THE IDOLM@STER アイドルマスター

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1名無しさん@お腹いっぱい。
アイドル育成シミュレーションゲーム「アイドルマスター」のスレです。
基本的になんでもありな感じで。
2名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/14(日) 13:37:09 ID:1tNSvtAs
          ┏  ━ゝヽ''人∧━∧从━〆A!゚━━┓。
╋┓“〓┃  < ゝ\',冫。’  ,。、_,。、     △│,'´.ゝ'┃.      ●┃┃ ┃
┃┃_.━┛ヤ━━━━━━ .く/!j´⌒ヾゝ━━━━━━━━━━ ━┛ ・ ・
       ∇  ┠──Σ   ん'ィハハハj'〉 T冫そ '´; ┨'゚,。
          .。冫▽ ,゚' <   ゝ∩^ヮ゚ノ)   乙 /  ≧   ▽
        。 ┃ ◇ Σ  人`rォt、   、'’ │   て く
          ┠──ム┼. f'くん'i〉)   ’ 》┼刄、┨ ミo'’`
        。、゚`。、     i/    `し'   o。了 、'' × 个o
       ○  ┃    `、,~´+√   ▽ ' ,!ヽ◇ ノ 。o┃
           ┗〆━┷ Z,' /┷━'o/ヾ。┷+\━┛,゛;
話は聞かせてもらいました! つまり皆さんは私が大好きなんですね!!


公式サイト
ttp://www.idolmaster.jp/

【アイドル】★THE iDOLM@STERでエロパロ 9★【マスター】 (18禁)
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1220873526/l50
【デュオで】アイドルマスターで百合 その7【トリオで】 (18禁)
http://babiru.bbspink.com/test/read.cgi/lesbian/1215481881/
SSとか妄想とかを書き綴るスレ7 (したらば)
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/game/13954/1201996512/
3名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/14(日) 19:48:23 ID:PvF8Cn/a

                 ∩
                (  )
                | | ,────ヽ
                | |∞      ∞ )∩
          ┏━   | / 凵凵凵凵 .| / (  )!━゚━'━┓。
╋┓“〓┃ < ゝ\',   .| | | の  の | | | | | △│,'.ゝ'┃.      ●┃┃ ┃
┃┃_.━┛ヤ━━━━  .ノ (  ワ   レ′し| |━━━━━━━━ ━┛ ・ ・
       ∇  ┠──  ヽ  ̄ ̄ ̄ ̄ _ ̄ 冫そ  ' ┨'゚,。
          .。冫▽ ,゚' \',冫|       j ⌒  乙 /  ≧   ▽
        。 ┃ ◇ Σ  |       |  乙 /’  │ て く
          ┠──ム┼.|       |__   ┼ 刄、 ┨ ミo'’`
        。、゚`。、     / .|    __   ) o|。了 、'' × 个o
       ○  ┃  `、, +  |  /⌒   |  j      ノ。 o.┃
           ┗〆━┷  |  | ┷━'(  ヽ   ┷+ ━┛,゛;
                  /  )     ⌒
                 /_,_,ノ
4名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/14(日) 20:29:44 ID:dBrq23hh
人力ボーカロイドをやろうとしたが挫折した
もうエロMADでいい
5名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/15(月) 00:55:26 ID:3ohvt3go
アイマスって人気の割にSSが少ない気がする
6名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/15(月) 01:00:24 ID:0kBe8Cnl
文章より絵や動画のほうに力注いでるから
7名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/16(火) 15:59:23 ID:V4j3qQs6
アイマスのスレなんて立ったのか
これは期待
8名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/22(月) 18:31:24 ID:nL5tbLzK
今更DLC見たけど、スモックておいw
9名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/26(金) 21:22:53 ID:m73TOFmC
保守

だけというのもなんなので、やよいを貰っていくとしよう
10名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/26(金) 21:53:12 ID:oi4lLiTl
真を頂いていくがかまいませんね!
11名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/26(金) 23:45:40 ID:ZLr5P43w
だれも阻止しないなら春香さんを頂いていくぞ
12名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/28(日) 10:22:09 ID:fsZhxtGl
みんなまとめて阻止
13名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/28(日) 13:52:13 ID:26j6wKS4
光化学スモック
14名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/29(月) 11:23:32 ID:xXIry8hK
光学迷彩によって服が見えなくなるんですねわかります
15名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/12(日) 23:06:49 ID:iwy3AAFL
だって私たちみんな
16名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/13(月) 14:24:22 ID:C3dy/XTN
ガンダムだ!
17名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/24(金) 16:56:41 ID:iZcwgIuO
なぜこの板に人が少ないかと考えた結果地鎮祭を行っていなかったからだという結論に達した
何が言いたいかというと要するにナムコは早く巫女服をDLCで出せ

ttp://www6.uploader.jp/dl/sousaku/sousaku_uljp00236.jpg.html
1810/26に名無し・1001投票@詳細は自治スレ:2008/10/24(金) 21:29:47 ID:g1ehaSEI
ちょwww運営協力wwww
19名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/25(土) 21:13:53 ID:GbdynQrm
気分が乗っていたのでもう一枚かけた。雑だけど
百合百合したものを描く予定だったのにあんまりそうならなかった

ttp://www6.uploader.jp/user/sousaku/images/sousaku_uljp00246.jpg
20名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/26(日) 00:46:48 ID:MwE/j7wS
>>19
今この二人がお気に入りの俺の心臓を三個くらい貫通した
21名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/26(日) 19:35:26 ID:Ne4oOwjI
百合リベンジ。嫌いな人は注意。ってもそれほどじゃないか?

ttp://www6.uploader.jp/user/sousaku/images/sousaku_uljp00255.jpg
22名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 05:11:55 ID:bYgFLE6/
こんなスレがあったとは、便利だ
23名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/29(水) 10:04:28 ID:WZXA2xZG
ナイスゆきぽ、ナイス百合
最高だぜ
24名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/29(水) 18:32:30 ID:q/rIayO5
誰かお題くれ
25名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/29(水) 23:47:12 ID:5k3iwjeH
修羅場トリオ、お願いします
26名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/30(木) 04:30:06 ID:xit5imTb
新作も出ることだし
765プロVS961プロで
各バージョンから三人ってことで
27名無し・1001決定投票間近@詳細は自治スレ:2008/10/30(木) 20:36:13 ID:4T3POCM5
>>25
ほい。
……いや、すまん
ttp://www6.uploader.jp/user/sousaku/images/sousaku_uljp00284.jpg

お題はこれで締切とさせてもらいます
>>26はちょっと時間かかるかも
28名無し・1001決定投票間近@詳細は自治スレ:2008/10/30(木) 23:09:04 ID:dNOHOjS3
これは色々妄想を誘いますね
ありがとうございました
29名無し・1001決定投票間近@詳細は自治スレ:2008/10/31(金) 16:19:17 ID:F7eNc0I6
>>27

二人のせいで疲れきった真をあずささんが癒してそのまま……ですね。わかります
30名無し・1001決定投票間近@詳細は自治スレ:2008/10/31(金) 21:38:25 ID:47pwLGyx
お邪魔します。やはり創作発表板にもスレが立ってましたね。

ここはSSもOKですよ、ね?
質問なのですが、SS投下時のルールはありますか(千早スレのような)?
最近書き始めたので、すぐ投下できるものはないのですが、ルールがあればよろしくお願いします。
SSの投下(大ネタ小ネタ含めて)はキャラスレでは活発ですが、何となく投下しづらそうなので・・・
かといってSSができそうな総合的なスレはエロパロスレしかないし・・・
31名無し・1001決定投票間近@詳細は自治スレ:2008/10/31(金) 21:41:58 ID:L0UdpjJ9
何もないんじゃないの?
SS投下は大歓迎のはず、むしろそれ用にスレだろう
板的にSSスレが活発な板だし
32名無し・1001決定投票間近@詳細は自治スレ:2008/10/31(金) 21:50:07 ID:47pwLGyx
>>31
ありがとうございます。
暗黙の了解みたいなものがあったら怖いなーと思ったものでw
いつになるかはわかりませんが、投下時にはまたよろしくお願いします。
33 ◆yHhcvqAd4. :2008/11/06(木) 11:26:24 ID:GTcK1QIz
創作文芸板にスレとか建たないかな?とか思ってたら建ってたんですね。
キャラスレでもSS投下ってスレによっては活発ですが、こっちも盛り上がることを期待して先陣を切らせてもらおうかと思います。
亜美真美ネタで、5レス分ぐらいになります。
34冬の足音 1/5:2008/11/06(木) 11:27:16 ID:GTcK1QIz

 季節の変わり目とは色々厄介なもので、急激に変化する気温や湿度についていけず体調を崩す人が、古今東
西を問わず後を絶たない。世間の人々が上着を羽織り始める頃になってしばらく経つ。どうやら俺も、変化に
ついて行けなかった人の仲間入りを果たしてしまったようだ。喉のひりつく痛みとツンと来る鼻の痛みに日々
頭を悩ませていた。発熱が無いのが唯一の救いだが、垂れてくる洟をどうにかすべくティッシュの持ち運びは
欠かせないし、担当アイドルに風邪を移しては一大事なのでマスクの着用も必須だ。鼻が痛いと頭も一緒に痛
くなるので、それが辛かった。
 「よし、じゃあ今日はここまでだ。二人ともお疲れさん」
 いつもよりも長く感じた一日もようやく終わり、頭一つ分低い所から俺を見上げる双子に声をかけて、右手
を挙げた。ブラインドに阻まれて外の様子は見えないが、きっと冷たい風が木々の落ちかけた葉を揺らしてい
ることだろう。
 「うん、兄ちゃんおっつー。……けど、カゼ、大丈夫?」
 「ああ、俺は平気だから、亜美と真美の方こそ、帰ったらきちんと手洗いうがいをしておいてくれ」
 そんなマメなことはやっていない自分のことはひとまず棚に上げておいて、不安そうに瞳を曇らせる亜美の
頭をそっと撫でた。
 「急に寒くなっちゃったよね、一週間ぐらいで」
 事務所の中でも少し冷える。そういえば、空調の調子が悪いから近い内にメンテナンスをお願いしよう、と
いう話を社長がしていたような気がする。
 真美は両手で口元を覆って息を吐きかけ、掌を擦り合わせていた。剥きだしの小さな手の白さが、フロアに
漂う冷気を強調するようだった。
 「ねぇねぇ亜美、帰りにコンポタ買ってこ」
 「ん、そだね。あったかい缶を持ってるだけで違うしね。じゃ、兄ちゃん、お先にー」
 「おう、気をつけてな」
 手を振りながら事務所を後にする亜美達の笑顔に安心しながらも、二人の姿が見えなくなった瞬間に体がズ
シッと重たくなり、心の底から溜息の出る思いだった。
 病院に行く時間はどこかで取れないものか、と思いつつも、人気が波に乗り始めた今が二人にとっては大事
なのだ。ここが踏ん張り所だと自分に言い聞かせ、俺は自分のデスクに戻ってパソコンを立ち上げるのだった。
 コーヒーを淹れようとマグカップの取っ手に指を引っ掛けた瞬間、指先から伝わってきた冷気が肘まで上っ
てきて、背筋がゾクリとした。



 五日後。幸い俺の風邪が移るようなことも無く元気なまま仕事に打ち込んでくれた亜美と真美は、オフを取
ってお休みだ。しかし、担当アイドルの休日がプロデューサーの休日であるわけでもなく、俺はいつも通りに
765プロの事務所だ。鼻と喉は相変わらず不調で、鼻炎、頭痛、倦怠感、咳と、列挙してみれば豪華なものだ。
俺のデスクには栄養ドリンクの空き瓶がそのままになっていて、今日もマスクはつけたままだ。今年の風邪は
しぶとい。毎年聞いている気がするフレーズが、今年もテレビで流れていたのを思い出す。
 あの二人がいない今が、溜まった事務仕事を片付ける絶好のチャンスだ。活発という言葉では表現しきれな
い、ただ一緒にいるだけでも猛烈な勢いで体力を消耗するような二人に振り回されないのは幸運と言えば幸運
だが、世の中の嫌なことを全て吹き飛ばしてくれるようなあの明るい声が聞かれないのは少々寂しくもある。
 「兄ちゃーん、おっはよーん」
 と、その時、まるで俺の考えを見透かしていたかのように、『あの明るい声』が事務所に響いた。ガサガサ
とビニール袋の擦れる音を引き連れて、声の主達はこちらへまっしぐらにやってくる。
 「おいおい、どうしたんだ、今日はオフだろう、二人とも」
 「うん、知ってるよ」
 俺の答えは予想済みだったのか、真美が口元をきゅっと吊り上げてはにかんだ。腰の後ろに回した手から下
がったビニール袋は真美のほっそりした腰元からでこぼこの輪郭を覗かせていて、スーパーで買い物をしてき
ました、と言わんばかりに青葱の首がこんにちは。亜美が手に持ったベージュのトートバッグには、その変形
ぶりから中に鍋でも入っているようだ。
 ひとしきり亜美と真美の手元を見てから顔に視線を戻すと、目を弓なりに細めて笑う亜美と目が合った。亜
美は、悪いイタズラを思いついた時と同じ顔をしていた。
35冬の足音 2/5:2008/11/06(木) 11:28:00 ID:GTcK1QIz
 「兄ちゃん、お腹空いてる?」
 「ああ、そこそこな。……なんか嫌な予感がするんだが」
 視界に入る、鍋の形が浮き出たトートバッグと、昼食前の空腹感を感じ始める頃に出てくるその問いに期待
よりも先に出てきたのは、不安だった。亜美真美と料理。何をどう考えても、地球生命体のような未知の物体
が粘っこいスモークを巻き上げながら鍋から這い出てくるようなおぞましい図しか想像できない。俺の体はと
もかくとしても、事務所が無事でいられるのだろうか。
 「あっ! 兄ちゃん疑ってるっしょー!」
 「ちゃんとママと予行練習してきたから大丈夫だよ」
 膨れっ面になる亜美の横で、真美が自信ありげに胸を反らした。ぶっつけ本番で何かを作るつもりでは無い
ことが分かって、ひとまず、少しだけ、安堵した。
 「何を作るんだ?」
 「んーとね……ナイショ」
 問いかける俺に、赤い舌をちょろっと唇から覗かせながら、亜美がトートバッグを隠すように背を向けた。
その横で真美も、「体のあったまる物だよ」と言いながら給湯室へ続く道に視線を移した。
 「というわけで……しばらく待っててね、兄ちゃん」
 いったい何が出来上がるやら、と、不安七割、期待三割の俺は給湯室へ歩いていく二人の後姿を見送りなが
ら、胃薬の在り処を頭の中で探し出していた。

 
 亜美と真美が給湯室に消えて行って、約四十分。パソコンの立ち並ぶオフィスのフロアには味噌独特の濃厚
な香りが漂い始めていた。空腹時に味噌の香りは実に効果抜群で、先ほどからギュルギュルと俺の胃袋は悲鳴
をあげっぱなしだ。次第に濃度を増していく香りが気になって給湯室の様子を見に行こうとしたものの、「ま
だダメだよ」と両手を広げた真美に行く手を塞がれてしまった。
 実家にいた頃、二階まで漂ってくる味噌汁のいい香りに幾度と無く二度寝を阻まれていたことを思い出す。
母親の作るそれは、耳の奥がキンキンするような電子音よりもよっぽど強力な目覚まし時計だった。
 懐かしさと空腹感にキーボードを打つ手のスピードも落ちてきた。いよいよ仕事がはかどらなくなってきて
しまったと体を背もたれに預けると、給湯室に続く通路から、向かって左側に束ねた髪を揺らして亜美が近づ
いてくるのが見えた。お盆の上には、ほかほかと湯気を立てる丼が三つ。
 「お待たせ、兄ちゃん」
 先ほどから感じていた味噌の香りが目の前に現れた。覗き込んでみると、まず目に入ったのは表面に散った
青葱と、その陰から自己主張する人参の橙色。地味に見えがちな茶色い湖が、今日はやけに鮮やかだった。
 「な、何を作ったんだ?」
 「豚汁うどん!」
 変なものが出来上がってしまうのでは無いかと胃薬を探していたことが恥ずかしくなって思わずどもりなが
ら尋ねる俺に、白い歯のこぼれる満面の笑みで亜美が答えた。
 「おお……」
 俺の机の脇に置かれた丼を改めて見てみると、思わず感嘆の声が漏れた。立ち上る湯気が温かい。
 「さ、食べよ食べよ!」
 両手を合わせて俺を待つ亜美と真美を真似て「いただきます」と号令をかけると、割り箸を割る音が三つ同
時に響いた。早速目に付いた蒟蒻を、ぱくり。薄めながらもしっかり歯ごたえがある。アク抜きがしっかりし
てあると思われる牛蒡も渋みや苦味が無く香り豊かで、大きめに切ってある里芋の粘り気も嬉しい。丼を傾け
て汁を啜ってみれば、豚肉の旨みが味噌のコクを一層深くしていて、顎の繋ぎ目辺りに心地良い痺れが走る。
 「美味しい……」
 「でしょー?」
 「亜美達だってやればできるんだよ」
 鼻高々といった様子で「ねー」と二人で顔を見合わせる亜美と真美。
 腹が減っているおかげなのか、本当に上手に作ってあるのか、破天荒な日頃の二人からは想像もつかないよ
うな、丁寧で味わい深い美味しさだった。箸が全く止まらない。
36冬の足音 3/5:2008/11/06(木) 11:28:50 ID:GTcK1QIz
 喋ることも忘れるほど夢中になっていると、あっという間に丼の中身が空になってしまっていた。温かい豚
汁とうどんを一気に食べたものだから、体がうっすらと汗ばんでくるのを感じる。
 「わー、兄ちゃん食べるのはやーい」
 「あ、うん。ホントに美味かったから」
 「へへへ、そう?」
 小首を傾げて亜美がにっこりと笑った。
 「ねぇ兄ちゃん、おかわりする?」
 「え、あるのか? じゃあ頂こうかな」
 「はーい、じゃあ持ってくるね」
 俺の手から空っぽの丼を受け取ると、亜美はウキウキした足取りで給湯室へ駆けて行った。
 「ふぅ、体が温まるな」
 「これ、作ろうって言い出したのは亜美なんだよ。真美は手伝いぐらいで、作ったのもほとんど亜美だよ」
 周りのデスクから借りてきた椅子の上で足を組み替えながら、真美が言った。つるつると控えめに啜りたて
る音と共に、真っ白いうどんが唇の中へ吸い上げられて行く。
 「亜美が?」
 「ホラ、兄ちゃん最近カゼでしんどそうだからさ、温かいもの食べれば具合良くなるかな、ってさ」
 「そうなのか……」
 冬を一足に飛び越して、心に春先の暖かさが訪れたかのようだった。真心のこもった思いやりがただ嬉しく
て、胸にジンと来るものがある。
 「はい、兄ちゃん。うどんは全部使っちゃったからおツユだけね」
 再び湯気を立てる丼を持ってきてくれた亜美に、男のスマイルなんて見ても嬉しくないだろうと思いつつも
俺は不器用なりに精一杯の笑顔を作ってみせた。
 「ありがとな、亜美。凄く美味しいよ。風邪なんてどっかに吹っ飛んでいっちゃいそうなぐらいだ」
 「う……うん。へへへ、『美味しい』って言ってもらえるとなんかこう……女のヨロコビって言うのかな?
お、お料理も悪く無いかもねー……」
 後頭部をぽりぽりと掻きながらわざとらしい調子で亜美がそう言った。照れを隠し切れずに頬を赤らめる仕
草がなんとも可愛らしい。感謝の意を表そうと、二杯目に手をつける前に、亜美に向かって軽く一礼した。
 真美は、そんな俺達の様子を柔らかい視線で見つめていた。

 
 やがて二杯目も食べ終えた所で亜美と真美の丼も空になり、三人分重ねたどんぶりをお盆に乗せて、食後の
心地良い気だるさに椅子のキャスターを転がす。体が温まったおかげなのか、ぐずぐずだった鼻にすっと空気
が通る。爽快そのものだ。
 食後の片付けぐらいはご馳走になった俺がやっておこうとお盆を手に持つと、携帯でメールを打っていた亜
美が開いたままの本体もそのままに、慌てて俺を呼び止めた。
 「あ、亜美がやっとくよ、それ」
 先ほどの嬉しさがまだ残っているのか、出したものはそのままにしがちな亜美にしては殊勝なことに、自ら
後片付けを申し出た。その意思は尊重した方がいいだろうと思い、手に持ったお盆をそのまま亜美に任せる。
 背中を向けようとしたその瞬間、何やら亜美が真美に向かって意味ありげにウインクしたのが見えた。それ
を受けて、真美の表情が微かに揺らいだ。
 給湯室へ歩いていく亜美の背中を俺と一緒に見送り終えると、真美がこちらに向き直った。
 「えーっと、兄ちゃん」
 唇の端を引き攣らせながら、椅子の背もたれに引っ掛けていたバッグを膝の上に乗せて、真美がその中に手
を差し入れた。カサッと薄い紙の立てる音と共に、白い袋が中から顔を出した。一気に引き抜いて、週刊誌の
入りそうなサイズの紙袋を、そのまま俺に差し出す。
 「これ、あげる」
 「何だろう……開けてもいい?」
 差し出されたままに受け取りながら、真美に尋ねる。真美の座った椅子が、ギシッと浅くきしんだ。
 「うん。まだちょっと早いかもしれないけど……」
37冬の足音 4/5:2008/11/06(木) 11:29:33 ID:GTcK1QIz
 袋の口を開いて中に手を突っ込んで見ると、指先がふかふかした何かに触れた。取り出してみると、長方形
になるように折り畳まれたグレーの布が現れた。外から差し込んでくる日光をスッとその身に吸い込むような
落ち着いた色合いだ。広げてみると、伸びる伸びる、まるでマフラーのように。というか、どうやらマフラー
そのものだ。
 「これは……マフラー? どこ製のだろう」
 見た感じは毛糸と思われるが、チクチクするような手触りが無く、しっとりとした質感すら感じる滑らかさ
に、高級品なのでは無いかと直感した俺はマフラーのあちこちを手と目で探ってみた。しかし、ブランド物な
らつきもののタグがどこにも付いていない。
 「どこにも売ってないよ。だってそれ、二人で編んだマフラーだもん」
 「ええっ!?」
 この手に持っているのが手編みのマフラーで、しかもその作り手が亜美と真美だという事実。二重の驚きだ。
 「ちょっと前まで学校の家庭科で編み物やっててね、その時思いついたんだ。兄ちゃんとどっちかがお仕事
に行く時、事務所とか楽屋で留守番してる方が交代でちょっとずつやってたんだけど、亜美がママに豚汁の作
り方教わるってことになって、その代わり真美がマフラー担当になったってワケ」
 椅子から両足をぷらぷらさせながら、真美が澱み無く言った。そう言われてマフラーに視線を落としてみる
と、布地の端の方に亜美と真美の名前がアルファベットで小さく刺繍されていた。二人のお手製という証。
 「カシオペア……だっけ? メッチャいい毛糸使ったんだよ」
 「毛糸の高級品っていうと、カシミアかな」
 「あ、うん。そうそう、それそれ」
 質感を試そうと首に巻いてみると、安物のセーターで感じた刺さるような感覚など全く存在せず、皮膚の薄
い首に触れていても不快感を感じないどころか、滑らかな触感が気持ちいいぐらいだ。粘液に阻まれること無
く鼻で呼吸してみると、いつだったか二人に招かれた、双海家の匂いがした。
 「温かいなー、これ」
 「あ、やっぱりスーツの色に似合うね。ピンクとかにしないで正解だったよ」
 ピンク色のマフラーを男が身につけるのはさすがに少々はばかられるが、暗めの色のスーツを着ていること
が多い俺には、確かにこの静かなグレーがありがたい。コートにも似合うだろう。
 「なんていうか、亜美も真美も、こんなに色々と……」
 「ホントはもうちょっと後に渡そうと思ってたんだけど、亜美と合わせるために結構急いだんだ。これから
もっと寒くなるからさ、今みたいにカゼ引かないようにして欲しいな、って思って」
 軽く俯いた真美の頬はほんのりと赤い。
 もしかしたら、手作りのマフラーを渡すという行為の意味を真美は知っているのかもしれない。そう思った
が、普段亜美と一緒になって場を賑やかしている姿を思い出すと、それは無いか、という考えに程無く至った。
 ただ、豚汁を作ってくれた亜美にせよ、マフラーを作ってくれた真美にせよ、その思いやりは素直に嬉しい。
心がほっこりと温まるどころか、感激に胸まで熱くなるようだった。
 「兄ちゃん、いつも頑張ってるよね。真美も亜美もそこんトコ分かってるから、兄ちゃんが辛そうにしてる
と心配になっちゃうんだ……」
 下がった眉尻の下から、上目遣いの潤んだ瞳が俺を見上げる。こんな表情でこんなことを言われては、風邪
をこじらせてしまったことがとても悪いことに思えてきてしまう。仕事上の付き合い、という関係に信頼が深
く根を下ろしているのをハッキリと感じた。
 「……ありがとな。具合悪いのなんてもうどっかに行っちまったよ」
 手を伸ばし、サラサラした髪の毛を掌に感じながら頭を撫でると、真美は嬉しそうに目を細めた。
 「あ、そういえばパパが言ってたんだけど、寝る時にマスクをつけたままにしておくと、喉が乾燥しなくて
いいんだって。加湿器点けなくてもいいから電気代も浮いておトクなんだって」
 いつの間にか片付けを終えて戻っていた亜美が、机の脇でしわくちゃになっていたマスクを一瞥して、思い
出したように言った。
 「お、そりゃ初耳だな。試してみるよ」
 亜美に相槌を打ちながら、首に巻いたマフラーをほどいて、なるべく丁寧に畳んで机の上に置いた。
38冬の足音 5/5:2008/11/06(木) 11:30:34 ID:GTcK1QIz


 「んじゃ、亜美達トモダチと約束あるから、そろそろ帰るね」
 「まだ豚汁はお鍋の中に残ってるから、食べたくなったら温めればオッケーだよ」
 「ああ、ありがとう。事務所の他の人にもお裾分けしていいかい?」
 「もっちろん! うどんは三人分しか持ってこなかったけど、豚汁はいっぱい作っておいたんだー」
 「他の人たちにも食べてもらいたいもんね」
 三人でまったりと食べた豚汁うどんだったが、今日仕事で出てしまっている他のアイドル達や、同僚と一緒
に外に食べに行っていた小鳥さんもいれば、もっと賑やかなランチタイムになっていたのかもしれない。それ
はそれで楽しいだろうが、さっきのようにじっくりと二人の心遣いを噛み締めることもできなかったかと思う
と、事務所に俺一人しか残っていなかったのはラッキーだったと言える。
 「オフだったのに、わざわざ顔見せてくれてありがとな。豚汁、美味しかったし、マフラーも嬉しかった。
結構疲れてて仕事がはかどらなかったんだが、二人のおかげで元気が出たよ」
 上着を羽織って事務所の出口へ足を向ける亜美と真美にそう呼びかけると、体ごとくるりとこちらに向け、
顔をお互いに見合わせながら二人がニヤリと笑った。
 「来て良かったね、真美」
 「うんうん。苦労した甲斐があったよー!」
 顔だけには留まらず、全身で喜びを表現するその姿に、口元が緩む。この二人をプロデュースしていると何
かとトラブルに遭ったり振り回されたりすることが多いが、それと同じぐらい、いや、それ以上かもしれない。
イタズラっ子ではあっても裏表の無い純真さには、打算渦巻く世界で彼女達のステージを演出する俺は心を癒
されることもしばしばで、今日は尚更、二人の気遣いが照れ臭いほどに嬉しかった。
 「じゃあ兄ちゃん、仕事頑張ってね!」
 亜美がぶんぶんと手を振りながら背を向けて、真美がその後に続く……と、真美がこっそりとこちらに近づ
いてきた。
 「兄ちゃん、マフラー大事に使ってね。その…………がメッチャこもってるから」
 顔を俯かせ、指先をモジモジさせながら、ぼそぼそと呟くような声で真美がそう言った。
 「ん、今何て言った?」
 俺が尋ね返してみると、真美は何も言わず、小さくなりかけた亜美の背中目掛けて走って行ってしまった。

 「ばいばーい!」と綺麗にハモって届く二人の声に応えてから、俺はマスクを再び身につけてパソコンに向
き直った。ついさっきの、聞こえなかった言葉。視界に入っていた真美の唇の動きを思い出す。
 「愛情……だったのか?」
 机の端に佇むグレーのマフラーは、大きな窓から差し込んでくる光に、のんびりと日向ぼっこをしていた。



 終わり
39 ◆yHhcvqAd4. :2008/11/06(木) 11:36:35 ID:GTcK1QIz
と、SSスレのやり方を踏襲して投下させて頂きました。感想批評など下されば幸いです。
内容構成とか展開とか言葉の使い方とか、キャラスレでは話し辛いようなそういう一歩突っ込んだ話をこっちで出来れば、と個人的には思います。
こっちに集中し過ぎてキャラスレからSSが無くなったら寂しいけど、色んなスレのSS職人が集えるスレがあったらいいなぁ……とか妄想。
40名無し・1001決定投票間近@詳細は自治スレ:2008/11/06(木) 12:17:11 ID:aPEfVHBZ
>>39
GJです。
いつも某スレではお世話になっていますw
読んでいるこっちまでなんだかあったかくなりました。

こちらのスレは自作SS・イラストの「総合スレ」になってくれればいいですね。
41名無し・1001決定投票間近@詳細は自治スレ:2008/11/06(木) 12:32:54 ID:dTFjQDIQ
>>39
お、まいどごちそうさまです。昨日は寒空で立ちんぼ仕事だったので、こういうあったかい
話読めると滋養が満ちますね。素直元気の亜美、ちょっと背伸びの真美も生き生きと
していて微笑ましい。良品をありがとうございます。

キャラスレは基本的にキャラを愛でるスレなので、Pが主役とか少しシリアスなテーマとか、
向かない作品が行き場をなくしていると思っていました。未来館使ってみたけどなんとなく
空気違うんで、『2chのままで』総合創作の場になったら素敵です。
ま、できたてのスレにあんま色つけても仕方ないし、まずはなんでもアリでいきたいですね。
支援支援。
42名無し・1001決定投票間近@詳細は自治スレ:2008/11/06(木) 18:26:44 ID:v8V7h0V8
>>39
心温まる話でよかったよ。GJ。照れる亜美可愛いw


この調子でどんどん投下来るといいな
43なら、誤爆ついでに。:2008/11/07(金) 01:29:32 ID:UWICqOHA
本当は、どう思っているのだろう?

ふと我に返ると、何とは無しにそんな事を考えてる自分。
もうメジャーランクも間も無い、ここ最近になって増えたそんな時間。

気が付けば、何時の間にか私の心は占領されていました。
一生懸命で。
優しくて。
一見すると頼り無さそうな人なのだけど…でも本当は、とっても頼りがいのある人。

こんな私を、ここまで連れて来てくれた ──── あの人に。


きっと神様っているんだ、って思います。
いいえ。
絶対…かな?
だって、こんな素敵な人に出会わせてくれたんですから。

私の ──── 『運命の人』に。

ttp://imas.ath.cx/~imas/cgi-bin/src/imas32639.jpg
44とある舞台裏 00X:2008/11/09(日) 11:01:43 ID:rfRBk8vJ
とある、大規模なライブが出来る場所。
そして、今日はその最終日。
会場には"THE iDOLM@STER"がBGMとして響いている。
「今日で最後だな。
 最後だから、余計に気を引き締めていこう。
 じゃあ、始めるぞ」
765プロ主催のライブ。
総勢十一人のアイドルたちが共演するというファンにはたまらないライブだ。
全アイドルがBランク以上であることもあり、全六回の公演が販売初日で全日程、全席売り切れを起こしていた。
開演十分前。
アイドルと、一人のプロデューサーが円陣を組む。
いつからか、大きなイベントやライブでは、当たり前になった儀式。
「アイドルとは!」
と、自分が言う。
「華麗であること」
と、真。
「美しくあること」
と、あずさ。
「明るくあること」
と、春香。
「元気であること」
と、亜美、真美、やよい。
「楽しくあること」
と、美希。
「大きな夢であること」
と、律子。
「小悪魔であること」
と、伊織。
「かわいらしくあること」
と、雪歩。
「歌で人を楽しませること」
と、千早。
「We are!」
『THE iDOLM@STER!』
アイドル達と、プロデューサーが一斉に床を踏み鳴らす。
いつもどおりに儀式を済ませ、
「舞台(おもて)」と「舞台裏(うら)」の境界線で、一人ずつに声をかけていく。
これも、さっきの儀式同様、通例になったことの一つ。
最初に舞台に上がるのは、律子だ。
「今日もMCを頼りしてるぞ」
「任せてください」
律子が出て行く。
「にひひ、伊織ちゃんの魅力を存分に見せつけてやるんだから」
「ピクシー顔負けな、かわいさを頼むな」
伊織が、バ、バカと一言残し、出て行く。
『兄(c)、行ってくるねー』
「おう、律子の言うことをちゃんと聞くんだぞ」
『わかってるよー』
亜美と真美が、飛び出していく。
45とある舞台裏 00X:2008/11/09(日) 11:02:58 ID:rfRBk8vJ
「あぅ〜」
「やよい、楽しく、な?」
「あっ、はい。うっう・・・・・・」
どうやら、緊張しているようだ。
「ほら」
と、俺は、手を掲げる。
「あっ、はい。
 ハイ、タァーチ」
やよいは、緊張が解けたようで、行ってきますと言い残し、出て行く。
「あふぅ、美希眠いの」
「おいおい、さっきまで寝てて、怒られたばっかだろ」
「眠たいものは眠たいの、あふぅ」
「しっかり頑張ってきたら、一番おいしいと言われている
 おにぎり屋のおにぎりを上げようと思ったんだがなぁ」
おにぎりという言葉に反応してか、美希が急にしゃっきりする。
「約束だからね!終わったら食べさせてよね!」
「あ、あぁ、わかった」
小さくガッツポーズをして、出て行く。
「もしかしたら、失敗してしまうかも・・・・・・。
 今すぐ、穴を掘って埋まりますぅ」
「大丈夫だよ。
 雪歩は失敗しない。
 それに、みんな一緒だ。
 助け合って、今までやってきただろ」
「そうですけど・・・・・・」
「みんなを信じて、自分を信じるんだ。
 俺が、一回でも間違ったこと言ったことあるか?」
「ないです。
 何か、元気が沸いてきました」
「その意気だ、しっかりな」
「はい」
少しぎこちない動きで、出て行く。
「あらあら、雪歩ちゃん、大丈夫かしら〜」
「そんなときこそ、あずささんの出番ですよ。
 みんなに、微笑んで、和ませるんですよ」
「私に出来るかしら〜」
「あずささんなら、出来ますって」
「プロデューサーさんが言うのですから、間違いないですね。
 信じて、行ってきますね。
 あらあら、みんな、楽しそうね。
 私も混ぜて〜」
いつもどおりのマイペースさで、出て行く。
「プロデューサー、行ってきます!」
「真、いっちょ、やっとくか」
「はい!」
いつもの挨拶、拳と拳を軽く当て合う。
「菊地真、いっきーます!」
颯爽と、出て行く。
46とある舞台裏 00X:2008/11/09(日) 11:04:01 ID:rfRBk8vJ
「千早が、望んだ理想の舞台だ。
 やれるか?」
「今さら何を言っているんですか。
 いつもどおり、歌うだけです」
「そうか、いや、そうだな」
「はい」
「蒼い鳥は、どこまでも飛べそうだな」
「はい。
 こんなに良い仲間がいますから。
 もう、一人ではありませんし」
「最高の歌を届けて来てくれ」
こくりとうなずき、出て行く。
「あわわ、ずっと転ばないで来れたけど、今日転んだらどうしよう」
顔をうつむかせ、春香がやってくる。
「じゃあ、転んでやると思ったらどうだ。
 そしたら、あーあ転んじゃったと思えるし、
 ちょっぴりドジな所も、春香の持ち味だろ?」
「ひ、ひどいです、プロデューサーさん。
 でも、少し元気になりました。
 いろんなアイドルがいたっていいですもんね。
 転んじゃうアイドルがいたって・・・・・・」
春香は、ぎゅっと手を握る。
「あと、笑顔を絶やさないようにな。
 春香の本当の持ち味の明るさが、さっきなかったぞ」
「えっ、嘘」
春香は、小さな驚きとともに、手を口元に持っていく。
「ウ・ソ」
「プ、プロデューサーさん!」
「ははは。
 ほら、春香の歌う箇所に差し掛かってるぞ」
「あっ、じゃあ、行ってきますね」
「あぁ」
最後の春香が出て行き、舞台裏からとりどりの華やかさが消え失せる。
ずるずると、壁にもたれながら、俺は座り込む。
「さすがに、ちょっと、キツイな・・・・・・」
「当然でしょ、本当に」
呆れ顔で、小鳥さんが言った。
「すみません・・・・・・」
「とりあえず、みんなには適当にごまかしておくから。
 あなたは、ホテルに戻りなさい」
「でも・・・・・・」
「聞き分けなさい!
 今のあなたの姿を見て、みんなが動揺して、舞台が台無しになったらどうするつもり!」
「っ!」
「今日くらいは、お姉さんにまかせなさい」
さっきの厳しい口調から、一転し、優しく諭すように言った。
「すみません、あとお願いします」
会場を後にし、おれは、ホテルに引き上げていった。
47とある舞台裏 00X:2008/11/09(日) 11:04:50 ID:rfRBk8vJ
目が覚める。
時計を見てみると、夜の十時を指していた。
「だいぶ楽になったな。
 んっ?」
上布団に、重みを感じ、重さの主を見る。
春香だった。
舞台衣装のまま、眠っている。
「おい、春香。
 起きろ、こんな所で寝ている場合じゃないぞ」
「う、う〜ん」
春香が目を覚まし、顔を上げる。
そして、
「プ、プロデューサーさんのバカーーーー!」
大音響で、言い放つ。
「な、何を・・・・・・」
すると、ホテルの廊下がバタバタと騒がしくなり、
自室のドアが、勢いより開き、765プロ所属アイドルが全員集まる。
「ちょ、なんだ、一体!
 みんな、舞台衣装のままじゃないか!」
「先に何か言うことはないですか」
と、律子。
「ライブは成功したのか?」
律子の平手打ちが頬に当たる。
「痛てぇ」
「何で、言ってくれなかったんですか!」
と、千早。
「小鳥さんから聞きましたよ。
 高熱なのに、無理して来てたって」
と真。
「あんた、バカでしょ」
と、伊織。
「うっう〜、あんまり無茶しちゃダメですぅ」
と、やよい。
「兄(c)は罰として、みんなからビンタの刑だー」
と、亜美が言い、
「ビンタ!ビンタ!」
と、真美がはやし立てる。
「いやいや、亜美、真美!
 バカなことを、おふっ!」
言葉を最後まで言い終わろうとした途中に、
物理的衝撃によって、遮られる。
48とある舞台裏 00X:2008/11/09(日) 11:05:18 ID:rfRBk8vJ
「春香!
 本当に、ぐおっ!」
次々と、右頬にビンタが叩き込まれていく。
全員にされ終わった頃には、俺の右頬が幾分か、膨れ上がっていた。
「私達、アイドルだけでTHE IDOLM@STERって言われてますが、
 プロデューサーあってのTHE IDOLM@STERということを忘れないでください」
と、千早。
「すまない」
「いえ・・・・・・」
まじまじと顔を見て会話をしていたが、気まずくなり、千早から顔をそらす。
「あの〜」
と、雪歩。
「いいところ、申し訳ないんですけど」
と、美希。
「千早ちゃんのプロデューサーじゃないんですよ〜」
と、あずさ。
「千早、抜け抜けと協定を破るつもり?」
と、伊織。
「そ、そんなつもりはないわ」
と、千早が否定する。
「きょう・・・て・・・い?」
「あんたには、関係ないことよ!
 寝てなさい」
と、伊織に言われる。
「さぁ、みんなも部屋に戻りなさい。
 あとは、私が・・・・・・」
と、突如沸いてでる小鳥さん。
『小鳥は少し黙ってて!』
と、アイドル全員に言われ、引きずられていった。

END 〜とある舞台裏 00X〜
49とある舞台裏 あとがき:2008/11/09(日) 11:12:35 ID:rfRBk8vJ
とある舞台裏 00Xの作者です。
長々と5スレも使ってしまい、すみません。
千早が優遇されているのは、作者が千早スキーなので、あしからず。
765プロ全員を出したものを書いたものの、
キャラスレでは、スレ違いになりそうだったので、お蔵入りしてました。
某所で、このスレの存在を知り、ここならいいかなぁと投稿したしだいです。

あと、作風が、ラノベ風なのは作者がラノベ厨だからです
このスレのさらなる発展を願って。

それでは。
50創る名無しに見る名無し:2008/11/09(日) 15:24:21 ID:TIywDC5Z
投稿はアイマスうpロダじゃまずいだろうか?
どうもレスだと読みづらくて・・・
51SS:2008/11/09(日) 20:13:29 ID:vc/ui/zE
52創る名無しに見る名無し:2008/11/09(日) 21:27:42 ID:fLmBO9Fk
ちーちゃんなんでしんでしまうん?
53創る名無しに見る名無し:2008/11/09(日) 23:20:26 ID:CFKVK8RJ
しねばいいと思うよ
54創る名無しに見る名無し:2008/11/10(月) 01:39:41 ID:ckTY6UQV
きっと今は自由に空も飛べるはず
55創る名無しに見る名無し:2008/11/10(月) 02:13:28 ID:D7riQQ6G
空気抵抗も少ないだろう
56創る名無しに見る名無し:2008/11/11(火) 05:23:15 ID:A+n9ZBYN
久しぶりに来ましたが、なんか殺伐としたスレになってますね・・・
57創る名無しに見る名無し:2008/11/11(火) 05:42:10 ID:JR1mnNCx
そう?レスすらつかなかった時期に比べればマシかと思うが
58春香が家にやってきた:第一話:2008/11/16(日) 16:07:02 ID:Okl06bgg
家庭用スレからの転載失礼します。

家に帰ったら、春香がいた。
俺は驚いた。
だって、このリアルの世界に、3Dモデリングの春香が存在していたのだから。
しかも、飯を食っていた。ウチのお袋が作った飯だ。
「あ、お邪魔してまふ。」春香は中の人さながらに口にものを頬張ったまま答えた。
「た、ただいま。」それ以外の言葉が出てこない。
「おかえり。急にお客さん来たからご飯なくなっちゃったけど、食べるなら冷蔵庫の温めるよ?」
お袋は、この異次元からの訪問者に普通に食事を用意したっぽい。
「いや。俺は食ってきたからいいよ。」
そんなことより、この春香は、何?誰?何故?いつ?どうして?
「あの・・・プロデューサーさん?そんなに食べるとこじっと見られると・・・」
「あ、ごめんごめん」
春香のモーションも話し方もいつも通りだ。しかし、それがリアルの世界で見ると、これほどオーバーでわざとらしいものだったとは、今初めて気付いた。
見ると、春香は普通に箸と茶碗を持っている。
リアル世界との物理的接触は可能なようだ。
触ったら、いったいどんな感触なのだろう。
俺はあらぬ方向に妄想を進ませた。しかしここは自宅で、家族もいることを思い出した。
59春香が家にやってきた:第二話:2008/11/16(日) 16:07:57 ID:Okl06bgg
家に帰ったら、3Dモデルの春香が飯を食っていた。
俺は春香が食事を終えるのを待って、聞いてみた。
「春香、なんでここにいるんだ?」
「う〜〜〜ん・・・ よくわかんないんですけど、気がついたら、いたんですよね。」
そうだった。春香はこういうヤツだ。いや、それ以前に、春香が自分の意志でリアル世界に現れたとは限らない。たまたまとか、事故の可能性だってある。
しかしこの狭い家の中では、いちいち腕を振り回す春香のアクションはあぶなっかしい。
いや、待てよ?!
「ということは、もしかして春香は、家に帰れないのか?」
「帰り方がわかれば、大丈夫だと思うんですけど・・・」
そうだ。同じような3Dモデルの外見、いや、背景画の外見をした、この春香が住む家が、この世界にあるかもしれない。
最寄りの駅の名前を聞いてみた。聞いたこともない駅名だった。住所も聞いてみた。それっぽい地名ではあった。
PCの電源を入れ、検索してみる。
春香が口にした駅名も住所も、実際には存在しないものだった。
「電話は?」
「私の携帯、気がついたらずっと圏外なんですよぉ・・・」
ウチの電話からかけさせてみたが、通じない。
俺は青ざめた。
やはり、この春香は次元を超えて来たのだ。いや、なんのはずみかどんがらがっしゃんか、来てしまったのだ。
春香は泣きそうな顔をしている。
おいおい、勘弁してくれよ・・・っていうか、ゲーム中ならここで選択肢が出るだろうに、リアルだから選択肢すら自分で考えなきゃならないじゃないかよ。
その時、お袋が横から「今日はもう遅いから、泊まっていきなさいよ。帰るところ、わからないんでしょう?」
「あの、でも・・・ご迷惑じゃないですか?」
「まだ子供なんだから、そんなこと気にしないの。」
俺は軽く感動した。ウチのお袋は、こんなに困った人に親切なできた人間だったのか!それもこんなアニメ絵の3Dポリゴンモデルの60fpsのアニメ声のオーバーアクションの地味な私服なのに自称アイドルなんてあやしげなこと言ってる人にまで。
ようやく人心地ついた俺は、改めて事態を整理してみた。

春香が
俺の家に
泊まる

残念なことに俺の思考はそこから全く離れることができなかった。
60春香が家にやってきた:第三話:2008/11/16(日) 16:09:37 ID:Okl06bgg
3Dモデルの春香が俺の家に泊まっていくことになった。
今、春香は風呂に入っている。
はたして服の下のテクスチャは存在するのだろうか。あんなところやこんなところは、あんな風やこんな風になってたりするのだろうか。
そんな妄想をしていると、コンコン、と部屋のドアがノックされた。
「はい。」
俺はひと呼吸おいて妄想を振り払った。
ドアを開けると、春香が立っていた。
「あ、プロデューサーさん、お風呂あきましたよ。いいお湯でした。」
そういう春香は、リボンを解いて、グッドスリープパジャマを着ていた。
「春香。お前、着替えとか持ってたのか?」
「え?いいえ?持ってませんけど?」
「じゃあ、そのパジャマはどうしたんだ?俺の家になかったはずだぞ。」
「あれ?そう言えばこれ、私のパジャマだ?どうなってるんでしょう?」
そんなやりとりをしながら、春香はドアの隙間から俺の部屋の中をチラチラ覗いていた。
「どうした?」
「えへへ。プロデューサーさんのお部屋って、どうなってるのかな、と思って。」
「見たいか?入りなよ。散らかってるけどな。」俺は春香を部屋に招き入れた。
「わあ。ここがプロデューサーさんのお部屋なんですね!」
そう言って、例のオーバーアクションで手を胸の前にまわす。
ガッ
その手が、棚の上に置いてあったものに当たって落ちた。リボ春香だった。
「ああっ、すみません。私って本当にドジで」「触らなくていい!」
俺はあわてて声を上げた。このパターンだと先は見えている。片付けようとして慌ててどんがらがっしゃーんだ。二次災害の方が被害は大きいのだ。
「あ、ご、ごめんなさい!プ、プロデューサーさんだって、人に触られたくない大事なもの、ありますよね・・・」
そう言いながら、春香はある一点を見ていた。
視線の先を追ってみる。服を着替えさせてる途中で放置した半裸の美希ドールがあった。
いろんなものがいろんな意味で終わった気がした。
「・・・じゃ、俺、風呂入ってくる。」
「私は寝ますね。おやすみなさい。」
「おやすみ」
俺の夜があっけなく終わった。
61春香が家にやってきた:第四話:2008/11/16(日) 16:10:38 ID:Okl06bgg
3Dモデルの春香が家に来た夜が終わり、朝が来た。
「あ、おはやうごがいまふ。ぷろびゅーはーはん。」
居間に行くと、春香は朝飯を食っていた。服はアナザーカジュアルに着替えていた。
そうきたか。確かに毎日同じ服じゃあ不自然だもんな。
「おはよう。でも口に物を入れて無理矢理挨拶しなくてもいいぞ。あ、お袋、俺にも目玉焼きお願い。」
「はいよ。」
そう言えば、お袋は俺が『プロデューサー』と呼ばれてることに、疑問は持たないのだろうか。それとも、春香のことをどこかおかしいとでも思ってるのだろうか。
まあそれを言ったら、このアニメ絵の3Dポリゴンの存在そのものが、どう見てもおかしいのだが。
「ところで、今日は春香はどうするんだ。」
「え?」
「ほら、家に連絡がつかないわけだし、何も手を打たないでいいのか?」
「ああ。そうですね・・・でも、どうしたらいいでしょう?」
「事務所に行ってみたらどうだ?今日は休みだから俺もつきあうよ。」
「本当ですか?ありがとうございます!」
「朝飯食い終わるまで待っててくれ。」
「はい!」
そう言いながら、俺は覚悟を決められずにいた。
おそらく、いや、まず確実に765プロの事務所は、ない。
その現実を春香に突きつけないといけない。
その上で全くこの世界に寄る辺のない春香を、俺はどうするか・・・
俺のそんなシリアスな考えを知るはずもなく、春香はのんきに歌っている。

「♪じーむしょじむしょ ♪765プロのじむしょ」
しかし、見事なまでに俺の知ってる通りの春香の行動だな。
なんだか見ていると気分が前向きになる。それが春香の魅力なんだろう。
本当に765の事務所があるんじゃないか、とも思えてくる。

しかし、現実はそんなに甘くはなかった。
62春香が家にやってきた:第五話:2008/11/16(日) 16:12:39 ID:Okl06bgg
3Dモデルの春香と二人で町に出た。
すれ違う人々が、一様に春香を見て、注目しているのがわかる。それは、春香がとても可愛いからなのか、それとも、フルポリゴンのアニメ絵が歩いているからなのか。
しかし当の春香は気にする様子もない。さすがに注目されることに慣れているんだろう。
そうして、目的の場所に着いた。
「あれ・・・?」春香が当惑した表情になる。
「事務所のビルが、ないですねえ?おかしいなあ。あんな大きなビル、見失うはずないのに・・・」
事務所レベルは3か。
「いつもレッスンしていたスタジオはどうだ?」
「そうですね。行ってみましょう!」険しい表情で言う。さすがに春香も深刻になってきたようだ。

そして、やはり、レッスンスタジオもたるき屋も、昔の事務所も何も見つからなかった。
「困っちゃったなあ、来週、ドームでライブがあるのに・・・。千早ちゃんと雪歩ちゃんはどこで練習してるんだろう?」
春香はどうも事態を把握できていないらしい。
いよいよだ。もう言わざるを得ない。
「春香。どうやらお前は、別の世界に来てしまったみたいだ。」
「え?な、なに言ってるんですか?プロデューサーさん・・・?」
「この世界には、765プロはない。高木社長も音無さんも、千早も雪歩も他の765プロのアイドルもいない。春香の家族も友達も、誰もいない世界なんだ。」
「で、でもプロデューサーさんは、いるじゃないですか?」
「俺はこの世界では、プロデューサーじゃない。食品会社に勤めるサラリーマンなんだ。現に春香の知ってる場所は、どこにもないだろ?」
まあいきなり信じろという方が難しいかもしれない。

俺は、春香をCDショップに連れて行った。
「ここに、春香のCDは、ないんだよ。あの伝説のミリオンセラー『太陽のジェラシー』は売ってない。」
「そんな・・・でも、そう言えば、どこのお店に行っても凄く目立つ所においてあったはずなのに・・・」
春香はあきらめきれない様子で、店内をきょろきょろし始めた。
納得の行くようにさせるか。
「ありました!私のCD、ありましたよ!」
春香が嬉しそうに持って来たのは、MA01だった。「ほら、ちゃんと太陽のジェラシーも入ってます!」
いかん。
俺はどう説明したらいいのか、わからなくなった。
63春香が家にやってきたの中の人:2008/11/16(日) 16:21:00 ID:Okl06bgg
不躾な登場、ひらにご容赦を・・・
ではなく、上記5話まで、家庭用スレに投下したものの転載です。
続きをこちらで書いて行くつもりですので、ご容赦ください。
一気に投下するのでなく、連日少しずつという形になりますが。
全10話前後の予定です。
64創る名無しに見る名無し:2008/11/16(日) 16:28:23 ID:bVtOKrCA
お前を待ってた。乙
65創る名無しに見る名無し:2008/11/16(日) 17:22:50 ID:qNMVkqO+
>>63
俺はそれでも構わんのだが、SSの定説としてメモ帳に書いてから
それをコピペした方がいいよ。テンポ悪いのは嫌がられる傾向にある
66創る名無しに見る名無し:2008/11/16(日) 17:39:45 ID:VfodEy+p
俺も一度にどさっと投下してくれるほうがうれしいかな
6763:2008/11/16(日) 17:52:28 ID:ty0CNNqh
携帯からでID変わります。
実は、その発表形式の問題があるから、キャラスレに行かなかったんですよねえ。
しかもここまで単話発表前提の冒頭と締めを入れた形式だっただけに厳しいですが、
まあ郷に入れば郷に従えで、まとめて上げるようにしてみます。
68創る名無しに見る名無し:2008/11/16(日) 18:51:27 ID:r+9sPu6Z
>>63
MA01で吹いたw
メタも面白いな

>>65
一気に投下するのでなく、連日少しずつって
1書き込み分ぐらいずつで1話の連載形式ってことじゃないの?
ローカルルールがどうこうってほどは書き込み数があるわけでなし
書きたいように書いてくれていいんじゃないかと思うけど
69創る名無しに見る名無し:2008/11/16(日) 21:18:08 ID:VfodEy+p
確かに話数で区切れてるなら連日少しずつのほうがいいかも
良い所で続きはまた明日とかじゃなけりゃ
70創る名無しに見る名無し:2008/11/17(月) 00:12:21 ID:2wp3HgQT
>>63
今ぐらいの文章量ならこのままでもいいんじゃないかな?
ちゃんと1回分の中でも起承転結付いてるし。


ただ、途中で投げ出すなよ( ̄ー ̄)ニヤリ
7167:2008/11/17(月) 11:02:16 ID:WImaMZiO
みなさんどうもです。
お言葉に甘えて連載形式でやらさせていただきます。

しかし、そうか。言われてみると、連載形式って途中で未完で投げ出す危険性ってのがあるんですね・・・
それは確かに読む方としては警戒しますね。
72春香が家にやって来た:第六話:2008/11/17(月) 11:06:30 ID:WImaMZiO
3Dモデルの春香と俺は、公園のベンチに座っていた。
春香の手には、ケースにひびの入ったMA01。CDショップで春香が手に持ったまま転んでしまい、やむなくお買上げとなった。
「本当にすみません。プロデューサーさん・・・」
いつになく神妙な春香。
「気にするな。CDの一枚くらい。」
「そうじゃあないんです・・・。私、本当はわかってたんです。このCDは私のじゃない、ってこと。」
「え?」
「私、このジャケットも見たことないですし、曲も歌ったことないのが入ってますし・・・。ううん、そんなことより、プロデューサーさんの言ったこと、本当なんだと思います。あ、プロデューサーさんじゃないんでしたっけ。ごめんなさい。」
「いや、いいよ。俺は春香のプロデューサーのつもりだ。」
俺がプロデューサーじゃなかったら、春香はこの世界と何の接点もなくなってしまう。今まで見たことがないくらい落ち込んだ春香に対して、そんな真似はできない。
「昨日から、なんかおかしいなあ、とは思っていたんですけど、はっきり『違う世界に来た』って言われたらさすがに信じられませんでした。でも、そうじゃないとおかしいことばかりなんですよね。」
春香は空を見上げた。遠い目をしていた。そしてしばらくしてから、言葉を継いだ。
「事務所のみんな、学校のみんな、お父さん、お母さん・・・みんなに会えないのは、ちょっと淋しいかもしれないですね。」
「春香・・・」
「でも」
春香はこちらに顔を向けた。
「プロデューサーさんがいるなら、この世界も、悪くないかな、って思います。」

それ、ヤバい意味じゃないだろうな?
ウソです。そんなこと絶対言いません。一瞬でもネタとしてでもそんなこと考えた俺を許してください神様。

「よし!決めた!」
俺は意を決して、ベンチから立ち上がった。
「え?何をですか?」
「俺は、この世界でもプロデューサーになる。春香をこの世界でもトップアイドルにしてみせる!」
「ええっ!!で、できるんですか?そんなこと?」
「できるかどうかは、やってみないとわからない。でも、やってみる価値はある。俺たちは、元々そのために出会ったんだ。春香をトップアイドルにするために。」
「わかりました!プロデューサーさん!私、頑張ります!」
春香は時にこちらが不安になるくらいあまりにも素直で単純だ。
「よし、そうと決まれば早速活動開始だ。」
「じゃあ、何から始めましょう?」
「やっぱり初日はミーティングだな。」
「あれ?その台詞、どこかで聞いたことがありますよ?」
俺は、にやりとした。
「春香、でいいかな?」
「プロデューサーさん。わっ、呼んじゃいました!」
俺たちは、顔を見合わせて笑った。
73創る名無しに見る名無し:2008/11/17(月) 17:16:40 ID:l9hHvmFr
イイヨイイヨー
74創る名無しに見る名無し:2008/11/17(月) 20:04:55 ID:twRbIpKa
楽しみ過ぎる
75創る名無しに見る名無し:2008/11/17(月) 21:00:00 ID:ZMl/BTJW
2828が止まらないどうしてくれる
76創る名無しに見る名無し:2008/11/17(月) 21:44:09 ID:l0sna5dl
そしてDLCがスモック、スク水、サンバなんですね
77創る名無しに見る名無し:2008/11/17(月) 22:40:35 ID:2wp3HgQT
ふと気になったが、このPはアケマスのPなのか、それとも箱○版Pなんだろうか……。



まさか! FDP?
78創る名無しに見る名無し:2008/11/17(月) 22:58:42 ID:SsSZRdBc
この状態で、箱を起動したら何故か春香抜きの状態だったり
キャラ選択時にプロデュース中表示だったりするのだろうか

実際これあったらまず中村先生に直接ぶつけてみたいw
それが無理だったらせめてリアルわた春香さんの書き込みを残させてみたい
・・・と書いてみて、MA01の売上だけは1枚確実に増やしているのに気が付いた
やりおる。
79創る名無しに見る名無し:2008/11/17(月) 23:53:18 ID:eXJl1KcY
>>77
ヒント:グッドスリープパジャマ

って、FDPかよ?!
80春香が家にやってきた:第七話:2008/11/18(火) 11:12:24 ID:yEfo24eT
俺は3Dモデルの春香をこの世界でプロデュースすることにした。
実は昨日から考えていたことは、それだ。それがこの世界で春香が過ごすのに最高の道だと思っていた。
見込みは、ある。
アイマスのライブには千人単位で人が集まる。その中で、中の人専門という人間はそう多くはない。つまり、広報戦略さえしっかりすれば、少なくとも数百人規模のライブなら成功させられることになる。
人が集まらないなら、小規模でライブやサイン会をやってもいい。なにせ本物の天海春香だ。小規模でも継続させれば口コミでだってファンは集まってくるはずだ。
いや、大きく出るなら、ドンとテレビに出演させてアイマスファン以外も取り込めれば、本気でトップアイドルも夢じゃない。

さて、現実に目を戻す。
まずミーティングと称して、なぜか俺たちはカラオケボックスにいたりする。
実は、先ほど春香はちょっと気になることを言っていた。MA01に、歌ったことのない曲がある、と。
プロデュースするに当たって、まずはこの春香がどの曲を知っているか、さらに歌唱力はどんなものなのか、どうしても確認しておきたかった。
別に、春香のナマの歌をすぐ近くで独占して聞きたいなんてことは、ほんのちょっと、本当にほんのちょこっとだけ思っただけだ。
「じゃあ、ますは一曲目、おなじみ『太陽のジェラシー』から行ってみよう。」
「はい!」春香はニコニコと答える。やっぱり歌うのが好きなんだな。

♪もっと遠くへ 泳いでみたい 光満ちる 白いアイラン♪

え・・・
う、うまい・・・
春香は、俺のイメージより、全然歌がうまいじゃないか!
俺はコールを入れるのも忘れて聞き惚れた。
そうか。この春香は、これまでのレッスンで歌が上達してるんだ。
そうだよな。「ありがとうございまし た」とくじけそうになっても、厳しいレッスンに付いて来てくれたんだもんな・・・

「天海春香で、太陽のジェラシーでしたー!あれ?プロデューサー・・・さん?」
「あ、ああ。ごめんごめん。」
つい思い出に浸ってしまい、曲が終わったのにも気がつかなかった。
「ところで、今はほとんど振り付けなしで歌ってもらったけど、ちょっとダンスの動きも見せてくれないか?ちょっとだけでいいんで。」
春香の実力は、俺の想像以上なのかもしれない。
「わかりました!じゃあ曲は・・・これで、ピッピッピッと。えいっ、送信!」
「どの曲リクエスト入れたんだ?」
「やっぱり得意な曲にしたかったんで、『私はアイドル』にしました。」さっそくイントロが流れ出す。
「え?こんな狭い場所であんな派手な動きやって大丈夫な
どんがらがっしゃーん
遅かった。転びそうなところを助ける役得を狙う隙すら与えない早技だ。
「大丈夫か?春香?」
「あいたた・・・えっと、ちょっとお洋服が濡れちゃいましたけど、大丈夫です。でも、飲み物全部こぼしちゃって・・・」
一瞬。俺は見逃さなかった。
春香の服の濡れた部分が、素肌に張り付いている。つまり、服の下にも何かしらテクスチャは存在する。しかも肌色の。
これは、大発見だ!このバンナムの変態め!!
81創る名無しに見る名無し:2008/11/18(火) 13:43:40 ID:z+iv0tKC
大発見すぐるw
82創る名無しに見る名無し:2008/11/18(火) 13:50:18 ID:j5bbKVDf
wktkすぐる
83創る名無しに見る名無し:2008/11/18(火) 17:45:30 ID:kjtLaN1l
前回のヤバい意味とかも含めてつい思うだろうことをずばずばと触れてくるなw
まったく大発見だ!この>>80の変態め!!
84創る名無しに見る名無し:2008/11/18(火) 23:45:40 ID:Do2lhKk5
した。いた。ある。なる。みたいな感じのあんまりこなれてない文章なんだが
それがかえっていかにもそこらのあんちゃんが自分の境遇書いてるみたいでイメージ合ってていいな
あと落とし方うめえw
85春香が家にやってきた:第八話:2008/11/19(水) 11:13:08 ID:He6fMlhW
3Dモデルの春香のプロデューサーとなった夜。
俺は、部屋でPCの画面に向かっていた。宣材と称して、半ば趣味で撮ってきた春香の写真を整理するためだ。
公園のベンチ、街角を歩く姿、カラオケを熱唱する姿、などなどたくさんある。
「・・・どうも、イマイチだなあ。」
下手な合成写真にしか見えない。アイドラのシーンよりもさらに収まりが悪く感じる。
しかも春香の表情そのものが、同じような笑顔で、同じ材料からコラ作ったようにも見える。某スレのキャプチャ職人の方が、よほどいい表情を捉えてる。

コンコン・・・
「どうぞ。入っていいよ」
「お邪魔します」
予想はしていたが、春香だった。
「あ。それ、今日の写真ですね?」
「うん、でもちょっと納得できてないんだ。春香、写真映りあまりよくないな?」
俺は責任転嫁した。
「え?そうですか?うーん・・・いつもニコニコして撮りやすい、って言われるんですけど・・・」
「そうか?まあ今度、ちゃんと撮影用の服でも買って、また撮り直そう。」
「はい!お願いします。うわあ、楽しみだなあ。」
視線が斜め上を泳ぐ。
「ところで、プロデューサーさん。」
「なんだ?あらたまって」
春香が居住まいをただす。
「本当に、いろいろとありがとうございます。」
深々と頭を下げた。
「お、おい・・・。よしてくれよ。」
「でも、ちゃんとお礼は言っておきたかったんです。私、全然知らない所に来ちゃって。もし、プロデューサーさんに会えなかったら、って思ったら・・・。」
「こうして会えたじゃないか。俺も最初は驚いたけど、春香に会えて嬉しかったぞ。」
「本当ですか?ご迷惑だったんじゃ・・・?」
「本当に決まってるさ。現に、こうして春香をプロデュースすることを考えると、楽しくて仕方がないくらいだ。」
「よかった・・・。」
春香は嬉しそうに頬を染めた。
あ、これだよ。こういう表情を写真に撮りたいんだよなあ。さすがに今はそんな無粋なことはできないけど。
「さあ、今日はもう遅いから、寝た方がいい。細かいことは気にしないで、いつも明るく元気でいた方が、春香らしくていいぞ。」
「はい。ありがとうございます。じゃあ寝ることにします。おやすみなさい。お仕事の邪魔しちゃってすみませんでした。」
「ああ、おやすみ。」
バタン

ふう。俺も寝るか。
俺は布団に入って、ちょっとにやけながら今のやりとりを思い出した。

あれ・・・ちょっと待てよ。もしかして・・・俺、ビッグチャンス逃してね?
そうかそうかそうだよないろいろ世話してやったよなだからその代わりに春香お前をいただきますガバッとか。
いやいや、そんな困っていたところにつけ込むような真似は人としてヤバいだろ。
いや・・・逆に考えると、こんな夜更けに俺の部屋に来たってことは、春香もそれなりの覚悟と、へたをすると期待を持っていたんじゃないか?
プロデューサーさんありがとうございますお礼に今夜は私をプレゼントしますどうか受け取ってくださいキャッとか。
え?俺、もしかして鈍感?知らぬ間に春香の気持ちを踏みにじった?あっちの世界のPと一緒?
いやいやいやいや、それって冗談抜きでヤバい意味じゃないかよ。プロデューサーという立場を利用して所属アイドルにセクハラまがいのことをしているとか。
いや、合意の上ならセクハラじゃない。しかし、そういう問題でもない。
そうか、合意の上とは言え、他人から見たらセクハラと思えることをしているから、セクハラまがいなのか。今わかった。
でもプロデュース初日にいきなり手を出したら、そりゃ最短記録だろうなあ。
そうだよ。俺はプロデューサーなんだよ。プロデュース中のアイドルに手を出すのは本来いけないことなんだよ、うん。
いや、実際手を出してるヤツは実例に事欠かないよなあ・・・。

俺は、眠れない夜を過ごした。
86春香が家にやってきた人:2008/11/19(水) 11:22:29 ID:He6fMlhW
業務連絡です。
明日、明後日は昼間書き込める環境にいない可能性が高いので、遅くなるか、もしかすると休みます。
でも、遅くなっても続きは書きます。約束します。

ところで、試しに少しずつ文章量と行数を増やして気づいたんですが、この板って量・行制限が緩いんですね。
知らなかった。
87創る名無しに見る名無し:2008/11/19(水) 11:53:46 ID:nLioPl0z
>>86
着眼点が新しく、楽しく読ませていただいてます。
こちらも期待して待てますが、無理強いもしませんので、
どうぞご自分のペースでゆっくりやってください。


この板はssなどの創作発表のための板のせいか、
60行、4,096バイト(Janeで確認)の様です。
専ブラをお使いになっていないようでしたら、導入をおすすめしますよ。
88創る名無しに見る名無し:2008/11/19(水) 13:19:21 ID:Uf+JtrZo
おもしれーな
89春香が家にやってきた:第九話:2008/11/20(木) 11:50:25 ID:Jp1kaTaT
3Dモデルの春香のプロデュースは、難航していた。
ある程度の覚悟は出来ていた。俺は芸能界にもマスコミにも全くコネも何もなかったのだから。
しかし、意外な所に大きな問題があった。
天海春香、その名前が、現在進行中のコンテンツのキャラクター名と完全に一緒である、ということだ。
名前が一緒なのは当然、当たり前だ。しかし、全く同じ氏名を芸名として使うとなると、話は別だ。
手始めに、と考えた小さなライブハウスですら、ライブのタイトル「天海春香ソロライブ」を、それはまずいから変えた方がいい、と言い出した。
しかし、天海春香という本名以外の名前を使うことは、意味がない。だいたい本名を使って何が悪い。
と言いながら、その本名であることを証明できる物がないのだ。

そうして、俺は副業(会社員)を休んで本業(プロデュース業)にいそしむこと数日。
その日も、何の成果も上げることなく、俺は家に帰って来た。
「ただいま・・・」
返事がない。
おかしい。春香がいるはずなのに、と思いながら、自分の部屋に入った。
春香がそこにいた。
春香は目に涙を浮かべ、怒りとも憤りとも悲しみともつかない表情で、こっちを見た。
「プロデューサーさん!私って、いったい何なんですか?!」
「え?ど、どうした、春香?」春香の雰囲気は尋常ではない。
「私、これ見ちゃったんですよ!」
どさどさっ
げえええっ!俺の秘蔵のアイマス同人誌(18禁)!!
「あ!ち、違った、これじゃないです!こっちでした!」
どさどさっ
え?
これは、ただのアイマスのムック本じゃないのか?
「これが・・・どうかしたのか?」
俺は、おそるおそる訊いてみた。
「私って、天海春香って、ゲームの中の存在なんですか?」
「は?」
「ここに書いてあることって、全部本当に私の、私たちのことなんです。この絵もみんなそうです。でも、それってこの世界のゲームの中のことなんですよね?」
「あ、ああ・・・それは、その通りだ。」
「つまり、私は、私のいた世界は、ゲームの中に作られた、ゲームの中だけのものってことじゃないんですか?プロデューサーさんの言っていた、別の世界って、ゲームの世界のことなんですか?」
あ・・・
そうか。そういうことか。
俺たち鍛えられたプロデューサーは、春香のいる世界が、実在するものであるかのように考えている。
しかし、普通に考えれば虚構の存在だ。
つまり、春香は自分が虚構の世界から来た存在だと、そう思ってショックを受けたんだ。
それも当然だ。自分のいた世界が虚構だなんて、考えただけでぞっとする。

しかも、それは俺の考える限り事実だ。
春香はすがるような目で俺を見ている。
しかし、かける言葉が見つからない。

やがて春香はその場に崩れて泣き始めた。
「春香・・・」
「お母さん・・・小鳥さん・・・千早ちゃん・・・みんな・・・みんな、ゲームの中なんかじゃないよね?・・・みんないるよね?」

その時。
どこからか音楽が聞こえた。
「・・・私の携帯?!」
よく聞くと、曲は団結のイントロだ。
ずっと圏外表示のままだった春香の携帯が、鳴っていた。
番号は非通知。
春香がおそるおそる電話を受ける。

「もしもし・・・え?小鳥さん?!」
小鳥さんだって?!
どこから?どうやって?
そうか!小鳥さんは○女のまま○0歳を迎えて魔法が使えるようになったんだな!
90春香が家にやってきた人:2008/11/20(木) 11:57:34 ID:Jp1kaTaT
>>87
ありがとうございます。
専ブラは使ってるんですが、Macなので・・・
Janeは確かに行数とか文字数制限が表示されて便利なんですよねえ。
BathyScapheはどこかに出るのかな?
そして、さっそく行数制限一杯まで使ってしまいました。
91創る名無しに見る名無し:2008/11/20(木) 12:01:17 ID:0wyIuy9W
>>89
>そうか!小鳥さんは○女のまま○0歳を迎えて魔法が使えるようになったんだな!

爆笑したwww
どう続くのか気になってたまらん、期待してます
92創る名無しに見る名無し:2008/11/20(木) 12:46:12 ID:WdV1Rjfk
91に禿堂www
引き込まれてしまっていただけに不意打ちを喰らったぜ。お前は読み手を一体感動させたいのか
笑わせたいのかどっちなんだw

ただ俺や他のアイマスオタでもこういう反応しそうだ小鳥さんスマソ
もうじき終結かな?
続き楽しみにしてる
93創る名無しに見る名無し:2008/11/20(木) 13:04:10 ID:tS7qTyz5
>>90
>そうか!小鳥さんは○女のまま○0歳を迎えて魔法が使えるようになったんだな!
いやいやいやww
しかし、変に説得力あるから困るwwww
94創る名無しに見る名無し:2008/11/20(木) 13:46:18 ID:R1BJF5mU
小鳥さんってもう●0才なのか
95創る名無しに見る名無し:2008/11/20(木) 14:21:35 ID:pHBelKQl
…巧いな。等身大の視点描写が。
この流れを保って終われれば、小品でもずっと記憶の片隅に残り続ける、
そんな作品になってくれそうで。
96創る名無しに見る名無し:2008/11/20(木) 15:39:15 ID:tS7qTyz5
まてよ
つまりその理屈でいくならPの中には向こうに電話を、更には旅立てる奴もいるんじゃないのか!
97創る名無しに見る名無し:2008/11/20(木) 19:33:13 ID:IdSys97u
>>95
>>92も言うようについ思ってしまうことをうまいことオチに使ってる点が
「俺」をヘンに持ち上げずに適度にイタくて笑えるヤツにしてる気がする

>>96
だいすきなえのなかに
とじこめられ た
98創る名無しに見る名無し:2008/11/20(木) 23:06:26 ID:yQJmlEVj
同人誌について不問にしてくれた春香の優しさに泣いた
99創る名無しに見る名無し:2008/11/21(金) 00:33:03 ID:+pohzmnm
つか、する事無いからって他人の部屋を家捜しするなよw
100春香が家にやってきた:第十話:2008/11/22(土) 06:54:46 ID:OBUUZ82M
3Dモデルの春香に、小鳥さんから電話がかかってきた。
「はい。プロデューサーさんなら、いますよ?今かわります。」
春香が携帯を俺に差し出す。俺はそれを受け取った。
「もしもし。」
『あ、プロデューサーですか?音無です。音無小鳥にじゅうチョメチョメ歳です。でも年齢は秘密ですよ♪』
あんた、絶対魔法使えるだろ?魔法で俺の心読んでるだろ?
「ところで、音無さん、今どこから電話かけてるんですか?」
『事務所からですよ。そうそう、プロデューサー、最近全然事務所に来ないで、どうしてたんですか?ま、まさか!春香ちゃんと駆け落ちとか・・・!?これは、765プロ始まって以来の大スキャンダル!!もし悪徳記者に知れたら・・・』
「な、何言ってるんですか?違いますよ!」
事務所に来てない・・・?
あ、そう言えば、春香が来てから、箱○もアケも全然やってなかった。まさかそのこと?
そう思って部屋の隅の箱○を見る。
ん?電源が入ってるぞ?
春香が慌てて「あ、それは私が、どんなゲームなのか知りたくてつけたんです。」
『事務所のみんなも、私も、困ってたんですよ。春香ちゃんにもプロデューサーにも連絡が取れなくて。』
この箱○の電源が入ったら、小鳥さんからの電話が通じた・・・そういうことか?
もし、そうだとすると・・・
「すみませんでした。後で事務所に行きます。ところで、一つお願いがあるんですが。」
『はい。なんでしょう?』
「もし、今から30分しても、春香が事務所に行かなかったら、もう一度春香の携帯に電話してもらえますか?」
『30分後ですね。わかりました、じゃあ事務所で待ってますね。』
「お願いします。じゃあ後で事務所で」
俺は電話を切った。

「プロデューサーさん、今、私が事務所に行くとか言ってませんでした?」
「ああ。俺の考えが正しければ、だけどな。ちょっと一緒に事務所に行ってみよう。」
俺はあえて軽い調子で言った。
「それって・・・私が、元の世界に帰るってことですよね?」
春香、どこ見てしゃべってるんだよ?
「まだ決まった訳じゃないが、ちょっとやってみる。」
「私が帰ったら、プロデューサーさんは?」
「俺も事務所に行くってば。」
「あ。そっか・・・うーん・・・なんだかよくわからないんですけど・・・」
ダメだ。ここで時間をかけたらダメだ。どんどん話がややこしくなる。俺の気も変わるかもしれない。
俺は箱○のコントローラを接続し直した。サインイン。
「帰ったら、またここに来れますかねえ?」
「俺が事務所に行くよ。前みたいに。いつものように。」
ゲームを起動させる。
「プロデューサーさんは、私が帰ることになっても、さみしいとか思ってくれないんですか?」
・・・だめだったか。さすがの春香も察したらしい。
ひとつ深呼吸をしてから、答えた。
「春香、俺は、春香にアイドルでいて欲しい。そして、俺はこの世界じゃ春香をアイドルにすることができないんだ。」
自分が言っていることが、本音か建前かわからなくなってきた。
「だから、元の世界で、一緒にトップアイドルを目指そう。な?」
現に春香は、さっきも元いた世界のことを思って泣いていたじゃないか。
帰ることが、春香にとっても最善の道なんだ。俺は半ば自分に言い聞かせた。
「で、でも、今すぐじゃなくてもいいんじゃないですか?」
「逆だよ。今すぐじゃなかったら、二度と帰れなくなるかもしれない。」
いつ箱○がRRoDくらうかもしれない。そうなると、福島に行って帰って来た箱○が元と同じ次元連結機能を備えているとは限らない。
それどころか、また電源を入れ直しただけでも、もうダメな可能性だってある。現に俺が、何百回と起動したって、小鳥さんから電話がかかって来たことなんて一度もなかったんだから。
「・・・わかりました。」
俺はその返事を聞いて、正直ほっとした。
あらためてスタートボタンを押して、ゲーム開始。
「プロデューサーさんは、プロデューサーさんですものね。」
「当たり前だろ?」
ユニット選択画面。
「でも、もし帰れなかった時は・・・」
「それは、まだ考えなくていいんじゃないか。」
ユニット選択。選んだユニットは『トリコし苦労』、春香、千早、雪歩のユニット。ランクAだ。
「でも、その時は、プロデューサーじゃないプロデューサーさんと、アイドルじゃない私とか・・・そんな未来があるのかなあ、なんて。」
101春香が家にやってきた人:2008/11/22(土) 06:58:47 ID:OBUUZ82M
えっと、一応、まだ続きます。念のために。
あと設定上は春香は部屋を掃除していて、どんがらがっしゃんやって、いろいろ見つけちゃったはずだったんですが、ふと見直すと関連描写を全部削っちゃってました。
春香、すまん。なんか春香を怪しげな人にしてしまった。
102創る名無しに見る名無し:2008/11/22(土) 07:06:24 ID:cZxjaXsU
>>101
早朝からの投下乙です。

箱〇が接続点とは・・・
103創る名無しに見る名無し:2008/11/22(土) 08:52:01 ID:8gdnR2QB
うちは箱の電源つけても音無さんから電話来ないんだが
104創る名無しに見る名無し:2008/11/22(土) 08:57:21 ID:R1KxiWVk
Red Ring of Deathワロタ
何たるコードネームwww

あなたの作風好きだ。基本真面目なのにところどころでひどい大技が入るw
クライマックス刮目して待たせていただく。
105創る名無しに見る名無し:2008/11/22(土) 18:33:02 ID:IhPtWsRl
面白いのぅw 続き期待。

     ,。、_,。、
    く/!j´⌒ヾゝ
    ん'ィハハハj'〉
    .ゝノ ゚ ヮ゚ノノ  ワクワク
      /i l i}
     く_0JJつ
106創る名無しに見る名無し:2008/11/22(土) 20:22:39 ID:Y2BbhlHk
家庭用スレの時から面白いな。
春香さん、どうして目をそらすんですかw
107創る名無しに見る名無し:2008/11/23(日) 12:24:06 ID:xSphIukV
>>106
向こうでやってた頃からどっか落ち着いて読めるとこで続けてほしかったから
ここ辺りはちょうどいいな
願わくば続く者が現れて>>40>>41が言うような場に発展するといいんだけど

自分で書ければいいんだけど今は副業が詰まってるし本業にだって少しは行きたいし
なにより書いたモノがつまらないw
108春香が家にやってきた人:2008/11/23(日) 17:41:46 ID:AB1jYuld
書き込みテスト

今日、春香からメールが来た。
アケのメルプリのものだ。
タイトルが「続きが読みたい…」
春香、お前、空気読み過ぎだろ・・・
(これは実話です)
109春香が家にやってきた:最終話 1/2:2008/11/23(日) 17:42:55 ID:AB1jYuld
「でも、その時は、プロデューサーじゃないプロデューサーさんと、アイドルじゃない私とか・・・そんな未来があるのかなあ、なんて。」

ドクン!
春香の言葉は、俺の心臓を直撃した。
そうか。そう言えば、俺はずっとプロデューサーとして春香を見ていた気がする。
もっと素直に、自分の意志で、春香と日々を過ごすことは出来たんじゃないだろうか。

でも、その日々だって突然終わる可能性はあるんだ。春香が突然こっちの世界に来たのと同じように。
だったら、春香が帰らなくても、突然帰っても、ずっとアイドルとそのプロデューサーという関係でいるのが、俺にとっても春香にとっても、幸せなんだ。
それに、俺はやっぱり、アイドル天海春香が好きだ!歌って踊る春香が!

「おはようございます。プロデューサーさん!」
画面から、春香の声がした。
あわてて周囲を見渡す。
さっきまで隣にいた春香は、もうそこにはいなかった。

ふう・・・
体中の力が抜けた気がした。
最後はあまりにあっけなかったな・・・
春香ぁ・・・

「あれ?私、おはようございますって、さっきまで夜だった気がするんですけど、朝ですよねえ?それに私、事務所に来てますよね?あれ?」
盛大に吹いた。
画面の中に、この世界から帰って行った春香がいた。
「春香ちゃん、プロデューサー、おはようございます。」
「あ、小鳥さん。おはようございます。今日は朝の挨拶は社長じゃないんですか?」
「ええ。ちょっとプロデューサーに業務連絡があるの。さて、プロデューサー、さっそく業務連絡です。」
俺?俺のこと・・・だよな?
「まずは、春香ちゃんを無事に返してくれて、ありがとうございます。お礼に今回は、一回だけの特別ボーナスプロデュース週にしますね。」
え?なに?リアルでフラグ立ててスペシャルステージ突入ですか?
「そのかわり、この週のプロデュースが終わると、セーブができません。さらにこのユニットのデータは消えちゃいます。」
「おい、それはないだろう?!」
俺は、つい画面に向かって声を上げた。
「仕方がないんですよ。春香ちゃんがいなくなっちゃうなんて、重大な欠陥を出しちゃったデータなんですから、本当は、黙ってプロデューサーデータを丸ごと消しちゃってもいいくらいなんです。」
いやいやいやいや。それは勘弁して下さいマジで。
「では、ボーナスプロデュース、スタート!」
選択の余地なしですか。

「プロデューサーさん。今回は、ありがとうございました。あの、私たちからお礼があるので、どうか受け取って下さい。」
私たち?
お、いつの間にか千早と雪歩もいるのか。例によって一言もしゃべらないけど。
「じゃあ、行きましょう!」
行くって、どこへ・・・?
「着きました。ドームですよ、ドーム!」
はやっ!
「私たち、明日からここでライブがあるんです。そして、会場内ではたった今、明日のステージのセットが終わったところなんです。そのステージで、なんと、プロデューサーさんのためだけに、一曲歌っちゃいます!名付けて、Live for P!」
ドームで、俺だけのために・・・。
シチュエーションとしては、かなり嬉しいな。
「あの・・・私たちにできるお礼って、こんなことしか思いつかなかったんです。でも、プロデューサーさんのために一生懸命歌います。だから、聞いて下さいね。」
3人はすでにステージ衣装に着替えていた。
もしかして、俺はお客さんだから衣装や曲やパート分けを選んだりできないのかな?
せっかくの特別ステージだから、最前のかぶりつきでグラビア水着2を堪能とか、そういう特典はなしですかそうですか。
いかん。画面越しだと思うと、ついつい、いつもの下衆さが出てしまう。春香が俺のためだけに歌ってくれるというのだ。心して聞こう。
110春香が家にやってきた:最終話 2/2:2008/11/23(日) 17:43:55 ID:AB1jYuld
「それでは、行きます。曲は『まっすぐ』」

ピアノのイントロが流れ出す
心の奥に触れるメロディー
何度、このメロディーを聞きながら、プロデュースの日々を回顧したことだろう

春香のボーカルが入る
甘い声が、しっかりと力強くメロディーラインを辿る
これがAランクアイドルにまでのし上がった春香の歌だ
デビュー当時の春香とは、まるで別物だ

いや、春香だけじゃない
千早も歌の表現に厚みを増し、雪歩もその歌に艶を加えている
ああ・・・俺は、なんて幸せなプロデューサーなんだ・・・
自分の手によって成長した彼女達の姿を、この目で見られるなんて・・・

曲は間奏に入った
ピアノが流れる
こ・・・これは、ゲームエンディングバージョン?!

ピアノが奏でるメロディーの中、俺は春香との日々を思い出していた
ほんの数日間、でもいろいろなことがあったようななかったような日々

すると、雪歩が中央に進み出る
「春香ちゃんを、ありがとうございました。」

え・・・

千早が出てくる
「春香のこと、本当にありがとうございました。」

最後に、半べそ顔の春香
「あ、ありがとう・・・っ ございましたっ!」
春香の顔が、俺の涙で滲んだ

春香は、それでもこらえて歌い続ける
その歌は最後まで大きく乱れることがなかった


素晴らしいステージだった。
曲が終わると、俺は画面越しに拍手を送った。

春香が、ついにこらえきれずに泣き始める。
千早と雪歩が、両側から歩み寄って、春香の肩を抱く。
二人は、顔を見合わせると、こちらに向き直って、深くうなづいた。

ああ。お前たちが一緒なら、春香は大丈夫だな。
そう思った瞬間、こらえてきた涙が堰を切った。

千早と雪歩が見守る中、俺と春香は、いつまでも泣き続けた。
111春香が家にやってきた:エピローグ:2008/11/23(日) 17:44:52 ID:AB1jYuld
『そこでこっちを見ている君!』
社長の声で飛び起きた。
周りを見回す。
俺の部屋だ。
俺が向こうの世界に行ったというわけではなかった。
『そう、君だよ、君!』
ゲーム画面から出ている声だった。
いつの間にか眠ってしまっていたらしい。外は朝になっていた。
俺は、携帯を取り出して日付を確認した。
春香が帰って行った翌日の日付だ。
全てが夢だった、ということでもなさそうだ。
「社長、失礼します。」
俺は一言断りを入れて社長の言葉を遮り、スタートボタンを押した。
ユニット選択画面を確認する。
『トリコし苦労』は存在しなかった。

はあ。
俺はため息を一つ、ついた。

視線を落とすと、妙なものが目に入った。
「リボン・・・?」
俺の左手首に、リボンが結んである。
赤いリボン。

よくよく見てみると、リボンの裏には、何か字が書いてあるようだった。
春香、バカだなあ。
字なんか書いてあると、俺はそれを読むために、せっかく春香が結んでくれたリボンを、ほどかないといけないじゃないかよ。

シュルル、とリボンを解く。
リボンの裏には、こう書かれていた。


 心はいつでも一諸ですよ! 春香


俺は・・・
泣いたらいいのか、笑ったらいいのか、突っ込んだらいいのか、わからなかった。

しばらく考えてから、俺は、リボンをPSPにストラップ代わりに結んだ。
これで、いつも、いつでも”いっしょ”だな、春香・・・。

112春香が家にやってきた人:2008/11/23(日) 17:50:43 ID:AB1jYuld
あとがきのかわりに。

これで、「俺と、この世界にやってきた春香」の話は終わりです。
おつきあいいただき、ありがとうございました。
あまりにも2ちゃんのアイマススレ的なネタだらけで、2ちゃん以外に発表をしようがない作品でしたがw

しかし、書いている間、これだけ多くの方に感想やら何やらいただいたのは初めてで、それが大変ありがたく、またモチベーションになりました。
本当にありがとうございます。

ラストは批判覚悟ですw
感想等、およせいただければ幸甚です。

それでは。
113創る名無しに見る名無し:2008/11/23(日) 18:37:25 ID:a5mP2I7b
>>112
     ,。、_,。、
   .く/!j´⌒ヾゝ
    ん'ィハハハj'〉 オモシロカッター!
    ゝ*> ヮ<ノノ

GJ&乙、ありがとう。
最後にちゃっかりSPの宣伝までw
個人的にはもうちょっとくらい接触があるのが好きだけどね。

例えば、夜中にトイレに行った春香が間違って主人公のベッドに戻ってきてぼふっと倒れこんでくる
→ 気付く → あわてて自分のベッドへ戻って行く。
主人公「体感した!おれは45kg【くらい】を体感したぞー!」 とかw

最近のラブコメ漫画みたいな一緒に転んで女の子の足の間に顔が〜じゃなくて、
掛け布団越しに体の重みを感じたとか昭和な慎ましさが好きなおれオサーン。
114創る名無しに見る名無し:2008/11/23(日) 20:35:55 ID:/I8VDxi0
>>112
字なんか書いてあると、俺はそれを読むために、せっかく春香が結んでくれたリボンを、ほどかないといけないじゃないかよ。

ここがとてもよかった。

改めて読み返してみて思ったこと
「主人公のかーちゃんすげぇw」
115創る名無しに見る名無し:2008/11/23(日) 23:02:31 ID:rqs6Ar51
>>112
本当に面白かった、乙。
もしまたSS書くとしたら投下するのはここ?
116創る名無しに見る名無し:2008/11/24(月) 02:20:34 ID:SUE/fnHV
>>109
待て!おれたちは大変なことを見落としている!

こ い つ の 無 印 に は 、 小 鳥 さ ん が い る ・・・ っ !
117創る名無しに見る名無し:2008/11/24(月) 02:31:04 ID:rTg4hKmp
いやオレの無印もいるけど?
もしかして朝の訓示をOFFにしてるんじゃねーの。
確か、そうすると夜も出てこない。
118創る名無しに見る名無し:2008/11/24(月) 02:46:49 ID:XperE/5v
>>112
いい作品読ませていただきました。GJ!!
次回作も待ってます。
>>116
魔法の力ってすごいよね
119創る名無しに見る名無し:2008/11/24(月) 13:54:55 ID:7hFDHc3a
小鳥さんって夜も出てくるのか
もしかして大きい事務所にならないと小鳥さんって出てこない?
120創る名無しに見る名無し:2008/11/25(火) 00:46:44 ID:Bw37Vc+Y
夜の小鳥さん、って書くと妄想してしまうな

>>112
面白かった!
細かい感想は他の方が既に述べている通りだったりするので割愛させてくだしあ
121創る名無しに見る名無し:2008/11/25(火) 03:28:48 ID:ZuqxLA2/
20+チョメチョメ才だから食べごろよ
Do-dai?
122創る名無しに見る名無し:2008/11/25(火) 13:29:13 ID:sFAIePvY
>>112
批判っていうほどじゃないけど「みんな、ゲームの中なんかじゃないよね?・・・みんないるよね?」を
結局回収できずじまいだったかなって
夢だったのか、いや本当にあったんだ的なENDに辿り着くにはかなり触れにくい部分ではあるけども
それを言わせてしまった上でそこをツッコミ切れず終わってしまったのはちょっと残念
いや、もしかしてこれは続編への伏線なのか!?伏線なのか!?
123創る名無しに見る名無し:2008/11/25(火) 16:44:36 ID:ZuqxLA2/
>>35
どこの孤独のグルメかと思った
124創る名無しに見る名無し:2008/11/26(水) 17:38:53 ID:bhT8GsuM
まったりしている所失礼します。

SS投下します。ご迷惑かとも思いましたが書いたからには人の目にお預けいたしたく。

・雪歩
・時代劇
・長編:21レスお借りします

タイトルは『くのいち雪歩・忍び穴』
まあ笑わんとしばしお目汚しをば。まいります。
125くのいち雪歩・忍び穴(1/21):2008/11/26(水) 17:39:30 ID:bhT8GsuM
 時は元禄、天下泰平の世の中である。将軍様のご加護も篤く城下の町民はみな平和に
日々を過ごし、まさに文化の花咲く盛代を謳歌していた。
 士農工商身分の差こそあるものの特にこの城下町では人々の心は穏やかで、普段の生活に
おいては位の隔たりなぞ見る影もなく、あちらではお侍が商家の倅と将棋を打ち、こちら
では荷卸に上ってきた農家の娘が顔見知りの武家娘と菓子をつまむ、そんな光景も見られる、
まこと平和な時代であった。
 ほら、ここにも。
「お雪、お雪?お雪ってば!」
 廻船問屋『水瀬屋』。ここらでは知らぬもののいない豪商の屋敷で、大きな声でどかどか
歩き回っているのはここの娘・伊織である。
「お雪、いないの?今すぐ返事しないとギッチギチに縛り上げて長持に詰め込んで熨斗
つけて田舎に送り返すわよ」
「はぅ、ここです伊織さまぁ」
 男名前を付けられて育ったせいか性格そのものもなかなかに強気なこの娘が呼び立てて
いたのは下働きの少女である。縁側を歩く伊織の真下から声がしたかと思うと、当のお雪が
顔を見せた。
「いっ、いまちょっとお庭のお手入れをしていたのでぇ」
「あらこんなところにいたのお雪」
「お願いですから郷里に返すのだけは勘弁してください伊織さま〜」
「なに言ってんの、冗談に決まってるでしょ。それよりお雪」
「は」
「一体全体何百回言えば分かるの?私のことは『様』付けなんかで呼ばないで!」
「えぇ?だ、だって私はここにご奉公の身でぇ、伊織さまはこちらのご息女でぇ」
「そういう四角四面なのがだいっ嫌いなんだってば。うちで私をお嬢様って呼ぶのは大番頭の
新堂だけで充分、あとは丁稚だろうが人足だろうが『伊織ちゃん』『お嬢』って呼ばせて
るんだし、あんたにもそうして欲しいんだから。そもそも今時そんなの気にする時代じゃ
ないでしょ?」
「いえ、むしろそういうのが命に関わる時代――」
「わかったの?わからないの?」
「は、はいぃっ」
「私はだあれ?」
「いっ、伊織さ……伊織、ちゃん、です」
「よくできました。にひひっ♪」
 ト書きを入れる暇もないほどまくし立てるこの少女、居丈高なのはその上辺だけの様子
である。
 さてこのお雪、彼女がここに奉公に来たのはほんの半月前のことである。本人が言うには
雪深い北国から江戸に出てきて数年、あちこちの大店で下働きをしては暇を出されて店を
変え、流れ流れて水瀬の大旦那に拾われたのが最後の望み、との話。ここで働くようになって
みると、男衆と満足に話ができなかったり河岸に上がった海老が怖いと泣き出したりと少々
気の弱いところはあるが熱心だし、庭仕事の類を任せると実に生き生きとする。ならば家の
ことと庭のことをもっぱらさせて、歳の近い娘がいるので話し相手に良かろうと、港の店では
なく屋敷付きの下働きとあいなった次第。
 伊織もどうやらこのとおり、お雪になついており、傍から見たら生まれついての姉妹かと
思うようである……ただ、年下の伊織の方がどうしても姉に見えるのだが。
「あれ、それで伊織さ……伊織ちゃん、私を探してたんですよね?」
「ああそうなのよ。ちょっとこれ見て頂戴。あんた字は読める?」
「あ、ええ、少しですけど。『功徳新報』、ですか?」
 伊織が懐から取り出したのは瓦版。江戸城下には数十と知れぬ瓦版刷りの新聞が発行
されており、その内容は将軍様のご偉業から相撲の番付から男衆の下廻りの諸々まで多岐に
わたる。伊織が持っている『功徳新報』というそれは大層な名前とは裏腹に、町の有名人の
私事を探る少々下世話なものだった。
「功徳なんて、お寺で発行してるんですか?」
「とんでもない。版元にお金出してるのは悪徳屋よ」
「あ、水瀬屋の競争相手ですよね」
 この時代、国内貿易と流通を取りしきる船問屋は幾百となく存在し、互いに商売に鎬を
削っていた。水瀬屋は当代きっての大店で、それを追随している十数軒の船問屋の中に
悪徳屋はある。
126くのいち雪歩・忍び穴(2/21):2008/11/26(水) 17:40:19 ID:bhT8GsuM
「悪徳って自分でつけるなんて、なんだか怖いですよね」
「ふん。『己が生業を悪と為し、お客様こそ善徳を得べし』とかなんとか。あれでちゃんと
お客がつくんだから不思議よ。それよりこれよ」
「あ、はい。えーと、『大店廻船問屋の娘が夜な夜な男と逢引か』?……って、えええーっ?」
「バッバカ声が大きいわよ!でたらめに決まってるでしょっ」
 先ほど身分がどうこう言っていた当人が、瓦版を片手にあるじの娘を目の前で指差す姿は
傍で見ているものがいたら肝を潰すだろう。伊織は声を潜めてお雪を制した。
 瓦版の内容はこうだ。江戸市中では有数の廻船問屋の娘、男名前の某々がこのところ毎晩の
ようにとある男性と遊び歩く姿が町なかで見かけられる。勢いのある船問屋の娘とは言え、
若い身空でこうもだらしのない振る舞いを許すとは父親である店主の親莫迦振りには頭が
下がる思いである。なんでも相手の男性は貧乏道場の跡取り息子で、この調子で娘が
ひとつおねだりでもすれば店主は船荷の横流しでも平気で行なうであろう、憶測に過ぎぬが
幾多ある問屋のうちわざわざ危うい船を選ぶ者は減るのではないか、などなど。水瀬屋の
名は一言も書いていないが、先ほどのお雪の反応の通り伊織を名指ししているも同然の
いかがわしい記事であった。
「ふええ……伊織ちゃんすごいですねえ」
「でたらめだって言ったの聞いてないわけ?あんた」
 一通り読み終えてお雪は頬を赤らめる。詳細は書いていないものの若い娘が男と逢引など、
そこから先はどうぞはしたない想像をなさってくださいと言わんばかりである。
「この道場の跡取りってのは私の幼馴染で、たしかにここ何日か一緒に出かけてるけど
なにもおかしなことしてるわけじゃないのよ」
「えー、でも火のないところに煙は立たずって」
「嫌なこと言うわね、おとなしい顔して」
「はう!す、すみません伊織ちゃん、お暇だけは勘弁してくださいぃ」
「そんなことしないわよ。ただまあこんな書き方されて黙ってるとこっちが悪者にされちゃう」
 伊織は言う。噂話など江戸市中に毎日いくらでも囁かれるが、いわゆる情報を形にして
残す媒体は数が知れている。お上の行なう高札やこういった瓦版がせいぜいで、それに
記された話は人々が容易に信じてしまう。評判が命の商売をしていると、こういう場合
断固として噂を否定しないと騒ぎが大きくなってしまうのだ。
「こういう下世話な噂って消しづらいのよね。付き合いの長い取引を心配することはない
けど、悪徳屋と『功徳新報』が繋がってるって知ってる人は少ないから、新しいお客を逃す
ことにもなりかねないわ」
「それは心配ですね」
「そこであんたよ」
 伊織がお雪の顔を指差す。
「えっ?」
「お雪、あんたちょっと町に出て人知れずうちのいい噂を撒き散らしてきなさい」
「えええっ?」
 驚くお雪をものともせず、伊織は続けた。
「私や店の者がこの噂話を打ち消して回ってもどうにもならないの、わかるでしょ?」
「まあ、噂の当人が何言ってもダメですよね」
「あんたはまだうちに来て間もないから顔が割れてないし、これまでもあちこちの店で
知り合いがいるでしょ。だから、そういうつてを探して、お父様が善人で水瀬屋が良心的な
商売をやってるっていう話を言いふらしてもらいなさい。お礼は弾むわよ」
 伊織の計画では、水瀬屋が真っ当な店であることを言い募ればいずれ悪い噂は消える、
というのだ。
 お雪は答えて、
「……それはできると思いますけど……ちょっと気になるところが」
「なによ」
「そんな普通のいい話、噂話で広まるんでしょうか」
「え」
「だって、水瀬屋はもとからいいお店なんですよね?そこに『水瀬屋はいいお店だ』って
話しても『ああそうだねえ』でおしまいに」
 伊織の顔が真っ赤になった。
「それならあんたが何か考えなさいよこのごく潰しーっ!」
「はわぁ?ごっごめんなさい〜」
 正論を指されて怒り出す伊織と反射的に謝るお雪、その二人に遠間から呼びかける声が
聞こえたのはその時である。
127くのいち雪歩・忍び穴(3/21):2008/11/26(水) 17:41:06 ID:bhT8GsuM
「こらこら伊織、伊織ってば」
「誰よっ!」
「ボクだよ」
 伊織とお雪が話をしていたのは屋敷の縁側で、広い庭があるとは言えすぐ先は天下の往来
である。表通りではないからほとんど人は通らないが、いまそこに一人の侍装束の人影がいた。
 伊織やお雪と同年代だろう、若者に流行りのざんばら髪に羽織袴。高価な品ではないが
丁寧に扱っているのが見て取れる。雄々しいと言うよりたおやかな印象を受けるその若侍は
いま、伊織の家の生垣に肘をつき、おもしろそうに二人のやり取りを見つめていた。
「あら、なによ真之介。見世物じゃないわよ」
「なに言ってるんだい、人通りがないとは言えこんな目立つ場所で密談なんて。悪徳の
連中が聞いたらこれも瓦版に載っちゃうよ」
「うるさいわねっ!あんたも似たり寄ったりの境遇なんだから人をからかう暇があったら
いい知恵貸しなさいよっ!お雪も……お雪?」
 真之介という若者を一喝しておき、お雪にも加勢を頼もうとしたのか横を向く。だが
そこには、頬を染め瞳を潤ませた、誰が見てもわかる『恋する乙女』がぼんやりと立って
いるだけだった。
「お雪ーっ!」
「ひゃいっ?」
「お雪ちゃん、っていうの?初めまして、菊地真之介です」
 伊織の一喝で我に返ったお雪に、真之介が笑いかける。
「最近働き始めたの?ボク、そこの先の道場にいるんだ。なにかあったら相談してよ」
「ふん、むしろあんたが『貧乏道場』の将来でも相談する必要があるんじゃないの」
「う、うるさいな!だいたい今回の件だって伊織があんなにはしゃぐから人に見られた
んだよ?」
「なによ!あんたこそあんなに思いつめた顔で――」
「あ……あの?」
 自分だけ置き去りで二人に喧嘩を始められたお雪が、おずおずと割って入った。今の
会話で状況がつかめたのだ。
「真之介さまは、あの瓦版に書かれていた方なんですか?」
「うん、そうなんだ」
「伊織ちゃんと夜な夜な逢引してるって」
「たはは。それで困ってるのさ、ボクも」

****

 三人は屋敷に上がり、伊織の私室で話の続きをすることにした。真之介の言うことも
もっともで、あのままでは密談にも何にもなりはしない。
 あらためて真之介が説明を始める。
「ボクと伊織は幼馴染でね、家も近かったし、伊織も伊織の兄上たちもうちの道場に通って
くれていたんだ。伊織は小さい頃から遊んでやってた仲で――」
「あら、『遊んでもらってた』の間違いじゃないの?」
「ボクの方が年上なんだぞ?まあ、こんな感じで仲良くやらせてもらってるってわけ。
瓦版の件もちょっとボクに悩みがあって、ここしばらく相談に乗ってもらってたんだけど
……さすがに目を引いたみたいでさ」
 髪をかきあげ、困ったように笑うその表情は実に爽やかで、お雪はたちまち目を奪われる。
伊織も黙って立っていれば人の足を止めるに足る美少女で、この二人が連れ立って歩いて
いればそれは野暮な想像をするものも少なくなかろう。
 二人は人目をしのび、その相談のことであちこち、神社の境内やら廃屋やらに行っていた
というのだがどうしても噂は立つもので、功徳新報の手の者に足取りを追われてしまった
ようだ、ということである。
「ボクたちは確かに仲はいいと思うけど、別に恋人でもなんでもない。ボクの相談ごとで
伊織の家に迷惑をかけるのも忍びないんで、お雪ちゃんが手助けしてくれるのならホントに
嬉しいけど」
「はっはい!私なんでもやりますっ!真之介さまのためならたとえ地の底岩の下、なん
でしたらその悪徳屋に火をつけて」
「な、なに言い出すのよっ!」
「わわわっ!物騒だな、無茶言わないでよ」
128くのいち雪歩・忍び穴(4/21):2008/11/26(水) 17:42:21 ID:bhT8GsuM
 勢い込んでお雪を、あわてて二人が止める。ちなみにこの時代、火つけは磔獄門であるし、
関与した人物もただでは済まない。
「はぁっ!わ、私ったらなんてことをぉ」
 いずこから取り出したか大きな江州鋤を取り出し、少女とは思えぬ素早さで部屋の畳に
打ち付ける。
「こんなダメダメな私はここに穴掘って埋まってますぅ!」
「きゃーっ?やめて、やめなさーい!」
「わ、ちょ、ちょっとお雪ちゃん」
「やーん、止めないでくださいぃ、こんな、こんな私はっ」
 しばしの奮闘の末どうにかなだめたが、それまでに伊織の部屋には人ひとり充分埋まる
ことのできる穴がぽっかりと空いていた。
「……はぁ、あんたが行く先行く先で暇を出される理由がわかった気がしたわ」
「うぅ、すいませえん」
「だいたいあんた人の部屋に穴掘って埋まってどうしようっての。こんなところで根っこ
下ろされちゃこっちが困るのよ」
「ぷっ、おもしろい」
「真之介は黙ってて!」
「あ、あのぉ」
 お雪が聞く。
「やっぱり私、郷里に送り返されちゃいますよね」
「そりゃあんた、こんなことしでかしてお咎めなしじゃ他の者に示しがつかないし」
「……そうですよね」
「伊織?そんなの可哀想じゃないか」
 真之介が止めようとするが、伊織の態度は固い。
「こういうのはね、いくらあんたでもどうにもならないの。私が偉いだなんて思わないけど、
奉公先のあるじの娘の部屋に大穴空けてあなたよくやったわね、なんてわけには行かない
ってことはわかるでしょ?」
「それはそうだけど」
「噂じゃお皿を割っただけで切り殺された奉公人だっているのよ。この有り様なら借金
背負わせたっていいくらい。返せるとは思わないけどね。なんなら吉原あたりに口利いて
やろうかしら?」
「はうっ?」
「伊織!」
「うるさいわねっ!」
 なお何か言おうとする真之介を伊織が制した。くやしそうに真之介が見つめると、伊織が
目を潤ませている。
「……私だって……」
「伊織」
「私だってなんとかしてあげたいわよ!まだたったの半月だけど……せっかく仲良く……っ」
 伊織の家は大店である。それゆえ彼女には気を許せる知り合いは少なく、同格で言い合い
をできるような友は数えるほどしかいない。屋敷にあっても使用人は年の離れた者ばかりで、
伊織というより伊織の父親に仕えていると言った方が正しい。多少の因果はあるものの、
あるじの目の離れたところで奉公しているお雪は伊織にとって新鮮な人間関係であったのだ。
 幼馴染みのめったに見せぬ弱さを目の当たりにして、真之介も引き下がることにしたようだ。
「ごめん伊織。ボク、ちょっと考えが足りなかったみたいだ」
「いいのよ。私の家の問題なんだから」
「……ごめんなさい伊織ちゃん」
 今まで畳に目を落としていたお雪が顔を上げる。
「私、やっぱりお暇をいただきます。こんなことして許されるはずないし、伊織ちゃんが
許してくれても旦那様がお許しになりませんよね」
「……そうね」
「だから、これで失礼します。旦那様には恩を仇で返すみたいで申し訳ありませんけど、
伊織ちゃん私のこと、かばったりしないでください。流れ者のお雪はうっかり伊織お嬢様の
お部屋をめちゃめちゃにして、自分のしでかしたことの恐ろしさに江戸から逃げ出した、
とでも」
「……ん」
「お部屋、直せなくてごめんなさい。時間をいただけば元通りにできますけど、さすがに
人に知れる前にとはいかないです。そのかわり」
 と、お雪は傍らに持っていた土の塊をさし出す。
129くのいち雪歩・忍び穴(5/21):2008/11/26(水) 17:42:54 ID:bhT8GsuM
「これ、置いていきます。穴掘ってる時に探り当たったんですけど、修繕のお代にはなる
かも」
「土の中から小判でも出たの?そんなの手土産にあげるわよ」
「いえ、そういうわけには。壷みたいですし、なんだか高価そうで。私の持つような物では
ないですから」
 言いながら土をほぐしてゆくと、中から現れたのは小ぶりな壷だった。この国のものでは
なく、海の向こうのものであると素人目にも瞭然である。特徴的な模様が見えたとき、伊織
が小さく叫んだ。
「お雪っ!それ、どうしたの?」
「え?ですからこの地面の下に」
「貸しなさいっ!」
 言うが早いかお雪の手から奪い、着物が汚れるのも構わず土を落としてゆく。しまいには
自分の袂で泥を拭き取る始末だ。
「い、伊織?」
 あまりの光景に真之介が止める暇もない。やがて美しい白い肌と鮮やかな絵付けの壷が
三人の前にまみえることとなった。
「これ……」
「伊織?知ってるの?」
 真之介の問いにすぐには答えず、興奮した面持ちで壷の仔細を眺めてゆく。やがて
ひとわたり検め終えたか、ふうと一息ついて、固唾を飲む二人に笑顔を向けた。
「これ、お父様の失くした家宝のひとつよ」
「ええっ?」
「お雪、これはどのあたりに埋まっていたの?」
「あ、はい、この穴のこっち側、そんなに深くなかったです……一尺くらいかな」
「3年ほど前に、商売ものでないお父様の趣味の品を虫干ししていた時にね、狂犬が暴れ込んで
大騒ぎになったことがあったの」
 状況を聞き、得心がいったのか伊織が話し始める。
「家の者はみな無事だったんだけど高価なお皿が何枚も割れた上、この壷がどこかに行って
しまってお父様の気の落としようったら大変だったわ」
「じゃあ……その犬が?」
「犬がくわえて行ったのを見たものがいるし、逃げ出す時に家の縁の下をくぐっていったから
家人が総出で探したけど見つからなかったの。次の日犬の死骸を見つけたときには壷は
見当たらなくて、割れたか誰かに持ち去られたんだろうってことでお父様はあきらめたわ。
後で聞いたら地方で大商いをしたときにそこのお大尽からいただいたもので、ちょっとした
冷や汗ものだったわよ」
 さらに壷の様子を調べながら、伊織は解説を終えた。話し終わったところで、お雪に
にっこりと笑いかける。
「お雪、首の皮が繋がったわよ。これを見つけるためならお父様は屋敷を取り壊す勢い
だったもの」
「ええっ?」
「じゃあ……」
「いま港の店に知らせを送るわ。お父様の目利きで素晴らしい下働きを雇うことができた、
って」

****

「お百度?」
「ええ、真之介さまのために伊織ちゃんがご祈願をしていたと言うお話で」
 翌日、再び伊織の部屋に三人は集まっていた。昨日の大穴はどこにもない。
 壷の一件でお雪の失態はなかったことにされ、むしろ物探しの才能を買われた格好と
なっていた。夜、屋敷に戻った店主が戯れに『亡くなった母が漬けたきり行方知れずになって
しまった梅干がどこかにあるのだが』と持ちかけたところ、彼が最近建てた離れの地下から
たちどころに壷を掘り出したのだ。伊織の父は大喜びで港の店の倉庫番に取り立てようと
したのだが、お雪と伊織の強い願いで引き続き屋敷で働くこととなった。伊織の部屋の穴は
本人の言葉どおり、約半日をかけてお雪が一人で埋め立てた。家を支える主要な柱には
傷ひとつなく、結局床板と畳を敷き直すだけで翌日には元通りになっていた。
 そして今。お雪が二人に、悪い噂を打ち消すよい噂を流す方策を考えたと打ち明けたのである。
130くのいち雪歩・忍び穴(6/21):2008/11/26(水) 17:43:31 ID:bhT8GsuM
「真之介さまのご相談ごとというのは、世間に明かすことはできないんですよね」
「ん……ごめんねお雪ちゃん。ちょっと無理」
「ならなにか別の、秘密にせざるをえないお話だったとすればいいんじゃないかって思った
んです。あの、真之介さまごめんなさい、瓦版には菊地道場の家計が」
 言いづらそうにするお雪に、真之介は笑って答えた。
「ふふ、そこは気にしなくていいよ。誰が見たって火の車なんだから」
 菊地道場はそれでも歴史の古い剣術の道場である。菊地流を名乗り歴史をたどれば関が原で
家康側につき武勲を立てたという。
 しかし無調法な武士の家柄、あるとき政敵の蹴落としに遭い、以来町で細々と剣術を教える
身の上となったそうだ。安泰の世の中となり実戦剣術の流派がひとつまたひとつと歴史を
閉じるなか、菊地流も弟子の不足によりいよいよ進退窮まったという状況である。父は
真之介に最後の望みを託しているものの、二本差しだけで飯の食える時代ではない。
「それを利用してですね。来月、剣の道場対抗の武術大会がありますよね」
「え、お雪ちゃんなんで知ってるの?」
「ここにご厄介になる前は鍛冶屋さんの飯炊きをしていたんです。時々ですけど刀のお手入れ
もおおせつかっていて、旦那さまがこういう催しのことよくお話してくださってたんです」
「お雪、そこでも穴掘ってやめさせられたの?」
「はうぅっ」
「伊織、いじめちゃだめでしょ。お雪ちゃん、続けてよ」
「ううっ、まあほんとに穴掘ったんですけど。あ、はい、その試合には真之介さまかお父様は」
「父が出るよ。名を上げる機会だし、って言うかむしろ褒賞目当てなんだけど」
 平和であっても武士はそこらじゅうにいる世の中である。主君のために戦った者たちの
子孫を干上がらせるわけにも行かぬ幕府は、そこここで様々な武道の試合を行ない、仕官の
道や褒賞金を与えていた。
「ですから、真之介さまはお父様の勝ちをお祈りしたい、と。ただ、男の真之介さまが――」
「うっ」
「――影から祈るというのはどうにもおかしいですから……どうかしましたか?」
「あ、な、なんでもないよ、それで」
「はい、そのことを伊織ちゃんに相談して、伊織ちゃんが幼馴染のお父上をお祈りすること
に、というお話にして」
 貧乏道場とは言え武士の跡取りが女々しく神仏にすがるわけには行かない。男児としては
身を清め、心静かに試合場で父の勝利を確信し見守るべしという風潮である。そこで幼馴染の
行く末を心配した伊織が、毎夜真之介を励ますと偽り、彼と別れたあとでお百度を踏んで
いる……という筋書きを、お雪は二人に説明したのだ。
「人の目を避ける理由も説明がつきますし、お二人が幼馴染だと言うことがかえって本当
らしく聞こえると思います」
「うん、そうだね。実際ボクは父に是非勝って欲しいし、伊織も応援してくれてる」
「私が応援してるのはあんたたちがうちの食客になりそうだからよ。にひひ、でもそうね。
『女子』としてはお百度でも踏んで是非名を上げて欲しいわ」
「む」
「あら?どうかしたの真・之・介・さまぁ?」
 委細はわからぬものの、伊織はことあるごとに真之介をからかっているようだ。お雪は
それを見ながら、なんとなく寂しい心持ちにされている。
 もちろん、奉公先の娘とその幼馴染がじゃれあっているところに、下働きの自分が割って
入ることはできない。しかし、伊織から一歩心を許された立場がかえって、それを曖昧に
させてしまっていた。
「伊織も意地悪だな、まったく。でもどう?ボクは名案だと思うけど」
「私も賛成よ。うちのためでもあるし、真之介やお父上を応援したいのもまあ、嘘じゃないわ。
それに、『大事な友人を影で支える健気な伊織ちゃん』なんて素敵でしょ」
「自分で言わないでよ。でも乗ってくれるんだね?ありがとう」
「あんたに礼を言われる筋合いはないわよ。本当ならむしろこっちが頭を下げる話なんだし。
お雪もありがとね、いい考えだと思うわ」
「あ、ありがとうございますぅ」
 更に話し合いを進め、実際に数日それを行なっていくうちに通りがかりの者に見つかる、
ということにした。発見者となる者は当初の伊織の発案どおりお雪の以前の知り合いを使い、
種明かしはせずに本当の『噂話』として広まるようにしようということになった。
131くのいち雪歩・忍び穴(7/21):2008/11/26(水) 17:44:06 ID:bhT8GsuM
「じゃあお雪、明日にでもその知り合い、探してきてよ」
「はい、ではお昼までお時間をいただけますか」
「そんなのでいいの?私のお遣いを頼んだことにしましょうか、ちょうど頼んでた振袖が
仕上がる頃なのよね」
「お雪ちゃん、ボクはなにかすることはある?」
「真之介さまは、そうですね、瓦版の話題が出たら『本当に困った』という振りを。何か
隠し事があると勘ぐり始めると、人はいろいろな噂をもっともっと聞きたくなりますから」
「なるほどね。でもお雪ちゃんってすごいね」
「え、なにがですか?」
 助言を反芻しつつ、真之介はお雪に笑いかけた。
「ただの下働きにしておくのは惜しいよ。気も回るし、きみみたいな人の旦那さんになる
人は幸せだね」
「は……」
 お雪の動きが止まった。何事かと見守る二人の前で、右手をぶんと振ると、またぞろ
昨日の江州鋤が出現する。
「いやあぁ!恥ずかしいですぅ!」
「――って穴を掘ろうとするなーっ」
「わ、お雪ちゃんちょっと!ちょっと待ってえ!」

****

 また次の日。お雪はとある長屋に来ていた。
「ということがありまして」
「ふむ、それは愉快。いい奉公先を見つけたね、お雪や」
「あ、はい」
 相対しているのは高木一朗斎という老人である。引退した興行師で、人の多い場所が
好きというのでこうして長屋で楽隠居をしている。お雪はこの老人に保証人に立ってもらい、
水瀬屋に奉公に上がっているのだ。
「というよりあまり無茶はしないでくれたまえよ。私だってそうそう奉公先を探しては
やれんからな」
「ふぅ、ごめんなさあい」
「まあよかった。それに奉公先の一大事なら是非助けて上げなさい、お前の考えで正しいと
思うよ。私にも知り合いは多いし、いろいろ手立てもしやすい」
「ありがとうございます。でも私のできる範囲で大丈夫だと思います。今日はご報告に」
「ふむ。あいわかった。しかし何かあるようなら一言声をかけてくれたまえ」
「はい、失礼します」
「ああお雪」
「はい?」
「ふたつ、話しておくよ」
 お雪を呼び止めた高木老人は右手の指を二本立てた。その表情は隠居した老人のもの
ではない。お雪も、これまで見たことのない真剣な顔をしている。
「くれぐれもお前のことは悟られないように」
「あ、はい。気をつけます」
「それから先方の問屋のこと」
 ただでさえ小さい声をさらに落とし、続ける。
「悪い虫がたかっているから、お気をおつけ」
「……ありがとうございます」
 お雪は老人にそう言うと、しなやかな足取りで長屋を後にした。

****

 それから数日。お雪の提案はじわじわと効果を上げていた。お百度を踏み始めた翌日には
早くも目撃者が現れ、一旦は『水瀬のお嬢様が怪しげなまじないをしている』という噂が
立ったものの、さらに次の日には『どうやら真之介のためらしい』『菊地道場の先生が
武術大会に出るそうだ』と複数の噂に取って代わられ、三日目にはお雪の言うとおりの
美談がそこかかしこで囁かれるようになった。
 新しい噂には気付かない振りを、とのお雪の提案どおりそ知らぬ顔で日々を過ごす伊織と
真之介にもその効果は面白いように判り、すでに日々の表情は喜びを隠し切れぬ様子である。
132くのいち雪歩・忍び穴(8/21):2008/11/26(水) 17:44:44 ID:bhT8GsuM
 そうして久しぶりに一堂に会した三人は、策略の新たな局面に進もうとしていた。
「お雪、あんたすごいわね。私はもうすっかり山之内一豊の女房よ。旦那役が真之介ってのが
どうにも気に入らないけど」
「ボクのほうも男児の鑑とか言われて。伊織の評判が先走り気味なのが腑に落ちないけどさ」
「なによそれ」
「なんだい」
「あっあの」
 この二人、調子のよいときは常に角つき合わせている様子である。あわててお雪が口火を
切った。
「悪い噂も消えたことですし、あとはこのまま武術大会が終わるのを待てばいいかなって
思うんですけど」
「そうは行かないわよ」
 伊織が反論した。
「こっちは余計な手間隙かけさせられて迷惑してるのよ、この調子で悪徳に畳み掛けられたら
たまらないわ。本当ならきついお仕置きのひとつもしてやりたいところなんだから」
「まあ、伊織の話じゃ実際に客足にも影響が出たってことだし、これで何日か足踏みさせ
られたのも本当だよなあ」
「無茶を言う気はないけど、当分うちから手を引かせる手はないものかしらね」
 二人はすでに返り討ちをする気満々であった。お雪はしばし思案する。
「ええとぉ。それでしたらやはり、『功徳新報』が悪徳屋のお仲間だと知れるようにする
のが早いかと」
「やっぱりその線よね」
 伊織はすぐに応じた。彼女もそう考えていたようだ。
「水瀬屋でも仲良くしている瓦版屋はいるから、そこを使えば簡単だけど」
「それじゃ悪徳屋と一緒ですよう。逆に噂を流されておしまいです」
「そうだよね。お雪ちゃん、なにか考えはある?」
「あまり手を加えたくなかったんですけど……今の『噂封じ』を進めてゆけば」
 お雪が話した内容はこうである。
 功徳日報は伊織の噂が美談になってしまい慌てているに違いない。当然向こうも、お百度の
顛末を芝居だと考える人間がそろそろ出てくるだろう。お雪はそのことを読み、実はちょっと
した仕掛けをしていた。
「お百度を見たっていう人たちを繋いでいくと、ある人物にたどり着くんです」
「その人たちの共通の知り合いっていう意味よね。それ、お雪じゃない」
「ええ?それじゃボクたちの策略だって簡単に気付いちゃうよ」
「ふふ、それが違うんです」
 お雪が手を回して伊織の目撃者にした人々。その人々を巧妙に目撃場所に誘導した人物。
「みんなに『いついつにどこそこへ行ってくれないか』『この刻限にこの場所を通って欲しい』
って頼んだ人は、私じゃなくて悪徳屋さんのもと人足頭さんなんです」
「……意味わかんない」
「ごめん、ボクも」
 お雪が少し聞いて回っただけで、悪徳屋は表向きの顔以外に相当後ろ暗いところがあると
知れていた。これまでにも抜け荷やら人買いのたぐいやら、もちろん証拠こそないものの
漠然とした事実として聞こえてくる。そこでくだんの『目撃者』作りの際、お雪はひと工夫を
織り込んだのだ。
「去年、悪徳屋さんが新しい倉を建てたとき、大きな喧嘩があったっていう理由で職人さんが
たくさんお暇を出されています。本当のことは知りませんけど、みんなが勘ぐる話です。
で、そのうち人足頭さんの一人が江戸から姿を消してます」
「郷里に帰ったんでしょ」
「はあ、まあ、たぶん。で、今回の皆さんは、その人のお知り合いなんです」
「なんであんたが知ってるのよ」
「そのころ私、港近くの木賃宿で働いていまして、下請けの職人さんはわかる人多いんですよ」
 安宿の下働きの顔をわざわざ覚えている人間は少ない。お雪の方が泊り客を覚えていても、
相手はお雪を誰とは判らない。彼女はそこで『誰それの遣い』という役柄を演じたのだ。
「そういうのに向いていそうな人を選んで、私もちょっとだけ変装して、たとえば『人足頭さんが
昔の仲間を頼って出て来ている、何時に何処へ来て欲しい』と言付けられた振りをして」
 ただでさえ頼りなさげな風体のお雪だ、うまく化ければ『人足頭が露見を恐れて、知恵足らずの
娘を遣いに使った』と誤解させるのも容易だろう。その人物の記憶に残るのは遣いの子供
ではなく、人足頭の顔と名前のはずだ。
133くのいち雪歩・忍び穴(9/21):2008/11/26(水) 17:45:24 ID:bhT8GsuM
「ははあん、功徳新報の連中が探れば探るほど、悪徳屋に恨みを持っている人足頭の存在が
明るみに出てくる」
「え、なんでそれがまずいわけ?」
「あの、『向いていそうな人』って、そうやって足元をあぶられると騒ぎ始める人たちなんです」
 今ひとつピンと来ていない伊織に、お雪が補足をした。真之介が更に続ける。
「たとえばさ伊織、飲み屋で『なあなあ俺さあ、功徳新報の連中にいろいろ聞かれちまったよ、
それも1年前に悪徳屋に首を切られた人足頭のことで』ってクダ巻く人がいたら、周りの人は
どう思う?」
「……そこだけ聞いたら、功徳新報は今度は悪徳屋を狙ってるのか、って思うかしら」
「功徳新報は取材を始めた相手をどういうふうに書くのかな?」
「十中八九こき下ろすわよね。あ、悪徳屋に悪い噂があるってみんな思うわよね」
「そういうこと。瓦版にはもちろんそんな記事は載らないから、じゃあなぜ功徳新報は
悪徳屋のことを書かないのか、って思い始める」
 そこでお雪が、悪徳屋が功徳新報に資金を回していることをそれとなく知らせるという
手筈である。このことは少し調べれば簡単にわかることであり、たとえばお雪が動かなく
とも、ほどなく悪徳屋が瓦版を使って商売敵を陥れていたと知れるであろう。
「すこし時間はかかりますけど、むしろ自然に広まると思います。それこそ武術大会の頃
には、功徳新報がどこの廻船問屋の記事を書いても誰も見向きしなくなるかと」
「お雪……あんたすごいわねえ」
「龍舌花の術ですよ。龍の舌が紡ぐ言葉は人心を乱す花を咲かすんです」
「術だなんてお雪ちゃん、まるで忍者みたいだね、あはは」
 面白そうに真之介が言う。お雪はその言葉に取り乱して顔を真っ赤にした。
「はわ!?そそそそんな、に、忍者なんてそんな」
「誰もあんたが忍者だなんて思わないわよ、この天下泰平の世の中に」
「あ?あ、あ、そうですかそうですよね」
「おおかた絵草子でも拾って読んだんでしょ」
「あ、ボクも好き!伊織がいっぱい持ってるんだよ。今度見せてもらいなよ」
 それからは真之介による絵草子講座となり、その日の密談はおしまいとなった。その
『龍舌花』はしかし、実際にお雪が言ったとおりに効果を発揮し、功徳新報は瞬く間に
発行部数を落とし影響力を失ってしまうのであった。

****

 時は流れて、今日は武術大会の日。
 真之介の父親は早朝から試合に出向いており、真之介と伊織は昼前からその応援に駆け
つける約束をしていた。
 その一行にはお雪も含まれている。すっかり仲の良くなった三人は何かにつけて連れ立って
行動しており、今日もこうして菊地道場の門前で待ち合わせをしていたのである。一人で
現れたお雪は、目指す場所に真之介しかいないのに気付き声をかけた。
「真之介さま、お待たせしました……あれ、伊織ちゃんは?」
「やあ、お雪ちゃん。伊織は一緒じゃないの?」
「それが『やることがあるから先に行く』って。私は用事を済ませてから来たんですけど」
「おかしいな、ボクずっと待ってたんだけど」
「え……変ですね、待ち合わせ場所、勘違いしたのかな。真之介さま、なにか変わったこと
とかありませんでしたか?」
 胸騒ぎのしたお雪は真之介に尋ねる。
「うーん。今日は武術大会のせいで町中が騒がしいからなあ。ああ、でも功徳新報の連中が
固まって走っていくのを見たよ。この試合でなにか書くつもりなのかな」
 少し考えながらの答えに、お雪の顔色が変わった。しかし口調はそれまでのまま、こう
聞き連ねる。
「あ、そうですかあ。その人たちはどこに走って言ったんですか?」
「あっち。うん?試合場じゃないな、伊織の家の方だ」
「!……真之介さま、先に行ってくださいませんか」
 真之介の答えを聞き、真剣な口調になったお雪が言う。彼女の様子が変わったのに真之介も
気付いた。
「どうかしたの?まさか、悪徳がなにか?」
「わかりません。けど、私、ちょっと心当たりがあるので聞いてきますね」
134くのいち雪歩・忍び穴(10/21):2008/11/26(水) 17:47:15 ID:VpzQkCuc
「お雪ちゃん、ボクも行くよ」
「いいえ!」
 彼女に追いすがろうとする真之介を、お雪はしかし断固と遮った。
「真之介さまは試合へお出向きください。お父上の試合までには必ず間に合わせます」
「お雪……ちゃん?」
 その顔色を見て、真之介は緊張する。お雪はそんな真之介に、改めて表情をやわらげ、
言った。
「真之介さま……お父上、勝つように祈っております。では、あとで」
「お雪ちゃん!」
 走り去るお雪を、それでも真之介は追おうとした、が、できなかった。
 追ういとまもないほど、お雪の走る速度は速かったのである。

****

「ちょっとあんたたち!いったいどういうつもり!?」
 町のはずれにある、打ち捨てられた商家の倉。
 手足を縛られた伊織がその床に投げ捨てられ、猿轡を解かれたのはたった今である。
 お雪より一足先に屋敷を出た伊織は、自分の後を何者かがつけているのに気付かなかった。
真之介の道場へ行く前にある店に寄り、そこを出たところを目の前にいる男たちに
かどわかされたのだ。
「こんなことしたらただじゃすまないんだから!私を誰だと思ってるのよ!」
「へっへっへ、水瀬屋のお嬢さんですよねえ。間違えちゃあ大変だもんなあ」
「!……あ、あんたたち」
 薄暗い土蔵の中、段々と目が慣れてゆき、そのうち何人かの顔に見覚えがあるのに
伊織は気付いた。
「功徳新報の!」
「おうよ、今はちょっと違うがな。お前さんのせいで首を切られた『もと職人』たちだぜ」
「どういうこと?やめさせられたんなら関係ないでしょ?」
「逆だ、莫迦野郎。お前のせいで飯の種を失くしちまったんでい」
 男たちは10人ほどだろうか。みなが一斉に、地べたに横たわる伊織に詰め寄る。
「面倒な策略を巡らしやがって。お前が黒幕だとようやく合点がいったぜ。だが、おかげで
功徳新報は廃版が決まっちまった。俺たちはお前のせいで用済みってわけだよ」
「そ、そんなの、あんたたちが悪いんじゃない!」
「威勢がいいねえ、だがそんなことは関係ないんだ。俺たちは『水瀬家のお嬢が出すぎた
まねをして』職をなくして、『その逆恨み』でお前さんを攫ってきたんだから。ですよね、
旦那」
 先ほどから喋っている男が後ろを向き、何者かに呼びかけた。倉のさらに奥、何も
見えなかった暗闇から一人の老人が歩み来る。
「だからお前は莫迦だってえんだ。なんでそれを私に確認するのだ」
「へえ、すいません、旦那」
 男の言葉に伊織が目を凝らす。その老人を、伊織は確かに知っていた。
「悪徳屋……!」
「久しぶりだね、水瀬屋のお嬢さん」
 その老人は、悪徳屋のあるじであった。

****

 一方こちらは高木一朗斎の長屋。高木老人が読み物をしながら茶を飲んでいると床下から
声が聞こえる。
「頭領、頭領」
 高木は眉を動かしただけで視線を遣ろうともしない。声の主を心得ているのだ。
「雪歩か」
「申し訳ありません。伊織ちゃんを攫われてしまいました」
 雪歩、と呼ばれた相手は、声を潜め、状況を説明する。
「武術大会にみんなで行く約束をしていたのですが、伊織ちゃんが先に屋敷を出てしまって。
少し高をくくってしまいました。まさか功徳新報がそこまで手が早いとは」
「催しがある時は人の波も心の波も乱れがちだ。少々気の短い輩がいたのだろう」
「いきなり殺すということはないと思います。手遅れにならないうちに探して、助けてきます」
135くのいち雪歩・忍び穴(11/21):2008/11/26(水) 17:47:58 ID:VpzQkCuc
「うむ、そうだね。伊織お嬢さんは可愛らしい娘さんだ、まだ日が高いとは言え見境の
つかない奴がいないとも限らない」
「探索の手は伸ばしています。時間から言っても遠くには行かないはず」
「半刻で3人呼べるが?」
「要りません。私の責任ですし、私だけで平気です」
 高木は茶を一口すすり、ふうと息をついた。
「わかった、任せよう。くれぐれも用心したまえよ」
「はい」
「今のお前は『瑠璃洞の雪歩』ではない。あくまで『水瀬屋のお雪』なのだ」
 応ずる声はなかった。というより、気配ごと消え去っていた。
 高木は茶を飲み干し、茶碗を盆に置いた。ふと窓の外の空を見上げる。
「空気が乾いているな。雪歩の日和だ」
 一人ごち、手元の書をまた一枚めくった。

****

 悪徳屋又右衛門。廻船問屋・悪徳屋の主人である。
 悪徳屋が店を開いたのももうずいぶん以前になる。もとは小さな問屋であったが、ある
時期から突如として商売を大きくし始めた。噂ではよい商売相手を見つけたという話である
が、その相手と言うのが後ろ暗かった。只のひとつとして確たる証拠はないが、表向きの
良心的な船問屋の裏で、いろいろと融通の利く商売をしているのだと言うのは半ば公然と
語られていた。
 公の立場としては一介の廻船問屋であり、水瀬屋の主人とも顔見知りである。同業者の
会合でも有力者の一端を担っていることから、伊織も挨拶をしたことがある。
 その悪徳屋が、いま目の前にいた。
「あんた……こんなところで、何を」
「おやおや、めぐりの悪いお嬢さんだね。本当に色恋にうつつを抜かしているのかな」
「なんですって!」
 不自由な体で身を起こそうとするのを、彼女を囲んだ男が阻む。
「こらこら、勝手に動くんじゃねえよ」
「なにすんのよ、やめなさいってば」
「お嬢さん」
 悪徳屋が言葉を継ぐ。
「私はこれまで一生懸命商売をやってきてね、お客様のためにどんなことでも応えようと
努力してきた。世の中にはいろんなお客がいる。安く荷を運びたい者、早く荷を届けたい者、
人に知られずに移動を手配したい者」
「は!御禁制のものを運びたいお客様だっているでしょうね」
「その通り。私はそれが正しいと思っているよ。物事には相応の手数と相応の代金があって、
その釣り合いが取れればどんなことだって商売になるんだ」
「商売敵の悪い噂を流すのも商売ってわけ」
「ちょっと違うな。水瀬屋より悪徳屋を使いたい者がいる、というところが商売さ」
「そんなの、使いたい人が勝手にそうすればいいじゃない」
「世の中にはしがらみというものがあってね、なかなか簡単に行かないこともある。だから、
水瀬屋さんには商売を小さくしてもらおうと私は思ったんだ」
「勝手なもんね」
「水瀬屋さんが商売を大きくしたのもそちらの勝手だからね。だけれど、ちょっと大きく
なりすぎた」
 くく、と悪徳屋は笑う。
「私のところと同じくらいなら、お客さんもいろいろと比較しやすいだろう。なにも水瀬屋
さんを潰そうだなんて思ってはいなかったんだよ。だけれど」
 今度はその表情を曇らせた。どうやら自分の感情に酔っているようである。
「だけれど、もうだめだよ。私の大事な瓦版屋に悪い噂を流すなんて、まっとうな人間の
やることじゃない。おかげでこんなにもあぶれ者が出てしまったよ」
「こんなにももなにも、全部あんたの因果が報いただけじゃないの!」
「いいやお嬢さん、あんたがおとなしくしてりゃこんなことにはならなかった。ほら、彼らは
お嬢さんのことを殺してやりたいほど恨んでる。だろう?」
 問われた男たちは一斉に下卑た笑い声を上げる。先ほど喋っていた男がまた口を開いた。
136くのいち雪歩・忍び穴(12/21):2008/11/26(水) 17:48:57 ID:VpzQkCuc
「おうよ。だがただ殺すんじゃ割に合わねえな。少々育ちが足りねえが折角の女だ、色々
とっくりと楽しんでから引導を渡してやるかな」
 男の言っている事は伊織にも理解できた。寝転がらされた姿勢で気丈にも顔を上げ、男の
にやけ顔を睨み返す。
「や、やれるもんならやってみなさいよっ!わ、私に指一本でも触れたら、舌を噛んで
やるから」
「そいつは都合がいいや。動きが鈍る」
 しかし男には伊織の脅しは通用しない。
「いいかいお嬢さん、人間、舌を噛んだくらいじゃ簡単には死なないんだ。勝手にひとつ
余分に痛い思いをしながら、手前の体がどんな目に合わされるかせいぜい見届けるんだな」
 むしろ逆に脅され、伊織の瞳にはみるみる涙が溢れだした。
「い……いや……許して」
「お嬢さん、私はどうでもいいんだが、彼らはきっと許さないよ。そうだろう?」
「へっへっへ、旦那は話が通じるいいお方だ」
 男の右手が伊織の着物にかかる。伊織は恐怖のあまり、身じろぎすらできない。
「さて、俺たちとちょっと遊んでくれや、お嬢ちゃん。なにほんの一日かそこらだ、その
あとはころりと楽にしてやるからよ」
「い……いやあああっ!」
 と……。
 その刹那である。
 暗い土蔵のいずこかで、彼らに向けて放たれた声があった。
「あの、待ってくださあいっ!」
「む」
「だ、誰だッ?」
 いささか頼りなげながらも凛と響く声は倉の内部に反響し、その所在は定かでない。悪徳屋も
男たちも、胸ぐらを掴まれたままの伊織までもがあたりを見まわす。
「一見まっとうな船問屋と見せかけ裏では抜け荷人買いの悪行三昧、一方では商売敵を追い
落とそうと謀略を巡らし、上手く行かぬと見れば人の命を手玉に取る血も涙もないその所行、
天が許してもこの私が許さないですぅ!」
「くっそう、どこだ、どこにいる?」
「姿を現しやがれ!」
 口々に叫ぶ怒号がものともせず、声は涼やかに男たちの罪を言い立てる。
「廻船問屋・悪徳屋又右衛門、それから瓦版・功徳新報一党、あなたたちの罪は明白ですう!
即刻罪を認め番屋へ出頭するならよし、さもなくば今ここで身動きとれなくして同心様を呼び
ますからそう思ってくださいっ!」
「いたぞ、あそこだ!」
 男の一人が近くの幅木を指差す。その上にはぼんやりと人影。
「落とせッ」
 彼らは手に持った小刀や足元の石くれを投げつける。一瞬身じろぐように見えた人影は
つぶての数の多さにたまらず、地面に落下する。
「莫迦め、やっちまえ!」
「……っ!」
 伊織を掴み上げた男が指示を出すと、彼らは手に手に刀を構え、どすどすとその体に
突き刺した。あまりのむごさに伊織は顔をそむける……が。
「えっ?」
「なんだこりゃあ!」
 異様な声を出して死体から離れる男たちに、伊織を掴んだ男がいぶかしげに首を巡らした。
「か……変わり身だと」
 伊織の傍らの男がつぶやく。伊織も男の影から恐る恐る覗いてみると……刀を突き立てられ
倒れているのは襤褸布を纏った古座布団ではないか。
「これは……これは一体――う」
 怖気づいたか伊織の着物を離し、立ち上がった男が突然呻いて倒れる。横倒しの伊織には
様子が見えなかったが、今度は耳元で声が聞こえる。
「伊織ちゃん、こっちに隠れていてください」
「え?――きゃ」
 反応する間もなく肩を抱かれ、ずいと引っ張られると体が下に落ちた。土蔵の地べたに
いたはずなのに、とあたりを見ると、どうやら穴が掘ってあったようだ。いつの間にか
手足の縄も切られており、自由に動ける。だが、声は落ち着いた様子で続けた。
137くのいち雪歩・忍び穴(13/21):2008/11/26(水) 17:49:35 ID:VpzQkCuc
「ちょっと騒がしいと思いますから、なるべく身を低くしていてください。お願いしますね」
 声の主はそして、伊織の視界を遮って穴を飛び出た。伊織は相手の姿を見つめる。
 ――忍者。
 純白の忍装束に白い覆面、動きやすさのためか腕や脚はほとんど覆わず、美しい肌を見せて
いる。ごく細い金の鎖帷子はむしろその肌の白さを際立たせるかのようだ。右手に持っている
のは刀ではなく、平刃の短槍……いや、違う。江州鋤である。
 忍者といえば隠密、という常識をひっくり返したような華美ないでたちだが、『忍者』、
そう表現するしかない人物が伊織を助け、今なお彼女の敵に対峙しているのだ。
「名無子忍軍・瑠璃洞の雪歩、参ります」
「なむこ?雪……歩?」
 小さくつぶやく声は男たちには聞こえまいが、それを伊織は確かに聞いた。一瞬穴を
飛び出そうと思うが、すぐに男の声が聞こえ、足がすくむ。
「そこにいやがったか!」
「おかしな格好しやがって。今度こそ膾だ、覚悟しろ」
「あのう皆さん、おとなしく自首してくださいませんかあ?」
 白い忍者は、この期に及んでなよなよと敵方に降参を願う。もちろんこの状況で応ずる
悪人はいない。悪徳が叫んだ。
「お前たち、相手は女じゃないか、しかも一人だ。やってしまえ!」
「ふえ、あの、あんまり近づかないで下さぁい」
「うるせえっ!」
 男たちが一斉に走り寄る。忍者は迎えうつと言うより、怯えたように鋭く叫んだ。
「いやーん、来ないでえ!名無子忍法・土龍砕っ!」
 左手で印を結びつつ右手の得物で地面を穿つ。すると、轟という音と地響き、そしてそれに
呼応するように土蔵の床が大きく崩れ落ちた。
「ぐお!」
「ぎゃあっ」
「うわあああ?」
 男たちの叫び声が聞こえる。薄暗い中もうもうとする土煙であたりは見えないが、穴の縁
から覗く伊織には数人の敵影がゆるゆると立ち上がるのがわかった。身を隠しながらも
近くにいるだろう忍者に叫ぶ。
「ちょっとあんた!まだ何人かいるわよっ!」
「あ、はいぃ」
 地面から鋤を引き抜くと、煙の中に駆け込んでゆく。しばらく金属のぶつかる音や男の
叫び声が聞こえ、やがて土埃がおさまった。
「雪……歩?」
 伊織は再び穴から這い出した。土蔵の床は地震でもあったかのように大きく崩れ、瓦礫の
中で男たちが呻いている。またその周りにも他の者たちが倒れているが、かすかにうごめいて
いるところを見ると忍者は彼らを殺しはしなかったのだろう。さて、その白い忍者はと
首を巡らす伊織の耳に、鋭い剣戟の響きが聞こえた。
 見ると、倉の奥のほうで切り結んでいるふたつの人影。どうやら相手も手だれらしく、
忍者は苦戦しているようだ。
 用心しながら伊織が近づくと、双方とも傷だらけである。いずれも大きな傷はないが、
避けては切り、切っては逃げるという千日手のようになってしまっている。
「ゆ……雪歩ーっ!」
「伊織ちゃん?」
「勝機ッ!」
 忍者に呼びかけたことで彼女に隙を作ってしまったようだ。そこにつけ込み男が刀を
彼女の眉間めがけて振り下ろす。
「きゃあっ?」
 間一髪で飛び退ったが覆面が破れ、その顔が半ば見えている。慌てて顔を隠す刹那、
男は伊織の方に素早く駆け寄り、その刀を伊織の喉に当てた。
「きゃっ?」
「くははは!形勢逆転ってとこかい。動くなよ、いずれにしてもこの小娘、殺したって
飽きたらねえんだ」
「……う」
「この泰平の世にくノ一とは驚きだぜ。そのおかしな姿からすればむしろ『くノ一かぶれの
女軽業師』あたりか?火遊びが過ぎるな、女」
「き、決まり事なんですからおかしいとか言わないで下さいぃ」
138くのいち雪歩・忍び穴(14/21):2008/11/26(水) 17:50:29 ID:VpzQkCuc
 男は伊織を半ば抱き上げながら、倉の出口へじりじりと移動する。
「お前を殺して、この小娘も切って、俺は逃げさせてもらう。幸い悪徳から稼いだ銭がある
し、何年か姿をくらませば用は足りる」
「人殺しなんて怖いこと、やめてくれませんかあ?」
「お前を殺すって言ってるんだぜ?」
 おかしな返答をする忍者に、男は苛立ちを隠せないようだ。彼女よりは彼の方が明らかに
怪我が重く、集中力は長くはもたないだろう。
「だってだって、そんなことしたら痛いじゃないですか。今だってこんなに痛いのに」
「ふざけたことを抜かして時間を稼ぐつもりなら無駄だぜ。ほら、お嬢の命を少しでも
引き伸ばしたかったらお前が先に切られるしかない。武器を捨てるんだな」
「ゆ、雪歩っ!こいつはどっちみち私を切るつもりなのよ?なら私ごと切っちゃってよっ!」
 喉に刃を当てられたままにもかかわらず、伊織が雪歩にそう叫ぶ。男は薄く笑って腕に
力を入れ、伊織の喉を締め付ける。
「……ぐ、ぇっ」
「伊織ちゃん!」
「威勢はいいが物事をわかってねえお嬢だな、つくづく。切られて死ぬってのは痛えんだよ、
すごく。この刃を横に滑らせればお前にもようくわかると思うがね」
「待ってください。わかりました」
 ついに覚悟を決めたか、雪歩は男に言うと手に持った武器を地面に落とした。
「これでいいですか?とりあえず伊織ちゃんを放してください」
「放しはしねえが、まあ息くらいはつかせてやるよ。これじゃお前を斬れねえからな」
 男の刀が伊織の首から離れる。激しく咳き込み、ぜいぜいと息をつく伊織を痛ましげに
見ながら雪歩は言った。
「伊織ちゃん、ごめんなさい。もう少しで終わるから」
「終わるのはお前らの命だ」
「あのう、本当に自首して下さいませんか?」
 相も変わらずの女々しい説得に、男の怒りが燃え上がる。
「いつまで下らねえ戯言をこきやがる!今さら助けなんか――」
 と、その時男は気付いた。こちらを見つめる女忍者の、破れた覆面から現れた目に映る
影を。その影が……規則正しくうごめいているのを。
 それは自分の背後に、誰かが駆け寄りつつあるのが映っているのだと。
「伊織ーっ!」
「ぬうっ?」
 がぃん。
 白刃が弾ける。
 混乱する現場に登場したのは真之介であった。
 おぼろげながら伊織が厄介事に巻き込まれたと察した真之介は結局父の応援には
向かわず、市中で伊織たちを探していたのだ。たまたま通りかかった近くで倉の床が
崩れる音を聞きつけ、野次馬に先んじて倉の中に入り込み、男に捕まっている伊織と
向けられた刀を発見して切りかかる隙を窺っていたのである。
 しかし男の剣客としての勘は鋭く、後ろを向いたまま真之介の刀を受け止めた。ぶん、
と刀身を滑らせ、勢いをつけて若侍を振りほどく。あわてて避けたが、真之介の袷が横に
切り裂かれる。刃が身にまで届かなかったのは幸運であったと言えよう。
「畜生、加勢がいたのか!だが残念だな、お前らの大事な嬢ちゃんを……ぐぅっ?」
 初太刀をこらえた男は、前後にいる忍者と侍に人質を見せ付けようと声を張り上げる。
が、男の声はそこで力を失った。驚いたような顔で伊織を見つめ、次に……伊織の手に
握られたかんざしが、自分の腹に突き立っているのを見つめた。
「貴様……どこに持っ、て」
「い、いつまでもバカにするんじゃないわよっ!」
 先ほどの圧迫でしゃがれた声だが、はっきりとした口調で伊織は言った。それを見、
雪歩は叫ぶ。
「伊織ちゃん、伏せて!」
 言われたとおりというより、ついに力尽きた風情で伊織が地べたに伏せる。と同時に、
真之介が男に切りかかった。
「だああああッ!」
139くのいち雪歩・忍び穴(15/21):2008/11/26(水) 17:51:15 ID:FKDNKtmM
「真之介さま、殺してはダメですう!」
 雪歩はその彼にも声を飛ばす。果たして彼は上段に構えた真剣の刃を咄嗟に返し、男の
肩口に渾身の峰打ちを叩き込んだ。

****

「……おり……伊織、伊織!」
「う、……ん」
 真之介の声に揺さぶられ、伊織はゆっくりと目を開けた。
 場所はまだ土蔵の中である。伊織が意識を失っていたのはわずかの時間でしかない。
「真之介……」
「ああ、よかった!」
 真之介は伊織を抱き締める。が、彼女はそれを力づくで押しのけた。
「そんなことより雪歩は?あの忍者はどこに?」
「雪歩……っていうの?あの人。あのあとすぐに姿を消しちゃったんだ。ボクも助け舟
もらって、あやうく人殺しにならずに済んだからお礼言いたかったんだけど」
「いなくなったあ?この役立たず!逃がしてどうすんのよっ!」
「ええ〜?」
 真之介は伊織をいたわって傍にいたのであろうのに、いささか理不尽な叱責を受けて
傷ついたような顔をしている。そこに聞き覚えのある頼りない声が、土蔵の扉の方から
聞こえてきた。
「伊織ちゃあん!」
「お雪!」
「お雪ちゃん?今までどこに」
 ふらふらと走り寄る姿に、真之介は思わず問いただす。それには答えず、お雪は伊織を
両腕にかき抱いた。
「伊織ちゃんごめんね、私のせいで……私があんな浅知恵使ったばっかりに、こんな怖い
目にっ!」
「ちょ、ちょっと」
「そんな時についててあげられなくて、ようやくたどり着いた時には全部終わってて」
「だからお雪、ちょっと落ちつきなさ」
「こんな、こんなダメダメな私はっ」
 右手を振るうと、例の江州鋤が忽然と現れる。
「穴掘って――」
「だから落ちつきなさーいっ!」
 地面が揺らぐかという大音声。
 真之介などは両耳を塞いだほどだ。伊織のこの一喝で、ようやくお雪は動きを止めた。
「……はぅ」
「はー、もう、あんたって子は」
 大声かお雪のうろたえようが相当疲れたのだろう、胸に手を当ててひと息つき、伊織は
背筋をのばしてお雪に向き合った。
「あんた、なんにもダメダメじゃないじゃない。ことはごらんの通り片が付いたし、私も
真之介もピンシャンしてる。お雪はなんにもいけなくないの。だからめそめそするんじゃ
ないわよ」
「伊織ちゃん……」
 主人の……いや、『友人』の温かい言葉に、お雪は思わず胸が詰まる。
「むしろあんたの怪我の方が気になるわよ。ひどくやられてたみたいだけど大丈夫?」
「あ、幸い私はかすり傷……って、わ、あわわ」
「うわっ?ホントだ、お雪ちゃん傷だらけじゃないか、どうしたの?」
 伊織の質問にうっかり答えてしまい、慌てるお雪を見て真之介がようやく気付いた。お雪の
姿は、着物こそ傷んでいないものの手から顔から、おおよそ目に見えるところは大小の
さまざまな傷に覆われている。当然衣類の中も大変な有様であろう。
「あっあの実は、伊織ちゃんを探して神社の境内まで行ったんですけど、裏の藪で足を
滑らしてしまって」
「ええっ?大変だったね、大丈夫?」
「……真之介……あんた今の話を真に受けてるの?」
「うん?なんかおかしいかな?」
140くのいち雪歩・忍び穴(16/21):2008/11/26(水) 17:54:16 ID:FKDNKtmM
「はぁ。あんたがそれで納得してるってんならいいわよ。でもその手の傷はちょっと大きい
から血止めくらいしなきゃね。真之介」
「なに?」
「あんたのサラシ、少し貸しなさい。手当てするから」
「いや、でもこれは」
「さっき服斬られて丸見えのくせに、今さら何をもったいぶってるのよ」
「え、丸見えって?……うっ」
「あの伊織ちゃん、私そんな……え」
 そんな会話に何気なく真之介の服に目をやり、お雪は声を失った。
 確かに先ほどの斬り合いで、真之介は衣服を切り裂かれた。体さばきがよかったのか布地
だけですんだのは僥倖であったが……代わりに体の前面がぱっくりと口をあけている事態と
なってしまっていた。命がけの戦いだ、それはいい。問題はその『中身』である。
 鍛えているにしては白くしなやかな真之介の胸板が露出し、そこには……なかなかに
可愛らしい、まごうことなく女子のものに違いない、小ぶりな乳房がふたつ、つまびらかに
されていたのだ。
「いやああん!みっ、見ないでお雪ちゃあん」
「し……真之介さまが……おっ、おっ、おっ、女の子おおっ?」
 ようやく我が身の有様を把握した真之介が胸を隠してしゃがみ込む。目を白黒させた
お雪が驚いた声を絞り出す。その時倉の外がにわかに騒がしくなった。
「ええい、どけどけ!奉行所だ、道を開けいっ!」
「あーもう、収拾つかないじゃない。真之介、いつまでもへたり込んでないで同心さまに
うまく説明してよ。どうせ顔見知りでしょ?」
 伊織が耳打ちし、半泣きの赤い顔で真之介が身支度を整え、立ちあがったところで
捕り方たちが倉になだれ込んできた。
「南町奉行所同心・軽口哲馬である!ものども神妙にせいっ!……む」
「軽口さま。菊地道場師範代・菊地真之介でございます」
「なんだ、若先生。どうされた?」
 駆けつけた同心に、どうにか平静を取り戻した真之介が歩み寄る。菊地道場は同心の流派と
親交があり、時折出稽古などで手合わせをすることがあった。
「今日は大先生が試合に出向いているのであろう?」
「はあ、それが面倒ごとに巻き込まれまして」
「ちょうどよい。顛末を知っているか?」
「それがですね――」
「真之介さま、こう説明してください」
「――えっ」
 何から話しはじめようかと思案したところで、お雪の声が聞こえた。思わず振り返るが
彼女は伊織とともに、大分遠い間合いで控えている。
「どうした?」
「あ、いえ。実はですね」
 同心には聞こえていないようだと感付き、これは従うべしと判断する。同心をごまかし
ながら中継ぎしつつ語った内容はこのとおり。
 町で噂となっている功徳新報と悪徳屋のつながりは、発端が水瀬屋への中傷であった。
これを不服に思い丹念に噂を消して回っていた伊織と真之介であるが、それが悪徳屋の
不興を買い、苛立った彼は伊織をかどわかすに至った。本日の試合にともに出向く約束を
していた真之介は伊織の不着を不審に思い、探して回っていたところこの倉での騒音に
気付いた。廃屋となっていた倉は土台が腐っていたようで、伊織を連れ込んだ悪漢どもの
人数が多かったことで床が崩れ落ち、被害を免れた数名の悪人は駆けつけた真之介が打ち据え、
からくも伊織の救出に成功した、と言う次第である。
「そうか。あそこで伸びているのは確かに悪徳屋だな」
 事実はほぼ網羅されているが、伊織たちの計略のくだりと先ほどの白忍者がごっそり
抜け落ちている。伊織は完全な被害者、悪徳屋は完全な犯罪者、真之介はすっかり正義の
味方である。日頃の悪徳屋の評判、真之介や菊地道場の人柄をよく心得ていた軽口は、
その内容を信じることにしたようだ。
 真之介はさらに付け加えた。これも耳元に囁かれた言葉である。
「あの、それで軽口さま、伊織が憔悴しております。医者に連れて行ってやりたいの
ですが……」
「そうか。本当なら関係者は全員確保が原則だが……まあ、他ならぬお前の頼みだ、
構わんよ」
「ありがとうございます!」
141くのいち雪歩・忍び穴(17/21):2008/11/26(水) 17:55:04 ID:FKDNKtmM
「俺も瓦版は目を通しているぞ。若い男女があまり羽目を外すなよ」
「軽口さままで!そんなことないですよ」
「はは、わかったわかった。いたわってやれ」
 同心が部下を指揮し、悪徳屋一味を捕縛してゆく中、真之介は伊織と雪歩を従えてその場を
後にした。

****

「ま、見られちゃったんだから仕方ないわね。話してあげなさいよ真之介、いいえ、真琴」
 ところは伊織の部屋。伊織と真之介は軽い打ち身程度で大きな怪我はなく、神社で転んだ
と言うお雪だけが満身創痍の体で、診療に当たった医師は首をかしげていた。
 ただ、長く水瀬屋のかかりつけとなっている医師は心得たもので、丁寧に傷を治療した
だけで何も言わず帰って行った。三人とも跡が残るようなことはないだろう、とのこと
である。
 喉元に巻かれた包帯も痛々しい伊織であるが、本人は元気そのものである。幾重にも
重なった憶測を解き明かそうと興味津々、まずは真之介の話を戸場口にしようという魂胆の
ようであった。
「うん。お雪ちゃん、ボク、本当は女でね」
 真琴、と呼ばれた真之介も覚悟を決めたのか、咳払いをひとつして話し始めた。
「本当の名は菊地真琴。家の事情で男として暮らしてる」
「ほ、ほんとに女の方だったんですかぁ」
「うち、剣の道場でしょ。父は跡継ぎが欲しかったようなんだけど、ボクしか生まれなくてね。
母は男児の養子を受けるのにずっと反対していて、結局二人で話し合って決めたのが、
ボクを嫡男として育てること、だったんだ」
 父も母も一粒種の真琴を心から愛している。だが、こういう時代に息子がいないのは家の
一大事である。とは言え養子の当てもなく、親としても実子をないがしろにするには忍び
ない。真之介の両親が決断したのは、女子の真琴を男児の真之介として育てる方法であった。
「何年か前に……ボクの体のこと、ごまかしきれなくなって、ついに打ち明けてくれてさ。
それからずっとこの生活。ただ、ボクも今の生き方は嫌なわけじゃないし、両親も面白半分で
こうしたんじゃないって解ってるから。できるだけこうしておいて、……あはは」
 自嘲でも自虐でもない、その笑みは真之介が、両親を思いやっての明るい笑顔であるとわかる。
「いつか、ボクを負かすような強い人を見つけて、その人が全部受け入れてくれたら、
菊地道場を引き継いでもらおうかな、ってさ」
「そんなことが……あ」
 一通り話を聞いてお雪は思い当たる。
「それじゃあお二人で夜出かけていたのも、それに関係あるんですね」
「そうなのよ。最近この子ったら色気づいちゃって」
「な、なんだよ、そんな言い方しなくたって」
「何よ!自分で男として生きるって決めた反対端で、『ねえねえ伊織、あの子の着物、
綺麗だよね、着てみたいなあ』とかどの面下げて言える訳?」
「ぐぅっ、い、いいじゃないか!ボクだって綺麗な着物着てみたい時があるんだよーっ!」
「そんな女々しい心根でいいお婿さんなんか来てくれるわけないじゃないの、あんたなんか
ずっと男装してればいいのよ」
「なんだい、伊織だってすっごく楽しそうに着物いっぱい持って来てくれたのに!色味を
あわせて自分まで着替えたり、何着かはわざわざボクに寸法合わせてくれたのまで
あったじゃないか!」
「そ、それはあんたがあんまり嬉しそうだったから……わ、私の着物に片っ端から着癖
つけられちゃ困るからお古を直してあげたのよっ!」
「あ、あのう、もし」
「お雪は黙ってなさいっ!」
「うぅ、ひどい〜」
 要するに、真之介が女物の服を着てみたいと伊織にねだり、伊織は幼馴染のために
世間に隠れて服を運んで、夜な夜な二人きりで披露会を催していたのだ。二人の楽し
そうな表情を見た通行人が、その仲が只事でないと察するに余りある有様が、くだんの
密会騒動に繋がったのである。
 しばしの言い合いの末、二人は本来解き明かすべき事態を思い出した。
「と……とにかく、そんなことがあって今回の騒動になっちゃったって訳なのよ。ね、
真之介」
142くのいち雪歩・忍び穴(18/21):2008/11/26(水) 17:55:41 ID:FKDNKtmM
「うん。ボクが余計なこと伊織にねだったせいでお雪ちゃんまで巻き込んじゃって、ほんと
ゴメン」
「あ、いいええ。いいんですよ」
「さて、それじゃお雪」
 と、ここで伊織が話題の矛先をお雪に据える。
「いよいよあんたのこと、聞かせてもらうわよ?」
「あのう……秘密っていうわけには」
「ダメ」
「ふうぅ、そうですよね。頭領すいませえん」
 お雪は天を仰ぎ、しかし心を決めたかやがて話し始めた。
「私、戦国から続いてる忍者の一族の出で……あの、あんまり喋るとさすがに伊織ちゃん
や真之介さままで危ないんで、ちょっとだけでいいですか?」
「呑気な忍者ね、つくづく。とっくに私たち消されててしかるべきなんじゃないの?」
「あ、いえ、こんな御時世ですし、今は忍者なんてむしろ絵空事って思う人のほうが多い
ですから。市中にもけっこういるんですよ、私の里のものだけじゃなく」
 先の戦いの中で彼女、『瑠璃洞の雪歩』がつぶやいた名無子――なむこ――というのは、
彼女が属していた忍びの一族名である。もともと戦闘よりは諜報を得意としていた一族は
その名を消し去り、「名無しの者」としてその時その時のあるじに仕えていた。
「だから一族の名もこんな感じですし、その里も今はもうなくなりました。一族も忍びとして
これから栄える心積もりはないので、頭領は時々身なし子を引き受けて、生活の術を
与えて独立させるような生き方をしています。詳しくは明かせませんが、忍者の頭領と
いうより寺子屋の先生みたいですよ、ふふ」
「あんたも身なし子だったの?」
「ええ、捨て子だったそうですよ。何をしてもうまくいかずにダメダメで、穴掘って埋まって
ばかりいたらそれが上手になりまして」
「ま、あの技はすごいわよね、確かに。土蔵の床を一瞬で抜くんだから」
「ああ、あれは本当に地盤がゆるんでたんです。そういうの見つけるの、得意なんです」
 野心を捨て、一般の人々とともに生きる決心をした忍者・名無子忍軍。頭領は戦うため
ではなく、生きるための技術として忍術を身なし子に教え、日々を暮らしていると言う。
「危険じゃない技術者集団っていうんなら、お父様に掛け合って5人や6人住まわせて
やったっていいのよ?あんたみたいのがいっぱいいたら商売にも役立ちそうだし」
「忍びを怖がる人や、利用しようと言う人もいますし、やっぱり私たちは日陰者です。
『陰気だけど、ちょっと手先が器用』っていうふうに、それぞれの生き方ができればいいんだ
と頭領が言ってました」
「……そう。解ったわ」
 一通り聞き終えて伊織が言う。隣で聞いていた真之介も唖然とした表情をしている。
「真之介はお礼言わなくていいの?あんたを殺生の道から助けてくれた恩人よ?」
「……って言うか」
 真之介がようやく口を開いた。
「お雪ちゃんがあの時の忍者だったの?」
「あんたの目はフシ穴かーっ!」
 真之介の頭をどやしつけて、伊織は改めてお雪に向き直った。
「真之介はどうでもいいわ、それよりあんたよ」
「私ですか」
「私の読んだ絵草子やなんかだと、正体を知られた忍者は大概行方をくらますわ。あんたも
そうするの?お雪」
「えっ」
 お雪は伊織を見つめ返す。伊織の瞳の光は複雑で、読み取れない。
「私は……」
 お雪はしばし考えた。
 忍者が身分を明かした後姿を消すのは、自分を追う者がいる可能性があるからだ。命を
狙おうという者もいようし、取り込もうと考える者もいる。そして人殺しの術を体得して
いる忍者と相対する人物は、おおむね人の命を重く見ない人種である。相手が武芸者で
あろうが少女であろうが、それを慮外とする者である。
「私は……伊織ちゃんや、真之介さまが心配です。私がいることで、今日みたいに皆さんに
迷惑をかけるんじゃないかって」
143くのいち雪歩・忍び穴(19/21):2008/11/26(水) 17:56:24 ID:FKDNKtmM
 伊織はすかさず言い返す。
「お雪が助けてくれたじゃない」
「こんなダメダメな私が、いつでも同じことできるかどうか」
「私を守ってくれたじゃない」
「ですから――」
「私のことはどうだっていいのよっ!」
 だん、と畳に平手を突き、伊織が激昂する。
「あんたは立派に私の命を助けてくれたじゃない!いま私がここであんたを怒鳴りつけてる
のは、あんたがいてくれたからなのよ!今日から先の私の命は、あんたから貰ったもの
なの!いい?」
「伊織……ちゃん」
「あんたがいなけりゃ、私は今ごろ恐ろしい目に遭っていたし、明日の今ごろはあの土蔵の
地べたで冷たくなっていたに違いないわ。あんたは今日明日には死んでた私の命を、救って
くれたのよ!」
 言いながら、伊織はお雪ににじり寄る。その目には涙をたたえ、しかしそれがこぼれぬ
ようにか懸命に目を見開き、お雪に詰めよってゆく。
「あんたに拾われた私の命なんかを、あんたは気にするんじゃないわよ!あんたがしたい
のは、どんなことなの?あんたは私と、真之介と、一緒にいたいの?いたくないの?」
 ぱた、ぱた、と畳に水音。ついにこらえきれず、涙が落ちる。
「私はお雪と一緒にいたいの!命の恩人のあんたと、この命が尽きるまで一緒にいたいの!
あんたはどうなの?私や真之介じゃなく、あんた自身はどうしたいの?」
「私は……私、は……っ」
 お雪の目にもいつしか涙が溜まり、こぼれ、流れ落ちていた。
「私……伊織ちゃんと一緒に、いたいです」
 絞り出すような一言は、やがて想いの奔流となって口を突く。
「伊織ちゃんと一緒にいたいです!伊織ちゃんや、真之介さまや、大旦那さまや、水瀬屋の
みんなと、ずっと一緒にいたいですっ!」
 堪らず顔を伏せる。自らの運命に歯向かう言葉を、自分の罪科に抗う望みを、誰よりも
迷惑を掛けたくない相手にぶつけてしまった自分を呪った。
 目を閉じても、脳裏に伊織の姿が映る。
 初めて屋敷に連れて来られ、挨拶をした強気な笑顔。
 瓦版を手に悪だくみに荷担させようとする、自信みなぎる表情。
 悪人を自分ごと斬れと命じた、決意の瞳。
 自分の人生の中でひと月足らずしか見ていない、伊織の顔。その笑顔が、怒り顔が、
泣き顔が、お雪の心を埋め尽くす。そして。
 そしてうつむいた髪に、何かが触れた。
「……よかった」
 はっとして顔を上げると、伊織がお雪の髪をなでていた。
「よかったわ、あんたが同じ考えで。これで私の片思いだったら、格好がつかないところ
だったもの」
「伊織ちゃん……っ!」
 お雪は伊織を抱き絞めた。伊織の胸に顔をうずめるお雪と、お雪の頭をなで続ける伊織の
姿は、まるで生まれついての姉妹のようであった。
 ただ、どうしても伊織が姉に見えるのだが。
「そうだ。お雪、これ上げるわ」
 しばし後、泣きやんだお雪に言い、伊織が懐に手を入れた。出てきたのは……幾分曲がった
かんざしである。
「これって」
 お雪はこのかんざしに見覚えがあった。そう、あの倉で、伊織が男の腹に深々と突き立てた
ものである。自分の勝機に繋がった小道具に、真之介が訊ねる。
「そう言えば伊織、どうしてこれ、あの時持ってたの?」
「……あいつらに捕まる前にちょうど買って来たところだったのよ。その……お雪に、
あげようと思って」
 伊織がお雪を置いて先に屋敷を出たのは、これのためであった。お雪に内緒で細工師に
作らせ、できあがった物を受け取ったところであったのだ。
「え……私に?」
144くのいち雪歩・忍び穴(20/21):2008/11/26(水) 17:57:02 ID:FKDNKtmM
「ほ、ほら、折角武術大会を見に行くことになってたじゃない。あんたって飾りっ気ない
から、仕方なく私とお揃いのを作らせたのよ。だ、だって連れ立って歩くって言うのに
かんざしのひとつもないなんて、連れてる私の方が安く見られちゃうでしょ?」
 嬉しそうに見つめるお雪に、伊織は頬を染めて慌ただしく説明する。
「でもあいつに思いっきり刺してやったから、汚れは落としたんだけど曲がっちゃったわね。
直してもらわなきゃ」
「……えっと、いいです」
「えっ」
「このままで、いいです。このままが、いいです」
 伊織の手を包み込むように、かんざしを受け取る。愛おしげに見つめ、伊織に笑みを向けた。
「ありがとうございます、伊織ちゃん。私、大切に使いますね」
「……あ、あんたがいいなら構わないけど」
 受け取ったかんざしを、位置を探りながら髪に挿してみる。途中から伊織が手伝った。
「どう、ですか?変じゃありませんか?」
「ふん、まあまあじゃない?」
「うわあお雪ちゃん、似合ってるよ」
 二人に言われ、お雪は嬉しそうに微笑んだ。

****

「お雪、お雪?お雪ってば!」
 そして今日も、水瀬屋では伊織がお雪を呼びながら歩き回っている。
「お雪、いないの?今すぐ返事しないと今日と言う今日はギッチギチに縛り上げて長持に
詰め込んで熨斗つけて田舎に送り返すわよ」
「はぅ、ここです伊織ちゃん。いま旦那さまの盆栽の手入れをぉ」
「まったく、相変わらず愚図ねえ」
「お願いですから郷里に返すのだけは勘弁してください伊織ちゃあん」
「冗談に決まってるでしょってば。大体あんた帰る田舎もないくせに」
「はぁ、そうでしたぁ」
 最近のこの界隈では、三日に一度はこのやり取りが聞こえる。近所を回る売り歩きの商人
など、これが聞こえた日は験が良いなどと言っている者さえいる。
「あっそれで伊織ちゃん、なにかご用ですか」
「そうだったわ。うちの門の前で拾ったんだけど、ちょっと相手しててくれない?」
 訊ねるお雪に、伊織は手に持っていた布の塊を手渡した。どうやら綿入れでその「拾い物」
をくるんでいるようだ。
「え、相手、ですか?」
「ええ、うちでは飼えないし、でも可愛らしいから真之介のところで面倒見てもらえないか
って思ってね。餌代くらいは持ってやってもいいし」
「飼う?餌?」
 矢継ぎ早の言葉を鸚鵡返しにするうちに、布の塊がうごめいた。驚いたお雪は思わず
取り落としてしまう。
「きゃっ?」
「うわ、気をつけてよ?このくらいの高さなら平気だろうけど」
「す、すいませ……」
 畳の上に落ちた綿入れはもこもこと身じろぎすると、やがて布の隙間から尻尾がにょきりと
飛び出した。
「……え?」
 続いてぶるりと強く身震いすると、それを包んでいた半纏はきれいに脱げ、中から茶色い
塊が現れる。
「おっとっと。どう、可愛いでしょ?」
 回りを見回し、走ろうとするのを伊織が抱き上げた。ぴたりと動きを止めたお雪の目の前に
伊織が見せたのは、まだ子犬の豆芝であった。
「捨て犬みたいなのよね。まだ生まれてそんなに経ってないし、頭もよさそうだから番犬
くらいにはなるんじゃないかしら。菊地道場も試合に優勝して人が増えたし、この子くらいは
……あら、お雪?どうしたの?」
 お雪の様子が変なのに気付き、子犬を抱いたまま伊織は顔を覗き込む。
145くのいち雪歩・忍び穴(21/21):2008/11/26(水) 17:58:05 ID:FKDNKtmM
「……き」
「き?」
 そしてお雪は胸いっぱいに息を吸い込む。
「きゃああああ!い、いぬ、犬はダメなんですうううっ!」
「えええ〜っ?」
 ぶん、と右腕を振るうと、その手にはお馴染み江州鋤が握られている。
「来ないでええ〜っ!名無子忍法究極奥義・紅蓮伽藍龍脈烈震破ああっ!」
「きゃあああ!?よくわかんないけどそんな物騒な技ここで使うなーっ」
 慌ててお雪に抱きつく伊織、その勢いで柴犬がお雪の顔にぺたりと抱きついた。今しも
恐ろしい技を繰り出そうとしていたお雪の目が、不意に白目を向く。
「……きゅう」
「あら、気絶しちゃった。お雪、お雪ったら」
 部屋の真ん中でばったり倒れたお雪はぴくりとも動かない。伊織はしばらく揺り起こそうと
してみたが、やがてあきらめた。お雪の顔をぺろぺろと舐めている豆芝を胸に抱き、意識を
失っている命の恩人にため息をつく。
「まったく。子犬見て気を失うなんて、どんな忍者よ。ふふ、ふふふ」
 ただ、その表情は柔らかい。子犬とともにおかしな奉公人を見下ろし、ころころと
笑い続ける。
「伊織ー。なにさ、今の騒ぎ」
 庭から彼女を呼びかける声がする。顔を向けるとちょうど通りかかったらしい真之介が、
垣根に肘をかけてこちらを見ていた。
「ああ真之介、ちょうど良かった。あんたんとこ行こうと思ってたのよ、お入りなさいな」
 真之介にはそう言い、伊織は子犬を包んでいた綿入れをお雪の体にかけてやり、縁側に
向かう。
 泰平のお江戸の陽光は、そんな彼らの上に今日も燦々と降り注ぐのであった。





146くのいち雪歩・忍び穴(あとがき):2008/11/26(水) 18:11:50 ID:VpzQkCuc
以上です。ありがとうございました。そして長らくの占拠申し訳ありません。

雪歩スレで1ヶ月ほど前にあった『くのいち雪歩』の流れでうPされたイラストにティンと
来まして、時代劇風味で書いてみようとしたらこの有様ですorz
分量的にも内容的にもキャラスレには到底向かない話になりましたので、これはいい
機会とこちらに投下した次第。
この分量ならロダだろJK、との謗りもありましょうがこれまたすいません。書き込み規制
チェックも目論んでおりました。結局2度繋ぎなおした。
・SETTING.TXTにはtimecount、timecloseともに空欄=一定レス数書き込み規制は無し
・かまわず書き込んでいたら11レス目にバイバイさるさん(つまり10レス打ち止め)
って感じのようです。御参考まで。

作品についてはお読みいただくのがなによりかと。「長いから読まん」もご評価。言い訳は
しませんが、俺個人としては大変楽しく書けました。
あ、注釈。「江州鋤(こうしゅうすき)」とは、スコップに良く似た当時の農具です。

次の機会があったらもっと短い奴にします。
最後にもう一度。
お付き合いありがとうございました。
147創る名無しに見る名無し:2008/11/26(水) 19:13:47 ID:98ZDYHZJ
いやーとても面白かったです。この板は初めて来たのですが作品のクオリティがとても高いですね!久々に2chで正しい言葉遣いの文章を見た気がします。これからも色々な作品を創ってください。
148創る名無しに見る名無し:2008/11/26(水) 20:22:57 ID:s9/B7ZKY
>>146
奥州雪歩と違う趣で、読むうちに引き込まれました。
下女のお雪と忍の雪歩にもっと差があれば…ありきたり過ぎるか。
時代物として突っ込みどころも多いけど、SSではそれもよし。
説明部分がややくどいかも。次作も楽しみに待ってます。乙でした。
149創る名無しに見る名無し:2008/11/26(水) 21:27:13 ID:cWjvYsR8
>>146
なんだろワクワクしない、描写が細かい(くどい?)から読み手が想像できる範囲が狭くなってるのも裏目なんだろうか
妄想させてくれないから深読みする楽しみもないですし。

丁寧な文章で読みやすい分、さらりと読んでしまって印象に残らない感じがします。
150創る名無しに見る名無し:2008/11/26(水) 21:39:49 ID:N9LrG/zK
>146
ティンとキタ絵ってまだどっかで見られる?
151創る名無しに見る名無し:2008/11/26(水) 23:45:55 ID:G2T7hmFT
>>146
GJ!!
一気に読んじまったぜ。
152創る名無しに見る名無し:2008/11/27(木) 01:04:25 ID:lfa/Q9ys
描写が丁寧かつ文もきれいで非常に読みやすかったです
長いことを気にされていたようですがその長さが気にならないほどストレス無く読め、
筋道も立っていたし、納得行かないと思う部分も特には見当たらず

が、ワクワクしないというのは極端な意見だとは思うのですけども
良くも悪くもお約束というかこうなってこうなるよねというような先読みの範囲内で
話が治まっていた感じはします
時代劇であんまり突飛なのもないのでそれでいいとも思うのですが、
これからどうなってしまうんだろうみたいな感じはあまりしなかったのが強いて言うと気になるとこかと
よく言えば安心して読めるわけですが。

えらそうな物言いになってしまいましたが、読んでいる間はそのお約束感は時代劇という題材もあって
テンポ良さとも感じられ、長所ともなっていたのではないかと。
次に書かれましたら、また楽しませていただきたいと思います。
153146:2008/11/27(木) 02:59:05 ID:E6vGd0yq
……あは、あはは、客層違うっすね(冷汗)。

感想ありがとうございます。いえもう読んでいただけただけで。ええもう。
描写がくどいとのご指摘、ありがたく頂戴いたします。もともとキャラスレや
bbspinkで書くにあたって「わかりやすく」「状況把握優先で」を心がけていた
のですが、数レスならともかくこの文章量では逆効果であったかもしれません。
時代劇フォーマット=王道展開を目指したことも拍車をかけたかも知れませんね。
巧い人なら王道でもちゃんとワクワクさせられるんでしょうからそこはこちらの
ウデ不足。精進いたします。

読みやすい、一気に読んだというご評価は前向きにいただいておきます。
なにかしら取り得があって胸をなで下ろしております。

創作発表板という場所のせいか(あるいは俺の突っ込みどころのせいかw)
細かい感想をいただけて嬉しいです。課題については気に留めておき次作へ
活かすよう頑張る。

>>150
zero0.x0.com/mc00/imgs/zero_05472.jpg、雪歩スレ27-855『愛奴流忍伝・
くノ一お雪』ってのがそうですが流れちゃったみたい。もちろん自分用には
確保してるけどどうしたもんか。

またいずこかでお目にかかれればと思います。
以上、最近料理モノさっぱり書いてない凸スレのレシPがお送りしました。
いおりん愛してるよいおりん。
154創る名無しに見る名無し:2008/11/27(木) 09:07:28 ID:jZHL5cKZ
>>153
ていねいで一貫した文体で、読み易いです。真のキャラもいい味出してる。
ただ、とにかく盛り上がりに欠ける。
展開が説明に負うのは仕方ないとしても、リズムが悪い。
たとえば雪歩のいでたちの描写にしても、最初の台詞の後に全て入れるのではなく、簡潔なものにとどめて、
話を進めながら細かく描写をして行く手段をなぜ使わないのかわからない。
これで説明的でテンポが悪いという印象になってる。
また、クライマックスに向けての伏線が欲しい。
バレたらどうなるかを頭領から注意させるとか、戦闘中でも重ねて言っておくとか、
それくらいやって、むしろちょうどいいくらい。
盛り上がりに欠けるとか、ワクワクしないというのはその辺が原因でしょう。
個人的には、化けたとしても『知恵足らず』にはカチンと来ました。
155創る名無しに見る名無し:2008/11/27(木) 12:15:05 ID:ZxQiERDM
自分はけっこう楽しんだけどもみんな今回わりときびしいな
あんまきびしい言い方では気軽に書ける場ではなくなってしまいそうでちょっと気になる
ここは我と思わん者は書き込んでみよってスレにするんならまた話は違うが

>>153
みんなあげてる点だが、この文章量にも関わらずとにかく丁寧で読みやすいのと
あと個人的に伊織がメチャクチャかわいく描けてるのはレシPと聞けば納得
キャラスレまでチェックしきれてないけどまとめサイトで読ませてもらってます
元のクオリティはかなり高いものだったことが「この人もっとできそうなんだけど」
「もすこし気を遣うだけで全然ちがうはず」とかえって読み手の要求するハードルをあげてしまったのでは
また、なにか書いてあげておいてくれるの期待してます
156創る名無しに見る名無し:2008/11/27(木) 19:50:35 ID:Nlf0MYq/
いやーおもしろかったよ。

作者さんが時代劇的な設定への造詣が深いことが読み取れるけど、
お話の要請によってはリアリティを無視して飛んだ設定にしてたり
読んでて非常に心地よかった。
伏線が最後にきれいに回収されてくあたりもいい。
157112:2008/11/28(金) 00:24:13 ID:t7eVh/nL
空気読まずに、今さらながら、春香が家に来た人です。
感想とか、ありがとうございました。
次回作とか、書いたとすれば多分ここに投下します、が、なにぶんSS自体4年ぶりくらいに書いたような身なので・・・。

ところで、自ら言うのはアレなんですが、最後の批判覚悟のボケは、気づいてもらえたのか、スルーされたのか、素でやったと思われたのか、それだけが気になってたりします。

>>153
SSというかビジュアルがすでにある作品の二次創作の文章って、キャラの絵が読み手の脳裏に浮かびやすいから、どこまで描写すべきかは確かに悩むところです。
自分の場合は、もうほとんど放り出して読み手の脳味噌に任せるテキストにしてしまってますが、細かく描写するのもありだと思います。
自分では、細かく描写したのを読み込んでもらえる自信がないんですが。
158創る名無しに見る名無し:2008/11/28(金) 01:15:35 ID:QG4wA2L0
>>157
諸ですか?
あれはごく普通にこのPも春香もキメきれないやつらなんだなあ、て感じで
そのキメきれなさが全編通しての味だったので、ああもう最後の最後までしょうなねえなw
とか微笑ましく受け取ってましたが
159153:2008/11/28(金) 01:15:55 ID:5m+O6SDV
※住人の皆さんにひとこと

ツッコミどころ満載のSS落としておいて僭越至極ではあるが、俺のこんなクオリティの
文章をちゃんと読んでいただき、ちゃんと感想をいただける皆さんの優しさには心から
感謝している。

書き手の皆さん、こんな雰囲気にしてしまってスマンw だがご覧の通り非常に前向きな
スレになっていると思うので、何か書けたらぜひ投下して欲しい。そこいらのスレで不出来な
作品投下したら普通はスルーか、よくて御祝儀GJでポイだ。こんなにちゃんと読んで貰える
なんて、書き手というより『産み手』として絶対嬉しいぞ。

読み手の皆さん、俺頑張るよ。今回のような優しさ溢れる感想を今後も是非頼みたい。
ただ、ひとつお願いがある。キャラスレ常駐していて感じるのはアイマスSSの書き手の
『若さ』だ(実年齢に関わらず)。パッション先行、萌え先行の書き手も多く、もし今後
そういう書き手がこのスレに来た時は、どうか察してやっていただきたい。

創作発表板の存在意義はこれから伸びる芽を踏みつけることではなく、効果的に栄養を
与えて大きく育てることだと思う。このスレで俺たちが求めているのは文芸的に優れた
作品ではなく、アイマスファンが読んで楽しくなる作品なのだから。



よーし言うことは言った。重ねて皆さんありがとう。

俺のSSはもともと5〜15KBを中心とした分量の、ワンシーン構成のものが大部分です。
本作に関しては「慣れていない文章量の作品をいつもの調子で書いてしまった」という
ことに尽きそうですね。味の濃い単品料理を10品並べて「コース料理でございます」と
言っても美味しいとは思ってもらえないでしょう、などとレシPらしい言い回ししてみたり。

そういう点、>>154の指摘は目からウロコでした。長い作品のテンポが悪いというのは、
実は以前から解法が見えずに困っていましたんで、参考にしてみます。
さらにカチンの部分。これも申し訳ない。俺としては効果的な単語を使ったつもりでした
が、改めてくだんの文脈を追ってみると、もっと配慮のある表現でも不都合はなかった
かも知れませんね。

過疎ってるように見えてけっこうクセ者が巡回していることも判ったことであるしw
またこちらのスレ向けも書いてみたいと思います。実年齢的には脳味噌も硬化が
始まってる有様で、どこまで研鑚の成果をお見せできるかはお約束し難いが、今回
皆さんに言われたことは大事にしようと思う次第。まだ何かお気づきの点あるようなら
レスでも作品庫でも承りますんでよろしく。

ではまたお目にかかりたく。
お呼びがかかるまで名無しに戻りますノシ
160創る名無しに見る名無し:2008/11/29(土) 02:06:38 ID:WQFACOvw
もっと春香が家に来るやつ続けて欲しいよ
あっさり帰っちゃってもっと居て欲しいって思うな
161創る名無しに見る名無し:2008/11/29(土) 04:12:33 ID:z2OTrgL4
>>160
俺は>>159さんの作品も読みたいな
ブログ見に行ったら律子とか伊織が生き生きしてて面白い面白い
あのクオリティなら長文も書き慣れればすぐに楽しませてくれそうだし

まぁ私ら乞食住人はただただ待つだけです

>>157
大まかには158さんと同意見
2人の関係が最後まで締まらない感じも初々しく和ませて頂きました
でも気持ちを伝えようという真心の深さを全体から感じるからこそギャグだけじゃなく味として読み手の心に残ったんじゃないかなと思います

次回作待ってまーす!
162157:2008/11/29(土) 12:54:44 ID:cngyDcx4
>>158
>>161
全体に馴染んでいるので、気づいてもあえて何も言う必要はない、というところでしょうか。
とすると、書いた方として、最高の受け取られ方をしているようで、安心しました。

>>160
ありがたいお言葉ですが、ネタが尽きる前に終わりにさせて下さいw


では、そろそろ名無しに戻ります。って名乗ってないですが。
またきっとここで、書き手としてお会いしたいと思います。
163創る名無しに見る名無し:2008/12/02(火) 18:00:10 ID:gVQeFeHY
沈みすぎなんで上げとく
164創る名無しに見る名無し:2008/12/02(火) 22:10:59 ID:pkfCi0Zk
亜美真美とやよいのどっちを選ぶか迷うなぁ
165創る名無しに見る名無し:2008/12/02(火) 22:16:16 ID:X3T+52g+
そこはやよいだろ
166創る名無しに見る名無し:2008/12/02(火) 22:33:31 ID:pkfCi0Zk
すまん誤爆なんだ
167創る名無しに見る名無し:2008/12/04(木) 00:33:12 ID:M8apD87U
事務員さんの話を書こうか、審査員さんの話を書こうか悩んでる。
168創る名無しに見る名無し:2008/12/04(木) 00:43:29 ID:qshtK313
765プロの事務員さんで頼む
169創る名無しに見る名無し:2008/12/04(木) 00:44:53 ID:Ngbq6awY
しかし希少性の高い審査員さんの話も捨てがたい
170創る名無しに見る名無し:2008/12/04(木) 05:38:47 ID:qshtK313
キャ!あたし765プロのプロデューサーさんのこと気に入っちゃったかも!!
本番では期待していますわ!(はぁと)
とか?
171春香が家に来た人:2008/12/06(土) 00:11:13 ID:BBzf4ksO
こんばんは。
あらためて名乗らせていただきます。
ペンネームを「みなと」と言う物書きの端くれです。
新作ができましたので、投下させていただきます。
今回は通常のSSの形式で、タイトルは「ある歌手とアイドル」
では行きます。
172ある歌手とアイドル 1/3:2008/12/06(土) 00:12:44 ID:BBzf4ksO
その日、私はある小さなイベントに出演していた。
私のステージは、客の反応も上々で、私はとても気分よく舞台を下りた。
スタッフとお疲れの挨拶も心地いい、そんな中、場内のアナウンスがその上機嫌を一気にぶち壊したのだった。

『続いて、みんなお待ちかねの彼女の登場だ! 音無小鳥! 曲は「イマジネーション・ディスティニー」!』

ああ、駆け出しのアイドルか。
同じレコード会社だから、彼女の名前は知ってる。曲も聞いたことある。
確かに可愛いかもしれない。でも、歌も曲も絶対私の方が上だ。
なのに、このイベントでは、まだデビューしたばかりの彼女が私よりも後の登場。つまり私より上の扱いをされてる。
結局、可愛ければ人気が出て、その人気で全てが決まるってことでしょ?
つまんない。
そんなことで私の歌が売れないなんて。

「あ、次は小鳥ちゃんじゃないか!急がないと見逃しちゃう。」
私のスタッフまでも、彼女が見たくて浮き足立ってる。
「なに?私の歌よりもあんな童顔のチャラチャラしたのがいいわけ?」
「君は歌を聴かせるんだけど、彼女はステージを魅せるんだよ。いい機会だ。君も見よう!」
「あ、ちょ、ちょっと!」
私は手を引かれて、無理矢理ステージの見える位置まで引っ張っていかれた。

173ある歌手とアイドル 2/3:2008/12/06(土) 00:13:57 ID:BBzf4ksO
「よかった間に合った。ちょうど始まるところだ。」
引いていた手を離される。こちらを見もしない。
私の不機嫌は極まった。
なによ、こんな可愛いだけのアイドルのステージなんか。
あんな派手派手な服なんか着ちゃって。


曲が流れる
と、軽やかなステップとターン
え?

続いて笑顔で振り返って大きなアクション
決めのポーズ

「な。いいだろ?」
「え、ええ。まあまあじゃない?」
本当は思わず見とれていた。

ボーカルが入る
しかしダンスの動きは衰えない
ボーカルとダンスが、乱れることなく混然一体となって迫ってくる
そのリズムに乗って、客席のボルテージは上がり続ける


私は恥ずかしくなった。
目から鱗が落ちるって、こういうことを言うんだなあ。
ステージングがどうの、って、スタッフからいろいろ言われてたけど、「私は歌で勝負」って全然気にしてなかったし。
確かに、アイドルとシンガーソングライターってまるで別の物かもしれないけど、このステージは素敵だと思う。
CDで歌を聞いただけじゃあ、わからないものってあるんだ。

「どうかね?彼女のステージは?」
「あ、社長!いやあ、いいですねえ。彼女、売れますよ。」
「そうかね?ありがとう!」
「社長・・・?」
私は声の主の方を見た。
逆光で真っ黒くしか見えなかった。
「こちらは小鳥ちゃんの事務所の社長で、高木さんだよ。」
「あ、どうも!はじめまして!」
「やあ。君のステージ、見せてもらったよ。素晴らしい歌だった。」
「ありがとうございます。でも音無さんのステージもステキでした。」
「そうか。いやあ、君のような実力のある人間に言われると、とてもありがたいよ。」
「とんでもないです!私こそ、アイドルなんてって思ってましたから、今日のステージを見せていただいて、自分が恥ずかしくなっちゃったくらいですよ。」
「うむ。確かに、今は、アイドルという言葉は軽く思われる傾向がある。しかし、歌とダンスとでステージを見せる、という方向は、アイドルというジャンルが一番積極的なのだよ。
アイドルという存在は、夢を見せるものだ。だから、アイドルも、アイドルの歌もステージも、人々の夢と一緒に、どんどん進化していかないといけないのだと、私はそう思うのだよ。」
ああ。こういう人が育てたアイドルが、彼女なんだな。すごく納得。

「ところで、一つ頼みがあるのだが・・・」
「はい。なんでしょう?」
「君の歌を見込んで、のことなんだが、どうか、うちのアイドルやアイドル候補生の女の子たちに、歌の指導をしてはもらえないだろうか?もちろん、君の仕事の邪魔にならない程度で構わない。」
私は嬉しかった。歌が認められたのもあるけど、さっきの音無さんに会える、しかも指導できる。私はたいして売れてるわけでもないシンガーソングライターだから、時間なんていくらでもある。
「もちろんです!音無さん、うらやましいくらいのいい声ですし、まだまだ伸びますよ。間違いなく!」
「そうか!歌田君、ぜひ彼女たちをよろしく頼むよ!」
174ある歌手とアイドル 3/3:2008/12/06(土) 00:15:39 ID:BBzf4ksO


カラン

話が途切れた時、グラスの氷が音を立てた。

「そんなことがあったんですか・・・」
「もう10年以上も前のことです。そのまま、私は自分で歌うよりも、アイドルのみなさんの指導や審査の道に進んだんです。これも高木社長のおかげ、とも言えますね。」
「いや、いい話を聞かせてもらいました。今夜のここはおごらせて下さい。」
「それはありがとうございます。でも、次のオーディションの審査では、手加減しませんよ?」
「もちろんですよ。歌田さんがそんな人だったら、こうして一緒に酒を飲みたいなんて思いません。」
「ふふっ・・・さすが、高木社長の見込んだ人ですね。」

俺は、照れ隠しにグラスに残っていた酒を一気にあおった。

「ところで・・・さっきの話の中で、音無さんの名前が出て来てたんですけど・・・」
「はい。」
「その後、音無さんはどうなっちゃったのか、事情をご存知ですか?」
「ああ、ご存知ないのですか・・・。確かに、あまりいい話ではないですからね。でも今日はおごっていただくお礼にお話ししましょう。」
「お願いします。」

「先ほど話したイベントのすぐ後でした。音無さんの担当プロデューサーの横領が発覚したんです。765プロダクションの外部から雇われた方だったんですけどね。」
「え・・・?」
そんな話、初耳だ。

「当時はあまりニュースにもならない小さな話でしたから、ご存じないのも無理はないですね。
ただ、そのせいで765プロダクションは傾いてしまい、事務所も小さくして汚い雑居ビルの3階に引っ越すことになって、音無さんのアイドル活動もそのまま休止になってしまったんです。」
「そんな・・・」
「でも、音無さんはそこからが違いました。もう後輩の女の子たちにこんな思いをさせるのはごめんだから、って言って、社長に進言したんですよ。これからはプロデューサーも自分たちで育てましょう、と・・・。
それ以来ですね。765プロダクションがプロデューサーの募集を始めたのは。」
「じゃあ、俺が今プロデューサーをやっているのも・・・音無さんのおかげってわけですね・・・」
「でも、あなたのご活躍で、765プロダクションもすっかり活気づいてますから、恩は充分に返したとも言えるんじゃないですか?」
「まだまだです。本当のトップアイドルを育て上げるまでは。」
「それは頼もしいですね。私も、あなたの育てたトップアイドルを審査するのを、楽しみにしていますよ。」
「ありがとうございます。あ、もう一杯飲みましょう。すみませーん、お代わりくださーい。」
「私もいただいていいですか?」
「もちろんですよ。じゃあ、あらためて乾杯しましょう。」

「では、あなたの育てる未来のトップアイドルに」
「乾杯!」

グラスがチンと鳴った。
175171:2008/12/06(土) 00:19:48 ID:BBzf4ksO
はい。というわけで、ネタバレになるので最初には書きませんでしたが、どちらにしようか悩んでいた167です。
結局、両方の話をまとめてみました。
最近不遇な扱いの人を、いい感じにアレンジして取り上げてみました。
妄想全開な作りですが、いかがでしたでしょうか。
感想等いただければ幸甚です。
176創る名無しに見る名無し:2008/12/06(土) 00:34:59 ID:U37P6tSC
      ./\        /\
     /:::::::ヽ____/::::::::ヽ、
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  / / °ヽ_ヽv /:/ °ヽ::::::ヽ
 / /.( ̄( ̄__丶 ..( ̄(\  ::::|
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. | :::.  )  )| |⊂ニヽ .| ! )  )   ::::|     |    |  /    |   丿 _/  /     丿
 | :  (  ( | |  |:::T::::.| (  (    ::|
 \:  )  )ト--^^^^^┤ )  )   丿
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177創る名無しに見る名無し:2008/12/06(土) 05:13:19 ID:4XELms4V
>>175
お疲れ様です〜
楽しかったです
178創る名無しに見る名無し:2008/12/06(土) 09:00:55 ID:w8MINUZH
GJ!
イイハナシダナー
179創る名無しに見る名無し:2008/12/06(土) 09:51:30 ID:BiaCK3IO
GJ
180創る名無しに見る名無し:2008/12/07(日) 01:31:33 ID:hOgh3wLY
>>981
Pは本当にうんこだからな
181創る名無しに見る名無し:2008/12/07(日) 01:41:22 ID:bJXssQla
THE IDOLM@STER アイドルマスター家庭用1212週目
981 名前: 名無しくん、、、好きです。。。 Mail: sage 投稿日: 2008/12/07(日) 01:27:50
>>975
おまいさんが春香Pなら何をやっても多分春香さんはアピールチャンスと捉えてくれるだろう
そしておまいさんはすべてスルー

これへのレスの誤爆ですね、わかります。
182創る名無しに見る名無し:2008/12/07(日) 18:23:37 ID:Yjf8FaK6
      ./\        /\
     /:::::::ヽ____/::::::::ヽ、
    / ::. _  .:::::::::::::  _::::ヽ_
  / / °ヽ_ヽv /:/ °ヽ::::::ヽ
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183創る名無しに見る名無し:2008/12/07(日) 19:02:31 ID:bUdwGYpj
エロは当然無しとして、ここって何でも有りっすか?
184創る名無しに見る名無し:2008/12/07(日) 19:49:05 ID:Yjf8FaK6
「我慢しなくてもいいのよ」小鳥さんはそう言うとおもむろに俺のイチモツを咥えた

とかのリアル描写が無けりゃ別にいいよ
185創る名無しに見る名無し:2008/12/08(月) 01:15:54 ID:+ZoQkiwY
>>183
今んとこスレだけのルールみたいのは>>1だし、板としては>>184だと思うし
後は作者さん達が>>39>>49>>112>>146>>175みたいに希望書いてる感じで進んでるね
186創る名無しに見る名無し:2008/12/08(月) 23:26:40 ID:A6XIt+T1
>>185
>>159がこうあってほしい、という方向性を一番明確に示しているかも
その方向性に賛同するかはそれぞれの意見次第だが
今のとこ「作品も感想もマナーとモラルを持って書け」以上のものはなさげ
問題が起こればその都度縛りは増えてくと思うがな
187創る名無しに見る名無し:2008/12/09(火) 01:43:11 ID:sEuE6fmN
某国某所、砂煙巻き起こるバトルフィールド。そこには敵を求め、彷徨うアイドル達がいた――――――

春香「うぅ、何でこんな事に・・・」
うなだれる春香、しかし瞳には確固たる意思が伺える。
春香「でも、目的の為だもん。泣き言は言ってられないよね!」
立ち上がり、森の中を歩き始める。日が翳る前に今日の寝場所を確保しなくてはならない。


彼女は何故この様な場所にいるのか。そして春香の目的とは?話は数日前に遡る・・・
188創る名無しに見る名無し:2008/12/10(水) 06:26:25 ID:owqQLoFp
>>187
この話は続くのか?
投げっぱなしはいかんぜよw
189創る名無しに見る名無し:2008/12/10(水) 10:09:00 ID:ggezsVRp
せめて、どうするのかの方針くらいは欲しいなあ。
形態とか回数とか
実はこれで全てとかw

各回形式で行くなら、それなりの覚悟?を見せて欲しいな。
各回オチをつけるとか、各回それなりにまとめるとか。
190創る名無しに見る名無し:2008/12/10(水) 13:31:21 ID:cC/5Lnoy
勝手ながらスレルール案を提案させて頂きます。
これを叩き台に議論していただければ幸いです。

スレ全体ルール
・このスレはアイドルマスターの二次創作SS、イラスト発表を目的としたスレッドです。
・雑談もOKですが、SS投下時は割り込まないよう気を付けましょう
・投下されたものへの感想、批評、また職人さん、書き手さんへの要望、リクエストは
 自由ですが、節度ある発言をお願いします。
・投下する作品は自作のものをお願いします。
・自作のものであれば他のスレに投下したものを転載しても構いません。
・投下者さんへ:この板は「SSなどを発表する」板です。住人さんもそのつもりで
 見ています。
 作品を人目にさらす以上、感想はもちろん時には厳しい批評、非難を受けることも当然
 あります。それを次の糧に肥やしにするかどうかはあなた次第です。
 ヘコんじゃったーときはーいっぱつーないてーそしてふっかつするのさ!です。
・読み手さんへ:書き手さん、職人さんを育てるのも殺すのもあなたのレス1つです。
 

SS投下ルール
・アイドルマスターの二次創作なら何でもOKです。
・この板は創作発表を目的とした板です。何レスにわたっても問題ありません。
・事前に使用するレス数が分かれば事前に宣言しておいた方がベターです。
・テキストファイルでアップローダーに上げても構いません。
 その辺は投下者の判断に任せます。
・投下する前には「投下開始宣言」、投下後には「投下終了宣言」を行なってください。
 (理由:割り込み防止と、他の住人さんに対するマナーとして)
・数レスにわたって投下する場合、入力しながらの投下は時間がかかり
 他の住人さんに迷惑をかけます。
 PCならメモ帳やワードなど、携帯からならメール、テキストメモ等で
 全て書き上げてからコピペで投下してください。
・連載形式のものも歓迎ですが、その旨宣言することと、次の投下予定(不明なら
 その旨を)必ず言いましょう。
・小ネタ、一発ネタ歓迎ですが、それがわかるようにして下さいw

・エロ表現のあるものはこの板には投下しないでください。このスレだけではなく、
 板全体の住人さんに迷惑が及びます。
 (BBSPINK エロパロ板に専用スレがあります)
  ※注釈:エロの定義は板全体でもまだ曖昧なようです。

イラスト投下ルール
・イラスト投下にはアップローダーを使用して、URLを貼って下さい。
・ゲーム画面のキャプチャーはご遠慮ください。
・MADムービー等はYouTube板でお願いします。
・エロ表現のあるものはこの板には投下しないでください。このスレだけではなく、
 板全体の住人さんに迷惑が及びます。
 (BBSPINK 半角二次元板に専用スレがあります)
  ※注釈:エロの定義は板全体でもまだ曖昧なようです。


エロパロ板のSSスレや書き手さんスレなどを参考にして考えてみました。
ルールが分からず、投下をためらっている書き手・職人さんがいるのではないかと思い、
提案しました。
長文で大変申し訳ありませんが、ご意見等お願いします。
191187:2008/12/10(水) 14:33:44 ID:abSTCUoQ
酔った勢いで書いた単発レスで申し訳ないorz
まだ基本的な設定しか妄想してないので、>>187は無かったものとしてください。
いずれまとまったら投下することにします・・・
192創る名無しに見る名無し:2008/12/10(水) 21:20:27 ID:oKoCHoPc
>>191
待ってる

>>190
グロい系はどうする?
死は表現に必要かもだから否定はしないが
切り刻んだり、傷付けて精神的に追い詰められたりはちょっとと思うけど
193創る名無しに見る名無し:2008/12/10(水) 21:39:51 ID:68keYNq1
194創る名無しに見る名無し:2008/12/10(水) 23:16:25 ID:qlXtjJuJ
グロを書くこと自体が目的になっていなければアリ、て感じ
195創る名無しに見る名無し:2008/12/10(水) 23:58:50 ID:UmXa+Esl
>>190
内容そのものはそれほど問題ないと思う
ただ、ルールルールって問題になる前から決める行為はあんま好きじゃないので
とりあえずは消極的賛成で静観しとく

>>192
グロ系は行きすぎてるのは確かにちょっとやだな。
自分らを特殊な性癖の人々と認識してそういう場をきちんと作ってやる分には自由だろうけども
前に鍵系のSS掲示板で気色の悪いグロ話垂れ流した挙げ句、グロこそ真実でそれ以外嘘っぱち
みたいな事言ってふんぞり返ってるおかしな人が湧いてるの見てこりゃダメだ思ったことが
196創る名無しに見る名無し:2008/12/10(水) 23:59:58 ID:dpPYTU56
俺もグロいのはちょっと勘弁って感じだなあ。個人的にだけど。
まあ、書く人って意外と見せたがりだったりするから、あんまりルールとかはっきりしてなくても投下する気はするんだけどねw

>>191
待ってるよー。
197創る名無しに見る名無し:2008/12/11(木) 00:23:32 ID:u9AwIbkM
今回のが「投下を躊躇してる人たちのための指針作り」という点において賛成。
個人的にはあんまり四角四面なのもどうかと思うが、なにか仕様があると
行動に移せる人がいる、というのも事実。
グロは……趣味人ではなく荒らしのツールとして使われるのが哀しいなあ。
基本専用スレ行け、が正解と思う。
198創る名無しに見る名無し:2008/12/11(木) 03:48:19 ID:xt3fpXv9
板的に全年齢ではあるね。
過激な暴力表現は禁止ならば、話は簡単なんだけど
ローカルルールにはエロ系についてしか言及がない、か。

それらもOkな大人向けのスレをしかるべき板に立てるのが良いと思う。
とりあえず2chだし、書き手の良識の下に判断してもらって、
読み手も自己責任で読むしかないと思うかな。

あと個人的に、ガッチリしたルールがあるのは好まない。
ゆるーくやって、問題があるんじゃない?って話があがったら、より適したスレを薦める、
くらいのルールでいいんじゃないかと思う。

荒れるときゃ荒れるw
199創る名無しに見る名無し:2008/12/11(木) 04:56:09 ID:qFGWIaPW
同感。エログロは別スレで、
あとは他SSスレの流儀を踏襲してくれればそれでいい。
200192:2008/12/11(木) 07:39:52 ID:O/cZwxbr
>>198
全年齢対象ってちょうどいいゆるさで良いね

グロ心配だったけど>>193さんが良い退避所教えてくれたし

長文はあまりやってないけど完成したら投下しますねー
201創る名無しに見る名無し:2008/12/11(木) 11:16:01 ID:CT1lN4HD
あくまで自分はだけども
エログロに限らずしっかり「アイドルマスター」してるかが分岐点
問題になってるような描写とは基本的には縁のない世界であること踏まえて
不快描写が受け入れのハードル上げること承知して、その上でこれならその描写も必要だな
って納得せざるを得ないモノを書いてくれるのならそりゃもうしょうがない
ただ汚してグチャグチャにしてポイ捨てだったらそういう趣味のとこへ行ってくれ、としか
202創る名無しに見る名無し:2008/12/11(木) 14:53:31 ID:XZirwdu6
1年位前だが千早スレで、狂信的ファンの自殺の巻き添えになり酷い後遺症を負った
(知ってるやつは知ってると思うので詳しくは書かない)千早がプロデューサーを誘い
ビルの屋上から……というSSを目にした。
もちろん物議をかもしたんだが不思議と荒れなかったのは、書き手が『それでも千早を
愛して書いた』のが伝わったからだと思う。
>>201はある意味当然なことではあるがファンが忘れがちなことでもあるな。

俺も頑張りたいところだが歳末は普通に忙しいw
いつか戻ってくるから書ける人・描ける人がむばってください。
203創る名無しに見る名無し:2008/12/12(金) 19:52:38 ID:HztrHPEc
>>202
あれはなぁ…
あまりの酷さに泣いてしまったが不思議と作者に対する憎悪は確かになかった
すぐ削除されたけど先に絵を見てしまってなんかもう…
204創る名無しに見る名無し:2008/12/16(火) 23:25:52 ID:dcuiPu8k
アイマス関連で見るのは、こことPV晒しスレと創作発表板のスレ
205創る名無しに見る名無し:2008/12/16(火) 23:30:02 ID:dcuiPu8k
一目見てわかるとおりの誤爆でした。
206創る名無しに見る名無し:2008/12/17(水) 00:01:04 ID:Wwp38I0D
PV晒しは俺もみてるぜ
207創る名無しに見る名無し:2008/12/26(金) 22:10:39 ID:+Kf+xbf5
>>202
もう少しkwsk
208創る名無しに見る名無し:2008/12/27(土) 10:10:45 ID:wAstXIkE
>>207

千早スレ19の644。
ttp://game13.2ch.net/test/read.cgi/gamechara/1196340307/644

すまんが、ロダに上げられたtxtは俺の手元にもない。
この周辺のログを閲覧できるなら雰囲気は伝わるだろう。
ただまあ今になって流れを見返すと『許容された』というよりは、
あまりの鬱展開に唖然としているうちに話題が押し流されたって
感じだなw

以上保守がてら。
それより部長、うちの会社に年末年始はあるんですかねorz
小さなライブハウスに似つかわしくない存在感。
ーー「初心に返って新しい年を迎えたい」
何とも"らしい"希望から企画された、天海春香のカウントダウンライブ。
独特の盛り上がりを見せる会場。そして、その時が訪れる。
「みんなー行っくよー!60、59、58………3、2、1」


【大晦日、天海家・春香の部屋】
「ぜろぉ〜!」

どんがらがっしゃーん

ベッドから転げ落ちた春香。痛みで目を覚ます。
「あいたた…あれ、夢?」
Pに相談してみたが、春香の年齢では夜中のライブは不可能だった。
ふと時計を見ると18時を差している。
「やばい、やよい宛ての年賀状!お母さん!遠い方の郵便局連れてって!」

【帰宅後】
「あーよかった。くじ付きだし、直接渡す訳にいかないもんね」

年越しそば、紅白、おせち作りの手伝い…普通の女の子と変わらない、春香の年末。

除夜の鐘が始まる。春香は祈りながらPに電話をかけた。
「もしもし、プロデューサーさん、私です。起きてました?
え?変な夢を見たって?あははっ、私もなんですよ。
用件?天海春香のカウントダウンライブですよ、カウントダウンライブ!
…それじゃあ、聞いてください。『太陽のジェラシー』」



「…3、2、1、ゼロ〜!プロデューサーさん、あけましておめでとうございます!
はい。そうですね…もう寝ます。おやすみなさい。いい初夢、見てくださいね?」

(また、同じ夢を見られますように…♪)


〈完〉

よいお年を!
210創る名無しに見る名無し:2008/12/31(水) 23:10:40 ID:bfH/t995
>>209
本スレで依頼したものです。乙でした!!

なんとも春香さんらしいシチュエーションでw
こうしてみると、やっぱり普通の女の子みたい。
211創る名無しに見る名無し:2009/01/01(木) 02:31:18 ID:uxlskt+I
>>209
そうでした、年齢的に就労時間外でしたっけw
久々の投下ごちそうさまです。個人的には繋がらなかった9本の電話に
ドラマを感じてみるのもおもしろいかなとか思ってみたり
212創る名無しに見る名無し:2009/01/10(土) 18:39:27 ID:wfv5nm38
■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□

本家を超えた!最高の本日の最高動画!
アイマスや東方の様な稚拙な動画じゃありません!
製作時間3ヶ月!これよりクォリティの高い動画はしばらくミク関係では出ないはず!
プロの犯行です!必見!

【MikuMikuDance】くるっと・おどって・初音ミク【ねんどろいど風味】
http://www.nicovideo.jp/watch/sm5799314

■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□
213創る名無しに見る名無し:2009/01/19(月) 20:04:49 ID:kQyIDl3b
ゲサロにアイマスクロスSSスレあるんだけど、次スレあったらテンプレ入れるべき?
214創る名無しに見る名無し:2009/01/19(月) 23:34:09 ID:irIcOYPO
>>213
「アイマスクロス」て何じゃそら?
『萌えよ! 私の小宇宙(コスモ)!!』とかちーちゃんが言うのか?
215創る名無しに見る名無し:2009/01/19(月) 23:40:49 ID:kQyIDl3b
まぁ間違っては無いけど、アイドルマスター×版権作品のSS書くスレだって。架空戦記みたいなもんだ。
216創る名無しに見る名無し:2009/01/20(火) 00:07:28 ID:vflf3qvC
創作スレだし、リンクしてもいいんじゃない
次スレ立つのがいつかはわからんが
217創る名無しに見る名無し:2009/01/20(火) 00:25:44 ID:JnV7+b8A
じゃあアドレス張るわ。

アイドルマスタークロスSSスレ
ttp://orz.2ch.io/p/-/schiphol.2ch.net/gsaloon/1228997816/
218創る名無しに見る名無し:2009/01/20(火) 07:22:32 ID:wnM4RMK6
>>214
直後に「やよい〜(がばっ)」の展開になりそうなんだが
219創る名無しに見る名無し:2009/01/20(火) 07:31:02 ID:JnV7+b8A
しまったアドレスが携帯のままだったorzこっちならパソになってる筈。
http://schiphol.2ch.net/test/read.cgi/gsaloon/1228997816/l50
さて、ちょっと吊ってくるわ。
220創る名無しに見る名無し:2009/01/22(木) 08:44:08 ID:LTx/nkc4
小宇宙で思い出したが、一応アイマスも12人だから黄金聖闘士やれるなw
221創る名無しに見る名無し:2009/01/22(木) 08:47:03 ID:LTx/nkc4
間違えた、「小鳥さん入れると」12人だ
亜美真美を双子座ポジションにするとどのみち足らなくなるけど
222創る名無しに見る名無し:2009/01/22(木) 08:49:57 ID:s6VLNkmg
>>221
そこで たかねと響の出番だ
223創る名無しに見る名無し:2009/01/22(木) 09:51:32 ID:m+EbDvBT
どうせ過疎ってるしネタの足しになるかもしれないな。いやスレ違いなのは判ってるが。

日付        星座         誕生日が該当するキャラ
0321-0419 白羊宮/おひつじ座   春香
0420-0520 金牛宮/おうし座     伊織
0521-0621 双児宮/ふたご座    亜美・真美
0622-0722 巨蟹宮/かに座     あずさ・律子・高木社長
0723-0822 獅子宮/しし座
0823-0922 処女宮/おとめ座    真・小鳥
0923-1023 天秤宮/てんびん座   響
1024-1121 天蠍宮/さそり座
1122-1221 人馬宮/いて座      美希
1222-0119 磨羯宮/やぎ座     雪歩
0120-0218 宝瓶宮/みずがめ座  貴音
0219-0320 双魚宮/うお座      やよい・千早

基本的な性質
ttp://fortune.yahoo.co.jp/12astro/12_basic.html



うろおぼえだったんで調べてきた。
やぎ座の「マカツ宮」を「魔蠍」、さそり座だと勘違いしてたw
ミロあんたのせいだwww
224創る名無しに見る名無し:2009/01/23(金) 07:53:11 ID:LKEFlv3s
>>223

良く頑張った、感動したw
とりあえず千早が私と高槻さんが同じ星座なんてやっぱり運命で結ばれてる云々の発言をしそう。
225創る名無しに見る名無し:2009/01/23(金) 10:38:03 ID:Zkb8gX32
>>223-224
折角のネタに水を差すようだが、やよいの誕生日は3月25日。
春香と同じおひつじ座だな。
226創る名無しに見る名無し:2009/01/25(日) 10:37:26 ID:sazYwJA9
旧暦カレンダー見てて思ったけど、千早とやよいは如月生まれなんだな
227創る名無しに見る名無し:2009/01/25(日) 17:39:29 ID:a8LzbGyN
>>220

黄金聖闘士やれるならデジモンフロンティアも行けるな。むしろ人数が多すぎるくらいだ
228創る名無しに見る名無し:2009/01/28(水) 22:58:33 ID:k0a7zUAz
化け猫

「今日の仕事はこれまで! 気をつけて帰るんだぞ」
「ありがとうございました」
 担当プロデューサーと別れて、その女性歌手は、レコーディングスタジオを後にした。瑠璃色の長い髪を持つ美しいお嬢さんで、スリムで上背があって、プロポーションもすばらしい。
 彼女の名は、三浦あずさ。765プロダクションのトップアイドルである。

 同事務所のタレント寮へ続く道を、あずさは静々歩いていた。と、その時。
「ちょいと、そこ行くお嬢さん」
(こ、こんな夜中にナンパ!? なわけないか……)
 彼女に声をかけたのは、自分よりやや小柄な男。とても同年配とは思えない、どう見ても厄そこそこのやつである。
「そこのおじ様、何かしら?」
「この先の川沿いに、化け猫の出る場所がある」
「化け猫!? そんなものが出てきたら、どうにもならないわ……ねえ、嘘でしょう? 嘘なんでしょう?」
「いや、実際に目撃されているんだ。独り歩きは危険だぞ!」
「ちょっと、ちょっと待ってよ、おじ様!」
 呼び止めたのを振り切るようにして、彼はどこかへ消えてしまった。
(あらあら、いなくなっちゃったわ……無事に寮まで帰れるかしら?)
 あずさの胸中は、既に不安で満たされていた。

 それから、あずさは二十分ばかり、暗い夜道を歩き続けた。
(おかしいわ……この辺のはずなんだけど……)
 今日の仕事場から765タレント寮までは、距離にしておよそ一キロメートル。普通なら、里程は消化されている。
 だのに、帰るべき建物がない。街灯を除けば、周りの明かりはすべて落ちていて、その手がかりもつかめない。おまけに、道の片側から、流水音が聞こえてくる。
(そういえば、化け猫が出るのは川沿いだって、さっき警告されたような……)
 びくびくしながら立ち止まっていると、音もなく現れたのが、彼女の数倍はあろうかという巨大な影法師。
「キャア、化け猫!」
 最早、勇気も何もない。あずさは、思わず持っていた手提げバッグを投げ捨てた。
229創る名無しに見る名無し:2009/01/28(水) 23:00:38 ID:k0a7zUAz
 すると、彼女の前方で、一斉にともった明かりが九つほど。
「何事!」
 どやどやと、あずさを取り巻くように駆け寄ってきたのは、自分の事務所の同僚たち。そう、前方の明かりとは、765タレント寮のものだった。
「あずさ! やっとこさ帰れたんだ」
 黄色い髪をなびかせて、正面に立つ星井美希が、尻餅をついて動けないあずさを抱き起こそうとする。
「あれ、持ち物は?」
「川に放り込んじゃったみたい。バシャンと音がしたような……」
 愛用の手提げバッグは、あずさの元を離れていた。事務所気付の携帯も、新しく買った手帳も、すべては水の中である。
「もったいないことしちゃったね」
「まあ、こんな日もあるってことよ」
 運の悪い時は仕方がないと、あくまで大らかに構える。これこそ、あずさクオリティ。
「それにしても、何で帰りが遅れたわけ?」
「そりゃ今日は、いつもより余計に歩いたから……」
 方位感覚が悪いので、しばしば遠回りしてしまう。これもまた、あずさクオリティ。
「間違って、変な道に入り込んじゃったみたいね」彼女は苦笑した。
「だったら、何でここに来るわけ?」
「あずさ! あんたが今いるのは、タレント寮の裏なのよ!」
 自分と同じように額を出した、栗色のロングヘアの美少女――水瀬伊織も、美希と一緒にダメを出す。
「反対側に来ちゃったのね……あら、化け猫は?」
 伊織は、あずさの言い分に驚いた。
「化け猫!? あんた、狐につままれたかしら?」
「でも、さっきわたしの正面に、巨大な猫の影法師が……」
230創る名無しに見る名無し:2009/01/28(水) 23:01:22 ID:k0a7zUAz
「あずささん。そいつは多分たろすけです」
 今まで押し黙っていた、自分に同じく瑠璃色の長い髪をした美少女――如月千早がこう言った。と、その時。
 どこからともなく、柴犬がタレントたちの輪に飛び込み、鼻をクンクン鳴らしつつ、あずさの胸に飛び込んできた。
「たろすけ、遅れてごめんね……」
 たろすけとは、この柴犬のことである。765タレント寮の飼い犬であり、千早と交替交替に、彼の散歩をさせるのが自分の日課となっている。
「あずさったら、こいつの影を化け猫と勘違いして……」
「腰を抜かしたわけですわね」
 たろすけとじゃれ合うあずさを見て、美希と伊織は談笑する。

「皆さん、何の騒ぎですか?」
 タレントたちの輪の中に、後れて独り入ろうとする美少女がいた。褐色の髪をおかっぱに切り揃えた、清楚な感じの娘である。
 名前を萩原雪歩という。無論あずさの同僚である。
「どうも、あずささんが嫌な目に遭われたようですが……」
「雪歩は引っ込んでて!」
 伊織が押しのけようとするのを無視してあずさに迫っていくと、彼女の胸に抱かれていたたろすけが後ろを振り返り、雪歩に向かってクーンと鳴いた。
「キャア、犬!」
 そう叫ぶなり、転がるように逃げてしまう。やがて、彼女は寮に消えていった。
「あらあら、雪歩ちゃんって……相変わらずの犬嫌いね」
「あずさ! そういうあんたも猫嫌いでしょう?」
 たろすけを抱いたままのあずさに、伊織が容赦なく突っ込む。千早は、両者を見つめている。
「この二人……とにもかくにも仲良しですね」
「それじゃ、そろそろ帰っちゃおう!」
 美希があずさを抱き起こすと、彼女はたろすけを放つ。そして、タレント一同は寮に帰り、再び消灯を迎えたのだった。
231創る名無しに見る名無し:2009/01/30(金) 01:21:19 ID:vYzpinMD

名前だけはアイマスと同じみたいだけど…
232創る名無しに見る名無し:2009/01/30(金) 08:48:29 ID:tFMZF/vb
>>228
何のコメントもないみたいですが、一応これで完結してると思っていいのでしょうかね?
あえてキャラの紹介を入れている辺り、まだまだ続くと思えるのですが。
その辺の説明は一言欲しいです。
あと、感想としては、口調をはじめとして、キャラがちょっと違う感じがします。
233創る名無しに見る名無し:2009/01/30(金) 09:25:25 ID:tD/UVVRU
なにかの既存の話を参考にしたっぽいな。講談とか落語とか。
地の文とか各キャラの言葉遣いとか、語り口が独特で実はけっこう
好きだ。「そんなものが出てきたら、どうにもならないわ」なんて
あずささんが言いそうで言わなさそうな微妙なセリフとか、いいね。
前書きも後書きもないのでいろいろ不明だが、アリだと思う。次は
フリとオチを意識して妄想してもらえると嬉しいかな。GJでした。

俺の知ってるたろすけは妖怪なんか火の玉投げてやっつけますがねw
234228-230:2009/01/30(金) 11:55:48 ID:/CWTBxqG
>>232
申し訳ございませんm(__)m
実は僕、音ゲーはあまり上手じゃなくて、
アイマスはアケ版すらやった経験がないんですよ。
単に世界観を借りただけですから、言葉遣いには
本編と少々異なる点もございます。

>一応これで完結してると思っていいのでしょうかね?

もちろん、これはこれで独立した話ですが……
可能な限りアイマス本編にも触れて、更に更に
ノベマスを書いていこうと思っています。

>>233
おっしゃるとおり、実は古典文学の焼き直し。
徒然草第八十九段「奥山に猫またといふもの
ありとのこと」が原話です。

>俺の知ってるたろすけは妖怪なんか火の玉投げてやっつけますがねw

はい! ナムコらしい名前にしようということで、
妖怪道中記の主人公から採らせていただきました。
235創る名無しに見る名無し:2009/01/31(土) 12:19:56 ID:OMBGtpYk
>>234
正直、アイマスはあまり音ゲーとして意識しなくても大丈夫なんで、ぜひ本編に触れてみてくだされ。
#もし、360持ってればもうそろそろツインズ出ますし。

周辺の情報(CDなり、ニコ動なり)だとたまにネタが一人歩きしますんで。
#伊織の『雪歩は……』はこの場合使わないだろうなぁ。
#犬嫌い知ってるからそれとなく近づけさせない様にするだろうし。
236創る名無しに見る名無し:2009/02/01(日) 22:52:23 ID:qeBxwQFV
>>234
既存の話の翻案というやり方そのものは悪くないと思います
ただ、翻案なら翻案で、もうちょっとだけでもらしさを追求してほしいところです
>>231氏の物言いは少々極端ではありますけども
話の原型が既存の物である以上、そこにアイマスらしさが充分加わっているかどうかが
おそらくこのスレでは受け取る側がどう思うかの分かれ目になるでしょうから

その辺りに充分手が加わっていれば、だいぶ読み手の印象は変わると思います
237創る名無しに見る名無し:2009/02/03(火) 04:20:16 ID:fPyUy/7B
「ゲームをやってない」ことをキャラが合ってないことの言い訳にはしないでほしいな
ゲーム未プレイでも丁寧に下調べして書いてる人もいるんだから
238創る名無しに見る名無し:2009/02/03(火) 04:44:50 ID:Y/merEkj
プロデュースしたのは律子・美希・千早だけなのに、やよいと真だって語れるんですから!
もちろんプレイも大切だけど、未プレイ者だって今日の本スレぐらいの議論はできるぞ。
239創る名無しに見る名無し:2009/02/03(火) 23:44:57 ID:e3n344ML
というか、話は既存ものの翻案でキャラはアイマスの上っ面だけ借りて、
それが書きたかったものなのか?

よくわからない。創作発表の場であるからには作りたいという気持ちがあるはずなんだが。
240創る名無しに見る名無し:2009/02/03(火) 23:55:10 ID:C1AQhtCc
とりあえず書いとく。
>>234気を落とすな。
みんなお前さんが嫌いなわけじゃない。
241創る名無しに見る名無し:2009/02/04(水) 17:18:42 ID:qz/5M2FA
>>240
それぞれ考えてこうすればよくなると思いながら批評はしているんだろうけど
ここに書くときっついこと言われる、悪いところばかりあげつらうみたいな場に
なってはほしくないな
もちろん言うまでもないことだし、みんなそんなつもりではないのはわかってるつもりだが
今の流れはちょっと書き手にきびしい気がする
242創る名無しに見る名無し:2009/02/04(水) 18:11:27 ID:l/a0DRrQ
だって実際うーん…と思う点が多いんだもの
アイマスである必要性が感じられない
243創る名無しに見る名無し:2009/02/04(水) 23:28:33 ID:hsvZBaOj
>>242
それを言うと、「このスレに発表する必要を感じられない」と言うとこに行き着くんだが。
アイマスは幸いな事に各キャラスレがそれぞれ立っていて、
SSを書いたとしても、メインを張っているキャラのスレに投下する事で事足りてしまう気が。
#スレの流れで出来たようなSSだと特に。
244創る名無しに見る名無し:2009/02/05(木) 00:03:48 ID:dvsNlTIh
そうだよなぁ、創作板だからこそできることだし、多少風変りなものでもいいと思うが。
245創る名無しに見る名無し:2009/02/05(木) 00:22:12 ID:X34quvA9
創発だからできることってなんだ?
246創る名無しに見る名無し:2009/02/05(木) 00:29:15 ID:dvsNlTIh
オリジナルキャラとか。
247創る名無しに見る名無し:2009/02/05(木) 00:33:22 ID:bUvyqb69
架空戦記っぽいSSがかけるとか?
248創る名無しに見る名無し:2009/02/05(木) 00:40:03 ID:6dstDqmL
リレー小説的なもの?
249創る名無しに見る名無し:2009/02/05(木) 00:52:09 ID:eWz5xc/O
趣味に走ったクロス物とか?
250創る名無しに見る名無し:2009/02/05(木) 00:56:46 ID:X34quvA9
なんかこの流れ続きがみたくなってきた
251創る名無しに見る名無し:2009/02/05(木) 01:05:58 ID:bUvyqb69
冷静に考えてみたら架空戦記っぽいSSやクロスは最近専用スレ
ができたからもうこっちだけでできることじゃないんだな
252創る名無しに見る名無し:2009/02/05(木) 01:16:18 ID:dvsNlTIh
でも何かないものかね・・・。
ホントここは過疎ってるし、何か名物になる物でもできりゃいいけど・・・
253創る名無しに見る名無し:2009/02/05(木) 02:04:11 ID:ge1Ko9Gp
上のログ見ると結構いい作品投下されてるのにね
キャラスレだとキャラスレだからっていう窮屈さみたいなものを感じなくもないから
大抵のものを気楽に置ける場は欲しい気がするけど、この流れだとそういう気楽さもないっぽいし
読み手が真剣に読んでるってのもわかるはわかるけどね・・・
254創る名無しに見る名無し:2009/02/05(木) 02:18:37 ID:8vygDIHz
アイマスが好きだから書いてるって気がしないんだよな、さっきのは。
アイマスキャラ書いときゃ受けるだろうみたいに思える。

その昔のKanonキャラ使った中世ファンタジーモノみたいに、名前と一部の口癖しか
キャラの特徴残ってないようなのはたくさん増えても困るというか。

しかし今の過疎具合だと、質はともかくまずは数だという方針で行ったほうがいいのかもな。
255創る名無しに見る名無し:2009/02/06(金) 12:12:59 ID:HcVsg+rA
こんにちわ。
翻案でひとつティンと来ましたので投下します。
タイトルは『秋月政談』、本文4レス。
さっそく参ります。
256秋月政談(1/4):2009/02/06(金) 12:13:32 ID:HcVsg+rA
「真美離してよ!兄ちゃんは亜美と遊ぶんだから!」
「亜美こそ離せー!真美、ずっと前から約束してたんだからぁ!」
「だーっ、お前ら二人ともとりあえず離せ、何より仕事にならんだろーが」
「お疲れさ……なに?一体」
 いつもにぎやか765プロ。本日の午後は、双子のけたたましい声から幕開きとあいなった。
 打ち合わせを終えて帰社した律子が見たものは、なにやら必死の形相でプロデューサーを
取り合う亜美と真美の姿である。
「あ、律ちゃん」
「ああ律子、ちょっと手伝ってくれないか、こいつら強情でな」
「律ちゃん助けてよ、真美が兄ちゃんをラチカンキンしようとしてるんだ」
「あ!亜美こそ兄ちゃんのことリャクシュユーカイしてるじゃんか」
「はいはいあんたたち、テレビで聞いた言葉を気軽に使わないの!」
 まずは二人をたしなめる。意味もわからず派手な言葉を使うのは子供の得意技であるが、
芸能人には舌禍というものがある。
「そういう悪い言葉、嫌いな人も多いんだからね。『いやな事言う双海亜美なんか嫌いだ』
とか言われたら困るでしょ?」
 亜美真美の倫理担当は油断がならない。そうしておいて彼女はプロデューサーに向き直り、
事情を訊ねた。
「なにやらかしたんですか、今度は」
「そんなに色々やってるワケじゃないだろー?」
「先月の私の収録、スタジオの部屋番号間違えてメモってたの誰でしたっけ?」
「……面目ない」
 彼は亜美と真美だけでなく、律子のプロデュースも担当している。忙しいのは理解している
ものの、これまでも彼のケアレスミスには苦労させられたことがある。致命的なものもないし
まあ笑える範囲であるが、もうちょっとしっかりしてくれたらと時々思うのだ。
「さ、話を聞きましょうか」
「あのね、亜美がね」
「真美が、真美が最初にね」
「あんたらは黙る!話を聞く順番は私が決めます」
「だってえ」
「心配しないでよ、どっちにも偏らないようにするから。十中八九プロデューサーが悪い
んでしょ?」
「おっおい律子?」
「抗弁はあとでどうぞ。プロデューサー、まず何が起きたのか教えてくださいよ」
 事と次第はこんな風。まず真美がプロデューサーと『一日デート』の約束をしたところ
から始まる。
「亜美も真美もここのところすごく頑張ってたろう?二人で交替とはいえ、アイドルランクも
上がってくると大して体を休めることはできない。半月前の新曲録り、真美の番だったんだが
ディレクターのせいで押しに押したじゃないか」
 新曲のPV撮影の話だ。律子も付き添っていたので知っている。真美も加えて合意の上での
事ではあるが、いくつかのシーンで納得が行かず、クランクアップがだいぶ遅くなってしまった。
あやうく児童福祉法違反である。
「私が亜美だけ先に帰して、戻ってきてもまだ撮影してましたもんね」
「全部終わって真美を送るとき、がんばったからご褒美ってことで約束したんだ。次にオフと
休日が重なる日、つまり明後日の日曜に二人で遊ぼうって。もちろん亜美にもちゃんと説明
して、わかってもらってた」
「本当なの?亜美」
「うん。それはホント。だけど」
「ストップ。いまプロデューサーが説明してくれます。ですよね?」
「亜美とは、先週のテストの話だ。二人とも仕事漬けで大変だってのはわかってるが、学業を
おろそかにはできない」
「義務教育じゃないですか、当然ですよ」
「水曜なんだが、二人でこっそり俺に相談に来てな。亜美が社会でひどい点取っちまって、
再テストになったんだと」
「テストはママに見せなきゃなんないし、かたいっぽだけじゃ変でしょ。だから真美が兄ちゃんに
相談して、亜美が再テストでちゃんとした点数とってから、二人でママに見せようって思ったんだよ」
 真美の補足を聞きながら、仏頂面の亜美を見つめる。
「なっさけないわね亜美、ちゃんと勉強してたの?」
257秋月政談(2/4):2009/02/06(金) 12:14:14 ID:HcVsg+rA
「うぅ〜」
「亜美は亜美で頑張ってたさ、な。で、再テストはしっかりやらなきゃってことで、本テストの
真美の点数以上取れたら――」
「二人っきりで遊ぼうな、って?」
 質問というより確認のため、プロデューサーの話を引き継いで聞いた。プロデューサーは
それが失敗だったんだという風にうなだれる。
「テストは今日だって聞いてたから、採点は週明けだと思ってたんだよ。そしたら再テストの
全員、目の前で採点して答案を返してもらったそうで」
「……まあ、再試験なら人数も少ないでしょうしね。じゃあ亜美、いい点取れたんだ?」
「うん、100点満点だよ!」
「おー、やったじゃない」
「で、その結果スケジュールがダブルブッキングに」
 委細承知。悪気がないのはわかるが、プロデューサーはもう少し慎重に行動すべきだった
のだ。亜美と真美のモチベーション維持には有効な手段であったろうが、余計な問題まで
背負い込んだ彼に思わず渋い声が出る。
「プロデューサーぁ……」
「そんな顔するなよ、俺だって色々説得したぞ。亜美の約束のほうが後だから次回にしようと
したんだが」
「次に兄ちゃんがまる一日遊べるの、来月の終わりじゃんか!亜美待ってらんないよ」
「でも亜美、あんたの場合赤点とったのがまず発端でしょ」
「だって、約束は約束だもん。真美だって『いいよ、亜美ファイト!』って言ってたもん」
「だけど真美の約束延ばして亜美とデートなんてダメーっ!」
「だから両側から手を引っ張るな!伸びたらどうする」
「シャラーップ!」
「ひ」
「うっ」
「うわ」
 さっきの状況に戻ってしまった。仕方なく声を荒らげて、こちらに注意を向ける。
「あんたたち、確かに約束はあるんでしょうけど『自分が、自分が』ってばっかり言ってたら
なんにもならないでしょ?二人ともプロデューサーのこと、大事なんじゃないの?」
「大事だよ、チョー大事!兄ちゃんには亜美のミセイジュクなツボミを一番に味わってもらう
んだもん!」
「真美だって!真美も兄ちゃんにヒミツのハナゾノをジューリンしてもらうんだー!」
「どこから聞いてきたのよそんな言葉ーっ!」
 出所不明なデンジャラスワードをまたも発見してしまった。どうやら意味は理解していない
ようだが、外部の者の前などでは絶対言わないようにしておかなければなるまい。
 律子は頭を切り替えて、亜美に顔を向けた。服にはかまわず事務室のフロアに膝をつき、
相手と目線を合わせる。
「亜美、ちょっと聞かせて」
「な、なに?」
「亜美の大事な兄ちゃんは、約束を破る人かな?遊ぶ約束を後回しにしたら、そのまま
ほったらかしにしちゃうかな?」
「ううん、そんなことないと思う」
「じゃあ、亜美がワガママ言って兄ちゃんと真美の両方を困らせるのって、亜美の大事な
兄ちゃんは嬉しいかな?」
「う……だ、だって」
「どう?」
「……嬉しくは……ない、よね、きっと」
 不安げな顔で答えるのに笑顔でうなずき、続いて隣の同じ顔を捉えた。
「真美」
「……はい」
「真美の大事な兄ちゃんは、真美が聞き分けなくして兄ちゃんの仕事の邪魔したら、『真美
よくやった』って思うかな?」
「……怒る、と思う。ううん、ひょっとしたら怒らないかもだけど、でも、今こうやってお仕事
できないでいると、兄ちゃんはザンギョー増えるんだよね」
「増えるわね、きっと」
「兄ちゃん、ますます疲れちゃうよね」
「そうね、疲れて疲れて、倒れちゃうかも」
258秋月政談(3/4):2009/02/06(金) 12:14:48 ID:HcVsg+rA
「それはダメだよ!」
 話の行きつく先に思い当たり、真美の顔色が変わる。
「亜美は?」
「亜美だって、ヤだ!」
「そうだよね。大事だ、大切だっていうことは、相手に無理させないってことでしょ。お互いに
欲しい欲しいって取り合うんじゃなく、真ん中に挟まれたプロデューサーを思いやってあげられ
ないのなら、実は大事になんか思ってなかったんだってことになるのよ」
「……」
「じゃあ亜美、真美、改めて聞くけど、あんたたちはどうしたらいいんだろう?」
 亜美も真美も、同時に黙り込む。考え込んでいるというより二人は、すでに出ている結論を
先延ばしにしているだけなのだ。下を向き、唇を噛み、ふと顔を上げて双子の片割れを横目で
見やる。目が合って慌てて視線をそらし、またうつむく。
「……わかった。あさってのデート、亜美にゆずる!」
 しばらくして、真美がこう言った。同じように口を開きかけていた亜美はぎょっとしたように真美を
見つめる。
「え、だ、ダメだよ!だって真美が先に約束したんでしょ?亜美があとから割り込んだんだから、
あさっては真美が行きなよ!」
「いいんだよ、亜美。亜美がテストすっごい頑張ったの、真美知ってるもん。満点とるなんて
すごいじゃん。今日それゲットしたんだから、すぐご褒美もらっていいって思うよ。真美はもっと
前から待ち慣れてるから、待つのが少しくらい延びたって一緒だよ」
「なに言ってるのさ、真美ずっと楽しみにしてたじゃんか。兄ちゃんだってもともと先の話って
思ってたんだから、亜美が待つよ!」
「いいってば、亜美が行きなよ」
「何回も言わせないでよ、真美が行きなってば」
「どうしてわかんないのさこの石頭!」
「なんだとこのわからずやー!」
「こらこら待ちなさーい!」
 途中までは黙って聞いていたが、たまらず律子は二人を引き離した。互いに身を引き合って
綺麗に終わるかと思えばこれだ。
「あんたたちってのはどうしてこう極端から極端に走るのよ!さっきまで自分が先だって言ってた
と思えば、今度は相手が先じゃなきゃダメだ?他にもいろいろやり方あるでしょうに」
「だってー」
 見事なユニゾンでの抗議に、律子は怒っているのがばかばかしくなった。要するにこの子らは、
ひとつの心を二人で分けて生まれてきたのだ。一人がAと考えたら、もう一人も同じにしか考え
られないのだ。二人が一緒でなければ駄目なのだ。
 されば、である。
「……わかった。プロデューサー、ちょっとスケジュール見せてください」
「え?ん、ああ」
 年も初めだというのにすでにくたくたの手帳を借り、この数日のスケジュールを確認する。
現在彼が担当しているのは亜美真美と律子だけで、今の話の間に彼女にはひとつのアイデアが
浮かんでいた。
「んー、今日は真美の当番でこれから番組収録、明日の土曜は亜美はレッスンスタジオで
振り付け、プロデューサーは私のドラマ撮影の立ち合いと、次回の脚本の件で私と打ち合わせ、
日曜が完全オフ、と。変更はなかったわね、よし」
「律子?」
 手帳を閉じ、プロデューサーも含めた三人におごそかに告げる。
「真美、あんたは日曜日、プロデューサーとデートしてきなさい。ただし、門限17時まで!」
「えっ?」
「それから亜美。トレーナーに連絡して明日のレッスンを17時からに変更してもらっておくから、
それまでプロデューサーとのフリータイム。朝から好きなトコ連れ回しちゃいなさい」
「ええっ?兄ちゃんは律ちゃんのお仕事あるんでしょ?」
「いま撮ってるシーンは私の出番がほとんどないから、プロデューサーなんかいなくたってどうにか
なるわよ。で、プロデューサー。私の打ち合わせは真美を帰した後、日曜の17時からお願いします」
「は?いや、俺は構わんが……お前が割を食っていいのか?」
「そうだよ、律ちゃんのお休みが減っちゃうじゃんか」
「大丈夫なの。いいから落ち付きなさい」
 一喝して三人を見回し、あらためて深呼吸する。
259秋月政談(4/4):2009/02/06(金) 12:15:27 ID:HcVsg+rA
「あんたたちが楽しく仕事できないってのは、私にとっても楽しくないのよ。亜美も真美も同じように
プロデューサーと遊びたいんでしょ?なら、できる限り遊べばいいのよ。仕事もあるから好き勝手
っていう訳にはいかないけど、お互い譲らないって言うんなら、真美」
 真美を指差し、続ける。
「もともとあんたがデートできるはずだった日曜日は、半日私が貰います。亜美も同じく、来月まで
待つはずだったデートをすぐ楽しんでちょうだい。そのかわり、あんたも半日だけね」
 人差し指を亜美に向けた後、手を返して自分の鼻先に振る。
「そして私は、オフの日曜日を半日仕事に振り替える、と。それぞれ半日ずつ損することになるけど
私は明日の撮影後に時間の余裕ができるし、亜美と真美は来月のオフをプロデューサーと好きに
過ごせばいいわ、ただし、仲良くね」
「うぁ。そっか、そうだね」
「えー、なんか律ちゃんすごいー」
「ふふん、これぞ三方半日損、ってわけ。さあ、わかったらあんたたちは出かける準備!これから
番組でしょ」
 律子がぱんぱんと手をたたくと、二人は顔を見合わせて大きくうなずき合った。
「うん、わかった!兄ちゃん、真美たち荷物取ってくるね!」
「待って、亜美も行くよ!それから兄ちゃん、さっきごめんね?明日とあさって、亜美と真美とデート
よろしくねーっ」
 転がるように駆け出して、二つの影はあっという間に事務所のドアを通り抜けていった。
「……ふう、大岡裁きかよ」
 事務室に二人きりとなって、プロデューサーはようやく息をつく。
「それも母子裁定と三方一両損の二本立てとは。律子すまないな、俺の口から『俺を思いやれ』とは
言えないし、実際のところ助かった」
「ふふ、プロデューサーは私と真美の相手でオフが潰れるんですよ。話に出てこないだけで一番
損するのはプロデューサーなんですから、謝ることないです」
「お前たちのためなら俺のプライベートなんざどうでもいいさ。みんなが楽しく仕事して、俺は
お前たちが輝くのを見守れる」
「キザ」
「まあな」
 軽く笑い、プロデューサーは席を立った。貸した手帳を律子から受け取り、あたりの書類を一掴み
カバンに放り込む。
「さて、では俺も行ってくる。今日はほんとにありがとう。今度埋め合わせさせてくれ」
「その言葉、待ってました」
 突如、律子の笑顔が変化した。事務机に投げ出していたバッグから自分の手帳を取り出す。
「実は、行きたいところリストアップしてあったんです。ビーフシチューの老舗『銀の櫓』、カキと
シーフードガンボが最高だって言う『ブルーオイスター』、佛跳牆の名店『明福飯店』、タンシチューで
有名な『SOUPSTOCK-EMPORIUM』、それから……」
「うわわっ?待て待て待て」
 立て板に水で出てくる高級レストラン。芸能界にいれば自然と詳しくなるそれらの店名は、いずれも
冬場には嬉しいスープとシチューの穴場揃いである。ただしもちろん、お値段もハイグレードな。
「お前には感謝してるよ、しかしそんなトコ行ったら俺の財布が大変なことに」
「大丈夫ですよ、一気にハシゴとまでは言いませんから心配は無用です。とりあえず明日と明後日、
夜はプロデューサーの体が空いてますから、これで二軒行けますよね」
 確かに、亜美のレッスンはトレーナーが行なう。土曜日の夕方、プロデューサーは亜美と別れた後は
事務所に戻り、仕事帰りの律子と鉢合わせとなることだろう。日曜は言うに及ばずである。
「ああもう、仕方ねえか。しかしおかしいな、三方一両損ときたらサゲは確か『多かぁ(大岡)食わねえ、
たった一膳(越前)』、と控え目な話で決まっていると思ったが」
 プロデューサーが負け惜しみをつぶやく。律子はふふんと笑った。
「甘いですね、プロデューサー。小学生とはいえ乙女心をもてあそんだ罪は重いのですよ」
 まったく、この人は乙女を……都合三人もやきもきさせたのを解っているのだろうか。
「なんてこった、お奉行様にはかなわないな。して俺の罰はいかに」
 この気安さを見るに、解っていないのだろう。
 ならば遠慮は要らぬとばかり、秋月リッチャンノカミ答えて曰く。
「もちろん獄門もの。ですから、シチュー引き廻しってわけですよ」





これにて一件落着。
260秋月政談(あとがき):2009/02/06(金) 12:16:13 ID:HcVsg+rA
終了です。ありがとうございました。
「政談」とは講談のジャンルでして、上記の話は文中で書いていますが大岡政談が元ネタです。
内容のほうも有名どころで補足の必要はありませんわなw オチだけ煙が出るほど頭をひねり
ましたが、こんなのが関の山でございますorz

おそまつさまでした。また何か書けたら参上いたします。
261創る名無しに見る名無し:2009/02/06(金) 12:22:36 ID:mjwkDOof
>>260
GJ!
おもろかったよー
262創る名無しに見る名無し:2009/02/06(金) 13:01:30 ID:SljZG9th
>>260
乙。上手すぎる。
263創る名無しに見る名無し:2009/02/06(金) 13:16:02 ID:bVmmNyOe
>>260
これほどの書き手がいようとはな。
一風変わった創作スレならではかもしれんな。
GJ!!
264創る名無しに見る名無し:2009/02/07(土) 00:53:11 ID:7Zl6Mimm
シチュー引き回しかぁ……。


くれぐれも悪徳記者のパパラッチにはご注意を。
265創る名無しに見る名無し:2009/02/07(土) 00:57:19 ID:ua0mGN6n
翻案も練り込み次第でまるで別の新しい話に、だな
でもこれ三方一両損というよりゼロからPとの食事の約束2つ作った律子の漁夫の利だろと
あと、外れていたらスマソだけど序文のスタイルと本文のふいんきを見るに
これもしかしてくのいちの人のリベンジ?
266秋月政談の人:2009/02/07(土) 09:02:14 ID:kZjJkmit
文章量を1/4にしたらみんながやさしくなったよ、とメモメモ。

お察しの通り『くのいち雪歩』でお邪魔したレシPです。先入観なく読んでもらう方が
楽しいと思うので基本、投下時は名無しです。
本作はリベンジってほどのつもりはありませんが、化け猫の人がいいヒントくれた
ので久しぶりにこのスレ向けのブツが出来上がったというところ。

かの人はたとえばアイマスを「ゲームとして」とか「キャラの内面が」とかではなく、
「アイドル、綺羅星の如く居並ぶ」という設定の第一印象が気に入ってからSSに
仕立てたってことなんでしょうし、つまり実はこのスレの存在意義に合った作品
だったのだと思います。
内容がコレジャナイロボ(本人も言ってるから書くけどw)なのは個々の作品として
評価する必要はあるのでしょうけどね。ああ俺>>233です。人にフリとかオチとか
講釈できる文章じゃねえなあハァ。

ご覧のとおり人のこと言えませんが、読み手も書き手も少し「後発のスレだから」
「創作発表の為の板だから」と『このスレならでは』を意識しすぎてるんじゃないか
と思います。個性ありきでそれに合う作品を集めるんじゃなく、集まった作品が
かもし出すものが個性なわけで、まずは投下作品を増やして、しかる後に方向が
練りあがるのを待つのが本当はいいのでしょうね。
267創る名無しに見る名無し:2009/02/07(土) 15:07:49 ID:DXpHniP7
>>266
どっちかというと住人が入れ替わったんじゃないか?
随分音沙汰ないスレだったし。

とりあえず、何でもいいからまずは俺も書いてみるかなぁ。
268創る名無しに見る名無し:2009/02/07(土) 18:34:00 ID:3R5F99Wv
>>266
GJ!!楽しく読めました。
1/4だからじゃなく、読みやすかったからじゃない?
亜美左官と真美大工、P大家に秋月越前守みたいな内容だったら、
散々言われてたはず。
269創る名無しに見る名無し:2009/02/07(土) 21:42:57 ID:zI5GE25+
トツってみたその翌日にあがってるなんぞ、なんたるたいみんぐw

あの事務所だといかにもありそうなシチュエーションを翻案で組み立てられてて
その上でオチもそう来たか、と言えるぐらいきれいに持ってこられてます
文章も変わらず非常に丁寧で読みやすく、元ネタから講談調を意識したかと思われる
一部堅い言い回しもあってもそれがまったく邪魔になってない。この辺りは技だなーと
長さについての言及も、たぶん前回の参考と展開からまとめまで
淀みなく繋がるのがちょうどそのぐらいだったのかなと

亜美真美の奪い合いでケンカ、譲り合いでケンカも容易に場面が想像出来ますし
うまくまとめつつ実はちゃっかリツコな流れも、腰に手を当て満面の笑顔で
「シチュー引き廻しってわけですよ」が目に浮かびます
270創る名無しに見る名無し:2009/02/07(土) 22:15:30 ID:zI5GE25+
やっぱり書かなきゃうまくなんてならない以上、書いてどこかで読んでもらうしかないわけで
そういう意味ではここしばらくの流れはちょっと厳しすぎないかなと思っていたり
この辺りはまあ自戒も含めて
とはいえ、きっちり読んでいろいろ言ってくること自体はこれはこれでと思う部分もあったり
・・・むずかしい

>>267
なんでもいいから、書いてみようはやっぱ出発点だよね
自分でもなにか書いてみたくはなるけど、進む時間の割に分が全く進まないw
271創る名無しに見る名無し:2009/02/08(日) 00:09:33 ID:XoNkETVy
ぶっちゃけこのスレの最初のほう流れが創発板ぽくなかったもん
272創る名無しに見る名無し:2009/02/08(日) 01:57:56 ID:OR7uwz5B
>>268

「てやんでい、こちとら江戸っ子、亜美のおちりからするりと抜け落ちたってえことは、ハナっから
亜美には縁のなかったぱんちゅってこった。拾ったもんはお天道さんが導いてくだすったわけ
なんだから3枚とも穿いちゃあくれねえか」
「ふざけるのも大概にしやがれ、真美だって持ち主の判ってるぱんちゅを黙っておちりに合わせる
ような曲がった性根は持ち合わせちゃいねえんだ。了見の狭いことをほざく暇があったらこの
ぱんちゅ、クマ虎パンダと3枚が3枚とも耳を揃えて持っていきやがれ」
「うむ、双方の言い分相判った。このぱんちゅは市中を騒がせたかどで没収とするが、自らの
尻を離れたぱんちゅは拾った者が使えと言う亜美、本来の持ち主に返すべしと言う真美、どちらも
見上げた心の持ち主である」
「「はは→」」
「ついてはその方らに褒美をとらそう。私のぱんちゅをこうして脱いでこれらに足し、亜美に2枚、
真美にも2枚」
「あ、シルクだ。これペパーミントグリーンてゆーんだよね、真美」
「ほら、脇んとこヒモだよ亜美、さすが律ちゃんオトナだねー」
「3枚なくした亜美、3枚拾った真美はそれぞれ2枚貰って1枚の損、この私も1枚の損、これぞ
三方一ぱんちゅ損だ。これからもアイドル稼業に励むがよい」
「「はは→」」
「これにて一件落着!」
「お奉行さま、ありがとうございます。みごとなお裁きと美しいぱんちゅ、胸に染みましてございます」
「プロデューサー、あなたは打ち首ですから」
「律ちゃんヒドス」



なるほど、これは叩かれそうだ。くわばらくわばら。
273創る名無しに見る名無し:2009/02/08(日) 02:05:09 ID:XoNkETVy
これは逆にネタとして面白いwwwwwww
274創る名無しに見る名無し:2009/02/08(日) 04:42:26 ID:Pnx+L8Zl
なんかここまで来ると一発ネタとしての妙にわかってる感があるなw
275創る名無しに見る名無し:2009/02/08(日) 18:19:34 ID:G2Rc1qj6
小判の代わりにぱんちゅを用いてちゃんとネタを表現できてるから叩かれやしないさ
もしなんのひねりもなく小判を使ってたら叩かれてたんじゃないかな
276創る名無しに見る名無し:2009/02/08(日) 22:14:11 ID:cW7kZYRe
今日は。レシPさんの言う
「化け猫の人」でございます。
大岡政談ネタが出たところで、
僕も古典落語の焼き直しを。
桂米朝師匠も得意としている
「天狗裁き」を基にしました。
それでは、ごゆっくりどうぞ。
277創る名無しに見る名無し:2009/02/08(日) 22:17:21 ID:cW7kZYRe

黒井裁き

 ここは、芸能事務所・765プロダクションの社屋でございます。
 今、所属タレントの一人が早朝のラジオ出演を終え、事務室のソファで仮眠を取っております。黄色いロングヘアをだらりと下げまして、脳天に後れ毛を立てましたこの娘――名前を星井美希と申しまして、若手のホープでございます。
 一方、そのそばの机で、熱心にそろばんをはじいている少女がまた一人。
 横長の細縁眼鏡をかけまして、栗色の髪を二本の三つ編みに結いなし、脳天に二本の後れ毛を立てております。名前を秋月律子と申しまして、表向きは所属タレントでございますが、簿記・珠算共に二級という技能を活かし、計理の手伝いもしております。

「ちょっと、美希! そんな寝方してたら風邪引くわよ。いつの間にか、毛布を床へ落としちゃって……自分まで転げ落ちなかったのが幸いね。
ほらほら、毛布を掛けてあげるわよ……全く、鼻から提灯出したり引っ込めたりなんかして……お祭りの夢でもみてるのかしら? 難しい顔をして、何やら寝言をつぶやいて……そうかと思えば、にたりと笑っちゃってるし。
きっと、楽しい夢をみてるんでしょうね……それにしても、既に十時を回っちゃって……三時間も寝りゃ、仮眠としては充分でしょうに……これ、美希、起きなさい!」
「ん? ムニャ、ムニャ、ムニャ……あー、よく寝た」
「何を呑気なこと言ってるの? 既に十時を回ってるのよ! もうそろそろ、次の仕事の打ち合わせでしょ?」
「え!? プロデューサーさん、まだ来てないけど……」
「直に来るんだから、しっかり起きて待ってなさい……それはそうと」
「何、何?」
「さっき、一体、どんな夢みたの?」
「ゆ、夢!? ミキ、そんなもんみてないけど……」
「嘘おっしゃい! 難しい顔をして、何やら寝言をつぶやいて……そうかと思えば、にたりと笑っちゃってたし。あなた、一体、どんな夢みたの?」
「だから、ミキは、夢なんかみてないもん」
「みてたでしょ! さあさあ、話してごらんなさい」
278 [―{}@{}@{}-] 創る名無しに見る名無し:2009/02/08(日) 22:18:17 ID:AF7fV2Ia
 
2792/4:2009/02/08(日) 22:18:28 ID:cW7kZYRe
「話せるわけないでしょ! ミキ、別に、夢なんかみてなかったから……」
「まあ、わたしにも話せないなんて……幸い、この部屋にはわたしたちしかいないわ。怪しいやつに聴かれる心配はないわよ」
「聴かれるわけないでしょ! 話せるわけもないんだから……」
「話せるわけもない!? それなら、無理やり話させましょう。このそろばんで、向こう脛を思いっ切りしばいて……」
「やめて! ミキ、痛いの大嫌い!」
 わあわあ言っておりますところへ、美希の担当プロデューサーがやってまいりました。
「お前ら、何を騒いでるんだ?」
「おはようございます。実は、美希が……」
「ほーお、夢の内容を明かしてくれないのか。俺も聴きたくなってきたぞ……おい、美希」
「やだあ、プロデューサーさんまで!」
「嫌がらなくてもいいんだよ……お前、どんな夢みたんだい?」
「だから、ミキは、夢なんかみてないもん」
「みてないはずはないだろう。さあさあ、俺に聴かせてみろ」
「聴かせられるわけないでしょ! 聴かせる話がないんだから……」
「律子は社長室にいるぞ。さあ、美希、話すなら今だ」
「話せるわけないでしょ! ミキ、別に、夢なんかみてなかったから……」
「とことん頑固なやつだなあ……美希、俺はお前の何なんだ?」
「プロデューサーさんだよ」
「プロデューサーだ? そうだろう! そんな俺にも話せないのか?」
「当たり前でしょ! ミキ、夢なんかみてないから、話すことなどできないもん」
「よーし、そこまで言うのなら……俺は今日限り、プロデューサーを引退するぞ」
「やめて! ミキを見捨てないで!」
 続いてやってまいりましたのは、765プロダクションの社長秘書・音無小鳥でございます。
「小鳥さん、ちょうどいいところへ!」
「プロデューサーさん、どうしました?」
「実は、かくかくしかじかで……」
「えっ、美希ちゃんが、夢の内容を話さないですって!?」
280 [―{}@{}@{}-] 創る名無しに見る名無し:2009/02/08(日) 22:19:25 ID:AF7fV2Ia
  
2813/4:2009/02/08(日) 22:20:24 ID:cW7kZYRe
「そうなんだよ。律子にも言わず、俺にも言わず……もう、こうなったら、頼みとするのは小鳥さんばかり」
「ああ、そうですか……ちょっと、美希ちゃん!」
「小鳥、ミキに何の用?」
「わたしを呼び捨てないように……一体、どんな夢みたの?」
「その質問、もうやめてちょうだい!」
「美希ちゃんが答えるまではやめられません」
「答えられるわけないでしょ! ミキ、別に、夢なんかみてなかったから……」
「美希ちゃん、どこまで意地を張るの? 律子さんが聴きたがり、プロデューサーさんが聴きたがった夢の話……わたしにならば語れるでしょ?」
「語れないもん! 語れる話がないんだから……」
「いや、幾らでもあるはずです! そんなに言いたくないのなら、この会社から追い出しますよ」
「やめて! 追い出されたら、ミキ、困っちゃう!」
 昔のタレントを真似て、駄々をこねておりますところへ、765プロダクションの社長・高木順一朗がやってまいりました。
「美希君、何を騒いでいるのかね?」
「わたしから代わって申し上げます。実は、かくかくしかじかで……」
「なるほど、口に出せないのか。相当うなされたようだな。小鳥君、よくぞ伝えてくれた!」
「ねえ、社長、ミキはこれからどうなるの?」
「その件については、隣の部屋でわたしが話そう」
 なんてんで、美希を連れて社長室に戻りまして……
「美希君! 幸い、この部屋にはわたしたちしかおらんぞ」
「社長、だから何なの?」
「律子君が聴きたがり、小鳥君が聴きたがり、君の担当プロデューサーさえ聴きたがった夢の話……わたしにならば聴かせられるな」
「聴かせられるわけないでしょ! 聴かせる話がないんだから……」
「美希君、さっきも言ったとおり、この部屋にいるのは君とわたしのみ。さあさあ、話すなら今だ」
「話せるわけないでしょ! ミキ、別に、夢なんかみてなかったから……」
2824/4:2009/02/08(日) 22:21:43 ID:cW7kZYRe
「美希君! 君は、まだ、話せるはずのことを『話せるわけがない』と言い切るのか?」
「当たり前でしょ! 夢なんかみてないんだから、訊かれても答えられないの!」
「おのれ、わたしを愚弄しおって……皆の衆、懲らしめてやりなさい!」
 高木社長の号令で、どこからか黒服の連中が一斉に飛び出したかと思いきや、美希にクロロフォルムを嗅がせ、外へ連れ去ってしまいます。やがて、見知らぬ建物の一室で、彼女は目を覚ましました。
「あれれ? さっきの部屋と、何かが違ってるような……ちょっと、そこの人!」
「そこの人とはけしからん。わたしは、ここの社長だぞ!」
「で、でも……ミキの知ってる社長じゃない」
「知らないで当然だ。わたしは、高木君の頼みで、君を引き抜いたんだからな」
「ミキは、野菜じゃないってば」
「そうではない。765プロダクションから、この961プロダクションへ移ってもらったんだ」
「えーっ!? ここって、芸能事務所なの?」
「そうだ。うちの看板娘として、君を活躍させたいんだが……その前に一つだけ、聴いておきたい話がある」
「何、何?」
「765プロダクションの連中が、事務所を挙げて聴きたがったという……君のみた夢の話だよ」
「いい加減にして! 今朝、寝てたのは確かだけど……別に、夢なんかみてないもん」
「君、君! ここは765じゃないんだよ。わたしにならば話せるだろう」
「話せるわけないでしょ! ミキ、別に、夢なんかみてなかったから……」
「星井君! 夢なんて、人間たれしもみるもんだぞ。君も、さっきの睡眠で、何かの夢をみてたはずだ。さあ、今すぐに打ち明けろ!」
「だから、打ち明けられないの! 夢なんかみてないんだから……」
「おのれ、わたしまで愚弄するか……それなら、こうしてくれるわい!」
「うっ! いっ、息が……」
 黒井社長の両腕に、喉仏を押しつぶされ、意識をなくした次の瞬間。

「ちょっと、美希! 一体、どんな夢みたの?」
283創る名無しに見る名無し:2009/02/08(日) 22:35:33 ID:7B37jhz+
また面白い話を持ってきたな。多少強引な気もするがGJ。

これって要するに夢の内容を問われる夢ってことだよね? で、それがまた夢で…
284創る名無しに見る名無し:2009/02/08(日) 22:39:51 ID:ig4ZIxyL
…何だろうこのもやもやした気持ち。
285創る名無しに見る名無し:2009/02/09(月) 04:21:13 ID:j6ng7nip
筋立てが落語の翻案なのはいいんだけど語調や文体がそれに引きずられすぎかな
筋は使うにしても一度自分の言葉、自分の文章に直して書いてみたらどーだろ
これだとなんとなく影響元からの丸写しに見えちゃう

筋以外の部分を一旦取っ払って見直してみれば、もっとこなれた形になるんじゃないかな
286創る名無しに見る名無し:2009/02/09(月) 21:44:58 ID:ype6Kb/2
なんか美希が終始責め立てられまくりでカワイソ(´・ω・`)スな印象を受けた

落語だから元ネタは面白い話なのかな?
だとすると原文の面白さというか笑いの部分みたいなのがあんまり感じられなかったかなぁ…ぶっちゃけでスマソ
287創る名無しに見る名無し:2009/02/09(月) 22:05:08 ID:Am2CBSmW
>>279
> 「まあ、わたしにも話せないなんて……幸い、この部屋にはわたしたちしかいないわ。怪しいやつに聴かれる心配はないわよ」

絶対小鳥さんの盗聴器&カメラがあると思ったw
288創る名無しに見る名無し:2009/02/10(火) 17:28:09 ID:wBZpqXfV
レシPでございます。
来てくれた人も含めみなさんありがとうございます。アイデア山ほど持ってんだから
なんか書いて早く書いてw
文章量についてはまあ、得意な方面に持ち込んだとは自覚しております。シーンの
変わらないシチュエーションコメディ形式、大好きですハイ。
三方一ぱんちゅ損も叩かれなくてほっとしております。



>黒井裁き

あんたとは趣味が合いそうだw
いや面白うございました。原作ゲームを知らないでこのくらい書けるなら、早くゲームに
ハマってくれと言いたくなるw。

1.美希が夢を見る→律子が知りたがる→Pがやってくる→小鳥さんの手を借りる→社長
登場→黒井にさらわれる、というキャラ選定はオミゴト。ここの流れがイカニモなので、
うんうんそうだよなと読み進むことができた。
2.ただ、(天狗裁きもこの人数だからこうしたのだろうけど)小鳥さんは割愛してもよかった
かも。夢に興味を持つ展開が各人一緒(原典もそう)だから、噺ならともかく文章にすると
少しくどく感じます。さらに黒井社長は立場的にも原典的にも、高木社長の指示ではなく
「偶然このタイミングで美希をさらった」方が俺ならしっくりくるです。
3.化け猫の時もそうだったけど各キャラの話し言葉が微妙にソレっぽくない(ほんとに
ゲーム知らないんならよく調べたと思うけど)。スパイスとして効果的に使えればいいん
だろうけど、キャラクターの口調や行動は二次作品のキモなので、ここが違ってると
大概違和感を覚える(284、285が言うとおり)。
4.あ、わたくし人に感想書く時は心に棚を作っておりますので「お前が言うな」とか言わないで
くださいヘコむからorz

>>283,>>286
原典『天狗裁き』はWikipediaにあらすじが載ってる。だいたいこのまんま。
ストーリーで笑わせる話じゃなく、天丼(繰り返し)の面白みと、市井の人からお偉い皆様
までつまらんことに興味を持つと止まらなくなるのは一緒、っていうおかしさを笑う話(しかも
夢オチ)なので、アイマスに限らず翻案された文章を読むより落語として聞くほうが多分
面白いと思うよ。
289創る名無しに見る名無し:2009/02/11(水) 14:53:27 ID:7cLK91YW
>>288
>原作ゲームを知らないでこのくらい書けるなら、
>早くゲームにハマってくれと言いたくなるw。

僕もぜひやっておきたいのですが、
いかんせんビデオゲーム店に行く
機会もないし、貯金額もなかなか
増えないので、箱○を買う機会も
巡ってまいりません(T_T)

P.S. どこかに美希のおにぎりネタを
   仕込んでもよかったかも。
   化け猫の時だって、結局雪歩の
   穴掘りネタは使わなかったし(T_T)
290創る名無しに見る名無し:2009/02/14(土) 10:32:15 ID:kHRAhAiB
なんだかしばらく来ない内に、活発なことになっていたみたいですねえ。よいよい。

>>289
おにぎりとか穴堀りとかの、いわゆるテンプレネタは、ある意味両刃の剣ですよ。
キャラがちゃんと再現できてればネタとして通用しますけど、キャラの再現性がイマイチだと、むしろ読んでいてしらけます。

あと、翻案を原作に忠実にやるのはいいですが、おかげでキャラの動きが余計に不自然になってる気がします。
上の「秋月政談」みたいに、ストーリーの筋立てだけを利用するなりで、もっとキャラをそれっぽく動かして欲しいのですが、
やはりそのために元のゲームを知ってもらわないと。それが最大の解決策だと思います。
というより、批判の言い訳を「知らない」で済ませるのは、勘弁して下さいというのが本音です。


ちょっと言葉が厳しくなってすみません。ここまで言うからには名乗ります。
>>58>>157の、みなとです。
お詫びに、近日中にまた新作上げます。

と、宣言でもしないと書かないからな、俺・・・。
291創る名無しに見る名無し:2009/02/14(土) 12:11:50 ID:jclwBRMH
>>290
wktk
292創る名無しに見る名無し:2009/02/14(土) 14:05:08 ID:YUYfAbuL
このスレはコテはOKでよくね?
作品投稿する人に限るけど
293創る名無しに見る名無し:2009/02/14(土) 14:32:02 ID:jclwBRMH
>>292
えっと、コテ雑談って意味?288とか290みたいな感じかな?
「コテ外さず雑談する人に目くじら立てない」って意味なら了解。
書き手の生の声好きだ。
294創る名無しに見る名無し:2009/02/14(土) 14:35:11 ID:YUYfAbuL
>>293
いやコテ雑談じゃなくて、作者コテのつもりで言った。
どうせ名乗るなら名前欄に書こうぜって
295創る名無しに見る名無し:2009/02/14(土) 14:49:41 ID:jclwBRMH
>>294
こりゃ失礼。33のトリ表示みたいな奴か。
うん、266みたいな意見もあるし本人次第だろうけど、そうだね。
俺もあらかじめ作者判ると嬉しいほうだなあ。

テレ隠しに仕事行ってくる。
296創る名無しに見る名無し:2009/02/14(土) 16:44:18 ID:YUYfAbuL
まぁ書いてる人の意見っていうことで、コテ雑談にするのもありかもしれんがね。
もうちっと周りの意見がほしい。
297創る名無しに見る名無し:2009/02/14(土) 19:21:17 ID:lVFa3Ed2
あのー 投稿時は名前欄はタイトルに使いたいかなーって
298創る名無しに見る名無し:2009/02/14(土) 23:38:04 ID:UJIATLBY
未来館みたいな雰囲気をおkとするかどうかだなあ…
299創る名無しに見る名無し:2009/02/15(日) 12:45:14 ID:rko35jp3
名乗りたければ名乗る程度でいいんじゃないか?
わざと匿名で書いているかもしれないし、詮索するのは野暮。
名無しコメだから軽視というのも間違ってる。
未来館はコテ同士の馴れ合いに見えてた時もあったと思う。
300(0/4):2009/02/16(月) 02:42:47 ID:0EfNvwZ9
もうちょっと早い時期に書きはじめていたらなぁと思いつつ、投下。
301(1/4):2009/02/16(月) 02:43:16 ID:0EfNvwZ9
「だから、いつの日か必ず、また私をプロデュースしてください。
 その時が来るまで、私はあなたのこと、ずっと忘れません。
 ずっと、待っていますから。

 …それでは、またお会いできる日を願って。」

 何度も書いては消した最後の一言。
 もうちょっと、もうちょっとだけ付け加えたい言葉があったのだけれど、
 私はその言葉を続けなかった。
 その言葉を口にしてしまう資格が、自分には、ないと思ったから。

 アイドル、と、プロデューサー
 そうじゃない。芸能界で生きていく一人と一人、それもちょっと違う。
 お互い信じあった相棒として。パートナーとして。
 今の私には、彼にその言葉を送る資格がないと、そう思った。

 だから、私は……


302(2/4):2009/02/16(月) 02:43:51 ID:0EfNvwZ9
「律子さーん、二番にOM事務所の木崎さんから電話でーす」
「わかりましたっ!」
 昼下がりの765プロ。 窓の外からはひっきりなしに聞こえる車のエンジン
音。山積みの書類。電話。春香が転んだ騒音。

 あれからどれくらいの日々が経っただろう?
 綺麗とは言いがたい雑居ビルの一室にあった765プロは、今や大きなビジネ
スビルの一フロアを占領する大手の芸能事務所。
 候補生と言えば聞こえがいいが、要は名前置いてるだけで事務所でぶらぶら
してるのが大半だったみんなも、彼のプロデュースを経て初週オリコン10位内
があたりまえの人気アイドルになっている。

 ベストパートナーだと思っていたのは私だけで、彼にとってのベストパート
ナーは、どうも、私じゃなかったのかも。

 そんな僻みめいたことを思うのも、あの後の芸能活動がいまいちうまく回ら
なかったせいなのかも、しれない。
 さよならコンサートで私が犯した大失敗のことがあるから、その後は楽には
いかないことは覚悟してたけど。
 年間単位のファンクラブ、期間更新してくれなかった人が大半だった。
 CDはすぐにプレス数を減らされた。
 TV局やラジオ局からかかってくる電話は私以外の誰かの出演交渉ばかり。
 華やかな舞台との縁がどんどん薄くなり、そして芸能誌に私の名前が載らな
いのが当たり前になってきて。

 一時期はほとんど自主休業状態だった「事務員兼任」、こちらのほうが私の
仕事の本筋になってきた。
 アイドルの旬は短い。人気が落ち目になったのであれば、地方で最後の一稼
ぎを適当に切り上げて普通の暮らしに戻るのがベストの道だとは、判っている。
 けれど、私には地方を回るほかにも、手元の仕事があった。
 いちばんはじめ、彼と出会う前の事務員に戻る道。
303(3/4):2009/02/16(月) 02:44:20 ID:0EfNvwZ9
 事務員だって私の夢につながる道のひとつだから。
 アイドル稼業自体、私の夢にとっては有用でも必須ではないものだから。
 そう思ってはじめは事務員復帰に張り切ってみたけれど。
 いいえ、張り切った振りをしてみせていたけれど……。

 いつだったか、事務所でその日の仕事の片づけをしていたとき。
 小鳥さんと私だけが残った事務所で。

「律子さん、お茶、入りましたよ」
「ありがとうございます。 休憩ですか?」
「そうですね、律子さんもそろそろ帰らないと、ご家族が心配される時間です
 しね」
「すみません、……まだ、事務処理終わってないのに」
「いいんですよ。 律子さんがいてくれるおかげで、私、ずいぶん楽になりま
 したから。 休日出勤しなくても仕事が回るようになりましたし、これでち
 ゃんと彼氏もつくれるかなー、なんて言っちゃったりして。あはは」
「小鳥さん、それ冗談になってないですよー?」
「♪クラスの友達思い出せない、彼氏も出来ない、ってね?」
「あはは、もうー。それじゃまるで、小鳥さんが独り身なの、私たちのせいみ
 たいじゃないですか」

 その一言で、小鳥さんの表情から笑みが消えた。
304(4/4):2009/02/16(月) 02:44:46 ID:0EfNvwZ9
「そうですよ、律子さん。 それだけ、私はみんなに賭けているんです。
 私だけじゃない、社長も、……プロデューサーさんも。
 でも、だからどうだとは思わない。自分の信じた人のために、全力で頑張っ
 てるんですから。
 その結果、一生独身で終わったとしても、きっと後悔しない自信はあります」
「あ……」
「それより、ずっと言おうと思ってたことなんだけど。
 律子さんは、ほんとうに、全力で頑張ってますか?」
「わ、私は、そりゃあ、時折ミスもありますけど、それでも頑張って仕事はし
 てるつもりです」
「……」

 鋭い言葉に半ばしどろもどろになりながら返事をする私に、小鳥さんは追い
討ちをかけようとはしなかった。
 ただ、一言、

「ごめんなさい、ちょっと私も疲れてるみたいですね。今日はもうこれで終わ
 りにしましょ」

 そう、いつもの笑顔に戻ってしまった……。



 今日も、事務員の仕事が始まる。
 765プロのメールチェック、765プロ事務部のメールチェック。郵便物の確認。
 そんな中、私の個人用アドレスに、久方ぶりにメールが来ていることを、ま
だ、私は知らない。 そう、「彼」からのメールだ。
 そして、私にとっての本当の「物語のはじまり」が、ようやく訪れたのだと
いうことも、まだ私は知らなかった。 
305(5/4):2009/02/16(月) 02:45:35 ID:0EfNvwZ9
序章的な感じで。 次回は明日にでも。
306創る名無しに見る名無し:2009/02/16(月) 09:12:25 ID:Y2owXZ4z
これはwktk
307創る名無しに見る名無し:2009/02/16(月) 13:29:27 ID:ewZcNK2E
お、これは・・・律子でプロデュース再チャレンジの流れ?
SP発売も迫りつつあるタイミングでこれは期待せざるを得ない
つかみから少し重いものを突きつけつつも、書き口があまりくどくないためか
入り込みやすい文なのもいい感じ。続き楽しみにしてる
308創る名無しに見る名無し:2009/02/16(月) 17:51:44 ID:PgYYSnzr
差し支えなければ何回くらい投下する予定か聞いてもおK?>作者

連載中に投下するのは控える
309創る名無しに見る名無し:2009/02/16(月) 18:43:18 ID:kp/7cOgm
>>308
確かに過疎スレだがw、できたSSの投下を待つ必要まではないのでは?
んー、でも数回で終わる予定だったらそのほうが読みやすいか。

>>305
律ちゃんはエンド後、裏方に回る選択肢もあるから目が離せない。
読みやすいし律ちゃん物ってとこも好きなので楽しみにしております。
しばらく続けるつもりなら(個人的には短編でも)タイトルつけてくれたら嬉しいかも。
310ユメノナカヘ 二話(0/6):2009/02/17(火) 02:04:56 ID:JLksWm42
昨日の続き的なもの。
311ユメノナカヘ 二話(1/6):2009/02/17(火) 02:05:30 ID:JLksWm42
 765プロ・会議室。
 賑わうビジネス街の喧騒から切り離された、静かな場所。
 私がここに主役級人物として足を踏み入れるのは、いつ以来だったっけ?
「彼」と別れてから、「会議室」と名のつく場所に来るのはほとんど事務員としての
立場ばかりだったような気がする。
 
 まだ誰も来ていない、ほんとうに静かな場所。
「もう、相変わらずこういうトコはルーズなんですね……」
 小声で呟いてみる。 重厚な会議デスクの天板をかるく人差し指で撫でる。
 冷たい感触。かすかに指先に白いものがついている。

 給湯室から濡らした台拭きを持ってくる私。
 机を拭いている私。
 お茶の数は、議事録の提出は、録音は必要か否か……
 すっかり発想が事務員になってしまっていることを、否応なく思い知らされてしま
う瞬間。

 ふと、部屋の隅のほうに視線がさまよう。

「あ……まだ置いてたんだ、これ」

 会議室の真ん中を堂々と占拠するぴかぴかのデスクやチェアに比べると、みすぼら
しくも思えてしまう古びた椅子。
 765プロがこの建物に移ってくるまで、会議室に置いてあった椅子。
「そのうち使うかな」と廃棄せずにとっておいたまま、会議室の隅で埃をかぶってい
くばかりの、この椅子。
 小さな雑居ビルの2F、なんとか空けたような「会議室」という建前の部屋で、この
椅子に座って、私は「彼」と最初のミーティングに臨んだんだっけ。

 最初だから、新人だから、出鼻に一発かましとかないと、という気負いもあったの
かどうか今となってはよく思い出せないけれど。
 ずいぶんとあの時の私は、「彼」に言いたいことを言っていたような気がする。
 いかにも業界慣れしていない、洗練とかスマートとかの形容詞が似合わないタイプ
の典型にしか思えなかった「彼」が、今や業界きっての敏腕プロデューサー。
 あの時彼に言いたいことを言ってた自分、秋月律子は、今や半ば業界から忘れられ
かけの実質事務員。
 
 ずいぶん、差、開いちゃったな……。

 その一言が口から漏れかけたとたん、視界が妙に歪む。
 冗談じゃない、こんなことで愚痴は漏らしても目から水なんて漏らせるもんですか。
 ずずっと鼻をならし目元を拭う。



 おかしいのは、わかってる。
 はじめてこの椅子で「彼」を迎えたときの私は、もっと強かったもの。
312ユメノナカヘ 二話(2/6):2009/02/17(火) 02:06:19 ID:JLksWm42
 存在に気づいてしまった、これも何かの縁よね、と呟きながら、台拭きですみっこの
椅子も拭き直す。
 ……座面を拭きなおしただけで、白かった台拭きが真っ黒になっちゃうとは思わなか
ったけれど。 もう、どんだけこの会社の社員ってズボラ揃いなんだろ……。いくら使
わなくなった椅子だからって、捨てないなら捨てないでちゃんと掃除くらいすればいい
のに。要らないっていうのなら捨てるのもスペース効率考えたら必要だし。

 ひとつ椅子を拭き終わり、台拭きを一度洗いに戻る。
 最初に持ち出したときは真っ白だった台拭きを、なんとか薄鼠色には戻せたかな、と
いうあたりで再び会議室へ。

 さぁ、次の椅子でも拭こうかしら、と本来の用事をすっかり忘れかけて次の行動を決
めようとしていたそのとき。
 会議室の、扉が開いた。



「悪い、待たせたな、律子」

 懐かしい、不思議に懐かしい、声。
「彼」との仕事付き合いが切れてから、もう何年も経ってしまったようにすら思ってしま
う、それくらい懐かしい声。
 
 あの日、あのとき、再会を約束して別れたあの夜から。
 長い間、そう、本当に長い間、待っていた。
「彼」と会えるのを。「彼」と組めるのを。
 もういちど、「彼」との日々が始まるのを。

 ずっと、ずっと、待っていた。
 そこは正直に、認めたい。

 だから、私はせいいっぱいの強がりで、

「もう、遅いですよ、プロデューサー!」

 そう、言うつもりだった。
 
「ごめんなさーい、おそくなっちゃったの!」

 脳天気な声が響き渡る、その一瞬前までは。
313ユメノナカヘ 二話(3/6):2009/02/17(火) 02:06:48 ID:JLksWm42
「……で、……新人……そういう……」
「彼」と一緒に会議室にやってきた子。
 もちろん、私は彼女を知っている。 事務員が本業にこれだけ近づいてきていたら、事
務所の所属候補生だって知らないでいられるわけがない。

 星井美希。例によって社長が「ティンと来た!」でスカウトしてきた候補生の子。
 もちろん彼女の書類も一通り目は通している。整った顔立ちに印象的な大きな瞳。高級
品ではないにしても小奇麗な靴に私服と、育ちはそれなりにいいような感じなのだけれど。

 私が彼女の名前を覚えていた理由は、その志望動機記入欄の内容だった。
 動機を問われているのに「やってみようと思いました」。
「必死になるのとかはちょっと苦手だから、あんまそうならないカンジで、うまくいくと
いいな」
 ……話法とか時制とかいろんな文法用語がアタマをぐるぐる駆け回り、「この子は……
ちょっと……」と書類を見ながら思わずつぶやいてしまったのを、私は覚えてる。

 まぁ、志望動機はみんな(私も含め)トンチンカンなことを書いていたような気もする
から、そこは差し引いてもいいんだけれど。



「……律子? 聞いてるか?」
「ぇ、ええ、はい、聞いてます!」
「疲れてるのか?」
「い、いいえ。 大丈夫です」
「それならいいんだが」

 まずい。 私の集中できなくなるパターンだ、これ。
 予想とまるっきり違う事態に突入しちゃうと、どこから手をつけていいのかわからなく
なってしまういつもの失敗パターン。
 落ち着け、落ち着け、私。 あの日、ドームの観客の前でやらかした失敗を、今度は観
客二人の場で繰り返すっていうの? 落ち着け、落ち着け、私。

 予想との違い、それはもうはっきりしてる。 この子、星井美希の存在。
 どう違うか。「彼」は私をプロデュースしに来てくれたと思ってたけど、そうじゃなか
った。
 ううん、それは私の勝手な思い込み。「彼」は私をプロデュースしに来たんじゃなくて、
 ……あれ? 何をしに来たんだっけ? 「彼」は。

 そうだ、そのことを「彼」は今話しているんだ。



 そんな当たり前の結論を導くまでにこれだけ逡巡しているあたり、私も相当ショックだ
ったのだろう、と思う。
314ユメノナカヘ 二話(4/6):2009/02/17(火) 02:07:20 ID:JLksWm42
「……というわけで、俺の今度の仕事は君たち二人のユニットのプロデュースになったわ
けだ。美希、律子、よろしく頼む」
「はいなの。 ミキ、難しいこと覚えるのニガテだから、そこんとこよろしくなの」
「判った、判った。 ……律子?」
「……はい。 よろしくお願いします」

 口だけが勝手に動く返事。

「んー、律子元気ないの? ミキと一緒で寝不足?」

 そんな私の心中を多分これっぽっちも判ってないだろう美希が、私の顔を覗き込んでく
る。腰まである金髪が光る。

「……そういう、わけじゃ、ないけど」
「そうなの?」
「そうなの」
「ふーん、そうなんだぁ」

 何が判ったのやら、こくこくと頷いている。

「おーい、二人とも、俺を無視すんなー」
 情けない声色でつぶやいている「彼」も居るけれど。



「んじゃ、まずは自己紹介からだな」

 定番のセリフを「彼」が口にする。

「俺が君たちの担当プロデューサー。変態とかセクハラとか言う噂はほとんど事実に反す
 るので信用しないよーに。事実は君たちの目と耳と口とその他もろもろ全身で確かめて
 もらいたい、以上」
「なんだか、本当みたいだね。その言い方だと」
「おーけー、ナイスつっこみだ、美希。 ……律子?」
「……はいはい」

 人の気も知らないで。

「そいじゃ、美希、どうぞ」
「ミキなの。 星井美希、14歳。 おわり」

 さすがに今度は私がコケた。

「ちょ、ちょっと、美希、何かほかに言うことが……」
「んー、でも自己紹介とか紙にも書いたし、めんどーだもの。
 ……あ、ムネ、大きいよ。 Fカップ♪」
「さっきの会話の後でそーいうことほいほい言わないのっ!」
「んー、だめだった?」
「……」

 あ、アタマが……
315ユメノナカヘ 二話(5/6):2009/02/17(火) 02:07:49 ID:JLksWm42
 ミーティングは淡々と進む。
 ユニット名は明日までに候補を考えてくる。
 集合時間に遅れるときは必ず連絡を入れる。
 曲選択と衣装選択は「彼」に腹案があるとのこと。
 その他、その他、淡々と進む。

 私が口を挟まず、美希がうとうとしているので淡々と進むのは当然なのだけれど。
 っていうか、寝てるの、この子?!

「美希、美希」
「……ふぁい、なの……」
「あー、律子、無理に起こすな。 なんだか眠いらしいからな」

 新人の子に怒るのは大人気ないと、どこかでセーブしていた私だけれど。
 さすがに「彼」のその一言には、キレた。

「……冗談もほどほどにしてください! 眠いらしい、でミーティングで寝させるプロデ
 ューサーが居ますかっ?! それも新人の子を?!」

 しかし、「彼」はどこ吹く風で、

「んー、まぁ、ここに居るぞ。 それに、ベテランだったら寝てていいのか?」
「そんなこと、言ってません! 新人の子に悪いクセつけさせて、他の会社の人の前でそ
 れをやらかされたらどーするんですかっ!? その子にも、ウチにも仕事、来なくなっ
 ちゃうじゃないですか!」
「まぁ、そこらへんは判ってるんだよな、俺も」
「だったらっ!!」

 そんな私の大声のせいなのか。
「んー……おはよぉ」と、間の抜けた声で美希が目覚めをご丁寧にも知らせてくれる。

「ま、起きたってことで、続きいくぞ、続き」
「はいなの!」
「……」

 納得いかない。 いろんな意味で、納得いかない。
316ユメノナカヘ 二話(6/6):2009/02/17(火) 02:08:35 ID:JLksWm42

 納得いかないなら、どうするか。
 納得いくようにすればいい。

「プロデューサー! 質問」
「ん、なんだ、律子」

 その日はじめて、私は「彼」の言葉をさえぎって発言したのはもうミーティングも最後
の最後だった。

「私はこんなんだし、美希もこんなんだし。
 プロデューサーはこのユニット、成功すると思ってるんですか?!」
「どうなんだろうね? こればっかりはなんとも言えないさ。
 ただ、全力は尽くすよ。 俺に出来る限りのことは、ね」
「……だったら! 美希!」
「ふぁい?」

 また寝かけてたな。

「あんた今日から特訓開始! まずは対人礼儀作法! つーか寝ない!」
「えぇぇえええぇええーっ?! ミキ寝なかったら死んじゃうよぉ……」
「仕事中は、ね」
「……わかったの、律子」
「それと、呼び捨て禁止」
「へ?」
「とりあえず私がいいって言うまで」
「ええーっ?!」
「だってアンタ、この調子だったら他所の偉い人にも全部このペースで話しそうだもの」
「だって、ミキ、いつもこんな調子だよ? 急に違うことやれっていわれても出来ないの」
「出来るようになるのっ!!!」
「ぅ……怒っちゃやなのぉ、律子」
「さん!」
「……さん」
「……まぁ、まずはそこからね。
 しばらく見ないうちにプロデューサーも頭のネジ外れかけてるみたいだし、もう黙ってら
 んない。明日からビシビシいくから、覚悟しといてよ? 美希、あとプロデューサー?!」

 猛り狂わにゃやってられっか! もーっ!!!

「ぅ、律子……さん、怖い」
「美希、ここは耐え忍べ。律子は大概こんなんだ」
「鬼軍曹の人なの?」
「そうだ、よく判ったな、美希」
「そこっ! 私語禁止ぃっっ!」
「や、やめろ律子、ハリセンはやめるんだぁっ!」
「きゃーなのぉぉっっ!!」




 とんでもない子とデュオを組むことになってしまった私は、
 でも、意外と悪い気はしなかった。
 大声で「彼」を怒鳴り散らして、でも新しい日々に歩みだしている。
「私、なにしてるんだろう」 胸の中の自分の問いに、ひさしぶりに正面向いて答えが言え
る一日を、過ごせたのだから。 
317ユメノナカヘ 二話(7/6):2009/02/17(火) 02:12:14 ID:JLksWm42
続きはまた明日。
の、前に……

>>308-309
タイトルつけました。 これで他の方も作品投下して大丈夫でしょうか?
投下は6話くらいを予定しているのだけれど、一日一話ペースでいけるかどうかは副業次第なもので……
気にせず投下していただければ、私としては嬉しいです。
318309:2009/02/17(火) 08:04:45 ID:iGCSle9B
>>317
面白かった。GJ!
第一話のダウナーな感じがどうなるかと思ってたけど律ちゃんにも張り合いが
出てきたようでよかった。

タイトルもありがとうございます。色々予感させるいいタイトルだと思います。
今後もよしなに。wktkさせていただきます。
319創る名無しに見る名無し:2009/02/17(火) 11:54:00 ID:6IRu9CIM
>>317
返答d。自分のネタも含めてしばらく様子見るわ
明後日には流れも変わるだろうし

連載頑張れ。感想は最後に書かせてもらいます
320創る名無しに見る名無し:2009/02/17(火) 18:41:10 ID:62UUQEow
>>317
文章もキャラについても、読んでいて気に引っ掛かる部分が一つもなく、すいすい読めます。
だから内容の割に悲壮感もなく、テンポもいい感じ。読みやすいです。
ストーリーについての感想は完結を待とうと思いますが、文章がこなれているだけに、期待は膨らみます。
321創る名無しに見る名無し:2009/02/17(火) 23:40:18 ID:IFTicQbP
冒頭見てもう少し悲壮でウェットな話になるかと思ったら
いい意味でひっくり返ったw
完璧に教育係です。同時にやりがいが見つかった律っちゃんの実にイキイキとしてること
いやこのプロデューサー明らかに一石二鳥じゃ物足りない狙いの策士だわw
322創る名無しに見る名無し:2009/02/18(水) 09:12:10 ID:ByvyxLTA
いかん。SPをムーンの律子のストーリーモードから始めてしまいそうだw
323創る名無しに見る名無し:2009/02/21(土) 23:55:14 ID:/h8dHwlH
保守age
324ユメノナカヘ 三話・前(0/7):2009/02/22(日) 00:35:25 ID:eiAzPbUT
大変遅くなってしまってすみません。
続きです。
325ユメノナカヘ 三話・前(1/7):2009/02/22(日) 00:36:01 ID:eiAzPbUT
 美希と私の初顔合わせの翌日。

 ……いったい、「彼」は何を考えてるのだろう?
 私、秋月律子を何度もそう自問させる「彼」の態度は、この日も変わら
なかった。



「来週は、オーディションを受けようと思う」

 あっさり言い放つ「彼」。
 きょとんとしている美希。
 唖然としている、私。
 そんな午後の事務所。

「ち……ちょ、ちょっと、どういうつもりなんですか?! 私はともかく、
 美希はまだ未経験の新人じゃないですか! まずはユニット内の意思疎
 通を図るとか、レッスンに費やすとか、他にやることがあるんじゃない
 ですか?!」
 机を叩いて「彼」に詰め寄る私。

 そんな私に、「彼」はあっさり言い放つ。

「これ、美希のデモテープ。で、美希、こっちが律子のデモテープ。衣装
 は事務所の好きに使って構わないぞ。流行はDa-Vi-Vo。曲は美希にはこ
 の前教えた『THE IDOLM@STER』で準備してある」
「え? ええ?」
「……?」
「それじゃ、来週の17:00に○○テレビ3Fの第四会議室に集合、な。当日は
 ここからTV局までの送迎はやってる余裕ないんで、美希と律子はそれぞ
 れ準備を忘れないように。夜は遅くなると思うから親御さんにはこっち
 から連絡しておく。じゃ、俺は帰るから後は二人で相談してくれ」
「えーっ?! プロデューサーさん、もう帰っちゃうの?!」
「帰っちゃうの。 じゃ、美希、頑張れよ」
「ううっ……ズルいのぉ」

 そのまま本当に会議室を出ていってしまった「彼」。
 涙目な美希。
 あっけにとられたままの私。

 この日のミーティングは、そんなかたちで幕を閉じた。

「どうしろっていうのよ、こんな指示で……」
「ズルい、ズルい、プロデューサーさんズルい!」
「……美希、あんたとはじめて意見合ったわね」
「律子、さん、もそう思うよね! 自分だけ先に帰って寝るのってズルい!
 ミキたちも帰って寝ていいよね? てゆーか、それが普通だよね?!」
「『帰らない』のが、本当の意味で『普通』かな……あと美希、問題点はも
 しかして『寝る』か否かってことだったりしないわよね?」
「そ、そんなこと無いもん」
「目が泳いでるわよ」

 ……頭が痛い。
326ユメノナカヘ 三話・前(2/7):2009/02/22(日) 00:36:42 ID:eiAzPbUT
 とりあえず、「彼」が今のところ何もする気がないのは理解できた。
 どういうつもり?! とか、何がやりたいのよ?! とか、そういう怒りの
言葉をぶつけたいところだけど、肝心の「彼」はあっさり逃亡してしまってい
る。
 そしてこの場に残っているのは、不満げに不安げにほっぺたを膨らませてい
る美希だけ。私は気を取り直して美希に向かい合う。

「美希、よく聞いて」
「うん?」
「今の状況、わかってる?」
「今の……状況? プロデューサーさんが帰っちゃった」

 まぁ、それは確かに……そうだけど。

「私たち、来週オーディションを受けることになったのよ。勝てばTV出演。通
 らなかったら、この一週間がパー」
「おー……でぃしょん?」
「歌うの。二人で。審査員の前で。
 他の事務所からくるタレントたちと歌で勝負するのよ」
「それはミキも判るけど……」
「で、他のタレントより上手く歌えなかったら、ダメ」
「!? 負けちゃうの?」
「そう」
「で、負けちゃったら終わり?」
「この一週間が無駄になるわね。 それだけ上を目指せる可能性が減っていく」
「むー……」

 お、なんだか難しい顔して悩んでるわね。
 私は言葉を続ける。
327ユメノナカヘ 三話・前(3/7):2009/02/22(日) 00:37:12 ID:eiAzPbUT
「他の事務所から来る子たちは、みんなそれなりに専門のレッスン受けて来てる
 子ばかりよ。私たちみたいに『デュオ結成、翌週いきなりオーディション』な
 んてのはたぶん一組もないはず」
「……そうなの?」
「大抵は、数ヶ月間はみっちりレッスン漬けね」
「そうなんだぁ……」

 その声色、ちょっと気になった私はさらに質問を続ける。

「レッスン漬けの日々、……嫌?」
「嫌。難しいことばっか言われて出来なかったら嫌な顔されるんじゃ、ミキも嫌
 になっちゃう。ミキ、楽しくやりたいの」
「……じゃ、今回はレッスンなしで勝負できるんだから、ちょうどいいんじゃな
 い?」

 カマをかけるつもりで言った言葉だけど。
 美希は、ちょっと意外な反応を返してきた。

「そんなことない! 練習してる子と勝負しなきゃいけないんだったら、ミキた
 ちも練習してなきゃ負けちゃうの!」
「じゃ、練習、する?」
「でも難しいのは嫌なの」

 即答する美希。 私は思いっきりコケた。 
 ……ここらへんは当分、話をしても無理かな……。

「ま……まぁ、ともかく、いま私たちの戦力になるのは流行情報と、あとあなた
 と私の存在だけ。歌う曲はアイツが指定していったけど、まぁ流行にあわせた
 選曲でしかないし。一週間、つきあってもらうわよ、美希」
「律子、さん、つきあえって言うけど、ミキ何すればいいの?」

 ……そっか。この子、まだ何も知らないんだ。
 こんな子に課題曲だけ覚えさせて後はトンズラこいた、裏切者の「彼」はとり
あえず忘れよう。今は、とにかく、美希を戦力にするのが最優先ね。

「大丈夫、私に任せて。 美希が来週のために出来ることも、いっぱい教えたげ
 るから。ついてくるのよ?」
「難しくない?」
「……たぶん」
「じゃあ、ミキ、律子……さんのこと、信じてみる!」

「彼」に逃げられてから不安げだった美希が、はじめて笑った。
 私もその笑顔につられて笑いつつ、内心はこの先どうすりゃいいか、考えをま
とめるので精一杯だったけど。

 ハッタリ? 美希も自分も騙さなきゃ、やってられませんって。 こんな状況。
328ユメノナカヘ 三話・前(4/7):2009/02/22(日) 00:38:13 ID:eiAzPbUT
 私たちが受けるオーディションは「アイドルの泉」。新人紹介が中心コンテン
ツの、深夜放送のFM番組。いくつかのFM局ネットで放送される番組だから、全国
とまではいかなくてもけっこう広範囲に私たちの名を売ることは出来そうだ。
「彼」が勝手に申し込んでしまったオーディションだけど、それなりには考えて
くれているらしい。

 番組自体がそういう構成だから、合格枠は広い。なんとかその枠に潜り込むた
めには有象無象の新人たちの中で、ぱっと審査員の目を引く必要がある。
 流行はDa-Vi-Vo。曲は「THE IDOLM@STER」、となると目を引く衣装となれば個
人的にこれ、「グリッターインゴット」。キラキラのラメがダンサブルな動きを
いっそう引き立てる衣装だ。
 Da一点突破を目指す方向で固める。 うん、悪くない……はず。

 そこまで考えて、翌日私は765プロに足を運んだ、のだけれど。



「あ、律子……さん!」

 事務所に入ってきた私に、満面の笑みで、美希。

「衣装のこと、ミキも一晩考えてきたんだけど。
 これ可愛いでしょー? ね、これ、これにしよーよ!」
「……何、これ」
「チアガール。でね、でね、これとこれとこれとこれ!」

 中学生の美希は、私より学校が終わるのが早い。
 放課後すぐに出社して、今まで衣装室でためすがめつしていたのだろう、髪の
毛や肩にホコリがついてるのを軽く手ぼうきではたきおとしてあげつつ、美希の
差し出した衣装を確かめる。
 チアガール。ピンクのポンポン。星のイヤリング。天使の羽根。宝石アンクル。

「……ねぇ、美希」
「どう? ミキが選んだの」
「んーと。 まず、私が来るより先に来て衣装選びしてたの、とてもいい心がけ
 だとは思うわね」
「♪」

 顔中笑顔だらけ、といった感じで喜ぶ美希。
 こんだけ嬉しそうにされると、褒め甲斐あるわね、この子。
329ユメノナカヘ 三話・前(5/7):2009/02/22(日) 00:38:44 ID:eiAzPbUT

「で、ひとつアドバイス。イヤリングも羽根もアンクルも、全部イメージがばら
 ばらな感じ、しないかしら?」
「……そうかも」
「今回、私も美希もライバルたちよりは準備は万全じゃないわ。そんな中で審査
 員の人たちに評価してもらうためには、ぱっと目を引くものがないといけない。
 そう、思わない?」
「んー……なんとなく、わかるかも」
「あと、もう一つ。 美希、舞台の上にあがって歌って踊った経験、ある?」
「ないよ」
「そんな中で手にかさばるポンポンつけて、スカートも短いチアガールの衣装で、
慣れない舞台にあがって。 どうなると思う?」
「んー……?」

 思いっきり眉を寄せて首をかしげて悩んでいる。
 派手な外見の割に、素直な子なのかも。

「目の前を邪魔する大きなポンポン。下からじーっと見てる審査員。スカートと
 っても短い。……どう?」
「……あんまり集中できないかも」
「そうよね。下にブルマーはいてるって言っても……ね?」
「うん……ミキも、なんか嫌」
「ま、これがもうちょっと慣れてきたら、わざと見えるか見えないかくらいのギ
 リギリの衣装で勝負するっていうのもあるんだけどね。
 慣れないうちはそういう小細工はしないほうがいいと思うし、私、そういうの
 あまり好きじゃないしね」
「ミキも同感。
 ……じゃ、ミキが選んだのってダメダメだったんだ……」

 今度はかくんと首を落として、がっかりした顔。
 これだけ表情ころころ変わる可愛い子って、きっと異性から見ても可愛く映る
んじゃないかな、とか考えたりしたのは置いておく。

「でも、アクセ選びは悪くないかも。どれか一つ、美希が思いっきり押し出した
 いイメージのアクセ、選んでくれる?」
「どゆこと?」
「いいから、いいから。イヤリングか、羽根か、アンクルか」
「んーと……じゃ、イヤリング! お星様でスターって感じだもん」

 そのまんまじゃん。

「じゃ、……これと、これと、これね」

 私が代わりに選んできたのは星のブローチ&グローブ。

「あ、こんなのあったんだぁ」
「これで揃えれば、全体的にまとまり出てくると思うわ」
「アンクルは?」
「キラキラ光って目立つから、アレはそのまま採用」
「ん、了解なの!」

 美希、あんたの目のほうがよっぽどキラキラしてるわよ。
 そんな軽口を叩きたくなるくらいに、彼女は嬉しそうだった。



 こんな調子でひとつひとつ準備を終えていく私たち。
 
 そして……当日。
330ユメノナカヘ 三話・前(6/7):2009/02/22(日) 00:39:49 ID:eiAzPbUT



 一緒にTV局までやってきた美希と私。
 それに気づいた様子で、エントランスホールから男が出てきた。
 言うまでも無い。「彼」だ。

「お、とうとうここまでこぎつけたみたいだな」
「……どちら様ですか?」
「ミキ、知らない人とは口利かないの」
「……手厳しいな、おい」
「担当ユニットの初週にいきなりオーディション組んで、その上に準備まで本人
 任せにするプロデューサーなんて知りません」
「同じく、なの」

 これくらいは、言ってやってもいいと思う。

「すまん、悪かった。今回はちょっと俺がワガママ言って組んだユニットだった
 もんでな、初週はどうしてもこうしなきゃいけなかったんだ」
「変な言い訳ですね」
「だよねー、律子、さん」
「むむむ……すっかり壁が出来てしまった」
「壁を自分から作ったのはどこのどなた様でしたっけ?」
「ミキ、プロデューサーさんに見捨てられたの、一生忘れないもん」
「えーい、もう! 事情があったって言ってるだろ!
 わかった、もう、なんか一つ要求聞いてやっから、機嫌直せ、いや直してくれ
 ってば。ごめん、済まん、悪かった、律子、美希」

 ちょっとだけ、もっと突っぱねてみようかな、とも思ったのだけれど。
「彼」が必死に頭をさげてる姿が、ちょっとだけ「昔」を思い出したから。
 あの頃の余裕も何もなく必死だった「彼」に、ちょっとだけ戻ってくれたよう
な気がしたから。
 ちょっとだけ勘弁してあげようかな、とも思う。

「……じゃ、今日のオーディション、勝てたらプロデューサーの奢りです。
 私と美希と、それぞれ一回ずつ。行き先は異論禁止拒否禁止。
 ま、プロデューサーのお給料じゃ可哀想だから関東平野縛りで」
「えっと、つまりどーいうこと?」
「どこでも好きな場所に好きな時間、連れてってもらうの。
 で、食べたいのを何でも注文してOK。 ただし関東地域限定」
「ん……じゃ、ミキもそれでOKなの! そしたらプロデューサーさんのこと許し
 てあげる」
「あ、ああ、……ありがとう。
 じゃ、美希もさっきの言葉は取り消しってことで……」
「それはダメなの。一生覚えておくのは変わらないの」
「……そうですか」
「プロデューサー、女の子をがっかりさせた罰です。 反省してください。
 あと、今度同じことをやったら、本気で怒りますからね」
「覚えとく。……すまん」



 本当に、「彼」とこんな会話、どれだけしてなかっただろう。
 こんなことで浮き立つ自分の心が、ちょっと、悔しかった。
331ユメノナカヘ 三話・前(7/6):2009/02/22(日) 00:41:38 ID:eiAzPbUT
大変長くなってしまってすみません。
続いています。



……ここ、1レスあたりの書き込み限界ってかなり多いんですね。
コピペ分量の計算間違えました。すみません。
332創る名無しに見る名無し:2009/02/22(日) 01:32:45 ID:WGZQ29Qw
期待
333創る名無しに見る名無し:2009/02/22(日) 01:42:12 ID:WGZQ29Qw
律子と美希もらしくて良いね
Pの投げっぱなしジャーマンも意図がありそうだな
334創る名無しに見る名無し:2009/02/24(火) 10:08:41 ID:it7TJ4dp
これって、SPプレイする前に書き始めたんだよな・・・。
SPだとソロしかプロデュースできないから、美希は結果的に移籍せざるをえなくて、箱だと複数ユニットでプロデュース可能だから、765プロにいられた・・・。
その理由付けがここでされているとしか思えない。
335創る名無しに見る名無し:2009/02/24(火) 20:54:37 ID:E1LqmYVL
>>334
言いたいことがよくわからんが、深読みしすぎかあるいは言いがかりだと思うぞ。
別に美希は箱○版でデュオ・トリオ専用のキャラだったわけでもなかろうし
ここで書かれているものはバンナムが示す見解とは直接的に何ら関わりはない
336創る名無しに見る名無し:2009/02/24(火) 21:28:11 ID:t3sicwag
>その理由付けがここでされているとしか思えない



           . ィ
._ .......、._    _ /:/l!
 :~""''.>゙' "~ ,、、''‐'、|         _   またまたご冗談を
゙、'、::::::ノ:::::::_,.-=.  _〜:、         /_.}'':,
 ``、/:::::::::__....,._ `゙'Y' _.ェ-、....._ /_゙''i゙ノ、ノ
 ,.--l‐''"~..-_'.x-='"゙ー 、`'-、 ,:'  ノ゙ノブ
"   .!-'",/  `'-‐'') /\ `/ でノ-〈
 .-''~ >'゙::    ‐'"゙./  ヽ.,'   ~ /
   //:::::       ',    /    ,:'゙


……というのは置いといて、俺は>>334の様には感じなかったよ
箱版の設定がこうでSP版の設定がこうだったから、このSSはこういう位置づけなんだろう!と決めるのも無粋だ
(そういう風に作者が見せようとしているのなら別だけど)

ただまあ、美希の立ち位置が現在の公式でもどっちつかずになってしまってるのは否めないかな……
337創る名無しに見る名無し:2009/02/25(水) 02:11:13 ID:zdL4aoMU
はじめまして。某所で雪歩ネタやってるんですが、こちらの方にも一度投下してみたく書いてみました。
何というか、周りの皆様の作品との温度差が激しすぎてアレですが、温かい目で見て頂けると嬉しいです・・・
で、小鳥さんネタなわけですが、なぜか今更バレンタインネタです。本当はホワイトデーネタやるつもりだったんですが、変な方向にシフトしました・・・

かんっぺきにラブコメってるんで、苦手な方はスルーお願いします。
そこまで長くありません。では、少し失礼して・・・
338Only for you! (1/5):2009/02/25(水) 02:13:30 ID:zdL4aoMU
一定の発展を遂げた街における駅前と言うのは、開発されているのが常である。
冬真っ盛りの2月のある日。駅前通りと称されるその場所は、水曜日の真昼間にも関わらず熱気に包まれていた。
その日は大安で、そして休日である。建国記念日と称されるその日、駅前通りを行く世の女性たちの眼は、その約半数が血走っていた。
彼女らにとって建国云々など大層どうだって良い話で、その血走った視線の先に待つのは大手のデパートであったり、洋菓子店であったり、様々であった。
それが製菓会社の陰謀であることなど、彼女らには最早周知の事実である。だが、それがどうした。どうしたと言うのだ。

2月中旬の祝日。それは学生のような、決戦前日に時間の取れる人間にはただの祝日でしかなかった。
しかしながら20代中盤から30代前半に掛けて、お勤めを果たしている方々、つまるところOLなどと呼ばれる人種にとっては、そうはいかない。
彼女らには、この日しかなかった。この日は本番前に許された、最後の戦場なのである。ここでの戦果で、今後の戦況が大きく変化するに違いないのだ。

そんな訳で、バレンタイン間近なのである。音無小鳥は、やはりそこに居た。



バレンタインデー当日の朝。友引である。
出勤と同時にロッカールームへと駆け込み、遭遇した事態に焦りを覚えていた。
玄関を開けた途端に遭遇したのは、ターゲットであるプロデューサーさんへと群がる3人の少女。
高脅威目標は現在彼がプロデュースしている千早ちゃんだけだと踏んでいたのだが、甘かった。これまで彼が受け持ってきた子達までも、彼へのアプローチを仕掛けていたのである。
とにかく、落ち着こう。深呼吸を行い、制服に袖を通し、ブツは取り合えずロッカーへとしまっておく事とする。
このタイミングでのアタックは非常にまずい。数あるうちの一つと処理されるのは問題なのだ。
事務所へと通じるドアノブへと手をかけ、何でもない風を装ってデスクへと近づいていく。あの子達は、どうやら渡し終えているようだった。

「おはようございます、プロデューサーさん」
「あ、おはようございます。小鳥さん」

彼のにこやかな笑顔にいつも通りキュンとさせられ、その手元にある4つの包みに一抹の不安を感じた。
・・・あれ?・・・よっつ?

「あの、プロデューサーさん。そのチョコレート・・・」
ちょっと待って。さっき居たのはやよいちゃんと、春香ちゃんと、千早ちゃんと・・・
「ああ、春香と千早と、やよいと・・・あと、あずささんが」
「あずッ・・・」

変な声が出た。何ででしょうねー、なんて能天気に言う彼を見て思う。何だこのタラシは、と。
しかし、あずささんの登場はまずい。非常にまずい。主に、スタイルとか。あと、年齢的にも。
339Only for you! (2/5):2009/02/25(水) 02:14:48 ID:zdL4aoMU
「へ、へぇ・・・モテモテですね、プロデューサーさん」
平常心、平常心と胸中で繰り返すが、その胸中は穏やかではなかった。
「はは。でも確かに、担当アイドルに受け入れてもらえるのは嬉しいですね」
そう言う彼の顔は本当に嬉しそうなもので、なんと言うか、ただの事務員がこの人にチョコレートなんて渡すのは惨めな気がしてくる。
少なくともこのタイミングで渡すことはどうにも難しそうなので、そうですか、とだけ答えて仕事に取り掛かった。仕事の内容なんて、全く入ってこなかったが。




「何だか元気無いですね、プロデューサー」
オーディション会場へ向かう途中、千早の一言でようやく現実に復帰した。ぼうっとしていたようだ。
いや、大丈夫だよと声を掛け、ペットボトルのお茶を呷る。
「小鳥さんからチョコレートを貰えなかったのが、そんなにショックなんですか?」
むせた。全力で。咳き込みながら、千早の姿を捉える。笑っていた。
「図星ですか」
「・・・大人をからかうんじゃない」
まあ、図星なわけだが。

「チョコレートを渡した身としては、複雑ですね」
拗ねた表情をされ、言葉に詰まる。すまん、とだけ答えるが、ここでの「すまん」はまずいんじゃなかろうかと考える。
悶々としているうちに、また笑顔で「冗談です」なんて言われるので、何ともはや、女の子は怖い。

「大丈夫ですよ。小鳥さんがくれない筈がないじゃないですか」
「いや、でも、どうも事務所を出る前に怒らせちゃったみたいでなぁ」
朝の出来事である。いつも通りに挨拶し、チョコレートの話を少ししたらそっぽを向かれてしまった。そういえば、あずっ、とか、てづっ、とか言っていたのは、何だったのだろうか。
何かあったんですか?と尋ねられた。まあ、こんな話題でオーディション前の緊張が解れてくれるなら安いもんだ。大体のことを掻い摘んで話す。
決してアドバイスを貰おうとか、そういう魂胆ではない。決して。

「それはプロデューサー、小鳥さんも渡せないですよ・・・」
「そうなのか?」
話によると、貰ったチョコレートの事を嬉々として話していたのがいけないらしい。

「でも、やっぱりお前達から貰えるのは嬉しいからなぁ。プロデューサーとして」
「そう言って下さると渡した甲斐がありますが、時と場合をですね・・・というか、私達も空気を読まないといけなかったんですね」
千早が後悔するような表情になる。
「いや、さっきも言ったけど、お前から貰えるのはやっぱり嬉しいからさ。来年も、よろしく頼む」
「・・・そういうのがいけないんだと思います、プロデューサー」
何がだ?と尋ねたが、もう知りませんと拗ねられたので後のことは聞けずじまいだった。
340Only for you! (3/5):2009/02/25(水) 02:16:19 ID:zdL4aoMU


彼が千早ちゃんを引き連れて事務所へ戻ってきてから15分が経ち、しかし未だにブツは渡しそびれている。
目前のコーヒーメーカーはクツクツと音を立てながらのんびりと真っ黒の液体を吐き出していて、その間にも刻一刻と定時が近づいてきていた。
「小鳥さん」
はぁ、と溜め息を吐く。どうせ彼に渡したところで、大した結果はもう望めそうに無い。いつもは滅多にしないネガティブ思考が頭を駆け巡る。
「・・・小鳥さん?」
いっその事、無かったことにしてしまおうか。そうだ。惨めな気分になるくらいなら、自分で食べてしまえば
「小鳥さん!」
「は、はい!?」
驚いて振り向くと、彼の姿があった。いつの間に。大丈夫ですかと心配されたので、何でもないですと答えておく。
気付けば彼がそこに居たので、驚き以外での心臓の高鳴りが凄かった。

「あの、朝のことなんですけど・・・」
そう言う彼は、何か言い難そうにえっと、とか、その、とか言っていた。
「その・・・すいませんでした!」
「はぇ?」

今日3度目の変な声が出た。何を謝られているのかわからなかったが、彼は美しい角度で謝罪の体勢を披露していた。

「え、えっと、な、何がですか?」
訳がわからずそう問うと、彼は顔を上げて説明し始める。朝、他の女の子から貰ったチョコレートのことを、嬉々として私に話したことへの謝罪だそうだ。
「いや、俺もこんなこと謝るのも変だな、と思うんですが・・・」
そう言う彼はそっぽを向き、さっきと同じようにえっと、とか、その、とか言っていた。
「それが原因で小鳥さんが怒ってしまったのなら、やっぱり謝っておこう、と」
「は、はぁ・・・」
別に怒ってはいないが。色々複雑なだけで。
「それで、その・・・」
何か言い難そうにあー、えー、と彼が繰り返し、私はそんな彼から目が離せないでいる。

「も、もし小鳥さんからチョコレートを貰えるなら、凄く嬉しいな、なんて・・・」
341Only for you! (4/5):2009/02/25(水) 02:17:10 ID:zdL4aoMU

コーヒーメーカーの、くつくつという音が聞こえてきた。
呆然として、目を見開いた。数秒の間を置いて顔が真っ赤になったのが、自分でもわかった。
次の瞬間には、給湯室を飛び出していた。向かうは、ロッカールーム。白の紙袋を取り出して、勢いよく自分のロッカーを閉める。
給湯室に戻ると、ぽかんとしている彼がそこにいる。恥ずかしくて、それ以上顔は見られなかった。

「ど、どうぞ!」
真っ赤であろう顔を伏せたまま、彼に紙袋を突き出した。まさか、こんなにも乙女ちっくな渡し方をする羽目になるとは。それもこれも、全部この人のせいだ。
「あ、ありがとうございます」

両手から、紙袋の重さが離れていく。
その途端に、事務所から拍手が沸き起こった。おめでとうございますー、とか、そんな類の声も聞こえてくる。
なんだなんだと真っ赤な顔で辺りを見回すと、事務所の方々はなぜかスタンディングオベーションの真っ最中だった。
よくよく考えれば、そんなには大きくない、しかし定時前でアイドルを含め十数名の人達がひしめく事務所から給湯室は丸見えで、
同じく静かな事務所内に、そこそこ大きな声は筒抜けであった。
その後の記憶は定かではないが、あまりの気恥ずかしさに卒倒したことだけは鮮明に記憶している。
342Only for you! (5/5):2009/02/25(水) 02:18:23 ID:zdL4aoMU



「まったくもう、全部プロデューサーさんのせいですからね!」
数時間前の出来事を思い出して、その出来事の全てをこの人の責任だと決め付けた。
ようやく落ち着きを取り戻した頃には19時をまわっており、丁度仕事を終えた彼と帰宅することになった。
あはは、と悪びれる様子の無い彼の右手には、いくつかの紙袋が握られている。白の紙袋も、その中のひとつ。
彼は、とても嬉しそうな表情をしていた。

「・・・たくさん貰えたチョコレート、やっぱり嬉しいですか?」

少しだけだが、悲しくなった。やっぱりこうして目にすると、いくつもある内のひとつでしかないように思えてしまう。
そう見えますか?と尋ねられたので、ハイと答えておく。

「そうですね。たくさんのアイドル達に受け入れてもらえるのは嬉しいですよ。プロデューサーとしては」
でも、と彼が続けるので言葉を待つ。

「俺個人としては、小鳥さんからチョコレートを貰えたことが、一番嬉しいんですよね」
そう言う彼の顔には眩しすぎる笑顔があって、そう言う恥ずかしいセリフをさらりと言い切れる彼は卑怯だ。
せっかく火照りの冷めていた顔が、再び真っ赤になっていくのがわかる。

「も、もう!これ以上は何も出ませんからね!」
ずんずんと、彼を追い越して歩みを進める。顔は、綻んでいた。
彼のその一言は、音無小鳥の歩んできた人生の中でかなりの高ランクに位置付けられる、大変に嬉しい言葉だったのである。
343Only for you!書いた人間:2009/02/25(水) 02:26:30 ID:zdL4aoMU
以上です。お読み頂いた方、本当に有難う御座いました!
10日前に出来上がってたらよかったんですが、人生中々上手くいかないもので・・・
と、言う訳で失礼します。また次も書けたらな、と思います・・・
344創る名無しに見る名無し:2009/02/25(水) 11:30:39 ID:5jT7tMkk
>>343
乙。ニヤニヤさせられっぱなしでした。
345創る名無しに見る名無し:2009/02/25(水) 15:40:04 ID:eNPg4ToV
>>343
うぶ小鳥さんかわいいようぶ小鳥さん
いいニヤニヤをいただいた。GJ!

創発板的な意見としては視点変更にツッコミを入れたくなる
ところですがw、実は読んでいて苦になりませんでした。
文章が軽妙なのと要所要所の空改行で、読み進めば「ああ、
視点変わってんな」と判断つきました。俺がこういう文章を
読みなれてるせいかも知れませんけど、他の読み手さんは
どうだったでしょうかね。

テンポよく読めてかわいらしく楽しいSSでした。
ごちそうさまでした。
346創る名無しに見る名無し:2009/02/25(水) 17:42:20 ID:8D5RgjpE
>>343
テンポそのものはいいけど、だ・であるの断定調で、特に「いた」「だった」「なかった」
など「〜た」で終わる文章がちょっと目に付きすぎて文がブツ切りになってたのが
ちょっと気になった。
あとは視点変更がちょっと指摘されてたけど例えば書き込みを6分けにして
一定の〜 から 〜そこに居た。 までを序章として一書き込み(三人称視点)
バレンタインデー当日〜 から 〜入ってこなかったが。 までで一書き込み(小鳥一人称視点)
以後3つめがP視点、4〜6が小鳥視点と書き込み単位で分けちゃっても
ちょうど良いぐらいの文章量だったかも
そうすれば一書き込みの中での視点変更が無くなるから、見た目に整理されたようにみえそう

しかし、小鳥さんもかわいいけどここで一番の萌えキャラはPではなかろうか
よりにもよって千早に相談なんてしてみちゃったりとか
しんじゃえばいいのにwってぐらいのラブコメ体質でいい感じです
全体的にカステラかなにか甘くてやや重いお菓子でお茶いただいたような気分かなw

相談相手を変えたバリエーションを展開させてみてもいろいろ面白いシチュが
考えつきそうです
347創る名無しに見る名無し:2009/02/26(木) 13:01:13 ID:U4mKmNR/
>>343
このスレでは珍しい純ラノベ調ですね。文体も、地の文とキャラ視点との入れ替わり具合も含めて。
文章は書き慣れた感満点にこなれていて、とても読み易いです。
キャラもとてもいい感じ。小鳥さんの奇声とか、Pの気をつかってるつもりなのに無神経なとことか、見事にそれっぽいです。

一つ気になったのは、視点の入れ替わりのせいで、最終段(5/5)が誰の視点なのか、すぐにピンと来なかったことです。
(2/5で「プロデューサー」という呼びかけから入って、プロデューサー視点になった前例があったので)
プロデューサー視点の部分は、視点はそのままでも本人語りではなく、三人称形の描写の方が簡単に読めた気がします。

全体には、読後感がとてもよかったです。面白かった!
348創る名無しに見る名無し:2009/02/27(金) 20:16:58 ID:q49/gYcT
SPの小鳥さんのアレを見た後だとさらに心に染みるものが・・・
よかったねえ(´;ω;`)ウッ…
349創る名無しに見る名無し:2009/03/03(火) 15:55:21 ID:jIgt65dV
保守
350創る名無しに見る名無し:2009/03/06(金) 15:06:20 ID:DE0Rn157
>>331はどうなったんだ?
351創る名無しに見る名無し:2009/03/06(金) 15:59:18 ID:vztTdpKM
>>350
催促してやるな
書けたら来るだろう
352創る名無しに見る名無し:2009/03/06(金) 21:32:37 ID:opIFfYXk
んー、俺も、催促するつもりはないけど、
楽しみに待ってるよー、とだけは言っておきたいかなーって
353 ◆yHhcvqAd4. :2009/03/09(月) 12:04:27 ID:wi/HUCDN
お久しぶりです、こんにちは。亜美真美でちょいと投下しに来ました。
3レスぐらい借ります。
354コーヒーをいれたから 1/3:2009/03/09(月) 12:05:16 ID:wi/HUCDN

 少し鼻を通過していっただけでそれと分かる独特の苦味を含んだ香りと、ゴリゴリと豆が砕けていく心地良
い音を愉しみながら、昼下がりのオフィスで俺はコーヒーミルのハンドルをぐるぐると回していた。給湯室の
ポットの前に陣取った傍らには、コーヒーサーバーに自分用のマグカップをセット済みだ。
 スーツを着て働くようになって以来、食後にコーヒーを飲むことが習慣になっていた。つい先日、一人でオ
フを取ってのんびりしようと思っていたがどうにも落ち着かずデパートへ出かけた際に福引をしたのだが、こ
のコーヒーミルが当たったのだ。
 どうせ自宅に置いておいた所で使う時間も無いだろうと職場へ持って来て見たが、これが中々楽しい。つい
ついコーヒー豆なんぞを自分で買ってみたりと、給湯室の中にこっそり豆の種類が増えていたりもする。
 少し豆の量が足りなかったかな、と思って足そうとした所で、給湯室の扉が勢い良く開いた。
「あっ、兄ちゃん発見!」
 狭い給湯室に高い声が響いた。亜美が思い切り俺の鼻先目掛けて指を差している。
「何してるの?」
 と、その後ろから真美がひょいと顔を出した。俺の握っているハンドルに二人の視線が集中した。
「ねぇねぇ、何それ? ぐるぐる回して何してるの?」
「あぁ、コーヒー豆を挽いてるんだ」
「へぇ、楽しそう! ねぇ、亜美にやらせてよ」
「真美もやるっ」
 亜美と真美が揃って好奇心に目を輝かせた。お互いの意思を確認することなどせず、亜美と真美の両手が一
斉に伸びてきて、制止した俺の右手がごちんと挟まれた。
「いてっ」
 コーヒーミルが傾いて、下部の引き出しから少しだけ黒い粒子が零れ落ちた。
「あっ、ごめん兄ちゃん!」
 先にそう言ったのは真美の方だった。
「もー、真美がいきなり手を伸ばすからだよ」
 眉を顰めて言う亜美が売った言葉を、
「なにさ、亜美だって同じことしたじゃん!」
 と、即座に真美が買う。
「まぁ落ち着け。これがやりたいんだろ?」
 ギスギスした色合いを含ませ始めた二人の視線を人差し指で引きつけて、そのままコーヒーメーカーへ。く
りっとした瞳が下から俺を見上げると、房になった髪を二人は縦に揺らした。
「なんか、おもしろそーなんだよね」
「といってもなぁ、もう半分ぐらいは終わっちゃってるし……」
 どうしたものかと考えあぐねていると、ポットの脇でまだ袋の口を開けたままのコーヒー豆が目に入った。
「二人もコーヒー飲むか? それで、自分の分を自分で挽けばいい。見事に万事解決だ」
 わざと明るい調子で言って、二人のそれぞれにスプーンを手渡す。ちょっと待ってろよ、と前置きをしてか
らさっさと自分の分を終わらせ、フィルターに砕いた豆を注ぎいれてから、どちらから先にするのかと目で問
いかけた。
「んー、ニガいのはイヤだなー……でも、やってみたいな、グルグル……」
 そう言いつつ、真美が流し目で亜美を促した。
「コーヒーかぁ、たーっぷり砂糖とミルク入れなきゃだね」
 真美の言葉を受けて、亜美が一歩前に出た。ややサイズの大きなパーカーの袖から可愛らしい指を覗かせな
がら、ティースプーンで二、三杯。ハンドルを握ると、途端に亜美の目がにんまりと細まっていった。
「お……おぉ〜……なんだかめっちゃ楽しいよ、これ!」
 いいなー、と羨む真美の声をBGMに、フルスロットルで亜美がハンドルを回す。バキバキと音を立てて砕ける
豆の破片が、小さなテーブルの上に散った。
「おいおい、あんまり勢い良くやり過ぎるとフッ飛んじゃうぞ」
 苦笑いする俺の声も、大はしゃぎの亜美の耳には入っていなさそうだ。円を描くミニマルな動きに亜美の視
線は熱く注がれっぱなしで、鼻息が荒いのも目に見えるようだ。香ばしいコーヒーの匂いが立ち上る。
 焦げ茶色の豆が刃に砕かれる、塊の存在を想起させる音がジャリジャリとした砂のような音へ変わっていく
のに、そう時間はかからなかった。やがて手ごたえが感じられなくなったのか、ハンドルを回す手の動きも緩
慢なものになっていく。
355コーヒーをいれたから 2/3:2009/03/09(月) 12:05:59 ID:wi/HUCDN
「ん、終わったっぽい」
 なんだ、もう終わりか、つまんないの。
 そんな声が聞こえてきそうなぐらい、楽しみが失われたことの落胆ぶりが亜美の表情に出ていた。
「ねえ兄ちゃん、次はどうしたらいいの?」
 ゆっくりとではあるものの依然とハンドルを回す動きは止めずに、亜美が言った。
「挽いた豆をフィルターに入れてお湯を注ぐんだ。そこの棚からカップを取ってくれ」
 自分の分を淹れ終えた俺がフィルターに折り目をつけていると、「自分でやるから」と言って亜美が俺の手
からフィルターをひょいとかすめ取った。粉末と化したコーヒー豆をフィルター越しにドリッパーへセットす
るその様子を、真美はそわそわと眺めていた。きっと、自分の番が待ち遠しいのだろう。
「すぐには出てこないんだね」
「インスタントならすぐなんだけどな。ま、これはこれで趣があっていいだろう」
 ドリッパーから少しずつサーバーへ落ちて行く液体に、亜美は膝立ちになって目線の高さをあわせていた。
新薬の開発に携わる研究者のように真剣な目つきだが、ぽかんと開いたままの口が、微笑ましい。亜美の脇で
は、やはりおもちゃを見つけた子供の顔になって真美がコーヒーミルのハンドルを回していた。しかし心なし
か──全力投球だった亜美と比べればの話だが──控えめな力加減で回しているように見える。
 一人分だった香りが、三人分になってゆく。真美がコーヒーを挽き終える頃には、亜美の持ったマグカップ
にもミルクと砂糖たっぷりのカフェオレがなみなみと注がれていた。亜美と真美は二人揃ってドリッパーから
滴る濃褐色の液に見入り、俺はその二人を観察しながらカップを傾ける。いい眺めだった。
 二、三分ほどして、真美のカップにも注がれるべきものが注がれた。意味も無くごつっと音を立ててカップ
を互いにぶつけたりしつつ、口の中に広がる苦味を愉しむ。
「……うげー、苦い。もうちょっと砂糖入れておけば良かった」
 真美が顔をしかめた。
「もう一本砂糖入れればいいじゃん」
 テーブルに半ば腰掛けながら言う亜美のすぐ近くには、砂糖の入っていた袋が何本も散らばっている。それ
を見て、
「やっぱいい」
 真美は首を横に振った。
「兄ちゃん、よくブラックなんて飲めるよね」
「亜美もちょこっとだけパパのを飲んだことあるけど、あんな苦いの、うげーってなんないの?」
「小さい頃は俺も砂糖をいっぱい入れたコーヒーじゃないと無理だったし、そもそもコーヒーなんて飲んでな
かったな。でも、大人になったらよく飲むようになってた。気が付けば砂糖も入れなくなったしな」
 食物の嗜好は七年周期で変わる。大学生の時分、飲み会で教授からちらりと聞いた一言をふと思い出した。
「じゃあ、オトナになったら苦いのもヘーキってこと?」
 亜美が甘いコーヒーを啜った。
「そういうことかもしれないな」
「そっか……オトナって凄いんだね」
 苦い物が平気なぐらいで凄いなんて言うものだからつい笑ってしまいそうになったが、真美が向ける尊敬の
眼差しに気が付いて、そっと心の中にしまいこんだ。
 真美は自分のカップへ視線を落とすと、ゆっくりとそれを傾けていった。
「……っっ」
 目を白黒させてなんとも味のある表情を見せながら、豪快にコーヒーを飲み込み、
「に、苦い……けど、これでオトナに一歩近づいたかな?」
 と、思い切り眉をひそめたままで、真美はどうにか笑顔を作った。
「むー、なんか敗北感……だったら亜美はブラックをイッキしちゃうもんね」
 そう言って新たに亜美がカップを取ろうとする。
「今度にしときな。コーヒーはあんまり飲むとトイレが近くなるし、これからレッスンだから」
「あ、そうだった。ならやめとこ。お腹タポタポじゃ大変だもんね。ねぇ真美、まだ残ってるよね? ちょっ
と亜美のと取替えっこしようよ」
「ん、いいよん。真美も丁度甘いのが飲みたくなったから」
 同じ柄のカップが二人の間で交換された。面倒な事態にならなかったことに、ほっと胸を撫で下ろす。
「ねぇ兄ちゃん」
 甘いコーヒーを飲んで表情から険の取れた真美が尋ねてきた。
「テレビで見たんだけど、OLの人たちってこういう風に給湯室に集まってお喋りするんだよね」
「そうそう、それで、ムカつく人たちの湯呑みに雑巾の絞り汁をたーっぷり入れるんだよね」
 亜美がイタズラっ子の笑みを浮かべた。
356コーヒーをいれたから 3/3:2009/03/09(月) 12:06:45 ID:wi/HUCDN
「いや、雑巾の絞り汁はやらないと思うぞ。……普通はな」
「えー、やらないんだ」
「少なくともウチの事務所でそんなことする人はいないと思うぞ。こういう風に、たまたま給湯室で誰かと出
くわしてそのまましばらく駄弁ってたりってことは、時々あるけどな」
 あくまでも、時々だ。スタッフによって仕事をする時間帯がバラバラで、事務所の外に出ていることの方が
ずっと多いこともあるので、給湯室の中では一人でいることの方が多い。亜美真美とはいつも顔を付き合わせ
ているが、ジュースを飲むことが多い二人は別室の冷蔵庫の前にいるのが大抵で、こうして給湯室までやって
くることは少ない。
 だからこそ、この珍しいコーヒータイムは思いがけず嬉しかった。
「ねえ、兄ちゃんはいつもアレ使ってるの?」
 一仕事終えてのんびりと机の上で佇むコーヒーミルを指差して、亜美が言った。「よさげだよね、アレ」と
真美も同調する。
「ああ、こないだ福引の景品で貰ったばっかりだから、使い始めたのはつい最近だけど」
「じゃあ、今度兄ちゃんのコーヒーも淹れさせてよ。あのグルグル楽しーし」
「お、亜美が淹れてくれるのか?」
「そうそう、これから兄ちゃんのコーヒーは真美達が淹れるんだよ」
 笑顔でそう語る二人を見て、俺の頭の中に、亜美や真美が俺のデスクまでコーヒーを持ってきてくれる光景
が思い浮かんだ。
「お待たせ、兄ちゃん」
 などと言いながら、中々いい塩梅の濃さに仕上げてくれていたりするのだろうか。
 いいかもしれない。
 と、そこで待ったがかかった。
「雑巾の絞り汁を入れたりはしないよな?」
 まさかと思いつつも、尋ねてみる。
「しないよ」
 真美はそう答えたが、
「でも、兄ちゃんが勝手に自分で淹れたら、やっちゃうよ」
 亜美が含み笑いをしながら言った。
「あ、それいいかも」
 真美が鮮やかに掌を返す。
「ふ、二人がいる時はともかく、いない時はセーフだろう?」
「んっふっふ〜……ダメ」
「亜美達がいない時はコーヒー禁止ね」
「ええっ、酷くないか? というか、ハンドルを回して豆を挽きたいだけだろう、二人とも」
「えへへ、そうだよ」
 ぺろり。亜美が唇から舌をちらりと覗かせた。習慣を突然禁じようという理不尽に抗議したい所だが、悪び
れる様子の無いその顔を見ていると、二人に任せても構わないかもしれないという思いが沸き起こる。
「……分かったよ。亜美と真美に任せる」
「わーい! じゃあ真美、交代でやろうね」
「ついでに、真美達の分も淹れちゃおっか?」
 きっと三日坊主で終わるだろう、という予想。しかし反面、二人と過ごすコーヒータイムが増えることへの
期待もあった。二人の機嫌が良くなるきっかけが一つでも増えるのなら、それはありがたいことだ。
「じゃあ、そろそろ時間だし、カップを洗ってレッスンに行くとしようか」
「はーいっ」
 俺の呼びかけに、二人は綺麗にユニゾンで返事をくれた。
 今日のレッスンは、いい結果が期待できそうだ。


 終わり
357 ◆yHhcvqAd4. :2009/03/09(月) 12:10:25 ID:wi/HUCDN
以上になります。
ゲームのコミュをSS化したらこんな感じになるのかな、と思いつつやってみました。
いつも書いてるようなSSよりセリフの比重が高いような気がしたりしなかったり。
感想批評等頂ければ幸いです。
358創る名無しに見る名無し:2009/03/09(月) 12:45:54 ID:YcA/bGpJ
>>357
ごっそさまです。昼休みにコーヒーの話とは気が利いてますな。
コーヒーというアイテムのためかご自身で言ってるコミュ風テンポ
のためか、おなじみ真美だけじゃなく亜美も落ち着いた雰囲気を
感じたのが面白いです。コーヒー飲むとオトナになるんだねー。
GJでした。
俺はこれからド○ールのコーヒー味わってきますわw
359創る名無しに見る名無し:2009/03/09(月) 13:32:49 ID:q43Ndk+S
>>357
GJ!
コーヒー飲みたくなったんでちょっと淹れてくる
360創る名無しに見る名無し:2009/03/09(月) 13:40:30 ID:HZTJjnUX
>>357
あなたの書く大人っぽい亜美真美が大好きです。GJです
361創る名無しに見る名無し:2009/03/11(水) 20:18:38 ID:lbwX5nkq
俺もコーヒーミル回したくなった
362創る名無しに見る名無し:2009/03/13(金) 19:25:58 ID:aaxSE98R
ドリップを待つ時間が、亜美と真美にも大人の余裕と安らぎを教えてくれた…
そんな第一印象です。
それにしても、過不足のない情景描写と、
その描写の醸し出す空気が、大変心地良いです。
この描写力と空気感は珠玉ですね。
363創る名無しに見る名無し:2009/03/21(土) 00:53:28 ID:pyNuA813
保守上げ
364創る名無しに見る名無し:2009/03/23(月) 12:22:32 ID:aqLMWRfa
こんにちは、また投下しに来ました。
3レスほどお借りします。
365風船のおにいちゃん 1/3:2009/03/23(月) 12:23:51 ID:aqLMWRfa
 休日の昼下がり、人がごった返すショッピングモールの一角に、男の子が歩いていました。まだ十才にも満
たない男の子は、両親と一緒に買い物に来ている所でした。学校よりもずっと広くて、見たことも無い店がい
っぱい並んでいるショッピングモールの光景を目にして、その瞳は興奮が溢れていました。
 白くて大きなウサギさんから貰った風船を誇らしげに掲げながら、人の波の流れの少ない所を見つけて小走
りに駆けていると、男の子は壁際で女の子が泣いているのに気がつきました。緑色のセーターに茶色のスカー
トを履いたその女の子は、編んだ髪を両方の側頭部から垂らしていました。
「どうしたの?」
 男の子が近寄って声をかけると、女の子の泣き声が止まりました。
「いないの……」
「いないの?」
「おとうさんと、ひっく……おかあさん」
 クラスで背の順に整列する時、いつも男の子は一番前でした。そんな男の子よりも更に小さな女の子の頬に
は、涙の通った後がまだ濡れたままです。後ろにも横にも、自分よりずっと大きな大人達があっちからこっち
へと通り過ぎていきます。
 どうして、みんなこの子に声をかけてあげないんだろう。男の子は憤りました。
「……ふうせんも、なくなっちゃった」
 作り物の人形みたいに小さな手が、天井を指差しました。指の示す方向を見上げてみると、なるほどそこに
は男の子が持っているのと同じ風船が漂っていました。空に帰りたいのに、風船は意地悪な天井に邪魔をされ
ているように見えます。
「ふうせんなら、ぼくのをあげるよ」
 さっきまでは離すまいと思っていたはずの風船を、男の子はいとも簡単に女の子へあげてしまいました。
 自分よりも小さい子には優しくしてあげなさい。父親がそう言っていたのを思い出したのです。
「……ありがとう」
 まだ涙で潤んだままの瞳が、男の子を見上げました。迷子の女の子が泣き止んでくれたのにホッとする男の
子でしたが、突然ハッとしました。
「ぼくの……!」
 後ろを振り返り、さっきまで一緒にいたはずの両親の姿を探しましたが、見つかりません。目の前で流れる
のは見知らぬ顔の大きな人間達ばかりです。男の子は背筋に嫌な汗がどっと溢れるのを感じました。
「いない……」
 呆然と立ち尽くし、体を押し潰す圧倒的な孤独感に男の子は声をあげて泣き出しそうになりましたが、すぐ
傍で同じ状況に陥っている自分よりも小さな女の子のことを思い出して、ぐっと踏みとどまりました。
「おにいちゃんも、まいご?」
「……うん、ぼくも迷子なんだ」
 素直にそう言ってしまうと、男の子の心は不思議と落ち着きました。こんな時に何をすればいいのか、迷子
になった子供はどこへ行けばいいのか、考えることができたのです。男の子は目をきょろきょろさせました。
「迷子センターに行かなくちゃ。行こう、一緒に」
 男の子が差し出した右手を、女の子はうんと頷いて取ってくれました。右手に感じる確かな温かさは、まだ
心にくすぶる寂しさと恐怖を追い払ってくれました。
 男の子の心に、小さな勇気が芽生えた瞬間でした。
366風船のおにいちゃん 2/3:2009/03/23(月) 12:25:25 ID:aqLMWRfa


 自分より頭一つ分も二つ分も高い、黒や茶色の葉っぱを豊かに生い茂らせた木々の間を、二人はくぐりぬけ
るように進んで行きました。休日だからか人の流れは激しくて、立ち止まっていたら押し流されてしまいそう
でした。男の子は流れに逆らうように懸命に進んで行き、自分の体の陰に庇いながら女の子の手を引っ張りま
す。女の子は健気に男の子の手を握り締めて、小さい歩幅でしっかり男の子についてきました。
 ところが、歩けど歩けど一向に目的地に辿り着けません。このショッピングモールは、まだ小学生の男の子
にとってあまりにも広すぎました。どこへ行けばいいかは分かるのに、どうやって行けばいいかが分からない
のです。太い柱が立ち並ぶホールまでやってきた所で、男の子は途方に暮れました。思わず涙が出そうになり
ましたが、繋いだ手から伝わってくる女の子の存在が、それをさせませんでした。
「ねえ、おにいちゃん」
 黙ってついてきていた女の子が、一本の柱を指差しました。
「ちず……」
「地図? あっ、ホントだ!」
 指が示す先には、ショッピングモールの地図が貼り付けてありました。
「えっと、この赤いマルは何だろう……この漢字、読めない……あっ、フリガナがある」
 現在地を確かめて、男の子の目は迷子センターを探し始めました。程無くしてそれは見つかり、目の前に広
がる道と地図とを照らし合わせます。
「えっと、このまままっすぐ行って、曲がり角で右に行けばいいのか」
 道筋が分かったことで、不安に曇っていた心が晴れていきました。当てのない放浪に明確な目的地が見つか
り、自分達を待ち受ける冒険を楽しもうとする余裕さえ、男の子は感じ始めていました。
「大丈夫? 怖くない?」
 頭一個分小さい女の子に声をかけると、
「うん、へいき」
 女の子の口からは、はっきりした答えが返ってきました。
「もうちょっとだと思うから、頑張ろうね」
「うんっ!」
 男の子が、大股で一歩を踏み出しました。

 それから二人が迷子センターに辿り着いたのは、すぐのことでした。通り行く人の数はさっきから変わりま
せんでしたが、男の子はするすると人波をすり抜けていき、男の子が通り抜けた場所を、女の子も通り抜けま
した。
 目立つ色の看板の前までやってくると、窓口の向こうから一人の女性が話しかけてきました。
「あれっ、キミ達だけ? お父さんとお母さんは?」
「ええと、ぼくも、この子も、迷子で、えっと……」
「そうなんだ。じゃあ、二人のお名前をお姉さんに教えてくれる?」
 お姉さんに言われた通りに、まずは女の子が名乗り、続いて男の子が名乗りました。二人は、初めてお互い
の名前を知りました。
「キミ達だけでここまで来たんだ……えらいね、よく頑張ったね」
 お姉さんの手が、男の子の頭に伸びてきました。
「今からお父さんとお母さんを放送で呼ぶから、ちょっとあっちに座って待っててね」
「うん、分かった。行こう」
 男の子は、女の子の手を引いてソファーの上に腰を下ろしました。さっきのお姉さんとは別の人が、オレン
ジジュースをコップに入れて持ってきてくれました。
「ありがと、うぅ、うああっ……!」
 これでもう大丈夫。そう思った瞬間、男の子の頬に熱いものが伝いました。堰を切ったように、涙がぼろぼ
ろと零れ落ちていきます。
「なかないで、おにいちゃん」
 安堵の涙を流す男の子に、女の子の手に握られたハンカチが伸びていきました。
「……ごめん」
 男なのに、情けないな。
 女の子に涙を拭ってもらいながら、少しだけ勇敢になった男の子は照れ笑いを浮かべました。

367風船のおにいちゃん 3/3:2009/03/23(月) 12:26:59 ID:aqLMWRfa


 それから年月が経ち、背の低かった男の子も長身の立派な青年に成長しました。芸能事務所でアイドルのプ
ロデューサーとして働く彼は、新たに移転した事務所の一角に備えることになった購買店について、とあるレ
ストランで商談をしていました。小売業を経営する壮年の男と契約を結び終えると、男は懐かしい目になって
青年にある昔話を始めました。
 始めは他人事として聞いていたその昔話は、幼い日の記憶を鮮明に呼び起こすものでした。
「まさか、あの時の少年と、こうして仕事の取引をするようになるとは。人生何があるか分かりませんな」
 知性を匂わせる顔立ちの男は眼鏡の蔓に指を添えて、にやりと笑いました。
「しっかり顔は見ていたし、名前だって聞いていたのに、覚えておらず申し訳ありません」
 青年はぺこぺこと頭を下げるばかりです。
「無理も無いでしょう。今からもう十五年も前のことになるし、貴方も娘も、こんなに小さな子供でしたから」
 男は、掌をテーブルの高さに合わせながらそう言いました。
「休日に出かける度に『風船のお兄ちゃんはどこ』って、あの頃の娘は私達にいつも言っていたんです」
「そ、そうなんですか」
「あの頃の娘は『風船のお兄さん』をかなり慕っていたようでしたよ。今では忘れてしまっているようですが」
 青年は、あの休日の午後以来、それとなく女の子がどうしているか気にしていた時期があったことを思い出
し、そんな頃もあったと懐かしむ一方、少しだけ恥ずかしくなりました。
「もしもあの時のことを覚えていたら、初対面の時にお互いどんな顔をしたのでしょうね」
「分からないです。でも、覚えていなくて、却って良かったと思います」
「ほう、それはまた、どうして?」
「その時のことをネタに色々とからかわれちゃうかもしれませんからね。泣き顔見られてましたし」
「ははは、そうか」
 青年は苦笑いして、男は目尻にくっきりと皺を作って笑いました。
「まぁ、褒め言葉を素直に受け取ってくれなかったり、何かと口答えして面倒に思う時もあるでしょうが、宜
しく頼みますよ。人のことを細かい所までちゃんと見てて、小さな親切にも気がついてくれる子ですから」
「ええ、と言っても、こっちばっかりが世話になっちゃってると感じることも多くって。呆れた顔をされるこ
ともしばしばです」
「食卓を一緒に囲む時間が取れた時は、よく仕事の話をしていますよ、娘は。会計が面倒だと愚痴も零してい
ますが、テレビや雑誌に出た時の話をするのが多い辺り、きっとタレントの仕事も楽しいのでしょう」
「そうですか。楽しんでやってくれているなら、何よりです」
 青年は、ホッと胸を撫で下ろしました。娘がアイドルの仕事をしていることで何か苦言を呈されたらどうし
ようかと、レストランに入った時からずっと胃を締め付けられる思いだったのです。
「ただいま」
 と、そこへ、話題に上がっていた人物がお手洗いから戻ってきました。
「なんか和気藹々としてるじゃない。何の話してたの?」
 お下げにした髪を揺らしながら少女が男に尋ねると、
「ちょっとした昔話をな」
 と、男が答えました。
「え、ちょっとお父さん、変な話してないでしょうね。『お風呂ぐらい一人で入れるもん!』って言って一人
でお風呂入ろうとしたら溺れかけた時のこととか……」
「……その話なら、たった今お前がしてしまったよ」
 墓穴を掘ってしまった少女に、父親の男は苦い顔になりました。
「あっ、し、しまった……プロデューサー、今言ったのは真っ赤なウソですからね、断じて、決してっ」
「くくくっ……律子らしいじゃないか……いてっ」
 ぱしんと軽快な音を立てて、ハリセンが青年の頭を叩きました。
「笑わないで下さいよ。誰にだってあることでしょう、それぐらい」
 膨れっ面になりながら、少女がドカッと青年の隣に腰を下ろしました。眼鏡の蔓をつまむその仕草は青年の
向かいに座る彼女の父親にそっくりで、青年は思わず頬が緩みました。
 あの日の話は、本人が言い出さない限りは、そっと胸にしまっておこう。
 青年はそう心の中で呟きながら、隣に座る少女に、柔らかい流し目の視線を送りました。


 終わり
368 ◆yHhcvqAd4. :2009/03/23(月) 12:33:06 ID:aqLMWRfa
と、以上になります。
律子にはかつて幼馴染設定が存在していたという所から考えたんですが、こういうの幼馴染といわないですねorz
三人称にしてみたり、子供が出てくるから文体をですます調にしてみたり、挑戦してみた部分が大きいです。
感想批評等頂ければ幸いです。
369創る名無しに見る名無し:2009/03/23(月) 13:38:58 ID:CRzn4hhY
>>368
誰が降臨したのかと思ったw まいど上手くまとめててGJ!

1レス目後半の多重遭難wのくだりは切れ味も鮮やかで気持ちよかったっす。
ですが2レス目後半、泣きのシーンはちょっと違和感です。俺自身に迷子の
体験が多いせいかも知れませんが8〜9才の男の子、もうちょっと頑張って
女の子を親御さんに引き合わせて初めて安心がこみあげてもよかったかと。
ちなみにわたくし、いまだに別の意味で人生迷子中です。
タネ明かしの3レス目はさすが安心感ありますね、冒頭で予想した落ちを
期待通りに収束してもらって、小ネタならではの爽快感でした。

そして次はお風呂場で溺れかけるろりっちゃんの話ですか楽しみです。
わっふるわっふる!
楽しゅうございました。いっぱい読ませてもらってばかりで申し訳ないです。
ちょっと構想中、うまく神様来たら投下しますねー。
370創る名無しに見る名無し:2009/03/23(月) 14:57:27 ID:aqLMWRfa
>>369
>8〜9才の男の子、もうちょっと頑張って
>女の子を親御さんに引き合わせて初めて安心がこみあげてもよかったかと。

ふむふむ、ご指摘ありがとうございます。確かに読み返してみるとその通りかもしれませんね。
本来ならもう少し会話を入れてあったんですが、まるごとざっくり切り取ってしまったのです。
ろりっちゃんは書けねーだろwwwと思ってたらネタが浮かびそうな気がしなくも無いです。

神様降臨期待してます
371創る名無しに見る名無し:2009/03/24(火) 15:39:52 ID:sKZagkpG
>>368
GJ!描写の巧さもそうだが話を作るのが上手いね。今回は子供向け小説みたいな印象だった。


それにしても過疎だな、ここ。点呼取ってみるか?
372369:2009/03/24(火) 17:18:53 ID:hr+JULlF
>>370
えらそうにすみませんでした。
この彼は生涯何回目の迷子か不明ですが、自分の幼少期の記憶を探ってみると
迷子体験もフタケタになると(ちょ)、
「……あ、またパパもママもいないや、はぁ。えっと迷子のトコは……」
てなもんでw 彼のように落ち着き払って自分の名前と親の名前を伝えていたように
思います。そのときの自分にとっての安心=迷子ミッションの終了は親が迎えに
来てくれる瞬間で、それまでは青い顔しながらも平然としていました。
んで親の顔見て号泣とwww
前半の彼がまるで自分を見てるようだったから、後半にアレッてなったんだと思います。
迷子の女の子拾ったことはありませんが、彼の勇気には拍手を惜しまんですよ。

ちなみにそんな俺ですが電車が使えるようになってからは、ヤバイと思ったらまず帰路の
確認をする癖がつきましたとさ。
つかそんなに頻繁にオモチャに目を奪われるな俺。

>>371
点呼とると悲しくなりそうです><
専ブラで更新チェックしてるから新作があれば俺は気づくけど、この投下ペースでは
気づかない(マメには巡回しない)人のほうが多いように思います。書き手だしここの
雰囲気好きだから落ちない程度に投下や感想があればいいかなーって。
373創る名無しに見る名無し:2009/03/25(水) 09:08:08 ID:0sdpi1g+
やべ。週一のチェックなんで点呼に遅れましたw

>>368
キレイにまとまってていい話です。
ちょっと読み手の視点から一言言わせてもらうと、だいたい途中で先行きは見えるんですが、
その時、もう少し、女の子の見た目や雰囲気などの描写が欲しいかな、と。
最初に出てくる描写をなぞるものでもいいし、新たな情報でもいい。
あと、最終節でも、「当時はかけていなかった眼鏡」とか一言欲しい感じです。

あと、律っちゃんだったら、たとえ幼少の頃でも、迷子センターで聞いた風船のお兄ちゃんの名前を
しっかり覚えていたり(今は忘れても当時は覚えてた)とか、そんなエピソードもあると面白そう。
374創る名無しに見る名無し:2009/03/25(水) 17:35:12 ID:VJdg00se
え、点呼なんてしてるの?wちょこちょこ来てるけど
そういえば、迷子対策に親が住所氏名電話番号に節を付けた歌らしきもの覚えさせられた気が
ハトヤの4126体操とかツカサのウィークリーマンションとかみたいなノリで
今思うと個人情報満載過ぎて噴くけどな
375創る名無しに見る名無し:2009/03/25(水) 18:45:07 ID:qNE2Rzqg
俺もちょくちょく来てるぞ!
いや来てるというか見てるだけなんだけどね
ROM専だけなら他にもいっぱいいると思われ
376創る名無しに見る名無し:2009/03/25(水) 22:14:53 ID:cZFNf/WK
書き手の立場からすると、できれば一言でも感想とか欲しい物です。
やはり、見られているという意識があるほど、書きがいもあるし、
いい意味で恥ずかしくないように一段と努力します。
アイマスガールズがどんどんとキレイになって行ったのと多分根は同じです。
ROM専と言わず、よろしくお願いします。
377創る名無しに見る名無し:2009/03/25(水) 22:22:24 ID:t0X+/JS3
書きたいんだけど一日2〜3行も進まず早数ヶ月w
しかも、自分で言うのもなんだけど詰め込みすぎでめっちゃめちゃ読みづらいから
多分完成して投下してもフルボッコかなーなんて思うわけだけど完成して投下してから言え?
ごもっとも
まあなんにせよとりあえず見てます

>>368
プロデューサとの年齢比較上、仮に22、23歳前後説を採った場合2人ともが子どもとして
泣くことが出来るのは律っちゃんまでが限界線かな、とか思います。
でも小学校中学年ともなると>>369にあるように結構がんばれちゃうかなあ、とも
さらにその下になると、ちょっとお兄ちゃんが大きくなり過ぎなので
幼少の思い出ネタはちょっとやりにくげですね。
以前から思っていたのですが、律っちゃんにはいろんな意味での冒険が似合うと思うのです。
真面目で手堅いからこそ、敢えて予測も付かない事態で振り回してやりたい、と。
しばらくは戸惑っていても必ず律っちゃんからも思わぬ機知を見せてくれそうです

幼少迷子バリエーションとしてろりっちゃんが遭遇したのが2つ年上のたよりなさそうな
おっとりおねーさんだったら・・・いやダメだ、収拾がつきそうにないw
じゃあPくんと2〜3歳下のはにかみやさんな女の子だったら?
・・・あの迷子癖はもしかして「また逢いたい」という無意識が影響とか、あ、これ割とアリっぽいw
378創る名無しに見る名無し:2009/03/25(水) 22:31:21 ID:dlLy1r4Q
こんな流れを待っていた

>>373
ご指摘ありがとうございます。
女の子の正体を明かすのは最後に、ということにしたかったので、女の子の手がかり
になる情報は意識的に消したんですが、段階的に情報を出した方がベターだったかもですね。
自サイトの方で色々いじくって細かい部分は改善してみようと思います。
あと、最後二行のそのアイデア、頂いていきます。

ちなみに、俺自身は迷子になった経験が皆無です。多分覚えてないだけだと思いますが。
あんまり長々と語ってもアレなので、次のSSに今回の教訓を活かすとします。
379創る名無しに見る名無し:2009/03/25(水) 23:41:29 ID:t0X+/JS3
>>378
確かに秋月父がほぼ疑いなくプロデューサーをその子だと思ってたとなると
迷子センターで一度聞いただけの名を覚えてたよりは娘が連呼していた名の方が
そりゃ印象に残ってて当然だろうって気がしますね
380373:2009/03/26(木) 16:49:30 ID:LF20BL1Y
>>378
やはり意識的に描写削ってましたか。
そうなると読む方は、情報求めてつい読み急いじゃうんですよねえ。
そこで、たとえ新情報がなくても、関連描写があれば、
一旦急ぎ足を止めたり、描写を遡って読み返したりできると思います。
また、正解が分かってから読み直す時にも、関連描写をメインにできて
辿って印象を整理しやすいのもあります。
確かに、おさげの描写をくり返すと大ヒントになっちゃったり、
難しい部分はあるんですけど。

あくまで個人的な読み方なんで、全然そんなことはない、という方もいるかもしれませんが。
381創る名無しに見る名無し:2009/03/28(土) 17:23:08 ID:OPM5Qju2
点呼に応えてみるw
下手な感想は邪魔だと思って自重してるんだ。
382 ◆doaGQuK4yU :2009/03/28(土) 17:29:47 ID:w01f3Jbf
思い立ったのでちょっと書いてみました。
元はここのスレじゃないのですが、どっちかというとこっち向きかと。
383待ち焦がれ(1/3):2009/03/28(土) 17:32:11 ID:w01f3Jbf
年度末だっていうのに、というよりも年度末だからこそ忙しい。
新しく入社する人、お別れになる人のために色々と書類を整える。
でも私には関係ない。私は去年も今年も、そして来年もきっとここにいる。

自分だけ時が止まっているようなものだ。

友人にも知り合いにも、先輩にも後輩にもあるような「時の刻み」。
私にはない。ただ、それだけのことなのかもしれない。
ただただ、流れるように私の周りを過ぎていく。


事務所の隅で仕事をしている私。
一人ではないのが、唯一の救いかもしれないけれど。
でも、彼女の時も止まったままなのかもしれない。

帰る家を失った犬のような眼をしながら、ただ黙々と仕事をしてくれている。


私はふと手を止めて、彼女の横顔を見る。
綺麗な長い髪に、ほっそりとしたしなやかな身体。
一見たやすく手折ることができそうな繊細なガラス細工のようにも見える彼女。


私の眼の前にあるのは、金属的な輝きの箱のそばに並べられた2つの茶色い瓶。

躊躇する私。
これに手を出してしまうことへの怖さと誘惑がせめぎ合う。

”楽になれるよ”

甘い囁きが頭の中で繰り返される。
私と彼女を待たせて、遠くへ行ってしまった彼の、あの人の声。
彼の心を争って、彼女と競ったあのころが懐かしい。
でも、今は、ただ望むだけの存在。
384待ち焦がれ(2/3):2009/03/28(土) 17:32:58 ID:w01f3Jbf
私は小瓶を手に取る。
もしかしたら彼のぬくもりが残っているかもしれない、などという甘い思いが冷たいガラスに吸い込まれていく。

黙々と仕事を続ける彼女のそばに立つ。
私の気配を察した彼女が、手を止めて不安そうな眼で私を見上げる。
「千早ちゃん…。これ…ね…」
「…小鳥さん…」
「楽に、なれる、よ…。」
「………。」
彼女が私から眼を背ける。
でも、視線の先にあるものは、私が置いた小さい瓶。

「彼が、くれた、ものだから…」
「…」
「一緒に、ね…。楽になろう…ね…。
 私も、寂しいの…苦しいの…
 あのことを思うだけで、苦しいの…」
「…小鳥さん…」

彼女が意を決したかのようにすばやく手を動かして、小瓶を手にとる。
蓋を開けた瞬間に少しだけ躊躇いを見せる彼女。
でも、すぐに、その瓶を彼女の小さな口元へと持っていく。
私もまた、彼女の動作に合わせるように、両手でそっと抱えるようにして。

こくん。こくん。こくん。
私と彼女がそれを飲み干す度に、小さな音が静かな部屋の中に響く。
甘くほろ苦いような味の液体が喉を過ぎて、おなかの中でじんわりと染み込んでいく。

彼女の隣に座る。
眼を閉じる。
瓶の中の液体が身体に染み込んで、すべてを取り払ってくれるようで…
「小鳥さん…これで…私たち…」
「うん…」

さようなら。
さようなら、私…。
385待ち焦がれ(3/3):2009/03/28(土) 17:33:44 ID:w01f3Jbf
さようなら、疲れた私!!!!!!!




「おおっしゃーーーーーー!!!やるぞ!やるるりますよ!
ひたすらやりますよ、音無小鳥20歳!」
「小鳥さん、やるのはいいんですけど20歳ですか?」
「いーの!こういうときは勢い!ほらどんどんやりますよ!
 千早ちゃん、たそがれている暇があったらこれ!」

私はばあんと机を叩いて勢いよく立ち上がると、席の後ろに置いてあった段ボール箱を勢いよく抱え上げる。
ミカン箱ぐらいの大きさの書類整理箱の中には、プリントアウトされた書類がぎっしり。
「ほら千早ちゃん!次はこれね!
この箱に請求書と明細のリストが印字されたものが入ってるから、カットして仕分け!」
「えええ、まだこんなに…いいです、やりますよ!やりますよ私は!」

流石はプロデューサーがくれた○○ケルね…高いだけのことはあるっ。
あの千早ちゃんまでがちょっとハイになって勢いづいてるんですから!

「そうそう、やらないと、焼肉だからねっ!
…ってああっ、きたきたきた、千早ちゃん来たっ!」
「きたーーーーっ、すぐ見ますっ」
「早く早くっ」
一度テンションが上がるともう止まらない。
さっきまでのけだるい雰囲気も、どこかに消えてしまっているようだ。

彼女の机の上においてある携帯電話が鳴っている。
プロデューサーからのメールが届いたことを知らせる音楽で。

「…ふんふん…小鳥さん、プロデューサー空港に着いたそうですよ!」
「肉持ってるって???」
「…律子さんが取引先を垂らしこんでゲットした上級カルビとタンが重すぎて持てません、とか書いてありますよ!」
「わーいわーい、カルビだ、タンだ!」
「小鳥さんはカルビたっぷり食べて、デブになってくださいね」
「いいよーだ、タンしか食べないと胸おっきくならないんだよ?知らないの?」
「くっ、そんなの嘘ですっ!」

そんな怪しい会話をしていると、事務所のドアが勢いよく開く。
「じゃーん、たっだいまー!
ピヨちゃん、買い出しユニット、ただいま戻りましたぁ〜!」
元気よく亜美と真美の二人がスーパーの手提げ袋を持って駆け込んでくる。
「報告します!ピヨちゃん参謀長!
はるるんとやよいっちはデザートほーめんでくせんちゅう、だったけど、必ずいいものを買ってくるって!」
「お金はあるから高くておっきなものを買ってくるのよ!」
「そのとおり伝えてるよ!そうでないとフタリでケンカになっちゃう!」

そんな会話をしていると、社長と真が重そうな瓶とペットボトルらしいものを抱えて入ってきて。

「ふうっ、おもかったぁ、流石のボクでもちょっときつかったですよー」
「真ちゃん、お疲れ様!
社長、すみません、重いものを持たせちゃって」
「いやいや、これぐらいは別にね。それにたまには頑張らないと、老化が進んでしまうからねぇ。
なんといっても苦労してくれる君たちのためだ、これぐらいはたいした事ないよ?
さあ、あと少しだろう仕事も。すっきりと年度末の打ち上げができるように、あと少しだけ頑張ろうじゃないか!」


今年の最後の焼肉パーティ。
ああん、焼けるのを想像するだけで、私、濡れちゃったんです…。
「小鳥さん、よだれ拭いてくださいよ。まだ早いですよ!」
386待ち焦がれ(E/3):2009/03/28(土) 17:34:47 ID:w01f3Jbf
以上です。というより


落ちがうまく付けられなかった。。。

けどまあ、思い立ったネタものなので、とりあえず出すだけ出すと…。
お眼汚しになりました。
387創る名無しに見る名無し:2009/03/28(土) 18:26:23 ID:6fT9ACBn
>>386
短気な人なら荒らしまがいと決め付けてしまいそうなネタ振りから
よくもまぁこんなIM@Sな品をwwお見事wwww
388創る名無しに見る名無し:2009/03/28(土) 19:17:12 ID:lblROiu6
2/3から3/3に持って行く辺り、さすが小鳥さんと言うかiM@Sと言うかw
この時期で焼き肉と言うと、ちょっと早いお花見か。
389創る名無しに見る名無し:2009/03/28(土) 21:08:28 ID:C/bJxVT2
あぁ、肉食いたくなってきたw
390創る名無しに見る名無し:2009/03/29(日) 19:25:32 ID:M3BOH06J
面白うございましたw ネタ振りも知りませんでしたので3/3の一行目で声出して
笑いました。くそういいなあ肉。
とりあえずtxtファイルにして、pixivにあった千早砂漠逃避漫画と同じフォルダに
保存しようと思います。
391創る名無しに見る名無し:2009/03/30(月) 21:22:52 ID:oN6sjtbh
感想ありがとうございます。
しかし、やっぱりお題に合わせるのって難しいですよね。いや合わせろとかそういうことはなかったんですが。

で、用語に詳しくなくてすみませんが(アーケード版も箱版もやってるけど、あまり深くその他の関連には入ってないので)、
IM@S っていうとどういうのを指すんでしょう?
色々キャラが出てきて?のようなパターン?
それとも、変な落ち?


小鳥さんと焼肉争奪戦したいですよね。

「くっ、俺だって焼けるの待ってるのに!」
「いいじゃないですか、あなた焼く人、私食べる人で!」

とかw

…いや次のはもっとましなのを書きますわ…。
やっぱりというか、こっちの方が書いてて面白いし。
392創る名無しに見る名無し:2009/03/30(月) 22:18:31 ID:FI2MEPnQ
>>391
ガミPこと坂上プロデューサー曰く、IM@Sに制限はないとのこと。
つまり765プロが関わってるなり、それと同軸上の話だったりさえすれば、
アイデア次第で幾らでも世界が広がるってこと。

要するに、>>387はアイデアに感心したってこったね。おみごと。
393創る名無しに見る名無し:2009/03/31(火) 02:19:50 ID:EtjHEdj4
焼き肉なんてここ数カ月食ってないな
事務所のみんなと食ってみたいよ

SSを書こうとしてもいい感じのフレーズやシチュエーションは結構思いつくんだけど
それを文にするのがなかなかうまくいかないんだよなぁ
394創る名無しに見る名無し:2009/03/31(火) 02:22:25 ID:EtjHEdj4
上げてしまった…

申し訳ないorz
395唐突にSSを思いついたので投下。:2009/04/01(水) 15:09:45 ID:TIhmYwEK
春香「あー。あー。ららら〜らら〜♪」
千早「春香、そこ半音ずれてるわよ。そこはラのシャープ」
春香「ラのシャープ? ……ああ、シのフラットだね!」
千早「違う! フラットじゃなくてシャープ!!」
春香「え? でもシのフラットもラのシャープも同じ音でしょ?」
千早「……違うのよ。貴方には分からないかもしれないけど、
   シャープとフラットには大きな違いがあるのよ」
春香「うーん、よく分からないや……」
美希「ねーねー千早さん」
千早「横から何よ、美希」
美希「いくら千早さんの胸が”フラット”だからって、
   そんな”小さいこと”まで気にしなくていいと思うの。
   ”胸が小さい”からってくよくよしちゃダメなの。
   そんなことじゃ”大きくなれない”の」
千早「……くっ。……うわああああああぁぁぁぁっ!!!」
春香「あー……。千早ちゃん逃げちゃった……」
美希「あふぅ。静かになったからお昼寝するの」

     ぐだぐだのまま終わる。
396395:2009/04/01(水) 15:11:49 ID:TIhmYwEK
なお、上記SSについて、
「転載・SSまとめへの収録、漫画化・動画化など三次創作」を全面許可します。
どんどんやってくれたまえ。

……しかし、我ながら美希がひどいw
397395:2009/04/01(水) 15:16:53 ID:TIhmYwEK
あ。タイトルを書き忘れていました。
「千早とシャープなお話」でひとつ。
398創る名無しに見る名無し:2009/04/01(水) 15:21:00 ID:sbHJsKGb
春香とNECなお話もください
399創る名無しに見る名無し:2009/04/01(水) 20:09:17 ID:qkKrt8uo
どうせなら音階はラ、シじゃなくA、Bにしたほうが違和感無いかなとは思った。
……ああ、でもそうしちまうと、千早がB♭という詐称をする事になるんダカッ
400創る名無しに見る名無し:2009/04/01(水) 20:44:51 ID:f3ygkBx/
つまり
春香の主張:A♭
千早の主張:G♯

ってことですね。
401 ◆doaGQuK4yU :2009/04/01(水) 22:34:48 ID:yXkyMcDt
前回は感想をありがとうございました。
で、今回は、少し前に古典を題材とした作品がアップされていたので、その流れに勝手に乗って。

「千早振る」

です。
402千早振る(1/13):2009/04/01(水) 22:35:30 ID:yXkyMcDt
 暦の上では春だけれども、まだ寒い日々が続いている今の季節。
 そうは言っても心の中まで寒いというわけでもなく、いやむしろほのかに暖かい、かもしれない。いや、俺が面倒を見ている子たちの仕事が、ようやく軌道に乗り始めたのだから、贅沢を言っていては罰が当たる。
 …というより、色々と紆余曲折もあったことだし、これぐらいは…と思うのは自分に甘いかな。努力がそのまま認められるなんてことがいつもあるほど世の中甘くないだろうし。

 俺がそんなことを考えながらプロダクションの事務室で小鳥さんと一緒に仕事をしている今は、土曜日の昼下がり。今まさに売れ時でというよりも今こそ売れなくてどうするんだ、というような子たちをプロデュースしているのに事務所で内職かと落胆する必要はまったくない。
今日はまず朝のニュースで顔出しできたし、その後には午前中にあった雑誌取材もうまくいった。それだけで、今の身分ならもうおなか一杯だ、というところだろう。適度に息抜きは必要だ。
でも当の彼女らは仕事とオフの中間ぐらいの気持ちのようで、午後になった今は、片方の子は料理番組に出る時のために自習だと言って買い物に行ってしまい、もう片方の子は事務所のトレーニングルームでこれまたトレーニングの自習をしている。

 俺が自分の机の上のパソコンで調べ物をしたり、次の企画のための売り出し方法なんかを作っていると、トレーニングをしていた方の子が戻ってきて、タオルで水分をふき取りながら事務室の隅のソファーに腰掛けた。
 おそらくいつものように洒落っ気もなく汗を流してきたのだろう。
それから、一息つきながら水分補給をしてこうやって少し身体を休める。そしてしばらくしたらまた別のところで歌の自習でも始めるのだろう。
それが彼女の日課。

 でも今日の彼女は少し違った。

 おもむろに彼女はソファーから立ち上がると、しっとりとして乾き切っていない長い髪をなびかせながらロッカールームのほうへと歩いていく。ドアを開け、それが再び閉まる間もなくすぐに戻ってくると、その手には黒革の通学かばんが提げられていた。
 ナイロンのありふれた高校生が使うようなかばんではなく、黒くて少しだけ光っている革のかばん。そういう古めかしさを感じさせる小道具を見ると、彼女が本物の高校生であったことを今更ながらに思い出してしまう。
春香はともかく、彼女はどうも時々年齢がわからなくなってしまうようなことがあるのだが、こういう姿の彼女はどう見ても真っ当な"女子高校生"だ。
403千早振る(2/13):2009/04/01(水) 22:36:42 ID:yXkyMcDt
 でもなぜ今日、土曜日で仕事しかない日なのにそんなかばんを持って来ているんだろう。もしかして普通のかばんを買う余裕がないのか、いやそうでもないだろう、などと思っていたのだけれども、俺の疑問はすぐに解けた。
 彼女は自分のかばんから「国語2」という文字の見える本を取り出して、それを開く。
 俺はそんな彼女の姿に一瞬ぽかんと見とれてしまった。でもよく考えてみれば、ああ、千早も普通の勉強をするんだ、などと思ってしまうのは彼女に失礼なことかもしれない。でも、こんなところにまで持ち込んで、宿題でも出ているのだろうか。
 教科書のページをめくる彼女の手が止まる。開いたページを彼女の眼がゆっくりと追っていく。胸元で軽く握っている彼女の指が締められたり緩められたりしている。

 俺はたまらず、席から立って、ソファーに座っている彼女に近寄って言葉をかけた。

 「…千早。どうしたんだ?宿題か?」
 彼女が教科書から眼を離すと俺の方を向く。その表情は、悪戯が見つかってしまった子犬のようにも見えて、少し慌てているようにも見える。
 「あ、いえ、その…。宿題って言えば宿題なんですが…
 さっきの、雑誌の取材に関連して、ついでに調べ物を…」
 「さっきの雑誌?」
 「はい。」
 先ほどの取材で何があったか、と思い起こしてみる。確か和歌の話になって、あ、そうか、和歌だから国語の教科書か。
 「実は、最近、勉強が手に付いていなくて。」
「ああ、そうだったんだ、悪いな、仕事のスケジュール、少し見直すよ」
「いえ、それはいいんです。でも、お前も色々あるのはわかるけれど、余りに悪すぎると落第だぞ、と学校で担任に言われてしまったので…。
しょうがない、少しは勉強するかと思って、かばんを掴んで家を出てきたのですが…。
今まで、歌以外の勉強なんて、って思っていたので、ほとんど何も手を付けていなかったのです。でも担任にそう言われたからではなく、自分でも最近それも余り良くないのではないかな、とは思っていたんです。
 そうしたら。
先ほどの取材で…恥ずかしい受け答えをしてしまったのではないかと思いまして。
やっぱり余り物事を知らな過ぎるのは、歌にもよくない影響が出るのかもしれない、と思ってしまったんです。そういう意味では、とても有意義なお仕事でした。なので、早速その気持ちを忘れないうちに、と思いまして。」
404千早振る(3/13):2009/04/01(水) 22:39:36 ID:yXkyMcDt
 「そうなんだ。刺激になったのならそれは良い事だな。」
 「はい。そうです。
 …あ、ここです、ここ。実は、本当にさっき話題になったあの短歌が、気になっていたのですが…。確か教科書に載っていたような気がして、それで丁度よいので調べていたんです。
 …ここ、ついこの間授業でやったはずだったんです。
でも、真面目に聞いていなくて…内心、酷く後悔していました。
無知はああいう時に露になって、言葉の端々に現れてしまうのでしょうね…反省することしきりです…」
 千早は唇の端を軽く噛みながら悔しそうに言う。
 「無知って、そこまで言わなくても。」
 「いえ。事実は事実ですから。それは正面から受け止めないと。
 でも本当にいい勉強になりました。短歌は古人の歌であることを認識させてくれましたし、古典、文学について詳しくなることは、歌を学びたいという目的にもきっと役に立つことだと思いますし。
昔の人はこういう気持ちを歌にして残しているんだ、と考えてみれば、これもよい勉強です。
 …でも、やっぱり…歌の意味の正しいところはわからない…か。
 授業で、解釈についてもやったはずなんですが…全然、覚えてなくて…もしちゃんと覚えていたら、変な受け答えをしないで済んだのに…」
 真面目だなぁ、千早は。本当に千早は自分が興味を持ったことについてはとても真面目な子だ。考えてみれば元々彼女は聡明で優秀な子で、それに加えて歌の才能と努力する心があっただけなのかもしれない。それが今の彼女を創り出して育てている。
逆に言ってみれば、今までの彼女は、歌にしか興味がなかったからこそこうなっているのかもしれなくて、やってみればもっと色々なことができるのかもしれない。
 だったら尚更、これだけに留まらず、もっと別のことにも興味を持ってもらいたいものだけれども。
 そんなことを俺が考えていると、千早が俺に問いを投げかけた。
 「あの…プロデューサー。一つお伺いしてもよろしいですか?」
 「ああ、何だい?」
 「はい。他でもありません。先ほど話題になった、"千早ぶる"の短歌ですが…
 プロデューサーは、解釈など、ご存じないですか?」
 そう来るか。
 「もしご存知でしたら、教えていただきたいのですが。
 いえ、自分で調べるのが本筋と思いますが、いかがでしょう」
 いや、はっきりいって知らないとかは全くなくて、むしろ色々知りすぎていて困るような状態だ。
405千早振る(4/13):2009/04/01(水) 22:40:32 ID:yXkyMcDt
そもそもお前、どんな答えを求めてるんだ、とか逆に聞いてみたいぐらいだし。
といってもどう考えても千早の性格だから真正面からの普通の答えを求めてるんだろうけど。
しかしだな、一言に芸術や古典と言ってもこの世界は奥が深い。もし仮に「芸術的、古典的な精神に則って適切に解説をお願いします」なんて言われたって答えは単純じゃない。
はっ、もしかしてそれを知っていてのあえての問いかけか?千早みたいなレベルの高めの子なら、ひねりにひねってそういうことがないわけじゃないかもしれない。ひそかに俺のほうが試されているのかも。
だとすると更に上を行く回答を与えてやらなきゃいけないんじゃなかろうか。

うむむ。

「どうしたんですか、余り悩まないで下さい。いえいいんです、お廉違いのことを伺ってるのはこちらですから。」
「いや別にお廉違いというわけでもなくてな。知らないわけじゃないんだよ」
「そうですか。いえ、簡単で構いませんので、さらっと」
さらっと語るほうが難しいって。俺の場合は!

そう。そうなんだ。千早振る、と聞いて答えが一つしか出ないような一般人ならまだいい。
知らない奴なら「ああ、千早のマネするってことだろ?」とか適当なこと言ってれば…
いやそれをやるときっと千早からあのまなざしで見つめられる羽目になるだろう。あのまなざし、俺は実は結構好きなんだけれども時々自省しないと取り返しの付かないことになりそうだから自粛しなければならない。
じゃあ普通に解説すればいいじゃないか、とも一瞬だけ思うけれどもそこは俺の血が邪魔をする。だからと言って単にアレをやってもオリジナリティがないような気がする。

すると残る手段は一つしかないじゃないか!
すなわちそれは演台の上で座布団を投げつけられる覚悟で「演る」ということである。
千早の前で演る。なんということだろう。
この、いつも観せる方にばかり回っていてそのことに純真無垢に取り組んでいる子をして、観る側に回らせると想像するだけで、ちょっとした緊張感だ。
以前律子の前で本物のほうを演った時とはまた違う感覚。あの時律子は「まあ、なかなかですね」と律子なりに褒めてくれたものだが。

どうする俺。
406千早振る(5/13):2009/04/01(水) 22:41:25 ID:yXkyMcDt
「うーん…」
「あ、いえ、ご存じなければ、それで。すみません、突然こんなことをお伺いして」
「いや。大丈夫。知ってるよ。それじゃあいい機会だから教えよう。
 というより、参考にしてくればというぐらいで構わないかな?」

 俺は、思い切って彼女に説明を始めた。

「まずは、この初句だな。初句の「千早振る」ってどういう意味だと思う?」
「…ええと…そうですね、では一つヒントを頂けますか。」
「ああ、構わないよ?なんだい?」
「ここでいっている、千早、というのは私のように、名前を示しているのでしょうか。」
「うーん…そうだな。それぐらいは教えていいか。そうだ、名前だよ。千早、という人がいたんだ。うん。美人の女性だったというよ。」
「だとすると、そうですね、その女の人が…振る…ということなのでしょうか…
それとも短歌の約束事があっての言葉でしょうか…。」
 鋭いな千早。いや、本当はちゃんと授業を聞いていて、俺を試しているのか?などと考えてしまう。
「うーん…。短歌ですし、振る…雨水が降られるのふる…の意味だったりするでしょうか?
 その千早さんが、雨に降られて雨宿りをして…という話…。そういえばそんな、雨宿りを題材にした短歌があると聞いたことがありますけれど…これでしょうか…
 いえ、それだと、二句目の『神代も聞かず』、とつながりが…悪いですよね。
 うーん…どうなんでしょう…」
「そうだな。いいところを突いていると思うよ。
じゃあまあ、もったいぶらずに教えてやろう。千早っていうのは、簡単に言うと昔にいた歌舞伎の役者だ。出雲阿国、とか言う名前は聞いたことがあるか?
彼女は歌舞伎の創始者といわれる人だけれども、千早、というのも歌舞伎というものが阿国によって始められるようになり、間もないころに活躍した歌舞伎役者なんだよ。」
と、そこまで言うと、向こうの方で小鳥さんが何やら小さく頷いている。
そう来るんだ、とかいうような声が聞こえた気がしないでもない。
そんな小鳥さんに構うこともなく、千早が続けて聞いてくる。
「そうなんですか。結構、その千早も、素晴らしい活躍をしたように聞こえますけれど…」
「ああ、もちろんそうだ。何と言っても、阿国が創始して、千早が発展させたとも言われているからな、歌舞伎は」
「へえ…それは凄い…私も、自分の歌で、そういうことができればいいのですが…」
それぐらいの意欲は持っていて欲しいと俺も思う。
407千早振る(6/13):2009/04/01(水) 22:42:07 ID:yXkyMcDt
「できるさ。大丈夫だって。
はっきり言ってな、うん、この事務所に似てるよ、当時の歌舞伎の状況は。
阿国っていうのはなぁ、言ってみればその、音無さんみたいな存在だったんだよ。」
俺がそんなことを言った瞬間に、ぶぶううううう、とかなり大きな音が机の向こうでする。
その音声の主であるショートカットの頭があわただしく動いている。どうやら飲んでいたお茶を書類の上に思い切りぶちまけたようで、慌てて机の脚に引っ掛けていた台布巾を手にとってふき取っているようだ。土曜日出勤だというのにお疲れ様、小鳥さん。
俺はそんな小鳥さんの慌しい気配を感じながらも、千早に向かって話を続ける。
「音無さんみたいな…?」
「ああ。音無さんが昔アイドルだったのは知っているよな。あれは、この事務所ができて間もないころのことなんだそうだよ。うちも小鳥さんが頑張って基礎が出来た。その辺が阿国の作り上げた歌舞伎と一緒だな。
で、小鳥さん、っていうか阿国が引退した後、しばらくして後継者の、その、千早だな、がデビューしたわけだよ。
 で、その千早には師匠の阿国だけでなく別にサポートする人がいた。」
「プロデューサー…ということなんでしょうか。そういう時代に、その言葉が適当かどうかは判断しかねますけれど」
「ああ。プロデューサーのようなものだと思っていいよ。
まあ、当時の人の役割を今の言葉で定義できるようなものでもないんだけれどな。とにかくそういう役どころの人がいた、と。
 でも、結果として千早は自分自身の努力と、少しだけのプロデューサーのサポートで活躍して、大成功を収めた。
そう言ってしまえば簡単なんだけれども、実のところプロデューサーと千早の関係は、はじめはあまりうまくいっていなかったんだ…っていうと、なんか身につまされるような話だな、はは」
「え、その、いえそんな…」
「いいんだよ。気にするな。
 うーん…でもそうだなぁ。考えてみればなんと親近感の沸く話に…うーん…
 日頃の気持ちが自然とにじみ出て…いや何でも…」
「考え込まないで下さい、プロデューサー。気になりますから。
 それで、どうなるんです?いえ、聞いてばかりで申し訳ありませんけれど。」
「いやいや、いいよ。
 まあそのな。千早は、お前みたいにとても才能があって、しかも努力する子だったんだけれども、プライドも高くてな。
下世話なことはできないと言って、必要だからやれ、といわれたことでも納得しなければ首を縦に振らなかったんだよ。」
408千早振る(7/13):2009/04/01(水) 22:42:48 ID:yXkyMcDt
「え、その…すみません、でも…」
「いいんだ。気にするなって。千早はそれがいいところなんだから…って今のはお前に対して言っているんだからな…ってややこしいなあ。
 で、だ。ある時、その、千早にな、プロデューサー役の奴が、この着物を着てこれから舞うんだ、って言ったんだよ」
「え…その、歌舞伎の着物ですよね?」
「正確なデザインなんてもう伝わってないからわからないけれど、まあそうだ。
でも、千早はそれが気に入らない。
"私はそんな着物なんて着たくありません"
"こんなのを着るんですか?嫌です"と言った感じで。だからそれが「千早振る」。
千早は首を振って拒否したからとも、首を振ってうんと言わなかったからとも言われているけれども、とにかくその着物を着て演じることを拒んだんだよ」
ほおお。今度はそんな声が上がる。
もう、聞くのはいいから静かにして下さいよ。
変な声で合いの手いれないで下さい小鳥さん。
「そうなんですか…。でも、私は、気持ち、わからないでもないです…いえすみません」
千早は本心からすまなそうに言う。ちょっと俺の心が痛む。
だけれどもまあ、止めるわけにもいかない。
「いいんだよ。謝らなくて。
 で、神代だ。神代って何だと思う?」
「ええと…ああ、わかりました。歌舞伎の演目ではありませんか?違いますか?
 ああ、そうではなくて、これも短歌のお約束ごとか何かでは…?」
「うーん、またまたいいところ突くね。でもそうだなあ…違うんだ…」
「そ、そうですか…残念です…。やっぱり、勉強不足ですね、私は…」
「いや。そうじゃない。むしろ千早もよく考えて…鋭いな…流石だな…いやそうじゃなくて…。」
いつの間にか、仕事の手を完全に止めてしまって、席の向こうから俺たちの会話に聞き耳を立てていた小鳥さんが、俺の顔を見ながら感心したような表情でうんうんと頷く。
俺は、小鳥さんが何かを言うんじゃないかと冷や冷やしながら続けた。
「ええとそのな。神代っていうのは千早の相棒。今で言うならユニットの相手方だよ。
 わかりやすく考えてみれば要するに、今の千早にとっての春香だ。」
「春香?春香なら、どっちかというと素直にプロデューサーの言うことを聞いたんでしょうか…」
「いやそれがな。春香も嫌がるんだよ。っていうか春香じゃなくて神代だけど。
"千早が嫌なら私も嫌です"とか言って。これまたうんと言わない。
 だからそれが「神代も聞かず」。」
409創る名無しに見る名無し:2009/04/01(水) 23:03:08 ID:hEfaQiLL
規制?
410千早振る(8/13):2009/04/01(水) 23:03:26 ID:yXkyMcDt
「そうなんですか…もしかして、その着物って、この間春香も嫌がったようなものじゃありませんか?春香も嫌がるような衣装…。私が嫌だって言うのは当たり前では…。
あんな変な、キワモノもの衣装を私たちに着せて興味本位のファンを獲得しようとか言う、プロデュース戦略とかいう言葉のごまかしの…いえなんでもありません…」
「うっ、それはちょっとな、待て、単に解釈の問題で…」
「い、いえ、今のは神代さんと千早さんの気持ちを代弁しただけで…」
代弁といってしまうには気持ちがこもっていたぞ、千早。

「それで。千早さんも神代さんも嫌がった衣装、その後どうなったんですか?」
「おお、そうだな。流石に二人に嫌がられて、そのプロデューサーも考え直したんだよ。
でもいい案が浮かばない。どうしたもんだかと悩みに悩んで、仕事もうまくいかなくなって、挙句の果てに放浪の旅に出てしまった。」
 「そんなに悩んでしまったんですか…一見、変なことを考えているように見えても、本当は真剣で真面目な方だったんですね…」
 「だ、だから俺じゃないぞそれは。
悩んだのはその、千早と神代のプロデューサーだからな。
そして悩みに悩んだ末に行き着いたのが龍田川だ。」
「龍田川…これは川の名前でいいんですね。とても遠くまで放浪したことになるんでしょうか」
「ああ、奈良県の川で、紅葉で有名なよい場所だそうだよ。都から奈良まで、今なら余り遠くもないような気もするけれど、昔だからな。
野を越え山を越え、時には一人寂しく野宿をし、プロデュース戦略に悩みながらの放浪だから大変だった…うう、なんか自分で言っていてちょっと身に染み…いやなんでもない…」
「ぷ、プロデューサー、すみません、いつもいつもご迷惑ばかりかけて…。
なるべく、私もわがまま言いませんから!
でも、ちょっと時々センスが…その…ついていくのが…
この間の、幼稚園児の格好とか…あれは流石に…いえなんでもありません…」
「うっ。まあそれはいいとして。
その龍田川まで来た彼は、はっとそこで見た景色にとても強い衝撃を受けた。とても綺麗な景色だったんだ。
 色とりどりの秋の紅葉が水面に映えて…それはもう絶景でな。
眼を閉じて想像してみてくれ。秋の深まる中、清流のほとりにそびえ立つ山々の紅葉。
どうだい?思い浮かぶだろう?」
「は、はい…わかるような気がします。秋の澄み切った綺麗な空気の中に、鮮やかな色とりどりの樹木の紅葉が…」
411千早振る(9/13):2009/04/01(水) 23:04:28 ID:yXkyMcDt
「そうだよ。そして感動したプロデューサーは、川の方へと降りていった。するとそこでは、何やら川で作業をしている人たちがいたんだ。」
「何のでしょう?」
「染物だよ。染物。布を染めていたんだ。
千早、布を染めるためにはな、綺麗な水がたくさん必要だ。だから昔は川の側に衣料を扱う人々が集まっていたんだ。
いい布は、とても綺麗な水のたくさんあるところじゃないとできないんだよ。
で、プロデューサーはそこで作業をしている人に聞いたんだ、こんな素晴らしい布地は見たことない、どういう品物なんだ、とね」
「はい。私も聞きたくなります。素晴らしい布地なのでしょうから」
「ああ。そうだよな。
そうしたらこう教えてくれた。これは、"唐紅"と言って、渡来人の技術で染め上げる手法でしか表現できない鮮やかな赤で、ここでしかできないものなんだ、とね。
それを聞いたプロデューサーは思った。そうだ、これだ、この布地で衣装を作って、千早に着せてやろう、そして千早の舞を完成させてやろう、とね。
きっとこれなら喜んで着てくれるだろう。そう思ったんだよ。
すぐに彼は周りの人に頼み込んだ。一緒に作業させて欲しい、とね。でも周りの人は言う、これは我々でも大変だ、楽な作業じゃない、お前さんみたいな都の人間には無理だ、と。
お金さえ出せばわけてあげるからそれで良いだろう、とも言われたんだけれども、プロデューサーはその時金を持っていなかったんだ。何しろ放浪の末にたどり着いたところだからな。
それに、どうしても彼は、自分で作ったものを千早に着せたかったんだ。」
「なんていう、篤いお心の持ち主なんでしょう…。」
「…ああ、そうだな。熱心だったんだろう。その人も。
 ま、そういうのが第四句の"からくれない"の意味するところだ。
まあそういうこともあって、彼はとにかく拝み倒して布染めの作業に加わらせて貰ったんだ。確かに言われたとおり、作業はきつかった。川の流れる水は冷たい。その中にずっと身体を置いて、作業しなければならないからな。」
「なんて情熱的な…すみません、そういうお心遣いがあるのに、私は…」
ふと気がつくと、知らないうちに千早の声が少し震えている。俺はそんな千早の姿にちょっとどぎまぎしてしまう。
「い、いやそれは架空の、いやそうじゃなくてプロデューサーって言っても俺じゃないから、まあ…」
「あ、はい、でも、その…わかってはいるんですが…私…」
412千早振る(10/13):2009/04/01(水) 23:05:25 ID:yXkyMcDt
「…まあ、それはそれとして…。
ところでだな、その作業は日夜続けられたんだ。周りの職人さんたちもびっくりなぐらい、彼は頑張った。ひとえにいいものを作りたい、という思いが彼を動かしていたんだろう。でも長旅の末にそんな慣れない重労働だ。そんなことをしていたら、彼はどうなると思う?」
「え…」
千早の表情がさっと暗くなる。むう、そんなに反応されても困る…けれど俺もここで引くわけにはいかない。引きようがない。
「布染めの作業で、疲労が溜まっていた彼は…
自分の手で染め上げた布を見て、ああ、これで千早にも、と思って気が緩んだんだろうな。その完成した晩に、眠るように息を引き取ったんだよ。」
「………。」
「で、その布は千早の元に届けられた。千早はそれを見てとても悲しんだ。
失ってみて初めてわかった、プロデューサーが自分のことをどれだけ大事に思ってくれたのか、をね。
そして嘆いた。この、唐紅の布を作るために、"水くくるとは"とね。
千早の脳裏に、日夜、冷たい水の中で布をくぐらせていた彼の姿が思い浮かんで…
彼女の涙が布地に落ちて、それがまた鮮やかな模様を作り上げたとも言われている。
そして千早は、その布で作った衣装を纏って、歌舞伎の世界に名を残したんだ」
「…なんていう…そんな…。
私、私…。大事な人を失ってまで、名を残そうだなんて…そんな…」
「ああ、だから余り考えすぎないようにな?千早。お話だから。そう、お話…」
「でも!いえ…。いいんです…
わかりました…いえ、本当にわかったんです…プロデューサー…」
 千早の眼には今まで見たこともないような大粒の涙が溢れかえらんばかりに湛えられている。いや、凄いな俺の演芸も。だなんて言っていていいのか、怪しい気がしてならないぐらいだけれど。

 「プロデューサー…本当に今日は、とても素晴らしいことを教えていただき、ありがとうございました。
 これからは、この短歌のことを肝に銘じて、頑張ります!
 本当に、古典の世界は奥が深いですね…」
 いや、古典って言っても創作古典っていうか。それにどっちかっていうと古典落語だけど新作だし…なんだっけ、小鳥の千早か、千早の小鳥か…って言われた人もいてだな…そうじゃなくて…。
 とか、そんな現実逃避をしていると。
413千早振る(11/13):2009/04/01(水) 23:06:41 ID:yXkyMcDt
 千早が思いつめたような顔をして、教科書をかばんに詰めはじめる。
 「ん、どうしたんだい、千早?」
 「はい、今日はもうこれで失礼します!
 来週、試験ですから、今日と明日、ご教示頂いたことを忘れないように復習して、しっかり心に刻んで、試験に生かします。これ、試験範囲なんです。」
 「試験?!」
 試験だって?そりゃまずいって。
 俺が思わず小鳥さんの方を見ると、小鳥さんはその瞬間に明後日の方向を向いてしまう。
 「参考にというつもりで演ったんだけど…」
 「はい、大変参考になりました。これで試験も万全です。プロデューサーって、勉強の教え方も上手なんですね。試験勉強をしなくてはならなかったのですが、本当に貴重な時間をありがとうございました。
…いえ、試験だけじゃありません…これまでの私の至らなさを省みて、今後の私の行動に役立てていこうと思います…
それでは、失礼します。また、お仕事頑張ります。
何でも…頑張りますから!
プロデューサーが、考えがあって選んでくれたなら、着ぐるみだって、サンバ衣装だって…くっ…でも頑張ります!
それでは失礼します、プロデューサー!」

千早は力強い足取りで事務所から出て行った。
414千早振る(12/13):2009/04/01(水) 23:07:26 ID:yXkyMcDt
「はぁぁぁぁあああああああ!」
やばい。これはやばいって。試験ならそう言ってくれよ千早。
とか何とかいったってもう遅い。
「はぁぁぁぁあああああああじゃないでしょう…
しーりませんよ、しーりませんよったら…さあどうなることやらですね…。」
「こ、小鳥さん!」
小鳥さんがにやにやとへらへらの混ざり合ったような笑顔で笑いながら俺の方を見ている。
「プロデューサー、落研だったんですか?
だとしたら経験が思いっきり邪魔しましたね」
「うー…。」
「まあ、結構いい出来だったんじゃないですか…オーソドックスに"千早振る"を演るのかと思いましたけど、オリジナル版ですかー。さすがですねぇ、プロデューサー。
 この間律子さんが言ってたのはこれだったんですねー。いえいえさすがさすが。」
「い、いやあれはオリジナルの方で!」
「まあまあ、いいじゃないですか、新作なんでしょう?ふふふふふっ、龍田川で染物で千早に着せるだって、ふふふっ。仕事の方にも行かそうだなんて。お上手ですね。」
小鳥さんは薄笑いを浮かべたまま、口元に手を当てて思い出し笑いを繰り返している。
「こ、小鳥さん、途中で突っ込みいれてくださいよ!
 龍田川って相撲取りじゃないんですか?とか!」
俺もかなり慌てていて、話してる最中に思ってたことと全然違うことを口走っているような気がしないでもない。
「あら、そんな無粋なことしませんよ。
それに何ですか。私。出雲阿国でしたっけ?ふーん、そうなんだ…」
「いいじゃないですか、アマノウズメじゃないんですから!」
「私は神話の世界から生きてたりしません!」
「ずっと生きてるなんて言ってませんって!たとえですたとえ!」
「へーへー、何でもいいですよー。そんなに言うなら今度天岩戸のコスプレで宴会芸やってさしあげますよーだ。
とにかく私は…おっと仕事が…土曜日なんだから速く帰りたいですしねぇ」
「…」
いかん…なぜか小鳥さんまで拗ねている…。
「大丈夫ですよ。千早ちゃんが赤点取って、そのせいで仕事のキャンセルが出てもいいように、スケジュール見直しておいてあげますから。
 ああ、それだけじゃ足りません?千早ちゃんを宥めて、機嫌を伺って、っていう時間も確保しておかないと…あーこりゃ大変ですねっ、ご愁傷様!」
とかいう会話をしていると。
事務所のドアが勢い良く開いて、一人の女の子が入ってくる。
「あら、神代ちゃんお帰りなさい」
「へ?かみよ?誰です、それ?」
「いや、春香、それはだな…」
「んー。次のお仕事の役名か何かですか?
 そう言えば、さっき建物の出口のところで、千早ちゃんとすれ違ったんですけど…
 なんか千早ちゃん、物凄く燃えてましたよ!
 プロデューサー、あのクールな千早ちゃんをあそこまで激励できるなんて、何か凄いこと言って励ましてあげたんですか?」
「うはぁ…」
「よーし、私も千早ちゃんに負けないぞ〜。
 これ、お土産のケーキです。私はトレーニング終わってから食べますね!
 先にお二人で召し上がっていてください!では!」

 ただただ呆然と春香を見送る俺。
 は、春香まで…。

「さ、お仕事、お仕事…ケーキは春香ちゃんが戻ってからにしましょうね。
 プロデューサーさん、それまでには立ち直ってくださいね?ふふっ」


〜終〜
415創る名無しに見る名無し:2009/04/01(水) 23:09:17 ID:yXkyMcDt
初めてゲームセンターの筐体で、千早のDランク雑誌取材を受けた時、すべての3択を否定したくなった、というよりも「千早のまねをする」じゃないだろう!わかってないな!
…と思ったのは私だけではないはず(多分)。
もちろん私だったら間違いなくあれですな。「千早ふる」っていうと千早っていうのは遊女で、ふられて、豆腐屋でおからで、とかそういうことを延々と話すわけで。

ところで、もし感想をいただけるなら…

このようなCommunicationを千早としたら、それは

Perfect Communication
Good Communication
Normal Communication
Bad Communication

のどれだと思うか、それもついでに書いて下さると嬉しいです。

書いてる本人としては、後でひたすら怒る千早というのも、とりあえず受けたというので喜んでいる千早というのも考えられるんですが…
PerfectのちBadっていうのが本当のところでしょうが。その時、思い出はいくつ増えるんでしょうかね?

最後に。いつもと書き方を変えたら、改行がかなり違った感じになり、見難いものとなってしまいました。すみません。
あと、発言数計算間違えました…。
416創る名無しに見る名無し:2009/04/02(木) 01:12:48 ID:pt5CtDIe
>>415
創作落語乙。

しかし、これで結果を決めるのは難しいなぁ。
Dランク以下ならきっとノーマル、バットだと思うけど、
そのレベルじゃまだ学業がおろそかになってはいない気が。
Cランク以上でグッドかなぁ。
#パフェは落語をそのままやって最後にばらす。
417創る名無しに見る名無し:2009/04/02(木) 09:40:09 ID:GcoBIuyM
>>415
おおぅ、こんなところで新作落語が読めるとはwww
おもしろうございました。落語のネタも本来の和歌の解釈も織り込んであるのがいいですね。
つうか自分の名前が出てくるのにひとったらしも授業聞いてない千早ウケるw
ちょうどMS03を聴いたところでして、予想外のところで無闇な燃え方をする千早に違和感が
なかったのも助力してますが。
なんにせよGJでした。ああ落語ネタおもしろいなあ。

なおコミュとしては
『数日後、答案返却の時にクラスで公表されてしまい、大爆笑されたとこっぴどく叱られた。
これからは冗談を言うのにも気をつけなければならないだろう』
っつってバッドになるんじゃないですかね、やはり。
高ランクでも>>416のようにコミュ内で収拾しないとテストがえらいことになりそうだし、低ランク
なら『本来の和歌の解釈を説明する』以外にパーフェクトの道はなさそうです。
千早って駄洒落に耐久力ないけど、手の込んだジョークは笑い所見失いそうな気がするです。
418創る名無しに見る名無し:2009/04/02(木) 09:43:23 ID:GcoBIuyM
あ、うっかりスルーしちゃったけど>>395もGJでした。
美希の無邪気クリティカル技はこわいですよこわいですよ。

こんな感じのちらほら投下されても楽しいよね。
419創る名無しに見る名無し:2009/04/02(木) 12:59:13 ID:+BVLBsHp
>>395
わかってないなあ、この抵抗なく流れるようにシャープな胸のラインが重要ですよ?
・・・結論、フラットでもシャープでも大差ありませんでした

>>415
千早振る、は誰もが一度は思いつきつつそのままやってもでお蔵入りさせる類の題材だと思うのです

コミュは・・・まあ、4月1日発表を加味してグッドで。普段だったら>>417方式でバッド確定ですね
パフェは取れるんだけど朝のメールチェックで千早の担任からメール来て、
開くと不幸の手紙の如くテンション真っ黒にとかそういう手の込んだ遊びが出来そうw
420創る名無しに見る名無し:2009/04/02(木) 13:49:02 ID:+BVLBsHp
>>420
感想書きかけで送っちゃってました
そのそのままじゃお蔵入りさせる題材を、話自体を創作してナナメの角度から
ぶち込んできた姿勢がまず好!(よし!)って感じです。
というかおからで井戸の方までもそこを押さえた上でのネタになってる辺り
手が込んでますw・・・まあ、千早振る自体が元の和歌を前提にしてて
それをさらに前提にしてこれがあるという姿勢では当然と言えば当然かもですが
そしてわかっててツッコまない小鳥さんがところどころで良い味出してて・・・
あと、えーと、その。ピヨちゃんのウズメ、マジ見てえですw
421春香が家にやってきた人:2009/04/03(金) 00:15:11 ID:ZV7j48CG
春香!俺だ!誕生日おめでとう!

ということで、書き手としてはご無沙汰しちゃってます。
>>58>>175の、みなと、と申します。
春香の誕生日までに新作上げたかったのですが、ちょっと遅くなってしまいました。
なので、このスレにということで、以前の拙作の番外編を一つ。

番外編なので、>>58からの一連をお読みでない方には理解してもらえないと思います。すみません。
スルーしていただくか、よろしければ一読いただいた後でお読み下さい。
422春香が家にやってきた:番外編(1/2):2009/04/03(金) 00:17:08 ID:ZV7j48CG
♪ちゃ〜ら〜 ちゃらら〜ら〜ら〜ら〜 ちゃ〜らら〜 ちゃらら〜ら〜
♪私は天海春香です!イェイ!トレードマークは頭のリボン!
<<プツッ>>
”はい。天海春香です。ただいま電話に出ることができません。すみませんけど、発信音の後にメッセージを<<ブツッ>>


部屋の片隅、白いゲーム機の大柄な箱の上に置かれた携帯は、応答を得る事なく空しく切れた。
着信履歴を示すランプが、小さく灯る。


コンコン・・・

部屋のドアがノックされた。
返事はない。
やがて、とまどい気味にドアが少しずつ開く。

「プロデューサーさん・・・?」
ドアの隙間から、少女が顔をのぞかせた。
キョロキョロと部屋の中を伺う、その動きに連れて、頭のリボンが揺れる。
彼女の大きな瞳が、部屋の真ん中で向こう向きに横になっている男の姿を捉えた。
『あ、もうお休みだったんですね・・・。』
声を潜めて独り言。
しかし、部屋の電気はおろか、ゲーム機とテレビ画面の電源も入りっぱなし。
ゲームのBGMが鳴り続けている。
明らかに、寝落ちしたというべき状況だ。

少女の表情に、迷いと憂いが影を落とす。
彼を起こすべきか。このまま寝かせといてあげようか。
起こしたい。それはもちろんだ。
もう一度、顔が見たい。声が聞きたい。そして、ちゃんともう一度お礼が言いたい。
『プ・ロ・デュー・サー・さん』
ささやくように呼びかけてみた。
やはり返事はない。
迷いを持ったまま、彼女は部屋に入っていった。

423春香が家にやってきた:番外編(2/2):2009/04/03(金) 00:17:56 ID:ZV7j48CG

ゲーム機の上の小さな光が、彼女の目に入った。
幸運な忘れ物。
この携帯を取りに行く、それが名目だったのだ。
期せずして訪れた好機。しかし、お目当ての彼はすっかり眠りに落ちている。
『せっかく、もう一度来たのに、プロデューサーさんは・・・』
そう言いながら、男の寝顔を覗き込んだ彼女は、息をのんだ。
嬉しさと悲しさをごちゃまぜにした様な寝顔は、涙でグシャグシャに濡れていた。
彼女のために流した涙で。
そう思うと、胸の奥が締めつけられるようだった。

彼が寝ていて良かったのかもしれない。
少女は、初めてそう思った。
もし、もう一度、話ができたりしたら、もう自分は帰れなかっただろう。
彼が寝ている今ですら、こんなに帰りたくないんだから。
少女はハンカチを取り出し、彼の涙をそっと拭った。
『このまま寝ちゃったら、風邪ひいちゃいますよ。』
あえて明るい口調で、しかし声は潜めたまま口にしてみる。
そして、寝ている彼の体に毛布をかけてあげた。

このまま帰ろう。
そう決めた。
でも、手紙くらい置いて行きたいな。
部屋を見渡す。
そう言えば、昼間この部屋を片付けしてたんだった。
確かその時に、ペンは見た覚えがある。
でも、紙は見なかったかも・・・。

彼女の記憶の通り、ペンはすぐに見つかった。
でも紙がない。
紙袋やチラシならあるけど、さすがにせっかくの置き手紙に使うのはためらわれた。
困ったな・・・と、頭に手をやった時、指に触れる物があった。
彼女のトレードマーク。頭のリボン。
そうだ。
自分の分身としてこの場に残して行くのに、これほどふさわしいものも他にないじゃないか。
大事にして欲しいな・・・。そう思いながら、リボンを解いて、メッセージを綴った。
そしてしばらく悩んだ末、最終兵器リボンの投下地点は、彼の手首と決めた。
リボンそのものに気付いてもらえなかったり、メッセージに気付いてもらえなかったりということはないか、散々考えた末の結論だった。
絶対に気付くところ、その上で絶対に、いつかそのリボンをほどくはずのところ。
へたに頭に付けて、気付かずに外出したりしたらかなりの悲劇だし、そこで気付いて慌ててリボンを捨てられたりしたら大変だもの。


リボンを結び終えた彼女は、今度は忘れない様に携帯を持った。
「また、きっと会えますよね。」
彼に、そして自分に対して言う。
「じゃあ、おやすみなさい。私の、プロデューサーさん。」
ドアが閉まる。
部屋の中には、彼女がプロデューサーさんと呼んだ男が、一人残された。

彼女の残したリボンと共に。

424春香が家にやってきた人:2009/04/03(金) 00:20:51 ID:ZV7j48CG

以上、番外編でした。
誕生日なのに切ない内容でゴメンよ。春香。

では、また。
425創る名無しに見る名無し:2009/04/03(金) 08:47:56 ID:Aa348O7N
>>424
だがそれがいい乙
最終兵器で笑っちゃったよw
426創る名無しに見る名無し:2009/04/03(金) 17:59:41 ID:wWiN13rz
>>424
おひさ

可愛かった。こんなチャンスにオチてるだらしない主人公、愛せるなあw
427創る名無しに見る名無し:2009/04/03(金) 21:29:41 ID:vOxsS9Rn
>>424
GJ!
改めて本編も読み返してからもっかい読んだら
こみ上げて来るものが・・・
428創る名無しに見る名無し:2009/04/04(土) 22:38:48 ID:OHthMHHE
>>424
だが書くことは「一諸」だw
こういう言い方するとあれだが
このプロデューサーもう一生別の恋人出来ないんじゃないかなって気が
なんていうか、もう二度と届かない相手、再会できるかどうか
わからない相手と破れない約束しちゃった感じがするから
でも、繋がりは残ってるから、またいつか会える、のかな。

その流れでゲームキャラと添い遂げることを決めてしまった時の
あのおかんの反応が見てみたくもあるようなそうでもないようなw
なんていうかこのシリーズ、妙にイタさがさわやかなんだよね・・・
429創る名無しに見る名無し:2009/04/05(日) 08:19:20 ID:aTtDa4g2
>>428を見て、なぜか
「全く別のPの家に、今度は千早が現れる。しかし、そのPには妻と子供が・・・。」
という昼ドラ展開が頭に浮かんだ。
430創る名無しに見る名無し:2009/04/11(土) 18:05:20 ID:rsIBTdyW
::::||__,。、
::::||⌒ヾゝ
::::||ハハj'〉
::::||ヮ゚ノノ <誰もいない…投下するなら今のうちですよ、今のうち!
::::lとソ

『天海の岩戸』本文6レス、まいります。
431天海の岩戸(1/6):2009/04/11(土) 18:06:36 ID:rsIBTdyW
「もー、プロデューサーさんのバカバカバカーっ」
「だーからなに怒ってんのかわかんないけどゴメンって。機嫌直して収録行こうぜ、春香ぁ」
「嫌です!もう私ここに閉じこもって一生外に出ないんですから!」
 765プロダクションの小会議室のドアを挟み、大きな声で会話しているのはアイドル・
天海春香とそのプロデューサーである。
 音無小鳥の耳には先ほどから言い争いが聞こえていたが、ちょうど資料室へ行く用事が
できたところで枝道の廊下を覗いてみると、この状況が見て取れた。
 廊下側から声をかけるのがプロデューサー。いつものごとく今ひとつしゃんとしない服装
で、それでも表情は真剣だ。
「そんな子供みたいなこと言ってないで現実を見ろ。お前はタレントで、今から久しぶりに
全国ネットの歌番組の収録だ。お前のギャラと765プロの業務収益のために、お前は仕事に
行かねばならんのだ」
「そんなにお金が好きなら、プロデューサーさんなんかカネゴンになっちゃえばいいんだー」
 それに部屋の内側から応じているのが春香。プロデューサーがノブをガチャガチャやって
いる風景と先ほどからの会話を鑑みるに、なにか行き違いがあって鍵をかけて閉じこもった
と言うところであろう。
「なぜカネゴンを知ってる、ってか無茶言うな。765プロは薄給なんだ、カネゴンを養う
余裕なんかないぞ」
「説得の方向性が間違ってますよ、プロデューサーさん」
 肩越しに声をかけると、プロデューサーは振り向いた。
「あ、小鳥さん」
「どうしたんですか、そんな大きな声出して。事務室まで聞こえましたよ」
「ああ、ご心配かけてすいません。実は春香がですね――」
「悪いのはプロデューサーさんですーっ!」
 話し始めた彼を遮るように、可愛らしい声の妨害が入る。二人は顔を見合わせ、次いで
閉ざされたドアを同時に見つめた。
「……プロデューサーさん、今度はなにやらかしたんですか?」
「俺ってそんなにいろいろやらかしてますか」
「おとといレッスン室のダブルブッキングで真ちゃんのプロデューサーさんと腕立て伏せ
対決やったの、誰でしたっけ」
「……面目ない」
 小鳥は小さく溜息をつき、会議室のドアに向かった。
「春香ちゃん、私です。このドア、開けてくれないかしら」
「ごめんなさい小鳥さん、でも今日と言う今日は私、本っ気で怒ってるんです。だから
ここを開けるわけには行かないんです」
「そんなに思いつめて?春香ちゃん、いったいなにがあったの?」
 まだまだランクは低いとは言え春香は765プロダクションの大事なタレントだ。その
タレントと二人三脚で芸能活動をこなすのがプロデューサーであり、確かに衝突のひとつも
ないとは言えぬもののその二人がこのようないさかいを起こすと言うのはよくよくのことだ。
プロデューサーとタレントが相身互いを信頼してこそのアイドルユニットである。小鳥の
脳裏に不穏な想像が湧き起こる。
「春香ちゃん……まさかプロデューサーさんに力づくで思うがままにっ!?」
「は?」
「えっ?」
「まさかまさか、でもプロデューサーさんとは言え一人の男すなわち一匹のオス、ああっ
いつの日かこんなことが起きるんじゃないかと心配していたの!」
「こ、小鳥さん?」
「そうなのね!そうよ今日の午後は春香ちゃんとプロデューサーさんが打ち合わせと称して
二人っきりで密室にいたんだわ。きっとそこでプロデューサーさんは
『なあ、春香?』
『なんですか?プロデューサーさん』
『春香の髪って……いい匂いがするな』
『ええっ?ぷ、プロデューサーさんったら、いきなりなにを言いだすんですかあ』
『本当のことさ。ほら、こうして手に取るだけで』
『やっ?な、なにを』
『それだけで乙女の芳醇な香りが漂うんだ。艶やかな流れに指をくぐらせれば』
『あんっ?い、いきなり触らないで……くださいっ』
『まるで光をたたえた川に身を踊らせるようだ。その岸辺には美しい野原が広がり』
『ふぁ!耳……は、だめ……っ』
432天海の岩戸(2/6):2009/04/11(土) 18:07:21 ID:rsIBTdyW
『起伏の全てを、その手ざわりの全てを感じたくなる』
『は……そんな、ふう……にっ、撫で……撫でないで……ぇ』
『春香……こっちを向くんだ』
『ふうぅ……プロデューサーさん……私……わたしっ』
『春香っ!』
ガバぁっ!
っていうふうに!」
「目を覚ませーっ!」
「はひゃあっ!?」
 プロデューサーが小鳥の耳を掴み、耳元で大声を出した。
「『っていうふうに!』じゃないですよ、人が困ってるのに!」
「はっ、私としたことが、つい不安が頭をもたげて」
「いま頭をもたげていたのは確実に不安とは別のなにかですがね。こっちは春香がすねて
困ってるんです、助力する気がないんなら事務室で仕事しててくださいよ!」
「ああ、ごめんなさいプロデューサーさん、今度はうまくやりますから。ねえ春香ちゃん」
「はっ、はいっ」
「なんだ、春香いたのか、すまんな余計な騒ぎを」
「い、いえっ。でも小鳥さんの妄想って聞いてるとすごいドキドキするから。あー、
なんか顔あっつい」
「大丈夫か?冷たいものでも?」
「あ、平気です。じゃ、私戻りますね」
「ああ、頑張れよ」
 春香は身を翻し、再び会議室に閉じこもる。
 バタン、ガチャッ。施錠の音が響き、そこでようやくプロデューサーが我に返った。
「――って春香!?いま、いま外にっ」
「あー、失敗しましたねプロデューサーさん」
「小鳥さんーっ!」
「ふう、せっかく私がアメノウズメ役でひと踊りしてさし上げたのに、タヂカラオの
プロデューサーさんが不甲斐ないんじゃどうしようもないですよ」
「え、今のって俺の落ち度なんですか」
「だってそうでしょう、事情はよく知りませんが、春香ちゃんはプロデューサーさんに怒って
社内に天の岩戸をこしらえたんでしょう?春香ちゃんだけに天海の岩戸ね、ぷっくくく」
「笑いごとじゃないっつうのに」
「プロデューサーさん、聞かせてください。春香ちゃんがこんなに怒ってる理由、心当たり
ありませんか?」
「んー、いや、それがさっぱり」
 プロデューサーは頭を掻く。
「さっきまで打ち合わせってのはおっしゃる通りですよ、でも今日の収録と来週以降の
スケジュールの話だけで、別に彼女の気に障るようなことは」
「あー!やっぱりプロデューサーさん気付いてないんだ、もー」
 ドアの向こうから春香の声。
 小鳥は考えた。なにがあったのか、春香に問いただすのはたやすいが、なんとなく
それでは問題の解決に結びつかない気がする。普段明るく前向きな彼女がへそを曲げる
のには相応の理由があるだろうし、それをプロデューサーが自覚していないのが火に油を
注いでいるのであろうからだ。
「うん、わかりましたプロデューサーさん、それではなぜあなたが春香ちゃんをこんなに
したのか、じっくり考えてみようではありませんか」
「小鳥さん?」
「収録に出るまでどれくらい猶予が?」
「あ、そうですね、10分くらいですか」
「了解しました。春香ちゃん?」
「はいっ」
「春香ちゃんはそこで聞いててね。プロデューサーさんに真実をつきつけ、罪を認めさせて、
そのドアと一緒にあなたの心の扉も開いてみせるから!」
「あ……ありがとうございます小鳥さん!よろしくお願いしますっ」
 小鳥は春香を勇気づけ、あらためてプロデューサーに向き直った。気分はふてぶてしい
犯罪者に立ち向かう敏腕美人検事である。
「ではプロデューサーさん、さっきの打ち合わせであなたと春香ちゃんがどんな行動を
取ったか教えてください」
433天海の岩戸(3/6):2009/04/11(土) 18:08:19 ID:rsIBTdyW
「……いいでしょう、俺に悪いところがあると言うなら、確かに直さなければなりません。
しかし俺は無実ですよ、やってみれば判ります」
「無実……ほんとうに?」
「ええ。俺が春香を困らせるはずがない」
 プロデューサーの説明は簡単明瞭であった。
 来週はオーディションが2本控えているので、その対策と選曲。今日の歌番組では新曲を
歌うので、これまでのレッスンの成果を存分に発揮すること、失敗しやすいポイントの
最終チェック。収録後は二人とも直帰なので、彼が春香を家まで送り届ける約束になっていた。
「今日は親父さんも帰りが早いって言うんで、収録終わったら超特急で送るからな、って
俺は立ち上がったんですが、振り返ってみたら春香が固まってたんです」
「固まった?」
「はい。ええとそうだ、超特急?って聞き返されたから、まかせろ、寝ててくれればあっと
いう間に天海家到着だ、と」
 会話のニュアンスには収録を早く終わらせよう、すなわちリテイクを出すことなくいい
ステージを見せてやれ、といったものも含まれていただろう。ただ、それはいつものこと
だし、芸能人である以上当然の話とも言える。
「そのあたりの話、もう少し細かく説明していただけますか?」
「ええ。ええとですね」
 プロデューサーの再現によると打ち合わせも終わり、そろそろ局へ向かおうという時間……。
『……こんなもんかな。春香、なにか確認のし忘れとか、ないか?』
『大丈夫です!今日はプロデューサーさんもいてくれるし、さっきも言いましたけど今回の
新曲、すっごく気合入ってるんです。失敗なんかありませんよ』
『頼もしいな。事務所の皆からもエール貰ってるしな』
『はいっ』
『今日の収録は出演者ごとにバラバラだから、自分の録りが終わったら終了だ。一発OKなら
番組スタッフの評価も高くなるぞ』
『ええ、ノーミスクリア目指しますよ、ノーミス!』
『よしよし、リテイクなかったら何かご馳走してやるか』
『わーい、やったー』
『ただし今度な。今日はお父さん早いんだろ?超特急で帰らなきゃな』
『……え?超……特急?』
『寝ててくれてもいいぞ。テレビ局の駐車場から天海家のドアまで、なにもないかのように
移動してやるぜ』
『……ぷ』
『ん?』
『プロデューサーさんのばかーっ!』
 ……。
 回想を終え、プロデューサーは小鳥に告げる。
「と、こんな感じです」
「わかりました。ねえ、プロデューサーさん」
 小鳥は訊ねる。
 実は話を聞いているうち、すでに彼女はある仮説にたどり着いていた。会話の詳細を
聞いたのはその確認作業である。
「プロデューサーさんは、たとえば誰かから『今度ご馳走してやる』っていう約束を
された時、どう思います?」
「え?そりゃあ……嬉しいんじゃないですか?」
「ですよね。では、約束はしたけれど、その日付が告げられないままだったら、どうで
しょう?」
「うーん……仕事相手だったら、『ああ、社交辞令か』と」
「もっと仲の良い相手だったら?家族とか、友達とか、恋人とか」
「なら逆です。言わなくてもあいつのことだからあの頃だな、と見当がつく」
「ですよね」
 今の会話で彼は、友人と飲む約束でも思い出したのだろう。今回の件がそれと同根とは
気付いていない様子だが。
「プロデューサーさん、やっぱりです。あなたは打ち合わせを終える時、大きな間違いを
犯したんですよ」
「なにを言ってるんですか?俺は無実だと」
「超特急で家まで送る、なんて言ってしまったから、春香ちゃんは『約束をすっぽかされた』と
思ってしまったんです」
434天海の岩戸(4/6):2009/04/11(土) 18:09:12 ID:rsIBTdyW
「約束?」
 プロデューサーは視線を宙に泳がせた。
「ご馳走うんぬんのことですか?ですから今日の今日なんてことは」
「それじゃないですよ、先週の土曜日のことです。なにがあった日か憶えていますよね?」
「誕生パーティでしょう?やよいと、春香の」
 そう。実は先週末、765プロでささやかなパーティが開かれていた。誕生日の近い二人を、
タレント仲間で祝うささやかな手作りパーティだ。仕事の都合などで全員とはいかなかったが、
多くのアイドルが集まり二人の生誕を祝ってくれた。ただ……そこに春香はいたが、
プロデューサーは顔を出すことができなかった。
「プロデューサーさんはそのパーティに参加していませんでしたよね」
「ええ、コンサートの前日でライブハウスに詰めてましたから。でも、ちゃんと携帯で
電話しましたし、メールだって」
「プロデューサーさん、その電話で春香ちゃんと約束しましたよね?春香ちゃんから
聞きましたよ」
「……ええっと」
「『近いうちにこの埋め合わせ、するからな』って。プロデューサーさん、春香ちゃんは
顔には出さなかったけれど、その約束を心待ちにしていたんですよ」
「……」
「近いうち、って言って、日付までは詳しく約束しませんでしたよね。でも、春香ちゃんは『きっと、
この日』って思っていたんです」
 プロデューサーの目の色が変わったのを見て、小鳥は自分の推理が正しいと確信した。
「この日って……今日っていうことですよ。たまたまお仕事が直帰終わりで、時間とか場所
とか考えると、プロデューサーさんが車で送ってくれるって思えた日」
 彼女の父親が早く帰ってくる、というのも偶然ではない。今日という日が……。
「今日が、春香ちゃんの誕生日だから、ですよ」
 今日は4月3日。やよいと日が近いために合同でのパーティをした日ではなく、彼女が
正真正銘、この世に生を受けた日。
「こんな大事な日がすぐそばにあれば、誰だって『埋め合わせ』は今日だって思いますよね。
春香ちゃんもプロデューサーさんも、今日は誕生日のたの字も口にしてはいないんじゃ
ないですか?」
「……ええ、確かに」
「プロデューサーさん、あなたは有罪ですよ。大切な春香ちゃんを、こんなに困らせて」
 小鳥はプロデューサーに、厳かに告げた。
「しかし」
「しかしじゃありませんよ。今日の打ち合わせでもご馳走のお話をして、その上また今度
なんて言ったらいくら春香ちゃんでも怒ります」
 春香がプロデューサーを慕っているのは、二人を見ていた全ての人間が知っている。
彼女がプロのタレントである手前誰一人口には出さないが、春香はプロデューサーに強い
好意を持っていた。プロデューサーの方も、決して彼女を嫌ってはいない。ただ年が
離れていることや仕事の兼ね合いからか、春香の想いは今ひとつ彼に伝わっていない
ところがある。
「女の子にとって、誕生日ってすごく大事な日なんです。プロデューサーさんが今日、
一緒にいてくれるっていうことは、春香ちゃんにはとっても大事なことだったんです」
 言葉を慎重に選びながら、小鳥は続けた。春香が自分で言うべきことを、自分が先走る
のもうまくない。
「プロデューサーさん、春香ちゃんに不安な思いのまま収録に向かわせるなんて、
プロデューサーとしてはどうかと思いますよ?」
 プロデューサーは床に膝を落とした。こうしてみると、やはり知らばっくれていたのだ。
「プロデューサーさん、春香ちゃんをちゃんと祝ってあげてください。プロデューサーさんの
大切な春香ちゃんに、ちゃんとおめでとうって言ってあげてください。そうすれば春香ちゃんは、
きっと元気よくお仕事に向かってくれます」
「……春香は」
 プロデューサーは絞り出すように言った。
「春香は、テンションが上がりすぎると失敗が増えるんです。俺は、彼女が誕生日のことを
言い出さなかったのは、自分でもそれが解ってるからだろうと思った」
 小鳥も、それはプロデューサーから聞いたことがあった。春香はあまりに嬉しいことが
あると舞い上がってしまい、ダンスや歌に力が入りすぎる。転んだり歌詞を飛ばしたり、
その結果オーディションに失敗したこともあるそうだ。
435天海の岩戸(5/6):2009/04/11(土) 18:10:09 ID:rsIBTdyW
「こんな記念日だからこそ、春香は完璧なステージをこなしたいと考えているのだろうと
思ったんです。それで、誕生日のことを言いださないのだろうと……だから、それなら
なおのこと、俺が彼女のコンセントレーションを乱してはならないと」
 ゆっくりと手を伸ばし、よれよれのスーツのポケットをまさぐる。
「だから全部……今日全部終わってから、それから祝ってやろうと」
「プロデューサーさん……?」
 プロデューサーが取り出したのは小さな包みだった。有名なアクセサリーショップの
ラッピングに、きれいなリボンがかけられている。ふたつに折られた紙が挟んであるのは
メッセージカードだろうか。
 彼は顔を上げ、ドアの方を見つめた。
「春香、ごめんな」
 先ほど小さな音がして、ドアが薄く開いているのには気付いていた。そこから覗く二つの
瞳に、プロデューサーは語りかけた。
「ほんとは、帰りの車の中で驚かせるつもりだった。帰宅時間にしたってご両親には芸能界の
話だ、春香さえよければ1時間や2時間ごまかせるって思ってた」
 プレゼントの包みをそっと捧げ、祈るように呟く。
「誕生日おめでとう、春香。お前の気持ちを考えもしないバカ野郎だけど、もうしばらく
お前のパートナーでいさせてくれないか」

  バン。

 大きな音を立ててドアが開き、中から人影が飛び出した。
 小鳥が目に留める間もなく、春香はプロデューサーにしがみついていた。
「……ご」
「春……香?」
「ごめんなさいプロデューサーさん、ごめんなさいっ!私、自分のことばっかり考えてて、
お仕事なんかあと回しでっ」
 プロデューサーーは優しく彼女の頭をなでてやる。
「私、プロデューサーさんは私の誕生日のことなんかどうでもいいんだって思い込んじゃって、
それでもう目の前が真っ白になっちゃって、もう全部どうでもいいやって……」
「そう、それが普通だよな。春香くらいの女の子なら自分の記念日がものすごく大事だもんな、
パーティにも参加できず、当日も知らんふりする奴なんか怒って当然だ」
「ふうぅ、プロデューサーさぁん、ふえ、ふええぇぇ」
「泣くなよ、せっかくの可愛らしい顔が台無しだぞ」
 ハンカチを取り出して涙を拭くプロデューサーを見て小鳥は、どうやら『天海の岩戸』は
無事に開いたと確信した。
「さあさあお二人、収録の時間は大丈夫ですか?」
「ふぇ」
「あ、そ、そうだ」
「それにいつまでもそんなカッコしてたら、私にも考えがありますよ。妄想続けちゃいますよ、
さっきよりさらにコッテリした奴」
「うわ!?それは勘弁してください」
「え、え、さっきの続きですか?」
「春香は興味津々な顔するな!いくぞ」
「あっはい、すいませんっ」
 二人は立ち上がり、廊下を小走りに駆けてゆく、途中でプロデューサーが立ち止まり、
小鳥を振り返った。
「小鳥さん、ありがとうございます、助かりました」
「いーえー。事務員としてもタレントさんには働いてもらわなきゃですもの」
「いささか恥ずかしいところを見せてしまいましたが、彼女のやる気がいい具合に上がり
ました。このご恩はいずれ」
「あ、ダメですよ」
 小鳥が制止する。
436天海の岩戸(6/6):2009/04/11(土) 18:10:54 ID:rsIBTdyW
「……え?」
「いまお話したばかりじゃありませんか。プロデューサーさんにそんな言い方されたら今度は
私が、すっごく期待しちゃいます」
「あ。はは、かなわないな。……じゃあ」
 プロデューサーは頭をかいて、謝礼の方針を変更したようだ。
「春香が先日レポートで行った駅前のケーキ屋、月曜の営業上がりに買ってきますよ。
みんなで食べましょう」
「うん、そんなもんでしょう。春香ちゃんの食べてたミルフィーユ、おいしそうでしたよね」
「ミルフィーユですね、了解。では」
「行ってらっしゃい」
 二人が去った廊下に一人残り、小鳥は考えた。
「うーん、なんか釈然としないわね。プロデューサーさんがサプライズ仕込んでるのは
想像ついたけど、本当なら春香ちゃんは『わあ、小鳥さんすごおい!』、プロデューサーさんは
プロデューサーさんで『小鳥さんは俺のこと、なんでもお見通しなんですね』ってなって、私が
『当然です。だって、いつも見つめている人のことですから』
『え……小鳥さん?それって』
『プロデューサーさん……私、本当は』
『小鳥さん。……なんてことだ、実は、俺も』
『ええっ?プロデューサーさんと小鳥さんはお互いに?これじゃあ私の出番、ありませんね、はぁ』
『三角関係も解決したところで小鳥さん!』
『プロデューサーさん!』
ガバぁっ!
っていうふうに!」
「小鳥くん、小鳥くん」
「うひゃあああっ!?」
 不意に後ろから声をかけられた。振り向いてみると社長である。
「あ、あ、あはは社長」
「どうしたんだね廊下で一人でぶつぶつ言って」
「うえ?ひ、いえそのっ」
「カバがどうとか聞こえたが、プロデューサーに動物の手配でも頼まれたのかね?バラエティ
番組の企画かな」
「え、ええまあ、そんなところです。わっ私ちょっとアニマルプロダクション当たって
みますね」
「よろしく頼む。私はこれで失礼するよ、例の会合があるのでね」
「あっはい、お疲れ様でした」
「ああそれから、その、なんだ……独り言はもう少し小さな声で頼むよ」
 社長は歩み去った。小鳥は廊下で一人、社長の最後の言葉に凍りついていた。
「……み……」
 やっとのことで口を開く。
「見られたあああ!社長にー!わ、私の内緒の妄想聞かれちゃった!知らんふりしてたけど
あれはきっとはじめから最後まで全部聞いてたわ、私があんなことやこんなこと考えてるって
見透かされたわどうしようどうしよう、あーもう、あーもーっ」
 かくして765プロのアメノウズメは、この瞬間役柄を変更し……。
「あー、もー、もう誰にも顔合わせられないーっ!」

  ばたん、がちゃがちゃっ。

 先ほどまで先客のいた天の岩戸の、新たな住人となったのであった。





おわり
437天海の岩戸(あとがき):2009/04/11(土) 18:12:13 ID:rsIBTdyW
以上です。ありがとうございました。
えー、ご無沙汰してますレシPです。「投下時は名無しが好み」とか言いましたがどうせ時をおかずに
保管庫に収録してるし、文体でけっこうバレバレなんで後書きで名乗ることにしてみました。
『千早振る』のお話の中で、小鳥さんがウズメやるとか言ってたのでひと踊りさせてみた次第。
年度変わりで忙しいのもあるんですが1年のうち8ヶ月ほどあるスランプ期に入っておりまして、筆の
進みが異常に遅いw 少し意識を変えて、完成させることを念頭にゆっくりでも書いて行こうかと。

本日はこれまで。ご意見ご感想よろしくお願いします〜。
438創る名無しに見る名無し:2009/04/12(日) 21:40:15 ID:sMQdEIq3
>>437
思わずニヨニヨしてしまった。
P好き好きオーラを出してる様子がイイです。

あと最後のオチw
439創る名無しに見る名無し:2009/04/13(月) 14:23:12 ID:Sk6ha4oo
>>437
久々に見たらなんか来てるー
GJ!なにこのニヤニヤ空間
440創る名無しに見る名無し:2009/04/14(火) 01:08:27 ID:aBPU4NUj
<千早振る>の感想ありがとうございました。

…はじめにすみません。あの後すぐに規制にかかり、その後1週ほど年度開始直後台風に巻き込まれ(まだ巻き込まれてますが)、やられてました。

その間に小鳥さんがあの宴会芸をっ。はやっ。
遅筆とか書いてありましたが、「どこがっ。」w

読む余裕がないのでまた後で読ませていただきますが、まずは少しチェーンしていただきありがとうございます。>レシP様。


>416

>#パフェは落語をそのままやって最後にばらす。

確かにっ。
「いやな、こういう話があるんだ。でも信じないで聞いてくれ、何と言っても落語だからな」
とかで始まるわけですね。でもそれだと興味を強く持ってくれるのは間違いなさそうですが、落ちは全くなさそうで。
そういう会話するのは面白そうなので、脳内で勝手にやっておきます。w

>417

>つうか自分の名前が出てくるのにひとったらしも授業聞いてない千早ウケるw

現代文とか古文とか、そういう国語系って千早は油断していてあまり聞いてないような気もする一方、詩などにはきちんと興味を持っていそうな気もするし。
学校での千早の姿は実際どうなんでしょうね。

>ちょうどMS03を聴いたところでして、予想外のところで無闇な燃え方をする千早に違和感が

千早は「お前はこんなことも知らないの?」とか煽ると食って掛かってきそうな気がします。
犬娘の癖に、眼の前でちょろちょろされると我慢できなくなる猫のような性格ですな。

>千早って駄洒落に耐久力ないけど、手の込んだジョークは笑い所見失いそうな気がするです。

いわゆる「今のはどこが面白かったんでしょうか」と真顔で聞くタイプでしょう…。
って、本編でそういう描写があったかなあ。あったような気も…。
見てから3〜4年たってるのでもううろ覚えだ。
SS書くならこういうのを覚えておかないといけないんですけどねえ…。


>419

>開くと不幸の手紙の如くテンション真っ黒にとかそういう手の込んだ遊びが出来そうw

いずれにせよ「今はいいけど後が怖い怖い怖い」というようなw
やっぱり「きちんと説明して面白さを解説」というのが彼女の知的好奇心を満たして○、ということになりそうですね。

>というかおからで井戸の方までもそこを押さえた上でのネタになってる辺り

はい。単純に力士ではちょっとアレナノデ、本編の衣装換えですぐにダウンする彼女のやる気を逆手にとって見ました。

全然関係ありませんが、「千早デススパイラル」(オーディション合格でテンションHIGH→挨拶失敗→衣装替え→コミュニケーション不発→テンションLOWになってしまうこともままある)という言葉がありますけど。
あれって私は勝手に「あれはかつての千早スレで私が言い出したから広まった」と思っていたりします。はい、勝手に。w

>あと、えーと、その。ピヨちゃんのウズメ、マジ見てえですw

すでに偉い人がやってくれたので恐れ多くもありがたいことですな。w
ではでは、どうもありがとうございました。
441343:2009/04/15(水) 01:05:08 ID:jPnP5kCn
一月半前、小鳥さんでバレンタインネタ書いた者です。お久しぶりです。
Only for you!の感想、本当にありがとうございました!あんなに感想を頂いたのは初めてだったので、恐縮しながら読ませて頂きました。
頂いた感想に返信したいのですが、本題の後じっくり返信させて頂きます!

という訳で今日の本題ですが、今日の大雨でネタ神様が降臨なされたので書いてみました、雪歩ネタです。
雪歩ネタは某所で長編を書きに書きまくったんで大好きです。ただ、ここで書くのはもちろん初めてなので少し不安ですが・・・

今回は出来る限り短くまとめてみました。サッと読める物を目指したつもりですので、お時間のある方、どうかお付き合いください。

では、3レス程度で失礼します。
442雨のち晴れ(1/3):2009/04/15(水) 01:06:45 ID:jPnP5kCn
毎晩11時の天気予報はその勤めを的確に果たし、70%と示された降水確率がその猛威を振るっている。
窓越しに伝わる耳障りな音が憂鬱な気分を更に募らせ、遠方で鳴る雷の音に驚かされる。
溜め息が吐いて出た。
今日、何度目の溜め息だろうか。数えようとして諦める。
雨は、そんなに嫌いではなかった。嫌いになる要素がなかったからだ。
雨が降っていれば、家の中でお茶を啜りながら詩集を綴っていれば満足だった。学校ならば、少し制服が濡れてしまうくらい。
なのに、今の私はどうしたのだろう。

リビングに設置された丸型のテーブルが頬を受け止め、視界が90度傾く。反射的に目を細めると、雨音が鮮明に聞こえてくる。
この不安定なリズムは、好きじゃない。頭の端の方でそんなことを考えて、意識して目を見開く。時計が見えた。午前10時25分。

どうして?

雨は、そんなに嫌いではなかった。嫌いになる要素がなかったからだ。
お茶を汲みに行く気がしない。詩集を綴る気力もない。
窓越しの雨音が耳障りで、そのリズムは好きじゃない。
好きじゃない。

何考えてるんだろう、私。そんな事を思って苦笑する。
強くなってきた雨脚に視線を向ける。プロデューサーは、今日も仕事だろうか。こんな雨の中、走り回っているのだろうか。
久しぶりのオフの日に振り続ける雨が、恨めしい。
でも、晴れたからと言って何をするのだろう。特に思い浮かばず、また目を伏せる。不安定なリズム。
443雨のち晴れ(2/3):2009/04/15(水) 01:07:58 ID:jPnP5kCn

こんなとき、プロデューサーならどうするのだろう。
彼の姿を思い描く。鮮明だった。眩しく思えた。
そういえば、私はプロデューサーのことをあまり知らない。
休日になにをしているのか、だとか。趣味はなんなのだろう、だとか。そんな事をつらつらと考えていく。

プロデューサーは、雨は好きなのだろうか。嫌いなのだろうか。
多分、嫌いだろう。
あの人は、明るい人だ。そんなこと、出会ったときから知っている。
彼自身が太陽みたいな人なのだから、きっと雨は嫌いだろう。

そこまで考えて、自分の単純すぎる詩的表現に恥ずかしくなる。額をテーブルへと擦りつけた。木目調の視界。

でも、確かにそうなのだろうと思う。
確かにあの人は、太陽みたいな人なのだと思う。
プロデューサーは、どんな時だって私に明るく接してくれる。
どんなに忙しくったって、辛い時だって、あの人は私に笑顔を向けてくれる。
あの人は、私なんかのために精一杯頑張ってくれる。私をここまで押し上げてくれて、私の居場所をつくってくれた。
プロデューサーは、どんなことだって真剣に向き合ってくれる。
どんな些細な相談だって一緒に悩んでくれる。
どんなくだらないお話でも、ちゃんと向き合ってくれる。
ちょっとしたミスを、意地悪く笑う彼もいる。
どんなときでも、明るくて優しい彼が居る。
あの人は、太陽みたいな人。

だから私は、プロデューサーのことが―――
444雨のち晴れ(3/3):2009/04/15(水) 01:09:08 ID:jPnP5kCn
伏せていた顔を持ち上げ、視界が開ける。強く降り続ける雨がやむ気配は無い。叩きつけるような、強い音。
雨が嫌いになってしまった理由が、わかった気がした。
ポケットから携帯電話を取り出す。アドレス帳からハ行を呼び出して、メールを打ち込んでいく。

今、どこにいますか?

いつもは少しだけ躊躇ってしまう送信も、今日はなぜだかすぐ出来た。
テーブルに頬を載せ、90度の視界。目を閉じると、不安定なリズム。やっぱり、好きじゃないな。
メールはすぐに返ってきた。飛びつくように文面を確認すると、自然と顔が綻んだ。

事務所。

そっけない文面は、明るい彼には似つかわしくない。でも、彼のメールはいつもこうだ。最初は驚いたが、もう慣れた。
彼が好きだと言っていたお茶を水筒に注いで、お気に入りのワンピースを着込む。
鏡で身だしなみを整える。少し頬が赤くなっている気がするけれど、気にしない。きっと、テーブルに押しつけていたからだ。

玄関を跨ぐと、降水確率70%の世界がすぐそこにある。まだ朝なのに、薄暗い。太陽は、厚い雲で覆われている。
嫌いだなあ。綻んだ顔でそんなことを考えながら、私は事務所を目指して走り出した。
445雨のち晴れ 書いた人間:2009/04/15(水) 01:36:34 ID:jPnP5kCn

以上です。前回みたいなラノベ調の文体も好きなんですが、やっぱりこういう文体の方が書きやすいです・・・
そんな訳で、雪歩ネタでした。すごくベタ展開ですが、僕がベタ展開大好きなんでw
読んで下さった皆様、有難う御座いました!また感想など頂けると泣いて喜びます・・・

では、ここから前回頂いた感想への返信・・・

>>344
有難う御座います!少しでもニヤニヤしてもらえれば、と思って書いたので嬉しいっす!

>>345
ニヤニヤして下さって有難う御座います!
視点変更は、やっぱりラノベ調には付きものって感じなんでしょうか。
僕がラノベ調で書く場合。視点がコロコロ入れ替わっちゃうので不評買うことが多いんですが、やはりラノベ読みなれていない方には面倒なのかもしれませんね・・・注意します・・・
文章が軽快だと言って下さったのはすごく嬉しいです!そのあたりは割と意識して書いているので、気付いて下さると本当に有り難いです・・・

>>346
ものすごく的確な指摘、有難う御座います!
だ、であるのような断定の形は好みで使っていたのですが、そう言われてみると読み辛くなっていますね・・・
ラノベ調で書くときには文章の軽快さだけは逃したくなかったので、以後気をつけたいと思います!
段落の小分けというのも全然気付きませんでw駄目ですね、アップするときには気をつけます・・・
プロデューサーは・・・萌えキャラでしょうか・・・?w いずれにしても、千早が可哀そうですw自分で書いといてなんですがw 相談相手の件も、確かにそうですね。春香ネタとか、泥沼っぽいですがw
有難う御座いました!

>>347
書き慣れた感満点・・・でしょうか・・・wそう思って下さるのは光栄ですが、まだまだ精進足りないっす・・・(346様のご指摘とか特に
キャラ付けはあんまり自信無かったんですが、そう感じて頂いて嬉しいっす!小鳥さんはとくに原作から離れ過ぎてないか心配だったので・・・
最終段の視点については、確かにそうですね。第1段との関連付けで3人称を使ってみても良かったなぁと今更ながら思いましたw
有難う御座いました!

>>348
実はSPはよく知りませんでwすいませんw
何があったんでしょうか、というのはネタバレになりそうなんでちょっと調べてみますw
いずれにしてもご覧頂き有難う御座いました!小鳥さんお幸せに!(今回は雪歩ネタですが)

感想への返信長くなりすぎました・・・すいません・・・本当に嬉しかったんで妥協できませんでした・・・
では、これで失礼します。またネタ神様がいらっしゃったらお邪魔します・・・
446創る名無しに見る名無し:2009/04/15(水) 07:36:33 ID:90ziYOhI
>雨のち晴れ
GJ!昨日の雨はすごかったですね。
「90度」「木目調」といった主人公の視界をを表現する言い回しが映像的で楽しかった。
雨の日の憂鬱な感じも出ていて、その理由に思い当たったときの心の雲が晴れる様子が沁みる。
やっぱ某所の先頭集団は腕が立ちますなw
後半で一人称と知れるのですが、ほんの少し雪歩らしくない口調で進むのは計算でしょうか。
違和感はありましたが新鮮でもあり、マイナスの印象は受けませんでした。
面白かったです。また読ませてください。
447創る名無しに見る名無し:2009/04/16(木) 12:41:38 ID:sx1yzFF6
>>445
表現の仕方とか状況の描写が美しすぎる・・・カギカッコの存在は皆無なのに雪歩の感情が全部伝わってきて、すげえ!と思いました。GJでした!
文体ですが全体的に心理描写みたいですし、変に雪歩口調にするよりこの方がしっくり来ました。

前回アップされた小鳥さんネタも拝見しましたが、本当に書き慣れてますね。面白かったです!次回作も待ってます!
448創る名無しに見る名無し:2009/04/16(木) 22:15:06 ID:61zioKM7
おおお。一週間来なかっただけで、2編も新作来てるよ!
しかも面白いよ!いいねえ、実にいい。

>>437
いやあ、明らかに筆者バレバレの文体ですねw 特に状況説明時の書き方とか。
原作をよく知らないのですが、Pがサプライズ仕込んでいたことが正直サプライズでした。そこまで気を効かすPなら、逆に閉じこもった理由も思いつきそうな気がw
あと、読者視点としては、もう少し事前情報が欲しいなあ、と思いました。読み進むのに、やはりこうなった理由を推測しながら読むので、後からその日が4月3日と知らされると、なるほど、と思う反面、なんだ先に言ってくれ、という気にもなります。
ちょっと気になる点を先に書きましたが、配役と構成と台詞回しは見事です。楽しく読ませてもらいました。

>>445
>>347です。書き慣れた感満点というのは、ラノベ文体に限ったことではなく、文章そのものが、と思って下さい。
実際、今回のも作者流の表現を多用していて、文章そのものに味わいを感じます。
一つだけ気になったのは、最終節の「降水確率70%の世界」という表現です。言葉の美しさと印象度からは理解できるんですが。
あえてその後の大雨の描写と矛盾を感じる表現を使った気もしますが、「降水確率70%と予測された世界」みたいな表現の方がしっくりくる気がしました。
中身は非常に味わい深くて、面白く読みました。
大雨の中、お気に入りのワンピースをあえて着る雪歩が凛々しい。
・・・って、お気に入りのワンピースって、いつものアレかw


上記両方とも、このレベルの書き手なら、多少辛い方が喜ぶかな、という意図も含めての感想です。
ぜひまた投下お願いします。
449創る名無しに見る名無し:2009/04/16(木) 23:54:04 ID:Rko/aiI5
>>448
なにげに高品質のものが投下されていて楽しいです
あとは興してくれている方が勢いを作ってくれているうちに裾野が広がれば
結構面白い場所になっていきそうでもありですな

>>437
創作は精神的ストリップだという見解がありますが、妄想ダダ漏れ恥ずかしいなんてのも
そういうののうちでしょうか。個人的にはシリアスにいい話になるより前の「じゃ、戻りますね」
ってさらっと出てきてる春香とかのコメディタッチの軽妙さがいい味出してるように思えます
もちろん、まとめるところをしっかり締めるからこそでしょうけれど
・・・でもこれだと小鳥さん、誰にも引っ張り出されないまま終業まで放置されたのかなあ・・・?

>>445
言葉の選び方が詩的ですね。モノローグと物思いの中間のような淡々としたリズムが心地よいです
なんというか、優しげでじんわりきますねこれ。
全体モノトーンの手書きアニメで、雪歩だけに彩色(ただしそれもあまり派手な色でない)施して動かしてる感じ、みたいな
玄関を出て、傘を開いて・・・その傘だけ、唯一のハッキリした真っ赤な色で・・・なんて
共有できるかはわかりませんが、浮かんできたイメージはそんなんでしたw
450創る名無しに見る名無し:2009/04/17(金) 22:42:11 ID:POvEwsSF
SS投下すんの初めてでドキドキしてれぅ〜。
はるるんお誕生日おめでとう的なSSを書いてたら、なんかモヤっとしたのになった。


451二つの距離 (1/6):2009/04/17(金) 22:44:12 ID:POvEwsSF
 瞳に焼きついたのは――。

 流れ行く人の波。街頭の四角い窓から流れる流行のメロディ。
 誰の心を映したのか――空は蒼く。今にも降り出しそうな雨は誰のモノなのか――。
 俺は探していた。朝も夜ともつかない曖昧な世界で、ただその姿を。
 見えない線に導かれる様に、その姿を雑踏の中に見つける。
 揺れるトレードマークのリボン。笑顔の彼女と――
 知らない男の笑顔。
 二つ並んで、消えて行く――。
 呼吸が止まる。視界が壊れて、その破片が体を刺したのか、斬りつけられた様に体が痛む。
 痛む――悲鳴を出し、泣き出しそうなくらい痛いのに、どうしてか、何処が痛むのか分からない。
 それで楽になる訳でも無いが、俺は膝と手を地べたについた。
 麻痺、というより消失。感覚が無い。粒が濡らし濃くなった地面の点で、自分が泣いている事を知る。
 内から広がる空の渦が、悪い夢だと憑き物を洗い落とすように存在を無に染める。
「これは……なんなんだ……」
 天を仰ぐ。すると、隣に誰かが立っていて、自分を見ている事に気付く。こんなに近い距離なのに、その気配をまったく感じられなかった。
 涙で曲線だらけの視界でも、それははっきりと在って、美の輝きを放っていた。確認の必要も無く、それは今をときめくトップアイドル、星井美希だった。
 情けない姿を見られた。しかし、恥よりも強く安堵。
 サングラスをして何故か全身をハードボイルドにコーディネートした美希は、表情を見せずにこう言った。
「プロデューサーさん……これは“恋”なの――」
452二つの距離 (2/6):2009/04/17(金) 22:52:43 ID:POvEwsSF
「うわはぁッ!?」
 ロケットのように覚醒した意識が初めに見せたのは、見慣れた部屋の無機質な白い壁。
 左胸の鼓動が速い。手にはじんわりと汗。レースのカーテンからはやわらかな日差しと小鳥の歌う声。
 ベッドの横に置いた牛乳パックを模したアナログの時計を見ると、朝の五時。
 昨日は就寝時間が遅かったというのに――目覚ましより早く起きるなんて久方ぶりだ。
「ひどい夢を見た……」
 上半身だけを飛び起こして起床だなんて、自分は漫画かドラマの登場人物か、と声に出さず吐き捨てる。
 そのままややブラックなメンタルの勢いでベッドから離脱する。こんな時は、うんと苦い珈琲が飲みたい。
 仕事に行きたくない――そう思う事は幾度もあった。今日の自分もそうだ。
 けれど過去、その理由は大概自分の精神的甘さ、未熟さから来る欲動で、今の自分とはちょっと違う。
 こんなケースは未体験で、その原因を探ってみると――。
「くそ……やっぱり昨日のアレだ……。そして、夢の中の……ああ!」
 さっきまで見てた夢を鮮明に覚えている。夢なんていつでも、透明で形が無い。そして知らずうちに忘れる――だから夢――なのに、なんでだろう。
 まぁどうでもいいやと、答え探しを止めて洗面をする。
 迷走する思考を止める刺激が欲しい。昨日の記憶も一緒に消え落ちればいいのにと、蛇口から出る冷たい水に虚しい願いをちょっぴりかけて。
 そして、どうしてそんな事ばかり思うのかって考えて、その答え探しも止めて――。
453二つの距離 (3/6):2009/04/17(金) 22:58:36 ID:POvEwsSF
「おはよう諸君! 今日の流行は――」
 恒例の社長の挨拶。どこかの組の事務所のようだったおんぼろビルの時も、都心に社を構えた今も、変わる事の無い社長のありがたいお言葉。
 それを右から左に聞き流し、俺は自分のデスクでお茶を飲む。もう何杯目だろうか、仕事なんて手につかず、体を動かしたいためだけに、お茶を飲み干しては用も無くトイレへ行く。
「おはようプロデューサーさぁ〜ん……あふぅ」
 また寝不足なのか、ふらふらとおぼつかない足取りも舞踊に見える天賦の才を披露しながら美希がやってくる。
 春香より先に来るなんて珍しい。いつもは一緒か、遅れてくるのが常のおやすみ姫が――これは何かの予兆か。
 腕時計を見ると、時刻は彼女達の出勤時間より十分ほど進んでいた。何の事は無い。やっぱり美希は遅刻じゃないか。
 が、同時にもう一つの事実。遅刻の美希が居て、春香が居ない――つまり、春香も遅刻。
「連絡は無いよな……渋滞か、バスに乗り遅れたのかな」
「ゆうべはおたのしみでした……かもしれないの」
 美希の時代を感じさせるジョーク。いや、まるで笑えない。今の俺は。
「君は、いったいどこでそんな事を覚えてくるんだね……っ?」
「ふにゅぅ。いにゃいよぉ〜ッ!」
 お仕置きに、美希の両頬を軽く引っ張る。担当アイドルの顔に悪戯なんて、他のプロデューサーは絶対にしないだろう。
「……プロデューサー、明らかにどうよう、してるの。だから美希にいじわるするの。もっとしっかりして欲しいの……!」
「ぬぅ……」
 指を離してやると、艶やかな金の髪をふりふりさせて、美希は俺の抱える悩み、急所を付いて来た。
「悪かったよ……。で、昨日も聞いたとけどさ、美希はどう思ってるんだ?」
「相手の人、演技も上手くて同性からの人気も高いし、ぴっかぴかで、マイナスなイメージにはならなうと思うの」
 ぴっかぴかってのは美希の感性、固有の言い回しか。
 美希のプロデューサーであるし、それなりに付き合いもあるから、以心伝心、なんとなく美希の言いたい事は分かる。
「じゃぁつまり、美希的にはOK……て事?」
「うん。今後の活動に大きな支障は無いと思うな」
 予兆は見られた。
 それは傾向となって意識に刻まれた。
 そして昨日、現実となって俺の前に現れる。
 全ては、仕事をこなす事に忙殺され彼女を見ていなかった俺の責任。 
 けれど――それを知るのが後でも前でも、俺はどうしただろうか。どうすればいいのか。
 この不思議な感情はただの戸惑い――そてとも驚愕か。
「そうてんのへきれき……」
「なんだ突然。数少ない知識を披露したくなったのか? 難しい言葉なんて使って」
 「むぅ。美希の事は褒めてくれないの」と、口をすぼめる美希。そんな仕草が可愛くて好きだからわざどそう接してたりするんだが、分かってくれてんのかな。
 まぁ確かに美希の言うとおり、今俺はプロデューサー業始めて以来の試練――的な物にぶち当たってる。
「……あのさ、事務所――ていうか俺が二人を引き裂いたら、美希は俺の事、どう思う……?」
 星井美希と天海春香。
 この二人をユニットとしてプロデュースし、彼女達の才能と弛まぬ努力によって、彼女達はアイドルとして、俺はプロデューサーとして、周囲に認められた。
 全ては順風満帆だった。すくなくとも俺は、そういう風にしか見えていなかった。大局的に見れば、今だってその風の中なのかもしれない。
 相手は人気絶頂の若手実力派俳優。スキャンダルも無い“ぴっかぴか”で社長や同僚に相談しても、否定的な意見はまず出ないだろう。
「プロデューサーは今試されてる……気がするの。美希が選んで欲しい方は、ちょっぴり切なくて、選んで欲しく無い方は、本当は嬉しい……だから、複雑、かな」
「あ? なんだ、よく分からないぞ。もちっとはっきりとだな――」
 どんがらがっしゃーん。
「きゃぁ!? ご、ごめんなさいごめんなさい!! 私ったらそそっかしくて――」
 事務所の入り口の方から、騒々しい物音と、何べんも聞いた台詞がセットで耳に入る。
454二つの距離 (4/6):2009/04/17(金) 23:00:40 ID:POvEwsSF
 春香――。
 昨日、春香の誕生日を祝うという主旨で、美希も含め、三人で食事に行く約束をしていた。
 だが当日、時間になって、春香からまさかのドタキャンを喰らう。後入れで入った“友達”との約束をどうしても断りきれない、と。
 予約もしてしまったし、俺は仕方なく美希と二人で店で食事をした。
 その帰り道、無粋な神様が俺に見せてくれた光景は、今朝の夢と重なる――。
 因果応報。つまづかないで走って来た俺は、彼女達を自分の言う事を聞く商売道具と心の隅で思い始めていたのかも知れない。
 それは違う。思いあがり。寒気がする傲慢だと、悪戯な神が教えてくれたのだ。分かってたはずのそんな単純な事も、浴びるライトの眩しさで見失ったのか。
 自分の愚かさを映す鏡として春香は選ばれてしまった。そんな気がして、自分を責め立てる。美化し過ぎた自意識。
 今日の俺は変だ。理由らしい理由なら用意出来る。けどそれだけか――
 また、答え探し――。
 よっぽどその問題を解くのが俺は嫌なのか、今日一日、俺は逃げ続けた。何事も無く振舞って、全てから。明日はオフ。俺は、とんだチキンだ――。
 そんな俺を見る、美希の初めて見る表情に宿した二つの瞳の意味だけを考えて過ごした。
 元々つかみどころの無い――あるにはあるけれど、つるつる滑る――性格の、彼女のあどけない顔が不安定に揺れて、枝から落ちる果実のようで――まぶたの裏に、強く記憶されている。
455二つの距離 (5/6):2009/04/17(金) 23:02:20 ID:POvEwsSF
 身を溶かすほど熱いシャワーを浴びて部屋に戻ると、携帯が着信を知らせて青く光っていた。
 ほんの一秒でも外の世界と自分を隔てたい気分の俺は携帯を手に取るのを躊躇うも、社会人生活数年で培われた大人としての最低限の責任か、観念してディスプレイを開く。
『メール着信 星井美希』
 電話でなくメール――相手は予想外の人物だったが、それはそれで読むのが怖かった。
 何しろ、仕事の関係上登録はしているが、春香と違って、メールを送って来るなんて事が今まで一度も無かった奴だ。
 それが突然。
 そして、今日の俺のカッコワルイ姿。自分でも分かってる。だからメールの内容はおおよそ察しがつく。
 自分は一体何にこれほど怯えているのか。
 面倒な事になりそうだから? 汚れ役が回って来たから?
 考えて、またやめる。このメールも、見るのは明日の夜でいい。
 明日はバッティングセンターでも行こうか。友と飲み明かすのもいい。
 ――が。美希の眼に、今日の俺はどう映ったのだろうか――。
 頭から離れない二つの瞳。それにはどんな感情が秘められているのか。この事を乗り切れば、教えてくれるだろうか。
 安っぽい手遅れのプライドが、俺を動かしてくれた。はぁとかふぅとかため息を吐きながら、俺は美希からの初めてのメールを読んだ。
456二つの距離 (6/6):2009/04/17(金) 23:06:25 ID:POvEwsSF
 次の朝、俺は先ず、昨日の自分を後悔する事から始めた。次に部屋の掃除、整理整頓、仕事も無いのに髪型も決めて“プロデューサー”っぽくオシャレに。
 そうです。アイドルだけじゃなく、僕達にもイメージ戦略はあるんです。アイドル達のイメージを傷つけない程度に。
 そうして簡単な朝食をすまし、リビングに座布団を二人分敷く。ニュースを見ながらそわそわして過ごすと、時刻はもうじき朝の十時。そろそろ彼女が来る時間。
 それにしても、担当アイドル――それも年頃の女の子――を男の一人住まいに呼び出すなんて、ひどい。俺は馬鹿か。
 部屋に貼り付けた時計が時を知らせるメロディを奏でるのと同時に、家のチャイムが鳴る。
「ぃ……やあ。お、おはよう」
「お、おはようございます。プロデューサー」
 ぎこちない挨拶を交わして――
 春香が家にやってきた。
「わ、悪いね、休みの日に呼び出したりして」
 何処で春香と話をしたらいいか思案した後、どうやら昨日の俺は自宅がベストだと判断したらしい。今日の俺は、異議異論あれどそれに従うのみ。
「いえいえ! わたしも、プロデューサーさんとこうしてゆっくりお話したいな、ってずっと思ってましたし……あ、わたし、御昼ご飯作って来たんです。よかったら一緒に、って……」
「そ、そう言ってくれると助かる。春香の手料理、久しぶりだし……め、めちゃくちゃ嬉しいぞ」
 おかしい――。
 何かがおかしい。
 昨日の俺のシュミレーションだと、ここは、例えるなら、子供の悪い点数のテストを見つけた親が説教をする、という感じなのだが。
 春香は変に構えた――男性の家に上がるという部分ではあるが――様子も無く、いつも以上にハツラツとしている。ホントに楽しそうだ。それとも、そうして触れられたくない話をそらす作戦なのか。
 いや、春香はそんな打算計算をするコじゃ――ああ、俺は何を信じればいい。
 自分の珈琲と春香にミルクティーを淹れて、テーブル越しに座して春香と正面から向き合う。
「えぇ〜〜……と……あの、今日呼んだのはさ……春香、何か悩み……といいますか、俺に言う事――チガウ、そ、相談とか……ありませんか……?」
 どっちが子供だかわからないほどハッキリしない言い方で、話を切り出す。緊張で、無意味に敬語になる。
 春香は二つの大きな瞳をぱちぱち見開きした後、
「ど――どうして分かるんですか!?」
 やはり――か。
 しかし、相変わらず予想の斜め上を行く反応をする春香に俺は戸惑う。これじゃ、悪いテストを見つけられて喜んでる子供だ。
 それでも言うべき事を言い、昨日から描いたシナリオ通りに事を運ぶ。
「いいんだ春香。俺は、春香の気持ちを尊重する――責任は、全部俺が持つ。他の誰を敵に回しても、俺は春香の味方だ。だから、本当の事を話してくれ」
457二つの距離 (7/6):2009/04/17(金) 23:07:32 ID:POvEwsSF
「あ、はい……。実は、半年前に共演した映画の主演の男優さんから、その、しつこくアプローチされてまして……あはは。わたしなんかのどこがいいんですかね? 
――でも、とても熱心で良い方だし、デ、デートの誘いとかも、断り難くて、困ってるんです。一昨日の件も、本当にすみませんでした!!」
 あれ。
 百八十度回る世界。
 崩壊するシナリオ。
 だが、まだ早い。もしかしてもしかしたら、これは春香渾身の芝居かもしれない。なにせ、春香は女優経験者。演技のスキルだって――。
「その話……本当?」
「はい。何度かプロデューサーさんに相談しようと思ったんですけど、余計な心配増やしちゃいけないと思って……美希には相談したんですけど」
 訪れる虚脱感。全てが大げさな独り相撲。Pバカかもだけど、こんな健気な春香が、顔色一つ変えず嘘をつけるコな訳がないのだ。パラレル世界ではあるかもしれないけど。
 春香に一人で悩みを抱えさせてしまうほど自分は頼りないプロデューサーで、信頼と理解の足りなさが、間抜けな俺までプロデュースして。
 この数日で、いったいどれほど自分の事を情けないと思ったか。今日の事態を招いたのは、己の無力。そして“はやとちり”か。
 どうして春香の事を勘違いして、はやとちりに陥ったのか――今ならハッキリと解る。答えは昨日気付いた。気付かせてもらった。
 ふと、申し訳無さそうに、捨てられた子犬のようにしょ気る春香に、果ての無い愛しさが込み上げて来る。
「あのさ、春香。このタイミングで言うのもなんだけど……俺さ、たぶん春香の事、特別に思ってる。言っちゃいけない事だと思うけど、今……抑えられそうにないんだ。今日呼んだのはさ、それも伝えたくて……俺、春香が――」
 すんでまで出かけて、脳の記憶装置が先ほどから何かをリピートして訴えている事に気付く。
 何を――
 『美希には相談したんですけど』
 『美希には相談したんですけど』
 『美希には相談したんですけど』
「――美希に相談した!?」
「へ、えぇ!?」
 顔を赤く染めながら、何かを期待する目で俺を見ていた春香も、いきなりのキラーパスに拍子抜けの声をあげる。
「お邪魔しますなの〜」
 と、ある意味神の意表を突く完璧なタイミングで登場する美希。玄関の鍵、閉め忘れたのだろうか。
「おおお、美希! 何しに来たとか、どうやって入ったとか、そんなのはどうでもいい。お前、知ってたな……!?」
「あふぅ。朝からうるさいの。メールの返事が無いから、無視されたと思って直接乗り込んで来たんだけど……美希、お邪魔?」
 人差し指を頬にツンと当てて、状況を見渡す美希。流石のぷりちーさだが、今はそれに騙されてやらない。
「俺の質問に答えろぉぉ!!」
「クンクン……おにぎりの匂いがするの」
「あ、わたし色々作って来たんだけど、美希も一緒に食べる? 人数が多い方が楽しいですし、一昨日はわたし、参加出来なかったから、その分も含めて――いいですよね、プロデューサー?」
 さっきまで乙女の顔だった春香も、いつの間にかいつもの“明るく元気な春香”に戻っていた。さっきのは幻?
「なんだこの展開……そ、ソウテイガイです。……因果律が……乱れた!?」
「……可哀想なプロデューサーはほっといて、お昼にするの!」
 リビングの中央で所在無く立ち呆ける俺をよそに、アイドル二人は食卓の花を咲かせる。しばらくそれを見守って、俺もそれに加わる。色々と不完全燃焼だけど、今はこれでいい――
 これがいい。
458二つの距離 (8/6):2009/04/17(金) 23:08:38 ID:POvEwsSF
 メールの返事は来なかった。
 もともと期待してなかったけど。
 きっと二人はうまく行く。
 羨みとか、悔やみは不思議と感じない。
 きっと、この感情がそれほど育ってなかったから。
 でも、胸がきゅんと痛い。
 人の恋をアシストして終わった初恋。
 ちょっとかっこいいかも、なんて笑顔になってみる。
 勇気を出して送ったメールはずっととっておく。
 ちくちくと切なくなっても、忘れたくない、等身大の私がここに居るから。
 素敵なものではないけれど、甘酸っぱい大切な思い出。
 素直じゃないその文面。
 ストレートなのに、変化球。
 彼はいつか分かってくれるのかな。
 この恋は、それだけで満足。
 だから、涙も流さない。
 失恋さえも無難にこなす自分の器用さが今はちょっとキライかな。
 一人になった帰り道、それを空に放ってみた。
『好きだって気持ちに気付いて』
 澄み渡っていた空は、夜、私の代わりに泣いてくれた。
459創る名無しに見る名無し:2009/04/17(金) 23:13:44 ID:3TuOeVvH
支援
460二つの距離 (あとがき):2009/04/17(金) 23:14:12 ID:POvEwsSF
もっと細かく刻まないとダメなのか。8/6とかw

物語の為にキャラがいるんじゃねぇ、キャラの為に物語があるんだ!
だから反省はしている……どこ叩いてもいいように、裸で待機してます。

これを機に、ちゃんと感想を書ける人間になりたいw
461創る名無しに見る名無し:2009/04/17(金) 23:24:29 ID:Cr/b1Qz+
じゃあ俺は肩を叩こう、まずはお疲れさま
初投稿後は(専ブラ使ってるとすると)新着レス増えるたびドキドキものだろうと思います


>>460
春香誕生日おめSSと言ったじゃないかー! ウソツキー!
どっからどうみても美希SSじゃないか! これはーっ!!

美希を美希らしく書くのってとても大変だと思います。
自分だったらこう書くかな、というコメントをつけるよりも
「あ、こういう書き方があるんだな」と示唆してくれたことに感謝、なのであります。
捉えどころがなく、一見アホの子に見えるほどに自由奔放で、
でもそれでいて見てるところはしっかり見てるけどでも第三者にはやっぱり伝わってないかもしれない

そんな美希らしさ。 いいもの読ませてもらいました。
462創る名無しに見る名無し:2009/04/18(土) 03:58:29 ID:aDyKj2LL
それでは自分は手を叩くことにする
はいたーっち、いぇい!w

んー、確かに春香で始めて、途中で美希が春香食っちゃった感ががが
美希の意図と心情へと軸がシフトした段階で、こりゃ美希の話ですねw

てか、春香さんあっけらかんとし過ぎてて、いちいち悩む方がバカみたい
というか状況がこじれる前に表も裏も見せてくれちゃってるので・・・
これで春香がもっと「駆け引きをする子」だったら、美希にも同じテーブルにつく
チャンスがあったかもしれませんけど、次元の違うところで決着されてる感じですね。
多分この春香はこの先、Pが考えすぎで疑心暗鬼に駆られるたびに自分のナカミをあっさり晒して
カラッポだよ?と示すことで本人も気づかないうちに危機の芽を摘んでうまくいっちゃうでしょう。
そんな気がします。突き詰めていくとある意味超人的ですらあるw

それに対しての美希が、いい意味でひどく「フツー」の子なんだなと。
美希の中のコドモとオトナがバランス良く表に出ていて、いい感じに切ない、それがいいw
463創る名無しに見る名無し:2009/04/18(土) 11:53:44 ID:O6AXuKEN
美希が春香を食っちゃうと聞いてー!(←違う)

>>460
一瞬Relationsの世界かと思わせ、シリアスムードで進みながらも要所要所に抜きどころのある作風、面白かったです。
Pは例によってヘタレで、様子のおかしい春香に翻弄される感じに引き込まれました。
美希はあくまで美希らしく……と言いたいところですが公式設定よりイイ女になってますねえw
すでに二人でトップランカーのようですし、もういろいろな想いを経験したあとなのかも知れません。
8/6の独白、効きますね。

よろしうございました。またお願いします。



んで投下の話。
分量的には(章で切らなきゃ)4レスで済むようですが、シーンごとに1レスとか考えるとけっこう細かくなりますよね。
問題ないと思って書き込みボタン押したらエラー食らって慌ててバラして、って経緯でしょうか?

ご参考までにこのスレの1レスあたりの容量制限は
・4096バイト(全角約2000文字)
・改行数60行
・1行あたり256バイト(全角128文字)
となっております。

俺は改行でずいぶん苦労して以来janeを重宝しております。もし専ブラ未使用でしたらお試しあれ。
464創る名無しに見る名無し:2009/04/18(土) 21:06:28 ID:+uIwVAsr
美希は知っててプロデューサーに隠してたあたり、小悪魔だなあ。
あえて不安にさせるような言葉を選んで、彼の本当の気持ちを引き出してるのか、それともそのままこじらせるのか、どっちのつもりだったのか。

春香の描写が少ないため、どうみても美希の話になってるけど面白かったよ。
あと誤字がちょっと気になった。
465460:2009/04/19(日) 00:14:56 ID:JhNo9lVG
やっぱりこれは美希SSなのかっw

批評、感想ありがとうです。全部モチベーションのアップになります。
ここが寂れぬよう、賑やかし程度にでもなれれば幸いです。

そしてまた毒にも薬にもならないゆるーいSS書いて来たんだけど、
ある程度保ったほうがいい投下間隔とかあるんでしょうか?

>>461
知れば知るほど分からなくなる。そんな感じですw
実際にゲームをプレイして感じた印象を大切にしようかなぁと。


>>462
「駆け引き」 
おぉ! と思いました。それを加えていたら、もっと面白くなったなぁ、と。ここはイイ所だ。

>>463
美希は初めてプロデュースした娘で、想い入れが強いんですw
ただ、それでキャラ本来の軸からぶれてしまうのが怖く、難しいです。一杯描いてあげたいけどw

専ブラさっそく使ってます。かなり便利そうです。感謝。

>>464
美希は二人の気持ちに感付いていて、前にも後ろにも進まず、
あるかもしれない可能性に期待して静観してる……という風に描いたのです。
いろいろとなってないSSです……がんばらねば。誤字も気をつけねば。
466創る名無しに見る名無し:2009/04/19(日) 13:29:48 ID:8Vw/zyPo
うおおお。書き込み規制で出遅れた!
私は、頭を叩くふりでナデナデしてあげようω>>460

なんとなく、言葉の選び方や比喩が、ちょっと前に売れ筋だったハードボイルドやサスペンス系の匂いがします。
全体に比喩表現が多過ぎる気がしました。もう少し使いどころを絞った方が、印象的な部分が生きると思います。
しかし、新鮮で印象的な表現も多く、書き手としても刺激になりました。つかみどころがつるつる滑るとは面白いし言い得て妙ですね。
また、後半のPの内容と台詞の噛み合なさが良いです。論理無視と論理跳躍の具合が。ゲーム原作のPらしさ、アイマスっぽい空気、さらに雰囲気の転換と見事な機能を果たしてます。

文章についてはこのくらいで、話の中身に行きます。
冒頭からrelations(一応、コミックじゃなくて曲の方)を彷彿させるのは狙ってますよね?最初の言葉も雰囲気も。
だとすると、もう最初から美希の話としか思えないんですがwタイトルもそうだしw
一言も言ってませんが、美希が春香のことも大好きだという感じが伝わってきます。それもいい感じ。
また、この美希だと、春香から相談を受けた時に
「それは困るよね。だって春香はプロデューサーのことが大好きなんだから。」
「な、なななななに言ってるの、美希!そ、そそそそそんなんじゃないよ!」
てな感じに、あまりにもさりげなく、見事なまでに自然に確認していそう。
そして春香は、あっけなく確認されていそうw

最後に、この話に引き込まれた賛辞として、私の脳裏に浮かんだこの光景を感想として記したいと思います。


使い古された言葉。今や死語。あまりにも陳腐で、誰もそんなことしやしない。
特に美希の様にいかにも今時の子が、なんて誰も思いもしない。
だからこそ、あえて、美希は逆説的とも言える意思表示にそれを選んだ。

そして、次の日、美希は髪をショートにして事務所に現れた。
467創る名無しに見る名無し:2009/04/19(日) 15:02:40 ID:LZlw9B+v
>>465
新しいSSが投下されるとそれ以前の作品に感想を書き込みにくくなるため、
何日か空けたほうがいいと言われますね。極端に近接しての投下は便乗や
妨害など下心を疑われたりします。
たとえばこのスレは進みが遅いので、感想レスが一段落(感想書き込んでる
のもほぼ固定メンバーw のようですし、投下から3〜4日のうちになにかしら
反応するみたいです)してからというのがいいところかなと思います。

ただ同一の書き手による連投であればさほど気になさる必要はないかと。
上のような勘繰りは無用ですし。

なんだか急に投下が増えて嬉しいというより戸惑ってる今日この頃w
468創る名無しに見る名無し:2009/04/19(日) 15:34:44 ID:0dXn25Yc
俺のような、普段はROMっていうのも居る。
レベル高すぎて手がでませんし、感想すら書けませんよ、ええ。
このスレはこのまま突っ走って星井。
469創る名無しに見る名無し:2009/04/19(日) 16:54:17 ID:rWLhosBe
確かにこのスレ、感想も妙にレベル高いの多いしなw
感想すら書き辛いのは、わかる。
まあ、だからこそ書き手が集まり出したんだろうし。
でも、一言「面白かった」「イマイチ」でも、感想あると嬉しいもんなのよ。
そこは、遠慮なく頼みます。

しかし、過疎る時期こそあれ、すでにかなりのスレになってる気がする。
俺も指をくわえてる訳にはいかんねw頑張ろっとw
470創る名無しに見る名無し:2009/04/20(月) 01:12:25 ID:cYxqBtSI
作品のポテンシャルを春香に凌駕する質の高いコメント……押し潰されそうだw
ココのSSのレベルが高いのも凄く納得。
それらにゴロゴロ削られて、見た目いい感じになれるといいなぁ自分も。

そして固くなり過ぎないように、ゆるいSSも投下してみる。

>>466
美希と春香の仲が伝わってくれたのなら、作者は感無量です。この二人が大スキだから。
まったく描写してないけど、自分の作品の中じゃ常に仲良しさんなので。

断髪エピローグ、どうしてその発想を俺は浮かばなかったぁぁぁ。
センスを磨くヤスリは何処に行けば買えますか?

比喩表現については、ズバっと斬られましたねぇ。
確かに、文章の粗を誤魔化す為に多用しすぎてる気がするorz
>>467
了解しました。丁寧な説明ありがとうございます!
>>468
自分もココ来てしばらくはずっとROM専でした。
けど、愛が……たぶん愛が私を突き動かしたんだッ!
こんないい場所を絶滅させる訳にはいかないw 
>>469
>俺も指をくわえてる訳にはいかんねw頑張ろっとw

そんな流れを望んでいた。私の感想でよければ、これからいくらでも。
ただし、中身はあんま期待しないでねw
471BAD COMMUNICATION (1/4):2009/04/20(月) 01:35:48 ID:cYxqBtSI
ガチャリと、金属が回る音。

「お邪魔します」という二つの声と足音がして、買い物袋を手に提げた春香と美希が部屋に入って来る。

社長から事前に知らせがあって、家の鍵を二人に貸したとの事。俺の住いは社宅で、事務所からそう遠くない。

プロデューサーの俺が風邪でダウンした事で、彼女達の活動はあまり動きの無い、雑誌の取材等軽い物に絞っているらしい。

今日も仕事が早く終わって、俺のお見舞いに来てくれたのだ。

まぁそれでもちゃんと回転してる辺り、765も立派になったとしみじみ。



「プロデューサー、少し見ない間に老けたね」

美希は冗談を言わない。見たまま感じたままを口にする娘だ。

だからきっと今の俺の心境が映した顔を的確に捉えた発言なのだろう。開口一番にそんな言葉が出てくるのもご愛嬌。

「いや、こう家でじっとしてるとさ、俺って居なくてもいい存在なのかな、とか考えたりしちゃって……」

実際、自分が居なくても回る世界――765に、部屋で独り、淋しさを感じてたりした。

熱にうなされながら、そんな想像で心まで消耗させて――。

彼女達がこうして見舞いに来てくれなければ、年甲斐もなく拗ねていたかもしれない。

「自分の体調管理も出来ないダメプロデューサーなんだよ、俺は。二人も、いつか俺を見捨てて――」

「そ、そんな事ありませんよッ!! それに、もしプロデューサーさんが『落ちぶれて』も、私がずっと面倒見ますから……!!」

持っていたスーパーの透明な買い物袋を床にドサッと落とし、必死の形相でベッドに寄って来る春香。

ちょっとした冗談なのだが、春香は本気にしてしまったようだ。その気持ちは嬉しい(?)のだが、その言葉がなんとも微妙で――

春香の言動は時折、雲みたいな性分の美希より理解に窮する事がある。

「や、冗談だってば春香。それにしても“面倒見る”とは、流石売れっ子アイドルは言う事が大きいな。お父さん嬉しいよ」

「は、えぇ! 冗談!? ……ですか。やだ、私ヘンな事……りり、リンゴお借りするのでキッチン剥いて来ます!!」

熱い鍋の蓋でもさわったみたいに、バッと俺の横たわるベッドから離れ、顔をまさにリンゴのように赤くしてキッチンに飛び去る春香。

「うーむ……面妖な。転ばないといいけど」

その狼狽ぶりに、逆に自分が変な事を言ってしまったのかと頭をひねる。

いぶかしげな目で、混乱したひよこみたいに動く春香の姿を追いながら考えた。

「寝ても覚めてもにぶい男なの……あふぅ」

眠たげに、あくびを手のひらで伏せた美希の呆れた視線。

こっちもこっちでわからん。
472BAD COMMUNICATION (2/4):2009/04/20(月) 01:40:42 ID:cYxqBtSI
仕事の話と、他愛の無い雑談――

といっても年の離れた女の子と共有出来る話題などなく、もっぱら俺は、学校で何があったなかったとかを聞くだけ――

で、いつのまにか夕暮れ。外の景色は深い藍色。

「プロデューサーさん。今日のお夕飯、私達が作りますね。プロデューサーさんが早く元気になってくれるよう、栄養いっぱいの!」

あの買い物袋を見た時に分かってたけど――

アイドル達がこんなに思ってくれる事は、仕事してて報われる瞬間。

お金や名声よりも、俺はこれが欲しくて仕事をしている――

いつか、自分が100%、そんな気持ちで満たされる人間になれたら、それが本当の幸せなんだろう。

だけど――

「わたし“たち”なんだ……やっぱり」

「美希もがんばるの! 美希、料理だって得意なの!」

一瞬脳内でゾンビとか出てくる時とかに流れちゃうシリアスなBGMが聴こえたのは、内緒にして墓の下まで持って行こう。

案外、墓に入るのも近かったりするかもしれないし。

「だ、大丈夫ですよ! 私がついてますから……たぶん」

俺の強張った顔を見て胸中察したのか、春香がフォロー宣言。

何事も無い事を願うばかりだ。
473BAD COMMUNICATION (3/4):2009/04/20(月) 01:49:32 ID:cYxqBtSI
彼女達から元気を十二分に分けて貰ったからか、体は大分軽くなり、換気で開けた窓から入る春の空気を心地良いと思えるまで俺は回復した。

料理と人数分の皿で埋められる我が家のクリアテーブル。

コタツ程度の高さで、床に座布団をしいて座り三人で食卓を囲むと少し窮屈な大きさ。



「いやぁ〜ちょっと食べ過ぎたかな」

春香の作った料理は俺の事を考えて、胃に優しい、消化に良いメニューだった。

春香の料理の腕もあって、食卓を彩る品々は吸い込まれるように口の中に消えていった。

「お粗末様です。私でよければ、またいつでも作りに来ますよぉ」

「うんうん。春香はいいお嫁さんになるよ」

一方――

「プロデューサー……いつになったら食べてくれるの?」

美希が言い指すのは、テーブルの中央にでかでかと陣取った、『推定』おにぎりと思われる物体。

いや、見た目はまんまおにぎりだが――

「いつって……もう食べ残した物は何も無いと思うんだけど……」

「美希、自分が食べたいの我慢してるんだよっ? なのに無視、するんだ……」

「だから、なんのコトだか――」

「お・に・ぎ・り」

美希が積み重なったおにぎりの山を箸で指し示す。

「何? これはおにぎりなのか!? 気付かなかった……なんかのオブジェかと……」

「……いいもん。美希、自分で食べるから……」

ちょっと言い過ぎたか、シュンとなる美希。

「じょ、冗談だって! 俺、好きなものは後にとっておくタイプなんだよ!」

流石にこのままスルーしたんじゃ美希が可哀想なので、おにぎりの山から一つ、ひょいと取る。

これはもう、食べるしかない。

どれくらい安全か――という質問を春香に目で送る。

すると春香はふいっと、視線を顔ごと背けた。
474創る名無しに見る名無し:2009/04/20(月) 01:52:16 ID:yKbtiB2o
>>470
>センスのヤスリは何処に行けば買えますか?

センスというか、ネタ出しの経験値のような気が。
私がよく使うのは(短編だとあまりやらないけど)
まず、全体のプロットを考えて、その時に使えそう使えなそうに関わらず、
場面ごとにとにかく思いつくネタを片っ端からひねり出して書いておくやり方。
とにかくネタさえ出しておけば、実際に書く時に楽です。
同時に、ネタを思いつく訓練の効果も高い気がします。
475BAD COMMUNICATION (4/4):2009/04/20(月) 01:52:40 ID:cYxqBtSI
「春香――!?」

「美希ね、いろいろ考えて作ったんだよ。自信作!」

ニコニコ顔になる美希。

避けられない戦いが、そこに在る――気分は日の丸戦士。

「おにぎりはね、食べるだけで力が出てくるの。でも、これはもっと特別。通常のおにぎりとは違うピラミッド状のにぎりが、ピラミッドパワーで中の具を極限まで――」

「……極限まで……?」

「――つまり、美味しいの!」

よく分からない解説だが、美希も一応俺の事を思って作ってくれた事は確かなようだ。

「まぁ料理に大事なのは愛情っていうしな。それは伝わってくるよ、このおにぎり。あと、緊張感も……」

観念して、ピラミッドおにぎりをてっぺんから頬張る。

美希の手でにぎったからだろう、一個のサイズは市販のそれより小さい。

難度が高そうな特殊な形状のにぎりも綺麗で、料理が得意ってのはホントなのかもしれない。

だがそれが余計に不安を煽る。

テーブルに残されたおにぎりの大きさがバラバラだからだ。

美希のセンス――天然びっくり箱――で選んだ具材。まるで想像できん。
476BAD COMMUNICATION (5/4):2009/04/20(月) 01:57:16 ID:cYxqBtSI
爆弾処理のように慎重に咀嚼する。

「…………う」

ぐにゃ、という食感と、ぬるぬるする甘さが口内に広がる。

気持ち悪さで、あわてて飲み込む。

「ちょ……おい……バナナ!?」

「あ、お見舞いに持って来た果物、無いと思ったら……」

「体にいいの!」

天使のような美希の笑顔。

その無垢は瞳はキラキラと輝いて、死人に鞭打つように感想を求めている。

「しんぴのちから、プロデューサーも体感しちゃったんだね。どう? 美味しい?」

春香が無言で渡してくれた冷たいお茶を飲みながら、上手い答え探す。

まさか“まずい”とストレートに言う訳にもいかず、俺がたどり着いたのは――

「うん……そんなバナナって感じ……」

ギャグとは認められないほど風化したギャグ。通称オヤジギャグ。

突如、場がしんと静まり、窓から生暖かい春の夜風が「ひゅるる」と音を立てて通り過ぎる。

「……美希、もう遅い時間だし、私達そろそろ帰ろっか」

「……うん。美希、風邪うつったかもしれないの……寒い……」

立ち上がり、いそいそと帰り支度を始める二人。どこか余所余所しい。

「え、あの……お二人さん?」

「プロデューサー、後のおにぎり、全部あげるの。早く元気になってね……」

慈しむ目で俺を見ながら、恐ろしい事を言い放つ美希。

「プロデューサーさん、後片付け、全部お願いしますね。行こう、美希」

ぺこりとお辞儀し、見事なほど無駄の無い動きで俺の家を後にする春香と美希。

部屋に残ったのは、事態を飲み込めない俺と、雄雄しくそびえ立つおにぎりの山。

ドッキリかもしれない、なんて楽観思考で十分くらいそのまま待機してるとその内、心が虚しさと悲しさで満たされた。

「やっぱりダメプロデューサーだ……俺は。おにぎり……捨てる訳にはいかないよ……な……」



途方に暮れながらもおにぎりの山を制覇した後、俺は二度と体調を崩さない事を強く、強く、滲む涙と胃袋に誓った――。
477創る名無しに見る名無し:2009/04/20(月) 02:03:13 ID:yKbtiB2o
更新するの忘れて投下途中にかぶってしまった・・・。
大変、申し訳ない・・・。
478BAD COMMUNICATION (あとがき):2009/04/20(月) 02:05:56 ID:cYxqBtSI
王道的なネタが大スキです。

そしてまた区切りをしくる俺。
何分の何っていうの、次から辞めようかな、自分w
中身も含め、投下する時どういう形式がベストなのかまだよく分からん。

>>474
なるほどなるほど。
どうも自分、まだまだパッション先行だなぁ……精進せねば。

479創る名無しに見る名無し:2009/04/20(月) 02:08:49 ID:cYxqBtSI
いえいえ、自分の投下速度が遅いのがいかんのです。

毎度まごつくw
480創る名無しに見る名無し:2009/04/20(月) 13:57:03 ID:tSOrWo2r
>>478
なんていうか、最初からPの心情に暗い雰囲気があって、最後までそれが晴れない。
もうちょっとコミカルに進んでれば、この終わりでもいいんだろうけど。
Pがすくわれなすぎる感じがするなあ・・・。
481創る名無しに見る名無し:2009/04/20(月) 18:21:41 ID:VroGDn6Z
固くなり過ぎないようにという作者氏の意向を汲んでゆるい感想で。

>>478
看病ネタキタ━━(゚∀゚)━━━!!
>りり、リンゴお借りするのでキッチン剥いて来ます!!」
こーゆーの大好きです。王道は1週間食べ続けても飽きないタチでしてw アイマスで看病ものって俺も
3〜4本書いてます。アイドルそれぞれなりの反応を妄想するのって楽しくてしょうがありませんねえ。
本作もお互いに微妙に思惑のすれ違う刺激感がいいですね。パラレルでない同一キャラで書いておられる
ようですが、時系列的には前作よりかなり前の話になるんでしょうか。
謎のパティシエを倒す程度にお菓子を作れる美希、おそらく料理の腕もゼロではないと思ってます。まして
おにぎりなら(普通の具を使うなら)なんの問題もないはず。ただ、確かに『いちごババロアおいしいから、
おにぎりに入れたらきっとすっごくおいしいの!』ってな感覚は装備していそうです。プロデューサーはきっと、
これ以降二度と風邪をひくことはないでしょう。
480氏が言ってることは俺も感じましたが、三人とも人間関係発展途上のイメージで書きはじめたのかなーって。
むしろ個人的にはフル空改行がちと辛うございましたorz まあ趣味の範囲かも知れません。



あと
>何分の何っていうの、次から辞めようかな、自分w
むしろもっとやれw

ごちそうさまでした。またよろしくお願いします。
482創る名無しに見る名無し:2009/04/20(月) 22:12:22 ID:yXsOKmyO
んじゃこちらもゆるい感じで。

>>478
お、いいねぇ!気に入っちゃったよオレ!
Pの救われなさっぷりは、まあバッド引いちゃったしこれはこれでアリかなーってw
あと>>481氏と同じことになってしまいますが、フル空改行は自分が読み慣れてない事も手伝って
何となく流れが切れてしまう感じがしてしまいちょっとだけ読み辛かったかな?

>区切り
あくまで自分の場合ですが、全て書き上げた後に1、2、3…って感じに
実際に番号を振って区切っていってますねー。
ちなみにこの最中に誤字脱字を見つけて軽く凹んだりしてるのは内緒だw

なにはともあれ乙でした、GJ!
しかしここでアンディ・ライスの亜種を見るとは思わんかったw
483創る名無しに見る名無し:2009/04/21(火) 01:22:22 ID:c0t3NJYd
>>478
コメディの定石を押さえつつも全体としてはあっさり気味のプロデューサーに
いつも通りスキスキ光線放っているのにびみょーに薄情な春香w
そしてただただ我が道しか行かない美希を組み合わせて独特のゆるーい空気で和えて
いただきました。
なんていうか・・・確かにコメディとしてみると浮き沈みの振れ幅が小さいという点で
コミカルさが足りないようにも見えますが、流れが実にシュールでこれはこれで楽しいかも
不条理まで含めてならこれはこれでおっけーかと。

>>481
美希の料理、個人的には最初の1回目は生、2回目は焦げ、3回目はひと味足りず
4回目以降はほぼ合格・・・みたいな感じかなと。レシピをちゃんと見た場合は
1回目と2回目の過程はなし、ちゃんと教える人がいた場合はいきなり4回目の段階かも
独特のセンスさえ発揮しなければ、それこそ「なんでもそこそこ出来てしまう」が
発動しておかしくないですね。

余談ながらテンプレ的には壊滅だと見られがちな伊織が休日イベントで
反証を手に入れていたのは本人にとって幸いだったかも。
むしろ貴音辺りが壊滅的で、同類だろと思ってた伊織が一応料理できるのをみて
「水瀬伊織・・・あなたは、料理が出来たのですか!?」とか愕然としてみたり、なんて。
それに「ま、まあね、今時料理の一つや二つ当然でしょ?」って見栄を張った伊織に
「水瀬伊織・・・いえ、伊織どの! 私に料理をご教授いただきたく!」なんて流れも
想像できたりなんかして。
もちろん、場の勢いで安請け合いした伊織も大して得意なわけでないので内心ヤチャターw

>>482
おにぎりにヨーグルトは難しそうですなw
484478:2009/04/21(火) 01:41:25 ID:OWc3qUMB
そういや美希って自分の事は“ミキ”だよな……ちょっと首吊ってくるorz

言われてるように、確かにコミカルな部分がもうワンパンチ足りんかったなぁ。
自分じゃ遠回りしないと気付かないトコに最短距離で行ける――実にありがたい。
毎度お付き合い頂いて感謝です。

一度、アイドル達そっちのけでハッスルするおばかなPってのを書いてみたいんだけど、
ちゃんとした固有名詞が無い透明な男故なかなか難しい。それに、需要の面でも心配だw

空改行は次からやめとこう。

3連投下は流石に気が引けるので、しばらくじっくり話を練るターンに。
読みたい! リアルタイムの刺激が欲しい! 投下来るまで祈祷しちゃう。

>アンディ・ライス

どうしてタイトルにしなかった俺! バッドとバナナを必死にかけようとしてた敗北者w
485創る名無しに見る名無し:2009/04/21(火) 19:08:02 ID:znKZQPum
>>484が次の投下を呪っていると聞いてやってまいりました。
ぬっるい話で刺激にはならないでしょうが、まあおひとつつまんでくださいまし。
『Home Place』、3レスでまいります。
486Home Place(1/3):2009/04/21(火) 19:08:43 ID:znKZQPum
「こんばんわー。やよいいるかー?」
「おー、響じゃないか」
「あ、セクハラプロデューサー久しぶりー。元気だった?」
「……人聞きが悪くてたまらないんだが」
 ある日の夜のこと。珍しく起伏のない一日で小鳥さんも定時で帰宅し、留守番状態の俺が
一人でいる事務所に現れたのはライバル事務所のトップアイドルだった。
「やよいなら伊織と二人でレッスンだよ。もうすぐ帰ってくるけど、時間平気か?」
「うん、今日はもう帰るだけだから。待っててもいい?」
「構わないよ。ただしスパイ行為は禁止だからな」
「ふっふっふ、自分を招き入れたときからすでに諜報戦は始まってるんさ。今日こそセクハラ
行為の証拠を掴んでやるからね」
「我々はスムースかつシークレットにセクハラを遂行するのだ。すなわちスリーSだな。
この技術力、きみに見抜けるかな?」
 後半のやりとりは彼女と、我々765のプロデューサー陣とのお約束みたいなものだった。
 響は黒井社長に『765プロダクションはプロデューサーたちがアイドルと言わず事務員と
言わずセクハラ行為を日常的に繰り広げる地獄のような芸能事務所だ』と吹き込まれている
のだが、ここ数ヶ月アイドルの面々や俺たちと直接関わるようになってから個人的には
認識を改めたようだ。ただ彼女としても敵対関係の事務所に友人宅のように入りびたるのは
気が引けるらしく、今のセリフを免罪符に使っているようである。
「まあそれはそれとしてちょうどいい、ちょっと給茶室まで付き合え」
「え……ふ、二人っきりで?」
「そこで警戒してどうする。それを言うならこの事務所がいま俺ときみしかいない」
「あっそか」
「セクハラし放題なんだぜ、うぇっへっへっへ」
「ぎゃー、出たー」
 実を言うと今朝がた専門店から材料が届いたところで、この娘が顔を出すのを手ぐすね
引いて待っていたのである。有無を言わせず簡易キッチンまで連れ込み、ボウルと泡立て器
を取り出した。
「なに始めるの?」
「いやな、ちょっと新作スイーツの実験台にしようかなと」
「……お菓子なんか作れるのか?」
「俺を誰だと思ってる」
「セクハラプロデューサー」
「ですよねー……って、いいから見てろ」
 まずはボウルに芋葛粉20g、小麦粉200gを入れ、300ccの水で溶く。続けて餅粉20gと
ベーキングパウダーを小さじ1、泡立て器を回す腕に力を込めた。
「響ってこっちに一人暮らしなんだよな。自炊してるのか?」
「そうだぞ」
「仕事も学校もあるだろうに、大変だな」
「あはは、外食多いけどね。帰りがけに貴音や美希とラーメン屋寄ったり」
 砂糖30g、黒糖50g、塩一つまみと順に加えながら話すうち、961プロではマンションを
一棟まるごと借り上げて社員寮扱いにしているのだと明らかになった。
「寮母さんみたいな人、いないのか?」
「ごはん頼んでもいいんだけど夜なんか時間めちゃくちゃだし、やっぱり慣れたもの食べ
たくってさー。地元から材料送ってもらって作ってたら、その方が気楽になっちゃった」
「まあ、東京でゴーヤはそうそう食えないか」
「でしょ?自分なら毎日でもオッケーだぞ」
「ミミガーとか好きなんだよ、俺」
「わかるけどおつまみかな、どっちかって言うと。あっでも、時間ある時ならソーキ丼とか
作るぞ」
487Home Place(2/3):2009/04/21(火) 19:10:10 ID:znKZQPum
「ヤギとかヘビとかも食べるんだって?」
「面白がらないでよー。好きな人もいるけどさ、自分へび香いるしイラブーはあんまり」
「ああ、そうか。いっぱい飼ってるもんな」
「飼ってない!一緒に住んでるの!」
「はいはい。ところできみの家、ブタもいなかったか?」
 フライパンに油を引き、弱火で両面から火を通す。焼けてきたらくるくると巻き上げ、
皿に積んでいった。沖縄風巻きクレープ『ちんびん』の完成だ。
「こんな感じでどうだ。本場ものには敵わないかも知れんが」
「へえ、でも家で食べてたのといっしょだ」
 てっぺんの一本をつまみあげ、ぶら下げてがぶりとやる。まだ熱を持っていたか、
はふはふと口で息をする様子はアイドルとか女の子というより、友達の家に遊びに来た
子供そのものだった。ようやく飲み込んで小さく歓声をあげる。
「ん、まーさんどー!やるじゃないかセクハラ」
「やると認めてくれるんなら、そろそろセクハラ呼ばわりは改めて欲しいもんだが」
「いーじゃないか、もう慣れちゃったから今さら『プロデューサーさーん』とか言えないさ」
「まったく。ジュース飲むか?」
「飲む。ありがと」
 のんびり焼き足しをしながら世間話を続ける。独り者の身で十も違う歳の少女の雑談に
付いていけるというのもある意味、アイドルのプロデューサーとしての習い性だと微妙な
気分になった。
「でもさ」
 響が話を変えた。
「うん?」
「765プロはいいね。仕事終わるとこんなお菓子食べられるんだから」
「961プロにもお菓子くらいいくらでもあるだろ?こんな素人のヤツじゃなくてちゃんと
したのが」
「そりゃね。だけど手作りって、なんかいいじゃないか。先週だって春香がクッキーくれたし」
 961プロダクションには765のような『アイドルユニットという企画をプロデュースする
人物』がいない。多くの芸能事務所と同じで営業部門は別の部署、タレントとの仲立ちは
マネージャーが行なう。大会社らしい効率的な組織運営と言えるが、役割分担がしっかり
している反面タレント個人に深く関わる人間がいない。
「こういうの、好きか?こんなぬるま湯みたいな事務所だからいつまでたっても弱小なんだ、
って黒井社長なら言いそうだが」
「おおっ、正解。社長こないだ言ってたよ」
 目を丸くしてみせ、その表情を笑顔に戻してクレープをもう一本手に取った。
「自分の田舎、親戚多いせいもあるんだけど近所じゅうが友達づきあいしててさ。家に
帰るといっつも誰かしら来てて、いっつも何か食べてたりお酒飲んでたりしてるんだ」
 徳利か杯のつもりなのだろう、端をつまんでぶらぶらと振る。
「こんな感じでオジーとかさ『やー響、ちょうどいいこっち来らんか』とか」
「おいおい、まさか未成年者が酒」
「しー!滅多なこと言うもんじゃないぞ」
「お、そうだよな、失礼――」
「ちょこっとだけだから平気さー」
「――ってこら」
「あはは。だからね、こういうのもいいなってさ」
 菓子を葉巻のようにくわえ、明るく笑う彼女に思わず声をかけた。
「……なあ、響」
「ん?なに?」
488Home Place(3/3):2009/04/21(火) 19:11:15 ID:znKZQPum
 『寂しくないか』と聞こうと思ったが、思いとどまった。きっと『寂しくないぞ』と
答えるだろうと気づいたからだ。
 実に余計なお世話だが、俺は響が心配だったのだ。
「二人が帰ってくるまでに、こいつをもう少し焼いておこうと思うんだ。料理できるんなら
手伝ってくれないか?」
「やよいたちが食べる分か。やる、作る!」
「助かるよ、ありがとう」
 強気で、自信家で、屈託なく笑う響が。
 一人で暮らし、一人でレッスンをこなし、一人でオーディションに挑み、一人で仕事に
追いまくられる彼女が。
 やよいや春香を慕って訪ねて来ることが、人間の言葉の通じない同居人を山ほど養っている
ことが、そいつらの食べ物をひょいひょいつまみ食いする癖が、きっと俺には心配だったのだ。
 いつだったか、故郷の兄が俺となんとなく似ている、と言われたからかもしれない。
「俺はこっちで生地を足しておくから、きみが食った奴みたいな感じでやってくれ。両面
焼いて、くるくるっと」
「ん、わかった。薄焼き玉子のつもりくらい?」
「錦糸玉子よりは焼けやすいかな」
「弱火、苦手なんだよなー」
 お節介極まりない話だし、杞憂なのだろうとも思う。しかし個人的には捨て置くことも
容易でない。だから俺は、彼女を見つけたら菓子を振舞ってやることにした。
 素人料理はもともと趣味だし、どうせうちのアイドルが食べる。食べ物の恩を売っておき、
オーディションで出くわしてもせめて悪質な妨害に走らないよう餌付けする。大儀名分
ならいくらでも探せる。
 俺はこの事務所を、こうして『誰かしらいて、なにかしら飲み食いしている』場所に
してやろうと思ったのだ。
 敵味方とかライバル事務所とか区別なしに、気楽に過ごせる場所に。
「う〜、でも久しぶりでドキドキだな……わわ、焼きすぎた、丸まらないよ」
「いいよ、そのままで。響が作ったって言えばやよいは喜んで食べるだろうし」
「ええー?こんなの見せられないよ、これ自分で食べる。よし、次に挑戦っ……あっ
早すぎた、くっついちゃった」
「響……きみ本当に自炊……」
「うるさいなー!ちょっと黙っててよセクハラー」
「だからセクハラを二人称に使うなと」
 それに、そうしていれば。
「なあ響、いっそ765プロ来ないか?こういうのいつでも食えるし」
「……なにサラッと移籍持ちかけてるんだ」
「いや、ちょっとどーかなーって。そしたらセクハラも正々堂々とできるからな」
「うえええ〜」

 そうしていればいつか、本当に区別が不要になるかもしれない……と、俺はひそかに
期待しているのだ。





おわり
489Home Place(あとがき):2009/04/21(火) 19:12:54 ID:znKZQPum
原題『響のちんびんマジ最高』をお送りしました。ええそうですともレシPですとも。

ひと月ほど前、響スレで↑というお菓子の名前の書き込みがあって脊髄反射したんですが、
なんかもうひとひねりできそうだったんで温めてみました。
響は当初アホの子扱いだったのが(おもに残り二人のおかげで)ツッコミ役に回ったり、
けっこうかしこい子のイメージになっております。このゲームとしては珍しい「はじめから
トップアイドル」という位置づけだし、もっといろいろいじり甲斐がありそうですね。

前作『天海の岩戸』もまいどご感想ありがとうございます。投下時愚痴ったとおり若干ヘコみ
気味の昨今、反応いただけると素直に嬉しいです。
お褒めの数々はありがたく頂戴しておき、これを更なる創作へのエネルギーにいたしましょう。
とりわけ、
>「じゃ、戻りますね」ってさらっと出てきてる春香
ここに目を留めていただき喜びもひとしお。ギャグ漫画では常套手段のネタですが、いつか
自分の作品でやってみたいと思っておりました。

>バレバレ
へえ、もう諦めましただw 以前こういう構成はどうなんだって意見もいただきましたが、地味に
精進しているもののぱっと見ではあまり変化もなく。せめてそれはそれとして読み進みやすく
あろうと努めておりますハイ。

この新作ラッシュ、いいっすね。ちょっと俺>>483の後半リクエストしたいんですけどどなたか
……てか483さん書いてくださいませんかw

ではまた。
>>484さんこれで三連投じゃなくなりましたが?
490創る名無しに見る名無し:2009/04/21(火) 22:40:05 ID:ijOKpyct
>>489
レシP!レシP!
相変わらずサクサクと小気味良く読める所は流石ですねー
491創る名無しに見る名無し:2009/04/21(火) 23:47:12 ID:9BbTK6eZ
>>489
「俺を誰だと思ってる」
「レシP」

もう、料理ネタで事実上自白される前に誰かわかってしまったよw
しかしこれで遅筆とか言われると、イジメられてる気分だw

感想っていうか、構成のせいだと思うけど、こういう軽い内容の方が読み易い。
(逆に>>478とかは、はっきりストーリーがある方が読みでがありそう。)
あと俺はやっぱり響には「出たな、765プロ!」って呼んで欲しいかなw
響のキャラは非常によかった。GJ。
492創る名無しに見る名無し:2009/04/22(水) 00:07:43 ID:oz1jFvZl
>>489
不敵だけどアットホームなPと響のちょっと心温まるワンシーン、堪能した!
徐々に二人の距離が融和してき、
響に「プロデューサーさん」と呼ばれる日の事を想像してニヤニヤした。
現在、祈祷成功率は1/1のようだ。

自分も>>483の伊織のお料理教室SS読みたいw

>三連投じゃなくなりましたが?
え、もう登板回ってくんの!? 中14日とか欲しいんだぞ。
ちぎっては投げちぎっては投げSS力投する「俺がエースだ」という方、
どこかにいませんか?w 自分敗戦処理として働きますんで。
「そこの君! ティンと来た! このラッシュに乗ってみないか?」




493 ◆yHhcvqAd4. :2009/04/22(水) 10:10:00 ID:jsKisEHk
おはようございます。今日はオフなんで投下しに来ました。
494そよ風の窓 1/3:2009/04/22(水) 10:10:44 ID:jsKisEHk

 蕾になって準備万端の桜も満開に咲き乱れ、世の人々が新たな生活を始めた頃。着慣れない様子の学生服を
着て歩いていく少年少女を横目に箱詰めの荷物を持って階段を行ったり来たりしていた俺も、今まさに新生活
の準備に追われている所だ。書類やらオフィス用品やら、朝も早くから何度このフロアとビルの入り口を往復
したことやら。デスクなどの大きな荷物は注文した業者があらかた置いていってくれたが、レイアウトの決ま
っていないここには、まだそれらがとりとめもなく散在しているだけだ。箱詰めのパソコンも、まだどっしり
と片隅にたたずんでいる。
「律子、このテーブルはどこに置くんだ?」
 背の低いガラス張りのテーブルをそっと床に下ろしながら、書類の束を抱える律子に尋ねる。
「えーっと、それはですね……ひとまずあの辺に。向かい合わせのソファーと一緒にするんで」
「了解だ」
 南向きの窓際を目で示した律子に従って、陽の射し込むそこへテーブルを下ろす。傍には、茶色い革張りの
ソファーが一対。この組み合わせ、どうやらここは応接スペースになるらしい。フロアの一角にぽつんと置か
れた、仕切りの無い応接室は、俺が765プロに来たばかりの頃を思い起こさせた。雑居ビルの一角にひっそり
と居を構えていた、弱小芸能事務所だったあの頃だ。経た年月を考えてみるとそれほど以前のことでは無いに
も関わらず、あそこでプロデューサーとして働き始めたのが大昔のことのように思える。それだけ密度が濃か
ったということなのだろうか。
「ほらほら、ボーっとしてないで下さいよ。事務所のセットアップは今日で終わりにする予定なんですから」
 窓から遠くに見える桜の木を眺めて黄昏ていると、律子の鋭い声が滑り込んできた。
「き、今日で? てっきり明日辺りまで準備で終わると思ってたんだが……」
「そんな時間ありませんよ。これからの行動計画も練ってあるんですから、早く動かなきゃ損ってもんです」
「……用意周到なことだなぁ、まったく」
 ふうと溜め息をつく俺をよそに律子はきびきびと動き回り、デスク一つを中心としてオフィススペースを着
実に作り上げていた。
「そうだ、これ」
 混沌となっていたクリアファイルの山を机の上の本棚に収めながら、律子が一枚の紙を俺に差し出した。
「事務所はこういう間取りにする予定なんで、机とか棚とかをこの通りに配置してくれます?」
「棚って……」
 事務所の入り口、ドアの横にデンと構えた、本棚と思しきサイズの棚。
「俺一人でやるのか……」
「中身は何も入ってないんで、一人でも運べると思いますよ」
「まぁ、あれぐらいなら何とかならんことも無いが」
「分業した方が効率上がりますからね。私はパソコンとか電話の設置とか、細々したことをやっておきますの
で。頼みますね、社長殿」
 社長という響きに、765プロの高木社長がふと思い浮かんだ。一瞬他人事のように聞こえたが、今は俺が社
長なのだ。まだ名前の決まっていない、小さな芸能事務所の。
 芸能事務所を建てるという話を聞かされたその瞬間は、あまり現実味を感じられなかったが、こうして『社
長』と呼ばれるようになると、なんだかとても重たいものを背負ってしまったような気になり、心細さすら感
じた。
 アイドルから転身、プロデューサーとして働くことになる律子には、元々その役を担っていた俺が色々とア
ドバイスを出せる部分もあるだろうが、経営に関する知識には乏しいと言わざるを得ない俺が、芸能事務所の
社長なんて、果たしてやっていけるのだろうか。
「……社長?」
 頭一つ分低い所から見上げてくる律子の視線が、俺の意識を目の前の状況に呼び戻した。
「ああ、なんでもないんだ。大丈夫」
 ぼんやりする俺を咎めるキツイ眼でなく、ヘトヘトに疲れた俺を気遣う時と同じ眼だった。俺の不安を読み
取られたのかもしれない。敢えて視線を合わせて確認を取ることはせずに、俺は黙々と自分の仕事に取り掛か
った。
495そよ風の窓 2/3:2009/04/22(水) 10:11:52 ID:jsKisEHk


 やがて、乱雑としていたフロアもだいぶピシッと整ってきた。手狭な感は否めないが、大まかな外観はだい
ぶオフィス然としてきたかもしれない。とはいえ、まだ何も入っていない本棚や、机どころか椅子の上に山積
みになった書類、書籍の類を見ると、肩が重くなった。
「律子、そっちはどうだ?」
「パソコンとプリンタはこれでOKですね。後は棚に段ボールの中身を入れ終えたら、一通りの仕事はできるよ
うになりますよ」
「ああ、まだあれがあったか……」
「一旦休憩にしましょうか。コーヒー入れるんで、ソファーの方に行ってて下さい」
「ん、分かった」
 律子に言われるままに、窓際に置いたソファーに腰を下ろす。向かって右のソファーには、窓から春の暖か
い陽射しが注ぐ。三月から寒い日が続いていたが、春らしいぽかぽかとした陽気になりはじめて、ソファーの
周囲に漂う柔らかな空気が心地良い。
「……疲れたな」
 よく考えるまでも無く、律子の引退コンサートが終わってからまだ一週間と経っていないのだ。準備の段階
から息をつく間も無しに忙しい時間が続いていたにも関わらず、まともに休みも取れていない。少し腰を下ろ
しただけで、体から力が抜けていき、両の目蓋がずしっと重たくなった。


 いかんいかん、眠っては怒られる。そう思って目を開くと、白い天井が、そしてそれを遮る何かが視界の手
前にあった。後頭部に感じるのはソファーの皮のゴムにも似た感触では無く、もっと弾力豊かで、柔らかい……
「お目覚めですか?」
 俺の頭の上、山脈の向こう側から声がした。
「ん……」
 顔を覗き込まれた瞬間、俺は自分の置かれた状況に気がついた。
「……膝枕?」
「コーヒー持ってきて隣に座ったら、グースカ寝てる誰かさんがもたれかかってきましてね」
「あ、ああ、悪かったな、それは」
「まだコンサートの時の疲れも抜け切ってないでしょうからね、そっとしておいてあげようと思って」
「……珍しいな、いつもなら即刻叩き起こされてるだろうに」
 視線を足先へ移してみると、タイトなパンツスーツからスラッと伸びた脚が前方へ軽く投げ出されている。
「のんびり寝息を立ててるあなたを見てたら、『もう少しのんびりやっていってもいいのかも』って、ちょっ
と思ったんですよ。あまりウカウカしてはいられない業界だってのも分かってるんですけど」
 陽光を受けてきらりと光る、眼鏡の奥の瞳は柔らかい輝きをたたえている。
「まぁ、先は長いだろうからな。あんまり急いでも、途中で息切れすると思うんだ」
「……そうですね」
 血色の良い唇が、綺麗に吊り上がった。
「さ、体起こしてください。サービスタイムは終了ですよ」
 律子が膝を持ち上げ、くいくいと頭が揺さぶられた。
「えっ、今、『のんびり行きましょう』みたいなことを言ったばっかりじゃないか」
 そう言いながら体を起こす。先程の気だるさは相変わらずだが、少しだけ体が軽くなったような気がしない
でもない。時計を見てみると、四十分近く眠っていたようだった。
「よし、じゃあ再開するか……ん?」
 気持ちを切り替えて立ち上がろうとしたら、ぐいぐいとスーツの裾を引っ張られた。
「なんだなんだ、サービスタイム終了なんじゃないのか? 結構寝ちゃってたし、俺」
 上げた腰を再び下ろすと、右肩に重みを感じた。春風に混じって、清潔感のある香りが鼻腔をくすぐる。
「交代ってことですよ」
 俺の肩に頭を乗せ、律子は体の力を緩めて寄りかかってきた。衣服越しに体温が伝わってくるようだ。冗談
半分で言ってみたら『ダーリン』と呼んでくれたり、出会った頃から比べれば心理的な距離は随分縮まったと
は思うが、ここまで律子と密着したことなんて何かの拍子にぶつかった時ぐらいしか無い。そんなことを思い
出して、今さっきまで膝枕という大サービスを受けておきながら、俺の全身に緊張が走った。
496そよ風の窓 3/3:2009/04/22(水) 10:13:12 ID:jsKisEHk
「……どういう風の吹き回しなんだ?」
「疲れてるのは私も一緒、ってことですよ。正直、かなり眠くって」
「いや、そりゃコンサートを演った本人だから疲れてるだろうが、なんていうか……」
「……いいじゃないですか。こんな風にしてられるのなんて、今の内だけかもしれないんですから」
 当然のことながら、まだ名前すら決まっていない事務所でスタッフとして確定しているのは、経営者になる
社長の俺と、プロデューサーとして働く律子の二人だけだ。プロデュースするタレントやアイドルが決まれば
さぞかし忙しくなることだろう。『二人っきりの時間を過ごす』という意味で捉えるのであれば、確かに律子
の言う通りかもしれない。
「ちょっと休むんで、しばらくしたら起こしてくださいね」
 そう言って、律子は長い睫毛を伏せた。窓から穏やかなそよ風が吹き込んできて、切りそろえられた前髪を
さらさらと揺らした。一緒に仕事をしていて結構長いはずだが、こうまで気を許されていることに、少々戸惑
いを感じてしまう。
 こんなに無防備な姿を晒していることは、俺への信頼の証なのだろうか。恐る恐る、そっと手を伸ばして細
いウエストを抱き寄せると、特に律子からの抵抗も無く、すんなりとそれは受け入れられたようだった。その
まま少し手を上へ上らせてみると、
「セクハラ禁止」
 眼を閉じたままの律子に、ぴしゃりと言い切られてしまった。
「なんだよ、起きてるのか」
「寝てますよぅ、熟睡中です」
「寝てる人間は応答しないだろ」
「熟睡といったら熟睡なんです。安心して眠りたいんですから、ヘンなことしないで下さいよ?」
「……分かったよ」
 気を許していると思いきや、律子の中ではボーダーラインがきっちり引かれているようだ。
 まぁ、寄りかかって眠る程度には信頼してもらっているということだ。今はこの事実をありがたく受け取っ
ておこう。もっと仲良くなるのは、これから先でもいい。

 桜の花びらが一枚、そよ風に乗ってやってきた。心細さが、うっすらと消えていくようだった。


 終わり
497夜 ◆yHhcvqAd4. :2009/04/22(水) 10:22:34 ID:jsKisEHk
以上になります。
職場が変わって物語文に触れなくなったせいでだいぶ鈍りを感じるんで、感想批評等頂ければ幸いです。
キャラスレに落とした方がいいのかなーとも思ったんですが、最近見ていなかった内にここへ
投下作品がいっぱい来てて狂喜乱舞な流れだったんで、ついやってしまいました☆

>>389
材料の描写をしてる時点でピンと来ましたw
961プロのビジネスライクで冷たい雰囲気、765プロのアットホームでホカホカな空気の対比が
良かったっす。まだSPをちゃんとやってないからだと思うんですが、響のキャラクターもとても
フレッシュに映ります。


他の作品も後ほど読ませていただきます。この調子でもっと盛り上がって欲しいですね!
498レシP:2009/04/22(水) 19:04:59 ID:pL/ILE+V
500レスを前にスレ容量の9割を消費するというすさまじい進行度合いw
歩みこそマイペースですが実に創発らしいスレに育っております。

>>497
ごぶさたですー。いろいろご発展でなによりですね。
春はいろいろスタートの季節、アイマスSSでもプロデュース期間を春に区切る人が多く、やはり
この時期そういう気分になるのかなと思います。
律子とPの新しい出発、新芽の風はすがすがしく二人を包むことでしょう。コーヒー持って戻ったら
オチてるPを発見、一瞬起こそうか思案するもののいたわりの思いが湧き、そっと隣に座ったところで
「んがッ」とばかりにPがのしかかってきて無言で大慌てする律ちゃんが目に浮かぶようですw
まいどの腕前のどこが鈍ってるやら検討もつきません。

お時間できたらまたいらしてください。



ご反応も毎回ありがとうございます。もうバレる件はしゃああんめえ、こちとらSSが名刺代わりでぃッ!
961プロの内実はほとんどわかりませんので、逆に言えば好き勝手考えられるというところ。貴音は
キャラを固めあぐねてますが美希(961ver)や響は動かし方を楽しく妄想中です。

>>491
>こういう軽い内容の方が読み易い
得意分野を褒めていただいて嬉しい限りなのですが、じ、実は25KB書いてもまだ終わらないという
ブツがありまして(忍者ほどは長くならないと思う)……いつか完成したら投下してもいいっすかね?w

ほいじゃまた。いいスレに育ちつつありますなあ。
499創る名無しに見る名無し:2009/04/22(水) 19:43:45 ID:nhuTwpPq
>>468
こう言うとアレかもしれんけど、このスレの現状は何人かの高レベルな書き手の方が
わりと気にして盛り上げようって投下してくれてる言うなら善永さんついてる状態だと思う
ここでもう一段裾野が広がるかどうかがここの今後の状況を左右する、もしそれができないまま
盛り立ててくれてる人が見切りつけちゃったらまた過疎スレになってしまうような。

だからさ、感想すら書けませんなんていわず、一言二言でもいい、書いておこうよ、感想。
ここに投下すれば必ず感想がつくと思えば次を、あるいは新たに書いてくれる人がまた出るかもしれない
感想書くこと自体が試されてるような気分になるのもわからないでもないけど
書いてる人にとって一番きついのは「読まれてる実感がないこと」じゃないかと。
別に技術的な指摘とか方向性の注文とか、小難しく考える必要はないんだし
「あなたが書いたもの、読んでるやつがここにいるよ」っていうことを伝えるだけでも
全然違うはず。その上で言いたいことがあるならさらに書き連ねてみればいい

浮かぶまま生の感想(きもち)でいい、それを想いと呼ぼう
・・・なんてね、うわ、自分で書いてててキモッ!
でも書いちゃえ!www
500創る名無しに見る名無し:2009/04/22(水) 20:31:05 ID:N1v25B0g
>>497
律っちゃんの個人的大ファンてわけでもないんで、キャラスレとか見てないんですけど、この律っちゃんはいい!
問われている事に真っ直ぐには答えなかったり、今言った内容と違う事を即座に返したり、要約した暗喩を使ったりと、こちらのほんのわずか、角度にして5度くらい斜め上を行く感じがそのまま再現されてると思います。
プロデュース時に、その斜め上に対して、真っ直ぐ返すか、ノリツッコミの要領で行くか、こちらも変化球で行くかと試される様に悩まされた経験がよみがえります。
律っちゃんは、見え見えのツッコミと論理跳躍しての結論がテンプレみたいに思われてるけど、それは決して間違いじゃないがそれだけじゃない。そのことを確認出来た思いです。
一番印象的なのは、最後の熟睡中のくだりですかね。
これだけ律っちゃんの台詞が見事だと、P側も半捻りくらい加えた返しの会話も見たくなります。(贅沢言ってますw)

文章については、これだけの文字量でありながら、まるで詰まる事なく読ませるんですから、こちらからは批評めいたことなんて言えませんwただ賞賛するのみ。
ぜひまた投下お願いします。


あと、>>498も遠慮なく投下してくださいねw


しかし、すでに容量の9割が使用済ですかw
もし作品投下途中に容量オーバーとかなったら格好悪いなあ、なんて心配は投下する作品を書き上げてから言うべきですねわかりましたw
501創る名無しに見る名無し:2009/04/22(水) 23:47:11 ID:oz1jFvZl
>>497
エークセレンット!!
完成度が高くて非の打ち所が私には見つからないw 
これぞSS! と唸りましたねぇ。ジェラシー感じちゃう私マーメイ(ry
りっちゃん今まで触れずにいたけど、プロデュースしてみようと思った。
次もまたやってしまってくださいw 期待してれぅ。

>>498
そのブツ、新スレで待ってる!

>>499
いやキモくないよ。そういう事を声に出してくれる人がいたから、
自分もSS投下したり感想書いて反応したり出来るよーになったし。
502創る名無しに見る名無し:2009/04/23(木) 01:06:11 ID:nneVKAT4
一時期、ちょっとキツ過ぎね?と思ってましたが
最近要求は高く、物腰は柔らかくな人が増えてきて、少し居やすくなったかなあとも
アイマスのSSは主層がキャラスレで、ここまで回ってこない傾向かと思いきや
キャラスレでは別のキャラ語りの合間に投じられる格好なのに対してここはあくまで
「SSと感想」、あとはあってネタ振りで構成されてる分、来る人間は話を書くか読むか
のどちらかが目的とハッキリしてるっていうのは意義としてあるのかも。
もちろん、キャラスレのキャラ語りからのインスピレーションも重要で、それはキャラスレ
独特のものだろうとも思うので、どっちが優れてるとかの話ではないですが。
あと、キャラスレはそれぞれ独自の文化があるので、そのキャラがメインだけどスレの
空気には合わない・・・なんてことも稀にはあるかもしれないし、数人が入り混じるSSで
誰がメイン、という見方をしたくない場合とか、キャラスレと別にここがある意味は
徐々に出来つつある印象。もちろん意味なんて関係ない、書きたいから書くで充分すぎますが。


さて、それはそれとして。
レシPと夜Pの連投ってこれなんてごちそう攻め?w

>>489
まずは、挨拶代わりに。響のちんびんマジさいこー
レシPんとこの場合、伊織が絡むとセクハラプロデューサー言われても否定できない気がするんだw
とはいえ、響と軽口叩き合える、でもあくまでも今はお客さんという気易さと遠慮の
入り混じったような微妙な距離感が今回の見所な感じがします。少なくとも、プロデューサー側から
セクハラネタを冗談として言い合えてるところは相当打ち解けてる印象。
・・・ちょっと前、「奇跡的に何も逃げ出さなかったオフに“同居人”たちに一方的に
話し続けて一日を終える響」なんてのを想像して微妙にヘコんでみたりしたので
こういう空気の中で過ごせてる響はいいなあと思うわけです
あと個人的には「やよいなら千早と二人でレッスンだよ。もうすぐ帰ってくるけど、時間平気か?」
だったらどんな反応したかなーと。響、あの感じだと千早のことは嫌いじゃないけど
苦手にはなってそうだしw
・・・プロデューサーに限らずアイドルも事務員もヘンタイか
にしても、そろそろまた長編とかに挑戦してみてみて、とか思ったら25KBとかw


>>497
急ぎ歩きの律っちゃんもたまにはちょっと春の陽気に一休み。
律っちゃんは人情家ではあるけども「あなたのためだから」のあまり、机上の計画ばかりを見て
本人の顔を見損ねてしまうようなところもあるので、時々はこういう柔らかい空気を作って
目と目、顔と顔を合わせる時間を思い出させるのも「ダーリン」の役割かなあと。
どんな顔しながら膝枕にもってったのだろうかとか書かれてないとこまでもニヤニヤすぎますw
優しい空気感は良いし、文章も安定。完成度が高くて非の打ち所が見つからない・・・という
意見もあり、正直かなり同意したいところではあります。
ただ、敢えて言うとその完成度の高さや安定感からか、かえって特にここが印象に残った!的な
なにかが感じにくいで気がしないでも。ラスト付近の熟睡中とか、もっとこう、ガツンと
来ていいはずなのに・・・やっぱ贅沢すぎですかね。
503創る名無しに見る名無し:2009/04/23(木) 12:50:55 ID:r3fjTq1f
>>499
青い!いいぞその青さ!面と向かって言えない事を言える匿名掲示板のいいトコだw
なんだか感想は感想で書いてる人が知れる感じなのが楽しいですよね。こんなに長文感想あると、なるほど
新規参入は腰が引けるかもしれませんw
ただまあ書き手としてはGJの二文字だけでも嬉しいですし、萌えた笑った感動した抜いただのもう一言あれば
さらに嬉しいってわけで。それがみなさん暴走するからこんなカンジになるわけで。

468さんみたいな人がいつの日か

「べ、別にアンタのSSに感動したとかじゃないんだからねっ?そりゃちょっとは面白かったし、つい引き込まれて
一気に読み終えちゃったけど、こんなのそんなにスゴイとかじゃないのよ?こんなレベルじゃ感想なんか
ひとつも付きゃしないだろうし、総スルーなんていくらアンタでも可哀想でしょ、今日は私も偶然時間あるし、
まあ一言くらい書き込んでやっておけば私の心の広さも知れ渡るわけじゃない。書き込む理由なんかそれだけ
なんだからね?アンタの次の作品なんかちっとも、これっぽっちも、ぜーんぜん待ってないんだからねっ!
……GJ」

とか

「誤字脱字はあるし敬語のチョイスもおかしい、起承転結はどうにか形にしたようですけど結末が微妙にご都合主義。
うまくまとめたとは思いますがまだまだですね、プロデューサー殿。キャラクターはよく捉えていますから軽快に
読み進められるのは評価できますかね、ただ私としては主人公がもう少し、女の子の想いに気づいてあげられる
ほうが、その、楽しいと思いますよ、読んでいて。今まで書いたことありませんでしたけど、次回作に期待っていう
意味も込めて、今回はGJさしあげましょう……かね」

とか

「いんたあねつとの類は不調法なもので生半には書き込みの段も踏めず今まで失礼をば致しました。貴殿の作は
必ず拝読致しているものの、これ迄は寧ろお心を乱してはと感懐も述べる事ができず、此度は小勇奮い起こし
きいぼおどに向かった次第で御座います。本作甚く感激致しました。佳境から結末へかけて抜き身が鞘走るかの
如き爽快感は読了後も暫し胸に残る心地好さも堪能させて載き御礼申し上げます。こういう場合に多用される略語
と聞き及びましたのでお伝え申し上げます。じいじえいで御座いました」

とか

書いてくれるんじゃないかとwktkしながら投下するのもなかなかオツなものなのです。
504創る名無しに見る名無し:2009/04/23(木) 13:21:13 ID:SwxuX9nr
まさか、気が引けたという書き込みだけで、こんなにネタにされるなんて。
だいたい、私は水瀬さんのように可愛い反応は出来ませんし、律子みたいに
ストーリー創作に明るいわけでもありません(四条さんのスタンスには、
比較的近いかもしれませんね)。

普段、書き込まないというだけで、これは伝えなければ、と思うところがあれば、
必ず書き込みます。ただ、他の方が書きたいことを先に書いてくださっているので、
機を逸しているというだけで。被ってもいいから書き込めって?
それは……必要なのでしょうか。

みたいにモディファイされるとは思ってもみなかった。
文芸板の住人の妄想力は底なしか……!

基本、キャラスレ住人なのでジャンクフードを食べるような感覚で、あちらでこそこそしますw
505創る名無しに見る名無し:2009/04/23(木) 14:26:02 ID:cENG+Lkw
>>504
志村ーここ創作
506創る名無しに見る名無し:2009/04/23(木) 17:19:33 ID:cENG+Lkw
……はっ……発表板。
507創る名無しに見る名無し:2009/04/23(木) 17:35:14 ID:F6em9mNp
いくら急に活発になったからって、おちつけ諸君w
508創る名無しに見る名無し:2009/04/23(木) 17:45:34 ID:KwUHW8Sz
タイミングを逃そうが内容が被ってようが言葉少なだろうが、
どんな感想&批評も、不必要だなんてコトは絶対に無いんだぜ。悪意さえ無ければ。
ちとストイックな雰囲気があって馴染み難いと感じるかもだけど、スローフードも食べに来てね!

……そう言えるだけのモノを用意しなきゃいけませんなぁ。
フリ逃げ? シマセンヨソンナコト……。
509創る名無しに見る名無し:2009/04/24(金) 21:48:10 ID:mKvKEGTI
 
510創る名無しに見る名無し:2009/04/25(土) 16:59:16 ID:5JwhdtCh
週末に投下が無いってのも寂しいもんなんで、やらせていただくー。
というかアイマスへの造詣を深める前に妄想書き綴ってる俺はなんなんだろうね……。
3レスほど。今度は上手くやれよ、俺w
511幻想LOVERS(1/3):2009/04/25(土) 17:05:09 ID:5JwhdtCh
「お見合い――ですか?」
「うむ。この前の仕事で、先方が君をえらく気に入ったようでね。それで、そんな話が出たのだよ」
 出勤するなりいきなり社長からお呼び出し。
 何事かと顔を引き締めて話を伺うと、予想外も予想外の縁談――というのだろうか、この場合も?
「俗的だが、業界に強力なコネクションが出来るしうちとしては悪い事はない。
 君も、今までと違った人生観が見えるかもしれない。結婚するしないはともかく、一度そういうのも経験してはどうかね?」
「はぁ……前向きに考えておきます」
 一般常識で測れば、四捨五入すれば三十とはいえの独り身の男が、
 プロデューサーとしてアイドル候補生と長く一緒に居ると親心としては不安になる。
 まったく信用されてない、という事もないだろうが、当然社長も心の隅でいつもその事は危惧してるのかも知れない。
「社長のお話、なんだったんですか?」
 社長室から戻ると、淹れたてのコーヒーを持って事務員の音無小鳥が話しかけて来た。
「あ、どうも。いや、ただのおみあ――」
 はっと、脳に電光が走る。
 何故だかわからないが、この話を小鳥の前でしてはいけない。
 何故だかまったくわからないが、それが世界の掟なのだと自分を納得させる。
 そして同時に、あいつらにも内緒にしておくべきだと悟る。
「変なプロデューサーですね……あ、二人はコーヒーと紅茶、どっちにします?」
 小首を傾げながらも、さして気に留めた様子もなく、小鳥は二人にリクエストを取る……二人?
「あ、すみません。私は紅茶でお願いします」
「ミキはコーヒーがいいな。あの、かぷ、かぷ……クリームで字が描いてあるのっ」
「そんな洒落た飲み物うちにはありません。お砂糖多目に入れてあげるから、それでいい?」
 生徒のわがままをなだめる教師のように言い聞かせて、給湯室へと向かう小鳥。
 そして残ったのは――。
「ちょっと君たち、いつのまに!?」
「綺麗な人ですね〜」
「えぇ〜ミキのほうが可愛いと思うな。ね、ハニー?」
「ぴちぴちの現役アイドルと比べてやるなよ……返しなさい」
 二人からお見合い相手の写真が映った冊子を取り上げる。
「ね、ハニー……結婚、しちゃうの?」
 くりくりと大きな瞳を顔の中央に寄せ、心細さそうに尋ねてくる美希。
 無言だが、春香も緊張した様子でその返答を待っている。
「いや、まだ決まった訳じゃ……ただまぁ仕事上の付き合いもあるし、受けてみようかなってくらい。
 ほら、いつまでもそんな事気にしてないで、一息ついたらダンスレッスン行くぞ」
 このまま見合いの話をしていると妙な空気になりかねない。その気配を察知した俺は強引に話題転換。
「むぅ〜レッスンなんてミキにはもう必要ないのにな」
「美希は吸収が速い分、サボるとそれが失われるのも速いんだ。体に染み付くレベルまでいって初めて“覚えた”って言えるんだよ」
「流石プロデューサーさんです。今の言葉、メモしておきます!」
「いや、ただの受け売りだから、そんなに感銘されても……」
「さっすがハニーなの! ミキ、また惚れ直しちゃうな」
「あんたに説教してんだよ……」
512幻想LOVERS(2/3):2009/04/25(土) 17:12:06 ID:5JwhdtCh
「お疲れさん。……なんだか二人ともいつものキレが無かったけど、疲れがあるなら言ってくれよ? 
 今のうちならスケジュール変更出来るからさ」
 春香と美希、二人がダンスレッスンを終えた夕暮れ。
 事務所へ向かう帰りの車中、明らかに前回と調子の違う二人に、プロデューサーとして言葉を投げかける。
 何処か集中力に欠ける――今日の二人はそう見えたのだ。
「……………」
「……………」
 明るく活発な春香も、マイペースを崩さない美希も、今日は大人しい――というより、静か。
 それに今の二人はまるで、心此処に在らずといった感じだ。その美麗さから、言葉を話さない精緻な人形のよう。
 自惚れかも知れないが、心当たりならある。
 お見合いの事――それほど気がかりなのだろうか。
 もし逆のパターンで、彼女らに男の影が見えたなら、確かに俺も心中穏やかじゃないだろう。それぞれの立場、というものもあるが……。
 この仕事をしていて時々考える。
 プロデューサーとアイドルの関係は、いったい何なんだろう?
 その形は、いつまでたっても見えて来ない。
 ただの仕事のパートナー。
 だけど時に友達より近く、親よりも長く一緒の時間を過ごす。
 もしかしたら社長の言った通り、自分が家庭を持った時、初めてその形が見えるのかもしれない。
 けど、その時失う物もあるはず。
 踏み込んでもいけず、とどまってもいけない――。
「プロデューサーさん、信号、青ですよ青!」
「うわっと、いけね。ありがと春香」
 気がつけば、自分までもがリズムを崩してる――。

「あふ……はぁ」
 事務所に戻りデスクワークをしていると、彼女そっくりのあくびが出そうになり、あわててため息のフリをして誤魔化す。
「なんだか今日はみんな調子がおかしいですね」
 自分の仕事が一段落し手が空いたのか、小鳥がひょいと顔を覗かせる。
 平静のつもりだろうが、口をむずむずさせていて、笑いをこらえてる様子がありありと伝わってくる。さっきのあくび、バッチリ見られたようだ。
「聞きましたよ〜。お見合いの話が来てるそうですね!」
「だ、誰に聞いたんです?」
「社長から」と、ケロリと答える小鳥。
「で、どうするんですか?」
「申し訳ないけど、断ろうかと」
「あらあら、ずいぶんと早い決断ですね。そのお心内、是非ご拝聴させていただきたく――」
「……笑いませんか?」
「笑いません。笑いません」
「簡単に言うと、俺の私情で彼女達に余計な心配与えたくないっていうか……。
 自惚れかもしれないですけど、たとえポーズでも、二人とも俺の事好いててくれて――
 信頼とか、そういうのと向きの違う感情、感じる時があるんですよ。
 彼女達が大人になって目が覚めるまで、その気持ち、大切にしてあげたいんです。
 幻想でも、彼女達が今輝いてるのはそのおかげかも知れないし……なんて、うわ、これ絶対だれにも言わないで!」
「うふふ……どうしましょう? なんて、冗談ですよ。
 確かに美希ちゃんなんか『ハニー!』って好き好きビーム撃ちまくりだし、春香ちゃんも私と話す時、プロデューサーの話題ばっかり。
 勘違いなんかじゃないと思います。でもいいんですか? 
 私の見る限り、あの二人は思い込んだら一途ですよ。あれくらいの年頃の子はみんなそうだと思いますけど……。
 今はそれでいいかも知れませんけど、いつかハッキリと境界線を明示しないと、お互い後で辛い思いするかも……
 なんて、ドラマの見過ぎですかね?」
「う……確かに。問題の先送りしてるだけか……」
「それに、そんな事ばかりじゃプロデューサー、婚期逃し続けて、気付けば社長と同じ歳――なんて事になりかねませんよ?」
「それは……うーんどうだろう。そんな嫌な気もしないけど……あ、それなら、そうならないよう、小鳥さんが俺の事もらってくれませんか?」
「はひ!?」
 頬を真っ赤に染めて、予想外の反応を見せる小鳥。
 このテの冗談、慣れてると思っていたのだが。
 ただでさえ日の落ちた時刻に事務所で二人きり、こう反応されると自分も妙に照れくさく、間髪入れずに別の話題を振る。
「あ、そうだ小鳥さん、し、仕事はどうしたんですか!?」
「そ、そうでした。伊織ちゃんの衣装合わせのお手伝いが……」
 散! と、忍者のように衣装室の方角へ去って行く小鳥――なかなか高等なスキルを持っているものだ。
 それと同時に衣装室のドアの方からした物音に、俺は気付かなかった。
513幻想LOVERS(3/3):2009/04/25(土) 17:17:26 ID:5JwhdtCh
「ハニー!」
「プロデューサーさん!」
「おう、おはよう二人とも。そんな息を切らして……ダイエット? そうそう、お見合いの話なら断ったよ――」
 次の朝、何故か息をきらし、しかし息ぴったりに声を出した二人に笑顔を零しながらも、お見合いは断った事を伝える。
「そんなコトはもういいの! ハニー……」
「プロデューサーさん……」

「「小鳥さんが好きって本当!?」」

「は……ぁあ?」
「いお……あるスジからタレコミがあったの! ハニーは小鳥さんが好きで、だからお見合い断ったって……嘘だよね? ね?」
「あの、プロデューサーさんは年上が好きなんですか……? 流石に、年齢だけはいくら努力してもどうしようもないよ……」
 なぜだろう? 何がどうしてどうなったらそんな事になるんだ?
 というか春香さん、その発言は畏れ多いぞ――。
「えーい、何を訳わからん事言ってる。根も葉も無い噂に惑わされるな! そんな事より、今日一日を大切に過ごす! 行くぞ、レッスンだ!!」
「そ、そうだよね。ハニーはミキの事愛してるもんね!」
「あーそうだ、愛してるぞー。だからきびきび働けい!」
「きゃぁ!! ねぇねぇ聞いた、春香?」
「ノーカウント! ノーカウントです今のはッ!!」

 今日も765プロは平和で――。
 ゴールも道のりも見えないけれど、この不思議で可笑しな関係のままゆっくり歩いて行きたい。
 そうだ。俺も彼女達のように、淡い幻想を見てる。
 いつまでも覚めないで欲しい、子供のような夢を――。

「やれやれ……何を朝から騒いでいるのやら。お見合い、出さなくて良かったかな。まるで子供じゃないか……」
「分かってませんね社長。そこが可愛いんですよ」
「そういうものなのかね……。時に小鳥くん。彼のマグカップが今日になって、社長の私より良い物になっているのはこれいかに……」
514幻想LOVERS(あとがき):2009/04/25(土) 17:25:44 ID:5JwhdtCh
また叩けば一杯ボロが出そうなの書いてしまった……でもスレ的にはそれはそれでアリか?
小鳥さんのキャラもそうだけど、最後のオチに持ってく理由が弱いね。
雨降ってて寒いけど、裸で(ry

関係ないけど、春香の逸らし目、美希の寄り目は国宝だと思ってる。俺の国の。
515俺もお前の国に入国させてくれ:2009/04/25(土) 18:09:20 ID:jkSQxnxf
「い、伊織ちゃん伊織ちゃん、わっ私告白されちゃいましたっ!」
「はぁ?約束に遅れてきたと思ったらいきなり何言ってるのよ、この事務員は」
「そ、それがね、かくかくしかじか」
「春香たちのプロデューサーが?発端は社長からのお見合い話?断ると言った彼に忠告を?
……あー、なるほどそっか、アイツなら口走りそうだわね」
「伊織ちゃん、私びっくりしちゃって逃げてきちゃったの!こ、これってまずいわよね、ちゃ、
ちゃんとご返事……」
「まず私に相談振ってくるのが大間違いでしょーに、はぁ。心配しないでも大丈夫よ小鳥、それ
多分あいつの冗……いや、待ってよ」
「どうしたの?」
「いい?小鳥。これは765プロ始まって以来の一大事よ。みんなのお姉さんであるあんたが
プロデューサーと婚約なんて話が広まったら、アイドルたちのテンション悪化は避けられないわ」
「そ、そうかしら」
「そうよ、絶対そうだわ!だから小鳥、あんたはこのこと、他のアイドルに絶対知られちゃダメよ」
「わかったわ伊織ちゃん」
「プロデューサーも環境が急に変わったら困ると思うわ、当分は自然体で振舞えばいいんじゃ
ないかしら」
「自然体?」
「これまでどおりってことよ。急にベタベタしたら周りが変に思うでしょ?それにこういうことは男で
あるプロデューサーの側からちゃんと発表させないと、まるであんたが強要したみたいになっちゃうわ」
「なるほど、それじゃ事実と異なるわね」
「あんたは今まで通りにやさしい事務員さんでいればいいわ、いつかプロデューサーが本当の
ことを言うと思うから、それまではじっと我慢よ、いいわね」
「わ、わかったわ伊織ちゃん。私、みんなより先に幸せになってごめんね?」
「いいのよ、今回のことで小鳥をうらんだりする人なんか、絶対いないから。衣装合わせは私
一人で大丈夫だから、あんたはお茶でも飲んでなさい」
「はい、お手伝いできなくてごめんなさいね。……ねえ、伊織ちゃん?」
「どうしたの?」
「私……輝いてるかしら」
「輝いてるわよテッカテカに!だから自重しなさいって言ってるの!」
「ありがとう。じゃ、私、行くね」
「はいはい、行って行って」

……

「ふぅ、なんで私があんなプロデューサーなんかの冗談の尻ぬぐいしなきゃなんないのよ。
ほっといたら小鳥のヤツ、事務所じゅうに言いふらす勢いじゃない!……そうね、アイツにも
少し反省してもらおうかしら。これで小鳥は恥かかずに済みそうだし、口は災いの元って言葉、
身をもって経験させてあげましょうね、にっひっひ♪」

翌日以降、アイドルに会うたびに同じことを聞かれて事情説明に追われるプロデューサーの
姿がのべ8回ほど見られたと言う。



>>514
リアルタイムGJ!ぶっちゃけシメがきれいだからオチは弱くていいと思う。
照れる小鳥さん可愛かったもんだからちょっとなんか漏れてしまったw
たぶん給茶室であわてた小鳥さんがPのカップを割ってしまったんだ。で買い直しに行った
んだけどつい上等なカップ(実はペア)に目が行ってしまったんだ。
ウザかったらごめん。
516創る名無しに見る名無し:2009/04/25(土) 18:10:42 ID:9yCGNWgR
>>514
この段階での「ハニー」に違和感。
しかし、考えてみればSP後の世界と言うものがあれば、こうなのかもしれないが・・・。
その点ではかなり意欲的なのかもしれないし・・・。
どうにもそこが引っかかって、普段の様な感想が書けない。すまん。
517創る名無しに見る名無し:2009/04/25(土) 18:51:05 ID:om05z0Yw
>>514
オレは3/3が翌日の朝っていうのが一瞬わかりにくかった以外は
特に引っかかるところはなかったかな。この辺は人によるのかも。
なんにせよGJでした。ニヤニヤが止まらん。
そして>>515もGJ
518創る名無しに見る名無し:2009/04/25(土) 19:25:59 ID:9YVG1hHS
>>514
俺(プロデューサー)視点で文章が進んでるのに
「音無小鳥」とか「小鳥」っていう表現を使うことに違和感を感じた。
社長やアイドルたちは呼び捨てのまま進めても違和感ないけど
プロデューサーからは「小鳥さん」と呼んで欲しかった。

同様に、美希の場合も「小鳥さん」と呼ぶことは無く、「小鳥」。
社長は訓示などで昔を振り返った時に「小鳥くん」と呼ぶが、通常時は「音無くん」だと思う。


個人的に、呼称にあちこちガタが出ているのが最初から最後まで気になってしまった
あえて言うならジャイアンがのび太を「のび太くん」と呼んでる二次創作と同じで
呼称のズレは話に入り込めない要因にもなるから、最低限の知識をつけてから書くか、あるいは調べてくるのをお勧めする。

辛口でスマンね。
519創る名無しに見る名無し:2009/04/25(土) 20:57:36 ID:SnbjlS7Y
プロデューサーから小鳥さんは『音無さん』だよ。
まあほとんどの二次創作は『小鳥さん』なんだけどね。
全体的にちょっとわかりにくい気がしたけど、つかず離れずの仲と言うのだろうか、そういうのっていいよね。
あと春香と美希のユニットはいい。
520514:2009/04/26(日) 01:36:39 ID:E0krZx8e
全部においてぐうの音も出ん。
なんか消化不良なもん読ませて申し訳ない。次はがんばらんと……。

>>516の言うとおり、高ランクアイドルという描写が無いのに「ハニー」はおかしいし、
>>518の言うように、呼称のズレは世界観の崩壊に繋がる。
しかも原因が最低限の知識の欠如とあっては、書き手としては勘当もん……。

それでも僕はS○APに戻りたい――。

どんなデキのSSにもアドバイスや感想をくれる皆さんには感謝。
この気持ちを今あえて言葉にするなら……「反省している」……いや、ありがとうw

>>515
そういうの、好きだぜ。
けどうちの入国審査はきびしーんだぞw
521創る名無しに見る名無し:2009/04/26(日) 02:17:27 ID:PHBjR1pd
>>520
呼称の件については既に述べてる人があるので追加で一つ。

>>511
> 「ちょっと君たち、いつのまに!?」
> 「綺麗な人ですね〜」
> 「えぇ〜ミキのほうが可愛いと思うな。ね、ハニー?」
ここら辺もうちょっと描写を脹らましても良いんじゃない?
特に春香のセリフなんてこれだけじゃ誰のセリフか判んない。
#「判んない」と言う没個性な部分が春香らしいとも言えるがw

話の筋や雰囲気は悪くないと思うんで、
もうちょっと世界観やらキャラやら勉強してください。

522創る名無しに見る名無し:2009/04/26(日) 02:39:08 ID:xlTZ4MF4
>>514
一人称視点と三人称視点にちょっとぶれがあるかなあ、という感じ
>>518が指摘する地の文での呼称ぶれがそれを余計に印象づけている感はあるかも
呼称そのものについては対照表もあるし、台詞ではさん付けしているから
知っていてやっているとは思うのだけども

個人的にはSP美希や覚醒美希でなくても、充分付き合いを深めればゆとり生活の
まんまでプロデューサーをハニーと呼ぶ美希も有り得ると思っているので、その点の
違和感はそんなにはないです。
個人的には覚醒美希は大きなきっかけがあったせいで「過程」をいろいろすっ飛ばしちゃった美希
SP美希はたまたまティンと来たせいで「始まり」を短縮してしまった美希だと思ってるので

あと、彼女そっくりのあくびの彼女が美希なのはまあわかりますけども、唐突に代名詞を
使った点がちょっと引っ掛かりました。誰かはわかっても代名詞を使うべき意図が何かあったかなと

全体のライトタッチなドタバタコメディの雰囲気は気楽に読めて良いと思います。
お約束連発も嫌いじゃないし、説教されてるのに全く応えない美希とか結構気に入った感じ。
多分小修正だけでずいぶん文全体の印象は変わると思います

・・・あれ、でもここまで書いてて気が付いたけど、美希関連ばっか触れてるなあ。
春香の印象ちょっと弱かったかも?
523創る名無しに見る名無し:2009/04/26(日) 02:48:28 ID:xlTZ4MF4
>>515
いおりんのごまかしまじサイコー
と棒読み気味に言ってみる。冗談の尻ぬぐいと言いつつ、長期的には事態が悪化してそうな気もw
・・・わざとか? いおりん恐ろしい子!

衣装室のドアの方からした物音云々の描写を見る限り、小鳥さんがなにも言わなくてもミテマスヨー
だったっぽいけどね
524創る名無しに見る名無し:2009/04/26(日) 10:07:33 ID:bCxcN9lC
>>514の呼称関連になるけど>>519補足

プロデューサーから「小鳥さん」は今までも主流の呼び方だったと思う。

「音無さん」を使い始めるようになったプロデューサーには
「L4Uに出てくる代表P」と、「L4UのDLCで出てくるP」と「PSP版に出てくるP」が浮かぶ。
(PSP版は美希がまだ候補生時代だったり961に移籍した直後、ということで
 Pが事務所に入って新米扱いでもある事から「音無さん」呼びなのかも知れない)

例として、Pが「音無さん」で呼んでいるSSがあれば、同時に「美希は961なのかも」という
イメージも付属しかねないということ。
(作者がそれを知っていた/知らなかった とは別に、そういう世界観があるシナリオがあるため)

プロデューサーから小鳥さんに限らず、相手に対する呼び方によって
アイドルランクの高低や、箱アケシナリオ/L4U/SPシナリオの分別も、作品に出てくる呼称に応じて
(それを知っている人には)脳内解釈されてしまうことの一つなので、やっぱり大事なんじゃないかと思う。

>>514
書き手側に対する要望になるけど、2次創作を作る、読む人たちっていうのは
大半が原作(1次)好きで、原作をやりこんだ人も多いと思うので、
まずは原作の世界観とかキャラに触れることで、理解して欲しいというのが読み手側からした正直な意見です。

作者が作品好きなのかどうなのか、理解しているのかどうか良くわからない二次創作、っていうのは評価しにくい。
作品の好きな気持ちと理解があってこその創作だと思うので、>>514の今後に期待して読み手に戻ります。
525 ◆bwwrQCbtp. :2009/04/26(日) 12:27:37 ID:J9z0krJh
意味もなくトリ付けちゃいましたが、みなとです。
>>174で「音無さん」呼称を使っている立場上、一言。

>>524
私の解釈としては、L4U以前はゲーム内でPが小鳥さんのことを呼ぶシーンが存在しなかったから、呼称はゲーム外のものによっていた、
その後、L4UやSPで、ゲーム内呼称は「音無さん」であることがわかった、というものです。
なので、L4UのDLC以降、完全にそれまでの作品と世界観を共有しない新作としては、「音無さん」が正しいと思い使用しています。
(しかしキャラ相互の呼称そのものがほとんどゲーム外から来ていることもあり、「小鳥さん」呼称を用いて描かれたものを否定しません。)

ちなみに>>89>>100では、主人公が現世界の人間としては「小鳥さん」、Pの立場としては「音無さん」と呼ばせています。



しかし、個人的にはどちらかと言うと、小鳥さんのP呼称が「プロデューサー」と「プロデューサーさん」と両方ある方が使い分け辛いです・・・。
526創る名無しに見る名無し:2009/04/26(日) 16:07:03 ID:fDHfog6S
>534

主人公、小鳥さんのそれぞれの互いに対する呼び方は、その場がフォーマルかインフォーマルか…
というところに拠ってもいいのかもしれないと思います。というか、そのほうが、卑しくも社会人の職場であることを考えつつ、
好意を持つこともありうるような関係を描くのに適切ではないかなと。

(その他には、主人公の性格などもあるかもしれません)
で、

「音無さん」と呼ぶとき

・年下の小さい子(特に年少組)の前
・社長の前
・事務所の外

「小鳥さん」と呼ぶ時
・年長組の前(特に律子の前)
・二人きりの時
・飲み会の席

などなど。

場をわきまえないような言葉遣いをしている登場人物だと、世界観からの逸脱、というよりも別のところが気になってしまう。
二次創作なのだから原作の世界観を大事にするというのも大事なんですが…
ただ、その原作の世界観が微妙に違うしなあ。
なもので、「場」とか主人公の性格とかによって変わる方が自然じゃないのかな、と思ったりもする…。

そう考えてる人はいませんか?
527創る名無しに見る名無し:2009/04/26(日) 16:44:38 ID:hmOy51OB
ファン代表応援P→すべてのアイドルを「ちゃん」「さん」付け、小鳥さんを「音無さん」と呼ぶ。
プロデュースP→あずささん以外のアイドルは名前呼び捨て、小鳥さんを「小鳥さん」と呼ぶ。

俺はこう判断してる。つか、自分視点で小鳥さんを音無さんと呼んだことがないから。


区分に意味がある内容なら複雑な呼称変化もありかもね。
作者脳内の一人相撲にしないためにも、読者にも解る理由が必要になるけど。
各人がもつP像に近くするか遠ざけるかは、あとはもう作者次第じゃね?
528創る名無しに見る名無し:2009/04/26(日) 16:52:38 ID:t3lGtHna
>>526
ありますね。アイドルたちの側の言葉遣いが、ふらついたり一貫してたり、というのを
キャラクターの演出に使ってます。

たとえば、一見しっかりしているようで、アドリブだと言葉遣いや敬称がブレる千早は、
アイドル活動を通して円滑なコミュニケーション能力を獲得する前、というだけでなく、
本人の人格は、まだまだ子供なのだ、という表現に。
なので、千早はしっかりしている≠言葉遣いがしっかりしているにして、その場の千早の
セリフとして、ほんとに言いそうなこと、感情の気分に合わせて「つい」言ってしまいそうな
ことを言わせますね。

ただ、意図が伝わらないと無駄なことだとも思うので、さじ加減じゃないでしょうか。
529創る名無しに見る名無し:2009/04/29(水) 01:00:36 ID:1NCj3+8P
実は物を書くよりこういう話をしている方が好きな自分。w

>527

その解釈というか見方は思い切り本編(ゲーム)に忠実な感じですね。
どういうスタンスのSSを書くのかにもよるだろうけれども、そうしたほうがいい場合も結構ありそう。
本編からそれほど遠くない位置のSSを書くときとか。

まあ、書き方、表現方法を変える以上、独りよがりでは駄目で、読み手に受け入れられやすい
もののほうがいいのも確か。言い換えれば、変えて書くならそのあたりがきちんとできるようにしたいし。

P像もいろいろで、私なんかは「あずささんだけ「さん」でつけているから」、という理由で
年齢を考えるのはどうかと思っているほうだけれど(社会人なら社会人に対しては「さん」だろう?
年齢だけで考えるのはアルバイト学生ではないのか?と思う口なので)、そうでない人もいるし。


>526

そういう言葉遣いを演出に使うのは面白い方法ですし、それが感じられる作品は興味深いですよね。

千早は、早く大人にならなければならない、という意識から大人としての意識を強く持とうという内面を持つと同時に
ある意味成長できていない部分を抱えてしまっている存在だとみています。

(大人の心の部分が言葉遣いに、子供の部分体型に現れているのではないかとか思ったり。
そう考えてキャラクターを作っているのなら自分的には[良く考えてるなあ」ですが。)

で、それはおいといて、本編でも「苛めたい」「困らせたい」というコミュニケーションがあったように思いますが、
それをうまく「背伸びしないで年相応でいいんだよ」と千早に伝える、というような話が書けたらいいなあ、
と思っていたりするけれど、はい、思っているだけでそれまでよ、というところですかw
530創る名無しに見る名無し:2009/05/01(金) 11:30:41 ID:LOEBfo5A
あと10KB。

GWで執筆に集中できる/これで完成って人もいそうだし、新スレ立ててみようと思うのですが。
短いレスで行けばしばらく話し合えると思うけど、こんなんでどうでしょう。

・タイトル『THE IDOLM@STER アイドルマスター part2』など、サブタイ不要。
・テンプレは>>1-2、アイマスロダと>>217のクロスSSスレもリンクリストに加える。

>>190のルール案については充分議論してないのと、積極的賛成というより条件付賛成みたいな
レスが多いので、なんでしたら即死回避wに新スレで話し合いますかね?>>146に書いてある
10レスバイさる情報や>>463後半みたいな容量ルールは、これから書いてみようという人には
有用な情報だと思うし。

とりあえずテンプレ案うp。大して変えてませんけど。

ttp://imasupd.ddo.jp/~imas/cgi-bin/src/imas44572.txt

しばらく様子見まーす。
※あ、「今すぐ投下したいが新スレ立てるのめんどい」とかご希望あったらドゾ。
531創る名無しに見る名無し:2009/05/01(金) 13:28:29 ID:mVa6mfsu
>>530
バイさるとか容量ルールとかみたいな板の仕様は簡単にでも
テンプレにいれといた方が便利かも
原稿用紙のサイズがわかってる方が使いやすいだろうし
532創る名無しに見る名無し:2009/05/01(金) 20:11:30 ID:pXiQFxU1
ですな。創作板住人のアイマススレというより他板アイマススレの住人が思うところあって作品投下する場所になってるし。
533創る名無しに見る名無し:2009/05/01(金) 22:26:53 ID:mIytOWVi
>>530
いいんじゃないスか。あと>>531も賛成。どこのスレでも容量制限は高確率で質問が出てますよ。
534創る名無しに見る名無し:2009/05/01(金) 23:32:29 ID:CifgqcmG
>>531
1000レス制限はわかってても500KB制限は普段意識しないだけに案外知られてなかったりする
まあそこまで書くかはともかく、せっかく調べて判ってる仕様はすぐ判るとこに書いといて
損はないよね

>>532
アイマスが主、創作が従であってその逆じゃないよね。二次創作スレだから当たり前だけど
あとこのスレ創作板の中でも比較的感想率は高い印象、というか感想常連も何人かいる気がする
535530:2009/05/02(土) 23:51:10 ID:YnSCuT5O
1日半経過〜。
過疎スレwで「しばらく」って何日が適当なのかあまり考えてませんでしたが、数時間前を
もって俺もGW突入したので新スレ立ててみます。

ではノシ
536創る名無しに見る名無し:2009/05/02(土) 23:59:08 ID:YnSCuT5O
立てました。

THE IDOLM@STER アイドルマスター part2
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1241275941/

容量条件とか190から最低限のマナーとか加えてみた。
黄金週間の大量投下を望みたい、っつか俺が書けって話ですねorz
537創る名無しに見る名無し:2009/05/03(日) 00:08:11 ID:fwZB3LZb
>>536
乙です

近頃いい感じのシチュが結構浮かぶんだけど文にするのが難しい
538創る名無しに見る名無し:2009/05/03(日) 00:17:49 ID:/NSS87rH
>>537
ここは親切な人多いから、自賄諦めたのなら聞かせてみれw
539創る名無しに見る名無し:2009/05/03(日) 00:18:32 ID:/NSS87rH
あ、>>536
540創る名無しに見る名無し:2009/05/03(日) 00:22:54 ID:NkNaWBjh
>>536


としか書けない自分に深く反省
541創る名無しに見る名無し:2009/05/03(日) 09:16:15 ID:GsyNzPNK
>>536
次すれも楽しみだ
542創る名無しに見る名無し:2009/05/05(火) 22:23:47 ID:Pwy7qrfy
ここは放置でおk?

1000まで埋めない不要スレの扱いって正直よくわからん
543創る名無しに見る名無し:2009/05/05(火) 22:51:49 ID:jpNN+h0o
500KB越えないとDat落ちしないんだっけ
544創る名無しに見る名無し:2009/05/05(火) 22:59:18 ID:03B3psQg
1レス4KBが上限だから、あと4レス分ぐらいのSSは書けるね。
545創る名無しに見る名無し:2009/05/05(火) 23:26:50 ID:Pwy7qrfy
現時点でギコには495.20kbと出てるが、これは残り量が4.80kbってことかな
上限投下(=4.00kb)をするなら残り1レス分くらいということ?

>>544
…意味が違ってたらスマソ
546創る名無しに見る名無し:2009/05/05(火) 23:31:32 ID:jpNN+h0o
いや、最大は512KBなのよ
547創る名無しに見る名無し:2009/05/05(火) 23:44:04 ID:Pwy7qrfy
ああそういう事か。Dat落ちばかりに目が行ってた
とりあえず現状(500未満)だと落ちることもなく残ってるってことね
548創る名無しに見る名無し:2009/05/07(木) 02:54:05 ID:l9OGWF5Y
向こうは即死の危険なさそうだしあとはこっちで>>530の言う話し合いを
きちんとすませてしまうというのも手かもね
個人的には使い方は示しつつ、あまり積極的な「ルール」を設定したくはないって
いうのが大雑把な見解かなーって気がするけど
549創る名無しに見る名無し:2009/05/07(木) 12:16:52 ID:v27+6M1+
>>548
今のところ、特に問題もないし、ルールを決める必然性もない気がする。
次スレの冒頭で投稿の目安が書かれているから、新規に書きたい人にもわかりやすくなったし。
どちらかと言うと、新規に書きたい人に方針示す方が、ルールそのものより意味があると思っていたので。
550創る名無しに見る名無し:2009/05/07(木) 13:33:58 ID:kv74q/AK
ルールというほどのものでもないけど、スレ立ての件で1つ。
「前スレが落ちることが確定」してから次スレを立てる方がいい気がする。
投下したい作品が出きたけど残り容量では足りないとか、500KBを超えてから立てるようにするとか。

古いスレを投げっぱなしにしたまま新スレを使い始めるのもどうかなと個人的には思うんだけど…
たいして付加が少ない板では、埋めずに投げっぱなし放置もよくあることなのかな?
551創る名無しに見る名無し:2009/05/08(金) 00:30:15 ID:4vA7/RrD
>>550
普通に投げっぱなしはまずいと思うので、使い切ってからスレ立ての方が、いいかな。

目安は冒頭の通り、タイトル観ての通りアイマスをネタにした二次創作であること、エロ・グロは余所で、
後はなにかあったらその都度相談・・・って感じでおっけかな
ちょっと読み手が厳しい方に振りすぎた時期もあったけど、今のところ概ねここのマナーはいい方なので
「問題行動を慎み、マナーを守りましょう。問題があればルールとして対処せざるを得なくなる場合があります」
レベルの縛りで今んとこいいと思う
552530:2009/05/08(金) 06:05:48 ID:JaPVrSHq
議論ハジマタw 490で次スレ提案した経緯を手短に。
・500KB超えると24時間で落ちてしまう
・レス書き込みはできてもスレ立てができない、という規制もある
ので、「満タン後スレ立て」は次スレへの誘導がスムースに行かないことがあります。特に過疎スレね。
俺がいたいくつかのSSスレでは、1000レスと同様に「次スレの周知が徹底したら(1週くらいか)雑談して
埋めて落とす」というふうにしてました。

ここはSS1本の容量も小ぶりなのが多いし、
・495KB到達に気付いた人が宣言してスレ立て、1週後雑談して500KB超えさせる
・投下中満タンになった人は自動的にスレ立てに挑戦、不能だったら現行スレに支援要請
あたりでどうでしょうかね。
553創る名無しに見る名無し:2009/05/08(金) 10:30:39 ID:F0AeyLtI
新スレではじまった小ネタの応酬をこっちにもってくるのも良かったね。
きちんと問題提起されるあたり安心だけど、自分でも動かんとだめだな。
反省。
554創る名無しに見る名無し:2009/05/08(金) 12:59:45 ID:kDE7mWpr
小ネタ応酬は即死防止+場の暖めで向こうを選んだって話なので
あえて向こうでやったのでは
555創る名無しに見る名無し:2009/05/08(金) 13:17:28 ID:8aHhONnO
ここの住人のマナーがいいのは賛成。まだ人数少ないし、さしあたりはテンプレ3の内容で充分かと。

>>552
長文感想1本あれば4kb消費してしまうし、書き手も「あと数レスしか感想もらえそうにない」状況で
SS投下するのも甲斐がないんではないですかね。495kbは少しチキンレース気味な気がする。
今回と同じ490kbでいいかなーと思います。

>>554場あったまりすぎててワロタ
556創る名無しに見る名無し:2009/05/08(金) 18:09:06 ID:hLl5W0N1
そろそろ終了でいいすかね(これレスしても500行かないはずだけど)。
埋め草なんてものは誰かしら準備してるものです。いつでも埋められるから心配無用w

ttp://imasupd.ddo.jp/~imas/cgi-bin/src/imas45069.txt

足りなくなったからロダUP。今スレ乙でした。
557創る名無しに見る名無し:2009/05/08(金) 23:45:20 ID:F0AeyLtI
>>556
やべえ、変態てらかっこよすw
そして、朴念仁ぺたすてきんぐw

こういうことをさらりとやってのけるから恐ろしい。
558創る名無しに見る名無し
>>556
ちょ、これ埋め草ってw
朴念春香Pとヘンタイ伊織P、かなり面白いじゃないすかw