217 :
涼宮ハルヒの帰還:2009/11/14(土) 18:46:40 ID:mUYUG1gG
「俺は彼を救うことが出来なかった」
古泉さんも必死に手を尽くしたことだろう。しかし、キョンさんが生き返ることはなかった。
万能たる涼宮さんの力を持ってしてもどうしようもなかったのだろうから、それは仕方のないことだった。
「そんなの関係ねえよ。涼宮さんに頼まれた以上、涼宮さんと約束した以上、即死だろうと何だろうと俺はなんとしてでも彼を救わなきゃならなかった」
古泉さんが掴んだフェンスがギシリと音を立てた。
「助けなきゃ、ならなかったんだ」
「……」
「そうすりゃ、きっと涼宮さんだっていなくならずにすんだんだ」
長門さんもさっき言っていた。涼宮さんの失踪。
「……涼宮さんがいなくなったってどういうことですか?」
「そのまんまの意味だ。ある日忽然といなくなっちまった」
「情報統合思念体の探査網にもかからない。涼宮ハルヒは完全に消失してしている」
「でもどこかにいるはずなんだ。少なくともこの空のどこかには」
そういって空を仰いだ。僕もつられて見上げる。灰色の平坦な空が広がっている。
すみません、飯作って食べてきます
支援の0qbjXOB9さん、ここまでありがとうございました
8時までには続きの投下を始めます
投下乙
乙
物悲しいな
戻りました
続き行きます
222 :
涼宮ハルヒの帰還:2009/11/14(土) 20:00:45 ID:mUYUG1gG
「それで、だ。彼を救えなかった駄目人間は考えたよ。彼はもういない。でも、せめて代わりになる人間を用意しなければならない。彼の代わりになるような人間をな。我ながら馬鹿なことを考えたと思うよ」
彼はフェンスから身体を離してこちらに顔を向けた。
「俺は彼の代わりになることを決意した。言葉遣いも彼の真似。ゲームも強くなるために死ぬ気で勉強したよ。そうすりゃいつかは涼宮さんが帰ってくるんじゃないか、なんてな」
古泉さんは笑う。少し寂しそうに。
古泉さんは待っていた。広い部室でたった一人で。キョンさんはもう二度と取り返せないけれども、涼宮さんだけは帰ってこないかと、そんな淡い期待を抱きながら。
それはきっととても……
「辛くはなかったよ。耐えることには慣れてる」
古泉さんは笑って言う。
しかし僕は忘れてはいない。七夕の夜、夜の校庭で恥も外聞もなく泣き伏していた古泉さんの顔を。
223 :
涼宮ハルヒの帰還:2009/11/14(土) 20:04:37 ID:mUYUG1gG
「あれから一年がたった。何も起きない何も変わらない。そんなとき一人の新入生が訪れた」
僕だ。
「いや、驚いたね。本当にびっくりした。俺の悲願が天に届いたかと思ったよ」
古泉さんは楽しそうに笑った。
「お前な、彼によく似てるんだ」
※
教室を去り際、谷口さんが僕の背中に声をかけた。
「お前、あいつに似てるよ」
「なんのことです?」
「お前はキョンに似てる。最初に会ったときあいつが生き返ったのかと思った。それぐらいよく似てるよ」
そういうと谷口さんは僕に初めて笑い顔を見せた。人好きのする、穏やかな笑みだった。
※
224 :
涼宮ハルヒの帰還:2009/11/14(土) 20:10:25 ID:mUYUG1gG
「長門がSOS団を去り、朝比奈さんが未来に帰っちまったあと、悲嘆にくれていた俺には天の啓示に思えた。涼宮さんが帰ってくるという予兆にな」
それからは僕も知っての通りだ。キョンさんの振りをした古泉さんは、僕を連れまわしSOS団の宣伝を行った。
「SOS団がまた賑やかになれば涼宮さんが帰ってくるんじゃないかと踏んだんだ。彼女好みの派手な宣伝でな」
もっとも、人も集まらず、涼宮さんが帰ってくることもなかった。
「俺なりに頑張ったんだけどな」
古泉さんはフェンスに寄りかかって俯きながら呟いた。
髪に隠れて表情は読めない。
「『わたしはここにいる』」
長門さんが唐突に言う。
「『待っている』」
長門さんは古泉さんを見ていた。
古泉さんもその目を見返す。
「それが校庭に書かれたメッセージ」
長門さんは一呼吸置いて続けた。
「あなたはよくやった」
労いの言葉。
これまでの奮闘に報いる言葉。
「わたしは諦めた。あの騒がしくも穏やかな日常、それが帰ってくることはもうないと」
支援?
227 :
涼宮ハルヒの帰還:2009/11/14(土) 20:20:03 ID:mUYUG1gG
長門さんは神人を見上げる。
「五人での不思議探索はもう出来ないと」
長門さんの目線がついと古泉さんへと向かった。
その眼は少し、ほんの少し揺れていた。
「あなたももう諦めていい」
古泉さんも視線を受け止める。
「あなたはもう古泉一樹に戻っていい」
「……」
古泉さんの視線は一旦落ちて、また長門さんの目に戻る。
沈黙だけが長引いた。
「……そう、かも、しれませんね」
ひとことひとこと、思い出すように古泉さんが口を開いた。
そのとき、音が聞こえた。うめくような、何かを呼ぶような音。
低く響いて、それは神人から聞こえているようだった。
長く長く響いて、やがて収まった。
誰もが黙って聞いていた。
228 :
涼宮ハルヒの帰還:2009/11/14(土) 20:22:05 ID:mUYUG1gG
※
僕は今日も部室に向かう。
空は今日もいい天気で、グラウンドからは野球部らしき掛け声が聞こえてくる。
開いた窓から流れる風は夏の匂いを運んでくる。
「こんにちは」
「あ、どうも」
廊下の途中で古泉さんと出くわした。
彼は最近敬語で話すようになった。僕は下級生だからその必要はないと言うのだが、それが彼の素というかポリシーらしい。
「僕は古泉一樹ですから」というのが彼の言い分だ。
そしてあの日以来、長門さんが再び部室に居つくようになった。
僕が原稿を書いている横で長門さんは分厚いハードカバーを捲る。
それが最近のSOS団の様相だ。
僕は最近新しい構想でライトノベルを書いている。一人の少年が破天荒な少女に振り回され、変な部活をつくり不思議な体験をするというストーリーだ。
もちろんこのモデルは……
「ぜひともその物語はハッピーエンドでお願いします」
古泉さんは僕に真剣な顔で言った。
「僕達が叶えられなかったハッピーエンドを、どうかその物語の中で……」
僕は快く承諾した。
身に余る大役だが、必ず成し遂げてみせると古泉さんと約束した。
部室のドアが近づいてくる。
昨日と変わり映えのしない、それでも大切な日常がやってくる。
229 :
涼宮ハルヒの帰還:2009/11/14(土) 20:23:50 ID:mUYUG1gG
ドアを開けた古泉さんに続いて中に入ろうとして、彼の背中にぶつかった。
抗議の声を上げようとして、違和感に気付いた。
古泉さんの背中がひどく硬直している。
「っ……」
古泉さんが声にならない声を上げる。
古泉さんの陰になって部室の中は見えない。
僕は何があったか問おうとして――
声を聞いた。
「古泉、君……?」
少女の声だ。長門さんのものではない。入部希望者だろうかと思い、古泉さんの反応から違うことに気付く。
古泉さんは背中を震わせ、搾り出すような声を上げた。何も言えなくて、それでも何か言わなくてはというような、酷く掠れた声だった。
「お、かえりなさい……!」
ややあって声が帰ってくる。
「――ただいま……」
長らく放浪を続けた旅人のように疲れきって掠れた、弱弱しい声だった。
それでも構わない。僕は気付いた。
残念ながらキョンさんは永遠に取り戻せないけれど。
SOS団はなくてはならないピースを今取り戻したのだった。
234 :
涼宮ハルヒの帰還:2009/11/14(土) 20:30:01 ID:mUYUG1gG
僕が途中参加した物語はこれにて幕引きだ。
ところで、僕の名前は谷川流。
有り得ないけれど、もし僕の物語が有名になったらこの名前を聞くかもしれない。
そのときはどうかよろしく。
そしてどうか、どうか彼らのささやかなハッピーエンドに祝福を。
終わり
谷川視点かッッッ
237 :
涼宮ハルヒの帰還:2009/11/14(土) 20:38:00 ID:mUYUG1gG
長々と投下してしまいすみません
読んでくれた方と支援してくれた方、本当にありがとうございます
楽しんでいただけたなら幸いです
そうじゃない方は……ごめんなさい、精進します
さて今回のこれ、自分にとっての初めての小説形式となります
もし、アドバイス等ありましたらぜひ聞かせてください
では失礼しましたー
投下乙
これには騙されたわな
上手いトリックだ
谷川も消失したが、どこ行ったのかね
いやー、これは良い仕掛け。
あれだけ飄々としてた古泉も、やっぱりSOS団の活動や
ハルヒや皆が大好きだったんだな、と思うと、ちょっと
うるっと来ちまったよ。
谷川視点はちょっとアレかなぁ、と個人的には思ったがw
おおむね興味深く読ませてもらったよ。GJでした!
なるほどーと思わせる内容でした。
>>242 そう言ってもらえると書いた甲斐があるというもの
……返事レスを続けるとキリがないからこの辺でやめよう
244 :
3次元アタック:2009/12/22(火) 23:35:03 ID:3/pvMCfu
古泉がクロノトリガーをするのを温かく見守る感じのSSです
処女作なんで温かい意見も厳しい意見も大歓迎です
誰も見てないかも知れませんがちゃんと完結させたいと思います
245 :
3次元アタック:2009/12/22(火) 23:41:58 ID:3/pvMCfu
――文芸部室――
キョン「ういーす。…ってまだお前だけか」
古泉「こんにちは」
キョン「ん、その荷物はなんだ?」
古泉「ええ、クラスの友達にゲームを勧められまして」
キョン「お前友達なんていたんだ」
古泉「酷いこと言いますね」
キョン「どれ、ちょっと見せてみろ」
古泉「どうぞ」
キョン「これまた偉く懐かしいもんだな。DQ5にFF4にロマサガ3に…」
古泉「僕があまりこういったものをやらないと言ったら、えらく熱心にSFCのソフトを推してきましてね」
キョン「まあ、チョイスは中々だかな…ん?これはクロノか」
古泉「面白いんですか?」
キョン「それを聞くのかってほどだな。何十週やったことか」
古泉「相当ですね」
247 :
創る名無しに見る名無し:2009/12/23(水) 00:05:39 ID:zlrmmc5s
古泉「それでしたらまずはこれに手をつけてみましょうかね」
キョン「それにしても古泉がゲームなんて意外だな。機関の方は忙しくないのか?」
古泉「誰かさんのおかげで最近はめっきり神人も減りましたしね」
キョン「うるせぇ」
古泉「んっふ、そうだよろしければ部活が終わったら僕の家に来ませんか?」
キョン「俺にそっちの気は無いぞ」
古泉「知ってますよ、RPGもあまりやらないのでナビしてくださいよ」
キョン「…まあ、特に予定も無いしいいかな」
古泉「決まりですね。…おや、どうやら彼女が来たみたいですね」
ハルヒ「やっほー!みんな揃ってる…ってまだみくるちゃんが来てないわね」
キョン「何言ってんだ。長門も来てないだろうが」
ハルヒ「そっちこそ何言ってんのよ。有希ならいるじゃないのちゃんとそこに」
キョン古泉「え」
長門「…」
古泉「一体いつから…」
長門「(最初からいたのに…)」
249 :
創る名無しに見る名無し:2009/12/23(水) 00:21:38 ID:zlrmmc5s
――放課後・古泉宅――
キョン「そういやお前の家に来たのは初めてだな」
古泉「キョン君の初めて…///」
キョン「殴るぞ」
古泉「冗談ですよ、ただ『朝倉「キョン君の初めて///」』に変換したら心を奪われるのでは無いかと思いまして」
キョン「…ったく誰のだ」
古泉「紅茶とコーヒーどっちにします?」
キョン「紅茶で、明日は朝早いからな」
古泉「久しぶりの不思議探索ですもんね」
キョン「明日はお前遅刻して来いよ、また奢りはいやだからな」
朝倉「っへくち」
長門「…風邪?」
古泉「どうぞ」
キョン「ふー、さあそろそろ始めようぜ」
古泉「中々乗り気ですね」
キョン「まあな、最後にプレイして3週間もたっちまったからな」
古泉「『も』ですか…」
『コッコッコッコッ』
『ピロピロリロピロピロリロ…ジャーンジャーンジャーン』
古泉「いよいよ始まりましたね」
キョン「『予感』」
古泉「?」
キョン「いや、悪い。きにしないでくれ」
古泉「はあ…。!!!!何ですかこのカッコいい曲!?」
キョン「『クロノトリガー』このゲームのテーマ曲みたいなもんだ」
古泉「カッコいい、本当にカッコいい…」
キョン「何回もリセット押すな。先に進まん」
『ジナ「起きなさい!イツキ」』
キョン「お前は主人公に自分の名前をつける派か」
古泉「何となくですけどね」
キョン「次もまた名前決められるぞ」
古泉「眼鏡っ子ですかこれは長門さんですかね」
キョン「それじゃあ、ユキか」
古泉「ええ」
キョン「長門と幼馴染みか…羨ましいな」
古泉「ユキはイツキのお嫁さんになるんだもん」
キョン「そんなの父さん許さないからな」
古泉「お、お父さん?」
ユキ「くしゅん」
朝倉「風邪でも引いた?」
『朝の日ざし』
『やすらぎの日々』
『みどりの思い出』
古泉「あっフィールド曲変わりましたね」
キョン「どうだ、いい曲だろ」
古泉「ええ、なんだか神秘的な曲ですね」
キョン「また明日サントラ持って来てやるよ」
古泉「いいんですか?」
キョン「ああ、貸す用だからな」
古泉「(これが噂の布教用!?)」
『ガルディア王国千年祭』
古泉「ほんとにお祭ですね」
キョン「色んなアトラクションもあるぞ」
古泉「レースやってますね、どっきりナイツに賭けようかな」
キョン「それ違うゲーム」
古泉「びっくりソルジャー」
キョン「好きだけどさ」
『キャッ!』
古泉「うわ、何ですか」
キョン「とりあえずその女の子に話しかけ…あーペンダントいったか」
古泉「?」
キョン「いや、気にするな」
古泉「あ、この子も名前決められる。…ハルヒで」
キョン「即決だな」
古泉「だってポニーテールですからね」
キョン「…やっぱ他の名前で」
古泉「ニヤニヤ」
古泉「あ、ユキだ。そうするとあのタバンとかいうのは情報統合思念体ですか」
キョン「流石宇宙人だな、テレポート使えんのか」
古泉「あ、ハルヒ消えちゃいましたよ、どうするんですかあなた!」
キョン「どうするって俺にふるなよ」
古泉「と思ったらそこはイツキが助けに行くんですね…。主人公の名前はキョンにするべきでしたかね」
キョン「殴るぞ」
古泉「殴ってから言わないでくださいよ」
古泉「やっとモンスターが出てきましたね」
キョン「戦闘の音楽もカッコいいだろ」
古泉「カッコいいですけど、それよりもあなたのそのキラキラしている目が気になります」
『風の憧憬』
古泉「」
キョン「…古泉、そろそろゲームを進めようぜ」
古泉「何ですかこの曲」
キョン「俺がこのゲームで1、2を争うほど好きな曲だからな。これを夜道で聞きながら吸う煙草は最高だ」
古泉「煙草吸うんですかあなた」
キョン「…言ってみたかっただけだ」
『ガルディア城〜勇気と誇り〜』
『』
古泉「…ハルヒ出てきましたね」
キョン「ああ」
古泉「また消えちゃいましたね」
キョン「ああ」
古泉「ごめんなさい、もういじりませんから」
キョン「ああ」
『マノリア修道院』
古泉「ユキも仲間になったしこんなポニーテールどもには負けないぞー」
キョン「ああ」
古泉「ごめんて」
古泉「カエルのくせにめちゃくちゃカッコいいですね」
キョン「お前もそう思うか」
古泉「名前どうしましょうか」
キョン「カエルだからな、イツキ、ユキ、ハルヒときてるから…」
古泉「キョンかミクルか…なんかどっちもしっくり来ませんね」
キョン「意外とそいつ年くってるんだよ。そんで中身は渋い…」
キョン古泉「……アラカワ?」
古泉「ゲーム初めてのボス戦ですね」
キョン「こいつはカウンター技があるから注意しないとな」
古泉「なら、威力の高い技だけを使った方がいいですね」
キョン「中々分かってきたな。さっき覚えた連携技使ってみろ」
古泉「エックス斬りか火炎車輪か。…ここはアラカワの力を借りますか」
古泉「いけ!エックス斬り!」
古泉「うぉー!カッコいい!」
古泉「次は火炎車輪いってみましょうか」
古泉「うぉー!カッコいい!」
キョン「(微笑ましいなぁ)」
古泉「ヤクラも倒してハルヒも戻ってきて現代に帰って来たわけですが」
キョン「お疲れ様」
古泉「一応話的に一段落しましたし、今日はもうこれくらいにしときましょうか」
キョン「気付けばもう10時か、明日も団活だしもう帰るか」
古泉「今日はありがとうございました」
キョン「気に入ってくれたみたいで何よりだよ。まあ俺が貸したわけじゃないんだけどな」
古泉「あ、でも明日サントラ持ってきてくださいね」
キョン「おう、そうだったな」
古泉「それではまた明日」
キョン「ああ、また明日」
265 :
創る名無しに見る名無し:2010/02/18(木) 15:21:27 ID:EjxPFAHb
ふむ
266 :
創る名無しに見る名無し:
最近ハルヒスレ重複が目立つなage