【ウィザードリィ】*Wizardry*【総合】

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61死の指輪 (1/4):2009/01/11(日) 04:08:06 ID:TAxVTD6g
 階段に腰掛けて、僕は、じっと地下の闇に目を凝らしていた。
 降り立ったところから二股に、回廊が伸びているのが見える。
 その回廊の先にうごめく何かの気配を感じた。
 背筋に冷たいものが走り、思わず腰の短刀に手を伸ばす。
 刃こぼれ一つなく、磨き上げられた新品の短刀。買ったときにはこれ以上なく頼もしく
感じられたのに、いざこうして地下の闇に相対してみると、こんなちっぽけな武器なんて
何の役にも立たないのだと、気付かされる。
 いったい、どんな化け物がこの先に待ち受けているのだろうか? そんなことを考え出すと、
不安でいてもたってもいられなくなる。短刀を握る掌に、じっとりと汗が滲んだ。

 僕は今日、初めて地下に潜る。
 怖くないかと聞かれれば、正直怖い。今すぐこの階段を駆け登って、あの陽光の射す
城塞都市の街路に戻りたい。そんな思いが頭をかすめもする。
 でも、僕には仲間がいた。つい昨日知り合ったばかりだったけど、僕よりずっと経験を
積んでいて、頼りになる仲間。冒険者になりたてで、右も左もわからない僕に声をかけて、
仲間に誘ってくれた、本当に気の良い人たち。
 彼らに出会えなければ、僕は、自分と同じような新人同士で地下の闇に挑まなければ
ならなかっただろう。
 それと比べたら、今の状況はとてつもなく幸運なことなんだ。この街に来てほんの数日の
僕にも、それは理解できる。
 だから、恐怖に屈するわけにはいかない。

 僕はがくがくと震える膝を叱りつけて、もっと前向きなことを考えることにした。
 仲間たちの力を借りながら、少しずつ一人前の冒険者に成長してゆく自分を思い描く。
彼らとなら、ワードナにだって勝てそうな気がする。両手に抱えきれないほどの財宝を
手に入れて、ついでに近衛兵の勲章をぶら下げて、故郷に帰ることができたら、どんなに
誇らしいだろう。
 故郷。僕の生まれた村。狭く、痩せた畑しか持たない小さな村。狂った王の課す重い税を
払うため、毎年口減らしを出さなければならない貧しい村。僕が金貨を持ち帰ることが
できれば、もうそんな必要はなくなる。多すぎる弟妹たちにパンを買ってあげられる。
金貨があれば、また、父さんや母さんと一緒に暮らせる……。

「アレフ」
 名前を呼ばれて、僕は一気に現実の世界に引き戻された。
 ちょん、と肩をつつかれて、慌てて後ろを振り向く。
「リーザ! みんな!」
 迷宮の入り口から差し込む光を背負って、黒く浮かび上がる五つの影。
 頼もしい仲間たちの姿が、そこにあった。
「待たせちゃったかしら? 準備に手間取っちゃって……ごめんなさいね」
 先頭に立つエルフの女性――リーザが、鈴を転がすような澄んだ声色で、優しげに
そう言った。
 耳に心地よいその声を聞きながら、僕はリーザの顔を見上げる。人間では考えられぬ
ほど細くなめらかな金髪が、逆光をまとって輝き、きれいな面立ちとあいまって、
まるで天使のようだった。暗闇に慣れた僕の目にはまぶし過ぎて、ついつい目を細めて
ぼうっと見てしまう。

「一人で待ってて、心細くなかった?」
「へ、平気だよ」
 そう聞いてきたリーザの瞳には、ほんの少しだけ悪戯な光が宿っていた。僕はさっき
までの怯えぶりを見透かされた気がして、慌てて大声で否定する。すると、リーザは
くすくすと笑って言った。
「最初なんだから、怖いのは当たり前よ。でも安心して。今日は戦わず、みんなの後ろに
下がって見ているだけでいいから」
 僕はその言葉を聞いて、正直、心の底からほっとしてしまった。それが露骨に表情に
出たのだろうか、リーザは再び笑い声を漏らすと、こう続けた。
「だから、はぐれたりしちゃ駄目よ? いい? これだけは、約束してね。何があっても、
どんな状況になっても、必ず私たちの後についてくること」
62死の指輪 (2/4):2009/01/11(日) 04:08:59 ID:TAxVTD6g
 それくらいなら簡単だ。ひょっとしたら、リーザは僕が一人で逃げ出すとでも心配して
いるんだろうか? 少しだけ軽く見られた気がして、僕はリーザの心配を振り払うように
力強く頷いてみせる。
「うん。絶対に、約束する」
 その返事に、少しは信用してくれたのだろうか。リーザはとても満足そうに微笑んだ。
 絶対に、足手まといにだけはならないようにしよう。
 僕は心の中で、改めてそう決心した。

 *  *  *

 仲間の戦士の鋭い一撃が、僧服を、下に着込んだ鎖帷子ごと貫いた。
「ぐ、……う、ぐぐ……ううう」
 敵の僧侶が苦悶の呻きを漏らしながら、仰向けにどうと倒れる。
 僕は左右を見渡し、これですべての敵を倒したことを確認すると、そのまま腰砕けに
ぺたんとへたり込んでしまった。

 熾烈な戦いだった。
 僕はあたりに転がる七体の敵の死体を眺めて、改めて肩を震わせる。
 戦士、僧侶、魔術師、そして、よくわからない格好のが一体。どれも人間……のように、
見える。もっとも、僕らが部屋に入るや否や襲い掛かってきたし、仲間たちも躊躇なく
切りかかっていたから、きっとそういう姿の化け物なのだろう。
 強かった。そりゃあ、僕には敵の強さなんてわかりはしないけど、こいつらがこれまで
蹴散らしてきた敵と別格だったというのは、はたから見るだけで理解できた。

 地下一階で襲ってきた豚の顔をした化け物を、リーザたちはいともあっさりと撃退して
みせた。それで、僕は仲間たちの強さを改めて認識し、すっかり大船に乗った気でいた
のだ。
 ところが、「エレベーター」とかいうものに乗って更に地下に降りて、そこで出くわした
凶暴な熊や馬鹿でかい昆虫どもには、さしもの彼らも少してこずっているようだった。
 そして、この戦闘だ。
 仲間の魔術師が機先を制して呪文を唱え、四体ほどがばたばたと倒れたまでは良かった。
だが残る三体も手強く、前衛の戦士たちがよくわからない黒尽くめのヤツにかかりきりに
なっている間に、残る二体が僕らのほうにまで魔法を飛ばし、リーザがひどい傷を負った。
 あれの標的が僕だったら、きっと一撃でやられていたに違いない。
 僕がこうして生き残れたのは、まったくの運、だった。

「またこいつらと戦う羽目になるとはな」
「まあ、これもアレを手に入れるためだ」
 仲間の誰かがそんな風に囁き交わすのが聞こえた。
 僕はふらりと立ち上がり、魔法で自分の傷を癒している最中のリーザのもとへと近寄る。
「リ、リーザ。それ、大丈夫?」
 癒しの光で見る見る傷口が閉じていくようだったが、眉をしかめるリーザは随分辛そう
だった。
 すると、前衛のドワーフが大声でリーザを呼んだ。
「おうい、リーザ。傷を癒してくれんか」
 見れば、ドワーフは左腿を切りつけられたらしく、鎧下にべっとりと血が滲み出ていた。
僅かに顔をしかめているだけで平然としているが、浅い傷には見えない。ついつい大丈夫かと
心配してしまう。
 しかし、リーザの返答は厳しいものだった。
「魔法には限りがあるの。それくらい我慢なさい」
「このままでは動きが鈍ってしまう」
「泣き言なら、聞きたくないわね」
 冷淡に言い放つリーザ。彼女が言うなら、きっとその判断は正しいんだろう。でも、僕と
接するときと違い冷酷ささえ感じるその語調に、僕は改めて、冒険の厳しさというものを
見せつけられた気がした。
63死の指輪 (3/4):2009/01/11(日) 04:09:30 ID:TAxVTD6g
「さ、アレフ。私は大丈夫だから、あなたはあなたの仕事をしてちょうだい」
「う、うん」
 リーザに促されて、僕はようやく自分のすべきことを思い出す。
 そう、僕は盗賊なんだから、戦闘が終わったら宝箱を調べなければならない。
 慌てて部屋中を見渡すと、隅の方にぽつんと、随分大きな長櫃が置かれているのに気付く。
 覚束ない足取りでそれに近づき、改めて見下ろす。
 これが、宝箱。初めて目にするそれに、僕の心臓は早鐘のように打ち始める。うまく
開けられるかという、緊張。罠がかかっているかもしれないという、恐怖。おそるおそる
手を伸ばし、馴れない手つきであちこちを調べ始める。

 罠は、ない、ような気がする。
 実を言えば、よくわからない、というのが正直なところだった。でも、盗賊の僕がそれを
言ってしまったら、他の誰にわかるはずもなく、この宝箱は開けられないことになって
しまう。先ほどの熾烈な戦闘が、無意味になってしまうのだ。
 ごくり。我知らず喉が鳴る。……足手まといにはならないと決めたのに。
「どう?」
 問いかける声がした。いつの間にか治療を終えたリーザが僕の隣に来ていたのだ。
「罠はない……と、思う」
「そう? じゃあ、早く開けてちょうだい」
「あ、あの、万が一があるから、リーザは下がってて」
「……大丈夫よ」
 自信なさげに言う僕に、リーザは少しだけ面倒そうに短くそう呟いた。
 その言葉に押されるように、僕は震える手を伸ばす。
 がちゃり。
 宝箱は、呆気なく開いた。罠なんてかかっていなかったのだ。

 拍子抜けしたように感じながら、僕は中をのぞきこむ。そこに、一本の杖と……指輪が
あった。
 杖は古臭く、簡素な作りで、価値はよくわからない。僕の両目はもう一方――指輪の方へと
吸い寄せられた。
 キレイだ。そして、禍々しい。
 矛盾した二つの印象が同時に浮かぶ。精緻極まりない細工が施され、きらきらと輝く宝石が
びっしりと埋め込まれている。それだけでとても高価そうなのに、指輪には加えて、なんと
表現したものか、魔法的な輝きがあった。何か底知れない「力」が秘められているかのような。
そしてその妖しい輝きが、同時になんだかとても忌まわしいのだ。
「素敵……やっぱり間違いないわ。これは高く売れるはず……」
 そんな呟きを耳にして横を見ると、リーザもその指輪に見入っているようだった。切れ長の
瞳を大きく見開き、食い入るように指輪を見つめる。目の色が違った。欲望にぎらぎらと輝いて
いるようで、なんだか少しだけ怖かった。

「さ、これは貴方が持ってちょうだい」
「う、うん」
 リーザに促され、僕は気を取り直して指輪と杖に手を伸ばし、それらを背負い袋の中に収める。
「その指輪にはきっととてつもない価値があるわ。アレフ、それが手に入ったのも、あなたの
おかげよ」
 声がかかった。改めてリーザを見ると、そこにはいつもの、優しげに微笑む彼女がいた。
「そ、そうかな」
 さっきリーザが別人のように見えたのは、気のせいだったかもしれない。そう思い直して、
僕はちょっと照れ臭そうに答えた。
「ええ、そうよ。自信を持って」
 罠もかかっていなかったし、結局僕は蓋を開けることしかしていない。それなのにそこまで
言ってもらえると、なんだか面映かった。
「だから、ちゃんと地上まで持ち帰ってね?」
「うん!」
 僕は強く頷いた。

 *  *  *
64死の指輪 (4/4):2009/01/11(日) 04:11:54 ID:TAxVTD6g
 視界が霞んだ。
 目の前のリーザの背中が二重に見えたかと思うと、足元がふらつき、たたらを踏んだ。
 ちゃんと歩かなきゃ。そう思って足を踏み出すと、今度はぐるんぐるんと目が回り、仰向けに
転倒しそうになる。心臓が、何かを振り絞るように高鳴る。体中からどっと嫌な汗が噴き出した。
頭が割れるように痛い。息を喘がせようと口を大きく開いても、喉の奥のほうで「ひゅう」と
力ない空気が漏れるだけだった。

 おかしい。おかしい。おかしい。
 あの部屋を出て、ほんの数フィート。何も起こってない。化け物にも襲われていないし、罠に
かかったわけでもない。なのに、今の僕は、まるで高熱に冒されて生死の境をさ迷っている重病人の
ような状態だった。
 宝箱を開けて、指輪と杖をしまって、立ち上がった。その時点ではちょっと立ちくらみを感じた
程度だった。先を急ごうとする仲間たちについていこうと、二三歩踏み出したところで、急に
息が上がり動悸が始まった。それでも、まだ気のせいだと思っていた。
 ところが、一歩踏み出すごとに劇的に苦しみが増し、今やもう歩くことすらできない有様だった。
辛い、苦しいだけではない。それを耐える力の方も、歩く度衰えてゆくようだった。
「あ……あ、……リィ、……ザ」
 浅い呼気の合間に、なんとか仲間の名を呼び助けを求めようとするが、哀れなほどか細い呻き
しか出なかった。リーザの背中に手を伸ばす。すっかり血の気の失せた土気色の手は、ふるふると
震え思うように上がらない。

 なんだこれ。なんだこれ。なんでこんなことに。
 朦朧とする意識の中で必死に考えをまとめる。
 そうだ、あの指輪だ。どう考えても、そうとしか思えないじゃないか。あれを拾ったから、あれを
持っているから、こんな風になっているに決まってる。
 僕はあの指輪を入れた背負い袋の口紐に、手を伸ばす。
 あれを手放せば、あれを捨てれば助かる。そうしなければ、死んでしまう!

「駄目よ」

 口紐をとろうとした僕の手を、誰かが掴んだ。
「……リィ……」
 もはや名を呼ぶこともできない。リーザが、その美しい顔を能面のような無表情にして僕を見つめて
いた。
「指輪を捨てては駄目」
 ひどく、冷ややかな声だった。「なぜ」。そう口にしようとして、ぜえはあという荒い吐息だけが
出た。だけど、言おうとしたことは伝わったようだった。
「だって、その指輪を運んでもらうために、わざわざあなたみたいな役立たずを連れてきたんですもの」
 リーザが何を言っているのか、理解できない。意味を考える余裕もなかった。
 もう、これ以上動くことはできない。そう態度で示そうとその場に崩れ落ちようとする。
 しかし、それすらもリーザは許さなかった。
「立ち止まるのも駄目。約束したでしょう? 『何があっても、どんな状況になっても、必ず私たちの
後についてくること』って」
 そう言ってリーザは掴んだ僕の手をぐいと引く。その力に引きずられるようにして、僕はさらに
一歩踏み出してしまった。
 がくん。その一歩で膝からまた力が抜け出たのがわかる。

「……ひゅう……ひゅう……」
 辛い、苦しい。もう一歩でも動いたら、死んでしまう。そう訴えようとして、また意味のない
呼気が漏れた。仲間たちを見る。リーザだけではなく、みんながみんな、能面のような無表情で僕を
見つめていた。辛い、悲しい。僕は、もう死ぬしかないの?
「大丈夫よ。死んでも街まではちゃあんと運んであげるわ。私たちがあなたの死体を運び、あなたの
死体が指輪を運ぶ。そうすることで、安全に指輪を持ち帰ることができるの」
 リーザが再び僕の腕を引く。
 抗う力もなく、前に踏み出そうとして……僕は前のめりに、無様に倒れた。
 もう、指一本動かす力も残っていなかった。体から、最後の生命力が抜け落ちていくのがわかる。
 死ぬ。僕は、死ぬんだ。
 遠のく意識の中で、頭上から降り注ぐリーザの声が聞こえた。
「運ぶ者に必ず死をもたらす呪いの指輪。でも、それでも欲しいじゃない?……だってその指輪は、
売れば山のような金貨になるんですもの。あなたも冒険者なら、わかってくれるわよね?」
65死の指輪:2009/01/11(日) 04:12:25 ID:TAxVTD6g
以上です。
66創る名無しに見る名無し:2009/01/11(日) 08:20:05 ID:JrjeJRpJ
朝おーーつ

やはり、WIZは殺伐としたシュールなオチが冴えますなぁ
67創る名無しに見る名無し:2009/01/11(日) 08:24:00 ID:NMLbJ+CS
RING OF DEATH!www
確かに回復呪文無しで普通に持ち帰ろうとすると絶対に瀕死になるか死人が出るしなww
68創る名無しに見る名無し:2009/01/11(日) 11:39:23 ID:JzOP+sST
リーザ属性EVILだろ…きたないなさすがEVILきたない
69創る名無しに見る名無し:2009/01/15(木) 02:22:23 ID:VuLmb4QP
VA 開け ヴァウアリフ
GU 扉よ ガインウーク
I 願い イェー
NA 心 ヌーンアリフ
「開け扉よ、願う心と共に」
※鍵のかかった扉を開ける
70創る名無しに見る名無し:2009/01/26(月) 17:10:14 ID:RhrjFgXk
* しんでしまいますよ! *
71創る名無しに見る名無し:2009/02/03(火) 23:12:06 ID:wY+EAGI2
墓場は暗く……
72創る名無しに見る名無し:2009/02/05(木) 08:57:34 ID:VSQyOr1n
罠は時を刻みしもの
73創る名無しに見る名無し:2009/02/12(木) 00:33:44 ID:/vU9pEEL
この先は行かぬが得策。 しからずんば……
74創る名無しに見る名無し:2009/02/24(火) 18:36:02 ID:qe0ytdgv
過疎の中に居る!
75創る名無しに見る名無し:2009/03/06(金) 08:59:08 ID:SDkzA3Of
確か外伝ってシナリオ作成ツールがオマケであったよな?
このスレにまだ人がいるなら、
みんなでシナリオ作って実装してみるのも面白いかもしれない
76創る名無しに見る名無し:2009/03/06(金) 13:49:03 ID:HLtVStXw
>>60で言われてる通り五つの試練自体が手に入りにくいからなあ……

自分はこの程度のことしかできない
ttp://imepita.jp/20090302/539900
77創る名無しに見る名無し:2009/04/02(木) 04:54:51 ID:xkmKiz4q
おおっと 過疎!
78創る名無しに見る名無し:2009/04/21(火) 20:03:42 ID:CTBKb10J
投下します。
タイトルは「ララ・ムームーを追って」。全部で7レスです。
LOLとHOMのネタバレを含みますのでご注意を。
79ララ・ムームーを追って (1/7):2009/04/21(火) 20:04:30 ID:CTBKb10J
――"La-La moo moo"?

 "La-La moo moo"は何者かって?
 そりゃあ俺にもわからんよ。
 見た目は……そうだな、駱駝だよ。トーガを纏った駱駝に見えた。
 でも駱駝じゃあない。アレを駱駝だと思って、「じゃあエジプト人だ!」って言ってた
奴がいたが、俺は違うと思うね。だって駱駝はブレスなんか吐かないよ。そうだろう?
 だからアレは駱駝の面をした駱駝以外の何かなんだ。もっと強い……別の生き物さ。
 いや、ひょっとしたら、生き物ですらないかも知れねえ。それくらい、強かった。

 なんで"La-La moo moo"なんていうけったいな名前かって?
 さあてね。
 名前の由来がわからない化物なんて、地下にはごまんといるだろ?
 ただ……そうだな。ムームーっていうのは、アレの鳴き声のことだと思うぜ。いや、
ホント、ムームーって鳴くんだよ。笑っちまうだろう? そんな可愛らしい鳴き声を上げる
生き物に、おれたちは手も足も出なかったんだ。
 ララの方は……ううん、さっぱり、見当もつかないな。意味のない歌声のようでもあるし、
何かとても古い、神秘的な言葉のようにも聞こえる。

 ん? ……ああ、そういえば、ブラザーフッドの坊さん方も「"La-La"に賞賛あれ」とか
言ってたな。
 仮にも神様の名前を駱駝に使うなんて不謹慎じゃないかって?
 だから駱駝じゃないって……いや、まあ、そうなんだけどね。
 でも知り合いのブラザーフッドの坊さんにアレのことを話したら、ちょっと驚いたみたい
だったけど、「なるほど……確かにそれは"La-La moo moo"に違いない」って言ってたよ。
 だから、別に構わないんじゃないかなあ。

 奴さん方が崇め奉ってる"La-La"とやらと、アレに、どういう関係があるかは、おれには
わからんがね。さあ? そいつは本人たちに聞いてくれよ。

              (ララ・ムームーに会ったことがあるという、とある冒険者)
80ララ・ムームーを追って (2/7):2009/04/21(火) 20:05:39 ID:CTBKb10J
――"La-La"?

 ララに賞賛あれ!

 汝、ブラザーフッドの門を叩く者よ。"La-La"について知りたいと願うならば、同時に
"三軸の調和"についても知らねばならぬ。心して聞くのだ。ララに賞賛あれ!

 あらゆる物事の背後には、四大元素の力が働いている。すなわち、大地、水、炎、空気。
これらの力は、ひとつの門より、我らの存在する次元へと流れ込んでいるのだ。
 流れが調和していれば、力はすべての生命の源となる。しかし、ひとたび流れが滞れば、
門には裂け目が生じ、メイルシュトロームが生まれることとなる。メイルシュトロームとは、
災いを撒き散らす渦である! おお、ララよ憐れみたまえ!

 ゆえに、門では"三軸の調和"が達成されねばならぬ。なぜならば、"三軸の調和"こそが、
荒れ狂う力を鎮めるものだからである。
 そして、これは力自身の望みであり、意志でもあるのだ。
 四大元素の力は、自らが調和してあることを欲する。この、力そのものの意志こそ、我らが
"La-La"と呼ぶものなのである! ララは偉大なり!

 "La-La"の声に耳を傾け、門にて"三軸の調和"を達成すること。すなわち、三軸の門を守る
こと。これぞ、ゲイトキーパーの知恵と教えなり! おお、ララを賛美せよ!

 汝が追い求めるその生き物は、"La-La"そのものではない。しかし、まったく関係がない
わけでもない。"三軸の調和"の本質に迫ることができたなら、その正体は自ずと明らかになる
であろう。

 ララに賞賛あれ!

                   (ブラザーフッド教団の高僧、グブリ・ゲドック)
81ララ・ムームーを追って (3/7):2009/04/21(火) 20:07:00 ID:CTBKb10J
――"三軸の調和"?

 まずは自己紹介をさせてもらおうかの!
 わしはThelonius P.Loon。時間の支配者であり、しかも 優れた予言者である。
 おぬしはある生き物の正体を追い、"三軸の調和"の本質を知るために、ここにやってきた。
そうじゃろう?

 人類の歴史上、いたるところにおいて、賢者達はこの宇宙の全てのものを動かす力の関係、
すなわち宇宙の力の永遠の調和について語ってきた。
 死すべき運命を持つ人間達のほとんどには、これらの力のふたつの側面しか見えない。
それゆえ、それらの側面を例えば、「善と悪」、「正義と悪事」、「本当と嘘」などという
名前で呼ぶのじゃ。
 明らかに、これらの相反する力は全ての人間の魂の中で、長い間戦ってきた。
 しかし、わしはここでおぬしに、この戦いには価値が無く、ただの錯覚である、と言わねば
ならぬ。

 "三軸の調和"の正しい本質を理解するためには、この錯覚の覆いを見抜き、ふたつではなく
みっつの力が働いていること、そして、それらはおぬしが今信じているのとは 異なる本質を
持つことを、認めなければならぬ。

 二軸からなる均衡は脆弱なものじゃ。反発し合うふたつのものは、容易に一方に傾き得る。
そして、本質を見失わせる。
 ゆえに、平衡はみっつのもののなかにこそある。何も難しいことではない。一方のものが
一つの鍵を手にし、他方のものがもう一つの鍵を手にしたとしても、仲立ち受け渡すものが
いなければ扉は開かぬ。ただ、それだけのことなのじゃ。

 みっつの力が存在することさえ理解できれば、自ずとみっつを統一するもう一つの力を
知ることになろう。そしてその四つの力それぞれの、さらに三つの側面を知ることができれば、
三軸の調和の本質を理解したと言える。
 もっとも、おぬしの目的にとっては、そこまで知る必要はあるまい。

 《成長》と《本質》と《変化》。これらはかつて偽りの名前で呼ばれていたし、今でもなお、
その名で呼ばれている。しかし、呼び名はどうあれ、人々が、このうちのふたつの力のみを
頼みにしていた時代には、おそるべき"天変地異"が起こったことを忘れてはならぬ。
 それこそ、力自身がみっつの力による調和、"三軸の調和"を望んだことの、確かな証なのじゃ。

 ハッハッ! わしには、おぬしの未来がはっきり見える!
 かつてリルガミンを襲った"天変地異"について、調べるがよい。そして、"三軸の調和"の
本質を思い出すのじゃ。そこで、おぬしはおぬしが追い求める生き物の正体を知り、その誕生の
ときに立ち会うことになるじゃろう。

                 (ジグソー信託銀行の予言者、セロニウス・P・ルーン)
82ララ・ムームーを追って (4/7):2009/04/21(火) 20:07:42 ID:CTBKb10J
――"天変地異"?

 "天変地異"、ね。
 ええ、確かに、あれはそうとしか言いようのないものでしたよ。
 ようく知っておりますとも。なにしろ、手前どもは、もとはアルビシアの植民島で商いを
しておりましたから。
 とてつもない大津波がね、こう、押し寄せてきて。街を、逃げ遅れた人たちともども、
呑み込んでいったんですよ。ええ、ええ、そうですとも。アルビシアの人間は、あれで全てを
失ったんですよ。

 それでこのリルガミンに逃れてきて……もっとも、当時はこちらも大変な混乱でしたね。
なんでも地震で、ニルダ様の寺院まで崩れてしまったとかで。ええ、ええ、それだけでも
大事ですけれども、倒壊に巻き込まれて、かのニルダの杖まで失われたそうで。
 ただ、実を申しますと、それは手前どもにとっては、幸運だった部分もありました。
 ご存知でしょう? それまでリルガミンは、杖の加護で守られていた。市に害をなす者、
つまりは、《悪》の戒律の者の大半は、立ち入ることもできなかった。杖が失われたことで
初めて、この街はすべての人間に開かれることになったわけです。

 いえいえ、手前は《悪》ではありませんよ。このリルガミンに対して、悪意を抱いたことも
ございません。ですからもちろん、それまでも街に入ることはできました。
 でもね、《悪》の方々がいらっしゃらないところでは、手前どもの商売も上手くは回りません。
《中立》の商人の売りは、なんといっても《善》の方々とも《悪》の方々とも、平等に取り引き
させていただける、という点ですから。

 ご覧下さい。生糸、香料、象牙。ここにある品々はね、全部、ガリアンたちから仕入れた
ものなんですよ。ええ、ええ、確かに彼らは《悪》の海賊たちですとも。ですが、彼らだって
どうにかして、略奪品を金貨に換える必要があるわけです。……これもアルビシアの頃からの
ツテでしてね。
 杖の加護が失われて、リルガミンにもこうした取り引きが増えました。《中立》の商人も、
随分増えましたね。ベイキ女王様の御時世には、考えられなかったことですよ。おかげ様で、
手前どももこれだけの大店を構えることができました。

 あの"天変地異"の原因は、なんでも"L'kbreth"とかいうドラゴンが現れたためだったとか。
ええ、ええ、駱駝ではなく、ドラゴンだったと聞いていますよ。結局、そのドラゴンから……
確か、宝珠かなにか……を持ち帰ったおかげで、"天変地異"が治まった、と、そういう話です。

 振り返ってみれば、複雑な思いがございますな。
 そもそも"L'kbreth"が現れなければ、故郷を失うことはなかった。けれども、こうして成功を
収めることもなかったわけです。
 いったい、なんだったんでしょうね。あの"L'kbreth"というのは。

                  (リルガミン市中立商人ギルドに属する、とある豪商)
83ララ・ムームーを追って (5/7):2009/04/21(火) 20:08:22 ID:CTBKb10J
――"L'kbreth"?

 フウム。それは難問だな。
 世界蛇の五匹の子のうちの一匹であるとも言われているが、これは伝承の域を出ない。
 いつから存在し、また、なんのために姿を現したのか。かのものについては、余りにも
多くの謎が残されている。そのほとんどについては想像でしか語り得ないが、判明している
点もなくはない。

 まず、名前。
 "L'kbreth"は「ル'ケブレス」ではない。「エル'ケブレス」と読む。おそらく、Lで
始まる何らかの単語が省略されているのだ。それが何であるかについては、賢者たちの
間でも論が分かれているが。
 続く「kbreth」についても、諸説紛々だ。まったく無意味な綴りにも思えるが、ある
有力な見解では、「龍」を意味する古い言葉だとされている。

 そう。"L'kbreth"は「龍」なのだ。
 「龍」はドラゴンともドレイクとも異なる。それらよりももっと古く強力な生き物だ。
いや、生き物と呼んで良いかさえ、定かではない。天変地異の先触れとしてこの世に姿を
現すのだとも、天変地異を引き起こす存在なのだとも、言われている。
 その姿もドラゴンとは似て非なる。……遥か東方の伝承によれば、「角は鹿、頭は駱駝、
眼は鬼あるいは兎、体は大蛇、腹は蜃、背中の鱗は鯉、爪は鷹、掌は虎、耳は牛に似る」
とされている。
 もっとも、預言によれば"L'kbreth"とは「この星の力そのもの」だという。それが真実なら、
龍としての姿さえ、仮初のものだということになるだろうか。

 いずれにせよ、"L'kbreth"は天変地異と同時にこのリルガミンに現れた。そして、
「善き者のみにても、悪しき者のみにても勝利を得ることはない」と告げると、言葉通りの
試練をリルガミンの民に課した。
 宝珠を持ち帰るためには、《善》と《悪》と、そして《中立》の者が必要だったのだ。

 いや、これは宝珠の探索だけの話ではない。
 リルガミンは長くニルダの恩寵の下にあった。《悪》の僭主が台頭したほんの一時期を
除き、《善》によって統治されていたのだ。しかし、今や恩寵は失われ、《善》と《悪》と
《中立》の、三つのものが必要とされている。望むと、望まざると。
 まさに、「New age of Llylgamyn」。リルガミンは新しい時代を迎えているのだ。
 まるでそうなること自体が、かの"L'kbreth"の目的であり、望みであったかのように。

 さて、そうして望みを達した"L'kbreth"がどうなったかは、誰も知らない。少なくとも、
棲家であった火山からは姿を消した。本来いるべき世界へと帰って行ったのかもしれないし、
あるいは、また別の姿をとって、どこかに存在しているのかもしれない。

                         (最も高位なる賢者、イェルダーブ)
84ララ・ムームーを追って (6/7):2009/04/21(火) 20:09:03 ID:CTBKb10J
――"La-La moo moo"?

 ついに巡り会えたな、か弱き者よ。もし、力を求めるならば、それは現れよう。

                                   (???)
85ララ・ムームーを追って (7/7):2009/04/21(火) 20:09:46 ID:CTBKb10J
「我こそはエル'ケブレス。平衡の守護者なり。汝ら、誉むべし。その行く手よ穏やかなれ」

 まるで地響きのような声だった。
 同時に、巨体が退き洞窟への道が開かれる。
 目の前の存在の強大さに圧倒されていた《中立》の侍は、そこでようやく我を取り戻した。
左右を振り返り、仲間たちの表情を確認する。《善》の君主は微笑を浮かべ頷き返してきた。
《悪》の忍者の双眸は既に洞窟の先へと注がれている。残りの仲間たちも、覚悟を決めている
ようだった。
 侍は右手を上げ、前進の合図を送る。そして、五人の仲間たちとともに、洞窟の入り口へと
ゆっくりと歩き出した。

 彼らが去ってからもしばらくの間、龍は洞窟の闇を見つめていた。
「……この姿は役割を終えた」
 やがて、龍はそう呟くと、眠りにつくかのように、その巨躯を迷宮の石床に横たえる。
 彼は深く長く息を吐いた。その吐息は燐光を纏って迷宮の闇に散らばる。すると、あたかも
その一息で精気をも吐き出したかのように、巨躯はみるみる縮み、そこには力を失った一頭の
動物だけが残された。

 今わの際に龍より吐き出された燐光は、しばらく所在なげに明滅していたが、やがて寄り
集まり四体の人影に形を変えた。
 それは四人の君主であった。
 豪奢な衣装を纏い、瞳には聡明な輝きを宿し、四人ともが全く同じ顔立ちをしている。
「荒れ狂う暴龍の時代は去り、」
「教え導く君主の時代が訪れる」
「彼らは『二つ』でなく『三つ』であることに気付いたに過ぎぬ」
「聖なる側面、時間と王国と本質の発見は後世にゆだねられよう」
 四つの人影が囁き交わす。

――Moo,Moo
 そのとき、かつて龍であった動物が鳴き声を上げた。
 龍の魂魄が四人の君主に変じたのだとすれば、それはまさしく抜け殻、龍の肉体の残滓と
呼ぶべきものだった。知性なき瞳は魯鈍に曇り、ただただ惨めな鳴き声を上げ続ける。神威を
失い知恵なき獣に堕した抜け殻は、砂漠に住むというあの愚鈍な生き物によく似ていた。
 "La-La Kbreth"(龍に化体したララ)の肉体は、今や"La-La moo moo"(ムームーと鳴くララ)
という別の生物に変じていたのである。

「龍の肉体の処分は如何にする」
「知恵はないが力は残っている」
「地上に残すには危険すぎるな」
「地獄の最下層に封じればよい」
 君主たちはその惨めな動物を取り囲むと、地下777階への門を開いた……。

(END)


以上です。
86創る名無しに見る名無し:2009/04/21(火) 22:38:32 ID:4QL7jK9X
投下乙!
ララ・ムームーを中心に色々よく繋げられていてすごいと思った
87創る名無しに見る名無し:2009/04/22(水) 20:01:05 ID:GPPFaOTB
でも駱駝だろ?
88創る名無しに見る名無し:2009/04/22(水) 20:28:00 ID:bVKnFlyw
AppleII版のグラフィックを見ると・・・
龍だと言われれば龍かなという気分にならなくもないぜ!
89創る名無しに見る名無し:2009/05/26(火) 23:18:59 ID:1C9IjIp8
ボスも居ないのに強くしてどうするの?
90創る名無しに見る名無し:2009/05/27(水) 09:02:50 ID:ott6ycPw
強くしても首跳ねや即死ブレスが待ってるからさ
91迷宮の孤独:2009/05/27(水) 20:26:43 ID:kIe4b4Rt
おれがなぜ、今のような境遇に陥ってしまったか。
それを語るには、まずおれの生い立ちから説明する必要がある。

おれの祖国は、ハーカゾニアというところだ。
もっとも、これは正しい呼び方じゃない。
なにしろ、おれたちの言語というのは特殊で、
たった一つの単語しか持っていない。
その抑揚や、強弱や、息継ぎの仕方、伸ばす音の長さ。
そういったものだけで、あらゆる意味を伝えるんだ。
とても高度で、複雑な言語なのさ。
祖国の名をおれたち流に呼んでみても、たぶんあんたたちには伝わらない。
だから苦肉の策として、あんたたち風に呼んでみた名前が、「ハーカゾニア」というわけだ。
まあ、そんなことはいい。

とにかくおれたちはハーカゾニアで生まれたハーケニスコン種の、
ああ、このハーケニスコンというのも……まあ、いいか。
とにかく、さる高貴な一族の最後の生き残りなんだ。
つまり、とても珍しい一族だってこと。
ひょっとしたら、今となってはおれが最後の一人かもしれない。それくらい……数が少ないんだ。

この、数が少ないってのが曲者でね。
物の価値はその希少性で決まる。
おれはそんな考え方を支持しちゃいないが、たいていの人間にとってはそうだ。
だから、おれたちは希少で、つまり、金になるんだ。
平和だったハーカゾニアに、欲にくらんだ邪悪な人間たちがやってきて、
ひっそりと暮らしていたおれを捕らえ、外の世界へと連れ出した。
売るために、ね。

人格のあるものを金でやりとりするなんて、罪深いことさ。
だが、売られた先で待ち構えていたのは、もっとおぞましいことだった。
おれはね、見世物にされたんだよ。
これもやはり、珍しいからだろうね。
物見高い連中が、はした金を払っておれを見にやってくる。
檻の中のおれを見て、げらげらと笑うんだ。
屈辱だったよ。だけど、それ以上に悲しかった。
こんなにも分かり合えないものかと、思い知らされたから。

ただ、おれは幸いにして頑丈にできていた。力も強かった。
これも、希少な血のなせる技さ。
おれを見世物の境遇におとしめたところの原因が、今度はおれを救ったんだ。
おれはその力で檻を破り、抜け出した。
おれを捕らえていた連中は、自由になったおれに恐れをなして逃げてしまった。

だけど、喜んだのも束の間だった。
おれのいた檻は、地下の閉鎖された空間の中にあったんだ。
見物客は奇妙な装置でもってその空間に出入りしていた。
でもその装置は、おれには扱えないものだったんだ。
檻から抜け出ててみたら、そこはもう一回り大きな檻の中だったんだよ。
笑い話だろ?
それとも、哲学的な話かな。
おれはその巨大な檻の中で、たった一人ぼっちだったんだ。
92迷宮の孤独:2009/05/27(水) 20:27:27 ID:kIe4b4Rt
それからどうなったかって?
それから、そのままさ。
おれは未だにその巨大な檻の中にいる。

ときたま、ほんとうに稀なことだけど、あの装置を使って人がくることもある。
見物客じゃあない。
彼らは、おそらく、地下のあちこちの空間を探検している、そういう人間たちだと思う。

おれはね、人間たちにはこんな目にあわされたけれど、
それでも、すべての人間が邪悪じゃあないと、そう思ってるんだ。
彼らの中には、話せばわかる人間もいるはずさ。
ひょっとしたら、おれの境遇に同情して、
おれがここから出る手助けをしてくれる人間も、いるかもしれない。
だからおれは彼らを見つけると、まず会話を試みるんだ。

といっても、おおっぴらに姿を現すのは、うまくない。
おれと彼らは、見た目が少々……異なっているから。
突然現れたら、彼らも驚いてしまうだろう。思わず、こちらに剣を向けてくるかもしれない。
それは望むところじゃあない。
だからおれは姿を消してこっそり近寄り、刺激しないように語りかけるんだ。

でも、ああ、最初に言ったよな?
おれたちの言語は、たった一つの単語からなるとても難解なものなんだ。
ほとんどの人間には、それが言葉だということすら理解できない。
* ハークル! ハークル! *
助けを求めるおれの呟きを聞いても、
彼らはきょとんとして辺りを見回して、徒に警戒を強めるばかりだ。
それでも、中にはおれたちの言語を解する者もいるはず。
そんな期待を込めて、何度も何度も呼びかけるんだ。
* ハークル! ハークル! *
だけど、ダメだ。どうしても、伝わらないんだよ。
やがて、会話が成立するより前に、彼らはおれを見つけ出してしまう。
おれの姿を目にして、そして……。

その先は、説明したくないな。
しかたがなかった。しかたがなかったんだよ。
おれに、ほかにどうしようがあったというんだ。
……本当に、おれたちは分かり合えないものなんだろうか?

それでも。
それでもだよ?
おれはいつかきっと、おれの話を聞いてくれる人間がくると、そう、信じているんだ。

(END)
93創る名無しに見る名無し:2009/07/29(水) 08:15:12 ID:XOurU4+E
 ゆうこうてきな ハークルヒ”ースト
   →たたかう
    たちさる
94創る名無しに見る名無し:2009/07/29(水) 09:54:00 ID:ABn0CtAh
そういえばととモノってWizの正式ライセンスを得て作られたんだぜ
95創る名無しに見る名無し:2009/08/28(金) 21:36:58 ID:frYhFqhD
エル’ケブレスのフィギュアが欲しい。
96創る名無しに見る名無し:2009/09/04(金) 09:50:09 ID:/GpintK1
ハークルハークル
97創る名無しに見る名無し:2009/09/05(土) 12:53:17 ID:a42XSDFc
まだ いたの!
98創る名無しに見る名無し:2009/09/08(火) 17:42:41 ID:hmow5T0l
携帯電話のWIZでLV&HP&E.Pがカンストしたぜ!!

99創る名無しに見る名無し:2009/09/26(土) 19:42:43 ID:xVzWkovI
ウィザードリィ外伝Xリルガミン終焉
おもしろいよ
100創る名無しに見る名無し:2009/09/26(土) 22:28:08 ID:j5SQp4Mc
マルチ乙100
101創る名無しに見る名無し:2009/11/07(土) 11:37:47 ID:LfjRHJHr
ある日、ワードナーのところに、罠職人がやってきた。

「ワードナー様、いいことを思いつきました。」
「なんだね、罠職人」
「テレポートなんですが、以前の壁の中へのテレポートは、侵入者を生存したまま捕らえることができませんでした。」
「そうだな。取り出せないから尋問もできんな。」
「そこで、考えました。AというテレポートはBというテレポートに移動する。そしてBのテレポートはAのテレポートへ移動するというものです。」
「なるほど、無限に転送するのか。テレポート中には魔法も使えんから、これなら逃げられんな」
「そうです。では、私が試して見ましょう。」
罠職人は二重テレポートの中に入っていた。

「・・・いかん、止め方を聞くのを忘れた」
102創る名無しに見る名無し:2009/12/16(水) 20:20:23 ID:jhQBTbYn
よし、じゃあ俺も

ある日、肉屋のところに、ワードナーがやってきた。
「おい肉屋、いいことを思いついた。」
「なんですか、ワードナー様」
「おまえの所のソーセージを作る装置だが、入れた豚肉をミンチにしてそのまま腸詰めにしているわけだ。」
「そうですね。ミンチと腸詰めが一度に出来て重宝しています。」
「そこで、考えたのだが。豚肉を装置に入れると生きた豚になる。そして牛肉を装置に入れると生きた牛になるというものだ。」
「なるほど、余った豚肉や牛肉を元に戻して飼育して無限に増やすわけですね。増えた分をまたソーセージにして売るわけですから、これなら仕入れ代もかかりませんね」
「そうだ。だが問題はその装置がどこにあるかということだ。」
肉屋は話を合わせながらも、またこの爺さんはじまったよと頭をかかえました。
そしてめんどくさくなった肉屋はこう答えました
「・・・そういえはトレボー王がそんな装置を持っていたような、ソーセージをいれると豚が出てくる…」



その夜、トレボーの城から魔法の魔除けが盗まれました



出典 アメリカンジョークを信じちゃった100人 アスキー出版 絶版
103創る名無しに見る名無し:2010/01/04(月) 04:09:53 ID:oDP69b2Q
アルパカがララ・ムームーに見えてしょうがない

現代から転送された若者が高冒険者となり、ララ・ムームーと対峙した時に
「ちょwwwミラバケッソwww」
「クラレーッw」
と全員爆笑して首を刎ねられるヲチを考えたが、めんどくさくてやめた

104創る名無しに見る名無し:2010/02/13(土) 15:06:49 ID:dVQNROCR
ディンギルやり始めたけどたかだか10マス以内に
魔方陣3、4つなんてざらだしエンカウント高くてイライラする
CDの読み込みも相まってイライラ倍増
糞すぎるなこれ
105創る名無しに見る名無し:2010/02/13(土) 15:34:52 ID:dVQNROCR
あーもう敵多すぎ
戦闘終わってすぐまた戦闘の繰り返し
何だよこの糞ゲーは
106創る名無しに見る名無し:2010/03/01(月) 10:46:41 ID:CtcXRN+F
>>105ちょっとスレちだぞw

1 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/12(日) 20:18:36 ID:yAv5ZzLX
古典RPG・ウィザードリィの二次創作スレです。
107創る名無しに見る名無し:2010/03/19(金) 15:55:17 ID:sVWHLH3q
ウィザードリィ外伝Y リルガミン終焉 なら今製作者がアップしてるけど
ニコニコ動画で見ました。
108創る名無しに見る名無し:2010/05/13(木) 21:49:37 ID:6EBQt7IB
>>101>>102
一笑させて頂きましたw
マウスあんま揺らさせんで下さいw
109創る名無しに見る名無し:2010/06/03(木) 16:39:32 ID:Za0zeVwX
>>102のをつかって俺も



肉屋は話を合わせながらも、またこの爺さんはじまったよと頭をかかえました。
そしてめんどくさくなった肉屋はこう答えました
「・・・そういえはトレボー王がそんな装置を持っていたような、ソーセージをいれると豚が出てくる…」

その夜、トレボーの部屋から悲鳴が聞こえました


「ア゙ッーー!」



出典 アメリカンジョークを信じちゃった100人 アスキー出版 絶版
110創る名無しに見る名無し
 イエィ!!!

 俺はなん百万も奴らを殺したぞ!