仮面ライダーバトルロワイヤル THE NEXT Version.9

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1名無しさん@お腹いっぱい。
当スレッドは、「仮面ライダーシリーズに登場するキャラクターでバトルロワイヤルをしてみよう」という趣旨のSSスレです。

企画の性質上、登場人物が敗北・死亡する描写や、残酷な表現が含まれています。
また、二次創作という性質上、原作本編のネタバレを多く含んでいます。
閲覧の際は、その点をご理解の上でお願いします。

企画の性質を鑑み、このスレはsage進行でお願いします。
また、このスレの話題をこの板の他のスレや、特撮!板の関連作品スレに持ち込まないようにしてください。
2名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/02(火) 19:25:27 ID:yTcnG9F0
Ignis aurum probat, miseria fortes viros.
(黄金は炎に、強き者は悲しみによって証される)
                 セネカ「神慮について」

まとめwiki
http://www8.atwiki.jp/rnext/
避難所(様々な議論や交流雑談、試験投下や規制時の一時投下など)
http://riders.sphere.sc/rb/rnext/
雑談スレ
http://riders.sphere.sc/rb/test/read.cgi/rnext/1206169641/l50
議論スレ(強制ID)
http://riders.sphere.sc/rb/test/read.cgi/rnext/1210423244/l50
予約スレ
http://riders.sphere.sc/rb/test/read.cgi/rnext/1216126570/l50

初めての方は、ゲーム進行上の特殊ルールをまとめた以下のページもあわせてご覧下さい。
http://www8.atwiki.jp/rnext/pages/29.html

初めて投下する方は、以下のページで予約システム等を確認してください。
http://www8.atwiki.jp/rnext/pages/36.html

誤字脱字や矛盾の指摘以外の主観的な意見や批判は「毒吐きスレ」で。
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/8882/1182007206/
#書き手は毒吐きスレを見る義務はありません。
#吐き出しですので、むしろ見ないことをお勧めします。
3名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/02(火) 19:25:57 ID:yTcnG9F0
■作品の投下と進行について
作品の投下前には、必ず予約が必要です。
予約は以下のスレで、トリップをつけてお願いします。
http://riders.sphere.sc/rb/test/read.cgi/rnext/1216126570/l50

投下までの期限は予約から一週間となります。
申請により、三日間の延長が可能です。

投下後、作品に明らかな問題があると判断されたときは、NG(修正・破棄)が発議されることがあります。
NG発議をする人はレス内にそのことを明記し、発議の理由を具体的に述べた上で
以下の議論スレに誘導し、議論スレに論点をまとめた書き込みを行ってください。
http://riders.sphere.sc/rb/test/read.cgi/rnext/1210423244/l50
誘導のない発議、議論スレにまとめのない発議は有効なNG要求と見なされません。

NGを発議出来るのは、以下の条件を満たすときに限ります。
1:文章そのものが小説の体をなしていない(日本語として意味が通らない・台本形式等)
2:作品の中に矛盾がある、時間の進行が明らかにおかしい、重要な出来事の描写がない、状態表と本文が一致しないなど、内容的な不備がある
3:原作設定からみて明らかに有り得ない展開で、それがストーリーに大きく影響を与えてしまっている
4:前のストーリーとの間で重大な矛盾が生じてしまっている(死んだキャラが普通に登場している等)
5:全体のバランスをこわしかねない展開やアイテムが含まれている(ただし、あらかじめ相談の上、住人や他書き手の承認を受けている場合を除きます)
6:企画の基本的なルールを逸脱している場合(予約されているキャラを別の書き手が投下、参加者の追加、制限の無視等)

以上の条件を満たさないNG発議は無効です。
「贔屓キャラが死んだ」「先の構想が潰された」などの主観的な不満は愚痴に過ぎません。
毒吐きスレで存分に吐き出してすっきりしてください。
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/8882/1182007206/

投下ルールについて、詳しくは、以下のページを参照してください。
http://www8.atwiki.jp/rnext/pages/36.html
4名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/02(火) 19:26:16 ID:yTcnG9F0
■参加者名簿■

主催者 村上峡児

【初代】1/4
●本郷猛/●一文字隼人/○死神博士/●ゾル大佐
【アマゾン】2/4
○山本大介/●モグラ獣人/○十面鬼ゴルゴス/●立花藤兵衛
【クウガ】4/5
○五代雄介/●一条薫/○ゴ・ガドル・バ/○ゴ・バダー・バ/○ン・ダグバ・ゼバ
【アギト】4/5
○葦原涼/○風谷真魚/○北條透/●水城史朗/○風のエル
【龍騎】4/5
○城戸真司/○東條悟/○香川英行/○手塚海之/●芝浦淳
【555】5/5
○木場勇治/○長田結花/○海堂直也/○北崎/○澤田亜希
【ブレイド】3/5
●剣崎一真/○橘朔也/●金居/○城光/○志村純一
【響鬼】4/4
○日高仁志/○桐矢京介/○和泉伊織/○歌舞鬼
【カブト】4/5
●天道総司/○影山瞬/○乃木怜治/○加賀美新/○風間大介
【電王】3/5
●モモタロス/○ハナ/○桜井侑斗/●デネブ/○牙王
【FIRST・NEXT】3/5
●本郷猛/○一文字隼人/○風見志郎/○三田村晴彦/●緑川あすか
5名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/02(火) 19:26:45 ID:yTcnG9F0
過去スレ
仮面ライダーバトルロワイヤル2nd Part0
http://tv11.2ch.net/test/read.cgi/sfx/1201602112/
仮面ライダーバトルロワイヤル2nd Part1
http://tv11.2ch.net/test/read.cgi/sfx/1204780567/
仮面ライダーバトルロワイヤル2nd Part2
http://tv11.2ch.net/test/read.cgi/sfx/1207484751/
仮面ライダーバトルロワイヤル THE NEXT Version.3
http://tv11.2ch.net/test/read.cgi/sfx/1209566468/
仮面ライダーバトルロワイヤル THE NEXT Version.4
http://tv11.2ch.net/test/read.cgi/sfx/1210669557/
仮面ライダーバトルロワイヤル THE NEXT Version.5
http://tv11.2ch.net/test/read.cgi/sfx/1211736341/
仮面ライダーバトルロワイヤル THE NEXT Version.6
http://tv11.2ch.net/test/read.cgi/sfx/1213529559/
仮面ライダーバトルロワイヤル THE NEXT Version.7
http://tv11.2ch.net/test/read.cgi/sfx/1215358420/
仮面ライダーバトルロワイヤル THE NEXT Version.8
http://mamono.2ch.net/test/read.cgi/sfx/1219136974/
6名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/02(火) 19:28:00 ID:yTcnG9F0
以上、スレストに伴い板を移転して新スレを立てさせていただきました。
この板でのスレ運営なども含め、皆で少しずつ進めて行ければ、と思います。
7名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/02(火) 19:35:22 ID:I1ON4yJv
>>1
投下乙です
8名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/02(火) 19:39:01 ID:nckOY9rF
ようこそ創作発表板へ!
9名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/02(火) 19:53:34 ID:U+GorHxb
>>1
乙です


>>7
投下乙ってwww

新天地ですが頑張りましょう
10名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/02(火) 19:56:55 ID:I1ON4yJv
間違えたw

>>1
スレ立て乙です
11名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/02(火) 23:07:50 ID:kDGxxn9S
スレ立て乙です!新スレでも頑張っていきましょう!
保守がてらにネタ振りを。
みんなもうすぐ第二回放送だけど、他のロワでやってるみたいに
人気投票とかしてみないか?
やっぱりこれからもっと盛り上げて行きたいしさ。
12名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/02(火) 23:18:11 ID:I1ON4yJv
>>11
たしかに。しかし、もう少し進むか、人が多い時がいいのでは?
13名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/02(火) 23:33:00 ID:CSy2v3ti
スレ立て乙です!

>>11
面白そうだな!
やっぱやるとしたら先ずは第一回放送までの作品で投票とかかな。
14名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/02(火) 23:46:05 ID:U+GorHxb
>>11
今回も放送募集で一週間位間をとりそうだから、
その期間に避難所でやるのはどうだろうか?

投票範囲は第一回放送前に賛成。
15名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/03(水) 13:06:21 ID:+fbRYuVo
予約いくつかあるし、第二回放送到達した頃には人も集まるか?

今の所のまとめとしては
・期間は第二回放送案募集中の一週間
・避難所で(雑談スレとか使わせてもらう?)
・投票範囲は第一回放送までの作品

一人何票入れられるとかはどうするかな。大体三票位が平均的?
16 ◆40jGqg6Boc :2008/09/03(水) 20:53:37 ID:vBhLJ0ZG
スレ立て乙です!これからも頑張っていきましょう!

>>11
投票ですか。わくわくしますね……楽しみですw
自分も>>15で纏められているような感じで良いと思います。 


それでは海堂、歌舞鬼、桐矢、三田村、北崎のSSを投下しますね
17EGO ◆40jGqg6Boc :2008/09/03(水) 20:54:57 ID:vBhLJ0ZG
どうしてこんな事になってしまったのだろうか。
何処にでも居そうな少年、三田村晴彦は誰に話すこともなく一人思う。
自分が属するショッカーとは違い、スマートブレインなる組織に気がつかぬ間に拉致。
その後、へんぴな孤島に送られふざけた殺し合いを強要されたこの現実。
たまったものではない。
声を大にしてありったけの抗議を口にしたい……それで事態が解決するのであれば。
喚くだけではどうしようもない事は今までの経験から嫌という程わかっている。
だから、結局は大きな不満を抱きながらこの状況に流されるしか出来ない。
たとえ改造手術を受けた、人外の存在――改造人間であっても今すぐ状況を打開するには全てが足りない。
どんな者でも、自分が苦渋を強いられたホッパーですらも己の実力でねじ伏せる力を始め、数え切れない要素が。
不足しているものが自分には多すぎる。

だが、その事について泣き言をいうのは既に通った道であり、今更どうこう言う事はない。
自分への恨み言はあの時、それこそ思い返せば飽きる程に募らせたから。
病気を患い、余命わずかと医者に宣告され、自分を取り巻く全てのものがどうしようもなく信じられなかった、あの灰色の入院生活の間に。
そんな時、すっかり濁り、先が見えなかった自分の人生に……光が差し込んだ。
原田美代子という今までの自分の人生にとって覚えがない、眩し過ぎた希望という光が生きる力を与えてくれた。
死ぬまで美代子さんと一緒に生きよう。
何ものにも換えられない、大切な存在のために自分はどんなものでも捨てる覚悟は既にショッカーの誘いを受けた時からある。

そのためにもどうにかしてこの場から抜け出す事が必要不可欠。
優勝するか他の人間と協力し、スマートブレインを屈服させ脱出するか……方法は幾らでもある。
そう。幾らでもあるのだ……あまり焦らずに、兎に角当面はこの殺し合いに生き残る事を第一に行動しよう。
幸運な事に今の自分には同行者が二人居て、一人は自分のように闘う力を持っていて至って順調だ。
たとえ、自分はその場の流れに完全に流されただけの結果であっても、自分の得になるようであればそれでいい。
なのに……一つだけ、どうしても不安な事がある。
もう二度と関わり合いを持ちたくなかった奴が、運命の悪戯のように自分の直ぐ傍に居る事が。
三田村に対し、絶えず言いようのない不安を与え続けていた。

「ねぇ、本当に僕の話聞いてる?」
「も、勿論……」

前方へ進む三田村と寄り添うように歩く北崎が可笑しそうに口を開いている。
しきりに口を動かし、いちいち三田村の反応を観察するかのように北崎は言葉を連ねる。
他愛もない、どうでもいいような雑談。
そんな北崎の言葉に対し適当に、それでいて彼の機嫌を損ねないように三田村は相槌をうつ。
三田村の額に短い線を引く一条の汗が彼の心の揺れを曝け出す。
北崎の名前は未だ知らないが、今の三田村には彼の本名についてはとても些細な事。
つい先程、行動を共にする羽目になった北崎の一言が聞こえる度に三田村は思わず恐怖を覚えていた。
今直ぐにでも北崎から逃げ出したい考えの方に気が向いてしまい、名前どころではない。
しかもその希望を実現出来そうにもない現状ではどうする事も出来ずに、三田村のストレスは蓄積する一方だ。

幾ら決意を固めても圧倒的な力の差は埋められない。
一度闘った事があり、自分では北崎に敵う筈もない事は既にわかっているため捨て身で闘う覚悟もない。
かといってこのまま北崎と共に行動をする事など嫌でしょうがなかった。
今のところ自分をどうこうしようとは思っていないらしい。
それでも北崎がいつまた自分を襲う可能性もあり、絶えず危険に怯えなくてはいけない。
勿論、そんな事は願い下げだ。
だが、他に良いと思える道もない事が三田村に重くのしかかり――
18EGO ◆40jGqg6Boc :2008/09/03(水) 20:57:40 ID:vBhLJ0ZG
(一体どうすればいいんだよ……俺は……)

彼自身の決断を迷わせていた。


一方、三田村と北崎が歩く数メートル後方に位置する地点。
其処に彼らの同行者である二人の青年と少年――歌舞鬼と桐矢京介が居た。
特に話す事もないため、互いに無言のままに二人は彼らを追うように歩く。
いや、話題が見つからなかったためだけではないのかもしれない。
少なくとも、京介にとって歌舞鬼と話すよりも考え事の方を優先したかったから。

(北崎さんだっけか……。悪い人じゃなさそうだけど……何か引っかかるんだよな。
三田村さんも北崎さんと話す時、なんか不自然だし……)

数十分前に合流した北崎と簡単な自己紹介を行った京介。
自分の名前を北崎に教えた時、何故か不思議そうな様子を見せた北崎のあの顔が今でも眼に焼きついている。
まるで自分を疑うような眼つき。
やがてその疑惑に満ちた表情は北崎の顔から失せて、結局京介は何が何だがわからぬままに終わったのだが。

そして、京介が考える最大の疑問。
それは歌舞鬼が北崎を引き連れて自分達の元へ戻ってきた時、突然三田村が走り出した事だ。
一瞬しか見えなかったが三田村が浮かべた表情には確かな驚きと、どことなく怯えのような感情があったのを覚えている。
三田村の奇行に驚くと同時に京介が疑問を抱くのはごく自然な事といえるだろう。
精神に異常がある者でなければ意味もなくあんな行動はしない。
知り合ってから半日もたっていないため、三田村の事について知っている事は少ないが。
それでも彼がそこまで異常な行動を取るとはどうにも思えない。
只、見知らぬ北崎が目の前に現れただけであんなに取り乱すのであれば数時間前、眼を覚ました直後、自分を見た時にもそれ相応に驚いても可笑しくはない。
だが、三田村は特に変わりなく自分と会話を行ったため矛盾する。
ならば、考えつく事は一つ。
そう。それはとても簡単な事……簡単な事である筈なのだ。

(やっぱり三田村さんは北崎さんと何処かで会った事があるんだ……。
けど、二人とも初対面だって言ってた……これはどういう事なんだ、一体……)

三田村と北崎にはなんらかの面識があると推測する京介。
だが、当の二人は口を揃えて初対面だと話した事がそれを確信には至らせない。
三田村の目線が不自然に左右へ振れていた事は気になるが、それでも彼らが嘘を言っていたとは思えない。
そもそも、互いの面識の有無について嘘を言う必要はないのだから。
中途半端な嘘をつけば、折角築いた協力関係に溝が出来てしまうであろうし。
其処まで思考を張り巡らせた時、京介はふとある考えを思いつく。
頭では否定したい、思考の末に出した結論。
だが、今の状況を考えれば一番理にかなった一つのケースが京介の緊張の糸を強く張らせる。
19EGO ◆40jGqg6Boc :2008/09/03(水) 20:59:31 ID:vBhLJ0ZG
(まさか、三田村さんは北崎さんに脅されているのか……?)

三田村のあの驚き様から考えて、あっても可笑しくはない。
恐ろしい結論に対し思わず息を呑み京介は只、視線を走らせる。
京介が見つめる先は、今もなお三田村に何かを話しかけている北崎一身のみ。
背丈から考えれば自分よりも年上に見えそうだが、浮かべる表情にはとても年上としての貫禄は見えない。
だが、今となっては北崎が浮かべる笑顔を京介は直視出来なかった。
恐怖。底知れぬ恐怖と気味の悪さが北崎との関わりを本能的に避けているのだろうか。
もし、本当に北崎が三田村を脅し、無理やり自分達は初対面だと偽らせているとしたら。
何のために? 決まっている、自分達に知られたら不味いからに違いない。
何故不味いのか? その理由を考え……京介の表情は再び曇り始める。
完全な確証は持てないが、一つだけわかる事がある。
それは北崎が危険な存在だという事だ。
三田村を力づくで口裏を合わせさせるなど……尋常な事じゃない。

(兎に角、俺だけじゃあ手に負えない。歌舞鬼さんと相談しないと……)

北崎に何かある事まで考えついたはいいが、決局自分には何かを為す力はない。
そのため、知恵を貰う意味でも、万が一のために力を貸して貰うためにも隣に居る歌舞鬼
に話をしてみよう。
そう考え、京介は歌舞鬼の方に首を回そうとする。

「よぉ、久しぶりだな」
「あれ? また来たんだね」

そんな時、歌舞鬼と北崎の声がほぼ同時に響いた。
二人が向く視線の方向は奇しくも同じ位置。
言葉を発しない三田村は二人が声をかけた先を心当たりがないような目つきで眺めている。
目線が自分に向いていなく、そもそも言葉の内容からして自分とは関係ない事なのだろう。
しかし、気にしないわけにもいかない。
彼ら三人にならって、京介も頭を動かし両目を凝らす。
その先に移るのは一つの影。京介には見覚えがない人物。
三田村にとって一度は成り行き上、共に闘った事があり、北崎と歌舞鬼とは以前に闘った
事がある男。
その男こそ蛇の力を持つ異形の者、オルフェノク。

「まーたおめぇらか……全く、俺様も運が悪りぃんだが良いんだがわかんねぇなぁ……」

海堂直也がその場に立ち、彼らの方を――主に北崎の方を睨みつけていた。
片腕に掴んでいるものは一本のベルト。
白銀で彩られたベルトに光が差し込み、まるで海堂の右手が輝きに包まれたような錯覚を見せる。
やがて、ベルトを――“三本のベルト”と称される内の一本、ファイズギアを腰に巻きつけ、徐に携帯電話を取り出す。
只の携帯電話ではない。ファイズフォンと名づけられたそれを操作し、手早くボタンを押していく。
数字の5が入力される度に電子音が鳴り、三回目の音が終わりを告げた後、enterと刻まれたボタンを打ってファイズフォンを閉じた。

――Standing by――

簡単な英語。準備が完了した意味を指す英単語。
男性による低い電子音声が鳴り響き、何か回転音のようなものが続く。
薄ら笑いを浮かべる北崎以外の三人にはこれから何が起こるかはわかっていない。
特に歌舞鬼にとっては、少しだけ異国の言葉はわかるものの、所詮戦国時代の人間であり尚更な事。
しかし、その場の空気が、海堂が浮かべる真剣な眼差しが決して遊びではない事を物語る。
ゆえに北崎以外の彼らは眼を離さずにはいられない。
海堂が行う一つ一つの動作に隠された意味を探るように視線を走らせ、やがて彼がファイズフォンを滑らせるようにファイズギアに差し込んだのを確かに見た。
そして海堂は斜めから滑り込ませたファイズフォンを直角に倒す。
20EGO ◆40jGqg6Boc :2008/09/03(水) 21:00:39 ID:vBhLJ0ZG
「変身!」

――Complete――

強く、意思を吐き出すように合図の言葉を紡ぐ海堂。
間髪入れずに、眩いほどに輝く赤の閃光が周囲へ拡散。
途端に再び電子音声が鳴り響き、ファイズギアを起点とし、真紅の線――フォトンブラッッドが海堂の身体を包むように走る。
それが辿る軌跡は一瞬の内に海堂の全身に浮かび始めたエネルギー流動経路――フォトンストリームのそれと同じ。
また、両方とも同じように真赤の輝きを迸らせる。
そして上下左右へ伸びていくフォトンブラッドが鎧ともいえる外部装甲を織り成す。
漆黒のスーツが海堂の全身を覆い、胸部には一際厚い銀の装甲、所々にフォトンストリームがはっきりと浮かぶ。
次第に彼の顔にもフォトンブラッドの束が包み始めた。

「先ずはてめえからだ! てめぇを放って置いたら何するかわかったもんじゃねぇからなあああーッ!
もう、誰も殺させねぇ……だから、俺様が倒す――」

既に黒の強化スーツを纏い終えた右腕を翳し、人差し指で指しながら北崎に言い放つ。
その言葉が言い終わるまでに、海堂の顔へ伸びていたフォトンブラッドが動作を完成する。
そう。中心部に明るい黄色で塗られた円のような――ギリシャ文字のΦを模したような目を持つ戦士。
主な装着者は違うものの、今まで数多くのスマートブレイン配下であるオルフェノクを倒してきた存在。
555――ファイズの名を持つ戦士に、いや――

「“仮面ライダー”である俺様がなッ!!」

“仮面ライダーファイズ”へ変身が完了した海堂が吼え、彼は走り出した。
自分の仲間である木場達と合流するために北上していたが、ファイズは闘いを選ぶ。
この場に居合わせた人物の中で、他の人間に対し、最も危害を加える可能性があると思われる男。
北崎を倒すべき敵として定めて。

「さっきとは違うね、何かあったのかな……」

一方、三田村からゆっくりと離れ、北崎が口を開く。
全力で走ってくるファイズとは対照的に、ひどくゆっくりとした歩調で歩いている。
確実に距離が近づいているが北崎には焦りなどない。あるはずもない。
何故なら自分自身を絶対の存在、何人も打ち倒せない存在だと傲慢とも思えるほどに自負しているから。
だから、北崎は余裕を貫く事が出来る。
オーガギアを使うか、それともオルフェノクの力を使うかの選択すらも今頃になって行える。
海堂が自分の事について言った事については特に言及せずに、三田村を始めとした彼ら三人が自分にどんな印象を持つかも北崎は意に介さない。
彼らは北崎の仲間でもなければ、彼らと仲たがいしないように自分を偽っていたわけではないから。
只、再びオルフェノクの力を使うためや変身するための時間を稼ぎたかっただけに過ぎない。
やがて決断し、北崎がゆっくりと口を開こうとする。

「まあ、どっちでもいいけどね。どうせ、君は死ぬんだから……」

やがて、北崎の顔になにかが浮かび、彼は時間が十分だった事を確信する。
複雑な模様、紋章のようなものが表面に現れて、北崎の表情が笑顔に移り変わる。
その紋章はどことなく龍の顔を模したものであり、一瞬真っ黒に塗りつぶされたかと思うと、それははっきりとしたものになった。
同時に北崎の全身を鋼の装甲が現れ始め、彼を最凶のオルフェノク――ドラゴンオルフェノクへ姿を変え終える。
暴龍。悪魔……様々な言葉で形容できるその禍々しい躯体は見る者に恐怖と威圧を与え、三田村は思わず後ずさった。
そんな三田村の反応を見て、ドラゴンオルフェノクは心なしか満足そうに顔を動かし――

「この僕によってね」

迫りくるファイズの元へドラゴンオルフェノクは歩き続ける。
まるでファイズを歓迎するように、両腕を開いて、彼を歓迎するかのように。
それぞれ驚愕の色に染まった三田村、京介、歌舞鬼が見守る中、ファイズとドラゴンオルフェノクの闘いが、再び始まる。

◇  ◆  ◇
21EGO ◆40jGqg6Boc :2008/09/03(水) 21:02:27 ID:vBhLJ0ZG
(さて、どうするかな)

ファイズとドラゴンオルフェノクの拳や爪がぶつかり、火花を散らす中、歌舞鬼は思考を張り巡らす。
歌舞鬼が考える事。それはいうまでもなく、自分が今どうするかについて。
只の人間ではなく、変身音叉・音角で鬼へと変身できる音激戦士の一人である歌舞鬼。
少し腰を引きながら、凝視している京介とは違い、歌舞鬼には鬼の力を使う事で目の前の闘いに介入出来る。
身体の感じから察するに、今は鬼になる事になんら問題はない。
だが、歌舞鬼は一向に動こうとはしなかった。

(北崎はやばい奴だったみたいだが……かといってあっちの海堂って奴も俺の事を恨んでるだろうしなぁ……)

今もなお、闘い続けるファイズとドラゴンオルフェノク。
ドラゴンオルフェノクの正体である北崎とは知り合って間もなく、向こうから襲ってくるのであれば闘う覚悟は当然ある。
歌舞鬼にはこんなところでむざむざ死ぬつもりなど毛頭ないからだ。
しかし、今はファイズとの闘いに集中……いや、楽しんでいるように見えて自分には関心はなさそうなため、特に北崎と争う理由もない。
ファイズの方はというと、装着者である海堂と歌舞鬼の仲はとても良いものではない。
なにせ、歌舞鬼の同行者であるアマゾンがモグラ獣人を斬殺し、それが発端となり実際に闘った経験もある。
海堂は今もなお自分の事を恨んでいると歌舞鬼は思っていたため、彼が自分ではなく北崎との闘いを選んだ事は少し意外だった。
理由は海堂にとって北崎はそれほどまでにも因縁が深い相手なのだろう。
闘う前に叫んだ言葉から察するに、他人を守るために北崎との闘いに挑んだと思える海堂。
その動機は立派なものだと歌舞鬼は人知れず胸中で小さく呟く。

「くっ!」

ドラゴンオルフェノクの右の爪を袈裟に振り下ろした斬撃が直撃し、ファイズが後方へ吹き飛ぶ。
赤白い火花が、ファイズが感じ取った痛みを現すかのように胸部を斜めに走ってゆく。
同時に歌舞鬼は再度確信する。
北崎の実力は海道のそれを遥か上へいく事を。
このままでは海堂は負けるだろう。長年の戦闘の経験から歌舞鬼はそう結論づけた。
だが、依然として歌舞鬼は万が一己の身に危険が及ぶ時を見越し、音角を握るだけで何も行動は起こさない。

「歌舞鬼さん! あの赤い人を助けた方がいいんじゃ……」
「いや、あいつとは一度闘った事があるからな。俺の事を良くは思ってないに違いねぇ。下手に手を出しちまったら、後々面倒だ。
ここはもう少し様子でも見ておこうぜ……」

心配そうに掛けてきた京介の言葉にも頷こうとはしない。
そもそも、どちらが生き残ろうかなど歌舞鬼には関係がないのだから。
そう。自分の命を優先させるためにも――
そこまで考えて歌舞鬼はふと思いたつ。
とても根本的な事を。

(だがよぉ、生き残ってどうする……? たとえあの世界へ戻れたとしても……)

魔化魍と闘える自分を化物と見なし、拒絶した汚い大人どもに嫌気がさして鬼に、人間に見切りをつけた歌舞鬼。
だが、無垢な心を持つ存在――子供を愛する心は捨てきれずに、知り合って間もない少年、アスムを庇い、その命を散らした。
厳密には一度死んだ身かどうかは歌舞鬼にとってはわからない。
しかし、きっと自分は一度死んだのだろうと歌舞鬼は確信している。
なにせあの距離だ。今も鮮明に思い出せる最後の光景。
響鬼にやられ、明日夢に襲い掛かろうとしたヒトツミに喰われたあの記憶を思い違える筈もない。
勿論、その行為には一片の後悔がない。
最期の最期で魔化魍から一人の少年を守りきる事が出来たのだから。
だが、自分は何の因果か再び生を受け、こんな場所で立っている。
望んではいなかった。別にあのまま自分の短い人生を終えても良かった。
また、鬼として人間達を……汚い大人立達も守るか、それとももう一度魔化魍として生きるか。
そんな決断はもうしたくはなかった。また、道を間違ってしまうような事は御免だったから。
けど、折角再び手に入れた命。それをみすみす捨てるにはどうにも気が引ける。
かといってその命で何かを為す事も特にない。

22EGO ◆40jGqg6Boc :2008/09/03(水) 21:03:16 ID:vBhLJ0ZG
――自分は一体何のためにこの場に居る

今まで後回し、後回しにしていた疑問への答え。
その答えが出せそうで出せない自分がどうにもみっともない存在に見える。
自分がやりたい事すらも見つけられないとは……こんなに自分は弱い存在だったのだろうかとすらも思える。
自分よりも若い明日夢は幼馴染を救うために村中の人間から敵に回しても、鬼である自分達に助けを願う道を取ったというのに。
何が鬼だ。何が歌舞鬼だ。
自分は焦りや不安を他人に気取られぬように必死に隠した、ちっぽけな臆病者でしかない。
濁流のように流れていく自嘲の波に飲まれ、思わず握り拳を握ってしまう。

(俺は……俺は……!)

自分への苛立ちに歯軋りする音すらも気に障る。
そんな時、金属が擦れる様な一際大きい音が響き、歌舞鬼ははっと顔を上げた。
見れば再びファイズがドラゴンオルフェノクから一撃を貰い、火花を散らしながらよろけている。
かと思いきやファイズは崩れそうな体勢を持ち直し、右拳をドラゴンオルフェノクの喉笛を抉る様に走らせた。
対してドラゴンオルフェノクは少し体勢を傾け、左腕を翳す。
拳が突き刺さった場所から鈍い音が起こり、一瞬硬直するファイズとドラゴンオルフェノクの二人。
苦し紛れの一発ではなく、十分に踏み込んだ上に放ったファイズの一撃は軽い一撃ではない。
だが、あまりにも短い一瞬が過ぎたと思うや否やドラゴンオルフェノクはファイズの腕を振り払い、右腕を滑るように叩き込む。
ファイズは瞬く間に宙を舞う事になり、やがて背中から地へ落ちる事となった。

(決局、こうなるって事か……)

もう、誰も殺させない。
そう言って、ドラゴンオルフェノクに立ち向かったファイズこと海堂。
だが、歌舞鬼の目の前で起きている現実では海堂が明らかに劣勢。
大層な理想を……以前、歌舞鬼が信じたような理想を掲げた海堂が叙々に消耗していくの事を。
歌舞鬼は只、どこか諦めと期待が混じったような目つきで眺めていた。

◇  ◆  ◇

「やっぱり、君だけじゃあ無理なんだよ。木場勇治と二人がかりでも僕を倒せなかった君なんかじゃねぇ……」

オルフェノクの力を行使し、ファイズとの闘いに身を投じた北崎。
戦況は歌舞鬼が察したようにドラゴンオルフェノクの方が優勢。
幾ら三本のベルトの一本であり、オルフェノクの王の守護を定められた存在の一体だとしても当然の事ながら最強ではない。
今までファイズと同等以上の存在であるカイザ、デルタとも闘い、二人がかりでも三人がかりでもドラゴンオルフェノクを倒すに至ってはいない。
この殺し合いでも木場勇治が変身したファイズ、海堂が変身したスネークオルフェノクのコンビでも倒しきれなかった。
そう。単体のファイズなどでは元より勝算などある筈もないのだ。
ドラゴンオルフェノクをその事を知っており、万が一にも自分が負けるわけがないと踏んでいる。
事実、つい先程もファイズの右ストレートを左腕により受け止め、そのまま右腕を突っ込ませファイズを後方へ飛ばした。
圧倒的な力。お前の力など通じないといわんばかりに力を奮うドラゴンオルフェノクに焦りなどない。
だが、そんなドラゴンオルフェノクには小さな違和感があった。
23EGO ◆40jGqg6Boc :2008/09/03(水) 21:04:46 ID:vBhLJ0ZG
「けど、やっぱり気のせいじゃない……何か変わってる。海堂君だっけ?
なんだか変な言い方だけど、前の君とは違うね……一体どうしたのかな」

左腕を撫でながらドラゴンオルフェノクが訝しげに言葉を発する。
思わず洩らした言葉に嘘はない。
決してファイズを認めたわけではないが、ドラゴンオルフェノクは彼が以前とは違うと感じていた。
先程貰った右拳による左腕への打撃がいやに熱を帯び、ドラゴンオルフェノクの胸の奥底で疑問と興味、そして若干の怒りが湧き上がる。
格下と見下していた存在に小規模でありながらも、自分が痛みを思い知らされるのは納得がいかない。
零した疑問に対するファイズの答えを聞き終えてから、さっさと殺してしまおうと思い、ドラゴンオルフェノクはいつでも動き出せるように少し腰を落とす。
流れた時間は極めて一瞬でしかない。
受けたダメージのわりには周囲の予想以上にファイズは機敏な動きで立ち上がる。


「そんなコト……わざわざ言うまでもねぇ! 大体なぁ、てめぇなんかには理解出来ねぇんだよッ!!」


ドラゴンオルフェノクに言い放つファイズ。
そしていつの間にかファイズの右腕には握られているものが一つ。
先端が円筒の形状を模った物体――ファイズポインターにミッションメモリーをセット。
徐に体勢を落として、右脚に備えられたホルスターにファイズポインターを装填し、脚の向きと同じになるように倒す。
バックルに横向きで収まるファイズフォンを開き、ENTERキーを押し込み、勢い良く閉じる。

―― Exceed charge ――

新たに響く電子音声と共にフォトンブラッドがバックルからフォトンストリームへ駆け巡る。
ファイズの右太腿を通り抜け、右脚へ赤い流動が辿りつき、ファイズポインターの先端部で動きを止めた。
次にファイズがそれに続くように腰を落とし、地を蹴って走り出す。

「ハッ!」

何歩かの助走を経て、大きく右脚を踏み込んだ瞬間、フォトンブラッドが一際大きな真紅の輝きを放ち、ファイズは宙へ大きく跳んだ。
一回転を行い、両脚を両腕で構えたドラゴンオルフェノクの方へ向け、ファイズポインターから線状に形成したフォトンブラッドを飛ばす。
やがて両腕を交差させたドラゴンオルフェノクの目の前で、斜め上から突き刺さるようにフォトンブラッドがドリル状に変化。
それはマーカーポインターとなり、ドラゴンオルフェノクを補足する。
そして宙へ跳んでいたファイズの右脚裏の先端部がフォトンブラッドにより赤く発光し――


「うおおおおおおおおおおおおおッ!!」


真紅の渦へファイズは右脚を向けて、右飛び蹴りを行いながら飛び込む。
螺旋を描くように廻るマーカーポインターに合わせ、蹴り貫く様にファイズの蹴りがドラゴンオルフェノクに直撃。
“クリムゾンスマッシュ”がドラゴンオルフェノクの両腕とぶつかり、火花を散らす。
伸ばしきったファイズの右脚が赤の閃光を生み、喰らいつくように侵攻を押し通す。
そしてマーカーポインター越しにお互いの視線が重なり、互いに相手を押し切るために力を込めた。
そんな時、ふと一瞬、ほんの一瞬だけドラゴンオルフェノクは視線を逸らして――

ドラゴンオルフェノクの身体が後方へ蹴り飛ばされた。

どこか怪しげな笑みを暴龍の仮面で隠しながら。

◇  ◆  ◇
24EGO ◆40jGqg6Boc :2008/09/03(水) 21:05:42 ID:vBhLJ0ZG
クリムゾンスマッシュは目標の身体を貫き、φの紋章が浮かぶ事で本当の完成とする。
よって今しがたファイズが放ったクリムゾンスマッシュは完全ではない。
地に降り立ち、ファイズはドラゴンオルフェノクを仕留め切れなかった事に後悔を覚えた。
だが、それでも手応えがあったのも事実。
自分一人でもここまでドラゴンオルフェノクを追い込む事が出来た事は自然とファイズに闘志を湧き上がらせる。
そう。自分の蹴りを受け、ドラゴンオルフェノクは数十メートル先で今も立ち上がれないでいるのだから。

(いける……いけるぜ……!)

休む暇は与えない。折角巡って来た好機をしっかりと手繰り寄せる。
このまま、押し切ってドラゴンオルフェノクを倒そうとファイズは歩き出す。
自分が充分に近づくまでにドラゴンオルフェノクの足止めをするために、バックルからはファイズショットを取り出し、右手に持つ。
多少卑怯じみた闘い方になんとなく気が引けるがそうも言っていられない。
何せ相手の力は強大であり、その事は既に身を持って体感している。
複数ではいざ知らず、自分一人でここまでやれたのは海堂自身が最も驚いていた。
これを逃せばチャンスは遠のく、だから今は兎に角、仕留めるしかない――そう考えた時、何かが海堂の中で引っかかった。

――手応えが無さ過ぎる。

数時間前の自分とは違う事を海堂は確信している。
あの時の自分とは違い、今ははっきりと仮面ライダーの存在を受け入れている。
今の自分とあの時の自分が同じ条件で闘えば、背負ったものの違いからきっと今の自分が勝つだろう。
決して自惚れでは無い自分の力――だが、それにもしてこの状況は可笑しいと海堂は思わずにはいられなかった。
未完成ながらもクリムゾンスマッシュを撃ち込みはしたが、それまでの戦況は自分の劣勢。
少しは効いているようであったが、相変わらず堅牢な外殻に覆われ、強靭な肉体から猛攻を繰り出すドラゴンオルフェノクは脅威そのもの。
そんなドラゴンオルフェノクがこれほどまでにも容易く地に倒れ伏すのか。
いや、考えにくい。もしや今も動きを見せないのは演技なのだろうか……何のために。
真意を探るように視線を飛ばすファイズ。
その時、ドラゴンオルフェノクは頃合を見透かしたように顔を上げた。

「参ったな……強い強い、本当に強いよ……僕なんかじゃあ君には勝てないや」

ファイズに良い気分はしない。
只、疑問が膨れ上がるだけだ。
今までの言動、実力からドラゴンオルフェノクがこんな事を言うとは信じられない。
更に強まった疑問がファイズの歩みを止めてしまう。

「腕もヒリヒリするし、困ったなぁ……これ以上痛い思いはしたくないしね……。
でも、君に負けるのも嫌だなぁ……そこで僕は考えたんだ」

依然浮かび上がる裸体の北崎の実像。
周囲の視線を一斉に集めているが特に動じる様子もない。
気味の悪い笑みを見せながら紡ぐ言葉には所々、嘘が混じっているように見える。
また、その言葉に隠された真意はいまいち要領を得ず、ファイズを始め誰にも計り知れてはいない。
そしてドラゴンオルフェノクは言葉には不釣合いな余裕を見せて次の句を続けた。
とても、嬉しそうな無邪気極まりない笑顔を浮かべながら。


「友達が居れば良いのさ。僕と一緒にどんな敵でも闘ってくれる味方が、いや友達が居たら君にも負けないよ……絶対にね。
だからさぁ――」

ドラゴンオルフェノクの表情には怒りのようなものはない。
只、この状況を楽しんでいるだけ。
別に助けを求めるほどに彼は窮地に立たされているわけではなく、普段の彼にはそもそもそんな気はない。
だが、今の彼には興味をそそられるものがあった。
ファイズの見違えた力よりも大きな興味を引き付けられるもの。
それを使って遊んでみたかったため、彼は一種の賭け事に興じていた。
そう。たった今、自分が言ったように協力を求めるために彼は口を開こうとする。

25EGO ◆40jGqg6Boc :2008/09/03(水) 21:07:25 ID:vBhLJ0ZG
「君は助けてくれるよね? 僕達は友達なんだから……」


彼が言う友達に、この場で知り合った友達に――


「ねぇ、三田村君?」


三田村晴彦に顔を向けて、そう言い放った。
急に話を振られて、身震いを起こすように反応した三田村の表情には確かな感情があった。
真正面からドラゴンオルフェノクの、北崎の実像の視線で射抜かれ、三田村が自ずと浮かべたもの。
それはいいようのない恐怖。
逆らったらどうなるのか……それすらも想像出来ない程に北崎の笑みからは無邪気な悪意しか感じられない。
だが、かといって三田村にはファイズと面識はないため、彼を倒す理由はないのだ。
無闇に敵を増やすべきではない。
冷静に考えたらそれが正しい選択の筈。

しかし、三田村はある選択を行う。
取り出した蛇の仮面を被り、青いノースリーブのコートを多数の金具で着込み、黒と青を基調とした怪人。
ショッカーの改造人間、コブラへと姿を変えて――

「――くっ!」

一直線にファイズの方へ向かった。
コブラの仮面の下に浮かべた表情に映ったもの。
それは北崎への隠しようの無い恐怖でしかなかった。


(これで良かったんだ……これで)

走りざまにファイズの身体を掴み、その勢いを殺さずに自分の身体もろとも転がるように身を投げながらコブラは思う。
一瞬、そのまま北崎から逃げようと思った。
事実、直ぐに踵を返し、全力で駆け出せばこの場から逃げ出せたかもしれない。
だが、コブラはどうしてもその選択が取れなかった。
友達のわけがない。
こっちはこれ以上関わりあいを持ちたくはない事をわかっているだろうに。
それでも、さも助けるのが当然かのように不気味に笑いかけてくる北崎は恐怖の対象であり、逃げても無駄な気がしてしまった。
逃げても必ず捕まえる――そう言われている気がして、気つけば駆け出していた。
コブラがこの場で行う事は何よりも自分の命を優先させる事。
ならば、その場しのぎのためにも強い方につくと、結果からすれば極めて単純な動機で彼は北崎の願いを聞き入れた。

「なっ! てめぇは!?」

何度か声を聞く度にファイズが一度共に闘った男だとコブラは知った。
だが、あの時の共闘は只、目的が同じだっただけの事。
別にファイズに牙を向く事に対し、コブラには躊躇いはなかった。
自分と闘った時の姿とは別の姿を持ち、しかも強力無比なその力を奮う事が出来る北崎。
最早、三田村には北崎に刃向かって勝利を収める気はなどなく、そんな事は無理な事だと確信した。
だから、三田村は動いた。
ファイズの恨みを買うよりも、北崎の怒りを誘ってしまう事を避けるために。
26EGO ◆40jGqg6Boc :2008/09/03(水) 21:09:27 ID:vBhLJ0ZG
「悪く……思うなよ」

そのために何度か地で転がった後、ファイズを横へ突き飛ばし、コブラが低い声で唸る。
直ぐに立ち直り、後頭部に付けられた鞭のようなものを手に取り、立ち上がろうとするファイズに構える。
北崎の恐怖を必死で抑えているためか、若干声が裏返っているがその挙動には油断はない。
ショッカーの改造人間として、多くの裏切り者を始末してきたコブラ。
既に血で汚れきってしまい、何より共に愛し合った美代子のために覚悟など当の前に出来ている。
何人にも、どんなものでもその願いは阻止できない。
自分が生き残るためにもファイズを倒すべき敵として定め、コブラは一気に駆け出し始める。

「ふふ、嬉しいなぁ……三田村君が僕と一緒に闘ってくれるなんてさ。こうなったら僕も頑張るしかないのかな」

電子音声が鳴り響いた後、立ち上がったファイズは右腕にファイズショットを携え、取り敢えずはコブラを沈黙させるために、引き金を引く。
ファイズショットによる光弾の渦を掻い潜り、ファイズの方へ突っ込んでいくコブラを見て、ドラゴンオルフェノクがようやく腰を上げる。
少し気だるそうな言葉とは裏腹に実像が浮かべるのは嬉しそうな笑顔。
この場で見つけた面白い玩具である三田村が、命令を与えただけで自分の意のままに動いてくれる。
自分に抵抗する事は無駄であり、従わなければ待つものは死あるのみ。
そんな認識を他人に植え付けさせるには、圧倒的な力を持たなければ無理な事。
しかし、ドラゴンオルフェノクにはやり遂げる事が出来た。
わかりきっていたが、自ずと己の力の高さが証明された事に思わず胸が高まる。
敵を叩き潰す楽しみとはまた変わった、それでいて同程度程の喜びが支配し、それはモチベーションすらもあげていく。

「全力でね」

ファイズとコブラの闘いをじっと見つめながら、ドラゴンオルフェノクも駆け足気味に歩き出す。
別に自分を助けてくれたコブラに応えるわけではない。
只、自分も遊びたいから。
いつ壊れてもいい、自分の玩具と一緒に遊びの輪に混ざりたかったから。
そのためにドラゴンオルフェノクは再び、闘いへ身を任せ始めた。

◇  ◆  ◇

コブラが鞭を奮い、ファイズがファイズショットで乱射し、ドラゴンオルフェノクが執拗にファイズに向け、両腕を向ける。
三者入り乱れて次々と各々の立ち位置が変わってゆくのが闘いの進行の早さを現す。
互いの拳や獲物、光弾がぶつかる度に零れ落ちる火花は、その闘いが果てしなく現実味が帯びたものだと見る者に認識させるように咲き乱れていた。
機敏な動きで動き回る三人。
終わりが見えそうにない闘いが続く中、唐突にその闘いに区切りが訪れた。

「そろそろ決めようよ、三田村君」
「わ、わかった!」

二対一の闘いを強いられ、心なしか足元がふらついている様に見えるファイズ。
そんなファイズから少し距離を取り、ドラゴンオルフェノクが直ぐ傍に立っていたコブラに声を掛ける。
いささか過剰気味に反応するコブラは腰を落とし、一気に地を駆け出す。
右腕に持つものは今まで使用していた一本の鞭。
右腕を使い、鞭を右に左に振るい、ファイズの身体へ叩きつける。
此処に来るまでの疲労、そしてドラゴンオルフェノクとコブラによる戦闘の末、疲弊しきったファイズの動きは最早精彩を欠いたもの。
避わす事は出来ず、少し腕を立てただけで碌な抵抗も行えず、鞭による打撃を受けるがままとなるファイズ。
数度の衝撃、伴う火花とファイズの叫び声が彼に確実なダメージを与えている事がわかる。
やがて、コブラが振るっていた鞭を手元に戻した時には、ファイズの装甲の至る所に不自然なへこみが現れた。
27EGO ◆40jGqg6Boc :2008/09/03(水) 21:10:43 ID:vBhLJ0ZG
「ッ! まだまだあああッ!!」

蓄積した疲労により両脚にかかる負荷がいつも以上に重く感じてしまう。
だが、多少前屈みになりながらも、ファイズは立ち続ける。
そしてファイズショットをバックルに戻し、ファイズポインターを再び右手に握り締める。
フォトンブラッドをエネルギーに換え、敵に叩き込むクリムゾンスマッシュに回数制限はない。
この場で最も危険な存在であり、以前自分と共に闘ったコブラを脅していると思われるドラゴンオルフェノク。
もしかすれば奴を倒せばコブラの戦意も喪失するかもしれないとファイズは踏み、腰を落とす。
もう一度クリムゾンスマッシュを蹴り込もうとファイズポインターを右脚に装填しようとするが、急にファイズの身体が宙へ浮き上がった。

「チェックメイト……ってやつだね」

いつのまにか距離を詰めたドラゴンオルフェノクが救い上げる様に腕を振り上げる。
衝撃により声にならないような嗚咽を漏らし、ファイズの身体が宙へ飛んだ。
吹き飛ぶ途中でファイズギアが外れ、ファイズより更に後方へ飛んでいく。
変身を解除され、元の姿へ戻った海堂がファイズギアを手繰り寄せるように腕を突き出すが敢え無く空を切る事となる。
二度、三度とファイズギアが地面と擦れる音が甲高く響き、ある方向へ滑るように流れていく。
ドラゴンオルフェノクの元でもなく、コブラの元でもない。
装着者を失ったファイズギアが幾度かの回転を終えてやがて止まった。


「……え?」

本能的に危険から逃れようとしていたのだろう。
歌舞鬼よりも更に後ろ斜めの位置を陣取っていた桐矢の目の前にファイズギアが転がった。
ファイズフォンも健在であり、オルフェノクの記号を持つ者ならば今直ぐにでも変身を行える。
だが、桐矢はファイズギアの装着者の条件は知らず、それどころか変身の仕方もわからない。
海堂がやってみせたのを見ただけであり、携帯のどこか同じボタンを三回押し、最後に別のボタンを押し、バックルに差し込むぐらいだ。
自分にとっては無用の長物でしかないファイズギアを桐矢は目を見開いて凝視する。
そんな時声が響いた。無邪気な声が全員の耳に。

「確か桐矢君だっけ。 どうしたの、拾わないのかな……それ。
5のボタンを三回、ENTERを押せばお終いさ……それだけで君もなれるんだよ。
海堂君が成った仮面ライダーにねぇ……」

ドラゴンオルフェノクはラッキークローバーの一員であり、他のオルフェノクより当然村上との繋がりは強い。
三本のベルトの事は一通り聞き知っているドラゴンオルフェノクが何故か桐矢にファイズギアの使用法を口頭で説明し始める。
変身回数や時間に制限が掛けられているこの場では、三本のベルトだけに限らず、変身ツールを多く持つ事に越した事はない。
今まで幾度もなく潜って来た戦闘の末、当然その事はドラゴンオルフェノクも知っている。
ファイズギアはオーガギアよりは劣るものの、手に入れれば己の力となるというのに、ドラゴンオルフェノクはわざわざ桐矢に知らせる。
一番重要な変身条件の事は未だ口に出してはいないが、何故ドラゴンオルフェノクは敢えてこんな真似をするのか。
そんな疑問の目を周囲から集めながら、ドラゴンオルフェノクは話を続ける。
三田村を嗾けた時と同じように、何かを楽しむような目つきで。
28EGO ◆40jGqg6Boc :2008/09/03(水) 21:11:34 ID:vBhLJ0ZG
「仮面ライダーとなって僕と闘うか、それともそのおもちゃを僕に渡して友達になるか選ばせてあげるよ。
誰の指示も受けずに、君の意思で……」

三田村の選択の結果を楽しんだように、ドラゴンオルフェノクは桐矢にも選択を迫る。
その行動の原動力となるものは純粋な興味。
自分がファイズの力を奪い、その力で叩き潰すのもいいが、それでは少し芸が無い。
手間と時間は掛かるが敢えて桐矢に選択を強いさせ、その結果を楽しむのもいいだろう。
変身するのであれば――いや、変身しようと自分に敵対する意思を見せるならば殺す。
命を請うのであれば今この場では特別に許し、所詮虫けらと等しい存在なので哀れに殺してやろう。
そんな思いを抱きながら、ドラゴンオルフェノクは口を開いていた。
依然、歌舞鬼は何かを思い悩んでいるように動きを見せず、ドラゴンオルフェノクも彼の方は一瞬見ただけで、直ぐに眼を逸らした。
勿論、歌舞鬼に全く興味がないわけではなかった。
海堂が沈黙した今、自分と闘ってくれそうな中で一番強いと思える歌舞鬼を無視する手はない。
だが、どうやら歌舞鬼は自分に向かって来ない事からあまり乗気ではないらしい。
また、一番手応えがありそうなのと最後に闘うのも悪くないとドラゴンオルフェノクは考えていたので今は歌舞鬼の事については保留と見なしている。
地に倒れ伏す海堂の数歩先まで歩いたドラゴンオルフェノクの後方には、コブラの姿が見えた。
自分が気絶した時に介抱された事もあり、コブラは桐矢には確かな恩がある。
しかし、コブラは一歩も動くことなく、事の成り行きを見守っているだけだった。

(冗談じゃない、北崎……さんを相手に回してでも桐矢を助けるのはデメリットがありすぎる……)

桐矢が死ぬ事に全く抵抗がないわけではないが、一歩間違えればドラゴンオルフェノクの怒りを買ってしまうかもしれない。
無意識の内に敬称をつけてしまった事にも特に抵抗はなかった。
そうなれば無事に済むわけも無く、みすみすそんな危険を冒す程、桐矢の命はコブラの中では重要ではなく、彼は確実に安全な手を取った。
何かを訴えるような眼で此方を向いてくる桐矢の視線が妙に痛い。
仕方ない。自分にはそこまでの力がないのだから、多少汚い手を使っても仕方ない筈。
声にならない呟きで自分の正当性を言い聞かせ、やがてコブラは桐矢から視線を外した。
そして、ドラゴンオルフェノクが新たな一歩を踏み出す。


「さあ、どうしょうか? ねぇ、桐矢京介君?」


両腕の爪を研ぎながら、ドラゴンオルフェノクが依然歩き続け、改めて問いかけを口にする。
未だ、間に海堂と歌舞鬼を挟んでドラゴンオルフェノクと桐矢は数十メートル以上も距離が開いている。
だが、段々とドラゴンオルフェノクの歩みは速くなっていき、既にもう話す事はないと示しているようだ。
思わず後ずさりする桐矢、直ぐにでも崩れてしまいそうな表情を浮かべて、彼はファイズギアを手に取り――


「う、うわあああああああああああああッ!!」


急に後ろを振り返り、逃げ出した。
脇目もくれず、桐矢の大きな叫び声で思わず後ろを振り返った歌舞鬼とも視線は合う事なく――

桐矢はこの場から逃げ出した。


29EGO ◆40jGqg6Boc :2008/09/03(水) 21:13:27 ID:vBhLJ0ZG
「あーあ……期待外れだったなぁ……」

逃げてゆく桐矢の姿が小さくなっていくのを見届け、ドラゴンオルフェノクが心底つまらなそうな声を上げる。
自分が提示した選択は取らずに、ファイズギアを持ち逃げした桐矢。
今まで自分が一度も遊んだ事はないファイズギアは少し惜しかったが、最早、逃げるだけしかない桐矢に対する興味は失せきっている。
だが、あんな行動を取ったという事は桐矢もまたコブラと同じように自分に興味を抱いているという証明。
揺るぎようの無い事実だと思っていたがその事を再度認識出来た事にほんの少しだけ、桐矢への不快感が消えていった。
やがて、ドラゴンオルフェノクは最後のご馳走をいただこうと、視線を動かした。

(さぁ、君は楽しませてくれるのかなぁ?)

未だ実力の程を知らない、未知なる存在、歌舞鬼。
今もこの場に残っている事からして自分と闘うつもりなのだろう。
自分の遊び相手が未だ一人居る事がたまらなく嬉しく、ドラゴンオルフェノクは歌舞鬼の方へ向き直ろうとする。
そんな時だ。

「おらああああああああああああああッ!!」

突然、ドラゴンオルフェノクの足元から何かが飛び出すように現れ、彼を殴りつけた。
濁った白い塊のような何かがドラゴンオルフェノクの右頬を抉るようにぶつかり、大きな衝撃を生む。
不意に貰った一撃によりよろめくドラゴンオルフェノクはふと思う。
同じような事があり、とても不快な感じがしたあの時の事。
弱者である一条薫に一撃を貰ってしまったあの事を思い出し、ドラゴンオルフェノクは静かに怒りを燃やす。

「へっ、俺様を忘れてんじゃねぇぞ……この海堂直也をなぁッ!!」

一瞬の内にスネークオルフェノクへ姿を変え、渾身の一撃を叩き込んだ海堂に対して。

◇  ◆  ◇

30名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/03(水) 21:13:50 ID:Vioj5nC8
 
31EGO ◆40jGqg6Boc :2008/09/03(水) 21:14:26 ID:vBhLJ0ZG
自分は何故こんなところに立っているのだろうと海堂は思う。
世界一のミュージシャンを目指していたのに、ひょんな事からオルフェノクに使徒再生する事になったあの日から全ては変わってしまった。
そして今度は殺し合いとやらに巻き込まれ、今はこんな窮地に立たされている。
以前一緒に闘い、敵対関係ではなかったのに唐突に牙をむいてきた三田村。
木場から譲り受けた大切なファイズギアを勝手に手に取り、何処かへ逃げ出した桐矢。
闘った事もあるためか手を貸さそうとはせずに只、静観を決め込んでいる歌舞鬼。
北崎以外にこの場に明確な味方は居ない。
仲間と、友といえるような者は一人も居なく、何の因果か自分の状況を不利にさせる事しかしてくれない。

「まだやるんだ。もう、君には勝ち目はないと思うけど頑張るね。何がそこまで君を動かすのかなぁ……」

確かにそうだと海堂は密かに思う。
ファイズに変身し、一人でもやれるところまでやった。
だが、結果は伴わず今は身体中が痛みで軋み、頭は垂れ下がっており、オルフェノクの姿を維持するのがやっとの状態。
もう、先程打てたような拳は握る事も出来ず、はっきりいって事態はかなり深刻だ。
痛む身体に鞭を打つような思いでここまでやってきたというのに。
こんな事ではやってられない、たまったもんじゃない――
そう思い、ドラゴンオルフェノクに変身を解除されられた時、失いかけた意識を無理して掴まずに深い眠りに落ちる事もやろうと思えば出来た。
北崎の性格上、気絶していればつまらないとかそんな理由でやり過ごす事も出来たかもしれない。
だが、それは以前の話だ。


「言っただろ。俺はこれ以上見たくはねぇんだよ……死んでいく奴は、あいつのような奴はなぁ……」


思い出すのは赤茶色のへんてこな奴。
変な喋り方をして、少しばかしドンくさくて、それでいてちょっと人間じゃないあいつ。
何度でも思い出せるのはあいつの声。
馬鹿みたいに脳天気な声は苛立ちを覚えさせてくれた。
だが、それ以上に悪くない心地がした。
素直で、自分の話を真剣に聞いてくれたあいつ――モグラ獣人を海堂が忘れた事はない。
出来るものならば何も出来なかったあの自分をぶん殴ってやりたい気持ちが燃え滾る。
しかし、そんな事は無理なのはいうまでもない。
だから、せめて今だけは全力を尽くす。
自分の限界などは通り過ぎて――只、全身に力を込める。
たとえ、これ以上一歩も動けないとしても。


「僕にはよくわからないなぁ。弱い奴が駄目なのに……まあ、良いさ。君がくだらない理由で闘ってるのだけは良くわかった……。
だから、もういいや。トドメをさすから……“仮面ライダー”の力でね」

どうして自分と出会う奴は良く飽きずにこんな事を言うのか。
心底興味がなさそうな表情でドラゴンオルフェノクはオーガギアを取り出す。
地のベルトと称され、その力は強大無比。
既に海堂はその力を、身を持って知っている。
自分一人、しかも満身創痍であるこの状況ではとても勝ち目は無い。
その事実を見越しているためドラゴンオルフェノクには溢れんばかりの余裕がある。
スネークオルフェノクの反応をわざわざ窺う余裕すらも。
32名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/03(水) 21:14:55 ID:7M8Q7PFg
33EGO ◆40jGqg6Boc :2008/09/03(水) 21:18:23 ID:vBhLJ0ZG
「てめぇが……てめぇなんかが…………」

そんな時、ぽつりぽつりとスネークオルフェノクの口から小さな言葉が洩れる。
段々と大きくなる声につれて、スネークオルフェノクはついに顔を上げた。


「てめぇなんかが……仮面ライダーの名を口にするんじゃねえッ!!」


大声を上げるスネークオルフェノク。
予想外の言葉、仮面ライダーを嫌っていた筈であるスネークオルフェノクの言葉にドラゴンオルフェノクは声の大きさと相まって思わず驚く。
既にボロボロな身であるにも関わらず、その顔には大きな意思が宿ったように力強いもの。
ドラゴンオルフェノクの言葉に対して――反抗の意思を貫き通すように。


『困ってる人は絶対に見捨てないし、助けを求める人がいたらどこへだって飛んでいくんだ』

「仮面ライダーはなぁ……困ってる奴を助けて、どんな時でも助けを求めてる奴のところへ行くんだよ……!
だから、俺は決めた。仮面ライダーになることを……あいつを嘘つきにさせないためにもッ! 俺は、俺はああああああああああああああああッ!!」


幻聴の類なのだろうか。
何故か、あの時自分に向けて嬉しそうに語ったモグラの言葉が聞こえてくるような気がする。
モグラの言葉と自分が見つけた答えを合わせて――只、言葉を紡ぐ。
モグラが信じた仮面ライダーを、彼の意思を嘘で終わらせないためにも。
自分が証明させてやると誓ったスネークオルフェノク、いや海堂の意思には今も迷いはない。
ありったけの言葉になけなしの力を込める。
血が滲み始めた身体はもう少しだけ我慢してもらえ。
一秒でも長く意識を保つためにも
たった一人でも構わない。
誰かのために……誰かを助けてあげられるような存在に――


「俺は人間を守る! 守ってみせるぜ……一人も見捨てずに絶対になぁッ!!」


誰しも憧れるヒーローとなり、希望を分け与える。
その決意をドラゴンオルフェノクに叩きつけた。
呆気に取られたドラゴンオルフェノクの動きは暫し止まるが、やがて動き出した。

「くだらない。ああ……本当にくだらないなぁ!」

ドラゴンオルフェノクにとってつまらない御託を並べるスネークオルフェノク。
オーガに変身するのも気だるく、この場で邪魔なオーガギアは放り投げる。
既にフラフラな身であるにも、異様にしぶといスネークオルフェノクにトドメをさすべく右腕を向けた。
一直線にスネークオルフェノクの右胸に突き刺さろうとする右の尖爪。

だが、それがスネークオルフェノクの身体に届く事はなかった。

34名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/03(水) 21:19:53 ID:7M8Q7PFg
35EGO ◆40jGqg6Boc :2008/09/03(水) 21:22:10 ID:vBhLJ0ZG
「そらあッ!」

スネークオルフェノクの後方から走ってきた一つの影が叫ぶ。
右腕に握られたものは一振りの刃。
その刃を渾身の力でドラゴンオルフェノクに向けて突き刺し、またも不意の一撃で彼は後方へ吹き飛ぶ。
地を転がる事となったドラゴンオルフェノクにコブラは慌てて駆け寄るが、乱暴に振り払われてしまう。

「なんのつもりかなぁ……?」

起き上がりながら憎憎しい声で口を開くドラゴンオルフェノク。
表情に浮かぶのは確かな苛立ち。
スネークオルフェノクにはもう反撃を行う力などないため、彼は違う。
そのためそんな方には向いていない。
ドラゴンオルフェノクが見つめる先は赤と緑の戦士。
海堂やモグラが思い浮かべる仮面ライダーとはまた違う戦士――いや、鬼。
戦国時代を己の力で生き抜いてきた男。
鬼と呼ばれ、慕われ、そして恐れられていた男。
鬼の名を持つ男がスネークオルフェノクを庇う様に前に出ていた。

「悪いなぁ。ちょっくら遅くなっちまったが俺も混ぜてもらうぜ。今からこの歌舞鬼も一枚噛ませてもらう……“仮面ライダー”とやらのお話にな」

口を開いたのは歌舞鬼。
いつのまにか変身を終えて、鬼の姿となった歌舞鬼がドラゴンオルフェノクと対峙する。
音叉を変形させた鳴刀・音叉剣を右手に持ち、油断無く構える。

「やっぱり君も変身できるんだね。嬉しいなぁ……けど、わからないなぁ。なんで今頃になってそれを助けるの?」
「あーそれは簡単だ。簡単な答えだ、北崎」

ドラゴンオルフェノクが疑問に思うのも無理はない。
今まで全く行動を起こさなかった歌舞鬼が何故この場になって動いたのか。
しかもわざわざ不利な立場に立つったのかはドラゴンオルフェノクにとっていまいちわからなかった。
その言葉を受け、歌舞鬼は腕を首の高さくらいまで持っていき、首を一回転させて口を開いた。


「俺の使命もその海堂って奴と同じなんだよ。人間を守る……そうさ、それが俺の、俺達鬼の使命。俺はそれのために闘っているのさ」


思わずドラゴンオルフェノクの表情が歪む。
またもくだらない理由。
折角闘える力を持っているのに、わざわざその力を殺すような真似をするスネークオルフェノクと歌舞鬼。
気に入らない虫けら達を倒すために、ドラゴンオルフェノクは完全に立ち上がった。

「おい、てめぇ……取り敢えずはありがとよと言っておくがあのアマゾンって奴はどうした!?
ちゅーかお前ら一緒じゃねぇのかよ!? 俺はあいつに話があるんだ!」
「今は話してる場合じゃねぇ。後で話すからよ……悪いな」
「はぁ? 何が――」

言い争いを始めるスネークオルフェクと歌舞鬼。
そんな時、突然歌舞鬼はスネークオルフェノクの鳩尾に拳による一撃を叩き込む。
疲弊しきっていたため、崩れ落ちるように倒れ、変身が解除された海堂を歌舞鬼は抱きかかえる。
そのまま海堂の身体をおんぶの形で担ぎ、歌舞鬼は唖然としているドラゴンオルフェノクの方へ振り返って口を開く。

「悪いが勝負はお預けだ。こいつはもう闘えそうにもないんでね……あばよ!!」

そう言って歌舞鬼は全速力で駆けてゆく。
現代ではなく、自転車すらもない戦国時代で生まれた歌舞鬼。
身体能力は人一倍高く、鬼に変身している事もあって、海堂を担いでもその速度は決して遅くない。
何故かドラゴンオルフェノクは動こうとはせずに、やがて歌舞鬼は完全に逃げきった。

◇  ◆  ◇
36名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/03(水) 21:23:23 ID:Vioj5nC8
 
37EGO ◆40jGqg6Boc :2008/09/03(水) 21:23:58 ID:vBhLJ0ZG
息も絶え絶えに桐矢はファイズギアを抱え、走り続ける。
三田村を力づくで従わせる北崎の力。
自分を眺める北崎の視線に耐え切れなくなり、彼は逃走を選択した。
抵抗するなどもっての他だが、ファイズギアを渡して見逃して貰う手段も北崎から示されていたが、桐矢にはその考えはなかった。
後ろを振り返り、自分を追う人影が見えない事を確認し叙々に速度を下げ、荒くなった呼吸を落ち着けて心の中で思う。

(三田村さんには鬼のような力がある……けど、俺には何も無い。北崎が満足出来る力はないんだ。
そうだ。あのまま仲間になっても、きっと散々こき使われていつか殺されるだけだったんだよ……。
だったら、俺の行動は間違ってない筈だ。あの海堂っていう人には悪いコトをしたかもしれないけど……仕方ないさ。)

一時的では駄目だ。確実に自分の命が保障される選択を取らなければならない。
単独行動を取らざるを得ないというデメリットはあるが、それでも北崎の仲間になる事は桐矢にとって願い下げだった。
今となってはどこか頭のネジが外れているような感じだった北崎と今後上手くやっていく自信はない。
そのため、追跡されたらどうしようという不安はあったが逃げる事に対し、桐矢は抵抗がなく、自分の選択には後悔はなかった。
たとえ海堂を更に危険な状況に追い込んだ可能性があっても、自分の安全と比べれば目を瞑るしかない。
やがて一時の休憩を終えて、桐矢は歩き出す。

(三田村さん、歌舞鬼さん……俺を見捨てるなんて。三田村さんは未だわかるけど、歌舞鬼さんは……失望したよ。
今度はもっと親切で頼りになる人を捜さないとな……このベルトで闘ってくれる人を)

自分に救いの手を差し伸べてくれなかった三田村と歌舞鬼に静かな怒りを燃やす。
特に歌舞鬼は何もせずに、只ボーっとしていただけ。
胸の奥底で沸々と湧き上がってくる苛立ち。
最早、わざわざ会いに行くこともないだろう。
色々とお世話になったりしたが缶詰の事などこちらも色々と教えてあげたので、ある程度の恩は返せた筈。
歌舞鬼達との合流は考えずに、桐矢は新たな合流者、ファイズギアを使って自分を守ってくれる人物を捜すために歩き続ける。
やはり咄嗟に思い浮かぶのは鬼に変身できるヒビキ。
未だ接点はあまり作れてはいないが、接触する価値はあるため、当面はヒビキを第一目標と定めた。
咄嗟に手に入れたファイズギアをしっかりと確認するように見つめる。
鬼のような存在、“仮面ライダー”という存在にさせてくれる変身ツール。
自分でも試してみようと思ったが、変身の際に流れるフォトンブラッドが電流のように見えどうにも怖くて桐矢には出来なかった。
決意を乗せた足を踏み込み、桐矢は歩きながらふと思い出す
北崎と自己紹介をした時にふと小さな声で彼が呟いた名前を。
まるで自分の顔を探るような目つきで呟いた名前を。

桜井侑斗という名が何故か桐矢には引っかかっていた。

38EGO ◆40jGqg6Boc :2008/09/03(水) 21:25:59 ID:vBhLJ0ZG
【桐矢京介@仮面ライダー響鬼】
【1日目 現時刻:昼】
【現在地:F-6北東部】
[時間軸]36話、あきらに声を掛けた帰り
[状態]:やや疲労、軽い擦り傷、僅かな人間不信 、
[装備]:なし
[道具]:基本支給品(食料紛失) ラウズカード(スペードの10、クラブの10) 、ファイズギア
【思考・状況】
基本行動方針:生き残る
1:取り敢えず今は何処かへ逃げる。
2:激しい恐怖(特にダグバ、ゾルダ、ドラゴンオルフェノクに対して)
3:アマゾンが心配。
4:響鬼が助けてくれることへの僅かな期待。
5:誰かにファイズギアの使用法を教え、その人物に保護してもらう。(出来ればヒビキが良い)
6:海堂に対して罪悪感。三田村と歌舞鬼、特に歌舞鬼に対して怒り。
7:桜井侑斗って誰だ?
【備考】
※自分を助けてくれた男性(水城)の生存の可能性は低いと予想
※食料は移動中に紛失しました。
※ファイズギアの装着者の条件は知りません。
※何処へ行くか次の書き手さんにお任せします。
39名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/03(水) 21:26:14 ID:Vioj5nC8
 
40EGO ◆40jGqg6Boc :2008/09/03(水) 21:27:09 ID:vBhLJ0ZG
「皆居なくなっちゃったね……」

海堂を担ぎ、逃げていく歌舞鬼を追う事なく、ドラゴンオルフェノクはオーガギアを回収しながら呟く。
ドラゴンオルフェノクが彼らを追わなかった理由は単に、気が削がれたから。
それ以外に特に理由はない。
海堂と歌舞鬼との決着は後回しと考え、既に桐矢の事はほとんど意識してはいなかった。
やがて変身を解除し、人間の姿に戻る北崎。
そんな北崎を見て、コブラも同じようにマスクを外し、元の三田村へと戻る。
結局、この場では使う事がなかったオーガギアを手で回しながら、北崎は三田村の方を振り向いた。

「じゃあ、三田村君。取り敢えず何処かでちょっと休憩しようか。次の相手と遊ぶためにね」

己の力に絶大な自信を持つ北崎だが、流石に少しは疲労を感じているのだろう。
休憩を持ちかける北崎に三田村は驚きながらも頷く。
北崎が自分と闘えと言うと思っていたため、三田村にとっては幾分マシな条件といえる。
北崎の力は強大で恐ろしい。だが、逆を返せばその力が自分に向けられずに、共に闘う事となったらこれほど心強い事はない。
信頼関係もへったくれもない関係だが、未だ40人は居ても可笑しくないこの状況では兎に角生き残る事を優先するべき。
そう考えると今は北崎との同行も我慢出来ないような事ではなかった。
やがて、心なしかホッとしたような表情を浮かべ三田村は歩き出す。
歩き出した北崎の後を追うように三田村は少し、足を速めた。
そんな時、北崎が再び口を開く。

「そうだ。もっと友達を増やしても面白いかも。君のようなのをあと一人か二人ぐらい……あんまり一杯居ても邪魔くさいから」

他人をそこらに生える草木のように話す北崎に三田村は相槌をうつ。
相変わらず傲慢な態度だなと思うと同時に、三田村は北崎の考えに疑問を抱く。
確かに生き残るために仲間を増やすのは良いかもしれない。
だが、自分達は優勝を目指している。
始まりの地で村上は優勝できるのはたった一人と言っており、最終的に一人を決めなくはていかず、幾ら仲間を増やしても意味はないのではと三田村は思う。
いや、そもそも優勝を目指すならあの場だけなら兎も角、北崎が自分を仲間に引き入れたのも良くわからない。
いつかは闘わなければならない事を忘れて、気の赴くままに口を開いていたのだろうか。
そんな疑問を胸に潜めていると北崎が言葉を続けた。

「それで最後は僕達が闘い合うんだ。仮面ライダーの力を一杯手に入れて、闘って闘って……決めようよ。
本当に最強の存在をさ」

思わず三田村の血の気が引く。
やはり北崎は最終的には自分を逃すつもりはないらしい。
来るべき北崎との闘いはどうしようもなく怖いが、要は最後の最後で北崎に打ち勝てば良いのだ。
勝率は限りなく低いが、この状況で一人になり、優勝を目指すよりかは未だマシな条件。

「……わかった」

生き残るためにも三田村は決意を固めて北崎に返答する。
口ではそんな事を言うが、気が変わりいつ襲い掛かっても可笑しくはなそうな北崎への恐怖を必死に抑えて。
依然、ひどく掴みどころのない笑顔を向けてくる北崎。
そんな彼と行動を共にする事を三田村は受け入れた。
これからどんな運命が自分を待っているのか。
その三田村の疑問は誰にも答えられるものではなかった。

41名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/03(水) 21:28:50 ID:Vioj5nC8
 
42名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/03(水) 21:31:23 ID:xTPj2aOs
43EGO代理:2008/09/03(水) 21:41:16 ID:zGhNsd2p BE:572033873-2BP(1)
【三田村晴彦@仮面ライダー THE FIRST】
【1日目 現時刻:昼】
【現在地:F-6南エリア】
[時間軸]:原作での死亡直前から
[状態]:全身に中度の疲労、胸に強い痛み、北崎に対する強い恐怖 、二時間コブラへ変身不可能
[装備]:特殊マスク、鞭
[道具]:基本支給品・不明支給品×1
【思考・状況】
基本行動方針:彼女を救いたい。
1:望みを叶える為にも、バトルロワイヤルに生き残るしかない。
2:生き残るために今は北崎に逆らわず、彼と行動を共にする。
3:いざとなれば迷わない……はず。
4;桐矢、海堂に僅かな罪悪感。
【備考】
※変身制限がある事をなんとなく把握しました(正確な時間等は不明)
44EGO代理:2008/09/03(水) 21:42:34 ID:zGhNsd2p BE:817191465-2BP(1)
【北崎@仮面ライダー555】
【1日目 現時刻:昼】
【現在地:F-6南エリア】
[時間軸]:不明。少なくとも死亡後では無い。
[状態]:全身に疲労。頭部、腹部、両腕にダメージ。背部に痛み。ドラゴンオルフェノクに二時間変身不可。
[装備]: オーガギア
[道具]:無し
[思考・状況]
基本行動方針:殺し合いを楽しんだ上での優勝。
1:今のところは三田村を引き連れて行動し、最終的には闘う。また、三田村のような人間をもう一人か二人手下にするのも面白いかも。
2:五代雄介、「仮面ライダー」なる者に興味。
3:桜井侑斗、香川英行とはまた闘いたい。
4:ゾル大佐、橘朔也と会ったら今度はきっちり決着をつけ、揺ぎ無い勝利を手にする。
5:「仮面ライダー」への変身ツールを集めたい。
6:木場勇治はどうせだから自分で倒したい。海堂直也と歌舞鬼はいつか倒す。
7:三田村晴彦は面白い。玩具的な意味で。桐矢はもうどうでもいい。
8:取り敢えず放送まで何処かで休む
※変身回数、時間の制限に気づきましたが詳細な事は知りません。
※桐矢京介を桜井侑斗と同一人物かどうかほんの少し疑問。
※どこへ向かうかは次の書き手さんにお任せします。
45 株価【380】 EGO代理:2008/09/03(水) 21:44:01 ID:zGhNsd2p BE:762711874-2BP(1)
(助かったのかぁ……俺は……)

歌舞鬼の背中に揺られ、殆ど失いかけた意識の中海堂は自分が生きているのを実感する。
身体の節々が大きな悲鳴を上げているが致命傷は無い。
取り敢えず勝ち取った幸運を噛み締め、今後自分がやるべき事を確認する。
先ずは手荒な方法で自分を助けてくれた歌舞鬼とやらを一発ぐらいなぐり、話を聞く。
モグラを殺したアマゾンの事を聞き、やつの場所を聞き出す。
そしてその後はファイズギアを持っていった桐矢を見つけて……いや、木場達との待ち合わせの約束もあった。
北崎達も放って置くわけにもいかない。
……やる事が多すぎだ。昔の自分なら直ぐに厄介事は放り出したのに……可笑しなもんだ。
小さく自嘲し、やがて海堂は一つの決断を行った。

(とにかくあれだ。今は少しだけ寝るか……少し、少しだけな……)

今は休もう。
どうやら歌舞鬼も自分をやすませようと何処かへ持たれかけられるように下ろしているようだ。
そして消え行く意識を手放し、海堂は一時だけ眠りに耽ろうとする。
やるべき事、やりたい事は一杯あるので一時だけ。
そう願った海道だったが――
46EGO代理:2008/09/03(水) 21:45:47 ID:zGhNsd2p BE:490314492-2BP(1)
何かがチクッと胸の辺りに当たったかと思ったその瞬間。




何かが自分を貫き、そして自分の身体から水のようなものが抜けていく心地がし――





海堂の意識は深い闇の底に沈み、二度と彼が目を覚ます事はなかった。




【海堂直也@仮面ライダー555:死亡確認】


◇  ◆  ◇
47EGO代理:2008/09/03(水) 21:47:14 ID:zGhNsd2p BE:1225786695-2BP(1)
音叉剣を既に物言わぬ海堂の胸に、丁度心臓のあたりから引き抜き歌舞鬼は変身を解除する。
苦しまないように一思いに刺したせいか、それとも既に声を上げる元気がなかったせいか海堂の最後の抵抗はなかった。
浮かべる意思は見えない。
感情が無さ過ぎる冷めた表情で海堂の亡骸を凝視する歌舞鬼。
やがて固く閉じていた口を開き、歌舞鬼は海堂に向かって言葉を発し始めた。

「悪いな。恨み言なら俺が地獄に落っこちた時にな……まあ、当分行く気はねえけどよぉ……。
この殺し合いとやらに優勝するつもりだからなぁ」

当然、木に持たれかける様に腰を落とした海堂からは何も返ってこない。
その事に対し特に気落ちする事もなく、歌舞鬼は立ち上がり、その場を後にする。
目的地はない。市街地に向かうのもいいが、絶対に行かないといけないというわけでもない。
只、この殺し合いに優勝するために他の参加者と接触するために歌舞鬼は歩き出す。
そう。海堂が命を賭けて闘った姿を見て――
現実の非常に絶望し、この殺し合いに乗る事を決めた歌舞鬼はしっかりと前へ前へと一歩を踏み出す。

(一人残らず人間を守る……結局、そういう奴から死ぬんだよ。そんな上手い話は夢のようなもんだ。釣り合う力もないのに、大きなコトを言う奴はな
だから、海堂はあんなにボロクソにやられた。俺が茶々をいれなけりゃあ間違いなく死んだ……
俺は、そんなコトは御免だ……また、何も出来ねぇ内に死ぬのはよぉ)

海堂が言った言葉は確かに素晴らしい事だと思う。
魔化魍を全て一掃し、全ての人間を守る事が出来たらどんなに良い事か。
だが、そんな事は無理なのだ。
幾ら大きな意思があっても力が伴ってなければ意味が無い。
世界はそれほどまでにやさしくは出来てはいない。
只、途中でぶち当たった壁に阻まれて無残に力尽きるようなもの。
その事を、見事に身を張って見せてくれた海堂を見て歌舞鬼は改めて自分の考えが正しかった事を思い知り、そして残念に思う気持ちが僅かにあった。
何度も何度も打ち倒されても立ち上がり、闘い続ける海堂を見て、歌舞鬼にもほんの小さな希望が叙々に生まれていった。
48名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/03(水) 21:48:11 ID:xTPj2aOs
49EGO代理:2008/09/03(水) 21:48:42 ID:zGhNsd2p BE:680993055-2BP(1)
――この男は自分が出来なかった事をやり遂げる事が出来るかもしれない。

自分を人と見なさず、見下した大人どもの存在がどうしようもなく気に障り、自分が断念した使命。
そう。先程、ドラゴンオルフェノクに対し言った自分の使命を諦めずに成し遂げようとする海堂。
そんな彼の姿が以前の自分と、あの時自分に打ち勝った響鬼と何故か被った。
海堂と共に自分もかつて追い求めた理想を追うか。
たとえ再び険しい道を辿る事となっても――
そんな想いを馳せながら闘いを見守り、海堂がファイズの変身を解除した時、助けに行くか歌舞伎は悩んでいた。
一度、本当に最期の最期だけしか満足いく事しか出来なかったあの一度目の人生を送るきっかけとなった、使命への挫折。
その大きすぎる使命を目指して、自分は再び道を間違える事なく進む事が出来るのか。
選択は歌舞鬼にとって難しいものであり、それは桐矢を守る行動にも支障をきたした。

(結局高望みしすぎたのさ……俺も海堂も。京介を、子供一人すら守れなかった俺は特にな)

逃げてゆく桐矢を見て、自分の無力さに打ちひしがれ歌舞鬼は更に選択が遅れた。
やはり自分には全ての人間を守るなど大それた事は出来ない。
結局歌舞鬼は最期まで手出しできなかった。
魔化魍のように暴力を振りまく存在であるドラゴンオルフェノク。
そんな奴に最期まで戦士として闘い抜いた海堂を殺させたくはない。
だが、もう既に海堂の身体はボロボロで生きていればこれ以上に傷つく事もあるかもしれない。
腕が飛ばされ、足が千切れ、全てを失うかもしれない。
だったら、だったら――
自分の手でいっそ静かに眠らせてやりたい。
そう思い、歌舞鬼は己のエゴの下に彼を助け、そして音叉剣で眠りに落ちた海堂を刺殺した。
50名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/03(水) 21:48:58 ID:xTPj2aOs
51EGO代理:2008/09/03(水) 21:51:28 ID:zGhNsd2p BE:1307505986-2BP(1)
(いや、本当の理由はそれじゃあねぇ……そうだ。俺は海堂を殺して、踏ん切りをつけたかったんだ……。
大きな決意を持った海堂を殺して、もう後戻りできないようにするために……俺の世界に戻って魔化魍だけでも叩くためにな……)

自分が勝手な理由で海堂を騙まし討ちにしたのはわかっている。
だから、もう迷いはしない。
海堂の命を蹴落とした分もこの命は最期まで使い切ってみせる。
やるべき事も既に決め終えた。
先ずはこの殺し合いに優勝し、元の世界に戻る。
ヒトツメやオロチが破壊の限りを尽くしているあの戦国の時代に舞い戻り、全ての片をつける。
ヒビキを始めた7人の鬼と再び闘う事になっても気にする事はない。
只、自分が魔化魍の側についた事で苦しんだ人々のためにも、全ての罪を拭うためにこの身を費やす。
命を散らす事には恐れは無い。
寧ろ、既に生を終えた身でもあるので、全てを終えてから敢えて散らそうと思う気持ちすらある。
只、また何も出来ないで終わる結末を迎える方が怖い。
それが一度短い人生を終えて、最期まで人間を守ると言い続けた一人の男を見て、歌舞鬼が出した結論。
自分の力と相談した末、自分にはこの場に居る全ての人間の命を救う事は無理だと思い、それならば自分の世界に居る魔化魍だけは倒そうと考えた結果。
歌舞鬼は決意を秘め、歩き出す。

「さて……これからが本当の闘いだな」

ヒビキが相手でも構わない。再び騙まし討ちをしても厭わない。
アマゾン、三田村、桐矢は気にはなるが既に自分の道は一つ。
出会ってしまえば殺す事になってかもしれない――そんな事を思い、歌舞鬼は出来れば彼ら三人には会いたくないと思う。
そして北崎。
彼とやりあえば消耗は必至だが、優勝するためには仕方ない――
海堂のデイバックを担ぎ、そして今までのゴタゴタで確認していなかった自分の支給品を握り締めて歌舞鬼は当ても無く彷徨い始める。
説明書はどうやら特別に自分にも読めるようにしてくれたらしく、使い方は大体覚えた。
そう。それは歌舞鬼の新たな力。
かつて自分の幸せを掴むために奔走し、そして最期の最期で本当の幸せを掴み、消えていった男が使った力――

インペラーのカードデッキを強く握り締め、歌舞鬼は改めて殺し合いに身を投じた。
52名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/03(水) 21:52:05 ID:xTPj2aOs
 
53EGO代理:2008/09/03(水) 21:53:31 ID:zGhNsd2p BE:326876843-2BP(1)
【歌舞鬼@劇場版仮面ライダー響鬼】
【1日目 現時刻:昼】
【現在地:F-5南部】
[時間軸]:響鬼との一騎打ちに破れヒトツミに食われた後
[状態]:健康
[装備]:変身音叉・音角、音撃棒・烈翠
[道具]:基本支給品×3(ペットボトル1本捨て)、歌舞鬼専用地図、音撃三角・烈節@響鬼、GK―06ユニコーン@アギト、ルール説明の紙芝居、インペラーのカードデッキ@龍騎
【思考・状況】
基本行動方針:優勝し、元の世界に戻って魔化魍と闘う。そして最後は……
1:アマゾン、桐矢、三田村とは出来るだけ会いたくないが気になる。
2:子供は殺さない……?
3:北崎はいつか倒す。
【備考】
※カードデッキの使い方は大体覚えました。
※何処へ向かうかは次の書き手さんにお任せします。

54名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/03(水) 21:53:49 ID:xTPj2aOs
 
55名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/03(水) 21:56:22 ID:xTPj2aOs
 
56名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/03(水) 21:58:05 ID:7PlDwXGB
57エゴ代理:2008/09/03(水) 21:58:46 ID:xTPj2aOs
705 EGO ◆40jGqg6Boc 2008/09/03(水) 21:48:42 ID:???
投下終了です。
代理投下を行ってくれた方、支援して下さった方々どうもありがとうございました!
それではご指摘や感想などをお待ちしています。
58名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/03(水) 21:59:56 ID:7PlDwXGB
投下乙です!
海道さん南無……あんたは頑張ったよ。しかし運が悪かった。
どこへ行くか分からない京介。我が道をゆく北崎コンビ。茨の道をすすむカブキ。
それぞれの今後が気になる話でした。熱血バトルもGJ!
59名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/03(水) 22:03:29 ID:6g50TDeI
投下乙です!
北崎の人形のまま終えるのか三田村!?響鬼勢の子役はろくなもんじゃない法則を作るのか京介!?
マーダーか!?マーダーなんだな歌舞鬼!今後が楽しみなのが多すぎますw

そして海堂…おつかれさまとしか言いようがない。苦しまずにすんだのが唯一の救いなのだろうか…
60名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/03(水) 22:08:48 ID:C/i8MT9D
移転後初投下乙です!!
三田村と桐矢のヘタレっぷりが…………w
海堂は頑張った……でも、これがロワだ。この死が木場や結花にどう影響するか気になる。
歌舞鬼の決断は吉となるか凶となるか、やはり気になります!

今までの話が綺麗に反映されてると感じます。GJ!
61名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/03(水) 22:10:04 ID:zGhNsd2p BE:1225787459-2BP(1)
投下乙です。
海堂さん、モグラの意思をついで安らかに眠れ。
北崎に倒れても立ち向かう海堂さんが熱かったです。
歌舞鬼さんの援護かと思いきや、意外な展開が。
各人の動向にも期待が持てます。
GJ!
62名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/03(水) 22:32:40 ID:Pp6mrvCy
投下乙です。
まずは、海堂のご冥福をお祈りします。
いい奴ほど、先に逝くんですよね……
そして、バラバラになったこの面子は、再会するまで生き延びられるのか。
何とも気になる展開で、GJ!
63名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/03(水) 23:33:55 ID:EHpjaEpa
投下乙です!
か、海堂ォーーーー!!
熱い戦いっぷりに胸が詰まりました!静かな最後がどこか物悲しい…
ファイズギアを持ったまま逃げた京介や脅威の北崎、操られるままの晴彦。
歌舞鬼の決断などなど、大きく動いた各人のスタンスが印象的でした!
GJです!!
64 ◆yFvLIBbl9I :2008/09/03(水) 23:40:21 ID:EHpjaEpa
それでは、日高仁志、手塚海之、志村純一、投下いたします。
65夢路  ◆yFvLIBbl9I :2008/09/03(水) 23:41:24 ID:EHpjaEpa
雲間から零れる僅かな陽光が、濡れた緑を輝かせている。
むき出しの赤土には水が溜まり、踏み出した足がずるりと滑った。

「ッ! ………」

歯を食いしばり、ヒビキは体を硬くして姿勢を保持する。
斜面が多く、舗装されてもいない山林道はぬかるみ、重なる枯葉や小石で滑りやすくなっている。
いかに山歩きに慣れ、鍛えられた肉体を持つヒビキでも到底歩きやすいと言えるものではない。
意識のない人間二人を抱えていては尚更だ。
ヒビキは二人の傷を悪化させないよう細心の注意を払っているにも関わらず、何度となく足を取られてよろめいた。

肩に触れた手塚の体はひどく冷たい。
耳元に聞こえる、浅く小さい息遣いが辛うじて命がある事をヒビキに伝えていた。
急ごしらえの止血帯が緩んだのか、着替えたばかりのヒビキの服にも、ぐっしょりと赤い血が染みている。
志村の顔も紙のように白く、先の戦闘で受けたダメージの大きさを物語っていた。

一刻も早く、本格的な治療を施さなければ危険だ。
だが、雨上がりの山道。道路は禁止エリアに分断されており、迂回しなければ病院へはたどり着けない。
泥交じりの、汗とも雨の雫とも知れないものが額を伝う。

濡れた体は吹き抜ける風によって冷やされ、戦いで消耗したヒビキの体力を容赦なく奪ってゆく。
担いだ二人の体が重い。
だが、立ち止まる訳には行かない。寒さに痺れるような感覚のする足に力をぐっと込め、さらに一歩を踏み出した。

その時、不意にヒビキの前に何か小さなものが降り立った。驚いて足元を見る。
担いでいた手塚の体に乗っていた、紫のサソリだった。
何事かと思いながらも、一歩ヒビキが前進する。
サソリも同じくチャカチャカと前に進むと、ヒビキの方を振り返っては小さな鋏と尻尾を振っている。
その姿はまるで道教えのようで。

「そうか……励ましてくれてるんだな、お前」

手塚を新たな姿に変身させた、機械とも生き物ともつかないそれ。
それでもヒビキには解った。こいつは手塚を助けたくて、一生懸命なのだ。あの時も、今も。

「大丈夫だ……絶対、助ける。―――手塚も、志村も!」
66名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/03(水) 23:42:23 ID:PJxfCCGn
 
67名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/03(水) 23:42:26 ID:zGhNsd2p BE:408595853-2BP(1)
68夢路  ◆yFvLIBbl9I :2008/09/03(水) 23:42:44 ID:EHpjaEpa
力強く告げると、二人の命と決意をその肩に乗せ、一歩ずつ、一歩ずつ、ヒビキは進む。
サソリも一緒に、振り返り振り返り、雨上がりの山道を進んでゆく。
そのまま少し歩いた所で、急にサソリの動きが早くなった。急かすように、鋏を振りたてている。
そうして、ヒビキとサソリ―――サソードゼクターは、山小屋を見つけたのだった。


※※※


ヒビキは迷ったが、この小屋で改めて二人の手当てを行う事に決めた。
一刻を争う事態ではあるが、このまま二人の体に負担を掛けながら下山するのはリスクが大きすぎる。
まずは失血や雨風によって失われた体温を取り戻し、
移動するための体力を―――怪我をした二人はもちろん、ヒビキもだ―――回復させた方が良いと判断したのだ。

入ってみると、小屋はこの島にある他の施設と同じく無人だった。
トレッキングコースの休憩所として作られたらしく、軒先にはそう古くもなさそうな、ささやかなみやげ物などが並べられている。
宿泊施設ではないようだったが、奥には畳の敷かれた休憩スペースがあり、ヒビキはそこに二人をそっと寝かせた。

部屋の隅に据えられた石油ストーブに火を入れると、小屋中をあさり、ありったけの衣類や毛布をかき集める。
二人の怪我は、応急手当の心得があるとはいえ素人であるヒビキがどうにかできるようなものではなかった。
それでも、包帯を巻き直したり、傷口に当てた布を清潔なガーゼと取り替えたり、自分に出来る治療を施していく。

志村の怪我を見たとき、ヒビキはふと違和感を覚えた。
焼け焦げて黒く見える腹部は凄惨の一言に尽きるが、その程度が前見た時より軽いような気がしたのだ。

(まさか……な)

あの時は気が動転していて、思ったより酷い怪我に見えたのかもしれないと、そう思い直す。
血らしきものが目視できないのも、火傷なのであまり目立たないだけだろうと判断する。
実はそれは、制限下に置かれてもなお僅かに常人を上回るアンデッドの回復能力によるものだった。
これだけのダメージを受けながらも生きていられる事自体がその証でもあるのだが、ヒビキには知るよしもない。
そうこうしているうちに部屋が暖まると、二人の呼吸が若干安らかになったような気がした。

ヒビキは傍らに座り込み、二人の体力が少しでも回復する事を祈りつつ、自らも体を休める。
サソードゼクターはやはり心配なのか、手塚の枕元をうろうろと歩き回っていた。
69夢路  ◆yFvLIBbl9I :2008/09/03(水) 23:43:35 ID:EHpjaEpa
その様子を見ながら、ヒビキは先ほどの戦いの事を思い出す。
何故あの時、装甲響鬼に変身することが出来なかったのだろうか。
そういえば、少し前にも変身しようとしたが何も起こらなかった事がある。その事と関係あるのだろうか。
試しに、音叉を鳴らし、精神を集中させる―――清らかな音が辺りに響くが、それだけだった。
やはり鬼の力を制限する何かが、自分に科せられているのかも知れない。
思い当たる事といえば、時間だ。あの時はバイクに乗った怪人と戦ったすぐ後に変身しようとした。
短時間に連続して変身する事を制限されているのではないかと、ヒビキは思う。
だとしたら、装甲響鬼にも、なれる時間が決まっているのかもしれない。
そこまで考えて、楽観的過ぎるかなと苦笑を浮かべつつ、ヒビキはデイパックからアームドセイバーを取り出した。

(―――それと)

もう一つ起こった、不思議な事。
自分の名が刻まれた、錆びた短剣を手にした時に沸き上がってきた、懐かしい記憶は一体何だったのだろう。
ストーブのほのかな明かりに照らされる、銀と赤の刀身を目の前に翳す。
じっと見つめていると、脳裏に少年の顔が浮かんだ。
ヒビキの知るアームドセイバーは、吉野の開発局長である小暮が作ったものだ。
だが、今この手にあるそれは、猛士が――そう、あの少年は猛士と言うのだ――作ってくれたものだと、なんとなく思った。
彼が誰なのかは解らない、どれだけ記憶を辿っても。しかしヒビキは、確かに彼を知っている。
そして、彼が何を言いたかったのかも。

「人を守る……これを使って。 ………そうだろ?猛士……」

決意を口にすると、記憶の中の猛士がまた、微笑んでくれたような気がした。


※※※


夢を見た。

目の前には黄金の鎧をまとった騎士。
響く電子音声、中空に蒼く浮かんでいるのは地獄に住むという獣の紋章だ。
ひらめく切っ先がそれを絡め取り、刀身に力を宿らせる。
一閃。
サソードは為すすべもなく胸を切り裂かれ、地面に倒れ伏した。
70名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/03(水) 23:44:18 ID:xTPj2aOs
 
71夢路 ◆yFvLIBbl9I :2008/09/03(水) 23:44:29 ID:EHpjaEpa
泥水を跳ね上げながら、スローモーションで倒れる自分を、手塚はどこからかぼんやりと眺めていた。
グレイブの変身を解いたダグバが、白い服を手塚の血で赤く染めながら、邪気のない笑顔を浮かべている。

現実感のないまま、手塚は倒れた自分を見下ろし―――凍りついた。
赤いジャケットは何時の間にか鮮やかなスカイブルーのジャンパーに変わり、血が斑模様を作っている。
明るい茶色の長髪が、血の気の失せた頬に張り付き、見開かれた目は虚ろで、既に光はない。

―――城戸。

思わず駆け寄り、抱き起こす。膝を突いた地面にどす黒く血が広がっている。
だらりと、力の抜けた四肢が重たかった。
亡骸の重さが一瞬にして手塚の記憶を呼び覚ます。
一文字に、自分に未来を託して果てた、本郷猛。親友である斉藤雄一。その最後の姿を。
おびただしく流れる血が手を濡らす。指先が酷く冷たく感じて、手塚は体を震わせた。

―――雄一……本郷……城戸……っ!!

手塚は慟哭する。

俺は。

―――俺はまた、運命を変えることが出来なかった。

ゆらり、と視界の端のダグバが動いた。
ダグバ―――いや、その姿は涙に霞んだ目には定かでない。
人なのか、ライダーなのか、それとも怪物なのか、手塚にはわからなかった。
ただ殺人者は、白い体を血に染めて笑っていた。
死の運命そのものが、自分を嘲笑しているように手塚は思った。
殺人者の姿が死神に変わる―――手に握られた大鎌には、真っ赤な血糊が一筋、伝っていた。
72名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/03(水) 23:44:30 ID:PJxfCCGn
 
73名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/03(水) 23:44:47 ID:zGhNsd2p
74名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/03(水) 23:45:34 ID:PJxfCCGn
 
75名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/03(水) 23:45:56 ID:zGhNsd2p
76夢路 ◆yFvLIBbl9I :2008/09/03(水) 23:47:35 ID:EHpjaEpa
※※※


「―――ゥグッ!」
「手塚!?」

不意に上がった苦痛の呻きに、ヒビキが弾かれたように振り向く。
胸を押さえ、激しく息を荒げる手塚を覗き込み、声を掛ける。

「手塚、気が付いたのか!」
「ヒ……ビキ、さん……俺は……」

掠れた声で呟き、起き上がろうとする手塚を押し留め、ヒビキは言う。

「酷い怪我だから、動かないほうがいい。本当はすぐ病院に行かなきゃいけないんだが……」
「……じゃあ……あいつは……」
「倒す事が出来なかった。 ……すまん」

申し訳無さそうに告げるヒビキの向こうに、手塚は横たわっている志村を見つけた。
その目線に気付いたのか、苦々しい顔をしてヒビキは続ける。

「……どっちかっていうと、見逃されたって感じかな。止めも刺さずに、あいつは立ち去った」
「そう……か…」

手塚は先ほどまで見ていた夢の内容を思い出し、力の入らない拳を握り締めた。
本郷を殺した、ダグバの圧倒的な力。戦いを楽しむ残虐性。
放って置けば、確実に城戸の身に危険を及ぼす存在。
本郷の想いを受け止めながら、倒すことが出来なかった事が口惜しい。

ふと、何か硬いものがぶつかるような小さな音が耳に入り、それが聞こえる方向へ僅かに顔を向けた。
霞んだ目に、メタリックパープルのサソリが映る。サソードゼクターが心配そうに寄り添っていた。

「こいつのおかげで助かった」

自分を励ましてくれた事や、道案内をしてくれた事。
ねぎらいの気持ちを込めて、ヒビキが撫でてやろうと手をかざすと、怒ったように鋏を振り上げて威嚇する。
手塚は朦朧としながらも、ほのかに笑みを浮かべて、サソードゼクターに言った。

「ありがとう……」
77名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/03(水) 23:48:32 ID:zGhNsd2p
78名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/03(水) 23:48:48 ID:7PlDwXGB
79夢路 ◇yFvLIBbl9I(代理):2008/09/03(水) 23:57:33 ID:PJxfCCGn
その時、志村の口からも呻きが上がった。
ヒビキが駆け寄り様子を伺うと、薄く目を開いて、ここは、と小さく尋ねる。
経緯を説明すると、志村は助かった事への安堵と、ダグバを逃した事への落胆の溜息を漏らした。

「ヒビキさんが……ここまで、運んでくださったんですね……ありがとう、ございます」

額に油汗を浮かべ、苦痛に顔を歪めながらも、切れ切れに礼を述べる志村の傍らにヒビキが屈み込む。

「いや…お礼を言うのは、こっちの方さ」

何故だかきょとんとした表情を見せる志村に、懐から取り出したハートのKのカードを見せた。
途端、はっと目を見開き、カードとヒビキの顔を交互に見つめる。

「相手の戦力を削ぐために、このカードを奪ってくれたんだろ? ひどい怪我をしていたのに……ありがとうな」

泥がついたままのカードを袖で拭うと、何で出来ているのか分からないが、それだけで鮮やかな模様が浮かび上がった。
ヒビキはそのカードを志村の手にそっと握らせる。

「カードの効果、志村は知っているんだろ?」
80夢路 ◇yFvLIBbl9I(代理):2008/09/03(水) 23:57:57 ID:PJxfCCGn
ダグバが持っていたカード。
グレイブに変身しても扱える事から、志村がこのカードの効果を知っているとヒビキが思うのも無理はなかった。

「ええ……これを使われていたら……危ない所でした……」

頷き、言いながらも志村の表情は暗い。顔を背け、声を震わせる。

「でも……僕が、もっと強ければ、ヒビキさんや……手塚さんを傷つけずに済んだのに……」
「そんな事……」
「……一番最初の放送で、殺された禍木と夏美は、僕の仲間だったんです」

志村の告白に、ヒビキと手塚は言葉を失う。
思えば、志村の持っていたグレイブは二人の纏う鎧によく似ていた。
圧倒的な数の刺客に蹂躙され倒れる戦士の姿と、舞い散る灰。
二人の脳裏にまざまざと、残酷な光景が蘇る。

「僕たちは……人を守るために仮面ライダーになった……
 二人が殺されて、城戸さんたちと出会って……この戦いを止めると誓ったのに……今の僕はライダーにもなれない……!」

カードを折れんばかりに握り締め、無力な自分への憤りも露わに言う。
そんな志村の様子を沈黙して見守っていた二人のうち、先に口を開いたのは手塚だった。

「ヒビキさん……荷物を取ってくれないか……」

ヒビキは言われるままに、部屋の隅に置いてあったデイパックを取る。
81夢路 ◇yFvLIBbl9I(代理):2008/09/03(水) 23:58:59 ID:PJxfCCGn
「……志村、俺の持っているカードデッキを……使ってくれ」
「……手塚……さん……」

ヒビキが差し出した、鮮やかな赤紫の下地にエイを模した金の浮き彫りが施されたデッキを見て、志村が呟く。
本当にいいのか、と言いたげな眼差しで、手塚を見つめる。
手塚はヒビキを挟んで志村の目を見つめ返し、弱弱しく掠れた、だが確固たる意思を持った声で告げた。

「あんたはライダーでいたいんだろう……皆を守るために。俺は城戸を……運命を守るために戦う」

手塚は顔の側にじっとしていたサソードゼクターを見る。
サソードゼクターは緑の瞳を輝かせて、手塚に従うと言っているかのようだった。
志村は震える手を伸ばし、ヒビキからデッキを受け取った。硬い指ざわりのそれを掌に収めると、唇を噛み締める。

「ありがとう……ございます、きっと……守ってみせます……皆を……城戸さんを」

感極まったように、涙声で返す志村を見て、ヒビキは微笑んだ。

どうやら本格的に雨雲は去ったらしく、店先から明るい光が差し込んでいる。
二人の意識が戻ったとは言え、移動に耐えうる体力はまだ戻っていない。
病院など設備の整った場所で、きちんとした治療を受けなければ危険な状況なのは変わりないのだ。
暖かくした部屋で、手塚と志村は横になったまま、ヒビキは壁にもたれて軽く目を閉じて、体を休めている。

放送の時刻までは、あとわずかだった。



※※※
82夢路 ◇yFvLIBbl9I(代理):2008/09/03(水) 23:59:46 ID:PJxfCCGn


夢を見た。

高さも奥行きも定かでない真白な空間に『彼』はいた。
その時『彼』はかたちもなく、『彼』という意識だけがそこに在った。

『彼』の前に佇んでいるのは奇妙な造形物だ。
黒曜石で出来た石版のような姿は一見無機質だが、滑らかな表面は刻一刻と色を変えている。
それがまるで生物の息遣いか、はたまた宇宙の営みを溶かし込んだかのように思わせた。
全ての生物の、ただ一つの強い願いが生み出した、バトルファイトというシステム。
目の前にある石版は、それを統べるものの声を届けるためにこの世に具現化したものだと『彼』には解った。
統制者は石版を通して『彼』に語りかける。

全てのバトルファイトの参加者は平等でなければならない―――と。

『彼』は頷く。
足元には影が落ちており、『彼』は自分が体を与えられた事に気付いた。
四年前のバトルファイトの勝利者は、誰もいない。
元よりこれは統制者の意志によって開催された物ではなく、参加者の一人であったはずの『人間』の介入で始まったものであった。
開放されたアンデッド同士の戦いではなく、人間の生み出した『仮面ライダー』なる者によってのみ封印され、
最終的にはジョーカーを含むすべてのアンデッドは封印された。
イレギュラーだらけのこの結末に統制者が納得するはずもなく、そして『彼』が生み出されたのだ。
石版の色が妖しく揺らめく。さながら『彼』を促すように。
83夢路 ◇yFvLIBbl9I(代理):2008/09/04(木) 00:00:36 ID:VSSPBkUy

『彼』に与えられた使命。
今は人間の手の内にあるカテゴリーキングのカードを取り戻し、バトルファイトの正規の勝者に与えられる『絶対的な最強の力』を得る事。
呼び出された邪神はその力で全てを焼き滅ぼし―――現在の生態系はリセットされるだろう。

促されるまま『彼』は一歩を踏み出して、ふと足元の影を見る。
その姿は黒い体をアンデッドの血で緑に染めたおぞましき53番目の存在、ジョーカーによく似ていた。
バトルファイトにおける破壊の化身、死神とも呼ばれるジョーカーと対を成す、白い体をヒトの血で赤く染めた亜種。

影が蠢く。
無数の飢えた瞳が『彼』に破壊をねだる。
世界の終末をもたらすべく、統制者に送り込まれた使者。

―――アルビノジョーカー。それが『彼』だった。


※※※


つかのまに見た夢から醒めて、志村は指先に触れるデッキの感覚を確かめる。
思った通りだ。
志村はかすかに口角を吊り上げる―――傍目には苦痛に顔を歪めているように見えただろうが。
84夢路 ◇yFvLIBbl9I(代理):2008/09/04(木) 00:01:20 ID:VSSPBkUy
食えない奴と思っていたヒビキがまさか、キングのカードを奪った事をああも都合よく解釈してくれるとは。
咄嗟にカードの効果をでっち上げたが、思わず笑い出しそうになり顔を背けてしまった。
その後も、『仲間』だの『守る』だの、そんな単語を並べるだけで手塚はあっさりライアのデッキを譲ってくれた。
どうやら城戸というお人よしに酷く肩入れしているようだが、全くもって理解できない。
バトルファイトにしても、このゲームにしても、勝者は一人と決まっている。
そんな状況で他人を気にかけても、何もならないだろうに。

だが。
利用するとなれば、話は別だ。
一度仲間意識を持たせれば、多少の綻びは何もしなくてもあちらが勝手に繕ってくれる。
戦闘時に危険な状況に陥ったとしても、この様子なら率先して庇う位の事はしてくれるだろう。

自分の正体に関しても、一文字の知る黄金の鎧を纏うライダーは既に自分ではない。
今グレイブバックルを持っているのは『白い怪物』ことダグバだ。

ダグバの事を思うと、腹部の火傷と首の痣が一際痛んだ。額にじわりと汗が滲む。
あそこでダグバを侮ったのは失策だった。あんな力を持つ参加者がいたとは。
最初もそうだった、相手の実力を軽視しては辛酸を舐めさせられた。
悔やみつつも、志村の笑みは消えない。

(これからは、そうはいかない)

新たな力であるライアのデッキを使って、うまく立ち回る。
信頼を得た事で、ヒビキと手塚、この二人の命は握ったも同然だ。
ダグバにも、せいぜい邪魔な他の参加者を殺してもらおう―――ああいった話の通じない相手にかかずらう事はない。
85夢路 ◇yFvLIBbl9I(代理):2008/09/04(木) 00:01:41 ID:VSSPBkUy
統制者は言った。
全てのバトルファイトの参加者は平等でなければならないと。

ならば、それを理解している自分の勝利は確実のものだ。
何れ好機は訪れる―――これがその始まりであると志村は確信する。
志村はデッキと、ハートのKのカードのふちをもう一度指でなぞり、静かに目を閉じた。


【日高仁志(響鬼)@仮面ライダー響鬼】
【1日目 現時刻:昼】
【現在地:D-5 山道沿いの休憩所】
[時間軸]:最終回前
[状態]:全身に疲労、顔面に傷、腹部に中度の火傷、背中にダメージ、一時間変身不可(響鬼)、強い決意。
[装備]:変身音叉・音角@仮面ライダー響鬼、音撃増幅剣・装甲声刃@仮面ライダー響鬼
[道具]:基本支給品一式(着替え1着と元の服を含む)、野点篭(きびだんご1箱つき)
    釘数本、折れた音撃棒×2、不明支給品×1(確認済)
【思考・状況】
基本行動方針:出来るだけ多くの仲間を守って脱出
1:志村、手塚の治療の為、移動するための体力を回復し、病院を目指す。
2:ダグバは放置できない。
3:別行動中の仲間に対する心配。
4:もっと仲間を増やす。
5:手塚と志村は信頼。志村を信頼したから一文字を疑うというわけでは無い。

[備考]
※猛士の剣は音撃増幅剣・装甲声刃に変化しました。
※装甲響鬼に変身するには響鬼紅の制限が解除されないとできません(クウガ、ギルスと同じ制限)。
※折れた音撃棒は木を使えば多少品質が落ちますが修理が可能です。
※手塚から一文字(R)と志村に瓜二つな敵が闘っていたという話を聞き、半信半疑です。
86夢路 ◇yFvLIBbl9I(代理):2008/09/04(木) 00:01:58 ID:VSSPBkUy
【手塚海之@仮面ライダー龍騎】
【一日目 現時刻:昼】
【現在地:D-5 山道沿いの休憩所】
[時間軸]:死亡直後
[状態]:胸に一文字の大きな傷、右上腕部に斬撃による傷(応急手当済)。全身に疲労とダメージ。若干動揺。強い決意。
    一時間変身不可(ライア、サソード)
[装備]:無し
[道具]:基本支給品、マシンガンブレード@仮面ライダーカブト、サソードヤイバー@仮面ライダーカブト、強化マスク
【思考・状況】
基本行動方針:運命を変えないように何としても城戸を守り抜く。
1:治療の為、移動するための体力を回復し、病院を目指す。
2:志村、ヒビキと共に城戸と合流、城戸の力となる。
3:自分にそっくりな男、一文字(R)への興味。出来れば本郷(R)の死を伝える。
4:夢の内容に動揺。

[備考]
※城戸が自分と同じ時間軸から連れてこられたと思っている為、城戸が死ぬ事は運命を変えられなかったことに相当すると考えています。
※サソードゼクターに選ばれ、仮面ライダーサソードへと変身できます。 但し、キャストオフ、クロックアップの方法を知りません。
※本郷の言葉から一文字隼人、風見志郎、ハナ、志村純一、クウガ、ダグバの事を知りました。
※携帯にデータが残っていたため、死亡者と禁止エリアについては知っています。参加者の蘇生に関しては知りません。
※志村から一文字(R)と志村に瓜二つな敵が闘っていたという話を聞き、信じています。
※傷には応急手当が施されましたが、依然きちんとした治療を受けなければ危険な状態です。
※ライアのデッキを志村に貸しました。
87夢路 ◇yFvLIBbl9I(代理):2008/09/04(木) 00:02:11 ID:VSSPBkUy
【志村純一@仮面ライダー剣・Missing Ace】
【1日目 現時刻:昼】
【現在地:D-5 山道沿いの休憩所】
[時間軸]:剣崎たちに出会う前
[状態]:腹部に重度の火傷(応急手当済)、首に絞められた跡、全身に疲労とダメージ。一時間変身不可(グレイブ)
[装備]:無し
[道具]:支給品一式、ラウズカード(クラブのK、ハートのK)@仮面ライダー剣、蓮華のワイヤー内蔵型指輪@仮面ライダーカブト、
    ライアのカードデッキ@仮面ライダー龍騎
【思考・状況】
基本行動方針:人間を装い優勝する。
1:志村、手塚の治療の為、移動するための体力を回復し、病院を目指す。
2:もう慢心しない。ダグバなどの強敵とは戦わず泳がせる。
3:ヒビキ、手塚を利用する。一文字とは合流させたくない。
4:誰にも悟られず、かつ安全な状況でならジョーカー化して参加者を殺害。
5:橘チーフを始め、他の参加者の戦力を見極めて利用する。自分の身が危なくなれば彼らを見捨てる。
6:『14』の力復活のために、カテゴリーKのラウズカードを集める。
7:『白い怪物と剣崎一真は共に殺し合いに乗り、尚且つ組んでいる』『桜井侑斗は危険人物』という情報を流す。

[備考]
※志村は橘から『仮面ライダーブレイド』の存在は聞いていますが、ライダーシステム資格者が『剣崎一真』という事は知りません。
ですが、志村は此処に連れてこられる前に独自に調査を行い、剣崎一真がブレイドであるいう事、彼の顔なども知っています。
※城戸、本郷(R)に『白い怪物と剣崎一真は共に殺し合いに乗り、尚且つ組んでいる』『桜井侑斗は危険人物』と話しました。
※手塚に一文字(R)と闘っていたのは自分ではなく自分に瓜二つな男だと話しました。
※傷には応急手当が施されましたが、依然きちんとした治療を受けなければ危険な状態です。
※ライアのデッキを借り受けました。
88夢路 ◇yFvLIBbl9I(代理):2008/09/04(木) 00:02:38 ID:PJxfCCGn
716 名前: ◆yFvLIBbl9I ? Mail: sage 投稿日: 2008/09/03(水) 23:55:55 ID: ???
以上で投下終了です。
支援&代理投下してくださった方ありがとうございました。
ご感想、ご指摘等お待ちしております。

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以上、代理投下終了です
89名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/04(木) 00:53:13 ID:VSSPBkUy
お二方とも投下乙です。

>◆40jGqg6Boc氏
海堂がついに力つきたか……
苦しまずに死なせてやろうと言う所に歌舞鬼の性根を感じました
少年二人の弱さが今後どんな形で影響するのか、気になります

>◆yFvLIBbl9I氏
真性ステルスが復活した、というか所詮はいい人な響鬼さんやばいやばいやばい……
手塚は違う意味で落ちて行くなあ

どちらも先行きが不安で楽しみです。
お二人ともGJでした!
90名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/04(木) 03:01:39 ID:V+1xPA/2
手塚が志村を信じ切っちゃってるところが怖い!
志村だけじゃなくてヒビキさんと手塚の行動も気になりますね!
GJでした。
91名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/04(木) 17:58:57 ID:nHbeYaSb
投下乙です!!
志村が今度こそ本領発揮か!?
響鬼さんの今後が危ぶまれますねw
手塚は手塚で苦しんでますね…同じくピンチか。

そして健気なサソードゼクターが面白いw
GJでした!!
92名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/04(木) 19:02:33 ID:fKMHYnbi
サソードゼクターかわいいよなw

前回はガタックが健気だったな。
澤田を選んだダブトゼクターとかはどんな様子なんだろ。
支給品だけどなんか気になるw
93名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/04(木) 19:35:52 ID:nHbeYaSb
今までの話を読み返してると、ダブトゼクターは澤田にぞっこんっぽいw
尻軽ザビーゼクターはいつ影山を見放してもおかしくなさそうだな
ドレイクゼクターは空気だが……行方不明の赤兜、姿すら見せない金銅兜の方が上だなw
94名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/04(木) 19:43:04 ID:CU7aDF73
銀兜、カメレオンのデッキが仲間になりたそうにこちらを見ている!
95名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/04(木) 19:46:24 ID:8wwtOCnk
投下乙です。

志村復活が鮮やか。
そしてライアを手に入れた志村に光明が。
響鬼さんたちはどうなるのか。
GJ!
96名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/06(土) 00:10:46 ID:HWg4MKRu
大丈夫だと思うけど保守

思えばもう八十話超えてるんだな
百話もすぐ到達しそうだ
97名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/06(土) 00:56:05 ID:j/VmyBNq
放送前後で参加者は確実に減ってるのに投下数は変わってないのなw

残りパート予約つかないならもうそろそろ放送の準備始める?
とりあえず禁止エリアは避難所で話すのか放送書く人任せか…
98名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/07(日) 17:36:58 ID:G0nwZi5c
その辺りはde氏の投下後判断かな
今の所はwktkして待つとしようじゃないかw
99名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/07(日) 18:33:17 ID:9rsy7hXD
あの人の延長はいつもギリギリだから物凄く焦らされる
100名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/08(月) 13:03:44 ID:zb2GLNky
濃いおっさん二人の予約気になりまくるw
葦原さんの予約も入ったし楽しみだ
101名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/08(月) 17:41:43 ID:Qds1OLDa
おっさんw
葦原さんは原作並の不幸ッぷりが良いな。

あと>>100おめw
102 ◆40jGqg6Boc :2008/09/08(月) 21:44:23 ID:sHjRjeHa
>>100おめでとーw

それでは完成しましたので葦原さん投下します。
103真実を追い求めて ◆40jGqg6Boc :2008/09/08(月) 21:45:35 ID:sHjRjeHa
一軒の小屋の近くに立ちすくむ男が一人。
金の短髪を生やした男――葦原涼は肌を撫でるように吹く風に身を任せている。
理由はゆらゆらと吹き荒れる風が心地よいから――と、いうわけではない。
意識したわけでもない。只、結果的に身を任せる事になったにしか過ぎない。
自分が今、何処に立っているのかすらも特に気にせずに葦原はある事を考えていたから。
そう。視線の先に存在する一際大きく隆起した土の山の奥底に沈むもの。
それが少なくとも現時点まで葦原の意識を支配していた。
右腕に握るものは大きなシャベル。
先刻、ログハウスから見つけ出したものであり、柄に溶接されたスプーン状の刃には泥や砂がこびりついている。
そして、葦原が今まで何をしていたのかをシャベルは無言で物語っていた。

「すまない……あすか……」

洩れた言葉は謝罪の言葉。
浮かべた顔には一片の笑みすらあるはずもない。
悔しさと申し訳なさで一杯になった感情を内へ抑えきれずに、外界へ流れていこうとするのを寸前で我慢するように葦原の表情には確かな震えがある。
葦原がシャベルを振るって、簡素ながらも作り上げた仮初の墓に眠る一つの骸。
緑川あすかの死に対し、葦原は後悔の念を垂れ流す事しか出来なかった。

出会って数時間しか経っていない。
それほど仲が良かったわけでもなく、男女の関係などある筈もない。
だが、いつしか下の名前を呼ばれていた事は今となっては不思議な事であり、心地良かった。
惹かれあった――というよりも互いに必要としていたのだろうか。
当然あすかの全てを葦原は知っているわけではなく、彼女が自分に対してどんな想いを抱いていたかは計り知れない。
力を――常識を超えたギルスの力だけをあすかは当てにしていた可能性もある。
あの時、変身の後遺症でいつもの苦痛が襲った時に優しく介抱してくれた事も。
全ては自分の力を利用するために――そこまで考えてみるが、やがて葦原は静かに否定する。

そんな事はない。
その証拠にあすかは眠ってしまった自分を庇うように闘っていてくれたのだから。
慣れないだろうに、自分と同じように異形の者に成り――変身を行い、二人の襲撃者と闘っていた。
女性的な身体つきで、白鳥のような羽を生やした白い方はよくわからない。
只、既に闘う意思がなかったあすかを卑怯にも上空から狙撃した。
その事実だけはわかっており、葦原には充分過ぎる。
白い方に――葦原は知る由も無いが仮面ライダーファムに変身した城光に――どう対応するか。
いうまでもなく、あすかの仇を取るために次に出会ったときには必ず倒すという事。
その決定にはなんら躊躇う事はないが、葦原にはしこりのように引っかかった事があった。

「四号……お前は、お前は人間のために闘ったんじゃなかったのか……」

一人は何度か躯体の色を、得物を換えて葦原やあすか、そして彼を助けるように現れた黒の乱入者と闘った男。
未確認生命体四号と呼ばれ、クウガとも名乗っていた男――その名は五代雄介。
数年前、未確認生命体と呼ばれる集団から日本を守った一人の戦士。
その筈だったのに、どういうわけか五代はあすかと闘っていた。
わからない。信じられない。
見たところ人が良さそうな感じだった五代がどうして……以前、自分をも救ってくれたというのに。
自分の見間違えではないかと思ったが、直ぐにそれは間違いである事に葦原は気づく。
新聞やニュースで見た事もあり、助けられた時にもその姿を見ており、見間違いという事もないだろう。

ならば何故、五代は仲間と組んであすかと闘っていたのか。
数時間前、本郷猛に直ぐにでも止めをさそうとしたように、あすかの行動にも少し突発的な傾向が見られていて、それが仇となって五代達とトラブルを生んだのか。
確かにその可能性もあるが、流石に闘い沙汰になる事はないだろう。
あすかが恨みを抱いているのはあくまでも本郷只一人。
他の人物と接触する時は先ず話を持ちかける筈。
だったらどうしてあんな事に、平和のために闘ったであろう五代とあすかが――と、そこまで考えたところで、葦原の表情が一段と曇った。
一向に解けようとしなかった疑問の氷山が唐突に溶け始め、葦原に一つの考えを抱かせる。
信じたくない、だが受け入れてしまえばそれほど荒唐無稽ともいえない考えが葦原の意識を支配し始めた。
104名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/08(月) 21:45:48 ID:wcbZhBQs
105名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/08(月) 21:45:56 ID:LEgsZ+jx
 
106真実を追い求めて ◆40jGqg6Boc :2008/09/08(月) 21:46:27 ID:sHjRjeHa
「まさか……あいつは最初から人間のためじゃなく、只、闘うのが好きで……未確認生命体を全滅させて……結果的に人間のために闘ったように見えただけ……。
俺を助けたのもあのアンノウンと闘いたかったから……そして闘えなくなった俺は見逃された、そういう事だっていうのか……?」

五代を知る人間がこの場に一人でも居るのならば直ぐにでも否定しただろう。
人間の笑顔を愛し、誰よりも強く戦い抜き、そして誰よりも暴力を嫌った五代。
だが、葦原は生憎五代の事について良く知ってはいない。
所詮、新聞やニュースで知りえた情報しか持っておらず、五代がどういう経緯でクウガとなり、どんな想いで未確認生命体と闘ったのかをも。
だから、五代は手に入れた力を揮いたく、その矛先が未確認生命体へ向かっただけの事。
表向きは人間のために闘っていたように見えた、只の戦闘狂にしか過ぎなかったと葦原は考えた。
完全に騙された事に対し、思わず怒りのあまり両の拳を固く握り締める。
一度話をした事はあるが、あまりにも短い時間であり、五代が言った事を全て鵜呑みにする気は葦原にはない。
既にあすかを襲ったという事実がどうにも五代への不信感を強めていき、彼が言った事、彼から感じた人柄も全てが虚構のようなものに思え始めたから。
皆の笑顔を守る、自分に向けて行ったサムズアップ。
それら一つ一つの言葉や動作が今ではどこか疑心の眼で眺めてしまう。

勿論、五代が本当に人間のために闘っており、何らかの誤解であすかと闘っていたという可能性もある。
しかし、それならば自分が闘いの場に躍り出た時に何か声を掛けても良かったのではないだろうか。
自分が変身していた事に五代が気づいていなかったとしても、自分の声に聞き覚えはあった筈。
確かに戦闘時に平常通りの判断をするのも難しいが、それでも目の前に立つ人間が誰か確認する余裕はあっただろう。
だが、五代はしなかった。
自分の方も訳を聞いておけば良かったとは思うが、それ以上に葦原は五代の行動に不信感を覚える。
仲間に向けた言葉以外、一言も言葉を出す事はなかった五代。
何故何も言わなかったのか。
既にその答えは葦原には出ていた。

「闘えればそれでいい、誰が相手でも構わない……そういうコトか……!」

最早、偶然とは言い難い。
五代を疑う要因があまりにも多すぎたため、少し短絡的な考えに陥っている事に葦原は気づいていない。
無意識に語気が強まり、葦原が抱く怒りの大きさを示す。
出来るものならば信じたい、あの笑顔と言葉を信じてやりたい――だが、葦原は同時にある事も知っている。
それは人間の持つ汚さや言葉や信頼が時にはあまりにも脆く崩れ去る事を。
ある日、とてつもない力を手にすれば、そんな力の存在を認識してしまえば人間は割りと容易に変わってしまうものだ。
以前の自分や自分を取り巻いていた人々を――葦原は今も遠い記憶として覚えている。
ギルスとして覚醒し、何もかも失ってしまったあの時を忘れるはずも無い。
きっと五代も変わってしまった、もしくはこの場に来て変わってしまったのだろう。
ほんの少し五代の事を不憫にも思いながら、葦原は直ぐにその一抹の想いを捨て去った。
五代は既に仲間と共にあすかが死ぬ原因を作った。
ならば自分がやるべき事は一つしかない。

「……行くか」

仮初の墓から踵を返し、葦原はゆっくりとカブトエクステンダーへ向かう。
目的はこの殺し合いの阻止。
また、五代とその仲間に対しあすかの仇を取る事も追加している。
五代への不信感は完全に怒りと移り変わり、それは皮肉にも葦原を突き動かす原動力となっていた。
シャベルは持ち運びに不便なため、その辺に投げ捨てた。
心なしか乱暴に投げ捨ててしまったのは焦りを感じていたのかもしれない。
もう、誰も自分のように悲しみに沈んだ人を出さないためにも――想いを力に換えて、葦原は口を横一文字に固く閉める。
107名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/08(月) 21:46:29 ID:IyR0irxG
108真実を追い求めて ◆40jGqg6Boc :2008/09/08(月) 21:47:34 ID:sHjRjeHa
そして携えたものは一人分の荷物に納めなおしたデイバックとスーツケースに入れられたデルタギア。
デルタギア――三本のベルトの一つであり、装着者をデルタと呼ばれる存在に変える変身ツール。
あすかが生前使ったものであり、遺品代わりに一緒に埋葬しようかと思いはしたが踏み止まった。
どんな人間でも簡単に力を与えてくれるデルタギアの存在を葦原は快く思っていない。
こんなものがある限り人が争うのは目に見えており、まさにそれを見越してデルタギアが造られた気がしてならないからだ。
この殺し合いで更に死者を出すために――そう思うと怒りで頭が真っ白になりそうな心地すらする。
自分達を人間と思わず、実験動物のような扱いでこんな所に送り込んだスマートブレインに対する怒りは今も色褪せてはいない。
だが、この場ではきっと力を求めている人も居る。
勿論、自分の欲求や五代のように闘いへの楽しみのために求める奴も居るだろうが、そんな奴にはデルタギアを渡すわけにはいかない。
守りたいものがあるのに、どうしても突き通したい意思があるのに力がないばっかりに悔し涙を流した人間。
どうせ造られてしまったデルタギアを有効に活用するために、葦原はそんな人物にデルタギアを託す決意をした。
自分には既に力がある。既に受け入れてしまった力があるから。
自分の眼でしっかりと見定め、この殺し合いに対し心から反抗を目指す人間を探す。
葦原にまた一つ、譲れない目的が出来た。
やがてカブトエクステンダーに跨り、エンジンを掛けて葦原は真っ直ぐ前方を見据える。

「たとえ一人でも俺は闘う。俺はお前を、お前達を許しはしない……四号ッ!」

目的地はない。
今は兎に角周囲を走り、五代達を見つけよう。
何処へ行ったかもわからないがそれでも止まっているわけにはいかない。
それからあの黒いライダーを探すのも気に留めて置く。
見ず知らずの自分達を守るために闘い、何も言わずに立ち去った×印の仮面を被った男。
きっとこの殺し合いを憎んでいるため、自分の手助けをしてくれたのだろう。
そうでなければあそこまで闘ってくれる筈もない。
生憎あすかが死んでしまう結果とはなったが、それでも彼の行動には葦原は感謝していた。
デルタギアを上手く扱ってくれるかもしれない――そんな淡い想いを抱くほどに。
やがて決意を乗せた咆哮と同時にカブトエクステンダーが地を走ってゆく。
再び葦原は孤独な放浪を続ける事になった。



きっと笑っているだろう。
否、あまりにも滑稽過ぎて逆に笑えないかもしれない。
葦原が数時間前に体験した出来事の真実を知っている者ならば。
あすかを殺したのは五代達ではなく、二人の男女。
しかも女の方は葦原が保護しようと思っていた風谷真魚であり、彼女が撃った弾丸があすかの命を奪った。
そして男の方は澤田亜希といい、デルタに変身し、葦原に誤解を持たせ、そして何食わぬ顔で戻り、×印の仮面を被った黒いライダー――カイザに変身した。
五代達は只、デルタに変身した澤田に襲われたため、これに応戦しただけの事。
更に葦原が誰かに託そうとしているデルタギアにも問題がある。
装着者の神経を刺激し、凶暴化を引き起こすデモンズストレートいう特性を持つデルタギアは当に呪われた代物。
あすかもデルタギアに魅入られた事すらも葦原は知る由もない。

今の葦原には情報が足らず、これらの真実には気づいてはいない。
葦原がそれらに気づく時、もしそんな時期が訪れるまで彼が生き永らえていたら、彼はどんな事を想うのだろうか。
それは誰にもわからない。現時点ではそこまでの事は計り知れない。
わかっている事は一つ
ずっと周囲をうろつき、全てを見届けたのにも関わらずに笑おうとも呆れようともせずに葦原に追従する存在があるだけ。
葦原が墓を作っている最中に、彼のデイバックの奥底に潜り込んだ“彼”はじっと静かにしていた。
緑と赤茶色の体色を持つ飛蝗のような体躯を持つもの――ホッパーゼクターは興味を示している。

この男がこれからどんな運命を、地獄を歩むのか。
そんな事を彼はカブトエクステンダーの車体が揺れる振動に身を任せながら、深く考えていた。

109名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/08(月) 21:47:37 ID:LEgsZ+jx
 
110名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/08(月) 21:47:54 ID:wcbZhBQs
111名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/08(月) 21:48:07 ID:IyR0irxG
112真実を追い求めて ◆40jGqg6Boc :2008/09/08(月) 21:48:39 ID:sHjRjeHa
【葦原涼@仮面ライダーアギト】
【1日目 昼】
【現在地:D-7 小屋周辺】
[時間軸]:第27話 死亡後
[状態]: 全身負傷(中)、疲労(大)、30〜60分間変身不可(ギルス)
    腕部に小程度の裂傷、変身の後遺症、仇を討てなかった自分への苛立ち
[装備]:フルフェイスのヘルメット、カブトエクステンダー@仮面ライダーカブト
[道具]:支給品一式(二人分)、ホッパーゼクターのベルト、デルタギア
[思考・状況]
基本行動方針:殺し合いには加担しない。脱出方法を探る。
1:立花を殺した白い怪物(風のエル)、あすかを殺した白いライダー(ファム)未確認生命体4号(クウガ)に怒り。必ず探し出して倒す。
2:立花藤兵衛の最後の言葉どおり、風見の面倒を見る?
3:自分に再び与えられた命で、救える者を救う。戦おうとする参加者には容赦しない。
4:黒いライダー(カイザ)を探してみる。
6:五代雄介の話を聞き、異なる時間軸から連れて来られた可能性を知る。
  白い怪物(ダグバ、ジョーカー)を倒す。
7:本郷(R)に対し、すこしすまなく思っている。
8:デルタギアを誰か、はっきりとこの殺し合いに反抗する者に託す。
※五代の話を聞き、時間軸のずれを知りました(あくまで五代の仮説としての認識です)。
※剣崎一真の死、ダグバの存在、ジョーカーの存在などの情報を五代から得ました。
※ホッパーゼクターが涼を認めました。(資格者にはすぐにでも成り得ます)また、デイバックの中に隠れています
※カブトエクステンダーはキャストオフできないため武装のほとんどを使えません。
 今の所、『カブトの資格者』のみがキャストオフできます。
※五代(クウガ)は殺し合いに乗ったと勘違いしています。
※勿論、デルタギア装着によるデモンズストレートによる凶暴化などは知りません。
113名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/08(月) 21:49:23 ID:LEgsZ+jx
 
114名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/08(月) 21:49:38 ID:wcbZhBQs
115真実を追い求めて ◆40jGqg6Boc :2008/09/08(月) 21:50:34 ID:sHjRjeHa
投下終了しました。
いつも支援してくださってどうもありがとうございます。
それではご指摘や感想などをお待ちしていますね。
116名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/08(月) 22:21:24 ID:U3mOLS1M
投下乙!!
葦原さん……五代と澤田に正反対の誤解をw
ホッパーゼクターとデルタギアがどう機能するかも楽しみ
前話の展開が上手く活かされていて楽しかった、GJ!!
117名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/09(火) 11:57:44 ID:dUA8vxT8
投下乙です!
怒りと悲しみの葦原さん…澤田の企みにまんまとハマった感じですね。
恩人の五代とこのまま対立してしまうのか!?
デルタギアの存在も不安感をかきたてますね。
これから葦原さんはホッパーゼクターの思う通りに地獄を見るのか?
先が楽しみな作品でした!GJ!!
118名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/09(火) 14:21:58 ID:fOwMRez+
投下乙です!
葦原さん哀しい誤解を…
不幸っぷりここに極まれりの葦原さんがこの先、ポッパーゼクターにふさわしい地獄をみることになるのか、
デルタギアを身に付けることになるのか否か。
次の展開が楽しみになる良作でした。GJです!
119名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/09(火) 17:05:38 ID:v1JTStfl
投下乙です。
葦原さんの悲しい決意が切ない。
GJ!
120名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/10(水) 20:14:32 ID:684QXYMW
投下乙です!
悲しいけど面白い、これからにも期待ができそうで楽しみです。
GJ!
121名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/11(木) 09:51:50 ID:N43r29xQ
久しぶりにCI氏の予約ktkr
しばらく間を開けてた人が予約してくれると安堵するぜw
122名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/11(木) 10:57:40 ID:FGQ9VynQ
>>121
俺もwメンツ的にもどんな話か気になる
いつかショッカー戦闘員服を着た影山が見られると信じてるぜ
123名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/11(木) 18:05:00 ID:g3GT7t2e
なら俺は全身黒タイツの大介に期待するぜ!!
124名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/11(木) 18:39:17 ID:o0Ye2I54
もう真司と三人揃って着ればいいじゃない
125名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/11(木) 18:42:06 ID:W5o0MlN8
待てwwwwww
じゃあ俺は尻軽ザビーゼクターに注目しておくか

今日か明日には来るであろう投下も楽しみにしつつ、暇な俺はここまでの話を読み返すわw
126名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/11(木) 20:30:42 ID:LPIHL4Y8
俺も久しぶりに読み返してみるかな
127名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/12(金) 21:36:48 ID:EJkDWa5Y
牙王とゴガドルバを予約した者ですが、現在急いで帰宅中ですので投下はあと少しお待ちください…
128名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/12(金) 21:43:36 ID:WLIp9YZC
お待ちしております。

CI氏予約破棄……急用でもあったんだろうか。
もしかしてルール読んだ感じ再予約できないのかこれ?
129名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/12(金) 22:14:51 ID:/KGkUOqw
了解です!お待ちしてます

>>128
今の文面だとそんな感じだな。
でも前と違って投下には予約必須になったし、見直しが必要かもね。
130名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/12(金) 22:23:48 ID:WLIp9YZC
他の書き手さんに書きたいって人がいるなら、
そちらを優先するべきだと思うがどうなんだろ…
予約関係は書き手さん方に話してもらうのが1番?
131 ◆deggScNisI :2008/09/12(金) 23:16:50 ID:WWncNXx6
遅くなりました。牙王、ゴ・ガドル・バ 投下させていただきます
132おふろでやりたいほうだい ◆deggScNisI :2008/09/12(金) 23:18:50 ID:WWncNXx6
二つのデイパックを右肩に下げ、左手には食料を握り締めながら牙王はずんずん歩いていた。
牙王が歩いた後にはパンやオニギリの包装紙が転々と捨てられ、今も続いている。
ゴミに気付き、誰かが追跡してくる可能性がある危険な行為だが牙王はむしろそれを望んでいた。
自分が獲物を見つけるのが先か、後ろから獲物がホイホイついて来るのが先か。
幸か不幸か…牙王の場合は不幸と言うべきだが獲物を見つけることも、獲物がついて来ることも無かった。
目的も無く歩いて誰かと遭遇する可能性は低い。今までがむしろ幸運だったと言えるだろう。
牙王も薄々と勘付いてはいるのだが、それとは少し違った考えが頭の中を占めている。

「…めんどくせぇ」

腰を下ろし焼きそばパンを貪りながら牙王は愚痴る。
もっと獲物の方からやって来る良い方法は無い物か。転々と続いているゴミを見つめながら牙王は考える。
ほんの少し考えが変わった理由は移動手段が徒歩しかない故の疲労からか、或いはゾル大佐という美味い食事にありつけ堪能する事ができたからか…
何か都合のいい物はないかと地図を広げ思考する。駅等で待ち伏せするのは悪くないかもしれないが当ても無く延々と待つのは御免だ。
獲物を呼び寄せる餌と、餌がある事を伝える必要があった。とすれば候補に残るのは…

G−3の放送局…放送局というからには少なくともこの地域全体に意思を伝える手段はある、かもしれない。
しかしそんな都合のいい物が使える状態で放置されているのだろうか?無駄足になる可能性のほうが高そうだ。
餌の問題もある。人質でもあれば死にたがりがノコノコやって来るのは目に見えているのだが。
133おふろでやりたいほうだい ◆deggScNisI :2008/09/12(金) 23:20:54 ID:WWncNXx6
「デンライナーの女がいたか…」

数時間前にチラリと見かけた女の存在を思い出す。どうせ人質にするなら女だろう。
だがその女も今はどこにいるのか見当もつかない。逃がした事が悔やまれる。
名簿を確認して人質になりそうな人物を数えてみると妙に女が少ない気がした。
逆に考えればそれだけ食い甲斐のある獲物が多いとも言えるが…その中に影山のような男も含まれている事を考えると期待しすぎるのは禁物かもしれない。
それならいっそデンライナーの女の方がマシだ。いつの間にやらあの女も変身できるようになっていた。食い甲斐という点では随分と魅力的だ。

「めんどくせぇ」

吐き散らすように呟き、立ち上がる。とりあえず餌が確保できるまで放送局を利用する手は保留する。
地図に載っている施設を手当たり次第に散策すれば餌は見つかるだろう。
ついでに獲物も見つけて放送局の事などすっかり忘れそうだが別にそれでも構わない。牙王にとっては食えればいいのだから。

「行くか…」

新たな惣菜パンを貪りながら牙王は今最も近い施設、保養所へと足を向けた。

          *   *   *
134名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/12(金) 23:22:17 ID:Oq2bE6oj
 
135名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/12(金) 23:22:27 ID:m6G3mkZc
136名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/12(金) 23:22:27 ID:mHo6H25a
 
137おふろでやりたいほうだい ◆deggScNisI :2008/09/12(金) 23:22:59 ID:WWncNXx6
つまらなそう。それが保養所を見た牙王の第一印象だった。
飾り気もくそもないコンクリートむき出しの外装。プランターに植えられた花が寂しく揺れる。
駐車場のつもりらしい砂利がしかれた広場は僅かながら荒れていたが興味を惹かれる事は無かった。
飲み干した乳酸飲料の空き箱を投げ捨て、保養所の中へと踏み込む。

外も飾り気が無かったが中も同じような物だった。
大きな古時計は清掃が行き届いていないのか薄く埃が乗っており、床に敷かれた薄紫の絨毯も踏み締めると何かが舞うような気がした。
とりあえず獲物が息を潜めている事を期待して牙王は探索を始めた。
保養所のメインともいえる大浴場を覘いて人が使用した痕跡を認めると鼻で軽く笑う。
やはり誰かがいたのだ。いや、或いは…今もいるのか。
物置やマッサージチュアが何台か置かれた部屋等くまなく探したが人影は見当たらない。
1階にいないとすれば後は…

ギシギシと階段を軋ませながら2階に到達する。
2階はどうやら個室になっているらしく等間隔にドアが並んでいる。人が隠れるなら最適な場所かもしれない。
順番に覘いていこうと牙王は躊躇する事無くドアを開け、部屋の中へと入り込む。
中には座椅子と小さなテーブル、備え付けのテレビがあるくらいだが純粋に休むだけならこんな物で十分なのだろう。
押入れやトイレのドアも開けて調べてみるが中には何もなかった。窓の外も確認してみたが隠れられそうなスペースはない。
大して気になる事もなく部屋を後にし、次の部屋の調べようとドアを開け…牙王は違和感を感じた。
見た目にはまったく同じ部屋、だからこそ感じる先ほどとの部屋の僅かな違い。気のせいかもしれないが…
トイレのドアを開け、押入れの中を調べた所で自分が感じた違和感が気のせいではない事を悟る。

「おもしれぇ…」
138名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/12(金) 23:23:21 ID:Oq2bE6oj
  
139名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/12(金) 23:23:33 ID:mHo6H25a
 
140名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/12(金) 23:24:20 ID:mHo6H25a
 
141おふろでやりたいほうだい ◆deggScNisI :2008/09/12(金) 23:25:02 ID:WWncNXx6
念のため隣の部屋も同じように調べていくが違和感を覚える事はない。
2階の個室全てを確認した牙王は再び階段に最も近い…最初に調べた部屋に戻っていた。
他の部屋にあってこの部屋に無いもの、備え付けの浴衣だ。だが浴衣が無い部屋は他にもあるにはあった。
それよりも牙王が気になったのは匂いだ。部屋の中にほんの僅かだけ石鹸のような匂いがしたのだ。
といってもその匂いに気付いたのは別の部屋を調べた時なのだが。比べてみて僅かに感じる程度の匂い。
部屋の空気を乱したせいか今はその匂いも感じられない、だが不思議と気のせいだったという考えは牙王には浮かばなかった。
この施設、ある筈なのに無い浴衣、うっすらと残る石鹸の匂い。すぐに分かる話だ。

「風呂に入るたぁ余裕があるじゃねぇか…」

その余裕のある人物は残り香を残すほど最近までこの部屋にいたのだ。恐らくは、ほんの数分前まで。
果たしてその人物は今どこにいるのか?牙王の存在に気付いてコソコソと逃げ出したのか、それとも…
先ほどは大して気にもしなかった窓へと再び近づき、笑いを堪えるのに苦労した。
慌てた様子を想像したのもあるが、最初に見たときに気付かなかった自分に対する自嘲も含まれていた。
窓の鍵が掛かっていなかった。まぁ閉める方法がなかったのだろう。さて窓から外に脱出した人物の行方は…
期待感を胸に牙王は部屋を後にし、1階へと降りていく。
そのまま出入り口へと向かわずに脱衣所への引き戸をガラガラと開ける。
142名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/12(金) 23:26:04 ID:mHo6H25a
 
143おふろでやりたいほうだい ◆deggScNisI :2008/09/12(金) 23:27:05 ID:WWncNXx6
もしも渦中の人物が隙を窺っているというのなら入浴中という美味しい場面を逃すはずはないだろう。
腕の派手な装飾品を外し上着も脱ぎさり籠の中へと放り込む。
下着も脱ぎ、全裸になると牙王はタオル片手に大浴場へと足を踏み入れた。
マスターパスとリュウガのデッキをタオルの中に忍ばせて。
外気に晒された身体がぶるっと震える。辺りを軽く見回した後にずんずんと歩き、浴槽の縁で座り込む。

――身体中にある無数の細かな傷や確実に刻まれている細かな皺が或いは彼を老兵に見せるかもしれない――
――しかし絞られた筋肉が、深く吐き出される吐息が、ギラリと輝く両目が彼が去りゆくだけの老兵では無い事を物語る――
――例えるならば知識と経験を幾重にも重ねていながら老いぬ獅子とでも言おうか――

湯を肩から2、3度掛け身体を慣らし、浴槽へと身体を沈める。
全身が湯の熱さを感じとり、体温を上昇させていく。
しばらくじっとしていると身体を蝕む疲れや痛みが湯へと溶け出していくようだった。
だが意識はどんどん覚醒していき牙王の思考をはっきりとさせていく。
それが身体の不純物が薄れたせいなのか単に温度のせいなのかはわからないが。
そっと眼をつぶり意識を集中させ――カッと見開く。

「ふん、出歯亀が…」

そう呟きタオルに、その下に眠る物へと手を伸ばす。
まるで見ていたかのように、まさにその瞬間に、湯が爆ぜた。

          *   *   *
144名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/12(金) 23:27:07 ID:Oq2bE6oj
    
145名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/12(金) 23:27:43 ID:mHo6H25a
 
146おふろでやりたいほうだい ◆deggScNisI :2008/09/12(金) 23:29:10 ID:WWncNXx6
突然の目覚め。ほとんど無意識のうちにガドルは支給品である携帯を操作し、状況を確認する。
反応があった、それもすぐ近くに一つ。この訪問者の気配を感じて恐らく意識が覚醒したのだろう。
手早く荷物をまとめドアまで近づき、止まる。階段を上る足音が聞こえてきたのだ。
踵を返しドア以外の唯一の出入り口である窓を開け、考える。飛び降りるべきか、それとも壁伝いに屋上へと登るべきか。
窓から見える地上はちょっとした林になっており身を隠すには最適だろう。身を隠しながら裏手に隠したバイクで逃げ出すのは容易に思える。
屋上に登れば辺りを見渡す事ができる、訪問者の姿を確認する事も可能かもしれない。それに屋内へと戻るのも素早く行なえるだろう。
ガドルは迷う事無く壁伝いに屋上へと登る。逃げる、という理由が含まれている選択を行なう事をガドルのプライドが許さなかったのだ。

それなら今逃げずに部屋で訪問者と対峙すればいいじゃないか、と気付いたのは登りきってからであった。
何故無意識の内に一時の間とはいえ逃げる事を最優先にしたのだろうか。
不意を衝かれたから?それとも自分の状態がベストとは言えないから?
覚悟を決める時間は十分にあった、体力も回復しており体調も言い訳にはできない。
理由は、この身体全体に走る悪寒としか考えられない。軽い震えは考えたくはないが…恐怖のせいなのだろうか。
強き戦士と戦う時にも似たような状態に陥る。しかしそれとはほんの少し違うこの状態は、ダグバの視線を感じた時に近い…か?

「いや…違う」

ダグバの視線はもっと恐ろしい。蛇に睨まれた蛙と言うと自分が蛙になってしまうのが悔しいが…適切な表現だろう。
この気配は似て非なる物だ。数は少ないがはるか昔にもこのような感覚はあった。
つまるところ、容赦がないというべきか…非道な奴だ。甘い所を感じさせない、それでいて恐ろしく強い、そんな人物。
この島で対峙した戦士達は誇れる強さを誰もが持っていたが、どこか甘かった。だからこそこの感覚に戸惑い…喜ぶのだ。

「一時の戸惑いに我を忘れるか…俺も甘いか?」
147名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/12(金) 23:30:11 ID:mHo6H25a
 
148名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/12(金) 23:30:13 ID:m6G3mkZc
149名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/12(金) 23:30:59 ID:Oq2bE6oj
    
150おふろでやりたいほうだい ◆deggScNisI :2008/09/12(金) 23:31:17 ID:WWncNXx6
純粋にこの気配の持ち主と戦いたい。死力を尽くして戦いたい。
ふつふつと湧き上がる闘争心に身を震わせ、そこまでしてようやくガドルは気付いた。自分が両手で拳を握っている事に。
この一見すると当たり前の行為、だがガドルにしてみればまさに僥倖とでもいうべき現象。
何故ならほんの数時間前まで彼の左手は上下に別れていたのだから。
グロンギの再生能力を考慮しても奇跡的な回復だろう。
温泉に入り身体の再生能力が一時的にあがったのか…長時間一切動かさず固定したのが幸いしたか…
或いは何かもっと違う次元の存在が「戦え」そう呟いたのか。
自分でも想像もつかない事が起こったのかもしれないがガドルにとってはそれほど大きな問題ではない。
今左手が治っている。これだけで十分だ。握り開きして感覚を確かめてみる。ほんの少しだけ痺れを感じるが感じる事さえ幸福だった。
両腕を伸ばしてみるとほんのちょっぴりだけ右腕より短くなった気がしたが多分気のせいだろう。

「喜べ非道の戦士…俺は全力を出す事ができるぞ…」

浴衣から普段の制服に着替え、カードデッキと携帯電話を懐に仕舞いこむ。
制服に着替えたのはこれから対峙する相手へのガドルなりの礼儀かもしれない。
首輪探知機を起動させようかとも思ったが気配をまだ近くに感じるのだから不要と判断し、気配の持ち主へと歩き出す。

すぐにその男は見つかった。だがガドルはしゃがみ込み、考える。
今すぐ襲うのは戦士としてどうなのだろうか?と。
非道の気を放つ男は、風呂に入っていた。少しばかり老け込んでおり非道の男とは思いがたい。
間違いかもしれないと一瞬考えたが他にいないので間違いは無いだろう。
もう少し待つべきか…そう考え覗きをやめようとしたガドルと、男の目が合った。気付かれたのか、それとも既に気付いていたのか。
こちらを見る男は、笑っていた。そして戦う手段をわざわざ風呂まで持ってきている事もタオルに伸びる手が物語っている。
それならば話は早いとばかりに、ガドルはその姿を仮初の姿から異形の姿へと変え、首飾りの一部を引き千切る。
引き千切られた飾りはこれまた異形のボウガンに変化し、光の矢を男が浸かる温泉へと放った。

          *   *   *
151名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/12(金) 23:32:08 ID:Oq2bE6oj
  
152名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/12(金) 23:32:21 ID:nNYXhj4m
 
153名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/12(金) 23:32:36 ID:mHo6H25a
 
154名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/12(金) 23:32:54 ID:m6G3mkZc
155名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/12(金) 23:33:05 ID:Oq2bE6oj
      
156おふろでやりたいほうだい ◆deggScNisI :2008/09/12(金) 23:33:41 ID:WWncNXx6
矢を放ったガドルは屋上から飛び降り、浴場へと降り立つ。その衝撃で浴場の床に埋め込まれた石の一部が砕け散った。
辺りは光の矢の衝撃による砂煙と水しぶきが舞い踊り、男の生死を確かめる事はできない。
だが何かを確信しているかのようにガドルの眼が赤くなり、右手に握られたボウガンがそれに呼応するように巨大な剣へと姿を変える。
砂と水とが混ざり合った浴場の床をザシュッザシュッと音を鳴らしながら歩く者が、一人。
その人物が歩くとまるで逃げるように砂煙が晴れて行くのは気迫が成せる技なのだろうか…

「はん、どんな軟弱亀野郎が来るかと思ったら…なかなか美味そうなカブトムシじゃねぇか」

全身に施された模様は男の気迫を具現化したかのような牙、それを支える巨大なオレンジの顎、ほとんどそれだけで構成されていた。
その強大な顎は一度掴んだ獲物は逃さず、太陽光に照らされキラリと光る牙は哀れな獲物を切り裂くとも思える。
最も凶悪な牙、ガオウガッシャーで右肩をポンポンと叩きながら相手を値踏みする老いぬ獅子。
全てを食らう牙、牙王。

全身に施された生物的な模様。だがそれよりも人々の目を引くのは各所に生えた雄々しく、気高さすら感じさせる角だろう。
威厳に満ち溢れたその姿は見るものを萎縮させる。真の男とは、真の戦士とはこういうものだと思わせる。
グロンギの最高峰ともいえるゴ集団の頂点に立つ偉大なるカブトムシ種の戦士。
破壊のカリスマ、ゴ・ガドル・バ。

破壊という点で譲らぬ二人、壊されるのはどちらか?

          *   *   *
157名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/12(金) 23:33:51 ID:nNYXhj4m
158名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/12(金) 23:34:43 ID:nNYXhj4m
159名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/12(金) 23:34:43 ID:Oq2bE6oj
   
160名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/12(金) 23:35:54 ID:mHo6H25a
 
161おふろでやりたいほうだい ◆deggScNisI :2008/09/12(金) 23:36:09 ID:WWncNXx6
しばらく対峙していた二人だがガドルの方が痺れを切らしたのか巨大な剣を右手で支え、剣先を牙王へと突き出す。
突き出された牙王は顔色一つ変えずにガドルを見つめている。

「破壊のカリスマ、ゴ・ガドル・バだ」
「かりすま?カリスマだぁ?びびって逃げ出して出歯亀野郎のカリスマか。こいつは笑えるな」

言葉の意味はわからないが侮辱されたと感じ取ったガドルは剣を引き、両手で握り締め横薙ぎに振り払う。
牙王は後ろに一歩引き、その攻撃を紙一重で避ける。ガドルはそのまま一歩踏み込み、折り返すように剣を振った。
あと少しで首を刈るかというところで牙王はガオウガッシャーの牙で受け止め、鍔迫り合いの体勢になりお互い力を込め、震える。

「ほう…見た目通り…力は、あるじゃねぇか」

口だけは余裕だが牙王は押されていた。少しずつ身体は後ろに傾き、もう少し力を込められればバランスを崩し倒れこむという所まで。
右手だけでガオウガッシャーを支え、離した左手でガドルの腹部へパンチを叩き込む――が、ガドルは怯まない。
効果が薄いと見るやすぐさま狙いを変更する。人差し指と中指だけを突き出し、ガドルの細い右目を抉る。
流石に答えたのかガドルが怯み、牙王はその隙をついてガオウガッシャーを払い、無防備になった胴体にヤクザキックを押し込み距離を稼ぐ。

「ったく馬鹿力が…まともにやり合ってたらこっちがまいるぜ…」

痺れの残る右手をプラプラと振りながら軽口を叩く。
よろめいたガドルが顔を上げ、キッと牙王を睨みつける。眼が赤いのは元々か。
右上段に剣を掲げ、走りだす。牙王の頭目掛けて振り下ろすが紙一重で避けられる、だが構わない。
そのまま石床へと振り下ろす。当然ただの床がその衝撃に耐えられるはずもなく石つぶてを辺りに散らす。
剣の風圧と石つぶてにほんの少し牙王が怯む、それだけでガドルには十分だった。
まだ床の欠片が残ったままの剣を引き、牙王の身体目掛けて突き上げる。
しかしその一撃は僅かに逸れ、牙王の右腹部を軽く抉るだけに止まった。
まだ左手がカンを取り戻していないのかあるいは先ほどの牙王の目潰しが効いているのかも知れない。
162名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/12(金) 23:37:50 ID:nNYXhj4m
163名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/12(金) 23:37:53 ID:m6G3mkZc
164名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/12(金) 23:38:40 ID:mHo6H25a
 
165名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/12(金) 23:40:08 ID:nNYXhj4m
166名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/12(金) 23:40:19 ID:Oq2bE6oj
   
「ふん、残念だったな!」

右脇で抱えるようにガドルの剣を押さえ込み、ガオウガッシャーを振り上げる。
そのまま首を、いやまずはその自慢そうな角を…そう考えていた牙王を意外な衝撃が襲う。
ガドルがその怪力を生かし、牙王を巻き込んで剣を振り回し始めたのだ。
当然そんな物にいつまでもつかまっているわけにはいかず、牙王はガドルの剣を放し、吹き飛ばされる。
洗い場の一部に激突し、辺りに鏡や壁の欠片を撒き散らす。蛇口もイカれたのか派手な音と共にお湯が噴出した。

「…本っ当に馬鹿力だな。付き合いきれん」

受けたダメージを気にする素振りも見せずに牙王が立ち上がる。
そのまま突っ込んでくるかとガドルが構えるが、牙王はガオウガッシャーを右手で突き出し、左足を引いた。
体勢としてはフェンシングの形に近い…かもしれない。

「どうした、こいよ?」

牙王の挑発にガドルは素直に応じる。何か策があるのならば見抜く、看破してみせるとあえてゆっくりと自分の剣の有効範囲まで近づく。
一切動きを見せない牙王を不審に思いつつ、範囲に捉えたガドルはゆっくりと剣を振り上げ、雷のような速さで振り下ろす。
その瞬間を待っていたとでもいうように牙王が一歩踏み込み、振り下ろされる剣に突き出していたガオウガッシャーの側面を、当てた。
そのまま右にほんの少しだけ動かすとガオウガッシャーに沿うように剣は振り下ろされ、牙王とはほんの少しだけずれた位置に落ち着く。

――驚愕するガドルの右目に、牙が襲い掛かった――
ガドルの一撃を退けた牙王はすぐさま左足を大きく踏み込み、空いた左手でガドルの右顔面を掴む。
掴みかかった内の親指が丁度ガドルの右目に食い込み、それは獲物に突き立てた牙にも見えた。
掴んだ顔面をぐいっと引き寄せ、左ヒザを叩き込む。
2度、3度と叩き込んだ所でガドルの力が緩んだ事を確認すると突き放し、ガオウガッシャーで斬りつける。

「浅い、か。大した鎧だな、流石はカブトムシか?」

今しがた血を啜ったばかりの得物で右肩を叩きながら牙王が薄く笑う。
斬り付けられた胸、それに右目から血を流しながらもガドルの闘志は衰えない。むしろ一層燃え上がっていた。
ガドルの両目が青くなり、巨大な剣が長い棒へと変化する。
変化させたばかりの棒を馴染ませるように頭上で回し、腰を落として両手で構える。

「はん、剣の次は竿か?気にくわねぇな…」

牙王も今度は両手でガオウガッシャーを構え、出方を窺う。
今までとは明らかに異なる速度でガドルが走り寄り、高速の突きを牙王の胸元へと繰り出す。
鈍い音を響かせながらかろうじて牙王はその突きをガオウガッシャーで受け止める事ができた。
ガドルは防がれた事を気にする様子も無く棒を引き、今度は無防備な足を狙う。
流石の牙王も今度は防ぐ事は叶わず右足に鈍痛が走る。だがそれだけだ。

「ふん、力を犠牲にして速くなったってとこか?」

冷静に分析する牙王を無視し、ガドルはビデオの繰り返し再生のように同じ動作を再び行なう。
今度の狙いは首。牙王には見えていた。当然ガオウガッシャーで受け止める。

「残念だが…対応できねぇ速さってわけじゃねぇな…」
169名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/12(金) 23:43:44 ID:Oq2bE6oj
  
4度の突きが今度は牙王の右腕を襲う。咄嗟に反応する事はできず一撃を食らい、鈍痛が右腕を襲う。
新たな突きが胸元へと繰り出されるがガオウガッシャーで受け止める。
ダメージを受けたばかりの右腕に衝撃が走り、少しの痺れを覚えた。
牙王はすぐさまガオウガッシャーを左手に持ち替え、寸での所で喉元にせまった棒を受け止める。
飽きる事無く繰り出させる高速の突きが今度はその左手を狙って繰り出される。
牙王は受け止めようとするが叶わず、鈍痛が走り、苛立たせる。

「しつけぇんだよ!」

牙王は反撃を試みるがその前に高速の突きが繰り出され、防御に回らざるを得ない。
そんな牙王をあざ笑うかのようにガドルの突きは続けられる。
何度かの両腕の狙いの突き、それにかろうじて受け止めた時に走る衝撃。これらが確実に牙王の剣の動きを鈍らせていた。

牙王もいい加減ガドルの狙いはわかってはいたのだが、気付いたときには遅過ぎた。既にその時が来る事を覚悟するしかない。
何度目かの喉元狙いの突き。動きは見えている、しかし牙王の身体は、両腕の動きはその高速の突きを防ぐに余りにも遅過ぎた。
今までは四肢だけで済んでいた衝撃が喉に走り、瞬間的に牙王の意識を混濁させる。
ガドルはそれこそ機械のように同じ動作を…唯一狙いだけが毎回異なる高速の突きを今度は腹部へと繰り出す。
受け止める事はできず牙王の腹に深々と突き刺さる。すぐさま引き抜き、今度は胸元目掛けて高速の突きが襲い掛かる。
鈍い音が牙王の胸から鳴るのを聞いたガドルは今までよりも深く棒を引き…

「ぬんっ!」

今までよりも深く踏み出し、神速の突きを牙王の喉へと繰り出した。
なす術も無く雨の様な乱打を受けた牙王の身体がその一撃で吹き飛ばされ、派手な水しぶきをあげて風呂へと沈んだ。

          *   *   *
「ガハッ!ガハッ…っ!」

ずぶ濡れの牙王が喉を押さえながら立ち上がり、仁王立ちのガドルを睨みつける。

「効いたぜ…久々に頭が飛んだ…ゲハッ…」

ほんの少しだけガドルの顔が歪む。それなりの深手を受けながらそれでも牙王は笑っているのだ。
まるでまだ奥の手を残しているかのような、そんな余裕さえ感じさせられる笑みだった。

「ハァ…ハァ…十分堪能したぜ……そろそろ食っちまうか」

牙王は黒いカードケースのような物を取り出し、それを落とした。
そのカードケースとベルトが交わる瞬間、光と音を発する。

  ――full charge――

ガオウガッシャーの先端で光る刃がドリルのように回転し、牙王の持つ最も凶悪な牙へと変化させる。
牙王がガオウガッシャーを振り上げるとドリルの刃はロケットか何かのように撃ち出される。
何かのエネルギーで繋がれたドリルの刃は牙王の動きに呼応するように上空を旋回した後に、ガドルへと振り下ろされた。
ガドルはその動きを逃す事無く見つめ続け、自分にその刃が襲ってくる事を確認すると右手の棒をボウガンへと変え、迫りくる刃を逃さぬように光の矢を放つ。
光の矢は弾かれるが構う事無くガドルは放ち続ける。2度、3度。弾くたびに少しずつ刃の回転が弱まり、4本目の矢と共についに爆散した。
これが切り札だったのだろうか?とガドルは少し呆れたような顔で牙王を見るが、当の本人はこの状況でも笑っていた。
「…っは、本当に食い甲斐がある奴だな」

その笑いもどこか呆れがあるような、ガドルはそんな気がした。
そろそろ最後の一撃を、ガドルがそんな事を考えていた時…牙王は左手で先ほどとは別の黒いケースを掲げていた。

「だが、こっちはこれで終わりじゃないんでな。丸焼きにしてやるよ」

そのケースに見覚えがある事に気付き、思い出す。
ガドルは変身を解き恐らくは同じ存在の…オルタナティブゼロのカードデッキを突き出す。
まさか同じ物があるとは考えていなかった牙王は大きくため息をついた。

「…しつけぇな。いい加減めんどくせぇぞ」

湯に反射した牙王の腰に銀のベルトが巻かれる。ガドルの腰にも若干見た目が異なる銀のベルトが巻かれた。
ガドルは無言でカードデッキを現れたばかりのベルトのバックルに差し込む。

「変、身」

掲げたリュウガのカードデッキをすっ、と落としバックルの横を通り過ぎる瞬間右手で押し込んだ。
ガドルの身体にいくつもの虚像が重なり、その身を黒いスーツに包み込む。
施された機械的なモールド、全身を包む黒いプロテクター。ほとんど黒一色で包み込まれた姿は或いは地味と思わせるかもしれない。
だが何もかも飲み込んでしまう闇のような大きな両目がそんな思いを四散させる。
戦いを破壊する為の兵器は、今は純粋に戦うために、黒い暴龍の前に現れた。

牙王の身体にガドルとは別パターンで虚像が重なり、その身を黒いスーツと鎧で包み込む。
全身を包む銀の鎧は守るため、というよりもむしろ黒き暴龍を押さえ込むための枷なのかもしれない。
相手を燃やしつくすと、この世から消し去りたいと言わんばかりに仮面から覗く赤い瞳が妖しく光る。
全てを壊す黒き暴龍が、今はその存在意義のまま、黒い兵器の前に現れた。

          *   *   *
リュウガがカードデッキからカードを引き抜き、オルタナティブゼロも同じようにカードを引き抜く。
両者はまるで鏡合わせのように同じ動作を行い、彼らの機械もまた、異なる音声で同じ言葉を告げる。

  ――SWORD VENT――

リュウガの右手にドラグセイバーが、オルタナティブゼロの右手にスラッシュダガーが握られる。
両者はお互いゆっくりとした足取りで歩き、円を描く。
その円は少しずつ小さくなり、やがて両者は向かい合う。その隙間は1メートルにも満たない。

どちらからともかく右手の剣を振り上げ、斬り付ける。剣と剣が空中でぶつかり、チャンバラ模様を描き出す。
甲高い音が浴場に響き渡る。お互い他に手札はあった。
それこそアドベントカードで契約モンスターを召還する事も、ストライクベントやアクセルベント等手札はあった。
しかしそれを許さない、純粋に剣と剣だけ。両者の心が不思議と一致していた。

それはもしかしたらお互いが破壊の権化であり、別の姿もまた、影を纏うライダー同士だったからなのかもしれない。
同じに見えるからこそ、自分の方が上回っていると。破壊の主であると、影のライダーであると、示したかった。

そのある種の意地の前には牙王の両腕のダメージも、ガドルの左手に残る違和感も何も関係はなく、一撃一撃に力の込められた斬撃を行なわせた。
175名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/12(金) 23:49:04 ID:THlfI4gU
 
いつまでも行なわれるかに思えたその乱舞もついに悲鳴をあげ始めるものがいた。だが構う事はない、お互いそう判断し、乱舞を続ける。
悲鳴は少しずつ増えていき…一際大きな音を立ててドラグセイバーとスラッシュダガーがパッキリと折れた。

「ふん…使えねぇ」

リュウガは持ち手だけになったドラグセイバーを投げ捨て、別のカードを引き抜く。
見ればオルタナティブもまた、新たなカードを引き抜いていた。きっと同じカード、リュウガはそんな予感がした。

「最後の最後まで力比べか…変わり映えしねぇな」

しばらくお互い睨みあっていたが、やがて手にしたカードをベントインさせる。文字通り終らせるために…


  ――FINAL VENT――


リュウガの背後の風呂からドラグブラッカーが飛び出し、リュウガの身体に炎を纏わせる。
オルタナティブの周りに散らばる鏡の中からバイクに変形したサイコローグが飛び出し、オルタナティブが飛び乗る。

炎を纏ったまま上昇し、全てを燃やし尽くす力が右足に溜まっていくのを感じ取る。
コマのように回転し、徐々にスピードを上げていく。全てを微塵に返す歯車へと変わっていく。

「はぁっっ!」
「ぬん…っ!」

リュウガの、牙王の短くも気迫の篭った声と共に、黒きドラゴンライダーキックを放つ。
オルタナティブの、ガドルの気合を発する声と共に、デッドエンドが飛び上がる。


それらはこの戦いを終らせるために 放たれた
177名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/12(金) 23:50:09 ID:THlfI4gU
 
激突した瞬間、確かに牙王は感じた。自分の右足がガドルの身体にめり込むのを
ガドルもまた、見ていた。凶悪なほど回転するサイコローグのタイヤが確かに牙王の身体を削るのを

二人が二人とも、自分の勝利を確信し…最後のこの瞬間までまったく同じように…彼らは吹き飛ばされた。

その衝撃でお互いの変身は解け、主を失った二つの黒いカードデッキがゆっくりと落ちていく。
片方だけほんの少しだけ先に地面に落ち、その身を 砕いた
ほんの少しだけ後に落ちたもう一つの黒いカードデッキはその砕かれた破片が緩衝材になったのか、カランと音を立てて落ちただけに止まった。

          *   *   *
179名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/12(金) 23:50:54 ID:THlfI4gU
 
「…どうやら、勝ったのは俺の方らしいな」

そう呟きながら…牙王がゆっくりと立ち上がる。身体全体に酷い痛みを感じた。特に腹部の痛みは酷く、折れているのは間違いないだろう。
ふと自分の周りを見渡すと竹の破片が転がっていた。どうやら外と浴場を隔てる囲いの物らしく、これがクッションになったようだった。
クッションといっても石の壁に激突するよりかはマシ、という程度だが。

「ガハッ…」

血反吐を吐くとは思わなかった。狼の軍人に続いて美味いものが食えたと牙王は満足していたのだが…
パラパラと破片が転がる石の壁…に開いた穴。恐らくはここにガドルは吹き飛ばされたのだろうが。
その穴の向こうから僅かだが呻き声が聞こえたのだ。牙王は顔をなんともいえない笑みで引きつらせながらその姿を確認しにいく。
服もボロボロで全身傷だらけではあったが…ガドルはそれでも生きていた。未だ目覚める事は無さそうだが呆れるほどのタフネスだ。

「ふざけやがって…」

腹を押さえながら牙王は来た道を引き返す。粉々になったカードデッキと、それに守られたような黒いカードデッキが眠る場所。
無事な方のカードデッキを拾い上げ、痛みが酷くなる事がわかっているのに、それでも牙王は笑った。

「ハハハハハッ!どうやら運は俺の方がとことん上みてぇだな!」

黒いカードデッキを鏡の破片に向ける。先ほどとは異なる銀のベルトが牙王の腰に巻かれた。

「変、身…っ!」

リュウガと対峙していたもう一人の黒いライダー、オルタナティブゼロ。今度は牙王の身を包み込み、その姿を現した。
既にリュウガのデッキは粉々で使用はできず、自分は変身していてガドルはそもそも意識不明。誰がどうみても明らかな勝敗だった。
181名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/12(金) 23:51:58 ID:Oq2bE6oj
    
182名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/12(金) 23:52:02 ID:THlfI4gU
 
  ――SWORD VENT――

勝敗が腹の足しになるのか?完全に食い尽くさない限り満足する事など有り得ない。
牙王は右手にスラッシュダガーを握り締め、ゆっくりとガドルの元へと歩き出す。
ガドルは呻き声を時折あげてはいるが未だに目覚めてはいなかった。牙王はゆっくりとスラッシュダガーを振り上げ…

天をつくような龍の雄叫びに邪魔され、振り下ろされる事はなかった。

          *   *   *
「あぁ?なんだてめぇは…邪魔するな…」

異様な雄叫びに少しばかり驚かされたがさほどの問題はない。牙王はガドルへのトドメを刺そうとする。
しかし黒き暴龍、ドラグブラッカーは吼えながら牙王の身体に突撃し、吹き飛ばす。
地べたを転がり、空を見上げる牙王に対し空中を旋回するドラグブラッカーが一際大きな声で吼える。

「どうやら痛い目みねぇとわからねぇらしいな…」

ドラグブラッカーとの契約はデッキが破壊された事により解除されており、黒き暴龍は枷のないモンスターと化していた。
勿論そんな仕組み等牙王が知る由もない。知っていた所でやる事に変わりは無いが。
カードを一枚取り出し、ベントインさせる。
するととてもそうは見えないコオロギ型モンスターのサイコローグが鏡の中から飛び出し、牙王の傍に降り立つ。

「おい、やれ」

首だけ動かし指示するとサイコローグはそれを理解し、ドラグブラッカーへと走り出す。
牙王もサイコローグの後を追うように走り出す。
ドラグブラッカーはやってみろと言わんばかりに一人と一匹をその巨体をくねらせながら待ち構える。

――実際の所、ドラグブラッカーには空腹による苛立ちがあったせいか…牙王を甘く見ていた――
――ガドルとの戦いで明らかに死力を尽くしているのだ。何ができるのだ、そう思ってしまっていた――
――ドラグブラッカーは知らない。手負いの獣がもっとも危険であると。さらに言うなら…食事の邪魔をされれば誰でも怒るという事を――
サイコローグが飛び上がり、ドラグブラッカーに近づくがゆうゆうと空を泳ぎ、回避する。
牙王が飛び上がったサイコローグを足場にし、通常の倍の距離の跳躍を見せドラグブラッカーへと迫る。
だが所詮は跳躍。それすらも見切り、ドラグブラッカーの口から高温の炎が吐かれていく。
吐き出された炎をスラッシュダガーで払いのけた牙王は勢いを失い、落下していく。
着地した隙を狙って焼き尽くす。ドラグブラッカーはそう考えタイミングを計っていたが牙王は意外な行動に出た。

  ――FINAL VENT――

その電子音声と共に既に着地していたサイコローグがバイク形態に変形し、無人のままで高速回転を始め、上昇する。

「やれ」

サイコローグはほんの少しだけ迷いがあったが、落下する主の言葉に覚悟を決め――

落下しかけた牙王の身体をドラグブラッカー目掛けて吹き飛ばした!

黒い弾丸となった牙王をドラグブラッカーは回避する事すらままならずその身を射抜かれる。
スラッシュダガーがデッドエンドの回転の余波で鎧のような黒い鱗を剥がし、肉を、骨を削っていく。
悲鳴とも思える轟音を吐き散らしながらドラグブラッカーが空中をのた打ち回る。

「蒲焼…いや、骨切りして湯引きしてやろうか。ちょうど湯ならあるからなぁ、おい」

スラッシュダガーを刺しては引き抜き、刺しては引き抜く。
引き抜くたびにスラッシュダガーの刃代わりの針の部分に黒いだが赤だが分からない物がこびりついていく。
宙返りを何度か繰り返し、ようやく牙王を振り下ろした頃にはドラグブラッカーの身体は傷、いや穴だらけであった。
186名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/12(金) 23:53:37 ID:THlfI4gU
 
敵わない、というよりもこのままでは命が危ない。ドラグブラッカーはそう判断し…未だ目覚めぬガドル目掛けて急降下していく。
食べれば少しは回復するはずだ。あとは逃げて、体力を回復してから牙王に復讐してやる…そう考えて。

「俺の物は俺の物だ。誰の物でもねぇ。横取りなんてケチくせぇ真似しやがって」

再び牙王がカードをベントインさせる。するとドラグブラッカー以上の速さで走り、ガドルの身体を抱えて突撃を回避する。
目標を失ったドラグブラッカーが頭から地面に激突し、意識朦朧としながら牙王を睨みつける。

「ふん、そうやって自分が消えていくのを眺めてろ」

  ――WHEEL VENT――

再びバイク形態になったサイコローグに牙王はガドルを抱えて飛び乗り、脱衣所の方へと走り抜けていく。
息も絶え絶えなドラグブラッカーはただそれを見つめることしかできなかった。

          *   *   *
188名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/12(金) 23:53:57 ID:Oq2bE6oj
  
保養所から離れ…サイコローグの背に揺られながら牙王は考えていた。

(移動手段は手に入った…さてガドルはどうしてやるべき、か。白けちまって今は食う気にならねぇしな…)

とりあえずどこか休める場所を、そう考えていた矢先に制限により、牙王の変身が解け同時にサイコローグのバイクも消滅する。

「ちっ、忌々しい制限だ…」

愚痴りつつガドルを適当な所に寝かせ、脱衣所を走り抜ける際に回収しておいた服を着込んでいく。
着替えながら牙王は一つの判断を迫られている事を感じていた。
つまるところガドルを置いて一人でさっさと動くかそれともガドルを連れて行くか、だ。
置いておけば保養所から離れたといってもそれほど距離を稼いだわけではない、ドラグブラッカーに食われてしまう可能性がある。
だがかといってこのまま連れて行くのも…。十分に味わい、最後の一口がまだだが…堪能したのだ。
その最後の一口のためにめんどくさい荷物を抱えるべきなのか?
最後の一口、と言えば。今食べてしまうという選択肢があるにはある。いまいち気が乗らないが。
放置してあの黒龍に食われるぐらいなら気乗りしないが食べちまうのもありだろう。

できればガドルが目覚める前に、その判断を決めておきたい所だ。
190名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/12(金) 23:54:57 ID:THlfI4gU
 
【牙王@仮面ライダー電王】
【1日目 現時刻: 昼】
【現在地:D-3エリア南部】
【時間軸】:最終決戦前。
【状態】:全身打撲、疲労大、あばら3本骨折、腹部に重度のダメージ、2時間変身不可(牙王、オルタナティブゼロ)
【装備】:ガオウベルト
【道具】:マスターパス、基本支給品一式×2、ランダム支給品1〜6(牙王、ゾル大佐分。共に未確認)、オルタナティブゼロのデッキ
     コンビニから持ってきた大量の飲食料(中量消 費)
【思考・状況】
基本行動方針:全て喰らい尽くした上で優勝
1:ガドルに対する対応を決める。放置するか連れて行くか、食うか
2:最終的に全参加者を食う。
3:人が集まりそうな施設を適当に目指す。
4:機会があれば煩わしい首輪を外す。
5:ガオウライナーを取り戻して村上も喰う。
6:餌(人質)が確保できたら放送局を利用して死にたがりな獲物を誘き寄せるか?
備考
※会場のどこかに時の列車(予想ではガオウライナー)が隠されていると推測しています。
※木場の生存には未だ気づいていません
※ゾル大佐のデイパックを偶然奪いました。
【ドラグブラッカーについて】
※デッキが破壊された事によりドラグブラッカーとの契約が無くなりました。
※ドラグブラッカーは全身に酷いダメージを負っており、また空腹です。
※牙王に対して非情に強い恨みを抱えています。
※C-3保養所内に未だいるのか、別の場所に移動しているのかは他の書き手様にお任せします…
192名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/12(金) 23:55:53 ID:THlfI4gU
 
【ゴ・ガドル・バ@仮面ライダークウガ】
【1日目 現時刻:昼】
【現在地:D-3エリア南部】
[時間軸]:ゴ・ジャーザ・ギのゲゲルを開始後
[状態]:全身打撲、疲労大、右目と左腕に違和感、右足部装甲破損、気絶中、2時間変身不可(怪人体、オルタナティブゼロ)
[装備]:オルタナティブゼロのデッキ、基本支給品×1、首輪探知携帯
[道具]:
[思考・状況]
基本行動方針:強き者と戦い、強くなる。
1:リントの戦士を倒す。
2:再びあの二人と戦う。
3:桜井侑斗と決着をつける。
4:戦闘を繰り返し、強くなる。
5:最終的にダグバを倒す。
備考
※ガドルは自分にルールを課しているため、抵抗しないただのリントには攻撃しません。
※ガドルは牙王に勝ったと思っています
※左腕は超常現象が起きたのか何故か治りました。右足の装甲が直らないのは、謎です
※バイク(YAMAHAのT MAX)は保養所の裏手に隠されています。

共通備考
※保養所内の浴場が大破しました、使おうと思えばもしかしたら使えるかもしれません
194名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/12(金) 23:57:00 ID:mHo6H25a
735 名前: ◆deggScNisI ? Mail: sage 投稿日: 2008/09/12(金) 23:56:25 ID: ???
投下終了です。変なところで区切ってばかりで代理投下してくださった方に負担をかけて申し訳ない…
代理投下ありがとうございました

誤字脱字矛盾点のご指摘よろしくおねがいしまs

----
以上、代理投下終了でs
195名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/12(金) 23:59:33 ID:Oq2bE6oj
投下乙です。
バトル描写が迫力ありました。
ガドル閣下もこれでお終いか! とハラハラしましたが、ドラグブラッカーがいたなw そういやw
最後まで気の抜けないバトル話でした。
GJ!
196名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/13(土) 00:03:03 ID:WLIp9YZC
投下乙です!
嗚呼、浴場……おっさん達の聖地が…w
バトルも面白く、堪能しました!!
手負いのドラグブラッカーは、このまま散るかそれとも……とても気になりますw
GJ!!
197名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/13(土) 00:16:28 ID:hYw9n1Hi
投下乙です。
湯煙のほほん風味タイトルと戦闘の緊迫感との、あまりのギャップにw
ガドルさんがしぶとく、生き残ってくれて良かった。
野良化したドラグブラッカーは、ぜひともエサを見つけて復活希望です。
GJでした。
198名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/13(土) 03:11:49 ID:fBQuuJtZ
投下乙!
バトル面白かったなあ、ガドル頑張れw
GJ!!
199名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/14(日) 13:02:24 ID:wu1NYpwP
えっ?
ドラグブラッカーをあんな風に使ってもいいのか?
他の選にもれた敵キャラとどう違うんだ?
あるいは、意思を持つアイテムは禁止だったよな?
微妙にルールに抵触するような……
せめて、ドラグブラッカーの思考描写は避けるべきでは?
200名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/14(日) 17:00:40 ID:C8C2e+bR
デッキ壊れた後の野良モンスターの扱いは書き手任せ、じゃないっけか?
俺は別に構わないと思うが、修正希望するならルール通り議論スレでな
201名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/14(日) 19:45:23 ID:4Z6fQbTi
>>199
ミラーモンスターの思考描写がおかしいなら、1stからさかのぼっての修正が必要になりますね。

>>200の言うとおり、書き手任せだと思いますよ。
202名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/14(日) 23:17:21 ID:dtqfz6E/
ケチつけたいだけじゃないのか?
相手にしない方がいいと思われ
203名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/15(月) 00:49:28 ID:Oc8cXBr4
>>202
そんなつもりは無かったんです、意思を持つアイテムは禁止というルールがあったからちょっと疑問に思ったんですが、デッキ破壊後の野良モンスターは書き手まかせというルールもありましたね。
すみません忘れてました。
>>199は取り下げます。
お騒がせしてすみません。
204名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/15(月) 12:24:14 ID:5vsc8E5Z
まあたしかに前のマグナギガはすぐやられちゃったもんな。
野良モンスターの扱いについてもwikiの制限のページに書き加えた方がいいかな?
205名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/15(月) 14:32:11 ID:4RdDOZOn
まあこういう勘違いはあることだしね

>>204
書き加えてくれた方が良いかも、と編集不可の携帯が言ってみる
206名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/17(水) 10:46:56 ID:oYQ/vd7q
保守
207名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/17(水) 17:48:53 ID:cWxb076J
そろそろ放送案募集の期間について話をしておきたいのだが
期間は今回も一週間で良いのかな?
208名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/17(水) 20:17:41 ID:Wu6ld4gu
>>207
特に問題ないと思うよ。
209名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/17(水) 20:44:40 ID:pyPbP1bX
今回は投票もやるんだっけ?
雑談スレ投票に使わせてもらっていいのかな…
いいなら集計やら引き受けたいけど。
210名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/17(水) 21:07:04 ID:cWxb076J
>>209
特に使われてないし良いんじゃないだろうか
集計は是非頼みますw

期間は一週間として、後はいつから一週間にするかかな
211名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/17(水) 22:27:14 ID:pyPbP1bX
>>210
期間は読み手が勝手に決めたらダメかもな…
今週いっぱい待ってみて予約がなかったら来週一週間とかどうだろ?
やるからには盛り上げたいよなー
212名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/18(木) 15:13:16 ID:G9U7sIGr
そうだよな、盛り上げていこうぜ!
213名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/18(木) 17:20:05 ID:lS4pu/eV
同意するw
放送に関しては、禁止エリア含め書き手さんに議論スレ辺りへ書き込みして決めて欲しいかな
あんまこっちで口出すのは悪い部分だしw


という訳で雑談ネタ振り…
お題は放送後の動向が特に気になる参加者について(展開予想は控えめにw)
俺が特に気になるのは木場と結花。海堂が死んだことでどうなるか予想できないw
特に木場は海堂のおかげで一旦持ち直した感があったし、一体どうなるか…
214名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/18(木) 18:01:14 ID:WkWie3wb
その話題どうやっても展開予想含むだろw

木場はまぁ、どうして死んだのかーとか考えつつもしかして人間に裏切られたんじゃ…と疑心が深まるかも。事実だけど
結花は虎ねぇが一緒なら大丈夫そうだが今いるのはノホホンいおりんだからなぁ…
215名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/18(木) 23:05:02 ID:Jp1fCwDW
何気に桐矢の持つファイズギアが何か厄介事を引き起こしそうで怖いぜ……。
216名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/19(金) 00:25:06 ID:Y+QrPHqN
桐矢には影山に続きエラーで吹っ飛ぶのを期待w
217名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/20(土) 09:33:47 ID:8PaeS7UC
木場のサイガに期待w
ダグバもマーダーとして頑張ってほしいな
218名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/20(土) 09:36:57 ID:/B6Koa1j
やっぱ橘さんかな。かっこよく覚醒したし。
でもこれからも騙されたり勘違いしたりしそうw
219名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/20(土) 10:32:15 ID:ksHFINqu
おさげライダーからちょんまげライダーに転生した手塚は生きるのか死ぬのかw
220名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/20(土) 11:34:09 ID:2w55EDme
橘さんは今後も冷静に考察を続けてくれると信じてるw
そして既に死者スレでネタにされてる全裸のおっさん達に期待するぜ
221名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/21(日) 13:23:21 ID:hwA7M9Qf
そういえば放送の予約ってもう解禁なのかな
222名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/21(日) 13:52:55 ID:Ti3cyMaY
放送自体は複数来たら投票で、本投下日の翌日0時から予約開放、の筈
前回は微妙に灰化させなきゃ云々的なネタが仕込まれてたから、今回も楽しみ
223名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/21(日) 21:44:37 ID:JwqmSFvY
言ってる間に放送案きたな。
224名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/22(月) 10:06:37 ID:bgM6o3uA
来たねえ。他にいなければあれで良さそう。
それで投票やるって人はどうした?
やるなら今週だと思うぜ
225名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/22(月) 17:25:38 ID:s+7wDVwx
投票は結局このままやらない…
俺の占いは当たる
226名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/23(火) 00:47:36 ID:JvlkeS7t
そんな占いをしないでくれorz

>>209はどこへ行ってしまったんだ…
227 ◆CIPHER0/kY :2008/09/23(火) 18:30:37 ID:tuxEa+rU
先日は予約した側から破棄してしまい、申し訳ありませんでした。
そんなことをした端から恐縮なのですが、予約ルールについて一部改正の提案があります。
議論スレに落としておきましたので、目を通していただければ幸いです。

それから仮投下スレの放送案ですが、私としては特に問題ないと思います。
他に放送案を書いていらっしゃる方がいれば挙手していただき、
どなたもおいででないようでしたら決定、ではいかがでしょうか。
228名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/23(火) 21:07:30 ID:zXqhFvzQ
乙です!また予約待ってます!

んですまん、PC触れなくて遅くなってしまったが
雑談スレでの投票許可がしたらばの管理人さんにオッケーもらえたらやってみる!
盛り上がって行こうぜ!
229名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/23(火) 21:19:35 ID:JvlkeS7t
うちの避難所はしたらばじゃねえぜと突っ込ませてくれw
こんな時こそ雑談スレの出番だw
230名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/23(火) 23:45:56 ID:zXqhFvzQ
外部板はぜんぶしたらばだと思ってたw

管理人さんに言われて投票用スレ立てさせてもらった!
ルールとかは前出てたのを参考にしたけどこれでいいかな?
みんな投票してくれい!
231名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/24(水) 00:03:53 ID:imm2B7/h
>>230
GJだ!
今から第一回放送まで見返すぜ〜。
232名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/24(水) 14:42:59 ID:slPcsm5X
>>230
GJ!

ついでにURLも張っておこうw

投票用スレッド
http://riders.sphere.sc/rb/test/read.cgi/rnext/1222179869/
233 ◆6VDLcuc3FQ :2008/09/24(水) 22:35:04 ID:HXYQIoTn
他に書いておられるかたもいらっしゃらないようですし、禁止エリアと死者を追加した放送を本投下します。
届く、届くよ。
死を告げるラッパの音が。

みんながみんな、とってもいやそうな顔してそれを聞く。
そんなにいやなら耳をふさげばいいだけなのに。
だれもかれもが怖い顔。
目を背けたくてしかたないのに、いやいやしながら聞いている。
滑稽ったらありゃしない。

ほんとうに。見れば見るほど。
ばかみたい。



は〜い、みなさんこんにちは。今日も良いお天気ですね。
当分の間は今みたいなとーってもきれいなお空が続くみたいですよ。お姉さんからの天気予報です。あはっ。
みなさんが大事にとってあるお友達の死体がびしょびしょのかわいそ〜にになることもありません。きちんと言いつけを守った良い子さんへのご褒美みたいですね。いいこいいこ。
せっかく注意したのにお友達の首輪を取っちゃったイタズラっ子さんは……あ〜怖い、どんな罰がくだるのかしら。
でも我慢がまん。お友達の体に酷いことしたなら相応の報いを受けなくちゃ。
では、前回から今回の放送までに亡くなられた方のお名前を発表します。
聞き逃したらたぁいへん。
本郷猛さん、デネブさん、もう一人の本郷猛さん、金居さん、緑川あすかさん、ゾル大佐さん、海堂直也さん、以上7名です。
ちょっと数は減っちゃったけど戦いはまだまだこれから。今後のみなさんの頑張りにお姉さん期待しちゃいます。
続いて禁止エリアです。今回追加される禁止エリアは十三時にH-4、十五時にB-9、十七時にE-7の三ヶ所。間違えて入ったりしないように注意してぇ。
それでは、今回の放送はここまで。寂しい?それはお姉さんも同じです。シクシク。
またお姉さんに会いたい、という人は次の放送まで頑張って生き残ってくださいね。
あ、もちろん他の人達と戦うのも忘れないように。
仲良くしようなんて考えてる人達、いけませんよぉ。そういうことを考えてると、後からと〜〜っても辛いことになります。
だって。
何をしたって最後に生きて帰れるのは、どうせ一人だけなんだから。きゃは。



「とりあえずは順調、といったところですか……」
配信された映像と途中経過の報告書に目を通し、村上峡児は革製の豪奢な椅子に深々と身を預ける。
「このまま上の上の結果を残して欲しいところですが」
「もちろんですわ。事態は社長が望まれた通りに進行しています」
先程まで映像の中にいた女性、スマートレディが粛々と答えた。配信映像で見せたような軽薄さは影を潜めているが、不思議とそれは彼女の印象にそれほどの変化を与えていない。
村上は長く重い息を吐き、スマートレディに退室の指示と計画の順調な進行を望む意思を伝える。
スマートレディは恭しく腰を曲げ、折り目正しい一礼でそれに応えた。
「全て社長の望まれた通りに、ですわ」
村上は無言のまま何を見るでもなく視線をそらす。
スマートレディはにこりと、笑みの形に表情を変えた。
両者の思惑の先にあるものは、まだ見えない。
236名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/24(水) 22:44:25 ID:EEWwZj78
放送GJです!
スマートレディは相変わらずいようのない不気味さを出してるなぁ……w
村上社長とのコンビは良く輝いてる!
禁止エリアは……なるほど!そこを押さえてきましたか!特に問題はないと思います。
リメイク本郷さんがご愁傷様ですけどw
237名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/24(水) 23:10:20 ID:DyvgQovi
放送投下乙です。
本郷さん二人呼ばれて吹いたw
これからどう展開するか非常に楽しみでなりません。明日以降の予約にwktk
238名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/25(木) 22:00:41 ID:N4e+0yXk
投票確実に進んでるねー。俺も早くやろうw

ところであと二時間ほどで予約合戦開始って事でいいのかな?
一応確認しておこうかと思って。
239名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/26(金) 01:23:55 ID:b0He2rBl
予約キテター
どっちも一筋縄では行かなさそうなメンツで楽しみw
240名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/27(土) 12:54:18 ID:w873zSR5
>>239
首輪ネタと考察ネタ筆頭の乃木北條ペアと
全裸筆頭のおっさん三人に期待せざるを得ないw
241名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/29(月) 11:36:54 ID:g1V53F9w
投下楽しみだな
242名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/29(月) 23:30:45 ID:O6iNvylB
投票、明日一杯?が〆切なのに停滞してるな
みんな!ラストスパートをかけるんだ!
243名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/01(水) 03:10:21 ID:O9+isp1C
投票はやっぱりロワだけあって、主役級の死亡話が人気だったみたいだなあ
それにしても、予約があまり入らないのは残念だ…やっぱり他ロワ行ってるのかな
244名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/01(水) 12:14:28 ID:xlgyxUeN
ヒント:スパロボ
245名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/02(木) 22:15:01 ID:iHrBpimL
ここの住人もスパロボ漬けだと…!?
みんなわりと好きなもの被ってるのな
246名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/03(金) 00:14:47 ID:CLRCCIvk
投票結果出たかー
上位は盛り上がり的には妥当…かな?
それにしても絞り込みが厳しすぎたw
次の時間帯はバトル無し回(繋ぎ?)とかライダー(あくまでもロワ内の印象だけで)の
投票もやってみたいなw
247名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/04(土) 13:29:07 ID:tOzDrKM/
その時は賛同させてもらおうか

いくらなんでも下がり過ぎなんでage
248名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/05(日) 10:01:12 ID:fWy6BIKF
予約がW破棄とは・・・
楽しみにしてたのに残念だ
249名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/05(日) 10:53:03 ID:mTgVrLfZ
体調不良はしょうがないよな・・・お大事にしてください
またの機会を楽しみにしてますので
250名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/06(月) 23:36:15 ID:BKl3fytr
季節の変わり目は体調悪くしやすいらしいからな…
気にせずゆっくり休んでください

ところで放送後のこの時点で楽しみなチームってある?
俺は海堂退場で影響受けまくりの馬鶴も気になるけど
デネブが死んだのを知って侑斗がどうなるかが気になるな
今ちょうどへこんでる所だし
251名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/07(火) 01:09:32 ID:xBxKCUKs
侑斗の未来にはもう悲壮感しか感じないな…順調にカード消費しすぎw
俺が気になるのは放送前遅れぎみの五代達と澤田達かな
葦原さんの勘違いフラグと五代達の目的地にダディがいる辺り何かおきそうw
252名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/10(金) 17:38:07 ID:HNOOlou2
僕はやっぱりサイガ木場に期待だね
海堂死んだのが残念だが・・・
253名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/10(金) 17:58:22 ID:a/s07EB6
むしろ知り合いが死んでからが木場の本番だろw

そして予約ktkr
254名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/10(金) 18:57:30 ID:tW1f+s4U
何気に殺したのはアルマジロオルフェノクのそっくりさんという皮肉付きW
255名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/10(金) 23:24:02 ID:7W1haoUN
アルマジロオルフェノクのそっくりさんとは知らなかったw
そして予約に期待!
256名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/11(土) 02:38:55 ID:i5lnAw82
>>254
マジかw
アルマジロってたしか元カノの兄だっけ?なんという因果…w
木場気付くかな?
257名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/11(土) 03:05:26 ID:l5ECjulK
影山に気付かなかった前科が木場にはあるからなあ…w
あれはまともに向き合うより早くエラーで人間だって教えちゃった上に
雰囲気がオルフェノク時とは違いすぎたからしょうがないけどw
本編で何話かに渡って深く絡んでたらまた違うんだろうが、結局は書いた人次第かね
258名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/11(土) 14:02:08 ID:OKKCriOe
>>257
影山はなんか前世の記憶?とかって言ってたよなw
海堂はけっこう絡んでたから気付くかもと思ってたけど退場しちゃったし。
しかしサブキャラまで含めると本当にそっくりさん多いんだな今回w
259名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/13(月) 15:09:01 ID:l1Vnjyze
何気に中の人が同じ連中はロワ中でほぼ正反対の行動をとるんだよな
悲壮感出まくりの侑斗と小物臭漂う京介とか、マーダーとして後戻り出来ない決意の風見と
対主催の中ではやたらとほのぼのしてるように見えて仕方ない風間とか……
260名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/13(月) 16:36:10 ID:vR5Ad6rC
傍らに女の子侍らせて新たな決意の一文字と
両手に全裸とステルスマーダーの手塚

ああ、180度違うなw
261名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/13(月) 19:45:36 ID:dMVm65rR
待て、その書き方だと手塚の状況がカオス過ぎるぞwww
ヒビキさんはちゃんとした仲間じゃないか、確かに全裸だけど
262名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/13(月) 20:50:01 ID:l1Vnjyze
そう考えるとヒビキさんは本当にステルスに縁のある人だよな
1stでも普通に騙されてたし
263名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/14(火) 02:14:25 ID:G1MftczT
人が良いからなぁ…
264名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/14(火) 10:51:13 ID:7ZeHzwc0
ま、主役ライダーがお人よしで騙されやすいのは、一号からの伝統だw
265名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/14(火) 10:55:23 ID:WcDD8/F/
それなら橘さんは間違いなく主役向きだな
266名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/14(火) 12:34:03 ID:2ViBF5oI
だが今の橘さんはただ一つ志村の存在を抜かせば死角無しな訳だが
267名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/14(火) 20:15:33 ID:fMppDw0T
その志村の存在があくまでも橘さんにとってでかすぎるからなぁw
既に騙されてるしw
268名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/15(水) 00:02:38 ID:8Pr+8kv3
手塚も、この場所にいていいか、何て事を占うぐらいなら、
出会った相手を信用していいかを占った方がいいとオモw

まあ、そんなことをしたら、話が成立しないがw
269 ◆yFvLIBbl9I :2008/10/15(水) 14:41:38 ID:PHGa1rgm
失礼します。
雑談板の仮投下スレに予約分を仮投下させていただきました。
矛盾点や誤字脱字の指摘をお願いします。
270名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/15(水) 19:03:50 ID:Q7/F5j3N
>>269
仮投下乙です。
先に答えがあった方と同じく、特に問題は感じられませんでした。
本投下をお待ちしております。
271 ◆yFvLIBbl9I :2008/10/15(水) 23:52:57 ID:jI/RQL3Q
チェックしてくださった方、ありがとうございます。
それではこれから、本投下させていただきます。
272LONG WAY HOME ◆yFvLIBbl9I :2008/10/15(水) 23:54:57 ID:jI/RQL3Q
どれだけ走っただろう。
周囲の景色は様々な色の奔流となって真魚の視界の端をただ流れていくのみだ。
ぼやけた眼前いっぱいに広がるのは澤田のダークグレイの上着。
呼吸音と心臓の音が忙しなく、やけに大きく聞こえる。
きつく握られた手が痛み、汗をかいて、冷たいのか熱いのかもう分からない。
息が苦しい。足が重たい。それでも、澤田と離れたくない―――

「―――あッ!」

足がもつれ、転倒してしまう。繋いでいた手が外れて、澤田もはっと立ち止まる。
真魚は激しい息遣いに肩を上下させ、アスファルトに手を付いたまま立ち上がる事が出来ない。
澤田はその傍らに屈み込み、顔を覗き込んだ。

「大丈夫?……立てる?」

澤田が手を差し伸べる。声を出すことも出来ないまま、小さく頷いた。
真魚は帽子のつばが作る影の奥、澤田の瞳をそっと見返して、嫌悪や苛立ちの色が無いか伺った。
切れ長の目は真魚が恐れるそのどちらも浮かべてはおらず、純粋に心配をしてくれているようだった。
真魚はそれを確かめてから、差し出された手を再び握った。
卑屈だとは思う。それでも真魚は怯えずにはいられない。
何故なら自分はつい先刻、人を殺したのだから。

澤田に軽く手を引かれる。その指先に引き金の硬い感触が蘇り、真魚は唇を戦慄かせた。


※※※


何とか立たせたものの、真魚の足元はおぼつかない。
捻ったり、ひどく擦りむいたりはしていないようだが、急に全速力で走った疲労と動揺からか、真魚の膝は震えていた。
澤田は周囲を見渡し、小屋からは十分に距離を取った事を確認する。
先ほど戦った紫色の戦士と白い鳥を模したライダーはバイクを持っていた。
追い付かれる可能性がないとは言えなかったが、真魚がこの状態では更なる移動はどの道無理だろう。
住宅街から外れてしまったのか、民家なども見当たらない。
273名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/15(水) 23:55:16 ID:xmQEO+jo
支援
274LONG WAY HOME ◆yFvLIBbl9I :2008/10/15(水) 23:56:47 ID:jI/RQL3Q
「少し休もうか。……こっち」

とりあえず姿を隠せそうな場所を、と思い、こんもりと樹木の茂る公園へ真魚を誘う。
半ば抱えるようにしてベンチまで歩き、そっと座らせた。
真魚は力なくベンチの背もたれに体を預けている。
汗ばんだ白い額に張り付いた一筋の髪の毛が、泣き腫らし赤くなった目元に相まって痛々しく映る。
澤田は、肩に掛けていたデイパックからペットボトルを差し出した。
真魚が水の入ったそれを受け取る―――かと思えたが、びくり、と震える手を引っ込めた。
澤田がいぶかしみ、凍りついたように見開かれた目の見ている物に気が付く。
デイパックに収められた拳銃だ。

「……仕方がないよ」

ぽつりと呟かれた言葉に、真魚は顔を上げた。
澤田は真魚の前に立ち、もう一度言った。

「仕方がないよ。あの女は俺と君を殺そうと思ってたんだから」

真魚は一旦上げた顔を再び俯かせ、黙ったまま肩を震わせている。
膝の上に落ちた手の甲に、涙の雫が数滴零れた。
無理もない、と澤田は思う。
ある日突然平穏な日常を奪われ、殺伐とした殺し合いの舞台に放り込まれれば、まともな精神状態でいるのは難しいだろう。
―――あの日を境に、『人間』である事を永遠に失った自分のように。
ふとそんな考えが浮かび、澤田は袖に隠れた拳を握って感傷的な気持ちを振り払う。
自分は迷ってなどいない。『人間』でなくなったのなら、そのように生きるまでだ。
スマートブレインもそれを望み、こうしてお膳立てをしてくれたのだ。
275LONG WAY HOME ◆yFvLIBbl9I :2008/10/15(水) 23:59:23 ID:jI/RQL3Q
「君が殺してくれなかったら、俺も君も死んでたかもしれない。 ……わかっただろ? ここはそういう所なんだって事」

慰めの言葉を掛ける。
少しでも早く彼女の動揺を治めて、自分の行動を邪魔しないようにするために。
そう自分に言い聞かせる。
自分のためと念じながら真魚を思いやる度、胸の奥の『人間』の部分が、かすかに疼く事に苛立ちながら。


※※※


暖かな早春の日差しが木漏れ日を作り、地面に淡い影を投げかけている。
澤田と二人座ったベンチの足元にも、風にさやさやと揺れる葉の形がぼやけて落ちていた。
森林地帯の入り口に当たる公園のぐるりには常緑樹が植え込まれ、濃い緑の手前に鮮やかな色で塗られた遊具が点々と設置されている。
子供たちの笑い声のないそれは明るい色彩とは裏腹に何とも寂しげで、真魚の心を一層虚ろにする。
心細い気持ちに耐え切れなくなって、真魚は隣に座る澤田を盗み見た。
長い前髪と帽子に隠された横顔からは、澤田の表情を読み取ることは出来ない。
手元では、また色紙をいじっていた。

『仕方がないよ』

先ほどの澤田の言葉がリフレインする。
引き金を引いた時の事を思い出すだけで、自分への嫌悪で胸がいっぱいになる。
銃弾に倒れた女性の見開いた目が、赤い血の色が、硝煙の匂いが、強烈に真魚の脳裏に焼きついて離れない。
這い上がってきた寒気に、真魚は値札の付いたままのカーディガンの前をかき合わせた。
『仕方がない』。人の死が、そんな言葉で済まされるものなのだろうか。
本当にあの女性を殺すのは『仕方がない』事だったのだろうか?
止まらない震えに唇を噛み締める。罪悪感と絶望に押し潰されそうになり、止まったと思った涙がまた眦に浮かぶ。

「……大丈夫?」

再び動揺を示し始めた真魚の様子に気が付き、澤田が声を掛ける。
優しさを繕った声音に、真魚は澤田を見返した。
276LONG WAY HOME ◆yFvLIBbl9I :2008/10/16(木) 00:08:14 ID:JScL8Mr+
―――澤田は、いつも自分を守ってくれた。その手を汚してでも。

澤田を悪と断じたくないが為に、真魚は無意識に都合の悪い考えから遠ざかる事を選んでいた。
『仕方がなく』失われる命がもしあってはならないとしたなら、目の前にいる彼は紛れもないただの殺戮者だ。
奇しくもそれは限りなく真実に近かったが、澤田に与えられた嘘と欺瞞が積み重なった天秤はもはや易々と動く事はない。
しかし、だからと言って澤田の言うように『仕方ない』と斬り捨てられるほど真魚は冷酷にはなれなかった。
澤田の今までの行いを否定する事も、向かってくる相手を殺すのを是とする事も出来ず、真魚の混乱は深まっていくばかりだ。

「……澤田くん、私ね……」
「……真魚ちゃん?」

思わず口をついた、真魚のか細い呼びかけに、澤田が身を乗り出す。

「私……ここに来るまで、ずっと自分の居場所がないって思ってた……」

唇を震わせながら切れ切れに漏れる呟きを、澤田はじっと聞いていた。
真魚は、混乱した思考の中から、浮かび上がる言葉をただ連ねる。

「お父さんが死んで、叔父さんの家に行ってから……ずっと、何か違うって……思ってた……」

ほんの少し前には、あたりまえだった風景。
学校から帰って、美杉の表札の掛かった門をくぐると、夕焼けのオレンジに染まった、手入れされた庭が目に入る。
目の前の扉を開ければ、太一が生意気そうな目をくるくるさせながら、開口一番にお菓子のありかを聞いてくるだろう。
この時間なら、叔父さんは大学からまだ帰っていないかもしれない。

「……でも……」

真魚ちゃん、と呼びかけられて振り向くと、菜園のうねに立ちこちらに手を振る長身の青年がいる。
豊かな茶色い髪に明るい太陽の光を浴び、日に焼けた顔いっぱいに笑みを浮かべてこう言ってくれる……
―――『おかえり』と。

「……私、帰りたい……」

イメージの中で、小さな目をいよいよ細めて笑う翔一の顔が涙で歪む。
翔一が、『皆の居場所を守りたい』と言ったその日から、自分の居場所はどこだろうと、ずっとそう思っていた。
そんな折に、父を殺したのがもしかしたら自分のこの力なのかもしれないと知らされた。
恐ろしい力を持った異能が、あの暖かい家に居ていいのだろうか。
277名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/16(木) 00:09:39 ID:7ELI2Wr2
しえん
278LONG WAY HOME ◆yFvLIBbl9I :2008/10/16(木) 00:11:41 ID:JScL8Mr+
そう思って家を出たのに、思い出されるのは真魚を『仲間』と迎え入れたマンションの男女達ではなく、美杉家の皆だった。
それは真魚が、心の中であの家に居る事を許されたいと願っていたからだろう。
今更そう気付いても、今の真魚には叶わぬ夢なのかも知れない。
この力で人を殺し、この手で引き金を引いて人を殺した自分には。

それでも。

悲鳴にも似た声で、せきを切ったようにあふれ出す感情に任せ、真魚は心情を吐露する。

「あそこが私の本当の居場所じゃなくても、皆のいる場所に、帰りたいよ……!」

その後はもはや言葉にすらならず、真魚の唇からは嗚咽が漏れるばかりだ。
再び訪れた静寂は程なくして破られた。
置かれたデイパックの中からベンチの座板を叩く、携帯電話の振動音によって。


※※※


澤田が携帯電話を開くと、目と口を三日月の形に歪めて楽しげに語る女が映っていた。
放送を聞きながら、澤田は真魚の様子を伺う。
顔を伏せ、白い手で耳を塞いでいる。
そんな事をしても、真実からは逃げられはしないのに、と澤田は思った。
だが、そうせざるを得ない真魚の気持ちも分からなくもないので、黙っておく。
女は大げさなボディランゲージとわざとらしい笑顔を振り撒き、歌うように脱落者の名を告げる。
その度に真魚はその薄い肩をびくりと震わせていた。
おそらく、自分たちの殺した者の名前が読み上げられているためだろう。
澤田は読み上げられた名前の中に海堂直也の名前がある事に気付いたが、特に何の感慨も浮かばない。
彼にとっては等しく殺すべき標的なのだ。真魚以外は。

―――最後に生きて帰れるのは、どうせ一人だけなんだから。きゃは。

作った笑い声が聞こえ終わる前に、澤田は手にした携帯電話をたたんだ。
今しがた帰りたい、と泣いた真魚には酷な言葉だ。
だが、澤田にとっては好都合である。
俯いたままの真魚に向き直り、口を開いた。

「俺たちに帰る場所なんてない」

そう告げると、真魚が弾かれたように顔を上げる。
大きく見開かれた瞳をじっと見据えて続ける。

「帰りたいなら、戦うしかないんだ」
279LONG WAY HOME ◆yFvLIBbl9I :2008/10/16(木) 00:13:26 ID:JScL8Mr+
澤田が『オルフェノク』として生きるために、自らの『人間』の部分を否定するための戦い。
この戦いに勝利する事で、澤田は初めて『オルフェノク』としての自分を認める事が出来る。
自分の居場所を勝ち得る事が出来るのだ。
澤田には知る由もないが、奇しくもそれは、澤田の憎む失敗作であり、この手にあるカイザギアの本来の持ち主である草加雅人が、
三原修二に向かって言った言葉によく似ていた。

「戦う、なんて……どうすれば……?」

表情を強張らせたまま、呆然と呟く真魚。
だが、その瞳には先ほどとは違い、彼女自身の、何らかの意思が宿っているように思えた。
澤田の言葉に、決意を感じ取ったのか、あるいは何か共感する所でもあったのだろうか。
不安に揺れる語尾に、澤田は優しい笑みを浮かべる。
彼女を安心させるために、今まで何度となく作ってきた表情だ。

「戦うのが怖いのなら……俺が君を守るから」

真魚の手を取り、完成した折り紙をそっと乗せる。
水色の、蝶を。

「……澤田……くん……」
「俺と離れないで、真魚ちゃん。 そうしたらきっと、俺が君を帰してあげる」

澤田は糸を張る。目に見えない、嘘という名の細い糸を。
真魚は帰れない。
何故なら、彼女は自分と最後の二人となった時、自分のこの手で殺されるのだから。
もし、死者の魂が元居た場所に帰るというのなら、この言葉は真実になるだろう。
魂などというものの存在を、澤田は全く信じてはいないが。

真魚は掌の蝶を見つめ、小さく頷いた。
その様子を見て、澤田は確信する。
これでもう、真魚が自分から離れる心配はない、と。
蝶を―――蜘蛛の糸に掛かった、哀れな自身を模しているとも知らず、大切そうに撫でる真魚に、澤田はもう一度笑って見せた。
280名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/16(木) 00:13:28 ID:T09Vmk2u
支援
281LONG WAY HOME ◆yFvLIBbl9I :2008/10/16(木) 00:15:09 ID:JScL8Mr+
※※※


ふと目線を下げると、スニーカーから覗くくるぶしが泥で汚れ、転んだ時に擦ったのか、血が滲んでいるのに真魚は気付いた。

「……血が出てる。 痛くない?」

澤田もそれに気付き、真魚に尋ねる。
足を動かすと、小さな痛みが走る。精神的な動揺もあって、今まで気付かなかったのだろう。
真魚は弱々しくだが、ようやっと笑顔を作り、平気、と答えた。

「でも、洗うだけでもした方がいいよ。 あっちに水道があったから、行こう」
「……じゃあ、ちょっと行ってくるね。 ……一人で大丈夫だから」

真魚は気遣う澤田にそう言って立ち上がる。背中に澤田の視線を感じながら、歩き出した。
少し歩いた所で、飾り気のないコンクリートの洗い場を手洗いの隣に見つける。
公園自体はさほど広くないものの、ちょうど手洗いに遮られて、澤田のいるベンチは見えない。
真魚にはそれが不安でもあり、ほっとするような気持ちにもなった。
何故かは分かっている。真魚は後ろめたいのだ。

澤田は知らない、真魚の力の事を。
急に駅の建物が崩れたのはきっと、自分の力のせいだ。
今までもそうだった。力は、感情の昂りに呼応して発現していた。
真魚が恐れているのは、それがいつか、自分の意思に反して澤田を傷付けるのではないかという事だった。

いや―――違う。
真魚はそっと唇を噛む。本当に怖いのは、そんな事じゃない。
澤田に嫌われるのが怖いのだ。
真魚の脳裏に、テニス部の先輩の、翔一の、怯えたような顔が蘇る。

澤田は自分を守るために戦ってくれているというのに、力の事を隠したまま傍にいていいのだろうか。
自分が澤田の事を信頼していない事の証明ではないのか。
その事がもし知られたら、澤田はきっと自分の事を見捨てるだろう。
そもそも、自分はそれを使って人を殺す事さえしているというのに、今更何を迷っているのか。
駅のホームにいた二人。黒い姿をした異形と、かつて一度澤田と戦った青年。
名前は知らないが、さっきの放送で読み上げられたうちの誰かに違いない。
282LONG WAY HOME ◆yFvLIBbl9I :2008/10/16(木) 00:17:01 ID:JScL8Mr+
事実を思うと、真魚の胸は重たく塞がれる。
黙っているのは苦しかった。それでも、どうしても言えなかった。真魚にとって、忌むべきものであるこの力の事を。

蛇口をひねると、冷たい水が流れ出す。乾いたコンクリートに、飛沫が黒く染みを作った。


※※※


真魚の姿が視界から消えて、澤田はひとつ息をつく。
オルフェノクの持つ鋭敏な視覚、聴覚を持ってしても、この周辺に人の気配は感じられない。
ベンチの硬い背もたれに背を預けていると、先刻の放送の後、ポケットにしまっておいた携帯電話が再び振動した。
今まで定時放送以外で受信する事がなかったため、不意を打たれて心臓がドキリと跳ねる。
幸い真魚が戻ってくる様子はない―――自分達の行動が逐一監視されていると思えば、当然であるが。
冷静さを取り戻した澤田は、それでも一応木陰に立ってから、冷たい機械を開いて耳に当てる。

『ハーイ♪ お疲れ様です、澤田クン。急にごめんなさ〜い。びっくりしちゃいました?うふ』

笑いを含んだその声に、ついさっき見た女の顔がそのまま思い浮かべられる。

「……何か?」
『はい♪ 澤田クンががんばってるから、お姉さんすっごく嬉しいで〜す。この調子で、最後の一人になってくださいネ』

わざわざそんな事を言うために電話を掛けて来たのかと、澤田が小さく溜息を吐いた。
かすかに滲む不快感を察したのか、女の声のトーンが若干落ち着いたものに変わった。

『社長もお喜びです。澤田クンには、とぉっても期待してるみたいですよ? でもぉ……』
「でも?」

そう言いつつも、思わせぶりに言葉を濁すスマートレディを促す。
このゲームに勝利した暁には、澤田を完全なオルフェノクと認め、重用すると約束した村上。
彼が自分に何か望む事があるなら、聞いておかなければならない。
283名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/16(木) 00:19:32 ID:7ELI2Wr2
支援
284LONG WAY HOME ◆yFvLIBbl9I :2008/10/16(木) 00:19:57 ID:JScL8Mr+
『社長は、澤田クンと一緒にいる女のコの事が気になってるみたいです。ほら、前も―――』

澤田は、携帯電話が軋むのを聞いた。我知らず、強く握り締めていたのだろう。
折り紙を手に、はにかむ少女の顔がフラッシュバックする。

(―――真理)

愛しい彼女を殺す事で、自分の持つ『人間』の部分を殺す事が出来ると信じていた。
だが、今の自分はどうだ。彼女を失ってなお、事あるごとに覗く甘さに舌打ちをしてきた。
腹の底から湧き上がってくる苛立ちを、何とか押さえ込む。
村上が何を言いたいのかは分かっている。大方、釘を刺したいのだ―――オルフェノクの使命を忘れるな、と。
馬鹿馬鹿しい、と澤田は思う。自分が何のために、このゲームに自ら参加したと思っているのか。

「……俺は最後の一人になって、自分が完全なオルフェノクだと証明する」
『きゃん、お姉さんそれを聞いて安心しました。社長にはちゃ〜んと伝えておきま〜す。がんばって♪』

怒気を含んだ澤田の声音も全く意に介さず、スマートレディは軽い調子で激励を送る。
首輪の盗聴機能によって全て筒抜けにも関わらず、伝えておくと答える事の無意味さに澤田が辟易していると、電話越しに彼女はにわかに声を潜めた。

『決意表明してくれた澤田クンにはご褒美をあげちゃいます。他の参加者の皆さんは、放送局に向かうみたいですよ。
 何か面白い事をしようとしてるみたいです♪』

この事は社長にはナイショですよ、しー。
スマートレディはそう続けたが、果たして本当にそうなのか澤田にはわからない。
通話を終え、携帯電話をたたむ。それを再びポケットに滑り込ませた。

公園の奥に目をやるが、真魚が戻ってくる様子は未だ無い。
ベンチに腰を掛けながら、これからの事を考える。
スマートレディの情報が本当なら、待ち伏せて獲物を狙うのも悪くはないだろう。
だが、敵がたくさん集まる場所にわざわざ出向くのはリスクが高すぎる。
真魚の前ではオルフェノクになれない事を考えると、多数の敵を相手にするのは避けたい所だ。
そしてもし―――その中に、真魚と親しい参加者が混ざっていたら。
自分だけを頼り、信頼している真魚の気持ちが、そちらに向いてしまう事も考えられる。
さながら恋情のような、嫉妬にも似た思考である。
285LONG WAY HOME ◆yFvLIBbl9I :2008/10/16(木) 00:21:38 ID:JScL8Mr+
その事に気付いた澤田は小さく嘲笑した。『人間』らしい感情とやらの不確かさを、だ。
澤田の心中にあるのは、それとは対照的な、冷たく暗い決意だけだ。

木々の作る深緑のトンネルの向こうから歩いてくる真魚を見るその目も同じく、冷たい光を宿していた。


【澤田亜希@仮面ライダー555】
【一日目 日中】
【現在地 E-7 森林前の公園】
[時間軸]:34話・真理再生前
[状態]:中程度の疲労。体の各部に打撲。カイザ、デルタに30分変身不能。
[装備]:カイザギア(全装備付属)
[道具]:基本支給品、通話発信可能な携帯電話、不明支給品×3(本人確認済み)
   ライダーベルト+ダークカブトゼクター、ディスクアニマル(アカネタカ)
   iPod(動画再生機能付き)ファイズアクセル
[思考・状況]
基本行動方針:参加者を皆殺しにして自分が完全なオルフェノクであることを証明する。
1:風谷真魚を守る。あくまで、最後に自分の手で殺すために。
2:他の参加者を殺す。
3:なるべくオルフェノク態で戦う事を避ける。そのために一つでも多く変身装備が欲しい。
4:リスクを避けるべく、人の多い場所には近づかない。
[備考]
※ダークカブトに資格者として認められました。ベルトはカブトのものを流用しています。
※能力制限等のルールについて、あらかじめ大まかに知らされています。
※澤田の携帯電話は特別仕様のため、通話の発信機能が生きています。
 現在の所、通話可能な相手は主催者(村上社長・スマートレディ)のみです

【風谷真魚@仮面ライダーアギト】
【一日目 日中】
【現在地 E-7 森林前の公園】
[時間軸]:31話・サイコキネシス発現後
[状態]:健康。動揺。強い自己嫌悪。
[装備]:コルトパイソンA@クウガ(装弾数5/6、マグナム用神経断裂弾)
[道具]:基本支給品一式x2(真魚・天道)
    ライダーパス、首輪(天道)
    特殊効果弾セット(マグナム用神経断裂弾54、ライフル用神経断裂弾20、
    ランチャー用非殺傷ゴム弾5、ランチャー用催涙弾5、ランチャー用発煙弾5、ランチャー用対バリケード弾5)
[思考・状況]
1:澤田についていく。離れたくない。
2:人殺しをした自分が憎い。
3:自分の能力と支給品の銃を嫌悪。
4:能力の事を澤田に知られたくない。
5:澤田と一緒なら、元の世界に戻れる…?
[備考]
※制限もしくは心理的な理由で超能力が不完全にしか発揮できません。
 現状では、サイコメトリーで読めるのは断片的なイメージだけです。
※以下のように事実を誤解しています。
サイコメトリーで見えた灰色のモンスターの正体は天道=カブト。
灰色の怪物(海堂)と赤い怪物(モグラ)は殺し合いに乗っている。
青いライダー(ガタック・ライダーフォーム)に変身して自分を守ったのは澤田。
加賀美(名前は知らない)は自分がサイコキネシスで殺した。
286LONG WAY HOME ◆yFvLIBbl9I :2008/10/16(木) 00:24:48 ID:JScL8Mr+
以上で投下完了です。支援してくださった方ありがとうございました。
誤字脱字のご指摘、ご感想お待ちしております。
287名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/16(木) 00:38:47 ID:OLji2GPg
投下乙です。
スマートレディが原作らしいw
澤田は放送局に向かうが、原作と同様の末路になるか楽しみです。
GJ!
288名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/16(木) 02:43:26 ID:hCl77nL0
スマレが何か原作らしくていいわw
このまま澤田が頑張ってくれることに期待!
GJでした!
289名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/16(木) 07:14:49 ID:QYeINGyS
投下乙です…スマレwwwww
放送局が次の分岐点となるのか…?期待です。
相変わらず心理描写も見事です。これでまた勢いが出ると良いなあw

あと仮投下スレで放送局じゃなくて研究所とか書いてた…誤字申し訳ない
290名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/16(木) 09:15:59 ID:ROdesNfg
投下乙&GJです。
澤田くんの今後にかなり期待。そしてスマレwww
291名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/16(木) 17:02:32 ID:skVk3YMH
真魚ちゃん儚くていいなぁ。
澤田の心理描写もGJ!でした。
292名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/18(土) 14:46:36 ID:UaiFONNq
age
293名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/18(土) 15:08:53 ID:hTZS40OQ
将軍以外の書き手はただの屑らしいですね
トリ出して文句言ってもいいですが、それだと捨て台詞になるらしいので
このまま、去ることにします。今までお世話になりました。
294名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/18(土) 17:52:55 ID:9fzMOBAy
そういや今の時点で十分な睡眠取ってる参加者っているのかね
みんなぶっ続けで起きてる気がせんでもないw
295名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/18(土) 18:46:45 ID:iiuwalMy
木場→孤島でおねんね
澤田→風見戦の後おねんね
北崎→コブラ戦前におねんね
響鬼さん→睡眠と朝風呂完了してから出現という驚愕の登場話w

覚えてるのはこれくらいかな
あと葦原さんみたいに気絶→看病してもらうとか
ガドルや志村も長めの気絶時間があったかな?
296名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/18(土) 19:27:39 ID:p412vFcp
ヒビキさんフリーダム過ぎるwww
297名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/19(日) 00:14:45 ID:wp46CZ2J
明らかに響鬼さんが浮いてるwwwww
298名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/19(日) 00:33:19 ID:mKy87JSo
思わず登場話を再確認してきたら、マジでそのままだった。
おさすがです、ヒビキさん。と、しか言えねぇ〜w
299名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/20(月) 23:29:10 ID:PYJwk/bG
なんとなく地図みたり各キャラの最新作読んでたんだが、皆南に固まりすぎw
300名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/21(火) 14:14:18 ID:no9LnOSN
>>299
大混戦の予感w
研究所組も相当重要なはずなんだが、妙に手薄になってるな。
301名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/21(火) 16:29:48 ID:+JGYIVCu
研究所は風見襲撃フラグ立ってたよな、確か
ただ絡めそうなのが近くにほとんどいないのがネックだよなぁ。かがみんくらいか?
302名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/21(火) 17:14:09 ID:b4fZ8IZ0
襲撃しようにも乃木さんは研究所出る気満々だしな
その辺り含め先日の予約が気になっていたんだが…
303名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/23(木) 18:01:11 ID:u4sa9q/6
予約来ないね……
304名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/23(木) 20:39:18 ID:OCy1Mm/X
そう思うなら自分で書けばいいじゃない
もしくは雑談のネタを振ればいいじゃない

ネガティブな独り言を書き捨てられても反応に困るし
空気が悪くなるだけよ
305名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/23(木) 22:01:13 ID:u4sa9q/6
そこまでいうなら雑談ネタ振ってくれてもいいじゃないw
……ああ、嘘だよ。書き手さんも忙しいのにこんなこと言ってスマンかった

という訳で俺がネタをと思ったらここ来てからは結構話してるんだよな
まだ出てなさそうなお題ってことで、皆が気にしてる支給品は?
俺は対応アイテムが支給済なのに未登場なゼクター(コーカサス、ケタロス)と、
正体不明だけど以前風のエルが落とした支給品…
どんなタイミングで使われるか気になってしょうがないw
306名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/23(木) 23:40:35 ID:sVrad6LT
支給品かー。
ゼクターはここぞ!!と言うときに出て来て話を盛り上げてくれそうだな。
風のエルのはたしかに気になるw誰か回収してくれんもんかね。
307名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/25(土) 07:37:47 ID:X0ddjiUU
今後カイザギアで誰か灰化するのか気にしてるw
308名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/25(土) 12:31:18 ID:pvdoWnuB
>>307
それはたしかに気になるw
そういえば今ファイズギアは京介が持ってるんだよな
誰かに付けさせるにしても腹くくって自分が付けるにしても
弾かれて吹っ飛ぶのがちょっと楽しみw
デルタギアも渡す人によっては大変な事になるだろうな…
309名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/25(土) 19:35:35 ID:xyLTMS6A
普通変身ツールは役に立つのに……555出展のは危ないのばっかだなw
310名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/26(日) 00:05:45 ID:7jgyhTUf
新しい人の予約ktkr
これは期待せざるを得ない
311名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/26(日) 00:37:01 ID:RD00s6/y
予約北
楽しみすぎる!がんばってください!
31223:59まで名無し・1001投票@名無し・1001スレ:2008/10/26(日) 20:40:22 ID:c0zEw9ud
予約キタか!
これは楽しみ
313名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/27(月) 03:04:21 ID:2GHsUAlC
さらに予約きたあああああ!!wktkが止まらん
体に気を付けて頑張ってください!!
314名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/27(月) 06:51:41 ID:nWTAnra0
おお、復活の予約がw
お二方頑張ってください!!
315 ◆WBRXcNtpf. :2008/10/29(水) 18:50:19 ID:9P9MKnis
五代雄介 長田結花 城光 和泉伊織 日高仁志 志村純一
手塚海之 一文字隼人(リメイク) ハナ
投下します
316それぞれの思考  ◆WBRXcNtpf. :2008/10/29(水) 18:51:04 ID:9P9MKnis
「…遅い!」
光は苛立ちを隠せない。通信を入れてから30分は経とうとしている。
しかしイブキたちはいっこうに帰ってくる気配がない。
「行き違いになるかもしれないから迂闊に動けないですしね…」
五代もまた帰りの遅い2人を心配していた。
辺りにはつい先程激戦を繰り広げたような強敵がうろうろとしているはずだ。やはりこの状況でチームを分散すべきではなかったのか。悩んでいると心なしか空も陰り始めた。
「もしもし、こちらイブキです」
「何をしている! 今どこだ!!」
突如として入ったイブキからの連絡に思わず光の声が荒いだ。
「あの、ちょっとこっちに来てもらえませんか? 面白いものを見つけたんです」
「面白いもの…?」



それまで穏やかだった天候が変わり始めたのはイブキが光からの通信を切って間も無くのことだった。
「…雨が降りそうだね」
竜巻を走らせながらイブキは空を眺めた。
猛士の一員としての日々の活動の経験則からイブキはすぐにその変化に気がついた。
「大丈夫? 少しは落ち着いた?」
声も無く首を縦に振って応える少女の姿にイブキは優しく微笑み返した。
「じゃあ…酷く降り始める前に2人のところに戻ろうか」
バイクが来た道をUターンしようとしたそのときだった。
「イブキさん……」
闘いに怯えていたか弱き少女が唐突にその口を開いた。
「どうかした?」
「…なんだか甘い花の香りがします。たぶん…薔薇の…」
オルフェノクの研ぎ澄まされた五感があるからか、いやそれ以上の何か言い表し難い本能のようなものが結花に薔薇の存在を訴えていた。
「薔薇か…」
乃木からの指令、「青い薔薇の入手」が2人の脳裏をよぎった。
「その香りはどっちからするの?」
「…あっちです」
結花の指示に従い、イブキはバイクを走らせた。


目的地へとたどり着いたイブキと結花の目の前には一面の薔薇の花が広がっていた。
川辺の一郭にまるで赤い絨毯のように咲き並んだ美しい花に2人は暫し見とれていた。
「可哀想…酷いことする人がいるんですね」
結花は突然そういうと1つの株を指し示した。その株は本来花が咲いているべき箇所が刈り取られ、茎と葉だけが沈黙していた。
「本当だ。まったく、植物は大切にしないと…」
イブキはふとデジャヴに襲われた。確か前にもこんなことを感じたような…
「イブキさん?」
突然黙り込んでしまったイブキを結花は心配そうに見つめる。だがイブキは尚も固まって考えていた。
そして思い出し、辺りの薔薇の花々を改めて見返した。見れば所々に同様な茎と葉だけ残された株が並んでいる。
「まさか…これが…?」
イブキは慌ててトランシーバーを取り出した。
317それぞれの思考  ◆WBRXcNtpf. :2008/10/29(水) 18:51:44 ID:9P9MKnis
「それで私たちを呼びつけたんだな」
事情を聞いた光の怒りが少し治まっているのを見て五代は安心した。
「ええ、本当に青い薔薇かどうかは分かりませんけどね」
イブキの記憶は朝食時に遡る。ふと眺めた窓の外、白い砂かなにかに覆われ、朝陽をまぶしく照り返していた庭に並んだ花々の中にも確かに枝葉を残したまま首の部分だけが落とされている株があった。
青い薔薇が何らかの形で使われたとすれば不自然に刈り取られているこれらの花々は現状最も疑わしい。
「じゃあ、まだ刈り取られてない青い花が残ってないか手分けして探しましょうか」
幸いにも降り行く雨はそれ程激しくはなく、イブキの提案はすぐに受け入れられた。


「…ないですね」
「そうだな」
あれからどれだけの時間が経っただろうか。みんなで手分けしてくまなく探したが青い花をつけた株はとうとう見つからなかった。意気消沈する面々。
「これはどうですか?」
そんな中、結花が手の平に何かを乗せて持ってきた。
「それは…」
五代は思わず言葉を失う。彼女の手に乗っていたのは多少茶色く朽ちていたものの紛れもなく「青い花びら」だった。
「とりあえず確保しておいた方が良さそうですね」
「ああ、そのようだな」
イブキの言葉を受け、光は中身を飲み干したペットボトルを結花に渡した。
意図を察した結花はその花びらをペットボトルの中にしまった。
「じゃあ先を急ぎましょうか」
五代は地図で現在地を確認する。今はD-5と6の境界辺り。この花畑へ来るために大きく西へ移動していた。
「このままもう少し西に移動してから南下した方がいいですね」
意見の固まった一同は移動を始めた。


日は高く昇り、先程までの雨雲もどこかへ消え去っていった。
暖かな日の光は小屋の中にまで入り込み、男たちの体にぬくもりと安らぎを与えた。
時刻はまもなく正午、第2回放送を迎えようとしていた。
小屋の中、一際たくましい体をした男「ヒビキ」は移動に向けて準備をしている。
手塚は再び眠りにつき、志村はその傍らで眠りこそしていないが横になっていた。
「よし、放送が終わったら移動するぞ。志村は大丈夫か?」
「僕は大丈夫です。手塚さんはまだ起きないですね…」
2人の視線が手塚に集まる。体温の低下は防げたが依然として顔色は悪いままだ。なるべくこれ以上の負担をかけることは避けたい。
「志村、手塚を少し見ていてくれるか?」
「ヒビキさん? どうしたんですか?」
「病院に連れて行く前にこれ以上負担をかけたくないからな。辺りに敵がいないかちょっと見てくる」
ヒビキはまとめ終わった荷物を担いだ。
「行ってきます」
そう言うとヒビキは軽く崩した敬礼をしながら軽快に飛び出していった。
318それぞれの思考  ◆WBRXcNtpf. :2008/10/29(水) 18:52:23 ID:9P9MKnis
「♪、良い木があれば、百人力さ…」
山林道を駆けるヒビキは敵の気配を探るとともに辺りの木々に目をやった。
「♪、さ、さ、さ、さ…」
ヒビキは白い怪物との闘いで折れてしまった音撃棒のことを思い出す。鬼石は無事だったので木さえあればすぐにも直すことは可能だ。
「♪、さ、さ、さ、さ、さ、さ、さ、さあ行こう!」
だが、装甲響鬼になれない今の状態では音撃棒だけが頼りだ。音撃を発揮するためにも出来るだけ音撃棒の質を落としたくはない。
「…やっぱり良い木ってなかなかないもんだな」
そろそろ引き返そうかとヒビキがふと立ち止まると何か気配を感じた。
歩いてくる者が2人、高速で近づいてくるものも2つ感じる。
敵襲を疑ったヒビキが音角を取り出したのとバイクがそこに辿り着いたのほぼ同時だった。
「ヒビキさん!」
「…イブキ! 無事だったか!」
「ヒビキさんもご無事で何よりです」
イブキは竜巻を止めると一目散にヒビキと駆け寄った。
合流出来た2人の話が盛り上がる間も無く、続けて別の者たちもやって来た。
「ヒビキさ〜ん!!」
「ハナ! 一文字! なんだなんだ、勢揃いだな!!」
だが、再会の喜びを掻き消すかのように時は正午を迎え、血塗られた放送が流れた。
「………何をしたって最後に生きて帰れるのは、どうせ一人だけなんだから。きゃは!」
虚構の微笑みとともに述べられた無情な言葉はその場の雰囲気を一変させた。
「とりあえず、こんなところで突っ立ってるのもなんだし、一旦中入ろうか!」
それを察したヒビキは皆を近くの山小屋へと案内した。
「一文字…ちょっと…」
その道中、ヒビキは一文字にそっと耳打ちをした。
「小屋の中にお前の言ってた黄金のライダーだったかもしれない奴がいる」
「…何?」
一文字は即座に怪訝な顔を見せた。ヒビキに言いたいことはそれこそ沢山ある。だが、ヒビキはそれを制して話を続けた。
「お前が疑問に思うのも分かるが…とりあえずすぐには事を荒立てないで様子を見ててくれないか」
ヒビキの真摯な眼差しが一文字の胸に迫った。
「…分かった」
一文字もヒビキという男には計り知れない奥深さを感じていた。その男をもってしても確信がもてない事態になっている。そう理解した。


山小屋の一室に9名の人々が集まった。それ程狭い部屋ではないのだが、流石に9人は多すぎたようだ。ヒビキが点てた人数分のお茶も窮屈さを醸し出しているのかもしれない。皆、どこかやり場に困った感じだ。
ヒビキは茶を一すすりすると先程拾ってきた木を削りながら話し始めた。
「じゃあみんなの話をまとめると、闘いに乗ってるのはこいつらか…」
一同の中心に置かれた紙にはこれまで出会った敵対的な人物の特徴が書かれていた。

白い怪物、羽根の生えた怪物、研究所を占拠してる男、
大喰らいの牙王、イカの化け物、赤い岩の化け物、
バイクに乗った怪人、黄金のライダーに変身して一文字と闘った志村そっくりの男、白い怪物と組み、剣崎一真と名乗った男。

「…じゃあ、志村さんが剣崎さんに襲われたんですか?」
話を交わすことでそう理解した五代は強い眼差しとともに志村に問いただす。
「ええ。確かに白い怪物と一緒に襲ってきた男は剣崎と名乗っていました。が…あなたの話ではそんな筈はないと?」
「はい! 剣崎さんは人間のため、正義のため、最期まで闘い抜いた立派なライダーです! 剣崎さんが殺し合いに乗っている筈がありません!!」
熱が入り、大きく身を乗り出した五代を光はなだめた。
「熱くなるな。この話だけでは既に死んでいるブレイドと志村を襲った剣崎が同じ人物かどうかは分からんだろう」
「つまり…僕を襲った人が剣崎さんの名前を語っていたということですね。僕もその可能性が高いと思います」
志村は真っ直ぐと五代を見つめる。
「五代さんは剣崎さんのことを信頼している。そして五代さんはとても嘘をつく人のようには思えない。僕は自分の体験よりもあなたの言葉を信じます」
そう言うと志村は痛みに耐えながら起き上がり、五代に手を差し伸べる。
「もし剣崎さんの名を語るような卑劣な奴がいるんだとしたら…一緒に敵を討ちましょう…仮面ライダーとして!」
「はい!」
固く握手を交わす2人を皆が見守っていた。
319それぞれの思考  ◆WBRXcNtpf. :2008/10/29(水) 18:53:19 ID:9P9MKnis
ヒビキの思考
(どう見てもいい奴なんだよな…)
実際、志村の言動は怪しい点が多すぎる。剣崎の一件だって故意に嘘を広めようとしていたとも解釈出来る。
だが、自らの命を危険に晒しながらも白い怪物に立ち向かったり、今もこうして五代と話をしたりする姿からは邪なものなど微塵も感じさせない。
志村は本当に好青年なのか、それとも策謀巡らす殺人者なのか。
(とりあえず一文字の判断待ちかな?)
志村に対する思考はそこまでにしてひたすらに手を動かす。
(もう犠牲者を出したくない…守ってみせるんだ、鬼として…)
あすかや本郷など聞き覚えのある仲間の名前も放送には含まれていた。
もうこれ以上の犠牲者は出さない。そう決めると応急処置の済んだ音撃棒を強く握り締めた。


一文字隼人の思考
(なる程な…ヒビキが迷うのも無理はないか)
一文字もまた志村の扱いに困っていた。
元々、策謀を張り巡らせるタイプの奴だとは思っていた。だが仮に全てが策謀だとしたら、
(厄介だな…)
志村は既に手塚や五代からかなり強い信頼を得ている。迂闊に突っ込めば逆にこちらが孤立する。
そして、その手塚が問題だ。
(普通ここまで他人と似るものなのか?)
世の中には自分そっくりな人間が3人はいるというが、ここまで瓜二つな人物に出会ったことなどない。
普通に考えれば自分の悪事をそっくりさんのせいにするなど苦し紛れの嘘にも程がある。信じられるわけがない。
しかし、実際に自分と瓜二つな人物と出会ってしまうと、あのとき闘った男と今自分の目の前にいる志村が同一人物だと言い切ることも出来ない。
(確信が持てるまでは様子をうかがうしかなさそうだな…)
ここは迂闊に動くべきではない。
今は亡き友、そしてかつて愛した女の分も生き抜かなければならない。
一文字もまた決意を新たにした。


ハナの思考
(あすかさんにデネブまで…他のみんなは無事だといいけど…)
犠牲者の中にあった見知った名前は彼女の胸に深い悲しみを刻み込んだ。
それと同時に主催者への強い対抗心をより一層強めることにもなった。
(闘って…闘って…絶対にみんなと帰るんだ!)
仲間が増えたのも心強い。だが、その一方で不安も募る。
(なんか信用出来ないのよね…あの志村って人…)
志村を見ているとあの嘘つきな亀が頭をよぎる。
何故だかウラタロスのような虚構の香りを志村から感じていた。
(侑斗の件もあるし…あまり信頼出来ない情報も多そうね…)
320それぞれの思考  ◆WBRXcNtpf. :2008/10/29(水) 18:54:13 ID:9P9MKnis
城光の思考
(気にいらんな…)
気にいらないことは山ほどあった。
仲間が増えたのはいいが、あまりにも人数が多すぎてかえって行動に制限がかかりそうなこと。特に怪我人がいる以上、もう自分はバイクで移動はできないだろう。
また、金井が早くも脱落したこと。それは放送が正しければアンデットに死が訪れたことを意味する。
アンデットに対する死とはどのようなものなのか? 死なないからこそ「アンデット」だというのに。
そして死んだアンデットはどうなるのだろうか? せめて封印出来ればいいのだが…
何にせよ、金井とは正当なバトルファイトで決着をつけたかった。
(神聖なバトルファイトを汚した者を許すわけにはいかんな…)
拳を強く握り締め、主催者に対する怒りを燃やした。
そして、さらに不満なのは志村に対して感じる違和感だった。
(何故だ…? 私は一体、奴に何を感じているんだ…?)
自分でも理解出来ない違和感に苛立ちは増す一方だった。


長田結花の思考
(海道さん…)
皆の話もろくに頭に入らなかった。ただただ強い悲しみが襲った。
何故海道さんが死ななければならなかったのか? 殺されたのか? だとしたら誰に?
(私はここで何をしているんだろう?)
オルフェノク、人外の存在でありながらまだ人であろうとしている。
人より強い力を持っていながら、それを隠し、欺き、守られている。
(今はみんな私を守ってくれてるけど…もし私がオルフェノクだって知ったらどうするんだろう…?)
イブキさんや五代さんや志村さん。優しい人間は多いが、彼らがもし真実を知ったら? 自分を待つのは生か死か。人間を信じていいのか。
(教えて…海道さん…啓太郎さん…)
ブレスを押さえながらただただ下を俯くことしか出来なかった。


五代雄介の思考
(剣崎さん…志村さんという心強い仲間も出来ました。他にもヒビキさんや一文字さんにハナさん、手塚さん…みんな正義のために闘っています。)
握手を交わしながら目の前の青年に笑顔を振り撒く。
(剣崎さんの分まで、俺…頑張ります!)
321名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/29(水) 18:56:57 ID:ckOgTE/l
322それぞれの思考  ◆WBRXcNtpf. :2008/10/29(水) 18:57:36 ID:9P9MKnis
志村純一の思考
(まったく…人間は本当に馬鹿だな…)
簡単に人を信じ、騙される。
微笑みの仮面に真実を隠しながら握手をしているというのに。
剣崎に桜井。どちらの情報ももうばらまけなくなったが、さほど意味はない。
既に信頼を得つつ集団に紛れ込むことに成功したのだから。
(まあ…若干の不安は残るがな…)
自分に向けられる懐疑の視線を確かに感じる。ヒビキ、一文字、ハナ。
(カテゴリークイーンも何か怪しんでいるようだし、下手な動きは出来ないな…)

イブキの思考
(ヒビキさんにも会えたし、心強い仲間も増えた。僕ももっと頑張らないとな…)
そこまで考えて茶を口に含んだ。
(でも…ヒビキさんに竜巻貸すのは心配だな…)

「話もまとまったみたいだし…行こうか!」
ヒビキの言葉を皮切りに動き出す面々。
集まった9名の戦士は目的によって2つのグループに分けられた。
志村と手塚を急いで病院へ連れて行くグループと、乃木の指令通りに放送局へ向かうグループだ。
「じゃあ、放送を終えたら病院で落ち合いましょう」
「了解!」
ヒビキが五代に微笑み返すと一同は動き始めた。それぞれの思惑を胸にして。
323それぞれの思考  ◆WBRXcNtpf. :2008/10/29(水) 18:58:16 ID:9P9MKnis
Aチーム 病院急行

【日高仁志(響鬼)@仮面ライダー響鬼】
【1日目 現時刻:日中】
【現在地:D-5 山道沿いの休憩所】
[時間軸]:最終回前
[状態]:顔面に傷、腹部に中度の火傷、背中にダメージ、30分変身不可(響鬼)、強い決意。
[装備]:変身音叉・音角@仮面ライダー響鬼、劣化音撃棒×2、音撃増幅剣・装甲声刃@仮面ライダー響鬼
[道具]:基本支給品一式(着替え1着と元の服を含む)、野点篭(きびだんご1箱つき)
    釘数本、不明支給品×1(確認済)、「竜巻」(HONDA Shadow750)
【思考・状況】
基本行動方針:出来るだけ多くの仲間を守って脱出
1:志村、手塚の治療の為、病院を目指す。
2:ダグバは放置できない。
3:別行動中の仲間に対する心配。
4:もっと仲間を増やす。
5:新たな仲間を信頼。志村は一文字の判断に任せる。

[備考]
※猛士の剣は音撃増幅剣・装甲声刃に変化しました。
※装甲響鬼に変身するには響鬼紅の制限が解除されないとできません(クウガ、ギルスと同じ制限)。
※折れた音撃棒は修理されましたが、多少品質が落ちます。
※手塚から一文字(R)と志村に瓜二つな敵が闘っていたという話を聞き、半信半疑です。
一文字隼人@仮面ライダーTHE FIRST】
【1日目 現時刻:日中】
【現在地:D-5 山道沿いの休憩所】
[時間軸]:FIRST終了後。
[状態]:全身に強い衝撃、リジェクションによる負荷と苦しみ、
[装備]:特殊マスク
[道具]:基本支給品、ホンダ・XR250(バイク@現実)
【思考・状況】
基本行動方針:バトルロワイアルからの脱出
1:本郷、あすかの分まで必ず生き抜く。
2:出来る限り、戦闘は避け状況を把握する。
3:余裕があれば首輪を回収に行く。
4:俺や本郷と同じ名前……偽者か、それとも?
5:志村を注意視。共に行動し、見極める。
[備考]
※死神博士の事を自分を改造した老紳士だと思っています。
※FIRST終了後の参戦のため、風見志郎の存在を知りません。
※変身解除の原因が、自身のリジェクション(改造手術による後遺症)によるものだと考えています。
※首輪について:
 金属製のフレームに吸音用の穴と紅いダイオードが一つ。詳細不明。
 さほど重くなく、表面にはスマートブレインのロゴがプリントされている。 
 無理に外そうとしたり禁止エリアに入ると起動、装着者は灰になる。
※自分が戦った高笑いの男(志村)は戦いに乗っている、また策謀を巡らせている可能性を考えています。
※夢の内容はおぼろげに覚えています。
324名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/29(水) 18:58:20 ID:ckOgTE/l
325名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/29(水) 18:58:53 ID:ckOgTE/l
326名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/29(水) 19:03:24 ID:Kz3iRwH6
327代理投下◇WBRXcNtpf:2008/10/29(水) 19:04:41 ID:ckOgTE/l
【手塚海之@仮面ライダー龍騎】
【一日目 現時刻:日中】
【現在地:D-5 山道沿いの休憩所】
[時間軸]:死亡直後
[状態]:気絶中、胸に一文字の大きな傷、右上腕部に斬撃による傷(応急手当済)。全身に疲労とダメージ。
    30分変身不可(ライア、サソード)
[装備]:無し
[道具]:基本支給品、マシンガンブレード@仮面ライダーカブト、サソードヤイバー@仮面ライダーカブト、強化マスク
【思考・状況】
基本行動方針:運命を変えないように何としても城戸を守り抜く。
1:治療の為、移動するための体力を回復し、病院を目指す。
2:志村、ヒビキと共に城戸と合流、城戸の力となる。
3:自分にそっくりな男、一文字(R)への興味。出来れば本郷(R)の死を伝える。
4:夢の内容に動揺。

[備考]
※城戸が自分と同じ時間軸から連れてこられたと思っている為、城戸が死ぬ事は運命を変えられなかったことに相当すると考えています。
※サソードゼクターに選ばれ、仮面ライダーサソードへと変身できます。 但し、キャストオフ、クロックアップの方法を知りません。
※本郷の言葉から一文字隼人、風見志郎、ハナ、志村純一、クウガ、ダグバの事を知りました。
※携帯にデータが残っていたため、死亡者と禁止エリアについては知っています。参加者の蘇生に関しては知りません。
※志村から一文字(R)と志村に瓜二つな敵が闘っていたという話を聞き、信じています。
※傷には応急手当が施されましたが、依然きちんとした治療を受けなければ危険な状態です。
※ライアのデッキを志村に貸しました。
328名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/29(水) 19:27:00 ID:RI+CmON5
329名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/29(水) 22:14:02 ID:woKMitLu
どうした?規制喰らったのか?
330名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/29(水) 22:53:50 ID:RI+CmON5
それなら避難所で大丈夫なんだが…何故か1レスで止まってるな
331名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/30(木) 08:31:38 ID:BQyJby5K
投下中にショッカーに攫われたとみたw

冗談は置いといて、どうしたんだろうか
332 ◆WBRXcNtpf. :2008/10/30(木) 10:42:36 ID:tcpZXwjg
ルータがいかれてました。すみません。
これから続きを投下します。
333それぞれの思考 ◆WBRXcNtpf. :2008/10/30(木) 10:43:47 ID:tcpZXwjg
【志村純一@仮面ライダー剣・Missing Ace】
【1日目 現時刻:日中】
【現在地:D-5 山道沿いの休憩所】
[時間軸]:剣崎たちに出会う前
[状態]:腹部に重度の火傷(応急手当済)、首に絞められた跡、全身に疲労とダメージ。30分変身不可(グレイブ)
[装備]:無し
[道具]:支給品一式、ラウズカード(クラブのK、ハートのK)@仮面ライダー剣、蓮華のワイヤー内蔵型指輪@仮面ライダーカブト、
    ライアのカードデッキ@仮面ライダー龍騎
【思考・状況】
基本行動方針:人間を装い優勝する。
1:治療の為、病院を目指す。
2:もう慢心しない。ダグバなどの強敵とは戦わず泳がせる。
3:馬鹿な人間を利用する。鋭い人間やアンデットには限りなく注意。
4:誰にも悟られず、かつ安全な状況でならジョーカー化して参加者を殺害。
5:橘チーフを始め、他の参加者の戦力を見極めて利用する。自分の身が危なくなれば彼らを見捨てる。
6:『14』の力復活のために、カテゴリーKのラウズカードを集める。

[備考]
※志村は橘から『仮面ライダーブレイド』の存在は聞いていますが、ライダーシステム資格者が『剣崎一真』という事は知りません。
ですが、志村は此処に連れてこられる前に独自に調査を行い、剣崎一真がブレイドであるいう事、彼の顔なども知っています。
※城戸、本郷(R)に『白い怪物と剣崎一真は共に殺し合いに乗り、尚且つ組んでいる』『桜井侑斗は危険人物』と話しました。
※手塚に一文字(R)と闘っていたのは自分ではなく自分に瓜二つな男だと話しました。
※傷には応急手当が施されましたが、依然きちんとした治療を受けなければ危険な状態です。
※ライアのデッキを借り受けました。
334それぞれの思考 ◆WBRXcNtpf. :2008/10/30(木) 10:45:32 ID:tcpZXwjg
Bチーム 指令遂行
【城光@仮面ライダー剣】
【1日目 現時刻:日中】
【現在地:D-5 山道沿いの休憩所】
[時間軸]:40話、トライアルについて知った後
[状態]:膝などに軽い擦り傷。腹部に裂傷(中程度:応急手当済み)。
[装備]:カードデッキ(ファム)
[道具]:基本支給品・トランシーバーA・ラウズカード(スペードQ/K)
[思考・状況]
基本行動方針:このゲームから脱出する。主催にはバトルファイトを汚した罰を与える。
1:北條奪還のため、まずは『青いバラ』『首輪』の入手、『放送』の指令を遂行。
2:他の参加者とは必要以上に関わる気はない。邪魔ならば排除するが基本的に放置。
3:剣崎の死、北條の言葉、乃木との戦闘から首輪制限下における単独行動の危険性を認識。
4:五代の態度に苛立ちつつ、僅かに興味。 志村に違和感。
※以下の様に考えています
青い薔薇は首輪と関係がある
ライダーの強化フォームはなんらかの制限が掛かっている。

【五代雄介@仮面ライダークウガ】
【1日目 現時刻:日中】
【現在地:D-5 山道沿いの休憩所】
[時間軸]:33話「連携」終了後
[状態]:全身打撲、負傷度大(応急手当済み)、強い決意。
[装備]:警棒@現実、コルトパイソン(残弾数6/6:マグナム用通常弾)
[道具]:警察手帳(一条薫)
[思考・状況]
基本行動方針:絶対に殺し合いを止め、みんなの笑顔を守る
1:北條を救出するために、乃木の命令を可能な限りで遂行する。
2:白い未確認生命体(アルビノジョーカー)、ダグバを倒す。
4:金のクウガになれなかったことに疑問。
5:剣崎の分まで頑張って戦い、みんなの笑顔を守りたい。
※第四回放送まで、ライジングフォームには変身不能
※ペガサスフォームの超感覚の効果エリアは1マス以内のみです。また、射撃範囲は数百メートル以内に限られます。
※ドラゴン、ペガサス、タイタンフォームには変身可能。ただし物質変換できるものは鉄の棒、拳銃など「現実に即したもの」のみで、サソードヤイバーやドレイクグリップなどは変換不能。
※葦原涼の「未確認生命体事件」の終結を聞き、時間軸のずれに疑問を持ちました。
※葦原涼の名前及びギルスの変身能力について知りません。
335それぞれの思考 ◆WBRXcNtpf. :2008/10/30(木) 10:47:19 ID:tcpZXwjg
【和泉伊織(威吹鬼)@仮面ライダー響鬼】
【1日目 現時刻:日中】
【現在地:D-5 山道沿いの休憩所】
[時間軸]:35話付近
[状態]:多数箇所に負傷、腹部に裂傷(小程度)。左肩を打撲。
[装備]:変身鬼笛・音笛、音撃管・烈風、陰陽環 、ディスクアニマル(アサギワシ)
[道具]:携帯電話、北條のデイパック(地図・マグライトを除く基本支給品)
[思考・状況]
基本行動方針:戦いを止める。
1:長田結花を庇護対象の未成年者と認識。安全を確保する。
2:北條を心配。でもいきなり指令って?
4:友好的な参加者と合流。 ヒビキに会えて嬉しい。
6:あの怪人(バダー)、バイク好きなんだな。
※備考
※陰陽環の式神(火の鳥)は使用者から数メートルの距離までしか飛べません。また殺傷性能が低く制限されています。
※なぜか変身しても服が消えません。
※乃木の言葉から、長田結花が何らかの秘密を抱えているかもしれないと考えています。

【長田結花@仮面ライダー555】
【1日目 現時刻:日中】
【現在地:D-5 山道沿いの休憩所】
[時間軸]本編第41話終了直後(武装警官を一掃する直前)
[状態]小程度の負傷、人間への不信感(軽度) 、海道の死に対する強い悲しみ。
[装備]無し
[道具]ライダーブレス(ケタロス:資格者不明)、トランシーバーB、青い花びら
[思考・状況]
基本行動方針:木場と合流する
1:「人間ではない」城光に若干の好意。「人間」の「警官」北條には強い警戒心。
2:イブキや他の人間に嫌われたくない。オルフェノクであることは極力隠す。
3:指令なんて、どうしたら……?
336それぞれの思考 ◆WBRXcNtpf. :2008/10/30(木) 10:48:07 ID:tcpZXwjg
【ハナ@仮面ライダー電王】
【1日目 現時刻:日中】
【現在地:D-5 山道沿いの休憩所】
[時間軸]:劇場版・千姫と入れ替わっている時
[状態]:疲労ある程度回復、悲しみと強い決意、
[装備]:冥府の斧@仮面ライダーアギト、カードデッキ(ナイト)
[道具]:支給品一式、洗濯ばさみ、紙でっぽう、戦国時代の衣装、ミニカー7台
【思考・状況】
基本行動方針:脱出する
1:仲間と行動。後ほどヒビキたちと合流
2:仲間を探して一緒に脱出する
3:イマジンに対する自分の感情が理解出来ない
4:危険人物に気をつける
5:モモタロスの分まで戦う
6:志村が妙に胡散臭い
337それぞれの思考 ◆WBRXcNtpf. :2008/10/30(木) 10:48:50 ID:tcpZXwjg
以上です。途切れ途切れですみません。
338名無し・1001決定投票間近@詳細は自治スレ:2008/10/30(木) 12:41:42 ID:U+ea1ypT
投下乙です。
遂に大型対主催チーム結成!!…とはいきませんねw
それだけ多くのやるべきことが残されているということですね
ただ地味にハナとチーム引き離された一文字www
このチーム分けがどんな結果を招くか楽しみです!!

それでいくつか指摘を。
海道の表記→海堂
コルトパイソンの弾数→前話状態表の5発から補充の機会は無いのでは?
文中の「敵対的人物」→直接戦闘したギルス、カイザ、デルタについては?

とりあえず目についたのはこの辺りです
339 ◆N4mOHcAfck :2008/10/30(木) 16:15:56 ID:2UbsFt1L
今回の投下を見てようやく拙作の状態表で弾数が間違っていたことに気付き、
本日の昼に修正しておりました。時間が無く連絡が遅くなり申し訳ない。
弾数が6/6なのはこちらの状態表を転用した為かと思われます。
◆WBRXcNtpf.氏ならびに>>338氏、申し訳ありません。


>◆WBRXcNtpf.氏
投下乙でした。再編成で生まれた二つのチーム、果たしてどうなるのか……
五代が志村に見事丸め込まれちゃってるのもw
病院には死神博士と真司がいますが、一文字と手塚は再会するのかどうかも楽しみです。
340名無し・1001決定投票間近@詳細は自治スレ:2008/10/30(木) 18:17:58 ID:U+ea1ypT
>>339
そうでしたか
お二方に迷惑をかけてしまい本当にすいません

氏の投下も楽しみにしてます
341名無し・1001決定投票間近@詳細は自治スレ:2008/10/30(木) 18:45:29 ID:16rdXFJf
投下乙です。
疑惑や不安が入り乱れる、良繋ぎだと思いました。
GJ

>>339
了解しました。
投下のほうも、楽しみにしています。
342それぞれの思考  ◆WBRXcNtpf. :2008/11/01(土) 15:41:26 ID:WTmrsqcT
>>318の敵対人物一覧を以下のように修正

白い怪物、羽根の生えた怪物、研究所を占拠してる男、
大喰らいの牙王、イカの化け物、赤い岩の化け物、
バイクに乗った怪人、黄金のライダーに変身して一文字と闘った志村そっくりの男、
白い怪物と組み、剣崎一真と名乗った男、Y字の角が生えている緑のライダー、
三角のマークがついた黒いライダー、×印の黒と黄色のライダー。
343名無し・1001決定投票間近@詳細は自治スレ:2008/11/01(土) 16:05:40 ID:ROtpcSJq
>>342
修正乙です。
特に問題はないかと。
344 ◆N4mOHcAfck :2008/11/03(月) 18:40:44 ID:U+xpsDKd
遅れて申し訳ありませんでした。
久しぶりの投下いきます。
345肯定、否定――my answer ◆N4mOHcAfck :2008/11/03(月) 18:42:18 ID:U+xpsDKd
 出入りのため、既に五度跨いだ研究所の敷居。本来ならば回を重ねる度に軽くなっていくべき北條の表情は、これまでに無い深刻さを醸し出していた。
 それもそうだろう。彼の横には過去五回の同行者以上の実力と、威圧感を兼ね備えた存在が帯同しているのだから。
 ペースアップを促すように、彼の斜め下――すなわち、隣人の足元からはコン、コンと一定感覚で音が鳴る。
 自分よりほんの僅か歩行速度で上回る男が、その歩みに合わせて杖をついているからだろうと、張り詰めた聴覚で判断する。
 乃木にそういった意図が無いと理解していながらも、北條は少しだけ早く歩いてしまう。
 少しでも、一つでも――たかが歩行ペースだとしても、何かしらの形で主導権を握りたい一心の現れだった。
 工場での探索。ミスを侵し、目的達成に失敗すれば、次の瞬間には首が胴体から離れることが必至。逆に成功しても、度合い次第で北條は用済みと化してしまう。分の悪い賭けだ。
 その悪い印象を自身から拭い去ろうと必死だからこそ、北條は実質的には歩行ペースを乃木に掌握されていると気付かないでいる。
 その様子に乃木は一考し、冷めきった目を北條へ向け呟く。

「……それにしても」
「?」
「思った以上に、参加者の諸君に出くわさんな」
「……それだけ、他の方々が南に集中しているのでしょう。邪魔が入らず好都合ですよ」

 それは本心の言葉ととれるだろう。実際問題、戦闘を繰り返していれば他の作業を行う余地は皆無。
 ラットを見つけることができたのも、ファイルを入手できたのも、辛うじて述べられる程度の所見を捻り出せたのも、こうして更なる進展を求める段階へ移行しているのも――
 ――全ては、彼らの行動を妨げる存在が四半日現れなかったことに起因しているのだ。

「南に参加者が集まっているということは、お使いに出した君の仲間が他者と接触する可能性が高いということでもある。かえって不都合じゃないのか」

 余裕を持った口調から、あくまでも「自分にとっては」都合が悪い訳ではないと示唆を与えてくる乃木に対し、北條の心内で嫌悪感が募る。
 だがそれも否定できない現実だ。乃木の手に掛かれば、首輪の入手など苦にもならないだろう。
 青い薔薇に関しては、正直なところ入手する気があるのかすら怪しいと言えた。
 明確に「参加者から奪う」という入手法が明らかにされている首輪と違い、青い薔薇に関して御使いに出た四人は何も知らされていないのだ。
 そんな状況で彼らが入手できるものならば、乃木自身の手でも入手できるだろうし、代役を立てても可能だ。
 彼らが死んでも、乃木に大きな損失は無いのだ。

「確かに危険人物と遭遇する可能性もありますが、我々のような行動をとっている集団と合流することも考えられます。……私は、事態の好転に賭けますよ」
「ならば、この話はここで一度打ちとめにしておこう。一時間と経たずに次の放送が行われる。それで相手の出方を見るとしよう」

 男達は駅へと向かう足を止めない。そこに纏わり絡みつく二つの思惑を知るのは、当事者たる彼らのみだ。
346肯定、否定――my answer ◆N4mOHcAfck :2008/11/03(月) 18:43:15 ID:U+xpsDKd


「…………………スゥー…………ッハァーー……よいしょ、っと」

 深く息を吸い込み、目一杯吐き出す。幾度か繰り返した後に、ダンッ、といった一際大きな足音と共に体を起こす。
 曲がっていた膝が、ピンと一直線に伸びると、加賀美の視界がグラつきを見せた。
 これも心身共に疲労が強まっている証か。片膝が再び折れ曲がろうとするのを堪えて、視点を安定させる。
 未だ上下に振動して酸素を求める両肩は落ち着きを取り戻さないが、気にしている時間は残されていない。
 右腕でデイパックを持つと、反対の袖で額を支配する汗を拭い去る。左腕が再び垂れ下がると、加賀美は列車の四両目を見やる。
 今彼が立っているのは三両目だから、丁度進行方向の反対だ。戦闘があったこの車両と違い、ごく普通の景色が広がって――いるのだが、一つ違和感があった。

「……なんで、開いてるんだ……?」

 一見平穏な四両目の中で、一箇所だけ窓が開いているのだ。 ――更に、その下方には放置されたデイパック。
 それが意味することを頭で理解するよりも、早く。加賀美は両の足へと移動を促していた。
 小走りで四両目へと入り込む。バイクに乗ったグロンギ――バダーが開けた三両目の大穴から入り込む強風は、列車が減速する最中も加賀美の追い風と化していた。
 開いた窓、放置された荷物――……この列車を利用した誰かが、窓を開けて抜け出したと考えるのが普通だろう。
 それも、デイパックを放置しなければならない程の状況であったことを想像するのも容易い。
 加賀美の脳内を駆け巡るのは、それが「どのタイミングで起こったことなのか」という疑問。
 いくら彼が先刻まで風間――と勘違いした風見志郎のことに集中していたとはいえ、この状況下で隣の車両に気を配らないなどということはありえない。
 おそらくは自分達が乗る前なのだろうと予想しながら、空いている左手で置き去りのデイパックを拾い上げる。

「少し重いな……」

 疲弊した加賀美の体にとっては、多少の重量差も死活問題である。
 多少だが自分がこれまで持っていたデイパックより重いらしい。
 利き腕である右腕と荷物を入れ替え、そのまま四両目最後尾のドアへ向けて歩く。

「早く風間を追っかけないとな……」

 列車が止まった反動で、一瞬だがハッキリと分かる範囲で加賀美の体が大きく揺れ動いた。
 身をもって己の疲弊振りに気付いたのか、彼は開いたドアからホームで出て数刻と跨がず、その場へ座り込む。

(こういう時になぁ……)

 不意に孤独へと襲われると、どうしても天道のことを思いださずにはいられない加賀美だ。
 自力では打ち倒せない強敵達、自身の命が掛かった局面で曝け出してしまう己の甘さ、逆立ちしても解き放つ手段が読めない首輪。
 言葉や態度を用いての説得でも止められなかった仲間の決意に、再開という願いを叶えてやることも無く儚く散らせてしまった新たな友の命。
 ここまでの半日を思い起こし、加賀美は思う。これらのメモリーに立ち会っていたのが自分ではなく、天道であったなら。
 この中の幾つかは……いや、もしかしたら全てを解決していたかも知れない。
 そして、今後似た場面に出くわした時、或いは継続されている問題と再び向き合わなくてはならなくなった時――

(――俺は、今度こそ俺自身の力でそれを解決できるのか?)
347肯定、否定――my answer ◆N4mOHcAfck :2008/11/03(月) 18:44:10 ID:U+xpsDKd


 時間通りにホームへと滑り込んでくるパンタグラフの無い列車を見て、北條が僅かに表情を固くする。
 一両目に乗るため、彼らはホームの端側に立っていたのだ。
 下手をすればこのタイミングで戦闘が発生する状況であり、万に一つの油断も防がなければならない。
 停車と同時に両サイドへとドアがスライドすると、乃木が堂々たる態度でもって乗り込みにかかる。
 慌てて北條もそれに合わせるように列車内へと入り込み、手近な椅子へと腰を掛けた。
 奇しくも、この二人が入れ違うように列車の最後尾から下車した参加者に気付くことはなかったのだ。

 動き出して間もなく、他の参加者が乗り合わせていないことを確認すると、北條は深く腰掛ける。
 向かい側で腕を組む乃木との会話は、三両目に大きく開いた風穴の件のみで、それ以上両者が何かを話そうとはしなかった。
 北條は「散歩」の具体的な目的を自分からは話さず、乃木もまた特別何かを問いただそうとはせず。
 今は二人、微振動を繰り返す揺り篭の中で、各々の思考を行うのみだ。

 最中、北條が一つの決心をつけた。そこから派生する今後の指針を組み立て、話を切り出すタイミングを計る。
 工場前の駅で下車すると、ホームに据え付けられたベンチの前でデイパックを降ろし、至って真面目に、既にベンチへ座り込んでいた乃木へ話しかける。
 
「ところで、一つ希望したいことがあるのですが……」
「言ってみたまえ。……もっとも、内容次第だがな」

 体中を駆け巡る寒気が偽りの存在でないと理解した上で、その感覚に身を委ねることも振り払うこともせず、北條は息を飲む。
 内容次第では却下されるどころか、その場で紅く染まるのは北條とて承知の上だ。が、迷うことなく両唇を紐解く。
 必ず提案は通る――確信を胸に抱いて、一字一句を正確に聞き取らせるように丁寧な発声を行う。

「しばらくの間、この場に留まりませんか?」
「ほう……」

 乃木の射抜くような視線には、明らかに失望の一種が含まれていた。突拍子もない提案には流石に呆れたのだろうか――いや、違う。
 態度とは裏腹に、その心理には要求への興味が隠蔽されている。一目見ただけでは真意の見えない笑みは、前回の嘲笑と一括りにできる類のものだと認め、北條は迷わず続ける。
 前回同様間髪入れずに言葉を紡ぎ、それでいて発言に絶対的な自信を持っているということも態度でアピールするのだ。
 
「目の前の首輪に餌付けされるあまり、その奥で控えている問題に目を向けていなかったものですから」

 ポケットから支給品の携帯を取り出し、待受画面を乃木へと向ける。

「貴方が先程言った通り、後三十分強で、調度良い機会が訪れます」
348肯定、否定――my answer ◆N4mOHcAfck :2008/11/03(月) 18:45:07 ID:U+xpsDKd

 発言と合わせて、乃木は北條が正午に行われる放送を待っていることを理解した。
 そして、その発端となる発言は自分が行っていたことも。
 奥に潜む大事が主催だという思考が併せて沸き上がり、しばしの間顎を引く。
 首輪を解除したとして、どのように在るべき処へと帰るのか。
 ZECTのライダーシステムとは明らかに異なる変身機構を備えたカードデッキ、それにより使役される生命体。
 ワームとは別の異形へ姿を変える、人間の姿をした参加者達。当然一つの世界、時間から集った訳ではないだろう。

(参加者の諸君を集めた「力」ならば、遊戯の最中でも脱出が可能か……?)

 自問するが、自答は行わない。「力」の影も形も分からない状況で考えても無駄だからだ。
 ZECTの切り札――忌ま忌ましいカブトの所有物であるハイパー・ゼクター――ならば。
 ……とも乃木は考えたが、島に来てゼクターやその資格者達との邂逅が無い状況で過度の期待を寄せることもできない。

(と、なれば……)

 引いていた顎を元の角度に戻し――…………
 まるで仮面でも被ったかの様に表情を固定しつつも、『早く答えろ』と言わんばかりに催促の意志を臭わす北條の瞳に焦点を合わせ、返事を返す。

「好きにしたまえ。俺としても、連中のスタンスを見極めるのは無駄では無いというのは前に話した通り……それにだ」
「……?」
「俺はこの散歩とやらの詳細を聞かされていないのだよ。……水源を辿るのに大事を諮る必要があるというのなら、止める理由は無い」

 北條は乃木の発言を、今回の探索において自身へと全権を委譲するものとして受け止める。無論、責任も全て彼が負わされることも意味しているが。
 今後はいかに時間を引き延ばし、それでいて有力な首輪解除の手掛かりを得るか、だろう。
 携帯を再び展開、視線を一瞬だけ送るや否や、北條は両目を閉じ、ベンチの固い背もたれに身体を預けた。

「では放送まで、休ませてもらいますよ」
「この状況で寝ようとするとは……危機感があまり感じられんが」

 うっすらと双眼を開き、緊張感を保持したまま北條は呟く。

「少なくとも……一人でいるよりは、貴方程の実力者に同行している方が私も開き直って振る舞えますからね」
「ククク……過度な信頼を寄せるのは止すべきだぞ?」
「ここまで何も聞かずに足を運んで来ておきながら、私をこの場で殺す程、貴方は愚かではないでしょう」

 一秒でも時間が惜しい、という気を発する北條が沈黙したのを確認すると、乃木は地図と携帯を両手に、改めて現状の禁止エリアを確認する。
 現時点で与えられている情報より、何か得られることはあるのか。
 脱出への最短ルートは、当初の考え通り勝者となることか、或いは中途での離脱か――
 乃木もまた、目の前の人間が探っている水源への道筋の深さ、複雑さに薄々気付き始めていた。
349肯定、否定――my answer ◆N4mOHcAfck :2008/11/03(月) 18:46:07 ID:U+xpsDKd


『は〜い、みなさんこんにちは……』

 両肩の荷物が音を立て土着する。振動音に導かれるかの様に携帯電話を開いた加賀美は、そこから零れ出る軽はずんだ女の声にありありと不快感を示した。
 自分達は殺し合いを継続させられている――加賀美にとって、己を取り巻き続ける現実と、未だその渦に流され続けている事実を突き付けられた結果となる。

「この野郎……」

 放送の主――スマート・レディの声があまりにもカンに障るものだから、加賀美は思わず携帯電話を身近で直立した樹木へ投げ付けようとする。
 それはキャッチャーのミットへと速球を投げ付けるピッチャーのフォームを彷彿とさせたが、彼の掌を球体ならぬ長方形が離れることは無かった。

『では、前回から今回の放送までに亡くなられた方のお名前を発表します……』

 閉じられた状態でも引き続き流れていた放送の一要素、『死者の発表』。今回は何人の名がコールされるのか、そしてその中に知り合いは含まれているのか。
 ――前回の放送で最も信頼し、尊敬していた友の名を告げられた。そして今から、自分が守れなかった新たな同志の名を呼ばれることも知っている。
 そんな加賀美が発表を無視できる筈も無い。案の定再び携帯は丁寧に開かれ、同時に女の口から、ハッキリ軽やかに死者達の名が紡がれた。

 ――二番目に、彼の知る名は呼ばれた。出会って四半日と僅かの縁なのに、その存在の喪失を認識するのは今が初めてでは無いのに、辛苦が彼に重くのしかかる。
 だが、加賀美に送られた結果はそれだけで無い。いくつかの希望もまた、彼の背に身を宿す。
 影山、風間という二名の仲間が健在だということ。
 デネブが拡声器を使ってまで合流しようとした、彼にとってかけがえの無い存在である桜井侑斗、そして同様に彼の仲間であるハナもまた生存している――――。
 これで何度目だったのろうか。思い出す度、確認する度に輩出される悲壮は、もう脱ぎ捨て無ければならない。
 希望を宿し、次の段階へ進むべき時――進化を求められた瞬間は、今なのだから。
 もし神がいるとするならば、それは彼の決意にどのような未来を見せようというのか――導かれるように研究所へ向かう加賀美に、知る由などありはしなかった。
350肯定、否定――my answer ◆N4mOHcAfck :2008/11/03(月) 18:47:13 ID:U+xpsDKd


 乃木は改めて北條へと視線を向ける。ほんの数分前まで完全に休息へ没頭していたかに見えた目の前の人間。
 いつの間にか設定していた携帯電話のアラームで即座に目を開いてから、彼はその面影を微塵も残していない。
 何かを呟き、地図に印をつけながら冷静に放送へと耳を傾ける姿は、「北條が弱い人間である」という前提を踏まえた上でなら、関心に値するものだ。
 脱落した弱者達の名を聞きながら、駅周りに気配が無いか伺う乃木。死者の発表など、彼には全くもって意味の無いもの。
 戦闘中に一度や二度聞いたかどうかというレベルの、ライダー資格者の断片的な呼名――
 そんなものが仮に呼ばれたところで、彼に反応を求めるのは酷といえるのかも知れない。
 乃木自身も、名を知る知らぬに関わらず自分から生死確認を望みなどしなかった。
 彼にとって資格者達は、「邪魔をするなら容赦しない」程度の優先順位しか持たないのだから。

『…………何をしたって最後に生きて帰れるのは、どうせ一人だけなんだから。きゃは。』

 放送が終わり、刹那の沈黙。どうしようもなく女の声、振る舞い、姿が二人の癇に障ったが、苛立ちを見せるのも勿体無いだろう。

「…………仲良くしていると、後からとっても辛くなるそうだぞ?」
「なら、今ここで私を殺しますか」
「遠慮しよう。空腹時にとる軽食など、余計腹を虚しくさせるだけだからな。
 ……放送を踏まえた上での君の意見を聞く方が、幾分かは価値がある」

 言い終えたと同時に立ち上がり小規模かつ無人の駅員室へと、黒装束を翻し乃木は歩む。
 最初からそちらへ行くつもりがあるのなら、何故ベンチに腰掛けたのかと北條は心底問い詰めたい衝動に駆られる。
 一瞬と経たず後の祭だと気付くや、デイパックと共に移動する。

「…………とりあえず、手に入った情報を整理しましょう」
「今回呼ばれた死者は七人。「彼ら」は……無事だったのかね?」
「少なくとも、私が知る「彼ら」の名前は呼ばれませんでしたが」
「なら、良い……しかし、もう少し活発化するかと思ったがな」
「それには同感ですね。我々の周りではこの六時間、ほとんど戦闘行為はありませんでしたから」

 二人が研究所に滞在していた期間、彼らが認知している交戦は二度。
 一つは乃木が北條の同行者――和泉伊織、長田結花、城光に五代雄介を加えた四名に研究所内で勝利した戦い。
 結果的に北條の介入によって、「脱落者」は出ていない。
 もう一つはそれから数刻後、長田結花がトランシーバーで助けを求めたことから発覚した研究所外での戦闘。
 これも一つ目と同様、死者が出ていないことは後の交信で二人の知るところとなっていた。
 その後四名は南下しており、研究所周りは至って平穏だった。

「禁止エリアで都市部から別方面への列車移動を早々に潰し、南北の中央を横切るE、Fライン上から二つ封鎖……
 西が丘陵だということを考慮すれば、必然的に連中が集まるのは都市部か東の駅周りか……」
351名無し・1001決定投票間近@詳細は自治スレ:2008/11/03(月) 18:48:12 ID:ZZcMCVL0
支援ー
352肯定、否定――my answer ◆N4mOHcAfck :2008/11/03(月) 18:48:13 ID:U+xpsDKd

 乃木が北條の広げた地図上の研究所に、人差し指を突き立てる。
 そこを始点とした爪先は、朱色で記された「道路」をなぞって行く。
 午前九時に禁止エリアで指定されたE-5、そこから遡って二時間前の七時に指定されたF-7の間を通る様に進むと、ショッピングセンターに行き着く。
 指は地図から離れ、その軌道を追っていた北條の視線は乃木の顔へと舞い戻る。

「……研究所――ショッピングセンター間に絞られそうなものだがな」
「…………実際問題、多くは挙げられたポイントに滞在しているか、そこを移動目標にしている筈です。
 ただ、人が集まっても、殺しあうとは限りませんが」
「わざわざ参加者間で合流を行わせ、集団行動できるように仕組んでいるとでも?」
「それは判断しかねます。……が、単純に集団が結成されたり、首輪解除の手掛かりを探される
 ということだけでは、彼らにとっては毒と成り得ない」

 自分達が研究所で青いバラと鼠の灰化実験に関連性を見出しても、スマート・ブレインという会社が危険な組織だと判断しても。
 こちら側から参加者へ放送を行うことを乃木が画策しようと、主催者から北條は一切の焦りや不安という要素を感じとれない。
 ましてや逆に放送で、既に死人の首輪を外した参加者が存在していることを示唆してくる主催。
 「首輪を外されて構わない」のか、「首輪を外させない自信がある」のか……真意へと切り込むには、駒が圧倒的に足りないと北條は思考する。

「これで一応は、ハッキリした訳だな」
「ええ、我々が一線を越えるまで、彼らは現状を崩さない……まあ当然と言えば当然ですが」

 実のところ、まだ放送に関して気になる要素は存在している。
 「殺し合いを促進させることが目的」としか表向きには思えない禁止エリアが、B-9などという僻地に指定される。
 南から参加者が列車で北へ向かうのは阻止しておきながら、北で自分達が研究所を起点に行う列車移動には一切介入してこない。
 それを北條が言わないのは、乃木の変調というものを察知してしまったからだろう。

「では行こうか、北條君! ……奴らは我々を軽視している――結構なことだ。次の放送の時には、必ず進展というものを見せてやろうじゃないか」

 その言動は、自分達を監視しているであろう主催者へのものか、主催者の掌で踊らされることで傷つけられたプライドへの嘲笑か――いや、両方だろう。
 故に、これ以上の問題定義は火に油を注ぐだけだと北條は判断。
 何れにせよ、首輪の有無に関わらずゲームの優勝者に成り得る実力を持つ男が、首輪解除を最優先課題としているのは事実なのだから。
 主催が動かないのなら、首輪の解除で動かす方向へ誘導するしかない。それが誘導させられているだけだとしても、死へのタイム・リミットを引き伸ばし続けている自分にはそれしかない。
 相手の掌で踊らされているということは、同時に相手と既に触れ合っていることも意味する。
 北條は誰よりも早く次の段階へ進もうとする。それも、可能な限り時間稼ぎを続けた上でだ。
 不意に、一組の男女が北條の脳裏を過ぎる。思わずそんな自分に彼は苦笑しながら。

(私はここへ来て、貴方より優れていることを証明すると誓ったのですからね……)

(もはや早期の脱出だけでは満足しない。スマートブレイン――……この俺を嘲笑ったこと、この手で後悔させてやろう)

 プライドを踏み躙った主催者への怒り。それが過去の方針を僅かながら否定するものだろうと、乃木は迷わない。

 二人の男が心情を交錯させた駅は、再び静寂に包まれようとしていた――
353肯定、否定――my answer ◆N4mOHcAfck :2008/11/03(月) 18:48:52 ID:U+xpsDKd
【乃木怜治@仮面ライダーカブト】
【1日目 日中】
【現在地:B-5 工場付近の駅】
[時間軸]:43話・サソードに勝利後(カッシスワーム・グラディウス)
[状態]:健康。
[装備]:カードデッキ(王蛇)
[道具]: 携帯電話、その他基本支給品×3(乃木、イブキ、結花)、ゼクトマイザー、トランシーバーC
[思考・状況]
基本行動方針:ゲームの早期決着及びスマート・ブレイン打倒
1:首輪解除のため、北條透と仲間の諸君をもう少し泳がせる。
2:主催者側に対して嫌悪感。
3:ZECTの諸君に関しては、接触した次第早めに始末をつける。
【備考】
※ライア・ガイのデッキが健在の為、王蛇のデッキには未契約のカードが2枚存在します。
※ユナイトベントは本編3体の場合しか発動しません。
※変身にかけられた時間制限をほぼ正確に把握しました。
※ZECTライダー資格者に関しての認識は「(TV版)ライダーの外見・名称」「(TV版)資格者の外見」を知っている程度です。


【北條透@仮面ライダーアギト】
【1日目 日中】
【現在地:B-5 工場付近の駅】
[時間軸]:最終話
[状態]:精神的に疲労。 現状に関する若干の恐怖。 主催に対する多大な不安。
[装備]:なし。
[道具]:携帯電話、地図、マグライト、研究所のファイル
【思考・状況】
基本行動方針:無事に帰還し、スマートブレインを摘発する。
1:スマートブレインの危険性を懸念。
2:乃木をうまくだまくらかし、救出を待つ。
3:工場に向かって実験道具の手がかりを探す。
4:長田結花を保護すべき民間人と認識。
5:友好的な参加者と合流、敵対的な参加者を警戒。
【備考】
※首輪の外見についてはほぼ正確に把握しました。ただし、肌に触れている部分を除きます。
※研究所の設備は基礎的な科学知識さえあれば扱える程度にマニュアル化されているようです。
 ただし、あくまで分析結果が自動で出るだけで所見はついてきません。
※ファイルにまとめられた実験資料には、ネズミの灰化実験に
 青いバラとケージに取り付けられた装置が関わっているという結論のみが明記されていました。
※ファイルの内容の真偽は未確認ですが、北條はとりあえず真実であるという前提で行動しています。
354名無し・1001決定投票間近@詳細は自治スレ:2008/11/03(月) 18:49:17 ID:6Cr8kpuS
支援
355肯定、否定――my answer ◆N4mOHcAfck :2008/11/03(月) 18:51:07 ID:U+xpsDKd



「ここが研究所……だよな」

 加賀美が研究所の室内に到達したのは、放送を終えて更に数十分後のことだった。
 敷地内についた時点で、再び緊張の糸が切れ、疲労がどっと押し寄せた為だ。
 天気が良かったものだから、外での休息にも嫌悪感を覚えず、今に至る。
 ようやく対面したロビーで二つのデイパックを降ろし、身近にあった椅子へ腰掛ける。
 一面を見渡し、二度の深呼吸。ガタックゼクターが辺りを旋回したところで、ようやく加賀美が疑問を持つ。

「誰も……いないのか?」

 そう呟くが、反応は無い。北にある数少ない施設だというのに、人気が感じられない事実に加賀美は驚く。

「風間はここにくるつもりじゃなかったってことになるよな……あそこで降りない方が良かったのか……」

 目的地への列車移動という加賀美の提案を受けた風見志郎は、北行きへの列車に乗り込んだ。
 そして路線上に存在する地図上の施設は、研究所、工場、大学の三箇所だ。

(風間に工場は……似合わないよなぁ。そうなると大学かな)

 何れにせよ、今の疲労具合と荷物で軽々しく出向ける場所でもない。
 しばらくはまた足止めか、などとガタックゼクターを眺めた瞬間、ゼクターが回転を止め臨戦態勢へと入った。
 直後にはゼクター特有の独特な電子音。地を跳ねる音。右腕を掲げ、対抗する様に自身の相棒をキャッチするが――

「……一度変身能力を行使すれば、二時間の間は制限が掛かる。ゼクターとてそれに変わりは無い」

 同様に地面を飛び上がる飛蝗――ホッパーゼクターを掴んだ風見志郎が、抑え目の声で宣告する。
 加賀美が途端に笑顔になり、ゼクターを持ったままで椅子から立ち上がる。

「風間……また逢えて良かったよ、本当に」
「身を案じられるのは、私で無くて貴方の方だ。……あの男は?」

 あの男――バイクで列車に突入し、バイクで列車を離脱した男のことを聞かれていると分かって、加賀美は少し俯いた表情になる。

「逃げられた……あのバイクごとな」
「情けない……しかし、徒歩だと考えても駅から時間が掛かりすぎているように思えるが……」
「お前な、次から次へと……疲れたり考え事したりで動けなかっただけだっての」
「……そうか」

 小さく、一言、風見は呟いて。
 片手でゼクトバックルの前面を開き、もう片方に握りしめているホッパーゼクターを、何時でも受け入れられる態勢に。
 再会を喜んでいた加賀美の表情が、唖然としたものへ瞬時に切り替わる。

「お前……」
「私に今ここで倒されるか……」
「!?」

 一度風見は言葉を紡ぐことを止め、一層強く、ギリギリと音を鳴らしてホッパーゼクターを握り直し。
 再び抑揚の無い声で、改めて冒頭から尋ね出した。

「私に今ここで倒されるか、私に今後協力すると誓うか――どちらか選ばせてやる」

 加賀美が思わず後ずさりながら、未だ手中に存在していたガタックゼクターをベルトに通す。
 無駄だと解ると即座にガタックゼクターを開放する加賀美。その瞳は真っ直ぐに風見を見据えていた。
356名無し・1001決定投票間近@詳細は自治スレ:2008/11/03(月) 18:54:05 ID:vnZECxxa
 
357名無し・1001決定投票間近@詳細は自治スレ:2008/11/03(月) 18:54:24 ID:6Cr8kpuS
支援
358名無し・1001決定投票間近@詳細は自治スレ:2008/11/03(月) 19:03:37 ID:ZZcMCVL0
携帯じゃ代理無理だわ
誰か頼む
359肯定、否定――my answer ◇N4mOHcAfck 代理:2008/11/03(月) 19:06:03 ID:vnZECxxa
「お前までそんなことを言うのか……」
「…………………………」

 双方の視線は複雑に絡み付き、解けることを知らない。

「……言った筈だぜ。俺はお前を止めるってな」
「では……」

 風見は加賀美が戦う覚悟を決めたと返答から解釈する。
 戦力として計算していた面も否定できなかったとは言え、若干寂しさを覚えた自分を風見はすぐに振り払う。

「ああ。俺はお前に協力する」

 風見が呆気にとられた顔で加賀美を見返した。
 ハッタリだろうかと疑いを見せるが、本気で言っているらしい。

「……どういった風の吹きまわしで?」

 ゼクターを手放した風見は、ハリケーンへ再び両手を戻す。そのまま返答を待たず、加賀美の横を通りながらそれを押していき、出入り口付近で停車させた。

「どうしたもこうしたも、さっき言ったばかりだ。俺はお前を止める。それが……俺に出来る協力だ!」

 「風間」にこれ以上の人殺しをさせたくなくない。
 天道の意思を継ぐためにも、デネブの願い通り桜井侑斗と合流する為にも、死ぬ訳にはいかない。
 選択肢など元から一つしか存在していなかったのだ。

「……まあ、貴方との決着は直につけることになる。貴方が協力するというならば、それまではそうしてもらおうか」

 風見は言い終えて、手近なソファに腰を落とす。それに合わせて加賀美もまた、もとの椅子に腰掛けた。
 無理にここで襲うつもりは無い――ここまで加賀美を生かしてきた自分の過去を、風見は肯定したかったのかも知れない。
360肯定、否定――my answer ◇N4mOHcAfck 代理:2008/11/03(月) 19:06:40 ID:vnZECxxa
 それに、これで一応は戦力が増えたことになるのだ。自分同様殺し合いに乗っている敵が現れた際には、連携して闘うことも不可能では無いと風見は判断する。
 主催に、殺し合いに抗う為に研究所を訪れる参加者と邂逅することになれば、加賀美が交戦を妨げることも想定できる。
 しかし、それらの者達に風見が自らの手で死を与える必要は無いのだ。
 そう――彼には「切り札」がある。
 ジャンクション駅で既に威力を確認し終えているFOX-7。風見はそれを研究室に仕掛けたのだ。
 風見はゆっくりと支給品の携帯を開く。内臓アプリでコードを打ち込みさえすれば、好きなタイミングで研究室に甚大なダメージを与えることが可能だ。
 例えば――首輪の解析の為に技術者を始めとする参加者が研究室に入った時。
 起爆装置を作動させ、容易く仕留めることができるだろう。
 そんな算段を描きながら、彼は再び携帯を閉じた。本体を見ていると、思わず先程行われていた放送を思い出す。
 ショッカーの裏切り者、本郷猛の死。そしてまたもや名前を呼ばれなかった葦原涼。
 少しばかり物思いにふけりながら、風見は待望する。次なる参加者の、来訪を。
361肯定、否定――my answer ◇N4mOHcAfck 代理:2008/11/03(月) 19:07:27 ID:vnZECxxa
【加賀美新@仮面ライダーカブト】
【1日目 日中】
【現在地:B-7 研究所ロビー】
[時間軸]:34話終了後辺り
[状態]:疲労と痛みはある程度回復。脇腹に刺し傷、頭部に打撲、肩に裂傷、背中に複数の打撲、右足にダメージ
   強い怒りと悲しみ。新たな決意。ガタックに約三十分変身不能
[装備]:ガタックゼクター、ライダーベルト(ガタック)
[道具]:基本支給品一式 ラウズカード(ダイヤQ、クラブ6、ハート6)不明支給品(確認済み)2個。
    放置されていたデイパック(基本支給品×2、ラウズアブゾーバー、V3ホッパー、首輪(一文字))
[思考・状況]
基本行動方針:桜井侑斗を始めとする協力者と合流する。
1:風間(風見)に同行する。風間(風見)と危険人物以外との戦闘は阻止する。
2:危険人物である澤田と真魚、バダー(名前は知りません)を倒す。
3:風間(風見)といずれは戦うことへの迷い。出来れば戦いたくない。
[備考]
※デネブが森林内で勝手に集めた食材がデイパックに入っています。新鮮です。
※首輪の制限について知りました。
※友好的であろう人物と要注意人物について、以下の見解と対策を立てています
味方:桜井侑斗(優先的に合流)
友好的:風間大介、影山瞬、モモタロス、ハナ(可能な限り速やかに合流)
要注意:牙王、澤田、真魚、バダー(警戒)
※風間大介(実際には風見志郎)が戦いに乗っていることを知りました。
※放置されていたデイパックの中身は確認していません。
362肯定、否定――my answer ◇N4mOHcAfck 代理:2008/11/03(月) 19:08:02 ID:vnZECxxa
【風見志郎@仮面ライダーTHE NEXT】
【1日目 早朝】
【現在地:D-9 駅のホーム】
【時間軸:】THE NEXT中盤・CHIHARU失踪の真実を知った直後
【状態】: 疲労回復、全身打撲、中。両腕、腹部にダメージ中。
【装備】:ハリケーン 、ホッパーゼクター+ゼクトバックルB、デンガッシャー
【道具】:基本支給品×2セット、ピンクの腕時計、ラウズカード(ハートJ、クラブJ)、FOX-7+起爆装置(残り3)
【思考・状況】
基本行動方針:殺し合いに勝ち残り、優勝してちはるに普通の生を送らせる。
1:研究室に設置したFOX-7を、最大の被害を与えることのできるタイミングで利用。
2:ショッカーに対する忠誠心への揺らぎ。
3:葦原涼が死んでいなかったことに驚きと僅かな安堵。
4:いずれあの男(加賀美)と決着を付ける。
【備考】
※モモタロスの死を受け止め、何か複雑な心境です。
※ホッパーゼクターを扱えます。
※FOX-7は基本的に、起爆装置を使った時にのみ爆発します。爆発の規模は使った量に比例します。
 起爆装置は全携帯が内蔵している専用アプリに起爆装置のコードを打ち込んで操作するもの。
 スイッチ式と時限式の両方の使い方ができます。
※加賀美のデイパックが二つになっていることにまだ気付いていません。


※研究所の研究室に、FOX-7が一つ仕掛けられています。
363肯定、否定――my answer ◇N4mOHcAfck 代理:2008/11/03(月) 19:10:15 ID:vnZECxxa
これで投下終了です。
そこまで長く無いので詰めればさるさん喰らわないと思ったのですが……
指摘、感想等ありましたらよろしくお願いします。

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代理投下終了
364名無し・1001決定投票間近@詳細は自治スレ:2008/11/03(月) 19:17:31 ID:vnZECxxa
投下乙です。
加賀美が主役しているw
風間とのやり取りは彼らしく熱かったです。

乃木と北条さんのコンビも緊張感があってべね。
GJ!
365名無し・1001決定投票間近@詳細は自治スレ:2008/11/03(月) 19:24:26 ID:ZZcMCVL0
投下&代理投下乙です!!
まさかの研究室爆弾ktkrwwwww
風見への解答が加賀美らしいですね。
そして怒りチャージ中の乃木さん恐いwww
北條も出かけた途端爆弾と首輪が研究所に来るのは想定外だよなあw

GJ!!
366名無し・1001決定投票間近@詳細は自治スレ:2008/11/03(月) 19:24:40 ID:6Cr8kpuS
乙でした!
乃木さん北條さんの利害に基づいたギリギリのやり取りは素晴らしかったです。
そして危険人物を脇にボロボロの加賀美の運命や…
367名無し・1001決定投票間近@詳細は自治スレ:2008/11/03(月) 22:06:45 ID:1qWQYTdx
投下&代理投下の方乙でした!
緊張感溢れる乃木&北條さんの会話にハラハラし、天道に思いを馳せる加賀美に燃え、
危険極まりない風見の行動に驚きました。入れ違いになったのは幸か不幸かw
面白かったです、GJ!
368名無し・1001決定投票間近@詳細は自治スレ:2008/11/06(木) 03:56:39 ID:dG23gQ4+
良スレ保守
369名無し・1001決定投票間近@詳細は自治スレ:2008/11/06(木) 10:08:00 ID:frXyEI61
最下層まで落ちたのでage
しかし雑談のタネがもうあまり無いね
書き手語りでもする?w
370名無し・1001決定投票間近@詳細は自治スレ:2008/11/06(木) 13:35:14 ID:EKId1Rdf
書き手さん語りかー
とりあえず自分の好きな話を書く人について語ればいいのか?
自分なら◆deggScNisI氏かな、バトルや話自体も面白いけどサバカレーwとか
どんな話かわからん変なタイトルとかの小ネタが好きなんだよなw
ガドルの温泉満喫話には吹いた。
371名無し・1001決定投票間近@詳細は自治スレ:2008/11/06(木) 21:07:34 ID:frXyEI61
◆yF氏の話が大好きだな
氏の繋ぎがあるからこそ他の人が大きく展開を動かせるのだと思う
そんな氏には今後是非長編を書いて欲しい訳だがw
372名無し・1001決定投票間近@詳細は自治スレ:2008/11/06(木) 23:20:09 ID:rRqbxRuu
◆N4mOHcAfck氏が個人的には特に好きな話多いかなあ
「ここでこうなるのかよ!?」って展開が俺のストライクゾーンに来ることが多いw
前後編バトルから単独キャラの繋ぎまで幅広くやってくれてるのも好印象だなあ
N4氏が木場を書くと必ず次以降哀れな目に遭うのも
373名無し・1001決定投票間近@詳細は自治スレ:2008/11/06(木) 23:21:22 ID:rRqbxRuu
切れたw
次以降哀れな目に遭うのも実に面白いw
374名無し・1001決定投票間近@詳細は自治スレ:2008/11/08(土) 00:05:37 ID:5GqHcZnA
もう中盤だし
書き手の方々も動かしにくい状況になってるのかね
375創る名無しに見る名無し:2008/11/08(土) 09:10:36 ID:+X8Yac47
ネタは掃いて捨てるほどある。ただ時間がないだけ。
書けないってのは大抵そんな理由だったりする。
376創る名無しに見る名無し:2008/11/08(土) 10:19:11 ID:e1xCxDRk
>>374
オムニバス形式なんだから、動かしにくいってことはないだろ?
動かしたい様に動かしてもいいんじゃね?
377創る名無しに見る名無し:2008/11/09(日) 11:49:52 ID:UYy4sqaC
その通りだよな。もうこっちの予想とか遥か斜め上進んでもらって構わないし
書き手側もそうするつもりだろう。進まないのは単に忙しいだけさ
378創る名無しに見る名無し:2008/11/10(月) 01:39:00 ID:Fjtnvf4u
単に飽きてきただけじゃね?
379創る名無しに見る名無し:2008/11/10(月) 03:18:36 ID:PyYN2/pf
なぜ、急にそんなネガティブにw
とりあえず、読み手でもできる事はあるんだぜ。
死者スレに投下するとか、書き手さん語り、リレー全話感想なんて手もある。
煽り文を考えるのもいいかもよ。
380創る名無しに見る名無し:2008/11/10(月) 07:09:08 ID:QwadXLmR
言ってることは全面的に同意するが何故>>379がそれをしないのか
381創る名無しに見る名無し:2008/11/10(月) 12:37:13 ID:0mXOShoe
絵板に一話からリレーイメージイラストを
どう考えても続かないな
382創る名無しに見る名無し:2008/11/10(月) 12:47:54 ID:QwadXLmR
絵は大変だからね…コンスタントに支援絵描いてる二人の絵師さんはほんと凄いよ
まだリレー感想の方が…って1st完結後のは途中で終わったしなw
383創る名無しに見る名無し:2008/11/10(月) 18:47:38 ID:PyYN2/pf
本当、いつも綺麗でかっこいい支援絵ばっかりで凄いよなあ。感嘆する。


でだ、絵を書けない自分は言い出しっぺの法則でリレー感想してみたいと思うんだが、他にも出来そうな人いる?
勿論、書き手さん語りとは平行でって事になると思うけど。
384創る名無しに見る名無し:2008/11/10(月) 21:56:33 ID:QwadXLmR
リレー感想しつつ平行して書き手について語るのは良い案だと思う
ただ全話やれるの?って疑問もあるぞ
ハッキリ言って話題にしにくい事情抱えた話もあるわけで…
それでも参加する奴が他にいるなら俺も加わるよ
流石に二人で交代ペースはきついw
385創る名無しに見る名無し:2008/11/10(月) 22:13:18 ID:7YiR+lW3
やろうや。
俺もやるから
386創る名無しに見る名無し:2008/11/10(月) 22:40:50 ID:PyYN2/pf
>>384
ああ、そうか。その問題があったか。
何もしないよりは、ましかと思ったんだけど……

でも、とりあえずやれるとこまでやってみる?
とりあえず言い出しっぺなんで、一番手切らせて貰うな。
387創る名無しに見る名無し:2008/11/10(月) 23:11:12 ID:0ciQGf6f
リレー感想と書き手語りやるんだったら俺も手伝うぜー
とりあえず一番手さんに期待。
388創る名無しに見る名無し:2008/11/10(月) 23:13:25 ID:PyYN2/pf
001 さくらの花の咲くころに
抵抗むなしく、圧倒的な数に押され倒されるランスとラルクに、
主催者陣営の組織力の高さをまざまざと見せつけられました。
スマートレディの口を通して告げられる仕掛けの数々もそれに拍車をかけ、
いよいよ始まるバトルロワイアルへの期待を募らせるOPでした。

次、お願いします。
389創る名無しに見る名無し:2008/11/10(月) 23:44:26 ID:QwadXLmR
001 Fiat Lux
真魚の能力を通じて描写されるカブトとカイザの開幕戦は、
断片的ながらも命懸けの戦いであることがひしひしと伝わってくるものでした。
実力も格も澤田を上回っていた筈の天道が「時間制限」「カイザギア」の二点を
原因として敗れたのは衝撃的であったと共に、
これがクロスオーバーであると共にバトルロワイヤルなのだという実感を沸かせてくれました。

改めてこの回はライダーロワNEXTの雰囲気を象徴していると感じるね……

じゃあ次頼むぜw
390創る名無しに見る名無し:2008/11/11(火) 00:07:00 ID:YAxoJrb8
002 『Chosen Soldier』
友を思う本郷(R)とさっそくお人よしっぷりを発揮する真司の出会い。
異様な状況にも変わらず他人を守ろうとする二人の決意が眩しかったり
少し不安だったり。
真司がした連との約束が本郷に、本郷が経験した戦いの日々が真司にと、
それぞれこの戦いを止めるという動機を固めさせるのがうまいと思いました。

次の人どうぞー。被らないかドキドキするなこれw
391創る名無しに見る名無し:2008/11/11(火) 13:16:10 ID:Hw/G+D7l
003 人か?野獣か?密林にいた凄い奴!
アマゾンと歌舞鬼の出会い。
アマゾンを餌付けしようとする歌舞鬼には思わずほのぼのw
鬼と魔化魍の間で揺れ動く歌舞鬼が印象的でした。

次の方、お願いします
392創る名無しに見る名無し:2008/11/11(火) 22:55:45 ID:nHGTJRge
004 闇の中で唯一光る
こちらは侑斗と香川の出会い。冷静に自分の成すべき事を見つける教授と
静かに正義感を燃やす侑斗は頼もしく見えました。
本文ラストで、侑斗が夜空に感じる不安感が二人の行く末を暗示するようで
なんとも意味深。

次の方お願いします
393創る名無しに見る名無し:2008/11/11(火) 22:55:46 ID:JVXYoQ3c
004 闇の中で唯一光る
出会いから情報交換、支給品確認…オーソドックスな登場の教授と侑斗。
死亡寸前と最終回直後、お互い自分の戦いを終えてからの参戦となった二人の今後に期待したくなった一作。
一見当たり支給品な首輪探知器が後々結果的に大学行きを阻止する原因となったのは面白いw


次は…橘さんかw
394創る名無しに見る名無し:2008/11/11(火) 22:56:30 ID:JVXYoQ3c
まさか被るなんてwwwww
395創る名無しに見る名無し:2008/11/11(火) 23:07:16 ID:JVXYoQ3c
被ったから5話書こうw

005 歪んでいる時間の道
ゾル大佐が優れた軍人なのは分かる、分かるけど…w
そんな感想を抱かずにはいられない橘さんとの時間軸差を利用した会話が面白いw
部下が死んだ後だというのに早速喰いまくる橘さんの姿もまた印象的な回。
とにかく笑わせてもらいましたw

次たのみますw
396創る名無しに見る名無し:2008/11/11(火) 23:21:26 ID:nHGTJRge
ちょwwwなんというwww
次の感想も乙!
397創る名無しに見る名無し:2008/11/12(水) 16:39:18 ID:RZSMkn78
006 そういう・アスカ・腹黒え
タイトルが駄洒落w
参戦時期によって行動方針が危ないあすかさん、とんでもない格好のハナさんと
ハーレム状態の大介という組み合わせが斬新でした。
しかし女好きのキャラの元に数少ない女性のうち二人も集まるのは
運がよかったと言えるのかw

次の方どうぞー!
398創る名無しに見る名無し:2008/11/12(水) 21:39:03 ID:tOZrlWpa
007 流されやすい者達
タイトルまんま、周りに流されてばかりな木場影山の出会いw
ロワに参加していないたっくんを心配する木場と参加者の天道を未だ敵視する影山の対比が印象的。
そんな二人による次々にファイズとザビーのギミックが繰り出されるバトルに燃えました。
それと影山にエラーはお似合いだw

次よろしくー
399創る名無しに見る名無し:2008/11/13(木) 11:18:32 ID:ayindtwT
008 Action−DENEB
とにかくデネブらしさ、加賀美らしさが出まくった掛け合いに爆笑。
さっそく死亡フラグである拡声器を使ってしまうデネブと突っ込みに忙しい加賀美の
組み合わせはナイスコンビと言わざるを得ない!
ギャグっぽい中にもデネブのやさしさ、加賀美の正義感に燃えさせてもらいました。

次の方よろです
400創る名無しに見る名無し:2008/11/14(金) 01:23:06 ID:+vZTp0oy
なにこのキモい流れ
401創る名無しに見る名無し:2008/11/14(金) 02:00:22 ID:zaCza6UW
>>400によるキモくない話題提供を期待するのは…無理かwww
402創る名無しに見る名無し:2008/11/14(金) 03:34:08 ID:GozdGVR+
板変わっても民度は相変わらずだな
403創る名無しに見る名無し:2008/11/14(金) 17:50:56 ID:ebquJxBM
次いっていいのかな?

009 それが仕事な人たち
風のエルVSイブキの初バトル。
この時きめたイブキさんの回し蹴りが後の狂マーダー風のエルの発端となるのですが、
音撃管がない中、善戦するイブキさんはなかなかかっこよかったです。
拡声器を使ったデネブへの北篠さんの絶叫突っ込みには激しく賛同しましたw
404創る名無しに見る名無し:2008/11/15(土) 09:55:17 ID:7AYeepHS
010 犀虎の十分間
東條と芝浦、龍騎のマーダーキャラがいきなり遭遇っていうのもインパクトあったけど
コンファイン・リターンの応酬が見れて個人的にはテンション上がったw
この頃から東條の思考は相当ヤバいw芝浦ノリノリだったのに一話退場で気の毒。
同作品同士ならではの、ある程度お互いの能力を知っていることによる
緊迫感のあるバトルが面白かったです。

次の方どうぞー
405創る名無しに見る名無し:2008/11/16(日) 23:43:26 ID:nkqpoKFZ
追放されたやつのになんて書くんだオゥ早くしろよ
406創る名無しに見る名無し:2008/11/18(火) 03:21:11 ID:BDW1P+o+
最近読み始めたんだけど、一つ質問
デネブの拡声器と北崎のバイクってどうなったの?
見落としてただけならゴメン
407創る名無しに見る名無し:2008/11/18(火) 23:42:26 ID:bCGCI6iB
そういやどっちの話にも記述がないな。
デネブの支給品は澤田が使えそうなものだけより分けたって文があったから、
駅のあたりに放置されてると思ってたけど。
バイクは『Weak and powerless』から全く記述がないし
ショッピングセンターに放置されてるのかもな。
状態表に書き加えてもらったほうがいいか?ちょっと書き手さんには手間かも知れんが。

ついでという訳じゃないけどリレー感想。
011 出るか?モモ獣人の必殺技!
モグラ獣人とモモタロス、海堂のやり取りはキャラがらしくて最高だったw
モグラに八つ当たりしたばっかりにぶん投げられたモモと、それがきっかけで
善玉怪人コンビを組む事になった海堂が面白い。
しかしこの話に出てきたキャラがもう全員退場済みかと思うと少し寂しい。

次の方よかったらどうぞ。
もちろん他の雑談したい人がいたらそっちしてもいいと思うし。
408創る名無しに見る名無し:2008/11/22(土) 11:38:48 ID:Deu1iNTt
誰も書かないので、あえて雑談をさせてもらいます。

俺が今回のロワで残念だったのは、ライダー1・2号が早期退場してしまったこと。
昭和と平成の時間差漫才は、ゾル大佐が見せてくれたけど、
お二人には、年齢的には同じか自分より上であっても、世代的には子供の世代である
平成ライダーともうちょっと付き合って、目を白黒させるところを見せて欲しかったなあ。
409創る名無しに見る名無し:2008/11/22(土) 23:51:21 ID:lLRwsxBM
だって超初期段階で合流しちゃうんだもんなぁ…
410創る名無しに見る名無し:2008/11/23(日) 09:48:29 ID:3yKGqr3R
他の作品で例えれば、真司と蓮とか天道と加賀美がいきなり合流するようなもんだからなあ
オマケに一文字はともかく本郷さんはスペックがチートすぎるし
411創る名無しに見る名無し:2008/11/23(日) 11:40:16 ID:U5qzxtBk
まあ、戦闘能力の低さは、知恵や駆け引きで補うことが出来るし・・・

小池一夫に「乾いて候」って話があって、
これは、徳川吉宗のご落胤でもある主人公が民衆の為に戦う話だが、
主人公が、敵を倒したものの、敵の毒にやられて寝込んで
「ああ、頭が重い、体もだるい・・・
なんでこんな目に会わなければならないのだ。自分の為でなく好きな女の為でもなく。
しかも、私の父は将軍ではないか。ならば、私はやりたいことが出来るはずではないか」
って、布団を被ってふてくされるシーンがある。

そういう理不尽な宿命を持たされた昭和ライダーが、バトロワみたいな
非常事態におかれて、つい本音wを言ったり、なんでも望みを叶えてやると
いうスマブレの悪魔のささやきに動揺したりする所をみたかったなあ、とも思ってね。

他にも・・・優等生の・・・見方を変えたら、ちょっと余裕のないタイプの本郷さんが
ヒビキさんみたいなマイペース型と一緒になったらどうなったかなあとw
412創る名無しに見る名無し:2008/11/23(日) 11:44:41 ID:U5qzxtBk
ああ、実を言うと、初期の段階でゾル大佐と一文字が出会った時、
橘さんが仲裁に入って、自分達のみを守るには、仲間は少しでも多いほうがいいし、
ここは呉越同舟でいけないか、と言いだして、橘・大佐・Wライダーの最強グループ・・・
と言うより、最強凸凹グループが出来るのかと期待したもんで・・・w

長文スマソ
休日の雑談として許して

413創る名無しに見る名無し:2008/11/23(日) 11:50:08 ID:U5qzxtBk
× 自分達のみを
○ 自分達の身を
414創る名無しに見る名無し:2008/11/23(日) 14:00:35 ID:Q38dPAWh
そんなことやられても、よくてバラされて、悪ければ全滅の典型的駄目なタイプの集団だぞ。
しかもマーダーの少ないあの時期で。
415創る名無しに見る名無し:2008/11/23(日) 16:12:01 ID:3yKGqr3R
>>414
過去を振り返ってそういうifを語るくらい良いと思うがw
もう成立する可能性の無い妄想に当時のマーダー事情持ち込むなよ

本郷さんはどちらかというとリメイク版が初代の直後死んだのが悲しかったなあ
色々誤解して欲しかった
416創る名無しに見る名無し:2008/11/24(月) 05:54:15 ID:+Kq8l3M0
R本郷死亡に引き摺られる形であすかも退場したしなー…
まぁあすかの場合葦原の不幸の肥やしってのが一番の死亡要因か
417創る名無しに見る名無し:2008/11/24(月) 22:16:18 ID:/tl5WT4n
>>411
キャラの本音と自分の願望を混同しないように。
キャラの基本造型を無視して願望でキャラをつくると
ただでさえ違和感大きい二次創作キャラが別人オリキャラになるから。
実際、優等生キャラや正義感強いキャラを無理に乗せた結果
似ても似つかない別人になった例はパロロワでいくらでもある。
418創る名無しに見る名無し:2008/11/24(月) 22:28:29 ID:EulHjyoa
>>417
前回の明日夢とかみたいになるって事か
参加時期が時期だからアリっちゃアリだけどな
話的には最高に面白いんだけどなぁ
419創る名無しに見る名無し:2008/11/24(月) 22:32:00 ID:L+Mv4Jfn
前回の明日夢はよかったな。
参戦時期では成長してない状態だったし、一般人らしい反応だったよ。
420創る名無しに見る名無し:2008/11/24(月) 22:42:14 ID:Ydo32gcM
当時は嫌われてたけど、あの何が何でも生き延びてやるってスタイル、自分は好きだなあw
そりゃ、ああなるってフツーはw
421創る名無しに見る名無し:2008/11/24(月) 22:53:45 ID:/Qdf4GXH
明日夢の崩れ方も当時は結構アレだったな
今はロワとして良い意味での崩壊と思ってるけど

それに比べると京介はどうにも微妙だな・・・「この後どうなる!?」
って終わり方した次の話でなんか別人の様に丸くなってたのは驚いたわw
422創る名無しに見る名無し:2008/11/25(火) 02:26:57 ID:Whp6bNhY
京介の場合むしろ今が「この後どうなる!?」状態じゃねぇかな

木場、侑斗、先生が比較的絡みやすい位置にいるからすぐ予約くると思ってたんだけどなぁ
423創る名無しに見る名無し:2008/11/28(金) 20:35:42 ID:1lLwT4Eo
すごくどうでもいい事に気づいたんだが第一回放送までに脱落した奴で
名前に『一』って付いてるキャラが妙に多いのな
逆に名前に『風』が付いてるキャラは全員生存…
424創る名無しに見る名無し:2008/11/28(金) 22:19:57 ID:6l3IHMUb
本当にどうでも良いなwでも確かに一って付く人結構いるな
まだあと二人残っているしね
425創る名無しに見る名無し:2008/11/29(土) 11:28:47 ID:KguaMdzQ
風は四人とも残ってるな。
426創る名無しに見る名無し:2008/12/03(水) 18:32:48 ID:LCnUEffF
もう最終投下から一ヶ月か……。
書き手さんたちも忙しいのかな……?

初めて見るロワだから知らないけどこれくらいの時期になるとこんなもんなのかな。
427創る名無しに見る名無し:2008/12/03(水) 19:22:55 ID:ekzDVToR
@私生活が書ける状況じゃない(仕事/就活/受験/入院等々)
A掛け持ちしてるロワが佳境(漫画/アニ2等)
B飽きました

どれかが主要因だろう。あとはモチベーションか

「○○や△△が書きたい」って気持ちで参加したならそいつが死んだ時点で、
「ライダーのリレー小説書きたい」なら周りが皆書かなくなった時に、
「□□氏と同じロワだから/□□氏が書いてるから」なら□□氏が消えた際、
それぞれ書く動機は消えたことになるし……
428創る名無しに見る名無し:2008/12/03(水) 20:31:32 ID:CDRpw/n/
12月だし忙しいのさ。実際俺たちも忙しいだろ?1月後半くらいまではこんな感じじゃねぇかな
429創る名無しに見る名無し:2008/12/03(水) 23:43:21 ID:ZkkQj2nI
まあ、まったり待とうよ。
雑談ネタが尽きたならお題でも出してみる?
某所の古今東西みたいに。
430創る名無しに見る名無し:2008/12/04(木) 09:34:20 ID:r3rAg4mN
待つしか出来ないのが辛いなぁでも自分は書けないなぁ
古今東西ってどんなネタ?
431創る名無しに見る名無し:2008/12/04(木) 22:38:01 ID:h9DaMrsU
初めての者なんですけど、何話か書いてみたので投下してもいいでしょうか?
やっぱり一度、一時投下して予約すべきでしょうか
停滞してるみたいなので構わないかなとも思うんですけど…
何分初めてなのでよくわからなくて
432創る名無しに見る名無し:2008/12/04(木) 22:55:08 ID:yeEZNaMI
>>431
まずはテンプレ(>>1-5)とwikiの該当ページをご覧になって、基本的な進行のルールを確認してみてください。
ルールを守って頂ければ、新規の書き手さんは大歓迎ですよ。
433創る名無しに見る名無し:2008/12/04(木) 23:03:42 ID:h9DaMrsU
ルールは守れていると思うんですけど、5話分あるのでキャラの予約は5話全員分予約したほうがいいですか?
一気に投下して、まとめ時に分けてもらえると嬉しいんですが…
あと文章力無いので期待しないでください
434創る名無しに見る名無し:2008/12/04(木) 23:06:53 ID:0/1mHAqQ
>>433
予約は予約スレで行い、一話ごとにキャラを予約、です。
また、予約後は一日あけてからの予約となります。

>>432氏はその旨がテンプレにあるため、確認を行なって欲しい、との返答かと。
435創る名無しに見る名無し:2008/12/04(木) 23:12:04 ID:yeEZNaMI
>>433
それについてもすべてテンプレ、およびwikiに明記されています。
基本的な点については、最低限ご自分で確認の労を取って頂くようお願いします。

ところで、「文章力がない」等の言い訳で自分を正当化し、責任を回避しようとする行為は
住人の皆さんにも、他の書き手さんにも失礼に当たります。
リレー小説は共同作業です。自分の作品に責任が取れないのでしたら、参加はご遠慮ください。
436創る名無しに見る名無し:2008/12/04(木) 23:12:05 ID:h9DaMrsU
>>434
ありがとうございます。
了解しました。
437創る名無しに見る名無し:2008/12/04(木) 23:14:54 ID:qlaVgnCk
新規さん大歓迎だぜ。文章力無いとかそんな謙遜しなくてもいいよ。
支援ぐらいしか出来ないけど楽しみに待ってる。
438創る名無しに見る名無し:2008/12/04(木) 23:30:45 ID:0/1mHAqQ
>>436
トリップのつけ方を間違えていますよ。

#(半角)の後ろに、適当な数字英字です。
kusakaixaは今回でトリキーがばれたため、別の文字列にしたほうがいいかと。
439信じるモノ ◆Z9EUSuuwiU :2008/12/05(金) 07:16:17 ID:D+utpgJ0
恥ずかしながら投稿します。
440信じるモノ ◆Z9EUSuuwiU :2008/12/05(金) 07:17:01 ID:D+utpgJ0
放送が終わり、道路を駆ける一台のバイクが居た
カブトエクステンダーに跨る葦原涼だった
フルフェイスのヘルメットをかぶり赤と白のライダーグローブをはめている


(あすか…)
この眼で死を確認した命の恩人である女性
その名が放送で告げられた
更に本郷という2つの同じ名前…。自分と拳を交えた男がどちらの本郷だったかはわからないが、彼もまた命を終えたということだろうか。
あの戦いが死に至らしめたとは思えない。おそらくはその後で事が起こったのだろう。

(もしかすると四号か…)
仲間と共にあすかを殺した第四号、人類のために戦ったはずの者、それが実は戦闘狂だという事実を見出した。ならば本郷も四号の手にかかった可能性も考えられる。
未確認生命体第四号…見つけ次第問いただすか、この手で葬るか…。
今は唯、“一発殴りたい”という感情だけが渦巻いていた

そうして悲しみの思いを胸にバイクを走らせる葦原
すると前方に巨大な施設が見えてきた
『動物園』と書かれた看板を眼にしながら静かにバイクを止める

フルフェイスのヘルメットを脱ぎ、入り口から園全体を見渡してみる。
どうやら動物は一匹もおらず、何も捕らえていない檻だけが置かれていた

と、その時入り口付近のベンチに座り込む1人の青年を見つけた

気になった葦原はヘルメットをハンドルに預けエンジンを切ると、警戒の眼差しで青年へと歩み寄った。


※※※
441信じるモノ ◆Z9EUSuuwiU :2008/12/05(金) 07:18:08 ID:D+utpgJ0
「おい 大丈夫か?」
葦原は座ったまま俯く青年の肩に手を当てて声を掛けた。
しかし青年はそれに気付かないのか、何か、うわ言の様に呟いている。


「海堂…なんで君が…」
生気を失ったような眼で俯いたまま呟く青年、木場勇治は絶望していた。
同じオルフェノクであり、友であった海堂が死んだ。
共に暮らし共に戦い続けてきた仲だった
偶然にもオルフェノクになったとはいえその運命に流されずに生きていた
彼は『正しく』生きていたはずだった。それなのに…死んだ
正しく生きる者が死に、戦いに乗るような悪しき者が生き残っている
唯の弱肉強食と言えばそれまでだが。それだけで言い切れないものも感じる
正しいから死んだのか?
生き残った方は悪なのか?
そらなら生き残っている自分は…。

(教えてくれ海堂…)
赤い化け物との戦いでファイズギアを預け戦闘を任せてきた
あの時自分が残っていれば良かったのだろうか。しかしあの時はああするのが最善だった。
まさかあの怪物にやられたのだろうか…だとすれば戦わせずに一緒に逃げれば良かった
戦わせた事によって命を落としたのならば、彼の殺したのは自分だ。
やはり自分は…オルフェノクは悪なのか…。
442信じるモノ ◆Z9EUSuuwiU :2008/12/05(金) 07:19:06 ID:D+utpgJ0
そして木場の脳裏に2人の人間が思い浮かぶ
桜井祐斗と香川英幸という人物
桜井祐斗は自分を「化物」と呼び罵った。それが彼の人間としての本心であったのだろう。
所詮は彼らにとっては化物という認識にしかない、人よりも下の存在と考えているのだろう。

そして香川英幸。
彼は人間でありながら殺し合いに乗っていた。持っていたライフルに発砲した跡が残っていたのが証拠だ、それに桜井祐斗をも狙っていた。
それを防ぐために香川を追い払ったのに、桜井には罵られた。
なんともしがたい心情である。
今回の放送で香川の名が呼ばれなかったのは、幸か不幸かわからない。
言えるのは、海堂の名を呼ばれたのは不幸だと言うことだけだった。


※ ※※
443信じるモノ ◆Z9EUSuuwiU :2008/12/05(金) 07:20:05 ID:D+utpgJ0
 
444信じるモノ ◆Z9EUSuuwiU :2008/12/05(金) 07:21:18 ID:D+utpgJ0
「おい!!」
「え…?」
そこへ、葦原の大きな声が響いた
考え込んでいて気がつかなかった木場もやっと顔を上げた

「………知った名前が呼ばれたのか?」
葦原は木場の呟きと表情から、ある程度のことは察知した
おそらく知り合いが死んだことに落胆しているのだろうと

「…海堂…大事な仲間でした…」
一度は葦原を見た木場の瞳は、空ろな目をして再び地面へと視線を移した

するとそれを見た葦原は少しだけ沈黙して、無言のまま木場の横へと腰掛けた

「俺は葦原涼…あんたは?」
沈みきった表情の木場に問いかける葦原
「木場…勇治…」
そうして木場は小さな声で名乗った

445信じるモノ ◆Z9EUSuuwiU :2008/12/05(金) 07:23:01 ID:D+utpgJ0
「木場か…あんたは戦いに乗っているのか?」
「…そんなこと…!…俺は戦いを止めたいと思ってる!」
葦原の突然の問に声を荒げて反論する木場

「…だったらなぜ、こんな所でいじけている?」
「いじけているわけじゃ…唯、わからなくなったんだ…人間を信じていいのか…」
その応えに葦原は一度大きく瞬きをするとスクッと立ち上がり、木場の正面へと回った


「………俺を信用できると思うか?」
葦原は自分の顔が見えるように立って問いかける
それに眉をしかめながら無言で見つめる木場

「…人であれ、なんであれ完全に信用できる奴なんて居ない」
何かを思い返しながら葦原は言葉を続ける
「俺も信じ続けて何度も失い、裏切られてきた…」
悲しみ暮れた瞳が木場に何かを訴えかけているようだった
446信じるモノ ◆Z9EUSuuwiU :2008/12/05(金) 07:24:27 ID:D+utpgJ0
「…それなら何を信じれば…?誰を信じれば…」
「自分だ」
動揺したような声で言う木場に葦原は一言で返した

「…自分?でもそれは人間を信じるのと同じじゃ……」

「…………そう思うか?」
木場の言葉に静かに応えた葦原は、おもむろに手にはめたグローブを外し始めた
そうして木場の眼前に素手を晒した


※ ※※
447信じるモノ ◆Z9EUSuuwiU :2008/12/05(金) 07:26:32 ID:D+utpgJ0
 
 
448信じるモノ ◆Z9EUSuuwiU :2008/12/05(金) 07:27:08 ID:D+utpgJ0
「…それは?!」
木場は目を見開いて驚愕した。
目の前に見える葦原の手は奇妙にも『老化』していた。
何故このようなことになっているのかわかない。
それでもこの様な病気なんか、聞いたことも無い。
だとすれば彼も自分と同じような…。

「………俺はもう人でもない、唯の怪物だ」
そう言いながら葦原は再びグローブをはめる
「それでも俺は自分を信じる。たとえどれだけ裏切られ、絶望し、地獄を見たって」
グローブをはめた拳が強く握り締められる

木場はその言葉に心が揺れていた。
香川や桜井……人間を信じられなくなっていた。
しかしそれを、自分の正体を明かしてまでこの男は応えてくれた。
449信じるモノ ◆Z9EUSuuwiU :2008/12/05(金) 08:21:31 ID:D+utpgJ0


450信じるモノ ◆Z9EUSuuwiU :2008/12/05(金) 08:22:08 ID:D+utpgJ0
この葦原という男は信用できる…いや、それではいつもと同じ。
そうやってすぐに信用してしまうのが、自分の悪い癖なのかもしれない。
彼の言うとおり、完全に信用できるものなどいない。
だったら自分を信じる…『葦原は信用できる』という自分を信じる。

「葦原さん…俺も信じます…自分を…」
すると木場は葦原を見据えて呟いた。
そして次の瞬間、顔に不気味な黒い影を現した。

「……あんたもだったのか」
葦原は、その影に別段驚きもせず、少しだけ鼻で笑った。
「…後悔するなよ」
影を潜めた木場に向かって、芦原の瞳は力強さを増す

451信じるモノ ◆Z9EUSuuwiU :2008/12/05(金) 08:23:09 ID:D+utpgJ0
「けれどあんたの行動が間違いだと感じたら、俺は容赦なくあんたを止める」
「……はい」
その真剣な眼差しに凄みを感じて、少し言葉が詰まってしまう木場

これは自分に釘を刺しているのだろうか…
木場はそう考えてしまう。もし、自分が戦いに乗るようなことになったら止めるということだろう。
そんなことには絶対にならないと思いつつも、まだ心のどこかで人間を、良くは思えないところがある。しかし人間が憎いのと、殺し合いに乗るのは話が別だ。

自分が人間なのか化物なのか、それは葦原にも課せられていることだろう
しかし彼はそんなことを、物ともしていないように見える
ただやせ我慢をしているだけかもしれないが…。


※ ※※

452信じるモノ ◆Z9EUSuuwiU :2008/12/05(金) 08:24:15 ID:D+utpgJ0
「…さて 俺はもう行くが あんたはどうする?」
葦原はカブトエクステンダーに跨り、ヘルメットを手に取って問いかけた

「…俺も行きます…連れてってください…話をしたい人がいるんです」
木場は拳を強く握り締めて応えた
桜井祐斗、香川、彼らにもう一度会って話し合いたい。
桜井はまだ化物と呼ぶだろうか、香川は妨害してきた自分をどう見るだろうか。
その結果はわからない、それによって,自分さえ信じることができなくなってしまうかもしれない。
だが,それでも会って話し合いたい、それだけが強く心に浮かんだ。
453信じるモノ ◆Z9EUSuuwiU :2008/12/05(金) 08:25:46 ID:D+utpgJ0
「いいけど俺も探している奴が居る、そっちを優先するぞ」
「構いません」
決意のこもった返事を聞いた葦原は、ヘルメットを木場へと投げ渡した。
それを両手で上手くキャッチした木場は、微笑みながら葦原の後部シートへと跨った。

「…四号…それから風見志郎ってのを知らないか?」
葦原はバイクのエンジンを掛けながら後部に座る木場へと尋ねる。
「よんごう?…いやどちらも聞いたこと無いです」
そう応えながらヘルメットを被る木場。

「……そうか、まぁ他にも聞きたいことがある。走りながら聞こう」
そう呟くと同時に葦原はハンドルを回し、カブトエクステンダーを発進させた。
情報交換する2人を乗せた赤いバイクは動物園を後にして島を南下していく。


2つのデイパックに潜むベルト達も唯静かにその時を待っていた…


※※※

454信じるモノ ◆dkyQBUJAmE :2008/12/05(金) 09:39:27 ID:T15aXT0u
【葦原涼@仮面ライダーアギト】
【1日目 日中】
【現在地:E-6 動物園手前】
[時間軸]:第27話 死亡後
[状態]: 全身負傷(中)、疲労(大)、30分間変身不可(ギルス)
    腕部に小程度の裂傷、変身の後遺症、仇を討てなかった自分への苛立ち
[装備]:フルフェイスのヘルメット、カブトエクステンダー@仮面ライダーカブト
[道具]:支給品一式(二人分)、ホッパーゼクターのベルト、デルタギア
[思考・状況]
基本行動方針:殺し合いには加担しない。脱出方法を探る。
1:立花を殺した白い怪物(風のエル)、あすかを殺した白いライダー(ファム)未確認生命体4号(クウガ)に怒り。必ず探し出して倒す。
2:立花藤兵衛の最後の言葉どおり、風見の面倒を見る?
3:自分に再び与えられた命で、救える者を救う。戦おうとする参加者には容赦しない。
4:黒いライダー(カイザ)を探してみる。
6:五代雄介の話を聞き、異なる時間軸から連れて来られた可能性を知る。
  白い怪物(ダグバ、ジョーカー)を倒す。
7:木場が間違いを犯した場合全力で止める。
8:デルタギアを誰か、はっきりとこの殺し合いに反抗する者に託す。(今の所木場が有力
※五代の話を聞き、時間軸のずれを知りました(あくまで五代の仮説としての認識です)。
※剣崎一真の死、ダグバの存在、ジョーカーの存在などの情報を五代から得ました。
※ホッパーゼクターが涼を認めました。(資格者にはすぐにでも成り得ます)また、デイバックの中に隠れています
※カブトエクステンダーはキャストオフできないため武装のほとんどを使えません。
 今の所、『カブトの資格者』のみがキャストオフできます。
※五代(クウガ)は殺し合いに乗ったと勘違いしています。
※勿論、デルタギア装着によるデモンズストレートによる凶暴化などは知りません。(デルタギアの使い方は知っています)

455信じるモノ ◆dkyQBUJAmE :2008/12/05(金) 09:40:56 ID:T15aXT0u
【木場勇治@仮面ライダー555】
【1日目 現時刻:日中】
【現在地:E-6・動物園手前】
【時間軸】:39話・巧捜索前
【状態】:全身に中程度の打撲。他人への不信感。全身に疲労大、背中等に軽い火傷。1時間半変身不可(ホースオルフェノク)
【装備】:なし
【道具】:基本支給品×1、Lサイズの写真(香川の発砲シーン)、サイガギア、トンファーエッジ
【思考・状況】
基本行動方針:???
1:香川と侑斗と話し合う。その上で人間の真意を見極める。
2:自分が信じる道を行く。
3:死神博士、ゴルゴス、牙王、風のエル(名前は知らない)、東條を警戒。影山はできれば助けたい。
4:事情を知らない者の前ではできるだけオルフェノク化を使いたくない。
【備考】
※香川から東條との確執を知り、侑斗から電王世界のおおまかな知識を得ました。
 また、第一回放送の内容も二人から知りました。
※香川を赤カードの影響で危険人物として認識したままです。
※自分を信るが、自分さえも信じられなくなったらその時は…?
456信じるモノ ◆Z9EUSuuwiU :2008/12/05(金) 09:42:15 ID:T15aXT0u
以上、投下終了します。
駄文失礼しました。
457創る名無しに見る名無し:2008/12/05(金) 11:02:03 ID:oq5eISTn
投下お疲れさまです……と言いたいのですがいくつかルール上の問題があります。

一時投下なさった作品に指摘がついた場合はそちらに対応し、意見及び修正内容を提示し、双方の合意が得られたなら修正作も投下する必要があります。
本投下前に意見を聞き問題があれば修正する、というのが仮投下の意義ですし、形だけの一時投下では意味がないですからね。


なので氏につきましてはまず仮投下スレで出された意見への対応をお願いします。拝見したところまだ指摘への対応(句読点等)もされていないようですし……。

また、初めての投下で不安になるのは分かりますが何度も自作について「駄文」等の文言を繰り返すのは謙遜を通り越し見てる側に不快感を与えかねない行為ですので……あまりなさらない方がよろしいかと。


最後は少々差し出がましい内容になってしまいましたが以上です。
分かりにくい部分も多々ある企画かとは思いますが、どうかルールに則った対応をお願いします。
458創る名無しに見る名無し:2008/12/05(金) 11:19:05 ID:oq5eISTn
っと、失礼いたしました。葦原さん関連については修正されていましたね。

誤読致しておりました。誠に申し訳ありません。
459創る名無しに見る名無し:2008/12/05(金) 15:03:56 ID:Y5WC0Oy5
申し訳ありませんが、木場関連の指摘もあまり改善されてないように見受けられます
私個人の感想としては、「立ち直りの早さ」がネックになっているのだと思います
「ショックが少ない」というのは「描写が足りない」という意味ではないのでは?
その辺りも踏まえて、仮投下での返答をお願い致します

それと、期限までまだまだありますので、急いで投下されなくても大丈夫ですよ〜
460創る名無しに見る名無し:2008/12/05(金) 17:53:02 ID:gu8Hqv2b
          ____   
       / \  /\ キリッ
.     / (ー)  (ー)\      
    /   ⌒(__人__)⌒ \    
    |      |r┬-|    |      分かりにくい部分も多々ある企画かとは思いますが、どうかルールに則った対応をお願いします。
     \     `ー'´   /      
    ノ            \
  /´               ヽ              
 |    l              \
 ヽ    -一''''''"~~``'ー--、   -一'''''''ー-、.    
  ヽ ____(⌒)(⌒)⌒) )  (⌒_(⌒)⌒)⌒))


          ____
        /_ノ  ヽ、_\
 ミ ミ ミ  o゚((●)) ((●))゚o      ミ ミ ミ
/⌒)⌒)⌒. ::::::⌒(__人__)⌒:::\   /⌒)⌒)⌒)
| / / /     |r┬-|    | (⌒)/ / / //  だっておwwwww
| :::::::::::(⌒)    | |  |   /  ゝ  :::::::::::/    自分じゃ書かずに人にケチばっかつけててクズすぎんだろjkwwwwwwwwwwwwww
|     ノ     | |  |   \  /  )  /
ヽ    /     `ー'´      ヽ /    /     バ
 |    |   l||l 从人 l||l      l||l 从人 l||l  バ   ン
 ヽ    -一''''''"~~``'ー--、   -一'''''''ー-、    ン
  ヽ ____(⌒)(⌒)⌒) )  (⌒_(⌒)⌒)⌒))
461創る名無しに見る名無し:2008/12/05(金) 18:02:31 ID:xUKro6V4
お前ら落ち着け
修正に関する話は議論スレで行うのがルールだぞ
462創る名無しに見る名無し:2008/12/05(金) 18:18:12 ID:6v6/mNat
議論スレ
http://riders.sphere.sc/rb/test/read.cgi/rnext/1210423244/

以降、何か指摘あるときは上記スレへ。
個人的に、指摘事項は他の方が行なっていますので、自分からは特にありません。
修正お待ちしております。
463創る名無しに見る名無し:2008/12/07(日) 12:49:17 ID:fkaPMnrS
お互いの為にも低クオリティSSは投下しないほうがいいよ
464創る名無しに見る名無し:2008/12/07(日) 15:42:44 ID:hMxXKtsT
>>◆Z9EUSuuwiUさん
投下(とそれに伴う指摘)から48時間経っておりますので、
修正などの件について、早急にこちらか一時投下スレにお返事を頂けないでしょうか。
議論が必要でしたら>>462の議論スレでも結構です。
お忙しいとは思いますが、よろしくお願いします。
465創る名無しに見る名無し:2008/12/07(日) 16:08:34 ID:w6ZiCcSz
得意の新規参加者締め出しかよ?
オムニバスでやってるんなら、立ち直りの早さとか書き手の判断で良いだろうが?
そんなに「自分達だけのストーリー」を作りたいんだったら、新規参加者お断りってルールに書いとけ。
仲間内の作品は、明らかにおかしい所を指摘しても無視あるいは仲間の援護でスルー。
新規には、嫌がらせで締め出し。
文句ばかり言ってる暇があったら、お前らの素晴らしい作品を読ませてくれよ。
466創る名無しに見る名無し:2008/12/07(日) 16:18:00 ID:rByFWsrE
釣れますか?
467信じるモノ ◆Z9EUSuuwiU :2008/12/07(日) 21:53:54 ID:ACjV1v3w
遅くなりました。
葦原涼、木場勇治、修正版投下します。
468信じるモノ ◆Z9EUSuuwiU :2008/12/07(日) 21:56:30 ID:ACjV1v3w
放送が終わり、道路を駆ける一台のバイクが居た。
カブトエクステンダーに跨る葦原涼だった。
フルフェイスのヘルメットをかぶり赤と白のライダーグローブをはめている。

(あすか…)
この眼で死を確認した命の恩人である女性。
その名が放送で告げられた。
更に本郷という2つの同じ名前…。
自分と拳を交えた男がどちらの本郷だったかはわからないが、彼もまた命を終えたということだろう。
あの戦いが死に至らしめたとは思えない。おそらくはその後で事が起こったのだろう。
(もしかすると四号か…)
仲間と共にあすかを殺した第四号、人類のために戦ったはずの者、それが実は戦闘狂だという事実を見出した。ならば本郷も四号の手にかかった可能性も考えられる。
未確認生命体第四号…見つけ次第問いただすか、この手で葬るか…。
今は唯、“一発殴りたい”という感情だけが渦巻いていた。

そうして悲しみの思いを胸にバイクを走らせる葦原。
すると前方に巨大な施設が見えてきた。
『動物園』と書かれた看板を眼にしながら静かにバイクを止める。
フルフェイスのヘルメットを脱ぎ、入り口から園全体を見渡す。
どうやら動物は一匹もおらず、何も捕らえていない檻だけが置かれていた。

と、その時入り口付近のベンチに座り込む1人の青年を見つけた。
気になった葦原はヘルメットをハンドルに預けエンジンを切ると、警戒の眼差しで青年へと歩み寄った。


※※※
469信じるモノ ◆Z9EUSuuwiU :2008/12/07(日) 21:58:47 ID:ACjV1v3w
「おい 大丈夫か?」
葦原は座ったまま俯く青年の肩に手を当てて声を掛けた。
しかし青年は気付かないのか、何かをうわ言の様に呟いている。

「海堂…なんで君が…」
生気を失ったような眼で俯いたまま呟く青年、木場勇治は絶望していた。
同じオルフェノクであり、友であった海堂が死んだ。
共に暮らし共に戦い続けてきた仲だった。
偶然にもオルフェノクになったとはいえその運命に流されずに生きていた。
彼は『正しく』生きていたはずだった。それなのに…死んだ。
正しく生きる者が死に、戦いに乗るような悪しき者が生き残っている。
唯の弱肉強食と言えばそれまでだが。それだけで言い切れないものも感じる。
正しいから死んだのか?
生き残った方は悪なのか?
そらなら生き残っている自分は…。

470信じるモノ ◆Z9EUSuuwiU :2008/12/07(日) 22:01:52 ID:ACjV1v3w
(教えてくれ海堂…)
赤い化け物との戦いでファイズギアを預け戦闘を任せてきた。
あの時自分が残っていれば良かったのだろうか。
しかしあの時は、ああするのが最善だった。
まさかあの怪物にやられたのだろうか…だとすれば戦わせずに一緒に逃げれば良かった。
戦わせた事によって命を落としたのならば、彼の殺したのは自分だ。
やはり自分は…オルフェノクは悪なのか…。

そして木場の脳裏に2人の人間が思い浮かぶ。
桜井祐斗と香川英幸という人物。
桜井祐斗は自分を「化物」と呼び罵った。それが彼の人間としての本心であったのだろう。
所詮は彼らにとっては化物という認識にしかない、人よりも下の存在と考えているのだろう。
そして香川英幸。
彼は人間でありながら殺し合いに乗っていた。持っていたライフルに発砲した跡が残っていたのが証拠だ。それに桜井祐斗をも狙っていた。
それを防ぐために香川を追い払ったのに、桜井には罵られた。
なんとも言いがたい心情である。
今回の放送で香川の名が呼ばれなかったのは、幸か不幸かわからない。
言えるのは、海堂の名を呼ばれたのは不幸だと言うことだけだった。


※ ※※
471信じるモノ ◆Z9EUSuuwiU :2008/12/07(日) 22:03:50 ID:ACjV1v3w
「おい!!」
「え…?」
そこへ、葦原の大きな声が響いた。
考え込んでいて気がつかなかった木場もやっと顔を上げた。
「………知った名前が呼ばれたのか?」
葦原は木場の呟きと表情から、ある程度のことは察知した。
おそらく知り合いが死んだことに落胆しているのだろうと。
「…海堂…大事な仲間でした…」
一度は葦原を見た木場の瞳は、空ろな目をして再び地面へと視線を移した。
するとそれを見た葦原は少しだけ沈黙して、無言のまま木場の横へと腰掛けた。
「俺は葦原涼…あんたは?」
沈みきった表情の木場に問いかける葦原。
「木場…勇治…」
そうして木場は小さな声で名乗った。
「木場か…あんたは戦いに乗っているのか?」
「…そんなこと…!…俺は戦いを止めたいと思ってる!」
葦原の突然の問に声を荒げて反論する木場。
「…だったらなぜ、こんな所でいじけている?」
「いじけているわけじゃ…唯、わからなくなったんだ…人間を信じていいのか…」
その応えに葦原は一度大きく瞬きをするとスクッと立ち上がり、木場の正面へと回った。

472信じるモノ ◆Z9EUSuuwiU :2008/12/07(日) 22:07:28 ID:ACjV1v3w
「………俺を信用できると思うか?」
葦原は自分の顔が見えるように立って問いかける。
それに眉をしかめながら無言で見つめる木場。
「…人であれ、なんであれ完全に信用できる奴なんて居ない」
何かを思い返しながら葦原は言葉を続ける。
「俺も信じ続けて何度も失い、裏切られてきた…」
悲しみ暮れた瞳が木場に何かを訴えかけているようだった。

「…それなら何を信じれば…?誰を信じれば…」
「自分だ」
動揺したような声で言う木場に葦原は一言で返した。
「…自分?でもそれは人間を信じるのと同じじゃ……」
「…………そう、思うか?」
木場の言葉に静かに応えた葦原は、おもむろに手にはめたグローブを外し始めた。
そうして木場の眼前に素手を晒した。


※ ※※
473信じるモノ ◆Z9EUSuuwiU :2008/12/07(日) 22:11:08 ID:ACjV1v3w
「…それは?!」
木場は目を見開いて驚愕した。
目の前に見える葦原の手は奇妙にも『老化』していた。
何故このようなことになっているのかわかない。
それでもこの様な病気なんか、聞いたことも無い。
だとすれば彼も自分と同じような…。

「………俺はもう人でもない、唯の怪物だ」
そう言いながら葦原は再びグローブをはめる。
「それでも俺は自分を信じる。たとえどれだけ裏切られ、絶望し、地獄を見たって」
グローブをはめた拳が強く握り締められる。

木場はその言葉に心が揺れていた。
葦原涼…彼は「人では無い」ことを明かした。
それがどういう行為か、身を持ってわかっている。
オルフェノクという正体を明かせば普通の人ならば恐れ慄いていく。
化物、怪物と罵られ、さげずまれる。
元恋人であってもそれは同じことだった。
だが彼は、そんなことを恐れる様子も無く、手に残る「証拠」を見せた。
口ぶりからすれば、自分と同じような目にあって来たのかも知れない。
それを踏まえてなお正体を明かしたと言うのなら、自分が惨めに見える。
474信じるモノ ◆Z9EUSuuwiU :2008/12/07(日) 22:15:34 ID:ACjV1v3w
できる限りはオルフェノクの姿は見せようとはしなかった。
それが相手のためであり、自分のためだと考えていた。
敵対する者にはしかたないとしても、味方や事情を知らない者には脅威になるだけだ。
だが彼は、脅威を隠そうとはしない。むしろ誇りにしているようにも見える。
どういった経緯で、彼が人でなくなったかはわからない。
それでも自分と同じく、化物、怪物に「なってしまった者」だろう。
同じ境遇の者として、自分は酷く惨めだ。
人でなくなっても、彼は人以上に人の心を持っている。
それが羨ましく思え、惹かれた。

自分にそのような強い心を持てるだろうか?
香川や桜井……人間を信じられなくなっていた。
もし彼なら信じただろうか…。おそらく信じただろう。
その瞳が、握られた拳が物語っているようだった。
そして感じる…姿や性格、まるで正反対だが、心は海堂に通ずるものがある、と。
この葦原という男は信用できる…いや、それではいつもと同じ。
そうやってすぐに信用してしまうのが、自分の悪い癖なのかもしれない。
彼の言うとおり、完全に信用できるものなどいない。
だったら自分を信じる…『葦原は信用できる』という自分を信じる。
475信じるモノ ◆Z9EUSuuwiU :2008/12/07(日) 22:18:53 ID:ACjV1v3w
「葦原さん…俺も信じます…自分を…」
すると木場は葦原を見据えて呟いた。
そして次の瞬間、顔に不気味な黒い影を現した。

「……あんたもか」
葦原は、その影に別段驚きもせず、少しだけ鼻で笑った。
「…後悔するなよ」
影を潜めた木場に向かって、芦原の瞳は力強さを増す。
目の前の男、木場勇治、先程まで全てに失望したような目をしていた。
なのに今はもう真逆の表情を見せている。自分の言葉に励まされる事でもあったのだろうか。特に励ますような事を言ったつもりはなかった。ただ記憶を振り返り、質問に答えただけだ。
それが木場の瞳から失望を取り除く結果になったということだろう。
改めて見る木場の目は真っ直ぐ前を見据えて居る。
しかし、どこか真っ直ぐ過ぎる気も否めない。
476信じるモノ ◆Z9EUSuuwiU :2008/12/07(日) 22:23:20 ID:ACjV1v3w
「…けれど、あんたの行動が間違いだと感じたら、俺は容赦なくあんたを止める」
そして一言忠告のように言った。その真っ直ぐな瞳が逆に心配になったからだ。
戦いに乗っていないと言うのは真実だろう。実際、自分を襲ってはこない。
しかし自分を信じた結果だけが正しいとも限らない。その判別が木場にできるのか。
真っ直ぐな瞳の奥底が、揺らいでいるようにも見えた。

「……はい」
葦原の真剣な眼差しに凄みを感じて、少し言葉が詰まってしまう木場。
これは自分に釘を刺しているのだろうか…。木場はそう考えてしまう。
もし、自分が戦いに乗るようなことになったら止めるということだろう。
そんなことには絶対にならないと思いつつも、まだ心のどこかで人間を良くは思えないところがある。しかし人間が憎いのと、殺し合いに乗るのは話が別だ。
自分が人間なのか化物なのか、それは葦原にも課せられていることだろう。
しかし彼はそんなことを、物ともしていないように見える。
その心の強さが何なのかを知りたいのかもしれない…。


※ ※※
477信じるモノ ◆Z9EUSuuwiU :2008/12/07(日) 22:26:22 ID:ACjV1v3w
「…さて 俺はもう行くが あんたはどうする?」
葦原はカブトエクステンダーに跨り、ヘルメットを手に取って問いかけた。
「…俺も行きます…連れてってください…話をしたい人がいるんです」
木場は拳を強く握り締めて応えた。
桜井祐斗、香川、彼らにもう一度会って話し合いたい。
桜井はまだ化物と呼ぶだろうか、香川は妨害してきた自分をどう見るだろうか。
その結果はわからない。
結果によって自分さえ信じることが、できなくなってしまうかもしれない。
だがそれでも会って話し合いたい、それだけが強く心に浮かんだ。
葦原のような強き心を持って人間の真意を見極めたい。
しかしそれでも裏切られてしまった時は…。
今は答えを出せない。
その時、その場の、自分を信じるしかない。

478信じるモノ ◆Z9EUSuuwiU :2008/12/07(日) 22:29:40 ID:ACjV1v3w
「…いいけど俺も探している奴が居る、そっちを優先するぞ」
「構いません」
決意のこもった返事を聞いた葦原は、ヘルメットを木場へと投げ渡した。
それを両手で上手くキャッチした木場は、微笑みながら葦原の後部シートへと跨った。
「…四号…それから風見志郎ってのを知らないか?」
葦原はバイクのエンジンを掛けながら後部に座る木場へと尋ねる。
「よんごう?…いやどちらも聞いたこと無いです」
そう応えながらヘルメットを被る木場。
「……そうか、まぁ他にも聞きたいことがある。走りながら聞こう」
そう呟くと同時に葦原はハンドルを回し、カブトエクステンダーを発進させた。
情報交換する2人を乗せた赤いバイクは動物園を後にして島を南下していく。


2つのデイパックに潜むベルト達も唯静かにその時を待っていた…。


※※※

479信じるモノ ◆Z9EUSuuwiU :2008/12/07(日) 22:32:36 ID:ACjV1v3w
【葦原涼@仮面ライダーアギト】
【1日目 日中】
【現在地:E-6 動物園手前】
[時間軸]:第27話 死亡後
[状態]: 全身負傷(中)、疲労(大)、30分間変身不可(ギルス)
    腕部に小程度の裂傷、変身の後遺症、仇を討てなかった自分への苛立ち
[装備]:フルフェイスのヘルメット、カブトエクステンダー@仮面ライダーカブト
[道具]:支給品一式(二人分)、ホッパーゼクターのベルト、デルタギア
[思考・状況]
基本行動方針:殺し合いには加担しない。脱出方法を探る。
1:立花を殺した白い怪物(風のエル)、あすかを殺した白いライダー(ファム)未確認生命体4号(クウガ)に怒り。必ず探し出して倒す。
2:立花藤兵衛の最後の言葉どおり、風見の面倒を見る?
3:自分に再び与えられた命で、救える者を救う。戦おうとする参加者には容赦しない。
4:黒いライダー(カイザ)を探してみる。
6:五代雄介の話を聞き、異なる時間軸から連れて来られた可能性を知る。
  白い怪物(ダグバ、ジョーカー)を倒す。
7:木場が間違いを犯した場合全力で止める。
8:デルタギアを誰か、はっきりとこの殺し合いに反抗する者に託す。(今の所木場が有力
※五代の話を聞き、時間軸のずれを知りました(あくまで五代の仮説としての認識です)。
※剣崎一真の死、ダグバの存在、ジョーカーの存在などの情報を五代から得ました。
※ホッパーゼクターが涼を認めました。(資格者にはすぐにでも成り得ます)また、デイバックの中に隠れています
※カブトエクステンダーはキャストオフできないため武装のほとんどを使えません。
 今の所、『カブトの資格者』のみがキャストオフできます。
※五代(クウガ)は殺し合いに乗ったと勘違いしています。
※勿論、デルタギア装着によるデモンズストレートによる凶暴化などは知りません。(デルタギアの使い方は知っています)
480信じるモノ ◆Z9EUSuuwiU :2008/12/07(日) 23:40:31 ID:ACjV1v3w
【木場勇治@仮面ライダー555】
【1日目 現時刻:日中】
【現在地:E-6・動物園手前】
【時間軸】:39話・巧捜索前
【状態】:全身に中程度の打撲。他人への不信感。全身に疲労大、背中等に軽い火傷。1時間半変身不可(ホースオルフェノク)
【装備】:なし
【道具】:基本支給品×1、Lサイズの写真(香川の発砲シーン)、サイガギア、トンファーエッジ
【思考・状況】
基本行動方針:???
1:香川と侑斗と話し合う。その上で人間の真意を見極める。
2:葦原に憧れに近いものがある。
3:死神博士、ゴルゴス、牙王、風のエル(名前は知らない)、東條を警戒。影山はできれば助けたい。
4:事情を知らない者の前ではできるだけオルフェノク化を使いたくない。
【備考】
※香川から東條との確執を知り、侑斗から電王世界のおおまかな知識を得ました。
 また、第一回放送の内容も二人から知りました。
※香川を赤カードの影響で危険人物として認識したままです。
※自分を信じるが、自分さえも信じられなくなったらその時は…?
481 ◆Z9EUSuuwiU :2008/12/07(日) 23:44:13 ID:ACjV1v3w
以上、投下終了します。
482創る名無しに見る名無し:2008/12/08(月) 01:30:59 ID:F20rxgwd
木場さんがらしくてGJ!

ですが、桜井侑斗の漢字が祐斗になっていたので其処だけ修正が必要かと…
あとは大丈夫だと思います。
483創る名無しに見る名無し:2008/12/08(月) 12:03:57 ID:TjHlFgsx
投下乙です。
似た環境にあった二人の出会いで、今後が楽しみになりました。
GJ!
484創る名無しに見る名無し:2008/12/08(月) 14:57:28 ID:JHLKF6/S
修正&投下乙です!
似たもの同士の出会い(水落ちの頻度的な意味で)がこれからどう影響を与えるか。
葦原さんの心の強さに惹かれる木場の描写がナイス。
そういえば数少ないライダーズギアが一所に二つも集まっているんですね。
良繋ぎでした。GJ!
485創る名無しに見る名無し:2008/12/08(月) 16:14:41 ID:h2C3aaHD
投下乙です。
悪い出来事が重なった木場にもようやく信頼できる人物が…
と思わせながらもまだまだ転落してしまう余地を残していてハラハラもんです
GJ!


また◆deggScNisI氏の予約にも大いに期待!!
486創る名無しに見る名無し:2008/12/11(木) 22:03:07 ID:RkNRYmVo
予約続々でうれしい限りです!
たくさんの人の活躍に期待です。
487創る名無しに見る名無し:2008/12/11(木) 22:14:22 ID:hg+1ss6h
3つ予約入るなんて久しぶりだねえ
しかも18人て多いなw
488創る名無しに見る名無し:2008/12/13(土) 14:49:24 ID:pQOC5PjL
これを機にまた盛り上がるといいねえ
489創る名無しに見る名無し:2008/12/13(土) 15:30:59 ID:qMpc+9ia
18人も来たら何人か死にそうだな。
490創る名無しに見る名無し:2008/12/13(土) 17:34:16 ID:N8Wa/rJU
話を動かす為の繋ぎだけという可能性もある
でも面子的にバトルはしそうだよなあ…w
491創る名無しに見る名無し:2008/12/14(日) 18:03:06 ID:V15QC6Hr
グロンギ三人ともいるしね。
さらには殺害数トップの人や北崎、牙王までいるとなると二人くらい死ぬんじゃないか?
492 ◆deggScNisI :2008/12/15(月) 18:17:49 ID:m2CZ5Hen
1時間の遅刻大変申し訳ありません。素直に白状すると期限忘れて買い物してました
山本大介、十面鬼ゴルゴス、歌舞鬼 投下します
493創る名無しに見る名無し:2008/12/15(月) 18:20:32 ID:hmbgL1ir
か〜ちゃんのためなら、え〜んやこら
494鬼³ ◆deggScNisI :2008/12/15(月) 18:20:55 ID:m2CZ5Hen
日が昇りきり、一層強く暖かい陽射しが地上を照らす。
アスファルトから反射する光に目を細めつつ、歌舞鬼は一人道沿いを歩いていた。
特に当てがある訳でもない。誰かしらと出会えればそれでいい、そんな考えで。
人探しの目的は情報収集にある。歌舞鬼はあまりにもこの世界、ひいてはこの舞台の事を知らない。
時代が違うのだから当然といえば当然だが。他の参加者からどんな些細な事でも知りたい所だった。
勿論最終的に殺害する事になるのは間違いない、その覚悟は既にできている――はず。

そんな覚悟ができている一方で常に頭のどこかでアマゾン、京介、晴彦の事を考えるのは捨てきれない甘さ故だろうか。
自分が見ていない所で何処へと消えてしまったアマゾン。
半ば見捨ててしまったような形になる京介と晴彦。
アマゾンや京介はまだ楽観視できる部分があるが晴彦にいたってはあの凶悪な北崎と同行しているのだ、いつ殺されてもおかしくない。
北崎はいずれ倒す事は決めているがそれまでに無事な保障はどこにもない、北崎の気紛れと晴彦の幸運を願うしかないだろう。

(って俺が思うのは罰当たりか……)

自嘲的な笑いを浮かべながら歌舞鬼は自分に問い掛ける。
何を期待しているのか?既に戻れないように踏ん切りをつけたはずなのに。

(俺がこんなじゃいくらなんでも……いくらなんでも海堂が不憫すぎるよなぁ)

軽く首をふり、小さなため息一つ。

          *   *   *
495創る名無しに見る名無し:2008/12/15(月) 18:22:54 ID:V/aKKuk0
496鬼³ ◆deggScNisI :2008/12/15(月) 18:22:57 ID:m2CZ5Hen
小奇麗だった民家が少しずつ姿を無くし、ポツンポツンと小さな煙が混ざりだす。
蹴り飛ばした小石がコロコロと転がり、カツンと大きなコンクリート片にぶつかった。
歌舞鬼は辺りを見渡し、どうやらとりあえずの目的地であるショッピングセンターに着いたことを確認した。
もっとも、歌舞鬼自身は『ショッピングセンター』が一体何をする所なのかは見当もつかないので確証は無いが。
建物が半壊し、火の粉もパチパチと舞うような現状ではどうしようもない所ではある。

一通り見て回ったが人がいそうな気配はどこにも無かった。
戦闘の傷跡が色濃く残る広場に出た所で歌舞鬼は足を止めた。
この辺りで北崎と出会い、そして連れて行ったのだ。自分が。
さしたる保障も無かったはずなのに、何故自分は北崎を引き入れようとしたのだろうか。
単純だ。要するに歌舞鬼は頼りたかったのだ、それは別に北崎でなくてもよかった。
それがたまたま北崎だった、それだけの話。
アマゾン、京介、晴彦の3人を自分一人で守りきる自信が無かった。
自分の自信の無さ、人を頼ろうとした性根の甘さが――あの分裂を生んだ。
拳をわなわなと震わし、己の心に刻み込むように歌舞鬼は呟く。

「俺はもう、頼らねぇ。俺は『独り』だ、それでいい……それがいい」

身体の力を抜き上を見上げると、壊れた天井の隙間から陽射しが差し込んでいた。
それを見ている内に歌舞鬼は再び笑みを浮かべ……いや、声を出して笑った。
覚悟を決めたのに、戻れないのに、たった今独りでいいと決め込んだのに。
陽射しを見ていたらふと3人の顔が浮かんでしまった。

「あっはははは……こりゃ、駄目だwどうにもなんねぇかもしんねぇなぁ俺は!」

可笑しいのか哀しいのか自分でもわからない歌舞鬼は、ただ笑った。
497創る名無しに見る名無し:2008/12/15(月) 18:23:09 ID:hmbgL1ir
『ただ今、タイピング中』かな?
498創る名無しに見る名無し:2008/12/15(月) 18:24:05 ID:hmbgL1ir
『ただ今、タイピング中』かな?
499鬼³ ◆deggScNisI :2008/12/15(月) 18:24:59 ID:m2CZ5Hen
歌舞鬼の笑いに重ねるように携帯電話が震え、女の声が聞こえだす。

「っと、もうそんな時間かい」

携帯電話を取り出し、必要な情報だけを記憶させるために耳を集中させた。
他のどうでもいい事は気にはしない。何人死んだか、禁止区域は?この2つだけが必要な情報。
海堂の名前が挙げられた時にほんの少しだけ目を細めたが、ただそれだけの事であった。
放送が終わり、画面が見飽きた表示に戻ると歌舞鬼は携帯を戻し、要点だけを頭の中で復唱する。
7人死んだ。これで前回の放送と合わせると残り人数は37人。比較しようがないが良いペースなのだろうか?
禁止エリアについては気になる所はE−7の封鎖くらいか。
E−5、F−7と少しずつショッピングセンターへの行き来するルートが限定されてきている。
E−6道路付近なら参加者と遭遇する可能性は高そうだった。

気にすべき情報はこれだけであり
『アマゾン、京介、晴彦の名前が挙げられなかった事にホッとなどしていない!』
と歌舞鬼は誰に言うでもなく否定していた。

いつまでもここに留まっていても進展が無いと判断し、歌舞鬼はE−6道路を目指そうと歩き始めた。
500鬼³ ◆deggScNisI :2008/12/15(月) 18:26:00 ID:m2CZ5Hen
何が理由で気付いたのかは知れないが、何故『あいつ』は気付けなかったのかも解らないが……
歌舞鬼は瓦礫の山に放置されていた『モノ』を偶然見つけた。

『モノ』は馬よりかは少し小さく、犬よりは大きい大きさで。身体は鋼鉄でできているのだろうか?
さらに目立つ特徴として鉄でできた輪が前と後ろについていた。

何か使える予感がした歌舞鬼は『モノ』に近づき、引っ張りあげる。武器として使うには少しばかり重過ぎるようだ。
ペタペタと触ってみると基本的にはヒンヤリとしているが一部はホンノリと暖かかった。
よくよく見ると中央は凹んでいて革に似たような素材で出来ているのか知れないが柔らかく、馬鞍のように思えた。
仮にこれが馬鞍だとすれば二つの角のような突起は手綱になるのだろう、か?
思い切って乗っかってみる。
歌舞鬼の視界が90度傾き、瓦礫と『モノ』との挟み撃ちに遭い少しばかり痛かった。

「足ね、足で支えないと駄目だよな」

気を取り直して『モノ』の身体を起こし、今度はしっかり足で支える。
今度は倒れずに立つ事ができた。そのままの状態でいること数十秒。
『モノ』が動き出す気配は何一つ無かった。

「うーん?カラクリだと思ったんだが動かないのか?」

何かないかとキョロキョロと『モノ』の身体を見回していると何かの拍子で突然『モノ』が動き出した。
突然の動きに歌舞鬼は対応できず、後ろに放り出される。『モノ』はふらふらと走った後に派手に倒れこんだ。
歌舞鬼は倒れこんだ身体をむっくりと起こし、頭をポリポリと掻いた。

「俺には知らない事が多すぎるなぁ……だが、あれは上手く使えりゃ便利だ。間違いねぇ」

傷だらけになった『モノ』へと近づき、再びその身体を起こし乗り込む。
必ず乗りこなしてみせるという決意を胸に、歌舞鬼は再びこけたのであった。

          *   *   *
501創る名無しに見る名無し:2008/12/15(月) 18:27:01 ID:hmbgL1ir
と〜ちゃんのためなら、え〜んやこら
502鬼³ ◆deggScNisI :2008/12/15(月) 18:27:20 ID:m2CZ5Hen
数十分の格闘の末どうにかこうにか歌舞鬼は『モノ』……いや、『バイク』に乗れるようにはなっていた。
道を曲がる時等に派手にコケてしまう事もあり、ギリギリ運転できているという状態ではあったが。
代償として身体中に浅い傷ができたが歌舞鬼は満足だった。今までよりも速く移動できるというのはやはりありがたい。
あくまでそれは道路限定の話であり悪路や山道では今の歌舞鬼の運転技量を考えれば徒歩の方が間違いなく速く移動できる事には目をつぶる。

「さて、ぼちぼち行くか……あんま倒れたくねぇから一々現在位置確認する為に止まったりはしたくねぇな。まぁ、走ってりゃ誰かに会うだろ」

現在位置を確認し、E−6を目指して歌舞鬼はバイクに乗って走り出す。
眼前には市街地という名前の灰色の迷路が待ち受けていた……

          *   *   *
503鬼³ ◆deggScNisI :2008/12/15(月) 18:29:31 ID:m2CZ5Hen
彼の頭の中にはただ『追う』という事しか浮かばなかった。
木々の間を潜り抜け、土の地面がアスファルトに変わってもその走りは止まらなかった。
しかし周りが彼が未だ慣れぬ人工物で囲まれた所でようやく止まる。
肩を上下させ、荒い息を続けながら辺りを見渡す。ほんの少しでも手掛かりがあれば、と。

目に入るのは灰色やカーキ色、所によりベージュ。
耳に入るのは風の音くらいのもので怖いくらい静か。
鼻に入るのは……潮の匂いともう一つ、ここにきて何度か嗅いだ事のある臭い。

それが何なのかという所を彼は理解していないがその臭いを嗅ぐと心がざらついた。
その臭いに惹かれるように警戒しながら歩き出す。潮の匂いも強くなり、海が近い事が容易に想像できる。
何度目かの角を曲がった所で視界が開け、目の前に黄色の砂浜と青色の海が彼を出迎えた。
そして、黄色と青色の中に異様に目立つ赤い奴を見つけた時

彼は笑っていた。ここに他人がいたらそう思うだろう。それほどの顔をしていた。

息を大きく一つ吐き、手を大きく広げ、姿勢を低くする。
ぎらついた目で距離を測り、赤い奴の動きを冷静に観察する。
彼は獣ではあったが、我武者羅に突っ込むほど馬鹿ではなかった。
赤い奴はこちらに背を向けたままどういうわけか解らないが海を見つめていた。
こちらに振り返る様子は無い。
なら、行くべきだ。
既にこちらに気付いており罠を仕掛けているかもしれない。
ならば罠よりも速く動けばいいだけのこと。
覚悟はできた。あとは行動あるのみ。
息を少し吸い、再び大きく吐く。限界まで身体を縮め、飛び出す。
風が起こり、砂が舞う。彼は……アマゾンは駆け出した。ここで全ての決着をつけるため。

          *   *   *
504創る名無しに見る名無し:2008/12/15(月) 18:30:05 ID:qevWsC5U
支援!
505鬼³ ◆deggScNisI :2008/12/15(月) 18:31:53 ID:m2CZ5Hen
ゴルゴスはふらふらと移動しながらある物を探していた。
それは参加者の死体。もしくは非力な参加者。
ファイズとゼロノスによって刻まれた胸の一文字の傷がずきりと疼く。
この傷を治癒する為、体力の回復や空腹を満たす為にどんな代物でも良いから血が欲しいというのが本音だった。

「ちっ、死体の一つも落ちていないとは。ここは殺し合いの場のはずだというのに、腑抜けばかりか?」

ゴルゴスは知る由もないのだが参加者の遺体は灰や炭と化して原型を留めていなかったり、
カードに封印されたり埋葬されていたりと死体として表に出ない場合もある。野晒しの普通の死体はむしろ珍しい部類に入っていた。
そんな貴重な死体にもほんの少しの幸運があれば或いは出合えたかもしれないがゴルゴスにはその幸運が無かった。

「むっ?」

不意に訪れた力の解放にゴルゴスは確認を取る為に身体を左右に振り、手を開いたり閉じたりしてみる。
どうやら制限が解かれたらしい。十面鬼は復活した。
制限下にあった時は不本意ではあるがいざという時に逃れやすくするために市街地にて死体探しをしていた。
だがそれももはや不要になり、ゴルゴスは市街地での死体探しを一時中断し、海岸へと移動する。
海岸ならば遮蔽物も無く、自分の力を100%発揮できるため仮に襲撃を受けても返り討ちにする事が可能だからだ。
砂浜に腰を……というか岩を下ろし、やる事もないので海を見つめる。
穏やかな海模様だった。波が微かな音を立てて砂浜を濡らしている。
空を見上げると太陽は丁度真上まで昇ってゴルゴスの身体を更に赤くしようとするかの如く照らしていた。
506鬼³ ◆deggScNisI :2008/12/15(月) 18:33:55 ID:m2CZ5Hen
「昼、か――昼だと!?」

本来ならばあの耳障りな蒼女の声が聞こえてくる時間のはずだがその気配は未だに無い。
よくよく考えてみればどうも身体が軽い。自分の身体を調べてみてゴルゴスは確信する。

「デイパックを落とした……だと!?訳の分からんベルトについてはどうでもいい。
 水や食料も俺様にとっては無用の代物。だが問題は、あの機械が入っていたという事だ!」

あの機械とはつまり携帯電話の事である。
影山が死神博士に説明していたようなしていなかったような曖昧な記憶があるがゴルゴス自身の認識としては小さなラジオ止まりだった。
だがそんな物でもこの場では重要な情報源だ。特に禁止エリアの情報が得られないのが痛い。
拳をわなわなと震わせ、どうするべきか考える。

「ふん、考える必要も無かったわ。無いなら奪うだけの事。お前の物は俺の物。俺の物は俺の物。
 適当な奴から血を吸い上げるついでに奪い取ってくれるわ。ぐわぁはっはっは!」

そうと決まればあとは行動あるのみだ。いい加減海も見飽きたゴルゴスは再び市街地へ戻ろうと振り返る。

「うおっ!?」

眼前に突如として獣が現れたのには流石のゴルゴスもびびった。獣はそのままゴルゴスに飛びつき、首筋に噛み付いた。
能力を発揮していないせいか本来なら獣の牙など文字通り歯が立たないほどの強固な肌が傷つき、血が滲み出す。

「離せ!離さんか!このケダモノめ!」

獣の頭を両手で掴み、必死に離そうとする。獣は獣で離れまいと歯を立て爪を立て、必死に抵抗する。
バランスを崩したゴルゴスは倒れこみ、ゴロゴロと転がりだす。
砂浜の一部が整備され、水しぶきをあげはじめた所でようやく獣はゴルゴスから離れた。
ゴルゴスはこの時ようやく気付いたのだが相手は獣ではなかった。
507創る名無しに見る名無し:2008/12/15(月) 18:35:15 ID:hmbgL1ir
はやい、はやいよ〜
508鬼³ ◆deggScNisI :2008/12/15(月) 18:36:11 ID:m2CZ5Hen
「貴様は!?アマゾン!」
「ケケーッ!」

海水で濡れ、髪が垂れているため顔は見えない。だが髪の隙間から見える鋭い眼差し。
アマゾン以外有り得ない裸体。そして左腕でキラリと光るギギの腕輪。
間違いなくアマゾンその人であった。

「会いたかったぞアマゾンライダー!貴様を殺し、ギギの腕輪は俺様の物としてくれる!
 残った血肉は俺様の腹の中に収めてやるわ、覚悟しろ!」

ゴルゴスの身体から溶岩のように熱い気迫が漲り、周りの空気がぐにゃりと曲がる。
異様な姿と発せられるプレッシャーは並の者ならすぐさま逃げ出すだろう。

だがアマゾンはそのプレッシャーに臆する事無くゴルゴスを睨みつける。
509創る名無しに見る名無し:2008/12/15(月) 18:37:38 ID:qevWsC5U
しえーん
510創る名無しに見る名無し:2008/12/15(月) 18:37:56 ID:qttQQQbU
支援ですー
511創る名無しに見る名無し:2008/12/15(月) 18:42:56 ID:qevWsC5U
代理投下できないので支援ー
512創る名無しに見る名無し:2008/12/15(月) 18:45:12 ID:hmbgL1ir
?????
弾幕うすかったから迎撃されちゃったか?
513創る名無しに見る名無し:2008/12/15(月) 18:49:06 ID:qevWsC5U
ヒント:避難所、さるさん
514代理投下 826 鬼3 ◇deggScNisI:2008/12/15(月) 19:12:03 ID:6eZDBsaB
「ア〜…」

両手を広げると身体の内から、ギギの腕輪から、アマゾンの身体に力が溢れ出す。

「マ〜…」

両手を交差させ、溢れんばかりの力を凝縮させ……

「ゾーン!」

力を全て解き放ち。両目が真っ赤に光る。
解き放たれた力がまばゆい光となってアマゾンの身体を包み込み、その身体を変化させる。
肌の色は緑と赤のまだら色に変わり、
膨張した筋肉が盛り上がり、胸部を覆うような形に変化する。
頭部はオオトカゲを思わせる形に変わり、巨大な真っ赤な目と大きく開いた口から覗く牙がキラリと光る。

「ケァーーッ!」

奇声を発し、ゴルゴスに負けないほどのプレッシャーを放ちだす。

アマゾンライダーここにあり

この瞬間、アマゾンとゴルゴスの死闘が幕を開けた。

          *   *   *
515代理投下 827 鬼3 ◇deggScNisI:2008/12/15(月) 19:13:48 ID:6eZDBsaB
パシャ、パシャと水しぶきを上げながらアマゾンとゴルゴスはお互いに旋回しながら相手の出方を窺う。
アマゾンは時折腕を交差させ威嚇の音を発したりしている。
一方のゴルゴスはアマゾンから目を離さないようにしつつ、アマゾン対策を考えていた。

(アマゾンが人間体の時に見せた素早さは変身した後も健在、むしろパワーアップしているはず。
 俺様の攻撃は威力は抜群だが当てるのは苦手だ。赤や緑、黄色のライダーを相手にして嫌というほど実感したわ。
 とするとアマゾンにも同じように真正面から馬鹿正直に戦っては厳しい、か)

チラリと青く大きく広がる海のほうを確認する。岩などは無く波も無い。
ゴルゴスがにぃ、と嫌らしい笑みを浮かべる。

「くらえっ!」

様子見を続けていたゴルゴスは突然巨大岩の口から砲撃を開始した。
アマゾンは横に転がり回避しすぐに立ち上がる。が、ゴルゴスの姿が無い。
辺りを見回し、すぐに見つけることができた。
ゴルゴスは沖のほうへと移動しており、アマゾンがしばらく様子を見ているとゴルゴスが振り返り、叫んだ。

「アマゾンライダー!俺を恐れぬのならばここまで来い!来ないのならば貴様を腰抜けと見なす!
 そんな腰抜け等相手にするだけ無駄だ、どこへでも逃げるがいいわ!」

ゴルゴスが挑発するが残念な事にアマゾンは今の言葉の1割も理解できていなかった。
だがゴルゴスが自分を呼んでいる、という事だけはなんとなく察した。さらにいえばここでゴルゴスを逃がす気などアマゾン自身無かった。

「ケケーッ!」

気合を入れ、バシャバシャと沖の方へと走り出し、海水が腰まで浸かろうかという所で飛び上がり、海へと潜り込んだ。
数秒の後に水面に浮かび上がり、両手足をフルに使い、海上で浮かぶゴルゴスへと泳いでいく。
516創る名無しに見る名無し:2008/12/15(月) 19:14:25 ID:qevWsC5U
再び支援
517代理投下 828 鬼3 ◇deggScNisI:2008/12/15(月) 19:15:52 ID:6eZDBsaB
ゴルゴスの狙いはまさにこれであった。アマゾンのスピードという武器を殺し、自分の攻撃を容易に当てられるようにする。
さらに海で浮かんだ状態でまともな攻撃など、ましてやゴルゴスは浮いているのだ。攻撃できるかどうかすら怪しいはず。
あとはアマゾンがこちらの誘いに乗ってくれるかどうかだけが問題だったがホイホイとついてきたのでゴルゴスは笑いを隠す事ができなかった。

ほとんどがゴルゴスの思い通りだったが一つだけ問題があった。

「アマゾンめ、思ったよりは速いではないか」

そう、アマゾンの海上での動きが思ったよりも速いのだ。だがあくまで思ったよりも、という程度の事だ。
真っ直ぐと向かってくるアマゾンに対して悠々と狙いを定め――

「さらばだアマゾン!」

砲撃をこれでもかとばかりに撃ち込んだ。
水柱があちこちに立ち上がり、静かな海を騒然とさせる。
流石にこれだけでアマゾンがやられるとはゴルゴスも思っていないがダメージは受けたはずと判断し、様子を見るため砲撃を中止する。

「むぅ?」

水しぶきがおさまり再び静かな海に戻りつつある中……どこにもアマゾンの姿は無かった。
まさか今の一撃で仕留めてしまい海中へと沈んでしまったのだろうか?と不安になる。
アマゾンの左腕にあるギギの腕輪が回収できないでは倒す意味が微塵も無くなってしまう為だ。
潜って確認すべきだろうかとゴルゴスは悩んでいた刹那
518創る名無しに見る名無し:2008/12/15(月) 19:16:27 ID:qevWsC5U
しえーん
519代理投下 829 鬼3 ◇deggScNisI:2008/12/15(月) 19:17:37 ID:6eZDBsaB
「ケケーッ!」

海を破るように飛び上がってきたアマゾンが右手で一振り、ゴルゴスの巨大岩を斬り付けた。

「ガハッ!き、貴様!」

反撃しようとするゴルゴスを無視し、一撃を与えたアマゾンは再び海へと潜り込む。
ゴルゴスがキョロキョロと辺りを見渡すが海には既に静寂が戻っており、アマゾンの気配は微塵も感じられない。

「どこだ!出て来い!」

苛立ちの声を上げるがその声は虚しく響くだけ……に終わらなかった。
その声に答えるようにゴルゴスの背後で水しぶきがあがる。

「そこかっ!」

素早く振り返り、水しぶきがあがった場所に撃ち込む。
その攻撃が捉えた物はアマゾンではなく小さな小石で、砲撃を受けた小石は粉々に砕け散った。
陽動だと気付いた時にはもう遅く、先ほどよりも大きな水しぶきがゴルゴスの背後であがり、背中に焼けるような痛みが走った。
振り向く前に再びアマゾンが水に潜る音が響き、静かな海が蘇る。
ここにきてゴルゴスは自分の作戦が過ちだった事に気付く。
自分が思っていたのとは反対にアマゾンは海中からでも問題なくこちらに反撃ができ、不意打ちを食らう分明らかに自分の方が不利だった。
さらに完全に潜られてしまうと砲撃も届かない。デメリットばかりだった。

「ちぃ……だが、貴様が攻撃できるのも俺が海上スレスレを飛んでいるからできる事よ」

ゴルゴスは砲撃による攻撃を諦め、高度をあげ海から徐々に距離をとる。
ある程度の所で停止し、海上をじっと見つめる。

「アマゾンライダー……貴様はモグラ叩きは好きかな?」

          *   *   *
520代理投下 830 鬼3 ◇deggScNisI:2008/12/15(月) 19:19:40 ID:6eZDBsaB
口の端から小さな泡を一つ吐き……ゆっくりと海中を泳ぎながらアマゾンは海上を見つめていた。
何度か攻撃を仕掛けたがどれもゴルゴスに致命傷に至る傷は与えてはいない。
だが次の攻撃には全力を使うつもりでいた。既に海に慣れつつあり、ゴルゴスの動きからイケルと判断した為である。
だが肝心のゴルゴスの姿が、見えない。
今までは海上スレスレを浮かぶゴルゴスが波間から見えたのだが今は歪んだ太陽と濃い青をした空しか見えなかった。
耐え切れなくなったアマゾンは海中から浮かび上がり、海上に顔を出し辺りを見渡した。
四方を見渡し、それから空を見上げる。海中からではわからなかったが太陽の一部が黒くなっていた。
太陽の眩しさに目を細めていると徐々に黒が大きくなっていく。

「!」

黒い物はゴルゴスであった。ゴルゴスが自分目掛けて落下してくる。
アマゾンは回避しようとするが気付くのが遅過ぎた。

「沈めぇぇーーっ!」

ゴルゴスの巨体を生かしたのしかかり攻撃がアマゾンに直撃し、そのまま沈み込む。
海中深くゴルゴスとアマゾンは潜っていく。
勢いに耐え切れずアマゾンの口から大きな泡が吐き出された。

(このまま海の底に叩き付けてくれるわ!)

ゴルゴスの勢いが衰える事は無く、このままでいけばアマゾンがぺしゃんこになるのは間違いなかった。
このままでいけば、であるが。
521創る名無しに見る名無し:2008/12/15(月) 19:20:40 ID:qevWsC5U
支援
522代理投下 831 鬼3 ◇deggScNisI:2008/12/15(月) 19:23:36 ID:6eZDBsaB
アマゾンの目がキラリと光り、されるがままだったゴルゴスの岩の底に手を当て、勢いから逃れようともがき出す。

(無駄な足掻きよ!)

だが、無駄ではなかった。海底へと激突する寸前にアマゾンは体勢を立て直し、即座に押し潰される事は無かった。
だが両手でゴルゴスを受け止め、両足は海底に少し沈みつつありすぐには身動きが取れない状況であった。

(ふん、まともに呼吸ができないのだ。いずれは力尽きるわ!)

これが他の参加者ならばゴルゴスの思い通りになったのだろう。だがゴルゴスにとって不運な事に相手はアマゾン。
アマゾンは――

(ケケーッ!)

えら呼吸ができる為、海中でも問題なく酸素を取り入れることが可能なのだ。
気力を取り戻し、半ば強引にゴルゴスを投げ飛ばす。

(ちぃ、これ以上海中にいると俺様の方がまいってしまうわ!)

起き上がったゴルゴスはそのまま浮上を開始する。
海中ではまともな攻撃手段がないうえにゴルゴスにはえら呼吸なんてものも備わっていないのだから。

当然浮上に集中している為無防備なその姿は格好の標的となる。

(ケケーッ!)

ゴルゴスの周りを泳ぎながら鮫のように手足のヒレを用いて攻撃を加えていく。
組み付いて噛み付こうともするが抵抗にあい、なかなか上手く行かない。
だが海中での切り裂きの連続は決して無駄にはならずゴルゴスの身体のあちこちから赤い煙幕のように血が流れ出してきていた。
523代理投下 832 鬼3 ◇deggScNisI:2008/12/15(月) 19:25:01 ID:6eZDBsaB
          *   *   *

「ぶはぁっ!」

海からあがったゴルゴスが一気に酸素を取り込む。
海面を見ればすぐそこまでアマゾンが迫ってきていた。

(思った以上の深手を……ともかくここで戦うのはまずい!)

全速力で逃げるように、砂浜目掛けて飛行するゴルゴス。
一足遅く浮かび上がったアマゾンはすぐさま追跡を開始する。
下手な色気を出さずに全力で飛行したのが幸いしたのかアマゾンからの追撃は一回もなかった。
泳ぐのが困難なほどの浅瀬までくるとゴルゴスが立ち止まり、振り返る。
立ち上がったアマゾンが視線を受け、睨み返す。

ゴルゴスは全身傷だらけで所々から血は今も流れ出しており体力もかなり消耗している。
片やアマゾンの方も無傷とは言わないがそれでも傷らしい傷もなく体力は未だに健在。

今現在両者の優劣は誰が見ても明らかであった

アマゾンがゆっくりと右手を振りかぶり、背中のヒレがわなわなと動き出す。
ゴルゴスは両手をゆっくりとかき混ぜるように動かす。ゴルゴスの両目が妖しく光り始める。

「ケケーッ「ブラック・オン・ゴォォルド!」」

アマゾンが飛び掛る寸前にゴルゴスが叫び、次いで辺り一面が暗闇に覆われる。
目標を見失ったアマゾンの右手が虚しく振り下ろされた。
524代理投下 833 鬼3 ◇deggScNisI:2008/12/15(月) 19:26:11 ID:6eZDBsaB
「…ッ!」

足元に海水の冷たさは感じる。潮の匂いや風の音も確かに感じる。
だが暗闇。足元も上も四方も全てが暗闇。唯一自分自身だけは暗闇に溶け込んではいなかった。
未知の体験にアマゾンは戸惑い、うろうろと歩き回る。
ゴルゴスの臭いは感じるのだが今までに流された血の臭いが邪魔で位置を特定することができずにいた。
そうしてしばらくしていると不意に、暗闇に光りが差し始めた。燃える炎の明るさが。

「!?」

本能的にアマゾンは何かがおかしいことを悟る。そう、海が燃えているのだ。近くに近づけば熱く、これが幻でない事を裏付けている。
炎は次々とあがり、やがて巨大な円となってアマゾンの周りを囲い込んだ。
炎に慣れていないアマゾンはなるべく距離を取ろうと円の中心から動かない、動けない。
525代理投下 834 鬼3 ◇deggScNisI:2008/12/15(月) 19:28:00 ID:6eZDBsaB
不意に足元が熱くなりアマゾンはその場を離れる。だがそこには炎は無く代わりに白い泡が浮かんでいた。
恐らく白い泡は海面を漂うように浮かんでいるのだろう。だがこの泡は?
恐る恐る泡に触れた指先が熱くなり、すぐさま海水で洗い流す。
泡に触れた指先が焼けただれ、酷い痛みがアマゾンを襲う。
白い泡は徐々にその数を増やし、アマゾンの足元まで漂ってくる。

「ッ!」

触れてしまった足首がじゅうっと嫌な音をあげた。
アマゾンを囲う炎は未だ健在でありアマゾンを襲う白い泡はどんどん増えていき、ついにアマゾンの逃げ場は失われた。

「ア…ガッ…グッ…ッ!」

両足が白い泡に溶かされていくのを感じるが倒れる事は決してできない。
倒れてしまえば一巻の終わりなのだから。
周りは炎に囲まれ、飛び越えるのも困難なほど厚い層を形成しつつある。
水の中に潜ろうにもここは浅瀬であり身体を完全に沈めることなど不可能。

アマゾンはなんとかゴルゴスの位置を探らんと必死に考える。両足が使い物にならなくなるまで時間が無い。

          *   *   *
526創る名無しに見る名無し:2008/12/15(月) 19:30:26 ID:qevWsC5U
しえん
527代理投下 835 鬼³ ◇deggScNisI:2008/12/15(月) 19:31:39 ID:6eZDBsaB
ゴルゴスは燃える液体と人体を溶かす白い泡を次々と放出しつつアマゾンの出方を暗闇の一角で静かに窺っていた。

(咄嗟に思いついた割にはいい攻撃だなこれは……炎の円を形成できたのがやはり大きいな。
 しかしアマゾンめ、しぶとい奴だ。必殺の攻撃をしてくるのは間違いない、だがその為にこちらの位置をどうやって探る?)

ゴルゴスは自分からは動かない。自分から動けばファイズ&ザビー戦の時のように思わぬ反撃を食らう事は学んでいるのだ。同じへまはしない。
そうやっている内についにアマゾンが膝をついた。倒れこむのを防ぐ為か咄嗟に左手をついてしまう。

「アグゥッ!」

新たな部分が溶ける痛みにアマゾンが悲痛な声をあげる。だがゴルゴスは白い泡を作り続けた。

(どうやら俺様の勝ちのようだな、アマゾン。貴様の全身が溶けるのを見届けてから俺様はゆっくり貴様のギギの腕輪を奪わせてもらうぞ……)

勝ちを確信しながらも、それでもゴルゴスは警戒心を解いてはいなかった。
何故なら両足、左手を溶かされかけても尚アマゾンの目は鋭く光っていたのだから。

「ケケーッ!」

アマゾンが驚異的な脚力で飛び上がる。その勢いから死力を尽くした最後の攻撃だという事は明らかだった。

(ここだ!ここでアマゾンの攻撃を退ければ俺様の勝ちだ!)

ゴルゴスが白い泡の放出をやめ、身構える。
528創る名無しに見る名無し:2008/12/15(月) 19:32:36 ID:CSAtTQYZ
支援支援
529創る名無しに見る名無し:2008/12/15(月) 19:35:34 ID:qevWsC5U
支援じゃー
530鬼³;:2008/12/15(月) 19:47:45 ID:CSAtTQYZ
飛び上がったアマゾンは両手足を広げ空中でヘリコプターのように回転を始めた。
その勢いでアマゾンの左手、両足に付着していた白い泡は四方八方に弾き飛ばされていく。
飛ばされた一部の泡がゴルゴスの身体にかかり、赤い肌を溶かした。
だがゴルゴスは歯を食いしばり、呻き声一つあげることなくその痛みに耐えたのだ。

(ふん今更傷の一つや二つで声などあげんわ!当てが外れたなアマゾンライダー!)

耐え切ったゴルゴスがアマゾンを見ると、目が合った。
いや、アマゾンには暗闇にしか見えないのだから目が合うという表現もおかしいのかもしれないが。

(何故位置がわかった!?……そうか、俺様に当たらなかった泡はそのまま下に落下するのみ。
 だが俺様に当たった泡は奴から見れば空中に固定されたように見えたはず!それを目印にしたのか!
 或いは肌が溶ける音を察知したのか……どちらにせよ、俺様の位置がわかったなら奴がする事は一つだ!)

「ケケーッ!」

アマゾンがゴルゴスの元へと飛び掛る。だがその動きはあまりにも直線的すぎた。

「馬鹿が!狙ってくださいと言ってる様なものよ!」

岩石の口からの砲撃がアマゾンを直撃し、アマゾンの勢いは止まりゆっくりと炎の輪の中へと落下しはじめた。

「勝ったっ!!!!」

勝利宣言をするゴルゴスの左腕に何かが撒き付く。
唯一無傷なアマゾンの右手にはロープに変化したコンドラーが握られ、その先端がゴルゴスの左腕に撒きついたのだ。
そのままブランコのように回転し、再びアマゾンは飛び上がった。ゴルゴスよりも、高く。

右手を振り上げ、背中のヒレが激しく動き出す。


「ケケケーーッ!!」


ゴルゴスは逃れようとしたが、一瞬の油断からその時間を失う。


振り下ろされたアマゾンの右腕が肩ごと自分の右腕が切断される瞬間をゴルゴスは見ているだけしかできなかった。


渾身の大切断が決まり、こうしてアマゾンとゴルゴスの決着はついたのであった。

          *   *   *
531代理投下 鬼³;◇deggScNisI:2008/12/15(月) 19:50:51 ID:CSAtTQYZ
飛沫をあげてアマゾンが着地し、そのまま崩れるように膝をつく。両足と左手の傷に海水や砂が触れるが痛みは感じなかった。
次いでガガの腕輪をつけたままのゴルゴスの右腕が浅瀬に沈む。
ゴルゴス自身は未だ飛行していたが右半身からの出血はもとよりガガの腕輪を失った事であと少しの命という状態であった。

「見事だアマゾン……そう言うしかあるまいな……ガハッ」

顔面岩の顔が次々と彫刻へと変わっていき、ゴルゴスの力が失いつつある事を現していた。

「だが、貴様もその傷だ……長くは、あるまい……グフッ、ぐわっはっは!!」

高笑いと共にゴルゴスが高度をあげ、空へと昇っていく。

「残念だったな!アマゾンライダー!俺様をここまで追い詰めたのは確かに貴様だ!だが俺様の命を消すのは貴様でも!」

制限の影響なのだろうかゴルゴスの首輪から甲高い音が発せられる。だがそれも予想の範囲内だったのかゴルゴスは自分の首輪に指を差す。

「ましてや訳の分からん者どもでもない!」

膝をついたアマゾンはただじっと空へと昇るゴルゴスを見つめていた。

「この俺様自身だ!俺様だけが!俺様の命を自由に扱える!貴様は最後の最後でツメを誤ったのだ、アマゾン!ぐわっはっはっは!!!」

ゴルゴスの身体が淡く光りだす。首輪の音の間隔は少しずつ短くなってきていた。


「見よ!アマゾンライダー!これが俺の最後だーーっ!!!」


叫びと共にゴルゴスの身体が爆発四散し、海一面に赤い肉片がボチャボチャと音を立てて沈んでいった。

はっきり言えばただの強がりである。間違いなくアマゾンはゴルゴスに勝利したのだ。
おまけにアマゾンは言葉がわからない。故にゴルゴスの最期の言葉も解らない。

だがそれでも、アマゾンの心の中には言い知れぬ悔しさが広がったのだった。


【十面鬼ゴルゴス@仮面ライダーアマゾン:死亡確認】



【残り36人】



          *   *   *
532創る名無しに見る名無し:2008/12/15(月) 19:55:14 ID:qevWsC5U
支援
533代理投下 鬼³◇deggScNisI:2008/12/15(月) 19:55:33 ID:CSAtTQYZ
変身を解いたアマゾンは沈んでいたガガの腕輪をゴルゴスの腕ごと回収し、引き摺る。
左手両足は変身を解いた途端に激痛に見舞われた。皮膚は溶け、足に至っては白い物が見えている。
それでもゆっくりととはいえ歩けるのはアマゾンの身体能力や治癒能力の高さの賜物だろう。
アマゾンの頭の中は空っぽだった。ただひたすらに休みたかった。
休んで、それから……

ここにきてようやくアマゾンは歌舞鬼に二人の少年の護衛を任せられていたことを思い出す。
流石のアマゾンも悪い事をした、というのは理解できた。まずは休み、それから謝りに行こう。そう結論付けた。


     パチ  パチ  パチ  パチ


何かの音に引かれ、アマゾンはゆっくりと顔をあげた。

『人』がいた。

黒いスーツに身を包み、胸と肩には茶色の鎧。肩からは金色の角のようなものが二つずつ生えている。

右膝には何かの動物を模したような飾り。

そしてなにより、表情の窺い知れぬ銀の面の左右には黄金の角が生えていた。

これはむしろ、『鬼』

『鬼』がいた。

『鬼』がアマゾンの健闘を称えるかのように拍手をしていたのだ。

アマゾンは何がなんだかわからずただ『鬼』を見つめていた。
『鬼』は拍手をやめ、じっとアマゾンを見つめた。
お互いの目と目が合っていたが、お互いに相手の考える事等解りようも無かった。
『鬼』が一度空を見やり、それから腰のベルトから何かカードの様な物を引き抜いた。
右膝をゆっくりとあげ、カードを動物の顔へと差し込む。


  ――SPIN VENT――


どこからともなく――巨大な角とも槍ともドリルとも思えるような――武器、ガゼルスタッブが飛来し『鬼』の右腕に装着される。
ここにきてようやくアマゾンは敵だと認識し、全身に力を入れる。

「アー……マー……ゾーンッ!」

だが身体は変わらない、信じられないといった表情でアマゾンが自分の身体を見渡す。
『鬼』は軽く首を振り……アマゾン目掛けて駆け出した。

アマゾンが立ち向かおうとするが両足の踏ん張りも利かず左手もまともに動かせず、できることはただ相手が迫るのを見つめるだけだった。

ガゼルスタッブの先端がアマゾンの胸に触れた所でピタリと止まる。
534代理投下 鬼³◇deggScNisI:2008/12/15(月) 19:59:31 ID:CSAtTQYZ
アマゾンは顔を上げ、『鬼』を睨みつける。
『鬼』がしばらくそうしていたが不意に――

「もう、やすめ」

そう呟き、ガゼルスタッブがアマゾンの身体を貫いた。

口から血が溢れ出し、アマゾンが唯一まともな右腕で『鬼』の面をゆっくりと、あがくように引っ掻いたがそれまでだった。
遂に右腕も垂れ下がり、アマゾンの眼も閉じられていく。


密林の王者は敵対する十面鬼が眠る海辺で、両足と左手を溶かされ、胸に大きな穴を二つ開けて、心も頭も空っぽな状態で殺された。


【山本大介@仮面ライダーアマゾン:死亡確認】



【残り35人】


          *   *   *


まだまだ不慣れな運転に加え土地勘もまったくないせいか歌舞鬼は目指すべき方向とは真逆の方向へと進んでしまっていた。
それに気付いたのも潮の匂いに気付いてからというのだから人間不慣れな事は極力しないに限るものである。
だがある意味この瞬間に海に着いたのは幸運であり不運であった。

歌舞鬼が辿り付いたのは、ゴルゴスが水中から襲うアマゾンに苦戦している時だった。
戦っているのがアマゾンだと理解した瞬間に加勢に向かいそうになったが歌舞鬼はグッとこらえた。
これはチャンスだと、頭がそう判断した。歌舞鬼の中で迷いが生じるがそうこうしているうちに戦いの舞台は海中へと移っていった。
その間に歌舞鬼はバイクと共に身を隠し、決着を見守る事にした。アマゾンが勝てば見逃そう、赤いのが勝てば殺そう。この時はそう考えていた。
そしてゴルゴスが姿を現し、次いでアマゾンが姿を現す。この時ゴルゴスの身体は傷だらけでアマゾンの勝ちは揺るがない、はずだった。
だがゴルゴスの能力なのだろうか突如として一部分が暗闇に覆われたのだ。その空間だけポツンと黒くなった。
そしてその空間が破られたとき、決着はついていた。
ゴルゴスの右肩から先は無く、血も滝のように流れていた。
だが勝利の代償は大きく、アマゾンの両足左手は溶けて骨さえ露出していた。動ける事自体恐ろしいほどの傷だ。

そうしてゴルゴスは最期には自爆した。最後の最後まで嫌な奴という印象しか覚えなかった。
疲弊しきったアマゾンは何故かゴルゴスの右手を回収し、ゆっくりと歩き始めた。
535代理投下 鬼³◇deggScNisI:2008/12/15(月) 20:05:40 ID:CSAtTQYZ
「もう、いいだろ……」

もはや見てられなかった。仮に、このまま見逃した所で先は見えている。

(海堂の時もそうだったな……)

歌舞鬼は鬼に変身しようするが途中で止め、インペラーのデッキに持ち替えた。

(アマゾンは俺の事を、多分まだ信用してる。最後の最後で俺に裏切られたなんて後味があまりにも悪すぎる、だろ)

インペラーのデッキをバイクのサイドミラーに掲げる。説明書通り、銀色のバックルが腰に装着された。

「変身……」

デッキを差込、虚像が重なり合って変身が完了する。

(アマゾン、お前は何も解らなくていい。解らないままここで死ぬのが、お前の幸せなんだ)

歌舞鬼は『鬼』となり、アマゾンの前に立ちはだかった。


          *   *   *


変身を解いた歌舞鬼は倒れこんだアマゾンの遺体を砂浜に仰向けで寝かせた。
近くに転がっていたゴルゴスの右腕。その右腕につけられた腕輪がアマゾンが左腕につけられた腕輪と形が似ていることに気付き、なんとなく悟った。

「大事な物、だったんだな。よかったな、取り戻せて」

ガガの腕輪をアマゾンの遺体の上に乗せ、手を合わせた。

しばしの黙祷の後に立ち上がり、歌舞鬼は海岸を後にする。

バイクにまたがり今度こそE−6を目指すため歌舞鬼は再び走り始めた。

誰に聞かせるでもなく、歌舞鬼は呟く。

「京介や晴彦も……つらい思いをしてるのか?苦しいのか?痛いのか?」

歌舞鬼を乗せたバイクは走る。

「なら俺に頼れ。俺が、楽に殺してやる」

歪み始めた愛情はどこへ向かうか
536代理投下 鬼³◇deggScNisI:2008/12/15(月) 20:10:30 ID:CSAtTQYZ
【歌舞鬼@劇場版仮面ライダー響鬼】
【1日目 現時刻:日中】
【現在地:G-6北部】
[時間軸]:響鬼との一騎打ちに破れヒトツミに食われた後
[状態]:健康 、バイク搭乗中、二時間変身不可能(インペラー)
[装備]:変身音叉・音角、音撃棒・烈翠
[道具]:基本支給品×3(ペットボトル1本捨て)、歌舞鬼専用地図、音撃三角・烈節@響鬼、GK―06ユニコーン@アギト、ルール説明の紙芝居、インペラーのカードデッキ@龍騎、KAWASAKI ZZR250
【思考・状況】
基本行動方針:優勝し、元の世界に戻って魔化魍と闘う。そして最後は……
1:桐矢、三田村がつらい思いをしているならば楽にしてやりたい
2:E−6は人が集まるはず。まずは情報収集
3:北崎はいつか倒す。
【備考】
※カードデッキの使い方は大体覚えました。
※E−6を目指してバイク搭乗中ですが運転に不慣れの為目指すべき場所までたどり着けない可能性があります
※何処へ向かうかは次の書き手さんにお任せします。
537代理投下 鬼³◇deggScNisI:2008/12/15(月) 20:18:48 ID:CSAtTQYZ
これにて代理投下終了です。投下&代理投下してくださった方乙です!

ここから感想のターンですが相次いでのアマゾン&十面鬼脱落!!
二人の死力を尽くした戦いは見ごたえありました。
そして子供を苦しめたくないという想いから殺す事にした歌舞鬼がおっかない。
GJでした!

538創る名無しに見る名無し:2008/12/15(月) 20:53:22 ID:qevWsC5U
投下乙です!!
アマゾン……ゴルゴス……熱い戦い、堪能させてもらいました。
歌舞鬼はもう引き返せない…その決意が今後どのように生きてくるのか期待。
GJ!!
539創る名無しに見る名無し:2008/12/15(月) 21:24:02 ID:46/qzH/G
投下&代理投下乙!そしてGJです!
熱い戦い引き込まれました!!
歌舞鬼の決意が悲しいよ…
540創る名無しに見る名無し:2008/12/15(月) 21:28:43 ID:933w0Czw
投下&代理投下乙です!
支援間に合わず、申し訳ない。

アマゾンとゴルゴスの戦いが熱くて面白かったです。
解釈をする歌舞鬼の心理描写が悲しかった。
GJ!
541創る名無しに見る名無し:2008/12/15(月) 22:15:22 ID:F5/lSIw8
GJです!
アマゾンと十面鬼の戦いが原作を彷彿とさせる!
自然と特撮で使われていたSEまできこえてきました。

昭和組の二人もここで脱落し、カブキはどこへ向かうのか……
542創る名無しに見る名無し:2008/12/15(月) 22:24:32 ID:bXtPTzH1
アマゾン勢全滅ッ!!

カブキも乗ってしまったからには頑張れ!!

GJ!
543創る名無しに見る名無し:2008/12/15(月) 22:38:13 ID:Qzp2WVUH
投下乙です!

ゴ、ゴルゴス!アマゾーン!!まさか一気に二人死亡とは…
ゴルゴスの散り様も、アマゾンのあっけない最後も、読んでて非常に面白かったです
歌舞鬼の心理もやるせなくていい感じですね
GJ!

それとどうでもいい事なんですが、>>496
>「あっはははは……こりゃ、駄目だwどうにもなんねぇかもしんねぇなぁ俺は!」
に混じってる「w」はついうっかり入れたものでしょうか?
544創る名無しに見る名無し:2008/12/15(月) 23:01:52 ID:j8a5SP+A
投下乙です。
アマゾン勢、潔く散る!
戦いのシーン、熱く読ませて頂きました。

>>543
「w」ですが、「こりゃ、駄目だわ」(a抜け)とかでしょうかね?
545 ◆Z9EUSuuwiU :2008/12/16(火) 08:10:33 ID:Z1ukZ98Y
桜井侑斗、澤田亜希、風谷真魚、投下します。
546時の波n ◆Z9EUSuuwiU :2008/12/16(火) 08:12:06 ID:Z1ukZ98Y
「嘘だろ…デネブ…」
陽気にも残酷な悪魔の放送を聞き終えた時、侑斗は地に膝を付いて呟いた。

川に落ちた香川を探して、その身を濡らしながらも懸命に探していた。
しかし一向に見つかる気配も無く今度は森林を駆け巡っていた。
突然木場が香川へと襲い掛かり川へと突き落とした。何故そのような行動を取ったのか…、冷静に考えると見えてきたものがあった。
赤のゼロノスカード。あれは使用者の記憶を誰か1人から消してしまう。
自分しかゼロノスに変身したことは無かったため気付かなかったが、どうやら自分の記憶が他者から消えるわけではないようだ。
ゼロノス・ゼロフォームへと変身した香川。おそらくその影響で木場は香川を忘れた。
そしてライフルを持った香川の写真を見て誤解した。
これならつじつまが合う。実際、木場は自分の事は覚えていた。赤いゼロノスカードが使用者のみに影響を与えることを証明していたということだろう。

しかし、気付くのが遅かった。感情に駆られ“化物”と罵ってしまった。
そのまま香川を探しに行き、戻ったときには木場の姿は無かった。
木場に謝りたい。その思いを胸に抱きながら足を忙しく動かして探索を続けていた。
しかし無情にも訪れた放送の時刻。
新たに呼ばれた脱落者たち、その中に含まれていた知った名前と相棒の名前。
最高のパートナー、未来の自分と契約したイマジン・デネブ。
アンデットと呼ばれる存在であったが命を賭けて闘ってくれて、その死を見届けた金居。
ゼロノスとなった香川と共に闘ってくれた海堂なる人物。

それらが今「死んだ」と告げられた。

547時の波n ◆Z9EUSuuwiU :2008/12/16(火) 08:13:27 ID:Z1ukZ98Y
信じられない、信じたくない。
そんな想いが侑斗の心を駆け巡る。
持っていた後悔の念が更に増していくのがわかった。
「俺に…未来の俺になんて言えばいいんだよ…」
天を仰ぎ亡き友を思いながら呟く侑斗。
『勝手にくたばるなよデネブ…』、この戦いの始めに香川と出会った小屋で、願った言葉が思い出された。『勝手にくたばるな』、そんなことがこの戦いにおいて実現不可能なのは頭に叩き込まれてきた。しかしそれでも、そんな『勝手』を達成して欲しかった。
もう椎茸が嫌いなんて言わない。人付き合いも上手くやる。
だからデネブが死んだなんて嘘だと言ってくれないだろうか。しかしそんな願いが届くはずの無いのは分かっていた。ただ唇を噛み締めて、後悔と怒りの念を堪えるしかなかった。

モモタロス、デネブ、これまでの放送が真実ならば2人のイマジンがこの世を去った。
それは2体の“怪人”が消え去り、自分達の世界の為になったのかもしれない。
しかし自分や良太郎達にとっては…。
同じく金居や海道、人ならざる者であって、それぞれの世界では驚異的な存在だったのかもしれない。しかしそれでも、誰かにとっては大切な存在だったのだろう。
消え去った2人のイマジンがそうであったように…。
548時の波n ◆Z9EUSuuwiU :2008/12/16(火) 08:14:11 ID:Z1ukZ98Y
そうしてしばらく沈黙した後、侑斗はスクッと立ち上がった。

「デネブ、モモタロス、金居、海堂…お前らの為にも必ずここを脱出して見せる」
決意を新たにした瞳が輝いている。
「そしてこんな馬鹿な戦いも止めてやる!」
空に昇った太陽に誓うように叫んだ。
侑斗は泣かなかった。溢れ出そうな涙を必死に堪えていた。
今はまだ泣いている時じゃない、ここで起きていることを阻止してからでないと泣くことは許されない。

だがそんな中で幸運だったのは香川と木場の名前が呼ばれなかったことだ。川に落ちたのを発見できないまま、時間だけが過ぎていた。しかし名前を呼ばれなかったということは死んではいないということだ。
デネブ、モモタロス、金居、海堂、4人の仲間を失った。
しかしまだ守るべき人、共に闘う仲間がいる。
ハナ、香川、木場…彼らと協力して必ずやここを脱出してみせる。

そして決意を固めた彼の視線の遥か先には小さな公園が映っていた…。
549時の波n ◆Z9EUSuuwiU :2008/12/16(火) 08:14:53 ID:Z1ukZ98Y
* **

「荷物持とうか マナちゃん?」
「大丈夫」
木々が生い茂る林道沿いの道を歩く澤田と真魚。デイパックを持とうと澤田の優しい言葉を拒否する真魚。そこまで重くないので自分でも持てる範囲だったからである。
すると澤田は小さく笑いながら携帯電話で時刻を確認した。変身制限の解除を待っていたのだ。詳細な時間は分からずとも、もう十分な時間は過ぎたはず。
これで全ての装備は使用可能となった。真魚の目にさえ映らなければオルフェノクの力だってある。そして澤田は携帯をしまいながら先へ進もうと目で合図した。
真魚も少しだけ微笑みながら、デイパックを担ぎ直す。
「―――あッ!」
しかし真魚が立ち上がった時、地面に飛び出した小石に躓いてよろけてしまった。
それによって転びはしなかったもの、持っていたデイパックが引っくり返って中身を散らせてしまった。
「ごめん澤田くん すぐ拾うから!」
急いで落ちた支給品を拾い集める真魚。
「急がなくてもいいよ…手伝うから」
すると澤田は帽子の影になった瞳を優しくして声を掛けた。
「…ありがとう」
真魚の返事を聞いて、2人は次々に中身を拾い集めてデイパックへと戻していく。
食料や水、そして1人の命を奪った拳銃。
これといって物は多くないが重みがあるもがある。
特に拳銃を戻したときの真魚の表情は僅かだが強張っていた。

そして最後の一つを拾い上げた澤田。
黒く四角いケース。電車のパスのようなもの。こんなものがなんの役に立つかはわからないが、別に捨てる必要はない。それにもしかしたら変身ツールの可能性も無いわけではない。黒いカブトムシが変身ツールだったのだ、まだパスの方がそれらしく見える。
「…これで最後――」
真魚の僅かながらに見せた拳銃への苦い表情を見ながらも黒いパスを渡した。
しかしそれと同時に言葉を詰まらせ彼女から視線を変えた。
オルフェノクとしての人を超えた感覚が何者かの足音を感じ取り彼を動かしたからである。
「…真魚ちゃん 後ろに隠れて」
「え?…うん」
突然の言葉と警戒態勢に驚きながらも真魚は小さく頷くと、パスを手にしたまま澤田の背後へと身を隠した。
「……」
無言で睨みを強まらせる澤田。足音は前方の茂みの方から聞こえる。
それはどんどんと近づいてきているのもわかる。
「誰か…いるの?」
「…うん」
背後からの真魚の声に、前方を見つめたまま返す澤田。するとその会話と同時に茂みの中から誰かが現れた。それに深く被った帽子の下から鋭い瞳が貫いた。
550時の波n ◆Z9EUSuuwiU :2008/12/16(火) 08:16:07 ID:Z1ukZ98Y
現れたのは一人の男。
白い上下の服に茶髪の青年、桜井侑斗だった。彼はそこに見えた澤田と真魚に警戒を強める。
侑斗のことなど知らない2人も同じく警戒を強めた。澤田はそっと自分のディパックへと手を滑り込ませる。

しばらく緊張の糸が張り巡らされる。
すると同じように睨みつけていた侑斗の表情が急に解れた。
「おい…あんた…?!」
侑斗は目を大きく見開きながら2人へと指差した。
しかしその指は澤田を通り過ぎ、その背後の真魚へと向けられていた。
「…え?わたし?」
身を隠しながらも困惑する真魚。澤田もそれを見ながら、静かに侑斗を睨みつけている。
「ナオミ…だよな?」
すると侑斗の口から1人の名前が飛び出した。
それは時の列車デンライナーの乗務員、食堂車を受け持つ少女の名前。
もちろんそのことを知るはずも無い2人。
「…???」
更に困惑が増している真魚を見ながら、澤田は侑斗に気付かれないよう後ろ手にダークカブトゼクターを握りしめながら更に睨みを強めた。
551時の波n ◆Z9EUSuuwiU :2008/12/16(火) 08:17:47 ID:Z1ukZ98Y
「…なんであんたがここにいるんだ?名簿に名前は無かったはずだ…」
そんな澤田の鋭い視線に動じることなく侑斗は続ける。
たしかにナオミの名前は名簿にはなかった。
自分の知った名前はデネブ、ハナ、モモタロス、牙王だけのはず……、それなのに彼女がここにいる。いつもと服装が違うせいか雰囲気も違って見える。それに多少幼くなったようにも見えるが気のせいだろうか。
しかし、同時に一番初めの会場で出会った青年と、金居の「兄弟はいるか?」と言った言葉が蘇る。確かにここには自分と同じ顔の青年が存在しているようだ。ならばナオミにも言えた事かもしれない。唯、顔が同じなだけか、まさか姉妹なのか。
そう考えながらも彼女が手に持っているのものが気になった。
(…真魚ちゃん 知り合いなの?)
(ううん…会ったこともない)
澤田と真魚は侑斗には聞こえない音量の声で会話する。
そして首を横に振る真魚を見て、澤田は再び侑斗を睨みつけた。
その応えに澤田は安心していた。
もし本当に知り合いだったら彼女は相手に着いていくかもしれない。それだけは阻止しなくてはならない。2人で共に生き残り、最後に彼女を殺すのは自分なのだから。
絶対に自分から遠ざけるわけにはいかない。
552時の波n ◆Z9EUSuuwiU :2008/12/16(火) 08:19:27 ID:Z1ukZ98Y
「…悪いけどお前のことは知らないってさ、人違いじゃないか?」
「人違い?パスだって持ってるのにか?」
澤田の言葉に侑斗は真魚の握った黒いケースを指差した。
それは先程拾い上げた電車のパスのようなもの。意味の無いものだと思っていたがここで出てくるとは思わなかった。しかしそれでも用途は不明である。
真魚も握ったパスを不思議な目で見ている
「それが、なんの証拠になるっていうんだ?」
「面倒くさい奴だな…!」
更なる言葉に侑斗は声を荒げた。
自分がゼロノスのベルトとカードを持っていたように、彼女の支給品がライダーパスだったのだろう。持ち主と関連するものが支給される傾向があると見てナオミにパスが支給されているのなら納得できる。
しかしライダーパスが確たる証拠だということがこの男には通じない。
パスがどういうものなのかを知りえないのだろう。それを説明するのが面倒だった。
だが、彼女がナオミなら何故パスのことを言っていないのか。たった今手に入れたのだろうか?それに何故、自分の顔を見て桜井郁斗だとわからないのか?
やはり同じ顔なだけだろうか…。とりあえずは話を聞く必要がある。

「行くぞナオミ」
「……え?…!?」
その瞬間、侑斗は澤田を無視して真魚の手を掴んだ。
「いい加減にしろ」
しかし同時に、澤田はダークカブトゼクターを投げつけて侑斗の腕に直撃させた。
「…ぐっ!痛……ッッ!」
衝撃と痛みで思わず手を離してしまった侑斗。真魚も驚きつつも再び澤田の背後へと身を隠す。そして腕を弾いたダークカブトゼクターは空を舞い上がりそのまま優雅に澤田の手の中に納まった。
「彼女は俺が守る」
呟く澤田の腰には既に銀色のベルトが巻かれていた。そうして掴んだダークカブトゼクターを本心を告げながらベルトへとセットする。
「変身」
同時に言葉と共にダークカブトゼクターの角の部分を一度横へと引いた。
[HENSHIN]
瞬間、電子音声が響く中、澤田の身体を光の粒子が覆っていき幾つもの六角形の光が重なり新たな姿へと変貌していく。そして変身を完了した澤田がそこに現れた。
仮面ライダーダークカブト・マスクドフォーム。
黄色い単眼を光らせて侑斗を睨んでいた。
553時の波n ◆Z9EUSuuwiU :2008/12/16(火) 08:20:06 ID:Z1ukZ98Y
「下がってて…」
ダークカブトへと変身した澤田の声が背後の真魚に飛ぶ。
それに大きく頷いた真魚は後方に広がる森林の中へと駆け出して、その身を大きな木の側へと寄せた。
「まったく…話を聞けって…」
侑斗は呟きながらも痛みに痺れた腕に力を込めてベルトを装着するとそのまま顔の横まで緑のカードを持って行く。
「変身!」
掛け声と共に流れるようにカードをベルト中央に翳す。
―ALTAIR FORM―
電子音と共に銀のレールが体中を走り黒いスーツに覆われる。
そして緑の鎧が次々に装着され、牛を模した顔と身体を作り上げた。
そこに現れたのは緑色のライダー。時の列車ゼロライナーの持ち主。
仮面ライダーゼロノス・アルタイルフォームが姿を現した

ゼロノスへと変身した侑斗はゼロガッシャーを強く握り締める。
そしてデネブとの思い出を振り返りながら、僅かだけ深呼吸をするとそのままゼロガッシャーを肩に担ぎ上げダークカブトを指差した。
「最初に言っておく“俺達”は、かーなーり強い!」
その言葉に深い意味を乗せて戦いの意思を見せ付けた。
必ずやここから脱出してみせる。
それには名簿に無いナオミとライダーーパスの存在が何かヒントになるかもしれない。
しかしこの男が邪魔をしてくる。おそらく理由を知らないからだと考える。
だが男は話を聞くよりも戦うことを優先しているようだ。ならば戦って説得するしかない。
その考えの元、ゼロノスは指差していた手をゼロガッシャーの柄へと添えた。
同時にクナイガンを構えるダークカブト。
2つの視線が緊迫した場を作り上げていく。

554時の波n ◆Z9EUSuuwiU :2008/12/16(火) 08:20:55 ID:Z1ukZ98Y
対するダークカブトはクナイガンを構えつつ考えていた。
「俺達」とはどういう意味だろうか。
もしかするとこの男以外にも仲間がいて近くに潜んでいるのだろうか。
しかしそれだと、わざわざ言葉に出す必要が無い。
ただのハッタリか、それとも遅れて登場でもしてくるのか。
どちらにしても今この場に敵は1人だけだという結論を即座に導き出した。

「…は!」
次の瞬間ダークカブトはクナイガンから高速の弾丸を連射で撃ちだした。
高熱のエネルギー体である弾丸は容赦なくゼロノスの顔面へと迫っていく。
「ふんッ!」
しかしそれをゼロガッシャーの腹の部分を盾にして防御に成功したゼロノス。
全てを弾き終えたゼロノスはゼロガッシャーを振り上げて駆け出した。
「でやぁッ!!」
そしてそのまま勢いよくゼロガッシャーを振り下ろした。
だが瞬時に反応したダークカブトはクナイガンでゼロガッシャーの巨大な刃を受け止めた。
強烈な金属音と火花を散らしながら2つの刃はぶつかり合う。
「キャストオフ」
しかしそんな攻防を打破するようにダークカブトがゼクターの角を横に引いた。
―CAST OFF―
同時にダークカブトの鎧が脱皮するかのように全方位へと飛散する。

「…なッ!?」
思いがけない出来事に驚愕の声を上げながら吹き飛ばされるゼロノス。そのまま地面を転がって近くにあった道路標識にぶつかった。
そうして全ての鎧が剥がれると同時にダークカブトは新たな姿を見せた。
ライダーフォーム、高速移動を可能にするその形態。対ワーム用に作られた兵器が真の姿を現した。
555時の波 ◆Z9EUSuuwiU :2008/12/16(火) 09:57:08 ID:YYhYERM1
「…へぇ やっと本気を見せるってわけか」
それを見たゼロノスが身を起こしながら言い放つと再びゼロガッシャーを構え直す。
「見えるといいがな」
ダークカブトは、そんなゼロノスを見つめながらベルトの横に手を置いた。
「クロックアップ」
―CLOCK UP―
次の瞬間ダークカブトは姿を消した。
いや、ゼロノスの目に追えないスピードで動き出したのだった。

ほぼ静止したも同然のような世界をダークカブトだけが動いて行く。
通常よりは短くなってしまっているクロックアップの時間。
だがそんなことを澤田は知る由も無い、元々短いのものとして頭に入れている。
そして即座に勝負を決するために3つのボタンを順に押していく。
[1…2…3…RIDER KICK]
電子音声と共に右足に青白い稲妻が走り帯電していく。
「ライダーキック」
囁くように言いながらダークカブトは右足を大きく振り上げた。
―CLOCK OVER―
そして時の呪縛が消え去ると同時に稲妻を帯びたダークカブトの回し蹴りがゼロノスへと振り下ろされていた。

「…な…にぃ…っ!!??」
姿を消したと思った瞬間、目の前に現れて帯電した足を蹴り降ろしてくるダークカブトが映ったゼロノス。咄嗟にゼロガッシャーを盾に構えるも、既に遅くゼロガッシャーもろともライダーキックの直撃を受けてしまった。
「ぐああアァツッッツッ!!」
火花と稲妻を走らせてダークカブトの足がゼロノスを装甲を削っていく。
そうして叫びを上げて森の中まで吹き飛ばされてしまった。
556時の波 ◆Z9EUSuuwiU :2008/12/16(火) 09:58:08 ID:YYhYERM1
「……しぶといな」
吹き飛ばされ姿の確認できない相手へ呟くダークカブト。オルフェノクの聴力が相手の心音を聞き取っていた。
それに気付いたダークカブトはクナイガンを構えながらゼロノスの飛ばされた森林へと近づいていく。

しかしその時だった――。

―FULL CHARGE―
森の中から電子音声が聞こえた。
すると次の瞬間、緑の光が走ったかと思うと巨大な木々が次々と倒れてきた。
「なに!?」
それに驚きながらも身をかわすダークカブト。
クロックアップで避けるため腰に手を当てようとするがそこへ倒れた木々が迫り、転がって回避したために失敗に終わってしまう。
「…くっ!」
そうしてクロックアップを使わず全ての巨木を避けきったダークカブト。溜息をつきながらもゼロノスのいたであろう位置へと視線を移した。
しかしそこにはもう気配や心音さえも感じられなかった。おそらくオルフェノクの感覚でも拾いきれない位置まで移動したのだろう。
「…逃げたか」
そう呟きながらダークカブトの変身を解いた澤田。
ダークカブトゼクターはベルトを離れ大空を舞っていく。
557時の波 ◆Z9EUSuuwiU :2008/12/16(火) 09:59:24 ID:YYhYERM1
「澤田くん」
そこへ隠れていた真魚が声を上げて駆け寄ってきた。それに僅かに微笑んで迎える澤田。
「大丈夫?」
「うん、なんともない」
気遣う目で見る真魚に平気な顔で応える。
「…さっきの人は?」
「逃げたみたいだ」
そう応えた澤田だったが真魚の表情が少しばかりか残念そうな顔をしたのに気がついた。
なにか気がついたことでもあったのだろうか、証拠に心音が速まっているのがわかる。
「……気になる?」
「え…?いや、『名簿に名前が無い』とか言ってたから…それで少し混乱しちゃって…」
どこか慌てたように応えた真魚。澤田は真魚の心音の早まりはその混乱と動揺から来ているのだと判断した。放送もあり、突然知らぬ誰かに連れて行かれそうになったのだ、混乱して当然である。

「……これ、貸してあげる」
「え…?」
すると澤田はおもむろに被っていた紺色の帽子を取り払い真魚の頭へと乗せた。
「これで人違いされなくてすむ」
困惑する真魚に説明と同時に笑って真魚を和ます。
しかしその笑みは自分のためのものだった。
先程の男のように人違いであれ真魚を連れて行こうとする連中が他にもいるかも知れない。
帽子を被ったぐらいで全部は隠せないが、これならすぐにバレはしないだろうし、なにより本当の知り合いと出会っても気付かれないかもしれない。
むしろそっちのほうが目的である。
558時の波 ◆Z9EUSuuwiU :2008/12/16(火) 09:59:58 ID:YYhYERM1
「……っ…!……あ、ありがとう」
真魚は照れくさそうに紺色のキャップ棒をそそくさと目深に被って感謝の言葉を告げた。
それにただ微笑んでいた澤田。その笑顔の奥で彼はもう一つ気になることがあった。
真魚も言ったが『名簿に名前が無い』という先程の男の言葉。
そんな者が存在するわけがない。スマートブレインが名簿に載せ忘れたなどというミスは考えられない。だとすれば外部から別にここへ来たということだろうか。
それも考えられない、参加者は全員首輪をしている。真魚も同じだ。
わざわざ外部から来て首輪をしてまで参加する者などいようはずもない。
と、なればやはりあの男の人違いに過ぎない。
たまたま知り合いが真魚とそっくりだけだったのだろう。
少しばかり思考を巡らせた澤田は優しく真魚に声を掛けた。
「行こう真魚ちゃん」
「…うん」
頷いた真魚を確認しすると、倒れた木々を避けながら足を進め始めた。
先の電話でスマートレディが言っていた通り放送局に人が集まるのなら行ってみるべきだろう。一度に参加者を減らせるチャンスでもあるが、同時に真魚の知り合いと出会う確率も高い。
だが、たとえどのような人物が迫ろうと必ず真魚は守ってみせる。
最後に自分が殺すために…。

そんな冷酷な思いを胸に澤田は真魚と共に歩んでいく…。
559時の波 ◆Z9EUSuuwiU :2008/12/16(火) 10:01:59 ID:YYhYERM1
【澤田亜希@仮面ライダー555】
【一日目 日中】
【現在地 E-6 公園向こうの平地】
[時間軸]:34話・真理再生前
[状態]:小程度の疲労。体の各部に打撲。ダークカブトに2時間変身不能。
[装備]:カイザギア(全装備付属)
[道具]:基本支給品、通話発信可能な携帯電話、不明支給品×3(本人確認済み)
   ライダーベルト+ダークカブトゼクター、ディスクアニマル(アカネタカ)
   iPod(動画再生機能付き)ファイズアクセル
[思考・状況]
基本行動方針:参加者を皆殺しにして自分が完全なオルフェノクであることを証明する。
1:風谷真魚を守る。あくまで、最後に自分の手で殺すために。
2:他の参加者を殺す。
3:なるべくオルフェノク態で戦う事を避ける。そのために一つでも多く変身装備が欲しい。
4:リスクを避けるべく、人の多い場所には近づかない。
5:放送局へ向かう
[備考]
※ダークカブトに資格者として認められました。ベルトはカブトのものを流用しています。
※能力制限等のルールについて、あらかじめ大まかに知らされています。
※澤田の携帯電話は特別仕様のため、通話の発信機能が生きています。
 現在の所、通話可能な相手は主催者(村上社長・スマートレディ)のみです
560時の波 ◆Z9EUSuuwiU :2008/12/16(火) 10:03:14 ID:YYhYERM1
***

真魚は深く被った帽子の下から瞳を潤わせて澤田の背中を見つめていた。
あの時、青年に腕を掴まれたとき、彼の過去の断片が脳裏に浮かんだ。
それは青年と誰かが泣きながらも嬉しそうに抱きついているイメージだった。
その誰かは黒い異型の人物…。そう、駅で自分が撃った銃弾に倒れた人物であった。イメージから察するにあの青年と異型の人物は親友とも呼べる存在だったのだろう。
だとすれば澤田と共に引き金を引いたとしても自分は彼の友の命を奪ったことになる。
澤田に「しかたなかった」と言われたが、やはりそんな言葉で片付けられるほど簡単なものではない。
あの異型の人物に帰るべき“居場所”があったとすれば、それは青年の所だったのかもしれない。同時に青年の帰るべき場所も異型の人物のところだったのかもしれない。
他人の“居場所”を奪っておいて自分だけが帰りたいなどと甘かったのだ。
「帰るべき居場所など無い」そう言った澤田の言葉が改めて胸に突き刺さる。
できることならもう一度あの青年に会って謝りたいとも思うが…。

深い後悔の念と自己嫌悪が彼女を包んでいく。

さらにもう一つ気になることもある
澤田に渡された帽子に触れたとき断片のイメージが流れ込んでくるのがわかった。
しかしそれを寸前で拒否してしまった。見るのが怖かったからかもしれない。
断片的にせよ…何か、全てを否定させるような、そんな気がしてしまった。
「………」
真魚は無言で澤田の背中を見つめながら歩みを進めた。

自由に力を操れていないのはわかっている。
それでもいつか決心がついたらこの帽子に触れよう。
それがどんな結果を生むかはわからないけど…。

561時の波 ◆Z9EUSuuwiU :2008/12/16(火) 10:05:34 ID:YYhYERM1
【風谷真魚@仮面ライダーアギト】
【一日目 日中】
【現在地 E-6 公園向こうの平地】
[時間軸]:31話・サイコキネシス発現後
[状態]:健康。動揺。強い自己嫌悪。
[装備]:コルトパイソンA@クウガ(装弾数5/6、マグナム用神経断裂弾)
[道具]:基本支給品一式x2(真魚・天道)
    ライダーパス、首輪(天道)
    特殊効果弾セット(マグナム用神経断裂弾54、ライフル用神経断裂弾20、
    ランチャー用非殺傷ゴム弾5、ランチャー用催涙弾5、ランチャー用発煙弾5、ランチャー用対バリケード弾5) 、澤田のキャップ帽
[思考・状況]
1:澤田についていく。離れたくない。
2:人殺しをした自分が憎い。
3:自分の能力と支給品の銃を嫌悪。
4:能力の事を澤田に知られたくない。
5:澤田と一緒なら、元の世界に戻れる…?
6:自分をナオミと呼んだ青年にもう一度会って謝りたい。
[備考]
※制限もしくは心理的な理由で超能力が不完全にしか発揮できません。
 現状では、サイコメトリーで読めるのは断片的なイメージだけです。
※以下のように事実を誤解しています。
サイコメトリーで見えた灰色のモンスターの正体は天道=カブト。
灰色の怪物(海堂)と赤い怪物(モグラ)は殺し合いに乗っている。
青いライダー(ガタック・ライダーフォーム)に変身して自分を守ったのは澤田。
加賀美(名前は知らない)は自分がサイコキネシスで殺した。
自分をナオミと呼んだ男(侑斗)と黒い異型(デネブ)は親友。
※決心が付いたら澤田の帽子に触れてイメージを見てみる。
562時の波 ◆Z9EUSuuwiU :2008/12/16(火) 10:07:08 ID:YYhYERM1
* **

「…なんなんだ、今のは?」
変身を解いて道路沿いの雑木林の陰に腰を降ろした侑斗は呟いていた。
吹き飛ばされた直後にスプレンデッドエンドを発動させ巨木をなぎ倒し、それによって逃走することには成功した。
だが、気になるのは黒い戦士の能力。「クロックアップ」という電子音声が聞こえたと思ったら既に敵は居なくなっていた。そして気付いた瞬間には眼前に居て回し蹴りの最中だった。
何処かで見たような能力…。
あれは一条がオルタナティブへ変身し、龍の怪人に変身する男と戦っていた時だ。
あの時は「アクセルベント」という電子音声が聞こえたと同時にオルタナティブの姿が見えなくなった。そして次の瞬間には自分達の目の前にいて、敵の砲撃から庇ってくれていた…。
クロックアップ、アクセルベント、仕組みや原理はわからないが似たような能力だろう。
ならば同じような敵と出会った場合でも反撃できるように対策を考えなければ。
(…………)
だが、そうなると自分の知恵だけではどうしても対策が浮かばない。やはり戦闘においても脱出においても香川のような人物が必要なのかもしれない。
…現状では対策は思い浮かばない、同じような能力の前では防御に徹するか、逃げることに専念したほうがよさそうだ。
563時の波 ◆Z9EUSuuwiU :2008/12/16(火) 10:09:10 ID:YYhYERM1
「…しっかし…もう少し男を選べっての」
そして今度は傷ついた身体を見ながら呟いて先程の少女を思い出した。帽子の男は人違いだと言っていたが、どう見てもナオミだった。だが、本来なら自分の顔を見れば気付いたはずだが…。
そんな時、ガオウの事を思い出した。確かに消え去ったはずのガオウがここには存在しているはずだ。これは主催がガオウを蘇らせたか、消滅する前のガオウを連れてきたかどちらかだろう。
時の列車に乗る者としては、前者よりは後者の方が納得できる。
それに木場から聞いた、主催であるスマートブレインはオルフェノクという集団組織であるという情報。死者の蘇生については何も言ってはいなかったが、人を超えた存在であることは木場の姿を見て確認できた。
だとすれば、主催はオルフェノクらを使役し『時を越える力』を持って皆を集めた。そしてナオミは自分と知り合う前の時間から連れて来られた、とも考えられる。

だが、それでも少女がパスを不思議そうに見ていたのが疑問に残る。
本当にナオミなのか、それとも似ているだけか。自分と同じ顔の青年、ナオミの名が乗っていない名簿、などの情報が頭の中を飛び交う。
そして一つの考えを纏めた。
仮にあの少女をナオミだとすれば、主催は時間を越える力を持っており、なおかつ名簿に無い参加者がいることになる。だとすればナオミだけでなく良太郎や、まさか愛理もいるのかもしれない。ならば絶対に見つけ出して守らなければならない。
しかしそれも全ては仮定の話、彼女がナオミでなかったら振り出しに戻ることになる。
あくまで、可能性があるということで考えたほうがいいだろう。

564時の波 ◆Z9EUSuuwiU :2008/12/16(火) 10:11:40 ID:YYhYERM1
そう考えながらカードを取り出した。残ったゼロノスのカードは緑が4枚、赤が1枚と芳しくない状態である。その上ダメージも大きく残っている。あの少女は帽子の王子様に守られているから安心だとしても、このまま香川と木場、それに愛理たちを捜索は難題だ。
少しでも身体を休めるしかない。しかし眠るわけにもいかない、いつ敵が襲ってくるかもわからない。歩きながらでも徐々に体力を回復させる。
そうして侑斗は傷ついた身体をゆっくりと起き上がらせてデイパックを担ぎ直した。
森の向こうには道路が見えたが、自分の来た道では無いのはなんとなくだがわかった。
565時の波 ◆Z9EUSuuwiU :2008/12/16(火) 10:12:40 ID:YYhYERM1
「待ってろよ…みんな…」
侑斗は先に見える道路を見つめて呟いた。
『人助けと時の運行を守るって事は違うんだ』
かつて良太郎に言った言葉がリフレインする。
そして今なら思う、それが間違いだと。確かに2つは等しいものではなかった。
だが、時間の運行を無視して集められたはずの人達が集うこの島では例外だ。
皆を助けて脱出する事が時の運行を守ることに繋がる。
しかし全て上手くいくとは限らない。
どのような事態が起きるかはわからない。
全ては波だ。この歪んだ空間にも絶えず流れる時間の波。
それを掴まえさえすれば時は自分に味方してくれるはずだ。

(時間の波を…掴まえて見せる!)
新たな決意を胸に侑斗は小さな一歩を踏み出した。

いるはずの無い参加者を追い求めて。

そしてその近くに自分と瓜二つの少年が居るとも知らずに…。
566時の波 ◆Z9EUSuuwiU :2008/12/16(火) 10:15:04 ID:YYhYERM1
【桜井侑斗@仮面ライダー電王】
【1日目 現時刻:日中】
【現在地:F-6・道路沿い】
【時間軸】:最終回直後
【状態】:深い後悔、強い決意。全身に中程度のダメージ、中程度の疲労。
【装備】:神経断裂弾(1発)、ゼロノスベルト
【道具】:基本支給品×2、ゼロノスカード四枚(内一枚赤カード)、ラウズカード三枚(ダイヤK・ブランク二枚)
     ショッカー戦闘員スーツ×2@仮面ライダー、ディスクアニマル(ニビイロヘビ)、戦国時代のディスクアニマル(イワベニシシ)
     煤けた首輪、双眼鏡、コーヒーセット、デジタル一眼レフ(CFカード)、望遠レンズ
【思考・状況】
基本行動方針:殺し合いの阻止
1:木場に謝りたい。
2:香川、木場との合流。
3:自分と同じ顔をした少年(桐矢)への疑問。保護が必要ならそうする。
4:ガドル、風のエル(名前は知らない)、北崎を倒す。
5:五代雄介に一条薫の死を伝える。
6:真魚(名前は知らない)は本当にナオミなのか知りたい。
7:可能性は低いが良太郎や愛理を探す。
【備考】
※変身制限に気づきました。大体の間隔なども把握しています。
※首輪の損傷具合は不明です。
※剣世界の事についておおまかな知識を得ましたが、仮面ライダーやBOARDの事など金居が伏せた部分があります。
※木場からオルフェノク・スマートブレイン社についての情報を得ました。
※クロックアップ、アクセルベントに近い能力の前では対策ができるまでは防戦、逃亡を優先。
※あの少女(真魚)は帽子の男(澤田)がいるから安心?
567 ◆Z9EUSuuwiU :2008/12/16(火) 10:16:03 ID:YYhYERM1
以上、投下終了します。
568創る名無しに見る名無し:2008/12/16(火) 15:54:27 ID:Mc6bTai8
投下乙です!
まさかナオミとマナちゃんの中の人同一人物ネタが此処で来るとは。
立ち直ったかに見える侑斗もまだまだ不安要素がたくさんあって気になりますね。
重ねて乙でした!
569創る名無しに見る名無し:2008/12/16(火) 17:51:41 ID:w+gkKpRa
投下乙です
出た、恒例中の人ネタw
真魚はいつか澤田の真実に気付くのか……?
ゼロノスカードもいよいよ残り5枚でどんな展開が待つか予想できません。
侑斗の熱い決意もナイスでした
570創る名無しに見る名無し:2008/12/17(水) 15:08:23 ID:JetNKTNa
十面鬼が、力を発揮出来る状態になったのを自分で察知したけど、あれいいの?
細かい事だけど。
571創る名無しに見る名無し:2008/12/17(水) 18:04:26 ID:6cfCZ8Q7
姿が代わったりする訳じゃなくて本来なら常時力を発揮してるに等しいはずだから
体に違和感があるかどうかで判断できるんじゃないかな?
勝手な推測だけど
572 ◆deggScNisI :2008/12/17(水) 18:41:36 ID:Ddj7RQCs
議論スレに今回の問題を挙げておきました。皆様のご意見お待ちしております。
>>570氏ご指摘ありがとうございます。
573創る名無しに見る名無し:2008/12/21(日) 12:06:56 ID:8UCGSHvj
やっぱり年末は忙しいのか・・・・
引き続きお待ちしてます!
574創る名無しに見る名無し:2008/12/21(日) 18:26:21 ID:OhaRFoUn
それに加えてこんだけ大人数の予約だもんな
執筆がんばってください!待ってます
575創る名無しに見る名無し:2008/12/21(日) 21:14:12 ID:LGszdP2Z
早くしてくれないと下半身が冷えてしまいます
風邪ひかない程度に待つので頑張って下さい!
576創る名無しに見る名無し:2008/12/21(日) 21:50:09 ID:m1inOzv0
自分も期待してます
頑張ってください
577 ◆N4mOHcAfck :2008/12/22(月) 23:05:04 ID:anivF4QY
帰宅が数時間後になりそうですorz
帰宅次第投下を開始して朝には投下完了しておく形になりますかね……
再延長を受け入れてくださった皆様へ今の内に感謝の意を述べさせていただきます
578 ◆N4mOHcAfck :2008/12/23(火) 02:52:09 ID:MNFgMOkm
ようやく帰宅ということで投下開始……
まずは猿さんまでにどのくらい投下できるかが勝負……
579創る名無しに見る名無し:2008/12/23(火) 02:53:19 ID:1h/N7Wda
580創る名無しに見る名無し:2008/12/23(火) 02:53:41 ID:1h/N7Wda
581前兆 ◆N4mOHcAfck :2008/12/23(火) 02:55:34 ID:MNFgMOkm
 唯一無二……互いの命を賭けた孤島でのデスマッチも開始から既に十二時間、半日が経過しようとしていた。
 北側に若干暗雲が覗く以外は概ね澄み渡っているといって差し支えない空模様に、島全域を見渡そうと天高く輝くお天道様。
 その輝きにぼんやりと視線を向けたまま、唇を僅かに開閉し何かを呟いている青年が一人。
 やや日本人離れした、西洋風の顔立ち。ショッカーの改造人間、「コブラ」こと三田村晴彦である。
 仮面ライダーファイズ――海堂直也との戦いを終え、三田村はしばしの休息を迎えていた。
 他の参加者達と交戦する度に思いきり奮い続けてきた両腕、移動時に鞭打って動かしてきた両脚……。
 それら蓄積した疲労が徐々に引いてきたことを理解しながら、三田村はここまでの半日が生み出した記憶に思いを馳せる。
 ショッカーの裏切り者である「ホッパー」に打ち破られた筈の彼に与えられた最後のチャンスが、この殺し合いだ。
 もっとも、生き残るには一筋縄ではいかないことを三田村は充分過ぎる程に痛感させられている。
 「ホッパー」達と同等以上の実力を誇る人間が、怪人が、この島には何人もいるのだ。
 そして詳細不明の首輪により変身能力を制限された為、三田村のような改造人間であっても一般人の手に掛かる可能性がある。
 そういった事態を阻止する方法とは何か。答えは二通りだ。
 一つ、自分が強くなること。この島に送られた参加者達は支給品をそれぞれ所持している。
 これらの中には首輪の制限下でも使用可能な一般火器なども存在し、上手く扱えれば制限時間中立ち回ることも可能だ。
 もしくは変身ツールを複数所持、戦闘力を底上げするとともに相互に制限時間をカバーするという手もある。
 しかし、三田村は「自己の強化」という選択を行わなかった。いや、行えなかった。
 必然的に選択肢は一つになり、三田村は生きる為にそれを選択、今に至る。その内容は至極明快。

「――三田村君、少しは休めたかい?」

 則ち、「強者」に同行することである。
 不意打ちとも言える、突然のタイミングでの質問。思わず三田村が体をすくめた。
 急いで返事を返そうと質問を脳内で繰り返す。内容は「休むことができたか?」だ。
582前兆 ◆N4mOHcAfck :2008/12/23(火) 02:56:22 ID:MNFgMOkm

(休めた訳無いだろ…………)

 肉体的な意味で疲労がある程度引いたのは間違いなく事実だ。手足に付き纏っていた重さは軽くなりつつある。
 しかし、精神的な面となれば話は別だ。安らぎを得るということはなく、ただただ、時間と共に神経が磨り減っていくのを三田村は感じていた。
 原因は間違いなく、三田村の目の前で笑みを絶やさず、返答を待つ男だろう。
 北崎――三田村が島内で出会ってきた幾人もの参加者の中で、最も「強者」と呼ぶのに相応しい男。
 三田村自身を完膚なきまでに打ち負かし、銀色の「仮面ライダー」を圧倒し、歌舞鬼や桐矢をただその場から立ち退かせた威圧感――。
 更に、改造人間である自分同様、人ならざる異形への変身能力まで保有している。
 今の三田村にとって北崎は強固な「盾」といえる存在だが、同時に次の瞬間には自らを貫く可能性を秘めた「矛」でもある。
 そんな北崎に絶対的信頼を置ける筈もないのだ。だが、三田村が面と向かってその様なことを言える筈も無い。

「あ……ああ、おかげさまで」

 ようやく三田村は返答を捻り出す。たった一言返しただけで、どうしようもなく息苦しくなっている自分に彼は気付いた。
 作り笑顔を絶やさずに、しばらくの間会話を続ける。見下されているのか、面白がられているのかは分からない。
 その時である。少しでも早く会話を切り上げたいと思う三田村の気持ちを察するかの如く、彼らの所持する携帯電話が同時に鳴り響いたのは。

「はは、もう半日経ったんだね」

 北崎が微笑を浮かべた。その何気ない動作一つ一つに、三田村が過剰反応する様子は北崎を楽しませる。
 携帯を開き、二人は放送へと耳を傾け始めた。
 やがて死者の発表が開始されると、彼らの聴覚は一字一句聞き漏らさんとばかりに緊張する。

(死んだのか……本郷猛)

 第一に呼ばれた本郷猛の名を聞き、三田村は何とも微妙な感覚に襲われた。
 先の放送で名を呼ばれた一文字隼人同様、本郷も三田村にとっては仇と呼んで良い存在だろう。
 その僅かばかりの感情も、次の瞬間には彼の頭から吹き飛んでいた。午前六時から正午までにおける、七人目の死者――
 海堂直也の名がコールされたのである。先程三田村が北崎と協力して痛めつけた参加者だ。

「へぇ、あんなこと言ってた割には結構やるんだね、歌舞鬼君……」

 何故名前を呼ばれた訳でもない歌舞鬼のことを口にしたのか三田村は疑問に思う。
 だが、次の瞬間には彼の口もアッと呟いていた。

「海堂直也を殺したのは……歌舞鬼さん!?」
「フフ……多分、そう考えるのが自然だろうね。でも、これは予想外だったなあ」

 海堂を連れた歌舞鬼が北崎達の下を去った時から、放送までの間にはそれ程の時間が経っていない。
 二人が歌舞鬼を疑うのは、当然のことと言えた。

「でも、何で……」
「彼は言ってたじゃないか。『人間を守る』ってね。……そう、僕や海堂直也みたいなオルフェノクや、
 君みたいな奴は対象外って訳さ。早く、彼とも戦ってみたいよ」

 心底嬉しそうに語る北崎の言葉が、段々と遠くなっていくのを三田村は感じていた。

(歌舞鬼さんも結局はあいつを殺した……北崎だって、その内……)

 タイム・リミットが突然訪れる恐怖に脅かされながらも、三田村は立ち上がる。
 ほとんど聞き取れなかった北崎の言葉の中に、移動を促すものが含まれていたからだ。

「行くよ、三田村君。僕達が、最後の二人になる為に、ね……」
583前兆 ◆N4mOHcAfck :2008/12/23(火) 02:57:48 ID:MNFgMOkm



「む………………」

 どのくらいの時間に渡り、自分の意識は暗黒の中をさ迷っていたのだろうか――目覚めたゴ・ガドル・バが第一に浮かべた疑問。
 それは支給品の携帯電話を開いたり、保養所の外で空を眺めればある程度の判断が可能なことだった。
 故に、ガドルは目を開く。携帯の時計にしても、空模様にしても、両目が閉じられた状態では見ることなど出来はしないからだ。
 そして、ガドルは確認する。青い空に、真っ白な雲達の姿を。様子を見るにまだ日中。まだそれ程時間は経っていない。
 そこで、ガドルは疑問を持つ。何故空を拝めるのか。それは屋外に出ているからだ。
 疑問は続く。いつ外に出たのか――答えは、「あの激突」だとガドルは答えを導き出す。
 温泉内で行われた二人のライダーによる激戦。二枚の「ファイナルベント」は施設に被害を与え、当事者達にも甚大なダメージを与えた。

(そうだ、俺は非道の戦士を打ち倒し……む?)

「こんなしけた食い物しかねえとは……飯にまで当たり外れがあるって訳か」

 ガドルにとって、確かに聞いたことがある声だった。それも、つい先程聞いたばかりな気さえする。
 声の主は、何かを頬張っている最中らしい。
 相変わらず固定したままの視線が示す青空を見るに、昼食の機会をもっても可笑しくは無い時間だろう。

(食事……食べる……食う?)

 「食う」。そのワードから記憶がとある発言をリフレインさせ、そこに傍らから聞こえる声がリンクしていく。

『……そろそろ食っちまうか』

(馬鹿な……この声は……)

 勝利に浸っていた筈であったガドルの表情に、驚愕という名の剣が傷をつけた。
 一連の思考を統合し、顔を声の主へと向けて行く。そこにあったのは――

「ようやく起きやがったか、カブトムシ野郎」

 お世辞にも美味しそうとは言えない乾パンを口にする――確かに全力を尽くして打ち破った筈の、「非道の戦士」の姿だった。
584創る名無しに見る名無し:2008/12/23(火) 02:58:18 ID:oDnLYzL2
  
585前兆 ◆N4mOHcAfck :2008/12/23(火) 02:59:44 ID:MNFgMOkm



 エリアE-6。動物園からショッピングセンターへと繋がる道路沿いに、一台のバイクが停車していた。
 カブトエクステンダー。ZECTが開発した、ライダーシステムとの連動で真の力を発揮する特殊二輪である。
 もっとも、相棒である天道総司は既にこの世に無く、カブトゼクターは行方をくらましているのだが。
 その車体の影には二人の青年が身を潜めている。良く似た辛苦を味わってきた、二人の異形が。

「偉そうなことを言いながら、結局俺はアンタの世話になっている。情けないな」

 横たわる青年、葦原涼は自分の不甲斐なさを自嘲した。強い決意を胸に刻んでも、それより深く刻み込まれた異形の力――
 その代償を振り払うことは出来ず、老化した手に目をやることしか許されないのだ。
 動物園を発って間もなく、涼は再び耐え難い痛みを感じたのだ。辺りにそれらしい建物も見当たらないので、やむなく道端の草影に身を隠している。
 僅か半日で、四度にも渡りギルスの力を涼は行使している。苦しみが躯を蝕む速度の加速を実感しながらも、抗う術は無く。
 かといって戦うことを止めるというのも、彼にとっては無理なことであった。

「そんなことはありません。俺の方こそ、感謝しています」

 涼の傍らで辺りを警戒しながら、木場勇治は静かに話し掛ける。
 自分と良く似た悩みを抱えながら、精一杯自分を信じ、向き合い続ける涼を、木場は尊敬の眼差しで見つめている。

「感謝……か。……そうだ、アンタに渡したいものがある」
586創る名無しに見る名無し:2008/12/23(火) 03:00:32 ID:1h/N7Wda
587創る名無しに見る名無し:2008/12/23(火) 03:00:52 ID:1h/N7Wda
588前兆 ◆N4mOHcAfck :2008/12/23(火) 03:01:07 ID:MNFgMOkm

 首を傾げる木場をよそに上半身を起き上がらせた涼が、デイパックに手を掛ける。
 端正な部類に入る顔立ちに似合わない、アンバランスな外観をした涼の手が何かを掴み、デイパックから姿を表す。
 取り出されたのは、銀色のケース。ロゴを見れば、即座に主催であるスマートブレイン社製であることが分かる。
 木場に支給されたファイズギアのケースに比べると若干サイズが小さいものの、中に納められているものの見当をつけるのは容易だ。

「それを……俺に?」
「ああ、木場……アンタみたいな奴に使って貰えるなら、あすかもきっと喜ぶだろう」

 あすか……一時間程前の放送で呼ばれた名であり、生前に涼と行動を共にしていたことについては木場もこの場で情報交換をした為把握していた。
 一方の涼も、木場との会話から彼が主催者との因縁を抱える「オルフェノク」であることを承知している。
 だからこそ解説書にデルタギアと記された、あすかの遺品を託すつもりになったのだ。
 勿論、お互いに交換した情報はそれだけでは無い。
 あすかを殺した未確認生命体第四号――五代雄介に、白鳥を模したライダーの危険性。
 香川という危険人物が、木場が誤解を解きたい存在である桜井侑斗に銃を向けたこと。
 その他にも、風見志郎、ラッキークローバー、ファイズ、制限、本郷、立花、英雄――多くの言葉が二人の間を行き来し、認識の共通化が図られた。
 木場はケースを開き、中に納められているベルトに注目する。
 かつてラッキークローバーの一角である北崎が使用したデルタギア。
 その力を身をもって認識している木場の周りを、ある種の不安が取り巻く。
 デルタドライバーが放つ邪気は、その特性上オルフェノクである木場には干渉することができない。
 にも関わらず不安を感じるのは、未だ木場の内側に闇が潜んでいる証だった。
 余寒を振り払う為、ケースをデイパックへ収納しようとする木場。
 そんな彼を嘲笑うかの様に、デイパックの中から新たなベルトがその姿を見せる。
 ケースと入れ代える様にベルト――サイガドライバーを握りしめた木場に、涼が尋ねる。

「そのベルトは何だ?」
「分かりません……いつの間にか荷物の中に」

 涼が疑問に思うのも無理は無い。木場が所持していたというファイズギアは、既に彼の手を離れたと聞いていたのだから。
 木場はデイパックへ再び手を侵入させた。これが支給品ならば、解説書が同梱している筈という仮説に従って。
 やがてざらざらとした紙の感触を認識すると、次の瞬間には解説書が引き抜かれて――
589創る名無しに見る名無し:2008/12/23(火) 03:01:13 ID:1h/N7Wda
590創る名無しに見る名無し:2008/12/23(火) 03:01:31 ID:1h/N7Wda
591創る名無しに見る名無し:2008/12/23(火) 03:01:48 ID:1h/N7Wda
592創る名無しに見る名無し:2008/12/23(火) 03:02:12 ID:oDnLYzL2
      
593前兆 ◆N4mOHcAfck :2008/12/23(火) 03:02:37 ID:MNFgMOkm


「お前が何故、生きている?」
「そいつは俺の台詞だろうが……ったく、誰のお蔭でここにいると思ってやがる」

 ガドルの質問に心底不快な表情で解答した牙王が、ペットボトルのキャップを回転させる。
 乾パンを流し込むように水を飲み終えると、軽くなったボトルが地面に転がされ、僅かに残っていた水が地面に染みをつくった。

(あの暴れ龍が追い掛けてこなかっただけの話だがな……)

 ガドルの処遇に悩んだ牙王の方針は、黒龍――
 ドラグブラッカーが現れた時点でガドルを「喰い」、制限の状態に応じて抗戦か離脱を行う、というものだった。
 つまり、ドラグブラッカーが出現しなかった為にガドルは生きながらえただけのことだ。

「まあそんなことはどうでもいい。今度は最後まで喰らわせてもらおうか、ガドルよ」

 マスターパスを構えた牙王が、悠然たる態度で立ち上がる。その様子を見上げたガドルもまた、合わせる様にして起き上がった。
 が、そこでガドルの中に違和感が一つ生まれる。オルタナティブ・ゼロのカードデッキが手元に無いのだ。
 表情こそ冷静さを欠いていないが、牙王にはガドルの動揺が見て取れた。
 確かに、双方の実力が拮抗していることは既に先の戦闘から互いに認め合うところだ。
 しかし、それは戦闘手段の保有数が並んでいるから成り立つのであって、デッキが失われればパワーバランスは崩れ去る。

「ククク…………」

 牙王は笑う。飽くまでも態度を崩さないガドルの姿に、確かな強者たる風格を感じながら。
 その勇姿に何か心打たれるものがあったのか、牙王は懐に手を忍ばせ。

「ナァ、お前が探しているのは……」

 デッキを見せ付けるかの様に取り出し、胸元で固定し。

「……コイツか?」
594創る名無しに見る名無し:2008/12/23(火) 03:02:47 ID:1h/N7Wda
595創る名無しに見る名無し:2008/12/23(火) 03:03:19 ID:1h/N7Wda
596創る名無しに見る名無し:2008/12/23(火) 03:03:52 ID:1h/N7Wda
597前兆 ◆N4mOHcAfck :2008/12/23(火) 03:05:59 ID:MNFgMOkm
 ガドルはそれが自分の使用していたデッキと理解してなお、頑なに態度を変えずにいる。
 冷静に考えれば、自身より先に牙王が目覚めていた時点で、これは当然の結果。
 生きていただけでも奇跡といって差し支え無いのだ。ならばと、ガドルは覚悟を決め、構えると同時に口を開く。

「お前にも、戦う前に尋ねておく。……ン・ダグバ・ゼバという、俺と同様の変化能力を持つ白服の男に見覚えはあるか?」

 経緯の都合上行えなかった質問を、ガドルは牙王へと行った。
 ダグバの名を出すことで、自らにも喝を入れようとするのが狙いだ。

(この危機を越えられぬようでは、ダグバを倒すことなど出来ん……)

「そんな名前を聞いた覚えは無いな……あの糞やかましい放送でも、そんな名前は呼ばれなかった」
「そうか」
「待て……」

 怪人の姿へと変化しようとしたガドルへ浴びせられたのは、意外なことに牙王からの静止要求。
 ガドルからすれば意味不明の行為だ。
 そもそも再戦を求めてきたのは牙王の方であり、デッキまで見せて挑発してきた牙王からその様な発言が飛び出るなど。

「どうした」
「今更お前を喰ったところで腹の足しにもならなそうだからな。ただ、代わりに聞かせてもらう……何故ダグバって奴をを探す? そしてそいつは強いのか?」

 牙王の投げたマスターパスがデイパックの辺りに転がったのを見て、ガドルは構えを解く。
 牙王の気まぐれは解せなかったが、答えて都合の悪いことでも無い為、ガドルは質問に答えることを決めた。

「ダグバを探すのは……何れは俺が倒す為。他に理由などない」
「成る程なぁ、お前じゃ今すぐ喰らいに行ける様な相手じゃねえって訳か」

 「何れ」という単語は、牙王にダグバをガドルより格上の存在と推測させる決め手となった。
 ガドルが即座に否定しなかった為、牙王は予想に確信を持ち始める。

「ダグバは強い。今の俺など比べ物にならない程にな」

 牙王はダグバへの、期待に満ちた興味を募らせた。
 浴場での戦闘とここまでの会話――牙王がガドルの人柄に触れたのは僅かな時間だ。
 それでも、自身を過小評価する様な漢では無いことくらい承知している。
 そのガドルをして「比べ物にならない」と言わしめるダグバ。
 どれ程の力を秘めているのか牙王には皆目見当がつかない。

「故に、俺は強くならなければならない。……ザギバス・ゲゲルを成功させる為に、ダグバをこの手で倒す為に」

 ガドルは首輪探知機能を備えた携帯を取り出す。牙王がいくら兵だと言っても、戦意が無ければ無意味だ。

「ダグバか……喰い甲斐がありそうじゃねぇか。……おい、何をしてる」

 牙王の見る限り、ガドルは携帯電話を熱心に弄るような性格では無い。
 にも関わらず、ガドルは携帯の小さなディスプレイへと真剣なまなざしを向けている。
 それが牙王には可笑しく感じられて、思わず疑問をぶつける結果を生んだ。
598前兆 ◆N4mOHcAfck :2008/12/23(火) 03:07:19 ID:MNFgMOkm

「首輪を探知している。お前が戦わないならば、他の強者を打ち破るのみ」
「首輪探知だぁ…………?」

 牙王が首を突っ込み、ガドルの握る携帯へと視線を落とした。
 そこには自分達の現在位置及び所在エリアと、それを中心とした周囲一エリア分の地図が表示されていた。
 これだけならばただの自エリアを中心に据えた拡大地図に過ぎない。
 重要なのは、その地図上に記された点だ。現在自分達がいるD-3エリアには、二つの点。
 南のE-3と南東のE-4にもそれぞれ一つずつ光点が煌き、東のD-4には固まった五点と外れた一点の計六つ。
 ガドルは選択を迫られる。どの点へと向かうべきなのか。
 E-3の光点が既に戦いを終えた者であることは、ガドルも保養所へ向かう前に確認済みだ。
 東か南東にて単独で輝く点へ向かうべきか、それとも四つの点が指し示す場へと向かうべきか――
 迷うガドルの左肩に、牙王の年季を感じさせる右手が掛けられた。

「ガドルよ、その点が首輪だとして……死んだ奴の首輪はどうなる?」
「……首輪さえ無事ならば、生死は関係ないとのことだ」
「だったら、こいつは“ハズレ”だ」

 牙王の爪先にはE-4の反応。そう、既に喰らった狼男。牙王はその首輪の残り香に過ぎないと見た。
 ガドルはその忠告を疑うことなく選択肢から切り捨てると、残り二択に思いを馳せる。
 そんな中熟考するガドルへ、再度横槍が入れられた。

「お前が強くなるつもりなら、より多くの連中を片っ端から喰らうに限る。……行こうじゃねぇか、こいつらの所へ」

 牙王は地面に接した二つのデイパックを手に取ると、内一つをガドルへと投げ渡す。
 脱衣所に放置されていたのを衣服や自身のデイパックと共に回収してきたものだが、ガドルのものだという予測は牙王にもついていた。
 もう片方――所有していた二つのデイパックの支給品を一まとめにした中へと腕を突っ込み、牙王はガドルに同行する意思を告げる。
 本来牙王は共闘を良しとする思考の持ち主では無い。島で一度チームを組んだ際にも、長続きせずに脱退を行っている。
 だが、あの時とは事情が違う。あくまで強者との闘争を欲するガドルの存在は、ゴルゴスや影山との違いを感じさせ。
 勝敗がついたにも関わらず双方生き延びることとなった、奇妙な間柄でもある。そして何より――――

「そして、強くなったガドル……お前と、ダグバを俺が喰ってやる」
「……良いだろう。ならばもう一つ聞いておく……貴様の名をな」
「俺か……? 牙王。そう、全てを喰らいつくす牙……それがこの俺、牙王だ」
599創る名無しに見る名無し:2008/12/23(火) 03:08:33 ID:oDnLYzL2
    
600前兆 ◆N4mOHcAfck :2008/12/23(火) 03:10:25 ID:MNFgMOkm


『じゃあ、放送を終えたら病院で落ち合いましょう』
『了解!』

 D-4エリアの南部にて歩を進める集団の面々は、それぞれが多様な表情を見せ、思いを胸の内に秘めていた。

 ――これまで頭の片隅にも置かなかった、「死」という概念に対する不安を持つ者。
 ――盲目的とすら言える信頼を他者に寄せることで、芽生えつつある闇を奥底へ封印しようと試みる者。
 ――最たる信頼を寄せる漢が仲間を守って来た姿に、自分のあるべき姿をもう一度見つめ直す者。
 ――好意を寄せた存在の死を受け、何れは自身がたどり着かなければならない受難に恐怖を覚える者。
 ――仲間を失った悲しみを、全ての元凶に打ち勝とうとする確固たる決意へと転化する者。

 そんな彼らが目指すのは、放送局。島全土へと放送を行い、首輪解除の「鍵」となる存在の延命を図るのが狙いだ。
 一人の命が賭けられている以上、可能な限り早急に行うことが望ましい。
 故に保有していた二台のバイクを明け渡すというのは、城光にとって不本意な行為であった。
 しかしヒビキの率いるもう一方のチームが複数の負傷者を抱えている以上、貸し出しを拒否する訳にもいかない。
 過ぎたことを思い返しても無駄だと思い、何も口にせず光は黙々と歩みを続けていた。
 しかし、余計なことを考えまいとしていると、今度は疲労感に襲われる。
 普段の光ならば、この程度で脚部に負担を感じたりはしない。原因は深く考えるまでもなく首輪だ。
 改めて枷に嵌められたことへの苛立ちが募り、かえって光の歩行ペースは上昇していた。

「光さん、何かあったんですか?」

 増して行く歩みの速さへ疑問を持った五代が、小走りして光の横に並んで尋ねた。
 二人の後方にはイブキ、結花、ハナ。いつの間にか距離が広まってらしい。
 光はその事実へ気付くと、立ち止まって足元の小石を蹴り飛ばす。
 やや薄白く写った小石が転がるにつれて、本来の外観である黒色を取り戻していく。
 その様子に言い様の無い何かを感じつつも、光は五代へと向き直った。
601創る名無しに見る名無し:2008/12/23(火) 03:11:46 ID:oDnLYzL2
    
602前兆 ◆N4mOHcAfck :2008/12/23(火) 03:12:14 ID:MNFgMOkm
「ただ、急いでいるだけだろうが」

 ぶっきらぼうに答える光に、再度歩き出す間も与えず次の言葉が投げ掛けられる。
 声の主はイブキだ。彼はあくまでも、足取りが重い少女二人に合わせたペースで光へと歩み寄っていた。

「女の子が二人もいるんですし、もう少しゆっくり歩いても……」
「私は女では無い……そうお前は言いたいのか」
「見た目も言動も態度も、少なくとも女の『子』じゃな……うぐっ」
「か弱い女の子とやらで無くて悪かったな」

 光の裏拳を鼻先に受けたイブキが、思わず膝をついて倒れかける。
 それを結花が支える傍ら、まだイブキ達との行動が初めてのハナは心中で思わず呟いた。

(この人、もしかして天然……というか空気読めないタイプ……?)

 本当にこれが、あの頼りがいのあったヒビキと同じ「鬼」なのか――?
 ハナは少々疑問に思いつつも、結花に合わせる様に逆サイドからイブキを支える。
 その様子に思わず苦笑する五代は、隣にいる光がデイパックを地面へと下ろし、腕を組んで溜め息をついていたことに気付く。

「俺、イブキさんの言うことはもっともだと思います」
「私には可愛い気が無いと、お前までそう言いたいのか」
「そうじゃなくて、歩く速さのことです。俺達はともかく……あの二人にはキツイですよ、この道」

 D4-5エリアの中部には、丘が存在している。
 北側から迂回すれば地図にも記される規模の道路が放送局へと通っているのだが、流石に使う余裕も無い。
 その為少々険しい南側を進んでいる訳だが、足場がお世辞にも良いとは言えなかった。
 日頃から様々な環境での戦闘に対応してきた五代、イブキ、光はともかく、結花やハナにとって悪路でデイパックを抱えての移動は、それなりに堪えるものと言える。

「……勝手にしろ」

 どこと無く淋しげな表情を見せた光が、足元に残るもう一つの小石を蹴り転がし、前屈してデイパックに右手を掛ける。
 先の言葉と合わせて提案が承諾されたと解釈したイブキが打たれた際に落としたデイパックを拾い上げ、更に結花のものを逆手で掴む。
603前兆 ◆N4mOHcAfck :2008/12/23(火) 03:13:49 ID:MNFgMOkm

「これ、僕が持つよ」
「あ、ありがとうございます……」
「気にしないで、鍛えてるから大丈夫だよ」

 イブキを見直すと共にハナが若干の寂しさを覚えた。
 野上良太郎やモモタロス、デンライナーの仲間達――或いは一文字隼人ならば、こんな時に……。

 ハナがチーム分けで一文字と離れたことは、彼女にとっても納得が行く編成ではあった。
 バイクに乗れるのは怪我人である志村と手塚を除けば、それぞれの操縦を担当する二名まで。
 元々ヒビキが二人を病院へ連れて行くつもりだったのだから、その時点で残り一人。
 実質的にこちらのグループのリーダー格となっている光はヒビキと別チームが望ましい。
 素人に毛が生えた程度の実力しか持たない結花やハナが四人目では、両チームに戦力差を生むことに。
 結花はイブキに最も心を開いていたし、別チームにする訳にもいかないだろう。
 そうなれば一文字と五代が残り、ヒビキと既に面識があった一文字の方が連携し易い、という訳だ。

 ハナが羨望の眼差しを結花へ向けていたのに気付いたのか気付いていないのかは不明だが、彼女のデイパックもまた男の手に持ち上げられた。

「じゃあハナさんのは、俺が持ちますよ」
「え、でも……」
「俺、冒険でこういうの慣れてますから」

 ハナも、屈託の無い笑顔を向けて来る青年の申し出を断る気にはならず、好意に甘えることを程無くして決めた。
 正直な所、五代にしてもイブキにしても今更その様な提案を行うのは、少々配慮に欠けていると言えるのだが。
 手伝う位なら最初からそうしろ、などと光が短く愚痴を漏らすのだが、生憎四人の誰一人として気付かずに終わる。

「用事が済んだなら行くぞ。E-4まで下り次第、通常の路へ合流して放送局へ南下する」

 一行が再び歩き出すと、それを遮らんとばかりに向かい風が一際強く吹きつけた。
 吹き上げられた白めの砂から目を防護しながら、結花は不安に襲われる。
 砂を巻き上げて向かって来る灰じみた疾風が、隠している自分の本性と何故か重なり、不安を煽る。
 間に入って風を遮断したイブキの後ろ姿が、彼女にはそれまで以上に大きく見えていた。
604前兆 ◆N4mOHcAfck :2008/12/23(火) 03:16:17 ID:MNFgMOkm


 俺にとって、突然の覚醒だった。ヒビキさん達にしてもそうだっただろう。
 記憶では、ライアのデッキを志村に預けた俺は放送を待って横になっていた筈だ。
 いつの間に眠りこけていたのかは分からない。ただ確認できたことが一つ。
 親指に人差し指、合わせて二本を鼻先へと動かす。「コイツ」を掴む為に。
 俺を起こしたのは……そう、この紫蠍だ。鼻をご自慢の鋏で摘んでくれたらしい。
 コイツはどうやら嬉しい様だ。何故俺が目覚めた位で喜ぶのだろうか――?
 理由を知ろうとも、知りたいとも思わなかった。
 到底人に誇れるものではない半日を過ごしてきた俺のことを認め、共に戦ってくれたコイツに、改めてただ一言送れれば良いのだ。
 ありがとう、と。
 そう呟いて間もなく、誰かが俺のぼやけた視界に入る。

「ようやく御目覚めのようだぜ、ヒビキ」

 不思議な話だ。城戸や秋山に話せば冗談だと笑い飛ばされるか、鼻で笑われて終わりだろう。
 たった今、「俺」は「俺」自身が目覚めたのを確認してヒビキさんへ報告したようなのだ。
 それも、まるで人事であるかの様な口調で。

「急にまた眠り出したから、心配したんだぞ」

 ヒビキさんが俺を気遣いながら言う。

「決して無理はしないでくださいね」

 続けて、志村も声を掛けて来た。俺のせいで待たせたことを考えれば、二人には申し訳無いという気持ちしか無い。

「思ってたよりは元気そうだな。……しかし、これなら俺はハナに同行して良かったんじゃないか?」

 そして、「俺」が苦笑混じりの声を漏らす。自分で思っている以上に「俺」は元気だったらしい。
 次いでヒビキさんへ冗談を垂れる「俺」。

「お前がいなくなったら、誰がバイクを動かすんだ」
「自分で動かせば良い……なんてな。冗談はここまでにしておくさ」
「じゃあ、現状を伝え次第病院に向かおう。手塚、もう起きれるか?」
「はい……ッツ……!!」

 突然腹部を中心に広まりだす激痛。この不意打ちには、俺も参らざるを得ないか。

「おいおい、やせ我慢はお勧めしないぜ?」

 「俺」に言われる筋合いは全くといって良い程無いが、とにかくこれ以上迷惑になる訳にもいかないのだ。
 痛みのラインを決死の思いで跨ぐ。案の定耐え難いレベルだが、声は紡がない。
 一線さえ踏み越えれば、ある程度の我慢は利くと知っているから。

「もう大丈夫……だ」

 体に鞭を打ちながら、「俺」に向けての返答。ヒビキさん達にも聞こえてしまっていることはこの際無視。

「よし、じゃあ放送と新しい仲間について……」
605Fatality-Cross ◆N4mOHcAfck :2008/12/23(火) 03:20:18 ID:MNFgMOkm


 アスファルトを滑る両輪が激しい摩擦を引き起こしつつ、躍動を抑え込むかの様に停止する。
 語るまでもなく、ブレーキが作用した為に起こった事象なのだと、近隣に居合わせた四者間において無意識ながらも認識の共有が図られた。
 停止の原因となった存在――人の皮を被った灰龍は、歓喜へと身を委ね歩行する。
 その腕に掛けられた黄金のベルトが、その威光を振りかざすかの如く日輪の光を辺りへと照り返していた。
 一方、二輪から降りた二人の異形……ヒトも歩んでいる。一人は何も所持せず、もう一人は腰に信頼の証を纏い。
 双方の距離が縮まって行く。40m……35…30…25…23…21…20m。
 三者が脚を停止させた。ギャラリーは心地良い春風に揺れる道端の草花と、灰龍の待ち伏せ地点に程近い小屋の中で首に嵌められた枷の制限に嫌悪する強化人間が主だ。

「フフ……君とまたこうして戦えるのは嬉しい限りだよ、木場勇治」

 投げ掛けられた再会を喜ぶ挨拶は、油と化して木場の心に滾る炎へと容赦無く注がれる。
 それで構わないと思った。敢えてバイクを停め、この場で害悪を討つと決断したのは自分なのだから。

「ここで、君を倒す」
「無駄な前置きはいらないよ。で、今回は助っ人が違うんだ。……ああ、当然だよねぇ。海堂君は死んじゃったもんね」

 挑発に対して歯軋りした木場が一歩前へ進もうとするが、向かって左側から突き出された腕に阻止される。

「葦原さん……」
「冷静になれ。怒りは判断を狂わせるだけだ」

 葦原涼も木場の思考へと賛同の意を示していた。大切な人を失う悲しみをこれ以上増やさない為ならば、何度苦しみ倒れようと構わない覚悟を秘めている。
 また、涼の忠告は自分へと宛てたものでもあった。怒りに任せて拳を奮った結果、守り抜けなかったあすかの命。
 あの過ちを繰り返さない、させたくないがために木場を抑え、自身を律する。

「怒ってようと冷静だろうと、結果は変わらないよ。絶対にね」
606Fatality-Cross ◆N4mOHcAfck :2008/12/23(火) 03:23:19 ID:MNFgMOkm

 地のベルト――オーガドライバーが北崎の腰に装備され、電子音声と共に全ての準備が終了した事実が唱えられた。
 木場と涼は宣戦布告が行われたことを察し、同時にアクションへ突入する。
 デルタフォンが木場の唇へ寄せられ、涼の両腕が胸板の前方でクロスを描き――

「変身!!」

 ――Standing by――

 叫びを伴い駆け出した涼に、深緑の戦士、ギルスが重なる。
 それでも、その気迫と異形たる姿を前にして、北崎の余裕はなお揺らぐことが無く。

「君は変身ツールを使わないのが少し残念だけど、楽しませてはくれそうだね……変身」

 ――Complete――

 起動準備を終えていた二本のベルトから金と銀の光線が放出され、二人のオルフェノクを「仮面ライダー」へと変化させた。
 同時に、ギルスが右腕を振りかぶった。オーガが左腕を目線まで持ち上げて、振り下ろされた拳を弾く。
 初撃を防がれたギルスが一瞬見せた動揺の隙に、オーガが一歩後退。
 左腕で二撃目を見舞おうとしたギルスの胸へ、持ち上げ気味に突き出された剛拳が直撃した。

「ファイア」

 のけ反ったギルスがオーガの視界から一時的に姿を消すのと入れ代わりに、デルタが携えた銃のトリガーを引く。
 速射された光線が装甲の表面を数度に渡って焼くが、オーガは意に介していない様だった。
 埃を掃う仕草で着弾点を拭うと、オーガはデルタを視線から外してギルスを見据える。

「その程度、掠った内にも入らないんだよね」

 起き上がったギルスの拳を今度は捌きながら、射撃を行おうとするデルタへと宣告。
 オーガが右足を突き出してギルスの腹部へ蹴り込むと、気品を感じさせる装飾が風に揺れた。
607創る名無しに見る名無し:2008/12/23(火) 03:41:19 ID:CUDRY/k6

608創る名無しに見る名無し:2008/12/23(火) 03:42:23 ID:CUDRY/k6

609創る名無しに見る名無し:2008/12/23(火) 05:39:42 ID:tL/+XbYQ
支援
610 ◆N4mOHcAfck :2008/12/23(火) 05:47:01 ID:MNFgMOkm
疲労で倒れてました……
続きを急いで投下します
611 ◆N4mOHcAfck :2008/12/23(火) 05:48:07 ID:MNFgMOkm


 E-4エリアに南下した五代達は、放送局へ向かって邁進を続けていた。
 このまま何も起きない場合、二時間も歩けば放送局へ到達できる見込みだ。
 そう。あくまでも、「見込み」だった――

「…………!?」

 結花がいち早く「異変」を聞き取った。それに光とイブキが反応し、更に五代とハナにも連鎖する。

「チッ、邪魔が入る様だな」
「ヒビキさん達の可能性は?」
「無いな。奴らは東からE-5を迂回する手筈だった。仮に何か理由があるなら、連絡の一つでも入れてくる」

 チーム分けの際貸し与えたトランシーバーは、所在エリアとその周囲八つのエリア間で通信が可能だ。
 だが通信は一切無く、存在するのはただ何かの走行音だけが一方的に迫って来る事実だけだ。
 光が結花を匿うようハナに指示して、五代とイブキは彼女達にデイパックをそれぞれ返還する。
 二人が鍵の掛かっていない側の民家に入ったことを確認すると、残り三人は素早く音源へ向き直った。
 戦闘に備えてイブキが鬼笛を握り、五代はベルト――アークルを出現させる。
 その間も接近を続けたバイクが三人の視界に出現すると同時に光の足元が爆ぜ、彼女に跳躍を行わせた。
 側まで寄って停止したバイクの騎乗者は二名。オルタナティブ・ゼロと呼ばれる鎧を纏った牙王と、ボウガンで奇襲を決行したガドルだ。
 遡ること数十分前。
 D-4エリアに確認された五つの反応。南に移動していたそれらを追うことにした二人が最初に問題としたのは、距離だった。
 対象が停止しているのならばともかく、常時移動を続けていた反応と徒歩で距離を詰めるのは困難といえる。
 それを克服するのに必要な移動手段――バイクの入手先は保養所。ガドルが運用していたものを彼がオルタナティブへ変身して回収。
 伴っていた牙王に運転を任せD-4へ移動、再び南に表れた反応へバイクを走らせて、現状に至っていた。

「三人か……残り二人は逃げたか、そこの家にでも隠したか?」
「何のことだ」

 顔色一つ変えず光はガドルへ応対する。五人チームであることを読み当てられた事実はもう覆らない。
 せめて、その手段だけでも見極めなければ。光は身構えたと同時に、額から確かな冷や汗の感触を感じていた。

「ふん、惚けたって無駄だぜ。心当たりが無いなら、二人喰ったか? それならそれで、お前らは喰い甲斐がありそうだがな……」
612 ◆N4mOHcAfck :2008/12/23(火) 05:49:25 ID:MNFgMOkm
(チッ…………首輪か)

 自分達三人が「二人の同行者を伴っている」「二人の参加者を殺している」のどちらかと推測されるならば、可能性が高いのは首輪の数だろう。
 また、五人と予想したグループに対して二人で仕掛けるという辺りから自信も伺えた。
 いかなる手段で「五つの首輪」を探り当てたのか、光は思考を巡らせる。

(首輪を作った連中ならば、センサーの一つや二つ用意しても不思議ではないが)

 仮にセンサーや探知器の類が存在するとして、何故参加者に支給されているのかが頭に引っ掛かる。

(好戦的な連中ならともかく、使う者次第では殺し合いの抑止剤になりかねんというのに――――)

 思考を中断し、ガドルの腕が動くと同時にタイガーアンデッドへ変化。真横へと飛び離れる。
 ガドルがボウガンを剣へと変化させ、オルタナティブが腰元から一枚カードを引き抜く。
 スラッシュされたカードがその場で消滅する。

「変身!!」

 ソードベントの電子音は叫びと鬼笛の二重奏に掻き消され、端から見れば唐突にオルタナティブの右腕へスラッシュダガーが握られた格好となった。
 タイガーアンデッドの両翼には紫のクウガと威吹鬼が得物を構えて並び立つ。

「クウガ……」

 ガドルが紫縁の銀鎧を纏った戦士へと歩むのを見て、牙王は「クウガ」という存在を認識する。
 クウガからも、距離を詰めてくる眼前の戦士が未確認生命体であることは容易に判断できた。
 各部に施された装飾や、腰部に蓄えられたそれは間違いなく今まで倒してきた未確認、そして剣崎を殺した化け物と同一だった。
 ハナに連れられて住居の二階へと駆け上がり、窓から戦場を見下ろした結花が呟く。

「…………怖い」
「…………私も」

 空間そのものが内包する殺気の規模は、自分達が割って入れるものではないと二人が悟る。
 眼下では、真の開戦を告げる金管の音色が、高らかに鳴り響いていた。
613 ◆N4mOHcAfck :2008/12/23(火) 05:50:01 ID:MNFgMOkm


 風を切り裂き進む二台のバイクの乗り手達は、アクセルを可能な限り全開に開き突き進む。
 竜巻のシートに腰掛けるヒビキは、背後に志村の体重を強く感じていた。
 それは志村が身体を預けてきているということであり、彼の状態が相変わらず芳しくないことの裏付けに他ならない。
 もう一台を駆る一文字も同様の想いだ。時間の経過と共に、手塚の息遣いが荒くなっていくことを聴覚が察知する。
 妨害さえ無ければ、数十分で病院まで到達出来るのだ。だというのに、激しい葛藤へと一文字は何度も襲われる。
 ここで一度止めるべきか否か――どちらを選べば事態が好転するのか、或は逆の結果を招くのか?
 一文字は決めかねていたが、前方に何かを認めた途端にヒビキの前方へ躍り出た。
 竜巻を停止させる様促し、自身もブレーキを掛けて車両を滑り止める。
 手塚に背を貸したまま、一文字が進行路を指差す仕草を見せた。ヒビキがその先へ目をやると、三人のライダーが目まぐるしく攻防を繰り返している様子が目に入る。

「まあ、何の障害も無く辿り着けるとは端から思っちゃいなかったが」

 涼やかに愚痴る一文字へ目もくれず音角を取り出したヒビキが、申し訳なさそうに志村をバイクから降ろさせた。
 スタンドを立てながら放置されたカブトエクステンダーを、そしてその奥のライダー達を見据える。

「突っ切るのは流石に厳しいか。一文字、二人を頼む」

 言い切る前に動き出したヒビキの右腕を一文字が咄嗟に引っ張り、一文字は自身の腰掛けるバイクに引き寄せた。

「待て。一人で全員相手にする気か」
「ゲームに沿って動いている奴を止めるだけさ」

 ヒビキに言い切られると同時に拘束を振り払われた一文字の腕が、余力で空を切る。

「三人ともその条件に該当していたらどうするんだと俺は聞いてるんだ」

 志村が降ろされた時の動作を模倣して、一文字もまた手塚を道路脇へ退避させる。
 そのままヒビキに駆け寄る一文字がどうしようも無く不機嫌な表情を見せていたのは、恐らく志村と手塚の勘違いでは無かっただろう。

「似たような姿や考えの持ち主達が、必ず協力するとは限らない」
(いつぞやの俺と本郷のようにな……)
「だが構図を見ればあれは二対一。二人の方は俺達の様に協力し合ってるんじゃないのか?」

 一文字もその意見を否定しようとは思わない。自分の言う通り全員が殺しあっているのなら、戦局は三つ巴となる筈だから。
 それでも一人に圧倒されている緑と黒銀のライダーを、安易に救出しようとはしない。

「いや……単純にそうとも言い切れない」

 端整な顔を歪めたままの手塚が、一文字と入れ替わる形でヒビキの意見を否定する。

「最後の一人になることを目的としていても、利害の一致で協力関係を結ぶのは少なからず存在する。
 ……それに、俺は今朝あの銃を持ったライダーと戦った」

 その言葉に、銃を構えたライダー――デルタを凝視するヒビキ。
 ハッとなった彼の口が紡いだ「あすか」という単語に、一文字が拳を握りしめ、すぐに離す。

「あすか、か……ヒビキ、一つ教えてやる」

 一文字の指先を介して、一同の視線がそれまで気にも留められていなかったカブトエクステンダーへ移る。

「あれに乗っていたのは、本郷だ」
614 ◆N4mOHcAfck :2008/12/23(火) 05:51:01 ID:MNFgMOkm


「フッ……本郷の最後を看取ってくれたのは、お前ってことか。それも、俺と勘違いされた上で」
「ああ、俺が無力だったばかりに……」

 遠い過去を振り返るような『俺』――いや、一文字隼人の表情は、予想していたよりも起伏を見せなかった。
 先程ヒビキさんから聞いた正午の放送を自ら耳にしていたからなのか、別の要因があったのかは分からない。
 ただ確かだったのは、一文字が本郷猛の死をこれ以上追及する気が無いということだ。
 彼はデイパックを抱え、少々古臭い小屋の扉を開くことで外気を室内に浸透させる。
 一文字はそれで良いのかも知れないが、俺としてはそうも行かない。義務があるから。 

「彼は……本郷は最後にあんたへのメッセージを残している」
「遺言ってのを聞くのは、性に合わないんだがな」



 音角を取り下げたヒビキも、酷似した顔つきをした青年達の言葉に踏み止まるのを決意する。
 二人の面識ある男女。それも、男は女を追う為に自分らと別行動をとったという曰く付き。
 その上六時間という短い間隔の中で、二人共立て続けに命を落としている。
 今、その男が使用していた鉄騎と、女が被っていた仮面が一箇所に集まっているというのは出来の悪い偶然なのか。
 挙句の果てに、何も考えず加勢すら考えていた自分を、浅はかだと心底思う。
 重く胸に響く、明確な殺気を蔓延させる存在。
 それを正確に討ち倒す為、ヒビキはただ戦況を見守る。制限の名の下、一時的に戦闘が収束するタイミングが目前に迫っていた。
615Fatality-Cross ◆N4mOHcAfck :2008/12/23(火) 05:52:17 ID:MNFgMOkm


「君達は、本当に往生際が悪いんだねえ」
「ウォォォォォ!!」

 ギルスが己を鼓舞する叫びをこだまさせ、デルタは何度目になるか分からない牽制の射撃を行う。
 火花を足元に散らすオーガがストランザーをギルスの面へ突き出すと、交差したギルスクロウが直撃を阻止。
 一度刃が引かれたのを認めると、オーガの腕が伸び切るのを待たずに地を蹴り、頭上を飛び越えて後方に回り込む。
 直後にはムーバーをベルトのハードポイントに納めたデルタが正面に踊り出て、腹部目掛けて拳を迫らせていた。
 ワンテンポ遅れてオーガは左拳を放つ。当然先にヒットしたのはデルタの一撃だ。それに身じろぎせずオーガは――

「フンッ!!」

 腕を押し込み、衝撃でデルタを吹き飛ばす。
 倒れ込みながらベルトのスペック差、戦闘技術の相違を改めて思い知らされた木場が必死に受け身をとる様子は、滑稽なものであった。
 追い討ちを行おうとストランザーを握りしめるオーガだが、背後からの獣声に行動を狂わされる。
 思考を切り替えて百二十度回転。一方のクロウを見掛けからは想像もできない機敏さで空振らせ、反対は手首を内側から外へ弾くことでギルスのボディをがら空きに。
 残り六十度の回転が生む強勢で蹴り付けられたギルスは、数歩後ずさった後に左膝を大地についた。

(強い…………)

 数分に渡る戦いで、木場は前回北崎と交戦した時以上の実力差を感じていた。
 勿論、涼=ギルスが海堂=スネークオルフェノクに劣っていたり、デルタがファイズより弱いと考えている訳ではない。
 涼は海堂に負けず劣らずの連携を行ってくれているし、後者に関してはカタログスペック上ではデルタが上なのだ。
 にも関わらず木場に前回以上の「壁」を意識させている、オーガギアの威圧感。
 一方で涼が持つ感情は、北崎の余裕ぶりに対する苛立ちだった。
 大技を繰り出す素振りもなくただ自分達へ暴力を浴びせ続ける行為は、「戦いを楽しんでいる」としか写らなかった。
 肩を上下させながらもギルスは咆哮を伴い、デルタに迫らんとしているオーガに挑みかかる。
 許せなかった。その態度が、立花を殺したアンノウンに、あすかを殺した未確認生命体にだぶる。
616Fatality-Cross ◆N4mOHcAfck :2008/12/23(火) 05:53:37 ID:MNFgMOkm

「オオオォォォオォォ!!」

 一発目のパンチ。オーガの肩口に当たるが、微動だにしない。
 続けて二発目。振り上げたクロウが弧を描き、頑強なスーツに浅い傷をつける。
 更に三発目。袈裟掛けに二発目と同じ部位を刻む。先程と合わせて生まれた火花が、沈黙したままな黄金のベルトを更にまばゆく照らす。
 続けて四発目。三発目に合わせて引いた左肩が狙うべき一点を定め、満を持して解き放たれた左拳が突貫。連撃が傷付けた一点に飛び込むと、遂にはオーガが後退した。
 広がった間合いはたかが二メートル。ダメージは微々たるままだろうが、確かな手応えを感じることは事実。
 距離が広がったことで攻撃の選択肢に足技が増え、ギルスは迷わず腰を落とす。
 腿から足首まで一直線に伸ばされた右脚の終着点は、携帯電話を嵌め込んだベルトの正面だ。
 二〜四発目で意識させたスーツ部への攻撃を捨て、最も脆く、防御面における唯一の弱点を突く。
 完全に虚をついたつもりだった。自我に沿って構築されていた軌道が、唐突に終わりを告げるまでは。

「狙い所は悪く無かったよ」

 オーガの纏う装飾が再び風にはためいたのを目にした瞬間に、足首を押さえつけられていたギルスはデルタの真横へと投げ飛ばされる。
 いつの間にか舗装された道路に突き刺さっていたオーガストランザーが、主の掌中に舞い戻る。

「安心して。ベルトをわざわざ狙わなくっても、そろそろ時間みたいだからさ」

 十分の経過が目前に控えていることを知った上で朗々と見せる余裕に、木場と涼の闘志が崩れかける。
 この様子では時間を稼いで制限に突入しても、無駄。
 油断を突いたつもりの攻撃も通用しなかった。ならば、出来ることはただ一つしか残っていない。

「木場」
「分かってます」

 ギルスとデルタ、二人の仮面ライダーが再び並び立つ。
 今一度、涼の決死の叫びが震わせる。ギルスの頭部に蓄えた角が、両踵が逞しく伸長した。
 ミッションメモリーを挿入されたデルタムーバーが指示を待つ。木場のチェックという宣言に呼応し、高らかに必殺技の発動シーケンスを開始した。
617Fatality-Cross ◆N4mOHcAfck :2008/12/23(火) 05:54:21 ID:MNFgMOkm

「ウォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ!!」

 ――EXCEED CHARGE――

 ギルスが猛進し、同時に青白い円錐がオーガをその場へと縫い付けた。
 屈伸と見間違える程膝を折り曲げ、ギルスはバネの如く地を蹴る。
 僅かに後方でデルタも飛び上がり、ファイズの際と同様のポーズ、右脚のみを突き出す形で天を舞う。

「楽しかったよ。やっぱり仮面ライダーは、こうでないと」

 フォトンブラッドに拘束される中で、オーガがENTERキーを入力する。
 この瞬間、デルタは戦いの結末を予想した。いや、そのビジョンが意識を駆け抜けるより早く、結果が刻み込まれる。
 光に包まれ、天に届こうかというスピードで両刃剣が化ける。
 振るうことすら無く、飛び込んできた二人がオーガストランザーに巻き込まれる形で吹き飛ばされた。
 ギルスとデルタギアはオーガの程近くに倒れこみ、木場はカブトエクステンダーの傍らに。
 木場にとって唯一の幸運は、デルタドライバーが衝撃で引き剥がされるのと、スーツの消滅に若干のタイムラグが発生したことだろう。
 その為に衝撃が緩和され、致命的なダメージを身体に負うことは無くて済んだ。

「木場は…………」

 ギルスの変身が解け、もがき苦しむ中で涼は呟く。

「彼ならバイクの近くに寝転んでるよ。……ああ、まだ立とうとしてる。本当に諦めが悪いよねえ」

 笑い声を押し殺して涼に話掛けつつ、北崎は数歩進んでデルタギアを拾い上げる。

「か……え…せ……」

 あすかの形見を、自分の信頼した木場に与えた力を、目の前で邪悪に奪われる。
 どんなに屈辱的なことだろう。足掻き、必死に身を起こそうとするが、力が全く入らない。

「元々これは僕が使ってたんだよね。今更、未練なんて無いけど。どの道君に扱える物じゃない。
 でも、どうせだから久しぶりに使ってみようかな。……君も気になるでしょ? 向こうで見物してる奴らが」

 後方で戦闘に介入せずにいた集団に関しては、涼も北崎も知る所であった。
 もっとも、戦闘中に第三者へ構う余裕はどちらにも無かったのだが。
 北崎はオーガギアをその場に落とし、デルタドライバーを装着する。
 木場とカブトエクステンダーから更に数十メートル離れた位置に停車したままな二台のバイク。
 逃げも隠れもせず、接近を待つだけの男四人に、北崎は期待と不安を入り乱らせた。
 涼同様に立ち上がろうとしている木場を放置して、通り抜けた刹那――

「待て……」

 息も絶え絶えに立ち上がった木場が、この場における三つ目のライダーズギアをデイパックから取り出していた。
618Fatality-Cross ◆N4mOHcAfck :2008/12/23(火) 05:54:56 ID:MNFgMOkm


 ――もし、木場さんや海堂さん、乾さんに啓太郎さんがここにいたら、こんな風に戦っているのでしょうか。

 私には、ただ見ていることしか出来ない。
 イブキさん達は私達を匿って必死に戦ってくれているのに、何もしてあげられない。
 隣にいるハナさんは、「いつでも戦える様に」といって黒いケースを握っているのに。
 私は城さんが返してくれた白いケースを、怖くてポケットにしまったまま。

 一体私は、何をしているのだろう。

 事ある毎に、余計な心配をさせていて。
 皆の足を引っ張って、放送局へ着くのを遅らせているだけ。
 けれど、この場から消える勇気がある訳でもない。
 今此処にいる『私』を失ったら、もう『私』は完全にいなくなってしまう気がするから。

 私が邪魔で、何の役にも立っていないことは私自身が一番良く知っている。
 それなのに、目にしている光景でイブキさんや城さんが傷つけられるのを目にすると、一人前に心配していて。

 ――そんな自分に嫌気が差した時でした。視線に気付いたのは。

 城さんとイブキさんを打ち払った黒い仮面が、私の方を見てきたのです。
 何となく、この後起こることが予測できました。
 仮面は腰からカードを抜き取ると、腕にそのカードを通しました。
 白いカードケースを使ったことがあるから、オルフェノクとは違う「怪物」が現れても、違和感は覚えません。
 バイクに姿を変えたのも、木場さんの変身を見たことがあるからそこまで驚かない。
 五代さんはもう一人の敵に動きを抑え込まれていて、城さんとイブキさんが仮面に攻撃します。
 そんな中で黒仮面がバイクに乗って、勢いをつけてからバイクを蹴って私達と外を隔てる窓ガラスへ――
 無感動に一連の流れを見ていた私に、横から力が加わりました。

「危ない!!」

 押し飛ばされて部屋を転がされた私は、突き飛ばした張本人のハナさんが窓から離れるのを見ました。
 瞬きをして改めてその光景を見ると、いつの間にかガラスの破片が背景に加わっていて、ハナさんの頬を一筋の朱が伝っています。
 もう一度同じ動作をしたら、今度は黒い仮面が部屋に入り込んでいました。

「こいつはいい。まさか隠れてたのがお前だったとはなぁ……」
「よ、よりによって牙王なんて……最悪」

 飛び散ったガラスの中で、一際大きな破片にハナさんがデッキを翳します。

「へ、変身」

 たちまち姿を変えるハナさん。その姿は、よくよく見れば私が『変身』した姿に似ていました。

「今の内に、逃げて!!」

 細剣を抜いて切り掛かるハナさんが言いました。ようやく恐怖を感じた私は、目前にあった部屋の出入り口へ走ります。
 無我夢中だった私を現実へ引き戻したのは、手の甲に刺さっていた小さなガラスという名の棘。
 昇ってきた階段の手前で、棘を払いながら一瞬考えます。
 私も『変身』して、ハナさんに加勢するべきなのか。言われた通り逃げ出すべきなのか。
 すぐに結論は出ました。

 ――逃げるしかない、と。

 イブキさんの時みたいに、邪魔をさせたくない。ただその一心で。
 邪魔な私は、荷物も持たずに無心で階段を降りていました。
619Fatality-Cross ◆N4mOHcAfck :2008/12/23(火) 05:55:32 ID:MNFgMOkm


 中身を入れ替えた。そう説明するのが一番分かり易いだろうか――白銀のライダー、デルタが前方へ転がりこむ。
 同時に、寸前まで彼の足元に相当していた位置が爆ぜた。前方回転受け身を終えたデルタが口元にムーバーを寄せる。
 ファイアの囁きでバースト・モードを起動させ、体を反転。片手で構えた銃口は――青空へ。
 途端に、自分が撃ち抜くべき対象から光弾の雨が降り注いだ。やむなく攻撃を中止、跳躍してやりすごす。
 北崎が舌打ちする。見上げた虚空にターゲットの姿は失せている。
 瞬時に居場所を割り出す。既に、¨正面¨だった――

「ヤァァァァァァ!!」

 目一杯の加速で勢いをつけた蹴りに、北崎が蹴り飛ばされる。つい数分前とは逆の展開だ。
 体に青の血液を漲らせて飛翔していた白のライダーが、緊張を持続したまま静かに着地する。
 先程まで行われていた戦いを間近で観戦した者達ですら信じられない展開だった。
 ――木場勇治が、北崎を苦戦させるなどとは。

「楽しいよ、木場君。約束通り面白いことを教えてあげる」



「まさか、君が持っていたなんてね」

 北崎がこの場での数十分において、最高の笑みを漏らした瞬間だった。
 木場は相手にせず、左親指で携帯電話に3・1・5・ENTERのコードを入力する。

「お前に、あの人達への手出しはさせない」

 北崎の奥に見え隠れする四人の首輪を嵌めた参加者達。見た限りで知り合いはいない。
 だがここで彼らを見捨てる程度では、桜井侑斗の誤解を解くことも、衷心に燻る人間への不信を打ち消すことも出来やしないのだ。
 サイガギア――解説書にそう記されていた支給品は、木場にとって未知の存在だった。使用前で分かったのは
・変身コード「315」
・飛行ユニット「フライングアタッカー」の存在
・「特定の人物」しか使用することはできない
 という三点のみ。到底気軽に使用しようとは思わない。
 涼に「オルフェノク以外使用不可」と解釈した三つ目の情報を伝え、その場でデイパックにしまい込んでいた。

「海堂君の時も思ったけど、どうして人間なんかにこだわるかなぁ」
「………………俺は、オルフェノクである以前に人間だ」
「そう、なら面白いことを教えてあげるよ。……一人で、僕を楽しませることができたらね」
620Fatality-Cross ◆N4mOHcAfck :2008/12/23(火) 06:11:31 ID:MNFgMOkm


 埃を払いながらデルタが立ち上がり、視線をサイガと一致させる。

「そのベルトは、僕がさっき使ってたのと対応するベルトでね……
 僕らみたいに優れたオルフェノクじゃないと、変身できないんだよ」
「僕ら……だって?」

 北崎の言い回しに不信感を持った木場が尋ね返す。

「そう。そのベルトが使えるってことは、君も僕と同様ってことさ。
 そうだ、ついでにもう一つ教えるよ。……海堂君を誰が殺したのかをね」
「何……?」
「歌舞鬼っていう、鬼みたいな仮面ライダーに変身する人間さ。
 彼は僕との戦いで力を使い果たした海堂君を助けるフリをして、殺したんだ」
「嘘だ……」

 突如、木場の胸に衝撃が続けて走る。デルタが発砲してきた為なのだが、対応する為の力が入らない。
 北崎が犯人なら、まだ木場にも救いがあった。憎しみを、怒りを向ける相手はそれまでと同一で済んだのだから。
 これでは、信じると決めた筈の人間へ再び憎悪が募ってしまう。 静止して曖昧に葛藤するサイガをデルタは一発殴り付け、木場の否定を更に否定する。

「もし彼を殺したのが僕なら、今頃ファイズギアで君と戦っているよ。その方がきっと面白いし。
 そうそう、彼からベルトを奪って逃げたのも人間。桐矢京介って言うんだ。
 …………人間を守る為に戦う仮面ライダーが、人間に見捨てられるのは流石に可哀相だったけどね……ッ!?」

「黙れ……黙れえええぇぇぇ!!」

 フライングアタッカーに二門設けられたブースターライフルが至近距離で一斉に火を噴く。
 無理矢理のけ反らせたデルタに向かって一回二回と拳を奮うが、余りにも単調なその軌跡は虚しく空を切るだけだ。
 格闘戦での不利を悟ったサイガが再び飛行を開始できたのは、ギリギリのラインで木場が理性を保ったからだろう。
 ライフルを連射すればデルタは回避に専念せざるを得ず、ある程度の余裕が生まれる。
 仮面の下で涙を流しながら、木場は周囲を必死に見渡す。涼にも、後方の四人にも変化は認められない。
 変化を起こしたのはただ一人。デルタがムーバーを変形させ、ルシファーズ・ハンマーの態勢に入っていたのだ。

「君が今どんな状態なのか、確かめてあげるよ」

 北崎の呟きは木場へと届かなかったが、連動して定められた照準の行方だけは容易に判断できた。
 無意識の内に可能な限りの加速で、放たれる寸前の青光の目標に先回りする。
 目の前で花開く輝きは悪魔による処刑執行の前戯でしか無いのに、木場は美しいという感情をそれに持ってしまう。

「最後まで君は、愚かだったね」
 北崎が満足気に話し、デルタがポイント部に飛び込む。
 ――葦原涼と光華の狭間に固定された、木場勇治へ向けて。
621Fatality-Cross ◆N4mOHcAfck :2008/12/23(火) 06:12:48 ID:MNFgMOkm


 ガドルの振り下ろす剛剣が、異様な唸りを上げてクウガの頭上へ振り下ろされる。
 辛うじてタイタンソードが軌道を反らし、肩の鎧を掠めた。

「おりゃぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 好機と見たクウガが剣先をガドルの強靭な腹部へ向かわせ、突き刺す。
 刺さった感触は確かにあるのだが、問題はその次のステップだ。
 貫けない。限界まで体重を掛けて押し出すが、剣は遅々として進まない。
 余裕綽綽といったガドルの左腕がタイタンソードを掴む。片手で軽々と剣を抜くと、右手に握るものと瓜二つの姿へと剣を変換した。

「ぐっ……超変身!!」

 剣を持たぬ紫のクウガなど、ただの鈍重な的――それを察した五代は姿を青に変え、一跳びで相互間の距離を広げた。
 結花とハナが退避した民家の二階が視界に映りこむ。割れた窓ガラスが侵入者の存在を主張する。
 救援に向かうべきか思考したことで隙が発生し、それは緑目のガドルが放ったボウガンを無防備な状態で受ける結果を招いた。
 紫だったら耐えられたかも知れない。自ら防御を捨てて回避をとったクウガ――五代には、意味の無い仮定ではあるのだが。

「五代さん」

 威吹鬼が音撃管を発砲するが、ガドルは動じない。
 ボウガンの標的を威吹鬼へと切り替えようとするが、既の所で引鉄を引くことなく右腕が蹴り上げられた。
 威吹鬼が気を引いた内に接近したタイガーアンデッドが、更にボウガンに爪を振るって地に叩き落す。
 元の飾りに変化したボウガンのことは忘れ、三人の敵を相手に立ち回ることのみを念頭に入れるガドル。
 五代達からすればチャンスであった。飾りを再び剣へと変えたガドルに捌かれてこそいるものの、攻撃を繰り返す度動きは僅かずつだが鈍っている。
 反射的にクウガを救援した光とイブキにはオルタナティブを放置するのが心苦しかったが、階段を駆け下りる音と刃物が打ち合う音の二種を聞き取ったことで迷いを振り切っていた。
 ガドルを倒した後に二階で交戦しているナイトかファムを救援するのが、最善手であることに疑いは無かった。
 威吹鬼が再び音撃管をガドルに向け、適当な棒を拾い上げたクウガとタイガーアンデッドが駆け出す。
 積み重ねた連携が、実を結ぶまでそう時間は掛からない「筈」だった。

「あっ……」

 カランカランと音を立て、ドアが開き結花が飛び出してくる。
 打ち付けられたドラゴンロッドを無視したガドルが、剣を三度ボウガンへと切り替えたのを威吹鬼は目にしてしまった。
 故に、彼は結花とガドルの間に迷わず割り込んでしまう。
 実の所、ガドルが結花を攻撃することは有り得ないのだが。
 ――ボウガンの発射音と獲物を見つけた黒龍の雄叫びがシンクロした。
622Fatality-Cross ◆N4mOHcAfck :2008/12/23(火) 06:13:54 ID:MNFgMOkm


 黄金色の甲虫が宙を旋回する。自身を受け入れるべき器――ライダーブレスの所持者を、見定める為に。
 最強を冠された青鍬形と互角に戦った先の戦いは、及第点に値すると彼は判断していた。
 後僅か。資格者に成り得るかどうかの判断を下す時が、近づいている。
 所持者が新たな闘争へと身を投じた為だ。

 木場が、涼が、ヒビキが、志村が、一文字が、手塚が、三田村が、北崎がこの戦いの勝者を悟った瞬間だった。
 勝利を確信した北崎の叫びのみが、静寂を打ち鳴らしているべき瞬間だった。
 早くも勝者を自身と決定付け、けたたましい排気音で静寂を破り裂く「ライダー」。
 一同がその正体を確かめるよりも、遥かに速く。
 ゴ・バダー・バの駆るジャングラーが、光と化す寸前だったデルタを空中で轢き飛ばしていた。
623Fatality-Cross ◆N4mOHcAfck :2008/12/23(火) 06:14:42 ID:MNFgMOkm


 オルタナティブの突撃した部分と全く別方向の部屋から、身体中に傷を色濃く残した黒龍が出現する。
 労せずして獲物を食する千載一遇の機会だった。
 無防備な鬼と少女を一手に得て、散々甚振ってくれた男へと復讐する。
 だというのに、不幸な黒龍――ドラグブラッカーの思惑は、またしても外れる結果となった。
 ほぼ同タイミングで出現した蝙蝠――ダークウイングによる超音波が、一時的な停止を余儀なくさせる。
 意図して行われた行為では無い。オルタナティブ・ゼロに苦戦するナイトが、苦し紛れに一枚カードを使用しただけなのだ。
 同様に室内で苦しむオルタナティブに、ナイトがダークランサーで我武者羅に切り掛かった。
 少々腕っ節が強い程度の素人であるハナが行える攻撃では、最も効果的なものらしい。
 やかましい騒音の中では長時間捌ききれないため、一撃を加えてナイトを倒れこませると数分前と逆に窓から飛び降りる。

「やかましさが二倍増しだと思えば……お前までいやがったのか」

 もがき苦しむ黒龍を見て牙王がぼやく。超音波に続けてガドルと威吹鬼の連射に相次いで行動を遮られている様子だった。
 クウガとタイガーアンデッドは牽制を終えたガドルに仕掛けている。
 想定外の事態を受け入れ、それでも皆が戦う中で、ただ一人生身を晒す女の姿が牙王の勘に障った。
 ドラグブラッカーに応戦する威吹鬼の傍らに隠れてながら結花は愚かな自分の選択を嘆いている。
 ここまで来てしまったなら、腹を括って戦うしか無いと思い始めた矢先、再び「仮面」と視線が合う。
 やはりカードを一枚オルタナティブはデッキから引き抜く。
 一切の情けも無く牙王は「アクセルベント」のカードを切る。
 猛烈な速度で一直線に、無防備な結花目掛けてオルタナティブ・ゼロが突撃。
 全くぶれの無いスラッシュダガーが肉体を貫き、盛大な鮮血がオルタナティブの装甲を、そして――
624Fatality-Cross ◆N4mOHcAfck :2008/12/23(火) 06:15:22 ID:MNFgMOkm









「イ……ブ………キ…………さん?」









 ――相変わらず無防備なままな長田結花の衣服を、紅く染めていた。
625Fatality-Cross ◆N4mOHcAfck :2008/12/23(火) 06:15:57 ID:MNFgMOkm


『本郷は、アンタが……仮面ライダーになることを、望んでいた』

『お前にもわかる時が来るさ……きっとな』
『頼む、一文字……』

 「変身」に、「ライダーキック」。本郷が俺に託した望みと言う訳か。

 十数分に渡る戦いをこの目に焼き付けて、途中から乱入してきたバッタ野郎(人のことは言えたもんじゃないが)を除く三人のスタンスが見えてきた。
 まず間違いなく俺達にとって敵なのは、途中でこちら方へ向かってきた奴だ。
 倒れてる金髪に銃を向けたりする辺り、どう考えても俺達も殺す気満々だろう。
 金髪を守りながらバッタに応戦している白い奴は、少なくとも俺達の敵では無い。
 寝転んでおけば放置されていたところを敢えて立ち上がって俺達を助けたり、狙われた金髪の盾になる辺りが根拠だ。
 最後に金髪。馬鹿みたいな強さを誇る最初の奴に負けてから倒れたままだが、先の二人の存在を考慮した場合敵か否かなら後者。
 この中で誰かに加勢するとなれば、白い奴しかいない。
 飛行能力があるにしても、金髪が足枷となって思う様に動けていない。
 しかも最悪なことに、銃使いの方が退き始めた。
 バッタ野郎が追撃してくれれば理想だったが、よりにもよって追いかけない。
 横を見れば、今にもヒビキが打って出そうな状態だ。
 あのバイク野郎を相手取るには、どう見ても同等の条件で立ち向かう必要がある。
 幸いバイクそのものは三台ある。が、ヒビキには荷が重い。

「ヒビキ」
「一文字、お前にも敵味方の区別はついた筈だ」
「あのバッタを追い払うんだろう? だったら、ここは俺の方が適任だ。……それに、あいつらに聞きたいこともある」

 ジャケットを開いて、腰のベルトを俺は回転させた。俺がここで能力を行使してしまえば、ヒビキは退かざるを得ない。
 ヘルメットを被り、元々最初に俺が乗ったバイクへと掛ける。
 デイパックが二つ転がっていた。俺は適当に片方の中身を漁り、引っ掛かったベルトを拾い上げ、アクセルを吹かす。
 後はいかにしてバッタを引き離すか、だ。
626Fatality-Cross ◆N4mOHcAfck :2008/12/23(火) 06:16:54 ID:MNFgMOkm


「うぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 再び仲間を失った五代の、悲痛な叫びだった。
 ようやく民家から飛び出たナイトがオルタナティブ・ゼロへと怒りに任せて槍をぶつけ。
 タイガーアンデッドが結花をドラグブラッカーから、イブキの遺体から引き離し。
 血色に身体を染めたクウガが天に舞い、ガドルへ微弱な蹴りを叩きこむ。
 胸に浮かび上がった紋章は即座に消え去るが、構わずにクウガはそれを二度、三度と繰り返した。
 ガドルが過程の中で、一種の不快感を帯びる。確かに、キックの威力自体は変わらない。
 封印エネルギーも、ガドルへダメージを通せるレベルのものではなかった。
 ただ、その一撃一撃に篭った憎しみという名の気迫が、回を増す毎に強まっているのだ。
 餌を喰らった黒龍は活発化し、自分達の変身に制限が掛かるのも時間の問題。
 ガドルは状況の不利を察すると、青く目を輝かせて此処へ赴く際使った愛馬へと飛び乗る。
 急加速してオルタナティブ・ゼロと鍔迫り合いになっていたナイトを追い払い、ほぼ強制する形で牙王に後ろへ乗る様指示。
 牙王の離脱に合わせてドラグブラッカーが鏡へと舞い戻り、直後にはクウガとタイガーアンデッドの変化が解けた。
 誰も彼らを追おうとはしない。いや、追えなかった。

「俺が不甲斐ないばっかりに、イブキさんまで……」

 涙を流して震えながら、五代が己が無力さを恨み続ける。
 剣崎を失った時のどす黒い感情が、心に空いた穴を埋めていくのが自分でも分かった。
 ハナや結花にしても同様で、特に結花の負った心の傷は余りにも深い。

(全部……私の……せい……だ……)

 手から零れ落ちたのは、イブキの遺した音笛とディスクアニマル。
 唯一涙を見せなかった光がそれらを拾い、強引に結花へ握らせる。

『持ってて……元気になるまでの、間…だけ……だから………』

 結花の脳内でイブキが遺した最後の言葉がフラッシュバックし、それらを握り締める可憐な拳の力が強くなっていった。

「立て。ここで立ち止まっていては、イブキに申し訳が立たない」

 少しでも状況が違えば、結花を庇って死んでいたのは自分だった。
 自覚している光は、そこで全てを割り切った。
 誰かの為に命を捨てるという行為の重さを肝に銘じて、光は南を見据えた。
627Fatality-Cross ◆N4mOHcAfck :2008/12/23(火) 06:18:27 ID:MNFgMOkm
【E-4 民家付近】
【1日目 日中】

【城光@仮面ライダー剣】
[時間軸]:40話、トライアルについて知った後
[状態]:膝などに軽い擦り傷。腹部に裂傷(中程度:応急手当済み)。各部に中程度の打撲。二時間アンデッド化不可。
[装備]:なし
[道具]:基本支給品・トランシーバーA・ラウズカード(スペードQ/K)
[思考・状況]
基本行動方針:このゲームから脱出する。主催にはバトルファイトを汚した罰を与える。
1:北條奪還のため、まずは『青いバラ』『首輪』の入手、『放送』の指令を遂行。
2:他の参加者とは必要以上に関わる気はない。邪魔ならば排除するが基本的に放置。
3:剣崎の死、北條の言葉、乃木との戦闘から首輪制限下における単独行動の危険性を認識。
4:五代の態度に苛立ちつつ、僅かに興味。 志村に違和感。
5:イブキの代わりに、結花の面倒を見る
6:首輪探知手段の支給という行為に疑問
※以下の様に考えています
青い薔薇は首輪と関係がある
ライダーの強化フォームはなんらかの制限が掛かっている。

【五代雄介@仮面ライダークウガ】
[時間軸]:33話「連携」終了後
[状態]:全身打撲、負傷度大(応急手当済み)、強い自己嫌悪。クウガに二時間変身不能。
[装備]:警棒@現実、コルトパイソン(残弾数6/6:マグナム用通常弾)
[道具]:警察手帳(一条薫)
[思考・状況]
基本行動方針:絶対に殺し合いを止め、みんなの笑顔を守る
1:北條を救出するために、乃木の命令を可能な限りで遂行する。
2:白い未確認生命体(アルビノジョーカー)、ダグバ、ガドル、牙王を倒す。
4:金のクウガになれなかったことに疑問。
5:剣崎の分まで頑張って戦い、みんなの笑顔を守りたい。
6:イブキの死に深い悲しみと自己嫌悪。
※第四回放送まで、ライジングフォームには変身不能
※ペガサスフォームの超感覚の効果エリアは1マス以内のみです。また、射撃範囲は数百メートル以内に限られます。
※ドラゴン、ペガサス、タイタンフォームには変身可能。ただし物質変換できるものは鉄の棒、拳銃など「現実に即したもの」のみで、サソードヤイバーやドレイクグリップなどは変換不能。
※葦原涼の「未確認生命体事件」の終結を聞き、時間軸のずれに疑問を持ちました。
※葦原涼のギルスへの変身能力について知りません。
628Fatality-Cross ◆N4mOHcAfck :2008/12/23(火) 06:19:04 ID:MNFgMOkm
【長田結花@仮面ライダー555】
[時間軸]本編第41話終了直後(武装警官を一掃する直前)
[状態]小程度の負傷、人間への不信感(軽度) 、海堂の死に対する強い悲しみ。
[装備]カードデッキ(ファム)、変身鬼笛・音笛、音撃管・烈風、ディスクアニマル(アサギワシ)
[道具]ライダーブレス(ケタロス:資格者不明)、青い花びら
[思考・状況]
基本行動方針:木場と合流する
1:イブキの死に深い悲しみ。自分の無力差を嫌悪。
2:「人間ではない」城光に若干の好意。「人間」の「警官」北條には強い警戒心。
3:仲間達に嫌われたくない。オルフェノクであることは極力隠す。
4:指令なんて、どうしたら……?
※イブキの亡骸がドラグブラッカーに捕食されたのを目の当たりにしています。

【ハナ@仮面ライダー電王】
[時間軸]:劇場版・千姫と入れ替わっている時
[状態]:小規模の打撲、疲労ある程度回復、悲しみと強い決意。二時間ナイトに変身不能。
[装備]:冥府の斧@仮面ライダーアギト、カードデッキ(ナイト)
[道具]:支給品一式、洗濯ばさみ、紙でっぽう、戦国時代の衣装、ミニカー7台
【思考・状況】
基本行動方針:脱出する
1:仲間と行動。後ほどヒビキたちと合流
2:仲間を探して一緒に脱出する
3:イマジンに対する自分の感情が理解出来ない
4:危険人物に気をつける
5:モモタロス、デネブ、あすか、イブキら仲間達の分まで戦う
6:志村が妙に胡散臭い
629創る名無しに見る名無し:2008/12/23(火) 09:41:02 ID:C54pNupQ
これは色々と激しい展開だ・・・・
詳しい感想は仮投下スレの分が上がってからで
630代理投下:Fatality-Cross ◇N4mOHcAfck:2008/12/23(火) 09:43:11 ID:/L7sMD57


「ここまでくれば大丈夫……かな?」

 右手にオーガギア、腰にデルタギアを保有したまま、少々不安な足取りで北崎は道路を歩んでいた。
 既に変身は解けており、その顔つきにはやや疲労の跡が浮かんでいる。
 木場にトドメを刺して終了していた筈の戦いを継続させた、異質なバイクを駆る異形。
 決して倒せない相手ということではないのだが、ドラゴンオルフェノクの制限がまだ解けていない為、頃合を見て北崎は離脱していた。

「結果的にはベルトが一つ増えたんだ。これは三田村君にでもあげようかな……あれ」

 三田村がいない――制限の為戦闘に参加できなかった三田村を、小屋に潜ませていたことを北崎は今更思い出す。

「そういえば……彼はまだあっちだったね……と、良かった。追いかけてきたんだ」
「ま、待ってくれ!!」

 呼び止めながら走ってくる三田村を、北崎は笑顔で迎え入れた。
 デイパックを担いで走って来ただけあり、それなりに息を乱していた。

「さ、最後の二人になるんじゃなかったのかよ…………」
「ごめんごめん、君の影が余りにも薄かったからさ。流石に悪かったから、君にはこれをあげるよ」

 肩を上下させる三田村の空いている手へ、デルタギアを渡して北崎は続ける。

「しばらく隠れてようか。今回ばかりは、僕も大分疲れちゃったからね……」
「そうしてもらえると、こっちも助かる……」
631代理投下:Fatality-Cross ◇N4mOHcAfck:2008/12/23(火) 09:44:22 ID:/L7sMD57
【F-6 西部エリア】
【1日目 日中】


【三田村晴彦@仮面ライダー THE FIRST】
[時間軸]:原作での死亡直前から
[状態]:全身に中度の疲労、胸に強い痛み、北崎に対する強い恐怖 、十五分コブラへ変身不可能
[装備]:特殊マスク、鞭 、デルタギア
[道具]:基本支給品・不明支給品×1
【思考・状況】
基本行動方針:彼女を救いたい。
1:望みを叶える為にも、バトルロワイヤルに生き残るしかない。
2:生き残るために今は北崎に逆らわず、彼と行動を共にする。
3:いざとなれば迷わない……はず。
4;桐矢、海堂に僅かな罪悪感。
【備考】
※変身制限がある事をなんとなく把握しました(正確な時間等は不明)


【北崎@仮面ライダー555】
[時間軸]:不明。少なくとも死亡後では無い。
[状態]:全身に疲労。頭部、腹部、両腕にダメージ。背部に痛み。ドラゴンオルフェノクに十五分、オーガに二時間変身不可。
[装備]: オーガギア
[道具]:無し
[思考・状況]
基本行動方針:殺し合いを楽しんだ上での優勝。
1:今のところは三田村を引き連れて行動し、最終的には闘う。また、三田村のような人間をもう一人か二人手下にするのも面白いかも。
2:五代雄介、「仮面ライダー」なる者に興味。
3:桜井侑斗、香川英行とはまた闘いたい。
4:ゾル大佐、橘朔也と会ったら今度はきっちり決着をつけ、揺ぎ無い勝利を手にする。
5:「仮面ライダー」への変身ツールを集めたい。
6:木場勇治はどうせだから自分で倒したい。歌舞鬼はいつか倒す。
7:三田村晴彦は面白い。玩具的な意味で。桐矢はもうどうでもいい。
8:疲労が取れるまで三田村と休息をとる。
※変身回数、時間の制限に気づきましたが詳細な事は知りません。
※桐矢京介を桜井侑斗と同一人物かどうかほんの少し疑問。
※どこへ向かうかは次の書き手さんにお任せします。
632代理投下:Fatality-Cross ◇N4mOHcAfck:2008/12/23(火) 09:47:08 ID:/L7sMD57


 ライフルを必死で連射しながら、木場は涼に立ち上がる様促す。兎にも角にも、涼が動けなければサイガは防戦一方なのだ。
 器用に小回りを利かせ、バダーはライフルの掃射を躱し続ける。
 先に変身が解けるのは相手なのだから、無理に深入りする必要は無いのだ。
 相手が反撃の手段を失ったところで、満を持してバイク対決を要求する――
 その時を待ち侘びながらジャングラーをターンさせたバダーの聴覚が、何よりも優先して戦うべき存在を瞬時に認識させる。
 カブトエクステンダーが前輪を掲げて突っ込んでくるのを避け、車首を向かい合わせる。
 サイガの変身が解けたのと、涼が立ち上がったのも同時刻だった為、彼らの邂逅は一切の妨害を受けずに成立した。

「お前の相手なら、俺がしてやる」

 マスクで素顔を隠すホッパー二号。そのシルエットにバダーが少なからず好感を持った。

「上等だ。先に往け」

 前へ出ることを要求され、ホッパーは素直に首を縦に振る。
 アクセルを改めて吹かすと、ホッパーがややシンプルなデザインのベルトを涼へと投げ渡した。

「これは……」
「お前の物だろう。早く変身しろ」

 変身しろと言われても、それまで使い道が分からなかったものを扱えというのも酷な話だ。
 直後に悩む涼の耳を打ったのは、何かがまるでバッタの様な軽快さで地を跳ねる音。
 飛び跳ねてきた機械――ホッパーゼクターを掴んだホッパー二号が、ゼクターを涼へ投げ付ける。
 涼が片手でそれをキャッチすると、たちまち明るい電子音が鳴り響いた。

「轢かれたいのか」

 そのやり取りに苛立ったバダーが堪らず告げる。
 警告をものともせず、ホッパー二号が言い返した。

「見た感じ俺一人じゃ勝てそうにないからな。助っ人を使わせてもらう」
「まさか……アンタ、俺のことを言ってるのか」

 ゼクターをその手にしても、どうすれば良いのか分からずあたふたする涼。
 見かねた木場が遂に口を開きつつ、ベルトを涼の腰へと装備させる。

「ゼクターに選ばれた人は、変身できるんです」

 蜂の姿を模したゼクターと呼ばれる機械で変身していた影山瞬の姿を木場は思い返す。
 一度涼の手から飛び跳ねたゼクターがバックルの正面を開き、反動で再び掌へ跳ね返った。

「そこにゼクターをとりつけてください」

 ――HENSHIN――

 ――CHANGE PUNCH HOPPER――

「変身したなら、さっさと乗れ」
「俺はまだアンタを信用した訳でなければ、協力するといった覚えも無い」

 木場を置いてバイクに乗れと言われても、そうホイホイと付いていく訳にも行かないのは当然だ。

「俺としては、このバイクの持ち主について聞きたいことがあるんだがな」
「何……? だが、俺が付いていったら木場はどうなる」
「俺の仲間と病院に向かえ。そこで仲間と合流する手筈になってる」
「……アンタの仲間は、信頼できるのか?」
「個人が完全に信頼できる存在なんて、自分自身だけだと思うがな」
633代理投下:Fatality-Cross ◇N4mOHcAfck:2008/12/23(火) 09:48:43 ID:/L7sMD57
 答えを返したとは言い難い一文字の返答だが、それでも涼はその回答に納得を示す。
 振り返って木場を見れば、彼も決意を固めていた。

「じゃあ行くぜ。勝負だ、バッタ野郎」
「ゴ・バダー・バ、だ」

 カブトエクステンダーが前に出たのをその双眼で確認し、バダーもジャングラーを発進させる。
 最強のライダーたる所以を示す為、黄金の兜が見守る中でジャングラーが突進した。

【F-6 移動中】
【1日目 日中】

【一文字隼人@仮面ライダーTHE FIRST】
[時間軸]:FIRST終了後。
[状態]:全身に強い衝撃、リジェクションによる負荷と苦しみ、ホッパー二号に変身中
[装備]:特殊マスク、カブトエクステンダー
[道具]:基本支給品、
【思考・状況】
基本行動方針:バトルロワイアルからの脱出
1:本郷、あすかの分まで必ず生き抜く。本郷の遺言には複雑な気分
2:バダーと決着をつけて病院へ向かう
3:金髪の男(葦原)からカブトエクステンダーの入手経緯を聞きだす
4:出来る限り、戦闘は避け状況を把握する。
5:余裕があれば首輪を回収に行く。
6:俺や本郷と同じ名前……偽者か、それとも?
7:志村を注意視。合流まではヒビキに任せる。
[備考]
※死神博士の事を自分を改造した老紳士だと思っています。
※FIRST終了後の参戦のため、風見志郎の存在を知りません。
※変身解除の原因が、自身のリジェクション(改造手術による後遺症)によるものだと考えています。
※首輪について:
 金属製のフレームに吸音用の穴と紅いダイオードが一つ。詳細不明。
 さほど重くなく、表面にはスマートブレインのロゴがプリントされている。 
 無理に外そうとしたり禁止エリアに入ると起動、装着者は灰になる。
※自分が戦った高笑いの男(志村)は戦いに乗っている、また策謀を巡らせている可能性を考えています。
※夢の内容はおぼろげに覚えています。

【葦原涼@仮面ライダーアギト】
[時間軸]:第27話死亡後
[状態]:全身負傷(中)、疲労(大)、約二時間変身不可(ギルス)、パンチホッパーに変身中。
    腕部に小程度の裂傷、変身の後遺症、仇を討てなかった自分への苛立ち
[装備]:フルフェイスのヘルメット、ゼクトバックル
[道具]:支給品一式(二人分)
[思考・状況]
基本行動方針:殺し合いには加担しない。脱出方法を探る。
1:立花を殺した白い怪物(風のエル)、あすかを殺した白いライダー(ファム)未確認生命体4号(クウガ)、北崎に怒り。必ず探し出して倒す。
2:立花藤兵衛の最後の言葉どおり、風見の面倒を見る?
3:自分に再び与えられた命で、救える者を救う。戦おうとする参加者には容赦しない。
4:黒いライダー(カイザ)を探してみる。
6:五代雄介の話を聞き、異なる時間軸から連れて来られた可能性を知る。
  白い怪物(ダグバ、ジョーカー)を倒す。
7:バダーを倒し、木場と合流する。
※五代の話を聞き、時間軸のずれを知りました(あくまで五代の仮説としての認識です)。
※剣崎一真の死、ダグバの存在、ジョーカーの存在などの情報を五代から得ました。
※ホッパーゼクターが涼を認めました。(資格者にはすぐにでも成り得ます)また、デイバックの中に隠れています
※カブトエクステンダーはキャストオフできないため武装のほとんどを使えません。
 今の所、『カブトの資格者』のみがキャストオフできます。
※五代(クウガ)は殺し合いに乗ったと勘違いしています。
※勿論、デルタギア装着によるデモンズストレートによる凶暴化などは知りません。(デルタギアの使い方は知っています)
634代理投下:Fatality-Cross ◇N4mOHcAfck:2008/12/23(火) 09:50:21 ID:/L7sMD57
【ゴ・バダー・バ@仮面ライダークウガ】
【時間軸:ゲゲル実行中(31-32話)】
【状態】全身にダメージ、背中や腕部等に多少の火傷、右足にダメージ、グロンギ体変身中。
【装備】ジャングラー@仮面ライダーアマゾン
【道具】基本支給品 車両配置図 ラウズカード(ダイヤの7・8・10) ライダーブレス(コーカサス) 
【思考・状況】
基本行動方針:リントではなく自分の「ゲゲル」を完遂する。
1:一文字と葦原をゲゲルに則り殺す。
2:クウガ、イブキ、ガタック、ドレイクはいずれ自分で倒す。
3:(スマートブレイン勢力も含めた)「ライダー」の探索と殺害。
4:グロンギ族に遭遇しても、このゲゲルを終え、ゲリザギバス・ゲゲルを続行する為に殺す。

※上記三名の移動先はお任せします。

【F-6 西側の道路】
【1日目 日中】

【木場勇治@仮面ライダー555】
【時間軸】:39話・巧捜索前
【状態】:全身に中程度の打撲。他人への不信感。全身に疲労大、背中等に軽い火傷。三十分変身不可(ホースオルフェノク)、
     二時間変身不可(サイガ)、人間に対して複雑な感情
【装備】:なし
【道具】:基本支給品×1、Lサイズの写真(香川の発砲シーン)、サイガギア、トンファーエッジ
【思考・状況】
基本行動方針:???
1:バイクに乗ってきた男(一文字)の仲間と接触してみる
2:侑斗と話し合う。その上で人間の真意を見極める。
3:葦原に憧れ。再び合流したい
4:香川、死神博士、ゴルゴス、牙王、風のエル(名前は知らない)、東條を警戒。影山はできれば助けたい。
5:事情を知らない者の前ではできるだけオルフェノク化を使いたくない。
6:サイガへ変身できた自分への疑問。
7:海堂を殺した歌舞鬼、ベルトを奪った桐矢への強い怒り。
【備考】
※香川から東條との確執を知り、侑斗から電王世界のおおまかな知識を得ました。(赤カードの影響で東條だけの情報が残っています。)
 また、第一回放送の内容も二人から知りました。
※香川を赤カードの影響で危険人物として認識したままです。
※自分を信じるが、自分さえも信じられなくなったらその時は…?

【日高仁志(響鬼)@仮面ライダー響鬼】
[時間軸]:最終回前
[状態]:顔面に傷、腹部に中度の火傷、背中にダメージ、強い決意。
[装備]:変身音叉・音角@仮面ライダー響鬼、劣化音撃棒×2、音撃増幅剣・装甲声刃@仮面ライダー響鬼
[道具]:基本支給品一式(着替え1着と元の服を含む)、野点篭(きびだんご1箱つき)、トランシーバーB
    釘数本、不明支給品×1(確認済)、「竜巻」(HONDA Shadow750)、ホンダ・XR250(バイク@現実)
【思考・状況】
基本行動方針:出来るだけ多くの仲間を守って脱出
1:志村、手塚の治療の為、病院を目指す。その為に木場と接触。
2:ダグバは放置できない。
3:別行動中の仲間に対する心配。
4:もっと仲間を増やす。
5:新たな仲間を信頼。志村は一文字の判断に任せる。
[備考]
※猛士の剣は音撃増幅剣・装甲声刃に変化しました。
※装甲響鬼に変身するには響鬼紅の制限が解除されないとできません(クウガ、ギルスと同じ制限)。
※折れた音撃棒は修理されましたが、多少品質が落ちます。
※手塚から一文字(R)と志村に瓜二つな敵が闘っていたという話を聞き、半信半疑です。
635代理投下:Fatality-Cross ◇N4mOHcAfck:2008/12/23(火) 09:51:14 ID:/L7sMD57
【手塚海之@仮面ライダー龍騎】
[時間軸]:死亡直後
[状態]:気絶中、胸に一文字の大きな傷、右上腕部に斬撃による傷(応急手当済)。全身に疲労とダメージ。
[装備]:無し
[道具]:基本支給品、マシンガンブレード@仮面ライダーカブト、サソードヤイバー@仮面ライダーカブト、強化マスク
【思考・状況】
基本行動方針:運命を変えないように何としても城戸を守り抜く。
1:治療の為、移動するための体力を回復し、病院を目指す。
2:志村、ヒビキと共に城戸と合流、城戸の力となる。
3:夢の内容に動揺。
4:一文字の生還を祈る。
[備考]
※城戸が自分と同じ時間軸から連れてこられたと思っている為、城戸が死ぬ事は運命を変えられなかったことに相当すると考えています。
※サソードゼクターに選ばれ、仮面ライダーサソードへと変身できます。 但し、キャストオフ、クロックアップの方法を知りません。
※本郷の言葉から一文字隼人、風見志郎、ハナ、志村純一、クウガ、ダグバの事を知りました。
※携帯にデータが残っていたため、死亡者と禁止エリアについては知っています。参加者の蘇生に関しては知りません。
※志村から一文字(R)と志村に瓜二つな敵が闘っていたという話を聞き、信じています。
※傷には応急手当が施されましたが、依然きちんとした治療を受けなければ危険な状態です。
※ライアのデッキを志村に貸しました。
※自分でバイクを動かせる状態にはありません

【志村純一@仮面ライダー剣・Missing Ace】
[時間軸]:剣崎たちに出会う前
[状態]:腹部に重度の火傷(応急手当済)、首に絞められた跡、全身に疲労とダメージ。
[装備]:カードデッキ(ライア)
[道具]:支給品一式、ラウズカード(クラブのK、ハートのK)@仮面ライダー剣、蓮華のワイヤー内蔵型指輪@仮面ライダーカブト、
    
【思考・状況】
基本行動方針:人間を装い優勝する。
1:治療の為、病院を目指す。
2:もう慢心しない。ダグバなどの強敵とは戦わず泳がせる。
3:馬鹿な人間を利用する。鋭い人間やアンデットには限りなく注意。
4:誰にも悟られず、かつ安全な状況でならジョーカー化して参加者を殺害。
5:橘チーフを始め、他の参加者の戦力を見極めて利用する。自分の身が危なくなれば彼らを見捨てる。
6:『14』の力復活のために、カテゴリーKのラウズカードを集める。
[備考]
※志村は橘から『仮面ライダーブレイド』の存在は聞いていますが、ライダーシステム資格者が『剣崎一真』という事は知りません。
ですが、志村は此処に連れてこられる前に独自に調査を行い、剣崎一真がブレイドであるいう事、彼の顔なども知っています。
※城戸、本郷(R)に『白い怪物と剣崎一真は共に殺し合いに乗り、尚且つ組んでいる』『桜井侑斗は危険人物』と話しました。
※手塚に一文字(R)と闘っていたのは自分ではなく自分に瓜二つな男だと話しました。
※傷には応急手当が施されましたが、依然きちんとした治療を受けなければ危険な状態です。
※ライアのデッキを借り受けました。
※自分でバイクを動かせる状態ではありません。

636創る名無しに見る名無し:2008/12/23(火) 09:51:17 ID:C54pNupQ
しえーん
637創る名無しに見る名無し:2008/12/23(火) 09:52:45 ID:C54pNupQ
支援
638代理投下:Fatality-Cross ◇N4mOHcAfck:2008/12/23(火) 09:53:09 ID:/L7sMD57


「……何のつもりだ」
「それは俺の台詞だ。何故あの場で退いた」

 D-4西部。
 二つの大路が重なるこの地にて、ガドルの制服の胸倉を取りながら牙王が激昂する。
 ガドルはそれを突き放すと、静かに一言呟いた。

「お前一人で、あの局面を切り抜けるのは無理と判断した」
「アァ?」

 オルタナティブ・ゼロにガドルの怪人体が制限を受けた時点で、残された戦力はガオウへの変身のみ。
 大して相手はまだハナが時間を残していた上、使い回しが可能なカードデッキ。
 ガオウを集中して狙っている節のあったドラグブラッカー。
 ダグバにこそ及ばないものの、確かな戦慄を最強の「ゴ」、ゴ・ガドル・バに与えたクウガの愛憎に満ちた飛び蹴り――
 これだけの不安要素を抱えてあの場に残るのは得策では無いとガドルは結論付け、行動に移したのだ。

「チッ、過ぎたことをウダウダぼやいても無駄か。
 ……おい、探知器を貸せ」



 ガドルが取り出した携帯を奪い取り、首輪探知機能を起動する牙王。
 南のE-4にある反応は四つに減少している。首輪諸共黒龍の餌となったのだろう。
 結果はそうであれ、殺したのは、喰ったのは自分だ。未練など露程も残っていない。
 まして次の獲物が見つかったのだ。何を嘆くことがあるだろうか。
 以前このD-4エリアで検知された、もう一つの反応。それが目前に迫っていたのだ。
 嬉笑を浮かべた牙王が、ガドルに新たな参加者の接近を告げようと顔を上げる。
 予想外なことに、ガドルは既に表情を強張らせていた。彼が静かに、それでいてハッキリ聞き取れる声量で来訪者の名を告げる。

「ダグバ…………」

 その言葉を聞いて満足したのか、牙王がマスターパスを構え走り出す。
 ガオウへの変身を完了させる過程で明確に感じる威圧感は、正に喰うに相応しい極上のものだ。
 笑顔で白服の青年が腰のバックルを開く。展開と同時に正面へ現れた黄色のゲートは、突っ込んできたガオウを吹き飛ばした。

 青年が静止したゲートを通過すると、金色のスーツが纏い付いた。
 腰から剣を抜くと、右腰から一枚カードを抜いて態勢を立て直したガオウと対峙する。

「リントにしては、随分好戦的なんだね」
「俺はお前みたいな奴を喰らう為に存在するんでなぁ……ダグバ」
「名前を知ってるのは、ガドルと一緒にいるからかな? ……まあ良いや、始めよう」

 ラウザーに一枚のカードが通される。マッハのコールが示す通りグレイブが加速、ガオウの懐で剣を振るう。
 音声を聞くと同時に一歩だけ下がったガオウがガッシャーを構え、一太刀を阻止した。

「どうした、もっと喰い甲斐のあるところを見せろ」
「へぇ、凄いじゃない。その調子で楽しませてよ……」

 ガドルは沈黙したまま、二人のライダーの手探り合いを見据える。
 ダグバが本気を出しているのならともかく、今はリントの纏う鎧で戦っているのだ。
 その真意は読めなかったが、やがて読む必要がないという結論に至る。今はただ決着を待つのみだ。
 ダグバの勝利か、牙王の勝利か、それとも――
639代理投下:Fatality-Cross ◇N4mOHcAfck:2008/12/23(火) 09:54:30 ID:/L7sMD57
【D-4 交差点】
【1日目 日中】
【牙王@仮面ライダー電王】
【時間軸】:最終決戦前。
【状態】:全身打撲、疲労大、あばら3本骨折、腹部に重度のダメージ、1時間40分変身不可(オルタナティブゼロ)、ガオウに変身中
【装備】:ガオウベルト
【道具】:マスターパス、基本支給品一式×2、ランダム支給品1?6(牙王、ゾル大佐分。共に未確認)、オルタナティブゼロのデッキ
     コンビニから持ってきた大量の飲食料(中量消 費)
【思考・状況】
基本行動方針:全て喰らい尽くした上で優勝
1:ダグバを喰らう。ガドルはしばらく連れまわす。
2:最終的に全参加者を食う。
3:人が集まりそうな施設を適当に目指す。
4:機会があれば煩わしい首輪を外す。
5:ガオウライナーを取り戻して村上も喰う。
6:餌(人質)が確保できたら放送局を利用して死にたがりな獲物を誘き寄せるか?
備考
※会場のどこかに時の列車(予想ではガオウライナー)が隠されていると推測しています。
※木場の生存には未だ気づいていません
※ゾル大佐のデイパックを偶然奪いました。
【ドラグブラッカーについて】
※デッキが破壊された事によりドラグブラッカーとの契約が無くなりました。
※ドラグブラッカーはイブキを捕食した為、ある程度傷が回復、空腹状態は脱しました。
※牙王に対して非情に強い恨みを抱えています。
※E-4民家でミラーワールドに戻って以降の消息は不明です。
※今後の行動はリレーしてくださる書き手さんにお任せします。

【ゴ・ガドル・バ@仮面ライダークウガ】
【1日目 現時刻:昼】
【現在地:D-3エリア南部】
[時間軸]:ゴ・ジャーザ・ギのゲゲルを開始後
[状態]:全身打撲、疲労大、右目と左腕に違和感、右足部装甲破損、気絶中、2時間変身不可(怪人体、オルタナティブゼロ)
[装備]:基本支給品×1、首輪探知携帯
[道具]:
[思考・状況]
基本行動方針:強き者と戦い、強くなる。
1:リントの戦士を倒す。
2:再びあの二人と戦う。
3:桜井侑斗と決着をつける。
4:戦闘を繰り返し、強くなる。
5:最終的にダグバを倒す。
6:クウガの異変に僅かの恐怖。何れ再戦する
備考
※ガドルは自分にルールを課しているため、抵抗しないただのリントには攻撃しません。
※左腕は超常現象が起きたのか何故か治りました。右足の装甲が直らないのは、謎です
※保養所内の浴場が大破しました、使おうと思えばもしかしたら使えるかもしれません

640代理投下:Fatality-Cross ◇N4mOHcAfck:2008/12/23(火) 09:55:46 ID:/L7sMD57
【ン・ダグバ・ゼバ@仮面ライダークウガ】
[時間軸]:47話、クウガアメイジングマイティに勝利後。
[状態]:脇腹に刺し傷、胸部に蹴りによるダメージ、右肩に清めの音によるダメージ、グレイブに変身中。
[装備]:グレイブバックル
[道具]:基本支給品×3 ラウズカード(スペードA〜9、ハートQ)、サバイブ『疾風』
【思考・状況】
基本行動方針:究極の闇を齎す。
1: 究極の闇を齎す。
2:強くなったクウガ、龍騎、響鬼、ライア(サソード)と再戦 。
3:『仮面ライダー』と思われる一文字隼人、風見志郎、城戸真司と戦う。
4: 志村は次も本気で来ないのならば容赦しない。
5:向かってくるガオウは倒す。ガドルに関しては保留
※自身の戦闘能力に制限がかかっていることを何となく把握。
※志村が人間でない事を知りました。
※ハートのKが無くなっている事に気付いていません。
※どこへ向かうかは次の方にお任せします。

873 Fatality-Cross ◆N4mOHcAfck 2008/12/23(火) 06:47:08 ID:1j4WoUs0
投下完了です。
今後はもう少しスケジュールと相談して予約していく次第です

御意見・感想、修正点等ありましたらよろしくお願いします。
641創る名無しに見る名無し:2008/12/23(火) 09:58:52 ID:C54pNupQ
しえん
642創る名無しに見る名無し:2008/12/23(火) 16:43:11 ID:oDnLYzL2
やっと見れた。
投下乙です!

多人数戦闘話、とても迫力がありました。
北崎の圧倒的強さに押される木場と葦原、死んでしまったイブキ。
ダグバとついに遭遇したガルドにガオウ。個人的にこのマーダータッグ好きなので切り抜けてほしいところ。
GJ!
643創る名無しに見る名無し:2008/12/23(火) 17:42:33 ID:ApC9SMx9
投下乙!お疲れ様でした!
おぉ、こんな大人数をここまで生き生きと動かせるとは……凄いとしか言いようがない
それぞれの闘いに緊張と迫力があり、まさに圧巻!
特に海堂の事で木場を煽る北崎、遂に本郷からの言葉を受け取った一文字が良かったです。
イブキさんの死には衝撃を……長田さんが彼の死を経て、どうなってしまうかも気になりますね……。!
それと忘れられていた三田村に思わず吹いたw存在感がwww
GJ!!
644創る名無しに見る名無し:2008/12/23(火) 18:44:50 ID:GFN26faz
氏にとっても死闘といえる投下、本当に乙でした!
イブキさんの死、そして長田さんの声。
迫力のあるバトルが目に浮かんできた!
今日はゆっくり休まれたでしょうか?
GJ!
645創る名無しに見る名無し:2008/12/23(火) 20:54:02 ID:C54pNupQ
投下乙です!!
複数の場所で同時に話が進んで行く話の形態に引き込まれました。
イブキさんの喰われるシーンが無かったのはかえって恐い・・・・・
木場や五代関係の不穏な空気に、戦闘突入で引きとなったバイク対決にガオウとダグバがどうなるか気になります!!
改めて乙でした!!
646創る名無しに見る名無し:2008/12/23(火) 21:01:45 ID:/L7sMD57
投下乙です。
イブキさんが死ぬシーンが直接ない事でなんかよりこう良い演出でした。
ああ、長田さんが心配だ。
それとやはり北崎の最強っぷりは半端ないw
647創る名無しに見る名無し:2008/12/24(水) 05:25:09 ID:31aG3wp/
ガドルがまだ二時間オルタナティブゼロに返信できないのはおかしくね?
この話で変身した牙王が1時間40分なのに
648 ◆N4mOHcAfck :2008/12/24(水) 07:20:17 ID:jurZVj4z
>>647
失礼しました。
ガドルはYAMAHA T MAX回収のためオルタナティブに変身させたので
ガドルの変身制限は1時間(オルタナティブゼロ)、1時間40分(怪人体)
となります。
649創る名無しに見る名無し:2008/12/24(水) 20:44:32 ID:gir9nVx/
しばらくは予約無いだろうし生き残ってるマーダーをまとめてみたり
「ゴ・ガドル・バ」
強者限定マーダー、というかむしろサラマンダー。風呂入ってノホホンとした事もあり
牙王とタッグを組むもダグバと急接近で次の話が気になるところ
「ゴ・バダー・バ」
バイク乗り限定マーダー、むしろ(ry。ジャングラーになっても運転スキルは健在
コーカサス様が見てる、な状況下でバイクバトルの行く末が気になるところ
「ン・ダグバ・ゼバ」
無差別マーダー。2人殺害。キングのカードが無い事には未だ気付いてない模様
牙王と衝突中。怪人体ではなくグレイブに変身して戦うその意図は…?
「風のエル」
無差別マーダー。おやっさん殺害。血液だーいすき☆
飛行能力+パーゼク持ちというよくよく考えれば恐ろしい手負いの獣が死神チームに迫る!?
「東條悟」
無差別マーダー。3人殺害で殺害数単独トップ。不意打ちに定評有り
芝浦、金居とステルス2名を殺害しステルスキラーとの噂も。現在位置的に絡めそうな相手は多い
「北崎」
無差別マーダー。かなりの強者のはずが殺害数は未だ1名のみ
三田村を玩具代わりに遊んでいるが飽きた時の事を考えると恐ろしい
「澤田亜希」
無差別マーダー。2名殺害。別名帽子の王子様
オルフェノク、カイザ、ダブトと3種類の変身を使いこなせるのがかなりの強み。真魚の存在が気がかりなところ
「志村純一」
ステルス。一時は空気化したりしてステルスが危ぶまれたがなんとか復帰した
上手い事対主催グループに潜み、傷を癒すため病院に移動中。彼の正体を知るダグバが今後絡むか…?
「歌舞鬼」
マーダー。2名殺害。アマゾン、海堂と2名の仮面ライダーを不意打ちに近い形で仕留める
マーダーなのは間違いないがこれが無差別に転ぶかステルスに転ぶかは今後次第
「牙王」
無差別マーダー。1名殺害。腹ペコキング
現在ダグバと衝突中だが正直5分とは言い難い戦力差、乗り切れるか!?ドラグブラッカーの復讐も怖いところ
「風見志郎」
無差別マーダー。2名殺害。ダブルホッパー爆弾魔
妹の為に外道の道を突き進む仮面ライダー。風間と勘違いしたままのかがみんとの腐れ縁は今も継続中…
650創る名無しに見る名無し:2008/12/24(水) 22:02:34 ID:2kRUnqRj
おぉ…よくまとめたなぁ…w

こうしてみると意外と殺害数はどっこいどっこいなんだな
まだ中盤弱くらいだから当然っちゃ当然だが
理由が十人十色なのがなかなか面白いぜ
651創る名無しに見る名無し:2008/12/25(木) 00:27:03 ID:SHX5AraQ
>「ン・ダグバ・ゼバ」
>2人殺害。


ははぁ、さてはG4になれなかった男の事を忘れてるな。
652創る名無しに見る名無し:2008/12/25(木) 00:39:55 ID:SHX5AraQ
と思ったら剣崎は五代のスコアだったな
すまん
653創る名無しに見る名無し:2008/12/25(木) 01:02:14 ID:GheMZViO
>>649
北崎は変身できなくなったところを三田村に殺されそうな気がする(琢磨くんの仕返しみたいな感じ)
澤田と風谷はBRの秋也と典子のポジだと思ってる。
654創る名無しに見る名無し:2008/12/25(木) 07:40:29 ID:gaFq8+Ah
>>653
澤田あれでも一応ジョーカーなのにw
655 ◆WBRXcNtpf. :2008/12/25(木) 10:15:10 ID:ntKMdQ0o
死神博士 影山瞬 風間大介 城戸真司 風のエル
投下します。
656完璧の名の下に ◆WBRXcNtpf. :2008/12/25(木) 10:16:05 ID:ntKMdQ0o
それは本来、ここにあるべきではない究極の力。
だが、その飾り気のないシンプルかつ銀色のカブトムシを象った力が確かにここにはあった。
「ハイパーゼクターか…」
その力を片手に死神博士は病院の廊下を歩いていた。
そして適当な空き部屋に、といっても空いていない部屋など1つしかないのだが、入ると腰を落ち着けてハイパーゼクターの観察を始めた。
少し確認しただけでも湧き上がる疑問点。
まず、このゼクターは何故動かないのか?
これまでに確認してきたゼクターは皆、まるで生きているかのように動き回っていた。
動く機能を持っていない? いや違う。影山の持っていたザビーゼクター同様の移動機構と思しき装置が取り付けられている。
次に、その容姿と名前だ。何故カブトムシの形をしているのにハイパーゼクターなのか? 素直にカブトゼクターと呼べばいいものだ。
既に存在しているゼクターと名前が被るといってもハイパーゼクターと名前をつける理由にはならない。蜂でザビー、蜻蛉でドレイクならビートルゼクターなどと名づけそうなものだ。
そして何より対応するアイテムの存在だ。やはりこれまでに確認してきたゼクターは皆、対応するアイテムが存在した。ゼクターはそれらと組み合わせることで仮面ライダーへの変身を可能とするのだ。
見ればこのハイパーゼクターにも何かにはめるような溝が刻まれてある。
影山のようなブレスにでもはめるのだろうか。ならば影山にこのゼクターが使えるのだろうか?
(それはないな…)
即座にその意見は却下された。これまでの考察を結びつけた上での結論だ。
1つ、スマートブレインが異世界の多種多様なアイテム全てを解析し、能力調整をしている可能性は低い。
2つ、ゼクターは生きているかのように動き回り、ハイパーゼクターも同様の移動機構をもっている。
3つ、各ゼクターにはそれぞれ対応するアイテムが存在する。
4つ、動いているゼクターの所有者はまた、そのゼクターの対応アイテムも所持している。
5つ、ハイパーゼクターのみネーミングが他のゼクターと異なる。
これらの情報から次のように考えられる。
各ゼクターには仮面ライダーへの変身に必要な対応アイテムが存在する。
しかし、ハイパーゼクターは例外だ。ZECTによって開発された仮面ライダーを強化するためのゼクターであり、これ単体で用いるものではないのだろう。
仮面ライダーに新たな力を与えるゼクター。だから名前がハイパーゼクターなのだ。
そしてハイパーゼクターが動かないのは近くにその対象となる強化すべき仮面ライダーがいないからであろう。
この理屈に従えば影山、ならびに風間はハイパーゼクターの対象外だと判断される。
(となると…これ以上はどうしようもあるまい)
推論が正しければ、現状ではハイパーゼクターは戦力にはなりえない。
かといって無駄にできる力でもないので科学設備の整った施設でもなければ迂闊に分解するわけにもいかない。
(まあ、ダメ元で影山のブレスにでもはめさせてみるか…)
死神博士は重い腰を上げて、影山の待つ玄関ロビーへと向かった。
657完璧の名の下に ◆WBRXcNtpf. :2008/12/25(木) 10:16:39 ID:ntKMdQ0o
「博士! 本当に私が…私が使ってもいいんですか!?」
「ああ、いいから早くはめてみろ」
「はい!」
死神博士の絶望的な推論を知らない影山は生き生きとしながらハイパーゼクターを受け取る。
「変身!」
そう叫びながらハイパーゼクターをブレスへとあてがう。が…
「…あ、あれ…これ、はまらない…何で…?」
「…やはりな。影山、もういい」
「ちょっと、ちょっと待ってください! もう少しで入りそうなんですよ!」
ブレスになんとかハイパーゼクターをはめ込もうと必死な影山の回りをザビーゼクターが飛び回っている。
(まあ、予想通りというところか)
慌てふためく影山を尻目に思考を続ける。
やはり影山にはハイパーゼクターは使えなかった。そもそもカブトムシの形をしたアイテムだ。
(使えるとしたらカブトムシ型のゼクターの所有者であろう)
そう結論づけた。
「影山、もういい。ザビーがハイパーゼクターに対応していないのは予想済みだ。分かったらその辺りにしておけ」
「…はい」
影山がしぶしぶとハイパーゼクターを返却すると時刻は正午を迎えた。

病院内のある一室に放送を聞き終えた男が2人。
「そんな…本郷さんまで…嘘だろ…」
死の放送で告げられた名前に城戸は悲しみを隠せなかった。
「…スマートブレインは絶対に許さない! こんな闘い…俺が必ず止めてやる!!」
「ええ、今回ばかりは私もあなたに同意しますね」
城戸の隣りで風間も静かに闘志を燃やしていた。
それはあすかの名前が呼ばれたためであろう。
(ハナさんが無事だったのは幸いですが…あすかさんは守ることが出来なかった。美しき女性を粗末に扱うなど…スマートブレインを許すわけにはいきませんね)
「風間さん。見張りの交代に行きましょう! 俺、もうここでじっとなんかしてらられない!」
「そうですね。もうだいぶ休みましたしね」
方向は違えどもスマートブレインの打倒を胸に2人は歩きだした。
658完璧の名の下に ◆WBRXcNtpf. :2008/12/25(木) 10:17:10 ID:ntKMdQ0o
「本郷が死んだだと…馬鹿な…」
死神博士もまた驚きを隠せなかった。本郷猛。その名が2回呼ばれたということは自分の知る本郷も、そうでない本郷もどちらも死んだということになる。
ショッカーの宿敵たるダブルライダーがこれほど早くに敗退するとは思ってもみなかった。
そして、あの本郷が死んだということは既に死んでいる一文字も自分が以前から知っている方の一文字だったのかもしれない。
さらに死亡者の中にはゾル大佐の名前もあった。
(自分の考えに自惚れるつもるなどないが…ここまで想定外の展開になるとはな…)
死神博士は自分の現状に対する認識不足を痛感していた。
思えば、天道総司とやらが死んだときの影山の反応も今の自分と大差はなかったのであろう。
この殺し合いには様々な世界から強力な力をもった参加者、それこそあのダブルライダーさえ凌駕するような強者が集められている。
(…これからはより注意せねばならんな)
利用できる駒はとことん利用する。
死神の冷たい視線は影山に刺さっていた。
(無事だったみたいだな…木場の奴)
自分の安全のために見捨てた男、木場。助かるためには仕方がなかったとはいえ多少は悔いが残るものだ。
(ここに来ないかな? 今なら受け入れてやれるかもしれないのに…)
死神博士は自分の本心を隠し、対主催者を集めて集団を形成しようとしている。
その真意はまだ分かりかねるが、せっかく集めた仲間に不信感をもたれるようなことはしないだろう。
ならば、木場を受け入れないということもないだろうし、いざとなればその程度の口利きは出来るだろう。
(まあ、木場がここに来たら…だけどな)
「Hyper Cannon」
影山の柄にもない優しさが垣間見えたとき、静寂を破る砲撃が彼らを襲った。
「…な!?」
遠方より放たれた光線は病院玄関の自動ドアを軽く粉砕し、受付の窓口を跡形もなく消し飛ばした。
「尋常ではないな…」
いきなりの砲撃。まず間違いなく来訪者は友好的な人物ではない。しかも、ダブルライダーのキックと同等か、はたまたそれ以上だろう。
「なんですか! 今の音!!」
「…これは酷い」
城戸と風間も轟音に驚き、慌てて駆けつけた。
「敵襲! 各自、戦闘体制!!」
死神博士の声を皮切りに皆が一斉に変身準備を整える。
それとほぼ同時。完璧と名にもつ兵器を片手に今は悪魔と化した神の使いが突入してきた。


倉庫を後にした風のエルは放送を聴くすべもなく、ただ血を求めて彷徨う獣と化していた。そして、その獣の目に留まったのがこの病院だった。
傷ついた人間達が集いし場所。エルの中での病院の認識だ。手負いの身としては少しでもいいから血が欲しい。その欲求が彼を病院へと突撃させた。
659完璧の名の下に ◆WBRXcNtpf. :2008/12/25(木) 10:17:52 ID:ntKMdQ0o
「「変身!」」
狂気に満ちた異形の出現に即座に対応し、変身を済ませる。
人を守り、殺し合いを阻止するために戦う戦士。仮面ライダー龍騎。
戦場の風となり、美しき花を守る戦士。仮面ライダードレイク。
2人の仮面ライダーが悪魔と対面する。
「おっしゃ!」
「SWORD VENT」
天より舞い降りた刀を手に龍騎が切りかかる。
その太刀を風のエルはパーフェクトゼクターの刃で受けるとすぐにボタンに触れる。
「KABUTO POWER」
「なっ!」
「HYPER BLADE」
目が眩むほどの閃光と共に、赤い光刀がドラグブレードごと龍騎を弾き飛ばし、壁へと叩きつけた。
「力づくで…強引な方のようですね」
近距離戦の困難さを察したドレイクは間合いを取って射撃を行う。
鈍い閃光が風のエルの体表で弾け、鮮血が宙を舞う。
「血だ…血が欲しい…」
「GUN MODE」
自らの流血に興奮したのか、風のエルはすばやく飛びのきさらなる射撃をかわすとパーフェクトゼクターをガンモードへと切り替える。
「KABUTO POWER」
銃口をドレイクへと向けると、ためらうことなく引き金を引いた。
「Hyper Cannon」
先ほど龍騎を弾き飛ばした刀と同質のエネルギーが砲撃となり、ドレイクを襲った。
「!」
ドレイクは慌てて回避を試みるが、病院ロビーの壁ごと爆発に巻き込まれ、弾け飛んだ。

(まさか…これほどとは…)
その様子を影から見ていた死神博士。油断したつもりなどなかった。だが、敵は一人。どれほど強力だろうとライダー3人がかりで撃退できぬはずはないとタカをくくり、自らの能力温存のため、不意打ちのために隣の病室へと回った。
だが、誤算があった。
1つ、敵の戦力は予想以上に高かった。普通、あのような強力な攻撃はとどめに用いるものだ。それを初撃から用いるような単細胞に負ける気がしなかった。まさか連発できるとは…
2つ、こちらの戦力は自分を除いて3人のはず。
(影山はどこへいった?)
辺りを見渡すと、敵に見つからないようにこそこそと何かを探し回る。男の姿が見えた。
「…影山、何をしている」
戦力として勘定に入れておいたはずの男が変身もせずに自分の周りをうろついている。疑問に思わぬはずがない。
「ザビーが…俺のザビーがいないんです…」
「何?」
影山の発言に耳を疑い、死神博士が戦場から目を離した瞬間にそれはやってきた。
「Hyper Sting」
槍状に噴出されたエネルギーが2人を隠す壁を貫き、ロビーを隣の部屋まで拡張した。
「…また見つけた」
血に飢えた獣はさらなる獲物を見つけた喜びと共にソードモードの刃先を向けて2人へ歩み寄る。
「俺の…ザビー!」
気が付けばザビーゼクターはパーフェクトゼクターの一部と化していた。
660完璧の名の下に ◆WBRXcNtpf. :2008/12/25(木) 10:19:59 ID:ntKMdQ0o
事の始まりは、影山がハイパーゼクターに興味を示したことだった。元々気難しく、適任者を見定めることに熱心なザビーゼクターはそのときから影山を注意視していた。
そして、先ほどのこと、ついに影山は自らが納まるべき場所であるライダーブレスへ、喜びを露わにしながら他のゼクターを装着しようとしていた。
前から他者の顔色ばかり伺い、シャドウの、組織のリーダーとしては少々頼りない一面も感じさせていた。
影山を見限ろう。ザビーゼクターがそう判断したのと、完璧と名にもつ力の保持者が現れたのはほぼ同時だった。

風のエルがザビーゼクターの存在に気が付いたのはドレイクを消し飛ばした後だった。
先ほどまではいなかった蜂が新たに装着された。蜂の体色から考え、黄色のボタンが使えるようになった可能性を見出し、敵が潜んでいそうな場所へ向かって実験を試みた。
そして、今へとつながる。

「俺のザビー…俺のザビーを返してくれよ!」
泣き叫ぶ影山を気にもせず、風のエルは刃先を2人に向ける。
「血が欲しい…血が欲しい…」
こいつは狂ってる。説得に応じる相手ではない。死神博士はそう判断した。
さらに変身能力を失い、ただのお荷物へと成り下がった影山に、敵の攻撃を喰らってまだ起き上がれない他のライダー。
(どいつもこいつも…役立たずが!)
苛立ちながらも自らの身を守るために死神博士は戦闘体制に入る。
「狂った怪人…わしを誰だと思っている」
老人の姿がおぞましきイカの怪物へと変化していく。
「偉大なるショッカー大幹部! 死神博士の力、思い知るがいい!!」
向かい合う異形の闘いの先に何があるのか…その答えはまだ誰も知らない…
661完璧の名の下に ◆WBRXcNtpf. :2008/12/25(木) 10:20:38 ID:ntKMdQ0o
【G-4 病院】【日中】

【風のエル@仮面ライダーアギト】
[時間軸]:48話
[状態]:頭部にダメージ。全身に大程度の負傷・行動原理に異常発生。左手首欠損。能力発揮中。
[装備]:パーフェクトゼクター
[道具]:なし
[思考・状況]
基本行動方針:優勝して帰る。 帰還した暁には、主に未知の力を報告。
1:「仲間」を持つ「強き者」を殺す。容赦する気はない。
2:人を殺すことに、快楽を覚えた。
3:人間の血から、主の人間へ抱く感情の一端を知りたい。
4:パーフェクトゼクター(名前は知らない)を有効活用したい。
[備考]
※デネブの放送、および第一回放送を聞いていません。
※首輪の制限時間に大体の目星を付け始めました。
※ショッピングセンター内に風のエルの左手首が落ちています。
※パーフェクトゼクターの使用法を理解しました。
※パーフェクトゼクターへの各ゼクターの装着よりも、基本的には各ライダーへの変身が優先されます。現在は資格者不在のザビーゼクターのみ装着されています。

【死神博士@仮面ライダー(初代)】
【時間軸】:一号に勝利後。
【状態】:擦り傷程度の傷多数  イカデビルに変身中
【装備】:鞭
【道具】:基本支給品一式、デスイマジンの鎌@仮面ライダー電王、ハイパーゼクター
【思考・状況】
基本行動方針:この殺し合いをショッカーの実験場と化す。
1:目の前の怪人を倒す。
2:集団を結成し、スマートブレインに対抗する。
3:影山、風間が役立たずで苛立ち。
4:首輪を外す方法を研究する。その為にも研究施設へ向かう。首輪のサンプルが欲しい。
5:未知のライダーシステムおよびハイパーゼクターの技術を可能な限り把握する。
6:利用できそうな人物を集める、障害となりうるのであらば排除。
7:真司はいずれ切り捨てる。
※一文字隼人(R)の事を一文字隼人(O)だとは信じていません。
※流れ星は一戦闘に六発まで使用可、威力はバイクがあれば割と余裕に回避できる程度。
 尚、キック殺しは問題なく使えます。
※変身解除の原因が、何らかの抑止力からではないかと推測しています。
※風間と城戸の所持品、カブト世界、 龍騎世界について把握しました。
※ハイパーゼクターはジョウント移動及び飛行が不可能になっています。マニュアルはありません。
【考察まとめ】
1.首輪の100%解析は不可だが、解除することは可能。
2.首輪を外せるのは罠で、タイミングが重要。
3.時空を超越して逃げても、追跡される。
4.会場に時の列車はない。あるとしてもスマートブレインの手の中。
5.ガオウから聞いた、デンライナーの持ち主は干渉を避けるために既に死んでいる可能性が高い。
6.ハイパーゼクターはカブトムシ型ゼクターで変身するライダーの強化アイテム。
662完璧の名の下に ◆WBRXcNtpf. :2008/12/25(木) 10:21:15 ID:ntKMdQ0o
【影山瞬@仮面ライダーカブト】
【時間軸:33話・天道司令官就任後】
【状態】:全身に若干の疲労。背中に軽い裂傷。 ザビーを失った悲しみ。
【装備】:ザビーゼクター、ブレス
【道具】:支給品一式×2、ラウズカード(◆J)、不明支給品0〜2(確認済)
【思考・状況】
基本行動方針:??????
1:ザビーを返してくれ!
※午前1時過ぎの時点でG-2のガソリンスタンドに乗り物はありませんでした。
※不明支給品は彼に戦力として見なされていません。
※風間と城戸の所持品、龍騎世界について把握しました。

【風間大介@仮面ライダーカブト】
[時間軸]:ゴンと別れた後
[状態]:鼻痛(鼻血は止まっています) 仮面ライダードレイクに変身中。気絶中。全身に大ダメージ。
[装備]:ドレイクグリップ、ドレイクゼクター
[道具]:支給品一式、オロナミンC2本(ぬるめ)
【思考・状況】早期に殺し合いを止めた上でのスマートブレイン打倒
基本行動方針:打倒スマートブレイン
1:都市部の探索。仲間との合流。
2:協力者を集める(女性優先)
3:謎のゼクターについて調べる。
4:あすかの死に怒りと悲しみ。
5:移動車両を探す。
6:影山瞬に気をつける
※変身制限に疑問を持っています。

【城戸真司@仮面ライダー龍騎】
[時間軸]:劇場版、レイドラグーンへの特攻直前
[状態]:仮面ライダー龍騎に変身中。気絶中。全身に大ダメージ。本郷、芝浦の死に悲しみ
[装備]:カードデッキ(龍騎)
[道具]:支給品一式
【思考・状況】
基本行動方針:早期に殺し合いを止めた上でのスマートブレイン打倒
1:仲間を集めて主催者打倒 。
2:金色の仮面ライダー(グレイブ)に注意する。茶髪の男?まさか…?
3:本郷の分まで戦う。
4:志村の後を追い、長田結花との合流を目指すついでに話を紐解く。
5:手塚に似てるなぁー。
[備考]
※不信感を多少持ちましたが、志村をまだ信用しています。
※名簿に手塚、芝浦、東條、香川の名前がある事から、スマートブレインが死者蘇生の技術を持っていると考えています。
※連続変身出来なかった事に疑問を感じています。
※志村について話していません。
※カブト世界について把握しました。
663創る名無しに見る名無し:2008/12/25(木) 12:28:18 ID:Yfx5G9rF
投下乙です。
死神博士渋カッコイイ……。
ついに影山ザビーに見捨てられたww
あっさりと蹴散らされる城戸と大介だけど、相手はアギトのラスボスの一人+パフェゼクだからなーw
GJでした
664 ◆WBRXcNtpf. :2008/12/25(木) 16:02:43 ID:ntKMdQ0o
すみません。
状態表のザビーゼクターを移動し忘れていました。
wiki収録時の修正でいいでしょうか?

それとパーフェクトゼクターの扱いは前回ロワを参考にしたんですが大丈夫だったでしょうか?
665創る名無しに見る名無し:2008/12/25(木) 16:08:16 ID:Yfx5G9rF
>>664
パーフェクトゼクターはちょうどいいかと。
修正もwiki収録で問題ないと思います。
666創る名無しに見る名無し:2008/12/25(木) 17:48:39 ID:gaFq8+Ah
投下乙です!!
影山…………wハイパーゼクターで変身しようとすんなwwww
前話の学習が生かされてるエルが何とも恐ろしい。
問答無用でパーゼク乱射はかなりの脅威ですねw
昭和勢最後の砦・死神博士の奮戦に期待!!
GJ!
667創る名無しに見る名無し:2008/12/26(金) 03:16:53 ID:3K6YeujK
投下乙です!
うわ〜ん!俺のザビーを返してくれよぅ…迷台詞だな、影山w。
影山のヘタレっぷりと風のエルの怖さが対比して面白かったです。
668創る名無しに見る名無し:2008/12/26(金) 14:10:34 ID:lKq90Q9R
「蜂でザビー、蜻蛉でドレイクならビートルゼクター」という件がありますが、蜂と蜻蛉が英語じゃないのに、〜ならビートルって英語を出すのはちょっと変じゃないですか?
死神博士はあんまり英語を知らない設定?
まぁ、話の筋に関係無いしどうでもいい事ですが一応。
669創る名無しに見る名無し:2008/12/26(金) 14:20:11 ID:hp6msiL2
蜂=ワスプ、蜻蛉=ドラゴンフライだっけ?
まぁ本当にどうでもいい事だけど、気にはなるな
670創る名無しに見る名無し:2008/12/26(金) 14:32:43 ID:Kh5Ys3XF
「カブト虫を髣髴させないハイパーゼクターという名はおかしい」であって、
「英語名じゃないゼクターはおかしい」ってわけじゃないと思うんだが。
671 ◆Z9EUSuuwiU :2008/12/26(金) 23:09:54 ID:e4TKaWD3
香川英行。城光、五代雄介、ハナ、長田結花
投下します。
672僕らはどこへ行くのだろう ◆Z9EUSuuwiU :2008/12/26(金) 23:12:22 ID:e4TKaWD3
「あれは…!」
ホテルの窓から眺める香川英行は、をある物に見て驚いていた。

共に戦ってきたはずの木場勇治に突如として襲われ川へと突き落とされ、そうして這い上がった先で今居るホテルを発見した。
「プラトン」そう看板に書かれているがホテルの名前だろうか、別に気には留めなかった。濡れた衣服のまま行動していては体力は落ち病に冒されてもしかたがない。着替えと体力回復にうってつけと考えホテル内へと潜入した。
やはり人の気配は無く無人と化している。
誰かが潜むには持ってこいの場所だが、今のところは敵の気配すら感じない。
そうして辺りを警戒しながらホテル内を探索する香川は従業員用の更衣室を見つけた。
着替えがないかと思い、入った結果、当たりだった。
ホテルマンの制服と、誰かが着てきたであろう黒いスーツがハンガーに掛けられていた。
スーツの方を掴み取った香川は次にフロントへと向かった。

シャワーを浴びるための客室の鍵を手に入れるからだ
。難なくフロントに辿りつき適当に鍵を掴んだ香川。
「315号室」そう書かれた部屋を求めて階段を昇った。
意図も容易く辿りついた客室に素早く入り鍵を掛けると、軽くシャワーを終わらせた。
そして濡れた衣服を余所目に、新たに手に入れたスーツへ着替え始める。

その時だった、島全体に響き渡る放送が聞こえたのは…。
673僕らはどこへ行くのだろう ◆Z9EUSuuwiU :2008/12/26(金) 23:15:41 ID:e4TKaWD3
その時だった、島全体に響き渡る放送が聞こえたのは…。

次々に呼ばれる死者の名前、その中で知った名前が出てきた。
『海道直也』、共に赤い化物と戦った者だった。木場勇治と同じくオルフェノクだった青年。
彼は、危険視すべきだと判断したオルフェノクの中でも除外だと思っていた。しかしその彼も死んでしまった。
これで信頼しうるオルフェノクはいなくなった。
だとすれば残りのオルフェノクは全て危険人物だと見たほうがよさそうだ。
主催社スマートブレイン、龍のような怪人、木場勇治。しかし木場勇治に仲間が他にいてもおかしくはない…。

「…海堂君、君の死を無駄にはしません」
そう考えながら香川は新たに着替えたなスーツに袖を通して呟いた
と、そこへ2つの排気音が外から聞こえてきた。
それに少しだけ目線を移すと、道路を走り抜けていく2台のバイクが見えた。
眼鏡を掛けているとはいえ肉眼では顔まで判別できなかったが、どちらも2人づつ計4人が乗っていたようだ。
高速のスピードに走り抜けていった2台のバイク。
それほどに急行することがあるのだろうか。

僅かに思考しながらも着替えを済ませた香川はデイパックを担ぎ直した。
そして、窓から視線を外そうとしたとき、まだ何かやってくるのが見えた。
バイクが去った後を歩く5人の集団。この地に着てからは集団行動をしているのは余り見ていない。
敵対する者同士が組む可能性は低い…だとすればおそらく戦いに乗っていないのだろう。
「…ふむ」
集団を見つめながら香川考える。今は武器も何も無い状態、このまま戦うにも無理がある。
いくら頭脳で勝負できるとはいえ限度というものもある。
先程のバイクと、この集団があの距離で気付いていないはずが無い。
ならば協力的な関係にあり、何らかの理由で2手に分かれたと考えるのが妥当だ。
つまり、あの集団に近づいても害は無いだろう。もしかしたら新たな脱出への情報、戦う術が見つかるかもしれない。
そう考えた香川は急いで客室を飛び出し、ホテルの外へと出た。
674僕らはどこへ行くのだろう ◆Z9EUSuuwiU :2008/12/26(金) 23:17:16 ID:e4TKaWD3
しかし、その幾分か後だった。ある物、黒き龍が空を舞うのが見えたのは。
「あれは…!ミラーモンスター!?」
遠目にだが、黒い巨体は明らかにミラーモンスターだとわかった。
城戸真司の契約する赤い龍と酷似してからでもある。
モンスターに色違いの亜種がいるのは断然把握している。問題は、龍が先程の集団の近くに存在することだ。
可能性として「仮面ライダー」が操っている確率が高い。
はたまた、モンスターさえスマートブレインの駒なのか。

「…急いだほうが良さそうですね」
武器がないのは何度も確認した。
あのモンスターを集団が召喚したのか、それとも別の誰かが召喚したのか。
どちらにしても戦いに乗っていないであろう集団が何らかの戦闘に巻き込まれているのは明白だ。
助けようにも力が無いが、あの集団を失うわけにはいかない。
「東條君…あなたではありませんよね」
眼鏡越しに姿の見えなくなった黒龍を睨みつけた香川は、集団の元へと駆け出した。

東條を止める。

そして……オルフェノクは全て危険人物と頭に叩き込みながら。


※※※※
675僕らはどこへ行くのだろう ◆Z9EUSuuwiU :2008/12/26(金) 23:21:27 ID:e4TKaWD3
「立て。ここで立ち止まっていては、イブキに申し訳が立たない」
強く言う光の言葉に長田結花は、小さく頷きながら腰を上げた。
余りにも残酷な「鬼」の死を目の辺りした結花の表情は暗く悲しみに暮れていた。
それは光もハナも、そして五代も同じ思いだった。だがそれを顔に出す事は無かった。

「俺は…俺はまた…守れなかった」
五代は拳を強く握り締めて、悔しく呟く。
「五代さんのせいじゃ…悪いのはガオウです…」
気付いたハナが、慰めるよう言う。
あの黒い仮面に変身していた男はガオウだった。
そしてイブキは、その牙と、黒き龍によって葬られた。
ハナも、その光景を思い出し唇を噛み締めるしかなかった。

「……わかった。少しだけ休もう」
そんな3人の表情に溜息をついた光は、言葉を告げた。
もちろん自分だって悲しんでいないわけではない。割り切っているだけだ。
イブキと言う戦力を欠き痛手であるということは充分承知している。
イブキに心を開いていた分、結花の悲しみの大きいのも分かる。
しかしそれでも今は北条奪還のため任務を遂行しなくてはならない。
そのためにも急ぎ放送局へ向かわなくては。
(だが…)
現状として戦闘能力は芳しくない。
自分、五代、ハナと変身制限が掛かってしまっている。
唯一、結花が制限を受けていないが戦力としては見ることはできない。
と、なると自分と五代がファムとナイトのデッキを使用するしかない。
それだとハナは戦闘できず、結花の護身用が無くなってしまう。
それでも今はこれしかない。闘うことになった場合は、だが。

すると考える光を他所に3人は軽く土を盛り、簡単な墓を作っていた。
そうして結花は墓の前に音笛を添えると、青いバラを握り締めて祈るように目を瞑った。
それにただ見つめるだけのハナと五代。光もその行為を納得し見つめていた。

676僕らはどこへ行くのだろう ◆Z9EUSuuwiU :2008/12/26(金) 23:23:30 ID:e4TKaWD3
「…もう、大丈夫か」
「はい……」
静かに応えた結花だったが、今だ心の動揺は収まらない。
祷を捧げることで少しは落ち着いた気もするが、やはり何もできなかった自分が憎い。
ファムのデッキも、オルフェノクの力もあったのに…逃げることしかできなかった。
結果、イブキは命を落とした。
しかしあの時、闘ったとしても自分はやられていただろう。自分の力などその程度だ。
(イブキさん、海堂さん、木場さん、啓太郎さん、私はどうすればよかったの?)
逃げた事によって生まれたイブキの死。
それならばイブキを殺したのは自分も同然。その罪を背負わねばならない。
(逃げなかったら…闘っていれば…でも…それじゃ…)
まるで終わりなきジレンマのように結花の中を自問自答が駆け巡る。

そんな、俯く結花を見て溜息をつく光。

と、その時――。

「誰だ!?」
光が声を荒げて裏の茂みへ振り返った。
驚いて同じく振り返った3人。

するとそこへ、男の声が聞こえた。

※※※※
677僕らはどこへ行くのだろう ◆Z9EUSuuwiU :2008/12/26(金) 23:26:28 ID:e4TKaWD3
「遅かった…ようですね」
香川が、その場に辿りついた時には事はもう終わっていた。
黒龍も見えず、確認できたのは民家の前で立ち尽くす4人の人物だった。
武器が無い故、慎重に茂みの中を移動して集団へと近づいてきた。
何度か金属音や叫び声が聞こえたが、今は唯静寂が包むだけだった。
(たしか集団は5人だったはず…)
茂みの中に身を低くして様子伺う香川は人数が足りないことに気付く。
これは1人やられたと考えるのが妥当だろうか…。

「誰だ!?」
そう思考する中、女性の声で此方へと叫びが飛んだ。
見つかると思っていなかったが、別に構わない。始めから接触するつもりだったのだ。
すると香川は茂みから身を起こして声を発した。

「少し、よろしいですか」
礼儀正しい声に光、五代、ハナ、結花が目線を移した。
そこから黒いスーツを着た眼鏡の男、香川英行は姿を現した。
「あなた方が戦いに乗ってないと見込んでいます」
香川は一番近くに居た光へと話しかけた。

「お前も乗っていないんだろうな…?」
「当然です」
光の警戒の眼も予想していたと言わん態度で応える香川。
「私はここからの脱出を考えています。そこであなた方との情報交換をさせて貰えませんか?」
そう提案した香川の言葉に4人は目を見合わせて、お互いの心情を探る。
戦いに乗っていないというなら敵ではないだろうし、情報はこちらも欲しいところだ。
すると皆の意見を受け止めたように代表して光が応えた。

「いいだろう、しかし我々も放送局に向かわねばならない。歩きながらにしてもらうぞ」
「それで結構です」
光の言葉を快く受け止めた香川は、小さく頷いて4人の輪の中へと入る。
再び5人となった集団が道路を歩いていく。そして香川と光達5人、それぞれが自己紹介を始めた。
678創る名無しに見る名無し:2008/12/26(金) 23:27:10 ID:pwUNV3y7
 
679僕らはどこへ行くのだろう ◆Z9EUSuuwiU :2008/12/26(金) 23:28:48 ID:e4TKaWD3
「私は香川英行、清明院大学で教授をしています」
「城光だ」「五代雄介、冒険家です」「ハナです」
順番に名乗っていく4人、それを流すように聞く香川。
この場において職業や肩書きなど大した意味は成さない。
それでも彼の頭脳には全てがインプットされていく。
一度覚えたものを忘れはしない、ズバ抜けた記憶力があるからだ。
そして次の名前を、より深く記憶に刻むことになった。

「長田結花…学生です……」
「…どうしました?」
香川は少し気になった。彼女だけが声を小さく震わせていた。
このような場で当然といえば当然だが。何故か周りから浮きだって見えた。
「…いえ、別に…」
暗い表情のままで俯いて喋る長田。

「たった今、仲間を1人失った…名はイブキ。知ってるか?」
「…そう…でしたか。申し訳ありませんでした、それにその名前も聞いたことがありません」
光の言葉から事情を察して結花へと謝罪する香川。同時に5人の集団っだったのが4人になった理由も理解した。

「海…さんに…イブキさん…まで…私…私…」
するとうわごとのように呟く結花の儚い声が香川の耳に届いた。
そして言葉の先頭に出た名前が気になった。
「…失礼ですが、今、イブキという名前以外に誰かの名前を呟きませんでしたか?」
「…海堂…さん…の…ことですか?」
「……っ!?」
長田の応えと同時に香川は声を失った。た
しか木場勇治と海堂は仲間だった…そして彼女は海堂の事を知っているということだ。
ここに来てからの知り得たのかもしれないが、結論から言えば木場勇治の仲間にしてオルフェノクの可能性が高い。

「…その人とはここへ連れて来られる前から?」
「…はい…仲間でした……」
その言葉に香川は確信した。
彼女もまたオルフェノクであると。
まだ決定的な証拠は無いが、ここに来る以前から海堂と仲間だったということは同時に木場の仲間でもあるはず。

680創る名無しに見る名無し:2008/12/26(金) 23:28:55 ID:pwUNV3y7
 
681僕らはどこへ行くのだろう ◆Z9EUSuuwiU :2008/12/26(金) 23:32:12 ID:e4TKaWD3
「あの…香川さん、そのへんで…」
そこへ結花を心配した五代が声をかけてきた。
「あ…あぁ すみません。生徒に同じ名前がいたので…つい…」
咄嗟に誤魔化した。
長田結花がオルフェノクとして海堂のようなタイプか、木場のようなタイプか。
それが問題である。
海堂のようであって欲しいとは思うが、スマートブレイン、龍の怪人、木場勇治と危険視すべき輩が多い、ならば長田結花も危険視したほうが良いだろう。
しかし何故人の皮を被った化物であるオルフェノクが何故この集団の中にいるのか?
答えはおそらくまとめて殺害するためであろう、そのために大人しく振る舞い、油断させているのだろう。
だとしたら今ここで正体をバラせば、襲い掛かってくる可能性がある。
今の自分は武器も無く無力だ。後の3人も戦えるという保障があるわけではない。
それにもしかしたら彼女がオルフェノクと知っている可能性もある。
ここはもう少し話を進める必要がある。

「……それでは、私が出会った人たちと、得た情報を教えます」
軽く咳払いをした香川は長田に警戒を強めながら喋り始めた。
桜井祐斗、金居、一条という刑事、龍の怪人、カブトムシの怪人、東条、羽の生えた怪人、赤い岩石のような巨大な怪物、そうして現時点では海堂と木場のことは伏せて伝えた。

その情報にそれぞれ感想を漏らす4人。
「金居め…」「一条さん…」
城は地を睨み、五代は警察手帳握って呟いていた。

「龍の…もしかして…」
そして小さく呟く結花の言葉も香川は漏らさず聞き取る。
龍の怪人、それに心当たりがあるということは、ますます彼女がオルフェノクである可能性を高める。
682僕らはどこへ行くのだろう ◆Z9EUSuuwiU :2008/12/26(金) 23:33:51 ID:e4TKaWD3
そう考える中でもう1人の少女が尋ねてきた。

「祐斗に会ったんですか!?」
ハナの大きな声に視線を移した香川。
「えぇ、勇敢な青年で時の列車という脱出の情報も教えてもらいました」
「それで、祐斗は今どこに!?」
香川の言葉もそこそこにハナは急かす様に問いかける。

「…わかりません、とある人物によってチームを分断されてしまいました」
「……そんな」
香川は急に暗い表情を見せて応える。それにただ呟くしかできないハナ。
「…しかしそれも放送前の話です、放送で呼ばれなかったのだから生きてはいるはずです」
すると香川は肩を落としたハナへと励ますように言った。その言葉に僅かな希望を見出したようにハナは微笑んだ。

「さて次は皆さんの情報を教えてもらえませんか」
そして今度は情報を得ようと5人に問いかけた。
それに順々に頷き喋り始める光たち。
先を走っていった2台のバイク、イブキの死、カブトムシの怪人、ガオウと黒龍、研究所と青いバラ、志村という男にそっくりな人間、城戸真司、風間大介、赤いマフラーの怪人…。
様々な新たな情報が香川の脳に刻まれていく。
683創る名無しに見る名無し:2008/12/26(金) 23:45:57 ID:LDlYx3ve
もう手遅れかな? 支援
684創る名無しに見る名無し:2008/12/26(金) 23:58:50 ID:pwUNV3y7
もしかしてスレ容量オーバー?
685僕らはどこへ行くのだろう ◆Z9EUSuuwiU
「なるほど…イブキ君を襲った黒い龍、おそらくミラーモンスターです。反射するもの中に潜み敵を狙っています。」
黒龍について説明する香川に皆は無言で歩みを進める。
ホテルから遠目に見えた黒龍と、桜井の言っていたガオウがイブキという人物を殺害した。
あのモンスターは見たことが無かったがガオウが契約している可能性が高いだろう。
そしてなにより気になるのは青いバラと首輪の関係。
しかし解析するための研究所は占拠され、北條なる人物が人質に取られている。
そのため指令を受けて放送局へ向かう途中だと言う。
そして怪我人たちは急ぎ病院へ向ったと言う。妥当な判断だ。
「…人質がいる以上は指示に従うしかありませんねしかし…」
様々な情報を得たが奇妙な人物が一人浮かび上がった。
「…話を聞くに、志村という人物がどうにも臭い…」
するとその言葉に反応した者がいた。
「やはりそう思うか」「なにか怪しいですよね」
城とハナが息を合わせたように言った。

「でも、一文字さんと手塚さんみたいに本当に似た人がいるかもしれないじゃないですか」
そこへ五代の反論の声が飛んだ。
「…たしかに金居君も桜井君にそっくりな少年を見たとも言っていました。ここには相似した人物が多数いるのかもしれません。名簿にも同姓同名がありますしね」
「したがって、志村なる人物が嘘をついているかは現時点ではわかりません」
その言葉に光とハナは溜息を付き、五代、結花は難しい顔をしている。
「……まぁ、そちらで抱えている問題まで解決する力は私にはありません。
今は脱出の方法を知りたいだけです」
すると香川は、ハナの方へと眼を向けた。