THE IDOLM@STER アイドルマスター part3

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305おかえりただいま(1/3) ◆DqcSfilCKg

連絡も無しにあの子が帰ってきていたことに気づいたのは、近所の奥さん達とお喋りをしていい加減、お夕飯の準備をしなきゃと家に戻った時だった。
土間に転がる靴に気づいて、居間を覗くと娘がまだ出しっぱなしのコタツにいた。
顎をテーブルの上に載せてぼんやりとしている姿に軽くため息をついた。
「帰ってくるなら連絡くらいよこしなさいよ」
返ってくるのは「んー」なんて呻き声だか何だか分かったもんじゃないもの。
誰に似たのかしらね、と思ったところで夫もよく寝言を漏らしているを思い出して肩を落とした。
まあとにかく、あまり変わりのない娘に少し安心した。
「おかえり、春香」
コタツに突っ伏しながら、娘は「ただいま」と言った。


八時ごろ、帰宅した夫は春香を見るなりそそくさと寝室へと引っ込んでしまった。
父親のそんな様子に娘は首をかしげる。洗い物をしている私に、もう寝ちゃうの? と聞いてきた。
「恥ずかしいのよ。お父さん」
娘が東京にいる間はひっきりなしに、いつ東京から戻ってくるんだと五月蝿かったのに、いざこうして帰ってくると言えず終い。
いつまでたっても繊細な男の子のような夫に苦笑していると、ふーん、とテーブルの上のミカンに手を伸ばしながら春香は返した。
「食べるのもいいけど、ちゃんと片しなさいよ、皮」
分かったよう、なんておっくうな返事。
ちゃんと一人暮らし出来てるのかしら。ぶーたれながらミカンの皮を片し始めたので、それは口には出さなかった。