1 :
名無しさん@お腹いっぱい。:
総合
どれだけ範囲が広いんだよw
二次全部かよw
4 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/28(木) 16:50:16 ID:GUCJqsMr BE:616523292-2BP(0)
幅広すぎてつかえねぇwww
逆に考えるんだ!
二次創作関連のスレ立てとかまとめとか、それに関する質問とか。
そういう風に限定的に扱うスレと…そう考えてみるんだ。
あ、そういう使い方はいいかもな
二次創作系スレ住民の交流とか雑談とか
最近の二次創作界隈で元気なジャンルってなんだろう
ちょっと前ならロワだったけど今はなんだろうな
エヴァとかナデシコとかGSとかの逆行ブームって今も続いてんの?
10 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/28(木) 20:49:12 ID:FaCoZqUf
2ch内だろ?
人数と勢いが高いのはルイズに召還スレとか
二次創作関連書き込みの範囲はどこまで?
2ch内での発表限定か、個人サイトの発表やWEB活動に限らない同人誌あたりまで含めるか、
まずはそこをはっきりさせてくれ。
俺は2ch内のつもりで話してたけど他のやつはシラネ
2ch外有りって範囲広すぎるだろうw
俺2ch外の二次創作は完全に守備範囲外だなー
なんか玉石混合過ぎて探す気になれないというか
まあ2ch内でもどこの板にSSスレがあるんだかわからないから
探すのが大変なことには違いないんだが
>>7 だいたい理想郷(注・通称)にあるジャンルが盛んだなー。
盛んというか、盛んだったというのもあるが。
あとはハルヒとかモンハンとかリトバスも結構動いてるみたいに聞くが、
ハルヒの以外は未確認。
なのはも動いてるとは聞くが…エロSSwikiのまとめの非エロが結構いいのがあったりする。
>>8 エヴァは去年はコンペとかやってたけど、今年は見る影もなく衰退している。
とは言っても、EF5いけば毎日何某かの更新はあるし、地道に続いてはいる。
GSはGTY系でUG氏とか頑張ってる。夜華系で今最も盛んなのは米田中将のNTだけど、
あそこはよろずの方が動いてるのかな?
カレチルアニメ化で椎名作品二次は盛り返せるかどうか微妙なところ。
>>10 2ちゃん内だったらなのはクロスとかも結構動いてる。他にも、あるかも知れない。
書き漏らしたけど………ナデシコはそもそも読んでないなあ。
某所で型月とナデシコのクロスというすごいゲテな組み合わせでそれなり面白いのがあったが、
それ以外のナデシコSSはそもそも読んでなかったり。
2ch内だったらなんだかんだでハルヒだろうな
エロパロにVIP、さらにはキャラスレでもそれぞれまとめサイト作られたりしてかなりの数のSSが保管されてるし
つかまあ2ch外でも凄いんだろうけど
2chで限って言えば、二時創作で人気高いのは
ハルヒとゼロ魔が2強なんじゃね
そこから少し落ちて、なのはと型月が人気かな
ハルヒ以外はどれもクロスオーバー系が多いのが特徴
20 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/29(金) 01:43:55 ID:LG/eOO80
ナデシコのssによって俺は三次創作なるものの概念を知った
クロスオーバー系は結構多いよな
>>9 あ、読み間違えてた。
逆行のブームね。
あれはエヴァ系でい地番はやっていたのが1998年から2001年、2002年くらいだと思う。
以降はエヴァ系全体からして下火になり続けているので、今では普通にEOEアフターもあまりない。
ナデシコは知らない。
GSの逆行はNTにいけばまだあると思う。ここ二年ほど見てないけど。
あ、エヴァ系のもNTのよろずであったなあ。
噂では、ヱヴァからして逆行モノではないかとも囁かれてはいるがな…。
おすすめの二次創作スレとかある?
とりあえず漫画系で。
安定して楽しめるのがいいなら漫画SS総合スレ(旧称バキスレ)か
ちょっと遅めだけどカオスリレーとも本格SSとも違う変なノリを楽しみたかったらえなりの奇妙な冒険(こんな名前だけど漫画家リレーSSスレ)がオススメかな。
特にえなりはちょっと前にリセットかけて今2スレ目だから話がわからないってこともないと思う。
26 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/29(金) 13:37:52 ID:W94LGBTt
27 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/29(金) 14:09:05 ID:h5fnQM5q
エヴァ板に投下予定のハルヒ×エヴァのSS投下していいかな?かな?
ただ、未完なんだけど。つまっちゃったから、先の展開をどうするか等のアドバイスが欲しいんだ。
28 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/29(金) 14:10:42 ID:9Vi0JSbR
ktkr!
さぁ早く投下するんだ早く!
月曜日、久しぶりの涼しい朝だ。季節が季節なだけに朝から気温が高いというのは
ある意味必然なのだが、たまには例外的にこういう清々しい朝を
迎えられることもある。
しかし、キョンの席のすぐ後ろには何やら陰鬱な空気が漂っていた。
涼しげで爽やかな色合いのセーラー服を身に付けているとはいえ
朝っぱらから机に突っ伏して、クラスメイトと一言も言葉を交そう
としない姿は重苦しい雰囲気を感じさせる。
「おい、ハルヒ」
キョンは上半身だけ後ろを向いて、話しかけた。
「なんで朝から、そんなにテンションが低いんだ?」
後ろの席に座っている女子生徒、涼宮ハルヒは、迷惑なくらい活発だったりする。
途方もないことを思い付いては、それをすぐさま実行に移したりするのだ。
しかし、そんな普段の姿を今は微塵も感じさせない。
「ハル……」
「何よ?うるさいわね」
ハルヒは頭をわずかにもたげた。
「夏風邪でもひいたか?」
「ひいてないわ。ただ昨日、夜更かししすぎちゃって眠いだけ」
「……もうテスト勉強を始めたのか?」
「違うわよ、バカ」
ハルヒは唇を尖らせて不機嫌そうな表情で言った。
「私はあんたと違って、そんなに根詰めてやんなくたって点数は取れるんだから」
30 :
ハルにゃん×エヴァ:2008/08/29(金) 14:48:37 ID:h5fnQM5q
「それより、キョン。あんたこそ、ちゃんとテストに向けて勉強してる?
せめて追試を受けなくて済むくらいの点数を取れるように頑張りなさいよ」
「ああ、もちろんだ。わかってるよ」
キョンは上っ面だけの言葉だと受け止められないように、努めて真剣に言った。
「なんかウソくさいわね。本当に頑張る気あるの?」
なかなか鋭い。しかし、その言い方には鋭さがなかった。
どうやら寝不足な上に、だいぶ疲れているらしい。
「テスト勉強じゃないなら、昨日はなんで夜更かしなんかしたんだ?」
「エヴァンゲリオンを見てたのよ」
「なっ?」
かなり間抜けな声が漏れてしまった。「萌え」という単語を日常会話で
使ったこともあるくらいだから、ある程度オタク文化に素要があるのだろう
とは思っていたのだが、夜更かしするほどアニメが好きなのか?
「暇潰しに、と思ってパソコンで見始めたら面白くなって一気に見ちゃったわ。
あんたは見たことあるの?」
「ガキの頃に、少しな」
キョンがそう言うと、ハルヒは途端につまらなそうな顔をした。
「だったら、あの話の深いところはほとんど読み取れなかったはずよね。
あの話、ただのロボットものじゃないもん」
「そんなに深い話だったか?」
31 :
ハルヒ×エヴァ:2008/08/29(金) 14:51:33 ID:h5fnQM5q
「かなり深いわよ。色々考えさせられちゃったわ」
外を見て黄昏気味に言うハルヒの横顔は、どこか寂しげだった。
退屈をもて余しているときの憂鬱そうな面持ちとは違っている。
「まだ旧劇場版と新劇場版を見てないから今夜も徹夜だわ。授業が始まったら起こしてね。」
そう言うとハルヒは再び机に突っ伏してしまい、ほどなく微かな寝息を立て始めた。
ハルヒがエヴァンゲリオンにハマっている。
女子高生が何にハマろうと本来関係のないことなのだが、ハルヒの場合は
話が違ってくる。キョンは胸に一抹の不安を覚えた。
「問題ないと思いますよ」
古泉はいつもの微笑みを崩さずにこやかに答えた。
「確かに涼宮さんは願望を現実のものにする力を持っています。
ですが、あの多くの人々が傷付いていく物語に憧れを抱き、
現実になることを願ったりするでしょうか?」
キョンは古泉と廊下の端で立ち話をしている。
古泉の顔が近いこともあって端から見たら妙に思える光景かもしれないが
今はそんなことを気にしている余裕はなかった。
「常人ならあんな世界が現実になることを望みはしないだろうな。
だがハルヒの思考回路は一般人のそれとはまるで別ものだぞ」
32 :
ハルヒ×エヴァ:2008/08/29(金) 14:52:33 ID:h5fnQM5q
「いや、涼宮さんはなかなか常識的な方です。心配には及びませんよ」
では、と古泉は目で軽く会釈すると自分の教室に帰っていった。
キョンは杞憂に過ぎないのかもしれないと思った。
古泉はただの高校生ではなく「機関」という怪しげな組織の一員である。
「機関」は保守的で現状維持を目標とし、日々、画策しているのだ。
古泉が大丈夫だと判断したのは、あるいは「機関」の総意かもしれない。
たしかに、いちいちフィクションに影響されて世界が改変されていたら
今のこんな日常は崩れさっているだろう。
思えば、ハルヒは今の日常に満足しているようじゃないか。
今日の放課後も、ハルヒの立ち上げた部活が始まるのだ。
疲れているようではあったが放課後には元気を取り戻し、好き勝手言うんじゃなかろうか。
そう、日常が使徒やら人造人間やらに崩されるなんてことはないはずだ。
キョンはそう思った。
そして、実際、現実世界とエヴァの世界が交錯するなんてことはなかった。
セカンドインパクトについて授業で習うなんてこともなければ
東京都が第三新東京市に変わるなんてこともなかった。
この世界は何も変わらなかったのだ。
この世界は……だが。
33 :
ハルヒ×エヴァ:2008/08/29(金) 14:53:51 ID:h5fnQM5q
シンジは目を覚ました。朝日がカーテン越しに、柔らかく指し込んでいる。
頭はまだぼんやりとしているが、起きて、朝食を作って、ミサトさんとアスカを
起こして……とやるべきことはわかっていた。
今の生活に慣れてきた証拠だろう。アスカが引っ越してきた当初は
色々と戸惑うことも多かったが今ではそんなこともなくなっていた。
まるでずっと前から三人で暮らしているような、家族のような錯覚を
覚えることもあるくらいだった。
シンジはむくりと起き上がり、ベッドから降りてカーテンを開けた。
すると台所から物音がするのに気がついた。
トン、トン、トンとリズミカルに何かを切る音が聞こえる。
誰かが朝御飯の支度をしているのだとシンジは思った。
でもミサトさんもアスカも料理なんて滅多に、いや全くと言って
いいほどにしない。誰かが台所にいる気配はするけれど、それが
にわかには信じられない。
リビングに向かおうとして、ドアノブに手をかけようとした
その時、誰かがシンジの部屋に近付いてきているような足音がした。
そしてドアがガチャリと音をたてて開き、シンジの前に人影が立ち塞がった。
ここで終わり?
連投規制とかなら支援
35 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/29(金) 15:08:48 ID:h5fnQM5q
27レスあるんだけど、携帯で定額じゃないから大量投下は気がひける。
毎日ちょこちょこ投下したい
36 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/29(金) 15:11:55 ID:9Vi0JSbR
これ携帯なのか!?
27レスもの量を携帯で書いて投下ってすごいな
これはハルヒのほうがエヴァの世界に行ってしまう展開っぽい
続き待ってるよー
アドバイスが欲しいのは27レスのあとの展開って事か
>>25 パロロワは内容的に万人に薦められるものじゃないのがちょっとな
話ごとの当たり外れもかなり激しいし
上手い人は本当に上手いけど
板生誕記念に、懐かしいGS美神の掌編を投下してみます。
所詮素人が書いた物なので、お目こぼしくださいませ。
「あ、忠夫さん」
扉を開いた横島は、戸口で息をのんだ。
秋気澄む日、柔らかい陽射しがおキヌを包み込み照らしている。
結婚式に新郎の晴れ姿を見に来る者など皆無だとわかりきってはいたが、改めて自分にほんのわずかでも視線をくれる者はいないだろうと、おキヌの笑顔は実感させた。
「……や、これは。まいったね」
「何がですか?」
桜色のウェディングドレスを纏ったおキヌは、ゆったり腰を下ろしたままいつもの調子で問い返した。
「あ、その、さ。……綺麗だな、と思って」
「ふふ、お世辞なんて言っちゃって」
「いやホント、冗談じゃなくってさ。ホント、綺麗になった」
横島が照れ隠しに鼻の頭をかく様になったのは、いつくらいからだったろうか。
見慣れた所作におかしさといくらかの懐かしさを覚える。
おキヌは服が皺にならないようゆっくりと身体の向きを変え、横島に向き合った。
光を背にしたおキヌの黒髪がより艶めく。
「変わったのかどうか、それは分からないけど。もしそうなら、それはきっとあなたのおかげですよ」
「俺は何もしてない、よ」
忠夫さん、とおキヌは手招きをした。
横島が側に来ると、おキヌは人差し指で横島の額を軽くはたいた。
横島が驚き見やると、おキヌは不機嫌そうに口を尖らせている。
おキヌがあまり見せることのない態度は、しかし横島を不安にさせるものではなく、むしろ安心させた。
「怒りますよ。あたしだって、伊達や酔狂でお付き合いしていたんじゃないんですからね」
「……ごめん」
いつまでも変わらないな、とおキヌはため息をついた。
この人の鈍さは一生こうなんだろうと、既に割り切ったはずのことなのに、また何を期待したのだろうと自問する。
「なんでこんな人に惚れちゃったかなー」
「ひっでぇ」
「ふふふ。でも、いいです。いつかの告白は、流されちゃいましたけどね」
ちくり、おキヌが横島を言葉で刺した。
横島も思い当たり、苦笑いを浮かべる。
控え室には、外の賑やかしい声も届かない。
あの時と同じに、二人は静かに語り合う。
違うのは、ここには光が溢れているという事。
「生き返って、随分色々な事があって……。あの時、私の周りは随分と目まぐるしくて、それが私の為だとわかってはいたけれど、少し息苦しかったのも確かなの。だけど、あなたはゆっくり一緒に進んでくれた……」
「それは、俺の甲斐性がなかっただけなんじゃ?」
「ふふ、そうかもしれません。だけど、それが私には嬉しかったから」
おキヌは手を横島の頬に添えた。
自分を見つめる横島の顔に、改めてあれから随分と時間が経ってしまったのだと思う。
過ぎていく流れの中で、物事の方向はこうしようと、と考えていた方向とは全く違う方向に行ってしまうことも多々ある。
だけれども横島にしろおキヌにしろ、たどり着いた場所は間違っていた場所ではないとだけははっきり分かっていた。
「あの事件の時ね、私わかったんです。GSというのは危険な仕事ではあるけど、私は今、確かに生きてるんだから、いつだってあなたの胸に飛び込むことが出来るんだって。お話しすれば楽しいし、隣にいられるのがなにより嬉しかった」
だから、一生振り向いてくれないかもしれないけれど、誰があなたを好きになったって、いつか私が口説き落とせたら、と思って。
言い終えて、おキヌはつぃと頬からうなじに手を滑らせる。
横島はその手を捕まえ、重ねた。
「最初出会った時に、もう取り憑かれてたのかな」
「幽霊押し倒したのは、誰でしたっけ?」
二人は笑う。
手を重ね合ったまま、惜しみない陽射しを受けて、背を丸め、この一瞬間違いなく世界で一番幸せな笑い声を部屋中に響かせた。
つーことで色々すまんかった。
あーはずかし。
42 :
ハルヒ×エヴァ:2008/08/29(金) 23:46:22 ID:h5fnQM5q
ミサトさんでもない。アスカでもない。青い髪を短く切り揃え、
感情の乏しい透明な眼差しを真っ直ぐにシンジに向ける少女がそこにはいた。
綾波レイだ。
「おはよう。起きてたのね碇君。朝御飯、もうすぐ準備できるから」
朝の眩しい光を背に浴びながら、静かな口調で綾波は言った。
綾波が、まるでミサトさんのアパートの住人であるかのようにたたずんでいる。
そんな目の前の光景が信じられなかった。
「なんで……綾波がここに?」
驚きのあまり声がかすれてしまう。目の前の綾波に届いているか
どうかすらも危ういか細い声。
「なんでって……何が?」
届いていたようだ。でも会話が成立していない。まるでシンジが妙なことを
言ったかのように、綾波は不思議そうな表情を浮かべている。
「どうして綾波がミサトさんのアパートにいるんだよ?」
僕はもう一度、同じ疑問を口にした。
「碇君どうしたの?私はもうだいぶ前から、ここに住んでいるじゃない」
静かな口調で、静かな表情で、当たり前のことを言うように綾波は告げた。
シンジは目の前が真っ白になっていくような感覚を覚えながら
半ば、綾波を押し退けるようにして部屋から出てミサトの部屋に飛込んだ。
43 :
ハルヒ×エヴァ:2008/08/29(金) 23:47:35 ID:h5fnQM5q
「ミサトさん!」
ミサトはまだ布団に潜り込んで寝ているようだった。
しかし、構わず大声をあげてしまう。
「綾波が来ています」
ミサトはゆっくりと起き上がると、眠たそうに大きな欠伸をかいた。
「何言ってんのよシンちゃん。来てるんじゃなくて、住んでるんじゃない」
平然と答えた。
「ミサトさんまで……何を言ってるんですか?
それじゃあ、僕達は今まで、ミサトさんと僕と綾波と
アスカの四人で暮らしていたとでも言うつもりですか?」
「おかしなこと言うわね〜、そんなわけないじゃない」
そう言って笑うミサトの笑顔にシンジは少し胸を撫で下ろした。
「私とシンちゃんとレイの三人暮らしでしょ?それにしても、誰よアスカって?あ、もしかしてシンちゃんの彼女〜?」
ミサトはいたずらっぽく笑って、指でシンジの胸を軽くつっついた。
何か重いもので思いきり頭を殴られたような衝撃にうずきながら
シンジはアスカの部屋に向かって駆け出していた。
ノックも忘れ、思いきりアスカの部屋の扉を開く。
そこには殺風景な……以前見た綾波の部屋を彷彿とさせるような
無機質な空気が流れていた。
「何かしたの?」
背後で氷のように冷たく響く声を感じ、
シンジは思わずビクリと背中を震わせた。
44 :
ハルヒ×エヴァ:2008/08/29(金) 23:48:37 ID:h5fnQM5q
「ご飯、用意できたわ。」
そう言って綾波は背を向けるとリビングへ向かって歩き出した。
シンジはもう一度、アスカの部屋を見渡した。そこには、
かつてアスカの部屋だった面影はまるでない。
アスカなど、初めからいなかったのだと部屋が告げているかのように感じられた。
足元がおぼつかない。ゆらゆらと頭の中が揺れる。
アスカは初めからいなかった?
そんなはずはない……
ミサトさんと綾波が二人でからかっている?
それはない。する意味がない。
第一、演技にしてはあまりに上手すぎる。
じゃあ何で……。
「今日のシンジ君はおかしいわね、疲れてるのかしら」
ミサトと綾波が食卓で話をしているのが耳に入ってきた。
おかしいのは、どっちなんだ。
シンジは自分の部屋に戻り携帯電話を取り出した。
電話帳を検索する。しかし、そこにあるはずのアスカの番号が消えていた。
胸がきつく締められるような痛みが走り、心臓の鼓動が早まる。
シンジは携帯をギュッと強く握り締め、ケンスケに電話をかけた。
「呼び出し中……呼び出し中……」
待っている時間がやけに長く感じられる。
45 :
ハルヒ×エヴァ:2008/08/29(金) 23:49:47 ID:h5fnQM5q
「もしもし?おはよう碇」
ケンスケが出た。
あいさつを返すのも省き、シンジは単刀直入に切り出した。
「惣流アスカラングレーって知ってる?」
何言ってんだよ、当たり前じゃないか。
それがシンジの期待する答えだ。
「え、知らないけど。どこかの国の女優?」
瞬時に、恐ろしいモノのフタを閉めるように、シンジは携帯を閉じた。
アスカがいない。そしてアスカの存在を誰も知らない……?
シンジはしばらくの間、そこに立ち尽した。
「シンジ君、さっきから何やってるの?」
ミサトが近付いてきて、シンジの顔を覗き込むように言った。
「ミサトさんは……アスカを知らないんですね……?」
「ええ。誰なの?」
その問いには答えず、代わりにシンジはこう言った。
「ネルフに行ってきます」
「え?どうしたのよ、急に。学校は?」
「行きません」
「ちょっと……!シンジ君!?」
シンジは自室に駆け込み、急いで着替えると
何も持たずにすぐさま家を飛び出した。
シンジの心中とは裏腹に透き通るような青空が、
いつもと変わらない日常を演出していた。
46 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/30(土) 05:58:11 ID:LcVFUxle
お、なんかいろいろ来てる!
すげーな
投下おつかれさまです。
でもエヴァ見たこと無いからコメントできない。
GS美神の方もお疲れ様です。
またえらく懐かしい、そして可愛いですねw
あ、ここだった。
二次職人さんたちお疲れ様です。
50 :
0/3:2008/08/30(土) 16:31:20 ID:mRBBGVCz
場所お借りします。
元ネタはアカギ。主人公三世代です。
最近文章書き始めたんだけど公開する場所が無くてどこをどうすればいいかさっぱりなので良ければ読んでやって下さい。
長いですがダメ出しとか感想とか頂けると嬉しいです。
51 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/30(土) 16:32:49 ID:zizavFPH
おk
52 :
1/3:2008/08/30(土) 16:32:52 ID:mRBBGVCz
「くそじじい」
「くそがき」
自分のそれより少し高い声と自分のそれより少し低い声がそう言ってげたげた笑い合っている。果たして、自分はこんな風に笑う人間だっただろうか。
あまり理解は出来ないがなんだか仲が良さそうなので放っておくことにする。
窓の縁に腰掛けて煙草に火を付けながらそういえばどうしてこんな所に居るんだったか、と考えていると背後から甲高い声が降って来た。
「兄さん」
「…どうした」
「今あんたの話をしてたんだ。随分派手にやってるそうだね…丁半やってヤクザに斬られたって?」
「そうそう、アレは痛かったよなあ。やせ我慢も良いとこだ」
子供の問いに重なるようにからかう様な低い声。
「…あんた達だってそうするだろう」
「俺は嫌だよ。そんな事で死にたくないね」
「ああそうだなあ、死ななくて良かったが馬鹿な事をしたよ」
学生服の少年と派手なスーツの男が顔を見合わせてくすくす笑っている。二人して俺をからかっているらしい。
昔の自分と過去の自分。少し面白くなってきた。
「あんただって、どうせ録な死に方しないぜ」
口角を歪めて笑いながら、自分と同じ髪をした派手なスーツの男に言ってやる。
当然だ。俺はきっと博打で死ぬ。あんな歳まで生きているらしいのは意外だったがたった数十年でこの価値観が変わる事はないだろう。
それを受けて男がまた笑う。
「ところが、そうでもないんだよな」
畳の上に胡坐をかいて座っていた子供が猫の様にぴくりと動いて男の方を見る。
「教えてよ、じいさん」
「駄目だ駄目だ、こればっかりは教えらんねえ」
相変わらず楽しそうに笑いながらそれよりその呼び方はなんとかなんねえか、と子供の額を指でつついている。食えない男だ。
「自分の死に方なんざ知っちまったらつまんねえだろう。なあ?」これは俺に言っているらしい。
ああ、確かにそうだと答えて笑ってみせる。見慣れない銘柄の赤い箱から煙草を取り出し男も笑う。
「まあ…そうかもね」
小さくごちて子供が畳の上に寝転がる。
そういえば、六年前は良くあの人の家に上がりこんで畳に寝ていた気がする。
この子供の帰る家は相変わらずあの狭いアパートなのだろうか。
支援
54 :
2/3:2008/08/30(土) 16:34:40 ID:mRBBGVCz
「なんだ、がき」
畳に手足を投げ出したまま男をじっと見上げて居たら顔を覗き込まれた。三十年後の自分はこんなニヤついた顔なのか、と改めて思う。
「さっきそうでもないって言ったよね。って事は、あんたは死人なのか」
「さーて、どうかな。でまかせ言うのはお前も得意だろう」
食えない男だ。ふ、と小さく笑うと男も同じ笑い方をした。
「あんまり先の事を気にするもんじゃねえ」
「まあね。でも、こんな狂った事二度と起こらないだろう。多少は気になるさ」
全く、狂っている。気付いたら目の前にこの男ともう一人、背の高い青いシャツの青年が居て、よくよく聞けば六年後の自分と三十年後の自分だと言うのだ。
最初は信じなかったのだがどうやら本当らしい。この大人達は自分と同じ生き物だった。
小さく掠れた笑い声が聞こえたので視線を変えると、六年後の自分も笑っていた。
「兄さんも思うだろ?」
すっかり丸くなってしまったらしい初老の男に比べるとまだ自分に似ている気がする青年に声を掛ける。
「ああ…どうかしてやがる」
くつくつと笑いながら青年が煙草に火を付けた。
どうやら将来の自分はヘビースモーカーらしい。何本目だか知らないが臭くてかなわないのでやめて欲しい。
「…タバコって、美味いの?」
「まあ、なんとなくさ…。お前もその内吸い始めるだろう」
はぐらかすようにひらひらと手を振られた。
自分も真面目に質問に答える性質ではないが他人にされると案外腹の立つものだ。これからは少し考えよう。
「ああそうだ、墓には行ってるのか?」
思い出したように問い掛けながら青年が顔を上げた。昔の自分─即ち俺にそんな事を聞く筈も無いのでこれは男への問いだろう。
「ああ、変わらず行ってるよ。サボったら祟られそうじゃねえか」
「…そうだな…違いない」
くつくつと、同じ笑い方をしながら二人が顔を見合わせている。
良く分からないが、こいつらの世界では墓参りをするほど親しかった誰かが死んでいるらしい。自分にそんな人間が出来ている事は少し意外だ。
果たして自分の知っている人間だろうか。俺の知らない未来の事だろうかか。流石にそれを問う気にはならない。
「ま…元気にやってるだろうさ」
スーツの男が変わらず上機嫌な様子で小さく呟いて、深く吸った煙を天井に吐き出す。全く、未来の自分は不思議な男だ。
55 :
3/3:2008/08/30(土) 16:36:44 ID:mRBBGVCz
「ところで…ここが何処だかあんたは知ってるのか」
灰皿の淵にとん、と灰を落として窓の方に顔を向ける。
刃物のような鋭い目をした青年。いくらか昔、まだ若い頃の自分だ。
昔の俺はこんなに悪い顔をしていたのかい、と思いながら小さく笑う。誰の仕業か知らないが全く面白い企画だ。
「ああ、知ってるよ」
この古い、狭いアパートは見知った場所だった。9年前迄はちょくちょく出入りしていたので間違いない。
「まあ…俺の家みたいなもんだ」
強ち嘘でもない。当時は若い家主にそう言って引っ張り込まれたものだ。
「家、ねえ…」
腑に落ちない様子で呟いてそっぽを向く青年が愉快でたまらないので、また小さく笑う。
隣に視線を落とすと学生服の少年が寝息を立てていた。
こいつらは過去の自分に違いないのだが、なんだか子供や孫が出来た気分だ。悪くない。
短くなった煙草を消して新しく火を付ける。煙を吸って吐き出す。
「もう…日が暮れちまうなあ」
暗い青と深い赤、僅かに鮮やかな橙。
詩的な表現なんかは出来ないが、青年の肩越しに見える東京の空をとてもうつくしいと思った。五十三年間、終ぞ変わらなかった空だ。
もしかしたら、これは俺の見ている夢なのか。
走馬灯って奴とはちょっと違う気もするが、間際に変な物を観ることは珍しくないと聞く。
夢だとしたらそう長く続く物ではないのだろう。
急に思い付いた答えに満足しながら小さく伸びをして少年の横に寝転がる。
古い畳の匂いを、懐かしく思う。窓からの、夏の終わりの風が心地良い。
──最後に、こいつらと話せて良かった。
そんな事を考えながら目を閉じて、眠気に誘われるまま意識を手放した。
56 :
50:2008/08/30(土) 16:38:19 ID:mRBBGVCz
以上です。
ageすいません…。
>ハルヒ×エヴァ
投下乙!!斬新な切り出しかも。LASかな?
>アカギ
アカギを題材にするならやっぱり麻雀の話かな?と思ったけど、なんだか後味爽やかな、でも渋味のある物語で、良い意味で期待を裏切られたよ。
興奮する場面は無いけど、心に染みる良い話だった。
61 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/31(日) 00:26:36 ID:n9m3KOYM
こんなにあったのか!
どうもありがとう
50氏のアカギ、年年歳歳人同じからずをうまく表してあって面白かった!
老人アカギの思いがしんみりきた。
65 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/31(日) 01:34:28 ID:n9m3KOYM
パロロワ企画は創作発表板以外でも50はあるからなぁ。
2chでもっとも採用されている二次創作の形式だと思う。
「リレー小説書こうぜ」があまりにカオスで笑えるw
67 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/31(日) 03:42:46 ID:U7FKfGmT
68 :
ハルヒ×エヴァ:2008/08/31(日) 07:43:33 ID:LxVymwf0
ハルヒは相変わらずエヴァンゲリオンに夢中だった。
部室にクロニクルなどのエヴァ関連の本を持ち込んでは、
部室のエンジェルである、麗しの先輩―朝比奈さんに対して
熱心に講釈を垂れるのがハルヒの日課になっていた。
変わったことなど、何もなく平和に時は過ぎ去っていった。昨日までは。
「キョンくん」
ほうき片手に掃除をしていると、廊下から可愛らしい声で
遠慮がちに呼ぶ声がした。朝比奈先輩だ。
キョンはほうきを壁に立掛け、廊下に出た。
何かよくないことが起こったのだとしか思えない不安げな表情をしていた。
「お願い、いますぐ部室に来てください」
「今すぐですか……」
キョンは首だけ動かして後ろを見た。
掃除をサボることのない真面目な数人がせっせと掃除をしていた。
今ここで抜ければ彼らの負担が増えてしまうことになる。
「キョンくん、急いで」
朝比奈さんは今にも駆け出しそうな様子でそう言った。
これは悠長に掃除なんかしてる暇はないのかもしれない。
「わかりました」
キョンは柔らかい羽のように駆け出した朝比奈さんの背中を追った。
69 :
ハルヒ×エヴァ:2008/08/31(日) 07:44:33 ID:LxVymwf0
部室に入ると、既に古泉と長門がいた。
最近は、綾波を彷彿とさせるから、という理由で
ハルヒにコスプレを強いられ綾波の制服を着たまま、
静かに読書に没頭していたりする長門だったが、今日は本を机に置いている。
「大規模な情報フレアが観測された」
長門は無表情のまま、唐突に切り出した。
「及び、強力な時空震も併発した」
淡々と語られる長門の言葉についていけず、キョンは
説明を求めるように古泉を見やった
「つまり、涼宮さんの力が暴発した、ということですね」
深刻そうな事態について話しているにも関わらず
古泉は貴公子のようなさわやかな微笑みを崩していない。
「これは大した問題ではないんです。世界を作り出すほどの
大きな力が働いたようですが……僕達には関係のないほど
遥か遠くで起こったことですから。ただ、問題は……」
古泉はそう言って、説明の続きを促すように長門に視線をやった。
「涼宮ハルヒの世界改変能力が失われたこと。涼宮ハルヒは通常の人間になった」
古泉、長門、朝比奈さんの三人は重苦しい雰囲気に包まれているが
キョンには何が問題なのかわからなかった。
支援
71 :
ハルヒ×エヴァ:2008/08/31(日) 07:46:31 ID:LxVymwf0
ハルヒの力が失われた……?
「ハルヒがただの人間になれて良かったんじゃないのか?」
キョンは思ったことをそのまま口にした。
「それが、残念ながら好ましい事態ではないのです。涼宮さんの力が
失われた、とは言っても消失したわけではないんです。
他者に移行した、と言えばいいんでしょうか」
古泉の顔からは、余裕のある笑みが消えていた。
「これまでは涼宮さんを僕と朝比奈さんと長門さんの三人で問題が
起こらないように対処してきました。
だから、世界を変えるほどの強大な力を涼宮さんが持っていても
大丈夫だったんです。あとは、涼宮さんが常識的な方であることも
これまで平穏を保つことができた要因のひとつですね」
キョンは何が起きているのか段々つかめてきた、と同時に不安が胸中で膨らんでいく。
「つまり、今どこかにハルヒのとんでもパワーを持った人間がいるということだな。
そいつは頭のおかしい、とんでもないやつかもしれないし
そいつを監視する人間もいないかもしれないということか」
「理解が早くて助かります」
古泉はふっと表情を和らげたが、場が和む感じはしない。
支援
73 :
ハルヒ×エヴァ:2008/08/31(日) 07:47:40 ID:LxVymwf0
「ですから、非常に危険な状態なんですよ。
涼宮さんの力を得た人間が、いつ、どんな形でその力を発動させるか
わかりませんからね。新たな情報フレアに巻き込まれて、この世界に
深刻な被害が及ぶようなことがあってもおかしくはないんです」
「長門」
俺は声を挙げて長門の方を見た。
長門は万能な宇宙人であり、この中では一番頼れる存在だ。
これまでも危機を乗り越えるときに力になってくれた。
今回もきっと力になってくれるはずだ。
「対策は……あるんだろ?」
「確実な対策はない。現段階において講じることができるのはプログラム起動条件を碇シンジに伝えること」
キョンにとって聞き覚えのある単語が二つ出てきた。
まずは「プログラムの起動条件」だ。これは以前、現実世界が狂ってしまった
ときにキョンが長門のヒントを元に起動させたものだ。
よくわからないが、世界を元通りにするための、きっかけのようなものらしい。
そして、もうひとつの聞き覚えのある単語をキョンは繰り返した。
「碇シンジ……?」
「そう。涼宮ハルヒの能力を取り戻すための鍵を握っている人物、それが碇シンジ」
75 :
ハルヒ×エヴァ:2008/08/31(日) 08:21:22 ID:LxVymwf0
「つまり涼宮さんは遥か遠くにエヴァの世界を創造した後
その世界の人物に力を譲渡したということなんですよね?
そしてその力を再び取り戻すための鍵を握っているのが碇シンジ……ですね?」
「そう」
古泉の言葉に長門は短く返事をした。
キョンはこの突然の事態にも戸惑わなかった。
今までの非日常的なイベントに比べれば、収拾がつかない
というほどのことでもなさそうに感じた。
なにしろ、今この学校には長門、古泉、朝比奈さん、それにハルヒだっているのだ。
「それなら長門、早くシンジにそのプログラムの起動条件とやらを伝えてやってくれ。漠然とした表現は避けて、なるべくわかりやすく頼むぞ」
「わかった」
長門は静かにそう言うと、パソコンの前に座り、高速でキーを叩き始めた。
文芸部室にキーボードを弾く音が木霊する。
ハルヒはまだ来ていない。根は真面目なやつだからまだ掃除をやっているのだろう。
なるべく早く事態が丸く収まってくれればいいな、シンジ頼んだぜ
キョンは心のうちで呟いた。
>ハルヒ×エヴァ氏
わぁ、不安定なシンジが神というのはヤバい。続編も楽しみです。
取りあえず人称がころころ変わるのはいただけないな<ハルエヴァ
79 :
シャミセン:2008/09/01(月) 00:32:01 ID:ZZ6maZmF
>>78 ハルヒ×エヴァの作者です
やっぱりそうですか。27レス以降はシンジメインで話が進むように
頑張ってみますね。ただ電波話がシンジパートだとやりにくいんで
たまにはキョンにも登場してもらうことになるかと……
一人称と三人称が混在してるって事じゃないか?
視点は基本的に統一した方がいいよ
明け方に密かに投稿
・ハルヒの二次です。
・性転換要素ありです。
・文章はど素人です。
・キャラの性格などが変かもしれません。
以上を踏まえた上で、そんなの見たくないって人は
『キョンキョンの憂鬱』でNG登録して下さい。
昨日はとくに変ったことが無い一日だった。いつものように学校へ行き、
いつものように授業を受け…これまたいつものごとく半分は眠っていたわけだが。
そして、いつものように文芸部の部室で古泉とオセロをして、いつものように
夕暮れになってから帰路に着いた。
昨日と言う日が比較的平和だったのは、他でも無い我等がSOS団、団長
涼宮ハルヒが特に騒ぎを起こさなかったからだ。
それでは、あのハルヒが何故ひとつの暴走もせずじっとしていたのかと言えば、
なにやら本をずっと読みふけっていたからだ。あいつがどんな本を読もうが
そんな事はどうでも良い。ただ俺にとってはハルヒが騒ぎを起こさない事が
ありがたかった。いっそのこと、そのまま文芸部員になってくれれば楽なのに。
今日も昨日と同じように平和であれば良いのだが。
寝起きのぼんやりとした思考の中で、漠然とそんなことを考えながら、
洗面台に向かった。鏡の前に立つと寝ぼけまなこの三人の姿が映った。
俺と、年の離れた妹と…三人!?誰? 鏡の中にはたしかに三人目の
姿があった。異常事態の発生に、俺の脳は赤唐辛子をまるかじりしたような
刺激を受け、一気に目が覚めた。
そしてすぐに、周りを見回した。妹をはさんで俺の左側に確かに人が居る、
見知らぬ女だ。背丈はやや低く細身。おそらく年頃は中学生ぐらいだろう。
背中まではあろう長い髪。顔つきは妹に似た感じをしているが、寝起きのせいも
あってかどうにもやる気の無い眠そうな目つきをしている。
一体、誰なんだこいつは?
俺がそんなことを考えながらその女を凝視していると、彼女の方も何か
気付いたらしく、ありえない物を見るような目で俺のほうを振り向いた。
「お兄ちゃんもお姉ちゃんも何してるの?」
とっくに洗顔と歯磨きを終えた妹が、変な表情でにらめっこをしている
俺と女に言った。
お姉ちゃん? この女が? 親戚かご近所さんにこんな子が居たか?
いや、居なかった。居たとしても泊まりに来ているなんて聞いていない。
約二分ほど、愛し合う男女のように長い見つめあいをした後、ようやく
俺とその女は口を開いた。
「「お前、誰だ?」」
そうして、お互いの状況確認がはじまった。苗字は同じで名前は互いに
もじった程度にしか変らない。生年月日や血液型は全く一緒で、同じ高校の
同じ学年、同じクラスに通っている。家族構成も一緒で両親と妹の4人家族
である。谷口や国木田といった交友関係も一緒。違う事といえば性別と容姿だ。
そこまで話し合って、俺達はようやく一つの結論を出した。それはあまり
信じたくない事ではあったが、非常識な事態にはもはやある程度慣れっ子だから、
この際受け入れよう。その結論とはつまり、俺とこの女は同一人物だということだ。
そして、妹の態度から察するに、今は双子の兄弟として同時に存在している。
「この分だと、どうせ犯人はあいつだな。」
「そうだな…とりあえず…放課後に古泉や長門と相談…するしかない…か。」
今後の事を話し合いながら、俺達は我が校名物の長い坂を上がる。
『姉貴』は何やら息切れをしているようだ。具合が悪いのか?
ちなみに彼女が『姉』だと分かったのは、俺が彼女の事を『お前』呼ばわり
していたら、自分の姉をそんな言い方するなと親に叱られたからだ。生年月日や
見た目じゃどっちが上か分からないから双子はややこしい。
「…ちょっと、待ってくれ。歩幅が違うんだから。」
少し遅れ気味になった姉貴が言った。なるほど。例えもともと同一人物とは
言え、性別が変れば歩幅や体力も変わる。どうりでこんなにしんどそうなわけだ。
しかし、今朝は出遅れたため、すでに遅刻ギリギリだ。あまりゆっくり歩くわけ
にはいかない。そういう訳で、俺が姉貴のカバンを持って早歩きすることになった。
「すまない、助かる。…しかし、ハルヒコの奴にも参ったもんだ。」
「同感…ん? ハルヒコ?」
聞き間違いか、それとも、そんな名前の奴が居たか? てっきり姉貴が涼宮ハルヒの
事を言っているのかと思い、俺はつい「同感」なんて答えてしまった。
「何とぼけてるんだ? こんなのは涼宮ハルヒコのせい以外に考えられないだろ。」
聞き間違いではない。姉貴はきっぱりはっきり『涼宮ハルヒコ』と言っている。
「ちょっと待て『涼宮ハルヒ』は女子だよな?」
俺の質問を聞いて、姉貴も話がすれ違っていることに気がついたようだ。
「あたしは男の『涼宮ハルヒコ』しか知らない。どうもまだおかしな事が
起こっていそうだな。」
俺達はほぼ同じ記憶を持っているが、それぞれ微妙に異なっているようだ。
家に居る時点で性別による習慣や行動の違いについては記憶が違っていると把握を
していた。しかし、それだけではなくSOS団のメンバーの性別についての記憶が
逆転しているらしい。
「まさか…SOS団の全員が双子になってる…とか?」
姉貴はクトゥルフ神話の邪神でも見たような絶望的な表情で、
そんな予測を口にした。
「やめてくれ、最悪の予想だ。特に、あのハルヒが二人居るなんて、
考えるだけでもおぞましい。」
そう答えた俺も、周りから見ればおそらくは、姉貴とほぼ同じ表情を
していただろう。
85 :
シャミセン:2008/09/01(月) 07:43:42 ID:ZZ6maZmF
>>80 そういうことですか……。視点には気を付けてはいたんですがダメっすね、俺。
とりあえず直せる範囲で直して、28レス以降は慣れている「私」の視点でいきます。
ところでハルヒ総合は分離して立ててもいいような気もするなあ
書き手も読み手も数はいるだろう
だな
ある程度人気のある原作はそれぞれに立てて良かろうな。
90 :
シャミセン:2008/09/01(月) 17:33:28 ID:ZZ6maZmF
移りますね。もしよかったら読みに来てください。それで悪い所、気になる所を指摘してけらっしゃい。
91 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/02(火) 04:28:07 ID:fxSW8J/m
こうやってこのスレからいろんなスレが分離していく形態になるのかね
東方楽曲の二次創作がしたいです
やっちゃいなよ
94 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/07(日) 22:08:54 ID:dMnzTpL2
んじゃ俺はドラクエ世界をベースにした二次書きたい
やっちゃえやっちゃえ
>96-97
GJ!
しかしバトロワの数も増えてきたなw
ガンダムなんかの最強論争よりは建設的だけど、
好きなキャラ同士を殺しあさせるっつーのはどうもな。
102 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/09(火) 23:28:18 ID:LXmE1Gn6
>>101 ガンダムといえば、一時期新シャアでは種死の再構成やクロスSSが流行っていた
大抵はシンがちゃんとした主人公になって、ラクス達をブッ殺す話だが
スレがない二次創作はここに透過してもいいのかな
どぞどぞ
>>103 今だとギアスの再構成SSが、それに相当するような感じだな。
110 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/12(金) 23:24:32 ID:e0ylOQNe
>>109 日報乙です
なのは系は今までエロパロが非エロを相当数吸収してたけど、そのスレが出来たことでどう転ぶか
111 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/13(土) 22:23:03 ID:gXNtlKqS
>>111 乙です。
ドラマの二次創作って珍しい気がするな
113 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/15(月) 00:44:23 ID:3ohvt3go
>>113 日報乙であります!
アイマスは伸びてくれると嬉しいな
2次創作スレは今どんなスレが
盛り上がってんのかね
ダントツでロワ系のスレ各種だろうね
118 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/21(日) 21:07:21 ID:lMj2DLK9
120 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/23(火) 22:15:54 ID:7kElk1JQ
乙〜
ちょっと見ない間にバトロワが増えてるw
>>120 怖いスレやなあ……。
それにしても、なんでバトロワがそんなにうける?
うけるというか
そもそもそれ関係の住民がいるスレだから
ボカロとかもそうだけど元々住民がいるスレはやっぱ強いな
好きなキャラの扱いに納得出来なかった痛い子が、バトロワを仕切り直そうとホイホイ乱立する暗い一面があるってのも一因だと思われる
あとやたらロワスレを乱立して自分じゃ何も動かない奴はサブカル他いろんなところに現れてたから……
放置してdatが一番なんだが、ここなかなか落ちないしなあ
現在ロワの名を冠しているスレが16
うち開始までこぎつけたのがksk、マルチ、非リレー
よそからの移転がネギま、RPG、ライダー、ジョジョ、(非リレーも一部合流組)
路線変更やネタ化したのが妖怪、バイト、歴史、ルイズ
いや、歴史上の〜は普通に進んでるっぽくね?
クロス系がなんか変な風に荒れちゃってるのが残念
期待していたんだけどな…
age忘れ
131 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/29(月) 22:34:43 ID:xXIry8hK
トランスフォーマー2010の第25話『グリムロックの新しい頭脳』をグリムロック視点のみで進めてみた。
俺、グリムロック。ダイノボットのリーダーだ。
俺達、トランスフォーマーって言う生命体。トランスフォーマー変形できる生命体。
鉄の体と、電子の心を持つ生命体。俺恐竜に変形する。
スラッグ、スナール、スラージ、スワープ、俺達の仲間のダイノボット!
今日も池で魚取ってる。やっぱりみんないると幸せだ。コンボイやホイルジャックも一緒にいれば幸せだと思う。
あ、ロディマス司令官呼んでる。何々?「しんえねるぎーゆにっとのさどうしき?」
……わかった俺手伝う。
「それで、これがエネルギー制御スイッチ、これが緊急停止スイッチ。これは自爆スイッチだから引くなよ、いいか!絶対引くなよ。」
そう言って、総司令官であるロディマスコンボイが説明をしながら、横のゴ●ラ……否、T-REX型ロボットに説明する。
「ううう……俺グリムロック。難しい……」
「だから、説明があったら、このレバーを引けばいいんだ。」
ええーとこれだな
「噛むな!」
「俺、グリムロック、レバー噛まない。」
そうして、何度も何度も確認する。
………それでさどうしきの日来た。
「今日は、記念すべき一日になると思う!このセイバートロン地下深くに収められた新型エネルギーユニットが、起動する最初の一日だからだ!」
わーと歓声が鳴り響く。
「よし、グリムロック。スイッチを入れてくれ。」
「俺、グリムロック、スイッチを押す! でもどれだっけ?」
まず制御スイッチだっけ? 緊急停止じゃなくて、作動スイッチだよな? ていうか作動スイッチってどれだっけ?
「こんな事も無いよう5回も教えたのに!」
下でロディマス司令官が怒ってる。 よし、これだ。
ピッ
「あれ、煙出た」
違うならこれかな?
カチャリ
ドンと爆発音が鳴り響く。
「えーとえーと…………。」
制御室を煙だらけにしてこっぴどくしかられた。
「ダイノボット自体、それほど頭が良くないんだから。」
そう言って、パーセプターが俺を馬鹿にした。
「なんだとぉぉ!」
と、そこで空を見ると白い姿が見えた。
「あっ、スカイリンクス達だ!」
「ほう、もう戻ってきたか。特に何も無かったようだな!」
「でも、なんか変だ! 落ちてきている!」
俺がそう言うと、パーセプターは直ちに望遠鏡に変形してスカイリンクス達の方を見る。
「………ああその通りだよ、グリムロック。」
「俺、グリムロック、スカイリンクスとアダムス達助けに行く!」
そう言って俺達、スカイリンクスの方に走っていった。
落下地点で、スカイリンクス達の様子を除き見る。
「でも、何でスカイリンクス達落ちた?」
「落ちる原因があったからさ。」
「………??」
「つまり、何らかの原因があって落ちたってわけさ。」
「そ、それぐらいわかってる!」
馬鹿にするな!
「な……なにがうわわわわわ」
スカイリンクスの体が変形したり戻ったりする。なんか様子が変だ。
「待ってろ!今助けてやるからうわわわわわわわわ!」
助けに行った仲間のスプラングが、調子を悪くしてしりもちをつく。
なんか嫌な匂いがする。きっと調子悪くなったのこのせいだと俺グリムロックそう思う(偏見)。
………スカイリンクス達運んで疲れた。
科学者のパーセプターがこんぴゅーたーにデータを分析させたらしい。
「チカノエネルギーユニットカラミチノボウガイデンパガハッセイシテイル。」
「俺グリムロック、何がなんだかわからない。」
「それで、どうすれば良い?」
「エネルギーユニットヲチョクセツテイシシテセイビガヒツヨウ。コノママデハセイバートロンハトランスフォーマーガスメナイトチニナッテシマウ。」
「よし、私達はエネルギーユニットを停止させよう。ウルトラマグナス、チャー、グリムロックはついてきてくれ。」
「私は、スカイリンクス達の修理にあたります。グリムロック、地下で防衛システムに引っかかったからといって壊すのは止めてくれよ」
「馬鹿にするな。俺グリムロック、ダイノボットの中で一番頭良い!」
「でもねえ、ダイノボットの頭がいまいちなんだよ!」
「なにをぉ?」
「グリムロック、パーセプターへの八つ当たりは止めろ!早くくるんだ!」
うう、司令官が呼んでる。俺グリムロック、今すぐ行く!
「これは参ったな。」
No2のウルトラマグナスが迷ってる。所々、通路が壊れてる場所があるらしい。
「匂いこっちからする。たぶんこっち。」
「おいグリムロック、勝手に行くな!」
「でもこっちから変なにおいする。俺気になる!」
「わしがグリムロックのお守りをします。司令官は副指令とどうぞ。」
「わかった、何かあったら連絡してくれ。」
匂いの反応追ったら、変なビリビリ見つけた。
「チャー、変なの見つけた!」
「おいグリムロック何を見つけたんだ?」
「チャー、お前様子変だ。スカイリンクス達と同じだ!俺グリムロックこれ破壊する!」
多分破壊すれば元に戻ると思う。コンボイ司令官もそうやってた!
尻尾でぶん殴って噛み砕く!
「ふう、どうやら元に戻った。しかしどうしたんだ、グリムロック?」
「俺グリムロック……」
いや、俺は偉すぎるな。
「私グリムロックが臼歯で引きちぎった。」
「そうかいそうかい、それはでかした……いいっ? グリムロックお前さん、今なんていったんだい?」
「聴覚にまで障害が出たのかいチャー? かんで説明しないとわからないとは困ったものだ。」
私はそう言ってチャーの元へと歩いていく。
「私グリムロックが臼歯でコードを引きちぎった。これで良いかい?」
「グリムロック、お前さん本当にグリムロックなのかい?」
「???????私はグリムロックだが?」
チャーは何を驚いているんだ?
「急ごう。ロディマス司令官の緊急信号をキャッチした。」
「ほ、本当じゃ!」
司令官、貴方達が警備システムに引っかかってどうしたんですか?
「はっ早く司令官を助けないと!」
「慌てない慌てない。あーやっぱり私の思ったとおりだ。」
順序良く制御装置のボタンを押して、電源を切る。昔ホイルジャックに言われた通りにしたら上手くいった。
「助かったよチャー。」
隔壁が開いてロディマス司令官とNo2のウルトラマグナスが出てくる。
「いや、お礼ならグリムロックに言ってください。あたしゃ何にも。」
「グリムロック! 一体どうしたんだ? まさか制御盤を噛んだんじゃないだろうな。」
「それは誤解も良い所です司令官。貴方方を救うには防衛システムの電源を一時的にカットすればそれですみますから。」
面食らったように二人が顔を見合わせる。
「今の聞いたか?」
「ああ、まるで別人のようだ。」
「……司令官上を!!」
いつの間にかメカの蝙蝠が天井に張り付いていた。
「あれはラットバットだ! 私達はスパイされていた!」
そう言って、ロディマス達は逃げようとするラットバットに攻撃を仕掛けたがラットバットは慌てて逃げていった。
「司令官、ラットバットが来たということはデストロンの仕業と見て間違いないでしょう。」
「確かにそうだよグリムロック。だが原因はなんでしょうか?」
「おそらくですが検討はついています。まずは研究室に戻ってしらべるべきです。」
「グリムロック………?」
帰る途中でダイノボットの仲間達と出会った。
「おーい、グリムロック!一緒に魚食おう。」
「駄目だ駄目だ。」
「でも、何時も俺達ダイノボット一緒に魚食う……」
「今の私の頭は魚よりもっと重要なことで占められているんだ。」
スナールの言葉を無視して私達は研究所に急ぐ。
データを次々にコンピューターに入力していく。
「……これで何がわかるんだ?」
出されたデータを見てウルトラマグナスが突っ込みを入れる。
「やっぱり私の思ったとおりです。この妨害電波の原因はアンチエレクトロンです。」
「アンチエレクトロンだって……ああ、確かにそれしかない。だがなぜ気づかなかったんだ?」
パーセプターもデータを見ながら気が動転しているらしい。
「それは君の頭脳がいまいちだからだよパーセプターくん。」
「むむむむむ………。」
「ロディマス司令官。私はロケットを作っておきます。パーセプターくん。後の分析を頼む。」
私はそう言って整備庫の方へと向かっていった。
「グリムロック〜グリムロック〜どこだ〜。」
そういって整備庫にスワープ達が入ってくる。
「やあみんな。今全方向噴射装置の取り付けをしてるんだ。」
「ぜんほうこうふんしゃ……なんだ?」
「全方向噴射装置だよ、スナール。スカイリンクスとアダムスは治療中で、オメガスプリームは外宇宙へ調査中だ。
そこで私はロケット作ったんだ。」
そう言って私はコントロールパネルに向かう。
「スナール。今からロケットのテストを行う。回転数を上げるからモニターを見ててくれ。」
だが、4人とも私を変な風に見ている。
「お前ダイノボット違う!」
「俺スナール、お前嫌いになった。」
「いこいこ。こんなのほっとけ!」
そう言ってダイノボットの4人は立ち去っていった。
入れ替わりに入ってきたのはブラーだ。
「ちょっちょちょっと、なに難しい顔してるのしてるのしてるのしてるの?」
「ブラー。黙っててくれないか?」
「今のあなたは頭がとても良いとても良いってことはうれしい事うれしい事うれしい事!」
それなのになんか寂しそうなんかへんなんかへんなんかへん!」
「ブラー。しばらく一人にしてくれないか?」
「どうしたのなんか悩みなんか悩み? 恋の悩み勉強の悩みねえねえねえ何なの?」
「一人にしてくれ!!」
「ねえねえねえどうしたの。」
「とても……面白くない事さ。」
………………
「司令官に人手が足りそうに無いから、応援が欲しいって言ってくれないか?」
「わかったわかったわかったわよ!」
ブラーが残像を残しながら駆けていく。
「私は…………一体誰なんだ?」
いくら天才になっても…………天才なったから………。
いや、今は目の前の事件を解決するべきだ。
そうしなければ……アンチエレクトロンによってセイバートロンあるいは地球に住むトランスフォーマーが全滅する可能性がある。
「私は……私は私は……」
ロケットが完成し司令官のロディマスコンボイ、No2のウルトラマグナス、チャーとパーセプター、そしてグリムロックとついでにブラーで行くことになった。
「………ねえねえねえどこいくのどこいくのどこいくの?」
「ユニクロンの首さブラー。」
「なんでなんでなんで?」
「アンチエレクトロンは自然にはほとんと存在しません。もしあるとするならユニクロンの首の中だけでしょう。」
「その通りだよグリムロック。だからその前に私達の手で押さえるんだ。」
「最悪の場合、もうデストロンが首に行っているかも知れません。もしそうならば………。」
次の瞬間、ユニクロンの首から謎のエネルギー波が襲い掛かった。
「これはアンチエレクトロン砲だ!!」
特殊なエネルギー波を受けてロケットは落下していく。
………目の前にガルバトロンと見慣れないロボット達がいる。
「しまった……」
何が天才だ。何が天才になっただ……この程度のことも予測できないで何が天才だ。
「あの野獣戦士達がアンチエレクトロンを持って暴れたら…………」
セイバートロン星はデストロンの手に落ちてしまう。
「ならば……この頭脳は……。」
ロケットが落ちきる前に飛び出してユニクロンの頭部へと駆けていく。
色々と残っているパーツを組み合わせ、自分のパーソナルコンポーネントの一部を彼に与える。
「目を覚ませノーズコーン。私、グリムロックがお前を作ったのだ。」
「……ということは、貴方が私のお父さん?」
「ああ、だが父ではなくサイバトロンの一員と思って欲しい。」
いずれ、お前達の『父』である資格を失うのだから……。
「お前も悪のデストロンを倒すために力を貸してくれ。」
「よーし、任せてくれ!」
ノーズコーンはドリル戦車に変形するとユニクロンの中を走っていった。
ぼろぼろのパーツを組み合わせて自らの頭脳を渡していく。
5体の私の知恵を受け継ぐ戦士を作った所で、私は宣言する。
「ようやく、完成した。私グリムロックが名前をつけよう『テックボット部隊』と」
「テックボット!気に入ったねえ。俺の名前はストレイフ!」
「おいおい、そんなに興奮するなよ。俺の名前はアフターバーナーって言うんだ。」
「僕の名前はライトスピード!」
「そしてスキャッターショット。お前がテックボットのリーダーだ。」
「ええっ、私達のリーダーは貴方ではないんですか?」
すまないスキャッターショット……
「いや、私にはリーダーになれない事情がある。
安心しろ。立派にやれるはずだ!」
「そうだぜ! まずは上の仲間を助け根ねとな。」
「……私はしばらく、ここですることがある…………すまないが一人にさせてくれ。」
私はそう言って、記録媒体に手をつけた。
「「「「おおっ!!!!!!」」」」
「よーしテックボット部隊初陣だ!」
「すまない…………」
『ロディマスコンボイ司令官へ
私グリムロックは知性を全てテックボットに渡すでしょう。
後悔はしませんし、多分できないと思います。
司令官にお願いがあります。彼等に命の暖かさを教えてください。
彼等に守るという意味を教えてください。
そして………彼らが迷わないように進むべき道を教えてください。
大馬鹿なグリムロックより』
私はひとつの装置を作り上げる。
過去の事を思い出す。
サイバトロンの基地で暴れたあの時、コンボイと戦ったあの時。
テルトラワンを守ってビルドロンと戦ったあの時。
ダイノボットアイランドでの戦い。
ユニクロンとの戦争。
ああそうか。
「余分なものがつきすぎたんだな。」
腕が多すぎる人を人間と呼ばないように。
知力がつきすぎてしまったグリムロックはグリムロックとは言えない。
「テックボット、サイバトロンの未来を頼んだぞ。」
慌ててテックボット達が入り口から戻ってくる。
「どっどうしましょうテラートロンが天を突く大巨人に!!」
「何も恐れることは無い。お前たちは合体戦士コンピューティゴンに合体する力を持っている。
合体しろ!!」
「おおおっ!!」
その言葉を合図に全員が、一糸乱れぬ合体を行う。
「私の名前はコンピューティゴン。私の演算容量はほぼ無限大です。ですが私の中にはデータが不足しています。」
「ひざまずけコンピューティゴン。私の優れた知性をお前に授けよう。そうして私は元の私に戻るのだ。」
「しかしそれでは!!」
「オボミナスの野蛮な力に対抗するには、卓抜した知性の力しかないのだ!」
そう言って私は決断を下す。
「これが唯一の方法だ。」
「……お前、もう利口になった! 俺グリムロック、もうお前の力になれない!!」
今までわかっていた事が急にわからなくなった。
俺グリムロック馬鹿だ。
「データ受信!
結論!! 直ちにオボミナスを排除する!!」
そういってあいつはユニクロンの外へと走っていく。
俺も一緒に走っていった。
「データ、オボミナス結合力に難点あり!
結論!! 強力な振動を与えれば……結合部分が分離する!!」
次の瞬間オボミナスはばらばらになった。
「うてうてうてええええい!」
ガルバトロンがそう言って、コンピューティゴンにレーザー砲を叩き込む。
「名前は、コンピューティゴン。 存在目的!!デストロン軍団の壊滅!!」
そう言って、コンピューティゴンのレーザー砲を受けてデストロン軍団はちりじりに逃げ出した。
で、スカイリンクス達に運ばれてセイバートロン星もどった。
「おーい、スキャッターショット。こっちも頼む!!」
あいつら上手くやってるみたいだ。俺うれしい。
「おーい、グリムロックそこで何してる?」
「えーと俺グリムロック修理見てる。」
「そんな事より魚食おう魚。」
「そうだな。」
テックボットの邪魔だし、そうするか。
「みんな、久しぶりにガルバトロンを痛めつけてやったし、新エネルギーユニットも完成した。
さらにテックボットの加入で我々の未来はいっそう明るくなった!
これもみんなグリムロックのおかげ……ってグリムロックは何処だ?」
「グリムロックならここだ〜〜〜! ダイノボット何時も一緒に魚食う!!」
そうだな、こっちの方が俺らしいな。
「俺、大天才でいるの面白くない!! ダイノボットのリーダー、はるかに、俺好きなんだ!」
だなだな。
「いええええええい」
なんかみんなもそう思ってるみたいだし!
完
ここまでです。原作が原作なんで暗い感じよりも明るい感じでかいたつもりです。
しかしアホの方が書いてて楽しいってどういうことだ?
投下乙!
やっぱり二次作品はしらない作品のだとさっぱりだな
しかし楽しそうに書いてるのは伝わったぜ
140 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/01(水) 22:53:45 ID:xzBwUVOw
>>140 ∧∧
(*^ω^) 乙。お茶ドゾー
( o旦o ∬
と_)_) 旦
( ゚ Д゚) イタダキマス
( つ旦O
と_)_)
( ゚ ◎゚) ズズ…
( ゙ノ ヾ
と_)_)
(´ `ヽ、 __
⊂,_と( )⊃ (__()、;.o:。
゚*・:.。
ちょwwwwww死ぬなwwwww
誰 が 殺 し た
ク ッ ク ロ ビ ン
パタリロ懐かしいw
147 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/02(木) 22:40:46 ID:9yFnb/35
148 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/03(金) 22:12:20 ID:j1SAFS8q
今日の新スレ
,. -───-: 、
/::::::::::::::::::::::::::::::::\
/ '':::::::::::::::::::::::::::::::''''' ヽ
!::::::::::ィ::ハ:::;::::::::::::::::::::::::::!
i::|:::i::/l/ i;::ト、:、:::i:::::::::::::::i
|::i/レ'-i'' 'ヽi-ヾ,ヽ!:::::::::::::l
|::ハ -‐- -─- i::::::::::::::l 新スレあらへん・・・
|::::::l| | | | |::::::::::::::!
|::::::ヽ | r---、! l,.!::::::::::::::l
l::::::::::::`;'-'=,‐,='r''i~!:::::::::::::::|
!:::::::l、::r'"´'. ' l ' i::::::::iヽ:::l
i:l、:::|./、_____,l::::;l:/‐'ヽ!
'!ヽ;i'>l____,.//-‐'''"ヽ
!/ |.VVVVVVVV.lV\!. i
| | | l
二次創作を書いた事ない者だけど、一次と比べて、書く上で特に気を付けなくちゃならない事ってありますです?
まずその作品を把握する、これが一番大事。
それとキャラや世界観を破壊しないことかな?
わざと壊すパターンもありといえばありだけど。
うーむ、またロワスレが立て逃げor人気投票スレになってる……
実は、以前からパロロワスレを乱立させる荒らし紛いの困ったさんが居るんです。
その人が立てたロワスレだけで30スレ以上もあるらしい。
このままじゃあものすごい数の立て逃げロワスレで創作板が埋め尽くされてしまうかもしれない。。。orz
真面目にリレー小説企画してる良スレのパロロワだって沢山あるんですけどね……
>>151 あ、わかるわかる。ロワと嵐のことは知らんが。
リレーやってるときに勝手に自分の好きなもんぶっこんでご満悦してる奴いるよな
世界観無視してギャグキャラ突っ込んだり、無敵キャラ突っ込んで雑魚一掃して俺Sugeeやったり
みんなに無視されてんのに主張だけ激しいの。うっぜーなぁ
153 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/06(月) 22:24:28 ID:xJVX69zm
154 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/09(木) 22:30:35 ID:VpYl16xQ
155 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/12(日) 00:40:50 ID:WiTi9MUT
156 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/12(日) 22:49:27 ID:iwy3AAFL
157 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/13(月) 23:51:12 ID:IIFFOVu5
158 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/14(火) 23:04:59 ID:1amqLOqJ
>>158 「……エルメス。それ、パロディっていいたいの?」
「そうそう、それだよキノ!」
と拾ってみたものの、そういう意味が本当にあったらどうしましょ…
>>158 とーちゃん それちがう
ぱてぃしえは おかしをつくるひと!
それをいうなら ぱすてぃーしゅ な!
しょうせつか?
しょうせつから ねたつくらないとだめか?
わからん!しらん!もうねる!
よつば凄いな!パティシエなんて単語知ってるのか
とーちゃんは嬉しいぞ
このスレはどんなものでも投下しちゃってよろしいんですか?
自分が最近ハマって勢いで書き始めちゃった
オリジナル世界観の魔法少女プリティサミーの長編?SSとか
誰が求めているのかさっぱり分からない代物を投下しちゃってよろしいんですか?
どーぞどーぞ
はいはい、ありがとうございます
それでは投下させちゃっていただきたいと思います
原作のネタはこれでもかと使いまくってますが、
知らなくても楽しめるように配慮したつもりです
よろしければご一読を
河合砂沙美は、海の星中学校に通う平凡な中学生である。
正直に言うと、平凡と称するには平均的な中学生と比べてかなりあちこちズレてはいるのだが、
これから起こる、彼女の人生を一変させてしまう大事件と比べれば些細な問題で、誤差の範疇である。
ともかく、砂沙美は今、学校にいる。
今日は金曜日。時限は5限目。これが終われば下校の時間、そして連休である。
学生なら誰でも待ち遠しい時間だが、砂沙美はことさら待ちきれない様子だ。
ツインテールにした青い髪がせわしなくゆらゆら揺れている。
キーンコーンカーンコーン
「はい、じゃあ今日の授業はこれまで」
終業の礼が終わると共に、生徒達は部活、帰宅など、めいめいの目的に向かって動き始める。
体力と運動神経には自信のある砂沙美だが、とある目的の為にどこの部にも入らず、もっぱら帰宅部だ。
今日は日直でも掃除当番でも無いので、真っ直ぐに家に帰ることができる。
ところが・・・・・・。
「えーっ! 今日の掃除当番あたしだけー!?」
わざとらしく素っ頓狂な声を上げたのは今日の掃除当番であるB美だ。
こういう名前なのは特に重要キャラではないということを示すためであって、決して手抜きではない。
ちなみにA美ではなくB美なのは委員長と名前が被るからである。
とにかく、彼女の班のメンバーは彼女以外の3人は皆図ったかのように病欠であった。
B美は助けを求めるように周りを見渡すが、みんなそそくさと逃げるように教室から出て行ってしまう。
そんな途方にくれるA美に、砂沙美は迷わず声をかけた。
「B美、あたしが手伝うよ!」
「えっ、でも河合さん、今日は何か用事があったんじゃ・・・・・・」
「いいのいいの。人助けは何よりも優先すべき至上命題だって、ママが言ってたよ」
「あ、ありがとう・・・・・・」
「気にしないで。あたし、誰かの助けになれてる時が一番嬉しいんだ」
砂沙美はそう言って本当に嬉しそうに笑う。
「砂沙美ちゃん、私も手伝うわ」
「あ、美紗織ちゃん!」
砂沙美に声をかけたのは、小学校から一緒の親友・天野美紗織だ。
流れるような黒髪と、エメラルドグリーンの瞳が印象的な美少女である。
「1人よりマシと言っても、2人じゃまだ厳しいでしょ?」
「うん、ありがとう美紗織ちゃん!」
こうして、B美、砂沙美、美紗織の3人で放課後の掃除をすることになった。
「なんだか砂沙美ちゃんとこうしてゆっくり話すのって久しぶりね」
黒板の掃除をしながら、世間話に興じる砂沙美と美紗織。
「うん、クラス変わっちゃったから・・・・・・」
「それもあるけど、砂沙美ちゃんったら最近すぐ帰っちゃうじゃない」
「ご、ごめんね・・・・・・」
「まぁ気持ちは分かるけどね。それで、天地さんとは上手く行ってるの?」
「そ、それは・・・・・・!!///////」
美紗織の思わぬ攻撃を受け、砂沙美はゴミ袋に移している最中のチョークの粉をぶちまけてしまった。
「ケホッケホッ・・・・・・うぅ〜、いきなり変なこと聞かないでよ〜・・・・・・」
「うふふ、ごめんね。でも気になるじゃない、友達の恋の行方って」
「ま・・・・・・まぁまぁ・・・・・・ってとこ、かな・・・・・・? ・・・・・・え、えへへ・・・・・・」
適当に誤魔化しつつ、砂沙美は手を進める。
そうこうしている内に、作業も大体終わった。
「砂沙美ちゃん、美紗織ちゃん、今日はありがとう!」
「ううん、何か困ったときはいつでも言ってね!」
B美は職員室に日誌を届けに教室から出て行った。おそらくそのまま帰るか部活に行くだろう。
「さてと、あたしもそろそろ帰ろうかな。美紗織ちゃんは?」
「私も帰ろうかな。帰ってもすること無いけど・・・・・・」
「あれ、そういえば美紗織ちゃん、合唱部に入ったんじゃなかった?」
「う、うん・・・・・・でも今日はいいの・・・・・・」
「ふ〜ん」
言葉を濁す美紗織だが、砂沙美は気にも留めなかった。
「じゃ、あたし急ぐから帰るね!」
「う、うん・・・・・・またね」
「バイバ〜イ!」
後ろ向きに大きく手を振りつつ、砂沙美は駆け出していった。
(前はいつでも一緒に帰ってくれたのにな・・・・・・)
残された美紗織は少し寂しそうだったが、頭を振って嫌な気持ちを追い払うと、自分も教室を出た。
「おかえり、砂沙美ちゃん」
「えへへ・・・・・・ただいま、天地兄ちゃん!」
垣根に囲まれた和風の家。
その軒先で、純朴そうな青年が砂沙美を待っていた。
砂沙美が急いで学校を帰る理由。
それは、近所に住む高校生・征木天地と会うためだった。
何を隠そう、二人は恋人同士。
中学校入学を期に、砂沙美は想いを打ち明け、天地もそれを受け入れたのだ。
砂沙美は両親とも忙しく、家に居ないことがほとんどだった。
それゆえ、幼い砂沙美は近所の征木家に世話になることが多く、
中でも世話を焼いてくれた優しいお兄さん―――つまり天地のことだが―――に砂沙美が惹かれたのも当然のことであった。
「砂沙美ちゃんが後だなんて珍しいね。いつもは俺の方が後で、家の中で待ってもらってるのに」
「ごめんなさい、ちょっと友達の手伝いをしてたから・・・・・・」
「いやいや、責めてるわけじゃないよ! ただ珍しいなって思ったから」
慌てて弁解する天地。そんな仕草も砂沙美の目から見ると愛らしい。
「じゃ、行こっか・・・・・・天地兄ちゃん♪」
砂沙美は、天地の腕を抱き寄せた。
金曜日の放課後は、二人のデートの時間と決まっているのだ。
デートと言っても、何のことは無い。
適当に公園を散歩したり、せいぜい商店街を見て回る程度である。
主婦のオバチャンや魚屋のオッチャンにからかわれつつも、砂沙美は天地の肩に寄りかかってるだけで幸せだった。
(このまま、ずっとこうしていられたらいいのに・・・・・・なんて)
我ながらこっ恥かしい乙女モードだなぁ、などと思う。
適当にあちこち回っている内に、二人はいつの間にか川原の土手を歩いていた。
砂沙美は何気なく眼下に流れる川に目をやる。
「・・・・・・あ〜〜〜〜っ!!!」
何かに気付き、天地の腕も振り解いて一目散に河川敷を駆け下りる砂沙美。
「どうした、砂沙美ちゃん!?」
「ひどい・・・・・・こんなにあちこちゴミが捨てられてるっ!!」
砂沙美の言う通り、川原には、残飯、空き缶、ビニール、タバコの吸殻など、
ありとあらゆるゴミがぶちまけられている。
「・・・・・・天地兄ちゃん、ゴメン! あたし、ちょっとコレ片付けるから待ってて!」
言い終わらないうちに汚いビニールを拾ってせっせとゴミを集め始める砂沙美。
天地はそんな砂沙美を見て、少し笑った。
砂沙美は昔からずっと変わらない。
誰にでも優しくて、曲がったことが許せない、そんな正義感の塊だ。
「よし、僕も手伝うよ!」
「ありがとう、天地兄ちゃん!」
二人で手分けしてゴミを集めていく。
大した量でもなかったので、割と早く片付けは終わった。
ゴミを処分して手を洗ったあと、二人は橋の上から川の流れを眺めていた。
「ねぇ、天地兄ちゃん・・・・・・」
「なんだい、砂沙美ちゃん?」
砂沙美の顔は、心なしか沈んでいるように見える。
話を聞く天地の顔も真剣だ。
「砂沙美ね、時々思うの・・・・・・。砂沙美は天地兄ちゃんと一緒に居るだけで幸せだけど、それだけでいいのかなって・・・・・・」
「どういうこと?」
「砂沙美、もっと何か大きなことができないかって思うの。社会にどげげっと貢献できることが、きっと何処かにあるんじゃないかって」
「なんだ、そんなことか。、砂沙美ちゃんは十分よくやってるじゃない。川原のゴミ拾いだって立派な社会貢献だよ、なかなか出来ることでも無いし」
「それはそうかもしれないけど・・・・・・」
砂沙美は納得いかない顔だ。
なんとも曖昧な悩みであることは、本人も良く分かっているのだが・・・・・・。
ふと、天地は腕の時計を見る。針は3時前を示していた。
「あ、ゴメン砂沙美ちゃん! 俺、そろそろバイトの時間になっちゃう」
「もうそんな時間? 分かった、天地兄ちゃん、今日もありがとね!」
「ううん、俺の方こそとっても楽しかったよ!」
天地は急いで仕事場に向かった。
残された砂沙美は天地の後姿を見送り、それが見えなくなると、ゆっくりと帰路に着いた。
「ミャ〜・・・・・・」
帰り道の途中、妙な鳴き声聞いた砂沙美は、足元を見る。
そこには、猫だかウサギだか良く分からない生物が居た。
ふかふかの茶色い毛皮に覆われていても、ぺこぺこにへこませているお腹が良く分かる。
いつ飢え死にしてもおかしくない感じだ。
「あれー、この辺りに野良猫なんて珍しいなぁ」
砂沙美は猫だかウサギだか良く分からない生物を一目で猫と断定した。
「ミャアン」
「なぁに、お腹空いてるの?」
猫だかウサギだか良く分からない生物はコクコクと頷いた。
「う〜ん、でもゴメンね。野良猫への餌付けはしちゃいけないことになってるから・・・・・・」
「ミュ〜ン・・・・・」
「そんな風に鳴いたってダメだよ。仕方ないでしょ、もし居ついちゃったらご近所さんの迷惑になっちゃうんだから」
「・・・・・・ミャ・・・・・ン・・・・・・」
猫だかウサギだか良く分からない生物は、本当に辛そうだ。
流石にこのまま放置するのは良心が咎めた。
「仕方ないなぁ・・・・・・あたしの家まで来る?それなら牛乳ぐらいならご馳走してあげるけど・・・・・・」
その言葉を聞くなり、猫だかウサギだか良く分からない生物は、砂沙美の腕の中に飛び込んだ。
「ミャン!」
「もう・・・・・・」
砂沙美は仕方なく、猫だかウサギだか良く分からない生物を家まで持ち帰った。
『商店街で強盗が〜』
『道端に刺し傷のある男性が倒れて〜』
『議員のB氏が汚職を〜』
「全く、どうして悪い奴らって居なくならないんだろう」
ピチャピチャと牛乳を舐めてる猫だかウサギだか良く分からない生物を尻目に、TVを見ながら砂沙美は一人ごちた。
こういうニュースを見て、真っ先に感じるのが自分の無力さだ。
もっともっと社会貢献して、もっともっと良い社会にしたいのに・・・・・・自分程度の小娘じゃ大したことは出来ない。
できることと言えば、飢えて腹を空かした猫だかウサギだか良く分からない生物を助けてあげることぐらいだ。
砂沙美は猫だかウサギだか良く分からない生物をチラリと見る。
「この子、いっそこのまま家で飼っちゃおうかな。それならちゃんと躾ければ近所の迷惑にもならないし」
猫だかウサギだか良く分からない生物は、牛乳のついでにあげた小魚を手で持ってカリカリとかじっている。
とりあえず頭は悪くなさそうだ。
意外と育ちも良いのか、品もいい。
少々やんちゃなのが玉に瑕だが、これならママも飼うことを許してくれるだろう。
「よし、そうと決まれば名前付けてあげなきゃね」
「魎皇鬼!」
「『リョーオーキ』ねぇ・・・・・・。かっこいいけど、ちょっと長いから縮めて『リョーちゃん』とか・・・・・・」
「やだよ、そんな呼ばれ方! ちゃんと魎皇鬼って呼んでよ!」
「へ?」
砂沙美は足元を見る。
「ボク、もう子供じゃないんだぞ! ちゃん付けなんてカッコ悪いよ!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
さっきから砂沙美の独り言に割り込んでくる幼い声。
それは紛れも無く、足元に居る猫だかウサギだか良く分からない生物から発せられていた。
「・・・・・・ね・・・・・・猫ちゃんが喋ったーッ!!?」
「ぶーっ、ボクは猫じゃないよ、ウサギだよ」
「ね、猫が喋るなんて・・・・・・あたし、夢でも見てるの・・・・・・?」
「だから猫じゃなくてウサギだってば!」
「嘘だっ!! どっからどう見ても猫そのものだもん!!」
「えー、そんなに猫に見えるー?」
「見えるよ!!」
砂沙美に断言され、猫・・・・・・はションボリしてしまった。
「・・・・・・ちぇっ、ジュライヘルムに帰ったらまた変身魔法の特訓をやり直しだな。
ま、それはいいとしてさ、お姉さん魔法少女にならない?」
「・・・・・・はい?」
猫が喋っただけでも驚きなのに、『魔法少女にならないか』と来たもんだ。
砂沙美の脳みそはフリーズ寸前である。
「どう? 魔法少女になる気あるの、ないの?」
「・・・・・・いや、その・・・・・・あの・・・・・・」
混乱してしまった砂沙美は、冷静に一つ一つ事実を整理する。
猫を拾ったら突然しゃべりだして、魔法少女に勧誘された。
・・・・・・うん、意外と単純じゃないか!
でも、どうして砂沙美に魔法少女になって欲しいんだろう。
そもそも魔法少女って何ができるの?
いやいや待て待てそんなことは後回しでいい。
このしゃべる猫にはもっと根本的な疑問を尋ねるべきだ。
「ねぇ・・・・・・猫ちゃん」
「魎皇鬼!」
「リョ、リョーちゃん」
「ちゃん付けはやめろ!」
「と、とにかく・・・・・・なんで猫なのに喋れるの? というか・・・・・・キミって一体何なの?」
よくぞ聞いてくれました、といった感じで魎皇鬼がふんぞり返る。
「えっへん! ボクこそは魔法の国・ジュライヘルムの住人にして、エリート魔法少年の魎皇鬼!
今はウサギの格好をしてるけど、これは仮の姿で、本当は地球人とほぼ同じ姿をしてるんだ!」
「だからどう見ても猫だって・・・・・・」
「うるさいな! ・・・・・・とにかく、ボクの使命は地球に降り立って、正しい心を持つ少女に魔法の力を与えることなのさ!」
「魔法の力を与えて、どうするの?」
「良いことをいっぱいさせる!」
「何の為に?」
「え? そ、それは・・・・・・」
善悪のバランスがうんたら。
地球とジュライヘルムの関係がうんたら。
世界の存亡がうんたら。
それには確固たる理由が存在するのだが、
まだまだ子供の魎皇鬼にはイマイチよく理解できていなかった。
「ねぇ、どうして?」
「それは・・・・・・その・・・・・・」
疑惑の目を向ける砂沙美。
「き・・・・・・決まってるだろ! もちろん正義のためさっ!!」
焦った魎皇鬼は思わず口からデマカセを言ってしまった。
「正義のためっ!?」
「そ、そうさ! 魔法の力を人助けの為に使うのさ! せ、正義を行うのに、理由なんていらないだろっ!?」
その言葉を聞いて、砂沙美は俯いてしまった。
(や、やっば〜・・・・・・デマカセだってバレちゃったかな・・・・・・?)
ガシッ!
凄い勢いで砂沙美に両手に掴まれ、ギクリとする魎皇鬼。
俯いた砂沙美の顔がぐぐぐと持ち上がっていく・・・・・・。
「そ・・・・・・・・・・・・・・・・・・それだぁ〜〜〜〜〜っ!!! それだよリョーちゃん!!」
魎皇鬼を抱き上げる砂沙美の瞳は、これ以上無いぐらい輝いていた。
「魔法という超越的な力で、どうしようもなくて困っている人達を助ける!!
これぞ究極の社会貢献、あたしの求めてたモノだよぉ〜〜〜!!!」
砂沙美の脳裏に様々なイメージが浮かぶ。
交通事故を食い止める自分・・・・・・
凶悪なテロリストを捕まえる自分・・・・・・。
巨大隕石を跳ね返して地球を救う自分・・・・・・。
「くぅ〜〜〜〜! たまらん! たまんないよっ!!」
ニヤけながらジタバタする砂沙美を見て、魎皇鬼は呆気に取られていた。
ま、まぁ・・・・・・何はともあれ乗り気になってくれたのはいいことだ。
「き、気に入ってくれてよかった、じゃあ早速このバトンで変身してみてよ!」
「うん、うん!」
魎皇鬼がクルリと回って、何だかおめでたいデザインのバトンを取り出す。
バトンを受け取った砂沙美はwktkが止まらないといった様子だ。
「そういえば・・・・・・」
砂沙美は、ふと浮かんだ疑問をぶつけてみた。
「ねぇ、何で砂沙美を選んだの? 正しい心を持ってれば別に誰でもいいんでしょ?」
「え? いや、なんとなく」
「な、なんとなく?」
「うん。ご飯ご馳走してくれたし、悪い人じゃなさそうだし」
「あー、そう・・・・・・」
魔法の国の女王の生まれ変わりだとか、
水晶玉で見つけた世界一心の綺麗な少女だとか、
そういう設定はどうやら無いようだ。
「とにかく、変身してみてよ。呪文は『プリティミューテーション・マジカルリコール』だよ」
「・・・・・・よし、おまかせっ!」
気を取り直して、砂沙美はとりあえず変身してみることにした。
「プリティミューテーション! マジカルリコール!」
魔法の光に包まれ、砂沙美の服が分解される!
もちろん透過光完備で、プライバシーの保護は万全だ!
髪から始まり、胸、腰、手足に魔法少女のコスチュームが装着される。
仕上げに額に三角のタトゥーが入れられ、小指を頬に突き立てた決めポーズ!
めでたく、魔法少女への変身は完了した。
「へー、これが魔法少女になった砂沙美なんだ!」
砂沙美はドレッサーの前でくるくる回って自分の姿を見てみる。
「こんな一瞬で服装が変わっちゃうなんて、すごい・・・・・・すごいんだけど・・・・・・」
些細なことではある。
砂沙美は地球を救えるほどのパワーを手に入れることができた。(砂沙美の勝手な推測だが)
それに比べれば、看過しても何も問題ない、非常に微小な問題である。
だが、だがしかし・・・・・・。
年頃の少女はとうとう耐え切れず、思わず確認してしまった。
「・・・・・・ダ、ダサくない、このカッコ?」
「うん、ボクもそう思う」
嘘でも否定してくれれば何とか自分を誤魔化せるというのに、
素直な魎皇鬼はあっさりと肯定してくれちゃった。
う〜ん、しかし何度見てもダサイ・・・・・・。
上半身は和服をイメージしてると思われる振袖なのだが、胸部が派手なピンクで、非常に浮いている。
加えて下は短いひらひらのスカートで、明らかに統一感が無い。
素敵な黄色いブーツも、この組み合わせでは子供が履く長靴にしか見えない。
さっきまでは意識しなかったのだが、魔法のバトンも相当ヒドイ・・・・・・。
羽子板を思わせる野暮ったい形状に、でっぷりとした厚み。
頂点部分には恥ずかしげもなく巨大なハートが意匠付けられており、色はもちろんピンクである。
小学生がこの格好をするなら、まぁ許せるかもしれないが、
砂沙美は花も恥らう中学生の乙女である。
はっきり言って、痛い。
痛すぎる。
「くぅー・・・・・・っ」
人として何か大事なものを失った気がしたが、これも正義のためだ。
そう、正義の・・・・・・。
「そうだ、それで変身したらどんな魔法が使えるの!?
なんたって正義の魔法少女だもん、そりゃあもうド派手な奴が使えるんだよねっ!?」
「えっ・・・・・・そ、そりゃあもちろん!」
「どんなどんな!?」
「え、えーと、うーんと・・・・・・」
魎皇鬼は上司の神官に言われた言葉を必死に思い出す。
(えと・・・・・・確か、新しく使えるようになった魔法は自然と使い方が分かるようになってるはず・・・・・・)
そう、何か魔法が使えるようになったのなら、自分で自然に気が付くはずなのだ。
しかし砂沙美をチラリと見てみても、目を輝かせるばかりで、そんな素振りは見せない。
つまり・・・・・・。
(こ、このお姉さん・・・・・・魔法少女になっても一つも魔法を覚えなかったんじゃ・・・・・・?)
だとしたら、何という才能のなさだろう・・・・・・。
地球産の魔法少女は過去にも沢山存在していたようだが、こんな話はとんと聞いたことが無い。
魎皇鬼は、改めて砂沙美を見る。
・・・・・・ワクワクしている。
真実を告げて、奈落のどん底に突き落とすのは、申しわけなく思えた。
「そ、そう! アレがあるよ!」
「なに? なになになぁに〜?」
「魔法少女になれば、身体能力が1.5倍になるんだ!!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
場を、静寂が満たした。
「・・・・・・それで?」
砂沙美は魎皇鬼をジト目で睨む。
流石にこんなことで誤魔化されてはくれないらしい。
魎皇鬼は方向性を変えることにした。
「お・・・・・・お姉さんは甘いよ!
魔法少女になれたからって、そう簡単に魔法が覚えられるわけないじゃない!」
「えぇ〜、今更そんなのアリぃ〜?」
「ま、魔法少女は一日にしてならずだよ! 魔法を覚えたいなら特訓あるのみ!」
「そんな〜・・・・・・」
落胆のあまり、砂沙美は膝を突いてガックリと肩を落としてしまった。
「ねぇ〜、ホントにこんなことで魔法が覚えられるのぉ〜?」
強弁する魎皇鬼に押され、しぶしぶ特訓をすることになった砂沙美だったが、
その特訓というのが川原でジョギングという、およそ魔法に関係があるとは思えない体力修行だったのが納得いかない。
格好が魔法少女のままだったので、道行く人に後ろ指を差されたりもした。
ある意味、精神修行も兼ねていると言えるが・・・・・・。
「足腰は魔法の基本だよ! つべこべ言わないの!」
「うぅ〜・・・・・・夕日がまぶしいよぉ・・・・・・」
願えば叶うのが魔法である。
一見無意味に思える特訓でも、信じさえすれば、必ず身になり、力になるのである。
・・・・・・多分。
「おや? キミは・・・・・・」
「どげげっ!?」
よりにもよって、砂沙美が一番会いたくない人に会ってしまった。
そう、恋人の天地である。
ちなみに彼がここにいるのはジョギングのためなどではなく、バイトの新聞配達のためだ。
「あ、あの、これは、その・・・・・・」
「ふふふ、何だか面白い格好をしているね」
(ぎゃ〜〜〜〜〜〜!!!)
顔は真っ赤。心の中は悶絶である。
もうダメ・・・・・・2週間は天地の顔を見れない・・・・・・。
「キミ、見かけない顔だけど、この辺りの子?」
「へ?」
天地は真顔で聞いてくる。
からかっているようには見えない。
「あ、あたしは、その・・・・・・プ、プリティー・・・・・・そう、プリティサミーって言います!」
「プリティサミーちゃん?」
「は、はい! 今日からご町内の平和を守ることになった魔法少女なんです!」
「ふぅ〜ん?」
「ど、どうぞこれからよろしくお願いします!」
砂沙美、いやプリティサミーはぺこりと頭を下げる。
「そっか、こちらこそよろしくね、プリティサミー。町内の平和は任せたよ」
天地は特に動じた風もなく、サミーの頭を撫で撫ですると、そのまま行ってしまった。
「し、心臓が止まるかと思った・・・・・・。でも、素顔丸出しなのによくバレなかったなぁ」
「当たり前だろ、砂沙美ちゃんは魔法少女になったんだから」
「そんなもんなの?」
「うん」
「う〜ん・・・・・・」
砂沙美にはどうも納得いかないが、まぁそういうものらしい。
「ともかく、魔法少女としての名前も決まったし、明日からじゃんじゃん正義の為に働こうね!」
「魔法少女としての名前って・・・・・・・・・・・・え〜、プリティサミーのこと〜!?」
「一度自分で名乗っちゃったんだから、それで通すしか無いだろ?」
「そんなぁ〜・・・・・・事前にもっとマシな名前を考えておけば良かったぁ〜!」
後悔先に立たず。
魔法少女プリティサミーこと、萌田砂沙美の戦いは、まだ始まったばかりである。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
天野美紗織はゲームセンターにいた。
服装は学校の制服のまま。
時間は7時過ぎ。
立派な非行だが、これが初めてというわけでもなかった。
『K・O! YOU WIN!』
女王様というあだ名がつくほど強気な性格と外見を持つ女格闘家が画面内で勝ち誇ると、
美紗織の頭上で連勝をカウントしている数字が、また一つ増える。
美紗織はピアニスト志望だった。
幼い頃から素早く正確に動かす訓練をしてきた指は、画面の中のキャラクターへ彼女の意志を正確に伝える。
加えて、気に入った物のことはとことんまで知り尽くさないと気が済まない性格の美紗織はこのゲームのことを調べつくし、
結果として、美紗織はここいらの界隈では敵なしというほどの強豪プレイヤーとなっていた。
美紗織がゲームセンターに入り浸るようになったのは、ひとえに退屈だったからだ。
小学生の頃からずっと遊んでくれた友達は、今は恋愛に夢中。
家に帰ってもどうせパパはまだ帰っていない。
ならばと入った合唱部はどうにも馴染めなかったため、すぐに行かなくなった。
一人ぼっちの家で時間を持て余すよりは、このまま不毛な連勝記録を積み上げ続ける方が、美紗織にはよっぽど有意義に思えた。
『K・O! YOU WIN!』
『全く下らない時間を過ごしちゃったわね』
『K・O! YOU WIN!』
『弱いわね! 出直しておいで!』
『K・O! YOU WIN!』
『ママのおっぱいでもしゃぶってな!』
女王様が敗者を罵倒するごとに、美紗織の頭上のカウントが進んでいく。
それに比例して、画面の中の女王様は、どんどん残虐になっていった。
最初は正拳突きや回し蹴りを使った無難な戦法だった女王様だが、
徐々に相手に馬乗りになったり、踏みつけたりといった、相手に屈辱を与える技が増えていく。
裏ワザでセレクトできる勝利ポーズも、どんどん挑発的なものに変わっていく。
弱者を見下し、踏みにじることに快感を覚えている……美紗織には、そう思えた。
……その女王様を操っている自分のことは、意識的に無視をした。
自分のことなど、今は何も考えたくなかった。
8時を回った頃、美紗織は家路についた。
ゲームセンターは深夜までやっていたが、あまり身体が丈夫でない美紗織は夜更かしをすることを嫌った。
適当に買い食いをして腹を満たしつつ、美紗織はゆっくりと歩を進める。
既に家は大分近くなっており、周囲も住宅地だ。
人通りもあまりなく、辺りは静まり返っている。
「あ・・・・・・」
美紗織の目に、道端に倒れて動かない緑の鳥が写った。
小鳥ではない。美紗織の両手に収まりきらないほどの大きさだ。
ぼんやりとしていた美紗織の目の焦点が一気に定まる。
「大変、怪我してるのかしら!?」
あわてて駆け寄り、抱き上げるが、鳥はピクリともしない。
しかし鼓動は感じられるので、まだ生きているのは間違いないようだ。
「・・・・・・獣医さんなら確か2丁目の辺りにあったわよね? 急がなきゃ!」
美紗織は鳥を抱きかかえ、獣医を目指して一目散に駆けていった。
(・・・・・・かあ・・・・・・さん・・・・・・)
鳥がうわごとで人間の言葉を喋ったが、
かすかだったその声に美紗織が気付くことはなかった。
おおーいいねいいね
天地無用は昔読んだことあるけど
魔法少女プリティーサミーって天地無用から
キャラだけ借りて新しく設定をつくったスピンアウト作品だっけ?
>>177 そうです、元がパロディから始まっただけに、
パロディ系魔法少女アニメの走りとも言われてます
ところでちょっと訂正します
冒頭で砂沙美の名前が『河合砂沙美』になってますが、
これは間違いで、『萌田砂沙美』が正しいです
直前まで迷ってて直し忘れた俺のアホーーーー!!!
赤ずきんチャチャとかもそうだよな
>キャラだけ借りて魔法少女モノ
180 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/19(日) 21:56:54 ID:UQYgmdKv
プリティサミーの第二話が書き上がりましたので投下させていただきます
今回は、全国百兆百億百万とんで百一人のファンを持つあの人が初登場しますw
第二話 『サミー、初陣! 敵は悪の魔法少女!?』
「あ、鳥さん目が覚めた?」
「・・・・・・(キョロ、キョロ)・・・・・・」
緑の鳥は、天野美紗織の家で目を覚ました。
獣医の診断ではただ気絶しているだけとのことだったが、
どうにも心配だった美紗織は、家まで連れて帰って毛布を重ねた布団に寝かせてあげたのである。
今は土曜日の朝8時。
緑の鳥は、丸々半日以上寝てたことになる。
「身体、大丈夫? 痛いところとか、無い?」
「ク・・・・・・クルッポー」
「そう、良かった!」
美紗織は鳥の返事を肯定と決め付ける。
鳥は、少々戸惑っている様子だ。
「ねぇ、少しお話しない?」
美紗織は寝そべり、顔を鳥に近づける。
「私ね、鳥さんって大好きよ。
自由に空を飛ぶことができるなんて、まるで魔法みたいだもの」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
鳥をまっすぐに見つめる美紗織。
その瞳の奥底に、深い悲しみや寂しさが隠されていることに、鳥は気付いた。
「・・・・・・魔法・・・・・・か・・・・・・。魔法があれば・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・ふふっ、私・・・・・・いつまで子供みたいなこと言ってるんだろ・・・・・・」
自嘲気味に目を伏せる美紗織。
そんな美紗織を、鳥が何か言いたげな目で見ていたが、ほどなく顔を逸らした。
「・・・・・・あっ」
ふと、美紗織は壁にかかった時計を見る。
もう9時に近い・・・・・・いつもならピアノを練習してる時間だ。
「鳥さん、まだ無理はしないでね。ここは安全だから、ゆっくり寝ててね」
そう言うと、美紗織は立ち上がり、部屋を出て行く。
去り際に立ち止まり、鳥さんに微笑みかけるのも忘れなかった。
鳥は、布団に横たわりながら自分の今後のことを考えていた。
鳥には留魅耶という名前があった。
彼は地球の住人ではない。生まれも育ちも魔法の国・ジュライヘルムだ。
彼が地球にやってきたのは、不運な事故だった。
空間移動魔法の不具合で生まれた異空間に吸い込まれ、気が付いたら地球に飛ばされていたのだ。
とっさに鳥の姿に変身して魔素の流出を抑えることが出来たのが不幸中の幸いか。
とりあえずは命が助かったことに安堵しつつも、陰鬱な思いは拭えなかった。
留魅耶は知っていた。
地球では、ジュライヘルムの住人が生きていくことはできないことを。
ジュライヘルム人は魔素と呼ばれる魔法物質で身体を構成している。彼らにとって魔素は必須の物質だ。
だが魔素が存在しない地球では、ジュラウヘルム人は魔素を大気に奪われ、1分もしない内に空に溶けてしまうのだ。
もちろん、留魅耶が今生きている以上、例外はある。
まだ魔力の弱い子供の内なら、動物の姿に変身することで魔素の流出を抑えられるのである。
しかし、成長期である彼の魔力は刻一刻と強大化しており、いつ臨界点を迎えて魔素の流出が始まってもおかしくない。
このままジュライヘルムの住人に発見してもらえなければ、どのみち自分は死ぬしかないのだ。
だが、地球に居る自分をジュライヘルム人が見つける確率など、砂漠で無くした針を見つける確率に等しい・・・・・・。
ならば望みの薄い救助に期待するよりも、このまま地球で死ぬまで楽しく暮らす方法を探す方が健全かもしれない。
(・・・・・・ごめん、母さん・・・・・・)
留魅耶はジュライヘルムへの帰還を諦めると同時に、未だジュライヘルムに居るであろう母に謝った。
それを最後に一切の未練を捨て、今後の暮らしについて考え始める。
ポロロン・・・・・・ポロン、ポロン・・・・・・。
ふと、部屋の向こうから流れてくる旋律に気付く。
美紗織がピアノの練習をしているのだ。
(・・・・・・そうだ、あの子・・・・・・)
留魅耶は自分を助けてくれた少女のことに思いをめぐらす。
(あの子、鳥の姿をしているとは言え、見ず知らずの僕を助けてくれたんだ。何かお礼できないかな)
優しいけど、触れたら折れてしまいそうな繊細な心の持ち主・・・・・・。
留魅耶から見た美紗織は、そんな印象だった。
お礼のことを抜きにしても、何とか力になってあげたいと思わせる少女だった。
(そうだ、魔法が欲しいとか、そんなことを言ってたじゃないか!)
地球の住人が魔法の力に自然に目覚めることは絶対に無い。
しかし、ジュライヘルムの住人はそれを目覚めさせる力を持っていた。
(あの子なら、魔法の力を正しいことに使ってくれるかも・・・・・・)
もちろん会ったばかりで素性も良く知らない少女だ、その決め付けに何の根拠も無い。
だが、留魅耶はあの少女が悪い子ではないと、直感的に感じていた。
ピアノが鳴り止む。
時計を見ると、時刻は10時を回っている。
向こうであちこち歩き回る音が聞こえた後、美紗織は留魅耶の元に戻ってきた。
「鳥さん、おなか空いたでしょ? ゴメンね、こんな物しかないけど・・・・・・」
美紗織が持ってきたのは、焼いたパンを削り落とした物だ。
お世辞にもご馳走とは言えなかったが、しばらく何も食べていなかった留魅耶はありがたく頂いた。
「うふふ、いっぱい食べてね」
嬉しそうに留魅耶がパンくずを食べるのを見つめる美紗織。
(やっぱり、とても優しい子だ・・・・・・この子ならきっと大丈夫!)
留魅耶は意を決して、美紗織に話しかけてみることにする。
「あ、あのっ・・・・・・!」
「だ、誰っ!?」
警戒心の強い美紗織は、不意にかけられた声に驚いて激しく後ずさる。
声の主を探してきょろきょろするが、それが目の前の鳥だとは思いもよらない様子だ。
「い、いや・・・・・・その・・・・・・」
所在無さげな声を出す留魅耶に、美紗織はおずおずと近づいて、抱き上げる。
「・・・・・・鳥さん・・・・・・なの・・・・・・?」
「う・・・・・・うん・・・・・・」
恐々として美紗織の次の言葉を待つ留魅耶だったが・・・・・・
「なぁんだ、九官鳥さんだったのね」
お約束のボケをかまされてしまったので、とりあえずズッコケておくことにする留魅耶。
が、すぐに気を取り直す。
「違うんだ・・・・・・僕、今はこんな姿してるけど、本当は魔法の国から来た魔法少年なんだ」
「え・・・・・・」
美紗織は、思ったより驚かなかった。
疑っている様子も無い。
そっと、留魅耶を見つめるだけだ。
「本当・・・・・・なの?」
二人の目が合う。
吸い込まれそうなエメラルドグリーンの瞳に気圧され、留魅耶はしばし言葉を失う。
「・・・・・・ほ、本当さ・・・・・・キミが望むなら、キミに魔法の力を与えてあげることも出来る」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
美紗織は少し思索すると、再び留魅耶に話しかける。
「・・・・・・私、天野美紗織って言うの。鳥さんの名前は?」
「留魅耶・・・・・・留魅耶って言うんだ」
「ルミヤ・・・・・・。・・・・・・ルーくんって、呼んでもいい?」
「えっ・・・・・・う、うん、全然OKだよ!」
「えへへ・・・・・・ありがと、ルーくん」
美紗織は留魅耶のおでこに軽くキスをした。
その動作は自然でさりげなく、いやらしさはまるで感じなかった。
「そ、それで、その・・・・・・僕、助けてくれた美紗織にお礼がしたくて・・・・・・」
「魔法の力、だっけ。私、魔法が実在するなら、一度使ってみたかったの」
「それじゃあ・・・・・・」
「うん、お願い♪」
留魅耶は扇形の魔法のバトンを取り出した。
実はこのバトン、同級生の樋香里ちゃんにプレゼントする為に買った物だったのだが・・・・・・。
・・・・・・ええいっ、未練は捨てると決めたばかり!
ジュライヘルムのことはもう考えるまい。
「このバトンを持って、『ピクシィミューテーション・マジカルリコール』って叫ぶんだ」
「うん、分かった!」
嬉しそうにバトンを受け取った美紗織は、力強く・・・・・・しかし控えめに叫んだ。
「ピクシィミューテーション! マジカルリコール!」
光に包まれて、美紗織が変身する。
一瞬の後、光が収まった後には一人の魔法少女が立っていた。
残念ながら、主人公以外の魔法少女の変身バンクを作る予算は無い。
「はーい、本邦初公開! これが魔法少女に変身した美紗織ちゃまよん♪」
「な、なんだか、雰囲気変わったね?」
留魅耶の言うとおり、変身した美紗織はまるで別人のように変貌していた。
まず、変身に伴い、黒かった髪が輝く金色に変わっていた。
口元は赤いベニが塗られ、目元には軽くシャドゥが塗られる。
清楚だった服装は、肩出しへそ出しのボンテージスカートに変わり、
両手足はそれぞれ肘膝まであるロンググローブ・ロングブーツを装着している。
色は全部真っ黒。思わず女王様と呼びたくなるようなコーディネートだ。
目元もキリリと釣り上がっており、元の大人しい美紗織の面影は何処にも無い。
額のカチューシャから一本だけ生えている羽の飾りだけが、
このセクシィファッションの中で唯一、女の子らしい可愛らしさを演出していた。
「これが魔法の力・・・・・・何だかパーフェクトにデリシャスな感じねぇ。
さぁー、ハッピーなエビワン! スーパーな魔法少女がこの世に誕生したことを祝福するのよ〜!」
美紗織はワケの分からないことを言いながら、
いつの間にか現れていたお立ち台の上で一人デビューイベントを行っていた。
(な、なんなんだろう、このテンション・・・・・・)
内気な所も魔法の力で矯正されたのだろうか。
だとしたら、今の美紗織が本来の美紗織の性格・・・・・・?
「うんうん、コスチュームも決まってるわ!
これなら堂々と悪の魔法少女を名乗ってもこれっぽっちも恥ずかしくないわねい!」
ドレッサーの前でくるくると―――ただし縦回転で―――回って自らの姿を眺める美紗織。
しかし何で名乗りたいのが悪の魔法少女なのか。
アニメとか見てる時に悪役に感情移入するタイプだったのだろうか。
「あーらあら、こんなにどっさりラブリィフラワー!
う〜ん、人気がありすぎるってのも困ったちゃんよねぇー」
自分の魔法で生み出した花束を積み上げて悦に浸る美紗織。
自作自演のデビュー劇に飽きる様子は一向に無い。
「み、美紗織、一旦ちょっと落ち着こうよ」
「ノンノン! ルーくん、それはミステイクよ! イージーミスよ!」
光の速さで留魅耶の顔前にクローズアップされたハイテンション美紗織は、ちっちっちっと指を振る。
「アーイム、ナット美紗織! アイアム、ミサ! 魔法少女・ピクシィーーーーミサッ!!」
もし突然に魔法少女になってしまった時でも困らないようにと、あらかじめ魔法少女用の名前は考えておいたのだ。
それが無駄になったりしなくて本当に良かったと、美紗織・・・・・・いや、ミサは満足気であった。
あれから、マジックショーや撮影会や脳内インタビュー等々、
延々と一人遊びを続け、小一時間ほどでやっとミサは満足したようだ。
流石に少々疲れたらしく、肘枕で寝っころがっている。
「いやー、マジックガール人生ってほんとハッピーねぃ。
魔法の力を与えてくれたルーくんに感謝感謝、サンクスギビングだわね」
私見で恐縮だが、寝っころがって耳をほじりながら言われても、感謝の気持ちは伝わらないように思う。
「ねぇ、ルーくん。そう言えば何でルーくんは地球にやってきたの?
もしかしてミサに魔法の力を与えてくれるためー?」
「いや、それが・・・・・・」
留魅耶はミサに事情を説明した。
「・・・・・・えぐっ、えぐっ・・・・・・なぁんて可哀想なの、ルーくん・・・・・・」
大げさに顔をくしゃくしゃにさせて大量の涙をボロボロとこぼすミサ。
泣いてる時までいちいちテンションが高い。
「えぐっ、ひぐっ・・・・・・ジュライヘルムって、やっぱり遠いの・・・・・・?」
「ジュライヘルムは月の裏側にあるんだ。
裏側って言っても、物理的な話じゃなくて、別の次元って意味でだけど」
「うぅっ、そりゃ遠いわねぃ・・・・・・母を訪ねて3千光年ってところかしら」
それにしてもミサはいつまでも泣き止む気配が無い。
「い、いい加減に泣き止んでよ・・・・・・同情してくれるのは嬉しいけど・・・・・・」
「それもそーね」
ミサは涙をぬぐうと、パッと泣き止んでしまった。
あまりの変わり身の早さに留魅耶も呆れている。
「さぁってと、泣くだけ泣いたらなんかスッキリしちゃったわねぃ。
空もイッツファインでいいお天気だし、ちょっくら町におでかけでもしてこようかしらん」
ガラガラっと勢い良くベランダの戸を開けるミサだが、足元の何かに気付く。
「おおっと、このボーイの世話を忘れてたわ!」
ミサは慌ててベランダに出ると、プランターに植えてある薔薇の様子を見る。
この薔薇は美紗織が大事に育てているもので、ミサに変身してもその習慣は変わらないようだ。
「ま、こんなとこね。じゃあルーくん、一緒に町に行きましょ」
薔薇の世話を終えると、ミサはベランダの淵に飛び乗る。
「ま、待って美紗織・・・・・・いや、ミサ!
変身したまま町に出て、一体何をするつもりなの!?」
「何って・・・・・・決まってるでしょ?」
ミサは留魅耶に投げキッスを飛ばす
「ワ・ル・イ・コ・ト ・・・・・・よ♪」
そう言うと、ミサはベランダから飛び降りる。
ここは高層マンションの5階だ。
思わず声を出す留魅耶だが、すぐに宙に浮き上がるミサの姿が見えた。
(あっという間に飛行魔法を使いこなしている・・・・・・。この子、魔法の天才かもしれない・・・・・・!)
「ルーくぅん、早く来ないと置いてくわよぉー?」
「ま、待ってよミサ!」
留魅耶は慌てて両手をバサバサさせてミサについていく。
町の何処へ行く気かは分からない、というかミサ本人も決めて無いだろうが・・・・・・。
とにかくミサを一人で行かせるのはあまりに不安だった。
おそらく、というか絶対に何かトラブルを起こすに違いなかった。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「ウチの犬が帰ってこないの!」
ガッシャーン
「カラスに婚約指輪取られちまった!」
バサッバサバサッ
「おい、八百屋のゲンさんと魚屋のタケさんがケンカおっぱじめたぞ!」
ドタゴタバッタン
「はぁっ、はぁっ・・・・・・」
萌田砂沙美こと、プリティサミーは疲弊していた。
カラスの巣を目指して木を上るうちに頭はフンだらけになり、
ゲンさんとタケさんのケンカを止めようと身体は痣だらけ。
オマケに足は行方不明の犬を探してクタクタだ。
「ありがとね、サミーちゃん。
この辺りに砂沙美ちゃんっていう子が住んでるんだけど、あなた、親切なところがその子にそっくりよ」
「は、はぁ・・・・・・それはどうも・・・・・・」
サミーが抱えた犬を受け取ると、主婦のオバチャンはにこやかに去っていった。
「・・・・・・ねぇ、リョーちゃぁん・・・・・・。
人助けするのはいいんだけど、ホントにこんな原始的な手段しか無いのぉ・・・・・?」
「ボクに言われたって困るよ!
サミーがとっとと魔法を覚えてくれれば、ボクだってあんな目に合わないですんだんだから!」
魎皇鬼は先ほどオバチャンの犬に追いかけられ、酷い目に合ったのだ。
昨日のサミーは、すっかり日が落ちるまで延々とジョギングを続けたのだが、結局何の成果も無かった。
当然、砂沙美は魎皇鬼に文句を言ったが、それで何かが解決するわけでもない。
二人は話し合った結果、人助けを行っている内に魔法の力が開花するに違いないという都合のいい目論見に賭けることにしたのだ。
・・・・・・まぁ聞いての通り、都合のいい目論見がそう都合よく当たったりはしなかったわけだが・・・・・・。
「はぁ〜っ・・・・・・魔法の使えない魔法少女なんて聞いたことも無いよ・・・・・・」
「くじけちゃダメだ! これは正義のためなんだぞ!」
その後もゴミを拾ったり、横断歩道が渡れなくて困ってるお婆さんを先導したり、子供の怪我の応急処置したりと、
サミーはあれこれ頑張った。とにかく頑張った。それはもう、頑張った。
「・・・・・・よく考えたら、普段とあんまりやってること変わってないじゃん・・・・・・何の為の変身なのよ・・・・・・」
「ま、まぁまぁ・・・・・・そのうちにきっと魔法を修得できるって!」
「だからそれっていつ―――」
「ちょっとヒロアキ、その女誰よ!?」
突如として、商店街に甲高い女の声が響いた。
サミーを含めた通りすがりの人たちは、思わず声の元を見る。
そこでは、二人の女が一人の男を取り合っていた。
「あんたこそ誰よ! 私はヒロアキの彼女よ!」
「ヒ、ヒロアキの彼女は私よっ!!」
「ふ、二人とも落ち着いて・・・・・・」
「「ヒロアキは黙ってて!!!」」
「は、はい・・・・・・」
どんどん修羅場エスカレートし、暴れる女達は周りの店の商品を吹き飛ばしていく。
これは止めねば! 正義の魔法少女として!
「ふ、二人とも落ち着いてください! 落ち着いて三人で話し合えば・・・・・・!」
「うるさいわね、関係ないんだから引っ込んでてよ!!」
「で、でも、周囲の人に迷惑が・・・・・・」
「アンタのその変な格好もよっぽど周囲の迷惑よ!!」
「そーよそーよ!!」
「う、うぅ・・・・・・」
取り付くシマもない。
それにこの魔法少女スタイルのことを突かれるとイタい・・・・・・。
「ど、どーしよリョーちゃん・・・・・・」
「ボ、ボクに言われても・・・・・・」
結局、サミー達は遠巻きに騒動を眺めることしかできなかった。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「・・・・・・ねぇ、ルーくん。あれって・・・・・・」
「う、うん・・・・・・信じられないけど、魔法少女だ!」
上空を飛んでいるミサさま御一行は、カップル達の修羅場の前で途方にくれてる魔法少女の姿を見つけた。
「じゃあ隣に居るウサギちゃんは?」
「多分、ジュライヘルムの住人に間違いないよ!」
留魅耶は少し思索する。
「・・・・・・そうか、今はちょうど魔法少女の儀式の時期だったんだ!
おそらく正式な使命で地球にやってきだろうあいつなら、ジュライヘルムへ帰る手段も持ってるはず!」
「やったじゃないルーくん! これで家まで帰れるわね!」
「うん!」
「さぁ、そうと決まればあのウサギちゃんを拉致監禁よっ!」
力強くビシッと指を指し、作戦の遂行を宣言するミサ。
「え〜〜〜!? 普通に話しに行こうよ!」
「ルーくんったら、おバカさんねぇ・・・・・・そんなの、ちっとも悪の魔法少女じゃないじゃない!」
「うぅ・・・・・・」
意味は良く分からないが、逆らえる雰囲気じゃなさそうだ。
「さぁ、本体(魔法少女)の方は私が引き付けておいてあげるから、とっととあのウサちゃんを狩り取ってくるのよ!」
「わ、分かったよ・・・・・・」
留魅耶はしぶしぶ頷いた。
ミサは地上に降り立つと、まずコホンと咳をして喉の調子を整える。
しかる後、ポーズを決めてから声を張り上げる。
「はーい、そこのプリティガールとウサギちゃん、こっち注目!」
「えっ?」
「ボクのこと?」
『プリティ』と『ウサギ』にそれぞれ反応したサミーと魎皇鬼が振り返る。
「・・・・・・な、なぁに・・・・・・サミーに何か用ですか・・・・・・?」
振り向いたら黒ずくめのボンテージファッションの金髪少女が居たのだから、
サミーが怪訝な表情をしたのも仕方の無い話だ。
一方、魎皇鬼はミサが何者なのか感じ取ったようだ。
「その格好・・・・・・まさか、キミも魔法少女―――うわっ!?」
上空から飛来した留魅耶の足が、魎皇鬼の頭を捕らえた。
ガッシリと固定して、そのまま空に連れ出す。
「な、なんだよ、こら離せ!」
ジタバタもがく魎皇鬼だが、空中ではどうにもならない。
「リョ、リョーちゃん!!」
サミーが叫ぶのもむなしく、魎皇鬼はそのまま連れ去られてしまった。
後を追おうとするサミーだが・・・・・・。
「ハロー、ナイストゥーミーチュー、もう一人の魔法少女!」
行く手に漆黒の魔法少女が立ち塞がった。
「何よ、邪魔しないでよ! リョーちゃんを助けに行くんだからっ!」
「あのウサちゃんなら後で返してあげるわよ。そんなことより・・・・・・」
ミサは自分じゃない方の魔法少女をジロジロと眺める。
「なぁによ、ヘンなカッコしちゃって。ノーセンスもいいとこね」
「あ、あんたに言われたくなーーーい!!」
確かに、いかがわしさのレベルではどっちもどっちである。
「そう言えば、自己紹介がまだだったわね」
ミサが指を鳴らすと、何処からともなくスポットライトが彼女を照らし始める。
「あたーしの名前は、人呼んで魔法少女・ピクシィミサ!!
破壊と混沌とカオスを愛する、破壊の女神ぃ〜〜〜!!」
名乗りながら、ミサは両手を広げて大空を仰ぎ見るポーズを取る。
ここまでやられては、サミーも正義の魔法少女としてはお返ししないワケにはいかない。
「あ、あたしは・・・・・・プ、プリティサミーよ!
町内の平和を守る正義の・・・・・・ま、魔法少女なんだからっ!!」
バトンをズビシッとミサに突きつけるサミー。
だが、手元は羞恥で少々震えている。
。
連投規制解けないので、今日はもう寝ます
半端になってしまって申し訳ありません
「う〜ん、前口上でテレてるようじゃ、まだまだおこちゃまね。サ・ミ・イ♪」
「う、うっさい! サミーは昨日デビューしたばっかりなのよ!」
「ふふん、あたーしなんてついさっきよ、つ・い・さ・っ・き♪」
「ムッキー!!!」
ムカついてるサミーを、ミサは再びまじまじと眺める。
「・・・・・・それにしても、何だかユーとは宿命チックなものを感じるわねぇ。
なんだか昔からずっと一緒に居たような、ズタボロに虐めてあげちゃいたくなるような・・・・・・」
「全然話が繋がってないよ! 意味わかんないよ!」
「まぁいいわ。あんたの実力、この魔法で試してあげる!」
「何!? 何をするつもり!?」
「コーリング・ミスティクス!!」
ミサは扇形のバトンをおおげさにくるくる振り回して魔力を溜めた後、
正眼に構えて一気に魔力を解き放った!
ちなみにこちらは変身と違い、しっかりバンクが用意されていた。
これからよっぽど多用する魔法なんだね。
放たれた魔力は、未だに言い争いを続けていた修羅場のカップル達3人に命中する。
光に包まれた3人は、一つに纏まって徐々に姿を変えていく。
そして現れたのは・・・・・・。
「ひどぃわぁ〜〜〜〜!! 私とは遊びだったのね〜〜〜!! よよよ」
ウェディングドレスを着た、妙な女だった。
明らかに人間より一回り大きく、顔は絵で描いたようなデフォルメされたブス子ちゃんだった。
「な、なに!? 一体何が起こったの!?」
「この子は破談女!! 人の悪意に私が魔力を与えることで生み出すことの出来る、ラブラブモンスターよ!!」
「ら、らぶらぶ・・・・・・?」
サミーは破談女を見る。
分厚い唇と、泣き腫れる以前の問題でドデカい目玉がブサイクだった。
「モンスターは分かるけど、一体どの辺りがラブラブなのよっ!」
「シャラップ! 人の美的感覚にケチつけるような奴ぁ、大成しないわよ!」
「さ、さっきはサミーの格好をバカにした癖に!」
「ま、それはそれとしてぇ」
ミサはビシッとサミーを指差し、命令する。
「さぁ、破談女! そこのおこちゃま全開な魔法少女さんと遊んであげるのよ!」
「ラジャーです、ミサさま〜!」
破談女の巨体がじわじわとサミーに迫る。
魔法少女と言っても、こんな危機的状況の経験などないサミーは身動きが取れない。
「サミーちゃぁん・・・・・・可愛いわぁ・・・・・・」
「や、やだ・・・・・・近寄んないでっ!!」
「サミーちゃん・・・・・・私と一緒になってぇ〜〜〜〜!!」
「いやだああああああああああああ!!!」
逃げるサミー。
しかし破談女は素早く飛び掛って・・・・・・。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「こ、この野郎! ボクに何の恨みがあるんだっ!?」
スーパーの屋上でやっとこさ開放された魎皇鬼は、当然留魅耶に食って掛かる。
「手荒な真似をして悪かった! でも頼みがあるんだ!」
「頼み?」
留魅耶は深々と頭を下げる。
つっても、鳥の姿ではサマにならんが・・・・・・。
「僕は事故で地球まで飛ばされてしまったんだ・・・・・・。
でも、僕は空間移動魔法の類は一切使えないから帰れない・・・・・・。
・・・・・・頼む、キミの力で僕をジュライヘルムまで送り届けてくれっ!」
「そんなこと言われても・・・・・・ボクだって空間移動魔法なんて使えないよ!」
魎皇鬼は戸惑い顔で言うが、留魅耶は引き下がらない。
「そんなワケないだろう!? なら、お前はどうやってジュライヘルムに帰るんだよ!」
「期限が来たら、自動的に発動する帰還魔法をかけてもらったんだ」
段々と雲行きが怪しくなってきたことを察し、留魅耶の顔が曇っていく。
「じゃ、じゃあ・・・・・・ジュライヘルムと通信する手段は・・・・・・?」
「無い。全部事後報告」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
留魅耶が放心してしまったのに気付き、流石に魎皇鬼もフォローを入れる。
「ま、まぁ心配するなよ! ジュライヘルムに戻ったら、救助の要請をしておくからさ!」
「おまえ・・・・・・帰るのいつ?」
「ん、大体一年後だけど」
それを聞いて、留魅耶は本格的にうな垂れてしまった。
「僕・・・・・・半年後に誕生日があるんだ・・・・・・10歳の・・・・・・」
「げっ・・・・・・」
魔素の流出が始まるのは、微妙に個人差があるものの、10歳の誕生日前後がほとんどだと言われている。
「・・・・・・ま、まぁ強く生きろよ! イイことあるさ!」
ビッ!と親指を立てて力強くエールを送る魎皇鬼。
もちろん、留魅耶の心には届いてはいなかった。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「あはははは、弱いわサミー! ベリーベリー弱すぎるわよ!」
「う、うええっ・・・・・・お、重い・・・・・・重いよっ・・・・・・!」
「サミーちゃん、あたしたちはずっと一緒よ〜! よよよ」
何とか気を持ち直した留魅耶と魎皇鬼が駆けつけた時、
サミーは破談女のウェディングドレスに押し潰されていた。
ミサの魔力で生まれた破談女の強さは圧倒的だった。
というか、サミーが弱すぎて勝負になってなかった。
「も、もういいよミサ! (不発だったけど)もう話はついたんだっ!」
「えー・・・・・・もおー・・・・・・?」
顔まで青くなっているサミーを見た留魅耶が慌てて仲裁に入るが、
ミサはまだ遊び足りないといった様子で、不満そうだ。
「・・・・・・破談女、どいたげなさい」
「ラジャーですぅ、ミサさま」
「ほへぇ・・・・・・」
破談女が上から退き、サミーはやっと一息つくことが出来た。
「サミー、大丈夫?」
「ダメ・・・・・・」
魎皇鬼が心配して声をかけるが、
サミーはぐったりと脱力して、立ち上がることすら出来ない。
「・・・・・・ま、それはそれとして♪」
ミサはサミーに向き直る。
「さぁ、トドメよサミー・・・・・・あんたもラブラブモンスターになっちゃいなさい!」
「えぇっ!? 良く分からないけど今ので戦いは終わったんじゃないの!?」
サミーは慌ててガバッと起き上がるが、ミサは既に魔法の発射準備を終えている。
「悪の魔法少女にルールなんてないのよ! 喰らいなさい、コーリングミスティクスッ!!!」
「いやあああああああああああああああああああああああ!!!」
サミーにミサの魔力が襲い掛かる!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
シュポンッ
「・・・・・・・・・・・・あり・・・・・・・・・・・・?」
確かに命中したミサの魔法。
しかし、サミーには何の変化もなかった。
ミサはそそくさと留魅耶に擦り寄り、耳打ちした。
「・・・・・・ねぇ、ルーくん。
魔法少女にはミスティクス効かないとか、そういうルールがあったりすんの?」
「いや・・・・・・そういうのは関係なく誰にでも効くはず・・・・・・。
魔法障壁とかで防げば別だけど、今のはどう見ても直撃したし・・・・・・」
「ふふん、オロカなり悪の魔法少女!」
そう言って、得意げに仁王立ち―――場所がサミーの頭上というのが難点だが―――したのは魎皇鬼だった。
「ミスティクスは悪意を増幅してモンスターに変える魔法!
よって、悪意が存在するはずもない正義の魔法少女に効くワケがないのさぁ〜っ!!」
ズビシ!とミサに人差し指を突きつける。眉毛も何故か濃くなっている。
「あんですって〜〜〜!? 悪意を持たない人間なんてこの世に存在していいの!?
いい子ちゃんすぎるにもほどがあるっちゅーの!!」
バトンを地面に叩きつけて八つ当たりするミサ。
「チャンスだサミー! 反撃だっ!」
力強く宣言する魎皇鬼。
「は、反撃って言われても・・・・・・」
「パンチでもキックでも何でもいいから! 戦いってのは相手をブチのめせば勝ちなんだから!」
正論かもしれないが、魔法少女としてそれはどうなのか。
「く、くそう、こーなりゃもうヤケだよっ!」
サミーは立ち上がり、ヤケクソでミサに向かって突進する。
「ホワット、肉弾戦を挑む気なの!? 魔法も使わずに!?」
「う、うるさいな、これでも喰らいなさい!!」
サミーはバトンを思い切り振りかぶると、即興でつけた技の名前を叫ぶ。
「プリティ・スラァッシュ!!」
サミーは渾身の力を振り絞り、バトンを振り下ろす!
「甘いわね! そんな見え見えの振り下ろし、簡単に受け止めて―――」
ガキィン!
・・・・・・ゴキリッ。
嫌な音がした。
ミサの手首が豪快に曲がった音だ。
「ぎゃっひぃいいいい〜〜〜〜〜〜〜!!?」
激痛で転げまわるミサ。
攻撃自体はバトンで受け止めたものの、ダメージは深刻のようだ。
「そ、そうか!」
魎皇鬼が叫ぶ。
「ただでさえ魔法少女の身体能力は常人の1.5倍!
それだけでも十分強力だけど、サミーは昨日の夕方のジョギング、
そして今日は人々のお手伝いでずっと走り回っていたんだ!
よって、尋常じゃなく鍛わっている足腰・・・・・・当然、そこから繰り出される一撃は強烈無比!
あんな魔法に頼り切って堕落した、軟弱な悪の魔法少女じゃ耐えきれないに決まってる!」
要は『身体、鍛えてますから!』ってことだが・・・・・・そんな力説するようなことか?
「・・・・・・や・・・・・・やっちゃいなさい破談女っ!! あたしのか弱いリストの仇を討つのよっ!!」
「はぁーい!」
自分で言ってりゃ世話ねーなって感じだが、とにかく自分で身動きできないミサは破談女をけしかけた。
今度は遊びじゃなく本気だ。流石に手首の恨みがこもっている。
だが・・・・・・。
「ええーーーいっ!」
再び渾身の力を振り絞ったバトンの振り下ろしが、今度は破談女の脳天に直撃した。
「は、破談女ーーーーーっ!?」
「ミ・・・・・・ミサさま・・・・・・・・・・・・仇討てなくて、ごめんなさい・・・・・・ガクリ、バタッ」
自前で擬音をつけながら、破談女は倒れた。
「・・・・・・あ、恋人は大事にしたいとダメよ〜ぅ?」
それだけ言うと、破談女はボムッと消えてしまった。
その後には、破談女の元となったカップル達が折り重なって倒れていた。
「は、破談女・・・・・・あなたのことは忘れないわ・・・・・・オイオイ・・・・・・」
何処からか取り出したハンカチで涙をぬぐうミサ。
「・・・・・・ううっ・・・・・・サミー、そういうワケだから今日のあたしはもう戦えないわ・・・・・・。
シーユーネクストタイムって言うかー、また来るからよろしくねーって言うかー・・・・・・」
ズズズと鼻をかみながら言うミサ。捨て台詞まで適当かい。
「もう来ないで! ケンカ売られても迷惑なんだから!」
「そう言われてもミサは来る時は来るけど・・・・・・とにかく、バイバイね・・・・・・」
ミサがバトンを振り上げると、光に包まれて彼女の姿は消えてしまった。
取り残されていた留魅耶は慌てる。
「えっ、ちょっと待ってミサ! 僕は―――」
「あ、ワリワリ。ごめんねルーくん、忘れてて」
再び光の中から現れたミサは、留魅耶の首根っこを引っ掴むと、今度こそ光の中に帰っていった。
後に残されたサミーは、プルプルと震えていた。
抑えようにも抑えきれない激情が内からあふれ出しているといった様子だ。
(サミー・・・・・・町内の平和を乱す悪の魔法少女が現れたから・・・・・・)
溢れる正義感や悪への怒りが彼女を突き動かしているのだろう。
魎皇鬼はそんなサミーを激励しようと声をかけようとしたが・・・・・・。
「・・・・・・・・・・・・ずるい」
「えっ?」
「サミーはあんなに特訓しても何一つ魔法を覚えられないのに・・・・・・。
ミサは・・・・・・モンスターを呼び出す魔法だけじゃ飽き足らず・・・・・・あんな便利な移動魔法まで・・・・・・」
サミーの震えが増す。
情けなさだかミサへの嫉妬だか色々な物が入り混じって。
「ずっっっっっっっっっっっっる〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜い〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!」
サミーの咆哮が、商店街中に響いた。
かくして、正義の魔法少女プリティサミーは、悪の魔法少女を撃退した。
新しく修得した必殺技・プリティスラッシュ(ただの上段振り下ろし)によって。
「うぅー・・・・・・プ○キュアですら決め技は飛び道具なのにぃ・・・・・・」
町内の平和を守るため、がんばれ我らがプリティサミー!
修得魔法が未だゼロでも、負けるな、くじけるな!
〜 第三話へ続く 〜
途中、見苦しいことになってしまってすみませんでした
前回自分で投下した物を読んでみた時に、
文頭と文末が分かりにくく感じたので少し工夫してみたのですが、いかがでしょうか?
模倣少女物のお約束を突っ走ってるなw
夢と妄想が爆発してるって感じでいいよいいよー
サミーはそっちの方がやり易いんじゃないか?
ここでも好評だったけどさ。
輪が広がるって事で。
もちろん、無理にお願いはいたしません。サミーさんのお考えを尊重します
あー、何だか自分にピッタリなスレが立ったんですね。
こちらで拙作を読んで頂いていた方には申し訳ないですが、
お誘いもあるようですし、自分はそちらのスレに移住したいと思います。
短い間でしたが、お世話になりました!
でも同好の士が集まるところが出来たなら、喜ばしい。
ここは良い板になってきたと思う。
卒業式イイね
こうやって同好の仲間ができたスレから独立していければいい
208 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/22(水) 21:38:58 ID:4Q/oDAoW
>>208 お知らせ人乙
2次はロワ以外は大手でも中々伸びないな。
薔薇乙女やゼロの使い魔はそこそこ投下があるが、
ハルヒはショボーン、なのはに至ってはスレを落とす相談までしてるしw
問題はそれが好きな人を呼べてるかどうかだよ
ある程度活気があるスレのおすすめ2ちゃんねる見たら
たいてい似たような傾向の他板のスレがある
活気がないスレはそれがない
てかおすすめ2ちゃんねるにスレ自体ない
つまり創発板に閉じこもってちゃだめってことだね
つまり、そういうのが好きそうな人がいるスレで
さりげなく話題に出せということですな
F5連打でお勧めに潜り込ませるというのも意外と有効だ
DOS攻ですねわかります
215 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/25(土) 22:50:58 ID:GbdynQrm
毎日マジ乙です
217 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/26(日) 22:01:16 ID:Ne4oOwjI
地獄少女か。ちょっと面白そう。職人が降臨してくれれば、見に行きたいな。
そしてwwww今日の俺ってwwww
パート2は別に紹介せずともいいんじゃないかな
それも二次創作おkなのか
しかし、80年代で二次創作と言われてもいまいちわかんねぇ
221 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 22:57:46 ID:8LZgRyGO
歴史系の創作スレがバトロワ系しか無いみたいなのでここをお借りします。
まぁ、歴史系と言っても最近出た『采配のゆくえ』の二次創作ですが・・・。
話が途中から始まる上に、ビジュアルを脳内補完することを前提とした作りなので、
原作知らない方にはワケが分からないと思いますが、ご了承ください。
采配のゆくえ 〜 if 〜 第四話・B
昔語りをいたしましょう……。
関ヶ原にて本陣を陥落させられた石田三成は、
謎のくのいちの助けを得て、春日村まで逃走……。
九死に一生を得たのでございます。
しかし、彼を追う鳴り止まぬ追撃の足元……。
それからも三成は逃げに逃げ、逃げ続けましたが、
とうとう伊吹山の山中で、東軍の残党狩りに見つかってしまったのでございます。
絶体絶命の石田三成……。
今や彼の目に映る道は、敗北、絶望、そして死のみ……。
三成が生き延び、そして勝利する道は……本当に存在しないのでしょうか……?
*障子が開く。
――― 慶長5年9月21日 ―――
(関ヶ原から6日後)
――― 伊吹山 ―――
三成(くっ……。完全に囲まれたか……)
*吉政登場。
吉政「三成、ようここまで逃げた。じゃが、これまでじゃな。」
三成「吉政殿……。」
人物・『田中吉政』の情報を入手した。
『豊臣家臣だか、東軍に属す。石田三成とは旧知で、仲も良かった。』
吉政「お主がここに逃げてくるのは分かっておった。さぁ、大人しく投降せい」
ニア はい
いいえ
三成「……確かに、この状況で抵抗しても意味が無い……。
吉政殿、俺はまだ諦めたわけではないが……俺の身柄、あなたに預けよう。」
吉政「……すまない、三成……。」
三成「吉政殿がどうして謝ることがあるのです?
むしろ、俺を捕らえる者があなたで良かった。」
吉政「そ、そうか……そう言って貰えると俺も助かる……。」
*吉政、何かに気付く。
吉政「そうじゃ三成、腹を空かせておるだろう。
部下に何か食事を用意させようぞ。」
兵士「では、これを……。」
吉政「これっ! どうして柿を持ってくる!
柿は痰の毒だと知らんのか!?」
言ノ葉・『柿は痰の毒』を記憶した。
『吉政の言葉。柿は痰の毒ゆえ、食さないほうが良い。』
吉政「ニラ粥を用意せい。あれなら健康にも良かろう。」
三成「…………。」
*モノクロの吉継が映る。
三成(吉継……すまない、俺はお前の想いに答えることが出来なかった……。)
人物・『大谷吉継』の情報を入手した。
『石田三成の親友。病をおして戦うが、関ヶ原にて討死する。』
三成(吉継……やはり、俺なんかではなくおまえが大将になるべきだったのかもしれない……。)
*回想
吉継「この私に100万の軍勢を……? 秀吉様、ご冗談を。」
秀吉「冗談ではない。大将の道とは、どんな時でも決して勝利を諦めぬことじゃ。」
言ノ葉・『大将の道』を記憶した。
『秀吉の言葉。どんな時でも決して勝利を諦めぬことこそ、大将の道である。』
秀吉「死病を患っていても、最期まで懸命に生きようとする……。
そんな吉継こそ、100万の軍勢を与えるにふさわしい大将だと思うのだ。」
吉継「…………。
ありがたいお言葉ですが……やはり私にはその器はございません。
病気のこともございますし、辞退させて頂きたく存じます。」
秀吉「そうか……残念じゃな。」
吉継「……代わりと言っては何ですが……。
私は、大将にふさわしい男を私の他に知っています。」
秀吉「なんじゃと? 一体誰じゃ?」
吉継「それは……。」
(あの時、吉継は俺の名前を挙げたが……。
秀吉さまには冗談だと思われて笑い飛ばされてしまった。
あの方の目から見ても、やはり俺ごときでは大将の器では無かったのだ……。)
吉政「……三成、どうした?」
三成「…………。
吉政殿……俺は戦場から逃げ出してしまった……。
ほぼ壊滅状態だったとは言え、まだあそこには味方が残っていたはずだ……。
俺は大将として、最期まで戦場に踏みとどまって戦うべきではなかったのか……?」
吉政「あー……。」
*吉政は頭をかく。
吉政「三成、おまえは自分が逃走したことを気にしているようだが、気に病むことではない。
逃げることは恥ではないのだ。今日の勝利者である徳川殿も、
若き日に武田信玄公にボロボロに打ち負かされて逃げ去ったことがある。」
言ノ葉・『若き日の家康』を記憶した。
『吉政の言葉。若き日の家康は、武田信玄に負けて逃走したことがある。』
吉政「その時に家臣もかなり犠牲になったらしいが、
死んだ家臣たちは、むしろ徳川殿を守れたことを誇りに思っていたそうじゃ。」
三成「…………。」
吉政「犠牲になった者のことを忘れろとは言わんが……。
それに囚われていては、正しい采配も振るえまい?」
三成「……そう、だな……。ありがとう、吉政殿……。」
*吉政は照れ笑いをする。
吉政「いや、いや……。俺の言葉などで気を持ち直してくれてよかった。」
――― 大津城 ―――
――― 門前 ―――
吉政「ついたか……。これで俺の任務も完了だ。一旦お別れじゃな、三成。」
三成「吉政殿、ありがとう。敗将の俺を手厚くもてなしてくれたことを、俺は生涯忘れないだろう。」
吉政「おいおい、そこまで固く考えるな。そういう所が福島辺りに嫌われる理由なのかもしれんぞ。」
三成「…………。」
*しばしの間。
三成「吉政殿、最後に一つお聞きしたい。」
吉政「うん?」
三成「あなたは、これから天下の行末はどうなると考えている?」
吉政「……ふーむ……。やはり、徳川殿の天下になると言わざるを得んよ。」
三成「…………。」
吉政「俺はおまえを捕まえた功績で今後は安泰だろうが……。
一つ心配なのは、このまま徳川殿の天下になったとして、その後……。
上様……秀頼公のことを、徳川殿がどう処遇するつもりなのか……それだけが心配でなぁ……。」
言ノ葉・『秀頼公は上様』を記憶した。
『吉政の言葉。上様とは、豊臣秀頼公のことである。』
吉政「……まぁ、なるようにしかならんだろう。
おまえの助命も出来る限り嘆願してはみるが、あまり期待はせんでくれ。」
三成「いえ……。」
吉政「では、俺はもう行くぞ。」
*吉政、立ち去る。
兵士「では、あなたを門前に縛り付けさせていただきます。」
三成「…………。」
*縄がギチギチ言うSE。
三成(俺はこれからどうすればいい……?
縄で縛られた状態では、身体を自由に動かすことすらできん……。
もう俺にはどうすることもできないのか……?)
*正則が現れる。
正則「ガハハ、三成め、良いザマだわ!」
三成「福島殿……!」
人物・『福島正則』の情報を入手した。
『豊臣家臣だが、東軍に属す。策が苦手な、イノシシ武者。』
正則「ワシはこうやっておまえを見下ろす日が来ることを夢見ておった。
それが、ついに今日叶ったという訳だな!
貴様がこうなったのも、細川殿の奥方を殺した報いであろう!」
人物・『細川忠興』の情報を入手した。
『豊臣家臣だが、東軍に属す。石田三成を妻の死の原因として憎んでいたが、今は誤解が解けている。』
人物・『細川ガラシャ』の情報を入手した。
『細川忠興の妻。何者かに殺害された。』
三成(違う! 俺はガラシャ殿を殺してなどいない!
細川殿の奥方、ガラシャ殿を殺したのは……十中八九、東軍の手の者だ!)
言ノ葉・『ガラシャを殺したのは東軍の者』を記憶した。
『三成の言葉。ガラシャを殺害したのは東軍の手の者である可能性が高い。』
正則「くくく、このまま貴様の無様な姿を眺めていたい所だが、
ワシは徳川殿に顔を見せに行かねばならん。
せいぜい、わしが帰ってくるまでに衰弱死しないようにするのだな!
ガッハッハッハ!!」
*正則、立ち去る。
三成(くっ……俺をここに縛り付けておく理由は、
こうやって晒し者にして屈辱を与えるためか!
だが、俺は大将として毅然とした姿を見せねばならない!)
*風がヒュルリと流れるSE。
三成(うぅ……だが、流石にこのままではちょっと寒いな……)
*長政が現れる。
長政「流石は石田殿。捕らわれていようと、せイカんな態度を崩さぬと見える。」
三成「黒田殿……。」
人物・『黒田長政』の情報を入手した。
『豊臣家臣だが、東軍に属す。勝ちに拘っており、西軍本陣を狙っていた。』
長政「ですが、イカんですな、石田殿。そのままでは肩を冷やすだろう。
……どうぞ、これを。」
所持品・『長政の陣羽織』を入手した。
『晒し者になっている三成を気遣って、黒田長政がくれた物。』
三成「……黒田殿、かたじけない。」
長政「ふふ、陣羽織を着た石田殿、なかなかイカしておるぞ。」
*長政、立ち去る。
三成(まだ少し寒いが……それでも大分マシになった。
黒田殿は俺を嫌っていたように思ったのだが……。
まぁいい、今は彼の心遣いに感謝しよう。)
*高虎が現れる。
高虎「よう大将、お目にかかれて光栄だぜ。」
人物・『藤堂高虎』の情報を入手した。
『豊臣家臣だが、東軍に属す。忍の扱いに長けた、知恵者。』
三成「藤堂殿……。
……皮肉はやめていただきたい。」
高虎「まぁそう言うな、これでも敬意を払ってるつもりなんだぜ。
あんたは本当によくやったよ。ただ、相手が悪すぎたということだな。」
三成「…………。」
高虎「ところで、あんたの目から見て俺の部隊はどうだった?
あんたの戦の腕は見事だった。だから是非とも意見が聞きたい。
特に鉄砲隊は組織してから日が浅くてな、穴が無いかと心配なのさ。」
三成「藤堂殿の鉄砲隊ですか……そうですね……。」
兵士「藤堂様!」
*高虎、定規を落とす。
高虎「おっと、急用ができちまった。
ゆっくり考えて、後で気付いたことを教えてくれ。」
*高虎、立ち去る
三成(藤堂殿の鉄砲隊、か……。
全体的に高い水準で整っているとは思うが、
強いて言えば、作戦発動時の挙動が少々鈍いのが欠点だろうか。
おそらく、鉄砲隊を指揮する者に身分の高い者を置いてないのだろう。
あれではいざという時に迅速な指令伝達が行えず、機を逃す危険が高い。)
言ノ葉・『高虎の鉄砲隊の欠点』を記憶した。
『三成の言葉。高虎の鉄砲隊は指揮者の身分が低いため、迅速な作戦発動が出来ない。』
*秀秋が現れる。
秀秋「よう、三成! 哀れな姿だな!」
三成「小早川殿……!」
人物・『小早川秀秋』の情報を入手した。
『西軍の主力を率いていたが、東軍に寝返った。豊臣秀吉の後継者であった。』
三成「俺は、あなたを絶対に許さない……!
あなたが裏切ったせいで、みんなは……!」
*秀秋、ガンを飛ばす。
秀秋「はっ、自分の無能を人のせいにするなよ。
裏切りは世の常だぜ? 読めなかったおまえが悪いのさ!」
言ノ葉・『裏切りは世の常』を記憶した。
『秀秋の言葉。裏切りは世の常であり、それを読めなかった者が愚かだと言う。』
三成「……確かに、あなたの裏切りが読めなかった俺は愚かだ……。
だが、あなたの裏切りは、未来永劫語り継がれて非難され続ける!
必ずや、あなたは報いを受けるはずだ!」
秀秋「ちっ……こんな状況になってまで威勢のいい野郎だ。
その威勢がいつまで続くか、じっくり観察しててやるぜ。感謝しな!」
*秀秋、立ち去る。
*画面、暗転
(この後も、俺は様々な武将の目に晒され続けた。
城に上げられ、部屋を与えられたのは、日が暮れてからのことだった。)
・現在の状況を記録しますか?
――― 大津城 ―――
――― 城内 ―――
三成(……野晒しは流石に応えたな……。
だが、今も自由は無いとは言え、一室を与えられた。
これならゆっくり休んで体力を蓄えることが出来るだろう。)
コン、コン。
三成「ん、どなたです?」
*正信登場、不敵に笑う。
正信「石田殿、ご機嫌麗しゅう。」
人物・『本多正信』の情報を入手した。
『徳川家康の家臣。もとは鷹匠。智謀に優れ、家康に重用されている。』
三成「……正信殿、俺に何用ですか?」
正信「ほっほっほ、お疲れのようですな。
流石のあなたも野晒しは堪えたと見える。」
*正信は鷹を撫でる。
正信「どうかな、石田殿。我が殿に恭順を示してみては?
このまま抵抗した所で、互いに不利益を生むだけであろう。」
三成(家康に、恭順を……?
……確かに、今はそうするしかないのか……?)
はい
ニア いいえ
三成(いや、駄目だ! 俺は誓ったじゃないか!
秀吉様のためだけではない……戦場で散った友のため……。
例え俺の器が秀吉様や、家康に劣っていたとしても……俺はここで家康に従うわけには行かない!
俺は絶対に家康に恭順しないと、説得を持って正信殿に思い知らせる!)
〜〜 説 得 ・ 開 始 〜〜
三成(正信殿は、あの手この手で、俺から屈従の言葉を引き出そうとするはずだ!
迂闊なことを言わないように気をつけた上で、逆にこっちが言いくるめてやる!)
正信「おっと、忘れるところであった。」
三成(!)
正信「上様からの差し入れだ、この小袖を羽織るがいい。」
三成「……上様? 上様とは、一体誰のことでしょうか?」
正信「知れたこと。徳川家康様よ。」
正信「さぁ、上様からの小袖を受け取れ!」
はい
ニア いいえ
三成「俺はその小袖を受け取るわけにはいかない……。
なぜなら……!」
ニア 言ノ葉・『秀頼公は上様』
三成「上様と言えば、大阪に居られる秀頼公を置いて他に無いはずだ!
その小袖を受け取ってしまえば、俺は家康が上様だと認めてしまうことになる!」
正信「ほう……。この期に及んで秀頼公への忠義を貫くとは、いやはや立派なことよ。」
*正信、不敵に笑う。
正信「だが、やせ我慢も大概になされよ。
今の石田殿は疲れきっておる。養生のためにもこの小袖は必要であろう?」
はい
ニア いいえ
三成「俺にはそんなものは必要ない! 何故なら……。」
ニア 所持品・『長政の陣羽織』
三成「俺には黒田殿から頂いた、この陣羽織がある!
もうこれ以上、着る物を頂く必要はない!」
正信「ふむぅっ!」
*正信は顔を真っ赤にする。
正信「我が主君から賜った小袖より、黒田ごときの羽織を取るというのか。不遜な奴め……!」
三成「俺は決して家康に屈することはしない!」
正信「全く……情けをかけていただいている分際でよくもそこまでほざけるものよ。」
三成「…………。」
正信「そも……。石田殿が今ここに居ることこそ、全くもって不可解なことでは無いのかね?」
三成「何……?」
正信「卑しくもあなたは敗軍の大将……。即刻、腹を切って責任を取るべきでは無かったのかな?」
三成(俺に切腹を勧めているのか……。俺は、やはり腹を切るべきなのか……?)
はい
ニア いいえ
三成(……そうだ、切腹を勧めるということは、それだけ奴が俺を恐れているということ。
俺は決して自分から死を選ぶべきではない……その理由を、この言ノ葉で主張する!)
ニア 言ノ葉・『大将の道』
三成「正信殿……。あなたの言っていることは全くの逆、正反対だ!」
正信「なんですと……?」
三成「俺には、西軍の大将として軍を勝利へと導かねばならない。
だからこそ、最期の最期まで決して諦めるわけにはいかない。
それこそ、大将としての最も重大な責任……。
腹を切ってあの世に逃げ場を求めるなど……葉武者のすることだ!」
正信「ぐむぅっ!!」
*正信、目を泳がせる。
正信「そ、そんなことは詭弁にすぎん!
石田殿は、結局自分が死ぬのが恐ろしいだけではないのか!?」
三成「では、あなたは敗北した大将は必ず腹を切るべきだとおっしゃるのですか。」
正信「と、当然のことだ! そうせねば死んだ者たちも浮かばれまい!」
三成「では……どうしてこの人物は、今なお生き続けているのですか!」
ニア 人物・『徳川家康』
正信「い、家康様だと!? 何を言い出すのだ!」
三成「あなたは自分の主君のことも知らないのか!
あなたの主張が正しいなら、家康も今生きているのはおかしいのです!」
ニア 言ノ葉・『若き日の家康』
三成「家康も、過去に武田信玄に大敗を喫して逃走した過去がある!
それも、数多くの家臣を犠牲にした上で!」
正信「ぐぬっ!!」
*三成、腕を振り上げる。
三成「俺が切腹するべきだと言うなら、あなたの主君も腹を切っていなくてはならないのです!」
正信「ぐぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぅう!!!」
〜〜 説 得 ・ 成 功 〜〜
三成「……俺は、決して家康に恭順することはない。
あなたの主君にも、そうお伝え願いたい。」
正信「くっ……今のうちに吼えているがいい……。
何にしろ、貴様はすぐに首を落とされることになるのだからな……。」
*正信、立ち去る。
三成(……正信殿の言う通りだ……。
このままでは何を言おうと俺の命運が尽きるのは間違いない……。
……だが……しょせん俺一人では何も出来ない……。
誰でもいい、こんな俺に協力してくれる人物が居れば……!)
シナリオ形式なのかな?
コン、コン。
三成(またか。次はどなただろう。)
*忠興が現われる。
忠興「三成殿……」
三成「! 細川殿。」
忠興「門前に野晒しとは、大変な目に合われたようですな。
そんな三成殿を見たくなかった為、私は入城には裏口を使ったのです。
それで先ほどは挨拶の一つも出来なかった故、改めて挨拶に参りました。」
三成(そうだ、もしかしたら細川殿なら……。説得次第で、俺に力を貸してくれるかもしれない!)
三成「細川殿……俺からあなたへ、お願いがございます!」
忠興「むっ……?」
〜〜 説 得 ・ 開 始 〜〜
三成「細川殿……。恥を偲んで申し上げる。
この俺、石田三成の窮地をどうにかして救っていただきたい!」
忠興「…………。
私が、どうしてあなたを助けなければならない?
三成殿がガラシャの仇ではないことは分かっているが、
だからと言って、貴殿に手を貸す理由も無い。」
三成(細川殿が俺に手を貸す理由が無い……。本当にそうだろうか?
……きっとこの人物のためになら、俺に力を貸してくれるはず……!)
ニア 人物・『細川ガラシャ』
三成「……細川殿! ご自分でもおっしゃったように、あなたには何よりも大切な奥方が居ました!
そのガラシャ殿の為に、どうか俺に力を貸していただきたい!」
忠興「……三成殿に手を貸すことが、どうしてガラシャのためになる?
今の私がガラシャにしてやれることと言ったら、手厚く葬ってやることぐらいだ……」
三成(もちろん、手厚く葬って差し上げるのも重要なことだろう……。
だが細川殿には、まだガラシャ殿のことで引っかかっていることがあるはず……それを主張する!)
ニア 言ノ葉・『ガラシャ事件の犯人は東軍の者』
三成「いいえ、あなたにはまだガラシャ殿の為にできることがある!
それは、彼女を殺した真犯人を見つけ出して、仇を討つことだ!」
忠興「……!!」
三成「そして、その犯人は東軍の手の者である可能性が非常に高い!
東軍と敵対する俺に協力してくれれば、ガラシャ殿の仇を討てる可能性もずっと高まるはずだ!」
忠興「ぐっ……!」
*忠興、汗をかき始める。
忠興「……貴殿の言う通り、おそらくガラシャを殺した犯人は東軍の中にいるのだろう……。
だが、私は既に徳川殿に忠誠を誓ってしまった身……。
今更、徳川殿に敵対することなどできはしない。
……三成殿、悪いが諦めてくれ。」
三成(果たしてそうだろうか……?
一度忠誠を誓った相手と敵対することは、絶対に出来ないのか……?)
ニア 言ノ葉・『裏切りは世の常』
三成「……細川殿。俺は、この言葉はあまり好きではありません。
だが、あなたの背中を押すために、あえて言います。
裏切りは……世の常なのです!」
忠興「ぬぅっ……!!」
三成「そもそも徳川殿に忠誠と言うが、
その徳川殿自身も、桶狭間において亡き今川義元公を裏切っている!
それだけではありません! 徳川殿は今においても、
豊臣家へ誓った忠誠を完全に蔑ろにしているではありませんか!」
忠興「ぐはっ!」
三成「細川殿……。あなたが裏切りを躊躇う理由は、何一つとしてありません!」
忠興「ぐおおっ!!」
*忠興、仰け反って揺れる。
忠興「だが、俺は……俺はぁっ……!!」
■■■■■■■■■■■■■
■大 一 大 万 大 吉■
■■■■■■■■■■■■■
三成「むっ……。これは、忠興殿の心……?」
忠興(父上! 明智光秀殿が謀反を起こしたというのは本当ですか!?)
藤孝(左様……。援軍を要求する書状も届いておる。)
忠興(ならば、急ぎ明智殿の下に馳せ参じましょうぞ!)
藤孝(ならぬ!!)
忠興(……な、何故です! 我らと明智殿はじっ魂の仲のはず……!)
藤孝(確かに我らは明智殿と親しい間柄であった……。
だが、それもたった今を持って過去の話とする。
……細川は、裏切りに手を染めるようなことは、絶対にせぬ!!)
忠興(で、ですが……。私の妻、ガラシャはどうなるのです!?
ガラシャは明智殿の娘……。我らが味方しないとなると、ガラシャが一体どう思うか……!)
藤孝(……そうか、ガラシャ殿の存在を忘れていたな……)
忠興(では……!)
藤孝(忠興、ガラシャ殿を奥の土蔵に幽閉するのだ。今、すぐに。)
忠興(なっ……!)
藤孝(これは細川家当主としての命令ぞ!)
忠興(……わ……わかりました……。)
ガラシャ(忠興さま、どうして!? お願いです、私をここから出してください!)
忠興(すまぬ……すまぬ、ガラシャ……。俺は父上に逆らうことは……。)
ガラシャ(忠興さまーーーっ!!)
忠興『私があの時、父に逆らってでも戦っていれば、ガラシャはあんな想いをせずに済んだのだ……。
私は……本当はガラシャの為に戦いたかった! 例え、裏切り者と呼ばれても!!』
言ノ葉・『裏切り者と呼ばれても』を記憶した。
『忠興の言葉。裏切り者と呼ばれようとガラシャの為に戦いたかったが、それは叶わなかった。』
三成(……細川殿……。
彼はもう、自分の中で答えを見つけている。
俺に出来ることは、彼の想いを代弁して差し上げることだけだ!)
ニア 言ノ葉・『裏切り者と呼ばれても』
三成「細川殿! あなたが裏切りを躊躇する気持ちは分かります!
ですが、あなたにとって、それ以上に大切なもの……。
何をおいても貫くべき、ガラシャ様への想いがあるのではないですか!」
*三成、腕を振り上げる。
三成「そう……例え、裏切り者と呼ばれても!!」
忠興「う……うおおおおおおおおおおおおっ!!!」
〜〜 説 得 ・ 成 功 〜〜
忠興「……ガラシャを失った今の私は抜け殻同然だった……。
しかし、そんな私にあなたは戦う理由を与えてくれた……。
ならばこそ……三成殿、俺はあなたに命を預けよう!」
三成「細川殿……かたじけない。」
忠興「……さて、肝心の三成殿を助ける方法だが……。
この城にいる間は、どうやっても不可能だな。
だが、直に処刑の為に三成殿は外に連れ出されるはずだ。
その機を見計らい、私は兵を率いてあなたを救出しよう。」
三成「分かりました。
俺はその機を逃さぬよう、常に注意を払っておくことにします。」
忠興「ああ、任せるがいい。」
*忠興、立ち去る。
*画面、暗転。
(こうして俺は、細川殿の協力を取り付けることが出来た。
おかげで一筋の光明は見えたものの、
やはり彼一人の力では、俺が生き延びるのは難しいだろう……。
だが……それでも、俺は決して諦めるわけには行かない!
細川殿が俺に命を預けてくれると言ったのだから!!)
・現在の状況を記録しますか?
――― 慶長5年10月1 ―――
(関ヶ原から16日後)
――― 六条河原 ―――
(俺は今、城から連れ出され、京都市中を引き回された上で、この川原に連れて来られた。
おそらくここで俺の首を切るつもりなのだろう……。
だが、俺は今際の際まで、生き延びることを諦めるわけにはいかない!)
*高虎が現れる。
高虎「さて、三成殿はこれから斬首に処されるわけだが……。」
折角だ、この柿をやろう。この世で最期のごちそうだぞ。」
柿を貰う
ニア 柿を断る
高虎「何故だ? 腹を空かせたまま死ぬのも空しいと思うが?」
三成「それは……。」
ニア 言ノ葉・『柿は痰の毒』
三成「柿は痰の毒ゆえ、ありがたいがお断りしよう。」
*高虎、定規を落とす。
高虎「ほう! この期に及んで己の身体を気遣うと言うのか。」
兵士「バカな……死を目前にして何の養生だと言うのだ。
やはり家康様に逆らうだけあって、愚かな男よ。」
高虎「いやいや、これこそ大将の器なのだろう。
バカなぐらいでないと大将は勤まらないということだな。」
三成(……何とでも言うがいい。
直に細川殿が俺の為に兵を挙げてくれるはずだ。
その一瞬の機会を逃さぬためには、柿など食べている場合じゃない!)
高虎「まぁいい、これより石田三成の処刑を始める!」
三成(くっ……。まだか……まだなのか細川殿!?)
高虎「石田三成、何か言い残すことがあれば―――」
……パァーン!
パァーン、パァーーーン!
高虎「ん、何事だ!」
兵士「て、敵襲! 何者かが兵を率いて石田三成を救出しに来た模様!」
高虎「何っ!? まさか本当に西軍の残党が現れるとは……!」
*高虎、立ち去る。
三成(細川殿、来てくれたか!)
兵士「ええい、急いで三成めの首を……ぐわっ!?」
*秀家登場。
秀家「三成、助けに来てやったぞ、感謝するのだな!」
*秀家、鼻を伸ばす。
三成「う、宇喜多殿!? どうしてここに!?」
人物・『宇喜多秀家』の情報を入手した。
『西軍の武将。中央の戦場で指揮を取っていたが、敵を支えきれずに敗走した。』
秀家「おまえも知っての通り、我が部隊は敵に破れ、敗走した。
……明石にはそのまま逃げるように言われたが……わしは、逃げなかった。
どうしてか分かるか、三成?」
三成「えっ……。」
秀家「それは、おまえという大将が居たからじゃ。
三成、おまえが居れば、我々は絶対に負けん!
……そう信じたからこそ、わしは命を懸けておまえを助けに来たのじゃ!」
三成「……!」
秀家「さぁ三成、この采配を取れ!
早速だが、おまえが戦場の指揮を取るのじゃ!」
所持品・『三成の采配』を入手した。
三成「宇喜多殿……ありがとう!」
――― 合 戦 ―――
三成(宇喜多殿のおかげで、風前の灯だった俺の命は繋がった!
宇喜多殿の信頼に応える為にも、ここは絶対に負けられない!)
秀家「さて三成、我らの目的はこのまま西進して安全地帯まで離脱することじゃ。
不意をついた勢いでこのまま一気に脱出と行きたかったのじゃが……。
残念ながら邪魔が入った。藤堂隊と京極隊が行く手をさえぎるように現れおった。」
*藤堂隊と京極隊が地図上に出現する。
京
↓
藤→
←宇
高虎「まさか本当にこんな所まで三成を救いにくる奴がいるとは……。
念のために俺の部隊を伏せて置いて正解だったようだな。」
*高虎、顔を押さえてガンを飛ばす。
高虎「さぁ、逃がしはせんぞ、石田三成!」
秀家「わしがおぬしを救出しに来るであろうことを読んでおったのじゃろう。
敵が二部隊に対して、こちらはわしの一部隊のみ……。
じゃが、やるしかない! 三成、指示は任せたぞ!」
三成「はい、任せてください!」
秀家(独り言)「しかし、まさかここで二部隊も相手にすることになるとは……!」
☆報告!
三成「宇喜多隊、報告せよ!」
秀家「よし、報告するぞ。
我が隊は、危険を覚悟でそのまま西進した。
上手く奴らの脇をすり抜けられれば良かったのじゃが……流石にそうもいかんようじゃ。」
京
↓
藤⇔宇
宇喜多隊vs藤堂隊
宇喜多隊vs京極隊
秀家「案の定、我が隊は待ち構えていた藤堂隊と京極隊に挟撃されてしまっておる!
三成を救いに来たつもりが、ミイラ取りがミイラになったという訳じゃ!
このままでは、我が隊は持ちこたえられん!
かと言って、後ろに退いたところで逃げ場は無い! はっきり言って絶体絶命じゃ!」
三成(宇喜多殿の言う通り、状況は絶望的だ……。
しかし味方が宇喜多隊だけでは打てる手段も限られている……。
くそっ、どうすればいい……!)
☆報告!(自動)
*秀家、目を丸くして仰天する。
秀家「三成、これはどういうことじゃ!?
突然現れた部隊が、京極隊と戦闘を始めおったぞ!
……あれは……どうやら細川忠興の部隊のようじゃ!」
京⇔細
藤⇔宇
細川隊vs京極隊
忠興「細川忠興、故あって石田三成殿にお味方する!」
*高虎、驚く。
高虎「な、なんだと!? 細川め、徳川の恩賞を蹴ってまで三成の味方をするというのか!?」
三成(来てくれたか、細川殿!)
三成「宇喜多殿、安心してください! 細川隊は我らの味方です!」
秀家「なんじゃと!? あの細川を味方にできたと申すのか。」
*秀家、鼻を伸ばす。
秀家「はっはっは、流石は三成じゃ!」
よーし、これで一対一じゃ! これなら負けはせん!
さぁ行くぞ、ものども!」
秀家(独り言)「ふんばるのじゃ! ここを突破しない限りはどうにもならんぞ!」
☆報告!
三成「宇喜多隊、報告せよ!」
秀家「うむ、報告じゃな?
見ての通り、一対一になったものの、未だ藤堂隊に行く手を塞がれておる。
意地でも通す気は無いらしく、とても力技では突破できん!
一瞬でも隙があれば、即座に我が精鋭の鉄砲隊で蜂の巣にしてやるのじゃが、
言ノ葉・『我が精鋭の鉄砲隊』を記憶した。
『宇喜多の言葉。一瞬でも隙があれば、即座に敵を蜂の巣にできる。』
所持品・『鉄砲隊:作戦指示書』を入手した。
『味方に、射撃を指示する。横一列に並ぶ、二部隊以上の敵に大打撃を与える。』
敵の陣形がこのままではどうにもならん! 何とか敵を一列に並べたい所じゃが、
わしが下がった所で、足止めが目的の藤堂隊が追って来ることはまずあるまい。
何か良い手があれば良いのじゃが……。」
三成(作戦を使わずに無理やり突破するのはムリか……。
ここはやはり、宇喜多殿の鉄砲隊に頼るしかないな。
だがしかし、敵を一列に並べるには……。)
忠興(独り言)「もはや迷いは無い……。全力で戦うのみ!」
☆報告!
三成「細川隊! 報告せよ!」
忠興「報告か、分かった。
現在、我々の部隊は宇喜多隊を助けるために京極隊と交戦中だ。
敵の士気が低いため、戦況はこちらの優勢で、やや余裕もあるが、
それでもこのままでは足止めを食わされてしまうのは否めないだろう。
……我が部隊は、選りすぐりの精鋭兵を用意している。
所持品・『強襲:作戦指示書』を入手した。
『味方に、強襲を指示する。隣接する敵一部隊を、強制的に後退させる。』
このまま強襲によって京極隊を藤堂隊と一列に並べることも可能だが……。
そうすると同時に我々も一列に並んでしまう。
おそらく、藤堂隊も鉄砲隊を準備しているはずだ。
だから味方が一列になるのは出来れば避けたい所だが……もうあまり迷っている時間は無いだろう。
おそらく援軍はすぐにでもやってくるはずだ。
そして、もし援軍が到着しようものなら我々に勝ち目は無い。
多少強引な手段を使ってでも、次の一手で藤堂隊と京極隊の撃破を狙うべきかもしれないな……。」
言ノ葉・『援軍がやってくる』を記憶した。
『忠興の言葉。すぐに敵の援軍が来るため、多少強引な手段を使ってでも藤堂隊と京極隊の撃破を狙うべき。』
三成(そうだ、俺達には時間が全く無い……。
急いで敵を突破して脱出しない限り、援軍に囲まれて終わりだ!
……強引な手段か……。細川隊、宇喜多隊、それぞれの伝令を少し変えてみるか。)
☆伝令!
三成「細川殿、強襲の実行をお願いします!」
忠興「……やはりそう来たか、確かに今はそれしか道はあるまい。
だが、一瞬でも作戦発動が遅れたらそれで終わりだ。
私が強襲を実行する前に、宇喜多殿にも話をしておいた方が良かろう。
宇喜多殿と話をつけた上で、改めて俺に指示を出してくれ。」
三成(確かに、先に宇喜多殿と話をつける必要があるか……)
☆伝令!
三成「宇喜多殿! 鉄砲射撃の準備を!」
秀家「なんじゃと!? 敵は一列に並んでおらんではないか!」
三成「ええ、ですから『準備』をお願いしたのです。
これから細川隊が強襲を発動することによって、敵味方共に一列になります!
そこからは先に鉄砲射撃を実行できた方の勝ちです、だからこそ今のうちに準備を!」
秀家「……確かにそうすれば我が隊は鉄砲射撃が行えるようになるが……やはり駄目じゃ!
敵の部隊も確実に鉄砲隊を持っているはず、そんな状況で味方も一列になる危険は犯せん!」
三成「宇喜多殿! 状況の危険を言うなら、もっと別に差し迫った危険があるのです!」
ニア 言ノ葉・『援軍がやってくる』
三成「細川殿が言うには、すぐにでも援軍がやってくるのです!
もし目の前の敵を撃破できないまま援軍が現われたら……それこそ我らは絶体絶命です!」
秀家「……三成。焦る気持ちは分かるが、ヤケになってはいかん。
確かに即座に敵を撃破する必要はあるが、イチかバチかの博打ではどうにも……。」
三成「これは博打ではありません! 十分に根拠のある勝利への道です!
宇喜多殿の鉄砲隊は、必ず敵に先制できます! その理由は、これです!」
ニア 言ノ葉・『我が精鋭の鉄砲隊』
三成「宇喜多殿の精鋭の鉄砲隊なら、必ずや敵に先制することができましょう!」
秀家「……確かにわしの鉄砲隊は自慢の精鋭部隊だが……。
それだけで敵に先制できる根拠とするにはムリがあるのではないか?
ありえんとは思うが、敵が我が隊以上の精鋭だった場合はどうする?」
三成「そ、そうですね……。」
*パァーン! 矢羽が一つ落ちる。
三成(……確かに、宇喜多殿の鉄砲隊が精鋭であるというだけでは根拠が弱いな……。
ここで考えるべきは、味方のことよりも敵のことなのかもしれない……。)
.
三成「宇喜多殿、今一度俺の意見を聞いていただきたい。
これは博打ではありません! 十分に根拠のある勝利への道です!
宇喜多殿の鉄砲隊は、必ず敵に先制できます! その理由は、これです!」
ニア 言ノ葉・『高虎の鉄砲隊の欠点』
三成「藤堂隊の鉄砲隊には、重大な欠点があります!」
秀家「藤堂の鉄砲隊の欠点、じゃと?」
三成「はい、彼の鉄砲隊はおそらく指揮者の身分が低い。
それによって、迅速な作戦発動ができないのです。」
*秀家、目を丸くして仰天する。
秀家「な、なんと……。
バカな奴め、鉄砲隊こそ最も高い身分の配下を置くべきだと言うのに。」
三成「加えて、藤堂隊は細川隊が危険を覚悟して強襲を行うなど、夢にも思っていないでしょう。
その隙をつけば、この作戦……必ずや成功します!」
秀家「あいわかった! 陣形が変わり次第、即座に鉄砲射撃が実行できるように手を回しておこう。
細川隊への伝令を頼んだぞ!」
三成「はい!」
秀家(独り言)「準備を怠るな! 必ずや藤堂隊より先に鉄砲射撃を実行するのじゃ!」
☆伝令!
三成「細川殿! 今こそ強襲の実行を!
作戦は宇喜多隊にも伝令済みです!」
忠興「いいだろう。宇喜多隊の鉄砲の精鋭ぶり、信じるぞ。」
*顔を赤くして髪の毛をゆらゆらさせる忠興。
忠興「さぁ、我が精鋭の兵たちよ! 敵に我らが怒りをぶつけるのだ!」
「うおおっ、何という勢いか!」
*京極隊を細川隊が押し込み、敵味方共に一列に並ぶ。
京⇔細
藤⇔宇
高虎「なに、まさかここで細川に強襲を実行させるとは……。
流石の石田三成も死を目前にして焦ったか? 鉄砲隊、奴らを蜂の巣にしてやれ!」
秀家「蜂の巣になるのはそちらじゃ! 撃てぇーーい!!」
ダダァーン!
*高虎、吹き飛ぶ。
高虎「ぐわっ!!」
*京極隊、ダメージ。
京極「こ、これはたまらん……撤退せよ!」
*京極隊、消滅。
*高虎、焦る。
高虎「バカな……宇喜多の鉄砲隊に先を越されただと!?」
兵士「我が隊の鉄砲隊は指揮者の身分が低いため、指令の伝達に時間がかかってしまったようです!」
高虎「くっ……。
三成め……まさか俺の隊のこの欠点に気付いてやがったのか!?
……ちくしょう、撤退だ!!」
*藤堂隊、消滅。
秀家「敵を撃破したぞ! ものども、今の内にこの戦場を離脱するのじゃ!」
☆報告!(自動)
忠興「まずいぞ三成殿、思った以上に援軍が現れるのが早かった!」
*北東に小早川隊が出現。
←小
←細
←宇
秀秋「はっ、三成を信じるバカがまだ居たとはな!
敵は寡兵だ、追撃しろ! 絶対に三成を逃がすなよ!」
*宇喜多、腕を振る。
秀家「おのれ秀秋! 関ヶ原の裏切りに飽き足らず、また我々の邪魔をする気か!」
三成「うっ……このまま逃げては追撃される……!
だが迎え撃って時間を取られたら、それこそ向こうの思うツボだ!」
忠興「その通りだ。ここは全力で逃げて、何とか奴を振り切るしかないだろう。」
三成「くっ……」
☆伝令!(自動)
三成「全軍、全力で西方へ離脱せよ! 敵に構うな!」
*全軍、隣の戦場に脱出。
☆報告!(自動)
忠興「三成殿、まずいぞ! 前方に待ち構えてる部隊がある!」
三成「な、なんですって!」
?→ ←細
←宇
*前方に???部隊が出現。
忠興「しかも悪いことに、よりにもよって槍ぶすまを構えている!」
所持品・『槍ぶすま:作戦指示書』を入手した。
『味方に、構えを支持する。構えて、最初に隣接した敵一部隊に大打撃を与える。』
忠興「誰が率いているのかは分からんが……このままでは挟み撃ちだ!」
三成「くっ……。
ここまで来て……もうダメ、なのか……?」
☆報告!(自動)
秀家「三成、安心せい。あれは味方じゃ。」
三成「え……?」
?⇔小
←細
←宇
*謎の部隊が忠興隊の脇をすり抜け、槍衾によって追撃して来た小早川隊を撃破する。
秀秋「や、槍ぶすまだと……!? 三成め、まさかまだ伏兵を用意していたとは……!
……ええい、退くぞ! 奴らごときの始末はいつでも出来る!」
秀家「くくく、秀秋の奴、ざまぁないのう!」
三成「あ、あの部隊は一体……?」
*小西が現れる。
小西「ほっほ。三成殿、ご無事でしたか。
宇喜多殿、どうやら上手くいったようですな」
人物・『小西行長』の情報を入手した。
『西軍の武将。敗色濃厚であることを悟り、東軍に投降した。』
三成「こ、小西殿!? 一体どうやってここへ……?
あなたは俺と同じく捕らえられたと聞いておりましたが……。」
小西「ほっほっほ、何とか上手く逃げおおせることが出来たのですわ。
……ま、その為に少々散財してしまいましたが。いわゆる袖の下って奴でして。」
三成「小西殿……。
助けに来て頂けたのはありがたいが、
損をするのが嫌いなあなたが、何故そこまでして……?」
小西「……わかりませんか、石田殿。」
*小西、そろばんを弾く。
小西「得する方につくのが商人の心意気!
その商人の眼力が、家康ではなく……。石田殿、あなたを選んだのです!」
秀家「商人の心意気は知らんが……三成、わしも小西と同じ気持ちよ。」
忠興「私も同じだ。かつて私とあなた方は敵同士だった。
だが今は……石田三成という大将を信じる気持ちは、あなた方と少しの違いも無い!」
小西「石田殿……我らがあなたを信じているように、今一度あなたも我らを信じていただきたい。
卑しくも、私は堺の商家の出身……絶対に、石田殿に損な取引はさせませんぞ!」
三成「小西殿……宇喜多殿……細川どの……。
ありがとう……ありがとう……!
あなた方に救われたこの命、俺は必ずや勝利に導いて見せる!」
――― 勝 利 ―――
*障子が閉まる。
こうして、仲間達の助けを得て、石田三成は絶体絶命の状況を生き延びました。
しかし、未だ味方は少なく、散り散りで……。
絶望的な状況であることにはいささかの違いもございません。
ですが、三成はもう迷いはしません。
命を懸けて自分を救出しに来てくれた宇喜多殿と小西殿……。
徳川における地位を捨ててまで自分に力を貸してくれた細川殿……。
そして、自分を信じて関ヶ原に散っていった多くの仲間……。
その強い絆が、三成の歩みを止めさせないのです。
しかし、その歩みの一寸先は、常に闇……。
歩みの先に何があるのか、何が起きるのか……。
それは三成にも……いえ、誰にも分からないことなのです。
はたして、ガラシャ殿を殺害した真犯人は、本当に東軍に居るのでしょうか?
そして、三成の采配のゆくえは……。
この物語を真実と取るか、嘘偽りと見るか……。
全ては皆様のお心のままにて……。
〜 了 〜
お邪魔いたししました。
本当は該当スレに張りたかったのですが、分量が分量なもので・・・。
いかにも続きありそうな終わりですが、続きを書く予定は無いです。
ここからは完全にif展開になってしまうので、自分の技量ではムリなので。
>>232 えーとですね、原作が台詞とキャラの動作だけで構成されているADVなのですよ
なので変に細かく人物の動作とか書き込むと不自然になるのでこうなりました
原作未プレイだとホントわけが分からんと思います
ホントすいません
乙です。しかし俺はゲーム未プレイ……
采配のゆくえか。逆転裁判のパクリとか言われながらも中々の良ゲーと聞いているが
乙です。
いろいろ感想はあるが、野暮ったくなりそうなのでやめた。
でもうっかり泣きそうになったことだけは言っとく。
>>231 GJ
貴方になら采配のゆくえの本当の行方を任せられそうだ
▼野生のプロがあらわれた
最近は新スレ少ないなー
あと立てるとしたら何があるだろ?
立てようと思えばいくらでもあるだろう。
欲しいと思ったスレがないと判った時に、必要な奴が立てるさ。
探偵モノとか 二次ならコナン・金田一・探偵学園Qとか
古畑・相棒・トリックなんてのもありかも
■第一夜
病院の椅子はいつでもどこでも安っぽい。
それを枕元に引っ張ってきて梨を剥いていた。
女「もう死ぬ」
ちらっとみる。別に死にそうに見えない。
でかい枕に黒い髪がはらはらと散らばっている。
女「そんなことないよ。もう死ぬよ」
断言する。そう云えばそういうやつだったなぁ、と思い出す。
こいつがこう言い切るんだから、そりゃそうなんだろうな。
男「死んじゃうの?」
女「死ぬともさぁ」
こっちを向いて、なんだか明るい声で言う。
柔らかい枕に半ば埋もれるような黒髪の中で
ちょっと上目遣いの拗ねたような視線で口を尖らせる。
男「別に急ぐことじゃない。死んだりしないほうがいいよ」
女「でも、死ぬんだもん。仕方ないよ」
梨を剥く指を止めて。どうしてそんなことになるのかと思った。
どうして死んでしまうんだろう。
どうして一緒にはいられないんだろう。
問うてみたけど、答えなんか、みつからない。
女「死んだらさ」
独り言みたいに女が言う。
女「死んだらさぁ。さくっと焼いたら葬式なんてすっ飛ばして
テキトーなお墓に埋めてさ。墓参りなんかも放置して、
後は野となれ山となれみたいにして欲しいな」
続きが聞きたくないので梨をその口に放り込む。
さくりという音と僅かに甘い香り。
男「そんなこというな。馬鹿」
女は困ったような申し訳ないような笑い顔を見せる。
女「仕方ないでしょ。死ぬんだし」
男「もう梨を剥いてやらないぞ」
女「いじわるだなぁ、もう」
拗ねそうなその口に、もう一切れを差し出す。
男「やだな」
女「――」
男「まだ早いでしょ」
女「――」
女の困ったような無言が、なんだか胸に堪える。
男「まだ会ったばっかりだし、何もしてやって無いし
こんなの冒頭のシーンじゃない? デートイベントも
水着シーンもクリスマスイベントもなーんにも
やってないわけじゃない? そもそも、なんだ、
いわゆる……えろい事だってしてない」
女「むむむ」
男「だからそんなのは横暴だと思うぜ?
死ぬのなんて、やめちゃえよ」
俺の言葉で、二人でひとしきり笑った。
こんな風に笑いあえるその貴重さが身にしみて、
子供みたいにはしゃいだ。
女「えーっと、じゃぁ、さ」
男「ん?」
女「特別ボーナスです!!」
女はご褒美をあげるときの笑顔で俺に言う。
男「なんだよ」
女「えろえろボーナスですっ」
男「マジでっ!?」
そんなこと出来るはずも無いのは知っていたけど
細くなってしまった肩にタオルケットを掛けながら尋ねる。
女「日が出るっしょ? して、また沈むっしょ?
それからまた出るっしょ? そうしてまた沈むっしょ?
そのあいだ、キミってば辛抱できるかな?」
男「余裕だろ」
悪戯小僧のような問いかけにためらい無く即答する。
女「えろのために?」
男「もちろん。えろえろの為に」
女「そんじゃさ」
女が、一瞬目を瞑る。怯えるような、思い切ったような声で云う。
女「そんじゃさ。百年待ってよ」
女「百年たったら、きっと逢いに来るから」
俺は待ってると応えた。
女は、もうえろえろなんだから。覚悟しておけよ、
なんて軽口を叩いて、二人でまた笑った。
すると黒い瞳のなかに鮮やかに写っていた世界が
ゆるりと崩れて一筋の涙になった。
揺れて、溢れて、流れ出したと思ったら、女の眼が閉じて
もう死んでいた。
――お墓はどうということの無い場所で
どうということの無いこしらえのものだった。
別にあんな約束を信じてたわけじゃないけどな。
そう思いながら苔の上に座った。
他にやることが無いからという理由からであって
別に女に義理立てをしたわけではない。
さてこれからどうしようかな、しばらくはのんびりするかな。
なんて事を考えていると、東から陽が昇ってきた。
そしてやがて西へと沈んでいった。
あのアホのいったとおりだな、と感心していると
また金色の朝焼けとともに陽が昇り、
茜色の夕焼けを引き連れて日が沈んだ。
俺は二つ目、とカウントした。
日々はそれとなく、だが忙しく過ぎていった。
カウントは毎日増えていった。
数えても数えても、数え終わらないほど。
たまに女の悪戯好きを思い出して、
きっとどこかで笑い転げているんだろうなぁ、と考えた。
また一日、と数える。
つまりこれは新手のどっきりだ。
俺を待ちぼうけにさせて、あいつは天国で笑っている。
別に真剣に待ってるわけじゃないからどうでもいいけどな。
他にやることが無いから。これはただの「ついで」だし。
カウントをまた一つ増やした。
肌寒い朝焼けの中で、
あいつの墓から青い草が生えているのに気がついた。
それはカウントと背比べをするように伸びて
風に揺らめく茎の先に、困ったように首をかしげるつぼみをつけた。
群青色の夕暮れを迎える頃、
蕾は真っ白な百合の花弁を開く。
何処からか招いた水滴がはなびらに現れて
その重さで揺れた花が俺の頬に、ひんやりと口付けた。
その甘い香りに視線を上げると紫の空に
暁の星がたった一つ瞬いていた。
百年はもう来ていたんだな。俺はこのとき初めて気がついた。
おもしろいしうまいけど何の二次? 誤爆?
二次だよ。
夏目漱石の「夢十夜」の第一夜の二次。
そうですか……無知でスマン
誰かみてるか?
ミテマスヨー
見てるよ見てる
267 :
創る名無しに見る名無し:2008/11/15(土) 13:39:41 ID:wbfkzTnK
見てちゃ悪いか(^ω^♯)ビキビキ
俺もみてるって
みんな見てるw
誰かワイルドハーフの二次創作作ってくれよ!
それでできればタイプムーンとクロスを!
サルサ&銀星VSセイバー&アルクェイドとか見たいお⊂(^ω^ )⊃
>>270 VSってことはバトルさせるのか?
2秒で犬の挽き肉ができて終わるんじゃね
サーヴァントの戦闘力は、およそ「戦闘機一機分」らしい。
真祖もかなり強いと思う。
サルサって、そこまで強いのか?
創ってくれってより、自分で書いた方が良いと思う。
ワイルドハーフ種族自体の能力が未知数な部分が多いから何とも
大地に大穴開けたりしてた奴は居たが、実在兵器と戦った奴は居ないし
274 :
創る名無しに見る名無し:2008/11/17(月) 22:58:41 ID:oIoxd0rh
告知ありがとうございます
もし場違いな質問だったらごめんなさい。
リボーンやD灰あたりの二次創作小説なんかを読んでると、たまに
その作品にあわせて創ったオリジナルキャラが出てくる小説があり
ますが、あれもやはり二次創作小説なのでしょうか?
自分はどうしても夢小説としか思えないのですが…
両方でしょう。
この二つは別に相反するものではないのだから、
『二次創作の夢小説』と言えばいいのです。
あと、オリジナルキャラが出てくる小説≠夢小説ですよ。
分かっているかもしれないけど念の為
>>277 夢小説っていうのも、厳密に言えば
「二次創作」というジャンルの中の一つなので間違いではないです
夢小説っていうのは、そもそも主人公の名前を
自分で好きなものに変更して読める小説ってのが始まりでしたが
最近では、その名の通り
「自分の好きなように原作を改変して書く、まさにドリーミーな小説」
みたいにもなりつつあります
原作の設定だけを借りたオリジナルキャラばっかりの小説でも、
まぁ二次創作は二次創作なので、そんな感じで
280 :
創る名無しに見る名無し:2008/11/19(水) 03:25:04 ID:x/kWLGMR
こちらにもお疲れ様です
今回はホントに多いですね
他にもいろいろ立ったしね
新スレの当たり日だ
283 :
創る名無しに見る名無し:2008/11/22(土) 09:40:05 ID:gMDwWsnc
勇者シリーズスレは容量オーバーで次スレ移行したようだね
それだけたくさんのSSが投下されたってことでよきかなよきかな
285 :
創る名無しに見る名無し:2008/11/27(木) 22:47:27 ID:UQ6pk7Ew
創作板もエコブームじゃな
エコエコアザラク〜
289 :
創る名無しに見る名無し:2008/12/01(月) 22:41:00 ID:IFvEYqgt
290 :
創る名無しに見る名無し:2008/12/02(火) 21:20:20 ID:GXZHr6Dw
乙です!
なんかゲーム版にはアニメに出てこないオリジナルキャラの主人公がいるらしいよ
>>290 ゲームオリジナルの主人公(チート気味)がストーリーに介入したり、アニメの登場人物と恋愛する要素があるのでファンの中でも別物扱いです。
創作発表板には既にギアス2期を作り直すスレがありますが、上記理由により今のところ別スレとしてお邪魔いたします。
なるほど〜ありがとう。
派生作品に出てくるキャラって扱いに困ること多いよね。
294 :
創る名無しに見る名無し:2008/12/03(水) 21:39:15 ID:X0jZ1944
295 :
創る名無しに見る名無し:2008/12/06(土) 23:43:36 ID:E3BR363q
296 :
創る名無しに見る名無し:2008/12/15(月) 22:10:46 ID:X4HuRwSv
ら抜き言葉ですね、わかります
乙です〜
新ジャンル・糸ノベル
みたいな
糸ノベルw
どんなジャンルだww
糸に書いてあるんじゃね?
米への写経みたいな感じで
とても(いと)述べる
302 :
創る名無しに見る名無し:2008/12/21(日) 20:37:22 ID:o3EHij+u
お疲れさまでふー
いつも乙です!
305 :
創る名無しに見る名無し:2008/12/27(土) 22:17:01 ID:8TIbTBXW
306 :
創る名無しに見る名無し:2008/12/30(火) 20:14:09 ID:abpY/PEs
307 :
創る名無しに見る名無し:2009/01/02(金) 22:19:07 ID:xpj+CD2T
いつも乙です!
保守
310 :
創る名無しに見る名無し:2009/01/03(土) 22:27:31 ID:f9qToA4l
311 :
創る名無しに見る名無し:2009/01/04(日) 22:39:50 ID:fzLT1QdH
312 :
創る名無しに見る名無し:2009/01/09(金) 22:17:00 ID:ocqxLTa0
乙です
314 :
創る名無しに見る名無し:2009/01/12(月) 22:24:24 ID:DkBPpU6B
乙ですー
乙ー
317 :
創る名無しに見る名無し:2009/01/19(月) 23:41:45 ID:9GnCbYeP
乙です
ショタスレって他になかったっけとか思ったり思わなかったり
しかしショタには詳しくないから突っ込みにくい感じ
何か違いとかあるのかしらん?
新しいほうのショタスレの趣旨はたぶん
ショタショタやショタロリやお姉さんショタやショタ一人舞台なんかもおkな感じ
ショタとお兄さんのほうは、二人が健全にいちゃいちゃしてるのを楽しむ感じ(?)
どう違うのか全くわからん///
どう違うもなにも
お兄さんが出ないといけないか出なくてもいいか
だけの話じゃね
うーん馴染みがないジャンルだからよくわからん
住み分けが必要なんでしょうね。当事者達は、一緒にされたくないのでしょう。
同性愛者という、ひとくくりでホモもレズも一緒にされたくないでしょうし……
326 :
創る名無しに見る名無し:2009/02/01(日) 21:13:00 ID:b/yAmpiN
いつも乙ですよー
330 :
創る名無しに見る名無し:2009/02/13(金) 22:50:04 ID:+KBEmO2N
331 :
創る名無しに見る名無し:2009/02/14(土) 22:22:21 ID:u6kpnUGq
乙ですー
いつも乙ですー
334 :
創る名無しに見る名無し:2009/02/17(火) 21:00:07 ID:ooxySPUY
335 :
創る名無しに見る名無し:2009/02/17(火) 21:36:15 ID:hn/0tWc3
このたび、歌手デュオ「19(ジューク)」の元メンバーの326さんと余命の告知を受けた難病患者がコラボした絵本「やさしさのまほうーたったひとりのお父さんー」が出版!
この絵本は、手も足も声も出にくくなり子ども達のお世話が何もできなくなったのに子ども達は日に日に優しくなっていく、という不思議な魔法にかかっていく2人の子ども達の実話に基づいたお話。
作者は言いました。
「子どもって、僕のように抱っこもしてあげられない親でも、゛精一杯愛していること゛が伝われば、その愛情を肥やしにして成長してくれるんだあ。」
ぜひ、読んでみてね。
購入方法
1)インターネット(「amazon.com」など)
2)紀伊国屋書店など全国の大手の書店
>>334 森崎君と聞くと、吹っ飛んだ―しか浮かばない
若輩者が乙させていただきます
なんかどこに投下したらいいのかわからずにここにお邪魔します。
ていうかどこにもいきようがない微妙な創作です……。
週刊少年ジャンプのアイシールド21のifストーリーですが、恋愛とかそういうのはないです。
今、手元にコミックスがないので間違ってる箇所もあるかと思いますが、流していただけると嬉しいです。
方言もいろいろおかしいと思いますが、あまり突っ込まないでいただけると助かります。
(原作ネタバレありの前提条件)
元弱小の主人公チームが高校アメフト日本一をかけて戦うチームが「帝黒学園」といいます。
圧倒的な強さで、大会始まって以来優勝し続けていると強豪校という設定です。
パワプロサクセス経験者の性なのか、
アンドロメダ学園という無名のダークホースが帝王実業を倒し、
颯爽と主人公チームの最大のライバルとして現れる、というのを思い出してしまいました。
そんな感じで、もしも大和、鷹、花梨が京都のアメフト弱小高校に入学していたら……というifストーリーです。
(三人の力で、いずれ帝黒を倒してクリボウ出場するという感じで)
なんか無理だったらスルーでお願いします。保守する手間が省けたと思って……
「大和くんって、かっこいいよね」
例えば朝のあいさつを交わしたあと、何気ない教師からの連絡事項を伝えたあと、
大和猛が立ち去ってから、女子生徒は示し合わせたようにそう言うのだ。
なぜだか、口をそろえて「かっこいい」と。
ボキャブラリーが貧困なのか、それ以外の言葉ではしっくりこないのか。
同じ部に所属して、一応は彼と友人であるだろう本庄鷹からしてみれば、
大和は天然で無礼だし悪気なく傲慢だし空気を読めないのではなく読む気がさらさらないのだし、
しかし離れたところで見るぶんにはそういった瑕疵が見えないのかも知れない。
どっちにしろ、他人への関心が極端に薄い鷹としてはいちいち訂正する義理もない。
――さて、そんなことを考えていた鷹の目の前に、ぬっとボトルが差し出された。
部活の休憩時間だった。
とうに秋と言っていい季節になっていたが、地球温暖化の影響か日差しは厳しく気温も高い。
運動後ならばなおさらだった。
「鷹くん、お疲れさま」
はんなりとした声は、むさくるしい男所帯の唯一の清涼剤と言われる小泉花梨だった。
大和と、他ならぬ鷹自身によってアメフト部にスカウトされた女子生徒だ。
マネージャーとではなく、クォーターバックとして。
しかし、当然といえば当然だが、男にまじってアメフトの選手になるなんて、と花梨は抵抗した。
一方、悪気なく傲慢な大和が自ら引くことなんてない。
そこで、――甚だ不本意なことに、この自分が! 折衷案を提案せざるを得なかった。
「ただでさえアメフト部は部員が少なくて困っている。選手の話はともかくとして、マネージャーを務めてくれないか」と。
大和も花梨もそこで妥協した。
選手だけでなく、裏方の手も足りていないのは事実だった。
花梨は、そのおどおどぼやぼやの性格とは裏腹に、頭も身体もてきぱきと動かせる性質のようだった。
性格と性質とは別であると彼女を見て知る。
そうそう馴染みのないだろうアメフトのルールも、道具の手入れも、マネージャーの仕事も、
まるで乾いたスポンジが水を吸収するような勢いで覚えていった。
手際も悪くない。
なにより、女っ気のない部活にようやく来てくれた女子マネだ。
先輩たちは、たとえ選手としてではなくとも、花梨を歓迎している。
鷹がドリンクのボトルを受け取ると、花梨は身体ごと振り返って、そこにいた大和に最後の一本を手渡した。
おさげが鷹の視界で大きく揺れる。
「大和くんも」
「ああ、ありがとう」
はっきりとした礼とともに、大和はボトルを受け取った。
一点の曇りもないさわやかな笑顔。
しかし鷹は、「さわやかな」の上に「無駄に」という言葉をつけたくて仕方ない。
帰国子女の大和はもちろん、鷹も年功序列とは縁のない世界で生きてきた。
花梨はそれを埋めるように先輩を立てている。
ドリンクは三年生が最初で、エースといえど一年生は後回し。
息を吸うみたいに自然に、えこひいきなく。
意外なことに、鷹自身はこういう扱いが嫌ではなかった。
鷹にとって、特別扱いはすなわち父親の威光だ。
「そう言えば、そのう、一度聞いてみたいと思ってたの」
「ん? 何だい?」
ドリンクを飲みながら大和は応える。
それほど大きな声ではないが、不思議なほど、よく通るというか印象に残る声の持ち主だ。
「大和くん、どうしてアメフトをしようと思ったん? ……あ、変やて言いたいんやないよ。
ただ、私の周りの男の子は、小学生のころはみんな野球やサッカーだったから」
空いた両手を身体の前で振りながら、花梨は言いわけするように付け足した。
花梨の気持ちもわからなくもない。
190cmの長身に、あれだけのスピードとスタミナ。
大和ならばどんなスポーツでも人並み以上にこなすだろう。
現に、大和が編入してきて最初のスポーツテストの結果を見て、
運動部という運動部が弱小アメフト部から彼を引き抜きに来た。
鷹が大和に勝てた種目なんて、握力と走り幅跳びだけだ(いくら何でもこの二種目で負けたら、鷹のアイデンティティが崩壊する)。
大和は、いつもみたいに自信に満ちあふれたふうに言った。
「好きだから、やりたいと思ったから、かな」
「……ええと、ね。そしたら、どこが好きや思ったの?」
大和は――彼にしては珍しく、悩むように口を閉じた。
いつだって明快な彼がこのような態度をとるなんて、数学の超難問に取りかかっているときぐらいなものだ。
二秒、三秒、そのくらいで大和は答えを見つける。
普段が普段の彼にしてみれば、かなりの熟考と言っていいだろう。
そして、大和が、笑う。
「好きだということに理屈をつけるのは苦手なんだ。言葉を重ねれば重ねただけ薄っぺらくなってしまうようでね」
遠くで大和の名が呼ばれる。
キャプテンだった。
大和は名残惜しさの欠片も見せず、身体をひるがえし俊足を飛ばして去ってゆく。
片手にボトルがあろうとなかろうと、それこそプロテクターですら彼の障害になることは叶わない。
一日でルールと基本的なフォーメーションを丸暗記した鷹も、彼ほどではないにしろ短期間でそれらを覚えた花梨も、
ルールブックに書かれていないことには答えようがない。
効率的な練習方法、ふさわしいメニュー、適切な試合対策――
そういう諸々にこの部で一番詳しいのは、監督(とは名ばかりの顧問の教師だ)でもキャプテンでもたまに様子を見に来るOBでもなく、
アメリカの第一線で活躍してきた大和だった。
一年生なのに、まるで部の重鎮みたいに、キャプテンや監督とも対等に話す。
その背中を見送って、花梨はため息とともにもらした。
「大和くんって……」
――大和くんって、かっこいいよね。
「正しい人やね」
……何となく虚を突かれた気分になって、鷹の反応は一瞬遅れた。
「……どこが? 『好きというのに理由はいらない』なんて、思考や分析からの逃避だ」
大体、ハードなぶつかり合いのある男のスポーツに、女子を本気で勧誘するあたりで間違っている。
これは鷹も同罪だが。
「うん、せやけどね……大和くんが本気で言うたことやったら、
もしそれが間違おてても、嘘でも、根拠がなくても、正しいことやて信じてしまいそうな気がするの。
……あ! 大和くんが嘘つきや言うてるわけやないよ!」
――瞬きの瞬間、鷹のまぶたの裏側に白光がひらめく。
大和猛は、例えるなら大質量の恒星のような人間だ。
自ら熱と光を発し、それを周囲に問答無用でふりまいている。
親しまれ愛され、時に信仰の対象にさえなるような、そんな圧倒的な引力を生まれながらに持っている。
だが、いったん近づいてしまえば、その熱と光で身を焦がされる。
――いや、恒星自身が、自らを灼きながら大規模な核融合を起こし、身を削りながら光と熱を放ち続けている。
やがて燃え尽き死に絶えるまで。
大和は正しい。
彼の、本心の根っこの部分から願いながら、それでもどうにもならないことなんて、きっとこの世にはないのだ。
世界は彼が望むように在る。
もしも彼が今は夜だと言ったなら、太陽さえも急いで西に沈むだろう。
だから花梨も、
「――私、やってみよかな」
ひとりごとのように、つぶやくのだ。
「私に大和くんや鷹くんの言うような、センスがあるなんて到底思えへんのやけど。
もしセンスがあったとしても、パスだけの女にQB任せるわけにはいかへんやろ?
せやから、その、まずは、マネージャーやなくて、選手として挑戦してみよかな、て」
「……いいの?」
センスを見抜いて勧誘しておきながら、鷹はまさか花梨が自らこんなことを言うなんて思っていなかった。
男にとっても過酷なスポーツで、こんな見るからに文科系のおとなしい女子が。
本心の根っこから、信じていたのは大和だけ。
「選手として、使いもんになるかは、ほんまのところ自信あらへんの……でも、それで、ちょっとでも役に立てるんなら」
「大和!!」
叫んだ。
各々休憩していた部員たちが、ぎょっとして視線をこちらに集中させる。
自分でも、これだけ大声が出せるなんて思わなかった。
ひとり悠然と、驚きも見せず大和が顔を上げた。
鷹の報告を聞いた大和は、きっと、わかっていたと告げるかのように笑うのだろう。
それが当然のように、世界は彼の望むように在る。
あ、別に続きません。
自分でもなんでこんな話が書きたくなったのか……
スレ汚し失礼しました。
アイシールド乙
週漫板の本スレでも帝黒が弱小だった方が良かったって意見が多かったなぁ
やっぱみんな思ってることなのか
あえて言おう
続きはまだかね?
お言葉に甘えてもう一個勢いのまま書きなぐったネタをば。
注意書きや設定は
>>337あたりですので
ダメな方は保守の手間が省けたと思ってスルーお願いします。
誰が喜ぶのかわからん、相変わらず恋愛とかそういうのはない
青春っぽいアンドロメダ学園(仮)の花梨と鷹と大和の話です。
転がってきたボールを投げ返した。
ただそれだけのことだった。
それなのに。
「君には才能がある。だから、一緒にアメフト部でやってみないか」
――なんで、こんなことに。
目の前に立って彼女を懸命に説得しているのは、小泉花梨のクラスメイトふたり。
この学校でもっとも有名な生徒のひとりと言っていい本庄鷹と、そして。
「この柔らかいパスは生まれ持ったセンスだ。君ならきっとクォーターバックとして活躍できる」
アメリカ帰りの帰国子女、大和猛だった。
ボールの回転がどうの、クォーターバックがどうのと言われても、
そもそもアメフトにまるで興味のない花梨はどうとも答えられない。
しかし、ここで押されてイエスと返事をしてしまえば、
男子と同じフィールドで戦わなくてはならないということはわかった。
だから花梨は、もう、今までの人生でこれだけ強い意志を見せたのは初めて、というぐらい必死になって断った。
決死の覚悟で。
大和と花梨の平行線はそのまましばらく経っても交わることはなかった。
いつの間にやら当事者から傍観者になっていた鷹が、言った。
「ただでさえアメフト部は部員が少なくて困っている。選手の話はともかくとして、マネージャーを務めてくれないか」
花梨の方に不利ではあったが、妥協案だった。
大和は、完全に納得はしていないようではあったが鷹の意見に譲歩の意思を見せた。
ここを逃したら選手にされてしまう。それよりはましだと花梨も引き受けた。
すべては、ここから始まったのだ。
――そのはずが、今の花梨はマネージャーではなく、選手として練習している。
花梨は、性格ゆえか運動音痴と思われることが多いのだが、実を言うとそんなことはない。
体育の成績は五段階評価の5、十段階評価だったら9をキープしている。
しかし、だからと言って運動部でバリバリに鍛えている女子生徒には敵わないし、
単純に努力の必要な、たとえば持久力といった類のものはそれほどずば抜けているわけでもない。
そもそも、あくまで「文化部の女子」という範囲での「運動神経抜群」だった。
すなわち、運動部の男子というフィールドに同条件で放りこまれたら、見劣りするどころの話じゃない。
「選手としてやってみる」と言ったのは花梨だった。
でも、最初の一週間は死ぬほど後悔した。
ウォーミングアップのランニングからしてついていけないのだ。
練習メニューは必然的に、大和や鷹のレベルに合わせている。
当然だ、能力の低い側に合わせたら、高い側の練習にならない。
ランニング程度では顔色ひとつ変えない大和や鷹に、息を切らし汗だくになりながらも何とかついてゆく部員たち。
そこからかなり遅れてメニューをこなす花梨、という図がしばらくの間続いた。
筋肉痛に悩まされなくなるまでに一週間はかかった。
――意外だったのは、花梨を熱意をもって勧誘した大和も鷹も何も言わなかったことだ。
「やっぱりマネージャーに戻ってくれていいよ」と言われることをちょっと期待したりもした。
しかしその台詞は花梨の空想であって、現実に彼らの口から発せられることはなかった。
他の部員たちも、お荷物扱いすることなく、新入部員として花梨を気遣ってくれた。
女子ということでそのぶん少し甘くしてくれたかも知れない。
――そして、眠れないくらいにひどい筋肉痛に襲われることも減ったある日のことだった。
練習中の休憩時間、ドリンクのボトル片手に花梨はグラウンドの隅に座りこんだ。
苛烈だった日差しもだいぶ穏やかになってきたというのに、
後から後から汗は流れ、滝のように肌を伝っている。
何とか、ランニングにはついていけるようになったころだった。
それでも、集団からかなり遅れてはいるけれど。
失った水分と塩分を補給しながら顔をあげると、同じくボトル片手に鷹が歩いてきていた。
日陰を求めて来たのだろう。
「お、お疲れさま!」
「ああ……うん」
鷹は、汗こそ光っているものの、大して息を切らした様子もない。
小学生のころからプロ野球選手の父との練習を日課にしてきたという彼は、まさに鍛え方が違うのだろう。
そんな涼しい顔の鷹の前で、花梨はいたたまれない。
息を弾ませながら、慌てて別の話題を振る。
「や、やっぱり鷹くんてすごいんやね! 部員になってみてようわかったわ。
こんなしんどいこと平気で毎日こなして、それで朝練も毎日してるいうてたし」
二度三度、鷹が瞬きする。
「別に。練習だけなら、慣れだよ」
花梨は、鷹が大声で笑った場面を見たことがない。
それだけでなく、怒りにまかせて激昂する場面も、
悔しさに声を震わせる場面も、
涙で表情をゆがませる場面も。
何かを誇り胸を張る場面さえも。
「慣れ……」
いつになれば慣れるのだろう。
花梨は目を伏せた。
何のためにアメフトを始めたのか、見失いそうになる。
慣れるまで続けて、そして、どうなるんだろう。
そんなうつむいた彼女の頭のてっぺんに、立ったままの鷹の言葉が降ってくる。
「……何を気にしてるのかは知らないけど、継続さえすれば大抵のことはできるようになる。
それに、少なくとも、大和は君が選手になって喜んでる」
顔をあげると、自分を見降ろしている鷹は相変わらず無表情だったけれど、……花梨はうっかり泣きそうになった。
失望させるのが怖かった。
期待外れの人と言われるのが怖かった。
期待されなければ、それを裏切ることもない。
意見を言わなければ否定されることもない。
だからいつだって、目立たない方に目立たない方にと進んでいた。
大和や鷹と一対一で向き合うのが怖かったのは、
「思っていたよりも使えない」と切り捨てられることから逃げたかったのだ。
「ええと、ね。見てのとおり、基礎練だけで、いっぱいいっぱいなんやけど」
「一度も打ちのめされたことのない選手なんていない。陳腐な言葉だけど、真実だ」
「鷹くんも?」
「人を何だと思ってるわけ? 昔は毎日負けて悔しがってた。今は知らないけど」
プロ野球選手の父親に、だろう。
それは確かに勝てるはずがない。
花梨は小さく笑った。
「大和くんも?」
「……たぶん、ね」
ふと、気づいた。
今まで練習についていくだけで精いっぱいで、周りが見えていなかった。
花梨はたったひとりのマネージャーだった。
選手は両面出場でもギリギリの人数しかいない。
当然、控えの選手をマネージャーと兼業させる、なんてこともできない。
だからこそ、たとえ選手としてではなくとも、花梨をマネージャーとして勧誘したのだろう。
その彼女が選手になった今、それまで花梨がやってきた裏方仕事を引き受けているのは……
できる人間がやるしかない。
となれば、大和か鷹だった。
ふたりとも一年生で、体力もあって、スポーツに関する知識もあって。
それでもなお彼らが「マネージャーに戻ってくれ」と言わないのは、気遣いではなく、期待だ。
基礎練習にさえまともについていけない女子に、本気で期待しているから。
アメフトも何もわからないまま勧誘されて、マネージャーになったのは、選手になるのだけは避けたかったから。
それなのに選手になると言ったのは、頑張っている彼らを見て、少しでも役に立ちたいと思ったからだった。
見失う必要なんて、全然なかったのだ。
今でも自信がない。
本当に、大和や鷹が言うような「センス」が自分にあるのかは。
だけど。
――大和くんが本気で言うたことやったら、もしそれが間違おてても、嘘でも、根拠がなくても、
正しいことやて信じてしまいそうな気がするの。
「この柔らかいパスは生まれ持ったセンスだ。君ならきっとクォーターバックとして活躍できる」
自分のことは信じられなくても、大和が言ったことだったら信じられるような気がした。
たとえそれが間違っていても、嘘でも、根拠がなくたって。
そしてその後の話。
自分には避ける才能というのがあるらしいことを知った。
「小学校のときも、ドッジボールで、どうしてだか最後まで残ってしもたんですよね、いつも」と言ったら、
大和だけは「なるほどね」と納得していたけれど、
鷹をはじめとする他の部員たちに「いやそれ違うから」と口をそろえてツッコまれたり。
体脂肪率がぐっと落ちて喜んだら、筋肉がついたぶん体重が増えてけっこう落ちこんだり。
趣味で開設していたお絵描きブログを休止したり。
そして、アメフトを始めてよかったと思いながら、クリスマスボウルを夢見て練習に励んだり。
「君には才能がある。だから、一緒にアメフト部でやってみないか」
そんなわけでお邪魔しました。
アンドロメダ学園(仮)は帝王実業(帝黒学園)を倒すものの
パワフル高校(泥門)には負けてしまうので、
なんかかわいそうですからこのへんで。
アイシールド知らないから内容はよくわからないけど
文章読みやすくてよかったよ
356 :
創る名無しに見る名無し:2009/02/24(火) 22:29:32 ID:ru5oXmcB
夜分遅く失礼します…。
自分も僭越ながら、どこに出していいかわからないオリジナルの
作品のあらすじを、ここに投下させて頂きたいと思います。
タイトルは『トッケビ!』です。
「トッケビ」という者達をご存知だろうか?
日本の隣国である朝鮮半島に太古より存在する、いわゆる「妖怪」の
名前である。彼らは、朝鮮半島において、妖力を使い、人間に対して
いたずらをしたり、協力をしたりと、人間たちと関わりながら活発に
暮らしていた。が、ある時、朝鮮半島全土に「使者(サジャ)」と呼ばれる
者達が無数に現れ、トッケビ達を「狩り」始めた。半島全土のトッケビ達は
たまらず、使者らの手が及んでいない済州島に逃れ、トッケビ達が
多大な尊敬の念を注ぐ「三斬鬼」と呼ばれる、三人組のトッケビに助けを乞うた。
使者の魔手は済州島にも及び、かくして、三斬鬼対使者らの戦いが始まった…。
数年後。場所は移り変わって日本・新大久保。
在日韓国・朝鮮人が多く住まうこの街において、そこに在住する中学生である
金勇太もまた在日韓国人であった。父を過労で亡くし、病弱な母を抱える
彼は、中学を卒業したら即座に韓国へ帰り、人並みの暮らしをしようと考えていた。
ある日、学校帰りの中で新聞配達に勤しむ勇太の前に、妙な髪形をし、瞳に不思議な
光を湛えた、薄着の少年が、何者かに追われている様子で現れる。それが、
金勇太と、朝鮮の地より来たトッケビ「トラジ」との出会いであった……。
うわあ間違えた。すみません!
何度もしつこくすみません。
保守代わりのアイシールド21のifストーリー投下させてください。
注意書きや設定は
>>337あたりです。
目ざわりで仕方ないという方は、
大変お手数ですが名前欄の「アイシールドif」でNG登録お願いします。
恋愛とかそういうのはない、大和と鷹の青春っぽい話です。
保守はこの板はまだ必要ないが、続きというのなら望んでいるぞ!
支援
卒業式が終わって最初の土曜日は、アメフト部の三年生送別会代わりの試合だった。
一年生三人が入部した時期と入れ替わるようにして三年生は引退していった。
それ以降は試合しようにも部員が足りず、そんなフラストレーション解消のための一戦でもあった。
対戦相手は同じく京都の弱小高校で、ぎりぎり試合ができる部員数という点も同じだった。
しかし、アメフトがチームスポーツだということを差し引いても、
アメリカの第一線で活躍してきた大和猛の存在は攻守にわたりあまりに大きかった。
小泉花梨も(彼女は両面出場ではない)その才能の片鱗を垣間見せ、
また、本庄鷹も「アメフトを始めたばかりだとは思えない」と言われる程度には活躍し、鮮やかに勝利をもぎ取った。
三送会代わりの練習試合は、まず満足できる内容だった。
そして。
「ちょっと、話があるんだけど」
週明けの月曜日、午前中の授業が終わってすぐ、鷹は大和に声をかけた。
長身の大和を見下ろせる機会なんて滅多にない。
しかし、目線の高さが違ってもなお、大和はまったく対等に鷹を見返し、
急な申し出にも大して意外でもなさそうな表情のままだった。
アメフト部の部室に場所を移して、申し訳程度にある椅子に向かい合わせに座る。
ふたりの間の机に昼食が置かれるが、まったく手を伸ばさない鷹とは対照的に、
大和はサンドイッチのパックのビニールを迷いのない手つきで破る。
環境や育ちの影響なのか、彼は和食より洋食が似合う。
「――昨日、帝黒学園からスカウトされた」
前置きもなく切り出した鷹に、大和は「へえ」と関心の欠片も示さない相槌を打った。
こういうところ、本当によくない部分だ。
自らのコミュニケーション能力を棚にあげ鷹は思う。
こんなのでも、生徒たちの間では「かっこいいのに親しみやすく人当たりのいい憧れの帰国子女」という認識で一致しているらしいのだ。
――帝黒学園「帝黒アレキサンダーズ」とは、高校アメフトの頂点に立つ大阪のチームだった。
誇大表現ではない。
なにせ、全国高等学校アメリカンフットボール選手権決勝大会――
通称「クリスマスボウル」を第一回大会から今まで優勝し続けているチームなのだから。
スポーツには番狂わせがつきものだ。
まして、アマチュアスポーツならば。
野球少年として育った鷹は、そのことをよく知っていた。
「最強」「無敵」「全ての始まりにして全ての頂点」など、ありとあらゆる称賛を集めているそのチームは、
高校アメフト界のゆるぎない絶対王者だった。
アメフトを始めて間もないうえに、興味のないことについてはまったく記憶力が働かない鷹ですらもその名前を知っているくらいだ。
ちなみに鷹は、関東王者も関西第二位のチームも知らない。
「帝黒はよっぽどスカウトに力を入れているようだね」
「アメリカから帰国するとき、熱心にスカウトされたって聞いたよ」
鷹も最初は、弱小同士の練習試合にさえ人をよこす帝黒の熱心さを意外だと思った。
しかし、それはおそらく間違っている。
――君と大和猛くんなら、きっと帝黒学園でも一軍で活躍できる。今なら遅くない、転校を考えてみないか。
――大和くんには、なぜだか編入を断られてしまってね。失礼だが、そんな弱小チームに所属させておくにはあまりに惜しいんだ。
支援〜
平気そうだが支援だ!
帝黒が、日本中すべての高校アメフトの試合を偵察しているわけではないのだ、おそらく。
桁外れの能力の大和が、日本最強チームのスカウトを断ってまで編入した高校。
そのチームはどんなものか、見に来たのだ。
そして、スカウトし損ねた大和の実力も。
鷹はそのついでに引っかかったにすぎない。
「昔の話さ。断ったんだからね」
「あっちはあきらめてないみたいだけど」
「こっちにその気がないんだから仕方ない」
「馬鹿じゃないの。何考えてるんだよ」
帝黒のアメフト部は二百人を超える大所帯で、一軍から六軍まで存在する完全な実力主義だという。
大阪、関西だけにとどまらない、全国から最強校に憧れたアメフトプレイヤーが集まってくる。
スポーツに重要なのは、努力や才能はもちろん、環境だった。
ポジションを争い切磋琢磨し、競い合い、危機感を覚え、実戦をこなして精神的にタフになる。
人数ギリギリのこの学校に、ポジション争いは存在しない。
大和に技術を教えられる監督やコーチもいない。
試合すらもままならず、設備も整っているとは到底言えない。
鷹がこれまで所属してきた野球チームは、どこも「強豪」「名門」と言われていたチームだった。
その中でも鷹は突出した存在だった。
それを埋めたのは、プロ野球選手として活躍していた父との練習だった。
敵わない相手がいるということは、精神的にも肉体的にもスポーツ選手を強くする。
単純な基礎体力や筋力は、本人の知識と努力で伸ばせるだろう。
しかし、それ以上のものはここにはないのだ。
本格的に、それこそ高校を卒業してからもアメフトの道に生きようとしている大和にとっては。
ヤーハー!
「帝黒に入ってしまえば、日本最強チームを倒すことができないじゃないか」
「……馬鹿じゃないの」
二度目の言葉は、一度目よりもさらに低くなった。
「弱小チームが王者を倒す。劇的な美談ではあるけれど、それだけだ。……その頭はヘルメットをかぶるためだけにあるわけ?」
「ひどいな。人を考えなしみたいに」
そのとおりだろう、と鷹は内心で言った。
そんな鷹にはお構いなしに、大和は続ける。
「これでもいろいろと考えているんだよ。――何のために自分はアメフトをやっているのか、とかね」
鷹は――もし自分が椅子に座ってさえいなければ、一歩引いていただろう。
青くさい青春論とか、暑苦しい熱血論とか、鷹にとっては最大の苦手分野だった。
「勝利を何より尊ぶのならば、帝黒を選べばいい。それはそうなんだろうね。
……それだったら、そもそもアメリカから帰国する必要もないだろう」
……それは、正しい。
アメリカンフットボールは、まごうことなくアメリカ合衆国のものだ。
競技レベルも競技人口も何もかも他国とは格が違う。
日本高校アメフト界における帝黒学園以上に、世界におけるアメリカはアメフトの絶対王者だった。
「ノートルダムにはいられないだろうけれど、これでも一応は当代最高と言われたランナーだったんだ。
他でもやろうと思えばプレイできたと思う。
――これは馬鹿にしているわけじゃないけれど、日本での競技の知名度から考えるに、アメリカには帝黒よりも強く過酷な高校があるだろう」
苦い過去のはずなのに、大和はあくまでも淡々としている。
そのへんの事情――
ノートルダム大学附属中学校から理不尽とも思える方法で追放されたという話の触りだけは大和から聞いたことがあった。
支援
「アメフトに限らず、負けるためにスポーツをする選手なんかいない。
誰だって勝つためにやっている。だから勝利は尊ばれる。
――鷹は、走り幅跳びの日本記録を持っているんだって?」
「……誰に聞いたの」
「さあ、覚えてないな。鷹は今、日本で一番遠くまで跳べる選手なわけだ。
――それでも、世界には鷹よりもいい記録を持っている選手がいるわけだろう」
「世界記録」ではなく「日本記録」を持っているということは、まあそういうことなのだろう。
鷹本人はそこまで興味がないので、世界記録がどのくらいなのかは知らないが。
「国で一番でも世界にはさらに上がいる。
勝利以外価値がないというなら、オリンピックで金メダルを取ったただひとり以外の結果はすべて無価値だというわけだ。
たとえそれが日本で最高の記録でもね」
「大和は極論に走り過ぎだよ」
それには何とも答えずに大和は笑って肩をすくめた。
ジーザスとでも口にしそうな雰囲気で。
そんなことを言い出したら迷わずペットボトルを投げつけてやると決めた。
元外野手の強肩を甘く見てはいけない。
残念なことに、大和が神に祈るなんて、このときもこれからも一度たりともなかったので、
鷹の強肩が発揮できる機会はなかったのだけれど。
「――このチームはいいチームだ」
ワンテンポ外して大和が言った。
「人種や年齢や性別に関する不当な差別がない。あっちでの日本人は、弱ければ嘲笑され強ければ暴力の対象だ」
鷹は思わず眉をひそめた。
「暴力? 大和も?」
「探せば傷跡ぐらい残ってるかもね。
――アメリカ帰りの年下にあれこれ指示されても、年長者は嫌な顔ひとつせず真剣に聞いてくれる。
入部したばかりの一年生をエースとして扱ってくれる。
努力を惜しまず、真摯に競技に向き合っている。
競技に対する尊敬と、チームに対する忠誠と、チームメイトに対する信頼があふれている。
目を覆いたくなるようなものはこのチームに何ひとつない」
――目を覆いたくなるようなもの。
それは、鷹にとっては父親だった。
昔から何をやっても、どんなに成功しても「父親がプロ野球選手なのだから」「親にもらった才能があるから」で済まされてきた。
時に妬まれ、時にうらやましがられ、時に逆恨みされた。
そういうものは、確かにこのチームにはなかった。
支援
「いいチームだよ、ここは。
――帝黒学園にだって負けるつもりはないけれど、たとえ勝てなくてもこのチームを選んだことを後悔しない。
スポーツマンシップというのは、こういうところにあるんだと今は思う」
――何のために自分はアメフトをやっているのか?
それはもちろん勝利のためだ。
だからと言って、勝つためになら何をやってもいいかといえば、そういうことではない。
そして、敗北はすべて無意味かといったら、そういうことでもないのだ、きっと。
アメリカで、当代最強のランナーとして名を馳せた彼が辿りついたのは、結局はそういうところだったのだろう。
「それで結局、鷹は帝国のスカウトを受けたのかい?」
急に話を変えるから、結構本気でびっくりした。
今まで熱く語っていたのに、本当に意味がわからない男だ。
「……まさか。俺は別に、アメフトをやりたくて高校を選んだわけじゃないし。転校なんてめんどくさいよ」
「ははっ、安心した。うちから鷹を取られたら困るからね、俺もみんなも」
――無駄にさわやかな笑顔で言う帰国子女に、
誰か「羞恥心」という言葉とその意味を教えてやってほしいと切実に鷹は思う。
ジーザス、と鷹の方が祈りたくなってしまって、途方に暮れた。
頼りにしていると言われるのは嫌いだったが――少しは自分で何とかしろよと言い返したくなるから――
このチームの人間に限り、たぶん嫌な気持ちになることはないだろうと、そんなふうに思った。
投下乙!
このif、めっちゃ爽やかでいいなー
続きも楽しみにしてます!
もしかしたら、この設定であと二回だけ書かせてもらうかも知れません。
できるだけ連投にならないようにするつもりですが、
目障りな方はNameNGをお願いします。
なんでこんな下火になった作品のこんなマニアックな設定の話を思いついたのか、
我ながら結構意味がわからないのですが…すみません。
>>361 支援ありがとうございました。
投下おっつー
目障りだなんてないよ!ないよ!
いや、これはふっつーに楽しめますわ
このスレは投下としちゃあんま使われてないし、面白いから弱気になる必要なんかないですぜ!
鷹がアメフトやってる理由は描かれるのかな?
まぁそこは原作でも完全スルーされた所だけど
「え? 大和くんが鷹くんをアメフト部に誘ったん?」
当然のように言った目の前の大和猛に、小泉花梨は思わず訊き返した。
「その言い方では正確ではないよ、花梨。俺は、ただ、アメフト部の見学に誘っただけだ」
「見学……」
ふたりの話題の種になっている本庄鷹は、入学当初からこの学校では最も有名な生徒のひとりだった。
なにせ、元プロ野球選手として活躍していた本庄勝を父親に持ち、
鷹自身も幼いころから天才少年として脚光を浴びていたのだ。
鳴り物入りで高校にやってきた鷹は、なぜだか陸上部に入部した。
これは、十年ぶりに甲子園を狙えるという全校の期待を裏切った。
鷹と同じ年に入学し、美術部に早々に入部を決めていた花梨にさえも、その騒動は耳に入ってきた。
「いちいち親を持ち出されるのにうんざりみたいやね」と友達が噂話を教えてくれた。
その彼は、一年生にして夏の大会で走り幅跳びの日本記録を樹立した。
夏休み明けの朝礼で表彰されたのを覚えている。
全校生徒の前で壇上に立ってさえも、彼は喜びも緊張も何ひとつ面に出さず、
面倒な義務を果たしていますと言わんばかりの気だるげな態度だった。
「陸上部の部員に辞めないでほしいと引き止められているところに出くわしてね。まあ、助け舟ってやつだよ」
大和は、いたずらっぽくウィンクした。
アメリカ帰りは違うわぁ、と内心で花梨は思う。
絵になるんやもん。
――やあ、鷹じゃないか。今日はアメフト部を見学に来てくれる約束だっただろう。早くおいでよ、始まってしまうよ。
恵まれたルックス、圧倒的な存在感、アメリカからの帰国子女である大和は、鷹とはまた別の意味で目立つ生徒だった。
190cmの長身に見下ろされたら、誰だって引きたくなる。
大和と鷹は同じクラスだった。
鷹は、顔見知りの出してくれた助け舟にそのまま乗ったのだろう。
「それで、どうやって勧誘したん?」
鷹を運動部に引き入れるなんて、かなりの難題だろう。
花梨がアメフト部にマネージャーとして入部したとき、すでに鷹はアメフト部の一員だった。
「勧誘なんてしてないよ。その日の部活が終わったとき、鷹の方から入部すると言ってきたんだから」
「嘘やあ。信じられへん」
「人聞きが悪いな」
冗談めかして笑いかけた花梨に、大和も笑顔で返した。
花梨自身、大和にはかなり強引に「選手として」勧誘されたのだ。
最初に花梨に声をかけたのは鷹だったのに、その鷹がいつの間にか傍観者になってしまうぐらい、大和の押しは強かった。
あれに否を言える人間がいたら見てみたい。
休憩終了の声がかかった。
大和は真っ先に立ちあがる。
一秒遅れて花梨も続いた。
彼女は今、マネージャーではなく選手としてここにいる。
三年生送別会代わりの練習試合を控えているのだ。
――そして、時は流れて、花梨の学年がひとつ上がって、アメフト部に新入部員もぽつぽつと入ってきたころの話。
アメフト部は、週に一度、練習を早く切り上げてミーティングを行う日がある。
アメリカンフットボールというスポーツの性質上、基礎のルールさえ知らないという新入部員は少なくない。
さらに、普段行っている練習メニューは何を目的としているのか、
そういう点をはっきりさせないと練習の意義が半減するというのが大和の持論だった。
ただこなすだけのメニューは苦行であってスポーツにはなり得ない。
アメリカ仕込みのフィジカルトレーニング論、運動生理学やスポーツ科学を叩きこまれている大和は、
半ばこの部のプレイングマネージャーだった。
それでも、司会進行をするのは三年生の部長である。
彼によってミーティングも終わりかけたそのとき、静かに手が挙がった。
鷹だった。
めずらしい、と花梨はそんな姿を横目で見る。
彼は無口ではないが寡黙な方で、自己主張もそれほどしない。
部長の許可を得て、鷹は、心底言いづらそうに口を開いた。
「……うちの親が、備品を寄付したいって言ってるんだけど」
室内が静まり返った。
親というのは、すなわち本庄勝のことだろう。
母親という可能性もなくはないけれど。
偉大な父親を持った息子。
鷹の父親に対する複雑な葛藤は、全校生徒の知るところである。
そして、花梨が見るところ、アメフト部の部員は一様に、そのへんの微妙さを慮れる人間ばかりだった。
彼らには、大和や鷹のような才能はないかも知れないが、興味本位ではやしたてるでもなく、
偉大な父親を持つことの大変さを推し量れるような――端的に言えば、いい人たちだった。
その彼らが、どうやったら鷹のプライドを傷つけずに喜びを表わせるか悩んでいるわずかな沈黙。
そこに、声が響く。
「へえ、いいお父さんじゃないか」
確認するまでもない、よく通る声の持ち主は、大和猛のものに他ならない。
まぶしいほどの笑顔で。
――ひぃぃぃぃぃぃぃ!! という心の絶叫が室内にこだまする。
無論、花梨も叫んだ人間のひとりだ。
大和は常に正しい。
今回だってそうだ。
しかしながら、正しさが必ずしも人を救うわけでも、
正しさが必ずしも人に歓迎されるわけでも、
正しさが必ずしも優しさと直結しているわけでもないというのは、歴史が証明するところである。
ここまで見事にピンポイントで地雷を踏みつける大和は、空気を読めていないなんてレベルではない。
鷹を中心にブリザードが巻き起こる。
隣に座っている花梨はその冷気にさらされ凍えそうだ。
マイナス273℃の絶対零度。
原子さえも凍りつく。
――だが、しかし。
マイナス方向の温度の限界は絶対零度ではあるものの、プラス方向ではそれこそ際限がない。
たとえば、恒星――最も有名な恒星である太陽の表面温度は6000℃だ。
凍りついている室内で、大和ひとり平然としている。
まったく効いていない。
「と、とにかく! 俺の方から先生に報告しとくから! うちの部は予算が足りていないから助かるよなあ!」
ひっくり返った声での部長の涙ぐましいフォローで、今度こそその場はお開きになった。
片づけを終え、花梨は鷹と肩を並べて部室を後にした。
ちなみに大和は、いつも部長たちとともに最後まで残って何やら話しあっている。
今日に限ってはそれでよかった。
隣を歩く鷹は、今日はミーティングがあったため普段より肉体的な疲労は少ないはずなのに、
いつもよりもよっぽど疲れた顔をしていた。
気持ちはわかる。
言葉数少なく無表情で人を寄せつけない雰囲気の鷹と、快活で人当たりがよくいつだって人に囲まれている大和。
それでも、実際に手に負えないのは大和の方だった。
近づいてみないとわからないことというのは案外多い。
重い空気に耐えられず、花梨は他愛ない質問を投げかける。
「そう言えば、鷹くんはどうしてアメフト部に入部したん?」
いつだったか、大和は「自分が誘ったわけではない」と言っていたのを思い出した。
「どうして……ああ、大和に誘われてアメフト部を見に行ったんだった、そういえば」
大和という名前を口に出しても、もうさほど堪えないみたいだった。
花梨はほっとする。
ぎすぎすした空気は苦手だった。
ちょっと声を弾ませて花梨は続ける。
「それでそれで?」
「練習で、大和が部員三人を引きずったまま走ってた」
……笑ったらいいのか驚いたらいいのかツッコんだらいいのか、花梨は反応に困って鷹の様子をうかがい見る。
彼はいつもの、表情のないポーカーフェイスで、花梨は結局無難な反応をした。
「ええと、それは、何というか、シュールな光景やね」
「何の手品かと思った」
「あ、わかるわぁ。
私も試合で初めて、大和くんが二、三人引きずって走ってるの見たときは、試合中なのに思わず二度見してしもたもん」
ひとりを60kgとしても、単純計算で180kgの動く意志のある重りを引きずりながら、
転倒もせず止まりもせず走り続けるなんて、尋常じゃない。
あの身体に、どんな魔法があるのかと驚いた。
「……それで、アメフトやろう思ったん?」
鷹は言葉を選んでいたみたいだったが、返ってきた言葉は、花梨の問いとは微妙にずれたものだった。
「大和は、自分が他人に与える影響について無頓着すぎるよ」
――大和猛は、恒星のような人間だ。
離れているぶんには、見とれて憧れて、崇拝していればいい。
しかし、いったん近づいてしまえば、否応なくその灼熱の炎に灼かれる。
良くも悪くも、影響を受けずにはいられない。
花梨だって、大和にあそこまで熱心に誘われなかったら、きっと今でも美術部のままだっただろう。
鷹の言葉は的確すぎて、花梨は笑ってしまった。
「ほんまにね。
……ね、あのね、そんなに嫌やったら、お願いして寄付を取りやめてもろてもええと思うの。
うーんと、みんな多分、新しい備品より、ワイドレシーバーの10番の方が、ずっと頼りにしてるし、必要としてると思うから」
怒らせてしもたかなぁ、と無言になった鷹の様子をひっそりうかがう。
そろそろ正門が見えてきたころ、鷹が「だって、仕方ないよ」と小さくつぶやいた。
「うちの部が全然予算足りてないのは事実だし。……俺ひとりのプライドと部全体を比べてみたら、天秤にかけるまでもないし」
――大和の影響力というのは、本当にすごい。
花梨はうつむいて、鷹にばれないように瞬きを繰り返す。
「ええ人やね。鷹くんのお父さんも、鷹くんも」
「やめてよ。……恥ずかしげもなくそんなこと言ってのけるのは、大和ひとりでも多すぎるくらいだ」
我慢できずに、声をあげて笑ってしまった。
鷹は嫌そうな顔をしていたけれど、もう何も言わなかった。
夕日が最後のきらめきを残し、沈みかかっていた。
どんなに長くてもあと一回で終わるので、
興味のない方は大変申し訳ありませんがスルーで我慢していただければと思います。
スレ占拠状態ですみません。
連投ですが、投下させてもらいます。アイシールド21のifストーリーです。
注意書きや設定は
>>337あたりですので、目ざわりで仕方ないという方は、
大変お手数ですが名前欄の「アイシールドif」でNG登録お願いします。
諸事情により、原作から学年がずれてしまいましたorz(大和たちとヘラクレスが同じ学年です)
駄目な方は、大変申し訳ありませんが、
これが最後だと思って寛大な心でスルーお願いします、すみません。
単独でも読めるかと思いますが、一応時系列順です。
1は
>>338-343 2は
>>348-353 3は
>>362-363>>366>>368>>370>>372 4は
>>380-385 恋愛とかそういうのはない、大和と鷹と花梨の青春っぽい話です。やっと終わりました…
そして時は流れて、高校生活最後の年。
何とか危ういながらも試合ができるだけの部員を獲得したアメフト部は、
京都府大会を順調に勝ち進み、関西大会へと駒を進めていた。
今までまともに公式戦に出場すらできていなかった無名校の大躍進だった。
ダークホースの存在は、関西高校アメフト界を多少騒がせたが、あくまで「多少」に過ぎない。
スポーツに番狂わせはつきもので、そして大阪にはその番狂わせすら許さない絶対王者が存在する。
最上級生になった大和猛、本庄鷹、小泉花梨は、
その絶対王者――帝黒学園の関西大会緒戦を偵察に、大阪の会場まで足を運んでいた。
「……さすがに、今までのチームとは違うね」
「部員、ほんまに多いんやね。対戦チームは完全アウェイやわ」
それぞれの地域を勝ち抜いてきた代表校に対して、無失点の完勝である。
帝黒と、それ以外のチームとは格が違うと言っていい。
別次元の強さだった。
帰り道、駅近くのファストフード店で時間を潰して快速を待っている三人の話題は、
もっぱら帝黒アレキサンダーズのことだった。
三人でラージサイズのポテトをひとつ。
手慰みのように、へなへなになったそれをつまんでいる。
わびしい間食だが、高校生の財布にとって往復の電車代はそれなりに打撃である。
時間を見計らって店を後にし、駅へと足を向けたそのとき、「あー!」という大声が耳に飛びこんできた。
声の主を見やって――大和は意表を突かれて瞬きを繰り返した。
身長は大和よりも低く、せいぜい鷹と同じくらいだが、身体の厚みが違う。
骨格が違う。
絵に描いたようなアメリカンフットボールプレイヤー。
「自分、大和猛やろ!? お、本庄鷹もおるな」
彼の周りには、スキンヘッドの男をはじめ、同じチームジャージをまとった選手が何人かいる。
「ふうん、うちんとこの試合、偵察に来たんやな。あ、俺は――」
「知っているよ。帝黒学園の平良氏、だろう?」
この男が、関西屈指のラインマンにして帝黒アレキサンダーズキャプテン・平良呉二だった。
スキンヘッドの男は平良と同じ一軍のラインマン、安芸礼介だ。
「おっ、知っとったか。なな、どやった、うちの試合。自分らやったら、うちの一軍でも活躍できたはずやのになあ」
試合の感想を聞いておきながら一方的に話し続けている。
大和は、とりあえず相手の言葉が切れるまで静観を決めた。
鷹はそもそも、よくしゃべる人間に進んで関わることはないし、花梨は声の大きい男が苦手だ。
大和の隣に控えている花梨に、安芸がやたらと目線を送っている。
女子の正クォーターバックはどこへ行っても注目の的だ。
「ほんまにそう思ってんねんで。大和と本庄がおったら、俺らの代は歴代最強になったはずや。
俺らは自分らを認めとる。なあ、どうしてスカウト蹴ったん?
言うたら悪いけど、自分ら、才能の無駄遣いやと思うで。今までの三年間は返ってこおへんしな」
そう言って、豪快に笑う。
花梨が、大和の背に隠れるように一歩下がったのが視界の端に映った。
「……大和、電車の時間」
ぼそっと小声で鷹が告げる。
それでも、平良の耳にまで言葉は届いたのだろう。
大げさに顔をしかめて彼は嘆く。
「なんや、急ぎかい。なんならうちの学校の見学に来てくれてもよかったのに」
「ははっ、残念だけど、またの機会だ。お誘いはありがたいけれど、今後の予定があるからね」
平良を先頭に、帝黒御一行さまが去っていくのを足を止めて見送った。
安芸が名残惜しそうに花梨に視線をよこしていく。
すぐに彼らの姿は雑踏にまぎれて見えなくなって、そして大和たちもホームへ向かって歩き出す。
何となく無言だった三人の沈黙を破ったのは、鷹だった。
「大和、『平良氏』って何。敬称の選択がおかしいよ」
「そうかな。それにしても、日本語は敬称が多すぎると思わないか?」
「日本人だろ」
「そうだけどね。――花梨、どうかしたかい?」
無言でふたりの後についてくるだけだった花梨が、弾かれたように顔を上げる。
整った顔が、ぎこちなく微笑みを形づくるのを無言で待った。
「えと、うん。あんな大きい人と、戦うんやな……て」
「アメフトは声の大きさで勝敗が決まる競技じゃないよ。心配いらない」
「その励まし方もおかしいと思うけど」
できるだけ声が彼女に優しく響くように気を遣ったつもりなのに、鷹からはなぜか一刀両断だ。
「……それより、緒戦に勝つことを考える方が重要だよ。うちは帝黒とは違うんだから」
「そうは言うけれど、最強の相手と戦う心構えはあるに越したことはないだろ?」
「せめて油断してくれていたらええんやけど……あの様子じゃそれも難しそうやね。
大和くんのことも鷹くんのことも、しっかり研究されてるみたい」
自動改札に切符を通してホームへと急ぐ。
快速に乗り遅れたら、また面倒だ。
それでも、日本の公共交通機関はアメリカに比べて大変に便利だけれど。
「そうでもないよ」
大和の声は、滑りこんできた列車の雑音にまぎれて、おそらくは鷹と花梨のふたりにまでしか届かなかった。
鷹も花梨も何かを口にしかけたけれど、人波に流されるように乗降口に吸い寄せられ、
それが言葉になったのは列車が発車して人心地ついてからのことだった。
「どういうこと? 大和くんも鷹くんも、帝黒の一軍でも活躍できるって、あの人も認めてたし……」
「あれはね、花梨。本人にそのつもりがなくても、一段高いところから見下ろしているんだよ。
人間が、芸をする動物を褒めるのと同じさ」
――覚えがある。
アメリカに留学したばかりのころ。
その能力の片鱗を垣間見せた大和に、チームメイトたちは悪意なく言った。
「やるじゃないか」と。
しかしながら、その称賛には言外に「日本人にしては」という枕詞がついていた。
「敗北の可能性はあると知っていても、自分たちのチームが実際に敗北する光景を想像できたことはないんだろうね」
しかし、大和が人種の壁を超えるような才能を発揮したとき、彼らは一様に慌て、戸惑い、プライドに小さくない傷をつくった。
アイデンティティをひどく損なわれた連中の一握りは、それが大和への暴言、暴力として発露した。
負けたことのない人間、負けるはずないと思っていた相手に凌駕されたときの人間は、案外もろい。
「どんなにデータや情報があっても、敗北を意識せざるを得ない程度に追い詰められれば、そのへんに付け入る隙がないではない。
結果が決まっているスポーツなんてないんだから」
――比肩するもののない、絶対王者は哀れだ。
そのアイデンティティを破壊するような出来事があったとき、肥大したプライドと過去の莫大な栄光とを支えて立ち直れるのだろうか。
それも、ゴール――クリスマスボウルへの通過点という場所で。
大和は自分が薄く笑みを浮かべているのに気づき、そっと口元を引き締めた。
血が騒ぐ。
王者として挑戦者を迎え撃つよりも、挑戦者として強大な王者に立ち向かう方が、自分の性に合っている。
そう、かつて単身アメリカに渡ったときのように。
そしていつか、日本チームの一員として、アメリカに勝負を挑むときのように。
そのために、自分は日本に帰国したのだから。
――そして、大方の予想を裏切り大和たちは勝ち上がり、
大方の予想通り勝ち進んだ帝黒学園と、関西大会の決勝戦で相まみえることとなった。
「帝黒の応援、すごそうやね。なんや、どきどきする」
言葉とは裏腹に、花梨の態度は落ち着いている。
先ほど後輩一同に「帝黒の連中と比べたら見劣りしますけど、先輩は自分らが身体張ってでも守りますから!」と言われた花梨は無敵だ。
競技に対する尊敬と、チームに対する忠誠と、チームメイトに対する信頼。
たとえ先輩が卒業し、代が移り変わっても、このチームはいいチームだった。
「先輩、OBの人誘って見に来るって。メール来てたよ」
「ほんまに!?」
「さっきケータイ見たら届いてた。花梨のとこにも来てるんじゃないの?」
「そっか、うん。アウェーでも応援してくれる人がいるってわかってると全然違うんやね」
花梨の唇の両端がきゅっと上がった。
試合前の緊張、とりわけあの帝黒と戦うというプレッシャーを、プラス方向に変えられている。
「観客なんて気にすることないよ」
「そうかい? 鷹は変わっているね。注目が大きければ大きいほどやる気が出るだろ」
「……ふたりとも、場慣れしすぎなんよ」
大和と鷹は同時に首をひねったが、まあ、花梨がそう言うのだからそうなのだろう。
心地のいい高揚感が大和の身体をじわじわ満たす。
試合開始にピークを持っていけるように、意識して気を落ちつける。
「大和。本当に、無名校に来たのを後悔してない?」
思い出したように鷹が問う。
冗談とも本気ともつかないような、相変わらずの口調だった。
以前も似たようなことを言われた覚えがあった。
それとも、この間、平良に言われたことを気にしているのだろうか。
しかし、大和の答えはあのころから変わっていない。
「日本ではマイナー競技であるアメフト部を、脈々と守り続けてくれたOBたちがいて、
意志を継いでくれる後輩たちがいて、そして鷹がいて、花梨がいる。
――これ以上望むことなんて、ひとつだってないだろう?」
花梨が微笑んでうなずいた。
鷹は、もしかしたらかすかな笑顔を浮かべていたような気もしたが、ただの目の錯覚かも知れない。
――挫折を知らない人間は脆い。
大和の最初の挫折は、アメリカでの差別と暴力だった。
それでも立ち上がり、名門・ノートルダム大学附属中学のエースとしての地位を勝ち取った。
最大の挫折はその後、ノートルダムから追放されたことだった。
人種の問題か、才能の問題か、誰かしらの目には自分はノートルダムのエースにふさわしくないと映ったのだろう。
人種も才能も天から与えられたもので、大和の努力で変えられるものでもない。
与えられただけの才能と、そして努力で当代最高のランナーの座を得た大和にとっては、どうすることもできない挫折だった。
いつか、日本チームとしてアメリカを倒す。
そんな、新たな志を持つことはできたが、あのとき自分はどうしていれば最良の結果を望むことができたのか、
その答えを大和はいまだ見つけられていない。
端的に言えば、苦い過去だった。
それでも、きっと、挫折を知る前より強くなっているはずだ。
それだけのたくましさをもって、自分に可能なかぎり速やかに立ち上がってきたのだ。
かの、ダレル・ロイヤルの手紙に提唱されていたように。
「――フィールドでプレーする誰もが必ず一度や二度、屈辱を味わわされるだろう。
打ちのめされたことがない選手など存在しない。
ただ一流の選手はあらゆる努力を払い速やかに立ち上がろうとする。
並みの選手は少しばかり立ち上がるのが遅い。
そして敗者はいつまでもグラウンドに横たわったままである」
だから、再び立ち上がる。
日本で見つけた仲間とともに。
苦い過去と一緒にアメリカに置いてきた、あの番号とともに。
――そして、記憶と記録に残る一戦が始まった。
彗星のごとく現れ、そして消えていったそのチーム。
のちにある種の伝説のごとく語られることになるそのチームを率いたエースの背負っていた番号は――栄光の、21。
終
作品が下火になってから登場したキャラクターで構成された、
パワプロサクセス経験者の性とも言えるようなマニアックな設定の話なのに、
思いのほか反応がいただけて望外の喜びでした。
無名校を大和が選んだ理由、鷹と花梨がアメフトを始めた理由なんかをひねりだしたら、
ついでに大和のカリスマ性や鷹のコンプレックスや花梨の葛藤なんかも書きたくなって、
予想外に長い話になってしまったことをお詫びします。
原作のキャラクターからキャラクター性があまりに乖離していませんように、
そして原作のキャラクターの魅力を著しく損ねていませんように祈るばかりです。
アンドロメダ学園(仮)はパワフル高校(泥門)に負けてしまいますが、
帝王実業(帝黒)に初めて公式戦で土をつけたのはアンドロメダ学園(仮)ですので、
真アイシとしてはまあ許されるんじゃないかな、と思ったり。
それでは、お付き合いいただきありがとうございました。
暖かくスルーしてくださっている皆さんもありがとうございました。
>>388-395 お疲れ様でした。
いつも読ませていただいていましたが、レスさせていただくのは初めてです。
二次創作で、元ネタの方は良く知りませんが、
知らないなりに楽しんで読めたと思います。
これからもこの板でお会いできます事を。
文章から手馴れている事がわかりますので、これで終わるのは勿体無いです。
是非これからもがんばってください。
オリジナル作品なども書かれたなら、この板で発表してくださるなら、
どこかで読ませていただけると楽しみにしております。
連載本当にお疲れ様でした。
三人が三人とも背負うものがあって、一人の人間として動いている
三者三様の理由がありながら、丁寧な心理描写で誰もに感情移入してしまう
会場の「ワァアアアア」という音が遠くに響いて、静かに交わされる会話と回想
途中から原作絵で脳内再現されて、大変なことになってました
うわーいいもん読んだ!上手くいえないけど、GJです!
398 :
"新"避難所よりレス代行:2009/03/13(金) 11:16:45 ID:MCeq+pml
こちらも久しぶりの乙だよー
これで終わったとか言っておきながらすみません。
アイシールド21のifストーリーを投下させてください。
注意書きや設定は
>>337あたりですので、目ざわりで仕方ないという方は、
大変お手数ですが名前欄の「アイシールドif」でNG登録お願いします。
S-1グランプリスレに投下した方がいいような話ですが、
二次創作ですのでこちらにお邪魔させてもらいます。
なんか今までで一番アメフトと関係のない、オリジナルじゃねーかと言われても仕方ないような話です。
ここはおまえのスレじゃ(ryとかどう考えても終わる終わる詐欺です本当に(ryとか
いろいろ言いたいこともあるとは思いますが……すみません。
単独でも読めるかと思いますが、一応時系列順です。
1は
>>338-343 2は
>>348-353 3は
>>362-363>>366>>368>>370>>372 4は
>>380-385 5は
>>388-394 恋愛とかそういうのはない、大和と鷹と花梨の青春っぽい話です。卒業話なので、今度こそ本当に終わりです。
秋が過ぎ、クリスマスが過ぎ、そして春が訪れようとしている。
時間を重ねてきたぶん、残り時間は減ってゆく。
――そして僕らはこの学校を卒業する。
なんの変哲もない部室だった。
せまくて、日当たりが悪くて、男くさい。
本庄鷹が今まで所属してきた野球チームのロッカールームとは雲泥の差だ。
それでも、鷹はこの部室がそれほど嫌いではなかった。
淡い光がガラス越しに差しこんで、浮遊する塵がきらきらと光っていた。
ユニフォームでもジャージでもなく、制服を着た小泉花梨が椅子に座っている。
大和猛は窓際に立って、まっすぐ外の景色を眺めていた。
鷹は所在なく入口の傍の壁にもたれている。
制服姿の三人がここに集まるというのは、案外珍しいことだった。
高校アメフトの頂点を決めるクリスマスボウル――アメリカ帰りの大和に率いられたこのチームは、
絶対王者の帝黒学園を破り、西日本代表としてクリスマスボウルに出場した。
そこでの試合は惜しくも負けてしまったけれど、大和と鷹は日本代表として、アメフトワールドカップのジュニア大会に選出された。
女子である花梨は選考から漏れた。
しかし彼女は、気にしたそぶりもなく言っていた。
「私ね、万が一選ばれたとしても、辞退してた。……このチーム以外のどこかで、アメフトやる気にはなれへんわ」
「クリスマスボウルにレギュラーとして出場した女子選手」という華やかで人目を引く肩書により、
彼女のところにいくつか推薦入学の話も持ち上がっていたようだったが、花梨はすべて断って他の大学を受験した。
アメフトは高校までだときっぱり言っていた。
正解だと鷹も思う。
あまり他人に関心がない鷹ではあるが、彼女が大学アメフト界の客寄せパンダのような偶像として扱われるのは、不快だった。
そんな花梨はともかく、大和と鷹がこの高校の制服を着るのは、今日で最後だった。
春の訪れを見ないまま、大和と鷹は代表の一員として明日アメリカに渡る。
卒業式には帰って来られない。
そして、アメリカでの大会が終わったら、大和と鷹も別々の道を行く。
だから、何となく示し合わせたようにして、三人はここに訪れた。
何を話していいのか、本当に途方に暮れる。
ただでさえ、鷹はコミュニケーションをとるのが下手なのだ。
こういうとき、どういうことを言えばいいのか。
今までだって小学校も中学校も卒業したし、チームメイトとの別れもあった。
そのときのことを思い出そうとしても、記憶は蘇ってはくれない。
窓もドアも閉め切っているので、運動部の掛け声がやけに遠くに聞こえる。
吹奏楽部の演奏も。
それが、やけに現実感がなくて、どうとも動きだせなかった。
この日々が終わるなんて、おかしな夢のようだった。
そんなふうに感じる自分が意外だった。
「頑張って、きてね。私が今さら言うことでもあらへんけど」
花梨が言った。
大和が、窓の外に向けていた視線を彼女の方によこして、「ありがとう」と答える。
いつもみたいに、よく響くのに耳触りのいい声で。
鷹は「うん」と小さく口にするので精一杯だった。
うまく会話が続かない。
なんだ、これは。
今生の別れでもあるまいし。
苦手なんだ、こういうの、ほんとに。
今までの鷹だったらさっさと逃げていたような気がするけれど、でも、今はとてもそんなことはできなかった。
すん、と鼻をすする音がして、反射的にそちらに目を向けると、花梨がうつむいていた。
もう明日には、大和と鷹の居場所はこの学校にない。
もうこの制服に袖を通すこともない。
腐れ縁みたいに三年間同じクラスだった大和と課題の話をすることもないし、
この学校のチャイムを聞くこともないし、
この場所に訪れることもない。
――卒業するのだ、他の生徒たちより一足先に。
だから僕らは今ここにいて、会話もうまく続かなくて、彼女は泣いている。
「泣く必要なんてないよ、花梨」
いつの間にか、座っている彼女の傍まで近づいた大和が、
映画の中の騎士がするみたいにひざまずいて、花梨の顔を下から覗きこんで言った。
世間一般の男子高生では絶対にできないやり方だ。
アメリカで過ごしたという環境が彼をそうしたのか、それとも彼の生まれ持った資質なのか。
「二度と会えないわけじゃない。会おうと思えば、いつだって会える」
ああ馬鹿だなあ、と思う。
泣いている相手に優しくしたら、余計に泣かしてしまうなんて、この自分でさえわかることだ。
花梨は顔を伏せて必死で嗚咽をかみ殺す。
それでも、その肩は震えているし、目のあたりを拭う指先は雫で濡れている。
「嘘じゃないよ。もし花梨が、本当に俺や鷹の力を必要とするときが来たら、きっと駆けつけてできるかぎりの力になる。本当さ」
勝手に人の名前まで使ってさ!
本当に、最後まで大和は馬鹿だ。
こんなことを言って、ずっと一緒にチームメイトとして近くにいた花梨じゃなかったら、熱烈な愛の告白だと誤解するところだ。
「……アメリカから戻ってきたら、ピアノ聴かせてよ」
泣いている彼女を落ち着かせようとして、鷹の口から出てきたのは、自分でも意外な言葉だった。
花梨はピアノを趣味にしている。
しかし、アメフト部の選手になってからはピアノの練習がおろそかになっていると言っていた。
一度、聴いてみたいと無意識のうちに思っていたのかも知れない。
「ああ、それは聴いてみたいな。あれがいいな、英雄ポロネーズ」
「ベタっていうか、わかりやすいよね大和は。俺は苦手だな、なんか、騒々しいっていうか……まぶしすぎて」
大和にぴったりすぎる選曲で、気おくれしてしまいそうだ。
鷹はもっと厳かなのがいい。
バッハとか。
「……それなら、練習しておかないと。今、ほんまに腕がなまってるんよ」
泣き笑いで花梨が言った。
大和のおかげで、鷹は人をフォローする能力を手に入れることになったのだ。
感謝したいような、そうでもないような。
光を浴びて輝く埃が大和の周りをたゆたっている。
まるで彼から光が発せられているような。
英雄ポロネーズ。
自分には似合わないけれど、大和にはさぞ似合うだろう。
この男に出会ってしまったせいで、鷹と花梨の運命が変わったのだ。
家族とか友達とかチームメイトとか同級生とか、いろいろなカテゴリの中で、大和と花梨はどこにも当てはまらない。
きっと鷹の中には「大和と花梨」というカテゴリができてしまっていて、大和や花梨にも同じようなカテゴリがあるのだと思う。
このふたりだけ、特別だった。
他の人間とどう違うのか、うまく言葉にはならないけれど。
だから多分、大和や花梨に助けを求められたら、鷹はきっと駆けつけてしまう。
(だって、あの大和や控えめな花梨が助けを求めるなんて、相当のことだ)
花梨は涙をぬぐいながら笑って、大和はゆっくり立ち上がって、鷹は少し離れた場所でそれを見つめている。
終わらないものなんてない。
試合も、少年時代も、人生も。
そしてこの時間さえも、もうすぐ終わる。
だけど、終わらなければいいのにと、愚かにも願ってしまう。
――ああ、そうか。
十八年の人生で、名残を惜しむという感情を、鷹は初めて知った。
――そして僕らはこの学校を卒業する。
終
>>404 なんかドームケーキみたいにふんわりしとる
406 :
創る名無しに見る名無し:2009/05/08(金) 01:05:02 ID:YgFb5C1d
ほしゅあげ
ついでに総合と書いてあるので質問してみる
スレチだったらスマソ
世の中には「小説の書き方」的本がたくさん出ているが、どんな本が参考になる?
「二次小説を書く」のに参考になる本とか
表現とか描写の仕方が学べるとか
というか、みんなああいう本読むの?
教えてエロい人
二次は原作付きアニメorドラマの脚本を書くようなものだと思えばいいんでないの
二次小説って、多少の技術の粗さは「原作への愛」でカバーできる、
奇特なジャンルだと思ってる。
(台本形式とか、あまりに日本語がおかしいのは別として)
だから、あまり二次小説書きで小説How to本を読む人はいないのではないだろうか。
一次も書く人やプロ目指してる人は別として。
逆に言えば、原作の登場人物からかけ離れてたりするのはもちろん、
名前を間違えたり、一人称や三人称を間違えたりすると、
そういう凡ミスだけで嫌がられるジャンル。
すごく特殊な世界だと思う。
>>406 一次創作も二次創作も技術的には一緒。
で、いわゆるHow to本も、どのレベルからの参考書を求めてるかで変わってくるよ。
それこそ漫画になってて文章作法からいちいち詳細に教えてくれる本もある。
いろいろと読んだけど、
今おれが読んでるのは「時代小説が書きたい」(鈴木輝一郎・著)だね。
別に時代小説を書きたい訳ではないんだけどw
現代劇というより、むしろSFなんかだと考え方の共通性はあると思って。
プロになりたい人は、同じ作者の「なにがなんでも作家になりたい」もオススメ。
文芸だろうが文学だろうがラノベだろうが、
技術的にやってることは同じだし、
あとは書きたいジャンルに合わせてチューニングするしかないよね。
二次創作だと重要視されるのは
文章構成の上手さとか文法の正しさとかじゃなくて
なにより「萌える/燃えるかどうか」だったりするしね
特にオンラインなら、三点リーダは二つセットとか
感嘆符・疑問符のあとは一字分スペースとか
そういうこと気にしてないひとは大量にいる
俺は二次創作の肝は「それっぽさ」だと思うので、
>>407が言ってるように、原作を踏まえた上で
ラジオドラマとかを作るイメージでやるとうまくいくと思う。
だから、原作付きのラジオドラマ(もしくはCDドラマ)が
参考になるんじゃないかな、と思ったり思わなかったり(ry
それっぽさは最重要だねぇ
現実の人物を使った場合は
二次創作になるんだっけ?
まあ、分類的にはそうなるかと。
どっかでモー娘。メンバー使ったエロいSSがあったりしたなー。
実在の人物を登場させる場合でも、二次創作とは言われない事はある。
時代小説でも実在の人物を主役に据えて、歴史に忠実に描いたら「歴史小説」だしな。
>>414でいうそれは、二次創作っていうかエロパロだろ。
パロ自体が二次創作なのかもしれないが。
うん、そういう認識。>パロ自体二次創作
まあ、定義論は突き詰めると
「貴方が二次創作だと思ったものが二次創作です。
ただし他人の同意を得られるとは限りません」
って事になるんじゃないかな。
>>416 いやあどうだろ?
>「貴方が二次創作だと思ったものが二次創作です。 ただし他人の同意を得られるとは限りません」
って言う意見は、拡大解釈されると厄介だよ。
おれは商業作品などのストーリーなり世界観なりを元に創作した物だと思ってるけどね。
だからいくらオリジナルと付いてても、ガンダムなり仮面ライダーなりで書いていれば二次創作。
モー娘。に関してはわかんないな。
ストーリーは無い訳だし。
何かあった時に問われるのも、著作権というより肖像権とか名誉毀損とかっぽいし。
>>417 拡大解釈も何も、気に入らないならスルーすればいい、
って意味の言葉でしかないですよ?
逆に、気に入らないからって押し付けるのはやめよう、
って意味の言葉でもありますが。
「こんなもん二次創作じゃねえ!」っていえるのは、
元ネタの雰囲気をぶち壊しているだけな作品にしか言えないかと。
そういう意味では、世の中の二次創作の結構な量が、
「こんなもん二次創作じゃねえ!」って言われてしまうというパラドックスw
ま、気楽に行きましょうや。
419 :
.:2009/05/11(月) 23:19:11 ID:tH4Cm8e8
つまり、二次と普通の小説では、やることは一緒だけど
求められているものが違うってことなんだろうか?
みんなは二次に何を求めてるんだろう?
いや、全然やること一緒じゃないだろ
何でそういう結論になるんだ
ただひたすらの面白さ
いや、基本的にゃ同じだろ。
全然違うとは思えんなあ。
オリジナルだろうと二次だろうと、読み手の事を考えて書くのは一緒だよ。
設定とかを自分で作るか、既存の物から持ってくるかが違うだけ。
そりゃ「創作物」という大きいくくりで言えば同じ作り方に決まってるが、今はそういう話はしてないだろ…
ホラー小説とコメディ小説は同じ小説だから書き方同じか?
そうじゃないだろ
おおい、ここは創発だぜい。
426 :
.:2009/05/15(金) 01:17:06 ID:0iXLLjTY
作品の投下を待ちつつ、自分のSSでお茶を濁してみる。
自分以外の誰が楽しいのかわからない、アイシールド21の二次創作です。
何で今さら……と思う方は、NGName「アイシールド21」、もしくはNGIDでお願いします。
脇キャラクターの桜庭春人と大和猛の話。ひどいご都合主義、ひどい捏造話です。
なぜ今さら……とか、なぜこのふたり……とか、一番疑問に思っているのは自分だったりします。
今までずっと、チームメイトである進清十郎との才能の差に打ちのめされてきた。
それでも、みっともなくあがいて、あきらめて、結局は割り切れずにすがりついて。
そんなことをもう四年も繰り返し、ひどい振り幅に悪酔いしそうになりながら、
アメリカンフットボールに、王城ホワイトナイツにしがみついてきた。
追いつきたくて、追いつけなくて。
そんなときでも、豪雨の中ひとりトレーニングを続け、どこまでも高みを目指す進の姿は、
凡才である自分への最後通牒にも思えた。
まやかしの偶像、祭り上げられたかりそめのエース・桜庭春人。
その立場に甘んじていられるほど無神経ではなく、
それをすべて捨ててしまえるほどには強くなかった桜庭は、まだただの十六歳だった。
雨に濡れた髪も服も、すっかり重くなっていた。
人気アイドルが笑わせると、自嘲する気力さえ桜庭には残されていない。
雨に体温を奪われるのと一緒に、心の熱まで失ってしまったようだった。
そのとき、ふと身体を打つ雨がなくなった。しかし地面で跳ねる水滴は変わらず桜庭の足元を濡らす。
顔をあげると、桜庭の濁った眼に映ったのは傘だった。
緩慢な動きで――だって、何だか本当にすべてがどうでもいい気分だったから――桜庭は視線を転じた。
濡れ鼠の男に傘をさしかけるなんてもの好きもいたものだ。
そんなふうに思っていた桜庭は、傘の持ち主を見て、わずかにその大きな瞳を見開いた。
背が高い。桜庭も人には長身と言われる方だが、この男はさらに高い。
しかし、桜庭を驚かせたのはその男の身長だけではなく、姿かたちそのものだった。
芸能人として活動してきた桜庭の目にも、整っていると思わせる顔立ち。
均整のとれた長身は、モデルにスカウトされてもまったく不思議じゃない。
この男の容姿には、ハリウッド映画のヒーローを想起させるような、ある種の完璧さがあった。
ただ、ヒーローと言っても、フィクションの中にしかいないような正義のヒーロー――
たとえば、そう、ホワイトナイトのような――という雰囲気ではない。
ホワイトナイトではなく、ブラックナイト。
星を呑みこむような漆黒の瞳が、ダークヒーローを彷彿とさせるのかも知れなかった。
「……何だよ」
アイドルとしてのイメージなんて、知るものか。桜庭は、ほとんど投げやりな気持ちで冷たく言い放った。
「とりあえず、屋根のあるところへ移動しないか?」
「放っておいてくれよ」
「それは、できない」
美声、というのは言い過ぎだろうか。声を張っているわけでもないのによく通る、耳触りのいい声だった。
「何でだよ」
「雨の中、箱に入れられたまま濡れている捨て犬を放っておくのは、人としてどうかと思わないか?
せめて、雨をよけてやるぐらいのことはしてあげてもいいだろう」
――犬に例えられた桜庭が怒らなかったのは、単に怒る気力さえなかったからだった。
絶望は、喜怒哀楽すべてを呑みこんでゆく。
うながされるままに、桜庭は近くのコンビニエンスストアの軒先に場所を移った。
でくのぼうのように突っ立ったままでいる桜庭をよそに、
男は大きなショルダーバッグの中からタオルを取り出すと桜庭に押しつけた。
手渡した、なんて可愛らしいものじゃない。受け取らざるを得ないような強引さだ。
雨の匂いの中、そのタオルだけは柔軟剤の甘い香りがした。
「それで」
傘の水滴を払いながら、彼が言った。豪雨の音にさえ負けない声だった。
「アスリートが雨で身体を冷やすなんて、重大な事件でも起こったのかい?」
「何でそんなこと」
わかったんだよ、と続けようとした桜庭は、しかし途中で言葉を引っこめた。
しなやかな筋肉で覆われた長身の彼は、まさに絵に描いたようなスポーツマンだ。
桜庭の身体を見れば、おおよそのところはわかるのだろう。
そんな桜庭の途切れた言葉を勝手に理解して、彼は屈託なく言った。
「まあ、正直に言えばそんなに興味はないんだ。ただ、これも何かの縁ってやつだろう。
もう二度と会うこともないだろうし、ストレスの発散くらいになら付き合うのもやぶさかではない、ということだよ」
「……ああそう」
すげー失礼だぞこいつ、と傘とタオルを借りた身でありながら桜庭は思う。
盗み見たその横顔は、年下にも年上にも見える。そう、整った顔立ちの人間というのは年齢が判別しづらい。
もしかしたら自分よりずっと年上なのかも知れない、と思い、結局文句は言わなかった。
弱まる気配を見せない雨。自動車のライトがにじんで通り過ぎる。
瞬きをして、そして、桜庭は濡れた唇を開いた。
「あんたスポーツやってるんだろ?」
「わかるかい?」
桜庭の口の利き方はかなりぞんざいだったが、相手も別に気にしてないようだった。それぐらいの無礼さは許されるらしい。
「才能の壁にぶつかったことは?」
チームメイトになるよりも、ただの友達になる方が早かった。
だけど、入部したアメフト部で、進はあっという間に「特別」になった。
野球少年が誰でもプロ野球選手になれるわけではないと、
努力さえすればオリンピックの金メダリストになれるわけではないと、もう桜庭は知ってしまっている。
「同い年のチームメイトに、天才がいるんだよ。四年間、ずっとそいつの背中を見てる。
一念発起して同じメニューで合宿をこなしたりもしたけれど、ちょっとの努力じゃどうにもならないんだよな、才能の差って」
隣でそれを見せつけられたら。
どれだけ努力しても、何ひとつとして報われない現実を目の当たりにしてしまったら。
進は友達だ。
だけど、桜庭は、かつてテレビの中のトップアスリートに熱狂したように彼の才能に憧れながらも、進を妬み恨み憎んでいる。
そして進以上に、醜悪で卑小で浅ましい自分のことを憎んでいた。
別に、自分のことを聖人君子だと思っていたわけではない。
それでも、これほどに自分が醜い人間だなんて、知りたくもなかった。
……すると、男は桜庭の顔をまじまじと覗きこんだ。
芸能人だということに気づかれたのかも知れないが、どうでもいい。
が、彼が口にしたのは、桜庭のまったく想定外の、思いもよらぬことだった。
「日本人は若く見えるというし、年齢を見誤ったかな。童顔に思えるけれど、ひょっとして二十代か三十代なのかい?」
「さんっ……!」
――あまりにあまりな言いように、気力が失われていたことさえ忘れ、桜庭は声を荒げていた。
「誰がだよ! 十六歳、高校二年生!」
「なんだ」
「何がだよ!」
「やけに深刻だったから、てっきり競技の引退を迫られているのかと思った」
意味がわからない。どこがどうやってそんな話になったのか。
こういう、少しも話がかみ合わない人物に、桜庭はひとりだけ心当たりがある。
――あの、桜庭に強烈な憧れとコンプレックスを抱かせる、天才だ!
「ひとつ言ってもいいかい」
「何だよ、もう」
「競技を始めて四年。その同じメニューで努力した合宿っていうのがどれくらいかは知らないけれど、長くても一か月かそこらだろう?」
「……ああ」
名前も知らないその男は、笑った。壮絶な笑顔というものを、桜庭は演技以外で初めて見た。
「おこがましい」
その言葉は――少しも優しくはなく、そして桜庭が望んでいた言葉とはまったく違うものではあったけれど――
まぎれもなく、一点の曇りもなく、正しかった。
その圧倒的な正しさゆえに、桜庭のドロドロに淀みきった胸の奥にも、まっすぐ届いて波紋をつくった。
「天才と呼ばれている君の同い年のチームメイトは、四年間それだけの努力を続けているわけだ。
たかだかひと月の努力で、すべて才能の差に転換して嘆くのは、おこがましいと思わないか?
自分でも言っていたとおりだよ、ちょっとの努力で才能の差を埋めようだなんて、甘いことだと自覚しているんだろう?」
その言葉は、正しい。
練習から逃げ出したこともある。理由をつけてさぼったこともある。手を抜いたことも、投げ出したことも。
桜庭が、進の才能と自分を比べ揺れている間、その四年間余りをずっと、進はまっすぐに高みだけを目指し続けていた。
正しい、けれど。
「……ちょっとはオブラートに包む努力ぐらいしろよ!」
「何を急に。勝手だな」
「こっちの台詞だよ! 初対面の人間に!」
「まあ、いいさ。怒りは気力につながるものだ」
そう泰然と言われてしまえば――進と会話するときも往々にしてそうだったが、こちらの方が大人げないような気がしてしまう。
言い方はあまりに直接的だが、彼の言葉が正しいのは間違いないのだから。
「自分ひとりが不幸のどん底みたいに言うなよ。才能の壁にぶつかったことぐらいあるさ。
別に俺だけじゃない、アスリートなら誰だって」
進の姿が脳裏に浮かぶ。そして、百年にひとりの天才と謳われる金剛阿含が、次いで細川一休が。
才能の壁。あの超人たちでさえも、そのような思いを味わったことがあるのだろうか。
「ただ、外から見ているぶんにはね、結果を残しさえすれば構わないんだよ。
天才だろうが凡才だろうが、どちらでも。チームスポーツならなおさらだ」
「……俺は、今までずっと足を引っ張ってきた。チームスポーツだからこそ、いたたまれないんだよ」
「その天才がどんな選手かなんて知らないけれど、ひとりで同時にいくつものポジションをこなすことはできないだろう?
未熟だろうと何だろうと、君がひとつのポジションを埋めているということに意味があるんだよ。
チームメイトがいなければ、どんな天才でも不戦敗だ」
虚飾に彩られた名前だけのエース。天才たちのさげすんだような眼差し。期待、重圧、ミステイク。純粋な声援。
桜庭の脳裏を目まぐるしく無数の光景が浮かんでは消えてゆく。そして、目の前の男の笑顔。
「君に足りないのは自信と、それを支える努力。そしてそれを完遂しようとするだけの覚悟だ。
時間がないのならどうしようもないけれど、そうでないならやるべきことは見えている」
桜庭の手の中でほとんど使われなかったタオルを奪うようにしてバッグに戻すと、彼は傘を開いた。
どうやら、話は済んだということらしい。引き留めたいわけではないが、あまりにあっさりしすぎている。
かける言葉を選んでいる桜庭を制すように彼は言った。
「捨て犬を飼ってやることはできない。一時の情で施しを与えるのも、結局は自己満足に過ぎないから、しないようにしているんだ」
「雨をよけてはやるのに、か?」
「人間の身勝手で野性を失わされた動物が、人間の身勝手で捨てられたとしたら、あまりに酷だと思わないか?
そのくらい手を貸してやっても、責められることじゃないだろう」
どこまでもまっすぐに正しい男だった。このまっすぐさに、凡人の桜庭は憧憬を覚えるのだ。そう、進に対してのように。
「努力は裏切らないよ。そして、努力を軽んじた者は、必ず何らかの形でしっぺ返しを喰らう」
「身にしみてわかってる。……いろいろと、ありがとう」
「礼を言われることはしてないさ。もう二度と会うこともないだろうしね」
「そうだな」
桜庭は、本当に久しぶりに、笑った。笑える自分に少し驚いたが、口に出したのは別のことだった。
「ほんと、そうだ。なんか、自分のやってる競技が全部になっちゃうと、視野が狭くなるよな。
アメフトなんて日本ではマイナースポーツなのに、それを忘れそうになるよ。
これが野球やサッカーだったら、再会の可能性があったのかもな」
それを聞いた彼は、一瞬目を見開いて――傘を差して雨の中、一歩踏み出すと、振り返った。
雨をもはじくような、灼熱の微笑み。
「それじゃあ、またいつか」
一言だけ言い残して、彼は雨の中去って行った。一度も振り返らない。
やるべきことはすべてやった、未練などないと言わんばかりに。
――結局、桜庭はあの場所へと戻る。喜びと怒りと悲しみと楽しみ、すべてを凝縮したようなあの場所へ。
そして桜庭は、自分が天才であるか凡才であるかということは関係なく――自分がチームメイトの先輩に必要されていることを知る。
しかし、この男の正体を、別れ際に彼がなぜ「またいつか」と言ったのかを、このときの桜庭は、まだ知らない。
続
ここはオリジナルキャラクターがいるとダメなんだっけ?
お、アイシールドの人だ
あいかわらずキャラの心理描写が見事だ
桜庭の反感の抱き方が非常にリアルで、自然な心理の移り変わりに
本誌で桜庭が立ち直る伏線の一つとしてあってもおかしくないなと思わされた
ありえたかもしれないif、面白かったです
乙!
注意事項
>>427 「……まさか、本当に再会するなんて」
桜庭春人は、うめくようにつぶやいてみせた。
アメフトワールドカップのジュニア大会の宿泊先のことでの話だった。
半年ほど前、一番どうしようもなかったときの自分が出会ったのはこの男――大和猛だった。
190cmの長身、見栄えのするルックス、何よりこの男は、
日本人ながらアメフトの本場であるアメリカの名門・ノートルダム大学附属中学校でエースとしての称号を勝ち取ったほどの選手だ。
曰く「アイシールド21」。
アメリカで当代最強のランナーの座を獲得した日本人。
天才と名高い進清十郎や金剛阿含でさえも、この男を真正面から破ることは難しい。
大阪の帝黒学園の生徒であるはずの大和がなぜあんな場所にいたのか、そのことは心底謎ではあるが。
「言ったろう? 『またいつか』ってね」
それにしたって、と桜庭は思う。まるで預言者みたいだ。
口にした言葉がこうも見事に現実となるなんて、できすぎている。
クリスマスボウルの決勝、フィールドに立っているこの男を見たとき驚いた。驚いたけれど、それだけだった。
しかし、まさか、こんなふうに話す機会があるなんて思ってはいなかったのだ。
まして、世界大会でのチームメイトになるだなんて。
あのころの、ぼろぼろの自分のことを他のチームメイトたちの前で話題にするのも避けたかったし、
何となくタイミングがつかめなくて、一対一で立ち話をする機会ができたのは決勝戦の前日、それも夜も更けてからのことだった。
試合直前というのに外出していたらしい大和が帰ってきたところを偶然捕まえたのだ。
別に、特別話があるわけではなかったのだけれど、
まあ、短期間とはいえチームメイトなのだから、他愛ない会話をしたっておかしくはないだろう。
「ああ、そういえば君は、芸能活動をしていたんだって?
あまり日本の芸能界には興味がないからあのときは知らなかったんだよ、ごめん」
「……いや、あのさ、謝られると余計いたたまれないっていうか……。
自分のおこがましさを実感させられるっていうか……別にいいから」
そう、人気アイドルだのなんだの言われようと、知らない人は知らないのだということを思い知らされる。
それを思い知らされると、何というか、自分の驕りのようなものを指摘されたようで、
ある程度割り切れた今になってもちょっと落ちこむ。
テンションを微妙に落とした桜庭にはまったく気づいた様子もなく、大和は思い出したみたいに言った。
進にも言えることなのだが、どこか一部分が飛び抜けて優れている人間というのは、
微妙な気遣いとかはできなくなってしまうのだろうか、と桜庭はちょっと考えていた。
失礼な偏見だとは思うが、大和の方も大概失礼な振る舞いをしているはずなので、お互いさまだ。
「あのとき君の言っていたチームメイトの天才っていうのは、進清十郎のことだったんだな」
「ん? ああ。すごいだろ、あいつ」
「確かに、天才という評価もうなずける」
「そういう自分も、だろ?」
話を振られた大和は、さも意外そうに驚いて見せた。そんな態度を取られたら、逆に桜庭の方が驚いてしまう。
「ただの器用貧乏だよ、俺はね。本当に才能のあるランナーに比べたら」
「はあ!?」
桜庭は、驚きを通り越して絶句した。何を言っているんだ、こいつは。
進や阿含でさえも圧倒するような能力を発揮しておいて。
日本チームでもトップクラスの実力者である大和が器用貧乏なら、他の選手は何だというのだ。
「……俺さ今思ったんだけど、過ぎた謙遜って嫌味だよな」
「謙遜なんてしてないさ」
「ほんとかよ」
「ああ。アメリカには、確かにいたよ。俺なんか足元にも及ばない才能の持ち主が」
遠い遠い瞳。そういえばかつて、自分だって才能の壁にぶつかったことぐらいあると言っていた。
攻守ともに日本で屈指の総合力を誇る大和にここまで言わせたのは、ここアメリカ、ノートルダム時代の経験だろう。
その相手が、もしかして、明日の決勝戦――アメリカチームの中にいるのではないか。
恐れにも近い感覚に背をなでられた桜庭をよそに、大和は平然と続けた。
「でも、別に構わない。瑣末なことさ。
才能なんて一種類じゃないし、自分と他人の才能の多寡を正確に量ることなんてできないんだからね」
中学生で単身渡米し、異国の地で最強のランナーの称号を得る。
才能の差なんて瑣末なことだと言い切る大和の持つ絶対の自信は、確かな覚悟と努力に裏づけられていた。
彼が渡米している間にどれだけの努力をしてきたか、桜庭は知らない。
ただ、大和本人に「おまえは才能があってずるいよな」という言葉だけは、言ってはいけないということは桜庭にもわかる。
それを言ったら本当に、アスリートのはしくれとして……人間として、だめだ。
桜庭は、大和と同じようにはできない。
それだけの覚悟をもって努力を重ね、今を手に入れた大和を、軽々しくうらやむ資格などない。
「天才だろうと凡才だろうと、結果を残しさえすれば構わないってことだろ」
大和は桜庭をわずかに見下ろして、面白そうに笑みをつくった。
桜庭がつぶやいたのは、あのとき大和が口にした言葉だった。
「ああ。個々人の才能や能力を比べるのも悪くないし、そういうのも個人的には嫌いじゃないが、
結局のところはチームの勝利こそが唯一の正義だ。それに比べれば、なんだって瑣末なことだ」
「Glory on the Kingdom」
――王城ホワイトナイツの試合前の円陣の掛け声に憧れていた過去。
「王国に栄光あれ、か」
「騎士の誇りに懸けて勝利を誓う……って。結局は、それなんだよな」
王国――チームが勝利の栄光をつかみさえすれば、それが最良の結果なのだ。
そのために礎となれるのなら、喜んで役目を果たそう。
エースだって控えだって、チームのために尽くすという点では同じなのだ。
そう、個人の名誉は二の次だと、試合のたびに宣言していたのに。
あのころの自分は煮詰まりすぎて、王城というチームを愛していることさえ忘れかけていた。
「――それじゃあ、また明日。休み損ねてベストコンディションでないなんて、言わないでくれよ」
「ああ、うん」
きびすを返した大和は、あのとき同様振り向く気配も見せない。憎々しいまでに潔いその背中。
しかしながら、そんな彼に、言っておきたいことがあった。
「大和」
「ん?」
足を止め、振り返る。折り目正しいという印象だった。
自分のように悩み過ぎてどちらにも動けなくなったり、迷って立ち止まったり、そういうことをしない男なのだろう。
誇りを尊ぶ王国の白騎士とはやっぱり少し違う。そう、鋼の規律を遵守する帝国の黒騎士。
かつて桜庭が大和に抱いた印象は、そんなに間違ってなかったのだと今は思う。
「あのときは、ありがとう」
「ん?」
「言ってもらえて、よかったよ」
才能の差という絶望。
漆黒の底なし沼に溺れかけていた桜庭に、偶然出会った大和は言った。「おこがましい」と。
その言葉は、優しくも親切でもなかったけれど、正しかった。
そして今思えば、その正しさこそが最大の優しさであり、親切さだった。
才能よりも何よりも、桜庭に足りないものは自信であり、
そしてその自信を支える努力と、努力を完遂するだけの覚悟が足りない、と大和は言った。
アスリートとしての桜庭を何ひとつ知らなかったにもかかわらず、大和の指摘は完璧に正しかった。
努力を重ねた桜庭は、その後の秋季東京大会でベストイレブンに選出され、
そして今はそうそうたるメンバーの並ぶ日本代表選手の末席に名を連ねている。
「ダレル・ロイヤルの手紙、知っているかい?」
急に何の話だ、と思わないでもないけれど、すでに大和の唐突さには少々慣れかけている桜庭である。
ああ、とうなずいた。
「一流の選手はあらゆる努力を払い……ってやつだろ」
――フィールドでプレーする誰もが必ず一度や二度、屈辱を味わわされるだろう。
打ちのめされたことがない選手など存在しない。
ただ一流の選手はあらゆる努力を払い速やかに立ち上がろうとする。
並みの選手は少しばかり立ち上がるのが遅い。
そして敗者はいつまでもグラウンドに横たわったままである。
「俺は、他人を引っ張って立ち上がらせてあげるような真似はしないよ。
知ってるだろう? 施しは好きじゃないんだ。誰のためにもならないからね。
だから、礼を言われるようなことじゃない」
「まあ、そうなんだろうけどさ。でも一応……」
言いかけた桜庭を制し、大和はよく耳に響く声で告げる。
「もしも俺の言葉が何らかのきっかけになったというなら、それは、俺ではなく、君の才覚のたまものだ」
――打ちのめされたことがない選手など存在しない。
ただ一流の選手はあらゆる努力を払い速やかに立ち上がろうとする。
おやすみ、と付け足しのように言って、今度こそ去っていく大和の背中に、桜庭は言った。
言わずにはいられなかった。というか、いつかは絶対に言おうと思っていたことだった。
「……年下のくせに、生意気すぎ!」
わずかだけ顔を振り向かせた大和は、心底楽しそうに笑っていて、何だか力が抜けた。反論はないらしい。
試合開始の直前、組まれる円陣。
その前に、桜庭は右手を左胸――心臓の真上に当てて、心の中でつぶやいた。
――騎士の誇りにかけて勝利を誓う。
エースだ何だと持ち上げられるのが嫌だった。
どれだけ騒がれようとも、どれだけ称賛されようとも、自分がそれにふさわしい実力を持っていないと、
他でもない自分自身が一番よくわかっていたからだ。
――Glory on the Kingdom!
でも今、日本代表の一員に名を連ね、そして昨日大和にかけられた言葉。
分不相応な気はするけれど、それでももう、しりごみして逃げ出したくなるようなことはなかった。
結局、人は誰も自分からは逃げられない。自分を救うための努力は、自分にしかできないのだ。
そう、努力は決して裏切らない。
覚悟を決めてからの努力がすべて、今の自分の支えとなっている。自信もついた。
東京のベストイレブンに選ばれておいて、それでも謙遜するだなんて、選ばれなかった他の選手全員に失礼だ。
そこで生まれた責任を、全部丸ごと背負うつもりでフィールドに立っている。
ふと目線を上げた先に、大和の横顔が見えた。
感情が読み取れないのは、試合開始に爆発させるためだろう。
フィールドで待っているのは彼の因縁、アメリカ代表との決勝戦なのだから。
そして試合が、はじまる。
フィールドに足を踏み入れる前、桜庭は、もう一言だけ心の中でつぶやいた。
――王国に、チームに、栄光あれ!
終
哀史る、今週(!)原作が円満終了したが、最終回だけに超展開だった。
後日談や何やがこんな風に描かれてたらなーと感じた者も結構いる…か?
448 :
保守:2009/10/28(水) 01:50:38 ID:n2eVx/Am
保守
449 :
クロスオーバー:2009/12/03(木) 05:55:50 ID:FeFECO6q
宇宙から光がさした…光は地球を貫き、直後大きな爆発が起こった。
何十億人もの人が爆発によって犠牲になりこの出来事は後に血の火曜日と呼ばた。
血の火曜日から4ヶ月後…
広大な砂漠にひっそりと佇むグランド・キャニオン、その断崖絶壁に命綱一つ付けず、己の腕と足だけで上へと昇り進める男がいた。彼の名はリュウ。
リュウ「…フゥ…。」
常人では決して上れないであろう高さの崖を汗を額から流しながらも岩と岩の間を器用に指でつかみながら軽々と登って行く。
ガシッ!
リュウ「!!」
崖の頂上に手をつけると、全身の力を腕に集中させ、一気にはい上がる。
?「奇遇ですね。ミスター・リュウ」
リュウ「…またアンタか。」
崖の上には見覚えのある顔があった。ここ何日もリュウに着いて回っているイギリス系の男だ。
?「例の話、考えていただきましたか?」
リュウ「……」
リュウ「ボンド、とか言ったか?」
ボンド「えぇ、名前を覚えて下さっていたとは、光栄です。」
フッといかにもキザに微笑するボンドと言う男は、
まるで避けるようにさっさと修業を終えて帰宅しようとするリュウの後を追い掛ける。
リュウ「いい加減勘弁してくれないか?俺は修業のためにここにいる。アンタと話をする気は全くない。帰ってくれ。」
ボンド「血の火曜日以来、世界中で得体の知れない怪物達が現れ、至る所で暴れ出しているのはご存知ですか?」
リュウ「あぁ、ニュースで見たがそれが
どうかしたのか?」
ボンド「私はイギリスの諜報員…いや、現在は地球防衛機構の工作員です。ミスター・リュウ。あなたの経歴は実にすばらしい。」
ボンド「史上最強とまで言われたタイ出身の格闘家、サガットを倒し、その数年後に麻薬組織シャドルーを壊滅、総帥と言われた悪名高きサイキッカー、ベガを滅ぼした。
さらに近年では魔人アポカリプス、そしてマーブル連合を壊滅寸前にまでおいやったオンスロートの打倒、さらには地球全土を危機にさらしたアビス戦役での活躍と…耳を疑うような経歴ばかりですね。」
リュウ「経歴なんて俺には無意味だ。強い奴と戦ってきた。ただそれだけさ。」
ボンド「ミスター・リュウ!!」
リュウ「うわっ;何だいきなり詰めよって来て…」
ボンド「あなたのその力、その強大な力が我々には必要なのです!
今地球は、あの怪物達によって食い尽くすされようとしています。我々はあなたがた、歴代の勇士を一刻も早く集めなければなりません!」
リュウ「俺の知った事じゃないな…。悪いが君の話には乗れないよ。他をあたってくれ。」
ボンド「……なるほど、どうしても話は聞いてくれない、と。」
リュウ「あぁ、すまないな。」
ボンド「ふぅむ…では、こう言うのはどうでしょう?」
リュウ「?」
ボンド「僕があなたに勝負を挑んで勝ったら、依頼を引き受けてもらう。と言うのは?」
そう言うとボンドはいきなり身構え、リュウの通る道を塞いだ。
ボンド「負ければもう来て欲しいとは良いません。
もうあなたが僕の顔を見る事もないでしょう。どうです?」
リュウ「決闘の申し出か。」
リュウ「最近ストリートファイトをやる機会がへっていたんだ…いいだろう。その戦い、乗った!」
ボンド「OKしてくれると思いましたよ…」
ボンドはニヤリと笑うと地面から小枝を拾った
ボンド「この小枝が地面に落ちた瞬間が勝負開始です。」
リュウ「良いだろう…」
ボンドはリュウの返事を待った後、勢いよく小枝を空に飛ばした。
宙に浮いた小枝が地面につくまでそれほど時間はかからない。あっと言うまに勝負は始まった。
ボンド「さて、おてなみ拝見といきますか。」
リュウ「来い!」
お、なんか来てる。
007とストリートファイターか。
454 :
クロスオーバー:2009/12/04(金) 01:33:05 ID:aW1KSEdS
その頃、とある離島では…
アンパンマン「ア〜ンパ〜ンチ☆」
バイキンマン「ギャヒ〜!!おのれ覚えてろよ〜バーイバーイキーン;;」
アンパンマン「大丈夫かい?おむすびマン。」
おむすびマン「ハハ、なんとか。いやしかし、相変わらずアンパンマンはお強いバイキンマンをいとも簡単に倒してしまうとは。助かりました。」
アンパンマンと呼ばれた3等身のマントを纏った“ナニか“が頭がおむすびの放浪人を介抱していた。
アンパンマンはこの街のヒーローだ。度重なる悪人からの災害から住民を守る正義の味方である。
彼の戦い方は大体が一度、顔面に重傷をおってピンチになった所を仲間達に助けてもらい「元気百倍」になった所で悪人に猛攻を食らわし、圧勝するのがセオリーである。
アンパンマン「とりあえず怪我をしてるみたいだからパン工場に帰ろう。」
おむすびマン「ぬぅ、かたじけないでごさんす。」
アンパンマン「背負ってあげるよ。」
おむすびマン「な、何もそこまでしてもらわなくても…」
アンパンマン「困った時はお互い様さ^^」
おむすびマン「かたじけないでござんす;ではお言葉に甘えて…」
と、その時だった。空から巨大な軍用機がアンパンマン達めがけて物凄いスピードで墜落して来くる!
おむすびマン「ア、アンパンマン、危ない!よけて!」
アンパンマン「え…うわああああああ!!」
ギュオォォォ!!
Σガシャアアアン!!
間一髪の所で回避したアンパンマン。
アンパンマン「ふぅ〜;危なかった〜^^;」
アンパンマン「一体あれは何なんだろう?」
墜落した軍用機は全体がひしゃげてしまったものの、何とか大破は免れた形で森の奥の方に着陸(?)した。
アンパンマン「おむすびマンちょっと待っていてね。
あの飛行機を見てくるから。中の人がケガでもしてたら大変だ!!」
おむすびマン「了解でごさんす。」
アンパンマン「うわぁ…メチャクチャだぁ…」
ボロボロになった軍用機のもとに駆け付けるアンパンマン。どうやら木が生い茂った所に落ちたため大破をまぬがれたようだ。
アンパンマン「すみませーん!!大丈夫ですかー!?いたら返事をしてくださーい!!」
軍用機の入口の扉をドンドン叩くアンパンマン。
…………
返事がない。
アンパンマン「これは中の人が本当に危ないかもしれない!!一刻も早く扉をあけなくちゃ!!よーし!!」
アンパンマン「アーンパーン…
Σ?「ターーーーーーーーンク!!!」
ん?続きか?
アンパンマン「!?」
突然中から誰かの叫び声が聞こえた…次の瞬間!!
バァァァァァン!!
Σアンパンマン「う、うわあああ;!」
入口の扉がいきなり吹き飛んだ!扉に巻き込まれ遠くの方へと飛ばされるアンパンマン!
同時にまるで怪獣が出現したかのような音楽が流れ始める。
タァァァタァタァタァタァタァタァァァァアアアアアン!!
Σ巨大な筋肉の塊のような怪物「ウォォォォォォォォォォォ!!」
?「忙げぇ!!急いで飛行機から出るんだ!!」
?「ごほごほ、廃を飲んじまったわい;」
?「ビル!!何してんの!!もたついてないで早く来てよ!!」
?「トホホ;今度こそ本当に戻れるかと思ったのに…」
突然飛行機の中から4人の男女が物凄い勢いで入口から
逃げるようにして姿をあらわした。
一人はいかにもワルそうな腕にタトゥーを掘った単髪の男。もう一人は兵隊の帽子を被り、タバコを口に加えた老人。
老人にせかすように言葉を投げかける十代前後の若い女性。
そして最後にサラリーマン風の細身の黒人男性
4人が逃げるように飛行機から出て来た後、甲高い唸り声を上げてみるからに“怪物“の名がふさわしい、ゴツい生物が地響きをたてながら4人に向かって来る!!
タトゥーの単髪「あぁ…;くそォ!!喰らえ!!喰らえこの野郎!!」
タトゥーの単髪がかかんにも怪物の正面に出て、ショットガンの弾を浴びせる!しかし!
Σ筋肉の塊のような怪物「ウォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!」
ゲシィィィ!!
Σタトゥーの単髪「ぐわあああああァァァァァ;!」
女「フランシーーーースッ!!」
怪物のその長く太い腕はタトゥーの単髪をとらえ腕一降りを単髪に喰らわしただけで単髪は10メートルもさきに吹き飛ばされてしまった!!
黒人「よぉくもフランシスを!!ゆ、ゆ、ゆゆゆ許さないぞォォォォ!!」
怪物に圧倒されていた黒人だったが仲間が吹き飛ばされ何か吹っ切れたように懐から火炎瓶を取り出した。
黒人「喰らえぇ!!マッチョ野郎!!」
バリィン!!
Σ筋肉の塊のような怪物「ウォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!」
黒人の投げた火炎瓶が怪物にクリーンヒットし、みるみるうちに怪物の体が炎をあげる!!
老人「ナイスだルイス!!ゲホッゲホッ!!」
女「さぁ!早くこの脳みそ筋肉野郎をミンチにするよ!!」
黒人「皆とにかく撃ちまくれ!!いくぞぉ!!」
炎を前にしてパニックを起こす怪物に、三人の銃が一斉に火を吹いた!!
筋肉の塊のような怪物「グゥ…ォ……」
三人の雨のような銃弾の嵐についに怪物は
力無い唸り声を上げて力つきた。
黒人「ハァ…ハァ。やった!やったんだ俺達!ハハハ!ハハ!」
老人「まったく焦らせよって老体は心臓が弱いんじゃ;」
女「大丈夫?フランシス。」
タトゥーの単髪「あぁ…くそ。いいとこ見せようと思ったのにッ。」
女「もう…。」
おむすびマン「あ、あなた方大丈夫でござんすか!?」
Σ老人「!?」
騒ぎを聞き付けたおむすびマンが4人の元にかけつけて来た。
黒人「ヒィィッ!!今度は何だ!!」
シャキッ!
いきなり現れたおむすびマンに黒人は銃口を向けた。
タトゥーの単髪「おいおい、今度はぬいぐるみの
ゾンビか!?」
おむすびマン「ぬいぐるみのゾンビ!?失礼なお方でござんすね!!あっしは街から街へと旅をする…そんな事よりあなた方その傷は大丈夫でござんすか?」
自分達の体を心配するおむすびマンになおも警戒する4人。
黒人「おいおい;今度はしゃべるゾンビかよ;
ちくしょう!ブッコロ…」
老人「待て!ルイス!まだ感染者と決まったわけじゃないじゃろう!」
Σおむすびマン「アワワ;」
老人「アンタここの住人か?」
おむすびマン「いや、あっしは街から街へと放浪し、特定の住まいは持たないのでござんす。」
タトゥーの単髪「おいおいゾーイ、聞いたかよ!?放浪癖のあるゾンビだとよ!こいつは笑えるぜ。」
老人「ちゃかすなフランシス!アンタ、本当に
感染者じゃないらしいな。我々はその…事故でここまできてしまったんだ…すまないがどこか安全な場所に我々を連れて行ってもらえんじゃろうか…」
おむすびマン「なるほどなるほど!それならいい場所があるでこざんすよ!街の外れにあるパン工場が。」
黒人「おいおい、こんなヘンテコな生き物の言う事聞く気かよ!?どうかしてるぞ!!」
女「いいじゃないルイス。なんか、かわいいし
(笑)」
黒人「ゾーイ…;」
ビル「とりあえず自己紹介をしよう。ワシはビルだ。よろしく頼む。」
おむすびマン「よろしくでござんす。」
ビル「そしてあのワルそうなイレズミ男がフランシス。」
フランシス「よぉ!アンタみたいな奴が世の中にいただなんて…まぁ、全力疾走のゾンビの群れと戦って来たから驚きもしねぇが。」
おむすびマン「そ、そうでごさんすか…;」
ビル「そしてこの紅一点が…
ゾーイ「私ゾーイ!!ホラー映画しか見てなかったからあなたみたいなかわいい人(?)見たのなんて久しぶりよ!うわ、手ふわふわ…」
おむすびマン「アハハ;よろしくでござんす。」
ビル「で、この会社員みたいな奴がルイスだ。」
ルイス「まだアンタを完全に信用したわけじゃないからな!ちょっとでもおかしな動きしたらお前のドタマかちわっ……」
?「上から来るぞぉ〜!気をつけるぉう!」
ルイス「?」
Σパーカーを来た怪物「キャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
ゾーイ「なんてこと!ハンターよ!!どうやって飛行機の中なんかに…」
ルイス「う、うわああああ;!!」
ガシィ!!
突如現れたパーカーを着た怪物は謎の声の言うとおりに
上から物凄いスピードでルイスにのしかかり馬乗りになる!!
ルイス「た、助けてくれー!殺されるー;!」
パーカーの怪物は馬乗りになると唸り声を上げて
ルイスの体中を尖った爪でひっかき回す!!
ルイス「だず!だずげでぐれぇーーー;!!」
アンパンマン「ア〜ンパ〜ンチ☆」
ルイスがやられる、すんでの所で先程筋肉の塊のような怪物に吹き飛ばされたアンパンマンがハンターと呼ばれたパーカーの怪物にキツイ一撃を食らわせ…そして…
Σハンター「キャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア〜;!」
ピカーン☆
星になった。
アンパンマン「ふぅ…。危ない所だったねー^^;」
ルイス「うぁ…;うぁ…;」
フランシス「おいおい何だ今度は?マントの
ピエロかよ?」
アンパンマン「あ、こんにちわ〜。僕アンパンマンです^^」
469 :
クロスオーバー:2009/12/04(金) 04:42:11 ID:aW1KSEdS
ビル「ふぅむ…みたこともない生き物だらけじゃなぁ…一体全体ここはどこなのか…」
おむすびマン「アンパンマン!いやぁ〜見つかってよかったでござんすよ!!おや?その傷は?」
アンパンマン「え?アハハ、大丈夫大丈夫ちょとすりむいただけ。こんなのへっちゃらさ^^!」
アンパンマン「あ…あれ?顔が汚れて力が;…へたり…」
おむすびマン「あ、アンパンマンしっかり;!」
急に体の力が抜けてへたりこむアンパンマン。
ゾーイ「ち、ちょっとこの子どおしたのよ!?」
アンパンマンを介抱しながらおむすびマンは言う。
おむすびマン「アンパンマンは、顔が濡れたりよごれたりするとまともに動けないんでござんす!早く顔を変えないと大変な事に!!」
ゾーイ「か、顔を変える;?」
おむすびマン「詳しい話は後でするでござんす!!早くアンパンマンをパン工場につれていかないと…とにかく手伝って欲しいでござんす!」
ゾーイ「わ、わかったわ;ほら!ルイスしっかりしなさいよ!この子持ち上げるの手伝って!」
ルイス「僕はケガ人だよ;?」
ゾーイ「がたがた言わずに手伝っえって言ってんでしょ!?」
ルイス「わ、わかったよ;手伝うって;
しっかし重いな;こいつ」
ビル「どれワシも手伝おう…う;本当に重いな;
ここに車でもあれば楽に運べるんだが…」
?「こんな夜は…命を無くす奴がおおい
いぃぃ…」
ビル「その声は…さっきの!」
ビル達が振り向くとそこには迷彩柄のスーツをまとった、右の腕と左腕の位置と右の足と左足の長さのバランスが極度におかしいヘンテコな男が立っていた…
おむすびマン「あなたは一体…?」
?「俺は……
コンバット越前と呼ばれたオトコ↑↑↑↑↑!
」
コンバット越前「だぁから言ったんだ…
クリムゾンなんかに関わっちゃいけないってッ↑!」
コンバット越前「クリムゾンに関わるな!関わると…命をなくすぞぉうぉ↑?」
フランシス「おい、このオッサンイカれてんのか?何言ってんだ?」
ビル「アンタ、もしや車もってんのかい?」
コンバット越前「あぁ…持ってるさ…だが俺の車は…お前を破滅へとみちビクッ!!」
ビル「よくわからんが、乗れと言う事らしいぞい。ほらみんな、こいつを担ぎあげるぞ!せーのっ!」
フランシス「おう!!んんん…」
5人が力を合わせてももつのがやっとなくらいアンパンマンは重いようだ。かなり時間をかけてアンパンマンを車にのせた。
コンバット越前「皆のれ!!それと…」
コンバット越前「せっかくだから俺はこの運転席を選ぶぜ↑↑」
ビル
「そうだな、これはアンタの車だ是非ともそうしてくれ。」
コンバット越前「おおろかな者よ↑!」
フランシス「あのじいさんよくあいつと普通に会話できるな;」
ルイス「あいつと同じで頭がイカれてんのさきっと。」
しばらくして…とあるパン工場…
パン工場の主人ジャムおじさんは事のなりゆきをおむすびマンに聞かされた。
ジャムおじさん「何だってー!?」
おむすびマン「顔が汚れちゃったみたいでして…」
ジャムおじさん「なるほどそれは大変だぁ…;バタ子すぐに新しい顔を焼くよ!」
バタ子「はい!ジャムおじさん!」
アンパンマン「う〜;」
コンバット越前「その前に伝えたい事がある↑↑
アンパンマン聞こえているか!?」
アンパンマン「う〜;なんとか;」
フランシス「おいおい、あいつは今弱ってんだ。そっとしといてやれよ。」
コンバット越前「事は一刻を争うんだよォォォォ↑!!!!」
フランシス「そうかい、勝手にしろよ全く。」
コンバット越前「俺は、地球防衛機構の
コンバット越前!!
地球を守るために君の力が必要なんだぁ↑↑」
アンパンマン「…え…?」
473 :
クロスオーバー:2009/12/13(日) 02:38:50 ID:p57Hsi/I
所変わってここは太平洋上空。壮大な雲に囲まれながら場違いに浮かぶ飛行海賊船が一隻。
アミンゴ「船長。ランチタイムの時間ですよ〜」
ルビィハート「はぁ〜ん…」
アミンゴ「ンホ?どうしたの船長。具合でも悪いんですかー?」
海賊船の船長は甲板で誰もが感じる心の病にふしていた。
コックピットからでてきたサボテンのような生物はトーストやサラダが乗った皿片手に陽気に船長に話しかけたがいまいち反応がない。
ソンソン「そっとしといてやりなよアミンゴ。ルビィは今、深〜い悩みに翻弄されているのさ。」
アミンゴ「ンホ?」
アミンゴの肩をポンっと叩き、フっときざににやつくのは同じ船員の猿娘。ソンソンであった。
474 :
クロスオーバー:2009/12/13(日) 03:01:55 ID:p57Hsi/I
アミンゴ「悩み?食べ物の事かな?」
ソンソン「あのね〜四六時中食べる事ばっか考えてんのなんてアンタみたいなもんよ!恋よ恋!ルビィハート船長大先生は今恋患いにかかってご傷心なのよ!」
アミンゴ「へ〜。恋か〜。おいしいの?」
ソンソン「はぁ!?アンタ恋も知らないの!?」
アミンゴ「ん〜…………?何?」
ソンソン「あのね〜。恋ってのはこう、胸にくぅ〜って来るって言うか〜…
Σルビィハート「アンタらさっきからギャーギャーうるさいんだよ!私のことなんかほっといて仕事しな!船から突き落とされたいのかい!」
ソンソン「ウキャー;!ほ〜らいわんこっちゃない!そっとしといてやれって言ったのにー!」
ルビィハート「ソンソン!動力室の整備どうしたんだい!?またサボってたんだろ!!」
ソンソン「うっさいわねー!ちゃんとしますよーだ!」
すたこらとその場を去っていくソンソン
アミンゴ「仕事だったらやってるよ〜。ほらこれ。今日のランチ!」
ルビィの身体に皿を押し付けるアミンゴ
ルビィハート「あ〜わかったわかった。ごくろうさん。ちゃんと食っとくよ。まったく。」
アミンゴ「ねぇルビィ。恋って何だい?心が何だの
ソンソンがいってたけど。」
ルビィハート「あーあーおいしいモンだよきっと。
ほらさっさとおいき。」
ルビィハートはアミンゴをまるで邪険にするようにシッシの動作をするとまた甲板の椅子にぐで〜っと腰をかけた
475 :
クロスオーバー:2009/12/13(日) 03:36:04 ID:p57Hsi/I
ルビィハート「んで!何でアンタがここにいるのさ!」
モリガン「あら、せっかくお友達に会いに来たのに何でいるんだなんてヒドいんじゃない…?」
ルビィの横でゆっくりとお茶を飲みながら寛ぐのはアースランド家当主にしてサキュバスのモリガンであった。
ルビィハート「気軽るに入って来るなって言ってんだよ!ここは私らにとっちゃ戦場!部外者が勝手に入ってこられちゃ困るんだよ!!」
モリガン「あ〜ら、戦場にいるのに愛しい人の事で頭が一杯なあなたに言われたくないわ。」
ルビィハート「うるさいねこのインバイ!!アンタに私の気持ちなんかわかるわけないのさっ!!」
モリガン「わかるわ〜。私も恋をしてるもの。あのかわいらしい三つ編みに大きな胸、スラ〜っと延びた脚に…あ〜ん!堪らないわ!」
ルビィハート「……;誰の事だか知らないがヤりたいと恋ってのは別物だよ、サキュバスさん。」
モリガン「まぁ!失礼ねぇ。ちゃんと私だって恋しているもの。」
ソンソン「あれー!?」
二人が話してる最中にまたヒョコッと顔を出すソンソン
ソンソン「ウキャーン♪モリガンだぁー!いつからいたのー!?」
モリガンを見つけるないなやいきなり彼女の胸に飛び付く
モリガン「さっきからいたんだけどねぇ。フフ、久しぶりねソンソン。何年ぶり?」
ソンソン「んもうすんっごく久しぶりよーん♪」
ルビィハート「おいソンソン!!整備してこいってさっき言ったばっかだろ!?」
モリガン「あ〜らお仕事さぼったの?いけない子ね。お仕置きしなくっちゃ…」
ソンソン「はぅ〜…お仕置きすき〜♪」
ルビィハート「あー…やってらんないよ」
ルビィハートは二人に呆れ変えると椅子を立って船の前方を見つめた。
Σルビィハート「はぁ〜今頃あいつは何してんだろうね〜サイr……!!」
アビスとの戦いで共闘した友の顔を思い浮かべた瞬間…
モリガン「あら、お客さんみたいね。」
ルビィ達の前方にはみたこともない巨大な
ステルス機が立ちはだかっていた。
Σソンソン「な、なんだぁ〜!?」
ルビィハート「クソックソッ!今度は何だよ!?」
ルビィハート「おいアミンゴ!マイクかしな!」
アミンゴ「ンホ!」
アミンゴが船体にくくりつけてあるレトロなメガホンをルビィに手渡した
ルビィハート『おい!そこの飛行機!アンタらの前方にはこの宇宙最強のルビィハート様の船が泊まってる!!ケンカ売ってんのかい!?さっさとどかないと大砲ぶっ放すよ!?』
ルビィハートがメガホンで威嚇するがステルス機は一行にどこうとはしない。
それどころかステルス機の前方はじょじょに変形して行きコックピット部分の下が開くとスロープがルビィの船の甲板に延びて行き中から数人の男達が出てくる。
ベガ「久しいな。ルビィハート…」
モリガン「あらまた…珍しい人がおいでだこと…。」
誰もいないんで今のうちに
ただ傍にいてくれたら
「お〜い、ねね姉!忘れてるよ」
「お、すまんすまん」
勢いよくマンションのドアから飛び出そうとしたねねねの背に、
元気よく声を掛けたのは赤毛の少女・・・アニタだ。
その右手には黒ぶち眼鏡が握られていて、ねねねは少しもどかしそうにそれを受け取った。
「・・・最近、よく忘れるよね・・それ」
「・・・うん、・・・そうだね」
ねねねはごまかすように笑みを浮かべながら眼鏡をかける。
「大切な人」が失踪してからかけはじめた眼鏡なのだが5年後、
その当の本人と再会し、異国の地への旅から帰ってきてからやたらとかけ忘れるようになった。
ふと、アニタの脳裏に本を山のように抱えて無邪気に笑う30歳無職のメガネ女が浮かび上がる。
…同じ眼鏡だよなあやっぱり
「ねね姉「あの人」のとこいくんでしょ?」
「うん、今日は遅くなる・・・いや今日もかな?」
「最近・・・毎日行くんだね」
「あ〜、あいつアタシがいないとなっっんにもできないからな」
ほれ、とやや自慢げに弁当をみせ、ねねねは自分がいないとメシも食わん、掃除もせん、
ドアの鍵もかけん、はたまた貯金もせん・・・等々・・等々・・・
まるで親か保護者のように愚痴をこぼしていく。
不思議なことに言葉とは裏腹にその表情は生き生きとしていて
「ふうん、でもなんだかねね姉嬉しそ・・って、いてて、痛い!何するんだよ!」
そんな少女の頭をねねねは右手でぐりぐりとこねくり回す。
「『読子・リードマン』、あの人じゃなくそろそろ名前で呼んであげなよ?」
「な、なんだよねね姉だって、名前で呼ばないじゃん!」
確かにねねねも彼女の名前をきちんと呼ぶことは稀にしかない。
だいたいは「センセイ」か「あんた」か「メガネ」
・・・少しは敬意?を払って名前で呼んでみようか?ねねねはそう思った。
「アニタ・・あんたまだセンセイのこと嫌いなの?」
あえて聞きにくいことをストレートに聞いてみる。
これくらいなら大丈夫だろう、そういう信頼がお互いの中でできていた。
「ち、違う!嫌いじゃないよ・・・ただ・・」
「ただ?ただ何よ?」
「う〜・・・うっ、うまく言えない!・・けど嫌いとかそんなんじゃないよ・・」
「ふうん・・まっいいけど」
それ以上ねねねは追求しない。そんなねねねにアニタは聞き返す。
「ね、ねね姉こそ、どう思ってんだよ?」
「へ?」
「よ、読子センセーのこと」
「・・・・・・・」
「前、香港にいた時に、話してたじゃんほんとはどうなの?」
ずっとアニタが気になっていたことだった
『好きだったの?』
香港で雨の中アニタはそうねねねに聞いた。てっきり
ねねねの探し人が男だと思ってたから。
でもねねねは
『…女のひとだよ』
そう言って寂しそうに微笑んだ。その笑みにアニタは頬を赤くした。
女のひとっていいながら、あの時のねね姉の表情はまるで…
「バ〜カ、変なこと聞くなセンセイは女だ、アタシはそんな趣味はねー」
「いって!痛いなあもう」
アニタの頭を軽く小突き、背中を向けたままねねねは答えた。表情は見えない。
「アタシはセンセイが傍にいてくれるだけで、・・・ただそれだけでいい」
「・・・・」
「じゃ、いってくる、たまにはマギーと料理当番代ってやれよ」
「うん、いってらっしゃい」
ねねねの後ろ姿を見送りながら、アニタはふとねねねがあの時の表情を浮かべているんじゃないか、
そう思った。
END
479 :
創る名無しに見る名無し:2010/02/16(火) 22:17:26 ID:lPmgLNNT
あげ
投下乙なんだけど、このスレ元ネタ知らんのばかり…
しかも読んでみてもネタバレっぽい描写に目を逸らしがち…ごめんよ
>>480 いや、そんなことない感謝
R.O.DはTHETVの方のネタ
482 :
創る名無しに見る名無し:2010/06/10(木) 03:18:26 ID:uq6qdyZ4
age
483 :
◆91wbDksrrE :2010/06/21(月) 00:55:39 ID:A68+lri+
会話形式小ネタ 元ネタ:化物語 阿良々木暦と八九寺真宵の会話ネタ
「こんにちは」
「ああ、久しぶり」
「お久しぶりです、オーキドさん」
「僕の名前をハカセ違いのように呼ぶな。僕の名前は阿良々木だ。確かにブラックホワイトにはアララギ博士が出てくる
らしいけど、わかりにく過ぎるだろ」
「失礼。噛みました」
「違う。わざとだ」
「揉みました」
「何だを!? 誰のをだ!?」
「先日、羽川さんにお会いしまして」
「まさか……お前、まさか……羽川のを……?」
「『あっ、そこいいっ! 気持ちいよぉ、真宵ちゃん……もっとぉ……もっと強くしてもいいよぉ♪』と大層気持ち良さそうでした」
「羽川になんて事を言わせるんだっ!? そして羽川のなんて所を揉んでいるんだっ!?」
「私も、まさか羽川さんの肩があそこまで凝っているとは思いませんでした」
「え」
「肩ですよ、肩。他のどこを揉むんですか?」
「あ……そ、そうか」
「普段アレだけ私の胸やお尻やあんな所まで揉みまくっておいて、羽川さんのそれが対象になるとそこまで取り乱すとか、
どれだけ羽川さん好きなんですか、阿良々木さんは……」
「羽川は僕の恩人だからな。それに、お前の場合はまだ発育途上だ。僕にはお前を発育させる義務がある」
「語尾にキリッとかつきそうな顔で、嫌な義務感に燃えないでください」
「そういえば今日は普通に挨拶して、会話に入ったから、恒例のあれやってなかったな」
「や、やらなくていいです! 手をわきわきさせないでくださいっ! ひぃっ!?」
「八九寺ー! 会いたかったぞこのやろー!」
「ひぃゃああああぁぁぁあああああ!!!??」
終わり
484 :
◆91wbDksrrE :2010/06/21(月) 00:56:26 ID:A68+lri+
ここまで投下です。
アララギ博士って聞いた瞬間にありゃりゃぎさんが浮かんだのは自分だけじゃなかったか
>まだ発育途上だ。僕にはお前を発育させる義務がある
うむ、いい言葉ですな
486 :
◆91wbDksrrE :2010/06/21(月) 15:44:24 ID:A68+lri+
某所で見かけた瞬間に浮かんで、速攻でネタにしてみましたw
いつもはエロい板で投下してるんですが、こちらで思いついたネタだったのでこちらに。
「こ・と・し・の・ふ・ぃ・ん・ら・ん・ど−あら?」
フィンランド沖の北海で、海底のメタンを食べるゴカイの研究をしている海洋生物学者の従兄にメールを打
ちながら駅の階段を降りる琴吹紬は、ふと顔をあげた拍子に見知った人物を目撃した。
「もう、本当にこれっきりにしてくださいよ!」
と言いながら道路の向い側にそびえ立つヒサヤ大黒堂ビルの前に停車した真紅のオペル・ヴィータから降車
したその人物とは、私立桜が丘高校に勤務する才色兼備の人気教師にして紬が所属する軽音楽部の顧問、か
ててくわえてヘビメタバンド「デスデビル」のリードボーカルという封印された過去をもつ女、山中さわ子
その人であった。
そして発車したヴィータの運転席から右手と顔を覗かせ、見送るさわ子に向って人差し指と中指を伸ばし、
小粋な仕草でシュッと手を振ってみせるのは苦味ばしった魅惑のアラフォー。
「さわ子先生と…誰?」
【仮面ライダー さわ鬼】
「一時間目から四時間目までは授業でしょう?昼休みは貧血の子を家まで送っていって…」
放課後、軽音楽部が占拠し今では自身のオアシスと化している音楽室で膝上まで捲り上げたスカートからス
トッキングを脱ぎ捨てた生脚を突き出し、火照った足を水を満たしたポリバケツに突っ込み延々と愚痴り続
けるさわ子。
自分の世界に浸っているせいでテーブルの反対側で一塊になり、なにやらヒソヒソ話をしながら微妙な視線
を向けてくる部員たちに気付きもしないのは、はたしていいことなのか悪いことなのか。
「さわちゃんが男の車で出勤かぁ…」
「さわ子先生美人だしスタイルいいしそういう人がいてもおかしくは…」
「でも恋人というような感じではありませんでした」
いつになく自信ありげに発言する紬。
「じゃあどんな感じ?」
「もつとこう危険な香りの漂う…例えるならVシネマに出てくる殺し屋かヤクザ屋さんの若頭といったとこ
ろでしょうか?」
「み、見てるんだそういうの…」
血しぶきをあげて吹っ飛ぶ安岡力也のイメージ映像が脳内再生されてしまいガタガタ震えだす澪。
「意外だねぇ〜」
「でもムギの言うとおりだとすると…」
「その男はもしや…」
「お米屋さん!」
「唯センパイは考えなくていいです」
「へぅ!?!」
今日も今日とていつものこいつらだった。