して、真言美は考える。 だが、言霊の力もあの白い異形の前には無力。一体どうすればいいのか、さっぱり判らない。 ただ、恐怖と絶望だけが広がっていく。 その時、靴音が聞こえた。 「ひっ!」 かつ、かつ、かつ、と規則正しいその音。 それが、この上もなく恐ろしい。 無様に這いずりながら、必死に隠れ場所を探す。 柱の影。机の下。階段の隅。 恐怖で塗り固められた思考は、ただただ混乱するばかりで、まともな答えを出しはしない。 ただただ、本能の命じるままに、必死になって柱の陰に隠れる。 無論全身が隠れるはずもなく、まさに頭隠して尻隠さずといった有様だ。 端から見れば滑稽極まりない光景。だが、真言美にしてみれば必死。 そして、靴音が止まった。
ン・ダグバ・ゼバ VS 横島忠夫&三輪坂真言美 『DANCE In the Moon, Moonlight』 >301 ゲギド バギン 「8……9……」 ゆっくり、ゆっくり。 出来るだけ間隔を大きく、落ち着いて数える。 焦るな……もうすぐ、再開だ。 そう自分に言い聞かせる。 パパンゼゼゾ 「10」 一際力強く、最後の数字を発する。 さて、何処まで逃げたかな? 目を見開けば暗闇は昼間のように見通せる。 相変わらず、奴等は音を隠しもしないで逃げ回る。 逃げる事は―――不可能だ。 かつ、と一歩を踏み出す。 ――――さて、狩りを再開しよう――――
ン・ダグバ・ゼバ VS 横島忠夫&三輪坂真言美 『DANCE In the Moon, Moonlight』 >302 震えていた。 「・・・真言美ちゃん」 必死になって、隠れようとしてそれも出来ないで。 「真言美ちゃん!」 少女は小さくなって、何処までも何処までも小さくなって、震えていた。 「真言美ちゃん!」 三度、俺は名前を呼んだ。 それでようやく気付いたのか、真言美ちゃんはゆるゆると顔を上げる。 ――――泣いていた。 顔をくしゃくしゃにして、表情を恐怖に染め上げて、俺を見る目すら彷徨わせて。 親と離れた幼い子供のように、泣いていた。 「落ち着けっ!」 ようやく、俺は気付く。 この娘は素人だ。ただ、ヒトとは違う力を持っているだけの、一般人。 化け物と戦う力はあっても、化け物と戦う必要のない人間。 俺たちみたいに、金を貰ってやっているプロとは根本から違う・・・ 「泣いてどうにかなるんだったら、俺が泣いとるわぁ!」 口ではそう言いつつ、俺は鋭い目で真言美ちゃんを見る。 瞬間、俺の内部から恐怖とか躊躇いとか迷いとか、全部消えていた。 潤む瞳と交差する、俺の眼差し。 そこにはいつもの恐怖とか、簡単に取り乱す俺の影はなかった。 あの時の――――自分から、戦い勝利を求める力が、遠くの方から起き上がってくる。 「俺がついてるから、怯えなくてもいい。あんなヤツぐらい、俺がどうにでもしてやるって!」 手が、するすると動く。肩から腕へ、そして背中へ。 「この俺を信じなさい!」 我ながら、決まった! そう思うほど、力強い台詞。 言い終わった後――――――何故か、抱き付いていたが。 ま、それはそれ。
>285 傷の男/スカー(M) vs 片倉優樹 下に叫んだ後、優樹はビルの端に立ち、その時を待っていた。 男がビルへと大きな足取りで確実にビルへと近づいて来る。 「こうやって誘われて、そうですかって登って来る人は普通いないからね」 下には多くの車と輝くビルが立ち並んでいる。 屋上に吹き付ける風が冷たく優樹の頬を撫でて行く。 月に照らされ、優樹の白髪は銀色に輝き、見るものを圧倒させる美しさを 醸し出していた。 優樹は下をジッと見つめ、男がビルの目の前に立つと同時に目を瞑り――― ―――落下した その速度は徐々に重力の影響を受け、そのスピードを上げていく。 優樹は瞑っていた目を開き、精神結合(ブレイク)を発動。 高速で近づいて来る地面が精神結合により、ゆっくりと、スローモーションになる。 そして、残った腕を筋力増幅(ブースト)により地面への衝撃、また 男への攻撃に備え、この形状での力を最大限にまで引き上げる。 ゆっくりゆっくり近づいて来る地面、そして。 目標。 男が此方を確認するように上を向く、そして優樹と目あった瞬間。 優樹はニヤリと笑い、大きく腕を振り上げる。 「当ったらかなり痛いですけど、我慢してくださいね」 そして、増幅させた腕の手を大きく開き、男の顔を掴み地面に叩き付けようとした。
>279 ハインケル・ウーフーVSロゼット 『どっちがよりAMENに相応しい?』 ロゼットの足取りを追って、ハインケルは走る。 その過程で有象無象に死を振りまきながら。 幾度となく弾倉交換を繰り返し、殺した数などもはや覚えていない。 「……追いついた!」 僅かに見えたロゼットの背中、すぐに階段に消えていったが間違いない。 捕まえた、もう逃がしはしない……顔が歓喜に歪む。 両手にある死の具現を殊更に握りしめながら、後を追って走り出した。 その先にあったのは暗い武器庫。 なるほど、ココに武器を取りに来たと言うことか。 とすると、アレにも何らかの戦闘能力があるという事らしい。 油断なく部屋へと侵入し、同時に一発デタラメに発砲した。 当たることを期待したワケではない。 ハインケルの狙いは、マズルフラッシュ。 そう、マズルフラッシュの光がロゼットの姿を浮かび上がらせた――武装した姿を。 「へぇ? いっぱしにやれるのかい? 子供の火遊びはケガの元だよ?」 幼さの残る少女に、嘲りの言葉を投げかける。 両手にある機関銃とライフルがあまりにも不似合いな少女。 だが、ハインケルは決して油断せず、じりじりとすり足で軸線をずらしながら移動する。 銃口はピッタリとロゼットに向けられたままで。
魔 像 の 十 字 架 麻宮アテナを狙う『鬼』 >201 青子にも報せなかった、変身時の切り札だ だがそれでもあの女は生きている やはり随分と強い人間だ その強さを限界まで試す まだまだ追い込めなければいけない そして、殺す! 喰い殺す! 少々火傷した右手に持ったショットガンを突きつけ、女の前にちらつかせる 「ネネネネネネネネ・・」 せわしなく動かした後、右手に狙いを定めた
ン・ダグバ・ゼバ VS 横島忠夫&三輪坂真言美 『DANCE In the Moon, Moonlight』 >303 恐怖と絶望に満ちていたココロに、何かが差し込む。 それは希望か、それとも別の何かか。 ただ一つ、言える事は。 ――――セクハラは、イヤだという事。 「きゃああああああああああああああ!!」 叫んだ。 それはもう、力一杯。 あの異形に聞こえるとか、そんなの考えもせずに。 ひとしきり叫んで、逆に少し落ち着いた。 そうだ、まだあきらめなくたって、何とかなるんじゃないか。 そんな事を思わせてくれる青年。 頼りがいがあるわけでも、格好いいわけでもないけど、安心させてくれる。 ――――そうだ。わたしはまだ何もしちゃいない。 ――――考えろ、考えろ、わたし。 ――――あの異形だって、不死身じゃないはず。 ――――どこかに、弱点があるはず。 そこまで考えて、ふと、思い至った。 腰の、あのベルトのようなもの。 もしかして・・・ 「変身ベルト!?」
>284 アグリアスVSアセルス 私の斬撃に対し、冷静に一歩退くアグリアス。 だが・・・幻魔は、その彼女を捉えた。 革鎧ごとその肉体を切り裂き、紅い血を散らせる。 最強の妖魔たる私の剣―――甘く見てもらっては、困る。 アグリアスに、反撃に転じえる余裕がないことを一瞬で見極め、 私はそのまま、振り上げた剣を切り落とした。 ・・・もっと、その紅き血を見られるように。
ン・ダグバ・ゼバ VS 横島忠夫&三輪坂真言美 『DANCE In the Moon, Moonlight』 >307 何かゴチャゴチャ話しこむ声と―――絶叫。 ……何をしてるんだか。 呆れつつも、それで位置はハッキリした。 物陰の、普通に見ていれば死角になるような場所。 隠れられるとでも思ったんだろうか? 大方は時間稼ぎして逃げる相談、か――― 「もう、いいかい?」 隠れんぼも結構すぐに終わるものだ。 飽きたな……殺しちゃおう。
ン・ダグバ・ゼバ VS 横島忠夫&三輪坂真言美 『DANCE In the Moon, Moonlight』 >309 腕の中で真言美ちゃんが叫ぶ。 そりゃもう、これでもかって大声で。 「ああっ、すんませんすんませんすんません・・・・・・!」 とっさに手を離して、土下座。 うう、なんでやっ! なんでこういう場面で俺ってヤツはまっ先に手が出やがるっ! 良い雰囲気に、良い雰囲気になれるかも知れなかったのに――――――――――――ッ! ・・・と。 「もう、いいかい?」 異形が姿を現す。やっぱり、そのまま逃がしてくんねーか。 「そんなこったろうと思ってたよ、チクショ――――ッ!!」 「変身ベルト!?」 俺が叫びをあげるのと同時に、真言美ちゃんが何かに気付いた。 なんというか、その、恐ろしく場違いなモノに。 ・・・なんでベルトなんて付いてらっしゃるんですか、この化け物?
ン・ダグバ・ゼバ VS 横島忠夫&三輪坂真言美 『DANCE In the Moon, Moonlight』 >310 「変身ベルトだとしたら……そこが弱点ですね!」 牽制するように叫び、その間にMDを操作。 選曲は四曲目。そう、ピンポイント攻撃に最も適した法術。 「マジックシュート!」 二筋の光が、白い異形の腰のベルト目掛けて走る。 法術が生み出した光の矢は、目標を誤る事はない。 その間に、青年の手を取って駆け出す。 目的は、屋上。 屋上なら、遠慮会釈なく、強力な法術でも使いたい放題だ。
ン・ダグバ・ゼバ VS 横島忠夫&三輪坂真言美 『DANCE In the Moon, Moonlight』 >311 「ガッ―――」 呻く。 腰のベルトに命中した光―――いや、違う。 痛みは、奥から突き上げてくる。 まるで何か別の生き物が体内で暴れ回っているような痛みが、全身を灼く。 ニゲロ。 嫌だね。こんなに楽しい奴を逃すわけには行かない。 こんな痛み、初めてなんだ。 ナラバ、オエ。 ああ、そうだねそうしよう。 元々奴等は狩られる獲物なんだ。 そう奴等は狩られるべき獲物なのになんで抵抗するんだなんで―――― ソシテ、コロセ。 どくん、と体が力強く脈打つ。 本能と思考が一致した。 そう思えるほどに体が軽くて、熱い。 蹲っている間に奴等は上へ移動したらしい。 逃がすものか。 上る為に、階段へと足を踏み出す。 ――――鬱陶しい。 ああ、面倒だ。 こんなモノ使わなくても、もっと早く行ける!! 力を込めて、跳躍。 階段がひび割れ、大砲のような音と一緒に体が跳ね上がる。 目の前に迫るのは邪魔をする壁。 邪魔だ! 拳を繰り出して打ち壊す。 そして砕けた階段に指を引っ掛け、指の力だけで更に上へ。 邪魔だ。 再び拳で叩き壊す。 ジャマダ。 念じて、壁を高熱化。溶解させて道を作る。 ――――そして、一番上へ辿り着く。 ここなら完全に、逃げ場は無い。 狩ってやる、コロシテヤル!!
ン・ダグバ・ゼバ VS 横島忠夫&三輪坂真言美 『DANCE In the Moon, Moonlight』 >312 真言美ちゃんが、急に俺の手を取った。 な、なんて積極的な・・・緊張の果てに、愛が、愛が芽生えましたか!? 「ま、真言美ちゃん!?」 名前を呼んでみる。でも、反応すらない・・・まま、少女はいきなり走り出した。 腕がぎゅん、と伸びて体が引っ張られる。手からぽろり、と文珠が落ちる。 一階から二階へ、二階から三階・・・どんどん、上を目指した。 俺に出来たのは、文珠を要所要所に落として、投げ込んで、隠すぐらい。 何か・・・策でもあるんだろうか? でも、駄目だ。遅い。 まだ怯えているのか、それとも元からか。女の子の足とは言え、遅すぎる。 このままじゃ、どうやっても逃げ切れない――――ええい、まどろっこしい!! 「ちょっと、ゴメン!」 繋いだ手を強く握って、胸元へ引き寄せる。戸惑う表情を見せたけど、構ってられない。 一気に持ち上げて抱きかかえると、真言美ちゃん以上の速度で駆け出した。 コンクリを蹴っ飛ばし、階段を踏み付けて、膝のバネで跳ね飛ぶ。 日頃鍛えたゴキブリの如き逃げ足で、一瞬の内に屋上へ・・・って!? 「でぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇええええ!」 破裂音爆発音炸裂音燃焼音・・・・・・なんか物騒な音が一纏めになって後からついてくる!? い、いやや、止めて、止して、勘弁してぇ! 追い立てられるように、実際追い立てられて、俺たちは屋上へと飛び出していた。 空を見れば、いつの間にか大きな月。 暗い闇を厚い雲を冷たい風を抉り取って、ぽっかり抜ける白い空白。 雨が上がった空に浮かぶ月が、全てを喰らわんばかりに俺たちへ迫る。 その虚無が、その欠落が、どうにも恐ろしかった。 足下へ文珠を二つ仕掛けると、真言美ちゃんを抱いたまま屋上を歩く。 白い異形の野郎は、足音高く追いすがってきた。 もう、逃げ場はない。窮鼠、上手い具合に猫を噛んでくれよ――――――
ン・ダグバ・ゼバ VS 横島忠夫&三輪坂真言美 『DANCE In the Moon, Moonlight』 >313 「お、お姫様だっこ!?」 青年に抱きかかえられ、驚愕。 いくら、真言美の足が遅いとはいえ、抱きかかえたのではと言う意味での驚きと、お姫様だっこされた事による驚き。 ……真言美にとっては、後者の方がより驚いたというのは語るまでもない。 そして、前者の(ホンのちょっぴりの)驚きに反して、青年はとんでもない速度で階段を駆け上がっていった。 (まるで、ゴキブリみたい……) ……その思いを口に出さなかっただけ、真言美も成長したのかも知れない。 そして、屋上にたどり着く。 いつの間にか雨は止み、月が出ていた。 空一杯に白い月が。 そして、真言美の目には、その横の『あるはずのない』青い月が見えていた。 真月……あるはずのない、偽りの月。 かつて、真言美たちが封じたその残滓。 真月の存在が、冷たい夜気が、ほんの少し残っていた恐怖を、絶望を忘れさせる。 いや、忘れたのではなく、克服したのだ。 ――――だって、思い出したんだもの。 (火者とは力ある者ではなく、覚悟ある者の名だ) その言葉をもう一度、思い出したから。 あの闘いをもう一度、思い出したから。 だから――――戦える。 床をぶち抜き、追いすがってきた白い異形を見る。 全身を覆う白いプロテクターには傷一つ無い。 にもかかわらず、腰の金色のベルトに僅かなヒビが見えた。 ――――やっぱり、アレが弱点。 確信を深める。 だが、マジックシュートでは充分なダメージではないらしい。 とは言え、他の術では狙いすましたピンポイント攻撃は不可能。 なら、出来ることは? 「あ、あのっ! 力を、貸してください!」 まだ自分を抱き上げたままでいる青年に向かって叫ぶ。 「あいつ、あのベルトが弱点なんです! でもでも、わたしだけじゃ力が足りなくて……」 必死に、青年に向かってまくし立てる。
ン・ダグバ・ゼバ VS 横島忠夫&三輪坂真言美 『DANCE In the Moon, Moonlight』 >314 足がしっかりと地面を噛む。 夜の空気は冷たく、火照った体を撫でて癒す。 月の光は闇を照らし、視界に真昼の如き明るさをもたらしてくれる。 この祝福された世界で、目の前に立つのは哀れな二匹の獲物。 無様に逃げ、 無様に追い詰められ、 無様に殺される。 ただそれだけの為に存在する哀れな存在。 しかし、今回は少し違う。 それだけでは済まさない。 ここまでやってくれたんだ。 奴等には最高の死に様を贈ろう。 この世に存在していたことすら思い出させない、完全な消滅を。 頭に描くのは白い光。 背負った月すら欺くような、 鮮やかで、無垢な白く輝く炎。 キ・エ・ロ 持ち上がった掌の中で力が渦巻く。 解き放たれるその一瞬を待つ、暴風が。 そして、今―――――
ン・ダグバ・ゼバ VS 横島忠夫&三輪坂真言美 『DANCE In the Moon, Moonlight』 >315 酷い威圧感。辺りを覆う霊波の気配。 異形は内に秘めた力を、一纏めに開放しようとしていた。 だけど―――――― 「あ、あのっ! 力を、貸してください!」 抱きかかえたままの真言美ちゃんが、意を決したように口を開いた。 「あいつ、あのベルトが弱点なんです! でもでも、わたしだけじゃ力が足りなくて……」 「弱点? もう、そんなの関係ない!」 手に残った二つの文珠を構える。 「これであいつは、お終いだっ!」 階段のすぐ側に立つ甲冑野郎、そこには俺の仕掛けた「破壊」が仕掛けてある。 ビルの中には無数の「爆」が。十個近くあった文珠は残り二個まで減っちったけど・・・ けど、これで詰み。 いかな化け物でも、重い灰色の墓標を背負って生き残る術なんて、ないっ! 文字を刻まれ、力を行使する瞬間を待ち侘びる文珠へ、俺は最後の命を下した。 「起爆!」 足下へ「起」の文珠を叩き付けた。大きな大きなトラップの引き金を。 まず、階段の入り口が纏めて陥没した。 それでも「破壊」は収まるところを知らず、コンクリートを浸食していく。 一階までの直通経路に叩き込まれ、異形の姿がたちまち見えなくなった。 これではまだ、終わらない。続いて連続した爆発がビルを揺らした。 落下の衝撃に連続した爆風。一階ぐらい崩れるかもしんねーけど、ならソレも良し! 生き埋めになったら、さすがに・・・・・・ 揺れが酷くなる。俺たちの足下すら震え、立っていられなくなるほど。 これは・・・まさか? 膝を付きつつ、俺の顔面は蒼白になった。 足場に、屋上に亀裂が走る。 鉄筋の裂ける音が足の裏から伝わる。 崩落する音が夜の静寂を切り裂き、辺り一帯に響き渡る。 ビルごと崩れる? 老朽化と火力が、思った以上だった!? 「し、しまったぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!」 「きゃああああああああああああああああああああああああああああああああああ」 とっさに最後の文珠を使って、「浮」を作るが間に合わない! 屋上が崩れ去ると同時に、俺と真言美ちゃんは落下した・・・
ン・ダグバ・ゼバ VS 横島忠夫&三輪坂真言美 『DANCE In the Moon, Moonlight』 >316 白い異形が迫る。 その腕には、絶望的なまでの殺意と破壊の意志。 急がなければ…… 必死に話しかける真言美。 だが、青年の答えは予想外だった。 「関係ないって、え……?」 青年の叫びと共に、廃ビルが振動した。 連鎖的な爆発が、ビルを揺るがす。 「え? え?」 事態を把握出来ないまま、真言美は青年の腕の中で目を白黒させる。 ついには、その崩壊は廃ビル全てを巻き込む。 「え? え? え?」 そして、そのまま落下する二人。 「し、しまったぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!」 「きゃああああああああああああああああああああああああああああああああああ」 叫びと悲鳴。 このまま落下すれば、ぺしゃんこの死骸が二つ出来る事だろう。 「か、風よっ!!」 精一杯、言葉に力を込め、叫ぶ。 言葉は言霊と変わり…… ふわりと、二人の身体を優しく包む風になった。
ン・ダグバ・ゼバ VS 横島忠夫&三輪坂真言美 『DANCE In the Moon, Moonlight』 >317 爆発音、衝撃、振動。 それを引き金にして、建物が崩れる。 先刻まであんなにも頼りになった足場が、無い。 足元にぽっかり口を開けるのは拒絶するような漆黒の闇。 ソンナ、バカナ。 ナンデ―――― 後は只、落下するだけ。 崩れる瓦礫が降り注ぎ、闇が体を飲み込み、世界が僕を拒絶する。 岩の塊と鉄の破片が体を激しく打つ。 いつしかそれは積み重なり、動きを阻害するまでになった。 暗闇と、静寂の中で。 心音だけがやけに大きく聞こえる。 どくん。どくん。 体中を血液が走り、力を行き渡らせる。 ぎちぎちと筋肉が軋む。 ニガス、モノカ―――― 凄まじい力で瓦礫を押し退けて、体を外に露出させる。 最後の岩を弾き飛ばす。 轟音とともに外の世界が開け――――獲物の姿を。視界に捉える。 ありったけの憎悪をぶちまけ、無制限に力を解放。 竜巻にも似た力の奔流が辺りを吹き荒れる。 そして辺りに踊るのは紅蓮の炎。 炎は複雑に絡み合い、一瞬にして瓦礫の山を炎の山へと変える。 燃えろ、燃えろ――――モエツキロ!!
ン・ダグバ・ゼバ VS 横島忠夫&三輪坂真言美 『DANCE In the Moon, Moonlight』 >318 ぐきっ。鈍い音が足首と膝から生まれて、骨を伝って脳を叩く。二人分の重みを支えきるには、 ちっとばっかし足場が悪すぎたようだ。砕けたコンクリート片に着地した、足を挫いた。 石に挟まれて踝から血が滲む・・・苦痛に荒い息が漏れ、膝が崩れ落ちた。 しまらねぇ――――けど! 甲冑野郎を倒したんだ、この程度の代償なら安い安い・・・! ふ、と―――― 岩が、動いた。人の背丈ほどもあるコンクリート片が跳ね上がり、回転して音をたてる。 もうもうと上がる土埃に煙が加わり、砕けた破片と鋼線とが舞い上がる。 そして、その中に立ち上がる異形が一匹――――――ヤツだ。 「ダぁ・・・」 ダメだ、そう叫ぼうとして震える喉を手で押さえ込む。 傍らに立つ少女を目にして、弱音を、叫びを上げるわけにはいかない・・・! 「だい、丈夫。大丈夫だっ! 俺に任せろっ!」 根拠のない叫び、それを掻き消すように石の弾ける音がした。 火が、瓦礫の山を走って、俺たちを包囲している。パイロキネシスか! しかも火勢はさっきと段違いで、力は可燃物を炎に変えて、瓦礫の山を埋め尽くしていた。 瞬く間に朱が迫り、余波だけで喉と肺が焼ける。 「消えろっ!」 手に残った「浮」の文珠を書き換え、「消」を作ってコンクリートの山へ投擲。 「消火」は音もなく、火を掻き消した・・・灼け付く大気と燻る瓦礫を残して。 ・・・文珠、これで残りゼロ。 「真言美ちゃん、その・・・」 もはや残されている手はこれしかない。これしか、ない。 「仕方ないんや、仕方ないんや! 勘弁してぇ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!」 素早く、本当に素早く。俺は真言美ちゃんの尻を撫でた。
>308 アグリアスvsアセルス 上段から振り下ろされる灼熱に対し、受ける以外のかわす手立ては通常なら三つだ。 つまり下がるか、左右に跳ぶか。 アグリアスは、そのどれをも選ばなかった。 前に出たのである。 正確には、身を投げ出しながら伏せたのだ。 落ち来る刃に空を切らせ、床に転がる。 胸の傷が開いたが、気にする余裕はない。 身を捻りながら妖魔の足元へ斬撃を送り込んだ。
傷の男/スカー(M) vs 片倉優樹 >304 認識したのが遅すぎた。 上から、遥か上から振り下ろされた死神の鎌はスカーの顔へと伸びる。 辛うじて出来たのは、それを肩口へ逸らす事。 強打は肩を砕き、男の体を地面へ縫い止める。 背中に冷たい大地の感覚が伝わった。 「この、程度で・・・」 右手に破壊を伝わらせる。 「終わると思うな、仇なす者!」 瞬間、足下を覆う地面が抉り取られるように砕かれた。 厚さにして、ほんの数十センチ。 だが、逃れるには十分な距離と瞬間を得れらた。 身を捻り、体を転がし、再び身構える。 だらりと下がった左手をふるい、右手に死を宿らせて。
『背徳信者』 >305 「火遊びってほど、お子様じゃないつもりだけどね?!」 私はだっと背後に飛び退ると、ロッカーの陰へと隠れる。 そして、上半身だけを影から出すと、機関銃を乱射した! 銃弾が彼女の眼前で炸裂し十字の閃光を放った。 私にヒトは殺せない。 たとえ―――彼女が私を殺そうとしているとしても。 「甘いわね!!ホントにィ!!」 そう叫びながら、私は機関銃を打ち続ける。 ≪かちっ、かちっ、かちっ≫ 「弾切れッ?!」 私は、機関銃を投げ捨てるとライフルに弾を装填する。 「おぉぉぉぉぉぉ!!」 そして、ロッカーの陰から飛び出すと、ライフルを構えながら彼女めがけて走るッ!!
>306 VS怪人 『ネネネネネネネネ・・』 『彼』がなにをしたいのかは、わかります。でも、なにを考えているのか。 なにを言いたいのか。 (恐いよね…) ショットガンをこれ見よがしにちらつかせて、私の右手に照準。 跳ね返しても、防いでも、あまり事態は好転しないでしょう。 だったら、撃たれる瞬間懐にとびこんで、超近接戦闘に持ちこみ、 あれの出番をなくす。そうなれば、十中八、九は私の勝ち。 うなじから背中に、汗が落ちます。だいじょうぶ。かわせる。かわせるから…。 (撃ってきなさい…!)
鈴鹿御前 vs パンテーラ(M) 『鬼の剣 豹の牙』 >231 静寂が支配する校舎の廊下で睨み合う黒豹と日本刀を構えるセーラー服の少女。 珍妙極まる光景だが、両者の間に張り詰める鬼気はそんな事を感じさせない ほど凄まじい。 一分一秒が永劫にも感じられる睨み合いの後――先に黒豹が動いた。 すかさず鈴鹿の大通連がそれを迎え撃つ。 しかしその太刀筋は先ほどと比べてわずかに鈍く、彼女の脇腹は浅く切り 裂かれた。 「どうしたい? お嬢ちゃん、ちょっと動きが鈍ってるよ。 あたしの香りにまいっちまったのかい?」 鉤爪に付いた鈴鹿の血を舐めつつ、パンテーラが挑発する。 鈴鹿は気づいていただろうか。 先ほどまで血臭がたちこめていた廊下に、いつのまにか馥郁たるジャコウの ような香りが漂い始めていたことに。 中世キリスト教の伝説によれば、豹は香りのよい息を吐いて獲物をおびき寄せる という。その伝説の通り、パンテーラの吐く薫香のごとき吐息は、相手の脳の 働きを鈍らせる効果があるのであった。 黒豹が黒い魔風と化して鈴鹿に襲いかかるたびに、彼女の体に浅い切り傷が 刻まれていく。 何度目かの攻撃を終えたパンテーラが、突然提案を切り出した。 「チャンスをやろう、お嬢ちゃん。 もしあんたが我々WORMの日本侵攻に協力するというのなら命だけは 助けてやらなくもないよ。 堕落した聖職者が最高の黒魔術師たり得るように、あんたが身も心も闇に 捧げれば我々WORMの中でも高い地位を得られるだろうよ。 ここまで生きてきた命、人間(モータル)ごときに義理立てして捨てるのは 詰まらないだろう?」
>321 傷の男/スカー(M) vs 片倉優樹 私の落下攻撃は見事、男に命中した。 しかし、寸前でかわされたのが拙く、左肩の機能を奪っただけで、男はまだ戦える状態にある。 左手で男の肩を掴み、そのままビルの壁に叩き付けようと思った時。 冷たいコンクリートで敷き詰められた地面は砕かれ、大きな穴が作られた。 これで、最後にしようとしていた攻撃がこうもかわされると、精神的ダメージは大きい。 優樹はその事を今、実感した。 私は下に落ちた男を追いかける為、下に向かって飛びあがり、穴のなかの男に 筋力増幅(ブースト)したままの左腕で再び攻撃をしかける。 「とどめっ!!」
魔 像 の 十 字 架 麻宮アテナを狙う『鬼』 >323 女に向けて撃たれた粒弾はある物は地面をえぐり、ある者は中へと舞った やはり弾は当たらない どうなっているのか、この女は しかし懐に飛び込んで来た事で、決定的な隙が出来る 喰い千切ってやる! つかみかかり、首筋へと牙を向いた
ン・ダグバ・ゼバ VS 横島忠夫&三輪坂真言美 『DANCE In the Moon, Moonlight』 >319 真言美と青年の周囲を突然、炎が囲む。 パイロキネシス……発火能力。 しかし、一瞬でこれほどの範囲と熱を生むとは、まさに怪物。 凄まじい熱が、ちりちりと身を灼く。 しかし、それを見ながらも、青年は震える声で、真言美を元気づける。 自分だって、怖いクセに、叫びたいクセに。 (わたしの、ために……) その思いに答えたいと思う。 だから、この凄まじい炎の中で必死に…… その、炎が消えた。 「え?」 訳がわからず、呆然とする真言美。 そして、さらに驚く事態が。 青年が謝りながら、真言美のお尻を素早く撫でた。 「ひ、ひゃぁぁああああああああああ!!」 何の意味があるかなど考える余裕もなく、真言美の手は青年の頬を思いっきりはたいていた。
ン・ダグバ・ゼバ VS 横島忠夫&三輪坂真言美 『DANCE In the Moon, Moonlight』 >327 何、だっ、て―――― 燃え盛る憎悪の形が一瞬にして消え去る。 だけど、それが消えてもまだ胸の中に憎悪は燻っている。 もう、何も見えない。 真っ白に染まっていく世界の中で――――直感だけで奴等の位置を探る。 激情に任せたままで瓦礫を破壊しながら、駆ける。 風を巻いて、空間に穴を開けるかのような勢いで真っ直ぐに直進。 もう、何も聞こえない。 イライラする。 凄く、イライラする。 奴等の首を二つとも一度に捻じ切ったら、少しはスッキリするだろうな。 ああ、それがいいそうしよう―――――
ン・ダグバ・ゼバ VS 横島忠夫&三輪坂真言美 『DANCE In the Moon, Moonlight』 >328 手の中に生まれた文珠を確認する間もなく、張り倒されました。 くらくらと廻る視界の中、白い甲冑が煙る瓦礫を突き抜けてくる。 ――――早い!? どうする? 足を止めないと。 何を使って? 文珠を当てて。 どんな文字を? それは―――――― 「え、え〜っと」 考えが纏まらなかった。 だ、だから足を止めるんだ。それぐらい出来るだろ!? 考えろよ、考えろって・・・・・・・考えられるかぁ! 猛スピードで迫る異形に、俺の緊張はついに途切れた。 「く、来るな帰れ失せろ消えろこっちを見るなぁ!」 びゅん、風を切る音。錯乱して叫びつつ、つい文珠を投げ付けてしまった。 あ・・・、とは思ったけど既に遅い。 すぐ目の前に落ちて、文珠は・・・・・・大穴を開けた。 文珠「失」が、どうやら瓦礫の山を消し去ったらしい。 異形は即座に反応し、勢いを維持したまま、飛ぶ。 白い体躯を月明かりの元、晒して。微かな軌跡を、漆黒の闇に刻みながら。 ――――軌跡? 目をやる。すると、月を受けた輝石が淡い光を返していた。 ベルトに嵌った、力を放つ輝石が。そう、真言美ちゃんの言っていた、ベルトが。 理解と同時に体が動き始めた。こんな時でも、染みついた動きは変わらない。 右手を目の前に構え、霊波を伝わせ、「栄光の手」を展開。 腕を覆う霊体の塊は俺の意思に応じて、手の形を作った。 ――――異形が、来る! 「伸びろっ!」 霊波の拳がそのベルトを撃ち、撃ち抜かれた異形は穴へ・・・・・・
ン・ダグバ・ゼバ VS 横島忠夫&三輪坂真言美 『DANCE In the Moon, Moonlight』 >329 真言美が、何とか気を取り直した時には、凄まじい速さで白い異形が迫ってきていた。 「わ、わきゃあっ!」 驚きの悲鳴を上げる。 その間にも、どんどんと迫ってくる異形が…… ――――穴に、落ちた。 「へ?」 状況を理解出来ないまま、目をぱちくりさせる。 「と、とりあえず……」 後頭部にでっかい汗の玉を張り付かせたような思いのまま、律儀にMDを操作。 選曲は、最終の一五曲目。 そう、真言美の使える最強法術。 いつもよりも長い詠唱の後、最後の言葉。 「必殺……カラミティィィィッ!」 言霊により、空間が歪む。 そして空間の歪みが、白い異形の肉体さえをも歪ませる。 名状しがたい音と共に、白い異形は捻られ、絞られ、そして畳まれる。 その光景を視界の端に収めながら、霊力を消耗しきった真言美は気を失った。
>320 アグリアスVSアセルス 二つ目の傷を負わせるはずだった私の剣は、 しかし虚しく空を切った。 ―――前に身を投げ出し伏せる。 その思い切った回避方法に、私は少々意表を突かれ、 続いての彼女の剣への反応が一瞬遅れた。 とっさのバックステップが間に合わず、腿のあたりを浅く斬られる。 そのまま、一旦間合いを取る。 アグリアスの紅い血と私の蒼い血が、戦場と化した寝所を彩っていく・・・ その様に、私の血が昂ぶっていく。 傷を負いつつもオヴェリアへの忠義を胸に剣を構える、女騎士アグリアス。 その姿は、美しかった。 ―――その首筋に、牙を立てたくなるほどに。 私も薄く笑みを浮かべたまま、幻魔を構えた。
ン・ダグバ・ゼバ VS 横島忠夫&三輪坂真言美 『DANCE In the Moon, Moonlight』 >330 あと一歩だ。 あと一歩強く踏み出せばこんな距離すぐに―――― その一歩を阻止するのは輝きを放つ拳。 拳がベルトを捉え―――激痛とともに体を突然出現した穴へと突き落とす。 突然の出来事に戸惑っている間に、終わりはすぐにやってきた。 叫びと共に、それは起こった。 空間に発生した歪みが、僕の体を、磨り潰す。 まるで世界がが殺意を持って僕を攻撃するかのように。 意識が、薄れる。 待て。 闇が、意識を塗り潰す。 こんなのは認めない。 こんな、無様な狩りの終わ――――― (ン・ダグバ・ゼバ/死亡)
>322 ハインケル・ウーフーVSロゼット 『どっちがよりAMENに相応しい?』 目の前で炸裂するロゼットの銃弾、決してハインケルの体には着弾しない。 それを侮蔑と取ったか、ギリッと歯ぎしりをしながら睨み付ける。 「ハ! 余裕だね! 生きるか死ぬかの瀬戸際で!」 叫びながら、機会を窺う。 いくら手加減していると言っても、アレは銃を持っている。 下手に突っ込めば、ケガでは済むまい。 と、銃弾が尽きたのか、突然に銃撃が途切れた。 その隙を逃さず突進するハインケル。 それを受けるかのようにライフルを構えて突進してくるロゼット。 互いの銃口が、いつでも互いの命を奪える場所をポイントしていながら、しかしどちらも発砲しない。 うかつな行動は命取りになる、むしろ、先に動いた方が隙を見せることにすら繋がる。 それを互いに分かっているが故に、どちらも発砲しない。 少しずつ、その距離が縮まっていき――そして目の前で対峙する。 ハインケルの二挺拳銃の内一挺が、ロゼットの額に。 ロゼットのライフルの銃口が、ハインケルの額に。 後は僅かな指の動きでどちらかが死ぬ。 「フン、大した度胸してるじゃない?」 その状況を、むしろ楽しんでいるかのように言葉を紡ぐハインケル。 「だけど、いつまでそうしてられるかねぇ? 小娘が」 まだ、その表情には余裕があった。 「神に仕える身が、またとんでもないことをしでかしたモンだねぇ、え? 神の慈愛じゃ足りなかったか? そんなにあの悪魔は具合がいいのか?」 下卑た言葉を投げかける。 「アンタの次はこのマグダラだ。マグダラは悪魔と悪魔憑きを匿ったカドで裁かれる。 そう、まさにアンタのせいでマグダラはお終いだ」 視線が、凶悪さを増したような気がした。 「その次はアンタがお気に入りの悪魔だ。アレはイスカリオテが全戦力を以て潰す。 アンタは一足先に地獄で待ってるんだね。 悪魔憑きも悪魔も天国になんざ行けるワケがないだろうからねぇ!!」 哄笑が、暗い武器庫に響き渡った。
鈴鹿御前 vs パンテーラ(M) 『鬼の剣 豹の牙』 >324 永劫にも感じられる(実際にはほんの数秒だったのかも知れないが)、睨み合いの後。 黒豹が宙を舞い、襲いかかってくる。思惑通りだ。 迎え撃とうとした刃は、しかし目標を捉えられずに空を切る。脇を駆け抜けていった豹の爪が、 脇腹を浅く抉った。 「どうしたい? お嬢ちゃん、ちょっと動きが鈍ってるよ。 あたしの香りにまいっちまったのかい?」 パンテーラの台詞に、ハッと気付いた。 先程まで辺りを覆っていた濃い血臭が、消えている。代わりに辺りを支配しているのは、麝香の ような甘い香り。 ──これを吸っては危険だ。 今更ながらに気付いたが、もう遅い。出血によるものとは異質の目眩が、断続的に襲ってくる。 もちろん、それを黙って見過ごす黒豹ではない。疾風のように襲い来るたび、私の身体に切り傷 が刻まれていく。 荒い息をつき、刀を杖に身体を支える私に、攻撃の手を休めたパンテーラが言った。 WORMの日本侵攻に協力しろ、そうすれば命だけは助けてやる、と。 「ここまで生きてきた命、人間(モータル)ごときに義理立てして捨てるのは 詰まらないだろう?」 その台詞が、私の逆鱗に触れたことに、彼女は気付いただろうか。 だから、言ってやった。 「確かにつまらないわね。 あなた如きのために、ここまで生きてきたこの命を失うのは!」 同時に、足の甲に大通連を突き立てた。 背筋を貫く激痛が、朦朧としかけていた意識を覚醒させる。 「返事は──ノーよ」
傷の男/スカー(M) vs 片倉優樹 >325 拳が迫り、 右手が空を掴み、 打ち砕かれ、 届かず、 ただ、体が崩れる。 人体破壊を帯びた右腕の一閃は空を切り、体を砕く強打が眉間を割った。 思考が途切れる。 膝が落ちる。 練成が解かれ、破壊が右手に成り下がる。 「だ、代行たる者が・・・この、ような・・・!」 もはや傷の男に錬金術をなす力は残らず、狂信はそこで、途絶えた。
ン・ダグバ・ゼバ VS 横島忠夫&三輪坂真言美 『DANCE In the Moon, Moonlight』 ―エピローグ― >332 全てが終わった。 ただ月のみが見やる中、白い異形はその存在を停止した。 ――――びょう、と風が吹く。 吹き終えた後、一つの人影。 その双眸は紅く、その手には巨大な鎌。 ――――その姿は、あたかも死を告げる神のように、ただ、月を背に在った。 ふわり、と軽やかに宙を舞い、真言美の横に降り立つ。 そして、彼女を抱き上げる。 呆然とその姿を見る横島に、影は呟くかのように言葉をかける。 「忘れなさい、この子のことを。全ては、月の見せた夢」 「ひとときの、幻」 まるで言い聞かせるような言葉が、横島の心に忍び入っていく。 その言葉、その双眸が命じる。 そう――――忘却を。
ン・ダグバ・ゼバ VS 横島忠夫&三輪坂真言美 『DANCE In the Moon, Moonlight』 横島忠夫、エピローグ >336 「横島ぁ――――――――――――――――――――――――――――――――――ッ!!!」 紫電の如きアッパーが俺の顎を抉る。事務所に帰った早々、俺は美神さんに殴り飛ばされた。 そりゃもう、問答無用に。しかも何度も何度も。ボロ雑巾のごとく血まみれになるまで。 なんとか異形を屠った俺だったけど、周りの被害は甚大。 ビルは崩すは破片で周りの建物に大穴を開けるはヤツの火で延焼は起こるは・・・ いくら除霊作業中の事とは言え、その総額はとんでもない事になっていた。 報酬が綺麗に消えるほど―――――― 「し、仕方なかったんやぁ!」 「うるさい、黙れッ!」 ううう、こんな扱いイヤや! やり直しを、やり直しを要求する! 助けてぇ・・・ 「――――ちゃん!」 名前を呼ぼうとした。 呼ぼうとした、けど。 出てこなかった。 抜け落ちたかのように。 「そ、それくらいにしてあげて下さい! 横島さん、死んじゃいますよ!」 流石に見かねたのか、おキヌちゃんが俺と美神さんの間に割って入る。 殴られて泣きたいはずなのに、目が自然とその髪に行った。 青をなす、長い黒髪へ。 「こいつがこれくらいで死ぬかっ!」 「あ、あんまりやぁ!」 その、おキヌちゃんの黒髪を見ると、何かを思い出しそうになる。 それが何なのか、さっぱりわからなかったけれど。 「何処を見とるかぁ!」 「へ、あ、ちょ、ちょっと!」 「いっぺん死んでこい!」 ――――窓から放り投げられた。 何か、大切なものは欠けたままだったけど。 まぁ、概ねいつも通りの光景だった。
>331 アグリアスvsアセルス 妖魔が跳び退く間に、アグリアスも転がる勢いを利用して立ち上がっていた。 中段に構える剣尖は大山の如く、毫も揺ぎない。 視線は笑みをこぼす妖魔に向けられたままだ。 「さっき永遠に生きるといったな――“私たちは”と」 摺り足で僅かずつ間合いを詰め、アグリアスは静かにいった。 「いずれ私もオヴェリア様も死ぬ。お前さえもだ、妖魔。 だが私たち、そう、“私とオヴェリア様”は生きる。今はまだ」 一足一刀の間境に達したその時。 床を蹴ったアグリアスは、叫びを真っ向からの火を噴く一剣に化さしめた。 「死ぬのはお前ただ一人だ!」
今回の纏めだよ。 ・・・へタレ? 何だいそれは? >281>282>283>286>287>288>289>291>292 >293>294>295>296>297>298>299>300>301 >302>303>307>309>310>311>312>313>314 >315>316>317>318>319>327>328>329>330 >332>336>337
鈴鹿御前 vs パンテーラ(M) 『鬼の剣 豹の牙』 >334 「るううううう〜。 この……非―人類(ノン・ヒューマン)の裏切り者があっ!!」 毅然として闇の誘惑を撥ね付けた鈴鹿に、パンテーラはくわっと口をあけ 怒号した。 パンテーラは前肢を伸ばし、身を低くかがめた。鉤爪がコンクリートの 床に食いこむ。 黒豹のベルベットのような美しい毛が逆立ち、毛の一本一本から青白い火花 がちりちりと散る。ブルーサファイアの双眸がさらなる輝きを放つ。 そして、鈴鹿の喉をひと噛みで食い破らんと、黒豹は黒い弾丸と化して跳躍した。
>335 傷の男/スカー(M) vs 片倉優樹 男の手は私の目の前で止まり、そして男は崩れ落ちた。 優樹はもらい物の時計で現在の時刻を確認する。 「10時47分・・・捕縛完了」 後は他の人間に任せれば済む事だ。 優樹は男の身柄を委員会に引渡し、その足で帰路についた。 分署に戻り、優樹はソファーに深く腰掛け、そのまま静かに天井を眺めた。 何を考えるわけでもなく、そのまま黙って。 それが優樹の日常。 普段は何もせず、ゆっくりと同じような暇な毎日を送り、 事件が起これば命がけで解決する。 ただ、それだけの繰り返し。 何も不満は無い。だけど・・・・。 その先の言葉が続かない。 しかし、その満たされない気持ちは何なのか、その数ヶ月後にわかる事になる。
>326 VS怪人 銃が火を噴いた瞬間! 短距離テレポート。懐に飛びこんだところを、がっちり抱きすくめられました。 身体が締めつけられ、荒荒しい息が顔にかぶさってきます。 顎が、ぐちゃりと開いて。 (だいじょうぶ、これなら…) 牙が、首に迫って。 「…私の勝ちよっ!!」 私から生まれ、一瞬で『彼』をも呑み込んで爆発する光。 壊すことしかできない、純粋なエネルギー。周囲の物ことごとく薙ぎ倒す、 これが…。 (サイコボールクラッシュよ…)
『背徳信者』 >333 「クロノを・・・・・・悪く言わないで。」 私は、搾り出すように声を出す。 「アイツは・・・・・私にとって、大切なパートナーなんだからッ!!」 私は、笑い続ける彼女をきっと睨み付けた。 「私は―――確かにあんたの言う通り『悪魔憑き』よ。」 ごくり、とのどを鳴らす。 今、次の瞬間にも彼女は私を殺せる。 そして、私も。 「私には―――何があってもやり遂げたいコトがある。 だから、此処で・・・・・こんな所で死ぬわけにはいかない!!」 かちゃり、とライフルが鳴る ははは・・・・・震えてる・・・・私・・・・・。 「死ねないのよッ!!」 私はぐっと腕に力を加え、ライフルを――――引いた。 「・・・・・けど。 私に・・・・アンタは殺せない。・・・・殺せないのよ!! 私は・・・・・人間なんだから・・・・・・・。同じ、ヒトを殺せないのよ・・・・・・。」
傷の男/スカー(M) vs 片倉優樹のレス纏めです。 >262>264>265>266>269>272>278>285>304>321 >325>335>341 ご協力感謝します。
鈴鹿御前 vs パンテーラ(M) 『鬼の剣 豹の牙』 >340 口を開き、悪罵を放ったパンテーラが、姿勢を低くする。嵐の前の、凪の姿勢。力を溜め、一気 に飛びかかってくる気か。 鉤爪が床のコンクリートを削る音が、ガリッと響く。 全身の毛を逆立たせ、極限まで蓄えた力を以て、黒豹はさながら弾丸の如く疾走、私の喉めがけ て跳躍する。 ──これが最後、これで──決める! 足を貫く大通連を引き抜く。 紅い軌跡を残しつつ、同時にサイドステップ。私の細い首のほんの数センチ横を、豹の鋭い牙が 駆け抜けていく。 後ろにあるコンクリートの柱を、罅が入るほどの勢いで蹴って再び跳ぶ。 目指すは、未だ空中にある黒豹の首。その急所めがけ、渾身の力を込めた大通連が、振り下ろさ れる! 「裏切り者? そんな事は、あなたに言われるまでもなく──分かっているわ」
魔 像 の 十 字 架 麻宮アテナを狙う『鬼』 >342 深手を負わされた『鬼』はどうなるか ただ生き延びるため、己の意志に関係する事なく更なる醜い変貌を遂げるのだ そうなってはならぬ 空中へと飛行し、次の一手、いや最後の詰みを考えた
>338 アグリアスVSアセルス 静から動へと変移し、叫びとともに閃くアグリアスの剣。 それを見極めて回避するのは出来ない話ではない。 だが・・・私はあえて、わずかに身を反らすだけに留めた。 致命傷にこそならなかったが、私の胴が切り裂かれる。 先ほどのアグリアスと同様に、蒼い鮮血が飛び散る。 「ククク・・・“お前”がそうしたいのはわからなくもない。 だが、果たしてオヴェリアのほうはどうかな?」 再び飛び退きながらそう言い、今一度オヴェリアのほうへと促す。 ・・・思ったとおり、オヴェリアの様子は変化していた。 息を荒げ、熱く潤ませた目で私たちの流した血を睨んでいる。 口元に見える犬歯は僅かながら先ほどよりも伸び、鋭さも増してきている。 舌さえも、ちらちらと見え隠れしていた。 「ふ・・・お互い、ここまで血を流したのだからな。 だんだんと我慢できなくなっているのだろうよ。 ―――あのオヴェリアを見て、なおも先ほどのような台詞を言えるのか?」 油断なく幻魔を構えながら、私は口元を歪めた・・・
鈴鹿御前 vs パンテーラ(M) 『鬼の剣 豹の牙』 >345 大通連の刃は、狙いあやまたず魔界の黒豹の首を断ち切った。 パンテーラの体が首と胴の二つに分かれて落下する。 しかし、魔界の生命力を持つ魔獣の首はそれでもなお細々とながら生命の輝きを 燃やしていた。 「ふるるるるうううう〜っ、これですんだと思ったら大間違いだよ、 お嬢ちゃん。 私の失敗はすぐに星幽界にあるWORM本部に伝えられる。 我らが主、世界の王メルクリウスはすぐに第二、第三の日本寺院(ジャパン・ テンプル)マスターを選んで差し向けるだろうよ。 なにせWORMは、全世界の黒魔術師が主義主張の違いを超えて、魔王サタン の無限にある顕現体の一つであらせられる首領メルクリウスの元に統合された 組織だ、あんた達を大暗黒界(クリフォト)の深淵(アビス)に突き落とす 人材には事欠かないよ」 そう毒づいたのち、パンテーラのブルーサファイアの双眸はゆっくりと 閉じられていった。 パンテーラ(M) 死亡
>343 ハインケル・ウーフーVSロゼット 『どっちがよりAMENに相応しい?』 震えるロゼットの銃口。 殺すことに恐怖するひよっ子が、よくもまぁ銃などを握るモンだとハインケルは心の中で毒づく。 と、ついにはその銃口がハインケルの眼前から消え去った。 一瞬、意識に空白ができた。 「何? まさか、殺せないとでも言うの?」 呆れたように肩をすくめた後――怒りの表情を浮かべ、つま先で鳩尾を蹴り上げた。 前屈みになって吐瀉物をぶちまけるロゼット。 その髪を掴んで、顔を上げさせる。 「いいか! アンタの手の中にあるモノは人殺しの道具だ! そこから吐き出される銃弾は明確な殺意の具現だ! その覚悟もないモノが武器を手に取るな!」 顎を掴んで、額に銃口がこつんとぶつかる。 「今からアンタは死ぬ、その次はマグダラの皆。 最後には悪魔! 自らの甘さの為に何もかもが死ぬんだ!」 自然と、口を割って出る言葉。 「まことに神は力強く、たゆむことなく/力強く、知恵に満ちておられる。 神に逆らう者を生かしてはおかず/貧しい人に正しい裁きをしてくださる。 神に従う人から目を離すことなく/王者と共に座につかせ/とこしえに、彼らを高められる。 捕われの身となって足枷をはめられ/苦悩の縄に縛られている人があれば その行いを指摘し/その罪の重さを指し示される。 その耳を開いて戒め/悪い行いを改めるように諭される。 もし、これに耳を傾けて従うなら/彼らはその日々を幸いのうちに/年月を恵みのうちに全うすることができる。 しかし、これに耳を傾けなければ/死の川を渡り、愚か者のまま息絶える。 神を無視する心を持つ者は/鎖につながれていても/怒りに燃え、助けを求めようとしない。 彼らの魂は若いうちに死を迎え/命は神殿男娼のように短い」 指に力が入っていく。 殺意の具現まで、後僅か――。
>347 アグリアスvsアセルス 「……下衆が……」 吐き捨てるアグリアスに、オヴェリアはそのとろんとした両目を向けた。 口の端から垂れそうになる涎を、妙に赤い舌が舐め掬う。 「アグリアスじゃない……。貴女もアセルス様のお情けを受けに来たの?」 うふふと笑った。 嘗て可憐だった彼女には似つかわしくなく、今は妖魔の贄と捧げられた彼女には相応しい、 爛れた淫声。 「ねえ、アグリアス。私、こんな世界があるなんて知らなかったわ。 一生あのかび臭い修道院に閉じ込められていたら、到底判らなかったでしょう。 気持ちいいのよ。アセルス様に血を吸われるのは。 毎日少しずつ、少しずつ吸われるの。 喉からだけじゃない、手も、足も、胸も、あそこからも。 そしてだんだん変わっていくの。人間じゃない、もっともっと素晴らしい生き物に。 たまらないでしょう? アグリアス、貴女も一緒にいらっしゃい」 堕ちた王女は犬歯を隠さない笑みを浮かべた。 「私たちの、妖魔の世界に……」 「オヴェリア様……ッ!」 正気を保て、という言葉をかける事も虚しかった。 足元が崩れていく様な危うさを感じつつ、アグリアスは蒼い血に塗れた長剣の構えを崩さない。
魔 像 の 十 字 架 麻宮アテナを狙う『鬼』 >346 ―あの女を小技では仕留め切れない それならば 宇宙を本来の生息地とする『鬼』は飛行速度では遥かに上だ 女の死角に回りこむと、事前に把握しておいた場所の一つへ向かう 大型積載量を誇る、タンクローリー― 曲がってきた女を視認すると、 上空から巨大な物体が自由落下を凌ぐ加速度で落下してくる 激突するする衝撃を感じると同時に分離し、最後のトドメとすべく 爆発するよりも早く、 刀を両腕と融合させ今までで最高最速最強の一刀を浴びせんとする
なんなんだ、ここは まるで 闇のゲームのようだ
>350 アグリアスVSアセルス 心の底からに違いない悲痛な声を上げつつも、アグリアスは構えを崩さない。 たいしたものだ・・・そうでなくてはつまらない。 「おいで、オヴェリア・・・」 私は、そんなアグリアスの最後の支えを断ち切るべく、オヴェリアを呼び寄せた。 歓喜の声を上げてやってくるオヴェリアを、片手で抱き寄せる。 「聞いたとおりだ、アグリアス。 王女様はもう人間じゃない、私の寵姫となったのだよ。 ―――証拠を、見せてやろう」 うっとりした目を私に向けるオヴェリアに微笑みかけ・・・その口元に、幻魔を近づけた。 ・・・アグリアスの鮮血滴る幻魔を。 『ああ・・・』 矢も盾もたまらぬ様子で、オヴェリアは幻魔に舌を這わせ始める。 ぴちゃぴちゃと、血を舐め啜る音が響き渡る。 「ふふ・・・おいしい? アグリアスの血は。 残りは後で味わわせてあげる・・・君のその牙を、彼女の喉もとに立てさせてあげるよ・・・」 『はい・・・アセルス様。 私が最初に、アグリアスの血を吸えるんですね・・・ああ・・・』 そう言ってオヴェリアは、紅く染まった口でアグリアスに微笑みかけた。 クク・・・さあ、もうすぐだ。 アグリアスの崩壊のときまで・・・
(デュエルディスクを装着)ドロー カードを一枚場に伏せておこうっと(ギアフリード)
>353 アグリアスvsアセルス ほんの少しだけ、アグリアスの剣先は揺らいだ。 だが、それだけだ。 「もう――語る事はない。私の為す事は決まっている」 青眼につけた構えは先程と変わらない。 「お前を斬る。その上でオヴェリア様も、助ける!」 助けるとは人間に戻すという意味か。 それとも――妖魔としての呪われた宿命から、剣もて解放するという意味か。 どちらかはいわず、また、多分己が心の内でも判らず。 一歩、右足を踏み出すと共にアグリアスは怨敵に馳せ寄った。 裂帛の気合い一声、己が存念をも断ち切らんばかりの烈剣が『妖魔の君』を襲う。
>351 VS怪物、そして… (タンクローリー!? うそっ!!) 悪意といっしょに降ってくる物。避けたら、あたり一帯火の海! 「とまってえええええっ!!」 全力の念動で、その即席爆弾を止めにかかります。 でも、あの質量と落下速度、なによりあの悪意を止めることが…。 「できてもできなくても、やるっ!!」 落下。 落下。 落下。 (…とまらない!?) こうなったら緊急手段。テレポートで上空へ飛ばして、そこで爆発させるしか。 高い空を見据えて、悪意の塊に手を触れて、収束したパワーを送りこもうとしたとき。 突然の彼。閃く一刀。もうかわせない! 「…こおのおおおっ!!」 すべてのパワーを開放して、変身。私の最後の切り札、フェニックスフォーム。 悪意の爆発を、さらに激しい炎で吹き飛ばし…! 「あなたあああっ!!」 炎の中から生まれるという伝説よろしく、燃え盛る巨鳥と化した私の鉤爪が、 『彼』を捉えました。この怪物を倒す今の私も、また怪物。 掴んだまま地面に叩きつけ、引き裂き、焼き尽くす。1分間という許容時間で、 跡形もないほどの完全破壊。最低の結末…!
魔 像 の 十 字 架 後日談 >356 しぶとさを取り柄とする産まれ立ての『鬼』も、ついに女の猛攻の前に潰えた 肉体は灰になるまで、本体の魂にももはや再生は不可能となるまでの致命傷を 負わされた 災害に見舞われた街 だがこの街は更にこれ以上の破壊と混乱の渦に巻き込まれる事になる その中心人物がここにいる 清水青子 人を喰わない鬼、『EATER』たちの頭角にまつりあげられた少女である この娘はある情報を得ていた それは『鬼』どもの本拠、陣営、装備、その他に関する情報だった これで戦力的に圧倒的に勝っている『鬼』どもに対する殲滅戦を仕掛ける事すら可能と なるかも知れない この情報を齎したのは、他でもない青子を闘いに引き込む原因となり、 自らも『鬼』を狩り続けた「半端者」の一人、紅丸であった 彼は『鬼』どもをたった一人で殺し続けたが、最後に自分もまたその忌まわしい者の 同類と堕する事に気付いた ―いやそれは当然と言えたのだ― そこで彼の最後っ屁は・・、家族以上の絆で結ばれた青子とついでにそれを警護するオマケ のために情報を遺す事だった 彼の魂は、情報の置き場所を伝えると青子の中へと吸収されていった 今までにない闘いの予感が青子を、街を、包む 清水青子は、夜明け前の空を見上げる そこには帰路の最中の麻宮アテナが空を舞っており、視線を落としていた 二人の眼が一瞬交錯する― 安息―
弓塚さつき(27祖) VS 緑川淳司&花村雅香 【導入1】北多摩美術館にて 「淳司、本部からこんなものが届いたぞ。」 研究室に入ってくるなり彼の伯父はそう切り出してきた。 その手には十数ページの紙がファイルに収められている。 研究書を読んでいた淳司は何も言わずにそのファイルを受け取ると、その内容を見て眉をしかめた。 「伯父さん。」 「雅香ちゃんにも機会があったら見せておいてくれ。詳しい事はまた明日。」 何か用事でもあるのか、そう言うとさっさと部屋から出て行ってしまう。 「……」 一通り読み終わると淳司は机の上にファイルを投げ置くと、再び研究書を読み始めた。 そのファイルには数年前の【三咲町事件】で吸血鬼となった弓塚さつきが、 【死徒27祖】に名を連ねた事が書かれていた……。
弓塚さつき(27祖) VS 緑川淳司&花村雅香 【不完全な作戦(?)】 「誰もいないわね。」 「こんな時間にここら辺を歩いているのは歩いているのは、 命知らずか、この事件の犯人か、俺たちみたいな奴だけだと思うが?」 物騒な事を言いつつ、緊張感も無く二人で道を歩いているのはもちろん、 先天性吸血鬼達によって作られた自衛組織であるCRSの会員である 花村雅香と緑川淳司である。 彼らは、この近辺で起こっている連続失踪事件を調査しに来ていた。 吸血鬼の仕業であるのかどうかを見極める為である。 っといっても、彼らに警察のような最新鋭の機材があるわけでもなく、 被害者達が行方不明になったと思われる時間に歩き回り犯人に直接会うという作戦である。 「というか、もう3日もこうしてるけど、それらしい人に会わないじゃない。」 「3日ぐらいで文句いうな。俺なんか独りで2週間もこうしてた時があったんだぞ。」 「大変だったのね。」 「だから、もう飽きたなんて言うのは止めてくれ。それに、もうすぐ現れるかもしれないし。」 「どうして?」 「それぐらいの周期で事件が起こっているのと……後は俺の勘だ。」 「……」 とまあ、心がまったく洗われない話を続けていた。 一時間後、今日はもう帰ろうとしたときの事である。 血の臭いが風にのってきたのを淳司達の鼻が嗅ぎ取った。 どうやらすぐ近くの路地からのようである。 急いで路地に向かった二人が見たのは サラリーマン風の男性の首筋に口をあてている高校生ぐらいの少女だった。
『魔像の十字架』 >61 >64 >69 >76 >79-80 >82 >84-90 >138 >152 >158 >169 >172 >184 >186 >190 >193 >195-201 >306 >323 >326 >342 >346 >351 >356-357 撮影時のNGシーンを一部紹介 主演女優「魔法熟女まじかる☆なるるんキャラクターショー?」 監督兼主演「違う違うアテナちゃん!『おジャ魔女どれみ』だろ!」 スタッフに爆笑の渦― 「オイシイよそれー」「かわいいー♪」「なるなる萌えー」
緑川淳司&花村雅香 VS 弓塚さつき(27祖) >359 【響く跫音】 ―――不味い 久しぶりの食事。 ―――お酒を飲む人の血は不味い すぐそこを歩いていた、サラリーマン。 ―――肝臓が、やられちゃってるから なんで、こんなにも、不味いのか。 その時、こちらに近寄る足音が聞こえた。 拙い―――と、思う心もあった。 だけど、それ以上に。 この人の血を吸っていたかった。 ほう、と出る溜息。 細まる両目、更に近づく足音。 なんだか、すっごく、気分が悪いよ。 寄る足音を睨みつけ、招かれざる来訪者の到着を待つ。 依然として、両手で男を抱きしめながら。 現れたのは、二人。 どんなに不味くても食事は食事。 ―――なんで、わたしの、邪魔をするの? つぷり、と爪が男の肩に沈む。 苛立ちを隠しきれぬまま、わたしは言葉を紡いだ。 「……何の用? 見て分かるよね、わたしが普通じゃないって」
『背徳信者』 >349 「げふッ?!」 彼女のボディーへの一撃を受け、思わず私は嘔吐する。 うぇっ、うぉぇっ・・・・・・! ・・・・・喉が・・・・・!! 思わずうずくまる私の髪を、彼女がぐぃと引っつかむ 「あぅッ!」 無理やり引き上げられる私の顔。 そして、その額に突きつけられる拳銃。 人殺しの・・・・道具・・・・・。 「・・・・・・アンタはそう言うけど それは、力に溺れてる連中が言う言い訳よ・・・・・・・!!」 私は、腰のポシェットへと手を伸ばす。 「アンタを殺すことはできないけど・・・・・・・ だからって殺されてやることもできないのよッ!!」 そして、私はぎゅっと目をつぶると、ポシェットから球状の物を取り出し、 地面にたたきつける! ≪くわぁかッ!!≫ 長老(エルダー)のじじいが開発していた閃光爆弾、『光輪爆(エンゼルハイロゥ)』! 炸裂した『エンゼルハイロゥ』が、武器庫内を光と轟音で埋め尽くす!
>362 ハインケル・ウーフーVSロゼット 『どっちがよりAMENに相応しい?』 「ッ……!? ガァッ!」 突如として広がる閃光と轟音。 それはハインケルのサングラスですら防ぎきれずに目を灼いた。 たまらず地面に倒れてのたうつ。 (クソッくそっ糞ッ! ガキが調子に乗りやがってぇッ!!) 心の中で毒づきながら、懸命に視力を取り戻そうとする。 しかし、その光量は半端ではなく、まだ視力が戻る気配はない。 歯がみしながら立ち上がり、ロゼットがいたのと反対方向へ走った。 この状況では、ロゼットとてすぐさま反撃に移ることはできないはずだ。 今の内に、距離を稼いでおく必要がある。 そう、まだあの売女に神罰を下していない、それなのに敗北を認めるワケにはいかない……! だが、閃光と轟音はハインケルから平衡感覚すらも奪ってしまっている。 まっすぐ走ろうにも、その軌道がまったく一定しない。 ふらつきながら、もどかしいほどゆっくりと歩くようにしか走れないハインケル。 (チッ、マズイ……!) もう、ロゼットは体勢を整えただろうか。 真逆、自らの仕掛けた手で自らも完全に行動不能になるとは考えにくい。 見えない銃口を前に、ハインケルのこめかみを冷たい汗が伝い落ちた。
『背徳信者』 >363 「効いてる・・・・?!」 私は、くらくらとふらつきながら逃げ出す彼女の背を睨み付ける。 今なら!! 私は、同様に彼女と反対側へと走り出す。 幸い、ここは武器庫だ。 装備には事欠かない。 「えっと、確か―――。」 私は、武器庫のロッカーを開き、閉め、また開いてそれを探す。 やがて――― 「あったッ!!」 私は、大型のハンディキャノンを見つけ出す。 弾丸は・・・・・よし! 私は、ハンディキャノンに弾丸を詰め込むと、彼女を探す。 そろそろ、目潰しの効果が切れるころだ―――!! 「いたッ!!」 私は、ふらふらとおぼつかない足取りで辺りを警戒している彼女を見つける。 今なら・・・確実に!! 「いっけェッ!!」 私は、彼女に標準を合わせると・・・・引き金を引く! ≪ダバァッ!≫ 炸裂音とともに、大型ネットが彼女めがけて・・・・飛んだ!
>364 ハインケル・ウーフーVSロゼット 『どっちがよりAMENに相応しい?』 焦る、焦る、焦る。 思うように動かない体に、戻らない視界に、そして何よりロゼットに。 だが、いつまで経っても恐れていたライフルの狙撃は飛んでこない。 やはり、あんな目に遭ってすら殺せないと言うのだろうか、あの少女は? (でも、このまま私を放置したりはしないだろう?) 一体、殺さないと言うのならどうするつもりなのか。 その答えは案外早く頭上から降り注いできた。 バサリと音をさせて、ハインケルの体を捕らえるネット。 (そう来たかッ!) だが、ハインケルに抗う術はない。 何より、藻掻けば藻掻くほどネットがより絡まって墓穴を掘るだけだろう。 覚悟を決めて、ネットの中にドカッと座りこんだ。 「あぁ、負けだ負けだ、私の負けだ! 煮るなと焼くなと好きにしろ!」 未だ視力が戻らない目からは、生理現象で涙がこぼれていた。
『背徳信者』 >365 「アンタねェ・・・・・・。」 私は一応、注意を払いながら彼女に近寄る。 「何だってそんなに刹那的に生きられるのよ・・・・・・」 私はカリカリと頭を掻いた。 一瞬、彼女の瞳から流れた涙が、私の良心をちくりと刺激する。 そんな私の背後から、ドタドタと走りくる数人の足音。 どうやら、みんなも追いついたようだ。 「・・・・マグダラ修道会、クラス2nd。ロゼット=クリストファ。 現時刻を持ってアンタを拘束させてもらう」 そういうと、私ははふ〜とため息をついた。 と同時に、入り口に現れる影。 これで、安心ね・・・・・・・。 『ロゼット!怪我は?!』 「ま、何とかね〜」 『こいつッ!!よくも!』 口々に叫びながら、同僚たちが彼女を捕縛するネットへと駆け寄る。 私は、背中を壁にもたれかからせて、そんな光景を眺めていた。 はは・・・・・クロノになんて説明しよ? そんな事を考えながら。
>366 ハインケル・ウーフーVSロゼット 『どっちがよりAMENに相応しい?』 エピローグ 拘束を宣言するロゼット、駆け寄ってくるマグダラの人間達。 勝負は決した、そう、ハインケルの負けだ。 ――だが、ハインケルはこのまま終わるつもりはなかった。 このまま生き恥を晒しては、イスカリオテの、ヴァチカンの、法皇猊下の、ひいては神の汚点となる。 カトリックとヴァチカンの間に重大な不和を残すだろう。 そう、このままなら。 寄ってくるマグダラ達の声から、ロゼットは離れていた。 ターゲットを消せないのは残念至極だが、もはや贅沢を言っていられる段階ではない。 自分さえいなくなれば、イスカリオテと自分を結ぶ接点は消失する。 イスカリオテ側はシラを切り通せばいいだけだ。 「神と子と、聖霊の御名において、AMEN」 口の中で、小さく呟いく。 懐に手を突っ込み、回りの人間に悟られないように一連の動作を終え、目を閉じる。 主よ、我を導き給え――。 再会を喜ぶロゼットの背後で巻き起こる爆発音、轟音、閃光。 それは、ハインケルが隠し持つ手榴弾のピンを片っ端から抜いた結果だった。 近づいてきていたマグダラの信徒達は一瞬にして蒸発している。 それだけでは飽きたらず、爆風は武器庫内部を余すことなく蹂躙しようとその領域を広げていった。 武器庫内部が、朱く、白く塗りつぶされていく――。
『背徳信者』 >367 「?!!」 突然の爆音に光。衝撃。 何が起こったのか、私にはわからない。 『ロゼットォ!!!』 クロノの声が聞こえたような気がして―――― そこから先は。 意識がブラックアウトする。 ============================ 「・・・・・・・う」 『ロゼット!気が付いた?!』 『ロゼットぉ・・・・!!よかった!よかった・・・・・!!』 次に気がついた時。 私は部屋のベットの上だった。 泣きながら、私に抱きついてくるアズマリア。 「と、とりあえず?!わたし、どうなったの?」 私は、目を白黒させながらクロノに聞く。 『・・・・・自爆したんだよ、彼女。最後の最後で。 助かったのは―――――君だけだ。』 クロノが、苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる。 「そんな・・・・・・・!!でも・・・・ど〜して私だけ?」 『いや・・・・その・・・・・・運がよかったんじゃない?』 そういうと、クロノはそっぽを向く。 「・・・・・・・・。」 私は、何となく私が助かった理由が分かった。 「クロノ!アンタ勝手にまた力つかったわね?!」 『しょ、しょうがないじゃないか!それしか方法なかったんだから!!』 「あ〜〜ん〜〜た〜〜は〜〜〜〜〜〜!!」 『ろ、ロゼットぉ?!』 『いたたたたた!!梅干グリグリはひど・・・・・・!!』 何時の間にか。私の顔には笑みが浮かんでいた。 そうだ。 たとえクロノが神様に忌み嫌われた存在だとしても。 私はクロノを―――信じてる。 クロノは、私の―――――― 〜〜〜〜END〜〜〜〜
まったく……私にどうしろと言うんだハインケルは! 死ぬならもっと後腐れの無いように死ね! 堂々とイスカリオテを名乗るバカがあるかぁ! しかも、報告書まで私の仕事にしていきおって……。 >267 >268 >270 >273 >277 >279 >305 >322 >333 >343 >349 >362 >363 >364 >365 >366 >367 >368 しかし、一体どうしたモノか……マグダラめ、マグダラめ! この借りは必ず、我らイスカリオテの手で返してやるぞ。
>245 vsギーラッハ 肉を斬らせて骨を断つ、否、骨まで斬らせて命を断つ、か。 口で「一歩も退かぬ」と言う男はいくらもいるが、それを実際に体現出来る男がいかほど いようか。この「紅の騎士」はまさしく後者だ。 戦いのさなかに、こんなことを思う。それを美夕は甘いと切り捨てるだろうか。 振り下ろされる大剣は、もはや避けようもない。少しでもその威力を削ぐべく、まともに 動かぬ左腕で受け止める。 爪を砕き、下腕を断ち割り、そして上腕を叩き斬ってやっと二条の大剣は止まる。 その瞬時の間に、ラヴァは首を失った鎧の騎士の胸に必殺の貫手を踊らせた。 と、その瞬間、鳥居の上から美夕が飛び降りる。その周囲には炎が舞っていた。
>280 エンハウンスVS孔濤羅 去っていく男の背中を、無言で見送る。 歯ぎしりの音を隠そうともせずに、憎々しげな目で。 何もかもが、気にくわなかった。 突然現れて自分を殺そうとした男。 そして、今自分に背を向けて去っていこうとする男。 何より、ワケの分からないままに暗殺の的になっていた自分。 誰かに説明を求めたい気分だったが、当事者が消えた今となってはそれも叶わない。 忌々しげに舌打ちした後、腐り落ちた左腕の切断面を見つめた。 既に腐蝕は完全に止まっているが、完全な再生にはまだ時間が掛かりそうだ。 なり損ないのエンハウンスは、再生能力がそれほど高くない。 最低でも一晩は回復を待つ必要がある。 右手一本で、魔剣と聖葬砲典を腰の後ろにまとめ――微かな苦痛と腐蝕があったが――その場を立ち去った。 日の光の下ではやはり再生が進みづらい。 負け犬は負け犬らしく、日陰に隠れて時を待つとしよう。 傷が治った後の事を復讐騎は考える。 まずは、右腕の呪紋書式を第七司教に書き直してもらわないといけない。 ならば、まずはヴァチカンに行くとして、その後だ。 「……一気に頭を狙うとするか」 そう、トラフィムを潰す。 実質、死徒をまとめ上げている27祖のトップ。 アルトルージュという政敵こそ存在するモノの、やはりその支配力は強固だ。 だが同時に、それは頭を潰された後の脆さをも示している。 頭のいない死徒を狩るなど、赤子の手を捻るより容易い。 その為の算段を頭の中に構築する。 一筋縄ではいかないが、勝てない相手ではないはずだ。 ――頭の中から、先ほどの男の事が消え去っていることにエンハウンスは気付かなかった。 そう、終わった戦いの事などエンハウンスには意味がない。 今生きている、そして戦う力がある、それだけがエンハウンスにとっての全てなのだから。 物陰の中で、隻眼だけが鋭い光を放っていた。 了
>355 アグリアスVSアセルス 何かを断ち切るかのように、アグリアスの剣が振り下ろされる。 「―――往生際が悪い!」 私はオヴェリアを離れさせ・・・その斬撃を受け止めた。 「私を斬る? そしてオヴェリアを『助ける』だと? ・・・悪あがきに過ぎないことがまだわからないのか」 嘲笑を浮かべたまま、じりじりとアグリアスの剣を押し返す。 ―――人の身で妖魔の君たるこの私に刃向かう事の愚かさを証明するが如く。
>372 アグリアスvsアセルス 幾度目か、騎士と妖魔の二剣がせめぎ合う。 歯を食い縛ったアグリアスは、もう相手の嘲弄に答えない。 互いを受け止めあったまま、二条の剣身はぐい、と持ち上がった。 アグリアスが交わった両剣をすり上げたのである。 突如、膠着が緩んだ。 今度は逆に、愛剣ごとアグリアスが身を沈めたのだ。 当然、落ちかかる妖魔の剣の下に彼女はいる。 だがその刃が届くより前に、自ずから崩した力の均衡そのままに、アグリアスは妖魔の胸元へ 渾身の突きを迸らせていた。 見切りが数瞬でもずれればアグリアスは両斬される。上手くいっても一撃は喰らうだろう。 しかし、相手は斃せる。 肉を斬らせる覚悟を以って骨も肉も断つ。 峻烈なる武技の精髄が、妖魔に叩きつけられた。
鈴鹿御前vsパンテーラ(M) 『鬼の剣 豹の牙』 エピローグ1 パンテーラのブルーサファイアの双眸が閉じられるのを確認しつつ、 鈴鹿は大通連を杖代わりにともすればへたりこみそうになるのを必死で堪えていた。 ふと辺りを見回す。 周りには自分が切り倒した獣人が生徒に戻って倒れている、先程までの 死闘を知らぬ者には彼女の方が加害者としか見えまい。 反対側から駆け寄ってくる多くの足音を聞き、彼女は慌てて大通連を隠した。 「君――一体何があったんだね? 署まで同行して事情を聞けないか?」 警官たちが口早に質問する。 「その・・・・・・事情は」 鈴鹿は口ごもった、黒魔術師が校舎に乱入して生徒の一部を獣人に変え たなどといっても信用してもらえるわけが無い、狂人扱いされるのがおちだろう。 途方にくれた鈴鹿と警官の間に、突然ぬっと逞しい腕が割り込んだ。 その腕の主は、迷彩入りの戦闘服にがっしりした肉体を包み込んだ、 精悍という言葉をそのまま人間の姿で表したような風貌の偉丈夫であった。 「何者だ、きみは!? 部外者は立ち入り禁止だぞ!!」 詰問する警官に、大男は深いバリトンで落ち着き払って答えた。 「失礼――私は陸自特殊部隊の志門聖司二佐です。 このたびの事件は“猛獣を兵器として利用した特殊なテロ事件” の疑いがあります、よって、この事件に対する捜査に我々が協力 すべきとの判断が県警からくだされました。 こちらのお嬢さんは目撃者としてまず我々が取調べを行います」 一瞬、志門と名乗った大男と警官たちとの間に白けたような沈黙が 漂った。 「う・・・・・・そうだったな、そんなテロの話を聞いたことがある。 優先権は君にあるな、国家の一大事だ、現場検証はこちらが やっておこう」 あっさりと引き下がった警官たちにあっけに取られる鈴鹿の耳元で 志門と名乗った大男がささやいた。 「この事件を未然に防げず申し訳ありません。私は先程あなたが 戦ったWORMの黒魔術師と戦う任にあるもの――『魔術戦士』 (マジカル・ウォリアー)です。詳しい事情はあとで話しますので、今は私にご同行ください」 他に選択の余地はあるまい――そう考え、彼女は頷いた。
鈴鹿御前vsパンテーラ(M) 『鬼の剣 豹の牙』 エピローグ2 >374続き 「すると――貴方はあのWORMとかいう連中と戦うために結成された 特殊部隊の人なんですか?」 志門の運転するパン・デューラに乗せられて辿り付いた教会で 回復法術による治療を受けつつ志門の話を聞いていた鈴鹿がたずねた。 「ええ、一九六九年六月二十三日、<国際宗教者平和協議会>において 設置を決議された対WORM用特殊戦闘部隊SWORD(=Special Warriors Order of Rose Delta――『薔薇三角』の特殊部隊)の一員。 それが私です。 WORMポルトガル寺院を壊滅させた後、WORM日本侵攻の報を聞いて 急遽戻ってきたのですが、奴らに先を越されてしまいました。 これについてはお詫びのしようもありません。 せめてもの償いとして、貴方が通常の学園生活に復帰できるよう 手を尽くします。 余り使いたくない手ですが、今回の事件は一種のテロ事件として 処理されるでしょう、貴方の名が表沙汰になる事は有りません。 今後、WORMには貴方のような方に指一本触れさせません。 そのために我々『魔術戦士』は存在するのですから」 きっぱりと断言すると、志門は見るものを安堵させる太陽のような 微笑をその精悍な顔に浮かべた。
おっと、すまないね。 エピローグ374は>348の続きだ。
鈴鹿御前vsパンテーラ(M) 『鬼の剣 豹の牙』 エピローグ3 >375 物理次元と重なって存在する異次元世界――。 そこに突如として、逆V字型に並べられたオーク材製の机と華麗な 文様が施された椅子が出現した。 ついで、それぞれの椅子の上に二十人のシルエットが現れた。 シルエットの大きさ、衣装はてんでばらばらで、ナチス親衛隊の制服 を身に付けている者、ローマの元老院議員風にトーガをまとった者、 筒袖海青の道服を着たもの、まっとうにスーツを着こなしているもの がいるかと思えば、身の丈一メートルにもみたぬ小人、逆に身長三 メートルを越す巨人までいるという有様であった。 ただし、彼らにはただ一つ共通しているものが有った。 人間ではありえない濃密な妖気である。 「諸君・・・・・・悪いニュースだ。日本侵攻の尖兵として差し向けた パンテーラが敗れた」 逆V字型に並べられた机の頂点にあるシルエットから、そんな男とも 女ともつかぬ、慈悲深い神の声にも残酷極まりない悪魔の声にも 聞こえる、奇怪としか形容しようのない声が発せられた。 それを聞いた他のシルエットが揺らめく――どうやら驚愕しているようだ。 「だが、日本侵攻計画を途中で放棄するわけにはいかん。後任として 『死馬の伯爵』ハパイ・カンを新たに日本に送り込むことにする」 シルエットは一斉に頷いた。異議無しというわけだ。 「見てのとおりだ、ハパイ・カンよ」 謎のシルエットの声に応え、メキシコの民族衣装チャロを身に付け 腰に二丁のコルト・アーミーを差したガンベルトを巻いた怪人 が現れた。その素顔は奇怪なヒスイの仮面で隠されている。 ハパイ・カンなる怪人は頷き、ナチス式の敬礼風に片手をあげると 高らかに宣言した。 「メルクリウス!! 私、死馬の伯爵ハパイ・カンは日本に巣食う 忌まわしきハンターと吸血殲鬼どもを皆殺しにし、日本を裏で完全 に征服することを、ここに<誓言>いたします」 その魔界の<誓言>を聞いた謎のシルエットが満足げに頷く。 ――以後長きにわたり日本を血に染めることになるWORMの黒魔術師 たちと日本の光の勢力との死闘は、今ここに火蓋を切った!! ・・・・・・To be continued
>373 アグリアスVSアセルス 「っ!?」 不意に、アグリアスの身が沈んだ。 彼女の剣を押し返していた力は行き場を失い、私の幻魔が落ちかかり そこへ、アグリアスの必殺の突きが繰り出され・・・ 一瞬の後。 そこには、彼女の剣に心臓の僅か右あたりを貫かれた私と 幻魔に肩口を深く切り裂かれたアグリアスがいた。 間一髪・・・反射的に身をずらすことで、心臓を貫かれることだけは免れたが、 ・・・危なかった。もう一瞬見切りが遅かったらやられていただろう。 「―――ク、ククク・・・さすがだ、褒めてやるよ・・・くっ」 激痛を堪えながら、彼女を賞賛する。 「いくら捨て身とはいえ・・・私に、これほどまでの傷を負わせるとは・・・な。 ふふ・・・褒美を、取らせてやるぞ」 自ら彼女の剣を抜きながら、私はそう言い・・・オヴェリアを呼び寄せた。 更なる流血を見たゆえだろう、王女は明らかに上気した顔で近づいてきた。 そして、アグリアスの傷から流れ出した血に舌を這わせる。 『アグリアス・・・私のために、こんなに血を流して・・・。 ・・・ふふ、すぐに気持ちよくさせてあげるわ。私がアセルス様にしてもらったように・・・』 そう言って、王女は紅く染まった口を開け・・・ 長く尖った犬歯を・・・いや“牙”を、騎士の首筋に突き立てた―――
ウピエルVSファントム >241 ツヴァイは5.56mm弾をまともに食らって、なお反撃してくる。 コイツは人間だ。5.56mmをまともに食らって無事で済むはずが無い。 事実、無事で済んでは居ない。コイツが戦闘力を失わないのは、ひとえにその強い意思の為だ。 つくづく、見上げた野郎だ。 血を吐きながら嗤う。とてもとてもイイ気分だ。 痛みも苦しみも怒りも、死の淵を覗き込む快楽を邪魔しない。 血反吐を撒き散らし狂った様に嗤う。最高にハイってヤツだ。 最高の獲物、いや、敵手との戦い。俺はかつて無いほどに興奮している。 デザートイーグルの相談数は7発。コンバットロードなら、薬室の1発を含めて8発。 4発食らったなら、残りは多くて4発。 発砲の瞬間を捉えたなら、銃弾をかわす事などどうとでもなる。 思いきり床を蹴り、銃弾を飛び越える。 何発の弾丸をかわしたのか自分でも把握しきれていないが、 ツヴァイのデザートイーグルのスライドが後退したまま止まっているのが目に入った。 どうやら、ツヴァイも弾切れだ。 空中で反転、天井を蹴り、銃剣を構えツヴァイに突進する。 鼓動を刻む臓器に走る痛みを無視して、己自身を弾丸に変えたかのようにツヴァイへと迫り、銃剣を突き込む!
>379 アグリアスvsアセルス 硬い音を立て、愛剣が床に転がり落ちる。 それを追う様に様に床にへたり込んだアグリアスを、オヴェリアは後ろから抱きしめた。 「駄目……お止め下さい、オヴェリア様……」 傷口を舌でねぶるオヴェリアへ、アグリアスは掠れた悲鳴を投げ掛ける。 勿論、オヴェリアが聞く筈もない。 仔猫がミルクを舐める様そっくりの音を立て、アグリアスの血を掬い取る。 入魂の一撃も妖魔には通じなかった。 オヴェリアに対する迷い、それを打ち切った一刀ではなく、打ち切る為の一刀では、 文字通り一髪の差は埋められなかったのであろうか。 白い首筋に紅唇が吸い付く。 ちくり、と軽い痛み。 「あ……いや……やめ……」 か細い呻きは、喉の奥から登って来た絶叫に飲み込まれた。 物凄まじい官能が襲い来る。 どうしようもなく甘い、痺れる様な甘美感。 陶酔と絶望を同時に味わいながら、アグリアスの意識は闇黒の淵を堕ちて行った。
ウピエルVSファントム >380 弾丸が切れデザートイーグルを捨てた瞬間、迫るウピエルの銃剣。 常人なら捕らえる事もできない筈の突撃がまるでスローモーションの様に見える。 腰に下げたステッキを左手で引き上げると、模様と見えた切れ目から現れたのは刃。 一閃、逆手に持った仕込み杖を右肩まで引き抜き、柄に右手を添えた刺突の構え! 全身に鞭打ってウピエルに向って突き出す。 ウピエルの銃剣と交差する刃、互いの切っ先が互いの胸を貫く。 スピードに勝るウピエルの特攻、その勢いに二人は絡み合う様に壁際まで飛ばされ 壁にしたたかに打ち付けられる。 ――――― バキン!! ――――― 強度に劣る仕込み杖はウピエルの胸部に深々と突き刺さったまま、そこで折れた。 息が、できない……。 心臓を貫かれた訳では無さそうだが、両肺がもうその役目を果たしていない。 体内に残された酸素の大半を一撃に使い切って、体はその機能を失いつつある。 駄目だ、奴にとどめを刺すまでは……。 ここで奴を倒さなければ、エレンが…… キャルが…… その毒牙にかかるだろう。 朦朧とする意識をその想いだけで繋ぎとめる。
>381 アグリアスVSアセルス ―――数日後。 今日もまたオヴェリアを愛で、その血を啜った。 すでに蒼く変貌した彼女の血が喉を潤す。 思う存分に血を味わってから・・・私は身だしなみを整え、ベッドから降りた。 「さて・・・と。 私は少し出かける。オヴェリアのことは頼んだぞ・・・いつものように」 未だ快楽の余韻に浸るオヴェリアを見やりつつ、私は傍らに使えていた騎士に命じた。 『は、承知いたしました・・・アセルス様』 金色の髪をたなびかせた美貌の騎士が答える。 「いい返事だ。何かあった時はしっかりと護ってやれよ。 ・・・お前は、オヴェリアの騎士でもあるのだからな、アグリアス」 私の言葉に、彼女は微笑みで返した。 ・・・口元に牙を覗かせつつ。 私は満足げに頷いて見せてから・・・「用事」を済ませるべく、転移した。
>370 vsラヴァ 不死者と畏れられる吸血鬼の生命力は伊達では無い。 心臓を潰されるまで、どのような傷を負おうが生き足掻く。 故に、首を跳ばされたぐらいではギーラッハは死なないのである。 だが、彼にはもはや思考を司る頭が無かった。 こうなれば、滾る血の赴くままに戦い続ける吸血鬼本来の姿と化すしか道は無い。 吸血鬼を支配するのは脳では無く、血なのだから……別段、差し支えのある問題でも無いのだが。 ラヴァの一撃は、正確にギーラッハの心の蔵を狙ったものであった。 思考能力が皆無な今のギーラッハでも、これが拙いことぐらい十二分に分かる。 迫り来る神速の貫手を身体で感じながら、ギーラッハも静かに動く。 斬! 音が聞こえた。肉を抉るかのような、鈍い音が。 実際、ラヴァの爪は鋼鉄の甲冑を紙のように引き裂き、肉を抉っていた。 が、心臓には届かない。直前でギーラッハは右腕を捨てている。 ラヴァの爪はギーラッハの右腕を貫き、厚い胸を僅かに抉ったところで止まった。 此処で本来なら反撃に転ずるところだが、できない。右腕が串刺しにされ、使えないのである。 片腕だけでラヴァの身体深くに食いこんだヒルドルヴ・フォークを抜き放つことは無理だ。 だが、ラヴァの両腕もまた然り。左腕は使えず、右腕はギーラッハの肉を貫いている。 この右腕は簡単には、抜けない。 このまま、膠着状態が続くか――――と、誰もが思った。 だが、ギーラッハは見た。いや、正確に言うとギーラッハの頭が、だ。 脳に血が回らず、朦朧とする意識の中で、彼は見た。 天から舞い降りようとする、真紅の炎に包まれた少女を――――
>383 アグリアスvsアセルス 主人が去った後、二人の僕は、どちらからともなく目線を合わせた。 まだベッドから立てないオヴェリアに、アグリアスは音も立てず近付く。 膝をかけた重みでベッドが幽かに軋む。 軽く身を起こしたオヴェリアの瞳がアグリアスを射た。 その潤んだ輝きに陶然としつつ、アグリアスはオヴェリアをそっと抱き締める。 「アグリアス……」 切なげにすすり哭く、その陶器よりなお純白のうなじに舌を這わせる事で、騎士は返答した。 感極まった様な嬌声に、アグリアス自身の心も昂ぶる。 こうしたかった。 ずっとずっと前から、オヴェリア様をこうして差し上げたかった。 何故気付かなかったのだろう。 私が望んでいたのはこんな簡単な事だったのに。 そう歓喜の想いに心が震える度、頭の片隅を鈍い痛みがよぎる事がある。 同時に、少しく物悲しい。 二君に仕える事は、これほど悦びに満ち満ちているというのに何故なのか。 判らない。 判らないが、その不可思議な感情も最近では薄れがちだ。 直に消えるのだろう。 放れたアグリアスの唇とオヴェリアの肌を、唾液と蒼い血の糸が繋いだ。 そしてゆっくりと、騎士は王女へ覆い被さる。 二人の喘ぎと体液が入り混じり、溶け合う。 オヴェリア様、永劫に、私の忠誠は貴女のものです。 貴女と、そしてアセルス様のもの。 人間であった頃の幽かな残滓を振り捨て、永劫に醒めぬ欲望の渦へといざなわれながら――。 アグリアスが知覚する全ての事象は、快楽に飲まれていった。 (了)
私と新しき我が君、アセルス様との闘争を纏める。 アグリアスvsアセルス >219 >222 >223 >230 >233 >236 >238 >243 >247 >250 >251 >263 >284 >308 >320 >331 >338 >347 >350 >353 >355 >372 >373 >379 >381 >383 >385 ああ……何て快楽。 隷属する事がこんなに素晴らしいとは……。
>83 遠野志貴 vs 邑輝一貴(M) 「銀と蒼」 雷撃を躱し、それに劣らぬ速度でボウヤは跳んだ。 いや、飛んだと言った方がいいかもしれない。 行きがけの駄賃とばかりに召鬼の一体を滅ぼして、 たった二回の跳躍で私の眼前に達する。 その動きはまさに紫電。 着地。 私の目の前に獣のように這いつくばったボウヤは、 一瞬こちらを見上げて――消える。 いや消えたのではない。 蒼眼が闇を裂き、駆け上るのをかろうじて目の端が捉える。 咄嗟に身をかがめる。 浅く右肩を裂かれる。 見上げる。 逆しまになった顔がそこにある。 緋色の月を背に、蒼の瞳が私を見つめている。 時が止まる。 その蒼眼に魅了されたように彼を見つめる。 だがそれも刹那の間。 召鬼を呼び、その逆しまに叩きつける。 簡単に斬り捨てられる。 それは予想のうち。 その隙にさらに二体の召鬼を呼ぶ。 もとの二体を疾らせ、召喚した二体に雷撃を吐きつけさせる。 狙うのは着地の瞬間。
>83 遠野志貴 vs 邑輝一貴(M) 「銀と蒼」 雷撃を躱し、それに劣らぬ速度でボウヤは跳んだ。 いや、飛んだと言った方がいいかもしれない。 行きがけの駄賃とばかりに召鬼の一体を滅ぼして、 たった二回の跳躍で私の眼前に達する。 その動きはまさに紫電。 着地。 私の目の前に獣のように這いつくばったボウヤは、 一瞬こちらを見上げて――消える。 いや消えたのではない。 蒼眼が闇を裂き、駆け上るのをかろうじて目の端が捉える。 咄嗟に身をかがめる。 浅く右肩を裂かれる。 見上げる。 逆しまになった顔がそこにある。 緋色の月を背に、蒼の瞳が私を見つめている。 時が止まる。 その蒼眼に魅了されたように彼を見つめる。 だがそれも刹那の間。 召鬼を呼び、その逆しまに叩きつける。 簡単に斬り捨てられる。 それは予想のうち。 その隙にさらに二体の召鬼を呼ぶ。 もとの二体を疾らせ、召喚した二体に雷撃を吐きつけさせる。 狙うのは着地の瞬間。
>388 遠野志貴 vs 邑輝一貴(M) 「銀と蒼」 常人ならば目の前から消えるような跳躍からの一撃は、右肩を浅く切っただけで 終わった。 片腕を奪い、相手を無力化しようとした俺の思惑は外れた。 邑輝は術により化け物を呼び出すだけでなく、俺の動きについてこられる体術も身に つけている。 舞い上がった俺に化け物を向かわせてくるが、俺は一刀両断に切り捨てる。 空中でかき消える化け物。 しかし、これは本命じゃない。 殺気は、次の一撃に込められている。 まずい。 だがどうしようもない。 着地の週間を狙われた俺は、邑輝の化け物の吐き出した雷撃の直撃を受けた。 炸裂する雷撃による激痛。 そして、無様に後に転がる。 だが、体はまだ動いた。即座に身を起こし、邑輝を睨み付ける。 痛みはあるが、戦うことは出来る。 だが――――。 どうする? 邑輝の体術に奇襲は通用しない。上回っているのは速さだけ――。 なんだ。簡単な話じゃないか。 近付いて、どうにか出来るまで切り続ければいいだけの事。 跳ばずに走って近付けば対応も出来る。 俺は地を蹴って、疾った。 再び吐き出された雷撃を軽いステップでかわし、すれ違いざまの二振りで化け物を 消滅させる。 そして、邑輝に迫る――。
>388 遠野志貴 vs 邑輝一貴(M) 「銀と蒼」 常人ならば目の前から消えるような跳躍からの一撃は、右肩を浅く切っただけで 終わった。 片腕を奪い、相手を無力化しようとした俺の思惑は外れた。 邑輝は術により化け物を呼び出すだけでなく、俺の動きについてこられる体術も身に つけている。 舞い上がった俺に化け物を向かわせてくるが、俺は一刀両断に切り捨てる。 空中でかき消える化け物。 しかし、これは本命じゃない。 殺気は、次の一撃に込められている。 まずい。 だがどうしようもない。 着地の週間を狙われた俺は、邑輝の化け物の吐き出した雷撃の直撃を受けた。 炸裂する雷撃による激痛。 そして、無様に後に転がる。 だが、体はまだ動いた。即座に身を起こし、邑輝を睨み付ける。 痛みはあるが、戦うことは出来る。 だが――――。 どうする? 邑輝の体術に奇襲は通用しない。上回っているのは速さだけ――。 なんだ。簡単な話じゃないか。 近付いて、どうにか出来るまで切り続ければいいだけの事。 跳ばずに走って近付けば対応も出来る。 俺は地を蹴って、疾った。 再び吐き出された雷撃を軽いステップでかわし、すれ違いざまの二振りで化け物を 消滅させる。 そして、邑輝に迫る――。
アンノウンだけでなく吸血鬼に、ハンター…。 一体、この街は…、どうなちゃったんだろう? でも、おれ…負けません! 俺の名前は津上翔一、または沢木哲也です。 おれの出典は仮面ライダーアギトで…主役やってました。 メインは格闘で、バイクに乗った戦闘も可能です。 (おれは過去に、特撮板やキャラネタ板にいた津上翔一とは別人です)
テンプレです。 出典 :仮面ライダーアギト 名前 :沢木哲也と言います。あー、津上翔一は愛称みたいなもんです。 数年ほど、この名前でいたもんで、愛着があります。 年齢 :先月22になったばかりです 性別 :男です。 職業 :レストランアギトという店でオーナーシェフをやってます あと…、アギトっていうのは職業なんでしょうか? 恋人の有無 :うーーん、一応、フリー…ですね。ええ。 好きな異性のタイプ :うーーーん。放っては、置けないタイプ、かな? 好きな食べ物 :特に好き嫌いはありません。 最近気になること :アンノウンの動き…ですね。 趣味 :菜園の手入れです。いまは葉たまねぎが元気に育ってますよ。 得意な技 :ライダーキックです。 一番の決めゼリフ :おれも生きます! おれのために! アギトのために! 人間のために! 将来の夢 :いまのまま、ずうっとこうしていられたら・・・いいなあと思います。 ここの住人として一言 :おれ、戦うのは嫌いです…。でも、みんなの居場所を守るために、生きるために戦います! ここの仲間たちに一言 :うちの畑で取れた野菜ですけど、いかがですか? ここの名無しに一言 :料理などの質問もお待ちしてます。
ウピエル(&ツァーレンシュヴェスタン)VSファントム >220>221>234 大型のバイクで特攻するアインを見た二人の感想は同じだった。 (馬鹿な事を―――) こちらは鈍重な戦車でも戦艦でもない。 いくらスピードがのっていても、バイクなど目をつぶっていてもかわせる。 あの傷では、アクセルを操作しながらの曲撃ちも不可能な話だ。 ……だが、その瞬間。もう一人のファントムが動いた。 ほんのわずかなタイムラグ。 どちらを先に攻撃すべきか? どちらの危険度が高いか? 身につけてまもない吸血鬼の本能でなく、 今まで受けてきた訓練が判断を下した時には…… フュンフの、金色の髪は自らの血で赤く染まっていた。 ドライの放った45口径の弾丸は、込められた殺意を忠実に反映する。 額の傷痕は小さかったが、後頭部からは冗談の様に大量の血と脳漿が吹き出る。 それでも少女は倒れない。 吸血鬼の身体は、それほどの生命力を持つのだ。 ―――しかし。 棒立ちになったフュンフの身体を、BMWのライトが照らし出す。 二人のファントムが奏でる死の協奏曲がホールに響き渡った。
〜導入〜 アリ型キメラヴァンプvs本庄 ある人間が居た。 人間を超えたい、吸血鬼になりたいと願う者が。 そして彼の願いは程なく叶った。 他生物と吸血鬼の融合した姿“キメラヴァンプ”として彼は生まれ変わった。 しかし彼は任務中、脳を破壊されそのまま暴走。 周りに居た人間を皆殺しにして逃亡した。 今も――――彼は彷徨っている。 ボロ布を頭から被り、光から逃れるようにして辿り着いた地下の街で。 飢えた嗅覚に訴える甘美な獲物の匂い。 血だ、血がここにある。 赤い眼に光を宿し、乱杭歯を剥き出しにする。 彼は、吼えた。 己の本能に従うままに。
>394 アリ型キメラヴァンプvs本庄 『やれやれ・・・・・・・・またゴミ処理か・・・・』 いいかげん、俺はうんざりしている。こちとら、命がけだ。 ただ一つしかない命を賭けた仕事。それが、どうして 下町の暴走キメラヴァンプの処理になるんだ? 俺は別に市民の平和を守るヒーローなどではない。 俺の苛立ちの理由はそれだけではない。 キメラヴァンプ。最高の生物兵器。俺は奴らに、なりたかった。 だが、それはかなわぬ夢。潰えた夢。許可が、下りない。 俺はいつまでも脆弱極まる・・・・人間だ。奴らへの嫉妬か。 ふん、それは良い。 ならせいぜい、殺ってやろうじゃあないか。死なない程度に。 いつも通り。 『地下街の 壁に咲きたる 朱(あけ)の花・・・・・・』 あ〜、下らん。 半ば自棄に、壁に真っ赤に血膿を散らし(恐らく奴が残したであろう) 叩き潰された人の屍骸を蹴飛ばし、俺は奥深くへ足を進めた。闇奥へ。
>395 アリ型キメラヴァンプvs本庄 「キィキィキキキ……」 それなりに満足だ。 血の詰まった皮袋を引き裂いて楽しむことも出来たし、血も吸えた。 だが、まだ足りない。 もっと、もっと、もっと……欲望は止まる所を知らない。 「……?」 鋭敏な聴覚が人の息吹を捕らえる。 嗅覚が新鮮な血の匂いを感じる。 何ら躊躇する事無く、彼は獲物の方向へと向き直る。 異形と化した姿の腕に握られた、四つの銃。 それらが同時に火を噴き獲物へと無数の銃弾を降らせる。 もっとも、冷静に照準するような思考は彼には無い。 何となく爽快だから、やっているだけだ。
>396 アリ型キメラヴァンプvs本庄 いつ見ても吐き気がする、というよりも笑いたくなる、か。 恐怖と笑いは表裏一体だ。奴の顔を見れば見るほどそう思える。 でたらめに銃弾が辺りのコンクリを削る 勘弁してくれ こちとら、生身だぜ? 常に右回りに壁を背にして動く基本動作を 教え込まれた自分の脳に感謝している俺がいる。 上役や周囲の環境に呪詛を振り撒きながら、しかし こうして復讐の機を与えてくれた環境に感謝している俺がいる。 判っている。命がけのスリルを、俺は愉しんでいる。 弾切れを知らぬ斉射は続く 継ぎ目が無いその斉射はしかし 無駄が無い様でいて、無駄だらけだ そもそも誰も居ない所に撃っても、意味は無い ならば、意味をやるのが俺だ 足元にある死体を放り投げると、その反対に向け駆け出す。 死体を俺と間違え蜂の巣にする銃弾。飛び散る肉塊。 こうした猿芸をしたり、或いはせずに進み、次第に俺は奴の死角へと移動する・・・・・
>396 アリ型キメラヴァンプvs本庄 撒き散らした弾丸は死体を穿ち、赤い華を咲かせる。 ああ、勿体無い。 何の為に弾丸を放ったのか。 それさえも忘れて彼は地面に流れた血を一心不乱に啜る。 ふと、思い出した。 こんな卑しい事をしなくても、新鮮な血があるじゃないか。 霞がかかったような頭から引きずり出したその情報。 それを思い出した彼は再び獲物を探索――――発見。 人間にはコマ落としとしか見えない速さで捉え、トリガー。 四丁の内の二丁、イングラムとスコーピオンがほぼ同時に銃弾を吐き出す。 彼はその異形の顔に深い笑みを刻んで、笑うのみ。 「キィキャキャキャキャキャ!!!」
>398 アリ型キメラヴァンプvs本庄 どこの世にも己の出来の悪さに気がつかない人間はいる。 俺もそうかもしれないし、そうでないかもしれない。 出来の悪い人間には自分が出来が悪いかどうかすらも、判らないものだ。 何せ、出来が悪いかどうかを感じる器官もまた、出来が悪いからだ。 俺も、奴も ただただ運命という糸とともに繰り出され 或いは、それは何者かの意図どおりに しかし観客からすれば、〈何者か〉意図せぬ 運命の糸はいと可笑しい事だろう その糸は、俺が繰り出してやる。 戸惑い慄き逃げ回りながら、と奴には見えたろう。 これも策の内だ。見ているが良い、相棒さんよ。 だが、死ぬのは策の内ではない。 ごりごりと背のアスファルトを削る銃弾の猛攻を受けながら、 嗤う奴を見て嘲り笑う俺。笑いは止まらない。動き出した未来は止められない。 勝利は俺に在る。 足元にやはり転がる死体を眺めながら、俺はほくそえんだ。
>399 アリ型キメラヴァンプvs本庄 吸血鬼の能力をフルに発揮して、彼は狭い地下を駆ける。 時に地に横たわる死体を踏み砕き。 時に跳ね、地獄を見下ろし。 満足だった。 立ち込める血の匂い。何の制限も無く暴力を振るう快感。 これだけでもう何――――― 鈍い衝撃音と振動。 ただでさえ思考力が失われている頭を更に混乱させるには十分な衝撃だった。 「キキャキャキャキャァァァァッ!!」 怒り狂って、やぶれかぶれに発砲する。 何も無い虚空に発砲する事もあれば自分の足を撃ち抜きもする。 自分が今何をしているか。 それすらも分からずにただ化物は荒ぶるのみ。
緑川淳司&花村雅香 VS 弓塚さつき(27祖) >361 【始まりは撤退から】 雅香達が近づく気配を察知したらしい。 しかし彼女はサラリーマンの男(もう死んでいるように見える)から離れず、 いまだにその血を啜っている。 お食事中の彼女から幾ばくかの距離をおき、二人は立ち止まった。 ……淳司の胸に微かなわだかまりを残しながら…。 『……何の用? 見て分かるよね、わたしが普通じゃないって』 食事の邪魔をされた彼女が殺意を込めた視線を二人に向けつつ、言葉を紡ぐ。 「それはあなたの方がご存知じゃないかしら?」 一見、お嬢様な雰囲気を醸し出している雅香がそのしおらしさを異次元の彼方に放り投げ、 その内に秘められた好戦性をさらけ出す。 その隣では、相変わらず何か考え事をしている淳司。 相手の言葉を待たずに雅香が続ける。 「最近寝不足でしょうがないの。さっさと用を済ませて、ベットに潜り込みたい気分だわ。」 そう言うや否や、ポケットからニンニクの主成分である硫化アリルと アリルプロピルサルファイドの液体の入ったガラスの小瓶を投げつけた。 そして、彼女たちに向かって走り出そうとした雅香だったが、淳司に腕を掴まれて前進をやめ、 更に淳司は彼女に対して背を向けて走り始めたではないか。 勿論、彼に腕を掴まれている雅香も引きずられるように彼女から引き離されていく。 「ちょ、ちょっとコーチ!?」 「言い訳は後で言うから取り合えず走れ!」 路地から抜け出そうと走る二人の後ろで、何かにぶつかり子瓶の割れる音がした。
ウピエル&ツァーレンシュベスタンvsファントム達 >234>393 狙い過たず、木杭はフェンフの胸板を貫いていた。 そのまま着地したバイクは、著しく重量を増し沈みこんだフロントサスの反動で 再度フロントを跳ね上げ、串刺しにした女吸血鬼を掲げながら、ホールの通路を爆走する。 一瞬にしてホールを横切り、出入り口の防音扉目掛けて飛び込むと、再び激突音。 木杭を扉に食い込ませたバイクは、開く扉に引き摺られるように、 扉の蝶番を支点として僅かに後輪を滑らせるが、直後、想定値を遥かに上回る 負荷をかけられた扉が、派手な音を立てて壁から引き剥がされる。 しかし、一度スリップしたバイクを立て直すには、BMWは重すぎ、 エレンは軽過ぎた。 スリップした後輪が、残った扉を直撃する。 そのまま蹴り跳ばす様に残った扉も引き剥がすと、車体はバランスを崩したまま ロビーへと、耳を塞ぎたくなるような破戒音を撒き散らしながら転がり出る。 反動でシートから放り出されたエレンの体は、勢いよく床を滑り 売店のガラスケースへと背中から飛び込んでいった。 静寂と諸共に砕けるガラスの音が、ロビーに響き渡る。 痛みを堪え、エレンがなんとか顔を上げた時、木杭からフェンフの姿は消えていた。 ただ、そこには一握りの灰が残るのみであり、それも空調の風に吹かれ やがて姿を消した。 「あと……一人……」
生命樹に捧げる協奏曲 〜南武公&操vs如月蘭 Hod ―――目覚めよと我を呼ぶ声あり――― >前スレ539 SIDE:MISAO 鋼糸が、弾かれた。 そして間髪入れずに反撃が来る。 胸に抱いた武公様を庇うようにしながら、後ろに跳ぶ。 直撃こそ避けたが、全身の機構にブレが生じる。 だが、武公様は無事。そのことに安堵する。 ――――やはり、呪文による強化無しでは。 冷静に戦局を見やって、圧倒的不利を実感する。 これは、武公様にお目覚めしてもらうしか、ないか。 だが、振夜の来訪者の呪縛から、私如きが武公様を救えるのか? ――――しかし、やるしか、ない。 来訪者からの攻撃を避けるため、公園をぐるりと囲む森の中へ逃げ込む。 そして、武公様の耳元で呼びかける。 『武公様、お目覚めください・・・武公様』
>400 アリ型キメラヴァンプvs本庄 槍刺され 皮を剥がされ 釘打たれ 細かく刻まれ 鬼に喰われる地獄。 それが地獄。 そして・・・・・痛みよりも何よりも、死ねないのがこれ地獄。 犠牲者どもの死体がむくり、身体を起こす すわりの悪い眼つき、すわりの悪い頭を揺らしながら 犠牲者はそうして更に犠牲者を産む 喰人鬼と化した死体ども 愉しい、愉しめるぞ・・・・・・・・・ 喰人鬼は弱い。その柔らかな身体は首を一刎ねするだけで動きを止めるだろう。 俺は迫り来、周りを取り囲む喰人鬼どもに感謝していた。 銃弾が飛来する。 そうとも、喰人鬼どもは人柱に過ぎない。 びちゃびちゃと肉塊と血膿を散らし、 しかし頭を砕かれぬ限り立ち続ける喰人鬼ども。・・・・・・愛してるぜ。 一時血膿をぬめる肉塊の一つと堕した俺は、手にした瓶を喰人鬼どもに振り掛ける。 着火。 俺が逃げつつも振り撒いておいた複雑な油の線に、火柱となった喰人鬼どもは足を踏み入れる。 一斉に計算どおりのラインが火の道を作る。これが、俺のやりかただ。皆・・・・・萌えろ。
生命樹に捧げる協奏曲 〜南武公&操vs如月蘭 Hod ―――目覚めよと我を呼ぶ声あり――― >403続き SIDE:TAKEMASA 声が、聞こえる。 母さんの胸の中で眠る俺を呼ぶ声。 母さんじゃないけど、暖かい、声。 誰? ――――いいのよ、気にしないで。 母さんが、俺の頭を撫でながら言う。 その言葉はとても暖かく、心地いい。 『武公様・・・』 だけど、俺を呼ぶ声は止むことはなく、ますます強くなっていく。 ――――ああ。そうか。 ――さんが呼んでるんだ。 名前だけが封じられたように、思い出せない誰か。 でも、だから。 ――――これが夢だと認識出来た―――― 起きあがって、母さんに相対する。 その姿は、おぼろげな記憶と一切変わることもなく、ただ優しく微笑むだけの影。 今ならわかる。着ている服や、その微笑みに、明らかな欠落があった。。 涙が、出た。 もう俺は、母さんのことを、はっきり思い出すことも出来ないんだと。 だけど、その俺に、母さんは・・・母さんの影は優しく微笑んでいった。 「行ってらっしゃい、武公」 と。 涙を、未練を振りはらって、母さんに背を向ける。 甘い夢から覚めるために。 辛い現実に帰るために。 だって、そこには待っている人がいるから。 ここにはない、けれど何処にでもあるあの本をイメージする。 固く鍵を掛けられた魔導の書。 人の触れ得ざる領域を垣間見せる魔書の中の魔書。 そう『マリオノール・ゴーレム』を! 「無究光(エイン・ソフ・オール)照らせし 十の神性(セフィロト) 魔書(グラン・グリモール)を繰りて 四言神諱(テトラグラマトン)を駆動せしめよ!」 俺の身体から光が放たれる。 そしてその光は、夢の世界を溶かすようにして消していく。 「さよなら、母さん」
生命樹に捧げる協奏曲 〜南武公&操vs如月蘭 Hod ―――目覚めよと我を呼ぶ声あり――― >403>405続き ――――幾度目かの攻撃。 さしもの操も躱しきれず、無様に地に転がる。 宙には疵一つ無い来訪者の姿。 ――――ここまで、ですか。 諦めが、操を支配する。 その時、夜気を裂き、朗々たる声が響いた。 「無究光(エイン・ソフ・オール)照らせし 十の神性(セフィロト) 魔書(グラン・グリモール)を繰りて 四言神諱(テトラグラマトン)を駆動せしめよ!」 胸に抱きしめていた武公は、泣きはらした目をしながらも、きっ、と来訪者を見つめる。 その双眸にあるのは悲しみと怒り。 ――――そう、第二ラウンドの始まりだ。
>404 アリ型キメラヴァンプvs本庄 血を吸われた者達は立ち上がり……動き出す。 ここが地獄ならば、存在できるのは死者のみ。 いや――――死に損ない(アンデッド)のみだ。 相も変わらず狂ったように銃弾をあきこちに放つ怪物。 それに撃たれても倒れずフラフラと歩き回る屍。 狂った舞踏会。 そう表現出来るほどにこの光景は凄惨で、美しい。 踊れ、踊れ、死んでも踊れ。 刹那の間。 そして今度のミュージックは火炎の唸り。 炎を体に纏い、蝕まれながら炎に包まれたグールを薙ぎ倒して獲物の元へと進む。 血。血。血。 真っ赤に染まった頭に残された思考はもはやそれのみ。
>407 アリ型キメラヴァンプvs本庄 一度ならずに二度三度 死に損なった者の舞 怨みつらみに狂わされ げに恐ろしきは人の性 躍れ。化物ども。 糸を繰るのは、この俺だ。 恐ろしく疾くキメラヴァンプが間合いを詰めてくる。 速い。気づいたときには、目の前に。 だが奴は致命的なミスを犯している。 零距離での50口径がどんなにつらいものか、奴は忘れているのか。 それとも、考え付かないほどにイカれているのか。 愉しい限りだ。気に喰わないような同胞狩りは。 飛び上がった奴の手がこの胸に触れたときには、既にD.E.の照星は 奴の少しは人間らしさを残している部分、顔をポイントしていた。 轟音 奇声 遠のく意識。 仰け反り吹き飛び炎に倒れ臥す奴。しかし、 それを見送る前に、俺は壁に叩きつけられていた。
ウピエルVSファントム >380 弾丸が切れデザートイーグルを捨てた瞬間、迫るウピエルの銃剣。 常人なら捕らえる事もできない筈の突撃がまるでスローモーションの様に見える。 腰に下げたステッキを左手で引き上げると、模様と見えた切れ目から現れたのは刃。 一閃、逆手に持った仕込み杖を右肩まで引き抜き、柄に右手を添えた刺突の構え! 全身に鞭打ってウピエルに向って突き出す。 ウピエルの銃剣と交差する刃、互いの切っ先が互いの胸を貫く。 スピードに勝るウピエルの特攻、その勢いに二人は絡み合う様に壁際まで飛ばされ 壁にしたたかに打ち付けられる。 ――――― バキン!! ――――― 強度に劣る仕込み杖はウピエルの胸部に深々と突き刺さったまま、そこで折れた。 ウピエルの銃剣は肺を貫き、凶暴な血染め刃を背中から覗かせている。 息が、できない……。 両肺がもうその役目を果たしていない。 体内に残された酸素の大半を一撃に使い切って、体はその機能を失いつつある。 死ぬのか……?俺は………。 駄目だ、奴にとどめを刺すまでは……。 まだ終わる訳にはいかないと、朦朧とする意識をその想いだけで繋ぎとめる。
>408 アリ型キメラヴァンプvs本庄 「キキ……ギ……、ガ……」 吸血鬼にとっては致命的な劇薬となる炎。 それが全身へと燃え移る――― 僅かながら理性を残していた脳はもう存在しない。 そんな物は銃弾と共に吹き飛んだ。 全身に杭が刺さるかのような痛みを感じながら、本能のみで獲物を察知。 その首筋へ、牙を突き立てる。 嗚呼―――美味いな、やはり血は良い、血は―――― 恍惚が体中を駆け巡る。 これでは、首から飲む程度では足りない。 腹を鋭利な鉤爪で引き裂く。 中から零れ落ちるのは果実にも似た赤い、赤い臓物。 それを、喰らう。 ただひたすらに、喰らい喰らい喰らい喰らい――――― 彼は、その命が失われた事すら気付かぬまま、燃え尽きて果てた。
>410 アリ型キメラヴァンプvs本庄 熱い・・・・・・・よく判らないが、熱い。 なにが起きている・・・・・・・・? 徐々に意識が覚醒する。 そう・・・・・俺は何をしていたのか。 力が、そして熱が奪われる。だが、熱い。 熱い 俺はこうして今夜も 熱い 真面目に働いて。 わけのわから 熱い ない化物どもを相 熱い 手にしながら。 目が覚めれば、俺は喰われているじゃあないか。 夢か? 良い夢だ。醒めないで欲しい。もっと、俺を喰え。 こうして赤く熱く燃える俺の命を、臓物を喰らえ。 喰われる〈物〉にならないと・・・・・・ただの〈物〉にならないと・・・・ 〈物〉にならないと人を辞めないと早く死なないと。 耐えられないから 嗤う俺が俺を見下ろしているから ほのおがしたからわらってる 気が狂えば。おれはおれでなくなる。 くるしくなくなるいたくなくなるから。 ・・・・・・・。 そうして、果てた。炭も残らない。何せ、俺は物だから。喰われたのだから。
〜事後報告通知書〜 ◆損害 キメラヴァンプ:一体 (型式蟻型 グレード E) エージェント :一名 (本庄) ※その他必要経費等は追って通知 ◆その他損害 死者:23名(うち戸籍を持たないもの18名) 被害総額:2,000,000円前後と推定 ◆事件詳細と事後処理経過 潜入捜査のため派遣されたキメラヴァンプ一体が 〈ハンター〉による攻撃を受け、脳に欠損。記憶消失。 よって燦月総務部調査課はエージェント一名を派遣。 自体の鎮圧と証拠の隠滅を図る。 地下に追い込む事に成功するも、エージェントは キメラヴァンプと共に死亡。体内の記録装置は残る。 犠牲者、及び事件現場は炎により幸い火事として 処理が可能。人為的な証拠は事後処理班が隠滅。 第二種情報統制により隠蔽可能。 また、ガス設備の欠陥を誘致し、それを事件の発端 となる誘因と報道させることに成功。 死傷者23名のうちの18名は身元不明のホームレス である事が確認されている。 エージェントの死体跡より回収された記録装置より >394>395>396>397>398>399>400>404>407>408>410>411
ウピエルVSファントム >409 俺の銃剣はツヴァイの胸に深々と突き刺さった。 骨を断ち肉を抉る感覚が銃剣を通して腕に感じられる。 ツヴァイの仕込杖は俺の胸を貫通し、背にまで達して折れた。 俺の胸の中の臓器は、ほぼ全てが使い物にならず、想像を絶する苦痛が胸郭を駆け巡る。 メキメキと音を立て顎の関節が変形し、口が大きく裂ける。 血を吐きながら嗤う。まだ嗤う。楽しくて仕方が無い。 これで終りだろうが、まだ終りにしたく無い。もっと、もっと、楽しみたい。 長い犬歯がさらに巨大化し、恐るべき牙となる。 テメェ・・・最高だぜ・・・ 殺せ、殺せ、もっと殺せ。足りない、足りない。この位では全然足りない。 俺も、オマエも・・・まだ、殺し足りないだろう? 抱き合うような姿勢で縺れ合ったまま壁にぶつかる。 「まだだ・・・まだ殺ろうぜ・・まだ続けようぜ・・・これで、終わりになんて・・・してたまるかよ!」 そのまま、牙の並ぶ口を開き、ツヴァイの喉笛に噛みつく。 血を啜り、吸い上げながら、ツヴァイの怒りと絶望を導く言葉を囁く。 そうだ、貴様はまだ死なない。地獄は、これからだ
ウピエルVSファントム >413 首筋に刺さる奴の牙、 抗う力も無く、残された命が奪われてゆく。 ウピエルの言葉が耳に届く。 このままおぞましい吸血鬼と化すのか? エレンを、キャルを、吸血鬼となった自分が襲う様を想像して戦慄する。 そんな…… そんな事だけは……。 エレンを守りたかった。 死ぬ時はキャルに殺されてやりたかった。 だが、今となってはもう…………。 断末魔の痙攣とも硬直ともつかない動きで、ウピエルの背後に回された左腕。 必死で抗う無駄な抵抗にも見える、奴の背中に押し当てられた掌の中。 そこにはピンの抜かれた、最期の手榴弾が握られていた。 エレン…… キャル…… すまない …………。 直後、唐突に意識が途切れた。
vsギーラッハ >384 首のない騎士と片腕の騎士。 一本の大剣を介して、繋がったまま微動だにしない二人。 その前にふわりと降り立ったのは白い着物の少女。その表情は怒りと苛立ちをあらわにし、 構えるその両手には赤く燃え盛る炎がまとわりついていた。 その炎が伸びると、首のない騎士の両腕に絡みつく。やがて、騎士の腕は飴細工のように 融け崩れた。 少女、美夕は地に転がるギーラッハの首を無造作に胴めがけて投げる。それは、逆回しの フイルムのように元あるところへと収まっていった。 そして美夕は片腕を失った銀髪黒衣の騎士、自らの従僕たるラヴァの体を抱きしめた。 首に手をかけ、まるで母が幼な子を抱くように。 「もう・・・おしまい。これ以上ラヴァとあなたを遊ばせてはあげない」 美夕は険のある表情でギーラッハを睨む。その瞳には嫉妬と独占欲の炎が揺らめいていた。 「あなたたちは『獲物』でいい――対等の勝負なんて、心に残る好敵手なんてラヴァにはもう いらないの・・・彼はわたしのものだから。わたしの言う通りにすればいいの・・・ね?」 美夕は、慈しむようにラヴァに頬を寄せる。 そのラヴァは、ギーラッハの射殺すような視線に目を伏せうつむく。 「さすがに、腕がなければ戦えもしないでしょ・・・?あなたはここでおいてけぼり。 天晴れなる武人の本懐、なんて許さないんだから」 憎しみとも何ともつかない、底冷えのするような瞳の光と無邪気な笑み。 誇り高い武人を絡め取ったのは、この得体の知れない白い闇、なのか。
ウルフvsフラック『月下叫笑』 「――あと、ひとつ」 街外れ。かつては市街の中心だった、経済の女神から見捨てられたビル。 半ば崩壊したエントランスホールの中心で、無数の人形を背にした人影が呟きを紡いでいた。 老人と子供が一緒に喋っているような、それは奇妙な声だった。 「あとひとつ、一要素……そう、それだけいれば、何も問題はありません」 原色に近い緑とオレンジの服。首の周りにはフリル、帽子には綿の飾りがついている。 サーカスの道化そのものの衣装。だが、顔の緑色は、断じてメイクで作れるものではなかった。 人影――太古より生きる魔人、フラックが人形達に向かって向きを変えた。生きる人形、彼の手に よって、一人残らず全身の機能を麻痺させられた人間達に。 「多数の人間をさらってくるのは、簡単な事でしたな。留守の合間に泥棒が入るかもしれない、とは 思いましたが、監視がいます。生け捕りにすれば、収穫がまたひとつ増える訳で」 動かざる人間の中の一人、銀髪の女性の身体を、手袋のようなフラックの素手が撫でた。 彼女は一体ここに何をしに来たのだろう。誰を取り戻しに来たのか、あるいはただ人間の肉体を好 むだけなのか――どちらにしろ、大した差はないにしても。 もう一度撫でる。恐らく、動く事は出来なくとも感覚はそのままだろう。もしかしたら既に発狂し ているのかもしれないが、それもどちらでも良い事だ。 「監視が誰か、気になりますか? どちらでも良いですか? ま、それでも――ほら」 まるで誰かに言い聞かせるように言い、フラックの持っている中で、唯一道化にふさわしくない品 ――鈴のついた錫杖が、しゃんと鳴った。動きを見せる人影が、数人ほど現れる。 ある者は腐り果てた額の皮膚から頭蓋が露出し、ある者は左腕の筋肉が剥がれ落ち、ある者はいま だに内蔵が残っている。かつて人だった者達は、今はただ主人にかしづいていた。
「しかしまあ、彼らもそれなりには有能ですが、ある程度強力な者が出てくると抗する術も有りませ んな。――ほら、このように」 フラックの腕が動く。そう見えた数秒後、ゾンビの中の一体がフラックに向かい振り向いた。 割れた窓からさしかかる月光の光が、一瞬だけ、生ける屍の顔貌を哀しげなものに見えさせた。 ゾンビの一体の腕が、胴が、脚が、指が、膝が、骨が、首が寸断されて地に落ちたのは、それから 更に数秒後の事だ。 錫杖についた腐汁だけをわずかに見やって、フラックは言葉を続ける。 「つまり、私も色々とやる事が有りまして、それには強力な配下が必要です。私と闘争が出来るよう な、素晴らしいアンデッド」 左腕が開き、長すぎる指が一本折られる。 「まず――私は、不死の術法の方式を見直しました。結果、死体を物として操る今の私の方式ではな く、怨念を基盤とする古式に立ち戻る事となります。なぜなら、人間は、何かを憎む時に恐ろしい力 を発揮いたしますので」 また指を一本。呟きにすぎない筈の声が、朗々と響き渡った。 「次に私は、多数の人間を集めました。人間の怨念は、集まれば集まるほど強力になりますからな」 最後に、中指を折り――フラックは、玄関の人影と正対した。 「そしてその怨念を、あなたのような強力な力を持つ方の死体に込めるといたしましょう」 今までの呟きの相手、最後の障害、最高の力の贈与者、道化の劇場の観客――素晴らしい闘争のパ ートナーの為に、フラックは最上の魔人の笑みを浮かべた。 「見なくとも分かります、良い夜宴になりますとも」 人影の放つ、鮮烈な殺気――いや、咆哮する生命そのものが、半ば無意識に道化にそんな言葉を吐 かせていた。 「誰を探しに来たかは存じませんが、この麻痺は私が消滅しない限り解けません。私が何を望んでい るかはお分かりでしょう?」 錫杖を構え、ゾンビ達がフラックの前に出る。ふと月光が異貌に当たり、懐かしげに目を細めて 「――おあつらえに今日は満月、夜から生まれた者の力が高まる夜。何かが何かを殺さずにはいられ ない夜です」 奇妙な声がホールに満ち渡り、反響し、切り取られた夜を支配する。 地上の瓦礫と、頭上の月と、完璧な調和をもって魔人が一礼した。 「私はフラック、魔族の道化です。お名前をお教えください――あなたの名が身体が生命が、全てが ねじれ、壊れ、叫び、笑い、泣き、怒り、まわり、踊り、溶け、はじけ――そして、敬意をもってあ なたを殺す事が出来ますように」
ウルフvsフラック『月下叫笑』 【ウルフ側 導入】 >417 真夜。 その世界は、何時の世も、絶対的な排他性を保ちつづけてきた。 天から垂れ下がる漆黒のベールは、真の夜の住人にのみ許される 誉高き聖衣であろう。 ・・・ざしゅ。ぴちゃぴちゃぴちゃ。 『なんだ、ああ、つまらない』 猛々しき獣毛が黒々と生い茂る右手の先端、鉤爪。 ビニール樹皮みたいにそこから垂れ下がるニンゲンの表皮。 写生に行った子供たちの絵の具がついた絵筆のような爪。 描かれたキャンバスは、うらぶれた廃ビルの360度。 前衛芸術のオブジェと化した人型が両手両足を自由に 絡め合い、苦悩に俯いている。 夜って言うのは。 つまりこういう事。 自らの意志を持たずして、その地を徘徊するコト事態が・・・ ・・・なんと、愚かで、憐れ。 こんな木偶人形。創作する事、それ自体。 どうして闇夜の品位を汚すものであると心得ない? まして。 『殺す?笑う?叫ぶ?泣く?弾ける?溶ける? あはははははははははははははははは・・・・・・・ 馬鹿だな、人形。ああ、何処までもオマエは愚かだぞ。 タカハシを、そんな事の為に攫うなんて・・・ 寂しいのか?ウルフに構って欲しいのか人形遊び人形? 哀れだな。無様だな。カコワルイな♪』 ほの明るい一条の月光に映し出された笑う人影。 その後頭部の面積が急速に膨らみ、伸張し・・・生ける屍と道化に 群がっていく。その正体は研磨された斬鋼線と差異なく猛る 人狼のハックル(髪)。 闇ヨリ眩イ獣ノ体毛が気高き朱に真夜を染める。
ウルフvsフラック『月下叫笑』 >418 それは、夜そのものに見えた。 人狼とその身を変えた人影。どう動くか、そう思った直後には、その人狼の髪が伸びていた。漆黒 の凶器に巻き込まれ、抵抗する間も無くゾンビ達が斬砕される。 広く、鋭い攻撃に、フラックもまた巻き込まれる――と、一瞬は見えた。 フラックの口から吐き出される、灼熱の炎。純粋な赤と黒が拮抗し、やがて互いが共に消えていく。 魔人の笑みを貼り付け、道化師が言った。 「……足りないんですよ、ええ。この程度では――全く、私は微笑んでいるしかありませんよ。もっ と良いものをくれませんと、この愚か者は……この道化は、全く、こんな事しか出来ません――」 その言葉をもって、フラックの姿が消えた。一秒にも満たない瞬間の後に、ホールの天井に釣り下 がっている。 「どうです、ちょっとした軽業でしょう? 驚かない? 驚きませんか? では、これではいかがで す? いや、実は、ね……」 にやにやといやらしく、あるいは壊れたおもちゃのように貼りつけた笑みをうごめかせて 「この天井、壊させて頂きましたよ」 言葉通りに崩壊した天井が、瓦礫の山を床に降り注がせた。 「ほら、どうです? あなたの大切な人に、当たったらどうなりますか……ほら、一人潰れた! い や、あれはゾンビでしたな! しかし、そろそろ誰かに当たりますかな! ははは! ははは!!」 落下しながら言葉を撒き散らし、狙いもつけずに氷のブレスを放射する。 ねじれた闇の道化が、跳ね回り夜を引き裂きはじめた。
ウルフvsフラック『月下叫笑』 ・・・道化が放つ烈火。 闇が慄き視界が爛れ、空気を焦がす。 大道芸は斯くあるべし。 焼き尽くされた髪により蛋白質が燃焼時に発する独特の悪臭が人狼 の鼻を突く。 人狼は体に燃え広がる前に途中で断ち切った髪を両足で踏みつけ、 天井下がりの顔面をねめつけた。 ・・・・・・・・がたん。 どしゃーん。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・がらがら。 崩落したt単位の瓦礫。 濛々たる土ぼこりと静寂をも凍りつかせる冷気の渦。 まさに、地獄絵図がその姿を文字通り凍りつかせている空間。 『馬鹿は逆さになっても河馬にはならない。 やっぱり馬鹿なのにな』 左手に少年・・・親友を抱え、瓦礫より這い出る人影。 それは、紛れもなく、道化と敵対する人狼、ウルフ。 背を紅い直垂を纏ったように紅に染め。 凍傷に頭頂の耳が乾物のようにしなびているが。 『とっても憐れなゾンビたちの掃除、 (一抱えあるコンクリートが宙に浮き) ありがとう。 ・・・・そして、(虚空を走り) さよならだ♪(無数に爆発し襲い掛かる)』
>420は >419のフラックに対してのレスだ。
ヤハベvsフィオ 『LA SALIDA DEL SOL』 肥え太った中年男が、豪華なソファーに腰掛けていた。 麻薬と武器の密造・密売でたっぷりと儲けている、この国の裏社会の顔役だ。 この男はなんでも持っている。 大企業、高級乗用車、愛人、ボディガード、ちょっとした宮殿といっていいサイズの別荘。 その別荘に、オレは来ていた。 「神父さまをよこしてくれるとは、ムッシュも気が利いているな。罪を犯したあとは、 懺悔を聞いてもらえるわけだ」 男が自らの冗談に大笑いする。 「それで神父さまは、普段はムッシュの罪の告白なんかを聞いていたりするのかな?」 「神父さまだったのは、昔の話だ。ヤハベって呼んでくれ」 男のくだらない質問には答えず、オレは話を本題に戻した。 「ムッシュは、あんたの組織とのビジネスから降りようと考えている。 理由は解るだろ?あんたらは最近、派手にやりすぎた。言うことを聞かない政治家や警察幹部を、 次から次へと暗殺してる。じきに、派手なしっぺ返しを食らうぜ。 それに巻き込まれるのは御免だ、そうムッシュは言っているのさ。 あれだけ無茶をやらかしたんだ、どんな報復が来るか解ったもんじゃないぜ」 オレの言葉に、男は口を歪めて笑いながら答える。 「ハハハ、心配性だなムッシュは。この国の警察も軍隊も、今じゃ俺の顔色をうかがって ビクビクしてるんだぞ? それに、俺にはとっておきの大物がバックについているのさ」 ここでいったん言葉を切って、男は真剣な顔付きになった。 「あんたもモーデン元帥の名前は知っているだろう?俺はあの方と同盟を結んでいてな。 オレがヤクの稼ぎを元帥に献上し、元帥は武器や兵隊で俺を援助してくれる。 俺に、いや俺たちに、怖いものなんぞなにひとつありゃあせんのさ。 ムッシュにしっかり伝えときな、なにも心配するこたぁないってな」 男がそこまで言ったとき、ヘリのローター音が僅かに聞こえてきた。
ウルフvsフラック『月下叫笑』 >420 純粋な重量、運動エネルギーの大群がフラックに襲いかかる。まともに受ければ、魔人の身体すら 殺しかねない――いや、消しかねない一撃。 自らが収穫した資産――麻痺した人間達の群れの中に逃げ込み、ブレスをもって凍り砕き、焼き潰 し、神速の体術をもって刻み壊し、それほどの行為をもっても、道化は全身への負傷を避ける事が出 来なかった。 「――はは」 フラックが、笑った。それまでの笑いとは、明らかに違う笑い。ただ音声だけで敵を殺そうとする なら、こんな笑いが最適だろう。 「ええ、十分です。もう満ち足りましたよ。勘弁してください。許してください。もっとお願いしま すよ、もっと、もう十分です、いや、もっと、もっと、もっと、もっと」 錫杖の鈴が鳴る。麻痺していた筈の者達が、突然動き出した。 錫杖の鈴が鳴る。フラックの口から毒のブレスが放射され、人間が苦悶して倒れていく。 錫杖の鈴が鳴る。既に死体となった人間の群れが、寄り集まっていく。 「もっと、もっと、もっと、もっと。私も巻き込まれますよ。当初は使うつもりではありませんでし た。これは損害です――もっと、もっと、もっと、もっと」 錫杖の鈴が鳴り、鳴り、鳴り、肉体の群れが潰れ、潰れ、潰れ、意味を持たない眼球が動き、意味 を持たない口が叫び、意味を持たない四肢が振れる。 そして、巨大なアンデッドが起動した。 その目的は、ただ生ある者の鼓動を止める事。恐るべき数の肉の弾丸を放ち、弾丸は標的をひたす らに追う。微塵に砕かれ、刻まれたとしても、腐った躍動が止まる事はない。
ウルフvsフラック『月下叫笑』 >423 しゃん。しゃん。しゃん。しゃん。 しゃん。 しゃん。 しゃん。 しゃん。 しゃん。 しゃん。 凛とした鈴の音は純粋な狂気を孕む真夜に相応しく、心を滾らせる。 その音色は心無いものであれども、一度堕ちた夜の住民であれば無反応は即ち罪。 肉、肉、肉、鈴の音に酔った肉片の乱舞。 リズムに酔いしれ、纏まり、弾け。仲間を増やすように、空を飛び交う。 「肉は黙って食われてろ。肉は黙って焼かれてろ。肉は黙って死んでいろ」 暴言が口をつく・・・しかし、タカハシがいる分、動きがかなり制約される。 瓦礫の山を縦横無尽にかけ、巨大なコンクリートでさえも盾として機能する 時間は極僅か・・・。 既に彼の表皮は数パーセントが抉られ、床の幾何学模様を増やしている。 思わず目でその様子を追ったとき・・・。 彼の視界に飛び込んで来たもの。 ・・・(あはははは・・・・)これだな。 天井や床下にあった古い配管より漏れ出している、冷涼な雫。 そこまで、肉片はタカハシを守るよう背中を貫くのにまかせ、一度に駆け出す。 亀裂から細く吹き出る液体に手を触れ。 ・・・・遠吼え。・・・・・ワイルドハーフの秘儀、マーキング。 人狼の僕と化した流体は、雷撃を帯び水蒸気として大気を引き裂く。 『空飛ぶ五月蝿い蝿。蝿が狼を倒せるか。エライ誤解だな。 道化、おまえは最後まで笑われてればいい。後がよろしくないのか?』
ウピエル(&ツァーレンシュヴェスタン)VSファントム >402 半身を失ったような喪失感――― 否。 身体中の全てが抜け落ちるような感覚を、ノインは味わっていた。 自分だけが世界から取り残されてしまったような気さえする。 永遠の命は祝福の筈だった。 愛する者と永遠に生きていくつもりだったのだから。 独りで生きていく事など、完全に脳髄から抜け落ちてしまっていた。 哀しいと感じないのは、心が感じる事を拒否しているのだろうか。 それとも……吸血鬼の心とは、こういうものだろうか。 数瞬後。突然スイッチが切り替わったかのように、ノインの心に憤怒が湧き起こる。 それでも、表情にその怒りが出る事は無い。 彼女が感情を見せる相手は、この世にたった一人だったのだから。 その相手がいない今、彼女の感情が表面に出る事も行動に影響する事もない。 冷徹に、冷酷に、冷静に…… ただ獲物を狙うだけの機械にも等しい。 アインとの距離は遠くなっている。最初にしとめるのはドライの方だ。 遊び弾も牽制も無い。遮蔽を考る事すらもしない。 AKの銃口は、一直線にドライの額に向けられている。 ドライの金髪にフュンフの面影を見る事すらなく、引き金は絞られた。 心臓でなく額を狙ったのは、ノインなりの追悼であったかもしれない。
死闘!復讐鬼対アギト! ◆アポロガイストvs仮面ライダーアギト◆ >128 俺の眼前で、アギトは再び戦士の姿へと変身した。 だが、その姿は先ほど以上の闘志に満ち溢れている。 それはまさに灼熱の炎に例えるに相応しい勇姿だった。 「さすがだな、アギト!私は運がいい。Xのみならず、貴様ほどの相手と巡り合えるとは。 これもGODとの付き合いを始めたおかげだ」 俺は言うや、右腕に着けた銃口を奴に向けると、 奴に向かいその顎を撃ち放つ。 そしてその銃弾を追い越すかのように跳躍すると、 上空からその首を狙うように剣を閃かせる。 アギトよ、その姿、その力、全てを俺に示せ!
死闘!復讐鬼対アギト!◆アポロガイストvs仮面ライダーアギト◆ >426 太陽神の名を持つ者の右腕から再び礫が放たれる。 魔弾を右腕の動作で振り払う。 灼熱の力により、礫が打ち払われる。 「フッハァァァァァァッ…!」 空いた左手をオルタリングの前にかざす。 円のような武具が現れる。 アギトの武器、シャイニングカリバー、シングルモードである。 両端に刃のついた手槍の状態になったシャイニングカリバーでアポロガイストの一撃を上半身の力のみで受け止める。 「ハァアアアアッ!!」 そのまま、アポロガイストを押して、シャイニングカリバーを構える。 夕日が血の色のように二人を照らし出していた。 ――――いずれかの死を悼むかのように。
死闘!復讐鬼対アギト! ◆アポロガイストvs仮面ライダーアギト◆ >427 「何だと!?」 あの一撃を上半身のみで弾き返すとは・・・・・・ 面白い、面白いぞ!そうでなくては闘う価値もない。 そちらが力で上回るならば、こちらは技で打ち勝ってみせよう。 再びアポロマグナムを撃ち放つ。 今度の標的は顔だ。ガードするなり叩き落すなりする間に、 一瞬の隙が出来る。其処をつく。 俺は一気に間合いを詰めんと駆ける。 高速回転させたガイストカッターを上から、アポロマグナムを下から、 ほぼ同時に閃かせた。太陽の顎から逃れられるか、アギトよ!
AKの暗く深い銃口があたしに向けられた。 その闇の奧には真紅の瞳。儚く、虚しい色をした真紅の瞳。 そんな瞳を見て、ふと気が付く。 (そういえば、どうしてあたしは殺し合いなんてしているんだ?) 間を置かず、銃声。それは3度鳴り響く。 次瞬、飛び散る鮮血。その鮮血の網から抜け出すかのように吹き飛ぶ指。――――そう、指だ。 AKの銃口とあたしの眉間を線で結び、その一直線上に『遮蔽物』を置いた。 それはあたしの左手。 ――――オルゴールの優しい音色が聞こえる―――― と、その左手にしっかりと握られた真鍮製のオルゴール。 肉を抉り、オルゴールに弾かれた3発の銃弾は跳弾と化してあたしの指を持っていく。 良いよ。指くらいあげるよ。冥土の土産って奴さ。あんた等とは、一応姉妹なんだからね。 そして、この音楽が……鎮魂歌。 「な〜んで、オルゴールなんかで突撃銃の銃弾がはじかれるのかな〜? そう思わない?」 吸血鬼は答えない。今現在、20発程の銃弾を浴びている彼女に、答える術は無い。 あたしの右手には同じAKライフル。空薬莢と銃弾を現在進行形で吐き出して、元気に活動中。 ついでに、足下には吸血鬼の亡骸。 「それは愛の力だからだよ。 It is L・O・V・E power オーケー?」 マガジンに残った最後の一発を吐き出して、AKの咆吼は止んだ。 だけど、オルゴールの音色はまだ止まらない。どうやら、まだ鎮魂歌を止めるわけにはいかないらしい。
やべ。>429は>425宛てな。
死闘!復讐鬼対アギト!◆アポロガイストvs仮面ライダーアギト◆ >428 顔面に迫る太陽の礫、天空から迫る太陽の車輪、大地から迫る太陽の剣。 いずれかを避けてももう一方に当たってしまう。 ―――前へ。 シャイニングカリバーを風車の如く回転させる。 前へ前へと進み、胸甲に、肩に、角に礫が当たる。 細かな罅が装甲全体に走り、衝撃が内側の肉体を傷つける。 太陽の車輪を、太陽の剣をシャイニングカリバーでかろうじて受け止める。 剣が罅の隙間に入り押し広げる。 鮮血が、夕日と相成ってその五体を真紅へと変える。 夕日が今まさに沈もうとし、残光を全身に浴びる。 罅が広がり、銀の鎧を表にする。 アギトの最強形態、シャイニングフォームとなる。
死闘!復讐鬼対アギト! ◆アポロガイストvs仮面ライダーアギト◆ >431 俺の猛攻を受けて尚、アギトは倒れない。 その身に剣を受けて尚、アギトは倒れない。 そして、目の前で、奴はその姿を変えた。 白銀に輝く鎧を纏った戦士に。 神を超える可能性を秘めた最強種に。 「ふ・・・・・・・・ふははははははは!!」 俺は笑った。心の底から湧き出る歓喜に身も震える。 だが、そろそろ幕を引こうじゃないか。 未練は残るが、な。 俺は間合いを一旦開けようと後方に跳ぶ。 その際に、ガイストカッターを投げ飛ばして。 一直線に飛ぶそれを、奴は避けるだろう。 だが、弾くにしろ、避けるにしろ、 それは後々、貴様を苦しめる。 俺は仮面の下でにんまりしながら、 奴に向け三度アポロマグナムを撃ち放った。
死闘!復讐鬼対アギト!◆アポロガイストvs仮面ライダーアギト◆ >431 銀の鎧を纏い、両端に刃のついた手槍…、シャイニングカリバーを双剣となす。 極限のスピード。 それをもって、太陽の礫を右のシャイニングカリバーで弾き、左のシャイニングカリバーで車輪をそっと受け止める。 残像を巻き起こしつつ、アポロガイストへ迫る。 「左!!」 右のシャイニングカリバーでアポロガイストの左腕に斬りつけ、 「突き!!」 左のシャイニングカリバーでアポロガイストの胸に突きを入れようとする。
>433は>432へのレスです…。 どうも失礼しました。
死闘!復讐鬼対アギト! ◆アポロガイストvs仮面ライダーアギト◆ >433 奴はその手の薙刀のごとき武器を双つの剣と為し、 竜巻のごとき猛攻を仕掛ける。 右から、左から、剣は閃き斬り裂こうとしてくる中、 俺はただ防戦に徹した。それでも、その防御を掻い潜って、 剣はこの身を切り裂いていく。 そろそろ頃合か・・・・・・・俺は左手をくい、と動かす。 同時に、弾かれたガイストカッターは宙へと浮かぶ。 そして、それはアギトの首目掛けて音もなく飛ぶ。 さぁ、音なき暗殺者の刃にかかって死ね、アギトよ!
死闘!復讐鬼対アギト!◆アポロガイストvs仮面ライダーアギト◆ >435 アポロガイストへ双剣のラッシュを続ける。 丁丁発止と、受け止められ、隙を見つけようとじりじりと回り込む。 その時、かすかにアポロガイストの左手が動いた。 視界の片隅に、回転する物体が見える。 ―――あれは!? 振り返って、右のシャイニングカリバーでガイストカッターを斬る。 その隙を突かれ、左腕を、胸を大きく切り裂かれる。 「くっ…」 膝を突きそうになるが、仮面の奥で歯を食いしばり、アポロガイストを見据える。 鮮血が再び、大地を赤く染める。
ウルフvsフラック『月下叫笑』 >424 全身に無数の死肉が食い込み、闇の生命を消去せんと動き回る。 炎にすら似た蒸気の渦を浴び緑色の皮膚が灼かれ、緑に赤の混じる魔人の肉が露出する。 全身をねじれたようにわななかせながら、それでもフラックは錫杖を振りつづける。 「……そう、私は最後まで笑われていればよろしい。それが最善ですとも」 しゃん、しゃん、しゃん。凶々しく澄んだ鈴の音に混じり、老人と子供が共に喋っているような、 フラックの声が続く。 「しかし――『最後』というのは、もっと騒がしく、愉しいものですよ。ねえ、そうは思いませんか?」 ひきつるように顔面の笑みが伸び、全力を込めた炎のブレスが放射される――全く、あさっての方向に。 「もっと騒がしく、もっと愉しく、もっと華々しく――ほら、例えば、このように」 炎が、ガス管に――極限の火炎が、全てのガス管に引火した。轟音が世界を錯乱させ、業火が世界 を蹂躪する。 「もっと強く、鋭く――最後の為ですよ、ねえ、舞台の為ですよ」 鈴の音が止む。岩塊、蒸気、肉刃、爆発、火炎に引き裂かれ、人間の風刺画の如き姿へとその身を 歪めた魔人。その姿が、錫杖を構えた。 笑い、悲鳴、苦痛、絶叫――錫杖の力の源である、膨大な人間達の感情が渦を巻いて溢れ出した。 首を落とす。首を落としても死ななければ、心臓を破壊する。心臓を破壊しても死ななければ、四 肢を刻む。四肢を刻んでも動けるなら、細かく切る。細かく切っても死ななければ、更に細かく。更 に細かく。更に、更に、更に細かく。細胞が原子に変わるまで、錫杖のみで破壊する。 死体が残らない。知った事ではない。たかだかの小道具を得る為に、最高の観客に対しくだらない 舞台を舞う。そんな道化がどこにいるだろうか? 既に、何の言葉も無く。 ただ殺す為に、フラックが跳んだ。
死闘!復讐鬼対アギト! ◆アポロガイストvs仮面ライダーアギト◆ >437 「ほう・・・・・・まだ膝をつかんか・・・・・・さすがだな。だが!先ほどまでの動きは出来まい!」 俺はゆっくりとアギトに向かい歩み寄る。 楽しい戦いであったが、それもこの一刀で終わる。 「さぁ、賢者の石とモノリス、頂くぞ!」 俺は右手のアポロマグナムを振り上げた。 その時だった。心臓部に激しい痛みが走ったのは。 こ、此処まで来て・・・・・・死ぬわけにはいかん!! だが、一瞬の隙を見逃すアギトではなかった。 奴の剣が俺の胸を貫く。よろよろと後ずさりしながらも、 俺は剣を引き抜く。 「まだだ・・・・・・まだ俺は死なんぞ、アギト!!」 俺は最後の力を振り絞り、アギトへ向かって渾身の突きを叩き込まんと、 一気に駆けた。
死闘!復讐鬼対アギト!◆アポロガイストvs仮面ライダーアギト◆ >439 膝を突くまいと、ただ、立つのみであった。 『さぁ、賢者の石とモノリス、頂くぞ!』 右腕の剣を振りかぶったアポロガイストは唐突に心臓のあたりを押える。 ―――おれは、生きる!! 一瞬の隙を突き、シャイニングカリバーをアポロガイストに突きこみ、距離を取る。 お互いに後は無い。 アポロガイストの突きに呼応するように、構えを取り、空を飛ぶ。 「ハァアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」 紋章がアギトの前に輝き、突き破る。 “闇の力”―――神に一矢報いたシャイニングライダーキックだ。
死闘!復讐鬼対アギト! ◆アポロガイストvs仮面ライダーアギト◆ >440 アギトは宙へと跳ぶと、蹴りを見舞う。 昔日の光景が瞼に浮かんだ。 あの時もXの蹴りの前に一敗地に塗れた。 だが、だがっ!! 「俺は死ねぬ!まだ死ねぬのだ!!」 剣と蹴りが交錯する。 剣はアギトの肩に突き刺さる。 しかし、奴の蹴りは胸板を貫通し、心臓を叩き潰していた。 「く・・・・・・死者は黄泉に帰るが運命か・・・・・・だが、後悔はしておらんぞ。 アギトよ・・・・・・貴様との闘争、冥土の土産には最適だった・・・・・・・地獄で会おう!」 俺は仁王立ちのまま、ゆっくりと身体の機能を停止した。 そして起こる爆発。 爆発が終わった後、そこにはただ一輪の深紅の薔薇が落ちていた。 一人の戦士の死を悼むかのように。
死闘!復讐鬼対アギト!◆アポロガイストvs仮面ライダーアギト◆ エピローグ>441 夕日が沈みきり、月が昇ろうとしていた。 『く・・・・・・死者は黄泉に帰るが運命か・・・・・・だが、後悔はしておらんぞ。 アギトよ・・・・・・貴様との闘争、冥土の土産には最適だった・・・・・・・地獄で会おう!』 戦士に墓を作ろうと思ったが、それは相応しくない気がした。 左肩に、突き刺さった傷が、闘争の高揚が心に今も残る。 それこそが戦士の墓に相応しいと。 「アポロガイストさん、おれも…、後悔しません。 地獄かどうかは分らないけど、いつか…、また会いましょう」 戦場に背を向け、 ―――数日後、いつも通りにレストランアギトは開店した。 「あ、オーナー、お花…挿してますが、いい事でもあったんですか?」 可奈が問う。 「あーー、まあちょっとね」 そう答えて、胸に真紅の薔薇を挿し、店を切り盛りする。 ―――だが、新たなる戦いは始まったばかりだ。 進め、そして変身せよ、仮面ライダーアギト! A Ω Ω A
死闘!復讐鬼対アギト! ◆再生アポロガイストvs仮面ライダーアギト◆ レス番号の纏めだ。 導入 >4 >5 闘争 >7 >8 >12 >14 >18 >95 >101 >103 >105 >108 >110 >116 >122 >125 >128 >426 >427 >428 >431 >432 >433 >435 >437 >439 >440 >441 エピローグ >442 死者は黄泉に帰るが運命だったか。だが、これで終わりではない。 諦めが悪いのが、俺の長所でね・・・・・・
此処ですか…… 多くの人が無為な闘争に明け暮れているところは…… 出典 :MOON. 名前 :鹿沼葉子 年齢 :23 性別 :女性 職業 :宗教団体FARGO CLASS−A所属 趣味 :修行 恋人の有無 :なし 好きな異性のタイプ :なし 好きな食べ物 :エビ(尻尾まで食べる) 最近気になること :天沢郁未さんの動向 一番苦手なもの :直射日光 得意な技 :不可視の力 一番の決めゼリフ :私はA−7です。A−12を排除します…… 将来の夢 :分かりません…… ここの住人として一言 :一応ですけど、宜しくお願いします…… ここの仲間たちに一言 :私はCLASS-Aです……、あなたたちとは違います…… ここの名無しに一言 :FARGOに入信しませんか……?
ウピエル(&ツァーレンシュヴェスタン)VSファントム >429 生物学的に言えば、ノインは既に死んでいる。亡骸と呼ぶには相応しい。 吸血鬼になった時点で、人の心も死んだ。 そして……先程、魂も死んでしまった。 それでも、いまだに活動は止まらない。 完全に動きを止めていた身体が、再びのろのろと立ち上がる。 目はどこも見ていない。 散発的に放たれていた銃弾も、全て見当違いの方へ飛んでいく。 だが、全ての弾を撃ち尽した後も引き金は引かれ続ける。 虚しい金属音がホールに響くが… 彼女に、他に出来る事は何もないのだ。 おぼつかない足元は、何故かゆっくりと交代している。 その先に、アインが乗り捨てたBMWがあるのは偶然ではないのかもしれない。 ―――バイクに縛り付けられた杭には フュンフが着ていた白いボロボロのチャイナ服が引っ掛かっていた。 そこにノインが向かって行くのは……決して偶然ではないだろう。
>445 赤く濡れたオルゴールが床を叩く。左手の感覚が無いんだ。燃えるように熱いが、それだけ。 痛みも何も無い。ただ、目には滝のように流れ出る血液が映し出されている。 (これは……マジで死んじまうかもしれねぇぞ……) 失血死。既に血液は大分失ってしまった。その上この傷である。 生きたいのであればすぐに止血をして、病院に転がり込むべきだ。 そう、生きたいのであれば。 AKを床に放り捨て、ふところからベレッタ92Fを取り出すと、スライドを自慢の白い歯で噛み付き、 無理矢理撃鉄を起こした。 そして、狙いを―――― 「ノイン……」 初めて、吸血鬼を名前で呼んだ。元から全員知っている。 一度も会ったことは無いが、サイスから聞いていた。 ノイン……可哀相な女―――― でも、 「ノイン、あんたの親の名前……教えてくれないか?」 軽い銃声。続いて爆発音。視界に広がっていく火炎の雲。 それに飲み込まれていく……吸血鬼。 爆音で聞こえないが、あたしの血に包まれてオルゴールが鳴り響いているはずだ。 哀れな女達ツァーレンシュヴェスタンがこの瞬間、全滅したことを告げる鐘の役目を背負って。
ウルフvsフラック『月下叫笑』 >438 尾に炎が燃え移り、紅葉のように舞い散る火片は天を突き、 月を焦がしている。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 血。血。血。血。血。血。血。血。血。血。血。 肉。肉。肉。肉。肉。肉。肉。肉。 胸いっぱい腹いっぱいに熱気に伴い蒸散したヒトの塊を吸い込むと、ヒトの弱さに 笑いが止まらなくなる。 『最期?最期か?オマエは最期といったか?最後か? ああ、不味い。不味い。最高だ。最高の、最高の料理だ。最高の・・・』 気付かなきゃ良かったんだ。 傍らの男の子に・・・ま、男の子って言っても年はウルフよりも10は上。 ちびで、いじっぱりな。今なんてもう、失神寸前のタカハシを見る。 ・・・そんな顔、するな。ウルフが悪い事をしたみたいだろ。 こういう顔を見ると、ニンゲンは、確かに苛めたくなる。 『どうする?アイツ。ほら、きれーだろ。ウルフ、燃えてる。 へーきじゃないぞ?おお!ぱちぱち言ってる火。ウルフの雷撃といい勝負だ。 あれが動物の皮を焼くと・・・香ばしいぞ?ちょっとの間』 ・・・そう、その顔。 実際ニンゲンって言うのは、希望と無駄な抵抗を忘れちゃいけない。 『・・・わかったぞ』 結局。道化の前にいる「最高の観客」はヒトの犬。 何時の時代も道化をまともに相手するのは道化でしかなく。 ヒトを守る、なんて。甘っちょろい感情の為に歯牙を欠いた狼は。 純粋な殺意を受け止めきれず、 燃え盛る火炎の中に、弾き飛ばされた。
ウルフvsフラック『月下叫笑』 >447訂正 >438 尾に炎が燃え移り、紅葉のように舞い散る火片が天を突き、 月を焦がす。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 血。血。血。血。血。血。血。血。血。血。血。 肉。肉。肉。肉。肉。肉。肉。肉。 胸いっぱい腹いっぱい。 熱気を伴い蒸散したヒトの塊を吸い込むと、ヒトの弱さに笑いが止まらなくなる。 『最期?最期か?オマエは最期といったか?最後か? ああ、不味い。不味い。最高だ。最高の、最高の料理だ。最高の・・・』 この時、気付かなきゃ良かったんだ。 傍らの男の子に。 ま、男の子って言っても年はウルフよりも10は上。 ちびで、いじっぱりな。今なんてもう、失神寸前のタカハシなんて。 ・・・そんな顔、するな。ウルフが悪い事をしたみたいだろ。 こういう顔を見ると、ニンゲンはっていう生き物は確かに苛めたくなる。 『どうする?アイツ。ほら、きれーだろ。ウルフ、燃えてる。 へーきじゃないぞ?おお!ぱちぱち言ってる火。ウルフの雷撃といい勝負だ。 あれが動物の皮を焼くと・・・香ばしいぞ?ちょっとの間だけ』 ・・・そう、その顔だ。 実際ニンゲンって言うのは、希望と無駄な抵抗を忘れちゃいけない。 『・・・わかったぞ』 結局。道化の前にいる「最高の観客」はヒトの犬。 何時の時代も道化をまともに相手するのは道化でしかなく。 ヒトを守るなんて。甘っちょろい感情の為に歯牙を欠いた狼は。 純粋な殺意を受け止めきれず、 燃え盛る火炎の中に、弾き飛ばされた。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− フラック、旧板の避難所を見てくれ。
ウルフvsフラック『月下叫笑』 >448 それがどれほどの影響なのか、今は量りようもない。赤と黒に染まった生き物の近くに、たまたま ただの人間がいた。それだけの事だ。 それだけの事の為に一瞬の力を欠いた狼が炎に負け、道化の脳――意識下の思考の部位が、かす かに揺らめいた。 ――なぜ。 ――この程度の脆さなのか。 ――奴もくだらないのか。 ――違う。 ――ならば、なぜ。 ――何故。 頭蓋の奥がざわめく。だが、道化はその動きを止めない。地を刻み縮める体術を、止められる筈は ない。数えられない一瞬の内に敵の肉を嗅ぎ、そして思考の揺れも消えた。 変わらず肉弾を射出しつづける屍。火炎に崩壊をはじめたビル。降り積もる瓦礫の山。少年。惑い。 血。月。人狼。道化。 この錫杖をもって斬れば、全てが幕の裏に消える。 斬った。
ウルフVSフラック 『月下叫笑』 >449 ピエロは決して素顔を見せず、幕を引くのが、その勤め。 舞台は!運命の監督は!観衆は!決して、その不文律を、曲げはしない。 ________________________________ 視界が陽炎を纏い、ゆらゆらゆらゆら揺らめいて。 人狼にとって、現実の世界は総て蜃気楼の向こうに掻き消えていた。 ・・・麻痺した五感は自身の身が焦げ行く様も、調理された焼肉を彼の 友人に振舞っているような錯覚を生む。 火の中へ手を差し伸べて、何か細かく口を動かしているタカハシ。 なんだ。ウルフの肉を取ろうとするのか? 『こっちの肉は熱いぞ。そっちの肉は丁度いい。タカハシは小さいから。 ウルフに遠慮してると何時までも大きくならない。何時までも、 何時までも・・・・・・・・・・・・・・・』 ざしゅ。 あはは・・・何時、までも、な。 (ウルフ、死亡)
ヤハベvsフィオ 『LA SALIDA DEL SOL』 >422 青い塗装を施された輸送ヘリから四人の兵士が広大な別荘の庭に降り立った。 金髪に赤いベストの鉢巻き男。 茶髪に黄色ベストのグラサン男。 金髪に緑のベストに緑のバンダナ女。 そして赤茶髪に白のベストに白いキャップのメガネ女。 「エリとフィオは標的の確保、および始末に向かえ! 俺とターマはここで退路を確保する!」 金髪赤ベストの男が叫んだ。 それに答えて女性兵士二人が一気に屋内に向かって走り出す。 「退路の確保ねぇ。なぁ、敵さんが全滅するのとあの二人が帰ってくるのどっちが早いと思う?」 茶髪のグラサン男がニヤニヤ笑いながら金髪鉢巻き男に話しかけた。 「二人が帰ってくるのが早いに30でどうだ?」 「んじゃ、俺は全滅に30か。それじゃちゃきちゃきやりますか」 男二人はその腕にヘビーマシンガンを構え、暴れ出した。 そのころ屋内に駆け込んだ女二人は敵の抵抗に逢い、足止めをくっていた。 「このままじゃ、頭目に逃げられるわね」 「どうしましょうか・・・」 壁に潜んで銃弾をやり過ごしつつ二人は相談する。 「あたしが露払いするからフィオが頭目の確保ね。じゃ、よろしく」 言うが早いかバンダナの女が銃を撃ちまくって敵を牽制。そのすきにメガネの女は走った。 そして事前の情報で掴んでいた頭目の部屋へ飛び込む。 「正規軍です! 動かないでください!」 油断無く銃を構えながら。
(下にいるもの全てを焼きつくさんとしているかのようにギラギラと太陽が輝き、 乾いた大地の上をガラガラヘビが這いずり回るメキシコの荒野――。 その砂塵の向こうから、メキシコの民族衣装チャロを身に付け、腰にコルト・ リボルヴァ―を吊った茶皮のガンベルトを巻いた怪人物がゆっくりと姿を現す。 その素顔を隠しているのはエメラルド色に輝く奇怪な翡翠の仮面だ) 闘争の最中、失礼する、私の名はハパイ・カン。世界の王アレクサンダー・ メルクリウス様が<最後の審判>を魔王に有利な戦況に導くため一九五六年六月六日、 全世界の黒魔術師を統合して結成なされた魔術的テロ結社WORM(=World Order of Ruin and Massacre――破滅と虐殺の世界教団)に所属し、もと WORMメキシコ寺院(テンプル)マスターとして『死馬の伯爵』の位階を有 する黒魔術師だ。 このたびの本格的なWORM日本侵攻にあたりこの地に正式参戦することにした。 非―人類(ノン・ヒューマン)たる私のカテゴリは当然Cだ。 この地は闇そのものだ、我らが主、世界の王メルクリウスもこのような地がある ことを心の底からお喜びになっておられる。 だがこの地には目障りな“光”の勢力も集っているようだな。 よかろう、貴様らをことごとく大暗黒界(クリフォト)の深淵(アビス)に叩き 落としてやる、せいぜいそこでのたうちまわれ!! では――我ら、世界の王メルクリウスの御名にかけ、地には破壊を、民には虐殺を、 光には闇を!!
テンプレだ。 出典 : 朝松健「魔術戦士」(ハルキ文庫) 名前 :ハパイ・カン 年齢 :不詳(原典に記述無し) 性別 :男 職業 :黒魔術師 趣味 :黒魔術による魔術的無差別テロ 恋人の有無 :非―人類たる私にそんなものは必要無い 好きな異性のタイプ :特に無し 好きな食べ物 :強いていえば人間のありとあらゆる負の感情だな 最近気になること : 魔術戦士(マジカル・ウォーリア―)の動き 一番苦手なもの : 志門聖司 得意な技 :変化と死の神秘を司る魔術『土星魔術(サトゥルス・マジック)』 岩石を自由自在に操る コルト・アーミーの早撃ち 一番の決めゼリフ : 我ら、世界の王メルクリウスの御名にかけ、 地には破壊を、民には虐殺を、光には闇を! 将来の夢 : 『最後の審判』において魔王を勝利させること ここの住人として一言 : WORMの黒魔術師の名に恥じぬ闘いをお見せしよう ここの仲間たちに一言 :ともにこの地を真の闇へと変えようではないか ここの名無しに一言 :お前達もWORMに入信せい
ウルフvsフラック『月下叫笑』 >450 ざしゅ。 そんな音を立てて、人狼が死んだ。 常命を超越し強化された視覚が、刎ね飛ばされる首の動画を遅く遅く遅く遅く引き伸ばす。長く、 無意味なスローモーション。 落ちた生首を、見やる。傍らの少年を、見やる。今度の所作は短く、あるいは遥かに長かった。 そして、少年に向かいこう言った。 「――この死体、あなたにさしあげますよ」 笑みを浮かべる魔人が、少年の反応を見る事もなく続ける。 「ただの人間でも、死ぬほどの労力を払えば蘇生が出来る人間を見つけられるでしょう。ただの人間 でも、埋めて泣く事は簡単でしょう。ああ、私のいる所も教えます、何をするにもご自由に。ええ、 何をするにも」 笑みを浮かべて続ける。 「道化役を預けるのですよ。私が観客になるのですよ。ただの、なんでもない、闘争も出来ない、ど うでもいい人間が、どんな道化になるのか見てみたいのです」 笑みを浮かべて続ける。 「目的が変わった? いいえ、変わっていませんとも。目的は舞台です。死体よりあなたの方が愉し いですよ。とても愉しいですよ」 笑みを浮かべて続ける。 「ねえ、どうですか? 早く行ったらどうですか? さっきから私があなたの盾になっていなければ、 あなたはとっくに死んでいますよ。どうですか、お坊ちゃん――ああ、いや、タカハシ君でしたか?」 その名前を聞いた途端、タカハシという名の少年が叫んだ。 対象の消え失せるほどの万感の奔流。そんな叫びが消えた時には、既に人狼――ウルフ、という名 の男の死体もない。 「タカハシ――ウルフ――ウルフ――タカハシ――」 フラックはその名だけを呟き、道化舞台から姿を消した。 空が薄明に色づき、月が昇り消えていく。 また空に堕ちるために。
(ウルフvsフラック『月下叫笑』l終了) レス番まとめ >416-417 >418 >419 >420 >423 >424 >438 >448 >449 >450 >454
ヤハベvsフィオ 『LA SALIDA DEL SOL』 >451 別荘の庭に一機のヘリが強行着陸し、四人の人影が姿を現す。 その直後に、銃撃戦が始まった。 この屋敷に控えているボディガード連中は、人数は充分、武装も訓練もすべて整っているはずなのだが、 侵入者はそれを突破した。 少人数だが、かなり優秀な敵がやって来たようだ。 「な、馬鹿な、どこの奴らだ!?」 うろたえる男を後目に、オレは鼻歌を唄いながら短機関銃を手にした。 まったく、オレはついている。 嫌々出向いた田舎の地で、思いがけないパーティーが始まったのだから。 「ホセ、ガブリエル!外の様子を見て来い!残りはここで俺を守れ!」 男が、ボディガードどもに慌ただしく指示を下す。 そうしている間にも、銃声は近づいて来た。 「し、神父!あんたも戦うんだろうな?」 「ヤハベだ。当たり前だ、お前さんもお祭りは好きだろ?」 男の問いに答えると、オレは笑顔をうかべながら来るべきものを待った。 もう、すぐそこまで来ている。 そして、それは来た。 ドアを破って現れたのが、眼鏡をかけた若い女というのはひどく予想外だったが。
ヤハベvsフィオ 『LA SALIDA DEL SOL』 >456 次の瞬間フィオを迎えたのは自動小銃に短機関銃の銃火だった。 「あわわわっ!!」 滑るようにして弾丸をかわし、反撃のヘビーマシンガンを浴びせて一掃。 「う、動かないでって言ったのに・・・」 穴だらけになった死体を一瞥するとフィオはソファの影に隠れている(つもりらしい)男に近寄った。 「ここの頭目さんですね? 死にたくなかったら大人しくしてくださいよ」
>415 vsラヴァ それは、炎というよりも刃であった。 寒気がするほどに鋭く、それに触れたものは空気であろうと切り裂く。 どんな銘のある刀でも、この炎の斬れ味には適うまい。 (怖ろしい女よ……) などとは思わない。両腕などは失っても、いずれ生えてくる。 紅の騎士ギーラッハの頭が在るべき位置へと戻って、即座に閃いた言葉は―――― 女 で、あった。 世界に五人といない『吸血姫』の称号を持つ神魔の監視者美夕は、女だったのだ。 少なくとも、ギーラッハの真紅の瞳に写った吸血姫は、紛れもない女であった。 して、その『女』が武人ラヴァを変えた。 女の嫉妬が、独占欲が、ラヴァの武人の道を閉ざしたのだ。 (斬るか……) そう思った。だが、斬れない。剣を振るう腕が無いからでは無い。 ギーラッハとて吸血鬼だ。吸血鬼の摂理ぐらいは分かる。 説明すれば、なるほど簡単な事である。ラヴァは美夕の『眷属』として正しく落ちぶれたのだ。 言うなれば、美夕の『所有物』である。 『弱肉強食』 ラヴァは美夕に負け、喰われた。そんな敗者に、興味は、無い。 負けた方が悪いのという理屈は、この世界の常識である。 「……嘆きはせぬ。」 ただ、武人ラヴァはその最期まで友の、父の死を慈しんでくれた可能性があると言うなれば。 友を、父を裏切り、斬り捨てた理由が『主君のため』と言うなれば。 「それだけで、満足だ」
>458 ぬ、これは己だ。失礼。
vsギーラッハ >458-459 私はもう武人ではない、『監視者』美夕の従僕にすぎないのだ。 しかし、これは私が望んで手に入れた座なのかも知れない。空虚な日々を送っていた私を 満たしてくれる存在、それが彼女だった。あの金色の瞳に魅入られたから、だけではなく。 だから私は全てを捨てた。血族も、友も、過去の武勲も――。 今はただ、彼女の側にあって彼女の敵を斬る、それが私の全て。 ――許せ、紅の騎士よ。 いつか私はすべてのはぐれ神魔と共に闇へと還ろう。その時は、手にかけたかつての友に 何と言って詫びたものだろうか―― ********************************************** 「じゃあね、さよなら。もう二度と会うこともないでしょ・・・ これ以上ラヴァにつきまとうなら、わたしがあなたを闇に還すから」 冷淡な言葉の裏側に、ことさらに厭味を感じたのはギーラッハの気のせいか。 だが、傷ついたラヴァを見る美夕の瞳は、年相応の少女のようにも思えた。 そして、二人は闇の中にかき消すように消えていった。あとに残されたのは両腕を失った 吸血騎士と、足元に転がるその愛剣だけ。 東の空に薄い紫が差す。もうすぐ、夜が明ける。
ウピエルVSファントム >414 ツヴァイが、抱きよせる様に左腕を俺の背中に廻す。 優しく抱き寄せる様にも見えるが、失血と痛みで力が入って居ないだけだろう。 その手に握られているのは、ピンを抜いた手榴弾。ツヴァイはそれを俺の背中に押しつける。 ピンから信管へとつながる導火剤の燃える匂いが俺の意識を覚醒させる。 ツヴァイの腕を振り払う。俺の背後に落ちる手榴弾。 刹那―― 逃げる暇も無く、手榴弾は爆発した。 銀の弾丸で傷ついて脆くなっていた左腕が吹き飛んだ。 顔面に火傷と裂傷。背中の肉は半ば削げ落ち、左肩は大きく抉れている。 全身に破片が突き刺さり、激痛が前身を駆け巡る。 最後の最後まで、やってくれたぜ・・・ 俺が盾になってしまったせいで、ツヴァイの肉体は意外なほどに手榴弾の影響を受けていない。 全身から、排除できる破片は引き抜き、抉り出す。ツヴァイに向かって自分でも何を言っているか判らない悪態を呟きながら。 再生の速度は目に見えて衰えだしている。これだけのダメージから、特に銀の弾丸の傷から立ち直るのはまず無理だ。 だが、まともに動けるようになるまで、俺は動かなくなったツヴァイに悪態を吐き続けた。 どのくらいの間そうしていたのか、自分でもわからない。 傷ついた肉体は多少の時間が過ぎてもやはり傷ついた肉体でしかない。 地獄のような痛みを堪え、朦朧とする意識と襤褸屑同然の肉体を叱咤して立ちあがった。 横たわるツヴァイに背を向け、残る二人の獲物に向かう。 心臓が鋭い痛みを発した。夜の終りが、狩り・・・いや、戦いの終りが近いのだろう。 俺は後どのくらいの間、戦士として、狩人として、怪物として動く事が出来るだろうか。恐らく、さほど長時間は持たない。 だが、例え短時間でも、俺はまだ動ける。 俺はまだ戦える。 なら、戦い、殺し、奪い、貪り食らう。 夜の終る、その時まで。
ウピエル&ツァーレンシュベスタンvsファントム達 >425>429 >414>461 鈍く響く爆発音。 それが階下からのものである事を、エレンの聴覚は捕らえていた。 「……玲……二……?」 傷だらけの身体を引き摺りながら、エレンは階下へと向かう。 途中の階段には戦闘の傷痕が生々しく残っている。 階下へと降りきったエレンは、眼前の光景を理解するのに 少なからぬ時間を要した。 赤く汚れたボロ布から突き出た突起物が、肘から先を失った 人間の腕であると気づいた時、そして、その腕が誰のもであるか気付いた時、 エレンはまるで糸の切れた操り人形のように、その場に崩れ落ちた。 「……玲……二……?」 弾痕と、爆煙と、血痕に塗れた空間に、その声は寒々しく通り抜けていった。
ウピエルVSファントム >461 >462 ――――― ドクン ――――― 止まっていた心臓が動き出す。 ――――― ゴボッ ――――― 肺腑を満たしていた血液が口から吐き出され、床の上で全身が痙攣するように跳ねる。 いつのまにか体中の傷が癒え始めていた。 胸の刺傷、体中の銃創、手榴弾による傷。 表面こそ未だ無残な傷口を呈してはいたが、もはやそれは致命傷と言える物では無い。 唐突に目が見開かれる。 その瞳は赤く、不気味に光を放つ―――――。 酷く、喉が渇いていた……。 血だ、血が足りない……。 戦いで失われた血、ウピエルに奪われた血。 血をよこせ! 俺の血を返せ!! 獲物は近くにいる、鼻腔をくすぐる人間の雌の匂い。 吸血衝動の赴くまま身を起こし、獲物を探す。 ――――― エレン!! ――――― その姿を確認して、戦慄と共にもう一つの意識が目を醒ました。 自分の意志では制御できない衝動を、必死で押さえ込もうとする。 「……クル…ナ…… ニ…ゲ…… エ…レ…ン…………」 懸命に数少ない言葉を紡ぐ……。 しかし一歩、また一歩とエレンへ向う歩みを止める事はできなかった。
ヤハベvsフィオ 『LA SALIDA DEL SOL』 >457 飛び込んで来た眼鏡の娘は見かけによらない素早い動きで、五人のボディガードどもを 次々に撃ち倒した。 死体になった連中のボスである男は、ソファーの陰に屈みこんで無様に震え上がっている。 眼鏡娘が男に銃を向けて、降伏を促した。 「た、た、助けてくれヤハベ!助けてくれたら、カネはいくらでも出す!」 恐怖にとらわれた情けない絶叫が、だだっ広い部屋じゅうに響きわたった。 眼鏡娘が部屋の隅、オレのいる方向に振り向く。 殺気を放っていなかったとはいえオレの存在に気づかなかったあたり、この娘は 少しばかり詰めが甘い。 眼鏡のレンズ越しに、怪訝な視線を向けて来た。 あからさまに場違いな、神父姿の男に面食らっている様子だ。 「あー、なんだ。オレはたまたま居合わせた、聖書のセールスマンです・・・・つっても、 信用してくれねぇよなー」 二挺のPPsh41を後ろ手に持ちながら、眼鏡娘にそう話しかけた。
ファントム達の戦い >461>462>463 玲二の首筋に穿たれた、二つの小さな傷痕. ―――吸血痕 躙り寄る玲二に対して、エレンはただ呆然とその姿を見守っている。 玲二が望むのであれば、この命はいつでも差し出す覚悟は出来ていた。 しかし……しかし……喉に刺さった小骨のように、僅かな不安が まとわりついたまま離れない。 これは、本当に玲二なのか? しかし、その両腕がエレンを捕らえ、その吐息が首筋に感じられるようになっても尚、 エレンは身動き一つしなかった。 「この世界が、無限の地獄じゃないとしたら、それは貴方が生きているからよ」 玲二の頭に両腕を回し、その腕にその身体を抱く。 抱しめながら、右手に握った拳銃の銃口を自らの眉間に押し当てる。 「でも、貴方が居ない世界に、私は生き残りたくない」
ファントム達の戦い >462>463>465 エレンの腕に抱かれ、より強く獲物の…… 処女の匂いに欲情する。 吸血鬼が最も好むのは処女の血、感極まり上気したその血は最高の美味なのだ。 エレンが自ら眉間に当てた銃口…… 折角の最高の獲物に死なれては困る。 左腕こそ未だ癒え切っては居ないが、右手だけで容易く銃を奪い、投げ捨てる。 欲望のまま唇を重ね、唾液…… 人にとっての媚薬を注ぎこむ。 長く延びた爪は防弾衣ですら紙の様に引き裂き、露になる新雪の様に白い肌。 その一角に歪に開いた傷口に舌を這わせ、流れ出る血潮の前菜を楽しむ。 全身に手を走らせ、揉みしだき、押しつぶし、弄び…………。 愛情も無く、慈悲も無く、ただ肉体の情欲を掻き立てるだけの手荒な愛撫。 それでもエレンは、女の体の仕組み通り熱く潤っていた。 知らぬ間に暴力的な猛りを見せる凶器を突きつける。 ――――やめろ、やめてくれ! 俺はエレンをこんな風に抱きたくは無い―――― 心の叫びも届かぬまま、遂に凶器はエレンを貫き、血が流される―――――。
緑川淳司&花村雅香 VS 弓塚さつき(27祖) >401 妙な二人組み。 この状態でわたしが睨めば、大抵の素面の人間は逃げ出すと言うのに。 ―――キニイラナイ 特に女のほう。 ただの人間の癖に、わたしに牙を剥くなんて。 べきっ、という音。 知らず知らずのうちに力が入っていたようだ。 手の中の男の腕が、おかしな方向に曲がっている。 更に続く相手の言葉に視線を上げると、目前に迫っている小瓶。 男の身体を盾にして、正体不明のソレから身を守る。 しかし、予想に反してソレは割れただけ。 燃えたりとか、爆発したりとか、そう言うことは一切ない。 そのまま男を投げ捨てて、いつの間にか姿を消した二人を探す。 ―――いた。わたしに背を向けて逃げ出す二人組み。 逃がさない、わたしの食事の邪魔を――― 「何!? この臭い……」 吸血鬼になってから、幾度となく感じた不快感。 それがニンニクのものだと気づいたときには、物凄い嫌悪感を抱いた。 その感情は今でも変わることなく、わたしの中に根付いている。 もう既に視界から消えようとする二人を追いかける。 人間風情がわたしを怒らせたことの意味、わからせてやるんだから。
《涙、果つることなく〜ガロン vs 弓塚さつき(死徒27祖)》 >126 何故、こうまですると尋ねられたか。 じんじんと痛む腕を抑えて、常に心に思うことを答える。 わたしが、こう在りたいと想うコト――― 「まだ、駄目なの。 あの人と同じところに立つには、こんなものじゃ全然足りないよ。 だって、あの人はとびっきりの殺人鬼なんだから―――」 ―――だから、ね もっと、もっとわたしをあの人のところへ近づかせて 今ここに在る、動く二つのモノ。 動くはずのモノ、動いていたモノ。 そのすべてが静止した闇の中で、刺激されたココロが疼く。 砂漠と化した心、顕現する渇き。 ありとあらゆる物を、砂へと還す――――― 手始めに、狼男の傍にある街灯を枯渇する。 「ねえ、愉しいよね? わたしは、とっても愉しいんだから。貴方もきっとそう。 ふふ、これから……もっと愉しませてあげる」 瞳を真紅に輝かせ、わたしのモノだった左腕を、風に散らせながらそう口にした。
涙、果つることなく〜ガロン vs 弓塚さつき(死徒27祖) >468 その身を魔性に変えて尚、 愛する者に再び遭う為に『生きる』少女。 彼女の返答は、俺の心を揺さぶった。 だが、迷うわけにはいかない。 この世に生ある限り、魔は狩る。 俺が俺であるために。再びヒトに戻るために。 ドラキュリーナの目が紅色に妖しく光る。 その目に映るは狂気と渇き。 それを認識した瞬間に、傍らの街灯は砂へと還る。 すぐさまその場を離れる俺の耳に、彼女の声が響き渡る。 「どこまでも愉しませてくれるな、ドラキュリーナ。 だが、少々お痛が過ぎるぞ。 現世での業は俺が引き受けよう。だから・・・・・・灰へと還れ」 俺は丹田で練った気を身に纏い、自らの体を砲弾へと変えて、 吸血姫めがけて跳んだ。
《涙、果つることなく〜ガロン vs 弓塚さつき(死徒27祖)》 >469 動くモノと、動かないモノ。 動くのは狼男、動かないのはわたし。 まるで弾丸の速度で迫るソレを、身体を横に向け踵で蹴り上げる。 「引き受けられちゃ困るよ。 あの人への想いはわたしだけのモノじゃないんだから。 あの人を、待たせたままにするわけにはいかないでしょう?」 ―――だから、絶対にここで死ぬわけにはいかない。 いかないのに。 ―――ドンッ、という衝撃。 身体が、弾き飛ばされていくのがわかる。 ―――めきりと 背中から、イヤな音がした。 そのまま、身体が壁に叩きつけられ、瓦礫の下敷きとなる。 倒れているわたしに近寄って来る人狼。 身動きが取れない――なら、取れるようにすればいい。 意識を広げ、辺りの瓦礫を『枯渇』する。 残った右手で、砂を掴み取りながら。
涙、果つることなく〜ガロン vs 弓塚さつき(死徒27祖) >471 ドラキュリーナは果敢にも俺を撃ち落そうと、 そのカモシカのような足をもって迎撃してきた。 だが、それは無謀というものだ。 いくら彼女が吸血鬼の力を持っているとはいえ、 このウェイトの差まで覆すことは出来ん。 彼女は独楽のようにクルクルと廻りながら壁に激突した。 その身体の上に崩れた瓦礫が崩れ落ちる。 その瓦礫に、彼女は完全に埋没している。 着地した俺はゆっくりと瓦礫の山に近づく。 ドラキュリーナに引導を渡すために。 足を山に載せ、右手を頭上にかざす。 あとは放たれた矢のようにそこに打ち込めば、 全てが終わる。 だが・・・・・・なんだ、この違和感は? 山に乗せた足に裏がちりちりと痛む。 喉が焼けるような・・・・・・・そう、言うなれば、 蒸し風呂の中で感じる、あの感触。 気づいたときには、瓦礫の山は砂の山にその姿を変え、 その砂の山から生み出されるように、 ドラキュリーナの姿が現れた。 く―――なんと無様な! 俺は自らの迂闊さを呪いながら、 間合いを取ろうと後方へ跳んだ。
《涙、果つることなく〜ガロン vs 弓塚さつき(死徒27祖)》 >472 ―――逃がさないから 当てるなら顔、それも――目。 残った拳をしっかりと握り締めて。 どごん、と試しに壁に穴を穿ってみる。 ―――なんだ、まだ全然大丈夫なんだ 流石吸血鬼、鬼って言うのは伊達じゃないみたい 砂をしっかりと踏みしめて、狼男を追う。 距離はおよそ数メートル、直進すれば二歩あれば届くだろう。 尤も、真っ直ぐの軌道なんて読まれているに決まってる。 けどね、わたしがそうしたいんだから、そうするしかないの。 わたしは小刻みに数回地面を跳ね、狼男を補足した。 落ちている石ころを蹴飛ばして、喉元を狙う。 その隙に相手に詰め寄り、右手を矢のようにその顔に伸ばし―――掌を開けた。 砂が、わたしの手のひらから零れ落ち、あるいは勢いに乗って狼男の顔へと流れてゆく。 きらりきらりと輝いて、さらりと中空を舞うように―――
吸血大殲27夜 ――Lunatic Dance――
闘争のインデックスだ。
>100 ◆スミレvs水のエル◆『ローラレイ』
>130 藤井八雲vs閑馬永空『蟲と下僕』
>135 『鋼鉄娘'sVS妖魔の君』 エリ&フィオVSアセルス
>191 名無しクルースニク対名も無きクドラク
>215 黒岩省吾対カーラ 〜闇と灰の狭間〜
>242 G.G.スレイマンVSロゼット一行&ヨコシマ『ボーイ・ミーツ・ガール?』
>261 ジャッジ・デスvsン・ダグバ・ゼバ
>276 【壊れた音色】 七荻鏡花 vs 遠野志貴(死徒)
>339 ン・ダグバ・ゼバ VS 横島忠夫&三輪坂真言美『DANCE In the Moon, Moonlight』
>344 傷の男/スカー(M) vs 片倉優樹
>360 『魔像の十字架』紅丸、麻宮アテナ
>369 『背徳信者』ロゼットvsハインケル・ウーフー
>378 鈴鹿御前vsパンテーラ(M) 『鬼の剣 豹の牙』
>386 アグリアスvsアセルス
>412 アリ型キメラヴァンプvs本庄
>436 エンハウンスvs孔濤羅
>443 死闘!復讐鬼対アギト! ◆再生アポロガイストvs仮面ライダーアギト◆
>455 ウルフvsフラック『月下叫笑』
中間纏め。
>470 緑川淳司&花村雅香 VS 弓塚さつき(27祖)
>474 涙、果つることなく〜ガロン vs 弓塚さつき(死徒27祖)
次スレ
吸血大殲28章『仄き鮮血の舞踏』
http://cocoa.2ch.net/test/read.cgi/charaneta/1023292545/
遠野志貴 vs 邑輝一貴(M) 「銀と蒼」 今章分 >83 >388 >390 決着……つきませんでしたねぇ。 まあいいでしょう。引き伸ばした方が快感も増すというものです。
>460 vsラヴァ ―――エピローグ――― ラヴァが去り際に見せた最後の表情。その表情は悲しみに満ちたものであった。 だが、そこに『後悔』は無い。確固たる意思を持つ男の顔である。 ギーラッハは気付いた。ラヴァは『今』が幸せなのだ。 武を争い、友や父と語り合ったあの頃よりも、美夕という女に仕える『今』が幸せなのだ。 その事実、ギーラッハには痛い程分かる。 彼もまた、主君リァノーンに出会うことで「幸せ」を見出した人間だから。 (己は何でそれが理解出来なかったのか……。) 気付いたら、笑っていた。何かが吹っ切れたかのように大声をあげて笑っていた。 笑いながら、ギーラッハは思う。 今度会うときは酒でも酌み交わしながらお互いの主君に対しての愚痴で、一晩中盛り上がりたいものだ、と。 特にラヴァの愚痴は愉しそうだ。僅かな出会いではあったが、あの美夕とか言う女。存外にじゃじゃ馬と見える。 ラヴァもかなりの苦労をしていることだろう。 しかし、あの神魔の監視者が、ラヴァとギーラッハが酒を酌み交わすことを許してくれるだろうか。 なら、いつかリァノーン様が目覚めるとき、美夕に口添えをしてもらうのも……。 そこで、ギーラッハは考えるのを止めた。 いつかリァノーンが目覚めるとき。それを待つ場所は、ここでは無い。 夜が明ける。 ギーラッハは、最後にもう一度だけ鳥居に目を向けると、帰路に就く意を固めた。 ――――紅の騎士ギーラッハが伊藤惚太に破れ、壮絶な討ち死にをする二ヶ月前の話であった―――― 〜ギーラッハvsラヴァ〜 >173>174>177>178>179>181>194>216>226>245>370>384>415>458>459>460>478
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482 :
以上、自作自演でした。 :
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