THE IDOLM@STER アイドルマスター part3
「やまないな」
「やみませんね」
突然振り出した雨を避けつつ、プロデューサーと言葉を交わす。続かず、沈黙。
今まで晴れていた空は真っ暗で、これでは写真撮影など出来ない。
すみません、ちょっと。そう呼ばれ、プロデューサーが駆けて行く。一人になり、見上げた。
滝のように、その言葉が的確かもしれない。それが、もうずっと続いている。いつになったら明けるのかわからない、どんより沈む空。
雪歩と声を掛けられて、視線を戻す。彼が戻ってくる。
「残念だけど、延期だ。また晴れた日に撮りなおすってさ」
一つ頷く。それよりも。
「ずぶ濡れですよ、プロデューサー。風邪引いちゃいます」
ハンカチで彼の額から拭う。背が高い彼に、爪先立ち。
苦笑しながら、有難うと返される。彼が屈んでくれ、いくらか拭き易くなる。
「・・・全然足りません」
すぐにハンカチが水を含んで、拭いきれない。大丈夫、と彼は背筋を伸ばして一息。
「しかし、さっきまで晴れてたのに。天気予報もあてにならないな」
確かに。撮影班の方々が、では、と駆け足で去っていく。
「傘も無いし、当分は雨宿りかな」
彼がよいしょ、とベンチに腰掛ける。その声に、何となく笑ってしまった。
「プロデューサー、おじいさんみたいですよ」
「失礼な。まだまだ若いぞ」
他愛無い話の最中にも、雨はやまない。強くなっていく雨脚に、彼が顔を顰める。
「これは困った。通り雨だと思ったけれど」
「事務所に戻れませんね」
水溜りが広がり、跳ねる。
「連絡しておくか」
携帯電話を取り出し、直ぐに耳に当てる彼。相手に声が伝わりにくいようで、大きな声を出している。
雨はまだ強くなる。傘なんてあっても、きっと役に立たない。そんな雨。水しぶきで、視界は白い。