先週金曜日(2009年11月6日)、インターネット・ホットラインセンターから「【公序良俗に反する情報】の通知書兼対応依頼書」なる、硫化水素の製造を直接的かつ明示的に誘引等する情報の対応依頼が来た。メールに添付されていたPDFファイルによると、2ちゃんねるにて書き込みされていた硫化水素ガス製造方法と自殺を誘引する書き込みが公序良俗違反であるそうだ。
テンプレとして広く流布したこの製造方法は当時入手が容易であった2種類の商品が必要です。しかし、皆さんご存じの通り、武藤鉦製薬が製造販売する六一〇ハップは現在製造されていません。昨年までの硫化水素自殺騒動で、同年5月に日本チェーンドラックストア協会から、販売自粛の要請がありほとんどの薬局等取扱店での販売が行われていません。同年7月に解除されましたが、再度扱う販売店も少なく武藤鉦製薬はこれが原因で経営が悪化し同年9月に製造中止となりました。現在、市場に存在せず製造されていない六一〇ハップの入手は極めて困難です。
そこで、疑問が生じます。削除依頼の理由となる公序良俗違反が成立するか否か。六一〇ハップの入手が極めて困難なことから、掲載されている情報からの硫化水素ガス製造は事実上不可能です。不可能であるのに、公序良俗違反は成立するのか?ここで民法第90条を持ち出すのはいささか乱暴ですが、公序良俗について以下の通り述べられています。
公の秩序又は善良の風俗に反する事項を目的とする法律行為は、無効とする。
硫化水素ガス製造が不可能であるから、公の秩序には全く反しないわけです。つまり、民法として公序良俗違反は以上の理由で成り立たないと思うわけです。
さて、話はちょっとかわり、硫化水素自殺騒動で昨年4月30日に警察庁が各都道府県警察本部長宛に警察庁丁情対発第3 3 号「硫化水素ガスの製造を誘引する情報の取扱いについて」を通達しています。さらにこの通達とほぼ同様のものが各インターネットプロバイダ事業者及びインターネット・ホットラインセンターにも通知されています。この通達の中ではインターネット上の硫化水素ガス製造方法について有害情報と認定すべく要件が以下の通り記載されています。
2.有害情報該当性の判断について
硫化水素ガスの製造を誘引したと判断されるためには、硫化水素ガスの製造方法に係る情報に加えて、
○ 製造を誘引する(簡単に作れる等)
○ 利用を誘引する(簡単・確実に死ねる等)
と認められることが必要となる。
以上の有害情報該当性の判断を見るに、製造方法を記していることから、製造を誘引すると認められるが、「簡単に作れる等」とあります。すでに述べたとおり、掲載された情報では硫化水素ガスの製造方法は不可能であり、この要件には当てはまらないと考えられます。利用をも誘引する必要がありますが、実行不可能なことに対してこの文言は成り立ちません。
以上のことから、インターネット・ホットラインセンターには先週金曜日にメールを受信した2時間後に、WAKWAKヘルプデスク(プロバイダ)からも11月2日に同様の連絡を受けその2時間後に削除は見送る旨の返信をしているのですが、いまだ返事がありません。WAKWAKヘルプデスクによると2009年11月5日17時までに削除し連絡をしないと利用停止にするとのことです。
WAKWAKはしばらく使いたいので、以上の理由でも削除を依頼するならば、再度連絡をするようにメールは送っています。返信はギリギリまで待ちますが、最悪の場合みみずんさーばはしばらく使えなくなります。触法することなくこれでは、本格的に海外サーバを検討する段階になりましたね。日本は世知辛いです。
参考(PDF):
インターネット・ホットラインセンター【公序良俗に反する情報】の通知書兼対応依頼書
警察庁生活安全局情報技術犯罪対策課長 警察庁丁情対発第33号 硫化水素ガスの製造を誘引する情報の取扱いについて
現在ムトウハップは確かに「新たに入手するのは困難」ですが、
家に備蓄がある人にとっては「簡単に作れる」わけなので、
そのへんが文句をつける根拠になるんだと思います。
理屈と膏薬は何にでも付くんですよ。
これが「石灰硫黄合剤」だともっと文句言われるでしょうね。
その点は、ぶろぐには書いていませんが、インターネットホットラインセンターの副センター長(Web110の中の人)からも同様の意見がありました。
しかし、販売自粛となってから18カ月経過し流通在庫は0と考えるのが自然であり、かつ当時までに一般の利用者が入手したとしても、通常の使用量であれば使い切っていると考えられる(製品1Lに対し1回の使用量は13ml。2ヵ月半で使い切る)こと。自殺志願者は当時までに入手している必要があり、情報を削除したとしても硫化水素ガスの製造方法は簡便ゆえに忘れることはなく削除の有効性が疑われる。当時以降の入手は一般、自殺志願者ともに極めて困難な事からその指摘はおかしい旨の返信をしていますが、お返事無し。
そこで、六一〇ハップの使用期限は製造後5年と思われるのでその日をもって閲覧を再開することを考えています。昨年5月が最終製造である場合2013年5月末に再開する予定です。もちろん、それまでに製造を再開した場合はその限りではありませんが、日本国外のレンタルサーバにコンテンツを配置するべく設計中だったりもします。国内法に触れる事案でもないので日本国外に配置することによりこういった面倒なことは縛りなしに拒否できそう。現地の法律にもしばられるのでいろいろ調査中。んでもって、意外と安く済みそう。
ちなみに今回、苦肉の策として不可視にしたのはプロバイダの規約によるところのものです。日本国内のプロバイダはもとよりレンタルサーバー屋の規約も一通りチェックしてみましたが、やっぱり海外かなぁと。まぁ、以前から移転構想はあったので具体化するだけです。よいきっかけになりました。
んでもって今のみみずんさーばは北米のサーバにつながるようになっています。もっとも日本資本なんですけれどね。
財団法人インターネット協会が、このようなPDF文書を公開しています。
http://www.sccs-jp.org/SCCS2010/resume/yoshikawa6.3.pdf
ひどいですねwwwwwwwwwwwwwwwwwww
OpenIDてすと~。
いやぁこの件、すっかり忘れていました。