第16章 >182 現在 (低容量版マップ)
M,N O.P.Q.R S,T U V,W,X,,Y Z
13■□■□■■□□□□□■□■
14※■□■□□□□□■■■■■
15■■9950□□□□□■■※■■ □:開かれた空間
16□□□□□□□□※□□■■■ ■:暗礁空域
17■■14□15□≠≠□□□□□■ ※:戦場跡
18■□□□□□□□□□□□□□ 〓:コロニー
19■■■□□□□□□□▼□□□ ▼:小惑星基地
20■□□□□□□□□▼▼□□□ ≠:崩壊したコロニー
21※※□□□□□□▼▼▼□□□ ▽:爆破された小惑星基地
22※□□□□□□▼▼▼▽▼□□
23※□■□□□□□▼▼▼□□□
24※■■■□□□□□□□□□■
25※※■■■□□□□□□□□■
26■■※■□□□□□□□□■■
27□■■□□□□□□門□□□□
28□□□□□□□□門門門□□□
29■■■□□□□□□00□□□□
立ち入り禁止区域は、>167参照。
立ち入り禁止が問題になるのは15のみ。
99は管制機能を持つレウルーラ級戦艦。00番はティーチャー(生身)
50は援軍艦隊(ザムス・ガル級3隻)ZPはゼファー制御のビギナ・ギナ。
01・20・50は同一地点。07・99は同位置。15・ZPは同一地点。
02・04・05・06・08・09・10・11・12・13・16・17・18・19・21・22・23・24・25・26死亡。
01・07・14・20は「失格」
……実のところ、ペズ・バタラの突進には、既に気づいていた。
そしてさしもの艦長といえども、
生徒たちの相次ぐ「通信途絶」を素直に「死亡」と信じるほど愚かではなかった。
さすがに、リファニアについては一瞬信じかけ、対処が多少遅れはしたが。
ただ、生徒たちがあまりに素早かった。
対艦突進攻撃のためだけに設計されたペズ・バタラに、迎撃は間に合わなかった。
まさにカタパルトから発進する体勢にあったギラドーガが、両断される。
一体、二体……。
五機中の二機は外に出たものの、一機大破、一機は片腕が吹き飛ぶ。
そして発進し損ねた一機が、MSデッキの中でペズ・バタラと向き合っていた。
格納庫から、整備員たちが逃げ出していく。
格納庫の片隅に、出撃しそびれたメガライダーが、所在無く佇んでいる。
* * *
「ええい、さっさと爆破しろ!」
「しかし、首輪は応答が……」
「機体の方だ! 首輪は、首輪カバーを使うことくらい判ってるわ!」
「……いえ、こちらも応答なく……おそらく」
「あッ! 無人機のビギナ・ギナも禁止区域に踏み込みました!」
「それも爆破だ! 応答なくとも、爆破信号は送り続けろ、首輪も機体もだ!
何かのはずみでカバーが外れて、爆発しないとも限らんからな!」
* * *
増援艦隊は、もう少し落ち着いていた。
「失格者の処分」という命令変更に、すぐにMSが飛び出せる準備をする。
直進する彼らの前方に、標的の影が映る。
サイコガンダムMk−U。ガンイージ。
彼らは警告も何もなしに、目の前のP-15を横切ろうとしている2機の横腹から射撃をかけた。
艦砲射撃が彼らを襲い、MSが次々と発進する。艦自身もP-15の中に踏み込む。
各種デナン系MSを取り混ぜたその数、10機。
艦砲射撃に続いて、彼らのライフルが火を噴く。
援軍艦隊はその戦力のおよそ三分の一を吐き出し、残りは舳先をレウルーラの方に向ける。
とはいえ、その横腹にも油断はない。
戦力差は甚大。そしてどれも素人ではなく、それなりの腕の兵士である。
管理側に不安要素があるとしたら……必死さの違い、だろうか。
誰も、こんなところで、死にたくはない。
【管制側の行動:01、07、14、20番の首輪爆破コード発信(−4p)
ガンイージ、ペズ・バタラ、ジャベリン、サイコガンダムMk−U、
ビギナ・ギナの機体爆破コード発信(−5p)
管制艦ギラドーガ4機発艦(−4p)応戦準備(−4p)
管制艦艦内、白兵戦対応準備(−1p)
援軍艦隊移動(P-18→P-17→P-16→P-15)(−9p)
援軍艦隊のMS隊発進(−10p)
援軍艦隊、01番・20番に対して一斉攻撃(2p分×2)(−4p)】
【管理側位置:管制艦O-15、ギラドーガ3機O-15(艦外、うち一機小破)、
ギラドーガ1機とメガライダーO-15(艦内)
援軍艦隊P-15、デナン系部隊×20 発進済み】
【管理側戦力状況:管制艦レウルーラ:ギラドーガ4機(一機中破)
援軍艦隊(ザムス・ガル級3隻、MS10機出撃20機搭載)】
【管理側の行動方針:「失格者」の「処分」】
彼女は、戦っていた。
その侵入はすぐに管理側の知るところとなり、際限のない戦いを強いられている。
U-29での陽動で多少戦力を削いだとはいえ、それでもまだまだ敵は多い。
「優勝者」の決定と、「失格者」の処分問題のゴタゴタのために、
彼女に全力を投入していないのが救いと言えば救いだ。
彼女側の武器は、ハロBの殺傷力とハロVのハッキング、彼女のNT能力。
NT能力で、殺意を感知し敵の接近を知ることはできるが、それも完全ではない。
複雑に入り組んだ通路を、隠れ、闘い、時に欺き。
全身に傷を負い、睡眠不足と疲労にふらつく体を引きずり、さらなる鎮痛剤を打ち。
とうとう、目標地点へと近づいていた。
『ゲート』、その最重要機能である、時空移転システムの操作室へ。
結果的に互いが互いの陽動となり、事態は阻止されることなく進行していく……。
【リーアの行動:兵士たちと戦闘しながら移動(−4p)】
【位置:V-29(ゲート内)】
【リーアの戦力:現在生身。U-28港湾部に停泊中のコアブースターに赤いハロ(ハロR)】
【リーアの所持品:血染めの白衣、小銃1挺、紫色のハロ(ハロV)、黄色いハロ(偽装ハロB)】
【リーアの状態:手足に細かい被弾、破片など。心身の極度の疲労。麻薬で無理やり行動中】
【リーアの行動方針: たった一人の戦争 】
シュウジのガンイージを追いつつ、追われつつ。
リファニアのサイコはレゥルーラの隣のエリアへと辿り着いた。
だが、すぐにレゥルーラと同エリアに入るつもりはない。
そのまま進路を修正せずに、P-15を斜めに横切るつもりだった。
……あくまでも、パイロットが死してもなお漂う、主の無いMS。
皆が周辺に集うまでは、あくまでもそのように装うつもりだった。
(突入組は、一斉に突入する事が望ましいもの。
リナルドもすぐそこまで追いついているし、レイモンドさん達がレゥルーラの近くにきたら動き出そう。)
だが、リファニアの思惑は他所に、O-15へと高速で進入してきた一機のMSがあった。
>>182 (なっ……ちょ、ちょっと、ベルクさんっ!
単機で突撃して侵入できる訳がっ……。)
だが、リファニアのそんな心配を他所に、ベルクのペズ・バタラはレゥルーラの迎撃態勢が整う間すら無しに、
一気に敵艦との距離を詰めていく。
(速いっ!!
……そうか、あの機体、変わった形してると思ってたけど……そういう機体だったのね。
あの形は、前方投影面積を減らす為。機体の前方にあの巨大なビームの刃を展開させて
突撃するという……命知らずの特攻機なのね。)
これなら、艦に取り付く事そのものは不可能ではない。
……だが、問題はそれだけではない。
取り付いた所で、単機だけでは準備の整った迎撃機に袋叩きにされる事は必死だ。
……もう、なりふり構ってなどいられない。
予定は少し変わってしまったが、奴らを間髪入れず畳み掛ける戦法に移るべきだ。
メガバズーカランチャーは、依然として有効。
艦内を混乱させるのにも、ベルクに続いてシュウジ達を突入させる為の援護にも。
>>183 定期放送によって、リナルドの優勝が告げられる。
だが、その放送が最後まで語られる事はなかった。
どうやら、ベルクの突撃は成功したようだ。
さて、ベルクが来たのならば、砲手たるべきレイモンドも、近くに来ている筈。
メガバズーカランチャーのエネルギーをチャージさせ、
スラスターを一度だけ大きく吹かして、あくまでも残骸を装いつつ、O-15へと侵入し……。
>>185 「……ははっ、やつら、結構動き速いじゃん。
ひい、ふう、みい……あはは、10機もいるよ……。
……もう、なりふり構っていられないよね。
起きて、サイコっ!ぶっ潰すよっ!」
封印していたサイコミュを解き放つと、増幅されたリファニアのサイコ・ウェーブが、
コックピット内に渦巻き出始めた。
抑圧されていた何かが、目覚めようとしていた。
「……ふふっ、私だって、パイロットの端くれだもの。
思いっきり躊躇せずに戦える戦場があれば、魂を荒ぶらせもする。
それにね、こういう一見絶望的な戦局でもね……覆してみせる何かを、私達は持ってる。
サイコミュを操る悪魔はね、イレギュラーな存在のはず……。
そうじゃなきゃ……パパが殺された意味が、無くなっちゃうでしょっ!」
P-15へと侵入してきた敵機たち、そして、三隻の敵艦。
……冷たい殺意。
敵を殺す事を作業的にこなす事のできる、プロの戦士達の殺意が収束するのを感じた。
即座に戦闘態勢をとり、全速で後退しつつシュウジのガンイージへと近づくリファニアのサイコ。
そこへ、艦砲射撃の雨が降りそそいだ。
「……Iフィールド、もてぇぇぇぇっ!!」
Iフィールドによって逸らされる大出力ビーム。
この戦闘空域を、凶暴な光の渦が支配した。
続けて、10機のデナン・タイプによって放たれた幾筋もの火線。
シュウジのガンイージを庇うように、立ちはだかるリファニアのサイコ。
Iフィールドによって弾かれたビームが光の幕をつくり、
マシンガンの弾が、紫の悪魔の装甲を容赦なく削り取った。
……が、悪魔は傷ついてもなお、健在だった。
ガンイージへと接触し、通信をおくりながら、メガバスーカランチャーを渡す。
「……シュウジさんっ!チャージは完了してるっ!
一発ぶっ放してっ!そして、行ってっ!!
後は、私が、止めるっ!!」
なるほど、寡兵に対しては、圧倒的な物量で押すのが正しいやり方であろう。
……だが、戦力の集中は、時として思わぬ被害を被る事もある。
養父によって教えられた戦史にも、幾つもの例があった。
ソロモン攻略戦、星の屑、グリプス攻防戦……。
(……あなた達は、私達を……舐め過ぎた。)
胸の拡散ビームを放って敵機の接近を阻み、シュウジの発射を援護するリファニア。
……作戦が変わろうとも、準備した数々の切り札は無駄にはしない。
【行動 : メガバズーカランチャーチャージ(-1)、Iフィールドでビーム無効化&シュウジをカバー(-2)
シュウジとの接触通信(0)、拡散メガ粒子砲で威嚇(-1)、残0 】
【位置 : P-15 】
【機体状況 : MRX-010サイコガンダムMk-U
全身の装甲に決して軽くない損傷、右肩アーマー損失、左肩アーマー上部損傷、背面に損傷、
スラスター損傷(推力70%) 、アポジモーター幾つか損傷、MA時バランサー異常
自爆装置改造済み、MS形態、攻性プログラム&『盾』ダウンロード済み、ジェネレーター??? 】
【パイロット状況 : 頬にうっすらと傷痕、右肩軽傷(治療済)、頭軽傷(包帯巻)、左腕重傷(処置済み)、
ノーマルスーツ着用、メイク済み♪、全身にピリッとした感覚、首輪カバー装着 】
【武装: 胸部3連装拡散メガビーム砲(一門破損)、リフレクタービット×5 、大型ヒートグレイブ、メガバズーカランチャー
腕部サイコミュ式 ビームソード×1、全身メガビーム砲×多数(左脛二門破損、右肩全門破損) 】
【方針 : 『揺るがせてはならない夢』、自分の意志で綺麗に生きる、誰も死なせない! 】
俺の合図を受けて、真っ先にペズ・バタラが進入禁止空域に入っていった。
どうやらベルクも覚悟を決めているらしく、そこに突き進む姿に、恐れなど微塵も感じられない。
そして…その勇気は最高の形で報われる事になった。
モニターに映るベルクの姿には、何の異状も見当たらない。
首が飛んだわけではない。
機体が吹き飛んでモニターが砂嵐になるわけでもない。
…ベルクのペズ・バタラは、文字通り真一文字にレウルーラに向かって突進していた。
これより先、リファニアのサイコガンダムとシュウジのガンイージ、それにビギナ・ギナも進入禁止
空域に入って行ったらしい。
俺にはベルクの持っているような特殊端末はないが、ペズ・バタラの突進はおそらくリファニア達の
攻撃のタイミングに合わせたものだろう。
であるならば、Q-17に到着したリナルドと俺以外のメンバーは全てレウルーラの周辺に到達している筈だ。
ベルクが援護を要請しつつ、O-15に…正確に言えばレウルーラに向かっていく。
そのスピードは衰えるどころか、レウルーラに近づくにしたがってますます加速しているようだ。
ここでベルクとの距離が開きすぎると、敵の中で孤立させてしまう可能性が高い。
「…じゃ、行こうか!」
俺は思い切りフットペダルを踏み込むと、一気にOー15を目指して進入禁止空域に入っていった。
そこはもう進入禁止空域ではなくなっていた。
意識ははっきりしていて、手も足も、全て己の意思通りに動いている。
…不思議な感覚だった。
高揚感と言ってもいい。
あれ程に恐れていた進入禁止空域の中を、何事もなかったように進んでいく。
苦手なもの、恐れるものを克服した時の気持ちの高ぶり。
それは俺の中で咆哮を上げつつある戦士の魂と混ざり合って、今までにないくらい、格段に
精神を研ぎ澄ませていく。
(続く)
O-15に突入する直前、俺の目はレーダーの反応をすばやく追っていた。
レウルーラ周辺にいる4機のギラ・ドーガと、レウルーラに重なるように映っているペズ・バタラ
にもう1機のギラ・ドーガ。
サイコガンダムとガンイージの反応は見えない。
…俺と平行して進んでいた救援艦隊に足止めしているのだろうか。
そうであれば、直ぐにでも応援に行きたいところだが……。
「…今はこいつらを叩く!」
弾けるようにO-15に突入すると同時に、4機の中で片腕を失ってうろたえているギラ・ドーガに
ロックオンして、タイヤのビームキャノンを放つ。
1発がもう片腕を吹き飛ばし、もう1発が狙ったように胴体に風穴を開け機体を紅蓮の炎に包み、
宇宙に赤い、血の色をした巨大な花を咲かせる。
その花の中心を突き抜けて、レウルーラに突き進む。
…レウルーラのカタパルトハッチが1つ、盛大に穴を開けられていた。
考えるまでもなく、ペズ・バタラが突っ込んだ穴だろう。
その先にいるのはペズ・バタラと…もう1機のギラ・ドーガ。
俺に迷いはなかった。
カタパルトハッチの穴に飛び込むと、ペズ・バタラの横をすり抜けて、向かい合っていた
ギラ・ドーガにタイヤで体当たりを食らわせる。
コクピットを揺さぶる、強い振動。
タイヤは衝撃で横に飛ばされて、壁に激突した。
シートの上で跳ねながら、それでもモニターのベルクに叫ぶ。
「今だベルク!やれ!」
【行動:ペズ・バタラ、サイコG、アビゴル、ガンイージに回線継続(0)移動ボーナスで
O-15に移動(-1)ビームキャノン発射(-1)レウルーラに移動(-1)体当たり(-1)】
【残り行動値:0p】
【位置:O-17→O-16→O-15】
【機体状況:右腕消失、頭部バルカン砲1門損傷、モニター一部使用不能、右肩装甲損傷、左肘
ジョイント負荷(40%)、胸部及び腹部装甲に凹みと歪み、ショットランサー1基消失
アインラッド:打撃による回転不良(小)、ビームキャノン1門破損】
【参加者状況:左肩負傷(処置)、左眼球裂傷(処置)、右手首切断(処置) 右肋骨骨折、
左大腿骨にひび、右上腕に銃創(処置)】
【武装:頭部バルカン砲×1、ビームサーベル×1、ショットランサー×1、ビームシールド
アインラッド 武装:ビームキャノン×1(76%)、9連装ミサイルポッド×8】
【所持品:ディパック、水2?入り5本、食料21/3日分、蕎麦団子1個、拳銃と自動小銃と弾倉×5
タッパーのカレー1つ、保冷シート2枚、書類の束、ペン、缶詰の段ボール、首輪カバー】
【行動方針:ベルクの手助け】
【同盟:ベルク、リファニア、シュウジ、リナルド】
文章の校正ミスがありました。謝罪と共に訂正します。
>>185 中段
>「あッ! 無人機のビギナ・ギナも禁止区域に踏み込みました!」
>「それも爆破だ! 応答なくとも、爆破信号は送り続けろ、首輪も機体もだ!
> 何かのはずみでカバーが外れて、爆発しないとも限らんからな!」
を、以下のように訂正します。
↓
「あ、無人機のビギナ・ギナはどういたします?
あれは01番の『私物』だったようですが」
「それも爆破だ! 主人が反逆して人工知能がこちらに忠実、なんてはずがあるものか!
応答なくとも、爆破信号は送り続けろ、首輪も機体もだ!
何かのはずみでカバーが外れて、爆発しないとも限らんからな!」
他の点、ステータス欄の行動に変化はありません。
スレ汚し、申し訳ありませんでした。
流石にペズ・バタラの突撃による衝撃が自分の体を突き抜け
意識を断つ寸前だったのを食い止め周りを確認すると
破壊をま逃れたギラ・ドーガがこちらを向いていた。
(―――――――――やべぇ)
そう思ったときペズバタラの横を通りすぎた何かがギラ・ドーガに
当たり壁まで吹き飛んだ。
『今だベルク!やれ!』
その声はレイモンドだった。
「承知!」
それと同時に俺はペズ・バタラを動かし
左手の甲に残っていたビームシールドを展開させ態勢を崩している
ギラ・ドーガの胴体部に突き刺し、爆発に巻き込まれない様
そのままビームシールドを前面に構えて爆風をしのぐ。
「すまないレイモンド助かったぜ。
だが、大丈夫か?ハデな当たり方しなかったか?
タイヤも吹っ飛んじまってるほどだし、アレ流石に壊れたんじゃないか?」
レイモンドへの礼の言葉を言いながら改めて周りを見渡す
どうやらこのカタパルトに残っていたMSはあれで最後の様だ。
(―――――――!?)
格納庫内の片隅に一機バイクのような機体があった。
「粗方、この格納庫内のMSは掃除したが・・・・・・
レイモンド。アレ使えないか?タイヤもボコボコだし
今度はバイクに乗りかえるとか。」
【行動:レイモンドと通信中(-0)会話(-0)ビームシールドで攻撃防御(-2)】
【残り行動値:2】
【位置:O-15】
【機体状況:右腕損失、左足膝部損失、右足膝部損失、本体側面装甲各所損傷
コクピット内機械一部損傷、スラスター各部損失(出力50%低下)
左手マニュピレーター消滅】
【武装:(本体)ビームアックス、3連装ミサイルランチャー×2(残弾0)(左手甲部)ビームシールド、
ビームダガー×1本 】
【所持品:ディパック 水2g三本 十字架 聖書 特殊情報端末 チ○ルチョコ20個ほど
アサルトライフル 予備弾倉5セット 拳銃 予備マガジン5セット
手榴弾 六個 ナイフ スタングレネード×1 防弾チョッキ 首輪カバー】
【行動方針:ミッションスタート】
【同盟:01番 シュウジ=アサギ 14番 レイモンド=デリック】
>>185 (
>>191)より少し前
リナルドからの返答を待つ間、ゼファーの中では幾つかの情報が目まぐるしく行き来していた。
ゼファーは思考する際、幾つかの判断を用意し、その中から現在の倫理基準に当てはまる最良の物を選んでいる。
この時、ゼファーの中では現在行っている行動が本当に最良なのか、それとも他の行動を取った方がいいのか、
と言う議論が行われていた。
命令を優先して"このまま演技を続ける"と言うものと、
マスターであるシュウジの生存率を上げるために"この演技を打ち切り、シュウジの元へ急行する"と言うものだった。
が、この議論をしている間、新たな問題が回路の中に生まれていた。
"シュウジは禁止区域に入っているが、それが実は発覚しているのではないか。
もしそうだとしたら、こちらが爆破されないか"という物だった。
この問題は、重大な問題として中枢回路に理解され、即座に議論に掛けられた。
自分が死んでしまっては、結局シュウジの生存確率は大きく下がるのだ。
そして、結論が出た。この間、数秒。機械と人間とでは、所詮時間軸が全然違うのだ。
ちなみにその結論とは、"自爆装置をとりあえず無効化。"と言う物だった。
未だにその判断が正しいのかという議論は継続中だが、これをしない事にはどうしようもなかったのだ。
そして、その判断は行動へ移された。
右腕のビームライフルを目の前の空間にとりあえず配置。
続いてフリーになった右腕にビームサーベルを装備。出力は最低。
そこで、指定されたポイントをいかに最小限の損害で破壊するかという計算を行うべきだという判断が用意されたが、
現在はその時間は無いという理由により却下され、とりあえず大体のポイントを突く事に決定した。
次の瞬間、ビームサーベルがコックピット右脇に突き刺さった。
即座に、様々な警告文がビギナギナから流れ込む。
"コックピット周囲外壁破損"
"コックピット内右全天周モニター使用不可"
"操作レバー類全使用不可"
"コンソール断線。使用不可"
シュウジが乗っていればかなりの被害だが、
今は乗っているわけでもないし、これから乗る可能性も低いだろうと言う判断から、
これらの警告文はすべて無視された。
今のところそれ以外の被害はない。自分を固定する器具にも、目立った損傷はなかった。
それを確認すると、武装を元に戻し、リナルドにメッセージを送ろうとした。
が、その時、光学センサーが信じられない物を捉えた。ビームの光である。
未だレーダー範囲外ではあるが、かなりのビームが、発射されている事が判明した。
ゼファーはこれを緊急の事態と判断し、リナルドにはとりあえず簡単な文を送ると、現エリアを全速で離脱した。
離脱する直前送られた文には、こう書かれていた。
"緊急事態が立て続けに起こっています。
私の義務はマスターを守る事。よってビームが発射された方向に向かいます。
後は、自分でどうにかしてください。すいません。"
【行動:自爆装置破壊(−1)筆?談(−0)Q−15を迂回してP−15に移動(−3)】
【残り行動値:0p】
【位置:両機P−15】
【機体状況(ビギナ・ギナ):左肩装甲融解 自爆装置無効化済 コックピット損傷
フィン・ノズル4個損傷、表面装甲損傷軽微】
【参加者状況:右足重傷(処置済み)打撲 左目周辺に切り傷 防弾チョッキ着用 首輪カバー装着中】
【武装:ガンイージ: 頭部60mmバルカン砲×2(残弾65%)、ビームサーベル、ビームシールド、ビームライフル(残弾3)
ビギナ・ギナ:ビームライフル×2(残弾:右85% 左70%) ビームサーベル×2 ビームシールド
フック付きワイヤー&ウィンチ ヒートナイフ×2 F-90S用クルージングミサイル×1
ドラム弾装式120mmマシンガン×2(残弾:右3斉射分 左4斉射分)】
【所持品:ディパック(食料0.5日分 計画書 紙とペン 医療用セット 首輪カバー
自動小銃 マガジン×5 スタングレネード)
拳銃(残弾16発) 工具セット 杖 ヨーコの果物ナイフ (ゼファー) 】
【行動方針::"示す" 利用出来るモノは利用 】
MSデッキへと繋がる通路を5、6人の兵士が移動していく。
それぞれが手に装備しているのは、携帯用のランチャーだ。
「奴が飛び込んだのはこっちだ。…急ぐぞ!」
先頭に立つ下士官らしき兵士が、後続の兵士に命令しつつデッキへと向かう。
彼はレウルーラに乗艦していた管理者側の兵士で、MSデッキにペズ・バタラが突入した事を
知り、すぐさまその場にいた兵士達にランチャーを持たせデッキに向かっていたのだ。
勿論彼はこんな物がMS相手に役に立つとは思ってはいない。
だが、デッキからの通信を聞くと、どうやらデッキには発艦しそこねたギラ・ドーガが1機いて、
ペズ・バタラと睨み合っているらしい。
彼の決意は固まっていた。
1対1では無傷のギラ・ドーガといえども、このプログラムをくぐり抜けてきた生徒と戦うには
いささか不安がある。
だが生徒の乗るペズ・バタラも傷付きまともな戦闘は長くできない筈で、全体的に見れば両者は
互角といったところだろう。
ならばこのMS相手には役に立たないランチャーでも、使いようによっては相手の気を逸らす事
くらいはできる。
うまくカメラに命中すればペズ・バタラの視界を塞ぐ事も可能だし、そのくらいの隙を作れば、
戦闘経験の少ない我が方のギラ・ドーガでも、容易くペズ・バタラを倒せるだろう…。
確かにレウルーラの艦橋にいる幹部には、階級に見合った能力の伴わない人間がいる。
…だが中には彼のような勇気も能力も、更には部下を引っ張る魅力をも持ち合わせた兵士も多くは
ないが、確かに存在していたのである。
「いいか、このデッキにペズ・バタラがいる。虚を突いて一気に突入して一斉にペズ・バタラの
カメラを狙ってランチャーを発射し、味方が攻撃する隙を作る。
…3つでいくぞ、遅れるな!
…1…2…3!」
…この時彼に誤算があったとすれば、それはデッキに突入してきたのがペズ・バタラだけではなく、
そしてあとから来た男が戦闘を長引かせるつもりが全くなかった、という事だろう。
勇敢な彼等がデッキに入って見たもの……いや、正確には彼等は何も見てはいない。
デッキへ通じる扉を開けた瞬間、その中の光景を彼等の脳が認識する前に、彼等は爆発したギラ・
ドーガの破片と爆風に巻き込まれて全員が戦死した。
(続く)
猛烈な爆風と炎、そして煙が収まったあとには、デッキには何も残っていなかった。
床に散らばる無数の破片が、そこに今までいたギラ・ドーガの名残りだ。
頭を振って周囲を見ると、ペズ・バタラの姿が目に入る。
どうやら破片などの被害は殆ど受けなかったらしい。
…しかし、俺が猛スピードで体当たりした、あのタイミングに合わせてギラ・ドーガに的確な攻撃
を仕掛けるとは、ベルクの操縦の腕はかなりのものだ。
乗っているのが半壊したペズ・バタラなだけに、余計に感心してしまう。
ベルクの通信を聞きながら、倒れたジャベリンを起き上がらせる。
こちらは倒れていたおかげで、破片の被害には合わなかったようだ。
と、近くにギラ・ドーガの物らしき、マシンガンが落ちているのを見つけた。
それを拾いながら返答を返す。
「お前の方こそ巧いアタックだ。ジャベリンの方は、大丈夫だが…。タイヤはビームキヤノンが1
門使用不能だな。それに破片で所々に傷がついてしまってるが…。
とにかく動かしてみない事には、何も分からない」
ジャベリンをタイヤに乗せて動かしてみる。
…振動は相変わらずだが、軋むような音も少しする。
さっきまでのような全力疾走は難しいかもしれない。
まあやってみなければ分からないが、まだ艦外にギラ・ドーガがいる状況で敢えてする気にはならない。
「ここで使う分には何の問題もないな。それよりも問題なのは、外にいる残りのギラ・ドーガだ。
立て続けに墜とされているだけに、向こうも慎重に攻めてくるかもな…。
とにかくシュウジでもリナルドでも、誰かが来るまでここを確保しなければならない。
そっちのバイクは、リファニアの応援に行く時にでも使わせてもらうさ。
ジャベリンのサイズより大きめだが、操縦はタイヤよりは早く慣れる事ができるだろう。
何か強力そうな武器もついているから、役には立ちそうだ」
本当なら直ぐにでもリファニアの応援に行きたいところだが、半壊したペズ・バタラを1機だけ
残していくわけにもいかない。
…こうしてまたレーダーとのにらめっこが始まった。
(早く…シュウジでもリナルドでもいいから、早く来い…)
【行動:ペズ・バタラ、サイコG、アビゴル、ガンイージに回線継続(0)タイヤ試走(−1)
ビームマシンガンを拾う(−1)】
【残り行動値:2p】
【位置:O-15(レウルーラMSデッキ)】
【機体状況:右腕消失、頭部バルカン砲1門損傷、モニター一部使用不能、右肩装甲損傷、左肘
ジョイント負荷(40%)、胸部及び腹部装甲に凹みと歪み、ショットランサー1基消失
アインラッド:打撃と破片による回転不良(中)、ビームキヤノン1門破損】
【参加者状況:左肩負傷(処置)、左眼球裂傷(処置)、右手首切断(処置) 右肋骨骨折、
左大腿骨にひび、右上腕に銃創(処置)】
【武装:頭部バルカン砲×1、ビームサーベル×1、ショットランサー×1、ビームシールド
ビームマシンガン(100%)
アインラッド 武装:ビームキャノン×1(76%)、9連装ミサイルポッド×8】
【所持品:ディパック、水2?入り5本、食料21/3日分、蕎麦団子1個、 拳銃と自動小銃と弾倉×5
タッパーのカレー1つ、保冷シート2枚、書類の束、ペン、缶詰の段ボール、首輪カバー】
【行動方針:味方が来るまでデッキ確保】
【同盟:ベルク、リファニア、シュウジ、リナルド】
>>182 「ベルク……作戦はどうしたんだ?おい!
まだ生きてるみたいだからいいがな……!」
サイコMK−2と並行するように進むガンイージの機内で、シュウジはレーダーの表示の変化に集中していた。
そして、そのレーダーの情報では、ベルクがレウルーラに突撃した事を示していた。
同時に、定期放送が入った。
>>183 リナルドの優勝を告げる放送。同時に鳴り響く衝撃音。
その事と、レーダーの表示からベルクがレウルーラへの突撃を成功させたという事がわかった。
「無茶しやがるな……。こっちも急いで向かうか。
……な……にぃ!?」
一瞬、シュウジは我が目を疑った。
ガンイージの全天周モニターの左側が、真っ白に染まっていたのだ。
直後、それが援護艦隊の艦砲射撃である事に気が付いた。
そして、レーダーには10機程のMSが接近しているという事を表していた。
「動きが予想外に早い……これを避けるのは……無理そうだ……な!?」
再び、シュウジは我が目を疑った。
目の前に急に巨大な影が現れ、ビームをすべて弾き飛ばし、弾丸を受け止めていた。
やはり直後、それが先程まで横にいたサイコMK−2である事に気が付いた。
「リファニア!生きてるかっ!?」
思わず、叫びながらサイコMK-2の状態を見る。その装甲は、あらゆる所に弾痕が宛われていた。
が、直後に入った通信がとりあえずシュウジを安心させた。
『……シュウジさんっ!チャージは完了してるっ!
一発ぶっ放してっ!そして、行ってっ!!
後は、私が、止めるっ!!』
「OK!
冷や汗流しな!管制者共ぉぉ!!」
そう叫びながら、メガバズーカランチャーに手を伸ばす。
そして、拡散メガ粒子砲をかわしつつ近づいてくるMS達のほぼ中央に照準を合わせると、トリガーを引き絞った。
『やったか!?』
『いや。まだだ!』
『状況は!?』
『サイコだ!Iフィールドでビームは弾かれた!実弾はまるで効いてないぞ!』
『糞っ!旧型のくせに……堅すぎる!』
『撃ってきたぞ!回避散開しつつ前進!回り込め!』
響き渡る怒号、命令。援護艦隊MS部隊第一陣の一員を務める事になったデナンゲーのパイロットは、
そのうちの有益な情報のみを拾い取り、命令を実行するべく、スラスターを噴かせた。
自分と同じように第一陣に選ばれた者の中には、相手の能力を軽んじ、自信だけが先行している者がいたが、
彼はそうではなかった。彼は追いつめられた者の怖さを理解していた。
故に、予想外の攻撃を受けても冷静さを失わず、淡々と命令を実行していた。
が、次の瞬間彼の冷静さは一瞬で吹き飛んだ。冷や汗が、背中を伝う。
サイコMK−2の脇に見える巨大な砲。メガバズーカーランチャー。それが見えたのだ。
さらに、画像を拡大すると、ガンイージがそのグリップを握るのが見えた。
「隊長!メガバ……。」
彼の最期の言葉は、途中で遮られた。ビームの濁流が、彼の機体ごと彼を粒子のレベルにまで分解していた。
「あー……糞っ!何機か撃ち漏らした!」
メガバズーカーランチャーの一撃は、援護艦隊MS部隊第一陣と思われるMS群を薙ぎ払ったが、
数体はそのビームから逃れていた。
「……ゼファー、リナルド……まだか!?
こいつをこのまま置いて行くわけにもいかないし……。」
〔マスター!〕
「!?」
突如入った通信。聞き覚えのある声に周囲を見渡すと、
ゼファーのビギナ・ギナが高速でこちらに向かってきていた。
「グッドタイミングだな!しかし用事は済ましたのか!?」
〔いえ!ビームが見えましたので!〕
(……てことはリナルドは置いてこられたのか。ご愁傷様。
だが……今はそんな事を気にしている場合ではないな。)
≪まだ続きます≫
「ゼファー!久しぶりに往くぞ!
……幻よ。今こそ我の前にその真の姿を現し、
抗う全ての者に分け隔て無く慈悲無き破壊を、絶望を、死を与え給え。
Zephyr.Phantom.System.-Natural-起動用意。」
〔パスワード・声紋認証されました。-Natural-起動用意。
機体情報、チェック。……ブルー。活動限界まで、900秒〕
「言語機能限定、
C−01/02/03解放、
FCS解放、
統合操縦システム、リミッターカット。
対G制限システム、リミッターカット。
独自戦闘モード、コードA−1からA−23随時変更しつつ対応。」
[All limiter separation.
Mode setup.
The completion of starting preparation.]
「Zephyr.Phantom.System.-Natural-起動!
900秒フル稼働最大戦速。
目標、前方艦隊!」
[Target setup.
The completion of attack preparation.]
「……やられない程度に引っ掻き回せ。
C O M B A T . O P E N !」
[yes my master.
I start a battle.]
「リファニア、ゼファー。後は任せた。俺はレウルーラへ向かう!」
そう言うと、ガンイージをレウルーラに向かわせた。
背後では、ゼファーが援護艦隊に突撃していった。
「死ぬなよ……!」
【行動:接触通信(−0) メガバスーカランチャー発射(−1)
ビギナギナと通信(−1) -Natural-起動(−1) O−15へ移動(−1)】
【残り行動値:0p】
【位置:O−15(ガンイージ):P−15(ビギナ・ギナ)】
【機体状況:ビギナ・ギナ:左肩装甲融解 自爆装置無効化済 コックピット損傷
フィン・ノズル4個損傷、表面装甲損傷軽微
ガンイージ :機体各所にダメージ、電子機器に被害、頭部右側面に損傷、右脚部損傷、左肩装甲損傷
右フロント・サイドアーマー破損 脱出装置使用不可 自爆装置無効化済】
【参加者状況:右足重傷(処置済み)打撲 左目周辺に切り傷 防弾チョッキ着用 首輪カバー装着中】
【武装:ガンイージ: 頭部60mmバルカン砲×2(残弾65%)、ビームサーベル、ビームシールド、ビームライフル(残弾3)
ビギナ・ギナ:ビームライフル×2(残弾:右85% 左70%) ビームサーベル×2 ビームシールド
フック付きワイヤー&ウィンチ ヒートナイフ×2 F-90S用クルージングミサイル×1
ドラム弾装式120mmマシンガン×2(残弾:右3斉射分 左4斉射分)】
【所持品:ディパック(食料0.5日分 計画書 紙とペン 医療用セット 首輪カバー
自動小銃 マガジン×5 スタングレネード)
拳銃(残弾16発) 工具セット 杖 ヨーコの果物ナイフ (ゼファー) 】
【行動方針::"示す" 利用出来るモノは利用 】
「………優秀な部下達を、一瞬で6人も失っただと……。
ちっ、あの忌々しい女が、生徒どもにあんなものを与えるから……こういう事になるのだ。」
メガバズーカランチャーの凶光から逃れ、憎々しげに呟いた攻撃部隊第一陣隊長。
彼の脳裏に、ハロ達と戯れながら無邪気な、それでいて、微塵も油断のならない笑みを浮かべた
裏切りのティーチャーの顔が浮かんでいた。
生き残ったのは、自分のベルガ・ギロスを除き一機のデナン・ゲー、二機のデナン・ゾンのみ。
……いかに優れた兵であろうとも、あれほどの大規模破壊兵器の威力を目の当たりにすれば、
戦意が崩れてもおかしくはない。事実、生き残った部下達の機体の動きは乱れ切っていた。
「……貴様ら、何を相手にしているか解っているか!
悪魔や化け物の類ではない、ただの旧式の大型MSに過ぎんのだ!
見ろ、あの満身創痍の姿を。確かに装甲こそ厚かろうが、残りの戦力で狩れん相手ではないッ!
貴様らは、いつも通りに冷静に任務をこなせば良いだけだ!」
何とか部下を鼓舞し、隊形を立て直そうとする隊長。
部下達もさすがに戦闘のプロフェッショナルらしく、動揺を何とか押さえ込み、再び隊形を整えた。
「……よし、奴に波状攻撃をかける!ショットランサーの餌食にしてやれい!」
……攻撃部隊が反逆者に再び攻撃体勢に移ろうとした時、戦場に一機の白銀のMSが姿を現した。
その機体は、攻撃部隊の面々にとってお馴染みのものだった。
ビギナ・ギナ。かつてのクロスボーンの象徴たる機体。
……かつて、自分達を裏切った女が駆っていた忌々しい機体が、再び自分達に牙を向こうとしている。
クロスボーンを崩壊させ、自分達がプログラムの管理側に雇われるきっかけをつくった女が駆ったMS……。
思わず視線が釘付けとなり、攻撃体勢への以降が遅れてしまった。
その隙に、反逆者のうち一機、シュウジのガンイージの離脱を許してしまう。
「……おのれ、どこまでも、我々の邪魔をしたら気が済むというのだ……。
あの白銀のMSといい……あの女どもといい。」
かつて自分達を導いていた女と、ティーチャーだった女の姿が重なる。
彼女らの立場は全く異なってはいたものの、立て続けに起こった不測の事態はいささか隊長を混乱させていた。
……憎しみが、白銀の機体へと収束する。
「……貴等様はサイコを潰せ!
貴様は俺と共に、忌々しい裏切りの機体を無に帰すのだ!
一機で抑え、もう一機で狩れ!」
それでも、戦闘そのものへの支障は最低限に抑えられるのがプロフェッショナルたる所以だろう。
素早く部下に指示を出し、攻撃態勢へ以降する。
サイコに二機のデナン・ゾンが襲い掛かり、ビギナ・ギナに隊長のベルガとデナン・ゲーが襲い掛かるが……。
「……何だと……?」
猛然と加速したビギナ・ギナは隊長達を振り切って、艦隊へと突撃をかけていた。
……その加速は、明らかに非常識なものだった。人の乗るMSの加速では、ありえなかったのだ。
「おのれ、おのれ……艦隊に、手を出させるな!
何としてでも落とすぞ!」
……必死で追撃しようとする隊長。
彼の注意は、完全にビギナ・ギナへと向けられていた。
まるで、破滅と誘う幻に捉われてしまったかのごとく。
※ ※ ※ ※ ※
>>197 「……すごい、光……幾つもの生命が、飲み込まれて……。」
シュウジのガンイージが放ったメガバズーカランチャーの一撃が、攻撃部隊のMS群を飲み込んでゆく。
光が収まった時、残された敵MSは、半数にも満たなかった。
直後、この空域に頼もしい援軍が一機あらわれた。
ゼファーの駆る、ビギナ・ギナである。
「……ん、きたね、ゼファー。
かつて、私を負かしたあなただけど……味方ならばこれほど心強いものは居ないよ。」
>>198 シュウジがゼファーに何かの指示を与えると、ビギナ・ギナの動きが一段と鋭くなった。
そのまま、なんの躊躇いもない加速で艦隊へと突撃するゼファーのビギナ・ギナ。
そして、シュウジは敵の隙を突いてこの空域を離脱し、レゥルーラの居る空域へと向かっていった。
『リファニア、ゼファー。後は任せた。俺はレウルーラへ向かう!』
「……了解っ!奴等の足は、ここで止めておくから!
できるだけ早く、レゥルーラ抑えちゃってねっ!
……でも、死に急ぐ真似だけは、しないでよね。」
……後は、彼ら突入組の無事と作戦の成功を信じて、余計な邪魔が入らないようにここで艦隊を足止めするだけだ。
チューブを機体から引き抜き、メガバズーカランチャーを後方に放り、グレイブを右腕に持ち替えたリファニア。
MSどうしの接近戦では、メガバズーカランチャーは邪魔になるだけだ。
じきに、動きの乱れていた敵MS群の動きが統率のとれたものに戻り、フォーメーションを組んで襲い掛かってくる。
リファニアのサイコに向かってくるのは、二機のデナン・ゾン。
小型MS特有の圧倒的な機動性で迫り来る敵機の、青く輝くゴーグルのようなカメラアイは、無機質で不気味だった。
囲まれないように後退しつつ、拡散メガ粒子砲を放つリファニアのサイコ。
敵機はビームシールドを構えながら散開し、光の奔流を潜り抜けると共に、
一機が正面から、携えたショットランサーのマシンガンを放ちながら、迫る。
サイコではマシンガンの弾を避けきる事は難しいが、余程まずい場所に直撃せねば戦闘力を奪われる事はない。
回避運動をとり、着弾する弾をできるだけ少なくすると共に、左腕のメガ粒子砲で反撃をしようと……。
「……っ!」
突然感じた冷たい殺意のきらめき。
とっさにアポジを噴かし、機体の上体をうしろに倒した。
眼前を、巨大な弾頭が通り過ぎ……いや、あれは、槍だ。
前方から迫り来る機体を囮にして、側面に回りこんだもう一機が、ショットランサーを放ったのだ。
頭部のコックピットをピンポイントで狙ってきたからこそ、鈍重な機体でもかわす事が出来たが、
直撃していたら生命は無かったであろう。
「……やって、くれるよね……。
けどね、機動力に圧倒的に負けてても、私とサイコなら、戦いようは……ある!」
……集中力を極限まで高めるリファニア。
感覚が周囲に広がり、宇宙へと溶け込んでいった。
敵機の中のパイロットの意識を、リファニアの感覚が網のように捕らえ……。
「……ひとつ、ふたつ……そこだっ!」
リファニアの感覚の閃きと共に、サイコのメガビーム砲が二門だけ、放たれた。
※ ※ ※ ※ ※
僚機とのコンビネーションは敵機を完全に翻弄し、僚機の放ったショットランサーの一撃は、
サイコのコックピットを容赦なく貫いた……そう思っていたが、その一撃は、紙一重でかわされた。
直前まで、僚機の存在に気づいた素振りすらなかったというのに。
だが、デナン・ゾンのパイロットは冷静だった。
初撃が外れたとしても、それで終わりというほど、この部隊の連携は甘くはない。
巨大な質量の機体といえど、パイロット次第ではそれなりの回避運動を行う事は不可能ではないだろう。
……だが、一度慣性のついた動きを止め、方向を修正するという機動こそ、大型の機体の苦手とする所である。
頭上からショットランサーを叩き込むべく、敵機の頭上へと回り込むデナン・ゾン。
体勢の崩れた敵機は、その動きについてこれやしない。
そして、僚機もまた、サーベルを抜き放ち、サイコの背後へと回り込んでいた。
訓練に次ぐ訓練と、充分な戦闘経験に裏づけされた、苛烈な連携攻撃である。
(サイコのパイロットは、確か15かそこらの小娘だったな。
可哀相だが、苦しまずに一瞬で殺し……っ!!)
敵機の死角へと入り込み、ショットランサーを放とうとした瞬間。
少女の幻が敵機より広がって、自分を包み抱いたような気がした。
サイコの砲門がふたつ、煌いた。
自機の進路の先に、眩い輝きがあった。
愛機の胸より上を吹き飛ばされ、衝撃がコックピットを襲う。
(……何が、起き……)
彼が最後に見た光景、それは、胴を光に貫かれ爆散する僚機の姿だった。
そして、彼も間もなく、同じ運命を辿る事となった。
※ ※ ※ ※ ※
二機のデナン・ゾンの爆光が、紫の悪魔を照らす。
「……はぁ、はぁ……まず、二機……。」
悪魔の胎内で荒く息をつくリファニア。
すぐに、ゼファーを追う敵機へと、感覚の網を広げた。
「……あれが、第一陣の隊長機……!」
……艦隊の戦力は、まだまだこんなものではないだろう。
最初に作り出したアドバンテージを最大限に活かして畳み掛けねば、いずれやられるのは間違いなくこちらなのだ。
【行動 : メガバズーカランチャーパージ(0)、拡散メガ粒子砲の制圧力で間合いを保とうとする(-1)
ショットランサーを紙一重でかわす(-1)、メガビーム砲でデナン・ゾン二機を撃破(-2)、残0 】
【位置 : P-15 】
【機体状況 : MRX-010サイコガンダムMk-U
全身の装甲に決して軽くない損傷、右肩アーマー損失、左肩アーマー上部損傷、背面に損傷、
スラスター損傷(推力70%) 、アポジモーター幾つか損傷、MA時バランサー異常
自爆装置改造済み、MS形態、攻性プログラム&『盾』ダウンロード済み、ジェネレーター??? 】
【パイロット状況 : 頬にうっすらと傷痕、右肩軽傷(治療済)、頭軽傷(包帯巻)、左腕重傷(処置済み)、
ノーマルスーツ着用、メイク済み♪、感覚開放、サイコミュによる負担、首輪カバー装着 】
【武装: 胸部3連装拡散メガビーム砲(一門破損)、リフレクタービット×5 、大型ヒートグレイブ、メガバズーカランチャー
腕部サイコミュ式 ビームソード×1、全身メガビーム砲×多数(左脛二門破損、右肩全門破損) 】
【方針 : 『揺るがせてはならない夢』、自分の意志で綺麗に生きる、誰も死なせない! 】
「……二機か……無傷で通るのは難しいな。
ならばせめて……奇襲をっ!」
シュウジは、レーダーに映る二機のギラドーガを確認した後、ヘルメットを被りなおし、
O−15に入るなり自分が耐えれる限界速度まで加速した。
シートに身体がめり込み、視界が一気に狭まる。が、進むべき方向は既に定めていた。
「後は……タイミングっ……!」
『糞っ……おい!どうする?』
『考え中だ!艦長に指示を仰ぐか……!?』
レウルーラの前で立ち往生する二機のギラドーガ。
本来ならすぐにでもレウルーラに侵入した二機を撃破したかったのだが、
先程、自分たちの仲間であるギラドーガが破壊されたのを見て、
これ以上レウルーラに被害を与えるわけにもいかず、攻撃できずにいた。
なので、今彼らに出来るのは、只周囲に漂い、突入の隙をうかがう事だけだった。
『おい!そう言えば、人数が少なくないか?
プログラマーとかはどうしたんだ?』
『大方、援護艦隊に足止めを喰らってるんだろう?
もしくはもうやられたのかもな?レーダーどうなってる?』
『待てよ……今確認する。……!?』
『どうした?』
『ガ、ガンイー……。』
ギラドーガの片方一機の通信は、そこで途絶えた。
もう一機のパイロットがその方向を見ると、
片腕と、脇腹からコックピットまでを切り裂かれた僚機。
そして、その脇を全速で通り過ぎるガンイージが見えた。
『野郎!よくも……。これ以上、近づかせるか!』
ギラドーガのパイロットは、怒りに身を震わせながら、
逃げつつレウルーラに向かうガンイージに照準をあわせると、
ビームマシンガンのトリガーを引き絞った。
「やりぃ!一機墜とせた!」
果たして奇襲は、これ以上と無いほどに上手く行った。
損傷を与えられれば十分と思っていた敵機には、行動不能になるぐらいの傷を負わせる事に成功し、
さらに無傷で突破する事が出来た。……と、シュウジは思いこんでいた。
その瞬間、機体を衝撃が襲った。
「……!!?」
ギラドーガから発射されたビームは、ガンイージの左腕、頭部、左腰アーマー、左足首を撃ち抜いた。
が、その勢いが殺される事はなく、ガンイージはレウルーラに向かい続けた。
「こ……のぉ!成功しろ!」
半分がむしゃらに、操縦桿を操作するシュウジ。
四肢の殆どを失った機体では殆ど操作は効かなかったが、
賢明にスラスターを噴かせて速度を落とし、姿勢を制御する。
その努力が実り、ガンイージはレウルーラのカタパルトにほぼ不時着に近い形だが、何とか着艦する事が出来た。
そのまま、左足を折り、機体を激しく摩擦させながらも格納庫内にスライディングの要領で滑り込む。
直後、壁に激突した事による衝撃がシュウジを襲った。
「……!!!……ぐっ……この野……郎っ!」
半ばヤケクソ気味に、ビームを外へ乱射する。
それが幸いしたのか、ギラドーガはすぐに突入してくることなく、レウルーラの外にとどまった。
「はぁ……はぁ……。ベルク、レイモンドッ!」
身体の痛みに耐えながら、通信をジャベリンとペズバタラにに接続する。
そして、やや早口でまくし立てた。
「リナルドは間に合わない!不本意だがこのメンバーで突入するしかないかも知れない。
準備は出来てるか?すぐにでも突入するぞ!」
そう言うと、ディバックを取り出し、そこからライフルを出した。
「……ゼファー……後少し保たせろよ?」
……その頃ゼファーは、援護艦隊MS部隊第二陣を捉えていた。
【行動:ビームサーベルでギラ・ドーガを攻撃(−1)ビームライフル発射(−1)ペズバタラ・ジャベリンに通信接続(−2)】
【残り行動値:0p】
【位置:O−15(ガンイージ):P−15(ビギナ・ギナ)】
【機体状況:ビギナ・ギナ:通信中(ガンイージ)自爆装置無効化済 コックピット損傷 左肩装甲融解
フィン・ノズル4個損傷、表面装甲損傷軽微
ガンイージ :通信中(ビギナ・ギナ ジャベリン ペズバタラ)
機体各所にダメージ、電子機器に被害、頭部大破 左右脚部損傷、左腕大破
右フロント・サイドアーマー破損 左サイドアーマー破損 脱出装置使用不可 自爆装置無効化済】
【参加者状況:右足重傷(処置済み)打撲 左目周辺に切り傷 防弾チョッキ着用 首輪カバー装着中】
【武装:ガンイージ:ビームライフル(残弾2)
ビギナ・ギナ:ビームライフル×2(残弾:右85% 左70%) ビームサーベル×2 ビームシールド
フック付きワイヤー&ウィンチ ヒートナイフ×2 F-90S用クルージングミサイル×1
ドラム弾装式120mmマシンガン×2(残弾:右3斉射分 左4斉射分)】
【所持品:ディパック(食料0.5日分 計画書 紙とペン 医療用セット 首輪カバー
自動小銃 マガジン×5 スタングレネード)
拳銃(残弾16発) 工具セット 杖 ヨーコの果物ナイフ (ゼファー) 】
【行動方針::"示す" 利用出来るモノは利用 突入】
高速でこちらのポイントに現れた機影はそれまで映っていた2つの機影のうちの1つを消すと、
まっすぐにレウルーラに向かって突っ込んできた。
そのかつてはガンイージだったものはカタパルトに滑るように着艦すると、外のギラ・ドーガ
に向けてビームライフルを乱射する。
随分乱暴な操縦だったが、どうやらシュウジは無事らしい。
ライフルの射撃が終わるのを見計らってシュウジに通信を送ろうとすると、それより先にシュ
ウジが早口で話し掛けてきた。
話を聞いた俺のこめかみに青筋が立つ。
…鏡を見たわけではないが、何となくそう感じた。
「…間に…あわないじゃないだろうがよ!
それじゃあ、何の為に今まで準備してきたのかわかんねえだろうが!…くそっ!」
勢いで思わず左足で蹴りを入れてしまい、痛さのあまり声もなくのたうつ。
左足を押さえながら、これからの方針を考える。
…仕方がないだろう。
リナルドが間に合わない以上、ここにいるメンバーで艦橋の占領を目指すしかなさそうだ。
基本的に戦場というものは、敵味方お互いに錯誤の連続だ。
綿密に戦略を練り、作戦を立てたところで、それが思い通りに進むなど滅多にない。
部隊編成にせよ、補給にせよ、攻撃にせよ、だ。
しかしその錯誤の連続の中で、それを最小限に留めた者が勝利を得る事ができる。
現時点での俺たちと管理者側、どちらかと言えば管理者側の方が錯誤が大きい筈だ。
向こうがその錯誤を修正しきれないうちに、現有戦力で艦橋を落とす。
最初に言ったように、この作戦はスピードが勝負なのだ。
サイコガンダムにはビギナ・ギナが援護についたらしい。
それでも、あの艦隊相手にはかなり不利な状態だ。
何とか…こっちが艦橋を落とすまで、踏ん張ってもらうしかない。
それにもしかしたら、リナルドが間に合って援護についてくれるかもしれない。
そこまで考えてから、タイヤをガンイージの近くまで寄せて、外のギラ・ドーガにビームキヤ
ノンで牽制攻撃を続ける。
「シュウジ、俺がギラ・ドーガを牽制しておくから早くガンイージから降りろ!
ベルクも準備ができ次第、ペズ・バタラから降りておいてくれ」
言いながら更にミサイルを放つ。
【行動:ペズ・バタラ、サイコG、アビゴル、ガンイージに回線継続(0)ビームキヤノン発射
(−1)ミサイル発射(−1)】
【残り行動値:2p】
【位置:O-15(レウルーラMSデッキ)】
【機体状況:右腕消失、頭部バルカン砲1門損傷、モニター一部使用不能、右肩装甲損傷、左肘
ジョイント負荷(40%)、胸部及び腹部装甲に凹みと歪み、ショットランサー1基消失
アインラッド:打撃と破片による回転不良(中)、ビームキヤノン1門破損】
【参加者状況:左肩負傷(処置)、左眼球裂傷(処置)、右手首切断(処置) 右肋骨骨折、
左大腿骨にひび、右上腕に銃創(処置)】
【武装:頭部バルカン砲×1、ビームサーベル×1、ショットランサー×1、ビームシールド
ビームマシンガン(100%)
アインラッド 武装:ビームキャノン×1(68%)、9連装ミサイルポッド×7】
【所持品:ディパック、水2?入り5本、食料21/3日分、蕎麦団子1個、 拳銃と自動小銃と弾倉×5
タッパーのカレー1つ、保冷シート2枚、書類の束、ペン、缶詰の段ボール、首輪カバー】
【行動方針:突入までの時間稼ぎ】
【同盟:ベルク、リファニア、シュウジ、リナルド】
メガ・バズーカランチャーの射撃。そして相次ぐMSの撃墜。
援軍艦隊は、予想外の被害に動揺していた。
彼らの見込みでは、サイコガンダムMk−Uとガンイージ、この二機は素早く落とせるはずだった。
火力はあれど旧式鈍重な大型機と、基本性能は高いが破損も大きく素人の乗った小型機。
さっさとこの二機を落とし、管制艦の所へ向かう、見込みだったのだが……。
サイコの防御力、メガ・バズーカランチャーの発射、ゼファーの乱入。
速攻で倒すどころか、出撃したMSの実に8割を失い、シュウジに逃げられ……
「……認めるしかあるまい。こいつらは、強い。
戦力の温存を考えていては、こっちが倒されるぞ」
「しかし、レウルーラの方も大変な状況に……」
「分かっている。三番艦だけ脱出させよう。残る戦力全てを用い、この2機を倒す」
* * *
艦隊が、動く。
二隻の戦艦がその場に留まり、残るMSをその腹から吐き出す。
そして戦艦自身も、腰を据えて砲撃体制に入る。
残る一隻は、その二隻に背中を預ける形で、隣のエリアへと脱出する。
……いや、脱出ではない。生徒たちの、殲滅に向かうのだ。
【援軍艦隊(1・2番艦)の行動:
第二陣MS隊(10機)発艦(−10p)戦闘参加(−10)
リファニア・ゼファーに向け、艦砲射撃(−2p)】
【援軍艦隊(1・2番艦)の戦力:
ベルガ・ギロス×1、デナン・ゾン×1(ゼファーのビギナ・ギナと交戦中)
クロスボーン系MS×10(第二陣)
ザムス・ガル級戦艦×2】
【援軍艦隊(1・2番艦)の位置:P-15】
【援軍艦隊(1・2番艦)の行動方針:ゼファー・リファニアを足止めし、倒す】
管制艦所属のギラ・ドーガは、困惑のうちに残り1機になってしまっていた。
彼らが突入してきた3機相手に戦いあぐねていたのには、もうひとつ理由がある。
下手に撃てば、艦を傷つけるのだ。
……本来なら、そうなることを防ぐための、出撃だったはず。
しかし、ベルクのペズ・バタラはその進路を遮るMSごと叩き切り、
レイモンドのジャベリンはアインラッドの速度を活かして駆け抜け、
シュウジのガンイージは奇襲と必死の抵抗で満身創痍ながらも通り抜けてしまった。
残されたギラ・ドーガは1機。
外から撃つわけにはいかない。艦を守るのに艦を壊してしまったら本末転倒。
万が一敵MSの融合炉を直撃でもしたら、艦そのものが沈んでもおかしくない。
中に斬り込むわけにもいかない。接近戦では、1対3の数の差は圧倒的な脅威だ。
いや、数の差がなくとも、狭い場所で待ち伏せ必至の状況では、下手に踏み込めない。
彼らの突入した破砕口からは、なおもビームやらミサイルやらが飛び出してくる。
生徒の方も牽制がメインなのだろう、致命傷を受けることはないが――しかし、攻め手がない。
この膠着は、援軍艦隊の一隻が到着しても、変わらなかった。
「……ある程度、艦を壊してしまっても仕方ないのでは?」
「奴らも、目的あって乗り込んだ以上、いずれMSを降りるはずだ、そこを叩ければ……」
「全員降りてくれれば楽なんだがな、どうするか……」
敵艦に斬り込むための海兵隊でもいれば良かったのだろうが、あいにく、援軍艦隊には乗り込んでいない。
そもそも、援軍艦隊の目的は――こういう事態を防ぐためのものだったのだ。
こうなってしまった後では、やれることがない。
あらゆる事態の変化に対処する姿勢をとりつつ、あらゆる方法が手詰まりであった。
彼らにできるのは、待機だけ。
【援軍艦隊(3番艦)の戦力:
クロスボーン系MS×5(出撃・レウルーラを取り巻いて待機)
クロスボーン系MS×5(艦内残留) ギラ・ドーガ×1(艦内残留)
ザムス・ガル級戦艦×1】
【援軍艦隊(3番艦)の行動:戦艦移動(P-15→O-15)(−1p)、MS(5機)発艦(−5p)】
【援軍艦隊(3番艦)の位置:O-15】
【援軍艦隊(3番艦)の行動方針:レウルーラ救援・方法検討しつつ待機】
艦長は、混乱していた。
戦闘は覚悟していたが、しかし、ギラ・ドーガの防衛線を抜け、3機全てが乗り込んでくるとは……
外に残ったギラ・ドーガも、やってきた援軍のザムス・ガルも、動けないでいる。
「ええい、どうなってるんだ! ギラドーガどもは何をやってた!」
「艦長、ど、どうするんですか!? このままじゃ……!」
「援軍艦隊へ、救援請う! 救援請う!」
混乱するブリッジ。
……もとより、この艦には乗員が少ない。艦を動かすのにギリギリの人員しかいない。
小惑星基地が壊れた時に犠牲になった者もいるし、元々余裕などない。
MSの進入を許したのも、人員不足による対空砲火の薄さによるところが大きい。
「もうだめだ! 上の連中も援軍艦隊の連中も、俺たちを見捨てやがったんだ!」
「落ち着け! そんなはずないだろう!」
「じゃあ、なんであいつら、あそこで見てるだけなんだよ!」
彼らの脳裏に、リーア・ミノフスキーの遺した言葉が蘇る。
『……上層部だって……ここにいる人間を切り捨てる覚悟がある……』
『あなたたちは、見捨てられたのよ――私と、一緒に』
その声は、まるで呪いの言葉のように彼らの不安と恐怖を蘇らせ――
「だ、脱出しましょう! 今なら、艦を捨ててもザムス・ガルに拾ってもらえます!」
「バカモノ! どのツラ下げてそんなこと……!」
「で、でも、じゃあ、どうすれば」
「総員、銃を取れ! 白兵戦に備えろ!
やつらの動きを見て……MSを降りて侵入してきたら、通路で迎え撃つんだ!」
* * *
艦長の指示は、白兵戦。
……しかし、彼らは通信兵を中心とする兵士たち。白兵戦そのものに、慣れてはいない。
士気も最悪。少なからぬ者たちが、機を見て逃げ出すつもりだった。
頭数と地の利はあるが、しかし……!
【管制艦の戦力:ギラ・ドーガ×1(艦外で様子見)、メガライダー×1(格納庫に放置)、
兵士数十人(士気最低・白兵戦経験少ない)】
【管制艦の行動:現状把握(−4p)、ザムスガル3番艦へ通信(−1p)白兵戦準備(−4p)】
【管制艦の位置:O-15】
【管制艦の方針:個々の兵士:なによりまず生き残る 艦長:侵入者の排除】
第16章 >207 現在 (低容量版マップ)
M,N O.P.Q.R S,T U V,W,X,,Y Z
13■□■□■■□□□□□■□■
14※■□■□□□□□■■■■■
15■■9951□□□□□■■※■■ □:開かれた空間
16□□□□□□□□※□□■■■ ■:暗礁空域
17■■□□15□≠≠□□□□□■ ※:戦場跡
18■□□□□□□□□□□□□□ 〓:コロニー
19■■■□□□□□□□▼□□□ ▼:小惑星基地
20■□□□□□□□□▼▼□□□ ≠:崩壊したコロニー
21※※□□□□□□▼▼▼□□□ ▽:爆破された小惑星基地
22※□□□□□□▼▼▼▽▼□□
23※□■□□□□□▼▼▼□□□
24※■■■□□□□□□□□□■
25※※■■■□□□□□□□□■
26■■※■□□□□□□□□■■
27□■■□□□□□□門□□□□
28□□□□□□□□門門門□□□
29■■■□□□□□□00□□□□
立ち入り禁止区域は、>167参照。
立ち入り禁止が問題になるのは15のみ。
99は管制機能を持つレウルーラ級戦艦。00番はティーチャー(生身)
51〜53は援軍艦隊のザムス・ガル級及びその艦載MS(それぞれ戦艦1隻分)
ZPはゼファー制御のビギナ・ギナ。
01・07・14・99・53は同一地点。20・51・52・ZPは同一地点。
02・04・05・06・08・09・10・11・12・13・16・17・18・19・21・22・23・24・25・26死亡。
01シュウジ、07ベルク、14レイモンド、15リナルド、20リファニア
レウルーラに侵入後数分が経過したときレーダーに新たな反応が現われた。
それは、外にいるギラ・ドーガの一機を破壊しダメージを受けながら
自分達の居るレウルーラのカタパルトに不安定ながらも不時着、
壁に激突してやっとその勢いを止めた。
(おいおい、大丈夫か?アイツ。)
『はぁ……はぁ……。ベルク、レイモンドッ!
リナルドは間に合わない!不本意だがこのメンバーで突入するしかないかも知れない。
準備は出来てるか?すぐにでも突入するぞ!』
シュウジの方からの通信でそれは心配無いようだ。
また無事に再会できたことに返事を交えて皮肉っぽい口調で答える。
「うるせえ、こっちは何時でも準備万端なんだよ遅れてきた奴に
指図されるまでもねえ。・・・・・・・・今度は出遅れるなよ。」
そう言うとバックからアサルトライフルを取りだしヘルメットを被ると
コクピットハッチを空ける。
(リナルド・・・・・・・やはり間に合わなかったか。)
『シュウジ、俺がギラ・ドーガを牽制しておくから早くガンイージから降りろ!
ベルクも準備ができ次第、ペズ・バタラから降りておいてくれ』
コクピットから出ようとするとレイモンドがギラ・ドーガを牽制しながら
指示を伝えてきた。牽制・・・・・というよりは撃墜させるような勢いだ。
「もうやってる。後は頼んだぜレイモンド。」
MSから降りると通路の一角から武装した兵士が向かってきている
バックから手榴弾を一つだし固まっている兵士の集団の中に放り込む
と爆発と共に兵士達が一斉に吹き飛んだ。
「さーて、シュウジ。これからはお前の出番だぜ。
遅れてきた分しっかり働けよ。」
【行動:レイモンドとシュウジに通信中(-0)会話(-0)MSから降りる(-1)
手榴弾で攻撃(-1)】
【残り行動値:2】
【位置:O-15】
【機体状況:右腕損失、左足膝部損失、右足膝部損失、本体側面装甲各所損傷
コクピット内機械一部損傷、スラスター各部損失(出力50%低下)
左手マニュピレーター消滅】
【武装:(本体)ビームアックス、3連装ミサイルランチャー×2(残弾0)(左手甲部)ビームシールド、
ビームダガー×1本 】
【所持品:ディパック 水2g三本 十字架 聖書 特殊情報端末 チ○ルチョコ20個ほど
アサルトライフル 予備弾倉5セット 拳銃 予備マガジン5セット
手榴弾 六個 ナイフ スタングレネード×1 防弾チョッキ 首輪カバー】
【行動方針:ミッションスタート】
【同盟:01番 シュウジ=アサギ 14番 レイモンド=デリック】
援護艦隊MS部隊の第二陣へ向けて、
追いすがってくる二機の第一陣生き残りの攻撃を回避しつつ人外の速度で突撃するビギナ・ギナ。
その中では、ゼファーが一瞬で敵戦力を分析していた。
(……敵戦力分析中。
ビギナ・ゼラ1 ダギ・イルス1 デナン・ゲー3 デナン・ゾン5
以前より戦力としては高いですね。特にビギナ・ゼラ……スペック上はこちらより上ですか。
陣形は横列陣。このまま包囲に持ち込む気ですね。
……後方からも……撃ち残しが追いすがって来てますし……急がないと。
では……参りますよ。)
先程の速度より、さらに加速するビギナ・ギナ。
目指すは、偵察能力に優れた、ダギ・イルスだった。
『早い!流石ファントムと言ったところか!』
『……だが第二陣が到着したようだな。デカブツが追いつくまでまだ少し時間がある。
向こうと協力して包囲殲滅する。デカブツはその後だ。』
『了解!絶対ぶっ壊す!』
ビギナ・ギナを追う二体は、攻撃を一度諦めると、ビギナ・ギナに追いつくべくさらに加速した。
『接触まで、残り20秒。いや、敵機加速!残り10秒!
後方からは第一陣のMSが追撃中!』
MS部隊第二陣の索敵を担当するダギ・イルスのパイロットは、
刻一刻と変わる状況を、逐次報告していた。
レーダーによると、目の前の無人機は、かなりのスピードでこちらに向かってきていた。
それは、どう見ても包囲に飛び込むようにしか見えない、無謀な行為だった。
(……何だってんだ……。あまりにも……おかしすぎる。
この速度で突っ込めば……明らかに包囲の餌食になる。
あの戦闘機械が……そんな真似をするのか?)
「……まさか……あれでも最大速度じゃないとか……なっ!?」
思考に耽っていたダギ・イルスのパイロットの顔が、恐怖に引きつった。
そのパイロットの目には、信じられない物が見えていた。
モニターいっぱいに広がる、ビギナギナの脚部。
次の瞬間、彼はコックピット内の機材に潰され、絶命していた。
(限界速度まで加速。)
ゼファーがビギナ・ギナにそう命令をを出した瞬間、機体は耐久限界速度まで加速していた。
ビリビリと機体が悲鳴を上げる。が、ゼファーは速度を緩めることなく、目の前のダギ・イルスに肉薄し……
(撃破。)
左足で強烈な跳び蹴りを喰らわせた。
耐久限界速度かつ絶妙な角度で繰り出されたそれは、
ダギ・イルスの胴体を大きく変形させ、コックピットをいとも簡単に潰した。
(もう二機。)
同時に、ダギ・イルスに左足をめり込ませたまま、
いきなりの襲撃を受けて呆然としているであろう
両脇のデナン・ゾンとデナン・ゲーを両腕のビームライフルで撃ち抜いた。
(左足首に負荷。稼働効率低下。しかし戦闘には問題なし。
敵戦力、残り……9機と、2隻。
レウルーラには動きはなし……。)
戦況を確認しつつ、ゼファーはビギナ・ギナを減速させつつ、一度MS部隊と距離を取った。
(もうあんなハッタリは通用しませんね。
問題はここからですか……。早くしてください、マスター。)
【行動:回避行動(−1)ダギ・イルスをキックで攻撃(−1)
デナン・ゾンとデナン・ゲーをビームライフルで攻撃(−2)】
【残り行動値:0p】
【位置:O−15(ガンイージ):P−15(ビギナ・ギナ)】
【機体状況:ビギナ・ギナ:通信中(ガンイージ)自爆装置無効化済 コックピット損傷 左肩装甲融解
フィン・ノズル4個損傷、表面装甲損傷軽微 左足首に負荷
ガンイージ :通信中(ビギナ・ギナ ジャベリン ペズバタラ)
機体各所にダメージ、電子機器に被害、頭部大破 左右脚部損傷、左腕大破
右フロント・サイドアーマー破損 左サイドアーマー破損 脱出装置使用不可 自爆装置無効化済】
【参加者状況:右足重傷(処置済み)打撲 左目周辺に切り傷 防弾チョッキ着用 首輪カバー装着中】
【武装:ガンイージ:ビームライフル(残弾2)
ビギナ・ギナ:ビームライフル×2(残弾:右75% 左60%) ビームサーベル×2 ビームシールド
フック付きワイヤー&ウィンチ ヒートナイフ×2 F-90S用クルージングミサイル×1
ドラム弾装式120mmマシンガン×2(残弾:右3斉射分 左4斉射分)】
【所持品:ディパック(食料0.5日分 計画書 紙とペン 医療用セット 首輪カバー
自動小銃 マガジン×5 スタングレネード)
拳銃(残弾16発) 工具セット 杖 ヨーコの果物ナイフ (ゼファー) 】
【行動方針::"示す" 利用出来るモノは利用 突入】
ゼファーのビギナ・ギナを必死で追撃する第一陣の隊長達。
苦し紛れに放った攻撃は、掠りもしない。
「……駄目です!速すぎます!とても、追いきれ…わぶっ………!」
通信機より飛び込んで来た部下の叫びが、突然途切れる。
レーダーを見ると、部下のデナン・ゲーの表示が<LOST>へと変わる瞬間だった。
さらに、サイコの撃破を指示した二機の反応までも、消えていた。
(……馬鹿な、仕留め損なったばかりか、全滅だと……?
おのれ、おのれ……これでは、我が隊の能を疑われてしまうではないか。
おのれええ……!)
※ ※ ※ ※ ※
「……悪いけど、余所見してるから!」
左腕のメガビームを放ち、ビギナ・ギナへと釘付けになっているデナン・ゲーを撃破する。
続いて隊長機へと攻撃をかけようとした時、リファニアは視界の端に、
この空域から離脱し、レゥルーラの援護に向かおうとしている敵艦の姿を捉えた。
「……そうは、させな……うっ!」
敵艦を追撃しようとした途端、残りの二艦より艦砲射撃を浴びせかけられてしまう。
大雑把な回避運動ながらも何とか直撃を避けたリファニアだったが、その隙に敵艦の離脱を許してしまった。
「……くそっ、シュウジさん達の邪魔をさせる訳にはいかないのにっ!」
そこへ、態勢を立て直した第一陣の隊長機であるベルガ・ギロスが、ランサーを構えて矢のように迫ってきた。
「……くっ!」
迎撃に放ったメガビームがベルガ・ギロスを掠め、左腕を吹き飛ばすものの、敵機は意に介さずに突っ込んでくる。
手にしたショットランサーで、こちらのコックピットを一撃で刺し貫くべく。
……回避も迎撃も、すでに不可能。敵機は目前へと、迫っていた。
「……うあああああっ!」
咄嗟に反応し、グレイブを掲げたリファニア。
グレイブが突き出されたショットランサーに激突し、その軌道を僅かに逸らし、
勢いの止まらぬベルガ・ギロスが、サイコの頭脇を掠めて後方へと抜けた。
激突の衝撃によって、両機の腕よりそれぞれの武装はもぎ取られていた。
「……痛ぅっ、マニュピレーターは……無事……か。敵機は……うあっ!」
次の瞬間、コックピットを凄まじい衝撃が襲った。
飛び出したエアバッグによってコンソールパネルに頭を打ち付ける事こそなかったものの、
激しく揺さぶられたリファニアは、後頭部をシートの背もたれに叩きつけられてしまった。
軽い脳震盪を起こしたのか、視界がぼやける。
「……ううっ、何が、起こって……!」
再び、コックピットを襲う衝撃。
先ほどのような凄まじい衝撃ではなかったが、断続的にガン、ガンと伝わってきていた。
次の瞬間、モニターに映ったものは、ゴーグルのようなカメラ・アイが特徴的な、
ベルガ・ギロスの頭部のアップだった。
サイコに体当たりをかけた敵機が、拳を振り上げてサイコの頭部へと何度も叩きつけていた。
……もっとも、腕の駆動系がいかれているのか、そのパンチには充分な勢いがなかった。
それでも、その執念に満ちた行為は、リファニアを戦慄させるに充分なものだった。
『……貴様が、貴様がァァァッ!!』
敵機のパイロットの声がコックピットへと伝わってくる。
腹の底から搾り出されたかのような、低い唸り声。
「……こいつ、マトモじゃない……。」
『お・ん・な……貴様もか……おんなァ……よくも、虚仮にしてくれおって……。
魔女め、叩き殺してくれる……コックピットから引きずり出して、御免なさいと言わせてやるぞ……。
謝る貴様を、マニュピレーターで握り潰してやるっ……。』
握りつぶそうにも、ベルガのマニュピレーターはすでに原型をとどめてはいなかった。
その事実を認識できぬまま、隊長は何度も何度も、サイコへと砕けた拳を叩きつけていた。
※ ※ ※ ※ ※
第二陣の中に、一機の紅いMSがあった。
ゼファーの駆る白銀の騎士、ビギナ・ギナに似たシルエットを持つ機体だった。
そのMS、ビギナ・ゼラのパイロットは、ゼファーを包囲する味方機たちより少しだけ距離を置いていた。
圧倒的な高速戦闘で友軍を翻弄するゼファーのビギナ・ギナ。
そして、鈍重な大型機であるにも関わらず、予想以上のしぶとさを見せ付けるリファニアのサイコ。
圧倒的な兵力差であるにも関わらず、善戦する二機の敵機を観察しながら、彼は感心するように呟いた。
「いやいや、驚いたねえ。
ファントムのビギナ・ギナだけならまだしも、デクノボウかと思えたサイコガンダムにまで、
これほど苦戦するとは思わなかったよ。
……なるほどねえ、そんな戦い方なんて、通常は想定しない。
二機ともに、我々では不可能な戦い方をやってみせているという訳だ。
撃墜されたパイロットは、きっと何が起きたのか全く理解できなかっただろうねえ。」
彼には、必死で抵抗を続ける二機が何故こうまで戦えるのか、その理由の見当がついていた。
「だけどなあ、悲しい事にねえ、君らの限界、見えつつあるんだなあ。」
そして、その戦い方の弱点というべきものも。
だが、彼はその事を友軍に教えはしなかった。
……彼らには、このまま敵に翻弄され続け、いい的となってもらうつもりだったからだ。
第一陣の隊長機――それは、彼ら援護艦隊のMS部隊の隊長でもあった――が、
サイコへと突撃し、張り付くのを確認したビギナ・ゼラのパイロット。
隊長が指示を出せる状況になければ、かわりに指示を出せる立場にあるのが、
第二陣の暫定的な隊長を任された彼だった。
「あー、隊長殿が頑張ってくれておいでだ。
デナン・ゾン二機は、動きの止まったサイコを潰せ。僕もすぐに援護に向かう。
残りの機体は、ビギナ・ギナを包囲して撃破しろ。
だが、焦って迂闊な攻撃を加えるなよ。ゆっくりと確実に追い込めば良い。」
適当に指示を出し、先行したデナン・ゾンを追ってサイコへと迫るビギナ・ゼラ。
だが、すぐに攻撃をかけず、一歩引いて戦闘の流れを静観していた。
(……クロスボーン・バンガードというカタチにいつまでも拘り続ける隊長には、
そろそろ消えて貰いたかったしねえ。そして、彼を支持する部下達も邪魔だね。
何故、彼らは今の境遇に満足できやしないのだろうか。僕には理解ができないねえ。
最高じゃないか。普通に戦場を駆け巡っていただけでは、これほどまでに多種多様な機体や、
御伽話の中の存在かとも思っていたファントム・システム、ニュータイプとはめぐり逢えやしなかった。
ここに居れば、こうして彼らと生命の遣り取りができるんだぞ……?
戦士はね、掲げられた旗印なんかじゃなく、戦いそのものにカタルシスを求めるべきなんだよ……。)
彼には、野心があった。
……自分の実力を示し、プログラムの管理側としてのし上がってやろうという、野心が。
この殺し合いゲームを一層素晴らしいものとする為には、殺し合いを心底楽しめる自分のような者が
管理する事こそ相応しいと、彼は考えていた。
【行動 : メガビーム砲でデナン・ゾン撃破(-1)、艦砲射撃を回避するも敵艦を逃す(-1)
メガビームでベルガ・ギロスに攻撃(-1)、ショットランサーをグレイブで逸らす(-1)、残0 】
【位置 : P-15 】
【機体状況 : MRX-010サイコガンダムMk-U
全身の装甲に決して軽くない損傷、右肩アーマー損失、左肩アーマー上部損傷、背面に損傷、
スラスター損傷(推力70%) 、アポジモーター幾つか損傷、MA時バランサー異常
自爆装置改造済み、MS形態、攻性プログラム&『盾』ダウンロード済み、ジェネレーター??? 】
【パイロット状況 : 頬にうっすらと傷痕、右肩軽傷(治療済)、頭軽傷(包帯巻)、左腕重傷(処置済み)、
ノーマルスーツ着用、メイク済み♪、感覚開放、サイコミュによる負担、首輪カバー装着 】
【武装: 胸部3連装拡散メガビーム砲(一門破損)、リフレクタービット×5 、(大型ヒートグレイブ、メガバズーカランチャー)
腕部サイコミュ式 ビームソード×1、全身メガビーム砲×多数(左脛二門破損、右肩全門破損) 】
【方針 : 『揺るがせてはならない夢』、自分の意志で綺麗に生きる、誰も死なせない! 】
俺が放ったビームキヤノンとミサイルは、ギラ・ドーガに比較的あっさり躱された。
こちらも当たれば儲けものという感じで撃っているのだから、いくらなんでも当たりはしないだろう。
要はギラ・ドーガに、自分が狙われていると分からせておけばいいのだ。
それを認識したパイロットはアシッドのような戦闘好きでもない限り、積極的な行動を取り難くなる。
こちらの攻撃を避ける事を優先してしまい、自分が攻撃できなくなる。
例え攻撃しようとしても、当然狙いは甘くなる。
その上俺がいるここはレウルーラの中だ。
自分の艦を傷つける事を恐れて、引き金を引けなくなっても無理はない。
…そういう意味であのギラ・ドーガのパイロットは、非常に常識的な反応を示していた。
暫く経った頃、そのギラ・ドーガの動きに変化が現れた。
そしてそれを勘繰るまでもなく、俺もその理由を悟っていた。
ザムス・ガルが1隻、O-15ポイントに進入してきたのだ。
ザムス・ガルのMS部隊に囲まれた、サイコガンダムが撃墜される映像が一瞬だけ脳裏をよぎったが、
すぐにそれを否定した。
サイコガンダムが撃墜されたのなら、こちらに来るザムス・ガルはもっと多い筈だ。
おそらく艦隊を二手に分けたのだろう。
戦力に余裕があればこその手段だ。
俺が見つめる先で、停止したザムス・ガルが何機かのMSを発進させる。
その機種もまた懐かしい顔ぶれだ。
ベルガ・ギロスと、デナン・ゲーが4機。
「…はて?」
隊列を組む5機を見る俺の口から、思わず疑問の声が漏れた。
……まあ、疑問を解消する機会はあとででもいいが…。
俺は何も言わずに、その5機を見つめ続ける。
しかしそのまま隊列を整えた5機も、こちらを攻撃してくる様子はない。
やはりレウルーラへの被害を考えると、そう簡単には撃てないという事か。
その時ベルクの通信とともに、デッキの奥から爆発の光が目の端に映った。
ペズ・バタラから降りたベルクが戦闘を開始したらしい。
(いよいよだ)
ベルクにジャベリンの左手を上げて応えながら、まだガンイージにいるシュウジに話し掛けた。
「シュウジ、見ての通り向こうの援軍が来た。お前とベルクは先に行ってくれ。
俺はもう少しここにいる。…あの5機をここに来させるわけにはいかないだろ。
2人だけの侵入は不安かもしれないが、俺もここからできるだけの援護をする」
今度はその5機に向かって、再びミサイルで牽制をする。
「…まあ期待せずに待っててくれ」
【行動:ペズ・バタラ、サイコG、アビゴル、ガンイージに回線継続(0)ミサイル2発発射(−2)】
【残り行動値:2p】
【位置:O-15(レウルーラMSデッキ)】
【機体状況:右腕消失、頭部バルカン砲1門損傷、モニター一部使用不能、右肩装甲損傷、左肘
ジョイント負荷(40%)、胸部及び腹部装甲に凹みと歪み、ショットランサー1基消失
アインラッド:打撃と破片による回転不良(中)、ビームキヤノン1門破損】
【参加者状況:左肩負傷(処置)、左眼球裂傷(処置)、右手首切断(処置) 右肋骨骨折、
左大腿骨にひび、右上腕に銃創(処置)】
【武装:頭部バルカン砲×1、ビームサーベル×1、ショットランサー×1、ビームシールド
ビームマシンガン(100%)
アインラッド 武装:ビームキャノン×1(68%)、9連装ミサイルポッド×5】
【所持品:ディパック、水2?入り5本、食料21/3日分、蕎麦団子1個、 拳銃と自動小銃と弾倉×5
タッパーのカレー1つ、保冷シート2枚、書類の束、ペン、缶詰の段ボール、首輪カバー】
【行動方針:突入までの時間稼ぎ】
【同盟:ベルク、リファニア、シュウジ、リナルド】
>>204 >>209 >>215 レイモンドとベルクから、突入開始の通信が入る。
シュウジはそれを、僅かに開けたガンイージのコックピットハッチから外の様子を探りつつ聞いていた。
外ではベルクが既に機体から降りており、手榴弾を投げている様子が見えた。
レイモンドの方は、なにやら痛そうな音がした後、ミサイルを撃っていた。
「了解了解……。だがちょっと待ってくれ……ふむ……。ベルク。少し計画を変更するぞ。
侵入地点を……今そこから見えるか?右手6m。そこにある整備班詰め所に変更する。
ガンイージの残った腕をそこまで伸ばすから、その腕を盾にして応戦してくれないか。
またその時に、俺が整備員詰め所に向かった事を知られないようにして欲しい。
何故かというと……専門的な事になるから説明しにくいんだが……。
とにかく、その方がシステム掌握の成功率が上がるんだ。
それでは……動かすぞ。気を付けろ。」
そう言うと、シュウジは慎重に右腕を操作し、皆避難して誰もいなくなった整備員詰め所にそれを突き刺した。
突き出されたその右腕は、ベルクとレウルーラの職員達とを隔てる壁となっていた。
「さて……。」
ガンイージによる格納庫内の混乱が起きているその間に、
シュウジはディバックとライフルを持つと密かにガンイージから降り、
右腕の影に隠れるように整備員詰め所まで移動した。
「此処までは……順調、だな。だが……少しやりすぎたか?」
ガンイージの右手が半ば突き刺さった整備員詰め所の中は、酷い状況だった。
あらゆるコンソールは砕け散り、椅子と机は吹き飛び、窓ガラスは一枚の例外もなく割れていた。
(まぁ……。重要なのは配線だからな……。さて……どこだ?)
職員達に見つからないように気を付けながら、
這うように移動しつつレウルーラのシステムへの進入路を探すシュウジ。
コンソール周辺を重点的に探してみたところ、それは簡単に見つかった。
早速、回線を少し弄り、ディバックから取り出したノートPCと繋いだ。
「それじゃ……いざ、勝負といこうか。未来の人々?」
接続状態を確認すると、シュウジはレウルーラへの"侵入"を開始した。
【行動:右腕操作(−1)整備員詰め所探索(−1)回線接続(−1)レウルーラへ侵入開始(−1)】
【残り行動値:0p】
【位置:O−15(ガンイージ):P−15(ビギナ・ギナ)】
【機体状況:ビギナ・ギナ:通信中(ガンイージ)自爆装置無効化済 コックピット損傷 左肩装甲融解
フィン・ノズル4個損傷、表面装甲損傷軽微 左足首に負荷
ガンイージ :通信中(ビギナ・ギナ ジャベリン ペズバタラ)
機体各所にダメージ、電子機器に被害、頭部大破 左右脚部損傷、左腕大破
右フロント・サイドアーマー破損 左サイドアーマー破損 脱出装置使用不可 自爆装置無効化済】
【参加者状況:右足重傷(処置済み)打撲 左目周辺に切り傷 防弾チョッキ着用 首輪カバー装着中】
【武装:ガンイージ:ビームライフル(残弾2)
ビギナ・ギナ:ビームライフル×2(残弾:右75% 左60%) ビームサーベル×2 ビームシールド
フック付きワイヤー&ウィンチ ヒートナイフ×2 F-90S用クルージングミサイル×1
ドラム弾装式120mmマシンガン×2(残弾:右3斉射分 左4斉射分)】
【所持品:ディパック(食料0.5日分 計画書 紙とペン 医療用セット 首輪カバー
自動小銃 マガジン×5 スタングレネード)
拳銃(残弾16発) 工具セット 杖 ヨーコの果物ナイフ (ゼファー) 】
【行動方針::"示す" 利用出来るモノは利用 突入】
ゼファーからの通信内容に目を通し、
返信の内容をノートPCに打ち込もうとしたところで、
明らかに不快な耳鳴りがリナルドの耳に飛び込んできた。
(今度は耳鳴りか……。
くそっ、どんどん身体がおかしくなってきてる……)
彼が頭を振ってキーボードを叩いていると、今度は全体通信が入った。
今はもう聞き慣れてしまった、あの男の声だ。
『少し早いが、定期放送の時間である。
…………(
>>182)』
「…………。
失……格? 優勝って……。
えと、あー、その、何だ」
少し慌てて言葉が言葉になっていないが、すぐに状況を理解する。
シュウジとリファニアが相討ちを演じ、レイモンドとベルクも首輪カバーを使ったのなら
残るはリナルドひとりになるわけで。
(……とはいえ、俺もここでじっとしているわけにも
いかないからな)
このままエリア移動を行えば、叛意ありと見なされ爆破されかねない。
となれば、首輪カバーを付けてから移動することになるのだが。
メガバズーカランチャーの光が、虚空を裂く。
悪魔の囁きは聴こえない。
彼女はそこで戦っているのだから。
ふと、リナルドは自分の手が止まっていることに気が付いた。
突然の放送に、ある程度予想していたとはいえ気を取られてしまったらしい。
ゼファーからの通信が入っている。
後は自分でどうにかしろとのことだ。
もちろん、自分でどうにかできなければ、待っているのは確実な死、
あるいは与えられた生と心の死しかない。
「リファニア……死ぬなよ」
(俺もまだ……死なない)
意を決してエミュレータを起動し、首輪カバーを嵌める。
アビゴルは再び胎動し、かの地を目指して動き出しだ。
≪続く≫
「何だ、あの戦艦……見たこと無い。
あれが増援艦隊の一部か?」
『後の時代』の戦闘艦だろうか?
メガバズーカランチャーの光の方向へと進んできたアビゴルのカメラは、
O-15に進入していくザムス・ガルの姿を捉えていた。
だが、今は構っている場合ではない。
最終的には構うことになるのだろうが、まずは合流しなければならない。
「遅れてすまない、レイモンド。
聞こえるか?
今からレウルーラに着艦する、間違って俺を撃つなよ!」
レウルーラに接近し、レーダーに映ったジャベリンのマーカーを確認すると、
大っぴらに回線を開いて呼び掛けた。
そして、デュアルタイプのままやや強引にデッキに滑り込み、ペズ・バタラとガンイージを確認すると、
再びレイモンドに声を掛けた。
「レイモンド、ここはひとりで抑えられるか?
無理なら無理だと言ってくれ、俺も奴らの相手をしよう」
【行動:Q-17→Q-16→P-16→O-16→O-15(-2:ボーナス有)、着艦(-1)、ジャベリンに通信(-1)】
【位置:O-15(レウルーラ・MSデッキ)】
【残り行動値:0pts.】
【機体状況:MA形態・両肩、背面損傷・『盾』・通信回線→サイコ、ガンイージ、ジャベリン】
【武装:(MS)ビームカタールx2、右腕ビームカッター、ビームキャノン、デュアルビームガン
ビームシールド】
【生徒状態:覚醒@ノーマルスーツ・首輪カバー・鈍痛・数箇所打撲・一部身体異常……】
【所持品:デイパック、コッペパンx1、水2gx2.6、食糧3.5日分、私服、拳銃(20)、救急箱
受信装置、自動小銃、マガジンx5、スタングレネード、防弾チョッキ
(以下私物)MS状態チェック用ポータブルコンパネ、ノートPC、眼鏡、配線修理用工具一式】
【行動方針:作戦遂行】
【同盟:全員】
コンテナ等を盾にしながら今だカタパルト内での銃撃戦は続く
相手は小人数の小隊だが武装が強力な分なかなか撃退できないでいた。
(ちっ、人数的には問題無いんだがバカバカ撃ちまくりやがって
こっちが反撃する暇がねえ。この状況で手榴弾なんか投げたって
届く前に流れ弾が当たって爆発しかねないし。どうする?)
盾にしているコンテナに当たる銃撃音や頭の上を通りすぎていく銃弾。
切りが無い。これといった策も無く体だけは隠れたままアサルトライフルの
銃口を頭上のコンテナの上から撃ってくる方向に向け適当に乱射する。
それに相手が怯んだのか銃撃が弱まったのを感じて今度は体も出して
正確に狙撃した。
二、三人倒したがまた別の小隊がかけつけてきていっそう銃撃戦が激しくなる。
>>217 「了解。」
ガンイージの腕が壁に刺さったのを確認すると隠れていたコンテナから
飛び出し腕の壁に隠れるまでライフルを撃ちながら移動をする。
ライフルの弾が切れるとバックの中にある手榴弾を進行方向の斜めになげ
壁にぶつかると衝撃と方向でうまく武装兵達の中へ落ち爆発。
弾が切れる前に応戦していた為、それほど銃弾が飛び交っていなかった
隙を突いての反撃。
(また、1個使っちまった。)
ガンイージの腕に隠れるとライフルのマガジンを交換。
再び反撃しようと立ちあがろうとした時、急に銃撃が止む。
それと同時に衝撃と震動が足元に伝わるとアビゴルが
そこに存在していた。当然、その機体の操縦者に通信を送る。
「大遅刻だなリナルド。お前も遅れてきた分さっさと仕事始めろ。
流石にこっちはきついんだ。」
(やっと、役者が揃った。後はシュウジの合図待ちだな。)
【行動:レイモンドとシュウジ、リナルドと通信中(-1)会話(-0)
ライフルで応戦(-1)手榴弾で攻撃(-1)マガジン交換(-1)】
【残り行動値:0】
【位置:O-15】
【機体状況:右腕損失、左足膝部損失、右足膝部損失、本体側面装甲各所損傷
コクピット内機械一部損傷、スラスター各部損失(出力50%低下)
左手マニュピレーター消滅】
【武装:(本体)ビームアックス、3連装ミサイルランチャー×2(残弾0)(左手甲部)ビームシールド、
ビームダガー×1本 】
【所持品:ディパック 水2g三本 十字架 聖書 特殊情報端末 チ○ルチョコ20個ほど
アサルトライフル 予備弾倉4セット 拳銃 予備マガジン5セット
手榴弾 4個 ナイフ スタングレネード×1 防弾チョッキ 首輪カバー】
【行動方針:ミッションスタート】
【同盟:01番 シュウジ=アサギ 14番 レイモンド=デリック】
─レウルーラ・コントロールルーム─
レウルーラのほぼ中央に位置する、あまり広くはないが、様々な機器で埋め尽くされた部屋。
もし、艦橋が破壊された場合に、艦をコントロールするために使われる部屋。
それが、レウルーラのコントロールルームだ。
だが現在は、艦橋が正常に機能しているため、そこには数人のセキュリティ関係の士官しかいなかった。
そんな静かな、だが襲撃により少し騒がしいこの部屋に普段は入らない通信が入ったのは、
シュウジが突入した直後だった。
[……というわけで、総員白兵戦に駆り出される事となった。
お前達も、白兵戦の準備を始めてくれ。]
「おい!ちょっと待てよ!」
その通信に答えたのは、若いがどこか疲れた雰囲気で、本来の年齢よりも少し老けて見える士官だった。
彼は数十年に一度と言われた優秀なハッカーであった。
だが、連邦相手の火遊びが過ぎて元の世界にはいられなくなり、
もう死ぬか、掴まるか、と言うところでプログラムの管制者に引き抜かれたのだ。
「そんな事したら、もし奴らにハッキングでも受けたらどうするんだ?
艦橋の方はプログラムの運営機器の所為で、この船のセキュリティ関係は弄れないんだろう?
もし、此処を無人にしたら、誰がハッキングに対応するんだ?」
[もし奴らがハッキングするとしたら、十中八九、運営装置の方だろう。
なんでレウルーラの方をハッキングする必要がある?]
「だがな……もしと言う事もある。」
[解った解った。じゃぁお前以外の全員を白兵戦に繰り出せ。
お前のようなチキン野郎は、出て行っても邪魔になるだけだ。]
「あぁ解ったよ!後で後悔しても知らないぞ!」
そう言うと、士官は殴るように通信機のスイッチを切った。
そして、怒鳴りつけるようにそのやりとりを見ていた部下達に命令する。
「……どうした……早く行けぇ!」
命令すると、部下達はやれやれといった様子で部屋を出て行った。
そして、再び部屋には静寂が戻った。
士官は、大きく溜息をすると、椅子に沈み込んだ。
そしてそのまま目を閉じたその時、コンソールの方からなにやら警告音が聞こえてきた。
士官は、その音に驚いたのか、飛び上がるように起きると、コンソールをのぞき込んだ。そこにはこう書かれていた
[Caution 不正規アクセス
Caution 不正規アクセス]
「はぁ……?……!本当にこっちに来やがった!?
あのプログラマーか……。糞っ!状況は……防壁一層突破、二層に侵入中!?
通信して部下を呼び戻している暇は……なさそうだな。とりあえず……二層に追加防壁投入。
逆探知は……攪乱プログラムが展開してあるな……だが、数が少ない。
……良し、逆探知完了!場所は……格納庫真横の倉庫内の端末か。攻性ウイルス投入!」
士官が侵入してきた者に対してウイルスを投入してから数分後、
防壁第二層に攻撃を加えている何者かは消滅し、コントロール内は再び静寂に包まれた。
「ふぅ……なんだ。以外に容易かったな……。
容易すぎた感があるが。」
「……引っかかった。」
整備員詰め所の中で、シュウジは一人、勝利を確認していた。
この船のセキュリティ担当士官は確かに優秀だった。
侵入者の攻撃に対して防御を強化。同時に場所を逆探知して攻撃。だが、優秀なだけだったのだ。
シュウジは、同じプログラマーとしてその行動を予測していた。予測していたからこそ、罠を用意したのだ。
まず、侵入地点。士官は倉庫内の端末という事を逆探知から突き止めたが、
それも攪乱プログラムの罠であり、偽の情報だったのだ。
彼はその事を知らずに攻性ウイルスを端末に投入。今頃は、その端末だけが、回線を焼き切られているだろう。
その僅かな間に、さらなる侵入者は消滅したという偽の情報をコントロールルームに流し、
その隙に一気に防壁第二層を突破。第三層も突破、艦内のシステムを掌握した。
今のところは気が付かれないように隔壁のシステムだけではあるが。
今頃セキュリティ担当士官は、偽の情報を目にして、安心しきっている事だろう。
「……久しぶりに楽しめたよ。優秀な士官さん達。……にしては対応が少なかった気がするが。
ベルク!今から隔壁を閉鎖する。閉鎖したら、取り残された奴らを片付けてくれ。」
ベルクへ向かってそう言うと、隔壁を予定通りに、艦橋までの道以外の物をすべて閉じた。
ガシュッという音と共に、次々と閉じられる隔壁。次々と隔離される士官達。
シュウジは、さらに畳み掛けるようにスプリンクラーと、外壁修復用のトリモチを作動させた。
「これで仕事は大体完了。艦内は大混乱。後は……荒事か。
どっちにしてもまだまだ大変そうだな……。」
整備人詰め所のコンソールから僅かに身を乗り出し、外を見るシュウジ。
見てみると、アビゴルがレウルーラに侵入してくるのが見えた。
「何だ……遅いじゃないか。」
そう呟くと、手にしたライフルを、敵集団に向けて撃った。
大体が外れたが、一人の士官が血を流しながら後ろに倒れるのが見えた。
「ベルクみたいにうまくは行かないか……。
ところで……何でベルクは何であんなに闘い慣れてるんだ……?」
ぽつり、と呟くシュウジ。その瞬間、多数の銃弾が、整備員詰め所を襲った。
「……危ねっ!」
【行動:レウルーラのシステム掌握(−1)隔壁閉鎖(−1)ライフルを撃つ(−1)銃弾回避(−1)】
【残り行動値:0p】
【位置:O−15(ガンイージ):P−15(ビギナ・ギナ)】
【機体状況:ビギナ・ギナ:通信中(ガンイージ)自爆装置無効化済 コックピット損傷 左肩装甲融解
フィン・ノズル4個損傷、表面装甲損傷軽微 左足首に負荷
ガンイージ :通信中(ビギナ・ギナ ジャベリン ペズバタラ)
機体各所にダメージ、電子機器に被害、頭部大破 左右脚部損傷、左腕大破
右フロント・サイドアーマー破損 左サイドアーマー破損 脱出装置使用不可 自爆装置無効化済】
【参加者状況:右足重傷(処置済み)打撲 左目周辺に切り傷 防弾チョッキ着用 首輪カバー装着中】
【武装:ガンイージ:ビームライフル(残弾2)
ビギナ・ギナ:ビームライフル×2(残弾:右75% 左60%) ビームサーベル×2 ビームシールド
フック付きワイヤー&ウィンチ ヒートナイフ×2 F-90S用クルージングミサイル×1
ドラム弾装式120mmマシンガン×2(残弾:右3斉射分 左4斉射分)】
【所持品:ディパック(食料0.5日分 計画書 紙とペン 医療用セット 首輪カバー
自動小銃 マガジン×5 スタングレネード)
拳銃(残弾16発) 工具セット 杖 ヨーコの果物ナイフ (ゼファー) 】
【行動方針::"示す" 利用出来るモノは利用 突入】
ベルクとシュウジは、デッキの片隅にある部屋に立てこもって管理者側の兵士と銃撃戦を行っている。
数の上ではかなり不利だが、うまい具合にガンイージの腕が盾となって銃撃を防いでくれているから、
まだ2人に怪我などはないようだ。
その様子を確認してから、再び敵編隊に目を移す。
…今のミサイルで怒って攻撃してくるかと思ったが、やはり向こうに動きはない。
さっきの見立て通り、向こうもこちらの様子を窺っているのは間違いないと確信した。
ただこのままお互いに、不毛なにらめっこをしているわけにもいかない。
(気になっている事もある……。仕掛けてみるか)
フットレバーに力を込めようとした時、不意に猛スピードで接近してくる機体がレーダーに映った。
通信機から聞き覚えのある声が聞こえる。
…遅れに遅れていたアビゴルが、やっと到着したのだ。
アビゴルは敵編隊を避けるようにあっという間にレウルーラに近付いてきたかと思うと、ガンイージ
と同じようにデッキに滑り込んできた。
そしてリナルドが、また通信を送ってくる。
黙って聞いていた俺の脳裏にさっきの怒りとその際に打った左足の痛みが思い出され、俺は通信機に
向かって怒鳴り返していた。
「やっかましい、ボケ!重役出勤しておいて偉そうな事ぬかすな!」
そこで思わず浮かした左足がコンソールにぶつかり、またも痛みでのたうちまわる。
…情けない。
これではルイの言っていた芸人そのものだ。
「…っっっっ…!!
………と、とにかくこのまま作戦を遵守するのなら艦内に突入してもらう事になるが、そのへんは
シュウジに聞いてくれ!向こうに人手が必要なら突入、いらないのならMS戦!
方針が決まるまで、ここは俺に任せとけ!以上!」
極力痛みを表に出さないよう早口で通信を返すと、俺は今度こそフットペダルを踏み込んで、敵編隊
に向けてタイヤを走らせていった。
…敵編隊の姿が近付いてくる。
5機が武器を構えようとしているのが肉眼でも判別できる。
5機……。
そう、俺が変に思ったのは…5機という数なのだ。
(続く)
クロスボーン・バンガードでは…いや、一般に軍隊では、MS3機で一個小隊を形成して戦闘を行う。
何故か?
それは3機という数が、非常に便利なものだからだ。
3機でデルタ隊形を作ると、1機や2機の時に比べて隙が小さくなり、相互支援が行いやすい。
デルタの底辺の2機は頂点の1機(主に隊長機)を援護し、またはお互いを援護しあう。
頂点の1機は2機の援護がある為に、かなり冷静に指揮を取りやすくなる。
そして比較的まとまって行動できる為、あまり機動力(特に小回り)を殺さずに済む。
攻撃しても味方が射線に入る事が少ない。
それに対して5機編隊になると隊としての攻撃力は侮れないが、基本的に攻めている時は雁行隊形
での行動になる為に、特に3列目にいる機が相互支援を受け難くなる。
その上敵が急な動きを見せると、3列目はどうしても前の機の動きを見てから動く事になる為に、
頂点の機に比べてどうしても1テンポ遅れた動きになってしまう。
それでも、他の隊形と比べればこれが1番有効なのではあるが…。
まあ大きな戦闘になればこんな理論など滅多に通用しないが、この場合奴等がかつての黒の部隊の
ような実力をもっていない限り、ある程度は通用する筈だ。
未だにタイヤの振動は続き、軋む、というか擦るような音も止んではいない。
俺はタイヤに負担をかけないよう、なるべく速度を巡行にもっていきながら編隊に更に近付く。
向こうの武器はベルガ・ギロスがショットランサー、デナン・ゲーがビームライフル。
使い込んだ武器だけに、射程距離も頭に入っている。
(……ここ!)
射程距離ぎりぎりとみるや、俺は機先を制してタイヤを瞬間的に停止させ、そこから右に90度曲
がると背中を向けて逃げ出した。
(…追ってこい。このまま、俺を逃がすわけにはいかないだろう?)
ビームキヤノンを躱したベルガ・ギロスは部下に合図を送ると、俺を追いかけてきた。
(…当然だ。そうでなければ出撃した意味がないだろうからな…)
向こうだって、出てきた敵に全く反撃せずに見逃すのは本意ではあるまい。
そんな事をしたら、帰艦してからこっぴどく怒られるに決まっている。
…そう思ったからこそ、俺もこうやって追いつけるような速度で走っているのだ。
常に細かく振動しているタイヤの様子も、奴等に故障しているように見せるのに丁度いい。
(続く)
予想通り奴等は雁行の隊形を取って追いかけてくる。
…一応それなりに隊形は整ってはいるが、誉められる程でもない。
ベルガ・ダラスのセンサーとスラスターを強化したベルガ・ギロスと、量産機の中では最高のスラ
スター出力を持つデナン・ゲー。
おそらく奴等5機の役目は、その卓越した機動力で敵を包囲、殲滅する事だろう。
それならば、5機という一見中途半端に見えがちな機数も納得できる。
…しかし、そのスピードは緊密な動きを要求される機動では、諸刃の剣となる。
特に自分達よりも有速の敵を相手にした場合は、尚更だ。
一旦引き離された編隊は、またじりじりと距離を詰めてきている。
再度射程距離に入れられるまで、あと少しだ。
レーダーを見る俺の目に汗が入り、染みる。
コンソールスティックを握る手も、汗だくだ。
それでも俺はその瞬間を逃さぬよう、神経の全てをレーダーの機影に集中する。
あと少し。もうちょっと。あとほんの僅か……。
その次の刹那。
俺は思い切り左に90度タイヤを転回させた。
それをかすめるように、幾筋ものビームの閃光が通り過ぎる。
(もってくれ…!)
タイヤに被害がない事を確認すると、一呼吸置いて思い切りフットレバーを踏み込み、今度は右に
180度の急転回を行う。
急激な動作に軋むタイヤと、それに伴うGに圧迫される俺の体が同時に悲鳴を上げる。
「…っぐ……うぅぅ……っ!」
たった180度の10秒足らずの時間が重くのしかかり、全身の血を逆流させていく。
耳に聞こえる音が、骨とタイヤの軋む音だけになったような感覚。
そしてそれすらも飛び越え、目の前が真っ暗になる次の瞬間、急に視界が開けた。
そこに見えたのは、左右に急転回したタイヤの機動についてこれずに、大きく軌道を外れかかって
いる右翼のデナン・ゲーだった。
ただでさえ隊形を維持するのも苦労するスピードでの急激な連続運動に、1番外にいる機体が追随
できないのは仕方がないだろう。
そして左に曲がったはずのタイヤが加速して、再びUターンして自分を狙う位置に来るなど、夢に
も思わなかっただろう。
だがそれを成し遂げた俺も、視覚のみでそれを認識していたにすぎない。
左右へのGの連続で脳に血が廻らなくなりつつあった俺の神経は、半ば麻痺状態だった。
それでも、瞬間的にロックオンして引き金を引いた流れるようなその動作は、まさしく戦士としての
本能がさせたと言っても過言ではなかった。
放たれたビームキヤノンは、寸分の狂いもなくデナン・ゲーの腹部を貫通、爆発させた。
その爆発の光に紛れて更に編隊の背後に回り込みながら、ビームマシンガンを連射する。
不安定な態勢で撃ったマシンガンは殆ど当たりはしなかったが、それでも偶然に1発がデナン・ゲー
左翼1番機のバックパックに命中して、煙を上げさせた。
緩やかに速度を落とし、レウルーラへ離脱しつつあるジャベリンのコクピット。
振動で真直ぐに走らなくなってきたタイヤを操作しながら、ぽつりと呟いた。
「…お前等がクロスボーンを真似するのは…1000年早えよ…」
【行動:ペズ・バタラ、サイコG、アビゴル、ガンイージに回線継続(0)編隊に近づく(−1)
急激な運動(−1)ビームキヤノン発射(−1)ビームマシンガン発射(−1)】
【残り行動値:0p】
【位置:O-15】
【機体状況:右腕消失、頭部バルカン砲1門損傷、モニター一部使用不能、右肩装甲損傷、左肘
ジョイント負荷(40%)、胸部及び腹部装甲に凹みと歪み、ショットランサー1基消失
アインラッド:打撃と破片による回転不良(中)、ビームキヤノン1門破損、大きな振動】
【参加者状況:左肩負傷(処置)、左眼球裂傷(処置)、右手首切断(処置) 右肋骨骨折、
左大腿骨にひび、右上腕に銃創(処置)】
【武装:頭部バルカン砲×1、ビームサーベル×1、ショットランサー×1、ビームシールド
ビームマシンガン(90%)
アインラッド 武装:ビームキャノン×1(60%)、9連装ミサイルポッド×5】
【所持品:ディパック、水2?入り5本、食料21/3日分、蕎麦団子1個、 拳銃と自動小銃と弾倉×5
タッパーのカレー1つ、保冷シート2枚、書類の束、ペン、缶詰の段ボール、首輪カバー】
【行動方針:突入までの時間稼ぎ】
【同盟:ベルク、リファニア、シュウジ、リナルド】
サイコに取り付き、崩れた拳を振るい続けるベルガ・ギロス。
パイロットの叫びがリファニアの耳を突く。
『……貴様のせいで、貴様のせいでっ!貴様が裏切ったから、我々は大儀を失いっ!
処刑隊のような卑しい仕事をせねばならなくなったのだ!
のみならず!貴様は、私の手塩にかけて育てた部下達を、部下達を!
許しがたい、許しがたいぃぃぃっ!』
「……この人、私と誰かを、混同しているんだ……。
大儀無い戦いが、プライドの高いこの人には、我慢が出来なかった……?」
※ ※ ※ ※ ※
隊長のベルガと揉み合うサイコへと、二機のデナン・ゾンが迫り来る。
『隊長を、助けるぞ!
俺は左方、お前は下方、二段構えだっ!
チャンスは一度だけ、お互いに一撃で決めるつもりで叩き込むぞっ!』
散開しニ方向よりサイコに襲い掛かるデナン・ゾンの姿を、ビギナ・ゼラのパイロットは
少し距離を置いて眺めていた。
「……さあて、僕の予想では……。」
※ ※ ※ ※ ※
「……部下を支え、部下に支えられ。
大儀を無くしたこの人にとっては、この部隊の勝利だけが全てだったんだ……。
これが、戦士の、戦いに身を捧げた人の、末路なの……?」
リファニアの脳裏に、彼女が目標とすべき戦士たちの顔が浮かんでくる。
戦い方のみならず、様々な事をリファニアに教えてくれた、パパ。
リファニアがどういう存在なのか知ってなお、彼女の為に身を捧げようとするリナルド。
その迷い無き戦いの姿勢で、リファニアの迷いをも断ち切ってくれたレイモンド。
そして、アレン……リファニアに、生きる姿勢を示してくれた人。
……生きる事そのものが戦いであるリファニアにとって、その戦いの勝利の鍵をくれた人。
この戦いの先にあるものを、目指すべきものを示してくれた人……。
「……違うよね。」
微かに微笑みながら呟き。
「……離れてっ!もう、戦えないでしょっ!
今はね、あなたの話をいつまでも聞いていられないのよっ!
私達が生きようとする邪魔、しないでっ!
立ちふさがらなきゃ、撃ったりなんかしないからっ!」
凛とした声で、ベルガのパイロットへとそう告げるリファニア。
『……情けを、かけると……?
貴様のような、小娘に、情けをかけられたと……?
……ふざけるなっ!』
だが、ベルガのパイロットは離脱しようとしなかった。
尚も無力な拳を振るい続けるうちに、ボロボロだった腕のジョイントがばきりと折れ、
ベルガの右腕は虚空へと漂ってゆく。
「……わからずやっ!
いいよ、引き剥がしてやるからっ!」
……すでに無力な敵を討てるほど、リファニアは割り切ってはいない。
サイコの両腕にビギナを掴み、そのまま引き剥がそうとする。
その時、こちらに向かってくる敵機の反応を、サイコのレーダーとリファニアの感覚が捉えた。
素早く散開し、サイコを挟み込もうとする敵機。
先程と同じく、容赦のない連携攻撃である。
「……新しい、敵……?コンビネーション……?
駄目、このままじゃ回避できない、回避、できないから……。
早く離れてっ!離れないと、離れないと……っ!」
……とても避ける事のかなわないコンビネーション。
避けることが不可能だからこそ……落とすしかない。
身を守るには、落とすしかない。
リファニアの意識の網が、デナン・ゾンのパイロットの殺意を捉える。
デナン・ゾンがショットランサーを放とうとした瞬間―――。
一瞬だけ、動きを止めた瞬間―――。
一門の砲口が煌き、光に胴を貫かれたデナン・ゾンが爆散する。
「……こう、なっちゃうんだよ……。」
苦々しげに呟くリファニア。
もう一つの殺意の流れをも、完全に捉え。
「……ごめん、そのタイミング、解っちゃうから……。」
一門の砲口が、再び光放とうと―――。
※ ※ ※ ※ ※
攻撃をかけようとしたその瞬間、サイコより放たれた一筋のビームに貫かれる一機のデナン・ゾン。
「……ほおら、予想通り。」
その光景を目の当たりにしながら、ビギナ・ゼラのパイロットは満足そうに呟いた。
(たいしたものだね、彼女……だったか?
鈍重な自分の機体そのものを囮にして、相手の動きに縛りを与えている。
しかしだ、圧倒的に機動性で上回る相手に対しては、火力が強力とは言っても
その砲火を容易に潜り抜けられて、懐へ入り込まれてしまう。
これでは、相手を落とす前に沈められてしまうのが落ちだね。
では、どうするか。
……ここからが、僕達には出来ず、彼女には出来る事だ。
敵対するパイロットの意識の流れを感じ、今まさに攻撃をかけようという瞬間、
普段は圧倒的な機動力で動き回っている相手の動きが止まる瞬間に、落とす。
うちの隊の動きが、完璧すぎるからこそ……そして、その動きを自らを囮にして縛ってこそ。
タイミングを合わせられるという事だね。)
僚機をやられた残り一機のデナン・ゾンが、果敢にもコンビネーションの流れのまま攻撃をかけるのを見て。
ビギナ・ゼラはV・S・B・Rを構え、サイコの周りの戦闘の流れへと意識を向けた。
デナン・ゾンが攻撃をかける瞬間のタイミングは、この隊の一員である彼ならば、ここから眺めていれば容易に解る。
(……そして、攻撃をかける瞬間こそ、隙が出来るというのは……彼女にとっても同じ事なんだねえ。
このV・S・B・Rの高速で貫通力の高いビームならば、この距離でもI・フィールドを貫ける。
……隊長機、ごとね。)
「……バイバイ、サイコの彼女。そして、隊長殿。」
デナン・ゾンが攻撃をかけようというまさにその瞬間。
ビギナ・ゼラは隊長機ごとサイコを打ち貫くべく、V・S・B・Rの引き金を引いた。
※ ※ ※ ※ ※
「………!」
リファニアがサイコのビームを放とうとした瞬間。
リファニアが感じていた敵パイロットの殺意に、別の方向から飛び込んで来た悪意が入り混じる。
デナン・ゾンのパイロットの殺意を捉えた、リファニアの攻撃意識をさらに捉えるような、その悪意。
(……何、駄目、やられるっ!)
放たれようとしたサイコのビームを止める術は、もう無い。
そして、リファニアを貫こうとする、悪意を伴った一撃も。
『これ以上、部下をおぉぉ……!やらせるわけには、いかんのだぁぁ……!』
サイコのコックピット内に鳴り響く、隊長の声。
スラスターを全開にした隊長機によってサイコの機体は押され、放たれたメガビームはデナン・ゾンを逸れた。
そして、視界に広がったのは、眩いばかりの閃光。
「……ううっ……!」
視界が戻った時、リファニアの目に映ったものは、胴が完全に消失した、ベルガ・ギロスの姿だった。
「……えっ……?」
サイコを後退させようとした瞬間、再びリファニアを閃光と衝撃が襲う。
ベルガ・ギロスが爆発し、サイコの機体が弾き飛ばされたのだ。
「……ううっ……何が、何が起こったのよ……っ!」
体勢を整えて、敵機の反応を確認する。
攻撃をかけてきたデナン・ゾンの残りの一機が、呆然と佇むように動きを止めていた。
そして、遠方に先ほど感じた悪意を感じ、機体を向けるリファニア。
二門の巨大なビームライフルを構えた真紅のMSが、そこにあった。
【行動 : ベルガ・ギロスを引き剥がそうとする(-1)、メガビーム砲でデナン・ゾン撃破(-1)
メガビーム砲でデナン・ゾンに攻撃しようとするも妨害される(-1)、爆発より逃れる(-1)、残0 】
【位置 : P-15 】
【機体状況 : MRX-010サイコガンダムMk-U
全身の装甲に決して軽くない損傷、右肩アーマー損失、左肩アーマー上部損傷、背面に損傷、
スラスター損傷(推力70%) 、アポジモーター幾つか損傷、MA時バランサー異常
自爆装置改造済み、MS形態、攻性プログラム&『盾』ダウンロード済み、ジェネレーター??? 】
【パイロット状況 : 頬にうっすらと傷痕、右肩軽傷(治療済)、頭軽傷(包帯巻)、左腕重傷(処置済み)、
ノーマルスーツ着用、メイク済み♪、感覚開放、サイコミュによる負担、首輪カバー装着 】
【武装: 胸部3連装拡散メガビーム砲(一門破損)、リフレクタービット×5 、(大型ヒートグレイブ、メガバズーカランチャー)
腕部サイコミュ式 ビームソード×1、全身メガビーム砲×多数(左脛二門破損、右肩全門破損) 】
【方針 : 『揺るがせてはならない夢』、自分の意志で綺麗に生きる、誰も死なせない! 】
注意深く、僅かにスラスターを噴かせながらの不規則軌道を続けるビギナ・ギナ。
そうしながらも、ゼファーは戦場全体に意識を広げ、戦場を注意深く見渡していた。
そうした観察が始まってすぐに、敵に動きが見られた。
(敵に動き。一機被撃墜。陣形変化。部隊を二つに分けた模様。
サイコの方へ隊長機と思われる機体を含んだ四機。
こちらへそれ以外の四機が接近中。
戦力、デナン・ゲー×2 デナン・ゾン×2
包囲陣を取る模様。……一定距離を開け、こちらの急襲を防ぐ算段ですか。
ではこちらも……どうせ目的は攪乱です。撃破出来ずとも……。)
ゼファーの読み通り、四機のMSはビギナ・ギナを包囲し、少しずつ、確実に包囲を狭め始めた。
まず、背後に回り込んだデナン・ゲーからビームが放たれた。
コックピットに向かうビーム。それをゼファーは、あたかも宙返りをするようにして、避けた。
頭部すれすれを飛んでいくビーム。カメラの画像がごく僅かに荒れる。
その向きのまま、自分が回転した事により目の前にいるデナンゲーにビームを撃とうとして……
すぐに止め、今度は右に機体をそらした。
その直後、ビームが左腕ギリギリを通り過ぎていく。
(くっ……やはり手練ればかりですね。
包囲を狭めながらも、互いに攻撃が当たらないようにしている。
やはり元は、プロの軍人ですか……。……!?)
今度は右脇をビームが通り過ぎていく。避けようとするが、遅かった。
気が付いたときには、既に右肩のマシンガンと、ビームライフルの銃身が溶けていた。
これでは両方、銃としては使用不可能だろう。
それを両方とも投棄する……と見せかけて、MS部隊の兵士達が驚く行動を見せた。
まず、ビームライフルをたまたま正面にいた哀れなデナン・ゲーに投げつけた。
無論、デナン・ゲーのパイロットは少し驚いたが、予測内の行動だったらしく、容易くかわす。
……が、二撃目は流石に、予測しきれなかった。
一気に距離を詰めてきたのだ。そこまではまだ予測できないこともなかった。
だから、ビームサーベルを装備させた。
だが、ゼファーはそれよりも早く、さらに間合いの違う武器を装備させていたのだ。
それは、右肩からもぎ取ったマシンガンだった。
それをあたかもグリップを逆さに持ち、
デナン・ゲーのビームサーベルが生成されるよりも早く、トンファーのように振り回した。
そしてそれは、MSの顎に当たる部分に食い込んだ。
『ぐはぁっ!?』
間違えてスイッチが入ってしまったであろう接触回線に乗って、中の兵士のうめき声が聞こえる。
さらに、首に当たる部分から飛び散ったオイルが、
ビギナ・ギナの頭部の一部ををさも返り血のように汚す。
だがそれをゼファーは気にせず、無防備なコックピットに左腕のビームライフルを放った。
そしてビギナギナが離れた直後、デナン・ゲーは爆発した。
「……。」
「っく……。」
「う……。」
兵士達は、視た。
爆炎の中、佇む一機の忌々しきMS。
銃とトンファーを両手に構えた、人無きMS。
幻と呼ばれる機械を乗せ、返り血に彩られた、白銀の機械。
兵士達は恐怖した。始めてこのゲームの管制者達に会った時よりも、恐怖した。
だが、退く事は出来ない。その事が、彼らに数の力すら忘れさせ、恐怖させていた。
(そうです……そのまま、恐怖したまま、止まっていてください。
その方が……誰にとっても良い結果となる。
……どうやらリファニアさんの方が苦戦しているようですね……。
だとすると……何時までもこうしているわけにもいきませんか……。)
【行動:回避行動×2(−2)ビームライフル投棄(−1)マシンガンでデナン・ゲーを攻撃(−1)】
【残り行動値:0p】
【位置:O−15(ガンイージ):P−15(ビギナ・ギナ)】
【機体状況:ビギナ・ギナ:通信中(ガンイージ)自爆装置無効化済 コックピット損傷 左肩装甲融解
フィン・ノズル4個損傷、表面装甲損傷軽微 左足首に負荷
ガンイージ :通信中(ビギナ・ギナ ジャベリン ペズバタラ)
機体各所にダメージ、電子機器に被害、頭部大破 左右脚部損傷、左腕大破
右フロント・サイドアーマー破損 左サイドアーマー破損 脱出装置使用不可 自爆装置無効化済】
【参加者状況:右足重傷(処置済み)打撲 左目周辺に切り傷 防弾チョッキ着用 首輪カバー装着中】
【武装:ガンイージ:ビームライフル(残弾2)
ビギナ・ギナ:ビームライフル(残弾60%) ビームサーベル×2 ビームシールド
フック付きワイヤー&ウィンチ ヒートナイフ×2 F-90S用クルージングミサイル×1
ドラム弾装式120mmマシンガン(残弾4斉射分)使用不可能なマシンガン】
【所持品:ディパック(食料0.5日分 計画書 紙とペン 医療用セット 首輪カバー
自動小銃 マガジン×5 スタングレネード)
拳銃(残弾16発) 工具セット 杖 ヨーコの果物ナイフ (ゼファー) 】
【行動方針::"示す" 利用出来るモノは利用 突入】