ガンダムバトルロワイヤル 第三回大会 第15章

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194リナルド=グレイス ◆4hTS22brJs :04/10/25 23:30:46 ID:???
アビゴルがU-20に入り、リナルドが最初に見たものは。
ヒート・グレイブを振り下ろすサイコガンダムと、その脇をすり抜けるヴィクトリーだった。
何が起こってしまったのか、彼の頭は瞬時に理解した。

(サーティア・クワン……、動きやがったんだな……!)

サイコガンダムの脇をすり抜け後ろを取ったヴィクトリーは、グレネードを放つ。
間に合わない。 リファニアが撃ち落とすなり回避するなりするしかない。
ヴィクトリーのレーダーにも、既にアビゴルは映っている。
レーダーにはジャベリンも映っているが、レイモンドは何をしているのだろう? 

ビーム・カタールに、再び刃が現れる。
開きっ放しの回線から、ふたりの声が流れてくる。

『……悪いけど、けじめはつけさせてもらうから。
 サーティアの目、覚まさせて、T-20に連れて行くっ!』

『アンタが私にけじめをつけるというのならねえ……。
 さっさとリタイアして、それを私への償いにしろっ!』

狙うは左腕。 高速移動からの攻撃ゆえにロックはできない。
今までどおり、充分に距離を詰めてから……

そこで、ジャベリンが動いた。
ビーム・サーベルを構え、ヴィクトリーに向けて突撃していく。
ガンイージとビギナ・ギナも既に宙域に入っている。
ビギナ・ギナが仕掛けるようだ。

(俺は……)

ジャベリンもビギナ・ギナも背中から。 ならば、ワンテンポ遅らせてアビゴルは上から。
あの時とほとんど同じだ。 イブと共に、サーティアと戦ったあの時と。
あるのはメンバーと前後の違いくらいでしかない。
ジャベリンがビーム・サーベルを突き出し、ビギナ・ギナが動き、アビゴルも動こうとした瞬間。
……そのタイミングで、リナルドは彼女の声を聞いた。

『レイモンドさん、駄目ェェェェェっ!!』

サーティアを庇おうとサイコガンダムが前進する。
ビギナ・ギナの射線上に、濃紫の巨躯が割り込んでくる。
リナルドにはスイッチを押し、ペダルを踏み変えるまでが精一杯で。
アビゴルは一瞬でその姿をデュアルタイプへと変え、
かなり強引な軌道でサイコガンダムとビギナ・ギナの間に割り込んだ。
それでも咄嗟にビギナ・ギナに対して機体上部を向けたのは正解だった。

直後、アビゴルを120mmの弾丸の嵐が襲う。
背部ビーム・カッターのエッジが吹き飛び、周囲には幾重にも銃創が刻まれる。
衝撃はコクピット内にも及び、リナルドは嵐が過ぎ去るまでシェイクされる羽目になった。
結果としてサイコガンダムへの直撃はかなり防いだが、
二門のマシンガンの射角を考えれば、完全に防げたわけではないはずだ。

「つぅ……馬鹿野郎、殺す気か!
 それに、リファニア! よりにもよって何てとこで戦ってんだ!」

何枚かのパネルにノイズが走るコクピット内で、被害状況を確認しつつ、
シェイクの際に打ったと思われる部位を抑えながら、リナルドはマイクに向かって声を荒げた。
195リナルド=グレイス ◆4hTS22brJs :04/10/25 23:32:06 ID:???

【行動:通信回線継続(0)、解析準備(-1)、V-20→U-20(-1)、変形(-1)、援護防御(-1)】
【位置:U-20】
【残り行動値:0pts.】
【機体状況:MS形態・右肘破損・両肩、背面損傷・一部ディスプレイ不調・
      通信回線→ジャベリン、サイコ、ビギナ・ギナ】
【武装:(MS)ビームカタールx2、右腕ビームカッター、ビームキャノン、デュアルビームガン
      ビームシールド(×)】
【生徒状態:覚醒@ノーマルスーツ・鈍痛・数箇所打撲・一部身体異常……】
【所持品:デイパック、コッペパンx2、水2gx2,8、食糧4日分、私服、拳銃(20)、救急箱
      受信装置(稼動中)、リファニアの私物
   (以下私物)MS状態チェック用ポータブルコンパネ、ノートPC、愛用眼鏡、配線修理用工具一式
      首輪カバーx6、エミュレータ(01)(03)(07)(11)(15)(20)、バッテリーx12】
【行動方針:対処は続く】
【同盟:20番リファニア 01番シュウジ 11番サーティア?】
196サーティア=クワン ◆y265QavDe. :04/10/26 00:32:18 ID:???
>>188
「アハハ、何、血迷ってやがる。
 私が、絶望しているように、見えるって……!?
 絶望なんて、私にとって最も縁の遠い言葉だってのよっ!
 そんなヤワな精神でやっていける程、お上品な場所で生きてちゃいないのよっ!」

そう、リファニアの言葉を否定しつつも。
接近する機体に対する反応が遅れたのは、目の前の小娘が発する言葉が癇に障ったからに、他ならない。

何を思ったか、無防備にこちらに手を伸ばすサイコ。
奴の頭部に向けて、マシンガンの照準を合わせる。
奴にとって豆鉄砲に等しいマシンガンも、この距離で頭部にぶっ放せば、
中のパイロットをミンチと化す事など、容易だろう。

『レイモンドさん、駄目ェェェェェっ!!』

「……愛するも、愛されるも、挽き肉になっちまえばできやしないだろう?
 無残に死にな。かつてアンタが言った暴言を、この場でそっくりお返ししてやる。
 ……レイモンド!?」

トリガーにかかった指を引こうとした瞬間、リファニアの叫びに鈍く反応したサーティア。

>>187
そこで初めて、コックピット内に警告音がやかましく鳴り響いているのに、気がついた。

とっさにフットペダルを踏みつけようとするサーティア。
直後、装甲の融解する不気味な音と共に、コックピット内のありとあらゆる警告灯が、一斉に点灯する。

ジャベリンのビームサーベルが、ガンダムの胴を、刺し貫いたのだ。
コックピットが刺し貫かれる事は、とっさにフットペダルを踏みつけた事によって、紙一重で避けられた。
……もっとも、それすらも、レイモンドがアインラッドに制動力をかけていなければ、かなわぬ事だっただろう。

「……殺られたっての……?
 レイモンド=デリック……アンタが、私を殺ったっての……?
 いや……まだだっ!」

この機体は、他ならぬガンダムだ。
ガンダムには、暫し、緊急脱出装置として、コアブロック方式が用いられる。
このヴィクトリーも、例外ではなかった。

「……生きてさえいれば、あんな死にぞこないどもに、遅れを取る訳はない……。
 くぐってきた修羅場が、違うってのよ……。」

即座に、ドッキングアウトの操作をする。
これがRX-78のようなタイプならば、胴を貫かれた時点で終わりだろうが……。
ヴィクトリーは、幸いにも胸部にコアブロックが存在しているのだ。
197サーティア=クワン ◆y265QavDe. :04/10/26 00:37:50 ID:???
火花を散らすボトムパーツをパージ。
腕が異なる為に、トップファイターとしては機能しないトップパーツも、続けてパージする。

「……ハハッ、ありもしない希望に、せいぜい縋っていればいい。
 私は、この場を………リオ……ン!?」

久しく、見ていなかった気がする、リオンの姿。
唐突に、眼前に、浮かんできた。
スロットルレバーに手をかけ、押し込もうとしつつ、眼前のリオンのイメージに語りかける。

「……わかってるわよ。
 貴方によって繋がれたこの生命、ここで無駄に散らすつもりはない……。
 でもね、貴方。
 どうして、笑ってくれな………っ!?」

>>191
サーティアの言葉は、突如襲ってきた激しい衝撃に、強制的に途切れさせられた。
何が起こったのか、一瞬、理解できなかった。
理解する頃には、背後から迫り来る灼熱の光に身を包まれていた。

ビギナ・ギナより放たれた、120mmの砲弾が、アビゴルの防護を縫い……。
今まさに飛び立とうとするコア・ファイターのエンジンを、貫いていた。


―――あつ――い―――――…

     ―――ねえリ――――オン――――…

          ―――どうし―――て笑っ―――てくれな――いの――……


―――泣かないで――――笑って―――……

    ―――わらって―――……

        
         ―――わらって――――………



―――あ。


―――笑って、くれた!


【生徒番号11番:サーティア=クワン―――死亡】
【死因:ゼファーの攻撃がコア・ファイターのジェネレーターに直撃、爆死】
ジャベリンの左手から確かに伝わってきた、手応え。
それは、俺が繰り出した攻撃がVガンダムにダメージを与えたという、ジャベリンからの声なき言葉。

閉じていた目をゆっくりと開き、レーダーの反応を確認する。
そこに映っていたVガンダムの反応は、少しして……消えた。

(リファニアは、サーティアを庇おうとしていた……。
 ……まだ……サーティアを信じていた……)

俺は……。

…………。

俺は今……どんな顔をしているのだろう?
笑っているのか?
泣いているか?

…リファニアは……無事のようだ。
…あとから来たシュウジと思われる機体も、リナルド=グレイスのアビゴルもいる。

深く…。
本当に深く、静かに深呼吸をして、気分を落ち着けるよう努力した。
それが功を奏しているかどうかは分からないが、管理者側に動揺を悟られるわけにはいかなかった。
そしてサイコガンダムに通信を繋げる。

ゆっくりと落ち着いて話した。
声が震えないように、最大限の力を振り絞って。

「ここが閉じられるまで、そう時間はない。…なるべく早く移動しよう。
 ……まだ……見られる未来があるうちは……前を見よう」

最後は、むしろ自分に言い聞かせた言葉だったかもしれない。
心のどこからか湧いてくるものを、抑えつけようとしているのかもしれない。
それを悟られないよう、自然に振る舞えるうちにタイヤを走らせ、T-20に向かう。

「……すまない。…攻撃を…止められなかった」

最後に一言、ぽつりと言い残して。
 
【行動:ペズ・バタラへの回線継続(0)サイコガンダムに回線接続(−1)T-20に移動(−1)】
【残り行動値:2p】
【位置:U-20→T-20】
【機体状況:右腕消失、頭部バルカン砲1門損傷、モニター一部使用不能
      右肩装甲損傷、左肘ジョイント負荷(40%)、胸部及び腹部
     装甲に凹みと歪み、ショットランサー1基消失
 アインラッド:打撃による回転不良(小)】
【参加者状況:左肩負傷(処置)、左眼球裂傷(処置)、右手首切断(処置)
       右肋骨骨折、左大腿骨にひび】
【武装:頭部バルカン砲×1、ビームサーベル×1、ショットランサー×1
       ビームシールド
 アインラッド 武装:ビームキャノン×2(84%)、9連装ミサイルポッド】
【所持品:ディパック、水2?入り1本、食料21/3日分、シャベル(小)、蕎麦団子1個、
     拳銃と自動小銃と弾倉、タッパーのカレー4つ、保冷シート2枚、書類の束、ペン2本
     首輪カバー1つ、ディスク、トリモチ銃(40%)】
【行動方針:今は行動あるのみ】
【同盟:ベルク、シュウジ(?)】
眼前で、ガンダムが光の刃に貫かれる。
直後、ガンダムが幾つにも分かれ、その中枢たるコア・ファイターが、戦場より飛び立とうとした時。
どこからか放たれた火線が、コア・ファイターを、貫いた。

同時に、紫の悪魔の機体を襲う衝撃は、何なのだろう?
コックピット内で、幾つかの警告灯が灯ったようだったが、深刻な被害には至っていないようだ。

『つぅ……馬鹿野郎、殺す気か!
 それに、リファニア! よりにもよって何てとこで戦ってんだ!』

耳に飛び込んでくる、もはや聞き慣れた怒声。
それすらも、今のリファニアの耳には、遠かった。
差し伸べられた紫の悪魔の手が指し示す先で、光に消えようとしている、一つの生命。
少女の魂の傷は、ぽっかりと大きな穴と化していた。
その穴からは、もはや、血を流す事すらないだろう。
それは、決して塞がる事は、ないのだろう。
……けじめをつける事は、もはや永遠に叶わなくなってしまったのだから。

コア・ファイターを打ち貫いた火線の放たれた方向へと向き直る、リファニアのサイコ。
視界に飛び込んでくるのは、二機のモビルスーツ。
ガンイージと、ビギナ・ギナ。
ビギナ・ギナの肩に装備されたふたつのマシンガンが、こちらに……。
……正確には、先ほどまでコア・ファイターのあった場所へと向けられていた。

理解した。

先ほど機体を襲った衝撃は、マシンガンから放たれた、流れ弾だろう。
それは、決して、こちらに対する害意のもとに放たれたものでは、なかっただろう。

同時に、その流れ弾の大部分より、リナルドが身を挺して護ってくれたことも、理解できた。
アビゴルは、決して軽くはない損傷を、被ってしまったようだ。
アビゴルの位置からすると、流れ弾は、本来ならばサイコの頭部周辺に着弾していた可能性が高かった。
……ここに至ってもまだ、リナルドは身を挺してまで、リファニアの生命を護ってくれた訳だ。

リナルドの身を案じるように、優しげな笑顔を浮かべるリファニア。
しかし、その瞳に宿るものは、虚無感だった。

「……ありがとう、リナルド。
 でもね、自分の身を、もうちょっと労わって。
 私なんかの為に、傷ついてしまうなんて……つまらないよ。
 だってね、私なんて……。」

そこまで言って、言葉を飲み込む。
その先は、決して言ってはならない言葉だった。
……それを口にしてしまっては、今まで口にしていた信念らしき言葉を、
無意味な奇麗事に、してしまうからだ。
……それは、大切なひとたちへ誓った事のことごとくを、
そして、自分自身の最も深い部分をも、裏切ってしまう事になる。

「……なんでもない。
 もう少しで、本当に、救いのない馬鹿になるところだったかも……。」

自嘲気味な笑みを浮かべるリファニア。
先ほどから、サイコミュの荒々しい波動がコックピットに渦巻いていたが、
それに応えるほどの覇気すら、今のリファニアは持ち得なかった。
……不幸中の、幸いと言っていいかもしれない。
本来ならば、今のリファニアは、容易にその波動を受け入れてしまっただろう。
砲門が向けられる相手は、間違いなく、シュウジ=アサギ。
頭では、彼が敵対行動をとった訳ではないと理解していたし、恨みの念は、ない。
それでも、今、激情をぶつける相手がいるとすれば、対象は彼になってしまうだろう。
>>198
そんなリファニアに、落ち着いた声で、レイモンドが語りかけてくる。

『ここが閉じられるまで、そう時間はない。…なるべく早く移動しよう。
 ……まだ……見られる未来があるうちは……前を見よう』

レイモンドの真似をした訳ではないが、リファニアも深い深呼吸をして、心を落ち着けようと試みる。

「……そうだね。前、見ないとね。
 それってさんざん、私自身で、言ってきたことだもの。
 言ったからには、率先して実行しないと、ね。」

空元気としか言いようがない、不自然に明るい声。

「さ、リナルド、シュウジさん。
 早くここから、離れないと。
 私達まで、死に捉われる訳にはいかないもんね?」

無理やり作り出した、ポジティブな雰囲気。
指で軽く弾けば砕けそうなほどに、酷く脆く思えた。

レイモンドが、先にT-20へと向かって行く。

『……すまない。…攻撃を…止められなかった』

去り際に彼が残した一言が、少女を、決壊させた。
少女の両の瞳から、大粒の涙がぽろぽろと零れ落ちる。

「……謝らないで、たのむから……。
 謝らないでよう……。」

リファニアの存在がなければ、このような事態は起こらなかった。
そんな考えは、先ほど必死で否定した、決して口にしてはならない事と、大差はない。
……そう思いつつも、リファニアは自らの内に沸き起こる罪悪感を、止める事は出来なかった。

サイコにグレイブを掴ませ、U-20を後にするリファニア。
心が再びばきばきに折れ曲がりそうになったとしても、歩みが止まる、事は無い。

【行動 : 通信回線継続(シュウジ、リナルド、レイモンド(0)、T-20へ(-1)、残3 】
【位置 : T-20 】
【機体状況 : MRX-010サイコガンダムMk-U
        表面に細かい損傷、右肩アーマー損失、背面に損傷、スラスター損傷(推力70%)
        機体表面に弾痕(細かい被害は……?)、MA時バランサー異常、自爆装置改造済み、MS形態 】
【パイロット状況 : 頬にうっすらと傷痕、右肩軽傷(治療済)、頭軽傷(包帯巻)、左腕重傷(処置済み)、
           ノーマルスーツ着用、メイク済み♪、全身にピリッとした感覚、どうしようもない虚無感 】
【武装:  胸部3連装拡散メガビーム砲(一門破損)、リフレクタービット×5 、大型ヒートグレイブ
      腕部サイコミュ式 ビームソード×1、全身メガビーム砲×多数(左脛二門破損、右肩全門破損) 】
【所持品: 首輪、ノーマルスーツ、ナバン61式拳銃、日記帳とペン、イブのロザリオ
      ディパック、コッペパン2つ、水2g入り2本(1本は空) 、ジオン女性士官の制服、
      抗生物質、換えの包帯やガーゼ、消毒薬 、アレンの遺したギター、トリィの羽根、
      ピンクのエプロン(ポケットに口紅)、白のエプロン 】
【方針 : 『揺るがせてはならない夢』、自分の意志で綺麗に生きる、??? 】
【同盟 : ALL 】
201シュウジ=アサギ ◆T2X.xlTDSU :04/10/26 22:14:56 ID:???
シュウジは、見た。火線に割り込む機体と、その後ろで起きた爆発を。
ゼファーは、見た。自らが発した火線にアビゴルが割り込み、身を挺して二体を守ったが、
分離したVガンダムに弾丸が命中し、それによって起きた爆発を。

『つぅ……馬鹿野郎、殺す気か!
 それに、リファニア! よりにもよって何てとこで戦ってんだ!』
『さ、リナルド、シュウジさん。
 早くここから、離れないと。
 私達まで、死に捉われる訳にはいかないもんね?』
「……?」
〔マスター……?〕
「何が、起きた?」
〔まず、アビゴルがマシンガンから二体を庇いました。
 同時に、ジャベリンがVガンダムの胴体にビームサーベルを刺しましたが、
 コックピットには届かなかったらしく、Vガンダムは脱出しました。
 そこにマシンガンの流れ弾が命中し、爆発しました。〕
「……俺のせいか?」
〔仕方の無かった事です。それよりも早く、移動を。
 死んでしまっては謝罪も何も出来ません。〕
「……わかった。」
とりあえずゼファーの言う事に従い、T−20へ移動した。
そこで一度レーダーを確認したところ、全員が此処にいるようだ。
……サーティア一人を除き。

「……すまな、かった……。
 中止命令が間に合わなかった……。
 …
 …
 すまない……本当に。」

そこで通信回線の内、画面情報の接続を切った。
自分が今どんな表情をしているのか。今あるべき表情なのか自信がなかったからだ。

【行動:T−20へ移動×2(−2)】
【残り行動値:2p】
【位置:T-20】
【機体状況:通信中(ビギ・ナギナ経由でサイコMk−2・アビゴル)対自爆装置改造済み
      機体各所にダメージ、電子機器に被害、頭部右側面に損傷、右脚部損傷、左肩装甲損傷 】
【参加者状況:右足重傷(処置済み) 打撲 左目周辺に切り傷】
【武装:ガンイージ:頭部60mmバルカン砲×2(残弾65%)、ビームサーベル、ビームシールド、ビームライフル(残弾3)
     ビギナ・ギナ:ビームライフル×2(残弾:右85% 左70%) ビームサーベル×2 ビームシールド
             フック付きワイヤー&ウィンチ ヒートナイフ×2 F-90S用クルージングミサイル×1
             ドラム弾装式120mmマシンガン×2(残弾:右4斉射分 左4斉射分)】
【所持品:ディパック(水2g入り0.5本 食料1.5日分 計画書 紙とペン 医療用セット 首輪カバー)ノートPC
     拳銃(残弾16発) 工具セット (ゼファー) コンテナ】
【行動方針:"示す" ムサイ組と道を共に メガバズーカランチャーの改造】
【同盟:???】
202リナルド=グレイス ◆4hTS22brJs :04/10/26 22:41:31 ID:???

ピーッ、ピーッ、ピーッ……

アビゴルのコクピット内に、アラートが響く。

「熱量……上昇?
 ……ッ、爆発する!?」

すぐに機体を変形させ、少し距離を取る。
爆散の跡に残ったのは、パージされたと思われるヴィクトリーのパーツだけだった。

(コア・ファイターが……爆発したのか……)

『……ありがとう、リナルド。
 でもね、自分の身を、もうちょっと労わって。
 私なんかの為に、傷ついてしまうなんて……つまらないよ。
 だってね、私なんて……。

 ……なんでもない。
 もう少しで、本当に、救いのない馬鹿になるところだったかも……』

(…………)

何も言わない。 フォローもしない。
リナルドは、ただ黙ってリファニアの言葉を聞いているだけ。

『ここが閉じられるまで、そう時間はない。…なるべく早く移動しよう。
 ……まだ……見られる未来があるうちは……前を見よう』

『……そうだね。前、見ないとね。
 それってさんざん、私自身で、言ってきたことだもの。
 言ったからには、率先して実行しないと、ね。

 さ、リナルド、シュウジさん。
 早くここから、離れないと。
 私達まで、死に囚われる訳にはいかないもんね?』

明らかに演技の香りが漂う言葉と共に、ジャベリンとサイコガンダムが移動を始める。
アビゴルも、その列に続いてT-20へと向かった。
コクピットに佇むリナルドは、リファニアを励ますべく微笑むでもなく、
逆に厳しい表情でサイコガンダムの背を見つめているだけ。

先程までの彼女はどこへ行ったのだろう?
もし、もし……ここで本当に折れてしまうのであれば。

(俺は、もう少し……)

ここまで来て、戦う理由を失くすわけにはいかない。
戦えなくなってしまうわけにはいかない。
何としても、再び希望として輝いてもらわなければならない。
それが彼女にとって重荷でも。 彼に希望を見せた以上は。
仮に、どちらが先に消えるとしても。

……リナルドは、それだけは考えないようにしていた。
それを考えると、ただでさえ痛む胸が、さらに痛んでしまうのだから。
再び考えなければならなくなったのだろうか。 再び決断しなければならないのだろうか。
今の彼には、そうならないことを切に願うことしかできない。
203リナルド=グレイス ◆4hTS22brJs :04/10/26 22:42:21 ID:???

【行動:変形(-1)、U-20→T-20(-1)】
【位置:T-20】
【残り行動値:2pts.】
【機体状況:MS形態・右肘破損・両肩、背面損傷・一部ディスプレイ不調・
      通信回線→ジャベリン、サイコ、ビギナ・ギナ】
【武装:(MS)ビームカタールx2、右腕ビームカッター、ビームキャノン、デュアルビームガン
      ビームシールド(×)】
【生徒状態:覚醒@ノーマルスーツ・鈍痛・数箇所打撲・一部身体異常……】
【所持品:デイパック、コッペパンx2、水2gx2,8、食糧4日分、私服、拳銃(20)、救急箱
      受信装置(稼動中)、リファニアの私物
   (以下私物)MS状態チェック用ポータブルコンパネ、ノートPC、愛用眼鏡、配線修理用工具一式
      首輪カバーx6、エミュレータ(01)(03)(07)(11)(15)(20)、バッテリーx12】
【行動方針:対処は続く……】
【同盟:20番リファニア 01番シュウジ】
危険区域から一足先に抜けてしばらくしてのことだ。
レーダーにも特殊情報端末の画面にもV-20にいた全員が
こちらに移動してきていると分かったが危険区域に指定され
もう数時間しかないのにもかかわらずU-20に全員が足を止めていた。

(どうしたんだ?何故、そこに止まっている?)

だが、その問いは考えることも無く理解してしまった。

レイモンドとの繋ぎ続けている通信回線から聞こえてくる
会話それが俺に理解させた・・・・・・・・その場の状況を
そして、彼等が居ると思われる座標に一瞬の輝きが見えた
それと同時に特殊情報端末の画面から11番の表示が消える。

(サーティア・・・・・か。)

こうなることは前から分かっていたのかもしれない。
彼女が俺達の前から去ったときから、俺とルイに剣を向けたときから
否、リオンと言う人物が居なくなった時からかもしれない。
彼女が俺に懺悔を話してきたとき、リオンの事を話してくれた
その時は、少しだけでも気が楽になったと言ってくれたが
彼女にとってはそれは一時の納得でしかなかったのだろう。

(俺には、それだけの力しかないのか・・・・・・・・・・・・。)

その時の懺悔を話してくれた人がそれを吹っ切れずに逝ってしまう。
失望、自分への失望、ただそれだけが今の自分に渦巻いていた。

しばらくしてレイモンドのジャベリンとリファニアのサイコガンダムが
こちらに移動してきた。続いてシュウジとリナルドも危険区域から
抜けてきた様だ。

戻ってきたレイモンドに声をかける

「レイモンド。サーティアはやはり・・・・・・・・・・・。
 すまない。こんな時、どんな言葉をかけて良いか分からないんだ。」
 
なにも考えずに話しかけてしまった。せめて気休めだけでもと・・・・・・
感情がそうさせたのだろうがうまく言葉が浮かばない。

ただ・・・・・・・・一言だけ

「お帰り・・・・・・レイモンド。」 

【行動:レイモンドと通信中(-0)筆談(-0)会話(-0)】
【残り行動値:4】
【位置:T-20】
【機体状況:右腕損失、左足膝部損失、右足膝部損失、本体側面装甲各所損傷
      コクピット内機械一部損傷、スラスター各部損失(出力50%低下)
      左手マニュピレーター消滅】
【武装:(本体)ビームアックス、3連装ミサイルランチャー×2(残弾0)(左手甲部)ビームシールド、
     ビームダガー×1本 】
【所持品:ディパック 水2g三本 十字架 聖書 特殊情報端末 チ○ルチョコ20個ほど
     アサルトライフル 予備弾倉5セット 拳銃 予備マガジン5セット
     手榴弾 六個 ナイフ】
【行動方針:情報の整理】
【同盟:01番 シュウジ=アサギ 14番 レイモンド=デリック】
205リーア先生 ◆UktGzzmQ/o :04/10/27 00:01:18 ID:???
第15章 >204 現在 (低容量版マップ)

  .L M,N O.P.Q.R S,T U V,W,X,,Y Z
13◎◎◎◎□◎◎◎□◎◎□◎◎■   □:開かれた空間
14◎◎◎◎◎◎□□◎□◎■◎◎◎   ■:暗礁空域
15◎■◎99◎◎□◎□◎■◎■◎◎   ※:戦場跡
16◎◎□□◎◎◎□◎※□◎◎■■   〓:コロニー
17◎◎■□□□□≠≠◎◎□◎◎■   ▼:小惑星基地
18■◎◎□□□□◎□□◎◎□□◎   ≠:崩壊したコロニー
19■■◎◎◎◎□□□◎◎◎◎◎□   ▽:爆破された小惑星基地
20□■□◎◎□◎◎01◎▼◎◎◎□
21◎※◎□◎◎□◎◎▼◎▼◎□◎   ◎:侵入禁止区域
22◎◎□◎□□◎□◎◎◎▽◎◎□   ×:侵入禁止予告区域
23◎※◎■◎□◎◎□◎▼◎□◎□
24◎◎■■■◎◎◎◎□◎◎◎◎◎   ?:情報のないエリア(侵入禁止)
25??????????91????   門:『ゲート』?(詳細不明)
26???????????????
27??????????門????
28?????????00門門???
29??????????門????


99は管制機能を持つレウルーラ級戦艦。00番はティーチャーのコアブースター。
ZPはゼファー制御のビギナ・ギナ。
91番は管制側所属のギラドーガ1番機、92番は2番機、93番は3番機。
01・07・14・15・20・ZPは同一地点。92と93はN-15の◎印。
02・03・04・05・06・08・09・10・11・12・13・16・17・18・19・21・22・23・24・25・26死亡。
01シュウジ 07ベルク 14レイモンド 15リナルド 20リファニア
206リーア先生 ◆UktGzzmQ/o :04/10/27 00:02:52 ID:???
生徒名簿 
(生存者は現行の機体。死亡者は死亡時の機体。{ }内の機体は初期支給機体)

 01番 シュウジ・アサギ         (32) 男性  ガンイージ
 死亡 シュヴァイザー・シュタイナー (44) 男性  ボリノーク・サマーン
 死亡 イブ・シュウリン          (24) 女性  Vガンダム
 死亡 ユリ・ランブ            (16) 女性  ゴトラタン
 死亡 ダグラス・ロックウード     (17) 男性  ゴトラタン {ケンプファー}
 死亡 ジェイス・カーライル       (28) 男性  ジェガン
 07番 ベルク・クロフォード       (25) 男性  ペズ・バタラ
 死亡 ヨーコ・クロサキ         (17) 女性  ガズR
 死亡 リオン・フライハイ        (15) 男性  ジオング
 死亡 アシッド・ミニングリー      (29) 男性  ギラ・ドーガ
 死亡 サーティア・クワン        (19) 女性  Vガンダム {ジム・ライトアーマー}
 死亡 サブナック・B・アンドラス    (17?)男性  ビグロ
 死亡 ショーン・コネリー        (52) 男性  ガンダム4号機 {ジャベリン}
 14番 レイモンド・デリック       (31) 男性 ジャベリン {ガンイージ}
 15番 リナルド・グレイス        (22) 男性  アビゴル
 死亡 アレン・D・バディアン     (20) 男性  ハンブラビ {ガンダム4号機}
 死亡 フィニー・ディクセン       (18) 女性  ハンブラビ(+ムサイ級戦艦)
 死亡 レニウム・アートナー      (33) 男性  ジ・O
 死亡 ラーズ・フィリー          (16) 女性  ヤクト・ドーガ(クェス機)
 20番 リファニア・ニールセン     (15) 女性  サイコガンダムMk-U
 死亡 アーネスト・マンソン  (20代後半?)男性  ガザD(+旧ザク)
 死亡 リー・ションロン          (22) 男性  ビギナ・ギナ
 死亡 スタンリー・M・イプキス     (33) 男性  クロスボーンガンダムX2
 死亡 ジョシュア・カミンスキー     (31) 男性  ガンダムMk-U(ティターンズカラー)
 死亡 ルイ・フィルセント         (22) 女性  R・ジャジャ
 死亡 シェラザード・ビンス・マクファーソン (28) 女性  キュベレイMk-U(3号機)

 00番(元ティーチャー)リーア・ミノフスキー(??) 女性  コアブースター {ドライセン}
 番外 ゼファーファントム・システム    人工知能  ビギナ・ギナ
リファニアがT-20に到達すると、そこにはレイモンドのジャベリンと、
ベルク=クロフォードのペズ・バタラの姿があった。
少し遅れて、リナルドのアビゴルと、シュウジのガンイージとビギナ・ギナも追いついてくる。
全員無事に、禁止区域に囲まれつつある檻より、抜け出す事が出来た訳だ。

……ただ、一人を除いては。

U-20へ向かって振り返り、その宙域を見つめるリファニア。
サーティアにぶつけられた言葉が、耳に残って離れなかった。
あれほどまでに他者に自分を否定された事など、無かった。
自分の存在が再び揺らぎそうになる事など、無いと思っていたが、
サーティアの言葉の刃は、あまりに鋭かった。

揺らいでは、ならない。揺らぐ事は、許されない。
そう、わかっていながらも。
リファニアは、心を埋め尽くそうとする虚無感に、
必死で抵抗しなければならない程に、追い込まれていた。

>>201
『……すまな、かった……。
 中止命令が間に合わなかった……。
 …
 …
 すまない……本当に。』

シュウジが、言葉をかけてくる。
ざわりと波立つ、リファニアの心。
怒りや憎しみではなく、哀しみに近い感情だったが。
ありとあらゆるネガティブな感情を拾い、サイコミュの戦いへの強制力が強まる。

「……ごめん、今は、黙って。」

シュウジには聴こえないくらいの小声で、そう呟いて。
リファニアは、サイコミュシステムを、停止させる。
サイコミュは、合わせ鏡。
今の自分では、ネガティブな感情が増幅されれば、それに抗いきる自信など、皆無だった。

面をあげて、モニターに映るシュウジの顔を見て返事を返そうとするが、
モニターに映るのは、"SOUND-ONLY"の文字のみだった。
それでもなお、モニターを見つめながら、言葉を返す。

「……あの時の私、向けられた銃口から逃れる事、考えてもいなかった。
 レイモンドさんやシュウジさんが攻撃を加えなかったならば、私の命はあそこでおしまい。
 だからね、謝らなくて、いいよ。ううん、謝らないで。」

ちらりと、リナルドに視線を向ける。
いつになく、険しい表情をしている、リナルド。
頭に酷くモヤがかかっているようで、彼の心を感じ取る事はできなかった。
そっと瞳を閉じて、誰に対してでもなく、あるいは、自らに語りかけるように、言葉を続ける。

「私も、謝らない。サーティアに、謝らない……。
 サーティアの事、わかったつもりになってた私を……サーティアは全力で否定した。
 そんな私には、謝る権利すらないんだなあって……思うよ。

 でもね、私は……認めない。
 認める訳には、いかないの。
 彼女にぶつけられた、言葉を。私を否定する、言葉を。

 私は前に、進もうとしているだけ。
 たとえ、償いきれない罪にまみれようとも……。
 精一杯綺麗に生きようと頑張る事の、どこがいけないの?
 失ったものを取り戻そうとする事の、どこがいけないの? 
 それを否定する事なんて、誰にだって、させやしない……。」

強がりを言うのも、正直疲れちゃったかもね……。
だからといって、歩みを止めてはいけないのが、私の、私達の置かれた立場。

止まったら、私は、二度と、笑えない。

誰も、笑いかけてはくれない。

瞼をゆっくりと開き、通信回線のつながっていなかったベルクの機体との回線を繋げて、
止まった足を進めるべく、全員に行動を告げる。

「……ここに居たって、仕方ないよね。
 向かう先は、ST-17コロニー?
 ……ST-17、コロニーか……。」

ST-17コロニー。
……因縁の、場所。
失った、場所。
そして、出遭った場所。

「……先に、向かってるよ。
 すこしだけ……ほんのすこしだけ、休みたいから。」

そう、自分の意思を告げると、サイコの進路をST-17コロニーへと向けた。
通信可能域から外れない程度の距離を保ちながら。
……人との繋がりが、折れそうな心を支えてくれそうだったから。

【行動 : 通信回線継続(シュウジ、リナルド、レイモンド)(0)、ベルクへの通信回線接続(-1)
      T-20→T-19→T-18へ(-2)、残1 】
【位置 : T-18 】
【機体状況 : MRX-010サイコガンダムMk-U
        表面に細かい損傷、右肩アーマー損失、背面に損傷、スラスター損傷(推力70%)
        機体表面に弾痕(被害不明)、MA時バランサー異常、自爆装置改造済み、MS形態、サイコミュカット 】
【パイロット状況 : 頬にうっすらと傷痕、右肩軽傷(治療済)、頭軽傷(包帯巻)、左腕重傷(処置済み)、
           ノーマルスーツ着用、メイク済み♪、全身にモヤッとした感覚、虚無感に抗う 】
【武装:  胸部3連装拡散メガビーム砲(一門破損)、リフレクタービット×5 、大型ヒートグレイブ
      腕部サイコミュ式 ビームソード×1、全身メガビーム砲×多数(左脛二門破損、右肩全門破損) 】
【所持品: 首輪、ノーマルスーツ、ナバン61式拳銃、日記帳とペン、イブのロザリオ
      ディパック、コッペパン2つ、水2g入り2本(1本は空) 、ジオン女性士官の制服、
      抗生物質、換えの包帯やガーゼ、消毒薬 、アレンの遺したギター、トリィの羽根、
      ピンクのエプロン(ポケットに口紅)、白のエプロン 】
【方針 : 『揺るがせてはならない夢』、自分の意志で綺麗に生きる、??? 】
【同盟 : ALL 】
T-20。

到着した俺をベルクが迎えてくれた。
まだ俺には、こうして迎えてくれる仲間がいる。
その有り難みを感じつつ、少しだけ小さく笑みを返す。
…本当ならばベルクに『気にするな』とでも言いたかったが、生憎、今の俺にはその言葉を
口にするだけの余裕がなかった。

…俺のあとに続いて、リファニアのサイコガンダムがやってくるのが、レーダーで確認できた。
しかし俺は、それを自分の目で見る事ができなかった。
結果として、サーティアを殺した事。
その後ろめたい感情が、俺にそうさせていた。

本来ならそんな事を感じる必要など、全くない筈だ。
実際、ビームサーベルを突き出すその瞬間まで、俺の中に迷いや戸惑いなど欠片もなかった。
何故あそこで、俺は攻撃を止めようとしたのか。
何故リファニアに対して、こんなにも申し訳ない気持ちになるのか。

…たしかにリファニアは、サーティアを信じてはいた。
だが、それが今のこの気持ちに繋がっているとは思わない。
むしろ感じるとすれば、驚愕とか、そういう類だろう。
あの局面でサーティアを信じ続けるのは、殆ど自殺行為に等しい。
事実、Vガンダムは何の躊躇もなくサイコガンダムに攻撃を続けていたからだ。

俺の見つめるレーダーに次々と反応が現れる。
まずはどういう原理で動いているのかは知らないが、ビギナ・ギナとガンイージの2機。
そして俺の意見を容れてくれたらしい、リナルド=グレイスのアビゴル。
これで、生き残っている参加者は再び全員が集まったわけだ。

それを見計らったかのように、リファニアから通信が入った。

(……その通りだ。本来なら当然の事をした俺が謝る必要はない……筈…だ。
 なのに、何故、俺は…?)

レーダーを見つめたまま、取り留めもなく考える。
何も見出せないまま、時間だけが過ぎていく。

(続く)
通信機から、またリファニアの声が聞こえる。
相手を特定するわけではなく、淡々と話し続けるリファニア。
そしてその中のある言葉に、俺は目を見開いた。

『精一杯綺麗に生きようと頑張る事の、どこがいけないの?』

(精一杯綺麗に生きようと…頑張る事……)

そのまま、暫くピクリとも動かずにいた。


…何となく、分かった。
俺のこの、後ろめたい気持ちのわけが。

(…俺は……リファニアの生き方が、眩しいんだ。自分が殺される危険を犯して、それでも
 その相手を信じられるリファニアの…綺麗に生きようと頑張る姿が…)

リファニアは、たしかに俺と同じ戦士だ。
しかし、その根本にあるものは全く違う。

俺はあくまでも、敵は倒すという前提の元に周囲を見る。
…そこに信じるという要素は殆ど含まれない。

サーティアや、その他死んでいった参加者。
それだけではなく、元は敵だったリナルド=グレイスやシュウジ。
リファニアはそんな個々だけではなく、もっと、大きいもの…。
もしかしたら、人間そのものを信じようとしているのではないだろうか?
普通なら戦場において最も否定されるべきものを、リファニアは信じているのではないか? 

些か誇大な考えかもしれないが、あの少女が時折見せる生きる為の光は、俺にその誇大な考えすら
納得させるものがあった。

この考えを聞いたら、おそらくリファニアはそれを否定するだろう。
彼女は自分の大きさを、良くて人並みと言っているし、それはある面では事実であろうからだ。
だがリファニアが今の生き方を貫けば、きっと彼女はもっと大きな人間になれる。
多分、俺の誇大な考えが真実になるほどに。

だからこそ、俺はリファニアに生き残ってほしいと思うのだ。

(続く)
そのリファニアは、ST-17という行き先を告げて移動していく。
当然ながら、俺とベルクも行かなければならないだろう。

リナルド=グレイスが、首輪カバーを完成させるならば受け取らなければならないし、もしそう
でなくとも、俺とベルクの持つ首輪カバーを渡さなければならないからだ。
そして、俺自身が少し休みたいという欲求もないではなかった。
要塞を出てから色々な事があった。
アシッドとの戦闘。
ルイと、ア−ネストの死。
様々な交渉と、慣れない作業。
…正直、心身が休息を望んでいた。

アビゴルに再び通信を繋ぐ。
管理者側を刺激しないよう、言葉を選ぶ。

「リナルド=グレイス。先程の休戦の件だが、そうしてもらえると有り難い。
 …前世紀の戦争には、例え戦闘中であっても休戦日というものを設けて、敵味方が交流したと
 いうものもあったらしいからな。いわゆる、騎士道精神、というものだったらしいが…。

 残った時間は少ないが、だが温故知新というのも悪くはないと思うが?
 …昔、俺がいた軍も似たような気風を持っていたから、俺には違和感はないしな」

続いてベルクに声をかける。

「じゃあベルク。さっきのお前の勧め通りに、少しだけ休息しようと思う。
 敵と一緒というのは気分良くないかもしれないが、残された空域が少ないから我慢してくれ」

そう言うと、サイコガンダムを追い抜く勢いでタイヤを走らせていった。

途中でそのサイコガンダムに追い付いた。
そして、今度はその巨体を自分の目で見る事ができる。
それに多少の満足感を抱きつつ、通信を送った。

「リファニア=ニ−ルセン。機体の調子はどうだ?先程の戦闘で至近距離から撃たれて
 いたが…。飛行状態などに異常はないか?」

遠くにコロニーが見える。
そして…あのコロニーで、全ての準備を整えなければならない。
少しの休息の後で。

【行動:ペズ・バタラ、サイコガンダムへの回線継続(0)アビゴルに回線接続(−1)
移動ボーナスを使いT-18に移動(−1)】
【残り行動値:2p】
【位置:T-20→T-19→T-18】
【機体状況:右腕消失、頭部バルカン砲1門損傷、モニター一部使用不能
      右肩装甲損傷、左肘ジョイント負荷(40%)、胸部及び腹部
     装甲に凹みと歪み、ショットランサー1基消失
 アインラッド:打撃による回転不良(小)】
【参加者状況:左肩負傷(処置)、左眼球裂傷(処置)、右手首切断(処置)
       右肋骨骨折、左大腿骨にひび】
【武装:頭部バルカン砲×1、ビームサーベル×1、ショットランサー×1
       ビームシールド
 アインラッド 武装:ビームキャノン×2(84%)、9連装ミサイルポッド】
【所持品:ディパック、水2?入り1本、食料21/3日分、シャベル(小)、蕎麦団子1個、
     拳銃と自動小銃と弾倉、タッパーのカレー4つ、保冷シート2枚、書類の束、ペン2本
     首輪カバー1つ、ディスク、トリモチ銃(40%)】
【行動方針:今は行動あるのみ、少しだけ休息を…】
【同盟:ベルク、リファニア、シュウジ(?)】
212シュウジ=アサギ ◆T2X.xlTDSU :04/10/27 22:15:04 ID:???
>>207-208

リファニアからの返信。その間シュウジは、ヘルメットを無為で、両手で顔を覆ったまま、沈黙していた。
途中、通信が後半に入ったときに一瞬肩が僅かに動いたが、それ以外の動きは全く見せなかった。
だがそれも数分の間で、すぐに顔を上げると、通信回線を元に戻した。
そして、誰にも聞こえないぐらいに小さな声で、一人呟いた。

「強いんだな……例えそれが、強がりでも……。」
『……ここに居たって、仕方ないよね。
 向かう先は、ST-17コロニー?
 ……ST-17、コロニーか……。』
「……!」
続いて入ったリファニアからの通信に、一瞬動きが止まる。

「ST−17……。そうか。そこしかないからな……。
 そうだな……仕方がないか……。
 しかし……まぁいい。
 しかし行くならT−17の方がいいだろう。
 S−17の宇宙港は俺の所為で大破しているから……な。」
何とか平静を装ったつもりだったが、少し声が震えていた。
見ると、ここから移動するためにコントロールスティックを操作する手も震えていた。足もだ。
むしろ、全身が震えているのかも知れない。

(……恐れている……俺は恐れている……。あの場所に向かう事を……。
 出来る事ならもう行きたくない場所だったが……。
 結局、戻る事になったか……。)

ST−17コロニー。それはシュウジにとって、もっとも特別な場所だった。
すべての始まりの場所であり、
もっとも多くの時間を過ごした場所であり、
愛した者の故郷であり、
その者との別れの場所であり、
仲間との別れの場所であり、
大きな過ちを犯した場所。
そして、シュウジが今もっとも訪れたくない場所でもあった。


【行動:T-20→T-19→T-18へ移動(−4)】
【残り行動値:0p】
【位置:T-20】
【機体状況:通信中(ビギ・ナギナ経由でサイコMk−2・アビゴル)対自爆装置改造済み
      機体各所にダメージ、電子機器に被害、頭部右側面に損傷、右脚部損傷、左肩装甲損傷 】
【参加者状況:右足重傷(処置済み) 打撲 左目周辺に切り傷】
【武装:ガンイージ:頭部60mmバルカン砲×2(残弾65%)、ビームサーベル、ビームシールド、ビームライフル(残弾3)
     ビギナ・ギナ:ビームライフル×2(残弾:右85% 左70%) ビームサーベル×2 ビームシールド
             フック付きワイヤー&ウィンチ ヒートナイフ×2 F-90S用クルージングミサイル×1
             ドラム弾装式120mmマシンガン×2(残弾:右4斉射分 左4斉射分)】
【所持品:ディパック(水2g入り0.5本 食料1.5日分 計画書 紙とペン 医療用セット 首輪カバー)ノートPC
     拳銃(残弾16発) 工具セット (ゼファー) コンテナ】
【行動方針:"示す" ムサイ組と道を共に メガバズーカランチャーの改造 ST−17へ】
【同盟:???】
迎えの言葉の後、レイモンドは笑顔で居てくれた。
だが、感じるその笑顔の中に悲しみや悔しさが混ざっていることが・・・・
その笑顔は俺への精一杯の気遣いなのだろう。

>>208

(やはりあの崩壊したコロニーに向かう様だな。
 まあ、其処しかもう行く意味が無いから当然か。)

集まってからしばらくしてサイコガンダムが移動を始めると
それに続いて次々と移動を始めていた。

『じゃあベルク。さっきのお前の勧め通りに、少しだけ休息しようと思う。
 敵と一緒というのは気分良くないかもしれないが、残された空域が少ないから我慢してくれ』

そう言うとレイモンドも移動を始めた。
俺もそれに続き移動を始める。

「そうだな。空を飛びつづける鳥でさえも時には枝に止まり
 羽を休ませる。みんなも同じような状態だろう。
 今は、許される時間の限り休むといい・・・・・・
 再び、空へ飛びたてる様その羽を休められる
 いろんな思いの詰まった俺達の枝で・・・・その時間だけは・・・
 安らぎを・・・・。」

【行動:レイモンドとリファニアに通信中(-1)筆談(-0)会話(-0)
    T-20→T-19→T-18へ移動(-2)】
【残り行動値:1】
【位置:T-18】
【機体状況:右腕損失、左足膝部損失、右足膝部損失、本体側面装甲各所損傷
      コクピット内機械一部損傷、スラスター各部損失(出力50%低下)
      左手マニュピレーター消滅】
【武装:(本体)ビームアックス、3連装ミサイルランチャー×2(残弾0)(左手甲部)ビームシールド、
     ビームダガー×1本 】
【所持品:ディパック 水2g三本 十字架 聖書 特殊情報端末 チ○ルチョコ20個ほど
     アサルトライフル 予備弾倉5セット 拳銃 予備マガジン5セット
     手榴弾 六個 ナイフ】
【行動方針:情報の整理】
【同盟:01番 シュウジ=アサギ 14番 レイモンド=デリック】
214艦長先生代理 ◆UktGzzmQ/o :04/10/31 00:07:58 ID:???
『定期放送の時間である。

 前回の放送から今までの間に、一名の生徒の脱落が確認されている。
 出席番号11番、サーティア・クワンだ。
 諸君らには、今後もこの調子で励んで欲しい。

 今回指定される立ち入り禁止区域は次の8箇所である。
 『C-13』 『E-01』 『G-10』 『L-19』
 『R-07』 『T-18』 『U-02』 『Z-16』

 以上だ』

【管制スタッフの行動:定期放送(−2p)】
【位置:管制艦O-15】
【残り行動値:∞】
【管制スタッフの行動方針:管理をやり遂げる】
215リーア先生 ◆UktGzzmQ/o :04/10/31 00:08:39 ID:???
第15章 >215 現在 (低容量版マップ)

  .L M,N O.P.Q.R S,T U V,W,X,,Y Z
13◎◎◎◎□◎◎◎□◎◎□◎◎■   □:開かれた空間
14◎◎◎◎◎◎□□◎□◎■◎◎◎   ■:暗礁空域
15◎■◎99◎◎□◎□◎■◎■◎◎   ※:戦場跡
16◎◎□□◎◎◎□◎※□◎◎■×   〓:コロニー
17◎◎■□□□□≠≠◎◎□◎◎■   ▼:小惑星基地
18■◎◎□□□□◎×□◎◎□□◎   ≠:崩壊したコロニー
19×■◎◎◎◎□□□◎◎◎◎◎□   ▽:爆破された小惑星基地
20□■□◎◎□◎◎15◎▼◎◎◎□
21◎※◎□◎◎□◎◎▼◎▼◎□◎   ◎:侵入禁止区域
22◎◎□◎□□◎□◎◎◎▽◎◎□   ×:侵入禁止予告区域
23◎※◎■◎□◎◎□◎▼◎□◎□
24◎◎■■■◎◎◎◎91◎◎◎◎◎   ?:情報のないエリア(侵入禁止)
25???????????????   門:『ゲート』?(詳細不明)
26???????????????
27??????????門????
28?????????00門門???
29??????????門????


99は管制機能を持つレウルーラ級戦艦。00番はティーチャーのコアブースター。
ZPはゼファー制御のビギナ・ギナ。91番は管制側所属のギラドーガ1番機。
01・07・14・20・ZPはT-18の×印。
02・03・04・05・06・08・09・10・11・12・13・16・17・18・19・21・22・23・24・25・26死亡。
01シュウジ 07ベルク 14レイモンド 15リナルド 20リファニア
216リーア先生 ◆UktGzzmQ/o :04/10/31 00:09:29 ID:???
……管理官の青年は、緊張していた。
反抗の疑惑を持たれた「ティーチャー」リーア・ミノフスキーが、この「ゲート」にやってくるのだ。
そして……当面、その行動を監視する任を任されたのが、この青年だった。
緊張する面々の前で、港側からの誘導に素直に従い、コアブースターが到着する。

港湾エリアに空気が満たされると同時に、青年管理官は武装兵士を連れてコアブースターに近寄った。
同時に、コアブースターのコクピットが開き、若い女性が顔を出す。

「……リーア・ミノフスキーですね?」
「ええ、そうよ。それにしても物々しい出迎えね」
「貴殿にかけられた疑惑を思えば無理もないでしょう。
 変な行動を取った時には、即座に射殺しても良いといわれています」

青年はそう言いながら、服の上から、ポケットの中にあるスイッチを確かめた。
射殺するまでもなく、このスイッチを一押しすれば、彼女の首輪は爆破される。
念のためと、上の人間から託された切り札であった。

「疑惑ねぇ……。艦長が何を報告したか知らないけど、私は別に反抗したつもりないんだけど」
三色のハロを撫でながら、その「疑惑の彼女」は柔らかな微笑みを浮かべた。
「むしろ、私としては艦長を告発したいのよね。上司への反抗の罪状で。
 上のヒトたちに申し開きして、早く管理任務に復帰したいわ。艦長の拘束命令も持って」
「あなたは、まだ『ティーチャー』を続けるつもり……だと?」
「そうよ。だから、その物騒な銃を下ろさせて、ね?」

ニッコリ微笑み、彼女はコアブースターから降り立つ。紫と黄色のハロも無言で彼女に続く。

「コアブースターには、燃料だけ補給しといて。申し開きが済んだら直ぐにレウルーラに戻るつもりだから。
 燃料補給以外はいらないわ、むしろ変なコトしたら怒る怒るわよ? ハロR、お留守番お願いね」
さも当然のように彼女は兵士たちに命令する。
コアブースターのコクピットからは、赤いハロが元気に答える。
「マカセロ! ガッテンデイ!」
「じゃあ、偉いヒトたちの所に行く前に、医務室と、情報端末のある部屋に連れてって。
 折れたアバラにちゃんとした治療して欲しいし、鎮痛剤も貰いたいし。
 今の進行状況知らないと、申し開きするにも説得力なくなっちゃうし」

銃を向けられているにも関わらず、平然としている彼女。
その様子に青年も兵士たちも、「ひょっとして本当に彼女は反抗なんてしてないのでは?」と感じていた。

「……まあいいでしょう。こちらも、急いでつれて来いとは言われてませんしね。
 ただ、監視は常に複数でさせて頂きますよ」

青年と兵士たちは、髑髏を抱えた彼女の背に銃を突きつけた形のまま、彼女を手近な医務室へと連れて行く。
半信半疑、疑心暗鬼の状態のままで。


【リーア元先生の行動:ゲート入港(−1p)、会話(0p)、医務室へ移動(−1p)】
【管制スタッフの行動:ギラドーガ1番機移動(V-25→U-25→U-24)(−2p)
           ギラドーガ2番機3番機移動(N-15→O-15)(−2p)
           ギラドーガ2番機3番機、レウルーラ着艦(−2p)】
【位置:管制艦O-15、リーア元先生U-28(ゲート内)、ギラドーガ1番機U-24】
【戦力状況:管制艦レウルーラにギラドーガ2〜6番機残留 全機完全武装(通常兵装)
      メガライダーも一機保有】
【残り行動値:∞】
【リーア先生の行動方針:??? 】
【管制スタッフの行動方針:管理をやり遂げる、1番機帰還】
217通常の名無しさんの3倍:04/10/31 07:30:06 ID:???
ST-17コロニーで態勢を整える事に、みんなは同意してくれたようだ。
もっとも、そこ以外に適した場所がある訳でもないのだが。

リナルドが遅れている事が気になって仕方なかったが、そろそろ疲労が限界だった。
もともと、全くの健康体ではないのだ。その上に、連戦に継ぐ連戦だ。
倒れない方が不思議なのではというくらいに、ふらついていた。

>>211
レイモンドが、愛機に少なからず被害を被ったリファニアを、気遣ってくる。
彼との間に、互いに確かな信頼感が芽生えつつある事を感じて、
多くの仲間を失った喪失感が、少しだけ、癒された気がした。

「……う〜ん、推進力が低下しているけど、実はもともと損傷してて、こんなものだったの。
 殆どの戦いはそれで乗り越えてきたんだから、大丈夫だよ。推進剤の漏れもないみたいだしね。
 壊れたのは、応急修理した所が殆どみたい。
 ……ああ、リナルドがせっかく直してくれたのになあ。」

最後にはぁ、と、ため息ひとつ。
点灯している細かいチェックランプについては、レイモンドに言わなかった。
エネルギー伝達系に若干の損傷がでているらしかったが、
使用可能なメガ粒子砲の数などは、以前と殆どかわらないように思えたからだ。
……それに、それを直している時間など、すでにありはしないのだ。

>>212
シュウジの声は、かすかに震えていた。
……魂の震えは、それ以上だっただろう。
自分も何度と無く味わった悪寒を、彼のなかに感じたような気がした。

そっか……。
シュウジさんは、このコロニーで、大切な人を死なせてしまったんだよね……。
私、以前に、直接じゃないけど、その古傷を抉るような事言っちゃったんだよね……。
魂を殺しあうような戦いだけは避けなきゃいけないって、自分でそう誓っていたはずなのに。

>>213
繋がったままの通信回線から聴こえてくる、ベルクとレイモンドの遣り取り。
彼らの強い信頼感があらわれているようだった。
ベルクの言葉への感想を述べるリファニア。
からかいも含まれていたが、その声は、あまりわだかまりを感じさせない穏やかなものだった。

「……レイモンドさんもだけど、あなたたちって、詩人コンビ?
 でも、その優しい表現、キライじゃないよ。
 許される時間、そう多くは……。」

>>214
だが、そのリファニアの言葉を中断して、定期放送が入る。
"彼女"の名が呼ばれる時、リファニアは一瞬、身体を震わせてしまった。
そして、次の進入禁止区域は、他ならぬ、この場所だ。
……まるで管制側が、残った参加者達を追い立てているかのようだった。

「……そう多くは、ないけど。
 定期放送が鳴った直後だもの、休むなら、今すぐがタイミング的に良いと思う。
 私、シュウジさんの言ったとおり、T-17に向かうから。
 ……そこでちょっとだけ、休ませてもらうね。」

そう、言いかけた言葉を続けて、T-17へと機体を向かわせた。
そこは、かつて一つの決闘が行われた場所。
……その時の光景が、目の前に蘇ってくる。
アレンの最後の言葉、「この殺し合いに参加できて良かった」という言葉が再生される。

……考えてみると、けっこうとんでもない人だったのよね。
それでも、私には、私達ミョーコウのクルーにとっては……優しかったのよ。
私は、彼の何一つをも、否定しない。
彼が罪を犯したのなら、その罪は、私自身の罪。

私は、自分で犯した罪を含めて、どれだけ贖罪しなきゃいけないんだろう。
それもこれも、全ては生きていなければできやしない事。

リナルドの居る宙域を振り返る。

リナルド、早く傍に来てね。
リナルドも、贖罪しなきゃいけないんだから。
……私の傍で、私の魂を暖めてくれなきゃ、いけないんだから。
もし、途中で居なくなってしまったら、私、泣いてなんかあげないよ。
……そんな事で逃げようとしたら、私、一生許さないんだから。

再び前方へと向き直り。

T-17に進入したリファニアは、港より機体をコロニーに侵入させる。
まずは、いつ動いてもいいように、補給作業くらいは終えておいたほうがいいだろう。
ハンガーデッキに侵入し、補給チューブをサイコへと繋ぐ。
推進剤とエアが機体に満たされていくのをコックピット内で待っているうちに、急激に、眠気が襲ってきた。

……最後に眠ったのは、いつのことだったか。目覚めてから、どれだけの事が起きたのか。
おそらく、自分にとって最も長い「一日」だった事は、間違いないだろう。
そんな事を考えていと、意識がだんだんと、闇へと沈んでいった。

……おはようは、そう遠く無いよ。
だからせめて、今は何も考えないで休もうよ。
ゆっくりお休み、リファニア=ニールセン……。

【行動 : 通信回線継続(シュウジ、レイモンド、ベルク)(0)、T-17へ(-1)、リナルドとの通信可能域オーバー(0)
      港へ進入(-1)、ハンガーデッキへ(-1)、補給(-1)、ダウン(0)、残0 】
【位置 : T-17 】
【機体状況 : MRX-010サイコガンダムMk-U
        表面に細かい損傷、右肩アーマー損失、背面に損傷、スラスター損傷(推力70%)
        機体表面に弾痕(被害不明)、MA時バランサー異常、自爆装置改造済み、MS形態、サイコミュカット 】
【パイロット状況 : 頬にうっすらと傷痕、右肩軽傷(治療済)、頭軽傷(包帯巻)、左腕重傷(処置済み)、
           ノーマルスーツ着用、メイク済み♪、全身にモヤッとした感覚、おやすみ…… 】
【武装:  胸部3連装拡散メガビーム砲(一門破損)、リフレクタービット×5 、大型ヒートグレイブ
      腕部サイコミュ式 ビームソード×1、全身メガビーム砲×多数(左脛二門破損、右肩全門破損) 】
【所持品: 首輪、ノーマルスーツ、ナバン61式拳銃、日記帳とペン、イブのロザリオ
      ディパック、コッペパン2つ、水2g入り2本(1本は空) 、ジオン女性士官の制服、
      抗生物質、換えの包帯やガーゼ、消毒薬 、アレンの遺したギター、トリィの羽根、
      ピンクのエプロン(ポケットに口紅)、白のエプロン 】
【方針 : 『揺るがせてはならない夢』、自分の意志で綺麗に生きる、??? 】
【同盟 : ALL 】
僅かな間を置いて、リファニアがサイコガンダムの状況を知らせてくる。
…聞いた限りではサイコガンダムは、致命的な傷は1つも負っていないようだ。
もう1度その機体を眺めてみる。
俺にはサイコガンダムのようなMSの事は殆ど分からないが、確かに外から見た感じでも、飛行
に極端な支障が出ているようには見えなかった。

リファニアには整備の知識はないらしいし、俺のプチモビの整備経験など、欠片の役にも立た
ないのは百も承知だ。
時間があるのなら、またリナルド=グレイスやシュウジに整備してもらうのもいいのだろうが、
あの崩壊したコロニーでは資材が揃うかどうかも微妙なところか。
…だが、別に直らなくてもいいのだ。
あと少しだけ……もう1、2回だけ戦闘ができれば、それで十分だ。
俺たちの選択が吉と出ようが凶と出ようが、このプログラムはもうすぐ終わる。

願わくばその時。
プログラムの結末を自分の目で見れるように……俺は全霊をかけてジャベリンで宇宙を駆ける。

そんな事を思いながらコンソールスティックの感触を確かめていた時、珍しく(?)リファニア
がベルクに話しかけている声が聞こえた。

(詩人、か。たしかにベルクは、そういった趣のある言葉を時々使うな…)

先程俺が書リファニアに書いて見せた詩は、俺の記憶に残っている他人のものを書いただけだ。
それとは違いベルクの言葉は、その時その場面で見た事、感じた事、それが自然と口から出てくる
ような印象を受ける。
それは、何者にも犯されていない、純白の言葉。
そしてそれは、時として物事の本質を鋭く見抜く力にもなり得る。
ベルクがプログラムに参加する前は何をやっていたのかは知らないが、俺にはベルクやリファニア
の素直な言葉が、少しだけ羨ましい。

リファニアに軽く声をかけようとした時、またも定期放送が入ってきた。
しかも御丁寧に、ここをピンポイントで指定してきた。
俺は無言でヘルメットの上から頭を掻く仕草をする。

(まあ…。わざと狙ってきていると見てしまうのも、仕方がないな)

先程の放送と違い、今度は焦る…というか、注意するような事柄も見当たらない。
既にリファニアがST-17への移動を宣言している為、得に行き先を論議する必要もない。
管理者側に追い立てられているような気分もしないではないが、そんな事を気にしていたら、奴等
への反攻なんてできはしない。
モニターに映るベルクに目で合図をして頷くと、先に行ったサイコガンダムのあとを追い掛ける
ようにコロニーの中へ入っていった。

(続く)
崩壊しているコロニーの割に、港はさほど破壊されてなく、その機能を辛うじて(?)維持して
いるようだ。
進んでいくと、先に入ったサイコガンダムが推進剤の補給をしているのが確認できる。
俺は視線を移して、ジャベリンの推進剤の残量をチェックした。

(そうだな…。ジャベリンも補給しておいた方がいいか)

要塞を出てから、戦闘、そして長距離の移動をしてきた。
小型MSだけに、戦闘行動が長引くと推進剤の消費も早い。
今後の憂いを1つでも無くす為には、ここで補給するしかないだろう。
タイヤを港に止めるとジャベリンを降ろし、サイコガンダムから少し離れたハンガーに着けた。

早速チューブをジャベリンに繋ぎ、補給を開始する。

アシッドとの戦闘で、機体の所々が歪んではいるが、運良くタンクに亀裂が入るような事にはなら
なかったらしい。
取りあえず、これで推進剤切れで漂流…などという目に遭わずに済みそうだ。

その様子を横目に見ながら、俺はデッキの壁に寄り掛かった。
これで…久し振りに、何も考える事なく休める。

《よー。おめえ、よくもまあそんなナリで生き残ってこれたなぁ?》

頭に響く久々の声。
……少し休ませてくれ(泣)

【行動:ペズ・バタラ、サイコガンダム、アビゴルへの回線継続(0)T-17に移動(−1)、
港のハンガーへ移動(−1)、ジャベリンに補給(−1)】
【残り行動値:1p】
【位置:T-18→T-17】
【機体状況:右腕消失、頭部バルカン砲1門損傷、モニター一部使用不能
      右肩装甲損傷、左肘ジョイント負荷(40%)、胸部及び腹部
     装甲に凹みと歪み、ショットランサー1基消失
 アインラッド:打撃による回転不良(小)】
【参加者状況:左肩負傷(処置)、左眼球裂傷(処置)、右手首切断(処置)
       右肋骨骨折、左大腿骨にひび】
【武装:頭部バルカン砲×1、ビームサーベル×1、ショットランサー×1
       ビームシールド
 アインラッド 武装:ビームキャノン×2(84%)、9連装ミサイルポッド】
【所持品:ディパック、水2?入り1本、食料21/3日分、シャベル(小)、蕎麦団子1個、
     拳銃と自動小銃と弾倉、タッパーのカレー4つ、保冷シート2枚、書類の束、ペン2本
     首輪カバー1つ、ディスク、トリモチ銃(40%)】
【行動方針:今は行動あるのみ、少しだけ休息を…】
【同盟:ベルク、リファニア、シュウジ(?)】
222シュウジ=アサギ ◆T2X.xlTDSU :04/10/31 20:55:27 ID:???
相変わらず、コロニーにはいる事を拒むように小刻みに体を震わせながら機体を操作するシュウジ。
だが、彼の意志に反し、機体は進み続ける。
さらに、定期放送という追い打ちが掛かった。

>>214

「チッ……。狙い澄ましたかのように……。」
〔意図的な物を感じずにはいられませんね。〕
「昨日の今日だからな。本当に、俺達はあいつらに信用がない。
 そろそろ……か。」
コロニーが近づいてきたので、進路を変更し、港湾部へと機体を侵入させた。
機体をハンガーに着け、港湾部を見回してみると、既にサイコMK−2とジャベリンが補給作業に入っていた。
こちらはと言うと、ビギナ・ギナの方は目立った戦闘は行っていなかったので問題なかったが、
ガンイージの方は補給が必要そうだった。
続いて、修理すべき部位はないかと二人に言おうとしたが、モニターの向こうの少女は既に眠っていた。

「やれやれ……信じすぎだぞ?とりあえず、出来る事をやっておくか。」
そう言うとコックピットハッチを開け、外に出るとビギナ・ギナにチューブを繋げた。
そして、小惑星基地から持ってきたコンテナを開く。

「あれと……あれと、あれ。よし、全部有るな。
 さて……さっさと済ませるか……。」
材料が全てある事を確認すると、早速作業に取りかかった。
疲労がないかというと、そうでもない。
ここまでずっと作業やら交渉やら作業やらで、全然休息を取った試しはなかった。
が、眠る事も出来そうになかったのだ。
眠ったら、嫌な夢を見そうだったから。
だがら、今は作業に没頭する事にした。


【行動:T-17へ移動(−2)補給作業(−1)メガバズーカランチャー改造作業(−1)】
【残り行動値:0p】
【位置:T-17 コロニー内港湾部】
【機体状況:通信中(ビギ・ナギナ経由でサイコMk−2・アビゴル)対自爆装置改造済み
      機体各所にダメージ、電子機器に被害、頭部右側面に損傷、右脚部損傷、左肩装甲損傷 】
【参加者状況:右足重傷(処置済み) 打撲 左目周辺に切り傷 疲労】
【武装:ガンイージ:頭部60mmバルカン砲×2(残弾65%)、ビームサーベル、ビームシールド、ビームライフル(残弾3)
     ビギナ・ギナ:ビームライフル×2(残弾:右85% 左70%) ビームサーベル×2 ビームシールド
             フック付きワイヤー&ウィンチ ヒートナイフ×2 F-90S用クルージングミサイル×1
             ドラム弾装式120mmマシンガン×2(残弾:右4斉射分 左4斉射分)】
【所持品:ディパック(水2g入り0.5本 食料1.5日分 計画書 紙とペン 医療用セット 首輪カバー)ノートPC
     拳銃(残弾16発) 工具セット (ゼファー) 】
【行動方針:"示す" ムサイ組と道を共に メガバズーカランチャーの改造】
【同盟:???】
223リナルド=グレイス ◆4hTS22brJs :04/10/31 21:00:43 ID:???

『……ここに居たって、仕方ないよね。
 向かう先は、ST-17コロニー?
 ……ST-17、コロニーか……』

あのコロニーへ。 再び戻る時が来たのか。
リナルドにとっての、戦いの始まりの場所へ。

(皆……覚えてる。
 俺は……、結局あそこに戻るのか)

長い苦しみと、安らぎの繰り返しが始まった場所。
彼女が、大切なものを失った場所。
……彼女の、大切なものを奪った場所。

『……先に、向かってるよ。
 すこしだけ……ほんのすこしだけ、休みたいから』

やはり、どうしても思い起こしてしまうのだろう。
リナルドにとっても、それは同じだ。 意味合いは違うにしても。
だが、既にそこしか拠点は残されていない。
切り札を隠しておくためには、コロニーに向かうしかなかった。

『リナルド=グレイス。先程の休戦の件だが、そうしてもらえると有り難い。
 …前世紀の戦争には、例え戦闘中であっても休戦日というものを設けて、敵味方が交流したと
 いうものもあったらしいからな。いわゆる、騎士道精神、というものだったらしいが…。

 残った時間は少ないが、だが温故知新というのも悪くはないと思うが?
 …昔、俺がいた軍も似たような気風を持っていたから、俺には違和感はないしな』

「ん……? ああ……、わかった。
 こちらもそれで構わない」

他の機体がエリアを去るのを見ながら、リナルドも後に続いた。
じきに懐かしい、そしてある意味では忌まわしくもあるコロニーが視界に広がる。
全機とも、T-17のハンガーに入るようだ。
アビゴルもそれに続き、サイコガンダムの隣に機体を止めると、
リナルドも先着に倣って補給を始めるべくコクピットを出た。

【行動:T-20→T-19→T-18→T-17(-3)、入港・ハンガーへ(-1)】
【位置:T-17・コロニー内・ハンガー】
【残り行動値:0pts.】
【機体状況:MS形態・右肘破損・両肩、背面損傷・一部ディスプレイ不調・
      通信回線→ジャベリン、サイコ、ビギナ・ギナ】
【武装:(MS)ビームカタールx2、右腕ビームカッター、ビームキャノン、デュアルビームガン
      ビームシールド(×)】
【生徒状態:覚醒@ノーマルスーツ・鈍痛・数箇所打撲・一部身体異常……】
【所持品:デイパック、コッペパンx2、水2gx2,8、食糧4日分、私服、拳銃(20)、救急箱
      受信装置(稼動中)、リファニアの私物
   (以下私物)MS状態チェック用ポータブルコンパネ、ノートPC、愛用眼鏡、配線修理用工具一式
      首輪カバーx6、エミュレータ(01)(03)(07)(11)(15)(20)、バッテリーx12】
【行動方針:対処は続く……】
【同盟:20番リファニア 01番シュウジ】
近づいてくる崩壊したコロニー。
否、自分で動いているのだからコロニーに近づ居ているのは俺の方だ。
どうやら極度の緊張感の開放とこれまでの疲れから感覚さえも鈍ってきたらしい。
一度目を閉じ、しばらくしてから目蓋を空ける。
一定時間、五感の一つを停止させることにより多少なりとも、
感覚の正常化を促すことが出来た。

『……レイモンドさんもだけど、あなたたちって、詩人コンビ?
 でも、その優しい表現、キライじゃないよ。
 許される時間、そう多くは……。』

>>214

レイモンドとの会話を聞いていたのか
突然リファニアが話しかけてきた。
だが、新たな定時放送が流れリファニアが言葉を止めてしまう。
この頃の放送には急かされることが多い。

『……そう多くは、ないけど。
 定期放送が鳴った直後だもの、休むなら、今すぐがタイミング的に良いと思う。
 私、シュウジさんの言ったとおり、T-17に向かうから。
 ……そこでちょっとだけ、休ませてもらうね。』

(詩人か・・・・・。
 あいつに言われたことがこんな時に出てしまうなんてな。)

まだ、俺が教会で働いていたときのシスターから言われた言葉。
あの時は・・・・・・・・・



思考を突然中断させジャベリンに繋いでいた映像から
レイモンドが目で合図を送ってきたのを確認する。
サイコガンダムが先にコロニーへ入ってから後からレイモンド、シュウジ、リナルドが
コロニー内へ入っていくのを見ながら、俺も後に続きコロニー内へ入った。

最後に俺がジャベリンの近くにペズ・バタラを止め補給を行う。
その間にコクピット内で持ってきた武装の点検をしようとバックを
探していると、ふとモニターに目をやる。
そこには、ぐっすりと眠り込んだ少女の顔が合った。

「今だけは、良い夢を彼女に・・・・・・・・・。」

【行動:レイモンドとリファニアに通信中(-0)筆談(-0)会話(-0)
    T-18→T-17へ移動(-1)補給(-1)】
【残り行動値:2】
【位置:T-17】
【機体状況:右腕損失、左足膝部損失、右足膝部損失、本体側面装甲各所損傷
      コクピット内機械一部損傷、スラスター各部損失(出力50%低下)
      左手マニュピレーター消滅】
【武装:(本体)ビームアックス、3連装ミサイルランチャー×2(残弾0)(左手甲部)ビームシールド、
     ビームダガー×1本 】
【所持品:ディパック 水2g三本 十字架 聖書 特殊情報端末 チ○ルチョコ20個ほど
     アサルトライフル 予備弾倉5セット 拳銃 予備マガジン5セット
     手榴弾 六個 ナイフ】
【行動方針:情報の整理】
【同盟:01番 シュウジ=アサギ 14番 レイモンド=デリック】
《おいこら。せっかく久し振りに話しかけてやったんだから、返事くらいしろっての。
 ここまでおめえに気を使って黙ってたんだから……》

俺の返事がないとみるや、頭の中で延々と喋りはじめるあいつ。
このまま何も言わなかったら、プログラムが終わるまで喋っていそうだ。

(…いくら久し振りだからって、ホント五月蝿いぞ)
 お前だって多分分かっているだろうが……本気で俺は休みたいんだ)

面倒臭いといったふうに俺は返事を返す。
とにかく、今は静かに休ませてほしかった。

《けっ。何を言ってやがる。俺様が珍しくおめえを誉めてやろうってんだから、黙って聞け!》

(……誉める?お前が、俺を?)

意外と言えば意外な言葉に、俺は眉をひそめた。
こいつに出会ってから17年間、誉めてもらった事など記憶にない。
……いや記憶にあっても、全く嬉しくもないが。

《今言ったろ。よくもそんなボロボロの体で生き残ってこれたもんだ…ってな》

(そういう事か。…まあ…昔の勘が戻ったからな。
 それに、俺はまだ死ぬわけにはいかないんだよ)

今度は間を置かずに言葉を返す。

死にたくない。
そしてその為に戦う理由。
プログラムが始まった時から俺が考えている事。
訳も分からず連れてこられて、無理矢理プログラムに参加させられて。
これを考えない奴はあまりいないだろう。

《そうだろうな。戦っている時もおめえの中から、そんな執念みたいなもんが感じられたしな。
 その感情もそうだが、その結果もたらされる死と破壊も俺様にとっちゃ心地良いもんだ》

ただプログラムが進んで昔の自分を取り戻すにつれ、俺の中で『死にたくない』という言葉の
意味が変化してきた。
それは、ただ自分が死にたくないというのではなく、戦士として仲間の為に、そして仲間と交わ
した約束の為に、ここで死ぬわけにはいかない……というふうに。

《おめえ以外の人間も殺し合いをやってるし、まあここは、俺様が黙ってても満足できる場所
 って事だ。だからおめえがあの、MSってのに乗ってる時は話し掛けねえさ。
 下手に話し掛けて死んじまったら話にならねえしな》

(続く)
サーティアに初めて出会った時、話した事がある。
『俺は戦う理由を探している』と。
……俺は確固たる理由が欲しかった。
死にたくないという利己的なものだけでなく、プログラムを生き抜く為の力になる、確固たる理由が。

今、俺にはそれがある。
ベルクという、要塞から一緒の仲間がいる。
リファニアという、未来を見せてやりたい少女がいる。
ルイと交わした約束がある。

俺は……死ぬわけには、いかない。

(そうだな。なるべくならそうしていてくれ。
 …でなきゃ、俺もお前も損をする事になるからな)

《…俺様はおめえが死んだところで、大した損にはならないんだけどよ。まあ長年の付き合いだ。
 これからも俺様を満足させてくれるならいいさ》

ジャベリンを見上げる。
小型だけにタンクの容量も大きくはない。
推進剤の補給ももうすぐ終わるだろう。

(…俺が生きている間は……結果的にお前の期待に応える事になるんだろうな)

【行動:ペズ・バタラ、サイコガンダム、アビゴルへの回線継続(0)あいつと会話(0)】
【残り行動値:4p】
【位置:T-17】
【機体状況:右腕消失、頭部バルカン砲1門損傷、モニター一部使用不能
      右肩装甲損傷、左肘ジョイント負荷(40%)、胸部及び腹部
     装甲に凹みと歪み、ショットランサー1基消失
 アインラッド:打撃による回転不良(小)】
【参加者状況:左肩負傷(処置)、左眼球裂傷(処置)、右手首切断(処置)
       右肋骨骨折、左大腿骨にひび】
【武装:頭部バルカン砲×1、ビームサーベル×1、ショットランサー×1
       ビームシールド
 アインラッド 武装:ビームキャノン×2(84%)、9連装ミサイルポッド】
【所持品:ディパック、水2?入り1本、食料21/3日分、シャベル(小)、蕎麦団子1個、
     拳銃と自動小銃と弾倉、タッパーのカレー4つ、保冷シート2枚、書類の束、ペン2本
     首輪カバー1つ、ディスク、トリモチ銃(40%)】
【行動方針:今は行動あるのみ、少しだけ休息を…】
【同盟:ベルク、リファニア、シュウジ(?)】
227リーア先生 ◆UktGzzmQ/o :04/11/02 00:01:48 ID:???
第15章 >226 現在 (低容量版マップ)

  .L M,N O.P.Q.R S,T U V,W,X,,Y Z
13◎◎◎◎□◎◎◎□◎◎□◎◎■   □:開かれた空間
14◎◎◎◎◎◎□□◎□◎■◎◎◎   ■:暗礁空域
15◎■◎99◎◎□◎□◎■◎■◎◎   ※:戦場跡
16◎◎□□◎◎◎□◎※□◎◎■◎   〓:コロニー
17◎◎■□□□□≠01◎◎□◎◎■   ▼:小惑星基地
18■◎◎□□□□◎◎□◎◎□□◎   ≠:崩壊したコロニー
19◎■◎◎◎◎□□□◎◎◎◎◎□   ▽:爆破された小惑星基地
20□■□◎◎□◎◎□◎▼◎◎◎□
21◎※◎□◎◎□◎◎▼◎▼◎□◎   ◎:侵入禁止区域
22◎◎□◎□□◎□◎◎◎▽◎◎□   ×:侵入禁止予告区域
23◎※◎■◎□◎◎□◎▼◎□◎□
24◎◎■■■◎◎◎◎91◎◎◎◎◎   ?:情報のないエリア(侵入禁止)
25???????????????   門:『ゲート』?(詳細不明)
26???????????????
27??????????門????
28?????????00門門???
29??????????門????


99は管制機能を持つレウルーラ級戦艦。00番はティーチャーのコアブースター。
ZPはゼファー制御のビギナ・ギナ。91番は管制側所属のギラドーガ1番機。
01・07・14・15・20・ZPはT-18の×印。
02・03・04・05・06・08・09・10・11・12・13・16・17・18・19・21・22・23・24・25・26死亡。
01シュウジ 07ベルク 14レイモンド 15リナルド 20リファニア
チューブからの注入がストップし、推進剤の補給が終わった。

《さあ、やることやったんならとっとと殺しにいけよ》

(お前はそれでいいかもしれないが、俺はまだここでする事があるんだよ)

ジャベリンからチューブを外しながら、苦笑しつつ答える。

さて、これからどうするか。
コロニー内に入る事も考えたが、特に必要なものがあるわけでもない。
それに休むだけならここでも十分にできる。
レウルーラへの攻撃の相談も、大丈夫だろう。

コクピットに入り、カメラで周囲を確かめる。
あいつとの会話で気づかなかったが、近くにはベルクのペズ・バタラがいる。
そしてシュウジのビギナ・ギナとガンイージもここに来ている。

(シュウジは…どうやって2機いっぺんに動かしているんだ…?)

ごくごく当たり前の疑問が脳裏に浮かぶ。

(…まあいいか。まずは休む事だ。あとで聞いても遅くはないだろ)

そこまで考えると、俺はディパックを肩に担ぎコクピットから降りて、デッキの中をうろつく。
はじめに思った程、この港は破壊されていないようだ。
崩壊したのはあくまでも内部の方で、だからこそここは機能を維持しているのだろう。
もしかしたら、まだ空気の残っている所もあるかもしれない。
そう思った俺は港の施設の中への入口を探す事にした。

そしてデッキの一画に見つけた扉。
この先はどうやらエアロックらしい。
躊躇せずに中へ入る。
そして久し振りに感じる重力と、酸素。

俺はエアロックからすぐ近くにあった警備室に入ると、ディパックからタッパーを出した。

「ま、とりあえずは食欲だよな…うん」

カレーは一晩置いた方が美味しい。
たとえ冷めていても、ルイが作ったカレーだ。

【行動:ペズ・バタラ、サイコガンダム、アビゴルへの回線継続(0)施設内に移動(−1)
カレーを頂きます(−1)】
【残り行動値:2p】
【位置:T-17】
【機体状況:右腕消失、頭部バルカン砲1門損傷、モニター一部使用不能
      右肩装甲損傷、左肘ジョイント負荷(40%)、胸部及び腹部
     装甲に凹みと歪み、ショットランサー1基消失
 アインラッド:打撃による回転不良(小)】
【参加者状況:左肩負傷(処置)、左眼球裂傷(処置)、右手首切断(処置)
       右肋骨骨折、左大腿骨にひび】
【武装:頭部バルカン砲×1、ビームサーベル×1、ショットランサー×1
       ビームシールド
 アインラッド 武装:ビームキャノン×2(84%)、9連装ミサイルポッド】
【所持品:ディパック、水2?入り1本、食料21/3日分、シャベル(小)、蕎麦団子1個、
     拳銃と自動小銃と弾倉、タッパーのカレー4つ、保冷シート2枚、書類の束、ペン2本
     首輪カバー1つ、ディスク、トリモチ銃(40%)】
【行動方針:今は行動あるのみ、少しだけ休息を…】
【同盟:ベルク、リファニア、シュウジ(?)】
229シュウジ=アサギ ◆T2X.xlTDSU :04/11/02 23:05:29 ID:???
[The completion of energy transfer]

「……ひとまずはこれで良し……と。後は撃ってみないと解らないな……。」

逃げるかのように作業に没頭すること数時間。
没頭していたからか、作業は思ったよりも簡単に済んだので、
今はサイコの外部接続用コネクタに取り付き、メガバズーカーランチャーとのリンクのチェックを行っていた。
そして、その結果、持ってきたノートPCのディスプレイには接続完了との表示が映っていた。
その結果にひとまず満足したのか、ノートPCとコードを引き抜くと、サイコのメンテナンスパネルを閉じた。

「さて……どうするかな……。」
することが無くなったので、とりあえずもう一度格納庫内を見渡す。
すると、傷だらけのアビゴルと、その近くにリナルドの姿を見つけた。
しばし考え込むように腕を組むシュウジ。そして数十秒後、リナルドの方を向き、通信を入れた。

「リナルド。よければ機体の方を修理させてくれないか?
 状況が状況だったとは言え、壊したのは俺の機体が撃ち出した弾丸だしな……。
 このままじゃ後味が悪いし、俺自身、今は何か作業をしていたい気分なんだ。
 別に、断ってくれてもかまわない。俺も立場は解ってるつもりだ。
 最初はサイコの方が先に来たからそっちから済ますつもりだったんだがな……既に寝てるみたいだ。」


【行動:チェック(−1)リナルドに通信(−1)】
【残り行動値:2p】
【位置:T-17 コロニー内港湾部】
【機体状況:通信中(ビギ・ナギナ経由でサイコMk−2・アビゴル)対自爆装置改造済み
      機体各所にダメージ、電子機器に被害、頭部右側面に損傷、右脚部損傷、左肩装甲損傷 】
【参加者状況:右足重傷(処置済み) 打撲 左目周辺に切り傷 疲労】
【武装:ガンイージ:頭部60mmバルカン砲×2(残弾65%)、ビームサーベル、ビームシールド、ビームライフル(残弾3)
     ビギナ・ギナ:ビームライフル×2(残弾:右85% 左70%) ビームサーベル×2 ビームシールド
             フック付きワイヤー&ウィンチ ヒートナイフ×2 F-90S用クルージングミサイル×1
             ドラム弾装式120mmマシンガン×2(残弾:右4斉射分 左4斉射分)】
【所持品:ディパック(水2g入り0.5本 食料1.5日分 計画書 紙とペン 医療用セット 首輪カバー)ノートPC
     拳銃(残弾16発) 工具セット (ゼファー) 】
【行動方針:"示す" ムサイ組と道を共に】
「・・・やっぱりカレーは美味いな・・・」

1人だけの警備室で、1人だけの食事。
少なくとも、あの食堂でルイと一緒にこのカレーを作っている時は、こんな食事を取ることに
なるとは思ってもいなかった。

テーブルの上にタッパーを置き、右手でずれないように押さえながらカレーを口に運ぶ。
ルイが香辛料を控えめにしたのだろう。
辛口が大の苦手の俺だったが、そのおかげで美味しく食べることが出来た。

(この味を、あの食堂で味わえたら良かったんだがな・・・)

要塞で、ルイと馬鹿騒ぎしていたのが・・・遥か昔の事の様な感じがする。



『あー。そうや、そうや。 自己紹介遅れてすまへん、すまへん。
 アタシの名前はルイ・フィルセントや。 以後よろしゅーなっ!!』

ルイのカンサイベンでの自己紹介。
まあ、挨拶からして只者じゃなかったんだけどな・・・。

『みよ。あの、芸人の星があんなボケじゃなさけないっちゅーて泣いとるで。
 あの星を泣かしちゃあかんのや。 あの星が腹を抱えて笑い転げるほどの芸人に
 なってるって幼い頃に 誓ったのを忘れたんか!!
 忘れたとはいわせへんで!!』

・・・すまん、ルイ。
まだその、芸人の星っていうのが、俺には見えない。
一流の芸人っていうやつへの道は、まだまだ遠いらしいな。

『まさか・・・・・・まさか、プロポーズ?
 おっさんがプロポーズ。おっさんの春。おっさん、恋の季節到来!!
 あっというまに髪の毛も抜け落ちて秋になってしまいそうやけどな』

残念だが、今でも俺の老後はロマンスグレーと信じて疑っていない。
勿論生き残ればの話だが。

『………な、何故俺のボンノーパワーを知っている!俺にボンノーパワーが備わっ
 ている事を知っているのは、俺の他には誰もいない筈だ!……君は何者だ?』

『ふっふっふ。ふが三つ。 とうとうボロを出しよったな、おっさん。
 いや、ボンノーカイジンオサーン!! アタシの正体は聞かれて名乗るのもおこがましいが
 聞かれてないのに名乗るのはもっとおこがましい正義の味方。
 カメンライーダのルイルイとはアタシの事やー!!
 さー。退治されとうなかったら、ボンノーパワーで台所をとっととさがすんやな』

『な、何!お前があの、さーちんも泣いて嫌がるという抱きつき魔、カメンライー
 ダルイルイか!?くっ!……だが俺も、秘密結社ニョッカーにオサーンありと言
 われた男。そう簡単にはやられはしない!』

『…だがしかし、惜しい事に今日は近所のマドモアゼルの占いで、戦ってはいけな
 いというお告げを受けているのだ。本当に、ひじょーうに残念だが今日のところ
 は勘弁して、大人しく食堂を探してやろう!…ふっ、運のいい奴よ…』

・・・何をやってたんだか・・・(苦笑)
あの時はなんだかんだ言って、一流芸人への道を歩み始めてたんだろうか・・・?

(続く)
『おっさーん、あーたんが食堂の場所知っとるって言うとるよ。
 こっちやて。 じゃ、お先に!!
 後についた方が先についた方を奢るっちゅーことで!!』

あの時は食堂まで競走したんだっけか。
結構気持ちの良い汗がかけたんだけどな。

『通常の三倍やて。そんなの甘い甘い。アタシは通常の十倍食べる乙女のルイやでー。
 アタシのほうが倍率は高いんやー!!』

・・・どうせなら食堂で本当に十倍食べて、俺を驚かせてほしかったよ。
・・・お前自分で作ったカレー・・・1口も食べてないじゃないか。

空になったタッパーを投げ捨てる。
・・・口元が、僅かに痙攣しているのが分かる。

『しか〜し。
 次の勝負は負けへん!!
 首根っこ洗って待っとるんやな。あはははははのは〜』

次の・・・勝負か・・・。

「・・・ルイ・・・。
 その、勝負は・・・俺の勝ちだな・・・。
 俺はまだ生きていて・・・。笑って・・・怒って・・・。
 ・・・・・・泣く事が・・・できる・・・」

両の目から流れた涙。
あそこで失ったもの。失った時。
1人になってそれを実感した時、俺の涙腺はそれに耐えることができなかった。

食事にベルクを誘わないでよかった。
こんな顔、とても見せられたもんじゃない・・・。


警備室の奥に仮眠用のベッドがあった。
薄い毛布があるだけだが、そこらへんで寝るよりかはよっぽどいいだろう。
ベッドに横になり、天井を見つめる。

『アタシの答えはYESかNOが答えろっちゅーたらNOや。
 アタシは他の人を殺してまで生き延びるなんてしとうない。
 そないな事しても楽しゅうないし、御飯もきっとおいしく食べれなくなる。
 これからの人生もきっと楽しくなくなってまう。そんなん嫌や。
 誰かを殺さんといて逃げるっちゅー事やったら間違い無しにYESといえるんやけど
 そうじゃないんやったらNOや』

・・・ルイがサーティアに向かって言った言葉。
あのあと、サーティアはおかしくなった。

(ルイ。お前は自分の中に曲げられない、守りたい事があった。
 だからサーティアの案に反対した。それだけなんだろ?

 ・・・俺も今、守りたいものがある。だからこんな体でも頑張れる。
 ・・・お前が貸してくれたあのタイヤ・・・返すことは出来なくなったが・・・。
 どこかで見ていてくれるなら、ベルクや、リファニアの為に力を貸してくれ)

最後まで自分を曲げなかった1人の女性。

その女性は、言葉では言い表せない何かを、俺の中に残していた。
【行動:ペズ・バタラ、サイコガンダム、アビゴルへの回線継続(0)、思い出(0)仮眠(−1)】
【残り行動値:3p】
【位置:T-17(警備室)】
【機体状況:右腕消失、頭部バルカン砲1門損傷、モニター一部使用不能
      右肩装甲損傷、左肘ジョイント負荷(40%)、胸部及び腹部
     装甲に凹みと歪み、ショットランサー1基消失
 アインラッド:打撃による回転不良(小)】
【参加者状況:左肩負傷(処置)、左眼球裂傷(処置)、右手首切断(処置)
       右肋骨骨折、左大腿骨にひび】
【武装:頭部バルカン砲×1、ビームサーベル×1、ショットランサー×1
       ビームシールド
 アインラッド 武装:ビームキャノン×2(84%)、9連装ミサイルポッド】
【所持品:ディパック、水2?入り1本、食料21/3日分、シャベル(小)、蕎麦団子1個、
     拳銃と自動小銃と弾倉、タッパーのカレー4つ、保冷シート2枚、書類の束、ペン2本
     首輪カバー1つ、ディスク、トリモチ銃(40%)】
【行動方針:今は行動あるのみ、少しだけ休息を…】
【同盟:ベルク、リファニア、シュウジ(?)】
外界の何ものをも、自分の内なる声さえも、今の彼女は感じる事はない。
ありとあらゆる感覚をシャットダウンして、ただ、傷つき疲れ切った心身が欲するままに。
夢すら見る事のない、深い眠りについていた。

―――pi――pi―――

MSの接近を示す警告音がコックピット内にこだましても、彼女は微動だにしなかった。
シュウジにより、外部からメンテナンスパネルを開かれた事による警告音が鳴って、
リファニアはようやくその音に反応し、僅かに身をよじらせた。

やがて少女は、薄目をあけた。
何もなければ、このまま延々と眠り続けていた事だろうが、今はそれが許される状況ではない。
度重なる休息と戦闘の繰り返しが、少女に戦士としての活動リズムを刻み込みつつあったのか。
戦場の空気が、彼女の覚醒を促していた。

「……ん……。」

瞼を開くと、そこは相変わらずコックピットの中だった。
戦う為のマシーンの中枢部。
寝床にはおおよそふさわしくも無いこの場所でこうも眠れてしまうのは、
マシーンの一部になりきってしまっているからだろう。
モビルスーツ、確かにキライではない。
だが、それを駆るだけの存在として、終わるつもりなど毛頭ない。

……もし、プログラムを終えてなお、生き残っていたのならば。
それからの自分は、どこに行くのだろう。
かつて住んでいたコロニーには、戻れない。あそこには、もう、パパはいない。
あの連中、戦争の生み出した亡霊どもの所にも、むろん戻るつもりはない。
おそらく戦うだけのマシーンである事を強要するであろう、奴らの所には。

モニターより機外を見る。
リナルドとシュウジが、何やら相談をしているようだ。
映像を、拡大してみる。
……ふたりとも、酷く疲れた顔をしているように見えた。

それほど長い時間眠っていた訳ではないが、自分自身の疲労感はずいぶんマシになったようだ。
どうやら、意外に自分はタフなようだ。
……そうでなければ、ここまで生き残ってくる事などできやしなかっただろうが。

「……それに、支えが、あったからね。」

ノーマルスーツの前を少し下げて、首より下げられたロザリオを手に取って眺める。
……あの艦の人々の想いが集約しているとも言える、大切なロザリオ。
それを握り締めながら、再び機外の二人へと、視線を移す。

……二人は、生き残るために必要な準備を、してくれている。
私には、ロクに手伝う事なんて出来ないけど。
せめて、戦いの時に足手まといにならないように。
……いや、人一倍働いてみせないと。

そのために今するべき事は、自分のメンテナンス。

傷口を消毒するべく、ノーマルスーツの上半身をはだけさせたリファニア。
……開きっぱなしの通信回線の映像が生きている事をふと思い出して、
赤面しながらも、特に取り乱さずに落ち着いて映像のみをOFFにした。

酷く染みる消毒薬も、かえって生きている実感を感じられて、有難かった。
傷口の消毒を済ませて、包帯を取り替え終えた時。

くぅ〜〜〜〜と、大きくお腹が鳴ってしまう。
……そういえば、長い事何も口にしていない。
喉だって、カラカラに渇いている。
ディパックを漁ると、水の入ったペットボトルと、コッペパンがあった。
ペットボトルの水をゴクゴクと半分くらい飲んで、続けてコッペパンを平らげようとしたが、
ふと、みんながまともな食事を摂っているのかが気になった。
少なくともリナルドは、まともな食事を摂ってはいない事は間違いない。

……作業を手伝えないのであれば、せめて、食料の調達くらいはできるはずだ。
このコロニーを後にしたが最後、後は戦いに赴くのみ。
それがどれだけ長引くのか。戦いを終えた後、どうなるのか。
それを考えると、ある程度の食料を確保する事は必須と言えた。

ノーマルスーツをきちんと着なおして、ディパックをもつ。
コックピットハッチを開いて、リナルド達の方へ向かって飛びながら、通信を入れた。

「ふたりとも、ご苦労さま。
 ごめんね、何も手伝えなくて。
 せめて、食料とか、調達してくるね。
 港湾施設の中なら、捜せばどこかにあると思うから。」

そのまま、手近なエアロックから、施設内へと入り込む。
エアが充分に有ることを確認すると、ヘルメットを脱いだ。

その時、リファニアの鼻腔を、なじみ深い匂いがくすぐった。
その匂いは微かでしかなかったが、腹が背につきそうなほどに空腹感に満ちていた
リファニアは、その匂いを見逃しはしない。

……このにおい。

「まさか……。」

その匂いは、すぐ近くの扉へと続いているようだ。
そこは、警備室のようだ。
くぅと鳴るお腹の音を、隠そうともせずに。
警備室の扉を開いて、中に入るリファニア。
香ばしいカレーの匂いが、よりいっそう強くなる。
どこかどこかと捜すリファニアの目に、空になったひとつのタッパーが、飛び込んできた。

「……だれか、居る?」

警備室の奥には、仮眠スペースがあるようだ。
そこに、誰かの気配を感じた。

【行動 : サイコの通信回線継続(シュウジ、レイモンド、ベルク)(0)、シュウジとリナルド(ノーマルスーツ)に通信(-2)
      施設内へ(-1)、探索(-1)、残0 】
【位置 : T-17(警備室) 】
【機体状況 : MRX-010サイコガンダムMk-U
        表面に細かい損傷、右肩アーマー損失、背面に損傷、スラスター損傷(推力70%)
        機体表面に弾痕(被害不明)、MA時バランサー異常、自爆装置改造済み、MS形態、サイコミュカット 】
【パイロット状況 : 頬にうっすらと傷痕、右肩軽傷(治療済)、頭軽傷(包帯巻)、左腕重傷(処置済み)、
           ノーマルスーツ着用、メイク済み♪、全身にピリッとした感覚 】
【武装:  胸部3連装拡散メガビーム砲(一門破損)、リフレクタービット×5 、大型ヒートグレイブ
      腕部サイコミュ式 ビームソード×1、全身メガビーム砲×多数(左脛二門破損、右肩全門破損) 】
【所持品: 首輪、ノーマルスーツ、ナバン61式拳銃、日記帳とペン、イブのロザリオ
      ディパック、コッペパン2つ、水2g入り2本(1本空、1本半分) 、ジオン女性士官の制服、
      抗生物質、換えの包帯やガーゼ、消毒薬 、アレンの遺したギター、トリィの羽根、
      ピンクのエプロン(ポケットに口紅)、白のエプロン 】
【方針 : 『揺るがせてはならない夢』、自分の意志で綺麗に生きる、??? 】
【同盟 : ALL 】
最初に予定してた行動と書き込みの内容が異なったため、行動欄が実際の行動と異なってしまいました。

【行動 : サイコの通信回線継続(シュウジ、レイモンド、ベルク)(0)、シュウジとリナルド(ノーマルスーツ)に通信(-2)
      施設内へ(-1)、探索(-1)、残0 】

【行動 : サイコの通信回線継続(シュウジ、レイモンド、ベルク)(0)、傷の処置(-1)
      シュウジとリナルド(ノーマルスーツ)に通信(-2) 、施設内へ(-1)、残0 】

に訂正いたします。スレ汚し申し訳ないです。
   カチャ カチャ

今コクピット内を満たしているのは
銃を整備する音と、鉄の匂い。
一度整備はしたがそれ以降使ったことは無いはずなのに
また、銃をいじっていた。
補給を終えるまでの時間潰しもあるだろうが
何かをしている方が気が楽なのかも知れない。
だが、そういう束の間の時間は思ったより短かった。

ペズ・バタラへの補給も終わり本格的にすることが無くなった。

(この場合、休んどくのがセオリーなんだが・・・・・・・・
 今はそういう気になれないな。)

ガチャ
整備し終わった武装を再びバックの中へしまい
外へ出るためコクピットから降りる。

周りを見渡すとメガバズーカーランチャーとサイコの間を
行き来しているシュウジの姿があった。どうやら作業中らしい。
気づけばレイモンドの姿が無い。

(何処へ行くかぐらいは言って欲しかったな。)

そして、俺も当ても無くこの場を後にした
行き付く先は、何を思ったのか崩壊したコロニーの廃墟となった町だった。
広大な宇宙に住むための人の作りし巨大な揺り篭。
それの熟れの果てを。

いろんな、思いの詰まったこの町をただ・・・・・・・・

        眺めていた。

【行動:レイモンドとリファニアに通信中(-0)筆談(-0)会話(-0)
    武装の整備(-1)移動(-1) 崩壊した町を眺める(-1)】
【残り行動値:1】
【位置:T-17】
【機体状況:右腕損失、左足膝部損失、右足膝部損失、本体側面装甲各所損傷
      コクピット内機械一部損傷、スラスター各部損失(出力50%低下)
      左手マニュピレーター消滅】
【武装:(本体)ビームアックス、3連装ミサイルランチャー×2(残弾0)(左手甲部)ビームシールド、
     ビームダガー×1本 】
【所持品:ディパック 水2g三本 十字架 聖書 特殊情報端末 チ○ルチョコ20個ほど
     アサルトライフル 予備弾倉5セット 拳銃 予備マガジン5セット
     手榴弾 六個 ナイフ】
【行動方針:情報の整理】
【同盟:01番 シュウジ=アサギ 14番 レイモンド=デリック】
俺は…夢を見ていたのだろうか。

見ていたようにも思うし、見ていないようにも思える。
見ていたとすれば、それはルイの夢だったのだろうか。
それとも、アシッドとの戦闘の夢でも見ていたのだろうか。
人は、眠りから目覚めるとそれまで見ていた夢を忘れてしまうというから、例え夢を見ていた
としても、それはもう俺には関係ない事だ。

ただ、目覚めた俺の目が涙で潤んでいたのは、目覚めのだるさのせいだけではなかったらしい。

…とにかく俺は、仮眠スペースに入ってきた少女の声で、微睡みから覚める事になった。

「君は…リファニア=ニールセン…か?」

あのサイコガンダムに乗っていた、モニター越しでしか見た事のない少女が、目の前にいた。
内心の動揺を抑えつつ、ゆっくりと起き上がる。

まだその夢の不快感、というか、悲しみは残っていたが……。
急速に覚醒していく意識が訪問者の少女にそれを悟られまいと、心に喝を入れる。

それが成功したかどうかは分からないが、俺は極力モニター越しに話していた時と同じように
リファニアに話し掛けた。

「こんな所にどうしたんだ?リファニア=ニールセン。君は、休まなくてもいいのか?」

【行動:ペズ・バタラ、サイコガンダム、アビゴルへの回線継続(0)仮眠の続き(−1)
     リファニアとの会話(0)】
【残り行動値:2p】
【位置:T-17(警備室)】
【機体状況:右腕消失、頭部バルカン砲1門損傷、モニター一部使用不能
      右肩装甲損傷、左肘ジョイント負荷(40%)、胸部及び腹部
     装甲に凹みと歪み、ショットランサー1基消失
 アインラッド:打撃による回転不良(小)】
【参加者状況:左肩負傷(処置)、左眼球裂傷(処置)、右手首切断(処置)
       右肋骨骨折、左大腿骨にひび】
【武装:頭部バルカン砲×1、ビームサーベル×1、ショットランサー×1
       ビームシールド
 アインラッド 武装:ビームキャノン×2(84%)、9連装ミサイルポッド】
【所持品:ディパック、水2?入り1本、食料21/3日分、シャベル(小)、蕎麦団子1個、
     拳銃と自動小銃と弾倉、タッパーのカレー3つ、保冷シート2枚、書類の束、ペン2本
     首輪カバー1つ、ディスク、トリモチ銃(40%)】
【行動方針:今は行動あるのみ、少しだけ休息を…】
【同盟:ベルク、リファニア、シュウジ(?)】
『君は…リファニア=ニールセン…か?』

仮眠用のベッドから起き上がった人物は、レイモンド=デリックだった。
どうやら自分の不意の訪問が、彼の眠りを妨げてしまったらしい。

「……あ、レイモンド、さん?
 ごめんね。もしかして、寝ていた所を起こしちゃったのかな。」

ぺこりと頭を下げて謝ったのち、顔をあげて、レイモンドを見る。
……モニター越しではわからなかった事だが、彼の右手首が失われている事に気がついてしまった。
それだけではなく、片目は痛々しく傷ついていたし、その他にも少なからず負傷しているようだ。

一瞬、息を呑んでしまう。
自分もいい加減ボロボロだと思っていたが、彼は更に酷かった。
だが、それだけの負傷を受けてもなお、サイコミュなどのサポートも無しに、
あそこまでの戦闘をやってのけて見せるのが、レイモンドなのだ。
当たり前であるが、戦士としての懐の深さの違いを、彼に感じずにはいられない。

『こんな所にどうしたんだ?リファニア=ニールセン。君は、休まなくてもいいのか?』

続けてそう訊いてくるレイモンドは、モニター越しに話しかけてくる時の様子と
ほぼ変わらないようにも見えたが、何故かどことなく硬いように思えてしまった。
そんな彼の心を和ませるべく、柔らかく微笑みながら、少女は答える。

「……少し眠ったから、もう、大丈夫だよ。
 このプログラムに投下されてから、もうかなり時間が経つでしょ?
 戦ったり休んだりの繰り返しで、こんなリズムにも慣れちゃったみたい。

 ……ここに来たのはね、シュウジさん達、機体の整備とかで忙しそうだったけど、
 私、そういうの苦手で役に立てるとは思えなかったから。
 でも、食料を確保する事くらいはできるでしょ?
 それでね、食料探そうと港湾施設に入ったら、いい匂いがしたような気がして。
 気がついたら、導かれるままにこの部屋に来ていたの。」

カレーの匂いが、再び鼻腔をくすぐり、思わずお腹がくぅ〜〜〜と元気に鳴ってしまう。

「……いい、匂い。懐かしくなっちゃうなぁ。
 ミョーコウでね、私もカレー、作ったんだ。
 まさか他にもカレー食べてる人が居たなんて、思いもしなかったなあ。
 ……これ、レイモンドさんが作ったの?」

空腹を隠そうともせずに、遠慮無く鳴り続けるお腹と、
食べ物に釣られてふらふらとここまで来てしまった自分が、恥ずかしくてたまらない。
赤面しつつも、誤魔化すように言葉を続けた。

【行動 : サイコの通信回線継続(シュウジ、レイモンド、ベルク)(0)、レイモンドと会話(0)、残4 】
【位置 : T-17(警備室) 】
【機体状況 : MRX-010サイコガンダムMk-U
        表面に細かい損傷、右肩アーマー損失、背面に損傷、スラスター損傷(推力70%)
        機体表面に弾痕(被害不明)、MA時バランサー異常、自爆装置改造済み、MS形態、サイコミュカット 】
【パイロット状況 : 頬にうっすらと傷痕、右肩軽傷(治療済)、頭軽傷(包帯巻)、左腕重傷(処置済み)、
           ノーマルスーツ着用、メイク済み♪、全身にピリッとした感覚 】
【武装:  胸部3連装拡散メガビーム砲(一門破損)、リフレクタービット×5 、大型ヒートグレイブ
      腕部サイコミュ式 ビームソード×1、全身メガビーム砲×多数(左脛二門破損、右肩全門破損) 】
【所持品: 首輪、ノーマルスーツ、ナバン61式拳銃、日記帳とペン、イブのロザリオ
      ディパック、コッペパン2つ、水2g入り2本(1本空、1本半分) 、ジオン女性士官の制服、
      抗生物質、換えの包帯やガーゼ、消毒薬 、アレンの遺したギター、トリィの羽根、
      ピンクのエプロン(ポケットに口紅)、白のエプロン 】
【方針 : 『揺るがせてはならない夢』、自分の意志で綺麗に生きる、??? 】
【同盟 : ALL 】
『……あ、レイモンド、さん?
 ごめんね。もしかして、寝ていた所を起こしちゃったのかな。』

そう頭を下げたリファニアが俺を見た瞬間、息を飲んだ。
おそらく俺の右手や、左目の怪我を見たせいだろうと思う。
静かな……お互いの呼吸の音しか聞こえないくらい静かな部屋の中で、息を飲むその音は
どうしても俺の耳に届いてしまう。
…だからといって、俺がそれを気にする事はなかった。
実際自分で見ても酷い怪我だと思うし、リファニアのような少女には、見慣れないものだった
だろうから。

いくら何でも寝起きの体勢では失礼だから、体を少し移動してベッドの縁に腰掛ける体勢になり、
再度リファニアに向き直る。
その俺にリファニアは、人なつこい笑みを浮かべて話し掛けてくる。

『……少し眠ったから、もう、大丈夫だよ。
 このプログラムに投下されてから、もうかなり時間が経つでしょ?
 戦ったり休んだりの繰り返しで、こんなリズムにも慣れちゃったみたい。』

…引き込まれそうな笑みとは今のような笑みを言うのだろう。
それは、さっきまでモニター越しに見た笑みより、何倍も魅力的に映った。
そしてそれは、俺が遥か昔に忘れてしまった笑み。
人間、リファニア=ニールセンの迸る生命の輝き。
数々の戦いを経て生と死を乗り越え、人と出会い生きる喜びを知り、人と別れ死の虚しさを
悟った、リファニア=ニールセンだけの微笑み。
その微笑みが俺に向けられた事に、正直、喜びを感じていた。
だからこそ俺の顔にも自然と笑みが浮かんだのだろう。

リファニアの話は続く。
…それによると、リファニアはシュウジ達の為に食料を探しに来たらしい。
で、たまたま俺と同じエアロックから入ってきて、俺が食べていたカレーの臭いに誘われて
ここに辿り着いたという事のようだ。

途中で腹の虫を鳴かせてしまい頬を朱に染めながら話すリファニアは、誰が見ても年相応の
少女にしか見えず、そしてそれがまた微笑ましかった。

(続く)
…しかし。

『……これ、レイモンドさんが作ったの?』

リファニアが何気なく言った言葉に、俺の表情は自分でも分かる程固くなった。
表情の変化を見られてはいけないと思い、さっと顔を俯き加減にする。

「…あ、いや…。それ…は…」

まずい事に、発した声もあからさまに固くなっていた。
だが、質問に答えないのは不自然極まりないし、何よりもリファニアに余計な心配をさせる
わけにはいかない。
とにかく別の事から話して、声を落ち着けるように努めようとした。

「…起こした事は…気に、しなくてもいい。以前軍に在籍していた頃から、スクランブルには
 慣れてる。…それに、睡眠の度合いは長さで…測るものではないからな」

そこまで話してから小さく息を吸い、呼吸を整える。
どうにも不自然な会話だ。
声が落ち着いたかどうか分からないが、このまま不自然な会話を続けるわけにはいかない。

「カレーは…」

そこで1回息を止め、一気に話しはじめる。

「カレーは、以前サーティア達といた要塞でルイが……。
 ルイ=フィルセントが作ってくれたんだ。…皆で食べようって…」

あの食堂の厨房で、喜々とした表情で包丁を振るっていたルイ。
俺の質問に嫌な素振りも見せず、笑顔で答えてくれたルイの姿が浮かんでくる。

【行動:ペズ・バタラ、サイコガンダム、アビゴルへの回線継続(0)リファニアとの会話(0)】
【残り行動値:4p】
【位置:T-17(警備室)】
【機体状況:右腕消失、頭部バルカン砲1門損傷、モニター一部使用不能
      右肩装甲損傷、左肘ジョイント負荷(40%)、胸部及び腹部
     装甲に凹みと歪み、ショットランサー1基消失
 アインラッド:打撃による回転不良(小)】
【参加者状況:左肩負傷(処置)、左眼球裂傷(処置)、右手首切断(処置)
       右肋骨骨折、左大腿骨にひび】
【武装:頭部バルカン砲×1、ビームサーベル×1、ショットランサー×1
       ビームシールド
 アインラッド 武装:ビームキャノン×2(84%)、9連装ミサイルポッド】
【所持品:ディパック、水2?入り1本、食料21/3日分、シャベル(小)、蕎麦団子1個、
     拳銃と自動小銃と弾倉、タッパーのカレー3つ、保冷シート2枚、書類の束、ペン2本
     首輪カバー1つ、ディスク、トリモチ銃(40%)】
【行動方針:今は行動あるのみ、少しだけ休息を…】
【同盟:ベルク、リファニア、シュウジ(?)】
少し固さを感じさせていたレイモンドの様子が、会話を続けているうちに、柔らかくなっていく。
だが、リファニアが何気なく口にした言葉が、彼の様子を一変させた。
それを隠そうと、顔を俯け気味にするレイモンド。
しかし、リファニアは彼の表情が酷く固くなった事に気がついてしまった。
そして、彼の口から発せられる言葉も、また。

『カレーは…』

搾り出すようなレイモンドの声。
リファニアは自分の言葉が彼の様子を変えてしまった事が気になってしまい、心配そうに彼の顔を覗き込んだ。
―――そして。

『カレーは、以前サーティア達といた要塞でルイが……。
 ルイ=フィルセントが作ってくれたんだ。…皆で食べようって…』

溜め込んだ息を吐き出すようにレイモンドが口にした言葉に、リファニアは瞳を一気に見開いた。
よろよろと後ずさるリファニア。脚がベッドに当たり、そのままぺたりと座り込んでしまう。

少女の脳裏に蘇ってきた光景と、当時の感情。

シェラザードの敵を討つという目的が、あの時ルイ達に銃口を向けた大きな要因であった事は間違い無い。
だが、それだけでは無かった。
マシンガンから放たれる弾丸に乗せられた感情には、シェラの力になりたいという想いだけではなく、
そこにはルイに対する確かな殺意が混じっていたのだ。

自ら決めた道とはいえ、その手を血に染めた少女には、ルイ=フィルセントの吐く言葉は、眩しすぎた。
故に、許せなかった。言葉を吐くだけで殺し合いの連鎖から逃れられると思っている彼女の事が。
……どうしても、認められなかったのだ。
言葉を吐くだけではなく、力で示せばいい。それが出来もせずに、理想を語るだけの貴女は、許せない。
だが、リファニアと違い、ルイ=フィルセントは、果たして戦士としての訓練を受けていたのだろうか?

「……ルイ=フィルセント……かの…じょが……?」

俯きながら、掠れ気味に声を出すリファニア。
……レイモンドに、顔を向ける事ができなかった。
リファニアの存在が、ルイを殺したと言えるからだ。
ベルクに剣を向けるリファニアを止めるため、ルイは向ける事を望まぬ銃口を向け。
死に逝くシェラはそれを止めるべく、彼女を道連れにする事を選んだのだから。

……リファニアの脳裏に、嬉々としてカレーをつくる彼女の姿が、浮かんでくる。
彼女の事は殆ど知らないにも関わらず。
不思議なほどに、その姿を自然に思い浮かべられてしまう。

……そんな彼女に、銃口を向ける事を選ばせて、死へと向かわせたのは。

「前にも言ったよね……。
 ルイ=フィルセントを殺したのは……私だって。」

はっきりとした声で、それを口にして。
リファニアは面をあげて、レイモンドの姿を見据える。
……少女の瞳は、かすかに揺れていた。
「私は、殺すつもりでマシンガンの銃口を向けた。
 シェラさんを護る為だけじゃない。
 彼女に敵意が無い事なんて、解っていたのに。
 ……汚れない彼女の言葉が、面白くなかったのよ。」

腰の拳銃を、抜く。
だが、グリップに手がかかってはいない。
リファニアの右手が握っているのは、拳銃の背の部分だった。

「そんな気持ちで、シェラさんを救おうだなんて。
 きっと、罰が当たったのよ。
 でも、罰を被ったのは、私じゃなくて……シェラさんだった……。」

拳銃を見つめながら、言葉を続ける。
最初ははっきりとしていた声も、次第に震えを増していった。

「……ルイさんが生命を落としたのは、確かに私の放った銃弾が直接の原因じゃない。
 でもね。私の殺意が、彼女を追い詰めた事は事実よ。
 そして、私がベルクさんに剣を向けた事が、彼女に引き金を引かせ……。
 それを止めようようとしたシェラさんと一緒に……生命を、落とす事になってしまった……。」

自分の生命がすでに自分だけの物ではない事は承知していたが。
……それでも、裁きをレイモンドに委ねなくては、気がすまなかった。
彼の事を、仲間だと強く意識し始めていたから。
……かつての自分の罪を、曖昧にしてはおけなかったのだ。

「レイモンドさんにとって、彼女は大切な人だったんだよね……。
 その敵が目の前にいて、ニコニコ笑いながら、彼女の残した料理の事をぬけぬけと口にする……。
 レイモンドさんにとって、我慢できないよね、そんなの……。」

手にした拳銃を、レイモンドに向かって放る。
レイモンドに向けられたリファニアの瞳は、揺れていた。
 
「自分でも、馬鹿げた事やってるんだなって、思うよ……。
 でもね、私、どうやって……償えばい…いの……か…。」

……自分のやってる事が、最も愚かしい逃避だという事は、承知していた。
このような安易な道に逃げようとする自分が、情けなかった。
自分への失望感と、罪の意識が、いつのまにか少女に冷たい涙を流させていた。

【行動 : サイコの通信回線継続(シュウジ、レイモンド、ベルク)(0)、レイモンドと会話(0)
      銃を委ねる(-1)、残3 】
【位置 : T-17(警備室) 】
【機体状況 : MRX-010サイコガンダムMk-U
        表面に細かい損傷、右肩アーマー損失、背面に損傷、スラスター損傷(推力70%)
        機体表面に弾痕(被害不明)、MA時バランサー異常、自爆装置改造済み、MS形態、サイコミュカット 】
【パイロット状況 : 頬にうっすらと傷痕、右肩軽傷(治療済)、頭軽傷(包帯巻)、左腕重傷(処置済み)、
           ノーマルスーツ着用、メイク済み♪、全身にピリッとした感覚 】
【武装:  胸部3連装拡散メガビーム砲(一門破損)、リフレクタービット×5 、大型ヒートグレイブ
      腕部サイコミュ式 ビームソード×1、全身メガビーム砲×多数(左脛二門破損、右肩全門破損) 】
【所持品: 首輪、ノーマルスーツ、ナバン61式拳銃、日記帳とペン、イブのロザリオ
      ディパック、コッペパン2つ、水2g入り2本(1本空、1本半分) 、ジオン女性士官の制服、
      抗生物質、換えの包帯やガーゼ、消毒薬 、アレンの遺したギター、トリィの羽根、
      ピンクのエプロン(ポケットに口紅)、白のエプロン 】
【方針 : 『揺るがせてはならない夢』、自分の意志で綺麗に生きる、??? 】
【同盟 : ALL 】
243リーア先生 ◆UktGzzmQ/o
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ガンダムバトルロワイヤル 第三回大会 第16章
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