>293 遠野志貴 vs 邑輝一貴(M) 「銀と蒼」
「ほう……!」
私は感嘆の声をあげた。
半ば実体のない召鬼を、目の前がボウヤはナイフで殺してのけたのだ。
一瞬、魔剣の類かとも思ったが、あのナイフに特別な力が無いことは施療院で確認している。
――つまり……ボウヤの方が特別製ということか……
「私と同じ特殊能力者ですか」
その言葉にボウヤが顔を歪めるのを見やりながら、私は彼の力の正体を考えはじめる。
魔力の動きが見られない以上、術の類ではない。
同様に、気を使用する武術ということもありえない。
ならば本当に私と同じ特異体質ということになるが、
いかなる力を以ってすれば非実体をナイフで殺すことが可能になるのか―――
「おっと……」
階段に足をかけようとしたボウヤの姿に思考を中断する。
相手の力の正体はなんであれ、ナイフを使う以上遠距離から行使できるものではないのだろう。
ならば接近されるのはいかにも拙い。
「なら……こういうのはどうです?」
私は印を結び、さらに3匹の召鬼を呼び出す。
足を止めることなく歩いてくるボウヤに、召鬼は先ほどと同じように向かっていく。
だが今度は召鬼たちは真っ向からは向かわない。、
半ばまで近づいた所で接近を止め、牽制するように彼の周囲を回りはじめる。
ボウヤが足を止める。
その蒼眼が私を射貫く。
それとほぼ同時に、
召鬼たちは彼に向かって一斉に雷撃を吐きかけた。