この流れを見て、久しぶりに幻水の料理やりたくなってきた。
データ残ってたかなぁ…
ゲンスイの料理。
実は放っておいたらすぐ腐ります。
そうだっけ?
ほのぼの系のミニゲームのくせに、ストーリーが意外と鬱展開なんだよなw
◆Rd1trDrhhU氏
投下乙です。
うまくまとめましたね。カエルのフラグをうまくたてちゃって……。
参加者中最高レベルの洞察力を持っているシュウだからこそですね。
GJ!
誤字などの指摘を
536にて
「殺し合いに載った人物」ではなく「殺し合いに乗った人物」
537にて
「カエルが鎧を着て剣を抱えて」
なぜ剣が?ブライオンを貸したとは思えませんし。
540にて
ステレイボウではなくストレイボウ
543にて
備考の「魔王と面識があるかどうかは不明」
面識はあるはずです。カエルになってる時点で。
>>558 指摘ありがとうございます。
全体的に推敲不足だったみたいです。申し訳ないです。
近いうちにwikiで修正します。
投下しますね。
山歩きには慣れている。光が届かない夜闇も、竹林で野盗をやっていたレイにとっては障害にはならない。
だというのに、体がまともに動かなかった。
最大の武器である俊敏さが発揮できず、レイは舌打ちを漏らした。
背中の傷が深く、血液と共に体力が零れていく。呼吸が苦しく、息が荒くなる。
一歩一歩を踏みしめるたびに、足元がふらつき倒れそうになる。
間近に迫った、死の気配。それは緩やかに、だが確実に、レイの命を削り取っていく。
だが、こんなところでむざむざ死ぬ気はない。
師から受け継いだ、心山拳。伝承されていくその心を、技を、絶やすわけにはいかないのだ。
だからレイは、足を止め目を閉ざす。
虎が咆えるように一挙に息を吐き出して、体内の毒素を抜く。
特殊な呼吸法で取り入れた酸素を体内で錬成し、血流に乗せて全身に送り出す。
虎咆精気法。
荒ぶる虎の如き力を心に重ね、身体能力の活性化と体力の回復を同時に行う技だ。
失った体力は、確かに戻ってくる。だが、傷の治癒や止血に役立つ技ではない。
せっかく回復した体力も、流出する血液と共にすぐ逃げていってしまう。一時しのぎにしか、ならなかった。
何処かで休むべきだと思うが、あの女を放っておくわけにはいかなかった。
人の姿で好き勝手やられては堪らない。無用な敵を作られる前に、手を打ちたいところだ。
それに。
あの女に分からせてやらなければならない。彼女の行為がどれほど愚劣なのか、を。
心山拳は、心の拳法だ。
言葉を投げかけても通じ合えない相手にも、拳に心と想いを乗せて、その全てを伝え切る。
戦いの果てに心を通わせ、レイの想いを伝えられれば、彼女を止められるはずだ。
体は万全ではないが、やらなければならない。
揺らがぬ信念を抱いて歩くレイ。感覚を研ぎ澄ませ、逃げた女の気配を辿るように。
――鋭さを増した感覚が、別の気配を感じ取った。
咄嗟に身構え、新たな気配の方に意識を向ける。傷が痛むが、構ってはいられない。
警戒心が緊張感を生み、汗が首筋をなぞっていく。
目を眇め、闇と木々の間を睨みつける。
すると、その気配もこちらに気付いたらしく、レイへと近づいてきた。隠れる気は皆無らしい。
現れたのは、赤毛を腰まで伸ばした女だった。
彼女は緊張感や殺気とは無縁そうな笑みを浮かべ、近づいてくる。
「私、アティって言います。あの、お伺いしたいんですけど……」
やけに友好的なアティの態度に、レイは目をしばたかせた。
油断はできない。一度奇襲を受けたのだ。警戒すべきだとは思う。
だが、アティという女からは、一切の殺意を感じない。
アティが巧妙に隠しているのなら話は別だが、それにしては彼女の態度が自然すぎた。
よほど上手い演技をしていたとしても、殺気は態度の不自然さとなって滲み出るものだ。
「って、どうしたんですかその怪我!」
レイの背に刻まれた刺傷と、垂れ落ちる血液に気付いたアティは、目を見開いて駆け寄ってきた。
心配そうな眼差しの彼女から、飛び退いて距離を取る。
「く……ッ!」
その際に背中の傷が広がって痛みが駆け抜け、生温い血液が溢れ肌に纏わり付く。
血がかなり抜けてしまったらしく、意識が朦朧とする。
――本格的に、不味いね……。
足が、縺れる。手近の木で身を支えるため手を伸ばすが、届かない。
倒れる。
そう予測は出来たが、体は上手く動かない。
しかし、地に倒れ伏しはしなかった。
アティが、レイの伸ばした手を握り締めていたからだ。
「見せてください。私、医者志望ですから、ある程度の手当てくらいはできます」
穏やかな笑みを浮かべるアティ。柔らかい手から伝わる温もりが、優しく心地よい。
「……分かったよ。あたいはレイ・クウゴ。とりあえずは信用してやるよ。
ただし、妙な真似をしたらタダじゃおかないからね」
その心地よさが、レイから完全に毒気を抜き、そう告げさせる。
アティに感化され、レイの表情は小さく綻んだ。
「そんな、おかしなことなんてしませんよ」
人好きのする笑顔を浮かべながら、しゃがみ込むアティ。彼女に傷口を見せようとして――。
レイは、振り仰ぐ。決して、アティが牙を剥こうとしたわけではない。
強く黒い新たな気配を、闇の先から感じ取ったからだ。
目を凝らし、意識を気配へと傾ける。
包み隠そうとしない殺気と、オディオにも引けを取らない憎悪を剥きだしにして。
男が一人、闇の彼方から姿を見せた。
◆◆
現れたのは、美しい銀髪の男だった。
長い髪の合間から覗く耳は尖っており、人とは異なる種族であると主張している。
美しい紅玉を思わせる瞳が、レイとアティへ、向く。
男と視線が重なり――皮膚が、粟立った。
その瞳には、憎悪と殺意と悪意がない交ぜになって宿っている。黒く昏い眼光は、刃を連想させるほどに鋭い。
あらゆるものを切り刻もうとする、一対の視線。
それを具現化したように、男は両の手に一振りずつ剣を握っている。
右手には、反り返った刃の剣――刀と呼ばれる武器を。
左手には、鋭い刃の短剣を。
男は一足で跳びあがり、その身を回転させた。髪とマントを靡かせて、アティたちへと突っ込んでくる。
状況が判別できず、アティは眉根を寄せた。
この男が明確な殺意を持って剣を携えている理由が、察せない。
だから、現状をすぐに呑みこめなかった。
剣を振りかざした男が降下軌道に入ったところで、ようやく危機を感じ取り咄嗟に下がろうとするが、遅い。
せめて直撃を避けるべく、封印球を掲げたときに。
レイが、アティを突き飛ばしてきた。
予想外の方向からの衝撃に、容易く地面へと転ぶ。
開いていた口内に入った土を吐き捨て起き上がると、刀がアティの髪の端を切り落とした。
「ぼさっとしてんじゃないよ!」
「ご、ごめんなさい!」
思わず出てしまった謝罪に答えはない。代わりに聞こえたのは、蹴りが空を薙ぐ音だった。
アティを押した後の不自然な体勢から繰り出した回し蹴りでは、男を捉えるには至らない。
男は、バックステップだけで高く宙に浮く。その口が、何かを呟いていた。
急激に気温が低下していき、前触れもなく冷気が立ち昇る。
「足元! 気をつけてッ!」
アティが叫ぶと同時に男が着地し、
「――マヒャド」
冷酷な韻を踏んだ詠唱が、終わる。
巨大な氷塊が、地面を突き破って現れた。
刃物の鋭利さと鈍器の質量を併せ持つ氷が、アティとレイを切り裂き潰そうと襲いくる。
半ば転がって横に跳び、アティは氷を回避する。
勢い余って巨木の幹に背を打ち付けるが、氷の直撃に比べればダメージは少ない。
氷塊はすぐに消失する。
しかし、それが幻ではなかったと証明するように、レイの体は中空に投げ出されていた。
「レイさんッ!」
重力に引っ張られるまま落下するレイを、滑り込んで受け止める。急ぎ怪我を確認し、アティは絶句した。
無残に破かれた衣服から見える右足に、肌の色が見受けられなかったからだ。
皮が裂かれ、肉が抉られ、骨が露出している。
それだけではない。
絶対零度を誇る氷の凶器は、傷口の周囲をも蝕んでいた。
傷の大きさを考慮すれば、右足全体に凍傷が広がっている可能性がある。
極端に低い温度の氷塊に接触したため、血管の収縮と血液の凝固が発生しており、出血はそれほどでもない。
だが、このまま放っておけば間違いなく壊死すると考えられる状態だ。
痛みでショック症状を起こしていて、意識はない。
微かに胸は上下し腕は脈打っているのが、唯一の救いだった。
「よもや避けられるとは思わなかったぞ」
白く煙る冷気の残滓越しに睥睨してくる男を、アティは睨み返す。
「一体どういうつもりですかッ!? 私たちが何をしたって言うんですッ!?」
アティの激情を、男は嘲笑う。
「何をしたか、だと? 原罪の自覚すらないとは本当に愚かだな、人間」
男の瞳は紅いのに、底のない暗闇に似ていた。
「己が欲を充足させるためならば、あらゆる汚れた手段を用いて、他者を貶め辱めるその性質こそ、貴様らの罪だ」
心底からの憎しみを込めて、男は吐き捨てる。
「矮小で醜悪で愚鈍な人間どもに存在する価値など、ない」
端正な顔が、憎悪に塗り固められている。
純粋な悪意に果ては見えず、世の人間を殺し尽くしても晴らされるとは思えなかった。
「……そうは、思いません」
それでも、アティは言い返す。
「確かに、自分のために物を盗んだり、他の人を傷つけたり、争ったりする人は、います」
両親を亡くし塞ぎこんでいた自分を、根気よく支え助けてくれた村の人たちを。
言葉に想いを込めて、失ったものを甦らせられる、人間を。
無価値だと、思いたくないから。
「だけど人は、話ができるんです!
言葉を使って、想いを伝えて、色んな素敵なものをもたらせる生き物なんですッ!
だから、どんな人にだって、想いを込めて話をすれば、きっと――」
アティは想いを言葉に乗せる。強い憎しみを凌駕する想いを、伝えるために。
しかし、
「下らんな」
男はアティの言葉を一蹴するだけだった。憎悪を陰らせることも、綻ばせることも叶わない。
返ってくるのは、無慈悲な言葉だけ。
「貴様の言葉も、想いも、私には決して届かない」
歯痒さと悔しさに、唇を噛むアティ。少し否定されたくらいで折れはしない。
簡単に潰されるほどアティの想いは弱くない。
だが、ここでずっと問答をしているわけにはいかない。
腕の中にいるレイに、急いで治療を施す必要があるのだ。
問題は、どうやってこの場から逃げるか。
サモナイト石があれば、手は見つかるのだが――。
「……悲しい、ね」
思考するアティに、言葉が割り込んでくる。目を落とすと、レイが目を開けていた。
◆◆
驚きを露にするアティの腕からすり抜けると、左足に重心を置いて立ち上がる。
氷塊の直撃を受けたせいで、右足の感覚が鈍く、まともに動かせない。
それでも、レイは確かに地に足を着け、自身の足で立っていた。
「じっとしてなきゃ! 重傷なんですよ!?」
「じっとしていられる状況じゃないだろ? 大丈夫さ、鍛えてるからね」
無茶苦茶な理屈だと分かっている。実際のところは、血が流れすぎて本当に危険な状態だった。
医術の心得があるアティなら、それくらい悟っているだろう。
「大丈夫なわけないじゃないですか! 早く治療しないと――」
「……ああ。治療しないと、もう駄目だろうね」
アティの言葉を遮るレイの声は、随分と落ち着き払っている。
死が迫り近づいて来ているというのに、驚くほど頭が冷えていた。血液が抜けすぎたせいかもしれない。
あるいは、アティの想いを込めた言葉が、レイの心に届いたおかげなのかもしれない。
「そういう意味じゃ……」
こんな状況にありながらも他人を気遣える彼女のひたむきさは、守られるべきだ。
真っ直ぐな想いを伝えられる彼女の尊さは、心は、失われてはならない。
会って間もないが、分かる。彼女は、生きるべきだと。
「自分の体だ、分かってるよ。だけどあたいはまだ、死ぬつもりなんてないさ。だから――」
レイは、自分に残された、たった一つの支給品をアティへと投げて寄越す。
愛着などない、一枚の絵だ。
何の役に立ちそうにもないそれだって、生きる道の標にはなり得る。
「それ、預かっといてくれよ。必ず生きて、取りに行くからさ」
「何、言ってるんですか? まさか、あなたを置いて逃げろって、言いませんよね?
そんな体で戦うなんて無茶、言いませんよね!?」
「……頼むよ、アティ」
短い頼みごとだった。
でもそれだけで充分だと、レイは分かっている。
何故ならば、その短い言葉の中に、たっぷりと想いを込めたのだから。
伝わらない、はずがない。
「嫌です。絶対に、そんなの、頼まれません」
伝わった上でそう言うのは、きっと、アティの心が優しすぎるから。
だからこそ生き延びて欲しいと、レイは思う。
「だったらどうするんだい? 言っとくけど、今のあたいは自分の身を守るだけで精一杯。
あんたが戦力として当てになるならいい。でも、そうじゃないなら足手まといだよ」
「それは……」
あの氷塊を避けたのだから、身のこなしは悪くない。
しかし口ごもるということは、少なくとも今は力になれないと自覚しているのだろう。
「そして、一緒に逃げるとしたらあたいが足手まといだ。
こんな足じゃ、すぐに追いつかれるのは目に見えてる。
――ほら、早く行きな」
そっと、促してやる。するとアティの大きな目が潤み始め、涙の色が顔に浮かぶ。
今にも泣き出しそうになりながら、それでも彼女は、頷いた。
頷いて、くれた。
「必ず、生きて取りに来て下さい。私、待ってますから。約束、ですよ」
言い残し、背を向けるアティ。見送ってやれる余裕はない。
遠ざかっていく足音を聞き、深く息を吸い込む。右足に走る激痛と背中に残る鈍痛も、まとめて飲み込む。
「……待っててくれるなんて、いいとこあるじゃないか」
言ってやると、男は不愉快そうに顔を顰める。
「ふん、偽善に塗れた茶番だな。虫唾が走る。
安心しろ。貴様を殺した後、あの女も追って殺す。預け物は、あの世で返してもらうのだな」
吐き捨てると、男は両手の剣を構え直す。その口は既に、呪文を紡ぎ始めている。
戯言は終わりだという、宣言だった。
「言ったろ? まだ、死ぬつもりはないってッ!」
だから、レイも構えを取る。これ以上、話をするつもりはない。
アティが愚直なほどに言葉を投げかけても、男は揺るがなかった。
想いが乗った言葉が届かないのなら、想いが乗った拳で伝えるまで。
男の構えにも気配にも隙はなく、殺意に曇りはなく憎悪に陰りはない。
対し、こちらは満身創痍だ。怪我は酷く血液が不足し、右足は使い物にならない。
だからといって、死ぬつもりなどない。生きるため、アティに支給品を預けたのだから。
ダメージを考慮すれば、長期戦は不可能。勝機が見出せるのは、短期決戦のみ。
レイは、あらゆるわだかまりや雑念を取り払う。
不安、懸念、恐怖、悪意、悔恨。
その全てを除き去った胸に残るのは、波紋一つない水面の如き想いだけ。
まさに、明鏡止水。
静かで揺らぎのない想いを、澄んだ心で練り上げる。汚れのない想いは昇華され、力となって具現化する。
光が、レイの足元から立ち昇る。
天へと昇り上がる龍にも似たその光は次第に大きさを増し、完全にレイを覆い尽くす。
「心山拳、奥技」
光に呼応するし、大気が震え出す。極限まで高まった力が、夜空へと噴き上がる。
男が炸裂の呪文を唱え終わるのは、ほぼ同時。
「旋牙連山拳……ッ!」
「――イオナズン」
耳をつんざく爆裂音が轟く。だが、その爆風の中心にレイの姿はない。
一足跳びという表現では足らぬ速度で、レイは男の懐に飛び込んでいた。
正拳を打ち込む。当たらない。
背後に回り裏拳。受け流される。
左へ飛び込み肘鉄。掠めるだけに終わる。
片足を負傷しているとは思えない俊敏さを以って、男に波状攻撃を掛けるレイ。
しかし男は確実にその動きに追随し、的確に見切ってくる。
だとしても、構わない。
レイの速度は、飛躍的に増していく。
風を切り裂き大地を蹴り飛ばす。
側転の要領で右へ跳ぶ。両手を地に付いて左足で蹴り上げる。
――靴裏が、皮膚にめり込んだ。確かな、手応えだった。
その一撃をきっかけに、レイの敏捷性が男の動きを凌駕する。残像を残し、攻撃を仕掛けていく。
正面からの拳打、左からの手刀、背後からの当身、右に回りこんでの貫手。
鮮やかで芸術的な動作から生み出される連続技は、華麗で美しく無駄がない。
レイは止まらない。
編んだ髪を躍らせて旋風となり、牙の如き鋭い攻撃を繰り出し、連なる山をも砕こうと拳を叩きつける。
逆巻く嵐を思わせる無数の連撃を、あらゆる方向から浴びせていく。
その様はまるで高速の舞踊。見惚れるほどに洗練された演舞。
だが。
速度と威力の限界が、見え始める。足の負傷と背中の怪我が、限界を近づけていた。
更に伸びるはずの速度は頭打ちとなり、威力を激減させる。
「付け上がるな……人間ごときがぁッ!」
故に。
反撃の機を、与えてしまう。
側面に回りこんだレイに、男は刀を振りかざす。
大振りな、一撃だ。無理矢理に大気を叩き割る重い斬撃は、魔人の攻撃を髣髴とさせる。
「なめんじゃないよ! 人間の、心をッ!!」
それに、レイは真正面から対抗した。どのみち回避は、間に合いそうにない。
全身全霊の力と心を拳に込め、技にする。
男の鳩尾にレイの拳が。
レイの胸部に男の刃が。
互いの勢いを保ったまま、接触する――。
◆◆
鼻の奥にしょっぱさと息苦しさを覚えながら、アティは森の中を駆けていた。
振り返らずに、ただ必死で足を動かす。振り返ると、足が止まりそうだった。
唇を、強く強く噛み締める。そうやって口に力を入れても、嗚咽はどんどん溢れ出て零れ落ちてくる。
レイを放って逃げたアティを責める声が、心の奥から浮かび上がってくる。
彼女を助ける道を諦めた自分を、他ならぬ自分が責め苛んでくる。
あの状況を打破する手が見つからなかったのは事実だ。
サモナイト石もなく、支給された鉄球を自在に操れるほどの腕力もないとなれば、まともには戦えない。
だから、あのときアティにできたことは、レイの頼みを聞くだけだった。
彼女の頼みが、心からのものだと分かってしまったから。
そう、言い聞かせる。その度に、声は尋ねてくるのだ。
――本当に、他にできることはなかった?
――たとえば、私が残ってレイさんを逃がしていたら?
――たとえば、レイさんと協力して二人で戦っていたら?
戦えないとか、二人一緒では逃げ切れないとか、そんなものは言い訳に過ぎない。
諦めた事実は、変わらない。
情けなさが、悔しさがアティを苛む。
何が医者志望だ。何が元軍人だ。何が首席卒業だ。
そんなことには、芥子粒の意味すらない。こんな無様さでは、生徒だって守れるとは思えない。
ただただ無力さを痛感する。そして、それを言い訳にしている自分が、嫌になる。
アティは、封印球を強く握り締める。
もう、奇跡は起こらないのだろうか。この石は、力を与えてはくれないのだろうか。
自己嫌悪の渦がアティを飲み込んでいく。果てなどない闇の底へ、連れていく。
足が縺れ、転ぶ。
コートが土で汚れるが、払う気分にはならない。
情けない自分には、泥まみれの格好がお似合いだとすら思う。
起き上がり、振り返った。
アティが駆けてきた獣道が伸びている。レイを残してきた場所に繋がる、獣道。
そこにはまだ道がある。細く険しく先が見えない道の先で、レイは怪我を押して戦っている。
――このまま一人、逃げてしまっていいの?
心の声が、尋ねてくる。
その問いには、頷けなかった。道を見てしまえば、もう逃げられない。
逃げたくは、ない。
アティを逃がすことが、レイの望みだと分かっていても。
自分だけ助かろうとするなど、アティの信念が許さない。
無力だからと、何もせずにいるのは辛くて苦しくて、嫌だから。
「間に合ってください……!」
封印球に祈り、アティはレイの元へと引き返す。焦燥感に煽られて、急いで引き返す。
◆◆
激痛が残る鳩尾に、銀髪の男は手を当てる。呪文を呟くと、掌が淡く光り始めた。
優しくたおやかな光の正体は、傷を瞬時に癒し体力を回復させる呪文だ。
にもかかわらず、怪我の治癒速度は緩慢で、体力はほとんど回復しない。
むしろ、その魔法を使ったせいで余計に徒労感を覚える。
「効きが、悪いか……」
紅の瞳をした彼――ピサロが舌打ちを一つすると、癒しの光が消える。
回復魔法の効果があまり出ないとなると、無理はしない方がいいだろう。
――口惜しいが、逃亡した女はひとまず放っておくが賢明か。
人間に後れを取るなどとは思わないが、慢心や油断、過信は捨てるべきだと判断する。
今の戦闘で予想以上に消耗してしまったこともあり、慎重にならざるを得ない。
刀と短剣を納刀し、ピサロはマントを翻して歩き出した。
一時の休息のため、西の洞窟を目指す。
ピサロは、振り返らずに歩いていく。
太い幹に背を預け座り込んだまま、動かない格闘家に、一瞥すらせず、歩いていく。
心の拳すらも、ピサロの決意に皹を入れることは、叶わなかった。
【D-5 南東部 一日目 黎明】
【ピサロ@ドラゴンクエストIV 】
[状態]:全身に打傷。鳩尾に重いダメージ。
疲労(やや大)人間に対する強烈な憎悪
[装備]:ヨシユキ@LIVE A LIVE、ヴァイオレイター@WILD ARMS 2nd IGNITION
[道具]:不明支給品0〜1個(確認済)、基本支給品一式
[思考]
基本:優勝し、魔王オディオと接触する。
1:西の洞窟へ向かい休息を取る。
2:皆殺し(特に人間を優先的に)
[備考]:
※名簿は確認していません。またロザリーは死んでいると認識しています
※参戦時期は5章最終決戦直後
◆◆
巨木が見えてきたところで、アティは、一層強く地面を蹴る。
転びそうになりながらも、少しも減速せずに疾走する。
耳が聞こえなくなったかと錯覚するほどの静けさが、戦闘の終了を物語っていた。
嫌な予感が鎌首をもたげてくる。心臓が狂ったように暴れているのは、全力疾走のせいだけではない。
木の陰から、三つ編みが見えた。
「レイさん!」
叫ぶ。
渇きを訴える喉を酷使して、名前を、呼ぶ。
「レイさん、レイさんッ!!」
縋るように、望むように、求めるように、欲するように。
それでも。
返事は、返ってこない。
足腰が震え、力が抜けていく。
走れなくなった体は、残った勢いに押されて進み、そして。
巨木の傍らまで、辿り着く。
――荒かった息が、詰まった。
「あ、あ……ッ」
夥しい血溜まりの中で、まるで眠っているように。
深い傷口を、夜気に晒しながら。
レイ・クウゴは目を閉じていた。
微動だにせず、目を、閉ざしていた。
「私、が。私が、逃げた、から。わたし、の、せい、で……ッ!」
足腰の震えは大きくなって全身へと伝わり広がり、立っていられなくなって。
腰が抜け、へたり込む。
まだ温かさの残る血溜まりで、身を汚しながら。
まるで、赤子のように、慟哭する。
ひたすらに広がる闇は、ただただ無情で。
泣きじゃくるアティを慰めてくれそうには、なかった。
【レイ・クウゴ@LIVE A LIVE 死亡】
【残り49人】
【D-6 巨木付近 一日目 黎明】
【アティ@サモンナイト3 】
[状態]:疲労困憊。コートと眼鏡とパンツと靴以外の衣服は着用していない。
強い悲しみと激しい自己嫌悪と狂おしいほどの後悔。コートとブーツは泥と血で汚れている。
[装備]:白いコート、水の封印球@幻想水滸伝2
[道具]:基本支給品一式、はかいのてっきゅう@ドラクエW
モグタン将軍のプロマイド@ファイナルファンタジー6
[思考]
基本:アリーゼを探す。
1:茫然自失。
2:アズリアを探してアリーゼ探索に協力してもらう。
3:他の遭難者やビジュという軍人も探す。
4:舟を襲ってきた海賊や島にいるかもしれない召還獣等に警戒する。
5:アリーゼと共に帝都に行く。
6:アリーゼを見つけてから服を取りに戻る。
[備考]:
※参戦時期は一話で海に飛び込んだところから。
※首輪の存在にはまったく気付いておりません。
※地図は見ておりません。
さるさん食らったので携帯から
以上投下終了です。感想指摘等ありましたら、なんでも言ってくださいませ。
投下乙です!
レェェェイイ!!!
カッコいいぜ……カッコよすぎるぜ……。
ピサロも強力な武器をゲットし、アティも今後が気になる展開ですね。
改めて投下乙です!
投下乙です!
ああ……俺の嫁がどんどん散ってゆく……
どいつもこいつも無茶しやがって……
レイさん南無。
ああ、やはりピサロにゃかなわんかったか。
投下乙! レェェェェェイ!!!!
リーザに続きレイまでもが! 俺の嫁が次々とカッコよく死んでいく! 悲しい反面、何か嬉しいw
これは前の話で繋がれたバトンを最良の形でリレーししています。いやーいい連携です。
ピサロは魅力的なマーダーになりましたね。クールなのに憎悪まみれ……これで最終形態があんなキモくなかったら最高だったのにw
レイは早期退場ですが、功夫編のテーマである『伝承』をしっかりと果たしましたね。
序盤で積まれたフラグは少ないので魅せて殺すのは難しい局面ですが、上手く原作のストーリーを使って魅せてくれました。GJ!!
すいません。トリそのままでした。見なかった事に……。
投下乙!
さらば、レイッ!!
ピサロとのマジバトルはカッコイイの一言。壮絶でしたGJ
アティもこれからどうなるんだ!?
ますます盛り上がってまいりましたねぇ
長生きできないと思ってたけどレイ退場か…
無常なり…
……ビジュ、せっかく予約されたのにこの組み合わせってw
葬式準備しとくかな〜
遅れたが投下乙でした
レイかっこよかったぜ!ピサロもいいマーダーで何より
しかし女キャラの死亡率が凄いなw
生きてる女キャラも、リルカはステルスマーダーと行動中、リンは皆殺しの剣で呪われてたりで大変なことになってるし、女に優しくないロワだなw
比較的平和なのは、幻水とクロノの女性陣くらいか。
死者追悼スレは女の子いっぱいでまさに天国といったところかw
>>580 集いの泉のブラ組を忘れてもらっちゃ困るぜ。
つかサモン組、テイルズやSOシリーズ押しのけて選ばれたわりには予約率低いな。
SRPGロワで最初に書かれたアズリアが未だ書かれていないとは・・・。
あとビクトールも残ってるから、早くなんとかしないといけないな。
ビクトールかぁ…
書きにくいキャラではないはずなんだが
>>581 太った親父にとって?
神官や渡辺もいるから決してハーレムではない筈だが…。
つか死者スレのドラクエ組のミネアに対する扱い酷すぎw
>>582 アズもビクも立ち居地が難しいんだろう。
参戦時期によってはおいしくもあるから、書き手さんがたも妄想しとるんだろう。
>>584 渡辺って誰かと思った。
見せしめで殺された奴なんだな。
メガザルがある限りミネアが生還できる可能性なんて万に一つもないんだろうなぁ……なんて
つか自己犠牲呪文・技持ちのキャラはどんなに最後の方まで生き残っても死亡する
ジンクスみたいなもんがあるからな。FFDQロワの5主、ミネアしかりテイルズロワのコレットしかり。
それを使うから燃えるっていうのもあるんだけどね。
それでも俺はミネアには生き残って欲しいと思ってる。
でもどのキャラだって最後まで生き残れる確率なんて殆ど無いからな
死に際の活躍フラグがあるだけでも幸せだよ
期限をちょっとおーばーしてしまいましたが、ブラッド、セッツァー、ヘクトルを投下します。
水が透き通って晴れていればそこが見えそうなくらいほど綺麗な川。
その川の流れはゆっくりと、かつ確実に南へと進んでいく。
ブラッドという大きな船を浮かべながらゆっくり、ゆっくりと進んでいく。
どれくらい流れているだろうか? ブラッド自身は一向に目を覚ます気配は無い。
ただ、彼は幸運なことに大きな岩に引っかかることができ、流れることを止められたのだ。
しかし、彼はまだ目を覚まさない…………。
鎧には数々の打痕。酷い所は金属が拉げてしまっている所まである。
しかし鎧を着込んだ本人、ヘクトルに目立った外傷はない。
それもそのはず、彼が今背負っている女性が傷を治したからだ。
……自らの命を賭してまで。
もう動かない女性は担いでみてもやはり異様なまでに軽かった。
死人はこんなにも軽いものなのか、と不思議な感覚にすら陥りそうなくらい。
なのに軽いはずの女性が、ヘクトルに重い重圧を与え歩みを鈍らせる。
ふと気がつけば、ヘクトルの目の前には砂漠が広がっていた。
もとより目指していたわけだが、半ば無意識に足を進めていたためどれくらい歩いていたのかの自覚は無かった。
ヘクトルが此処に来た理由は一つ。
「すまねえ、本当はしっかり埋めてやりたいんだが……」
ヘクトルは少しへこんだ所に彼女を寝かせ、上から周りの砂を被せていく。
時間はかかるものの、穴を掘るよりかは簡単に済む埋葬だった。
砂が彼女の全身を覆いつくすように被さった所で、ヘクトルは刃の折れた剣をそこに突き刺す。
「ホルンの魔女……リーザ。アンタの分まで俺はあの野郎をぶっ潰す。
アンタが成し遂げられなかった分まで……俺に任しとけ」
その言葉と共に、彼女のデイバッグに入っていた透明の球体を天に掲げる。
数秒その姿勢で固まった後、墓というには簡素すぎたそれに背を向けて走り出した。
今のヘクトルにはグズグズしている時間は無い、ましてや後ろ向きに進むなんてもってのほかだ。
振り返っている時間はない、今は一秒すらも惜しい。
このフザけた殺し合いを止めるための仲間を探すために、自然とヘクトルは駆けていた。
外に出て数分、ふらふらとした足取りのセッツァーは回収したトルネコのデイバッグを手に取った。
デイバッグを二つ持つのも億劫だったので、中身を全て自分のデイバッグに移し変えることにしたのだ。
トルネコのデイバッグの中身は一切確認していない、ひょっとすればこの槍より扱いやすいものが入っているかもしれない。
期待を膨らませながら中を漁ってみるも……セッツァーにはとても扱えたものではない物が二つほど。
唯一使えそうだったのが銀色に輝く一枚のカード。硬さは申し分ないがいつも使っているトランプよりかは扱いづらい。
無いよりはマシと言い聞かせカード以外の物を自分のデイバッグに仕舞い込み、銀色のカードをコートのポケットに押し込んだ。
そして、荷物を移し変える際に気がついた一冊の本に目を通す。
不幸にもこの殺人ゲームのチップとなってしまった者たちの名前が並べられている。
もちろん自分、「セッツァー=ギャビッツァーニ」の名前も。
驚いたのはそこに並ぶ他の名前である。
ティナ・ブランフォード、エドガー・ロニ・フィガロ、マッシュ・レネ・フィガロ、シャドウ、ゴゴ、ケフカ・パラッツォ。
ケフカとゴゴという人物以外はかつてセッツァーの仲間だった人間だ。
ケフカに至ってはあの瓦礫でできた塔でお山の大将を気取っているが、力は本物である。
この五人の強力さは自分も良くわかっている、真正面から殺害するとなると多少無理がある。
しかし、ゲームに勝利し配当を頂く上では避けては通れない壁である。
どんな手段を使ってでも、この五人はできるだけ早めに排除しておきたい。
ありとあらゆる手段を考えているうちに、気がつけば目の前に一本の川があった。
何の変哲も無い……筈だったが、どういうことか全身にやけどを負った男が倒れこんでいる。
セッツァーは槍を手に持ち、男へと足早に近づく。
どうやら男は気絶しているらしい、ここで心臓を一突きにすればいとも容易く殺せる。
しかし、此処でこの男を殺したところでメリットはアイテムが増える程度だろう。
もし殺す瞬間を誰かに目撃されたとなれば自分が人殺しになっていることがバレるかもしれない。
その上この怪我である、放って置けば勝手に死にそうでもある。
後始末、その点を如何に綺麗にできるか。
まだまだ敵を作る状況ではない、正面から戦闘を挑まれ続けてはさすがに生き残れない。
「シャドウ……ヤツなら、どうするだろうな」
こういう場面に場慣れしていそうな仲間だった男の名前を呟く。
槍の構えを解き、怪我の男を川から引き上げようとしたその時。
「おい、アンタ」
見知らぬ方向から唐突に声をかけられた。
声の方向へ振り向くと、微かに息を上げた男が立っている。
「単刀直入に聞く、あんたは殺し合いに乗ってるのか?」
ナイフを構えながら鎧の男はセッツァーに問いかける。
自分の得物は槍、相手はナイフ。
武器のリーチ、攻撃力を取れば自分が上かもしれないがどうやら戦闘経験の差は大きそうだ。
相手の体格、構えからしてもなかなかの熟練者だと感じられる。
無駄に戦闘をして体力を削られるのは避けたい。
その上鎧の男はセッツァーを見る前に怪我をした男にも目を配っていた。
セッツァーはそれを見逃してはいなかった、警戒されているのは間違いない。
無駄に敵を作るのは……やはり賢明ではない。
「まさか……冗談じゃない」
セッツァーは槍を投げ捨てやれやれといったポーズをとり、笑った。
ヘクトルの構えが解かれるのも、すぐの事である。
「いきなりこんなところに連れて来られて、歩いていたら川に人がぶっ倒れてたんだ。
様子を見に来ないほうがおかしいだろ、それで今どうしようかと……な。
ちょっと手伝ってもらってもいいか? 俺一人じゃ完璧に引き上げるのは難しそうだからな」
その言葉を聴き、鎧の男はセッツァーへと歩み寄る。
そして、二人そろって川に浮かぶ男の体を掴む。
「せー……のォッ!!」
水しぶきを上げながら一人の男が川を脱出し陸へと上がる。
躍り出る男は、まるで鮭のように。地面へと放りだされた。
未だに目が覚めない男を目にして、二人は無性に笑いがこみ上げてきた。
「……しっかしひでぇ怪我だな」
セッツァーがそう呟くのも無理はない、怪我の男の全身の火傷は皮膚の色を変色させるほどの強烈なものだった。
幸い、川に漬かっていた事で悪化はしなかったようだが、それでもひどい怪我であることには変わりない。
セッツァーは静かにわずかに覚えた魔法のうちの一つ、ケアルラを詠唱し始める。
柔らかな光がブラッドを包み込み、ブラッドの火傷が少しだけ回復しているように見える。
二度目の光景ではあったが、鎧の男はやはり驚きを隠さずにいられなかった。
「……アンタもか。 なんで杖もなしに回復魔法が使えるんだ?」
セッツァーは別段驚きもせずに、静かに鎧の男のほうへ向く。
「あー、これにはそのいろいろ理由があって……えーと」
セッツァーが頭に手をやっていることに気がつき、鎧の男は急いで口を開く。
「あ、ああ。俺はヘクトルだ。あんたは?」
「……セッツァー、夢を追い続ける男セッツァーだ」
ヘクトルは何気ない自己紹介だった。
だが、セッツァー違った。もう一度確認するため。自分の意思を揺らがせないためでもあった。
「……で、リン、フロリーナ、ニノってのがアンタの仲間でジャファルってのが一応気をつけるべきなんだな?」
互いの世界、魔法のこと、さまざまなことを交えながらの軽い自己紹介の後にお互いの情報交換を始めることにした。
「ああ、リンはこんな状況でも人を斬るってのはよっぽどのことじゃない限りねえ。
ニノはまず無いな、あいつも人を殺すようなヤツじゃない。ジャファルの野郎もニノのおかげでマシになりつつあるが……気をつけたほうがいい。
フロリーナも……大丈夫だ、殺し合いに乗る人間じゃない。
ヘクトルは一切嘘を交えずセッツァーに話す。ジャファルに気をつけたほうがいいというのは的確な情報ではあった。
しかし、現実は残酷なことにそれ以外にもリン、フロリーナの二人が殺し合いに乗っていることを知らない。
「そうか、わかった。俺が知ってるのは……」
セッツァーも名簿を片手にヘクトルに話す。
「まず、ティナだ。コイツはヤバイ。かつて魔導アーマーっていう兵器を使って敵軍の兵士を何十人も殺戮したことがある危険なヤツだ。
しかも俺より魔法の知識に秀でているから戦闘になるのは避けたほうが良さそうだぜ」
セッツァーは喋る、かつての仲間のことを。
「エドガー、こいつもヤバい。国王なんだが自分の国を機械で埋め尽くしてそのうち世界を征服しようだなんて考えてるタマだ。
けったいな機械を使ってあたりのやつらに攻撃を仕掛けてるかもしれないな」
セッツァーは喋る、かつて仲間だったもののことを。
「マッシュ、こいつは安心だ。エドガーの弟なんだが兄貴のやり方に嫌気が差して国を抜け出したらしい。こういう殺し合いには乗らないタチだとは思うぜ」
セッツァーは喋る、排除すべき存在のことを。
「シャドウ、一番危険だな。受けた仕事は必ずこなす。たとえそれが殺人だったとしても……人を殺すことに躊躇いはねえ、近づくのはやめたほうがいい。」
セッツァーは喋る、己の夢のために。
「ケフカ、絶対に安全だ。魔法の知識も豊富だ。こういう殺し合いにはまず乗らないヤツだしな。この忌々しい首輪もなんとかしてくれるかもしれねえ。こいつを最優先で探したほうがいいいかもしれない」
セッツァーは喋る。若干の嘘を交えて。嘘と真実を交差させ、嘘を目立たなくさせる。
結果的にヘクトルには嘘が真実だと刷り込まれていくだろう。
ギャンブルでも使うブラフのテクニック、相手が見抜けるかどうかの問題だ。
「こいつらの特徴だが……」
ここから先は嘘を交えずに述べる。
特徴で嘘をつくメリットは無い。が、本人像で嘘をつくメリットはある。
ティナが殺戮兵器だったのは事実だ、そこを見知らぬ人物に突かれれば多少ひるむことはあるだろう。
エドガーはこの首輪を真っ先にどうにかしそうだ、このゲームを壊されてはせっかくの夢もかなわない。
ヤツの首輪解除というイカサマを真っ先に防がなければならない。
マッシュは……特に気を配る必要も無いだろう。
シャドウが危ない人物なのは事実だ、正体がつかめない。早めに消えておいてほしい人物だ。
ケフカは真っ先に取り除いておきたい、だがヤツに他の人物をぶつければヤツはきっと利用しつくすかその場で殺すだろう。
効率はいいとは言い切れないが、このゲームの参加者を減らしてくれるには違いない。
「とまあ、こんな感じだ。分かったか?」
ヘクトルは頷く、それをみてセッツァーは親指を立て、笑顔を作る。
ヘクトルは知らない、その笑顔の下に潜むものを。
「さて……俺はそろそろ行くぜ。止めなくちゃいけない奴等がいっぱいいるからな」
セッツァーは槍を手に持ち、ゆっくりと進みだそうとする。
「おい、待てよ。俺も一緒に行くぜ」
ヘクトルがセッツァーの肩を掴み、セッツァーを引き止める。
セッツァーはゆっくりと手を振り払い、進み始める。
「悪いな、これはちょっと俺の問題でもあるんでな。俺ひとりにやらせてくれ。それに――」
セッツァーは指を指す。ヘクトルの背後で倒れている男に向けて。
「あいつ、あのままほっといてたら死ぬかもしれないだろ? どうか面倒見てやってくんねえか?」
ヘクトルはその言葉に多少たじろぐが、最終的にはセッツァーの肩から手を離した。
「分かったよ……その代わり、絶対死ぬんじゃねえぞ」
「ああ、分かってる」
ヘクトルと拳を突き合わせ、別れの合図を交わす。
今から歩き出そうとしたその時、セッツァーの歩みが止まる。
「そうだ、コレ。置いてくから使ってくれ。どうにも俺には扱えないんでな」
セッツァーのデイバッグから出てきたのは一振りの斧。
それを地面に突き刺し、セッツァーは闇へと向かう。
「じゃあな」
短く交わす別れの言葉。
「生きてたら会おうぜ」
「ああ、お互いな」
その言葉が宿す真意に、当分気づくことはない。
【G-6 南部、川辺 一日目 黎明】
【セッツァー=ギャッビアーニ@ファイナルファンタジー6】
[状態]:若干の酔い
[装備]:つらぬきのやり@ファイアーエムブレム 烈火の剣、シルバーカード@ファイアーエムブレム 烈火の剣
[道具]:トルネコのランダムアイテム2個(セッツァーが扱えるものではない)、基本支給品一式×2(セッツァー、トルネコ)
[思考]
基本:夢を取り戻す為にゲームに乗る
1:手段を問わず、参加者を減らしたい
2:扱いなれたナイフ類やカード、ダイスが出来れば欲しい
※参戦時期は魔大陸崩壊後〜セリス達と合流する前です
※名簿を確認しました。
※ヘクトルの仲間について把握しました。
「さて……と」
斧を地面から引き抜き、ヘクトルは倒れている男のそばによる。
万が一この男が起き上がりざまに襲ってきたときのために、武装は剥がしておきデイバッグは没収しておいた。
そして座り込み考える。セッツァーが信用に足る人物かどうかを。
通りすがりだった自分をいとも容易く信用し、さらに名も知らないこのけが人に回復魔法をかけるほどのお人よしだ。
確かに何か考えているかもしれない、しかし現在のヘクトルにはセッツァーを悪と断定する要素はない。
相手にわざわざ武器を渡し、戦力を増強させるのは並みの考えではない。
しかし可能性を考え始めればいくらでもセッツァーを疑う要素は見つかる。
「あー……めんどくせえ」
が、ヘクトルはそんな難しいことを考えるのは得意ではなかった。
未だ起きない男の隣で、ヘクトルは一人夜空を見上げる。
リーザの遺品のガラス玉を突き上げてみる。光はない夜空だというのに、妙に輝いて見える。
キラキラと、キラキラと。幻のようにビー玉は輝く。
ヘクトルを、見守るように。
【H-6 北部、川辺 一日目 黎明】
【ヘクトル@ファイアーエムブレム 烈火の剣】
[状態]:全身打撲(小程度)
[装備]:ゼブラアックス@アークザラッドU
[道具]:聖なるナイフ@ドラゴンクエストIV、ビー玉@サモンナイト3、ブラッドの不明支給品1〜2個、ドラゴンクロー@ファイナルファンタジーVI
基本支給品一式×3(リーザ、ヘクトル、ブラッド)
[思考]
基本:オディオをぶっ倒す。
1:仲間を集める。
2:ひとまずブラッドの保護、目を覚ますまでは一応そばにいる。
3:セッツァーをひとまず信用。
[備考]:
※フロリーナとは恋仲です。
※鋼の剣@ドラゴンクエストIV(刃折れ)はF-5の砂漠のリーザが埋葬された場所に墓標代わりに突き刺さっています。
※セッツァーと情報交換をしました。一部嘘が混じっています。
ティナ、エドガー、シャドウを危険人物だと、マッシュ、ケフカを対主催側の人物だと思い込んでいます。
【ブラッド・エヴァンス@WILD ARMS 2nd IGNITION】
[状態]:気絶、全身に火傷(多少マシに)、疲労(大)
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考]
基本:主催者を倒す。
1:気絶中。
[備考]
※参戦時期はクリア後。
投下終了ですー
最後のほうに焦って推敲したのでけっこうミスがあると思います……
何かあればどうぞ。
そろそろ次スレが必要だと思うんですけど、どうしましょう?
投下乙!
セッツァーめ、なんというギャンブラー!
恐ろしく巧妙な彼の手口は、これから先も皆の中を掻き回していきそうだ
果たして彼との邂逅がヘクトルの進む道にどう影響していくのか……楽しみ!!
GJ
このド外道が! 昔の仲間ですらおとしいれるセッツァが良かったです。
投下乙!
ナイスかく乱。こういうのはセッツァーの得意分野ですね。
アホみたいに強いマーダー達の中で、頭脳派で冷静なセッツァーがどこまでやれるか、楽しみですね。
そしてヘクトル斧ゲット。これで強対主催の仲間入りかな。
リーザの意思をついでやる気にはなっているが、今回のニセ情報によって空回りしないか心配……それはそれで面白いけどwGJ。
投下乙
セッツアー、いいマーダーっぷりだ
情報撹乱は結構厄介だなあ
ヘクトルを通して情報が錯そうしそうだぜ
「ひゃはは、ひゃははは! 死ねエェェェェェ!!」
遡ること数十分ほど前、彼女とちょこは突如緑の髪の男の襲撃を受けた。
振り下ろされた剣から迸る雷光。
ロードブレイザーという世界を焼き尽くしかねない脅威と戦ってきた彼女からすれば大した事のない一撃に見えた。
それでも、聖剣の加護が無い今の彼女にとっては、十分傷を負わしうる攻撃で。
当然当たるわけにはいかなくて、必死で後ろに飛び退いた。
繋いでいた手も離して。
自分が生き残る一心で。
一人だけ死の顎から逃げた。
直撃。
ちょこの幼い身体を電撃が打ち据える。
大人に致命傷を与えるには程遠い威力ではあったが、相手は幼子だ。
最悪、死んだかもしれない。
そう考えた瞬間、胸の奥が僅かに軋んで。
「おいおい、逃げやたったよ! こいつ、ガキを見殺しにしやがった! ヒヒヒヒヒヒヒ!」
「すっごーい! ピカって光ってビリビリ〜ってきたのー!! ゴーゲンのおじーちゃんみたーい!!」
「いひっ、ひゃはははは!うひゃははははは……は?」
それがどういう感情か理解する間もなく、驚愕することとなった。
無傷だったのだ。
落雷を浴びたはずの少女は変わらず笑みを浮かべ、その場でぴょんぴょんぴょんぴょん跳ねていた。
あろうことか跳ねるのに合わせて万歳までしている様は、それだけを見れば非常に可愛らしいものであったが。
「て、手前ェどおして!?」
「今度はねー、ちょこの番なの! いっちゃえ〜!」
声に合わせ炎を纏った巨大な鳳がちょこの前に顕現する。
それだけで砂漠は昼間の姿を取り戻したかのように熱を帯びた。
歪む空気、立ち込める熱風。
良く見知った光景が広がっていた。
規模こそ控えめだが、ロードブレイザーの炎は、いつもこんな風に命を寄せ付けないものだった。
「ひいぃぃぃ……っ!!」
砂塵を舞いあげつつ迫り来る炎熱に男が悲鳴を上げ、デイパックへと手を突っ込む。
怪鳥の爪と嘴が男の服を焼き焦がしにかかるなか、必死で取り出した緑色の玉を男は放り投げた。
しれで、決着だった。
鳳凰をも飲み込む莫大な量の煙が辺りに蔓延。
「けほけほ。真っ白で、何も見えないの〜」
ようやっと視界を取り戻した時には男の姿はどこにも無かった。
†††
思いっきり誤爆しました。
本スレその2の方に、きっちり全部投下しておきました。
支援感謝。