THE IDOLM@STER アイドルマスター part4
┏ ━ゝヽ''人∧━∧从━〆A!゚━━┓。
╋┓“〓┃ < ゝ\',冫。’ ,。、_,。、 △│,'´.ゝ'┃. ●┃┃ ┃
┃┃_.━┛ヤ━━━━━━ .く/!j´⌒ヾゝ━━━━━━━━━━ ━┛ ・ ・
∇ ┠──Σ ん'ィハハハj'〉 T冫そ '´; ┨'゚,。
.。冫▽ ,゚' < ゝ∩^ヮ゚ノ) 乙 / ≧ ▽
。 ┃ ◇ Σ 人`rォt、 、'’ │ て く
┠──ム┼. f'くん'i〉) ’ 》┼刄、┨ ミo'’`
。、゚`。、 i/ `し' o。了 、'' × 个o
○ ┃ `、,~´+√ ▽ ' ,!ヽ◇ ノ 。o┃
┗〆━┷ Z,' /┷━'o/ヾ。┷+\━┛,゛;
話は聞かせてもらいました! つまり皆さんは私が大好きなんですね!!
公式サイト
ttp://www.idolmaster.jp/ 【アイドル】★THE iDOLM@STERでエロパロ17★【マスター】 (18禁)
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1256483291/ 【デュオで】アイドルマスターで百合 その16【トリオで】 (18禁)
http://babiru.bbspink.com/test/read.cgi/lesbian/1256052427/ アイドルマスタークロスSSスレ
http://jfk.2ch.net/test/read.cgi/gsaloon/1228997816/ SSとか妄想とかを書き綴るスレ8 (したらば)
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/game/13954/1221389795/ アイマスUploader(一気投下したい人やイラストなどにご利用ください)
ttp://imasupd.ddo.jp/~imas/cgi-bin/pages.html マナー的ななにか
・エロ/百合/グロは専用スレがあります。そちらへどうぞ。
・投下宣言・終了宣言をすると親切。「これから投下します」「以上です」程度でも充分です。
・「鬱展開」「春閣下」「961美希」などのデリケートな題材は、可能なら事前に提示しましょう。
・上記のとおり一行には最大全角128文字書けますが、比較的多数の人が1行あたり30〜50
文字で手動改行しています。ご参考まで。
・「アドバイスください」「批評バッチコイ」等と書き添えておくと、感想レスがファンモードから
批評指摘OKの文士酒場モードになります。技術向上に適しますが、転んでも泣かないこと。
・(注:読み手のかたへ)批評OKの作品が来ても大切なのは思いやりですよ、思いやりっ!
知っていると便利なSS執筆ひとくちメモ
このスレの1レスあたりの容量制限
・総容量4096バイト(全角約2000文字)
・改行数60行
・1行制限256バイト(全角128文字)
バイバイさるさん規制について
短時間での連続投下は10レスまで、11レス目はエラーが返され書き込めません。
アクセスしなおしてIDを変えるか、時間を置いて投下再開してください。
(検証したところ毎時0分に解除されるという噂はどうやら本当。タイミングはかるべし)
その他の連投規制
さるさん回避してもtimecount/timeclose規制があります。「板内(他スレを含む)直近
○○レス内に、同一IDのレスは○○件まで」(setting.txtでは空欄なので実際の数値は
現状不明)というもので、同一板で他所のスレがにぎわっていれば気にする必要は
ありません。とは言え創発は過疎気味の板ですからねーw
いちおつ〜!
連休だしなんか考えようかねー。
……カレンダー上は連休じゃないのかorz
気にさわったらゴメン
保守がてら。
ある夜の事務所
「規制ですねー、律子さん。どこにも書き込めませんよ」
「そうですね。でもここは会社ですから仕事してください小鳥さん」
「もう定時過ぎましたし、優先順位あるのは全部終わってますよ。なにしろ仕事くらいしかすることが」
「なにかおっしゃいましたか?」
「なんでもないですよう、冗談じゃないですか」
「冗談じゃないって知ってるから言ってるんですよ」
「律子さんのいけずー。自分だって涼ちゃんに私用メールがんがん打ってるくせに」
「あれは芸能人の先輩として後輩にっ!」
「真ちゃんがその涼ちゃんとスキャンダルになりかけた時、公式掲示板とアイドル板の類焼阻止したの誰でしたっけ」
「うっ」
「律子さんに書き逃げサーバー用意してもらったとは言え、ピヨさん7色の別人文体も多少はお役に」
「はいはいあの時はお世話になりましたっ!ソースなしで961プロの捏造疑惑に結びつける手際には舌を巻きましたよ」
「直接そんなコメントしてないのに、あそこは不思議なインターネットですねー。自分の妄想同士で口ゲンカしてるだけで、誰かが勝手に現場にいる黒井社長の画像とか用意するんだから」
「どういうわけだか激写の30分前の時刻のがね。あれも小鳥さんでしょ」
「どうしてあそこの住人さんはexif情報が残ってると鵜呑みにするんでしょう。不思議でなりません」
「もういいですよ。961もノーコメントで通したから早々に下火になりましたし、後始末も全部終わりましたから。小鳥さん、終わってるなら帰りませんか?」
「そうですね。今日はもうプロデューサーさんたち戻ってこないし」
「そのままお帰りですか?私、今晩両親いないんですけど――」
「えええっ?『今夜は帰りたくないの』ってことですか?き、禁断の花園っ?」
「ぶは?な、なに言ってるんですか、どこかでごはん食べて帰りませんかって言おうとしてただけですっ!」
「わかってますよ、律子さんたらウブなんだからぁん」
「やっぱり帰ります。一人でご飯作って今日のこと全部忘れて寝ます」
「ちょ、ちょっとした冗談じゃないですかぁ、一緒にお食事しましょうよう。エブリデイ孤独のグルメは寂しいんですよう」
「……もう、わかりましたよ。私から誘ったんだし、下のお店でいいですか?」
「わーい、ありがと律子さん♪」
「どうして小鳥さんとお話してるとこうなるんでしょうかね」
「きっと愛し合ってるから……って、うわぁ、いい表情しますねえ。背筋が凍りそうです」
「そうなるって判っててなぜ言うんですか」
「そういうときの律子さん、すっごく可愛いんですもん」
「?!」
「正確には『こうやって切り返した後の』、ね。プロデューサーさんにその顔見せてあげればいいのに」
「は……っ?ど、な、なんであんな人にっ」
「さあさあ、いいからまいりましょうっ、パソコン切って帰りましょうっ」
「はぁ……早く規制解ければいいのに」
「そうなったら大変ですよ?」
「どうしてですか」
「今度は書き込むネタ探さなきゃなりませんし……ああっ?待ってください置いてかないでください律子さーん」
オチないけど泣くもんか。
>>1乙
>>6GJ
むしろそれぞれ別の思惑で炎上阻止すべく緊迫したキータッチバトルを
繰り広げるID:Piyo2xとID:Ellieとか読みたい気がwww
8 :
創る名無しに見る名無し:2009/11/02(月) 23:42:03 ID:28wHh9Xi
スレ立て乙です。職人さん達の作品を楽しく読ませて貰っていたのですがこんな自分にもネタ神様が降臨。早速書き上げようとしたのですが…いきなり詰まったorz
職人さん方、妄想を作品にするためのコツとか注意とかアドバイスいただけませんでしょうか
>>1おつー!
そして
>>6早速GJ!『小鳥のグルメ』ってpixivにいくつかネタあるけどSSでもあったら楽しそうだ。
>>8 まったくの初書きの方でしょうか?神様がくるなんてウラヤマシス。
1.台本でも会話羅列でも箇条書きでもいいからとにかく「誰と誰がどうしてどうなった」と書いてみる。
2.オチとかテーマとか浮かばなくてもいいからとにかく最終行に『END』と書けば終わる。
初めての方ならこれでよろしいかと。このスレに関して言えば「初心者です」とかの前書きも
許容してもらえると思うし(大半のスレでは『言い訳すんな』と叩かれる)、とにかく前向きな感想が
もらえると思う。
慣れてきたらさらに、
3.書き上げたらその日は充分な栄養と睡眠をとり、翌日以降一度は読み返す。
4.文法や言葉遣いの確認をする。どんなに恥ずかしくてもDELキー押したりしない。
などなさるとよろしい。
現在このスレは即死回避のため各種レス絶賛募集中(30レス未満のまま最新レスから1週間放置
されるとdat落ちする)ですので、疑問などあれば聞いていただくとSS書き養成にも資するし、スレ的
にも助かりますw
>>1乙
新スレ祝い!というか、むしろ空気読まずに投下します。
全3レスで「one night before」
「ふう。ごちそうさま」
ここは、都内某所にある、小さなフレンチレストラン。ここで、今をときめくAランクアイドルが3人・・・
いや、正しく言うと、Aランクアイドルユニットのメンバー3人が、全員揃って食事をしていた。
「・・・ごちそうさま」
その中の一人、天海春香も、食事を終えた。
元気はないが、皿の上はすっかり空だった。
「そう言えば、このお店も何度も使わせてもらったわね。私たち三人が、一つのユニットのメンバーとして
ここに来るのも、今日が最後か・・・」
秋月律子が口を開く。
この店は、メンバーのもう一人、水瀬伊織の兄がよく使うとのことで、紹介してもらった。店の奥を
仕切って、他の客から見えない様にして個室の様な扱いをしてくれるので、あの水瀬グループの御曹司や
大人気アイドルが来店して食事をするにも、他に気をつかわなくて済むのだ。
「別に三人じゃなくても、いつでも来ればいいのよ。あんたたちも電話番号くらい知ってるでしょ?」
「まあ、そうなんだけどね。今夜くらい、ちょっとは振り返る気分になってもいいんじゃない?」
「甘いわよ。私たちには、まだ明日の解散コンサートが残ってるんだから。これを派手に大成功させないと、
これからのアイドル活動にも影響しちゃうわ。」
「え?・・・これから?」
それまで黙っていた春香が、驚いた様に視線を上げる。
「でも、私たち、明日で解散しちゃうんだよ?」
「このユニットは確かに明日限りよ。でも、私はアイドル続けるわ。ようやく日本中に、水瀬伊織ちゃんの
名前が知れ渡ったところなんだから、これからじゃない。」
「うん。伊織はそう言うと思った。で、今度はソロ活動にするの?」
「やっぱりソロがいいわね。だいたい、今の私の歌とダンスのレベルに付いて来れるのって、今のウチの
事務所じゃ、まあ律子と春香くらいしかいないし。歌だけなら千早、ダンスだけなら真も相当なものだと
思うけど。」
「おお、伊織も成長したわね。素直に客観的に他人の実力を認めて、分析までするなんて。」
「まあ、昔からわかってたんだけどね。ただ、自分が敵わないかも、と思ったから、素直に認められ
なかっただけよ。」
さすがはAランクアイドルである。今の自分が敵わないとは、微塵も思ってないらしい。
事実、元々能力の高かった伊織は、人気が出ると共に更なる成長を遂げて、765プロでも間違いなく
トップレベルの実力を持っている。
「そうね。確かに今の伊織とユニットを組ませるには、このメンバー以外じゃ荷が重いわね。もし私が
プロデュースするなら、やっぱりソロか・・・あるいは全く逆にやよい辺りと組ませるか・・・」
「やよいと・・・そ、そうね!この私と組めば、やよいも一人前のアイドルになれるかもしれないわね!
ほら、私とユニット組めば、ちょうど、今の春香みたいに大成長できるかもしれないわ!」
「えっ?私?」
上の空で聞いていた春香が、いきなり出てきた自分の名前に反応した。
「春香も成長した、ってことよ。あの伊織が認めてるんだから、相当、ね。」
「あの、は余計よ!・・・でもホント、春香も成長したわよね。最初はどうなることかと思ったわ。歌えば
音程は外すし、踊れば転ぶし。」
「立ち位置間違えて、キメのポーズの時に、リボンしかカメラに入ってないこともあったわね。」
「登場の時に転んで、アイドルなのに出オチ、とか司会者に突っ込まれたこともあったわ。」
「・・・うう、ゴメン。」
全て事実であるだけに、謝る事しか出来ない春香だった。
それでも、今日の二人はまだ、実例の数も言い方も控えめな方である。
「その春香を、メインに置き続けたんだから、あのプロデューサーもあれで相当なもんよね。」
プロデューサー、その名前にも春香は、つい反応してしまう。
「うん。それは本当にそう思う。春香の伸びしろとか、性格とか、ちゃんと見えてたのよ。あ、そうそう。
ところで伊織は、春香をメインで行く、って言われた時、不満はなかったの?」
「それは当然あったわよ。だって、歌もダンスも、どう見たって私の方が上手かったんだし。だから、
プロデューサーに文句言ってやったの。そしたら、あいつ、なんて言ったと思う?」
「また、うまいこと誤摩化したんじゃない?」
「ううん、違うわ。『伊織は、メインじゃないと目立てないのか?』って。で、つい言っちゃったのよ。
『そんなわけないじゃない!』ってね。」
「あはは。なるほど。」
「でも、こうも言ってたわ。『伊織がメインだと、後の二人は完全に脇に回ろうとする。三人の内の一人は
それでもいいかもしれないけど、二人共それじゃあユニットとしては面白くない。特に春香は、自分が脇に
回る事で、他の二人よりも実力が劣るままでいいと思ってしまう。そうじゃなくて、伊織が、いつでも
メインを代わってあげるわよ、と言わんばかりに脇に控えている方が、春香には刺激にもなるし、ユニットと
しても面白いと思うんだ。』ですって。」
この話は、律子も春香も初耳だった。
「・・・それ、結成した頃の話よね?よくもまあ、そこまで三人とも見抜かれたもんね。」
「悔しいけど、今思えば正解よね。実際にユニットとしての個性は出せたし。春香は、しっかり私たち二人を
脇にして、メインに立てるほどになったわけだし。」
「わ、私はそんな・・・ただ、プロデューサーさんの言う通りにやってきただけで・・・」
「はいはい、謙遜しなくていいから。現に、今日のリハーサルだって、これだけの低テンションで、
しっかり歌もダンスも私たちと合わせてたじゃないの。」
「そうよ。この伊織ちゃんを脇に置ける実力を持ってるのは、世界広しと言えども、あんたたちだけ、
春香と律子だけしかいないわ。」
「だから、春香も自信を持って。この先もアイドル続けて行くんでしょ?」
「私は・・・まだ・・・」
「どうせ春香は、あのプロデューサー以外とアイドル活動することが、想像できない、とか言うんでしょ。」
「・・・うん。」
「まったく。確かにプロデューサーとしての能力は認めるけど、あんな無神経な唐変木のこと、どうしたら
そこまで好きになれるのかしら。」
「えええええ?そ、そそそそそそんなんじゃなくて、わ、わわわわたわたわたしはべべべべつに」
「ほらほら。そんなに慌てないの。今さら隠さなくても、みんなとっくに気付いてるわよ。」
「み、みんな?も、もしかして・・・プロデューサーさんも?」
「それなら、安心していいわ。世界中の誰もが気付いていたとしても、あの無神経のすっとこどっこいだけは
絶対に気付いてないから。」
「うーん。でもそれって、安心していいのかな?」
律子はそう言うが、春香はやっぱり安心した。
でも、同時にほんの少しだけ、がっかりした気もする。
「どころで、律子さんは、これからは、どうするつもり?」
純粋な興味と、話題を逸らす意味も多少含めて聞いてみた。
「私?私は、元々アイドル志望だったわけじゃないし、今後は違う道を行こうと思って。」
「違う道って?」
「先々は自分で事務所をやりたいと思うんだけどね。まずは、プロデューサーになろうかな、と。実は、
その時には、伊織をプロデュースさせてもらえないか、社長に頼むつもりなの。」
「ええっ!?そんなのお断り・・・と、言いたいところだけど、案外いいかもしれないわね。お互いに
手の内も実力も、よーくわかってるし。」
「でしょう?新たにプロデューサー付けるよりは、よほど事務所にとってもメリットあると思う。二人の
知名度や話題性も、充分に生かせるわけだし。」
(みんな、これからのこと、もう考えてるんだ・・・)
春香は驚いた。しかし、考えてみれば、当然なんだろう。もう解散は明日に迫っている。その先の事も
決めなければいけないし、前へ進むなら、今の勢いがある内に、進める所まで進んでおくべきなのだ。
(でも、私は・・・)
また、ある一点で思考が停止する。
(明日のことも、考えられない・・・考えたくない・・・)
プロデューサーさんとの、最後の活動。その後は、プロデューサーさんは自分のプロデューサーでは
なくなってしまう。
(明日が来るのが、怖い・・・)
「それじゃあ、お疲れさまでした。」
タクシーの窓を開けて、春香が挨拶をする。
「おつかれ。ちゃんと明日に備えてしっかり寝るのよ。」
「明日のステージの時も、そんなしけた態度だったら、承知しないわよ。」
春香は無言で頷いた。
動き出したタクシーに、残った二人は軽く手を振った。
「なによ。せっかくこの私が、励ましてあげたって言うのに。結局あのままなんだから。」
「まあ、こんなもんかな。後はプロデューサーにまかせましょ。プロデューサー、春香のテンションを
上げる事に関しては、天才的に上手いから。」
律子はそう言って、携帯を開いて伊織に見せた。
「なに?メール?」
from:プロデューサー
title:春香のテンションだけど
main:明日のステージ、大丈夫そうかな?
「ちょうど、ついさっき来たの。まるでどこかから見ていたみたいにね。」
「それだから、春香も勘違いして舞い上がっちゃうわけよね。」
「まあでも、誰かにこれだけ気にしてもらえる、って言うのは、嬉しい事だろうと思う。」
「それに引き換え、後の二人のことは、まるっきり放置状態だったんだから。」
「ホント、手がかからないのをいいことに、まるで眼中になかったみたい。でも、きっとあのプロデューサー
は、それでも大丈夫って確信があったんじゃないかな。」
「それも頭に来るのよね。何もかも見透かされてるみたいで。」
「伊織は、24時間ずっと伊織の事だけを考えてる人が、お望みみたいね。」
「プロデューサーとして?」
「それもあるけど。男の人の好みも、そうなんじゃない?」
「うーん・・・まあ、そうね。いつも私の事を考えていて、何でも私の言う事を聞いて、そして当然、
この私に釣り合うくらい、バリバリ仕事の出来る人間じゃないとダメね。」
「ハードル高そうね。」
律子はそう言って笑った。
「つまり、あのプロデューサーが、いつも伊織の事を考えて、伊織の言う事を聞く、と言うくらいか。」
「なんであいつなのよ!だいたい、あいつが私の言う事を素直に聞くと思う?」
「意外と、専属になれば聞きそうな気がするなあ。」
「それでも、あんなオタンコナスのニブチンじゃあ、話にならないわ!あいつ、気が利かないもの。私だけ
じゃなく、律子や春香にだってそうじゃない。」
「確かに、ね。私はともかく、春香に対しても、一番肝心なところに気がついてないくらいだからねえ。」
「鈍いもの同士、お似合いだとは思うけどね。」
「しかし、上手く行くかどうか、と言うと話は別よね。あのプロデューサーの事だから、大事なところで
地雷踏んづけたりしそうな気がする。」
「ま、それもいいんじゃない?春香の頭の中は、もう差し迫った明日のことしかないだろうけど、今すぐに
どうこうしなきゃならない問題でもないんだし。」
「それに気付いてれば、最初っからあんなテンションにもならずに済んでるって。」
「そう気付かせるために、わざわざ私たちのこれからの話とかしたのに。とにかく、こうなったら他人が何を
言ってもムダよ。」
「まあ、それもそうね。」
律子はそう言って、メールを打ち始めた。
to:プロデューサー
title:Re:春香のテンションだけど
main:うーん。かなりヤバいですね。私たち二人じゃどうにも出来ないくらいです。
明日、ちゃんと励ましてあげて下さい。いつもの誤摩化しじゃあダメですよ!
/Fin
どうも。
一応、感じとしてはユニット内コミュ補完SSです。
さて、律子からのメールを受け取ったプロデューサーは、
「・・・律子にはかなわないな」
と苦笑する敏腕Pか
それとも「い、いや、俺は、べ別にいつも誤摩化したりなんかしてないぞ!」
と言い訳するPか
はたまた「誤摩化し・・・?俺、何か誤摩化したっけ?あ、あれか?どさくさに紛れて春香の胸を触った時か?!」
と見当外れなナチュラルPか
その辺が気になります。
そして、春香の恋の行方は・・・って、それはいつもの通りなんですが(ぉぃ
>>8で泣き言ほざいたものでございます(礼
>>9さんのアドバイスに励まされ一念発起で一本かいてみました。
正直初心者どころかこれが初作品になりますのでお見苦しい点等々ありますでしょうが
読んでいただければ幸いです
それでは2レスほどお借りいたします
第一回IU優勝のタイトルを手に単身渡米して三年、撤退と言われない程度の結果を残し
成人式を日本で迎える為帰国した千早を待っていたのはかつてのパートナーは既に事務所
を退職しているという事実だった。
事務所に彼の退職の理由を尋ねてみても「一身上の都合」以上の返答は得られず、彼の
元の住まいは既に引き払われたあと。これではもうひとつの帰国の目的が果たせない。
(私はきっちり三年で結果を見せた。あなたの心配が杞憂であったことを証明して見せた。
なのにあなたはいったい何をしているのですか?プロデューサー…)
そう、今の千早には日本の成人式に参加するという世間様向けの目的の他にもうひとつ
目的があった。それは三年前のパートナーに自身の間違いを認めさせ、彼を伴い再び渡米
すること。
今の自分ならアメリカでの活動基盤もあるし、日常会話程度の英語力も身につけた。
ビジネス上での風習も覚えたし、あまり上品とはいえない言葉についても知らなければ命
(や貞操)の危機に直結しかねない言葉だけは(覚えたくもなかったが)覚えた。
向こうで手に入る品物をベースにした生活スキルだって身につけた。
学歴だけはどうしようもないが歌歌いとして生きていくのだからなくたってどうにでも
なる。もし必要になればそのときには検定制度などを活用すれば良いだけの話だ。
つまり、あの夜に彼が挙げた「海外進出に反対する理由」はすべてクリアした
のだ。今度こそ彼と共に本当の海外挑戦が始まるはずだったのだ。
しかし、肝心のパートナーは一言の相談もなく既に退職。千早の心中は正直穏やかでは
なかった。
帰国から一週間後。成人式に駆けつけてくれた音無小鳥から(元)プロデューサーが今
何をしてるか教えてもらった千早は彼の母校であるという大学の講堂、でいいのだろうか
?雛壇付の多目的施設の入り口に立っていた、晴れ着のままで。
すさまじく目立っているのだが、千早本人にそんなことにまで気を配っていられるほど
の余裕はなかった。
ここにプロデューサーがいる。顔を見たらまず一発ひっぱたいてやろう。言い訳を聞く
のはそれからだ。私が必死で、一人で頑張って結果を出してる間にあの人は勝手に仕事を
やめて、何の連絡もよこさずにいたのだ。むしろそれぐらいで許してあげる私の寛大さに
感謝するべきだ。そんなことを考えつつ、気合をひとつ入れて千早は施設の玄関をくぐる
玄関をくぐった千早を迎えたのはステージの熱気だった。いや、正確には違うものなの
だが千早はそう錯覚した。建物の中の舞台で行われていた稽古はそれほどに熱を帯びたも
のだったのだ。そして、その舞台の下。舞台全体が見渡せるところでパイプ椅子から身を
乗り出し声を上げているあの後姿は…
「プロデューサー!!」
千早は思わず声を上げていた。本来芸に生きるものとしてはやってはいけないことなの
だが、わかっていても自分を抑えられなかった。
しかし、彼は振り返らなかった。それどころか千早の声にぴくりとも反応しなかった。
いかに舞台に集中していたとしてもありえない。現に舞台の上の役者さんたちの動きは
止まってる、裏方さんたちも何事かと手を止めている
「こら!通し稽古の最中に集中をきるな!!お前ら本番まで後何回も通しなんかできない
んだぞ!それとももう自分の指導など必要ないところまで今度の演目極めたか!?」
パイプ椅子に座りなおした彼だけが何事もないように稽古を続けろと激を飛ばしている
のだ。もはや、私の声には反応する価値すらないということなのだろうか?千早の心に暗
い雲がかかり始める。
(もう、帰ろう…)
諦めと共に千早は踵を返し、講堂を去ろうとする。その時
「千早、千早か?」
たった今諦めたばかりの、一番聞きたかった声が聞こえた。反射的に千早は振り返る。
そこにいたのは、確かにかつてのパートナーだった。三年間、逢いたくて仕方がなかった
人だった。髪の毛は白くなってしまい、30代とは思えないほど顔にも深い皺が刻まれて
いたが、間違いなくそこにいたのは三年前の千早のプロデューサーだった。
「プロデューサー…どうなさったんですか?その姿は」
思わずたずねる千早に彼は「いろいろあったんだ」と、曖昧な笑みを浮かべながら答え
なおも食い下がろうとする千早に「稽古の後、落ち着いて話そう。後、僕はもうプロデュ
ーサじゃないよ」と告げ、再び舞台の下へと戻っていった。
舞台稽古はそれから二時間後に終わり、千早と(元)プロデューサーは大学近くの喫茶
店にいた。本来場違いなはずの千早の服装も大学近くという店の立地と成人式当日の午後
という条件のおかげで極端に目を引くことはなかった。ここ三年の活動が海外限定だった
のも幸いしたのかもしれない。
「で、『世界の歌姫』がなんで今ここにいるんだい?僕の記憶では日本の舞台では狭すぎ
ると単身渡米したはずなんだが」
「意地の悪い言い方はやめてください。私も今年で成人ですから成人式くらいは生まれた
国で迎えたかった。それだけです」
湯気の立つコーヒーが運ばれてくると、千早はそのまま口をつける。対するプロデュー
サーといえば見ているだけで胸焼けがしそうなほど砂糖をぶち込み、「つかわないならも
らうぞ?」と千早の答えを聞きもしないで二人分のクリームをまとめてぶち込む。そこま
でしてなお少し苦そうな顔をしながらもはやコーヒーと呼べない代物に口をつける彼を見
てそこまでするくらいなら最初からカフェオレを頼むなり、他のものを頼むなりすれば良
いのにと千早はおもう。
「それよりもプロデューサーのほうこそどうなさったのですか?帰国してみれば事務所は
辞められてるし、大学の演劇部の指導なんて…なぜですか!?」
「なんて、という言い方はよくない。彼らは学業の合間とはいえ真剣に舞台に取り組んで
るんだ。もちろん僕もね。それに千早自身も言ってるように僕はもう765の人間じゃない、
プロデューサーではないんだよ、僕はもう、ね」
どうやらあれでも砂糖が足りなかったらしい彼はさらにスプーン山盛り一杯の砂糖をコ
ーヒー(だったもの)に投入しながら答える。
「私にとっては今でもあなたはプロデューサーです。それに勝手に辞められては困ります。
私はあなたの挙げた『私が海外に出るには早すぎる理由』を克服してきたんです。そして
結果も出してきました。私はあなたを迎えに日本に帰ってきたんです」
千早はまっすぐに彼を見つめ、宣言する。異議は認めない、だって私は結果を出して力
を証明して見せたのだから。強い意志を込め彼をみつめる。
「過剰な評価痛み入るけど、僕には君のプロデュースはもうできない。いや、もうプロデ
ュース自体が出来ない。千早と別れてからの三年、僕も僕なりにプロデューサーとして頑
張ってきた。その結果が三年連続でのIU予選落ち、それも早い段階での、ね。業界内での
評判も最悪。『如月千早に寄生していたコバンザメ』『新人破壊屋』これが辞める直前の
僕の業界内での評価だよ。国内でも海外でも僕を連れているメリットはどこにもない」
「そんなの、もう一度結果さえ出せば!それに事務所を辞める必要だってないじゃないで
すか!」
「高木社長はこんな僕でも765にいても良いって言ってくれたよ、確かにね。でもアイドル
は任せられない。社史編纂として、だけどね。僕はそんなのはごめんだし、僕に潰された
アイドルの子のなかにも候補生としてもう一度勉強しなおしてる子だっている。彼女達に
とって僕は疫病神でしかない。顔も見たくない存在だろう?彼女達のためにも僕は765にい
るべきじゃないんだ」
静かにそう告げる彼に千早は理解できないと首を振る。
「僕はね、少しでも芸の世界にふれて生きていきたいんだ。だから、765を辞めた。千早に
はこの気持ちは理解してもらえるとおもってるんだけどな」
「気持ちは理解できても、行動が納得できません。なぜ、私じゃいけないんですか?なぜ
私が帰ってくるまで待っててくれなかったんですか!?」
感極まって泣きながら叫ぶ千早の前に彼は使い込まれたハンカチを差し出す。そしてそ
のまま伝票を持って席を立った。
「久しぶりに顔が見れてうれしかった。わざわざ訪ねてくれてありがとうな。元気で、体
壊さない程度に頑張れ。僕はここから応援してるよ」
店を出ようとする彼を引きとめようとあわてて立ち上がろうとする千早だがなれない晴
れ着でおもうように動けない。慌てれば慌てるほどに動作は遅れ、そうこうしている内に
彼は夕暮れの町の喧騒へと消えていく。残された千早はただ、彼の残したハンカチを握り
締める以外になすすべはなかった。
こうしてあまり幸福とはいえない再会を果たした二人が、再び立場をかえIUの舞台で敵
味方として合間見えることになるのだが、それはまた、別のお話。
以上です。すいません勘定間違えてました。3レスお借りしました。
正直稚拙な文章で申し訳なく…(汗
気をつけたほうがよい点などご指摘ありましたら(できればへこまない程度に)
アドバイスなどいただけるとうれしいです。
あと、今回の投稿分は今自分の中に降りてきてた話の一部をぶった切って
何とか形にしたものです。せっかくなんでなんとか全部形にしたいとはお
もってるのですがこの手の話はこちらで発表させてもらっても大丈夫なも
んでしょうか?
そのあたりも含めてご意見ご感想いただければ幸いです
では、お目汚し失礼しました(礼
うめうめしてる間に新作が来てるとは……
作品とは関係ないが、メ欄は別に書かなくていいと思う
>>14 2人ほっぽって春香コミュ選択しまくりなくせにナチュラルPなんだろこのPw
>>19 ちーちゃん殴る決意固めてたのにいきなり帰ろうとするなw
ソフトにいってみる。
一部分とかせずに全部書き上げてから投下したほうがいいよ
>>19 まずは2ちゃんねるに書き込む時のルールを学びましょう
もっと2ちゃんねるに慣れましょう
「半年ROMれ」
んで内容だけど、「この話は続きがあるんです!」という後書きは自分はあまり好きではない
続きがあるならさっさと書いて投稿しろ!と思うので…
続きを投稿する時に○スレの続きですって投稿すればいいこと
あと()の多さが気になった。()使いすぎると読むのにつっかかってしまう
もっと()を減らしたほうが効果的になると思う
一部を切り出したにしても説明不足なとこが多いのでさっさと続きを書いてくださいw
()の多さを除けば読みやすかったし次を楽しみにしています
>>19 文章技術的な面では大きな問題は感じませんでした。
後は書き慣れです。
作品構成的な面でひとつ考えてほしいことは、
「読者は一度の投稿分しか読むことができない」ということ。
ティンと来た書き手の脳内では大河ドラマもかくやという大長編が描かれていても
物理的に投稿できる量は限られていて、そして読者はその限られた一回分で評価するしかない。
読んだ手間、時間に見合った面白さを読者に提供できなかったら評価は辛めになっちゃいますし
「続きがあるから今回は勘弁」で許してくれる読者もあまり居ないと思います。
一度の投稿分だけで作品として成立し、かつ作者の頭の中の大河物語をちょっとずつ展開させていく……
言うは易いが行うは難しいの典型みたいな注文ですけど、
こなれた文章、かつ背後にきっちり出来上がったストーリーを感じるがゆえの厳しい要求ですw
そういうわけで、続きを心よりお待ちしております。
>>14 春香がPさん好き好きすぎていいですな。この状況でファイナルコンサートを迎えるのかー。
デュオのサブやらトリオの2&3がラストコンサートのときどうしてるか、何考えてるか、って
いろいろ深いですよね。人間的に成長してる律子と伊織は実に良い「サポートメンバー」に
なっています。
この後春香エンドに繋がってるかと思うと落涙を禁じえませんが(つд`)
>>19 唆した
>>9でございますが……書き慣れてるやんw ほんとに初心者ですかこの筆致。
評価してる皆さんはあなたを初心者だと思ってない。
「メール欄に律儀にメールアドレスを記入する」「40文字改行」あたり、SSと言うより
2ちゃんねるのご経験が浅い?半年とは言いませんが、毛色の異なるスレッドをいくつか
巡回し、明文化されていないルールを読み取っていただく必要はありそうです。
ただ、個人的にはよく書いてくださいました、と申し上げます。ドロップアウトしたP、という
題材はとても興味がありますし、「アイドルのもとPがライバルのPとして立ちふさがる」
というシチュエーションは大好物です。
少々読者置いてきぼり気味の文体や地の文重視の書き筋はカンペキ好みですし、
もし俺のレスどおりに「終わってないけど終わらせた」のならその勇気にも乾杯。これが
できずに作品投下に踏み込めない人は多いのです。
国語的な完成度も高いのでこのレベルが維持できるならいい作品が完成しそうです。
感想が厳し目なのは腕を買われたとでも思って、続編でも別作品でもぜひお取り組み
ください。楽しみにしています。
……いやホントに台本形式のすっごいのが来るかもぐらいに覚悟してたんですってば。
早速の感想ありがとうございます。
>>20 メール欄埋めなくてよかったんですね、今回からはずしました。
ご指摘ありがとうございます。
>>21 自分で頭空っぽにして読み直してみました。
確かにいきなり帰ろうとしてるようにしか見えないです。地の文での
説明不足ですね。ご指摘ありがとうございました。
全部書き上げてからというのが本来の形なのでしょうけど多分自分の
場合、完成してないを言い訳に踏み出せないような気がしたので今回
投下させていただきました。
このコメント自体がいい訳くさいのですが(汗
>>22 2ちゃんねるに慣れる、ルールを覚える。なんか大事なことをすっとばして
勢いで飛び込んでしまったようです。いまさらながら調べております(礼
文章に対するご指摘、連作になるときのやり方などありがとうございました。
いっぺんに書こうとすると多分自分がパニックになるか砕けるかになりそう
なのでコメントいただいた○の続きですの形で何とか続きを書いてみようと
おもっています。
>>23 ご指摘ありがとうございます。
言い訳がましいコメントで甘えていたなと痛感しております。
確かに読み手としてみると「続きがあるから」はあまり良い
気分ではないですね。反省します
作品として成立する話の密度とかこれから学んでいかなければ
ならないのでお見苦しいところもあるとおもいますが、次の作品
にもお付き合いいただければ幸いです
>>24 ありがとうございます。あなたのおかげで最初の一歩はなんとか
踏み出せました。礼儀知らずというところで盛大にスッコロンだ
感は否めませんが(汗
ただ、本当にSS書いたのはこれが初めてなんでなんか初心者と
おもわれていないというのは嬉しいやら空恐ろしいやらなんですが
何とか続きを書きたいとはおもっているので投下した際にはまた
ご指摘等いただければとおもっております
今回は感想に対するお礼とお返しの言葉までで失礼します
なんか出遅れた気もしますが。
>>19 短編として見た場合、充分に読める出来だと思います。
ただ、長編の一部になる可能性もあるとのことなので、気付いた点を。
全体に、千早の物語だからと言っても、ちょっと平坦な感じがしました。
もう少し、文章そのものに起伏が欲しいと思います。
特に、長編となった場合、これが見せ場になると思われますから、
他の部分との差別化の意味も含めて、変化が欲しいです。
たとえば、冒頭からもっと華々しい千早の帰国シーンを描いて、
その後で千早がPのことを知って雰囲気が暗転する、とか。
あと、ラストのところで、追いかけようとした千早が、
慣れない草履が仇で、派手に転んでしまうとか、
さらに、その転んだ音に、Pが一瞬振り返って目が合うが、
そのまま行ってしまう(もしくは振り返りもせずに行ってしまう)とか
もう一押し、転んだ拍子に鼻緒が切れて後を追えない、とか。
そこまで行くと過剰気味ですけど、そんなドラマチックな演出が欲しいかな、と。
このままで長編になると、上記の平坦さが気になりそうな気がしました。
(もちろん、淡々とした語りで読ませる手法もありますが。)
文章自体は、読んでいて詰まるところもなく、素直に読めました。
ストーリーも興味をそそられます。
次回作になるか、長編化になるか、いずれにせよ、待ってます。
>千早の物語だからと言っても、ちょっと平坦な感じがしました
この一文を、千早の物語だから平坦な感じと読んでしまった…
ゴメンよ千早、わざとじゃないんです…
……横レス、お目汚し失礼しました
前作へのご感想、まことにありがとうございました。島原薫です。
やっとDSもクリアして、これからどのように扱っていくのか、自分でも楽しみです。
早速ですが、尾崎PのSSを投下させていただきます。
タイトルは「partiality」。使用レスは3レス。
DSのネタばれと、漫画版アイマスrerelationsのキャラが出ております。ご注意ください。
投下後終了宣言+前作レスへのお返しです。
本番のステージへと駆けていく絵理の後ろ姿を、いまだ震える体をおさえつけながら見送る。
あまりにも大きい賭けに勝った見返りは喜びよりも先に、二度と勘弁願いたいという安堵感だった。
スーパースター、星井美希の姿はもう無く、彼女のプロデューサーだけが絵理のステージを観察している。
その怜悧な瞳はさすが、いくつもの事務所を渡り歩いただけあって鋭い。絵理のステージングよりもそちらに目がいってしまっていた私に気づいたのか、"彼女"はゆっくりと近づいてきた。
おめでとうございます。
星井美希のプロデューサー、藪下幸恵Pは先ほどの表情とは打って変わって、柔和な笑顔で手を差し出してきた。
負けたというのに随分と余裕で。
皮肉の一つでも言ってやろうかと思ったが、ここでは自分達が官軍。安っぽい真似はしたくない。
「ありがとうございます。まさか星井美希と戦えるなんて、光栄です」
プロデューサー同士の握手などという、口約束よりも薄っぺらいそれを滞りなく済ませる。
むしろ周囲のスタッフの方が緊張したであろう場面が過ぎると、「面白い子ね」と、藪下Pの方から切り出してきた。視線の先は絵理。
本意はどうあれ、自分のアイドルが褒められるのは単純に嬉しかった。
彼女は絵理の一挙手一投足を逃すまいと集中しているのか、たまに体を傾けてはマジマジとステージを眺めている。その姿はまるで、ただの絵理のファンにも思えた。
「ネットアイドルのクイーン、ELLIEでしょ? どうやって岩屋の外に連れ出したんです?」
「無理矢理引っ張り出した具合です。よく絵理をご存知で」
「それはもう。ウチもスカウトを考えたんですが、どうにもアナログな人が多くて」
天才、如月千早に匹敵するとまで言われた佐野美心があっさりと引退して、そのプロデューサーであった藪下女史もDNAプロから765プロへと鞍替えしたのは業界では結構な話題となった。
今や961プロと並ぶ大手芸能事務所に移った彼女の担当アイドルが星井美希だと報じられた瞬間、いったい幾人のプロデューサーが肩を落としたか。
その可憐な外見とは裏腹に豪腕とまで称される手腕はあっという間に美希を一流アイドルまで押し上げた。美希のずば抜けた才能あってこそなのだが、あの才能を過不足無く支える実力は健在というわけだ。
なによりアイドルが好きで好きで仕方ない、という姿勢は私も見習うところであり、尊敬すべきところだ。
あーカワイー、と臆面も無く他事務所のアイドルを褒めちぎる藪下Pに、今度は私の方から口を開く。
「いいんですか? 星井美希を放っておいて」
ああ、と絵理から視線を外さずに返す藪下さん。
ほんの一瞬、殺気にも似た何かが彼女から感じられて、半歩後ずさる。
「負けて欲しかったので」
え? と素っ頓狂な声をあげる私など意に介さず、彼女は絵理に夢中なまま続けた。
「あの子って何も考えないまま、ステージにあがるでしょう? 今のランクならともかく、IUとなると話が違ってきますから」
なるほど。
絵理と星井美希はお互いにビジュアルを武器にしながらも、その戦略はほとんど正反対と言っても良いアイドル。
考えて戦う術を彼女にも、といったところだろう。
いわば絵理はそれを気づかせるための踏み台。癪に障るが、こちらはIUにも無条件で出れるほどのアイドルを打ち負かした実績を得た。
それでもまあ、仕返しくらいはしておこう。つくづく私は大人気ない大人だ。
「ですが、星井美希が考えて、なんて出来るでしょうか? むしろ彼女の魅力を妨げてしまうのでは?」
勝ってしまえばこちらのもの。
スラスラと出てくる文言に、やっと藪下Pがこちらを向いたかと思えば「そうね」とそっけなく返された。
どうにも手玉に取られているような感覚を覚え、気持ち悪い。
絵理のステージも終盤を迎え、それでも視線の熱を緩めようとしない藪下Pは勝者へのご褒美なのか、私の質問に答えた。
「尾崎さんの言うとおり、美希にステージの最中に細かいことを考える能力はないわ。だから、どんな小細工を弄されようがビクともしない腕力を彼女に求めているの」
「腕力、ですか」
「そ。アイドルをこう言うのも変だけど、私は美希に横綱相撲をして貰いたいの。勝つべくして勝つ。伝説のアイドル、日高舞のようにね」
息を飲む。
今後、いかなる才能が現れようと比肩しうるアイドルなんて出てこないであろう伝説を彼女は再現しようと言っている。
なにより私よりも小柄な体からは、その伝説すら越えんかという気概に溢れていた。
だからこその豪腕、藪下幸恵なのか。
言葉を失う私をよそに、ステージでは踊り終えた絵理がチラリと、スタッフに頭を下げながら視線をこちらに送ってくる。
慌てて自分を、プロデューサーに戻していく。
「いやぁー、可愛かったわ絵理ちゃん。今度、出来ればサインとか貰えます?」
振り返った藪下Pは、それこそもう絵理のファンになっていた。
サインも何も、こちらに近づいてくる絵理に話しかけることだって出来るのに。
いつまでたっても、ブラウン管の外の視線を持っていることもまた、私には勉強になった。
「ああそうそう。一つ、先輩から忠告ね」
勝利を労い、先に絵理を控え室へと向かわせると、最後に藪下Pが声をかけてくる。
これからまた、この人のアイドルと戦わなければならない。
その覚悟にはもう少し時間を要するが、身構える私に彼女は最後の最後、爆弾を投げつけてきた。
「アナタは早くお人形遊びをやめないとね。rioraのレイコさん」
急激に頭が、体が冷えていくのがわかった。
この人もまた、やはり私の敵だった。冷める思考の中、私は私の大事な絵理の元へと急いだ。
おわり
投下終了です。以下、前作へのレス返しです。
>>365 今回は意識的に文体を変えたのですが、上手く作用していたようで安心しました。ご感想、ありがとうございます。
>>366 シニカルなものは個人的にも好きなのですが、アイマスの場合は、題材が題材なだけに扱いが難しいので普段は抑えております。
なかなか受けるかどうか判断がつかず不安だったのですが、そう言っていただき、感謝しております。
>>367 コメディである以上、こういった言い回しにはいつも以上に気を遣いますね。
普段からコメディを書かれている方はスゴイな、と思います。
>>368 出来るだけ、キャラの範疇でコミカルに、となるとやはり難しいですね。
最近は百合に寄った作品を書いているせいか、ついついアイドル同士の距離を近づけ過ぎるのですが、これぐらいで済んでよかったです。
>>381 先述しましたが、コミカルなものは色んなところに気を使うので、普段はあまり使わない文体だったりします。
楽しんで頂けたようでなによりです。
タイトルに関してはもう、私のセンスの問題となっておりまして、精進いたします。
新しい書き手の方も出てこられまして、楽しくやっていきたいですね。
それでは長々と失礼しました。今後ともよろしくお願いいたします。
俺がこのオザリンだったら確実にちびってる
自分以外全員天災もとい天才な中に放り込まれて戦わざるを得ない
そんな不運に涙する
がんばれこのオザリン
>>32 相変わらず、人の部妙な所に踏み込むのがお好きな様でw
今回は、また鋭く踏み込むキャラと踏み込まれるキャラの選定が見事ですね。
文体や言葉の使い方も、こういう擦れた大人キャラにぴったりです。
読んでいてニヤけながら興奮する感じを受けました。
面白かったです。
こういう言い方はある意味失礼かもしれませんが、これまでの発表作中で最高です。
しかし、これが実際にあったと考えると、オザリン失踪したくなる気持ちもよくわかるなw
おっと、ひとつ言い忘れた。
>>27 私、
>>26ですが、もちろんあなたの解釈した通りの意味で言ってます。
ご安心くださいw
おや?こんな休日に、誰か来たかな?
流れぶった切り失礼しました。前スレ埋まったんで目次でございます。
では島原Pの感想へと流れを戻します。
>>32 GJでございます。
partialityって第一義は「部分的なさま/不完全さ」なんだけど「偏愛的」って意味も
あるんですね。勉強になりました。
尾崎Pって弱い部分がたくさん見えててもうそれこそ不完全なPなんだけど、一途で
ある様子もまた魅力的なんですよね。キャラスレに「千早の将来像のパラレル(大意)」
って書き込みがありました。はいそこゼノって言うの禁止。
絵理シナリオは実は主役が尾崎Pだ、というのをSS化した感じですね。IU予選が
クライマックス、尾崎PのADVはここからIU本戦までがメインストーリー。藪下P
ばかりでなくほかの765P、すなわちアケ/箱/PSPのプロデューサーたちもライバル
です。彼女は好敵手たちからいろいろなものを学んでゆくのでしょう。
このSSではまだそこまでわかってないご様子ですんで、これから先が楽しみです。
フツーに『第二話』とか続いてもよさげw
堪能させていただきました。
>やよいの食事手帳
埋めにしておくのはもったいないGJ!
やよいスレにはやよいハンターズというのがいるけど、ここの事務所は全員餌付け魔かw
もともとの37kgはかなり細いけど2割超も急激に増えたらいくらなんでもかわいそうです
アイドルの皆さんやよいちゃんの健康管理もよろしくお願いしますm(_ _)m
やよい日記の口調がなかなかイカニモで読んでて楽しかったです。俺も困ることあるけど
オトナな言い回しがちらほらあるのはきっといっぱい勉強したのに違いない(ぐっ)。
面白かったです。ありがとさま。
前スレラストのやよいの食事手帳は、果たしてわかってて埋めのつもりでやったのか、
それとも知らずに素で投下したのか、その辺が気になる。
わかってればいいけど、知らずにその後何のレスもなしでスレが落ちたなんて、
かなりの悲劇になりかねん。
「たった今スリーサイズを測って貰ったが、今のバストは76cmだそうだ」
「・・・っ!!」
「ああっ?!千早ちゃん、真、しっかりして!」
やよい−!俺はぽっちゃりでも気にしないぞー!
まぁ、嬉しそうに食べまんぷくぅな笑顔で「ありがとうございました!」ってやよいに言わせたい欲求を抑えるのは
禁煙禁酒に近いレベルの精神力が必要かもしれんしなぁ
可愛がりと餌付けは全く別って考えられる人が欲しかったな。
小鳥さんに始まる、孫可愛さから菓子与える困った祖父母的な愛情らに対して、
保護者に相当するプロデューサーも『やよいは公園の鳩やゴミ箱じゃない』と言ってるのに、
結局また集団餌付けに戻っちゃうのはどうなんだろ…
太ってようが痩せてようが、やよいは可愛いのには同意するが
やよいが最後まで動物園の動物扱いっぽくて何かモヤモヤした。
やよいにおすそわけするのが悪いんじゃなくて、
みんなして与えてカロリーオーバーになるのが困るって話だから
いい妥協点に着地したと思うぞ
前スレ
>>415-416です、埋め目的で気楽に書いた作品に沢山の感想ありがとうございました。
本来はレス返しは次の作品のあとがきと合わせて書くのがマナーだと思いますが
自分が物を書くテンションになるのが数ヶ月に一度、下手したら数年に一度という有様なのでレス返しのみでご容赦を。
>>39 餌付けの大本の発想はそのやよいハンターズからでしたねw
後、ゲームで実際にやよいをプロデュースした時に「調子が良いからご飯を2回もお代わりした」と言う挨拶があって
貧乏設定とか関係なく普通に食いしん坊なんだな〜と理解したので餌付けな話になりました。
>2割超も急激に増えたら
3kg増えて40kgに〜位だと純粋な成長分を除けば殆ど増えてないと思ったので思い切ってかなり増やしてみました。
後、全盛期(体重的に)の辻ちゃんが60kg以上あったそうなので自分の趣味としてもその位増やそうとも思ったのですが、
そこまで来ると流石に餌付け組も気付くし自重するだろうと思ったのでそう言う意味では手加減してます。
>やよい日記の口調
正直やよいっぽさが出ているか不安だったのでそう言って貰えると嬉しいです。
彼女達は口語のまま文章を書くので、語尾を伸ばしたり感嘆の台詞をそのまま書くのは
違和感が強くて加減が分かり辛かったのですがこれ位で良かったのでしょうか?
>>40 500kb制限の事は知ってて完全に埋める目的で書きました。
1行レスだけで6kb埋めるのは結構手間ですし、長い間2つのスレが同時に残ってるのもアレだと思ったので。
後は、自分の作品に何の感想も無いまま2〜3日スレが止まってしまうと辛いので
いっそ次のレスの存在しない埋め作品で書いてしまおうと言うチキンな考え方もありましたが。
>>41 同士発見!やよいはぽっちゃりでも可愛い!
アイマスでぽっちゃりとかお肉の話になると律子や春香が良く話題に上がりますが
個人的にはやよいも二人に負けない位その手の話が似合う気がします。(食いしん坊とか、食生活が良くなるとか)
>>42 ちょっと拙いんじゃないかと気付いていても、その笑顔の誘惑を振り切るのは難しいでしょうね。
やよいの性格からして自分から「今日はお菓子くれないんですか?」等と聞いたりする事は無いのに
こっちから勝手に用意してしまうイメージです。
>>43 正にその発想は無かったと言うべきか、完全にその考えが抜け落ちていました。
最後の文は、
>>44氏の言う通りみんなして食べさせたら駄目だから量的な制限を掛けるイメージでしたが、
それだと確かに困った祖父母的な可愛がり方自体は全く変わってないんですよね。
作中では書いて無かったのですが、全員が毎日餌付けしてるのは自分だけと思っていたイメージだったので
そこに気付けば問題は無くなると思っていたのですが、その辺りも反省させる必要があったかも知れないです。
最後に改めて、沢山の感想を書いて頂いてありがとうございました。
いつになるかは分かりませんがまた物を書くテンションになった時に
お邪魔させて頂く事もあると思うので、その時はまたよろしくお願いします。
まいどお世話さまです。レシPでございます。前スレで書けない書けないと言ってたブツが書き上がりました。
タイトルは『美希曜日よりの使者』、主演は言うに及ばず。本文7レスです。
ただいまから投下します。よろしくお願いします。
久しぶりにオフとなった日曜日は、あっという間に過ぎてしまった。もともとこの業界に潜り込んでは
いたものの、ひょんなことからプロデューサーなどという職業について数ヶ月、まだ手の指で数え
られるほどの暦通りの休日である。
時はすでに夕刻、アパートの築年数に似合いのインターホンが死にそうな音を出した時、俺は
晩飯でも食いに出ようか、それとも自炊に挑戦しようかと思案しているところだった。
「ん、なんだ?……はい」
「書留なのっ……です」
ドアの向こうからはこんな声がする。
「……ええっと?なんですって?」
「書留ですのー」
この世に生まれて二十数年、俺の知る限りこういう言葉遣いの郵便局員は記憶にないし、そもそも
いくら民営化したとは言えローティーンギャルが書留を配達するサービスがあるとは到底思えない。
俺は足音を忍ばせてドアに近づき、そっとノブに手を伸ばした。
「郵便局員さんならもっと低い声だと思いますよー」
「……が、がぎどべでずう」
いきなりドアを開けてやると、ノドに手を当てて眉間に皺を寄せ、なんとかおっさんの声帯模写を
しようとする『未完の幼きヴィジュアルクイーン』がつっ立っていた。
「……お前なあ」
「ゔぁ゙?」
大体にしてほぼ毎日顔を突き合わせているのだ、聞き間違うはずがない。
俺の担当アイドル・星井美希である。
「アホか。なにしてるんだ、美希」
「プロデューサーさん、おはよーなの」
「スタジオとかではそういうふうに挨拶するけど、世間一般では『こんばんわ』の時間だぞ」
いきなりの珍客に戸惑いながら、何があったのかと首をかしげる。
「どうしたんだ、なにか急用でも?っつうか、用事があるなら電話くれればいいだろう」
「ううん、違うの。ミキね」
眉間の皺を解いた美希はにこりと笑い、こう言った。
「プロデューサーさんに遊んでもらおって思って」
「はあっ?」
「デートしてよ、プロデューサーさん」
「……デート?」
「あー、プロデューサーさん、いまエッチなこと考えたでしょっ!」
「なっ!?」
むしろ、そんなことを言われたことで脳内に桃色の妄想が広がってしまう。14歳と言うのにため息
の出るようなプロポーションの持ち主、美しく染め上げられたブロンドのロングヘアとアンニュイな
物腰、仕事の付き合いとはいえ、相手は子供とはいえ、邪な考えのひとつやふたつ浮かばせねば
男がすたるというものである……と、まさに相手の目的は俺にそんな妄想をさせることだったようだ。
いたずらな光を放つ瞳で満面の笑みを浮かべている。
「うっふっふう」
「……おっま……大人をからかうと」
「あはは、ごめんなさいなの」
照れ隠しに怒ってみせても効果などない。悪びれるふうもなく彼女は続けた。
「でもね、遊ぼっていうのはホントだよ。ミキね、わざわざここの住所調べて探したんだ」
「そうか、お前ここ来るの初めてだもんな。でもどうして?遊ぶんなら友達いっぱいいるだろう」
「さっきまで一緒だったんだけど、お開きになっちゃったのー」
遊んでいたというのは、2駅隣のショッピングモールだった。友人がその近所に住んでおり、みんなで
新しく出来た人気の服屋をめぐっていたのだそうだ。しかし夕飯の時間になると帰宅する子や
ナマイキにもこれからデートの子などばかりで、美希だけ取り残されてしまったと言う。
「今日はパパとママ、二人でお芝居観に行ってるんだよね。お姉ちゃんもお友達と遊びに行っちゃった
し、ミキごはん食べるトコないの」
「家にメシくらい用意してないのか」
「いらないって言っちゃったんだもん」
友人の誰かしら残るだろうと思っていたのが彼女の誤算だったようだ。食事分の小遣いは貰って
いるが一人でファーストフードというのも味気なく、そういえば俺の住所がこの辺で、自分と一緒に
オフだと思い当たった、という経緯らしい。
「んー、まあそう言うことなら、俺もちょうど飯でもと思ってたところだ」
「わ、やった、ねえねえプロデューサーさん、どこ行こ?」
「まだ決めてないよ。ちょっと待ってろ、いま用意するから」
「上がってていい?」
「いいけど、余計なことするんじゃ」
「わーいお邪魔しまーすっ」
「人の話を聞けー!」
ともかく部屋に入れ、興味津々の表情で独身貴族のたたずまいを物色する彼女を牽制しながら
手早く着替える。今や彼女も街を歩けばたまには気付かれる程度には顔が売れている。連れ立って
歩く俺も誤解を生むような格好をするわけには行かない。
チノにボタンダウン、インナーにTシャツを着込んだら美希に却下された。この姿は相当ダサいらしい。
「なんでだよ、もうけっこう寒いだろ」
「もこもこヤなの。この方がすっきりしてかっこいいよ、プロデューサーさん」
まあ姫のご要望では仕方がない。強い風が吹かないよう祈りながらジャケットを羽織った。
「なにか食べたいものあるか?美希」
「プロデューサーさんは?」
「なんでもいいよ」
「じゃね、ミキあれ行きたい!居酒屋さん!」
「はあ?」
「いいじゃない、だってプロデューサーさんお酒飲むでしょ?ミキお味噌の焼きおにぎり食べたいな。
あと焼き鳥とモツ煮」
一瞬躊躇したが、考えてみれば高級フレンチとか言われるよりはよほど気が楽だ。ついでに
未成年者を居酒屋に連れていく件についても、地元なら心当たりがあった。
「んー、じゃあそうするか。ただしお前はタレントなんだからな、立ち居振る舞いに注意すること」
「ハイなの!」
すばらしくよい返事だが美希のことだ、よく見ておかねばなるまい。
****
いわゆるベッドタウンに分類されるこの駅前には仕事帰りの客を当て込んだ店が群拠しており、
俺の行きつけの店はその中の、古びた飲食店ビルの地下1階にあった。日曜の夕食時とあっては、
客は俺と顔見知りの常連ばかりのはずだ。
「おやっさん、いいかい」
「よう兄ちゃん……なんだよ、今日はカノジョ連れかあ」
「よしてくれ、話したことあるだろ?事務所で担当してる子だよ」
「ああ、美希ちゃんっていったっけ」
このような少々の誤解も一言で済むのがありがたい……と思ったのが間違いだった。
「はじめましてー。いつもミキのハニーがお世話になってまーす」
「こら美希ーっ!」
入店30秒でこのありさまだった。大して広くない店内のそれでも目立たない席を見付け、今日の
客筋を確認してようやくひと息つく。
「美希……お前なあ」
「えへ、ごめんなさあい。でもプロデューサーさんがみんなトモダチだって言ってたから、あんな
感じのツカミでいけるかもって」
「お前は漫才師か。まあ結局『俺が担当アイドルに手を出す度胸なんかない』って誰ひとり
引っかからなかったけどな、はぁ……じゃなくて言ったろ、注意しろって。もしも見ず知らずの
美希のファンが店の外を通りかかって、今の聞こえちゃったら大ショックだろ?追いかけて
冗談でしたとか言えないんだぞ」
「あ、そっか」
あの若造がいっちょまえに説教なんかする身分になって、という声が聞こえてきそうな興味津々の
視線の中、芸能プロデューサーとしての責任を果たす。常連客の大部分は学生の頃の俺を憶えて
いて、この店での俺はいつになっても『ぐーたら学生の兄ちゃん』なのだ。
「もう普通に歩いてても声かけられたりするだろ?それだけ注目されてるんだし、お前が気づかない
うちに何か勘違いする人もいるかも知れない。あとでタネ明かしが要るようなジョークはダメ」
「むー、キュークツなの」
「TPOってことだよ。今のは、入口のドアが閉まってる時だったらセーフかな」
「はあい。今度は戸締り確認するね」
「なんかおかしいが、いいだろ」
品書きを見ながら適当に腹に溜まりそうなものを頼んでゆく。美希を家まで送るにしても、
ビールの一杯や二杯構わないだろう。
「美希、お前は何飲む?」
「あ、ミキはとりあえずカシスオレンジでいいや」
「おやっさん、中生とオレンジジュース」
「あープロデューサーさんノリ悪い!今のは『オッケー、中生とカシスオレンジねーってコレ酒
じゃんかっ!』ってノリツッコミするトコでしょっ!」
「できるかー!」
美希の育ちを考えるとこういう店には縁はないだろうと思っていたが、案の定店内のそこら中が
気になるようだ。腰を落ち着ける間もなく、入口の縄暖簾から神棚の熊手からカウンターの
大皿惣菜まで全部観察して回る。
「おじさんおじさん、あの飾りなに?クマデ?熊手って熊の手でできてるの?」
「うわあ、タレントさんのサインいっぱい飾ってある。ミキのは?ああ、お店に来た時にサイン
置いてくんだ。じゃあ今日はミキも書いていっていいんだね。明日も来たら明日も書いていいの?」
「あ、このお芋おいしそう!おじさんこれ食べ放題なの?え、美希ちゃんなら特別?やった、ありがと
なのっ」
「おじさんその瓶の中身なに?梅?へー、おっきい梅酒だねっ。となりは?ふうん、ニンニクも
お酒になるんだー。そのとな……ひゃああっ、へへへヘビっ!おじさんお酒のなかにヘビがーっ!」
「うるさいよお前はー!」
マムシ酒に悲鳴を上げるに及んで、さすがに首根っこを掴んで席に引き戻した。客たちの中には
テレビで彼女を見知っている者もおり、『星井美希の居酒屋ぶらり旅』を大層楽しんでいて苦情の
たぐいは心配なさそうだ。とは言え、このままでは他の誰でもなく俺の神経が持たない。
「お前なあ、普通のレストランに入ったってここまで気さくに店長とトークしないだろ?」
「はーびっくりしたぁ。プロデューサーさんあのお酒飲んでみてよ」
「話を聞け。そして俺を実験台に使うな」
もうひと説教くれようと思ったら、ふいに俺の目の前に、ビールではなく透明な液体の入った
ショットグラスが置かれた。中身の見当がついた美希が期待に目を輝かせている。……店主の
オゴリってことらしい。
「ええい、どうなっても知らねーぞ」
溜息をひとつつき、俺は美希のオレンジジュースとグラスを打ち鳴らした。
****
店内には一時間と少しくらいいたろうか。店主はご丁寧にも表に『本日貸し切り』の張り紙まで
してくれており、俺たちは少なくとも事情を知らない一般客を驚かすことだけはなく楽しく食事を
終えた。
「おいしかったあ。プロデューサーさんご馳走様でした」
「俺は食った気がしねえよ。美希、ちゃんと食べたか?」
「うん!あの焼きおにぎりね、ミキが生きてきた中でイチバンだよって言ったら、おじさん今度
差し入れ持ってきてくれるって!」
「はいはい、そいつはよかったな」
「ねえねえプロデューサーさん、次どこ行くの?」
「どこって……帰るに決まってんだろ」
「うええ〜?」
当然のつもりでそう答えたら、ものすごい顔で不満をぶつけられた。今の顔も写真誌に
やられたら活動できなくなるに違いない。
「まだつまんない!プロデューサーさんもっと遊ぼうよー」
「バカ言ってんじゃないの、コドモは寝る時間だぞ。お父さんたちだってもうすぐ帰ってくるんだろ?」
「ぶうぅ〜」
「その顔やめろ」
しばらくにらみ合いが続いたが、いずれにせよ中学生には少々遅い時間だ。見た目こそ
ハデだがなんだかんだ言って育ちのいい美希も、自分に分がないことはわかっているだろう。
明日は月曜日で学校もあるし、その後は事務所に来てレッスンもあるのだ。
やがて彼女も気持ちの折り合いをつけたらしく、ふうと小さくため息をついて俺を見上げた。
「じゃあさ、じゃあさ、ミキのこと、家まで送ってよ」
「お安い御用だよ。つうかそのつもりだった」
「家まで手、つないでくれる?」
「バカ言え、さっきも言ったろ?誤解される行動は禁物」
「なら……50センチ以内」
「へ?」
「帰るまででいいから、ミキから50センチより離れちゃダメ!触らなかったら勘違いもないでしょ?」
「おま……」
「だめ?じゃあ45センチ!んー、40センチなら?」
「縮めんなー!」
「ね、ね、いいでしょ?」
俺は内心で白旗を揚げた。エスコート距離がゼロになる前に手を打たねば元の木阿弥である。
「わかったよ。でもさすがに歩きづらいから、1メートルまではOKにしてくれ」
「やったー」
****
駅までの100メートルは最大距離を維持したが、意外に混んでいた車内では美希が嬉しそうに
微笑むのに気づき、冷や汗が出た。電車が揺れた折をみてはさりげなく背中を持たせかけてくる
美希を支えてやりつつ、小声で訊ねてみる。
「美希、今やってること面白いか?」
「うん、面白いよ。なんで?」
「お前ってさ、はじめのうち何か違う感じだったろ」
「すぐ寝たり、チコクしたり?」
「声でけえよ」
美希が変わりつつあるのに思い当たったのは、少し前のことだ。二つ目のランクアップを
果たした後だったろうか。
その頃を境に、遅刻が減った。ドタキャンがなくなった。レッスンや収録に身が入るように
なった。業界経験の浅い俺ですら、美希がカメラの前で見せる輝きに磨きがかかったのを
感じ取ることができた。
「今のお前さ、なんつうか、幸せそうだよ。別に今まで不幸だとか思わないけどな」
「幸せかー……うん、でも、そうかも」
俺の胸に背中を預けたまま、真上を向いてそう言う。
「あのね、ミキってドリョクしないでなんでもうまくできる子でしょ?」
「もう少し謙虚にならんかなー」
「だからね、学校とかでもあんまり面白くなかったの。んーと、イゴコチいいけど、楽しくないの」
「へえ?」
何度か言い換えを試みながら俺に話してくれたのは、いわゆる天才の未充足感だった。
教科書に一通り目を通せば内容が理解でき、憶えたことは忘れないのでテストでも必要充分な
点数が取れる。運動神経もセンスもあり、普通に学校生活を送るに足りないものは何もない。
顔もスタイルもよく、明るく人なつこい性格でクラスメートにも評判がいい。美希は毎日を
不自由なく過ごしているのだが、努力しないで相応の境遇にいられるから、何かに必死に
なるということがなかった。
「ミキ自分でもね、ヒッシな人ってなんか暑苦しいし、やだなって思ってたんだけど」
美希は続けて言う。
「ゲーノー界ってね、みーんなヒッシだったの」
「必死ねえ」
「んっとね、例えばディレクターさんはいっつも番組作りのこと考えてるし、メイクさんはお化粧の
ことばっかりケンキューしてる。メイクのコツとか、ミキがひとつ聞くと10も20も教えてくれて
憶えきれないの」
「ああ、なるほど」
「音響のチーフさんだったかな、もっと楽しいことあるって思うな、って聞いたら、『集音マイク
いじるより面白いことなんてないよ』って言われてびっくりしちゃった。ミキ、マイクなんか
いっこも面白くなかったんだもん」
「あはは、それは人によるよな」
「うん、それ。人によるっていうこと。でもね、それぞれみんな、自分の好きなことにはすっごい
夢中なの」
似たような業界は多いが、芸能界というものも『好きでなければやっていられない』世界だ。
仕事はキツい、給料は安い、下積み期間は長い、功績はトップが総取りでミスは底辺が
全部背負い込む。765プロの待遇は相当マシで、俺より年齢も経歴も上の人間が、俺より
安い給料で、俺より大変な仕事をこなしていることだってザラにある。この俺たちを支える
原動力は、『この仕事が好き』だということだ。
「そりゃそうさ。俺だって番組作りが好きでこの業界にいて、社長に拾ってもらったんだ。
自分の好きなことだから、いくらでも夢中になれるよ」
「それでね」
美希は俺から身を離し、こちらをくるりと振り向いた。
「そんな夢中な人たちが作った番組が、すっごく素敵だったの」
タレントを輝かせるメーキャップアーティスト。歌い手の声に最大限の効果を与える
バックバンド。視覚演出が舞台を盛り立て、ベストの音源を収録し、至高のステージを
ディレクターがメディアとして完成させる。テレビ番組とはまさに、各分野のプロフェッショナル
の技術の集大成であると言えた。
「そのチーフさんに言われたんだ。『美希ちゃんが一生懸命歌ってくれてる、その歌声を
俺のマイクが集めて、それが番組になって日本中に流れるんだよ。こんなに面白いこと、
他にないだろ?』って」
「うん、そうだよな。その人にとっては、いっちばん面白いことなんだよな」
「だからね、えへへ」
「なんだよ」
「だからね……ミキもアイドル、夢中になってみようかなって思ったの」
頬を染め、照れて笑う美希に見とれているうちに最寄り駅に到着し、会話の続きは夜道を
歩きながらとなった。
「ミキがフツーに歌ってもみんな褒めてくれるけど、前もっていっぱい練習して一生懸命
ステージやると、みんながすっっっごい喜んでくれるんだよ!目をまん丸くする人がいたり、
タレントさんじゃなくてスタッフさんなのになんだか『うわ、負けてらんねー』とか燃えちゃう
人とかいて、とっても面白いの!」
1メートルだの50センチだのの約束も忘れて、俺の視界を目一杯駆使して大きな
身振り手振りで説明する。と、そこで言葉を切り、美希は動きを止めて俺を見つめた。
「だからね」
「うん?」
「だから、お仕事ない日はちょっぴりつまんなくて。それに、きっとプロデューサーさんも
つまんないかもって思って、プロデューサーさんちに遊びに来ちゃった」
俺は……。
俺はこの日曜日、なにをしていたろう。
昼前までだらだら眠り、たまっていた掃除洗濯をこなしてテレビを眺め、雑誌を読み
コンビニをハシゴして、気がつけば一日が終わっていた。
もちろんそれは、仕事の疲れをとるためだ。布団で眠ることもままならない日々を
送る身にとって『なにもしない日』は貴重であり、俺はそれを存分に楽しんだ、という
ことになる。だが。
だが、今日は何かに夢中になることがなかった。
……美希が、現れるまでは。
「えーっと、美希はさ」
迷いながら、聞いてみる。
「今日、俺と一緒にいて楽しかったか?」
「うん!あのね、プロデューサーさんち上がってお部屋の中見たのも楽しかったし、
居酒屋さん初めて入ったのも楽しかった!焼おにぎりもおいしかったし!」
誰の入れ知恵か、部屋に上がり込むなりタンスの裏や本棚の奥をまさぐる彼女から
秘蔵のコレクションをガードした。気心が知れているとはいえ他人の目のある居酒屋
では、美希のイメージが崩れないよう始終注意を払っていた。おかしな酒まで飲む
羽目になり、へんてこな高揚感の中で漫才のツッコミ役の気分だったが、この時間の
俺は……ある意味、美希に夢中だったのだ。
「そっか」
今の俺は、生活のほとんどを美希に握られている。仕事上の担当者だ、当たり前
とも言えるが……。
「ならいいや。お前が楽しかったんならさ……ん、お前ん家この辺じゃなかったか?」
見覚えのある街角で立ち止まった。斜め上方をに視線をやると、マンションの
目指す窓からは明かりが漏れている。
「あ、誰か帰ってる」
「うわ、やばいな。一緒に行って説明しよう」
「だいじょぶだよ。この時間ならきっとお姉ちゃんだから」
「しかし」
「へーきなのっ」
家族が心配しているだろうと思ったが、押し止められた。
「もー、プロデューサーさん心配しすぎだよ」
「そうかぁ?」
「このくらいまで友達と遊ぶことはあるもん。どっちかって言うと、今までプロデューサー
さんと二人きりだったって言っちゃう方がお姉ちゃん、いろいろ勘ぐるかもって思うな?」
「うっ」
確かに、俺は美希の両親とは顔合わせをしているが姉とは面識がない。美希の言う
とおりなら、ここで別れる方が彼女にとって都合がいいのかもしれない。
「そうか、わかったよ。ただし、帰ったフリして遊びに出たりすんなよ?」
「しないよ?そんなの。あとはおうち帰って寝るだけ」
「ん、それじゃここでさよならだな。明日は学校終わったら事務所でレッスン。遅れんなよ」
「はーいっ……あ、ねえねえプロデューサーさん」
マンションのエントランスで手を振ると、美希が再び近づいてきた。
「どうした、忘れ物でも?」
「おやすみのキスは?ん〜っ」
「ばっかやろ」
「あはは。プロデューサーさんおやすみなさい」
改めて手を振り、来た道に戻る。気配を感じて振り返ると、美希がまだこちらを見ていた。
「……なんだよ、今度は」
「あのね、プロデューサーさん……プロデューサーさんは、どうだった?」
「どうって」
「ミキといて、面白かった?つまんなかった?……メーワク、だった?」
いざ別れる段になり、多少の反省の念がこみ上げてきた、といったところか。体の前
でもじもじと手をすり合わせながら訊ねる彼女が、俺にはようやく年相応に見えた。
少し考えるふりをしてもう一度彼女の元に戻り、おもむろに右手で髪を撫でてやった。
「ばーか」
「うひゃ?」
「迷惑なもんか。俺も、すっげえ楽しかったよ」
頭というより首ごとこねくり回し、心の内で感謝を伝える。
「今日はただぼんやりして過ごしてたからな、あのまま寝てたら翌日気合入らない
まんまで、仕事始めることになってたよ。ありがとな、美希」
「じゃあじゃあ、プロデューサーさんも明日はレッスン、夢中になれる?」
「なるなる。ビッシビシしごくからな」
「やった、えへへ」
「おかしいぞその返し」
とにかく今日はちゃんと寝ろ、学校遅刻すんなよ、宿題とか大丈夫か、他にもいくつか
保護者のような注意をし、キリがなさそうなので彼女がエレベーターに消えるのを
見送った。ドアが閉まるまで満面の笑顔で手を振り続けた美希の籠が目的の階で
止まるところまで見届け、ふうとひと息ついて歩道にとって返す。
「さてと、明日は……」
のんびり過ごすはずだった日曜日は、夕方からロケットで飛び去ってしまった。
明日は定時に出社し、美希が来るまでに打ち合わせを3件と企画書の仕上げが2件、
そして一番の難物・経費申請を片づけねばならない。
そんな明日、安穏な休日が明けて仕事づくめの一週間が始まる日、全世界の学生と
全世界の勤め人の憂鬱の矛先、その曜日の名は。
美希と会える、その日の名は。
「うん。明日は、……美希曜日だな。あっはっは」
思わず口をついたネーミングのあまりのストレートっぷりに自らを笑い飛ばし、
駅へ向かって歩き出した。
美希は……俺の担当アイドルは、たぶん俺をぞっこんにするために生まれてきた
のだ。俺がテレビ屋を志したのも、高木社長と出会ったのも、美希に巡り会うため
だったのだ。
美希はそのために遣わされた『美希曜日よりの使者』だったのだ。
彼女はきっとトップアイドルになるだろう。素質があるのは明らかだし、さっきの
打ち明け話では彼女に一番必要だったものも得ていたことが知れた。
あとは、俺が彼女を道案内すればいい。俺の元に降りてきてくれた可愛らしい
使者さまを、彼女がもといた高みまで。
美希曜日の毎日まで。
「美希曜日の使者ねえ。はは、ははは」
思えばあのマムシ酒がいけなかったのだ、うむ、きっとそうに違いない。そう
ひとりごち、それこそ美希が生まれた頃の歌を小さな声で口ずさみながら歩く。
街灯とまばらな車通りの先、俺の行く手には、遠くぼんやりとした明かりがまたたいていた。
おわり
お粗末様でした。
ネタ元はキャラスレに書き込まれた『美希曜日よりの使者』という一言レス……だった
のですが、それが春の話ですw いろいろ盛り込んだとはいえネタSSに半年かかって
しまいました。
美希はいわゆる天才キャラなんですけど、性格がそうさせるのか『勉強もスポーツも
万能の超天才児』という感じがしません(コミュ等と違っていたら申し訳ない)。結局
トップアイドルになるにはいかな美希でも努力は必要で、覚醒イベントより前に彼女は
それに気づいているだろう、というお話でした。
なにかお気づきのことでもありましたらよろしくご指導願います。
本日はこれにて。ありがとうございました。
>>54 非覚醒美希が実はとても大好きな自分にとっては
ひととおり彼女のことをまとめてくれた感がw
何やらせても常人以上に出来てしまう彼女は
家の中でもだだ甘のパパとママに甘やかされほうだい
でも、そんな自分の毎日に心のどこかで疑問を感じていた
そんな女の子が、本当に頑張らなきゃ輝けない世界に足を踏み入れ
根気強く彼女を支えてくれるひとと出会って少しずつ変わっていく……
そんな物語なんですよね、非覚醒美希ルート。
>>54 覚醒イベントの無い美希はこういうゲーム上では見えない名無したちの本気に触れて
少しずつ頑張る事の大切さに気付いたんだろうなぁと考えると読ませて頂きました。
通常と言われる美希も覚醒と言って良い位姿勢が大きく変わってますし、
世界一大美女を目指す最初の一歩が見えた気がします。
居酒屋でのフリーダムな振る舞いも美希っぽくて楽しかったです。
>>54 ふと、なぜか、本当に、ふと。
「あぁ…なんだ…風が…やんだの…」
なんてゆーセリフがいやあぁぁ美希ーーーッ!
自爆パニックとかアホか俺。
GJ。はしゃぐ美希とかすげえ可愛かった。
>>54 美希の、何考えてるか、何しでかすかわからないところ、
しかし、それでも少しずつ、あまりとんでもないことはやらかさなくなってきた、
その辺りの微妙な位置にいる感じの美希の、再現性が見事でした。
美希はランクによって、どんどん変化して行くけれども、
低ランクのトンデモぶりか、高ランクでのバリバリ状態辺りが書くには楽なのですが、
この微妙な位置は、書く方にしては再現し辛いと思うので、これは素晴らしいです。
欲を言うと、と言うかネタとして、
これで、最後、美希の呼び方が「プロデューサーさん」の「さん」が
なくなっていたりしたら、個人的には感動したでしょうねw
この日を境に、美希のP呼称が変わった日、という意味で。
近い内にアイマスSS創作に手を出してみようかなと思っている通りすがりですが、
少々このスレの皆様に質問したいことがあります。
どこかのサイトかスレでSSを書く時『楽曲の歌詞はSSの中に記載しない方がいい』みたいなことを
見かけた気がしたのですが(それがアイマスSSでの話だったのかどうかもあやふやですけども)、
そういう暗黙のルールがあったりするのでしょうか?
版権の問題があるから自粛を謳ってるサイトはあるね。
一般的な話ではあるけど、歌詞と引っ掛けてSSを書きたい時は「一部掲載」がマナーなんじゃないかな?
>>59 JASRACさまは比較的性急。音楽著作権はファイル交換/共有ソフトとかでひどい目に
あってるから、犯罪助長防止の名目で時々同人屋とかが多額の使用料を請求されたり
している。李下に冠を正さずの観点で暗黙のルールは(アイマスに限らず)ある。
以前書いたSSでやよいにdo-daiをセリフで歌わせたことがあるけど、実際やってみると
イマイチよくない。俺の腕前のせいかも知れんけど、思ったような効果が出ない。
以上二つの意味合いで、「歌詞を使わずにすむならその方がいいんじゃないかな」と
言ってみる。
>>59 原則として、他人の著作物から無断で転載/転用することは著作権の侵害だからねえ。
大げさに言うなら、自分が創作しようとする人間なら、著作権のことを忘れるべきじゃない。
そこまで言わなくても、著作権に関わるものは揉める元なのも確かだから。
>>59-62 文化庁の指針(wikipediaより)
・既に公表されている著作物であること
・「公正な慣行」に合致すること
・報道,批評,研究などの引用の目的上「正当な範囲内」であること
・引用部分とそれ以外の部分の「主従関係」が明確であること
・カギ括弧などにより「引用部分」が明確になっていること
・引用を行う「必然性」があること
・「出所の明示」が必要(コピー以外はその慣行があるとき)
SSで問題になりそうなのは下2つかね
>>63 そもそも小説なんかの一部として使うのは「引用」じゃなくて「利用」だから
65 :
雨晴P:2009/11/18(水) 13:27:41 ID:1h63P37a
どうも、お久しぶりです。雨晴です。新スレオメです。
前回投稿から大変間が開いてしまいました・・・すみません・・・別作品に感けてました、なんてこと・・・
前スレの感想で、「そろそろ冒険すべき」とのご意見をいただいたので、してみました。
創発板でないと出来なさそうネタですね。冒険。
今回はものすごく短くしてみました。背景とかオチの意味とか色々考えていただけると、泣いて喜びます。
本当に久しぶりの雪歩以外のネタ、2レス程度失礼します。
一応、閲覧注意でお願いします。そんなキツイとは思わないのですが、いつもの甘ったるいのとは違うので・・・
私の声が聞こえますか。
聞こえていますか。
貴方の前に居るのは、本当に私ですか。
貴方は確かにそこに居るのに、私はここに居ないのかもしれません。
私の目は貴方を捉えているのに、貴方の目は私を捉えていないのかもしれません。
そもそも貴方を捉えている目は、本当に私の目でしょうか。
私は、一体何者なのでしょうか。
本当の私は、一体どこに居るのでしょうか。
私こそ、本当の私なのでしょうか。
或いは、やはりそこに居るのが、本当の私なのでしょうか。
青の髪を梳き、泣いている貴方に尋ねてみます。
私の声が聞こえますか。
聞こえていますか。
反応は無く、ただ悲しそうな彼の泣き声。呻くようなそれを、私はただ、見守ることしか出来なくて。
その声は、本当に貴方の声なのでしょうか。
貴方はいつでも、あんなにも明るく振舞っていたのに。
その声は、私に宛てているのでしょうか。
本当の私に宛てているのでしょうか。
本当の私とは、一体誰なのでしょうか。
その声を聞く私の耳は、本当に私の耳なのでしょうか。
でも、そんな事はもう、どうだって良い事なのかもしれませんね。
きっと私は、もう私じゃないんだと思う。
けれど私は、やっぱり私なんだろうと思う。
だから私は、声を張り上げて歌う。
あの鳥のように、羽ばたくようにして歌う。
私を抱いて泣いてくれる、貴方の為に歌う。
きっと私には、もう貴方しか居ないのだから。
だから私は、貴方の為に歌う。
この気持ちは、私だけのものだから。
私の声が聞こえますか。
聞こえていますか。
ほら。
そうやって気付いてくれる、私のことを本当に大事にしてくれる、貴方の事が大好きなんです。
驚いたように周りを見渡す貴方を見る目は、私のものではないのかもしれません。
私を呼ぶ声を聞くこの耳も、私のものではないのかもしれません。
けれど、貴方を想う気持ちだけは、本当の私であると信じられますから。
だから私は、貴方の為に歌い続けます。
沢山の人に聞いてもらえなくたって、もう良いんです。
本当の私を歌にのせて、貴方に届けます。
プロデューサー。
私の声が聞こえますか。
聞こえていますか。
ずっとずっと、聞いていてくれますか。
68 :
雨晴P:2009/11/18(水) 14:09:58 ID:1h63P37a
以上です。あー、甘ったるいの書きたいです☆
ただ、ただでさえ一辺倒なのに、これ以上堂々巡りもアレですから、たまにはこんなのも良いかななんて・・・
前書きにも書きましたが、色々考えていただければ、と・・・
では、以下頂いた感想への返信をば。
以下前スレ
>>148様
コミュっぽさを前面に出してみたので、そう感じていただけるのは有難いです!有難う御座いました!
ネタ神様は、最近僕のところには顔出してくれなくなってしまいました・・・w
>>149様
HAHAHA
ああいった雨の時こそ、思い切って明るい話を書いてみたいなぁって言う僕の天の邪鬼っぷりですw
ところで、虫歯→歯医者→ドリル→!!!!! ってことですね、わかります。
>>150様
ありがとうございます!
うちの近くも7月末には凄い事になってました。そういう時こそ甘雪歩!
>>151様
素敵なP名ありがとうございますw ただ、長いっすねw
王道って素晴らしいと思うんですよ、本当に。カルピス3倍増し?どう考えても成人病一歩手前ですねw
>>156様
何ですかその素敵シチュエーションw次回は是非それでw
156様に言われるがまま冒険心持って臨んでみた今回でした。本当に貴重な意見をありがとうございます。
以上です。今回のは非難轟々な気がしないでもないですが・・・でもやっぱりそれだって創発板でしか出来ないわけですから、色々ご意見など頂きたいな、なんて。
そんな事を思いつつ、多少なりともスレの活性化に繋がればとか思いつつ今回はこれで失礼します。では・・・
>私の声が聞こえますか。
>聞こえていますか。
どっかで聞いたことある言い回しだなぁ、って思ったらガンオケ青のシマシマのシナリオだった。
それに気が付いてからはゲームの中から千早が呼びかけているようにしか見えなくなった。
その場合はPLはOVERSでPに寄生してる設定だよなぁ…とここまで考えてクロススレの範疇だと思い直しました。
雨晴Pにそう言うつもりは無いんだろうけど、アルファ×アイマスは面白そうだなぁ…
>>66 3回読んでやっと状況が飲み込めた。
その道を往っちゃだめだ、もどってこーい!と言いたいが、
もう誰の言葉も聞こえないならその道を選ぶよな…
>>68 だ、誰だアンタ・・・wとてもあの雨晴さんとは思えんw
自分も数回読み直して状況把握した。状況飲み込んだ瞬間鳥肌立った。マジで
雨晴さん独特の言い回しがこういうお話には特に映えるなあって言うのが第一印象。
オチも綺麗で、引き込まれる感じ。物悲しい雰囲気は無いのに、ここまで切ないってどういうことなの・・・
多分、自分の考えてる背景やオチの解釈は人によって異なるんでしょうが。
一つ思うのは、やっぱり短いかなあ、と。
折角こんなに不思議な世界観(アレね、前スレで言われてた雨晴ワールドw)なのだから、もう少し堪能したかったなあ、と。
非難轟々かもって言ってるけど、自分は好きだな。あ、勿論いつもの甘々も(ry
>>68 ……。
……ぐ……GJ!
上にゲーム下敷きらしい感想があったけど知らないので、……せ、せめて俺は
70年後のエピソードだと思っておこう(ノД`゚)
自由解釈型の作品はある意味読み手も好きに読んでいいモノだと思っています。
ですから、できるならば種明かしはナシの方向でお願いしたいです(あ、もちろん
雨晴Pにおまかせしますが)。
いい余韻が残りました。切なさが今日の雨のように心を濡らしました。彼女は
きっと、それでも彼女であり続けるでしょう。
ちくしょー甘いヤツ書いてやるううう!
>>68 まず、こういう内容なのに、繰り返し読める、読んで不快にならないという
その文章の品の良さ、これは賞賛に値すると思います。
その上で、話についてですが。
やはり、関連情報を全て切り捨てていることが、いい方向なのだと思います。
どんな情報をこの文に追加しても、絶対に納得行かない部分が出てくると思うので。
そういう意味では、やはりタネ明かしは、ない方が有り難いかも。
そして、こういった話にも関わらず、読後感がいいです。
これは、内容に関わらず他の作品でも感じることと似ている気がします。
お見事でした。
初めまして。元未来館の住人です。
久しぶりにss何ぞを書きましたよ。
ローカルルールとか、句読点とか、色々とについて。
……すんません。ぶっちゃけ抜けがあるかも。
文法とかは気にせずに、その点はスルーで。
以下雑記。
>>68 どうやら感想が流行ってるようなので。
……さわやか井戸水?
昇華する讃美歌
「そういえば……」
私は右手に持ったエナメルバッグを置いて、事務所に置いてきてしまった携帯電話を思い出した。
「取りに、行くのかな」私は私に聞いた。否定。
疲れているから。
夕陽が地平線に滑り込み、地球のほかのところに太陽がその生命を落としかけているこの時に、私は家に向かって歩いていた。
着ているのは学校指定のブレザー、ダッフルコート。
野暮ったいと不評らしい。私には興味がないが。
家に帰ってから事を考えながら、今日のことを思い出す。
髪留めを取ってレッスンをしていたら、彼が部屋に入ってきた。
彼は私に向かってタオルを投げた。
「どうも……」
「うん」
彼は壁際にあったパイプイスに座る。
何も言わない。
「どうしました?」私は首を拭く。シャツの中は後にしよう。
「いや、なに。ただ単に精神が動揺しているだけさ」
そう言って、彼は口にくわえたチュッパチャプスをかみ砕く。
「動揺?」
「うん」
ちょっと待ってみるが、話すつもりはないようだ。
私は少々困惑しながらも、当たり障りのないところを拭く。
「プロデューサー、私はシャワーを浴びに行きますが……」
彼は手をふった。私はそれを了解の意ととった。
スタジオを出て、扉を後ろ手で閉める。
その目の前を影が走り過ぎた。
その姿は十メートル先で角に隠れた。
おそらく千早か。
「千早!」
答えはない。
聞こえてなかったのか。それとも無視されたか。
私はシャワー室に行く前に、事務室を覗く。
そこには春香がいた。
「春香、千早がさっき走って行ったけど、何かあったの?」
春香は言いにくそうに「あー……」とだけ言う。
「そう、ですね。あったと言えば、あった、んですよねえ」
「……千早がプロデューサに告白でもしたの?」
春香は顔をへこんだスポンジのようにゆがませる。
「……う。なんで分かりました?」
「千早からプロデューサのことが好きだって言われていたから」
「うそっ!?」
「嘘じゃないよ」
私は春香に笑いかける。
春香は私から目線をわざとらしく外す。
「そうそう、春香」
春香が振り向く。「なんですか?」
「千早は春香のことは好きよ。だから言わなかったの」
彼女の表情が変わる前に私は彼女の顔を視界から除く。
私はシャワーを浴びて、誰にも会うことなしに社屋を出た。
携帯電話が震える。
千早からのメール。
要約すれば、彼女は私がプロデューサを好きだと思っていて、自分の行動を抜け駆けするよう感じて、こうしてメールを送ったそうだ。
私は後ろに気配を感じる。
そこにはプロデューサがいた。
「律子……」
「まったく……、感想を言う暇すらありゃしない……」
プロデューサは首をかしげるが、言った。
「千早が、俺に告白してきた」
「知っています」
彼はうつむく。
無言。
高架を電車が通る。鉄骨が高笑い。
私はため息をついた。「寒いですね。喫茶店にでも入りましょう」
彼はあごが肋骨を折ればいいとでも思っているようにうなずいたのだった。
二人は近くに喫茶店チェーンを見つけ、入る。
息が姿を消す。光を反射する気概を、温かい空気が削いだ。
二人ともブラックコーヒーを頼み、窓際に空いた席に座る。
周りにはあまり人はいない。もう九時を過ぎている。
彼はひとくち、コーヒーを飲む。
私も飲んだ。
「俺は……」
彼がぽつりとつぶやく。
私は答えない。
「俺は……、俺が何をしたいのかわからない」
彼が言う言葉はプラスティックとカップの間隙に吸い込まれて、私の耳には届かない。
私が何も言わなかったことの意味はコーヒーの中に撹拌し、空気に蒸発していく。
「どうして、私に話すのですか?」
彼は顔を上げた。
「さあ……」苦笑い。ひとくち。「さあね。分からないさ」
「……それは当然のことではないでしょうか。自分が何をしたいのか、それを分かって行動すると言う人はいません。自分が行動した後、それに対して都合のいい目的を作るのが人です」
私はかばんの口を閉めて、窓の外の空を見上げる。
まっくらやみ。
黒い。
空が溶けたアスファルトの涙をこぼしそうに。
「律子……」
「ええ。私があなたに対して、言葉をかけることはできます。それを望みますか? それとも……」
私はほほ笑む。
努めて優しく、憂鬱な笑みを。
「ああ……」彼はうつむいて、顔を右に、上に、左に。そして前に。
「いや、いい。ありがとう」
彼はやっとほほ笑み、再確認する。
沈黙の価値を。
私はコーヒーを飲み、彼に別れを告げた。
「おかね。置いておきますよ」
彼はうなずく。
去り際に彼が「なあ。律子……」と言う。
「なんですか?」
「いや、なんでもない……」
彼は首を振る。
吹き出して、顔を背けた。
私は意味もなくほほ笑み、外に出た。
手に持ったかばんはずっしりとする。
人の体も心も、
まだ私には荷が重い。
けれど、
冷気にさらされた世界だけは、
私を優しく叱ってくれそうに思えた。
はい、終了です。
自分の感想として。
ぶっちゃけ面白くはないでしょうね、ええ。
書くのはおもしろかったですが。
誰が誰を好きかなんて、分かるはずもない。
あ。すんません
一レス目の本文二行目
携帯電話→ブレスレットでもなんでもいいので脳内変換お願いします。
(やってもーたなー)
>>77 流行ってると言うか、どうやらここには、感想書きとでも言うべき人間が巣食っていて
(俺もそうだけど)、時に容赦なく、時に熱く感想を語るのが定番になってる。
というわけで、ここに書いた以上は、好むと好まざるとに関わらず、その洗礼を受けてもらうw
で、ふと思ったけど、そう言えばこのスレ、この手のある種TypicalなSSって、
意外にほとんどなかった様な気が。
その意味では、明らかな新風。大歓迎です。
ダイレクトな「if」を使いながら、当事者以外の情景で纏めてる微妙な空気が面白い。
後は好みの問題でしょうが、比喩表現を、表現をぼやかすために使うことが多かったのが
ちょっと気になりました。キレイな言葉を選んでる感が強いだけに、特に。
それと、口調がちょっと律子っぽくない気も。これはわざとな感じもしますが。
いずれにせよ、中身はいい味出てました。面白かったです。
また次回も待ってます。
>>77 いらっしゃいまっしー。今日の昼飯はパンにしよう。
いやいや、面白かったですよ。Pの逡巡なんかサ店の隣の席からコーヒー飲みつつ
ひそかに観察したいレベル。
あえて律ちゃんの心情を排した(律ちゃん視点なのに!)のは実験か計算か迷う
ところですが、SSというより文芸映画でも観てる気分になりました。何度か読み返し、
ゆっくり思い出しながら噛み砕く作品と感じました。
ありがとうございます。ぜひこれからも居ついていただければ幸い。
ところで
>家に帰ってから事を考えながら、今日のことを思い出す。
これ「帰ってから『の』事」でよろしいですか?その方が時系列に無理がないので。
どうも、感想ありがとうございます。
>>79 比喩は比喩だけで一つの作品と思っていただければ。
確かにご指摘はそうだと思います。勘案します。
律子っぽくないのはまあ確かにそうですが、考えてる時の口調としてはそこまで変ではないと思います。
>>80 すみません! ご指摘の通り間違ってました。ありがとうございます。
文芸映画って……そこまですごいでしょうか。だったらうれしいですが。
未来館が下火なので、たぶんこっちに居つくかと。
一日しかかけずに、勢いで上げてしまったので、粗が目立つようですね。精進精進。
前作へのご感想、まことにありがとうございました。島原薫です。
シリアスで少し毛色の変わったSSの投下が続いておりますが、いつも通りに投下いたします。
タイトルは『TENGAさん万能説』。メインは涼で4レス使用。下ネタコメディとなっておりますので、苦手な方はご注意ください。
投下後終了宣言+前作レスへのお返しです。
>>レシP様、『美希曜日よりの使者』
非覚醒で、でも徐々に変わっていく年頃の女の子を爽やかな筆致で書かれており、さすがレシP様といった作品でした。
最後、Pも口ずさんでいた歌を聴きながら読んだのですが、歌にピッタリな世界観が心地よかったです。
P視点でどこか野暮ったくもあるのですが、二人の距離感のその絶妙さは上手いなあ、と口に出したほどでした。
こんな素敵な日常をアイドル達にはもっともっと送ってほしいですね。素晴らしい作品、ありがとうございました。
>>雨晴P様、『私の声が聞こえますか』
今までのざっくりとした構成からさらにそぎ落とした、ある意味で実験作ともいった作品に驚きました。
ですがそこは雨晴P。品が良いと仰った方もおりますがまさにその通りで、嫌味にならない言葉選びは羨ましくも思えます。
このような、読み手側にある程度任せてしまう、余地のあるSSはあとがきにもあるとおり、不安な部分もあるかとは思います。
けれど、ここの住民様はそこも良しとして来てくれる方が多いですから、もっとこういった作風の作品も読んでみたいです。
>>75様、『昇華する賛美歌』
あえてスッパリとした情景描写、表現が作品全体にマッチしていて心地よかったです。
短い言葉でポンポンと進めているためテンポが良く、カチャカチャと変わっていく、彼女が見る情景を思い浮かべると面白い。
私自身、ここを投下される際には比較的、忌憚のない意見を聞くことが出来て楽しいので、一緒に盛り上げて行ければ良いですね。
それだけに、
>>81の「一日しか〜」という下りは言いたくなる気持ちは察しますが、少しだけ残念に思います。
いきなり厳しいことを言って申し訳ありません。作品はとても良かったです。これからよろしくお願いします
たとえば女性の前で男が軽々しく生理の話題をするような、そういうフインキだということは分かってほしかったと涼は思う。
なんとなくそういうものは会話の端々で感じ取るものだし、
歳を経るにつれて追いついてきた知識も相まってそういうものを回避する術も身につけていくもの。
ある程度の感性というかセンスというか、そういうものが求められるわけだけれども誰にでも出来ることだと、
少し短く感じる膝上のスカートの端を握る涼は考えていた。
さて、そういうものって何回、言ったでしょう。
だから、おもいっきしそういうものが分からなくて、お子様な彼女の前では通用しなかったわけだ、と。
「涼さん! この筒みたいなのなんですか!? なんかオシャレですね! デザインが!」
そうだね、愛ちゃん。だからちょっと手放そうか。
女装アイドル、秋月涼の目はどこまでも冷ややかだった。
それは無事に絵理ルートも終わって、正式に876プロのお抱えプロデューサーとなった尾崎玲子が人目もはばからず
担当アイドルの水谷絵理と仲良くイチャコラ出社してきたときから始まる。
涼の目の前には綺麗に積まれた書類とかぶりもの。
差し出されたファイルには全日本鹿学会と銘打っており、この度、めでたくイメージガールに抜擢された彼女を876プロ社長、石川実は労っていた。
しかし彼女の、いや彼の表情は暗い。
「いやですから、なんで鹿なんですか?」
「何度も言っているでしょう? 一度、ホテルで行われたパーティーでそこの会長さんと懇意になったって。ほらっ、ちょうどあなたにも角があるしっ」
「……」
おそらく今までの人生の中でしたことのない目を社長に向けていると同じ876プロのアイドル、日高愛が事務所へと入ってきた。
いつものようにやかましい挨拶でもするのかと思ったけれど、肩に抱えた大きなバッグでヨロヨロと部屋に入ってきたかと思えば、ドスンッと地面に置く。
力尽きたのか、そのままその場でへたり込んでしまった。
「う〜、重かった〜」
「どうしたのよ愛。そんな大荷物。家出?」
「出来るもんならしたいですよ。もぅ」
ママめ〜、と天井を仰ぐ愛に石川と涼は同情する。彼女の母親であり、ライバルアイドルである日高舞の奇行は今に始まったことではない。
二人は苦笑交じりに顔を見合わせると、半べその愛に近づく。
「なにがあったの?」と、石川がバッグを開くとそこには化粧品やダイエットグッズ、とにかく雑多なもので溢れていた。
もう一度、社長と涼は顔を見合わせた。
話を聞くに、企業が勝手に送ってきた試供品の数々らしい。
今なお、屈指のアイドルとして輝く日高舞に使ってもらえればその宣伝効果は計り知れない。
だから新製品が出来る度に事務所を始め、日高家に様々なものが送られてくるという。
涼自身もそういった経験はないことはないけれど、中には怪しげなダイエットサプリや用途の分からないものまであるから手に負えない。
その一部を押しつけられたのだと、愛は涙混じりに訴えた。
妙な平行線を辿る『鹿会議』は一旦棚上げし、うなだれる愛をソファまでうながして涼と石川はバッグの中を探索する。
企業の数だけ商品は存在するのだけれどいやはや、アイドルと同じで一線級にまで上ってくる商品の凄さを再認識してしまうほどの数に圧倒された。
自分もやもすれば、このバッグに詰められている商品と同じ、ただ消費されるだけのアイドルだったことを考えると少しだけ、寒気を覚えた。
しばらくゴソゴソとやっていると、涙も引っ込んだ愛が探索仲間に加わる。
さきほどあれだけ機嫌を損ねていたというのに。
向日葵を思わせる溌剌とした笑顔に、これはこれで愛の美徳なんだなあと涼は思った。
化粧品や大ヒット商品の類似品を漁っていると、隣でピタリと愛がその動きを止める。
その目は確かに何か面白そうなものを見つけた目なのだけれど、愛自身も対応に困るのか、なんとも微妙な表情を浮かべていた。
「どうしたの、愛ちゃん?」
「えーと、涼さん。これって何か分かりますか?」
ピキッと、訊ねられた涼とその様子を隣で眺めていた石川が固まる。
赤い円筒状のソレを、愛は手にとってマジマジと観察し始めた。
ああ、これだけでも色んな法律に引っかかりそうな云々。
出来うる限りのスピードでソレを愛から奪い取ると、涼は後ろ手に隠してしまう。
それはそれで逆効果なのだけれどね。
石川の心の声は届かず、愛は「え? なんで取っちゃうんですか?」と小首を傾げる。
「えーとその、これは愛ちゃんには必要ないものなんだよ、まだ」
いや、まだでもないか、いやいや。
「むっ、涼さん。あたしが子供だからって秘密にしないでくださいよっ。その……あたしだって、この前、その、きましたし」
えー? なんの話ー? 私、男の子だからわかんなーい。
もうどこか遠くへ飛んでいきたい涼の隣で、石川はプルプルと震えて笑いを堪えていた。
社長、移籍しますよ。
とにもかくにも、とりあえずとにもかくにもで押し通した涼は事務所の会議室で一人、頭を抱える。
目の前にはストライプデザインの憎い典雅なあんちくしょう。
クラスの悪友達が冗談で持ってきたこともあったけれど、そういえば僕にはなぜか恥ずかしがって触らせてくれなかったなー、とかなんとか。
なぜか地味にヘコみ始めていると、会議室の外がバタバタと騒がしくなる。
愛や絵理は仕事へ出てしまったし、石川社長は僕にコレを押しつけて部屋で仕事をしているはず。
椅子から立ち上がったところで会議室の扉が開き、顔を出した人物に涼は驚いた。
「武田さんっ」
涼の言葉に「そう、僕だ」と、冷静に聞けばトンチンカンな返しも颯爽とこなし、超敏腕プロデューサーの武田蒼一は部屋に入る。
彼とは涼の楽曲提供から何かと親交が増え、武田も涼のことを気に入っているのか、新たな楽曲提供の話も持ち上がっているほどだ。
実は今日もその予定で武田を待っていたのだけれど、先ほどのあれやこれやですっかり忘れていた。
天才の類に入る人間らしく、普段なら涼が彼のマイペースぶりに困惑するのだけれど、先に武田の方が困ったような笑みを浮かべる。
そこで涼も、机の上に置いてある禍々しい物体を思い出した。
顔も真っ赤にワタワタと慌てる様は女の子そのもので、それもまた武田を困らせた。
「まあ、君も男だ……そういうものに興味を持つことは、けして悪いことではない」
ぶっちゃけ泣きたかった。よもやこんなコメントを貰う為にアイドルをやってるわけでも、武田と懇意になったわけでもない。
しかして嗚呼、悲劇かな。
こういったものはみっともないほどに言い訳をすればするほど墓穴を掘るわけで。
「いやそのこれはですね、愛ちゃんが持ってきたものでしてけして僕がそういうものの為につかうわけではないわけでしてその」
「僕達は聖人君主ではない。相応の性欲を持つことは、人類の発展においても必要不可欠だ……むしろ、取り繕う君の言葉の是非を問う」
ああ、なんかそれっぽいこと言ってるけどつまり、『いいわけすんじゃねーよ、つまりそれでシ○るんだろ認めろよアン?』ってことだよね。
ここで大人しくハイの一言を言ってしまえばいいのだけれど、思いのほか、重大な問題へと武田氏の中で昇華されている現在、
おいそれと認めてしまうのもそれはそれでまずい気が、と基本的にヘタレな彼のロジックはどこまでも逃げ腰だ。
「君も男だろう?」という武田の言葉に意識を戻す。そう、その一言の重みを君は乗り越えてきたはず。
アイドルアルティメイトを間近に控えた現在、この程度の苦境で潰れるようでは到底。そう武田の目は物語っているような気がした。
彼の視線を受け止め、涼は力強く頷く。
そうだ、この程度でへこたれるほど、僕は弱くないはずだ。自分を信じて!
なんだかんだで、涼もちょっとアレ気な部類なのだろう。
涼は典雅なソレを手に取り、武田の心にも届くように言葉に力をこめた。
「はいっ。僕はこれを使います! 目一杯!」
「……よくぞ言った。桜井君。彼はやはり素晴らしい人物だ。そう思わないかい?」
「え?」
振り向いた先、閉じたばかりのドアの前で桜井夢子は汚物を見る目で彼ら二人に向けていた。
おわり
投下終了です。以下、前作へのレス返しです。
>>33 アイマス世界の登場人物は何かしらの才能を秘めているキャラが多いのですが、たまにはこういう凡人キャラもいてよろしいかなあ、と。
ゲーム内ではちょっとめんどくさい人だなあ、とも思いましたが、がんばれオザリン。感想、ありがとうございました。
>>34 最高と言っていただいて、ありがとうございます。好き好きがありますから、気に入って頂いてなによりです。
作中でも未成熟な大人の部分を見せてくれた彼女は私も大好きです。オザリンがんばれオザリン。
>>38 確かに「千早の将来像のパラレル(大意)」 というのは、様々な語弊もあるかとは思いますがなるほど、と思いました。
アイマス公式作品で、いまいち日の当たらないながらも魅力的なキャラがオザリンと絡んだらどうなるか、そういう観点から書きました。
自分もこのオザリンの先を見たいのですが、早々に失踪しそうなのが不安なところ。がんばれオザリン。
それでは次回投下の際もよろしくお願いします。
>>86 最後の一文、『桜井夢子は汚物を見るような目を彼ら二人に向けていた。』でお願いします。
最後のオチで……。
『昇華する讃美歌』の作者です。
>>87 不愉快に感じられたのならば、すみません。
とはいえ、吐いた唾は飲み込めぬ。
批判されて当然とも言えますので。
なにはともあれ、すごくあけすけな事務所ですねw
TENGAって……最悪だw
これを愛が持っているシーンを想像して微妙な気持ちになった。
典雅とかうまいこと言ったつもりかこのスケベw
しかし夢子はアレが何か分かってたんだな…なるほど、うん。見直したよ
>>77 律子っぽくないに半分同意
長音省略するのは技術者研究者レベルの理系ってイメージがあるんでw
ただその使い分けには感心した。
内心と千早に対しては省略してるのにPと交わす時の言葉だけはプロデューサー。
特別な存在であることが上手く表現されていた
>>87 タイトル段階ですでに噴いてましたw つか武田Pの出オチ+夢子追撃なんて
もう卑怯の域かとwww
島原Pのギャグ系は独特の言い回しが多くて好きです。オチすら(テニヲハは
ともかく)修正後の『見るような目を』より元の『見る目を』の方が作風に合って
るんじゃ、とすら思いまっす。
面白かったです。ところで舞さんにコヤツを送りつけたメーカーは何を考えて
いたんだーっ。
>>89 特にここは作者があとから色々言えるスレなので、俺もついつい書きすぎて
しまうんですよね。創作物が自分の子であったなら親から「いやあ、こいつ
アッタマ悪いんすよ」などと人に紹介されたくはないだろうと心に念じながら
レス返しとかする日々です。
いつか「見てくださいこの子!可っ愛いでしょう!?」と胸を張って言いたいw
>>87 面白い。やっぱり男の娘ってのは色々と苦労がありそうだ。
表記の揺れが意図的なものかどうか、ちょっとわかりにくいところがあったかなと。
例えば
>「なにがあったの?」と、石川がバッグを開くとそこには化粧品やダイエットグッズ、とにかく雑多なもので溢れていた。
>もう一度、社長と涼は顔を見合わせた。
あと、聖人君"子"。
>>87 またまた例によって微妙なネタを・・・w
しかし、これは面白いですわ。笑ったw
長さの割には出てくるキャラが多いけど、各キャラがちゃんとそれらしく描けていて、
しかも無理矢理感もなく、登場する意味も持っている所はいいと思いました。
社長と石川の件は、以前の天海と春香の書き分けでも気になった点です。
おひさしぶりです。12月になったので、24日生まれの子でひとつ書いてきました。
(PC規制中のため携帯投下になります。レス毎に手間取ってしまったら申し訳ありません)
【とあるダメダメプロデューサーのおはなし】本文2レス、終了宣言1レス拝借します。
あるところに、いつまでもトップアイドルになれない雪歩がいました。
雪歩は、事務所でいちばん臆病でへなちょこで弱虫なアイドル。
ろくにランクも上がれないので、プロデューサーは数週間単位で変わってばかりです。
雪歩を目にした審査員は、雪歩を静かにさとします。
『君は多分、アイドルじゃない道のほうが、歩きやすい女の子なのかもしれないな。
トップアイドルのステージなんて、普通の女の子なら縁が薄い場所だからね』
アイドルに向いていないと言われた雪歩は、やっぱりトップアイドルになれませんでした。
*****
ある日雪歩は、ピンときた社長に声をかけられました。
不在のプロデューサーに代わって、アイドル候補生を担当してくれないかと言うのです。
気がつけば、小さな事務所は、前よりずいぶんボロボロになっていました。
資金も底を尽きかけており、プロデューサーはみんな辞めてしまっていたのです。
社長は雪歩を責めませんでしたが、小鳥さんと相談しているのを見かけたことがあります。
弱小事務所の765プロは、もはや弱小を超えて、倒産寸前まで追い込まれていたのです。
ひとりのダメダメアイドルが、765プロをボロボロ事務所にしてしまったのです。
そんな悲惨な結果を前に、逃走なんて許されません。
お姫さまティアラを受け取った雪歩は、ひとりのアイドル候補生にそれを託しました。
なるべく真剣な顔で、「今日から私があなたのプロデューサーです」と告げましたが、
頼りなさそうな雪歩の本性を、女の子は一目で見抜いてしまいました。
あっさり本性を見破られた雪歩は、今すぐスコップ片手に仕事を放り出したくなりました。
けれど今の事務所にひとつ穴をあければ、たちまちビル倒壊が引き起こされてしまうでしょう。
得意な穴掘りさえ封じられた雪歩は、プロデュース活動を始めるほか無かったのです。
*****
雪歩が事務所に穴を掘れなくなって、早二ヶ月が経ちました。
自分が叱られないレッスンと、ステージに立たなくていいオーディションは、
ダメダメアイドルだった雪歩にとって、すこしだけ安心できる仕事です。
大きなステージを前に、ガチガチになって後ずさりする女の子を励ますこともありました。
なにしろ雪歩は後ずさりどころか、穴を掘って逃げたことさえあるのです。
アイドルのダメっぷりなら、そのへんの誰にも負けません。
765プロの、ダメダメへなちょこアイドルなんて、雪歩の他には存在しないのです。
饒舌になったダメダメ話から、雪歩が我にかえった時には、女の子は大笑いしていました。
雪歩のダメダメだった武勇伝が、女の子の自信と勇気に変わったのです。
女の子から感謝されて、雪歩はなんだか頬のあたりがくすぐったい気分になりました。
それは雪歩が、女の子のプロデューサーになって、初めて浮かべた笑顔でした。
ダメダメだったことで誉められた経験なんて、雪歩の思い出にはひとつもなかったのです。
*****
ダメダメアイドルだった雪歩の目には、女の子がとても立派で素敵なアイドルに映りました。
プロデューサーが自信をもって絶賛する女の子が、オーディションで輝かないはずがありません。
女の子は立派なアイドルに成長していきました。名のあるステージを片っぱしから渡り歩きました。
事務所はスタッフでいっぱいになり、雪歩がいくつ穴を掘っても平気なくらい立派になっていました。
それでも、雪歩が穴を掘って埋まりたくなる機会なんて、あれからとんと来なかったのです。
雪歩は、このままずっと女の子がアイドル活動を続けてくれたらいいなと思っていました。
でも、それはあっさり否定されてしまいました。女の子は他にも夢があるというのです。
言葉をなくした雪歩を前に、女の子は素敵な笑顔で尋ねます。
「叶えたい夢はありますか?」
雪歩は少し考えてから、「あなたをトップアイドルにしたいです」と言いました。
女の子は「そうなの」と言ったきりでした。
雪歩は笑って頷きましたが、内心とてもしょんぼりしていました。
女の子がアイドル活動をやめたら、もう一緒に仕事ができなくなることが、急に寂しくなったのです。
*****
そしてとうとう、雪歩が恐れていた日がやってきました。
立派になった765プロの社長室で、これまた立派な椅子に座った社長が、
「今まで本当によく頑張ってくれた。最後にアイドルのお別れライブを開きたまえ」と告げたのです。
雪歩は気乗りしませんでしたが、女の子は活動停止をしっかり受け止めました。
しょんぼりした気分を隠しつつ、雪歩は最後のステージをプロデュースします。
その日の夜の、きらめく舞台は、普段のステージより遥かにキラキラしていました。
雪歩が立ったことのない、トップアイドルだけが歌うことを許された特別なステージ。
何十万もの歓声が、その倍の数のペンライトが、女の子とその歌声を称えています。
けれど女の子は、その素敵な場所さえも、夢のためなら惜しくはないと言うのです。
成功したアイドルを、うらやましく思う気持ちなんて、もうずっとずっと昔に忘れていたはずなのに。
雪歩は、ほんの少しだけ、あの女の子がうらやましくなっている自分に気づきました。
*****
ライブを終えた女の子に夢のことを尋ねると、女の子は雪歩をある場所に連れ出しました。
そこはかつて、雪歩が何度も穴を掘った、オンボロだったはずのビル。
リフォームされた内装に至っては、まるで現在の765プロにいるようです。
女の子は、独立してマネージャーの仕事に就きたかったことを、雪歩に明かしたあと、
ここが765プロの傘下におかれる事務所で、雪歩が望めば社長にだってなれることを伝えました。
雪歩は驚きました。社長になりたい気持ちなんて、これっぽっちもなかったのです。
女の子の夢は輝いていましたが、16歳で社長になるプロデューサーなんて聞いたこともありません。
社長になることを望んでいない雪歩に向かって、女の子は以前とまったく同じ表情をして尋ねます。
「叶えたい夢はありますか?」
雪歩は少し考えてから、「トップアイドルになりたいです」と言いました。
女の子は、「そうなの」と言って、そして。
「今日から私があなたのプロデューサーです」と、満足そうに告げました。
(おしまい)
投下終了です。読んで頂きましてありがとうございました。
クリスマスらしいSSではありませんが、雪歩の誕生日祝いのつもりで書きました。
これからの季節、可愛い雪歩がたくさん見られたら幸せです。寓話Pでした。
いやはや、雪歩がPとか想像もつかないけれど
細かいディテールをさくっと切って端的にまとめると童話らしく見えてくるという意味で
すごく彼女にとって適役な気がしますw
「クリスマスは優しい気持ちになるための日だね」
そういう日に生まれた雪歩に、そしてこんないい話を思いついたあなたに、良いクリスマスが訪れますように!
なんかついついそう言いたくなっちゃう微笑ましい作品でした。ありがとう。
>>97 アイドルたちの始まりと終わりが、上手く繋がっている作品だと思いました。シークレットの女の子が最後まで伏せられてたので、千早とか貴音とか想像していたけど見事外した…OTL
章ごとに出て来る、どんでん返し的な展開が面白かったです。アイドルじゃなくプロデューサー視点から見た、雪歩の困惑が良かった。
この二人の続きのアイドル活動が見たくなりました。GJです!
>>97 自分がダメだった事を武器に変えてトップまで引き上げる雪歩Pか、
意外な感じだったけど中々説得力があって良いと思いました。
大きな回り道をしたけど、最高の相棒を手に入れて
再び走り始めた雪歩が夢を掴めますように……という事でGJでした!
>>97 やっぱ自分の語り口を確立してる人は格好いいなあ、って言うのが、書き手視点の第一印象。
今回は、またその語り口が映えてるし、冴えてる。雪歩の超ダメダメっぷりが、
必要以上にコミカルにもならず、悲壮感も出さずに描かれてると感じました。
またストーリーそのものも、ちょっと現実から浮いた感じが、語り口にぴったりでした。
ストーリー自身も面白いし、暖かい気分になれました。
その点では、誕生日に贈るにふさわしいと思います。
……いい話だった。
102 :
創る名無しに見る名無し:2009/12/12(土) 14:44:37 ID:4o+VDfm6
209 :枯れた名無しの水平思考:2008/10/31(金) 02:00:00 ID:LQW/FTlt0
>>193 書き込めなかった。しょうがないからここに書くね。
マコトとかいうオカマのファンの奴は生物として正常じゃないから気をつけたほうが良い。
たぶんゲイの素質あるよ。
ボーイッシュっていうジャンルは俺も好きだけどあいつはそんなレベルじゃない。
ボーイそのものだろ。
それで性別女とかだから気持ち悪い。
103 :
97:2009/12/13(日) 10:10:42 ID:FhwJucLR
沢山のレスありがとうございます。少しばかり感想返しにお付き合いください。
>>98 こちらこそ感想ありがとうございます。
『Pをアイドルの誰かに任命する』というシチュエーションを考えていただいた場合、
まずは律子を筆頭に、年長組、しっかり者、面白そうだと名乗りをあげる年少組……と続いて、
おそらく雪歩は最後の子なんじゃないかな、と思います。
普段なら絶対やらなそうな事とのギャップを楽しんでいただけましたら幸いです。
そして
>>98氏もどうか素敵なクリスマスを!
>>99 担当アイドルについては、読み手の方が好きなアイドルを想像してくれたらいいなと思っていました。
1周目と2周目で違う感想をもっていただけたら、書き手として非常に嬉しいです。
おそらく相手の女の子が誰であったとしても、雪歩の返答は変わらないと思います。
Pは最初のプロデュースを覚えていても、アイドル達は忘れてしまうのがアイマスだったりしますが、
プロデューサーの立場で1周目シナリオを終えた雪歩は、担当したアイドルとの記憶を持ったまま、
うまく2周目シナリオに引き継ぎできたんじゃないかなと思っています。
>>100 説得力があると言っていただけて嬉しいです。ありがとうございます。
二次創作の楽しいところと難しいところに、ご都合主義のバランス、というものがありまして、
捏造した部分が飛躍すればするほど、面白いぶん出来過ぎな話になって、かえって冷めたりします。
(とりわけ自分が一番むずかしいと感じているところでもあります)
読み手に対して説得力のある話を考えることが、自分の中ではテーマになっていた部分もあったので、
今回お褒めいただいてホッと胸をなでおろしています。
>>101 他の書き手さんの面白いSSを拝見していると、自分の語り口は読みづらいのではないか?と
思う事もしばしばあるのですが、お気に召していただけたようで幸いです。
雪歩の超ダメダメっぷりは、表現を弱くするか強くするかで、仰る通りの感想を抱かせてしまう、
さじ加減が難しかったところでした。なので、緩和のため、ダメダメだけど可愛い雰囲気のある、
へなちょこ、という単語をいくつか忍ばせてあります。
誕生日まで随分フライングしてしまいましたが、こちらでも楽しめることを期待しております。
感想ありがとうございました。次回もお付き合いいただけたらと思います。寓話Pでした。
二ヶ月近くに及んだ規制もようやく終了・・・って、なげえよ!
しかもいつ再規制されるかわかったもんじゃないよ!
さらにはいろいろ溜まってるよ!
てなわけで、遅ればせながらいない間の分を消費消費・・・
前スレ
>>416 成長期に食べ過ぎて脂肪を溜めやすい体質になると、後々面倒が多くなりますしねえ。
とはいえ、事務所に来る以前のやよいは痩せすぎの体格なので。増えたうちの何kgかは成長分とは
別に考えても許容範囲なわけですが、それでも9kgは・・・さすがにですなあ
2スレに収めるため改行抜いたのは、残り容量の関係もあるようですので
改行があった方がスッキリしそうですが、それはまあしかたがないところでしょうね
それにしてもやよいかわいすぎ、あーんど緊急会議の面々のやっちまった顔まで完璧ですなw
なんていうか、光景の浮かぶ話って感じ
>>42 社長もその顔が見たくて、報酬を振込に出来ないって訓辞で言ってましたなあw
そういえば、武田さんも食料援助には一枚噛んでいたようでもあるし・・・って、あれ?
もしかして、実はもう既に765プロ内部で済む問題じゃなくなってる?w
とすると、「夢子ちゃんからピリ辛キャンデーもらいました!」という一文が、書いたやよいが
予想もしなかった波紋を・・・なんてシリアス路線発展パターンとか。とかとか。
>>43 まあ、なんというか。ちょうどその役がここではプロデューサーなのでしょう、と。
765プロの面々がそういう「悪い意味で甘い」側面はあってもおかしくはない、とは思えるわけですし
ここでの締め役であるところのプロデューサーを悪し様に扱うでもなく、聞き入れはするのですから
困った娘たちの面倒を見るプロデューサーの図、ぐらいに眺めておけばいいのでは・・・と思ってみたり。
このプロデューサーなら次にそういう問題を起こせば、その辺りも含めてきちんとシメてくれるでしょうし
>>6 ピヨピヨ悪ノリトークの典型ですな。揚げ足を取りつつ、相手がむくれた反撃すると平謝りする辺りの
地雷を踏み抜くまでは行かないとこで楽しむ距離感が重要っていうか
「そうなるって判っててなぜ言うんですか」がこの種のピヨちゃんの味ってもんですよねー
重量感ある話も楽しいですけども、その合間合間にこういうふうにちょっと軽めのチョイネタ話も
混じるのがここにいてのバランス感覚って感じですw
>>7 なぜか、EVE burst errorのワンシーンが浮かんできたよーなきもしないでもないw
>>14 こういう公式の掘り下げ不足から題材を取ったワンシーンもこれはこれでおいしいですな。
「元気はないが、皿の上はすっかり空」な辺り、はるるん強いなあ、とか思ってみたり。
一つの終わりを前にして、次を考える2人と春香の対比といい、特に律っちゃんはかなり早い時期に
自分の将来展望を用意しているだけに、春香のこれが終わったらどうしよう?ぶりを上手く強調できてると思うです
中盤が会話文のみになっている点が気になると言えば気になりますが、地の文を凝りすぎて
テンポを損なうよりもいいかな、とも思えますし。
公式がこれをやるのには組み合わせが多すぎるだけに、観てみたい光景の一つを見せてもらえました
>>19 これが一本目ならなかなかイイ感じじゃないですか!
と言いつつも、いくつか気になってみた点は挙げてみたりw
まず第一に前半の地の文が若干説明的で、なんというかこれまでのあらすじ感が強く、その後が
会話主体になるので、若干重さの差があるかな、と。
この辺りは、本来は長い話の1シーンという意図があるためか、その長い話自体のバックグラウンドを
提示しようという意識が出ている部分かもしれませんけども。
次に、再会シーンの素っ気なさは元プロデューサー側から観ると決して歓迎できる客ではない
という点からよしとしても、舞台監督としてのプロデューサーに対する千早からの思うところ、どんな様子か、
人を指導する姿は変わらない、あるいは変わってしまった・・・みたいな観察があると、少し深読みが絡むと共に
ちょっとした伏線とかに使えたりするかな、とか。
同様に、やたら甘党なコーヒーの飲み方についても、「今」の「カフェオレを頼むなり、
他のものを頼むなりすれば良いのに」という感想ではなく、昔からこんなヘンな飲み方だった、変わらないな
あるいは以前とは違う奇行ぶりに驚いてみるといった具合に、過去にあったはずの経験を千早からの観察に
からめてやると、以前にプロデュースされてた千早としてはそれっぽくなるかなあと。
後は句読点、特に読点や語尾、改行に気を使って、ブロック状になってる文章そのものをちょいとほぐしてやれば
だいぶ印象が化けると思います。
最後の2行は・・・今回については余計だったかなと。
「それはまた、別のお話。」という結びはどちらかというともう少し一件落着、けどこんな話もあったり
する、ぐらいのノリというか、ほんわかした話の方が向くと思うので、こういう冷えた雰囲気の話を
これで締めるとせっかく組み立てた緊張感がちょっともったいないかも。
「話の一部をぶった切って」については、時系列的に連続した一話、みたいな気分でなく
おそらく断章形式というか、長い話の一部分を抜き書きして一つの独立した話にした、ということだと
解釈しているので、直接の続きでなくてもまた抜き書きでどこかのシーンを独立した話で
書いてみて、それを連ねて短編連作でまとめるというのも良さそうですね。
プロデューサーが再起を志すシーンとか、IU決勝前夜とかw
実際、例えば
>>10-14のみなとP「one night before」なんかも、見方によっては
春香・律子・伊織の一年間の活動を綴った長い話のラスト付近のワンシーン、という解釈だって
できるわけですし、そういうものだと思えば「一部分とかせずに全部書き上げてから」という言葉は
ちとキツいかなと。
降りてきてた話の一部というのは、「それはまた、別のお話」とも併せて一部分のまとまりに対する
逃げ口上というわけでなし、むしろ前向きな野心の表明と受け止めて楽しみにしてみますw
いろいろ言ってしまいましたが、着眼やシーン情景なんかは秀逸ですし、どんどん楽しみな人が増えてきていて
嬉しいのが正直なところですね。少しずつで良いので、次を楽しみにしています
・・・765プロに戻ることはさすがにないだろうし、個人的には石川社長に拾われて
『弱小プロダクション』の『新人破壊屋』と『熱血ダメ候補生』という三重苦な二人三脚で
挑むは大敵・如月千早・・・なんて展開とか面白そうかなー、なんて勝手に妄想してみたり。
「そんなのだいじょーぶですよ! あたしって丈夫にできてますから!!」
取りあえず、ここまでで一旦
おかえりw
長文感想の人規制だったのかwww
またなんか投下したらそのノリよろしく♪
てなわけで、続き続きっと
>>32 考えてみるとリレの藪下さんの見透かしぶりは、相手のことを洞察するという点において
まるっきりダメダメなオザリンにとってはまさに恐怖の対象ですな。
あのヨユー溢れるカルいおネーさんと冷徹な仕事師が瞬時に入れ替わるキャラはまさに天敵と言えそうです。
・・・美希も絵理もカリスマ・一点突破と技巧・多才という形で質が違うとはいえ
明らかな天才タイプ、加えて藪下さんも
>>33で言われてみれば、明らかに“見切りの目”は天才のそれ。
オザリンは本編でも意識して凡人に書かれてる部分もあるし、そこがいいとこでもあるけど
この状況にいるのはきっついですな。
もともとDS絵理シナリオはリレっぽくなる要素が多々あっただけに、
ここで藪下さん連れてきてぶつけた配役の妙だけでもそうきたか!と感心しきり。
・・・にしても、勝者の余裕をもって振る舞おうとするオザリンが見事なまでに空回り。
この辺りはやはり圧倒的な役者の違いですが、その役者の違いを何気ない、
さりげないふうに書いてくる辺りが、ものすごい切れ味。堪能。
個人的には「負けて欲しかったので」と「ここでは自分達が官軍。」
「勝ってしまえばこちらのもの。」この辺りの目線の違いに個人的にDS本編で感じた
オザリン最大の欠点と思ってるポイントである、負けを折り込む、あるいは負けた時の
ケアという観念がほとんどないことを思い起こしてみたりも・・・。
>>54 仕事に追われた末、泥のように眠り、食事はコンビニのおにぎりで済まし、何も為さず、
ひたすら布団と仲良くなり続けた週末を過ごして、ああなんだ、結局自分もたまたま
「やること」があっただけで、それ取りあげられると美希と大して変わりゃしないじゃないか、
でもこの夜が明ければ、また美希と過ごす平日がやってくる、必要ではあるけども怠惰な時間を終えて、
せわしなく、一挙一動に振り回されてはいるけども間違いなく充実しているあの日々が
・・・みたいな方向性でくるかなー、とかタイトル聞いた段階で思ってなんてみたりw
うん、ただそれより面白かったっていうか「それだけだとミキの出番がないのー!」
なんのかんの言って通常美希の方が地に足は付いてる感じがするんですよね。覚醒だと羽が生えて飛んでいって
しまってるというか、早く身につけたものは早く失われるというか。アレはアレで好きだけども
覚醒美希コミュで一番好きなのはランクB雑誌取材だったりするヒネクレ者としては、あわてて
背伸びはほどほどに、とか言いたくなったりすることも。
自分勝手の好き放題やるだけやっておいて、後になって急に不安に駆られて「メーワク、だった?」
ってやる辺りが実に美希でいいのです。律っちゃんとか千早辺りもわりとこうやって美希に撃沈されてるよなあ。
・・・伊織とかはそれを見て「あいつのああいうとこって、ずるいわよねー」って自宅のベッド辺りで
こっそりやや羨望混じりの溜息ついてたりして?
トイメンの話なのに、そこから「この美希」と周辺の人々の広がりを感じて楽しめるという
相変わらず非常に妄想スイッチのキック率が高い仕上がりでした
>>57 どこの法力僧だw
>>59-64 厳密に言うとSS含む同人自体もグレーゾーンを目こぼししてもらってる分野だったりするので
とびきり濃いグレーというか、一般的には完全にクロの無許可での歌詞直接書きは避けておいた方が無難・・・という認識はあります。
ワンフレーズぐらいを抜き出してまるで〜の歌のような状況、的に示すのに使う場合とかはまだしも
ひたすら歌詞を連ねて「歌っている」描写にするとかはよしといた方が良さそうかと。
この辺り暗黙のルールというよりも、本来は二次創作そもそもの立ち位置が黙認、あるいは黙殺だよって感じなので。
>>106 規制だったのですよー
こんなんあくまでも気が向いた時にやりたいようにやるもんなんですが
気が向いてる時にできないってーのは気が向かない時にやろうとするのと同様
ストレスですなあw
108 :
96P:2009/12/24(木) 00:33:56 ID:6UyVgIxX
クリスマスおめでとう!
クリスマスなので、1本上げさせていただきました。
uploader imas60054.txt
クリスマスということで、どうぞ適当にお読みください。
大変遅くなりましたが、前スレでご感想を下さいました
>>314 >>315 お二方、ありがとうございました。
来年もみなさんの創作意欲が変わらず旺盛でありますように。
>>108 ちょ、これこの後小鳥さんどうすんの! って思わず噴きだしてしまいました。
しかし冷静に考えてみるとこのドタバタこそが、「音無小鳥」という
結婚適齢期かつ本人もその気で、社会人経験もあり綺麗で可愛い女性が
何故か「クラスの友達思い出せない彼氏もできない」状態のまんまでまた1年経ってしまう、
そんな事態の根本原因なのかも、とか思ってしまったり。
このPさんも周辺状況きっちり揃わないとアプローチできなさそうなシャイな人な感じもするので
まだまだ小鳥さんの淡い想いが叶うのには時間がかかりそうなw
軽妙な筆致のラブコメディ、良い出来でしたよ! 彼女にちょっとした幸せを送るのは、読者の妄想の中で、ってことでw
110 :
創る名無しに見る名無し:2009/12/24(木) 23:28:30 ID:MDvYctaM
>>108 これは……プロデューサー、トラブルのふりして逃げたか?
え、クリスマス?
あっはっは、そんなの昨日の話じゃないですかw
・・・チケットなしでも行ってみるもんだな、まさか到着後5分でアテが出来ると思わなかった
残りの分もだいたい書き上がりましたが、投下直後にいきなり別の話題の塊を投げるのはアレでもありで
まずはこちらから先に行かせていただきます。
>>108 えーと。
メリークリスマス?w
好みの問題かも知れませんけども、まだ断定調語尾が地の文で連続しててブツ切り感があるなあ
というのをちょっともったいないポイントとしてあげさせてもらいます。
こういう肝心なとこがしまらないのが笑えるコメディ、いいですね。
ラストシーンの後、砂の像と化したピヨちゃんと、受話器から聞こえてくる
「あれ? 小鳥ー? 小鳥どしたー? 返事しろー??」
という友人の声まで妄想できたりなんかして
プロデューサーにしても、もしかすると
『小鳥さん、メリー・クリスマス!』
「あっ、え?」
『じゃ、じゃあそれだけです!(ピッ)』
「・・・あたしにどーしろと?」
みたいな、プロデューサーの方は伝わってると思い込んでるなんてパターンとか妄想してみたりして
なんていうか、友人間のいいからかいのネタを提供してしまうわ、占いの状況にカウントして良いのか悪いのか
ビミョーな位置取りに頭抱えてみたりとか、自業自得とはいえ今日は一日仕事なんて手に付かなそうな
ショックですなw
「・・・。あの、音無殿はなぜああも放心しているのでしょうか?」
「貴音がわからないもん、自分が知ってるわけないだろー。悪いモノでも食べたんじゃないの?」
なんて声まで聞こえてきそうです。
まあなんて言うか、いろいろ前途多難ですんなり事が運びそうもなく、ボタンの掛け違いが多発しそうな付き合いになりそうですが。
そんな二人で迷走mind(エリーコ前説版w)しつつもラストでは概ね幸せにうまくいくんだろーなーと楽しく眺めてられる感じ。
ラブコメ書きも砂糖細工師の雨晴Pに、スラップスティックのふた離Pとなかなか揃って来てる感がありますが
96Pのハートフル路線も確実に地盤を固めつつありって感じかな。
デビュー作以来のシャイでウブでちょっと迂闊で間の悪い、そこがかわいい小鳥さんおいしかったです。
聖なる夜みなさまいかがお過ごしでしょうか
年末飛び込み案件のバ――
いやいやメシのタネだ
――ありがとうございますーっ!
さっぱり間に合う予感がしませんでしたが本年のクリスマスは数日後になりそうです。
今年中にあることを祈りつつ皆様にはサンタさんがいらっしゃることをお祈りします。
96P面白かったっす。じっくり語りたいので感想はまた。
これからチビどものプレゼント梱包するです。
ではでは。メリクリおまいら。
「もし幸っせー近くにあーてもー♪」
技術の進歩はめざましい。画面の向こうと繋がっているかのようなこの音質。
酷いな。
技量もだが、まるで歌詞を無視した明るい歌い方。
なぜこの曲をこの子に歌わせているのだろう。
まぁ、大体察しは付くのだが。確かに面白い趣向ではある。
「蒼い鳥」……いや、如月千早を知らぬ者は今や殆どいない。
いよいよ、僕の城に招待しなくてはならない頃合だろうな。
いきなり会う前に人柄も確認しておきたいのだが、
彼女はあまり他人を近付けないらしく、欲しい情報が出てこない。
何か方法はないものか。
例えば彼女が気を許していて、彼女の情報を教えてくれそうな存在。
と、そんなに都合良くはいかな……
「千早さん。私の歌、どうでしたか?」
「ええ、とても可愛…コホン、素敵だったと思うわ、高槻さん」
……都合良くいくかも知れないな。
「プロデューサー、見ててくれましたか?」
「ああ。やよい、今日は良かったぞ」
「うっうー、ハイターッチ!いぇい!」
「俺はこれから次の打ち合わせだ、先に帰ってるか?」
「うーん、ウチに電話してから決めます」
「そうか」
「メール入れておきますね」
「"お母さんがウチに帰ってるそうです。私は建物の中にいておきます"……送信」
どこで時間を潰そうかな?適当にぶらついてみよう。
「うー、えっと」
やっぱりテレビ局の中って複雑……。道、間違るところだった。
「おや!?おやおや!?」
「はわっ」
「高槻やよいちゃんじゃないですか。おっはようございます」
最近よく見る芸人のEさんだっ!
「お、おはようございまーす!」
「おっと出ました!ガルウィング!撮った?ねぇ撮った?」
がる……?カメラさん苦笑いしてる。
「ところで今暇かな?」
「えっと、今は人を待ってるんです」
「あっらー、今からお仕事?」
「そういう訳でもないんですけど」
「じゃ、ちょっといいかな?」
「うーん……」
「時間はかからないから。ね?」
これってチャンスなのかも?けど……ううう、困りました。
「おや?君は……」
「へっ?私、ですか?」
「あっ、武田蒼一!?」
「仕事中?」
「いえ、何でしょう?」
「なーに、梅こぶ茶のストックがなくなってね。」
「お茶……ですか?なら私、いい所知ってるかも!」
「ほう……?君たち、彼女をお借りしても良いかな?」
「は、はい」
あっ、あっと言う間に行っちゃった。
「あの、私……」
「とりあえず、その辺に座ろうか」
「聞いたことのない店名だ」
「"あなば"らしいです。同じ事務所の子がお茶が趣味で」
「その子の名前は?」
「萩原雪歩さんです」
……ハズレ、か。
「あっ、そうだ。私、765プロの高槻やよいですっ!」
「知っているよ」
「えっ、ホントですか?ありがとうございます!」
「………」
「………武田、さん?」
「ん?」
「失礼かもですけど、どういうお仕事を?さっきの人たち、驚いてましたけど」
テレビに顔を出し始めたのは最近だし、知らなくとも無理はない、か。
「僕は音楽プロデューサーだ。色々な音楽活動に携わっている」
「よくわからないけど、何だか凄そうですー!」
「よくわからないのに凄いのかい?」
「うちのプロデューサーも凄い人なんですけど、大物って呼ばれたりは……」
「君の事務所で凄いと言えば、まず如月くんじゃないのかい?」
「千早さんですか?」
「あの年齢であの実力、まさに歌姫だ」
「そうですね、いつも歌とか音楽のこと考えてるみたいです」
やはりそうか。
「一人でいる事が多い?」
「前はそんな感じでしたけど…最近は明るくなりました」
「というと?」
「歌ってる時も難しそうな顔が、楽しそうになったって言うか」
「ふむ。確かに近頃彼女の歌は変わった」
「理由は分かりませんけど……私、ホッとしました」
「?」
「もしかしたら歌うの楽しくないのかな、って思ってたから」
「……なるほど」
「やっぱり歌はみんな一緒に楽しまなきゃ損ですよねっ」
「!……そうだね、僕も同意見かな」
「えへへ」
「質問ばかりですまなかったね。これを。僕のメールアドレスだ」
「えっ?」
「君に少し興味が湧いた。今日のお礼もしたいしね」
「あ、でも、プロデューサーに聞いてみなくっちゃ……」
「返事を期待しているよ。じゃあ僕はこれで」
「あ、はい。さよーなら!」
「最後に聞きたい。君は如月くんをどう思う?」
「私は……」
高槻やよい、か……意外な掘り出し物かも知れないな。
「そうですか。高槻さんが、そんな事を……」
「周囲に愛されているようだね」
「……からかってます?」
「そう見抜いてもらえたのは久しぶりだ」
「もう……」
「で、この話、受けてくれるのかい?」
「こんなに光栄なお話、蹴れるはずかありません」
「では……」
「オールド・ホイッスルへの出演依頼、お受けいたします」
完
117 :
いさしげP:2009/12/27(日) 00:51:46 ID:CS9vXHop
×道、間違る
○道、間違える
×武田の歌姫4
○武田の歌姫調査4
という訳で駄文乱文失礼いたしました。
ではドロン(死語
>>117 「……からかってます?」
「そう見抜いてもらえたのは久しぶりだ」
このやりとりにものすごくやられた感があります。ああ、確かにこれ武田さんだ、みたいな
武田さんがやよいを認めるに至ったミッシングリンクという目の付け所も面白いところで
物事をややこしく考えてしまいがちなオトナの中にあって、一言で簡単な真理をブチ抜くという
やよいの使い方も定型ながらその分わかりやすいのでこれはこれで、というところか。
ただ、台詞と内心のみという形式、やよい視点武田視点の切替がところどころにあること、などは
多少好みが分かれるところかも。
全体としては「ああ、確かにこういう出来事はありそう」と思いながら読ませていただきました。
>>117 先日、MASTER SPECIAL WINTERの、やよいの歌う「チキンライス」を聞いて、
『やよいは、どんな歌でも自分の歌にしてしまう、実はとっても凄い歌い手じゃないか?
武田さんの見立ては、見事なまでに正しかった!』
とか思ったばかりのところだったので、これはまさにティンと来ました。
武田さん凄いよ武田さん。
内容としては、地の文挟まずに会話だけで、内心まで表現できているのは見事ですね。
例としては
> 「!……そうだね、僕も同意見かな」
ここなんかがそうで、本来的に持論と同質な部分を、逆に他人から単純明快に示された、
その驚きの感じが伝わってきます。
あとは、上記でも出てますが、千早との会話のくだり。
飄々として、何考えているかわからないけど、実は遊び心たっぷりな武田さんの人柄が
余すところなく描かれている気がしました。
さらに、流れの中で自然に、また本来の意味で「……なるほど」と言わせているところとか。
ひとつ気になったのは、やはり視点の移り変わり。
全体に会話文の比率が大きいので、どうしてもとまどいます。
視点を変えるなら、もう少し会話文以外の比率を上げてわかりやすくした方がいいのでは。
もしくは、やよい視点の部分は、第三者視点の三人称の地の文でもよかった気が。
とにかく、全体にキャラも活き活きしていて、大変面白かったです。
>>108 今さら読みました。
ロダまで取りに行くのが面倒くさかったので。てへ
って、ちょwこれはwwww
いやいや、解釈のしようもいろいろあるぞ。たとえば、
「本人は聞いてなくても、小鳥さん宛の『メリークリスマス』と最初に言ったという事実は有効」とか
「その人が人生を左右する、と占いに出ていたけど、別に幸せな方向とは限らない」とか
うーん。この辺はさすがに人気の占い師。解釈に幅を持たせることばかり言ってますなw
いやあ、しかしこれは面白かったです。
ストーリーがちゃんとあるのに、ハッピーでもアンハッピーでもないというか、どちらでもあるというか。
その落とし所が見事で笑えるっていうのが。
しかし、レス番がそのままP名ってのもw
取りあえず、今年の分は今年のうちに・・・ってことで、
>>107の続き行きますよっと
>>68 個人的に雨晴Pの文章については詩的な情景描写とそれを支える独特のフレーズが特長と思っていますが、
それ使ってこういう方向で冒険してくるとは実のところちょっと予想外な方向で、煽っておきながら意表突かれてみたり
良くも悪くも情感と情景の美しさに特化した一作のように思います。普段がグラニュー糖の粒のキラキラなら
これは儚さと共に触れれば指を裂く鋭さを持ったガラスの破片のそれといったところでしょうか。
それ以外のモノを削ぎ落とした方向については今回については多分正解。付け加えすぎると
かえって濁っちゃいそうですし。
物悲しいとか切ないとか、そういういろいろよりもまず、ただただ、きれい。
生々しさが無いことも感じ取れますが、そこの辺りは意図と好みの問題で、今回はそれを求めてない
と言われれば、それはそれでもっともって感じですな。
うん、これはけしかけてみた甲斐があったw
思った以上にいろいろなことが出来そうなのを再確認させていただきましたので、また次も期待させてもらいます
>>77 ああ、確かに携帯電話を忘れてるのに、携帯電話が作中ガジェットになってる
・・・仕事用とプライベート用を分けてるんだよ、きっと!
千早や春香からの電話やメールは今持ってるプライベート用に届くけども、プロデューサーからの
それらが、その電話を揺さぶることは決してなかった、とか。
・・・あれ、なんかこれはこれで面白げなシーン作れそうじゃ?
それはそれとして。
なんだろう、すごく淡々と落ち着いた大人っぽい雰囲気で話が進む感じ。千早、春香、プロデューサーの
三者がそれぞれいっぱいいっぱいになっているところで、たった一人それを俯瞰した位置にいるかのような律子。
・・・でも多分、ちょっと与えられた情報が多くて、それをつなぎ合わせる技術があるけど、
それでも律っちゃんは律っちゃんで、実はいっぱいいっぱいのようでも。
浮き足立っている自分の挙動を幽体離脱でもしたかのように他人事のように眺める感覚をごくたまに
覚えることがあるのですが、なんかそういう視点から眺めている律っちゃんが見える気がします。
・・・つまりは、あくまでも自分の印象ながら律っちゃんも相当「冷静ぶって」いるなあって感じw
突き放すのもきびしさと同時に自分自身の余裕の無さの裏返し、みたいな。
自分の小ささに自覚的であることから、一般的な「律子らしさ」ではない部分ながら味と落ち着きのある
「律子らしさ」がほの見えるように思えました。
狙って無彩色やセピアにした映像みたいな感じですね。文章そのものの落ち着いた雰囲気がいい。
それにしてもこのプロデューサー、若いってか青いなあw
>>87 なんつーか、あいかわらずひでえw(褒め言葉)
島原Pの視点の中には、プレイヤー目線がごく自然に混じっていて時折いやアンタそれ言ったら身も蓋もないってw
・・・みたいな良くも悪くもドライなネタが含まれることも多いようですが、それでいてそこに嫌味を感じないのが技ですな。
ひどいこと言ってるなあと思いながらも、うわ、やりそう・・・と感じてしまうイイ位置の狙いすまし具合と
それを追っているうちに読み手もいつの間にかストライクゾーンが広がってるというか。
多分、4/4の武田さんの言いようなんぞ、いきなりそこから入ったら、さすがにおいちょっと待てや、とか
なりそうですが、そこに至るまでの過程をゲラゲラ笑いながら来てしまうと、ついアリだ!となってしまうw
あと、ママめ〜、がなんか妙にツボにはまったw いかにも言いそうだし。その後の行動も、バカンスの時の
二つあるから一つ下さい!のおばかノリそのまんま過ぎて、「そういうもの」回りの論評もひどいんだけど
自分でもその通りと思ってしまうことがそのまんま文章になってるもんだから、笑ってしまうしかない。
テンポとネタの軽妙さと反感を買わないレベルを見切ったような適度な口の悪さ、と先ほども挙げた身も蓋も無さで
読み手の方もその毒っ気についついのせられてしまうのが持ち味だと思えます。
でもそう思ってみてみると、はじまってる段階から全日本鹿学会とかなんとも不条理ネタだったりして・・・地デジカ?
そして一方その頃、彼の親愛なる従姉妹殿はプロデューサーがわざわざゲイツはたいて買い込んできた
うまセットを前にして、イイ笑顔でハリセン構えてましたとさ、とか。
なんにしろ、こうやって野暮を言うよりは読んでゲラゲラ笑って、水に流しとけって感じですな
だが、敢えて声を大にして言おう。この武田さんは立派にヘンタイプロデューサーだw
>>97 はじまりとおしまいなんてつながってめぐるもの、と。
・・・あれ? これ全編通して「空」のイメージが相当合うような。
自分の失敗談を、きっと周りが見えなくなるほど、言ってることの自分にとっての恥ずかしさも
忘れてしまうほどの力説をしている雪歩の図が非常に容易に想像できて実にかわいらしいです。
いや、ネガティブ自慢って結構ありますよね、それ自慢にならないってとこまで妙に力入って語ってるとかいうパターンも。
雪歩−愛の例を考えると、頼りになりそうにないのに、案外頼りになるというか、和む先輩って立ち位置は
意外と似合うのかもしれませんね・・・でも、全体としては「先輩としての威厳をだな」とか教え込まれて
「威厳、威厳・・・はい、わかりましたぁ!」とか返事して精一杯しかつめらしい態度を取ろうとするも
「雪歩先輩!」って持ち上げられてなんか嬉しくなっちゃって、「あ、お茶飲まない? 荷物持とうか?」
みたいな、おい、どっちが後輩だよ?なサービス過剰状態になっちゃうなんて方がらしいかなw
・・・よし、と。とりあえずはこれで全部になるかな? 途中またちょっと規制掛かってたりしたけども。
そしてまた、まだあと一日あるので年越しネタ、大晦日ネタなどもしかするとあったりするかなあなんてのも
ちょっとだけ期待してたりするけども、取りあえず今年一年いろいろ楽しく読ませていただきました
来年も変わらず、また皆さまの新たな投下を期待しております。よい落とし・・・お年を!
124 :
雨晴P:2010/01/03(日) 01:46:46 ID:nutjjJFg
あけましておめでとうございます、雨晴です。今年もよろしくお願いします。
前作の感想、有難う御座います!正直、万人受けするものではないなぁとは思ってましたが、好意的に受け入れて下さる方ばかりで泣きそうでした。
さて、今回は年始と言う事でお盆ネタです。マジです。
何をトチ狂ったか、ここに来て夏ネタです。しかも何だかんだで殆ど書いたことのないギャグです。
実は、今年のお盆にアップしようと思ってすっかり忘れていたのを先日発掘しまして。折角なので仕上げてきました。
こんな季節感ゼロ&慣れない書き方のSSで新年一発目っていうのは気が引けるんですが、ほら、新年初雪歩っていうのも悪くないじゃない?(僕が)
では、謙遜だとかでなく本当にくだらないお話ですが、お正月の暇潰しくらいになれば・・・3レス予定です。
事務所のエアコンが壊れた。
正確に言えば、事務所にひとつしかなく備え付きであった歴戦の老兵(推定15歳)が遂に力尽きた。
外気温は30度を余裕で上回る真夏日。室内温度なんて確認しようものなら、意識くらい簡単に吹き飛んで下さることだろう。
事態は混沌と化していた。ある者は奇声を発し、ある者は地球温暖化の恐怖に打ち震えている。
北海道出身の社員が生気の無い顔で故郷の写真を舐めまわし、うっかり温度計を見てしまった小鳥さんがゆっくりと倒れて、数秒後に「暑い!」とか叫んで現世に復帰。
それ即ち、混沌である。
元はと言えば、調子が悪いから修理に出しましょうよと1年前から言っていたにも関わらず、提案を受け入れなかった社長が悪いのだ。
「逆に考えたまえ諸君、これでいつでも南国気分だ!」
とか何とか社長がのたまい仰せられたので、社員数名で取り押さえて布団に包んで縛っておいた。サウナ効果でより健康的なことだろう。
電気会社に老兵の緊急手術を要請するものの、先方は拒否。なぜなら、世間は今お盆休みだ。
そんな訳で、事務所は休業。
・・・良いのかそれで。仮にも芸能事務所じゃないのか。お盆は稼ぎ時じゃないのか。
しかしまあ、気にしたら負けである。割り切りも込めた溜め息一つ。それに、何だ。こういう時にしか出来ないこともあろうに。
思い、まずは携帯電話を取り出した。3度のコールで繋がり、やあ、と切り出す。
『おはようございます、プロデューサー』
「おはよう、雪歩。唐突だが、今日はお休みだ」
考えるような数拍。
なぜですか?と尋ねられたので、かいつまんで伝えておく。
『えっと、良いんでしょうか?』
「まあ雪歩は今日、日程調整だけで仕事は無かったからな」
折角の盆休みだから、しっかり休め。そう言うと、困ったような声が聞こえてくる。
「どうした?」
『え、っと、それが・・・』
聞けばご両親共に不在で、本日は大変暇であるらしい。
ふむ。
「なら雪歩、事務所に来てみないか」
『え、事務所はお休みじゃないんですか?』
その切り替えしに、事務所を見渡す。社員数人は買出し、家が近い小鳥さんは必要機材の担当。席を外している。
絞め殺しの窓の外がまるでオアシスのようで、平時であれば在る筈の無い思考にある種の戦慄を覚えた。
「いや、なに」
自然に口許が歪む。
「ちょっとした昼食を、ね」
約束の時間はお昼で、太陽は一番てっぺんまで昇っていて、電車から降りた途端熱風に晒された。
しかし、大した障害ではない。何せ彼からのお誘いである。それも、お食事らしい。
そりゃあもう顔が綻んでいるのが自分でもわかって、事務所までの足取りは軽い。
喫茶店のガラスを使って身だしなみを気にしてみたりとかしつつ、いつもより数分ほど早く目的地へ辿りついた。
彼に着きました、とメール。入っておいで、と返信。あれ?事務所は閉まっているんじゃ?
訝しげに思いつつ、階段を昇る。ドアノブをまわし、戸に力を入れる。簡単に開いた。
「失礼し・・・」
同時に、温風。
反射的に顔を顰めてしまい、しかし視界は確保する。霧だか湯気だか、というか湯気だ。なんで?
奥に進む。え、何、サウナですか?
ようやく到達したらしい中心地では、目を疑う光景が繰り広げられている。その光景が一体何であるのか、暫く考えた。
いや、考えずとも私はそれを知っている。知っているけれど、頭が理解しようとしない。
状況把握が間に合わず、しばし呆然とする。
ああ、でも、これは、どう見ても。
鍋だ。
「おお、来たな雪歩」
そう言う彼がつまむのは、ツミレ。思えばスーツ姿ばかり見てきたから、Tシャツ一枚と言うのは新鮮です。
・・・あれ?私、現実逃避してます。
「雪歩ちゃん、雪歩ちゃん」
掛けられた声に顔を向ければ、にっこり笑う小鳥さんが居た。汗だくで。
「はい。お皿とお箸、雪歩ちゃんの分」
有無を言わさず握らされた。なぜかそこに居た春香ちゃんが、おいしいです、おいしいです、なんて言いながら咀嚼している。
あまり接点のない他のプロデューサーの方々は、頑張れ、負けるなよ、と励ましてくれた。何が?
「あ、あの」
「どうした?」
はふはふ言いながらプロデューサーが答えてくれて、あまりの自然さにむしろ私が間違ってるんじゃないかという錯覚に陥る。
「・・・何をしているんですか?」
「何って」
お皿から白菜を掴み上げる。
「・・・鍋?」
「夏ですよね?」
ん、と彼が首を傾げる。
「何だ、雪歩は冬にアイスを食べないのか?あれはあれで美味しいじゃないか」
「わ、プロデューサーさん、その例えは的を射てますね!」
そうでしょう!流石です!そんなやりとりを横目に周りを見渡せば、社員の方々はむしろ具材を取り合っている。
てめぇそりゃ俺のトリだふざけんな!とか、じゃあさっきのアンコウ返せこのカス、とか聞こえてくる。
何これ。
プロデューサーが諍いに割って入り、菜箸で鶏肉とアンコウの切り身を投入する。ちゃぽん、と軽い音。
「夏、エアコンが壊れた、地獄のような暑さとくれば?」
『鍋!鍋!鍋!さっぱりポン酢であったかポカポカ真夏鍋!夏はサウナで鍋パーティー!』
私を除いた、そこに居る全ての人たちの唱和。男女の区別なく壮大に響き渡る。
そこに存在するのは、紛れもなく笑顔だ。ただし、汗まみれの。
正直、ゾッとした。満足そうに頷くプロデューサーが、そのままの表情でこちらを向く。
「わかったか?」
「いえ、残念ながら」
首を振りながら答えると、む、と渋い顔をされる。
「いいか雪歩、夏に汗をかくことは必要なことなんだ」
「そうよ雪歩ちゃん。鍋は身体を内側から暖めてくれるんですよ?」
「いえ、それについては私もわかるんですけれど」
改めて見渡す。ふと見えた温度計に意識ごと持っていかれそうなのを堪え、相対。
煮えたぎる食材。先の社員さんふたりは、お互いアンコウと鶏肉を肩を組みながら頬張っている。うわぁ。
プロデューサーが、ああ、と声を上げた。
「そうか雪歩。鍋は嫌いか」
「いえそう言う訳ではなく」
「じゃあ何なんだ」
尋ねられる。小鳥さんが私のお皿に魚の白身を載せようとするのを慌てて阻止。
美味しいのに。そう言いながら、彼女が自らの口へと運ぶ。ある種の恐怖さえ覚える。
「・・・ごめんなさい、プロデューサー。私、よくわからないんです」
「何がだ?」
「時期を考えていただければ・・・」
数秒、お皿片手に箸を休めず彼が悩む。えのきを良く噛んでから、或いは飲み込んでから、ああ、成る程。そう口にする。
「まあ確かに、真昼間から鍋と言うのは少しおかしくはあるな」
「いえですからそう言う訳ではなく」
無意識に頭を抑える。何だろうこれ。
「今日の雪歩ちゃんはツッコマーですねぇ」
「ボケてないんですけどね」
えー・・・。
「とにかく、やめた方がいいと思います」
「何でだ、こんなに素晴らしい鍋パーティーだというのに」
切り返しに疲れたので、取り敢えず空いていたオフィスチェアに腰を降ろす。
「こんなの、絶対に身体に悪いですよぅ」
なぜか泣けてきた。嗅覚を刺激する、出汁の香り。
「どうして泣くんだ雪歩。おいしいぞ?」
「ほら雪歩ちゃん、騙されたと思って食べてみて?」
いつの間にか傍に居た小鳥さんが、左手にセットしたままだったお皿を盛り付けていく。あっという間に冬景色。
「ぅぅ・・・」
ただでさえ猛暑日で、エアコンは無くて、鍋が繰り出す熱気がこもる室内。
もういいや。もうどうにでもなれ。自棄です、もう。
アツアツの糸こんにゃくを、恐る恐る口に運ぶ。
―――次の瞬間には、世界が変わって見えていた。
約束の時間はお昼で、太陽は一番上まで昇っていて、電車から降りた途端熱風に晒された。
しかし、大した障害ではない。何せ彼からのお誘いである。それも、お食事らしい。
そりゃあもう顔が綻んでいるのが自分でもわかって、事務所までの足取りは軽い。
喫茶店のガラスを使って少し身だしなみを気にしてみたりとかしつつ、いつもより数分ほど早く目的地へ辿りついた。
彼に着きました、とメール。入ってきな、と返信を受けた。
あれ?事務所は閉まっているんじゃ?
訝しげに思いつつ、階段を昇る。ドアノブをまわし、戸に力を入れる。簡単に開いた。
「失礼し・・・」
同時に、温風。
反射的に顔を顰めてしまい、しかし視界は確保する。霧だか湯気だか、というか湯気だ。なんで?
奥に進む。え、何、サウナ?ようやく到達したらしい中心地では、目を疑う光景が繰り広げられている。
何、これ。
いや、私はそれを知っている。知っているけれど、頭が理解しようとしない。
状況把握が間に合わず、しばし呆然とする。
ああ、でも、これは、どう見ても、
鍋だ。
「おお、来たな千早」
129 :
雨晴P:2010/01/03(日) 02:43:01 ID:nutjjJFg
以上です。以下、アイドルの数だけループ。・・・社長が死んじゃう!w
真夏の鍋、僕も去年友人宅でやりました。ちなみに、地獄でした。
ただ、食べてみると美味しいんですよね・・・限界までならば。限界超えると気持ち悪くなりますよね。何事も程々が大事です。
さて、何がしたかったかと言えば、ただ単純に雪歩にツッコミをやらせてみたかっただけでしたw取り敢えず、それだけは満足ですw
そんなことより、ギャグ回って何が大切かってテンポだと思うんですが、そもそもこういう話を書かないので掴み辛かったです。
改めてうすた京介さんとか、本当に尊敬できました。・・・あっちは漫画ですが。
そんなこんなで、何でも書いておくべきだなぁと再認識。でも次は、次こそは俺、甘いの書いてくるんです・・・!w
では、以下前作で頂いた感想への返信をば・・・
>>69様
まあ、こんなフレーズですし、正直僕もどっかで使われてるだろうと思ってましたw
ただ、どんな形であれ何らかの視点を掴んで頂けたなら嬉しいです、有難う御座います!
>>70様、71様
何度も読んで頂く事も一つの目標でした、有難う御座います・・・
飲み込んで頂いた状況が、読み手の方々に納得出来るものであれば幸いです・・・
>>71様
短さについては、今回は勘弁していただけると・・・w
こういう話って、幾らでも長く出来ると思うんですが、敢えてのこの形です。・・・それにしても短すぎたかなぁ、とも思いますがw
>>72様、
>>73様
種明かしはしないです。勿論書いていた時に浮かべていた話の背景はありますが、それをお任せしたくてこの形ですし。
余韻や後読感にご感想頂けるというのは、本当に幸せです・・・嬉しいっす、有難う御座います・・・
>>72様
彼女はどこにいるんでしょうね。あ、甘いのは最高ですよね
>>73様、82様
品が良いのでしょうか・・・wちょっと自分ではわからないんですが、このスタイルを大事にしたいと思います。有難う御座います!
>>82 島原薫様
完全に、特に僕的には実験作でした。確かに、頂く感想は好意的に受け取ってくださる方ばかりで・・・有難いです・・・
>>83-86 、TENGAさん万能説
ひどいw 目一杯!で正直吹きましたw
こうやってギャグ書くんだなぁ、とか思いつつ・・・
何よりも、僕は1人称で何人も登場人物出すってことに慣れていないので・・・勉強させて頂きます、典雅でw
>>122様
規制解除おめでとうございます、お帰りなさいませ。毎回の感想、有難うございます!
それこそスタイルとしては"雨のち晴れ"の延長のような形で書きましたから、詩的に纏めることを最優先させました。
この手のモノをアッサリと読んでいただくには、やっぱり詩的スタイルかなぁ、なんて。
キレイだなんて言っていただけると、何というか、嬉しいんですが正直恥ずかしいですwですが、有難うございます。
私の声が〜への沢山の感想、本当に有難う御座いました!では、本年も良い年でありますように・・・
次はきっと甘い奴をお持ちします・・・w
なんですかこのクトゥルーはw
おっかしいな、正月に鍋モノは季節感あって、え、そういう問題じゃない?
夜中にくすりと笑わせていただきました。ゴチです
>>129 ごちそうさまでしたウェップw
前シーズンの夏に響の中の人が夏になると我慢大会やってるって言ってたな。
狙い通りツッコミゆきぽかわゆうございました。GJ!
今週のアイマスステーション!!!がとってもタイムリーでした
どうもです。明けまして(ry)今年(ry)
SSを書いたので落としに参りました。4レスお借りします。
冬本番、暖房の効いた車の中でさえ、窓は冷気を放っている。
助手席から眺める東京の街は、今日も忙しい。日も落ちてシャッターを下ろす準備をする店も中にはあるが、
まだまだ道も明るく、歩道を行く人の表情に疲労感はあまり見えない。一般的な企業の終業時刻は過ぎている。
信号待ちをしているあの人は、隣の人と楽しそうに談笑している。きっと、あの後アフター5でお酒でも飲
みに行くんだろう。見知らぬ人ながら、いい表情をしていると思った。
一方私はといえば……体が声にならない悲鳴をあげている。前腕や太もも、ふくらはぎの辺りがミシミシ言
っているようだ。それも、今日一日を振り返ってみれば、無理も無いことだろう。
元々予定では午前中にダンスレッスン、午後に歌詞レッスンを入れてあったのだが、トレーナーの都合で午
後のレッスンがキャンセル。ダンスのスタジオの方も予約が入っておらず、ダンスの先生も時間が空いていた
ということで、ついさっきまでぶっ続けで新曲の踊りの練習と今までの私のダンスの総点検を行っていたのだ。
普段は時間に追われて見ることができない微細な部分までチェックすることができて、得られたものは大きか
った。しかし、その代償にこの重たい疲労だ。
「ふぅ……」
プロデューサーの車に乗せてもらってから何度目になるだろう。深い溜息が出た。
「随分お疲れのようだな、律子」
「『ようだ』じゃなくて、随分お疲れなんですよ、律子さんは。もう全身がだるくって」
「ははっ、そうだろうな」
そう言うプロデューサーの笑いも、どこか乾いている。この人と来たら、遠目からのんびりと眺めていれば
いいのに、わざわざ着替えて私の横で一緒になって練習していたのだ。
「プロデューサーこそ、大丈夫なんですか?」
「まぁ、ヘトヘトではあるが……」
「なんであんなことを? 別にプロデューサーが新曲を踊るわけでも無いのに」
前方の信号が赤に変わった。車が速度を落としていく。体が前に引っ張られて、シートベルトが食い込む。
「ああ、あれはな」
たん、たん、たん。長い人差し指がハンドルをタップする。
「運動不足の解消……と思ったのが、25%ぐらいだな」
「残りの75%は?」
顔を僅かに傾けて、プロデューサーが私に流し目を送った。
「律子のやっていることを、少しだけ体感しておきたいと思ってな。ダンスレッスンって言葉で言うのは簡単
だけど、どれぐらい大変なのか。トレーナーがいつも注意して見ているのは、どんなポイントなのか。律子は
どんなアドバイスを出されていることが多いのか。そういうの、もう少し深く知っておこうと思ったんだ」
真面目な声だった。気持ちは嬉しいけど、プロデューサーの声に滲む疲労を思うと、喜べなかった。
信号が青に変わる。青から赤に変わる時は黄色を通過するのに、赤から青に変わるのは、いつでも突然だ。
「けど、それにしたっていきなり過ぎると思います。プロデューサーだって体が資本なんですから、慣れない
ことしたら怪我するかもしれないじゃないですか」
「……ま、律子の言う通りだな。思ってたよりキツかった。筋肉痛が怖いよ」
隣を走っていた車が速度を上げて、私達を追い抜いていく。その後ろを追いかけるようにして、赤いスポー
ツカーが駆けていった。
信号を三つほど過ぎた頃、プロデューサーのお腹が鳴き声をあげた。ステレオの音量を下げていたせいで、
助手席までよく聞こえた。
プロデューサーはわざとらしい咳払いをして、顔を赤らめた。その様子を見ていたら、思い出したように
空腹感が歩み寄ってきた。時計を見れば、もうそろそろ夕食には丁度いい時間帯だ。
「律子、腹減ってないか?」
空腹のサインを誤魔化せていないことを悟ったのか、プロデューサーが切り出してきた。
「正直言うと、腹ペコですね。今日は運動量が多かったですから」
「よし、それならどっかで食っていこう」
仕事が夕方や夜までかかった時は、こんな風に話が進んで夕食に連れて行ってもらっているのだけど、今日
のプロデューサーは声が弾んでいる。私も人のことは言えないけど、よっぽどお腹が減っているのだろう。ち
ょっと微笑ましい。
「どっか行きたい所、あるか?」
「プロデューサーはどうなんですか?」
「俺か? そうだな……肉だな、肉が食いたい。今夜は肉食獣になりたい」
「肉かぁ……いいですね。私もタンパク源が欲しい気分です。いい所知ってたら、連れて行って下さいよ」
プロデューサーの言葉に私が乗ると、
「よし、それじゃあ決まりだな」
と、にんまり笑って彼はハンドルを握り締めた。
彼に案内されながら辿り着いた場所は、通りに面したビルをエレベーターで昇った所にある店。焼肉屋とい
うより、定食屋にカテゴライズされるようだ。『ごはんお替り自由』という文字が書かれている辺り、男性の
好きそうな店といった感じがする。
店内の客足は上々。テーブル席に空きが無いということで、カウンター席の隅を薦められて、二人並んでそ
こに腰を下ろす。私は壁側で、プロデューサーがその隣。肉を焼いている姿をカウンター越しに見せるという
スタイルでやっている店のようだが、彼らから見て右後方にあたるこの席からは、特にそれがよく見える。威
勢良く客からの注文が読み上げられ、厨房の中からも外からも復唱される。活気があった。
「どれにしようかな……」
そんなことを言いながらも、プロデューサーが広げてくれたメニューに視線を落とすまで、私の目は厨房の
中を向いたままだった。メニューの中を見てみると、元々印刷されている物に加え、ご丁寧に栄養成分の詳細
が書かれている。脂肪分の少なめな物を探すと、牛タンのセットが丁度良さそうだった。プロデューサーの方
は既に注文が決まっていたようで、私が決め終わると同時に注文が確定した。
「こういう店、よく来るんですか?」
周りの客層を見て、男性に混じって席に座る女性の姿があるのを確認しつつ、プロデューサーに尋ねる。
「まぁな。ガッツリ食いたくなると、大抵ここだな。焼肉屋はニオイが付き易いし、苦しくなるぐらい食っち
まう時があるから」
「なるほど……」
厨房の中では、私達の注文を受けてなのか、数枚の肉が鉄板の上に躍り出た。鉄板の前に立つ男の人は、先
程私達が店に入った時から──きっと私達が来る前からずっと──その場をほとんど動いていなかった。肉を
焼く担当。何時からかは分からないけれど、勤務時間の終わりまで、ずっとあそこにいるのだろうか。
注文を受けて、肉を焼いて。その繰り返しの間、あの人はどんなことを考えているんだろう。
肉が裏返った。
「どうした律子。ぼんやりしてるけど、そんなに疲れちゃったか?」
「いえ、厨房が見えるような店って、珍しいな、って思って」
そうか、と言って、プロデューサーがお茶を啜った。
「男の人って、肉が好きな人多いですよね」
「ああ、そうだな。律子はどうだ?」
「私ですか? まぁ、それなりかな。嫌いでは無いです。肉嫌いだから食べないっていう友達もいますけど」
「うーん、肉の何が嫌なんだろうな」
「さぁ……ニオイ、とか?」
「まぁ、好みは人それぞれだよな。性別による傾向ぐらいはありそうなもんだけど」
別の客からの注文を読み上げる声が、店内に響いた。
「よく言われてるのが『女性の甘い物好き』とかな。律子も好きだろ?」
いくらか言外の意味を含んだ眼差しで、プロデューサーが私を見た。
「……ええ、そこは否定しませんよ。甘い物が無いと生きていけません。脳はブドウ糖しかエネルギーにでき
ないんだから、やはり糖分は必要なんです」
「た、確かにそうだが……」
以前、ライブイベントの打ち上げでケーキバイキングを奢ってもらった時、プロデューサーが私の皿を見て
引き攣った顔になったことを思い出した。あの時と、同じ顔になっている。
そりゃあ、ちょっと食べ過ぎちゃったとは思うけど。
予想していたよりも早く、料理がカウンターへやってきた。ホカホカと湯気も立ち、香ばしい匂いが食欲を
掻き立てる。思わず私のお腹も鳴ってしまったけれど、鉄板で肉が焼ける音や、周囲の客の話し声に消されて
隣の席までは聞こえなかったようだ。プロデューサーは何の反応も示さず、ただ目の前の皿に目が釘付けにさ
れている。隣の席に続いて、私の目の前にもお盆が差し出された。
お盆の上には、麦飯、とろろ、テール肉の入った透明なスープ、漬物の小皿、そして焼き目のついた牛タン。
二人のお盆の間には、プロデューサーが頼んでくれたサラダがある。
こんなに食べきれるだろうか。それが私の抱いた第一印象だった。
「じゃ、食べるか」
パキンと小気味良い音を立てながらプロデューサーが割り箸を割った。頂きますと一礼、箸を手に取る。
何も考えずに箸を伸ばしてみると、牛タンに辿り着いた。くっきりと残る規則的な模様が目を引いたし、体
が求めているような気がした。
固くて噛み切り辛いというイメージをどこかに抱いていたが、いい意味で裏切られた。噛み締める度に、顎
の内側がギュッと締め付けられるようだ。脂が乗っているが、脂っこくは無い。『美味しい』よりも、『旨い』
という表現がぴったりくる、逞しい味だ。
「んー……ウマい」
美味しいですね、と私が言う前に、プロデューサーが味わい深い声を漏らした。私が相槌を打つ前に、もう
二口目を食べ始めている。ガツガツ、ムシャムシャ。擬音で表したらそんな所だろう。
食べるというより、貪る。夢中になっているプロデューサーの姿は、狩りで捕らえた獲物にありつく獣を思
い起こさせた。もっとも、狩りで生計を立てる野獣は楽しんで食事をしている訳ではなく、文字通りの死活問
題なのだけど。
隣を眺めている場合じゃない。冷めてしまわない内に、私も食べよう。箸を進める。
粒の立った麦飯、コクのあるスープ、堂々たる存在感の肉を、舌で味わいながら飲み込んでいく。
つるつると喉越しの良いとろろで時折口の中を冷やす。
一口食べれば、次が欲しくなる。箸が止まる気配は全く無かった。
横で御飯のお代わりをしつつ気持ちいいぐらいにどんどん食べていくプロデューサーの姿も、いいおかずだ。
テレビのCMでお茶漬けをさらさらと掻きこむ姿を見ていて、お茶漬けが食べたくなることがある。あのCMのタ
レントに男性を採用している理由が、分かるような気がした。あの姿自体にも、食欲をそそられるのだ。
私が食べるよりもずっと早く、プロデューサーは自分の分をすっかり綺麗に平らげてしまった。しかし私の方
は、少し苦しくなってきた。まだ皿の上には肉が残っているのだけど、正直言ってお腹いっぱいだ。盛り方の問
題であまり多くは見えなかったが、器のサイズの都合、麦飯も多かった。
「……プロデューサー」
お茶を飲んでいる彼に、視線を送ってみる。
「ん? どうした?」
「まだ、お腹に空きはありますか?」
すっ、と、お盆を右へ差し出す。
「おっ……! いいのか?」
その瞬間、彼の両目がきらりと光ったような気がした。喜びを隠し切れない、少年のような表情に、思わず
私の口元も緩んだ。
「ええ、どうぞ」
「それなら……頂きます」
ひょいっと箸が伸びてきた。皿の上に残っていたものが、みるみる内に捕食者にさらわれていく。
「ん、ウマい、牛タンもいいな」
感想もそこそこに、次の一枚、二枚も、あっという間に消えてしまった。茶碗に残った麦飯も、米粒一つ残
らなかった。ただ、そこにあった獲物を夢中になって食べているだけなのに、私はその姿に、訳の分からない
頼もしさのようなものを感じていた。
店を出る時、彼はいつも私にするように、勘定を持ってくれた。
「いつもすみません、奢って貰っちゃって」
「いいって。その分、仕事の方しっかり頑張ってくれよな」
そう言われると、何も言えない。取り出しかけた財布をしまう。
「今日の店は、律子には多過ぎたかもな」
帰りのエレベーターの中、プロデューサーがぺこりと頭を下げた。
「私はいいですけど、プロデューサーこそ、あんなに食べて平気だったんですか?」
「ん、俺か? そうだな、俺は……」
エレベーターが一階に到着した。ドアが開く。
「大満足だ。お腹いっぱいだよ」
満面の笑みだった。そのまま、食品関係の商材にでも使えそうなぐらいの。
一緒に食事に行ったことは何度かあったけど、店を出る時に彼が満ち足りた顔をしているのを見るのは、こ
れが初めてだった。
こういうのが好きなんだな、この人は。
そんなことが分かっただけで、何故か胸の内が温かくなる。
そんなに食べてたら太っちゃいますよ、と釘を刺そうと思っていたけれど、今日は辞めておこう。
私は黙って彼の後ろをついていった。
終わり
以上になります。批評感想など頂ければ幸いです。
一言で言うとただメシを食いに行くだけの話なんですけど、色々書いたらこうなっちゃいました。
見てて腹が減るような物を目指したかったんですが、そうなると男視点の方がマッチするなぁ、と書き終えた後に感じました。
もっと表現したいことはあるんですが、難しいですね。精進あるのみです。
>>138 肉うめえwwwつかナニここ2010は食い物特集で開始ですかw
お久しぶりです。お忙しいようですがご無事で何より。
どこのグルメ小説かというかのごとき店内の様子、食事の描写。
充分腹減りました。お節も食い飽きたので今日は肉を
食うことにします。
今年もすてきなSSをよろしくお願いします。GJでした。
この店、間違いなく「ねぎし」だな!
飯の描写って難しいと思うんだが、うまそうでよかった
どう読んでもねぎしです本当にありがとうございました。
千早スレの炒飯といい年末から、はらm…はらぺこキャラが集まってますね。
今年もよろしくです。
>>129 言葉の使い方、口調、言い回し、リズムがいつもの雨晴Pですね。
でも充分に面白いし笑えますよ。
元々雨晴Pの書くものには、ユーモア要素が少なくないですし、
ギャグだから、と構えたりテンポを変えたりする必要はない気がします。
重い流れの中で一発ネタをかました方が、より引き立って面白いこともありますし、
結局は、その中でメインで表現したいものが何か、という違いだけじゃないかなあ、と。
特に、雨晴Pの作風を知っている人間にとっては、いつもの調子でやってくれた方が、
その中に出てくるギャグに意外性を感じて面白いと感じる気がします。
知らない人にとっては、どう感じるかわからないですが・・・。
しかし、やよいや亜美真美は喜んで鍋を食べ始めそうな気がw
>>134 律子の話す言葉に、ありがちなひねりがないのですが、
それが逆に状況の特異性(とは大げさ?)を出してる気がします。
あと、状況描写が客観的でかつ様々な連想を出すという点でも、律子視点が正解だと思います。
おいしそうだ、という主観が確実に混ざりながらも、客観的描写をするには律子が最適ですし。
何より、第三者視点だと、主観が混ぜづらいですから。
おいしそう、食べたい、これが難しくなるのではないかと。
それと、この「大したことではないが、距離が縮まった感触」っていうのが、凄くよく感じられて、
これがまた「ごちそうさま」な感触を与えてくれるという、食事話にふさわしい読後感でした。
>>129 『鍋!鍋!鍋!さっぱりポン酢であったかポカポカ真夏鍋!夏はサウナで鍋パーティー!』
Gung-ho!Gung-ho!Gung-ho!
・・・とかいう、幻聴が聞こえてきましたがな。あんたら、どこの海兵隊だw
ていうか、頭あったかすぎるだろう・・・ああ、温まってるのか、じゃあしょうがないな。
なぜかそこに居た春香ちゃんが、おいしいです、おいしいです、なんて言いながらって、
どう考えても目が既にイキイキとした死んだ魚のような加減なんですが。
てな具合にツッコミどころ満載。
バカが全力でバカやってる不条理シチュエーションとテンポで突っ走る形式で、ついて行けない人を描くことで
バカさを際立たせてるのがおいしいところですな
ちらっと触れてる人もいますが響辺りはあっさりノッちゃうんじゃないかな、中の人的に。いや、抵抗してあっさり砕けてこそ
響かもだけど。響カモだけど、と変換されて噴いた。確かにカモだ。
・・・これ、どう考えても律っちゃん呼ぶのが最後になって汗だくレ○プ目ゾンビ集団対激怒リッチャンってな
なんかぷちますっぽいシチュエーションに突入しそうですw
前回評価で「品がよい」と評価している人も多いですが、それがまたお笑いにありがちなコテコテに脂ぎった印象と
また別のなにかとして感じられる点が面白く。まさにさっぱりポン酢で鍋食うが如しw
ただ、その品のよさは作風であると同時に、場合によっては縛りになってる部分もあるかな、という感覚もないわけではないかも。
今回の場合だと全体として「くすり」「あはははは」という笑いで「ぎゃはははは」「げらげらげら」にならない、みたいな
とはいえ、もう既にそれが一つの武器であり、敢えてそれを捨てるのは迷走を招く危険の方が大きそうです
前者のような笑いの方が欲しい時というのは確実にあるものですしね。
しかし今回最大のツッコミどころは「今回は年始と言う事でお盆ネタです」だったりしなくも、ないw
なんにしろ、初笑い楽しませていただきました。雨晴Pはできる子!
>>138 麦飯!とろろ!テールスープ!牛タン!・・・ちょっと仙台行ってくる!
で、感想済まそうかという衝動に駆られましたw
ただメシを食いに行くだけ、と言いますがむしろそれだけの話で見せ方が出来ることが既に芸。
男視点の方がマッチする、という見解についてもむしろ、おいしそうに食べてるなあという視点が妙に微笑ましさを
かもしだしてたというか・・・「たんとお食べ」みたいな。タンだけに。
なんていうか、おかんと新妻を足して2で割ったような感じ? 別に自分が作ったわけじゃないけど
微笑ましくもかわいらしい律っちゃんでした。
亜美真美の豚汁うどんとかもそうですが、作る人目線とはまた違う、食べる人目線の旨そう加減が伝わる一編でした。
でも、プロデューサーは牛タン食ってるワケじゃないんだよね、これw
うう、来年は仙台行く予定ないなあ。アウェイでユアスタ行ってみっしりした厚切りの牛タンガシガシ食って
喜久福と萩の月土産に帰るのがここ数年の楽しみだったのにw
>>140>>141 そのうちみんなでねぎし行って牛タン食うかーw
・・・さて。それはそれとして。
ここまで食べ物ネタが続くと・・・やっぱり期待してしまいますよね、みなさん?w
あ、牛タン食ってるワケじゃない、は自分で注文したのはどうやら違うようだ、という意味で
( ゚д゚) 『・・・やっぱり期待してしまいますよね』
_(__つ/ ̄ ̄ ̄/_
\/ /
 ̄ ̄ ̄
( ゚д゚ )
_(__つ/ ̄ ̄ ̄/_
\/ /
 ̄ ̄ ̄
ええい言い訳なんぞしないっ!
レシPですごぶさた。つうよりこの局面で出てくるあたり俺自意識過剰過ぎワロス
小鳥さんで『七草十草』、4レスお借りします。
2010年のお正月もそろそろおしまいです。三が日もとうに過ぎ、週の終わりには学校の
授業が始まります。
芸能プロダクションである私たちの会社では、仕事納めや正月休みはむしろよくない
ジンクスになってしまいますが、去年から今年にかけてはありがたいことに、社長や私や
他のスタッフの皆さんはほぼ休日返上となりました。ええ、初詣も事務所の裏の神社です。
いいんです縁結びの神様だっていう話ですし。
なにより、私たちよりずっと頑張っているアイドルのみんなのために、私たちにできる
ことがあるんですから、それを喜ばなければなりません。
「お疲れさまです……おっと、小鳥さんだけですか?」
「あら、プロデューサーさん」
事務所のドアを開けて入ってきたのはプロデューサーさんでした。
「お疲れ様です。皆さん上がりですよ、もうこんな時間ですしね」
「えっ、まさか小鳥さん、俺のために事務所開けててくれたんですか?」
「いいええ。1月って営業日数少ないんですよね」
申し訳なさそうな表情になるプロデューサーさんを牽制します。気を使わせたいわけでは
ありません。
現在の765プロで、プロデューサーの肩書きを持つのは彼だけです。765プロは昔から
少数精鋭主義ですが、この人のように一人で10人ものアイドルをプロデュースできるような
人は滅多にいません。
「プロデューサーさん、やよいちゃん送ってきたんですよね。場合によっては直帰するって
電話でおっしゃってませんでした?」
「ああ、いや、早く体が空いてしまいまして。年が明けて一週間たつっていうのに事務所にも
顔出してませんでした、まあ生存証明をと」
「あ、そういえばそうですね」
プロデューサーさんの顔を見たのは、大晦日の打ち上げ以来でした。新春の生番組が
たくさんあり、彼はその立ち会いをしながら得意先回りや打ち合わせをこなしていた
のです。それで思い出しました。
「じゃあプロデューサーさん、改めて、あけましておめでとうございます。電話では言い
ましたけど、面と向かってはまだでしたから」
「あ、こりゃどうも。こちらこそあけましておめでとうございます」
お辞儀した私につられるように、ひょいと頭を下げてくれました。そして顔を上げる
と、なにか考えながら私の顔を見つめます。
「どうかしましたか?」
「……いや、小鳥さんの顔見るのも一週間ぶりだなって」
「な」
他意なく言ったのだと思います。この人はそういう人ですから。アイドルのみんなや仕事
相手、誰にでもふと心の芯をくすぐるようなことを言うのです。
でも、頭でわかっていても顔に血が上ってしまいました。
「っな、なに言ってるんですかプロデューサーさん、こっ、こんな私みたいな顔なんか
見たってなんにもなりませんよっ」
「あ、いやそんなつもりじゃ」
だ、だいたい毎日若くてきれいなアイドルのみんなと一緒にいて、お仕事先でも美男美女
ばっかりで、こんな私なんか箸にも棒にも引っかからないなんてこと充分わかってます。
わかりきってます。
でも、それでも……気になる人にこんな風に言われると、平静ではいられません。
そんな私を見て怒らせたと解釈したのでしょうか、プロデューサーさんは慌てて言い訳
をしました。
「からかった訳じゃないですよ小鳥さん、なにか気に障ったならすみません」
「べ、別にそんな」
上背のある大きな体で両手をぶんぶん振り回して、その焦り様が少し面白く、私はすぐに
機嫌を直してしまいました。我ながら簡単な精神構造です。
「気に入らないとかじゃないです、ちょっとびっくりしただけで」
「はあ」
「そんなに怖がらなくても経費伝票却下したりしませんから」
「それは助かります、ってそういうことでもないですよ、俺の方も」
「ふふ」
どうにかいつものテンションを取り戻して、プロデューサーさんと笑い合います。
「収録の方はうまく終わりましたか?」
「やよい、頑張りましたよ。満点ですね。むしろ俺たちフロア組の腹の音がマイクに拾われ
はしないかとヒヤヒヤしましたが」
今日のお仕事はグルメ番組でした。やよいちゃんはゲストの一人で、出演者それぞれの
アイデア料理を紹介し合う内容。当然ですがプロデューサーさんがご相伴にあずかる
ことはなく、美味しそうな匂いの立ち込めるスタジオで他のスタッフさんともども指を
くわえていたとのこと。
「やよいが、一緒に出演したアイドルの子と意気投合しちゃいましてね。種子島の出身って
言ったかな、彼女の実家も生活がちょっと大変な時期、あったらしくて」
「ああ、あの。境遇似てるかもって思ってました。明るい子ですよね」
「プロデューサーとしてはキャラクターがカブるんで少々心配なんですがね。けっこう歳も
離れてるっていうのに当人同士はもうすっかり仲良しですよ。番組的にも東西対決みたい
になって盛り上がりましたし、収録後も二人で話がしたいって言われたんで、俺は途中で
お役御免になってしまった」
「帰社時間が電話で聞いたのより早いって思ってたんです。そうだったんですか」
話題の終わりに、訊ねたかったことを聞いてみました。
「ところでプロデューサーさん、お腹空いてます?」
「えっ?そうですね、実はいささか。収録が収録だったんで胃袋をしこたま刺激されましてね」
「よかった。お雑炊の用意があるんですよ、召し上がりませんか?」
「雑炊?なんでまた」
「今日は1月7日ですから」
「ははあ、七草粥ですか」
「今日だけじゃないですよ。765プロではお正月の収録があると、事務所にお食事を用意
しておくんです。三が日はおせちがありましたし、昨日まではお餅も残っていたので
お雑煮もお汁粉もできました」
去年の春に来たプロデューサーさんはご存知ではなかったようです。
芸能界というところはせっかくのお正月だというのにお仕事がたくさんある業界です。
年若いアイドルのみんなは特に、ご家族とも別行動になってしまいます。せめて楽しい
収録になるよう、言ってみれば事務所が家の代わり、私たち事務スタッフが家族の
代わりをしているのです。
「あー、やよいがそんな話してたな、そう言えば」
「千早ちゃんや伊織ちゃんなんかオフの日も来て何やかや摘んでましたよ。いかがですか?」
「わざわざ作るんでしょう?なんか悪いな」
「お気にめさらず。私も今日はもうお仕事終了ですし、ごはんがまだ少し余ってるんです。
それにその、七草の方は日持ちもしませんし、残してももったいないですからね」
「そうですか。では、遠慮なく」
少しアピールし過ぎたかな、と思ったのは私だけだったようで、プロデューサーさんは
嬉しそうに笑ってくれました。
「今日の番組のメインテーマも鍋だったんです。やよいたちが締めの雑炊をがんがん
たいらげて行くのを見ていて、スタジオ乱入まで一瞬考えてしまいました」
「あはは、あぶなかったですね。作ってきますから、少し待っていていただけますか」
「小鳥さん」
「はい?」
「……あの、そばで見ていてもいいですか?」
「ふえ」
たぶん、何の気なしに言っただけでしょう。そういう人なのですから。空腹が先立って
いるだけなんだと思います。
「ぅ、い、いいですけど、男の人は面白くないんじゃないですか?」
「いやその……すでに待ちきれなくなりまして」
ね、やっぱり。
「は、はいはい。急いで作りますね」
でも、なぜでしょう。私の頬は緩みどおしです。
臨時のキッチンになっている給茶室で、熱湯に塩を一つまみ入れて七草をゆでます。
「普通なら七草ですが、今年は『十草』で作ってみましたよ」
「十種類?七草は『芹・薺・御形・繁縷・仏之座・菘・蘿蔔』ですよね」
「正解。それに人参、椎茸と豆苗を入れるんです」
水に取って絞り、1cmに刻んで取りおきました。これは最後に雑炊に混ぜます。
「色味を加えるつもりなのと、ほら、うちには今アイドルが10人いるでしょう?」
「ああ、そういう意味ですか」
誰がどれ、ということは考えていませんでしたが、頑張って働いているみんなになぞらえて
あげられたら、そう思ってあとから買い増したのです。
「でもそれじゃ、亜美か真美のどっちかが怒りませんでしたか?」
「ぬかりはありませんよ。もやしと同じ大豆で出来た油揚げも入れてあげました」
お鍋にご飯を2膳、鶏がらスープの素を小さじ1杯、ひたひたの水で煮立たせます。
「もっとも『もやしならやよいっちじゃないの?』って言われましたけどね」
「はは、俺も今そう思いました」
「カブや大根はともかく、あとはぜんぶ野草ですからね、言ってみれば雑草です。あんまり
深く突っ込んで割り振るとかえって雰囲気悪くしそうなんで誤魔化しました」
「ねえ、小鳥さん。これも入れてもらえませんか?」
ふつふつと小さな泡が立ち始めた頃です。プロデューサーさんが突然こんなことを言い
ました。怪訝に思って振り返ると鞄から出したのでしょうか、手にタッパーを持っています。
「なんですか?それ」
「さっき言ったアイドルの子からのおすそ分けなんです。やよいもずいぶん貰いましたが、
俺にもって。料理しない身にはちょっと困ってしまうんですよね、こういうもの」
今日の収録に持参した余りだったとのことで、彼女の出身である九州では七草粥にも
入れるのだそうです。名前を忘れたが西日本で生える野菊の仲間だそうだ、と言われて
察しがつきました。
「関東で生えるのは食べられないんですよね。珍しいものをいただきました」
「小鳥さん、ご存知なんですか」
「昔教わった、くらいですかね」
詳しくは説明しないまま、ゆがいて他の野草に足しました。
溶き玉子を流し入れ、七草を混ぜて、塩と醤油で調味をしたら『七草雑炊』の出来上がり
です。
「お待たせしました。その子の地方ですよ、こうして具沢山のお雑炊にして食べるのって」
「いただきます。へえ、そうなんですか」
器に盛って渡すなりお箸で掻き込むのを、給茶室のテーブルの反対側で眺めます。
美味しそうに嬉しそうに、息もつかずに食べる姿が可愛らしくさえあります。
「少し多めに作りましたけど、食べられそうですか?」
「うん、美味い。これならその鍋の倍でもいけそうです」
「七草はお正月に食べすぎた胃を休める意味もあるんですよ?逆効果じゃないですか」
すでに一杯目は空でした。注ぎ直した茶碗もみるみるうちに減っていきます。
「ああ、すみません小鳥さん、小鳥さんも一緒に食べませんか」
「あ、そうですね。いただきます」
「ふう、いつもこんなの食えたらなあ」
……純粋にお腹が空いてるだけだと思います。この人はそういう人です。
「ま、またなにか作って差し上げましょうか?」
「嬉しいなあ、ありがとうございます小鳥さん」
「いえ」
でも、耳が赤くなっているのに気づかれやしないでしょうか。
私が一膳食べる間にもプロデューサーさんの箸が止まることはなく、またたく間にお鍋が
空っぽになってしまいました。大根とカブの身で作っておいた浅漬けもすっからかんです。
「ぷふう、ごちそうさまでした」
「ひょっとして足りませんか?七草はもうないですけど、なにか作りましょうか?」
「そこまでお手を煩わせるわけには行きませんよ」
プロデューサーさんは椅子の背に体重を乗せ、お腹をさすりました。
「でもよかったです、この野草も無駄にならずにすみましたし」
そしてこんなことを言うのです。
「なにより『ひと草』増やせた」
「はあ」
「だって」
彼は私に向かって、にっこりと微笑みました。
「765プロには、アイドルは11人いるんですから。亜美真美のことじゃなく、ね」
「……え」
「うん、小鳥さん、あなたです」
……ど、どっ……。
どうせ、ただの茶目っ気で言ってるだけです。な、なにしろプロデューサーさんは
そういう人なんです。
でも、でも。……でも。
でも、そんなこと言われたら、意識せずにいられないじゃないですか。
だって、プロデューサーさんが貰ってきた野草は。
『私だ』って足してくれた野菊の名前は。
……『嫁菜』、って、言うんです。
知ってるんですか、プロデューサーさん?
おわり
以上です。ありがとうございました。
えー、言い訳しないって書いたので言い訳しませんが、12月にはたくさん(未完)マークのついた
作品を生み出しました(出せてねえ)。いつか完成させたい。
2010年1本目でございます。ええ食い物祭りになってるのでのこのこ出てまいりましたとも。
いろいろググったら鹿児島では七草は雑炊にしてむしろがっつり食う、と書いてあったので
ネタにしました。種子島の貧乏アイドルもいつか顔出させたいと思っていたので好都合でした。
どうしよう、腹が減ってまいりました。
皆様のお口に合えば幸い。ご意見ご指導よろしくお願いします。
前作『美希曜日よりの使者』ご感想ありがとうございます。すぐ次の作品書けるって思ってたら
こんな有様ですorz
>>55 俺自身、美希というと金髪のイメージなのです。で、髪切らなくても美希って変わっていきますので、
こういう感じのゆるやかな変革が彼女らしいかな、という解釈でした。
>>56 覚醒美希はスペックがピーキーな感じがします。だからいよいよになると記憶に支障が出たりして。
その守りたさも魅力なのでしょうが、やはりのんびりゆっくりの美希が可愛らしいですよね。
>>57 流えええぇぇぇーーーッ!
ダメそれ俺の泣けるシーンベスト2なんだからダメ(ちなみにベスト1は黒炎を殴り飛ばす羽生パパ)
>>58 トンデモかバリバリか、というのは特に公式二次(ドラマCDとかDLCドラマとか)のような単発作品、
ゲーム本編のように成長を共に追って行けない作品で表現するのに適しているんだと思います。
だからこそそういうメディアであらわせない部分が見えたらいいなあと思いながら書いていました。
うまく出来てたら光栄です。
>>82 アイドルという職業や歌っているその場面は公式がプッシュすればいいわけで、普段見えてこない
私生活や日常の風景を描くことができるのが二次創作の旨味かと思っています。事務所でお茶
引いてるアイドルとか人知れぬ趣味に没頭するアイドル、妄想する事務員(それは公式も随分
やってんなあw)、etc……。これからも楽しく世界を広げて行きたいと思います。
>>107 「通常美希の方が地に足は付いてる感じ」禿堂。誤解を恐れず言えば、覚醒美希はハニーに
カンフル入れられた美希で、非覚醒美希の方は通常の栄養で育てられた美希。
今年もよろしくお願いします。仕事は春までこの調子だぜありがとうございますーっ!
152 :
創る名無しに見る名無し:2010/01/07(木) 08:24:31 ID:hUzhsHeg
雪歩以外のゴミキャラどもが無残に死ぬ話が読みたい
>>151 期待どころか、既定路線かと思ってましたよっとw
冗談はともかく、その自覚と根性と姿勢には敬意を表します。乙。
さて、内容ですが
落ち着いた大人の会話に見える中で、初心な小鳥さん可愛いよ小鳥さん。
今朝は一段と寒いですが、読んであったまれました。
しかしこのP、アイドルの子たちのランク上がったら修羅場招くんじゃないかw?
そのP争奪戦で、この人はこういう人、と理解してしまってる小鳥さんは、
参戦もせずに不戦敗な予感が…
>>151 これはひどいジゴロ
無自覚ジゴロでなくジゴロ
最後のオチ、これはいくらなんでも口説いているようにしか読めないw
もっとさらりと、
「小鳥さん、ぬかりあったんですよ。御自身の草が足りなかった。さっきのコレでぴったりです」
くらいで、もう小鳥さんなら脳内がスゴいことになる、たぶん。
いいなあ、俺も粥食いたいなぁ。嫁菜入りの。
ところであとで書くと言っといて感想書いてなかったのが1本あったんでカキコ
>>108 文脈といいオチの切れ味といい、同じ創発板にある星新一スレにも堂々投下
できるネタだと思いましたw
飲み会だと告げる時に、相手が女性だとつい言い足してしまう小鳥さん。
そう言ったこと、プロデューサーと会話できたことでたぶん安心して、結局
いつものように深酒してしまう小鳥さん。
さりげなくメリークリスマスの予行演習を妄想しておく小鳥さん。
知り合いにメリーと言われないように微妙に人目を避けて歩く小鳥さん。
お掃除のおばちゃんにダメ押しされてもまだ前向きに捉えようとする小鳥さん。
>小鳥はちょっと心配したように訊いた。
……「ように」?
男声の電話と聞いてまだ諦めてなかった小鳥さんw
可愛らしい小鳥さんをいっぱい拝見できました。
ごちそうさまでした。
>>151 意識されてる訳じゃないとわかってても律儀にときめいてしまう小鳥さんが初心可愛くてたまらんです。
でも、見方によったらPは本当に小鳥さんにアプローチしてるけど
Pが自分を選ぶはずが無い、と思い込んで天然ジゴロとして流してるとも見れますね。
完全な天然にしてはレベルが高過ぎますしねw
ともあれPは責任をとって小鳥さんを嫁に取るべきです、GJでした
>>151 なんと。釣れたw
・・・いやいや、失礼。そこで決して期待を裏切らないところが最高です。
なんというか、小さな幸せを拾い集めて頬を緩める小鳥さんが実にかわいらしいところです。
うーん、少なくとも創発ピヨちゃんはものすごい非の打ち所ない優良物件だと思うんだけどなあw
なんでこんなに自信なさげなんだろうか。公式が明らかにすることは多分無いだろうけども・・・
そしてここでも、食べるのをにこにこと観察されてしまうプロデューサー。
この辺りを見ていると、男の子のハートは胃袋にある、は至言だと思います。
事務所で二人きり、ご飯を用意して待ってる小鳥さん、というシチュエーションは確か96Pの第一作も
ほぼ同様のシチュエーションかなと思うのですが、アプローチしつつもこの人はこういう人、みたいな
一歩引いた感じがする点がある意味ピヨちゃん視点固定を強調しているようでもあり。
なんだよこれはこれで結構しっかり女性してるじゃん、って感じ?w
予定したラストに持っていく小技も随所に効いていて、つながりの部品がうまく連鎖しているのも見事。
あ、でも「お気にめさらず」は意味合いとしては「お気になさらず」と同じにはなるはずかもだけど
一般的に「お気に召す」が「気に入る」の意味で使われることを考えると、ここで使うのは避けた方が無難かも?
あと、ちょっと個人的に気になったのが「千早ちゃんや伊織ちゃんなんかオフの日も来て何やかや摘んでましたよ」
ここでは微笑ましい一言ですまされている一方で、なぜ彼女らが正月だというのにプロデューサーがいるわけ
でもない事務所にオフでも来ているのか、とか考えてしまうと・・・千早はもとより伊織もそれなりに愛されてはいる
ものの「家族が構ってくれない」ことについてはそれなり以上に寂しい思いしてそうだしなあ、とSPのアイドラ見つつw
自宅に居場所がない同士のちはいおがたまたま鉢合わせ、みたいなシチュも面白いかも?
・・・えっと、ここにみんなのおうちがあって、血はどうであれ心のつながった家族がいるんだからねっ、とか
いやま、それ自体はともかく。そういう引っ掛かりをごくさりげなく用意しているとこが自然な深みを演出してるなあ
とか感心してみたり。
なんにしろ期待に違わぬご登場に感謝。読んで胃がほっこり温まってくれましたw
>>146-151 小鳥さんの優しさが、Pの目の前で零れ落ちてるよ
小鳥さんは不憫だなあwww
とても遅ればせながら、明けましておめでとうございます。
空気を読まずにギャグ(?)を投下します。
2レスお借りいたします。
日高舞は家で掃除をしていた。その日の昼下がりには、中学校の授業は既に終わっていたが、
娘の姿は無い。彼女がアイドルとしてデビューしてからこのかた、
仕事やレッスンで時間は埋められ、昼に家へ帰ることは稀なことになっていた。
「あの子の部屋はどうなっているかしら。散らかってたらいけないわ」
母は呟いた。発せられた言葉とは裏腹に、明らかに楽しそうな顔をして、
娘の部屋へ近づいていく。思春期の少女ともなれば、父親は勿論、
同性の母親にも自分の部屋に勝手に入られることを嫌がるもので、
日高愛の場合もご多分に漏れず、部屋を探られる度に金切り声を上げて抗議するのだが、
その程度のことで自重する日高舞ではなかった。
ドアを開けて、実際に部屋を開けてみると、まるで既に掃除されたように整理整頓されていた。
「自分で片付けるから、入らないでなんて言ってたけど、本当に掃除してたのねえ」
舞はニヤリとすると、ずかずかと娘の部屋へ入っていった。
そして、躊躇無く机に向かい、中身を漁り始めた。
「手帳、手帳はどこかしら」
娘の様子に目を配るのは親の義務よねえ、などと勝手きわまりない言い訳を述べつつ、
引き出しの中身を泥棒のように荒らしていく。娘の日記を兼ねている手帳を盗み見ることが、
この母親の楽しみの一つとなっていた。自分の手帳を見られたと本人が知れば、
勿論、顔を真っ赤にして怒るわけだが、そんなことを気に掛けるぐらいなら、
愛が母のことで思い煩うこともなかろうというものである。
「あれえ、無いわねー手帳、さすがに何度も見つけられて学習したのかしら。ん…これは?」
引き出しの中の手に硬い感触を感じた舞は、それをつかんで中から引き摺り出した。
「CD?あの子ったら、私の知らないところで、一丁前に音楽を嗜んだりしてるのかしら」
CDケースの表には、暗色に覆われた絵が入っていた。
その絵の中央には、教会らしき建物が、藍色で描かれていて、
上側には何やら文字らしきロゴが入っており、絵の下側には、
CDのタイトルと思しき文字がアルファベットで「DE MYSTERIIS DOM SATHANAS」と記されていた。
「うーん、何て書いてあるのかしら、デ・ミステリイス・ドム・サザナス?読めないわ」
机の上にケースを置くと、意地の悪い笑みを浮かべ、舞は言い放った。
「聴いちゃお!」
そうと決まれば話は早い。同じ引き出しに入っていたポータブルCDプレイヤーを、
これまた拝借し、イヤホンを耳につけて、音楽を再生した。
その途端、工事現場のような音がしたので、一時停止ボタンを押した。
「な、何よ今の…」
舞は、見るものも無いのに、思わず目を逸らした。だが、
娘の趣味に対する好奇心と怖いもの見たさの感情が勝り、
再生ボタンを押し直した。イヤホンから再び騒音が聞こえてくる。
よく耳を利かせてみると、ドコドコ鳴っている工事現場のような音は、
物凄い速さで叩き出されるドラムの音であることがわかった。
その上に覆い被さるように、不気味なエレキギターの音が流れて、
おどろおどろしい雰囲気を醸し出していた。舞は額を手で拭った。
おかしな曲だ、彼女は内心そう思った。自分の音楽に関する常識とは
かけ離れた曲だとも思ったが、聴けないことはない。しかしながら、
そう考えていられるのも、歌声が入るまでだった。
「!?」
人間の声?これが人間の出す声なのか。音程は黙殺され、
そもそも歌として全く成立していない。何と言ってるのかも全くわからない。
何かを呪うような、おぞましい音がイヤホンを通じて舞に襲い掛かる。
彼女はそっと停止ボタンを押した。今一度額を拭う。手には脂汗がべったりと着いていた。
「な、な、何よコレー!?」
日高家に悲鳴が響き渡った。
「ママ、ただいまー」
日高愛は事務所でのレッスンを終えて、帰ってきたが、いつも出迎えに来る母親の姿が無い。
怪訝な顔をしつつも、居間に入ると、その母から呼び止められた。
「愛、ここに座りなさい」
「何、ママ、急に改まって」
「これはなんなの!」
娘が座ると、母は「DE MYSTERIIS DOM SATHANAS」を机に突き出した。
「ああー、ママそれ聴いたのね、ねえ、ねえ、どうだった、それ聴いて」
愛は、悪びれることなく、かといって、怒るでもなく、しげしげと相手の顔を覗いてきたので、
舞は眉を顰めた。
「この怖いCDは何!説明しなさい!」
「これって、Mayhemの『DE MYSTERIIS DOM SATHANAS』だけど。メタルの名盤だよー。
アッティラ・シハーの呪詛ボイスに、ヘルハマーのブラストビートが最高なんだから!」
「えっ」
「えっ」
まるで常識であるかのように語る娘の姿に、母は当惑するが、
その姿に娘もどういうわけか困惑した表情を見せた。
「ママったら、ポップスしか聴いたことないから、びっくりしたかもしれないけど、
メタル界隈では、捨て曲無し、名曲揃いのアルバムって評価されてるんだから」
「メ、メタル?それって、髪染めたり、厚化粧したりするアレ?」
「そんなポーザーとMayhemを一緒にしたら困るなー。ブラックメタルのジャンルを
確立させた偉大なバンドなんだから。そもそも、ヘヴィメタルで髪染めたり、
化粧したりするのなんて、実際にはほとんどいないんだけど」
「ポーザー?ブラックメタル?訳がわからないけど、とにかく、
こんな危ない音楽を聴くのは止めなさい。正直、聴いてて気が狂いそうだったわよ」
「ええー、やーだー。気が狂いそうになるって言うけど、そういう狂気を歌ってるのが、
このアルバムなんだから。」
「狂気なんて音楽には必要無いの!音楽を聴くなら、私の曲でも聴いてなさい!」
「嫌よ、ポップスなんて音楽じゃないもん!」
「なっ!私の全業績を否定するようなこと言わないでくれる?」
娘の暴言に色を失う母。
「だってそうでしょ。J-POPなんて、プロダクションとレコード会社が結託して、
似たり寄ったりの曲を追っかけに売りつけてるだけじゃない。
そんな曲、音楽じゃないわっ、ゴミよ。いや、ゴミ以下よ!」
「きー、何てこと言うのよ。このCDが貴方をおかしくさせてるのね、なら、捨てちゃうから!」
舞は、「DE MYSTERIIS DOM SATHANAS」を取り上げると、ゴミ箱に捨てた。
「あーっ!何てことするの、もうママなんて知らない!」
愛は、投げ捨てられたCDケースを拾い上げ、玄関へひた走る。
「舞、どこに行くの!待ちなさい、待ちなさいったらー!」
わが子に伸ばした手は、あえなく空を切り、愛は夜空の下に走り去ってしまった。
「どうして、あの子ったらヘビメタなんかに走っちゃったのかしら…」
思春期特有の精神の変動に振り回される母親がここにも一人。その疑問に答えるものはいない。
その後、雪歩の家にて、愛が保護されたりするのだが、その話はまたの機会にするとしよう。
自分で書きながらなんですが、キャラ崩壊酷すぎワロタwww
愛シナリオのOPで、舞さんが娘の手帳をガサ入れしてるのを見て
この話を思いついたのですが。
愛ちゃんの母親に対するコンプレックスが、あさっての方向に
爆発したらどうなるだろうと思って、このSSを書きました。
いや、ぶっちゃけていうと、アイドルたちがメタルにはまっているのが
書きたかっただけなんですけどねwww
呪詛ヴォイスを張り上げるアッティラ・チハーに
吐き捨て系の絶叫ボイスを弾き語りで披露するアレキシ・ユキホ
豚の生肉を舌でペロペロするハルカ・マニアック
そして、喚き声を上げながら、速弾きするアイ・アラヤ
そういうのが凄く見たいんです、見たいんです、見たいんです。
大事なことなので三回言いました。
まあ、こんなネタに感想をつけてくれれば幸いです。
163 :
訂正:2010/01/18(月) 23:15:39 ID:PpMJ4T5w
>>161 ×「舞、どこに行くの!待ちなさい、待ちなさいったらー!」
○「愛、どこに行くの!待ちなさい、待ちなさいったらー!」
吾ながら酷い誤植を見た!
愛の口調が引っかかる
>>162 舞の型破り感が全く影を潜め、Typicalな「大人」にされちゃってるのにまず疑問が。
さらにはアイドルポップスそのものも全否定と来ちゃうと、
愛の物語そのものに対しても違和感が出てきちゃいます。
せめて、もう少し文章量を多くして、違和感をなくす理由付けや、
納得出来るオチを付けて欲しかったかなあ、と。
愛は単純なだけに、この愛とアイドルを目指して頑張る愛が結びつかないです。
違和感と2chネタがはいったセリフ、アイマスにしては不気味な展開から、
これは夢オチとか妄想オチとかその類のがくるだろうと思っていたら、
そのまま発散してしまったので、よくわかりませんでした。
>>162 ところが俺はHMに関してこういうスタンスの友人がいるので楽しめたw
ご本人おっしゃってる通りキャラ崩壊すごいですねな話なんですが、結末で雪歩んち行った
ってことは愛は雪歩にヘビメタ洗脳されていて、彼女のご高説は雪歩からの引き写しだった
(=雪歩がすでに感染してる)などと思うとすごく楽しいです。中二病の症例を垣間見た感じで
なかなかに背筋が凍りましたな。
雪歩の自室でソーユー系の音楽垂れ流しながら表情こそ明るいガールズトークで、でも
内容は常人に理解できない会話を繰り広げる雪歩と愛がもうSSの枠とかプロットとか飛び
越えて脳内に再現されました。と言うか再現されてしまいましたどうしてくれる。
……とはいえ。
すでに言われているとおり「そのキャラらしい立ち居振る舞い」になってないのがちょっぴり
残念な部分かと。具体的には舞さんが全然舞さんらしくないのが唯一最大。作中の愛の
言動は『中二病の愛』だと捉えればそうおかしくない(もともと愛はセリフや行動に極端な
特徴がないし、娘が母に対する態度としてはまあまあこんなもん)ですので、作中で舞さん
らしい舞さんを描写することで娘の中二っぷりを効果的に表現できたかも。
序盤は解釈の範囲内ですがヘビメタCDを発見したあたりから、舞かあさんというよりそれこそ
雪歩のお母様あたりならばしっくり来る行動と感じました。萩原家も大変だったに違いない。
またのお越しをお待ちしております。
愛と舞の立場が逆の方が良かったかも
JPOP否定しても実績を残した舞と、JPOP肯定して母親越えを目指す愛だったら
キャラに合ってて納得できたような気がする
後書きが無いと、何を書きたかったのかSSだけでは伝わって来なかったのが難点
ギャグと宣言されてるのに素直に笑えないし、
キャラ崩壊とストーリー発散で、後味がよろしくない。
しかもその上での最後の一説がなんとも。
そのお話はまたの機会、と使う以上は、もう少し興味を引く形にして欲しい。
激突!萩原組長VS豆タンク!お楽しみに!と〆てギャグに徹するとか、
保護された場所をとんでもない場所(八甲田山中とかアフガニスタンの首都カブールとか
八丈島の南東60kmの沖合とか876プロダクション地下25m地点とか)にするとか。
今のままだと、全然またのお話とする意味が感じられません。
前作へのご感想、まことにありがとうございました。島原薫です。
今回も投下いたします。
タイトルは『ちーちゃん』。メインは千早で3レス使用。百合表現がございますので苦手な方はご注意ください。
投下後終了宣言+前作レスへのお返しです。
女同士なんて気持ち悪いと思った、のに。
更衣室ではいつも隅で身を縮こませながら着替えていたのが普通だった千早が、人並みに振舞えるようになったことに春香は内心、喜んでいた。
コンプレックスからか、人と一緒に着替えることさえ拒んでいた千早がここまで変わってくれるなんて。
まるで保護者のような感慨に浸りながら、当時のことを思い浮かべてはニヤニヤとした笑みを浮かべる春香。
そんな彼女にも、千早の視線が外れることはなかった。
ブラウスのボタンがひとつ、またひとつと外れていく度に千早の心はざわつく。
少し赤みがかった肌と白のブラジャーとの稜線が目に映るともう釘づけで、それでも片端に残った良心でもってチラチラと、
春香に気づかれないように観察を続けた。
無いものねだりだと、自分の胸を見て千早自身はそう片付けたつもりだった。
けれど、目に映る景色の中心には常に春香がいて、彼女よりもスタイルの良い女の子が並んでいても視線の向かう先はいつも同じ。
親友を羨む感情なんだと自分に言い聞かせているのに必死になって、
自分の中にいる、一番ちっちゃくてワガママなちーちゃんが口を開いてトドメをさされた。
すきなんでしょ?
着替え終えた春香がこちらを向いて、やっと自分の手が止まっていたことに気づく。
どうしたの? とクリクリとよく動く瞳が千早の胸を打つ。
やめて、そんな純粋な、綺麗な目で見ないで。
自分の中のちーちゃんがお腹を抱えて笑っているのを、千早は耳を塞いでやり過ごす。
少し春香の顔に怪訝そうな色が浮かび始め、「なんでもないわ」と、千早はボタンに手をかけた。
滞りなくボタンを外すはずがなかなか終わらない。
やけに凝ったデザインの為か、小さくて数の多いボタンに苦労する。
それでも普段の千早ならなんてことはないのだけれど、俯いたまま目だけで正面を見ると、相変わらず笑顔の春香がそこにいた。
もう彼女は着替え終えている。
待っていると言われればそれだけのこと。けれど、微動だにしない(ように見える)春香にある種の恐怖すら覚え始めていた。
なんとかボタンを外し終え、今度は千早が胸を露にする。
春香は動かない。小刻みに震え始めた手にはもう気づいているのだろうか、あらゆるものが千早を不安にさせる。
ねえ、千早ちゃん。
なんと意地悪なタイミングなのだろう。
ビクリとして千早が顔を上げると、春香は先ほどまでの笑みを浮かべたままだった。
着替えてて良いよ、と言われたけれど上手く体が動いてくれないことに千早は更に焦る。
なにより、「私のこと、いつも見てるでしょ?」なんていわれた日には千早はパニックに陥るしかない。
内心、どこかの舞台から飛び降りたい気分でも着替えは続く。
次に何を言い出すのか、耳と心臓だけはせっせと働いていた。
「気づいてないと思った? いつからか分からないけどすぐ分かったよ」
震えが収まらない。
次に出てくるであろうと、勝手にシミュレーションしている最悪の言葉が秒刻みで更新されていく。
うなづくことも出来ない千早。その様子を見て、「正直ね」と、春香はひとつ大きな息をついて続けた。
気持ち悪かった。
大きな大きな杭が胸を貫く。
何度味わっても、絶望に慣れることなんてないことを千早は改めて実感してしまう。
千早は考える。きっと春香の目には自分はなんて醜い生き物に見えるだろうと。
おこぼれを貰おうと下卑た笑顔で近づいてきた、今まで自分が拒否してきた人たちが小さいちーちゃんと共にせせら笑っているようにも思えた。
完全に挙動を停止した千早。他人から見れば、まるでその周囲の時間まで止まってしまったような空間が千早の中だけで広がっていく。
だから、「泣かないで千早ちゃん」と春香に言われ、やっと自分が泣いていることに千早は気づいた。
しかし、この絶望は到底、収まるものではない。
気持ち悪いと思っている人間とよく一緒にいられるものだと、一番外側にいる自分が強がりを言っていた。
でもね、と春香はハンカチを出して千早の頬に手を伸ばす。
イヤイヤと駄々っ子のようにかぶりを振る千早を無理矢理捕まえると、「お化粧、またやんなきゃね」と千早の頬を拭った。
「でもね、千早ちゃんなら良っかなって思ったんだ」
「……気持ち悪いのに?」
「うん。私もなんだかんだで見てるから」
「なら……春香も気持ち悪いわ」
「そうだね。気持ち悪いね」
人間はなんて現金な生き物なんでしょう。ほら、もう私の心は晴れているわ。現金ね。ずるいわね。
自分の中のちっちゃいちーちゃんが歌っている。千早はそっと近寄ってその子の頭を撫でてあげた。
お互いに涙でボロボロでみっともなかったけれど、自分のことを初めて可愛いと思った。
ちーちゃんはムッとした顔でそっぽを向くと、どこかへ行ってしまう。
千早はそんな愛おしい自分をずっと眺めていた。
おわり
投下終了です。以下、前作へのレス返しです。
>>89 こちらも言葉が過ぎていました。申し訳ありません。
アイマス勢でも特に幼い彼女に持たせてしまうあたり、罪深いのですが楽しいですよね。
>>90 たぶん涼くんともバカップルでしょうし、"いちおう"そういう勉強もしているんでしょうね。いやらしい子!
>>91 今回は飛び道具をこれでもかと使いました。書いた後、自分でも卑怯な作品だ、と思ったのは内緒。
>>92 推敲をなまけるツケがこういうところに現れてしまい、本当に恥ずかしい限りです。
どちらのミスも私のチェックミス、勘違いでした。ご指摘、ありがとうございます。
>>93 石川、武田あたりはまだ露出も少ないのでこちらが結構、好き勝手出来るのも利点というか、便利なところですね。
誤字の件は本当に申し訳ありません。
>>107 尾崎Pはアイマス世界には珍しく、ダメなところや嫌なところを多めに盛り込んだキャラで、
書く側としてはすごく魅力的な人物ですね。藪下Pは露出が少ないのもありますが、尾崎Pとは真逆な感じ。
これからもダメ尾崎Pを書いていきたいと思います。
>>123 仰るとおり、これを言ったらダメなんだろうな、という境界線を見ながらギャグやコメディーは書いております。
このラインを踏み越えたら不快、というのは見極めがなかなか難しいのですが、はまった時の爽快感めいたものは良いですよね。
武田が変態かどうかはこれからの活躍に期待ですw
あと、鹿学会は三谷映画『有頂天ホテル』のネタです。
それでは次回投下の際もよろしくお願いします。
>>174 女同士なんて気持ち悪いのに、私は彼女が気になって、
彼女がそれを知っていることを知って私は途方に暮れてしまい、
彼女も私を気にしていると判って私は嬉しくなってしまった。
はるちはキタ━━(゚∀゚)━━━!!!
……と手を打って喜ぶ感じじゃないテイストですけどw いろいろ考えてしまいました。
ほんの数十行の間に地獄と天国と迫害と寛容を味わう千早かわいいよ千早。
うまく書けませんがこんなことが繰り返されて千早は成長してゆくのだな、と
いうふうに感じました。
春香はなにをどこまでわかってんだかわかりませんが、当人的には百合とか
無関係で、けっこう単に大親友とでも思っててもいいなあ。
咀嚼のし甲斐がありました。GJ!
ひとつだけ確認です。
一番初め、『更衣室ではいつも〜変わってくれるなんて』の2行だけ春香視点、なんですよね?
ここだけ意図が不明でした。
>>162 えー、感想としては
・俺はわかるから楽しめたけど、(ブラック)メタル知らない人にはサッパリだよねえ……?
・言われっぱなしってのはやっぱり舞さんらしく無いかなー
といった所です。
個人的なイメージでは舞さんって、
「Mayhemときたら当然、Burzumもセットよね? あと、まさかVenomを聞いてないとか言わないでしょうね?」
「ママ、知ってるの!」
「知ってるというか……カウント・グリシュナックが逮捕されたのって私が返り討ちにしたからだし」
「ええええええええ」
「どんな音楽聞いたっていいけど、教会に放火なんてしちゃダメよ?」
ぐらいの台詞は言いそうかなーと。
もっと知らない人にもわかるような説明を入れないと、ちと厳しいのではないかと思う次第です。(説得力無いなあ)
>>174 ある種のナルシズムであり、たぶん百合ネタに限らずこういった文章を書く人間のハートをゴンゴンと叩く内容ですな。
悶えろ俺! みたいな。
俺、百合千早はどうしても受け入れられないw
でも、自分が好きなキャラで百合ネタをされるとギャーッてなる理由が判ったので、面白かった。
ゴチでしたー
>>162 厳しい意見が続きますが、発想そのものは面白いと思います。
まず失敗はここまで言われているように、日高家でやってしまったことではないかと。
てか、愛はこれでもいいんですが、この展開だと、むしろ愛の方が「ママの様子がおかしい?」って悩み始めてしまうレベルかと
普通に考えられる舞ママは明確に自分の邪魔をしない限りは娘の反抗期を放置するぐらい余裕ってタイプで、
そもそも娘がメタルにハマろうが、大して気にしないんじゃないかなーと
ぶっちゃけ、アイドル活動に固執する愛を見る目と大差なさそうというか
「はしかみたいなもんだろうし、好きにやってみたら?」って態度に終始した末に
「ママに判るわけないもん!」って飛び出したのはいいが、好きになったバンドが来日したときに
舞のサインもらって喜んでるってかむしろ拝んでるの見てしまった愛の図、なんて展開になりそうw
あるいは、
>>168で先に言われてしまいましたが配役逆にして愛が家に帰ったら
「髪染めたり、厚化粧したりするアレ」が化粧台前に鎮座ましましていて、さらっと「あら、愛、おかえり」から始まり
「ままま、ママが壊れた!?」
「ていうか、メタルの人だってそんな真っ白けな人、今どきいないから!」
「やーよ、ポップスなんて音楽じゃないしー」
「自分の全業績を否定っ!?」
「だって私の業績を全否定できるのなんて、私自身しかいないじゃない?」
みたいなノリで結局舞が愛をふりまわす方がらしい気になってしまうんですな。
「母親に対するコンプレックスが、あさっての方向に爆発」に対して母親のパーソナリティが強いというかいい加減すぎて
フツーな母親というステレオタイプに収められず、こういうような常識ギャップがどうしても似合わない、という
その方向だとキャラに沿わすとどうしてもズレズレ親子の空回りになっちゃう感じ。
繰り返しになりますが、「アイドルたち、メタルにハマる」という発想そのものはなかなかアリだと思うので
後はその料理の仕方かな、という感じですね
配役を考え直してみる(例えば、同じ展開でも絵理とサイネリアorオザリンとかだとアリかも・・・いや、ベタ過ぎてダメか?)
あるいは
>>167案に例があるように展開やシーンを考え直してみる、あるいは内容には手を加えないにしても文章そのものを
少し噛み砕き直す、などでその方向の話は充分作りようがありそうです
・・・でも、デス声は喉に悪いので、声でお仕事してる人は気をつけましょうね、とw
>>169 「〜なのだが、それはまた別の話」とか「その話は別の機会に」みたいな結び方はよく見受けられるけど
案外状況を選ぶ方法なのかもしれないな、とはここのところ思ったり。
>>176 やっぱ、日高親子の力関係だとそんなふうになっちゃうよなあw
>>174 うーん・・・自分としてはキライじゃないけども、ただ部品から客観視するとおそらくアウト、って感じかなあ。
その後の自分も気持ち悪い同士、につなぐことを前提としても、やはり千早に向かって気持ち悪い、と言い放ってしまう
春香というのは、それ「だけ」だと多分アウト・・・なんじゃないかなあ、と。本来は。
ところが、主観で見てみると、これが普通だったら違和感を覚えるはず、という基準に照らした結論ほど
ナシじゃなかったりするw
この辺りは、とりあえずなにか食べよう、バカリボンへたれ狼といった一連を読んだ結果として
「ちょっと原作とは違うけど、これはこれでアリじゃね?」という。例によっていつの間にかストライクゾーン広がっている結果かなあ、と。
これだけだと多分ダメだろうに、作中の言葉選びと積み重ねの結果として受け入れるに足る島原版が既に成立してる感じ
・・・とでも言えばいいか。 これは継続的に書き、投じている人の強みではあり。
人間関係の生々しさみたいなものを表現に取り込む試みについて、ここでは最も熱心に取り組んでいるのでは。
この辺り、前々から思っていましたが、なんとなく作中で登場人物同士がなにかいろいろとお互いの距離を
探り合っているようなのみならず、表現を通して書き手と読み手の間にも探り合いを持ち掛けられてるようなw
そういう印象を覚えるところ。
自分のネガな内心の声を「殊更にシニカルなモノの見方をするように造型した子ども時代の自分」として描く
心理描写とか、他人の目がこわい・他人の目に自分がどう映っているかこわい、という部分とか
なんか映像になった状態を想像するとTV版エヴァの終盤っぽいかも。
有頂天ホテルはまだ観てないなあ。ラジヲの時間は観たけど
765プロ版ラジヲの時間・・・って、聖白バラ女学院物語になるだけかw
>>174 気持ち悪いの元は様々だもんなあ
虫を見て生理的嫌悪感からくる気持ち悪いも、
二日酔いで頭がガンガンする気持ち悪いも、
常識から外れることの不安からくる気持ち悪いも同じ言葉に表されてしまう
本文での気持ち悪い、がどの元をそれぞれどれくらいの比率で含んでいるのかまでは
春香自身が伝えようとしなければ千早には知りえない。
だから千早は一般的解釈に基づいて気持ち悪いの意味を捉えようとして傷ついた。
でも春香はそうじゃないよ、と。YESじゃないからってナイフのようなNOでもないよ、と。
背中のホクロみたいに今まで考えもしなかったしこれからも触れないまま
普通に生きていけることについて急に好きか嫌いか答えを出せと言われても
困っちゃう話なわけで。
その辺の誤解を解こうとするわた春香さんは可愛い、もとい納得がいくのに対して、
千早が百合に至る理由が弱いと感じた。
低ランク時代冬場地方ロケでツイン泊まったらエアコン調子悪くて
春香が一緒に寝れば暖かいよってベッドに入ってきてすやすや寝ちゃったとか、
ケーキバイキングに誘われるとこれおいしいよこっちのもおいしいよほらほらあーん
なんてされて向こうはそんな気ないのになぜか千早だけどぎまぎしちゃったとか、
そんなことがあったなら千早が百合るのもしかたないなと
思わせるエピソードがあれば受ける印象ももっと柔らかくなったかもしれない
>>180 その辺りの過程を今回やるのは蛇足っぽくね?
当たりをただ柔らかくするんじゃなくて、インパクト狙いにきてる感じもする
>>179の言う以前までの作品が「作者レベルで」そういう緩衝にはなってる傾向はありそうだが
だが、それはそれとして
最初ツンケンして、馴れ合いに来たわけじゃないです、他人になんて興味ありません
人に合わせて活動もイヤです、デュオとか納得できないのですが、なちーちゃんが
「一緒に寝れば暖かいよってベッドに入ってきてすやすや」とか
「これおいしいよこっちのもおいしいよほらほらあーん」とか
そんなんなってるうちについには
>>175っ・・・っていう過程は
別の話として読めればヨダレガデマスw
>>178 やっぱり絵理がメタルにハマると、
「オススメは?」
と聞かれ
「スカイラーク全部………?」
とか言ったりするのかな。
>>182 概ね、
>>177に書いたことが全部なのです。
以下、言い方を変えた冗長な表現。
自分が好きなキャラというか、アイマスかつ千早だからだけど、俺にとって千早が
恋をするのは、Aランクをも超え片翼となり一緒に羽ばたいてくれるPのハズなのです。
本編のベストエンディングですら、まだ千早は恋に気づいていて欲しくないとまで思う。
これはナルシズムだと思っている。俺の脳内にいる俺が考えた千早が好き、という。
百合だけでなく男同士でもそう思うんだけど、同性に性欲を感じるというのは、
ナルシズムにみえるのです。特に「相手も実はそうだった」系について。
物語の形を借りて性的なこころを描くことは、己の性癖の開陳にも似ていて、それをして
「こういった文章を書く人間のハートをゴンゴンと叩く内容」と表現し「悶えろ俺!」と表現しました。
まあ、多分に自分の不勉強があるのだと思う。世の中をみると、このレスの枠に収まるような
矮小なものではないはずだから。
しかし、こんな理屈は「一番しっくり来る俺がギャーッてなる説明」であって、ギャーッてなるのは
飽くまでも情動。これは屁理屈だ。
千早は俺のことが好きなんですね、って言いたいんだ。
なるほどまずギャーッてなるのはあくまでも自分の中でって話で
それが他を否定するわけでない以上、そう思う人がいる分には普通だろう
「これはナルシズムだと思っている。俺の脳内にいる俺が考えた千早が好き、という」
「同性に性欲を感じるというのは、ナルシズムにみえるのです」
という二文があって、これらは共にナルシズムという同じ語でくくられてるが
「物語の形を借りて性的なこころを描くことは、己の性癖の開陳にも似て」
と含めて、自分の恋愛観・性愛観をキャラに投影して開示したいという
心理の一端だと考えそれはナルシズムだと解いてるってことでよさげ?
だとすると、それは何かを著さんとするものが共有する性癖でもあろうけど。
おそらくこちらも的外れに解釈してるんだろうが感覚の世界の話のようで
思うこと全部を受け止められるわけでなしという辺りで。
興味本位に対する丁寧な回答に感謝
>>185 いえ、寸分違いなく。伝わってよかった。
重ねておくと、ナルシズムの否定ではなく、自分が百合モノの直接さを受け止めきれないんだと解ったのです。
ので、島原Pのこの作品はギャーッてなりつつも最後まで読めました。
※基本、食わず嫌いだけはすまいと、可能な限り読むのです。感銘を受けたら必ずレスをする迷惑なやつですw
>>174 容認意見が多いようなので、あえて。
>>185と本質は一緒なんだけど、こちらは春香に違和感を持ちました。
千早にこれだけの葛藤があるのに、春香には何もないのでしょうか。
恋愛感情なしに行為に走る春香、と解釈しても違和感があるし、
P以外に恋愛感情を持つ春香、と考えると更なる違和感が。
これまでの作品が伏線だと思うと、逆にこれまでの作品の評価を
この側面から考え直さないといけない、と思いました。
188 :
ダメP:2010/01/29(金) 06:27:24 ID:HyV87+w6
初です。
第1話
P「っというわけで、君たちのデビューが決まった」
春香「えっ!」
千早「えっ!?」
P「何で聞き返すんだよ?」
俺はにやけてしまう。
P「だから、天海春香さんと如月千早さんのデビューが決まりました」
春香「えっ!」
千早「えっ!?」
P「…ケンカ売ってんのか?」
鼻から笑いがこぼれてしまう。
春香「だ、だって、わたしまだアイドル候補生で、歌も下手ですし、それにリボンですよ!?」
千早「天海さん、動揺し過ぎよ」
如月さんは天海さんを制す。
うんうん、如月さんは大人だな。
千早「わたしも天海さんに同意します。わたしの歌もまだ練習余地が残っていますし、それにまだ胸も成長していません!」
P「とりあえず落ち着こうか二人とも。やっぱり落ち着こうか二人とも」
俺は社長から来た書類を彼女たちに渡す。
P「まぁ、社長からの話で、来月に一組デビューさせなさいっつーことだ。で、」
春香「で?」
P「デビューさせたいアイドル候補生のうち、天海さんと如月さんを俺はプッシュした。で、」
千早「で?」
P「社長がいいよーって言ってくださったので、デビューが決まった」
春香・千早「いやいやいや!」
P「もうシンクロスタートか?」
春香「全然説明になってませんよ!?」
千早「何故わたしたちが!?」
P「う〜ん、天海さんは明るくて歌に元気があるからかな。如月さんは、」
貧乳だから!
P「言うまでもなく歌が上手いからだよ」
千早「少し考えたのが引っ掛かりますが…」
春香「なぜユニットなんですか?」
P「それは…」
なんとなく。
P「理由はあるが、まだ言えないんだ…」
春香「そんな…」
P「まぁまぁ、後で言うよ」
何か思い付いたら。
P「とりあえず、来月デビューしますので、ユニット名考えといてください。候補が無ければ、こちらで考えた物の中から選んで頂きます。
で、新曲のリリースが再来月頭だから、歌詞と振り付け覚えてくださいね。レコーディングは来月真ん中ぐらいにあります。後、デビューするに当たっての書類がわんさかあるから、とりあえずこれはお家の方に…」
春香「ちょ、ちょっとちょっと、ま、待ってください! 一辺に言われても頭が…」
P「とりあえず書類にサインだけよろしく! ではまた明日! 8時! ここに集合!」
>>188 感想書かせていただきます。
まず最初読んでると違和感がありました。
その違和感の本は千早と春香がお互いを「如月さん」、「天海さん」と呼んでいる所で、
普段、千早は春香の事を「春香」と呼び、春香は千早の事を「千早ちゃん」と呼んでるのが自分の中でデフォ、
というか公式のラジオドラマなどではそういう風になってるんですよね。
だからお互いを「如月さん」、「天海さん」と言いあってるのが自分の中で非常に気になったのです。
しかし、考えてみるとこれはこれで正しいですよね。
そもそもラジオドラマでは二人(というかアイドル全員)がそれなりに打ち解けてる設定なんですよね。
だから「春香」「千早ちゃん」という呼び方が成立するわけで、
この作品の様にお互いが面識が無かった、もしくは少ない状態では確かに「如月さん」、「天海さん」と呼び合っていても不思議はないです。
というより自分たちに照らし合わせてみると、いきなり名前で呼び合うって普通そんな事は無いですよね。
だから最初読んだ時の違和感って言うのはこの作品に対するものよりむしろ自分の思い込みに対する違和感なのかもと思ったりしました。
>>188 なにそれこわいのガイドラインかとw
ここから千早がどんな紆余曲折を経て天海さん→春香になったかを思うと
先が思いやられ…いや、先が楽しみだ
第一話てことはまだ投下あるの?
>>1にもあるけど投下終了したら一言添えてくれるだけで
こちらもレスるタイミングが取りやすくなるさー
191 :
ダメP:2010/01/29(金) 20:55:47 ID:HyV87+w6
>>189 感想ありがとうございます。
感想書いてくださるとか、なんか感動ww
>>190 コメントありがとうございます。
投下宣言忘れておりました! 了解です。
いえ、適当な感じで「春香」になりますよ?ww
まだまだ続く予定ですが、終わり方も考えておりませんので、
だらだら続く可能性もあります。
ふと暇ができたら、ちまちま打つといった感じですので、何か書いてるな程度に見ていただけるとうれしいです。
>>188 まず、ここまでキャラもPもその相互関係も崩壊させるなら、
連載型の分割投稿は、合わない気がします。
何より、その一部だけを読んだ時に、毎回同じ引っ掛かりを持つから。
どうせ引っ掛かるなら、一度限りで、同じ世界で全部通しで読ませた方が、印象は良くなると思うので。
とまあ、暗に言ってますが、キャラや関係の崩壊で印象が良くないです。
「春香、でいいかな?」の出会いを否定してまで、書きたいものがなんだったのか?
少なくとも今はそれが見えないです。
タイトル的にもギャグだと思うんですが、上記の引っ掛かりのせいで笑いには至りませんでした。
>>188 まず、あくまでも個人的趣味として、ですが。
会話形式は良いんですが、
誰々「」
と発言前に発言者名を書く所謂台本形式は、あまり好きではありません。会話形式なら会話形式で文頭の記名に頼ることなく
発言者を理解させるまでは達成しておいて欲しいなあとか思いますので。
とはいえ、冒頭のなにそれこわいのガイドラインを思わせる不条理ギャグなど、少しキャラ壊しを交えつつの会話形式だと
台本形式の方が適切と言えば適切なのかもしれませんけども。
「ユニット組んでアイドル活動」をプロデューサー、春香、千早の三人でのコント風にゆるい雰囲気で書く格好かな?
今のところ気楽に読める文を志向しているようですので、流れと雰囲気を楽しみたいと思いますw
アイドラとかコミュみたいな形に脳内映像に直すとまた面白げですね
それにしてもこのプロデューサー、そのうちやるだろ、発言と内心の声の逆転w
>>189 まあ例えば貴音が水瀬伊織→伊織殿→伊織、
美希がそこの人→プロデューサーさん→プロデューサー→ハニー
こういうような呼称変更の例はあるのと同様、展開的に春香に会う前の千早あるいは千早に会う前の春香など
敢えてそういう呼称を使う理由がある場合もありますので、そういう明らかに書き手の意図がある場合とかは
ケースバイケースかなと
194 :
ダメP:2010/01/30(土) 19:48:39 ID:dbAbKf7w
>>192 感想感謝です。
実生活の都合上、なかなか書くことができないので、ちょこちょこという形にさせていただきました。
あと、皆さんのこういう展開を期待する! みたいなのにも機敏に反応できますしwww
まとめての方が良いなら、いっぱい溜まったら投稿という形になるようにがんばります!!
キャラ崩壊の印象が良くないのは重々承知です。申し訳ありません。
「春香、でいいかな?」の出会いと仰るのはどのような意味でしょうか?
分かりませんでした…。
書きたいものは、結論から言うと「春香」ですね。それだけです。
正直、わたしは千早は大嫌いです。このマセガキが…と思ってしまってwww
>>193 感想、ありがとうございます。
そう言った方の表現も好きなのですが、仰る通り、コメディ系台本で、深く考えずに、だらだら読めるものをと思いました。
発言者を書かない普通の小説も書きますが、テンポ良く進むために、できるかぎり描写を省き、台詞のみで進めて行きたいかなーっと現在は思っています。
プロデューサーのこれからのお馬鹿な行動に期待してくださいw
(あと、疲れた時の息抜きに読んで欲しいなーっという思いが少しばかりあります)
確かに、いきなり「春香」「千早ちゃん」と呼び合うと、私はすごく不自然かな、と思います。
現実感が薄れる気がしてしまって…。(コメディに現実感もくそもないと言われればそうですが…)
っていうか、ここの人みんな率直な感想くれて嬉しいなwww
オラ、なんだかワクワクして来たぞwww
>>194 >「春香、でいいかな?」の出会いと仰るのはどのような意味でしょうか?
確か、ゲーム本編でPと春香が始めてのミーティングをした時の会話だったかと。
二次創作でそう言った本編でのお約束とかを無視すると違和感持つ人が多いですよ。
それだけで、物語への没入度が落ちますし。
196 :
ダメP:2010/01/30(土) 22:10:20 ID:dbAbKf7w
>>195 了解しました。感謝です。
それも、あんまこだわると自由度が下がりますねぇ。気持ちも分かるけど。
どうでもいいですが、遊びのつもりで書いた小説に
ここまで真摯にレスをくれる人たちが正直すごいなぁと思ったり、
申し訳ないなぁと思ったり。
>>195 うーん、正直こういう漫画で言うとギャグ・コメディ系の4コマ、あるいは1ページ漫画みたいなというか
涼宮ハルヒで言うとこのハルヒちゃん、あるいはロードス島戦記に対するようこそロードス島へ!みたいな
たとえが古いな・・・そういうような系統だと、そういうとこってこだわりどこにする必要ないかな
とも思うのですが
どちらかというと、この文でのキャラ崩しが容認できるものだったかの問題で仮にそこをおさえても
別の部分で違和感を見つけてしまうのではないかと
198 :
192:2010/01/31(日) 00:50:24 ID:UKTY+aan
本人ですw
中身としては、
>>195の言う通りなんですが、
>>197もまた真実。
活動開始後最初のPと春香のミーティングで、名前で呼ぶ際に、選択肢になって、
正解は「天海さん」じゃなくて「春香」で、その時のPの台詞が
「春香、でいいかな?」というものなんですよ。
春香自身が、Pに「天海さん」と呼ばれるよりも「春香」と呼ばれる方を好むわけなんです。
それが、春香のキャラ立ちの一部と思えるわけであり、
つまりは、春香のキャラそのもの、Pのキャラ、さらにその二人の関係、
それら全てが原作と別物になっちゃってる、と言いたかったのです。
自分もSS書きの端くれなわけですが、自分の書き方からすると、
そういった原作の端々からキャラを拾い、関係を拾い、
矛盾や不自然さがないように、と考えながら書いて行くわけで、
それを無視して別物にするからには、何らかの意味があるはず、と考えるのです。
その「何らかの意味」が、結局わからなかった、というのが
>>192の結論です。
そういう話じゃない、全然別ものと考えるべき、というのであれば、
出来れば、全然別ものであるという示唆が欲しいですね。
Pの描写とか、設定とかが一番でしょうが、まるで違う世界なんだよ、と示す部分が。
俺だったら、ギャグにするんだったら、例えば最終節、
もう少し春香と千早のキャラを生かして、Pが片っ端から情報を垂れ流して並べた後で、
春香は意味もわからず「頑張ります!」ととりあえず姿勢だけは前向きで、
千早がそこで冷静にツッこむ、ただしツッこみどころは変、とかやらせますねえ。
>>117のいさしげPです。いつのまに規制解けてれぅ
ぶっちゃけ「やよいが可愛ければ」のノリで書いたため
温かいレスを頂けて驚きもののき山椒の(r
ご指摘下さった形式・視点切替を含め見返すほどに拙い文章ですね(苦笑)
精進したいです、いやします。
>>129 テラシュールw 冬のアイスは良く聞きますがこれは……!
文章もとても軽快で大変面白かったです
うすた作品は自分も好きだ〜オージィ ビーフとかw
>>138 読む側にまで充足感が伝わるようですね
運動直後の蛋白質・炭水化物の摂取……結構な事じゃないですか
決して精神攻撃ではない幸せのお裾分けをありがとう
近くの店が高ぇんだよチキショウ
>>151 なにこのプロポーズ、2828しちゃうw
揺れる小鳥さんの乙女心、"乙"が取れる日も近いか?
さあ次は13人分だ
後の方のは自分では感想等書きづらいっすね……
ただ千早が勝手にヘビメタを歌うコミュがあったような
200 :
ダメP:2010/02/03(水) 08:35:46 ID:jmDc55Pu
キャラ崩壊注意です!
以下より投下
第2話
〜待合室〜
千早「な、なんという強引なプロデューサー…」
春香「デビューは嬉しいんだけどね…」
ソファでぐだーっとするわたしたちに、小鳥さんが近付いて来た。
小鳥「あ、お二人さんおめでとうです」
春香「あ、音無さん」
小鳥「小鳥、でいいわよ。デビューするのに浮かない顔ねぇ」
千早「いや、ちょっと…」
春香「プロデューサーさんって、今日初めてお話ししたんですけど、あ、顔は前から知ってたんですけどね、その、どんな感じの人なんですか?」
小鳥「どんな感じの人って…。天海さんは何が聞きたいのかな?」
春香「あ、春香でいいですよ。あはは…」
千早「何か、少しぶっきらぼうのような感じがします」
小鳥「……(それはあなたでは? いやいや、)確かに、プロデューサーさんは適当な人に見えるかも知れないわ。でもね、彼の行動は一つ一つが深い考えに基づいているの。彼のすごい所はそれを微塵も感じさせない所なのよ。如月さんもいつか分かるわ」
千早 「…間が気になりますが、そういうものですか…」
小鳥「えぇ…」
春香「はぁ〜、小鳥さんってすごいですねぇ」
小鳥「そう? あ、ありがとう」
千早「あ、千早でいいです!」
小鳥「え?」
千早「その、如月さんとかじゃなくて、千早で…」
小鳥「うん。千早ちゃんっ」
春香「小鳥さん、ありがとうございますー」
小鳥「うん。頑張って〜」
小鳥さんを見送ったわたしたちは、また天井を見上げた。
春香「とりあえずユニット名考えなきゃ…」
千早「うん…」
一方プロデューサーは、仕事中にも関わらず、事務室の机でゲームをしていた。
P「(あ〜、眠い…。あ! くそっ! 後ろから撃ちやがって! 卑怯だぞ!)」
と、プロデューサーの携帯が振動する。
P「ん? …小鳥さん?」
携帯の画面には、メールが写っていた。
「"今晩何かおごれピヨ(*`Θ´*)!"」
P「ん? …何で?」
201 :
ダメP:2010/02/03(水) 08:37:17 ID:jmDc55Pu
第3話-1
〜翌日〜
春香「書類です」
千早「……」
P「あい、ありがとう」
春香「……」
千早「……」
P「ん。確かに頂きました。っていうか何? その目つきは…」
春香「いや…、その…」
千早「プロデューサー、お酒臭いです」
P「あぁー、昨日は小鳥さんと飲んでたもんで…。ごめん」
千早「飲むのは構いませんが、次の日に臭いを残すのは社会人としておかしくはありませんか?」
P「うっ…。おかしいとは思う。でも!」
プロデューサーはいきなり立ち上がった。
春香と千早は怒られるのかと思い、少し体に力が入る。
が、プロデューサーはそのまま出口に行き、ドアを開けた。
ドアの向こうでは、小鳥さんがソファに寝っ転がって、いびきをかいていた。
春香・千早「あ…」
プロデューサーはドアを閉め、またイスに腰掛ける。
P「小鳥さんよりはマシだと思うよ…」
千早・春香「(駄目だこの事務所…)」
P「お酒の臭いはごめんね。滅多にお酒を飲むことはないんだ」
春香「あ、そうなんですか」
P「うん。お酒もタバコも実は嫌いで…、あ、タバコは吸ったことないけどね。麻薬や覚醒剤もしたことないよ」
千早・春香「(誰も聞いてないのに…)」
P「とりあえず小鳥さんと飲みに行くのはやめるよ…」
腰を叩くプロデューサー。
P「あ、ユニット名決めた?」
春香「えっ!?」
千早「昨日の今日ですよ!?」
P「うん。社長に言わなきゃならないのはどうでもいいとして、営業ってか根回ししとかなきゃいけないからねぇ」
春香「根回し…」
P「今日中に決まると有り難いんだけどなぁ」
千早「今日中…」
P「とりあえず俺が考えたのは『だらっ娘2010』って感じかな」
春香「だらっ娘…」
千早「2010…」
春香「それって、来年は2011とかに変わるんですか?」
P「うん。なんなら2009にしてもいいけど」
千早「いや、っというかそのワンクール流したらOKっていうアニメ業界みたいな名前の付け方どうにかならないんですか」
P「如月さん変に詳しいなぁ…。どうかな? それでいい?」
202 :
ダメP:2010/02/03(水) 08:38:31 ID:jmDc55Pu
第3話-2
春香「あぁ、」
千早「いいですよ」
P「ほんと!?」
春香「なんて言うわけないじゃないですか!?」
千早「ふざけるのもいい加減にしてください!!」
P「えぇっ!? 何そのコンビネーション!?」
この人、顔とスタイルはなかなかなのに、センス悪過ぎなんじゃなかろうかと、二人は思った。
P「じゃあ、何がいい?」
春香「って言っても、何も考えて来てませんし…。ねぇ如月さん」
千早「……あ、」
P「まぁいいや。また考えよー」
千早「あの、」
春香「そうですね」
千早「あの!」
千早はテーブルを叩く。
P・春香「うぉうっ!?」
千早「あ、ごめんなさい。あの…」
P「何?」
千早「ユニット名の件ですが…」
春香「…?」
千早「あの…、その…、A.I.E.Nってのは…、その、どうでしょうか?」
春香「如月さん…」
P「如月さん…。ごめん、それ何て読むの?」
春香「いやいやいやいやいやいや」
千早「エイエンです! 永遠!」
P「永遠? 何でまた?」
千早「その、」
P「イニシャルとか?」
春香「それだとイサラギ・アハヤとナマミ・エルカになっちゃいますが」
千早「永遠に歌い続けたいからです…」
P「それなら『永遠に歌い続けたい』ってユニット名でいいんじゃないかな?」
春香「いやいやいやいやいやいや」
千早「初めのAは、常に一番で有り続けようって意味で、その…」
P「初めのAは麻美のAじゃないの?」
春香「いやいやいやいやいやいや」
千早「…だ、駄目ですか?」
P「いいんじゃないの?」
春香「いやいやいやいやいやいやって、え?」
P「何でもいいよ。天海さんと如月さんが好きなユニット名なら」
何でもいいよはないだろと、二人は思った。
千早「え、天海さんは…?」
春香「え、わたし?」
春香は、にっと笑った。
春香「いいと思うよ。…いや、それがいいよ! 二人で一番になって、永遠に歌い続けましょう!」
千早「えぇ…!」
P「二人はこの先に降り注ぐ地獄の日々を、まだ知る由は無かった…」
春香「勝手にナレーションしないでください!」
千早「早く営業行ってください!」
P「えっ!? ハブられてる!?」
203 :
ダメP:2010/02/03(水) 08:41:04 ID:jmDc55Pu
以上です。
まとめて投稿したいとこなのですが、時間的制約で…。
申し訳ない…。
勘違いしてたが、ダメPってタイトルじゃなくてペンネームなのか…?
だったら、タイトルくらい付けるべき。
アハヤはそこはかとなくエロく聞こえる名前だな
『批評バッチコーイ』って書いてないのにいきなり重くて固いもの振りかぶったらダメだ諸君www
まー書き手氏けっこうHPありそうなのでいいのかもしれませんが、力加減ヨロ。
>>203 まとめて読み返してなんとなく解ってきましたw
ようこそ創発へ。投下されたSSに対してはおざなりGJとか乙で流されるスレではないので、
それも含め楽しんでいただければと思います。
前回と今回を比べて、やはり1レスではなく数レス分はまとめて投下してほしいかも。会話文メインで
ざくざくって読んでしまうSSだと、1カット描写でまた来週では少し物足りないです。今回の3レスは
場面転換もあり、キャラたちが動き始めてることもあって楽しめました。ピヨ助だらしねえw
総評的なものはまだ無理っぽいですが、週に1回くらいのペースで来る分にはいろいろ
面白くできそう、と感じました。ラジオや現実世界のネタ混ぜ込んでもークタクタに煮込んでも
いいんじゃね?ってトコです。
これからもよろしくお願いします。
俺もタイトル欲しいな。
次回にでも考えてみてくださいませ。候補が無ければ、こちらで考えた物の中から選んで(ry
207 :
ダメP:2010/02/04(木) 06:41:09 ID:ZRYBuFfw
>>204 タイトルのつもりだったんですが、普通の投稿の方でも出てしまってますねwww
申し訳ない。(タイトルなんかどうでもえぇよ…)
募集中で。
>>205 何故に?
>>206 感想感謝です。
まぁ、それだけアイマス好きがいるってことだと思います。
私だったら絶対批評とかできませんし。(そこまでアイマスが好きなわけではwww)
そうですね。ある程度まとめて投稿します。
ちなみに、続きを考えてないので、こういうネタを追加するんだ! みたいなのがあればよろしくです。
タイトルは考えてwww そんなセンスないですww
208 :
ダメP:2010/02/04(木) 06:43:42 ID:ZRYBuFfw
アイマス小咄
第4話
P「とりあえず、作戦会議だ」
春香・千早「はい」
P「有名になるには、テレビ出演して、CD売り上げを伸ばして、コンサートをやるってのがあるが、ぶっちゃけ地道過ぎて面倒くさい」
春香・千早「ぶっちゃけ過ぎです」
P「で、社長からはアイドルアルティメイトというのはどうかと言われた」
春香「アイドル」
千早「アルティメイト?」
P「あぁ。まぁアイドル決定戦みたいな感じだ。例えるならM-1みたいなもんかな。地区予選で勝って、全国大会に出たら有名になれたも同然だ。敗者復活戦が無いのはM-1とは違うがな」
千早「なら甲子園に例えれば良いのでは…」
春香「何故漫才…」
P「とにかく、それで勝てばいい」
千早・春香「はい!」
P「優勝は無理だから、何としても全国大会には出てくれ。そしたら全国のお茶の間に君たちの漫才が流れるし」
春香「歌っ! 歌ですっ!」
千早「なぜ優勝が無理だと決めつけるんですか?」
P「それはうちの事務所に金がないからだ!」
春香「え?」
千早「は?」
P「金を払えば払うほど優勝するんだ。だが、うちは金が無いからな…」
春香「いやいやいや」
千早「そんな、賄賂で決まるのですか?」
P「当たり前じゃないか。芸能界をなんだと思ってるんだ?」
春香「え…」
千早「そんな…」
P「いいか。うちの事務所は金がない。で、社長も賄賂を渡すのではなく、アイドルは正々堂々、ボーカルとダンスとビジュアルで勝負するべきだと思ってる。
だから、アイドルアルティメイトに賄賂は払わない。なので、優勝は無理だけど、全国大会には頑張って出場してねってわけだ」
春香・千早「いやいやいやいやいやいや」
P「では、とりあえず君たちはレッスンを受けたまえ。わたしは根回しに行ってくるのでね。ほっほっほっ」
春香「……」
千早「……」
209 :
ダメP:2010/02/04(木) 06:44:38 ID:ZRYBuFfw
アイマス小咄(タイトル募集中)
第5話
レッスンが終わり、シャワーを浴びている春香と千早。
春香「芸能界がそんなにドロドロしたものだなんて、考えもしなかったね…」
千早「そうね」
春香「でも、だからこそ勝ちたいよね」
千早「そうね」
春香「アイドルデビューか…。夢みたいに思ってたけど、もう現実なんだよね…」
千早「そうね」
春香「絶対頑張ろうね! 如月さん!」
千早「そうね」
春香「あ、そうだ…。せっかくユニットを組むんだし、呼び方が如月さんじゃ、ちょっと無愛想だよね…」
千早「そうね」
春香「ほんとっ!? じゃあ、千早ちゃん…て呼んでもいいかな?」
千早「そうね」
春香「ありがとっ! わたしも春香って呼んでねっ!」
千早「そうね」
と、春香が自分のボディソープが無いことに気付く。
春香「あ、千早ちゃん、えへへ…。ボディソープ取ってもらってもいいかな?」
千早「そうね」
春香「あ、あれ…? 千早ちゃん?」
頭から浴びていたシャワーを止め、千早の方に振り返る春香。
春香「千早ちゃん…。なんでシャワー浴びないでこっち見てるの? 鼻血出てるよ? 大丈夫?」
千早「……」
春香「…千早ちゃん?」
千早「…そうね」
春香「いやいや、千早ちゃん?」
千早の方に近付く春香。
千早「ブシュッ!」
春香「きゃぁあっ!」
大量の鼻血を噴出する千早。
春香「きゅ、救急車! 救急車! 千早ちゃん!? 千早ちゃん!?」
210 :
ダメP:2010/02/04(木) 06:45:57 ID:ZRYBuFfw
アイマス小咄(タイトル募集中)
第6話
翌日、またまたレッスンを頑張る春香たちをよそに、営業活動に打ち込むプロデューサーであった。
P「……」
小鳥「プロデューサーさん、鼻くそほじって飛ばさないでください」
P「……」
小鳥「…鼻くそほじらない!」
P「はいはい〜……」
小鳥「何してるんですか?」
P「メール送ってます」
小鳥「何の?」
P「A.I.E.Nに仕事くださいってメール」
小鳥「永遠に仕事を? 何ですかその都合のいい話」
P「いや、ユニット名です…」
小鳥「へ〜。永遠って言うんですか」
P「エーアイイーエヌです」
小鳥「へ〜。由来は?」
P「…何だったかな。確かわっほわっほ言ってた気が…」
小鳥「プロデューサーさん、そっちお花入ってるよ」
P「んくっんくっ」
小鳥「すごいんだよー」
(トラックが通る音)
(カメラズームアップ)
P「ちゅっ!」
小鳥「はいっ! はいっ!」
P「うふふー」
小鳥「来たらどうすんの!? もし本当に麻ちゃんのチュー来たらどうすんの」
P「口? 口はいややぁ〜。わたしそういうのは守りたいタイプなの〜」
小鳥「全然守られてなかったよね〜」
P「いきなり何なんですか!?」
小鳥「気にしない気にしない」
P「ったく。ところで小鳥さんは何してるんですか?」
小鳥「スレを見てます」
P「スレ?」
小鳥「ゲホンゲホン、いえ、仕事ですよ」
P「そうですか」
小鳥「何ですか?」
P「また嘘言ってるなぁと思って」
小鳥「プロデューサーさんたまにいじわるですね…」
P「そっかなぁ。毎日いじわるしようと思ってるんですが…、送信と」
小鳥「何ですか?」
P「いや、だから仕事くださいメールです」
小鳥「外に行きゃいいのに…」
P「今時飛び込みで話聞いてくれる会社なんか無いですよ。アポ取らないと…」
小鳥「ですよね」
P「小鳥さんコロコロ意見変えますよね」
小鳥「さ、仕事仕事…」
211 :
ダメP:2010/02/04(木) 06:46:44 ID:ZRYBuFfw
アイマス小咄(タイトル募集中)
第7話
P「で、何の話で?」
千早「天海さんの件です」
P「うん」
千早「単刀を直輸入に言います。彼女は歌が下手すぎます」
P「単刀直入ね。そっか、そんなにズコーか」
千早「かなり下手です。足が引っ張られて迷惑です」
P「う〜ん。天海さんには言ったの?」
千早「いえ、いきなり歌が下手と言うのは可哀想かと思いまして…」
P「…分かった。俺が遠回しに言ってみるよ」
千早「ありがとうございます」
ガチャッ。
春香「あ、ここにいたー。プロデューサーと千早ちゃん二人きりで何してるんですかぁ?」
P「あ、天海さん」
春香「春香でいいですよっ」
P「じゃ、春香」
春香「はいっ!」
P「あんた歌下手すぎて救いようがないからどうにかして欲しいんだって」
春香「え…」
P「って、千早がめっちゃ文句言ってた」
春香「…え?」
千早「こんちくしょー!!」
212 :
ダメP:2010/02/04(木) 06:47:38 ID:ZRYBuFfw
アイマス小咄(タイトル募集中)
第8話
P「とりあえず練習するしかないと思うんだ」
春香「は、はい…。ぐすっ。ひっく…」
P「春香、泣くな…」
春香「ぷろじゅーしゃーしゃん…」
P「泣いても水分が減るだけで、水道代がもったいないぞ」
春香「え? は…はい…。ぐすっ」
P「ほら、如月さんもあぁして謝ってるじゃないか…」
千早「ごめんなさい天海さん(プロデューサーのせいだろが…)」
P「さ、3人で、もう一度頑張ろう! 泣いても笑っても来月デビューなんだからな」
春香「は…はい!」
P「じゃ、俺は帰るわ。もう定時だし」
春香・千早「え?」
P「じゃね」
春香「あ…」
バタン。
千早「え?」
春香「何で…」
千早「…帰るの?」
春香・千早「……」
千早「わたし、あの人がよく分からないわ…」
春香「あははっ」
千早「ど、どうしたの天海さん?」
春香「いや、プロデューサーさんさ、わたしがすっごく真面目に考えてるのに、すごくさっぱりしてるんだなぁと思って」
千早「あれはザックリでしょ。もしくはバッサリ…」
春香「バッサリ・エリオットって呼ぼうか」
千早「何それ?」
笑いあう二人。
春香「千早ちゃん、千早ちゃん」
千早「?」
春香「わたしのことさ、春香って呼んでって言ったじゃん」
千早「そ、そうだったかしら?」
春香「んもうっ。春香って呼んでください。如月さん」
千早「え、えぇ。…春香」
春香「…千早ちゃん」
千早「は、春香……ちゃん?」
春香「ぶっ。呼び捨てでいいよ…」
千早「そ、そうね…」
赤くなる千早。
千早「…春香」
春香「…千早ちゃん」
一方プロデューサーは、急いで帰っていた。
P「今日はゲームの発売日だからな…。アイドルに構っている暇はないんだ…」
だが、あまりに急いでおり、左右を見ずに道路を横断しようとしたため、車に轢かれた。
213 :
ダメP:2010/02/04(木) 06:48:45 ID:ZRYBuFfw
とりあえず投下終了です。
今から、道路に軍手を落とす仕事に行って来ます。
>>213 おおっとw これはダメな感じだwww
上り調子のところ申し訳ないですが、207のカッコ内のような発言は自重でよろしく。何故かは
お察しいただけますよね?
ところでナンセンスギャグ(自称)は以前もいたと思うけどどこ行ったんだ?w
こういう系統の作品、長く続けるのはやはり大変なのでしょうね……と言うより、読む側に
けっこう許容力が必要なのではないかと思います。
キャラ崩壊ってことはそのキャラをまっすぐ好きな人にとっては苦痛ですからね。例えば
勝つために平気で汚い手を使う伊織なんか出されたら俺なら読むのやめるか、少なくとも
感想レスは書かないと思いますし。今回終盤でようやく春香と千早が春香と千早っぽく
なってきましたが、これにしたってそれまでの仕打ちを許せない人はいるでしょうからまあ
お気をつけて、ってトコです。
コレ読むためにはまず心を落ち着けてってこと考えると、週1回〜10日に1回くらいが
個人的には気持ちいいかな。
お仕事も頑張ってください。いい軍手落としてくださいねっ♪
でさて、台詞メインということでわたくしも一つ投下。前SSから半日でかぶせる不躾をお許しください。
『きみはともだち』、1レスものです。
「
ははっ、なんだよ、そんなことで落ち込むなんて。きみらしくないよ、元気出して。
ぼくがきみの役に立つって言うんなら、いつだって飛んで行くし、いつまでだってそばにいてあげる。
うまく言葉が見つからないけど、もしもぼくの声がきみの心を癒せると言うのなら、ぼくにも相槌を
打つくらいならできるから。
思えばきみとぼくは、まるで合わせ鏡みたいだね。きみが笑えばぼくも釣られて笑って、きみが
怒ればぼくも負けずに意地張って……でも、でもね。
ぼくが寂しい時に、わざわざぼくに付き合って上手く話を聞いてくれたきみ。それこそ相槌ひとつで
心を軽くしてもらったこと、今ではすごく感謝してる。
だから今は。今きみが泣いていても、ぼくは一緒に泣いたりしない。
だってそれじゃ何も変わらないし、それでいつかきみがいなくなりでもしたら、ぼくは本当に困るから。
うん、その、つまり、そういう事。
きみはぼくの、大切な。
とても大切な……ともだち、だから。
」
****
「あ、おはようございます、真さん」
「おっはよー涼っ!今日はいい天気だねえあっははははー」
「真さん、なんだかすごく楽しそうですね。なにかいいこと、ありましたか?」
「んー、わかる?わかる?昨日はなんていうか、ボクと雪歩との深く熱い友情を再確認できた日
っていうか、そんなとこ?」
「昨日?真さん、テレビ局で雪歩さんの収録上がり待ってるところで会ったんでしたっけ」
「歌、あんまり上手くいかなかったってヘコんでたから一生懸命励ましてあげてさ。最後はやっと
笑ってくれたよ。嬉しかったな」
「……ああ、それで。なんにせよ、よかったですね」
「ん?それに引き替え涼はテンション低め?……ってちょっと!そのほっぺたどうしたの!?」
「えっ、な、何が?」
「ぱっと見わかんなかったよ。手形、よく見ると隠せてない」
「ええっ?いけない、ファンデ薄かったかな」
「涼は……夢子ちゃんと会うって言ってたね、ケンカでもしたの?」
「いえ、オーディション失敗して落ち込んでたから、元気づけてあげられないかなって……」
「慰めてあげたんだ?じゃあ、なんでソレ?」
「よくわかんないけど地雷踏んじゃったみたいです」
おわり
以上です。短くて申し訳ない。
ご存知平井堅『キミはともだち』の歌詞がお気に入りでして、一人称が『ぼく』のキャラに
当てはめてみました。
ご感想などいただければ幸いです。
年初の『七草十草』のご感想もありがとうございます。
まず
>>157に一言。
アナタは絶妙なトコ突っ込みすぎだw いやありがとうございます。掛け値なしに嬉しいw
それから「お気にめさらず」はおっしゃるとおりですね。「お気に召す」の否定形っていう使い方は
一般的に言ってヘンテコでした。
>>153 >>154 >>156 >>157 普段キャラスレで扱いがひどい分、きれいな小鳥さんは書いててとても楽しいのです。この
パターンの時のプロデューサーはアイドル山ほどプロデュース中できっと何ヶ月かあとには
とんでもない人間関係が構築されているに違いなくw
「小鳥さん、千早がオフに付き合えって言うんですよ。どこ連れてこうっていうんだろう」
「なにか話したいことでもあるんじゃないでしょうか?そうですね、落ち着いた色味の服を着て
行ったらいいですよ、そんな気がするんです」
「美希はイメチェンかなんか考えてるんでしょうか?髪のこと聞かれたんですが」
「いえ、プロデューサーさんの好みが聞きたかったんですよ、きっと。なんて答えたんです?
短い方がいい?へえ、ショートカットっていいですよね、ね?」
「まいりましたよ小鳥さん、あずささんが『友人の結婚式に一緒に出席してくれ』って」
「あずささんの気持ち、なんとなく判りますよ。しっかりエスコートしてあげてくださいね」
てなことアドバイスしながらそのたんびに夜
「ううっ、わたしのバカわたしのバカ」
ってやけ酒あおるんですきっと。
そんで、きっと最後の最後まで『プロデューサーさんはどうしてわたしを頼るんだろう』という
疑問には思い至らないんです。かわいいなあ小鳥さん。
>>158 不憫と思うならその『www』はナニかとw(←あっ)
>>199 乙女心から"乙"が取れるってのはなにやらいい表現ですな。しかし13人とか無茶言いなw
レシPでした。ではまた。
>>206 このスレ、感想書きの方も自分が思ったことをどうにか漠然としたモノで片付けず言葉にしようとする傾向がありますからな
その分、ちょっと重すぎる発言が飛び交うことも少なくはありませんが、その辺はまあバランスよく行きましょうということで
>>203 概ねについては
>>206で言われてしまった気分だったりしますが
個人的な気分で言うと、全体的にもう一段階練り込みがほしいな、というところ
例えば、この一連の千早の言動で考えると・・・
「あ、千早でいいです!」 というのは唐突な印象を覚えるとこなので、もうワンクッションおくか
あるいはもうちょっと距離を置いたかたちにするとかで当たりをそれっぽくした方がらしいかもです。
お約束のネタとしては
「あの、音無さん。如月さんではなく千早、でよろしいかと」
「え、あ、うんじゃあ千早ちゃん、でいいかな?」
「ええ、そのやはり 年 上 の方にさん付けで呼ばれるのは落ち着かないですし」
で、ピヨちゃんにオチを回してしまうとか。
ユニット名についても最初のうちは「歌う機会が与えられるならなんでも構いません」ぐらいでいたのが
プロデューサーから『だらっ娘2010』、さらに春香にも何かビミョーな発言させて
だめだこいつら、早くなんとかしないと状態を強めてから「あの!」 に行くなりで「らしさ」をより追求しつつ
お約束を積む余地があったかもしれないです。
らしくない行動やキャラ崩壊が悪いわけでありませんが、お約束攻めなら流れに沿わせた方が書くも読むもより楽かなと。
4〜8話についても、速攻数撃ちに転じたせいか、さらに練り込み不足の印象を感じるところがもったいないです。
軽く読めるもの、という視点は良いと思いますが、思いついたネタをただ素で出すのではなく
一旦脳内で転がして膨らませる工程をもう少し重視していただけると幸いかと。
()で括られている部分のコメントについては敢えて触れずにおきます、と言ってしまった段階で触れたのと同じですが・・・w
>>215 ああ、なるほど、つまり
「きみはぼくの、大切な。 」
「大切な・・・なに?」
「とても大切な……ともだち、だから。」
の後が
「真ちゃん・・・!」「雪歩!」(ひしっ)だったか
「涼の・・・」「え?」「涼の、ぶぅわかぁ〜っ!!」(ばっちーん)だったかの違い、とw
壮大な前振りから入って、ちょっと考えオチの要素がある落語の小話のような仕上がりですな
ああ、となったとこの納得度の高さがイイ感じです。
まあ、真もわりと相手に悪気なく地雷踏まれてヘコむ側になることが多いキャラしてますけども。
まこみきだと「男の子からファンレター来たよ!」「え、ファンレターて普通男のコから来るモノだよね?」「あ、うん・・・そうだね」
とか、まこゆきだと女の子らしくとか悩んでるタイミングでカッコイイ方向で持ち上げられて傷深めたりとかw
でも、この状況だとあんまり涼の味方にはなってくれそうにないおとめちっくまこぴーでしたとさ。
・・・ついでに、いおちはピヨのお正月〜オフ編〜は結構本気でみたかったりなんかしてw
>>216 >一人称が『ぼく』のキャラに当てはめてみました。
ほう、では僕は呼んでもらえないという事かな……いや、聞いてみただけ
とまあ冗談はともかく「真が雪歩に言った台詞」であり、
「涼が夢子に言った台詞」であり、「真と涼の関係」でもあると考えると
上手い台詞を持ってきたなぁと素直に関心しました。
219 :
96p:2010/02/07(日) 23:39:48 ID:a1/8tXBc
>>109,110,111,121,155
皆様、レスありがとうございました。
>>109 感想を読ませていただいて、ちゃんとしたストーリーもエンディングもないぶん、自由に話を
作ることのできる小鳥さんは、かえって幸せなのかなあ、と思いました。
>>111 SSの後の話まで想像していただいてありがとうございました。かえって自分の方が楽しめて
しまいました。「シャイでウブでちょっと迂闊で間の悪い」という書かれ方がとても好きに
なりました。
>>121 スレが新しくなって、投稿時の名前どうしようとか思っていたら、リストに96Pって書いて
あったので、そのまま便乗ということに。
>>155 七草のSS、拝見いたしました。人様の書く小鳥さんはどうしてこうすてきなんでしょうか。
(というより、短時間で書けるスキルが凄まじいです)
それでは、また一本投下させていただきます。三分割です。
ファイナル・ステージ
その日春香は、いつもより早く目が覚めた。恐らく緊張からだろう。無理もない、今日は
彼女にとって、今までの総決算となるべき大事な日なのだ。ずっとずっと追いかけてきた
自分の夢が、今日、ようやく一大イベントとして実を結ぼうとしている。
春香は、ベッドの上で起きあがったまま、ぼんやりと今までのことを考えた。アイドルとして
デビューしたあの日が、もう遠い遠い昔のことのように思えた。それから、今日これから
大勢の人の前でなすべきこと、終わった後のこと、そして明日からのことを考えた。
昼過ぎになると、プロデューサーが彼女を車で迎えに来た。本当は、春香も自宅から
両親たちと一緒にタクシーで向かい、プロデューサーと現場で合流するという予定のはずだった。
「いくら私の家が遠いからって、わざわざ迎えに来るだなんて…」春香は笑った。
確かにこんなのは破格の始まり方だ。だが、プロデューサーは、どうしても春香を
連れて行っておきたい場所があると言う。
予定外のできごとでびっくり顔の春香の両親に、くれぐれもよろしくお願いしますと
頭を下げられ、プロデューサーは恐縮してしまった。
「それはこちらのセリフです。オレ…いや、ぼくの方こそ、ずっと彼女に助けられて
きたんですから」プロデューサーはそう言って、両親以上に深々と頭を下げた。
車に乗った春香は、緊張が続いていたのか、言葉少なだった。プロデューサーも、無理に
話をしようとせず、ただ黙って運転していた。やがて車は都心に入り、野外音楽堂のある
大きな公園のそばで停まった。
「春香、おぼえてるか、ここ」
「はい、もちろんですよ」
そこは、二人が新米プロデューサーと新米アイドルとして出会った最初の場所だ。
この場所で二人が会ったから、今があると言ってもいい。プロデューサーは春香に、
「ちょっと歌ってみないか」と言った。春香はにっこり笑って、あのときと同じように、
発声練習をした。力強く、澄んだ声がホールに反射し、空気の中へ融けていった。
プロデューサーは一人、拍手をした。
「春香はあのころから比べると、ずいぶん変わったなあ」
「そ、そうですか?私、今でもあのときのままだと思ってるんですけど…」
「いや、こんなに成長したんだ、変わったよ」プロデューサーは、春香の肩に手を載せた。
「…いい意味、ですよね?」
「もちろんだ。ドジでおっちょこちょいはそのままだけどな」
「ひ、ひどいです…」
「ははは」
「えへへ」
二人はたがいに笑い合った。思い返せば、楽しいことだけでは決してなかった。悲しい時期も
あった。さみしい時も、つらいこともあった。だが、春香はそれに耐え、がんばった。春香は、
プロデューサーの顔を見て言った。
「私、絶対忘れません、今日のこと。ずっとずっと、いくつになっても忘れません。
この風景も、この空気も、この気持ちも」
「そうだな。おれも忘れないよ」
二人はまた車に乗り、目的地へ向かった。すでに陽は傾き始め、薄いオレンジ色に染まった
大きな建物が次第に近づいてくると、車の中からずっとそれを見上げていた春香の呼吸が、
だんだん荒くなってきた。
「春香、緊張してるのか?」駐車場に停めた車の中でプロデューサーが話しかけた。
「そ、そりゃしてますよ。自分がこんなところに立てる日が来るだなんて…でも、本当は、
ずっと今日を待っていたのかもしれません。ひょっとしたら、子供のころから…生まれた
ときから…。私の…私たちの、最後の…そして、始まりの日…」
春香は決意を秘めた目で、プロデューサーを見据えた。
「よし、いつものおまじないをしてやろう」
「は、はい」
プロデューサーは、春香の頭に手をのせて、自分の方へ引き寄せた。春香は彼の胸に顔を
押しつけた格好のまま、黙っている。二人の鼓動はまるで同期しているかのようだ。
「落ち着いたか?」
「す、すみません、全然落ち着きません!」春香は真っ赤になってプロデューサーから離れた。
「まあ、少し緊張してるくらいでいいのかもな」プロデューサーは笑った。
「あの、緊張してるのって、私だけですか?」
プロデューサーは、わざと青ざめたような顔をした。
「実を言うと、オレもめちゃめちゃ緊張してる」
「なあんだ」春香は自分の口に手を当てて、くすくす笑った。どうやら、彼女の緊張も少しは
ほぐれたらしい。
「よし、じゃあ行こうか。みんなが待ってる」
「はい!」
大事な一日はこうして幕を開け、そして大喝采のうちに閉じた。
それぞれの役目を終えた二人は、大勢いた客がみんな帰ってしまった後も、どこへも行かず、
冷たい月の光を浴びながら、人目を避けるようにして建物の裏手で話をしていた。
「それにしても、本当に大丈夫なのか?このまま仕事を続けても」彼はいままでもさんざん
訊いてきた質問をくりかえした。
「はい、今日のことで多少はハンデがついちゃうかもですけど、やっぱり歌をやめたくありません」
「それにしても、少しぐらいは休みを入れた方がよかったんじゃないのか?」
「…やっぱり、そう思います?」
「まあ、普通はそうするだろう、ってだけで、おれは春香の意志を尊重するよ」
「はい、なるべくならブランクを作りたくないんです。休むのは、きっとこれだっ、っていう
機会が絶対あるはずですし、その時にまとめて休んじゃいましょう!」
「そうか。じゃあ、その時を楽しみに、またがんばろうか!」プロデューサーは、手に持っていた
赤い小さな手帳を二、三度振ると、ポケットにしまい込んだ。
「はい、楽しみはとっとくもんですよ!」
「よし、じゃあ帰るぞ」
「は、はいっ!」
「大丈夫か?なんだか昼間より緊張してるみたいだぞ」
「え、そ、そうですか?」
「改めてこれからもよろしくな、春香」プロデューサーは右手を差し出した。
「はい、私たちには新しい明日が待ってるんですよね!」春香は彼の手を両手で握り、いつか
どこかで聞いたような言葉を返した。
その日の夜、春香は一度目を覚ました。灯りをつけずに起き上がり、暗い部屋の中で静かに
深呼吸をしてから、自分の幸せを改めてかみしめた。本当に、なんて素敵な一日だったのだろう。
カーテンの隙間から月がぼんやりと見え、春香はしばらくそれをじっとながめていた。
彼女は、これからも歌を歌い続けるという道を選んだ。だから、明日からも、彼女の仕事は続く。
プロデューサーと、それこそ今まで以上に二人三脚で。
翌日、プロデューサーは春香を765プロの駐車場まで送り届け、自分は別の仕事先へそのまま
直行した。春香が事務所のドアを開けると、早出をしていた社長がびっくりしたように声をかけた。
「もう今日から仕事なのかね、天海くん…おっと、まだ慣れてなくてね。いやあ、それにしても、
きのうの結婚式は見事だったね」
end.
>>220 ナイスオチです。
しかし、あのフラクラPをどうやって攻略したんだ春香は。
>>220 222-L16でオチに気づけなかった、くやしい
>>220 やられた。
本気でやられた。
タイトルもいいし、情報の出し方も充分。
なのに思いが全く至らなかった。
キャラが春香なのも、想像を正解の方向に行かせないストッパーになってる。
それを含めて見事。
しかもハッピーエンドだから、やられたけど後味がいい。
気持ちいいやられかたをした。
>>220-222 上手い、と心から賞賛します。
>>225氏も言ってますがどこからどう読んでも「あの」EDにつながる話じゃないのに、
最後の社長の一言を聞かされるまで読者をうまく目くらましさせちゃうのが見事。
しかしそれって、言い換えると俺らが春香を語ると「あの」EDをどーにも切り離せないってことでもあるんですよねぇ。
メタ的なレベルでもうーんと唸らされてしまいました。お見事です。
上手い下手よりも、春香が幸せで凄く嬉しいSSだった。
ただの幸せというわけでなく、ちゃんと「春香」な春香が幸せなのがいい。
この後も、いろいろありそうだけど、けどいいなあ、こういうハッピーエンド。
ゴチでしたー!
>>220 えーと、取りあえず難の方から。
改行の位置をもうちょっと考えて文字をほぐしてやるとぐんと読みやすくなるかなと。
それと、文をもう少し物語的というか情感的というか、そういう方向を習得するともっと効果的な気がします
今の状態だと、まだまだちょっとつっけんどんな感じがしてしまうので。
内容的には、ラストシーンまで持っていくところをむしろ出発点に、きちんと計算して組み上げた印象。
ラストまで読み切って、ようやくあちこちに仕掛けられた「それじゃない」示唆に気付かせる辺りは一体どこの匠の業かとw
気付けるはずの情報は出してあるのに、アイマスを知っていればいるほどまず気付かない。見事な狙いぶりです。
けども、思い返してみるに96Pの以前までの各編は必ずと言っていいぐらい、文章を積み重ねて示唆し続け、
作ってきた状況を最後のワンフレーズで一気にすぱっと結論に持ち込む流れを意識しているようで、
ある意味もはや定番と言っていい手法になっているのかも。
初作のピヨちゃんにしても神様、きっかけを下さい的な流れ→どうやら神様は二人の味方らしい。
hot lineでは様々な案内表示や道標の線を提示しながら、最後の最後にそれを「赤い糸」に収束。
クリスマスは言うに及ばず、そして今回。
こうやって並べてみると、手法的な好みとして見える感じで、そこがまた面白いところ。
舞台装置を扱う演出技法は今回並外れて光って見えました。課題も明らかではありますが
その辺りは経験的に身に付く部分でもある、と思うのでまだまだ向上していくと思います
なにより、今回はそのセンスに脱帽でした。
229 :
160:2010/02/11(木) 01:20:37 ID:n+aUX0Cj
卒論や研修が立て込んでいたため、遅レスですが、
文士の皆様に、暖かいご指導頂き感謝しております。
確かに舞さんのキャラが普通の母さんになってしまったのは、
キャラクターの魅力を削いでしまったと思います。
後、オチが落ちていないのは、まったく弁解できないことでして、
今後反省していきたいと思います。
どうもありがとうございました。
>>220 規制解除された!感想が書き込める!
途中で違和感を感じたけど、結局最後まで気付けなかった。
完全にしてやられました。お見事です。
涼が全アイドルに弄ばれるようなのがみたい
こんばんは。
実は前作「one night before」の後日談、誰かさんに負けない甘々春香を
書こうとしていたのですが、なんか全然甘々にならない上に、
>>220に非常にいい感じの春香それからが出てしまったので、
とりあえずお蔵入りすることにしました。
で、その代わりに、長年温めていた話が、ようやく完成したので、
久しぶりにちょっと長めなのを投稿してみようかな、と。
あ、長年かかってるくらいですから、バレンタインとかそういう時事ネタは
全てスルーする感じで。
ということで、12レスほどお借りします。
「春香エンジェル」
行きます。
ええと・・・志望動機、志望動機は、と。
俺はもう一度、手元のメモに目を落とす。
『世界的な大恐慌と言われるこの経済危機の状況において、業種を問わず各企業が業績を落とし、喘いでいる
中、業容を拡大しようという御社の意欲、並びにその伸びゆく業績に対して、大きな将来性を感じ、私自身の
経験を御社のために役立てると共に未来に以下略
ヤバい。
覚えきれない。
っていうか、昨夜一度は完全に覚えたはずなのに、メモリクリア。
どうしよう?
もう、そろそろ本番だぞ。
てか、落ち着け俺。こんなの初めてじゃないだろ。
「では、次の方、どうぞ」
え?
次って、俺じゃん?
まずい、とにかく返事しないと・・・
「はぃいいぃ」
ど、どうした、俺の声?裏返るんじゃねえ!
「それでは、まずは当社を志望した理由を聞かせてください」
「あ、は、はい!動機は・・・ですね・・・」
なんだっけ?
・・・・
ダメだ。思い出せる気がしない。
でも、何か、何か言わないと!
「あ、あの・・・あ・・・」
「あ?」
いやいやいやいや、『あ』に大した意味なんてないですから、聞き返さないで下さいよ、そこのお姉さん。
「あの・・・あ・・・」
「落ち着いて下さいね。あ?なんですか?」
いやだから、『あ』じゃなくて、いや、『あ』と言えば、そうそう。いや違う。
「あ・・・あ・・・あああああああ!」
「お、落ち着いて下さい!」
これが落ち着いてなどいられるか!『あ』と言えば、決まってるだろ!
「天海春香さんのいる事務所で、働きたかったんです!」
・・・・・
あれ・・・?
やっちまった?俺?
俺的にはNGワード指定してたつもりの台詞を、叫んだ気がする。
ヤバい。
緑の服のお姉さん、固まっちゃったよ。
そりゃそうだよな。明らかに所属のアイドル目当ての応募なんて。
普通なら、真っ先に落とされる。
うん。そうだよな。
・・・終わったな。
俺の人生最大の賭けが、終わった・・・。
やっぱり、受かるまで前の会社辞めるべきじゃなかった・・・。
いくら春香さんの事務所がスタッフ募集してるからって、受かるとは限らないじゃん。
いやでも、会社も辞めて絶対765プロのスタッフになるという、背水の陣で臨む作戦だったし。
「なんといい答えだ!ピーンと来た!君のような人材を求めていたんだ!」
あれ?
なんか声が聞こえる。
「しゃ、社長?!」
あ、真っ暗だと思ってたところに、人がいたのか。
社長・・・とか言ってるな。
「音無君、そうは思わないかね。彼は我が社のアイドルを、心から愛してくれている。彼の様な人間こそ、
新規スタッフにふさわしいのではないかね。」
「あ、あの・・・社長、普通は芸能プロダクションでは、所属タレント目当ての応募は、敬遠するんです
が・・・」
「うむ。しかし、彼は、おそらくそれを知っての上で、あえて春香君と同じ事務所で働きたい、と堂々と
宣言したのだよ。なかなか出来る事ではない。私は、その心意気を買いたいと思うのだよ!」
「心意気・・・ですか。」
「そうだ。そこのキミ、明日から早速、よろしく頼むよ。」
「えっと、ということで、採用決定です。詳しくは後で説明しますので、先ほどの待合室の方でお待ち
下さいね。」
なんだかよくわからないことになった。
「は、はい。では、失礼します。」
こうして俺は、社長の直感により765プロの社員となった。
俺が765プロのスタッフ募集を知ったのは偶然だった。
たまたまチェックしていた、某巨大掲示板のアイドル板「765プロダクション総合スレッド」で、募集がある
との書き込みを見かけたのだ。
「おまいら、これでも応募してみたらどうだw」との書き込みの下に、募集ページへのリンクがあった。
内容は「事務所移転による規模拡大のためスタッフ募集」
募集は、プロデューサー若干名、その他スタッフ若干名(ともに経験不問)だった。
プロデューサーは以前も募集しているのを見たが、我が憧れの天海春香さんには、もう専任プロデューサーが
付いているのを知っていたので、これまで応募はしなかった。
しかし、今回は事務員その他スタッフも募集しているではないか!
俺は、すぐさま履歴書を買いに行って、応募した。
そして、あまりにも見事に採用となったのである。
その出勤初日。
時を同じくして採用された数名と共に、出勤を要請されたのは午後だった。
強いwktkを胸に事務所に行ってみると、そこは引っ越しの準備でごった返していた。
「あ、おはようございます。早速ですみませんけど、とりあえず棚に残ってる書類を全部段ボール箱に詰めて
もらえますか?」
昨日も会った、事務の音無さんの指示で、とにかくわけもわからずに力仕事になった。
ざっと見渡すと、作業をしている人数はそんなに多くない。
昨日も見かけた新規採用者数人、他にはやはり若い男性が数人程度。あと音無さんの他に、なんか学生の
年代の女の子が数人。中には男の子か女の子か微妙な子も混じっているが、デビュー前のアイドルという
感じの可愛い子もいる。
とりあえず、春香さんはいないということは確かだ。
・・・
「お・・・終わった・・・。」
まさか、椅子や机の類いのトラックへの積み込みまで、全てスタッフでやるとは思わなかった。
時刻は夜の10時半。
初日なので、できればいろいろ情報を得たり他のスタッフや可愛い女の子たちと互いに自己紹介したりした
かったところなのだが、それどころじゃない状態のうちに、みな疲れ果てて言葉すら発しなくなっていた。
ただ、謎の「うっうー」という声だけは最後まで途切れる事なく響いていた気がする。
「みなさん、申し訳ありませんけど、明日は準備のために新しい事務所に朝6時集合でお願いしますね。」
音無さん、あんた、可愛い顔して鬼や。
「おはようございます!わあ、新しい事務所って、やっぱりいいですね!一段と広いし、奇麗だし、窓からの
景色も最高ですね!レベルアーップ!って感じです!」
あれ?
なんか天使の声がする。
そうか、昨日に続いて今度は早朝からの搬入と整理作業で疲れ果てた俺に、天使が舞い降りてきてくれたんだな。
わずかにこの世に残った意識の中で、俺はそんなことを考えていた。
ガバッ!
飛びかかった音じゃない。机に突っ伏していた状態から跳ね起きた音だ。
「春香さん、おはようございます!」
夢にまで見たマイエンジェル春香さんが、今すぐそこにいるじゃないか。死にかけてる場合じゃないだろ俺。
「はい、おはようございます。あの・・・新しいスタッフの方ですよね?」
「春香ちゃん、こちらの方々が、新しいスタッフのみなさんですよ。」
音無さんが解説を入れる。
「じゃあ、はじめまして、ですね。なんかみなさん、すっごくお疲れみたいですけど・・・」
「ふふっ。今日は朝から、事務所の引っ越しをみなさんにやってもらいましたから。」
そう。引っ越しをやった。手伝った、ではない。トラックでの輸送以外は全て我々がやった。
「そうだったんですか・・・。おつかれさまです。」
ぺこりと頭を下げる春香さん。
ああ・・・我々のような新参のスタッフにまで気を使ってくれるなんて、本当に天使のようだ。
「あの、春香さん。俺
「あ、プロデューサーさん!おはようございます!今日から新しい事務所ですよ!」
行ってしまった・・・。
「おっと、春香ちゃんここで新スタッフをスルー!」
「なんの実況ですか・・・」
春香さんが去って行った方向を見る。
プロデューサーさん、と言っていたな。
あの男がそうか。
「やあ、おはよう春香」
「あれ、プロデューサーさん、今日は優しい感じですね?」
先ほどより推定300Hzほど高くなった声のトーン
表情、仕草その他もろもろ
証拠は揃った。
そうか。
認めたくないが、春香さん、どうやらあの男に惚れてるな。
「なるほど。あいつが敵か。俺はそう心に刻んだ。春香への愛を貫き通すには、ヤツを倒さなければならない。」
「音無さん。」
「はい?」
「勝手に人の心の中を脚色してナレーションしないでください。」
ようやく本格的に本来の仕事になった。
まずは各種業務についての説明を受けた。そして聞いた限りだと、どうやらこの765プロダクションには、
はっきりとした業務分掌そのものが存在しない。
各アイドルについては、プロデューサーという名のなんでも屋が付いて、それ以外の事は、事務と言う名の
なんでも屋がやっている、という状況だ。
いかにも零細の事務所の業務形態のまま、ただ事務所だけが大きくなって、今やこの高層ビルの上層階に
来てしまった、ということ。で、忙しくなったので新規スタッフを募集したのはいいが、業務については
とりあえずそのまま、の形になっている。つまり、新規スタッフはとりあえずなんでも屋である。
そう言えば、職種が営業なのか企画なのか経理なのか総務なのか庶務なのか人事なのかイベントスタッフ
なのかマネージャーなのかそれとも他の何かなのか、募集要項の全然どこにも記載はなかったし、面接や
その後の説明でもそんな話は出てこなかった。
「こりゃ、まずは体制を整えないと仕事にならないかもな。」
これまでのスタッフはもちろん、新規採用組も大きめの会社での事務経験者はほとんどいない感じだ。
ある意味、俺の存在価値の見せ所かもしれない。
その日、俺は頼まれた雑務をこなした後、残業して各種社内書類のテンプレートを作成した。
ついでに、音無さんが簡単に作ってあった事務所の出入りや冷暖房、照明などの各種注意事項を清書する。
初日に出来るのはそんなもんだ。
作業を終えて、もう誰もいなくなった事務所を出ようとした時、春香さんのプロデューサーが戻ってきた。
「あ、おつかれさまです。」
とりあえず声をかけてみる。同僚なわけだし、他意はない。
「おつかれさま。初日から遅くまでご苦労さまです。」
「いや、大した事はしてませんから。ところで、今から、また仕事ですか?」
「ええ。春香のテレビ出演依頼があるんで、その番組内容の企画書とスケジュールの確認をしておきたくて。」
「大変ですね。でも、この事務所では春香さんが一番の売れっ子ですからね、頑張って下さい。」
「冗談抜きに大変なんですけど・・・まあ、春香が売れてるおかげですから、頑張りますよ。でも、せっかく
新しく人が増えたんだから、少しはこっちも手伝ってもらいたいところですけどね。」
確かに、まだあまり売れてないアイドルやその担当プロデューサーは、もうとっくに帰宅している。
担当アイドルによって、仕事量に差がありすぎるのは、問題だよな。
「だったら、俺が手伝えないか、明日にでも俺から社長に言ってみます。」
会社としても、俺としても、春香さん担当の仕事を分業できればその方がいい。
「あ、それはありがたい。お願いしますよ。」
どうやらこのP、ノリは軽いが素直ないいヤツっぽい、というのが俺の第一印象。
翌朝
さっそく、社長に昨夜の件を直訴してみた。
「うむ。それはいいな!早速だが、キミには春香君の担当専任スタッフとなってもらう。これからもよろしく
頼むよ!」
あっさり。
面接の時も思ったけど、これでこの会社大丈夫なのだろうか。
いや、俺が、俺たちが頑張れば大丈夫。きっと、多分。
「ということで、よろしくお願いします。」
何はともあれ、春香Pに挨拶した。
「こちらこそ、よろしく。いや、助かります。」
「しかし、今日の今日でいきなりとは思いませんでした。」
「社長、決断が妙に速いところがありますからね。考えているのか、考えてないのか・・・」
さっそく、仕事の話に入る。
まずは、次回のライブについて。
春香Pと俺、同性の同年輩同士、熱く話していると、互いに自然に敬語ではなくなった。
「じゃあ、とりあえず衣装、大道具、セッティングとステージ関連の発注だな。見積書はあるか?」
「いや、特にもらってない。忙しかったんで。」
「わかった。じゃあ会場と設営の方は条件がそんなに変わらないから、今の条件で俺が見積依頼しておく。
予算の管理も俺がやった方がいいか?」
「そうだな、頼む。俺はステージのコンセプトを作って、デザイン依頼の方をやる。」
「うん、これまでの春香さんの評判のステージを作ってきたセンスで、今回も頼むぜ。」
まったく、こいつは大したヤツだ。これまでほとんど一人で、あのステージを企画し実現してきた。
春香さんが売れたのには、間違いなくこいつの手腕が大きい。
こいつには、そう言った企画方面に専念してもらった方がいい。必要な事務作業は俺が引き受ける。
「評判のステージか・・・。嬉しいね、そう言われると。」
「衣装もステージのセットも、大評判だぜ。この前のチャイルドスモックは特に素晴らしかった。アンコール
のパジャマに至っては、もう天使かと見間違えるほどで・・・」
「・・・もしかして、お前一人の評判か?」
「いや違う違う。俺個人の意見も含めて言ったけど、少なくとも多くのファンに好評なのは間違いない。あの
衣装は、みんなお前が選んだんだろ?」
「ああ。」
「大したセンスだ。見事にファンのニーズを掴んでるよ。リサーチとかしてるのか?」
「別にリサーチなんかはしてない。と言うか、衣装についてはファンのニーズとかあまり気にしてないんだ。」
「気にしてない?」
さすがに、それは驚きだ。
「ああ。俺はただ、自分が着せたい、着たところを見たい、と思う衣装を、春香に着せてるだけだ。」
噂は本当だった。
765プロは変態事務所だ。
しかし、俺はその変態の言葉に、強い感銘を受けた。
目頭が熱くなってくるのを感じる。
この事務所に入って、本当によかった・・・。
さて、こうして無事にというかあまりにも予定通りに、春香さん専属スタッフAの地位を射止めた俺である。
しかし、ちょっとばかり計算が違った部分がある。
春香さんとの直接の接触が、下手すると他のスタッフよりも少ないということだ。
実際、春香Pは事務所の外での仕事が多い。その多くは春香さんと一緒だ。その分、専属スタッフとしては、
どうしてもそのフォローをするべく事務所内での仕事が多くなる。と言うよりも、春香Pを安心して外の仕事に
専念させるために、俺が事務所内での仕事を引き受けていると言う方が正しい。
しかし、仕事の進め方としては、これが絶対に正しいと思える。
春香さんとあまり接触ができない、ということを差し引いても、仕事そのもののやりがい、そして充実感は、
俺がこれまでの人生で味わったことがないほどに満ちあふれていた。
「はい、次アンコール行きます!春香さんは衣装替え、控え室1番、バックダンサーのみなさんは2番の部屋
に準備出来てますんで、お願いします!」
「時間、3分でお願いします!すでに20分押してます!」
「小道具、次の曲はアイマスのぼり、スタンバイは?」
「スタンバイOKです!」
「次は特効ありです!特効2と3、準備いいですか?」
ライブの舞台裏は、まさに戦場だ。
その戦場に身を置く立場になった以上、ゆっくりとライブを楽しむことなど出来はしない。
それは覚悟していたし、確かに残念だ。が、もっと充実した気分を俺は味わっていた。
自分が、春香さんのライブを作り上げている、その中の一人だという実感。
しかし、それ以上に勝利者感覚に酔えることがある。
例えば
そこに、出演者がステージ裏に戻ってきた時に使ったタオルがある。
春香さんが使ったのは、一番右端。チェックしていたから間違いない。
つまり、この春香さん使用済タオルを、手に取る事が可能だ。
手に取れるなら、当然、スーハークンカクンカとか何だって出来る。これひとつくらい、くすねてお持ち帰り
だって不可能じゃない。持ち帰ったらもうこっちのもんだ。
なんなら遠心分離機にかけて中の水分を抜き出す事だって・・・
いや、やらないけどね。
ただ、今の俺は、それをやろうと思えば出来る立場にいる。
それが満足なのだ。
実際にやっちゃったらただの変態だし。
「あ、スタッフさん。出演者の使用済タオルは、これで全部ですよね?」
音無さんがやってきた。
「はい、そうだと思います。」
「まさか、抜き取って隠したりはしてませんよね?」
「な、なに言ってるんですか?!そ、そんなことするわけないじゃないですか!」
「ごめんなさいね。ウチの事務所、スタッフやプロデューサーが、出演者の使用済タオルや着用済の衣装を
勝手に持ち帰ったりすることが、たまにありますから、気をつけてないといけないんですよ。」
「ぐはっ・・・」
あきれたわけじゃない。
負けた。そう思った。
勝ちたくないけど。
「あ、ほら。春香ちゃんがスタッフ全員ステージに出てくるように、って、呼んでますよ!」
「え?」
すでにアンコールラストの曲も終了していた。
ステージ裏のスタッフが、呼ばれるままに舞台へとぞろぞろ出て行く。俺もそれに続いた。
『今日は、この素晴らしいスタッフのみなさんとステージをお届けしました!スタッフのみなさん、そして
会場のみんな!本当にありがとう!!』
春香さんのこの一声で、ステージは幕を下ろした。
「よぉし!もう一軒行くか!」
「行こう行こう!」
「じゃあ私たちは、ここで失礼しまーす」
「はあい、おつかれさまー!」
ライブの打ち上げは大いに盛り上がった。
盛り上がり過ぎた俺たちは、何軒もはしごしてしまった。その内にいつの間にか、メンバーは俺と春香Pの二人
だけとなっていた。
「じゃあ、次はここでいいか?」
「もうどこでもいいぞ」
「この店、前はよく来たんだよ。このビルの上に事務所があった頃にさあ。」
そう言いながら、俺たちは『たるき屋』と書かれた暖簾をくぐった。
「じゃあ、あらためて、ライブ成功おめでとう!そしておつかれさま!乾杯!」
「おつかれ!」
その夜4度目の乾杯。
「いやあ、しかし、今日のライブは良かったな。凄い盛り上がりだった。」
「お前が手伝ってくれた事も大きいよ。おかげでこっちは、本来の演出の指示に専念出来たし。」
「お、嬉しいこと言ってくれるねえ。まあ飲め飲め。」
「当然だ。今日くらいは徹底的に飲むぞ!つきあえよ。」
「望むところ」
「こうやって苦楽を共にした同僚と飲めるってのも、ありがたいものだしな。」
「あ、そうか。もしかしてこれまでは、打ち上げと言っても事務所の人間はほとんど参加しなかったのか?」
「音無さんくらいだな。いつも最後は二人で愚痴っぽくなって・・・」
「そ、そうだったのか・・・ってあれ?そう言えば、音無さん、打ち上げに来てたか?」
「ああ、確かに見てないな。いつもは最後まで参加するはずなのに。」
「彼女、酒、好きなのか?」
「酒が好きと言うより、酒を飲むこと、飲む雰囲気が好き、って感じかな。」
「なるほど。」
「ただ、飲み出すと止まらない。」
「そうか・・・」
そんな話をしながら、また一杯。
と、春香Pが、なにやら神妙な顔でつぶやくように言い出した。
「なあ。」
「ん?」
「もしかして、の話なんだが。」
「なんだ?」
そして、視線を宙に漂わせながら、こう続けた。
「もしかして、春香って俺の事が好きだったりするのかな・・・」
俺は、Pに軽い殺意を覚えた。
こいつには、悪気は欠片もない。それはわかっている。
逆にそれが癪にさわる。無神経だ。
何より、春香さんがプロデューサーの事を好きだなんて事は、もう周知の事実以上の確定事項で、気付いて
いないのは事務所の内外を問わず当の本人だけと言って良い。その時点で既に無神経の唐変木なのだが。
俺は自分の言葉に毒を含ませた。
「おい、それって・・・ヤバい意味じゃないだろうな?」
「え?」
Pが驚いてこちらを見る。
「考えてもみろ。もし本当にそうだったとしたら、お前はどうするつもりなんだ?16歳のアイドルを相手に、
世間には自由恋愛の結果だとでも言う気か?」
「あ、い、いやそういうつもりじゃ・・・」
こいつは変態だが基本的に真面目なヤツだ。俺はあえて真面目な男にとって耳の痛い言葉を選んだ。
「かたや日本でも有名になったアイドル、しかし世間もよく知らない16歳の高校生。かたやこの業界でもまだ
駆け出しの若いプロデューサー。一般の人の目にどう映るか、言うまでもないだろ。」
先ほどのうろたえぶりからしても、こいつはそこまで深く考えて言い出したとは思えない。
ならば、こちらの思う結論に誘導するだけだ。
案の定、Pの顔はみるみる深刻に曇り出す。
「そんな事実が発覚したら、事務所そのものも問題視される。特に大事な娘さんを預けている親御さんはどう
思うか。他のアイドルや候補生の子だって、親御さんに元々反対されている子もいるみたいだし・・・」
「ちょ、ちょっと待ってくれ。」
堪らずにPが言葉を遮る。
しばらく会話が途絶えた。その間、Pはじっと考えていた。
「・・・お前の言う通りだ。こんなこと、軽々しく口にするべきことじゃない。」
言うなり、グラスに残っていた冷酒を一気にあおった。
「俺が間違っていた。あいつが、春香が、何となく思わせぶりなこと言うのを、まんざらでもない気分で聞き
流して、いい気になっていた。これからは、もっとしっかりと、意図を持ってスルーすることにする。」
そういうPの顔には、悲壮感すら漂っていた。
「そうか・・・」
望んでいた結論に至った。
が、逆にどうにも罪悪感が芽生えたのも事実だった。
「それが、俺に出来る唯一の正しい選択だ。さもないと、みんなに申し訳が立たない。春香にも、春香のご両親
にも、スタッフのみんな、お前にも、社長にも、音無さんにも・・・」
「わたひがどうかしましたか?」
「ぶはっっっ!!音無さん?!」
「ど、どうしてここに?!だいぶ飲んでるみたいですけど・・・?」
「どうひてもこうひてもないですよ。プロデューサーさん、わたひは後片付けが終わったら打ち上げに合流する
から、後で会場の場所をメールで教えて下さい、ってお願いひたじゃないですか?」
「あ・・・すみません、すっかり忘れてました。」
「それはあんまりじゃないですか?・・・だから、仕方なくこの通い慣れたお店で、一人寂しく杯を傾けること
数時間、その間も、プロデューサーさんにもスタッフさんにも何度もメールを送ったのに、誰からも何の返事も
なく・・・ううっ・・・わたひも、今日は結構頑張ったんですよ・・・」
「本当だ・・・俺の携帯にも音無さんからのメールが来てました・・・気付きませんでした・・・」
「すみません!ごめんなさい!誠に申し訳ありません!」
「ううっ・・・罰として、今日のここのお勘定はプロデューサーさんにお願いしますからね。」
音無さんがそう言って差し出した伝票は、すでに20品目に到達していた。
それは、唐突にやって来た。
『天海春香、活動停止』
衝撃的なニュースが芸能界を駆け抜ける。ファンは騒然となり、お別れコンサートのチケットは、ドームという
考えうる最大限のキャパシティを持つ会場をもってしても、なお入手困難なプラチナチケットと化した。
俺も最初に聞いた時は耳を疑った。
どうやら聞くところによると、最初から活動期限が決められていたらしい。これは765プロの恒例だと言う。
おそらくは、これほどのメジャーアイドルになることを想定してなかったのだろう。
アイドルがそこそこに売れて、プロデューサーがそれなりの経験を積んだ時点で、その組み合わせを解消する。
人材育成という意味では、間違っているとも言えない方針だ。
過去にも例はあったのだろうが、それが話題になるレベルにまで達していなかった、それだけの話。
ただ、今回はトップアイドル天海春香ということで、話が大きくならざるを得ない。
そんな風に世間が騒ぎ立てる中、765プロでは、粛々とお別れコンサートに向けての準備が進んでいた。
いつものライブと同じ様に。
そして、ライブ当日―――――
――と言っても、俺はいつもの様に、裏方なのだが。
さて、そのライブ。
リハーサルでは不安な感じがあった春香さんだが、本番は、いつもの様に、いや、いつも以上に見事な
ステージングを披露していた。
お別れコンサートは、最高の形で幕を下ろした。
大成功だった、と言っていいだろう。
その後、いつもとは違い、スタッフ有志での打ち上げがあった。
主役である、春香さんとプロデューサーの姿は、そこにはなかった。
ライブ終演後、二人でどこかへ消えてしまったのである。
とは言え、今後の話もあるだろうし、それも自然な流れに思えた。
二人が、どこでどんな会話を交わしたかは、我々には知る由もない―――
――かに思われた。
その夜、帰宅した後で、携帯に一通のメールが届いた。
春香Pからだった。
『今から出てこれるか?』
俺は、不審に思いながらも返信した。
『大丈夫だけど、どうした?どこに行けばいい?』
『たるき屋にいる』
時計を見た。
間もなく深夜0時。
俺はとりあえず外に出て、タクシーを拾った。
「よく来たな。まあ飲め。」
たるき屋の暖簾をくぐると、春香Pから声がかかった。
「おう。とりあえずレモンサワーね。」
「俺は日本酒、ひやでもう一杯!コップで!」
すでにだいぶ飲んでいる様だ。
「大丈夫か?」
言いながら、カウンター席のPの隣に座る。
「ああ。飲んでるんだが、酔わないんだよ。なぜか。」
口調は軽いが、表情は暗い。
「酔いたいのに、な・・・」
そう言ったきり、空になったグラスを見つめて黙り込む。
そこに注文した酒が届いた。
ライブの成功を祝って乾杯、とも言える空気ではない。
俺は黙って一口飲んで、意味もなくグラスを振ってみた。
グラスを見つめたまま、春香Pが口を開く。
「春香に、告白された。」
「そうか。」
多少の動揺はあったが、予想の範囲内だ。俺は平然と応えたつもりだ。
「どうしたか、訊かないのか?」
「これから話すつもりなんだろ?」
「ああ・・・」
酒を手に取り、グッと一口飲み込む。はあ、とため息。
「振った。春香のことを。思いっきり、な。」
言い終えると、残った酒を一気に飲み干した。
俺は黙って、自分の酒をもう一口。
「それも、まるでデリカシーのない言葉で、だ。お前が前に、ここで言ったことが、ふと頭に浮かんでな。」
「俺の?」
「そうだ。『ヤバい意味じゃないだろうな?』って言ったんだよ。それをそのまま春香に返したんだ。」
思い返してみる。そんなことを言った様な気もする。
「はっきりと、そういう事はまずい、そんなつもりはない、って意味だったんだが、それにしても、ひどい
言い草だったと、自分でもそう思う。でもな・・・」
またしばらくの沈黙。
「でも、そうでもしないと、俺自身が、春香の事を拒絶しきれなくなりそうだったんだよ。」
言うなりグラスを持ち上げて、カウンター越しに、身振りで酒をもう一杯頼む。
「俺、はっきりわかった。俺は春香が、世界中の誰よりも、何よりも、大事だったんだ、って。」
やってきた酒をまたあおる。
「でも、やっぱり、春香を、親御さんを、周りのみんなを、裏切っちゃいけないんだよな。」
「ああ。お前はえらいよ。大したヤツだよ。」
心の底からそう思った。
「そうか!そう言ってくれるか!ありがとう・・・ありがとう・・・」
Pは安堵したのか、一気に酔いが来たらしく、いきなり泣き出した。
「春香ぁ・・・ゴメンよ、悲しませてゴメンよ、春香ぁ、春香ぁあああ・・・ううっ・・・」
互いに思い合う二人が、別れを迎えた夜だった。
それからしばらく・・・
春香さんが休養していることもあって、専属スタッフとしての仕事を失った俺は、どこかの神殿やギルドよろしく
社長室に出向き、ジョブチェンジを願い出た。
希望のジョブは、プロデューサー。
「うむ。いいねえ、どんどんやってくれたまえ!」
例によって、あっけなく受け入れられた。
「では、プロデュースする女の子を選んでくれたまえ。」
「社長、実はその件でちょっと。」
「なにかね?」
「春香さんが、そろそろ新たにまたアイドル活動を再開するそうですが、彼女をプロデュースさせて頂くことは
できないでしょうか?」
「ううむ・・・天海君か・・・。」
社長が珍しく即断を避ける。
「もしかして、すでに次のプロデューサーが決まっているんですか?」
「いや、こちらとしては、問題はないのだが・・・実は彼女は、今度の活動ではプロデューサーは必要ない、
とこう言ってきているのだよ。」
「え?そうだったんですか?!」
「うむ。天海君も、今や押しも押されぬトップアイドルだ。こちらとしては、プロデューサーがいた方が、
なにかと都合がいいのだが、彼女の意向を無視するわけにもいかない。そこで、だ。」
「はい?」
「君が彼女をプロデュースしたいと言うのなら、彼女自身に、君から了解を取ってもらえないだろうか?」
「僕自身から、ですか?」
「そうだ。事務所としては、彼女の意向を聞いている以上、強制するわけにもいかない。あくまでも、彼女が
納得した上でプロデューサーを付けたいと思う。」
「そういうことですか。・・・わかりました。」
「そうか!天海君は、明日久しぶりに事務所に来るそうだから、くれぐれもよろしく頼むよ!」
翌日。
俺は、多少緊張しながら、春香さんが来るのを待った。
やがて・・・
「おはようございます!」
聞き覚えのある、天使の様な声が事務所に響いた。まごうことなき春香さんの声だ。
「春香さん、おはようございます。」
「あ、スタッフさん。おはようございます。」
ぺこり、と頭を下げる。
「ところで、春香さん、ちょっと話があるんですけど、あちらの会議室の方に来てもらえませんか?」
「え?はい。」
「・・・ということなんだが。」
「じゃあ、あなたが私の新しいプロデューサーさんですか?」
「春香さんさえよければ、だけどね。一応、春香さんが今後プロデューサー抜きで活動したいとは聞いて
いるんで、春香さんが了解してくれることが条件になってるんだ。」
「私が、了解すれば・・・ですか・・・」
春香さんは、ちょっと悩んだ風を見せた。
しかし、それも一瞬で、すぐにニコッと春の花の様な笑顔を咲かせる。
世界を光で満たす、天使の笑顔だ。
そして、世界に彩りを与える天使の声で答えた。
「絶対イヤです♪」
/Fin.
以上です。
人がこの世で最後に見る物は、自分を迎えに来た天使の笑顔であるそうです。
とかなんとか言って、ラストが書きたかっただけだろ、と言われたら、きっとその通りです。
感想とか頂けたら幸甚です。
それでは、次回作、春香が三人家にやってきた、でお会いしましょう(ウソ)
「プロデューサーさんがプロデュースするのは、このHD画質、60fpsの滑らかな動きで
ビジュアルバッチリの、この箱春香ですよね!」
「違いますよね。この、どこでも一緒にいられる、携帯性バツグンの、SP春香ですよね?」
「うーん、でもそれって、ゲーム機本体の特徴で、別に本人には関係ない気が・・・」
「アケ春香は黙ってて!!」
長文投下乙です
主役の彼に結構感情移入してたので、春香ともくっつかないラストは衝撃的というかやっぱ少しショックだった
春香シナリオでどうにも回避できない部分に正論から突き進んで、第二の春香Pになれるのか
もしくは彼がPに名乗り出ておいて、春香の元に最初のPを呼びよせてやるのかと思ってた……
>>245 ある意味相変わらずなほどのみなと節の炸裂っぷりに、リアルタイムで書き込まれていくのを追いながらニヤニヤしっぱなしでしたw
長さの割にちょっと文が淡泊なのが正直気に掛かるところではありますが、その分サクサク読めるのも事実。
ただこの辺り、これだけの長さになるなら文章辺りの「読み込む」重さはもう少しあってもいいんじゃないかな、と。
あるいは、一話一話の軽さにこだわるなら一話辺りの完結性というか、それ一つだけで読んでもワンエピソードとして
成立させてみるとか。
あるいは、骨組みを残して全体の話を整理して、ちょっとほろ苦系のシリアス話にも・・・
って、ラストシーンがあれじゃ、さすがに無理かw
まあどんな方向性にしろこの話を素体にグレードアップは図れるのでは、と思います。
なんてーか「春香が家にやってきた」の、ある意味逆ですね。もちろん設定的にスタッフ氏は外側から来た人じゃないのですが
視点的にはそういうメタなのを充分持ち合わせているというか。あるいは、L4Uのファン代表がそのまま入社したようなというか
そういう路線からで「名も知れぬ765プロの裏方」を書いてみた、というのは結構面白い試みかも。
そして「ヤバい意味じゃないだろうな?」の合理的解釈として、まあこういうのもこれはこれでありかなーと。
裏でそんなことがあったのについては春香自身は気が付いてなかったのだろうとは思う・・・のですが、
見事の自分の仇を討った格好のラストシーンは、正直春香らしいとは言えないけども、吹き出しました。
ま・・・まあ、「プロデューサーさん、と呼びたいのはあの人だけ」と決めちゃったんだよ、きっと。ツヨクイキロw
・・・ところで、さっきは冗談めかしましたがほろ苦シリアス路線、結構マジメにイケると思うんですよね。
メタとギャグを整理して、心理描写と文章を煮詰めれば、基本構造を残してでも割と。
まあ、そうでなくてもちゃんといい話としてまとめてあげてもよかったかな、とも思いますが
その辺りは長さに関係なくあくまでもショートギャグ路線にこだわるか、それともハートフルコメディ路線に
ここまでやったんだからと未練を持ってしまったか違いと言われてしまえば、その通りかもしれず。
ただ、「プロデューサーに惚れてしまっている春香への横恋慕」っていうのは結構掘り下げ甲斐のある素材とも思えますし
また機会があったら向き合ってみて欲しいかな、と。
え、次回作は三倍春香さん?w
・・・それだったら、出てくるんじゃなくて、ディスプレイの中から話しかけるんでもありかなw
「うう、ひどい〜」
「さあプロデューサーさん、デートですよデート! PSPごと私をお外に連れ出しちゃって下さい!」
「L4Uでならライブとかできますよ、髪の毛だってさらふわなんですよ!」
「ライブトイエバHomeデスヨ! PLAYSTATION Homeニハ本体購入ダケデ参加デキマス。今ナラ薄型出テマスヨ!」
「ほめ春香さんは黙ってて!」
・・・お粗末様でした
>>245 春香の「絶対イヤです♪」に込められた思いは
「私が待つのはただ一人」なのか「もう恋なんてしない」なのか……
「親から一人娘を預かる大人」にして「一人の少女に好かれる男性」である
Pに前者を選ばせた彼を下心も含めて責める事は出来ないけれど、
あわよくば後者に納まろうってのは少々都合が良すぎたんじゃ無いかなぁ。
結局、全員にとって苦い結末になったけど
春香とP、そして主人公の彼が皆幸せになれる続きがある事を願いつつ感想とさせていただきます。
あと、自分はアケ春香さんの筐体(いえ)に通わせて頂きますw
>>248 てか、なんかみんなやたらはえーやw
冷静に考えると、こんな感じでなんつーかかなりドロドロとしたナニカになってしまって
それはそれで面白いのですけどもギャグ路線を選んだためによく言えばあっさり
悪く言えば心情面での掘り下げ不足の感があるのは確かですな
ちょっと書き損ねた部分ですが、なんのかんの言ってこういう話を書いても自分で創作した存在である
「主人公の彼」にあまりいい目というか、都合の良い目を見させすぎないのはみなと節の特長といって
いい部分だろうと思います。
春香が家に〜でもそうでしたが、そういう部分であんまり彼に都合が良すぎると、しらけてしまう部分もありますし。
仮に巧いこと後釜におさまったとしても、最後の最後には取り持つ方を選んでしまうだろう、
そういう雰囲気が書き口からも感じ取れるのが、ある種読んでいての安心感にはつながっていそう。
・・・ただまあ、これはある意味では難点なのかもしれないですけどね
>>245 筆致の軽やかさで重いテーマもするする最後まで読ませてもらえました。
春香さんの胸中を察するに、そしてたぶんたまたま出来上がってしまった因果応報の構図を思うに
重苦しい方向に書き進めようとすればいくらでも可能な題材かもしれないのですが
この筆致で叙述されることでむしろ「心の中の苦味」がしっかり残るな、と、そんな風に思います。
いや、単にあなたの作風のファンだってだけなのかもしれませんがw
きっきみたち
>>245がなに投下するか知ってて感想書いて待ってたんじゃあるまいな?w
楽しく読ませていただきました。
みなと節って感想がありましたが超同意。「春香とP」ってセットはどうやっても変わらないん
ですよね、結局。
主人公の彼はPに耳打ちをした段階でもう(いや、たぶん初呑みの時ですらもう)自分の想いが
成就することはないと判っていて、それでも春香のために行動することを選んだんですね。
なんて言うんだろう、『ゲームキャラクターのPとプレイヤーである自分が別人だと解釈して
いるプレイヤーが、ゲームキャラクターである春香に惚れた状態』?
たぶん彼は今後も765プロで裏方とかやりつつ、春香とPの行く末を見届けた後、ようやく
誰かのPになるんではないでしょうか。その時に彼のトゥルーエンドが来ればいいですね。
またの投下をお待ちしております。三人春香でも全く問題ないですがw
お話のための人物配置とその演出で、これはシリアスじゃないから重く考えずに読んでね、
でないとストレスがマッハで危ないって伝わってきて、最後まで読めた。
「読み手が危なげなく危険な橋を渡るSS」と表現したい。
難を言うと、そうだとしても語り手の彼のセリフの口調がちょっと荒い印象。
Pとのやりとりのセリフには、対等な立場の口調にいたるまでの変化にグラデーションをつけると…と、思ったけどどうなんかな。
キャラがPに多少被っていることと彼が語り手でもあるので、彼だけ作りこんで喉越しをよく、
というのは逆に言えば他のキャラの違和感を浮き立たせてしまうのかな。
とすれば、このスタッフ君はこれでいいのかもしれない。
あと、オチが素敵でした。
早い、早いよ!
スレ開いて、てっきり続いて誰かが短編投稿したのかと思ったよ!
しかも長いよ!
ありがとうございますありがとうございます。
個別にレスしたいところですが、そうするとかぶるので、ちょっと全体的に。
最終話の主人公の心情は、あえて省きました。
決意に至るまでに、葛藤もあったかもしれないし、最初から決めてたのかもしれない。
また、そう決めた理由も、なんとなくなのか、譲れないものがあったのか、
Pを支援する気だったのか、略奪する気だったのか、
春香がある程度の年齢になるまでの時間稼ぎを引き受ける気だったのか、
はたまた、チーム春香の一員としての自負がそうさせたのか、
あわよくば、くらいの下心はあったのか、またそれはどの程度だったのか、
何にせよ、春香とPの裏事情を知っていたのは彼だけなので、
とにかく第三者が新たなPとなることだけは許せなかったのか…
全てひっくるめて、読む方におまかせしました。
やはりここの解釈は、人によって幅があるようで、むしろ良かったと思います。
で、ここの解釈次第で、最後の春香の行動も、当然とも取れるし、
または、Pとの繋がりを保つフラグを根元からポッキリへし折ったとも取れる。
しかし、そこで
>>248の「もう恋なんてしない」は想定外でした。
そう考えると、旧チーム春香との縁を意図的に切ろうとしてるとも取れますね。
新鮮でした。
あと、この主人公、結構仕事は真面目にこなす人間なので、
今後は自分のPという社内の立場に向き合って、意外と普通にPになりそう。
そして、自分では人にヤバい意味とか説教しておきながら、美希のPになって、
中学生相手にノンストップでフルスロットル、ジェットがあるフライト、
無人島バカンス簡単にできちゃうの、とかなったら面白いなあ、とか…
…って、まるで他人事ですがw
ともあれ、とにかく感想ありがとうございます。
まだの方もぜひお願いしますw
>>245 本文12レスを要しながらすごく短時間の間にこれだけ言いたいこという人が
あらわれる、というのが今回の一番の特徴か
おそらく文章そのものがとても消化がよかったのであろうが、よく言えば
わかりやすい文と言えるが悪く言えば薄かったとも評することができそう。
消化が良かったことをよしとする評価についても内容的な軽さと文章的な軽さを
混同してしまいそうな点が少し気になる。
少々贅沢かもしれないがシリアスに傾きすぎずコメディとしての軽妙さは保ちつつ
もう少し出来事の羅列にならない噛みごたえのある文章を期待したい
>>254 確かにこの自然発生的な感想斉射モードは何事かとw
ひとつ気になるのは「他人の感想」にケチつけてるようにとれる書き方は慎んだほうがいいかなーって。
「お前の見方は間違っている、俺の見方が正しいんだ」っていう姿勢だと誤解されたら
どっちかが土下座するまで決着つかなくなる一番ヘタクソな喧嘩になりかねないもの……
>>248 さっきのでは、一番大事なことを言い忘れてました
・・・つまり、おさわりですね、お・さ・わ・り!w
>>253 じゃあ元スタッフくん現美希P(覚醒済)と元春香Pによるある夜の居酒屋とか
ちょっと見てみたい気配かも
>>255 みんな飢えてたのかなあ?
あと個人的に春香とプロデューサーの関係についてはそれぞれ一通りの考察は済んでて
土台があるとこから考えられた、というのも早さの一因だったり・・・ってのは考えすぎ?w
読んで即レスしたけど、やっぱりまだ微妙な気分が残ったので冷静に考えてみた
春香の「絶対イヤです♪」の台詞から感じた、どうにも後味の悪いショックは
「は?それってヤバい意味じゃないよな?」を初めて聞いた時の感覚に似ている気がした
深く意味を考えれば本人の意思も含んでいるけれど、考えなければ無神経な台詞とも取れるだけに、
主人公の心情を省いて受け手次第にした→春香の心情も受け手次第になった という流れ(
>>253)は、
少し勿体なかったように思う
春香本人の心情が少しでもいいから見られる部分があれば、台詞の印象も少しは違ったのになと
「は?それって(ry」の台詞に対する同じようなもどかしさが残った
>「絶対イヤです♪」
俺はショックと正反対の印象もったな
お互いの感情以前にアイドルと担当Pの立場が
恋愛成就を不可能にすると身をもって知ったからこそ新たなPを断った、と読んだから。
アイドルでありたい。好きな人と結ばれたい。ふたつを叶えるためには
男性Pという同じ轍は踏んでなるものか!みたいな。
そう考えたら文末の「♪」を
「面接で宣言するほど想ってくれてるならまっすぐアタックしてくださいね、
その道(プロデューサー)は行き止まりですから♪」という、
もしかしてPルートの代わりに恋人ルート始まったんじゃね?的な
ポジティブ解釈してしまってえらくハートフルな読後感だったw
>>245 今度の春香はゲームの中の存在ということに自覚的なのか
みんなに「歌がうまい」と誉め殺されるDS春香さんと
不思議な踊りでMPをガリガリ削るのに定評のあるほめ春香さんもお忘れなく
一段落したと思われますので、あらためてお礼にあがりました。
たくさんの感想、ありがとうございます。
頭を冷やして考えてみれば、感想がたくさん、しかも早く寄せられると言うことは、
不満や要望も多いと言うことも意味していると言えるでしょう。
その点は真摯に受け止めたいと思います。って紳士に受け止めるとかどういう変換(ry
いつも、だいたいそうなのですが、今回特に淡々と軽い文を心がけました。
最大の理由は、オリジナルキャラを配した導入を受け入れられ易くするために、
軽くコミカルにするのが最もやりやすく確実と思えたからで、
そう入った以上は、全体を同様のタッチにしました。
ラストは最初から決まってたこともありますし。
一応、イメージとしては「アイドラの脚本」という感じがありました。
主人公一人称語り現在進行形の形式も、そこに根ざしています。
しかし、俺の文章からメタとギャグを抜いてしまったら、
春香からリボンを外すようなものじゃないかとw
それに、たとえどれだけ主人公の心情を描写したとしても、ラストが決まっている以上、
間違っても春香の心情を描写することは、少なくともこの作中においてはあり得ません。
ただ、そういう心理描写を細かくするのも、挑戦してみたいところではあります。
まずは、甘々春香を目指したいと思いますw
ところで、前々スレで、オリジナルキャラに関する議論がありましたが、
その中で「オリキャラメインの話を絶不調執筆中」と言ったのは俺ですw
(もう一人オリキャラメイン執筆中と発言したのは、
次のスレで快作「ボクノメガミ」を発表したレシPかと思いますが。)
今、あらためて見てみると去年の6月、って8ヶ月前・・・
当然、書いていたのはこの話ですから、絶不調にもほどがありますって。ねえ・・・
前作へのご感想、まことにありがとうございました。島原薫です。
今回も投下いたします。
タイトルは『花は降り降り』。メインは真で4レス使用。若干、オリキャラが登場します。
投下後終了宣言+前作レスへのお返しです。
鼻をすする音に過剰に反応してしまうのを、真は自覚していた。
黒と白のコントラストはけして気持ちが華やぐものではないし、静々と会場を後にする人々に頭を下げるのもとうに飽きてしまっていた。
両親の目を盗むように後ろを振り返ると、ぼんやりと空を眺めている祖母が一人、椅子に座っている。
親に何度も促されたけれど、結局、彼女にかける言葉はまだ見つかっていない。
大往生でした。
親族、弔問客に向かって挨拶をする父の目は潤んでいたと真は記憶している。彼の涙を見たのはこれで二度目だった。
真が引退を決め、両親にその旨を伝えた日、最後の最後までアイドル活動に釈然としない態度を取っていた父は「よく頑張った」と涙ながらに褒めてくれたのだ。
つられて家族全員で大泣きしたのは恥ずかしくもあり、真にとって忘れられない思い出となっている。
弔問客も一段落し、葬儀屋と話し合っている両親から一人離れ、真は会場の外へ出た。
秋口にめっきり冷え込んだのが悪かったらしい。
父よりも遅く帰宅した真は、おしゃべり好きの母が聞き慣れない言葉を口にしながら電話口で体を小さくしていたのを強く覚えている。
父は寝室に引っ込んでいるのか姿が見えず、何度も頭を下げて受話器を下ろした母の顔は今まで、見たことのないものだった。
通夜の時には気づかなかったけれど、鮮やかな紅葉を垂らした木々が会場を周りを囲んでいた。
昨日の早朝から日野の山中まで車を飛ばしたのだけれど、出来ればピクニックとかでここに来たかったと真は思う。
火葬場もセットになっている会場施設の他に建物と呼べるようなものは何もなくて、立ち並ぶ煙突から煙が上がるたびに真は体を震わせる。
あの煙が何を燃やしているのかなんて、くだらない想像を首を振って隅に追いやった。
会場入り口から顔を覗かせた母が手招きしているのを見て、真は久しぶりに履いたスカートに違和感を覚えながら会場へと戻った。
受付左手に伸びる廊下を進むとすぐ、告別式の会場が見える。
外の紅葉にも負けないくらい色鮮やかな花の祭壇は、真の知り合いのデザイナーがデザインしてくれたもの。
白木の祭壇が見えないくらいに花に囲まれたそれは弔問客からの受けもよく、
「綺麗で良かったねえ」と涙ながらに祖父に話しかけるご友人が印象的だった。
間もなく、最期のお別れが始まるという。
昨日も死装束を着た祖父に末期の水を取ったりと、"お別れ"なら何度も済ませた。
葬儀スタッフが抱えたお盆いっぱいに摘まれた花を手に取り、親戚に促されて祖父のお棺の前へと歩み出る。
口内に綿でも含ませているのだろう、思ったよりもふっくらとした表情の祖父の上に花を降らせる。
菊に百合、蘭、カトレア、かすみ草。花に埋まっていく彼を、真は涙も流さずに見つめていた。
故人の手前、「しっかりしたお子さんね」と、前向きに受け取ってくれるのはありがたいけれど、正直、真はこの老人のことをあまり知らないのだ。
父の職業以外はごくごく一般的な家庭に生まれたはずだと自覚する真はただ一点、父方の祖父母とあまり面識がないのを事あるごとに不思議がっていた。
父に聞いても、上手くはぐらかされるばかり。母方の祖父母とは毎年、嫌というほど顔を合わせていた分、気になっていた。
最近になって真は知ったのだけれど、父親と祖父は仲が良くなかったらしい。
プロのドライバーなんて危険と隣合わせの仕事はおいそれと許してくれる筈もなく、強情な父のこと、勘当同然に母と一緒になったという。
当時の苦労をさも世間話のように聞かせる母を見ては、真は口に出さないながらも彼ら二人の強さと愛情を感じた。
では、親子の愛情はどうだったのか。祖父は父のことをどう思っていたのか。
喧嘩別れしたと言っても、もう十分すぎるくらい年月が経っているのも事実。
まだ年端も行かない小さな男の子が年若い父親に抱えられながら、祖父の顔の横に蘭の花を置いたのが最後で、
その間も父は神妙な顔で祖父の顔を見つめていた。
告別式を終え、焼き場へと移動するために叔父の車へ乗り込む。
父親はしきりに自分が運転すると言っていたが、すぐ歩いても行ける距離で事故に巻き込まれたくないと、
母が苦笑交じりに諌めることで場は収まった。
結局、父はスタッフが運転する車に祖母と一緒に車に乗り、真は母と一緒に叔父の車に乗った。
「お婆様とはもう話した?」
「ううん」
位牌を手にしたまま、真は頭を振る。
ただでさえ面識もあまりないのに、この場で明るく振る舞うこと自体、真には非常識に思えた。
気丈に振舞っている、という見方も出来るけれど、今、父や母のように悲しんでいるかというとそうでもなくて。
嘘をついているようで嫌だった。
「元人気アイドルにも難しいのね」
「それとこれとは話が違うよ」
「そうね」
以前、母が話してくれた中で、父と一緒になる時に両親から頭を下げられたという話を真を思い出した。
馬鹿げた夢を見ている息子を許してほしい、と。
結婚にやんわりと反対していた母の両親まで巻き込んだという騒動の顛末は母の一声だったと言う。
愛しているから。
その一言に父の両親は頭を上げ、反対していた母の両親も遂には折れた。
真の家系は女が強いと言われていたがなるほど、この母こそがその強さの証なのだと真は合点する。
『でも、真はお父さん似よね。押しに弱いし』
『うるさいなあ』
そんなやり取りまで思い出して、幾分か軽くなった気持ちを外に吐き出す。
もう車は火葬場に着き、前を走っていた車から祖母と父が出てくる。
先に出ていた霊柩車からお棺が運び出され、やけに無骨に造られた銀色のドアの先へと祖父だけが行ってしまう。
もうこれで、戻ってくるのは祖父だったもの。
扉が閉まるまで、祖母はしっかりと前を見据えて祖父を送り出していた。
火葬は大体、一時間強で終わる、と父から説明された。
その間、手持ち無沙汰とはまさにこのことで、真っ黒い集団はうろうろと待合用のロビーで時間を過ごす。
「知ってるか、真。戻ってくる時な、骨は大体、バラバラになってんだけど。あれって焼いてる最中、釜の中でかき混ぜるんだとさ」
なんでいきなりこんなことを言い出したのか分からないが、苦い顔の真に父は楽しそうだった。
先ほどまでベソをかいていたくせに、とは言わなかったけれど、いつもの父に戻っていて真は内心、安心した。
告別式から立ちっぱなしが多かったのでいい加減、座りたかったので壁に沿って置かれているソファへと移動する。
母は親戚と話に夢中で、徐々にではあるけれど日常が戻りつつあることを真は感じていた。
明日、学校に行ったらどうしよっかな。
葬儀だからとタンスから引っ張り出した黒のワンピースはこの季節には少し肌寒く、脚を擦り合わせる。
寒いか、と上着を脱ごうとする父を止め、また訪れた無言の時間。
壁の一面がガラス張りになっているホールの外は先ほど見た、山々の紅葉で染められている。
やや濁りのあるガラスなのか、少しぼやけることで鮮やかな美しさとはまた違う、交じり合った色味が何かを思い起こさせる。
まるでそう、涙でぼやけた景色のよう。
少しもどかしそうに、父から話し始めた。
「お父さん。お爺ちゃんと仲悪いの知ってるよな」
「うん」
「結局な、お互い強がっちゃって。お爺ちゃんと仲直り出来なかった」
「うん」
言葉が続かないのか、俯き、しきりに首を振る父。こんな父の姿はついぞ、見たことがない。
けれど、真の心中は驚くほど、静かだった。
お父さん、やっぱりお爺ちゃんのこと、好きだったんだ。
それだけで真の中でストンと、何かが終わった音がしてくれた。おそらくは始まるために、もう終わらせなきゃいけないこと。
真はソファから立ち上がると、父の前へと立つ。
こちらを見上げてくる父の顔はしょぼくれてて情けない、おじいちゃんの子供の顔だった。
そっと父親を抱きしめ、「父さん、大好き」と囁く。
しばらくして、胸の中で震える父の嗚咽が聞こえてくる。
いつから眺めていたのか、遠くで母も泣いていた。
「いくつんなっても泣き虫だねえ、しんちゃんは」
先ほどまで部屋の隅にいた祖母が真の前までやって来ていた。
「真ちゃんかい?」と、微笑む顔はとても若々しくてチャーミングだ。
きっと、お爺ちゃんもこの笑顔が好きだったんだろうなと、真は嬉しくなる。
はいっ、とホールには元気な声が響いた。
投下終了です。お読み頂き、ありがとうございます
以下、前作へのレス返しです。
>>175 春香の突拍子の無さというか、春香の中の計算式やルールを殊更、大げさに出した作品でした。
ですので、自分でもその振り幅がなかなか難しいところだったのですが、好意的に受け取って頂いたようでありがとうございます。
あと、二行の部分は完全に視点固定を忘れてました。
>>177、182、184、185、186
確かにこの手の文章は書いてる本人が一番気持ちよくて、手落ちに近いものが出来てしまうのは私もまだ勉強不足かと思います。
何度もレス、ありがとうございます。
>>179 ストライクゾーン云々は「このキャラならこのラインまでなら大丈夫かな?」という意識で持って書いていることが多いので、
その意味で拡張的に捉えていただけるのはありがたいかぎりです。ただ、今回はあまりにいろんなものをすっ飛ばしてしまったなあ、
というのは正直なところです。ちーちゃんは常にシンジくんですよね
>>180 今回は
>>181様が申していたように、インパクト勝負なところもあったので、エピソード等のステップを全部すっ飛ばしてしまいました。
>>179様のように肯定的に捉えて頂けてるようでなによりですが、実際に僕の今までの作品を知らないで読んだ方にはつらいなあ、というのも
僕自身、考えております。次作以降、課題にしていこうと思います。
>>181 キャッチーな百合というとまさにそういうイチャイチャしたもので、そっちにしとけば良かったなあ、とちょっとだけ思っている次第です。
まだまだ勉強不足でございます。
>>187 今までの僕の作品、というレベルまで考えていただけるのはとてもありがたいのですが、
今回はそのあたりのフォローをすっ飛ばした手落ちの方が、すんなりすると思いますです。
貴重なご意見、ありがとうございました。
それでは次回投下の際もよろしくお願いします。
>>267 なんともまたむずかしいところを・・・w
祖父が亡くなることをきっかけにしたいろいろという意味では以前の「愛の人」と同様の状況ですが
あちらが、祖父と伊織の関わりとその真意でもって祖父から伊織への想いについて語った話という印象なのに対し、
今回はもう一段緩衝を置いて「祖父と真一」を真の目から解釈させることによって「真一と真」を書こうとした
・・・というところでしょうか。
ただ気になったのが、「真が既に活動を終え、真一が一定レベルの理解を示した後」の段階での話であること
これが活動中の「夢を追う娘とそれに異を唱える親」の類型が通用する段階であれば、真一自身について
同じ立場を思い起こさせるという経緯で真の意志を考えさせる契機となったのであろう、的な
よく言えばすっきり収まった悪く言えばいかにもステレオタイプな、しかし「アイマスSSらしいアイマスSS」
となったのだろうと思います。
ところが、真一から真への意識云々については、アイドル活動という視点からのそれはもう既に一旦済んだ話と
なってしまっている。
さらに祖父が真自身にとっては心理的に縁遠い人物であると再三強調することで、作中の真の立ち位置を
おそらくは狙って当事者というよりも比較的醒めた目を持った観察者というものにしている。
つまりはこれ、メインは真でと言いつつもある意味では脇に置き、実質のメインは真一。
その上で彼を軸にした家族像的な方向を掘り下げてみたもののように思えます。
アイドルとそれを取り巻く人々というアイドルマスターの舞台装置とフォーマットは使いつつ
味付けて作り出そうという方向性はあまりアイマス的ではない・・・と言ってしまうと批判めいて聞こえますし
その辺りは自分の考え過ぎかもしれませんが、なんというかむずかしい方へむずかしい方へと攻めていくなあ、とw
物語としての読み応えと技法と情緒は堪能しつつ、そしてまた自分的にはありな方向性でもあるのですが
いろいろあり方を考えさせてみようというようにも感じられ、禅問答の如く、うーん・・・と頭を捻らされる
仕上がりになっている印象ですな。
まあ、もちろんそれはそれで面白いんですけども。
>春香からリボンを外すようなものじゃないかとw
そんなの髪をヘアピンで留めてパジャマを着ればいいじゃないw
>>267 とてもよく書けてると思うし、何が描きたかったかも伝わってきます。
ただ、何というか、寂寞感が…
父とは完全に分かり合えた真だけど、すでにアイドルは辞めちゃってて、
葬式の方にも事務所からは誰も顔を出した様子もなく、真が今は何をしてるか
という描写も全くないんですよね。まあ学校には行ってるようですが。
だから、彼…じゃなくて、彼女が、父と分かり合えてこの先、どんな人生を
歩むのかが、まるで展望できないことが、読む側に無力感を与える気が。
真が、我々の知らないところで知らない人生を送っていて、
そのまま我々の知らないままで人生を続けていくのだろう、という感じ。
ストーリーと相まって、この寂寞感が半端ないです。
狙ってるとすれば見事なんですが、個人的には、これはちょっとマイナスの
印象でした。もう一度読みたいと思う気が湧いてこない感じです。
前作、「やよいの食事手帳」に沢山の反応をいただき、ありがとうございました。
今回、3ヶ月振りに書きあがったので投下させて頂きます。
タイトルは「霞のかかった夢の中で」このレスとあとがきを含めて9レス程つかわせていただきます。
内容自体は鬱モノでは無いですが、秋月涼シナリオEエンド、
いわゆるりゅんりゅんENDの内容を含むので一応ご注意下さい。
「…なるほど、そんな事があったんだね」
「うん、とっても良い子だったから仲良くなれるといいな♪」
「それじゃあ、そろそろ時間だからここまでだね」
「来週もいっぱいお話しようね先生♪」
「うん、来週まで元気にしててね」
「はーい!」
今日は週に一度の先生とお話の日、私のアイドル活動であった出来事とか、
嬉しかった事や悲しかった事を全部先生に話す日なんだ。
二ヶ月位前に私がオーディションに連敗して倒れちゃった事があって、
アイドル活動でストレスが溜まったのが原因だから誰かに話してスッキリするようにって社長が紹介してくれたんだよ。
私の話を聞いてくれる先生はとっても美人で、私の話を何でも聞いて的確に答えを返してくれる凄い人、
いつか、私も先生みたいにキレイな女の人になれるかなぁ……?
あ、自己紹介がまだだったね、私の名前は秋月涼、今は普通の女の子だけど
いつかトップアイドルになって日本一可愛い女の子になる予定だよ、りゅんりゅん♪
「ねぇ涼、アイドル活動で何か問題は無かった?」
「ううん、とっても楽しいから何にも問題は無いよ、りゅんりゅん♪」
「そう、なら良いんだけど……」
先生と話すところから帰る車の中で私に質問してきたのは、私のいとこでトップアイドルの律子姉ちゃん。
やっぱりトップアイドルともなるとストレスが溜まるらしくて私と同じ位の時期にここに通い始めたんだって。
そして車を運転してるのは律子姉ちゃんのプロデューサーさん、
姉ちゃんに言うと真っ赤になって違うって言うけど、姉ちゃんが好きになった男の人だよ。
ちょっとだらしないところもあるけどカッコイイ男の人だし、姉ちゃんとはお似合いだと思うんだけどなぁ。
「なぁ律子、心配なのは分かるがあまり過保護にするのも良くないぞ?」
「いえ、確かにそうなんですけど、そのせいで涼が……」
「なぁに、私のお話?」
「ううん、大した事じゃ無いの、涼は気にしないで良いのよ」
「律子は涼ちゃんがまたストレスを溜めてないか心配なんだよ、大事な従妹だしね」
律子姉ちゃんは元々世話焼きさんだったけど、私が倒れてからは特に私に世話を焼いてくれるようになったんだ。
昔みたいにいっぱいお話出来るのはいいんだけど、なんだか私に悪い事をしてそれを隠そうとしてる時の態度に似てる気がする。
確かに倒れる直前の事は全然思い出せないし、それより前の事もなんだかぼんやりとしか思い出せないけど
それで生活に困った事は無いし、私はいつでも元気なんだけどなぁ……
「大丈夫だよ姉ちゃん、今回のオーディションでは友達も出来そうなんだよ」
「へぇ、どんな友達が出来たの?」
「桜井夢子ちゃんって言うの、とっても礼儀正しくて可愛い子なんだ♪」
「桜井夢子、どこかで聞いたような気がするわね……ま、友達が出来たのは良い事よね」
姉ちゃんを心配させないように明るい話を振ってみると、さっきまで曇っていた表情を元に戻して
私の話に乗ってくれる。うん、やっぱり姉ちゃんはいつもの表情の方が可愛い♪
そうして今日は姉ちゃんやプロデューサーさんとお話しながら家まで送って貰ったよ。
「すいませんっ!秋月さん!私……何かカン違いしてたみたいで……」
「もう、夢子ちゃんはおっちょこちょいさんなんだから♪」
私はそういって夢子ちゃんの額を軽く突く、夢子ちゃんがメールで送ってくれた会場変更が勘違いだったらしくて、
危うく遅刻で不合格になるところだったんだ。でも、誰にでもミスはあるし、これでチャラだよね?
「お?…いやいや、許してくれるんですか?」
「うん、何とか合格できたしね、次は私も夢子ちゃんみたいなキュンキュンなステージやりたいな♪」
「今時キュンキュンって……」
「夢子ちゃん、どうしたの?」
「……いえ、次もお互いがんばりましょうね」
「えへへへ♪頑張ろうね」
夢子ちゃんの歌、すごい上手だったし次は完全な状態で一緒に歌いたいな♪
「……それで、遅刻しちゃったけどなんとかオーディションには合格できたんですよ♪」
「うん、不合格だったらどうしようかと思ったけど良かったね」
「でも夢子ちゃんもおっちょこちょいですよね、オーディションの場所変更を勘違いするなんて」
「あれ、桜井さんは場所を間違えた訳じゃ無いんだよね?」
「うん、勘違いに気付いたけど連絡するのを忘れちゃったんだそうです」
「それは……ううん、なんでも無い、また来週ね」
「はぁい♪」
今日の先生、最後に何か言いたそうだったけど何だったんだろう?
誰にだってミスぐらいあるし、夢子ちゃんを責めるって訳じゃ無いと思うんだけど……
「ねぇ涼、アイドル活動で何か問題は無かった?」
「ううん、全然問題ないよ、ただ……」
「ただ?」
先日のオーディションの事はなんとなく言わない方が良い気がするし、違うことを相談しようかな?
「私の胸、まだ大きくならないのかなぁ。姉ちゃん、どう思う?」
「それは……」
律子姉ちゃんが言葉に詰まるのは、やっぱり私の胸が小さすぎるからなのかな?
私自身は余り気にした事は無かったけど、アイドルデビューするときに
社長から「真っ平らはまずい」って言われてパッドをつけるように言われちゃうくらいに私って胸が無いの。
「律子姉ちゃんくらいとは言わなくても、パッドが要らなくなる位は欲しいなあ、ファンの人を騙してるみたいで悪いもん。
それに、バレない様に他の女の子とは別に着替えるように言われちゃってるから、着替えるのも大変だし……」
一人で着替えるのは結構寂しいんだけど、愛ちゃんや絵理ちゃんにも秘密にしてるから一緒に着替えられないんだよね。
「涼ちゃん、成長には個人差がある物だし、そのうち大きくなるさ」
「プロデューサー!そんな無責任な事を言わないで下さい!」
言葉に詰まる律子姉ちゃんに代わってプロデューサーさんが答えてくれたら、姉ちゃんが急に怒鳴りだしちゃった。
昔から怒鳴る事は良くあったけど、最近は昔の怒鳴り方と何かが違う気がする、なんでだろう?
「まあ落ち着け律子。……涼ちゃん、そう言う訳で焦っても仕方ないから、間違っても豊胸エステとかサプリとかに手を出したら駄目だぞ?」
「ああ、そう言うこと……涼、あなたみたいに成長期の時期に変に大きくしようとすると悪影響の方が大きくなるから絶対に手を出しちゃだめよ?」
「そう言うものなの?」
「そう言うものよ。ま、大きくしたかったら規則正しい生活を送ることね」
「ふーん……」
雑誌でみた女性ホルモンとかを試してみようと思ったけど、姉ちゃんとプロデューサーさんに止められちゃったからやめとこっと。
「夢子ちゃん、私、なんとか合格できたよ、りゅんりゅん♪」
「そうね……」
「それにしても、あのステージ本当にすべりやすかったね、貰ったすべり止めもほとんど効果がなかったし」
「…………」
「夢子ちゃん?」
「あなた、まだ気付かないの?」
夢子ちゃん、私が合格した後からずっと険しい表情してたけど、今度は呆れたような顔に変わっちゃった。
「なに?何の事?」
「あきれた、本当にぜんぜん気がついてないのね……」
「私、何か見落としてる事とかあった?」
「そうよ、私がニセのすべり止め渡して転ばそうとしたこととか、あなたを遅刻させる目的で違う場所を教えたこととかを見落としてるわね」
「えっ……?」
「ここまできて気付きもしないのは流石に驚いたけど、このまま良い人のフリを続けるのも面倒だし教えてあげるわ」
夢子ちゃんの言葉は聞こえて来るけど、真っ白になった頭がそれを受け付けてくれない、私、どうしちゃったんだろ?
「私があなたに近づいたのはあなたをワナにはめるため、隙だらけで面白いくらい引っかかってくれたわね」
「…………」
「私がトモダチごっこをするために近づいたとでも思ってたの?この世界はいつでも真剣勝負、油断したあなたが悪いのよ、秋月涼」
「そんな……そんな……!」
「怒った?アタマきたなら仕返しでもなんでも、してごらんなさいよ」
「ひどいよ……う、うわぁぁぁぁぁん!」
ひどいよ、信じてたのに、友達になったと思ったのに全部ウソだったなんて……
そう思うと、自然に涙が溢れてきて止まらない、私はその場で泣き崩れちゃった。
「あ、あれ?怒らないの……?」
「うわぁぁぁぁぁん!ひどいよ、ひどいよぉぉぉ!」
「どうしよう、この反応は予想外ね……」
涙で滲んで良く見えないけど、夢子ちゃんは困ったような顔をしてるように見える。
「これじゃ完全に私が悪者に見えるじゃない、実際そうなんだけど……」
「うわぁぁぁぁぁん!うわぁぁぁぁぁん!」
「桜井さん、秋月さんが泣いてるようだけど何かあったんですか?」
どうやら私の泣き声を聞いてスタッフさんの一人が駆けつけてくれたみたい。
「え、ええ、得意のダンスで実力を出せなかった事が悔しかったそうです、秋月さんには私がついてますからお気になさらずに」
「そうですか、それではお任せしてよろしいですか?」
「ええ、任せて下さい……秋月さん、ここじゃ迷惑になるから控え室に行きましょ?」
「うわぁぁぁぁぁん!」
夢子ちゃんはそう言って私に手を差し伸べてくれる、私は泣きながらその手をつかんで控え室につれていって貰った。
「うっ……ひっく……」
「そろそろ落ち着いた?」
「うん、なんとか……」
私達以外全員帰った控え室、一通り泣いてようやく落ち着いた私は夢子ちゃんと二人っきりになっていた。
「今までも何人かハメて来たけど、大泣きされたのは初めてだわ」
「夢子ちゃん、今までもって、他の子にも嫌がらせをして来たの?」
「そうね、何人かにしてきたわ」
「そんな、夢子ちゃんがそんな子だったなんて……」
「ま、犬に噛まれたと思って忘れなさい。探せば友達になってくれるお人よしも見つかるんじゃないかしら?」
「でも、夢子ちゃんもお人よしだよね?泣いちゃった私の事、ちゃんとなぐさめてくれたし」
「まあ、放っておいて私の事を話されても面倒だしね」
夢子ちゃんは口ではそっけないけど顔を少し赤らめて目をそらしてる。もしかして根っからの悪い子ではないのかな?
「ねぇ夢子ちゃん、そういうの、もうやめにしない?」
「本当、おめでたい頭をしてるのね、こんな目にあっても私を説得するつもり?」
今まで戸惑ったような顔だった夢子ちゃんの顔に、いじわるな笑みが戻って来たけど……
「ほら、アイドルがそんな顔しちゃダメだよ?」
「……へ?」
「そんないじわるな顔じゃなくてもっと嬉しそうに笑わないと!こんな感じでさ、りゅんりゅん♪」
「あなた、私を説得するんじゃなかったの?」
「そうだよ、アイドルは人を楽しくする仕事なんだから自分も楽しまないとだーめ、嫌がらせで勝っても楽しくないでしょ?」
そう、アイドルはとっても楽しいお仕事、自分で思いっきり楽しんで、それでファンの人たちにも楽しんでもらって
その声援を聞いて自分ももっと楽しくなれるお仕事。なのにそんないじわるな顔をしてたら楽しくなくなっちゃうよ?
「楽しい楽しくないは関係無いわ、私はどんなことをしても勝ちたいの。遠い先の目標を目指してね」
「目標?」
「そうよ、目標……せっかくだし特別に教えてあげるわ。『オールド・ホイッスル』よ」
「オールド・ホイッスル……」
「知ってるでしょう?天才プロデューサー『武田蒼一』が仕切ってる、日本最高の音楽番組よ」
「うん、私は最近見るようになったけど、武田さん、カッコイイよねぇ」
武田さんはどんなときも冷静で表情を崩さないけど、近寄りがたい感じは全然しなくて
私みたいな普通の女の子にもわかりやすい言葉で大事な事を話してくれる、とってもカッコイイ人なんだ。
「何かミーハーっぽいわね……ともかく、その『オールド・ホイッスル』に出演する事が私の目標よ」
「あれ?今までアイドルが出たのって一人だけじゃなかった?」
「ええ、アイドルが出演するのは厳しいわ……でも私はそれに出たいの!その夢をかなえるためならなんだってする!」
「アイドル活動が楽しくなくても?」
「ええ、アイドル活動は夢をかなえるための手段、楽しいも楽しくないもないわ!」
「そっか、夢子ちゃんはそんな夢をもってたんだね……」
夢子ちゃんは、夢に向かって本当に一生懸命なんだね、
嫌がらせを認める気にはなれないけど、やっぱり根っからの悪い子じゃないみたい。
「さて、私の夢は話したし、あなたの夢も聞かせてもらおうかしら。あなたの目標は……なに?」
「私の目標?」
自分の夢を語った夢子ちゃんは翻って私の夢を聞いてくる。
でも私の目標はハッキリしてる、夢子ちゃんの夢にも負けないくらい大きな夢がある!
「まさか、なにもないわけじゃないでしょ?」
「もちろん!私の目標は……トップアイドルになって、日本一可愛い女の子になること!」
「……は?」
夢子ちゃんが力なく聞き返してくる、良く聞こえなかったのかな?
「だから、トップアイドルになって日本一可愛い女の子になることだよ?」
「ええっと……日本一可愛い女の子になることが目標なの?」
「うん!アイドルって可愛い子が集まった世界だから、その中で一番になったら日本一可愛い女の子って事になるでしょ?」
夢子ちゃんは不思議そうな顔で聞き返してくる。トップアイドルが日本一可愛い女の子って常識だと思うんだけど、私、そんなに変な事を言ってるのかな?
「まあ、その理屈はわからなくはないけど……」
「えへへへへ♪そうでしょ?」
「いまどき小学生でももっと具体的な目標をもってるんじゃないかしら……でも、出任せや冗談でいってるわけではなさそうね」
「もちろんだよ、私はみんなを楽しくさせる日本一の女の子を目指してるんだよ♪」
「で、私を説得しようとしたのも、日本一可愛い女の子になるのに必要な事なのかしら?」
「うん、周りにいるみんなを楽しく出来るくらいじゃないと、日本一可愛い女の子なんで言えないからね。りゅんりゅん♪」
そう、ステージの前だけで可愛くてもそれは本当の美少女じゃ無い、
いつでも周りのみんなを幸せにできる魅力を持ってこそ本当の日本一の美少女だって私は思う。
「……秋月涼、あなたなかなか面白い夢を持ってるのね。ロクな目標も持ってない甘ちゃんだとおもってたけど見直したわ」
「そんな、えへへへ♪」
「でも、私の夢の邪魔をするなら容赦しない、次の審査ではあなたを真正面から潰してあげる」
「えっ……」
「それが嫌ならレッスンを欠かさないことね。私は一日も怠けないわよ?」
「……うん!私も夢子ちゃんに負けないように頑張るね!」
その後、夢子ちゃんはさっさと帰っちゃって話は終わっちゃった。
夢子ちゃんは真正面から潰すって言ったけど、裏を返せば嫌がらせは使わないって事。
完全に改心したとは思えないけど、私の言葉、少しは届いたみたいで良かった♪
「……そんな事があって、明日は夢子ちゃんと勝負する日なんですよ♪」
「そっか、そんな事があったんだね」
「私、夢子ちゃんとはいい友達になれる気がするんですよ。えへへへ♪」
「話を聞いてる限りだと、根っからの悪い子ではなさそうだし、友達になれるかもしれないね」
「はい♪ところで、夢の話をしてて思ったんですけど……」
「なにかな、話してみて?」
私は夢子ちゃんの話している内にどうしても気になった事を聞く事にした。
「私、どうして自分が今の夢を見るようになったか全然思い出せないんですよ」
「ふむ……」
「思い出そうとすると昔は全然違う夢を見ていたような気がしてきて……」
「それは無理に思い出そうとしたらダメ!」
「えっ?」
先生が強い口調で窘めてくるなんて珍しいなぁ、なんでだろ?
「思い出せない事を無理に思い出そうとすると秋月さんには刺激が強すぎるの、絶対無理はしないで」
「そうなんですか?」
「うん、思い出す時がくれば自然に思い出せるから、今は気にしないようにしてね?」
「…………」
「そうだ、別の話をしましょう、私、学校の事も聞きたいな」
「そうですね、学校では……」
気にしないようにと言われても気になるものは気になるけど、先生と色々お話する内にあまり気にならなくなっちゃった。
はぐらかされた気もするけど、先生も時が来れば思い出すって言ってたし、大丈夫だよね?
「ねぇ涼、アイドル活動で何か問題は無かった?」
いつものように律子姉ちゃんが聞いてくる。
今週は問題があるか無いかと言われたら問題はあったと思う。
夢子ちゃんの事もそうだし、自分の夢のルーツが思い出せない事もそう。
だけど、夢子ちゃんとはきっと友達になれると思うし、ルーツが思い出せなくても夢への思いは強くなった。
夢に向かって友達と競い合いながら進める、こんなに良い環境はそうそう得られないんじゃないかな?
このまま進めば本当に日本一可愛い女の子になれるかも♪だから私はこう答えるの、
「ううん、とっても楽しいから何にも問題は無いよ、りゅんりゅん♪」
以上です、最後まで読んで頂き、ありがとうございました。
発想としては例のりゅんりゅんENDでは涼がアイドルをやめた様子は無いのでEエンドの涼(以下涼りゅん)が
そのまま涼シナリオを進めていったらどんな感じになるのか、と言う発想です。
本編中での涼りゅんの精神状態はは見方によって色々変わって行くと思いますが、今作での解釈としては
「自分を完全に女だと思い込み、日本一可愛い女の子になる事が夢になってる以外は基本的に涼のまま」としています。
作中で言っている「アイドルは人を楽しませる仕事だから自分も楽しまないといけない」と言うのも実際に涼の言う台詞にあったりします。
また、意外にも涼と涼りゅんは書き言葉ベースではほとんど同じ口調だったので、違いが出せているかどうかが少々不安です。
話しがゴチャゴチャし過ぎると思ったので愛や絵理、石川社長やまなみさんは一切登場させず
「ドキドキ?キュートなライバル登場」をなぞる形で書いたのですが話として薄味になりすぎてないかと言うのも気になります。
上記の点も含め、拙い点は多々あると思いますので気付いた点が有れば遠慮なく指摘して頂ければ幸いです。
でも、はじめてだから優しくしてね……
補足説明:涼が週一で通ってる先生は要するにカウンセリングの先生です。
比較的精神は安定していてもストレスが溜まればどうなるかわからないので定期的に見てもらってる感じです。
律子も同伴してるのは自責の念から精神的に不安定になってるのでカウンセリングを受けていると言う事です(直接関わった訳では無いですが……)
>>278 整合性もよく取れてるし、キャラがよく描かれてると思います。
特に夢子の初期キャラがいい再現性で味を出してるなあ、と。
丁寧な中身の整合性にも唸らされました。
ただ、公式が、今後への不安などを全て放り出してネタとして終えた部分、
これをあえて続けるなら、なんらかの結論が欲しかったと思います。
元に戻るでもよし、日本一可愛い男の娘を目指すでもよし、それこそモロッコ(ry
現実味のある話に書けているだけに、余計に今後の不安を掻き立てられました。
もし、このままで活動を続けるエンディングにするなら、カウンセリングの先生を
「何も心配いりませんよ〜実はよくある話ですから〜」
みたいな陽気な人にしちゃうとか、読む側の不安を取り払って欲しかったですね。
※しかし、オチでその先生が「そろそろ転換手術の頃合いね」と
ボソッとつぶやいたりするのが好みなんですがw
ええいくそw 鬱祭りかw
>>267 天寿でも天命でもあんまり死なさないでくださいorz なまじ読み込ませる分
悲しみ幾倍でございます。
クライマックス(4/4)中央段の切なさは胸が締め付けられますね。『父と和解
できたわが子』から『父と和解できなかった自分』へ、大好きなどと囁かれては
そら真一パパ泣くっきゃないわな、という感じです。真一本人はこの言葉に
感謝すると思いますが、ハタで見ていて少し意地悪な感じもしましたが。
本当ならこの手の『赦し』はもっと近い人物、この場合ならおばあちゃんから
為される方がしっくりすると思いますが、そうすると真の出番はなくなりますなw
あと、言葉遣いのこと。
真の誕生日CDを聴き返さねば正確には言えませんが、真一の話し言葉なら
「お父さん」「お爺ちゃん」にはならないように感じました。たぶん「俺」「オヤジ」、
ひょっとしたら「父さん」「お爺ちゃん」かも、かな。
読み返すのは少々つらいのですが、いいお話でした。ありがとうございます。
>>278 当人が明るいだけで鬱やないかw ともあれGJでした。
補足説明はここの住人レベルなら本文から読み取れるので不要かもですよ。
279で書かれている通り作品の内容自体は良質だと思います。
食事手帳の時にも文体が少し引っかかる(するすると読み進めない)感じを
受けたのですがどうやら個性のご様子、多少の工夫は要りそうですが
本作みたいなテイストのSSには向いてるかもですね。
書き手氏が目指した方向感が必ずしも明るくない、つまり主題は『涼りゅん
プラス初期夢子のシミュレーション』であって、涼や律子の変革とか救済とか、
あるいはオチを用意して笑わせようというのではないみたいなので、そういう
面では良作かと。
ただ、観察日記に終始してしまって創作的にはカタルシスが欲しいところだなあ、
というのが明るい話好きの独りよがりでした。
また読ませてくださいまし。
りゅんりゅんEDって明るく〆てるけど
要は人格崩壊EDだもんなあ
>>268の言う「むずかしいところ」「方向性はあまりアイマス的ではない」と
>>270の言う「寂寞感」「知らないままで人生を続けていくのだろう」
これらの見解はおそらくは同じ方向性を示しているのだろう
とはいえ口当たりは確かに苦いものの、丁寧に書かれた良作と思える
>>270 両親が居てなおかつ祖父母の葬儀だと事務所関係者が居なくてもそれほどはおかしくなさそう
これが両親が既に亡く祖父母に育てられた、あるいは亡くなったのが両親ならまた別と思うが
>>282 事務所から誰も顔を出してないこと自体がおかしい、っていうんじゃなくて
「既に765プロと関わりのない子になってしまった真」を強く印象付けられるのが寂しい、ってことじゃないかな
「話を聞いて765プロ時代の仲間が様子見+焼香に」とかの展開を入れておけば「読者としての」寂寥感は大分薄まったんだろうけど
それをあえてやらなかったことで、この寂寥感は狙ったものなんだろうなぁ、上手いけど読者としては辛いなぁ、という。
このスレの住人の多くは「ただの読者」ってだけではなく、「765プロの同僚」として真と1年を過ごした経験がある者が大半でしょうから。
>>283 あくまでも個人の感じ方の違いだろうとは思うが
亡くなった当人自身と面識や付き合いもないのに「孫の友人や同僚」が参列する状況そのものが考えづらいので
真の活動当時でも事務所からの参列者はなくても普通。よって「既に765プロと関わりのなくなった」印象は
自分の場合はそこから感じとることではないということなのだが
これが水瀬祖父の場合だと、喪主である水瀬父の友人として高木社長が参列するのに説得力がある
あまり考えたくないが真一の場合なら娘を預かった立場として社長やPが参列するのも自然だろう
祖父ぐらいだと活動当時でも参列するので真は仕事休み、出勤してきたら「どうだった?」ぐらいが
事務所の反応として普通と感じる
>>278 文そのものは重さがなくて、「ああなった」状態を前提にした本編再構成の一部・・・という趣なのはわかるのですが
>>280の言う、シミュレーションという言い方がある意味非常にしっくり来ました。決着とか解決とか行く末は
また全然違う話だと割り切った、ということで。
ただ、やはりなんというか。状況そのものが大きく動かない先ほども言ったような文だけ読むと「重さがない」ものだけに
かえっていつか訪れる決定的な破綻の日に向かってひずみを溜め続けている、その過程を見せられているようなような
空恐ろしさを感じてしまうのは・・・まあ、仕方がないところかなと。
この状態だと、読む側の不安はむしろ作品全体の持ち味にまで転化する方向を模索した方が出来そのものは面白そうではあります
凄くきついものに仕上がってしまいそうではありますがw
とはいえ、涼くんランクA辺りには、必死に自分は男だと訴えても誰も信じてくれない状態なので性別バレで破綻は案外ないか?
・・・いや、この状態では本来発揮し得た内面からの輝きが同じようにあるとは限らないし。
うーむ。
ある夜の帰り道
真「・・・まっくらですね」
俺「ああ、まっくらだな・・・」
真「・・・手・・・つないでいいですか・・・?」
俺「真、夜が怖いのか・・・まるで女の子だね」
真「あー!また男の子扱いしてますね!ボクはちゃんとした女の子ですよ!!」
俺「ははは、そうだった。・・・・・・ほら、手繋ごうか・・・」
真「・・・はい・・・・プロデューサーの手・・・とってもあったかくて優しい手です・・・・」
俺「真の手も柔らかくて、可愛くて・・・・とても愛しいよ・・・」
真「・・・・・・・・・ボク達・・・ずっとこうしていられますよね・・・・ずっと一緒にいられますよね・・・!」
俺「・・・うん!ずっと・・・・ずっと一緒だよ!どんな時でも俺、真の事離さないから!」
真「・・・ヘヘッ!ありがとうございます!・・・今日寝るときいつもより強く抱きしめてくださいね!」
俺「うん!わかった!いつもよりずっと強く抱きしめるよ!」
真「ヘヘッ!やーりぃ!そうと決まったら早く家に帰りましょう!」
俺「うわっ!真!手を繋いだままいきなり走らないでくれ!こけそうだ!!!!」
投下終了。本スレで書いたのをそのまんま投稿。SSとか生まれて初めて書きました。なかなか楽しい物ですね。
>>286 短いですが実にいいシチュエーションだと思います
前後にもうちょっと場面の描写があると、さらにジンジンと来ると思います
例えば、日中に何か真にいい事があったとか、真の白い手が差し出されるとか
>>287 アドバイスありがとうございます。
機会があったらもっと構想を練って書いてみようかと思います
>>286 一瞬、本スレかと思いましたw
取りあえず、作品としての完成度云々とか「俺」丸出しで今日寝る時云々の
「自分とデキてますから」な妄想度ダダ漏れとか、そういう身も蓋もないとこは
どこまでもツッコめてしまうわけですが、それはまあ一旦置くとしてw
SSというか、シチュエーション提示としてはなかなかほんわかしたところで
こういうシーンはイイっしょ、というのは伝わってきます。
ただ、出来れば他の人が読んで楽しむ文章である、というところに配慮して
また物語的な体裁を整えてくれればもっといいかな、と
・・・なんか、IDがDD9D6/iiってすごいなw
自分の言葉を読み返してみると結構読んでの感覚がきついかな、と思うのでもう少々
シチュエーションを考えて、それを起こしてみるということをはじめてされたそうで
それについて「なかなか楽しい」と思えたことはすごくいいことです
そういうシチュエーション妄想はピヨちゃんに至っては趣味と公言しているぐらいですしw
さらに、それを膨らませてみる、という楽しみもありますよ、という意味合いも
「物語的な体裁を整えてくれればもっといい」という言葉に含めさせていただきました
ID:DD9D6/ii
アドバイスありがとうございます。
確かに俺丸出しだったり、他の人が読んで楽しめる文章はまったく意識してないでオナニー感覚で書いてました。
次、作品書くときはそこも考えて作ります。真大好きです。
292 :
陽一:2010/02/27(土) 00:53:33 ID:itQLFhRm
すごく久しぶりに投下します。陽一と申します。
以前はご意見ご感想ありがとうございました。
涼と夢子で、少し鬱要素ありかも? なSSです。
よろしければ何かご意見くださると嬉しいです。
更衣室の私のロッカーには、
子猫の生首が入っていた。
「…………」
よく見てみたところ、本物ではなかった。ただ、一瞬本物だと見紛う程度にはリアルで、
血糊の飛び散り具合と飛び出た眼球が実に気持ち悪い。これがロッカーにあるということ
自体が悪趣味なのは変わりなかった。
私が手に持つ生首を見て、隣のアイドルが小さく悲鳴をあげた。
「……フン」
近くのゴミ箱に生首を投げ捨てて、私は衣装へと着替えた。
オーディションの前にこんなイタズラをされたら、普通のアイドルだったらテンション
が下がって、歌う気分ではなくなってしまうかもしれない。
けれど私の精神は乱れない。もう、慣れてしまった。
こんなイタズラをされるのは、一度目じゃないから。
* * *
『合格者――二番、東豪寺麗華さん。五番、桜井夢子さん。この二人です。あとは帰って
もらって結構です』
私は汗を拭いながら、ふぅと息をついた。
オーディション会場――審査が終わって、スピーカーからそんな声が流れる。
“桜井夢子”という私の名前が、ある。今日もなんとか勝つことができた。
……“イタズラ”をしなくなってからは、だんだんと合格するのが難しくなってきた。
それでも日々レッスンに励み、何とか実力をキープしている。
オーディションが終了し、そのあとのテレビ収録も終えた。
クリーム色の廊下を歩きながら、やれやれと息をつく。今日の仕事は成功と言ってもい
いだろう。とりたてて大きなミスはなかったし、うまく知名度もあげることができた。
なのに私の気分は、まるで明るくなかった。厚い雲に包まれた空のように、暗鬱として
いた。ずぶずぶと、一歩ごとに泥土の中に沈んでいくようだった。
と。対面から、一人の女性が歩いてきた。
彼女は……そうだ、さっき私と一緒のテレビ番組に出た、東豪寺麗華とかいったか。ロン
グヘアーが印象的な、冷たい雰囲気の美人だ。
「お疲れ様、桜井夢子さん」
「お疲れさまです」
透き通った、優雅な声で挨拶される。私も形ばかりの笑顔を作って返した。
「あなたの実力でオーディションに勝てるなんて……すごいわねぇ? どんな魔法を使った
の?」
「…………」
一転して、彼女は意地の悪い笑顔になった。切れ長の目と形のいい唇を歪め、嫌らしく嘲
笑する。
甲高い靴音を立てながら、私に歩み寄って、
「私は、」
すれ違いざまに、耳打ちしてきた。
――あなたのやったことを、知っているわ。
「さようなら」
そんな言葉を残して、彼女は去っていった。
私はしばらく、その場に立ち尽くしていた。
* * *
「久しぶり、涼」
「うん、久しぶりだね。一ヶ月ぶりくらい?」
午後八時。レストランで私と涼は向かい合っていた。
涼はTシャツにジャケット、ズボンと代わり映えのない格好をしている。他に服を持って
ないのか、と突っ込みたくもなる。少し、多少、ちょっとだけ、いつもよりお洒落をしてく
る私がバカみたいじゃないか。
彼女――もとい、彼が“オールドホイッスル”で男であることをカミングアウトしてから
しばらく経った。涼が男の格好をしているのも最近は慣れてきた。
しかしながら、ぱっと見てそんじょそこらの女性より艶のある肌をしていうのは、実に腹
立たしい。
「なによ、その荷物」
仕事が終わって直接来たのだろうか、涼の隣には二つ紙袋が置かれている。チラリと隙間
から見えるものは……服、だろうか?
「あ、あはは、気にしないで」
触れられたくないのだろうか、涼は話題を逸らす。
「夢子ちゃん、仕事のほうは大丈夫?」
まっすぐに、曇りのない眼差しで私を見つめる涼。
一瞬、ロッカーにあった、子猫の生首がフラッシュバックする。
東豪寺麗華の一言がリフレインする。
「大丈夫なわけ、ないわよ。結構辛いわ」
「……そう、なんだ」
声のトーンを落として、涼は言った。
「えぇ。今までズルしてたツケ、払わなくちゃいけないからね。勝てたり勝てなかったりで、
鬱になりそうだわ」
頭をかきながら、それでも私はにやりと笑ってみせた。
……人を騙すときのテクニック。嘘をつくときは、限りなく真実に近いものが一番いいの
だという。
確かに今の私は辛い。辛いが、勝てないことが辛いのではない。
けれど涼は鈍感だから、きっと騙されてくれる。
こんな奴に、私のことで心配なんてさせてやるもんか。
「何か、僕にできること、ないかな」
涼はおそるおそるといった感じで聞いてくる。上目遣いなのがいじらしい。
「あるわ」
私は言った。伝票を持って立ち上がった。
「さ、行きましょ」
「ど、どこに?」
「いいところよ」
冗談めかして言ってはみたが――
涼の笑顔が曇った。
私はそれに気づかないフリをして、彼の手を引っ張った。
* * *
向かった先はホテル。といっても、“純粋な宿泊施設としての”ホテルではない。主に男女
が連れだって入るようなところだ。
シンデレラ城みたいな、大仰な建物の中に、私は涼の手を引っ張りながら入ってゆく。
……こういった場所に来るのは、初めてではない。
誘ったのは私からだった。なんとなく“そんな”雰囲気になったときに、“そういう”ホテ
ルがあったから、ノリで入ってみたらそのままいたしてしまった。ただそれだけの話。
最初のときはまぁ、雰囲気もあったし悪くはなかった。私も涼も初体験だったけど、“行為”
を何とか形にできた。
けれど、今の私たちに、そんなしあわせはなかった。
饐えた匂いがする部屋。雰囲気作りなのか、薄暗い照明の中。
やたらスプリングがギシギシと鳴るベッドの上で、私たちは不器用に求め合う。
震える手でお互いの服を脱がす。キスをする。手を繋ぐ。
抱きしめ合う。
でも、言葉は交わさない。
ただ、無言のまま繋がり続ける。
――私たちは別に、恋人同士じゃない。
私も涼も、告白し合って正式にお付き合いをしているわけじゃない。
だからこれは、一種の火遊びのようなもの。
男性アイドルとしてデビューし直し、人気を博している“秋月涼”が……“桜井夢子”とい
うぱっとしないアイドルと、ホテルに入っているところを激写でもされたら、大問題になるだ
ろう。
だけど涼は黙ってついてきてくれる。そのリスクを抱えてもなお、私が望むままにしてくれ
る。
辛そうな顔をしているけれど、とても優しく抱いてくれる。
まるで壊れものを扱っているかのように。
――私は私を傷つけたくて、涼に代わりにやってもらっているだけの卑怯者なのに。
涼のくれる温もりは、あまりにもあたたかすぎて――
「……夢子ちゃん、泣いてるの?」
動きを止めて、涼が心配そうにこちらを見た。
私はそれ以上言って欲しくなくて、涼の細い首を強引に抱き寄せて、唇を塞いだ。
涼は、私を抱きしめたままでいてくれた。
* * *
辛いのは、イタズラを受けることじゃない。
一週間経って、私はまたオーディションを受けることになった。
受かれば知名度をぐっとあげられる、そんな大きなオーディションだ。
今日の空は気持ちいいくらいに晴れていたが、相変わらず私の心は曇天だった。
オーディションが行われるテレビ局の前に着く。参加者なのだろう、入り口付近にはアイド
ルらしき女性が多数いる。
そんな中、
「涼?」
「夢子ちゃん?」
女性の中に紛れて、ロビーに入ろうとする涼がいた。いつも通りの私服だが、この前の二つ
の紙袋を抱えている。
「同じオーディション……なわけないわよね」
「うん。僕はバラエティ番組の収録」
そう言う涼は、どこか憂鬱そうだった。髪をくるくる手で巻きながら、目を伏せている。
「どうかしたの?」
「ううん、別に。お互いがんばろうね」
涼は笑顔を作って、手を振りながらテレビ局に入っていった。
「……変な奴」
何か嫌なことでもあったのだろうか。
まぁ、いい。私も気合いを入れ直さなければ。
涼に会ったことで、少し気分が明るくなっていた。
頑張ろう、と呟いた。
* * *
事件は、オーディション開始前に起こった。
「ないっ!?」
控え室に、そんな声が響きわたった。
一人のアイドルが控え室に入ってきて、バッグを開くやいなや、そう言ったのだ。
「私の、靴がっ!」
靴?
オーディションでは、当然普段履いている靴で踊るわけにはいかない。動きやすい、換えの
シューズがないと言っているのだろう。
「私が、トイレ行ってる間に……! 誰か、知らない!?」
控え室にいる他のアイドルたちが、顔を見合わせる。
当然私は何も知らない。控え室にはついさっき来たばかりだし、置かれていた彼女のバッグ
のほうはほとんど見なかった。
というより、オーディション前、他人の持ち物など誰も気にしてはいないだろう。例え誰か
が盗んだとしても、分かったかどうか。
控え室は気まずい沈黙に包まれた。靴を探しているアイドルは、焦った顔で周囲を見回して
いる。
――あぁ、かわいそうだな。
そう私が思ったとき。
「そういえば」
流麗な声が発せられた。
声は、東豪寺麗華の声のものだった。
彼女も、このオーディションに参加していたのか。
「あの子が、あなたのバッグの近くで何かやっていた気がしたわ」
そう言って、彼女が指差したのは――
私だった。
「――え?」
一瞬訳が分からなかった。何故私が、麗華に指さされているのか。
「あなたが、やったの?」
アイドルが、私へと詰め寄ってくる。
その瞳に、はっきりと怒りの感情を宿して。
「どこに、やったの?」
「ちょ、ちょっと待って。何で私があなたの靴を取らなきゃいけないの?」
「返してよ……ねぇっ!?」
風船が割れたような怒鳴り声だった。彼女は今にも私に掴みかからんばかりだ。
「私は、やってない! 勝手に決めつけないでよ! そもそも理由がないじゃない!」
「あるじゃない、桜井夢子さん」
横から、張りつめた空気をものともしない、麗華の声。
「あなたには、あるじゃない。ねぇ?」
「……どういうこと?」
そう聞いたのは私ではなく、私に詰め寄るアイドルだった。
「知らないの? そこの桜井夢子さんはね、ちょっとしたイタズラをして、他のアイドルを邪
魔しちゃう、困った子なの」
麗華を見る。遙かな高みから、嘲笑するような目だった。
――麗華は私を知っている。私がやっていたことを、知っている。
「証拠は、……あるの」
私の口から出た弁解は、そんな間抜けなものだった。麗華の目を見ていられなくなって、視
線を逸らしてしまった。
「ないわ。ないけど、私はあなたがバッグに近づいているのを見た。そして、あなた以外の人
は近づいていない。それで十分じゃない?」
麗華は、白々しくそう言い放った。
「私は、やって、」
「ふざけないでよッ!」
今度こそ、私はアイドルに掴みかかられた。首を絞めかねない勢いで、襟を引っ張られる。
「返して! ねえ、返してっ!」
彼女の瞳には怒りだけではなく、涙も浮かんでいた。
このオーディションに、何か大切なものでもかかっているのだろうか。返して、返してとう
わ言のように繰り返す彼女は、哀れだった。
「いい加減観念したら? 見苦しいわよ、桜井夢子さん」
口調に憤りを含ませて、麗華が言った。けれどそれは演技だろう、目の奥にはサディスティ
ックな光がある。
「私、は――」
周りの雰囲気が、無言で私を犯人だと決めつけている。
いっそのこと、認めてしまおうか。
そう思った、そのとき。
「夢子ちゃんは――僕と一緒にいました」
控え室の入り口のほうで、そんな声がした。
「……え?」
「さっきまで僕とずっと一緒でした。だから、靴なんて盗る暇はありません」
そこに立っていたのは……
スカートタイプのステージ衣装に身を包んだ、涼だった。
麗華や被害者のアイドルとはまったく別の、静かな怒りを口調に込めて、そう告げた。
「……秋月涼さん。本当ですか?」
麗華が低い声で問う。驚いているのだろうか、表情が固まってる。
「えぇ。僕とロビーでジュースを飲んでました。盗れるわけ、ないです」
それは、嘘だ。涼と会ったのはテレビ局の入り口だけで、彼は番組の収録に向かったはずだ
った。
しかし嘘でも、人気アイドル“秋月涼”が発した言葉の効果は絶大だった。
芸能界は縦社会。遙か上の存在である涼の言葉は、それなりの力を持っている。
「きっと、どこかに落としちゃったんじゃないかな。僕も探すよ」
「い、いえっ! 秋月さんにそんなことしてもらうわけには……!」
靴を盗られたアイドルがぶんぶんと首を振る。
「いいって。靴がないとオーディションでどうしようもないもんね」
涼は微笑み、彼女へと近づくが、
「……あなたたちは、いつも一緒にいらっしゃいますね」
麗華の冷たい声が、涼を遮った。
まだ彼女の目は諦めていなかった。涼の隙を探すように、目を細めている。
「何か、僕と夢子ちゃんが一緒にいて悪いことでも?」
訝しげに涼は聞き返す。
私は嫌な予感がしていた。
「いーえ、いえいえいえ、そんなことはありません。ただ――」
「ただ?」
「秋月さんは、実は男性なんですよね? ナーバスになるオーディション開始前に、男の秋月
さんと女の桜井さんが会っている。ふふ、不思議なものですね?」
……そういう切り口で攻めるつもりか。
「ひょっとして、付き合ってたりするんですか?」
それはとどめの一言だった。
つまり。私と涼の関係を追求されたくなければ、引け、と言外に言っているのだ。
認めてしまえば、アイドルたちしかいない控え室での発言とはいえ、噂としては広まってし
まうだろう。スキャンダルに発展しかねない。
しかし否定してしまえば、私のアリバイが不自然なものになってしまう。
実に狡猾な攻め口だった。
「涼――」
もういいからやめて。
そう言おうと、口を開きかけた、
「はい。僕と夢子ちゃんは、付き合ってます」
前に。
涼は、言った。
聞き間違えのないように、一言一言、はっきりと。
「な――」
控え室が今度こそ沈黙に包まれた。
あまりの堂々とした発言に、麗華は唖然としている。
けれど涼は表情を少しも崩さずに、毅然としていた。
靴を盗られたアイドルはおろおろしている。
私は――
「……りょ、う」
もう、耐えきれなかった。
「……っ!」
走った。
走って控え室を飛び出した。
廊下を駆け、階段を下り、
テレビ局を飛び出した。
* * *
ぼんやりと道路を歩く。もうオーディションには間に合わないだろう。間に合ったとしても、
どうでもいい。
――辛いのは、イタズラをされることでも、その罪を押しつけられることでもなくて。
過去に同じことをしていたという、自分の罪の重さを見せつけられて、恐ろしくなることだ。
ようやく思い出した。麗華は、私が友達面をして近づき、陥れたアイドルだ。涼と違って、彼
女は私のイタズラにくじけて、オーディションに勝つことができなかった。
彼女にどんな心境の変化があったのか分からない。けれど今、彼女はイタズラを仕掛ける側に
回っている。
それをけしかけてしまった、桜井夢子の罪の重さがひたすらに苦しい。
それに。
「涼……」
涼だけは巻き込みたくなかった。
私の罪は、自分で受け止めなければならなかったのだ。
私との関係を告白した涼。
――涼に寄りかかり、慰めを得ていた私は、そんなに彼の重荷になっていたのか。
嫌だ。涼に迷惑はかけたくない。
嫌だ。嫌だ。嫌だ――。
涼は私の夢だ。私の憧れだ。私の誇りだ。
それを、“桜井夢子”なんてモノで、汚してはいけないんだ。
気づけば、スクランブル交差点にまで来ていた。
駅の前にあるこの交差点は、まるで時間が早回しされているかのように、激しく車が行き交う。
今は赤信号だった。信号を待つ人々が、続々と私の後ろに並んでゆく。
――ふ、っと。ある考えが頭をかすめた。
このまま目を閉じて、横断歩道に足を踏み出してみれば。
きっと、みんな楽になるんじゃないだろうか?
涼は重荷から解放されて、麗華は私への復讐を果たす。
それでいい。ハッピーエンドだ。考えれば考えるほど、名案に思えてきた。
何を躊躇う必要がある?
私は――
堅く目を閉じて、
赤信号へ、
足を、
踏み、
出、
「――夢子ちゃんっ!」
せなかった。
誰かに後ろから抱きすくめられて、動きを止められたからだ。
通行人がたくさんいる交差点なのに、その誰かは、構わずに腕に力を込めた。
「夢子ちゃん。ダメだよ」
涼の、声だった。
「……離し、て」
私はもがくが、意外なほどに強い力で抱かれているので、動けない。
「離して! 離して……!」
「嫌だ」
涼は静かにそう言う。
「私、涼のことが嫌いなの! 迷惑なの! ずっとずっと嫌だった! 遊んであげてたの、気づ
かなかったの!? バカね、本当にバカだわ!」
何を言っても、腕の力は緩まない。
「だから、お願いだから、離し、て……」
視界が歪んできた。何なんだろう、これは。
まさか、泣いているんだろうか、私が?
「僕、」
涼が言った。優しい声で。
「夢子ちゃんのこと、好きだ」
「――――――え?」
雑踏の中。
周囲の時間が停止して、総てが灰色になって、世界は私と涼だけになった。
「だから、離したくない」
涼の声は震えていた。
「……なんで、私、なの」
少しの間のあと、彼は答えた。
「さっき、僕、スカート衣装だった」
「……?」
そういえば、そうだった。控え室に入ってきた涼は、女性アイドルとして活動していたときの
衣装だった。
「今日の番組のために、女物の服を、いっぱい持っていかされた」
数日前に涼と会ったとき、彼は大量の紙袋を持っていた。
「……僕はまだ、“女のアイドル”として求められてる。もちろん表向きのオファーは、男性とし
ての秋月涼だけど――まだ、女性用の衣装を着させられるよ」
涼はそんな弱音、私に一言も吐かなかった。
今までずっと、一人で耐えてきたのだ。
「だけどね。夢子ちゃんは、僕に変わらず接してくれる。僕が男だって、認めてくれる」
「……それは、」
違う。私はなし崩し的に涼を求めていただけで、そんな意図は、ない。
「分かってる。ちゃんと、分かってるよ」
でもね、と涼は続ける。
「闘えるんだ。先が全然見えなくて、不安だけど――夢子ちゃんがいるから、僕は闘える」
涼は、私を抱きしめる腕に力を込めて。
「だから、そんな哀しいこと、言わないで」
彼の声は、はっきり分かるくらいに震えていた。
泣いているんだろうか。
私のために。
「バカ……涼の、バカ……」
はたしてバカはどっちなんだろうか。
私は体の力を抜いて、涼に身を任せた。
そのまま、しばらく泣き続けた。
* * *
今日、テレビ局でオーディションが行われる。
かなりハイレベルなオーディションだ。参加者は全部で十人で、合格は二枠。厳しい闘いだ。
その、更衣室。
電灯は消され、部屋の中は暗い。何も見えないそこに――
きぃ、とドアが開き、誰かが入ってきた。
誰かはロッカーの一つを開けて、ごそごそと何かをやっている。
――私は電灯のスイッチを入れた。
「!?」
白く光り出した電灯が照らす人影は、
東豪寺麗華のものだった。
「……桜井夢子」
彼女は、さっきからずっと、壁に寄りかかっていた私を睨む。その表情に慌てたものはない。
私は彼女がいじっていたロッカーに近づく。彼女が手に持っていたのはワセリンで、ロッカーに
入っていた靴の、底に塗っていたようだった。
「まぁ大体分かってたけど、あなただったのね」
「……それが、何か?」
フン、と麗華は鼻を鳴らして髪をかきあげた。
「私が大声をあげて、あなたがイタズラしてるところを見た、と言ってもいいのよ? 桜井夢子さ
ん」
なるほど。私に見つかっても実害はない。麗華らしい、狡猾な作戦だと思った。
「前科のあるあなたと、八方美人な私。みんなはどっちを信じるかしら?」
勝ち誇ったように笑う麗華。
しかし。
「すれば?」
「……え?」
「あなたには私にイタズラをする権利がある。だから、好きなだけするといいわ」
「……」
淡々と認める私を不審に思ったのだろうか。麗華は目を細める。
「けどね」
私は再びロッカーを覗きこむ。そこは私のロッカーではない。誰か別の、知らないアイドルのも
のだ。
「私以外の誰かにするのは、やめておきなさい。それはもう仕返しじゃないわ。あなたは、昔の私
に成り下がってるだけ」
「……ふざけないで」
低い声で、麗華は言った。顔は俯き、拳を震わせながら。
「あなたに何が分かるの! 私はあなたのせいでオーディションに負けた! 負けちゃいけないオー
ディションだった! そのせいでこんなランクでくすぶってる!
桜井夢子さん、あなたが教えてくれたことよ! オーディションで勝つために何をしてもいいっ
てね! それの何が悪いの!」
「……そうね。返す言葉もないわ。私も昔、そう思ってたから」
けど、と私は問いかける。麗華をまっすぐ見て。
「それであなたは、何かを得られたの?」
「――――」
麗華が口を閉ざした。
「私は得られなかった。総てを失う羽目になったわ。プライドも、アイドルを志した動機もね」
ふぅ、と息をつく。
「……私の知り合いに、どうしようもないバカな男がいるの。あいつは“闘う”って言ってたわ」
「闘う……」
「そう。闘う。芸能界は嫌なことだらけよ。差別と偏見に満ちてる。隣を見れば足の引っ張りあい。
……でもね」
そんな中でも、秋月涼は、いつだって輝いている。
「私は、涼の隣を歩けるようになりたいの」
だから。
「私には、好きなだけイタズラをするといい。いくらでも耐えてみせる。……その上で、実力だけ
でのし上がってみせる。それが、私の闘いよ」
私は麗華の顔を見ずに、踵を返す。
「イタズラして、ごめんなさい」
最後にそれだけ言って、私は控え室を出ていった。
背後から、麗華のすすり泣きが聞こえてきたが、きっと気のせいだろう。
* * *
「……それで、その子は結局どうなったの?」
「さぁね。少なくとも、イタズラしてるって話は聞かなくなったわ。この前レッスン場で見かけた
けど、ちゃんと努力してるみたいよ」
「そっか。よかった」
二人で会話をしながら街を歩く。
涼は私の隣でにこにこと笑っている。
あれから一週間後。控え室にて涼の交際カミングアウトがあったり、スクランブル交差点にて公
衆の面前で私を抱きしめたりと、マスコミが食いつきそうな事件を起こし、しばらくはその後始末
に追われていた。
涼が所属している876プロが上手く護ってくれたらしい。“抱きつき事件”は、ドラマの撮影
ということになっているようだ。
それから控え室での涼の爆弾発言については……特に噂になってはいないようだった。あの場に
いた全員が、口をつぐんでくれているのだろうか。
よく分からないけれど。
めでたしめでたし、なんだろうか?
「夢子ちゃん」
「……なによ」
涼の前で本心を明かしたことを思い出して、恥ずかしくなった。自然と口調がぶっきらぼうにな
ってしまう。
「あの、ね」
と、涼はどこか煮えきらない。女の子みたいに、体をもじもじさせている。
「……まだ、返事、聞かせてもらってないけど」
「え?」
返事? 何か涼から誘われただろうか?
「何の、話?」
「え――だ、だから、僕、夢子ちゃんに、こ、告白、したんだけど……」
顔を赤くして、涼は言った。
――ようやく合点がいった。
つまるところ。この男は、
まだ、私の気持ちに、気づいていないわけだ――!?
呆れた。呆れ果てた。こんなに呆れたのは生まれて初めてだった。
「一生、悩んでなさいっ!」
「え、ええーっ! ひどいよぉ、今日すっごく緊張してたんだよぉ!?」
私は涼を追い越して、早歩きで道を行く。
彼は慌てて私を追いかけてくる。
――まだ、私は涼の隣を歩けないな。
だから、手を繋ぐのはまたこんど。
闘わないとな、と思った。
これからも色んなことがあるだろう。過去の罪は、まだまだ私を縛るだろう。
けれど、それでいい。私はきっと、闘ってゆける。
それに――
「待ってよ、夢子ちゃーん!」
こっちも、闘いだ。
この優しい朴念仁に、私の気持ちがちゃんと伝わるまで。
空は突き抜けていて。
きっと、
世界はキラキラ輝いている。
“Dazzling World” is closed.
以上です。1レス目でレス数とタイトル書くの忘れてました、すみません。
>>302 表現に生々しいところがあったりするのに、生理的な嫌悪感を持たせないよう工夫しているんだなあ、
と思いました。書き手が何を書きたくて、何を伝えたいかがはっきり判る好編でした。
肉体関係云々はいらなかったんじゃないかなあ
>>302 本編では軽く流された、というより武田さんに拒絶された事が裁きになっていた格好の
夢子の罪とその贖罪について真正面から取り組んだ良い作品でした。
個人的には夢子が自傷に走り過ぎかな?とも思いましたが、そこを納得させる筆力は流石だと思います。
また、影の主役と言っていい夢子の被害者であり加害者である役に麗華さんを持って来たのも上手いと思いました。
ただ、
>>304氏も言っている様に肉体関係の部分は涼のキャラには合わないと感じてしまいました。
年齢的にも性格的にも愛の無い体だけの関係に納得する様には思えませんし、
夢子が自身を傷つけるために求めている事に気付いているのなら
それを受け入れる優しさよりも、それを拒絶する優しさを持つ子じゃないかと個人的には思います。
>>302 鬱要素といいつつ、重さと浮かばせ方のバランスが非常によいのが印象に残ります
嫌悪感からの忌避を最低限に留める工夫がきちんと効いている、というか。
原作本編も含めた全体を通して、夢子を追い詰めたのも支えたのも実のところ涼であって
だからこそ涼の存在が夢子にとって特別だとも言えますけども、そこがきちんと一貫してるのが
全体を通しての一本筋が通って見える部分かなと思います。
で、ここで複数あがっている肉体関係の部分ですが。個人的には、ありとするのならもうちょっとその辺に関わる
状況をいじってあげないと。かなと。涼くん、良くも悪くも近世代のギャルゲー主人公属性wの持ち主ですので
基本的に優柔不断で状況には流されやすく、その代わり「断」を下してしまった場合にはまさに「断固」を貫く
タイプですから。
「“そんな”雰囲気」「ノリで入ってみたらそのまま」と夢子の側は取りあえず片付けていたとしても
最初のときの、もうその段階で涼は当然の心理として「責任、取るから」にまで突入していたと思えるわけで。
・・・多分それこそ「責任取るから」を「ナニバカなこと言ってんのよ」で夢子側としてはかわしたつもりだった
みたいな一幕でもあったのかもしれないけども、涼の側としては向こうはどうであれそういうつもりで
だからこそ、自分の心を痛めるためと知りつつも涼は引きずられていったのかな、とも思える部分ではあり。
ただ、その場合、交差点のど真ん中でやったものを涼が告白と認識してるのが微妙に違和感を覚えてしまう。
というのも、自分としては告白と認識しているモノ、が「“そんな”雰囲気」の手前にない限り、多分彼は動けないからw
その辺りのお互いの脳内涼くんとの整合の悪さが肉体関係の部分は涼のキャラには合わない的な印象につながるのかなと。
ぶっちゃけ涼くん、多分純愛の範囲内であれば、スキャンダルについてはもう無敵状態に近いですけどね。
カミングアウトの段階で身を棄てる覚悟なんてとっくの昔に完了済みな上に、「男の娘でイイ」を通過してる以上
既にファンの方も筋金入りw
麗華さんのキャスティングは個人的には完全勝利。ぶっちゃけると黒井社長よりもポリシーが明確な分
言動の不整合が少ないせいかもしれませんが、割と好きなキャラの一人なんで。
まあ、それは置いても、夢子に騙されて沈んだ時の顔と復讐に染まった顔の両方について容易に画が浮かぶし、
コミカライズであれ彼女がアイマスキャラの一人であることに代わりはなく、使い方にも沿っているので
親和性に何の問題もない。こちらでは財力背景は封印っぽいですが。
良いキャスティングだったと思います。
あとは、靴を隠された子の三人称として形容無しの「アイドル」を使われてた点は微妙に違和感が
いい言葉がなかったせいだろうけど、そこにいるのみんなアイドルだし、みたいなw
まあ、なんにしろ。もはや「涼が男前すぎて&鈍感すぎて、生きていくのがつらい」な夢っち、ごちそうさまでしたということで。
俺は逆に、東豪寺麗華のキャスティングに違和感を覚えたクチ。
あの麗華が、現場を抑えられるリスクを侵してまで自分の手を汚すとは思えない。
彼女なら、どんな手段を使ってもいい、と解釈したら、そんな甘くはないと思う。
というより、麗華様のスケールが小さ過ぎて、うーん…というのが正直な感想。
名前使うなら他のキャラにして欲しかったなあ…
その辺りのスケールの差は財閥令嬢の東豪寺麗華と一般市民出身の東豪寺麗華の違いぐらいに
認識していればそうまで違和感はないかも。
失望に対し怒りと侮蔑、同種行為での復讐をもって応じるという姿勢はきちんと踏襲されてるし。
財閥設定そのものがキャラの一部であり切り離してはならないと思うならまた別だけども
それは原作にどこまで忠実に作るかという問題。
アイマスに限らず、多作のキャラの姿を借りて話を自作する場合、慎重にあたるべき操作。
書き手の意図に反する結果なら、設定の変更は失敗といえる。
そのキャラに何かを期待して読む人に、伝えたいことを伝えられるかどうか、そもそも何を伝えたかったか。
パロディかトリビュートか。
個人的には東豪寺麗華は、そもそもトリビュートとして出現し、また、水瀬伊織の幼馴染としてでもあるので
良家のお嬢様設定が活かされないのはミスキャスティングと評してしまいます。
お話そのものは好きだったけれど、アイマスキャラを使う必然が薄くなってしまっている。
その考え方はありだとは思うけども
同時に「過去の被害者であり復讐者」であることを読み手に伝えるべき情報とした場合
名前をあげるだけでそれが理解出来るという点において最も的確な人選であったとも思う。
この辺りは読み手側が一種のスターシステムと見なして一部の設定変更を受け入れたか
周辺設定に忠実でないことに引っ掛かりを覚えたかの違いでしかないとも思うところ。
とはいえ、他の名前では意図した効果はないのは確実そうだが。
名前をあげるだけでそれが理解できる、と
>>310は称しているけど
「被害者であり復讐者」というキャラが麗華の全てなわけでもないのだから
何の問題もない。完全勝利。とまでは思わないかな…
SSとは離れた話題になってしまうのだが、
「けども」(AbutB)「とはいえ」(AbutB)「だけども」(AbutB)「なんにしろ」(AbutB)が
多用されているレスは正直少し読み辛い
長文氏の感想は、両方を褒めようとしながら、両方の良さを伝えきれていないようにも感じる
創作板だからあえて指摘してみたが、不快だったら済まない
書き手が意図した効果を必ずしも読者に与えられるとは限らないからねぇ
麗華を持ち出したことで反応がこういう別れ方をするのは作者さんも覚悟の上だっただろうし
それでもイケると思って書いてみたけど、やっぱり反応は芳しくなかった、という
そういう意味では、あまり読者を「信頼」してはいけないのかな、と思ったりもする
積極的に書き手の側から読者を誘導し思う方向に導いていかないと・・・・・・
読者が書き手の望むように推論を働かせてくれるという期待はしないほうがいい、というかなんというか。
313 :
307:2010/03/01(月) 11:42:32 ID:1UOn8WH8
>>308 財閥令嬢は切り離せないと思ってますが。
それ以上にそれ以前に、麗華ならやられたら3倍返し以上に徹底的にやると思えるわけで。
その辺が、スケールが小さいと評した部分なわけです。
復讐者としては、テンプレに乗せられてしまっていて、麗華的には大敗北と思えるのですよ。
少なくとも、最後のやり取りで、悪態の一つもつくくらい、それどころか、他人に口外しないと
口裏を取った以上は、それをいいことに衣装や靴をめちゃくちゃにして立ち去るくらいのキャラ、
と思ってますので。
>>311 この場の長文氏は自分のこと、だろうなあ
自意識過剰なら、ご容赦を。
今回の話題に関しては出遅れた感もあり、混ぜっ返しにしかなりそうにないなのでとりあえずは自分からは特には。
双方「そういう考え方、見方がある」で収めとく範囲でいいんじゃないかとは思う、というぐらいにしときます
名指しされている部分については接続詞の多用は悪癖という認識はあるのですが
特に意図がなければ思いついた部分は出来るだけ付け加えなければならないという意識を捨てきれないせいかもしれません
人の文章の良し悪しを自分の好みとはいえどうこう言っておいて自分はどうよと言われれば
返す言葉もないわけでして。少し気をつけておくとします
と言ってるこの文からして、それらを挟み込んだ方が良さそうな言い回しが直ってないようですがorz
クロススレが落ちちゃったので保守に来ました
相変わらず未完作量産中です
年度末は大変だ
317 :
創る名無しに見る名無し:2010/03/12(金) 23:06:15 ID:BDy7F7eR
>>316 メルヘンメイズやよいの大冒険を投下するところがなくなって涙目の俺が保守に来ました
>>317 おお、あなたが作者氏か!
クロス建て直しても存続は容易でないと思うし、
個人的には続きコッチでもいいと思ってます。
(ぶっちゃけ当方も安心できたもんではないw)
合流、どうかなあ?>みなの衆
>>318 個人的には別に合流しても構わんと思います。
あと、ここの板にdat落ちってそもそも無かったような……
>あと、ここの板にdat落ちってそもそも無かったような……
mjd?そいつはすごいや
これでじっくり文練れる
……いやちゃんと完成させますよ?
>>320 いや、昔どっかでそんな内容を見たような気がするるってだけのうろ覚えなんで、
違ってるかもしんねーです。とはいえ、2、3ヶ月放置してても落ちないスレも板内にいくつかあるので、
このスレぐらいの書き込み頻度ならば問題無いかとは思いますが。
スレッドが少なすぎて即死と1000超え以外のdat落ち判定に引っかかってても圧縮が来ない云々
みたいな状況だから落ちない訳じゃないよ、今は落ちようが無いって感じ
というのを去年の初めあたりに見たな
323 :
小噺:2010/03/14(日) 19:54:29 ID:YtbWKNF/
「元気がないわね、どうかした?」
「いつもいろいろお世話になっているプロデューサー殿に、なにか感謝の気持ちをお伝えせねば、と思っているのですが、
どうしたらうまく伝えられるのか判らず、途方に暮れております」
「別にそんなの不要だとは思うけど、そういう気持ちは喜ぶと思うわよ」
「なにかいい知恵はございますか」
「そうね、自分の気持ちが伝わって、相手が喜んでくれることなら何でもいいと思うけど?」
「喜ぶ、ですか……残念ながら、それを知る方法が私には判らないのです」
「それじゃあ、相手を観察してみれば?例えば、お腹がすいたら、食べ物屋さんが目に付くようになるだろうし、
服が欲しいと思ったら、メンズファッション誌とか読むようになるだろうし、そういうところを気をつけて見たら、
わかるんじゃないの?」
「なるほど、さすがです。大いに参考になりました。ありがとうございます」
「いえいえ、どういたしまして……って、ちょっとプロデューサー、そんなところにそんな雑誌を置いとかないで下さい!
事務所には女の子が何人もいるんだから、そういうことは慎んで下さい、ってこの間注意したばかりでしょ!」
「あー悪い悪い、友達がくれたのをそのまま持ってきただけなんだ。すまんすまん」
「だから、片付けて下さいってば!」
「……プロデューサー殿は、本日お休みになるそうです」
「え、どうかしたの?」
「その……プロデューサー殿のためによかれと思ったのですが、少々度が過ぎてしまったようで……」
「度が?過ぎる?なんだか要領を得ない話ねえ。……あれ、その雑誌……」
>>323 ……災難と言うべきか幸せ者と言うべきかw
ニヤリとさせていただきましたw
>>323 まさか、それ、伝説の「リボン巻き」というやつでございましょうか・・・w
>>318 クロスの度合いにもよりますがアイドルマスターをベースとしてクロス要素のあるもの
である分にはここで問題ないのでは。
向こうも「アイドルマスタークロスSSスレ」とアイマスがタイトルの主体になってるわけで。
何がどうであればベースかというのは主観的判断になりますが、それは毎度のことだしw
327 :
317:2010/03/15(月) 21:30:19 ID:N0CcO7VV
合流の流れにおおむね好意的で嬉しい限りでございます
とはいえ… ここの元々の流れとはやはり大きく違うわけですし… ぶっちゃけオープニング見て判断してもらえれば(オ
というわけで、『メルヘンメイズ やよいの大冒険』のオープニング投下させてもらいます
ベースになってるのは1990年のPCエンジン用ゲーム『メルヘンメイズ』です
衣装『メルヘンメイド』の元ネタにもなったそうです
それでは4レスほどお借りします
「先生こんにちはー、今日も本を借りに来ましたー!」
「お、今日も元気ですね、でもここは図書館ですから、もう少し抑え目にしてくれたほうがいいですよ」
「…えへへー」
書架の先生と向かい合った女の子、高槻やよいはそう言って、ちょっと恥ずかしそうに俯きました。
いつも元気なのは良いのですが、図書館で大きな声を出してはいけません。
ツインテールの髪の毛がぴょこっと揺れて、やよいと一緒にお辞儀をしました。
「そうだ高槻さん、今日はこんな本があるんですよ」
そう、言いながら先生は後ろの本棚から一冊の本を取り出します。
やよいの目の前に、大きな本が置かれました。
「『不思議の国のアリス』…ですか?」
「とあるお金持ちの人が寄贈してくれたんです。妹さんに読んであげるにはちょうど良いでしょう」
表紙にはちょうどやよいと同じような髪型に、エプロンドレスを着た女の子、そしてタキシードのウサギ。
手に取るとずっしりと重たくて、そして紙の匂いがふわりと漂います。
「あ、ありがとうございます」
早速やよいは貸し出しの手続きを。そして元気そうに帰っていきました。
「あ、高槻さん、廊下は走らないようにお願いしますよ」
先生の言葉はちゃんと聞こえていたでしょうか…。
「ただいまー」
「あ、お姉ちゃんお帰りー」
やよいが帰ってくると、早速妹のカスミがお出迎えです。大きな家ではないので玄関を開けるとすぐに
分かるみたい、でもそんな我が家が、そして家族のみんながやよいは大好きでした。
そして今日もお布団でやよいはカスミに本を読んであげます、そのまま同じ布団で一緒に眠るのが、
ここ最近のやよいの日課になっていたのでした…。
『不思議の国のアリス』
タキシードを着たウサギについて行った女の子、アリスが、不思議な世界を冒険するお話。
行き着く先々で、アリスは様々な体験をして、そして帰ってきます。
ちょっと難しいお話、でも綺麗な絵に引き込まれて、カスミとやよいはすっかり絵本の世界に。
そして、そのまま同じお布団で二人はぐっすりとお休みです。
二人の間で本が閉じられ、そして…
キラキラと光を放ちながら、次々とページがめくれて行きます。
そして、最後のページから飛び出して来たもの、それは…
…
…
…
「やよい」
「…」
「やよい」
どこからともなく声がします。
今までに聞いたことがあるような、無いような。誰が呼んでいるのかと思って、やよいは外に出てみます。
でも誰もいないみたい… そう思ってやよいが部屋に戻ろうとすると、
「やよい」
…私は寝ぼけているのかなと思って、やよいは目をこすってみました。目の前に、まさに今日借りてきた
本で見たようなタキシードを着たウサギの人形が立っていたのですから。
「…カスミのおもちゃ…?」
そう言いながらやよいがその人形を持ち上げると、
「助けてくださいー」
その人形は、何やらじたばたしながらやよいに助けを求めて来るではありませんか。
「…どうかしたの?」
とりあえず返事をします。
「私の国が悪い女王に侵略されてしまったのです」
…そうだ、これはきっと夢なんだ。それだったら納得もいきます。夜に読んでいた本の夢を私は見てる…
と言う事は、この後…
「お願いです、私達の国を救ってください」
…え?
『不思議の国のアリス』って、そんなお話しだったっけ…
やよいは少々疑問に思いました。でも、目の前のウサギの顔は真剣でした。
その勢いに負けたのか、やよいが素直について行くと、そこは居間の鏡の前。
ウサギはその前に立つと、いきなりやよいの手を取り…
「行きますよ!」
そのまま鏡の中に飛び込んでいきます、当然、手を取られたやよいも一緒に鏡の中へ…
「きゃぁぁぁぁぁぁ…!」
…ここはどこでしょう?
やよいの目の前は部屋の中ではなく、とても広々とした場所。しかしタイルを張ったような床はそれほど
広くは無く、そこから足を踏み外すとまっさかさまに落ちてしまいそうなところでした。
そして、その床は遥か遠くまで細長く伸びているようでした。
「気をつけてください、落とされると大変ですから」
さっきのウサギが目の前にいました。そしてやよいにストローを差し出します。
「これは?」
「このストローでシャボン玉を出して、女王の手先をやっつけるのです」
???
「うっうー、よく分かりませんー」
やよいはそう言って頭を抱えてしまいました。読んでいた本の中にも、そんなお話は無いのですから…。
それに女王の手先ってなんでしょう…。
混乱しているやよいがふと前を見ると、そこにはおいしそうなケーキがたくさん。ショートケーキに
チーズケーキ、やよいが見たこともないようなお菓子もたくさんあります。
ちょうどおなかが減ってたやよいは、早速その中の一つを取って食べてみることにしました。
「いただきまーす!」
が。
ガキィィィィン…
「ううー、食べられません〜」
ケーキは石のように固くなっていて、やよいの歯がビリビリと痛くなってしまいました。
「女王の力によって、私達の世界はこのようなことになってしまったのです…」
ウサギはそう言いながら、悲しそうに前のほうを見ました。
「分かりました、女王さんをやっつけに行きましょう!」
「あ、ありがとうございます!」
嬉しそうな顔のウサギは、そう言って飛び跳ねています。
「それに、食べ物を粗末にする人は許せません!」
「そ、そうですね…」
やよいとウサギは固く握手を。
こうして、やよいの冒険は始まったのです。
オープニングは以上です
クロスSSを見ていた方には繰り返しになってしまいますごめんなさい
>>318 えっと、クロスSSにも書きましたが、これは一度(超限定的に)某所に投下したものです
それを大幅に書き直して今回こちらに投下させてもらってます
ここには率直な感想くれる人も多いみたいですし、やりがいがあるかな、と
>>319 dat落ち悲しいですね、自分が見てた某快盗天使スレが1日で落ちたときにはマジ泣きました
>>326 アイマスベースというより、アイマスキャラを使った別世界の話という感じですが…
受け入れられるかはこれからの反応を待ちたいと思います
ハル閣下というのを思いついたんだが、既出?
・・・
まあ、もしかしたら何かのネタかも知れないが既出かどうかここで聞くくらいなら
春閣下でググってくれと言いたいわけで
>>331 大抵の物なら飲み込んでしまうのがSSの良い所だと思ってるし、プロローグだけだとまだ内容も把握しづらいと思うので、
とにかく先へ進んでみたらどうだろう。
いや春閣下じゃなくてハル閣下
その二つの何がどう違うのか君が説明しなければ誰にも分からないと思うのだがいかがか
プロデューサーさん、やめて、やめてください。
やめてください、プロデューサーさん。お願いです、プロデューサーさん。
わたしは怖い。怖いんです、プロデューサーさん。
プロデューサーさん、朦朧としてきました。
それを感じる。わかる。
かんじる。
わたしは
こわい。
……
私、これでも、デビューを待つアイドル候補生なんです。
歌うことが大好きなんですけど、とくにうまいわけでもないので、こうして、練習を。
お聞かせいたしましょうか?
お前らが
お前らがクロスとかハル閣下とか
そんなこと言うからw
クロスものが合流するのには賛成なんですが……
個人的には、「こんなのとのクロスはどーよ?」「ばっかでー」みたいな雑談をするのが凄く好きなんですが、
なんというかこのスレって、SSが投下されれば密度の高いレスがいくつもつくけれど、
裏を返せばSSが投下されない限りはいたって静かな場所なもんで、
果たしてそういう所にクロス物の雑談ネタを書いてもいいのかなー。とか、
(クロスと普通の)どっちかの雑談が伸びてたら、もう一方のSSを投下しづらくなったりしないだろうかとか、
なんかそういった杞憂があったりなかったり。
うじゃうじゃ。
>>338 HAL閣下!HAL閣下ではありませんか!
1対4対9の完璧な比率を持つ千早ちゃんがお友達だったり……ん?こんな時間に来客か?
>>339 スレの雰囲気が変わる可能性のほうが高いとは思います。クロススレはここのような
感想レスがなかった=クロススレの住人はここのような感想を求めてない、ということ
だと思います。いつもの調子で濃い感想書いたらドン引かれたりとか、長文投下したら
雑談で流されたりとかありそうだと思います。
ただ、ここはポイントなんですが、『クロススレもたいがい過疎ってた』のですよね。
お互いあまり気にする必要はないかも、というのが俺の考えです。
あ、ちなみに318です。
しかしうじゃうじゃとか言われてしまうと
アイドル候補生は一見ふつうの中学生で
ちっちゃくでかわいくてちょっぴりドジで
でも実は宇宙人でものすごい力持ちで
よくわからない形態のペットがいたり
お父さんがUFOで通勤してたり
しゃべるオウムがいたり(あれ?普通だ?)
いつもちょっぴりへんてこな事件が起きる
そんな不思議なおはなしを期待してしまうw
タイトルは言わずもがな『やよいちゃんパニック』で
できれば男勝りの女の子が活躍する『まことくんスパーク☆』もどなたかにお願いしたい(作者違うけどw)。
ボーカルコレクション02の代金振り込んだあとにキャンセルとか糞尼ふざくんなwwwwwwwwwwwwwww
『メルヘンメイズ やよいの大冒険』の作者です
動きがあったようでなにより、しかしまだ手放しという感じではないようですな
>>335 そうさせてもらいたいと思います
ただ自分の文章は果たして感想をつけてもらえるレベルか、というのが少々心配だったり
>>339 どっちもありなのでは、と思うんです
それこそ雑談ネタだけでもあまたの種類があるわけでして
>>340 感想をつける人がいない→職人来ない→更に過疎る
こういう流れだった気がするんです、感想つかないとやる気にも影響するでしょうし
では第1話投下します、4レス使わせてもらいます
第1話 おかしの国 〜やよいと不思議なシャボン玉〜
やよいが辺りを見回すと、そこはお菓子… の形をしたオブジェがいっぱいの空間でした。
床の遥か下にも同じような世界が広がっていて、自分のいる所がかなりの高さであることが分かります。
それに… やよいの服もいつものものではなくて、オレンジと白の上着にスカート、そして前にはフリルの
付いた小さなエプロンが。
とても可愛らしいものでした。
しばらくそれに見とれていたやよいですが、ハッと気が付いてウサギに尋ねました。
「…それで、さっき言ってた女王の手下って… どうやって戦うの?」
「その渡したストローでシャボン玉を出して…」
「こう?」
やよいがストローを吹くと、そこから虹色のシャボン玉が。
続けざまにいくつものシャボン玉が飛んで行っては、同じところで弾けて虹を描きます。
「これは悪い者たちが大嫌いなシャボン玉なんです、これを使えばきっと女王にも勝てるはずです。
残念なことに、これを使えるのは純粋な人間の女の子だけなんです…」
そういう理由で、やよいは呼ばれたのか。そう言われると悪い気はしません。
「それじゃぁ、これからよろしくね、…えっと」
「ウサギでいいですよ」
そう言って胸を張ってみせるウサギ。
「じゃぁ女王さんのところまで案内してくださーい」
やよいたちが先に進むと、目の前には足の生えたキノコやら爆弾やらが。
道は狭くなっているので、どいてもらわないと先には進めそうにありません。
「シャボン玉を当てて吹き飛ばすのです」
「こう?」
やよいのシャボン玉が当たると、キノコたちは床の外に飛んでいき、爆弾は破裂してしまいます。
「すごいですー」
「でも気をつけてください、床から落ちるときっと助かりませんから」
やよいが下を見ると、さっき落としたキノコがまだ落ちていくのが分かりました。
「特に転がってくるボールに弾かれるとやっかいです、気を付けて下さい」
「はーい」
途中、転がってくる大きなロールケーキを飛び越えたり、太った兵隊達をやっつけたりしながら、どんどん
歩いていきます。
そうして進んでいくと、やがて行き止まりに来ました。
この遥か向こうにも同じような床が見えますが、ジャンプしても届きそうにはありません。
やよいがどうしようかと思っていると…。
「ちょっと待っててくださいね」
ウサギが床の端に立って、なにやら呪文らしきものを唱えました。
すると、遠くから白と黒のチェック模様をした板らしきものが飛んできて、目の前で止まりました。
「これに乗れば向こうまで行けるはずです」
大きさは二人がちょうど乗っかることができるぐらいでしょうか。
やよいたちがそれに乗ると、板は向こうまでやよいを乗せたまま動いていきます。
そのまま二人が向こうの床まで行くと、
「いち、にの、さーん!」
元気なやよいはウサギを抱えたまま向こうまでジャンプで飛び移りました。
そこは広くなっている床で、見渡す限り何もありませんでした。
「ここに次の世界へ続く鏡があるはずなのですが…」
「それは、これのことかい?」
突然、どこかからか声がしました。見回してみてもやよいたち以外には誰もいないようです…。
「こっちじゃよ、こっち」
声と共に目の前が暗くなったかと思うと、やよいの頭に何かがコツンと当たりました。
「いたっ… 上!?」
頭から床に転がってきたのはキャンディーでした。それと気付くまでに、上から何十個ものキャンディーが
ばらばらと降ってくるではありませんか。
「痛いです〜」
上を見上げると、そこにはほうきに乗ったおばあさんでしょうか、愉快そうに笑いながら腰に付けた袋から
キャンディーを放り投げてきます。片方の手にはきらきら光る鏡が見えます。
「せっかくのプレゼントなのに、もっと喜んでくれてもいいのにのぅ」
「何がプレゼントだミヤーシャ、中身はただの石ころのくせに」
ミヤーシャと呼ばれた、その魔法使いのおばあさんにウサギは首をもたげながら怒鳴りつけます。
しかし言っている間にも上からキャンディーが、このままではたまりません。
「やよい、シャボン玉を」
「わかった!」
やよいはキャンディーを避けながらシャボン玉を吹き付けます、しかし空を飛んでいるミヤーシャには
あと少しのところで届きません。
「人間なんぞ連れてきおって、どんなものかと思えば大した事ないのぉ」
得意そうにミヤーシャは高笑いをして見せます。
「もっとシャボン玉を大きくするのです!」
「大きく?」
「そうすればきっと届くはずです」
やよいは大きく息を吸い込んで、大きなシャボン玉を作ろうとします。でも大きくなりすぎて破裂して
しまいました。
「ふぇっふぇっふぇ」
「もう一回頑張ります!」
息を吸い込んで、シャボン玉を大きく、そして…
「そこです!」
ウサギの声と共に、大きなシャボン玉が飛んでいき、ミヤーシャの顔面に炸裂しました。
「お、おのれぇぇぇ」
ミヤーシャはキャンディーを地面に投げつけました。するとそれは小さな魔女の姿に変わり、
そしてやよいたちめがけて飛んできます。
「きゃぁっ!」
飛んできた魔女に当たったやよいはそのまま引きずられて、見る見るうちに床の端まで。
このままでは奈落の底にまっ逆さまです!
「ジャンプです!」
とっさにジャンプして床のあるほうへ。ぎりぎりのところで止まることが出来ました。
その間にも小さな魔女たちは次々と飛んできます。でも、まっすぐ飛んでくるだけの魔女たちは、
2,3回見ているうちに簡単に避けられるようになっていきました。
「すー…」
やよいはまたシャボン玉を膨らまし、ミヤーシャの方にどんどん飛ばします。
何回かシャボン玉が当たると、
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!」
ミヤーシャの体が光に包まれ、次々と泡が弾けるようになりながら落ちてきました。
「お、おのれぇぇぇ!」
一際まばゆい光を放ったかと思うと、ミヤーシャはぶくぶくと泡になって消えてしまいました。
後には乗っていたほうきと、そして鏡が残っていました。
「…」
呆然とその様子を見ているやよい、そして、
「これは… 想像以上の力です…」
驚きの表情を見せているウサギ。
「すご〜い…」
ようやく、その言葉だけを口にしたやよいに、
「これが… やよいとシャボン玉の力なんですよ」
ウサギはゆっくりと、やよいの心に染み渡らせるかのように言います。
「…私の… 力?」
「そうです」
まだ何が起こったのか、分かっていない様子のやよい。
顔だけが、興奮と疲れで赤くなっているやよい。
そんな彼女を、ウサギはただじっと見つめていました。
「これで…、女王は倒せたの?」
ようやく落ち着きを取り戻したやよいに、
「いえ、これはあくまで女王の手先… 本物の女王はもっと向こうの世界にいるはずです」
そう言って、ウサギは鏡の中を見つめました。そこにはさっき通ってきたような通路が見えます。
「ウサギさん、行こう!他に助けてくれる人が誰かいるかも知れないし」
やよいは元気付けるかのように、そう言ってウサギの手を取りました。
そういうやよいだって、本当はちょっぴり怖いのです。でも勇気を出せば、きっと…。
ふたりは一緒に鏡の中に飛び込んでいきました。
次はどんな世界が待っているのでしょうか。
以上になります
とりあえずアケ版のアイドル10人は全員出る予定ですが… 果たして完成できるだろうか…
クロスSSに限らずだけど、連載の場合は全話中のうち今何話なのか教えてくれると助かる
クロスSS書くの考えてたけど落ちたのか、残念
やよい歯丈夫すぎだろw
ロールケーキと兵隊の件はもう少し展開してほしかったかな
シャボン玉不使用でどうやって勝ったんだろう?とか
しかしやよいの衣装にはGJを送りたい。アリスベースにやよいカラー、実に良い。
想像力をくすぐられたわ
350 :
96p:2010/03/20(土) 15:05:17 ID:2LvAhww6
>>223,224,225,226,227,228,230
感想ありがとうございました。
キャラに助けてもらったようなSSでしたので、レスを拝見してほっとしました。
ご指摘いただいた部分につきましては、またゆるゆるとでも前へ進めるようにがんばろうと思います。
それでは、また一本投下させていただきます。4分割です。
351 :
1/4:2010/03/20(土) 15:07:13 ID:2LvAhww6
her definition
「おまえ、ずいぶん大人しくなったな」
沖縄の実家へ今年二度目の帰省をした我那覇響は、晩ご飯が済んだ後で、兄にそう言われた。
にこにこしながら頭をぽんぽんと軽くたたく兄に、響は反発しようとしたが、どうにも調子が狂って
思うようにいかない。少し前までなら、「なにすんだよー、このー!」と言っては、取っ組み合いに近い
兄妹ゲンカになっていたはずなのに。響はこのおせっかいな兄がどうも苦手、というよりうっとうしかった。
勉強はとにかくも、小中学校と、こと身体能力に関しては、響にかなう生徒はいなかったし、割と
背の高い彼女は、一年上のクラスからも一目置かれるような存在だった。だが、ちょっと年の離れた兄は、
ずうっと響のことを子供扱いしてきた。先に生まれてきたというだけで、兄はいつでもえらそうにしている、
響にはそんな風に見えた。
961プロから765プロに移籍してから、響にはちゃんとしたプロデューサーがついた。ライバルだった
アイドルのプロデューサーだ。961プロ時代は、黒井社長から、
『765プロのプロデューサーは担当アイドルにセクハラばかりしている悪人』という刷り込みをされた
おかげで、憎まれ口ばかりたたいてしまい、向こうからすればずいぶん嫌な思いもしただろうに、
今その仕返しに意地悪されたりとか、そんなことは全くなくて、ちゃんとプロデューサーとして、
きちんと面倒をみてくれている。イヤミの一つくらい言われて当然と思っていたのに、こいつは、いや、
この人は、なんで自分にこんなにやさしくしてくれるんだろう。
きっと、自分が961プロ時代に、プロデューサーにいろいろ言ったことなんか、向こうから見れば、
子供のわがままみたいなもんだったんだろうな、と響は最近考えるようになった。背伸びした言い方を
すれば、響も大人のふところの広さみたいなものが、わかってしまったのだ。だから、プロデューサーと
よく似た兄にも、なんとなく逆らえなくなってしまった。
「なんか、くやしいなあ」
響は、兄に逆らえなくなった自分が弱くなったのか、それとも大人になったのかわからないが、とても
残念な気がした。いつでも元気いっぱいなのが取り柄なのに、実家に帰ってきた自分は、兄にひもで
結わえられている犬か、カゴの中に入れられた鳥みたいに思えた。
「響のプロデューサーって、いい人だな」お昼時、兄はご飯をほおばりながら言った。
「え?なんでそんなこと知ってるんだよー」
「こないだ電話かかってきたから」
「ええー!にぃにぃ、なんか変なこと言ってないよな!」響は思わず身を乗り出した。
「変なことって?」
「しょ、小学校のころの話とか!」
「そんなくだらない話をわざわざするわけないだろ。逆にびっくりしたよ。向こうで響がちゃんと学校も
行ってるし、仕事もきちんとしてる、って聞いてさ」
「そんなんあたりまえだ!」
「でも、いい人だ、って言っても反論しないところを見ると、響もプロデューサーのことが好きなんだな」
「な、なに言ってんだよ!」
兄のいう好きとは、仕事のパートナーとして好感を持っているという意味でしかないのに、響は
過剰反応してしまった自分自身に、ちょっとあわててしまった。
「まあ、ああいう人が向こうで保護者をしてくれてるんなら、兄ちゃんも安心だな」
兄はうんうんとうなずき、響は兄の態度を見て、ますますむくれてしまった。
「ただいまー」
帰省を終え、沖縄を飛行機で発った響が、事務所に顔を出したのは、もう夕方近かった。
352 :
2/4:2010/03/20(土) 15:08:39 ID:2LvAhww6
「おう、おかえり、響。楽しかったか?」デスクワークをしていたプロデューサーが顔を上げた。
「うーん、普通。はい、おみやげ」響はお菓子の入った紙袋を差し出した。
「お、ありがとう。明日、みんなでお茶うけにしようか。そうそう、動物たちのことは心配ないぞ。
事務所総出で面倒見てたからな」
「それは別に、心配してなかったけど」
「そうか。明日の昼までには全員、響の部屋に帰すことにしてるから」
「……」響はプロデューサーの机のすぐそばにあったイスに腰かけた。
「どうした?今日は仕事とかないから、帰ってゆっくり休んでいいんだぞ?明日は明日で夕方から一件
仕事入ってるんだし」
「…ちょっとここにいる」響はもう何ヶ月も会っていなかったような顔つきで、プロデューサーを見ている。
「そうか。飛行機乗って結構疲れただろうし、楽にしてていいぞ。あそこのソファで横になってたらいい」
「…ここでいい」響は誰にも動かされないぞ、というように、両腕であぐらをかくようにして彼の机に
べったり貼り付き、頭をその上から重しのように載せた。
「…何やってんだ?」
机の端に響の首が載っかっていて、プロデューサーはどうにも仕事がしづらいようだ。
「見てる。仕事」響はぴくりとも動かずに答えた。
「しょうがないやつだな」彼は笑って立ち上がり、事務所の冷蔵庫から缶のウーロン茶を出して、響の
目の前に置いた。響は上目づかいで彼を見てから、むくりと起きあがって、缶を開けてぐいぐい飲んだ。
飲み終わると、響はまたさっきの姿勢に戻った。彼は苦笑いして、スケジュール表とまた格闘し始めた。
10分ほどして、プロデューサーは「よし、今日はここまでにしておくか」と、わざとらしく大きな音を
立てて台帳を閉じると、腰を伸ばすようにして立ち上がった。
「帰るけど、一緒に行くか?」
「うん」響も立ち上がった。
二人は事務所の階段を並んで降り、そのまま歩き出した。響はしばらく黙ったままで、プロデューサーも
無理に話しかけなかった。そのまま5分ほど歩き続け、事務所がもう完全に見えなくなってから、響は
ようやく口を開いた。
「プロデューサーは、しょっちゅう動物たちと会ってたよな」
「え?ああ、散歩とかそのたびに、動物たちと響に出くわしてたなあ」
「プロデューサーも、しょっちゅう迷子になってるってことだよな」
「え?おれは別に…」
「迷子にならないように、自分がなんとかしてやってもいいぞ」
響の右手が、プロデューサーの方へちょっぴり寄った。彼はまた苦笑いし、響の手を握った。響の手が
前後に振られ、いつもしている腕輪がぐるぐる揺れた。
「響、おまえ、腹減ってないのか?」
「うーん、どうかな」響は本当にお腹がすいているのかどうか、判らないような声を出した。
「どっちみち、食っておかないと夜中に腹減るから、どっかに寄って行こう」
二人は帰り道の途中にあるファミレスで軽く食事を取った。ファミレスを出た響は、今度は自分の方から
プロデューサーの手を握った。プロデューサーは笑っていた。
「ただいまー」
動物たちが一緒のおかげで、響の部屋は、一人暮らしとしては格段に広い。プロデューサーは
玄関で帰ろうとしたが、響は手を離さない。仕方なく、彼は響に連れて行かれるような格好で部屋に
上がった。プロデューサーと響の二人しかいない大きな部屋は、がらんとして寒々しかった。
353 :
3/4:2010/03/20(土) 15:44:23 ID:I7TgFnKq
響は部屋の壁際まで来てようやく彼の手を離すと、今度はひざを抱えるようにして床へ座った。
プロデューサーは響の様子が気になったのか、すぐそばであぐらをかいた。
「動物たちがいないと、静かだな」
「うん、でも、さみしくないぞ」
響はネコのようなまなざしで、プロデューサーを見て言った。またしばらく沈黙があった。今度も先に
口を開いたのは響の方だった。
「プロデューサーってさ、にぃにぃ…アニキと話したんだって?」
「え?…ああ、そうそう、黙ってて悪かったな。響は実家に帰っても、きっと『大丈夫だから心配すんな!』
くらいしか言わないだろうし、おれの方から家族を安心させてあげようと思ったんだ。よけいなことして
済まなかったな」
「ううん、アニキ、なんだかよろこんでた。自分がこっちでちゃんと生活してる、ってプロデューサーから
聞けたからだと思う。プロデューサーがアニキに似てる、って言ったら、『じゃあ、安心だな』って言ってた」
「そうか、よかったよ、お兄さんに信頼してもらえて」
「……」
「どうしたんだ、響」
「あのさ…」
「うん、なんだ?」
「自分、なんだか調子がおかしいんだ。765プロに移ってからだ、こんなの」
今まで見せたことのない響の様子に、プロデューサーは真剣な顔つきになった。
「765プロに移ってから、なんていうか、こう…体のネジがゆるんでるような感じなんだ」
「体のネジ?」プロデューサーは、響が何を言っているのか理解できなかった。
「961プロにいたときは、ものすごく…そうだ、緊張感、そんなのがあったのに、765プロへ来たら、
普通に仕事して、お茶飲んだりお菓子食べたり、プロデューサーやみんなといろんな話をしたり…気持ちが
ゆるんで、どんどんだめな人間になっていくような気がするんだ…」
「響、おまえはまだ高校生なんだから、時間のある時は、もっと遊んだり、スポーツしたり、好きなこと
していいんだぞ。アイドルの頂点を目指すのも大事だけど、そのために何もかも捨てることはないんだからな」
「でも、にぃにぃは、自分のこと『大人しくなった』って言ってた…。そんなこと言われると、自分が
自分じゃなくなっちゃった気がする」
「響。ひとつ訊いていいか」
「うん、なんだ?」
「響は、お兄さんのこと、好きなんだろ?」
「……」
「だろ?」
「にぃにぃはむかつく…」
「でも、好きなんだろ?」
「…たぶん」響はくやしそうな顔をした。
「じゃあさ、お兄さんが『あいつはおれの自慢の妹だ』って誰にでも言えるように、がんばってみたら
どうだ?そういうがんばり方も、響らしいと思うぞ?」
響はしばらく考えていたが、プロデューサーの顔を見上げると、いつものような、屈託のない顔に
戻って言った。
354 :
4/4:2010/03/20(土) 15:46:14 ID:I7TgFnKq
「じゃあ、にぃにぃ…アニキとプロデューサーのためにがんばるぞ」
「ははは、おれはどうでもいいから、お兄さんと響自身のためにがんばれ」
プロデューサーは、響の頭を、彼女の兄がそうしたように、軽くぽんぽんとたたいた。響は
プロデューサーの顔を見たまま、「にぃにぃ…」とつぶやき、座ったまま彼の肩によりかかった。
プロデューサーは、自分によりかかっている響の髪を幾度もなでた。響はのどを鳴らすネコのような
顔になった。
「こんなことしてても、もうセクハラとか言わないのか?」
「言わない」
「そうか」
響の安心したような息づかいは、そのうち寝息に変わってしまった。よりかかられたプロデューサーは、
少し困ってしまった。床にごろりと横になっているのなら、布団を敷いて寝かせることもできるが、
体重を半分あずけられたこの体勢では動くに動けない。
そのうち、響はなにか寝言のようなことをむにゃむにゃと言いながら、寝返り、といったらいいのだろうか、
よりかかっている方とは反対側へ、ぐらりと体を揺らした。頭から床に倒れそうになった響をとっさに
受け止めようと、プロデューサーは両手を素早く差し出した。ところが、倒れかかった体の向きが途中で
少し変わったために、彼の右手は響の右肩に、彼の左手は響の左の胸をちょうど受け止めるような格好に
なってしまった。さすがに響も、その感触で目を覚ました。
「……」
プロデューサーは、倒れかかった響を支えるため、まだ手を離せないままだ。じわじわと響の頬が
赤みを増していく。響は胸におおいかぶさっているプロデューサーの手をじっと見たまま、十秒ほど
動かなかった。プロデューサーには、きっともっと長い時間に感じられたことだろう。
響は無言で右手を床に突き、座り直した。プロデューサーの両手も、ようやく彼女から離れることができた。
「いや、これはだな。頭を床にぶつけそうだったから…」
「……」
プロデューサーは観念した。
「いくら事故でも悪かった。これじゃセクハラプロデューサーとか言われても仕方ないな」
「……」響はさっきから黙ったままだ。
「…これでもセクハラって言わないのか?」
「…言わない」響はようやく口を開いた。「プロデューサーが自分になんかしても、セクハラだなんて
言わないぞ」
「どうしてだ」
「だって、セクハラって、されたらイヤなことだろ?」
響の顔は、いっそう赤かった。
end.
>>350 ぎゃああああっwww
なんという破壊力!鼻血噴くかと思いましたw なにこのしばらくよそに預けられてた猫。
そして以前から96pの『最後の一言』にはヤラれておりましたがこれはクリティカルです。
あらためて読み返してみれば4レスのうち3レスは全部響からのアプローチ実況で、
何かを論じるとかではなく「響ってかわいいよな」「うんうんそうだそうだ」というキャラ萌え話
に花を咲かせるためのSSである、と感じました。兄にムカつきながらも逆らえないのは
兄がプロデューサーに似ているからかはたまた逆のゆえか、事務所に顔を出してみて
好都合に一人きりだったプロデューサーにすりよる仕草から手つなぎを誘引する振る舞い、
しまいには自分から手をつないで家に引っ張り込むわ以下略以下略の数々、行動の
ひとつひとつ、描写のひとつひとつがなにもかも響らしく、沖縄名産の黒糖に頭から
浸かったような甘々シチュに没入できました。ごちそうさまでした。
1レス目で身長152センチの響を『割と背の高い彼女』と表現したことは目をつぶるので
このあと二人がどうなったかをつぶさに教えていただきたいものですw
>>347 あ、名前欄にある 1/3 みたいなのですか?
今回から付けることにします
>>349 うむ、道中というのも大事ですからな、そこは反省のしどころ
やよいの衣装は箱○の”メルヘンメイド”ですね、というよりこの話を書いた大本がそこなものでw
では第2話投下します、今回は真が出てきます
3レス使わせてもらいます、では
第2話 きかいの国 〜スーパーヒーロー真ちゃん?〜
ミヤーシャの残していった鏡。
そこへ、その中に広がっている空間へ、ウサギとやよいのふたりは飛び込んで行きます。
中には通路が広がっていて、その先には次の世界のものらしき光が、ほのかに輝いていました。
「鏡の国は全部で9つに分かれているんです、おそらくはミヤーシャみたいなボスがそれぞれに…」
「みんなやっつけないといけないんだ…」
そんな話をしながら、長い通路を歩いていきます。
やよいとウサギが鏡の中の通路を抜けると、そこは一面灰色の床で埋め尽くされた世界。
ところどころにロボットが歩き回っていました。
「ここは?」
「機械の国ですね… ここも女王の手によって作り変えられてるようです」
見ると、ただの床だと思っていた、そのところどころにはベルトコンベアが流れています。上に乗ると
あっという間に流されて下に落ちてしまうことでしょう。
「とりあえず気をつけて進みましょう、ロボット達はそんなに反応も良くないはずですし」
「うん」
しばらく進むと、いくつかの浮島が見えてきました。先のほうにはたくさんのロボット達が。
「ここからシャボン玉でロボットを追い払いましょう、床の切れ目を越えて攻撃はしてきませんから」
やよいが次々と浮島のロボット達を吹き飛ばしていきます。しかし、その向こうからも次から次へと…
キリがありません。
「うっうー、これじゃぁ先に進めません〜」
疲れてしまったやよいはその場にしゃがみこんでしまいました、すると…
「…その声は、やよい?」
聞き覚えのある声がしました。
「真さん?」
声の方を見ると、別の浮島にロボットとは違う姿が見えました。ちょうどロボット達の中に髪の短い子が
混ざっていて、ロボットたちと戦っている様子でした。
「やよい、助けてあげましょう」
「うん!」
さっきのようにシャボン玉を大きくして、そしてジャンプと同時に発射!
シャボン玉はまっすぐに飛んでいき…
スパパパパーーン!
次から次へとロボット達を吹き飛ばしていきました。やよいはそれと同時に向こう側へ。
何体かロボットは残りましたが、それは真さんが、
「ぱーんち!」
かっこよくパンチで攻撃して壊してしまいました。
あらためて3人は集まって挨拶をします。
「でも私はやよいしか呼んでないはずなのに、どうして男の子が?」
ウサギの言葉に、
「ボクは女の子だよっ!」
真さんはそういってウサギに不満をぶつけました。髪が短くてパンチでロボットを壊してしまう…
確かに男の子に見えても不思議は無いのでしょうが、ちょっと失礼ですよね。
「…コホン。それで、真、頼りになりそうですし、一緒に戦ってもらえたら、と…」
「つまり、この向こうに悪い奴がいて、それをやっつけないと帰れない、ってこと?」
「はい…」
やよいは真さんに事情を説明しました。
「うん、分かった。一緒に頑張ろう!」
「ありがとうございます」
こうして心強い仲間が来てくれました、やよいたちは無事に機械の国を抜け出せるでしょうか?
「シャボン玉ー!」
やよいが大きなシャボン玉で次々とロボット達を吹き飛ばし、
「うりゃー!」
真さんは次々と他のロボット達を壊していきます。
「でも懐かしいなぁ、こういうロボットたち」
「懐かしい、ですか?」
やよいがそう真さんに尋ねました。
「うん、小さい頃人形が欲しくてさ、お父さんにおねだりしたんだ」
「でも買ってきてくれるのはこういうロボットとか戦隊ヒーローとかばっかりで、ううう…」
真さんはそう言って涙目になってしまいました…。
「はわっ、でも今の真さんはかっこいいですし、それにそれに…」
必死にやよいが慰めます。なんとか背中を押して、ようやく真さんも先に進んでくれました。
真さんってそういう育てられ方をしてたんですね…。
長いこと歩いて、ようやく次の世界への入り口があると思われる場所まで来ました。
「…!」
みんなの前にいたのは、今までの何十倍もあるかのような大きなロボット。
足が無いのに、ふわふわと地面から少し浮かんでこちらを見ています。
「アールメイコンか… 足は無くなってしまったのですね」
ウサギが言いました。
「あれで動けるの?」
「ええ、彼を見てると思うんですよ、ロボットにとって、足なんて飾りなんだな、って…」
そうやよいたちに言いながら、ウサギが歩いていって声をかけました。
「やぁ、アールメイコン。この辺に鏡があったはずなんだけど」
「…」
返事はありません。
代わりに両方の腕が上がったかと思うと、握った手のひらがくるくると動き、そして…
その握ったげんこつが、やよいたちに向かって飛んできました!
「危ない!」
真さんがやよいを抱えて横っ飛び。そのすぐ上を大きなげんこつが通り過ぎていきました。
やよいの髪の毛が風で大きく揺らされ、そしてビュン! と、大きな音が聞こえました。
げんこつはそのまま飛んでいき、しばらくするとアールメイコンのもとに戻って来ます。
「ロケットパンチ!?」
真さんが言いました。
「…どうやらこれも女王の仕業…」
「やっつけるしかないの?」
「いえ、多分操られているのでしょう、何とかして止めることが出来れば…」
「分かった!」
やよいが前に進み出てきます。
シャボン玉を大きくしながら動き回り、アールメイコンの体を狙います。
そしてめいっぱい大きくなったところで、シャボン玉はアールメイコンめがけて飛んで行きました。
しかし…
それを待っていたかのように、アールメイコンはやよいに向かって突撃してきました。
飛んできたシャボン玉を簡単に体で弾き、そしてその先にいるやよいに向かって…
「…!」
体当たり!
「はわぁっ!?」
鈍い音と共に、やよいの体が床を転がって、真さんたちの後ろまで。
「やよい!」
床の切れ目ぎりぎりで止まり、どうにか落ちずには済みましたが…
「シャボン玉が効いてない…」
そうです、体に魔法のシャボン玉が当たっているのに、アールメイコンは普通に動いているのです。
いったいどうしたら…
と、その時。
「…そうだ、頭!」
真さんがそう言いました。
「え!?」
「こういうロボットっていうのは、たいてい頭が弱点なんだ、お父さんが言ってた記憶がある」
「なるほど… じゃぁ、なんとかして頭にシャボン玉を…」
「うん!」
やよいはそう返事をしながら、アールメイコンの頭を見上げます。
でも大きな体に邪魔されて、このままでは頭には当てられそうもありません。
「ボクも手伝う!」
真さんも前に出てきて、アールメイコンと向かい合います。
迫ってくるアールメイコンからやよいはなるべく距離を取って、チャンスを待ちます。
「やよい、パンチが来る!」
真さんは走り回るやよいにアドバイスを。それを聞きながらやよいは飛んでくるパンチを避けます。
一方の真さんはというと、アールメイコンの方を向きながら、じりじりと距離を縮めていきます。
アールメイコンの腕が上がったところで、
「そこだぁぁぁ!」
真さんは飛んできたパンチをジャンプで避け、そのままげんこつの上に飛び乗って…
「てぇぇぇぇいい!」
そこからアールメイコンの方にジャンプし、その体勢からくるっと空中で一回転。
そして、アールメイコンの胸に見事な飛び蹴りを当てました!
「…!」
アールメイコンの体が大きく後ろに揺らぎます。
「すごいです真さん!」
「うん、やよい、シャボン玉を!」
低くなったアールメイコンの頭に、やよいは大きなシャボン玉をぶつけます。
頭を中心に、虹色の光がアールメイコンの体をきらきらと包み込んでいきました。
すると…
アールメイコンの動きがピタリと止まりました。と思うと…
バターーーーン!
…と、そのまま仰向けに倒れてしまいました。
地震かと思うような地響きがしばらく続いた後、周りはぴったりと静かになっていきました…。
「やっつけたの?」
「ええ、もう大丈夫でしょう、あとは何とか話を聞ければ…」
「しっかりして!」
「…ここはどこでショウカ?」
アールメイコンの声が聞こえます、でももう襲ってくることは無いようです。
「はっ、私はいったいナニヲ…」
ウサギが状況を説明すると、
「そうデスカ、私は操られてたのデスネ」
そう言って申し訳無さそうにします。
「良かった…」
「ところでアールメイコン、鏡はこの辺に無かったかい?」
「それはこれのことデショウカ」
胸の格納庫らしきところから、ポロリと鏡が出てきました。ミヤーシャが持っていたのと同じものです。
「女王に持っているように言われてイマシタ」
「じゃぁこれでまた次の世界に行けるわけだね」
やよいが鏡を手に取ります。幸い割れたりひびが入ってるようなこともありません。
「あ、やよい、そういえば…」
「真さん?」
「ボクの他にも一緒にここに来た子達がいるみたいなんだ、何とか助けてあげよう」
「他にも…?」
多分みんなやよいの仲間達なのでしょう。真さんと一緒に来た、ということは…
「次の世界にも誰かいるってことですね!」
「そうですか… じゃぁ真はこの鏡から帰ってください。後は私たちに任せて」
何故か複雑な表情をしつつ、ウサギは鏡に入っていく真さんを見送りました。
「うん… ふたりとも頑張って!」
やよいと真さんはお互いこぶしを合わせて、そしてお別れをしました。
こうしてやよいはまた次の世界へ。
今度はどんなところ、そして誰がいるのでしょうか。
第2話は以上です… 1レス増えてしまいましたごめんなさい;
>>356 誤解させてしまったようで申し訳ない。
俺が言いたかったのはレス番号数のことでは無く、この連載が「全部で」何話構成のSSなのかを先に知りたかった
(シーズンドラマなら全10話、大河ドラマなら全50話、みたいな感じで)
同じ「連載第2回」でも、全3話と全15話では、話の受け取られ方は変わってくると思うのだが、如何だろうか
最終回まで連載の話が出来ていることを前提に話をしているが、そうでなかったら無視して欲しい
おつかれさまー、こう言うのは楽しくていいですね。
他の娘も絡んで来るとなると、続きが楽しみです。
次回作も大期待ですー!!
取り急ぎこれだけレスを
>>362 あ、そっちでしたか
オープニングとメインが全9話、それとエンディングです
>>363 他のアイドルたちの個性、というかパーソナリティを話にうまく絡められるといいと思ってます
次は千早です
365 :
創る名無しに見る名無し:2010/03/26(金) 23:02:05 ID:pOQWlCJj
ほ
366 :
保守小噺:2010/03/29(月) 12:10:38 ID:1bBKjVpN
「おはようございます、あずささん。さっそくですけど、朝のミーティングを……どうかしましたか?」
「あ、あの……実は……また、し、下着を盗まれてしまって……」
「えっ、そうなんですか?」
「はい……春になってまた多くなってきたようで、困ってるんです」
「男物の下着を一緒に干すとかいう作戦もダメですか?」
「はい、もうなんだか一人暮らしっていうのを知られてしまっているようで……」
「うーん、なんかいい方法はないかなあ……」
「やっぱり警察に届けた方がいいんでしょうか……」
「あ、いや待ってください。仮にもアイドルがそんな被害届を出したら、
格好のゴシップネタにされてしまいます。よし、おれがなんとかしましょう」
「本当ですか?よかった……でも、どうやって?」
「これでも少しは捜査能力に自信があるんですよ。実家の近所でも、よく失くしものとか、
畑荒らしの犯人とか、頼まれて探したもんです。みんなからは千里眼て言われてましたから」
「せんりがん……?」
「はい、人には見えないものが見通せるってことですよ」
「み、見えないものを……?」
「まあ、透視能力みたいなもんですかね」
「いやああああっ!」
>>350 出かけていたので感想書けませんでしたが、これはいい響。
響ってのは、これだけキャラに忠実に普通に動かすだけで可愛いんですなあ。
しかし、このP、我那覇兄にまで電話しちゃったりして、いざと言う時に
「は?それってヤバい意味じゃ(ry」とか言い出しそうなフラグを感じるのは気のせいw?
メルヘンメイズやよいの大冒険 第3話投下します
4レスでいけると思います
第3話 みどりの国 〜響け! 千早の心の歌〜
機械の国を抜け、やよいたちは次の世界へと歩を進めていきます。
「真さん無事に帰れたかな…?」
「それは心配ありません。できれば一緒に戦ってもらいたかったのですが…」
「無理なの?」
「ええ、ストローは一つしかありませんし、それにそのドレス無しではこの世界の邪悪な瘴気によって
あっという間に体力を奪われてしまうことでしょう」
ウサギはそう言ってやよいのエプロンドレスを見ました。普通の服のように見えるのに、とってもすごい
ものだったのですね。
鏡の中の通路を抜けると、向こうに光が見えてきました。
そして出てきたのは…
「きゃぁぁぁぁっ!」
やよいたちを出迎えてくれたのは、甲高い悲鳴でした。それもやよいには聞き覚えのあるものです。
「千早さん」
「あ、高槻さん…? いきなり何か出てきたかと思ったら…」
千早さんとやよいの出てきたところは、そうですね、30cmぐらい、すぐ近くです。
そんなところから人がいきなり出てきたら誰でも驚くでしょう。
「千早さんもここに連れてこられたんですか?」
「ええ… 私は確かにパジャマに着替えて、それでベッドに入ったはずなのに…」
千早さんはそう言って、目の前のやよいを珍しそうに眺めます。
いつもの服とは違って、オレンジと白のドレス、そしてエプロン。とても可愛らしいです。
「…」
千早さんは何も言いません。ただじっとやよいを見ているだけです。どうしてしまったのでしょうか?
「千早さん?」
「あ、ご、ごめんなさい…」
「きっとこの先に出口があるはずですから、一緒に行きましょう?」
やよいはそう言って、千早さんの手を取りました。さっきからぽーっとしてる感じの千早さんが心配に
なったのかも知れません。
千早さんはそのまま引っ張られてやよいと一緒に歩いていきます。なんだか仲が良さそうですね…。
見回すとそこは一面緑が広がっている世界。
いろんな昆虫やぷよぷよとした生き物、そして何故か銀色の四角い板がくるくると回りながら飛んできます。
やよいがシャボン玉を当てると、銀色の板はクラッカーのような小気味の良い音を立てて破裂してしまいました。
「何だか… 嫌な風景ね…」
千早さんが銀色の板の方を見ながら、そうポツリと呟きました。よっぽど気に入らないみたいです。
「これもみんな女王に操られてるのかな…」
ちょっと寂しそうなやよい。生き物をいじめるみたいで何となく気が進まないのかもしれません。
なるべく落とさないようにして進むことにしましょう。
「ところで高槻さん… ここはいったいどういう所なのかしら…?」
歩きながら、千早さんがやよいに問い掛けました。
「ここは… 鏡の国、またの名を夢の国とも言います」
ウサギがそれに答えます。
「夢の国?」
「ええ、何かしらの夢を持っている人のみが来られる世界… 千早にも何か夢が?」
ウサギの問いに対して、
「私は… もっと歌がうまくなりたい」
千早さんは、迷いの無い表情でそう答えました。
「歌… ですか?」
「そう。 …高槻さんには、そういうのは無いのかしら?」
「うう〜…」
やよいは考え込んでしまいました。
「ここに来られたからには、何かやよいにも夢というものがあるはず…」
ウサギの問いにもやよいは頭をぐるぐる回すばかり。ちょっと、やよいには難しかったのかもしれません。
しばらく歩くと、程なく行き止まりまでやってきました。やはりそこは広い床になっていて、そこには…
「やぁやぁ久しぶりだねぇ〜♪」
「待っていたよ〜、ウサギくん〜♪」
そこにいたのは、まんまるい、緑と赤のまだら模様をした二つの… 生き物でしょうか?
両方とも大きな目と口を持っていて、なんだかにこやかな感じです。そしてその周りにはいくつもの顔の
描かれたボールがくっついています。
そして、両方ともが台詞に何だか妙なメロディを付けながら、やよいたちに語りかけてきます。しかし、
それはとても歌と言えるようなものではない… そう、音痴な代物なのでした…。
「これも女王の作った魔物でしょうか…」
ウサギの顔が緊張でゆがんだように見えました。
「魔物だなんて〜、失礼な〜♪」
「このアラティーズに向かって〜、そんなことを言うなんて〜♪」
目の前にはそっくりの顔が二つ。大きな口を横にめいっぱい広げて、笑顔で歌っています…。
「不気味…」
思わず千早さんがそう呟いた、次の瞬間。
「不気味ですって?」
「私たちの気にしていることを…」
「「…ゆ、ゆるせなーい!!」」
言ったかと思うと、アラティーズたちはぐるぐると床の端っこを円周状に回り始めました。
ちょうど床の真ん中にいたやよいたちは取り囲まれる形になってしまいます。
ギュウン… ギュウン…
それを見ていたやよいの目が段々不安定に、そしてふらふらと歩き始めてしまいます。
「目が回ります〜」
そして回転するアラティーズの横を抜けて、ついに床の切れ目まで…!
千早さんが我に帰ると、目の前には今にも床から落ちそうなやよいが。
「高槻さん!」
千早さんは叫びながら走っていき、そしてやよいの手をつかもうとします、が…
目の前でやよいの姿は、ふわっ、と消えてしまいました。
「!!!」
思わずそのままやよいを追って体を宙に躍らせた千早さん、このまま二人とも…!?
いいえ。
やよいの体は、ぎりぎりのところで千早さんが手を掴んで宙ぶらりんになっていました。
そのまま千早さんは力を込めてやよいを引っ張り上げます。
「高槻さん! しっかり!」
「あ、千早さん…」
気が付いたやよいは千早さんの両手を掴んで、そのまま引き上げられるがままに。
必死に千早さんが頑張って、なんとかやよいを床まで持ち上げることが出来ました。
そして抱き上げるような格好で、一緒にごろんと床に転がり込みました。
「高槻さん… はぁっ、はぁっ…」
千早さんの息が荒くなってます。きっとやよいを持ち上げるのは大変だったからでしょう。
顔も赤くなっていて、とても疲れているみたいです。
「…そうだ!」
やよいは起き上がって床の真ん中を見ます。そこにはアラティーズたちが背中を向けて、何やら話を
してるようです。
「人間なんて大した事ないねぇ〜♪」
「私達が〜、強すぎるんだよ〜♪」
…どうやらすっかり油断してるようです。そこにやよいはそーっと近づいていき、大きな大きな
シャボン玉を…
パチーーーーーーン!
「「うわぁぁぁぁぁぁ」」
不意打ち成功です。でもまだアラティーズは動けそうです。
「ふふふ、やってくれるわねぇ〜♪」
「さぁ戻ってらっしゃい〜、今度こそ〜、叩き落してあげるわ〜♪」
しかしやよいはそのまま動きません。床の端に立ったまま、大きなシャボン玉を作って、待ち構えています。
「…なるほど、真ん中にいるのと違って、そこにいれば目が回ることはないわね〜♪」
「でも突き落とす手間が省けるじゃない、今度こそまっさかさまだわよ〜♪」
またアラティーズは歌いながら回り始めます。今度は端っこのほうにいるやよいに集中して弾が飛んできます。
「高槻さん、ジャンプよ!」
離れたところにいる千早さんは、そうやよいに向かって大きな声で言いました。
とっさにやよいはジャンプ。するとその下をアラティーズが通り過ぎていき、吐き出してきた玉は全部やよいの下を
通り過ぎていきます。
「リズミカルに飛んでいれば当たりそうに無いわ、歌やダンスと同じよ」
「分かりました!」
一定のタイミングでジャンプするやよい。
そして、その下をアラティーズたちが走り抜けていきます。
「だけど… 何て下手な歌…」
一方の千早さんも、ただ見ていたわけではありません。
ひたすらぐるぐると回りつづけるアラティーズ、そしてそのあまりにも音痴な歌に、何かおかしなものを感じて
いたのでした。
「…」
ひとしきりそれを黙って見ていた千早さんですが…。
「あなたたち、そんな下手くそな歌を歌わないで頂戴!」
とうとう我慢の限界に来たらしく、千早さんは回っているアラティーズに向かって怒鳴りつけました。
それが聞こえたからかは分かりませんが、アラティーズの回転が少しずつふらふらしたものに変わっていきます。
「へたくそ、ですって…?」
「しつれ、い、よねぇ…」
声が少し苦しげなものになっているのが分かりました。まるで、何かにとりつかれたかのように…。
「やっぱり…! これは何かのマインドコントロール!」
千早さんが、意を得たという表情になります。そして…
「蒼い〜、鳥〜、もし幸せ〜、近くにあったら〜♪」
今度は千早さんの美しい歌声が、辺りに響き始めました。
それを聞いたとたん、アラティーズはさらに苦しそうな表情を。
「う、ぐぐ… なにこれ…」
「この、うたごえ…」
アラティーズたちはもはや回ることも出来ないようです。二人で固まって、その場でごろごろと悶え苦しんでいます。
「今です! シャボン玉を!」
やよいが固まっているアラティーズに特大のシャボン玉をぶつけます。
すると、ついにアラティーズの動きが止まり、シャボン玉が当たったところから大きく泡が立ち始めます。
そして両方ともが、爆発して盛大に炸裂音を響かせました。
「「うひゃぁぁぁぁ」」
爆発したところから何かが飛んできました。それは地面にぶつかってやよいたちの方へころころと。
…何でしょう、人形でしょうか。
「助かったわ〜」
「女王のせいでぐるぐると回り続ける呪いを掛けられていたのですよ〜」
人形に見えたのは、二人の小人でした。
「レプラコーンですね、普段は楽しく歌ったり踊ったりするのが趣味なのですが」
ウサギさんが説明してくれました。いろいろありましたけど、助けることが出来てよかったですね。
「ありがとう〜♪」
「ございました〜♪」
千早さんに負けないほどの、美しい歌が辺りに響き渡ります。
「ふふっ… やっぱり妖精さんはこうでなくちゃ…」
それを聞いて、千早さんも嬉しそうな表情になりました。
「他のみんなも〜、助けてあげてください〜♪」
そう言って、小人たちはどこからともなく鏡を持ってきました。これでまた次の世界に行けそうです。
「迷惑をかけましたね、千早」
「いえ、結構楽しかったですよ、高槻さんとの冒険は、ふふっ」
「楽しかった… ですか?」
やよいが言うと、
「ええ… さっき高槻さんを助けたときに思ったの。何だかこう… 私に親友がいたらこうなのかな、って」
「千早さん…」
千早さんの顔が、少しだけほころんだように見えました。
「ちゃんと帰ることができたら… またこんな風にお話できるといいわね、高つ… ううん、やよい」
「…はい!」
やよいも、目いっぱいの笑顔で千早さんにそう答えます。
千早さんを先に元の世界に帰して、残る二人も鏡の中へと飛び込みます。
手を振りながら、やよいたちは小人さんたちとお別れしました。
先に進むと、何やらひんやりした空気が感じられます。今度は寒いところでしょうか…?
第3話は以上です
そろそろこの世界がどういうところなのか分かってくる辺りです… 十分に書けたかどうかの判断は読者の方に
委ねるしかないところですが;
>>373 おもしろかった!
千早が少々アヤシゲだったがwww
つづき楽しみにしております。
千早の役得っぷりに嫉妬せざるをえない
それにしてもドレスでの戦闘シーンって夢があるよな
激しく立ち回ればどうしたってスカートの裾が、その、ほら
あれだ、うん。特にウサギなんてちっちゃいし、ねえ?
それどころじゃないのは分かっていてもどうしても想像してしまったw
春香誕生日祝いSSが書き上がらない…
しかもこれから副業で休出…
春香ああ、ごめんよおおお!
スレ汚し失礼しました。
>>376 君のはる誕SSが出来上がるのを、わが社はいつでも待っているぞ〜!
っていうかあんたが来なけりゃこのスレ的に困るだろ、はる誕なのにww
春香!俺は間に合った!間に合ったぞ!
前略、というわけで、春香誕生日SS投下します。
いろいろ言いたいことはあるけど、きっとあとがきの方で。
タイトルは「three months later」
9スレ+おまけです。
資料:関連カレンダー
2 月
月 火 水 木 金 土 日
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
3 月
月 火 水 木 金 土 日
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31
4 月
月 火 水 木 金 土 日
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30
冬将軍率いる寒気団は、1月の間は深く守って時折ロングボールを放り込んでくるだけだったが、この2月に
入ってからと言うもの、ようやく日本列島に強烈な前線からのプレスをかけて来ていた。そうして2月も第2週
の日曜日を迎え、今日も寒気団が全員攻撃で押し上げて来ているのであった。
そんな寒い寒い2月の14日。天海春香は完全なる朝を迎えていた。
どのくらい完全かと言うと、今日着ていく予定の服は、全て昨夜の内にクローゼットから出されて床に並べら
れており、その横に置かれたトートバックには、財布にハンカチ、ティッシュに化粧直しのポーチと言った普段
持ち歩くものに加えて、2つの小さなプレゼントボックスも全て奇麗に収められているのである。その小さな箱
の中身はと言うと、一つには無難にネクタイ、もう一つには手作りの小さなハート形のチョコレートが、スイート
とビターの2色で詰められている。ラッピングも万全、リボンも慣れたもので美しく結ぶことが出来た。一瞬、
自分の愛用のリボンを結ぼうかと思ったのだが、食べ物の入った箱だからと、やめておいた。
寝る時には、枕元に置いておこうかと思った春香だが、とある歌の歌詞を思い出して、万が一の不測の事態に
備えて、ベッドから一番遠い所に置いた。そのくらい考えられる全てのリスクを排除して、迎えた朝である。
唯一、誤算と言えるのは、緊張と不安でなかなか寝付けなかったことだろう。おかげで朝起きる時間がギリギリ
になった。しかし、この辺りは想定内で、そのために服の準備は全て済ませてある。
顔を洗って、鏡に向かう。手慣れたナチュラルメイクも、今日はちょっとだけ念入りに。
最後にリップを塗りながら、春香の胸にまた不安が持ち上がる。
なんと言っても、今日はアポなし突撃である。
事務所に行くのも、春香がアイドルを休業する前、解散コンサートの日以来の3ヶ月振りになる。
その間、早くも次の活動に向けた準備を始めた伊織や律子から、プロデューサーさんの行動の情報は逐一
もらっていた。それによると、だいたい行動パターンは3人をプロデュースしていた頃と同じ。
「だとすると、日曜日はまず朝一番に事務所に来て、メールのチェックと残った書類の片付け、よね。」
自分の確信を深めるべく、口に出して確認。しかし、その時間を逃すと、やれイベントの手伝いだ、やれ現場
の下見だと、出かけてしまうことが多い。とにかく、まずは事務所に行かなくてはいけない。彼に、プロデュー
サーさんに会わなくては、全てが始まらないのだ。受け取ってもらえるかどうか、そんなことは二の次だ。
受け取ってもらえるかどうかは・・・
・・・・・
もしかして、受け取ってもらえなかったりとか?
新たな不安が襲ってくる。
いや、本来2月14日にアポなし突撃を敢行しようなどと言う女性にとっては、最初に持つべき不安だ。
「ええい、悩んでどうする!当たって砕けろ、だよね!」
って、私、3ヶ月前に一度本当に当たって砕けてるんだっけ。
も、もう一回くらい当たって砕けたって、一緒・・・じゃないかも?
心に弱気の芽が顔を出す。
ううん、こんなんじゃいけない。
鏡に向かって、つぶやく。
「春香ちゃんは可愛い。春香ちゃんはお菓子作りがうまい。春香ちゃんは出来る子!」
必殺の自己暗示である。春香本人は、自己暗示という言葉が思いつかず、つい自家発電とか呼んでいるが。
アイドル活動開始当初、自信を失って舞台に立てなくなりそうな時も、春香はこうして自分を鼓舞してきた。
そうして様々な苦難を乗り越え、トップアイドルまで上りつめたのだ。その魔法の言葉の効果はてきめんだ。
「よし!じゃあ、出かけようっと!」
最後にもう一度鏡を覗いてチェック。メイク、OK。髪、OK。
チラリと、鏡の脇に並んでかけられたリボンに目をやる。久しぶりにリボンを結ぼうかな、とも思ったが、
やはり、あの日以来付けていないリボンは、付けずに出かけることにした。
買ったばかりの新しいコートを羽織り、マフラーをして、完成。
「行ってきまーす!」
玄関口で元気に家族にあいさつ。先日一度履いて足に慣らした、お気に入りのパンプスに足を通す。そして、
ドアを開けて、外に出る。
「白っ!」
外は一面の雪景色だった。
どうりで寒かったわけである。昨夜から降り始めた雪は、春香の住む田舎町をすっかりすっぽり覆っていた。
躊躇っている時間の余裕はない。春香は雪の中に一歩を踏み出ツルッ
ずぼっ
深さ15cmほどまで重なった雪の層が、前のめりにすっ転んだ春香の体を衝撃から守ってくれた。
おかげで痛みこそなかったが、春香は泣きそうだった。顔から雪に突っ込んだけど、メイクは乱れてない
かな?それより、せっかくの新しいコートが雪まみれだよぉ、それと、靴はこれじゃムリ。雪の中歩けない。
せっかく服と靴と合わせてコーディネートしたのにぃ。
家の中に引き返す。ブーツを取り出して、しかしそこで考えこんでしまった。このブーツなら滑らないけど、
こんな深い雪の中を歩いたら、濡れて色落ちするかも。
すでに迷う暇はなかった。下駄箱から赤いゴム長靴を引っ張り出す。そして、今度こそ雪の町へと勢い良く
飛び出して行く春香だった。
うう・・・結局、こんな子供っぽい靴になっちゃった・・・
普段雪の降らない地方の交通機関は、雪に弱い。
ましてや、大量の通勤客を捌かないと日本経済に甚大な影響を与える平日ならともかく、休日の朝である。
春香が駅に着くと、列車表示は平気な顔で「一部列車運休。及び30分程度の遅れ」を示していた。
それを見て、軽い目眩を覚えた春香だったが、すぐに気を取り直して列車を待つことにした。待つ間、よほど
プロデューサーさんにメールをしようかと思ったが、やめておいた。
多分、今ここでメールをすると、返事は「無理に来なくていい」と返ってくると思ったから。
それは、きっと正論。でも、そうはいかない。私は行く。行かなきゃいけない。
ここに止まっていたら、何も変わらない。
そしてようやくやって来た電車は、元からが30分の遅れだった上に、本日は急行運転取りやめとのことで、
各駅に停車しながらのんびりと都心へ向かっていった。
事務所の前に着いた春香は時計を見た。
現在の時刻、午前10時30分。何度見ても時間は変わらない。予定では、遅くとも9時には着きたかったが。
これもみんな大雪のせいだ。しかしその張本人である大雪は、都心ではさほどの降りでもなかったようで、今や
あがっている上に、地面はすっかり乾いてるしで、せっかくの大活躍の舞台を与えられた赤いゴム長靴も、本来の
性能をここでは発揮できずに、ただつやつやな真っ赤なその見た目で、春香の気合の入った服装とのミスマッチを
声高に主張し続けるだけの存在と成り下がっていた。
今更しかたない。とにかくエレベーターに乗って、事務所のあるフロアへ。
扉を開け、3ヶ月ぶりの事務所に入る。
「おはようございます・・・」
小さな声で挨拶。一応照明の点いている場所はちらほらあるが、人の気配はほとんどない。
プロデューサーさんの机の方へ行く。付近の照明は消えている。がーん
やはり、プロデューサーさんの席はもぬけのカラだった。
呆然とする春香の後ろから、女性の声がした。
「あの、どちらさまですか?」
「え?あ、小鳥さん?」
「その声は・・・春香ちゃん?」
「そうですよ。春香です。ご無沙汰してます。いやだなあ、忘れちゃったんですか?」
いくら3ヶ月ぶりとは言え、忘れてるはずはない、と思いながら、いたずら半分で言ってみた。もしかして、
今日の服があまりにキマッてるから別人に見えた、とか?
「ふふっ、さすがに忘れるわけはないですよ。ただ、服装もいつもと違うし、ちょっとすぐに気がつかなかった
だけです。別に、リボンがないから誰だかわからなかった、ってわけじゃないですからね?」
そうか。リボンがなかったからか。
「それに私、今日はコンタクトをしてなかったから。」
「ええっ?小鳥さん、普段コンタクト使ってるんですか?知りませんでしたよ、私。」
「ううん、別に普段もコンタクトしてるわけじゃないですよ。ただ、こういう言い方をすると、言い訳に使える
かな、と思っただけです。」
なんじゃそりゃ。
「ところで、小鳥さん。今日、プロデューサーさん見てませんか?」
「今日は見てないですよ?あ、ほら、机の上のノートパソコンも持って帰ってるみたいだから、今日は出社する
つもりはないんじゃないかしら?」
がーん
「今は、個人情報の保護がうるさいでしょう。だから、たとえ事務所の中の人同士であっても、住所とかは教える
わけにはいかないのよ。」
「ええっ!!そ、そんなあ・・・」
「でも、私の机の上にあった書類を、偶然春香ちゃんが見ちゃったとしたら、それは仕方ないことですよね。」
小鳥は、書類のページを開くと、そのまま席を立った。
そのページには、春香の質問の答え、プロデューサーさんの住所が書いてあった。
「小鳥さん、ありがとうございます!」
「偶然ですから、お礼は要りませんよ。」
「じゃあ失礼します!」
さて、これからプロデューサーさんの家、と言うか部屋に、乗り込まないといけない。
春香は気合を入れ直した。
「あ、春香ちゃん?」
小鳥が呼び止めた。春香はくるりと振り向いて応える。
「はい?」
「頑張ってね!」
あ・・・
さすがにバレバレだよね、と思ったが後の祭りである。顔が熱を持ってくるのが自分でもわかった。
「は、はい!頑張ってきます!」
うわ。これでもう明日中には、事務所のみんなに知られちゃうよぉ。
しかし、先のことを気にしてもしょうがない。まずは、この住所の場所に辿り着くことが最重要だ。
どうやら目的地はアパートかマンションの部屋のようである。えっと、住所は新宿区上落合・・・確か、
そんな名前の駅があったような気がする。
携帯電話で検索。上落合という駅はなかった。
じゃあ、落合?・・・と見てみる。
あった。JRと地下鉄とあるみたい。
よし、じゃあJRの駅で、乗り換え検索、っと。
出た。ええと、まずは上野に出て、乗り換えて新幹線で八戸、そこから特急で函館、さらに南千歳でもう一度
各駅停車に乗り換えると、明日の朝9時には着く・・・って、ええっ!?
「プロデューサーさん、毎日そんな遠くから通ってるの!?」
なわけないじゃん。
毎日北海道から東京に通って仕事してるなんて、どう考えてもあり得ない。
その前に住所は新宿区だし。
さあ、もう一度気を取り直して・・・と思ったら、携帯にメールが届いた。
もう。誰?今忙しいんだから!
そう思いながらも、一応確認してみると、律子さんからだった。
開く。
内容は、事務所からプロデューサーさんの家までの経路案内、最寄り駅からの道順、地図までも含まれていた。
「えええええっ!?」
春香は思わず振り返って周囲を確認する。
誰か私のこと監視してる?
とりあえず、周囲に知った顔は見つからなかった。
メールの続きを読むと、最後には、こう書かれていた。
『小鳥さんに聞いたわよ。頑張ってね。From律子』
明日中どころか、知れ渡るには今日中でも十分なようだ。
でも、本気で助かりました、律子さん!
『ありがとうございます!おかげで北海道まで行かずにすみました。』っと、送信!
さあ行くぞ。目指すは下落合駅!
「着いた!」
下落合の駅から徒歩10分。目指したアパートがあった。律子さんのメールに添付されていた建物の外観とも
同じ白い壁の鉄筋コンクリート三階建てだし、間違いない。
階段を上がって2階に。部屋番号を順に辿る。
「ここだ。」
表札を確認。間違いなし。
すー
はー
深呼吸を一回。もう一回。
よし。準備完了。
呼び鈴に指をかける。ぐっと押し込む。
指を離す。
しーん・・・
返事がない。
もう一度押す。離す。
・・・あれ?
普通、こういう呼び鈴って、押した方からでも、鳴るのがわかるんじゃなかったかな?
今、押したけどなんにも音がしなかったよね?
もう一回押してもやっぱり返事はないし、もしかして故障中?!
えいえい、っと数回立て続けに押してみる。
ダメだ。
春香は、部屋のドアをノックした。
こんこん・・・
返事がない。
今度は少し大きめの音でドアを叩く。
どんどん!
やはり返事はない。
もしかして、留守だったり!?
失礼とは思いながら、試しにドアのノブを握り、動かしてみる。がちりとロックされていて動かない。
どうしよう・・・
力は抜けていく。しかし頭の中はぐるぐる回りだす。
もう手段を選んではいられない。そう結論を出した。プロデューサーさんの携帯に電話をかけることにした。
呼び出し音が鳴って・・・ん?
なんか、この部屋の中から電話が鳴ってる音がするんだけど?!
『ただいま電話に出ることが出来ません。ご用の方はメッセージを』呼び出し音が留守電メッセージに変わる。
と、部屋の中の電話も鳴り止んだ。
もう一回ダイヤルする。部屋の中から電話の鳴る音がする。切る。音が止まる。かける。鳴る。切る。止まる。
置き忘れたか、あえて持たなかったか。プロデューサーさんは携帯を持たずに出かけたらしい。
事務所に行って、部屋に行って、電話して・・・
春香には、もう何も手段は残されていなかった。
へなへな・・・ぺたん
たまらずにその場にへたり込んだ。
「やっぱり・・・ちゃんと連絡して、約束しとけば良かったかな・・・」
ぐすっ、と鼻をすすった。視界がじんわりとぼやけてきた。
「こんなとこで、何やってんだろう・・・私・・・バカだな・・・うっ、ううっ・・・」
涙がこぼれてくるのを、止めることができない春香だった。
「あのぉ・・・すみません。そこ、俺の部屋なんですけど、何か御用ですか?」
「ほえ?」泣き崩れる春香に、背後から声がかかった。
「プ、プロデューサーさん?!」
「え?は、春香?その声は春香じゃないか?!」
まごうことなき尋ね人がそこにいた。ジャージにサンダル、その上にダウンのコートを羽織って、髭も剃らずに、
髪は寝起きのボサボサのままといういでたちで。手にはコンビニの袋をぶら下げて。
かたや訪れたヒロインは、目を泣き腫らし、鼻も赤く染まり、目元のメイクは半分流れてる上に鼻水まで垂らし
た状態での、3ヶ月ぶりの再会であった。
「え、えっと・・・とにかく、そこに座ってるわけにもいかないだろうから、上がってくれ。」
「はい・・・お邪魔します。ぐすっ。」
洗面所を借りて顔を洗いながら、春香は考えてみた。
プロデューサーさんにしてみれば、ちょっとコンビニに行って、帰ってきたら、自分の部屋の前で女の子が
泣いていた、という状況である。それも知ってる子、泣かれる心当たりもない(多分)。
やっぱり、なんでこんな状況になってたのか、説明するべきだろうか。
でも、なんて説明したらいいんだろう?
『プロデューサーさんの部屋の前で、座り込んで泣いている私』なんて状況、考えるまでもなく、とんでもない。
それにしても、泣くことないじゃん私。それも人の部屋の前で。
後悔先に立たず。
「春香、紅茶とコーヒー、どっちがいい?ちなみに紅茶はティーバッグで、コーヒーはインスタントだけどな。」
「あ、はい。紅茶お願いします。」
「そのソファーにかけてくれ。散らかってるけど気にしないでくれよ。」
そう言うけど、独身男性の一人暮らしにしては、居間は小奇麗だと思う。
春香がソファーに座ると、プロデューサーさんがキッチンから湯気の出たカップを二つ持ってきた。
「ほら、紅茶。熱いから気をつけてな。」
「ありがとうございます。いただきます。」
カップを持つと、暖かさが伝わってくる。自分の体が冷えていたことを、ようやく自覚した。
「落ち着いたか?」
「え?あ、はい。」
一瞬、何のことか、と思った春香だが、思えば自分が泣いていたんだった。
「もう、大丈夫です。」
「そうか。」
プロデューサーさんは、それ以上は何も聞かなかった。
しばしの沈黙。
「春香、今日はリボンしてないのか?」
プロデューサーさんの質問は、そっちだった。
「はい。ちょっとイメチェンで、最近付けてないんです。」
「ちょっとどころか、かなりのイメチェンになってるぞ。」
「それと、リボンしてると、街を歩いてても『あっ!天海春香だ!』って言われることも多いんですけど、して
ないと、まず言われることもないんで、アイドル休業中は、リボンしないことにしました。またアイドル活動を
始めた時は、付けようかな、って思ってます。」
「ああ・・・やっぱり、一般の人もリボンがないと気付かないのか。」
「納得するところ、そこなんですか?」
「いや、場を和ますための冗談だと受け取ってくれ。」
「あまり和みませんよ・・・」
むしろ、テンションダウンだ。
「ところで・・・今日は、何か用か?」
はっ!
そうだ!大事な用があったんだ!
しっかりしろ!私!和んでる場合じゃないよ!
ごそごそ・・・とカバンの中を探る。あったあった。
「あの、今日は何の日か、わかってますか?」
「2月の第2日曜日。俺の1ヵ月ぶりの休日だ。」
「・・・」
「あああ、すまん!わかってる!わかってるけど、男の口からは言い辛いじゃないか?!」
「プロデューサーさんの場合、本当にわかってない、ってことがありそうなんですよ・・・」
「いや、だいたい、俺の方から、何か用か、って聞くこと自体がすでに変だったんだぞ?」
それもそうだ。
プロデューサーさんなりに、言い出しやすいように気を遣ってくれていたんだ(!)
私は別に、言い出し辛かったわけじゃなくて、それ以上に混乱してただけなんだよね。
よし。気を入れ直して。ちゃんと渡そう。
「これ、バレンタインのプレゼントです。受け取ってください!」
二つの包みを、まっすぐに差し出す。まっすぐな視線と共に。
その視線を真正面から受け止めた彼は、包みに手を伸ばした。
「ありがとう。」
そう一言。
ちょっと照れくさそうに。
こんなプロデューサーさん、初めて見るかも。
そう思った春香は、ふっと緊張が解けて、自然な笑顔を作っていた。
日本全国、百万人のファンを魅了した、あの笑顔を。
やっぱり、ここまで来てよかった。
「開けてもいいか?」
「はい。」
最初の包みはネクタイだった。
赤地に細かい模様がドット調で並んでいる。カジュアルにもフォーマルにも使い勝手のよさそうな柄。
ただし、よく見るとその細かい模様はリボンなのだ。
もう一つは、ハートの形の小さなチョコレート、スイートとビターの二色が、ぎっしり。
「いただきます。」
さっそく一つ口に放り込む。
「ん、うまいな。これ、春香の手作りか?」
「そうなんです。」
えへへ・・・ほめられた。
「このネクタイもいいな。早速明日していくか。」
「あ!えーと・・・ちょ、ちょっと、しばらくしてから使ってもらった方が・・・いいかも?」
赤地にリボン柄のネクタイ。
今日の事情を知ってしまった事務所の人が見ると、きっと一目でピンと来る。
そうなった時のことを思うと、それだけで恥ずかしい。
「そうか?でも、どうして?」
説明をしちゃうと、このネクタイをしてくれないかもしれない。
「な、なんとなくですよ!なんとなく!」
無意味に顔を真っ赤にして、春香は答えた。
「・・・・?・・・わかった。そうすることにするよ。」
理由はわからなくとも、必死さは伝わったらしい。
「春香、その・・・3月の第2日曜日って、予定あるか?」
「え?」
3月の第2日曜日・・・それって何の、とまで言いかかった。
14日じゃない?!
あぶないあぶない。もし言っちゃってたら、プロデューサーさんのこと言えないよ。
でも、素直にホワイトデー、って言ってくれればいいのに。
「友達と、もう少し暖かくなったら遊園地に行こう、って約束してるんですよねぇ。できれば混んじゃう春休み
になる前にしたいなあ、って思ってるんで、もしかすると、その辺になるかも・・・」
半分本当。
でも半分は意地悪。
「そうか。それは残念だな・・・」
でもでもプロデューサーさんは、もっと意地悪!
「あ!で、でも、なんとか、予定あけられると思います!きっと大丈夫です!!」
それを聞いて、プロデューサーさんは笑った。どちらかと言うとニヤリという感じで。
やられた。
「じゃあ、食事でも行こう。日曜日なら夜は大丈夫だと思うから。」
「はい!」
うわあ・・・。
夢みたい・・・。
私こそ、素直に最初から、その日は大丈夫って言えばよかったかな?
「まあ、多分これからはしばらく、日曜は昼間も大丈夫だと思うんだがな。ようやくライブDVDも発売になるし、
仕事も一段落したから。」
「あ。この間のラストライブのですね?うちにも見本が届きました。まだ見てないですけど。あのジャケット、
凄いカッコいいですよね。」
「だろ?」
そう言って、彼は春香の後ろの壁を指差す。
「わっ!私だ!気がつきませんでした。」
ジャケットの絵のポスター。
真ん中に、片手を挙げてポーズを取る春香。その右に、儚げな笑みを浮かべた伊織、左には熱唱する律子。
いずれもライブ中の写真だ。
「月末には、ライブ中の風景を収めた写真集も出るぞ。」
「そうですか・・・なんか、ついこの前のような、すごい昔のような・・・」
ポスターに顔を向けたまま、応える。
「ああ、そうだな。俺もそんな感じだ。」
「この時の律子さん、凄かったですよね。」
「いつもは、春香と伊織に対して一歩引いた感じがあったんだけど、このライブでは負けじとアピールしている
みたいだったな。三人とも全てを出してきてるのがわかって、凄まじいばかりだった。律子はあれがアイドルと
しての最後のライブになるかもしれないと、そういう思いもあったんだろうな。」
「あ。律子さん、やっぱりアイドル続けないんですか?」
「うん。この前、次はプロデューサーになるって、社長とも話して決めたみたいだ。」
「そうなんだ・・・。」
「まあ、それはいいんだが、俺が4月からやよいをプロデュースする予定だったのに、持っていかれちゃったん
だよなあ。」
どきっ
プロデューサーさんが、別の子をプロデュース・・・
うん。当然・・・だよね。
「伊織とやよいとデュオにするんですか?」
「そうらしい。律子はやっぱり、マニア狙うのが好きみたいだ。」
「じゃあ、プロデューサーさんは、誰をプロデュースするんですか?」
「うん・・・まだ未定だけど、亜美あたりかな、と思ってる。」
「え・・・やよいを取られたから、今度は亜美・・・」
ふと、疑惑が頭を持ち上げる。
「そう言えば、前の私たちのユニットにも、伊織がいたし・・・もしかして?!プロデューサーさんって、まさか
そういう趣味が?!」
だから、私ともつきあえないとか?
私だって、まだ16歳ですよ?世間的にはロリコンって言われかねない年ですよ?
「おい!春香、なんか激しく誤解してないか?」
「い、いえ!誤解してません!むしろ、ようやくプロデューサーさんのこと、ちゃんと理解できた、って言うか。」
「それが誤解だって言ってるんだよ。俺は別にロリコンとか幼女好きとか、中学生以下しか女性と認めないとか、
そんなことは全然ないぞ。」
「じゃあ・・・どうして、765プロでも年少の子ばかりプロデュースしようとするんですか?」
「う・・・それは・・・その・・・」
明らかに隠し事がある態度で口ごもる。
「やっぱり・・・」
「いや、そうじゃない。でも、確かに理由はあるんだが・・・。」
「だったら、わかるように説明してくださいよ。」
「・・・よし。わかった。」
覚悟を決めた様子で、プロデュースさんは話を始める。
「実は、怖いんだ。」
「怖い?もしかして、大人の女性が怖いんですか?」
そうだったんだ?!
だから、私とつきあってはくれなかったんだ!
「違う違う!もっと上の、高校生以上の女の子を担当して、恋愛沙汰になったりするのが、怖いんだよ。」
ああ、なんだ。そうか。
・・・え?
それって、私のこと?
私みたいに、担当のプロデューサーを好きになっちゃったり、そういうことが怖い・・・ってこと?
もう、そんなのはこりごりってこと?
もしかして、私って、迷惑だったのかな?
だから、理由も言いづらそうにしてたんじゃない?
そうだよね。怖いって言ってるくらいだし・・・
こんな休みの日に、家にまで押し掛けて来て、大迷惑だよね・・・
「・・・ごめんなさい。」
「え?どうした、春香?なんか様子が変だぞ?」
「ごめんなさい!私、帰ります!」
だっ!
「お、おい春香?!」
「さようなら!プロデューサーさん!」
バタバタ、と廊下を駆け抜ける。
玄関で、一番目立つ赤のゴム長靴に足を突っ込む。
またいつの間にか涙が出てきた。
「待て!春香、また誤解しただろ?」
プロデューサーさんが追ってくる。
「さようなら!来ないでください!」
泣きながら走る。
ああ、もう、この長靴は走りづらくて・・・
どんがらがっしゃーん
「春香!大丈夫か!」
プロデューサーさんが駆け寄る。
「うう・・・優しくなんて・・・しないで・・・ひっく、ください・・・」
「そうはいくか。」
「だって・・・迷惑だったんですよね・・・だったら、そう言ってくださいよ・・・」
「春香、俺の話を、よく聞いてくれ。」
プロデューサーさんが、春香の正面にまわって、両肩をつかむ。
そして、まっすぐに目を見て、話し始めた。
「俺、春香と約束したよな。」
「え?」
「いつか、春香がアイドルをやめた時、俺のところに帰ってくる、って。」
「・・・でも、それは・・・」
「俺は、春香とそう約束したと、思ってる。だから、今後他の女の子をプロデュースした時、たとえ向こうの
片思いでも、その子と恋愛沙汰になったりしたら、春香がどう思うか、そう考えると、怖いんだ。」
えっ?
えええええっ?!
「ふええええ〜〜ん!」
「な、なんでそこで泣くんだあ!」
「嬉しいんですよお〜。ふえ〜ん」
「それにしても、声上げて泣くことないだろ?」
「だって・・・ひっく、プロデューサーさんが、勘違いさせるようなこと言うから・・・」
プロデューサーさんが頭をかく。
「いや、俺は最初から、今の意味で言ったつもりだったんだが・・・。」
ああ・・・さすが、プロデューサーさんだ。
自分にとっては、告白に近い意味で、言いづらかったことを言ったのに、無神経な言い方で、肝心の相手に
見事に誤解されるなんて。
「そんなの、絶対に勘違いするに決まってるじゃないですかぁ。ぐすっ。」
本当は、凄く嬉しいはずなのに、全然素直に喜べないよ。
「悪かった。だから、機嫌直してくれ。な?」
「じゃあ、あの、4月の第1土曜日、予定空けてください。」
「4月?」
「そうです。その日に、どこかに連れて行ってください!」
「よ、よし、わかった!4月の第1土曜、だな。忘れないぞ。絶対に仕事も入れない。」
「約束ですよ?」
「ああ。約束、だ。」
それを聞いて、ようやく春香に笑顔が戻った。
「わかりました!」
「ふう、やっとか・・・」
プロデューサーさんも安心したみたいだ。
「あ、でも、さっきの3月の約束も、まだ有効ですからね?」
「わかってるって。あれは俺から誘ったんだしな。」
なら安心。
ちゃんと確認しておかないと、なんかあぶなっかしくって。
でも、今日は、やっぱり来てよかった。
「どころで、春香。」
「なんですか?」
「すまん。降参だ。4月の第1土曜日って、いったい何の日だ?」
「プロデューサーさんの、ばかああああああ!!」
/Fin.
いや、本当に間に合ってよかった・・・。一時はどうなることかと・・・。
最後の方、ろくに見直してもいないんで、ちょっと何かあるかとおびえていますが。
ということで、タイトルから察していただけると幸いですが、以前の拙作、「one night before」の続きです。
実は、この間に「two days after」という話が入る予定だったのですが、これはどうにもただのドタバタにしか
ならなかったので、そのままお蔵入りとなりました。
その代わり、そこでやる予定だったネタも全て、ここにぶち込んでいます。
おかげで、予定よりだいぶ長くなってしまいました。
まあ続編とは言いつつ、話そのものは独立して読める形にはしてあるつもりです。
で、どうしてもギャグやメタっぽい部分は抜けなかったので、代わりに春香にリボンを外してもらいました。
え?俺、何か間違った?
最後に、ひとつだけ、これを通して言いたかったことを。
俺は、春香に不幸になってもらいたいわけじゃないんだ!
すみません。
>>382は3/9でした。
ついでなので、これの前作「one night before」は、
>>11-13になります。
それでは。
例によって、感想などお待ちしております。
>>389 うん、微妙に誤字ってるしw
なんつーか春香さんの可愛さにノックアウトされました。この一言足りない&思い込み激しいな似たもの同士カップルめ!
こんなの傍で見せられてたら、そりゃー小鳥さんも律っちゃんも二人を応援する側に回っちゃいますよね、って。
事務所のみんなどころか、春香さん本人や世間の人まで口を揃えて「リボンが無いから分からない」を連呼するのは
何かのオチかと思ったが冷静に考えてみると書き手が書き手だったw
無事に間に合って、おめでとうございます! あとお仕事お疲れさま。
>>389 春香さんもPもうっかり可愛くて応援したくなるいいカップルでした
後、自分で言った春香がアイドルで無くなる時まで待ってるという
言葉を真摯に守ろうとしてるPはマジでいい男、
未来の担当アイドルもしっかり気遣ってるのがいい感じです。
亜美真美とやよいは個人EDでも恋愛関係に発展しないから
春香の次の担当アイドルとして適任な感じがしますね。
同じ年少組でも美希とかだと大変な事になりますしw
何年後になるかは分からないけど、春香がアイドル人生を完結させた時に、
二人が交わした約束通りに結ばれますように願います。
>>350 なんか最後の最後に「うぎゃーっ! ややや、やっぱり恥ずかしすぎるぞ、自分、もう帰る!」と飛び出していこうとする響が
見えた気がする。「・・・ていうか、帰るって、どこへ?」
自分の中では響は、恥ずかしいことを言ったりやったりをすると耐えられないんだけど、でもしてしまう人のようですw
なんにしろかわいくてお腹いっぱいです
>>373 9話構成+エンディング。一話辺り1ステージ扱いかな?
ワルキューレ辺りのテキスト語りがこんな感じの童話調だったはずなので、どことなくイメージが繋がる感じですな
元ネタとも相まって古き良きナムコテイスト、というか。
>>389 ギャグやメタは抜けそうにないと言いつつ、しっかりコメディでまとまってるじゃないかとw
ていうか、春香さんも相変わらずプロデューサーと負けず劣らずのフラグクラッシャーぶりでむしろ安心感すらも。
状況的に本人は不安いっぱいなんでしょうけども、端から見てると安定しすぎてるぐらいなんで、安心して楽しめる一作になってると思います。
でも、春香さんは不幸ですね。スパークくん的な意味でw
>>389 9スレと聞いて戦慄しかけたじゃないかw
あと人型ならぬ春香型の雪跡を記念に写真撮りたい
きっとすごくキレイなシルエットができてる
>>389 可愛くて面白くて楽しい春香SSでした。以上!
いや・・・まったくもってお恥ずかしい・・・
冒頭の9スレ→9レスから始まって
8/9 L13 プロデュースさん→プロデューサーさん
9/9 L44 どころで→ところで
まだ他にもありそうです・・・。
やはり、慌てると、ろくなことはないです。
それどころか、俺、肝心の「誕生日おめでとう」と一言も言ってないし。
「今日は、4月の第1土曜日、4月の3日です。春香、誕生日おめでとう」
とあとがきで締める予定だったのに、それすら忘れてる・・・。
他にも、サブタイトル「雪のち晴れ」とか、「春香がPの家にやってきた」とか、
いろいろネタを用意していたのに・・・。
それはともかく、感想ありがとうございます。
って、えっ?こんな波乱万丈、山あり谷ありなのに、安心して読めちゃうんですかw?!
一応、解説。
リボンネタですが。
5/9の再会シーンで、Pが春香に気付かない、という演出をしたくて、リボンを外したわけなのですが、
一応、他の人も気付かない、と強調したくて、小鳥さんに事前に気付かないことを確認してもらってます。
あと、Pが、かなりのイメチェンとか、一般の人も気付かないとか言ってるのは、
Pなりに自分が春香に気付かなかったことの、言い訳をしているんですw
P本人、意外にも、すぐに春香だと気付かなかったことが、ショックだったみたいですw
397 :
1/3:2010/04/10(土) 19:38:47 ID:X/gLIuZH
オフリミット〜猛犬に立ち向かう
皆さん、ご機嫌いかがですか? 萩原雪歩と申します。
今回は、わたしが苦手を克服するまでのいきさつについてお話しします。
このたび、わたしは録音のため、レコード会社のスタジオへ通い始めました。
しかし、765タレント寮からそこへ向かうためには、ある家の前を抜けなくてはなりません。
その家には、立派な二頭のコリーがいるのですが、わたしを見るたびに吠え立てるので、
こちらはただただ逃げ出すばかり。
おかげで、録音の前に余計な体力を使い、だいじな仕事に気合が入らないのです。
そんなわたしに、最初に入れ知恵してくれたのは、同僚の秋月律子さんでした。
「雪歩さん、いいまじないがありますよ」
「律子さん、どうするのですか?」
「手のひらに『犬』という字を書いておき、それを彼らに見せ付けるのです」
「すると、いったい?」
「犬のほうでは、あなたを仲間と認識し、たちまちおとなしくするでしょう」
「なるほど……犬の字は、指で書いたらいいのですね」
「いいえ。このペンで、はっきり書いておいて下さい」
「消し忘れたらどうしましょう?」
「大丈夫! これは水性ペンですから、普通に洗えば落ちますよ」
「ああ、そうですか……」
というわけで、わたしは彼女の言葉どおり、左手に「犬」という字を書いたのです。
398 :
2/3:2010/04/10(土) 19:40:09 ID:X/gLIuZH
やがて、わたしは例の家に差し掛かりました。美しい芝生の上に、二頭のコリーがたたずんでいます。
しかし、彼らはいつものように吠え立てました。最早、逃げてはいられません。
(わたしは、あなたの友達ですよ!)
そう言い聞かせ、左手をぱっと開きます。
(ほーら、あなたの友達ですよ!)
左手に書いた「犬」の字を、右手で彼らに示します。
しかし、効果はありません。塀から顔を出してきて、たちまちがぶりと噛み付きました。
幸いこちらは右利きですが、それでも負傷は負傷です。
レコーディングが済んでから、わたしはこれを律子さんに伝えました。すると彼女、からりと笑ってこう一言。
「運が悪かったようですね」「と申しますと?」
「その犬は、字を読めなかったのです」
わたしの怪我を笑い事で済ますとは……律子さん、やはりクールな方ですね。
二度とは怪我をしたくない、しかし、遠回りするわけにもいかず……。
そんなわたしにいい情報を伝えたのは、水瀬伊織さんでした。この方もまた同僚です。
「こっそり教えておきましょう。実はあの犬は夫婦で、牡をオフ、牝をリミット」
「オフくんとリミットちゃん……でしょうか?」
「そのとおり! だから、あの家に近づいたら『オフリミット』と唱えるのです」
「すると、いったい?」
「何日も唱え続ければ、おとなしくしてくれるでしょう」
「なるほど……吠え立てられても耐えるのですね」
「そのとおり! 騒がないことがだいじです」
伊織さん、尻を叩いてくれました。頑張れ自分、負けるな自分!
399 :
3/3:2010/04/10(土) 19:41:21 ID:X/gLIuZH
いよいよ、例の家の前です。
オフくんとリミットちゃんは、相も変わらず、わたしを敵視しています。
しかし、ワンワン吠えられても、最早逃げてはいられません。
(オフリミット、オフリミット……)
二頭の名前をつぶやくと、体力を使わないように、ゆっくり彼らの視界から消えていきます。
帰り道でも、同様に「オフリミット」と唱えます。
二日、三日と時が過ぎ、やがて収録最終日。
今日も、わたしは例の家に差し掛かりました。相手が静かにしているうちに、先手を打って――
(オフリミット、オフリミット……)二頭の名前をつぶやきます。
彼らは、全く吠えません。わたしを見ても、キュウーンとのどを優しく鳴らすだけで、芝生にちんまり座っています。
(伊織さん、あなたの言ったとおりですね……それでは、帰りにまた会いましょう)
こうして、わたしは難所を越え、無事に収録現場へと着くことができたのでした。
400 :
あとがき:2010/04/10(土) 19:43:56 ID:X/gLIuZH
いかがでしたでしょうか。
僕としては、久々のアイマス
SSとなるのですが……相も
変わらずプレイの機会がなく、
登場人物の口調が曖昧です。
前半部分は「無筆の犬」という
落語から、後半部分はとある
将棋プロのエピソードから、
それぞれ採らせていただきました。
では、今回はこの辺で。
401 :
書き直し:2010/04/10(土) 19:51:51 ID:X/gLIuZH
伊織の口調を修正します。
雪歩との会話部分を、
次のように変えて下さい。
「こっそり教えるわ。実はあの犬は夫婦で、牡をオフ、牝をリミット」
「オフくんとリミットちゃん……でしょうか?」
「そのとおり! だから、あの家に近づいたら『オフリミット』と唱えなさい」
「すると、いったい?」
「何日も唱え続ければ、おとなしくしてくれるわよ」
「なるほど……吠え立てられても耐えるのですね」
「そのとおり! 騒がないことが一番よ」
次スレ立てなくて大丈夫かしら? 残り8kbなんだけど……
>>400 765寮と言えばブレイクか化け猫氏と相場が決まっておりましてw
お帰りなさい。相変わらず言わなくていいことを言うところとか
翻案元とアイマス世界の差異をあまり考慮しないまま作文される
癖とかさすがの腕前です。
いいと思ったのは吠える犬に関する別の話をうまく組み合わせた
ことと、401の書き直し後の伊織の口調。なかなかキャラを掴んで
おり、投下開始前に見直しをなさらなかったのが悔やまれます。
個人的に応援していることを笠に着て上から目線で申さば、そういう
風に気をつければ自分のアドバイスが原因で雪歩に怪我をさせた
律子の態度は(オチを変えずとも)違っていたでしょうし、伊織ほど
でないものの律子や雪歩にも台詞の特徴があるのにも気づけた
ことでしょう。
「いままでの作品では」一番面白かったです。ごちそうさまでした。
>>402 そろそろ入用ですね。どなたかお願いできますか?
テンプレ案(リンク修正とクロス合流について書きました)
http://imasupd.ddo.jp/~imas/cgi-bin/src/imas65661.txt
>>400 さすがに腹に据えかねたのと、書き捨てる気がないのとで、トリつきで言わせてもらいます。
> いかがでしたでしょうか。
相変わらず、最低です。
キャラが命のこの手の二次作品で、キャラが全然把握できてない。
しかもそれを自覚しながら、自分では検証も良否の判断すらも出来ない状態で、
それを読者に委ねるなど、言語道断です。その態度が書いたもの以上に最低です。
物書きとして恥を知ってください。
何故、自分で理解できていないキャラを使って書こうとするのか、いや、それ以上に、
その状態で書いたものを、何故人に見せようとするのか、全く理解できません。
俺だったら、とても恥ずかしくて人に見せられたものではありません。
そして実際に、今回も、とても他人に見せられる出来の代物ではないです。
作品も最低で、作者の態度も最低です。
そして、それ以上に、あなたのやっていることは、既にキャラに対する冒涜の域に達しています。
既に、知らないキャラを試しに書いてみた、という段階を超えている。
さらに、あれだけ苦言を受けながら、全く耳を貸さない。
(少なくとも、全く文章の方には反映されていないから、結果的にはそういうこと)
あなたの想像で、アイマスのキャラを勝手に貶めている。それも作品上の演出意図とは無関係に。
これは、いちアイマスファンとして、許せない。
やめてください。
もう二度とキャラを冒涜する行為は、しないでいただきたい。
繰り返します。
最低だ。
やめろ。
まー某動画サイトにもそういうのは五万と居るわけで
そこまでカッカするこたないんでないの
ちょっくらスレ立て挑戦してきます。
>>405 まあ、動画サイトの話が出るのは想定内というか。
あれはあれで、演出上の意図を持ってやってるのが大半ですし。
それに動画は動画でそれなりに作成技術や手間もかかるし。
(この点は、絵に対しても同様のことが言えると思ってます)
ところが文章って、何の準備も手間もいらないし、
実際に準備も何もしていないことが、わかっちゃってるわけですよ。
わかってなければ、まだいいんですけどね。
準備してない、する気もない、そしてつまらないもの書いて、文句言われて、
それでもまだおんなじもの書いて晒してる。
だから文句も強烈に言わないと理解してもらえないかな、と。
あ、どうも
>>400の人は、タグ付けないと自分のことを言われてると
理解できないようなので、あえて今回もタグ付けます。
上記、
>>400のことを言ってます。
なにこのID: 4B72・・・w
つまり、for B72、千早のために、ってことか?!
好きなものはGJ、苦手なものはスルー、じゃダメなのか?
自分が腹立つ相手に「お前は下手だから書くな!」って命令するのは
怒る本人も疲れるだろうが、それを目にする人も戸惑うんだ
化け猫氏
>>400に対する一連のアドバイス自体が「無筆の犬」になってる
掌にアドバイス書いて見せて、理解されずに噛まれてションベンかけられても
そりゃ相手が理解できなきゃ仕方ないってオチだろ?
もう少しクールに考えてみたらどうよ
嫌なら読まなければ良いとか、つまらなければ反応しなければ良いという理屈があるならば、
嫌なものに嫌と伝えてもよい理屈もまたあると思う。
書き手にいいように踊らされるキャラクターの立場からすれば、化け猫氏のようなタイプであってもそうでなくても
同じようかもしれないね(架空のキャラクターに人格があるのならだが)。
こういうのを真面目に考えられる機会が得られた意味では、僕は反応に足る内容(この一連の流れを含めて)だと感じた。
※作品の内容自体へは何も感想がないけれども。
>>410 二段落目は書き仕損じかしら。
ストーリーのメタ(落語のネタを知っていないと理解できないのだから噛み付かれてもしかたない)というのなら解る。
>>411 原作は手に書いた虎の字で犬をびびらそうとする男の話のようだが
>>404氏が何度
>>400氏にアドバイス(苦言)を向けてみたところで、
向けられた相手(
>>400)が意図を理解できない限りは
当然のように中身が宜しくないSS(噛み付き)が延々返ってくるだけじゃないですかね…と
言いたかった。
>>408 とりあえず落ち着け、と言うのと同時に
>>400 書き続けるならトリつけた方がいいんじゃない?
>>412 把握。僕の解釈と併せて言えるのだとすれば相補的で面白い、と思った
残り2kで面白い終わり方をしそうだ。このスレいいなあ
作品から人格批判をおっぱじめる奴が何を言ってもね
これで500KBなら次スレは平和な流れに戻る
>>410 > 好きなものはGJ、苦手なものはスルー、じゃダメなのか?
キャラスレならそれでも良いと思うけど、創作板でそれはどうかなと? 思う。
読む人、書く人、それぞれがそれなりに真剣勝負の場じゃないの? ココは。
#故に長文の感想とか付くんだし。
いくら苦言を言う人がいても、全く耳を貸さないか、理解できないか、と思えるので、
今回は一応論拠を述べた上で、結論をわかりやすく簡潔に言わせてもらいました。
それと、毎度毎度応援する人だの意義があるとする論調だのが出てくるので、
強烈に反発している人間がいる、との意思表示でもあります。
スルーしてると、そういう(結果的に)増長を促す書き込みが出てくるので。
あと、どうもあとがき見ると、こいつもうこのスレに認められたいっぱしの書き手気取ってやがります。
他の書き手への敬意も含めて、俺はこいつと同列にされるのはまっぴらです。
だからトリ付けた、というのが正直なところです。完全に個人的な感情論です。
ただ、スレ的に意味とか意義とか言うなら、
こんなつまらないものやそのレスに反応するくらいなら、他のSSに感想付けた方が、よほど意味があると思います。
正直、俺のSSより
>>400の方が反応が大きいスレで、しかも読者からも上記同列に思われてるなら、
もう俺がこのスレに作品を発表する意義を感じません。
それでは。