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588創る名無しに見る名無し:2009/05/26(火) 13:50:37 ID:ztBtseKP
コピペいらね
589花沢花子の憂鬱:2009/05/27(水) 01:29:59 ID:Luy/ckq4
サザエさんのカツオ周辺が中学生(2年ぐらい?)という設定で
花沢さんと早川さんの帰り道を妄想します。

カオリちゃんビッチ扱いでごめんなさい。
続編書けるならちゃんと理由考えてあげたい…
590花沢花子の憂鬱:2009/05/27(水) 01:32:06 ID:Luy/ckq4
まだ夕方の5時に満たない空は、夜が十分に照らされた青色から始まって、
しぶとく周囲を染めて残る細い赤色の光線で終わる、
全体が巨大で重苦しい虹のように見えた。

花子はその光景に物凄さを感じて、この時間には、
本当にいつもこんな空になっているのかな、と不思議に思った。

こんな早い時間に帰るのは随分久しぶりで、
明るい道を一人で歩いていると妙な気分になる。

「花ちゃん」

不意に呼び掛けられて顔を上げると、ちょうど早川さんが隣に並んだところだった。
すっかりあだ名として定着してしまって、同じ小学校出身の皆でさえ
"早川さん"と呼んでいる早川さん。

ショートヘアと人懐っこい笑顔はそのままだが、
バスケ部に所属して背も手足もすらりと長く伸びている。
テレビのCMでたまに見かけるリボンの騎士のサファイア姫みたいだ、と花子は思っている。

「今日は一人なんだ」
「うん、夕飯の買い物していかなきゃいけないから」

花子は自宅の冷蔵庫に足りないものをもう一度思い浮かべる。
今日の夕飯はお好み焼きにするつもりだから、キャベツと豚肉。卵は買ったばかり。

「私もお使い頼まれてるんだ、一緒に行こ。
 うちのお母さん"テスト週間で早く帰るならついでに買ってきてよ"って早速だよー」

(うちはあたしが晩ごはん作って片付けるとこまでやるんですよー)

心の中で突っ込んでみるが、夕飯を任されているのは、
仕事の入っている時期何かと忙しそうな両親を気遣って
自分から申し出たからであって、別に不満はない。

花子は素直に早川さんのお母さんのちゃっかり具合を彼女と一緒に笑うことができた。

それから二人は"部活ないと身体鈍るねー"から始めて、お互い今下げているビニールの袋の中には
女子にあるまじき臭いを放つ部活用シューズが入っていることを暴露したり、
テストへの不安や愚痴を話しながら買い物を済ませていった。

花子の家はこの本通りを真っ直ぐ行った駅前の不動産屋、
早川さんの家はもう少し奥まった所にある住宅地だ。
この辺りがちょうど分かれ道になっていた。

「花ちゃん家駅前でいいよねー買い物も便利だし」
「でも線路の側だと電車の音がうるさいよ。2階はカーテン閉めっぱなしだし」

あぁ、まあねぇ、と早川さんはあっさりと納得してみせた。
591花沢花子の憂鬱:2009/05/27(水) 01:33:08 ID:Luy/ckq4
何となく離れ難いのか、彼女は話題を変えて話を続けた。

「…何か中学入ってから、皆ばらばらだよね。
 昔と全然違う人みたいで…時々これで良かったのかな、って思うことがある」

表情のつかめない顔で静かにそう言う早川さんを見ていると、
花子には彼女がそれを自分に伝えたくて追いかけて来たのかもしれないな、と思えた。

中学に入ってから女子は(男子もそうかもしれない)可愛くて積極的な子と
地味で大人しい子に別れて、更に何らかの基準で細分化されたグループを組むようになった。

早川さんはいつの間にか花子とは別のグループに所属することになっていたが、
以前に比べて他所よそしくすることはなく、今のように機会があれば親しく話す仲だった。

ただしその機会自体が滅多に訪れないのだが。

「…花ちゃんが最近元気ないのってカオリが原因?」

驚いて顔を上げたとき、また自分が俯いていたことに気付いた。
これでは一目見て分かるはずだ。

「…え、カオリちゃん?」
「だってどう見てもカオリ、花ちゃんのいるところで磯野くんにベタベタしてるんだもん!
 磯野くんもカオリにヘラヘラしてるし…」

やはり花子が小学校から未だに磯野カツオを好きでいる、というのが周囲では前提となっていた。
確かにあの頃はよくあれだけ周りの目も省みずあからさまにできたものだと思う。

「あの、早川さん。あたしもう磯野くんのことは別に…」
「え!?そうなの?」
「今にして思うと、あたしが押し掛けるといつも迷惑そうだったし、
 中学に入ってからもこんなのと噂されて、磯野くんも可哀想なもんよね」

ははは、と念を押すように笑ってみせた。
592花沢花子の憂鬱:2009/05/27(水) 01:34:03 ID:Luy/ckq4
けれども元気がないと言われる原因は確かにその辺りにあった。
カオリが自分を目に留めると、思いついたように磯野カツオを
構い始めることに、花子は既に気付いていた。

今はグループが違うし全く話さないといっても、小学校では仲良しだったカオリが
自分の弱点を突くようなやり方で嫌がらせをしてくることは純粋にショックだったし、
磯野カツオに対する気持ちの切り替えもまだほとんど出来ていなかった。

それどころか実際花子は変わらずに彼のことが好きだった。

それなのに異性に堂々と好きだと言えるような容姿や立ち振舞いが、
自分には無いということが彼女を酷く悩ませていた。

磯野カツオに面食いの傾向があるのもそうだが、
世間というのは男も、女でさえ美しい女が好きだ。
余程のことがなければ美しい/可愛いだけで初めから人望があり、
信頼され、何より発言権がある。

自分のように豚鼻で肌も別にきれいではなく、寸胴で、
肩と脚が筋肉と脂肪でぱんぱんに膨れ上がったような女が何を言っても
可笑しみの対象になってしまうことは、花子はよく承知していた。

(バレーじゃなくてバスケ部にしておけば良かったな)

全ての原因はこうして花子の中で一つに繋がっていた。

「花ちゃんがもうそんなに好きじゃないって言うんなら仕方ないけど、
 絶対自分なんかって諦めちゃ駄目だよ!」
「うーん、そう…だねー」

曖昧に頷きながら、まあこいつには一生分からねえだろうな、
という異様に乱暴な気持ちを、まさか早川さんに対して抱いてしまった。

自分たちの間にはどうしようもない隔絶が広がっている気がした。
593花沢花子の憂鬱:2009/05/27(水) 01:35:09 ID:Luy/ckq4
「…それにしても、カオリちゃんどうしちゃったんだろうね」

気まずい話題を変えるために言ったことだったが、
それは花子が純粋に疑問に思っているところだった。

「私あの子にどういうつもりなのか聞いてみたんだ。
 そしたら別に花沢さんのことは嫌いじゃないし、からかってるつもりもないって。
 …そんな訳ないじゃんね。
 何か私も知らない高校生ともメールしてるみたいだし…」

「それって…ちょっとヤケになってるみたいだね。
 カオリちゃんって早川さんにも悩みとか話したりしないの?」

「全然!いっつもニコニコしてるだけで自分のことは言わないの。
 …私の方はずっと親友だと思ってきたんだけど…」 
無理やりに一瞬だけ明るく作った早川さんの表情に、再びじわりと悲しみが染みる。

小学校の頃からカオリと早川さんが一番近くにいるのは当たり前のことだと
花子を含め皆が思ってきた。
けれどもこの二人の間にもやはり立ち入ることのできない部分があり、
最近はそれが大きく広がってきているのだと今本人から打ち明けられている。
とても痛ましいことだ、と花子は思った。

「だから…なのかな、今は私が花ちゃんに謝らなくちゃ気がして。
 本当は関係なんかないのにね。
 …それなのに結局こっちが話聞いてもらっちゃった」

早川さんはもう一度曇りを振り払って、
"何かあったら今度は私が花ちゃんの話聞くからね!"と言いながら
自分の道を帰って行った。

花子は彼女が息苦しそうに呟いた言葉を思い出していた。
"…何か中学入ってから、皆ばらばらだよね。
 昔と全然違う人みたいで…時々これで良かったのかな、って思うことがある"

自分は恥を知って慎みを覚えたつもりでいるけれど、
果たしてそれで以前より良くなったことがあるだろうか。
けれども小学校の頃、磯野くん磯野くんと呼びかけながら町内を駆け回り、
何の不安もなく彼とずっと一緒にいることを夢見ていた頃には、
どうにも戻れないような気がした。

(お好み焼きなんか食べてるから太るんだ…晩ごはん、食べたくないな)

もちろん花子の両親がそんなことを許すはずがなかった。
でもカオリちゃんのお家はそんな我が侭を平気で言えるのかもしれないな、と
彼女の人形のように細い脚を思い浮かべながら花子は勝手に想像した。


594花沢花子の憂鬱:2009/05/27(水) 01:36:49 ID:Luy/ckq4
以上です。
やまなしおちなしいみなし、ある意味801だな、こりゃあ。
595レス代行:2009/05/27(水) 10:38:48 ID:GPvILFFd
悩める感じがよく出てておもしろかったよー
596創る名無しに見る名無し:2009/05/28(木) 10:02:13 ID:BQ7deoaN
タイトル「ベイビーブルー」
夫は子どもを介護要員として産んでねと言う。
このグローバル化した現代において何を言う…と思いつつ、これは
夫の症状なのだと思うことにした。私は不妊の気があり、子どもはできやすいが、
流れやすい、すなわち流産しやすい体質だと最近知った。あっさり告知する保健師には
あきれたが、言われないよりはよかった。私はすぐに、かかりつけの心療内科へ足を運び、
薬の処方箋を産婦人科病院へ渡し、医療機関どうしの連携をお願いすることに成功した。
こんなことができるなんて。私は子どもをあきらめようかとまで思っていたのに。
でも、そういった話をすると主人は「ほかの人と子どもを作るよ。」とのたまった。
ほかの女に生で、中で射精するってこと?私はいまだにショックから立ち直りきれていない。
主人が浮気する生々しい妄想に支配されつつも、私はこの地獄から這い上がりたい。
大悪起これば大善来たり。これは地球そして宇宙を支配する大法則なのだから。
大善は必ずやってくる。それが夫との赤ちゃんとなってやってくるのか、夫との別れとなってやってくるのか。
それは結局、仏のみぞ知ることなのだろう。何、万一夫に捨てられようと、今流行りのイエガネーゼとやらになってお気楽?に
生活してみるのも悪くない。私は悪運は強いほうなので、もし家がなくなってもどうにか安全に生活できると思う。
私が夫から追い出されたら、夫はほかの女とすぐくっついて幸せになるのだろうか。それとも突然自殺するだろうか。
前者であっても後者であっても、私の人生とは関係ない。関係ないんだ。
夫の福運がどう現れるか。それだけだ。それだけなんだ。
私は夫に捨てられるよりは一緒にいたい気持ちが強い。だからずっと一緒にいたい。
誰も私の夫を略奪しないでほしい。お願いだ。勝手に夫と家族気取るのはやめてくれないか、他人女様よ。
私は夫にとって他人じゃない。他人じゃないんだ。わかってくれ。わかってくれよ!!!
殺されないとわからないのか?刺されないとわからないのか?刺されても、わからないなら殺すよ、殺してやるよ。
住所は、わかっているし、職場もね。いつ私に刺されてもおかしくないって、覚悟しておいてよね、
夫と恋に落ちた子持ちのm.oさん。夫はあなたのこと「友達じゃないよ」って主張するの。
それって特別な人ってことよね。もう絶対許さないからね。絶対殺すからね。
じゃあね、今夜はもうあなたの命はないと思っておきなさいね。

(終)
597創る名無しに見る名無し:2009/05/28(木) 11:27:03 ID:2Ur1Dto6
怖っ!普通に怖かった
598596:2009/05/29(金) 09:04:31 ID:Se25npSc
>597
ご感想ありがとうです。怖い話でスマソ

タイトル「死ねって言うな」
死ね。これほど人の心を凍てつかせる言葉もないのではないか。
私はこの沖縄のヤンキー文化なごあいさつにどれほど憂鬱になってるか。
梅雨どきの気候も関係しているのか、いないのか…人は今憂鬱な状況のときが多いのか。
私だけが憂鬱ではないはずだ。こうして愛するあなたに思いを綴っているときは憂鬱を
忘れる私は、憂鬱になるとこうして思いを書き込みたくなる。
忘れられない人は数人いる。体の関係を持った人は夫以外には二人しかいなくて、そのうち
一人はとにかくイケメン。もう一人はゆきずりの普通の人だったので名前も覚えていない。
でも、体の関係を持ったイケメンへの未練はすっかりなくなった。女って、立ち直れるものだなあ。
男の場合はどうなんだか。うちの夫はほかの女と性行為をすることに非常に興味があるようで恐ろしい。
性感染症の恐怖もなにも知らないセカンドチェリーボーイ症候群か?不倫という概念が彼の頭にはない様子。
それは私もそうだが、何せ相手がいない。募集しているわけでもないので当然だが。
夫は、とある独身女性からアプローチを受けて非常に幸せそうだ。私はまさに彼の好きな女の代わりにとりあえず抱く的な週一セックス付き
家政婦なのである。そう考えると、ハワイへ逃亡したくなる。しかし逃亡しても人類の業からは逃げられないのだろう。
どんなにお金があっても。どんなに頭がよくても。宿命を転換しなければ、環境を変えても同じ。人間革命が必要だ。
それが私の使命なんだ。だから夫よ、リアルにほかの女もしくは女の子もしくは積極的なグロオバサンを抱きに行くその前に、
ちょっと待ってくれないか。
あなたを宇宙一愛しているのは、ほかならぬこの私なんだからね。
だから死なすって言うな。通りがかりの沖縄県民もね。人を見れば死ねって言うの、すぐにおやめなさい。
あなたが余計不幸になるだけだよ。私は余計幸せになるだけです。言った側じゃないから。
いいですね?犬や猫でも死ねなんて言わない。沖縄県民の少ない欠点は早く直しなさい。
思いやり予算でゆとり脳になっているのはわかるけど、もうちょっとモラルについてお勉強、一緒にしよう。
私も沖縄県民にそまってるので…。とりあえず私の尊敬する人以外は死ね。

(終)
599596:2009/05/29(金) 18:02:01 ID:Se25npSc
タイトル「斡旋魔マサル」
私の夫の知人に、斡旋魔マサルという男性がいる。
この男は、夫のことを、そして自分のことを可愛く思うあまり、
職場の、これはと思った女性と夫を性交させようと躍起になっている。
つい先日も、奴は、夫に飲み(無料情婦人斡旋)に誘う電話を架けてきたので「学生じゃないんだから…」
と、たしなめ、その日の飲み参加は阻止できた。いやはや、これほど危険な知人がいたとは。
結婚してから世間というものの厳しさが別の角度からわかるようになってきた気がする。
奴は、「とりあえず、俺のオキニだがまだ抱いていない亜矢を四の五の言わず抱け」
といった、男どうしの絆を深める儀式的な、かなり一般人離れした言動を、私たちが結婚した後も数か月おきに、
忘れた頃にしでかそうともがいている。断末魔め。お陰さまで夫への愛情が本物だと再認識できたではないか。
ありがとう!もう、私達夫婦はお前に用はない。もちろん、その情婦にもまったくもって用はない。同情の余地はない。
夫よ、奴とはとにかくもう二度と連絡を取らないでくれ。電話には出ず、メールも返信しないのが常識だ、そんな破廉恥魔。
頼む、夫よ。そんな悪魔達とは二度とコンタクトしないでくれ。でも、もう大丈夫だよ、罠に気付いたからね。
そんな悪魔とは、絶縁するのが良識派日本人の感覚だぞ!時間の使い方をもっと価値的に!
そばにいる誰かさんをもっと大事にしてやれよ、と自分でも思う。
身近な本当の悪魔を見抜き、打ち砕く、もっと高尚な人間となってくれ。頼む。そうでなければ、後進の人類に申訳が立たないではないか。
お願いだ、土下座もする。夫よ、あなたに情婦を斡旋してくる魔が存在する事実は、私の宿命が現れたのだね。
斡旋魔よ、早く消え失せろ!人類にとって目ざわりだ。社会のゴミだ!
妻より

(終)

600創る名無しに見る名無し:2009/06/04(木) 22:59:04 ID:qZUdsfpc
高校の時に書いたやつを発掘したんで記念に投下。

タイトル「七夕の夜」
傘をさした男の子は、女の子に会いました。
女の子は不思議な歌を歌いながら、逆さまに広げた傘をくるくるくるくる、回していました。
しとしと雨が、傘の中で水たまりになっています。
「何してるの」
女の子がびっくりして振り向きました。ぱちゃん、傘の水たまりが揺れて、ちょっとだけ零れたみたいです。
「あ……、おどかして、ごめんね」
女の子は首を振って、男の子の手をとりました。
そうして、びっくりしている男の子を見つめて、可愛らしくほほえみました。
「ううん、私こそ。こうしないと、あなたと話もできないの」
女の子が体を動かして喋るたび、髪から頬から、細かな雨の粒が散ってゆきます。
それなのに、女の子は傘をひっくり返そうとはしないのです。
男の子はそれを尋ねました。
「空のお水を集めているの」
女の子が答えます。
「天の川が渇いてしまっているから、空のお水を集めなくてはならないの」
成る程、そうなんだろうな。男の子は思いました。
これだけ雨が降るのですから、天の川だって渇くのに違いありません。
男の子は、手伝ってあげることにしました。
  * * *
霧のような雨が降る中で、男の子と女の子が笑っています。
二人はしっかり手をつなぎ、逆さまに傘を持ち、それぞれの言葉で歌を歌っています。
段々と濃く深くなっていく霧の中、二つの歌は一つに混ざり、高く高く響きます。
やがて、宵闇と霧とで二人の姿が見えなくなった頃――男の子は、女の子と同じ歌を
歌っていることに気がつきませんでした。
* * *
七夕の夜が明けて、一つの町から、子どもが一人消えました。
たくさんの人が何日も探していましたが、消えた子はどこにも見つかりません。
そして誰も、天の川に増えた小さな一つの星には気づかないのでした。
601創る名無しに見る名無し:2009/06/05(金) 09:53:03 ID:gTzYkwQs
これは…美しい
602創る名無しに見る名無し:2009/06/05(金) 13:23:55 ID:9bhppmki
一ヶ月後にもう一度読み返したいと思います。
603創る名無しに見る名無し:2009/06/05(金) 18:17:04 ID:TvKNfLYu
ああ、投下する時期を間違えたんだな…
604創る名無しに見る名無し:2009/06/06(土) 02:38:32 ID:0t4jKuWb
なんとも美しい…
605創る名無しに見る名無し:2009/06/06(土) 09:29:31 ID:MzWdDVmB
『出生前性格診断』

「根はいたって真面目ですが、心配性……というか、不安を抱きやすい性格です」

「ふむふむ」

「事前に結果を踏まえておかないと、なかなか次の行動に移ろうとしないようです」

「なるほど」

「あと、人の意見を鵜呑みにしがちな傾向があります。受身の姿勢を改めさせたほうがいいでしょう」

「わかりました。本日はどうもありがとうございました」


 妊婦が立ち去った後、産婦人科医は看護婦に向かってつぶやいた。

「要するに、カエルの子はカエルってことだよ」
606創る名無しに見る名無し:2009/06/07(日) 11:10:10 ID:eriTOOXu
猫と金魚


私は金魚が好きだ。
夕焼けをぎゅっと詰め込んだような体、綺麗。
まあるい水槽の中は、いつだって夕焼けが泳いでいる。

私は金魚が好きだ。
あなたの赤は綺麗だと褒めると、
あなたの黒だって綺麗よと笑ってくれる。

私は金魚が好きだ。
外の世界の話を聞かせてやると、
虹色の泡をぽこり、ひとつ、ため息をついて、
『私も広い世界に出たいわ』

私は金魚が好きだ。
けれど私は猫だから、どうにもしてやれない。

だから、そうだ。

私は金魚が好きなのだ。
金魚も私が好きなのだ。
おおきな声を出したり、あばれたりもしないのも、


私と金魚はいつも一緒だ。
今も、これからも、ずっと。

ちいちゃな夕焼けを抱えて、
そう、こうやって、
世界を見せてやる事に決めたのだ。
607606:2009/06/07(日) 11:11:10 ID:eriTOOXu
以上です。
ほとんど詩のようになってしまいましたが…
608創る名無しに見る名無し:2009/06/07(日) 14:24:11 ID:4+ivQFF3
かわいい
609創る名無しに見る名無し:2009/06/11(木) 00:46:12 ID:dkWD8xRf
どこへ書けばいいのかわからなかったもので……ここに投下させて頂きます。ある、勧誘する、男

「なぁ、だから、脱いでくれれさえすればいいんだよ。な、簡単だろ?」
「絶対に、嫌よ。何回言ったらわかるの? いいから、帰ってちょうだい。こんな夜中に、迷惑だわ」
「…ふざけんな! お前、うちから金借りてんだろ、なぁ。何生意気な口利いてんだ、あぁ!!?」
「辞めてよ! 辞めて、蹴らないで、扉が壊れちゃうわ。そう言えば、最近、ここら辺に、パトカーが多くいるのよ。わたし、いいのよ。借金取りに脅されてます、って、その人たちに、言ってもいいのよ」
「言ったら即、お前の首は飛ぶけどな。それでもいいなら、言えばいいじゃねぇか!あぁ!?」
「……。だって、それに、その借金だって、わたしの父親が作ったものよ。わたしには、一切関係ないはずだわ」
「あるだろう、お前の、親だろ?」
「理由になっていないと思うわ」
「うるせぇ! いいからさっさと開けろ! AV一本出りゃあ、借金をちゃらにしてやってもいい、つってんだ。何も一生、AV女優として生きろと言っている訳じゃない。な、いいだろ? わかったら、ここを開けろ!」
「……どうしても、どうしても、無理なのよ」
「…あぁ?」
「そうよ、無理だったのに…。アナタが、そんなに、強く言うから……。それなのに、何で、どうして、また来るのよ……。こんなことされたら、わたし、わたし……」



「もう一度、殺すしかなくなるじゃない。」
610創る名無しに見る名無し:2009/06/11(木) 07:15:56 ID:k2+VgJoR
ごめん。
理解力不足だと思う。
でも、意味がわからない。
611創る名無しに見る名無し:2009/06/11(木) 08:37:42 ID:m4Ji/HOn
要するに借金取りを殺してどっかに埋めたか捨てたかしたんだけど
そいつが幽霊になってまだやってくるっていう話かな?
612創る名無しに見る名無し:2009/06/11(木) 11:02:06 ID:dkWD8xRf
>>611
そうです!男の方は、自分が女に殺され、幽霊になったのにも気付かずに、生前と同じく、借金を取りに現われる、という話のつもりでした…
すみません、私の勉強不足です。出直してきますノシ
613創る名無しに見る名無し:2009/06/11(木) 12:45:36 ID:4U/ZAcdc
どうやってもう一度殺すのかもわからんよ
614創る名無しに見る名無し:2009/06/11(木) 13:12:32 ID:m4Ji/HOn
そこはそれ、精神的に追い詰められて錯乱した女性の言うことだから…
とはいえ怖さはあまり感じなかった。なんでかな?

まぁオレはホラーものを書いたことはないし書けないから、偉そうなことは言えないけどね
人を怖がらせるのと笑わせるのは本当に難しい…
615創る名無しに見る名無し:2009/06/11(木) 21:32:31 ID:g8ZFsb0g
>>609
一行目に、
男は靴も脱がずに上がり込んできた。
とか一文入れてみたら?
616創る名無しに見る名無し:2009/06/16(火) 17:54:36 ID:JQ/hWJNd
届かないラブレター

『元気ですか?
 私は相変わらず元気です。
 あなたと会えなくなってからしばらくたちます。あなたが風邪などひいてないか心配です。
 気がつくと、いつもあなたのことを考えているんです。
 あなたは今どうしてるんだろう?
 あなたは今何を考えてるんだろう? って……。
 おかしいですよね?
 そんなに話をしているわけでもないのに。それでも私は気がつくと考えちゃうんです。
 実は、ずっと、あなたに伝えたいことがあったんです。
 私……あなたのことが……』


 最後まで書いた手紙を封筒に入れる。
 そして、机の引き出しに入れる。
 そこには、今まで届けられなかった思いがある。
 出されることのない手紙。でも、それで十分。

 彼女はそう思った。
617創る名無しに見る名無し:2009/06/30(火) 14:05:05 ID:Fr2+UzJs
禁断の人妻テルミ

私の夫は、人妻を囲む会(飲み会やバーベキュー)にときたま参加しては、人妻漁りをしている。
その会に参加している人妻は、テルミとK子(K子は親友なので仮名にします)。
K子は、もうすぐ旦那さんと転勤で引っ越すみたいなので、転勤先で男漁りをするのだろう。
しかしテルミは違う。あくまで地元で漁るらしい。しかも旦那さんのいる目の前で。
人妻を囲む会に、以前は私も参加したかったのだが、やはり倫理的におかしいと思い参加は思いとどまった。
それに、夫が私の参加を絶対に嫌だと言うからだ。
夫は身勝手だと、前は思っていたが、今は違う。夫はこの会に狩りに行っているのだから、メスの私は家に
いろというわけだ。
テルミ、今はあなたの人生バラ色かもしれない。でもね、そんなに男漁りがしたかったら離婚すれば。
でも、夫は渡さないから。
イケメン旦那さんにも謝りなさいよ、テルミ。あなたは旦那さんにご不満があるのね。だから漁るのね。
もうよしてちょうだい。お願いよ。何がバーベキューよ。何が飲み会よ。
早く帰って旦那さんと子づくりに専念しなさいよ。
あなた、私の夫との子どもがほしいのね?嫌よ、夫が許しても私が許さないから。
まだ、あなたを囲むハーレム会を開催するなら、私だって黙っちゃいないのよ。
公務員だからって調子に乗らないことね。最近は公務員だってリストラされるかもだからね。
ああ、だから漁ってるんだ、正社員の私の夫を。嫌ね。家つきのイケメン旦那様のお給料が
安いから、仕事がダサいからって、バーテンダー正社員の私の夫が、ちょっと結婚指輪をつけ忘れて
飲み会に参加したからって、何もあなた目当ての参加というわけじゃないから。K子のことも好きなんだから。
夫はB型だから、好きな人が100人以上いるのよ。参るわ。だから勘違いしないことね。
テルミ、you will killed by me soon!

(end)
618創る名無しに見る名無し:2009/07/21(火) 14:24:23 ID:6qa1sJlB
2009.21.7.21
 「何となくある」
 「その気持がだんだん大きくなると思うよ。それは何でと言うより、人間が持って
埋まれば本能なんだ。動物と同じで、誰にも教わらなくても誰かを好きになると
その人と唇を合わしたくなったり、、それに男と女が抱き合い、男のおちんちんが
自然に大きくなり、女の人のあそこに入たくなる、そして子供が出来る。これは
理屈じゃなくて、自然にね」
 「男の人はおちんちんを触られると気持いいんでしょう」
 「何で知っているの」
 「それは誰に触られても気持いいの」
 「それはどうかな、好きな人だけかと言うと好きな人だけとは言えない。好きな
人に触ってもらったほうが気持いいと思うよ。でも、好きとは関係無しに触られたり
するとおちんちんは大きくなる。握ったり、摩ったり、しごいたりして刺激すると
大きくなり硬くなって棒のようになり、気持も高ぶり、大きくなったおちんちんを
女の人のあそこに入れたくなるんだ。好きな人の場合は触られ無くても自然に
考えただけでおちんちんが大きくなるし、話している途中に大きくなるときもあるね」
 「そのとき、エッチな話をしなくても、大きくなるの」
 「それはそのときの二人のいる場所にもよると思うけどね。好き同士が二人だけ
だったら余りエッチな話はしないだろう。恋人同士はどんな話をしていてもお互い
の体を寄せ合ったり、触ったりして、いつの間にかお互いを欲しくなり、男は
その気持がおちんちんを大きくするし、女の人も体を触って欲しいとか抱いて
欲しいと思い、男は女の人のあそこにおちんちんを入れたくなり、女の人は
あそこに男の人のおちんちんを入れて欲しいと思う訳だね」
 「若松さんとお母さんも好きだから、抱き合っていた訳でしょう、今、こんな話を
すると若松さんのおちんちんは大きくなる訳」
 「そうだな、少し大きくなったかな、誰でも男は女の人とこんな話をすると大きく
619創る名無しに見る名無し:2009/07/21(火) 22:36:52 ID:QEpDOybg
手紙読みました。
あなたの手段は非常にいいアイディアだと今も思っています。
しかし残念なことに『書いた』ということを忘れることがなかったために
「なんとなくやってみたら手紙を見つけた」ということは出来ませんでした。
元から無理な話だったのでしょう。
それと抽象的な書き方が多すぎです。他人であることには変わりないのですからもっと具体的に書きましょう。
あなたはその後、少しだけ行動をしました。ほんのわずかだけど前進しています。
ただそれはいずれは後退へと繋がるものです。早めな転換を私は望みます。
さて、堅苦しいのはこのくらいにして今回は彼女について話したいと思います。
私が指す『彼女』があなたの指す『彼女』と同一人物であるかどうかわかりません。
ただ今の私からすれば必ず同一人物であると言い切れます。その理由はあなたもよくご存知かと。
『彼女』に出逢ったのは高校時代のことでした。
当時私はどこの部活に入ろうか悩んでいるとき、友人がいるという理由でとある部活に入部しました。
そのとき居た同級生の1人が『彼女』でした。それはあなたもよくご存知かと思います。
最初はなんてことないはずでした。普通の同級生。ただそれだけのはず。
だけど私が1人でいるとき、『彼女』はなぜか近くにいました。今でも理由はわかりません。
ただの思い過ごし、偶然、気まぐれだったのかもしれません。人の考えることなど奇奇怪怪ですから。
だけどあの日。思い返せばあの夕日を見たあの時。なぜか黙って隣にいてくれた『彼女』。
前述した通り、人の思考など奇奇怪怪。私には人の気持ちを理解することなど出来ません。
彼女がどう思って私と2人で夕日を見てくれたのかはわからない。
でも私にとっては『彼女』が特別な存在になりえる十分な出来事だったのです。
だけどすぐにはそれに気づけませんでした。結局気づいたのはその1年後。
告白など洒落たことをしたことない私はこのまま気持ちを収め続けるのだろうと思ってました。
『彼女』とはちょっとだけ仲がよく、たまにメールする程度の関係。素晴らしい関係じゃありませんか。
だけど『彼女』が彼氏が出来たとメールしてきたあの日。自分の手でそれを壊しました。
なぜあのとき告白してしまったのだろうか。なぜ過ちを犯したのか。今となっては知るよしもありません。
ただそれからだんだんと疎遠になって行き・・・今に至るというわけです。
結局私は変わることなど出来ません。
やろうと思えば彼女に連絡は取れます。でもそれが出来ません。
あなたならわかるはずです。
自分が『彼女』に嫌われてると思い、連絡を取らない。
それは違うでしょ?
『彼女』に直接、嫌いと言われるのが嫌だからなんでしょ?
どんなに『彼女』を愛しても愛しても愛しても。『彼女』のことを考えるだけで切なくくらい愛しても。
結局行動なんて出来ない。メールのひとつすら打てない。
永遠に変わることなどない。
望みが叶ったじゃないか。俺はあの時、望んでいた底辺に辿り着いたんだよ。
あんたもどうせそこにいるんだろ? 何も出来ない蛆虫のように。
これを見るのがいつの俺かはわからん。が、いつかの俺であるあんたよ。
俺はここに誓うよ。
作家が全てを糧にするように。俺はこれを糧にして作品を書く。
それが俺に出来る唯一の抵抗だと信じてるから
620創る名無しに見る名無し:2009/07/22(水) 04:54:45 ID:sVCdcZfP
相変わらず尖がった作品が多いなぁwここまで感想が付け辛いスレも珍しい

よっし! 480KB越えたし次スレ立てようぜ!
テンプレは>>の18禁リンク取っ払ったのでいいのかな? 立ったら俺の昔書いたポエムを晒すかも試練
621創る名無しに見る名無し:2009/07/22(水) 08:23:40 ID:jkr4AzKm
基本的に18禁以外なら何でもあり、書き捨てもOKですが、その分感想も
付きづらいかも知れません、といった文面もテンプレにつけ加えた方がいいだろうか…
622創る名無しに見る名無し:2009/07/22(水) 09:36:08 ID:0VRhxoQ5
2009.21.7.22
 「おはよう。良さん。早かったね」
 「おはようございます。久しぶりですね」
 「会うのはね。元気そうね」
 「まあまあですよ。でも、今日は仕事の話は無しでしょう」
 「そう、私は仕事に行くのよ。良さんにも手伝って貰わないと」
 「本当ですか。こんな格好でいいんですか」
 「そうね。ばっちりよ。私のはどう」
 「ばっちり」
 若松は安井社長の車に乗り、安井社長は助手席に座り、何が起こるか分らない
2日間のドライブの始まりだ。安井社長は笑いながら車の外を見ながら、
 「久しぶりね、何とか時間作ったの、良さんは大丈夫だった」
 「大丈夫ではないですよ。でも、社長の言う事は第一ですからね」
 「そうよ。聞いて貰わないと」
 安井社長はいつまでも笑っていた。
 「何がそんなに可笑しいのです」
 「可笑しいのよ。良さんといると何となく、可笑しくなる。いいでしょう。二日間で
しょう。嬉しくない」
 「それはそうですね。嬉しいと言えば嬉しいし、何か事故でも起きたら大変だな
と思ったり、でも、社長が楽しいのなら、何も言う事はないですよ」
 「打ち合わせが2時なの間に合うかな」
 「なんだ、仕事もするんだ」
 「仕事だから、出られたのよ。そんなに時間は掛からないから、何処かで
待っていて欲しい」
 「そうなんだ。何時間ぐらいです」
 「30分位か一時間かな、終わったら連絡する」
 車は山間部に入り、景色は田舎の風景になり、安井社長は相変わらず楽しそうに
話し続けていた。
 「田舎か、私も田舎育ちよ。子供のころは色々会ったな、良さんは子供の頃、
お医者さんごっこした」
623創る名無しに見る名無し:2009/07/22(水) 19:42:01 ID:+PnTWoLu
 危機的状況というのは人生で何度もあることではないだろう。何度も危地に陥るよう
な人は、おそらく自らそれを望んでいる方か、あるいはたいへん不幸な方であるかの
どちらかだと言える。
 が、平凡な人生を送っていても、時にそのような状況に直面することは、ある。
 ところで、あなたも嫌いな食べ物や料理というものを一つや二つはお持ちだろう。私も
それらが無いではないが、おおむね好き嫌いは無い方だと思っている。
 ただ、それはその食べ物または料理が、少なくとも平均的な出来である場合だ。
 不味い食べ物というのは、むろん食べる当人の主観的評価によるものが大半である。
好みの問題もあるし、その時々の気分によって評価も変わるだろう。しかし――この世
の中には、絶対的に不味い食べ物というのも存在する。いついかなる人が食しても、
すべての場合において高いマイナス評価を得るだろう存在だ。
 幸運なことに、それは絶対的に美味い食べ物と同様、そう頻繁にお目にかかれる存在
ではない。万が一遭遇しても、そのような食べ物には(これも美味いものと同様)オーラ
というものがあるから、普通は事前に回避することが可能だ。

 しかし、その絶対的な不味さ、それを具備した存在が――今、私の目の前にある。
 
 なお悪いことに、私はそれから逃れることはできない。なぜなら――

「ね、ゆーくん」と彼女は言った。「お話もいいけど……そろそろご飯たべないと、冷め
ちゃうよ?」
「あ、そーだね、しーちゃん」と私は答えた。「……そうだよね、冷めちゃうよね」

 ……念のため言うと、私たちはUとCという仮名で呼び合っているわけではない。私
たちの名前の中に同じ音を含む文字があるというだけの話だ。……ともかく、私たちは
そのような略名で呼び合う仲ということはご理解いただけるだろう。ともあれ、――

 私の眼前に鎮座するのは、冷めるどころかいまだに湯気をたてている物体だ。全体
的に赤みがかっているが、ところどころ黄色や白のねばついた部分が見える。盛り上
がった全体の端の方は焦げ付いて皿に貼りついているようだ。それでいて、中心部
は奇妙にやわらかそうで、うかつにフォークを差し込みでもしたら一生忘れられない
ような色の物体が溢れ出てきそうである。
 彼女はこの料理をオムレツと言った。だが私にはこれが料理にすら見えない。

「あ――そうだ」私は背中ににじむ冷や汗を自覚しながら言った。「しーちゃんは、
何か食べないの? ぼくばっかりおなかいっぱいになるのなんて不公平じゃない」
「ゆーくんはやさしいね」彼女は天使のように微笑み、「でも、だいじょーぶ。それを
つくるときに、いっぱい味見したから」
 そっか、と私は笑った。

 ここで、彼女が味見したというのだから少なくとも人類の味覚が耐えうるレベルの
不味さだろう、という推測をするのは危険である。彼女が嘘をついているというのでは
ない。彼女はその点、天使よりも純粋で誠実であることを私は保証する。
 だが不幸なことに、彼女の味覚が人類の規格内に収まっていることを、残念ながら
私は保証することができない。
 しかしそれはある意味で当然かもしれない。彼女はあらゆる点で人並みをはるかに
超えた女性だ。その容姿については――あえて言う必要もあるまい。そして彼女は、
何よりその内面において、どんな表現でも言いつくせないようなすばらしい人間だ。
味覚においても、そのような筆舌し難さが現れたに過ぎない。それが長大なマイナス
方向のベクトルとして現れたのはやはり残念であるが。
 神は二物を与えず、という。だが神は彼女に限っては大盤振る舞いしたとしか思え
ない。問題は神が完璧主義者ではなかったことで、どうやら最後の一つについては
鼻をほじりながら適当に選択したとしか私には思えないことである。
 さて――神や仏に祈っても、ましてやそれらに責任を押し付けようとしても、このオム
レツがこの世から消滅するわけではない。今この瞬間この世の終わりが来るというの
なら別だが、幸か不幸かそうなる様子はなく、ただ時間だけが過ぎてゆく。

「ゆーくん」彼女は言った。「……もしかして、おなかの具合、わるいの?」
 その心配の感情以外に何の疑いもない瞳に、私はすべてを白状してしまいそうに
なる……だが、ここで真実を告げれば、彼女が傷つくことは必定だ。たとえ彼女が
624創る名無しに見る名無し:2009/07/22(水) 22:05:38 ID:+PnTWoLu
その場ではちょっと困った笑顔で謝ったとしても、もっと奥深いところではひどく
傷ついているということを私は知っている。私は彼女を傷つけたくないし、それくらい
ならこのオムレツをかきこんだ方がましだ……。
「ううん、そんなことないよ」私はどうにか笑って言った。

 腹の調子が悪いのは事実である。葛藤とストレスに苦しむ私の胃が、このオムレツ
を受け容れてなお活動を保っていられるかどうか、私には自信がない。それ以前に、
私の舌と喉がこの物体の通過を生理的に許可するかどうか、私はなんとも言えなか
った。
 愛する人のためなら死ねるという人は多くいるだろう。私も僭越ながらそのような
人間のひとりであるつもりだ。だが、愛する人のためなら人糞四人前を食べられるか
と言われれば、躊躇する人が大半ではないだろうか。むしろ喜んでそれを行える人
は、特殊な性癖の人間だとしか思えない。もちろん、彼女の料理が人糞並だと言って
いるわけではない。それ以下の可能性もわずかながらあるのだ。
 ここで誤解の無いように述べておくと、私は彼女の人格について悪意をもって述べて
いるのではない。私はただ、彼女の料理について客観的な評価を下し描写しようと努力
しているだけだ。私はたとえ彼女の料理が生物兵器に認定されようと彼女を愛している
し、彼女の生物兵器、もとい料理を食べる覚悟もある。これは比喩ではない。
 覚悟はある、が――いざそれを目の前にすると躊躇してしまうのが、私の弱さだろう。
しかしここで躊躇しないというのも、やはり人間として問題がある気がする。これなら
まだ、彼女のために死ねと素直に言われた方が楽かもしれない。

「ゆーくん……」彼女は深刻な顔で言った。「……もしかして、ゆーくんって――」
 私はあわててそれを遮ろうとした。
「い、いや、しーちゃんの料理はまず――」
「――ゆーくんって、オムレツ……きらいだった?」
 私は一瞬、ぽかんとした。その瞬間、私の脳内をいくつもの計算が同時に駆け巡った。
「あ……」私はできるだけ申し訳なさそうな表情を努力してつくった。「……その、ごめん、
実は……」
 ばん、と大きな音がしてテーブルが揺れた。私は彼女の顔を見ることができず、次に
起こるだろう事態を想像しようとした――が、目の前のオムレツ以上にそれは想像
し難いものだった。私はただ、このオムレツから逃れようとする己の打算が、より悪い
結果をもたらさないことを祈るのみだった。
 すたすたとスリッパが床をこする音がして、それが私のすぐ隣で立ち止まった。私は
決心し、おそるおそる顔を上げた。これくらいの決心は、先ほどまでの悩みに比べれば
清水の舞台からパラシュートを背負って飛び降りる程度のものだ。
 ――そしてそこには、半分泣きそうな彼女の顔があった。

「ゆーくん!」彼女のふわりとした香りが私を包んだ。「ごめんね、わたし、ゆーくんの
ためにつくったのに……きらいなもの食べてって言われて、困ったよね。ゆーくん、
怒ってる……?」
「まさか」私は頬がゆるむのを感じた。「しーちゃんがいっしょうけんめいつくってくれた
のに、食べられなくてほんとうに残念だよ……ほんとうに」
「ほんとに、怒ってない?」
「ほんとだよ。ぼくの方こそ、しーちゃんにばっかり料理させて、ごめんね。今度からは、
いっしょにつくろ?」
「ゆーくんと、いっしょ?」彼女の顔がぱっと輝いた。「わああ……ゆーくんといっしょに
お料理! ほんとに、してくれるの?」
「もちろん。しーちゃん、教えてくれる?」
「うん! ……ゆーくん、大好きっ!」

 ぎゅっと押しつけられる彼女の身体を、私は幸せいっぱいな気持ちで抱き返した。
彼女に好きと言われることが心とろけるような気持ちにさせることも確かだが、率直に
言ってこの目の前の物体を食べずに済んだことが、私の気分をいっそう晴れやかな
ものにさせていた。しかも、どうやらこれからは同じ目に遭わずに済みそうなのだ……。
 私は彼女がその得体の知れぬ物体をおいしそうにぱくつくのを、微笑んで見ていた。
自分が食べるのでなければこうなのだから、現金なものだ。しかし私は、その物体が
彼女の肉体を構成する一要素となるとはとても思えなかった。

「なぁに、ゆーくん」彼女はくすりと笑った。「お口に、なにかついてる?」
625創る名無しに見る名無し:2009/07/22(水) 22:07:46 ID:+PnTWoLu
「そうじゃないよ」私も笑い、「しーちゃんが食べてるの、かわいいんだもの」
「こんなに食べたら、わたし太っちゃうかも」
「しーちゃんは太ってもかわいいよ」
「もう……ゆーくんったら」
 彼女はそこでふとまじめな顔になると、私に顔を向けたまま、目を閉じた。

 私は一瞬だけためらい――彼女にそっと口づけをした。

 ……そのときどんな味がしたか、ここではあえて言うまい。ただ、私の彼女に対する
愛が少しも揺らがなかったことだけは、最後に明言しておこう……。
626創る名無しに見る名無し:2009/07/23(木) 02:10:41 ID:/RqkTziK
>>621
確かにその事に関するご理解は大事だけど、テンプレに入れちゃうと免罪符になっちゃうかもとか思うんだ
いや、感想つけづらいスレなのは変わりないけどさw
627創る名無しに見る名無し:2009/07/23(木) 02:15:29 ID:/RqkTziK
ほぼ>>1のコピペだけど、シンプルにこれで行っちゃう
実は結構これ名文だと思って感心してたり



とりあえず書いてはみたものの、一体どのスレに投稿するべきか分からない自作の作品を投下するスレです。
仲間外れの方、空気読めない方で、想像力と妄想力をもてあまし気味の方は是非、こちらのスレへどうぞ。

批判、批評、ご意見はなるべく簡潔に。変に貶したり感情的にならずに優しく見守ってあげましょう。


前スレ
他に行き場所の無い作品を投稿するスレ
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1223547316/
628創る名無しに見る名無し:2009/07/23(木) 02:21:24 ID:/RqkTziK
ぎゃふん!立てられませんでした!
依頼してくるます!
629昔書いたポエム:2009/07/23(木) 02:28:14 ID:/RqkTziK
肋骨! 肋骨! 肋骨!
数えろ! 探れ! 刻み込め!
叩け! 叩け! 叩け!
走路の終りは泥塗れだ!
630悪夢1/2:2009/07/23(木) 13:06:27 ID:BpA0tKSi
 また夢を見た。
 中学生のときのあの忌まわしい出来事……。もう二十年の年月が流れようとしていた。



 一回り以上年下の歩美とは付き合い始めて半年になる。まだ結婚を考えるのは早いと思っているけれど、歩美は親に紹介したがっていた。
 ついに根負けして歩美のバースデーパーティに招待されるかたちで、歩美の家に行くことになった。
 歩美は母親と、父親の違う妹の三人家族だ。母親は歩美が産まれてすぐに離婚し、二度目の夫とは死別していた。
 歩美の母親とは初対面のはずなのだが、何処かで会ったことがあるような、ないような…… どうしても思い出せない。
 車で来ていたのだけれど、場の雰囲気も手伝って、ついついアルコールを口にしてしまった。



「おまえ、男だろ!」
「早くしろよ!!」
「もっとだよ! もっと!!」




 またあの夢か……。
 ハッとして飛び起きると、ソファの上だった。近くでは歩美の母親が後片付けをしていた。歩美はちゃっかりと自分の部屋で寝ているらしい。遅いから泊まっていくように言われる。
 しばらく歩美の母親と話し込んだ。仕事のこと、趣味のこと、そして将来のこと……。結婚を考えているならという条件付きで、歩美の生い立ちを語り始めた。

 この家は死別した夫のもので、以前は僕が中学生まで住んでいた町に暮らしていたこともあったらしい。これから先の話は歩美にも言っていないという。
631悪夢2/2:2009/07/23(木) 13:07:40 ID:BpA0tKSi


 その日は夫が出張中で、ひとりで留守を預かっていた。夕闇が迫ってきた頃に彼等はやってきたという。
 チャイムの音で玄関を開けると、四〜五人の男たちが一気になだれ込んできた。
 何が起きたのか理解する間もなく、押し倒されて両手両足を押さえつけられ、猿轡をされて衣服を剥ぎ取られる。
 声も出せず、抵抗らしい抵抗もできずに男たちにはされるがままであった。最後にひとりだけ小柄な男が、周りに囃し立てられながら行為に及んだことまでは憶えているという。
 出世に関わる大事な出張を邪魔するわけにもいかず、警察には届けないでいた。妊娠が判明したのはそれから数ヶ月後であった。
 夫との子でないことはわかっていたが、喜ぶ夫に本当のことは言えずに出産。しかし血液型の相違から浮気を疑われ離婚に至ったという。彼女の父親は誰なのかはわからないままだ。




 仕方なかったんだよ!
 僕は何度も拒んだんだ。でも、あいつらの言うとおりにするしかなかったんだ!!
 僕が彼女の父親のわけない! だってあのときは、井上も、山崎も、武田も、永井も、みんな同じようにやったんだ。僕じゃない!!



「あなたどうしたの? 酷くうなされてたわよ」
 目を醒ますと、そこには妻となった歩美が心配そうに見つめていた。
632創る名無しに見る名無し:2009/07/23(木) 17:53:54 ID:ga/joVMH
次スレ
他に行き場所の無い作品を投稿するスレ2
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1248339137/
633創る名無しに見る名無し:2009/07/23(木) 23:37:39 ID:EjWIR+vZ

このスレ9カ月も続いたんだな
地味ながら需要もある良スレだと思う
634創る名無しに見る名無し:2009/07/29(水) 23:30:49 ID:gCiwvqbv
てすtp
635創る名無しに見る名無し:2009/07/29(水) 23:34:38 ID:gCiwvqbv
ぼくは、盲導犬だ。

犬のくせに、ぼく、だなんてのもないだろうって思うかもしれない。
たしかにぼくは犬だけれど、盲導犬なんだ。正式には、電子盲導犬
というらしいけれどね。

いまの(人間の)世界で、電子仮想世界へ対応する能力、いわゆる
サイバー・リテラシーは必須のものとなっているのは、もちろん
知っていると思う。
高度な情報ネットワークである仮想世界へアクセスするためには、
脳に演算補助用のマイクロマシン群を注入しなければいけない。
これもいまじゃ当たり前のことだね。けれど、そういうマイクロマシンを
身体が受け付けない人もいる。それがギヴスン症候群と呼ばれる
病気で、ぼくのご主人さまもその病気にかかっているんだ。
ギヴスン症候群の人が仮想世界へアクセスするには、マイクロ
マシン群以外の演算補助装置が必要になる。そのために考え
出されたのが、ぼくみたいな電子盲導犬なのさ。

ぼくの脳には、だいたい五億くらいのマイクロマシンが注入されて
いて、演算能力はふつうの二千倍くらいまでは上がっている。
こうして話せているのも、そのちょっとした副次効果ってわけさ……
思考ってのは、つまり、計算することだからね。ぼくの脳は有機的
な素材でできた演算装置、コンピュータなんだ。
そんなぼくの脳はご主人さまの脳と連絡ワイヤーで物理的に結合
されて、ぼくの脳が処理した仮想世界の情報はご主人さまの脳に
受け渡される。逆にご主人さまの脳が発した命令は、ぼくの脳を
介して仮想世界へ伝えられる。そうしてご主人さまは、ぼく、電子
盲導犬という存在を介して、仮想世界へとアクセスして活動する
ことができるわけなんだ。

もちろん、向こうの世界で活動するのはご主人さま本人なわけだから、
ぼくが能動的になにかするわけじゃない。ふつうは、電子盲導犬を
使っていることを仮想世界でわざわざ示すようなことはしないんだ。
でも、ご主人さまは……ぼくのご主人さまは、そうじゃない。
ご主人さまは、仮想世界にわざわざぼくのアバターをつくってくれて、
いっしょに連れて歩いてくれる。それだけじゃない、そんなぼくのこと
を、自分のたいせつなパートナーだって、逢う人ごとに紹介してくれ
るんだよ!
……それがどれだけすばらしいことかっていうのは、なかなか
わからないだろうね。ぼくだって、ご主人さまの役に立てるなら、
それだけでもじゅうぶんうれしいよ。でも、ご主人さまといっしょに
いられることで、ご主人さまの役に立てているってことを、もっとよく
実感できるんだ。それに……だれだって、たいせつな人から
ほめられてうれしくないなんてこと、ないでしょう?
そうさ。ぼくはご主人さまのことを誰よりもたいせつに思ってるし、
だれよりも大好きだって、胸をはって言えるよ。

そんなぼくも、現実世界ではちょっと頭がいいだけの犬だし、ご主人さま
も健康なひとりの人間なんだ。いっしょに散歩もするけれど、ご主人さまは
そこでもぼくのことをパートナーとして扱ってくれる。ときどきむしょうに、
投げられたフリスビーか何かを追いかけてみたいような気持ちにかられる
けれども、そんな子供っぽいことはもちろん言わないよ……もちろん、ね。
でも、ぼくだってそりゃあ、たまには甘えたくなるときもあるさ。ご主人さまは
どうしてかちゃんとそういうことをわかってくれてね、いっしょにベッドで寝て
くれたりもするんだ。
ご主人さまの身体はあったかくって、やさしい手でなでてくれて……ぼくは
もうそれだけでしあわせいっぱいになる。でもそれだけじゃなくって、ベッドの
中でご主人さまがかけてくれる言葉がね……うふふ、そういうときこそぼくは、
ちょっと頭のいい、人語を解する電子盲導犬という存在として生まれてきて
よかったって思うのさ!
636創る名無しに見る名無し:2009/07/29(水) 23:35:19 ID:gCiwvqbv
(∪^ω^)<何か求められているものと違った気がした。
たぶんこれで500kb超えたな
637  
隙間をついて1Kb
イイハナシダナー