造反。
生き残りし5名の生徒たちは、殺し合いをやめて管理側を己の敵と決定する。
裏切りし元教師は、管理側の中枢で戦い続ける。
それはおそらく、普通に戦い優勝を目指すよりも、困難な道。
膨大な数、莫大な力を持つ管理側との、先の見えない戦い。
それでも、これは自分たちで選んだ戦いだから。
押し付けられた理不尽な戦いではなく、自ら望んだ戦いだから。
ガ ン ダ ム バ ト ル ロ ワ イ ヤ ル
第三回大会、最終章。
現在 死亡 21名。失格者、5名。
閉塞(おわり)のさらなる向こうに、平穏(おわり)はあるのだろうか。
第三回大会の新規参加者の募集は、既に打ち切りました。
何か気になったROMの方は、お気軽に管制室までどうぞ。
第四回大会の開催も計画されています(2005年初頭開幕予定)。
ルール等の詳細は
>>1-15くらいに。
@ このスレッドについて @
このスレッドでは、一人の参加者が一人の『生徒』を担当し、リレー形式で話を進めていきます。
(すでに第三回大会の新規参加者は、受付を終了しました)
参加希望者は管制室で受けつけをし、クジ引きによって『機体』と『支給武器』を決定しました。
彼らには、「宇宙世紀」という縛りの中で自由にキャラクターの設定をしてもらいました。
それぞれの人がそれぞれの登場人物を受け持ち、その行動方針から行動の結果まで、全て決定します。
常識を外れた過剰な行動を防ぐために、『行動値』や『移動』などのルールが設定され、
また、千日手防止や偶然性の演出などのために、『ID判定』のルールが用意されています。
しかし、それでも参加者の自由度はかなり高いものです。
参加者も読者も、くれぐれも節度を持ってこのスレを楽しむようにして下さい。
@ 行動値ルール関係 @
このスレでは『行動値』というものが設定されています。描写と共に、これを消費しつつ行動を行います。
一人の人間が行動できるのは、現実時間の一日ごとに4P分だけです。
行動値がリセットされるは、現実時間の午前0時です。
行動値が必要な行動としては、
『移動』『探索』『整備』『戦闘行動』『通信』『変形(可変MSの場合)』などが代表的です。
行動値が要求されるのは大きな行動のみで、ちょっとした動作などには必要ありません。
会話も、『通信開きっぱなし』『接触回線での会話』『生身での会話』なら行動値無用です。
ただし、劇中で時たま使われる『全体通信』のみ行動値を2点消費します。注意してください。
尚、行動の描写の後には、位置、所持武器、行動方針、同盟相手等を明記して下さい。
観客の理解や、参加者間の認識の食い違い防止に、大きな助けになります。
@ 戦闘 @
(注:このルールは基本的に生徒同士の戦いにおけるルールです。
今回の最終章においては、管理側相手への攻撃は『先行破壊』などをある程度容認しています)
このスレの戦闘では、最も重要なルールがあります。
それは 『攻撃の結果は、攻撃側の描写を受けて防御側が決定する』 ということです。
撃破されたか、腕が吹き飛んだが、かすったか、シールドで防いだかなど、防御側に決定権があります。
『先行破壊』は厳禁です!
回避の術のないゼロ距離射撃なども『先行破壊』と見なされることがあるので、注意しましょう。
戦闘時の行動については、
『ビームライフルで攻撃』『ミサイル一斉射撃』『回避』などがそれぞれ行動値1点分の行動になります。
攻撃の際は、攻撃目標を明記するようにしてください。
撤退については、まず戦闘地帯からの『撤退』で行動値1点分になります。
これは同一エリア内での移動なので、隣のエリアに移動する際にはさらに行動値が必要です。
目安として、1点分の行動値の攻撃を防御・回避するのに、1点の行動値を必要とします。
防御を省みずダメージを受けるままにすれば、行動値を使う必要はありません。
ルールとしての縛りは最低限にし、機体や乗り手の優劣は書き手の裁量に任せています。
くれぐれも節度を守っていきましょう。
@ 特殊ルール『達成値』(通称ID判定) @
『達成値』とは、そのカキコで取った行動の成功・失敗をIDで決めるルールです。
このルールは当事者双方の合意があった場合にのみ、使用します。
特に戦闘においては、延々と回避が続く千日手を防止する意味でよく使用されます。
使う場合はメール欄を空欄にしてIDを表示して下さい。
出てきたIDに含まれる数字を使い、その行動の『達成値』を決定します。
基本的にIDの文字列に含まれた最も大きな『数字』が『達成値』となります。
『In3rKPcy』の場合、含まれている数字は『3』のみなので、『3』となります。
『Atw4g6Qg』では、数字の『4』と『6』がありますが、大きい方をとって『6』と判定します。
『oHI+CUmX』のような数字の入っていないIDは『0未満』とします。
大文字の『N』または『T』があれば『9よりも上』です。『sp02X9NK』『a0Tf/jEj』のように。
さらに『Ttw4g6Ng』のように、『NT』の2つの大文字が揃えば『NやT一文字より上』です。
小文字の『n』『t』は、いくら入っていても無意味です。無視して下さい。
早見表
NT(二文字かつ大文字)>N or T(一文字かつ大文字)>9>8>7>6>5>4>3>2>1>0>数字なし
基本的に、両者の合意があったときのみ使うものです。
戦闘時には使うのが慣例ですが、義務ではありません。戦闘時以外でも使って構いません。
判定後、敗北側は『なんらかの不利な結果』を受けるようにして下さい。その程度は問いません。
IDの値の差の大きさを、損害の程度に結びつける必要もありません。
もしもその気ではなかった場合には、拒否しても結構です。
しかし、IDを出しておきながら判定を拒否したり、無視が多過ぎれば叩かれることになります。
くれぐれも節度を守ってください。
@ 所持品 @
初期に支給されるものとして、原作通り
『ディパック』『首輪』『コッペパン2つ』『水2g入り2本』です。
さらに今回は、宇宙ステージということで『ノーマルスーツ』も支給されます。
後は、参加者が誘拐された時に持っていた『私物』を持ち込むことができます。
@ マップ @
『A〜Z × 1〜24』の624マスで構成されています。詳しくは後に示します。
毎回、今何処にいるのかを明記して下さい。
禁止領域は放送の時に予告され、放送後、現実時間で48時間後に爆破のスイッチが入ります。
尚、参加者は最初から地図を所持していますが、他の参加者の場所は表示されません。
@ 移動 @
行動値を1点使うことで、マップ上のエリアを1マス移動することができます。
移動可能な方向は上下左右だけで、斜め移動はできません。
MAや、艦船やSFSに乗ったMSは『開けた空間』なら1点の行動値で2マス移動できます。
ただし、どの場合も『想定以上の荷重』(MSを載せ過ぎるなど)が加わると、ボーナスを失います。
艦船に乗っている場合、一人が艦ごと【移動】すれば、一緒に乗っている人も同時に移動します。
それ以外の場合では、移動時には常に行動値を消費して下さい。
他者の手で受動的に移動した場合でも、それに抵抗しないのならば、移動量に相当分の行動値を消費して下さい。
なお、マップの『外側』は『侵入禁止区域』と同じ扱いになっています。
@ 索敵 @
どれだけ遠くの敵を察知できるのかは、搭乗している機体ごとに異なります。
策的範囲は、通常機で周囲2マス、艦船・狙撃型で3マス、偵察機で4マスとなっています。
他の参加者の位置を確認し、その範囲内に入っていれば、劇中でも「発見」できます。
当然、地形ごとに見やすさは変化しますが、その点は描写で表現して下さい。
(『開けた空間』ならはっきりと相手の機種まで特定できるでしょう。
『暗礁空域』に潜む敵は、一度存在に気づいても途中で見失うかも?)
ちなみに、通常の「通信」で通信ができる範囲も、この策敵範囲と同じ範囲です。
「見えている相手とだけ通信できる」と考えて下さい。
@ 爆弾 @
爆弾は、機体と、参加者の首輪につけてあります。
首輪の爆弾には、タイマーが仕込まれており、タイマー延長コードが定期的に打ち込まれています。
管理側が爆破コードを打ち込むか、延長コードが打ち込まれずにタイマーがゼロになると、爆破します。
明らかにされている首輪の爆破条件は、以下の通りです。
立ち入り禁止区域に踏み込む/それまでいた場所が立ち入り禁止区域になる
戦場フィールドの外に出る
支給された機体を失い、かつ別の機体を獲得できない場合
これ以外にも爆破される条件があるかもしれませんが、詳細は不明です。
(なお、現在、全ての参加者が、首輪の爆破を無効化する仕掛けを用意しています。
また、参加者の使用MS全ては、機体の爆破装置を無効化しています)
@ 参加者の持つ情報 @
劇中の参加者は、現実世界の読者と同じ情報を持っているわけではありません。
まず、彼らは、(随時スレ内で表示されている)他の参加者の位置を知りません。
他のMSと対面した場合、相手の機体名は分かりますが、性能は分かりません。
初期支給MSと参加者の名前の組み合わせは分かりますが、途中で乗り換えた場合は分かりません。
また、他の参加者が脱落しても、それをすぐに知ることはできません。
脱落者の情報は、定期放送で耳にして初めて知ることができます。
ただし、これらは原則です。
NT能力を発揮したり、現場で乗り換えや死亡を見ていれば、この限りではありません。
特殊な支給品によって情報を得られる場合もあります。
『プレイヤーの知っている事』と『キャラクターの知っている事』の混同に、くれぐれも注意して下さい。
迷った場合は、管制室で相談してみて下さい。
@ 放棄された参加者 @
長期に渡って書き込みがない場合、『スレへの参加の放棄』とみなします。
用事などで書き込みできないことが分かっている場合、管制室で相談して下さい。
何の宣言もなく長期間放置された場合、管理側で『この参加者は『放棄』された』と認定します。
こうして『放棄』された参加者を攻撃した場合、特例として、攻撃側が結果を書くことができます。
つまり、積極的に頑張っている参加者の『肥料』にする、ということです。
目安としては、2週間 音沙汰がなかった場合、この判断を下します。
あらかじめ『参加不可能宣言』が出ていればこの限りではありません。
@ 戦艦運用ルール @
支給武器や色々なイベントで『戦艦』が手に入ることがあります。
その際は以下のルールに従って運用して下さい。
*戦艦にMSが着艦する際には、衝突しないようかなり注意した操縦が必要です。
また発艦する際には、機体の起動やカタパルトの操作が必要です。
これらのことを踏まえ、【着艦】【発艦】にはそれぞれ1点の行動値を消費して下さい。
*ブリッジ(操縦席)と格納庫はかなりの距離が離れています。
ブリッジ・格納庫間を移動する際は、【移動】として行動値を1点消費して下さい。
*ブリッジにいる人間は、行動値を使って戦艦を【移動】させることができます。
戦艦は、1点の行動値で『開けた空間』を2マス進むことができます。
この場合、戦艦に乗っている全ての人間・MSが行動値を使うことなく一緒に移動します。
ただし、ブリッジに何人いても、24時間で【艦の移動】に使える行動値は合計4点までです。
艦を移動させた後、MSを【発艦】させて【移動】するのは自由です。
*戦艦の特典の一つとして、格納庫の存在が挙げられます。
この格納庫にMSを収容することで、簡単な補給・修理作業が行えます。
ただし初期状態では、ちょっとした補修を行う材料と予備の推進剤はありますが、
武器・弾薬・脱出用ランチなどは一切搭載されていません。
*本来、戦艦というものは、何人もの専門家が役割分担してやっと動かせる存在です。
一人でも動かすことは不可能ではありませんが、
操舵・武器管制・通信の各システムはブリッジの中でもそれぞれ離れた位置にあります。
(さすがに行動値を使って移動する必要はありませんが、描写の際には注意して下さい)
@ 要点 @
色々ややこしく書きましたが、
@ 行動は基本的に自由。
@ 戦闘の結果は『攻撃を受けている側』が決める。(今回の管理側は特例)
@ 『両者の合意があった場合』、達成値を使用する。
@ 自分の居場所を毎回、明記しておく。
@ 侵入禁止区域にいた場合は有無を言わさず死亡。
@ 基本は原作と同様。
@ 分からない点があれば、管制室で先生に聞く。
@ 管制室での抗議は、冷静に、論理的に、相手に敬意を持って。
という以上の8点を守って下さい。あとは、楽しく殺しあいましょう♪
10 :
事務員:04/12/20 17:49:01 ID:???
@ 会場宙域地図 @
A B C,D E,F G,H. I, ,J K L M,N O.P.Q.R S,T U V,W,X,,Y Z
01■■■■□□□□□■■■■□■■□□□■■■■■□■
02■※■□□□□□□□■■■■■□□□□□□■■■■※
03■□□□□□※□□□□■■□□□□□□□□□■■■■
04□□□▼▼□□□□□■※■□□□□□□□□□■※■■
05□□□□▼▼□□□□■■■■□□□〓〓□□□□□□■
06■□□□□□□□□■□□□□□□□□□□□■□□□□ □:開かれた空間
07※■■□□□□□□□□□□□■□□□□□□□□□□□ ■:暗礁空域
08■※※■□□□□□〓〓□□□□□■□□□※※□□□□ ※:戦場跡
09■■※■■□□□□□□□□□□□□□□※□※□□■■ 〓:コロニー
10■■■■■□□□□□□□□■□□□□※※※※※□□■ ▼:小惑星基地
11■□■■■■□□■□□■□■■□□□□※※※□□■■ ≠:崩壊したコロニー
12■■■■■□□□□□□■■■■■■□□□※□□■■■ ▽:爆破された小惑星基地
13※■■■□□□□※□■■■□■□■■□□□□□■□■ 門:『ゲート』
14■■□■□□□▼□□□■※■□■□□□□□■■■■■
15■■■■■□□▼□□□□■■□□□□□□□■■※■■
16■□■■□□□□□□□□□□□□□□□□※□□■■■ 25行以下は地形情報が未公開。
17□□■□□□□□□□□■■■□□□□≠≠□□□□□■ 策敵範囲内の地形は普通に分かる。
18※□□□□□□□□□■■■□□□□□□□□□□□□□
19□□□□□□■□□□□■■■■□□□□□□□▼□□□
20□□□□□□□□□□□□■□□□□□□□□▼▼□□□
21□□□〓〓□□□□□※□※※□□□□□□▼▼▼□□□
22■□□□□□□□□※※※※□□□□□□▼▼▼▽▼□□
23■■□□□□□□□□※※※□■□□□□□▼▼▼□□□
24※■■□□□□□■□□※※■■■□□□□□□□□□■
25■■■□□□□□□■■■※※■■■□□□□□□□□■
26■■□□□□□□□□□■■■※■□□□□□□□□■■
27□■■□□□□□□□□□□■■□□□□□□門□□□□
28□■□□□■■□□□□□□□□□□□□□門門門□□□
29■■■■■■■■■□□□■■■□□□□□□門□□□□
11 :
事務員:04/12/20 17:49:55 ID:???
@ 各地形の解説 @
□ 開けた空間
ほとんどデブリもない、開けた宇宙空間。
移動は極めて楽ですが、遠くからも視認されやすく、物資の獲得はほぼ望めません。
MAや、SFS・艦船に乗っているMSは、1点の行動値で2マス分移動できます。
■ 暗礁空域
壊れたコロニーの残骸や、岩塊を中心としたデブリ地帯です。
移動時には慎重に動かないと、岩塊に衝突して自滅するでしょう。
身を隠したり生活物資を探したりするにはいいですが、戦闘関係の物資はほとんどありません。
※ 戦場跡
暗礁空域よりも密度が薄く、戦艦やMSの残骸を中心としたデブリ帯です。
どうやらここは、昔戦闘があった跡のようです。
無傷のものはほとんどありませんが、多少は武器や弾薬・推進剤の補給が見込めるでしょう。
〓 コロニー
無人となったコロニー。重力と空気は残っていますが、住民はいません。
生活用品を中心に、さまざまな物資を獲得することができるでしょう。
マップ上、2マス分で一つのコロニーとなります。全部で4基(うち1基は破損)あります。
▼ 小惑星基地
ルナ2やアクシズのような小惑星軍事基地です(その両者よりも小さめですが)。
施設が整っていて、多少の武装強化も望めますが、中は入り組んでいて迷路のようです。
≠ 崩壊したコロニー
壁にいくつも穴が開き、空気が全て失われてしまったコロニーです。
大気と共に色々なものが飛び去ってしまい、また内部は冷たい真空に晒されています。
ですがコロニー全体の形はまだ留めており、港湾部の施設などには空気が残っています。
▽ 爆破された小惑星基地
開始時から禁止エリアだった領域。かつてプログラムを管理する管制室がそこに存在していました。
『リセット・チャンス』によって立ち入り禁止が解除され、その後、爆破されました。
? 情報のないエリア
生徒に与えられた行動範囲の外のエリアです。マップにも載っていません。
門 『ゲート』?
不定期放送で存在が明かされた管理側の施設です。
この『プログラム』の中核的な役割を持っているようですが、詳細は不明です。
12 :
事務員:04/12/20 17:50:42 ID:???
@ 最後に参加者様へ @
バトロワ参加者心得
一つ、場の空気を読む努力をする。
一つ、戦闘時、無理やり人を自分の土俵に引き込まない。
一つ、極力、相手がなにをしたいかを考える。
一つ、自分勝手な行動をしない。
一つ、放棄しない。
一つ、観客もいることも頭に入れておく(管制室を読まない読者の存在も忘れずに)
一つ、誤字、脱字、変換ミスには気をつける。
一つ、ID待ちはしない(みんな、案外見てますよ)。
一つ、叩かれたら、怒らず、まずは自分を見直す。
一つ、管制室での質問・抗議・意見などは、穏かな口調で冷静に。決して煽らない。
一つ、全てにおいて節度を守る。自分は職人だと自覚する。
一つ、『生きる』為の戦いではなく『魅せる』為の戦いを心がける。
一つ、死んでも泣かない。
一つ、エロスは大事、でも程々に。
一つ、既に『プログラム』は終わっていますが、物語の幕引きはこれからです。頑張って。
13 :
事務員:04/12/20 17:51:24 ID:???
失格 シュウジ・アサギ (32) 男性 ガンイージ {ホビー・ハイザック}
死亡 シュヴァイザー・シュタイナー .(44) 男性 ボリノーク・サマーン
死亡 イブ・シュウリン (24) 女性 Vガンダム
死亡 ユリ・ランブ (16) 女性 ゴトラタン
死亡 ダグラス・ロックウード .(17) 男性 ゴトラタン {ケンプファー}
死亡 ジェイス・カーライル (28) 男性 ジェガン
失格 ベルク・クロフォード (25) 男性 ペズ・バタラ
死亡 ヨーコ・クロサキ .(17) 女性 ガズR
死亡 リオン・フライハイ .(15) 男性 ジオング
死亡 アシッド・ミニングリー .(29) 男性 ギラ・ドーガ
死亡 サーティア・クワン .(19) 女性 Vガンダム {ジム・ライトアーマー}
死亡 サブナック・B・アンドラス (17?)男性 ビグロ
死亡 ショーン・コネリー (52) 男性 ガンダム4号機 {ジャベリン}
失格 レイモンド・デリック (31) 男性 ジャベリン {ガンイージ}
失格 リナルド・グレイス .(22) 男性 アビゴル
死亡 アレン・D・バディアン (20) 男性 ハンブラビ {ガンダム4号機}
死亡 フィニー・ディクセン .(18) 女性 ハンブラビ(+ムサイ級戦艦)
死亡 レニウム・アートナー (33) 男性 ジ・O
死亡 ラーズ・フィリー (16) 女性 ヤクト・ドーガ(クェス機)
失格 リファニア・ニールセン (15) 女性 サイコガンダムMk-U
死亡 アーネスト・マンソン (20代後半?) 男性 ガザD(+旧ザク)
死亡 リー・ションロン .(22) 男性 ビギナ・ギナ
死亡 スタンリー・M・イプキス (33) 男性 クロスボーンガンダムX2
死亡 ジョシュア・カミンスキー (31) 男性 ガンダムMk-U(ティターンズカラー)
死亡 ルイ・フィルセント .(22) 女性 R・ジャジャ
死亡 シェラザード・ビンス・マクファーソン .(28) 女性 キュベレイMk-U(3号機)
00番(元ティーチャー)リーア・ミノフスキー(??) 女性 コアブースター(ドライセン)
番外 ゼファーファントム・システム .人工知能 ビギナ・ギナ {機体なし}
14 :
事務員:04/12/20 17:52:34 ID:???
第16章 >232 現在 (低容量版マップ)
M,N O.P.Q.R S,T U V,W,X,,Y Z
13■□■□■■□□□□□■□■
14※■□■□□□□□■■■■■
15■■9951□□□□□■■※■■ □:開かれた空間
16□□□□□□□□※□□■■■ ■:暗礁空域
17■■□□□□≠≠□□□□□■ ※:戦場跡
18■□□□□□□□□□□□□□ 〓:コロニー
19■■■□□□□□□□▼□□□ ▼:小惑星基地
20■□□□□□□□□▼▼□□□ ≠:崩壊したコロニー
21※※□□□□□□▼▼▼□□□ ▽:爆破された小惑星基地
22※□□□□□□▼▼▼▽▼□□
23※□■□□□□□▼▼▼□□□ 立ち入り禁止区域は省略。
24※■■■□□□□□□□□□■ (影響を受ける者がいないため)
25※※■■■□□□□□□□□■
26■■※■□□□□□□□□■■
27□■■□□□□□□門□□□□
28□□□□□□□□門門門□□□
29■■■□□□□□□00□□□□
99は管制機能を持つレウルーラ級戦艦。00番はティーチャー(生身)
51〜53は援軍艦隊のザムス・ガル級及びその艦載MS(それぞれ戦艦1隻分)
ZPはゼファー制御のビギナ・ギナ。
01・07・14・15・99・53は同一地点。20・51・52・ZPは同一地点。
02・04・05・06・08・09・10・11・12・13・16・17・18・19・21・22・23・24・25・26死亡。
01シュウジ、07ベルク、14レイモンド、15リナルド、20リファニア
通信機の向こうから、レイモンドの怒鳴り声が聞こえる。
「わかった、こちらも全速で事に当たる。
……死ぬなよ。
死んだら、死ぬよりもっと恐ろしい目に遭うハメになるんだからな」
イブさん、そういうわけだから。
誰かがそっちに行ったら、例のアレ、よろしくね。
大した理由も無く、リナルドはあの世の彼女に言付ける。
機体を止め、銃器類のチェックを済ませたところでベルクからの通信が入った。
「だから、悪かったって言って……も、仕方ないか」
ため息ひとつで押し流すのは毎度のことだ。
「さ、頑張って遅刻の分を取り戻すとしましょうかね……」
銃撃戦から離れた位置とはいえ戦闘中に着艦したのだから、敵の目はこちらに向いている。
そこを出て行こうというのだから、自殺行為も甚だしい。
それでもやらねば、道は拓かれない。
まずはベルクのもとへ。
デュアルタイプのアビゴルのコクピットハッチは幸い下部……つまり、床に面している。
ディスプレイでベルクとシュウジの位置を確認してからハッチを開く。
リナルドは、銃撃が止んだ瞬間を狙って機体からするりと抜け出すと、
自動小銃を敵部隊に撃ち込みながらベルクの隣へと滑り込んだ。
「悪い、お待たせ。
それじゃ一丁、始めますか」
【行動:銃器・位置チェック(-1)、MS→ベルクの傍(-1)、攻撃(-1)】
【位置:O-15(レウルーラ・MSデッキ)】
【残り行動値:1pts.】
【機体状況:MA形態・両肩、背面損傷・『盾』・通信回線→サイコ、ガンイージ、ジャベリン】
【武装:(MS)ビームカタールx2、右腕ビームカッター、ビームキャノン、デュアルビームガン
ビームシールド】
【生徒状態:覚醒@ノーマルスーツ・首輪カバー・鈍痛・数箇所打撲・一部身体異常……】
【所持品:デイパック、コッペパンx1、水2gx2.6、食糧3.5日分、私服、拳銃(20)、救急箱
受信装置、自動小銃、マガジンx5、スタングレネード、防弾チョッキ
(以下私物)MS状態チェック用ポータブルコンパネ、ノートPC、眼鏡、配線修理用工具一式】
【行動方針:作戦遂行】
【同盟:全員】
「……ちっ!最後の最後に、余計な事を……!」
苛立ちを隠せずに舌打ちするビギナ・ゼラのパイロット。
彼の視線の先には、装甲表面を焦がしながらもいまだになお健在なサイコの姿があった。
……そして、隊長の部下のデナン・ゾンも、一機が無事な姿を晒していた。
(……クソ……艦隊の脅威になるあの厄介なサイコを落とし、次いであのガタが来た無人機を落とせば……。
処刑隊における僕の地位も約束されるというのに……。
目障りな隊長もついでに始末し、隊長と共にサイコと戦った部下も囮となって死んでもらう……。
事の顛末を知るものは誰も居なくなり、後はサイコを落としたという結果だけが残る。
……そういう、筋書きだったというのにっ!)
血走った目をしながら、右手で自らの左の二の腕を掴み、ギリギリと圧迫する。
だが、唐突に彼の目に冷静な光が戻り、彼はクククと低く笑った。
「……まあいいさ。このビギナ・ゼラならば、正攻法でもあんなデクノボウを落とす事なんて訳はない。
この僕なら、あの娘の戦術に取り込まれる事もないしね……。」
笑いを収め、キッと真顔を作った彼は、呆然と漂うデナン・ゾンに通信を入れる。
「……おい、お前!ぼうっとしてないで、僕とサイコを挟撃しろっ!
命を賭してお前の命を救ってくれた隊長殿の仇を、討ちたくはないのかっ!」
『……な……隊長は、あなたが……。
あなたが、撃ったのではありませんかっ!
……自分には、そう見えました……。』
明らかに納得のいきかねる様子のデナン・ゾンのパイロット。
その声には、憎しみすらも感じられた。
だが、ビギナのパイロットは、微塵も動じず、言葉を続ける。
「隊長殿は死を覚悟しておられたっ!
それに、今はそのような詮索よりも、敵機を落とす事が先決だろう!
お前は後で好きなように報告すればすればいい!
審問は、いくらだってうけてやるさ!」
『…………了……解……!』
渋々ながらも、その言葉に従ったデナン・ゾンのパイロット。
機体の動きに迷いを感じさせながらも、サイコの下方へと回り込もうとした。
それを見て、ビギナのパイロットは満足そうにニタリと笑った。
(……フン、君に後なんて、ないんだがねえ……。さて……。)
「遊ぼうか、サイコの彼女ぉ……!」
シェルフ・ノズルが光を放ち、ビギナ・ゼラが猟犬のようにサイコへと襲いかかる。
その悪意に満ちた牙を、突き立てるべく。
※ ※ ※ ※ ※
「……あの隊長が、部下を助けようとしなければ……私は、落とされていた……?
サイコのIフィールドをものともしない、強力なビーム兵器……。
……敵は、味方ごと……私を殺そうと……。」
少しの間を置いて、自分の身に何が起きたのかを理解したリファニア。
前方の紅いMSから、恐ろしく不快なイメージが感じられた。
「……くっ、あいつだ……。
あの時割り込んできた悪意……あんな奴に、撃たれるなんて……。
あの隊長も、浮かばれないよ……っ!」
……今まで相対した敵の中でも、これだけ不快な敵は初めてだった。
リファニアの目に、涙が浮かんでくる。
臆したのではない。
……戦士として、あの隊長の無念さが何となく解ったからだ。
その時、動きを止めていたデナン・ゾンが動き出し、サイコの死角へと回り込もうとしてきた。
先ほどと違い、明らかに動きに精彩を欠いていた。
……これでは敵の意思を捉えなくとも、落とす事は容易だった。
サイコの砲門が煌く。
だが、放たれたビームはデナン・ゾンを大きく逸れ、虚空へと消えていった。
「……撃て……ないっ……!
撃たなきゃ、やられるのは私だというのに……っ!」
戦士としてのプライドをガタガタに突き崩されたあの隊長が、最後に護り通したもの。
彼のプライドの最後の一かけらが、残されたあの部下なのだ……。
それが解ってしまうリファニアの僅かな迷いが、サイコミュの正確なコントロールを叶わなくしていた。
デナン・ゾンを落としきれないリファニアに、ビギナ・ゼラが襲い掛かる。
「……う、奴が……っ!」
殺気を感じ、回避行動に移ろうとするも、間に合わない。
直後、ビギナ・ゼラがヴェスバーの引き金を引いた。
ヴェスバーから放たれたビームはIフィールドを容易く貫通し、サイコの右脇腹を抉る。
数瞬の後に損傷箇所に爆発が起こり、サイコの巨体が揺らいだ。
「……うああっ……!」
体勢を崩しつつも左腕のメガビームを撃ち返すが、ビギナ・ゼラに舞うようにかわされてしまう。
隙が出来たサイコ対し、間髪入れずデナン・ゾンがマシンガンの弾を浴びせかけてくる。
装甲の損傷箇所に数発の弾が潜り込み、機体の所々が小さく爆ぜた。
二機の猟犬にいいように嬲られるリファニアのサイコ。
紅いMSがヴェスバーを構え、止めを刺すべく迫り来る。
(……駄目……駄目……こんな奴に、負けたら……。
今まで受け継いで来たもの、ぜんぶ……否定される事になる……。)
「……それ、だけはぁっ!」
叫びと共に砲火が放たれるものの……。
圧倒的な機動性とビームシールドの防御力であっけなく砲火を潜り抜けた紅いMSは、サイコを照準に捉えていた。
【行動 : メガビーム砲でデナン・ゾンを撃つも、外す(-1)、V・S・B・R回避失敗(-1)
メガビーム砲で応射(-1)、拡散ビーム砲で応射(-1)、残0 】
【位置 : P-15 】
【機体状況 : MRX-010サイコガンダムMk-U
全身の装甲がボロボロに、右脇腹にビームで抉られた損傷、
右肩アーマー損失、左肩アーマー上部損傷、背面に損傷、
スラスター損傷(推力70%) 、アポジモーター幾つか損傷、MA時バランサー異常
自爆装置改造済み、MS形態、攻性プログラム&『盾』ダウンロード済み、ジェネレーター??? 】
【パイロット状況 : 頬にうっすらと傷痕、右肩軽傷(治療済)、頭軽傷(包帯巻)、左腕重傷(処置済み)、
ノーマルスーツ着用、メイク済み♪、感覚開放、サイコミュによる負担、首輪カバー装着 】
【武装: 胸部3連装拡散メガビーム砲(一門破損)、リフレクタービット×5 、大型ヒートグレイブ、メガバズーカランチャー
腕部サイコミュ式 ビームソード×1、全身メガビーム砲×多数(左脛二門破損、右肩全門破損) 】
【方針 : 『揺るがせてはならない夢』、自分の意志で綺麗に生きる、誰も死なせない! 】
『だから、悪かったって言って……も、仕方ないか
さ、頑張って遅刻の分を取り戻すとしましょうかね……』
その通信後リナルドが移動しやすい様、盾にしているガンイージの腕から
上半身を出し、武装兵たちに向かってライフルを乱射し牽制する。
その途中、シュウジからの合図が聞こえた。
『ベルク!今から隔壁を閉鎖する。閉鎖したら、取り残された奴らを片付けてくれ。』
「それを待ってたぜ、了解。」
うまく相手が怯んだ隙にリナルドが応戦しながらこちらに到着すると
同時に、ガンイージの腕に身を潜める。
『悪い、お待たせ。
それじゃ一丁、始めますか』
「ああ、シュウジが作業を終えた。
まずは、ここに居る奴らをすべて叩く。今の状態では時間がかかりすぎるから
速攻で決める為にスタングレネードを使用する。
炸裂したのを合図に、至近距離まで近づき確実に仕留めろ。いいな?」
こちらが撃ってこなくなったのに乗じて銃撃が激しくなる。
ならば、顔を出して射撃に集中しているはずの今がベストだろう。
好機を狙いガンイージの腕を盾にしゃがんだまま、スタングレネードを
武装兵のいる方向に向かって投げ炸裂音と激しいフラッシュが当たりを包んだ瞬間、
その場から飛び出し、ライフルを乱射しながら二、三人倒すとそのまま
奴等のバリケードを飛び越え、残りの兵士に向かって銃弾を浴びせる
ライフルの残弾が無くなれば腰のホルスターにしまってあった拳銃を鮮やかに抜き、
それで兵士を倒していく。
【行動:レイモンドとシュウジ、リナルドと通信中(-0)会話(-0)突撃(-1)
ライフルで応戦(-1)スタングレネード使用(-1)拳銃で攻撃(-1)】
【残り行動値:0】
【位置:O-15】
【機体状況:右腕損失、左足膝部損失、右足膝部損失、本体側面装甲各所損傷
コクピット内機械一部損傷、スラスター各部損失(出力50%低下)
左手マニュピレーター消滅】
【武装:(本体)ビームアックス、3連装ミサイルランチャー×2(残弾0)(左手甲部)ビームシールド、
ビームダガー×1本 】
【所持品:ディパック 水2g三本 十字架 聖書 特殊情報端末 チ○ルチョコ20個ほど
アサルトライフル 予備弾倉4セット 拳銃 予備マガジン5セット
手榴弾 4個 ナイフ 防弾チョッキ 首輪カバー】
【行動方針:ミッションスタート】
【同盟:01番 シュウジ=アサギ 14番 レイモンド=デリック】
揺れる。
俺が揺れているのではない。
揺れているのはタイヤの方だ。
俺が行った急激な運動は、いよいよタイヤの状態を悪化させていた。
ひどくなった振動は、タイヤを真直ぐに進ませる事を許そうとしない。
コンソールスティックを力ずくで安定させようと試みてはいるが、それも左手だけでは限界
というものがある。
絶えず聞こえてくるようになった擦れる音も、タイヤの状態を如実に表している。
…要するに、もうタイヤは兵器としては殆ど役に立たなくなったという事だ。
パイロットの意思通りに動かなくなった兵器は、自分の命を危険に晒すだけの、ある意味敵機
よりも厄介な存在になる。
タイヤを貸してくれたルイに申し訳ないが、もはやさっきのように高機動を発揮する事は無理だ。
せいぜいが、デッキの中の短い距離を行き来するくらいが関の山だろう。
辛うじて巡行速度を保ちながら、レーダーを監視する。
「…ま、もっとも、奴等がレウルーラまで帰らしてくれればの話…か」
レーダーにはタイヤに接近してくる3機の機影がはっきりと映っていた。
********************************
ベルガ・ギロスのコクピットで彼は困惑していた。
彼は自分の判断は間違ってはいなかったと思っている。
レウルーラのデッキから飛び出してきたアインラッドに乗ったジャベリン。
勿論迎撃をしないわけにはいかなかった。
彼の中にはアインラッドは自分たちをザムス・ガルから引き離す囮で、その隙を突いてあとから
来たアビゴルが攻撃を仕掛けてくるのでは、という懸念もないではなかったが、そういう時の為に
ザムス・ガルにMSを残してあるのだ。
それに彼等が素早くジャベリンを片付ければ、待機している仲間の手を借りるまでもない。
故障しかけているアインラッドと片腕のジャベリンを片付けるなど、雑作もない事だ。
…そう、彼にとってそれは雑作もない事の筈だった。
最初にジャベリンがこちらの武器の射程をぎりぎりで外した時も、その気持ちは変わらなかった。
しかし…ジャベリンのパイロットは、2度目の攻撃もこちらの射程を読み切ったかのような絶妙
のタイミングで躱すと、そこから左右への変針を高速で、しかも信じ難いほど小さい半径で回り
込んで、デナン・ゲー右翼2番機を瞬時に撃墜していった。
しかも左翼1番機もバックパックに1発食らい、著しく速度を落としている。
今彼等は左翼1番機を後に残し、残りの3機でジャベリンを追撃している。
アインラッドはさっきの攻撃のあと、速度を落としつつレウルーラに向かっている。
この様子ならば、もうすぐ追いつけるだろう。
ただそれ以上に彼の心に引っ掛かるものがあった。
こちらの武器の射程を知っているかのような動きと、緩急をつけた運動からの的確な攻撃。
ここに派遣される時に、生徒名簿を見た時から気にはなっていた。
以前彼がクロスボーンにいた時にも何度も談笑した事があった。
精鋭、ザビーネ大隊……通称黒の部隊四番小隊長。
そしてレーダーに映るジャベリンのパイロット。
どちらの名前も…レイモンド=デリックと言った。
【行動:ペズ・バタラ、サイコG、アビゴル、ガンイージに回線継続(0)】
【残り行動値:4p】
【位置:O-15】
【機体状況:右腕消失、頭部バルカン砲1門損傷、モニター一部使用不能、右肩装甲損傷、左肘
ジョイント負荷(40%)、胸部及び腹部装甲に凹みと歪み、ショットランサー1基消失
アインラッド:打撃と破片による回転不良(中)、ビームキヤノン1門破損、大きな振動】
【参加者状況:左肩負傷(処置)、左眼球裂傷(処置)、右手首切断(処置) 右肋骨骨折、
左大腿骨にひび、右上腕に銃創(処置)】
【武装:頭部バルカン砲×1、ビームサーベル×1、ショットランサー×1、ビームシールド
ビームマシンガン(90%)
アインラッド 武装:ビームキャノン×1(60%)、9連装ミサイルポッド×5】
【所持品:ディパック、水2?入り5本、食料21/3日分、蕎麦団子1個、 拳銃と自動小銃と弾倉×5
タッパーのカレー1つ、保冷シート2枚、書類の束、ペン、缶詰の段ボール、首輪カバー】
【行動方針:突入までの時間稼ぎ】
【同盟:ベルク、リファニア、シュウジ、リナルド】
……。
…………。
………………。
「ガ……! ニン、m、カンリョ、……ガガッ」
「……ご苦労さま、ハロB。ありがとうね」
飛び散った血と肉片で紅く染まった部屋の中、彼女は力ない笑みを浮かべ、『彼』に語りかけた。
球体だったその黄色いボディは度重なる被弾で大きく歪み、ボコボコになっている。
歪んで収納できなくなった回転ノコギリは、ところどころ歯こぼれした姿を晒している。
ハロBは己に与えられた任務を完全に果たし、この時空移転システム制御室でその機能を停止した。
そのハロを片手で抱え、壁に背を預けて座り込む彼女も、無傷ではない。
左腕はダラりと下がり、動かない。肩を撃ち抜いた銃創から、鮮血が滴る。
右膝も曲げられないのか、右足は投げ出すように不自然に伸ばしたままだ。
他にも身体のあちこちに小さな傷があり、その小さな身体を紅く染めている。
頭にも傷があるのか、鮮血が彼女の額からつぅっと伝う。
通常なら激痛に悶絶しているような重傷。
クスリで痛覚を麻痺させているとはいえ……出血は、彼女の意識を危うくさせている。
彼女とハロ以外に、部屋の中に動くものはない。彼女とハロも、動かない。
あとは十数人分の肉の塊が、乱雑に散らばるだけだ。
……いや、部屋の片隅に跳ねるものがある。
紫色の球体が、その耳をパタパタさせて女主人を呼ぶ。
「リーア、システムシンニュウ、セイコウシタデ〜!」
「……ああ、ありがとう、ハロV。よくやってくれたわね」
紫のハロは、無傷だ。
彼女と黄色い殺人ハロが、彼を温存できるよう、盾になって戦ったからだ。
彼はまさに、この時のためにその能力を授けられたのだから。
「さあ……わたしの望みのために、あと一手。
そして彼らの望みの助けのために、もう一手。
……こっちの方は、ダメなら私の知ったことじゃないけれどね」
彼女は、大儀そうにその身を起こし、壊れたハロをその場に置き、紫のハロの下へ向かう。
負傷がひどい。特に出血。そう長いことはないだろう。
管理側の兵士もしばらくすれば再び襲ってくるだろうし、奪取したシステムもいずれ奪還されるはずだ。
けれども――きっと、なんとか、ギリギリ、間に合うだろう。
「その先」のことなんて――考えてもいない。
【リーアの行動:兵士たちと戦闘(−3p) 時空転移システムコントロール奪取(−1p)】
【位置:V-29(ゲート内、時空転移システム制御室)】
【リーアの戦力:現在生身。U-28港湾部に停泊中のコアブースターに赤いハロ(ハロR)】
【リーアの所持品:血染めの白衣、紫色のハロ(ハロV)】
【リーアの状態:左腕動かず。右足骨折。出血多量。麻薬で無理やり行動中】
【リーアの行動方針:天国の門を開く】
援軍艦隊1番・2番艦、予想外の苦戦。
それは、一つには兵士たちの油断もあったのかもしれない。
兵士たちの間にあった不協和音もあったかもしれない。
しかし、全ての艦載MSを吐き出した今、打てる手は限られている。
友軍MSと接近戦をしているから、艦の砲撃も容易には放てない。
危険を冒すか、現状をただ見守るか、二つに一つ。
「……生き残りのMSに打電。艦と協力し、艦と連動した攻撃を仕掛けよ。
1番艦は巨体のサイコ、2番艦はあの無人機だ。これより、さらに接近する」
「サイコに対しては、MSに足止めを命じ、艦の砲撃を当てていけ。
向こうのIフィールドが焼け付くまで撃ち続けてやれ。
無人機に対しては、砲撃で動きを止めてMSでトドメだ。
あの馬鹿げた機動力を封じるよう、弾幕で逃げ道を塞いでやれ!」
2隻の戦艦が動く。
護衛MSのない今、反撃で逆に艦ごと沈められる危険も少なくない。
けれども、今は――MSの減った今は、他に打開策もない。
安全を留保し、相手を軽視した態度では、この危険を切り抜けることは不可能だ。
歴史上、ありえるはずもなかった「旗艦」2隻が、揃って反逆者たちに肉薄する。
【援軍艦隊(1・2番艦)の行動:
戦艦2隻が戦闘に積極参加】
【援軍艦隊(1・2番艦)の戦力:
ビギナ・ゼラ×1、デナン・ゾン×1(リファニアのサイコガンダムMk−2と交戦)
デナン・ゲー×1、デナン・ゾン×2(ゼファーのビギナ・ギナと交戦)
ザムス・ガル級戦艦×2】
【援軍艦隊(1・2番艦)の位置:P-15】
【援軍艦隊(1・2番艦)の行動方針:ゼファー・リファニアを足止めし、倒す】
援軍艦隊3番艦は、自分たちの失策を悔いていた。
レウルーラを包囲し監視していたにも関わらず、外から来たアビゴルの突入を許してしまったからだ。
動きを止めていた「優勝者」が、何か刺激があったわけでもないのに突然動き出したこと。
援軍艦隊の1番・2番艦が止めてくれると思い込んでいたこと。
包囲していたMSたちが、その意識を包囲の「内側」に向けており、「外側」を気にしていなかったこと。
変則的な5機編成で、連携がいまいち上手くいかなかったこと。
……言い訳の理由はいくらでもあるが、どちらにせよ、彼らの失策だ。
そして今、レイモンドのジャベリン一機に、苦戦している。
いくらアインラッドがあるとはいえ、あそこまで手玉に取られるとは……。
「……とはいえ、一機でも外に出てきた今はチャンスかもしれないな。
残りのMSも出撃しろ。一部はあのジャベリンの足止め、一部はレウルーラへの突入だ」
「と、突入ですか」
「ビームシールドを展開すれば、「場所を動かない敵」からの攻撃で致命傷を受けることはないだろう?
そうやって白兵戦の距離まで踏み込めば、あとは五分だ。
機体に損傷がない分、こちらの方が有利だろう。
レウルーラ内では、白兵戦が始まっているという。
つまり、MSを降りている反逆者がいるということだ。この機を逃す手はない」
* * *
三番艦から6機のMSが出撃する。
5機は同じくクロスボーン系のMS。1機は途中で拾った管制艦のギラドーガ。
二手に分かれ、それぞれの目標に向かう。
片方はレウルーラへ。片方は、アインラッドとレウルーラの間に立ちふさがるように。
【援軍艦隊(3番艦)(+管制艦搭載MS)の戦力:
ベルガ・ギロス×1、デナン・ゲー×2(レイモンドのジャベリンと交戦)
デナン・ゲー×1(小破)、ギラ・ドーガ×1(レウルーラ近くで待機)
クロスボーン系MS×5、ギラ・ドーガ×1(新規に出撃)
ザムス・ガル級戦艦×1】
【援軍艦隊(3番艦)の行動:MS発進(×6)(−6p)
MS、防御姿勢とりつつ移動・戦闘参加×6(−6p)】
【援軍艦隊(3番艦)の位置:O-15】
【援軍艦隊(3番艦)の行動方針:レウルーラ救援】
ザムス・ガルの周辺が騒がしくなった。
…どうやら艦内に待機していた残りのMSを発艦させたらしい。
こればかりは仕方がない……。ベルガ・ギロスのパイロットは思った。
彼等は5機のMSで、半死半生のジャべりン1機に手間取っているのだ。
ザムス・ガルとしてはより確実を期す為に当然の、そして現時点ではベストの判断だろう。
ザムス・ガルの通信からすると、新たに発艦した部隊は二手に分けて1隊をレウルーラへの突入に。
もう1隊をジャべりンとレウルーラの間に配置するらしい。
これでレウルーラに対してもジャべりンに対しても、より完全な布陣を敷く事ができる。
しかし彼はすぐに攻撃の攻撃の命令を出そうとはしなかった。
さっきから彼の中でわだかまっている疑問。
それを確認しないうちに命令を出す事はできなかったのである。
その事を艦の上層部が知ったらかなりの叱責を受けるかもしれないが、彼にとってはそんな事は
些細な問題でしかない。
今はあのジャべりンのパイロットが自分の旧知の人物なのか?
彼はそれだけを知りたかった。
やがて十分に間合いを詰めたと判断した彼は、ジャべりンに通信を開いた。
こんな何気ない行為に緊張したのは久しぶりだった。
「聞こえるか、ジャべりンのパイロット」
********************************
敵である筈のベルガ・ギロスから送られてきた通信。
いつ撃ってきてもいいように後方に最大限の注意を払っていた俺だったが、これにはさすがに驚いた。
それでも表面上は表情を崩さずに、こちらも回線を?げる。
…こういう場合は時間稼ぎと見た方が正解なのだろう。
現にあとをついてきた残りのデナン・ゲー2機は、扇に展開してビームライフルを構えている。
そしてタイヤとレウルーラの間には、ザムス・ガルから新たに出撃してきたMSが待機している。
ザムス・ガルの搭載機数からすれば、まだ出し惜しみしている感はあるが…
それでも敢えてベルガ・ギロスに回線を開いた理由はただ1つ。
たとえ時間稼ぎだったとしても、この男が何を話すのか興味があったからだった。
『聞こえるか、レイモンド=デリック。聞こえているのなら…』
「何度も言わないでも、はっきり聞こえているよ。…レイモンド=デリックだ」
応答した途端、僅かだが相手のパイロットが息を呑む気配が伝わってきた。
…何だと言うのだろう。
『……どうやら間違いじゃなかたようだ…』
そんな事を言われても、やはり俺には訳が分からない。
『お前は俺のこの声に聞き覚えはないか?…いやある筈だ。
…俺は元クロスボーン・バンガードだ。ゼルゲス大隊第四小隊長だった』
【行動:ペズ・バタラ、サイコG、アビゴル、ガンイージに回線継続(0)
ベルガ・ギロスに通信回線接続(−1)】
【残り行動値:3p】
【位置:O-15】
【機体状況:右腕消失、頭部バルカン砲1門損傷、モニター一部使用不能、右肩装甲損傷、左肘
ジョイント負荷(40%)、胸部及び腹部装甲に凹みと歪み、ショットランサー1基消失
アインラッド:打撃と破片による回転不良(中)、ビームキヤノン1門破損、大きな振動】
【参加者状況:左肩負傷(処置)、左眼球裂傷(処置)、右手首切断(処置) 右肋骨骨折、
左大腿骨にひび、右上腕に銃創(処置)】
【武装:頭部バルカン砲×1、ビームサーベル×1、ショットランサー×1、ビームシールド
ビームマシンガン(90%)
アインラッド 武装:ビームキャノン×1(60%)、9連装ミサイルポッド×5】
【所持品:ディパック、水2?入り5本、食料21/3日分、蕎麦団子1個、 拳銃と自動小銃と弾倉×5
タッパーのカレー1つ、保冷シート2枚、書類の束、ペン、缶詰の段ボール、首輪カバー】
【行動方針:突入までの時間稼ぎ】
【同盟:ベルク、リファニア、シュウジ、リナルド】
>>19 「凄いな……。」
整備員詰め所に潜むシュウジは、目の前で広がる戦闘における、
ベルクの今までの雰囲気からは考えられない程の手際の良さに正直驚いていた。
「……っと。呑気に眺めてる場合じゃない。
しかし混戦と化したこの状況では援護射撃も難しいな……。
とりあえず……周囲の状況を一応把握しておくか。
レウルーラのレーダーの情報を拾えるか……?
……よし。」
ノートPCに映るレウルーラのレーダーの画像。数秒の間をおいて、シュウジの顔が青くなった。
青くなった顔のまま、通信機に向かって叫ぶ。
「ベルク!……急いでくれ。
敵が……援護艦隊の敵が此処に辿り着いた。
MSが三機……いや、五機か?こちらに接近してきている。
この感じだと……このまま突入してくる勢いだろうな。
急いで片付けないと、勝ち目はなくなるぞ!」
叫びつつ、自動小銃のマガジンを取り替えた。
取り替え終わると、ノートPCをディバックに入れ、
それを持つと整備員詰め所から飛び出した。
「……荒事は苦手だってのに!」
そうぼやくと共に、ベルクに気を取られている敵襲団に突っ込み、
自動小銃をベルクに当たらないように極力気を付けながら乱射した。
【行動:レウルーラのレーダー情報拾得(−1)マガジンを代える(−1)自動小銃乱射しつつ突撃(−1)】
【残り行動値:1p】
【位置:O−15(ガンイージ):P−15(ビギナ・ギナ)】
【機体状況:ビギナ・ギナ:通信中(ガンイージ)自爆装置無効化済 コックピット損傷 左肩装甲融解
フィン・ノズル4個損傷、表面装甲損傷軽微 左足首に負荷
ガンイージ :通信中(ビギナ・ギナ ジャベリン ペズバタラ)
機体各所にダメージ、電子機器に被害、頭部大破 左右脚部損傷、左腕大破
右フロント・サイドアーマー破損 左サイドアーマー破損 脱出装置使用不可 自爆装置無効化済】
【参加者状況:右足重傷(処置済み)打撲 左目周辺に切り傷 防弾チョッキ着用 首輪カバー装着中】
【武装:ガンイージ:ビームライフル(残弾2)
ビギナ・ギナ:ビームライフル(残弾60%) ビームサーベル×2 ビームシールド
フック付きワイヤー&ウィンチ ヒートナイフ×2 F-90S用クルージングミサイル×1
ドラム弾装式120mmマシンガン(残弾4斉射分)使用不可能なマシンガン】
【所持品:ディパック(食料0.5日分 計画書 紙とペン 医療用セット 首輪カバー
自動小銃 マガジン×4 スタングレネード)
拳銃(残弾16発) 工具セット 杖 ヨーコの果物ナイフ (ゼファー) 】
【行動方針::"示す" 利用出来るモノは利用 突入】
リナルドは、ベルクの言葉に頷いた。
「りょーかい」
ベルクがスタン・グレネードを投げ込み、轟音と閃光が発生する。
機を逃さず飛び出すと、リナルドはガンイージの腕を足場代わりに蹴り、
自動小銃を撃ちつつ敵のバリケード内に飛び込んだ。
着地と同時に自動小銃から拳銃に持ち替えると、まずは眼前の兵士に二発撃ち込んで倒し、
続けざまに左側にいた兵士の腹を蹴り込んで体勢を崩すと、
正面に現れた兵士に肉薄し、零距離で二発、これを倒す。
次に、後ろに迫っていた兵士に対して低い姿勢で跳びつき、背後に回りこんで首を掴むと
そのまま先程蹴り飛ばした兵士の方向に掴んだ首を向けた。
直後、首を掴まれた兵士の胸に複数の銃創が穿たれる。
リナルドは、楯代わりにした兵士を放して素早く接近すると、
ワンステップで再加速した掌底を繰り出した。
常人の膂力を遥かに超える破壊力と貫通力を持って放たれた掌底の衝撃は、
易々と兵士の胸板を貫通して肋骨を砕き、内臓器官にも致命的なダメージを与えた。
兵士は、一度ビクリと痙攣して血を吐くと、それきり動かなくなった。
(……また、『人殺し』に戻るのか)
絶命した兵士のホルスターから拳銃を抜き取り、マガジンも拝借する。
持ち込んだ拳銃との互換性は無いが、今のうちに調達しておいた方がいいと考えたのだ。
不意に、リナルドの脳裏をリファニアの姿が過ぎる。
……不思議と笑みがこぼれた。
「そうだな……」
武器を自動小銃に持ち替えると、シュウジの背中を守るように移動し、
リナルドは銃を構えた。
【行動:戦闘(-3)、回収(-1)】
【位置:O-15(レウルーラ・MSデッキ)】
【残り行動値:0pts.】
【機体状況:MA形態・両肩、背面損傷・『盾』・通信回線→サイコ、ガンイージ、ジャベリン】
【武装:(MS)ビームカタールx2、右腕ビームカッター、ビームキャノン、デュアルビームガン
ビームシールド】
【生徒状態:覚醒@ノーマルスーツ・首輪カバー・鈍痛・数箇所打撲・一部身体異常……】
【所持品:デイパック、コッペパンx1、水2gx2.6、食糧3.5日分、私服、拳銃(16)、救急箱
受信装置、自動小銃、マガジンx5、スタングレネード、拳銃(8)x3、防弾チョッキ
(以下私物)MS状態チェック用ポータブルコンパネ、ノートPC、眼鏡、配線修理用工具一式】
【行動方針:作戦遂行】
【同盟:全員】
「ははっ!どうしたんだい?
さっきまでの正確な攻撃は?
肝心な所で期待を裏切ってもらっては困るね?」
デナン・ゾンへの攻撃を外し、その後二機に畳み掛けられるように攻められ続けるサイコ。
苦し紛れに放たれた拡散ビームも、潰れた一門の死角を見出したビギナのパイロットにとって、
それを潜り抜ける事など容易だった。
ビームシールドを掲げ、ビームの弾幕の薄い所を突破して、絶好の位置につけたビギナ。
「今度こそ、外し様はないよ?
最後はあっけなかったけど、これで……何だ?」
ヴェスバーを構えたところで、後方からニ艦が接近しつつある事を示す警告音が鳴り響いた。
「……僕が苦戦しているように見られてしまったか。
だがね……これで、終わりさ……。」
サイコの中心たる動力部を照準に捉えたビギナ。
ヴェスバーの引き金が引かれ、強力無比な貫通力を持つビームが今放たれようと―――。
※ ※ ※ ※ ※
「落ちない!……落とせないっ!
やられ……る……?」
サイコのIフィールドをも貫くビームを放てる、大型のライフルを構えたビギナの姿がリファニアの目に映る。
敵機が引き金を引こうとする動作が、止まっている程にスローモーションに感じられた。
……この感覚は、以前にスタンリーに撃たれた時のそれに酷似していた。
あの時は、トリィが死神の手から救い出してくれた。
だが、今は救いの手を差し伸べてくれる者など、居ない。
ゼファーも、今はあそこで敵機を抑えるのが精一杯なのだ。
ゼファー……ゼファーは、リファニアの視線の先で、見事に敵機を抑えていた。
敵機の真っ只中に立ちはだかり、敵機の動きを釘付けにしていた。
(ゼファー……凄いな……完璧に敵機を抑えきってる……。
私には、出来なかったな……ごめんね、パパ……私……また負けた……。)
死に捉われかけるリファニア。
そんなリファニアの脳裏に、幾つかのイメージが広がった。
リファニアを一人の女に仕立て上げ、満足そうな笑顔を浮かべながらその身体を抱いてくるシェラ。
身体を壊しながらも、自らの身体と精神に鞭打って皆を纏めようと奮戦するダグラス。
時に厳しい言葉、時に暖かい言葉と共に、傷ついた心身をいつも優しく介抱してくれたイブ。
そして、トリィを膝に乗せたリファニアの前で熱く歌う、目指すべき夢の象徴となった彼。
アレン=D=バディアンの姿を見たとき、リファニアの目から一滴の涙が零れ落ちた。
(……走馬灯なんかじゃ、ない……死ぬなって、言ってる……?)
次いで、リファニアの脳裏に浮かぶのは。
レゥルーラを抑えるべく、多くの敵兵と銃撃戦を繰り広げる今の仲間達の姿だった。
温厚そうな雰囲気とは裏腹に、獅子奮迅の活躍をみせるベルク。
決して軽くない傷を負いながらも、ハッキングのみならず銃撃戦にも奮闘するシュウジ。
その手を血に染める事で心をすり減らしながらも尚、生きる為に戦うリナルド。
そのリナルドが、自分をちらりと見たような……そんな気がした。
(……リナルド……私も、生きる為にこの手を血に染めてる。
でも、それもすべて、戦いの先にある物の為。
……迷わないで。そして、私も迷っちゃ駄目だね……。)
そして、レゥルーラの外では10機程の敵機を相手に奮闘しているレイモンドの姿。
作戦開始前にレイモンドに言われた言葉が、思い起こされた。
(レイモンドさんは、言った。私が、MS戦の要なんだって。
レイモンドさんは、私を戦士として認め、私に要たる役割を委ねたんだ。
その私がやられてしまったら……取り返しのつかない戦力の穴が開いてしまう。
あそこで10機もの敵を相手にしているレイモンドさんも、このままじゃいずれやられちゃう。
レイモンドさんがやられちゃったら、みんなも……それ、だけはっ!)
虚ろになりかけていたリファニアの瞳に、覇気が戻る。
(……ゼファー。あなたに負けたままでも、いられないよね。
あなたの存在、素晴らしいと私は思う。大きな可能性、秘めてると思う。
でもね、私にだって、意地があるっ!
パパから受け継いだ技術の価値を、証明しなきゃね。)
ビギナ・ゼラを真っ直ぐ見据えるリファニアの身体から、緑の光の粒子が放たれ、
サイコのコックピット内に緑の風となって渦巻いた。
目視可能な程の強力無比なサイコ・ウェーブ。
(そう……負けて……らんないっ!
アレン、ダグラス君、シェラさん、イブさん……みんな、最後まで戦い続けたじゃないっ!
みんなの生命は、失われてしまったけれど……私は、死を乗り越えてみせるっ!
今までみたいに、誰かに守られてじゃなくて、自分自身の力で……っ!)
停滞した時が、動き出す。
ヴェスバーから、貫く光が放たれようとした瞬間。
サイコより、リファニアの思念をのせた5つの物体が放たれる。
(……私に向けられた殺気が、線のように……それが、ビームの射線ね。)
「……いけっ!」
5つのリフレクター・ビットが、ヴェスバーの射線上に一直線に並ぶ。
ヴェスバーより放たれた光が、一つ目のビットを貫き、二つ目のビットを貫き。
そして、三つ目のビットを貫こうとした時、ビームの方向がかすかに逸れた。
サイコの大出力ビームの嵐を耐え切ってみせるリフレクタービット。
それは、単発ではそのビームを遥かに上回る貫通力を持つヴェスバーのビームを、
僅かに逸らすだけに留まったが、それで充分だった。
サイコの中心を撃ち貫く筈だったビームが左脚を貫き、爆散させる。
「……くうっ……そのまま、いけっ!」
だが、リファニアは臆さない。もとより、無傷で耐えられるとは思っていない。
残った二基のビットが、リファニアの意思によって突き動かされて、ビギナ・ゼラを取り囲む。
次の瞬間、サイコの全身の残った砲口から、放てるだけのビームが全て、放たれた。
※ ※ ※ ※ ※
光の奔流に飲み込まれつつあるビギナ・ゼラ。
「……な、何だとっ……!
あんな、あんな無茶苦茶な……デタラメなっ!
……サイコミュ兵器がっ……来るっ……!」
ビームシールドを掲げつつ、四方八方から来るビームの奔流から必死で逃れようとするも、片脚をもぎ取られる。
「……くおおっ、この距離では、かわしきれないっ……!」
このままではいつ直撃を被るかわからない……。
だが、焦るパイロットの目に、サイコの後方へ回り込むデナン・ゾンの姿が映った。
「……そうだ、今の奴の背中は無防備だぞっ……。
今なら、仕留め……!」
だが、デナン・ゾンは動こうとしなかった。
「……貴様ッ!何故、動こうとしないっ!貴様、貴様……っ!
……っ!!」
光の奔流にシェルフ・ノズルの何枚かをもぎ取られるビギナ。
だが、必死の回避行動が功を奏したのか、敵機の放つ光の奔流が次第に弱まっていった。
「……何とか、耐え切ったようだね……。
それにしても、それにしても、お前等ぁぁぁっ……!」
回避行動を取りつつ、二本のヴェスバーを構えるビギナ・ゼラ。
一門はサイコに、もう一門はデナン・ゾンに向けられていた。
「……纏めて、死ねよやっ……!
………!!」
だが、そのヴェスバーからビームが放たれる事はなかった。
コンソールに目を向けるパイロット。
<ジェネレーター出力低下><砲身温度上昇、要冷却>
そんな言葉が、無情にも示されていた。
「……放ち過ぎたと……!
……ちいっ、一旦、距離を……!」
だが、次の瞬間ビギナのパイロットが見たものは、モニター一面に広がる、巨大な握り拳だった。
「……距離…お……っ!」
コックピットを襲う猛烈な衝撃とともに、パイロットの意識が遠のいてゆく。
自分がどうやって敗れたのか理解できぬまま、闇へと沈む意識。
彼の心に満ちるものは、ただ、ただ、憎しみと敗北感だけだった。
※ ※ ※ ※ ※
放たれた右腕のサイコミュ・ハンドを引き戻しながら、
頭部を潰され虚空へと流れてゆくビギナ・ゼラの姿を一瞥するリファニア。
ビームの奔流でパイロットの目を眩ませて、ビームソードを発生させずに放ったサイコミュハンドで質量弾攻撃。
これだけ機体の体格差があれば、その拳だけでも充分な破壊力となるのだ。
「……悪いけど、あなたみたいなのに躓いている時間なんて、もう無いの。
さっさとここを切り抜けて、みんなと合流しないとね。」
ジェネレーターに過負荷、Iフィールド強制停止。
使用できる火力も限られているこの状態で、残るMSとあの二艦を突破する。
正直、困難極まるが……リファニアは全く、絶望してはいなかった。
【行動 : リフレクタービット・コントロール(-1)、V・S・B・Rのビームを逸らす(-1)
全門発射(-1)、サイコミュハンドを叩きつけて攻撃(-1)、残0 】
【位置 : P-15 】
【機体状況 : MRX-010サイコガンダムMk-U
全身の装甲がボロボロに、右脇腹にビームで抉られた損傷、左脚膝から下喪失
右肩アーマー損失、左肩アーマー上部損傷、背面に損傷、
スラスター損傷(推力70%) 、アポジモーター幾つか損傷、MA時バランサー異常、Iフィールド停止
自爆装置改造済み、MS形態、攻性プログラム&『盾』ダウンロード済み、ジェネレーター過負荷 】
【パイロット状況 : 頬にうっすらと傷痕、右肩軽傷(治療済)、頭軽傷(包帯巻)、左腕重傷(処置済み)、
ノーマルスーツ着用、メイク済み♪、感覚開放、サイコミュによる負担、首輪カバー装着 】
【武装: 胸部3連装拡散メガビーム砲(一門破損)、リフレクタービット×2 、大型ヒートグレイブ、メガバズーカランチャー
腕部サイコミュ式 ビームソード×1、全身メガビーム砲×多数(左脚前全門喪失、右肩全門破損) 】
【方針 : 『揺るがせてはならない夢』、自分の意志で綺麗に生きる、誰も死なせない! 】
『ベルク!……急いでくれ。
敵が……援護艦隊の敵が此処に辿り着いた。
MSが三機……いや、五機か?こちらに接近してきている。
この感じだと……このまま突入してくる勢いだろうな。
急いで片付けないと、勝ち目はなくなるぞ!』
シュウジからの通信は聞こえているものの戦闘中に答えられる訳も無く
返答をしないまま戦い続けていた。
何時まで戦い続けているのだろうか?時間的にはそんなに経っていないはずなのだが
何時間ものあいだ兵士を殺しつづけているような感覚に浸っていた。
一人殺せばまた一人、同じことの繰り返しが目の感覚を鈍らせているのか
見ているものがスロウモーションの様に流れつづけている。
今俺はどんな顔をしているのだろう?
薄ら笑いを浮かべながら殺し続けているのか?
それとも鬼神の如く鬼の形相で死を振り撒いているのか?
ふと、そんなことを考えてしまう。
まだそのほうが良いのかもしれない、そう思うのは表に現われる感情だからだ。
その思いとは裏腹にその顔には何も表れてはいなかった。
青い目は見るものを凍りつかせるような冷たい瞳。
表情は生きているのことを感じさせない人形のような表情。
ただ目の前の障害を排除する。
そして同じようなことの繰り返し、目の前にいた兵士の頭部を撃ちぬきそれが倒れるより速く
後ろの気配に対して銃口を向け引鉄を引く・・・・・・・・・・はずだった。
銃口の先には何時の間にかいたシュウジに背を預ける様にして
銃を構えているリナルドがいたそこで思考が一瞬停止。
それから俺に意識が通常通りに戻るまで時間はかからなかった。
辺りには紅い液体と人だったモノが捨てられた様に散らばっていた。
リナルドに向けていた銃口をゆっくりと降ろしマガジンを交換すると
腰にホルスターにしまい、ライフルのマガジンも取りかえる。
「ここはこれで終わりのようだな。
すまないなリナルド、戦いに意識が沈んでいたため銃を向けてしまった。
シュウジも何時の間に来ていたのかはわからなかったよ。
さっきの通信は聞こえていた早速だが道案内を頼む。」
彼等と話をしている顔は少しながら感情の覗えるものになっていた
【行動:レイモンドとシュウジ、リナルドと通信中(-0)会話(-0)マガジン交換(-2)
拳銃をしまう(-1)拳銃で攻撃(-1)】
【残り行動値:0】
【位置:O-15】
【機体状況:右腕損失、左足膝部損失、右足膝部損失、本体側面装甲各所損傷
コクピット内機械一部損傷、スラスター各部損失(出力50%低下)
左手マニュピレーター消滅】
【武装:(本体)ビームアックス、3連装ミサイルランチャー×2(残弾0)(左手甲部)ビームシールド、
ビームダガー×1本 】
【所持品:ディパック 水2g三本 十字架 聖書 特殊情報端末 チ○ルチョコ20個ほど
アサルトライフル 予備弾倉3セット 拳銃 予備マガジン4セット
手榴弾 4個 ナイフ 防弾チョッキ 首輪カバー】
【行動方針:ミッションスタート】
【同盟:01番 シュウジ=アサギ 14番 レイモンド=デリック】
サイコMK−2を駆る少女は満身創痍になりながらも、絶望せずに闘っていた。
ビギナ・ギナ を駆る機械は追いつめられ、絶望という擬似感情を感じ始めていた。
相変わらず周囲を舞う四機のMS。主砲射程内に接近してくる一隻の戦艦。
戦闘出来るのが不思議なぐらいのサイコMK−2。
(……残り戦闘可能時間も短い……推進剤を節約しなければなりませんね。)
そう思考していたとき、上方からビームとミサイル2発が接近してきた。
(デナン・ゲーの攻撃……くっ!)
ミサイルの内一発はマシンガントンファーで叩き落としたが、
もう一発は避けきれずに右下腕部を破壊してしまった。
ビームは瞬時に発生させたビームシールドでギリギリで弾き飛ばした。
そこで反撃に移ろうとしたとき……。
(熱源!?)
前方からの熱源に気が付いたゼファーは、ビギナ・ギナにそこに地面があるかごとき急制動をかけさせた。
直後、ギリギリの地点を通り過ぎていく巨大なビーム。
かわしきったにもかかわらず、その熱量が左腕のビームライフルとビームシールド発生器をを溶かした。
(艦隊からの攻撃……ですが左腕はまだ生きている……。
このままやられてばかりでは!)
思考が終了したとき、ビームが完全に通り過ぎていった。
その時、ゼファーを取り巻くMS達の陣形は、味方からの砲撃を避けるため、若干の揺らぎがあった。
無論、ゼファーはそれを一瞬で把握し、その隙を見逃さない。
左腕で腰にあるヒートナイフを取り出すと、
たまたま現在の軌道上にいたデナン・ゾンにそれを投げた。
そしてそれは、デナンゲーのパイロットが反応するより早く、頭部に突き刺さった。
コンピュータを失い、機能を停止するデナン・ゾン。
ゼファーはその後ろに回り込み、左腕でそれをしっかりと抱え込んだ。
機能を停止した敵機を、盾にしようと言うのだ。
(卑怯ですが……このような殺し合いをさせるあなた達には勝てませんね。
……さて……この敵達が味方を殺すような人たちでなければよいのですが、
元軍人である可能性がある以上、それも期待しきれませんね。)
【行動:攻撃回避・防御・回避(−3)ヒートナイフでデナン・ゾンを攻撃(−1)】
【残り行動値:0p】
【位置:O−15(ガンイージ):P−15(ビギナ・ギナ)】
【機体状況:ビギナ・ギナ:通信中(ガンイージ) コックピット損傷 左肩装甲融解 右下腕部損失
フィン・ノズル4個損傷、表面装甲損傷軽微 左足首に負荷 自爆装置無効化済
ガンイージ :通信中(ビギナ・ギナ ジャベリン ペズバタラ)
機体各所にダメージ、電子機器に被害、頭部大破 左右脚部損傷、左腕大破
右フロント・サイドアーマー破損 左サイドアーマー破損 脱出装置使用不可 自爆装置無効化済】
【参加者状況:右足重傷(処置済み)打撲 左目周辺に切り傷 防弾チョッキ着用 首輪カバー装着中】
【武装:ガンイージ:ビームライフル(残弾2)
ビギナ・ギナ:ビームサーベル×2 フック付きワイヤー&ウィンチ
F-90S用クルージングミサイル×1 ヒートナイフ×1
ドラム弾装式120mmマシンガン(残弾4斉射分)】
【所持品:ディパック(食料0.5日分 計画書 紙とペン 医療用セット 首輪カバー
自動小銃 マガジン×4 スタングレネード)
拳銃(残弾16発) 工具セット 杖 ヨーコの果物ナイフ (ゼファー) 】
【行動方針::"示す" 利用出来るモノは利用 突入】
『おうレイモンド。前いいか?』
いつもの模擬戦闘訓練のあと、ザムス・ガルの食堂でランチを取っていた俺に声をかけてきたのは、
俺たちザビーネ大隊と共にザムス・ガルに乗り組んでいるゼルゲス大隊の小隊長だった。
俺と同じ第4小隊長という縁もあり、時々話をしている。
「…お前か。別に前に座るくらい、いちいち断らないでもいい」
『それじゃ、遠慮なく』
俺の前に座ると、更に話し掛けてくる。
『あーあ。今日もまた模擬戦、俺たちの負けだよ。…全く、こうも負けが続くといい加減自分の適性
を疑いたくなってくるねぇ』
大袈裟なジェスチャーでそう言うと、これまた大袈裟に首を振っている。
たしかに大隊同士の模擬戦闘訓練は、今日も俺たちザビーネ大隊の勝利に終わっている。
「…わざわざ嫌みを言いに来たのか?…大体お前、自分で言うほど落ち込んでいないだろう」
『おっ、さすが黒の部隊の小隊長。分かっていますな』
体をテーブルに乗り出してニヤニヤ笑いかけてくる。
俺がこれをやったら周囲から非難の視線を浴びそうだが、こいつの場合、それが妙に憎めない。
「分かるさ。こっちから見ていても、日に日にお前等の部隊としての動きが鋭くなってきている。
まあ元々、才能があるからこそ、お前もこうして旗艦に乗り組んでいるんだからな…」
これは偽りのない事実だ。
ザビーネ大隊と訓練する事で、ゼルゲス大隊のレベルも確実にアップしてきている。
こちらも追い付かれまいと、日々切磋琢磨する。
これはクロスボーンにとっては好ましい現象と言えるだろう。
こうした部隊同士の相乗効果は、イコール軍としての強さに繋がるからだ。
『だけどレイモンド…。お前ホント俺の事名前で呼ぼうとしないな。聞く所によると、部隊内でも
名前で呼ぶのはザビーネ隊長と自分の部下だけって聞くぞ』
…まあそれも偽りない事実だ。
マリーを失った日から俺は、他人と深く交わる事を避け続けてきた。
だからと言ってその件をこいつに話すつもりは全くない。
ランチを食べ終わった俺は席を立ちながら言った。
「いつかお前がザビーネ大隊に配属されて、俺の部下になる事があったら名前で呼ぶ事にするよ。
…だが忘れるな。精鋭精鋭と言われて、格好良いって思っているかもしれないが…。
精鋭部隊っていうのは、いつの時代も最激戦区に投入されるものなんだぞ?」
(続く)
…思い出した。
確かに今目の前にいるベルガ・ギロスに乗っているのは、あのゼルゲス大隊の男だ。
モニターに映るその顔にも見覚えがある。
「…ああ、思い出したよ。たしかに俺はお前を知っている。
…まさかこんなところで会う事になるとは思わなかったがな…」
俺の言葉を聞いたベルガ・ギロスの男が苦笑するのが見えた。
『相変わらず俺の事を名前では呼ばないんだな、レイモンド。
もしかしたら覚えていないのかもしれないがね』
「…こんな月並みな事を聞くのは何だが…。…何故管理者側にお前がいる?
自分のいる組織が何をしているか……分かっているだろう」
何よりも先ず、この事を聞かずにはいられなかった。
クロスボーン・バンガードの人間が、何故こんな…。
その時男の顔に浮かんだのは、怒りとも悲しみとも取れる複雑なものだった。
『…全てはあの時に始まったんだよ、レイモンド…。
…お前も覚えているだろう。ベラ・ロナの宣言を。…あの時から…』
コスモ・バビロニア建国戦争がある程度の小康状態に落ち着いた頃、クロスボーンにベラ・ロナが
キンケドゥという青年を連れて帰還した。
一時期にせよ離反したベラ・ロナに対し、上の方ではその処遇に相当揉めたようだが、結局コスモ
・バビロニアの代表を務めさせる、という事で落ち着いた。
マイッツァーは年老い、弟のドレルはまだ若く、政治的な事に疎すぎるというのが理由らしい。
しかしこの後ベラ・ロナは、コスモ・バビロニアの根本を揺るがす宣言をしたのである。
彼女は皆を前にした演説で、明確に反貴族主義を表明した。
貴族が人民を導くという目的を持った国家の代表が、その根本を否定したのだ。
文字通りコスモ・バビロニアは揺れに揺れた。
そしてこの混乱は、当然の如く国家を二分する事態へと進展した。
すなわちベラ・ロナを支持する者と、弟のドレル・ロナを支持する者に分かれて内戦が勃発したのだ。
ベラ・ロナを支持したのは、以前からその才能を買っていたザビーネ隊長と、再編途中の黒の部隊。
それにここまでの戦闘でクロスボーンに投降した元連邦の兵士達。
ドレル・ロナを支持したのがドレル大隊を再編して作られた新生ドレル大隊、通称レッドバンガード
と、貴族主義を信奉する兵士達。
少数の兵士達が中立の立場を取り、静観していた。
レッドバンガードはたしかに手強い相手ではあったが、それでも再編途中とはいえ黒の部隊の実力は
頭1つ抜けており、無事勝利を収めるかに見えた。
しかしそこに立ちはだかったのが、ドレル・ロナ自らが駆る新型MS、ビギナ・ギナ2だった。
フロンティアサイドの戦闘で出現した、F91というガンダムタイプ。
ビギナ・ギナ2はその機体を研究しそれを踏まえて開発された新鋭機で、その恐るべき性能の前に
黒の部隊も戦死者が相次いだ。
この危機を救ったのがザビーネ隊長と、ベラ・ロナに付き添っていたキンケドゥ。
2人は協力してビギナ・ギナ2を撃破し、ベラ・ロナ陣営に辛うじて勝利をもたらした。
…そしてこの戦闘は、俺が黒の部隊として戦った最後の戦闘となった。
(続く)
一瞬の回想から我に返る。
「あの内戦の事はよく覚えている。…だが、ダメージは残るとはいえ、コスモ・バビロニアがなく
なったわけではないだろう。俺の質問の答えにはなっていない」
『…コスモ・バビロニアは…なくなったんだよ…』
「…なんだと」
一瞬その言葉の意味が飲み込めずに、俺は思わず聞き直した。
『内戦から数年後……かねてから建造されていた新造戦艦、マザー・バンガードが完成した。
本来なら地球侵攻時の旗艦になる予定だったらしいが、まだ内戦の傷が癒えてなかったしな。
で、とりあえず試験航海をしたんだが……そのまま、行方不明になっちまった』
「……本当なのか」
『本当だよ。ベラ・ロナもザビーネ隊長も、みんないなくなって……あとに残ったのは、抜け殻
になったコスモ・バビロニアだけだ。
…あとはもう、言わなくても分かるだろう?』
俺はシートにもたれて1つ小さく溜息をついた。
ベラ・ロナが行方不明になれば、コスモ・バビロニアにその代わりを務められる人物はいない。
病人がだんだん衰弱していくように、コスモ・バビロニアも崩壊していったのだろう。
『俺達は運良くこの組織に拾われた。だからこそ俺は、組織のやっている事が悪だとしても、そ
の恩に報いていかなければならないんだ…』
この男にも守るものがある。
自分の生活も、自分を頼る部下も、全てを抱えてきたのだろう。
例え自分の気に入らない命令を受け続けてきたとしても…。
『レイモンド……。お前にその気があるなら…俺達と共に来ないか?
ここでいたずらに絶望的な戦いを続ける事もないだろ』
「…正気で言っているのか」
『勿論な。…黒の部隊はある意味伝説の部隊だ。
その小隊長だったお前が来てくれれば皆の士気も上がるし、いつかの話みたいに、俺がお前
の部下になったって構わない』
伝説。
正直実感が湧かない。
俺達は特に何かをしたわけではない。
ただひたすらに、目の前の敵を倒していった。…それだけだ。
今やっている事と、何も変わらない。
…違うものがあるとすれば、それは…。
「せっかくの誘いだが、断る」
『……狩る者と、狩られる者……。所詮理解し合えない…という事なのか?』
「理解し合えないのなら、初めから話そうとは思わない。…ただそれが、少しばかり遅かった
だけだ。……今俺には…名前を呼び合える仲間達がいる。…そういう事だ」
(続く)
このプログラムの中で多くの出会いがあった。
俺にルイやアーネストがいたように、お互いに協力しあう参加者がいた。
俺の前にアシッドがいたように、命を削りあう参加者もいた。
…同じように生き残ってきた仲間達。
出会ってからまだ間もなくても、その間には単に時間などでは到底はかれない何かが常にある。
「俺の方も1つ質問をさせてくれ。…組織に拾われたのは、ここにいる奴等だけか?」
『…いや。2番艦にも部隊が配属されている。
…もしかしたら、他にもいるかもしれないな。…それがどうかしたのか?』
俺の中で1つの仮説が立ちつつあった。
だがそれを証明するものは、何もない。
「…こんな大掛かりな事をする組織だから、様々な時代の人間が係わっていると思っていたが…。
ブッホコンツェルンも、そのうちの1つだったみたいだな」
向こうの応答はない。
俺は確証があるかのように更に話す。
「だってそうだろう?いくら組織に時間を越える技術があるとしても、お前達をピンポイントで
拾いにこれる程情報を持っているわけではないだろう。
…要するに…お前達はブッホから組織に差し出された、貢ぎ物のようなものなんだよ」
モニターの向こうの顔が強ばるのが見えた瞬間、ベルガ・ギロスの左腕を狙ってビームキヤノンを
撃ち、同時にデナン・ゲーに向かって走っていく。
ベルガ・ギロスは何とかビームシールドで防御したが、体勢を崩されている。
デナン・ゲーはビームライフルでの迎撃は無理と判断したのか、ビームサーベルを抜いて構えた。
『その機動力の殺されたアインラッドで突破できると思うのか!』
繋がったままの回線から聞こえてくる声を無視してビームサーベルを抜くと、デナン・ゲーの手前
でバックにギアを切り替えながら切り掛かった。
(たしかにスピードはもう出せない。…だが、だからこそこんな動きが出来る!)
デナン・ゲーがビームサーベルを受け止めた瞬間、俺はそこを軸にしてタイヤをドリフトの要領で
横に滑らせると、そのままバックにギアを入れたままデナン・ゲーをパスした。
振り向こうとするデナン・ゲーの頭をビームキヤノンが吹き飛ばす。
その先にいるさっき出撃してきた部隊がこっちに気づき、狙いを定めつつある。
…だからと言って後に引けるわけがない。
【行動:ペズ・バタラ、サイコG、アビゴル、ガンイージ、ベルガ・ギロスに回線継続(0)
ビームキヤノン2発(−2)ビームサーベルで攻撃(−1)タイヤの操作(−1)】
【残り行動値:0p】
【位置:O-15】
【機体状況:右腕消失、頭部バルカン砲1門損傷、モニター一部使用不能、右肩装甲損傷、左肘
ジョイント負荷(40%)、胸部及び腹部装甲に凹みと歪み、ショットランサー1基消失
アインラッド:打撃と破片による回転不良(中)、ビームキヤノン1門破損、大きな振動】
【参加者状況:左肩負傷(処置)、左眼球裂傷(処置)、右手首切断(処置) 右肋骨骨折、
左大腿骨にひび、右上腕に銃創(処置)】
【武装:頭部バルカン砲×1、ビームサーベル×1、ショットランサー×1、ビームシールド
ビームマシンガン(90%)
アインラッド 武装:ビームキャノン×1(48%)、9連装ミサイルポッド×5】
【所持品:ディパック、水2?入り5本、食料21/3日分、蕎麦団子1個、 拳銃と自動小銃と弾倉×5
タッパーのカレー1つ、保冷シート2枚、書類の束、ペン、缶詰の段ボール、首輪カバー】
【行動方針:突入までの時間稼ぎ】
【同盟:ベルク、リファニア、シュウジ、リナルド】
>>33 「っ……。」
以前から、シュウジはベルクという人間について、疑問があった。
聖職者……のようだが、教会ではそのようなそぶりは見せなかった。
それに、MSの操縦技術はある程度の物があった。少なくともシュウジは軽く越える程の。
そして……目の前にいる者が誰なのか、自分でもいまいちよく分からなくなってきていた。
しかも、気が付いたときには、こちらに銃を向ける程だった。
「戦いに意識が沈んでいたため銃を向けてしまった。」と言っていたが、
こちらの存在に気が付かない程の物なのだろうか?
(……追求しても始まらないな。俺からにして、妙な過去なんだから。
闘いが終わったら聞けばいいだろう。)
そう自己完結して、マガジンを換えつつ、ベルクに言った。
「……危ないな。次から気を付けろよ。
入り口は……ほら、あっちだ。それからは一直線だから、真っ直ぐ進め。」
唯一、開いた隔壁の方を指さしつつ言う。
そこからは、レウルーラ内部の空気が流れてきているのか、周囲の煙が外に向かって流れていた。
マガジンを換え終わると、兵士達の死体の中から、ある物を探した。
「う……免疫がないと、キツいな……これは。」
混み上がってくる嘔吐感に耐えつつ、ある物を探す。
それはすぐに見つかった。兵士の死体からそれをはぎ取る。
それとは、通信機だった。それをディバックから取り出したノートPCに繋ぐ。
「侵入コードは……。よしよし、これで端末なしで隔壁を操作出来る。
行くぞ。ベルク、リナル……ド。」
ベルク達に指を指す動作と、通信で言うシュウジ。
だがその言葉は、途中で詰まった。代わりに、その表情が青ざめていく。
その視線は、格納庫の外を向いていた。そこには、新たに侵入してきた援護艦隊のMSがいた。
そのMSは、流石にすぐにライフルを撃つ事はなかったが、強制着艦した事による甲板の破片が、
シュウジを襲った。真っ直ぐに飛んでくる破片。大きさは、30p程だった。
「……がッ!?」
飛んでくる破片に驚く暇もなく、衝撃が身体を襲った。
ベルクとリナルドが、自分から急激に離れていく。
実際には、シュウジが反動により後ろに吹き飛ばされたのだ。
「……!!」
二度目の衝撃。背中が激しく痛む。壁に打ち付けられたのだ。
脳震盪により急激に遠くなる意識。だが、ギリギリのところで持ち直した。
「……げほッ……!」
続いて、激しく咳き込む。血の味を感じつつ自分の身体を視ると、破片が胸の辺りに突き刺さっていた。
だが、そこから血は出ていない。防弾チョッキが、破片を受け止めていたのだ。
しかし、破片が直撃した事による衝撃は、かなりのものだった。
「ベ……ク、……ルドっ、急……ぇ!」
息も満足に出来ない身体で、必死に叫ぶ。が、その言葉は途切れ途切れにしか発せられなかった。
そこで、再び咳き込む。すると、視界の一部が紅く染まった。
「……死……ぅ?」
【行動:マガジンを換える(−1)通信機を探す(−1)破片が直撃(−0)】
【残り行動値:2p】
【位置:O−15(ガンイージ):P−15(ビギナ・ギナ)】
【機体状況:ビギナ・ギナ:通信中(ガンイージ) コックピット損傷 左肩装甲融解 右下腕部損失
フィン・ノズル4個損傷、表面装甲損傷軽微 左足首に負荷 自爆装置無効化済
ガンイージ :通信中(ビギナ・ギナ ジャベリン ペズバタラ)
機体各所にダメージ、電子機器に被害、頭部大破 左右脚部損傷、左腕大破
右フロント・サイドアーマー破損 左サイドアーマー破損 脱出装置使用不可 自爆装置無効化済】
【参加者状況:右足重傷(処置済み)打撲 左目周辺に切り傷 防弾チョッキ着用 首輪カバー装着中 破片が身体を直撃 】
【武装:ガンイージ:ビームライフル(残弾2)
ビギナ・ギナ:ビームサーベル×2 フック付きワイヤー&ウィンチ
F-90S用クルージングミサイル×1 ヒートナイフ×1
ドラム弾装式120mmマシンガン(残弾4斉射分)】
【所持品:ディパック(食料0.5日分 計画書 紙とペン 医療用セット 首輪カバー
自動小銃 マガジン×3 スタングレネード)
拳銃(残弾16発) 工具セット 杖 ヨーコの果物ナイフ (ゼファー) 】
【行動方針::"示す" 利用出来るモノは利用 突入】
巨大なドーナツ状の構造物、『ゲート』。
その大きさは、中央の穴にコロニーが軽々と通過できるほどのものである。
その中央の穴に、今異変が起きつつあった。
穴を取り巻く用途不明の数々の機械が、ギリギリと動き始める。
真空の宇宙空間に、稲光が走る。
穴の向こうに見えていた星々の姿が、グニャグニャと揺れ始める。
穴を中心として、時間と空間が捻じ曲げられつつあるのだ。
* * *
「時空転移システムを動かしているのか?」
「やはり狙いは時空間を越えた逃亡か。しかし『彼女は』絶対に逃がさん」
「門を通りぬけるには、一度宇宙に出なければならない。しかし、港湾部への道は全て閉鎖してある」
「
「U-28のシステム異常の方は、まだ直らんのか? あそこにはあの女の乗ってきたコアブースターがある。
何か変な細工でもしてないとは限らん。例えば、自分を迎えにくるような」
「そろそろシステム再掌握完了します。まもなく港湾部に兵士が到達するはずです」
* * *
「……ハロR。こっちは、準備、いいわ。時の壁の向こうへ、行って頂戴。
まずはあなたに、『始まりよりも前』に行って貰わないと」
「ハロR、リョウカイ! コレヨリ、ハッシンスル!」
……U-28の港湾部。
停泊していた一機のコアブースターが、無人のまま動き出した。
U-28で続いていたシステム異常を乗り越え、ようやく港に突入してきた武装兵の目の前を、一気に駆け抜ける。
コクピットで何本ものコードを咥え込んでいるのは、紅いハロ。
リガ・ミリティアの一少年兵の持っていたハロを参考に作られた彼。
彼はそのオリジナルと同様、高い自己判断能力とMSの操縦能力を持っていた。
もっとも、その操縦技術は「一応動かせる」というレベルに留まり、ゼファーのような戦闘力はないのだが……
UC0153の技術を内に含んだ人工知能が、UC0079の宙域戦闘機を駆り、UC0090を目指し、飛び出した。
【リーアの行動:時空転移システム起動(−1p)、転移先時間設定(−1p)
通信(U-28にいるハロR)(−1p)、ハロR発進(−1p)】
【位置:リーア:V-29(ゲート内、時空転移システム制御室)
ハロR:U-28(ゲート外宇宙空間)】
【リーアの戦力:現在生身。U-28のコアブースターに赤いハロ(ハロR)】
【リーアの所持品:血染めの白衣、紫色のハロ(ハロV)】
【リーアの状態:左腕動かず。右足骨折。出血多量。麻薬で無理やり行動中】
【リーアの行動方針: コアブースター発進 】
レーダーで確認できる機数は4、5機。
種類なんていちいち確認する暇などありはしない。
ここからレウルーラに戻る道の選択肢は2つ。
1つ、最短距離を通り一気にデッキに辿り着く。
2つ、少しでも安全策を取って、ビームシールドを展開できる左側を常に向けながら進む。
…どれもこれも一長一短だが、2は選択し辛い。
どうにも突破するのに時間を要すると思われる上に、スピードの出ないタイヤでは敵を引き離す事
ができず、いたずらに攻撃を受け続けてしまう可能性がある事が難点だった。
…そうと決めたらあとは度胸1つ。
1の案も攻撃を受ける事には違いないが、それも少しの我慢。
俺が最短距離で早く辿り着くか、奴等の砲火が俺をばらばらにするかだ。
再びギアを戻すと、タイヤの向きを変えてできる限りのスピードで走り始めた。
敵機は2、3機がレウルーラを目指しているらしく、その分だけ僅かに編隊に隙がある。
「…ここから!」
タイヤを左右に切り返し編隊の隙を広げると、前方に見えるレウルーラに向かって一気に突っ切ろ
うと飛び込んでいった。
だが編隊が動きを乱されたのは一瞬だった。
すぐさま立て直すと、左右からビームライフルを雨霰と浴びせてくる。
「ちぃ…!こんなスピードじゃ、上手く乱せなかっ…たか……っ!?」
絶えまなく鳴り響く警告音と、目のくらむようなビームの雨。
タイヤの安定しない軌道が自然と回避行動の役目をしているようだが、それとて焼け石に水程度の
効果しかないだろう。
ビームシールドは展開しているが、果たして防いでくれているのか。
体を震わせる振動がタイヤの振動のものなのか、それとも攻撃の命中によるものなのか全く分からない。
小さな振動とともにカメラが大きくぶれ、全方位モニターの右側が消えた。
同時に花火が弾けるような音が続けざまに聞こえてくる。
頭部をかすった何かが、損傷していたバルカン砲の弾を誘爆させたのか。
それ以外にも所々で何かが削り取られるような音が聞こえる。
機体状況を見る余裕もないから、何が起きているかなんて想像するしかない。
1つだけ確信できるのは…俺もジャベリンもまだ生きて、前に進んでいるという事だけだ。
そうだ。
俺はまだ生きなければ。
生きて…約束を守らなければ。
再び別の振動が来て、割れたモニターガラスが右肩に突き刺さった。
「……っ……くぁ…!」
うめき声は上げても、俺の目はレウルーラから離れない。
…俺は約束した。
MS戦の要たるリファニアを守ると。
俺は…その約束をまだ全く果たしていない!
(続く)
「まだ…まだあぁ!」
自分に言い聞かせるように叫ぶと、更にフットレバーを踏み込む。
その時突然鳴り出した新たな警報。
思わずコンソールを見ると、ずっと不安定な回転をしていたタイヤが過熱して、搭載していた
ミサイルが誘爆寸前になりつつあった。
「タイヤは…もたない…か?」
ジャベリンの行く手を阻むようにギラ・ドーガが現れるのが分かる。
その時点で俺は決断した。
「……邪魔するな旧型ぁ!」
ビームマシンガンを乱射するギラ・ドーガにスピードを落としつつ体当たりした。
ギラ・ドーガは僅かに後退したが、大きさを利してタイヤを受け止めようとしている。
「お前の前にも…そうしようとした奴がいたよ!」
叫びながらジャベリンをタイヤから素早く脱出させると、過熱したミサイルポッドにビームマシ
ンガンを撃ち込んだ。
瞬間、太陽と見間違えそうな光が広がり、タイヤはギラ・ドーガを巻き込みながら大爆発を起こす。
爆風で機体を加速させながら、レウルーラのデッキに突っ込む。
そこには着艦したばかりのデナン・ゾンがいた。
「お前も…邪魔をするな!」
【行動:ペズ・バタラ、サイコG、アビゴル、ガンイージ、ベルガ・ギロスに回線継続(0)
タイヤで体当たり(−1)ビームマシンガンを撃つ(−1)レウルーラ到着(−1)】
【残り行動値:1p】
【位置:O-15(デッキ)】
【機体状況:右腕消失、頭部バルカン砲1門損傷、モニター30%使用不能、右肩装甲損傷、左肘
ジョイント負荷(40%)、胸部及び腹部装甲に凹みと歪み、ショットランサー1基消失
誘爆により頭部破損(小)、機体各所に傷、右足膝下消失】
【参加者状況:左肩負傷(処置)、左眼球裂傷(処置)、右手首切断(処置) 右肋骨骨折、
左大腿骨にひび、右上腕に銃創(処置)ガラスにより右肩裂傷】
【武装:頭部バルカン砲×1、ビームサーベル×1、ショットランサー×1、ビームシールド
ビームマシンガン(85%)】
【所持品:ディパック、水2?入り5本、食料21/3日分、蕎麦団子1個、 拳銃と自動小銃と弾倉×5
タッパーのカレー1つ、保冷シート2枚、書類の束、ペン、缶詰の段ボール、首輪カバー】
【行動方針:突入までの時間稼ぎ】
【同盟:ベルク、リファニア、シュウジ、リナルド】
「ゲート起動! 安定化まで、あと30分ほどかかる模様!」
「U-28港湾部から、あの女の乗ってきたコアブースター、出ます! 無人のようです!」
「防衛MS、出撃せよ! コアブースターを落とせ!」
「ゲートの安定の前に、V-29に寄るはずだ! 防衛線を張れ!」
コアブースター発進から遅れること数分、雑多なMSが飛び出してきた。
手に手に武器を構え、年代も陣営も様々なMSが陣形を組む。
それは、1年戦争の支援機には、到底突破など不可能な強固な陣形で――
しかし、彼らの眼前、コアブースターは全く違う方向に直進していった。
* * *
「ゲート安定マデ、アト30分!」
「いいえハロV、時空間双方を完全に安定させる必要は、ないわ。
UC0091年あたりを中心に、時間軸の揺らぎをプラスマイナス1年以内に。
空間座標も、地球圏内なら別にどこでもいいわ。
早く、その範囲内に、押さえ込んで……」
「……ジョウケン、タッセイ!」
「ハロR! 行って!」
リーアは、通信機に向けて叫んだ。血の混じった唾が飛ぶ。
モニタの中には、ゲートの中心、光の渦に向かって一直線に疾走るコアブースターの姿が……
* * *
コアブースターは飛ぶ。
その主人のいるはずのV-29ではなく、ドーナツの中心、時空の門の開くV-28に向かう。
未だ完全に安定せず、行き先の揺らいでいる不安定な時空の穴。
「……自殺行為だ! どこに着くかも分からないのに!」
「いや、しかし……あの状態で時を越えられると、追跡できない!」
「打ち落とせ! 何を企んでいるにしても……落とせば同じだ!」
防衛MSたちは、慌ててコアブースターを追う。
しかし追いつかない。一年戦争の機体とはいえ、単純な直進速度なら大抵のMSよりは速いのだ。
一部の可変MSがMA形態になり、その背を追いつつビームを放つ。
無数の光の一つが、コアブースターの後部を貫くが……直後、分離。
爆風を背に、ハロのみを乗せたコアファイターは、渦巻く光の向こうに吸い込まれ、消え去った。
【リーアの行動:時空転移システム調整(−1p)、通信(継続通信)(ハロR)(−0p)、
ハロR攻撃回避(ブースター部切り離し)(−1p)
ハロR移動(U-28→V-28→『時空間の向こう側』)(−2p)】
【位置:リーア:V-29(ゲート内、時空転移システム制御室)
ハロR:????(時空の壁の向こう側?)】
【リーアの所持品:血染めの白衣、紫色のハロ(ハロV)】
【リーアの状態:左腕動かず。右足骨折。出血多量。麻薬で無理やり行動中】
【リーアの行動方針: 全てはこの時のために 】
デッキに降り立ったデナン・ゾンは、傍のアビゴルにショットランサーを撃とうとしている。
…それだけはさせられない。
アビゴルはこの中で唯一まともに動ける貴重な機体だ。
それをこうも簡単に失ってしまっては…!
俺は片足も失って飛行体勢の悪くなったジャベリンのバランスを何とか取りつつ、ペズ・バタラの
開けた穴からデッキ内に飛び込もうとした。
…だが次の瞬間、デナン・ゾンはくるっと機体の向きを変えると、ジャベリンに向かってショット
ランサーを撃ってきた!
「うぉっ…!」
攻撃を阻止すべく、ビームシールドを前面に立てて体当たりをしようとしていた俺は、この攻撃
に全く対応できなかった。
『ガツン!』
という衝撃とともに、展開していたビームシールドは左腕から引き剥がされて宙を舞う。
同時に突っ込もうとしていたジャベリンも、ショットランサーの衝撃に勢いを殺されてデッキに
つんのめるように着地した。
尚もビームサーベルを構えて突きにこようとするデナン・ゾンに、何とか牽制射撃を放ちその場
にとどまらせた。
ゆらりとジャベリンを立たせると、ビームサーベルを抜く。
ショットランサーは撃っても、おそらく躱されるのがおちだ。
********************************
デナン・ゾンのパイロットはコクピットで舌打ちしていた。
彼がジャベリンに放ったショットランサーはまさに必殺のタイミングだったが、ジャベリンが偶然
展開していたビームシールドによって失敗に終わったからだ。
ジャベリンのビームシールドを破壊してはいたが、あまりに見合わない成果だ。
彼はメガマシンガンを放るとビームサーベルを構えた。
メガマシンガンは確かに強力だが、MSの、特にコクピット周辺の装甲を貫くには、相当に近寄ら
なければならなかった。
それならばまだサーベルの方が勝手が良い。
ジャベリンを見る。
…どう見たって戦闘を継続させているのが不思議なくらいの状態だ。
右手足は無く、機体の所々が傷付き歪んでいる。
今こうして向かい合っているのだって、無重力だからできる事で、本来ならとうにオシャカだ。
(続く)
彼はおもむろに左腕のビームガンを撃ち、同時に踏み込んでビームサーベルを突き出した。
命令の事もあるからこビームガンで倒すつもりはない。
要は少しだけジャベリンの気を引ければいいのだ。
ビームガンは避けたジャベリンの脇を抜けていったが、片足の悲しさか、その動作もぎこちない。
…この一撃をコクピットに加えれば、それだけで終わる。
少なくとも彼はそう確信していた。
彼はコロニー警備隊の出身で、黒の部隊は隊長の名前くらいしか知らなかった。
あのベルガ・ギロスのパイロットなら、こんな安易な攻撃は仕掛けなかっただろう。
********************************
ビームガンとビームサーベルの同時攻撃。
殆ど無視していたビームガンは多少体勢は崩したが難無く躱す。
本命は次のビームサーベルである事は見当はついていた。
何故なら、このデナン・ゾンはアビゴルに向かってショットランサーを撃とうとしていたからだ。
ショットランサーは元々、コロニー内での戦闘を考慮したクロスボーンが、MSの融合炉を破壊し
ないようにする為に開発した武器だ。
それをアビゴルに使うという事は、MSの爆発で無用な傷をレウルーラに与えたくないと管理者側
が考えているに他ならない。
ならば狙ってくるのはコクピットのみ。
より確実を期すならば、ビームサーベルの攻撃が最も有効だ。
…であるならば対応するのは容易い。
コクピットを狙うが故に、ビームサーベルの軌道は悲しいくらいに読める。
デナン・ゾンが踏み込むのを見た俺は、僅かにスラスターを吹かして機体を右に動かした。
左腕を掠めるように突き出されたビームサーベル。
右腕が伸びきったデナン・ゾンの動きがぴたりと止まる。
その胸には、ビームサーベルの柄を持ったジャベリンの左手が押し当てられていた。
「確実を期すっていうのは…こうやるもんだ」
次の瞬間、柄から伸びた光の刃が、デナン・ゾンのパイロットをコクピットごと消滅させた。
完全に動きを止めたデナン・ゾンを退かし、周囲を見渡す。
その視線が止まった先には、あのバイクが佇んでいた。
さっそくジャベリンを跨がらせる。
…サイズの小ささはどうしようもないが、どうやら操縦は無線操作らしく少し安心した。
さて、果たしていきなりでどこまで動かせるか…。
【行動:ペズ・バタラ、サイコG、アビゴル、ガンイージ、ベルガ・ギロスに回線継続(0)
ビームマシンガンを撃つ(−1)デナン・ゾンの攻撃を躱す(−1)ビームサーベル
で攻撃(−1)メガライダーに乗る(−1)】
【残り行動値:0p】
【位置:O-15(デッキ)】
【機体状況:右腕消失、頭部バルカン砲1門損傷、モニター30%使用不能、右肩装甲損傷、左肘
ジョイント負荷(50%)、胸部及び腹部装甲に凹みと歪み、ショットランサー1基消失
誘爆により頭部破損(小)、機体各所に傷、右足膝下消失、ビームシールド破壊
メガライダー:異常無し】
【参加者状況:左肩負傷(処置)、左眼球裂傷(処置)、右手首切断(処置) 右肋骨骨折、
左大腿骨にひび、右上腕に銃創(処置)ガラスにより右肩裂傷】
【武装:頭部バルカン砲×1、ビームサーベル×1、ショットランサー×1
ビームマシンガン(85%)
メガライダー:メガバズーカランチャー(100%)】
【所持品:ディパック、水2?入り5本、食料21/3日分、蕎麦団子1個、 拳銃と自動小銃と弾倉×5
タッパーのカレー1つ、保冷シート2枚、書類の束、ペン、缶詰の段ボール、首輪カバー】
【行動方針:突入までの時間稼ぎ】
【同盟:ベルク、リファニア、シュウジ、リナルド】
その方法に思い至ったのは、第二回大会の資料を漁っていた時だった。
『ティーチャー』としての準備の過程で、彼女は『生徒』だった頃には見れない資料も手にしていた。
初期支給品・中途でのプレゼントとして用意された『過去の大会のデータ』も、その一つ。
そこには、『生徒』であった頃には知る由もない各参加者のプロフィールも書かれていた。
もちろん、他ならぬ『彼』についての個人情報も。
「案外、近い年代の出身だったのね……。
『プログラム』のために拉致されてなかったら、ひょっとしたら自然に出会っていたかもね」
彼女は手にした髑髏に語りかけた。
そう口にして初めて、彼女は自らの成すべきことを知った。
* * *
ゲート中央部、光輝く時空の穴に、ブースター部を失ったコアファイターが消える。
揺らぐ光の前で、追跡するMSたちが慌てて足を止める。
彼らとしても追撃したいのは山々なのだが……
ゲートが安定していない今の状態では、通過するだけで非常に危険だ。
そしてもし無事通過できても、目標座標を確認していないため、行ったら行ったきり戻れなくなってしまう。
その様子をモニターで確認しながら、満身創痍の彼女は微笑んだ。
「ハロRが、上手くあの時代の『私』と出会えるといいんだけど……
あとは、祈ることしかできないわね」
ここまでの道のりが綱渡りの連続ならば、この先の道のりは偶然頼みの連続だ。
けれども、既に賽は投げられた。
その賽の目を彼女が見ることはできないけれど、やれるだけのことをやり遂げ、彼女は満足だった。
張り詰めていた気持ちが緩んだのか、薬が切れてきたのか。
彼女は、虚脱感に襲われた。
左肩やら全身やらが少しずつ痛みだし、出血のせいか寒気を感じる。視界も霞んできた。
「このまま、ずっと寝てたい気分だけど……
あの子たちにも、応えてあげないとね」
まさに最期の力を込めて。
震える手を伸ばし、彼女は通信機を操作した。
* * *
『……はい、みなさん、元気に殺し合いしてますか? 管理側のみなさん相手に。
私は――元気とは言い難いですね。
でもみんなのお陰で、私の『目標』は、達成しましたよ。
本当に、ありがとう。そして、色々と、ごめんね。
唐突ですが……みなさん、いつの時代の、どこに、行きたいですか?
多少誤差も出るから、あんまり細かい指定もできないですけど。
全体通信で言ってくれれば、こっちにも聞こえますから。
誰かが応えてくれたら、その時空に設定するわ。
ソッチも大変だろうし、相談する余裕もないかもしれないけど……
なるべく、早めに教えてね。
コッチも、どれだけ持つか、分からないですから。
返事できる自信ないから、今のうちに説明しておくわね。
V-29まで来ると、巨大なドーナツ状の構造物があるわ。
そのドーナツの穴に、飛び込んで。
飛び込む時は、一緒に行きたい者同士で、MSの手を繋ぐなり、同じ乗り物に乗るなりしてね。
でないと、行き先がバラバラになっちゃうから。
飛び込んだ後の追っ手の心配は、当面しなくていいわ。
じゃ……さよなら。先に逝っておくわ。
みんなはなるべく、『コッチ』には来ないように、ね」
* * *
全体通信越しにも、彼女の息遣いの荒さが漏れ聞こえただろうか?
彼女は通信を切ると、その場にへたり込んだ。
壁に背を預けたまま、時空転移システムの制御盤に繋がったハロVに声をかける。
「……ハロV、事情は、分かったわね?
全体通信使って、生徒の誰かが移転先の希望を言って来たら、それに従って転移システムを設定して。
完全に安定させないで、ほんの少し揺らぎを残すように」
「ハロV、リョウカイ!」
「新しい転移先にゲートを設定した後、即座にシステムをロック。
後から操作できないように、なるべく時間を稼げる仕掛けをお願い。
ハロV自身がいなくなっても、大丈夫なようにね」
「リョウカイ! リョウカイ!」
高いプログラム侵入・操作能力を持つ人工知能、ハロV。
彼に全てを託し終えた彼女は、壁に背を預けたまま目を閉じた。
ものすごい眠気と、疲労を感じていた。
【リーアの行動:全体通信(−2p)、ハロVへの指示(0p)、ハロV時空転移システム準備(−1p)】
【位置:リーア:V-29(ゲート内、時空転移システム制御室)
ハロR:????(時空の壁の向こう側?)】
【リーアの所持品:血染めの白衣、紫色のハロ(ハロV)】
【リーアの状態:左腕動かず。右足骨折。出血多量。極度の疲労。瀕死】
【リーアの行動方針: 】
↑
(名無しになってしまいましたが、49は私の行動です。スレ汚しスイマセン)
ビギナ・ゼラを退けたリファニアの脳裏に、突然、迫り来る破片と、血のイメージが飛び込んで来た。
胸を襲う呼吸困難を起こしかける程の鈍い痛みが、リファニアを責め立てる。
一瞬、リファニアは何も理解しないうちに自らの身に死が迫ったのかと思ったが……違う。
次第に、血のイメージにシュウジの姿が重なっていき、それが誰の痛みか理解した。
(……そんな……ダメ、シュウジさん、ダメ……。
誰も、死なせない……死なせたら、私達の負けだよ……!)
通信機のスイッチを叩き、ゼファーの駆るビギナ・ギナへの回線を繋ぐリファニア。
「……ゼファー、ゼファー!
シュウジさんが、シュウジさんがっ……危ないかも、知れないっ!」
リファニアの視線が、敵機に囲まれながらも奮戦するゼファーのビギナ・ギナへと向けられた。
ゼファーは良く戦っていたが、次第に敵の数に圧されつつあった。
元々、ゼファーの機体も無傷では無かったのである。
ノズルの損傷により推力の低下した機体で、あれ程までの機動をやってのけるゼファー。
推力の低下はパイロットの耐G能力を無視した機動により、減速を最小限に抑える事で補う事は可能だが、
その戦い方では推進剤の消耗は一段と激しくなってしまう。
……時間を置けば置くほど、ゼファーにとってこの戦いは不利になってしまうのだ。
(……私と同じで、ゼファーも満身創痍……でもっ!)
「ゼファーって確か、希望の西風とか、そんな意味でしょ?
だったら、こんな所で落ちる訳にはいかないじゃないっ!
……奴等を突破して、皆を助けに行こうっ!」
ゼファーを激励するリファニア。
感情の宿るはずもないプログラムに叫んでも無駄だと思えるかも知れない。
だが、シュウジとの遣り取りを見るかぎり……ゼファーには人格や感情に似たものがあるようにも感じられる。
だからこそ、ゼファーという名を与えられたのではないかとも思えた。
どちらにせよ、少なくとも今のリファニアにとっては共に戦う仲間である事には変わりない。
激励の後、迫り来る二隻の敵艦へと機体を向け、サイコに残った70パーセントの推力を全開にして、突撃をかける。
自棄になった訳ではない。
敵艦が前進してくるという事は、奴等は多少の被害など恐れずに、本腰を上げてこちらを潰しに来たという事だ。
……こうなっては、後退すれば後退するだけ厳しい追撃に晒される事となる。
活路を見出すには……こちらも臆せず前に進むしか、ない。
先程ビギナ・ゼラと共に攻撃をかけてきていたデナン・ゾンが、リファニアを追撃してくる。
「……見逃してくれる筈もないよね……くっ!」
敵機の左腕のビームガンより放たれたビームが、サイコの右腕に着弾した。
一応はまだ形を留めているものの、すでに右腕はその機能をほぼ失っていた。
火器を失い、サイコミュ・ハンドも飛ばせないばかりか、マニュピレーターとしての機能すら怪しい。
「……このままじゃ、さすがにっ……!けどね……。」
サイコをMA形態に可変させるリファニア。
盾を失っている事でバランサーに異常が出ていたが、それはあくまでも重力圏の運用での話で、
宇宙ではさほどの問題ないようだ。
「……この形態なら、推力が低下した今のサイコでも、並のMS程度の機動力は出せる。
敵機よりは遅いけど、それだけの速度が出せれば、私には充分だよ。
見せてあげる、このサイコの最も得意とするのが、対艦戦闘だって事をね。
……行けぇっ!」
そのまま、敵艦へと突撃をかけるリファニア。
自機の後方の離れた所を、二基のビットに追従させていた。
※ ※ ※ ※ ※
『敵MS、低速で接近!』
「……自殺願望でもあるのか?
このザムス・ガルの対空砲火の前に、叩き落とされるのが落ちだというのに。」
ザムス・ガル一番艦の艦橋で部下の報告を耳にした艦長は、サイコが無謀な特攻をかけるつもりだと理解した。
『……敵機、Iフィールド喪失!』
友軍機の攻撃により、敵機がすでにIフィールドを維持する事すら困難な状態にある事が暴かれる。
「……終わりだな。友軍機の射線上からの離脱と共に、一斉射。一瞬で蒸発させてやれ。」
勝利を確信した艦長の命令により、クロスボーンの旗艦となるに足る大型艦が、その持てる火力の全てを解き放つ。
虎の子のMS部隊に深刻な被害を与えた旧世紀の亡霊の一体を、完全に消失させるべく。
※ ※ ※ ※ ※
デナン・ゾンの追撃が止む。
異変を感じたリファニアは、自らを捉えようとする殺気の流れを感じ取るべく、感覚を開放させた。
蜘蛛の巣のようにサイコを絡み取らんとばかりに広がる殺気の網を感じる。
敵艦の中の幾つもの狩人の目が、リファニアのサイコを捉える。
まさに、砲火がリファニアを焼き尽くさんと放たれようとしていた。
「……完全に、潜り抜ける必要なんてない……。
ほんの小さな隙間があれば……それでいいの……。
………あそこっ……!」
リファニアが見た僅かな殺気の隙間。
二隻の敵艦の間に飛び込む進路に、サイコの機体より僅かに狭く感じられる殺気の隙間が確かにあった。
自らの感覚を信じ、飛び込むリファニア。次の瞬間雨あられと降り注ぐビームの嵐。
「……うああああああっ、死ねる、かぁっ!」
機体の各所をビームで抉られつつも、リファニアはただ前へ、前へと機体を進める。
「……抜けたぁっ!!」
右腕と左脚を完全に喪失、右脚の側面を浅く抉られ、頭部を覆うカバーを吹き飛ばされ、
機体の質量を大きく低下させつつも、サイコの姿は健在だった。
二艦の間に入り込んだ今の状態ならば、敵艦の砲火を封じる事ができる。
しかし、リファニアはなおも機体を前へと進めて、敵艦の後方へと回り込もうとしていた。
※ ※ ※ ※ ※
『……敵機、健在!なおも低速で向かって来ます!』
「何だと……?
馬鹿者、何をやっている!これ以上の接近を許す前に落とせ!」
当然、今の砲撃を潜り抜ける事など不可能だと思っていた艦長は、苛立ちを隠せずに部下を叱責した。
『……敵機、止まりません……!』
「そんな筈はなかろうが!奴の機動力と図体では、この砲火を潜り抜ける事などできる筈もない!
パイロットの問題ではない、不可能なのだ!」
『ビ、ビームは確かに命中しているのです。
ですが、止まらないのです……!』
狼狽した声で報告を続ける部下自身、何故敵機が無事なのか理解できてはいない。
『て、敵機、本艦の側面へ!僚艦との間に入りますっ!』
「ちっ……本艦は全速前進!
このまま敵機を後方へ抜けさせろっ!
MSに敵機を抑えさせつつ本艦は反転、後に敵機へ再度一斉射撃だ!」
この状態では、下手な砲撃は僚艦を傷つける事となる。
ならば、このままサイコをやり過ごすしかない。
デナン・ゾンに指示を出し、サイコをさらに追撃させ、艦の転進中にサイコの攻撃に晒される事を防ぐのだ。
『敵機、本艦の後方に抜けました!』
「……馬鹿め……今度こそ、逃げられはせんぞ……?」
※ ※ ※ ※ ※
敵艦の脇を一気に抜け、艦の後方に回り込んだリファニア。
艦砲射撃の前に一時離脱した先ほどのデナン・ゾンが素早く追撃に舞い戻り、リファニアのサイコを追い立てる。
一見、リファニアのサイコは艦に攻撃をかける隙もなく、一方的に追い立てられているだけのようにも見えるが……。
「……みえたっ!あの光っ!」
サブモニターに映った機体後方の映像で、リファニアは転進する敵艦の姿を確認していた。
強引に旋回し、側面に何発かデナン・ゾンの放ったマシンガンの弾を食らいながらも、再び敵艦を前方に捉える。
いつの間にか、リファニアのサイコに追従していた筈のビットの姿が消えていた。
リファニアが次なる行動に移ろうとしたまさにその時。
突然、血に染まりつつある女のイメージが飛び込んできた。
「……リーア・ミノフスキー……!?」
この感じは、そうだ。以前感じた、彼女の胸の内に宿る、ほのかな灯火。
引き寄せられた者の身を焼き、ほんのりと輝き続ける灯火。限りなく絶望に似た希望。
まさにリファニア達は、その炎に焼かれようとしているのかも知れなかった。
……もっとも、少なくともリファニアは、それを承知した上で今の戦いに望んでいるのだ。
たとえ、リーアが自らの目的の為にリファニア達を利用しているのだとしても、
おそらく、彼女の導きがなければ、僅かな希望すらも生まれて居なかっただろうから。
だが、その灯火は……何故か、次第に彼女の中から薄れていった。
消えた、という訳ではない。むしろ、解き放たれた……そんなイメージの方が、正しい。
それと共に、彼女の生気までもが失われていくような感じがした。
>>49 次いで、コックピット内、いや、この戦場全てに流れた全体通信に、戦場の動きが止まる。
管制側にとっては、裏切りのティーチャー。
そして、残る参加者にとっては、少なくともリファニアにとっては、かつては倒すべき相手だった女。
……彼女の声は、死の匂いに満ちていたが、どこか満足感のようなものが、感じられた。
リーア・ミノフスキー。
絶対に許せない女ではあったが、反面、絶対にこんな所で死なせてはならない人だった。
「……駄目よ、ダメっ!
あなたは、死んじゃダメな人でしょっ!?
もう一度会って、頬の一つでも叩いてやらなきゃ、私、納得できないんだからっ!!
謝ったって、駄目なんだからっ!!」
その叫びがリーア・ミノフスキーに届かなかったとしても、リファニアは叫ばずには居られなかった。
リファニアの被るメットの中には、いつの間にか大粒の涙が舞っていた。
叫びに乗せた理由だけではなく、リファニアは、本心からリーアに死んで欲しくはなかった。
【行動 : ビギナ・ギナへ回線接続(-1)、ビットコントロール継続(0)、変形(-1)、
紙一重の回避?(-1)、敵艦の後方へ(-1)、残0 】
【位置 : P-15 】
【機体状況 : MRX-010サイコガンダムMk-U
全身の装甲がボロボロに、右脇腹と右脚側面のビームで抉られた損傷、左脚ほぼ喪失、
右腕ほぼ喪失、MA時コックピット部増加装甲損失、背面に損傷、
スラスター損傷(推力70%)、アポジモーター幾つか損傷、MA時バランサー異常、Iフィールド停止
自爆装置改造済み、MA形態、攻性プログラム&『盾』ダウンロード済み、ジェネレーター過負荷 】
【パイロット状況 : 頬にうっすらと傷痕、右肩軽傷(治療済)、頭軽傷(包帯巻)、左腕重傷(処置済み)、
ノーマルスーツ着用、メイク済み♪、感覚開放、サイコミュによる負担、首輪カバー装着 】
【武装: 胸部3連装拡散メガビーム砲(一門破損)、リフレクタービット×2、(大型ヒートグレイブ、メガバズーカランチャー)
腕部サイコミュ式 ビームソード×1、全身メガビーム砲×多数(総数半分以下に減少) 】
【方針 : 『揺るがせてはならない夢』、自分の意志で綺麗に生きる、誰も死なせない! 】
「……!?」
向かい合った敵を撃ち倒し、自動小銃のマガジンを交換したリナルドは
冷たい氷が背中に触れたような感触と共に黒いものを感じ取り、
素早く振り返って拳銃を向けると、その先には彼に銃口を向けたベルクがいた。
「ここはこれで終わりのようだな。
すまないなリナルド、戦いに意識が沈んでいたため銃を向けてしまった。
シュウジも何時の間に来ていたのかはわからなかったよ。
さっきの通信は聞こえていた、早速だが道案内を頼む」
「……ふぅ……」
拳銃を腰のホルスターに戻し、辺りを見回す。
死屍累々とはこういった情景を指すのだろうか。
普段の彼なら顔を顰めて吐き気のひとつでも催しただろうが、今の彼にそんなことは無かった。
「……危ないな。次から気を付けろよ。
入り口は……ほら、あっちだ。それからは一直線だから、真っ直ぐ進め」
シュウジの説明に、指を指された方を向く。
周辺で唯一開かれた隔壁だ。
その時、艦を振動が襲った。
「侵入コードは……。よしよし、これで端末なしで隔壁を操作出来る。
行くぞ。ベルク、リナル……ド」
急にシュウジの声が変わり、そして止まる。
あわせて振り返ったリナルドも、一瞬止まらざるを得なかった。
いつの間にか、デッキにMSが入り込んでいたのだ。
そのため、何かの破片がリナルドたちに向けて飛んで来ているのが見えた。
「くっ……うわっ!」
咄嗟に自動小銃の銃身を掴み、銃把で破片を振り払うが、あまりの衝撃によろけてしまう。
だが、特にダメージも無く切り抜けることができた。
(くそっ、無人の機体を潰す気か!)
だが、そこにレイモンドのジャベリンが割り込んできた。
ここは任せても大丈夫そうだ。
シュウジとベルクはどうしただろうか?
リナルドは声を張り上げた。
「二人とも、無事か!?」
だが、振り向いてもシュウジはそこにいなかった。
しかし、視線を少し先へ向けると、そこには防弾チョッキを纏い流れるノーマルスーツが見えた。
リナルドは、すぐにそれがシュウジであると確信した。
「……シュウジッ!!」
床を一蹴り、シュウジのもとに駆け寄ると、
防弾チョッキに刺さった破片を取り払ってシュウジの背を支えた。
シュウジは明らかに苦しんでいる表情をしている。
「おい、何くたばり掛けてるんだ!
しっかりしろッ!!」
そうしてシュウジを支える間に、今度は何か温かい光が消えて行くイメージを見た。
今まで見たことの無いイメージ。
似たようなものは見たことがあった気がするが、それらとは明らかに別の輝きだった。
「……先……生……?」
それは以前から彼女に対して抱いていたイメージとはかなり離れた温かさを持っていた。
それでも、リナルドはその温かさがリーア・ミノフスキーのものであるのではないかと
直感ながら感じていた。
「何だよ……。
何か……あったのか?
一体、何が起きてるんだ……?」
【行動:戦闘(-1)、リロード(-1)、回避(-1)】
【位置:O-15(レウルーラ・MSデッキ)】
【残り行動値:1pts.】
【機体状況:MA形態・両肩、背面損傷・『盾』・通信回線→サイコ、ガンイージ、ジャベリン】
【武装:(MS)ビームカタールx2、右腕ビームカッター、ビームキャノン、デュアルビームガン
ビームシールド】
【生徒状態:覚醒@ノーマルスーツ・首輪カバー・鈍痛・数箇所打撲・一部身体異常……】
【所持品:デイパック、コッペパンx1、水2gx2.6、食糧3.5日分、私服、拳銃(16)、救急箱
受信装置、自動小銃、マガジンx4、スタングレネード、拳銃(8)x3、防弾チョッキ
(以下私物)MS状態チェック用ポータブルコンパネ、ノートPC、眼鏡、配線修理用工具一式】
【行動方針:作戦遂行】
【同盟:全員】
『……危ないな。次から気を付けろよ。
入り口は……ほら、あっちだ。それからは一直線だから、真っ直ぐ進め』
そうシュウジの指示する方向を一度確認した後、
シュウジが兵士の死体から通信機を奪うとそれをノートPCに繋いでいた。
『侵入コードは……。よしよし、これで端末なしで隔壁を操作出来る。
行くぞ。ベルク、リナル……ド』
シュウジの会話を妨げる様に震動と衝撃がカタパルト内を走る。
「・・・・・・・クッ・・・。」
援軍のMSが着艦した衝撃で小さな無数の破片が襲いかかる。
それを低く伏せることでダメージを避けることが出来た。が
気づけばシュウジの姿が無く急いで周囲を確認すると
後方の壁に大きな破片が刺さって持たれかかっているシュウジがいた。
リナルドに続いて自分も本能的に駆け寄る。
大きな破片は防弾チョッキに阻まれシュウジに外傷は与えなかったが
それでも変形した防弾チョッキがすさまじい衝撃がかかったことを意味していた。
(外傷は無いもののこの位置だ肋骨が何本か確実に折れているだろう。
大事な器官にそれが刺さっていたらたヤバイな・・・・・・。)
『ベ……ク、……ルドっ、急……ぇ!』
必死に力を振り絞って話すシュウジが咳き込んだとき
ヘルメット内のレンズが紅く染まる。
「シュウジ。分かっている今は無理に喋るな。
リナルド、チョッキを外してやれ流石にそのままでは苦しすぎるだろう。
それと無理に動かすなよ症状が悪化するかもしれない。」
そう言うと俺は立ち上がりシュウジのバックの方へ歩いていくと
バックからスタングレネードを取り出し自分のバックに入れシュウジ達に
背を向けたまま話しかける。
「スタングレネード貰ってくぞ、その状態じゃ持ってても役に立たないだろ?
ゆっくりそこで良い知らせを待ってろ、すぐにカタをつけて戻ってくる。
リナルド、そのままシュウジを見てやれ。まあ俺だけじゃ役不足だと感じたら
後から来い・・・・・・・・・じゃな、先に行ってる。」
シュウジ達の方を振り返らずに俺は通路の奥に消えていった。
【行動:レイモンドとシュウジ、リナルドと通信中(-0)会話(-0)伏せる(-1)
シュウジのバックからスタングレネードを取り出す(-1)移動(-1)】
【残り行動値:0】
【位置:O-15】
【機体状況:右腕損失、左足膝部損失、右足膝部損失、本体側面装甲各所損傷
コクピット内機械一部損傷、スラスター各部損失(出力50%低下)
左手マニュピレーター消滅】
【武装:(本体)ビームアックス、3連装ミサイルランチャー×2(残弾0)(左手甲部)ビームシールド、
ビームダガー×1本 】
【所持品:ディパック 水2g三本 十字架 聖書 特殊情報端末 チ○ルチョコ20個ほど
アサルトライフル 予備弾倉3セット 拳銃 予備マガジン4セット
手榴弾 4個 ナイフ 防弾チョッキ 首輪カバー】
【行動方針:ミッションスタート】
【同盟:01番 シュウジ=アサギ 14番 レイモンド=デリック】
「……糞っ!」
ビギナ・ギナの周囲を囲むMS、デナン・ゲーとデナン・ゾン。
その内のデナン・ゲーのパイロットは、知っている限りの呪いの言葉を吐いていた。
それに対し、デナン・ゾンのパイロットは恐怖に震えていた。
「どうなってるんだ!四機で囲ったのに……その上艦隊からの援護射撃もあったのに……。」
『……あ、あああ……。』
「情けない声を出すな!お前も何か手を考えろよ!」
『……む、無理だ……。あんな化け物、どどどうしろって言うんだよ!
しかも人質をををッ……取られたんだぞ!?』
「く……そぉっ!」
怒りに震えるデナン・ゲーのパイロット。今のところ、ビギナ・ギナに動きはない。
左肩のマシンガンこそこちらに向けているが、あの姿勢からは正確な射撃も、高速戦闘も出来ないだろう。
それに対しこちらも動かなければ、恐らく囚われているパイロットも、自分たちも殺される事はないだろう。
だが、それでは奴の思うつぼなのだ。
こうしている間にも、失格者達によるレウルーラ襲撃は進んでいるのだ。
「こうなったら……あいつを見捨ててでも……。」
『まっ……待てよ!あいつを見捨てるのか!?
100歩譲って見捨てるにしても……本当に、あいつを墜とせるのか?』
「……。」
以外にも、冷静な判断が出来ているのは、脅えるデナン・ゾンのパイロットだった。
通信越しに相手に聞こえる程に歯ぎしりをするデナン・ゲーのパイロット。
もはや、彼にはデナン・ゾンのパイロットの声は聞こえていなかった。
初めに墜とされたデナン・ゲーのパイロット。それに乗っていたのは彼の友人でもあったのだ。
それだけではない。その他にも倒された数多くの仲間達のこともあり、彼の怒りは今まさに、最高潮に達していた。
ビームライフルをビギナギナに向けるデナン・ゲーのパイロット。
その引き金を引こうとしたときだった。ビギナ・ギナの動きに急激な変化が訪れたのは。
(……動きませんね。時間稼ぎにはなりますが……
確か一隻がレウルーラの方へ向かったはず……やはりこちらから動かなくては……なりませんか。
しかし……撃破されては、元も子もない。推進剤も、残り少ない。どうしましょうか……。)
判断を纏めきれず、攻めあぐねるゼファー。だが、通信が入る事により、その思考は中止された。
>>51 (……!)
その瞬間、思考が加速した。
そして、判断は結論に達した。
――殲滅。
この通信が、真実なのかどうなのかは解らない。だが、この状況下で嘘を付くとも、到底考えられない。
だから、ゼファーは殲滅という結論に達した。結論に導き出してからの、行動は疾かった。
まず、人質に取っていた。デナン・ゾンを投げ捨てた。
ビームライフルを構えていたデナン・ゲーは驚いたのか、一瞬反応が遅れた。
だが、もう一機のデナン・ゾンの方は素早い反応を見せ、これを回避、こちらに高速で向かってくる。
「――――――!」
声にならない咆吼を上げ、それを迎え撃つべく、ビームサーベルを構えて突進するゼファー。
刹那、交錯する二体のMS。二体が完全に通り過ぎたとき、
そこには鉄屑と化したデナン・ゾンと、左肩に搭載されたマシンガンが漂っていた。
続いて、ゼファーはもう一機のデナン・ゲーを狙う。が、それは意外な場所にいた。
(……!!)
ゼファーの眼が捉えるのは、コックピット間近に潜り込むデナン・ゲー。構えられるビームサーベル。
それが、突き出される。ゼファーの視覚は、それをはっきりと捉えていた。
ゼファーの感覚では、それはものすごく遅く見えた。
だが、機体は回避行動に追いつかない。
確実に迫るビームサーベル
だが追いつかない機体
加速していく、思考
鈍く、遅いからだ
確実に近づく死
声が聞こえる
だれかの
こえが
≪死ぬなよ……!≫
(……まだ……)
その瞬間、ビギナギナのコックピットは、ビームに焼き尽くされた。
【行動:デナン・ゾンを投棄(−1)ビームサーベルでデナン・ゾンを攻撃(−1)】
【残り行動値:2p】
【位置:O−15(ガンイージ):P−15(ビギナ・ギナ)】
【機体状況:通信中(ビギナ・ギナ ジャベリン ペズバタラ)
機体各所にダメージ、電子機器に被害、頭部大破 左右脚部損傷、左腕大破
右フロント・サイドアーマー破損 左サイドアーマー破損 脱出装置使用不可 自爆装置無効化済】
【参加者状況:右足重傷(処置済み)打撲 左目周辺に切り傷 防弾チョッキ着用 首輪カバー装着中 破片が身体を直撃 】
【武装:ガンイージ:ビームライフル(残弾2) 】
【所持品:ディパック(食料0.5日分 計画書 紙とペン 医療用セット 首輪カバー
自動小銃 マガジン×3 スタングレネード)
拳銃(残弾16発) 工具セット 杖 ヨーコの果物ナイフ 】
【行動方針::"示す" 利用出来るモノは利用 突入】
右肩のガラス片を抜こうとしていたところで、リーア=ミノフスキーの声が聞こえてきた。
彼女の目的は達成され……俺達を脱出させる準備も完了したらしい。
…おそらく、彼女自身の生命と引き換えに。
その放送を聞き終えたあとも、俺の表情は変わらなかった。
「ごめんね…か」
彼女の言った謝罪を自分で繰り返した時、僅かに表情が動いた。
ゲートがあると思われる方を向くと、落ち着いた声で話しだす。
まるで彼女がそこにいるかのように。
「リーア=ミノフスキー。…お前が何を望んでいたかは知らないが……。…その謝罪の言葉は
俺達ではなく、あの世にいるルイやアーネスト、それにイブ=シュウリン達…。これまで死ん
でいった連中に言ってくれ。
…俺は今更お前の謝罪を聞いたところで、何も救われない。
お前に選ばれ、殺し、殺された傷は一生かかっても消えはしない。
……だがそれでも、もしも脱出に成功してそれで何か変わるものがあるのだとしたら……その
手助けをしてくれた事、それだけは感謝する」
そして少し間を置くと、困ったように呟いた。
「…帰れる時代は1つだけ、か。…こういう場合はリファニアの希望を叶えてやるのがいいのか、
それとも艦橋を占領した奴への御褒美にするべきか…」
引き抜いたガラスはとっとと捨てた。
傷は多少痛むし、血も出ているが動脈は大丈夫のようだ。
…第一、今はこの右腕を使う事などないのだから、多少の痛みは気にならない。
コンソールスティックを握りながらカタパルトハッチの穴を睨む。
(…ここまでに墜としたのはデナン・ゲーとデナン・ゾン、あとギラ・ドーガを2機…。
頭を吹き飛ばしたデナン・ゲーの戦闘力は半減している。
だから…レウルーラの周囲にいる残りの敵機は…7、8機、といったところか)
フットペダルを浅く踏むと、バイクがゆっくりと動きだす。
リファニアのサポートに向かう為には、あともう一撃加えておきたいところだが…。
【行動:ペズ・バタラ、サイコG、アビゴル、ガンイージ、ベルガ・ギロスに回線継続(0)
ガラスを抜く(−1)メガライダーを動かしてみる(−1)】
【残り行動値:2p】
【位置:O-15(デッキ)】
【機体状況:右腕消失、頭部バルカン砲1門損傷、モニター30%使用不能、右肩装甲損傷、左肘
ジョイント負荷(50%)、胸部及び腹部装甲に凹みと歪み、ショットランサー1基消失
誘爆により頭部破損(小)、機体各所に傷、右足膝下消失、ビームシールド破壊
メガライダー:異常無し】
【参加者状況:左肩負傷(処置)、左眼球裂傷(処置)、右手首切断(処置) 右肋骨骨折、
左大腿骨にひび、右上腕に銃創(処置)ガラスにより右肩裂傷】
【武装:頭部バルカン砲×1、ビームサーベル×1、ショットランサー×1
ビームマシンガン(85%)
メガライダー:メガバズーカランチャー(100%)】
【所持品:ディパック、水2?入り5本、食料21/3日分、蕎麦団子1個、 拳銃と自動小銃と弾倉×5
タッパーのカレー1つ、保冷シート2枚、書類の束、ペン、缶詰の段ボール、首輪カバー】
【行動方針:突入までの時間稼ぎ】
【同盟:ベルク、リファニア、シュウジ、リナルド】
リーア・ミノフスキーの全体通信は、ザムス・ガルの艦橋にも響き渡っていた。
突然の事態にざわめく艦橋。暫しの間、管制能力に乱れが起きる。
「沸くな!あの女の置き土産を生徒共が拾うような事態にはならん!
我が艦はただ生徒どもを狩る事に努めていればよい!」
声を張り上げる艦長。
厄介なあの女が逝けば、管制側はただ残る生徒どもを狩る事に集中すればいいのだ。
戦況を確認すれば、ビギナもサイコも今まさに追い詰められ狩られようとしていた。
そして、今、ファントムの駆るビギナ・ギナに突き立てられるビームの刃。
「……終わりだな、奴らも。」
勝利を確信し、艦長は唇の端を僅かにあげた。
※ ※ ※ ※ ※
リファニアは、リーアに迫り来る死に哭いた。
哭きながらも、その足が止まったのは、ほんの僅かな間だった。
「……私の帰りたい時代なんて、ない。私に帰る所なんて、ないから。
でも、行くべき所なら、ある。
いつの時代でもいい。何処だっていい。
私を愛し、私が愛する人が隣に居て……私が夢に向かって進んでいけるのならば。
どこだって、私の行くべき所になるんだから。」
デナン・ゾンに追われつつも、再び敵艦へと突撃するサイコ。
二隻の敵艦は、まだ回頭を終えきってはいなかった。
リファニアの意識が、虚空に漂うビットを拾い上げる。
それぞれのビットは、先ほどの敵艦の一斉射に乗じて、二艦の懐へとそれぞれ飛び込んでいた。
「……ゲート……絶対にたどり着いてやる。
こいつらを、突破して!みんなと一緒に!」
二門のメガビーム砲が光り、二艦へ向かって光を放つ。
ビームは敵艦を逸れ、リフレクター・ビットの元に。
二筋の閃光が鋭角に向きを変え、それぞれの目標へと吸い込まれてゆく。
先ほど敵艦が回頭した時に確認した、光発する場所へ。
※ ※ ※ ※ ※
『敵MAの熱反応微増!撃ってきます!』
「今の奴にいかほどの火力が残されていようか!
我が艦に大した被害を与える事もできん、撃たせておけ!
回頭が終わり次第、一斉射だ!」
最後のか細い抵抗か。
敵MAからニ方向に、二筋のビームが放たれる。
艦からは大きく逸れてあさっての方向へと飛んだと思われたビーム。
だが、次の瞬間、艦が揺れた。
艦の脇を通り過ぎた所でリフレクター・ビットによって反射されたビームが、着弾したのである。
『艦右側面前方に被弾!
……おかしいです、敵MAはそこを攻撃し得る位置にいません。』
「……裏側、だと?だが、この程度の揺れだ、大した被害はあるまい。
よし、回頭終了、一斉射!」
『止まりません!』
「……何だと?」
サイコの攻撃は、旋回の為のアポジモーターが集中している場所の一つを、ピンポイントに狙ったものだった。
むろん、完全に旋回できなくなるほど深刻な被害を受けた訳ではないが、突然の噴射力の低下に対応しきれず、
二隻のザムス・ガルは停止予定地点をこえて回ってしまう。
一斉射のタイミングは、完全にずらされてしまった。
「……おのれ、小ざかしい真似をやってくれる。
だが、この艦の戦闘能力を奪うにはあまりに火力不足。
僚艦に打電!このまま共に集中砲火をかけ……。」
『……敵MAが、居ません!』
「何だと……!?」
僅かな隙に、サイコの姿を見失ったオペレーター。
だが、見失った時間はほんの数秒といった所だった。
オペレーターが次に見つけた場所は……。
『……敵MA、本艦の下方から……!』
再び、艦が僅かに揺れた。
『……敵MA……いえ、MS、本艦底部に取り付きました……!』
蒼白になる艦長。MSへと姿を変えたサイコが、艦底面に膝をついていた。
だが、すぐに冷静な判断を取り戻す。
敵が取り付いた所で、この艦をすぐに沈めるだけの火力など敵にはない。
「……うろたえるな、MSを呼び戻せっ!」
※ ※ ※ ※ ※
ビギナ・ギナとの回線が、突然プツリと途切れる。
「ゼファァァァァっ!
……くっ!!」
だが、リファニアのサイコは止まらない。
敵艦の動きが乱れた隙に、敵艦の下方から一気に接近した。
MS形態へと姿を変え、敵艦の底面へと取り付いて向き直り、追ってきたデナン・ゾンと対峙した。
この状態では、この艦はおろか、僚艦は完全に手出しが出来ない。
敵MSも、その攻撃を慎重に行わざるを得ないだろう。
なによりも、攻められる方向を限定させる事ができるのだ。
「……ふん、デカ過ぎるのよ、この艦。
私のサイコがいくらデカくっても、これじゃサラミスにとりつくザクとあんまり変わらない。」
ちらりと、ゼファーのビギナが戦っている場所へと視線を向ける。
苦々しげな表情を浮かべるリファニア。
ゼファーと敵として戦う事はもうありえない。
だが、ここで沈まれてしまっては決着をつける事がかなわない……。
たとえ戦う事がありえなくても、その機会が永遠に無に帰す事は、戦士としてやりきれない物があった。
(……ゼファー、本当に、やられちゃたの……?)
だが、感傷はここで終わりだ。
迷ってる暇もなければ感傷に浸っている暇もない。
……リーア・ミノフスキーの行為を無にする訳にはいかないのだ。
「……たとえ一人でだって、切り抜けてやる。
切り抜けて、みんなの所に行ってみせる……!」
約束、したのだから。
何があっても、敵MSを抑えてみせると。
どんなアクシデントがあっても、皆を回収してみせると。
【行動 : メガビーム砲発射、リフレクタービットで反射して敵艦の旋回用アポジモーター攻撃(-2)、
ビギナ・ギナとの回線断絶(0)、MSに変形(-1)、敵艦下部に張り付く(-1)、残0 】
【位置 : P-15 】
【機体状況 : MRX-010サイコガンダムMk-U
全身の装甲がボロボロに、右脇腹と右脚側面にビームで抉られた損傷、左脚ほぼ喪失、
右腕ほぼ喪失、MA時コックピット部増加装甲損失、背面に損傷、
スラスター損傷(推力70%)、アポジモーター幾つか損傷、MA時バランサー異常、Iフィールド停止
自爆装置改造済み、MS形態、攻性プログラム&『盾』ダウンロード済み、ジェネレーター過負荷 】
【パイロット状況 : 頬にうっすらと傷痕、右肩軽傷(治療済)、頭軽傷(包帯巻)、左腕重傷(処置済み)、
ノーマルスーツ着用、メイク済み♪、感覚開放、サイコミュによる負担、首輪カバー装着 】
【武装: 胸部3連装拡散メガビーム砲(一門破損)、リフレクタービット×2、(大型ヒートグレイブ、メガバズーカランチャー)
腕部サイコミュ式 ビームソード×1、全身メガビーム砲×多数(総数半分以下に減少) 】
【方針 : 『揺るがせてはならない夢』、自分の意志で綺麗に生きる、誰も死なせない! 】
「う……。」
体の感覚が、無い。
床に対し上を向いているのか、下を向いているのか。
熱いのか、寒いのか。
そして、なりよりも……
生きているのか、死んでいるのか。
『……──ウジッ!!』
『──い、何く──てるんだ!
しっか──ッ!!』
何か聞こえる気がする。しかしよく聞こえない。
……ノイズが入っているみたいだ。
『──当に、ありがと──して、色──、ごめんね。』
懐かしい声が聞こえる気がする。
これは……謝っているのだろうか?
『──ウジ。分かって──今は無理に喋──。
リナ──、チョッキを外し──流石にそのま──苦しすぎ──。
それと──動かすなよ症状が悪化──しれない。』
また、声が聞こえた。
だんだんと症状は治まってきている気がする。
それと同時に痛みが蘇ってきた。……やっぱり生きてるのか。
『スタングレ──貰ってくぞ、そ──態じゃ持って──役に立たないだろ?』
……何を言っている?
『ゆっくりそこで──知らせを待ってろ、すぐにカタを──て戻ってくる。』
……ふざけるな。
『リナルド、その──シュウジを見てやれ。まあ俺だけじゃ役不足だと感じたら
後から来い・・・・・・・・・じゃな、先に行ってる。』
こいつは……ふざけた事を言っている。
何かを言わなくては……その思いに対し、身体は……動いた。
「……ふざ……けるなよ。それじゃ……だめなんだよ。
俺は……俺のためにこの作戦に協力しているんだ。
勝手に終わらせられたら……困るんだよ。
俺はま……だッ!」
そこでまた、咳き込む。血の味が僅かに口の中に広がった。
だが、殆ど出血は止まりつつあるようだ。
少々見づらくなったバイザー越しに外を見ると、
ジャベリンがメガライダーに跨り、出撃するのが見えた。
同時に、鉄屑となったデナン・ゾンが視界に映った。
(どうやら……レイモンドが片付けたようだな。
……だが……また何時突入してくるか解らないか……。)
「……とに……かく、無理矢理にでもついて行かせてもらうからな。」
そう言うと、リナルドを通路の奥に押しやり、自分も入ると隔壁を閉じた。
「ところで……さっき、全体通信か何かあったか?
何か懐かしい声を聞いた気が……したんだがな。」
相変わらずクラクラする頭で、シュウジは言った。
その上……寒気が酷い気がした。
【行動:通路に移動(−1)隔壁閉鎖(−1)】
【残り行動値:2p】
【位置:O−15 レウルーラ通路内】
【機体状況:通信中(ジャベリン ペズバタラ)
機体各所にダメージ、電子機器に被害、頭部大破 左右脚部損傷、左腕大破
右フロント・サイドアーマー破損 左サイドアーマー破損 脱出装置使用不可 自爆装置無効化済】
【参加者状況:右足重傷(処置済み)打撲 左目周辺に切り傷 防弾チョッキ着用 首輪カバー装着中 内蔵に負荷】
【武装:ガンイージ:ビームライフル(残弾2) 】
【所持品:ディパック(食料0.5日分 計画書 紙とペン 医療用セット 首輪カバー
自動小銃 マガジン×3 スタングレネード)
拳銃(残弾16発) 工具セット 杖 ヨーコの果物ナイフ 】
【行動方針::"示す" 利用出来るモノは利用 突入】
「…隊長。レウルーラに突入したデナン・ゾンの通信が途切れました」
レウルーラの様子を見張っていたデナン・ゾンから通信が入ると、2番隊のベルガ・ギロスの
パイロットは苦々しい顔で頷いた。
デッキにある無人の機体を始末するだけの任務は、あの1機で充分の筈だった。
だがジャベリンのアインラッドに1番隊を突破され、更には2番隊も突破を許し、しかもレウ
ルーラ所属のギラ・ドーガもやられた。
あっさり突破を許した1番隊に文句を言ってやりたいところだったが、今は先ず任務を果たす
事の方が重要だ。
「相手は損傷しているとは言え、強い。…レウルーラへの単機での突入は禁じる!
…よし。お前達3機はレウルーラに一斉に突入しろ」
『しかし隊長、あの穴は3機が入るには小さすぎますが…』
「小さければ広げればいい!多少傷つけたところでさしたる問題は無い!
メガマシンガンでハッチを一斉射撃して、少なくとも2機分の広さにして突入しろ!」
最低2機が一斉に突入すれば、中にいる傷ついたジャベリンに止められる道理がない。
最悪1機がやられても、2機は無事に済むだろう。
レウルーラからはひっきりなしに救援要請が発信されている。
早急にデッキを攻略し馬鹿な事をやらかした生徒どもを殲滅する為に、彼の考えはこの
状況に則した妥当なものだった。
『2番隊、聞こえるか。…中にいるジャベリンのパイロットは元黒の部隊小隊長だ。
決して油断するな!』
1番隊隊長から忠告の通信が入るが、彼はすぐには答えなかった。
彼には現時点でこれ以上の策は思いつかない。
たしかに、黒の部隊の小隊長ともなればデナン・ゾン1機では歯が立たないだろうが、それでも
2対1、3対1ならば大丈夫だ。
そう思うしかなかった。
「だがこれ以上事態を膠着させるわけにはいかん。…俺は今できる限りの策を採ったつもりだ」
それだけ答えると、彼はレウルーラに接近する3機のデナン・ゾンを見つめた。
********************************
(続く)
カタパルトハッチに加えられるメガマシンガンの猛烈な攻撃。
3機のデナン・ゾンがこちらに突入しようとしているのだ。
敵の意図は分かっていても、俺にはそれを阻止する手立てがない。
ジャベリンが今持っている武器では、デナン・ゾンを墜とすどころかビームシールドすら貫けない。
どんなに上手くやっても1機を相手にできるかどうかだろう。
そういう意味では管理者側は手堅い作戦を採ってきたと言える。
…ここにいるのがジャベリンだけだったらの話ではあるが。
バイクに装備されているメガバズーカランチャー。
在り方は違えど、これはサイコガンダムが持っていたあれと同種のものだろう。
このバズーカが、その口径に見合った威力を発揮してくれるならば……こいつはザムス・ガルに
対する最大の武器になる。
その為に。
(その為に…こいつをここで試し撃ちさせてもらう!)
デナン・ゾンの攻撃が今にもハッチを崩そうとするその時。
バイクの先端から放たれた目の眩むような光の帯は、ハッチそのものを瞬時に融解させ、その先で
メガマシンガンを撃っていた3機のデナン・ゾンのうち2機をハッチと同じ運命に無理矢理引きずり
込み、残りの1機はメガマシンガンごと右腕を消し飛ばされた。
長い間管理者側に押さえつけられていた俺達が、それを超え得る力を手にした瞬間だった。
【行動:ペズ・バタラ、サイコG、アビゴル、ガンイージ、ベルガ・ギロスに回線継続(0)
メガバズーカランチャー発射(−1)】
【残り行動値:3p】
【位置:O-15(デッキ)】
【機体状況:右腕消失、頭部バルカン砲1門損傷、モニター30%使用不能、右肩装甲損傷、左肘
ジョイント負荷(50%)、胸部及び腹部装甲に凹みと歪み、ショットランサー1基消失
誘爆により頭部破損(小)、機体各所に傷、右足膝下消失、ビームシールド破壊
メガライダー:異常無し】
【参加者状況:左肩負傷(処置)、左眼球裂傷(処置)、右手首切断(処置) 右肋骨骨折、
左大腿骨にひび、右上腕に銃創(処置)ガラスにより右肩裂傷】
【武装:頭部バルカン砲×1、ビームサーベル×1、ショットランサー×1
ビームマシンガン(85%)
メガライダー:メガバズーカランチャー(80%)】
【所持品:ディパック、水2?入り5本、食料21/3日分、蕎麦団子1個、 拳銃と自動小銃と弾倉×5
タッパーのカレー1つ、保冷シート2枚、書類の束、ペン、缶詰の段ボール、首輪カバー】
【行動方針:突入までの時間稼ぎ】
【同盟:ベルク、リファニア、シュウジ、リナルド】
リファニアのサイコと対峙するデナン・ゾン。
サイコの背には、ザムス・ガルの艦底部がある。
迂闊に撃てば、艦体に被害を与えかねない。
となれば、格闘戦に持ち込む他はない。
どちらにせよ、格闘戦の立ち回りでは圧倒的にこちらが有利である。
敵機の図体では俊敏な動きは不可能、増して片腕と片脚を失いAMBAC性能の低下した状態では尚更だ。
「酷いよな……こんな所で殺し合いゲームの監視をやってさ。
気がつけば、みんな、みんな、死んじまって……。
お前が悪いという訳じゃない……お前にとっては逆恨みに等しいんだろうが。
……隊長たちの敵は、討たせてもらうぞっ!」
デナン・ゾンのパイロットの決断は早かった。
中隊最後の生き残りとして、何としてでもあの大型MSを落とす。
隊員達の命を代償として、奴は大いに傷ついているのだ。
ショットランサーを構え、サイコに突撃をかけるデナン・ゾン。
一撃必殺の念を込めて、ランサーを突き出した。
※ ※ ※ ※ ※
「……来たっ!」
槍を構え、突撃をかけてくるデナン・ゾン。
リファニアは、これを待っていた。まさに、敵機が接近するその瞬間を、待ち構えていた。
集中するリファニア。敵機の突撃は、予想以上の勢いがある。
……タイミングを、合わせきれるか……。
「……そこだあっ!」
敵機が槍を突き出したまさにその瞬間、リファニアは無事な左腕でショットランサーの側面を殴りつけた。
かつて、リファニアが対峙した相手の戦い方を、彼女は貪欲に吸収してみせていた。
逸らされた槍の先端。サイコの脇をかすめ、船体に突き刺さる。
だが。
次の瞬間にリファニアが見たものは、左腕でまさにサーベルを抜き放とうとしている敵機の姿だった。
やら……れ……。
やられる。そう、リファニア自身が思考するのよりも早く、リファニアの身体が反応していた。
踏み込まれる、フットペダル。
スラスターが吠え、敵機がサーベルを構えるのよりも早く、サイコの巨体がデナン・ゾンに叩きつけられる。
サイコのコックピットに激突の衝撃が伝わるものの、大人と子供どころの話ではない質量差である。
サイコの損傷がこれ以上目立って広がる事はない。せいぜい、エアインテークが凹んだ程度である。
だが、デナン・ゾンはそうはいかなかった。
フレームが歪み、糸の切れた人形のように手足をだらんとさせながら、弾き飛ばされるデナン・ゾン。
だが、敵機の戦闘能力が失われた訳ではない。
パイロットは衝撃に朦朧としていたが、なおも健在である事を、リファニアは感じとっていた。
意識が戻り次第、再びこちらに刃を振るってくるだろう。
「……今撃てば、確実に彼は死ぬ。
こんな状態の敵を、私は撃てるの……?
でも、撃たなきゃやられるのは、私。こんな戦法、二度は通じない。
ここで、足踏みしている余裕も……ないっ!」
……ロック・オン。
無慈悲に引かれるトリガー。
放たれた、2筋のメガ・ビーム。
敵機へと向かって伸びた光は、デナン・ゾンの両腕を吹き飛ばし、それ以上の何も、奪わなかった。
「……こうすれば、あの機体は何もできない筈だよね。
さて、残りの機体がどう出るか、ね。」
もう少しここに張り付いて時間を稼げば、ジェネレーターは正常に戻るはず。
先程から最低限の火力しか使用せずに、ジェネレーターへの負担をできるだけ軽くするように努めているのだ。
たとえ手足を失おうとも、その火力と鉄壁のIフィールドを復活させる時間を稼ぐ。
その為に、多少の無茶をしてまで艦にとりついてみせたのだ。
「ふらふらな状態じゃ、レイモンドさん達を助けに行った所で足手纏いなだけだもんね。
もう少しだけ……待っててね。」
【行動 : 突き出されたショットランサーを殴って逸らす(-1)、敵機に体当たり(-1)
メガビーム砲二発発射、敵機の戦闘力を奪う(-2)、残0 】
【位置 : P-15 】
【機体状況 : MRX-010サイコガンダムMk-U
全身の装甲がボロボロに、右脇腹と右脚側面にビームで抉られた損傷、左脚ほぼ喪失、
右腕ほぼ喪失、MA時コックピット部増加装甲損失、背面に損傷、
スラスター損傷(推力70%)、アポジモーター幾つか損傷、MA時バランサー異常、Iフィールド停止
自爆装置改造済み、MS形態、攻性プログラム&『盾』ダウンロード済み、ジェネレーター過負荷 】
【パイロット状況 : 頬にうっすらと傷痕、右肩軽傷(治療済)、頭軽傷(包帯巻)、左腕重傷(処置済み)、
ノーマルスーツ着用、メイク済み♪、感覚開放、サイコミュによる負担、首輪カバー装着 】
【武装: 胸部3連装拡散メガビーム砲(一門破損)、リフレクタービット×2、(大型ヒートグレイブ、メガバズーカランチャー)
腕部サイコミュ式 ビームソード×1、全身メガビーム砲×多数(総数半分以下に減少) 】
【方針 : 『揺るがせてはならない夢』、自分の意志で綺麗に生きる、誰も死なせない! 】
「はは……やった……。
殺った……殺ったぞ……。」
デナン・ゲーにより、突き立てられたビームサーベル。
それは、確実にビギナ・ギナのコクピットを消滅させていた。
間違いなく、消滅させていた。だが、まだデナン・ゲーのパイロットは
その事が信じられないという様子だった。
だが、それも十数秒で、すぐに彼は自分が今やるべき事を思い出した。
「そうだ……あのデカブツ……!」
ビームサーベルをしまい、振り返るとサイコMK−2を探した。
レーダーと拡大画像によると、それはザムス・ガルの艦底部に取り付いているようだった。
それを確認すると、加速しようとする。が、動けなかった。
「あ……?」
コックピットに穴の開いたビギナ・ギナが、ビームサーベルを構えていた。
それは、逆にこちらのコックピットを捉えようとしている。
「え……?え……?
何が起こって……?」
デナンゲーのパイロットは、目の前で起こっている出来事に、完全に混乱していた。
* * * * * *
(……まだ……)
刻一刻と、ビームサーベルが迫ってくる。
もう、回避は諦めた方がいいだろう。
と、ゼファーは判断した瞬間、取るべき行動の検討を始めた。
そして、ビームサーベルが1o接近するよりも早く、結論に達した。
("死ぬ"わけには……。)
とあるプログラムを起動し始めるゼファー。
起動は一瞬で完了し、すぐさま動作を始める。
(いきません。)
ビームサーベルがコックピットを溶かし始める。
動作完了率、50%
続いてシートが消滅し始めた。
動作完了率、80%
自分が入っているメモリーユニットにも、動作不良が始まる。
その時、あるプログラムの動作率が、100%に達した。
次の瞬間、ゼファーの意識は、S−17のコロニー管制室にあった。
(間に……合いましたか……危ないところでした。
さて、仕上げを。)
ゼファーはまず、全体通信を開いた。そして送れるすべての場所に自分のコピーを送り、
そこで各々がそのコンピュータはどこの物なのかを調べ、
コロニー管制室に辿り着いた物以外のコピーは、自壊するように設定したのだ。
そして、ゼファーはさらに開いたままの全体通信を介してすべてのMSに侵入した。
侵入用の攻撃プログラムは、ビギナ・ギナに組まれた防壁に完全対応したもの。
それは、ビギナ・ギナの防壁のみを破り、こうしてゼファーは再びビギナ・ギナのコントロールを得た。
(……覚悟を、してもらいますよ。)
【行動:全体通信(−2)データコピー(−1)ビギナ・ギナのコントロール掌握(−1)】
【残り行動値:0p】
【位置:O−15(ガンイージ):P−15(ビギナ・ギナ)】
【機体状況:ビギナ・ギナ:通信中(ガンイージ) コックピット大破 左肩装甲融解 右下腕部損失
フィン・ノズル4個損傷、表面装甲損傷軽微 左足首に負荷 自爆装置無効化済 遠隔操作中
ガンイージ :通信中(ビギナ・ギナ ジャベリン ペズバタラ)
機体各所にダメージ、電子機器に被害、頭部大破 左右脚部損傷、左腕大破
右フロント・サイドアーマー破損 左サイドアーマー破損 脱出装置使用不可 自爆装置無効化済】
【参加者状況:右足重傷(処置済み)打撲 左目周辺に切り傷 防弾チョッキ着用 首輪カバー装着中 内蔵に負荷】
【武装:ガンイージ:ビームライフル(残弾2)
ビギナ・ギナ:ビームサーベル×2 フック付きワイヤー&ウィンチ
F-90S用クルージングミサイル×1 ヒートナイフ×1
ドラム弾装式120mmマシンガン(残弾4斉射分)】
【所持品:ディパック(食料0.5日分 計画書 紙とペン 医療用セット 首輪カバー
自動小銃 マガジン×3 スタングレネード)
拳銃(残弾16発) 工具セット 杖 ヨーコの果物ナイフ (ゼファー) 】
【行動方針::"示す" 利用出来るモノは利用 突入】
「…貢ぎ物か」
2番隊のデナン・ゾンが3機ばかり、レウルーラのデッキへの突破口を開こうとしているのを
見ながら1番隊の隊長は呟いた。
たしかに言われてみればその通りかもしれない。
あの時代のあのタイミングで都合よく俺達が組織に拾われたのは、出来過ぎと言えば出来過ぎだ。
…レイモンドの言っていた事も、あながち想像だけの話ではないかもしれない。
だからといって、今更それを知ったとて何ができるのか。
1番隊も2番隊も、他の艦に乗っている奴等も、もう後戻りなどできはしない。
組織に所属し、その巨大さを身をもって知っている彼は、レイモンド達のようにあくまでも反抗
する生徒のような真似ができなかった。
彼にできたのは少しでも功績を上げて、部下を楽させてやる事だけだ。
そしてそんな彼にとって、今回の任務は功績をあげる絶好のチャンスであった。
ついさっきまでは。
まさか、たった1機のジャベリンにここまで翻弄されるとは思ってもいなかった。
パイロットの技能にアインラッドの機動力が加わったが故の損害。
状況に合わせた訓練が不足していた。
生徒にあっさり侵入を許し、状況を厳しくしたレウルーラの責任。
…彼自身の油断から生じた損害。
…言い訳は何とでもできるが、上層部が聞いてくれるかどうか自信がなかった。
(結局は俺の責任が1番重いんだが…。査問委員会…かな)
彼は頭を振って再びレウルーラを見た。
とにかく今は任務を果たさねばならない。
責任の所在など、その後で存分に考える事ができる。
そろそろ、3機のデナン・ゾンがハッチを広げ終えようとしているようだった。
彼も部隊に集合をかけ、レウルーラ周辺の警戒にあたろうとしていた。
そのレウルーラから強烈な光が発せられたのは、丁度その時だった。
「…な……に……!?」
彼はその凶悪な破壊の光を、ただ呆然と見守る事しかできなかった。
********************************
(続く)
…正直驚いた。
メガバズーカランチャーがもたらした、問答無用の力に。
数秒間シートで固まってしまう程に。
放たれた大出力のビームは、ハッチの向こうにいたデナン・ゾンを消し去っていた。
大袈裟ではなく、文字通り消し去ったのだ。
運良く右腕だけで済んだデナン・ゾンが、呆然と立ち尽くしているのも見える。
…たった今起こった出来事を、脳がまだ理解していないのだろうか。
撃った俺からして信じられない部分があるのだから、無理もない事か。
(ちっ…。何をぼーっとしてるんだ俺は!)
戦場で一瞬我を忘れた自分に怒りを覚えつつ、ハッチに開いた大穴からバイクで飛び出していく。
勿論デナン・ゾンなどに構っている暇などない。
レウルーラの周囲にいるその他のMSにも用はない。
メガバズーカランチャーは強力だが、形態上前方にしか撃てない不便な面が考えられる。
さっきのように不意を突ければしめたものだが、奴等も次はそうそうやらせないだろう。
ならば今は、バイクのスピードを活かして引っ掻き回す程度でいい。
俺の目標は…ザムス・ガルだけだ!
【行動:ペズ・バタラ、サイコG、アビゴル、ガンイージ、ベルガ・ギロスに回線継続(0)
レウルーラから出撃(−1)】
【残り行動値:3p】
【位置:O-15】
【機体状況:右腕消失、頭部バルカン砲1門損傷、モニター30%使用不能、右肩装甲損傷、左肘
ジョイント負荷(50%)、胸部及び腹部装甲に凹みと歪み、ショットランサー1基消失
誘爆により頭部破損(小)、機体各所に傷、右足膝下消失、ビームシールド破壊
メガライダー:異常無し】
【参加者状況:左肩負傷(処置)、左眼球裂傷(処置)、右手首切断(処置) 右肋骨骨折、
左大腿骨にひび、右上腕に銃創(処置)ガラスにより右肩裂傷】
【武装:頭部バルカン砲×1、ビームサーベル×1、ショットランサー×1
ビームマシンガン(85%)
メガライダー:メガバズーカランチャー(80%)】
【所持品:ディパック、水2?入り5本、食料21/3日分、蕎麦団子1個、 拳銃と自動小銃と弾倉×5
タッパーのカレー1つ、保冷シート2枚、書類の束、ペン、缶詰の段ボール、首輪カバー】
【行動方針:突入までの時間稼ぎ】
【同盟:ベルク、リファニア、シュウジ、リナルド】
>>49 久々に聞く彼女の放送。
彼女は目的を達成したと言った彼女の目的とは何だったのか?
今でも分からない。だが、確かなことは
俺達の目的が現実となる可能性が高くなったことだ。
通路には今だ兵士の姿が見当たらない。
さっきのカタパルトデッキの兵力に大半を注いだのか
度々見る閉じた隔壁の奥から打撃音がするだけだった。
配線を調べて開けようとしているのか、力ずくで打ち破ろうとしているのだろう。
それにしても――――――――――――――
あの時、無我夢中で兵士を殺していたあの感覚。
何故か懐かしかったような気がする・・・・・・・・何故?
そんなことを考えているうちに見たことも無い映像が脳裏に浮かんだ。
あの時の様に、人だったモノが大量に地面に横たわっている。
だが、場所は違う・・・・・・・施設?
服も・・・・・・兵士も居たが白衣を着ていた奴も居た。
青い液体が飛び散ってる・・・・・・・人から出たものじゃない。
鏡・・・・・・割れて・・・・・映ってる奴が居る。
―――――――――――――俺?!
『……ふざ……けるなよ。それじゃ……だめなんだよ。
俺は……俺のためにこの作戦に協力しているんだ。
勝手に終わらせられたら……困るんだよ。
俺はま……だッ!』
ヘルメット越しから聞こえたシュウジの声で我に返る。
急いで進んできた通路を引き返すとふらふらした足取りで
シュウジがこちらに向かってきていた。リナルドもシュウジの後について来ている。
『……とに……かく、無理矢理にでもついて行かせてもらうからな。
ところで……さっき、全体通信か何かあったか?
何か懐かしい声を聞いた気が……したんだがな。』
「馬鹿野郎!そんな怪我で何が出来る?
まともに動けもしないだろう?無理してきやがって
リナルドも何で止めなかった?!無理をすると危険だと誰が見ても分かるだろう。」
思わずシュウジの胸倉を掴みかかろうとしたが途中で止める。
怪我を押している体を無闇に動かしては行けないと冷静に戻る。
突き出した手はそのまま変形したシュウジのチョッキを外していた。
そして自分のチョッキを外しシュウジにそれを着ける
怪我に響かないよう少しゆるめに着せる。
「さっきの放送、先生からだ。
いつの時代の、どこに、行きたいかだとさ。
彼女は自分の目的は達したと。」
【行動:レイモンドとシュウジ、リナルドと通信中(-0)会話(-0)引き返す(-1)
シュウジに自分のチョッキを着ける(-3)】
【残り行動値:0】
【位置:O-15】
【機体状況:右腕損失、左足膝部損失、右足膝部損失、本体側面装甲各所損傷
コクピット内機械一部損傷、スラスター各部損失(出力50%低下)
左手マニュピレーター消滅】
【武装:(本体)ビームアックス、3連装ミサイルランチャー×2(残弾0)(左手甲部)ビームシールド、
ビームダガー×1本 】
【所持品:ディパック 水2g三本 十字架 聖書 特殊情報端末 チ○ルチョコ20個ほど
アサルトライフル 予備弾倉3セット 拳銃 予備マガジン4セット
手榴弾 4個 ナイフ 防弾チョッキ 首輪カバー】
【行動方針:ミッションスタート】
【同盟:01番 シュウジ=アサギ 14番 レイモンド=デリック】
2番隊隊長が見たもの。
それは配下のデナン・ゾンが突入に成功する様ではなかった。
彼が見る事になったのは、突然ハッチを破って放たれた光の中に消えていく部下の姿。
…それから暫くの彼の様子は、生き残った部下のそれと大差はなかった。
彼が我を取り戻したのは、デッキからジャベリンを乗せて出てきたバイクのようなSFSが、1番隊
の脇を猛スピードですり抜けていってからである。
彼はそのSFSの情報を知らなかった。
ここに派遣される前に生徒の各情報を見ていたが、支給された武器の中にあのようなものは存在しない。
実際はレウルーラが独自に探し出して使用しようとしていたものだったが、今の彼にそこまでの
推測は無理だろう。
彼に理解し得た事実は、あのSFSに2人の部下が殺された……それだけだった。
ぼんやりとした目で、SFSの動きを追う。
1番隊も彼と同じような状態だったようで、意表を突かれたのか有効な攻撃ができない。
それ以前にただでさえ機数が少なくなっているから、無理もないところか。
彼は考えた。
自分があれに乗っていたら何をするかを。
あれだけの強力な武器を使ってできる事…。
彼は生き残ったデナン・ゾンに言った。
「…奴はきっとザムス・ガルを狙ってくる。…ついてこい」
********************************
俺にとって、レウルーラの近くにさっきの編隊が待機していたのは計算違いだった。
何故なら編隊の弾幕を避ける為に、少し遠回りしてしまったからだ。
これを突っ切ろうとした場合、編隊との距離を考えると、メガバズーカランチャーに攻撃が命中
してしまう可能性がある。
まぐれでもなんでも、メガバズーカランチャーを傷つけられるわけにはいかない。
多少のロスを覚悟で、迂回するように攻撃を回避した。
こちらに向けられる攻撃は何発かはかすってはいるが、どれもごく軽い傷で済んでいる。
スピードで優る敵に対しての、横からの射撃や追い撃ちは基本的に当たるものではない。
何発かがかすっただけも大したものだ。
もしも効果的な攻撃をしたいのであれば、相打ち覚悟で真正面から撃たなければ…。
遠ざかる編隊を見ながら、ベルガ・ギロスへの通信回線を切る。
もうお互いに何も話す事はない。
そして視線をザムス・ガルへ向けた時、バイクとザムス・ガルの間に立ちふさがるベルガ・ギロス
とデナン・ゾンが確認できた。
位置はほぼ、バイクの真正面。
「…相打ち覚悟ってか。…やるな」
【行動:ペズ・バタラ、サイコG、アビゴル、ガンイージに回線継続(0)
バイクの回避運動(−1)】
【残り行動値:3p】
【位置:O-15】
【機体状況:右腕消失、頭部バルカン砲1門損傷、モニター30%使用不能、右肩装甲損傷、左肘
ジョイント負荷(50%)、胸部及び腹部装甲に凹みと歪み、ショットランサー1基消失
誘爆により頭部破損(小)、機体各所に傷、右足膝下消失、ビームシールド破壊
メガライダー:ごく軽い傷】
【参加者状況:左肩負傷(処置)、左眼球裂傷(処置)、右手首切断(処置) 右肋骨骨折、
左大腿骨にひび、右上腕に銃創(処置)ガラスにより右肩裂傷】
【武装:頭部バルカン砲×1、ビームサーベル×1、ショットランサー×1
ビームマシンガン(85%)
メガライダー:メガバズーカランチャー(80%)】
【所持品:ディパック、水2?入り5本、食料21/3日分、蕎麦団子1個、 拳銃と自動小銃と弾倉×5
タッパーのカレー1つ、保冷シート2枚、書類の束、ペン、缶詰の段ボール、首輪カバー】
【行動方針:突入までの時間稼ぎ】
【同盟:ベルク、リファニア、シュウジ、リナルド】
艦底部にとりついたまま、さらなる敵機の接近に備えるリファニア。
サイコのジェネレーターの出力が回復するには、もう少しだけ時間が必要だった。
それまでの間、できるだけジェネレーターに負担をかけないように
火力の使用を制限したまま敵MS達の攻撃を凌がなければならない。
だが、待っても待っても新たな敵機が接近する様子は無かった。
膠着したまま流れる時間。
「………!!」
突然、ゼファーの駆るビギナ・ギナより広がってゆく意志のようなものを、リファニアは感じ取った。
「……ゼファー?」
たとえゼファーが感情あるように振舞おうとも、今までリファニアはその心を感じることは出来なかった。
故に、常に敵の存在を感じながら戦うリファニアが、かつてシュウジと対峙した時には、
一つの意志しかないのにまるで二つの敵と戦っているかのような違和感を感じ、翻弄されてしまっていた。
ゼファーには心はない。心を学習し心があるように振舞うプログラムに過ぎない。
魂など宿っては居ない……筈だ。
にも関わらず。
たった今感じた意志はゼファーのものであると、何故かリファニアはそのような感じ方をした。
その意志が、この戦場に居るあらゆる機体へと降り立つ。
リファニアのサイコにも、それは一瞬ではあるが、確かに宿っていた。
「……意志、戦う……意志?」
間もなく、その意志は霧散する。
だが、消え去った訳ではない。
ある一機のMSには、ビギナ・ギナには、いまだにその意志が宿ったままだった。
そのMSの核に意志は宿ってはいない。
ゼファーの意志はそのMSを外から包み込み、動かしているようだった。
ビギナ・ギナが動き出す。
ゼファーの戦う意志に、衝き動かされたまま。
「……そうだよね、ゼファー。
こんな所で終われる訳はない、最後まで戦い抜かなきゃ。
私が幾つもの生命を飲み込んで生き残っているように。
ゼファー、あなただってサーティアの生命を飲み込んだんだから、ね。」
(私も、そろそろ動き出さなきゃ。
間もなく、ジェネレーターが回復するしね。)
ゼファーがMSを釘付けにしてくれている為に、思わぬ余裕ができた。
ならば、これ以上ここに留まっている理由などもうない。
レーダーを見る限りでは、隣のエリアでは多くの敵機を相手にレイモンドが一人で立ち回っているのだ。
(……よおし、じゃあ、この艦から離れる前に……。)
敵艦に取り付いたまま、接触回線を開いたリファニア。
「貴艦へ告げまーす!
私にここに取り付かれた以上、すでに勝敗は決しているよ。
何故なら、そっちからこちらに手出しは出来ないけど、
私はここに居ながら貴艦のあらゆる場所を攻撃する事が出来るんだからね。
……証拠、みせてあげる。」
満面の笑みを浮かべながらそう告げると、リファニアはサイコのメガ・ビームを放ってみせた。
艦底部と平行に飛んだビームがリフレクター・ビットによって跳ね返されて、艦の後部の推進器を狙い撃つ。
爆発するエンジン・ユニット。その一つが、使用不能になったようだ。
これだけの大型艦だ。推進力を完全に失わせるにはまだまだ攻撃を加えなければならなかったが。
今は時間もなければ、ここでジェネレーターに余計な負担をかけたくはない。
追撃の為の機動力を奪えれば、それでいい。
「……次は、無いからね。
迂闊に追撃してきたら、今度は容赦なく艦橋に直撃させちゃうから。」
にこにこ笑いながらも、ドスの効いた声で釘を刺したリファニア。
もっとも、リファニアの言葉の内容の半分はハッタリだったが。
ビットを用いたとしても、ここからでは射角的に艦橋を狙い撃つ事はまず不可能だったし、
さすがに最も砲火が厚くなる上面から攻める事は、現状では現実的ではない。
だが、ハッタリだったとしても、今はそれで充分なのだ。
敵の動揺を誘い、艦から離れる時に対空砲火を浴びないようにする為に過ぎないのだから。
迅速に敵艦から離れすぐに次の敵艦へと向かうリファニア。
敵の艦長の動揺が解けた頃には、リファニアのサイコは敵艦と敵艦との間を結ぶライン上を、
砲撃を封じるように移動していた。
すでに機銃で攻撃する距離ではなく、迂闊に主砲やミサイルを放てば僚艦が危険である。
(……ふふっ、上手くいったかな。
さてと、できるだけ早く味方と合流したいけど、いつまでも何隻もの敵艦と追いかけっこなんてやってられない。
少なくても、まともに追撃できない程度にこの艦の足も殺しておくっ!)
次の敵艦にリファニアのサイコが接近した途端、待ち構えていたように敵艦の対空砲火が火を噴いた。
これだけの大型艦だけに、その弾幕は恐ろしく厚い。
「ちょっと、取り付くのは骨が折れそうだけど……そんな必要、もうないんだよね。」
この艦も大抵の艦の例外に漏れず、底に回れば対空砲火は薄い。
本来それを補う役割がMSに与えられている筈なのだが、その虎の子のMS隊も今は艦から少々離れている。
「力押しに頼り過ぎよ。私達がこんなにしぶといなんて思いもしなかったんだろうけどっ!」
敵艦の後方より艦底部に回りこんだリファニア。
そのまま、敵艦の底部を駆け抜けながら、狙いもせずにメガビームの一撃を放った。
この艦の傍にも待機していた一基のビットによって進路を修正され、エンジン・ユニットを撃ち貫くビーム。
「護衛のモビルスーツ無しで対艦攻撃のスペシャリストなこのコを抑えようなんて、ちょっと無理な話だよね?
さてと、ゼファー拾ってとっととみんなの所に行くっ!」
【行動 : 敵艦に接触通信(0)、敵艦の推進器攻撃(-1)、敵艦から離れ、もう一隻へ向かう(-1)
底面に回りこんで対空砲火をやり過ごす(-1)、もう一艦の推進器攻撃(-1)、残0 】
【位置 : P-15 】
【機体状況 : MRX-010サイコガンダムMk-U
全身の装甲がボロボロに、右脇腹と右脚側面にビームで抉られた損傷、左脚ほぼ喪失、
右腕ほぼ喪失、MA時コックピット部増加装甲損失、背面に損傷、
スラスター損傷(推力70%)、アポジモーター幾つか損傷、MA時バランサー異常、Iフィールド停止
自爆装置改造済み、MS形態、攻性プログラム&『盾』ダウンロード済み、ジェネレーター回復目前 】
【パイロット状況 : 頬にうっすらと傷痕、右肩軽傷(治療済)、頭軽傷(包帯巻)、左腕重傷(処置済み)、
ノーマルスーツ着用、メイク済み♪、感覚開放、サイコミュによる負担、首輪カバー装着 】
【武装: 胸部3連装拡散メガビーム砲(一門破損)、リフレクタービット×2、(大型ヒートグレイブ、メガバズーカランチャー)
腕部サイコミュ式 ビームソード×1、全身メガビーム砲×多数(総数半分以下に減少) 】
【方針 : 『揺るがせてはならない夢』、自分の意志で綺麗に生きる、誰も死なせない! 】
『……はい、みなさん、元気に殺し合いしてますか? ……』
紛れも無く、彼女の声。
今のリナルドたちにとってとんでもなく重要な情報を語っていく。
だがその息遣いは荒く、今にも消え入ってしまいそうな感さえある。
(……目的は、達した? 先に、逝く……?)
シュウジを抱えて硬直しているリナルドに、ベルクが矢継ぎ早に言葉を掛けてきた。
「……じゃな、先に行ってる」
「あ、おい! 一人じゃ……
……ったく……」
リナルドが言い終える前に、ベルクは隔壁の奥へ消えてしまった。
彼が顔をしかめて思案していると、今度はシュウジが起き上がった。
「……ふざ……けるなよ。それじゃ……だめなんだよ。
俺は……俺のためにこの作戦に協力しているんだ。
勝手に終わらせられたら……困るんだよ。
俺はま……だッ!」
「お……おい、大丈夫か?
あまり急に身体を動かさない方が……」
「……とに……かく、無理矢理にでもついて行かせてもらうからな」
「やれやれ……」
押し込まれるように通路に入ったリナルドは、シュウジと共にベルクを追った。
通路の先を見据えて油断無く自動小銃を構えるリナルドに、シュウジが問い掛けた。
「ところで……さっき、全体通信か何かあったか?
何か懐かしい声を聞いた気が……したんだがな」
「ああ……先生からの通信があった。
目的は達した。 ありがとう。 ごめんなさい。
それから――」
全体通信でなるべく早めに、行きたい時代と場所を知らせること。
V-29にドーナツ状の構造物があり、そこに飛び込めばいいこと。
飛び込む時は、行き先がバラバラにならないように、絶対にはぐれないようにすること。
リナルドは、聞いたばかりの全体通信の内容を掻い摘んでシュウジに説明した。
先に……というくだりについては、伝えなかった。
説明する間に引き返して来たらしいベルクに追い付くと、たちまちベルクは怒声を上げた。
「馬鹿野郎!そんな怪我で何が出来る?
まともに動けもしないだろう? 無理してきやがって。
リナルドも何で止めなかった?! 無理をすると危険だと誰が見ても分かるだろう」
「止める間もなく通路に押し込まれたんだ、しょうがないだろ?」
両手を上げてお手上げのポーズを取って見せると、
ベルクにも先程のシュウジの質問が聞こえていたのか、シュウジに簡潔に説明しだした。
説明が終わるのを待って、リナルドは二人に声を掛ける。
≪続く≫
「さ、早いとこブリッジを目指そう。
艦外の状況がより悪化してからじゃ、こっちも動き辛くなるばかりだしな……」
そう言って自動小銃を構えると、リナルドは通路の先を警戒しながら進み出した。
【行動:艦内移動(-2)、会話(-0)】
【位置:O-15(レウルーラ・艦内通路)】
【残り行動値:2pts.】
【機体状況:MA形態・両肩、背面損傷・『盾』・通信回線→サイコ、ガンイージ、ジャベリン】
【武装:(MS)ビームカタールx2、右腕ビームカッター、ビームキャノン、デュアルビームガン
ビームシールド】
【生徒状態:覚醒@ノーマルスーツ・首輪カバー・鈍痛・数箇所打撲・一部身体異常……】
【所持品:デイパック、コッペパンx1、水2gx2.6、食糧3.5日分、私服、拳銃(16)、救急箱
受信装置、自動小銃、マガジンx4、スタングレネード、拳銃(8)x3、防弾チョッキ
(以下私物)MS状態チェック用ポータブルコンパネ、ノートPC、眼鏡、配線修理用工具一式】
【行動方針:作戦遂行】
【同盟:全員】
予想通りザムス・ガルに迫ってくるジャベリンのSFS。
「…部下の仇…俺の命に代えても討たせてもらう!」
スコープの中にその姿を捉えながら、パイロットは呟いた。
『た、隊長!む無理です、退きましょう!』
しかし彼は、弱音を吐いた部下を一喝した。
「戯けた事を言うな!お前は…目の前で戦友をあのように殺されて何も感じんと言うのか!?
男なら、パイロットなら、先ず第一に戦え!
…それに奴が狙っているのはザムス・ガルだ。…このままザムス・ガルを沈められたら、我々は母艦
を損傷したたった1機のMSに沈められた部隊となるのだぞ!
…そのような屈辱、受けるわけにはいかん!」
彼の主張は少々感情的ではあったが、概ね賛成を得るだけの根拠はあった。
拮抗した戦力の敵相手ならまだしも、たった1機の敵に母艦を沈められる屈辱は、パイロットならば
耐え難いものだからだ。
それが分かるからこそ、デナン・ゾンのパイロットも何も言えなかった。
針路を変える素振りも見せずに迫ってくるSFS。
ベルガ・ギロスのパイロットは声もなく笑った。
「さすが黒の部隊、いい度胸だ!あくまでも針路は変えんか!
…ならば、この一撃……受けろぉ!」
スコープ一杯に迫ってきたSFSに向かって、ショットランサーを撃つ。
彼の目にそれとほぼ同時に放たれた、あの破壊の光が見えた。
********************************
バイクの襲撃に気づいたザムス・ガルが回避運動を開始する。
だがバイクは既に、針路の変更が出来ないところまできていた。
メガバズーカランチャーは発射態勢に入っていたし、これから再度突撃をやりなおそうとすると更に
時間をロスする事になり、背後の編隊に追いつかれる可能性が高い。
ならば、多少照準がずれてもこのままベルガ・ギロスごと撃ち抜くしかない。
スコープ内にベルガ・ギロスとザムス・ガルを睨み、真一文字に突っ込む。
デナン・ゾンが左手のビームガンを連射しはじめた。
ザムス・ガルも射撃可能な対空砲を撃ってくる。
そしてベルガ・ギロスのショットランサーが、その鋭い切っ先を向ける。
「残念だが相打ちには、ならない。生き残るのは…おれだ…!」
バイクを細かく左右に振りながらビームガンをかわし、引き金を力一杯引いた。
そして再びあの光の帯が、周囲をその光に包みながら獲物へと伸びていく。
…その光の陰から現れたショットランサーがジャベリンの頭部を吹き飛ばしたのは、その一瞬後だった。
(続く)
突然現れた黒いものがモニター一杯に広がった次の瞬間、激しい衝撃と共にコクピット内は闇となった。
「うぐぅ…!」
肩の傷の激しい痛みに耐えながら、何とかコンソールスティックを操作する。
映りの良くないサブカメラに切り替わったモニターとレーダーを駆使して、周囲の確認を急いだ。
ベルガ・ギロスの姿はない。
レーダーに映るのは、奴の部下らしきデナン・ゾンのみだ。
暫し心の中で、光と共に消え去ったであろう勇敢なパイロットへ敬礼を捧げる。
そして……奴が守ろうとしたザムス・ガルは沈んではいなかった。
後部のメインジェットをメガバズーカランチャーに貫かれ、煙を上げながら停止している。
残念ながら沈めることはできなかったが、結果的にはこちらのほうが良かっただろう。
ザムス・ガルが沈まなかった事で、残りの敵機をザムス・ガルの防衛に貼り付ける事ができるからだ。
再度後方ののベルガ・ギロスに一瞬だけ通信を繋ぎ、宣言する。
「今の射撃は外れたが、次はそうはいかない。…油断してると……」
…これで暫くの間、リファニアの援護に向かう余裕を作れた。
レーダーの端に映るサイコガンダムの影。
これでリファニアの奮闘に報いてやる事が出来る。
【行動:ペズ・バタラ、サイコG、アビゴル、ガンイージに回線継続(0)バイクで突撃(−1)
MBR発射(−1)ベルガ・ギロスに通信回線接続、切断(−1)】
【残り行動値:1p】
【位置:O-15】
【機体状況:右腕消失、頭部消失、モニター30%使用不能、右肩装甲損傷、左肘ジョイント負荷
(50%)、胸部及び腹部装甲に凹みと歪み、ショットランサー1基消失、
機体各所に傷、右足膝下消失、ビームシールド破壊
メガライダー:ごく軽い傷】
【参加者状況:左肩負傷(処置)、左眼球裂傷(処置)、右手首切断(処置) 右肋骨骨折、
左大腿骨にひび、右上腕に銃創(処置)ガラスにより右肩裂傷】
【武装:ビームサーベル×1、ショットランサー×1、ビームマシンガン(85%)
メガライダー:メガバズーカランチャー(60%)】
【所持品:ディパック、水2?入り5本、食料21/3日分、蕎麦団子1個、 拳銃と自動小銃と弾倉×5
タッパーのカレー1つ、保冷シート2枚、書類の束、ペン、缶詰の段ボール、首輪カバー】
【行動方針:突入までの時間稼ぎ、リファニアの援護】
【同盟:ベルク、リファニア、シュウジ、リナルド】
>>80 通路を移動する間、リナルドから先程の放送について掻い摘んだ内容を伝えられる。
それに対し、シュウジは
「……興味ない。お前達で行き先は勝手に決めろ。」
と、一言ですませてしまった。
そうこうしている内に、ベルクに追いつく二人、それに対し、ベルクは怒号で迎えた。
『馬鹿野郎!そんな怪我で何が出来る?
まともに動けもしないだろう?無理してきやがって
リナルドも何で止めなかった?!無理をすると危険だと誰が見ても分かるだろう。』
「……貴さッ……!」
ベルクが、シュウジの胸ぐらに掴みかかろうとして、途中で止めた。
代わりに、こちらの防弾チョッキを外し、自分のを着せてきた。
それを受けて、シュウジも冷静になり、叫ぶ事を止めた。
余計な事で、命を削るべきでないと悟ったのだ。
「……このまま、何もせずに普通に終わってしまう事は、
どんな物理的な痛みよりも、辛い。
……いや、死ぬよりも。」
『さ、早いとこブリッジを目指そう。
艦外の状況がより悪化してからじゃ、こっちも動き辛くなるばかりだしな……』
リナルドの声を合図に、行動を開始する。
まず、壁をコンと軽く叩いた。当然、コンと音が帰ってくる。
「空気は、有るようだな。」
音が聞こえるという事は、それを伝える媒介となる空気が存在するという事だ。
シュウジは、それを確認すると、ヘルメットのバイザーを上げた。
果たして……空気は存在した。
「このバイザーじゃ、視界が悪いからな。
さて……時間だが、この艦のセキュリティー担当が、
此処のシステムを掌握されている事に気が付くまでが勝負だ。
それまでの時間は、そんなには長くないだろう。
もし、巻き返されたら対処のしようがない。
対抗手段は幾つか用意してあるが、そう長くは保たない。
一般兵士の方は、今はあまり考慮に入れなくて大丈夫だろう。
隔壁を破壊しようにも、隔壁の間隔が狭くて、爆弾の爆風から身を守れないからな。」
そう言いつつ、リナルドに付いていく。
ついて行きつつ、一言付け足した。
「自爆してでもこの艦を守ろうとする、忠誠心の異常に高い奴が居たとしたら話は別だがな。」
【行動:会話(−0)通路移動(−1)】
【残り行動値:3p】
【位置:O−15(ガンイージ):P−15(ビギナ・ギナ)】
【機体状況:ビギナ・ギナ:通信中(ガンイージ) コックピット大破 左肩装甲融解 右下腕部損失
フィン・ノズル4個損傷、表面装甲損傷軽微 左足首に負荷 自爆装置無効化済 遠隔操作中
ガンイージ :通信中(ビギナ・ギナ ジャベリン ペズバタラ)
機体各所にダメージ、電子機器に被害、頭部大破 左右脚部損傷、左腕大破
右フロント・サイドアーマー破損 左サイドアーマー破損 脱出装置使用不可 自爆装置無効化済】
【参加者状況:右足重傷(処置済み)打撲 左目周辺に切り傷 防弾チョッキ着用 首輪カバー装着中 内蔵に負荷】
【武装:ガンイージ:ビームライフル(残弾2)
ビギナ・ギナ:ビームサーベル×2 フック付きワイヤー&ウィンチ
F-90S用クルージングミサイル×1 ヒートナイフ×1
ドラム弾装式120mmマシンガン(残弾4斉射分)】
【所持品:ディパック(食料0.5日分 計画書 紙とペン 医療用セット 首輪カバー
自動小銃 マガジン×3)
拳銃(残弾16発) 工具セット 杖 ヨーコの果物ナイフ (ゼファー) 】
【行動方針::"示す" 利用出来るモノは利用 突入】
「―― リーア、時空転移ゲート ノ システムロック、準備完了シタデ〜♪」
静かな制御室に、楽しげな合成音声が響く。
彼の声に、応える者はない。
紫のハロは、沈黙に対し目をチカチカと点滅させると、再び口を閉ざす。
「―― 全体通信、イマダ来ズ! 転移先ノ設定、UC0091プラスマイナス1年ノママデ待機!」
十数分後、再び楽しげな口調の電子合成音が発せられる。
彼の声に、応える者はない。
紫のハロは、無数のコードをくわえ込んだまま、その場で軽く跳ねて『彼女』の方に向き直る。
部屋の片隅。
紅く汚れたコートを着た女が、壁に背を預けて座り込んでいた。
いや、それはコートではない。血に汚れた白衣だ。
眠っているのだろうか? 目を閉じたまま動かぬ彼女は、青白い顔色ながらも微かな笑みを浮かべている。
いつも浮かべていた挑発的な微笑みではなく、実に穏やかな、安らぎに満ちた微笑。
紫のハロは、彼女を見つめて目を点滅させる。
もちろん、ハロ特有の呑気な表情は変わらない。彼の声も「楽しげな」電子合成音しか登録されていない。
――だから、元祖ハロも持っていた簡易健康診断システムも、彼の口調や表情には何の変化も与えない。
あくまで楽しげな口調で、彼は観測した事実を繰り返すだけだ。
「………リーア、脳波レベル、低下。低下。低下。テイカ。テイカ。テイ…………」
聞く者もいない独り言を、壊れたレコードのように延々と繰り返すだけ――
――ダダダダダッ!
唐突な銃声が、ハロVの「テイカ」のエンドレスリピートを断ち切った。
銃声に合わせて紫の球体は二度三度跳ねた後、弾痕から煙を上げて沈黙する。
動くものも音を立てるものもなくなった制御室。
自分たちが放った銃弾を追うようにして、数人の完全武装の男たちが踏み込む。
油断なく小銃を構えたまま、壁際に座り込んだ白衣の女を取り囲む。
兵士の一人が女の髪を乱暴に掴み、顔を覗き込む。
そして舌打ち一つ上げて、手を離す。
支えを失った身体は、ズルズルと崩れて彼女が作った血溜りの中に倒れこんだ。
兵士たちは通信機を用いて現場報告を行うと、紫のハロの繋がっていたコンソールを弄り始めた。
【生徒番号なし(元ティーチャー):リーア・ミノフスキー 死亡】
「メインカメラがないってのは、やっぱり不便なものだな…。レーダーが使用可能なのが救いだが…」
P-15へ向かう道すがら、モニターを眺めて呟いた。
見えないよりかはましだが、サブカメラの映像はメインカメラに比べて視野が狭い。
それに画像も鮮明とは言い難い。
これからはカメラとレーダー、それに己の五感をフルに使っていかないとだめだ。
いや…まあ、これまでもずっとそうだったんだが。
その狭い画像に映る、バイクの先端についている傷。
おそらく、さっきのベルガ・ギロスのパイロットはジャベリンではなく、このバイクを狙ってショッ
トランサーを撃ったのだろう。
『将を射んとする者は先ず馬を射よ』ってやつだ。
そしてその狙いは外れてはいなかった。
しかし、バイクの流線形のフォルムが避弾効果の役目を果たし、跳ねたショットランサーが偶然ジャ
ベリンの頭部を襲った……といったところか。
(全く…運が良いんだか悪いんだか分からないな…)
苦笑する俺を乗せたバイクは、P-15へと入っていった。
レーダーで確認できたのは、2隻のザムス・ガルと数機のMS。
そのうちの2機はサイコガンダムと、例の無人のビギナ・ギナ。
…どうやらここにいた敵機は、あらかた墜としたらしい。
(…やるもんだ)
リファニアもそうだが、無人のビギナ・ギナの能力にも正直舌を巻いた。
そしてそれを作り出した、シュウジの能力にも。
ザムス・ガルに近づくにしたがって、その周囲の状況が飲み込めた。
そして今俺のするべき事も。
「聞こえるか、リファニア=ニールセン。これより援護する」
サイコガンダムに通信を送ると、ザムス・ガルの周囲を高速で通過しながら艦上にビームマシンガン
をばらまいた。
【行動:ペズ・バタラ、サイコG、アビゴル、ガンイージに回線継続(0)P-15に移動(−1)
ザムス・ガルにビームマシンガン発射(−1)】
【残り行動値:2p】
【位置:P-15】
【機体状況:右腕消失、頭部消失、モニター30%使用不能、右肩装甲損傷、左肘ジョイント負荷
(50%)、胸部及び腹部装甲に凹みと歪み、ショットランサー1基消失、
機体各所に傷、右足膝下消失、ビームシールド破壊
メガライダー:ごく軽い傷】
【参加者状況:左肩負傷(処置)、左眼球裂傷(処置)、右手首切断(処置) 右肋骨骨折、
左大腿骨にひび、右上腕に銃創(処置)ガラスにより右肩裂傷】
【武装:ビームサーベル×1、ショットランサー×1、ビームマシンガン(75%)
メガライダー:メガバズーカランチャー(60%)】
【所持品:ディパック、水2?入り5本、食料21/3日分、蕎麦団子1個、 拳銃と自動小銃と弾倉×5
タッパーのカレー1つ、保冷シート2枚、書類の束、ペン、缶詰の段ボール、首輪カバー】
【行動方針:突入までの時間稼ぎ、リファニアの援護】
【同盟:ベルク、リファニア、シュウジ、リナルド】
敵艦のエンジン・ユニットに大きな被害を与え、敵艦の底面から一気に離れようとするリファニア。
(さあて、ここからが一番危ない所。
離脱する瞬間、おそらく思いっきり艦砲射撃を浴びる事になるんだから。
……果たして無事に抜られるかどうかって所だけど、やってみせ……!?)
その時、上面から果敢にも敵艦に攻撃をかけつつ接近するレイモンドのジャベリンの姿を、
レーダーとリファニアの感覚の双方が捉えた。
「……レイモンド、さんっ!」
何故レイモンドがレゥルーラを離れてここに現れたのか。
そういった事を考えるよりも先に、リファニアは歓喜の声をあげてしまった。
……正直、この戦力でここまで戦い抜けた事は自分には出来すぎのような気もしたし、
戦っている時はそんな事を表に出さなかったが、すこしだけ心細かったのだ。
敵艦の底面を一気に通り抜け、ジャベリンの姿を肉眼で確認したリファニア。
だが、その姿を見た途端、リファニアはぽかんと間抜けに口を開いてしまった。
「タ、タイヤがバイクに進化したっ!
……じゃなくて、あれは、確か……。」
そう、あのマシンの事……知っている。
単体での運用可能な、メガ・バズーカランチャーを唯一かつ強力な武装として持つSFS。
かつてエゥーゴが運用したという、メガ・ライダーだ。
単純にSFSの性能として見ればタイヤの驚異的な防御力と汎用性に比べれば見劣りするのだが、
そんな事はリファニアにはわからないし、特性を考えれば現状では非常に有用な代物である事は確かだ。
(これはいい物、手に入れたかも。
メガ・バズーカランチャーをサイコに繋いでいる間は私が動けないけど、
これなら機動力を失わないでメガ・バズーカランチャーの運用が可能になるんだから。
それに、誰かがMSを失ってしまってもコレに乗る事もできるしね。)
一通り喜んだあと、レイモンドが何故ここに来たのか気になってきた。
乱れた敵艦の対空砲火を潜り抜け、機銃にやられない程度に距離をとると、レイモンドの機体との通信回線を開いた。
「レイモンドさん、援護ありがと。
見ての通りボロボロだけど、何とか凌げたって感じかな。
過負荷がかかったジェネレータももう少しで回復するし、まだまだ私は戦えるよ。
……レイモンドさんの機体も、頭とかやられちゃって、結構ボロボロだね。」
言いながら、まじまじとジャベリンの姿を確認するリファニア。
レイモンドが相当の激戦を戦い抜いてきた事が伺える。
だが、隣のエリアにまだ多数の敵機の反応があることが気になる。
「そうそう、助けに来てくれた事は嬉しいんだけど、レゥルーラに突入したみんなは大丈夫なの?
シュウジさんの身に何か、起きなかった……?
ここの敵艦の脚は殺したし、敵機の殆どが戦闘不能だよ。
残るのは今ゼファーが相手してる敵だけだから、ゼファーと一緒にレゥルーラの近くの敵を抑えに………!?」
その時、唐突にリファニアを悪寒が襲い、リファニアは言葉を詰まらせてしまう。
蒼白になり、ガタガタと震え出すリファニア。
この悪寒の原因は……かつて向けられた事のない程の、悪意に満ちた殺意……?
それはまさに、リファニアにピンポイントに向けられているようだった。
だが、次いでリファニアの中に誰かが通り抜けていったような。
そんな感覚がして、先ほどまで感じていた悪寒が弱くなる。
今通り抜けていった穏やかな魂は……これは、リーア・ミノフスキー?
それは、虚に満ちた笑みに取り繕われていなかった。純粋に穏やかな魂だった。
(……リーア・ミノフスキーが……逝ったの……?
今のリーアから、悪意なんて感じなかった。なら、この悪寒は、一体……?)
悪寒はまだ、かすかに残っていた。
だが、今は震えている場合などではない。
レイモンドに向かって微笑んでみせて、言葉を続けた。
「……突然言葉を切らせてしまってごめん、レイモンドさん。
みんなが艦橋抑えた時にいつでも拾えるように、レゥルーラの居るエリアに行こっ。
まずは、ここでゼファーを拾ってね。」
そう言うと、ゼファーと対峙する敵機へとサイコを近づけた。
【行動 : 敵艦より離脱(-1)、対空砲火回避(-1)、レイモンドに通信(-1)、残1 】
【位置 : P-15 】
【機体状況 : MRX-010サイコガンダムMk-U
全身の装甲がボロボロに、右脇腹と右脚側面にビームで抉られた損傷、左脚ほぼ喪失、
右腕ほぼ喪失、MA時コックピット部増加装甲損失、背面に損傷、
スラスター損傷(推力70%)、アポジモーター幾つか損傷、MA時バランサー異常、Iフィールド停止
自爆装置改造済み、MS形態、攻性プログラム&『盾』ダウンロード済み、ジェネレーター回復中 】
【パイロット状況 : 頬にうっすらと傷痕、右肩軽傷(治療済)、頭軽傷(包帯巻)、左腕重傷(処置済み)、
ノーマルスーツ着用、メイク済み♪、感覚開放、サイコミュによる負担、首輪カバー装着、悪寒 】
【武装: 胸部3連装拡散メガビーム砲(一門破損)、リフレクタービット×2、(大型ヒートグレイブ、メガバズーカランチャー)
腕部サイコミュ式 ビームソード×1、全身メガビーム砲×多数(総数半分以下に減少) 】
【方針 : 『揺るがせてはならない夢』、自分の意志で綺麗に生きる、誰も死なせない! 】
「う……ぁぁ……。」
目を見開いて、目の前の状況を決死に把握しようとするデナン・ゲーのパイロット。
だが、それをするには時間がなさ過ぎた。
(……情報通りにコックピットのメインユニットは潰したはず……
なのに……何故動く?機体の方にシステムを移動?
いやいや、容量の問題から言って、それは不可能なはず……!
なのに何故だ!
何故動く!
何故だ!
何故)
デナン・ゲーのパイロットの身体は、そこでこの世から完全に消滅した。
* * * * *
ビギナ・ギナのビームサーベルが振るわれる。
その後には、コクピット部分で両断され、回転をする上半身と、下半身があった。
(……撃破。)
デナン・ゲーがそれ以上動かない事を確認すると、
頭部とコンピューターを破壊され、只漂うだけとなったデナン・ゾンの元へ向かった。
そして、その機体から腕部に残ったままだった、ショットランサーをもぎ取った。
(……武装としては貧弱ですが、贅沢は言ってられませんね……。
残りの敵機は……?)
ビームサーベルをしまい、ショットランサーを左腕に持たせる。
続いてレーダーとセンサーを使い、周囲を索敵した。
それにより得られた情報を信じるならば、周囲のMSはほぼすべて殲滅が終わり、
さらにザムス・ガルの推進器を破壊する事に成功したようだ。
そして、サイコMK−2がこちらに向かってきている。
それを受け、ゼファーは一応ビギナ・ギナを通して通信を送った。
その声は、直接サイコMK−2のコックピットのスピーカーから発せられた。
〔周囲敵機の殲滅が終わったため、先にレウルーラに向かわせてもらっていいですか?
あなたからの通信にあった、マスターの危機というのが気になりますので。
もう推進剤も残り少ないですが、レウルーラ側の防衛戦を越えるぐらいならどうにかなります。〕
実際、残り推進剤は10%にも満たない。
だが、着艦し、格納庫内に籠城するぐらいならばどうにかなるだろう。そうゼファーは考えていた。
【行動:ビームサーベルでデナン・ゲーを攻撃(−1)ショットランサー回収(−1)サイコMK−2に通信(−1)】
【残り行動値:3p】
【位置:O−15(ガンイージ):P−15(ビギナ・ギナ)】
【機体状況:ビギナ・ギナ:通信中(ガンイージ サイコMK−2) コックピット大破 左肩装甲融解 右下腕部損失
フィン・ノズル4個損傷、表面装甲損傷軽微 左足首に負荷 自爆装置無効化済 遠隔操作中
ガンイージ :通信中(ビギナ・ギナ ジャベリン ペズバタラ)
機体各所にダメージ、電子機器に被害、頭部大破 左右脚部損傷、左腕大破
右フロント・サイドアーマー破損 左サイドアーマー破損 脱出装置使用不可 自爆装置無効化済】
【参加者状況:右足重傷(処置済み)打撲 左目周辺に切り傷 防弾チョッキ着用 首輪カバー装着中 内蔵に負荷】
【武装:ガンイージ:ビームライフル(残弾2)
ビギナ・ギナ:ショットランサー(二連マシンガン残弾:4)ビームサーベル×2 フック付きワイヤー&ウィンチ
F-90S用クルージングミサイル×1 ヒートナイフ×1 】
【所持品:ディパック(食料0.5日分 計画書 紙とペン 医療用セット 首輪カバー
自動小銃 マガジン×3)
拳銃(残弾16発) 工具セット 杖 ヨーコの果物ナイフ (ゼファー) 】
【行動方針::"示す" 利用出来るモノは利用 突入】
>>84 (ったく強情な野郎だな・・・・・・・・まあ本人がそう望むなら仕方ないか。)
『さ、早いとこブリッジを目指そう。
艦外の状況がより悪化してからじゃ、こっちも動き辛くなるばかりだしな……』
リナルドの言葉と同時に二人が動く俺もそれに続き通路を進んでいく
当初の作戦での陣形とは多少異なり、俺が後シュウジを挟んでリナルドが
前方で進む形になる、今の状況下では後ろからの強襲は無いだろうが
念の為にも後方に着いて進むことにした。
途中シュウジが戦艦内のハッキングは後少ししか時間が無いと
説明してきたそれを踏まえて二人に話しかける。
「ああ、大体予想の範囲だよ。
いくらお前でもずっとシステムを掌握できるとは思ってないさ
通路は一本道だろ?そんなに時間はかからないと思ってるんだがな
それにこの戦艦のメインシステムはブリッチにあるんだろうから
セキュリティー担当もそこに居るわけだ制圧と同時に抑えれば問題無い。
問題はどうやって攻め込むかだ。
突入のタイミングはシュウジがブリッチの扉を開けた
タイミングでいいだろうが
リナルド、その後のブリッチの攻略はどうする?
俺はカタパルトデッキでのスタングレネードを使った
奇襲攻撃と同じような作戦で良いと思っているのだが
他に有効な策はあるか?」
【行動:レイモンドとシュウジ、リナルドと通信中(-0)会話(-0)通路を進む(-1)】
【残り行動値:3】
【位置:O-15】
【機体状況:右腕損失、左足膝部損失、右足膝部損失、本体側面装甲各所損傷
コクピット内機械一部損傷、スラスター各部損失(出力50%低下)
左手マニュピレーター消滅】
【武装:(本体)ビームアックス、3連装ミサイルランチャー×2(残弾0)(左手甲部)ビームシールド、
ビームダガー×1本 】
【所持品:ディパック 水2g三本 十字架 聖書 特殊情報端末 チ○ルチョコ20個ほど
アサルトライフル 予備弾倉3セット 拳銃 予備マガジン4セット
手榴弾 4個 ナイフ 防弾チョッキ 首輪カバー】
【行動方針:ミッションスタート】
【同盟:01番 シュウジ=アサギ 14番 レイモンド=デリック】
>>91 リファニアが援護などするまで無く、ゼファーによって敵機は瞬時に葬り去られる。
(……はや…い。流石ね。)
思わず舌を巻いてしまうリファニアに、サイコのコックピットのスピーカーを介して
ゼファーが話しかけてきた。
どうやら、ビギナ・ギナの通信装置が完全に死んだ訳ではないようだ。
「うん、解った。あなたの機体の方が私の機体よりも足が速いし、敵陣突破もしやすいしね。
すぐに追いつくから、先に行ってて……っと!」
ゼファーに返信していると、ザムス・ガルから艦砲射撃を浴びせられた。
「……ゼファー、援護するから行って!」
そう言い残して、艦砲射撃の矢面に立ったリファニア。
ジェネレーターはすでに回復している。
Iフィールド再起動。破損しているものを除き、全身の45%の火器が使用可能。
(これだけ使えれば、充分っ!)
Iフィールドでゼファーとレイモンドに浴びせかけられるビームを逸らし、
放たれたミサイルを拡散メガ粒子砲で迎撃する。
沸き起こる爆光の渦。
「……レイモンドさんも、今のうちに行って!」
行動 : ゼファーに通信(-1)、レイモンドとの通信継続(0)、カバー(-2)、ミサイル迎撃(-1)、残0 】
【位置 : P-15 】
【機体状況 : ※変更点※ジェネレーター回復、Iフィールド回復 】
『こちらダメコン隊!ダメです、火の勢いが強すぎます!消火できません!』
「…分かった。怪我人を出来る限り収容して、全区画を閉鎖しろ」
絶望的な報告をしてきた隊長に伝えると、ザムス・ガル艦長は溜息をつき、隣の副長に話しかけた。
「…何とも無様な戦をしたものだな、副長」
「全ては我々の判断の甘さが原因でした」
副長は前を見たまま、表情を変えずに続ける。
「戦略と戦術。全てにおいて生徒に遅れをとりました。
今更何を言っても言い訳になりますが…」
「その通りだ。我々は生徒の力を見誤り、戦力分散という戦場でのタブーを犯してしまった。
最初に艦隊を二手に分け…。次にMS隊も二手に分けてしまった。
…その結果が、これだよ」
確かに溜息をつきたくなる惨状であった。
彼の座乗するザムス・ガルは半数以上のMSを失い、自身も左舷のメインエンジンを破壊された。
P-15の2艦は稼動MSゼロという、更に酷い有様となっているようだ。
「レウルーラの様子は?」
副長は返答を用意していたかのように言った。
「レウルーラの通信によると、生徒は既に内部に侵入しています。…レウルーラの救出は外部からは
ほぼ不可能でしょう。今更無人のMSを破壊しても、効果は怪しいものです」
そこで彼は艦長に向き直ると、声を改めた。
「…艦長。稼動MSの全機をもって、P-15の生徒の撃墜を進言します」
「うむ。…採りうる策は、それしかあるまい」
「はい。P-15の生徒を撃墜し、次いで無人のMSを破壊すれば侵入した生徒も脱出手段を失います。
甚だ分の悪い賭けですが、レウルーラ救出の手段はもうそれしかありません」
その言葉に、艦長は表情を引き締めた。
「稼動機は?」
「1番隊のベルガ・ギロス、それにデナン・ゲーが3機と2番隊のデナン・ゾン1機です」
軍艦の副長たる者、どのような質問にも答えを用意しているようでなくてはならない。
副長の見本のような士官は、間髪をいれず答えた。
「ではベルガ・ギロスに伝えろ。本艦を顧みず、稼動全機をもってP-15の生徒を撃墜しろと」
そして艦長は考えた後で、通信兵に言った。
「レウルーラにも伝えろ。本艦はこれより最後の攻撃に移る。これが失敗した時、貴艦を救う術は
尽きる。…貴艦も万策尽きた時は降伏を考慮せよ。
生徒の目的はあくまでも脱出だ。抵抗しなければ無意味な殺戮はするまい、とな」
(続く)
指示を終え一息ついた艦長に、副長が話しかけた。
「艦長はレウルーラの降伏をお望みですか?」
その問いに微かに笑って艦長は答えた。
「策がないのであればな。艦長には自爆などという早まった真似はしてほしくはない。…レウルーラ
に蓄積されたデータとこの戦闘を経験した乗組員は、第四回への貴重な財産となるのだからな」
********************************
ザムス・ガルの艦上に小さな爆発が連続して起こる。
視界の狭いカメラの映像だったが、ザムス・ガルの巨体を外すわけが無い。
そして当たり前だが、対空砲火はバイクの動きについてこれない。
艦船の対空砲火では、普通のMSを墜とす事すら稀なのだ。
SFSに乗ったMSに当てるのは、限りなく難しいだろう。
射撃を終えるとリファニアに通信を返す。
「まあ、あの数と戦ってこの程度で済んだ事を幸運と思う事にするさ。
…シュウジだが、何かあったのか?俺がバイクに乗り換えた時デッキには誰もいなかったから、
皆無事に艦内に突入しているんじゃないのか?」
バイクをサイコガンダムに近づけながら、更に通信を送る。
「ところでリファニア…。さっき、何かに怯えていなかったか?
今は何ともないみたいだから…ん、どうし……!?」
サイコガンダムがすっと前に出るのを見ていぶかしんだが、次の瞬間周囲に起こった爆発を見て
何があったのかを理解した。
どうやら立ち話がすぎたようだ。
「すまないリファニア=ニールセン。…ああそうだ。移動する前に話しておくが、O-15にはまだ
戦闘可能な敵MSが存在している。決して気を抜くな」
レーダーにはザムス・ガル周辺にいたMSが、そこから離れていく様子が映っている。
それは奴等が、母艦の防衛を捨てたという事を示している。
【行動:ペズ・バタラ、サイコG、アビゴル、ガンイージに回線継続(0)サイコGの傍に移動(−1)】
【残り行動値:3p】
【位置:P-15】
【機体状況:右腕消失、頭部消失、モニター30%使用不能、右肩装甲損傷、左肘ジョイント負荷
(50%)、胸部及び腹部装甲に凹みと歪み、ショットランサー1基消失、
機体各所に傷、右足膝下消失、ビームシールド破壊
メガライダー:ごく軽い傷】
【参加者状況:左肩負傷(処置)、左眼球裂傷(処置)、右手首切断(処置) 右肋骨骨折、
左大腿骨にひび、右上腕に銃創(処置)ガラスにより右肩裂傷】
【武装:ビームサーベル×1、ショットランサー×1、ビームマシンガン(75%)
メガライダー:メガバズーカランチャー(60%)】
【所持品:ディパック、水2?入り5本、食料21/3日分、蕎麦団子1個、 拳銃と自動小銃と弾倉×5
タッパーのカレー1つ、保冷シート2枚、書類の束、ペン、缶詰の段ボール、首輪カバー】
【行動方針:リファニアの援護】
【同盟:ベルク、リファニア、シュウジ、リナルド】
「他に有効な策はあるか?」
「奇襲か……そうだな。
戦闘になってるんだし、ブリッジ要員はほぼ全員が戦闘ブリッジに入ってるはずだよな。
だったら、通常ブリッジは簡単に突破できるはずだ。
戦闘ブリッジにスタングレネードを放り込んで突入するなり
こちらを撃ちに出てきたところを仕留めるなりしてから、艦長クラスを押さえるか?
いくら艦長クラスでも、連中、いざとなったら捨て石にするかもしれないし……
今さら人質は役に立たないと思うけど、『ゲート』や組織の情報を聞きだせるかもしれないしな。
俺が思い付くのはこのくらいかな」
ベルクに意見を述べてから、リナルドは片手を上げて二人を一旦止めると、
通路の先を素早くチェックして手招きする。
ルート以外の隔壁があらかた閉じているのだから、それほど神経質になる必要は無いのかもしれないが、
基本を怠っては生き残れないだろう。
(……もうすぐだな……)
一本道を進む三つの影は、ようやくブリッジに到達しようとしていた。
【行動:移動中(-1)、会話(-0)】
【位置:O-15(レウルーラ・艦内通路)】
【残り行動値:3pts.】
【機体状況:MA形態・両肩、背面損傷・『盾』・通信回線→サイコ、ガンイージ、ジャベリン】
【武装:(MS)ビームカタールx2、右腕ビームカッター、ビームキャノン、デュアルビームガン
ビームシールド】
【生徒状態:覚醒@ノーマルスーツ・首輪カバー・鈍痛・数箇所打撲・一部身体異常……】
【所持品:デイパック、コッペパンx1、水2gx2.6、食糧3.5日分、私服、拳銃(16)、救急箱
受信装置、自動小銃、マガジンx4、スタングレネード、拳銃(8)x3、防弾チョッキ
(以下私物)MS状態チェック用ポータブルコンパネ、ノートPC、眼鏡、配線修理用工具一式】
【行動方針:作戦遂行】
【同盟:全員】
「さて、じゃあもう少し奴等を引き付けるとするか。
またレウルーラの中に入られたら厄介だしな」
ザムス・ガルの攻撃が一息ついたところで、バイクをサイコガンダムの影から出した。
「リファニア=ニールセン。あまり無理をするな。俺はバイクのスピードで何とでもなるが
その傷付いたサイコガンダムでは、集中攻撃を受けたら辛いぞ」
リファニアにそれだけ言い残すと、再びO-15へとバイクを飛ばしていった。
O-15の敵機は残り5機。
ザムス・ガルを離れたその5機は、いずれもレウルーラに向かう気配は見せていない。
レーダーでその様子を見た俺の目がすうっと細まる。
(奴等の目標は…レウルーラじゃない…?)
モニターで遠くに映るその編隊を睨み付けた俺の顔に、僅かに笑みが浮かんだ。
「これ以上、デッキのMSにこだわるのは止めたか…?
…そうだな。それが正しい。もっと早く気づけば更に良かったが…」
ぐんぐんと敵機の姿が近づいてくる。
向こうも気づいているのだろう、編隊を分散させている。
…いや、おそらくはまとまったままで、メガバズーカランチャーの餌食になるのを恐れているのだ。
「…構わんさ。こちらも用心している相手に撃つつもりはないしな」
ぽつりと呟くと、一気に分散した編隊の間をビームマシンガンを撃ちながら通過した。
…どうやら、こちらも向こうも当てられなかったらしい。
今のような高速移動での反航戦で、1回の射撃で命中させるのは奇跡に近い。
命中させたいのなら、さっきのベルガ・ギロスのように真正面からの射撃をするか、若しくは同速度
での同航戦にもち込むべきなのだろうが、生憎どちらもやらせるつもりはない。
【行動:ペズ・バタラ、サイコG、アビゴル、ガンイージに回線継続(0)O-15に移動(−1)
敵編隊に突っ込む(−1)ビームマシンガン発射(−1)】
【残り行動値:1p】
【位置:O-15】
【機体状況:右腕消失、頭部消失、モニター30%使用不能、右肩装甲損傷、左肘ジョイント負荷
(50%)、胸部及び腹部装甲に凹みと歪み、ショットランサー1基消失、
機体各所に傷、右足膝下消失、ビームシールド破壊
メガライダー:ごく軽い傷】
【参加者状況:左肩負傷(処置)、左眼球裂傷(処置)、右手首切断(処置) 右肋骨骨折、
左大腿骨にひび、右上腕に銃創(処置)ガラスにより右肩裂傷】
【武装:ビームサーベル×1、ショットランサー×1、ビームマシンガン(65%)
メガライダー:メガバズーカランチャー(60%)】
【所持品:ディパック、水2?入り5本、食料21/3日分、蕎麦団子1個、 拳銃と自動小銃と弾倉×5
タッパーのカレー1つ、保冷シート2枚、書類の束、ペン、缶詰の段ボール、首輪カバー】
【行動方針:突入までの時間稼ぎ、リファニアの援護】
【同盟:ベルク、リファニア、シュウジ、リナルド】
>>95 >>97 レイモンドはリファニアの顔色が酷く悪化した事を若干気にするそぶりを見せていたが、
リファニア自身、悪寒を感じた理由がわからなかった事もあるし、レイモンドを心配させたくも無かったので、
ただ強気な笑みを浮かべながら首を横に振ってみせるだけで、黙っていた。
それを受けて、レイモンドはリファニアに無茶をしないように釘を刺すと、
レゥルーラの居るエリアに戻ろうとする。
「うん、自分の機体の事は良く解ってる。独りで無茶をするような事は、しないよ。
レイモンドさんと上手く連携を取る事を心がけて、決して前に出過ぎないように戦う。」
そう答え、リファニアもレイモンドを追おうとした。
敵MS群を牽制しておけば、ゼファーが敵陣を突破する事もより容易になるだろう。
……それにしても、先ほど感じた悪寒は、何だったのだろうか。
その悪寒はいまだに完全に消え去った訳ではない。
まるで獲物を見定める蛇のような視線を誰かに向けられているような、そんな感覚があった。
「……気持ち、悪いな……。」
不安を感じながらも、急ぎレイモンドを追う。
「ゼファー、露払いはやっておくからね。」
グレイブを拾い、ゼファーにそう告げてO-15へ移動すると、敵陣の真っ只中を強行突破するレイモンドの姿が確認できた。
一見無茶をやっているようだが、それが幾度もの戦いの経験に基づく確かな戦術である事がリファニアには理解できた。
(絶妙のポジショニングと、攻撃タイミング。隙をぜんぜん感じさせない。
……まるで、パパの戦いを見ているみたいね。私じゃまだまだあんな戦い方、できないな。
私のは、自分の能力に頼り切った戦いだもの。)
包囲網を突破され、若干フォーメーションに乱れの出た敵部隊。
レイモンドに引きつけられて、新たに登場したリファニアのサイコに対する反応が明らかに遅れていた。
「悪いけど、その隙いただきっ!」
サイコの全身のメガ粒子砲が光を放ち、敵部隊にビームの嵐が浴びせかけられる。
だが、光の奔流が通り過ぎた後、敵機の数は一機たりとも欠けてはいなかった。
間一髪の所で新たなる敵を察知した隊長の指示により、素早く態勢を立て直した敵機は、
ビームシールドを掲げながらサイコの砲火の薄い場所へ退避し、難を逃れたのだ。
(くっ……さっきの部隊よりさらに動きが良い。……だけどね。)
回避こそされたが、敵機のフォーメーションの乱れはさらに大きくなっている。
ゼファーならばこれを突破する事は容易だろう。
【行動 : ゼファー、レイモンドとの通信継続(0)、グレイブを拾う(-1)、O-15へ移動(-1)、
メガ粒子砲一斉射(-2)、残0 】
【位置 : O-15 】
【武装: 胸部3連装拡散メガビーム砲(一門破損)、大型ヒートグレイブ、
腕部サイコミュ式 ビームソード×1、全身メガビーム砲×多数(総数半分以下に減少) 】
【方針 : 『揺るがせてはならない夢』、自分の意志で綺麗に生きる、誰も死なせない! 】
>>92 >>96 「……。」
艦橋の襲撃法について議論する二人を、シュウジは後方の隔壁を閉じつつ聞いていた。
だが、その足取りは決して軽いとは言い難い。
先程の破片の直撃は、内臓へ確実にダメージを与え、じりじりとシュウジの体力を奪っていった。
(……これは……長くは保ちそうにないか……。)
この負傷もあり、シュウジの口数は、以前にも増して少なくなっていた。
そうこうしている内に、三人は艦橋のドアまで後十メートル程まで近づいていた。
「……開けるぞ……準備はいいな……?」
二人の方を見て、言うシュウジ。
少し待つと、艦橋のドアを開けるべくノートPCに手を伸ばす。
艦橋近くのマップを開き、ドアを選択する。そして、そのスイッチを開放にしようとしたその時だった。
"バシュッ"
「……!?」
艦橋のドアの方から聞こえた音。その音に驚き、ドアの方を向く。
すると、そこには。
『な……お前ら!』
疑う余地もなく、そこにいたのはレウルーラの艦橋要員だった。
「……冗談じゃない……。」
シュウジは舌打ちと共に、そう呟いた。そして、同時に
「……運命の女神は……とんだ阿婆擦れのようだな。」
とも呟いた。その顔は、苦痛と、怒りとに歪んでいた。
そして、ノートPCの代わりに、銃を構えた。
【行動:隔壁閉鎖しつつ移動(−2)】
【残り行動値:2p】
【位置:O−15(ガンイージ):P−15(ビギナ・ギナ)】
【機体状況:ビギナ・ギナ:通信中(ガンイージ サイコMK−2) コックピット大破 左肩装甲融解 右下腕部損失
フィン・ノズル4個損傷、表面装甲損傷軽微 左足首に負荷 自爆装置無効化済 遠隔操作中
ガンイージ :通信中(ビギナ・ギナ ジャベリン ペズバタラ)
機体各所にダメージ、電子機器に被害、頭部大破 左右脚部損傷、左腕大破
右フロント・サイドアーマー破損 左サイドアーマー破損 脱出装置使用不可 自爆装置無効化済】
【参加者状況:右足重傷(処置済み)打撲 左目周辺に切り傷 内蔵に負荷 防弾チョッキ着用 首輪カバー装着中】
【武装:ガンイージ:ビームライフル(残弾2)
ビギナ・ギナ:ショットランサー(二連マシンガン残弾:4)ビームサーベル×2 フック付きワイヤー&ウィンチ
F-90S用クルージングミサイル×1 ヒートナイフ×1 】
【所持品:ディパック(食料0.5日分 計画書 紙とペン 医療用セット 首輪カバー
自動小銃 マガジン×3)
拳銃(残弾16発) 工具セット 杖 ヨーコの果物ナイフ (ゼファー) 】
【行動方針::"示す" 利用出来るモノは利用 突入】
レウルーラ艦橋の艦長の椅子の上で、艦長は頭を抱えていた。
そこには、先程までの尊大な彼の姿はない。
(…いつも偉そうにしてても、こうなったらどうしようもないな)
近くにいる兵士はその様子を横目で見ながら思った。
そこに同情の類の感情は篭ってはいない。
艦長がこんなになった理由は様々あるだろうが、1番の理由はついさっき入ってきたザムス・ガル
からの通信だろう。
救援艦隊の作戦失敗。
それと共に伝えられた、降伏を考慮せよという言葉。
どちらも艦長にとっては思いも寄らない、しかしそれだけに与えられたショックは絶大だった。
しかも厄災は外だけに止まらない。
侵入した生徒がコンピュータをハッキングして、隔壁を操作している。
未だにハッキングは破れず、侵入からの経過時間からして、生徒達は確実に間近に迫ってきている。
それでも艦長が降伏に踏み切れないのには、訳があった。
勿論彼だって、生き残れるものならその道を選択したかもしれなかった。
しかし、例えそれで生き延びたとしても、彼はその責任から逃れる事はできない。
リーア=ミノフスキーが裏切った今、彼は現場の最高責任者なのだ。
その上彼は己の指揮の拙さから、生徒の反抗という前代未聞の事態を招いてしまった。
それを鎮圧できたのならまだ望みはあったが、事態は最悪の結末へ間違いなく向かっている。
どう考えても、組織がその彼を見逃すとは思えなかった。
そしてザムス・ガルの通信は、艦橋の内部そのものに影響を与えていた。
何しろ戦闘経験の乏しい兵士ばかりである。
その彼等が慣れない銃を構えて、死を覚悟していたところに降伏の通信がきたのだ。
彼等、特に責任問題とは程遠い下級の兵士は、先ず生き残る事を考え始めた。
この生徒の反抗の責任は主に上層部(特に艦長)の人間にあり、命令に従うしかない彼等自身は大
した罰を受ける事はないと考えても無理はない。
それに、命令を出すだけの頭は直ぐに挿げ替えられるが、彼等のような場数を踏んだ司令部要員は
得ようとしてもなかなか得られないという計算も働いている。
こうして艦長をはじめとする上層部と兵士の間には、微妙な空気が漂いはじめていた。
(続く)
「おい…おい、そこの。ちちょっと通路の様子を見てこい」
その空気を知ってか知らずか、艦長が傍の兵士に命令した。
怪訝な顔をする兵士に、更に続ける。
「な何も奴等がここに来るまで、じじ、じっとしている事はない。まだ大丈夫のようなら、おお前
達全員で通路を進んで奴等を迎え撃つんだ!」
「ま、待ってください!先程ザムス・ガルより降伏を考慮せよと通信が…」
「だだま、黙れ!黙れ!まだ我々は負けていない!お前達全員でかかれば、多少の犠牲は出ても
奴等を殺す事ができるだろうが!さ、さあさっさと通路を確認してこい!」
兵士の非難の視線に気が付かないまま、艦長は言うだけ言うと顔を背けた。
艦長にできる最後の策だった。
隔壁が閉じられて戦闘区域が限られている現在、こちらから出て迎え撃つのは悪い考えではない。
…問題があるとすれば、命令を出すタイミングが悪すぎたという事だろう。
彼が少し落ち着こうと帽子に手をかけた時、事態は急転回した。
『な……お前ら!』
通路の様子を見に行った兵士の驚愕の声。
帽子にかけた手が止まった。
…時間そのものが止まってしまったようだった。
そして、その静止した世界を突き壊すかのような銃声が聞こえてきた。
********************************
最初の交戦を終えたベルガ・ギロスのコクピットの中で、パイロットはヘルメット越しに歯ぎしり
が聞こえそうなくらい、歯を噛み締めていた。
別に攻撃を食らったわけではない。
あのSFSの武器を警戒して早めに編隊を分散させたのは正解だったし(そのかわり濃密な射撃が
できなくなったが)、すぐあとに仕掛けてきたサイコガンダムの攻撃も、運良く全機が躱せた。
その彼が苛ついている理由は、攻撃の手段を見出せない為だった。
あのSFSにはスピードで劣っている為に有効な射撃位置を確保できないでいるし、個々の機体の
現状に差があり、上手く火線を形成できそうにない。
サイコガンダム相手には、現在の武器で対抗できるのか心許ない。
あの巨体を倒せる程弾薬は残っているのか、直接攻撃を出来るくらいに近寄る事ができるのか、
不透明な要素が多すぎる。
だが。…彼は考える。
隙が多いのは間違いなくサイコガンダムだ。
たしかに攻防共に高いレベルのMSだが、さっきの攻撃には明らかに穴があった。
難しいかもしれないが、そこから何とか崩すしかない。
勿論相手もその程度は承知しているだろう。
だがもう、敢えて虎穴に入らなければ成果は望めないのだ。
…それに一度接近してしまえば、SFSもこちらに攻撃できなくなる。
「各機に告ぐ。サイコガンダムを第一の目標とする。
さっき見た通り、奴の拡散ビームには穴がある。その隙間を見極めて接近戦を試みろ!
奴も傷付いている。倒せない相手ではないぞ!」
全機に伝えると、彼のベルガ・ギロスは先陣を切ってサイコガンダムに向かっていった。
********************************
(続く)
最初の攻防のあと、敵機の様子に変化が表われた。
どうも、ジャベリンに対する警戒が先程よりも薄れている気がする。
そりゃサイコガンダムもいるから、ジャベリンばかりを警戒するわけにもいかないが。
何よりリファニアが絶妙のタイミングで攻撃を仕掛けた為か、どちらかと言えばサイコガンダム
の方をより警戒している感じもする。
(奴等がサイコガンダムに仕掛けるとすれば、どこかに隙を見つけたという事なんだろうが…)
「!」
ベルガ・ギロスが明らかにサイコガンダムを目指す仕草を見せた。
どうやら奴等はその隙を狙っているのだろうか?
「リファニア!接近されたら厄介だ、後ろに下がれ!」
その時、敵機の動きを見る俺の脳裏にある策が思い浮かんだ。
…だが正直思いつきの策が成功するか、自信がない。
だからと言って、近接戦闘に持ち込まれたら俺には手が出せなくなる。
大きく息を吸うとリファニアに話し掛ける。
「リファニア!1回だけ聞く!…俺の腕を信用できるか?」
【行動:ペズ・バタラ、サイコG、アビゴル、ガンイージに回線継続(0)】
【残り行動値:4p】
【位置:O-15】
【機体状況:右腕消失、頭部消失、モニター30%使用不能、右肩装甲損傷、左肘ジョイント負荷
(50%)、胸部及び腹部装甲に凹みと歪み、ショットランサー1基消失、
機体各所に傷、右足膝下消失、ビームシールド破壊
メガライダー:ごく軽い傷】
【参加者状況:左肩負傷(処置)、左眼球裂傷(処置)、右手首切断(処置) 右肋骨骨折、
左大腿骨にひび、右上腕に銃創(処置)ガラスにより右肩裂傷】
【武装:ビームサーベル×1、ショットランサー×1、ビームマシンガン(65%)
メガライダー:メガバズーカランチャー(60%)】
【所持品:ディパック、水2?入り5本、食料21/3日分、蕎麦団子1個、 拳銃と自動小銃と弾倉×5
タッパーのカレー1つ、保冷シート2枚、書類の束、ペン、缶詰の段ボール、首輪カバー】
【行動方針:突入までの時間稼ぎ、リファニアの援護】
【同盟:ベルク、リファニア、シュウジ、リナルド】
隊長機らしき機体は回避行動を終えると共に、今度は矛先をこちらに向けてきた。
隊長機に導かれ、素早くフォーメーションを整える敵機達。
無傷のデナン・ゲーと、頭部を失ったデナン・ゲーが、隊長機に続きフォワードに。
残る二機はレイモンドの動きを牽制するべく、サイコとジャベリンの間を隔てるよう配置につく。
『リファニア!接近されたら厄介だ、後ろに下がれ!』
開かれた回線から飛び込んできたレイモンドの怒声が、リファニアの耳を突く。
(こいつら、私に狙いを切り換えた?)
乱れなき敵部隊の動き。
先ほどの回避運動といい、こいつらは恐ろしく練度が高い。
フォーメーションを収束させたまま接近する三機の敵機。
掲げられた三枚のビームシールドが、まるで花弁のようにも見えた。
(接近などさせは、しないっ!)
後退しながら拡散メガ粒子砲を放ち敵を牽制するリファニア。
だが、敵隊長機はサイコの砲門が破損している事による穴を、的確に見極めていた。
一所に集められたビームシールドによって、砲火の薄い場所を容易に突破されてしまう。
(ならば、こっちも火力を集中させてもらうからっ!)
続け様に全身のメガビームを敵MS達に向かって収束させて放つ。
だが、それこそまさに敵隊長の思う壺だった。
素早く散開する敵機。
光の束に射抜かれて、パッと花弁が散ったように、リファニアの目には映った。
散開と共に、敵機の火器が光と火線を放つ。
デナン・ゲーによって放たれたビームがIフィールドに逸らされ、光の幕を作り出す。
続けてショットランサー据え付けのヘビー・マシンガンを放ちながら、
隊長機が一気に間合いを詰めようとして来た。
必死で後退しつつ回避運動を取るが、何発かが機体に着弾した衝撃があった。
大型MSを相手するにはいささか火力不足の武器ではあるが、損傷箇所に弾が飛び込めば只では済まない。
それを追い撃ちするかのように、二機のデナン・ゲーがサイコを囲むように上方と下方に回り込もうとする。
苦し紛れに全身のメガビームを放ち、敵機の動きを牽制するものの、このままでは懐に入られるのも時間の問題だった。
(……集中する間を与えてくれない……っ!)
焦燥感に満ちてゆくリファニアの心。
その時、リファニアの耳に、再びレイモンドの声が飛び込んできた。
『リファニア!1回だけ聞く!…俺の腕を信用できるか?』
彼の声に、リファニアの心が若干の落ち着きを取り戻す。
(そうだ、今はレイモンドさんと轡を並べて戦っているんだ。
そう思うと、自分でも不思議だけど、落ち着いてくる。やっぱり、まるで……。)
勝気な笑みを浮かべながら、リファニアはレイモンドに一言返した。
「……これ以上無いくらいにねっ!」
【行動 : ゼファー、レイモンドとの通信継続(0)、牽制の拡散メガビーム(-1)、火力集中(-1)、
回避&後退(-1)、苦し紛れに一斉射(-1)、残0 】
【位置 : O-15 】
>>100-101 すぐ間近で起こった銃声。
耳をつんざく轟音に、一瞬停止していた彼の身体と思考も動き出す。
――早い! もうブリッジに到着したか!
レウルーラ艦長は造反生徒たちの動きに驚くと共に――
不意に、彼はかつて『ティーチャー』と呼んでいた女と交わした会話を思い出した。
* * *
『ギラ・ドーガが6機のみ……戦力としては少なすぎませんか?
レウルーラの積載能力なら、もっと載せることができますよ』
『フフッ、いいのよ。この程度で十分。
だって、万が一レウルーラを使うことになっても、万が一生徒たちに襲われても……
ほんのちょっとの時間稼ぎさえできれば、わたしたちの勝ちなのだから』
そして『彼女』は、彼女曰く『最悪のケース』の展開を予測した。
すなわち――
小惑星基地は、それ自体が非常に頑強な構造物だ。
反抗的な生徒が攻撃したとしても、その厚い岩盤はそれ自体が強固な防壁となる。まずダメージは受けない。
だがひょっとしたら、生徒たちはコロニーの姿勢制御を乗っ取り、小惑星にぶつけるような真似をするかもしれない。
しかしそんな時こそレウルーラの出番だ。
管制室を揺るがすほどの攻撃なら、事前に把握できないわけがないから、楽々と無傷で逃げられる。
また生徒の中には、第二回大会で彼女が作ったのと同様の『首輪カバー』を思いつく者がいるかもしれない。
しかし、それを使って逃げようとしても、あるいは管制側を攻撃しようとしても、今回はもう1つ仕掛けがある。
『レウルーラで逃げ出した所に、首輪カバーをつけた生徒が襲ってくる――
この『最悪のケース』に陥っても、わたしたちは時間を稼ぐだけでいいの。
たった定期放送2回分の時間をしのぎきってしまえば、首輪のタイマーが作動する。
彼らは哀れ、志半ばにして自滅するのよ♪』
彼女は楽しそうに呟くと、艦長に向けて悪戯っぽく微笑んだ。
まるで、誰かを嘲るかのように。
* * *
今にして思えば――
彼女が嘲っていたのは、無謀な反逆を試みる生徒たちではない。
その程度の説明で『なら大丈夫か』と思ってしまった、艦長をこそ嘲っていたのだ。
実際には、
小惑星基地は内部からのメガバズーカランチャーで破壊され、
逃げ出す過程で『彼女』は生徒とイレギュラーな接触を行い、
『彼女』は叛意を隠そうともせずに追放処分となり、
やがて『ゲート』で露骨な反逆行為を行った果てに死亡した。
生き残った生徒どもは全員揃って管制側への敵愾心を剥き出しにし、
気が付けば首輪の爆破も間に合わず、搭載MSも援軍艦隊もほぼ全滅――
「!? 首輪の……爆破!?」
艦長は、そこでようやく思い出した。
ここまでの怒涛の展開、目の前の防衛だけでいっぱいいっぱいだった彼は、
忙しすぎて時間を気にするヒマもなかった彼は、
――ようやくにして、遅まきながら、思い出した
彼は背後の銃撃戦の音も忘れ、ブリッジに飛び込む跳弾さえも忘れ、艦橋の一端末に駆け寄る。
それは、簡易化され小型化された、生徒たちの首輪管理システム。
レウルーラが『プログラム管制用艦艇』に改装された際、追加されたもの。
小惑星基地の管制室が亡き今、彼らの首輪を第一に管理する、この艦の最も重要なシステムだった。
最重要だからこそ、艦の中心、すなわち艦橋に備えられている。
首輪管理システムには、既に反逆生徒たちの『推定死亡』が表示されている。
Time Up。
とうに、彼らの時間は、尽きているはずなのに――!
「は……はは……」
艦長は、笑った。
笑うしかなかった。
「何故だ……何故、奴らは生きてるんだ……はは……は………」
レウルーラの戦力は、最初から『時間稼ぎ』の分しかない。
援軍艦隊に与えられていた命令も、レウルーラの『護衛』、すなわち時間稼ぎだ。
個人レベルでは、組織内で功績を上げようと、攻撃に積極的な者もいたが――しかしそれは少数。
これでは――その『時間稼ぎ』が無駄になった今、戦意が保てるはずもない。
「あの女が何か情報を漏らしたのか――
それとも、あの女の定期放送から自分たちで対策を見つけたのか――
これでは――降伏勧告するザムス・ガルの気持ちも、分からんでもないよなぁ――」
呆けたように、艦長は呟く。
彼らがどうやって首輪を無効化したのかは、見当もつかないが――
もう、勝てる気がしない。
「何が、『最悪のケース』だ……今の現状に比べりゃ、何万倍もマシじゃねぇか」
虚空を見上げ愚痴る艦長の独り言に、兵士たちは眉をひそめた。
……だが、分からないことがある。
首輪の解除が目的でないなら――首輪管理システムが目当てでないなら、何故レウルーラを襲った!?
最初は、この艦橋に乗り込んで自分達の首輪を解除するつもりなのだと思っていた。
しかし、首輪が彼らにとって『障害』になっていないなら……
何を求めてこの艦橋に飛び込んでくるのだ?!
つい先程まで、イザとなればこの『首輪管理システム』を破壊することも考えていた。
首輪関係のデータも貴重な資料だから、壊せば何らかのお咎めを受けるだろうが、何、そんなもの今更である。
目の前で目標を失った反逆者たちは意気消沈するだろうから、一気に制圧できるはずだ。
最後の手段ではあるが、消極的な方策ではあるが、いい『武器』になるはずだ――
そんな思惑が一気に消滅すると共に、大きな疑問。
奴らは――何をしたいのだ?
「ふふふ……ははは!」
思考ここに至り、不意に、艦長は哄笑を上げる。
兵士たちは場違いな笑いに引きつって、侵入者への銃撃の手が止まる。
銃撃の止まった艦橋入り口に向け、艦長は両手を広げてフラフラと歩きだす。
「ふはは、ようこそ勇敢なる反逆者諸君!
我々の負けだよ、ああ、負けだよ!」
芝居がかかった口調で、狂気の笑顔を満面に浮かべ、全く無防備に『反逆者』の前に姿を晒す。
「それで君達はいったい何をしたいのかね、この私の艦で!?
首輪の解除!? 違うな、君らは既に自由の身だ、そうだろう!?
私達への復讐!? そうかもしれないな、中間管理職に『復讐』とは全く筋違いだとも思うがね!
それとも……この私のレウルーラを、タクシー代わりにでも使おうとでも言うのかね!?」
そう言い放つと、彼は自分の冗談が面白かったのか、際限なく笑い始めた。
彼には、元ティーチャーほどの芝居っ気も茶目っ気もない。
敵の意図も理解できず、対策もなく、未来もなく、希望もなく、部下の信頼もない現状に、彼は耐え切れなかった。
彼は、本当に、作戦も何もなく、――――
【管制艦の行動:現状確認(0p)、戦意喪失(0p)】
【管制艦の位置:O-15】
【管制艦の方針:個々の兵士:なによりまず生き残る 艦長:壊れる・全ての責任放棄】
敵機に今度の攻撃は上手く立ち回られている。
向こうの隊長はさっきの失敗に懲りたのか、編隊を分割してジャベリンとサイコガンダムに当ててきた。
こちらには2機、そしてサイコガンダムには3機。
近付けさせまいと、サイコガンダムがビーム砲を撃つ。…1発。2発。
だが当たらない。
本来の3機編成に戻った小隊は、予想以上にその機動力を活かしている。
いや、それだけではあのビームをああも躱し切る事は出来ない。
おそらく隊長機が、ビーム砲の砲口の向きから攻撃位置を読んで編隊を動かしているのだ。
ビームが拡散する時は編隊を攻撃の穴へ、集中する時は編隊を分散させている。
今の攻撃を見ていて分かったが、確かにサイコガンダムのビームには1箇所だけ穴の部分がある。
癪だが、それを直ぐさま見抜いて攻撃を仕掛けるベルガ・ギロスは大したものだった。
俺の方もデナン・ゲーとデナン・ゾンに行く手を遮られている。
こちらの2機は所属隊が違うのか、連係はさほどできていない。
それを承知しているのか、攻撃もあくまで牽制程度に留めているようだ。
スピードの不利も、サイコガンダムを中心とした円の内側にいる事で何とかカバーしている。
そして常にサイコガンダムを背にする事で、メガバズーカランチャーも封じ込んでいた。
おかげで俺は、さっきから近づいては離れるという動作を繰り返す羽目になっている。
まあ、この動きも思いつき作戦の一環なのではあるが。
そしてリファニアの何の迷いもない言葉を聞いたからには、それを実行する事に戸惑いはない。
一旦距離をあけるとリファニアに早口で通信を送る。
「了解した、リファニア。時間がないから説明は1度だけだ。よく聞けよ?
…あと少ししたら俺が合図をするから、そうしたら君はサイコガンダムのビーム砲をさっきと同じ
くらい拡散させて撃ってくれ。射軸をずらして2発だ。
そして撃ったらすぐに、左右どちらでもいいから、全速で移動してくれ。いいか、すぐにだぞ?
あとその際、敵には接近されすぎないように。
難しいかもしれないが、俺も君をこれ以上ないくらい信用しているから頼めるんだ。
だから、グッドラックとは言わない。君なら運などに頼らずにできると信じる。
…じゃあいくぞ」
さっきからの小競り合いで、バイクはサイコガンダムのほぼ真後ろに来ている。
ここからは見えないが、その向こうには敵編隊がいるのだろう。
位置を確認すると、俺は先を遮っている2機へ向かっていく。
2機は再び牽制射撃を仕掛けてくるが、俺は今度は引き返すつもりはない。
ビームマシンガンを乱射しつつバイクを真直ぐ走らせていくと、向こうもさっきまでとは違う事に
気づいたのか、慌てて射撃を集中してくる。
焦っているとはいえ、真正面からの射撃はメガライダーに傷をつけていく。
ジャベリンにも命中している弾はあるだろうか?
が、そこまで考える余裕があるなら、今は作戦の遂行に全ての神経を傾けるべきだ。
「邪魔を、するな…!」
2機の間を擦るように突破すると、バイクの向きを修正しつつ叫んだ。
「リファニア、今だ!」
【行動:ペズ・バタラ、サイコG、アビゴル、ガンイージに回線継続(0)小競り合い(−1)
ビームマシンガン乱射(−1)突破(−1)】
【行動方針:突入までの時間稼ぎ、リファニアの援護】
>>96 ブリッチへの戦術はカタパルトデッキの奇襲攻撃を
そのまま行うという容でリナルドは納得してくれたようだ。
シュウジのも返事を聞こうとしたが返事を返えせる
状態では無さそうなので止めておくことにした。
そして、ブリッチの扉の前に辿り着くとバックからスタングレネードを
取りだし投げる準備をする。
『……開けるぞ……準備はいいな……?』
そうシュウジが言った時にそれは起こった・・・・・・・。
『な……お前ら!』
その言葉が聞こえた後、数発の銃声と何かが壊れる音と共に俺は通路の天井を見ていた。
他だ呆然と・・・・・・何も感じない状態で。
(あれ?なんで天井なんか見てんだ・・・・・・・・・・俺。
さっきドアが開いた時に・・・・・・・兵士がいてそいつが
俺達を見るなり撃ってきやがったから俺も応戦し様として
たら・・・・・・・・・・・・あ・・・そっか・・・・撃たれたんだ俺。
だから、天井見てるんじゃなくて倒れてるんだな
シュウジとリナルドはどうなったんだ?
銃声が遠くに聞こえる・・・・・・・・・てことはあいつ等まだ戦ってるんだよな?
・・・・・・静かになったどうしたんだ?
変な笑い声が聞こえる酷く耳障りだ・・・・・・黙れ・・・・・・・。
もう休ませろ・・・・・・疲れた・・・・やっぱ帰れそうに無いな
すまない・・・・・・・・・・シュウジ、リナルド、みんな・・・・・・・・
すまない・・・・・・シスター、ガキんちょ共、神父さん・・・・・・・
?・・・・・おいおいお別れ言う相手はまだ居るだろ
・・・・・・・・・・・?・・・・・だれだ?なんでこれだけしか思い浮かばない
父さんは母さんは?・・・・・・思い出せない?覚えてない?
記憶に無い・・・・・・・どうして?)
意識の混乱と静寂の狭間に、ある疑問が俺を襲った。
(俺は・・・・・・・・・・・誰だ?)
その疑問に答えるかのように古い映画のフィルムが巻きもどる
ような映像が高速で俺の意識を埋め尽くしている。
【行動:レイモンドとシュウジ、リナルドと通信中(-0)会話(-0)応戦(-1)
銃弾が心臓付近に直撃(-1)意識の混沌に沈む(-1)】
【残り行動値:1】
【位置:O-15】
【機体状況:右腕損失、左足膝部損失、右足膝部損失、本体側面装甲各所損傷
コクピット内機械一部損傷、スラスター各部損失(出力50%低下)
左手マニュピレーター消滅】
【武装:(本体)ビームアックス、3連装ミサイルランチャー×2(残弾0)(左手甲部)ビームシールド、
ビームダガー×1本 】
【所持品:ディパック 水2g三本 壊れた十字架 聖書 特殊情報端末 チ○ルチョコ20個ほど
アサルトライフル 予備弾倉3セット 拳銃 予備マガジン4セット
手榴弾 4個 ナイフ 防弾チョッキ 首輪カバー】
【行動方針:俺は誰だ】
【同盟:01番 シュウジ=アサギ 14番 レイモンド=デリック】
戦端を開くサイコMK−2とジャベリン。
それを確認すると、ゼファーは〔感謝します。〕と二人に告げ、機体を加速させた。
(……恐らくこれが、最後の最大戦闘速度……。)
戦線自体の突破は、サイコとジャベリンに向いているため、容易だった。
だが、こちらに注意を向けた機体が居なかったわけではない。
それに二連マシンガンをしたたかに撃ち込む。
無論、当てるためではなく、錯乱が目的のために撃ったので当たりはしなかったが、
戦線を突破するのに十分な時間は確保出来た。その隙に一気に戦線を抜けてしまう。
そして、レウルーラはすぐに見えてきた。
今のところ目立った対空射撃などは行われてこない。
が、一応用心と戦力を減らしておける内に減らしておけるという思考の元、
右舷上方甲板のメガ粒子砲に、クルージングミサイルを撃ち込み、破壊しておいた。
そして、そのままたいした妨害もなく、レウルーラにビギナ・ギナは着艦した。
(……上手く行きすぎている気もしますが……。
とにかく今は、そんな場合ではありませんね。)
あまりにも容易に着艦に成功した事に対する疑念を振り払い、
ゼファーはシュウジのノーマルスーツに通信を繋いだ。
〔マスター。大丈夫ですか?
こちらは、ハードであるメモリーユニットを失いましたが、何とかシステムは無事です。
しかし、機体の方は中破。推進剤も残り少ないです。
ですので、甲板防御に回ってよろしいでしょうか?
ちなみに、敵残存戦力はMS数機に、移動不可の戦艦三隻。
レイモンドさんとリファニアさんが交戦中です。〕
実際、ゼファーも外で闘っている二機の増援に向かいたかった。
だが、傷つき、消耗した機体ではそれは不可能に近く、足手まといになりかねない。
それが、ゼファーにあるはずのない焦りを生み出していた。
【行動:O−15へ移動(−1)二連マシンガンで攻撃(−1)
クルージングミサイルでレウルーラを攻撃(−1)通信継続→ガンイージ(−0)】
【位置:O−15(ガンイージ、ビギナ・ギナ)】
【武装:ガンイージ:ビームライフル(残弾2)
ビギナ・ギナ:ショットランサー(二連マシンガン残弾:3)ビームサーベル×2
フック付きワイヤー&ウィンチ ヒートナイフ×1 】
【行動方針::"示す" 利用出来るモノは利用 突入】
>>107 レイモンドの言葉に、リファニアは少し照れたような笑みを浮かべた。
同時に、精神の乱れは全くといって言い程無くなっていた。
『リファニア、今だ!』
レイモンドの合図と共に頷き、全身のメガビームを一斉射するリファニア。
幾筋もの光の束が放たれるが、敵部隊からすれば明らかにその砲火には穴があった。
その穴を潜り、少しずつ間合いを詰めてくる敵部隊。
レイモンドの作戦の通り、射軸を変えて、もう一撃を放とうとするリファニア。
敵部隊の今までの動きからすれば、その一撃もかわされてしまうだろう。
(……でも、信じてるから。
レイモンドさんの戦い方は大胆だけど、信頼できる安心感をどこかに感じるの。)
サイコの全身が再び光放ち、追い立てられつつも再び砲火を潜り抜ける敵部隊。
リファニアはその隙に機体を変形させると、フットペダルを踏み込み、機体を左に全速で移動―――。
させようとした、その時。
リファニアの脳裏にベルクの姿が飛び込んでくる共に、
全身を鉛弾に撃ち貫かれたような痛みと熱さに襲われた。
「……ベル……クさ……駄……」
一瞬だけ、操作タイミングに遅れが出た。
機体コントロールに大部分をサイコミュに依存した現状では、
精神の揺らぎがダイレクトに機体の動きに影響を及ぼしてしまうのだ。
気がつくと、敵隊長機の気配が上方にあった。
ショット・ランサーを構える隊長機。
鈍重なサイコで今まで戦ってこれたのは、常に敵の反応の先を突いていたからだ。
それが叶わなかったならば、敵の攻撃より逃れる術はない。
「……リナルド。」
無意識のうちに、その名を呟いてしまった。
仲間が傷つきも、敵艦の中でいまだ戦い続ける彼の身を案じてか。
心身共に傷つきながらも自分を護ってくれた彼に対して、先に逝く事の申し訳なさか。
何よりも強かったのは―――未練、執着。
―――抵抗。
踏み込まれる、フットペダル。
リファニアが見ているのは、ただ、進むべき方向だけ。
射出されるショット・ランサー。
機体が貫かれる衝撃が、リファニアを襲う。
だが、止まらない。
隊長機の脇を巨大な物体が通り抜ける。
素早く身を翻し、追撃しようとする敵部隊。
だが、その動きを乱す一陣の風があった。
戦場を横切る、ゼファーのビギナ・ギナ。
西風は、確かに希望を与えたてくれたようだ。
敵部隊とサイコ・ガンダムの距離が離れる。
「レイモンド、さん!」
合図のように、レイモンドの名を叫んだリファニア。
その瞳はいまだ戦う意志に満ち満ちていが、その呼吸は荒かった。
サイコガンダムの胴にショットランサーが深く食い込んでいたが、そこはコックピットではない。
Iフィールド発生機が完全に潰され、様々なレッド・ランプがコックピット内を照らしていたが。
紫の悪魔は何かに憑かれたかのように、いまだその相貌を爛々と輝かせていた。
【行動 : ゼファー、レイモンドとの通信継続(0)、一斉射×2(-2)、変形(-1)、 囲みを突破(-1)、残0 】
【位置 : O-15 】
【機体状況 : MRX-010サイコガンダムMk-U
全身の装甲がボロボロに、右脇腹と右脚側面にビームで抉られた損傷、左脚ほぼ喪失、
右腕ほぼ喪失、MA時コックピット部増加装甲損失、背面に損傷、胴に刺さったショットランサー
スラスター損傷(推力70%)、アポジモーター幾つか損傷、MA時バランサー異常、Iフィールド喪失
自爆装置改造済み、MA形態、攻性プログラム&『盾』ダウンロード済み 】
“ばしゅっ”
シュウジがブリッジの扉を開く前に、扉は内側から開かれた。
「な……お前ら!」
レウルーラのブリッジ要員が銃を抜く。
リナルドは、今まさに構えようとしていた矢先の出来事に対応し切れず、
咄嗟に銃口を向けるものの相手の発砲を許してしまった。
「くっ……!」
扉を開けたブリッジ要員は倒される。
リナルドは左手で拳銃を構えて一歩引き、右腕を倒れたベルクの背に回すと
ブリッジの内部に気を配りながら声を掛けた。
「撃たれたのか、しっかりしろ!」
ゆすってみるが反応は薄い。
とにかく近い距離から撃たれているのだから、防弾チョッキはあまり役には立たなかったはずだ。
意識が混濁しているのだろうか。
「シュウジ、撃たれてないか?
どうす……」
「ふふふ……ははは!」
突然の笑い声に言い掛けた言葉を切り、リナルドが視線を戻すと、
両手を広げた男が近付いてきた。
「ふはは、ようこそ勇敢なる反逆者諸君!
我々の負けだよ、ああ、負けだよ!」
(この声……こいつが新しい責任者か?)
「それで君達はいったい何をしたいのかね、この私の艦で!?
首輪の解除!? 違うな、君らは既に自由の身だ、そうだろう!?
私達への復讐!? そうかもしれないな、中間管理職に『復讐』とは全く筋違いだとも思うがね!
それとも……この私のレウルーラを、タクシー代わりにでも使おうとでも言うのかね!?」
「……それ以上近付くな。
シュウジ、死角に入ったか? ベルクを頼む」
未だに目を覚まさないベルクをシュウジに託すと、
リナルドは少し身を乗り出して両手に拳銃を構える。
脳裏では、ひたすら艦長の行動を分析していた。
(自由……?
そうか、この首輪カバーの仕掛けに気付いてないんだ。
にしたって……何を考えてるんだ?
……演技なのか?
でも、あんなところに立ってたら、ブリッジからの銃撃だってできないぞ。
それとも、本当にナチュラルに行動を……?)
≪続く≫
――俺たちは、何をしにここまで来たのだろう?
先生はブリッジを占拠せよと伝えたそうだ。
その言葉に従った。
……それだけじゃなかった。
情報が必要なんだ。
奴らに関して、できるだけ、多くの……。
情報が無けりゃ、リファニアを守ってやることだってできやしない。
戦うことも、守ることも、きっと、できない。
「……シュウジ。
この状況をどう打開するか、お前の意見を聞かせてくれ」
リナルドは、どうにも対応し切れないでいた。
自分が向かい合っている男の行動を理解しようとするために。
また、自分の目的を果たそうとする故に。
【行動:応戦(-1)、対応(-1)】
【位置:O-15(レウルーラ・ブリッジ前)】
【残り行動値:2pts.】
【生徒状態:覚醒@ノーマルスーツ・首輪カバー・鈍痛・数箇所打撲・一部身体異常】
【所持品:デイパック、コッペパンx1、水2gx2.6、食糧3.5日分、私服、拳銃(6)、救急箱
受信装置、自動小銃、マガジンx4、スタングレネード、拳銃(8)x3、防弾チョッキ
(以下私物)MS状態チェック用ポータブルコンパネ、ノートPC、眼鏡、配線修理用工具一式】
【行動方針:作戦遂行】
【同盟:全員】
最初からの敵編隊の動きを見ていて思いついた作戦だった。
奴等はベルガ・ギロスの的確な指示によって、サイコガンダムのビームを避けている。
その動きに殆ど無駄はなく、正確だ。
だがその正確な動きを逆手に取れば、奴等を一網打尽にできるのではないか?
…編隊が最も小さくまとまる時、つまり、サイコガンダムのビームの穴にいる時ならば、メガ
バズーカランチャーで墜とせるのではと踏んだのだ。
それを成功させる為に、俺はいくつかの布石を置いた。
先ずは、ジャベリンとサイコガンダムの間にいる2機と小競り合いを繰り返し、突破に手間取って
いるように見せかけた。
簡単に突破して射撃態勢をとったら、ベルガ・ギロスに察知されると考えた上での行動だ。
次に小競り合いをしながらサイコガンダムの後方に位置取り、その巨体でベルガ・ギロスの視界を
遮った。
こうすればベルガ・ギロスからジャベリンは見えなくなり、邪魔をする2機を突破しやすくなる。
だがベルガ・ギロスのパイロットの事だ、レーダーでこちらの動きに気づくかもしれない。
そこで俺はリファニアに、サイコガンダムのビーム砲を2回撃たせた。
射軸をずらした攻撃で、編隊にビーム砲を避ける事に専念させようとしたのだ。
もしかしたらサイコガンダムの後ろに回り込もうとするかもしれなかったが、それはリファニアが
許さないだろうと見越した上での指示だった。
あとは俺が、ビームの穴にいる奴等に必殺の一撃を見舞うだけだが、穴にいる編隊に命中させる
為にはサイコガンダムに向けて引き金を引く事になる。
だからサイコガンダムが全速退避する事が、何よりの必須条件だった。
俺の合図を受けてビーム砲を放つサイコガンダム。
絶妙の間隔で2回、拡散された光の筋が宇宙を照らす。
それを見た瞬間、俺は狙いを定めたメガバズーカランチャーの引き金を引き……。
「リファ…?!」
引き金を引きかけた俺の指は、短い呻きと共に止まった。
サイコガンダムの動きが鈍い。
ここまでのダメージの蓄積が酷かったのか、その動きは予想以上に鈍重に感じた。
そのサイコガンダムに発射されたショットランサーが突き刺さる。
(……!)
俺は作戦の失敗を覚悟した。
思いつきの作戦が通用する程、戦場は甘くないって事か…。
おそらく、もうベルガ・ギロスも俺に撃たせてはくれない。
そうなったら、あとはもう矢尽き刀折れるまで、持久するしか…。
まあ傷付いたジャベリンとサイコガンダムが、矢が尽きるまでもつかどうかも微妙だが…。
(いや違う!)
歯を噛み締めて前を見る。
(あの時俺は言っただろう。リファニアを守ると…!今こそ、その約束を守る時だろうが!)
再度引き金に指をかけた俺の視界を、見覚えのある白い機体が通り過ぎていった。
(続く)
「…ビギナ…?」
一瞬だけその名を呼んだ俺の耳に入るリファニアの叫び。
『レイモンド、さん!』
…幼い戦士は、まだ諦めていない。
そうだ、ここで諦めるようなら、俺はリファニアをここまで認めたりはしなかった。
その闘志がもたらしたのだろうか、ベルガ・ギロスの脇をすり抜けるサイコガンダムの巨体が
再び壁となってベルガ・ギロスの視界を塞ぐ。
そこへビギナ・ギナが通り過ぎざまに撃っていったマシンガンが、敵編隊に向かって降り注ぐ。
当たってはいないようだが、確実に気を引く事に成功していた。
「任せろ、リファニア!」
サイコガンダムが通り過ぎるかどうかというタイミングで引かれた引き金。
今日発射された3発目のメガバズーカランチャーは、宇宙を駆け巡る彗星のように眩しく、粒子
と死をまき散らしながら消えていった。
頭がなかったデナン・ゲーは跡形もなくなっていた。
偶然隊列から外れていたもう1機のデナン・ゲーが、所在なさそうに佇んでいる。
その視線の先には、下半身を失ったベルガ・ギロスが壊れた玩具のように浮かんでいた。
【行動:ペズ・バタラ、サイコG、アビゴル、ガンイージに回線継続(0)方向修正(−1)
MBR発射(−1)】
【残り行動値:2p】
【位置:O-15】
【機体状況:右腕消失、頭部消失、モニター30%使用不能、右肩装甲損傷、左肘ジョイント負荷
(50%)、胸部及び腹部装甲に凹みと歪み、ショットランサー1基消失、
機体各所に傷、右足膝下消失、ビームシールド破壊
メガライダー:各所に傷】
【参加者状況:左肩負傷(処置)、左眼球裂傷(処置)、右手首切断(処置) 右肋骨骨折、
左大腿骨にひび、右上腕に銃創(処置)ガラスにより右肩裂傷】
【武装:ビームサーベル×1、ショットランサー×1、ビームマシンガン(50%)
メガライダー:メガバズーカランチャー(40%)】
【所持品:ディパック、水2?入り5本、食料21/3日分、蕎麦団子1個、 拳銃と自動小銃と弾倉×5
タッパーのカレー1つ、保冷シート2枚、書類の束、ペン、缶詰の段ボール、首輪カバー】
【行動方針:突入までの時間稼ぎ、リファニアの援護】
【同盟:ベルク、リファニア、シュウジ、リナルド】
「おわわわわっ!」
飛び交う銃弾、怒号、悲鳴。扉が開けられた事で、
ブリッジとそこを繋ぐ廊下は、一瞬にして地獄絵図となった。
シュウジは、マガジン一つ打ち終えると、死角へと逃げ込んだ。
『撃たれたのか、しっかりしろ!』
「どうした……?ベルクが撃たれたのか?」
見ると、リナルドが倒れたベルクを支えているのが見えた。
防弾チョッキに穴が開いている。だが、撃たれたのが至近距離だったので、役に立ったかどうかは解らない。
『シュウジ、撃たれてないか?
どうす……』
「あぁ……お陰さ……」
『ふふふ……ははは!』
「?」
突如、ブリッジの中から笑い声が聞こえてきた。
ゆっくりとシュウジがブリッジの中を覗き込むと、男が両手を広げてこちらに歩いてくるのが見えた。
「誰……だ?」
『ふはは、ようこそ勇敢なる反逆者諸君!
我々の負けだよ、ああ、負けだよ!』
『それで君達はいったい何をしたいのかね、この私の艦で!?
首輪の解除!? 違うな、君らは既に自由の身だ、そうだろう!?
私達への復讐!? そうかもしれないな、中間管理職に『復讐』とは全く筋違いだとも思うがね!
それとも……この私のレウルーラを、タクシー代わりにでも使おうとでも言うのかね!?』
(『私の』……そうか、此処の責任者か。)
『……それ以上近付くな。
シュウジ、死角に入ったか? ベルクを頼む』
「……。」
リナルドの声に対し、シュウジは無言でベルクを射線からの死角へ移動させる事によって答えた。
そして、ベルクを移動させ終わると、リナルドに続いてブリッジの中へ入った。
『……シュウジ。
この状況をどう打開するか、お前の意見を聞かせてくれ』
リナルドが、こちらに問いかけてくる。
だがシュウジには、その言葉は届いていなかった。
そのままシュウジは艦長の下へ歩み寄り……小銃で思い切り殴りつけた。
鼻血を出しながら、後方へ跳ばされる艦長。
そんな事が起きても兵士達は、シュウジを撃たなかった。
この事からも、兵士達の戦意の無さが伺えた。
シュウジはそんな兵士達を一瞥した後、マガジンを換えつつ言った。
「……タクシー代わり?それはいい考えだな?
この虫以下の野郎が……。
リナルド。こいつ、殺していいか?
いいよな……?こいつはもう生きてる価値なんか無い。
別に情報が欲しいんなら、こいつから取らなくてもいいじゃねぇか。
後で俺が此処のコンピュータから根こそぎ盗ってやるからさ。
だから……いいだろ?殺して……いいだろ!?」
妙に落ち着いた声で言うシュウジ。
だが途中から、その声は怒りと、悲しみと、いろいろな感情が入り交じった声になっていった。
その顔は……怒りで歪んでいた。だが、同時に涙を流していた。
そしてシュウジは、自分が泣いているという事に、全く気が付いていなかった。
【行動:自動小銃で攻撃(−1)ベルクを移動させる(−1)艦長を殴る(−1)マガジンを換える(−1)】
【位置:O−15(ガンイージ、ビギナ・ギナ)】
【所持品:ディパック(食料0.5日分 計画書 紙とペン 医療用セット 首輪カバー
自動小銃 マガジン×2)
拳銃(残弾16発) 工具セット 杖 ヨーコの果物ナイフ (ゼファー) 】
【行動方針::……殺していいか?】
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
人は生まれたとき何を感じるのだろう?
完全な安らぎである母の体内から産み堕とされ
目蓋を開けた時、強烈な光が瞳を焼くように襲いかかり
外の世界の寒さに肌を刺すような痛みと騒がしい雑音が
耳の中を刺激するために悲痛の叫びをあげるのだろう
まさに楽園(エデン)を追い出されたアダムとエヴァのように・・・・・
過酷な世界で生き続けなければならない運命に身を堕とされたのだろうか?
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
始めて目にした光景は青い液体の向こうに見える薄暗い
光と金属の壁、そこを動き回る青白いコートを羽織った人間と言うもの達。
本当は白いコートだったのかもしれない。
俺はその青い液体の中にいた肌に触れる液体は暖かいのか
冷たいのかさえ分からない、ただ、そこにあることが自然なように
俺の肌に馴染んでいた。
音は聞こえない。時々、俺と液体を留めておく箱を叩く音が聞こえるだけだった。
それでも寂しくはなかった、俺だけではなかった。少なくとも目の見える範囲には
同じ箱に入った仲間が居た。
しばらくして、僕達の記憶の中に戦闘技術や惨殺映像、身体の構造が
痛いほど流れ込んできた。ありもしない経験、その中で自我を保っていられたのは
僕の隣の箱に入っていた女の子がいたからだ。
その娘とは隔離された空間の中で始めて会話をした人だった。
会話、と言うよりも意識の共有。言葉と言う音でなく、お互いを感じる精神。
今思えばそれがニュータイプというものができることだったのだろうか
現実世界とは隔離された僕達だけの世界。そこは僕達の楽園(エデン)だった。
だが、それも何時か終わりが来る。
仲間だと思っていた同じ箱の中のモノは、仲間とは認識できない形になっていた
その形を保っていたのは僕と彼女だけだった。
そして、来てしまった楽園を追い出される時が・・・・・・・・・・
最初はあの子だった・・・・・その時に最後に感じたあの子の意識は
助けを求めていた。青い液体が箱からなくなっていくに連れ、
その悲痛の意識が僕に流れ込んできた。助けたかった、助けられなかった。
液体がなくなり箱が外の世界と繋がった時、あの子の強烈な意識の叫びと共に
・・・・・・・・・・・・・・途切れてしまった。
その後、俺は彼女を抱きしめたまま座りこんでいた。
人だったモノが大量に地面に横たわっている。
兵士も白衣を着ていた奴も紅い液体と共に散らばっている。
青い液体が飛び散って箱の下に溜まっていた。
あの時俺は隔離された世界の壁を砕き、そこに居たモノを
彼女と世界を引き離したモノを砕いた。
突き出した拳は、頭蓋骨を破り、人で無い力で身を引き裂き、
臓物を引きずり出し、物言わぬ壊れた人形に変えた。
彼女を抱きしめたまま、ただ呆然と彼女の顔を見るだけだった
微かに聞こえた彼女の最後の意識。
(アリ・・・ガ・・・ト)
目から熱いものが流れる。そこで俺の記憶は閉じられた。
【行動:レイモンドとシュウジ、リナルドと通信中(-0)会話(-0)
意識の混沌に沈む(-1)記憶の旅(-1)】
【残り行動値:2】
【位置:O-15】
【機体状況:右腕損失、左足膝部損失、右足膝部損失、本体側面装甲各所損傷
コクピット内機械一部損傷、スラスター各部損失(出力50%低下)
左手マニュピレーター消滅】
【武装:(本体)ビームアックス、3連装ミサイルランチャー×2(残弾0)(左手甲部)ビームシールド、
ビームダガー×1本 】
【所持品:ディパック 水2g三本 壊れた十字架 聖書 特殊情報端末 チ○ルチョコ20個ほど
アサルトライフル 予備弾倉3セット 拳銃 予備マガジン4セット
手榴弾 4個 ナイフ 防弾チョッキ 首輪カバー】
【行動方針:俺は誰だ】
背後で凶光が、煌く。
輝きが消えると共に機体を振り向かせると、サイコを追撃していた敵機は、
一機を残し壊滅的な被害を被っていた。
一機のデナン・ゲーは、完全にその姿を確認する事はかなわなくなっていた。
隊長機のベルガ・ギロスは、下半身を完全に消失し、ただ漂うのみとなった。
その光景を前に、呆然と佇む一機のデナン・ゲー。
その機体に損傷たしい損傷は無かったが、いかに歴戦の兵といえども、
この一撃が与えた衝撃からは、即立ち直るという訳にはいかないようだ。
「……やった、やったよ、レイモンドさんっ!
残る敵機は、三機。一気に、畳み掛けさせてもら……。」
ゼファーが動けない以上、敵の数はいまだこちらを上回っている。
この隙を見逃してやる程の余裕など、こちらには無い。
感覚を解放し、残る敵機を捉え、サイコが全身のメガ・ビームを放とうとした時。
「………っ!!」
リファニアは全身をびくんと痙攣させ、口から小さな悲鳴を漏らした。
全身の神経に直接電極を押し付けられたような猛烈な痛みが、リファニアを襲ったのだ。
コントロールを失ったサイコの動きが、乱れる。
(……痛い、痛いよっ……!)
負傷した左腕を補う為、機体のコントロールをほぼサイコミュ・システムに依存させていたリファニア。
強化らしい強化などは殆ど受けていないリファニアにとって、その負担はあまりにも大きすぎた。
自らの肩を抱き、身を固めて激痛に耐える。
声にならない呻きを口から漏らしながら痛みに耐える時間は、数秒がまるで数時間にも感じられた。
じきに、痛みが完全ではないが、引いてくる。
面をあげ、戦場の動きに目を向けるリファニア。
(まだ……まだ、もう一頑張り……。
まだ、私の戦いは、終わらない。終わらせる訳にもいかない……。)
敵機の姿をキッと見据え、乱れた機体の動きを立て直す。
全身がピリピリと痛むのに耐えながら、再び感覚を開放した。
(……私が戦い抜くには……こうするしかないっ……!)
【行動 : ゼファー、レイモンドとの通信継続(0)、限界?(-1)、残3 】
【位置 : O-15 】
【パイロット状況 : 頬にうっすらと傷痕、右肩軽傷(治療済)、頭軽傷(包帯巻)、左腕重傷(処置済み)、
ノーマルスーツ着用、首輪カバー装着、メイク済み♪、感覚開放、全身の神経に過負荷 】
リファニアの喝采の声を聞き、それに応えようとした時だった。
彼女の語尾が切れて、呼吸が乱れた。
モニターには、苦しそうに肩を抱えるリファニアが見える。
俺の脳裏にさっきの動きの鈍かったサイコガンダムの姿が映る。
あの動きが機体の損傷などではなく、リファニアの負傷によるものだとしたら…。
「くそっ」
舌打ちを1つすると、バイクを反転させた。
リファニアの呼吸の乱れは、それは傍にいるデナン・ゲーが我を取り戻すのには十分だろう。
…ビームマシンガンでは多少の傷を負わせても、墜とすには一定量の弾を集中しないとダメだ。
ならばとサイコガンダムへ向いながら、ビームサーベルを抜く。
「……!?」
ジャベリンに、微かな違和感を感じた。
********************************
彼が我を取り戻して、最初に見たものは下半身を失って漂うベルガ・ギロスだった。
次に目に入ったのは、勝利を味わうかのように佇むサイコガンダム。
怒りがこみ上げた。
何に対してかは分からない。
隊長を倒した連中に対してなのか、それとも守れなかった自分に対してなのか。
1つだけ分かる事は、今はそれを向けるべき相手が目の前にいる、という事だけ。
それだけで十分だった。
ビームサーベルを抜くとデナン・ゲーを上昇させていく。
出撃前に見た資料では、サイコガンダムのコクピットは頭部にある筈だった。
********************************
デナン・ゲーがビームサーベルを抜いた。
狙いは…考えずとも分かる。
ジャベリンの左腕の油圧が下がっている。
どうやらあの2機を突破する時に、パイプが傷つけられたらしい。
重くなってきているコンソールスティックを握り締めながら、サイコガンダムとそこへ上昇して
いくデナン・ゲーの間に入った。
突如間に入ったジャベリンに驚いたのか、デナン・ゲーの攻撃は中途半端な斬撃になった。
それでもビームサーベルを完全には受けきれずに、バイクがサイコガンダムにぶつかる。
同時に、コンソールモニターのターゲットサークルが消えた。
衝撃でコンピュータも一部いかれたらしい。
パイプの傷も広がったのか、油が吹き出しはじめた。
まだ、踏ん張れるか…?
落ち着いたらしいリファニアに叫ぶ。
「大丈夫か、リファニア!?戦闘の続行が無理なら、俺が時間を稼いでいる間に離脱しろ!」
【行動:ペズ・バタラ、サイコG、アビゴル、ガンイージに回線継続(0)サイコへ向かう(−1)
ビームサーベルを受ける(−1)】
【機体状況:右腕消失、頭部消失、モニター30%使用不能、右肩装甲損傷、左肘ジョイント負荷
(50%)、胸部及び腹部装甲に凹みと歪み、ショットランサー1基消失、機体各所に傷
右足膝下消失、ビームシールド破壊 、コンピュータ一部故障、左腕油圧低下
メガライダー:各所に傷】
【行動方針:突入までの時間稼ぎ、リファニアの援護】
モニターに拡がる眩い光は、激突する二本のビーム・サーベルが発する光だった。
「……護……られてる……。」
間髪入れず、メガ・ライダーがサイコに激突する衝撃がリファニアを襲った。
ジャベリンの腕から噴出したオイルの血が、むき出しのサイコの頭部へとかかり、モニターの視界を若干悪くする。
『大丈夫か、リファニア!?戦闘の続行が無理なら、俺が時間を稼いでいる間に離脱しろ!』
レイモンドの叫びがリファニアの耳を打つ。
「……離脱……?」
少女の視線が、モニターに映るレイモンドへと一瞬だけちらりと向けられるが、
次の瞬間には、少女は眼前の敵機へと視線を向けていた。
「ふふっ、駄目なのよ、それじゃ。
自分の生きる道は、自分で戦って勝ち取らなきゃ……ね。」
呟いた後、ジャベリンの下方へとサイコを移動させ、デナン・ゲーへとメガ・ビームの嵐を叩き込むリファニア。
たまらず、敵機はジャベリンの傍より離脱する。
「レイモンド、さん。」
レイモンドの名を呼び、モニターに映る彼へと再び視線を向け。
「その腕、信用してるから。」
少女はにっこりと微笑み、ただそれだけを告げ、フット・ペダルを踏み込んだ。
サイコの全身の火器を放ちつつ、残る三機の敵機の真っ只中へ飛び込んでゆく。
(さあ、あなた達の目標は、ここに居る。
……私を、狙え。ねらえ、ねらえっ!)
三機の敵機の中に宿る、三つの生命。
感じられるのは、恐慌、動揺―――怒り。
―――殺意。
敵がトリガーに指をかけるのよりも速く、リファニアは回避行動に移った。
瞬きするほどの後、サイコの巨躯を掠める幾条もの閃光。
右脇の損傷箇所をビームが掠め、爆発が起こる。揺れる、巨体。
エネルギー伝達系にかなりの被害を受けたようだ。
(……ふふっ、そう、もう一息。もう一息で、私は落ちる。
所詮、最後の、悪あがき。そう、見えるよね?
だけど……。)
額に脂汗を浮かべながらも、勝気に笑ってみせるリファニア。
敵機の意識はほぼこちらに向けられ、フォーメーションは乱れ切っていた。
【行動 : ゼファー、レイモンドとの通信継続(0)、メガビーム砲で牽制(-1)、敵陣の真っ只中へ(-1)、
一斉射(-1)、回避行動(-1)、残0 】
【位置 : O-15 】
【機体状況 : MRX-010サイコガンダムMk-U
全身の装甲がボロボロに、右脇腹と右脚側面にビームで抉られた損傷、左脚右腕ほぼ喪失、
MA時コックピット部増加装甲損失、背面に損傷、胴に刺さったショットランサー、エネルギー伝達系損傷、
スラスター損傷(推力70%)、アポジモーター幾つか損傷、MA時バランサー異常、Iフィールド喪失
自爆装置改造済み、MA形態、攻性プログラム&『盾』ダウンロード済み 】
……さっきから、いろいろなものが『入って』くる。
ほとんどはどこか諦めたような意識。
(嫌な感じだ……)
嫌悪感はかたちを取らない。
あまりにも多くのノイズがマイナスの感情を表に出すことを妨げ、
彼自身も戦意を失くした連中に何かを言おうとは思っていなかったからだ。
また、ノイズたちはすぐ近くの異変を遮ってしまっていた。
だから、艦長に拳銃を向け警戒するリナルドは、反応することもできず
シュウジの行動を黙って見送るしかなかった。
小銃を棍棒代わりに艦長を殴り飛ばすと、
シュウジは落ち着いた声で、徐々に感情を露に言った。
「……タクシー代わり?それはいい考えだな?
この虫以下の野郎が……。
リナルド。こいつ、殺していいか?
いいよな……?こいつはもう生きてる価値なんか無い。
別に情報が欲しいんなら、こいつから取らなくてもいいじゃねぇか。
後で俺が此処のコンピュータから根こそぎ盗ってやるからさ。
だから……いいだろ?殺して……いいだろ!?」
「……タクシー代わりってのは上等な案だ。
情報の引き出しも、確かにその通りだな。
これでお前が正気なら、俺も別に、始末に関してとやかく言う気は無い。
こいつにしても周りの奴らにしても所詮末端だろうが、
自由にしておけばいつ反撃を喰らうとも限らないからな。
……だが。
自分の顔をよーく見てみろ。
どう見たって俺には、お世辞にもお前が正気を保っているようには見えないな。
泣くのか怒るのか、どっちかにしたらどうだ?
それが済んだらクールになれ。
始末すると言うなら、それからだ」
【行動:警戒(-1)、応答(0)】
【位置:O-15(レウルーラ・ブリッジ)】
【残り行動値:3pts.】
【生徒状態:覚醒@ノーマルスーツ・首輪カバー・鈍痛・数箇所打撲・一部身体異常……】
【所持品:デイパック、コッペパンx1、水2gx2.6、食糧3.5日分、私服、拳銃(6)、救急箱
受信装置、自動小銃、マガジンx4、スタングレネード、拳銃(8)x3、防弾チョッキ
(以下私物)MS状態チェック用ポータブルコンパネ、ノートPC、眼鏡、配線修理用工具一式】
【行動方針:作戦遂行】
【同盟:全員】
生きる道は自分で戦って勝ち取る。
以前俺も、同じような事を言った覚えがある。
(…戦い、勝ち取ってこそ、価値のある生、か)
共に戦う戦士として認める少女に、逃げる事を薦めた自身を恥じた。
『その腕、信用してるから。』
そう言い残すとリファニアは敵の中へ突っ込んでいく。
デナン・ゲーも、殆ど動かないジャベリンよりもサイコガンダムを強敵と見たのか、そのあとを追い
掛けていった。
数は…さっきの2機と合わせて3機。
サイコガンダムの状態を考えると無茶としか言い様がないが、これがリファニアの選んだ道なのだ。
「リファニア!今出せるアドバイスは1つだけだ!故人曰く
“敵中における最大の武器は、絶えず動き続ける事である”
今はとにかく無理でもいいから動け!」
通信を送りながら、メガバズーカランチャーの向きを調整する。
信用されたからにはどうにかしたいが、コンピュータがイカれた現在、俺には目視射撃しかできない。
勿論移動しながらの射撃など、できるわけがない。
さっきまでは指揮官がいて統一された動きをしていた為に、ある程度の未来予測ができ、移動しな
がらの射撃ができた。
逆を言えば、指揮官不在の今は動きが統一されていないランダムなものだけに、狙いがつけ辛いのだ。
ではどうするか。
射撃位置を固定して、視界に入った奴に向けて撃つしかない。
普通のライフルなどではとても命中は望めないが、メガバズーカランチャーならば多少目測がずれて
も、大きな損傷を与える事ができると読んだからだ。
砲を固定するのだから当然多大な危険が伴うのだが、サイコガンダムが3機を誘引してくれているか
ら、その点では現在は安心と言えた。
あとは、奴が視界に入ったら引き金を引くのみ。
目標は…あのバックパックを損傷して機動力が落ちているデナン・ゲーだ。
サイコガンダムの動きに合わせて、バイクの向きを微妙に調整しながらその時を待つ。
しかし、そうしている間にもサイコガンダムの傷が増えていくのが見え、焦りを誘う。
汗が額を伝い、顎へ流れる。
俺の腕を信じて奮闘するリファニアの為に、すぐにでも撃ってしまいたい欲求に駆られる。
だがそれでは駄目だ。
まだ奴の姿をうまく捕えられない。
1発。
1発外しただけで、全てが水泡に帰してしまう。
リファニアが命を張って作ろうとしているチャンスを、不用意な射撃でふいにはできない。
(続く)
じりじりと身を焼かれるような数秒間が過ぎ、モニターにようやくデナン・ゲーの姿が入った。
おそらくここまでかかった時間は1分強。
このチャンスを待った1分が、こんなに長く感じられた事はなかった。
次の瞬間、サイコガンダムの右脇の辺りが爆発を起こした。
もはや一刻の有余もない。
引き金にかけた指に力が篭る。
ところが、その爆発が思わぬ幸運を呼んだ。
その爆発を見たデナン・ゲーが一瞬止まり、向きを変えようとしている。
奴も勝負所と見たのだろう。
俺と同じように。
…デナン・ゲーが向きを変えライフルを構えようとしたその時、メガバズーカランチャーの光が辺り
を包み込み、その上半身を溶鉱炉のように変えた。
命中はしなかったが、おそらくコクピットは灼熱地獄だ。
…当然パイロットは生きてはいないだろう。
だが憐憫の情など抱いている暇はない。
まだ敵機は2機残っているのだから。
ビームサーベルを構えると、さっきのデナン・ゲーにバイクを突っ込ませる。
もうジャベリンの左腕でビームサーベルを振る事は難しいが、バイクの勢いを利用して斬りつける事
はできるかもしれない。
(殺った!)
タイミングは会心だった。
しかしその一撃は、デナン・ゲーのビームライフルを破壊したに留まった。
メガバズーカランチャーもそうだったが、片目で見ているせいか、目視の攻撃の際に若干攻撃が右に
ずれる傾向があるらしい。
コンピュータに照準を任せていた時には殆ど気づかなかったが、注意しなければ。
ビームサーベルを抜いたデナン・ゲーと対峙する。
もう1機のデナン・ゾンは挟撃を警戒しているのか、サイコガンダムと向き合っている。
さすがに疲れからか、または緊張が長く続いたからか息が乱れてきた。
フットペダルを踏み続けた足も、痙攣しはじめている。
だからといって、それをリファニアに悟られるわけにはいかない。
気丈に振る舞っているが、さっき苦しんだ様子からも分かる通り、リファニアは辛い状態のようだ。
パートナーが苦しんでいる時だからこそ、俺が毅然としていなければならない。
こんな時だからこそ、俺がリファニアの支えになってやらねばならない。
リファニアに笑った。
「さああと少しだ。もう少しで…俺達の勝利だ」
【行動:ペズ・バタラ、サイコG、アビゴル、ガンイージに回線継続(0)MBR照準合わせ(−1)
MBR発射(−1)突っ込む(−1)ビームサーベルで攻撃(−1)】
【武装:ビームサーベル×1、ショットランサー×1、ビームマシンガン(50%)
メガライダー:メガバズーカランチャー(20%)】
【行動方針:突入までの時間稼ぎ、リファニアの援護】
>>123 リナルドの声に、眉を寄せるシュウジ。
だがそれも一瞬で、表情は少し前までの冷静な表情に戻りつつあった。
「……。泣いてる……俺が? 何故……泣かなければならない?
ああもう……こいつらのせいだ……こいつらのせいで……俺はおかしくなったんだ……。
だが……解った。冷静に、クールに、だな?解った解った……。」
肩をすくめ、おどけたような動作で言うシュウジ。
後ろでは、艦長が、苦悶の声を上げていた。……それには、嘲笑が混じっていた。
『……ぐ……は……ははっ。
な……かま……われか。
は……ははは……。』
「……黙れ。」
『……。』
艦長に銃を突きつけ、黙らせるシュウジ。艦長が一応静かになった事を確認すると、
リナルドに近づき、耳打ちした。艦橋にいる者達に聞かれてはならない事だと判断したからだ。
「(……冷静に……だな?冷静になったついでに一つ指示を出す。
レイモンド達にレウルーラの艦橋が占拠し終わった事を伝えてくれ。
後、ベルクを頼む。
俺はその内に艦の制御法を探し、後……首輪の制御装置を探す。
此処にいる奴らの処理は……その後でも……まぁいい。)」
伝え終わると、艦橋を一望し始めるシュウジ。その時、艦を衝撃が襲った。
「……くっ……。何だ!?援護艦隊からの攻撃か!?」
『冗談じゃない!』
『やっぱり見捨てられたんだ!』
『逃げろ!』
『どこに逃げるんだよ!どこに!』
一瞬にして恐慌状態に陥る艦橋要員達。
その中には、艦橋から飛び出していく者達も居た。
「糞っ……。」
悪態をつくシュウジ。その時だった。ゼファーからの通信が入ったのは。
【行動:会話(−0)艦長を黙らせる(−0)リナルドに耳打ち(−0)】
【位置:O−15(ガンイージ、ビギナ・ギナ)】
【所持品:ディパック(食料0.5日分 計画書 紙とペン 医療用セット 首輪カバー
自動小銃 マガジン×2)
拳銃(残弾16発) 工具セット 杖 ヨーコの果物ナイフ (ゼファー) 】
【行動方針:首輪の解除 レウルーラのコントロール確保 状況確認 艦橋要員の処理】
リナルドの言葉で、シュウジはすぐに冷静さを取り戻したようだ。
リナルドはシュウジの耳打ちに頷くと、通信士の席へと跳んだ。
電文を打とうとした瞬間、謎の衝撃がブリッジを揺さぶる。
既に抵抗を諦めていたブリッジ要員の間に、一瞬で混乱が広がった。
パニックを引き起こし、幾人かのブリッジ要員がブリッジを飛び出して行く。
リナルドはそれを尻目にブリッジを占拠した旨の電文をジャベリンとサイコガンダムに送ると、
シュウジに近寄り小声で伝えた。
「通路は一本道だし、今出て行った連中にMSを奪われたら厄介だ。
救急箱を取りに行くがてら、潰してくる。
すぐに戻るよ」
言葉を切ると、リナルドは自動小銃を取り出してブリッジを出る。
ブリッジ前の通路には、まだベルクが横たわったままだ。
「……すぐに、戻る」
視線を戻すと、逃亡者の背に容赦なく銃弾を浴びせながら
来た道を戻り出した。
【行動:送信x2(-2)、艦内移動・追撃(-2)】
【位置:O-15(レウルーラ・通路)】
【所持品:デイパック、コッペパンx1、水2gx2.6、食糧3.5日分、私服、拳銃(6)、救急箱
受信装置、自動小銃、マガジンx4、スタングレネード、拳銃(8)x3、防弾チョッキ
(以下私物)MS状態チェック用ポータブルコンパネ、ノートPC、眼鏡、配線修理用工具一式】
【行動方針:作戦遂行】
艦を襲う衝撃。恐慌状態の艦橋。その中でシュウジは、歯噛みしていた。
(……機体の方は隔壁を閉じてあるから大丈夫だろうが……。
こうも、早いとはな……。せめて、この間のすべてを掌握してからにして欲しかったな……。)
自動小銃とディバックを担ぎ、艦橋内リフトに近づくシュウジ。
そして、戦闘ブリッジへ移動しようとしたその時、ゼファーからの通信が入った。
〔マスター。大丈夫ですか?
こちらは、ハードであるメモリーユニットを失いましたが、何とかシステムは無事です。
しかし、機体の方は中破。推進剤も残り少ないです。
ですので、甲板防御に回ってよろしいでしょうか?
ちなみに、敵残存戦力はMS数機に、移動不可の戦艦三隻。
レイモンドさんとリファニアさんが交戦中です。〕
「何だ……今の攻撃はお前か。
あぁ、何とか無事……とは言い難いな。まぁ、何とか生きている。
しかし……メモリーユニット大破とは……コックピットを破壊されたか?
どうやって動かして……いや、言わなくてもいい。
甲板防御か……少し待て、艦橋まで来い。」
〔了解。……しかし何故……?〕
「……こういう事さ。
……艦橋にいる全員に告ぐ!今、ゼファーを此処に呼んだ。
お前達がこれ以上ここから逃げる、もしくは俺達に攻撃を加えるというのならば、
ゼファーに艦橋に大穴を開けさせる。
俺達はノーマルスーツを着ている。お前達は着ていない。これが意味するところは解るな?
解ったら、部屋の端に寄って指示されたとき以外身動き一つするな。
ゼファーの怖さは……解ってるな?」
シュウジの言葉と、シュウジの真後ろの窓の外に現れたビギナ・ギナに艦橋にいた全員が凍り付いた。
恐慌は一応収まり、艦橋内には静けさが戻った。無言のまま、端に寄っていく兵士達。
〔そう言う事ですか……。〕
「……でも、少し逃げたな……。
リナルド!医務室までの隔壁を開けておくから、そっちに誘導された奴らは頼む。
殺すなりなんなり好きにしろ。」
リナルドへの指示を与え終わると、今度は倒れたままになっているベルクの元へ向かい、
空いているシートへと横たわらせた。
「まだ……生きてるよな?」
見たところ、血は流れているようには見えず、気を失っているだけのように見える。
ヘルメットを外してやりたかったが、先程の脅迫の手前、それは出来なかった。
とりあえず安静にさせておく事にして、再び首輪の制御装置を探す事にした。
「……。」
注意深く、一つ一つのコンソールを調べていく。
その中で、一つだけ他の部分とは違う材質で作られた感じのコンソールがあった。
「これか……。
リナルド、聞こえてるか?首輪の制御装置を見つけた。
これから使い方を調べるから、少し待て。
……この忌まわしい首輪から解放されるのも、後少しだぞ……。」
リナルドに通信を繋ぎ、言うシュウジ。
その手は、無意識にノーマルスーツの首輪のある部分を撫でていた。
【行動:ゼファーをブリッジ前まで移動(−1)会話(−0)脅迫(−0)通信接続(−1)】
【位置:O−15(ガンイージ、ビギナ・ギナ)】
【行動方針:首輪の解除 レウルーラのコントロール確保 艦橋要員の処理】
ある朝、目覚めたときは病院のベットだった。
少し薄汚れた白い天井、体を起こせば酷い脱力感に襲われる。
周りを見渡せばおかしな事に気づく、何故個室なのかと。
俺はまだ訓練生でしかない、一般の共同の病室のはずだ
それの疑問に答えるかのように計ったようなタイミングで
担当医らしき医者と看護婦が病室に入ってきた。
『あ、先生。ベルクさんが・・・・・』
『おや、目を覚まされた様ですね。』
さも、それが自然な会話だったのだろうが何かが引っかかるような違和感を感じた。
「俺はどうしてこんな場所に居るんだ。」
その時の会話は、在り来たりなものだった。
『身に覚えが無いようですね、では確認のために
いくつか質問します覚えていることを話してください。
まず、貴方のお名前は?』
「ベルク=クロフォード。」
自分の名前を言うのには自然と答えられた反面、違和感が積もっていく。
『では、ご家族の名前、経歴―――――――――――――――――――――。』
在り来たりな質問だ。記憶が鮮明であるか?それによる脳への異常を検査している
「家族は俺を含めて三人、父はヴァン=クロフォード、MSのパイロットだった
3年前に戦死、母は、クレア=クロフォード、専業主婦。父の跡を追うように
俺が軍に入ったすぐ、難民キャンプに手伝いに行っていたところを
戦火に巻き込まれ2年前に死んだ。
俺は、連邦軍訓練施設生。歳は二十歳、成績は可も無く不可も無く
成績は真中ぐらい、もうすぐ正式に軍のMSパイロットとして戦線に出る予定。
あ、・・・・・・思い出した確か訓練終了時にコクピットから出ようとしたら
急に意識が沈んでMSから・・・・・・・・・・・・。」
この時は、何の疑いも無く記憶の中にあったことを話していた。
状況に流されたまま、俺の疑問を話せなかった。
今思えばそれが俺に与えられた・・・・・植え付けた記憶だったのだろう
・・
『その時にMSから転落されたんですよ。無事回復されてよかった。
記憶に問題は無さそうですね。体の傾向も良さそうですし
少しリハビリを行えばまた、以前のように動けるよう―――――――――。』
この時から、俺は人としての人生を歩まされていたのだと今更ながら思う。
初めて感じた、悲しい記憶と喪失感、その時生きていた人の証である
記憶は忘れ去り、のうのうと生き続けている自分。
それは決して忘れてはならないこと・・・・・・・・・・俺の背負った罪。
何の為に作られ、何の為に存在しているのかさえ判らないのに
俺は・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
そして、記憶のフィルムがランダムに再生されていく。
教会の庭で遊ぶ子供達、初めてシュウジ達と会った場面
コロニーの崩壊、要塞での出来事、小惑星基地での惨劇
巡る巡る記憶の断片。
過ぎ去る、変えられぬ、記憶に刻まれた過去。
その中の一つが――――――――――――。
『うふふっ。ごめんなさい変なこと聞く人だなーって思ったから
えーと”何の為に生きてるのか?”でしたっけ
そんなの誰にもわからないと思いますよ?
だってそれを見つける為に産まれてきてそれからずっと探しつづけるんですよ
きっと―――――――――――――――。』
最後に見た記憶の欠片。
何気無く、聞いてみた疑問。
風に靡く金色の髪を押さえながら、微笑みながら、彼女が答えた言葉・・・・・・。
答えであって答えで無い、意地悪でとても真っ直ぐな真実。
目の前が真っ白になり俺はまた楽園を追放された。
目覚めたときは、何かのシートに座っていた。
少し薄汚れた天井、体を動かせば胸部に酷い痛みが襲う。
(生きてるのか・・・・・・・・・・・。)
「シュウ・・・ジ、リナ・・・ルド、ゴホッゴホッ
状況・・・は、どう、なった、んだ、無事、なのか?」
【行動:レイモンドとシュウジ、リナルドと通信中(-0)会話(-0)
意識の混沌に沈む(-1)記憶の旅(-1)記憶の終わり(-1)目覚め(-1)】
【残り行動値:0】
【位置:O-15】
【所持品:ディパック 水2g三本 壊れた十字架 聖書 特殊情報端末 チ○ルチョコ20個ほど
アサルトライフル 予備弾倉3セット 拳銃 予備マガジン4セット
手榴弾 4個 ナイフ 防弾チョッキ 首輪カバー】
【行動方針:生きてる?】
レイモンドのアドバイスの通り、一時も動きを止める事なく敵の真っ只中で奮闘するリファニア。
サイコの巨体は度重なる戦いで各部が削ぎ取られ、その印象はまるで一回り小さくなったかのようにも見える。
Iフィールドジェネレーターは既に潰れ、敵機の放つビームは容赦なく巨大な的であるサイコを撃つ。
しかし、ただの的では終わらない。
かわしきる事は不可能だが、感覚を解放し、敵の動きの常に先を行く回避行動を取る事で何とか凌いでいた。
まるで明るい灯火に引き寄せられる羽虫のように、敵の動きがサイコに釘付けとなる。
その敵機の隙を突いて、レイモンドがメガ・バズーカランチャーを放った。
高熱のビームによって炙られた敵機の中で、ひとつの生命が失われる。
残る敵機は、二機。
『さああと少しだ。もう少しで…俺達の勝利だ』
こちらに笑いかけるレイモンドをちらりと見て、ぱちりとウィンクを返し。
リファニアは一気に攻勢に出て、浮き足立ったデナン・ゾンへとサイコの巨躯を突っ込ませた。
デナン・ゾンのパイロットにとって、正面から迫り来る巨体は、いい的にしか見えなかった。
ショットランサーを向け、ヘビー・マシンガンを放とうとするが、次の瞬間彼の表情は凍りついた。
サイコは微塵も躊躇せずに、最大戦速で迫ってくるのだ。
たとえ弾を浴びせかけたとしても、この勢いのままあの巨体に激突されればタダで済みはしない。
慌ててサイコの移動軸上から離脱しようとするデナン・ゾン。
だが、意識の全てを敵機を捉える事に集中させたリファニアは、その浮き足だった動きを逃がしはしなかった。
拡散メガ粒子砲の雨に飲み込まれ、四肢をもがれながらデナン・ゾンが爆散する。
リナルドより、レゥルーラの艦橋を占拠した事を知らせる電文が届いたのは、丁度その時だった。
表示される電文を見て、ハッと溜め込んだ息を吐き出すように息をつくリファニア。
「……勝った……勝ったよね……。」
呟きながら、レイモンドへと機体を向け、彼の戦いへと目を向ける。
全身の感覚にモヤがかかっているような違和感を、リファニアは感じていた。
【行動 : ゼファー、レイモンドとの通信継続(0)、デナン・ゾンに突撃(-1)、拡散メガ粒子砲で攻撃(-1)、残2 】
【位置 : O-15 】
どちらも動かない。
それは動けないのか、それとも動かないのか。
ジャベリンとデナン・ゲーは睨み合ったまま、その距離を保っていた。
勿論ただ睨み合っているわけではなく、お互いの一挙手一投足を観察し、隙を見い出そうとしているのだ。
デナン・ゲーを観察する。
…見た所目立った損傷は見当たらない。
武装も、ここからでは全ては見えないがスラスターも、異常はないように思う。
ならばデナン・ゲーから見た、ジャベリンはどうなのか。
まあ、考えるまでもなく隙の塊に見えるだろう。
頭部と右腕、右足が無く、油まみれの左手を見れば、そこの油圧が下がっているのは直ぐに分かる。
実際ジャベリンの左腕は、肘から下は曲げたまま動かなくなっている。
辛うじて指が動く程度だろう。
肩と上椀部はまだましだが、これとて数分後にはどうなっているか…。
要するに、奴が注意するのはメガバズーカランチャーだけでいいのだ。
位置としては、バイクの前に立たなければそれでいい。
より確実を期すならば、ジャベリンの右側から徹底して攻めれば問題は無い。
だからこそ、俺はそれを許すわけにはいかない。
メガバズーカランチャーを避けようと右に回り込もうとするデナン・ゲーと、それをさせまいとする
ジャベリンの間の空間が張り詰めていく。
それを破ったのはデナン・ゲーだった。
一旦右に回り込むと見せてから切り返し、敢えて左側から仕掛けてきた。
これは…俺の計算のうちに入っている!
バイクのスラスターを吹かし前進させ1撃目を躱す。
しかしデナン・ゲーもそれを読んでいたのか、突っ込んだ勢いをそのままに機体を半回転させると
2撃目を加えてくる!
だがこれも距離を合わせて左肩を動かし、何とか下から弾く。
僅かにバランスを崩したデナン・ゲーに、バイクごと斬り掛かろうとしたその時。
バランスを崩したかに見えたデナン・ゲーが、左肩のグレネードランチャーを発射した!
衝撃に揺さぶられるコクピット。
斬り掛かろうとバイクを動かしていたのが幸いして、2発までは回避できたが、3発目がバイクの
左エンジンに命中、推進力を激減させた。
(くそっ…!奴が狙ってたのはこれか…!)
デナン・ゲーはあのジャベリンの頭部を破壊したベルガ・ギロスと同じように、先にバイクを破壊し
、そのあとでジャベリンを狙うつもりだったのだ。
機動力を失ったバイクなど、デナン・ゲーにとっては何の脅威にもなり得ないだろう。
そして一瞬の思考から目覚めたその時には、デナン・ゲーはその場所にはいなかった。
鳴り響くアラーム。
接近を示すレーダーの光点。
(…予定外だ)
目論見通りバイクの足を破壊したデナン・ゲーが、ジャベリンの右側から乗り出してきた。
その手には無気味に光るビームサーベル。
(この状況にもってくるのに、ここまでバイクが傷付くとは思わなかった…)
デナン・ゲーのパイロットは気づいただろうか?
ジャベリンの左手に、既にビームサーベルが握られていない事を。
その左手が握っていたものを。
ジャベリンにはまだ、指が動けば発射できる必殺兵器……ショットランサーがある事を。
(続く)
メガバズーカランチャーが当てられないのなら、何とかショットランサーを当てる。
さっき睨み合っている時に考えた。
ただ単に撃っても駄目だから、避けられない状況にもっていって撃つ。
それには決定的とも言える隙を作ってみせ、デナン・ゲーに止めの一撃を撃たせるように仕向ける。
グレネードランチャーを使わせてしまえば、デナン・ゲーは碓実を期してビームサーベルで攻撃する
しかなくなるし、そうなれば先ず間違いなく接近してくる。
1門しかないビームガンは命中させづらく、これも接近した方が碓実だ。
至近距離から発射されたショットランサーは、デナン・ゲーの左脇を削り取るように命中し、左腕
を乱暴に胴体から引き剥がした。
よろけながらバイクから距離をとった、デナン・ゲーの動きがピタリと止まる。
パイロットは気づいたのだ。
戦場に残っているのが、既に自分だけだという事に。
何よりも、俺の背後に見えるサイコガンダムに。
…後ずさりを始めるデナン・ゲー。
一度萎え始めた心を取り戻すのは、容易な事ではない。
そして心の中の恐れが一線を越えた時、パイロットは逃げる事を選択した。
「…よぉっし!」
デナン・ゲーがザムス・ガルに帰っていくのを見送り、俺は思わず大声を出した。
リナルド=グレイスからは、レウルーラの艦橋の占領に成功したと通信も入っている。
つまり、作戦は成功しつつあるのだ。
「…どうやら、恥ずかしい戦いをしないで済んだようだ」
俺の戦いを見ていたリファニアを見る。
「リファニアも…よくここまで頑張った。…見事だ」
モニターの向こうへ敬礼を送った。
【行動:ペズ・バタラ、サイコG、アビゴル、ガンイージに回線継続(0)攻撃を避ける(−2)
ショットランサーで攻撃(−1)敬礼(0)】
【機体状況:右腕消失、頭部消失、モニター30%使用不能、右肩装甲損傷、左肘ジョイント負荷
(50%)、胸部及び腹部装甲に凹みと歪み、ショットランサー1基消失、機体各所に傷、
右足膝下消失、ビームシールド破壊、コンピュータ一部故障、左腕油圧低下
メガライダー:各所に傷、左エンジン損傷】
【武装:ビームサーベル×1、ビームマシンガン(50%)
メガライダー:メガバズーカランチャー(20%)】
【行動方針:突入までの時間稼ぎ、リファニアの援護】
(来た時とは違う方向に道が曲がっている……。
シュウジが開けたのか)
リナルドが格納庫への道を戻る途中、自動小銃のマガジンを交換しながら
角の先を注意深くチェックしていると、シュウジからの通信が入った。
『リナルド、聞こえてるか?首輪の制御装置を見つけた。
これから使い方を調べるから、少し待て。
……この忌まわしい首輪から解放されるのも、後少しだぞ……』
「わかった、そっちは任せるぞ」
返事をしながら角から拳銃を構えて飛び出してきた兵士を蹴り倒すと、
「……悪く思うなよ。
大人しくしていてくれれば、
逃げたり、銃を向けたりさえしなければ……
死なずに済んだかもしれないんだぜ?」
(そもそも、こんな……いや、やめるか)
至って冷静に拳銃の引鉄を引き、一本道の先へと進んでいった。
【行動:リロード(-1)、通信(-1)、艦内移動・追撃(-2)】
【位置:O-15(レウルーラ・通路)】
【所持品:デイパック、コッペパンx1、水2gx2.6、食糧3.5日分、私服、拳銃(4)、救急箱
受信装置、自動小銃、マガジンx3、スタングレネード、拳銃(8)x3、防弾チョッキ
(以下私物)MS状態チェック用ポータブルコンパネ、ノートPC、眼鏡、配線修理用工具一式】
【行動方針:作戦遂行】
後退するデナン・ゲーの姿が、リファニアの瞳にうつる。
周囲に戦闘の意思を感じさせる敵機はすでになく、レゥルーラの艦橋には
ゼファーのビギナ・ギナがすでにとりついていた。
実質、レゥルーラ制圧作戦は、ほぼ成功と見ていいだろう。
『リファニアも…よくここまで頑張った。…見事だ』
敬礼と共に、レイモンドに賞賛の言葉をかけられ、リファニアはにこりと微笑み返す。
「レイモンドさんがフォローしてくれたから、今の機体の状態でも戦えたの。
一人なら、あっという間にやられていたよ。」
リファニアの微笑みは、彼女自身が想像していたものより遥かに力ない微笑みだった。
……全身の感覚を覆うモヤは、一向に晴れる気配はなかった。
そして、そのモヤは、覆い隠していた。
自らへと向けられた、不吉な悪意を。
「でも、まだ終わった訳じゃないよね。
首輪はまだ外れていないし、外れた後もすぐに"ゲート"に向かわないと。
……休めるのは、全部終わったあと。それまでは、まだ、戦い続けなきゃね……。」
悲鳴をあげる身体に鞭打って、リファニアはサイコを動かした。
……完全に制圧するまでは、戦闘態勢を解く訳にはいかない。
サイコミュをカットすることも、出来ない。
戦闘態勢を解かぬままゼファーの傍らへ機体を寄せ、艦橋を覗き込む。
すると、なんらかの制御装置を動かそうとしているシュウジの姿が確認できた。
MA形態ではサイコの腕を動かす事は出来ないので、
すでに剥き出しになった頭部のアイカメラをチカチカと点灯させ、
シュウジに敵MS部隊の征圧が完了した事を暗に知らせながら、
リファニアは今後の行動について、考えをめぐらせていた。
おそらく"ゲート"には今まで以上の敵戦力が陣取っているだろう。
……これとまともに当たるのは、幾らなんでも自殺行為だ。
ただ、リファニアはその事についてさほど悲観してはいなかった。
いや、あえて楽観的に考え、自らの歩みが止まらないように仕向けた。
おそらく立ち止まった瞬間に、萎えた脚を二度と前に進める事は叶わなくなるだろうから。
それに、切り札はまだ残っている。
何も、ゲートの戦力とまともに当たる必要はないのだ。ただ、突破すればいい。
シュウジの用意した、ウィルスプログラム。
……その効果は未知数だが、これに賭けるしかない。
【行動 : ゼファー、レイモンドとの通信継続(0)、レゥルーラの艦橋を覗き込む(-1)、残3 】
【位置 : O-15 】
「……全員のモードが[推定死亡]になってるから……。
この状態から[解除]にするのは無理だよなぁ……。」
殆どが死亡の文字で埋め尽くされた首輪管理システムの前で、
腕組みしつつ唸り続けるシュウジ。
下手に動かすと取り返しがつかなくなりかねないと言うプレッシャーが、
シュウジをいつもよりも慎重にさせていた。
そんな時、後ろから声を掛けられた。聞き覚えのある声だった。
>>130 「……あぁ、ベルク。起きたのか。
動かない方が……いいと思うぞ。結構至近距離で撃たれてたしな。
あんまりそう言うのには詳しくないが……よくあの距離で無事だったな?
まぁいいか……何とか生きてるみたいだしな。
で、現状だが……結論から言うと、レウルーラの艦橋確保はほぼ完了した。
今リナルドは救急箱を取りに行ってる。
で、俺は……首輪の制御装置を調べてるところだ。」
シュウジはベルクの方を一度振り返って言い、
そして兵士が妙な行動を取ってないかゼファーに一度確認させる。
〔兵士に動きはないのですが……。〕
「……何だ?」
〔後ろを見てください。〕
「……っ……サイコMK−2か……驚いた。
此処にいると言う事は……敵は倒した……のか?」
艦橋の外にいるサイコMK−2は、何故動いているのか不思議なぐらいに損傷していた。
だが点滅するカメラアイが、目の前にあるのが残骸ではないと言う事を、何よりも物語っていた。
それに対してシュウジは簡単に敬礼をする事によって答えると、
また首輪管理システムに向き直り、腕組みをし直した。
「さてと……じゃぁ……どうするべきだ?
ここはいっそ……リセットしてみるべきか……?
どうせカバーがある以上影響も出るわけがないんだしな……やってみて損はないか。」
そう呟いた後、シュウジは腕組みをとくと、コンソールを操作し始めた。
しばらくして、表示が消える。
そして再び、コンソールに文字が表示される。
「……情報取得中……?
じゃぁ……これを中止にして……。
モード変更……エラーを無視……。
モード、[解除]……。
……完了。」
ふぅ。と溜息をつくと、今いる場所が兵士達から見えない場所である事を確認し、
ヘルメットを外し、ノーマルスーツのファスナーを首輪が外せる程度に下げた。
下げ終わると、慎重に……首輪カバーを外した。自爆する気配は、無い。
そして、一瞬後。
[カチリ]
「……
……
……ははっ。
……ははははっ。
……こんなにも簡単に……なぁ。
ベルク、リナルド。首輪の解除を……確認した。
今から全員の解除を開始する。少し、待ってくれ。」
叫びたい衝動を抑えつつ、リナルドとベルクに告げるシュウジ。
その掌の上には、今や完全な輪の形ではなくなった、首輪があった。
シュウジは、それを外にいる二機に見えるように、掲げた。
【行動:首輪管理システムリセット(−1)首輪解除[01番](−1)会話(−0)】
【位置:O−15(ガンイージ、ビギナ・ギナ)】
【参加者状況:右足重傷(処置済み)打撲 左目周辺に切り傷 内蔵に負荷 防弾チョッキ着用 首輪解除】
【所持品:ディパック(食料0.5日分 計画書 紙とペン 医療用セット 首輪カバー
自動小銃 マガジン×2)
拳銃(残弾16発) 工具セット 杖 ヨーコの果物ナイフ (ゼファー) 】
【行動方針:首輪の解除 レウルーラのコントロール確保 艦橋要員の処理】
俺に通信を返すと、リファニアはサイコガンダムをレウルーラへ近付けていく。
リファニアの言う通りだ。
俺も、まだ気を抜く事は出来ない。
満足に動けないとはいえザムス・ガルも健在だし、艦橋を占領したとはいえ、まだ首輪が外れた
わけでもない。
油断なく周囲を見渡す。
サイコガンダムが取り付こうとしているレウルーラが見える。
別方向の少し離れた所には、煙を上げ続けているザムス・ガルがいる。
…静かだ。
ほんの数分前までビームが交差し、ミサイルが飛び交った戦場とは思えない程に。
ベルクが最初に戦端を開いてから、30分くらいだろうか。
撃ち、殺し、斬り、助け、助けられ。
4人の仲間の為にこの30分で俺が手にかけた数は、ザムス・ガルと合わせるとかなりの数になる。
これを常人が犯したならば、とても正気を保ってはいられないだろう。
だが今俺は、確かにある種の満足感をもっている。
それは、現時点の目的を達成した事への充実感なのか、それとも己の能力の限りを尽くして戦えた
事への充足感なのか、それともその両方か。
…いや、これはこれで違わないが、決定的なものでもない。
…俺は嬉しいのだ。
信頼しあえる仲間と、それこそ焼け付くような緊張感の中で戦い、ギリギリまで命を削りながらも
、それでもこうして生き残った事に。
生き残ったからこそ味わえる喜びがある。
生き残ったからこそ感じ取れる感動もある。
そして、見られる未来もある。
そう。この先も自分の未来を生きて見る事ができる。
今の俺にとってどんな財宝よりも、どんな愛の囁きよりも宝物だった。
…まあ本当の未来は、あのゲートの向こうへ行ってみない事には分からないわけだが。
だからこそ、ここでうっかり気を抜くわけにはいかない。
「…ゲートか。…そういえば…リーア=ミノフスキーが全体通信で行きたい年代を言えと言っていた
が、あれはどうなって…」
『レイモンド。おい、聞こえてるか?』
俺の思考を中断させたどこかで聞いた声。
それは俺の全く思いも寄らなかった所…、宙を漂うベルガ・ギロスからのものだった。
【行動:ペズ・バタラ、サイコG、アビゴル、ガンイージに回線継続(0)】
【位置:O-15】
【行動方針:艦橋の動きを待つ】
『……あぁ、ベルク。起きたのか。
動かない方が……いいと思うぞ。結構至近距離で撃たれてたしな。
あんまりそう言うのには詳しくないが……よくあの距離で無事だったな?
まぁいいか……何とか生きてるみたいだしな。
で、現状だが……結論から言うと、レウルーラの艦橋確保はほぼ完了した。
今リナルドは救急箱を取りに行ってる。
で、俺は……首輪の制御装置を調べてるところだ。』
「そうか・・・よかった。」
シュウジから聞いた言葉の後に一言そう告げるとようやく安心した。
(そういえば、至近距離から撃たれたって言ってたな
その時、なんか壊れる音がしたから・・・・・)
撃たれたと思われる個所に手を移動させる
触れると激痛が走ったが構わずその周辺を手探りで探す。
確かにノーマルスーツには穴が開いていたが中からは出血をしているような
感じではなく冷たいく固い感触がする。
ノーマルスーツのファスナーを胸部の下あたりに下げ、それを手に取る。
思わず顔の筋肉が緩んだ。
(一番信じてねーモノに救われっちまったな。
俺はテメーに何の感謝もしてねーんだぞ・・・・・・チクショウ。)
その手の中にあったものは、役職の形だけで着けていた十字架。
中心部に変形した銃弾がめり込んでいてそこから蜘蛛の巣の様に
ヒビが入っていた。
(シスターが祈ってでもくれたのかな・・・・・・
チッ、何だかんだいって信じてんじゃねーか。馬鹿だな俺。
・・・・・・帰れたら礼の一つでも言ってやるか、柄じゃねーけど。)
一息ついて胸に手を置くとまた激痛が走り悶絶する。
銃弾の直撃は無かったものの十字架越しからの衝撃が
骨を砕いている可能性が高い、よくてヒビか?
痛みがおさまっていく中でシュウジの笑い声が聞こえてきた。
>>137 「ああ、頼んだぜシュウジ。
俺はもう少し休ませてもらうよ。」
そう告げると手の中の壊れた十字架を握り締め、祈る様に目を閉じた。
【行動:レイモンドとシュウジ、リナルドと通信中(-0)会話(-0)
胸部周辺確認(-1)激痛(-1)】
【残り行動値:0】
【位置:O-15】
【所持品:ディパック 水2g三本 壊れた十字架 聖書 特殊情報端末 チ○ルチョコ20個ほど
アサルトライフル 予備弾倉3セット 拳銃 予備マガジン4セット
手榴弾 4個 ナイフ 防弾チョッキ 首輪カバー】
【行動方針:生きてる?】
シュウジはリファニアに向かって敬礼を返すと、コンソールの操作を始めた。
周囲を警戒しつつ、その姿を見守るリファニア。
視界が霞み、意識が遠のきそうになるが、何とか意識を保ち続ける。
……自分の役割はまだ終わってはいないのだと、自らに言い聞かせながら。
ふと、シュウジの後ろに、よろめきながらも何とか無事な様子のベルクの姿が見えた。
「……生きて……くれた。」
そう呟くリファニアの声に含まれるものは、安堵感ばかりではない。
「そうよ、生きてくれなきゃ、困るんだから。
軽々しく死ぬ事なんて、許さないんだから。
あなたは、あの人の生命を喰らったんだから……。」
自分も、誰かの生命を喰らって生きている。
だからこそ、無駄に生命を散らす訳にはいかない。
……意地は、イブに託された生き方は、何が何でも通してみせる。
そして、暫くの後にリファニアの瞳に映ったものは、リファニアの活力を再び蘇らせるのに、充分な光景だった。
視界が、霞む。しかし、意識ははっきりとしていた。
視界を歪ませたのは、自らの涙だった。
涙の向こうに見えたものは、すでに輪の形を為していない首輪だった。
「……やっ…たね。私達……やった…んだね…。」
嗚咽を漏らしながらも、途切れ気味の声で呟くリファニア。
ふと、艦橋にリナルドの姿が見えない事に気がついた。
「……そうだ、リナルドは、どこ……?」
彼の身に何かあれば、リファニアに解らない筈は無い。
おそらく、無事だとは思うのだが……。
「……もう、どこで油…売ってるのよ……。」
リナルドのノーマルスーツとの通信回線を開いたリファニア。
「リナルド、聴こえてる?…ねえ…。
やったよ、私達、やったよう……。
シュウジさんが、首輪、外したの……。
もうすぐで、自由になれるんだよ……。」
そう言葉発しているうちに、再び瞳の奥に熱いものがこみ上げてきて、声を上げて泣き始めた。
張り詰めていた緊張の糸が切れ……今のリファニアは、戦士である事から解放されていた。
突然、レーダーが、警告音を発した。
途端に泣き止み、戦士の表情に戻ったリファニアは、レーダーに映る機影へとサイコを向けた。
レイモンドのジャベリンに、撃破したはずのベルガ・ギロスが近づいていた。
だが、ベルガ・ギロスは攻撃する素振は見せなかった。
ヘルメットを脱ぎ、涙を拭い、再びヘルメットを被ったリファニア。
警戒しながらも、レイモンド機との通信回線から聴こえてくる、ベルガ・ギロスのパイロットの言葉に耳を傾けた。
【行動 : ゼファー機、レイモンド機との通信継続(0)、リナルドに通信(-1)、残3 】
【位置 : O-15 】
通信機の向こうから聞こえてくる、リファニアの歓喜の声。
だが俺の意識はモニターに映る、ベルガ・ギロスに集中していた。
固い表情で、回線を繋ぐ。
「…お前…生きているのか?…こういう想像はしたくないが……。
まさか噂に聞く、戦場伝説(フー・ファイター)じゃないだろうな…」
主のいなくなったMSから聞こえてくる声…。
戦場伝説によくありそうな話だ。
『残念ながら幽霊じゃないな。
第一、幽霊がこうしてモニターにはっきり映ると思うか?』
「…自己主張の激しい幽霊なら」
『おい』
「冗談だよ。…しかし真面目な話、よく生きていたものだな」
これは本音だ。
あの一撃を食らって生きているのが、実際声を聞いても信じられない。
『…運が良かったんだろうな。たまたまフィンノズルがあのビームの進路と直角に向いて噴射して
いて、あれの超高熱に殆ど晒されずに済んだ。…何故かは知らないが、爆発もしなかった。
…それでもダメージは結構でかかったらしくて、ジェネレータ出力が殆ど上がらない。辛うじて
フィンノズルが少し吹かせる程度だ。
通信機も半分死んでいて、たまたま近くにいたお前に繋げる事ができたってわけだ』
少しの沈黙があった。
「…で、用件は何だ?気が済まないから、再戦か?」
意識せずに自然と声のトーンが低くなる。
彼からすれば俺は部下の仇だから、そう思っても不思議はない。
…だが彼は静かに笑っただけだった。
『言っただろう、出力が上がらないって。メガマシンガンもどっかに無くしちまったし、今だって
満足に機体の制御もできていない』
そして、ひとつ息を吐き出すと言った。
『でも、な、レイモンド。…お前にその気があるんなら…俺にとどめを刺してくれないか?』
…俺は特に驚かなかった。
もしかしたら、何となくそう言うと分かっていたのかもしれない。
その理由も想像はつくが、それでも俺は聞いてみた。
「何故そう願う」
『…分かるだろう。部下を失い、母艦を傷つけられ、何故おめおめと帰る事ができる?
帰ったところで待っているのは査問委員会、そしてその先はお決まりの凋落パターンだ。
…それなら俺は…パイロットのまま死にたい。部下がそうであったように』
彼の言葉は、まさしくクロスボーンの兵士として、パイロットとしてのそれだった。
不名誉な生よりも、名誉ある死を。
感情に流される人間をゴミと決めつけていた黒の部隊では、当たり前とも言える選択だった。
だが……。
(続く)
「それはできない」
俺の言葉にモニターの向こうの表情が変わった。
『…何故だ、レイモンド。お前は俺に、このまま恥を晒して生きていけと言うつもりか!?
命令が下されれば、一般市民ですら表情も変えずに殺していた黒の部隊のお前が、何故俺1人を
殺す事を拒む!第一、ついさっきまで俺達は殺しあっていたんだぞ!?』
…彼の脳裏には、おそらく昔の俺が見えているのだろう。
そしてその俺は、まさしく彼の言う通りの俺だった。
今でも覚えている。
自分のMSの足の下で逃げまどい、死んでいくフロンティアの市民の姿を。
歯を食いしばってその映像を頭から追い払い、話を続ける。
「確かに俺達は殺しあい…そして、俺が勝った。
だから勝者の俺に決める権利がある筈だ。…お前は生きろ」
『何を…』
「黙って聞け!」
俺の声に気押されたのか、彼は少しだけ落ち着いたように見えた。
「お前は恥を晒して生きられないと言うが…では勝った俺がこのあと幸福に生きられると思うのか?
…答えはノーだ。例えどの時代で暮らしたとしても、俺は管理者側の追っ手を警戒しながら生きて
いくしかない。…そして死んでいった他の参加者の様も、一生脳裏から消える事はない。
おそらく何十回、何百回と夜中に叫びながら飛び起きるだろう。
だがそれでも、俺は生きようとする事をやめるつもりはない。…何故だと思う?」
『……』
「…それが仲間達と……大切な仲間達と掴み取った未来だからだ。俺が生きる事をやめるという事は、
それは…共に戦った仲間達の生を、そして生きようと戦って死んでいった参加者達の命を、侮辱す
る行為に他ならない。
…お前がここで死んで誰が喜ぶ?死んでいった部下が、喜んで迎えてくれるとでも思うのか?」
『…だが…』
力なく言う彼の顔には、迷いが感じ取れた。
俺は重ねて言う。
「生きていればこそ見られる未来がある。…生きていればこそ、また立ち直る事もできる。
死んだ部下も生き残った部下も、それを喜んでくれる筈だ」
そしてバイクを近付けて、コクピットハッチを開けた。
「そのベルガ・ギロスではザムス・ガルに辿り着けないだろう。
乗れ。ザムス・ガルまで送ってやる」
その言葉に、彼は一瞬驚きの表情を浮かべた。
『…な、何を言って…』
「だーから何度も言わせるな。ここでの戦闘はほぼ終わったんだ。
…お前も帰るべき所へ帰れ、クリント」
そのあと、暫く無言が続いたベルガ・ギロスのコクピットハッチが開く。
そしてそこには、何とも言えない笑みを浮かべたパイロット…クリントがいた。
『お前…俺の名前覚えているじゃねえか……馬鹿やろう』
「さあな。覚えていないと言った事はない筈だが、な」
多分、俺も似たような笑みを浮かべていたのだろう。…多分。
クリントがこっちに向かって来るのを見つつ、こちらの会話を聞いていたらしいリファニアに言った。
「まあそういうわけだから、ちょっとザムス・ガルまで行ってくる。
何かあったら直ぐに知らせてくれ」
【行動:ペズ・バタラ、サイコG、アビゴル、ガンイージに回線継続(0)
ベルガ・ギロスに回線接続(−1)】
【行動方針:艦橋の動きを待つ、ザムス・ガルへ】
「07解除、14解除、15解除、20解除。
四人の解除……確認。
……OKだな?確かに四人、番号間違ってないな?」
注意深く解除の表示とその後にある参加者の名前を見比べるシュウジ。
その確認行動は、三度にわたった。
(ここで首輪が自爆したら意味無いしな……。
……良し、確かに解除した。)
「皆、まだ生きているか?通信はまだ繋がっているか?
もしそうだったら、喜んでくれ。首輪の解除を一応完了した。
一応注意して外してくれ。注意したからと言って何か意味があるわけではないが……。
俺はこれからレウルーラの制御法を調べ始める。
それが完了し次第、ここを発ちゲートに向かう予定だ。
一応、レウルーラからあまり……離れないように。以上……だ。」
ベルクには直接、リナルドには先程繋いだ通信で、
リファニアとレイモンドにはガンイージとビギナ・ギナの通信網を介して伝えるシュウジ。
身体は怪我と、疲労とでそれなりに辛い状況にあった、が。
(後俺に残された仕事はこれだけ……だしな。まだ……休んではいられないな。
援軍も……またいつ来るか解ったものじゃないしな……。)
という思いと、現在の状況がが、シュウジに休息を許さないでいた。
【行動:首輪解除[07・14・15・20番](−4)通信(−0)】
【位置:O−15(ガンイージ、ビギナ・ギナ)】
【行動方針:レウルーラのコントロール確保 艦橋要員の処理】
「やれやれ……」
最後の脱走兵を始末したリナルドは、
レウルーラの医務室で荒い呼吸を落ち着かせるように深呼吸をした。
想像以上に激しい抵抗を受けたこともあったが、やはり緊張の連続というのは
疲労を増大させるアンプのようなものなのだと彼は痛感していた。
(……パイロット用のドリンクがどこかにあるはずだな……)
クーラーボックスの中からドリンクを見つけ、救急箱と共に回収したところで、
リファニアの涙声が耳に響いた。 どうやら通信のようだ。
『リナルド、聴こえてる?…ねえ…。
やったよ、私達、やったよう……。
シュウジさんが、首輪、外したの……。
もうすぐで、自由になれるんだよ……』
「そうか、やってくれたか。
……よく頑張ったな。 よく生き延びてくれた。
貰い物だけど、飲み物もあるから、そっちが落ち着いたら上がっておいで」
労う言葉を掛けると、彼はブリッジに戻るべく医務室を後にする。
そこに、シュウジからの通信が入ってきた。
首輪のロックを解除したらしい。
恐る恐る、首輪に指を這わせる。
すると、あれほど恐れていたものはあっさりと外れ、通路に漂った。
ふう、と一息つくと、
「シュウジ、リナルドだ。
首輪の解除を確認、外したぞ」
とノーマルスーツの通信で報告を入れ、ブリッジへと向かった。
【行動:艦内移動・追撃(-2)、探索(-1)、通信(-1)】
【位置:O-15(レウルーラ・通路)】
【所持品:自動小銃、マガジンx3、スタングレネード、拳銃(8)x2、防弾チョッキ、救急箱、
MS状態チェック用ポータブルコンパネ、ドリンクx5、首輪(解)】
【行動方針:作戦遂行】
>>144 久しぶりに聴く、、リナルドの声。
こちらにとっても、よく生き残ってくれたという思いでいっぱいだ。
「うん……状況が落ち着いたら、そっちに行くね。」
リファニアの声には若干の活気が戻った。
全身を蝕む痛みはかわらなかっが、彼の声はそれに耐える為の心の糧となる事ができた。
>>141-142 再び、レイモンドと敵隊長機の通信内容に耳を傾ける。
二人は、まるで昔からの知り合いであるかのように……いや、間違いなく、二人は互いを知っていた。
以前レイモンドが話してくれた、彼が「クロスボーン・バンガード」に属していた時の戦友なのだろうか。
プログラムの参加者は様々な時代からかき集めて来られるようだが、管制側の人間にもそれは当てはめられるらしい。
レイモンドが、敵隊長を諭す。
彼の口から語られる言葉は、信念を貫いて戦い抜いてきた彼だからこそ口に出来たものだ。
敵隊長……クリントをジャベリンに乗せ、敵艦へと送り届けるレイモンド。
「……行っちゃった……大丈夫、かな……。
えっと、リナルド、聴こえる?
まだ、戻れないみたい。
なにかあった時の為に、待機してなきゃね。」
その姿を見守りながら、リナルドにそう告げた時、シュウジからの通信が耳に飛び込んで来た。
>>143 それが聴こえるや否や、リファニアはメットを脱いで、ノーマルスーツの首の部分を緩める。
恐る恐る、首輪を覆うカバーの止め金をぱちりと外し……一瞬びくりとなりながらも、一気にカバーを外した時。
カバーと共に、リファニアの身も心も拘束していた首輪がリファニアの首から外れ、コックピット内を漂った。
ただ漂うだけの首輪をぼーっと眺めるリファニア。
「……あは……あはは……。」
間もなく、少女は笑い始めた。
笑い声は次第に大きくなっていき、じきにまるで気が触れたのかと思えるほどの哄笑へと変わっていく。
右手で前髪をくしゃっと潰しながら、目を覆い隠し、笑い続けるリファニア。
「……アハハ、アハハハハハ……!」
笑いながらも、少女の瞳からは涙がとめどめも無く流れていた。
……じきに笑いを収め、ノーマルスーツを着なおし、メットを被るリファニア。
漂う首輪をむんずと掴んで、コックピットハッチを開放すると、少女はそのまま宇宙へと身を投げ出した。
「……見てーーーっ!イブさん!シェラさん!ダグラス君!
そして……トリィに、アレェェェェン!!
プログラム、崩壊させてやったよぉぉぉっ!」
メット内を涙の粒で一杯にしながら、失った大切な人たちの名を叫ぶリファニア。
「こんなものぉーーーっ!!」
少女は、叫びと共に首輪を宇宙の深遠へと投げつけた。
………。
再びサイコのコックピットに戻った時、リファニアは涙を流す事を止めていた。
心なしか、その顔は以前よりも大人びているようにも見える。
「シュウジさん、本当に、お疲れ様。
……これで私達を縛るもの、何も無くなったんだね。
もしもの時の為に、私は艦外で待機してるから。
なにか指示があったら、言ってね。」
サイコをMS形態へと変形させ、艦体を残っている左腕で掴ませて機体を固定しながら、
リファニアは艦橋のシュウジへと接触通信を送る。
待機しながらも、リファニアの視線はある一点へと真っ直ぐに向けられていた。
この狂った宇宙から解き放たれるための場所、「ゲート」へと……。
【行動 : ゼファー機、レイモンド機、リナルドとの通信継続(0)、宇宙へ身を晒す(-1)、サイコへ戻る(-1)
艦橋(シュウジ)との接触通信(0)、MS形態へ(-1)、艦体を掴んで機体を固定しながら待機(-1)、残0 】
【位置 : O-15 】
「こちら生徒番号14番、レイモンド=デリック。ザムス・ガル聞こえるか。
漂流していたそちらのパイロットを送り届けたい。聞こえるか、ザムス・ガル」
回線を繋ぎザムス・ガルに話し掛ける。
クリントを届けるのはいいが、不用意に近づいて撃たれたら只の間抜けだ。
続いてクリントも通信を送る。
「1番隊隊長、クリント=テューダーであります。恥を晒すのを承知の上で帰還致しました」
通信を終えて暫し。待たされるかと思ったが、返答は意外と早かった。
『こちらザムス・ガル。了解した、レイモンド=デリック。貴官の厚意に感謝する。
右舷後部のデッキを開くから、そちらへ廻ってくれ』
どうやらザムス・ガルは最大限に気を使ってくれたらしい。
いくら上の人間が攻撃しないと決めても、それが末端まで行き渡るとは限らない。
一兵士では無理でも、下士官あたりが少し変な気を起こせば攻撃をする事はできる。
…艦橋からのレーダー制御されていない砲個別の攻撃など滅多に当たりはしないが、油断は禁物だ。
しかしザムス・ガルに限らず、軍艦というものは前部に比べて後部は兵装が少なく、その上左舷エン
ジンの爆発による煙のせいで、極端に視界が悪い。
おそらくザムス・ガルの上層部は、その辺も考えて指定したのだろう。
通信を切るとバイクを艦体の下に潜り込ませ、そこから後部へ移動する。
「…っと、そうだ」
さっきのシュウジの通信を思い出した俺は、無造作に首輪カバーを外すと外れた首輪を後ろに置いた。
それをクリントは呆れたような目で見ている。
「全く…。解除したお前の仲間も凄いが、何の躊躇もなしにそれを外せるお前もお前だな。
普通少しは躊躇するぞ。解除できていなかったら、とか考えたりして…」
さも当然というようにニヤリと笑う俺。
「お前は知らないだろうが、俺はシュウジの腕を散々見せつけられているからな。
心配はしていなかったさ。それに…」
「それに?」
「…俺の中には俺を死なせたがらない、もう1人の俺がいるんだよ。そいつが俺に悪運をくれるんだ。
その証拠に…俺はクロスボーンで、どんなに無茶な訓練をしても、どんなに厳しい戦闘でも戦い抜き
、生き残ってきた。今回もまた然りだ」
頭の中でそのもう1人がぶーたれているが、知らん振りを決め込む。
クリントもどういう解釈をしたかは知らないが、自分を納得させたようだ。
そんなことを言っているうちに、後部のデッキが見えてきた。
俺はバイクを、ハッチのところで止める。
「俺が送ってやれるのはここまでだ。…さあいけ」
「用心深いな…。だけどいいのか?俺を帰して」
クリントはデッキにいる兵士と、迎えに出てきた将官らしき人物を見ながら聞いてくる。
「俺を帰すという事は、いずれまたこういう事態が起こった時に生徒を撃墜するかもしれない。
…そういう事なんだぞ?」
クリントを見た。
「こういう事態…。…やはりプログラムは、これからも続くのか…」
「無論だ。このプログラムには、様々な時代の軍と企業、そして人間の欲が絡んでいる。
…終わる筈がないさ。…人間が存在する限りは」
(続く)
1個だけ残っていた蕎麦団子を投げ渡した。
「意味がないさ。お前を殺しても。そんな事をしても、プログラムがなくなるわけではない。
それに…俺は俺の為に。そして仲間の為に戦った。…次の参加者の事まで考えていられない。
次の事は、次の参加者がどうにかするだろう。……さあ、いけ」
開いたコクピットハッチに立ったクリントが振り向き、見事な敬礼を寄越してきた。
「ここまでの厚意に感謝する。…貴官の行き先に武運と未来があらん事を。
いいか、ゲートを潜る時は一直線にいけよ。ふらふらしているとどこへ飛ばされるか知らないぞ。
あと…団子、有り難く頂いておくよ」
俺は一瞬だけ目を見張ると笑みを浮かべ、手首のない右手で昔通りの敬礼を返した。
「協力を感謝する。…貴官のこれからの征途に栄えあらん事を。
団子の味は保証しないぞ。…もう2度と会う事はないだろうが、お互い壮健でいたいものだな」
ジャベリンを離れていくクリントの向こうに、こちらに敬礼をする将官の姿が見える。
(…あの将校も、もしかしたらクロスボーンにいたのか…?)
だがその疑問は、離れていくザムス・ガルの煙の中に消えていく。
その煙に紛れるようにレウルーラへと戻った。
ゲート…。そう、あとはゲートだけだ。
【行動:ペズ・バタラ、サイコG、アビゴル、ガンイージに回線継続(0)ザムス・ガルに移動(−1)
ザムス・ガルに回線接続(−1)蕎麦団子を渡す(−1)レウルーラに移動(−1)】
【所持品:ディパック、水2?入り5本、食料21/3日分、 拳銃と自動小銃と弾倉×5
タッパーのカレー1つ、保冷シート2枚、書類の束、ペン、缶詰の段ボール】
【行動方針:艦橋の動きを待つ】
「基本的には……昔のジオン系軍艦と変わらないんだな。
だったら大体の事は……確か以前データ盗ったことがあったよなぁ……。
思い出せ……思い出せ……マニュアル航行は不可能でも……自動操縦があったはずだ……。
……確か、これか。……目的地設定……ゲートの場所は……V−27。
だから……V−15まで行って、V−27へ行くのでいいか……。
一エリアの大きさがこのくらいだから……V−15までがこれぐらいで……そこからV−27までがこのぐらいか。
設定完了……さて。」
そこで一度伸びをするシュウジ。
だが、延びきる途中で銃弾を受けた辺りに激痛が走ったため、すぐに姿勢を元に戻した。
「げほッ……ふぅ。
各員。聞こえているか?レウルーラの自動操縦をセットし終えた。
置いて行かれたくない奴以外は艦にしっかり取り付くか、格納庫内に機体を入れてくれ。
後……一つ相談したい事がある。
今、レウルーラの艦橋要員を拘束してある。それに対する意見を頼む。
返答と着艦の期限は2時間以内。それを越えたら兵士の処分は今艦橋にいる人間で決め、移動を開始する。
援護艦隊が戦闘不可となった今、新たな援護艦隊が呼ばれないという保証はない。
出来るだけ早い返答を求む。……以上だ。」
そこまで通信で言うと、シュウジはシートに沈み込んだ。そして、ぽつりと呟いた。
「……もうそろそろ気が付いてもいい頃だがな……。
もしかして、周到に準備をしているのか?
……対策は……考えてあるが……それすらも見通していたとしたら……どうしようか……。」
そう呟くシュウジの目は、ノートPCに表示されたマップのコントロール室を見つめていた。
【行動:制御法を調べる(−1)自動操縦設定(−1)通信継続(−0)】
【位置:O−15(ガンイージ、ビギナ・ギナ)】
【行動方針:艦橋要員の処理 他の者を待つ ゲートへ】
虚空に浮かぶ、ドーナツ状の巨大構造物『ゲート』――
その、丸い穴の中に揺らいでいた光が、揺らぎを止める。
フラットな、光の板になる。
時空の穴を繋ぐ、光の湖面。
「ゲートの制御システム、コントロール回復しました」
「だいぶ手間取ったようだな」
「あの女が無理な作動をしてくれたせいで、システムの安定化に時間を喰いました。
でももう大丈夫です。
それで……ゲートの方は、いかが致しましょう? やはり閉じますか?」
「いや、安定した状態で開いておけ。万が一やつらが通過しても、すぐに我々も後を追えるようにな。
生徒たちの反乱を鎮めた後、あの女の放ったコアファイターの追跡もしたい」
「了解です。コアファイターの去った空間座標は分かりませんが、時間的にはUC0091年前後です。
このあたりの時間座標でゲートを固定しておきます」
「他の箇所のシステムは回復したか? あの女の忌々しいハロが、散々ウィルスばら撒いてくれた奴だ」
「重要な箇所はほぼ復旧しました。プログラマーの一部は休憩に入ってます」
「手が空いたなら、01番の生徒への対策を練り直させろ。
アレが悪さしてきても耐えられるよう、防御を見直しておかねばなるまい」
「分かりました。リアルタイムでの防衛の準備もしておきましょう」
「精鋭の防衛部隊も準備しておけ。組織の新入りどもではない、真の精鋭だ。
レウルーラは乗っ取られた危険もある、その場合は容赦なく破壊せよ。
あの艦が持つ貴重なデータは惜しいが、しかしそのデータが外部流出する危険には換えられない」
「奴らを簡単に逃がしもしないし、希望も捨てさせない――
逃げ道を全て潰してしまうより、相手が目指す逃げ道を限定させた上で叩いた方が、やりやすい」
【管制側の行動:ゲート管理システム把握(−4p)、ゲート座標固定(UC0091前後)(−1p)
防衛部隊準備(−4p)】
【管制側の方針:造反者の処分。『ゲート』に誘い込み倒す。レウルーラは落としてしまう】
>>143 自分達のこれまでの悲劇の一つである首輪は今外された。
目的の一つを達成した開放感と同時に目から熱いものが流れる
それは感激に満ちたものではなく、後悔と悔しさ。
今この場に、ルイがいたかもしれない。不意にそう思う
あの時、俺が守ってやれていれば・・・・・・・・・・・。
ここに来るまで沢山血が流れた。そうなるのは必然だった。
こんなやり方はルイは反対しただろうが
それでも、ルイには生きて笑っていて欲しかった。
死んでしまった人の分まで笑って生きて欲しかった。
だから、俺達は生きなければならない
傲慢な理由かもしれない。それでもルイや他の参加者が生きていた証として
俺達はそいつ等の分まで笑ってやらなければ
今生きている意味など無いのだから・・・・・・・・。
さあ、目を開けよう。まだ終わったわけじゃない。
本当の自由を勝ち取る為の戦いはこれからだ。
仮初めの喜びと後悔に浸る時間を終わらせ
俺達はまだ辛い現実と戦いつづけなければならないのだから。
再び目を開け、俺は現実に帰ってきた。
>>149 「シュウジ、これ以上血を流すのは無意味だろう。
奴らを救命ポットか何かに詰め込んで放り出してしまえば
ここを去った後にでも、奴らの組織が回収してくれるさ。
こんな奴らでは盾にも出来ないからな。さっさと捨てちまおうぜ。」
【行動:レイモンドとシュウジ、リナルドと通信中(-0)会話(-0)
目を開ける(-1)首輪を外す(-1)】
【残り行動値:2】
【位置:O-15】
【所持品:ディパック 水2g三本 壊れた十字架 聖書 特殊情報端末 チ○ルチョコ20個ほど
アサルトライフル 予備弾倉3セット 拳銃 予備マガジン4セット
手榴弾 4個 ナイフ 防弾チョッキ 首輪カバー】
【行動方針:生きてる?】
バイクをレウルーラのデッキに入れ、その一画に止める。
さっきまでの乱暴な操縦、それにメガバズーカランチャーの射撃などで、機体やジェネレータにかなり
の無茶を強いている。
シュウジが言っていた2時間の間くらいは休ませてやりたい。
うまくすればジェネレータ出力も回復して、もう1、2発くらいメガバズーカランチャーを撃てるよう
になるかもしれない。
水を飲みながらシュウジのスーツに回線を繋ぐ。
「そいつらに抵抗する意思がないのなら、余計な労力を使って殺す事もないだろう。
これからの目的を考えれば艦を降りてもらった方がいいんだが、その辺は各自の自由にさせてやれ。
…ああ、変な素振りをしたら、その場合は容赦は無用だが」
【行動:ペズ・バタラ、サイコG、アビゴル、ガンイージに回線継続(0)デッキに移動(−1)
シュウジのスーツに回線接続(−1)水分補給(−1)】
【所持品:ディパック、水2?入り5 3/4本、食料21/3日分、 拳銃と自動小銃と弾倉×5
タッパーのカレー1つ、保冷シート2枚、書類の束、ペン、缶詰の段ボール】
【行動方針:艦橋の動きを待つ、メガライダーを休める】
【同盟:ベルク、リファニア、シュウジ、リナルド】
リナルドがドリンクを口に含みながらブリッジに向かう間に、シュウジからの通信が耳を叩いた。
二時間後に移動を開始するらしい。
その前にレウルーラのクルーを何とかするとして、MSの整備をするのはその後になるだろう。
“ゲート”を舞台にしたここでの最後の戦いを考え、リナルドは表情を一層引き締める。
ブリッジに戻った彼は、シュウジにドリンクを手渡しながら言った。
「ほい、お疲れさん。
連中の処分は、まあ……別にどうなっても構わないんだけど、
あまり艦内に死体を増やしたくないし、ランチにでも押し込んで
放り出すってのが一番現実的かな。
あぁ、それから……外した首輪だけど。
何かの弾みで爆発されても困るし、再利用する気が無いんだったら
これも宇宙に放り出してしまった方がよくないか?」
リナルドはひとつ大きな伸びをすると、誰に話すでもなく呟いた。
「ん……さて、当面の問題は“ゲート”だけだな……」
【行動:艦内移動(-1)、飲む(-1)、会話(0)】
【位置:O-15(レウルーラ・ブリッジ)】
【所持品:自動小銃、マガジンx3、スタングレネード、拳銃(8)x2、防弾チョッキ、救急箱、
MS状態チェック用ポータブルコンパネ、ドリンクx3、首輪(解)】
【行動方針:作戦遂行】
シュウジへの通信を終えると、シートにもたれて一息ついた。
あとはシュウジの判断次第だ。
これまでの仕返しがしたいのならそうすればいいし、俺も止めるつもりはない。
例え命令されていただけだとしても、奴等もこのプログラムに加担していたのだ。
司令部にいたという事は、それなりに重要な仕事もしていたのだろう。
物事には当然リスクは付きものだ。
このプログラムに加担したからには、それなりの覚悟もしてもらわなければならない。
(まあ、生きて帰れたら儲けもの、ぐらいの覚悟はしてもらいたいがな…。
何て言ってもこちらは、無理矢理参加させられた挙げ句に何度も死にそうな目に会い、片手首
を失っているんだからな)
そんな事を思いながら手首から先のない右手を眺める。
…本当なら俺は、あの基地内で死んでいてもおかしくなかった。
その俺が今もこうしていられるのは、あの時ルイとアーネストが治療してくれたおかげだ。
あの時サーティアが、同盟を結成していなければ……俺は……。
(同盟…。同盟…か)
サーティアに会い、ア−ネストに会い、ルイとベルクに会って結成した。
ルイと一緒に騒ぎ、サーティアと争い、アーネストに救われ…。
脳裏によぎる、脱出した時に見た基地と、その周りの宇宙。
そしてルイと…約束、した。
思い出した。
それを決心するまでの数瞬、俺の身体は強張ったように震えていた。
だが…決めたからには。
約束を果たすと決めたからには、俺はもう迷うわけにはいかなかった。
ジャベリンをバイクから降ろすと、ゆっくりとカタパルトハッチへ向かい、外を見る。
レウルーラの傍には、リファニアのサイコガンダムが寄り添うように留まっている。
艦内では他のメンバーがそれぞれの仕事をこなしているのだろう。
皆…大切な仲間達だ。
一つ息を吸うと、努めて平静を装って誰にともなく言った。
「…皆、すまない。俺はここで同盟から抜ける」
【行動:ペズ・バタラ、サイコG、アビゴル、ガンイージ、シュウジのスーツに回線継続(0)
メガライダーから降りる(−1)】
【機体状況:右腕消失、頭部消失、モニター30%使用不能、右肩装甲損傷、左肘ジョイント負荷
(50%)、胸部及び腹部装甲に凹みと歪み、ショットランサー1基消失、機体各所に傷、
右足膝下消失、ビームシールド破壊、コンピュータ一部故障、左腕油圧低下 】
【武装:ビームサーベル×1、ビームマシンガン(50%)】
【行動方針:約束を果たしに…】
>>151 >>152 >>153 「この時点で……多数決で解放に決定だな。
とりあえず、救命ポットかランチを探しておく。
リナルドは……誘導の準備と、一つ頼みたい事がある。」
リナルドから受け取ったドリンクを受け取りつつ、言うシュウジ。
その受け取ったドリンクとは言うと、今は怪我の所為で吐き気しかなかったため、コンソールの脇に置いておく。
そして、コンソールからリナルドの方に向き直り、リナルドにだけ聞こえる声で言った。
「……移動するに先駆けて、実は一つ不安要素がある。
ここの隔壁を閉じるためにここのシステムに侵入したときに、抵抗した奴が居るんだ。
恐らくこの艦のセキュリティ担当だと思うんだが……。
……まぁ、一度乗っ取る事は出来たからもう乗っ取り返される事はないと思うんだが、
問題はこれだけの騒ぎなのに、全く反応がないと言う事なんだ。
確かに時間稼ぎとして、向こう側に侵入されてはいないという偽の情報を流しておいたんだが、
普通、勝手に隔壁が閉じたり、自動航行が開始されたとしたら、気づくはずだろう?
なのに何の反応もない。だとしたら、何をしているのか。
考えられるのは、乗っ取り返すために入念な準備をしているという説。
流石に俺でも、入念な準備をされたら、防ぎきる自信はない。
そこで、先手を打ってこのセキュリティ担当がいると思われるコントロールルームを抑えて欲しいんだ。
勿論誘導はするし、兵士と鉢合わせしないようにはする。
どうだろうか……?」
そこまで言うと、脇に置いてあったノートPCに手を伸ばした。
そこには、先程と同じく、コントロールルームの位置が示されていた。
「出来るだけ、早いほうが……いいと思う。
出発までには処理しておきたい問題だし、出発は早いに越した事はない……しな。」
(……身体も……もう後どれだけ保つのか……解らないしな。急がないと……。)
撃たれた場所を抑えるシュウジ。まだ痛みが残っており、それが吐き気をも起こしていた。
そこで、辺りを浮かんでいる首輪だった物に気が付いた。
「あぁそうだ。首輪についてだが……俺はちょっと保管しておく。調べてみたい事もあるしな。」
気が付いたようにそう言うと、シュウジは首輪を少し離れた場所に置いた。
【行動:通信継続(−0)会話(−0)】
【位置:O−15(ガンイージ、ビギナ・ギナ)】
【行動方針:艦橋要員の処理 ゲートへ】
【―――P15宙域―――】
両のマニュピレーターを失ったデナン・ゾンのコックピットにて。
サイコと対峙し敗れたパイロットは、ぼうっと遠くで沸き起こっては消える幾筋もの光の線と光芒を眺めていた。
やがて光が収まった時、彼は確信した。
サイコの体当たりの衝撃により、レーダーや通信機の類がことごとく破損していた為に、
戦場の流れを彼が把握する事は出来ないはずだったが。
それでも、彼は確信していた。
―――レゥルーラは、陥ちたのだと。
我々は旗印を失い、兵士としての心の拠り所を失った。
兵士としての戦闘力のみを買われ、「管理者」達によって拾われた我々には、もはや任務に生きる以外の道はない。
任務に失敗しては、我々の存在意義を問われるのだ。
我々に残された兵士として最後の拠り所を護り通す為に、何としてでも勝たねばならんのだ!
「……口癖のようにそんな事を言っていたかな、隊長は。
この俺の無様な姿を見て、何て言うんだろうな……。」
ふう、とため息をつくパイロット。
「……でも、まあ、いいさ。
こんな殺し合いゲームが潰されるって流れは、正しい流れなのかも知れないな……。」
彼がそう呟いた時、機体に何かが接触した衝撃が、コックピット内を揺らす。
「………!」
モニターに映ったものは、一機のMSだった。
その姿は、まるで血まみれの首なし騎士のようにも見え。
そして、首を失ってもなお、血を求める事を決して止めようとはしないほどに、禍々しき気を放っていた。
奴が求める血は―――。
『や・あ。』
ノーマルスーツの通信機に、直接耳障りな甲高い声が響く。
「……生きて……おられたので。」
思わずそう呟いてしまったデナン・ゾンのパイロットの耳に、奴の哄笑が響く。
『………〜〜〜〜ッッ!!ひゃはははははっ!!
生きてた!生きてた!生きてたァ〜〜〜ッ!!
―――最高の返事だねえ……。』
愛機ビギナ・ゼラでデナン・ゾンを拘束しながら、奴は質問を浴びせかけてくる。
『……なぜ、あの時攻撃をためらった?
君、僕を亡き者にしようとしたね?
隊長を撃ったと君が報告したとしても、僕の罪が問われる可能性は限りなく低い。
……証拠が、無いからねえ……。』
「……うくっ……。」
言葉に詰まるパイロット。
……あの時、ビギナ・ゼラがサイコの猛攻に晒された時、
引き金を引くことを一瞬躊躇してしまったのは事実だった。
……だが、あくまで一瞬だけだ。
すぐに兵士としての本分を思い出し、攻撃に移ろうとしたが……。
その時はすでに、サイコの拳がビギナ・ゼラをとらえていたのだ。
『……まあ、いいさ。
その事について、僕が君をこれ以上問い詰める事は止めにしよう。
……君には、これから少し役に立ってもらって……それで君の咎を帳消しにしよう。』
そう言って低く笑う、奴。
その声は、相も変わらず耳障りだった。
「……役に……?
ですが、私の機体はこの通り……。」
動けません、と続けようとした彼の言葉を、奴は遮るように言葉を放った。
『ああ、構わないよ……。
君はただ、そのままにしていればいい……。』
ビギナ・ゼラがサーベルを抜く。
その出力は極小に絞られており、発生したビームの刀身は、MSにとって短剣程の長さしかなかった。
突き出された、灼熱の刃。
それはデナン・ゾンのコックピットのみを灼き、パイロットの肉体を焼失させる。
『機体の引き渡し任務、ご苦労。』
敬礼と共に言葉を放ち、奴は再び哄笑した。
動かなくなったデナン・ゾンを背後から羽交い絞めにするビギナ・ゼラ。
そのコックピット内で、奴の視線はレーダーに映るある光点へと向けられていた。
『……さて、彼女とのデートの時間に間に合えばいいんだけどねえ……。』
そう言って笑う奴の顔は、本当に恋人とのデートに向かうのではないかという程に、喜びに満ち満ちていた。
それは、どこまでも黒い喜びであっただろうが。
彼が求める血は―――。
※ ※ ※ ※ ※
「……アタマ……重い……カラダ……熱い……。
でも、もう少し……もう少しだけ……頑張れば……。」
ゲートのある宙域へと視線を向けながら、少女は途切れそうになる意識を必死で保っていた。
シュウジの通信に対する返答のタイミングを逸してしまったが、みんなの結論の通り、
余計な血を流す必要はないと思えたので、リファニアは通信機の向こうのシュウジに頷いて、了解の意思を示した。
その時、リファニアの耳に飛び込んで来た、レイモンドの言葉。
『…皆、すまない。俺はここで同盟から抜ける』
突然の彼の言葉に、少女は思わず目をまるくした。
「……レイモンド……さん……。」
……だが、彼の名を呟きながらも、リファニアはそれ以上問う事をしなかった。
彼が決めた事は、彼が決めた事なのだ。
生半可な理由で、彼がそのような事を口にしないという事くらい、共に戦い抜いてきた自分には、わかる。
「……ありがとう、今まで。本当の戦士と共に戦ってこられた事、私は誇りに思うよ。
レイモンドさんがどんな決意をしたのかはわからないけど……。
信じてきたものの為に戦い、私達はプログラムに対して勝利した。
……戦士は信じるものの為に戦うものだもの。
私にとって、何としても生き残って脱出する事が、これからの戦いの理由。
……レイモンドさんには、別の戦いに赴く理由がある……そういう事、だもんね?」
にっこりと微笑みながら、言葉を続けるリファニア。
「……でもね、レイモンドさん……生きることをやめる事は、しないでね……。
ルイさんだって、レイモンドさんには何としてでも生き残って欲しいって、思ってる筈だよ。
それに……レイモンドさんは、戦いが終わった後も、戦い続けられる人だとおもうから……。
だって、レイモンドさんは……似て………っ!!」
リファニアの言葉は、レーダが新たに接近する機体を捉えた事を告げる警告音によって、途切れさせられた。
「……敵は……一機……?
画像拡大……あの、戦闘不能にしたデナン・ゾン?
なんで、今頃になってここへ……?」
レゥルーラから離れ、接近するデナン・ゾンへと向かうリファニア。
「……なんだろう、この不吉な悪寒……。」
呟きながら、少女はコックピットでぶるっと震えた。
そして、少女は見た。
デナン・ゾンの焼き切られたコックピットハッチから姿を覗かせている、完全に焼かれたコックピットを。
「………!!
これって、この、悪寒って……!!」
デナン・ゾンが……いや、その後ろの何者かが放つ、禍々しい気。
リファニアは、思い出した。
自分に向けられていた、不吉な殺意が誰のモノであるのかを。
『やあ、お嬢さん。私と踊っていただけますか?』
ガクガクと不自然にデナン・ゾンの機体が揺れると共に、通信機から耳障りな声が飛び込んでくる。
……なるほど、あのパイロットに相応しい不快な声だ。
「―――悪趣味な……それに、自分の仲間を殺したなっ!
あんたなんか、戦士じゃないっ!」
叫び、サイコの残った左腕のビームソードを発生させた時。
『踊っていただけるので……?
……感謝しますぅぅうううっ!!』
裏返った声と共に、背後からデナン・ゾンが切り裂かれ、爆光がリファニアの視界を奪う。
「……うううっ……!!」
敵の意思を感じ取ろうにも、禍々しい気はこの宙域を覆う程に広がっており、リファニアの感覚を混乱させていた。
……そして、消えた敵機の姿を必死で捉えようとするリファニアをあざ笑うかのように。
『こ・こ・だ・よ♪』
リファニアの耳に、奴の黒い喜びに満ちた声が響く。
奴の姿を捉えた時、そこにはVSBRを構えたビギナ・ゼラの姿があった。
―――少女は、何も考えずに、咄嗟にフットペダルを踏み込んだ。
かつて、少女を庇った時のトリィも、こんな感じだったのだろうか。
リファニアが機体を向けたのは、ビギナ・ゼラとレゥルーラを結ぶ射線上。
そう、VSBRが向けられていたのは……レゥルーラだった。
間に合え……!
間に……合ええっ……!!
少女の身体から発せられるサイコ・ウェーブ。
それは、緑の光の粒子として視認できるほどに強力だった。
サイコのビーム・ソードが伸び、巨大な光の剣となってゆく。
少女が、感覚を最大限に開放し。
巨大な悪意によって覆い隠された、レゥルーラへと伸びる殺意の線を、捉えた時。
少女の中で、プツリとなにかが。
―――きれた。
VSBRより放たれるビームに身を晒したサイコが、巨大なビーム・ソードを振るう。
ソードとVSBRのビームがぶつかり合い、凶悪なまでに眩い光を放つ。
光が薄れたとき、そこにあったモノは。
―――いまだに左腕にビーム・ソードを輝かせながらも。
頭部のコックピットをビームによって抉られ、全身を灼かれた紫の悪魔が。
レゥルーラを庇うように仁王立ちしたまま、その動きを止めていた。
ビギナ・ゼラのコックピットで、奴が笑う。
『アハハハハァ……無様に死んだ、死んだぞ……!
何の意味がある、庇った所で!
そのまま僕に沈められるというのになぁ!
……踏みにじってやるよ。
君が護ろうとした全てをさあ……。
無駄死にの……犬死だよ、アハハハハハァ……!!』
エネルギーの干渉波によって機体のセンサー・カメラ類がほぼ死んでいた為に、
コックピットハッチを開き、目視でレゥルーラの姿を照準に捉え。
『……このタイミングで僕が奴等を狩る事には、大いに意味がある……。
君達は、僕の願望の踏み台になってもらうよ……。』
奴が再び、ヴェスバーを構えた時―――。
すでにコックピットと共にパイロットを失った筈のサイコが、緑の光に包まれて、動き出した。
『……な、なじぇ……ッ!!』
狼狽のあまり、奴は無様にも舌を噛んでしまう。
ゆらゆらと揺れながら向かってくるサイコより広がった少女のイメージが、奴に覆いかぶさってゆく。
この戦場に響く、少女の声。
それは、言葉のようであり、歌のようであり。
聴く者によっては、どこまでも暖かく感じられ。
そして、聴く者によっては、どこまでも恐ろしく、感じられた事だろう。
アリガトウ ワタシヲ ソダテテ クレタヒト
アリガトウ ワタシニ ユメヲ クレタヒト
アリガトウ ワタシノ イノチヲ ツナイデクレタカレ
アリガトウ ワタシノ イバショヲ ツクッテクレタヒト
アリガトウ ワタシヲ ダレヨリモ リカイシテクレタヒト
アリガトウ ワタシヲ キレイト イッテクレタヒト
アリガトウ サイゴマデ アキラメズニ トモニタタカイヌイテクレタ センユウタチ
アリガトウ アリガトウ ワタシニ ユメヘト ムカイツヅケル ミチヲ シメシテクレタヒト―――
―――イキテ
―――サヨナラ―――
自らのジェネレーターへとビームソードを突き立てる紫の悪魔。
―――直撃。
安全装置の働く間も無く、巨大な光芒と化す。
光芒に巻き込まれるビギナ・ゼラ。
コックピットに飛び込んで来た灼熱の光によって、奴は悲鳴をあげる間もなく灰塵と化した―――。
再び、静寂を取り戻した宇宙。
緑の光を纏った銀のロザリオが、レルゥーラの艦橋をくるりとまわって―――。
光の尾を引きながら、宇宙の深淵へと消えていった―――。
【行動:レゥルーラを庇う(-1)、自らの手でジェネレーター直撃させ、自爆(-1)、ラスト・コンサート(-2)】
【生徒番号20番(失格者):リファニア=ニールセン ――死亡――】
【死因:コックピットへのビーム直撃による肉体焼失】
【行動方針:「どこまでも、見守るよ」】
どれだけの時間、シートに固まっていただろう。
実際は、長くてもほんの数分だったかもしれない。
突っ込んできた赤いMS(名前はよく知らない)の攻撃からレウルーラを庇おうとサイコガンダム
が立ちはだかり……そして、そのMSもろとも、爆発した。
おそらく生涯忘れる事のないであろうその瞬間は、まさしくストップモーションのような無限を感じ
させる光景だった。
「……っっ!……っ!」
自分でも聞き取りようのない呻き声と共に左拳を何の罪もないコンソールに叩きつけ、つい今までサイ
コガンダムが存在していた空間を睨みつける。
だがどんなに睨みつけても、どんなに穴の開くほど見つめても、そこにはやはりサイコガンダムの姿も
反応もありはしなかった。
…リファニア=ニールセンは、死んだのだ。
《おめえ、あの小娘の事が好きだったのか?》
不意を突くようなあいつの声。
しかし、いつもは不快に感じるその声が、今は俺の心の均衡を何とか保ってくれた。
(…それはないな…。同じ戦士として…最高の仲間の1人だった)
少し考えてから一言付け加えた。
(ただ…。もしもマリーよりも先に出会っていたら、間違いなく惚れただろうな。
リファニアはそれだけの輝きを放っていた。…死ぬ直前まで、変わらずにな)
面白そうに含み笑いをするあいつ。
《おーおー臆面もなく言うねえ。…世間様じゃあ、それを惚れたとは言わないのか?
…まあいいか。…で、どうするつもりなんだ》
その物言いに言ってやりたい事はあったが、ここで不毛な言い争いを続けるわけにはいかない。
(俺は自分のするべき事を決めた。そしてそれを果たす。…その先は…)
《その先は?》
ジャベリンをデッキから出しながら、俺は少しだけ笑った。
(宇宙を見ながら考えるさ)
艦橋の横にジャベリンを付けると、接触回線を開いた。
「じゃあ…俺もこれで行く事にする。
デッキに、さっきまで乗っていたバイクを置いておくから使ってくれ。
あのバイク自身にコクピットがあるから、乗っても大丈夫の筈だ。
しっかりジェネレータを休ませれば、あと2、3発はメガバズーカランチャーも撃てる」
そこまで言った時、僅かに表情が歪んだ。
「…。…リファニアは俺に、生きる事をやめるなと言った。その言葉を俺からも送る。
…皆最後まで希望は捨てないでくれ。
あと…最後に、俺からの策を1つ伝える。…成功するかどうかは不明だが、聞くだけ聞いてくれ」
(続く)
「俺の戦友が言った事だが、ゲートに入ったら余所見をせずに一直線に進めと言っていた。
ふらふらしたらどこに飛ばされるか分からない、と。
逆を返せば、ふらふらして不確定な年代に飛ばされれば、暫くは追っ手の目から逃れられるかも
しれない。ゲートの行き先が決まっている以上、飛ばされてもせいぜいその年代の前後くらい
だろうが、イレギュラーな行き先だけに追っ手もすぐには追っては来れない筈だ」
全てを伝えたあと、そして艦橋のメンバーに向かって敬礼を送った。
「ベルク。あの基地の同盟で生き残ってこれたのは運や偶然だけでなく、お前自身の実力もあった
からだ。あと少しだ。…死ぬなよ。
シュウジ、色々と世話になった。ここまで来れたのはひとえにお前のおかげだ。生き延びたら、
その頭脳を今度は平和の為に使ってみてくれ。
リナルド。お前のアビゴルは損傷も少なく、十分に戦闘力を維持している。ゲートに敵がいた場合
お前が皆を守ってやってくれ。頼む。
…俺はここで別れるが、俺達は生きる年代は違っても…未来永劫、仲間だ」
半壊したジャベリンをレウルーラから離し、ゆっくりと遠ざかる。
もう振り返らない。
俺は俺の約束を果たし、そして俺の生を求めていく。
【行動:ペズ・バタラ、サイコG、アビゴル、ガンイージ、シュウジのスーツに回線継続(0)
デッキから出る(−1)レウルーラに接触回線接続(0)O-12に移動(−3)】
【残り行動値:0p】
【位置:O-15→O-14→O-13→O-12】
【行動方針:約束を果たしに…】
【同盟:なし】
>>155 シュウジが残ったレウルーラの兵士達の処分を決めてた後
何かを話しているようだったがそれよりも
レイモンドから思いもよらぬ通信が入る
『…皆、すまない。俺はここで同盟から抜ける』
(・・・・・・えっ)
驚いたのはそれだけではなかった。
>>160 レウルーラのブリッチが光に包まれたと思ったとき
”また何かを失った”そんなことを感じてしまった。
>>161>>162 そして最後のレイモンドの通信を聞いていた。
その内容からは直接伝わらなかったが最後の言葉に
リファニアに送る言葉が無かったことでそれを理解した。
(また、命が旅立った。)
最近、泣いてばかりだな俺。
どうして・・・・・・・・・・問うて答えられる相手はいない。
それは分かっていてもこんなの悲しすぎる。
「シュウジ状況を説明してくれ・・・・・・・・それから急いでゲートに向かうぞ。
こんなところで終わらせない。」
自分にも言い聞かすようにその言葉が出た。
【行動:レイモンドとシュウジ、リナルドと通信中(-0)会話(-0) 】
【残り行動値:0】
【行動方針:終われない】
俺は小さい頃は随分と泣き虫で、何かとよく泣いていた。
転んでは泣き、蜘蛛を見ては泣き、お化け屋敷では特に泣いた。
そんな時父は泣きじゃくる俺を抱きかかえ、よく夜空を見せてくれた。
俺はコロニーの作られた星空が何故か好きで、それを見ていると不思議と直ぐに泣き止んでいた。
いつも小さな手を一杯に伸ばして、星に触れようとしていたらしい。
…モニターの外を流れていく星たちは、あの頃と同じように俺に少しだけ平穏を与えてくれている。
大分落ち着きを取り戻してきた俺の心に残った、ある疑問。
それは俺には、というより普通の人間には理解し得ない疑問だった。
(おい、ちょっといいか?)
《…おめえの方から話し掛けてくるなんて、珍しい事もあるもんだ。何だ?聞いてやるよ》
こういう時にこいつがいると、少し便利かもしれない。
普通じゃ分からない事も、こいつだったら…。
(…さっき、サイコガンダムが爆発する直前…俺の耳…いや、意識そのものか。
とにかく聞こえる筈のないリファニアの声が聞こえたような気がした。…何故だか分かるか?)
《その声は何て言ってた?》
それは俺の気のせいだったかもしれない。
だが、そんな理由付けで済ませられない程に、その声ははっきりとして、生々しかった。
(俺に聞こえたのは一言…『アリガトウ』。これだけだった)
《俺様にも確証があるわけじゃねえが、多分そりゃあ、ソウルヴォイスじゃねえか?》
少しだけ間を置いた返答……それは聞いた事のない言葉だった。
(ソウルヴォイス…。魂の、声…?)
《正しい名前があるわけじゃねえが、要するにそんなもんって事だ。よく人が死ぬとその直前の
念…。心残りなんかがその場に残るって言うだろ?ま、それが声になったもん…かな》
その言葉を理解すると同時に、それは新たなる疑問を呼び起こす。
(…じゃああの声は…。あの、リファニアの声は…。死ぬ直前のリファニアが、強く念じていた
心の声…という事なのか?)
《そういう事になるか。それがどんな理由でおめえの意識に届いたのかは分からねえが、死ぬ直前
あの小娘がそれを強く念じていた事は確かだな》
衝撃を受けた。
あいつの言った言葉に。
そのような事が現実に起こり得る事に。
そして何よりも、それを現実にした、リファニアという少女の汚れ無き魂に。
恐怖や怒りでも、ましてや悲しみなどでもない。
リファニアは死の直前…己の肉体が消滅するその瞬間まで、仲間達への感謝の念を忘れていなかった。
最後まで……本当に最後の最後まで、リファニアはリファニアであり続けた。
…コンソールスティックを握る左手が震える。
《小娘が何て言ってたのか、全部教えてやろうか?アリガトウしか聞こえなかったんだろ?》
俺はゆっくりと首を振った。
(…いや…いい。俺には、その一言だけで…十分すぎる…)
モニターの外の星の1つ1つの光が霞んで繋がり、川となっていく。
あいつはそれに目ざとく気づいたらしい。
《…なんだぁ?おめえ、泣いてるだろ?》
一瞬血の気が引いた顔面が、一気に熱くなる。
(なっ…!ば…!こ、これは、あ、あれだ。め、目の涎だ、うん)
《…いや…それを言うなら目の汗だろ…》
どこまでも純粋な1人の少女がいた。
肉体は滅びてもその魂は、生き残った参加者の心にその欠片を刻み付けている。
【行動:あいつとの会話(0)O-8に移動(−4)】
【位置:O-12→O-11→O-10→O-9→O-8】
【行動方針:約束を果たしに…】
【同盟:なし】
165 :
通常の名無しさんの3倍:05/02/07 16:31:18 ID:i4eFWEXm
さすがにやばそうなのでage
これまでタイヤやらバイクやらで移動していた為か、現在の速度が異様に遅く感じてしまう。
以前にSFSなしで移動していた時には、これが普通だと思っていたのだが…。
そう感じてしまうのは、やはり贅沢なのだろうか。
まあこれほどやられた機体にしては、バックパックの損傷がなかったのは幸いだった。
おかげで時間はかかるが、何とか目的地まではたどり着けそうだ。
歩みは遅くとも、碓実に約束の場所は近づいてきている。
【行動:L-7に移動(−4)】
【位置:O-12→N-8→M-8→L-8→L-7】
【行動方針:約束を果たしに…】
【同盟:なし】
「……そうだな。 わかった。
じゃあ、すぐにでも――」
シュウジの提案に賛成し、ブリッジを出ようとしたリナルドの足を止めたのは、
背筋を走った小さな悪寒だった。
もう、その時にはどうしようもなかったのだ。
止めることも、守ることも、庇うこともできなかった。 ……間に合わなかった。
間に合うはずもなかった。 彼女は艦の外にいて、彼は目の前……ブリッジにいたのだから。
光の速さで格納庫まで戻れたならば、間に合ったのかもしれないが。
過ぎてしまった今となっては、もう、何もかもが遅いのだ。
(何だ? 凄く、嫌な……!?)
それは、ブリッジのガラス越しにはっきりと見えた。
距離はあったのだが、彼の両眼はそれをしっかりと捉えていた。
―― V.S.B.R.の銃口が、レウルーラのブリッジを綺麗にポイントしていた。
(……やられる……? そうは……!)
意識は動く。 だが、身体がすぐについてくるわけではない。
―― その反射に近い動きを阻止するものがあったのだ。
『間に合え……!
間に……合ええっ……!!』
次の瞬間、彼は何を見たか?
それは何をもたらしたか?
―― ある意味で、それは、確かに『死神』だったのだ。
* * *
『そこ』は、既に大量の亀裂が黒く空を裂いた淡い虹色の世界。
もう、淡い虹色と亀裂からのぞくどす黒い闇、どちらが本当の空なのか、
その判別すらつかないほど、崩れ切ってしまっていた。
―― その世界の中央で。
彼女は、罅だらけの水晶を抱きかかえて、佇んでいた。
(……消えた。 あの人も、消えた……。
世界を支える柱は、もう私しかいなくなった。
……無理だよ、お兄ちゃん……。
ひとりじゃ、崩れを止められない……)
マヤの涙声をよそに、水晶はさらなる悲鳴を上げて崩壊を始めた……。
* * *
≪続く≫
「……さよならなんて、言うなよ……」
閃光が辺りを白く染める。
「そんな、急に……さよならなんて……言うなよ……!」
サイコガンダムが朽ちた宇宙に、闇の帳が戻る。
「そんな……!
また……お……俺は……またッ……!」
(まただ……。
今度は、どこで間違った?)
「何で……、何で俺より先に君が死ぬんだ……!」
(これで、もう、本当に……俺には何も残ってない)
「……どうして、いつも俺を置いていくんだよ……」
(……俺を置いていくくせに、生きろだなんて……。
また置いてけぼりかよ、ちくしょう……)
「……どうして、そんな、無責任なこと、言うんだ……ッ」
(俺には何も見つけられない。
理由も目的も無く、生きろって言うのか……?)
大粒の涙をメットの中に浮かばせ、ぽつりぽつりと呟く。
「上等だ、この野郎……」
(この身体は近いうちに止まる。
最後まで話せなかったけど。
俺なんかに“生きろ”なんて言ったこと……)
「後悔させてやる……」
(あの世でな。
すぐそっちにいって、君の怒ってふくれた面を拝んでやるんだ)
「待ってろよ……、リファ……ニ……ア」
(ッ、……だから、それまでは……)
「生きてやる……!」
バイザーを開き、頭を振って涙を払うと、
「コントロールルームへ行く。
ルートの確保、頼むぞ」
リナルドはシュウジに声を掛け、ブリッジを後にした。
≪続く≫
コントロールルームへ行く、というのは口実だ。
どうしても抑え切れるものではないと、彼自身が認めただけだ。
誰とも顔をあわせたくなかっただけ。
失ったものは、彼の崩壊を止めるほどの大きさを占めていたのだから。
ブリッジを出たリナルドは、やがて、ゆっくりとその歩みを止める。
途端にその肩は小刻みに震え出し、双眸は再び銀の大粒を生み出していく。
「く……う……ぅっ、う……あ……ッ、う……」
嗚咽はひとつのカタチとなって、鉄の壁をも打ち破った。
『うあああぁぁあぁあぁぁあああああッ!!』
宇宙に響く漆黒の叫び。
それは、誰にも届かない……闇の帳を切り裂く咆哮。
【行動:会話(0)、崩壊再開(-1)、艦内移動(-1)、咆哮(-1)】
【位置:O-15(レウルーラ・通路)】
【所持品:自動小銃、マガジンx3、スタングレネード、拳銃(8)x2、防弾チョッキ、(救急箱)、
MS状態チェック用ポータブルコンパネ、ドリンクx3、首輪(解)】
【行動方針:生きる。 最期の時まで、生き延びる】
ジャベリンの左側を通り過ぎていく、あのコロニー。
最初にアシッドと戦った所。
水鳥達と暫しの平穏な一時をすごした所。
ムサイの参加者達と初めて遭遇した所。
苦労して小さな蕎麦畑を耕した所…。
正直寄っていきたいと思ってはいたが、ジャベリンの状態がそれを許さなかった。
もはやジャベリンの四肢でまともに動くのは左足のみ。
その状態で重力下に降りたら、ジャベリンは2度と立ち上がれないかもしれない。
あそこに行けば考えがないでもないから、うまくいけばまたここに来れるだろう。
【行動:H-7に移動(−4)】
【位置:L-7→K-7→J-7→I-7→H-7】
【行動方針:約束を果たしに…】
シュウジがリナルドからの返答を待つ間、予測だにしない方から通信が入ってきた。
『…皆、すまない。俺はここで同盟から抜ける』
「!?」
その内容は、シュウジの思考を止めるのに十分だった。
だがそれも一瞬で、すぐにレイモンドに何かを言おうとする。
その時、リナルドから返答が来た。
『……そうだな。 わかった。
じゃあ、すぐにでも――』
「すまないな。疲れてるのにこんな事任せて。
……さ、て。」
ブリッチから出ようとするリナルドを見送りつつ隔壁を操作し、
今まで空いていた箇所を閉め、コントロールルームまでの通路の隔壁を開けた。
続いてレイモンドに一言言おうとしたとき、ゼファーからの通信がそれを遮った。
〔マスター!敵です!〕
「!?」
その言葉に、艦橋の外を見るシュウジ。
するとそこには、見た事のない紅いMSと、頭部を失った紫の巨大なMSがいた。
ゼファーのビギナとは言うと、艦橋を庇うように立ちはだかり、マシンガンを今にも撃とうとしていた。
だが、もう既に遅かった。
サイコMK−2の頭部……すなわち、コックピットは、既に失われていたのだから。
それは、仲間がまた一人、失われたという事なのだから。
目の前での出来事に反応するよりも早く、信じられない事が起きた。
「……動い――」
言い切るよりも早く、サイコは自ら突き立てたビームソードにより、爆発した。
光に包まれるレウルーラのブリッチ。無論、破片も飛んで来たが、大半がビギナ・ギナによって防がれた。
そして、光が収まったとき、また元と同じ、静寂が広がっていた。
以前よりも、静かな静寂が広がっていた。
〔……サイコMK−2、敵機とともに反応消失しました。〕
『ベルク。あの基地の同盟で生き残ってこれたのは運や偶然だけでなく、お前自身の実力もあった
からだ。あと少しだ。…死ぬなよ。
シュウジ、色々と世話になった。ここまで来れたのはひとえにお前のおかげだ。生き延びたら、
その頭脳を今度は平和の為に使ってみてくれ。
リナルド。お前のアビゴルは損傷も少なく、十分に戦闘力を維持している。ゲートに敵がいた場合
お前が皆を守ってやってくれ。頼む。
…俺はここで別れるが、俺達は生きる年代は違っても…未来永劫、仲間だ』
「……。」
ゼファーの通信にも、レイモンドの言葉にも反応を見せないシュウジ。
サイコMK−2が光に包まれたその時からコンソールに突っ伏したままで、その肩は小刻みに震えていた。
『シュウジ状況を説明してくれ・・・・・・・・それから急いでゲートに向かうぞ。
こんなところで終わらせない。』
「……リファニア・ニールセンが死んだ。残っていた敵機に……やられて……。
ああもう……なんでよりにもよって……。」
ベルクの声に、やっと反応を返すシュウジ。
だが、顔は背けたままであり、肩の震えは収まってはいない。
『コントロールルームへ行く。
ルートの確保、頼むぞ』
「もう……やってある。」
艦橋を出て行くリナルドに対しそう短く答えると、
涙を拭き、今度はベルクの方をきちんと向いて言った。
「……お前の言う通りだな……急ごう。
おい、お前ら!」
今度は部屋の端の方にいる兵士達の方向を向く。
「お前達を今から解放する。救命ポッドの位置を教えろ。」
『……A−23ブロック。』
「……オーケィ。」
兵士の一人の声を受け、急いでノートPCで言われた位置を調べるシュウジ。
幸いその位置は、リナルドが向かった方向とは逆の位置にあった。
そこまでの隔壁を解放させると、シュウジは兵士達に再度言った。
「今、そこまでの隔壁を解放した。死にたくなければ走って行け。
出てすぐ左。それ以外の方向には行くな。急げ!急がないと殺す!」
シュウジの言葉に、兵士達は我先にとブリッチから出て行った。
「……はぁ。」
兵士達を見送った後、シュウジは溜息を一つつくと、そこに座り込もうとした。
が、視界の端に映った物が、それをさせなかった。
「何故……まだここにいる?」
そこにいたのは、レウルーラの"元"艦長だった。
相変わらず、壊れたようにニヤニヤ笑いを浮かべている。
一言言ってやろうと彼に近づいていくシュウジ。
1mぐらいの位置まで近づいたとき、彼の右手に何かがあるのに気が付いた。
だが、気が付いたときには既に遅かった。
次の瞬間、シュウジは元艦長の拳銃に撃ち抜かれ、反動で後方に飛ばされていた。
【行動:隔壁閉鎖・解放(−2)会話・通信(−0)隔壁解放(−1)】
【位置:O−15(ガンイージ、ビギナ・ギナ)】
【参加者状況:右足重傷(処置済み)打撲 左目周辺に切り傷
内蔵に負荷 防弾チョッキ着用 首輪解除 左二の腕に銃創】
【行動方針:ゲートへ】
コロニーが小さくなり見えなくなると、辺りはまた、星の海が続く。
近くに障害物がない事を確認すると、1つ背伸びをした。
いくら俺が星を見るのが好きだと言っても、さすがにこの長時間見続けるのは疲れる。
俺もあいつも、あれからずっと黙ったままだ。
あいつは基本的に操縦中の俺には何も言ってこない。
こちらが話し掛ければ向こうも応えてくれるだろうが、特に用事が無いのに話し掛けたら、さっき
泣いていた事を蒸し返されそうで嫌だ。
それにここまで来れば、もう暇を潰すような真似はしなくていい。
…何故なら、目的の場所はもう間近なのだから。
記憶に鮮明に残る、あの光景。
侵入禁止空域に封鎖された基地。
そこに飛び込もうとするルイと、それを止めようとする俺とベルク。
あの時…俺は、ルイと約束をした。
首輪が取れたら、もう一度ここへ戻って来ようと。
死んだ人間との約束の為にベルク達と袂を別つのは、許されない行為かもしれない。
…だが、あの時ルイは死んだアーネストの為に、本気で侵入禁止空域に飛び込もうとしていた。
そのルイの気持ちを汲んでやれるのは…2人に命を救われた…俺だけだ。
志半ばで逝った2人の魂が、少しでも安らげるのなら…。
遠くに見えていた黒々とした影が、段々形を成してくる。
やっと…戻って来れたのだ。
【行動:F-5に移動(−4)】
【位置:H-7→G-7→F-7→F-6→F-5(基地の表面)】
【行動方針:約束を果たしに…】
【同盟:なし】
>>172 「シュウジッ!」
兵士達が走り去った後の静まり返ったブリッチ内でそれは起きた。
シュウジが残っていたレウルーラの元艦長に無防備に歩みよったその時、
一発の銃声と共にシュウジが何かに押された様に飛んだ。
俺はとっさに腰に巻いたホルスターから拳銃を抜き
胸の痛みに耐えながらシュウジに向けられたままの銃口の射線上に
割ってはいる様に移動しこちらも銃口をレウルーラ元艦長に向ける。
『ひゃはははあは、死ね死ね死ね死ね死ねー
どうせ貴様らはここから出られず死ぬんだー
ひゃはははあはははははっはっ。』
奴は笑いながら銃を乱射してくる。それに対抗する様に
俺も銃の残弾が無くなるまで撃ちつづけた。
奴は狙いを定めず適当に撃ちつづけているのか見当違いの方向に
銃弾が当たっているようだったがそれでも何発かは俺の体を貫いた。
いずれ銃声の一発一発に合わせてレウルーラ元艦長が
糸の切れた人形の様に狂い踊りながら動かなくなったのを確認すると。
体の力が急に抜けた。
(こんな所で終われないんだ。)
その体に力を入れてふんばり、膝を着くことは無かった。
しっかり地面を踏みしめ、力の入った手で十字架を強く握り叫んだ。
(俺は!こんなところで、終われないだ―――――――――――。)
その叫びは、音にはならず立ったままのモノ言はぬ入れ物の中で響いていた。
【生徒番号07番:ベルク=クロフォード 死亡】
【死因 銃弾の心臓貫通によるショック死 】
――――――――――――――――――――――――――――
白い空間。
立っているのか、寝ているのか。
落ちているのか、昇っているのかさえ判らない。
一人だった・・・・・・・・・・。
そこにあの少女の姿が見える。
彼女は少し悲しそうな顔をしていたが微笑みながら
手を差し伸べてきた。
俺は少し困った表情をしたが差し伸べられた彼女の手を取り
自分も微笑み返し彼女と共に白い空間に溶けていった。
「……ッ!」
痛みは、一瞬遅れてやってきた。撃たれたのは、左腕。
どうやら銃弾は貫通したようで、前と後ろの両方から血が出ていた。
「……このッ!」
シュウジは痛みに耐えながら、反撃するべく右足のホルスターに手を伸ばし、拳銃を手に取った。
元艦長が乱射しているのだろう。銃声が絶え間なく続いている。
拳銃を構え、元艦長の方へ向ける。が、目の前に広がっていたのは……
>>174 「……ベルク?」
返事は、無かった。
「……艦長は……倒したのか?」
艦長は身体のあちこちから血を流しながら倒れていた。
ベルクもまた……
「……!」
血を流していた。立っていたが、身体のあちこちから血を流していた。
「……またか……。」
また、仲間が死んだ。
他の者を、守って。
自分を、守って。
「どいつも……こいつも……ッ。」
左腕の痛みを忘れたかのように、立ちつくすシュウジ。
そこからもまた、血が流れていた。
「何故……俺が生き残らなくてはいけない……?
死ぬために……ここにいるのに……。
逆になるはずだったのに……。
……
……
俺に何をさせたいんだ……。」
それからも、無言でシュウジは立ちつくしていた。
人を守って死んでいった二人の返事を待つように、立ちつくしていた。
だが、シュウジは十分すぎる程解っていた。
いつまで待っても答えは返ってこないという事に。
だがシュウジは、返事を待っていた。
【行動: (−0)】
【位置:O−15(ガンイージ、ビギナ・ギナ)】
【参加者状況:右足重傷(処置済み)打撲 左目周辺に切り傷
左腕に銃創 内蔵に負荷 防弾チョッキ着用 首輪解除 】
【行動方針: 】
楽しい思い出…。
人間にとってそれは、明日を生きる上での活力になる。
…ただし、楽しい思い出ばかりの場所が最高かと聞かれたら、俺はノーと言わざるを得ない。
何故ならそこには、喜怒哀楽が感じられないからだ。
楽しい思い出や悲しい思い出。
そういう清濁併せ持った場所の方が、思い出としては遥かに強く残る。
まあそこから感じ取るものは人それぞれだろうが、少なくとも俺にとってはそのような場所は絶対
に不可欠なものだろう。
…まさにこの基地はそんな場所だった。
(…ええと。あのデッキに通じるハッチは…。たしか、ここだった…か?)
思い出の場所といっても外からは数えるほどしか見ていない為、そのハッチを見つけるのは、い
ささか骨が折れた。
変な所から入ったりしたら中で迷いかねないから、自然と慎重になってしまう。
そんな探索を暫く繰り返し、俺はやっと例のデッキへ入る事ができた。
ぼんやりとライトに照らされたデッキの中に、今だ残る爆炎の跡。
サーティアが撃ったガトリングの薬莢と、その弾痕。
ルイが走り回ったタイヤの跡。
アーネストがサーティアに放った武器(…あれが何だったのか、未だに謎だ)の爆発で黒ずんだ
床と、破片の刺さった壁。
…その近くにある、俺の血だまりの跡。
全てがあの時のままに、時間が止まってしまったかのようにここには存在していた。
そう…あれも…。
俺が見つめるデッキの片隅には、プログラムから取り残されたもの……アーネストの青いMSが
静寂の中に佇んでいた。
アーネストはどこにいるのか。
先ず探すべきなのは、やはりあの青いMSだ。
アーネストが脱出しようとしていたのなら、コクピットにいる可能性は低くない。
青いMSの隣にジャベリンを止め、そのコクピットハッチを外部操作で開く。
…サーティアがガンイージを乗っ取った時もそうだったが、コクピットハッチは意外と簡単に開く。
おかげで随分大変な目に遭ったが、これも管理者側が狙って開きやすくしたのだろうか…?
取り留めの無い事を思いつつコクピット内を覗くが、そこには彼の姿はない。
…複雑な気分だ。
既にアーネストが死んでいるのは分かっているのに、それでも死体が見つからないと、もしかしたら
…という希望じみた思いが湧いてくる。
そんな思いを抱いても、現実の前では虚しいだけなのに。
やはりアーネストは基地内にいるのだろう。
俺はそう判断した。
アーネストも基地内全てを把握していたわけではないだろうから、迷わないような所…。
そんなに離れた所には行っていないだろう。
簡単な見当をつけると、俺は内部へと入っていった。
【行動:ハッチの探索(−1)デッキへ移動(−1)ガザDコクピットを見る(−1)基地内へ(−1)】
【位置:F-5(基地内部)】
【行動方針:約束を果たしに…】
【同盟:なし】
――小さい頃、何度も同じ夢を見た。
自分の身体が崩れていく夢を……。
夢だと思ってた。 ただの悪夢だと。
でも、彼女を失った時に、ふと、その夢を思い出した。
今はわかる。 その悪夢は、現実になったんだって――
(リファニア……)
通路を進みながらも、リナルドの頭は別のことを考えていた。
(俺は、君に……何をしてやれた?)
角の手前で一旦止まり、一呼吸置いてから角を曲がる。
(君なら、何て答えるかな?)
再び床を蹴り、通路を進む。
(……自信が無い)
ふと、胸のキスマークのあたりを押さえてみる。
(それでも、君は笑ってくれるかな?)
心臓は規則正しく動いている。
(答えは……返ってこないんだよな)
痛みは……もう、あるのか無いのかさえわからない。
(そうだな。 向こうで訊いてみることにしようか)
黒に鈍い光をたたえた瞳が、目的地を捉える。
(わがままを言うなら……)
立ち止まった彼の前には、コントロールルームの扉が立ち塞がった。
(もう一度、抱き締めてあげたかった。 頭を撫でてやりたかった)
不意に零れた涙をバイザーを開けて払うと、扉越しに気配を窺う。
リナルドは、意を決して扉を開いた。
≪続く≫
「!?」
セキュリティ担当の士官は、動かしていた手を止めて振り向いた。
自分を閉じ込めていた扉が急に開かれたのだ。
しかし、扉は開かれただけで、何も起こる気配は無い。
「な、何だ……?」
仕官は拳銃を抜き、恐る恐る扉に近付いていく。
その判断は、通常なら間違っていなかったかもしれない。
セーフティを解除し、銃口を扉に向け、ゆっくりと扉ににじり寄る。
そして、銃身が扉をくぐった瞬間――彼は、引き摺り出された。
天井に潜んでいたリナルドが、扉からのぞく銃身を掴んで有無を言わさず引き出したのだ。
次の瞬間、鳩尾に加減して回し蹴りを叩き込み、首筋に手刀を打ち付ける。
ぐったりとした仕官の口に適当に詰め物と猿轡をし、舌を噛み切られないようにすると、
仕官の銃からマガジンを抜き、コントロールルームの隅に放ってパネルを操作し始めた。
「……あー、シュウジ。 俺だ。
コントロールルームの仕官を押さえたぞ。
まだ殺してはいない。 これからどうすれば……
どうした? 何か……あった……な!?」
リナルドが異変に気付いて質問を変えた言葉は、銃声と共に唐突に切られることとなった。
仕官は、気絶し切っていたわけではなかったのだ。
リナルドは仕官の銃からマガジンを抜いたものの、銃そのものを奪ったわけではなかった。
仕官を拘束し、自由を奪ったわけでもなかった。
普段は忘れないような確認を怠ってしまっていた。
偶然が積み重なり、仕官は意識を持ち直し、銃の薬室に一発の弾丸が残されていることに気付いた。
このままでは殺される。
仕官は、最後の反撃に出たのだ。
【行動:艦内移動(-1)、格闘(-1)、通信(-1)】
【位置:O-15(レウルーラ・コントロールルーム)】
【所持品:自動小銃、マガジンx3、スタングレネード、拳銃(8)x2、防弾チョッキ、救急箱、
MS状態チェック用ポータブルコンパネ、ドリンクx3、首輪(解)】
【行動方針:生きる。 最期の時まで、生き延びる】
「……。」
〔……マスター。〕
「……。」
通信機から聞こえてくる、ゼファーの声。
なんだか申し訳なさそうに聞こえるその声は、シュウジに次の発言を容易に予測させた。
〔すいませんでした……。〕
「……。」
〔監視を任されたのに、いざというときに対処出来なかった私の責……。〕
「……やめろ。」
〔……?〕
「責任云々は、この際意味がない。」
〔しかし……。〕
「……今更誰かに責任を押しつけて、自己満足する気はない。
もし、この責任を押しつけるのだとしたら……その対象はこのゲームの管理者全員だ。」
〔……。〕
「……いいかげん、血……止めないとな。」
〔……そう……ですね。〕
それからは二人とも無言のまま、ゼファーは周囲の監視を、
シュウジはベルクの遺体をとりあえず椅子に横たわらせた後、止血作業を始めた。
「糞……もう左腕……動かないな。」
〔大丈夫ですか?〕
「大丈夫と言いたいが……やっぱり痛いな。それに胸の傷が……辛いな。」
〔すいません……。〕
「いや、胸の傷はお前のせいじゃな……。」
『……あー、シュウジ。 俺だ。
コントロールルームの仕官を押さえたぞ。
まだ殺してはいない。 これからどうすれば……
どうした? 何か……あった……な!?』
「……!?」
〔マスター……!今の通信、最後の方……。〕
「……っ。」
〔マスター!?〕
シュウジとゼファーの会話の途中に割り込んできた通信。
それはコントロールルームを制圧したであろうリナルドからの物だった。
普通なら制圧を完了したという喜ばしい通信内容のはずだったのだが……。
最後に聞こえてきた慌てるかのような声と、一発の銃声。
すなわち……一時は成功したかに見えた制圧が、そうではなかったかもしれないという事になる。
その通信を聞いた直後、シュウジはすぐさま行動に移っていた。
その辺に置きっぱなしだった自分の拳銃を手に取ると、ブリッチを飛び出していったのだ。
目指すは無論、コントロールルーム。
「糞……っ。糞……っ。糞……っ。
何で……また俺の所為か……また俺が……殺してしまうのか……。
ゼファーにはああ言ったけど……結局、俺の所為なんじゃないか……。
そうなって……また仲間を殺して……たまるか……。」
コントロールへ向かい、一直線に向かうシュウジ。
その間、ずっと同じ言葉を繰り返していた。
"殺させるものか"と。
【行動:会話(−0)ベルクを寝かせる(−1)止血作業(−1)コントロールルームへ向かう(−1)】
【位置:O−15(ガンイージ、ビギナ・ギナ)】
【行動方針:……殺させるものか。】
基地内を探すに当たって俺も闇雲に歩いたわけではなく、一応の目安はつけていた。
俺が医務室で眠るまで…アーネストはそこにいた。
そして目が覚めてから脱出するまで、それほど時間は経ってはいなかった…筈。
脱出するその際、デッキや食堂ではアーネストの姿は見ていない。
おそらく…アーネストは医務室を中心とした、さほど遠くない場所にいると思われる。
彼の事をもう少し知っていれば、どこに行ったかも推測出来たかもしれないが、残念だがそこまで
の話をする事は結局はなかった。
今は自分の勘を頼りに、虱潰しに探していくしかなさそうだ。
医務室。
ここで俺はアーネストに命を救われた。
診療ベッドにもその時流れたのだろう、血の跡がシーツに染み付いている。
そしてその脇には、治療に使ったと思われる道具が置いてある。
(…デッキや食堂にいなかったから…自然と反対の方へ行ったという事になるが…)
記憶の映像を頼りに、医務室から出て廊下を歩いていく。
少し進んでいくと、いくつかの倉庫がある区画に入った。
十字路で立ち止まって左右を見る。
アーネストが来るとすれば、やはりここらへんが一番可能性がありそうだ。
手っ取り早く、近くの倉庫から順に覗いていく。
…そして、2つ目の倉庫の中を覗いた時――。
薄暗い倉庫…。
天井の蛍光が照らし出した、その片隅に…彼はいた。
床に広がった、乾いた血溜まりの中に…。
「……アーネスト……」
息を整えてゆっくりと近づき、傍にしゃがみ込んだ。
「何をやってんだよ…こんな所で…。……馬鹿やろう」
…アーネストは、まだ自分が死んだ事を認識していないかのような、生きていた時と殆ど変わらない
表情をしていた。
傷口を見てみると、そこはかなり酷い様相を呈していた。
それは首輪の爆発で、一瞬にして首と胴が離れた事を示している。
惨い有り様ではあったが、おそらくアーネスト自身が、痛みを感じる暇も無かったであろうという事
だけが唯一の救いではあった。
本来ならば宇宙葬にしたいのだが、基地のどこに施設があるのか、まるで分からない。
基地の規模は中程度でも、実際はかなりの広さなのだ。当ても無しに歩いたら迷うだけだ。
(……)
ふと思い立って、倉庫内にあった大きめの台車に、アーネストの身体を乗せた。
「こんな扱いをしてすまない…。暫く我慢していてくれ」
台車を押して、再びデッキへと向かう。
【行動:医務室に移動(−1)倉庫区画に移動(−1)捜索(−1)デッキに移動(−1)】
【行動方針:約束を果たしに…】
【同盟:なし】
デッキに到着すると、さっそく片隅にある整備員の待機室から、工具箱と長めのケーブルを
探し出して持ってきた。
青いMSの爆弾を解除する為だ。
実際のところ管理者側からも忘れられていたような機体だし、レウルーラも占領した事もあるから
爆発の危険はさほど無いかもしれないが、それでも万が一は考えておかなければならない。
ダウンロードしたシュウジのディスクと、ジャベリンという現物の見本があれば、作業自体に不安
はあまりなかった。
問題があるとすれば片手での作業という事なのだろうが、これはとにかく慎重に慎重を期して行う
しかないだろう。
そういう意味では、首輪が外れ進入禁止空域の心配がなくなった事は本当に有り難い。
MSのメンテナンスハッチを開けて内部に入る。
さあ、作業開始だ。
【行動:道具と材料を探す(−2)ガザD内部に入る(−1)】
【位置:F-5(デッキ)】
【行動方針:約束を果たしに…】
【同盟:なし】
銃声はリナルドの右腕を貫き、モニターに傷跡を刻む。
リナルドは、貫通した傷痕を押さえたために、一瞬の虚を衝かれてしまった。
「うおおおおおッ!」
仕官は、銃身を握るとグリップで力任せにリナルドを殴りつけた。
リナルドは腕をかざしてそれを止める。
が、押し返すこともかなわずに、逆に押され始めた。
(何だ……? 力が……入ら、ない)
何とか左足で仕官を蹴り上げると、顔面に掌底を打ち込んで強引に距離を作る。
リナルドが銃を抜く前に仕官はまたも殴り掛かり、しばし取っ組み合いが展開された。
そうしてついに、仕官はリナルドを壁際に突き飛ばした。
「く……そ……ッ!」
「殺されて、たまるかァァァ!」
仕官は、叫びながら形振り構わず部屋の一点を目指して飛び出した。
リナルドがマガジンを放った、コントロールルームの隅へ向かって。
銃を向けられたら、負けだ。
リナルドも負けじとマガジンを放った方向へと走る。
だが、仕官の方が一瞬早い。
仕官はマガジンを拾い上げると、すぐにグリップに押し込んで薬室に銃弾を送り込む。
そうして勝利を確信して振り返った時、彼の顔は青褪めた。
「今、死ぬわけにはいかないんだ……。
リファニアは、生きろと言ったんだ……!
だから……」
仕官の目の前には、右手に拳銃を、左手に自動小銃を構えて
既に万全の射撃体勢を整えたリナルドが立っていた。
右手の人差し指が静かに引かれる。
銃弾は仕官の右手に吸い込まれ、仕官は悲鳴と共に銃を取り落とした。
「殺されてやるわけには、いかないんだッ!!」
そして左手の人差し指が引かれ、轟音が悲鳴を掻き消していく。
やがて、腹を空かせた自動小銃のマガジンを交換すると、リナルドはコントロールパネルに背を預け、
自分で作り上げた目の前の惨状もそのままに座り込んでしまった。
「まだ、倒れる、わけには……」
彼は荒い呼吸を落ち着かせるように呟くと、右腕の手当てを始めた。
【行動:格闘(-1)、始末(-1)、リロード(-1)、手当て(-1)】
【位置:O-15(レウルーラ・コントロールルーム)】
【所持品:自動小銃、マガジンx2、スタングレネード、拳銃(7)x2、防弾チョッキ、救急箱、
MS状態チェック用ポータブルコンパネ、ドリンクx3、首輪(解)】
【行動方針:生きる。 最期の時まで、生き延びる】
「……っ!?」
コントロールルームまで、あと50m。
そこまで辿り着いた時、コントロールルームの方から銃声が響き渡った。
「クソ……っ。」
毒づきながら、最後の角を曲がる。
そして、扉をくぐると最初に部屋の隅に転がる士官の死体が見え、
続いてコントロールパネルの下に座り込んだリナルドが見えた。
それを見たシュウジは、安心したのか脱力してその場に座り込み、
同時に緊張が解けた事により戻ってきた左腕の痛みに、思わず傷口を押さえた。
「……リナルド……よ……くないか。すまない、俺の所為……だな。
でもとりあえず……生きてて良かった……。
……
……だが……
……一つ……
知らせなければならない事が……ある。
ベルクが……死んだ。
艦長に撃たれて……。
俺を……守って……。
また一人……仲間が失われた。」
悔しさに顔を歪めるシュウジ。
だがその表情には、悔しさ以上に後悔がうかんでいた。
しかしそれも一瞬で、すぐに表情は決意を秘めた表情になっていた。
「でも……もう、時間が……無い。
後悔してる時間とか、死んでいった者たちを悔やむ時間とか、
とにかく……後ろを見ている時間は、無い。
残された俺達にはもうそれすら許されることはない。
だから……往くぞ。"ゲート"へ。
そして生き残る……死んでいった者の分まで。その者達を悔やむために。
この体がいつまで保つか解らないが……保つまで。
だから……死に急ぐとか……やめてくれよ?
もう、仲間が先に死んでいくのは見たくない。
もう十分すぎるぐらいに……重いんだ。せめて、お前も背負ってくれよ……?
俺も生き残るために最大の努力をする。
二人で背負えば……まだどうにかなりそうだ……しな。
レイモンドも戻ってきてくれれば……まだマシなんだがな……はは。」
そこまで言い終わると、立ち上がり、ゼファーに向けて言った。
「ゼファー。レウルーラはお前でも制御出来るな?」
〔はい。可能です。〕
「では30分後に、用意してある移動用プログラムを起動してくれ。
起動したら格納庫に入れ。最後の補給を行う。」
〔了解しました。……大丈夫でしょうか?〕
「来るならもう既に来てるさ……。」
「……さて、往く前に、いくつか仕事をしておかないとな……。」
【行動:会話・通信(−0)】
【位置:O−15(ガンイージ、ビギナ・ギナ)】
【行動方針:生き残るために、最大の努力を】
このプログラム中は宇宙空間がメインになる為か、あまり時間の概念というものがなかった。
従って自分が作業を開始してからどのくらい経ったのか、勘で推測するしかない。
多分、ベルクが爆弾の処理をした時よりも2倍から3倍近く時間がかかっただろう。
コクピットに繋いだケーブルをしっかりとテープで固定して、俺のある種ゆっくりとした作業は
ようやく終了となった。
気になる事もある。
処理作業に予想よりも時間がかかったのは、作業中に右手の傷が痛みを訴えたからだ。
…これまで怪我をした直後以外でこの傷が痛んだのは2回。
…アーネストとルイが死んだ時だけだ。
まさかベルクの身に何かが…?
その痛みは、俺の心に小さな、しかしはっきりとした不安を感じさせていた。
「あ、あとは…と」
それを振払うように大きめの声で呟くと台車のアーネストをコクピットに乗せ、次いでジャベリン
のコクピットに入りディパックを右肩に担ぐ。
(…これも持っていくか)
シートの後ろに放ってあった外れた首輪もパックに入れ、段ボールを左腕で抱えると青いMSに乗り移った。
そしてシートに腰掛けると、近くにあったそのマニュアルに目を通す。
AMX-006 ガザD
それがこの機体の名称だった。
(俺の乗機も3機目か。…もういっそのことペルサーノとでも名乗った方がいいかな。
…いや、今は戦闘中じゃないから、別に名乗らなくてもいいか)
本気とも冗談とも言えない事を考えながら、起動スイッチを押した。
【行動:処理作業(−2)アーネストを運ぶ(−1)荷物を移し替える(−1)】
【武装:ビームサーベル×2、背部ビーム砲×2、肩部5連装ミサイルポッド×2、ナックルバスター
足裏部2連装メガ粒子砲×1(右足のメガ粒子砲損壊)、脚部格闘用クロー×2
スリングクラッカー×2(武装庫に保管)】
【コンテナ武装:ザクT:武装ザクマシンガン×1、予備の30連ドラムマガジン×1、
ブービートラップ(クラッカー)×1、現在武装庫に保管中】
【行動方針:約束を果たしに…】
外に出るにあたって、困ったのはコンテナの存在だった。
これを引いたままでは、ガザDの特徴である変形ができないかもしれない。
もし変形できたとしても、機動力はまず間違いなく殺される。
…だが流石に置いていく事はできない。
…何故なら、コンテナにはあの、ザクTが入っているからだ!
博物館でしか見た事が無い幻のMSが、体育座りで俺の目の前に…。
何とかして、こいつを持ち帰りたい。
そして許されるなら庭に飾って、時々乗りたい。
その思いが俺にコンテナを捨てさせなかった。
「これまで俺を守ってくれて…感謝している。…有難う」
ハンガーの傍らに座るジャベリンに敬礼を送り、ガザをデッキから外へ向けて移動させる。
乗り心地は悪くないし、操縦もまあ何とかなりそうだ。
MSの操縦など、一部の例外を除いてはザクの頃から基本は変わりは無い。
初めてのMSでも如何にして応用を利かすかが、パイロットの資質の1つなのだ。
ただ変形という動作が加わった事による、左手の捌きが考えどころではあった。
そして様々な思い出の詰まった基地が、だんだん離れていく。
サーティア、アーネスト、ベルク、ルイ。
彼らと共に過ごしたのは僅かな時間。
だがそれは、俺の人生そのものを根底から覆すような出会いだった。
笑いも、怒りも、悲しみも、全てが大切な出会いによってもたらされた。
ルイとアーネストに救われ、サーティアを手にかけた。
散っていった命の無念の想いを、俺が和らげてやれれば…。
【行動:基地から出る(−1)D-6に移動(−3)】
【位置:F-5→F-6→E-6→D-6】
【行動方針:約束を果たしに…】
「……シュウジか」
リナルドが何とか荒い呼吸を整えたところへ、シュウジか駆け込んできた。
通信の途中で襲われたのだから、異常に気付くのは容易かっただろう。
「…………」
ベルクの死が伝えられた。
いよいよゲートへ向かうことが伝えられた。
リナルドは、椅子に手をつき、何とか立ち上がる。
「……すまない、完全に油断していたんだ。
別にお前のせいじゃない。
大丈夫だ、俺は死なない……殺されてたまるか」
大きく息を吐き出して、彼はぽつりと呟いた。
「……皆、いなくなっちまったな……。
……ん、あ……いや、何でもない。
機体のチェックを済ませたら、少し休むよ。
ああ、ここのコンピュータ、一応調べた方がよくないかな?」
取り繕うように少し早口で告げると、リナルドはゆっくりと格納庫へ向かった。
アビゴルに乗り込むとMS形態に変形させ、ギラ・ドーガが納まっていたであろう場所へと移動させる。
そうして補給を始めると、彼はコクピットに戻って、無言で機体のチェックに掛かった。
【行動:会話(0)、コントロールルーム→格納庫(-1)、MA→MS(-1)、補給(-1)、チェック(-1)】
【位置:O-15(レウルーラ・格納庫)】
【所持品:自動小銃、マガジンx2、スタングレネード、拳銃(7)x2、防弾チョッキ、救急箱、
MS状態チェック用ポータブルコンパネ、ドリンクx3、首輪(解)】
【行動方針:生きる。 最期の時まで、生き延びる】
>>186 「……そうだな……。」
機体の所へ向かう旨を告げ、コントロールルームから出て行くリナルド。
その後、シュウジは適当なコンソールに向い、そこでまず隔壁を解放し、
それから先程まで士官が作業していたであろうコンソールに向かった。
それを見たところ、プログラムは完成直前で阻止されている事に気が付いた。
とりあえずその事に胸をなで下ろした後、
遅延型ウイルスが仕掛けられていない事を確認し、
システムを一応艦橋からしか制御出来ないようにロックした後、コントロールルームを後にした。
「さて……次は。」
〔マスター。格納庫に到着しました。
移動用プログラムを起動。レウルーラの移動を開始します。〕
「……あぁ。
すまないが、その前にプログラムを一部改竄。微速前進に変更しておいてくれ。
後でまた命令を出す。
補給はちょっと待ってくれ……ブリッジにヘルメットとディバッグを取りに行ってくる。」
〔了解しました。〕
ゼファーとそんなやりとりをしながら、ブリッジへと向かうシュウジ。
兵士達が逃げた艦内はかなり閑散としており、自分が壁を蹴る音以外何の音も聞こえなかった。
その後は兵士とかち合う事もなく、無事ヘルメットとディバッグを回収し、今度は格納庫へと向かった。
「……これは……また……。」
格納庫に辿り着いたシュウジを迎え入れたのは、人間で言う腹の部分に風穴を開けたビギナ・ギナだった。
それ以外に損傷は多く、右下腕部にいたっては完全に消失していた。
〔全力で努力したのですが……。〕
「いや、十分だ。メモリーユニットを失ってまで……よく、がんばった。
……ところで、どうやって動かして……。
機体にDLするのは無理があるから……あ、まさか……。」
〔恐らく、予想している通りだと思います。〕
「これで死ぬ事はなくなったわけか。」
〔そう言う……事になるのでしょうか?〕
「さて……作業作業……と。……ん?」
〔どうしました……?〕
「いや……別に。」
そう言うシュウジの視線の先には、若干損傷したメガライダーが佇んでいた。
たしか、レイモンドが置いていったような……そんな事を言っていた気がした。
(……いい物を置いていってくれたじゃないか……。)
【行動:隔壁操作(−1)システムチェック(−1)艦内(外)移動(−2)】
【位置:O−15(ガンイージ、ビギナ・ギナ)】
【行動方針:生き残るために、最大限の努力を】
基地を離れたガザはアーネストを乗せて、ある場所へと向かう。
かさばるかと思われたコンテナもさほど邪魔にはならず、まあ順調な飛行だろう。
何事もなく暗礁空域を越えると、そこには兵共の夢の跡……戦場跡が広がっていた。
…俺が目指していたのはここだ。
更に目をこらしその空域を見渡すと、見えるのは所々に浮かぶ艦船の残骸。
俺はその中にある1隻のムサイにガザを近づけた。
あの広い基地内で宇宙葬用のカプセルを探すよりかは、戦場跡にある船で探した方がいい。
特に1年戦争時代のものは、以前に個人的に研究した事もあって艦内も大体把握している。
これが俺がここまでやってきた理由だった。
目の前のムサイはそこここに穴が開き、潜り込みやすそうだ。
【行動:C-8に移動(−3)ムサイに近づく(−1)】
【位置:C-8】
【行動方針:約束を果たしに…】
「カプセルがあるのはまず間違いなく艦底だろうから……あそこらへんか…」
目星を付けた艦底に開いた穴の目の前に、コクピットハッチが来るようにガザを着けて、ハッチを
開き、そこから内部に入る。
光の届かない宇宙空間の艦内。
最初にしたのは近くにあった部屋に入り、灯りを探す事だった。
…実のところは、あいつの力を借りれば暗闇でも目が利くようになるのだが、いくら便利とは言っ
てもそれは俺自身のプライドが許さなかった。
それに案外簡単に灯りは見つかるとも思っている。
戦闘中、いつ電源が切れるか分からない艦内で、各部屋に非常用のライトが置いてない筈がない。
暫く部屋の中を探っていた俺の手が、壁に取り付けられた棒状の物を掴んだ。
「…あった」
手にしたライトを点け、艦底を泳ぐように進む。
施設へ向かう通路に漂う、無念の思いを残した死者の数々。
皆故郷に親を、恋人を、妻子を遺してきたのだろうか。
死が目前に迫った時、彼等は何を口にしただろう。
呪詛の言葉か、怒りの叫びか、悲痛な慟哭か。
…この宇宙の暗闇は、その叫びを全て飲み込んで存在する。
過去、現在、未来……その怨念の鎖が切られる事は…おそらく、ない。
…そして俺の目が、そして耳がその言葉に傾けられる事もない。
俺が目を向けられる死には、数に限りがあるのだ。
とある広めの部屋で見つけたカプセル。
戦闘の影響だろうか、無事なものは少なかった。
その中の1つを押して、もと来た通路を戻る。
こんな無機質な箱にアーネストを入れなければならない事が、少しだけ悲しかった。
【行動:ムサイ内部へ(−1)ライトを探す(−1)カプセルの部屋に移動(−1)入口に戻る(−1)】
【位置:C-8】
【行動方針:約束を果たしに…】
リナルドが機体のチェックを進めていると、ビギナ・ギナが着艦した。
コクピットのあたりにはサーベルか何かで刺し貫かれた跡が生々しく残っている。
どうやって機能しているのかはわからないが、それでもゼファーは動いていた。
「…………」
(悲しいはずなんだよなあ……)
チェックを済ませると、リナルドは小さく伸びをした。
(リファニアがいなくなって、悲しいはずなのに)
シートの陰に押し込まれていたデイパックから食料を取り出し、口に運ぶ。
(どうして、もう涙が出ないんだろう?)
こんなことは考えても仕方が無い。
それでも、考えずにはいられなかった。
(戦場に出れば、死を悼む暇は無いってわかってるのに……)
徐々に思考は変遷していく。
仕方の無いことから、必要なことへ。
(……泣いても笑っても、次がここでの最後の戦いになるのか)
(彼が定義付けた)敗北条件は満たしてしまったが、まだ生命の灯火が消えたわけではない。
まだできることと、やるべきことが残っている。
(生き延びなきゃならない。
生きて……やらなければならないことがある。
……分の悪過ぎる賭けだけど)
もはや悔いを遺さずに死ぬことなどできない。
ならば、その悔いを少しでも減らしていくより他に、生きる目的などは無かった。
(そのために、とうに死ぬはずだった身体で生き延びてきたのだから)
そこまで考え、彼はゆっくりと目蓋を閉じた。
(俺はまだ、止まれない。 死ねないんだ。
もう少しだけでいい、時間をくれ)
【行動:食事(-1)、仮眠(-1)】
【位置:O-15(レウルーラ・格納庫)】
【所持品:自動小銃、マガジンx2、スタングレネード、拳銃(7)x2、防弾チョッキ、救急箱、
MS状態チェック用ポータブルコンパネ、ドリンクx3、首輪(解)】
【行動方針:生きる。 最期の時まで、生き延びる】
カプセルを押しての移動も2往復目となると、少しだけ面倒臭くなってくる。
見て分かる通り、俺は更にカプセルをもう1つ、ガザの近くに押して持ってきていた。
最初のと合わせると2つ。
…別に自分の分を持ってきたわけではない。
サーティアも一緒に弔ってやりたかっただけだ。
ほんの一時でも、共にカレーを食べようとし、生き残る術を求めようとしていた仲間。
身体はなくとも、せめて魂だけは心静かに逝かせてやりたい。
それは、サーティアを手にかけた事への贖罪だったかもしれない。
罪の意識から逃れたいだけのポーズだったかもしれない。
だが、今の俺がサーティアにしてやれるのは…どんなに考えてもこれくらい出てこなかった。
ルイの分のカプセルは持ってきていない。
あの屈託のない笑顔を思い出すと、宇宙葬にはできなかった。
ルイには…この宇宙は静かすぎて寂しいだろう。
ルイは、彼女に良く似合う、光差す大地に葬ってやりたい。
地球とは言わないが、せめてどこかのコロニーがよさそうだ。
最初のカプセルには2枚の紙と、タッパーのカレーを入れた。
紙にはそれぞれに名前が書いてある。
サーティア=クワン
リオン=フライハイ
かつてリオンの名前を出した時、サーティアはいささか過剰な反応を示した。
…それだけでも彼女のリオンに対する思いが、多少なりとも分かる。
紙に書いた名前だけでは寂しいかもしれないが、それでも、せめてそれだけでも一緒にしてやりたい。
ゆっくりと敬礼をしようとした手が、ピタリと止まる。
以前、サーティアが軍人を嫌っていたのを思い出したからだ。
その代わりに握手をするように、左手をカプセルに添えた。
「…そのカレーは…リオンと2人で食べてくれ。冷めてはいるが…だが、きっと温かい筈だ。
…君たちに、心安らかな永遠が訪れん事を祈る」
【行動:カプセル移動で往復(−2)カプセルに紙とカレーを入れる(−2)】
【位置:C-8】
【行動方針:約束を果たしに…】
[推進剤注入開始 残り時間30分]
「これでよし……と。」
〔マスター。レウルーラ、移動を開始します。
微速前進ですので、目標地点到着は数日後になりますが……。〕
「あぁ。無論、このまま行くつもりはない。加速するときは追って連絡する。」
〔了解。移動を開始します。〕
「あとな、ガンイージに装備してあったビームライフルを今再充電している。
出撃するときに腰アーマーにでも装着しておいてくれ。
それと……格納庫の隅にあるやつ、見えるか?」
そう言いつつシュウジが指さしたその先には、橙色をした、バイクのような機体があった。
レイモンドの置いていった、メガライダーだ。
〔……SFSですか?〕
「あぁ。あれも使う。あとで制御関係を掌握しておいてくれ。
アレが使えれば、闘いやすいはずだ。」
〔了解しました。
しかし……勝てるでしょうか。今の装備で。〕
「……勘違いをするな。」
〔?〕
「もう負けてるんだ。俺は。」
〔……。〕
「……って言ったらリナルドに失礼か。」
〔まだ敗北ではありませんよ。〕
「?」
〔まだ、マスターは生きてます。〕
「……目的無くして生きてても仕方ないだろ……。」
〔でも、私の目的はマスターを守る事ですから。〕
「全く……ある意味自分勝手だな。」
〔そう設定したのはマスターですよ?〕
「あー……すっげぇ今後悔してる。」
そう言うシュウジの口調には、冗談めいた物が含まれていた。
だがそれも一瞬で、すぐに真剣な口調に戻る。
「さてと、次は……。」
〔まだなにか?〕
「レウルーラの制御システムをノートPCで動かせるようにしないとな……。
これが一番大変だ……。」
〔大丈夫ですか……もうかなりの時間休んでいませんが。〕
「……大丈夫大丈夫……事が済んだら一日中寝るさ……。」
そう言うと、シュウジは格納庫を後にした。
次に向かうのは、コントロールルーム。
先程彼が言ったように、レウルーラの制御システムを作り直すという作業を行うためだ。
【行動:補給作業〔推進剤・ビームライフル〕(−2)
レウルーラ微速前進開始(−1)会話(−0)艦内移動(−1)】
【位置:O−15(ガンイージ、ビギナ・ギナ)】
【行動方針:生き残るために、最大限の努力を】
アーネストに対する最初の印象は『何だか正体不明な感触』だった。
デッキに入ってきたガンイージを待ち伏せていたところからして、必ずしも俺に好意を抱いて
いたわけではなさそうだったが、不思議と敵意も感じさせなかった。
…その曖昧なイメージが一変したのは、そのあとで彼から聞いたサイコミュについての考察や、
俺の怪我への治療の知識やその技術だった。
明らかにアーネストは俺なんかよりも何倍も頭が良かった。
もしかしたら、シュウジと肩を並べるほどだったかもしれない。
皮肉なものだ。
そのアーネストがあんな事で命を落とし、戦うしか能が無い俺が、こうして彼を弔っている。
その逆だったらいくらでも可能性はあっただろう。
……いや、ないか。
少なくとも俺は…アーネストに弔ってもらえるような男ではないから…。
「すまない。両手が使えたら、せめてノーマルスーツくらいは替えてやりたかったんだが…。
お前には…最後まで迷惑をかけてばかりだな…」
カプセルにアーネストを納め呟くように話し掛け、黙り込む。
暫くして伏せていた視線を元に戻すと、更に話を続けた。
「少し前リーア=ミノフスキーが言っていた。…アーネスト・マンソンは殺人者だ…と。
…今更お前に、話の真偽なんて聞かない。…真実を聞くのが怖くて聞かないわけじゃないんだ」
そこでカプセルに向かって右手を上げてみせる。
「例え真実だったとしても…この右手を治療してくれたのは、紛れも無くお前だ。どんな理由が
あったとしても、俺が今こうしていられるのは、間違いなくアーネスト=マンソンのおかげなんだ。
…だから俺は、仲間として…友としてお前を送り出す」
そして俺はその右手で、カプセルへ敬礼を送った。
「…我が友、アーネスト=マンソンの魂が、母なる宇宙の懐で永遠の安らぎを得ん事を願う」
ガザに乗り込むと、そっとカプセルを握らせる。
本来なら艦から宇宙へ射出するのが常だが、このムサイではそうはいかない。
「じゃあ…お別れだサーティア」
先ずサーティアのカプセルをゆっくりと押し出すように投げ、次にアーネストのカプセルを掴む。
「アーネスト…本当に世話になった…」
言いながら、同じようにカプセルを投げる。
俺は暫くの間、2つのカプセルが星の海に紛れて見えなくなるまで見つめていた。
「いつか俺も、お前達に追いつくから…。また、いつか…な」
【行動:アーネストをカプセルに納める(−1)カプセルを送り出す(−2)】
【位置:C-8】
【行動方針:約束を果たしに…】
「……よし……チェック完了。」
コントロールルームで、満足したようにうなずくシュウジ。
彼の目の前には、完成したレウルーラ制御システムを組み込まれたノートPCがあった。
〔完成、ですか?……信じられません……早すぎます。〕
「と言っても……急ごしらえな上に……だ
レウルーラのシステムそのものを作り直した訳ではなく、
それらを統合利用するシステムを作っただけだからな。
感覚的にはゲームみたいなものか?いや違うか。」
〔だとしても……。〕
「まぁ……自分でも驚いた……何十時間も寝てない頭で作り上げるなんて。
あとでバグが出ないか心配だな……。
さて……次は。」
〔まだ……なにか?〕
「……ブリッジに移動して寝る……限界……。」
〔……。〕
「……。
いや、本当に疲れたしな。」
〔……いえ、すいません。適切な反応が見つかりませんでした。〕
「改善の余地有りだなぁ……。
そうだ……ベルクは……どうしようか。」
〔このまま連れて行っても問題ないのでは?〕
「……そうだな。葬るなら元の時代で……って言うのもありだな。
じゃぁ……休む事にする……な。
現時刻より、レウルーラ加速開始。V−23辺りで……起こしてくれ。」
〔了解しました。……お休みなさい。〕
「あぁ……おやすみ……。」
そう言うと、シュウジはノートPCを持ってブリッジに向かい、
着くなり艦長席に倒れ込み、直後、深い眠りについた。
【行動:制御システム製作(−1)艦内移動(−1)レウルーラ加速(−1)睡眠(−1)】
【位置:移動中(ガンイージ、ビギナ・ギナ)】
【行動方針:生き残るために、最大限の努力を】
《いつか追い付く…ね》
俺の呟きを聞いて、あいつもポツリと呟いた。
《まあおめえも人間である以上、確かにいつかは追い付かなけりゃならないよな》
カプセルが去った方向を見つめたまま、俺は僅かに笑みを漏らした。
(何だ、一応心配でもしてくれているのか?)
《…まあ心配と言えば心配かもな。何だかんだ言って、おめえにくっついてると面白いしな。
そんな直ぐに死なれると、正直困るんだよ》
俺の方もこいつの言う事は大体分かっていたから、殆ど表情は変わる事はなかった。
今こいつの言った事ではないが、何だかんだ言って17年間の付き合いなのだ。
それは、俺の人生の中で最も長い……肉親よりも長く一緒にいる事になる。
そう考えると、今更こいつの言う事にいちいち目くじらを立てても、仕方がないように思えた。
(心配するな。…俺も、そう直ぐにくたばるつもりはない。
せっかく俺なりにやってみたい事ができたんだ…。俺を助けてくれたルイとアーネストの為にも、
俺は、俺なりの生を精一杯貫くつもりだ)
ディパックから出した缶詰を開けて、中の肉を口に放り込む。
それを咀嚼して、口内に広がる旨味。
それはまさしく、生きている感触。
…俺にはまだ、生きる希望がある。
生きなければならない理由がある。
『見れる未来がある限り、前を向いて進む』
自分で言ったこの言葉を、自ら反古にするつもりは毛頭ない。
「行くか」
一言言って、俺はガザを発進させた。
…もう、カプセルが消えた方向を振り向く事はなかった。
【行動:缶詰を食べる(−1)A-8に移動(−2)】
【位置:C-8→B-8→A-8】
【行動方針:新しい生を求めて】
A-8ポイント。
ついこの前まで参加者達にとって、この先には見えない壁が立ち塞がっていた。
参加者達がどんなに願ってもどんなに焦がれても、乗り越えられなかった無慈悲な壁。
だが、今の俺の前にその壁はその存在を消失していた。
首輪の解除によって。
機体の爆弾の処理によって。
…そう。
この先にあるのは、プログラムから解放された未知の世界なのだ。
その時を迎えて、俺の心臓の鼓動は僅かにその動きを早めていた。
それは未知への不安か、生への期待か。
…勿論ここから脱出したからといって、即自由というわけではない。
このあとも管理者側は俺を追ってくる可能性は高い。
本当の自由への戦いは、これからと言えるのだ。
しかし、それでもいい。
道半ばで散っていった参加者達に比べて、俺の何と幸福な事か。
この先にあるのが戦いだとしても、再び死線を彷徨う事になるのだとしても、俺はいつも自由を
見つめて戦う事ができる。
外へ向かってフットペダルを踏み込む。
これからの俺の戦いは、全てを乗せた戦いでもある。
ルイ、アーネスト、サーティア、リファニア達の無念の思いを乗せた復讐でもある。
ちっぽけなものかもしれない。
組織からすれば蚊に刺された程度の事かもしれない。
だが、そのちっぽけな一撃一撃が、俺と戦友達の、奴等へのカウンターパンチなのだ。
【行動:空域外へ移動(−4)】
【位置:A-8→外へ】
【行動方針:新しい生を求めて】
あれから、どれくらいの間飛び続けただろう。
あの戦場を脱出してから、どのくらい経っただろう。
時間を知る方法がない俺にとっては、それはとてつもなく長い時間だったように感じるし、うたた寝
の間に見る一瞬の夢のような時間だった気もする。
しかしその不可思議な感覚は、俺の周りに浮かぶ缶詰の量を見ればある程度解決する。
…俺は随分長い事飛んでいるらしい。
新たなる生を求めて脱出してはみたが、よくよく考えてみれば、あの戦場が地球圏のどこに存在し
ていたかなんて分かる筈が無い。
いや、そもそも地球圏なのかどうかさえ定かではない。
様々な時代から色々な物を持ってくる組織の事だ。
俺はもしかしたら、地球圏でも木星圏でもないような、どこか遠くの宇宙にいるのかもしれない。
そんな不安を抱えたまま更に飛び続けていたその時、ガザのレーダーに巨大な影が映った。
それはコロニーだった。
一瞬あの戦場に戻ってきたのではないかという錯覚に陥ったが、流石にそうではないようだった。
小高い丘に降り注ぐ、暖かな光。
俺とガザDはその丘の上の少し開けた場所に立っていた。
近くには小さな森があり、少し離れた所にはこれも小さいが町も存在している。
内部に入り込むのは、フロンティアサイドの時の応用で案外簡単にできた。
辺境のコロニーらしく、警備らしきものが少なかったのも幸いした。
今目の前には、森から持ってきた木で簡単に作った墓がある。
「ルイ、いい日差しだろう。…本当なら、この日差しを2人生きて受けたかったがな…」
涼やかな風が丘を吹き抜け、プログラム中に伸びた俺の髪と、墓の前に植えた花を揺らす。
そして墓の中には、ルイの名前を書いた紙と、あそこから持ってきた首輪が埋まっている。
「ルイ…分かるか?その首輪が…。お前が望んでいた皆の協力の結晶が、それだ。
お前とアーネストのおかげで俺は生き延び…ここまで来る事ができたんだ」
ルイの前では涙は見せない。
少なくとも彼女の周りは、笑顔で包んでやりたい。
俺の生きる理由の1つが、ここにはっきりとある。
「この陰惨なプログラムに、もしも勝利者がいるとするなら……それはルイ、お前だ。
これからも…ここでずっと笑っていてくれ」
【行動:その後(-4)】
『Pi──、 Pi──、Pi──』
「……?」
艦橋内に響く、アラームの音。
その音に反応して、シュウジは目を覚ました。
「……。」
〔マスター。目的地、V−23近郊に着きました。〕
「そうか……、少し待ってくれ。まだ頭が覚醒してない……。」
そう言うとシュウジはヘルメットを外し、二・三回頭を振ったりした。
そしてヘルメットをまた被り直す。
「……何か異常は?」
〔今のところはありません。〕
「そうか……援護艦隊からの連絡で迎撃に出てくるかとも思ったんだがな……。
戦力を分散させず……防御を固めるつもりか……。」
ゼファーと会話しながら、シュウジはノートPCを艦橋のコンピューターに繋いでいった。
そして、繋ぎ終わるとノートPCに入れられたレウルーラ制御ソフトを起動させる。
機動を確認してからまずしたことは、レウルーラ艦橋からアビゴルへの通信回線を繋ぐことだった。
接続された事を確認すると、シュウジはリナルドに言った。
「リナルド、ゲート近郊まで着いたぞ。戦闘準備だ。
……って、寝てるのか……起きろ!ゲートに着いたぞ!」
そうリナルドに話しつつも、ノートPCを叩く手を休めないシュウジ。
そのノートPCの画面には、火器管制システムが起動したという事と、
ダミーバルーンが展開されたという情報が表示されていた。
〔ダミーが……役に立つでしょうか?〕
「正直思えないな……だが、無いよりマシだ。盾にぐらいはなる。
……ところでこの情報、どう思う……?」
〔?〕
シュウジからゼファーに送られたファイルには、レウルーラのフィールドの管理システムのログにあった、
"何者かがA−8からフィールド外に出た"という情報があった。
〔十中八九、レイモンドさんかと思われますが……。〕
「……やっぱりそうか……。
結局、この戦力で行くしかないようだな……。
……ゼファー、メガライダーは使えそうか?」
〔一応可能ですが……過信は出来ません。〕
「OK。無いよりマシだ……。
……リナルド。起きたか?
作戦についてだが、細かい事に関しては相談している暇はない。
とりあえずおおざっぱに言えば、"無限旋律"起動後の混乱に乗じてゲートに直接乗り込み、
ゲートを開いてそれをくぐる。それだけだ。後は状況に合わせて臨機応変に対応する。
本当は綿密に計画を立てたいところだが、敵の情報が全く無い以上それは意味がない。
異論があれば10分以内に返答しろ。」
一気にリナルドにそう告げると、シュウジは次にレウルーラの火器類の情報を呼び出した。
とりあえず、火器類の損傷は右上部主砲のみのようで、他の火器類は殆ど無傷で残っていた。
「……ミサイルも殆ど手付かずか……よし。」
予想以上に戦力として機能しそうなレウルーラに思わず笑みをこぼすと、
またすぐに表情を引き締め、行く手に有るであろう、ゲートの方を見た。
まだその姿は全く見えないが、確かにその方向にゲートはあるのだ。
(……あそこがゴールとなるか……ならないか……、
どっちにしてもこれで終わりだ……だからこそ、全力を尽くす!)
【行動:レウルーラ制御システム起動(−1)アビゴルに通信接続(−1)
ダミーバルーン展開(−1) 火器類把握(−1)】
【武装:ガンイージ:なし
ビギナ・ギナ:ショットランサー(二連マシンガン残弾:3) ビームライフル(残弾7)
ビームサーベル×2 フック付きワイヤー&ウィンチ ヒートナイフ×1
レウルーラ:連装メガ粒子主砲×4、連装メガ粒子副砲×2、3連装対空機関砲×20 ミサイル発射管】
【位置:V−23】
【行動方針:生き残るために、最大限の努力を】
200ゲトc
“ずきん”
「うぅ……う……ん?」
鈍い痛みが、リナルドの思考を覚醒させた。
耳にはシュウジの声が響いている。
水を飲んで顔を拭くと、リナルドは現在位置を確認する。
V-23に達したということは、随分と休んでいたことになってしまう。
『OK。無いよりマシだ……。
……リナルド。起きたか?
作戦についてだが、細かい事に関しては相談している暇はない。
…………』
「ああ、大丈夫だ。
アビゴルはカタパルトデッキに上げておく。
敵をできるだけこちらに引き付けるようにはするが、数で来られたらひとたまりもない。
群がられたらアウトだ、気をつけろよ。
……もう一息だからな。 ここまで来て死ぬなんて冗談じゃない」
(また、痛むようになってきた。
持たせろ、とはよく言われたが、無理なものは無理なんだよなあ……。
ま、やれるだけやってみますかね)
アビゴルはゆっくりと歩いてカタパルトデッキへと立った。
眼前には漆黒の宇宙が広がっている。
リナルドは『盾』が入っていたディスクをフォーマットし、別のデータを書き込むと、
ラベルに何やら書き込んでデイパックに放り込み、口を閉めた。
あとは、ゆくのみ。
【行動:通信(-1)、デッキへ(-1)、出撃準備(-1)】
【位置:V-23(レウルーラ・格納庫)】
【機体状況:MS形態・両肩、背面損傷・『盾』・通信回線→レウルーラ】
【武装:(MS)ビームカタールx2、右腕ビームカッター、ビームキャノン、デュアルビームガン
ビームシールド】
【行動方針:生きる。 最期の時まで、生き延びる】
>>201 「OK。短期決戦、だな。」
〔マスター。レーダーの反応を見てくれませんか?少し様子がおかしいです。〕
「……?」
リナルドに返事を返したのとほぼ同時に、V-24に入った。
そしてゼファーからの通信。それを受け、レーダーを確認してみた。
「……なんだこれは……。」
レーダーを見てみると、マップで言うV-27に当たる部分が通常ではあり得ないような反応を示していた。
「重力場異常……電磁波異常……熱反応もデタラメ……まさか……。」
レウルーラのカメラを最大望遠にして、メインスクリーンにゲートの様子を映し出させるシュウジ。
すると、そこには思っていたより巨大なゲートと、空間に半ば無理矢理開けられた"穴"があった。
「リナルド、ゼファー……作戦を変更する。
ゲートは既に開かれている。よって、管制室を制圧するという行程を省略する。
リナルドは出撃後、真っ直ぐゲートに向かえ。
俺は……ミサイルに遅延弾頭があったはずだから、
それをゲートに向けて仕掛けてからゲートをくぐる。
あんなゲートが複数あったりしたら意味はあまり無いが……やっておいて損はない。」
〔しかしマスター。それではマスターが一番危険では……。〕
「大丈夫大丈夫。いざとなったらガンイージで脱出するさ。」
……とはシュウジは言った物の、艦橋から格納庫までの距離はかなりある。
レウルーラから脱出しなければならない状況に追い込まれた時には、
すでに乗り込むのはまず無理になっているだろう。
そしてシュウジは、その事をよく理解していた。
「……よし、
現時刻より作戦を開始する。
作戦目標は、生き残る事。これは絶対だ。
レウルーラ全速前進開始。
各MSはレウルーラの主砲が射程内に入ってから出撃しろ。
なお、戦闘開始と同時に無限旋律を起動させる。
よし……突撃!
往くぞ!」
叫ぶとともに、レウルーラのメインノズルを点火させる。
瞬く間に加速するレウルーラ。
モニター越しのゲートが近づき、その異常な大きさがみるみる現実味をおびてくる。
……そして、大量の艦船類やMS。
(……戦力差は絶望的……だが、こちらにはこれがある!)
V-27に差し掛かった辺りで、ノートPCを操作し、レウルーラの全体通信を起動させた。
「……Unlimite Melody起動準備!」
……切り札を引くべき時は来た。
【行動:通信継続(−0)V-27へ移動(−2)全体通信接続(−2)】
【武装:ガンイージ:なし
ビギナ・ギナ:ショットランサー(二連マシンガン残弾:3) ビームライフル(残弾7)
ビームサーベル×2 フック付きワイヤー&ウィンチ ヒートナイフ×1
レウルーラ:連装メガ粒子主砲×4、連装メガ粒子副砲×2、3連装対空機関砲×20 ミサイル発射管】
【位置:V−27】
【行動方針:生き残るために、最大限の努力を】
機体をデュアルタイプに変形させて出撃の時を待つリナルドに、
シュウジから作戦変更の通信が入った。
「わかった。 先に行って、ゲート周辺の敵をできるだけ片付ける」
(例えシャアとアムロ大尉が組んだって、あの数には辟易するよな……)
ゲートへの行く手を塞ぐ膨大なMS群と戦艦を見れば、誰だって溜め息が漏れるだろう。
ましてやこちらは充分な戦力が整っているわけでもない。
となれば、シュウジの切り札がその効力を失う前に出来る限り“ゲート”に接近するしかない。
目を細めるリナルドの眼前に、彼女の姿が浮かぶ。
「あぁ……お望み通り、生き延びてやるさ。
だから……見ててくれよ。 こんなところで終わりはしない。
よし。
……アビゴル、いきますッ!」
レウルーラの主砲が敵群先端を射程内に収めた合図と同時に、アビゴルはレウルーラから飛び立った。
ただ一時の終わりを迎えるために。
儚い願いを叶えるために。
ダークシアンの死神は、最後の戦いへと鋼鉄の身を投じる。
【行動:変形(-1)、出撃(-1)】
【位置:V-27(ゲート前)】
【機体状況:MA形態・両肩、背面損傷・『盾』・通信回線→レウルーラ】
【武装:(MS)ビームカタールx2、右腕ビームカッター、ビームキャノン、デュアルビームガン
ビームシールド】
【行動方針:生きる。 最期の時まで、生き延びる】
〔全体通信によるUnlimite Melodyへの接続完了。全システム起動。〕
「奴らへの通信経路はレウルーラから確保する。
レウルーラのシステムにはノートPCの防壁を噛ませるぞ。」
〔了解。コロニー管制室全コンピューター起動。
送信ファイル構築。データ送信・楽曲演奏準備完了。〕
「システム解放。"無限旋律"演奏開始。」
〔システムを解放します。〕
ついに起動されるシュウジの切り札。
それが用意されたのは、かなり前の事に遡る。用意された場所はS-17コロニー管制室。
仕掛けは、こうだ。
全体通信接続と同時に、ある種の電波をフィールド全体に送信。(この電波は普通は使われていないもの)
その電波を受け、S-17コロニー管制室コンピュータが一斉に起動、
そして、全体通信網に乗せて全参加者、管制官問わず
アクセスしたコンピュータ全てに無差別に膨大な量を誇るコロニー管制用のデータを無限に送り続けると言うものだ。
その結果、データ量が半端ではないため、送られた側はコンピュータの動作が著しく制限され、
さらに大音量の音楽をこれもまた無限に流し続けるため、直接人間の声で情報を伝達させる事も難しくなるのだ
勿論、全体通信網・アクセス対象に防壁が備えられていたときに備えて、攻撃用プログラムは幾つか備えており、
攻撃プログラムに合わせた専用防壁をインストールさせておけば無限旋律の影響を受ける事はない。
ちなみに、同盟が出来た時点で全員に渡した"盾"というのが、この専用防壁だ。
発動したかどうかは、専用防壁が効果を完全に無くしてしまうため、シュウジ達からは解らない。
なので、発動してからもレウルーラ艦内は静寂に包まれていた。
「……ちなみに楽曲は何にしたんだ?」
〔コロニー内のネットサーバーにあったものなのですが……。
ファイル名が"第九第四楽章"となってました。〕
「"ベートーヴェン交響曲第九番 第四楽章"……かな。
……選曲ミスじゃないか?」
〔……何故ですか?〕
「この曲は……喜びの歌とも言われてる。
喜びって言うには……この状況は。」
〔しかし……第四楽章となっていましたし。
"最後"にはふさわしい楽曲だと思いましたので。〕
「……ま、いいか。」
>>203 リナルドから、出撃を告げる通信が入り、アビゴルが出撃していく。
それに応じ、ゼファーのビギナギナも発進体制に入った。
〔ビギナギナ、出撃します。〕
「あぁ、全開で行けよ。これが最後なんだからな。」
〔了解。往きます!〕
レウルーラから出撃するビギナ・ギナ。
ショットランサーを持ち、メガライダーに跨ったその姿は、騎士のようにも見えた。
「……さて、こちらも……始めるか!」
そう言うとともに、まず援護射撃として敵艦隊の先端部へと、全火器の一点集中砲火を浴びせかけた。
【行動:通信継続(−0)レウルーラからゲート艦隊へ通信接続(−1)Unlimite Melody起動(−1)
ビギナ・ギナ出撃(−1)集中砲火(−1)】
【武装:ガンイージ:なし
ビギナ・ギナ:ショットランサー(二連マシンガン残弾:3) ビームライフル(残弾7)
ビームサーベル×2 フック付きワイヤー&ウィンチ ヒートナイフ×1 メガライダー
レウルーラ:連装メガ粒子主砲×4、連装メガ粒子副砲×2、3連装対空機関砲×20 ミサイル発射管】
【位置:V−27】
【行動方針:生き残るために、最大限の努力を】
レウルーラからの凄まじい火線が目の前の敵に降り注いでいく。
アビゴルも頭頂部のビーム・キャノンを撃ち込みつつ接近し、変形して数機を斬り捨てる。
敵機の反応は鈍く、反撃にも余裕を持って対処できた。
(よしよし、切り札はちゃんと効いてるみたいだな)
ゲートを正面に捉えると、そのまま進行上の敵機を手当たり次第に攻撃しながら
アビゴルは奥へと突き進んでいく。
まだまだ距離がある上、奥に進むにつれて敵機からの反撃も激しくなっていく。
シュウジの切り札が敵の動きを抑えているとは言え、動かなくなるわけではないのだ。
数条のビームがアビゴルを掠めていく。
リナルドは小さな感覚を全開にして、ビーム・シールドと細かい軸振りで受け流す。
ミサイルはデュアル・ビーム・ガンで撃ち抜き、シールドを立てて爆風もお構い無しに突っ込んでいく。
下手に大きく避けようものなら、ゲートに辿り着くのが遅れてしまう。
「そう簡単に墜とされはしない……墜とされてやるものか!」
今ひとたび、彼は鬼神に戻る。
核の爆炎を纏って死神は進む。
【行動:攻撃(-1)、変形(-1)、戦闘(-2)】
【位置:V-27(ゲート前)】
【機体状況:MS形態・両肩、背面損傷・『盾』・通信回線→レウルーラ】
【武装:(MS)ビームカタールx2、右腕ビームカッター、ビームキャノン、デュアルビームガン
ビームシールド】
【行動方針:生きる。 最期の時まで、生き延びる】
「くそ、煩い音楽だ……通信もままならねぇ」
通信のボリューム自体を下げながら、一人の兵士が舌打ちする。
「機体の動きも悪い。コンピューターが悲鳴上げてやがる」
文句を言いながらも、ライフルを構え、撃ち放つ。
照準関係のシステムも圧迫されているらしく、メガ粒子の奔流は数秒前に敵のいた空間を虚しく貫く。
「補正が大変だな、こりゃ……。さっさと誰かコレ潰してくれないかね」
ぼやきつつも、彼は先ほどの誤差を計算しつつ、再びライフルを放った。
多少の差はあれ、多くの兵士がこの混乱に対応しつつあった。
機体の動きは明らかに鈍っている。簡単に当てられる射撃が当てられず、簡単に避けられる攻撃が避け切れない。
連携も、通信が邪魔されているせいか非常に悪くなっている。
それでも――個々の兵士には、精神的なパニックはほとんどない。
それは、自分たちの戦力を信じているから、というのが1つ。
そして、この攻撃自体は予想外とはいえ、相手に天才プログラマーがいると知っていたのが1つ。
彼らは「自分たちの側の専門家」たちがいずれ対処法を見つけると信じ、操縦もままならぬ機体で耐えていた。
時間を稼ぎさえすれば、自分たちの勝ちなのだ。
管理側の管制室の1つでは、プログラムの専門家たちがすぐに対応を始めていた。
スピーカーの電源を引きぬいた後、さっそく彼らはモニターの前に座る。
彼らとて一流の専門家で、しかも攻撃自体は予測していたのだ。反応は早い。
「シュウジが来るなら、システムへの侵入・支配を試みると思ったんだがな。当てが外れた」
「こいつはまた、直球勝負で来たもんだ。データ大量送付による処理能力パンク作戦か」
「しかし手が込んでますよ。基本は全体通信網ですが、一旦侵入するとあらゆる所に抜け道作るようです」
「ソフト的な対処には時間がかかるな。なにより、出撃中のMSには手が打てない」
「回転数……今月の天気予定……電力配分計画……これは、コロニーの管理データか」
「S-17か。ならば、簡単に対応が……」
「しかし、この音楽の中。誰にどう指示を出しますか? 喋っても聞こえにくいですが……?」
「なに、そんなもの――生徒の連中も使っていた『と思われる』方法を使えばいいだけさ」
防衛MS隊の一人、通称『ハチドリ』。
レウルーラへの攻撃に参加しようとした矢先に、ノイズ交じりの画面の中、管制室からの通信を受け取った。
「こんな音量の中で聞こえるかよ、って……」
管制室側の無能さをぼやきかけた『ハチドリ』は、画面を見て自分の言葉を飲み込んだ。
「なるほど、これなら伝わるわなぁ」
モニタに映されたのは、通信兵の顔ではなく……文字の書かれた紙面。
筆談なら、時間はかかるが意思疎通が可能だ。時々画面が乱れるが、読めないこともない。
早速『ハチドリ』は了承の意志を敬礼の動作で示すと、操縦桿を握る。
ベキッ。ベキッ。
MSの腕が動き、ガンダムタイプの特徴であるV字アンテナを自らへし折ってしまう。
さらに機体のあちこちの予備通信機器を、自分の腕で壊していく。
――途端に、機体の動きからぎこちなさが消える。
「情報の侵入路を壊せば、通信全部できなくなる代わりに無効化できるわなぁ」
しかし全てのMSがこれをするわけにはいかない。そのために『ハチドリ』一人に通信が来たのだ。
「そんじゃま、ちょっくらコロニー管制室をブチ壊しにいってくる。
情報発信源潰せば、そりゃ止まるわなぁ。
みんな待ってろよ〜、間に合わないかもしれねーけどよぉ」
ぎこちない動きで迎撃を続ける仲間を壁にして、『ハチドリ』の機体は変形してあさっての方角に飛び出す。
MSZ−006C1[Bst]、Zプラス「ハミングバード」。
生徒への支給も検討されていた、推力と火力を強化した可変MS。
こういう任務には、まさにうってつけの暴れ馬である。
『ハチドリ』の到着が早いか、反逆者たちの突破が早いか。スピード勝負である。
【管理側の行動方針:抗戦。S-17コロニー管制室の破壊による『無限旋律』無効化】
【『ハチドリ』の行動:通信受信(0p)、通信機器自己破壊(−1p)、MA形態に変形(−1p)、
離脱(V-27の戦闘空域から)(−1p)】
(注:ハミングバードの移動力は、通常の可変MSと同じとします)
ビギナ・ギナとアビゴルを携え、敵艦隊の真っ只中を突き抜けていくレウルーラ。
敵機を見つけ次第主砲やミサイルで墜とし、時には巨体を活かして"轢いて"いく。
だがその損傷は、無傷というわけにはいかない。
ダミーは全滅し、対空機銃は幾つか損傷し、姿勢制御用ノズルは破損し、装甲版が剥離していく。
が、現在の所重要区画には大した損傷はなかった。
ゼファーも、確実にMSを墜としていく。
「……此処までは快調。無限旋律も完全に動作しているようだな。」
〔しかし……そろそろ解決法が見つかり始める頃ではありませんか?〕
「そうだな……防壁とかも……組まれ始めているころかな。
……ん?」
〔どうしました?〕
戦闘当初に合計五本のビームと三本のミサイルを喰らって撃沈した
ザムス・ジェス級の残骸を通り過ぎようとしたその時、シュウジがレーダーの異常に気が付いた。
「……一体……艦隊を離脱する機体がいるな……結構速い。
方向は……上?」
〔どういう事でしょうか……?〕
「……そうか!S-17だ!」
〔……!〕
「あいつら……もっともシンプルな方法を取る気か……。
クソ……もう少し攪乱プログラムの方に力入れておくべきだったな……。
……ゼファー。今お前のメインシステム、あそこにあるんだろう?」
〔……?はい。そうですが。〕
「だったら急がないとな……。奴らあそこを物理的に破壊するつもりかもしれん。」
〔私のシステムでしたら……大丈夫ですよ。
いざとなればコロニー内のネットサーバーに逃げる準備は出来ています。〕
「だが……無限旋律は機能停止するだろうな……。」
〔一応、隔壁を閉じておきます。時間稼ぎにはなるでしょうから。〕
「頼む。……あぁ、追跡はしなくてもいい。
追ってたらゲートを潜るのに間に合わなくなるだろうからな。」
〔了解しました。しかしこの機体で通る必要性は……。〕
「闘いは此処で終わると決まった訳じゃない……一応、保険だ。
さて……時間勝負か……戦力でも圧倒的に不利だってのに……。」
歯噛みするシュウジ。レウルーラは、現在の所防衛艦隊第一陣を突破し、
第二陣に差し掛かろうとしていた。残る防衛網は、これを含めて後二つ。
「……そろそろ……本格的に来る頃か……。」
【行動:メガ粒子主砲で攻撃(−1)ミサイルで攻撃(−1)
ビームライフルで攻撃(−1)ST-17コロニー隔壁閉鎖(−1)】
【武装:ガンイージ:なし
ビギナ・ギナ:ショットランサー(二連マシンガン残弾:3) ビームライフル(残弾6)
ビームサーベル×2 フック付きワイヤー&ウィンチ ヒートナイフ×1 メガライダー
レウルーラ:連装メガ粒子主砲×4、連装メガ粒子副砲×2、3連装対空機関砲×16 ミサイル発射管】
【位置:V−27】
【行動方針:生き残るために、最大限の努力を】
『ハチドリ』は飛ぶ。
圧倒的な加速で、巨大な小惑星の向こうに隠れた廃コロニーを目指す。
「さて、それにしても……コロニーのどこをどう壊せばいいのかねぇ。
管制室、ってこたぁ港湾部か?
飛び出す前に、も少し詳しい情報聞いとくんだった。
ま、実際に着いてみりゃ、判るわなぁ。いざとなりゃ手当たり次第壊せばいい」
T-24から『戦闘エリア』に突入する。
岩塊に隠して設置されていたセンサーが、外部からのMAの侵入を察知。
『ゲート』と『管制艦レウルーラ』にその事実を告げる。
だが『ハチドリ』は一切構わず飛びつづける。
小惑星基地の突端を掠めるように、ハミングバードは緩やかなカーブを描く。
問題のコロニーまで、あとは一直線だ。
【管理側の行動方針:抗戦。S-17コロニー管制室の破壊による『無限旋律』無効化】
【『ハチドリ』の行動:移動(V-27→T-24→S-22)(MA移動ボーナスあり)(−4p)】
【『ハチドリ』の位置:S-22】
狂ったような機動で攻撃・回避・前進を続けるアビゴルのレーダーが、
戦列を離れて動く一機の機影を捉えた。
「! 逃げる?
あの方向はコロニーが……」
しかし、リナルドはすぐに意識を戦闘に戻す。
いくら敵機の動きが鈍っているといっても、四方八方から集中砲火を浴びているのだから、
集中しないわけにはいかない。
(構ってはいられない、か……。
俺たちには時間が無いんだ)
直撃を受けて片足でも失くそうものなら、変形した時にまともに動くことができなくなる。
片腕でも失くそうものなら、その分 敵機に対応することができなくなる。
故に、被弾は全力で避けていかねばならない。
〔右! 止まって!〕
「ッ……うわッ!」
リナルドが不意に聴こえた声に反応して機体を急停止させると、
右側から放たれたビームが胸部装甲を掠めた。
ビーム・ライフルを撃った敵機をビーム・ガンで撃破すると、アビゴルはすぐに前進する。
(……ちぇ。
俺は一体何人に見られてるんだ?)
呆れ半分と安堵半分の溜め息を残して、アビゴルは進んでいく。
【行動:攻撃・回避・防御・前進(-4)】
【位置:V-27(ゲート前)】
【機体状況:MS形態・両肩、背面損傷・『盾』・通信回線→レウルーラ】
【武装:(MS)ビームカタールx2、右腕ビームカッター、ビームキャノン、デュアルビームガン
ビームシールド】
【行動方針:生きる。 最期の時まで、生き延びる】
「まだシステムは回復しないのか!?」
『もう少し掛かります!本部から対処がなされたようですが……。
……目視で"ハチドリ"の発進を確認!コロニーに向かうようです!』
「なるほどな……。発信元はコロニーか……。
後少しだ!後少し、持ちこたえろ!!」
第二陣の先頭集団に位置するザムス・ギリ級戦艦の艦長は、
上手く機能しないコンピューターと、
プラグを抜いたために使用不可になっている通信機に苦戦する部下達を叱咤激励した。
時間が総てを握っている。時間さえ稼げば勝利する事が出来る。
そう兵士達は信じているが、いざ第一陣が突破されたと知ると、動揺せずにはいられなかった。
現に先程出撃させたMS部隊は、ビギナ・ギナにすでに三機が落とされていた。
「後少しだ……後少し……。
……主砲は!主砲はまだ使えないのか!?」
『一応撃つ事は出来ますが、照準がまるでつけられません!』
「目くらましになればいい!全門開け!目標、前方!味方に当てるなよ!」
『了解!
……待ってください!熱源接近、ビギナ・ギナです!
これは……メガライダーに高熱源発生!メガバズーカランチャーです!』
「回避!回避だ!」
『間に合いません!』
「……!」
次の瞬間、艦長以下数十名はザムス・ギリの艦橋ごと消滅した。
* * *
〔マスター!橋頭堡確保、行けます!〕
「待ってくれ……ノズルが一つやられて推力が出ないんだ!」
シュウジがそう叫んだ瞬間、レウルーラを衝撃が襲った。
外を見ると、右舷艦首が爆ぜるのが見えた。
「……糞っ!主砲も一つ潰された!ミサイル管もか……!」
〔急いでください!敵機はマップ内に侵入しました!〕
「解って…………!」
そう言いかけたシュウジの声が止まる。
なぜなら、レウルーラの艦橋の目の前に今まさに
ショットランサーを突き立てんとする半壊したエビル・Sがいたからだ。
「なっ……。」
〔マスター!!〕
【行動:撃破×3(−3)メガバズーカランチャーで攻撃(−1)】
【武装:ガンイージ:なし
ビギナ・ギナ:ショットランサー(二連マシンガン残弾:2) ビームライフル(残弾4)
ビームサーベル×2 フック付きワイヤー&ウィンチ ヒートナイフ×1 メガライダー
レウルーラ:連装メガ粒子主砲×3、連装メガ粒子副砲×2、
3連装対空機関砲×16 ミサイル発射管(残り半数)】
【位置:V−27】
【行動方針:生き残るために、最大限の努力を】
ハミングバードは、一直線に飛ぶ。
とんでもない推力のブースターを4機もつけたアンバランスな怪物。
すぐに問題のコロニーが見えてくる。
コロニー目前で、MAの形が解体される。
畳まれた手足を伸ばし、人型から崩れた出来損ないのMSのような姿へ。
脚の代わりにブースターを装備した、宇宙専用MS――
AMBACを活かして体を捻ると、進行方向に『両足』を向け、急制動をかける。
凄まじいGがかかるが、『ハチドリ』は意にも介さない。
ハミングバードは、滑るようにしてコロニーの傍に停止する。
「とうちゃ〜く。
さて、どっから潜り込んだものかな。
……さすがに、あいつらも扉くらい閉めてるわなぁ」
壊れたコロニーの港湾部前。
閉ざされた入り口を前に、『ハチドリ』は腕を組んで考える。
【管理側の行動方針:抗戦。S-17コロニー管制室の破壊による『無限旋律』無効化】
【『ハチドリ』の行動:移動(S-22→S-18)(MA移動ボーナスあり)(−2p)
MS形態に変形(−1p)移動(S-18→S-17)(−1p)】
【『ハチドリ』の位置:S-17(コロニー外)】
両肩のブースター部にそれぞれ2門。
手にも物干し竿のようなビームライフル。
いささかメガ粒子砲に偏ってはいるものの、火力は絶大。
集中放火を浴び、隔壁がまた一枚、溶けて破れる。
「軍事施設じゃなく、民間コロニーの隔壁なら……
隕石衝突は計算してても、ビーム攻撃は計算外だわなぁ」
うそぶきながら、機体を捻るようにして狭い穴から侵入する『ハチドリ』。
穴をマニピュレーターで押し広げながら無理やり入っていく。その眼前にはもう一枚。
港湾部での船舶事故や、隕石飛来事故に備えて用意された隔壁。
『ハチドリ』の言葉とうらはらにかなり頑丈だし、一枚ではない。
さしものハミングバードの火力でも、破るには時間がかかる。
しかし、それらを破ってしまえば……
「破っちまえば、コロニーの構造なんてどこもそう変わりないわなぁ」
探すのに手間取る理由もなく、軍事施設でもないから装甲に護られているわけでもない。
ハミングバードは低重力の港湾部を漂い、ついに問題の場所へと到達した。
砲門を、壁越しに管制室に向ける。
【管理側の行動方針:抗戦。S-17コロニー管制室の破壊による『無限旋律』無効化】
【『ハチドリ』の行動:コロニー隔壁破壊(−2p)移動(S-17コロニー内部へ)(−1p)
探索・発見(−1p)】
【『ハチドリ』の位置:S-17(コロニー内港湾部)】
(……遅い。
このままでは……)
レウルーラの足に合わせて進むアビゴル。
リナルドは被弾によって推力が不充分なレウルーラをかばうようにして戦っていた。
アビゴル単体でなら変形して一気に突っ切ることもできなくはない。
だが、ここまで来て見捨てることなどできないし、したくもない。
(そんな生き残り方して、これ以上後悔を増やしてたまるものか)
徐々に動きを取り戻してきた敵機を楯にするように動きながら、
レウルーラに近い敵機を墜としていく。
しかし、いつまでもそうしているわけにはいかない。
近く、必ず限界が来る。
「シュウジ、ここまま……じゃ!?」
レウルーラを視界に入れたリナルドの目に、それは映った。
半壊した機体がブリッジ付近を漂っているようにも見えるが、
確かにショット・ランサーを構えている。
「くっ……、間に合え……!」
ビーム・シールドを構え、アビゴルは爆発的な加速で体当たりを試みる。
間に合わなければ、その時は……つまり、そうなるのだろう。
【行動:戦闘(-3)、突進(-1)】
【位置:V-27(ゲート前)】
【機体状況:MS形態・両肩、背面損傷・『盾』・通信回線→レウルーラ】
【武装:(MS)ビームカタールx2、右腕ビームカッター、ビームキャノン、デュアルビームガン
ビームシールド】
【行動方針:生きる。 最期の時まで、生き延びる】
「なっ……。」
〔マスター!〕
迫り来るショットランサー。
それを避けようと、レウルーラの姿勢制御ノズルを
全開で噴かせて回避しようとするシュウジ。
(……間に合わない!?)
ショットランサーがブリッジに突き刺さるか突き刺さらないかというその瞬間、
エビルSに、アビゴルが突っ込んできた。
「リナルド!?」
吹き飛ばされるエビルS。ショットランサーも接合部が破損し、どこかへと飛ばされていく。
だが、エビルSの武器は、それで終わりではなかった。
左腕に内臓された腕部ショットクローとヘビーマシンガン。
まだ、この二つの機能は生きていたのだ。
「!」
ブリッジに向けられる左腕。とっさにシュウジも反応し、姿勢制御ノズルを噴かせようとしたが、
それも間に合わず、ブリッジにショットクローが突き刺さった。
さらに、エビルSはマシンガンを撃とうとする。
〔マスター!!〕
急反転し、レウルーラの救援に向かおうとするゼファー。
が、周囲の敵機がそれを許すわけもなく、取り囲み始める。さらに……。
(コロニー内に侵入者!?さっきの離脱した機体……。
…。
……。
………。
今は……。)
〔退け!〕
警告を無視し、集中砲火をかいくぐり、レウルーラに向かうゼファー。
いくつものビームがメガライダーを掠めていく。
損傷が限界に至り、爆発しそうになったその瞬間、ゼファーはメガライダーを捨てた。
主を失い、火を噴きながら慣性で進んでいくメガライダー。
そして、狙ってか狙わずか、その先にいたMSを巻き込んで爆発した。
〔─────!!!〕
破壊されたビームライフルを捨て、
進路を塞いでいたMSを持ち替えたマシンガンで撃ち抜き、さらに突き進むゼファー。
途中、右足と残っていたフィンノズルを数個を撃ち抜かれるが、意に介さない。
〔倒れろ!〕
"叫び"ながら、ショットランサーをエビルSに繰り出すゼファー。
その一撃は繰り出したビギナギナ自身の左腕を破壊する程の衝撃で、
エビルSはその衝撃でバラバラになり、しばらく吹き飛ばされた後、爆発した。
〔マスター!無事ですか!?〕
「……よぉ。」
通信機に聞こえてくる弱々しい声。何とか、シュウジは生きていた。
とっさに身をよじったのが幸いしたのか、ショットクローはシュウジの足下を貫くにとどまっていた。
〔良かった……。〕
「……マジで……死ぬかと思った……。」
〔……良かった……。〕
シュウジが生きていた事に"安堵"するゼファー。
もう管制室からシステムを移し替えるのは間に合わないだろう。
だが、ゼファーは今は"安堵"していた。
【行動:回避行動(−1)メガライダー放棄(−1)
マシンガンで攻撃(−1)ショットクローで攻撃(−1)】
【武装:ガンイージ:なし
ビギナ・ギナ:ショットランサー(二連マシンガン残弾:1)ビームサーベル×2
フック付きワイヤー&ウィンチ ヒートナイフ×1
レウルーラ:連装メガ粒子主砲×3、連装メガ粒子副砲×2、
3連装対空機関砲×16 ミサイル発射管(残り半数)】
【機体状況:ビギナ・ギナ:両腕大破 右足大破自爆装置無効化済 コックピット損傷 左肩装甲融解
フィン・ノズル8個損傷、表面装甲損傷軽微 左足首に負荷 】
【位置:V−27】
【行動方針:生き残るために、最大限の努力を】
ハミングバードのメガ粒子砲が、火を噴く。
火を噴く。火を噴く。火を噴く。火を噴く。
対MS用には過剰過ぎるその火力は、恐らく対艦対要塞戦を想定して用意されたもの。
とてもではないが、民生用のコロニーの壁が耐えられるものではない。
港湾部を視認しながら管理する管制室が打ち抜かれ、その奥にあるコンピューター室が打ち抜かれ、その周辺の施設も蜂の巣になる。
最も単純で乱暴で野蛮な方法で、コンピューターのデータが消えていく。
最も単純で乱暴で野蛮な方法で、コンピューターの接続が断ち切られる。
最も単純で乱暴で野蛮な方法で、コンピューターのハッキングが打ち破られる。
管制室の音楽データバンクも打ち抜かれ、喜びの歌が、唐突に断ち切られる。
「さて、しかし……コロニーの管制室ってなぁ、あと一つ予備があるんだわなぁ」
徹底的な破壊をし終えた『ハチドリ』は、ひとりごちる。
一般的に、円筒形のコロニーの両端には、港湾部がそれぞれ一つずつ。管制室も一つずつ。
互いにリンクしてバックアップしあうのが普通である。
『ハチドリ』は最後にトドメとばかりにビームを2,3発打ち込むと、コロニー内部に向かって飛び去った。
最後に打ち抜かれた船舶の推進剤補給パイプから火が出て、無人の港湾部が爆風と炎に包まれる。
* * *
シュウジ・アサギの『無限旋律』の効果の一つ、耳をつんざく『喜びの歌』が消えた戦場では……
かえって、混乱が増大していた。
「SOS! SOS! こちら○○級戦艦3番艦第二艦橋! 本艦航行不能、救助を求む!」
「おい、どうすりゃいいんだよ……って通信繋がった!? 第9MS小隊、応答せよ!」
「こちら『ゲート』司令部、各自持ち場を守れ、繰り返す、こちら『ゲート』司令部……」
「隊長〜、どこですか、隊長〜」
……要するに、それまで掻き消されていた通信が、一気に戦場に溢れ出してしまったのだ。
さらに、一部の艦船やMSは、通信復活に気付かずなおも通信断絶のまま。
これならむしろ、全員が等しく耳を塞がれていた先程までの方がよほど上手く行っていた。
しかも、機体やコンピューターの不調は、なおも完全には回復していない。
刹那、防衛隊全体の連携が激しく乱れる。
【管理側の行動方針:抗戦。S-17コロニー管制室の破壊による『無限旋律』無効化】
【『ハチドリ』の行動:S-17コロニー管制室の破壊(−3p)
移動(S-17→T-17)(コロニー内移動)(−1p)】
【『ハチドリ』の位置:S-17(コロニー内港湾部)】
体当たりでショット・ランサーを吹き飛ばすことはできたが、
半壊のエビル・Sを止めることができたわけではなかった。
敵はまだ左腕をブリッジに向けている。
(内蔵か!? まずい……!)
アビゴルは周囲のMSに片っ端からビーム・ガンとビーム・カッターを
撃ち込みつつ、反動でエビル・Sへ向き直る。
続いてエビル・Sの向こう側で大爆発が起こる。
(間に合……わ、ない?)
だが、ブリッジは爆発しなかった。
ビギナ・ギナがすんでのところでエビル・Sを撃破したようだ。
「シュウジ、生きてるか!?
返事をしろ! ……!?」
リナルドが叫ぶと同時に、敵群の動きに変化が生まれた。
だが、それは整然としたものではなく、むしろ乱れている。
「シュウジ、何だかわからないけど、チャンスだ。
そのまま行くにしても、格納庫の機体に移るにしても……
今のうちに突っ切らないと、もう長くは持たないぞ!」
【行動:戦闘(-2)、通信継続(0)】
【位置:V-27(ゲート前)】
【機体状況:MS形態・両肩、背面損傷・『盾』・通信回線→レウルーラ】
【武装:(MS)ビームカタールx2、右腕ビームカッター、ビームキャノン、デュアルビームガン
ビームシールド】
【行動方針:生きる。 最期の時まで、生き延びる】
「あーもう……滅茶苦茶だ……。ゼファー!」
〔はい。〕
「ベルクは……どうすればいいと思う?」
〔それなら……問題有りません。ビギナ・ギナで運びます。
元コックピットの空洞で……どうにかなるでしょう。
もうビギナギナには……戦闘能力はありませんし。〕
「OK。」
ゼファーの言葉を受け、先程空いた穴にベルクの死体を運ぶシュウジ。
そこには既にビギナ・ギナが待機しており、
シュウジはそのコックピット部に空いた穴に衝撃で吹き飛ばされないように一応ベルクを固定した。
「これでいい……かな。よし、往くぞ……って!?」
乗せ終わるとともに、ビギナ・ギナは真っ直ぐゲートの方へ向かっていった。
まさしく自殺行為のようにも見えたが、以外に敵機は撃ってこない。
「ゼファー。どうしたんだ……?レウルーラと一緒に移動させた方が……。」
〔すいません……マスター。
最後まで……ご一緒出来そうにありません。〕
「……?」
〔コロニー内に敵機侵入……もう、データ転送が間に合いません。〕
「……な……に。」
〔外部壁面融解……最期に……これだけは……。〕
「おいゼファー!何がどうなってるんだ!」
〔……今まで……有り難うございました。
いろいろな……経験を……私に
……させ……て……下さっ…
…ておかげ……で……私…
…ハ……他……に得…
…gaた……いモノを
得……る事ガga…
…出来……まし
た……だから
あ……たは
生き……
て……
くだ
…
さ
…
…
…〕
「ゼファー!」
〔SIGNAL LOST〕
「……!!」
無機質な電子音とともに、突如打ち切られた通信。
シュウジは、何度も何度も通信を繋ぎ直そうとした。
だが、表示されるのは"ERROR"の文字。
それは、S-17管制室の消滅。
そしてゼファーの"死"を表していた。
『シュウジ、生きてるか!?
返事をしろ! ……!?』」
『シュウジ、何だかわからないけど、チャンスだ。
そのまま行くにしても、格納庫の機体に移るにしても……
今のうちに突っ切らないと、もう長くは持たないぞ!』
「……了解……。
仲間達の死を……無駄にするわけにはいかないしな……
突っ切ろう……今は……。」
再び、推進力を取り戻すレウルーラ。
ジェネレーターは臨海限界の運転を。
ノズルは、耐久限界ギリギリでの噴射を。
主砲は、砲身が焼き付く勢いで斉射を。
総ての機関が、悲鳴を上げるほどの稼働をしている。
すべてが何時爆発してもおかしくない程の勢いで。
だが……。
「……停まるわけには……いかない」
【行動:ベルクを乗せる(−1)ビギナ・ギナV-28へ移動(−1)最期の言葉(−0)
レウルーラV-28へ移動(−1)主砲斉射(−1)】
【武装:ガンイージ:なし
レウルーラ:連装メガ粒子主砲×3、連装メガ粒子副砲×2、
3連装対空機関砲×16 ミサイル発射管(残り半数)】
【位置:V−28】
【行動方針:生き残るために、最大限の努力を】
ST-17コロニーの両端の港が、炎に包まれる。。
それは、『無限旋律』の終わり。
コロニーに蓄えられた大量のデータが失われ、データ送信のルートも失われる。
プログラム的に対処の難しい高レベルのハッキングソフトが――シンプルに、破られる。
「ミッション・コンプリート、だわなぁ。
念のため、も少し壊しておくか」
T-17の港湾部、際限なき破壊を繰り広げながら、『ハチドリ』はひとり呟く。
砲身も焼けつかんばかりに、ビームを撃ち続ける――
* * *
PAM! PAM! PAM!
『ゲート』前の戦場に、まばゆい信号弾が数発上がる。
シンプルな――しかしそれだけに確実性の高い、命令伝達方法。
その信号の意味は軍や組織によって異なるが、この場の防衛隊にとっては次の命令を意味していた。
『最終防衛ラインを中心に防衛せよ』
途端に――艦隊がに整然と動き出す。
『無限旋律』打破直後にあった命令系統の乱れが、自然と収まる。
最終防衛ラインの者たちは迎撃に専念し、それよりも前に配置された者は流れ弾を避けて横にズレる。
そして各部署の長の判断で、最終防衛ラインに参加したり、撃破された者の救援に向かったりする。
――先ほどの混乱は、一時的に命令系統がマヒしたことによるものだ。
ならば、トップの『意志』を全軍に示せば自然と収まる。
通信が使えないなら――通信ではかえって混乱すると言うなら、それ以外の方法を使えばいい。
「反逆者どもも足並みが乱れているぞ! 一つ一つ潰していけ!」
戦場の中心がV-27からV-28へ移りつつも――口を開けたゲートの間近に近づきつつも、砲火は止まない。
【管理側の行動方針:防戦。防衛体制建て直し】
【『ハチドリ』の行動:T-17の隔壁破壊(−2p)T-17コロニー管制室の破壊(−2p)】
『……了解……。
仲間達の死を……無駄にするわけにはいかないしな……
突っ切ろう……今は……』
ビギナ・ギナが止まる。
レウルーラがさらに加速する。
舞台をV-28に移し、なおも死闘は続く。
(もうレウルーラも限界だ。
中の機体に乗り移る時間は無いかもしれない……。
俺がしっかりしないと……)
アビゴルはレウルーラに付かず離れず添うように突き進み、
ビーム・ガンとビーム・カッターを撃ち続けた。
だが、ビームとミサイルの嵐を掻い潜る決死行の最中、またも異変は生じる。
「信号弾……?
また、敵の動きが……!」
動きを見る限りでは、後方に防衛線を敷くようだ。
それでもゼファーが引き受けていた分までもが一挙に押し寄せてくる。
ついに回避し切れず、右足の膝から下を持って行かれてしまう。
激震がコクピット内のリナルドを襲い、さらに直上からビーム・サーベルが迫った。
「……死ねるか……。
死んで、たまるか……」
(もう本当にボロボロ。 身体中が悲鳴を上げてるの。
もう休んだっていいのよ? 諦めたって、誰も責めないよ?
こんなに頑張ったんだもん、そうでしょ?)
「ここまで来たんだ……。
背負ってるんだ、まだ……」
(これ以上、自分を傷付けないでよ……。
生き残ってどうするの? 何をするの?
もうそれほど長くは持たない。
奴らと戦う時間だって無い!)
「……まだ、止まって、ない……!」
悲嘆に暮れながらの進言を拒否するように、リナルドはペダルを踏み込む。
アビゴルはそれに応え、冷却もままならないノズルを無理矢理に噴かし、すれ違いざまに両腕を振るう。
アビゴルの胸部外装が灼け、敵機はサーベルを煌かせたまま、脇腹を裂かれて爆ぜた。
(どんなに足掻いても、もう……運命は変わらないのよ!)
「それでも……、俺は、生きる……
……進むんだ!」
それが、彼女の最期の望みだった。
そして、彼が握り締めた意思に他ならなかった。
【行動:V-27→V-28(-1)、戦闘(-3)】
【位置:V-28(ゲート前)】
【機体状況:MS形態・両肩、胸部、背面損傷・右膝下消滅・通信回線→レウルーラ】
【武装:(MS)ビームカタールx2、右腕ビームカッター、ビームキャノン、デュアルビームガン
ビームシールド】
【行動方針:生きる。 最期の時まで、生き延びる】
〔WARNING! WARNING! WARNING!〕
けたたましく鳴り続ける、ロックオンされている事を告げるアラート。
シュウジは、そんな事はとうに承知していた。数十隻の戦艦、MS、ゲートに備え付けられた砲台。
これら総てが、アビゴルとレウルーラを狙っているのだ。
警告が鳴り続けるのは、至極当然の事だった。
「……火線が集中してきている……!」
みるみる赤く染まっていくレウルーラのステータス。
殆どの隔壁が閉まっているため誘爆はないが、
赤い表示はどんどん重要区画へと近づきつつあった。
「……後方の敵艦も……集まってきてるな……。
後少し……後少しだというのに……!」
レーダーを確認したところ、敵も統制が取れてきたのか、
突破した第一陣、第二陣の艦隊が、こちらを取り囲むように展開を始めていた。
火線も、前方からのだけではなく、四方八方から襲うようになってくる。
「……後少し……っ!?」
突如、目の前が爆風に覆われる。
そして、ステータス画面にガンイージとペズバタラが格納してあった
第一格納庫が破壊されたと表示された。
被害はそれだけではない。その攻撃に巻き込まれて上部副砲、
さらに別の攻撃で左舷下部主砲、対空砲が9つ破壊された。
「……まだだ……。
後僅かで……第三陣を抜ける!
そこまで保たせれば……!」
第三陣突破まで、あと10000。
後僅かのようだが、シュウジにはその距離がやけに遠く感じられた。
【行動:進撃(−1)戦闘(−3)】
【武装:連装メガ粒子主砲×2、連装メガ粒子副砲×1、
3連装対空機関砲×7 ミサイル発射管(残り半数)】
【位置:V−28】
【行動方針:生き残るために、最大限の努力を】
(10000……9990……9980……9970……)
第三陣の終わり、即ちゲートまでの距離が、実感できる数値となって表れてくる。
既にビーム・カッターは発振器が焼き付いて使い物にならなくなっていた。
(……8590……8580……8570……8560……)
ビーム・カタール、ビーム・キャノン、ビーム・ガン、果てはビーム・シールドまで、
少々の被弾には構わず、アビゴルは搭載している全ての兵装を以って敵機を屠り前進する。
(……7180……7170……7160……7150……)
今の敵陣を突破できれば、まずはそれでひと段落だ。
V-28より戦闘エリア半径の小さいゲート内に入ってしまえば、
一度に相手にする追撃の数もそれなりに絞られるだろう。
(……5770……5760……5750……5740……)
運命の扉に辿り着くまであと、5000。
【行動:前進(-1)、戦闘(-3)】
【位置:V-28(ゲート前)】
【機体状況:MS形態・損傷多数・右膝下消滅・通信回線→レウルーラ】
【武装:(MS)ビームカタールx2、ビームキャノン、デュアルビームガン、ビームシールド】
【行動方針:生きる。 最期の時まで、生き延びる】
「……後5000。」
確認するように、距離を呟くシュウジ。
いよいよ、レウルーラのステータス画面はその過半数が赤く染まっている。
シュウジ自身の体力も、そして何より精神力が限界に近づきつつあった。
「……後……4000。」
再度、呟くシュウジ。
呟きつつ、主砲照準ポインタを前方敵艦にセット、発射。
続いて副砲照準ポインタをMSにセット、発射。
照準ポインタをセット、発射。
ポインタをセット、発射。
セット、発射。
セット、発射。
セット、発射。
セット、発射。
事務的に、機械的に敵を破壊する。殺す。屠る。
「……後……3000……!」
残り距離が3000となったところで、シュウジの目の色が変わった。
そして、同じように敵を屠りながら進むリナルドに告げる。
「……リナルド!護衛は此処までで十分だ!
お前は先にこのまま直進し、ゲートに向かえ。
俺はミサイルを仕掛ける。……また逢おう。
……ゲートの向こう側でな!」
敵陣突破まで、あと2500。
【行動:進撃(−1)戦闘(−3)通信(−0)】
【武装:連装メガ粒子主砲×2、連装メガ粒子副砲×1、
3連装対空機関砲×5 ミサイル発射管(残り半数)】
【位置:V−28】
【行動方針:生き残るために、最大限の努力を】
『……また逢おう。
……ゲートの向こう側でな!』
「……!」
(そうか、ゲートの機能を止めないと……。
けど……)
あと、2000。
「わかった……。 だが」
デュアル・ビーム・ガン銃身の排熱がとうとう追い付かなくなり、強制冷却が始まる。
「間違っても間違わなくても、レウルーラを自爆させてゲートを破壊しよう、とか
施設に乗り込もう、なんてことは考えるなよ……」
あと、1500。
「俺たちは生きてゲートをくぐり抜けるんだ。
それがどんな結果を招こうと……俺たちは、まだ背負ってるんだ」
主砲をレウルーラに向けた戦艦のブリッジに、ビーム・カタールを投げつけて強引に発射を止める。
「必ずだ。 必ず生きて、ゲートを越えろ」
あと、1000。
「待ってるからな。 ……信じてるからな」
アビゴルの加速が強まる。
「だから、今は先に行く……!」
あと、500。
「またな。 死ぬなよ、シュウジ!!」
銃身の冷却レベルが6割を超えたのを確認し、リナルドはマニュアル操作でセイフティを解除する。
ゲートに備え付けられた砲門にビームを撃ち込みつつ、
アビゴルは多くの敵機を引き連れて、ついにゲート内部へと突入した。
【行動:通信継続(-0)、戦闘(-3)、ゲート進入(-1)】
【位置:ゲート内】
【機体状況:MS形態・損傷多数・右膝下消滅・通信回線→レウルーラ】
【武装:(MS)ビームカタール、ビームキャノン、デュアルビームガン、ビームシールド】
【行動方針:生きる。 最期の時まで、生き延びる】
>>227 敵機を引きつけたまま、ゲートを突破していくアビゴル。
シュウジは、それを見送りながらぽつりと呟いた。
「わかってるのか……?
こんな状況でミサイル発射管をゲート縁に向けるという行為の意味を……。
それは一瞬足を止めるという事……。アビゴルがMSを一部引き連れていったとは言え……。
集中砲火の中、生き残れる確率は……皆無に等しい。
まぁ、自分でやると決めた事だ。生き残れたら……神を信じよう!」
そう言うと、レウルーラに90°上方を向くように指令を出す。
僅かに残った姿勢制御ノズルを使い、少しずつ方向転換をするレウルーラ。
そして、奇跡的にも方向転換は成功し、
再度メインノズルを点火させたその時、けたたましい警告音が鳴った。
「……読まれてた!?」
シュウジがレーダーを見ると、一体のMS……ベルガ・ギロスが接近してきている事を告げていた。
慌てて、照準ポインタを合わせようとするシュウジ。
だが、それも間に合わず、四連マシンガンが艦橋を貫いた。
「……!!!」
艦橋内を破壊の嵐が駆け抜ける。
コンソール類を吹き飛ばし、
先程突き刺さったショットクローを撃ち抜き、
シートを片っ端から木っ端微塵になり、
屋根は跡形もなく破壊される。
そう言った破壊の嵐が駆け抜けた後……シュウジは、まだ生きていた。
だが……
(……まだ……生きてる……な。あちこち痛い……が。
でも……もう……声……すら出ない……まずいな。
身体は……動くか?
足は……見ない方が良さそうか……。
左腕は……初めから動かなかったんだ。折れてても……別にいいか。
右腕は……?動くな……。
ノートPCは……よし、ケーブルも繋がってるし、何とか届きそうだ……。)
瀕死のの身体を引きずりながら、最後の力を引き絞り、ノートPCに手を伸ばすシュウジ。
その時、ふと上を見上げると、レウルーラと併走するように、一隻の戦艦がいた。
その主砲は、総てがレウルーラの方を向いていた。
(……回避行動……通常のコマンドじゃ無理だ……。モード変更……。)
[Manual Mode]
(よし……。)
レウルーラの制御モードの一つ、Manual Modeに変更するシュウジ。
このモードは、直接プログラムによるコードを入力し、レウルーラを制御するモードだった。
(……間に合え……。)
キーを一つ一つ、渾身の力を込めて叩くシュウジ。
そして、数行のプログラムを打ち終わり、Enterを押そうとしたその時、レウルーラを衝撃が襲った。
レウルーラの動きに気が付いたMS隊が、こちらに向かってきたのだ。
その衝撃で、ノートPCは僅かに床を滑り、シュウジの手の届かない場所に行ってしまった。
(……何でだよ……。
何で……こうも……何もかもが……上手く行かない……。
後……少し……だというのに……。
後……少……し……。)
ノートPCに手を伸ばしながら、真上を見上げるシュウジ。
併走する敵艦は、今にも主砲を撃たんと、出力を上げていた。
この一撃で、終わりにしようと言うのだろう。
(……俺は……間違ってたのか……。
やっぱり神は……間違った行いをした者を救いは……しないのか……。)
【行動:方向転換(−1)再加速(−1)状況確認(−0)モード変更(−1)】
【武装:連装メガ粒子主砲×2、連装メガ粒子副砲×1、
3連装対空機関砲×3】
【位置:V−28】
【行動方針:ゲート破壊】
「……っ……。」
(届かない……。まだ……沈むわけには……。
このままじゃ……リナルドに追っ手がかかる……。
……やばいな……意識……遠くなってきた……。
たった一つのキー……俺が……こんな物に……負ける……のか。)
Enterキーを押そうと、必死に手を伸ばすシュウジ。
だが、破片の一つが身体を貫通し、
床に突き刺さってしまっているらしく、身動き一つ取れなかった。
さらに、大量の出血で、意識も遠くなりだしていた。
(……もう……駄目か……。
せめて……勝者の側で……死ねれば……よかったんだが……。
……人を殺した者への……これが……罰なのかな。)
だんだんと、シュウジの瞼が閉じていく。
腕の力も失い、右手が弛緩し始める。
意識も急速に遠くなり、二度と目覚める事が出来なくな……
(……?)
……ろうとしたとき、右手に、誰かの手が添えられる感覚がした。
目を、少しずつ開けていくシュウジ。
(……お前は……?)
やっとの思いで目を開いたとき、そこには"誰か"が居た。
それは幻覚だったのかも知れない。
だがシュウジには、それが"彼女"に見えた。
(……何だ……ずっとそばにいたのか……?
どうせなら……最初から姿を見せていてくれれば……良かったのにな……。
……わかったよ……もう少し……がんばればいいんだろう……?
でも……一回だけだ……本当にこれで……最期だ……!)
「……ウあ゙ぁァぁっッ!!!」
身体に突き刺さった破片に身体を引き裂かれながらも、床を進むシュウジ。
手を限界にまでキーに伸ばす。
「……と……どけ……っ!」
[ RUNNING ]
無機質な電子音。直後、シュウジの身体をGが襲った。
直後、レウルーラのすぐ脇をビームが掠めていく。
「ははっ……成功……だ!」
相手側の艦長から見たら、相当信じられない動きをした事だろう。
先程入力したプログラムにより、レウルーラが行ったのは、90°バレルロール。
それにより、投影面積を遙かに少なくし、ビームを回避したのだ。
あれだけ最大出力で主砲を放ったのなら、冷却に時間が掛かるはず。ならば後は……。
(後は慣性で……どうにかなるな……。
……勝った……か。
結局リナルドとの……約束……破っちまったな……。)
勝利を確認し、シュウジは今度こそ本当に目を閉じた
ゲートは既に目の前。激突は避けられないだろう。
絶え間なく響き渡る爆発音を遠くに聞きながら、
シュウジは傍らにいる"彼女"に問いかけた。
―――一つ、確かめたかった事があるんだ……
―――俺は、許されるのかな……
―――俺のした事は……間違って無かったのか……?
"彼女"は答えない。答えているのかも知れないが、
シュウジにはその声は聞こえなかった。
だが……シュウジはその気配で、答えを感じ取った。
その答えを受け、シュウジの顔はこれまでにないくらい、穏やかな物になった。
同時に、その両目に一筋の涙がこぼれる。
―――そうか……よかった……―――
【行動:回避(−1)突撃(−1)問いかけ(−2)】
【生徒番号01番(失格者):シュウジ=アサギ 死亡】
【死因:両足、腹部の傷による出血多量】
「ここ」でもなく「いま」でもない――とある宇宙空間。
傷だらけのコアファイターが、力なく虚空を漂っていた。
コクピットには、紅いハロが一つ、浮いているきり。
「サイド6、ジャンク屋、ペチャパイ、リーア……ペチャパイチガウ、スレンダータイケイ」
聞く者もなき独り言――しかし、無意味な独り言ではない。
時空の狭間、激しい磁気嵐の中で破損しかけた、彼の重要な記憶の自己修復の過程なのだ。
「キャット、緑ノ猫、会イニイケ、工業カレッジ。ユーカイ、チュウイ!」
彼に残された記憶は断片的だったし、彼の身体も無傷ではなかったが、彼は自らの任務を覚えていた。
「リーア探ス! キャットモ探ス! 二人、イッショニスル!」
会うべき人物と、会わせるべき相手。回避すべき事件。託された想い。
彼の兄弟の中でも特に優れた会話能力、それは全てこの後のために。
ギリギリで用意された、1年ほどの歴史改変のチャンス。
その間に、誰かに拾われて誰かに話を聞いてもらい、なんとかその2人に巡り会えれば、任務達成の見通しが――
『彼女』を探し『彼』に会わせ、誘拐される前に歴史を変えて、二人の想いを別時空で叶える。
それこそが、赤いハロの仕事であり、『彼女』の最後の願いだった。
コアファイターの残骸は、静かに静かに漂っていく。
独り呟き続ける赤いハロを乗せて、慣性に従って。
推進剤もすべて失い、機体の制御も失い、ただ冷酷な運命に流されるままに。
ジャンク屋に拾われる希望に満ちた、コロニー群。
その煌きを横目に、外宇宙の、地球圏外の、木星軌道の方角に向かって――
【生徒番号なし:ハロR 機能停止(リタイア)】
【原因:メンテナンス無しでの長期の稼動、及び外宇宙への漂流】
(これで、良かったのだろうか?)
アビゴルはゲート内部の空間で戦っていた。
円筒形の広大な空間。
この長いのか短いのかさえわからないチューブの先は、一体いつへと繋がっているのだろうか?
時間と時間を繋ぐチューブの中で、リナルドは戦っている。
(先に来てしまって、良かったのか……?
あいつ、もしかしたら……)
その時、不意に、ゲート内全体が激しく振動し、境界面がぶれる。
とうにレウルーラとの通信回線は切断されていたが、レウルーラがゲートへ進入してくる様子は無い。
「…………ッ
そういう……ことかよ……!」
チューブの境界一面にノイズが走り、空間全体が激しく揺れ始める。
一時的に、ではあるが、戦闘どころではなくなってしまっていた。
カメラ、モニターは境界面に走るノイズや同じように対処に手を焼く敵MS群を映し、
レーダー上のマーカーは輝きを失くし、正確な情報を得ることは難しくなっている。
(この空間が不安定になっている……消えるのか?
だとしたら、まずいな……逃げないと!)
相変わらず激しい振動が続く中、アビゴルは出口を目指してふらふらと進み始めた。
* * *
アビゴルを追うデナン・ゲーのパイロットたちも、この振動に対応を論じていた。
『まずいぞ、こちらも離脱しなければ!』
『しかし、あれにレウルーラのデータがバックアップされていたらどうする?
あの艦に残されていた情報を持ち出させるわけには……!』
『ゲートを抜けてから墜とせばいいじゃないか、今は……』
『だから、その前にゲート自体が消える可能性があるんだ!
そうなったら、どこに放り出されるか……どうなるか、わからんぞッ!!』
『……ならどうする? ゲートが消えたらオシマイ、任務失敗ということは、
戦闘に時間を掛けるわけにもいかない』
『決まっている。 アビゴルを見失うな!
撃ちながら進むんだ。
墜とせればよし、そのまま我々はゲートを抜けて回収を待つ。
墜とせなくとも、逃がしさえしなければ、同じ時代に出るはずだ。
とにかく、やばそうなら同時にゲートを抜けられるようについていけ!』
『了解した。 後列の機体に撤退の指示を』
* * *
アビゴルの動きに気付いた敵MSのうち、体勢の立て直しが早かった数機が追い縋る。
電子機器に頼ることのできない、有視界戦闘が始まった。
≪続く≫
アビゴルは、リナルドの思うように進めないでいた。
敵方も出方が決まったのか、ビーム・ライフルを撃ちながら進んでくる。
それを避け、受け流しながらとなれば、なかなかスピードも上がらない。
揺れは時が経つにつれて増し、境界面のノイズも徐々に量を増やしつつある。
「……ッ、この……しつッこいんだって、言ってるだろうッ!!」
いよいよサーベルを構えて白兵戦射程にまで迫ったデナン・ゲーの胴体に、
突如反転したアビゴルのビーム・カタールが吸い込まれる。
爆発で損傷することも気にせず、反動で再び前進するアビゴル。
しかし、突然襲った一層大きな振動でバランスを崩してしまう。
一瞬早く立ち直ったデナン・ゲーの撃ち放ったビームが頭部を貫き、爆発を招いた。
「しまった、カメラを……!」
リナルドはサブカメラから送られてくる映像を頼りに再び舵を取ろうとする。
しかし、回路を切り替えモニターを見た彼は、そこで硬直することとなった。
「……境、界……面」
ビームを捌き続けるうち、アビゴルは知らず知らずと境界面に接近していたのだ。
レイモンドの言葉が脳裏に甦る。
―― ふらふらしたらどこに飛ばされるか分からない ――
(だめだ、俺は……立ち止まるわけには行かないんだ。
余計な回り道はできないんだ。 そんな時間、無いのに……)
機体を振り回す要領でデナン・ゲーに向き直り、
適当に当たりをつけてビーム・ガンを連射、何とか撃破する。
だが、爆圧がアビゴルを容赦なく境界面に押し付けた。
(まずいッ……)
確認してみると、既に左脚部が境界面に沈んでいる。
機体全体が徐々に流砂に埋もれて行くような、そんな感じだ。
「飲み込まれて、たまるか……ッ!!」
しかし、ペダルを踏み込んでもアビゴルは飛び立つことができない。
ビーム・ガンの反動と爆圧で背面ノズルまでもが飲み込まれていたのだ。
(みんな、ごめん)
彼は力なくシートにもたれ掛かった。
シュウジ、ヨーコ、シュヴァイザー、ベルク、イブ、ダグラス、シェラザード、
ラーズ、サーティア、レイモンド、先生、……そして、アレン、リファニア。
今まで出会った人々の顔が浮かんでは消える。
(俺……ここまでかもしれない)
そしてアビゴルが境界面に飲み込まれて十数秒後……
ついに、ゲートは消滅した。
【行動:戦闘・前進(-4)、境界面接触(0)】
【位置:???】
【機体状況:MS形態・損傷多数・頭部、右膝下消滅】
『各機へ。そろそろP点だ。警戒を怠るなよ』
俺の後方で別の輸送船の護衛をしている筈の隊長が通信を送ってきた。
それに応える部隊各機。
「ああ、分かっている」
俺も周囲を監視しながら、静かに返答する。
宇宙世紀0096年――。
…あのプログラムから脱出して、1年半が過ぎた。
俺は今、とある傭兵部隊に所属して民間の輸送船団の護衛にあたっている。
とりあえず何をするにしても先ず必要なのはどの世界でも金だったから、ここで暮らし始めてから、
俺は自分の能力を最大に活かす為に傭兵部隊に入隊した。
傭兵にで必要なのは賄賂に使う金でもなく、弁の立つ口でもない。
戦い任務を達成する為の腕や、常に危険を察知、回避できる経験や勘が全てと言ってもいい。
だから、戸籍などと言うものを持っていなかった俺が金を稼ぐには、傭兵部隊が丁度よかったのだ。
この1年半で学んだところによると、現在は第2次ネオジオン抗争が集結してから3年程経ち、地球圏
は一応の静寂を取り戻している。
まあどんな楽天家でもそれが永遠に続くとは思ってはいないだろうが、それでも人々はその限られた
平和を謳歌していた。
ただ、それはあくまでも全体的に見た大まかなもので、細部を覗いてみると必ずしも平和とは言えない。
この船団が到達したP点もそうした危険地点で、何度か輸送船が海賊に襲われていた。
で、その海賊から輸送船を守る為に俺達が雇われたという訳だ。
ふとモニターから離れた視線が右手に移る。
そこには、しっかりとコンソールスティックを握った右手があった。
仕事をこなして(それと少しの賭け事で)貯めた金で、何ヶ月か前に取り付けた義手だ。
最初は随分違和感があったそれも、今は生身と同じように意のままに動いてくれる。
…やはり両手が使えるというのは良い。
片手では傭兵仲間相手にはいささか見劣りした操縦も、今は皆から一目置かれる程になった。
その時ついでに左目も手術して、多少視力が回復している。(さすがに全快はしなかったが…)
そして思う存分働けるようになったからには、頑張って稼がなければならない。
あのコロニーで待つ、あの子達の為に。
《続く》
あの子達。
そう……俺の大切なもの。
リファニアと話していて思いついた事を、俺は実行している。
コロニーにいる戦災孤児を何人か引き取って、暮らし始めたのだ。
当初は何もかもが大変で、正直何度もやめようと考えた事があった。
当然言う事を聞かない子供もいたし、逃げ出した子供もいた。
一番年上のクリスとしっかり者のヘンリーが手伝ってくれなかったら、本当に駄目だったかもしれない。
最初は俺の傭兵の稼ぎから細々と出していた生活費は、1年経ち畑の野菜栽培が軌道に乗ってくると、
さほどきつくはなくなってきた。
一仕事を終えて帰ってから、子供達と畑を耕したり、遊びに行ったりするその一時の安息。
俺の人生の中で、これほど心安らぐ時があっただろうか。
恋人も仲間も守る事が出来なかった俺にとって、今度こそ守らなければならない大切なもの。
そして何よりも…。
コロニーで待つ子供達の中には、何者にも替えられない子もいる。
俺の「実の」息子。
あの子の事を思う時、俺は自分が犯した罪と巡り巡った運命を思い出して悄然となる。
…だが、どんな運命であろうと……息子は息子だ。
他の子と変わらない……愛すべき息子だ。
そしてそれとは別に忘れてはならないのが、プログラムを実行した組織の事。
…俺が生活費を稼ぐ為に連邦に入隊しなかった理由はいくつかある。
1つ目は俺自身が戸籍を持っていなかった事。
連邦がどこの誰ともしれない人間を、はいどうぞと入れてくれるわけがない。(ちなみに現在は、
裏のルートを使って戸籍を手に入れている)
2つ目は時代背景の問題。
第2次ネオジオン抗争が終結し、只でさえ維持費がかかる軍が縮小傾向にあると思われる現在、
新兵をわざわざ入れるとは考え難い。
最後の3つ目が、組織と軍の関係だ。
組織が様々な時代の軍や大企業と繋がりがあるのだとしたら、連邦に入るのは奴等の懐に飛び込
んでしまうようなものだろう。
いくらなんでも、わざわざ見つかりにいくような危険は犯したくはない。
そんな訳で俺は傭兵部隊を選び、本名を隠して働いていたのだった。
《おい。左の方から何か来るぞ》
相変わらず俺の中にいるあいつが、接近してくるものを教えてくれる。
まだレーダーでは探知していないが、おそらく間違いはないだろう。
「フェリルから部隊全機へ。左方向に注意しろ」
…俺が仲間達から一目置かれている理由の1つが、この探知能力だった。
元はと言えば、少しでも長く俺を戦わせていたいあいつが敵機を見つけるのを手伝ってくれている
だけだが、あいつの真意はともかく、手伝ってくれる事に関しては有り難かった。
何故ならその事が、右手がなくて技量の面で疑われがちだった俺を、部隊内で認めさせる一因と
なったからだ。
勿論あいつの事など信じてはもらえないだろうから、理由を聞かれても勘としか言い様がなかったが。
《続く》
やがてレーダーにポツリポツリと光点が現れはじめた。
そして段々とその数は増えていく。
ここらに連邦はいない筈だから…こいつらはほぼ間違いなく、この辺りに出没している海賊共だ。
レーダーの反応を確認した各機が戦闘態勢を取る。
《…おい。あの中におかしなのがいるな》
まだ海賊を見ていたらしいあいつが、奇妙な事を言ってきた。
(何だ、そのおかしなのというのは?)
《あのうちの何人かの意識が、間違いなくおめえに向かってきてるんだよ。…多分…》
(それ以上は言わなくてもいい)
最後まで聞かずにその言葉を遮る。
そして俺の顔には……凄絶な笑みが浮かんでいた。
それはあの時以来封印してきた、俺の中の戦士の笑み。
「…奴等が…来たんだな?」
ついに奴等が来た。
俺が最も恐れ、そして、最も望んだその時が、来た。
…奴等がいずれ俺を見つける事は、容易に想像できた。
だが、片手を失い左目も不自由だった1年半前の俺では、正直辛い戦いになっただろう。
だから名前を変え、別人に成り済ましてまで身を隠してきたのだ。
…失った身体を元に戻し、闘志を内に封じながら…。
『フェリル隊、バーグナー隊は、進出して海賊共を迎え撃て。残りは抜けてきた奴を狙え。
いいか。こっちはくぐり抜けてきた修羅場の数が違う。輸送船ばかり襲うような腰抜けとの
違いを見せてやれ!』
「了解だ、隊長。フェリル隊全機、行くぞ」
隊長のけしかけるような命令に、俺は真っ先に反応した。
フットレバーを軽く操作すると、パートナーのガザDを一気に加速させる。
(おい。俺を見ている奴は、どいつとどいつだ?)
俺の目を通して、あいつも向かってくる海賊を見る。
《…おめえから見て一番左にいる3人だな。分かるか?》
(ああ見えるさ。基本に忠実な3機編隊だ)
俺の目は、見誤る事なくその3機を捉えた。もう見逃しは…しない!
「ベルクも、シュウジも、リナルドも…お前等の為に苦しんだ…。
そして俺は…この時を、待っていた…」
小さな声で呟く。
「再びお前等と、全力で戦うこの時を…」
所詮、目の前にいるのは奴等の末端。
「…ルイの…アーネストの…」
いくら墜としたところで、組織にとっては何のダメージにもならない。
…だが…!
「リファニアの、サーティアの…。それにイブ達…!」
フットレバーをぐいっと踏み込み、更に加速する。
いきなり自分達に向かってくるとは思わなかったのだろう、3機の動きが僅かに乱れた。
「お前等の為に苦しんだクラスメイト達の無念…!この戦いは…それを晴らす為の第一歩だ!」
俺は躊躇なく、ターゲットサークル一杯に捉えた先頭の機体に向けて引き金を引いた。
【生徒番号14番:レイモンド=デリック 生存……未だ戦う事を止めず】
「……ここは、どこだ……?」
アビゴルがゲートの境界面からこのノイズの中に放り出されて、
既に小一時間ほどが経過していた。
(何かが聴こえる、頭の中に入ってくる……
頭が、割れそうだ……)
リナルドは機体を動かすことをしない。
全身の至る所から痛みが湧き上がってくるだけでなく、
上下左右の感覚が無い上に、見渡す限りどこまでも同じ景色なのだ。
激しい動きを繰り返したために推進剤の残量も心許なくなっていた。
(このまま……止まって……終わるのか? 俺は……)
「そんなのは、嫌だ……!」
たったひとつでも綻びを見落とすまいと、リナルドは目を見開いた。
だが、ディスプレイを睨付ける瞳にはまるで変わらない風景が映り込むだけだ。
彼は胸を押さえる。
(もう何もできないのか? ここでおしまいなのか?
奴らに一矢報いることすらできないのか?
ここでこうやってみんなの犠牲を無駄にすることしかできないのか?
そんなの、嫌だ……)
(お兄ちゃん……)
「……何だ」
(諦める?)
「バカ言え。 大体お前、何やってたんだよ」
(ずっとここにいたわ。 あなたの傍に、あなたの中に)
「ぅ゙……そうか……」
(ねえ、ディスクに何か書き込んでたよね? 何を書き込んだの?)
「……未来への希望を。 掴み取れなかったものを。
今度こそ、守れるように……。
知ると言うこと自体が危険を招くこともある。
けれど、知らなければ守れないから。
あの時も、そうだったんだ……」
(リーアさん? それともリファニアちゃん?)
「どっちだっていいだろ。
どこの誰でもいいんだ、知った誰かが、大切なものを守れるようにしたかったんだ」
(……本当は自分に届けたかったんでしょ?
かつて、何も知らなかった自分に。 結末を変えるために)
「最初はね。 けど、それどころじゃなくなっちまったからな」
≪続く≫
(何とか有効利用したいんだ?)
「せっかくここまで来たんだ。 なのに……
こんなところで……こほっ、止まって、終われるかよ……」
(諦めなければ大丈夫。 みんながついてるわ)
「みんな?」
(そう、みんな。 ……まだ背負っているんでしょう?)
……………ド……
…………ルド……
「……え」
(ほぅら、聴こえた。 聴こえたなら、もう大丈夫。
引っ張ってもらいましょう、明日のある方へ)
「いやだから、あんまり聞きたくないけどもうちょっと具体t」
………丈夫?……
……リナルド……
「……!!」
(私の役目はここまでね。 じゃぁね〜)
徐々にはっきりと聴こえる声。
聞き覚えのある、忘れられない声。
守れなかった、彼女の声が聴こえる。
……手を伸ばして……
……一番近い場所……
……導く、 か、 ら……
リナルドは無意識のうちにアビゴルの右腕を声が聴こえてくる方に伸ばしていく。
マニピュレータが力無く開かれた先、おぼろげに白い綻びが見えた。
綻びは広がり、その向こう側に漆黒の宇宙を覗かせている。
時の狭間から一体いつかもわからない宇宙へと、アビゴルは飛び出した。
……生きてね……
……リナルド……
「待ってくれ! 訊きたいことが……!」
それきり、導く声も聴こえなくなる。
リナルドは目を伏せたまましばらく俯くとやがて顔を上げ、
周囲のチェックを始めた。
「……頭を吹っ飛ばされたのはまずかったなあ……。
レーダーにほとんど何も……」
ふと、ディスプレイから周囲を目視で確認していたリナルドの目に
大質量の人工物体が映った。
「……コロニー? 一体いつ、どのあたりに出たんだ……?」
≪続く≫
ともかくコロニーに向かおうとペダルを踏み込み掛け……リナルドは足を止めた。
「このまま入るわけにもいかないよな……。
防衛隊が出てくるだろうし、こっちはIDだって持って無いし。
せめてバーニアでもあれば……ん? バーニア……」
大きく溜め息をつき、リナルドは呟いた。
「はぁ……また綱渡りかよ。
これで上手くいかなかったら……警備の連中にでも捕まらないと
コロニーには入れそうもないな……、ぞっとするよ」
呟き終えると、リナルドはおもむろに着替え始める。
服の上からノーマルスーツを着直し、バイザーを閉めると
必要な道具類だけを全てデイパックにしまった。
「じゃ、行きますかね……。
ったく……俺ってば、いつからこんな不良になった?」
そうして座り直し、データの入力を済ませるとハッチを開けてペダルを踏み込んだ。
既にアビゴルの自爆カウントダウンは始まっている。
(……見えた。 第一の関門はクリアだな)
コロニーの補強、あるいは増築工事だろうか。
コロニー港湾部周辺には張り巡らされた骨組みが見える。
リナルドはデイパックを背負ってシートから立つと、
未だ高速で突き進むアビゴルのハッチへと進み出た。
「……今までよく耐え抜いてくれたな。
その褒美がこれじゃあんまりだけど、最後にひとつだけ、許してくれ。
じゃあな。 陽動と仕上げ、頼んだぞ……!」
リナルドは踵でパネルをこつんと蹴る。
ディスプレイには新たにウィンドウが表示され、
それはオートパイロットの軌道を映し出した。
骨組みへと最接近した次の瞬間、リナルドはアビゴルから身を放り出した。
それでもリナルドは慣性のため高速で進み続ける。
その先にはひとりの作業員。
「よし、二つ目もクリアだな……」
リナルドはそのまま骨組みを蹴って方向を微調整し、
ラリアットの要領で腕を作業員の首に引っ掛け連れ去っていく。
『ん……? ぐわっ!』
「いてて……と、悪いな……腰に巻いてるそれ、頂くぜ……!」
『な……! ぐふっ……』
鳩尾に拳を打ち込まれた作業員はぐったりと身体を曲げる。
リナルドは足を絡めて支えると、バーニアを奪い取って装着した。
バーニアを噴かして減速し、作業員を抱えたまま港口の作業員出入り口へと降り立った。
リナルドが頭上に目をやると、軌道を変えてコロニーに沿うように進んでいるであろう
アビゴルを追って防衛隊のMSが出撃していくのが見える。
直後、振動と閃光がコロニーを襲った。
≪続く≫
リナルドは作業員を抱えたまま、コンパネを使って扉のロックを開けながら進んでいく。
もちろん開かない扉もあった。 そんな時は回り道をしたり強行突破するのみ。
何とか与圧室に辿り着くと、加圧しながら作業員の身体を横たえた。
「付き合わせて悪かったな。 あんたはここに置いていく」
加圧が終了するとリナルドはノーマルスーツを脱ぎ捨て、
デイパックを肩に掛けてコロニー内部へと進み出た。
「はぁ、はぁ、――はぁ、はぁ……」
リナルドはよろよろと歩いていく。
これからどこへ行けばいいのだろう?
それすらわからず、足取りもおぼつかないまま歩いていく。
――ただ、今歩いている方向は間違えていないと思った。
何故だかはわからないが、彼はそう思っていた。
どれくらい歩いただろうか。
やがて住宅地に差し掛かったところで、彼は足をもつれさせ前のめりに倒れこんだ。
(いってぇ……、もう歩けないな……。
ここまで、かな……)
ふと首を回すと、教会の十字架が目に入った。
教会の前で倒れたようだ。
(……教会じゃ良くも悪くもいろいろ起こったっけか。
終着点がこれかよ……出来過ぎてる)
何とか起き上がろうとするが、逆に力無く頭を垂れる。
(リファニア……)
薄れる意識に、彼女の顔が浮かんだ。
(君は俺を怨んでないか? 軽蔑してるかな?
君と違って、何も為せずに、倒れる、俺、を……)
リナルドの意識は、そこで途切れた。
リナルドが意識を失ってから数分後。
教会のドアが勢いよく開かれた。
「遅くなるんじゃないよ。 何かあったみたいだから気をつけて」
「うん。 じゃ、行ってきまーす! って……
あ……あれ、ぱ、パパッ! あれ見て! 人が……!」
「どうしたんだ、リファニア?」
【生徒番号15番:リナルド=グレイス 消息・生死共に不明
備考:レウルーラのバックアップデータ所持の可能性あり、
連中との接触前に真偽の確認、及び対処の必要性を認める】
ガンダムバトルロワイヤル 第三回大会
… … be over
第四回に期待しつつ保守