【妖怪】人間以外の女の子とのお話22【幽霊】

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1名無しさん@ピンキー
オカルト・SF・ファンタジー、あらゆる世界の人間以外の女の子にハァハァなお話のスレです。
これまではオリジナルが多いですが、二次創作物も大歓迎!
多少の脱線・雑談も気にしない。他人の苦情を勝手に代弁しない。

<前スレ>【妖怪】人間以外の女の子とのお話21【幽霊】
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1175519231/l50

<保管庫>
2chエロパロ板SS保管庫
http://sslibrary.gozaru.jp/
 →「オリジナル・シチュエーションの部屋その5」へどうぞ。

過去スレとか関連スレは>>2-5へどうぞ
2名無しさん@ピンキー:2007/09/07(金) 12:58:18 ID:O2F/o1px
【妖怪】人間以外の女の子とのお話20【幽霊】
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1163776989/l50
【妖怪】人間以外の女の子とのお話19【幽霊】
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1153583027/
【妖怪】人間以外の女の子とのお話18【幽霊】
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1149415855/
【妖怪】人間以外の女の子とのお話17【幽霊】
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1138894106/
【妖怪】人間以外の女の子とのお話16【幽霊】
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1136184690/
【妖怪】人間以外の女の子とのお話15【幽霊】
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1129137625/
【妖怪】人間以外の女の子とのお話14【幽霊】
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1123248462/
【妖怪】人間以外の女の子とのお話13【幽霊】
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1118943787/
【妖怪】人間以外の女の子とのお話12【幽霊】
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1112711664/
【妖怪】人間以外の女の子とのお話11【幽霊】
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1105867944/
3名無しさん@ピンキー:2007/09/07(金) 12:58:55 ID:O2F/o1px
【妖怪】人間以外の女の子とのお話10【幽霊】
http://idol.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1102854728/
【妖怪】人間以外の女の子とのお話9【幽霊】
http://idol.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1099739349/
【妖怪】人間以外の女の子とのお話8【幽霊】
http://idol.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1093106312/
【妖怪】人間以外の女の子とのお話7【幽霊】
http://idol.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1088018923/
【妖怪】人間以外の女の子とのお話6【幽霊】
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1084053620/
【妖怪】人間以外の女の子とのお話5【幽霊】
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1077123189/
【妖怪】人間以外の女の子とのお話4【幽霊】
http://www2.bbspink.com/eroparo/kako/1072/10720/1072019032.html
【妖怪】人間以外の女の子とのお話3【幽霊】
http://www2.bbspink.com/eroparo/kako/1065/10657/1065717338.html
【妖怪】人間以外の女の子とのお話U【幽霊】
ttp://www2.bbspink.com/eroparo/kako/1047/10479/1047959652.html
人間じゃない娘のでてくる小説希望(即死)
ttp://www2.bbspink.com/eroparo/kako/1046/10469/1046994321.html
4名無しさん@ピンキー:2007/09/07(金) 13:00:24 ID:O2F/o1px
<関連スレ>
かーいい幽霊、妖怪、オカルト娘でハァハァ【その12】
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1164655218/l50
【獣人】亜人の少年少女の絡み5【獣化】
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1167835685/l50
【亜人】人外の者達の絡み【異形】
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1098260654/l50
ロボット、アンドロイド萌えを語るスレ:α5
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1164199888/l50
触手・怪物に犯されるSS 11匹目
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1168016836/l50
猫耳少女と召使いの物語12
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1172055074/l50
魔法・超能力でエロ妄想 その4
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1172923757/l50
<エロくないのは↓へ>
【何でも】オリジナルSSスレッド【OK】
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1126341412/l50
5名無しさん@ピンキー:2007/09/07(金) 13:04:28 ID:O2F/o1px
エロくない作品はこのスレに7
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1161876969/l50
スレから追い出されたSSを投下するスレ
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1161043643/l50
6名無しさん@ピンキー:2007/09/07(金) 13:12:01 ID:iZ9HX0uw
>1
スレ立て、お疲れ様です。

『箱入り娘』の最後の1レス投下させて頂きます。
7箱入り娘:2007/09/07(金) 13:12:50 ID:iZ9HX0uw
 そうして連れ帰った好奇心旺盛なミミックが、箱に閉じ篭って静かにしていろと言うディーターの言い付けなぞ守る訳も無く。
 一人で陸船の船内探検に出発し、あっさりと陸船のクルー達にバレて大騒ぎになったり。
 お菓子で買収された少女が中で何があったかを彼女による監督脚色演出付きで話したお陰で、港に帰り着くまでディーターが女性クルー陣から虫でも見るような目で見られ続ける事になるのだが。
 それはまた、別のお話。

 『箱入り娘』 了
818スレの314:2007/09/07(金) 13:13:35 ID:iZ9HX0uw
以上、長文乱文失礼致しました。
半端な形でスレを跨いでしまい、ご迷惑をお掛けしました。
前後編に分ければよかったです。

当初は、座敷童係長と佐藤(仮)君の話を考えていたのですが、出来上がったら全然関係ない話になってました。
どこで電波の周波数を合わせ間違えたのやら。
9名無しさん@ピンキー:2007/09/07(金) 13:27:01 ID:O2F/o1px
関連スレの一部の現行スレです

猫耳少女と召使いの物語13
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1183396735/l50
ロボット、アンドロイド萌えを語るスレ:α6
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1187951829/l50
触手・怪物に犯されるSS 14匹目
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1187017100/l50
魔法・超能力などの非現実的能力でエロ妄想 その5
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1187957540/l50

確認せずに張ってしまいすみません。
10名無しさん@ピンキー:2007/09/07(金) 13:34:56 ID:qs6we5kE
>>1には乙を、
>>8にはGJ!を。

文字通りのラヴトラップっすか……イイw
11名無しさん@ピンキー:2007/09/07(金) 21:44:05 ID:InXfF/ON
>>1>>8>>9
GJ&乙!
12名無しさん@ピンキー:2007/09/08(土) 11:14:01 ID:rwB0yBsD
いちもつ
13名無しさん@ピンキー:2007/09/08(土) 16:11:48 ID:N9ZhOns0
>>1
乙!

>>8
GJ!続編はあるのかな?
30レス弱程度じゃ物足りねぇ!ってのが率直な感想
14名無しさん@ピンキー:2007/09/08(土) 16:19:41 ID:GmOAh5ZB
>>8
これはいいハニトラすね
GJ、可愛くてえがった。鍵穴を局部に例えた話って多いけど、ここまでガチでやったのは初めて見たw

そして>>1
15名無しさん@ピンキー:2007/09/08(土) 16:35:25 ID:/WuLPW9w
>>1乙!

そして>>8はGJ! しかしこのミミック娘、下手に怒らせると何をされるか
わかったもんじゃないな…嫉妬なんかした日には…

>当初は、座敷童係長と佐藤(仮)君の話を考えていたのですが
今度はこちらを是非!
16名無しさん@ピンキー:2007/09/08(土) 18:24:48 ID:N9ZhOns0
気がつけば天井さがりとミミックの話を各3回ずつは読んでいた


どうやら俺は『性知識のない無垢な娘』に弱いらしいwww
17名無しさん@ピンキー:2007/09/08(土) 23:03:28 ID:ipMObTnB
新スレ出来てたのか。今まで気づかんかった


新作の参考にと思って「もののけ姫」を借りてきたら

乙事主×モロがちょっと書きたくなったが、難しいな・・・
18名無しさん@ピンキー:2007/09/09(日) 01:09:09 ID:RHziSyYJ
>>17
どっちもトシがトシだし、モロに至っては中の人が……
19名無しさん@ピンキー:2007/09/09(日) 01:11:13 ID:3no82w3p
いや、もちろん、両者若い頃の話

美輪明宏自身が演技指導の中で宮崎監督から聞かされた話によると
この二人は本当に若い頃「いい仲」だったことがあるらしい

監督、想像力が追いつきません
20名無しさん@ピンキー:2007/09/09(日) 16:32:22 ID:RHziSyYJ
>>19
パヤオォォォォオオ!!

全く想像できない……ってか、種族からして違うってツッコミは禁止か!?
21名無しさん@ピンキー:2007/09/09(日) 18:22:19 ID:BNlz1Zdq
猪は早漏らしいな。
その代わり何発でもイケるとか。

狼系では、犬は射精が長く、猫は痛いだけだと聞く。
22名無しさん@ピンキー:2007/09/09(日) 18:22:38 ID:BNlz1Zdq
あ、狼だから犬だけでいいのか。
23名無しさん@ピンキー:2007/09/09(日) 18:29:30 ID:ff/4jIa1
>箱
サキュバスクエストの「お楽しみターイム!」を連想しますた。
イイですよね、無邪気ロリ。
ロリ無邪気、イイですよね。
24名無しさん@ピンキー:2007/09/12(水) 22:25:24 ID:owyraAaN
孤高の狼娘とHしたい
25名無しさん@ピンキー:2007/09/14(金) 00:26:55 ID:koUzZDAh
バック物件の地縛霊映像

http://sugar310.dip.jp/cgi/upload/source/up7997.avi
26名無しさん@ピンキー:2007/09/15(土) 09:45:24 ID:giq3/5x3
人いないねぇ
27名無しさん@ピンキー:2007/09/15(土) 13:08:03 ID:g+mrKCfE
>>26
この程度じゃあまだまだ。
28名無しさん@ピンキー:2007/09/17(月) 00:00:39 ID:xuInRqW2
いつの間にか、さがりタンがまとめに載ってた!
あとはミミックタンを待つばかり

『天井裏から、愛を込めて。』と聞いて
るろうに剣心を思い出した俺は駄目かもしれん
29名無しさん@ピンキー:2007/09/17(月) 00:56:26 ID:EZp2Qy0X
あのヴェノム野郎には
天井裏から降りてこないでそのまま戦うという新境地を期待していたのに
なんか普通に地上に出てきて何から何まで台無し
30名無しさん@ピンキー:2007/09/17(月) 10:16:20 ID:bfJe2L2T
age
31名無しさん@ピンキー:2007/09/17(月) 11:22:49 ID:tzqiHNFl
>>29
天井裏からの攻撃に対抗するには外に出て戦うしか無いだろうし、漫画としてもキャラの全体像出さなきゃマズイっしょ。
32名無しさん@ピンキー:2007/09/17(月) 21:50:02 ID:wkUJYPbC
>>29
>>31
足洗い?
33名無しさん@ピンキー:2007/09/18(火) 01:35:32 ID:xbIzBM2F
人魚きぼん
34名無しさん@ピンキー:2007/09/18(火) 18:10:26 ID:A1yfedQG
>>32
明治維新で一族が職を失ったことに対する復讐(というか八つ当たり)に現れた刺客。
一族伝統の「人体精製」で身体を改造しているせいで、局地戦に特化した身体をしている。
ちなみに家業はお化け屋敷。
本人は黒目がちの泣き虫ロリッ娘でおっぱいだけを頑張って精製して大きくしてきた。

「廃仏毀釈のおかげでオカルトはやんなくなったですぅ責任取れ三十路男」
「でかい板に赤ペンキ塗って『大イタチ』とかやられてもなぁ」
「というかとらんじすたぐらまあなロリに跨られてるのにちっとはこーふんしやがれですー」
「拙者真性ロリでござる。ニセモノイクナイ」
「この糞るろうニート!」

という地獄のような死闘はざんぷ史上に残る大業物だった。はず。
今一記憶に自信が無いが。たぶんあってる。
35名無しさん@ピンキー:2007/09/18(火) 20:07:02 ID:zZFtjWvf
>>34
ちょwww2行目以降あってねえwwwwww
36名無しさん@ピンキー:2007/09/18(火) 21:07:31 ID:xRXaoC1Q
『私、メリーさん。今、一階のロビーにいるの…』
『私、メリーさん。今、二階の踊り場にいるの…』
『私、メリーさん。今、三階の踊り場にいるの…フフフ…』
 ………
『わ、私…メリー、ハァ…さん。今、87階の、踊り場にいるの…ハァハァ』
律儀に階段を上り、それを一々報告しなければいけないというのも、妖怪ゆえの悲しい性(さが)だ。
『わ、あ、あたし、メリー…さんっ。ハァ、今は…88階にィッ…る、の』
私が今座っている場所は、上海に建つ超々高層ビルディングの147階居住フロアである。
あと60階近くも残っているのにへたばっている様では、100を前に倒れこむだろう。
『や、あ、たし、メリーさ…んぅっ! い、いあ…89…ちょっと、うう!
 やあ、おしっ…もうだめぇ、出して、ここ開けてぇ! も、もれ、あ…いあああああ!
 あ、あ、だめぇ! 切って、今すぐ電話切ってぇ! 聞かない…でぇぇっ…』
何だ、やけに息切れしていると思ったらそういうことだったのか。妖怪にも「そんなこと」があるとは初耳だ。
50階から126階まではオフィスフロアがひしめき、非常階段のドアはセキュリティ上の都合で
非常時以外は開かないようになっている。駆け下りるにも駆け上がるにも行かず、さぞや苦悶したことだろう。
しかし、不本意な形ながら障害を排除し、恥辱に燃えるメリーさんが残りの階段を駆け上がってこないとも限らない。
そうなる前に、私は屋上のヘリポートへ向かうことにした。

なんかこんな物見つけた
37名無しさん@ピンキー:2007/09/18(火) 21:55:30 ID:p4ZsusKS
ありえん



降りて迎えに行くだろ常考
38名無しさん@ピンキー:2007/09/18(火) 21:59:49 ID:xbIzBM2F
それには同意せざるを得ない
39名無しさん@ピンキー:2007/09/18(火) 22:05:20 ID:ZEAZ6BaE
うむ。そのとおり。
40名無しさん@ピンキー:2007/09/18(火) 22:12:13 ID:5OeifU96
迎えに行ってプロポーズしてそのままハッピーエンド
あれ?そんな発想したの俺だけ?
41名無しさん@ピンキー:2007/09/18(火) 22:19:01 ID:Ufwb7RHS
もらした所を(二つの意味で)優しく慰めてもらって――


「私、メリーさん。今、大好きな人の隣にいるの…」


うむ、まごう事なきハッピーエンド。
42名無しさん@ピンキー:2007/09/18(火) 22:23:27 ID:xbIzBM2F
>>41
不覚にも感動した
43名無しさん@ピンキー:2007/09/18(火) 22:27:55 ID:5OeifU96
>>41
感動した!
44名無しさん@ピンキー:2007/09/18(火) 23:15:01 ID:YiKblarI
水を差すようだが、>>36はオカルト娘スレの11代目にあった。
元々はオカルト板のクール反撃スレからのコピペだったかな。
ちなみにオカルト娘スレでは>>41とは違うルートを辿った。


>>35
いや、2行目はかろうじて合ってる、3行目からズレ始めたんだ!w

>>34補足
元々は金鉱を掘る金掘り衆の末裔だったが、幕末にはほとんどの金鉱が掘り尽くされていた為、
長い手足を活かす暗殺者として身を立てようとしていた。
手足が長かったのは、幼少期から手足に重りを付けて伸ばす秘伝のお陰。
手袋状の爪で戦うが、幕末に剣心と戦った際に右手が使い物にならなくなり、以後左手をメインに強化したが、
明治に剣心に再戦を挑もうとした際に斉藤と戦い、敗北。
デザインは元々バンダナマスク版ウルヴァリン+スパイダーマンのカーネイジだったが、
後にスパイダーマンやスポーン、ヴェノムまでゴチャ混ぜに。

俺の個人的にかなり好きなキャラ。
45 ◆i00Aq69qlQ :2007/09/19(水) 02:15:18 ID:hOjo/dJD
>>36から>>41につながる話を書こうとしたら、
何かぜんぜん違うものになった。
461/4 ◆i00Aq69qlQ :2007/09/19(水) 02:16:24 ID:hOjo/dJD
『うっ……ぐす……私、メリーさん。今、90階にいるの』
涙声で、また電話がかかってきた。
何があっても、一階ごとの報告は欠かすことができないらしい。
難儀なことだ。
「もしもし、こちらヒューマン。今屋上のヘリポートにいる。
 ヘリは発進準備中だ。あと5分ほどで飛び立つ」
途端、メリーさんは電話口で金切り声を上げた。
『えぇ―――っ!?ちょ、ちょっと待ちなさいよ!
 ヘリって何よヘリって!何なの、あたしの立場はどうなるのよ!』
「妖怪の立場なぞ知らん。あ、掃除はして帰れよ」
痛いところを突かれ、メリーさんはますますヒートアップする。
『うっ、うるさいわね!ちゃんとハンカチで拭いたわよ!
 それよりダメよ、ヘリなんて使ったらダメ!
 それ反則!ズルよズル!やり直し!』
「仕様がないな。じゃあ、エレベーターで1階に降りるから、
 君はまた階段で下まで降りてきなさい」
『そ、そこで待っててくれるの!?』
「いや、君が2階ぐらいまで来たら、またエレベーターで屋上に上る」
『それで私が屋上に着いたら?』
「また降りる」
『馬鹿にしないでよ馬鹿に!何の意味があるのよ!
 人間なんかのくせに、人間なんかのくせに……!』
「その人間なんかに恥ずかしいおもらしの音を聞かれたのは誰だ」
『う、ううっ……!』
メリーさんは返す言葉に詰まり、とうとう電話の向こうで泣き出してしまった。

「仕方ないな」
私はパイロットに発進中止を指示し、ビルの管理室に電話をかける。
「私だ。90階フロアの非常階段通用口と、
 9001のエントランスをオープンにしてくれ。
 それから、そこにタオルと女物の着替えを持ってこさせるように」
なにせこのビルは私のものだ。何だってできる。
9001はちょうど今空き部屋になっている部屋で、
電気や水道は通してあるけれど人は誰もいない。
それだけ済ませてから、私はエレベーターで90階へと向かう。

『ぐ、ぐすっ……わたし、メリーさん。いま、91階に……』
「もしもし、こちらヒューマン。9001号室にいる。
 90階の非常通用口を開けさせた。
 通用口からフロアに入って右手に入り口がある」
『ほ、ほんとに!?ホントに90階にいるの!?』
「本当だ」

『わっ、わたしメリーさん。今90階の踊り場にいるの。
 あ、あなた本当にそこにいるんでしょうね!?
 ウソじゃないでしょうね!?』
まだ不安そうな声で、メリーさんが尋ねてくる。
ウソは言ってない。私は、本当に9001号室にいる。
472/4 ◆i00Aq69qlQ :2007/09/19(水) 02:17:07 ID:hOjo/dJD
『わたし、メリーさん。今9001号室の前にいるの』
「わたし、ヒューマン。9001号室入って直進、
 突き当たり右手のドアの向こうの部屋にいるの。でもね」
メリーさんの口真似をしながら、私は教えてやる。
「突き当たりの左側のほうのドアを入ると、バスルームがあるの。
 暖かいシャワーが出るし、着替えとタオルもちゃんと用意してあるの」
『え、ええっ!?』
「好きに使っていいの」
ガチャリ。

これは罠であり、賭けだ。
メリーさんがこれに乗ってこなければ、
相手は危険な妖怪、さすがに危ないかもしれない。しかし。

『わ、わたしメリーさん。いまバスルームにいるの。
 すぐそっちに行くから、ちょっと待ってて欲しいの』
獲物は、罠にかかった。私はほくそ笑み、すかさず行動に移る。

「わたし、ヒューマン。今、」



「あなたの後ろにいるの」



ケータイ片手に素っ裸で無防備にシャワーを浴びていたメリーさんを、
私は後ろからがっしりと抱きすくめる。
もちろん私も服は脱いできた。バスルームなんだから、当然だろう。

「き、きゃ――――――――――――っ?!!!
 なに、何なの、いや、チカン――――!」
「誰がチカンだ」
「あんたよ、あんたに決まってんでしょーっ!
 いや、やめて、さわんないでよーっ!」
触るさ。触るとも。触らいでか。
少女並みの背丈しかないメリーさんのすべすべの肌の感触を楽しみながら、
私は両手で彼女の裸身をまさぐっていく。
「いや、やめ、くすぐったい、ダメ、やめて、もう離してよぉ!」
離しません。
「不法侵入者の悪い妖怪め。この人間様が成敗してくれる」
この部屋は完全防音、この建物は私のビル。
泣かれても騒がれても平気だ。え、立場が逆になってるって?気にするな。

「あっ……!」
小ぶりな胸を後ろから揉みしだき、桜色の乳首に刺激を与えてやると、
メリーさんの声にわずかに甘いものが混じり始める。

「やっ、いや、やめて、お願いー……」
だんだん抵抗が弱まっていくメリーさん。
メリーさんの恐ろしさは、その神出鬼没さにある。
おびき出して自分の土俵に上げてしまいさえすれば、
どうってことはないのだ。いくら身体をよじって暴れようとしても、
人間の大人の男のこの私のほうが、単純な腕力では勝っているのだから。
483/4 ◆i00Aq69qlQ :2007/09/19(水) 02:18:11 ID:hOjo/dJD
「いや、んっ……んーっ……!」
強引に唇を奪って舌を割り込ませ、逃げようとする彼女の舌を思う様に弄る。
私はボディーソープを取り、彼女の股間に手を這わせた。
「どーれ、おもらしちゃんは綺麗にしてあげないとねー」
「やっ、最初に自分で洗ったってば!いい、しなくていいっ!」
そんなことは問題ではない。私がこの手で洗う、ということが大切なのだ。
たっぷり泡をふくませ、私は毛の薄い彼女の陰部を上下にこすり立ててやる。
「あっ……やぁ……だめぇ……!」
もう抵抗だか哀願だか分からない感じになってきたメリーさんの声を聞きながら、
私はじっくりと手を動かし続ける。やがてその指先に、
泡でもお湯でもないものがしっとりと絡み始めた。
「おやー?おかしいな、綺麗にならないなー。またおもらしかな?」
「ち、ちがうっ……そんなんじゃ……!」
「どれ、確かめてみよう」
浴室用の椅子の上に座らせて足を開かせる。
私はその前にかがみ込み、メリーさんの秘所に舌を這わせていく。
「あっ、ダメ、ダメ……!それダメぇっ!」
「やっぱりまだちょっと匂うな。さすがはおもらしちゃん」
「えっ、嫌、そんな……」
メリーさん、また涙声になっている。
もちろん、小水の匂いなんて、嘘だけど。もうしっかり洗ってあるんだし。
少女の香り漂うそこを、私はじっくりと、丹念に、愛撫し続ける。
「恥ずかしい音を聞かれて……恥ずかしいところの匂いを嗅がれて……
 それでこんなに濡れてるなんて、メリーさんはエッチな子だなぁ」
「―――っ!」
ガクガクと膝を震わせ、既に返事もできないメリーさん。
私は彼女を抱え上げ、向かい合わせになるように膝の上に座らせた。
「あっ……やぁ……!」
その体勢のままじわじわと、彼女の中に自分のものを沈めていく。
腰をひきつけて密着させると、窮屈なそこにどうにか私の全てが収まる。
「あぅっ……やだ、いた、痛いよぉ……!」
彼女の腰を浮かせてみると、ちゃんと出血のあとがあった。
あるんだな。処女膜。妖怪にも。
「言わなくていいの?」
「な・・・…何を……っ」
息も絶え絶えと言った感じに、メリーさんがうめく。
「『あたしメリーさん。今あなたの上にいるの』とか」
「ばっ、バカ……っ!この変態っ……!そんな余裕、ある訳……、あっ……!」
お約束だと思ったのに。でもまあ、いいなら、いいや。
私は下からメリーさんを突き上げ、思うさまにその中の感触を楽しむ。
「あっ……!あっ、やぁ……っ!」
小柄な彼女が、私の上で弾む。声も、身体も。
「あ、あ、あっ……あ―――っ……!」
悲鳴のようなその声を引き金に、私は彼女の仲に白い欲望を叩きつけていた。

「おっ、終わり……?もう服着て帰っていい……?」
「ダメ。まだ。ほら、この通り」
私はすぐに元気を取り戻したそれを彼女に示してやった。
「いやっ……いやー、誰か、誰か助けてぇぇぇ」


ほんの6発ほど気持ちよく放ったところで、
私はぼちぼちこの不埒な侵入者を解放してやることにした。
途中で2回ほど私に失神させられていたメリーさんは、
魂が抜けたかのようにふらふらで、もう私の命を狙うどころの有様ではなかった。
494/4 ◆i00Aq69qlQ :2007/09/19(水) 02:18:43 ID:hOjo/dJD


そして数ヵ月後。

『あ、あたし……メリーさん。い、今、一階のロビーにいるの』
「あ、そう」
『あ、そうじゃないわよっ……!
 お願い、オートロック開けてよ!
 そっちからじゃないと、エレベーター使えないじゃないっ……!』
「たまには歩いてきたら?君、メリーさんなんだし」
『い、嫌……きょ、今日だけは許してよっ……!』
「ということは、ちゃんと私の言う通りにしてきたか」
『そうよっ……ちゃんと入れてきたわよ、あれっ……!
 だから、お願い、エレベーター使わせてぇっ……!』
「ダメ。でもまあアレだ、さすがに147階はあんまりだし、
 今日は45階の4512号室を使うことにしよう。ちゃんと階段で来いよ。
 一階ごとに、バイブの具合がどうなってるかちゃんと報告してね」
『こ、この鬼畜っ……!』
「言う通りにしないと」
『し、しないと……?』
「こないだみたいにおねだりしても、抱いてやらんぞ」
『〜〜〜っ!覚えてなさいよ〜っ!』


ちゃんちゃん
50名無しさん@ピンキー:2007/09/19(水) 03:10:26 ID:JV7VwmhV
ちょwwwwwww
グッジョブwwwwwwwww
51名無しさん@ピンキー:2007/09/19(水) 03:11:04 ID:JV7VwmhV
sage忘れすまんorz
52名無しさん@ピンキー:2007/09/19(水) 06:09:56 ID:l9A7Y5nR
ちょw
これはwww
53名無しさん@ピンキー:2007/09/19(水) 08:28:36 ID:SX0sWl23
何この輝く神な流れ。
職人GJ!!

笑ってほんわか幸せな気分になった。
メリーさん可愛いじゃねーかwwww
54名無しさん@ピンキー:2007/09/19(水) 17:49:09 ID:ZCHFhAVw
GJ
55名無しさん@ピンキー:2007/09/22(土) 09:39:14 ID:hUH08KaT
ho
56名無しさん@ピンキー:2007/09/22(土) 22:31:37 ID:AsqfiKLa
唐突だが

何がしかの物や道具なんかが突然美少女に変身して
エッチな御奉仕をしてくれる、というエロ妄想小説は

江戸時代に一大ブームになって大量に書かれたことがあるらしいね
エロは歴史を超える
57名無しさん@ピンキー:2007/09/22(土) 22:36:39 ID:4Xdq/GFw
歴史を超えるというか歴史は繰り返すというかすごいな。
58名無しさん@ピンキー:2007/09/23(日) 07:18:25 ID:dbm6zqBe
保守
59名無しさん@ピンキー:2007/09/24(月) 12:20:34 ID:YEXMC6nP
>>49
メリーが釘宮ボイスで再生されるから困る
60名無しさん@ピンキー:2007/09/25(火) 16:48:18 ID:MP7Nb/Kc
>>59
ルイズ?
61名無しさん@ピンキー:2007/09/25(火) 22:06:41 ID:yA3X514z
>>59
何より真っ先にアルフォンスが思い浮かんだ
62名無しさん@ピンキー:2007/09/25(火) 22:07:20 ID:yA3X514z
sage忘れごめん
63名無しさん@ピンキー:2007/09/25(火) 23:30:08 ID:SYVnpPNE
>>61
俺の場合は三千院ナギだったが、アルと同じ声優と知った時は心底驚いたと同時に、声優って凄い職業だなと感心したものだ。
64名無しさん@ピンキー:2007/09/25(火) 23:41:36 ID:TK3NBS4S
>>61
アルフォンスと言われて思い浮かぶのがパトレイバーな俺は超異端。
ゆうきまさみスレかロボスレか擬人化総合スレに行って来る
65名無しさん@ピンキー:2007/09/26(水) 01:22:44 ID:SN1GHgKt
>>64
よう俺。
66名無しさん@ピンキー:2007/09/26(水) 07:48:03 ID:Hc+KJD2V
>>64-65
何で俺が二人も・・・・・・
67名無しさん@ピンキー:2007/09/26(水) 08:00:35 ID:8N6P0/FR
>>64-66
お、俺が三人もいるぜ。
68名無しさん@ピンキー:2007/09/26(水) 08:41:10 ID:Uhr0sASB
>>64-
 ココは俺百人なインターネッツですね
69名無しさん@ピンキー:2007/09/26(水) 09:09:45 ID:c9qYX3cg
>>64-68
俺だらけのスレだね
70名無しさん@ピンキー:2007/09/26(水) 09:53:03 ID:4J5H0nUd
さすが人外スレ。ドッペルゲンガーがいっぱいだ
71名無しさん@ピンキー:2007/09/26(水) 16:43:18 ID:t422hx4B
♪君に 惹かれて めちゃめちゃ めっちゃ メカ 狂い♪

つまり時代はメカか
72名無しさん@ピンキー:2007/09/26(水) 17:42:58 ID:hzEMNqr/
アルフォンスは犬の名前
73名無しさん@ピンキー:2007/09/26(水) 18:25:20 ID:ejKwEfup
>>70
つまり、一人に襲われて「一人で私をどうにかできると思ってるの!?」と
反撃しようとしたら、背後からもう一人現れて捕まり、さらに増殖していく姿に
恐怖と絶望を覚える空手おにゃのこのSSを(ry


と思ったが、一人がタ○マタ○マ蹴られたら全員悶絶しているシーンが浮かんでしまったので没。
74名無しさん@ピンキー:2007/09/26(水) 18:59:56 ID:hzEMNqr/
ドッペルゲンガーかぁ・・・
ドッペルゲンガーを萌え美少女化するのはとても簡単なんだが
それは萌え美少女のドッペルゲンガーであって
ドッペルゲンガーの萌え美少女ではないからなぁ
75名無しさん@ピンキー:2007/09/26(水) 19:04:18 ID:ejKwEfup
>>74
深いな、ドッペルゲンガー
76名無しさん@ピンキー:2007/09/26(水) 19:07:15 ID:NU5aOHbw
……自分を女性化させたような物体とか?

主人公が女顔で線が細いってんならギリギリだがドッペルゲンガーだと主張できるな
77名無しさん@ピンキー:2007/09/26(水) 19:10:09 ID:ejKwEfup
そもそもドッペルゲンガーとは何ぞや?という事で

ttp://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%89%E3%83%83%E3%83%9A%E3%83%AB%E3%82%B2%E3%83%B3%E3%82%AC%E3%83%BC

>ドッペルゲンガーは、サイエンス・フィクションやファンタジー小説などにも
>よく登場する。そこでは、不埒な目的のために、特定の人や生き物に
>なりすますシェイプシフターとして描かれている。

こっちの意味でのドッペルゲンガーだと使い易いか?
けどそれだと面白くないか・・・。
78名無しさん@ピンキー:2007/09/26(水) 19:31:54 ID:Uhr0sASB
あまりにも、特定の人や生き物になりすます事を続け過ぎたために
本当に好きになってしまった男の子相手に不埒なコト(w をしようと
思った時、本当の自分が分からなくなってて、悩むドッペルちゃん
79名無しさん@ピンキー:2007/09/26(水) 19:33:57 ID:ejKwEfup
>>78
本当の自分を見てもらいたいのに、その本当の自分がどれかわからないわけか。
萌えるな。
80名無しさん@ピンキー:2007/09/26(水) 19:35:54 ID:hzEMNqr/
>>77
それで話作ると、別に人間に化けるキツネでも一緒なんだよね
じっさいそんな昔話もあるし
81名無しさん@ピンキー:2007/09/26(水) 19:39:56 ID:hzEMNqr/
>>78
で、自分のなかみを取り戻すために人間を赤い箱に(ry
82名無しさん@ピンキー:2007/09/26(水) 22:29:15 ID:uRWNf2BD
パトレイバー吹きまくったwwwwww俺多過ぎwwww
ドッペルゲンガー深過ぎるな。自分の存在を疑うとかやたら哲学的になりそう。
でもだからこそこれでSS書けたら本物の神じゃないか…
83名無しさん@ピンキー:2007/09/27(木) 01:28:38 ID:3c2JA8dN
>>82
ドッペルゲンガーが「己の存在」を証明するためにとった唯一の行動…それは自慰だった。
日替わりで様々な人間の擬態をとった「彼女」は、自分が自分であることを「感じる」ため、
人目をはばからず、ただひたすらオナニーを続けるのだ。
84名無しさん@ピンキー:2007/09/27(木) 02:21:22 ID:z70L1m1n
>>81
結局アレはとある男の遺伝子を弄って創ったクローン体で、ベースはおにゃのこだったらしいな。


ドッペルゲンガーのアイデンティティか……
言ってしまえば、ドッペルゲンガーってのは、「既に存在する人物の(霊的な)コピー」に過ぎないからな。
鏡に物を写さなければ、当たり前だが、鏡に物は写らないワケで、オリジナルがいなければコピーも存在しない。
オリジナルの存在の上に成り立つコピーの存在。
すなわち、コピーだけが存在する事は有り得ず、コピーだけでは個として確立しない。
「自分は何者なのか?」を考えると、やはり「既に存在する人物のコピー」であり、
「ドッペルゲンガー当人のアイデンティティ(=独自性・身元・正体)」は存在しない。

とりあえず俺は眠い頭で無い知恵搾ってこんな事を考えた。
85名無しさん@ピンキー:2007/09/27(木) 02:55:51 ID:3c2JA8dN
「今日は…あのひとに決めた…」

 私は気付かれないよう、彼女の後をつける。時々追越しをかけ、前後左右…時には歩道橋の上から。道路の水たまりに
 移る、下からのアングル。出来る限り彼女の外見を読み取った私は、人気のいないビルディングの裏へ隠れるように歩を
 進めた。
「誰も…見てない」
 周囲を確認した私は、彼女の姿を頭に浮かべた。ほっそりとした身体に似合わない大きな乳房、腰まで届く艶やかな
 黒髪…全てのイメージがリンクした瞬間、全身を悪寒が通り抜けた。
「んんっ!」
 ぞくりとした感触に我慢できず、両腕で身体を抱え込む。悪寒が通り抜けた後、遅いくるのは堪え難い激痛だ。
「くぅ…はあ…ぐあっ!!」
 両腕から肉体の変化が明確に伝わってくる。擬態を変化させる時には違和感や痛覚を伴うのが普通なので、もう
 慣れっこになっていたつもりだった…が、今回の痛みは格別だ。特に胸がむくむくと大きくなるにつれ、例えようのない
 痛みと…そして快感が私の脳を貫いていく。
「んぁ…あ゛ッ…んふぅ…!!」
 今までの擬態に合わせてつけていたブラが、どんどん私の胸をしめつけていく。そしてブラウスの胸部がはちきれん
 ばかりに膨らんできたころ、身体の変化が止まった。

「はぁ、はぁ…これが…今度の『わたし』…?」
 道路の水たまりに映りこんだ自分の姿に見入る私。苦労に見合ったその姿だが、私の本意はその姿ではない。
「胸が…くるしい…」
 乳房を掌で包み込む。言い様のない感触が、再び私の意識を刈り取ろうとした。
「んくっ!」
長い黒髪を振り乱し、思わず前かがみになった。ブラウスのボタンを外すのももどかしい…私はブラウスに手を
かけ、ボタンを引きちぎりながら乳房を露にさせた。
「…!」
 ブラで締めつけられているというのに、たわわな乳房が縛めを解かれたかのようにぶるんと弾けた。たまらなく
 なった私は、ブラのフロントホックを荒い手つきで外す。
「んっ」
 つんと立った乳首が上方を向きながら、ぷるんと震えて自己主張をした。その頂きを指で摘み、まるで他人の
 もののように揉みしだき始める。
「…ぁ…っはぁ…んんんっ!!」
 『私』が『私』である唯一の証…それは快楽。私が自分を初めて意識したときから、私は自分自身の姿を
 持っていなかった。人からは「化け物」と蔑まれるし、実際私は他人の姿を借り、この世を生きていくしかなかったのだ。
「ん…あぁ…あぁん」
 いつからこんなことを始めたのかは、もう覚えていない。でも、この感覚こそ他人のものではなく、自分のもので
 あると私が誇れる、たった一つの宝物なのだ。いつしか私はより強い快楽を求めるため、極端な体型をもつ
 女性の身体を模するようになっていた。
「もう…こんなに濡れて…」
 無意識にスカートの中へ手が伸びていた。下着越しに触るだけでも、割れ目がしっとりしているのが判る。
 左手を下着の中に差し入れ、割れ目の中へ一気に指を突っ込んだ。くちゅりという淫らな音が響き、脊髄を通して
 電撃のような快感が全身へ広がっていく。
「あはぁ!! ん゛んっ!!!」
 誰かに見られているという事なぞ、微塵も考えられない。ただひたすら、快楽を求めて乳房を揉みしだき、
 割れ目を弄る。
「んっ…ぁあ…あんっ…あん!」
 頭の中が白くなり、私の姿がとろけていく。残るのは私自身の意識と、それを包んでいく快楽。

 私は…ドッペルゲンガー…仮初めの…姿の…



(続かない、多分)
86名無しさん@ピンキー:2007/09/27(木) 02:56:40 ID:3c2JA8dN
発作的に書いた。反省はry


|彡サッ
87名無しさん@ピンキー:2007/09/27(木) 02:57:12 ID:cMWlFCTJ
主人公
ヒロイン
ヒロインのドッペルゲンガー
の三角関係
これならいけるんじゃね?
88名無しさん@ピンキー:2007/09/27(木) 07:17:50 ID:rYi5lXr5
3Pはデフォだな
8978 :2007/09/27(木) 07:42:55 ID:2Qbbkhoq
>>85
 続けてください、お願いします。


と、一方的にオネダリするだけではなんなので、自分も >>78 の続きを妄想。

>あまりにも、特定の人や生き物になりすます事を続け過ぎたために
>本当に好きになってしまった男の子相手に不埒なコト(w をしようと
>思った時、本当の自分が分からなくなってて、悩むドッペルちゃん

しかも、かなり奥手だった為に、男の子相手に不埒なコト(w をいたすのは、今回が初めて。

取りあえず、百戦錬磨な友人たちからイタズラ半分で教え込まれた、素人にはかなり無理くさい
アレやコレやを、男の子相手にやってみようと必死で努力するものの、根がお莫迦仕様なため
一々、『コレは〇〇ちゃんに教わった××』とか『☆☆さんの恋人は、△△が好きなんだって〜』等の
いらん知識をぼろぼろ口走りやがって、相手の男は興ざめ→遂には、逆切れ。

『オマエは俺専用のオマエになれば、良いんだよっ!!!』で、ソイツの有る意味歪んだ性癖専用に
カスタマイズされちゃって、ドッペルちゃん無事(?)卒業。


……朝早くから、本当にすいません。吊って来ます……orz
90名無しさん@ピンキー:2007/09/27(木) 08:52:08 ID:+jeBJwIl
アウターゾーンにこんな話あったね
91名無しさん@ピンキー:2007/09/27(木) 23:25:35 ID:Pa0t94S2
まさかとは思うが、念のためほす
92名無しさん@ピンキー:2007/09/28(金) 02:52:12 ID:8Un3Pjft
パトレイバーで盛り上がった(?)後に「ほす」とか言われたら…
93名無しさん@ピンキー:2007/09/28(金) 03:48:01 ID:b5o28F+W
>>92
風速40m出すような台風はもう来ないだろうから安心しなよ。
94名無しさん@ピンキー:2007/09/28(金) 16:09:13 ID:fJGaMSFQ
本当になんであんなに盛り上がったんだろな
95名無しさん@ピンキー:2007/09/28(金) 19:50:13 ID:V2I01F/v
>>94
アルフォンスも、人間以外の女の子だからだろう。

・・・違ったっけ?
96名無しさん@ピンキー:2007/09/28(金) 19:51:57 ID:is/ez9Bv
ちょっと大柄
97名無しさん@ピンキー:2007/09/29(土) 00:15:58 ID:u2IxKkEI
確かに>>1にはSFて書いてあるからあながちスレ違いでもないな。
98名無しさん@ピンキー:2007/09/29(土) 04:15:54 ID:o5js+i/9
>>95
アルフォンス(アルフォンソ)は男性名らしいよ。
アルフォンソはスペイン語圏で、アルフォンスはチェコとかその辺りっぽい。

だが個人的には男性名を名乗る男装少女を推す。
99名無しさん@ピンキー:2007/09/29(土) 11:31:56 ID:44+v9ug7
>>98
なんてこったい

ちょっと大柄なのを気にしてて、割とすぐに身体を(文字通りw)壊すちょっとひ弱な男装少女だって!?
100名無しさん@ピンキー:2007/09/29(土) 13:42:02 ID:GcsFsXbn
腹の中には可愛い猫耳の少女でもいると言うのか!?
101名無しさん@ピンキー:2007/09/29(土) 14:33:16 ID:cCPIsegY
2号機が力任せに初号機を押し倒す図が浮かんだ俺はもうだめだ
102名無しさん@ピンキー:2007/09/29(土) 17:11:54 ID:sfvKi54P
それを言ったら量産機なんか頭のカタチがまんまチンコじゃねーか

ムケるし
103名無しさん@ピンキー:2007/10/01(月) 00:44:10 ID:q0JOjiHO
>>101
お前が初号機というから突然流れがエヴァになったwwww
ああもうパトとエヴァの擬人化が脳内であらゆる意味でカオスなあらゆるバトルを繰り広げてる。
104名無しさん@ピンキー:2007/10/01(月) 09:02:26 ID:6vywG2K5
ネルフ脅威の科学力で人間になったペンペンとセクロス
まで読んだ
105名無しさん@ピンキー:2007/10/01(月) 14:47:57 ID:S8sSevJe
>>100
ショートカットでボーイッシュなメカフェチ元気少女がいます。
106名無しさん@ピンキー:2007/10/03(水) 23:23:50 ID:kFScLgWB
ho
107名無しさん@ピンキー:2007/10/04(木) 18:17:28 ID:qQmstvpK
ゾンビ娘なんてのみたい
108名無しさん@ピンキー:2007/10/04(木) 18:18:34 ID:a5XZaqj4
どれくらい腐ってるのがいい?
109名無しさん@ピンキー:2007/10/04(木) 19:10:06 ID:Wa62Jm82
>>108
男が二人並んで歩いているだけで鼻血を吹き出す位
110名無しさん@ピンキー:2007/10/04(木) 19:18:28 ID:3FPVGOvu
違う意味で腐ってるー!(がびーん
111名無しさん@ピンキー:2007/10/04(木) 20:20:41 ID:d787phZR
>>108
レアからウェルダン?まで
お好みに合わせて各種取り揃えております的なお店をつい想像してしまった
112名無しさん@ピンキー:2007/10/05(金) 01:22:22 ID:X6jO8ths
刑部姫の続きまだー?
113名無しさん@ピンキー:2007/10/06(土) 04:09:39 ID:PuZYZKvk
>>112
氏が閃くまで待つべし。



いつの間にかまつろわぬ者も6話か…
114名無しさん@ピンキー:2007/10/06(土) 14:13:32 ID:N82rv/S5
ハーピーきぼん
115名無しさん@ピンキー:2007/10/06(土) 18:38:22 ID:Tq/vYmCy
( ´w`)<ハッピーなハーピーの話かい? ナンチテ
116名無しさん@ピンキー:2007/10/06(土) 18:40:26 ID:Oq1c+gn2
【審議拒否】
      ∧,,∧  ∧,,∧
 ∧∧ (・`  ) (  ´・) ∧∧
(ω・` ) U  )  (  Uノ( ´・ω)
| U   u-u   u-u (U  ノ
 u-u ∧,,∧  ∧,,∧  u-u
    (・ω・`) (´・ω・)
    (l  U)  (U  ノ
    `u-u'.  `u-u'
117名無しさん@ピンキー:2007/10/06(土) 21:36:53 ID:40MeAzOv
ザンスっぽいな。
118名無しさん@ピンキー:2007/10/07(日) 01:08:38 ID:EB5yU5R4
( ´w`)<本当にそうざんすね。 ナンチテ
119名無しさん@ピンキー:2007/10/07(日) 10:39:52 ID:QSVN7fss
         2位決定でもCSあるんだから帰りますよ。
            ∧,,_∧ ,lヽlヽ
             [ ー。ー] 彡 ヽ_
            (     Oミ≡=゚,,,,,,)
            ゝ/|\ミ:::::/`─'ヽ∧,,∧
              ⌒⌒ノ::::/ィ   (;´w`)
                r':::::ノ    ( ∪∪
               (::::::(     ∪∪
               ):::::)
               r´:/
                 (:(
               _。_ ヽ)
           c(__ア
120名無しさん@ピンキー:2007/10/07(日) 21:55:32 ID:s3pbbYTo
>>118
ボッコーボッコーフルボッコ♪(つるぺったんのリズムで)
121名無しさん@ピンキー:2007/10/09(火) 19:27:41 ID:FBFQN9Zw
ハァ
どっかにかわいい妖怪が落ちてないかな
122名無しさん@ピンキー:2007/10/10(水) 22:06:09 ID:E9J0aWE5
落ちてねぇーよ
123名無しさん@ピンキー:2007/10/10(水) 22:30:13 ID:sY7OzMX1
俺も足洗亭に引越したいよママン
124名無しさん@ピンキー:2007/10/11(木) 00:45:55 ID:8+gQkKtd
保管庫に「箱入り娘」が無いよ〜?
125名無しさん@ピンキー:2007/10/11(木) 14:15:09 ID:e8vPeRxt
なかの人が18−314氏だったらしい。>箱入り

気づかなかったよ。
126名無しさん@ピンキー:2007/10/11(木) 18:50:43 ID:8+gQkKtd
>>125
ほんとだ。ありがとう。
127名無しさん@ピンキー:2007/10/14(日) 12:52:21 ID:X25MdwoL
あーこんなスレあったのね。
人外で検索してたから見つからん訳だ。
いつになるか分からないけどいつか書いてみたい…
このスレはメカでない人造少女はおk?
128名無しさん@ピンキー:2007/10/14(日) 12:58:02 ID:BFbqTzEI
>>127
ホムンクルス?
大歓迎だ!!
129名無しさん@ピンキー:2007/10/14(日) 14:33:07 ID:VHwQgC/v
蝶OK
130名無しさん@ピンキー:2007/10/14(日) 16:03:19 ID:Wz3MYsV6
>>128-129
某漫画を思い出した俺を罵って下さい
131名無しさん@ピンキー:2007/10/14(日) 16:06:42 ID:LGAM+k//
>>130
臓物をブチ撒けろ
132名無しさん@ピンキー:2007/10/14(日) 16:17:30 ID:s5OeWhdq
>>130
お前の親は可哀想だ
133名無しさん@ピンキー:2007/10/14(日) 20:05:10 ID:0ZuP7Xn8
>>130
この豚野郎
134名無しさん@ピンキー:2007/10/14(日) 20:06:28 ID:BFbqTzEI
>>130
このブタ野郎!
135名無しさん@ピンキー:2007/10/14(日) 22:44:36 ID:3saH12x1
>>130
このぶ・た・や・ろ・う☆
136名無しさん@ピンキー:2007/10/15(月) 00:06:04 ID:ufJJ/Ixq
>>130-135
テラブラボーw
>>128-129
d。初書きだからあんまり期待しないでくださいな。
137名無しさん@ピンキー:2007/10/15(月) 02:37:26 ID:9hJjjQan
>>130死ねよ知識障害者
138毛羽毛現之事:2007/10/15(月) 16:00:30 ID:N9R+1mbK
 暇だったので、久しぶりに風呂でも洗ってみることにした。
 濡れてもいいようにTシャツにトランクス一丁で浴槽を磨いていると、排水口からゴボゴボという音が聞こえ出した。
 目をやれば、なにか黒い紐状の海苔みたいなものがぐにょぐにょと蠢いている。
 よく見てみると、それはどうやら髪の毛らしい。
 どっかで排水管がおかしくなったんだろうか。とりあえず浴槽から出て様子を見てみる。
 髪の毛はたちまちのうちに浴槽の半分程度にまで増えると、そこで動きがなくなった。どうやら逆流は止まったらしい。
 しかし、なんだろうこの髪の毛の量は。尋常じゃない。まさか幽霊とか……?
 そんなことを考えていると、髪の毛に動きがあった。
 浴槽いっぱいに広がった髪の毛風呂の真ん中に波紋が起きたかと思うと顔が浮んできたのだ。
 美しい少女の顔である。美しすぎてどこか作り物めいており、生きているとは思えない蒼白さ。
 デスマスク――そんな言葉が相応しい。
 ふと、触れてみたいと思った。どうしてこんなものがとか、どうやって排水口よりも大きい顔が出てきたのかとか、そういった疑問や怖さ以上に『美しいものに触ってみたい』という欲求が強かったのだ。
 髪の中に浮かぶ水死美人(オフィーリア)の頬を、そっと撫ぜてみる。
 ふにふに。
 柔らかい。それに温かかった。硬く、冷たそうに見えたのだが。
 指を滑らせ、桜の花弁のような唇にも触れてみる。
 ぷるぷる。
 頬とは違う柔らかさ。頬は低反発だが、唇は弾力がある。

 どれくらいの間そうして触っていたのか――不意に、目が開いた。
 思考と視線の窺い知れない、焦点のない瞳。以前こんな眼を見たことがある。死んだ魚の眼だ――しかもちょっと時間の経ったやつ。
 その眼がぎょろりと動いたかと思うと、目が合った。
139毛羽毛現之事:2007/10/15(月) 16:04:38 ID:N9R+1mbK

「うおっ!?」

 驚いて仰け反り、尻餅をつく。ちょっと腰が抜けたらしい。立てない。情けねぇ。
 自分の肝の小ささに怒りを感じつつも、なんとか後ずさろうと足を動かす。
 視線は浴槽に向けたまま。
 ぬうっと影が立ち上がる。あの髪の塊だ。しかもツインテール。海老風味じゃない方の。
 ぐりんと勢いよく顔がこちらを向いた。勢いがよすぎて自分のツインテールで顔面をひっぱたいてしまっていたが、気にした様子は一切ない。
 絶対いま眼球叩いてたと思うんだが、痛覚がないのだろうか。
 ……鈍いようだが、やっぱり痛かったらしい。右のテールが触手のようにのたくり、緩慢な動作で顔を二度三度とさする。
 そんなことを思っている間に彼女は浴槽から出てきた。
 滑るような動きで、顔の位置が上下左右に一切ブレない。接地面の近くの毛が波打っていることから、どうも蠕動運動で移動しているらしい。
 その割りにはカタツムリなんかと比べ物にならないくらい早かったので一瞬、浴槽をすり抜けて出てきたのかと思ったほどだ。
 完全に浴槽から体――と言っても顔以外はどこも毛の塊なのだが――を出すと、前に飛び跳ねたアホ毛をひょこひょことメトロノームのように揺らしながら、顔を下げて姿勢を低くする。
 どうも台所に出る『G』を思い出してしまう動きだ。この娘も濡れてる上にキューティクルが凄くて妙に黒光りしてるし。
 と、突然彼女が飛び掛ってきた。完全な不意打ち。予想外の俊敏な動きに驚く暇もなく圧し掛かられる。
 体は濡れてるくせに温かい。微温湯に浸かっているようだ。髪が広がり、下半身は完全に呑みこまれてしまった。
 もぞもぞと身じろぎしたかと思うと目の前の髪が割れて、再び顔が浮かび上がる。相変わらず何を考えてるかわからない顔だ。
 ぴょこんと顔の横からツインテールが飛び出し、ぴんとアホ毛が跳ね上がった。
 やっぱりアホ毛は触角らしい。何かを確認するように、ぴとぴとと顔に触れてくる。何度かアホ毛で顔に触れると今度は首を伸ばして顔をすり寄せてきた。
 髪の塊がシャツの中に入り込んで胸板の上を這い回ってくすぐったい。
 髪の毛はトランクスの中にも入り込んで、陰茎に絡みつく。何かの拍子で陰毛が亀頭に絡みついた時はそりゃもう痛い思いをしたものだが、彼女の髪が絡みついても不思議と痛みはない。
 むしろ心地好い。
140毛羽毛現之事:2007/10/15(月) 16:09:25 ID:N9R+1mbK
 温かく、ツルツルとした髪が一本一本巧みに波打ちながら陰茎を刺激する。与えられる快楽に従って、俺のモノは素直に勃起していく。
 前言撤回。
 心地好いどころじゃない。気持ちよすぎる。どう考えても異常な状況であるのに、そのことに思慮を巡らせられるような余裕が持てない。
 頬擦りを止めて俺の顔を覗き込んでいた蒼白だった顔に、わずかに朱が差している。どうやら彼女もなんらかの快感を得ているようだ。
 表情自体は相変わらず無表情だが、それがなんだか却って欲情を煽り、肉棒はますます猛りを見せる。
 してもらいっぱなしというのもなんだか情けない気がしたので、こちらからも何かしようと思ったが相手は無形の怪物。どこをどうしたものか。
 ……とりあえずキスでもしてみよう。手は自由に動かせたので、彼女の頭を抱き寄せる。
 ズボッと手がめり込んでしまうんじゃないかと思っていたが、柔らかな髪の下に何かの手応えのようなものを感じる。
 髪がまとまって芯を作っているのだろうか。毛布を丸めたような感触だ。少なくとも、骨のような硬い物が内部にあるという感触ではない。
 引き寄せた唇に、そっと口付けをした。しばし唇の感触を楽しむと今度は舌で歯列をなぞり、ゆっくりと押し開けていく。
 ディープキスした瞬間、髪の毛が大量に口へと入り込んでくるんじゃないかという危惧は、杞憂だったらしい……ホントどうなってるんだろう、この娘の構造は。
 小さな口腔を余すところなく愛撫し、舌を、唾液を絡ませていく。彼女はわずかに目を細めて瞳を潤ませ、おずおずと舌を動かしてきた。
 しばらく舌技を楽しんでいると頭がいい感じにフワフワしてくる。酸欠でブッ倒れるわけにはいかないので惜しみながらも唇を離した。
 俺は軽く息が上がっているが、彼女はちっとも息が乱れていない。というか嬌声はおろか音一つ彼女は出していない。
 さすがは人外。
 反応が少なくて、ちと物足りない気もするが彼女なりに快感を表現した結果なのだろうと思えば、それすら愛らしく感じられるのだから不思議だ。
 ツインテールを手のように使い、俺の後頭部に回して顔を引き寄せるとこちらの呼吸が整ったのを見計らって今度は彼女のほうからキスしてくる。
 ほんと無表情な割りに積極的な娘だ。男としてはその期待に応えてやりたい。
141毛羽毛現之事:2007/10/15(月) 16:12:24 ID:N9R+1mbK
 先ほどよりも激しく舌を動かして愛撫する。いや、もうこれは蹂躙と言ったほうがいいのかもしれない。
 口戯が激しさを増すにつれて肉茎を刺激する蠕動も一層激しさを増す。
 再び息苦しくなったので口を離した。唾液が透明の橋を作る。彼女も名残惜しそうにツインテールで俺の頬を撫で、体を起こした。
 人間なら腰に相当する辺りを掴み、仰臥したまま腰を突き上げる。
 ただでさえ焦点のない瞳が色情に曇り、ますます正体を失って茫洋としていく。その様子を見ながら俺はピストンを早めていく。
 無表情だった顔に初めて表情が浮んだ。切なげに眉を寄せ、口を大きく開く。
 だが、それでも声や音が発せられることはない。無声のままに喘ぎ、息せぬままに呼吸を荒げ、快感に身をよじる。

「…………!」

 どうやら彼女は達したらしい。声なき嬌声を叫びながら弓なりに背を仰け反らせ、きゅぅと俺のモノを締めつける。
 その瞬間、絶妙を超えて霊妙ですらある快感が俺の全身を奔り抜けた。
 電撃が走ったように頭が真っ白に染まる。

「……く、ぅぁっ…!」

 それで俺も絶頂を迎えて精を迸らせ、彼女の胎内に放った。
 ビクビクと脈打つたびに快感が送り込まれ、最後の一滴を吐き終えるまでそれは続いた。

「…はっ、はっ、はぁ、はぁっ……!」

 脳に叩きつけられる暴力じみた悦楽に息も絶え絶えになりながら、なんとか呼吸を整えていく。最後にひときわ強く呼気を吐き出し、深呼吸に切り替えた。
 快感に蕩けて脱力したのか彼女のダルマのような体はなかば原型を失い、溶けたバターのように俺の上に広がって、余韻に震える肉茎に合わせるように小さく痙攣している。
 口をぱくぱく動かしながら体を縮めたり膨らませたりしているが胸の上に乗った彼女の口から呼気を感じることはないから、やはり呼吸はしていないようなのだが……。
 一体なにを吸い、なにを吐き出しているのか。
 ――まぁ、それはともかく。

「さて、どうしたもんかな」

 俺の呟きが聞こえたらしく見上げるような格好で俺の顔を見る。無表情だがどこか不安そうに見え、「すてるの?」という幻聴まで聞こえてくる。
 そっと彼女の頭を撫で、手櫛で髪を梳くと嬉しそうに目を細めて、また胸板に頬を摺り寄せてきた。
 捨てるとかマジ無理。考えられねぇ。
 とりあえず……

「風呂入りながら考えるかぁ」

 苦笑しながら体を起こし、彼女を抱きかかえてシャワーの前に移動する。蛇口を捻り、お湯を出す。
 ほんとシャンプーのしがいのありそうな体だ。1ボトルで足りるだろうか。うーむ、これからはいろいろとお金が入用になるなぁ。
 これからのことに思いを巡らせながら、湯を浴びて目を瞑っている彼女の頬にそっと唇を寄せた。



 オワリ
142名無しさん@ピンキー:2007/10/15(月) 16:19:54 ID:N9R+1mbK
 初めてエロ小説(らしきもの)を書いた。
 しかし書いてる途中で恥ずかしくなって内容が薄っぺらに……これが童貞の限界です。
143名無しさん@ピンキー:2007/10/15(月) 16:36:28 ID:85S2QjRp
敢えて言おう!
GJである!
で、続くんですよね?
144名無しさん@ピンキー:2007/10/15(月) 17:03:07 ID:aw0SzezN
GJ
145名無しさん@ピンキー:2007/10/15(月) 17:18:14 ID:9gQTC/xv
>>130
その腐りきった尻を乗せている貴様の席をとっとと空けろ老害!!!
146名無しさん@ピンキー:2007/10/15(月) 17:56:23 ID:SuBvrZPc
>>142
 GJ!!!
 しかも、始めてなのに、このクオリティ!!!

 ……もう、ダメポ
147名無しさん@ピンキー:2007/10/16(火) 07:23:30 ID:ZMposKeL
き、鬼太郎〜
148名無しさん@ピンキー:2007/10/16(火) 09:53:26 ID:CpfHwgy7
GJと言わざるをえないじゃないか
149名無しさん@ピンキー:2007/10/16(火) 12:08:14 ID:j2uHMuEp
>>142
グゥレイトォ!
無口っ娘とは素晴らしいチョイス。

>>145
アームストロング少将乙
150名無しさん@ピンキー:2007/10/16(火) 16:45:03 ID:uFflpT+7
二次裏けうけげんで脳内再生しました。
アカイノ大好きです。
151名無しさん@ピンキー:2007/10/17(水) 22:44:14 ID:Ee3kbvLM

突然ですが問題です。俺は今どこに居るでしょう?

わからない?答えは…

「こっちが聞きたい!!」

俺の記憶が確かなら、さっきまで自分の部屋のベッドで寝ていたはずだ

じゃあここは…
「…夢の中?」
辺りを見回しても霧でよく見えない
俺はとりあえず前に進む事にした。

しばらく進むと大きな扉を見つけた

「こんなでかい扉開けられるわけないな、他を探そう」
扉を開けるのを諦めてその場を立ち去ろうとした時、
扉がひとりでに開いた

「うおっ!?…開いた?」
とりあえず中に入ってみる

152名無しさん@ピンキー:2007/10/17(水) 23:21:18 ID:Ee3kbvLM
扉をくぐった先は石造りの開けた部屋だった。

よくみるとカウンターがある
「誰かいますかー?」

返事はない、誰も居ないようだ

とりあえずカウンターの中を物色する俺。
「お?なんか見っけ!…招待状?」

『おめでとうございます!
ただ今から
貴男はお見合いの資格を得ました
奥のドアに入るとお嫁さん候補が待っている102部屋に通じる通路にでます。
そこから先は貴男のご自由に、お好きな部屋へお入りください

なお、結婚できるのは当然お一人までですので、よく考えて選ぶことをお薦めします。
管理人より
幸運な貴男へ』

到底信じられたものではないが、
少しだけ期待してドアを開ける
そしてー
「まっマジだった!」
俺の目の前には果てしない通路と数えきれないほどのドアがあった

「この招待状が本物だとすると102人の候補から選ばないといけないんだったな」

そして俺はー
153ペス:2007/10/17(水) 23:36:16 ID:Ee3kbvLM
勢いで書いたせいで名前もタイトルも考えてなかったや
そうだ
【ザ・お見合い】にしよう
一応この後の話は考えてあるんだけど参考までにどれがいい?

1・人魚
2・御稲荷様
3・雪女

なんだけど
154名無しさん@ピンキー:2007/10/17(水) 23:41:43 ID:+9D102Mr
人魚に一票
155名無しさん@ピンキー:2007/10/18(木) 00:49:53 ID:JGruhcsP
雪女を推す
156名無しさん@ピンキー:2007/10/18(木) 01:35:09 ID:HfFnnZxZ
ああーどれも捨てがたい。
でも狐耳好きなんでお稲荷様で
157名無しさん@ピンキー:2007/10/18(木) 02:56:25 ID:EdMMzmoW
悩むけど、3で
158名無しさん@ピンキー:2007/10/18(木) 05:30:53 ID:R3L5zrvv
漢なら全部だぜーーー!!
嘘です。すいませんお稲荷様でお願いしますorz
159名無しさん@ピンキー:2007/10/18(木) 07:25:20 ID:POuN79XU
御稲荷様
160名無しさん@ピンキー:2007/10/18(木) 07:53:36 ID:OQwufc09
無論。お稲荷様を……
161ペス:2007/10/18(木) 08:49:25 ID:fcGaJNlW
エンディング分岐のつもりで全部書いてみる。

だって俺…漢だから!
162名無しさん@ピンキー:2007/10/18(木) 08:53:20 ID:d9qz64n1
無理しない程度にがんがって欲しいぞ
163【ザ・お見合い】御稲荷様編:2007/10/18(木) 09:02:15 ID:fcGaJNlW
一通り見て歩いた俺には、ずっと頭から離れない名前の部屋があった。

御稲荷様だ。

「御稲荷様って…俺、寿司と結婚するつもり無いそ?」
でも…寿司じゃなかったら?
俺は頭に浮かんだもう一つの可能性を考えていた
「まさか…チンチンか?」
子供の頃からクレヨンしんちゃんを見ていた俺の頭の中には
巨大なチンチンが一人でに歩いている図だった。

「やべぇ!見てぇぇ!!」
俺は我慢できずにドアを開けた。
164【ザ・お見合い】御稲荷様編:2007/10/18(木) 09:18:52 ID:fcGaJNlW
ドアの中は部屋ではなかった
狂ったように咲く桜と藤。
それがアーチ状にどこまでも続いている
「はぁー」
あまりの美しさにため息が出る

「歩きたく…ない?」
自分で自分に確認する。
歩くのがもったいない位に美しいこの道を
ボーっとしつつも一歩づつ前に進んでいく



進み続けて行くと、
目が慣れて来たせいか、色々思い出してきた。

「巨大チンコどこだーっ!」
そう叫ぶと、急に風が止んだ。

「ならばっ…チンコー!チンポー!オチンチーン!」
だが返事はない…
「ふぅっ仕方ない、他の部屋に行こう」
165【ザ・お見合い】御稲荷様編:2007/10/18(木) 09:39:08 ID:fcGaJNlW
今まで歩いてきた道に背を向け、再び歩いていく

と、突然風を切るような、布が風に揺られるような音が鳴り始めた
「なんだ?」
振り向いた視線の先には…
「ムササビ?」
突如空に現れた黒い影

ムササビの様なその影は、どんどん大きくなる
「ってうわぁっ!」
ドサッ
俺は、何かの襲撃を受けて倒れた

そして今、何かが胸の辺りにしがみついている
見るのが恐い…
『おい』
もし…もし想像通りだったとしたら…
『おいっ!』
「うわぁぁぁっ!チンコが喋ったぁぁぁぁ!」
『にゃにぃぃぃぃっ!貴様!人をその…チ…チンコ呼ばわりとは…失礼だろう!』
よく見ると、しがみついていたのはチンコではなかった
「へ?チンコじゃない?」
思わず間抜けな声を出す。
『当たり前だ!そのような下品な物と一緒にするなぁ!』
そう言いながら少女が胸からはなれ、立ち上がる
166【ザ・お見合い】御稲荷様編:2007/10/18(木) 09:59:28 ID:fcGaJNlW
続いて俺も立ち上がる

俺の前に立っていたのは
藤色の髪、桃色の瞳

そして…
「白い耳…白いしっぽ!?」

『何を驚いておるのだ、自分から選らんだのだろう!』
ということは…
「御稲荷様?チンコじゃなくて?」
『ちがぁぁぁう!狐!狐だっ!御稲荷様はき・つ・ね!』
「あーそういえばそんな名前のほこらあったわ」
『まったくぅ』

「だったら君は…お嫁さん候補?」
『…そうだ』
頬を赤らめながらそう答える少女
そこで俺は一つの疑問に辿り着いた、
「人間じゃ…ない?」
そう呟くと、少女は寂しそうな顔をした

『人間でなければ…ダメなのか?私では…ダメなのか!?』
少女が泣きそうになりながら聞いていた
「…え?」
突然の問いに戸惑いつつ、少女をなだめた
そして俺が何も知らない事を説明した
167【ザ・お見合い】御稲荷様編:2007/10/18(木) 10:35:20 ID:fcGaJNlW
『…そうか、人間でない事は知らなかったのか…』
落ち着きを取り戻した少女は、こちらの事情を理解してくれたようだ。
「聞いてもいいかな?このお見合いっていったい…」

『このお見合いは招待状を手に入れた者のために用意された空間内で行われるお見合いだ、
102人の候補の中から当選者が一人を選び嫁として現世に連れ帰るのだ。』

空間とか現世とかよくわからないが、質問をつづける
「君たち102人の候補っていったい…」

『…私たちは人間ではない、俗に言う妖物の類だ』
「妖物!?」
『そうだ、でもこれだけはわかって欲しい
私たち候補者はお前の為に存在している、心も…体も』

「それってつまり…君も含めて皆俺の事が好きって事?」

『……っ!』
顔を真っ赤にして俯く少女、俺は思わず抱き締めた。
少女はそれくらい愛らしいかった
「名前…聞いてなかったね」

『……綾だ』
綾は気恥ずかしそうに答えた
そして俺は…勃起した!
『んっ!熱い…胸に…何かか…当ってる』

そう、綾の胸はちょうど俺の腰の位置にある、
先程までは装飾でわからなかったが、こうして触れるとかなりでかい

168ペス:2007/10/18(木) 10:39:23 ID:fcGaJNlW
危うく課長にバレるとこだったわ

続きはまた後で
169名無しさん@ピンキー:2007/10/18(木) 12:37:33 ID:caqck0sk
なんという放置プレイ!
ってか仕事中ですか乙>>168
170名無しさん@ピンキー:2007/10/18(木) 13:13:10 ID:u1fTSmMy
ばれないようにメモ帳に書き溜めればいいんじゃない
171【ザ・お見合い】御稲荷様編:2007/10/18(木) 14:23:17 ID:fcGaJNlW

「もあ我慢できない!」
俺は我慢できず綾を押し倒す
ドサッ!
『まっ待ってくれ!私は…んぅっ』
獣の様に綾の豊満な胸を揉み、乳首を吸う

「もう綾の事以外考えられないんだ!好きなんだ綾!!」

『んはぅっ!うれしっはぁんっ!」
俺は綾の恥部に手を伸ばした
くぷちゅちゅぷくぷ

『んあぁん!そこっ刺激がぁっ強すぎてぇぇぇ変にっなっちゃぁっんっ!』

「はぁっはぁっ好きだ!好きだ!綾ぁぁ!」

『はぁぅんっ!はぁっわたしもぉっしゅきぃ!』
綾の恥部に俺のモノを押し当てる
「入れるよ?綾」
『はぁっはぁっわったしは…はっ初めてっだからぁ…やっさしくっ…優しくっな?』

172【ザ・お見合い】御稲荷様編:2007/10/18(木) 14:44:52 ID:fcGaJNlW
つぷぷぷぷぷっ
俺のモノが綾の肉壺にいやらしい音を立てながら入っていく
『んぁぁぁぁぁぁっ!奥まで…入って来るぅっ!」

「くぁっすごい…締め付けるというより蠢いて…気を抜くと…出ちゃいそうだ!」

『ひぁんっ!』
どうやら奥まで届いたようだ

「入れただけで何回もイってるね、綾の中ずっとヒクついてるよ」
『らぁってぇ…きもひよすぎてぇぇぇ…ひぁっ!動くのらめぇぇぇっ!』

「俺も気持ち良いよ!綾!もう出ちゃいそうだ!」

『はぁっいいよ?出して?私の中に精液出して!』

そう言い終えると綾の中の蠢きはだんだんと激しくなってくる

「うぁっもう…出る!」
『んぅはぁぁぁぁぁぁぁぁぁんっ!』
「綾!綾ぁぁぁぁぁっ!」
ぬぽっ!
びゅくびゅるるる〜
173【ザ・お見合い】御稲荷様編:2007/10/18(木) 15:05:22 ID:fcGaJNlW

「はぁっはぁっはぁっ」

『はぁっはぁっんっ…どうしてっ中に出してくれなかったのだ?…やはり…人間では無いから…』


「そうじゃない…でもさ、できちゃった婚なんて…格好悪いだろ?」

『それはっ…つまり…私を』
「そうだよ、綾…おいで』


少し前に見た光景、

少女が手を広げて飛んでくる


全裸で…
あっまた…

ハシッ!
『ん?』

「はははー…ごめん」

『…もう一回…するか?』
「やめとくよ…帰れなくなりそうだし」

『ふふっ…そうだな!…帰ろう、私たちの家に』
「ああ、帰ろう!」


174【ザ・お見合い】御稲荷様編:2007/10/18(木) 15:17:45 ID:fcGaJNlW


  〜数ヵ月後〜


『んっんっぅんっ!はぁっ!はぁっ!早くっ起きないとっ…中にぃっ出てしまうぞ!』

「ぐぅ〜すぅ〜」

『もうっ…ぁんっ知らないからな!ふぅっ』

「っ!」
ごぽっこぷっこぷっ…
『んはぁっ!でてるぅぅー』


「ふうっ…また中にだしちゃったね、…これじゃあいつ子供できてもおかしくないや」

『それが…実はな?』
ごにょごにょ
「えっ?本当か!?」


この後、綾が顔を赤らめながら頷いたのは言うまでもない
【ザ・お見合い】御稲荷様編
〜完〜
175ペス:2007/10/18(木) 15:19:19 ID:fcGaJNlW
御稲荷様編は一応これで終わり

どうも御粗末さまでした
176名無しさん@ピンキー:2007/10/18(木) 15:30:56 ID:YmPYHB4q
おめー仕事中だから展開早めやがったな・・・いや、気持ちは分かるけどね、うん
177名無しさん@ピンキー:2007/10/18(木) 20:40:29 ID:6IfJXgP/
どうでもいいことかもしれんが、
何故99人や108人ではなく102人なのだろう
178名無しさん@ピンキー:2007/10/18(木) 22:26:56 ID:caqck0sk
>>177
そういえばそうだね。何だろう102。

改めてテンプレ読んでて気付いたんだけど、>>4の一番上のスレとは何が違うんだ?
179名無しさん@ピンキー:2007/10/18(木) 22:32:37 ID:rgcv0D+n
人の形をしてるかどうかじゃないの?
180名無しさん@ピンキー:2007/10/19(金) 14:42:37 ID:iKhgMUiQ
>>178
『かーいい』に該当するかどうかもある
大人のお姉さんならここだろう

あと傾向として、妖怪はこっち、幽霊は向こうが多い気がする
181名無しさん@ピンキー:2007/10/19(金) 15:03:21 ID:913h1cLx
保管庫読み比べると、なーんとなく空気の差は掴めるよ
182名無しさん@ピンキー:2007/10/19(金) 20:56:58 ID:njdNvQ87
刑部姫はこっちだっけ?とつい迷ってしまう。
183名無しさん@ピンキー:2007/10/20(土) 13:44:18 ID:hm6sZY9g
>>178
元々、オカルト娘スレはオカルト板からのスレなんだよ。
その為か、女の子の年齢層がこっちより低めだし、幽霊タイプがメインになってる。
人外系スレはそんな感じで住み分けがされてる。
184名無しさん@ピンキー:2007/10/20(土) 18:38:52 ID:ugEdA8wV
>>179-183
ありがとう。確かにそんな感じだ。

>>127氏の人工娘にも期待。
185メリーさんの事:2007/10/21(日) 12:24:25 ID:xx4N8ROi
「もしもし、私メリーさん。今あなたの後ろにいるの」

 土曜の深夜、翌日のスーパーヒーロータイムに備えて床に就いていた久瀬アキラを起こしたのは、そんな電話だった。
 うーん、と寝ぼけた胡乱な頭で考える。
 鹿賀丈史並みに記憶が確かならば、そんな名の知り合いはいない。
 しかしこのフレーズ、どこかで聞いたような……デジャヴュ。胸の顔は飾りだ。それはデネブ。関係ない。メリーさん。電話。後ろにいるの。
 ピコーン!(○ームボーイの起動音)
 そのときアキラに電流走る――。
 知り合いではないが、たしかにその名を知っている。っていうかこれが知り合いなのは中島らもくらいだろう。
 アキラが出した答えは、一つ。割れたら二つ。おおガッチャマン。
 これってあの怪談じゃね?
 そうと判れば一安心(?) 貴重な怪奇体験を味わいつくすことに決定。
 声から察するにメリーさんは少女。おにゃのこ。いぢめるしかあるまい。好きな子にいぢわる。これ男子の本懐。
 可愛い子にはいぢわるをせよ、と昔の人も言ってるし。顔見てないから可愛いかどうか知らんけど。
 昔の人はそんなこと言ってません。

「お客様がおかけになった電話番号は、現在使われておりません。もう一度番号をお確かめの上、おかけ直しくださいコノヤロー」

 電話の向こうで、ありりとか、おっかしいなぁとか言ってるのが聞こえたかと思うと、電話が切れた。
 というか最後がおかしかったことに気付け。

 ――数分後、再び電話が鳴った。

「もしもし、私メリーさん。今あなたの後ろにいるの」

 一回目の電話と同じ内容だ。いきなりバックを取る気マンマンである。マンネリ打破の精神は買うが、この場合は定型やテンプレどおりにやるのが正解だろう。
 99%の嗜虐心と1%の親切心であげたセカンドチャンスもパァである。

「まだ一回目の電話じゃねーか。ズルしちゃダメ。やり直し」

「え〜、ヤダよぅ。メリー、疲れるのキライだもん」

 ヤダヤダという声とジタバタという音が聞こえる。ンモー、今の子供はすぐ怠けようとするー。
 寝転がってジタバタするAAがアキラの脳裡をよぎった。
 別にいいかな、と思うがもう少し会話を楽しみたいし色々と準備もしておきたいので、ここは心を鬼にしてダメと言うことにした。

「駄々こねるんじゃありません。そんなんじゃ立派なメリーさんになれないザマスよ!」

「……はぁーい」

 そう言うと、ちょっと考え込んだ様子だったが素直に返事が返ってきた。
 いや、素直すぎる。アキラは一応、釘を刺しておくことにした。

「念のため言っとくが、二回目からなら『後ろにいるの』がOKって意味じゃないからな。きちんと順を追ってだんだん近づくように」

「……お兄ちゃんのケチんぼ」

 図星だったらしい。
 そんな悪いことを考える子には覇王翔吼拳――じゃなくて、お仕置きという名のセクハラせざるをえない。

「毛ちんぼ? 確かに俺のチンチンには毛が生えてますが、それが何か?」

 ボーボーやで。

「あのね、よくわかんないけどケチんぼさんっていうのはチンチンとかいうのと違くって、え〜っとぉ…う〜んとぉ…………
186メリーさんの事:2007/10/21(日) 12:27:50 ID:xx4N8ROi
 ………ケチっていう意味なのー!」

 華麗にスルーされたし、それは知ってる。
 どうやらアキラが言ったことの意味がよくわかってないらしい。
 性的な方面には疎いというか幼いというか、そういった印象を受ける。もしかするとメリーさんは少女通り越して幼女かもしれない。
 アキラがしばらく黙っていると、わかった?と可愛らしく尋ねてくる。
 ええ、わかりました。言われなくても知ってたけど。
 そう言って茶化すのも楽しそうだが、話が進まないのでアキラはちゃんと答えることにした。

「わかった。でも何と言おうとダメなものはダメだ。ちゃんとしなさい」

「えぇ〜、ヤダよぉ〜」

 ぶーぶー子豚。コマンタレブー。不満垂れぶー。

「ちゃんとしたら、お菓子あげるから」

 基本中の基本。幼児を釣るには菓子で釣れ作戦。
 お菓子ぃ、とメリーさんは素っ頓狂な声を上げると、

「えっとね、えっとね、メリーね、モンブランが好きなの! あとそれからそれから、プリンとねぇ――まるごとバナナが好き!」

 息せき切って注文しだした。
 怖いくらいに効果覿面。一生懸命注文したものが全て近所のコンビニで買い揃えられるというのがお手頃というか、庶民的というか……それを死に物狂いに近い声で言うのだから微妙に悲しいものがある。
 きっと貧しい家庭で食う物にも苦労して育ったに違いない。
 ウウッ!

「どうしたの、お兄ちゃん。……泣いてるの?」

 すでにアキラの中ではメリーさんは、物乞いのためにこうして電話して回りながらも餓えて死んでいった少女の幽霊ということになっていた。
 大丈夫だよ、と答えると、食べたいものを確認する。

「モンブランとプリンとまるごとバナナだったな? それくらい安いもんだ。ぅオレにィ! むゎかしとけェい!!」

 気合満タン、アキラは叫ぶ。

『うるせえ! 今何時だと思ってんだ!!』

 隣の人に怒られた。
187メリーさんの事:2007/10/21(日) 12:30:17 ID:xx4N8ROi

「うー、さぶ」

 最近になって急に冷え込みだしたので、夜風は冷たい。
 買出しの道中、メリーさんは定型どおりに「今○○にいるの」とアキラに電話で伝えてきた。
 感心感心。プリンをちょっと奮発して2倍サイズのを買った甲斐がある。
 そんなことを思いつつアキラが、コンビニから出ようとしたときに何度目かの電話があった。

「もしもし、メリーさん?」

「うん! あのね、今お兄ちゃんのお部屋にいるの。早く帰ってきてね、お兄ちゃん」

 そ、そうきたかぁ〜……。
 どこまで型を破れば気が済むのか、このメリーさんは。アキラはもう怒る気も失せてしまった。

「うん、ハヤクカエルー!」

 棒読みでそう答える。
 言い方が可笑しかったらしく、メリーさんは声を上げて笑った。こういうのがツボらしい。
 ひとしきり笑い転げ、ようやく落ち着いたらしいメリーさんはアキラに別れを告げる。

「ん。俺の帰りを楽しみに待ちまくるがよかろう」

 尊大なようでバカな返事を返して電話を切ると、駆け足で家路を急いだ。


「もしもし、お兄ちゃん?」

「もしもし。ぼぉく、アキラえもんです。今自分の部屋の前にいるの」

 玄関前でそう電話すると、なかからパタパタと軽い足音が聞こえてきた。ガチャ、と音がしてドアが開く。
 ドアはゆっくりと開いていき、それにつれて部屋の中が見えてくる。
 そう、見えたのは部屋の中だけだ。メリーさんの姿がない。あれと呟き、怪訝に思いながらアキラは部屋に上がる。

「メリーさーん?」

 呼びかけても返事はない。
 とりあえずリビングへと足を進めようとした時、電話が鳴った。

「もしもし?」

「お兄ちゃん」

 電話口から聞こえたのは、楽しそうな少女の声。

「今、あなたの後ろにいるの」

 電話からではなく、後ろから声が聞こえた。とっさに振り返る。
 白い影が躍り、アキラは衝撃を受けた。
 完全に不意をつかれ、想像以上の威力によろめいて後ろに倒れる。
188メリーさんの事:2007/10/21(日) 12:32:23 ID:xx4N8ROi

「痛ってぇ……」

 フローリングに強かに後頭部を打ちつけてしまい、かなり頭がクラクラしている。
 星が飛んでチカチカする目を凝らし、軽いが確かに質量を感じている腹の上を見た。
 白い。
 そうとしか言いようがないものがそこにいた。
 ツバが広い、白い帽子。絹糸のような白銀の髪。日焼けやシミはおろか黒子一つ見当たらない、きめ細かい白皙の肌。
 そしてヒラヒラとした薄手の白いワンピース。
 そんな白亜の人型が顔をうずめるように腰に抱きついている。
 胸の少し下辺りにある頭。腹に当たる小さくとも確かに存在する柔らかいふくらみ。
 てっきり幼女かと思っていたが、少女といったほうが相応しいようだ。
 アキラがそんなことを思っていると、ゆっくりと伏せられていた帽子のツバが持ち上がり、彼女の白面が明らかになる。
 十分白づくめだと思っていたが、彼女の白さはアキラの予想を遥かに超えて徹底的なものだった。
 目玉の白い部分や冷たい目のことを『白眼』というが、彼女の目は比喩でもなんでもなく、白かった。
 白目の部分だけでなく、虹彩と瞳孔も薄っすらと青みがかった白なのだ。
 アキラは白内障患者の写真を見たことがあるが、それとはまた違う白さだ。濁っているのでも曇っているのでもない。
 最初、アキラは彼女はアルビノなのだと思った。だから白いのだ、と。
 だが目を見た瞬間、それが間違いであったことを彼は理解した。
 すなわち、アルビノではなく白い色素を持っているのだ、と。
 アルビノであるならば、色素欠乏のために網膜の血管が透けて紅く見えるはずなのだ。
 彼女は、そんなアキラの思考など気づいていないのか――あるいは知っていても気にも留めないのか――にっこりと笑う。

「んむぅっ!?」

 アキラはたまらず、白磁の唇に吸いついていた。
 頭と腰に手を回し、メリーさんを抱えたまま横向きに寝転がる。
 ああ、俺は頭打っておかしくなっちゃったんだなと思い、まだそんな考えが出来る自分が可笑しかった。
 柔らかくも弾力ある唇を、唇で、舌で、歯で、触れ、舐め、噛み、味わう。
 一分もすると、とりあえず満足したので、いったん唇を離した。

「あ、は――ぁ……」

 悩ましげな溜息をもらすメリーさん。
 白かった頬には薄っすらと紅を差したような赤みがある。
 アキラはメリーさんを横抱き――いわゆるお姫様抱っこ――で抱き上げる。
 帽子が、音もなく床に落ちた。

「あ、う……?」

 メリーさんは不思議そうにアキラを見る。
 ああ、俺はこの娘を汚してしまいたいのか――何も知らないような無垢な顔が、一度鎮まった欲情の熾き火を焔に変えた。
 足早に寝室へ向かうと、メリーさんをベッドに寝かせる。
 なかば放り投げられるようにベッドに乗せられ、メリーさんは、きゃん、と小さく仔犬のような悲鳴を上げた。
 そんな仕草さえも欲情を煽る。
 アキラはメリーさんのワンピースを首元までめくり上げた。
 露わになる肢体。
 すらりと伸びた脚。清純そうな白いショーツ。きゅっとくびれたウエスト。乳房と呼ぶには小さい、ふくらみかけの双丘。
 その桜色の頂点に、引き寄せられるように口付ける。
189メリーさんの事:2007/10/21(日) 12:35:18 ID:xx4N8ROi

「あは、お兄ちゃん赤ちゃんみたい」

 甘えんぼさんでちゅねぇ。よしよし、良い子良い子。
 最初はそんなことを言いながら、赤ん坊をあやすようにアキラの頭を撫でていたメリーさんだったが、次第に眉根を寄せ始めた。
 啜るように、啄ばむように、口中で乳首を弄ばれ、それにつれてじりじりとした感覚が強くなってくる。
 その感覚は刻一刻と強くなっていくが、メリーさんにはどうしようもない。
 知らないのだ。この感覚の正体を。ゆえに対処のしようもない。出来ることといえば、なすがままに流されるだけ。
 アキラの頭を押しのけようとも思ったが、それは出来なかった。この感覚が失われるのが、嫌だったからだ。
 きゅっと弱々しくアキラの頭を掻き抱く。
 アキラは、うっすらと浮かび上がった肋骨と太腿に指を這わせた。

「や、ぁ……くすぐったいよぉ……」

 思わず抗議の声を上げる。だがそれも弱々しい。
 触れるか触れないかという間隔を保ってなぞる指に反応してビクビクと発作的な動きをする小さな身体。
 そろそろ、かな。
 アキラは乳首に軽く歯を立て、もう片方は優しく爪で引っ掻いた。

「ぁ、ぁああああっ!?」

 ひときわ強く、ほとんど跳ねるように仰け反ったかと思うと、一気に脱力した。
 抱きとめる力も失せたのか、アキラはするりとメリーさんの腕から逃れる。滑るように腕が落ち、マットレスで軽くバウンドして広がった。
 は、は、と断続的に息をしながら、茫然とした目でどこかを見ているメリーさん。
 白いシルクのショーツを脱がせても、気づいていないのか、それどころじゃないのか、まったく抵抗する素振りはない。
 少女らしい、つるりとした恥丘と清楚な縦すじが露わになる。
 太腿から陰部へと、味わうようにゆっくりと舌を這わせる。
 少女は何をされているのかと思い、初めての快感の余韻に浸っていたところを邪魔されて少し不機嫌になりながら気怠い体を起こして目を向けた。

「…そこ、舐めたら汚いよ……?」

 メリーさんはそう言ったが、そこは一度でも排泄したことがあるのかと思うほど綺麗で、臭いなど微塵もなかった。
 舌を這わせるのを止め、そっと口付けしてみる。
 なるほど、確かに『唇』だ――アキラはそう思った。そう思うほどに柔らかかった。
 今度は舌をねじ込んでみる。きゅぅと吸いついた。

「ぁ……もっとぉ……」

 頭をグイと押さえつけられる。なんとか鼻で呼吸する。
 自然と激しくなった鼻息が、少女の小さな芽を撫でていく。

「ひぁっ……くすぐったぁ、い…」

 ビクビクと身を震わせる少女。
 唾液とは違うぬるりとした感触を覚え、舌を離し、頭を上げた。

「は、ぁぁ…ぅ……?」

 どうして止めてしまうのか。メリーさんの瞳はそう言っている。
 別に止めたわけではない。
 ここまで来て、これで終わりにする気などアキラにはさらさらなかった。
 固くいきり立った己自身を露出させ、先端を秘所に押し当てる。
 何が当てられているのか、何が行なわれているのか、何をされるのか――理解はしていない。ただ、この新しい感覚はイヤじゃなかった。
 だから、目の前の男に全てを任せる。
 ゆっくりと、しかし確実に陰唇が押し開かれ、陰茎が挿入されていく。
 少女の胎内はキツい。だが、それでも入らないわけじゃない。入れた方が驚くほど、スムーズに侵入していく。
 ――何かに当たったように、一瞬の停滞。
 ゆっくり慣らそうと思っていたが、今のアキラにそんな余裕はない。
 メリーさんを絶頂に導いていけばいくほど彼女の肉体もまた本能的にアキラを絶頂に導こうとしているのだ。
 一気に、貫いた。
190メリーさんの事:2007/10/21(日) 12:37:33 ID:xx4N8ROi

「痛ぁ、ぐ…ぅぅぅ……」

 快感ではなく苦悶のために眉が寄った。愛液に混じり、純潔の紅が陰茎を伝う。
 その苦痛の声すら、欲情を煽った。
 滅茶苦茶に汚して、壊してやりたい。
 そう思ったが、なけなしの良心がそれを押し止めた。
 あまりにも気持ちよいのでピストンは止められなかったが、さすがに動きは遅くなる。

「ゴメンな。痛かったよな? もう、大丈夫だから」

 大丈夫、大丈夫――そう言い聞かせたのは果たしてメリーさんへか。己自身へか。
 少しでも快感で苦痛を打ち消せるようにと、再び愛撫を開始する。

「っん…く、ぁ…あんっ……」

 舌を絡め、唾液を啜り、手は乳房を揉みしだき、指は乳首を擦り、摘み、撫でる。
 秘裂の襞を雁首で擦り、突き上げるたびに下腹部を陰核に触れさせる。
 手が、舌が、指が、唇がナメクジのように緩やかに全身を余すところなく這い回っていく。
 全身を包む快楽で、苦痛のうめきが艶っぽい喘ぎに変わるのに対して時間は要らなかった。
 今や頬だけでなく、全身が桜色に上気している。
 絶頂に向けてピストンを早め、一気にスパートをかける。 

「んぁ、はああん! ああ、ああああっ」

 静かな喘ぎは、すでに嬌声へと変化していた。
 はしたなく声を張り上げ、四肢をわななかせ、快楽を全身で表現する。

「くっ、そろそろ……!」

 放出に向け、いっそう力強く突き上げる。
 ――それが、とどめ。
 瞬間、メリーさんの頭が白く染まった。

「ぁ、ぁあああああ――――っ!!」

 目の前がチカチカして何も考えられなくなり、ただ無心にアキラに抱きついた。
 さすがに中出しは止めようと思っていたのだが腰をがっちりと脚でホールドされ、外に出せない。

「うぁ……っ!?」

 絶頂に窄まった秘裂は、陰茎を優しく包み込んでいた柔らかな襞を押し付ける。
 たまらず、射精した。
191メリーさんの事:2007/10/21(日) 12:38:25 ID:xx4N8ROi

「ぁ……あつ、い……」

 絶頂の余韻に震える肢体に、吐き出される白い欲望。
 精液を吐き出して陰茎が脈動するたびに、たまらない快感が全身を突き抜ける。
 昇天するような絶頂感は、ゆるやかに落下するような浮遊感に変わり、そのままメリーさんは夢の中へと落ちていった。

「……ふぅっ」

 それを見届けて、アキラはメリーさんの胎内から己自身を抜き出す。 
 粘っこい水音を立てて引き抜かれる陰茎。ゴポ、と精液があふれ出した。
 ようやく欲望が充足され、落ち着きを取り戻した。
 そして今日起こった出来事を回想する。
 メリーさんから電話があって。キスして。押し倒して。犯した。
 一目惚れ? 俺ってロリコン? これが恋?
 それにしたって――

「始まりはいつも突然、かぁ……」

 まったくその通りだと嘆息し、彼女の寝顔を見る。

「ん…ぅ……」

 髪を梳き、頬を指の背で撫でる。
 あどけなく屈託なく、幸せそうな寝顔だ。
 朝一で風呂入って、シーツ洗って、それから買出しして――
 添い寝して明日の予定を思い描きながら心地好い疲労感に身を任せ、アキラも眠りに落ちていった。



 オワリ
192185〜191の人:2007/10/21(日) 12:45:54 ID:xx4N8ROi
 以上です。
 冗長な駄文、失礼しました。
 以前非エロでメリーさんの短い話を書いたこともあって、メリーさんは思い入れがちょこっとある。そんなわけで二番煎じと知りつつもエロいのも書いてみた。
 毛羽毛現のときよりもエロティックに、と思っていたけど卑語猥語を書こうとするたびに羞恥心がこみ上げて書けやしない。
 これが童貞の(ry
 ぶっちゃけ毛羽毛現のほうは続ける気はなかったんだけど……ネタが思い付いて書き上げれたら投下するかも。予定は未定。
 でもこの話見ても判るようにエロよりも生態観察とかどうでもいい部分の描写をついつい無駄に冗長に書いちゃうヤツなので期待はしないで……。

>>150
 モデルがそれだと、どうしてわかったぁ?(津川雅彦風に)
19318スレの314:2007/10/21(日) 15:34:25 ID:QEYL35FE
一本書いたのですが、テキストファイルで140kBにまでなってしまいました。
さすがにまとめて投下は辛いので、前後編で二つに分けさせて貰います。
前編はエロ無しですので、それが嫌な方はスルー若しくはNG登録をお願いします。

>185〜191の人
GJ!
毛羽毛現の方も楽しませて頂きました。
194キマイラエクスプレス:2007/10/21(日) 15:35:47 ID:QEYL35FE
――1――

 今や伝説の中に記録を留めるばかりとなった、血と炎に彩られた混沌の時代。
 その幾万幾億の命を飲み込んだ人と魔の対立も、僅かな手勢と共に魔王の城に乗り込んだ勇者と女魔王の七日間に渡る壮絶な一騎打ちと取っ組み合いと口喧嘩の果てにお互いに愛が芽生えてしまい、グダグダで有耶無耶の内に終わった。
 理由すら定かでない対立の末、自分達の手で己の住む大陸をも沈めんとしていた戦いも遥かな昔となった時代。
 かつては神の怒りを知らぬ魔道外法の産物と恐れられていた魔獣が街で郵便配達をしていてもおかしくないくらいに人魔の垣根の下がった、そんな時代。
195キマイラエクスプレス:2007/10/21(日) 15:36:39 ID:QEYL35FE
――2――

 からん。ころん。
 磨りガラスの嵌まった大きな観音開きのドアの、その片方が開く。
 ドアチャイムの気の抜けた音色が、午睡にぴったりの空気を静かに揺らした。
 暑さが峠を越えて秋の気配が少しは見えてきたと言うのに、まだまだ夏はその力を緩めるつもりがないようだ。
 いまだ夏の暑さを纏った空気が、開いたドアの隙間からゆるりと入り込み、ひんやりとしていた店内を気だるげに掻き回す。
 時ならぬ暑い微風に、冷気の魔術が魔力付与<エンチャント>された小さな珠が、壁に掛けられたままで揺れる。
 予めチャージされた魔素が尽きかけて余命幾ばくも無い寿命目前のそれは、余計な仕事を増やすなと言わんばかりに、ちらちらと瞬いた。
 からん。ころん。
 開いたドアは、押した主が手を離せばゆっくりと元の場所へと戻る。ドアチャイムが再びやる気なさそうに仕事をする。
 高価そうな木製のドアに嵌っているのは、これも高そうなドワーフ職人の手掛けた大きな磨りガラス。そこにはアーチ状に黒い文字で、こう刻まれていた。
 "CHIMAIRA EXPRESS"、と。
 一人の少年が、鏡文字になった社名の刻まれた磨りガラスを背に立つ。
 足を踏みいれた店内は閑散とした。

 客も店員も、人っ子一人いない静かな店内を少年は見渡した。
 右手には受付け用なのだろう、彼の肩まであるカウンター。何人もが同時に書類を書いたり出来るように、バーカウンターのように横に長く伸びている。カウンターテーブルの高さは、ようやっと彼の胸元が届くくらい。向こう側がどうなっているか、彼に覗き見る事は出来ない。
 左には、余裕で十人はまとめて席につけそうな大きなテーブル。それにテーブルを囲んで置かれる、いくつかの椅子。
 他にも書類の詰まった棚や、幅広の紙を巻き取ったらしい筒っぽい物などなど。少年が何に使うのか想像がついた物など、半分にも満たなかった。
 しかし、ここは確かに店である筈なのに、誰もいない。
 少年の家の近所にあった小さな雑貨屋でさえ、入るなり威勢の良い声が飛んできたものなのだけれど。
 他の事で頭が一杯の少年は気付かなかったが、もし鋭い観察眼を持つ者が訪れたならば、この部屋の放つ違和感に気づいたろう。
 カウンターから壁までの間隔。家具と家具との隙間。店の奥へと続く今は閉まったままの扉。確かに全体的に広い店内ではあったが、それにもましてどれもこれも横に広い。普通の店を水平方向に無理やり引き伸ばしたみたいに、人が使うにしては間隔が開きすぎていた。
 とは言え、少年にとっては瑣末事。彼は加速する不安感に耐えるので手一杯だった。
 家具だけが揃っていながら、人だけがいないと言うのは不気味な物だ。それでなくても、ここは少年には初めての場所で、加えて頼る者も無く独りなのだ。
 不安がむくむくと育ち、少年の心中で黒雲となる。
 もしかして潰れちゃったのかな。
 そんな不安もすぐに消えた。
「はぁい、いらっしゃいませ。キマイラエクスプレスは貴方の大切なお手紙を迅速かつ丁寧確実に配達致します」
 カウンターの向こうから、ひょいと女性が顔を覗かせたからだ。
 緩やかにウェーブした豊かな金髪を逆立たせた、見事なライオンヘアー。
 ハスキーな声も、サバンナの王者みたいなワイルドな美貌に良くマッチしていた。
 綺麗な顔に仮面のような嘘っぽい笑顔を張り付けたままで、一息に挨拶を言い切った。
196キマイラエクスプレス:2007/10/21(日) 15:37:16 ID:QEYL35FE
「お客様、本日はどのようは御用で…って、あら?」
 普段の客層とは全く異なる小さなお客様に、彼女は瞳をパチクリさせた。
 仕草自体は可愛らしいのだが、実際、あまり可愛くは見えない。
 それは彼女が女性として、いや、男性を含めてもかなりの大柄だからだ。
 少年からではカウンターが壁となって視線を遮っているので、見れても受付け嬢の胸から上がやっと。
 だが、それでも彼女の体躯が男性をも軽く凌ぐほどなのが想像できた。
 彼女はマッチョな筋肉ダルマなのではなく、ブクブクと太っていて横に広いのでもない。彼女の身体は優雅なラインを描いており、不恰好の対極にいる。
 ただ、大きい。白く清潔なブラウスの肩幅はかなりある。
 胸元はメロンが二つ入っているかのように大きく丸く盛り上がっているが、体躯が大きいのでアンバランスな下品にならずに見事な調和となっていた。深く刻まれた谷間に鼻の下を伸ばすほど、少年は成熟してはいなかったけれども。
「可愛らしいお客さんね。坊や、どうしたの?お父さんのお遣いかしら?」
 こちらの方が彼女の素の喋り方なのだろう。営業スマイルの仮面を外し、気さくに少年に微笑みかける。
 美女に笑みを向けられている羨ましい事態なのに、当の少年はそれ所ではなかった。
 真っ白だった。
 ここに来るまでに、散々どうするかを頭の中で繰り返したのに。
 何を、どうすれば、いいのか。真っ白。
 緊張の反動が、彼の頭の中身全て残らず吹き散らしていた。
「あらら?もしもーし?」
 要領を得ない会話に、と言うか会話が成立しない事に受付け嬢が首を傾げる。
 少年は答えない。答えられない。
 ぱくぱくと酸欠の金魚みたいに唇が意味を持たない形に歪むだけ。
 何とかしなくちゃと言う焦りだけが急速に胸を満たし、目尻には涙が浮かび始めている。
「あらぁ?坊や、どうしちゃったの?喋れないのかしら?それとも……冷やかしかしら?」
 受付け嬢の甘い声色が、急速に冷えていく。
 音も無く立ち上がり、カウンターに手をついて身を乗り出す受付け嬢は、事務作業をする人間には似つかわしくない長手袋をしていた。
 肘の先から長くしなやかな手指の先に至るまで、艶めかしいほどの漆黒。
 貴婦人が夜会で身に付けるような最上級の黒絹の品にも見える。もっとも、ずっと貧しい暮らしの少年に貴人が身を飾るドレスなど縁がある筈が無く、あくまでショウウィンドウを飾る品から得た知識だけだったが。
 でも何かが違う、と少年は思った。
 何か違和感がある。
 手袋と言うには妙に生々しい。そう、まるで生きているような。
 その違和感の正体に気がついた時、少年の口から漏れたのは納得の嘆息ではなく、恐怖に引き攣った声だった。
「ひっ?!」
 違う。
 あれは長手袋なんかじゃない。
197キマイラエクスプレス:2007/10/21(日) 15:38:23 ID:QEYL35FE
 肘から先の黒い部分が彼女の自前であると少年は気付いた。
 気が付かなければ良かったと後悔するだけの余裕も、少年には無かった。
 肌の色が異なっているのではない。
「あっ…ああ……」
 受付け嬢の肘から先は、真っ黒い獣毛に覆われていた。
 人間じゃない。
 悲鳴も出てこない。
 ただ肺の空気が搾り出されるだけ。
「もう、黙っているだけじゃ分からないじゃないの」
 そう言って、受付け嬢は更に身を乗り出した。
 カウンターに手だけでなく足もかけて、その全身をカウンターテーブルの上に引きずり出す。
 ぎしり、と彼女の重みを受けたカウンターが小さく抗議の声を上げた。
 美しい顔を少年に近づけ、腰を高く上げた姿勢で四つん這いになる。
 もし彼女が人間ならば、はしたない以外の何物でもないだろう。だが、種族によってはそれはごく自然な格好となる。
 受付け嬢には上半身しかなかった。
 足がないと言う訳では無い。
 正確を期すならば、受付け嬢には人間種の下半身が無かった。
 受付け嬢の下半身は獣だった。
 彼女の腹から下で流れるような優雅な曲線を描くのは、不幸を運ぶ黒猫の下肢。サイズからすれば虎か豹と呼ぶべきか。全体的なプロポーションは猫科の猛獣のそれで、胸の部分から前が女性だ。
 下半身もビロードのような短く黒い毛に覆われている、腕と同じ艶めかしい闇の色。
 猫の背には翼もあった。
 下肢が猫ならば、こちらは鴉。
 彼女がどんな種族なのかなんて分からない。
 人と魔の対立が終わってから長い年月が経つ。元は人側諸種族領の最大拠点であった此処、王都ハイエスト・ホープにおいてさえ、かつては魔に組していた者達の姿を見かける。
 だが、それは都市部に於いての話。歴史的背景からゴブリンやオークなどの数が多い種族でさえ住んでいる人口が少ないのに、さらに魔獣ともなると王都近隣とは言え、農村部ではまだまだ彼らは珍しい存在だった。
 生まれてこの方、人間以外を碌に見た事のない少年は恐怖に圧倒されていた。
「本当に冷やかしなのかしら?だとするとぉ、あたしにも考えがあるわよ」
 女の口の両端がゆるりと吊り上がる。
 恐怖は更なる恐怖の呼び水となり、少年には女の口が耳まで裂けているかのような錯覚に陥った。
 実際には、彼女の形の良い唇はにまにま笑っているだけなのだが。
 本気でどうこうしようと思っているのではない。暇な受付けの合間に来た少年を、彼女は単にからかっているだけに過ぎない。
 その証拠に、受付け嬢の目が笑っている。
 だが、彼の短い人生の中でも最大級の恐怖に直面して石像さながらに固まっている少年に、それに気づけと言うのは酷だろう。
198キマイラエクスプレス:2007/10/21(日) 15:39:05 ID:QEYL35FE
「この辺りはね、子供が少ないのよ。どうしてか、坊やは知ってるかしら?」
 知らない。
 知っている訳が無い。
 首を縦にも横にも振れず、かたかたと震えるばかり。
「この辺の子供はね、ウチに冷やかしに来ちゃあ、みぃんな、あたし達に食べられちゃったからよぅ」
 ばさり。
 女の背にある漆黒の翼が広げられる。
 濡れた女の黒髪のように艶やかな一対の翼。
 それは誇るように高々と差し上げられて、少年の視界を黒で覆う。天井まで届かんばかりに一面の黒。
 広げられた漆黒が、少年の意識までも黒に染め上げようとした時。
「おやめ、フレデリカ」
 しわがれた声が、何とか少年の意識を引き戻した。
「あんたの接客って言うのは、お客に小便ちびらせる事かい」
「あら、社長。いつの間に」
 しわがれてはいるが、張りのある老婆の声。
 呪縛から解き放たれた少年が、荒く息をつく。溺れかけた者がやっと空気にありつけた時みたいにして、肺と咽喉が貪欲に空気を求めて動く。
 いつの間に現れたのか。
 こんなに暑い夏の日だと言うのにまるで物語に出てくる悪い魔女みたいにローブを纏った老婆は、フレデリカと呼ばれた女の魔獣のすぐ傍に立っていた。
「すまなかったねぇ、坊や。ウチの社員が悪さをしたみたいで」
 謝罪の言葉の半分は少年へだったが、その後ろ半分はカウンターの上でポーズを決めたままのフレデリカに向けられていた。
 矮躯に似合わぬ強烈な意思の光を宿した視線が、じろりと彼女を睨みつける。
 当のフレデリカはと見ればさして悪びれるでもなく、ぺろりと舌を小さく覗かせて照れ笑い。
 肩を竦め、大柄な体をしおらしく縮めながらの仕草は妙な可愛らしさがあった。
「ごめんね、坊や。ちょっと悪戯してみたかったのよ」
 フレデリカは謝りながら少年にニッコリと微笑みかけ、のそのそとカウンターの奥に戻っていった。
 顔を向けてもいないのに分かるのか、フレデリカが通常の窓口の位置に戻るのを待って、老婆が口を開いた。
「さて、と。ご覧のとおり、ウチは普通の店じゃないよ。もしも店を間違えたって言うんだったらお帰りはそっち。間違えていないってお言いなら、坊やはウチにどんな御用かね?」
「これを……」
 そう言う少年の手には茶色い物が大切そうに握られていた。彼が胸に抱くようにして持っているのは、薄くフラックスシードオイルを引いて水を弾くようにした丈夫な一通の封筒。
 途中まで言い掛けて、言葉が喉に詰まってしまって、言い出せずに俯いてしまう。
 これを渡せば終わりではない。渡してからが、自分にとって試練の始まりなのだ。上手くいく自信なんてまるで無い。でも、一度スタートの合図をしたら上手くこなすしかない。
 老婆は、迷いをたっぷりと乗せた少年の態度に苛立つでもなく急かすでもなく、辛抱強く見守った。
 数度にわたる逡巡の後、少年はきっぱりと言った。
「これを…この手紙の配達をお願いします」
199キマイラエクスプレス:2007/10/21(日) 15:39:38 ID:QEYL35FE
――3――

「ウチはキマイラエクスプレスだよ。その意味が分かってるのかい?」
 少年よりも背の低い社長が、探るように言う。
 その体には精力と覇気が溢れている。少年には、その様がまるで老婆が火の玉でも飲み込んでいるように感じられた。
 完全に気圧されてしまって、老婆を見下ろしている筈が、逆に見下ろされているような感覚。
「確かにウチは郵便屋だがね、他とは違うのさね。ウチの娘っこ達が、キマイラ達が運ぶ」
 はぁい、とフレデリカの手がひらひらとカウンター越しに振られる。
 手の甲側は全部滑らかなビロードに包まれているが、掌や指の内側にはピンク色の肉球が見え隠れしている。
 社長はフレデリカをキマイラと呼んだ。
 その台詞を少しでも魔に属する種族に関して知っている人が聞いたならば、即座に浮かんだ疑問にその首を捻っただろう。
 キマイラとは、頭はライオン、胴は山羊、そして蛇の尻尾を備えた種族である。少なくとも女性のパーツはそこには存在しない。彼女の構成は、むしろスフィンクスに近い。
 より知識が豊富な、特に魔術に通じた人間が社長の言葉を聞けば、納得の頷きを返すと共に、その顔に嫌悪感を乗せたであろう。
 だが、その手の知識のごく限られている少年には本来のキマイラと、キマイラのフレデリカの差など区別が出来なかった。
 だから、彼は素直に社長の言葉を受け入れた。
 ああフレデリカさんはそういう種族だったのか、と。
 少年にしてもキマイラエクスプレスを使うように言い付かりはしたが、その会社が実際にどういう風に手紙を運ぶのかまでは知らなかった。
 彼は社長の質問にのみ、首肯した。
「知ってます。とても早く届けてくれる郵便屋さんだって。それに、お金も凄くかかるっていうのも」
「なるほど。確かにウチのお客のようだね。ほれ、フレデリカ、仕事だよ」
 言われずとも当の昔に書類を作る用意は終わっている。受け付け票、羽根ペン、インク壺、料金表、今週の配達員ローテーション割りなど。全て彼女の前でスタンバイ完了。
 彼女は優秀な配達員であると共に、優秀な事務員でもある。
 彼女に限らずキマイラエクスプレスに無能はいない。努力すれば誰だって無能とは縁遠くいられる。努力する理由が彼女達にはあった。
 フレデリカは羽根ペンを手に取り、片手でインク壺の蓋を外した。どちらも社長が使う時もあるので普通の人間用サイズなのだが、人に比して大柄だがしなやかな指は人以上に繊細に動いて、サイズの差は障害にならない。
 羽根ペンの先端をインク壺に浸してしばし、ペン先をブルーブラックの海で泳がせて、インクを吸い上げたのを確認してから、ハスキーボイスが尋ねる。
「まずは、送り主から。坊やのお名前はなんて言うのかしら?」
「ユルギス=マイルスです。村ではユーリーって呼ばれてました」
200キマイラエクスプレス:2007/10/21(日) 15:40:31 ID:QEYL35FE
 カウンターの向こうからは、かりかりと筆を走らせる音がする。
 その音を聞きながら社長は小さく鼻を鳴らした。尖った顎をゆるりと撫でる。『ました』。過去形だ。
 やれやれ、またぞろ面倒事かね。心の中で溜め息一つ。だがそれを雰囲気にも、無論表情にも出しはしない。弱気を見せないのは商売の鉄則である。
「ふむ。坊や、あんたいくつだね?だいぶ若そうだけれども、保護者は…お母さんか、お父さんはいるかね?」
 ここは、担保を取っておくとしよう。
「お母さんはいません…一週間前に亡くなりましたから」
 そう言いながら、ユーリーは困ったような小さな笑みを見せた。
 それが諦観なのか現実感を失しているからなのか、フレデリカには判断が付きかねた。ただ、ちょっと小首を傾げて苦笑するその様を、ひどく痛々しいと感じた。
 ユーリーの運命は、彼に悲しみに浸る間を与えてくれなかっただけだ。
 村人により右から左に流れるように手早く母の葬儀は執り行われ、ユーリーが遺骸に縋って泣く暇も無く共同墓地の隅に埋葬された。
 雑という訳ではなかったが、けっして丁重とは言えず、死者を悼む気持ちもそこにはなかった。埋めたりするのは面倒だが、雑にやって化けて出られるのはもっと面倒。そんな感じを覚えた。ユーリーの直感は正しかった。
「送り先は?」
 社長は心の中で溜め息をもう一回。担保は無しだ。
 それなりに長い付き合いの社長の心中はだいたい察せるけれど、お構い無しにフレデリカは淡々と書類の空欄を埋めていく。
「ザッツボロー公領ホワイトストーン村の…」
 そこでユーリーは、知らず知らずの内に口中に溜まった唾を飲み込んだ。
 何かを決断するように。覚悟を決めるように。
「エヴァン=マイルスまで」
「あら、おんなじ姓ね。親戚の方かしら?」
「父…らしいです」
 ユーリーは困ったような、悲しいような様々な感情のない交ぜになった複雑な笑みを浮かべた。
「僕は顔も知りませんけど」
「あの…ごめんね、坊や」
 フレデリカが、ばつの悪そうな表情を浮かべて俯いた。
「ま、坊やも複雑な家庭事情をお持ちのようだが、こっちとしちゃ知った事じゃないさね。のこのこと首突っ込んでどうなる物でもないしの」
 冷淡とも言える社長の態度が、逆にユーリーにはありがたかった。
 同情されても、どういう感情を返せばいいのか、彼にも分からなかったから。
 名前だけ知っている男は、自分にはいないものとばかり思っていた父であると、一週間前に告げられたばかりなのだ。そして、その事実を告げた者はもういない。
 ユーリーの中は、様々な感情が荒れ狂う混沌の大渦だった。あまりにも激しい渦に、幼い心は自分自身を守ろうと感情を半ば凍らせていた。
201キマイラエクスプレス:2007/10/21(日) 15:41:11 ID:QEYL35FE
「お客の事情がどうあれ、ウチにとって大切なのは、依頼を受けて、しっかり運んで、きっちり報酬を受け取る事さ」
 社長はユーリーに広げた右の手の平を突きつけた。
 親指だけが折り畳まれている。立っている指は四本。
「坊や、宛先はザッツボロー公領と言ったね。その距離なら四枚だね。銀や銅じゃない。金貨で四枚だ」
 市井の人間には目の玉が飛び出すほどの、法外と言っても過言でない値段だ。
 それを、社長と呼ばれたこの老婆は軽く言ってのけた。
 普通の郵便料金の優に数倍はある。
 郵便と一口に言っても、様々な種類がある。軍用から民間まであるが、その中でも一般市民に最も縁がある郵便と言えば、駅馬車郵便だろう。
 各地にある駅から駅を繋ぐ駅馬車によって、リレーのように手紙を運んでもらう。
 駅馬車を利用すると言うシステム上、駅から駅までは運んでもらえるが、宛先に直に届けてはもらえない。そこまで優れたサービスではない。
 駅留めと言って、駅馬車によって宛先に一番近い駅までは届けてもらえるが、そこに留め置かれる。
 駅に用の有る村人や、近隣の村の代表者がチェックに出向いて確認し、村人宛の手紙があれば持ち帰って届けるようになっている。
 手紙の詰まった郵便袋よりも駅馬車に乗る人間の荷物が優先されるので、いつ届くか、出した方も出された方も分からない。
 強盗に襲われる事もある駅馬車を使うので、僻地宛ともなれば届くのかさえもあやふやだ。
 軍用郵便は信頼性も速度も上だったが、当然ながら市民に手の届く筈が無い。
 そのような郵便システムにあって、キマイラエクスプレスがこれだけの料金を取るのには、無論それなりの理由があった。
 キマイラエクスプレスは、宛先に直接配達するからだ。
 何があろうと宛先まで出向き、誰であろうが配達員が直に手渡す。相手がどこぞの王様だろうが飼い猫だろうが、同じ。
 加えて、もう一つ。何故ここまで値が張るのか、素直に頷ける理由がある。
 話は単純。キマイラエクスプレスは、純粋に速い。
 少年の依頼を例に取れば、ザッツボロー公領ホワイトストーン村までは王都から直線距離で約五百キロ。北から南に張り出した山脈を大きく迂回しなければいけないので、実際の道中は約六百。
 徒歩でなら一ヶ月以上、駅馬車をどんなに上手く乗り継いでも優に一週間。健脚で知られるケンタウロス達がリレー形式で運ぶ軍用郵便でさえ、片道三日を要する距離だ。
 そこをキマイラエクスプレスは一泊二日で飛ぶ。
 これ以上を求めるならば、魔術に頼るか、奇跡にすがるしかない。
202キマイラエクスプレス:2007/10/21(日) 15:41:48 ID:QEYL35FE
――4――

「お金はここにあります」
 半ズボンのポケットに手を入れて、小さな麻袋を取り出してカウンターに置いた。
 ジャラリと小さな金属音を立てて、小袋はカウンターのテーブルに力なく倒れ伏す。
 ズボンも袋も埃だらけ。ユーリー自身も埃と汗と垢だらけ。
 それは彼が、キマイラエクスプレスを探して歩き回った証拠だった。
 キマイラエクスプレスの名は王都でも有名ではあるが、王都中に支社がある訳ではない。さらに料金が料金だけに、普通の市民の利用者は多くない。名だけなら兎も角、利用もしない人間が社の住所まで知っているケースは稀だった。
 衛兵にも尋ねたが、公的施設ならともかくとして受け持ち地区以外にある一企業の住所までは、彼らも大雑把にしか知らなかった。ただでさえ乏しい財布の中身を減らす訳にもいかないので王都の街中を巡回する馬車も使えず、仕方なくユーリーは道を尋ねながら歩いた。
 大城壁の外に広がる農村地帯から、キマイラエクスプレスの存在するダウンタウンのウェストブロックまで。
 少年にとって、冒険と呼ぶに相応しい道程だった。
 加えて、この十日間、天は地上に恵みの雨を降らせなかった。
 夏の強烈な日差しは大地をじりじりと炙り、水気を奪っていた。どこの大通りも狭い街路も、熱気を伴なって舞う風も埃だらけ。
 歩き通しだった少年の全身が茶色に薄汚れているのも、むべなるかな。
 同様に薄汚れてしまった袋の中には、金貨が四枚きっちりとは入ってはいなかった。
 高額貨幣もあるが、いかにも掻き集めましたと言わんばかりに、袋の中には雑多な貨幣がたくさん。
 節くれだった指が、そのコイン達を一枚一枚チャリチャリと弾いていく。
「坊や、失礼するよ。どれどれ、ちょいちょいの…ちょいと…確かにあるね」
「はい、確かに料金は頂きました。坊や、お手紙、渡して貰ってもいいかしら?」
 営業スマイルではなく爽やかに微笑みながら、フレデリカが何かを求めるように広げた手の平をユーリーに差し出す。
 フレデリカに言われて初めて、ユーリーは自分がどのように封筒を持っているか、気がついた。
 ぎゅっと細い腕の中に抱きしめていた。
 もし、この手紙を手から離してしまったが最後、魂までも一緒に放してしまうと言わんばかりに。今にもくしゃりと潰れてしまいそうなほどにきつく、強く。
 別段、意識しての行動ではない。無意識の内だった。
 もう後には引けない。
 宛先は伝えた。お金も払った。あとは届けるべき物を渡すだけ。届けるべき物はここにいる。
 両の瞳に決意を漲らせ、怪訝に首を捻る社長に向かい、
「僕も連れて行ってください」
 ユーリーはそう言った。
「お母さん…母からこの手紙はどんな事があっても直接渡すように言われています」
 堰を切ったように、言い切ってしまわなければ命が危ういとばかりの気迫で一息に。
「だから…お願いです。連れて行ってください!」
 ユーリーの母は、そう彼に言い残して逝った。
203キマイラエクスプレス:2007/10/21(日) 15:42:40 ID:QEYL35FE
 お金は手紙一通に何とかギリギリ足りる分は都合がついたわ、と今にも消えてしまいそうなか弱い声で病床の母は言った。
 でも、あなたの分までは足りなかった。
 そう言って、小さく悲しそうに首を振った。
 あなたには大変な旅をさせてしまうけれど、ごめんなさい。
 母が何を言わんとしていたのか、それが分からぬほどこのユーリーという少年は馬鹿ではなかった。
 これが彼の試練だった。
 金も無く、親類縁者の一人としていない身寄りの無い少年が事を成そうとするならば、善意にすがるしかない。それも、神話にあるように慈悲深い蜘蛛の女神が救いの糸を天から垂らすのを待っていたのでは遅すぎる。誰かから善意をもぎ取るしかない。
 母の遺志を成そうと、ユーリーは必死だった。
 ましてや、これは背水の陣。借家であった彼の家は、家賃の払いが滞っていたのもあって追い出され、ほんの一日前に無くなっていた。
 大家も病人を追い出しては後味が悪いが、身寄りは無いが五体満足健康な子供一人なら良心はさほど痛まなかったのだろう。家財道具の類いも、足らない家賃代わりにと差し押さえられていた。
 ここで否と言われても、ユーリーには戻るべき場所なぞ、とうにない。
「お願いします!!」
 翡翠の双眸に精一杯の気迫をこめて迫る。
 老獪な社長は、長い人生の中でユーリー程度の曰く付きの客ならごまんと見てきた。世界が不公平で不条理で残酷なのは今に始まった事ではない。
 可哀想だと思わないでもないが、いちいち付き合っていたら体は兎も角として財布がもたない。
 社長の返答はにべも無かった。
「駄目だね、坊や。確かに料金はある。だから、その手紙は運ぼうさ。でもね、ウチじゃあ人は運ばないんだよ」
 キマイラエクスプレス社では、小包こそ取り扱っていたが基本的に大荷物はお断りである。
 キマイラ達一人一人が背負って運ぶと言う、その手段からして重量物向きとは言えない。しかも空を飛んで、となればなおさらの事。
 それに人と言う荷物は運ぼうとすると、途端に手間が増える。飛ぶのに不慣れな、もっとも飛ぶのに慣れた人間などそうそういないが、者を運んで万が一にでも道中で落っこちられた日には即死は免れない。その際の保障をしなければいけないし、会社の評判にも傷が付く。
 事故が無かったとしても、物がナマモノだけに当然ながら食う寝る出す、と必要だ。紙切れに比べれば遥かに手間とコストが掛かるし、その増えた手間全てを配達員が負担しなければいけない。おまけに、物言わぬ手紙や小包達と違って文句まで言う。
 運送の手間だけではない。人を運ぶと言う事は、時として大変厄介な事態に首を突っ込む羽目になるのだ。
 規則で取り扱っていないと言う理屈の上でも、そこを何とかと言い募る少年と社長の押し問答の趨勢でも、誰の目にも老婆が優勢に見えた。
 が、運命の女神はいつも気まぐれで、突拍子も無い悪戯をする時がある。
「いいじゃないのさ、社長。そこまで言ってるんだから、運んであげれば」
 少年にとっての女神は、ほんのすぐ傍にいた。
 余計な事を言うなと、童話に出てくる悪い魔法使いその物な恐ろしい視線にも怯まず、フレデリカと呼ばれたキマイラは言葉を続ける。
 獣毛に覆われた美しい人差し指が、少年を指し示しながらリズムを刻むようにひょいひょいと揺れる。
「その坊やは、封書付き『荷物』。『荷物』だからまともなお世話は無し。『荷物』が風に煽られて勝手に落っこちちゃっても文句は無し」
 くすくすと喉の奥で悪戯っ子のように笑いながら、にっこりと笑う。
「どう?」
 それが自分に向けられた意思の確認だと気付くのに、彼はほんのちょっとだけ要した。
 そして、そうだと気付いた途端。
 弾かれたように頭を下げた。
 チャンスの女神に後ろ髪は無い。去っていく彼女を捕まえる事は出来ないのだ。
204キマイラエクスプレス:2007/10/21(日) 15:43:18 ID:QEYL35FE
 ユーリーにとって、これは最後の望みだった。
 どれほど頭を下げ続けただろうか。
 時間の感覚が無くなってきた頃、忌々しげな表情を隠そうともしないで社長がフンと大きく鼻を鳴らした。
「いいだろう。坊やの依頼、受けようさね」
「本当ですか?!」
 承諾の言葉に、垂れたままだったユーリーの頭がぴょこんと跳ね上がった。
 垢だらけで薄汚れてはいるが、可愛らしい顔がぱぁっと明るくなる。
「まだ喜ぶには早いよ。確かに請け負うさ」
 社長が剣を含んだ語気でびしりと釘を刺し、機先を制する。
「ただし!料金は倍額。今は無いようだからツケて後払いにしといてやるが、どれだけ掛かろうがどうあっても払ってもらうよ。
 加えて、坊やが怪我しようが死のうが飯が不味かろうが文句は言わせない。
 そして、フレデリカ。あんたが飛びな」
「えぇぇっ?!」
 少年と老婆のやり取りを、にまにまとチェシャ猫張りに笑いながら見ていたキマイラが急に会話の矛先を向けられて素っ頓狂な声を上げる。
「えぇ、でも、社長…今週のローテーションじゃ、あたしは窓口業務なんだけど」
「だから、どうしたね」
 そこには老婆の矮躯に見合わぬ、有無を言わせない力強さがあった。
「あんたが言い出した事だろうに、つべこべお言いでないよ。その口から吐いた言葉なんだから、しっかり責任取って貰うよ」
「はぁい」
 仕方が無い、と言わんばかりにフレデリカが肩をすくめる。
 するりと身をくねらせ、猫の身ごなしそのものの動作で音も無くカウンターから降りた。社長直々に飛べと言われれば飛ぶしかない。だが、飛ぶにしてもいきなりは無理だ。色々と下準備がいる。
 流石に茶々を入れ過ぎたかしらね、と頭の隅でちらりと反省してみるけれども、それもほんの少しだけ。
 ずっと座って無味乾燥な書類整理やら面白い会話がある訳でない接客をしなければいけない退屈な店番よりも、実際に配達業務に就いている方が彼女は好きだった。
 なにより、彼女は飛ぶのが好きだった。
「決まったら話は早い。今から行きゃあ半分は距離を稼げる。二人とも三十分で支度しな」
 唐突ではあったが、そこは熟練の配達人らしく、早々とフレデリカは行動に移っていた。
 一度、そうと決めたならば彼女は迷わない。
 既に店の奥に消えかけていたフレデリカが、閉じかけた扉から毒蛇の尻尾だけを覗かせ、ひゅっと一振りして社長の指示に諾と応えた。
「ああ…」
 今まで厳しい表情しか覗かせなかった社長が、はたと困った顔になる。
 しわくちゃの困った顔で、何をして良いか分からずに社長と同じように困った表情をしているユーリーを見やった。
 夏の日差しの中でキマイラエクスプレス社を探して散々歩き回った残滓が目に付く。彼の簡素な服と言わず彼自身の体と言わず、全身余す所無く、汗と埃で汚れていた。
 この状態で更に旅をしろと言うほど、社長は冷酷ではなかった。
「裏手にシャワーがある。浴びておいで。支度の時間は一時間にまけといてやるさね。フレデリカ!坊やにシャワーの場所を教えてやっとくれ!」
 そうして、フレデリカがブラウスを脱ぎかけた酷く扇情的な状態で戻ってきて、初心な少年を真っ赤にさせた。
205キマイラエクスプレス:2007/10/21(日) 15:44:39 ID:QEYL35FE
――5――

「ここから六百は……」
「こっから北西に向かって……サウザンドヒルズの泉で泊まって…」
「あそこは注意が……駅馬車……から報告が…襲われ…」
 フレデリカが座っていたカウンター横の、奥へ続く扉を挟んで反対側には大きなテーブルが置いてある。
 どっしりとした風格すら漂う落ち着いた色合いのローズウッドで出来たテーブルの上には、大きな一枚の紙が広げられていた。人の背丈くらい高さのある巻いて収納するスクロール状の地図で、サイズもそうであったが、この地図自体がそうそう見られない類の物だった。
 ここまで大きく詳細な地図は一般人には所有する事が許されないからだ。
 街中の小さなエリアに限定された街路図や旅行用に街道だけが描かれたいい加減な物ならともかく、地理や気象情報は国家にとって非常に大切な情報であり、軍事上の重要な戦略情報となる。それがびっしりと記載された地図は敵国にとっては喉から手が出るほど欲しい品だ。
 あまり大きな争いの無い平和な時代ではあったが、平和とは次の戦の準備期間と考えるような人種が国家の要職について安全保障の手綱を握っている以上、一般人は詳しい地図を持つ事は許されなかった。
 キマイラエクスプレスは国境破りを請け負う非合法密輸屋<ブロッケドランナー>ではないのだから、正式な所持許可を持っていた。ここまで詳細なクラスの所持許可は企業と言えど、そう簡単には下りない。
 その持っているだけで官憲がすっ飛んでくる品の所持が許されている段階で、このキマイラエクスプレスと言う会社の特殊性が理解できよう。
 フレデリカの目の前に広がる王都とその周辺領地図には、様々な字で書き込みが加えられていた。
 地図には載っていないような小さな川や泉は休憩に使え、森や洞窟は嵐などの緊急時の避難場所に使える。さらには山から流れて来る風の癖、季節による天候の変化の仕方などいずれも飛ぶために重要な情報。
 今までに何人もが次に飛ぶ誰かの為に、持ち帰った情報を書き記していったのだ。
 もとより接客用であるらしく、テーブルのサイズは人間に合わせられていた。天板に広げられた地図を俯瞰するには社長は立ったままで丁度良いのだが、視点の低いフレデリカには立った状態ではいささか見辛い。
 彼女は見目麗しい女性の体が付いた前半分を天板に載せて、寝そべるような格好をしていた。
 いささか無作法ではあるが、フレデリカは気にしない。社長も注意すらしない。二人が無調法者なのではない。仕事の前のプリブリーフィングの重要性を知っているからこそ、マナーなぞより優先させているだけの事。マナーとは危険とは縁遠い連中が気にしていれば良いのだ。
 取るべきルートを、予想される危険を、天候を、差し向かいで真剣な眼差しで話し合う。特に今回はいつもと違うオマケが付いている。
 その真剣な様子を、シャワーから上がったユーリーが雰囲気に飲まれた様子で見ていた。
 人心地つけて戻ってきたユーリーは、迷った。
 先ほどまでは何も載っていなかったテーブルに紙が広げら、それを前にして二人が真剣に話し合っている。もっとも、地図を見た事が無い少年にはその凄く大きな紙が何であるかは分からなかったが。
 配達の打合せなのだと想像は付いたけれど、想像がつくだけに仕事の邪魔をしては悪いので、自分が戻った事を言い出し辛い。
 それでも時間は限られていて、ずっとこうして見ている訳にはいかない。
206キマイラエクスプレス:2007/10/21(日) 15:46:08 ID:QEYL35FE
 少年は勇気を出して、おずおずと声をかけた。
「あの…シャワーありがとうございました」
 まだ水気の残る頭をわしわしとタオルで拭いているユーリーを見て、社長が目を見開いた。
 フレデリカが囃すようにヒュウと口笛を吹いた。
 二人の反応も無理も無かった。
 これが先ほどの、全身が埃で茶色っぽく染まっていた垢じみた少年と同一人物とは思えなかったからだ。
 伸びやかな腕や足は農村に住む人間らしく健康的に日に焼けているが、胸元から覗く素肌はアラバスターのように白い。
 タオルが乗っかったままの髪はサラサラで、フェアリーの裁縫職人が紡ぐ極細の金糸に勝るとも劣らない。
 髪の毛が金糸ならば、瞳は特大サイズのエメラルドだ。
 驚く二人の様子に不安に駆られたのか、おどおどした様が女の子のような中性的な容姿にとてもマッチしていた。
 その手の趣味がある人間が彼を見たならば、思わず犯罪に走っても不思議ではない。
 そんなユーリーの前で、ぼそぼそと女二人が悪事の相談でもするみたいに小声で会話する。
「うっわぁ、すっごい美人じゃないの。ねぇねぇ、社長、ここまで見越してたの?」
「ここまでの逸品だとは思っちゃいなかったがね。ま、これで上手い具合にツケの担保が出来たさ。もしも払えなきゃあ、その時ゃ男娼館が言い値で引き取ってくれるだろうよ」
「社長、物は相談なんだけど売る前に味見させてもらってもいい?」
「冗談はおよしよ。お手付きだって知れたら値が下がるだろうが。どんなモノだって初物は良い値がつくんだからね」
「あの……僕、売られちゃうんですか?」
 すっかり悪人その物の会話は、当の本人に丸聞こえだったが。
 頭の天辺から爪先まで、服の下まで透かして見るような女二人の視線に、ユーリーが居心地悪げに身を捩る。
 まるで市場で牛か豚でも見るかのような目付きで値踏みされれば、誰だって居心地悪くなるだろう。この手の視線に慣れていない少年ならば、尚更。
「あはは、冗談だって。そんな事、流石の社長だってやらないわよ。ね、社長?」
 その問いかけに社長は応えず、ただその口元をわざとらしくニヤリと歪めた。
207キマイラエクスプレス:2007/10/21(日) 15:46:42 ID:QEYL35FE
――6――

「社長の台詞なら気にしなくっていいわよ。ああ見えても、見かけ通りに悪いって人じゃないから。今は、ちょぉっとばかり虫の居所が悪いだけなのよ」
「誰の所為だと思っておいでだね」
 じろりと飛んでくる不機嫌な視線を避けるように、フレデリカはテーブルの上で寝そべった体を翻した。
 頭の先から尻尾まで入れるとユーリー二人分はありそうな巨体が、するりと優雅に動いて床に下りる。磨かれた木の床に爪が触れ、カツ、と僅かに音を立てた。
「わぁ…」
 すっかり着替え終わっていたフレデリカの装束に、ユーリーは目を奪われた。
 フレデリカはユーリーの不躾な、良く言えば好奇心旺盛な、視線を許した。興味津々と言った少年の視線はフレデリカにはくすぐったかったが、同時に性的な意図を含まないそれは心地良くもあった。
 王都領内に住むとは言え、大城壁よりも外の最も外縁部の農村地帯に居たユーリーには獣人ですら縁遠い。
 少年にとってキマイラの、特に郵便配達用の装備など想像した事すらない物だった。
 先ほど窓口にいた時はシンプルな白いブラウスを着ていたフレデリカだが、今はすっかりその身を鎧っていた。
 鎧うと言っても、そこに無骨さは欠片も無い。
 酒場や街角で吟遊詩人が歌う英雄譚の登場人物のように、その姿は凛々しかった。
 胸を覆うのは、白く染められたビスチェ風の胸甲。乳房の下辺りから胸全体を覆い、胸元部分は喉元までせり上がっている。
 革をなめした鎧は、彼女のグラマラスな肢体を忠実に反映して、大きく波打っている。ブラウスに深い谷間を形作っていた大きな双丘は堅いなめし革の下だが、ビスチェにはその二つの膨らみを強調するかのように銀糸で縁取りが施されている。
 左胸には、黒い円の中で火を吐くライオンの頭と山羊の胴体に蛇の尻尾を持つ、小さな黒いキマイラの意匠。
 キマイラエクスプレスの社章だ。それと、扉に書かれているのと同じ意匠の社名が小さな字で黒く書かれている。
 鎧を付けているのは胸だけでは無い。四本の手足それぞれに手甲と言うか、脚甲を着けていた。
 こちらもビスチェと同じ、白に銀の縁取り。
 人で言えば、腕や脛部分を覆っており、手指を保護するガントレット部分は無い。
 人とは違ってキマイラは獣と同じような姿勢なので、手首から先は関節の動く範囲が広い。下手に鎧をつけて手首から先の動きを阻害しないようにした方が良いのである。
 鎧を着たフレデリカの動きは先ほどカウンターにいた時と同じにように機敏で、ユーリーにはどれも軽そうに見えた。
 後肢の前辺りから黒い翼の羽根の付け根辺りまで。そこには、貴婦人がドレスの下に身に付けるようなアンダーバストタイプのコルセット。
 人で言えば腰から腹にかけての箇所は、優美なくびれの曲線を描いているが、闇夜のような毛並みは黒革のコルセットの下に隠れている。と言ってもフレデリカが着ているのは、締め付けて無理矢理に腰の曲線を形作って男を騙す為の矯正下着ではない。
 そんな物を付けずとも、彼女のくびれは十二分に魅力的だ。
208キマイラエクスプレス:2007/10/21(日) 15:48:21 ID:QEYL35FE
 コルセットには、胴の左右それぞれの側に皮製のサイドバッグが一個ずつ取り付けられていた。
 光を弾く独特のツヤからすると、蝋が塗られて防水が施されている丈夫な旅行用の鞄だ。
 魔術的な教育を受けた事の無いユーリーには分からなかったが、魔術視覚で見ればバッグは薄ぼんやりと光を放っている。より完璧に水気をシャットアウトする為に、防水の魔術が魔力付与されているのだ。
 ほとんどの業務が手紙と言う水分に大変弱い代物を運ぶ以上、湿気は天敵だった。特に空を飛んで運ぶキマイラエクスプレス独特の悩みとして、雲に入ると湿度が極端に跳ね上がると言う事がある。
 雲を避ければ済むのだが、毎度毎度避けていては時間ばかり喰ってしまう。それに突然の雨は避けようも無い。
 コルセットがバッグを固定するためだけではないのは、華美ではないが装飾が施されている事からも明らかだ。
 所々に銀細工と思しきメタルでアクセントがつけられていて、黒革の中で、とりわけフレデリカの滑らかな黒い毛皮の中で星のように煌いていた。
「坊や、あんまりレディをじろじろ見るものじゃないわよ?」
「あっ、ごめんなさい。フレデリカさん」
「ふふっ、冗談よ。どう?綺麗でしょ。これがウチの配達する時の制服なの」
 白と黒のコントラストも美しいキマイラを呆けたように見続けるユーリーに、フレデリカはくすぐったそうに微笑んだ。
 フレデリカはそう言ったが、たとえ制服と言えど騎士団の儀仗用装備でもないのだから鎧をここまで飾る必要は無い。
 わざわざ白く染めたり、縁取ったりすれば値段が高くなるだけで、装甲強度や実用性のみを求めるならば全く不要だ。
 剥き出しの金属パーツなど光を反射して、むしろ敵に見つかりやすくなるだけ。
 それでも、傭兵や冒険者らから見れば派手な鎧なのには当然ながら理由がある。もっとも、彼らの中にはフレデリカの白い鎧が地味に見えるほどの傾奇者もいたが。
 理由は簡単。キマイラ達は兵士ではないから。
 確かに危険と隣り合わせになる時もあったが、フレデリカが赴くのは戦場ではない。
 もう一つ理由がある。彼女ら一人一人がキマイラエクスプレス社の広告塔を兼ねていた。
 白く派手な鎧に身を包み、颯爽と空を駆けるキマイラ。
 キマイラエクスプレス社ここに在り、と地上を行く人々の目に焼き付ける格好の素材を、抜け目の無い社長が逃す筈も無かった。とは言え、堂々と着飾れるとあって魔獣とは言え女性であるキマイラ達からは社長の方針は歓迎されていた。
 フレデリカの装備はキマイラエクスプレスの制服だったが、旅慣れた冒険者達からだと、強盗に襲われる可能性も高い職業としては彼女はあまりに軽武装に見えたろう。
 しばしば駅馬車などは、徒党を組んだ盗賊に手頃な獲物として狙われる。郵便と言うシステムは庶民に行き渡っているとは言えず、郵便物は割りと高価だったり貴重な品を多く含んでいるからだ。
 だが、それは普通の人間の話。キマイラにとっては、この軽い武装の方が都合が良いのだ。
 彼女達キマイラのような魔獣と言うカテゴリーで括られる種族は、総じて魔素<エーテル>との親和性が高い。
 魔素親和性が高ければ高いほど、魔術の行使が楽であり、行使した際の効率も高い。これが魔術師に天賦の才が求められる理由である。
 キマイラの親和性は人などよりも断然高い。限定的な魔術ならば、詠唱を伴なわなくても行使可能なくらいなのだ。
 重く堅固な鎧を身につけて体力と敏捷性を奪われて配達業務に支障をきたすよりかは、魔術的な防御に頼った方が効率が良いのだ。それに空を飛ぶ以上、体は軽ければ軽いほど楽だ。
 もっとも魔術的な防御も無敵と言うには程遠く、意識していないとまるで無防備になってしまう欠点があったが。
209キマイラエクスプレス:2007/10/21(日) 15:49:10 ID:QEYL35FE
 ユーリーが見守る前で、フレデリカはサイドバッグの中にテキパキと様々な荷物を詰めていく。
「ほれ、坊やもボサッとしてるんじゃないよ」
 声と一緒に何かが飛んで来た。ほいと投げ渡される。
「えっ?!え、わ、わわっ」
 ユーリーは上擦った声を上げてあわあわとお手玉しながらも、何とか落とさずに受け取った。
「これは、コート…ですか?」
 一塊になっているそれらは厚手のコートに毛糸の手袋。コートも内張りがしてあるし、手袋も毛糸が密に編まれていて見るからに暖かそうだ。今が冬であるならば。
 しかし、季節は夏の終わりごろ。
 今いる店内こそ冷気の魔術が効いているので涼しいが、一歩外に出ればまだ夏が居座っていて、猛烈に暑い。
 我慢大会でもするのかな。
 怪訝な顔をするユーリーに、
「今は暑いけど着ておいたほうが良いわ。上がると寒いわよ」
 と言いながら、フレデリカが真上を指し示した。別に天井の上に登るのではない。
「寒い…んですか?」
 ユーリーが首を傾げる。彼の知識の限りでは、疑問に思うのももっともだった。彼は今まで地上から離れた事が無い。
 フレデリカが目指すのは地上から遠く離れた高みだ。そこは、風の仔達の住処。
 地上と同じ環境だと思っていると、痛い目に会う。
「高く飛ぼうとするとどんどん気温が下がるのよ。それに飛んでると風をもろに喰らうから、真夏でも冬みたいに冷えちゃうわ。あたしは暖気の魔術が効くから良いけど、たぶん後ろまでは効かないと思うのよね。凍って落っこちちゃっても知らないわよ」
「わかりました。それじゃ、着ておきます」
 ユーリーは彼女の言葉に素直に従った。
 例え冷気の魔術と言えども夏の暑さを緩めてくれる程度にしか設定されていないので、冬用のコートを着れば暑い。
 だが、自分は『お客様』であると同時に『荷物』だ。『荷物』は何も言わない。『荷物』は運び手に従うのみ。
 ユーリーは黙ってコートに袖を通して、手袋をはめた。
「うう、やっぱり暑いですよ〜」
「もう少しの辛抱よ。男の子なら我慢しなさい」
 これで準備は整った。
210キマイラエクスプレス:2007/10/21(日) 15:49:43 ID:QEYL35FE
――7――

「わざわざ外であたしに乗っても、暑いだけだしね。中で乗って、外に出たら止まらずに一気に飛ぶわよ」
 フレデリカが床に腹をつけて座り、背中をちょいちょいと指す。乗れ、という事らしい。
 女の人に跨るというのが、何かとてもいけない事をするようで、気後れするユーリーに、
「ほら、男の子ならぐずぐずしない」
 フレデリカの尻尾が苛立たしげに振られる。振られる蝮の腹が床と擦れ合い、しゃっ、しゃっと音を立てる。
 その音に背中を押されて、熱い風呂に爪先から入るような様子で、おずおずと翼の付け根のちょっと前辺りに跨る。行き先を探してウロウロしていた手も結局、フレデリカの肩に落ち着いた。
 丁度、フレデリカの背中に跨る形になる。お馬さんごっこの姿勢。
 もうそんな遊びをするほど子供じゃないのに、と恥ずかしさに頬がほんのりと赤くなる。
「駄目。そんな乗り方じゃもろに風に吹かれるわ。飛ぶって言うのはね、とても強い風に頭から突っ込んでいくって事でもあるの」
 下半身が猫だけあって、全身が柔らかいのだろう。フレデリカの腕が器用に背中側に回され、顔を少し赤らめたままのユーリーをぐいっと引き寄せる。
 女性とは思えないほどの腕力に抗いきれず、ユーリーの体が傾いで、そのまま肩から上が剥き出しになったフレデリカの背中に這いつくばった。オンブされたままで水平になったような体勢だ。
「正面からだけじゃない。横からも下からも風は気まぐれに吹いてくる。だから、こうやってぴったりくっつかないと飛ばされちゃうわよ」
 背まで靡くライオンヘアーに鼻先が埋もれる。髪から匂いがふわりと漂い、鼻をくすぐる。嫌な臭いではない。むしろ、真逆だ。フレデリカの匂いと、香水の香り。二つが混ざり合って素晴らしい芳香を産む。
 どくんと心臓が跳ね上がる。
 色づいた程度だったユーリーの頬が、一気に火でも付いたかのように真っ赤に染まる。ユーリーを背負うフレデリカからでは彼の姿は見えない。熟れきったリンゴのような顔も見えない。
 美少年好きのキマイラは、喉の奥でくすくす笑いながら、背中から伝わる感触で彼の慌てっぷりを堪能していた。
 すっかり慌てちゃって初々しくて可愛らしいったらない。
 でも、まだこれで終わりじゃない。坊やはどんな反応をしてくれるのかしら。
「それに肩に手をかけられると、ちょっと動き辛いわね」
 フレデリカのしなやかな手がユーリーの細い腕を取り、ゆっくりと導く。
 少年の腕は、フレデリカの脇の下を潜り、更にその先へ。
「それでぇ…坊やの手は、ここ」
「うひゃあぁぁっ?!」
 端から見れば、普通は立場が逆だろう、と言いたくなる可愛らしい悲鳴が上がる。
 反射的に身を離そうとするユーリーだが、たおやかに見える手はまるで万力のようで、彼をがっちりと捕らえていた。女性であるとは言え、魔獣のフレデリカの力はかなりの物だ。しかも配達と言う厳しい肉体労働によって鍛えられている。
 フレデリカが一見すると痴女にも見える行動をしたのには、純粋に合理的な判断もあった。
 肩に手を置かれると腕を動かす時に邪魔だし、かと言って彼女が身に付ける鎧には掴めるような場所が無い。風圧に耐えて長時間掴まっていられそうな場所が、自分の胸から丁度いい具合に大きく張り出している。
 並みの男なら泣いて喜びそうな素晴らしい取っ手ではあるが、如何せんまだ性の悦びに疎い少年では、恥ずかしさの方が先に立つ。
 彼女の判断の中には、とびきり可愛らしい男の子の感触を味わおうという、不純な動機も多分に含まれてはいたが。
 フレデリカの鎧は、体型が体型なので仕方がないのだが鎧という割りには露出が多い。それはユーリーとフレデリカが密着する箇所が多い事を意味する。
 香りが伝わる。体温が伝わる。鼓動も、滑らかな肌の下で動く筋肉も、骨の動きすらも伝わる。
 フレデリカは魔獣とは言えなかなか見られないほどの美人で、かなりの大柄だが抜群のプロポーションの持ち主だ。そこに男が密着すれば、起きる変化はただ一つ。
 ユーリーが彼女の香りと体温を感じたのと同じように、フレデリカもまた、鎧越しに彼を感じていた。
 幼いながらも、ユーリーの男は立派に機能していた。
211キマイラエクスプレス:2007/10/21(日) 15:50:19 ID:QEYL35FE
――8――

 社長がパチンと指を鳴らす。
 詠唱も一切無しのただそれだけの何気ない動作で、磨りガラスの嵌った正面扉が、不可視のドアボーイでもいるかのように独りでに大きく開いた。
 虎視眈々と侵略の機会を狙っていた暑さが店内へと雪崩れ込む。
「それじゃ、社長。いってきます」
「ほいよ、気を付けていっといで。フライトプランはワシが書いて出しとくよ」
 道に降りた途端、四方から熱気が押し寄せてくる。雨季を過ぎているので湿度が無いだけまだ楽だが、むわっとした熱気に押し包まれる。
 さっさと上がらないと芯まで茹だってしまいそうだ。
 時刻は昼下がり。勤め人は昼食を終えて、それぞれが午後の仕事までの一服を楽しんでいる時間。主婦や子供達は強い陽射しを避けて、家の中。埃っぽい道にはほとんど人気が無い。
 飛ぶ、と言ってもキマイラがその体を蒼空に躍らせるには助走がいる。鳥のように軽やかにとはいかない。
 助走距離を取るのに、人通りが多いとわざわざ道を空けてもらわねばならないのだが、今日はその手間は要らないようだ。社長もそう思っているようで、彼女が離陸の手伝いをする気配は無かった。
 フレデリカは道の真中をゆっくり歩きながら、宙に手を差し伸べるように翼を広げた。
 歩くペースを僅かに速めながら体の具合を確かめるように、あちこちの関節を回し、ついで右後ろ足左後ろ足と体を伸ばす。ユーリーには、体の下で引き締まった筋肉や骨がぐりぐりと動くのが感じられた。
 フレデリカの翼がばさり、ばさりと羽ばたき始め、翼が振るわれる度に風が起きる。彼女の足も徐々に速まり、早足程度。
 羽ばたきと風切り音には奇妙な音が混じっていた。
 チ、チチ、チチチ、と儚げな音が次第に高く大きくなっていく。
(なんの音だろう?)
 首だけを回して探るユーリー。目に飛び込んできた光景に、彼は呆気に取られた。
「うわあ…」
 音の源は、フレデリカの翼だ。正確には、翼の周り。
 黒翼は、青白い光の微粒子に彩られていた。蛍のような小さな光が無数に纏わりついている。
 息をするのも忘れるほど見つめるユーリーの目の前で、粒は一羽ばたき毎に数を増していき、奏でる音もより高くなっていく。その音が、人の耳では捕らえきれないくらい高まった。
212キマイラエクスプレス:2007/10/21(日) 15:51:08 ID:QEYL35FE
 瞬間、光が爆ぜ、フレデリカの翼全体が光の膜に包まれた。
 魔力でブーストされた羽ばたきが嵐を産む。今までとは比べ物にならない強烈な風が、轟と渦巻く。
「うわ、わあっ?!」
 背中を思い切り蹴飛ばされたような強烈な加速が襲う。
 既にフレデリカは駆けていた。
 街路を蹴る指先がぶぅぅん、と薄青い光を放ち始める。
 ばさり、と一際大きく羽ばたく。指向性を持った猛烈な嵐が地面を叩き、蛍を思わせる燐光を纏った前後の足先が宙を踏みしめた。
 ぐぅっと、内臓が下に押し付けられる感覚。水平線が下へ流れて消えていく。視界を青と少しの白が占めていく。
 何も無い空中に蒼い爪跡が刻まれては、やがて風に消える。
 重力の頸木から解き放たれる。この瞬間が、フレデリカは大好きだった。全てのしがらみを、体と心に絡み付く鬱陶しい事全てを振り切れるような気がして、思わず笑い出したくなるほど最高に心が躍る。
 高揚する心のままに大空目掛けて駆け上がるフレデリカを、苦しげな呻き声が制した。
 ユーリーだ。
「うきゅぅ…うぅぅ」
「あちゃ、ごめんね。坊やがいるの忘れて、ついいつもの調子で上がっちゃった」
 ユーリーの体全体に圧し掛かっていた透明な布団が、ふと緩まる。まるで見えない巨人に首根っこを掴まれ、押さえ付けられていたようだった。
「はあぁ…」
「坊や、一息つけたかしら?まだ低いから、もっと上がるわよ」
 ようやっと首を起こせたユーリーが一息つけたのを確認し、フレデリカは再上昇。今度はかなり緩く上昇していく。
 その様子を、社長がきつい陽射しに目を細めて見上げていた。
 ユーリーを背負ったフレデリカは、配達の度にそうするように上空で大きく旋回して蒼穹にクルリと輪を描く。
 そのまま、いつもより随分とのんびりしたペースで高度を上げながら、西へと飛び去った。
「行ったかね…まったく面倒な事になりそうだねぇ」
 焼け付くような暑気を避けて、社長はよっこらせと姿相応の声と共に店内へ戻っていった。
213キマイラエクスプレス:2007/10/21(日) 15:53:14 ID:QEYL35FE
――9――

 魔力を帯びた翼が制御された暴風を作り出し、それがフレデリカを強く押す。
 魔力を纏った足先が何も無い宙を蹴って、文字通り飛ぶように駆ける。中空に刻まれた魔力の残滓が点々と連なり、航跡を描く。
 空を飛べる魔獣幻獣達の中で、純粋に翼の力だけで飛ぶ者はあまり多くない。大抵は魔術を併用する。
 魔術とは、魔素を媒介として己の求めるように世界を改変する業だ。無限に編まれ続ける世界という名のタペストリーに、紡いだ魔素で己の意思という一糸を捻じ込む行為に他ならない。
 長ったらしい呪文も、複雑な印も、大仰な儀式も、手法は違えどその全てが大量の魔素をより効率的に扱おうとする為の手段に過ぎない。
 今、フレデリカは詠唱もしなかったが、人が歩くのにいちいち手足の動きを意識しないように、魔獣は飛ぶ際に意識して魔力を使う訳ではない。
 飛ぼうとする意思により、魔素との親和性の高い体は自然と周囲の魔素を集め、魔術的な効果を発揮する。人間にはどう足掻いても成せぬ技だ。
 長距離を飛ぶのでペースを考えてトップスピードは出さないが、既にフレデリカは馬をも凌ぐ速度に達していた。
「ほら、あれがお城。空からだと白鳥宮の双翼尖塔が良く見えるでしょう」
 風がびょうびょうと吹き荒ぶ中で、不思議とフレデリカの声は聞き取れた。
 白亜に輝く荘厳な建物が、足元の遥か下方を流れていく。夢にも見た事のない風景に、ユーリーは目を丸くしていた。
 初めて空を飛んではしゃぐユーリーに、フレデリカはあれやこれやと解説してやっていた。
 足の下に広がる地面には、色々な形をした小さな箱や立てた鉛筆みたいな物が無数にばらまかれている。その隙間を様々な太さの線が縦横無尽に走っている。
 その一本一本が道だ。その線の上を大小さまざまな粒や塊が蠢いている。
 指がすっと伸ばされて、眼下の一点を指す。
「あの辺り、見えるかしら?他よりもずっと大きい通りがあるでしょ?あそこが王宮通り<ロイヤルマイル>で、前はウチもあそこにお店があったらしいのよ」
 その度に、世慣れていない少年は素直に感嘆の声を上げた。
 周囲の建物より一際高い石造りの大城壁を超える。人魔が対立していた時代に作られたと言われる大城壁はとても厚く、城壁の上は馬車が通れそうなほど広い。
 地上から見た時は視界を埋め尽くす壁のようであった城壁も、今、自分の下を後ろに過ぎていくのはちっぽけな玩具のよう。
 大城壁を越えると王都外縁部。そこから先は都の膨大な消費を賄う為の農村地帯だ。
 玩具箱をぶちまけたような王都の町並みから抜けると、あとは農村地帯がずっと続くだけで、あまり変化は無い。地上に見える家の多寡はあるけれど、基本的に延々と緑が広がるだけ。話の種も少なくなる。
 そうなってしまうと、年齢も境遇も住む場所も全く違う二人には、共通して話せるような話題がほとんど無い。
 流石のフレデリカも、母を亡くしたばかりの少年に彼の家庭の事や彼の昔の事を聞いて話題を作ろうとするほど、無神経ではない。
 ユーリーも、母にしっかりと教育されたお陰で慎み深かった。フレデリカの事情に、ずけとは踏み込まない。
 少し気まずい雰囲気もあったが、それもじきに気にしなくて良くなった。
 ユーリーが黙らざるを得なくなったからだ。
 出発前にフレデリカの言った通りに、上空は寒かった。しかもユーリーが生まれて初めて味わうスピードは、当然ながら同じ速度の風を産み、それが身を切るように冷たい。
 彼の歯が鳴り始めるまで、あまり時間はかからなかった。
 フレデリカはあまり気にした素振りも見せず、淡々と同じペースを保って飛ぶ。
 風は穏やか。雲は高く、雲量は少なく、視界は澄み渡っている。飛ぶには良い日和。
 フレデリカは太陽の傾き具合から時間を計った。基本的に飛んでる最中には地図や時計は見れないので、キマイラの航法は地形と天測頼み。太陽の傾きから時間を計測するのくらいお手の物だ。
 出発してから、おおよそ一時間。
「坊や、凍ってないわよね?休憩するから降りるわよ」
「……はいぃ」
 ユーリーはしがみついたまま、なんとか返事をする。カチカチと歯の鳴る音が混ざるのは止められなかったが。
214キマイラエクスプレス:2007/10/21(日) 15:54:00 ID:QEYL35FE
 フレデリカの眼下には一本の茶色の線が引かれている。そこそこ大きな街道だ。
 その街道沿いに生える一本の大樹に、彼女は目標を定めた。ある程度大きな街道では、距離を測る為に一定間隔で樹を植えるように定められている。同時に、大きな木陰は旅する人の良き休憩場所にもなる。
 背中のユーリーを気づかい、ゆっくりと高度を下げていく。
 羽ばたくのを止めた翼は風を産み出す事を止めて、空気の上を滑るように風に乗ってソアリングする。フレデリカは優雅とも言える動きで道に滑り込み、肉球を備えた女性の手と猫の後ろ足が音もなく地面を踏む。
 幸いにして木陰には誰もいなかった。
 誰かを驚かさずに済んで、フレデリカはほっとした。たまに休んでいる人を驚かせてしまう事があるのだ。一回ならずとも、驚いた馬車馬が暴れだして大事になりかけた時もある。
 ユーリーはと見れば、華麗な着陸を決めたフレデリカと対照的にゾンビのような歪な動きで、よろよろと一時間ぶりの大地に降り立った。
 かくかくと、しゃっくりするような動きで自分の腕で自分を抱き締める。そのまま、妙なダンスでも踊りだすように足踏みし始める。
 ユーリーが何をしているのか、すぐさま察したフレデリカはサイドバッグの中から水袋を取り出した。
 水袋を咥えたフレデリカの尾が、ユーリーの手に水袋を押し込む。
 温かい。かじかんだ手には神の助けのようにありがたい。でも、指がかじかんで上手く動かせず、肝心の中身にありつけない。
「ごめんね、坊や。次からはもう少し低く飛ぶから」
 フレデリカがすまなさそうに言いながら、保温の魔術が魔力付与されて温かいままの水袋の中身を飲ませてくれた。
 フレデリカ自身、他人を載せて飛ぶ、と言うのは初めてだったのだ。まさか、彼がここまで冷えるとは思っても見なかった。
「はい。アーン、して」
 普段だったら赤面しそうな台詞も仕草も気にならない。と言うか、気にしていられない。
 開けてくれた水袋の吸い口を付けて、赤ん坊のようにちゅうちゅうと吸う。
 温かい紅茶の威力は絶大だった。ユーリーは溶ける氷の気持ちがちょっとだけ分かった気がした。
 フレデリカは言った通りにしてくれた。
 あまり高く飛ばないようにしてくれた。お陰で、寒さは雪の降る真冬から秋も終わりの頃くらいには和らいだ。
 そうやって一時間飛んでは降りて、十分間程度の休憩を取る。そして、また飛ぶ。
 次第に眼下の風景が変わっていくのに、ユーリーは気付いた。
 王都を出た頃は、風を受けて穂が波のようにうねる一面緑の小麦畑だったのが、
「なんか、面白い景色ですね」
「あら、良く気付いたわね。ここら辺は王都の周りみたいな小麦畑じゃないの。作ってるのはお芋と牛。牧草地と畑が混ざってて、二つが綺麗に分けられてるのよ」
 良く見れば、地形も変わっている。平地から、緩やかな丘の連なりへ。地平線まで幾重にも丘が続いている。
「丘が一杯あるから、サウザンドヒルズって呼ばれてるわ。この辺はどこ飛んでも似たような景色が続くから分かりにくいのよねぇ…」
 きっちり四角形に整えられた牧草地とジャガイモ畑それぞれが色の違うタイルのように見える。モザイク模様の景色を眺めながら、キマイラ便は軽快に駆ける。
 四回目の休憩を取って、飛び立つ頃には陽は傾きかけていた。
 空は鮮やかなまでに赤く、太陽は西の地平線の向こう、自分のねぐらへと帰ろうとしている。
 太陽の反対側の空は薄い青から濃い青へ、そして藍、紺と徐々に闇に近づいている。
 東から夜がひたひたと迫ってくる。
 全身を赤く染めて、二人は飛ぶ。
215キマイラエクスプレス:2007/10/21(日) 15:55:05 ID:QEYL35FE
――10――

「見てごらん、坊や」
 吹き荒ぶ風の中、フレデリカの右手が上がり、人差し指を伸ばした。
 黒い指の指し示す先を、ユーリーは風に抗いながら目を眇めて見やった。人並みの視力しか持たないユーリーには、フレデリカが何を指しているのかまだ良く見えない。
 波のようにうねる広大なモザイク模様の中に、ぽつんと緑色の染みが浮かんでいる。
 初めは小さな点だった染みは、近づくにつれてどんどん大きくなっていく。
 その染みからは一本の光の線が引かれていた。緩やかに延々と続く丘の起伏の低い所低い所を縫って引かれ、夕陽を照り返してキラキラと輝いている。
 ユーリーの目でもようやく、それが何であるか分かるようになった。
 森と、そこから流れ出る川だ。
 空から地上を見ると言う経験が無いので正確さは甚だ心許ないが、見たところ大河ではない。フレデリカの文字通り人間離れした視力ならばいざ知らず、ユーリーにはせいぜいその程度しか分からない。その水が育む森もさほど大きくは無い。
「あそこが今日の宿よ」
 夏の陽射しを一杯に受けて生い茂った梢の中、一際大きな水面が光っている。
 社長とフレデリカが相談していた時に口にしていた泉だろう。
 そうこうする内に、二人は森のすぐ間近まで迫っていた。
 フレデリカがゆっくりと高度を下げる。
 もうユーリーの目でも、風に揺れる樹の一本一本が区別できる。
 大地が近づくに従って、茹だるような暑さが戻ってきた。
 と、フレデリカが奇妙な動きを見せる。彼女は今までの休憩でそうしたように、すぐには降りようとしなかった。
 森の外縁上空を、反時計回りに大きくぐるりと回る。
 一周、二周と回ってコースを変える。体をぐいと捻って左旋回九十度。
 そこだけ樹が無く、ぽっかりと空に向かって大きく口を開けている泉の上空を一航過。
 別に彼女は、遊覧飛行をしているのではない。これも業務の内だ。業務と言うよりは、生き延びる為に必要なプロセス。
 なんですぐに降りないんだろう、と大きな背中で揺られながら少年は怪訝な顔をしていた。
 それでも彼は問いかけはしなかった。ぴったりとくっ付くフレデリカの体が緊張していたから。
 雰囲気で少年の言いたい事の目星はついていたけれど、フレデリカも何も答えない。彼女もそれ所ではない。
 ユーリーからは見えなかったけれど、彼女は真剣な表情で眼下を見下ろしていた。
 フレデリカを始めとするキマイラに限らず、空を飛べる者達にとって飛び立とうとする瞬間、降り立とうとする瞬間が一番無力なのだ。
 羽ばたく力を溜め、あるいは慎重に足を降ろそうとする離着陸時に、予期しない横槍が入っても対処出来ない。
 正面切って戦えば圧倒的な力を持つ相手と上手くやろうとするならば、相手が無力な時を狙って奇襲するに限る。と言うか、それしか手が無い。休憩した時は開けた地形ばかりを選んだが、今は違う。隠れる場所は豊富にある。
 その奇襲に絶好のチャンスをほいと投げて寄越してやるほど、フレデリカは自分の命に執着しない訳ではなかった。
216キマイラエクスプレス:2007/10/21(日) 15:55:50 ID:QEYL35FE
 航過し終えたフレデリカは、上昇して再び高度を取っていた。
 泉の上を飛び過ぎた時に、鋭い知覚を誇るフレデリカの目の端に引っ掛かった物があった。
 小動物が木陰に隠れるようにして設営されている簡単なテント。煙を燻らせる焚き火。慌てたように走り回るいくつかの人影。手に手に携えるのは夕陽を反射して光る何か。
 下にいるのがどういう連中で、何を目論んでいるのかなんて一目瞭然。
 その程度の偽装でキマイラの眼から逃れようなんて甘い甘い。
「まるでなっちゃいないわねぇ」
 嘲笑うように呟く。
 どういう存在に喧嘩を売ろうとしていたのか、下の奴らに一つ教育してあげよう。
「坊や、今からちょっと振り回すわよ。しっかりと捕まってて」
「振り回すって、どうかしたんで……うひゃあっ!」
 ちょっと所の話では無かった。
 フレデリカがそう言うや否や、がくんと高度が下がった。
 足先から頭に向かって血が逆流するかのような嫌な感覚。木登りをしていて手を滑らせて落っこちた時と同じ感覚。
 あの時はしたたかにお尻を打っただけで済んだが、今は高さが全く違う。落ちたら即死。恐怖に心臓と下半身が縮み上がる。
 声も無く慄くユーリーに気にも止めず。
 フレデリカが凛とした声で戦いの開始を告げる。その宣言は、魔術の詠唱。
「魔素を紡ぎて鏃と成す!弾けよ、魔弾!疾く、我が敵を討て!一番から四番、装填!誘導選択、熱源追尾。射程選択、短距離。弾頭選択、爆裂」
 魔素がハスキーボイスの詠唱に応じる。
 大人の握り拳くらいの青白い塊が、何も無い空間から染み出すようにして姿を現す。フレデリカの前方に浮かぶ、数は四つ。
 フレデリカは正規の魔術師ではない。だから魔術師学校で基礎から教わった事もないので、普通の魔術師がどういう風に唱えるのかは知らない。
 彼女の使う魔術行使構文、いわゆる呪文は彼女がキマイラエクスプレスに入社してから覚えたものだった。
 社からそう遠くない私塾に通ったのだが、その私塾の講師は正規軍を退役した魔術士官で、お陰で彼女の呪文はどうにも軍人めいてしまっている。フレデリカ自身、どうにも妙なリズムよねとは常々思っていた。
 青白い人魂めいた魔力塊はまだ解き放たない。魔術による誘導はいい加減だ。今撃っても馬鹿正直に誘導された魔術弾頭は木々の生い茂った葉に当たるだけ。地面にいる連中までは届かない。
 弓を引き絞ったままの己をイメージする。
 様子見で上空を緩く旋回した時とは全く違う、高速を出しながらの左旋回。翼は巡航していた時よりも力強く羽ばたく。体が地面に垂直になるほど傾く。
 ユーリーが泣きそうな悲鳴を上げながら、それでもしっかりとフレデリカにしがみつく。
(あら、坊やったらあたしの戦闘機動に付き合わされてる割りには漏らしてないわ。あとで褒めてあげてもいいわね)
 ちらりと思ったのも束の間、すぐさま意識を戻す。
 さっき目にした焚き火の、泉を挟んで反対側に回る。そこから焚き火が真正面に来るまでさらに急旋回。
 加えて同時に、木々に開いた隙間から泉目掛けてパワーダイブ。
 もうユーリーには何がどうなっているのか考える余裕すらなかった。
217キマイラエクスプレス:2007/10/21(日) 15:56:39 ID:QEYL35FE
 フレデリカが急な機動をする度に、背後からは「きゃあ」とか「ひゃあ」とか悲鳴が聞こえる。胸に加わる力も、魅力的な出っ張りに手を掛けるのでは無く鷲掴む感じになっている。
 奇襲する筈が急襲を喰らって慌てて逃げ回る連中と、的が視界に入る。
 射線、クリア。
 この為に梢の下まで急降下したのだ。引き絞られた不可視の弓弦を開放する。
「Arcane missile!FOX2!」
 暮れなずむ太陽が全てを紅に染める景色の中、突如として四条の流星が出現した。
 青白い流星は、フレデリカを圧倒的に上回る素晴らしい速度で飛翔する。
 魔術によるそれらが普通の流星と違うのは、狙った獲物目掛けて自ら軌道を変える事だ。今回、フレデリカは熱を追うようにセットしていた。
 それらは高熱源、すなわち火が点いたままの焚き火に向かって殺到した。
 ズズンと腹の底に響く爆音が四回。
 連なる鈍い爆音と悲鳴が背後に聞こえた時には、フレデリカは既に高度を引き起こし終わっていた。
 だが、まだ終わらない。
 目を回しかけているユーリーが落っこちていない事を、背中の重みだけで確認。
 身体を捻り森の梢の上を、緑の絨毯の上を駆けるみたいにして取って返す。局所的に叩きつけられる強風に梢が猛烈に揺さぶられ、脆い枝が折れては後方に吹き飛ばされる。
 急襲を喰らった連中が、パニックから脱出するまでに降り立てるかが勝負所。手馴れた連中だと、すぐに回復して立て直すから厄介だ。
 上空から泉目掛けて、隼が獲物を捕らえるみたいにして急降下。水面にぶつかると思われた瞬間、フレデリカはぐいっと体を引き起こし、力一杯翼を振るう。
 最大までブーストされた翼が地面とフレデリカ自身の間に竜巻をおこし、空気のクッションを作って無理やりに落下速度を殺す。
 時ならぬ嵐で水面を激しく波打たせながら、フレデリカと目を回しかけているユーリーは湖岸に着陸。フレデリカが羽を数回、羽ばたかせてからその背に畳んだ。
 絶好のチャンスだったのに、反撃は来なかった。
 空を駆ける魔獣が無事に地上に降りてしまった時点で、結末は決まっていたのかもしれない。
 キマイラは堂々たる態度で地面に四肢を踏ん張り、一筋の油断も無く四方を睥睨する。
 次の瞬間、ユーリーは目を丸くした。彼にとって女性とは、口汚く罵るなんて事はしない生き物だった。
「出てきな!!くたばりぞこない共!それとも女一人にケツ蹴っ飛ばされたってママに泣きついて慰めて貰うかい?」
 安い挑発の言葉にホイホイ乗せられて、吹き飛ばされ損ねた人影がまんまと誘き出された。数は三。彼らにとっては素直に吹き飛ばされていた方が良かったのか、それとも悪かったのか。
 フレデリカの挑発に罵り返す言葉から察すると、あまり育ちのおよろしくない連中なのは確かだ。
 爆発で吹き飛ばされて地面で倒れ伏したままの連中も、爆発から間一髪で逃れて殺気を隠そうともしない連中も。全員残らず、武装していた。
 ここまで来れば、ユーリーにも分かった。
 彼らはこの泉を使おうとしていた先客などではない。野盗だ。
 そこまではユーリーでも分かったが、フレデリカは冷静にさらにその先まで考えを巡らす。
 魔術攻撃で吹っ飛んだのが数人。武器を構えてるのが三人。十人にも満たない野盗集団の正体は、おそらくは街で食い詰めたゴロツキ共。人だけではない。ゴブリンやオークの姿もちらほら見える。戦闘能力が高いトロールのような連中はいない。
 身に付けている鎧はひどく汚れていたり、右と左の肩当が違っていたりとちぐはぐで、手入れも適当だった。
 彼らが手にするのもまともにメンテナンスされていない剣だったり、戦闘用ではない鉞だったり、果ては木の根っ子でも削ったと思しき手作りの棍棒を持った奴までいる。
 構え方も危なっかしくて、どいつもこいつも見ちゃいられない。
218キマイラエクスプレス:2007/10/21(日) 15:57:28 ID:QEYL35FE
 駅馬車でも襲う気楽さで、キマイラエクスプレスに手を出そうと考えたのだろう。普通に比べればかなりの高額ふんだくる郵便屋なんだから、運ぶ荷物も高値の筈。
 所詮、その程度の考えであったのは想像に難くない。
 その値の張る筈の荷物にどうして護衛がいないのか、なんて思いも付かなかったのだろう。
 その浅慮をたっぷりと後悔させてやる。
 闘争本能に火がついて、フレデリカの身体の芯が燃えるように熱くなっていく。
「あはぁ」
 フレデリカが獰猛に笑う。
「たったの三人ぽっちで、あたしをどうこう出来るなんて思ってるのかい?」
 彼女の笑みは、野盗共の愚かさに対する侮蔑と嘲笑で満ちていた。そして、降るであろう血の雨への期待にも。
 その恫喝に彼らは武器を構える事で応じた。応じたが、どいつもこいつも腰が逃げている。所詮は数頼みしか出来ない奴らだ。
 皆殺すのに一分もいらない。
 フレデリカがじりっと距離を詰める。
 詰めた分だけ、野盗共が退がる。
 詰める。退がる。
 詰める。退がる。
 詰めながら、姿勢を低くする。
 上半身が地面に触れるほど低く下げて、それでいて腰は上げたままの這いつくばるような独特の姿勢。それでいて視線だけは外さない。急激にフレデリカの全身の筋肉が張り詰め、瞬発力を蓄えていく。今のフレデリカは引き絞られた弓の上の矢も同じ。
 きゅ、と鎧の上から胸に力が加わる。ユーリーの手だ。
 その年相応に小さな手には、フレデリカの本能に冷水を浴びせるだけの力が有った。
 殺戮の喜びに沸き立つフレデリカの頭の中が、さーっと冷えていく。
 そうだ。今日はいつもとは違う。後ろには坊やがいる。見せる訳に行かない。汚い死体も、血に狂うあたしも、どっちも。
 殺せ殺せ殺せと声高に喚く魔獣としてのフレデリカに、人としてのフレデリカが手綱をつけて、組み伏せる。
 手加減は苦手なのよね、と心中でぼやきながら慎重に歩を詰める。指先から研ぎ澄まされたナイフよりも鋭い爪が伸び、姿を覗かせる。
 抜き身の剣を喉元に突きつけ合うような緊張感。
 ほんの一突きで崩れ去るとても脆い均衡の上に築かれた、仮初めの静寂が場を支配する。
 野盗達は場慣れしていると言っても、所詮は数に任せて有利な喧嘩しかしなかったり、抵抗できない無辜の民を食い物にしてきた連中だ。
 手練れの発する錐のように鋭い殺気に曝されて、彼らはあっさりと馬脚を現した。
 思ってもいなかった事態に焦りばかりが募る野盗の一人が、相談するように仲間の方へとほんの少し頭を巡らせた。その視線に誘われて、残る野盗二人の視線もお互いに見合わせるように動く。
 その一瞬の隙を逃すフレデリカではない。
 容赦はしてやるが、躊躇なぞ微塵もしない。
 貯めこんだ体中のバネを一息に開放する。その瞬間、野盗達にはフレデリカが魔術を使って消えたかのように映った。
「あたしの加速を甘く見てもらっちゃ困るわね!」
 人では視認する事さえ難しいほどのダッシュ。瞬きする間に彼我の距離が無になる。体中に付けた装備も、背負ったユーリーすらもハンデにならない。
 まずは鉞を持った奴。
 飛び込みざまに前肢で軽く撫でてやる。たったそれだけで、そいつの二の腕を覆っている革鎧はボロ切れに変わり、血がしぶく。そいつが切られた腕を押さえようと動くよりも早く、フレデリカはそいつを蹴りつけて跳んだ。
219キマイラエクスプレス:2007/10/21(日) 15:58:18 ID:QEYL35FE
 次だ。
 次の目標は、剣を持った奴。
 彼は三人の中でも少しは腕に覚えのある方ではあったが、人の反応速度の外を駆けるキマイラには無力だった。
 まだ構え終わってもいないのに、染みだらけの革製胴鎧に袈裟懸けに爪跡を刻まれていた。斬られたと思った時にはもう、一人目と同じように踏み台にされている。
「ぐっはぁ…ッめんな、このアマァッ!」
 蹴りつけられながらも果敢に振るう。
 だが、フレデリカにとってそんな体勢が崩れた腰の入っていない打ち込みなんて、のんびりと飛ぶ蝶々も同じ。苦し紛れに振るわれた剣を、柔らかな身のこなしで避ける。
 お返しよ、と言わんばかりに剣を持つ手首を毒蛇の尻尾がしたたかに打ち据える。噛まれてもいないのに上げた無様な悲鳴なぞ、耳にも入らない。
「あんたで最後よ!」
 空中で体を捻って、棍棒を持った奴に尻を向けて着地。
 フレデリカの下半身は猫とは言え人の因子も混ざっている。下衆なんかには見せるのも勿体無い脚線美から、強烈な後ろ蹴りが繰り出される。地面すれすれから、掬い上げるような一撃。
 思わず円やかな尻の曲線に目が行った阿呆は十メートルも吹き飛ばされた。
 太った体が衝撃を和らげてくれたと見えて、なんとか気絶だけはしていない。既に敵にもならないどころか、立つのも辛そうな有様ではあるけれど。
 フレデリカが疾風と化している間、ユーリーはきゅっと目を瞑ってしがみついていた。
 最後の男を蹴りつけた反動を利用して跳び、フレデリカが最初にいた場所に、重さなど感じさせないような軽やかな動作で降り立つ。
「さて、どうするのかしら?まだ、やる?」
 ほんの瞬き数回にも満たない時間で三人を叩きのめして見せたと言うのに、フレデリカは僅かも息も乱していなかった。
 この程度、彼女には準備運動の範囲だった。
「どうしてあたしがあんたらを殺さなかったか分かる?あんた達に後ろで引っくり返ってる連中を持って帰ってもらう為よ。でもあげられるチャンスは一回きり。もしもイヤだって言うのなら……今度こそ皆殺しにしてあげるわ」
 フレデリカが自分の顔の前に、右手をかざす。
 黒く短い獣毛に覆われて、長くしなやかな指を備えている手。その五指の先から猛獣の爪が音もなく滑り出た。
 凶悪に研がれた武器が夕陽を照り返して、鈍く光る。
「さて、どうするのかしら?」
 恐るべき力を秘めた美しい指が、野盗共を指し示しながらリズムを刻むようにひょいひょいと揺れる。
 最初に飛びかかった奴、二番目に切ったの、最後に蹴り飛ばした男。伸ばされたままの鉤爪が、それぞれの顔を順繰りに指しては、また最初に戻る。
「イエスかノーか、よ」
 三者三様に苦しげな呻きを上げる野盗に最後通牒を突きつける。
「イエスだって言うなら、さっさと回れ右してお寝んねしてるお友達を連れて帰る事。お家でもどこでも帰りなさい。でも、もしも、ノーだって言うのなら今度は容赦しない」
 そこで言葉を一度切った。
 大きな目が引き絞るようにして細められる。楽しそうな口調と正反対にそこに宿る光は全く笑っていない。くぅっと形の良い唇の端が吊り上っていくに従って、野盗共の顔が恐怖に歪んでいく。
 ワイルドな美貌には、美しさと明確な殺意の同居した凄惨な笑みが浮かんでいた。
「自分達の血で作ったプールで泳がせてあげるわ」
 フレデリカの笑みの威力は絶大だった。
 盗賊三人はあっという間に回れ右。倒れている連中を回収し、取る物も取らずに逃げ去った。
220キマイラエクスプレス:2007/10/21(日) 15:58:54 ID:QEYL35FE
――11――

 野盗達は気絶した仲間を蹴り起こし、怪我をした者に肩を貸しながら遁走した。
 下手な捨て台詞もなかった。そんな余裕があると勘違いできるほど、彼らの後ろから飛んで来る視線は生易しくなかった。
 自分達が束になっても傷一つ付けるのが精々の恐ろしく強い魔獣が、殺意剥き出しで睨んでいるのだ。猛獣の顎の中にいると言うのにくつろげる人間がいるだろうか。
 フレデリカの言葉に素直に従って、全員で全力で逃げるしか選択肢は無かった。
 姿が見えなくなって数分後。
 ワイルドヘアーを雄々しく風に靡かせ、百獣の王さながらに立つフレデリカの四肢から緊張が抜けた。ふーっと、肺腑の全てを吐き出すような長いため息を吐いた。
 こちらは坊やを傷付けず、あちらを殺さず追い払う。
 背中で身じろぎ一つしないユーリーに殺戮の現場を見せないようにした難しい状況だったが、何とか切り抜けた。
 手加減して追い払うよりも、夜中に逆襲されたりと後腐れの無いようにいっそ皆殺した方がまだしも楽なのだ。
「坊や、もう終わったわ。降りてもいいわよ」
 野盗共は心底、恐怖を味わったのだろう。辺りから人の気配は消えていた。人よりも鋭敏な、密林に住む猛獣並みの五感を持つフレデリカでも、もう感じ取れない。
 極細の鋼線をより集めたような筋肉から、戦いの緊張が溶け去っていく。
 ふと、フレデリカは違和感を覚えた。
「坊や?どうかしたかしら?」
 返事は無かった。
 さすがに気絶しちゃったのかしら、と思ったフレデリカは首を捻り、背中を視界に入れた。見るや否や、眉根が寄せられた。
 ユーリーは彼女の背の上で身を起こしていた。なかなか胆の据わった様子で気絶もしていない。そこまでは良い。
 が、円らな瞳は何も捕らえていない。
 達人ともなれば剣以上に鋭く研ぎ澄まされた殺気だけを得物とし、相対する者の意識を奪うこそすら可能である。
 ユーリーは王都外縁部の農村出身と言っていた。そこは都に近い分、随分と治安も良い。彼が白刃が煌く命をやり取りする場に立ち会った事など無いのは、ほぼ確実だろう。
 訓練を積んだ大人でさえ、初陣では大小の差はあれど何かしらの失敗をやらかすものだ。少年が初めて臨んだ戦いの場で、場の持つ気に当てられて正体を失ってしまったとしても無理は無い。
 フレデリカは身を捻り、振り落とすようにしてユーリーを降ろした。
 思考の凍ったユーリーではあったが、外部からの刺激と状況に体だけが反応し、対応していた。
221キマイラエクスプレス:2007/10/21(日) 15:59:46 ID:QEYL35FE
 少し乱暴すぎたかしら、とのフレデリカの心配も杞憂ですんだ。かなり危なっかしげではあったが、何とか彼は転ばずにはすんだ。転ばずに立ちはしたが、それだけ。乱暴なフレデリカに文句を言うでもなく、体の両脇にだらりと手を伸ばし、ただ宙を見詰めている。
 ユーリーを放って置いて、フレデリカは後肢前に括り付けられているサイドバックの留め金を外した。かつては彼女もそうであったように、これは言葉でどうこうした所でどうにかなる症状ではない。
 留め金が開いたところに即座に蝮の尻尾が頭を突っ込み、中をごそごそと探る。
 ずるりと戻ってきた尻尾は鈍く銀に輝く金属を咥えていた。皮の滑り止めがぐるりと巻かれたスキットル。フレデリカの大きな手に収まるくらいのサイズで、その気になれば一息で飲み尽くす程度の量しか入らないが、目的からすれば丁度いいサイズだ。
 器用に動く尻尾からスキットルを受け取り、親指を捻るほんの少しの動作でキャップを外す。
 中身を頭から浴びせるようにして飲ませた。
 ツンときついアルコール臭と、熟成された甘味のある香りが鼻を突く。酒だ。
「ほら、しっかりしなさい!」
 ぺしぺしと頬を嗜めるようにごく軽く叩く。覗き込むようにして翠の瞳を見つめ、呼びかける。
 フレデリカの呼びかけは功を奏したようだった。
 ユーリーの眼にじきに知性の光が戻ってきて、
「え…あ、フレデリカ…さ…うぁ、けほっけほっ」
 口中の強い酒に、思い切りむせた。
「ちょっとキツかったかしら?でも、もう大丈夫ね。それにしても、良く頑張ったわ。初めてなのに気絶しないだけ大した物じゃない」
 ユーリーの頭をわしわしと撫でてやりながら、フレデリカは天を見上げた。
 太陽はほとんど沈むくらいまで傾いて、全天が暗くなっている。木々に囲まれたこの場所は、もうじき闇に落ちるだろう。
 その前にやる事はやっておかないといけない。
 まずは明かりの確保。
 今も昔も、夜と言うのは人の子の時ではない。闇に紛れ、本能に身を任せた魔物の蠢く時間なのだ。用心を怠ってブラックドッグに食われた旅人の話など、枚挙に暇が無い。
 特に今日は、闇に住まう者達から見れば格好の食餌がいる。
「坊やにも手伝ってもらうわよ。焚き火は連中が付けていってくれたのを使うとして、少し薪を拾ってきてくれないかしら」
 ユーリーがお客様であったのは、キマイラエクスプレス社の扉を出るまで。今は彼は荷物であり、お客様扱いなどして貰えない。それはユーリーも承知の上だ。なにせ、彼はフレデリカが言った悪戯めいた言葉のお陰でここまで来れたのだ。恩人の言葉に異存がある筈が無かった。
 フレデリカの言葉に、こくんと頷いて、踵を返す。
 初めての実戦に立ち会った後遺症が、まだ尾を引いているのだろうか。
 首を傾げるフレデリカの視線を背に受けて、微妙に足をふらつかせながら、ユーリーは泉の周りに広がる森に分け入って行った。
222キマイラエクスプレス:2007/10/21(日) 16:03:09 ID:QEYL35FE
――12――

 陽がすっかりと暮れた夜の中、紅い火の精が小さな焚き火の中で楽しげに踊る。
 彼らが炎の中でくるりくるりと回るたび、ぱちっ、ぱちっ、と火の粉が爆ぜる。
 王都と同じく、この辺りも雨が少なかったのだろう。ユーリーが腕一杯に抱えて持って帰ってきた薪はすっかり水分が抜けており、良く燃えた。
 焚き火の側には、野盗共が設営していった目の詰まった毛布を天幕にしただけの簡単なテント。その中には、同じく連中が残していった酒に食料、暇潰し用と思しきカード、洗われていない食器に鍋やら調理道具が転がっていたが、フレデリカは見向きもしなかった。
 洗って使えば良いのでは、というユーリーのもっともな提案も「面倒くさいじゃない」の一言で斬って捨てられた。
 フレデリカには、鍋を洗うのも、鍋があってもこの暗さの中で食材になる野草を探してくるのも両方面倒だったのだ。それに野盗連中が残していった物など、触りたくも無い。こちらの理由の方が大きい。
 赤々と燃える焚き火の炎が、簡素な夕餉を彩る。
 ぶ厚く切ったサラミとスライスした玉葱とチーズを挟んだ硬パン。バターと砂糖をたっぷり使ったショートブレッド。果物の砂糖漬け。
 シンプルなメニューだが、量は多かった。
 体が大きいのに加えて、ずっと体を動かし続けていたフレデリカは、ユーリーの倍も平らげて彼をビックリさせた。
 チャージされていた魔素が抜けて保温の効果も薄れてしまい、だいぶ温くなってしまった紅茶を代わる代わる飲んで、食後のお茶にする。
 人心地つき、あたりにはゆったりとした時間が流れる。
 炎をぼんやりと眺めながら、フレデリカは頭の中で明日のコースをシミュレートしていた。揺らめくオレンジの光に浮かび上がる姿は、さながら聖なる墓所で宝物を守る守護の彫像のよう。
 ユーリーは、炎に照らし出されて複雑に陰影の揺れるフレデリカの下半身に目が行った。
 フレデリカの下半身は獣である。が、彼女の腕が獣毛に覆われていたり人には無いパーツが混ざってはいるが同時に人のラインを色濃く残しているように、脚の方も少なからず人族の因子を反映しているようで、猫と言うには人間らしさを含んでいる。
 先刻、盗賊の一人が見惚れたように太股は優美な曲線を描く。そこには猫科の猛獣の持つ独特の躍動感と同時に、成熟した大人の女の肉感があった。
 極上のビロードのように毛足が短いその様は、まるでぴったりとフィットする黒タイツでも履いているかのようで、艶めかしくうねるラインをユーリーの目に晒していた。
 少年らしい健全な下心が無いと言えば嘘になるが、ただそれだけで見詰めてしまったのではないのもまた事実。
 フレデリカの左太股。ごく短い毛に覆われているその中で、一箇所だけ、その毛並みを乱している箇所があった。よくよく見れば、闇色の毛皮に一筋、紅黒く短い線が引かれている。
「フレデリカさん、そこ、怪我してるじゃないですか」
「ん?ああ、こんなの掠り傷よ。大した事無いわ」
 明日のお天気でも話すみたいに、軽やかにフレデリカが笑う。剣が掠めた時に出来たのだろうが、実際、流れ出した血は既に止まっている。
「駄目です!もしも膿んじゃったら大変ですよ!」
 そんな彼女に、ユーリーは顔を真っ赤にして言い募る。
 確かに彼の言う通りだ。傷を消毒しないで放っておけば化膿する危険がある事も、時にはそれが命取りとなる事も。
 だが、そこまでの傷ではないのはフレデリカの経験上、分かっていた。傷と言ったって太股の表面に毛ほどの傷が入った程度なのだ。生命力の強いフレデリカならすぐに塞がってしまう。
 ユーリーは人の話を聞かずに力説している。焚き火に照らされているにしても、何が彼をそこまで駆り立てるのかと思うほど彼は顔を赤くしていた。と言うか、赤すぎる。
223キマイラエクスプレス:2007/10/21(日) 16:03:59 ID:QEYL35FE
 フレデリカは怪訝な顔でスキットルを開け、ちろりと一舐め。
「あら」
 合点がいった。
 入れてくる酒を間違えたらしい。てっきりウイスキーだとばかり思っていた中身は、寒さの厳しい北方に住むドワーフ達が愛飲する蒸留酒。大の大人でも飲み慣れていないと踊りだすくらいで、度数はかなりキツい。
「あらら…?」
 気がそれる。フレデリカの体から力が抜ける。ユーリーの腕に力が篭る。
 押し倒された。
「傷はきちんと消毒しないとダメですよ。傷口から悪い病気が入ったりしたら…」
 座った状態から、ごろりと寝転がらされる。そのフレデリカの下半身に、いつの間にやらユーリーが覆い被さっていた。
「だから…僕が舐めて消毒してあげます」
 そうして、少年はとんでもない事を言い放った。
 慌てて止めさせようとするフレデリカの手も、全てが遅く、遠かった。
 騎士が貴婦人の手にキスをするみたいにして、ユーリーの桜色の唇がそっと寄せられる。
 酒精に酔ったのか、色香に惑わされたのか。おそらくはその両方で、頬を薔薇色に染めて太股にそっと口付けた。
「うっくぅ」
 妙な声と共に、フレデリカの手がピンで宙に縫いとめられたようにして、ぴたりと止まる。
 気色悪さとくすぐったさと心地良さが、ごちゃ混ぜになった感触。内訳は心地良さが半分で、残りはその他。
 瑞々しい唇を割って突き出された舌が、まるで焦らすような動きでちろりと傷跡をなぞる。
 ゆっくりと下から上へ。登りきったら戻り、再び傷をなぞり、舐め上げていく。
 訂正。心地良さが七分。頭の片隅で冷静に事態を俯瞰するフレデリカの一部が告げる。
 ユーリーの行為に下心は無い。
 フレデリカにもそれは分かっている。純粋に、好意と彼女の身を案じて出た言葉だ。
 分かっているが故に、退けがたい。
 これがみっともなく鼻の下を延ばしながらの台詞だったら、首根っこ掴んで容赦なく泉に叩き込み、強制的に頭を冷やさせただろう。
 が、そうもいかない。
 ユーリーの行為はフレデリカの傷を気遣っての事なので、そのような意図が無い以上は手を上げて制する訳にはいかなかった。かと言って、辛抱たまらなくなってフレデリカの方から手を出す訳にもいかない。
 ユーリーはあくまでキマイラエクスプレス社で請け負った運びべき『荷物』なのだ。社員が荷物に手を出したのが知れたならば、社の信用に傷がつく。手を出した当人のフレデリカも、ペナルティは免れないだろう。
 これでユーリーが彼女の好みで無いような男だったら問題はなかった。そもそも触らせたりしない。
 だがしかし、相手は輝くような金髪をしたとびっきりの美少年ときた。食前の挨拶もそこそこに飛び掛り、食後の一服までフルコースで頂きたくなるような相手なのだ。
 ユーリーは全く意図していなかったが、彼の行為はある意味、フレデリカには拷問だった。
 砂漠を渡る渇した旅人の前に、青々と水を湛えるオアシスがある。だが、その水は毒水で、飲めば一時は渇きを癒せるが、後でもがき苦しむ羽目になる。それが今のフレデリカの状況だ。
224キマイラエクスプレス:2007/10/21(日) 16:04:41 ID:QEYL35FE
 ユーリーに彼女の葛藤など知る由も無い。
 それどころか、フレデリカが形の良い眉根を寄せている様を傷が痛むのだと思って一層熱心に傷口に、もっとも既に傷は塞がりかけているのだが、舌を這わす。
 傷を舐めているので、当然ながら口からは息がしにくい。自然、呼吸を確保する為にユーリーの鼻息が荒くなる。まあ、荒くなっていく原因は息がし辛いからだけではなかったけれど。
 ゆっくりとしたペースの水音と、小さい荒い呼吸音。
 それがまたエロティックな雰囲気を一層加速させる。
 淫靡な空気と酔いにそっと後押しされて、既に消毒という行為を飛び越えて女の太股を一心に舐め続ける。ユーリーは完全に己の行為に没頭していた。
 フレデリカの方は、崖っぷちに立たされて心境だった。
 欲望と言う火の上に渡された、理性と言う一筋の細い紐が下からじりじりと炙られる。
 ユーリーの舌が傷口を這うのがとてもイイ。
 イイけど、良くない。
 我慢すればするほど、意識してしまい、我慢できなくなる。そんなぎりぎりの綱渡りかと思われたフレデリカに、ふと、余裕が生まれた。
 まるで若い愛人を侍らす貴族みたいね、とフレデリカは思った。
「もういいわ、坊や」
 行為を遮る言葉に、なにか気に触る事をしたんだろうか、と雨に濡れる子犬のような不安げな表情のユーリー。
 ふわふわの金髪を指に絡めるようにゆっくりと撫でてやって、少年の怯えにも近い不安を消してやる。
「ふふ、そんな顔しないの。もうそこは十分だわ。次は、こっち、よ…」
 妖しく笑いかけながら、太股に這わされたままのユーリーの手を取る。少年の水を弾くような張りのある肌触りを味わい、その手を濡れそぼう秘密の園へと誘い、そして…。
 そこでフレデリカは妄想を振り払った。
(そんな事、ある筈ないじゃない…)
 我ながら馬鹿な事を考えたものだ。
 仮に今ここでフレデリカが妄想通りの行動を取ったとしても、相手から返ってくるのは拒絶だろう。
 人魔が争っていた時代ならばいざ知らず。今では人と魔獣の間に立ち塞がる種族の壁はそれなりに薄い。互いの体格に倍ほども差があるようなカップルだってそう珍しくは無いし、体型自体が全く違うペアもいない訳ではない。
 だが、もしもユーリーがフレデリカをもっと良く知れば、礼儀正しく慎み深い少年は嫌悪感を露わにはしないだろうが、距離を取ろうとするだろう。彼女を知ろうとした者、誰もがそうであったように。
 大分、明かりの落ちた焚き火に照らし出されるフレデリカの顔は、この世の何もかもを諦めた者のようで、まだ若いにも関わらず酷く年老いて見えた。
 その顔には、暗い自嘲の影が色濃く漂っていた。
 森のフェアリーが旅人に悪戯するように、ユーリーの綺麗な金髪をついと一房摘んでは離し。また一房摘んでは離し。
 いつの間にやら、ユーリーは人の太股を枕にしてクークーと気持ち良さそうな寝息を立てていた。本当に火がつくほど強いアルコールは覿面に効いたようだ。
「さてと、坊やも寝ちゃったし、あたしも顔洗って頭冷やして寝るとしましょうか…」
 自分の上であどけない寝顔を見せる少年を起こさないように慎重に抱き上げて、そっとどかす。フレデリカの膂力からすれば痩せぎすの少年一人くらい軽いものだ。今夜の彼のベッドでもある、ユーリーが昼間着ていたコートの上に彼を寝かしつけ、冷えないように包んでやった。
 そうして、熾火でも飲みこんだように火照った顔と身体を醒ます為、フレデリカは一人静かに泉へと足を向けた。
22518スレの314:2007/10/21(日) 16:06:19 ID:QEYL35FE
『キマイラエクスプレス』 後編へ続く

前編は以上です。
後編は明日か明後日にでも投下させて頂きます。

OCNが規制されてて家から投下出来ないのが辛い…。
226名無しさん@ピンキー:2007/10/21(日) 21:29:37 ID:BQTNKnp7
>>225
GJ
フレデリカさんはいっその事妄想通りに突っ走ってしまえば良かったのに!
22718スレの314:2007/10/22(月) 17:29:14 ID:LlWOkzA8
『キマイラエクスプレス』 後編を投下させて頂きます。
後編はエロ有り。属性は女性責め、ショタ受けです。苦手な方はスルーをお願いします。
そんなにマニアックではない…と思います。
228キマイラエクスプレス:2007/10/22(月) 17:31:24 ID:LlWOkzA8
――13――

 今日も元気一杯に地平線から顔を覗かせた太陽は、夜の名残りにわだかまる朝靄をさっさと追い払う。
 木々を抜けて吹く風は穏やか。空はと仰ぎ見れば、ペンキを塗ったかのように爽快なまでに青一色。
 ハーピーならずとも、飛び立ちたいと思わせる素晴らしい朝空だ。
 そんな空と対比を成すかのように、一人沈み込んでいる人間がいる。
 無論、ここには二人しかいない。そのうち一人はここで頭を抱え込まんばかりに落ち込んでいる。
 今、もう一人が四肢を地につけて、泉のほうから歩いていくる。顔を洗っていたのだろう。彼女のウェーブした金髪には水滴が絡みつき、朝日を受けて宝石でも散らしたようにきらきらと輝いている。
 酔ってそのまま寝てしまったユーリーだったが、彼にはしっかりと昨晩の記憶があった。
 フレデリカを憎からず思っていたのは確かだけれど、普段の自分はあんなに恥ずかしい事はしない。酒の類を初めて口にした少年には、それが酔いの恐ろしさだとは理解出来ず「女の人の脚を舐めて喜ぶなんて僕って変態だったのかな」と的外れな自問自答を繰り返す。
 とても恥ずかしい上に、変な事をしたとフレデリカに怒られるのも怖い。
 まともに彼女の顔も見れずにいると、
「おはよう。よく眠れたかしら?ほら、早く食べちゃいなさい」
 紙袋がひょいと飛んできた。何かと中を見れば、朝食が入っている。出かける前にまとめて作ってもらったのでメニューは昨晩と同じ。
 袋の中から、視線を上げる。
 怯えた態度を素直に不思議に思っているのか、彼女は目だけで、どうしたの?と問うている。
 その視線を逸らす事も意図を無視する事も出来ずに、おっかなびっくり、ようよう口を開いた。まるで真冬に池に張った薄氷をつま先で踏む気分。
「あの…怒ってないんですか?」
「あたしが坊やの何を怒るって言うのかしら?オネショでもしたって言うのなら、話は別だけど」
 彼女の顔には、怒りやその類いの感情は一片たりとも浮かんではいなかった。それ所か、冗談を言いながら笑ってさえいる。
「あの…昨日の…僕、フレデリカさんに変な…事……」
 続く言葉は、もごもごと口中に消えた。
「あぁ、別にどうってことないわよ。あの様子じゃあ、お酒飲むの初めてだったんでしょ?酔っ払っちゃってたんじゃ、仕方ないもの。それに坊やの酔い方、可愛かったわよ」
 ぱちりと鮮やかにウインク。
 ユーリーはほんの数分前まで蒼白だった顔を、今度は真っ赤に染めて俯いてしまった。
 肩を竦めて、大人の余裕を見せるフレデリカ。ここで自分が受け止めてやらねば、この少年はネガティブな方向に走っていってしまうだろう。とは言っても、フレデリカも内心、あまり余裕は無かったが。
 ユーリーを見た途端、昨晩の記憶がどっと蘇り、高鳴る動悸がひどくうるさく思えた。
(いまさら未通女でもないってのに、大人しくしなさいよ)
 ユーリーには笑顔を見せつつも、跳ね回る心臓を静めようと躍起になっていた。
 もしその二人の様子を誰かが端から見ていれば、見たすべての者が初々しいとか甘酸っぱいとか評しただろう。もっとも口にした途端にフレデリカの照れ隠しにぶん殴られただろうが。
 そうして手早く朝食を片付け、支度を始めた。
 半分まで来たとは言え、まだ目的地までの道程は長い。この先、何が起こるか分からない。早く飛び立てば、それだけ時間に余裕を得られる。
 焚き火の跡には、ユーリーが上からしっかりと土をかけて火の気を消す。ゴミは野生動物が嗅ぎつけて、彼らを寄せないように穴を掘って埋めた。
 この森は近隣一帯の水源なのは明らかだった。付近の住人によって、手入れが行き届いている。下草はきちんと刈られ、樹には枝を打った跡が見てとれる。簡単に汚すような真似は出来ない。
 その間にフレデリカは鎧を身につけ、大して多くはないが荷物を整理し、鞄にきちんと詰め込む。
 ユーリーが森の精霊と、泉の精霊に一夜の宿を借りた感謝を捧げた。
 時間は大切ではあったが、フレデリカは急かさなかった。彼女自身はあまり敬虔とは言い難かったが、他人の信仰にまでとやかく言うほど無粋ではなかった。
 ユーリーが祈りを捧げ終わるのを待ってから、二人は飛び立った。
229キマイラエクスプレス:2007/10/22(月) 17:32:18 ID:LlWOkzA8
――14――

 森の黒山羊亭は、ホワイトストーン村のメインストリートに面して建っていた。
 メインストリートとは言っても、王都の華やかで喧騒に溢れたロイヤルマイルとは比べるべくもない。所詮は、頭にドが付くほどの田舎の小さな村。幼い子供の足で全力疾走しても、一分と経たずに通りの端から端まで走り抜けて、お釣りがくる。
 通りに面して立ち並ぶ店の密度も歯の抜けたようにスカスカで、それらの建物の中で、森の黒山羊亭はホワイトストーン村にただ一軒しかないレストラン兼宿屋だった。
 一階のレストランは村の寄り合いに使われたり、仕事の退けた男達でそれなりに繁盛していた。どちらかと言うと、昼に飯を食いにくる客よりも、夜に酒場として訪れる客のほうが多い。しかも客のほぼ全員が村人。身内だ。
 ジャガイモ畑くらいしか見るものがない村に訪れるような奇矯な旅人は少なく、二階の宿屋部分はあまり使われていなかった。
 そんな環境だ。
 客のほとんどが農業に従事する村人という商売柄、日中の客足はかなり鈍い。
 一日分の仕込みは終えたものの、よく訪れる連中は全員畑仕事に出払っていて、相も変わらず客のいない昼前。この店の主、フランツは生欠伸を一つ。噛み殺そうとする素振りも見せない。
 くあぁ、とフランツが半ばまで大口開けたところで、ドアが揺れて彼は欠伸を中断させられる羽目になった。
 スイングドアを押し開いた二つの人影は、フランツに欠伸を途中で止めさせた上に、彼の目をぎょっと見開かせた。
 ただ、珍しい時間に客が来たというだけではない。来た客自身も珍しかった。
 大きい影はごく自然に構えるフレデリカ、不安げに寄り添う小さい影はユーリーだ。
 女の上半身と獣の下半身をした魔獣と、人間。そちらはまだほんの子供だ。下手をすると、どこぞから攫ってきた子供を連れた魔物にも見えてしまう絵ヅラ。
 唖然とするフランツの前で、子連れの女魔獣はテーブルについた。
 先代の店主、フランツの父親は店に人族以外のフォルムをした種族が入るなんて考えもしないで店を作ったので、テーブルも椅子もフレデリカにはまったく合っていない。
 女は、フランツの僅かに恐怖を含んだ驚きで凍っている様子をまったく気にした風でもない。あるいは、単にこの手の反応に慣れているだけか。勝手に椅子をゴトゴトとどかしては、その大きな体を収められるだけの場所を作っている。
「い…いらっしゃい」
 フレデリカが自分の席を作っていくのを呆然として見守り、自分の商売を思い出してようやっとそれだけの言葉を搾り出せた時には、既に彼女は席を作り終わって座っていた。
 フランツに、いや、ここの村人にほぼ全てに共通しているが、フレデリカの姿に驚くなというのは酷だ。彼らは魔獣などほとんど見た事がないからだ。
 この村の近くで人族以外の種族は、村はずれの森に住み猟師を生業にする人狼の一家に、パン屋を営む黒エルフの夫妻くらいのものだ。例外は時たま現れる盗賊と、そいつらを撃退する為に雇われる冒険者達。
 近くの山にヒポグリフが巣を作ってしまい、飛来する魔物に村が襲われて大変な事になった時もあったが、それは「人食い狼が出た」というのと同じレベルだ。
 この天地に生きる知性を持った種族としての魔獣を、どの種族であれフランツが目にした機会は、両手の指で数えられる程度だった。
230キマイラエクスプレス:2007/10/22(月) 17:33:01 ID:LlWOkzA8
 魔獣幻獣は元々の個体数が少ない上に、彼らはあまり他の種族と積極的に交流を持とうとしない。
 そして、未知は根源的な恐怖を誘う。フランツの反応は、閉鎖的で辺鄙な村の住人としては上出来の部類に入る。
「そうびっくりしなさんな。キマイラエクスプレス、聞いた事ないかい?王都にある郵便屋だよ」
 フランツとしては客商売の手前、顔には出さなかったつもりだったが、驚愕はあまりの大きさに少なからず表情に漏れていた。
 数種の生物的特徴の混ざった魔獣を、女と言い切っていいものかフランツには判断しかねたが、女はその戸惑いを別段気にした風もない。
 あたしはそこの配達員さ、とにこやかに笑って付け加えた。
 まだ驚きが抜けないフランツに、女が気さくに話し続ける。
「昼にはまだちょっと早いけど、何か腹に入れておきたくってね。あたしとこの坊やの分、何か食わせてもらえないかい?」
「あ…ああ、いいともさ。その、ランチ二人前でいいかね?」
 店主の問いに、フレデリカは鷹揚に手を上げて答えた。
 しばらくして、いくつも皿を乗せた木のトレイがテーブルに運ばれてきた。
 朝焼いたばかりのライ麦パン。芽キャベツと鳥のシチュー。付け合せに塩で茹でた人参とブロッコリー。フレデリカには蜂蜜と湯で割って薄めたワイン、ユーリーには茶。
 なかなかに美味そうで、量もそれなりにある。
 ホワイトストーン村は小さくはあるが、余所者に出す食材に苦労するほど貧しい村ではない。
「フレデリカさん、あの、こんな事してる場合じゃないでしょう」
 店内に入ってから初めて、少年の方が口を開いた。見た目から想像される通りの聖歌隊にも入れそうな、なかなかの美声。前に座る女にだけ聞こえるように喋っているつもりなのだろうが、他に人もいない店内では少年の高い声はよく通り、フランツまで会話は届いていた。
 人がせっかく作った料理に、こんなとは言ってくれるじゃないか。
 ひどく焦っている感じで、詰め寄ると言うよりは苦言を呈す少年を、パンを千切りながら女はやんわりと抑えた。
 少年の様子は店に入った時からずっとそうであった。姿も声も無い何かに、急げ急げと背中をどやしつけられ急き立てられているようだ。
「落ち着きなさい、坊や。何事にも順序ってものがあるの。朝ご飯、少なかったでしょう?まずは腹ごしらえよ」
 そう言われてもなお少年は、心ここにあらず、と言った様子で視線は定まらず、始終そわそわしている。
 女の方は、彼女が握るとまるでティースプーンにも見えそうな木のスプーンを口に運んでは、心底料理を楽しんでいる。
 少年の方は料理にほとんど手がついていない。
 シチューとパンを全部胃袋に収めた女魔獣が、ワインで満たされた木の杯を片手に、他愛無い世間話でもするような感じで何気なく聞いた。
231キマイラエクスプレス:2007/10/22(月) 17:35:03 ID:LlWOkzA8
「ねぇ、ところで親父さん、この村にエヴァン=マイルスって人はいるかしら?」
「エヴァンさんかい?村の外れに住んでるが…」
 少年がキッとフランツに振り向く。それは大の大人であるフランツが思わずたじろいでしまうほどの勢いだった。
 少年の目に宿るのは、身を焦がすほどの焦燥感と、すがり付くような目つき。少年の事情も、何を思っているのかもフランツの知るところではなかったが、尋常ではない雰囲気なのだけは分かる。
 エヴァン=マイルスは十年ほど前に、この村にふらりと来訪し、そのまま居ついた人物だった。
 何があってこんな田舎の村で生活したいと言い出したのかは語らなかったが、人の少ない村だけあって入植者は大歓迎だ。
 寡黙ではあるが働き者なエヴァンは今ではすっかりホワイトストーン村に溶け込んでいるが、ただ一点、村に来る前の事だけは口を開こうとしなかった。
 口さがない、と言うよりも他人の噂話が飯よりも好きな実害は無いが少しばかり鬱陶しい連中は、色々と勝手な憶測を巡らせては好きな事を言い合っていた。
 彼はそれらの噂については肯定も否定もせず、直接聞かされてもエヴァンはただ困ったような笑顔を浮かべるだけであった。彼の人柄が、それを許していた。
 フランツにも、目の前の少年の態度にも全く動じない、人がいない割りに慌ただしい雰囲気に包まれた店内にあってただ一人平静を保つ女魔獣。
 彼女は杯のワインを舐めるようにして飲みながら、まったく変わらぬ口調でさらに尋ねる。
「ここからはどうやって行けばいいのかしら?」
「店を出て左に行って、通りの一つ目の角を右に曲がって、あとはずっと道なりに行き止まりまで。そうさな、小一時間も歩けばエヴァンさんチだ」
 突如、バン、という大きな音が静かな店内に響いた。
 一体全体今度は何だ、とフランツが顔を向ける。
 そこはつむじ風でも通り過ぎたかのようで、椅子はひっくり返って床に転がり、乱暴に扱われたスイングドアがキィキィと不満の声を上げながら揺れていた。そして、つい一瞬前までいた子供の姿が消えている。
 ようやく床に落ちてきた木のスプーンが、カランと乾いた音を立てた。
 今日に入ってから何回目の驚きか、既に数える事も放棄して呆然と戸口を見つめるフランツ。
 そんなフランツめがけて、キラリと光る物が緩やかな放物線を描いて飛んでくる。彼は慌てて受け止めた。
 握った手を開いてみれば、そこには大振りな銀貨が一枚。ランチの代金にしては多い。この一枚で二人が食べたランチが十回は食える。
 投げた当の本人は、狐につままれた様子のフランツに艶やかに微笑み、杯に残るワインを一息で干した。笑みの形に細められているが全く笑っていない眼は、分かってるわよね、と言っていた。
 何を、とはフランツも問い返さなかった。銀貨を前掛けのポケットにしまい込み、返事とした。
「あんたら…一体なんなんだ…」
 ただ、一言、当然の疑問が口をつく。自分の混乱を沈める為だけの無為な質問。
 答えは最初から期待していなかったが、女が答えた。
「言ったでしょ?あたしは郵便屋。用事は郵便配達、よ」
 女は脇腹に付けたサイドバッグをピシと弾く。
 ついで、伸ばしたままの指でまだ揺れるドアを意味深に指し示した。
 フランツにはその意味する事なぞ、分かりようもなかった。
232キマイラエクスプレス:2007/10/22(月) 17:35:40 ID:LlWOkzA8
――15――

 ハッ、ハッ、ハッ。
 辺り一面は、もう花もしぼんでしまったジャガイモと、まだ頭を垂れていない緑の麦穂。
 夏の日を浴びる畑の中に、一頭引きの小型馬車がようやっと通れるか通れないか程度の道が通っていた。
 畑の中を続く一本の道を走る。
 ハッ、ハッ、ハッ。
 獣のような自分の息遣いが、やけに大きく聞こえる。
 胃に食べ物を収めたばかりなのに運動したせいで、横腹がじくじくと痛んだが、構わなかった。
 こんなところで倒れるもんか。やっと来たんだ。母の死に悲しむ暇も無く。色んな人の好意に縋って。細いチャンスの糸から糸へと綱渡りして。
 それもこれも、全てはまだ見ぬ父に会う為に。自分を想い、送り出してくれた母に応える為に。
 手を、足を動かす。激しく呼吸する。
 走った。走った。
 苦しくても走った。
 ひたすらに走った。
 心臓が、肺が、足が、一同にユーリーに「休め」と訴える。さもなくば、ペースを落とせ、と。
 ユーリーはそれらを無視し、動けを命令した。
 一分でも、一秒でも早く、望みの場所へと辿り着かねば。全てが泡と消えてしまうのではないかという焦りが、ユーリーを突き動かす。
 貪欲に空気を求める肺。激しく呼吸する喉はカラカラで、血でも吐くんじゃないかと思うくらい痛む。
 胃の中身が逆流しそうになるのを堪える。酸っぱい臭いが鼻をツンと刺す。
 全身の筋肉に力を取られ、思わず視界が霞む。
 その視界に、薄く白いヴェールの向こうに一軒の家が見えてきた。
 店主の言った通りだった。そこで道が終わっている。畑が開けている。一軒の家がある。
 ようやく、ユーリーは走る足を緩めた。途端、今まで感じなかった疲労が全部まとめて襲ってきた。膝が笑い出し、まともに歩けない。それでも一歩一歩、地面の感触を確かめるようにしてゆっくりと家を目指す。
 目指す場所は、もう既にそこにある。手を伸ばせば届きそうな所に建っている、丸太で組まれたそこそこの広さの家。
 もう幻のように消えてしまう事も無い。ユーリーはそう思った。
 と、扉が開いた。
 農夫姿の中肉中背の男が出てくる。
 あれが、顔すら知らぬ自分の父親。
 肉親との再会の期待に、自然、顔が綻ぶ。
「おとうさ……!」
 凍りついた。
 父らしき男の後から、続いて人影が大小一つずつ、出てきたからだ。
 母よりも若い女性。
 自分よりも年下の女の子。
 聡明な少年が全てを悟るには、それで十分だった。
233キマイラエクスプレス:2007/10/22(月) 17:36:17 ID:LlWOkzA8
――16――

「坊やも速いわねぇ。追いつくのが大変だわよ」
 妙に年寄りじみた台詞が、ユーリーの背に投げかけられる。
 その言葉に反し、文字通り、化け物の体力を持つ女は息一つ乱れてはいなかった。
 田舎の人間からすれば魔物その物である自分が登場して、わざわざ感動の再会シーンに水を差す事も無い。
 そう遠慮して、わざとユーリーを追う足のスピードを緩めていた。
 フレデリカは飛ぶ事も出来るが、走るのにも長けている。彼女の足は、人のそれを遥かに凌ぐ速度を出せる。少しくらいのハンデがあっても、ただの子供に追い着くくらい訳は無い。
 フレデリカのシナリオとしては、再会シーンを見届けた辺りで出ていって、受け取りにサインを貰い、代金を立て替えてもらうかどうにかして、静かに引き上げる。その筈だった。
 彼女の思惑から外れていた事と言えば、ユーリーが道の真中に立ち尽くしていた事だ。フレデリカの思い描いていた筋書きは最初っから躓いていた。
 ユーリーにやすやすと追い着いて、肩を並べる。
 フレデリカが追い着いても、ユーリーは立ちすくんだまま。
 不思議そうな視線を向けられても彼は何も答えない。動く気配を見せない。まるで足から根でも生えて、立ったまま大樹の精<トレント>にでもなってしまったかのようだ。
 フレデリカは視線を移した。
 ユーリーから足元の地面へ、次いで道を辿り、さらには道の先にある家へと。そこにいる一組の家族へと。
 フレデリカも当初からおおよその事情は悟っていたが、それが今、確証へと変わった。

 昔、昔、ある所に男と女がおりました。
 男は女を捨てて逃げました。女は愛を信じ続けました。
 女は人づてに男の居場所を知り、幾度か便りを出しました。全ては梨のつぶてに終わりました。
 女はそれでもなお男への変わらぬ愛をその胸に抱き続け、男が帰ってくるのを待ち続けました。
 女は病に倒れ、男へと、彼との間にできた愛の結晶を託しました。
 男は、逃げた先で新たな愛を育んでおりました。
 つまりはそういう事だ。

 それでもなお、フレデリカはユーリーを促した。
 彼女には義務がある。天涯孤独になりかけのユーリーを、なりかけのままで終わらせる事。少なくとも一人、彼女の見詰める先にはこの少年の肉親がいるのだ。あの男性にユーリーを引き渡さなくてはいけない。
 彼女には一つの想いがあった。ユーリーは自分とは違う。全てを捨てた自分とは違う。捨ててはいけない物、手から取り零してはいけない物をまだ持っている。それを捨てさせない事。
「あそこが宛先みたいね。都合よく受取人もいるみたいだし。ほら、坊や、行くわよ」
 フレデリカがサイドバッグの中の手紙を取り出し、呆けたように立ち尽くすユーリーの手を開かせて、捻じ込むようにして持たせた。
 焦がれるような肉親への想いは、ユーリーに肝心の封書の存在すら忘れさせていたのだ。
「…いいんです」
 細い首と頭が、力無く振られる。
 方向は横。
 否定。拒否。拒絶。
 それはフレデリカの予想に反していた。
「なんで!どうして行かないのさ!」
 予想外の反応に絶句し、ついで小さく叫んだ。
234キマイラエクスプレス:2007/10/22(月) 17:36:59 ID:LlWOkzA8
「あそこにいるのは坊やの親父さんなんだろう?!坊やの持ってる手紙にだって、なんて書いてあるかぐらいは馬鹿なあたしにだって想像がつくさ!」
 フレデリカは他人を殺めた事もあるけれど外道ではない。
 人の不幸を嘲笑う性癖など持ち合わせていなかった。
 だから、少年に反駁した。
「手紙を手渡しで届けなきゃいけないってのを口実にして、坊やのお袋さんはウチを使って親父さんのところまで直に坊やを送らせたんだろうに!」
 彼女からして見れば、十分な幸福がそこにある。質素かも知れないけれども、その手を血に汚す事もない生活。街の喧騒と華やかさとは無縁だが、土と共に生きる退屈なまでに穏やかな平和と家族の安らぎ。
 多くの人が望み、そしてくぐる事の適わぬ扉が、今そこに開いている。何故、それを自分の手で閉ざそうと言うのか。
 フレデリカのヒステリックなまでの声に対し、少年は反論しなかった。
 ただ、静かに首を振った。
 ユーリーは、手の内に携えたままの封筒に視線を落とす。その掌はいつの間にか握り締められて、中に納められた手紙ごと封筒をくしゃりと潰していた。
 その封筒には封蝋が押されてはいなかった。彼の母はそれを買う金さえ削って高額なキマイラエクスプレスの料金を捻出し、ユーリーを送り出したのだ。
 故に、ユーリーは封筒の中身を見ていた。書かれている文面を知っていた。
 そこには、母親の父親への変わらぬ愛と、ユーリーの身を案じる言葉が綴られていた。これを綴った時に既に己が病魔に冒され、そう長くはないと母親は悟っていたのだろう。紙の中の母は、ユーリーの事を一身に案じていた。
 その一枚の紙切れが、目の前の家庭に嵐を巻き起こすとも知らずに。
 ユーリーの父親も、彼に対する負い目もあろうから、無碍にはしないだろう。だがおそらく、迎え入れられたとしても彼の存在は平和そうな三人家族に決定的なヒビを入れるであろう事は想像に難くない。
 ユーリーは顔を上げた。
 視線の先には一人の少女。彼よりも年下の女の子。自分と同じく父譲りの金髪をなびかせた、おそらくは腹違いの妹。
 両親と手を繋いで、幸せそうに、満面の笑みを浮かべている。あの笑顔を曇らせたくない。
 他人の安寧と幸福を打ち崩してまで己の居場所を奪い取ろうとはしない。出来ない。
 他人を傷つけてしまうくらいなら、いっそ己が傷つく方を選ぶ。
 それがこのユルギス=マイルスと言う自虐的なまでに優しい少年だった。
「……いいんです」
 先ほどと同じ呟きが、再び口をつく。
 宛名を見る。
 正しく、ここだ。
「フレデリカさんはちゃんと仕事をしてくれました。荷物はちゃんと宛先に届きました」
 馬鹿みたいに明るい声。
 ざあ、と風が吹く。
「でも、その荷物は受取人がいなかったみたいです。受取人がいないと、荷物は受け取ってもらえません」
 街とは違う森の香りをたっぷり含んだ風が、実りを待つ夏の穂を揺らす。
 少年の手から真っ白い紙吹雪を優しく受け取り、遥かな空へと散らしていく。
「さあ、帰りましょう」
 ユーリーは笑っていた。
 笑いながら、泣いていた。
235キマイラエクスプレス:2007/10/22(月) 17:38:59 ID:LlWOkzA8
――17――

 ユーリーとフレデリカは、昨日と同じ泉を宿にしていた。
 あの後、ユーリーはすぐに泣き止んだ。だが、僅かな涙は一緒に彼の感情全てまでも流し去ってしまったようだった。
 今のユーリーを表すならばほんの一言で済んだ。ただ、虚ろ。
 過酷な真実に打ちのめされている少年を一人、見捨てて置き去りに出来るほどフレデリカは残酷ではなかった。だいいち、ユーリーの受け取り印を貰っていないので、そこで荷物を放り出したら配達失敗になってしまう。
 彼を連れて、帰路に着くしかなかった。
 村に一軒しかない小さな食堂兼宿屋、森の黒山羊亭を再び訪れて、フレデリカは往路で減った水と食料を補給した。
 異形のキマイラと少年のコンビは、スイングドアを押し開けて一歩足を踏み入れるや否や、様々な種類の視線を集めた。そのどれもこれもが、下着の色まで探りださんばかりの下世話な好奇心に満ちていた。
 視線の主達は、己のこびり付くような嫌な視線を隠しているつもりだろうが全く隠し切れていない。
 さきほどは店主しかいなかったレストランだが、今は幾人かの村人がテーブルを囲んで何事かを話していた。
 その輪の中に、店主もいた。僅かに怒気と殺気を滲ませたフレデリカが睨みつけると、彼はばつの悪そうな顔をして、慌てて厨房に引っ込んでしまった。
 フレデリカは心中でフンと鼻を鳴らした。わざわざそれを顔に出して、噂話に新たな餌をくれてやる必要は無い。
(肝心な部分は喋ってはいないようだけど、まったく忌々しいったらありゃしない)
 話題の中心は、先ほどのユーリーとフレデリカであるのは村人の視線からも明らかだった。と言うか、それしかないだろう。
 亡霊のような雰囲気を放つ少年は、フレデリカ以上に好奇の目に晒されたが、視線とユーリーの間にフレデリカの黒猫の身体がするりと割り込んで盾になった。
 遠巻きに見守る村人達に一言も発せさせず、注文した品を受け取ると、乾いた羽ばたきを残して村を後にした。
 それから数時間、ユーリーは一言も発しなかった。
 まるでユーリーの代わりに死神か、疫病神でも乗せているよう。
 背中に圧し掛かる重い雰囲気に耐えかねてフレデリカも声を掛けようとはするものの、どう切り出せば良いのか考えあぐねて、結局は黙った。
 二人は来たのと同じ道筋を逆さまに辿った。
 道も同じなら、寝床も同じ。
 焚き火が燃えている即席の竃も昨日と同じ場所。
 違うのは、届ける筈の『荷物』はまだあって、その『荷物』に見られた快活さが今は欠片も無い所。
「ねぇ、坊や。お腹すいてない?」
「…すいてません。何も食べたくないです」
 取り付く島も無い。
「そっちは寒くない?こっちに来たら?」
「ここでいいです。寒くありませんから」
 彼女に答える時でさえ、ユーリーは膝を抱えて座り、じっと火を見詰めていた。
 ユーリーとフレデリカの間には、雲に消えるほど高い壁があるようだった。何を投げかけても、壁を越えて届く事は無く、全てが跳ね返されては投げ手に戻ってくる。
「そ。じゃあ、あたしが坊やの方へ行くわ」
 しばしユーリーの顔を炎越しに見詰めていたフレデリカが、衣擦れの音一つさせずに身を起こす。
236キマイラエクスプレス:2007/10/22(月) 17:39:57 ID:LlWOkzA8
 そのしなやかな身体が焚き火をぐるりと半周して自分の方に向かってくるのを目の端で捕らえながらも、ユーリーの顔も心も微動だにしない。
 フレデリカはユーリーの隣に腰を下ろし、上半身は起こしたままで、ゆったりとした寝椅子に寝そべる風に下半身を寝かせ、すらりと引き締まっているその下半身をユーリーに寄り添わせた。
 昨日までのユーリーであれば、豊満な肉体とここまで密着すれば顔色の一つくらいは変えたものだが、今は違う。
 ユーリーは身じろぎ一つしなかった。まるで、いま隣に座ったのが空気か何かで、そこにフレデリカがいないかのような対応振りだった。無視しているのではない。目に入ってはいるが見ていないだけだ。
 あまりにも刺々しい。
 ユーリーの中で感情の大渦が、棘となって表れている。
 その刺々しい態度は、他人にだけ向けられているのではない。内側にも向けられている。
 棘は他人を刺し、自分を刺し、その棘故に周りから誰もいなくなっても内を向いた棘は抜け落ちる事無く、ただ己を傷つけていくだろう。
(この不幸な坊やは、その棘の抜き方を知らないのでしょうね)
 父を知らず、母子二人の家族。それも死に別れたのではなく、捨てられた女と父無し子。王都近隣であるとは言え、農村という集団は概して閉鎖的だ。そして閉鎖的な集団は、自分達とは違う物、集団内の異物にはことさら辛く当たる。
 ユーリーの家族が苦労の連続であったのは想像に難くない。事実、その通りだった。
 これだけのいい子だ。ずっと母を助けて生きてきたのだろう。
 泣き言も言わずに。
 否、言えずに。泣いて叫んでぶち撒けてしまいたい事全てを、小さな胸に飲み込んで。ただでさえ重荷を背負った母の負担にならぬようにと、その胸に縋る事も出来ず。
(抜き方を教えてあげないと、この子は壊れてしまう)
 事実、ユーリーの心中は恐ろしく冷たい風が吹き抜けていた。ユーリーが立つ大地は土ではなく、無数のガラス片で覆われていた。
 幼く純真な心は透き通ったガラスのように美しいが、脆い。そして一度割れれば砕けた破片は鋭い切っ先となり、心を埋め尽くし、全てに突き刺さり傷つける。
 己の心の中で答えを見つけようと彷徨えば彷徨うほど、虚無の風は身を切り裂き、ナイフのように鋭い欠片が足を刺して血が流れる。
 大人ならば誰しも多少なりとも心を鎧う術を身に付けている。現実と心の折り合いの付け方を、生きる中でゆっくり学んでいくものだ。
 ユーリーにはその時間は与えられなかったのだ。酷く辛い現実を真正面から投げつけられ、砕けたガラスだらけの心の中を裸足で彷徨い、折り合う答えを探すしかなかった。それが、砂漠に埋もれた砂金一粒を探すに等しい行為とも知らずに。
「少し、お話をしましょ」
 それに応える者はいない。
「聞く気がなかったら聞く必要はないわ。あたしがただ独りで、坊やの隣で話すだけ」
 そう前置きしてフレデリカは話し始めた。
 ごく淡々した、掠れたような声だった。
237キマイラエクスプレス:2007/10/22(月) 17:40:35 ID:LlWOkzA8
 むかしむかしって言うほどでもない、ちょっと昔のお話。
 ある所に一人の女がいたの。決まりきった村の生活が嫌で街の生活に憧れて、それだのに出て行く勇気もない女。
 そして、悲しくなるくらいに馬鹿な女だったわ。
 ひょいと村に訪れた吟遊詩人に入れ込んで、駆け落ち同然で付いて行った。
 離れた街に一緒に住んで、その男に貢いだ。貢いだ。貢いだ。
 でも手に職もないような村から出てきた娘にろくにお金が作れる筈もないわ。
 夜の街で働いて、体も売って、お金を作ってはひたすら貢いだ。彼の言う事なら何でもきいた。
 そうして残った物と言えば、別れの挨拶が一言書かれた紙切れ一枚と、ボロボロの体。
 勿論、全部貢いじゃってるんだからお金なんて無いわ。薬も買えなけりゃ、医者にも診てもらえない。

 ごしゃっと音を立てて、焚き火の中の薪が崩れた。
 フレデリカが静かな手つきで薪を足す。
 ユーリーは無言だった。
 フレデリカも急がなかった。
 放り込まれた新たな薪が、古い薪と一緒に火の舞を踊り始めてから口を開いた。

 女は粗末なベッドの上で死にかけてた。その女の前に魔女が現れた。
 魔女は病なんて診やしなかった。代わりに、死にそうな女に尋ねたの。『お前はまだ生きたいかね?』ってね。
 ほんっとーに馬鹿な女よね。頷かなければ、その手を取らなければ、安らかに逝けたかも知れないのに。
 魔女が本当は何を考えていたのかなんて知らない。ただ、女は死にたくなかった。
 それが幸いなのか不幸なのか知らないけど、女は死なずに済んだわ。
 でも、死んだ方がマシだと思えるほどの借金も出来た。
 人間である事もやめた。
238キマイラエクスプレス:2007/10/22(月) 17:41:24 ID:LlWOkzA8
 キマイラと言う単語は二つの意味を持つ。
 一つはこの世界に生きる魔獣の一種族そのものを指す。ライオンの頭に山羊の胴体、蛇の尻尾を持つ者達だ。
 そしてもう一つは、『由来が異なる複数の部分から構成されている者達』。
 フレデリカは後者だった。
 真の意味での合成魔獣。
 死にかけた女、黒猫、鴉、蝮。
 大きな魔女の鍋に全部まとめてぶち込んで、ぐつぐつ煮込んでぐるぐるかき回して、呪文を唱えればポン!
 フレデリカが両手で何かが爆ぜるジェスチャーをする。
 それっきりフレデリカは口をつぐんだ。
 ユーリーも無言だった。
 ゆるやかに踊る炎が二人を照らす。
 二対の瞳が、ぱちぱちと燃える火をじっと見つめていた。
 足した薪が火の中で燃え崩れ始めた頃、ようようユーリーが口を開いた。
 そこからは、およそ感情という物が消え失せていた。冬に吹く北風のように冷たく痛々しく、まるで一気に歳をとってしまったようだ。
「フレデリカさんは不幸自慢がしたいんですか?」
「あたしの方が坊やよりも不幸だから安心しなさいって言いたがってるって?まさか。あたしは自分を惨めにさせて喜ぶような性癖なんて持ってないわ」
 フレデリカの言葉は事実だ。それが猫が混じっているからかなのかは彼女自身にも分からないが、彼女はどちらかと言うとサディストの気の方が強い。
「あたしが言いたいのはね、人生やり直しがきかないって事よ」
 フレデリカの視線は、ユーリーの横顔から動かない。
 ユーリーもまた、火を見詰めたまま。視線は微動だにしない。構わず、フレデリカは続けた。
「ここで吐き出さなけりゃ、坊やはずーっとその胸の中にもやもやしててトゲトゲしたモノを抱えて生きてかなきゃいけないって言ってるのよ。
 過去はね、捨てる事は出来ない。起きてしまった事だから、ひっくり返す事も出来ない。
 出来る事と言えば、飲み込む事だけ。でも苦くて大きくて刺々しいのを簡単には飲み込めないわ。
 だから、まず最初にソレから棘を取ってあげないとダメ。
 坊やはね、その棘の取り方を知らないだけなのよ」
 フレデリカの片手が自分の背中に回された。
「あたしが、坊やの胸にがっちり刺さっちゃってる棘の取り方を教えてあげるわ」
 焚き火が爆ぜる音に混じって、ぱちり、ぱちりという音がする。
 と、フレデリカの胸元を覆っている白い鎧がずれた。その鎧は社のキマイラ一人一人にオーダーメイドであつらえられており、専用の鎧はフレデリカの肌に吸い付くようにぴったりと合っている。その鎧と肌との隙間が大きくなる。
 ビスチェ風の革鎧と高価そうなレース飾りのついた下着をまとめて引き剥がすようにして脱いだ。
 夜目にも鮮やかな白い肌が露わになる。
239キマイラエクスプレス:2007/10/22(月) 17:42:39 ID:LlWOkzA8
 フレデリカは、肉感的な裸身を惜し気もなくユーリーの前に晒していた。
 胸元全てが冷たい夜気に晒され、わずかに粟立つがそれもすぐに消えた。それは焚き火の温もりか、それともユーリーの為とは言え肌を晒す僅かな羞恥の所為か。
 日々の配達業務と実戦は、フレデリカの身体を筋肉質にならない程度にしっかりと鍛えあげている。それは彼女の全身余す所無く及んでいた。
 昨日、ブラウスに見事な谷間を作っていた小高い二つの丘は、重力に屈する事無く、その質量感も誇らしげにツンと前方に突き出している。
「今日は大盤振る舞いよ、あたしの胸を貸してあげる」
 流石のユーリーもこれには反応した。否、まだ彼の感情は生き返ってはいない。反応したと言うよりかは、たまたま顔の向いた方向にフレデリカの裸があった、と言う感じだ。
 フレデリカは、鎧の留め金を外した手を今度は彼女の方に向いたユーリーへと差し伸ばす。
 肉親のものくらいしか女性の裸を見た事が無いであろう年頃の少年だというのに、戸惑う訳でも、照れる訳でもない。
 漆黒の長手袋をしたような手が、そんな彼の後頭部にそっと添えられる。
 そして手は主の元へと引き戻され、素晴らしい胸の谷間にユーリーの顔をグイと押し付けた。
 まるで愛し子を抱くようにして、ユーリーを抱き締めながら、フレデリカはありとあらゆる全てへの許容をもって囁く。
「いい、坊や?辛い時、悲しい時は泣いていいの。男の子だからって我慢する事はない。泣ける時にしっかり泣きなさい」
 まるでブ厚い氷のようだったユーリーの表情が、じわりと揺らぐ。
 どんなに厚い氷だとて、いずれは融ける。永遠に続く冬など無いのだ。暖かな日差しを受ければ、氷は融け、流れ、消えるのが宿命。
 フレデリカのただの一言が、ユーリーにとってどれだけの救いと許しを運んだのだろうか。
 なだらかな肩が震える。
 嗚咽が搾り出される。
 胸の奥底から溢れだす物は、ユーリー自身にも押し留める事は出来なかった。
「そうよ、泣いて泣いて、涙と一緒に嫌な気持ちは全部捨てちゃいなさい」
 フレデリカは双丘の谷間に、熱いものが伝い落ちるのを感じた。最初は僅かな一筋、それもすぐに滔々とした流れと化した。
 ユーリーは泣いていた。
 ぎゅっと閉じられた双眸から己の全てを吐き出すかのよう泣き方だった。涙は途切れる事無く溢れてはフレデリカの胸元を濡らしていく。
 だが、滂沱と涙を流しているのというのに、不思議と泣き声は聞こえなかった。ユーリーは歯を食い縛り、己の声を殺しているのではない。
 大きく口を開けて、喉を震わせていた。無音の叫びがそこからは迸っていた。
 溢れる物が大き過ぎるが故に、人の感じ取れる範囲を超えてしまっていて誰の耳にも聞こえない。そんな感じだった。
 それはまさに慟哭と呼ぶに相応しかった。
 ユーリーの頭を優しく抱いているフレデリカの腕に応えるように、ユーリーもまた彼女をひしと抱きしめていた。
 慟哭に震える少年の頭を、フレデリカはずっと撫でていた。彼女は嫌な顔一つ見せない。嫌な顔どころか、その顔には、まごう事なき慈母の微笑がたたえられていた。
240キマイラエクスプレス:2007/10/22(月) 17:43:18 ID:LlWOkzA8
 どれほどの時間が過ぎたのだろうか。
 フレデリカの谷間を伝う涙の流れが途切れ、肩の震えも収まった頃、フレデリカがポツリと呟く。
 手はゆるゆるとユーリーの金髪を梳ったまま。
「捨てなさい、か。どの口が吐くのかしらね。
 親も捨てた故郷も捨てた友人も捨てた。人でいる事すらも捨てた。くっついてくるのは馬鹿な選択しかしなかった過去のツケと呪いと借金ばかり。
 その結果が純粋種達には"混じり"だからと嫌われる。かと言って魔術の産物だと人にも疎まれる。
 あたしも坊やとおんなじ。嫌になるくらい独りぼっちよ」
 一見、あっけらかんとした独白には、とても濃い自嘲が含まれていた。
 フレデリカは悩み惑う人間が良くそうするように、ふと天を仰いだ。
 だが、月も星も何か応えてくれよう筈も無い。そこに住まう神々にとって、人の悩みなど蟻にも等しい些末事。
 健気にも女を不安から守ろうというのだろうか。回されたユーリーの腕に僅かに力が篭る。
 星々の代わりに、少年が応えた。
「違います。フレデリカさんは馬鹿なんかじゃありません。お店でフレデリカさんが言ってくれたから、僕はここまで来れたんです。馬鹿な選択なんかじゃないです。
 最初は気まぐれなのかも知れないけどフレデリカさんは僕を助けてくれました。他の人が嫌いになっても僕はフレデリカさんを嫌いになったりなんかしません
 何が混ざってたってフレデリカさんはフレデリカさんじゃないですか。
 たしかに僕は独りぼっちです。でも、今は一人じゃないです。あの、その、フレデリカさんがいてくれるから……」
「ふふ、ありがと。こんなに可愛くっても、やっぱり男の子なのね」
 そうして、女はまた少年の頭を撫でてやり、少年は女を抱きしめ返した。
241キマイラエクスプレス:2007/10/22(月) 17:44:02 ID:LlWOkzA8
――18――

 一頻り、泣いたからだろうか。
 ユーリーからは綺麗に憑き物が落ちたようだった。すっかり元通り、とは行かないまでも心を厚く覆っていた氷が剥がれ落ちたようで、ユーリーの瞳には感情と理性の光が戻ってきた。
 ただし、この状態で、感覚とついでに本能まで戻ってくると男としては困った事になる。
 ユーリーはほとんど全裸のフレデリカに抱きしめられ、その巨乳の谷間に顔を埋めているのだ。照れくささから腕の中から抜け出したくもあり、また彼女の芳しい香りと乳房の弾力をいつまでも味わっていたくもある。
 そうしてユーリーの理性が葛藤している間にも、彼の本能は着実に仕事を果たしていく。すなわち、最高の雌を前にした雄としてスタンバイする為に。
 股間が熱くなっていく。下着の中で勃ちあがり始めたモノの納まりが悪く、もじもじと内股をすり合わせる。
 本人としては、フレデリカにバレないようにこっそりとしているつもりだったのだが、無論、ほとんど密着状態の二人なので隠しとおせる訳もなく。
 人であった頃の人生経験から、フレデリカの方が男女の機微では初心な少年より何枚も上手だった。ユーリーの状態など、心も身体も両方とも簡単に予想出来た。
「もっと慰めて欲しい?」
 フレデリカの言葉は短い。
 不意にかけられた言葉を無視する訳にもいかずに、悪戯を叱られる直前の子供のようにおずおずと顔を上げる。金色の瞳がユーリーを射る。
 そこには悪戯っ子のような笑みと、好色が浮かんでいた。慈母は姿を潜め、娼婦が取って代わる。
「まずは返事して。イエスかノーか、よ」
 ユーリーは十代前半ではあるが、まだまだ幼さが残る年齢だ。加えて、その生い立ちと母の手伝いばかりしていたので友達も少なく、また彼らと一緒に遊ぶ時間も少なかった。その年頃の男子が三人も集まれば自然と話題に上る、所謂"その手の話"にも疎い。
 それでも、おぼろげながらではあったがフレデリカの言葉の意味は分かった。
 こくん、とユーリーの白い喉が動く。
 ついで彼の頭も動く。
 それはユーリーの心中を映して、引っ掛かりながらの歪な動きだったが、確かにコクリと縦に振られた。
「そ、いいお返事。でもさっき言った通り、人生はやり直しがきかないの。だからぁ…途中でゴメンナサイって言っても許してあげないから」
 賽は投げられた。子羊は雌狼の前に自らその美味そうな身体を投げだしたのだ。
 フレデリカの指がユーリーの頤にかかり、つい、と自分を向かせる。
 目が合う。暗闇から獲物を狙う猛獣のように炯々と光る眼差し。
 ユーリーの唇に温かく柔らかい物が押し付けられた。
 それがフレデリカの唇で、キスされたのだと理解した次の瞬間、舌が唇の隙間を押し広げて入り込んできた。
 突然の事に目を見開くユーリーだったが、すぐに驚愕は快感に押し流された。
 口内に伸ばされたフレデリカの舌先が、怯えて縮こまるユーリーの舌先をちょんちょんと突付いて、まずはご挨拶。
 舌の腹全体を使って口蓋を舐める。先端でくすぐるようにして歯茎をなぞる。人よりも長く器用に動く舌が、緊張を解すようにユーリーの舌に絡みついては捏ねくり回す。
 あちらこちらと気まぐれに動いてユーリーを翻弄し、蹂躙していった。
 初めのうちはメデューサに石にされたみたいにカチンコチンだったユーリーだが、次第に体から力が抜けていく。まるでフレデリカがユーリーの体を縛る緊張を吸い出していくようで、重なった唇の間からクチュクチュと水音が漏れ始める頃にはとうとう彼女に体を預けていた。
242キマイラエクスプレス:2007/10/22(月) 17:45:00 ID:LlWOkzA8
 母に頬や額にされた事のある親愛の情を示すキスとは全く違う、初めての濃厚な口付けにトロリと蕩け、ぬるま湯にでも浸かってうたた寝をしているような表情をしているユーリー。
 最初は驚愕を映していた瞳も、いつしかしっとりと潤んでいた。
 半開きになった口の端からは、ユーリーのとフレデリカのが混じりあった唾液が、つぅっと伝い落ちる。
「あら、勿体無い」
 顎先から半開きになった唇まで伝う跡を、ぺっとりと突き出された舌の腹が逆さまになぞり、舐めあげる。
 ゴールまで辿り着く。優勝者にはユーリー少年の桜色の唇を漏れなく進呈。ちょんと触れ合う程度の軽いキス。
「大人のキスはどうだったかしら?」
 フゥフゥと切なげな吐息を漏らす唇を、フレデリカが小鳥のように啄ばみながら問う。
 その答えを待つ気は彼女には最初から無かったのだろう。
 何かを答えようと開かれたユーリーの唇に、物も言わせず再び重ねた。
 先ほどよりもさらに深く。挿しいれられたフレデリカの舌はユーリーの口蓋をちろちろと舐め、唾液を啜り、お返しとばかりに自分の唾液を送り込む。
 長い長い交換の後、ようやく離れた二つの唇の間を細い唾液の橋がしばし繋いで、切れた。
 こくり、と嚥下したユーリーにフレデリカが再び問うた。
「もう一回、する?」
 躊躇があった。オネダリしてはしたない子と思われたくない。が、それもほんの数瞬の間のみ。
 頬に朱を散らしたまま、うるんだ瞳でフレデリカを見詰める。
「……はい」
 二人の距離が再び縮まり、やがて零になる。
 フレデリカの真似をしようというのだろう。健気に精一杯突き出されるユーリーの舌を、フレデリカは絡め取るようにして迎えた。
 二匹の龍が睦みあうように、舌はその身をくねらせ、絡み合う。
「あっ、そこは…」
 ユーリーが反射的に身を引こうとする。
 フレデリカが、目だけでニヤリと笑った。がばりと身を起こす。横からお互いを抱き締める形だったのを、フレデリカは人間離れした筋力に物を言わせてユーリーを優しく組み敷く。一瞬の早技はユーリーに抵抗すらさせなかった。
 ジタバタともがくユーリーの口を文字通り塞いで黙らせて、フレデリカは彼の同意を得ずにその先のステップへと歩を進めていた。
 二人の口腔から漏れる水音に、カチャカチャと言う金属音と激しい衣擦れの音が混ざる。
 今までの中で最も長いキス。
「…ぷはぁっ」
「んんん!……っはぁ!あ、やだ、フレデリカさん、か、返して下さい」
 長い長い口付けの終わりしな、フレデリカの手から何かが放り投げられる。ぱさっと軽い音を立てて地に落ちたのは、ユーリーが身に付けていた半ズボンと下着だ。
 果たしてユーリーの下半身は剥かれ、白く細いユーリーの両足の間からは男の象徴が精一杯自己主張していた。ペニスと言うよりはオチンチンと表現した方がいいような、先端は半ば以上が皮に包まれている、まだ生っ白い子供のソレではあったが。
 内股になり、ピンと勃ち上がったモノを両手で必死で隠そうとするが、それはフレデリカが許さなかった。
243キマイラエクスプレス:2007/10/22(月) 17:45:42 ID:LlWOkzA8
 ユーリーが束になっても敵わない獣の筋力で優しく、しかしガッチリとユーリーの手首を掴み、彼が座っていたコートの上に組み敷いていた。組み敷く、と言う単語から連想される男女の位置とはの立場がまるで逆だ。
「返してくださいよ〜」
「あらぁ、着たままじゃ出来ないじゃない。それとも…坊やは着たままの方が興奮するのかしら?」
「そういう訳じゃないですけど…」
「じゃあ、いいわよね」
 フレデリカはユーリーの抗議を風に柳と受け流す。
 こんな人を捨てた自分に好意を寄せてくれたのだ。ならば、する事は決まっている。フレデリカは、ユーリーの意思に女として全身全霊全力を以って応える気だった。
 雄々しいというよりは可愛らしいと言った風情の性器ではあったが、そいつを見てしまったのだ。体内を駆け巡る熱と疼きが、理性を痺れさせていく。もう止まらない。フレデリカ自身にも止められない。止める気もない。
 フレデリカの頭が徐々に徐々に下がっていく。ユーリーの身体の上を舐めるように低く這う。
 首、胸、腹、腰、そして太股の間へ。
 フレデリカの視線はユーリーの顔を見たまま。ひたり、と見据えられてユーリーもその視線から逃れられない。フレデリカが自分のペニスのすぐ側まで綺麗な顔を寄せていくのを、ただじっと見詰める事しか出来なかった。
「ひゃあ!」
 フレデリカはぽってりとした唇をすぼめて、ふぅっと吹く。
 途端、股に息を吹きかけられたユーリーが女の子のような悲鳴を上げた。
「昨日は坊やがこうしてくれたのよね。だから、今日はあたしがお返ししてあげるわ」
 若々しい肌に、ちゅ、と吸い付いた。
「くっうぅん!」
 フレデリカの身長、彼女の場合は全長と言うべきか、は窮屈ながらも背中にユーリーを載せられる事から分かる通り、人と比すると巨体と言える。
 上半身は妙齢の女性ではあるが、そちらも全身とのバランスを取る為にかなりの大柄だ。魔獣になった時に、そういう風に変えられていた。
 そして人のパーツも大きい。その舌も含めて。
 フレデリカの大き目の舌が太股をちろり、ちろり、と舐め上げるたびにユーリーは声を上げた。
 舌先からまるで電撃でも流れているように、舐められた所から背筋までがぴりぴりと痺れる。ユーリーは自分でも信じられないほどいやらしい声が出てしまう恥ずかしさから口元を手で押さえたが、その声を押し留める事なんて出来っこなかった。
 翡翠の瞳は潤み、女の子のように長い睫毛が切なげに揺れる。
 同時に腰も揺れる。
 ユーリーはフェラチオという単語を知らない。
 言葉を知らずとも本能は、敏感な幼竿をフレデリカの唇や舌で触れてもらえば、より大きな快感が得られる事を知っていた。
 ユーリーのペニスはさらなる快感を求めて、腰を突き出すようにくねくねと揺れる。
 揺れるのだが、熱烈に求められる事に嬉しそうにしているフレデリカに太股をがっちりと捕まれて、動きを握られているので届きようもない。
 ユーリーにも自分がエッチな事をして欲しくって腰を揺らしているのは分かっていた。分かっているが、どうにも止められない。
 どれだけフレデリカを求めようとも、切なげなユーリーに意地悪そうに微笑みかける彼女には決して届かず、逆に赤い舌が白い内股の上で奔放に踊ってはどうしようもなく腰をゾクゾクさせる。
 彼女が頭を上下させる度に、金髪の幾本かがペニスを掃くようにして掠めていく。
 焦らされて研ぎ澄まされた先端は、そんな些細な刺激でも残さず感じ取っては快感に変換していく。焦らされて過敏になった神経は、容易に細い身体を跳ねさせる。
244キマイラエクスプレス:2007/10/22(月) 17:46:20 ID:LlWOkzA8
「やっ、やっ、フレデリカさぁん」
 切なげにフレデリカの名を呼ぶユーリー。
 ユーリー自身と同様に、たっぷりと焦らされ続けはするが頂きに達する事の出来ない切なさに、ペニスも涙を流し始めた。
 慎ましやかなペニス先端に入った切れ込みを押し広げ、ぷくりと水滴が膨れる。
 僅かに粘る水滴は、揺れる炎を照り返して、きらりと光る。
 ユーリーが震えが伝わったのだろう。水滴が亀頭の先端にわだかまっていたのは、ほんの少しの間だけ。すぐに零れ落ちた。つぅっと滴る先走りは、段差の少ない造形の肉筒の根元まで光る道をつけていく。
「もう、意地悪…しないで下さい」
「意地悪ってどんな事?」
「それは…」
「意地悪って言うのは、こぉんな事、かしら?」
 言うなり、小さな胡桃が二個包まれた白い袋を、そっと撫で上げた。
 肉球を備えた指の腹の方ではない。手の甲側の毛皮で、だ。
 人肌とは全く違う、滑らかなビロードで擦られる感触がユーリーの脳を痺れさせる。
 満足に毛も生え揃わず、そよぐ陰毛も皺も少ないツルンとした少年の陰嚢が柔らかく擽られるたびに、甘く強烈な疼きがユーリーを喘がせた。
「くうっ…ぅううん!ふぁっ!」
 フレデリカは満足げな微笑をうかべながら、泣きべそをかく一歩手間まで来ているユーリーの嬌声をさらに引き出していく。
 彼女の愛撫は決して忙しいものではなかった。あくまで優しく、羽毛のように軽やかに。蟻の戸渡りを円を描くように撫で、袋の中で放出を待ちわびる胡桃のコリコリとした感触を楽しみ、内股を擦り上げていく。
 まるで掌中の小動物を可愛がるように、ゆっくり、ゆっくり。
 おちんちんの下にぶら下がる袋がこんなにも気持ち良くなれる場所だと、これ以上ないと言うほどフレデリカはユーリーの身体に教え込んでいた。
 ユーリーの口から漏れる鼻にかかった喘ぎがフレデリカの耳を震わせるたび、悦楽を欲する獣の部分がフレデリカの心をぞわぞわと侵食していく。フレデリカはそれを押さえるどころか、手に手を取り合って少年を弄ぶ。
 最初はさらりとしていた指もいつしか溢れる先走りに塗れ、濡れたビロードで撫でられると言う独特の感覚がユーリーを焦がす。
「フ、フレデリカさぁん…もう…」
「ん?どうしたの?気持ちよくない?」
 フレデリカは朗らかとさえ言える笑顔で尋ねた。
 ユーリーがどれだけ辛くって何を訴えているかなんて、彼女にはまさに手に取るように分かる。
 何よりも、フレデリカの目前で先走りをトロトロと垂れ流し、ぴくんぴくんと震えるペニスが彼の言葉以上の説得力を持って訴えている。
(ちょっといじめ過ぎたかしら)
 ちらりと反省が脳裏を過ぎったが、それも束の間。
(坊やがあんまりイイ声で鳴いてくれるから、ずっと愉しんでいたくなるのよねぇ)
 肉欲と嗜虐に染まった瞳でユーリーを見上げるフレデリカに、そろそろ次のステップに進もうと彼女の内なる獣性が提案する。
 フレデリカは賛成した。耳では十分楽しんだ。次は味わってみたい。
245キマイラエクスプレス:2007/10/22(月) 17:47:03 ID:LlWOkzA8
 先ほどからフレデリカの熟れたカラダも、ユーリーとの言語を用いない、より原始的なコミュニケーションを欲している。
 ユーリーにはとても気付く余裕はなかったが、四つん這いの姿勢で高く掲げられた彼女の美尻と尻尾がまぁるく円を描くようにして蠢いていた。
 息も絶え絶えのユーリーだったが、焦らしに焦らした本人が彼にお詫びをするかのように動いた。フレデリカの謝罪は言葉ではない。お詫びの印は、更なる快感。
 ちゅ、とペニスの先端に吸い付いた。
「っくん!あぁぁっっ」
 ユーリーの喘ぎ声のオクターブが跳ね上がり、切羽詰った感じがいや増す。もう泣き叫ぶような声だったが、フレデリカは気にしなかった。
 ちょんちょんと小鳥が餌を啄ばむみたいに、包皮から顔を出している亀頭にご挨拶。舌先を僅かに突き出して、ぷっくり膨らんだ表面を掠めるように一舐め、二舐め。
 先っぽに生まれた甘美な痺れが腰まで届き、ユーリーを悶えさせる。
 舌先は天辺に辿りつき、湧き出す先走りを舐める。自然、敏感な鈴口をフレデリカの舌が這い回る。
 ユーリーは溜まったものではない。後頭部を地面に擦り付けるようにして仰け反り、産まれてからこっち味わった事の無い、強すぎる快感に悶えた。
 元より自慰の経験もほとんど無いような少年に、元娼婦であったフレデリカの熟練の舌技に耐えられる筈もない。
「…ひぅんっ!イイッ…くぅぅんっ!」
 先端を被ったままの包皮と亀頭の間に、そっと舌先が挿しこまれる。亀頭の周りをくるりと回る。
 途端、目の奥が白くなる程の快感が強烈にユーリーを痺れさせる。
 くるり、くるりとフレデリカの舌がさらに回る。
 視界を染める白光が爆発的に強くなる。ユーリーの顔が引き攣る。
 フレデリカの唇の下で、亀頭がぷくりと膨れる。
「ひぃぃ、んっ!やぁ!あ、あはああぁぁっ!!」
 次の瞬間、
「あはぁ!出た出た。坊やのおちんちんったら可愛いわ〜」
 ん〜、と舌を伸ばす。
 ペニスは火山のようにマグマを吹き上げて、伸ばされたフレデリカの舌と言わず、すっかり雌と化した顔と言わず、満遍なく白い化粧を施していく。
 まだまだ発達途上のユーリーのペニス。その段差の小さい雁首を、包皮の上から段差をなぞるようにしてフレデリカが舐め上げる。
 まだ精液を吹き上げている途中なのに、射精しながらの愛撫を受けた方は堪ったものではない。
「やぁ!フレデ…ッリカさぁん。そっ…それ、キツ過ぎぃっ…です〜」
 敏感になった所を舐められる。
 さっきはフレデリカの口での愛撫をねだって振られた腰が、今はそこから与えられる強すぎる刺激から逃げようとして振られる。
 動きにつられて一緒に振られるペニスからは精液が撒き散らされて、フレデリカの胸元や、ユーリー自身の体の上にぱたぱたと落ちては白く汚していく。
 降り注ぐ精液を悦びと共に顔で受け止めながら、フレデリカは射精直後で敏感な先端を思う存分、舌で弄んでいた。快楽拷問のような口唇愛撫はユーリーを泣き叫ばせ、それはペニスの脈動が収まるまで続いた。
 弓なりに背を反らせていたユーリーの身体から緊張がふっつりと抜け、とさっと地面の上に身体を横たえた。
 ようやく解放されて息も絶え絶えのユーリーの上で、淫らな化粧をしたフレデリカが艶然と微笑んでいた。
246キマイラエクスプレス:2007/10/22(月) 17:47:55 ID:LlWOkzA8
 美しい顔にこびり付いた精液をしなやかな人差し指で拭い取る。
「さすが、若いだけあるわよね。こぉんなにたっぷり出しちゃって…嬉しいわ」
 フレデリカが手を広げ、指輪でも眺めるような仕草をする。指先に煌くのは宝石ではなく、にちゃにちゃと粘る白い欲望の残滓。
 それをフレデリカの蕩けた眼差しが見ていた。湯気が立ちそうなほど熱い精液の熱が匂いと一緒にフレデリカの身体に染み込んでいくようで、どんどん胎の底が熱くなっていく。
 口を開ける。はぁ、と熱い吐息が漏れる。若い雄に見せ付けて官能を煽るように、紅い舌先を伸ばす。
 フレデリカは躊躇せず、白濁に塗れたままの指を口に運んだ。
「あ、ダメです、汚いですよ!」
「あら、汚くなんかないわよ。坊やが出してくれた物ですもの。それに…こんなに美味しいんだから」
 ちゅぷっ、ちゅぱっ、と殊更に大きな水音を立てて指にこびり付く精液を啜る。
 己の行為と少年の青臭い性臭に酔い、陶然とした顔のフレデリカ。
 ユーリーに見せ付けるように、彼のゼリーのように濃い精液を口に運んではワインでも味わうように飲み下す。
 イケナイとは思うもののフレデリカほどの美女が自分の吐き出した白濁液を飲みこんでいく、その淫靡な光景がユーリーの雄をさらに駆り立てていた。心臓が大きく脈打ち、力強くビートを刻む。
 一回放出した直後だと言うのに、ユーリーの幼竿は萎えるどころか鎌首をもたげ、前にも増して猛っていた。
「はい。アーン、して」
 フレデリカの指が、つ、とユーリーの口元に差し伸ばされる。
 これが正気だったならば、とても口にしなかっただろう。
 あらゆる箇所と五感全てから送り込まれる快感は二人から理性を奪い去っていた。
 フレデリカの黒い毛皮に白が絡みついてマーブルになった指に、ゆっくりとユーリーの桜色の唇が近づく。
 鋭い爪が隠された指先を唇が軽く食む。
 そのまま、ユーリーは自分の吐き出した白濁汁がたっぷりと纏わりついた指をゆっくりと咥えた。
 これが一人だったら、あまりのえぐい味に一瞬と持たずに吐き出していたろう。それが、フレデリカの指に乗っていると言うただそれだけで、採れたての蜂蜜みたいになる。自分の吐き出した物を舌で絡め取っては、その端からコクコクと飲み下していく。
「ん…ふぅ……」
 お返しとばかりに口唇奉仕するユーリーは、フレデリカの肢体に走った微妙な震えを見逃さなかった。
 僕の舌で気持ち良くなってくれてる。
 フレデリカが喜んでくれていると言う素直な気持ちと、女を悦ばせていると言う欲望が入り混じる。
 事実、ざらりとした舌の腹が撫でていくたびにフレデリカは皮膚の下の神経そのものを舐められているみたいで、身体を柔らかい電流が走り抜ける。達するような快感ではない。ちりちりと脳を炙り、延々と『気持ちいい』が続く。
「は…ぁ…んんっ!イイわ、坊や。んっ!ねぇ、もっと、もっと舐めて…」
 舌の腹を丸め、指に巻きつけるようにしながら、長いストロークで扱くように舐める。
 フレデリカの尾が先端を箒のように激しく振り、彼女の昂ぶりを示していた。
 そんなフレデリカの様子が嬉しくって、無心に乳を吸う赤子のように、ユーリーは一心にフレデリカの指を舐め清めていった。
 指先に舌先をキスさせて、ちろちろと細かく舐める。
 まるでソレがフレデリカに生えた仮初めのペニスで、それに奉仕しているかのような錯覚。だが、けして不快ではない。目はすっかり潤み、口の端から涎が零れるのも構わずにユーリーは精液塗れのフレデリカの指に奉仕する。
 指の付け根を湿った物が過ぎるたび、痛痒感に似た快感がフレデリカを襲う。激しくはないが無視する事など到底出来ない。もどかしいが故に、とてもタマラナイ。
 奉仕を受けながらフレデリカは征服感に満ちた目でユーリーを見下ろしていた。
 延髄辺りが、くつくつと煮える。ハァハァと飢えた獣のような荒い息が口から漏れる。
 いつしか、フレデリカは右の手をユーリーの舌に委ね、左の手指で胸の谷間に飛び散った精液を掬っては自分の口元に運んでいた。
247キマイラエクスプレス:2007/10/22(月) 17:48:29 ID:LlWOkzA8
――19――

 小さな唇から、濡れた毛皮に覆われた指が引き出されていく。
 半開きにされた桜色の唇の隙間から見えるのは、赤い口腔。そこから黒い指がゆっくりと出てくるのは、ひどく淫猥な光景だった。
「んっ…ふっ…ちゅ、ふぅっ」
 ユーリーは子犬みたいに鼻を鳴らしながら、去っていく指を舐め続ける。
 長い指を追うように、名残惜しげに舌が伸ばされる。
 引き出された指と舌先の間に、様々な汁の混ざりあった吊り橋がかかってプツリと切れた。
「あっ……」
 フレデリカが身体を起こした。ユーリーの太股の上で、彼の両足を跨いでしゃがんだ姿勢になる。彼女は歩く時には四つ足が必要だが、身を起こして座れば人と同じように動ける。
 彼女の足が動いた。若い雄の視線を誘うように身をくねらせ、蠱惑的なまでの緩やかな動作で。
 はじめて見る女性器への期待に、ユーリーの喉がごくりと大きく動き、鼻息が荒くなる。
 人には描けぬ躍動感に溢れた曲線が、左右に開いていく。ユーリーにその中心にある物を見せつけるように大きく股を開き、はしたない格好で秘部を晒す。
 望んだ物が見れる、とフレデリカの両太股の付け根をまじまじと食い入るように覗きこんだユーリーだったが、すぐにその顔が疑問に曇った。
 そこは妙につるんとしていた。話しに聞いていたのとはかなり違う。
「うふふ、エッチな坊やね。がっついちゃって、そんなにあたしのアソコが見たいんだ」
「そ、そんなことは…」
 スルリと蛇が現れた。フレデリカの尾だ。尻の側から回り込んで、しゃがんだ股の隙間から彼女の恥丘の前に出て来る。
 猫が匂い付けで身体を擦り付けるようにして、蛇の頭がのっぺりとした部分を縦に擦る。
 獰猛に笑う口から真っ赤な舌が姿を現して、じゅるりと舌なめずりする。
「見たいんでしょ?あたしのア・ソ・コ。遠慮なんてする事ないわよ、これからそこに坊やのオチンチンが入るんだもの」
 と、フレデリカが口の中でごにょごにょと、二言三言、何事かを唱えた。ユーリーには分からなかったが、それが解除の呪文だったのだろう。
 不意に、彼女の股間ののっぺりとした部分がポゥと青白く光って複雑な紋様が浮かび、光はすぐに宙に溶け消えた。
 のっぺりとした部分の一端が、ペロンと捲れる。
 魔術を用いた前張りだ。
 大元はエルフの貴族が愛娘の為にと異常な情熱を以って開発した貞操帯を起源にしているらしいが、今ではそちらの用途よりも魔素を操るのに長けた者達や人間とは違うフォルムの種族用の下着として使われる方が多い。
 素材は薄い布か紙切れかのようで、フレデリカの毛皮の色に合わせて黒く染められており、極力目立たぬようになっていた。
 捲れた端を、蛇の口が咥えた。ぺりぺりと日焼け跡の薄皮を剥くように、剥がしていく。
 こぽりと蜜が溢れ出す。
「うわぁ…」
 魔術を使っているだけあって前張りにはかなりの防水性があるようで、外からのも内からのも水分をシャットアウトしていた。じくじくと溢れ出す淫液を全て、フレデリカの膣内に溜めるくらいに。
 粘液はフレデリカの黒ビロードの毛にいやらしく絡みつきながら伝い落ち、尻の谷間に入り込んで、そこからポタポタと滴り落ちる。
 見つめるユーリーも、見せつけるフレデリカも興奮が頂点に達し、肌は上気してほんのり薄桃色に染まっていた。
248キマイラエクスプレス:2007/10/22(月) 17:49:15 ID:LlWOkzA8
 獣臭さと女の香りが混ざった、潮の香にも似た濃厚な性臭がプンと漂う。
 毛皮に覆われた猫の半身の中に、そこだけ人と同じような性器が息づいていた。フレデリカの漆黒の毛皮と対比を成すように、毒々しいまでの赤い肉色。
 愛液に濡れた陰唇はすっかり充血し、ぽってりと厚い花弁を開いていた。
 秘裂は、ユーリーが欲しいと、フレデリカの言葉を代弁するかのように物欲しげに口を開いている。
 まるで昏い森の中で、独り咲き誇る妖花のよう。
「ほら、見て。坊やが欲しくって欲しくって、もうこんなになっちゃってるのよ」
 まるで小水でも漏らしたみたいで、ユーリーの足元に粘ついた愛液の水溜りを作っていた。
「だから、今のうちに謝っておくわ。ごめんなさいね、あたし、坊やを壊しちゃうかも」
「フレデリカさんにだったら構いません。僕を、壊して…ください」
 ユーリーのペニスの根本にしゅるりと蛇が巻きついた。尻尾がクイと天を向かせると、亀頭に熱い汁が滴り落ちてベトベトに濡らしていく。
 フレデリカは妖艶に微笑むと、一気に腰を落とした。
 僅かに白く濁った半透明の粘液が、じゅぷっと飛沫をあげる。
「んく…ああぁぁぁんっ!」
 一擦りで果てなかったのが、ユーリー自身にも不思議なくらいだった。
 温かく愛液でぬかるんだ膣肉が彼自身を包み込む。柔らかく、それでいて全体をきゅうっと締め付ける。
 巨躯の重みがかかって、ユーリーのペニスは根元まで咥えこまれていた。
 フレデリカは腰を沈め、ユーリーの肩近くに両手を付いて上半身を支えていた。ユーリーを押し潰さないように、かと言って彼の腰が揺れても逃がさぬような絶妙な加減。
「っあ…はぁぁぁ…すっごくイイわ。ユーリーのが入ってるぅ…」
 幸せそうな呟きがフレデリカの唇から漏れる。
 童貞を奪いユーリーの初めての女になれた満足感と、胎を満たす異物感がとても心地良い。
 騎乗位で圧し掛かりながら、初めての快感に浸るユーリーの顔を見下ろし、フレデリカは微笑んだ。こちらも口の端からは涎が一筋伝い、蕩けている。
「どうかしら?」
「イイです…熱くって…オチンチンがくちゅくちゅされてて…」
「うふふ、すっかり目が溶けちゃってる。でも、まだまだよ。こうすると…もっとイイでしょう?」
 フレデリカはゆっくりと腰を上げた。ずずず、と引き抜かれていくのに合わせて快感が生まれ、フレデリカが息を吐くような静かな喘ぎをあげる。
 もっとずっと胎を満たしていて欲しいと、引き止めようとナカへ引き摺りこむように淫肉が蠢く。
 ペニスを丸ごと包みこむ淫裂に根元から先端へと扱かれて、ユーリーが眉根を寄せて苦しそうに呻く。
 ズン、と腰が落ちる。汗や先走りや愛液の混ざった汁が、ぴゅっと飛び散る。
「くあぁぁんっ」
 ユーリーの白い太股にフレデリカの黒い毛に覆われた尻がペチンと当たる。再び、フレデリカの腰がゆるゆると上がる。二人が同時に喘ぐ。
 腰のピッチが早くなっていく。
 数秒に一回のペースで肉を打っていた音が次第に早まり、しまいにはペチンペチンと連続した音になる。
249キマイラエクスプレス:2007/10/22(月) 17:50:09 ID:LlWOkzA8
 官能の荒波にもみくちゃにされているユーリーだが、まだ幼くても身体の奥に息づく雄の本能は本物だ。身体の上で勝ち誇ったように腰を振る女を征服しようと、果敢に反撃を試みる。
 飛んでいる最中に散々掴んでいた魅惑的な取っ手に、ユーリーはまた手をかけた。
 手をいっぱいに広げて掴んでも収まりきらない。瑞々しく、柔らかく、それでいて見事な形を保つ乳房。
 魔王を初めとする魔族達に古から伝わる彼らの伝統的な料理の一つ、モチと言うものをユーリーが知っていたら、そう表現したかもしれない。だが似ているのは色合いのみ。突つけば豊かな弾力で押し返す肌触りはそれ以上。
 白い乳房は薄く朱を帯びて、しっとりと汗ばんでいた。さっき流したユーリーの涙と一緒くたになって、揺れる炎に艶めかしく照り光る。
 初めはおずおずと巨乳の表面を撫でるだけの掌。
 それも、すぐに指を一杯に広げて鷲掴む。
「あぁんっ!そう、よ、ユーリー。もっと…っはん!…乱暴にしても、あはぁん!っいい…わ」
 ユーリーが言われたとおりに動く。右と左の胸を別々に揉みまわし、パン生地みたいに捏ねまわす。白い乳房に指が埋もれるほど強く掴む。たわわに実った二つの果実は少年の乱暴な愛撫を受け止めて、やんわりと押し返す。
 揺れる柔肉の、桃色も鮮やかな頂点がユーリーの指に搾り出されるようにして、それぞれ好き勝手な方向を向いてはふるふると揺れる。
 そこにはテクニックも何もなかった。
「ねぇ、乳首もぉ…乳首もいじってぇ!」
 はしたなく喘ぎ、ねだるフレデリカにユーリーがどうにか応える。ピンと固く勃つ二つの頂きを、両の親指と人差し指で摘み、同時にくりっと捻りつぶす。
 あひぃ、と宙に舌を突き出してフレデリカが悶える。
 お返しとばかりに、フレデリカが腰を上下させ、シェイクするように回す。
「っん、あぅぅぅんんっ!」
「あらぁ、手が止まってるわよ。んふっ!もっと動かさないと苛めちゃうわよぉ…ほら!ほらぁ!」
 フレデリカの腰が早く小刻みに上下する。きゅうきゅうと締め付ける膣口で、包皮の上から敏感な雁首を擦る。
 途端、ユーリーの喘ぎ声が切羽詰る。足先が、きゅうっと丸まる。
「やっ、それ!キツ、イィッ!んっ!んっ!フレ…デリカさぁん!」
 絶頂の予兆にユーリーの下半身が戦慄く。
 フレデリカは動きを変えた。浅く早くから、ゆっくりと奥深くまで咥えこむ。もっとユーリーを感じていたい。ここで彼にイカれては愉しめない。
 次第に二人の息が合って来る。
 フレデリカが腰を上げる。ユーリーが引く。
 逃がさないとばかりに狭い蜜壷が締め付け、退がる亀頭を媚肉が撫で回す。
 段差の小さい雁首が壁を引っ掻き、愛液を掻き出す。
 一息つく間も無い。フレデリカにも、ユーリーにも、一息つく気はない。
 フレデリカが腰を落とす。ユーリーが突き上げる。
 ペニスが抜けて閉じ合わさった隙間を再び引き剥がすように、肉の間を幼竿が掻き分けていく。
 情熱的にうねる膣襞が肉槍の穂先を絡め取り、柔らかく抱き締める。
 ジュプジュプと淫靡な抽送の音を伴奏に、荒々しい二つの呼吸と嬌声の合唱が森に響く。
 自分が快感を貪れば、それが相手を気持ち良くさせる。
 ユーリーが、フレデリカが、快楽を求めれば求めるほど、快感は相手にもフィードバックされる。
 己の快感が相手の悦びに変換されて、ぐるぐると回り続け、高みを目指す螺旋を形成する。
250キマイラエクスプレス:2007/10/22(月) 17:50:48 ID:LlWOkzA8
――20――

 二人とも、もう限界だった。
 フレデリカの視界がちかちかと星でも散らしたみたいに瞬く。体全てが焼けるように熱く、ふわりと浮きあがりそうな感覚。達しそうな予感。
 秘裂は熱い汁を搾り取ろうと、きゅっきゅっとリズミカルに締まってユーリーを追い込む。
 熟れたフレデリカでさえ、そうなのだ。ユーリーはかなり耐えた方だろう。
「あふっ…あ、イキそ、はっ!…ユーリー!きて!一緒、いっしょにぃ!」
「っくぅん!あ、ぼく、僕っも…イっちゃいそうですぅ!好き、好きです!フレデリカさん!」
「あ、あたしも!あたしもぉ!あ…はんっあんっ!んんぅっ!もうダメ、離さない!だから…だから一緒にイッてぇっっ!!」
 ユーリーの足の先が丸められる。細い身体が弓なりに反らされる。
 背を反らした拍子に、今までで一番奥まで入り込む。
 フレデリカの太股がぶるぶると震える。細かく震動する尻尾がピンと伸ばされ、天を突く。
 二つの雄叫びが夜気を震わせた。
 女に溢れろとばかりに注ごうとする放出。
 男から一滴残らず搾り出そうとする蠕動。
 ビュクビュクから、トクントクンへ。
 天を仰ぎ、咆哮する石像さながらに固まっていたフレデリカが、がくりと頭を垂れた。肺の中身全てを搾り出すような、長い長いタメ息。胎内を満たしていく迸りの温かさと、次第に収まっていくペニスの脈動をフレデリカは愉しむ。
 ユーリーはと見やれば、
「あらら、完全に堕ちちゃったか。ま、初めてじゃ仕方ないかしら」
 "気をやる"の言葉通り、激しい快感と射精の勢いでどこか彼方に正気をやってしまったみたいだった。
 開かれた眼は月の無い夜の沼みたいに淀み、焦点を結んでいない。半ばまで開いた口からはフゥフゥと荒い呼吸が漏れて、胸は走った後みたいに忙しく上下している。
 端正な顔は涎と涙に塗れて酷い有様だったが、フレデリカにはそれさえも愛おしく思えた。彼の汗まみれの金髪を慈しむような手付きで梳ってやる。じんわりと体中を満たす多幸感。
 ユーリーが正気を取り戻したのは、しばらく経ってからだった。
 心地良い沈黙の後、ハープの弦を爪弾くように、フレデリカからぽつぽつと口を開いた。
「実はね、この身体になってから男と寝るのは初めてなの。ユーリーの初めてを貰ったけど、あたしのもあげちゃったわ」
 屈託無く笑う。
 フレデリカの告白を聞くなり、ユーリーの顔がぼっと火でも吹きそうな勢いで赤く染まり、心臓がトクンと脈打つ。
 気だるい余韻も何のその。
 彼の興奮は、ある一箇所を素直に顕れた。
「あら、なんか大きくなってきてるわよ。あたしのナカにあれだけ出したのにエッチなユーリー……もう一回、する?」
「…はい」
 稚拙ながらも彼女を悦ばせようと、彼の方から腰を突き上げる。
「む、生意気な。悪戯坊やはこうしちゃうんだから」
 そして、主導権はあっさりと逆転された。

 暗い森の中。鳥も寝静まる刻限。辺りでするのは朽ちた枝葉の落ちる音と、微かな虫の音のみ。
 暗闇を僅かに切り取る明るい火の周りで、そこだけ森とは異質の音がする。
 粘液質な水音と、熱に浮かされたような荒く早い呼吸、辺り憚らぬ淫声が二つずつ。
 いつまでもいつまでも続くその音を邪魔する者は、誰もいなかった。
251キマイラエクスプレス:2007/10/22(月) 17:51:55 ID:LlWOkzA8
――21――

 太陽が昇る。
 とうに森の生き物達は目を覚ましていた。鳥は囀り、青空を群れをなして飛ぶ。森は無気味なまでに静かな夜の顔から、昼の顔へと様変わりしていた。森の外に広がる畑でも近在の農夫達が精を出している頃だろう。
 フレデリカとユーリーの目も覚めていた。意識は半ば覚めていたが、体の方はまだ寝転がったまま。
 抱き締めあった姿勢のまま、お互いの体温と微睡みを楽しむ。寸法的にユーリーのほうが大分小さいので、抱き締めあうと言うよりはフレデリカに一方的に抱え込まれるといった感じだったが。
 お互い様ではあったが、二人は酷い有り様だった。昨晩の張りきりようからすれば、それも無理はない。
「ユーリーったら、すっごいベトベトよ。体、洗ってあげようか」
「僕もフレデリカさんを洗ってあげます」
 泉で体を清めるべく起きようとした二人の口から、異口同音に悲鳴が上がった。
 身体中が痛い。手足が重い。
 酷使した関節や筋肉、体のいたる所満遍なく。使い過ぎだ、とぎしぎし軋む苦情があちこちから押し寄せた。性器もひりひりと熱せられたように痛む。
 繋がっている最中は快感が痛覚を脇に押しやっていたから、疲労も痛みも気にならなかった。
 それが一晩たち、快楽の麻酔がなくなると全身の骨が鉛にでもなったかと思うくらい、体を疲労が鈍く包み込む。
 二人は、そうっと身を起こして、泉を目指す。急に動かすとあちらこちらが痛むので、動かしても痛まない範囲を探りながら慎重に慎重に。その歩みは、鈍重なゴーレムさながら。
 水の香りが届くくらいのすぐ近くにある泉に辿り着くまでに、フレデリカは一回腰から力が抜けてへたり込みかけ、ユーリーは三回つまづいて転びかけた。
 朝日に水飛沫をきらめかせて洗いっこしながらお互いの様子を笑いあったが、それもじきに笑っていられなくなった。
 二人はキマイラエクスプレスのある王都まで帰らなくてはいけないのだ。
 しかも、距離はまだ三百キロ以上もある。
 翼を酷使した訳ではないのが、まだしも救いであった。
 それからしばらくして。
 よろよろとした、見ている方が不安になるような危なっかしい飛び方で空を往く魔獣を、畑仕事に出ていた幾人もの人間が目撃した。
 どうにか飛ぶには飛べたが、今度はこのペースでは手持ちの糧食が不安になって来た。二人とも、昨晩のハードな運動が祟って腹ペコだ。
 途中、小さな街に寄った時は、フレデリカの姿以上に二人の常にしゃっくりでもしているかのような奇妙な動きが、訝しげな目を集めた。
 怪我か病気だと思ったのだろう。稀に気遣わしげな声音でどうしたのかと尋ねる親切な者もいたが、二人揃って曖昧なお愛想笑いとしどろもどろな返事で誤魔化した。
 恥ずかしくって、とても本当の事など言えやしない。
 恥ずかしさから赤面する二人の様子に、さらに怪訝な顔をする人に手短かに別れを告げ、そそくさと立ち去った。もっとも、それも随分とぎこちない歩き方ではあったが。
 フレデリカ自身は空を駆けるので疲れ具合は言わずもがな。ユーリーも背に乗っているとは言え、寒風に抗ってしがみ付いているので体力を要する。
 少しだけの休憩で回復した体力は、飛ぶたびにヤスリにかけられるみたいに削り取られる。
 疲労を誤魔化す為に飛んでは休み、休んでは飛ぶの繰り返し。

 結局、駿足を誇る筈のキマイラ便が王都に戻ってくるのには、行きにかかった時間の倍を要した。
252キマイラエクスプレス:2007/10/22(月) 17:52:42 ID:LlWOkzA8
――22――

「フレデリカ、あんたは配達に行ったと思ってたんだがね。で、こいつはどういった訳だい?」
 ようやく戻ってきた王都で二人を待っていたのは、苦々しい社長の声だった。
 全く老いを感じさせない勢いのあるしわがれ声は、これ以上無いというくらいに渋い。
 怒気を露わにしてはいないが、老婆の矮躯の周りをゆらゆらと不機嫌のオーラが漂うのが見て取れるようだった。
 フレデリカは何かに責任転嫁して取り繕うとはしなかったし、ユーリーも彼女を庇う真似はしなかった。
 日も暮れかけの頃にようやく還ってきたと思ったら、背中には運ぶべきオマケを積んだまま。それどころか、封筒は破損の上、紛失。郵便屋が命を賭けるべき受け取り印すら貰っていない。
 下手に何か言っても全て逆効果だろう。
 今の社長は、導火線に点火した爆弾も同じ。わざわざ導火線の火を扇いで、破裂を早める事はない。
「納得のいく説明を聞かせてくれるんだろうね?」
 フレデリカは黙って頷いた。
 口内に溜まった唾を飲み込んで、整理すべき事柄を頭の中で組み立てて一列に整列させて、ゆっくりと彼女は切り出した。
 事の顛末を、社長は黙って聞いていた。
 報告も仕事の内であるので、事情説明はほとんどフレデリカが行ったが、無論、夜の部分は一切伏せていた。
「…で、どうしようもないから戻ってきたの」
 フレデリカの話は余計な修飾が無く要点はきちんとまとまっていて、さほど長くは無かった。
 それでも、野盗に襲われたのでその旨の被害報告を提出するので、それなりの時間を要した。既に陽が落ちかけるている。
 外からは家路を急ぐ人々と、夕餉の支度をする買い物客の活気に溢れるざわめき。
 時折、元気良く走り抜けていく足音は、アルバイト中の魔術師学校の生徒達だろう。彼らが灯して回っている魔術を使った街灯が、其処此処でぽつぽつと光を宿し始めている。
 店内にも闇が忍び寄り、薄暗くなり始めている。
 社長がよっこらせと、小さい身体を動かした。
 店内の数箇所にある柱には、それぞれ壁掛けランプが固定されている。社長はそのランプの一つに近づいた。
 ガラス製の蝋燭の炎のような絞られた形のホヤを持ち上げて、ずらす。ホヤの内側には真鍮製と思しき細い筒。それも同じように持ち上げて、ユーリーには見えないがどこかにフックがあるのだろう、引っ掛けて止める。中には、大人の親指の先くらいのガラス球。
 社長は節くれだった指でガラス球を指差して、
「灯れ」
 と言った。たったの一言だけだが、それが呪文だった。
253キマイラエクスプレス:2007/10/22(月) 17:53:16 ID:LlWOkzA8
 ガラス球の中心にポッと無機質な白い光が宿る。光量はごく弱い。かと思うと、すぐに光は強烈に膨れ上がり、直視できないほどになる。
 社長は明かりの調整用の金属筒は全開にしたままで、ホヤだけを戻した。
 くるり、と並ぶユーリーとフレデリカに向き直る。
 無言で、彼女が着ているゆったりとしたローブの袖口、その左の袖に右手を突っ込んだ。
 ローブの袖口から戻ってきた右の手には、使い込まれた色合いの長煙管が握られていた。
 ユーリーはちょっと首を傾げた。煙管は折り畳める形状にはなっていないのに、袖口に仕舞っておけるとは思えないほど、長い。
「出ておいで、マロウフィクス。火をお寄越し」
 ぱちり、と指を鳴らす。
 突然、何も無い空間から滲み出るようにして何かが現れた。愛嬌のある丸っこい身体に円らな黒い瞳、大きな耳。ネズミに似ているが、長い髭と尻尾はちろちろと燃える炎で出来ていた。
 ユーリーもフレデリカも正体など見当もつかないソイツが、ぽてっと社長の肩に落ちる。かさこそとローブを伝い、煙管の先までたどり着くと、尻尾を伸ばして火皿に詰め込まれた刻み煙草に火をつけた。顕れた時と同様に煙のように消える。
 社長は右の眉をほんの少し、数ミリくらいだが、吊り上げた。
 この坊や、たったの一日で随分と肝が据わってきとる。使い魔を見てもほとんど動じない。
 社長の観察眼は鋭かった。ユーリーは初めて目にする使い魔を物珍しそうに見てはいたが、うろたえたりはしていない。
 フレデリカと社長のやり取りの間中も、ユーリーはじっと黙り、澄んだ瞳には強い意志の光を宿らせて、フレデリカの傍に立っていた。
 ユーリーは相応の覚悟を持って、自らの意志を貫こうとしていた。たかだか見た事もないと言うだけの魔術で簡単に心を揺さぶられたりしない。
 社長は最初の一服を大きく吸い、きついが薫り高い煙草の味をゆっくりと味わう。
「フレデリカ、あんたの話は分かったよ。依頼主がそう言ったんだったら仕方ないさ」
 長く突き出した鼻から、ふーっと長く煙を吐き出した。
 あたかも、それが積もりに積もった溜め息の代わりだと言うように。
「で、坊やの方はどうするね?手紙も荷物も坊やの依頼通りに目的地まで届けた。だが受取人に届く直前で依頼主がキャンセルしたからって料金もチャラって訳にはいかないんだよ」
 ふわりと漂う紫煙を突き抜けて、鋭い眼光がユーリーに飛ぶ。
 大きい声ではないが、厳しい口調。悪意も叱責も感じられない。ただ、事実のみを告げている。
 社長は再び煙管を咥え、燻らす。
「坊やは、ウチに追加料金の金貨四枚分の負債があるってのを忘れちゃいないだろうね」
 フレデリカの報告など前座に過ぎない。
 フレデリカとユーリーにとって、ここからが正念場。
「ここで、キマイラエクスプレスで働かせて下さい!お金は働いて返します!配達はまだできないけど、きっと憶えます!」
「彼もこう言ってるしさぁ、働かせてあげてよ、社長。ユーリーの借金はあたしの分に上乗せしちゃっていいから」
 それは、道中、二人で相談した事だった。
254キマイラエクスプレス:2007/10/22(月) 17:54:06 ID:LlWOkzA8
 互いの孤独を理解し埋めあえる、番いとなれる相手を見つけたのだ。引き離される気など、二人にはさらさら無かった。
 もし、担保としてユーリーが男娼館に売り飛ばされたとしても、フレデリカは即刻身請けに行くつもりだった。ちょっとくらい仕込まれてからでもいいかしら、と外道なアイデアがちらっとよぎりはしたが。
「この坊やにどうやって手紙が運べるって言うんだね」
 じろりと目だけが動いてユーリーを睨みつける。ふざけるな、と言わんばかりの矢のような視線がユーリーを射る。
 この社長に生半可な言葉は通用しない。
 社長は勘付いていた。フレデリカのユーリーに対する呼び方が、出て行く時とは違っている事に。
「フレデリカ、坊やは重くなかったかい?」
「全然。羽みたいに軽かったわ。重装備してる時に比べりゃ、よっぽどマシよ」
 唐突な質問だった。今までの話の流れから完全に切り離され、遊離しているように感じられる社長の言葉。
 少々面食らったものの、フレデリカは肩をすくめ、事も無げに応えた。
 一大決心を言ったにも関わらず、放って置かれて不安げなユーリー。
 ふむ、と小さく呟いて、社長は尖った顎を撫でながら、ほんの少し宙を見つめる。
 フレデリカは心中で身構えた。社長が、この魔女が何を考えてるのかなんて分かりっこなかった。が、考えてる内容がこちらにとって良からぬ事なのだろうと見当はつく。今回の仕事は、イレギュラー続きでスマートさとは程遠い結果になりかけているのだ。
 報酬は金貨八枚とかなりの額だが、半分しか納められておらず、しかも残り半分の返済が全て終わるのはいつになるか覚束無い。金にうるさい社長が、何か仕掛けてこない筈が無い。
 フレデリカの準備は無駄に終わった。抵抗の予想される箇所を迂回し、脆い部分を突くのは戦術の基礎。
 社長はおもむろにユーリーに振り向き、フレデリカにしたのと似たような質問をする。
「坊や、フレデリカは重くなかったかい?」
 質問の意図に気付いたフレデリカが慌てて制止しようとしても、時既に遅し。
「はい、大丈夫でした。フレデリカさんはそんなに重くなかったですよ」
 元気一杯に答えていた。 
 魔女としても商売人としても百戦錬磨の老婆の前では、齢十五に満たない少年など赤子も同然。
 まさに赤子の手を捻るように、いともあっさりとカマ掛けに引っかかった。
 無論、ユーリーがフレデリカを背負える筈も無い。
 女が男の上に乗る。その言わんとする所は明白だ。
「あー……やっちゃったー」
 ばつが悪そうに視線を逸らすフレデリカと、苦虫を噛み潰したような顔で睨む社長。
 それぞれの表情を浮かべる二人の間で、ただ本人だけがその返事の持つ意味を理解していなかった。
「え…あれ?どうしちゃったんですか?!僕、なんか変な事言いましたか?」
 二人に挟まれて、おろおろとするばかり。
 社長が長煙管を口にやる。
255キマイラエクスプレス:2007/10/22(月) 17:54:59 ID:LlWOkzA8
 刻み煙草に火が回り、ジジ…と微かな音を立てる。
「だから人を運ぶのは嫌だったのさ。まったく、ウチの娘っこ共と来たら面倒ばっかり増やしおる」
 ボヤキと共に鼻から盛大に紫煙を吐きだした。逆さまにした煙突みたいに、煙がぶはぁっと広がる。
 諦観に満ちた深く大きな溜め息を一つ。
 紫煙が霞みのように漂い、空気に溶け消えながらフワリと登っていき、天井辺りまで来た時にはすっかり見えなくなる。
 長い沈黙の後、社長が一言、呟くように言った。
「好きにおし」
 ユーリーの顔に、ぱぁっと光が差す。至極真面目な表情を浮かべて強張っていた頬が緩み、彼の相貌と相まって、天使のようなと形容するのがピッタリの笑顔が浮かぶ。
 フレデリカがひゅうと口笛を吹く。
「ウチの社員が大切な荷物を傷物にしたと知られちゃあ、我が社の信用に関わるんだよ」
 二人はまるで聞いちゃいなかったが。
 喜びのあまり、ユーリーはフレデリカの胸に飛び込んでいた。
 フレデリカも彼を抱きとめ、可愛らしいユーリーの額にキスの雨を降らす。
「ただし、それが社員同士だったって言うなら話は別だ。別段、ウチは社員同士の恋愛を禁じちゃいない。それに誰と誰がくっつこうが離れようが世間様も気にしやせんだろうさ」
 手に手を取って、指と指を絡めあい、一緒にいられる喜びを噛み締める。
 子供みたいにはしゃぐフレデリカが、ユーリーをぐいと持ち上げる。とうとうユーリーを胸の谷間に抱き締めて、舞踏会でワルツでも踊るようにくるくると回る。
 広い店内とは言え、キマイラが立って踊るにはちょっと狭い。
 大きな漆黒の翼や尻尾が振り回されると、かなり鬱陶しい。二人とも社長の事など頭から飛び去ったようで、ワルツが終わる気配は無い。
 社長は、やれやれと首を振りながら、店の奥に引っ込もうとした。
 扉の前で急にくるりと振り向き、びしりとねじくれた枯れ枝みたいな指を突きつけた。
「言っとくがね、坊や。ウチの仕事はきついよ。途中で投げ出したりなんかしたら承知しないからね」
 フレデリカの胸と腕の中でもみくちゃにされながら、少年は社長に頭を下げた。
 一つの扉は閉じられた。だが、別の扉が開かれる。
 それがより不幸なのか幸福なのか、社長にもフレデリカにも、無論ユーリー自身にも分からない。
 そこには苦難もあるだろう。大多数の人間の人生がそうであるように、挫折もあるに違いない。
 だがしかし、そこは暗闇に閉ざされてはいない筈だ。
 何故ならば、彼と彼女はもう独りではないから。
 掌に温もりを感じる。その温もりを確かめるように、その感触が露と消えてしまわないように、握る手に僅かに力を篭める。同じくらいの力で握り返される。
 ユーリーは明るい明日に向かって、元気一杯に挨拶をした。
「はい、社長!よろしくお願いします!」
25618スレの314:2007/10/22(月) 17:56:27 ID:LlWOkzA8
『キマイラエクスプレス』 了

以上です。
非常に長文となってしまい、失礼致しました。
フレデリカの外見は漫画版「荒野に獣慟哭す」の迷企羅姐さんと、MGS4のクライングウルフを参考にしてます。
体型が獣ですと、体位が騎乗位かバックに限られてしまうのがネックですね。
本番シーンがエロく描けずで、してる時の熱気が上手く出せませんでした。

さらに投下してから前編の一部に推敲不足が露呈しました。
吊ってきます…。
257名無しさん@ピンキー:2007/10/22(月) 22:33:31 ID:RVNOelZW
ひぐらしかとおもた
>フレデリカ
258名無しさん@ピンキー:2007/10/22(月) 23:10:05 ID:tms2LLDU
むしろ某NTRゲーの薬中の方が浮かんだw
259名無しさん@ピンキー:2007/10/22(月) 23:21:09 ID:3SiOvZvH
むしろ某同人RPGの人魚g(ry
260名無しさん@ピンキー:2007/10/23(火) 00:28:28 ID:7cIe8oeI
魔砲使い黒姫読んでたから二人の脳内デザインが零と黒姫だった。
GJ!
261名無しさん@ピンキー:2007/10/23(火) 02:30:55 ID:Uz65+dk3
>>256
おー、荒野に獣慟哭す読んでんだ
メキラ姐さんは確かにエロいよね。かなりのどSっぽいけど 
262名無しさん@ピンキー:2007/10/23(火) 12:06:02 ID:VoytTOPA
>>256
GJ!
フレデリカの心理描写で、もう少し切なさがあればなぁとも思った。続きが読みたい。
263名無しさん@ピンキー:2007/10/24(水) 22:05:35 ID:9kp0RiRz
なんでちっともGJ付いてないんだ。
GJ!世界観が作り込まれていて入り込めた。同世界観のSSが読んでみたいよ。
落ち込んだかもしれんがガンガレ。
264名無しさん@ピンキー:2007/10/24(水) 23:06:45 ID:KKecnsRb
もしかして 住民みんなキマイラエクスプレスの地元支部を探してさまよってる
265名無しさん@ピンキー:2007/10/24(水) 23:10:57 ID:Granc27Y
魔王の伝統料理がモチ……がヒット。
いやいや、良い話でした。普通の意味でもクオリティ高いし。
266名無しさん@ピンキー:2007/10/25(木) 04:07:59 ID:yRVK4x7i
なんか薄めの文庫本読んだ感じである。つまりめがっさ長井!
でもその分中身を楽しめた。坊やが壊れてからの描写とか俺涙目wになり掛けたかんねw
GJなんて簡単な言葉で表せられないくらいGJ!感動した!!
267名無しさん@ピンキー:2007/10/25(木) 17:04:28 ID:Ue98R+M5
これはGJすぎる。ボーイミーツガールとしてもエロスとしても。
ぜひとも続きが読みたいお話であります! 他の社員の娘さん方とか!
なお当方のユーリー君脳内イメージはP2のヒロムキュンでした。
26818スレの314:2007/10/25(木) 17:45:12 ID:SUxyscir
皆さん、感想ありがとうございました。
続きに挑戦しようとは思うのですが、続編と言う物を書いた事が無いので、どうネタを出せばいいのか悩んでいる内に完全別ネタが浮かぶ悪循環です。

>263氏
同一世界観で書いたのは、これが2本目です。
1本目は獣人スレの4スレ目で『お嬢様と鈍感牛』と言うタイトルで書きました。
よろしければ、そちらの方もどうぞ。例によって、男が責められっぱなしですが。
ttp://red.ribbon.to/~eroparo/sslibrary/o/original1203.html
269名無しさん@ピンキー:2007/10/25(木) 20:28:07 ID:BMJZT+FV
>>268
読ませて頂いた。確かに出だしは一緒だな。

終盤はニヤニヤが止まらなかったよw
こういうノリの話は大好きだ。
270名無しさん@ピンキー:2007/10/25(木) 20:47:02 ID:xnBZxDbt
GJ!!
続きますよね!?続くんですよね!?
271名無しさん@ピンキー:2007/10/26(金) 02:49:39 ID:lpbRDzFy
>>268
乙でした


続きは色々あるジャマイカ
職場での仕事とか
結婚式とか
妊娠出産とか
子育てとか

…人とキマイラの子供ってどうなるのかしら
272名無しさん@ピンキー:2007/10/26(金) 11:26:54 ID:Nx9JlNj0
>>271
人間、黒猫、鴉、蝮のキメラと人間だから、人間の遺伝子が一番強く出るんじゃないか?
273名無しさん@ピンキー:2007/10/26(金) 16:07:09 ID:ssHMy6Ky
獲得形質は遺伝しないぞ。ルイセンコ学説ならともかく。
たぶん産まれてほしいと思うものが産まれるんじゃない?
274名無しさん@ピンキー:2007/10/26(金) 17:50:24 ID:cKkQ1laG
ユーリーの手料理を食べたフレデリカが無意識に涙を流す…って感じの続きをキボンヌ
275名無しさん@ピンキー:2007/10/29(月) 08:03:47 ID:ufui0Ioe
ちょっと浮上してみよう。
276名無しさん@ピンキー:2007/10/30(火) 01:02:18 ID:vMG5Nije
バラストタンクブロー!アップトリム最大!!急速浮上!!!


あ、潜水艦の九十九神ってのは如何か?
277名無しさん@ピンキー:2007/10/30(火) 01:03:40 ID:mvlVfopG
>>276
GS美神のUボートのむさいおっさんしか思い浮かばない…
278名無しさん@ピンキー:2007/10/30(火) 01:32:11 ID:u9inAQaK
深海探査艇とかならともかく、潜水艦だとどうしても軍人さんの乗るものというイメージが強いからなぁ。
もしくはディープブレッシング 。
279名無しさん@ピンキー:2007/10/30(火) 12:01:37 ID:9/oBPw4p
そこで鯨娘ですよ
280名無しさん@ピンキー:2007/10/30(火) 12:44:57 ID:kDRym3+S
船の代名詞はsheだけどな
seaじゃないんだからね!
281名無しさん@ピンキー:2007/10/30(火) 15:48:27 ID:a6nubtGY
>>278
ジョジョ3部でアブドゥルが買ってたけど、アレはちょっと違うしなあ。
6部でも承太郎の身体を運ぶ為にスピードワゴン財団の小さな潜水艇があったな。
「鯨の王」という小説を読んだらイルカの生体脳を組み込んだ小型潜水艇が出てて、ちょっと萌えた。
282名無しさん@ピンキー:2007/10/30(火) 18:50:42 ID:4OoETub3
>>280
イエス、マム。
28318スレの314:2007/10/31(水) 15:11:00 ID:xO9NRf/n
ハロウィン合わせで一本書きました。
連投気味になっちゃいますが、どうしたもんでしょうか。
284名無しさん@ピンキー:2007/10/31(水) 15:29:25 ID:BrHB51CU
それは当然投下すべきだと思いますよ!
wktkwktk。
28518スレの314:2007/10/31(水) 17:37:47 ID:xO9NRf/n
時節柄、ハロウィンをテーマにして1本書きました。
14レスほどお借りします。
ロリで、ちょっとマゾ仕様です。人外要素自体は少なめ。本番無し。足コキ、つば垂らしです。
その手のプレイや描写が苦手な方はスルーをお願いします。
286いたずらカボチャ:2007/10/31(水) 17:38:44 ID:xO9NRf/n
 青年は自室で寝っ転がってテレビを見ていた。狭い部屋の中には様々な本が何本も塔を成し、ゲーム機やDVDデッキなどがゴチャッと置かれている。一見乱雑ながらも、そこに住まう者にとってはもっとも効率良く物が配置されている、典型的な独り者の部屋。
 あまり大きく無い液晶のテレビ画面に映っているのは、DVDに録画しておいたローカルテレビ局の放送だ。
 サイコロキャラメルの空き箱を握り締めた男が、大きな駅前だというに辺り憚らず画面内狭しと飛び跳ねている。もう一人、モジャモジャ頭の男性が、その様子を固唾を飲んで見守っている。
 力一杯、男の腕が振られ、サイコロが宙を舞う。
 と、いい所でコマーシャルになった。
 購入したDVDソフトではなく放送を録画した物なので、コマーシャルまでそのまま一緒に録画されているのだ。
「よっこいせっと……」
 青年は体を起こし、飲み物を取りに立った。こういう時に、コマーシャルと言う存在は実にありがたい。
 十秒とかからず辿り着ける場所にある冷蔵庫を開けて、ペットボトルをラッパ飲みして、そのまま戻す。
 そこで、ふと、彼の耳に届く音があった。妙に騒がしい。部屋の中からではない。外からだ。
 騒がしいと言っても、暴走族のような分かり易い騒音ではない。だいたい、この辺りの彼らは意外と根性が無く、バイクに乗っても寒くない、春から夏にかけての温かい時期しか出てこない。
 内容までは聞こえないものの、声が纏う雰囲気からは楽しそうな様子が浮かぶ。甲高いざわめき。パタパタと駆けていく軽い足音。それも複数。
 首だけを捻って、壁にかかったカレンダーを見やる。日付は、十月三十一日。なんかあったよなぁ、と記憶を漁って、冷蔵庫の扉を閉めたところで彼はようやく納得した。
 ハロウィンか。日本人にゃ、あんまり縁の無いイベントだよな。
 青年の感想はそう思う程度に留まった。
 町内の子供会か、小学校辺りで主催しているちょっとした地元のイベントだろう。
 そんな事を考えつつ青年が部屋に戻り、ごろりと元いた場所に寝転がると、タイミングを見計らったようにコマーシャルが終わった。
 画面の向こうで、サイコロの出目が大写しになる。同時に二人の出演者が、がっくりと膝を付く。
『……ッッダメ人間!!!』
 コン、コン。
 テレビからの血を吐くような罵声に混じって、乾いた音が聞こえた。二度、ドアが叩かれた音。ノックの音だ。
 青年は首を捻った。夜はそれなりに更けている。時間が時間だ。新聞の勧誘や、宗教関係者にしては仕事熱心すぎる。
 もし仮に青年の友人達ならば、礼儀正しすぎる。彼らは大抵、ノックなど無しに問答無用でドアを開けて入ってくるからだ。
 思い当たりそうな選択肢を、頭の中でとっかえひっかえ。だが、どれも当てはまりそうに無い。
 コン、コン。
 再び、規則正しく間を開けて二回、控えめにドアが叩かれる。
 とりあえずは開けるしかないだろう。
 居留守を使う意味も無い。使ったところで、どうせテレビの音でバッチリばれているだろう。
287いたずらカボチャ:2007/10/31(水) 17:40:23 ID:xO9NRf/n
「はいはーい。今出ますよー」
 がちゃり、とドアが開かれる。
「Trick and treat」
「……はへ?」
 果たして、青年の予想を全て裏切る訪問者がドアの外には立っていた。
 訪問者は、一人の少女だった。
 黒いトンガリ帽子。
 尖った先端は青年の首に届く程度。中身の方は、たぶん頭の天辺が青年の胸に届くか届かないかくらいだろう。
 黒いワンピース。
 薄手の黒い布が凹凸に乏しい細い肢体を包んでいる。スカート裾や袖口はギザギザの波になっていて、肘から先は露出していてこの季節の服としてはちょっと寒そうだ。
 黒いオーバーニーソックス。
 ぴっちりとフィットして、肉付きは薄いが伸びやかな足のラインを露わにしている。ニーソックスとスカートの間から覗く素肌は染み一つ無く、健康的に白い。
 そして、ふわりと広がるスカートの裾から姿を見せているのは、薄いオレンジ色のぱんちゅ。もとい、カボチャパンツ。
 少女のワンピースのスカートは、年齢の割に大胆なまでに短かった。提灯のように大きく脹らんだパンツの一部がスカートの裾を押し上げて、見えてしまうくらいに。
 あれは下着としての役割を果たすパンツではなく、コスチュームの一部なのだろう。
 と、青年は一人で勝手に納得した。
 だいたい、肝心の隠すべき中身が見えてしまうようではスカートの意味がない。
 魔女の服装にオレンジ色のカボチャ、と言う事で頭の先から爪先まで統一したテーマを持たせて全身でハロウィンらしさをアピールしているのだろう。
 ハロウィンのカボチャとカボチャパンツをかける辺り、そしてソレを周囲にアピールするコスチュームにする辺り、青年はこのコスチュームのデザイナーとはいい酒が飲めそうだと思った。
 一見した所で素材がどうの裁縫がこうの、と言えるような知識は青年には無かった。
 ただ、良く出来たコスチュームだというのは分かった。
 あつらえたような、と言うよりは上から下まできちんと一式あつらえたのだろう。安物の既製品を着ているような、だぶついたりキツキツだったり無理をしている感が全くしない。
 念の入った事に、小振りな金属製と思しき角燈までもが少女の腰にぶらさがっていた。
 おおよそ円筒形をしていて、明かり取りの窓は一つきり。その丸窓の中で、熱の無い青色の光が無気味さを煽るように揺らめいている。
 突然の少女の訪問と、そしてその訪問者の可愛らしさにしばし呆気に取られる青年を、少女が楽しそうな表情を浮かべて見上げる。
 少女が上半身を傾がせた拍子に腰の角燈が、かろん、と音を立てる。
288いたずらカボチャ:2007/10/31(水) 17:41:06 ID:xO9NRf/n
「すごいな、そのコス、良く出来てるね」
 青年は素直に感心した。
 同時に、「炉裏のおぱんちゅハァハァ」とか言ってる節操のない脳内自分の一部に、『パーン!』のアスキーアートと共にツッコミを入れてやる。
 青年の素直な賞賛に、少女は輝くような微笑みで返事をした。
 少女が再び口を開いた。
「とりっく・あんど・とりーと、だよ。お兄ちゃん」
 鈴を転がすような、とはまさにこの事。
 楽しいイベントの途中なのだろう、弾むような声音からもそれが伺える。
 間抜け面を晒す青年の様子から察したのだろう。流暢だった英語の発音もさっきよりも大分カタカナに近くなり、青年にも聞き取れるようになっていた。
 ハロウィンについての知識が乏しい青年だけれども、少女の台詞に少しだけ違和感を覚えた。
「あーっと、なんだったかな。確か、お菓子あげるんだったっけ?」
「そうだよ、お兄ちゃん」
 青年は、その違和感が自分自身の知識不足によるものだろうと思い、そいつを意識の隅に追いやって、さらにポイと捨てた。
 仮に彼が自分の覚えた違和感の正体が分かったとしても、子供だから言うべき台詞を間違えて覚えたんだなぁと想像するに留まっただろう。
 少女が真実、その言葉通りの意図を持っているなど欠片ほども思わず。
 青年はハロウィンをよく知りはしなかったが、それでも、何をどうすればいいのかくらいは知っていた。歴史的な背景や宗教的な意味は兎も角として。
「お菓子って言ったってなぁ……ちょっと待っててね」
「は〜い」
 なにか子供にあげられそうなのはあったかなぁと記憶を引っくり返しながら、青年は部屋に引っ込んだ。まずは机の上から行方不明のお菓子捜索作戦に取り掛かり、ついでに机の上に置いてあるリモコンでいまだ掛かりっ放しのDVDを止めて、黙らせた。
 明るく返事をした少女の後ろで、独りでにドアが動いた。
 きい、と僅かに蝶番の軋みをあげる。誰も触れてもいないのにドアがゆっくりと閉まっていく。
 少女は手も触れていない。閉まるほど強い風も吹いていない。
 ドアノブが捻られ、ボルトが引き込まれ、がちゃんと大きな音を立てないようにして閉まった。まるで、見えない誰かが静かにドアを閉めているよう。
 僅かな音も、空気の揺らぎも生まずにドアは閉まった。
 少女に背を向けたままの青年は気付かない。
 かしり、と小さい金属音と共にサムターンが回って、しっかりと鍵がかかる。
 日本人離れした涼しげな美貌には、うっすらと薄暗い笑みが浮かぶ。
 ごそごそと探し物をする青年の後ろ姿を、ゆらりと揺らめく鬼火のような光を双眸に宿した少女が見詰めていた。
289いたずらカボチャ:2007/10/31(水) 17:41:46 ID:xO9NRf/n
「うーん、残念だけどあんまりいいのがないなぁ」
 なんともタイミングの悪い事に、菓子の類いは買い置きがなくなっていたのだ。冷蔵庫の中身も減っており、青年もそろそろ買い出しに行かねばと思っていた頃だった。
 頭を掻き掻き戻ってきた青年の手に握られるのは、数少ない生き残りの一つ、紙製のパック。
 少女にポッキーの箱を見せた。
 箱の紙パックの封は解かれ、いくつか入っている内部の包装ビニル袋も一つは開けられており、見たとおりの食べかけだ。
 まだ開けたばかりとは言え、流石にこいつをほいとあげるのは気が引ける。しかし、わざわざ青年の家を訪れた、楽しいイベント中であろう少女を悲しませるのはもっと気が引ける。
「これしかないけど、いいかい?」
「うん。ありがとう、お兄ちゃん」
 わーい、と無邪気にはしゃぐ少女を目の前にして、青年の心にふと魔が差した。
 開けられたビニルパックの中からポッキーを一本摘み取り、満遍なくチョコレートがコーティングされた先端を軽く咥えて、 
「はい」
 と、少女の視線と高さを合わせるように体を屈めて、突き出した。
 いわゆる、ポッキーゲームの姿勢。学生のコンパや、ホステスとの遊びでの定番メニューだ。青年は耳にはした事はあれど、目にした事や実際にプレイした事は無い。女と縁も無ければ金も無い彼にとっては、都市伝説。
 青年としては、何も意図しない、ただの気まぐれだった。いや、その気まぐれさえも、ナニカの気に当てられたものか。
 最後までどころか、ポッキーの端に口をつけるのすら強要しようとは思っていない。
 この可愛らしい少女がどんな風に戸惑うのか、見てみたい。
 そのつもりだった。
 さく……。
 青年が咥えるのとは反対の、チョコで覆われていないクッキーの地が露出した柄の部分。少女はそこを口に含んだ。
 青年の全ての動きが止まった。
 目と目が合う。そこで初めて、青年は少女が外国人の血を引いていると知った。
 少女の瞳は青かった。蛍光灯の光を反射しているのだろう。少女が腰から下げる角燈と同じように、ゆらゆらと蒼い炎の如く揺れるそれはまるで、死沼に誘う鬼火<ウィル・オー・ウィスプ>。
 吸い込まれそうなほど青い瞳に魅入られてしまったかのようで、青年の頭の中身は全て吹き飛ばされていた。
 さく…さく…。
 白く小さな歯が軽い音を立てて、チョコレート菓子を噛み砕いていく。
 歯が小気味いい音を立てるたびに、二人の距離が徐々に近づいていく。
 そして、それはやがて、零になる。
290いたずらカボチャ:2007/10/31(水) 17:42:41 ID:xO9NRf/n
 少女の唇は、チョコレートの味が移ったかのようだった。
 唇同士がほんのちょっとだけ触れ合うほどのごく軽い、でも甘い甘いキス。
「うふふ。お菓子ありがとう、お兄ちゃん。美味しかったよ」
 少女が離れてもなお、青年は呆然としていた。思考も、体も凍りついたまま。
 予想の遥か斜め上を行く少女の行動に、反応できないでいた。
 つい、と少女から青年に差し伸ばされる物がある。先ほどは青年から伸ばされたが、今度は反対だ。
 それは少女の人差し指。
 男の物と比べれば遥かに繊細で柔らかい。その柔らかさがどのくらいなのかと、青年は己の唇で知らされた。
 唾液と体温で溶け、唇に少しだけ付着していたチョコレートを、少女の指がそっと拭い取る。
 そして、少女は何の躊躇も見せずに、チョコがついた指をぺろりと舐めた。
「とりっく・あんど・とりーと、だよ。お兄ちゃん」
 口中に己の人差し指を含んだまま、目尻を細めて微笑んだ。
 それは、少女と言う年齢にはまるで似合わぬ、とても艶めかしい笑みだった。
「"とりーと"はもう貰ったから、次は"とりっく"だね」
 この時点まで来て、ようやく青年の思考は再び回転を始めていた。青年は慌てた。
 おかしい。こんなハロウィンは聞いた事がない。
 お菓子か、さもなくば悪戯か。
 それがハロウィンの伝統の筈だ。実際に参加した事のない青年だって、それくらいは知っている。
 その青年の狼狽振りが面白かったのか、少女がくすくすと笑う。
「言ったじゃない。とりっく・あんど・とりーと、だって」
 青年の無知と慌てぶりを嘲笑っているのではない。
 あくまで軽やかに愉快そうに。年下の子供の間違いを直して上げるかのように優しく微笑みながら、少女は青年の思い違いを正す。
 "とりーと"は、菓子。"とりっく"は、悪戯。
 二つの単語を繋ぐのは、"オア"ではなく"アンド"。
 ならば、少女の意思は、こうなる。
「だから…お兄ちゃんがお菓子をくれたから……悪戯してあげる」
291いたずらカボチャ:2007/10/31(水) 17:43:25 ID:xO9NRf/n
 それは少女の言葉と同時だった。
 少女に向かって屈んだままの姿勢でいた青年が、バネ仕掛けさながらの勢いで跳ね上がり、突如として"気をつけ"の姿勢になる。否、青年にそのような意思は無い。させられる、だ。
 二の腕が水平になるまで肩が上がり、ついで右腕が肘の所から直角に曲げられ、くるりと回転して指先が天井を指す。左もまるで同じ。
 兵隊のようにきっちりと気をつけの姿勢で揃えられていた両足が開き、休めの姿勢になる。脚の開きが大きくて膝も曲がっているので、休めの姿勢と言うよりはがに股に近い。
 まるで見えない展翅台に生きながらに貼り付けられた蝶の標本。
「俺をどうするつもりだ!」
 青年の怒気を含んだ怒鳴り声など、どこ吹く風。力の差は歴然としている。どこに怯む必要があるのか。
 先ほどと同じように、少女がくすくすと笑う。
 目を細め、桜色の綺麗な唇をにっこりと吊り上げて。年下の子を優しくたしなめるように。
「ねぇ、お兄ちゃん。普通の子供が、こんな風にお兄ちゃんを金縛りにできると思う?」
 言外に含む意味は明白。
「お…俺をどうするつもりですかァ?!」
 いきなりヘタレる青年。まぁ、無理もないが。
 全くの突然に彼の日常は目の前の少女に粉砕され、思いも寄らない未知の恐怖に曝されているのだ。百戦錬磨の戦士だとかではない普通の大学生ならば、そうなって当たり前だろう。
 青年の手も足も、感覚だけを残して神経が切られたみたいで指一本どころか身動ぎ一つ出来ない。その癖、首から上は完全に自由で、少女が何をしようとしているのかは良く見えた。
 少女は、青年の足元に膝まづいていた。
 僅かな布の隔たりの向こう側に汚らわしい雄の器官があるのにも躊躇せず、そっと顔を寄せる。少女が、青年を見詰めた。
 ぞわり、と青年の背筋を走り抜けるものがあった。
 恐怖と快感だ。そのどちらもまだ精神的なもので、何かを肉体に直接与えられて引き起こされる物ではない。
 その二つが一緒に背筋を走り抜け、ぞくりと身を震わせる。実際にはそういう錯覚を起こしただけで、金縛りの体は相変わらず身動き一つ出来なかったが。
 彼はその二つの感情が、相反するように見えて実は同居できるのだと言う事を、幼いと言ってもいい年齢の少女に教えられていた。
 恐怖は、風に揺らめく炎の如くチロチロとざわめく少女の蒼い眼光によって。
 快感は、ジーンズの股間に顔を近づけられチャックを咥えられる事によって。
 少女の意図は明白だった。
 見せつけるようにしてゆっくりとチャックが引き下げられる。ジジジ…と金属の擦れあう小さな音がする。
 少女の動きは一つ一つがゆったりとしていた。別に動作が緩慢な訳ではない。青年が、目で見て、情報が脳に届いて、それを理解して、心に染み渡るまで待つ。
 自分が何をされているのか、じっくりと噛み締めさせるように緩やかな動きだった。
 それはいっそ扇情的と言ってよかった。
292いたずらカボチャ:2007/10/31(水) 17:44:15 ID:xO9NRf/n
 はぁ、と少女が咥えていたチャックを吐息と共に離した。
 そこにはまるで媚薬でも含まれているかのよう。
 直に触れられた訳でもないのに、たったそれだけの行為で青年の肉棒は充血し始めていた。
「お兄ちゃん。ジャック・オー・ランタンって知ってる?」
 青年は、その問いに答えるどころでは無かった。
 股間から沸き起こる熱を必死の思いで防ごうと苦悶していた。少女の吐息が細胞一つ一つに染みこんで、まるで内から炙っているように感じられる。
 この少女が見た目通りの存在ではないと骨身に知らされている最中では有ったが、それでも十歳近く下に見える女の子の前に勃起したブツを晒す訳には行かない。
「知らないってお顔してる。仕方ないかな、あたし達ってこの国じゃまだまだマイナーだもの。でも、だから、もっとハロウィンを知って欲しいの」
 少女が、彼の理性と倫理観と衣服を一枚一枚剥いていく。
 カチャカチャとバックルを言わせながら、ズボンのベルトを外す。
 青年は腰を振って、何とか少女の手から逃れようとしたが、徒労に終わった。
 動かそうという意思に、体は全くの無反応。いまだに青年の体をがっちりと拘束する金縛りが解ける気配は無い。
「だからね、こうやってハロウィンを知らない人に教えてあげてるの。
 本当はアンドじゃなくってオアなんだけど、それくらいも知らない人には細かい所がどうなってるーとかよりも、まずは知ってもらわないとね」
 青年の抵抗も空しく、ジーンズが下ろされた。グレイのトランクスが露わになる。
 こうしてあげれば絶対に忘れないでしょ?、と極上の笑顔と共に少女は言った。
 初めは背筋を冷たく走っていた恐怖は、既に半ば以上が肉欲への期待感に駆逐されていた。
 トランクスの下の器官が、青年のどこよりも雄弁にその事実を物語っている。
 そこは既に丘となっていた。まだ丘の標高は低い。頂きとはなっていない。なってはいないが、ゆるゆると勃ち上がり、着実に天を突こうとしていた。
「それにぃ…これは、いやいやしてるって訳じゃないのよ」
 少女の言葉に嘘は無かった。彼女の笑みがそれを証明している。
 目前に迫る卑猥な盛り上がりを嫌がる風でもない。
 それどころか、ソレが親しい友達にも秘密にしておきたいほどの大切な宝物だとでも言いたげに。
 鎌首をもたげつつある脹らみを、そっと掌で覆い隠した。
「お兄ちゃんみたいな男の人に悪戯するのって、すごく面白いんだもの」
 少女から、春風のように暖かい微笑みは失せていた。
 今、彼女の貌に浮かぶのは、鼠をいたぶる猫のそれ。
 青年の肉棒が、どくんと一際大きく脈動した。
293いたずらカボチャ:2007/10/31(水) 17:45:03 ID:xO9NRf/n
 青年の顔に浮かぶ、苦悶の表情は意味が変わっていた。
 彼は趣味こそ多少特殊な部類に足を踏み入れてはいたが、一般常識と倫理観は普通だった。
 従って、見せてはいけない相手に見せるべきでないモノを見られてしまう事を嫌がった。必死に小さい手から逃れようとしていた。
 が、今は違う。
 動きの止まった手が、その先を与えてくれない事に苦しんでいた。
 肉の発する熱を余さず感じ取ろうというのか。可憐な手の平は、下着を突き破らんばかりに押し上げる肉棒を、布切れ一枚挟んで包み込んでいた。
「うふふ、お兄ちゃんのすごく熱〜くなってる」
 無垢である筈の少女の口から、淫らな言葉が発せられるたび、山の頂きが高くなる。
「あ!今、ぴくんって動いたよ」
 羞恥心に顔を真っ赤に染めながらも、青年は顔を逸らさなかった。
 いや、逸らさないのではない。逸らせない。ダメだと理性が訴えるものの、愛らしい少女の手で触れられているという事実が何よりも彼を昂ぶらせる。
「とくんとくんってしてる。なんか爆発しちゃいそう」
 少女は、青年が認めたくない事実を一つ一つ丁寧に指摘して、雄の部分を包んでいる薄皮を剥ぐ。
 言葉通り、まるで心臓が股間に移ってしまったかのように感じられた。
「それに、こんなに硬くなっちゃってる…」
 手の平で脹らみを押し包みながら、中の感触を楽しむように少女が指を蠢かす。
 くにくにと細い指先がグレイの布地の上で動く度、甘くもどかしい感触が沸き起こっては青年に歯軋りさせる。
 少女が、小さな唇を窄めて、滾る頂きへと近づけた。
「なっ?!いや、そんな事しちゃダメだって!」
「嘘つきなお兄ちゃん。本当はもっとやってって思ってるくせに」
 青年の制止も少女には届かない。
 ふぅ、とバースデーケーキの上にたつ蝋燭を吹き消すような感じで、肉棒の先端がいる辺りを軽く吹く。
 トランクスが燃えた。
 青い炎に包まれて、瞬き一回にも満たない時間で、灰も残さず燃え尽きる。だと言うのに、青年の肉体には火傷どころか熱すら伝わっていない。
 途端、戒めから解き放たれた肉棒が、ぶるんと暴れる。
「あははっ、出た出た〜!」
 ひょいと軽やかに少女の頭が後退する。
294いたずらカボチャ:2007/10/31(水) 17:45:47 ID:xO9NRf/n
 それが来ると予め分かっていたようなごく自然な動きで、振るわれる肉棒が触れるか触れないかのギリギリの距離を保って避ける。まるで相手の間合いを全て把握した熟練の格闘家だ。
「あは、お兄ちゃんったら元気〜。それに、ほら、こんなにぷっくりしてる〜」
 ぴと、と熱く赤く火照った肉塊にひんやりした細い指先が触れる。
 そっと、慈しむかのように、あくまで優しく。
 おっかなびっくりで触れているのが分からないほど弱くもなく、かといって好奇心に任せて痛みを与えるほど強烈でもない。その微妙な力加減をわきまえた様は、手練手管に長けたオンナそのものだ。
 白い指先が、まぁるく円を描く。頭にこさえたコブを撫でてやって痛みを和らげてやるように、ゆっくりゆっくりと。
 青年が苦しげに喘ぐ。彼の肉棒から腰の裏を伝って、背筋を通り、延髄へと快美電流が流れる。
 少女はその声を聞きながら、嬉しそうに指を動かす。
 すりすり、すりすりと小さな円を描きつづける。
 触れているのが分かるけど、けして強くない。あまりにもどかしい刺激に、もっと強くしてくれと青年の身体が懇願の涙を流し始めた。
「ほらほら、お兄ちゃん。分かる?先っちょから、ねばねばしたのが出てきたよ?」
 零れ落ちる透明な粘液を指の腹で受け止めては、少女はソレを亀頭全体に塗り広げていく。
 羽毛で表面を撫でつけるような愛撫に、じれったい快感と切なさだけが青年の内に積もっていく。
 じくじくと痺れるような快感が、雪のように降り積もる。だが、少女はけして青年に雪崩を打たせない。
 張り出したエラから艶々した表面まで満遍なく這い回る指先は、とろとろと先走りを垂れ流す鈴口に到達した。
 指先が尿道口を擦り、ほんの僅かだけ押し入って、くにゅっと穴を広げる。
 一際強烈な刺激に青年が仰け反った。がつっと後頭部が床に当たるが、痛みなんて感じてる余裕は無い。
 弾けそうになる寸前。
 きゅ、と根本を押さえられた。
「ぐっ!ぐあぁぁぁっ!」
 白い渦は、奔流となって肉筒を駆け抜ける事を許されずに逆戻り。
 一見たおやかに見えて万力の如き剛力を秘めた指は、噴きだす事など許さない。指の戒めをすり抜けたちょっとだけ濃い先走りが、ぴゅるっと一滴、力無く吹くがそれだけ。
「ダーメ。まだイカせてなんてあげなーい」
 天使のような笑みと優しい声の、残酷な宣言。
295いたずらカボチャ:2007/10/31(水) 17:46:47 ID:xO9NRf/n
 快感を苦痛にすりかえられ、その二つが混ざった荒い呼吸をする青年の体が、ガクリと動いた。
 ゆっくりと青年の体が倒れ始める。彼の背中の下に見えないジャッキでも据え付けられたような感じだ。まるでダンプの荷台に寝かされているように倒れていく。
 とうとう、青年は仰向けになった。
 快感、苦痛、恐怖、屈辱、被虐。
 全てが混ぜこぜになった彼を、少女が見下ろしていた。
 少女は何も言わない。黙っている。黙って、彼の開かれた両足の間に立っている。
 いまや、床に仰向けになった青年の無力な様を、黙って眺めて楽しんでいるかのようだ。
 唇は閉ざされているが、彼女が何事かを企んでいるのは青年にも分かった。
 僅かに朱の散らされた少女の頬がもごもごと動いている。
「まさか…」
 青年の顔が歪む。
 少女は見逃さなかった。恐怖と嫌悪に慄くソコに一筋の期待が含まれていた事を。
 少女は青年が望む事をしてやった。
 ちろり、と舌を突き出す。
 一拍の間をおいて、唇で塞き止められていた物が流れ出した。
 唇を通り抜け、舌の腹を流れ、尖らせた先端から狙った場所目掛けて滴り落ちる。つぅ、と唾液が細い滝と化す。
 青年が息をするのも忘れるほど見守る中、唾液の流れは狙いあやまたず、亀頭の裏側に落ちる。
「うぅっ!」
 彼の体で最も熱くなった所に、少しだけひんやりとした液体が伝う。その温度差に青年が呻く。彼は、少女の体温を感じていた。
 少女は僅かに顔を揺らして、亀頭表面に満遍なく唾液を垂らしていく。
 透明な唾液は先走りと混ざりあい、肉棒を淫猥に濡らしていった。
 目も眩みそうな屈辱。
 同時に何と言う甘美な快感。青年がどういう感情を抱いているかは、彼の股間が一番雄弁に語っていた。
 異能の力を持つ人外の存在とは言え、見た目は年端も行かない少女に良いようにされる。
 異常すぎるシチュエーションもあいまって、屈辱が被虐の快楽へと転化する。
 いつの間にか、青年は少女によって与えられる酷く歪んだ快楽を受け入れていた。否、心待ちにしていた。それは少女に膝を屈したのと同義であった。
 既に青年は犬のように彼女の行為を待ち望んでいた。
「お兄ちゃんはぁ、こーして欲しいんだよね〜?」
 すっ、と足が持ち上がる。
296いたずらカボチャ:2007/10/31(水) 17:47:36 ID:xO9NRf/n
 肉付きの薄い、年相応の幼い足。
 盛りのついた犬さながらの勢いで青年の鼻息が吐き出される。円やかさはないがほっそりとした複雑な曲線全てを、青年に見せ付けていた。
 上から見た時はパンツが裾からちょっと姿を覗かせていただけだが、今は違う。青年の膝辺りに立って、足を上げればスカートが捲れて中身がほとんど見えてしまう。それほどまでに少女のワンピースのスカートは丈が短かった。
「お兄ちゃん、期待してるでしょ?おちんちんがプルプルしてる。うふふふ、そーっと、踏んであげるね」
 上がった足は、びくびくと震える肉棒の上に軽やかに降り立った。
 バレリーナのように爪先が伸ばされる。形の良い桜貝のような爪が黒いニーソックスの薄い生地を通して見える。
 伸ばされた爪先が、亀頭の裏側にチョンと触れた。
 くうぅっ、と青年が呻く。
 それだけで達しそうなほどだった。
 屈辱は背徳感というスパイスで調理され、素晴らしい料理となる。少女に淫らな器官を足蹴にされるという嗜虐の快感に、脳が痺れる。
 青年は己の目を疑った。
 少女が履くカボチャパンツは徹底的に凝ったディティールだったからだ。
 パンツのモチーフは、彼女自身と同じジャック・オー・ランタン。ハロウィンのカボチャだ。目と鼻を三角形にくり抜き、横に大きくニタリと笑うように口を開けるカボチャ。
 同様に、少女のパンツも目と口と鼻の形に切り取られていた。切り取られつつも人外の力によってか、不可視の力に支えられているので形が崩れない。
 無論、それはパンツなのだから、内にまた何かを履くなどナンセンス。
 故に見えてしまっていた。
 真っ白な丘。
 無毛の縦筋。
「あはは、お兄ちゃんのおちんちんが足の下で大きくなってるよ」
 無垢な秘所を青年に晒しながらの、無垢な微笑み。
 青年の肉棒がみりみりと音を立てそうな勢いで怒張する。彼がどの程度、興奮しているのかは少女の足裏から良く伝わってきた。
 ぴっちりと閉じた幼花をもっとよく見ようと青年は足掻くが全ては徒労に終わる。
「そこから何が見えるのかな〜。ちょっと可哀想だから、もう少しだけ見せてあげるね」
 急所を踏みつけられる屈辱と、恥辱を煽る言葉。
 それすらも、今の青年には快感となる。
 彼を踏みつけていた少女の足が、すっと上がった。舞台上のバレリーナさながらに高々と上がる。不安定な姿勢にも関わらず、少女には微塵もバランスを崩す様子は無い。
 少女が美脚を大きく割り広げた事で、青年の目には天国が映っていた。
 足に釣られて、慎ましやかな割れ目が僅かにほころび、陰からサーモンピンクの中身が姿を現す。無垢でありながら妖艶に男を誘う幼膣。
 これでもかと言うほど焦らされた身は刺激が強すぎた。スカートの中に頭を突っ込んで己の指と舌で割れ目を味わってやろうと、金縛りを解こうと青年が暴れる。
 目は欲情して血走り、荒い鼻息はまるで蒸気機関車だ。
「やだぁ、こんな子供のオマンコでそんなに興奮しちゃうんだ……お兄ちゃんの変態さん」
297いたずらカボチャ:2007/10/31(水) 17:48:09 ID:xO9NRf/n
 ヘソに突きそうなほど反り返った竿が足の裏で軽く踏まれる。ニーソックス越しに柔らかさと、少女の体温がじんわりと伝わる。
 青年に足の温もりを堪能する時間は与えられなかった。すぐに少女の足が動き出したからだ。
 足を上手く使って、肉棒全体をしごく。
 たかだか足一本だと言うのに、青年は狂ったように喘ぎ、悶えていた。
 しゅっしゅっという乾いた音は、すぐににちゅにちゅと湿った淫音へと変わった。
 ニーソックスが肉棒に塗された唾液と先走りを吸って変色するのも気にせず、少女は責める。少女が少しだけ力を篭めると竿と足の裏が密着して、足の下で寝そべる体はいやらしい水音と泣きそうな喘ぎ声を立てる。
 とっくの昔に発射体勢に入っていてぷっくりと膨張した輸精管を、土踏まずの弓なりに反った微妙なカーブが扱いていく。
「お兄ちゃん、イっちゃいそう?」
 その問いに何度も首を縦に振って答えた。もう青年には痩せ我慢するだけの気力も残っていなかった。
 少女の足の裏が肉竿の側面に回りこんで、しゅこしゅこと扱きたてる。
 恥も外聞も男としてのプライドも捨てて哀願した。
 もう我慢できません。だから、
「イカせて!お願いですぅ、イカせてえぇぇ……」
 少女にその願いを聞いてやる気はなかった。
「だよね〜。カメさんがこんなにパンパンに膨れてるもんね〜」
 そう言いながら、ソコがどのくらい膨らんでいるのかを少女は確かめるように動く。石榴さながらに真っ赤に膨れ上がった亀頭の上で、少女の指が踊る。
 親指と人差し指をいっぱいに広げ、亀頭を摘んで、二本の指でくにくにと先端を磨くように擦る。
 ニーソックスの肌理の細かい生地が亀頭表面をざらりと撫で上げるたびに、神経そのものを撫でられるようだった。
 ニーソックスは指先までもがすっかりと濡れ、肉棒との間に粘っこい糸を幾本も引いていた。
 指先が曲げられ、敏感な肌の上をほんの少しストロークする。たったそれだけで、青年の口からは悲痛な呻きにも似た嬌声があふれ出る。
 自分でするのとも、実際に女と交わるのとも全く違う独特な感触。脳髄が芯から痺れるほど甘く、ただひたすら強烈な刺激。
「でも、ダーメ。イカセてあげなーい」
 絶頂の予感がこみ上げるたび、全てを把握する少女は足を離す。
 後ほんの一押しで極上の快楽を味わえると言うのに、青年はその手前で必ず押し留められた。
 身体を縛る戒めは頑として未だ解けず、腰を振って少女の足に性器を擦り付けて浅ましく快感を貪る事もできない。ただ飢えた獣のように荒い息を吐いて、涙と涎を垂れ流す事だけが、青年に許された自由だった。
 そうして、強制的にクールダウンさせられた青年に余裕が戻ると、少女の足が愉しそうに残酷に肉棒を翻弄する。
 根本を摘まれ、くきくきと細かく扱かれる。
 弾けそうになる。
 足が離れる。
 子犬の頭を撫でてやるように、こちょこちょと指が細かく動いて亀頭を撫でる。
 その愛撫も、弾ける気配があれば、すぐに退く。
 最後の一押しが貰えずにイカせてもらう事も、かといって自分で慰める事も出来ない。
 青年に出来る事といえば、ただ無様に泣いて請うだけ。
298いたずらカボチャ:2007/10/31(水) 17:48:45 ID:xO9NRf/n
「ねえ、お兄ちゃん。イキたい?」
 涙と涎で顔をベトベトに汚してひんひんと泣き悶える青年の様子を見れば、そんな事は一目瞭然。
 それでもなお、静かな口調で問う。
「イキたかったら、一つだけ、約束して欲しい事があるの」
 親指が赤黒く充血しきった亀頭の表面をゆるゆると撫でまわす。
 それが悪魔の囁きであろうが、今の青年は躊躇しなかった。この達する事の出来ない、延々と続く終わりの無い快感に終止符を打って貰いたかった。
 獲物の狂態を愉しげに見下ろす少女には、何と返事が返ってくるかなんてお見通し。
 果たして全ては予想通り。青年は、がくがくと壊れたように何度も頭を縦に振る。
「する、するよぅ!何でも約束するから!だから…」
 イカセテ。
 少女に、青年の言葉を最後まで聞く気はなかった。
「うふふ、いいお返事です」
 止まっていた足は動き始め、急ピッチでスライドを繰り返す。
 上に、下に、白く泡立つ粘液を纏わせた肉棒と足の裏の間でニチャニチャと激しい淫音がする。
 青年はもう何度目か分からない瀬戸際まで、あっという間に追い込まれた。
「来年はちゃんとハロウィンに参加してくれる?」
 足の裏で肉棒を捏ねるように扱きながら、亀頭の先端を親指と人差し指で摘む。
 きゅうっと締め付けてやりながら、先端から雁の下、裏筋まで満遍なく擦り下げる。
 亀頭が最大限まで脹らむ。
「する!この先、一生ずっとちゃんとハロウィンに参加するからっ!」
 青年が頭を仰け反らせて叫ぶ。既に絶叫だった。
 望む答えは得られた。
 少女は満足げにほほ笑むと、絶頂まで後ほんの数ミリの瀬戸際で留まらせられた青年をポンと押してやり、線を越えさせた。
「ほら。イッちゃえ、お兄ちゃん」
 ぐ、と足に力がかかり、今までになく強烈に肉棒が扱かれる。
 下がった指が戻ってきて、雁のクビレを挟み込む。
 水道栓を開けるように、きゅっと捻られる。
 次の瞬間、肉棒はまさしく壊れた水道栓を化した。
 焦らしに焦らされ、たっぷりと溜まった精液がびゅくびゅくと吹き上がる。
 青年は思う存分、精液を目の前の少女に浴びせ、彼女の愛らしい顔と言わず薄い胸と言わず、クビレの無い腹にまでぶっかけて汚そうとした。
 が、その願いは少女に届く事適わず。
 そんな分かりやすい欲望なんてお見通しとばかりに、少女の爪先が裏筋を摘んで、暴れる亀頭をコントロールしていた。
 宙に切れ切れの白いアーチを描いて、全て身動きできない青年に降り注いだ。
 先端から白い糸でもズルズルと引きずりだされるかのような圧倒的な射精快感。脳味噌までも精液に変わって鈴口から溢れ出して、ドロリと流れ出ていく錯覚。
 青年の射精は延々と続く。
 少女の爪先もくりくりと動き続けて、玉袋に決壊寸前まで溜まった白濁汁を残らず搾り出してやった。
299いたずらカボチャ:2007/10/31(水) 17:50:23 ID:xO9NRf/n
 肉棒に感じる圧力が、ふと失せた。
 青年は視界に収めようとしても首が動かない。少女の足によって魂まで吐き出されたかのようで、まるで力が入らない。
 ようよう目だけを動かして、少女がいる辺りを見やる。
 そこに少女はいた。青年が自分を見るのが分かっていたみたいに少女の瞳も青年を指していて、吸い寄せられるようにピタリと視線が合う。
 少女の手には、彼女がドアをくぐって入ってきた時からずっと腰に下げていた角燈が携えられていた。
 かろん、と角燈が触れる物も無いのに音を立てる。小さな筈なのに、その音は嫌に大きく耳を打つ。
 角燈の丸窓の中でちろちろ燃える蒼い炎が、大きくゆらりと揺らぐ。
 少女の細い肢体が熱の無い炎に包まれた。
「じゃあね、お兄ちゃん。今年はこれで帰るけど、約束…したからね」
 うっすらと白く霞む視界の向こう。
 青く燃える双眸が微笑む。
 そうして僅かな言葉を残し、全身に炎を纏った少女は宙に溶けて、消えた。
 およそ現実離れした光景。
 それを見届け、何か感想を思いつく暇もなく、青年の意識も闇に堕ちた。
30018スレの314:2007/10/31(水) 17:52:16 ID:xO9NRf/n
『いたずらカボチャ』 了

以上、乱文失礼致しました。
かーいい幽霊スレに投下するべきか悩みましたが、こちらに投下させて頂きました。
本番無い割りに相変わらずダラダラと長いです。エロくないです。反省。
足コキ物は初挑戦なのですが、実際は本当に気持ちいいモノなんでしょうか。

一応、青年はこたつむりの主人公と同一人物という設定ですが、時間無くてその辺まで手が回りませんでした。
301名無しさん@ピンキー:2007/10/31(水) 19:13:18 ID:RYUdPbzy
GJ!お菓子買い込んでおこう…
302名無しさん@ピンキー:2007/11/01(木) 00:31:36 ID:ylvIXhbG
ハロウィンのハロウィンによるハロウィンのためのお話GJです!
炉利はSでもMでも美味しいなぁ…
303名無しさん@ピンキー:2007/11/01(木) 03:03:17 ID:GtDJG3Wj
お見事GJ!家に来ないかな〜
さりげなくパンプキンシザーズやりました?
304名無しさん@ピンキー:2007/11/01(木) 08:01:30 ID:GaCiwp2F
どんな時でも6を出すダメ人間乙
305名無しさん@ピンキー:2007/11/01(木) 18:43:00 ID:QCvYw9lk
>>300
GJ!
いや十分エロイですよ。ロリ属性もM属性も薄いはずなのにフル勃起したので。

>>303
「カロン」と音をたてる蒼い灯のランタンに、死沼に誘う鬼火<ウィル・オー・ウィスプ>だしなあ。
よく考えるとドアをノックしてるし。
306名無しさん@ピンキー:2007/11/02(金) 23:57:43 ID:LUxjIJ87
トリック オア トリート!
犯してくれなきゃイタズラするぞ?
307名無しさん@ピンキー:2007/11/03(土) 13:03:54 ID:eyKujKMb
いいだろう。尻を出せ。
308名無しさん@ピンキー:2007/11/04(日) 03:14:19 ID:YsjzG/iu
アッー!
309名無しさん@ピンキー:2007/11/04(日) 15:49:40 ID:oN4lwn6p
なんかモンスター娘みたいないい人外系のSSサイトはないかな
探したけど中々見つからないな・・・
310名無しさん@ピンキー:2007/11/04(日) 22:52:43 ID:honaR3oI
モンス○ー娘百○は?
311名無しさん@ピンキー:2007/11/04(日) 23:07:32 ID:vr4/lJMA
>>309
『人外娘の隠れ里』で探すのもいいかもしれん
ttp://monster-girl.homelinux.net/etc/
312名無しさん@ピンキー:2007/11/06(火) 12:39:11 ID:xPDx5SoX
>>311
サンクス
色々良いサイト見つかった
313名無しさん@ピンキー:2007/11/09(金) 02:02:36 ID:7Xg8t2K8
>>310
そのサイトって逆レイプ系ばっかなんだよなぁ
314名無しさん@ピンキー:2007/11/10(土) 12:43:08 ID:aBbF2qM/
人外と逆レは相性がいいからな。
315名無しさん@ピンキー:2007/11/14(水) 11:17:17 ID:OcJF0+Id
人外と言っても人間に近いタイプかそうでないかで結構違う気がするが。

最近某ゲームにはまって吸血鬼モノが書きたくなった・・・
316名無しさん@ピンキー:2007/11/14(水) 22:52:49 ID:6SzljppM
今頃悪魔城ドラキュラにはまったのか
317名無しさん@ピンキー:2007/11/14(水) 23:00:52 ID:CFYk2EDk
ぶっ
318名無しさん@ピンキー:2007/11/14(水) 23:53:44 ID:OcJF0+Id
超図星な件orz
319名無しさん@ピンキー:2007/11/14(水) 23:57:25 ID:WkoDEYbu
いや悪魔城シリーズっぽい世界感はアリだろ。ふいんき(ry良いし生モノだけでも登場キャラには困らん。
320名無しさん@ピンキー:2007/11/14(水) 23:59:57 ID:6SzljppM

マジだったの
321名無しさん@ピンキー:2007/11/15(木) 01:12:31 ID:NXdRkFfH
吸血鬼モノのゲームっていうからヴェドゴニアとか月姫あたりを想像してたら、
悪魔城かよww
322名無しさん@ピンキー:2007/11/15(木) 08:45:31 ID:0r9mwBD+
おうちにかえってきた当主の息子をマッハで全裸に剥く冥土長、デス子たんとか、
ひんそーな本体を偽肉で覆っていい気に成ってたのに全力で剥かれてなみだ目のレギオンタンとかですね。
323名無しさん@ピンキー:2007/11/15(木) 09:36:56 ID:4/JzTQNq
いやそもそも>>315は吸血鬼モノが書きたくなったと言ってるだけだから流石に悪魔城のエロパロが書きたいと言ってるわけではなかろうw
324名無しさん@ピンキー:2007/11/15(木) 10:40:10 ID:u7rCSxQ6
復活を察知してやってきたハンターに一目惚れとか
コレはベタか
325名無しさん@ピンキー:2007/11/15(木) 10:40:15 ID:fmPL1BOm
人外娘達を代々伝わるムチでシバき倒していくSMバトルアクションですか?
326名無しさん@ピンキー:2007/11/15(木) 12:26:49 ID:cVdergwN
クロスはどこに入れときますか?
327名無しさん@ピンキー:2007/11/15(木) 20:18:39 ID:DetWwJeh
チンコから血吸われて射精多量死
みたいな内容のSSを読んでから吸血鬼が怖くなった
328名無しさん@ピンキー:2007/11/15(木) 20:44:58 ID:rkz48S72
サブウェポンにロウソクとかありそうだなw
329名無しさん@ピンキー:2007/11/15(木) 20:52:08 ID:0sMeLDUT
散らばった穀物をかがんで必死に集めているところを後ろから…
330名無しさん@ピンキー:2007/11/15(木) 21:50:47 ID:4/JzTQNq
>>328
荒縄、三角木馬なんかも追加でw
331名無しさん@ピンキー:2007/11/16(金) 00:45:36 ID:KiBzL4EX
トランシルヴァニアからロンドンに婿探しにきた、ドラキュリアたんは
そこで理想の花婿ウェステンを見つけるけど、
前々から彼のことを気になっていたツンデレ気味な幼馴染の
ヴァン・ヘルシングたんに阻まれてしまうという話だよね?
332名無しさん@ピンキー:2007/11/16(金) 03:09:39 ID:RjR3hmZp
悪魔城名物と言えばデス様だが死神モノって書きづらいんだよなぁ。
俺も吸血鬼モノで何か書いてみようかな・・・
333名無しさん@ピンキー:2007/11/16(金) 11:21:25 ID:riW1Bpz+
狼娘とかサキュバスとか人造人間フランたんとかネタには困らんぜ>悪魔城
クリーチャー系は流石に扱いに困るが・・・
334名無しさん@ピンキー:2007/11/16(金) 17:17:44 ID:3Jv4K8+b
人造人間フランたん…
335名無しさん@ピンキー:2007/11/16(金) 20:26:10 ID:VYswLesU
ふが?
336名無しさん@ピンキー:2007/11/16(金) 23:30:40 ID:vMlv8hF7
>>333
狼娘は厨房担当でよろしく
337名無しさん@ピンキー:2007/11/17(土) 00:52:31 ID:BVJPEd9+
フランはマッドサイエンティストのヴィクター博士が完全なる少女を目指して創造した人造人間で・・・
となるとなんか6人の姉妹と喧嘩始める姿しか思い浮かばなかった。

デス様には悪魔城名物時計塔でも担当してもらうか。
338名無しさん@ピンキー:2007/11/17(土) 02:02:41 ID:scZq1eu3
フランたんとかデス様とか言うから
脳内から某赤い核実験場が出てきて困るんだぜ

そういや最近あの雑誌でエロいスフィンクスとかあったっけか
339名無しさん@ピンキー:2007/11/17(土) 04:28:12 ID:N3nuvjyl
>>331
吸血鬼の花嫁の生首三つぶら下げたあのやたらおっかねえ教授しか思い出せんw
340名無しさん@ピンキー:2007/11/17(土) 15:21:03 ID:9HkjFs3n
ちょこっと☆ばんぱいあやればいいんじゃね?
34118スレの314:2007/11/17(土) 19:40:47 ID:uYvU1cRw
流れは吸血鬼と聞いてちょいと書いているうちに、流れが微妙に変わってしまった悲しさ。
エロ無しの小ネタを投下します。
342とあるお食事風景:2007/11/17(土) 19:41:29 ID:uYvU1cRw
 コツコツと小さな音がする。
 たとえ眠っているとしても、普段ならばその程度の小音では青年は目を覚まさなかっただろう。
 ナニカの符号がかちりと噛み合ったのか、何がしかの運命の力が働いたのか。どうした訳か、今晩に限って耳はその音を捕らえ、脳へと伝え、惰眠を貪る主を揺さぶる。
 小さいが不可思議な力を秘めた音は頭に染み渡り、暗く快適な眠りの世界に漂う青年を現実へと引きずり戻した。
 むっくりと起き上がった頭が、燈台のようにゆっくりと回転する。寝ぼけ眼が、室内をぐるり見回す。
 青年はペットは飼っていないし、つけっ放しにした電化製品も無い部屋の中で音を立てるような物はいない。
 ならば、外か。
 カーテンを引き開ける。
 さぁっとさやけき月光が差し込む。
 天高くに満月が浮かぶ。まるで黒い空にぽっかりと白い口が開いたかのようだ。
 白光は下界をあまねく照らし、モノトーンに浮き上がらせる。
 連なる家並みも、縦横に走る道も、街路樹に植え込み、駐車する車、道の脇に停められている自転車、目に入って来るありとあらゆる物全て。
 音の消えた、仄暗く光る白と黒の世界。
 そして、部屋の外側の窓辺に佇む一人の少女も例外ではなかった。
 月光に浮かび上がるのは、空にある月と同じくらいに冴えた美貌の少女だった。
 夜の闇と同化しそうなほど美しい長く伸びた黒髪。
 切れ長の目は、じっと青年を見詰めて離さない。鼻梁はすっと高く、眉は細く美しい弓を描く。
 どのパーツをとってもそこら辺のモデルなど裸足で逃げ出すほど。それでいて各々が別個に主張するのでは、全てが調和している。
 一目見れば忘れる事など出来そうにもない、尋常な美しさではなかった。
 人並み外れた姿。そして、まさしく少女は人間離れしていた。
 瞳は赤く爛々と光り、無邪気に微笑む口元からは人の倍ほどもありそうな鋭い犬歯が覗く。
 人並み外れた、どころではない。この少女は人ですらない。
343とあるお食事風景:2007/11/17(土) 19:42:03 ID:uYvU1cRw
 当然だ。ただの人間が重力の頸木から逃れ、なんの足場も無い二階の窓の外に浮かぶなどと出来る訳が無い。
 他者の生き血を啜り、魅了の魔眼を持ち、幾つもの異能の力を不死と共に誇る者達。
 彼らを畏怖し、またはその力に憧れ、人間は彼らを呼ぶ為の無数の言葉を造った。その中でも彼らの最も象徴的な生態にして、最も端的に彼らを指す言葉がある。
 すなわち、吸血鬼。
 何の疑いも無く、青年の頭の中にそんな単語が浮かんだ。
 青年は別に怪しい宗教にはまっていたり、オカルトに傾倒していたりなどいなかった。昼間に聞けば、そんな馬鹿な事がと鼻で笑い飛ばすような言葉だ。
 今は違った。彼女がそういうモノであると、お伽話や伝説の中にだけ名を残す人外の存在であると誰かに言われれば、何の疑いも無く頷いただろう。
 少女の放つ雰囲気はそれほどまでに妖しく蟲惑的で、夜を歩く者に相応しい力を備えていた。
 魂までも吸い込まれそうな美貌を、青年は呆気に取られた風でただ見つめていた。
 そんな青年の態度に少女は気をよくしたのだろう。見惚れられる、と言うのはそう気分の悪いものではない。
 瑞々しく形の良い唇が、青年の見守る前でくぅっと釣りあがって魅力的な笑みの形になる。
 人形じみたと言ってもよいほどの清楚な面立ちの中で、そこだけは少女の年齢には不釣合いなまでに真っ赤だった。しかし、不釣合いであるが故にそれはとても妖艶だった。
 絞りたての鮮血を塗りつけたように真紅の唇が動く。
 ゆっくりと一つ一つ区切るようにして、無音の言葉を紡ぐ。
 い。
 れ。
 て。
 少女の放つ人外の美しさに魅入られたように固まっていた青年から、ふっと力が抜けた。
「なんだ……ロリか。パス」
 ひどく詰まらなそうに言い放つと、そのまま布団にゴロリと横になった。まだ少しだけ布団に残る温もりを求めるように、丸くなる。
 起こされたのは確かに気に喰わないが、関わる気も起きない。ただでさえ少なく貴重な睡眠時間のほうがよほど大切だ。あんな薄べったいチビなんかどうでも良かった。
 心地良い眠りを邪魔しようとする全てを遮断するかのように、頭から掛け布団を引っかぶってモゾモゾと丸くなる。
 後に残されるのは、あまりの反応に目と口をまん丸に開けたままの少女。
 少女に背を向けて動かなくなった布団製の芋虫が、再び窓の外に浮かぶ少女に興味を向ける兆候はない。

 月の光は白く淡く下界を照らす。
 りー…りー…と虫の音が辺りに優しく響く。
344とあるお食事風景:2007/11/17(土) 19:42:42 ID:uYvU1cRw
 しばらくして呪縛から解放された少女が、素手でぶち破らんばかりの勢いでバシバシとガラスを叩く。
「ちょっと!なんで無視するのよ!開けなさいよ!」
 物凄い剣幕で窓の外から男に迫る。
 本当は首根っこ掴んでガクガク前後に揺さぶってやりたいのだが、招かれないと室内に入れないのが吸血鬼の性。
 それは様々な力を持つ吸血鬼の弱点の一つ。初めて訪問した家では、彼らはその家人に招かれなければ中へ侵入できないのだ。
 招かれないどころか「帰れ」と言われてしまい殴りこむ事も叶わずに、窓ガラスが邪魔でそれ以上は青年に詰め寄る事が出来ない。
「ふざけんじゃないわよ!あたしは吸血鬼。吸血鬼なのよ?!
 人間なんかと違う高貴な種族なのよ?!それがなんで門前払いされなきゃいけないのよ!
 この私が命じてるんだから、獲物なあんたは素直に言う事を聞いて!ここを開けて私を入れればいいのよ!!」
 がーっと火でも吐きそうな勢いでまくし立てる。
 形の良い柳眉は逆立ち、真白い牙はさらに伸び、元が綺麗なだけあって一層恐ろしい形相を呈している。
 どうやら、こちらの方が少女の地らしい。先ほどまでの妖しさはどこへ行ったのやら。欠片も見られない。全て獲物を騙すための演技演出のようだ。
 とは言え、どれだけ言葉を並べようとも彼女に出来る事と言えば、冷たいガラスにへばりついて喚くのが精一杯。ガラスに押し付けられた顔が、ぐにぃっと滑稽に歪む。美少女が台無しだ。
 少女の罵声と騒音が効を奏したのか、布団芋虫がムクリと起き上がる。
 中から出てきた顔は、最高に不機嫌そうに眉が顰められていた。熟睡中だったのを起こされて、さらに寝ようとした所を騒音で邪魔されているのだから無理もないが。
「しっしっ!どこか他を当たれよ、ガキにゃ興味ないんだよ」
 不機嫌を隠そうともしない声で言い、餌をねだってまとわりつく野良犬を追い払うかのような仕草。
「くうぅっ…こっのっ……!」
 怒りのあまり、少女の白皙の美貌が夜目にも鮮やかに朱に染まっていた。
 少女の本来の目的は食事だ。無論、吸血鬼が口にする食事といえば一つしかない。
 吸血鬼としての食事をしようと、適当に目に付いたこの青年の部屋へと来たのだが、既に目的は変わっていた。だが頭に血の上った少女は、その事に気が付いていない。
 口を開けば罵倒よりも先に怒気が吐き出され、ぱくぱくと開閉を繰り返すだけで言葉にならない。
 もしも少女に恋人がいれば、百年の恋も一秒で冷めて逃げだしたくなるほどの勢いで怒り、まさに鬼のように顔を歪め、噛み締められた歯がぎりぎりと音を立てていた。
 少女は自身の価値をよく理解していた。自分がどのくらい可愛くて、どうすれば男の目を惹きつけるのかを把握していた。
 自分が妖しい仕草で誘えば、たいていは彼女が何者であるかなどと欠片ほども疑わずに、ころっと魅了されるのが常だった。
 だと言うのに。
 この青年は自分を犬か猫のように鼻であしらったのだ。
 誇り高い少女のプライドはズタズタだった。
「俺は眠いんだよ。分かったらさっさと帰れ。このペッタン娘」
 ヘソで茶を沸かす、と言うが今ここに水の入った薬缶があったならば少女の頭がコンロ代わりに出来たろう。
 なんとかしてこの無礼者に一矢返さねば気がすまない。
 何故、この男は自分の魅力に転ばないのか。僅かでも心の隙間があれば、魅了の力はそこから忍び込んで相手を支配すると言うのに。
 マグマのように煮えたぎる少女の脳裏に、不意にピンと閃く物があった。
 少女はまさしく己を正しく把握していた。その理解は、自分の持つ要素、そして悔しいが自分の持たざる要素についてまで及んでいた。
 まるでとびっきりの悪戯を思いついたと言うようにニヤリと心底、意地悪そうに笑う。
「あー…分かっちゃったぁ〜。あんた、年上が好きなんでしょ?」
345とあるお食事風景:2007/11/17(土) 19:43:30 ID:uYvU1cRw
 青年の心中を探るように、窓越しに上目遣いで覗き込む。
 青年の隠された、隠していたい性癖を抉りだすように言葉が投げつけられる。
「それで大きくってやわらかーい胸が大好きなんだ?それでぇ、私とは正反対な性格してるのが好みなんだよね〜?」
 それはほんの僅かな変化に過ぎなかった。だが少女は、青年の表情が引き攣るのを見逃しはしなかった。
 ここが責め所、とさらに畳み掛ける。
「おっきなオッパイの谷間に顔埋めて、撫で撫でしてもらいながら『いい子でちゅね〜』とか言われるのが好きなんだ?」
 少女は青年がさも汚らわしい物であるかのように顔を背ける。赤く光る瞳は見下すような雰囲気をたたえ、青年にひたりと据えられて動かない。
 青年に反論させる暇を与えず、少女は続けざまに嘲笑う。
「えー?マジ〜?マザコン〜?!
 キモーイ。ママのおっぱい吸って許されるのは三歳児までだよね〜」
 窓の外で少女がケラケラと笑う。
 どこかで聞いた台詞なのは気のせいか。
 どこでそんなネタを仕入れてきたのか、なんて青年には知る由も無かった。それに問題はそこではない。ああまで言われて、それでもなお我慢する理由は彼には無い。
「なっ?!テメ、この、言わせておけば!」
 相手が見た目は少女に過ぎず、そんな少女相手に本気になって大人気ない、なんて事はこれぽっちも思い浮かばなかった。人間、得てして真実を突かれた時ほど頭に血が上りやすいものだ。
「クソガキが、お仕置きしてやらぁっ!こっち来やがれ!」
 青年は掴みかかろうとした。
 が、自分と彼女を隔てる物がある。目の前のガラス。厚さはほんの数ミリに過ぎないが、確かな壁となり少女へと手を延ばすことを阻む。
 邪魔だ。目もやらずに鍵を外し、一息に引き開ける。
 それは日常と非日常を区切る線。昼と夜に住まう者を分ける境界。
 激高した上にまだ寝ぼけた頭では、それが少女の罠であると気が付く筈も無く。
 僅かに隙間が開いた途端、ふわりと夜気が忍び込む。
 冷えた夜風に晒されて、寝巻き姿の青年の体を震わせる。だが、彼が震えているのは何も全てが夜風の所為だという訳ではなかった。
 窓の外で宙に浮かびながら佇んでいた筈の少女が、ひんやりとした掌で青年の頬を撫ぜたから。
 いつの間に青年のすぐ傍にまで忍び込んでいたのか。細い体が本当に夜風となってスルリと入り込んだかのようで、青年には全く見えなかった。
 ほんの少し体を傾ければ触れてしまいそうなほど近く。
 青年の視界をわざとらしいほどの満面の笑顔で埋めて。
「今晩はお招き頂き、感謝いたしますわ」
「あ…」
 ここに来て、ようやっと青年は己の犯した致命的な間違いに気が付いた。
「お礼はしてあげないとね。色々と……」
「あああ……」
 青年は逃げたかった。今すぐにでも後ろを向いて走り出したい。だが、悲鳴を上げて逃げだしたくっても身体は主の意思には従ってくれない。
 手足は雨に打たれる捨て犬のように震え、喉からは擦れた声が絞り出されるだけ。
「それじゃあ…」
 ぺちっと可憐な両手が合わせられ合掌の形になる。
 食事の前には礼儀正しく元気良く、頂かれる獲物への感謝の心を忘れずに挨拶をしましょう。
「いっただっきまーす」
「アッーーー!!」
346とあるお食事風景:2007/11/17(土) 19:44:09 ID:uYvU1cRw
 朝日が昇る。
 黄金に輝く光は暗闇を吹き散らし、街を跋扈していた夜の住人をそれぞれのねぐらへと追い返す。
 太陽は等しく全てに降り注いで、青年の部屋にも光が差し込む。一日の始まりを告げる曙光は、乱れに乱れた布団、元は寝巻きだったと思しきボロ布の塊など、室内の惨状までも余す所無く照らし出す。
 そこには一人の人間がいた。
 少女は既にどこかへと消え失せていた。
 室内にいるのは吸血鬼の少女が訪れる前と変わらぬ、ただ一人。
 全身の至る所に真っ赤なキスマークと噛み跡を付けられ、シーツにくるまってシクシクと泣きはらす青年が一人いるだけだった。
 東の空が黒から藍にと変わり始めた頃、去り際に少女は言った。
「けして吸い尽くして殺したりはしない」
 と。また彼女はこうも言った。
「下僕になんてしてあげない」
 血液を吸われるが死に至る事は無く、かと言って無罪放免と生かされもせず、下僕とされ何も考える事無く彼女に全てを捧げる事も許されない。
 それはつまり青年自身が「パス」と言い放った嗜好のあわぬ相手に、己の意思全てを無視された上で望まぬ行為を延々と強制される事を意味する。

 そして。
 今夜もまた少女が窓を叩く。
34718スレの314:2007/11/17(土) 19:46:50 ID:uYvU1cRw
以上です。エロ無くって、すいません。
ヘルシング9巻を読んだお陰でロリ吸血鬼を書くと、脳内でロリアーカードのイメージが強くて困ります。
書いていて思ったのですが、妖艶悪女タイプやサドロリタイプは見かけますが、天然癒し系お姉さんでうっかり者の吸血鬼って聞きませんね。

血の吸い方をあれこれ考えていて、自慰を見せ付けて相手を興奮させ鼻血を出させてソレを啜る女吸血鬼、とか浮かぶ自分は異端でしょうか。
348名無しさん@ピンキー:2007/11/17(土) 19:55:12 ID:/kbra6Gk
>>347
GJ
あとそのシチュは女の自慰に最高に興奮する俺にはかなりツボだぜ!!
349名無しさん@ピンキー:2007/11/17(土) 20:00:42 ID:LTwZhjwT
>>347
青年に合掌…

> 自慰を見せ付けて相手を興奮させ鼻血を出させてソレを啜る
異端かもしれないが俺にはど真ん中ストライクだ。
もっとやれ。
350名無しさん@ピンキー:2007/11/17(土) 20:36:51 ID:KFE0GJGB
乙。でもそれだとギャグになっちゃいそうだなぁ。
351名無しさん@ピンキー:2007/11/17(土) 20:54:57 ID:Uv8v6LxS
顔を横にし、鼻を丸ごと咥えて血を啜る事になるのか……ちょっといいな!
352名無しさん@ピンキー:2007/11/17(土) 21:26:50 ID:BVJPEd9+
やっぱり首筋からが好きな俺ガイル。
少量でいいなら指先に傷をつけて吸うってのもそそるんだがな・・・上目遣いで。
353名無しさん@ピンキー:2007/11/17(土) 21:45:23 ID:/kbra6Gk
>>352
吸血鬼ではないけど、
羊のうたの千砂姉さんを思い出したわw
354名無しさん@ピンキー:2007/11/17(土) 21:48:25 ID:bF5cmNKn
皮膚が弱いってゆーか、唇の表皮が非常に薄い体質なので
冬になると簡単に荒れてしまうのだけれど、ご主人様(女)が
リップクリームの感触が大嫌いなので、何時も唇には
蜂蜜を塗っておくように言い付けられいて、キスされる度に
文字通り、甘い血液をねちっこく啜られてしまう下僕(女)

と言う莫迦デンパを受信してしまいましたよ……
355名無しさん@ピンキー:2007/11/17(土) 23:56:46 ID:N3nuvjyl
>>352
お前さんの望むシーンがヘルシング4巻169ページにある。
俺はあのシーンで勃起した。

何で吸血鬼って最強最悪の化物みたいな描かれ方なんだろう?
吸血鬼は弱点だらけだ
にんにくを嫌い 十字架を嫌い 聖餅や聖水は身を焼く
川・海・湖畔・流れる堀を渡れず 太陽に目をそむけ 聖書に耳をそむけ
招かれなければ家に入れず 散らばる小麦を数えずにはいられない
ほとんどの吸血鬼は夜しか動けず 安息のねぐらは唯一ツ暗く小さな棺だけ
それでも吸血鬼は無敵の怪物と呼ばれる
それは何故だ?
356名無しさん@ピンキー:2007/11/18(日) 00:03:09 ID:0VX15M0B
>>355
本当は吸血鬼は弱い生き物なんだけど
人間が怖いからそう簡単に襲って来られないように
「自分達は最強の化物なんだ!」と
人間社会で頑張って噂とかを広めた結果
357名無しさん@ピンキー:2007/11/18(日) 00:28:00 ID:qBIQC1DA
逆に考えるんだ。その力が強大だからこそそれに対抗するために人間が必死こいて弱点を調べ回ったんだと。

>>352
その吸血シチュは最高なんだがロリ以外だと微妙なんだよなぁ・・・
358名無しさん@ピンキー:2007/11/18(日) 00:35:14 ID:ttUS2h2P
吸血鬼といえばこんなのもあったな

ハーレムスレ保管庫より
ttp://marie.saiin.net/~mcharem/04_042.htm
359名無しさん@ピンキー:2007/11/18(日) 01:04:11 ID:Lgo7eFCc
>>347
GJ
良いものを読ませてもらった
わざと従者にしないのがツボだ

>天然癒し系お姉さんの吸血鬼
趣味は料理だが、隠し味にうっかりにんにく使っちゃって三日寝込む、とか?
360名無しさん@ピンキー:2007/11/18(日) 01:42:55 ID:d3jkkOkW
>>358
ハーレムスレには他にも吸血鬼ものがあるというのに、なぜあえてそれなんだ?
いやまぁ、面白いけどさ、その人のSS。
361名無しさん@ピンキー:2007/11/18(日) 02:16:41 ID:HTfEmEnW
>>347
GJ

>天然癒し系お姉さんの吸血鬼
『僕の血を吸わないで』ってラノベのヒロインがそんな感じだったような・・・
362名無しさん@ピンキー:2007/11/18(日) 03:43:33 ID:ttUS2h2P
>>360
女の吸血鬼が出てくるのがこれしか見つからなかった
見落としてたかもしれないんでまた見とくよ
363名無しさん@ピンキー:2007/11/18(日) 09:58:37 ID:E12PmZYW
>361
懐かしいなオイ。
そう言えばあれも鼻血で吸血だっけ。
364名無しさん@ピンキー:2007/11/18(日) 11:50:34 ID:lBMB8SL/
「自ら口の中を噛み切って出血させキス経由で吸血」に勝るものはないと思うのだよ。

はじめは「誇り高き吸血鬼のわたくしが、こ、このような形で施しを受けるなど……」と口
先だけで強がってみるのだが、いざ口づけとともに唾液ごと大量の熱い血潮を流し込
まれては、もはや本能には抗えず、んくんくと喉を鳴らしながら嚥下していくしかない。
愛する男に傷を負わせてしまった申し訳なさ、そうまでさせるほど自分が大事にされて
いるという女としての悦び、そして何よりこれまで己を苛んできた渇きが嘘のように癒さ
れていく充足感……それらがない交ぜになった形容しがたい感情に突き動かされ、
日頃の高貴なたたずまいはどこへやら、ひと飲みごとに頬を真っ赤に上気させて、うわ
言のように「おいしぃよぉ……もっとほしいよぉ……」と幼女めいた呟きを漏らすばかり。
果ては差し込んだ舌先で男の口腔粘膜を舐めまわすには留まらず、上下の歯列一本
一本をなぞり、果ては舌の付け根までもつついては、血の一滴も逃すまいと貪欲に口
内を蹂躙していく。長い時間の果てにようやく血への欲求が満たされ、唇を離してほうと
一息つく間もなく、今度は執拗な口づけによってもたらされた女芯の疼きに耐えられなく
なってしまい、目元に朱を散らしたままスカートをたくし上げると(以下略
365名無しさん@ピンキー:2007/11/18(日) 13:11:03 ID:/BdoUVAd
いいぞいいぞもっと書け

どうでもいいけどなのじゃ口調のロリっていいよね
366名無しさん@ピンキー:2007/11/18(日) 13:45:59 ID:S+W7XFun
>>365
よく分かってるじゃないか
367名無しさん@ピンキー:2007/11/19(月) 02:11:21 ID:J+ju/RLR
人外ロリのなのじゃ口調こそ至高だ!!!
368名無しさん@ピンキー:2007/11/19(月) 02:57:14 ID:aK0FxcDC
密かになのじゃ口調のロリエルフなんて妄想を暖めている俺は異端。
369名無しさん@ピンキー:2007/11/19(月) 03:04:58 ID:kkCBPoU3
ID:/BdoUVAd
ID:S+W7XFun
ID:J+ju/RLR
ID:aK0FxcDC 

で、お前等のうち誰が鋼屋ジンですか?
370名無しさん@ピンキー:2007/11/19(月) 10:35:42 ID:bTbIps60
あれ、あのロリ魔導書ってなのじゃ口調だったっけ?
371名無しさん@ピンキー:2007/11/19(月) 12:19:37 ID:8PihpTF6
今の流れはなのじゃ口調のロリ吸血鬼か
372名無しさん@ピンキー:2007/11/19(月) 16:46:46 ID:OotbT5yH
見た目ロリでも歳食ってて、だけどそういう事には疎いなのじゃ吸血鬼。


最高ジャマイカ
373名無しさん@ピンキー:2007/11/19(月) 17:36:57 ID:tQ/tEvWL
密かになのじゃ口調のロリ狐なんて崇めている俺も異端。


374名無しさん@ピンキー:2007/11/19(月) 18:37:43 ID:DXMss7ZL
憲兵口調を思い付いた。

犬娘「貴様、なんだその口の利き方は」
375名無しさん@ピンキー:2007/11/19(月) 18:48:58 ID:ocvcekjv
一人称が儂でなのじゃとか言う巫女とかいいな〜って思ってるオレはどうすれば?
376名無しさん@ピンキー:2007/11/19(月) 18:54:08 ID:ocvcekjv
ちなみに人外属性は狐から神まで和風だったら何でもアリ<巫女
377JOY:2007/11/19(月) 19:11:02 ID:SgmzWUWf
空気を読まずに投下する。
伊藤園のジャスミン茶をインスパイヤした。即興短編。

「JOY」

ジャスミンの花は、夜開く。
白く小さく、清楚なそれは月光の下、
優しい、そして妖艶な香りをひっそりと放つのだ。


額をさらりとした感触が撫でた。
滑らかに零れていくそれは、心地よく肌をくすぐる。ひどく懐かしく、そして現実味のない感覚。
冷たく軽い何かが額をなぞるのを遠く感じた。不知火少尉の、重苦しい暗闇に沈んだ意識が、ゆっくりと浮上する。
痛くはないが不快な頭痛。酒を飲みすぎた次の日のようだ。
閉ざされていた意識には知覚されなかったそれが、次第にはっきりとしてくる。
重い瞼をこじ開けると、ぼんやり霞んだ世界に天井が映えた。
誰かが覗き込んでいる――女――、黒く長い髪。

知らぬ女だった。
何故ここにいるのか、何故ここに横たわっているのか、思い出そうとすると鋭い頭痛がする。

だが、何故か今そんなことはどうでもいいような気がした。
ゆっくりと布団から身を起こした不知火は、思わず隣に座っている女を見据える。
「君は・・・」
きちんと正座して、驚く様子もない女は真っ直ぐに不知火を見返した。
緑なす黒髪、という比喩が似合う、この古びた和室には似つかわしくない程の美女だ。
「助けてくれたのですか」
救命胴衣も、落下傘用固定用のベルトも取り除かれ、飛行服で眠っていたらしい。
着慣れた海軍の、茶色の飛行服。
何か大事なことを忘れている違和感を抱えたまま、頭に手をやる。
彼女は、まるで彼が起きることを見越していたかのような表情をしている。
少しだけ頷いた彼女には、物怖じする様子はない。
無骨な指先に、額の傷に巻かれた包帯の感触がした。
不知火は辺りを見回す――シミと褪色で黄ばんだ襖、毛羽立った畳、黒ずんだ木材の柱。
四畳ほどの古い部屋を、開け放した障子窓から入る西日が金色に染め上げている。
流れるたびにさらさらと音を立てそうな女の黒髪も、一本一本がその金色に光っていた。
金色の川。
「君の名は」
聞いた不知火は、思わず正面から女に見入った。
白磁のような肌、卵形の輪郭は、主張しないことで際立つパーツ美がある。
黒く優雅な眉に、弓なりの美しいカーブの目、そして長く繊細に伸びる睫。
花びらのようにめくれた唇は淡いピンク色に咲き、歪みなく伸びた鼻筋は西洋人形のようだ。
深い緑を何色も重ねたような黒の瞳は、磁石のように視線を吸い込む。
「・・・・」
女の、口元のふっくらした肉が蠢いた。
ぱく、ぱくと何かを言おうとするが、漏れるのはただ息の音のみだ。
俯き、首を振った女の富士額に黒髪が掛かる。
悲しそうな目で不知火を見る。
378JOY:2007/11/19(月) 19:11:34 ID:SgmzWUWf
「喋れないのか」
女は頷く。
――聞いてはいけなかった。
「すまない」
そう瞬間的に後悔に打たれた不知火に、女はもう一度首を振る。
動くたびに揺れる、美しい黒髪。
毛先が各々の方向に大きく緩やかなカールをしたそれは、まるで三日月のアーチのようだ。
真っ白いワンピースの下、大きく盛り上がった胸を彩るアーチは、鮮やかな曲線を描いている。
そして、顎で切りそろえた前髪は、白い肌を引き立てていた。
どこからか漂う、優しく甘やかな薫香はまるで彼女の体臭であるかのように感じる。
清楚でありながら妖艶。
華奢でありながら力強い。
どこかで見た、しかしそれが何かは思い出せない。
それは、彼がよく馴染み、彼が知り尽くしたものの気がする。
ざーっという、無線のノイズに似た耳鳴りがしていた。
障子窓の向こうに視線を投げる。
千の波の稜線を、沈む陽が金色に縁取っていた。
ネイビーから橙に変化していく空に掛かる雲は、夕日に透かされ輝いている。
淀んだ影が部屋に溜まっていく夕刻は、時間の流れを止めているようだ。

逢魔ヶ時。

そんな言葉がふと頭に浮かんだ。
ここはどこなのだろう。
重い身体を引きずり起こし、不知火は窓辺に向かう。
そっと腕を取り、女は彼を助ける。見かけによらず、その力は頼もしく感じた。
西日と一緒に流れ込んで来る風。
窓枠に寄りかかり、景色を見回した不知火は息を呑んだ。

遠くに広がる海、そして浜辺。
高台から見下ろした白い花々は、一つのうねりとなって風に揺れている。
その中に一つ、古びた神社が佇んでおり、その前に鳥居が立っているのも見える。
雪に埋もれているかのようだった。
海神を祭ったのか、それとも八幡なのか、小さな社は忘れ去られているかのようだ。
取り囲むように咲いた白い海が、黄金のまどろみに浸かりながら揺れている。
鼻腔をくすぐる、優しい香りはあの花々の香りなのだろうか。
女と同じ香りだった。
379JOY:2007/11/19(月) 19:12:07 ID:SgmzWUWf
ひどく懐かしく、心を揺さぶるようなそれ。
肘を掴む女の指がすこし力を強めたように思った。
振り向いた不知火を、女はじっと見つめている。
雪のように清らかでいて、あの花々のように優しかった。
――不知火は海軍の戦闘機乗りの中でももてる方だ。
切れ長の一重に、外人のような琥珀色を帯びた瞳。
秀でた眉も、短めの鼻も、きゅっと結ばれた意志の強い唇も、その男らしさを際立てていた。
身長も小さいほうではないし、無口で頑固な性格も女には人気があったのだ。
だから、いろんな芸者や女にもてたが、彼女程美しい女は見たことがない。
きっとそれは、顔立ちだけの問題ではないのだ。
哀しそうにじっと不知火を見る女の目は、何かを不知火に伝えようとしている。

ふわふわと風を含んで揺れる髪の毛が、不知火の腕を撫でた。
「茉莉花・・・」
それが女の名前なのだと、なぜか不知火は唐突に理解する。
こくこくと茉莉花は頷く。
俺は茉莉花をよく知っている。
不知火は、根拠もないのにそう確信した。何故気付かなかったのだろうと思った。
真正面から赤々と残照に輝く茉莉花の手をとる。
彼女の白く細い指先を、節くれだった搭乗員の両手が包んだ。
「君なのか」
涙をいっぱいに溜めた目で、必死に茉莉花は笑った。
身体をぴったりと包む膝丈のワンピース。腿はしっかりとしているが、膝から下はすっきりと伸びている。
細い肩紐。真っ白な胸元。柔らかそうな腕。
優美な曲線の何もかもが茉莉花らしかった。
眉間に皺を寄せ、彼女は耐え切れず目を瞬かせる。
涙が押し出され、ぽろりと一粒落ちた。
思わず茉莉花を抱き寄せる。柔らかな感触に、濃くなる香り。
黒髪が描く、下弦のカーブが不知火の腕に触れた。
――ずっとこうしていたい。
しかし、一方で不知火はそれが叶わぬことを理解している。
しばらく茉莉花を抱きしめたまま、彼女の流れる髪を指先で弄ぶ。
窓際に崩れ落ちた二人の影が、次第に闇に溶けていった。
380JOY:2007/11/19(月) 19:13:43 ID:SgmzWUWf

いつの間にか世界は蒼ざめ始める。
冷たい星屑が空にちりばめられ、月が昇る。
硬質な月光が照らす世界は、この世ならぬものであるかのようだ。


――まだこの戦争が、ベテランとベテランの戦いだったころ、
不知火上飛曹は夜明け前にジャスミンの花を摘んだ。


「茉莉花、よく顔を見せてくれ」
彼女の顔に掛かった髪を払い、ぼんやりとした月光の下で茉莉花を見つめる。
白い細面は青白い光に微かに反射していた。涙の筋が残る顔が愛おしかった。
「・・・きれいだ」
また茉莉花の目が潤む。
――今生の別れ。
二人とも、それが目前であることを知っている。
サーモンピンクの唇に不知火はそっと自分の唇を重ねた。柔らかなふくらみの感触は心地よい。
初々しい恋人のような口付け。
それは、戦争が始まるずっと前から、忘れていたもの。
死と隣り合わせの戦闘機乗りであることが、彼を縁談や結婚といったものから引き離していた。
茉莉花の細く折れそうな首は、急激なGの変化に耐えうる不知火の太いそれとは全く違う物質に見える。

女とはこんなものだったのか。

改めて不知火は実感する。
細い肩紐の下に指を滑らせると、滑らかな鎖骨をなぞった。
心地よい冷たさと、吸い付くような湿り気のある肌。
顔を赤らめてそむける茉莉花の横顔を彩る、長い睫。
ぞくりとするほどに色っぽいその仕草に不知火は思わず唾液を飲み込んだ。
肩紐を落とす。ずり下がったワンピースの胸元から、真っ白に盛り上がった胸元が覗いた。
冷たい夜風のなか、指先で感じる茉莉花の体温だけが温かい。
「・・・いいのか?」
無粋と分かりながら不知火は語りかける。
381JOY:2007/11/19(月) 19:14:32 ID:SgmzWUWf
顔を向けられぬまま、それでも茉莉花は頷いた。
触れ合うたびに音を立てる髪の毛の音だけがする。
不知火は茉莉花の腰に腕を回し、軽々と抱え上げた。彼女が驚いたような気配が感じられ、肩に柔らかい重さが掛かる。
無性に可笑しくて、そのまま何度もぐるぐると回った。
「俺の旋回は一流だ!」
首に巻きつく茉莉花の腕。
恐らく彼女が声を発することができたなら、悲鳴を上げているだろう。
錐揉みをしながら、乱れ舞う茉莉花の髪の香りを嗅ぐ。
今では曲芸飛行ができるものも少なくなった。
そしてたとえ操縦士の技量があっても、以前のように曲芸飛行に耐えうる飛行機は少なくなりつつある。
布団の上に茉莉花を降ろした。
優雅な黒髪が布団に落ちる。不知火は笑った。茉莉花も笑っている。
そのまま彼女の顔の横に手を付く。
裾の捲れたスカートに思わず目が行った。大腿の中ほどまでずり上がっている。
両肩から落ちた紐、膨らみを危うく隠す布。
胸の合間に暗がりが淀んでいる。
額を重ね、唇を重ねた。上唇を甘噛みする。胸元へと落ちていく不知火の手が襟に滑り込んだ。


船には神が宿るという。
それは船魂(ふなだま)と呼ばれ、船乗りに広く認知され、祀られている。
海や山は神そのもので、その前に人間はあまりに無力だ。
そしてまた時に、自らが作り出した物に、神が存在することを日本人は知る。


382JOY:2007/11/19(月) 19:16:35 ID:SgmzWUWf
柔らかな膨らみを探る手は、滑らかな生地のワンピースを下ろしていく。
丁寧に舐った茉莉花の唇から短く息が漏れた。
「――っ・・・」
声を出せない茉莉花の喘ぎは苦しそうだ。
彼女の吐息を舌先に感じながら、さらに奥へと舌を差し入れる。
滑らかな口蓋を、唾液を絡めながら撫でた。
舌先を絡めながら、二人の境目は溶けていく。茉莉花の腕が蛇のように不知火の背中に絡んだ。
大きなまろみを捏ね上げ、その頂点を指先で挟む。
電流が流れたように、びくりと茉莉花は身体を震わせた。
淡い光と、波の音だけが部屋に流れ込んで来る。
ざらついた暗闇の中、茉莉花の身体の翳りだけが滑らかだった。
露出した乳房は質量を持ってずしりとしている。
揉み上げるたびにふるふるとそれは揺れた。
重たそうな瞼を持ち上げて不知火を見る茉莉花の目は、清廉さの奥に隠した官能を洩らしている。
「はぁっ・・・」
唇を離し、鎖骨を吸うと、白い身体が吐息と一緒に波打った。
着衣の乱れた様は全裸よりもかえって扇情的だ。
ぴったりとしたスカートを、撫でるように腰まで捲くり上げる。不知火の厚い舌は鎖骨から胸元へと降りていく。
唾液の航跡が清い白の上に残った。
「・・・すまない」
溺れながら、不知火はポツリと謝る。
濃い桜色の頂を口に含むと、茉莉花が顔を仰け反らせたのが分かった。
舌先でちろちろと蕾を刺激しながら、大腿の内側を何度もさする。
愛撫を増すごとに、びくん、と身体の反応も激しくなっていく。彼女のとろんとした目は、涙をいっぱいに孕んでいた。
身体を起こし、茉莉花の脚の間に割って入った。
大腿を持ち上げる。白い下着を露にしたあられもない姿はこの上なく刺激的だ。
肉付きのしっかりした腿は日の光に当たった事がないのかというほど透き通り、生々しい。
茉莉花は仰向けの姿勢で、肘を着いて身体を起こしている。
日の出ている時間の茉莉花と、夜の彼女は全く違う女に見えた。
飛行服のボタンを外しながら、一瞬不知火は不意に蘇った記憶に引き戻される。
383JOY:2007/11/19(月) 19:17:20 ID:SgmzWUWf



燃料タンク、右翼のエンジンも被弾していた。
黒々とうねる海は広く、友軍の基地は果てしなく遠かった。
米軍機の追撃は振り切ったものの、着陸できる飛行場はどこにもなかったのだ。


飛行服の上着を脱ぎ捨て、シャツのボタンを外そうとして不知火は、不意に衝撃に襲われた。
タックルに似た衝撃に、膝で立っていた不知火はバランスを崩して後ろに倒れる。
畳の上に倒れこんだ不知火に、質量を持った白が覆いかぶさった。
「!」
不知火を突き飛ばした茉莉花が、彼に跨っている。
それを理解するまでに、不知火には3秒ほど必要だった。
ぞくりとする凄艶な笑みを浮かべた女は、彼のシャツのボタンをじらすように指先で除いていく。
「・・・おい!」
見下ろすように不知火を見据えた茉莉花は、彼の制止など聞いていない。
またぐらの上に乗った彼女に、今までとは比べ物にならぬ速さで男が反応していくのが分かる。
言葉など、彼女には要らない。
シャツを開き、茉莉花は愛おしそうに厚い胸板を撫でた。
そうして服越しの硬いモノに下着を擦り付け、ふるふると睫を震わせる。
胸をこぼしたまま責めるその姿に、不知火の男の反応はいきり立った。
「ま、り、か」
不知火はたまらずその名を呼ぶ。
腰を浮かせた茉莉花の手がベルトに掛かり、ズボンのボタンを外す。
紅潮した顔は、のぼせたような表情を貼り付けていた。
開け放たれたズボンのボタンから、冷たい空気が下着の中に流れ込んで来る。
屹立したそれをむき出しにして、茉莉花は何かを伝えようとぱくぱく口を動かした。
「ま・っ・て・た・・・待ってた?」
こく、と茉莉花は頷く。
何を待っていたのか。こうして交わるのを待っていた、というのだろうか。
茉莉花をぐいと引き寄せ、胸の上に降る髪の毛の感触を楽しむ。
ふるふるとした膨らみが、不知火の胸板に押し付けられた。
今度は茉莉花から、不知火の唇を奪う。
384JOY:2007/11/19(月) 19:18:11 ID:SgmzWUWf



斜め銃。紆余曲折を経て採用された装備だった。
そもそも、機体の開発経緯自体が紆余曲折である。
双発戦闘機として開発され、
戦場の変化と共に、その価値を失い偵察機となり、
斜め銃の採用と共に、爆撃機の邀撃を主とする夜間戦闘機となった。


茉莉花の口付けは情熱的だった。
愛撫されながら、下唇を吸い、不知火の舌を挟み、吸い、絡ませる。
「ふは・・・っ」
茉莉花の重みも、キスの激しさも、愛おしい。
髪の毛を掻き分け、片手で茉莉花の頭を抱き、片手でふくよかな尻を撫でる。
下着を降ろしながら、柔らかく白い尻をもみしだく。
恋人と呼ぶには親密すぎる。
そして、友人というには知りすぎている。
「こんな終わらせ方で、すまない」
不知火は、呻きながら謝る。
一瞬唇を離した茉莉花が、息を詰まらせたのが分かった。
彼女の目から溢れ出した涙が頬を伝い、不知火の頬に落ちる。
とろとろとした蜜のような秘部が、膨張した肉茎に触れた。
「ッ!」
女が熱っぽく息を吐いた。
仰け反らせた顎、白い首が月光に艶かしく光る。
茉莉花は躊躇せず肉を沈めた。ふわふわした肉の摩擦が不知火を包んだ。
「は、ぁぁ、ーーっ」
声なき喘ぎ声を漏らす茉莉花の、苦痛に耐えるような表情。
黒髪のさらさらした流れが不知火の頬を撫でる。
粘膜のぬるぬるした温かい感触を怒張に感じながら、身体を密着させた。
胸のぷるぷるした感触、小さな突起が押し付けられている。
泣き顔で、必死に唇の両端を吊り上げ、かぶりを振った茉莉花の表情。
両手でそっと不知火の顔を撫で、腰を動かすたびに瞼を震わせる。
385JOY:2007/11/19(月) 19:18:57 ID:SgmzWUWf


その名は「月光」
美しいその名通り、偵察、夜間の邀撃を主な任務とした。
べったりとした暗緑色ではなく、銀色の光り輝く機体であったならばもっと美しかっただろう。
雲海の朝焼けの中、操縦席から見る翼は、虹色の光に包まれた神の翼。
正月には、お神酒とバナナを供えて祝った。
B-17を邀撃した夜、硬い月の光に縁取られた滑らかな曲線。
南洋の島の滑走路に佇んだその機体は、えもいわれぬ優雅な曲線美を持っていた。
昼の月光よりも、冷たい月の光の中に佇む機体はやはり美しかったと思う。
零戦や雷電、紫電改といった名だたる戦闘機の、エッヂの鋭さを持った機体とは違う。
両翼の二つのエンジン、優雅な広く大きな翼。
細くすらりとしたシルエット。
機動性や切れ味といったものには欠けるが、不知火はその機体が単純に好きだった。
南洋から叩きだされ、やがて爆弾を搭載した戦闘機が敵艦に突っ込むようになって、不知火は恐れた。
体当たり攻撃では、あまりに機体が可哀想だ。
人機一体、技量と機銃の闘いこそが本懐のはずだった。
最後まで全うな戦闘機として飛ばしてやりたい。
それが、一度も故障も反抗せずに死線を潜り抜けてきた機体への思いだった。
たとえ戦争に、負けるとしても。


「あ、ぁ・・・茉莉花、茉莉花」
腰を強く押し付けると、茉莉花の大腿が、鍛えられた不知火の腰を強く挟んだ。
ぐちゅ、と音がして深く楔が食い込む。五分刈りの頭に、白い指が埋まった。
とろりとした半目で茉莉花は不知火を見据える。
不知火は細い肩を撫で下ろした。骨の浮いた痩せた肩だった。
結合を深める度に、あふれ出す蜜がくちゅ、くちゅと音を立てる。
唾液に濡れた肉色の唇が戦慄いた。
茉莉花は泣いていた。泣きながら揺さぶられていた。
はっ、はっ、はっ、と耐え切れず漏れる息だけが間近に聞こえる。
電流に打たれたかのようにびくびくと身体をしならせ、不知火の身体にしがみついていた。
生き物のように揺れる黒髪ごと茉莉花を愛撫し、不知火は何度も肉壷に自身を穿つ。
「うっ、ああっ、ぁっ」
隘路の絞るような締まりに思わず呻きが漏れた。
濃くなる甘い優しい香り。
――月光の香り。
激しくなる蠕動に、茉莉花は背を逸らせる。白い乳がたぷたぷと揺れる。
捲り上げられたスカートの下で動く結合部から、どろどろの生温い液体が溢れた。
ぐちゅ、ぐちゅ、ぐちゅ
386JOY:2007/11/19(月) 19:19:44 ID:SgmzWUWf
白銀の光の下、淫靡な裸体が浮かび上がる。
キツイのに柔らかい、搾り取るような粘膜に怒張は硬度を増す。
腹に手を置き、髪を振り乱しながら茉莉花は沈み込んでいた。
ピストン運動は激しさを増していく。
「―――っ、はっ、――ッ」
虚しく彼女が無音の叫びを紡ぐのが聞こえた。
しごくように上下に動く茉莉花の腰を突き上げる。魚のように激しく跳ねる不知火の臀部に愛液が伝った。
「ま、りっ、かっ」
舌を出すほど激しい快感に襲われながら、不知火は何度もその名を呼んだ。
「ハッ、ハッ、ハッ、ッ」
返事はない、激しい二人の息遣いだけが絡み合う。
頷く余裕も失った彼女は、幾粒も涙を流しながら不知火を見る。
悦楽の表情の中に、深い悲しみを潜ませて。
「・・・・」
悲しみを忘れようとするかのように、また幾度深く沈みこむ茉莉花。
激しいピストン運動が不知火の余力を瞬く間に奪っていく。
目の前が霞み、血潮の流れる音がザーと聞こえた。
締め上げる膣口、柔らかく潰れてぶつかる尻、目の前で揺れる豊満な身体。
こみ上げる射精感が怒張を内部から圧迫していく。
「う、はあ、ああ、っ!」
全身の血液と快感が一箇所に吸い取られていくかのようだ。
今までどの女からも得られなかった快楽に、目の前が白くスパークする。
「―――り、か」
ぎゅっと顔を俯かせた茉莉花の膣に、熱い潮が流れ込んだ。
その瞬間、ひくひくと瞬きをした彼女が、その後静かに瞼を閉じた。


フィリピンではサンパギータと呼ばれるジャスミン――つまり日本で茉莉花といわれるそれは、月光の下で花開く。
まだフィリピンの制空権、制海権を日本が握っていた頃、不知火は白い可憐な花を摘み取った。
夜の空気に妖艶な香りが混じった。
ポケットに挿したそれを、一輪操縦席の計器に飾ったのを覚えている。
風防ガラス越しに満月が掛かっていた。
蒸し暑いが、静かな夜だった。見知らぬ南洋の波の音が響いた。
387JOY:2007/11/19(月) 19:20:42 ID:SgmzWUWf

――茉莉花。

不知火少尉と蛍田1飛曹のペアが搭乗した月光は、瀕死の状態で太平洋上を飛んでいた。
到底友軍基地まではたどり着けないだろう。片肺飛行の上、燃料タンクをやられていた。
しかし暗い洋上では、着水も相当な危険を伴う。
一か八か。
暗闇に浮かぶ島の、浅瀬へのアプローチ。
それが不知火の決断だった。
懸命に飛び続けているかのような月光を、三日月の細い光が照らす。

――フィリピンで俺がお前にジャスミンを飾ったことを、覚えていてくれたのか。

よく覚えていない。強引なアプローチだった。
目の前ががくんと揺れて、強い衝撃と共に意識が途切れた。
蛍田の悲鳴が遠のいた。

――おれは、いい搭乗員だったのだろうか。


花々が青白い燐光を放っていた。
夜の黒い森を背にして、あの古い社が立っている。
4畳半も無い様な、小さな社だ。
ジャスミンの花に囲まれた鳥居と社の前に、茉莉花が立っていた。
優しい香り。胸に迫る月光の切ない香り。
黒髪を波打たせながら花の中に立つその姿。
白っぽく光る肌、わずかにふわふわと動くワンピースは月の光のように優しい。
不知火は、ただ黙って立ち尽くしていた。
慈母のように優しい笑みを浮かべた茉莉花は、耳にジャスミンの花を飾っている。
ありがとう。
茉莉花がそう言ったのが分かった。
「・・・茉莉花」
人機一体。もしもそれが言葉通りならば、友人でも恋人でもない。
俺とお前は一体だった。
不知火はそう思う。
388JOY:2007/11/19(月) 19:21:34 ID:SgmzWUWf
「こんな終わり方で、済まない」
熱いものが溢れて、思わず不知火は目頭を押さえる。
何度も繰り返した謝罪の言葉、
少しだけ頭を振った茉莉花は、はっきりと、口を動かした。

さようなら。

不意に強く風が吹く。
ざぁっ、とジャスミンの花が揺れた。
天を仰いだ茉莉花を蒼い燐光が包む。
鳥居の下、白い花びらが舞い、燐火のように茉莉花が燃えていく。

一瞬眩いばかりに青白く輝いた燐火は、蛍のように散って沈んでいった。


船魂、というのがあるのだとすれば、
月光に精霊が宿らないとは誰が言い切れるだろう。


「不知火少尉、大丈夫でありますか」
漁船の発動機に、蛍田の声が混じる。
霞んだ目に明けたての青い空が染みた。
山男のような髭面をした蛍田が、不知火を覗き込んでいた。
「貴様か、・・・蛍田」
甲板には生臭い臭いが充満している。
重い頭を起こした。
「・・・大丈夫だ」
額を切ったらしく、流れた血が顔中に固まっている。
「少尉は頭を怪我されております。まだ寝ておられたほうが」
容態を心配する蛍田が続ける。
・・・それに、意識がない間、随分唸られていました。
「いい」
制止を振り切って不知火は身を起こす。
不時着水して浅瀬に乗り上げた地点に、地元の漁民が救助しにしてくれたらしい。
まだ100メートルも離れていない小さな島。
翼まで浸水し、明るい水面で光を受けて輝いている月光が、尾翼をこちらに向けていた。
その向こうには、小さな山の麓、あの社と鳥居が草原の中に立っている。

月光は力尽き波間に沈んでも、なお美しい。風防が朝日にチカリと光った。
息を引き取った愛機の最後の姿。
不知火は、離れていく月光と、社をずっと見送った。

茉莉花は海神になったのだろう。
389JOY:2007/11/19(月) 19:25:15 ID:SgmzWUWf
投下終了です。
調子に乗って書いた
今は反省している。すみませんでした。

補足
月光
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9C%88%E5%85%89_%28%E6%88%A6%E9%97%98%E6%A9%9F%29
ジャスミン
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B8%E3%83%A3%E3%82%B9%E3%83%9F%E3%83%B3
390名無しさん@ピンキー:2007/11/19(月) 20:38:17 ID:2Dfbj6Eb
乙。

>>372
見た目幼女で性格も子供っぽいのに子供扱いすると「子供扱いするでない!」とか言い出しちゃうタイプか。
391名無しさん@ピンキー:2007/11/19(月) 21:21:14 ID:DXMss7ZL
>>390
いるいるwww
392名無しさん@ピンキー:2007/11/20(火) 00:10:29 ID:RVghI13q
なんとなくヘルシングのアーカードの幼少期バージョンみたいだよな<なのじゃ口調
393名無しさん@ピンキー:2007/11/20(火) 00:15:12 ID:TYF9t6TZ
吸血鬼+ロリ+なのじゃというと
どうしてもワイルドアームズのマリアベルが浮かぶ喃
394名無しさん@ピンキー:2007/11/20(火) 00:37:02 ID:syUcziA4
>>389
GJ
彼女は九十九神の一種ということになるのかな?
395名無しさん@ピンキー:2007/11/20(火) 00:50:08 ID:ACCOyyHi
頭を撫でてやると子供扱いするなと嫌がるくせにやめると残念そうな顔をするとか萌える。
そういうタイプって弄りがいがありそうで実に良い。
396名無しさん@ピンキー:2007/11/20(火) 02:06:26 ID:MlBZBi6F
月光というと特殊刑事課を思い出してしまう。
とにかく乙。儚い…
397名無しさん@ピンキー:2007/11/20(火) 03:04:15 ID:lIxponZV
>>396
俺はレーザーブレードだぜ。
ファーストシリーズでは唐沢とこいつで大暴れしたモンだ。
398名無しさん@ピンキー:2007/11/20(火) 03:28:42 ID:vASFNAn/
レイヴン乙
399名無しさん@ピンキー:2007/11/20(火) 10:27:44 ID:bYhk0EFB
>389
乙です。GJです。俺、器物神系にはとことん弱いんだぜ……ああ、視界に映ったモニタが歪んでいる
400名無しさん@ピンキー:2007/11/20(火) 21:52:39 ID:RVghI13q
不覚にも鬼太郎の猫娘に萌えた
401名無しさん@ピンキー:2007/11/21(水) 01:54:52 ID:K2fXpxw6
最近のアニメ版のアレだろ?

原作の初期バージョンに萌えたというなら本物の妖怪マニアだが
402名無しさん@ピンキー:2007/11/21(水) 22:10:25 ID:/gnnL7sB
>>373
狐だと普通っぽい
403名無しさん@ピンキー:2007/11/22(木) 02:17:31 ID:MpPRr9Ih
>>399
器物神が器物挿に見えた俺はもう駄目かもしれん
404名無しさん@ピンキー:2007/11/22(木) 14:59:36 ID:12iYy1X5
ロリババァか…
魔法スレの魔法技師の話に出てくる魔王はいいぞ
405名無しさん@ピンキー:2007/11/22(木) 18:15:43 ID:VgICkiw7
以前書いてたのがアレとネタ被っててな・・・
406名無しさん@ピンキー:2007/11/22(木) 23:52:22 ID:Ic4AsOV+
>>405
ネタは同じでも中身は別物さ
同じ野球チームでも巨人と阪神くらい別m・・・あれ?
407名無しさん@ピンキー:2007/11/23(金) 22:43:41 ID:3jZsMhHG
メカニックとか技師モノは昔から結構書いてたなぁ
408名無しさん@ピンキー:2007/11/24(土) 22:20:41 ID:hJ9V1pcW
フジテレビでしゃばけやってるな
…アニメ化だったらよかったのにw
409名無しさん@ピンキー:2007/11/25(日) 00:12:53 ID:uGvnd/80
家鳴のビジュアルが可愛くなくなってたのが不満だったよw
ってか女キャラ人口低いだろあれ。
410名無しさん@ピンキー:2007/11/25(日) 09:59:46 ID:w6wbYSMr
腐にウケることを狙っとる主演からして
とはいえ原作も女(妖怪)キャラ比率は低かった
411名無しさん@ピンキー:2007/11/25(日) 19:04:32 ID:4ZUmdo/7
録画までしたのに騙された>シャバ
この怒りは人間に使える♀溶解のSSにぶつけてやるわ
412名無しさん@ピンキー:2007/11/25(日) 21:13:03 ID:mkymTGvd
>人間に使える♀溶解
ものすごい大量破壊兵器のような字面だw
413名無しさん@ピンキー:2007/11/26(月) 01:58:43 ID:51Fu4jZT
「旦那様」だと凄くそそるのに「御主人様」だとなんか萎えるのは何故だろう
414名無しさん@ピンキー:2007/11/26(月) 02:18:58 ID:gBQU8aso
>>413
個人的な見解だが、
旦那様:相手を人間扱いしている雇い主
御主人様:相手を人間扱いしていない雇い主
のような印象だな。
「人間扱い」というか、見下しているか否か、に近い。
415名無しさん@ピンキー:2007/11/26(月) 08:19:38 ID:yJh/Ytxg
御主人様の方が萌えれる俺は異端
アルケニーさんに蔑まれてぇ(*´д`)ハァハァ
416名無しさん@ピンキー:2007/11/26(月) 10:13:53 ID:eJakKwxH
>人間に使える♀溶解
「♀溶解」はアシッドスライム娘だな。
そして「人間に使える」と言うところをみるに、ごく弱い酸を分泌して人の肌を綺麗にするんだろう。

この意味する所は…、
どんな細かい隅間にでも入り込んでニュルニュル洗う身体洗い用プチスラ娘発売とな?!
417名無しさん@ピンキー:2007/11/26(月) 11:33:01 ID:lnS6oozu
御主人様は他人行儀っつーか隷属的な感じ、旦那様だと家族の一環になってるって感じだな。個人的には。
鬼畜系なら御主人様でもいいが・・・
418名無しさん@ピンキー:2007/11/26(月) 15:42:33 ID:saeBqn04
旦那様だといかにも雇われって感じがするから御主人様のほうが好きだな
様つけずに「旦那」なら親しみを感じるから俺的萌え度が高いんだけど
これではもはや違うジャンルになってしまう
419名無しさん@ピンキー:2007/11/27(火) 01:12:35 ID:bmvke6Xv
鬼や天狗のように敵キャラみたいな妖怪に萌えるよ
420名無しさん@ピンキー:2007/11/27(火) 17:55:47 ID:ZJfEY0xB
このスレにいるとむしろ敵味方が逆転して見えるから困る。
桃太郎は「小島で平和に暮らす鬼の家族を、彼らの僅かな財目当てに襲う人間」っていう話であってるよな?

で、目の前で父母を犯され殺された鬼の娘は桃太郎の魔の手から何とか生き延び、
クラマの山に棲む天狗の下で修行をして、家族を殺した桃太郎プラス3匹に復讐をする。
てな電波がピピピと。
421名無しさん@ピンキー:2007/11/27(火) 18:07:03 ID:94AAKAiA
それなんて芥川?特に前半部分とか。
422名無しさん@ピンキー:2007/11/27(火) 18:17:59 ID:X0+1IH9i
>>420
 家来の猿・鳥・犬を葬り、なんとか桃太郎の元へと辿り着いた鬼娘。しかし家来共は彼女の想像していた以上の
 強敵で、3匹と死闘を繰り広げた彼女に最早妖力は残されていなかったのだ。
「女、よくぞここまで辿り着いた。我が家来を打ち倒したその力、認めてやろう」
「貴様が…貴様があたしの親父を…家族を…!!」
「口だけはまだ達者のようだな。しかし、その様子では持てる力を全て使い果たしたようだな」
 兜を脱ぎ、刀を置いて鬼娘に近づく桃太郎。
「舐めるなぁ!!」
「ふっ」
「!」
 振り降ろされた刀を指二本でいとも簡単に受け止めた桃太郎は、そのまま鬼娘の手首を
 鷲掴みにした。
「くそっ、離せっ…ぐっ!」
 手首を更に強く握られ、鬼娘は残された唯一の武器であった断首刀を落としてしまった。彼女の脳裏に、
 目の前で頭蓋骨を握りつぶされた母親の悲鳴が浮かび上がる。
「畜生…畜生!!」
「よく見れば、女…中々良い?をしておるではないか」
 鬼娘の胸当に手をかけ、一気に引き剥がす桃太郎。布きれが引き裂かれ、止め紐が引きちぎられる音と
 同時に、倭人ではまず見られない豊満な乳房がさらけ出された。
「いやぁあああ!!」
「ふふふふ…これはまた上物であるな…では、下の方もさぞかし良いものが…」
 今度は腰当てに手を掛ける桃太郎。彼の目には、抵抗できない女を玩ぶ喜びにうちふるえる炎が明らかに
 灯っている。それを見た鬼娘の顔に、恐怖の表情が浮かんだ。
「やめろ…っ! やめ…やめてくれぇ!!!」
423名無しさん@ピンキー:2007/11/27(火) 18:23:37 ID:X0+1IH9i
>>420の電波を共振したので書いて見た。反省はry
424名無しさん@ピンキー:2007/11/27(火) 18:29:14 ID:VNFdooZp
さあ、早く続きを書く作業に入るんだ
425名無しさん@ピンキー:2007/11/27(火) 18:29:32 ID:X0+1IH9i
げふ、文字化けしてた…桃太郎に掘られてくる
λ....
426420:2007/11/27(火) 18:29:41 ID:ZJfEY0xB
>421
ググったらあったんで芥川龍之介の桃太郎を読んできました。
83年前に完璧なまでに既出だったとは…。さすがは文豪。

>422
仕事はやっ!
427名無しさん@ピンキー:2007/11/27(火) 18:38:06 ID:94AAKAiA
>>422
GJ!
作者の筆の速さに嫉妬。
428名無しさん@ピンキー:2007/11/27(火) 19:01:55 ID:X0+1IH9i
 鬼娘の抵抗も空しく、彼女の腰当てはまるで紙切れのように破られ、引き剥がされた。彼女の髪と
 同じ色の草叢で隠された秘部が、桃太郎の眼前に晒される。

「見るなぁ!」
「いちいち小煩い娘だ…だが、そんなことを言っていられるのも今の内」
「なん…だと?」
 鬼娘が気を緩めた瞬間、桃太郎は自らの額に巻いていたはちまきを解いたかと思うと、あっという
 間に彼女の両腕にはちまきを回し、後ろでで縛り上げた。
「くっ!?」
 そのまま地面に彼女を組み伏せ、馬乗りになる桃太郎。腰に縛りつけていたヒョウタンを手に取り、
 軽い音を立てて栓を引き抜いた。
「これがなんだか判るか」
「…」
「これはな、キビダンゴの材料を発酵させて作った酒だ」
「き、キビダンゴだと?」
 キビダンゴ。それぞれの種族の中でも獰猛な3匹を家来にせしめた、伝説の丸薬。
「この酒には、雌を淫らな行為に走らせるという効果があってな…今、お前で確かめてやろう」
「誰がそんなものを…ぐふぅ!」
 鬼娘の頬を強引に掴み、口を開かせる桃太郎。彼女の口腔に、容赦なく酒が注がれていく。
「ぶふっ! げほっ!」
「どこまでも強引な女だ」
「むぐっ…あふぅ」
 口を手で強引に塞ぎ、口腔内の酒を鬼娘の胃に流し込んでいく。彼女の目から大粒の涙が
 ぼろぼろと零れているが、そんなことには全くお構いなしの桃太郎。
「どうだ、女…」
「んぐ…あ…」
 鬼娘は身体を時折痙攣させ、首を横に何度も振った。頬は朱に染まり、乳房の頂きがみるみる間に
 小豆のような大きさに膨らんでいく。
「熱…い…身体が…うぅ」
「ほほう」
 桃太郎は組み伏せている彼女の下半身に手を添えた。その瞬間、彼女は大きな喘ぎ声をあげ、
 あわや桃太郎を振り落とさんと上半身をのけ反らせた
「ん゛っ!!!!ぁあっ!!」
「ふふふ…我慢する必要はもうないのだぞ…その証拠に」
 幾度となくのけ反る鬼娘の上半身を力づくで押さえ込み、もう一方の手で彼女の秘裂を指で
 かき混ぜた。
「ぁんっ!! ああぁ!! ひぃ!」
「前戯無用とは、正にこの事」
 秘裂の滾りをすくいとった桃太郎が、その指を彼女の目の前で止めた。
「こんな…あたしの…身体じゃ…違…」
「どうした、これで終わりか」
 桃太郎は口の端をにやりと歪ませ、愛液が絡んだ指で左乳房の頂きを何度も掠めるように弾く。
「くぅ! んぁ! あぁっん!」
 涙と涎を迸らせ、頭を振り回して喘ぎ声をあげる鬼娘。彼女の理性の糸は、最早切れる寸前だ。
 それを見越したのか、桃太郎は右乳房の頂きを摘み上げ…一瞬力を入れた後、指先から固くなった
 小豆を滑らせ落とす。
「ふぁああ!」
「…気分はどうだ?」
「…い…」
「…聞こえんな」
「欲し…い…」
「何が?」
「貴様…が欲し…い…」
「よかろう」
 桃太郎は立ち上がり、服を脱いだ。鬼娘の眼前に、熱く、そして太くそそりたった肉棒が姿を現す。
「はや…く…」
「お前の望み通り…くれてやる!」
 鬼娘の秘部を、桃太郎の”刀”が鋭く貫いた。
429名無しさん@ピンキー:2007/11/27(火) 19:16:31 ID:X0+1IH9i
「ぬぅ」
「あ゛んっ!!」
 男の小さな声と、悲鳴に近い女の喘ぎ声が夜の山中に響き渡った。
「よい…ぞ…このような締めつけは…我も…始めてだ」
「ひぁ…んんっ」
 焦点の合わない目で、桃太郎を見つめる鬼娘。その表情に最早憎しみはなく、ただひたすら己の
 身体の火照りを沈めて欲しいという願いだけだ。
「くっ…ぬ…」
「あっ…あっ…あん…ああっ!」
 桃太郎が腰を動かし始めると、鬼娘の口からも淫靡な声が漏れだした。ぱん、ぱんと腰が打ち付けられる
 リズムがどんどん早くなり、二人の声も激しさを増していく。
「うぅ…ぐっ…くぅ…はぁ」
「ん゛っ…ぁあ…ぁんっ…ああんっ…ん゛!!」
 鬼娘の乳房を鷲掴みにし、揉みしだく桃太郎。全身をかけめぐる快感に飲まれ、意識に白いものが混じり
 始めた彼女は、記憶の向こうに許嫁の鬼が遠ざかっていくのをまるで他人のように見つめていた。
「ぐ…ぁ…くう…ぁあ…ぬぉおおおおお!」
「はぁ…アア…あ、あ、あ、んんぁああああああ!!」
 快楽に身を焼かれた二匹の獣の声が、満月を包み込むようにこだました。


-------------------------------------------------------------

「…桃太郎はまだかえ」
 かつて桃太郎を育て上げた老婆が、囲炉裏にくべた炭を火ばしでかき混ぜた。だが、その顔はどうみても
 老人のものではない…二十歳過ぎの美女が、煮えたぎる鍋の蓋を開ける。
「不老不死と美貌が得られる鬼の肉…次はどうやって食そうかのう」
 怪しく、そして美しい笑みを浮かべた彼女の口から、きらりと光る牙。そして、流れるような黒髪を湛えた
 その頭蓋の頂きには、鬼族のみが持つ筈の角が見えた。


(終わり)
430名無しさん@ピンキー:2007/11/27(火) 19:17:22 ID:X0+1IH9i
推敲無しの勢いだけで書き上げてしまった…苦情は受け付けなry


|彡サッ
431名無しさん@ピンキー:2007/11/27(火) 19:37:25 ID:94AAKAiA
GJ!
推敲無しとは思えない作者の技量にも嫉妬。
ただラストは個人的にはちょっと……
432名無しさん@ピンキー:2007/11/27(火) 19:40:15 ID:q6nXHqL+
こういうオチも嫌いじゃない俺
433名無しさん@ピンキー:2007/11/27(火) 19:52:41 ID:VVo2LauG
>前技無用
四字熟語吹いた
434名無しさん@ピンキー:2007/11/28(水) 01:36:40 ID:G2gya/9Q
圧縮回避保守
435名無しさん@ピンキー:2007/11/28(水) 12:05:34 ID:tDuTJZWL
>430
GJ
人こそまことの鬼と呼ぶに相応しい、という感じですね。

あと推敲無しでこのレベルが出せるのと筆の速さに嫉妬。
436名無しさん@ピンキー:2007/11/28(水) 16:18:57 ID:JIu7YYSU
>>430
この早さと勢い、そしてエロ…あんた、まさかロボ娘スレの…
437名無しさん@ピンキー:2007/11/29(木) 13:50:49 ID:p46qiH1f
しっているのか月光!
438なしれ ◆8XSSeehUv6 :2007/11/29(木) 20:51:09 ID:uqeDwIhi
こんばんは。久しぶりに「住み込み弟子」シリーズ投下します。
いつものように人間×ラミア(蛇女)です。
苦手な方はタイトル「ある夜の実験室」をNG推奨。
10レス程度消費予定。
439ある夜の実験室(1):2007/11/29(木) 20:52:27 ID:uqeDwIhi
「あ、おはようございます」
「んー‥‥おはよ‥‥」
 さわやかな朝、なんてこともない挨拶。大蛇の下半身をずるずると引きずって
一階へ下りてきた師匠は、まだまだ目が眠そうだ。いつもより三時間は早いから、
それも仕方ないだろう。
「ラート、あたしの朝ご飯は――」
「あ、ついさっき作ったところなんでテーブルに置いてあります」
「ん、ありがと‥‥。――店番、今日もお願いね‥‥あたしの仕事は
‥‥なんとか今日中に‥‥ふぁ‥‥終われると思うけど‥‥」
「わかりました。何かあったら聞きに行きます」
 俺の返事にこくんこくんと頷くと、まぶたが下がりきらないように何とか目を開けつつ、
師匠は食堂へ消えていった。‥‥あれは八割がた寝てるな‥‥。

 *

 ビルサ寝坊大会があれば上位入賞間違いなしの師匠が早起きしているのには、
もちろんそれなりの理由がある。数日前のことなんだけど、突然仕事が舞い込んだ。
うちが商品の仕入れ先として世話になっている、シャダイム商会の元締め兼唯一の従業員の
ファイグが、見慣れない鉱石を持ち込んだんだ。
 ファイグは得意満面の顔で、布にしっかりくるまれたそれをカウンターの上に置いた。
黒い、でこぼこの、少し金属光沢を感じさせる石。師匠は俺たちのやりとりなんて
興味なさそうに、いつものように魔導書を読みふけっていた。
「‥‥なんだこれ‥‥鉱石?」
「っかー! てめぇ、それでも見習い魔導士か!?
姐さんに恥をかかせるのもたいがいにしとけよ‥‥なあ、姐さん?」
「‥‥え、あたし!?」
 完全に他人事だと思っていた師匠は素っ頓狂な声を上げると、慌ててもったいぶった仕草で
その石を取り上げた。そして注意深く観察し、おもむろにカウンターの上へ戻した。
「もちろん姐さんは分かってくれるよな、この石のすごさ!」
 得意げな問屋に訊かれて――
「――何、この石?」
「な、何って、冗談きついぜ姐さん! 秘星石に決まって‥‥!」

 ファイグの慌てぶりは滑稽なほどだった。
 秘星石――。ファイグの言うとおり、名前は俺でも知ってる。でも、見たことはない。
魔導処理を施せば持ち主の魔力を飛躍的に高める効果があるという、今では伝説になった鉱石だ。
師匠の話によると、今から千年ほど昔に記された『聖王年代記』のあいまいな記述が記録に残る
最後の例らしい。学者によっては、その存在自体が伝説に過ぎない、という人もいるとか。
そんなものがまた発見されたら、これは物凄いことだというのは俺でも分かる。が、問題は――
「何しろ昔話級の代物だからね。本物かどうか‥‥見ただけじゃ、あたしにもわからないわ」
「そ‥‥そういうもの、なのか‥‥?」
「そういうもの、よ」
 顔を引きつらせるファイグに、師匠はごくあっさりと認めた。

 そんなわけで、とりあえずその鉱石は師匠が預かり、鑑定することになった。
どうもファイグは秘星石だというふれこみを真に受けて、大枚をはたいて仕入れたらしい。
秘星石でなくちゃ困る、なんて無茶なことをいいつつ、ろくに話も聞かずに
膝をかくかくさせながら夕焼けの街へ出て行った。その妙に影の薄い背中を見ながら、
渋い顔の師匠に話を振ってみた。
「‥‥で、正直なところ、師匠はどう思うんですか?」
「ま、何かの鉱石なのは間違いなさそうね。ただ‥‥秘星石じゃない、気がする。‥‥すごく」
「――何にしても鑑定してから、ってことですよね」
「そうね。ま、早いうちに鑑定を終わらせましょ。
ファイグもあの調子が長引いたんじゃ、仕入れに支障が出そうだし」
 そう言うと大きく伸びをして、くきくきと首を鳴らす。申し訳程度の布で隠された胸が、
その動きに合わせて激しく自己主張。‥‥あー‥‥
「こら。『揉みたい〜』とか思ってないで、さっさと店じまい!」
「は、はいっ!」
 ‥‥いつも思うんだけど、なぜばれるんだ。
440ある夜の実験室(2):2007/11/29(木) 20:54:05 ID:uqeDwIhi

 * * *

 店番は俺が引き受け、師匠は朝から晩まで書庫か実験室に籠もりっぱなし。
そして、今日で六日目だ。なのに、鑑定はかなり難航中。
何と言っても秘星石自体についての情報が少なくて、当の鉱石が秘星石なのかそうじゃないのか、
その程度のことさえなかなか分からない。が、これは同時に、もう一つの可能性も示していた。

「――え、今なんて‥‥」
 午前中の店番を特に何事もなく終わらせ、師匠と向かい合わせに昼飯を
もぐもぐとやっていたら――師匠がぼそり、と聞き捨てならないことを口にした。
「うん‥‥もしかしたら、なんだけど‥‥あれって、今まで知られてない鉱石かも」
「み、未知の鉱石!? ‥‥んぐっ‥‥げほっげほっ!」
 思わずむせかえる。げほんげほんと咳き込む俺をあんまり気遣うふうもなく、
師匠は独り言のように自説を展開し始めた。
「この数日、うちの資料をひっくり返して、ビルサ大学とかほかの魔導士とかにも
秘星石絡みの資料を借りてみたでしょ。で、相変わらず秘星石の性質自体が要領を得ないんだけど、
それでもあの石‥‥どうも秘星石じゃなさそうなのよ。
じゃ、だったらあれは何なのか、って話。――魔力放射は微弱、魔力伝導も
なんだか変な癖があるし‥‥。精錬すれば金属が得られるかも知れないけど、
試料があの量じゃそういうわけにも‥‥あと、四大元素反応もしっかり調べなきゃね」
 そこで一旦言葉を切ると、お茶をこくんと一口飲む。
「ま、とりあえずは秘星石かどうか、ってところだけでも確定しなきゃならないし――
あとは出たとこ勝負ってところかな。あ、まだ早いけど、晩ご飯が済んだらまた実験手伝ってね」
 何気なく、そう言う。‥‥正直言って、弟子入りしてからこのかた、師匠がこれほどまじめに
研究しているのを見るのはこれが初めてだ。冗談も言わず、ご飯時でさえ何かを考えてる。
 弟子として、これは喜ぶべきこと、なんだろう。当代一流の大魔導士のそばで、
未知のものかも知れない鉱石の鑑定を間近に見る――そうそうある機会じゃない。
手伝いのためにページをめくる分厚い本も、俺の故郷じゃ図書館にさえ無いような書物だ。
実験室にあふれかえる器具も、薬も、魔導具も。きっと大陸中の魔導士が
うらやむほどの恵まれた環境で、一瞬たりとも無駄にできない濃密な時間なんだろう。
――でも。
「――ほら時間よ。店番、退屈だろうけどよろしくね」
 不意に声をかけられ、やっと我に返った。尻尾の先で俺の頬を軽くつついて微笑むと、
またしても師匠は実験室に籠もってしまった。午後も退屈なのは間違いないから、
俺はうんざりしながら店へと戻った――。

 * * * * *

「はい、そっち持って‥‥あー、傾けないで‥‥うん、そんな感じ。そのままじっとして」
「お、重い‥‥」
「我慢我慢。はい、いくよー」
 師匠の手伝いは時々かなりの重労働になる。金属とガラスが組み合わされた大きな実験器具を
左手で支え、右手は絞りの調整が変わらないように押さえる。師匠が火精石に
魔力を注ぐと、ぐねぐねと曲がりくねった管を通って高圧の熱気が例の鉱石へ吹き出しはじめた。
「――出力上げるよ。そっちの調整はできてる?」
「熱っ‥‥あ、できてます」
「よーし。――三、二、一、はいっ!」
 合図と共に、炎の吹き出し口がしゅぼっ! と唸る。噴き出す炎はもう「炎」の形じゃなく、
一直線に走る炎の棒のようだ。その炎が直撃している部分は赤く光り、そこから青い火花が
ぱりぱりと散る。
「火花は青、か‥‥。ん、消すよ」
 それを観察しつつ首をかしげる師匠。しばらく見つめていると合図を出し、
すぐに炎の勢いが弱まってゆく。ぽふ、という気の抜けた音を最後に熱と光は消えた。
「はい、もう下ろしていいよ。――ま、こんなところかな」
441ある夜の実験室(3):2007/11/29(木) 20:55:46 ID:uqeDwIhi
 額にうっすらと浮いた汗を手の甲で拭うと、師匠は肩をくいくいと回した。
まだ熱を持っている火精石がぼんやりと赤い光を放ち、師匠の白い肌を柔らかな紅で染めている。
「というと――」
「秘星石じゃなくて、別の何か。ほぼ間違いなくね。
で、言ったように、じゃあ何なのかってのが次の課題よねー。
まずは‥‥そうね、このフラスコに水入れて。蒸留水ね。で、そこの青水晶粉末と、
黒曜石レンズを取って。あと、そっちの机で冷却器を組み立てといて。
――あー、ほら、さっさと放炎器を片付ける!」
「そ、そんな一気に言われても――あちっ!」
「火傷してないで、さっさとする!」
 師匠の興味は早くも次の段階に移ったらしく、矢継ぎ早に指示を出す。
ちょ、ちょっと待って‥‥! もたもたしてると怒られるし、急ぐ用件から順に片付けないと。
あふれかえる器具だの材料だのを掻き分けて棚から目当ての物を引っ張り出して師匠に渡し、
今度は放炎器を注意深く分解して――。
「冷却器が組めたら水精石を入れて準備。あ、一階の資料室から『魔導鉱物』の八巻と
『木石論』全巻、あと『大いなる魔導の石』もお願い」
 自分の作業を進めながら、顔も上げずに次の指示を出す。ひー、追いつかない‥‥!

 *

 くそ重い図鑑や稀書を抱えてぜえぜえ言いながら実験室に戻ってくると、
「遅いよ、もっと急ぎな! 『魔導鉱物』八巻十三章、付録図のページを開けてこっち持ってきて。
――ふ‥‥ん、そっか。じゃ、次は『木石論』の――」
 初めて見るほどの熱心さで実験を繰り返し、文献を繰り、指示を飛ばし――。
これが大魔導士か、と俺は認識の甘さを痛感した。単に魔力が強いだけじゃない、
鬼気迫るほどの知識、記憶、技術。その内容はあまりに高度で、
俺には師匠が何をしているのかさえよく分からない。ただただ指示を追いかけるのが精一杯だ。
 でも、その暴風のような勢いの実験も少しずつ落ち着いてきたらしい。
指示も少しずつゆっくりになり、ようやく実験の手元を見る余裕ができてきた。
 師匠は魔力増幅器を前に置き、その先に例の鉱物を置いていた。
増幅器に取り付けられた水晶玉に手をかざし、魔力を送り込む。と、その力は光の粒となって
鉱物に収束する。照射されている部分がぼんやりと光り、青緑色の輝きが師匠を照らし返している。
幻想的な光が、師匠の美貌を浮かび上がらせて。いつもとは一味も二味もちがう、
不思議な魅力が漂う。
「師匠‥‥」
 思わず、ため息が漏れた。
「ん‥‥どしたの?」
 師匠は顔をこっちに向け、小首をかしげる。どうもそれほど集中は必要ない作業みたいだ。
「いや‥‥ちょっとすることがなくて」
「じゃ、さっきの本でも読んどきなさい。基本的なところなら、あんたでも分かるでしょ?」
 そう言うと、またしても実験に没頭する。あまりにも簡単にいなされた俺は、
分厚い本をしぶしぶ眺めることにした――。

 * * *

 どれだけ待っただろうか。師匠はもう指示を出すこともなく、自分の作業しか
意識にないようだった。あくびをかみ殺しながら退屈な本を読んでいたけど、
さすがに飽きてきた。――飽きてるから時間を長く感じるのか、本当に長時間待ってるのか、
それはちょっと分からない。月や星の影響を受けないように窓は暗幕で閉じられ、
部屋の中は照明水晶が薄暗く照らすばかり。
 増幅器越しに魔力を注がれ、例の鉱石もいくらか様子が変わってきているらしい。
頼りなげだった光も、青から橙色へと色を変え、ずいぶん明るくなってきている。
 暖かい色の光が揺らぎ、師匠の上体を柔らかく照らし出す。暗い室内でぼんやりと
浮かび上がる白い肌は、いつも以上に艶めかしい。
 とくん。――心臓が、小さな音を立てた。
 師匠の美しさを意識してしまうと、いつもこうだ。そして、それは一度意識すると
簡単には収まらない。
442ある夜の実験室(4):2007/11/29(木) 20:58:06 ID:uqeDwIhi
 邪魔をしちゃいけない――頭を振って、ページに視線を落とす。でも視線は文字と行を
なぞるばかり。瞳はすぐに師匠の姿を探し始める。
 きれいだ。
 白い肌も、つややかな唇も。照らし出される胸も、陰になった胸元も。
 ――だめだ、見ちゃいけない。目を固く閉じ、邪念を必死に払う。師匠は本当に懸命になってる。
未知の魔導鉱石となれば、当たり前だ。大魔導士の名をさらに高める偉業になるかもしれないんだ、
邪魔していいはずがない。‥‥だけど‥‥!
 留められないほど渦巻く欲望――そうだ、それも当たり前だ。
 昨日も、おとといも、もう五日も‥‥してない。今日だって、たぶんこのまま実験は
終わらなくて、二人別々にベッドに入ることになる。
 したい。したくてたまらない。あの柔らかい肌を抱きしめて、抱き合って、絡まり合って
――それがいつもだった。毎日だった。もしかすると、その「いつも」が
世間の「普通」じゃないのかもしれないけど、俺にとってはやっぱりそれが「普通」だ。
 ぱらり。
 書物のページが、一枚、また一枚とひとりでに閉じてゆく。
足が勝手に立ち上がり、師匠の後ろへと俺を連れて行く。
 ――きれいなうなじ。香しい髪が、鉱石からの魔力波を受けてふわふわと舞う。
ほっそりと緩やかな曲線を描く首筋、そこから続く胸の盛り上がり。落ち着いた呼吸に合わせ、
そのたわわな膨らみが規則的に上下する。――そこへ後ろから伸びる、手。
指先が布越しに膨らみに触れ――
 むにゅうっ。
「んあっ!? ――ちょっ、何!?」
 驚いた声と弾力たっぷりの肉感が、俺の意識を叩く。でも、それは理性を回復する働きよりも、
欲望を暴走させる働きの方がずっと強かった。両手では到底収まりきらない胸をゆっくりと
円を描くように揉み――
「‥‥ナイアさん‥‥」
「こ、こら‥‥ダメだって‥‥邪魔、しないで‥‥」
 ほんのり赤く染まった耳朶をついばむと、はにかんだように体をくねらせる。
困った声で注意するけど、でも意識と手はしっかりと実験の方へと向けられてる。
――いいよ、別に。意識は俺の方へ向けさせてあげるから。
「あ、ん‥‥ほら、自分の勉強、しなさい‥‥。あ、ぁん‥‥こっちは後で、してあげるから‥‥」
 嘘だ。絶対、ナイアさんは自分の興味を優先する。そうでなきゃ、五日もおあずけに
なったりしない。――子供じみた嫉妬が、手と指にこもる。ゆったりと乳肉をこね回していた指が、
無意識に暴れ始めた。
「集中できないじゃない‥‥ほら、戻っ――あはぁっ! や、やめ‥‥ああっ、はぁうっ‥‥」
「おっぱい、感じるんでしょ? もっと喘いでいいよ」
 ふふっ。ナイアさんの魔力が乱れてきた。体もいやらしくくねりはじめてる。敏感な体だ。
乳首もつんと立って、服の布地を下から押し上げてる。
「し、師匠の、じゃ、邪魔するんじゃ、ない‥‥ああっ、っく、はぁんっ
――あ、あぁん、うまい‥‥よ‥‥そこ‥‥っ!」
「ほら、本音が出た‥‥五日間、してないからでしょ」
「た、溜まってなん、か‥‥ないわよ‥‥っ、
あんたじゃあるまいし‥‥ああっ、そこ、そこ‥‥ぉ‥‥!
いい、もっと‥‥あっはぅ‥‥つ‥‥強く‥‥!!」
 ごちゃごちゃ言いながらも、おねだりが交ざりはじめる。視線はなんとか鉱石へ
向かっているけど、眉を寄せて、目元も潤んできてる。手に力を込めるたびに身体が震え、
熱い吐息が漏れる。背中も俺に預けきって、抵抗なんてあってないようなものだ。
「も‥‥ぉ‥‥。困った弟子ね、あんたは‥‥っ。か、鑑定、させてよ‥‥あ、ぁ‥‥」
「そこまで言うなら続けていいよ‥‥でも、俺はやめないから」
 首筋に唇を這わせて、溢れる乳肉を思いきり揉み潰す。ナイアさんはのけぞり、
ひときわ大きく甘い声を上げる。開いた上下の唇を、唾液の糸が繋ぐ。跳ね返る圧力を
両手にたっぷり感じながら、続けて二度、三度と揉み込んであげると、
うっとりするほど色っぽい吐息と喘ぎが耳を打つ。口角から涎がとろりと溢れ、
首筋をつたって胸元まで流れ落ちた。
443ある夜の実験室(5):2007/11/29(木) 21:00:16 ID:uqeDwIhi
 中空をぼんやりと見つめながら、びくびくと震えっぱなしのナイアさん。
弱点の塊みたいなおっぱいをこれでもかと言うほどに揉みしだくと、
もう俺を叱ることもなく悶え鳴く。――なのに、その両手は相変わらず増幅器に掲げられ、
小刻みに震えながらも魔力を送り続ける。凄い執念だ。‥‥俺も負けてられない。
「ナイアさん‥‥こっち向いて‥‥」
 俺の囁きに、抵抗することもなくゆっくりと振り向く。濡れた唇は半開きになり、
熱い吐息が俺を誘う。その唇を軽く舐めると、浅く短い息が漏れた。
右手でその顔を抱き寄せて――。
「あんっ‥‥んぅ」
 優しく、でも濃厚に唇を重ね合い、ついばみ合う。舌をぬるりと差し込むと、
抵抗もなくそれを受け入れてくれる。絡み合わせ、舐め合い、互いの味を確かめ合う。
胸をたっぷり揉みしだかれたせいか、ナイアさんの舌の動きは鈍い。いつもなら俺を絡め取ろうと
好戦的に襲いかかってくるのに、今日はされるがまま‥‥とまではいかないけど、激しさはない。
 香しい匂いが俺の鼻をくすぐる。頭をぐっと抱き寄せ、互いの唇を完全に密着させて、
舌を思いきり絡ませる。ふれ合っている面積ができるだけ大きくなるようにして。
じゅるじゅると唾液を送り合い、すすり合う。
 そのうちに、ついにナイアさんは俺の方へと身体をよじり、椅子から腰を上げた。
鉱石へ魔力を送っていた両手のうち、左手だけを俺の体に絡ませて。
――実験はどうしても中断できないらしい。俺との秘め事よりもそっちを優先するなんて
気に入らない‥‥弟子としてはあまりにも不遜な想いが沸き立つ。
ナイアさんがそのつもりなら、俺にも考えがあるよ‥‥。
「ん‥‥っく‥‥ん、んんっ! ぷぁっ、んむぅ‥‥っっ!!」
 頭をしっかり押さえ込んだまま、左手で胸をしつこくこね回す。尖りきった先端を、
布越しに中指と人差し指の間に挟んで軽くつまむ。そしてそのまま、指に力を込める。
遠慮せず、思いきり。むにゅ、ぐにゅ、と鷲づかみにして力を込めるたびに、
唇を奪われたままナイアさんは悶える。抵抗もできず、声も出せない。完全に追い詰めた上で、
さらに胸だけを愛撫する。すると、力の入らない上半身を完全に俺に預けてすがりついてくる。
もっと揉んで、とでも言いたそうな反応。でも、ナイアさんの要求には応えてあげない。
ずっとこね回されていたおっぱいを解放し、両腕でナイアさんの体を抱きしめる。
唇は重ね合ったまま、舌は絡ませ合ったまま。
 ――ナイアさんは、予想通りの行動に出た。
 ちゅうっ、じゅる、くちゅ、という唾液の音を響かせながら、立ったまま絡み合う。
下着の中で張り詰めた俺のモノに、何かが触れる感触が伝わってきた。何か、なんて
言うまでもない。わずかな布地で隠された秘部が、むずがる子供のようにすり寄ってくる。
腰をくねらせ、ナイアさんが俺に密着してる。
「どうしたの、ナイアさん‥‥そんなにくねくねして」
「あ、はぁん‥‥いじわる、しないで‥‥ちょうだい‥‥」
 蕩けきった美貌が、切なげな瞳で俺の眼を見る。あのナイアさんを完全に掌握して、
おねだりさせてる――ぞくぞくするほどの快感。
「してあげるけど、そのためには実験を中断しないと無理でしょ?」
「そん‥‥な‥‥ぁ」
 まだ理性が残ってるらしい。さすがは大魔導士様、ってところなんだけど、
今の俺には逆効果でしかない。未練がましく増幅器にかざされた右手を掴んで、
腕ごと体を抱きしめる。魔力の供給を絶たれた鉱石はパリッパリッと小さな火花を
上げたかと思うと、あっという間に光を失ってしまった。
「ほら、もう実験は失敗だね。――決めたんだ、俺。
今日はナイアさんを犯す。思いっきり抱く。五日間、『今日で終わる』って言われ続けて
我慢したんだから――もう歯止めがきかないよ」
 ぼうっと熱さを湛えた瞳が、上目遣いで俺を睨む。
「二時間も頑張った実験なのに‥‥台無しにするなんて‥‥あ、ぁ‥‥」
 腰を抱く。物凄い胸やむっちりしたお尻とは対照的な細いくびれを、思いきり抱き寄せ、
抱きしめる。恨み言を漏らすナイアさんの目を見据え、体を密着させる。
ガチガチになった俺の下腹部が、濡れそぼった所を布越しに圧迫する。
――俺を睨む瞳が怯えたようにすくみ、そして次の刹那にはとろんと蕩ける。
唇がゆるみ、熱い吐息が漏れる。
444ある夜の実験室(6):2007/11/29(木) 21:02:16 ID:uqeDwIhi
「ね‥‥ぇ‥‥ベッドで‥‥お願い‥‥」
「嫌だ。もう我慢できないよ。‥‥ほら、わかるでしょ」
 下半身を露出し、ナイアさんの手をそこへ導いて。しなやかな指先が、
おずおずとそれに触れ――するりと絡まる。俺の形を確かめるように、根元から先へ、
先から根元へとするすると這う。二、三度指先を往復させると、ため息混じりの感嘆。
「すご‥‥い‥‥。そんなに、あたしが欲しいの‥‥?」
 返事はいらない。抱きすくめ、唇を奪い、貪り、貪り合う。あれだけ未練がましく
実験器具へ向かおうとしていた手も、俺の体に絡みつく。
 上あごを舌先で舐め、唾をとろとろと口内に流し込む。長い舌が嬉しそうに俺を迎え、
蜜のように甘い響きの吐息がうっとりと漏れる。胸を覆った布きれを、そして腰に絡まった帯を
片手で解いてゆく。ぱさっ、という音と同時にナイアさんの体から力が漏れ出てゆき、
骨を失ったようにふにゃふにゃとへたり込んでしまった。椅子や雑物の入った箱を
手荒く脇へどけ、空いた空間にナイアさんを押し倒す。

「――きれいだよ」
 思わず、言葉が漏れた。――誰だってそう言いたくなると思う。
 ナイアさんの体を覆う物は何もない。そして、薄暗い光の中、その姿はあまりにも魅惑的だった。
つややかできめの細かい柔肌。ほっそりとして、それでいてしなやかな肢体には不釣り合いなほど
大きな乳房が、悠然と俺を誘う。くびれた腰には上品なおへそ。そして艶めかしい曲線を作り出す
骨盤から下には規則正しい鱗が連なり、みなぎる生命力を感じさせる逞しい蛇体が長々と続く。
これ以上ないほど美しい、奇跡のような体。
 そしてその奇跡は、あまりにも卑猥な状態になっていた。
 みずみずしい唇は半開きになり、湯気が見えそうなほど熱い息を規則的に、時に乱しながら
吐いている。熱を帯びた肌はほんのりと色を差して。柔らかな膨らみの頂点はツンといきり立って
存在感を主張して。絞ったかのように細い腰は、くねくねと物欲しげに動いて。
そして――
「実験が、とか言って‥‥ナイアさんも欲しかったんでしょ」
 さっきまで腰布で隠されていた部分が、今は見えてる。ぐしょぐしょに涎を垂らして、
花びらをぐちゅぐちゅとよじらせて、上端の突起をぴんぴんに尖らせて。ナイアさんの欲望が
煮詰まって、溢れていた。よく見れば、したたり落ちた蜜はとろとろと溢れて下半身をつたい落ち、
床にまで達してる。さっき外した腰布も、きっとぐしょ濡れだろう。指を一本差し込むと
粘液質の音が派手に響き、熱い蜜が指に絡みついた。糸を引くほどに粘っこいその液を
ナイアさんに見せつけ、胸元に塗りつける。
てらてらと光る筋が、白い膨らみに淫らな跡を描いた。
「胸しか触ってないのに‥‥おっぱい、ほんとに弱いんだね。――そうだ」
「ふぁああっ!? あ、ぁはぅっ、んああっ!!」
 耳元で囁いた直後、前触れもなくいきなりおっぱいを揉みたくる。片手に収まらない乳房を、
それぞれ左右に揉み、掴み、こね回し、乳首をつまみ、弾き、ひねって――
「イっていいよ、ナイアさん‥‥胸だけで、思いっきり鳴いてよ」
「そ、そん、な、うそ、うそよ、あ、あ、ぁぁ、っ‥‥ああああぁぁあっ!!!」
 俺の手を押さえ、床の上でのけぞり、のたうちながら――ナイアさんは、胸だけでイった。

 *

 すっかりできあがってしまったナイアさんは、そこからは一気に積極的に欲しがりはじめた。
俺のチンポを掴み、しごき、一秒たりともそこから手を放さない。キスや愛撫の最中も、
欲しくて欲しくてたまらないといった顔だ。それが分かるからこそ、俺も焦らす。
いよいよ挿入、というふうに見せかけておいて、モノの先であそこの突起や入り口をつつき回す。
「き、来て、早く‥‥っ!!」
 亀頭でじゅくじゅくと秘裂をまさぐると、切れそうな弦のように張り詰めた声が俺を求める。
もっとかき回して焦らそうかと思っていたのに、俺の体はその声で陥落してしまった。
感じるところを探りもせずに、体の奥から湧き上がる衝動のままに――貫いた。
「あ、あ、すご‥‥っ、――あぁぁあっ!!」
「うあ‥‥なんて締め付け‥‥!」
「‥‥っく、ぁ‥‥ぁぁ、あ‥‥っ!」
 目を見開き、ぱくぱくと口を開け閉めして、ナイアさんは思いきりのけぞった。
反動で巨乳がぶるんと踊る。でも目の保養をしてる場合じゃない。チンポが一気に呑み込まれ、
もみくちゃにされて‥‥!
445ある夜の実験室(7):2007/11/29(木) 21:04:10 ID:uqeDwIhi
「ぁ、ぁ‥‥っ、す‥‥、す‥‥ご‥‥ぃ‥‥! ら‥ぁ‥と‥‥――っく‥‥」
 きれぎれに喘ぐナイアさん。俺はと言えば、攻め寄せる快感に耐えながら
ナイアさんの肉洞を味わうのに精一杯。動くことなんてできやしない。
この煮崩れそうなまでにたぎった淫裂の中で、うかつに動けばその瞬間に暴発しそうだ。
早くも肉棒はビクビクと上下に震えはじめ、快感をますます増幅させてゆく。
うそだろ‥‥っく、我慢、しないと‥‥!
「ラート、おねがい、も、もう、これ以上焦らさないで、突いて‥‥!!」
 必死に耐えるばかりの俺を、ナイアさんは「焦らし」だと思ってるらしい。
そ、そんな余裕、無いよ‥‥!
 そう言おうにも、ナイアさんのおねだりは止まらない。視線で、唇で、喘ぎで、
吐息で、言葉で、全身で俺を誘う。――だめだ、耐えないと‥‥暴発なんてしたら、
絶対気を悪くする‥‥我慢、しろ、俺‥‥!!
 じっとりとした汗が顎先から滑り落ちる。顔面が張り詰めたように熱い。
きっとみっともない顔になってるんだろうけど、それどころじゃない。
なのに、ナイアさんは分かってくれない。理性を直接たたき壊すような淫らさで、
俺の目に、耳に、熱烈に訴えてくる。そして――突いて、という叫びと共に腰を
思いきりくねらせてきた。――そん‥‥な、耐えられ‥‥ない‥‥!!
「――うああぁぁっ!!」
「あっはあぁっ! あぁ、すごい‥‥っ!! ひぁ、あ、――こ、こん、な――だ‥‥め‥‥!!」
 荒れ狂う快感はナイアさんの腰使いにあっさり爆発し、出口を求めてチンポの先から吹き出る。
その最中も二人の腰は止まらない。精液の直撃を子宮口で受け止めながら、
ナイアさんの下半身がのたうち回って悶え狂う。回りの器具や椅子ががたがたとなぎ倒されていく。
「‥‥ご、ごめんっ、ナイアさん‥‥我慢、できなくて‥‥っ!」
 しびれるような快感に、射精を続けながらも腰を突き入れてしまう。謝る言葉が
口から溢れるけど、ナイアさんは聞いてない。俺の首にしがみついて絶叫するばかり。
どろどろの愛蜜と俺の精子が絡まり、どくどくと溢れて鱗を濡らしてゆく。
焼けつく快感が頭を光で塗りつぶす。白濁液をぶちまけながら衝動のままに何度も腰を突き込み、
ナイアさんを絶叫させ続ける。数十秒かけてやっと欲望を吐き出し終えるころ、
ナイアさんは早くも息も絶え絶えになっていた。俺の体も力尽き、がくりと崩れ落ちる。
「あ、あ‥‥出しながら‥‥突くなんて‥‥」
「はぁっ、はぁっ‥‥もっと我慢するはずだったのに‥‥ごめん‥‥」
「いいよ、もっと抱いて‥‥もっと、もっと‥‥!」
 俺の顔を抱え、熱い口づけを。モノをくわえ込んだままのあそこが、きゅうっと締まる。
長い蛇の体が脚に幾重にもからみつき、きめ細かい鱗が太股や膝裏を滑り、愛撫してゆく。
欲望を吐き出し終えた肉棒がナイアさんの期待を受けてビクビクと跳ね上がり、大きく反り始める。
「うん‥‥今度は長持ちさせるからね」
 のたうつ蛇体が嬉しそうにぎゅっと締め付け、くすくすと楽しげな声が耳をくすぐった――。

 * *

 肉壺を貫き、抱き合ったまま腰を動かす。椅子がそれに合わせてガタガタと騒ぐ。
四本脚の簡素な椅子に俺が浅く腰掛け、ナイアさんの体を腕とあそこで支える。
長い下半身は俺の両足の間から椅子の下へ流れ、そして椅子ごと俺を抱きしめる。
「腰、くねらせてごらん」
「くはっ‥‥ぁ、ふぅっ‥‥。だ、だめ‥‥力が‥‥抜けて‥‥」
 はふはふと息を乱しながら、俺の首に抱きつく。お尻が背中越しに見える。
薄い香水の香りと汗の匂いを含んだ髪が俺の首や顔にかかった。むっちりしたお尻を揉みながら
その香りを大きく吸い込むと、体がますます熱くなる。
「ほら、じっとしてちゃ楽しめないよ。ナイアさんも動いたほうが燃えるよ」
 頭を軽く抱いてそう言うと、ナイアさんの唇が何かを言いたそうに動く。
そして椅子の背もたれを掴むとぎこちなく腰をくねらせはじめ――歓喜の喘ぎが漏れはじめる。
「あぅっ、は、あ‥‥っ! すご‥‥い‥‥っ、なんで、こんな――あああっ、
う、動かさないで、だめ‥‥っ!!」
 お尻を掴んで俺の腰へこすりつけさせる。亀頭の先がコリコリしたところに当たる。
――とたんに喘ぎが破裂する。
446ある夜の実験室(8):2007/11/29(木) 21:06:59 ID:uqeDwIhi
「気持ちいいでしょ? ここ‥‥」
「よ、よすぎて‥‥っ、う、うそ、あ、あ、‥‥あうぅっ!!!」
 俺の頭を抱えてくぐもったよがり声が詰まり、次の瞬間にはかみ殺した絶叫。
髪を跳ね上げてのけぞり快感を表現すると、がくりと倒れ込む。規格外のおっぱいに
押しつぶされる俺。顔を左右に傾けて手当たりしだいに柔肉を甘噛みすると、
倒れ込んだままの体がびくびくと震える。
「あふっ、か、噛まないで‥‥っ」
「歯形つけてあげようか? ナイアさんは俺のものだ、って印の代わりに」
 視界は完全に谷間に埋まってるけど、舌先で乳首を探り当てる。そのたびにぴくんぴくんと
身体が跳ねる。その反応をおもしろがって舌でこねくり回すと、止められないかのように
びくびく、がくがくと震え続ける。断続的な喘ぎが頭の上から聞こえる。
「ナイアさん‥‥身体、起こせる?」
 顔をおっぱいで潰されるのもいいんだけど、この体勢はちょっとつらい。俺の言葉に
ナイアさんはどうにか上体を起こし、俺の肩を掴んだ。顔は上気し、唇からは荒い吐息が漏れてる。
「こ‥‥この体勢‥‥深いよ‥‥ああぅ‥‥っ」
 俺は椅子に腰掛けてるけど、ナイアさんは股間に体重が掛かるんだから、それもそうだ。
もちろん、それが狙いだけど。
「ちゃんと掴まって‥‥動くよ」
「ま、待って、ちょっ――あああぁっ!!
まっ‥‥て、おねが、いっ――!? ひあっ、んはぅっ!!!」
 懇願を無視して、腰を突き出す。お尻を抱え込み、思うままに動かす。そのとたんに
よがり泣くナイアさん。のたうつ身体と踊るおっぱいを楽しみながら、無言で突き上げ、
突き崩す。がっくんがっくんと頭が前後に振れ、深紅の髪が跳ねる。きゅっと締まったお尻は
左手に任せ、右手でおっぱいを握りつぶす。溢れた乳肉がぷるぷると悦び、
同時にナイアさんのあごが天井を向く。悲鳴のような金切り声を上げ、
ナイアさんは思いきり派手にイった。
 それに追い打ちをかけるように、ますます激しく腰を突き上げ、ナイアさんの腰も
力任せに揺さぶる。色っぽい唇から涎をこぼし、狂おしい絶叫を上げ続ける。
悶えるナイアさんを追い詰め、鳴かせる。いやいやという風に顔を激しく左右に振ったかと思うと、
またしてもナイアさんは大きく震えた。

 * *

 ナイアさんは狂い続ける。自分でも腰を振りたくり、俺を熱烈に求めてくる。
床に這い回る蛇の胴さえも俺の脚にすがりついて、快楽の余波を欲しがっているかのようだ。
「くはっ、あふっ‥‥! 子宮、しびれる‥‥ああ、あたってる‥‥あんたの、ちんぽ‥‥
あたしの、中で、あばれて‥‥ああ、うそ、また‥‥っ!」
 がくがくと震えながら俺の胸に手を突き、数秒間硬直したかと思うと――
「――あはぁあ゙あ゙あ゙ぁぁぁぁっ!!!」
 汗ばんだ髪を跳ね上げ、一気に体を反らせて嬌声を爆発させる。髪を留めていた飾りが
激しい動きではね飛ばされ、床で乾いた金属音を立てた。そしてわずかな間隔をおいて、
ナイアさんはもう一度俺に覆い被さる。唇から一筋のしずくがぽたり、と俺の額にこぼれ落ちた。
「すごい、すごいわ‥‥ラート‥‥止まらない‥‥あたし‥‥あんたに‥‥狂わされてる‥‥!」
「ナイアさん‥‥っ、そんなに、締め付けたら、俺‥‥っ!」
「いいよ、来て、溢れるぐらい、――注いで‥‥!」
 火傷しそうなほどの愛欲を込めて求めてくる。互いに腰を振りたくり、
ただただがむしゃらに愛し合う。ぐちゃぐちゃと湿った音がますます激しくなり、
竿もぐっと締め付けられる。言葉にならない叫びを連ね、汗みどろになって。
汗と涎にぬめるおっぱいを俺に揉ませ、そのたびに震えながら身体をのけぞらせる。
巨大な乳房が揺れ、弾み、跳ねる。乳首を噛むとガクガク震えて泣き叫ぶ。
椅子の下を通って這い回る胴体はばたんばたんと派手に暴れ、そのたびに他の椅子や器具が
はね飛ばされる。椅子がぎしぎしと悲鳴を上げるけれど、それさえ喘ぎの中に消えてしまう。
「だめだ、出る‥‥っ!!」
「来て、来て、おねがい、ぁ――っ!!!」
 跳ね上がる乳房を鷲づかみにし、子宮を狙って思いきり突き上げた。
稲妻のような衝撃が背筋を走り、チンポの中を焼き尽くして吹き上げる。
 狂おしく顔をゆがめ、美しいラミアはひときわ大きく上体を反らす。
声にならない叫びに乗って、涎が空中に一筋の弧を描いた。
447ある夜の実験室(9):2007/11/29(木) 21:10:18 ID:uqeDwIhi
「あぁぁあっ、ああ、あぁ、あ、ぁ‥‥っ!!!」
「っく‥‥あ‥‥っ」
 どくん、どくん、どくん‥‥。
 際限なく噴き出す精液。その衝撃を必死に耐えつつ、俺もナイアさんも硬直していた。
動けない。繋がったまま動けず、互いに快感の余韻を乗りこなしかねて――荒い息を大きくつき、
二人の体が柔らかくなったのはほとんど同時だった。崩れるように俺の上に肌を重ね、
熱い絶叫を吐き続けていた唇で俺の唇を塞ぐ。
「ん‥‥んん‥‥」
 鱗に覆われた下半身が、ひくひくとくねる。くたり、と俺に身体を預けきったナイアさん。
その体重を支えると、柔らかい肌がたまらなく気持ちいい。
でも‥‥さすがにこの椅子じゃつらい体勢だな、床に移った方がよさそうだ。
「椅子から降りるよ‥‥俺につかまってて」
 一気に倒れ込まないように気をつけながら、繋がったままゆっくりと横へ、
椅子から腰を滑らせ――あ、っちょっと、やばっ――
 どたんばたんがしゃんがつんっ!
「はきゃうっ!?」
 妙にかわいらしい叫びが耳に届いたのと、頭に衝撃が来たのは同時で――意識が途切れた。

 * * *

 身体が温かかった。さわさわとした感触が全身を撫で、暖かさが伝わってくる。心地いい。
「‥‥ト」
 どこかで師匠の声が聞こえた。どこだろう‥‥下のほう‥‥足元のほうから‥‥?
「ラー‥‥‥‥なさい‥‥」
 また、声だ。するすると身体に触れる、暖かさ。この感触は‥‥ああ、鱗か‥‥師匠の‥‥。
「ラート、そろそろ起きなさいよ‥‥こっちはとっくに起きてるんだからさ‥‥」
 んん‥‥? こっちって‥‥なんだよ。
 しばらくすると、独りでに目が開いた。何も見えなかったけれど、
目が慣れるにつれて暗い天井がぼんやりと見えてきた。
‥‥実験室‥‥なんでここで寝てるんだっけ‥‥。
「ほらほら、目が開いたならさっさとあたしの相手をする!」
「うあっ!?」
 思わず声が出る。――怒られたからじゃない、もっと直接的な――
「ふふふっ。気絶したから心配したけど、こっちは元気なんだから‥‥」
 首だけをどうにか持ち上げると、股間には師匠の顔が。そう。いきなりチンポを吸い上げられて、
それで目が覚めたんだ。
 反射的に上体を上げようとすると、太い蛇身に押さえ込まれた。身体が温かかったのは
このせいか‥‥。って、心配もそこそこに股間にむしゃぶりつくなんて。
「ちょっとしゃぶってあげたらあっという間に固くなるんだから‥‥まだまだヤリたりないわけね?
このスケベ。スケベの絶倫野郎! ‥‥なんてね」
 気絶してる間にビンビンになってたらしいそれに横からキスをしながら、
なんだか楽しそうなナイアさん。舌先をちろちろと動かして隅々まで嬲ってゆく。
――俺が身動き取れないのをいいことに、好き放題に遊ぶつもりみたいだ。
その意図に気付いたことが分かったのか、にっと笑うと身体を少しずりあげて――
「んふふっ、分かったみたいじゃない。たっぷり遊んであげる。
さっきは私が胸でイかされちゃったんだから、今度はあんたがあたしの胸でイく番よ‥‥」
 言葉が終わらないうちに、チンポが柔らかい乳肉で挟まれた。白い手がおっぱいを
左右から支えて、むにゅっむにゅっと上下する。温かい肉の丸みに挟まれ、
その谷間から顔を出す肉棒――その張り詰めた先端を、師匠の舌がちろちろと這う。
二種類の刺激に、俺のそこはますます張り詰め、反り返る。反り返ってしまうと、
ますますナイアさんの与えてくれる刺激を強く感じてしまう。
際限なく溢れる先走りがこぼれ、柔肉の間でにちっにちっと音を立てる。
「ふふっ‥‥谷間が熱いよ‥‥。あんたの、ぶっといので擦られて‥‥んはぅ、きもち、いい‥‥」
 身体を上下に揺さぶりながら、わずかに眉根を寄せる。吐息に熱がこもって、瞳も少し潤んでる。
顔だけを上げて、その様子を堪能する。身体と目、両方からの刺激に股間がますます張り詰め、
ついに強く跳ね上がりはじめる。熱が集中し、堪えきれないほどの快感が攻め上がってくる‥‥!
448ある夜の実験室(109):2007/11/29(木) 21:13:44 ID:uqeDwIhi
「さっきからずっとしゃぶってあげてたから‥‥限界でしょ?
ほら、出しなよ、あたしの顔に‥‥かけて‥‥!」
 その色っぽすぎる顔を見て、堪えられる男なんて――絶対いない。
ぎりぎりのところでこらえていた関があふれ、奔流が吹き上げた。
粘液質の白濁液が顔、髪、胸に飛び散り、淫靡に飾ってゆく。
そしてそれからはもう‥‥互いに貪り合うばかり。ただただ愛して、愛し合って、
快楽を高め合って。俺を欲しがる蜜壺を、ナイアさんを欲しがる肉塊で埋める。
突き崩し、掻き乱し、絡まり合って――そして、その熱い身体の中に思いをぶちまける。
抜かずに三度、連続で。溢れて、溢れかえるまで――。

 * * *

 しばし無言で軽い口づけを何度も交わして、体を優しく愛撫して。互いの呼吸が
完全に落ち着いた頃、ようやくナイアさんは体を起こした。繋がっていた部分から
俺のモノがずるりと抜け、同時に粘液がごぷっとあふれ出た。
「‥‥ふふ、こんなにたっぷり撃ち込んでくれちゃって‥‥。
五日分か、それにしても凄い量ね‥‥」
 秘部に指先を這わせ、まとわりついた液体をひとすくい。それを唇に運び、艶然と微笑む。
――二人の営みが終わった後のナイアさんは、独特の艶がある。
「ああ‥‥気持ちよかった‥‥まだ頭の芯がしびれてる‥‥。――って、あんたまだ勃つの?
ふふふっ、頼もしいじゃない‥‥壊されそう」
 そう。精子を味わうナイアさんを見ていると、またしても股間に熱が集まってきた。
でもこれだけ激しいと‥‥六回戦目は‥‥どうかな‥‥。
「ん? 何よその顔は。
――師匠の実験を潰しておいて、しかも何発も出したのにまだビンビンで、
そのくせ『疲れました、もうできません』とか言うんじゃないわよねぇラート君?」
「あ、う、いや‥‥」
「ふふん、じゃ、続きをしてもらうわね。五日分、あたしも溜まってるんだから」
 胸を反らし、にやにやと笑って俺を追い詰めるナイアさん。ちょっと怖いその笑みが
俺に近づき、白い腕が首に絡みつく。その刹那、顔つきが変わった。
「‥‥壊して、ラート‥‥思いっきり抱いて‥‥」
 とびきり悩ましい顔、声。――我慢できるほどの精神修養はできてなかった。

 * * * * *

 翌日、鑑定が最初の一区切りになったのを見計らったかのようにファイグが現れた。
秘星石じゃなかったと言うと意気消沈していたけど、未知の鉱石だったと聞いて
俄然やる気が出たらしいので、それはそれで良かったみたいだ。こっちも面白いオモチャ
‥‥もとい、実験対象を手に入れて師匠がはしゃいでいるので、
それに応じた額――それはファイグの期待に沿う額だったみたいだ――を支払うことで落ち着いた。
 それはそれとして。
「ラートー。 そろそろお昼なんだけど、ご飯はできてるのー?」
 店先から師匠の声。げっ、そんな時間!?
「ちょ、ちょっと待ってくださいー!!」
 こ、こっちの片付けはまだまだ終わってないのに好き勝手言ってくれるよあの師匠は!
 ――いやその、実験室の片付けが‥‥。一晩大暴れしたから、もともと雑然としてた部屋が
ぐちゃぐちゃだ。壊れた器具もいくつかあるし、材料類も飛び散って――あああ、
なんでこの瓶が割れてるんだ。
「こら!! さっさとご飯を作りなさいこの馬鹿弟子!!」
449ある夜の実験室(11):2007/11/29(木) 21:15:29 ID:uqeDwIhi

 * *

「で、どうなの? 実験室の様子は」
「それは‥‥まあ‥‥今日いっぱいはかかりそうです」
「あたしは『ベッドで』って言ったのに、あんたが『我慢できない』とか言うから
こういうことになるのよ。わかってる?」
 いたずらっぽくも色っぽい笑みを口元に浮かべて、俺の耳元で囁く。
「‥‥はい、すいません‥‥師匠‥‥っ」
「声が詰まってるよ‥‥ふふ‥‥」
「あ、あの‥‥ちょっ‥‥りょ、料理がしにくいんで、座っててくださ――っ!」
「い・や・よ」
 へっぴり腰で野菜を切る俺に、後ろから絡みつく師匠。その手は股間をまさぐり、
いつのまにかその中身を取り出してしごきはじめてる。
「あたしの作業をさんざん邪魔してくれたんだから――仕返しくらいさせなさい。
ほぉら、ガッチガチになってきた‥‥どうする? あたしを襲う? ‥‥だぁめ、ご飯が先‥‥」
 耳に舌を這わせたかと思うと、そのまま首筋にキスを落としてゆく。
あ、うぁ‥‥や、やめ、それは‥‥!
 考えもなしに襲ったツケだ。これで料理に失敗したらますますオモチャにされてしまう。ううっ。
「あたしも悪いとはいえ、器具の弁償はしてもらうよ。ま、あんたに払える額じゃないし
――カラダで、ベッドの上で、ね‥‥。ふふふっ、今夜もいっぱいしてね、ラート‥‥」
 き、きのうは結局何発出したのか覚えてない。たぶん十回ぐらい‥‥最後は何も出なかった、
ような気がする。いっぱいして、と言われても‥‥
「――出し尽くして今日の分はありません、とか言ったら‥‥わかってるんでしょーね?」
 ――う、うあぁぁぁ。

 教訓。後先考えずに師匠を襲っちゃだめだ。

(終)
450なしれ ◆8XSSeehUv6 :2007/11/29(木) 21:16:26 ID:uqeDwIhi
以上です。
数え間違いでレス数が伸びてしまいました。スイマセン
451名無しさん@ピンキー:2007/11/29(木) 21:31:17 ID:0ZzmNyDF
よっしゃキタ━━━━(゚∀゚)━━━━ッ!!
感想一番乗り!!
やっぱこの二人はいいわ〜。
エロ分もいつもより数割増しでいう事なしです。GJ!!
452名無しさん@ピンキー:2007/11/29(木) 22:00:33 ID:bKYnKlrb
>>450
キタ――――――(゚∀゚)――――――!!!!!
この師弟むっちゃすっきゃねん!
GJ!ご馳走様である!
お仕置き編を密かにキボン
453名無しさん@ピンキー:2007/11/29(木) 22:44:18 ID:yD8zUHG/
GJ!この師弟はいいよなー


しかしこれだけヤリまくっているのに一向に子供が出来る気配が無いのは残念だ
この二人が家庭を作って欲しい派としては
454名無しさん@ピンキー:2007/11/30(金) 12:56:06 ID:TZ2ayU21
異種交配モノは最高なんだが子の扱いに困る
455名無しさん@ピンキー:2007/11/30(金) 19:02:05 ID:p85fnPE7
>>450
GJ!エロ過ぎです!!
てっきり鉱石がエロくなる魔力を放ってるものと思ってたんだがw


>>453
「異種間では子供が出来にくいので異種間でも確実に孕む魔法薬を
飲んでHする話」の伏線かもしれないぜ?www
456名無しさん@ピンキー:2007/11/30(金) 20:53:56 ID:tDkn0sPE
それだとろりっ娘に転生しちゃうだろw
457名無しさん@ピンキー:2007/12/01(土) 09:44:06 ID:5X92I8BR
>>450
グッジョブていうかゴッドジョブ!
まだまだナイアさんの方が上ですね。
ラートが研究にかまけるナイアさんに嫉妬してたけど、
ナイアさんがラートに嫉妬するってのも見てみたいっス。

>>453
あれ?俺がいる。

子供は、男だったら人間、女だったらラミアになると予想。
モンコレのマンガ版でそんなのがあった。
458名無しさん@ピンキー:2007/12/01(土) 11:01:28 ID:RHlia4Hq
>>455
よう俺
もしくはエロ行為に反応してどうとかとか、そんなんかと思ってたがそんな事は無かったぜ
459名無しさん@ピンキー:2007/12/01(土) 13:53:41 ID:vywv520J
>>455
「あれ…僕がいる…何でだろ…僕が三人も…」


不意に思い付いた、ドッペルゲンガーに翻弄される僕っ娘。
460名無しさん@ピンキー:2007/12/01(土) 20:57:03 ID:6J4sa1qE
GJ!相変わらずいい仕事してますねぇ

>>453
モンコレの小説じゃないかったけ?
461老婆:2007/12/02(日) 14:44:41 ID:oNVr36/r
ある日、その少年は鉢植えの麦に水をやる老婆を見かけた。少年は学生であり、暮れなずむ夕暮れの時刻であった。
何故だか彼は、その鉢植えが妙に気になった。まだ暑い夏の盛りである。
青々とした麦は、いかにもその強さを示しているみたいに風に吹かれていた。
そうして、じっとその鉢植えを見ていた少年に、気づいたのだろう老婆が声をかけてきた。

「坊や。この麦が気になるのかえ?」

それは奇妙に古風でしわがれた声であったが、不思議と嫌悪の情は沸かなかった。
少年は老婆に「鉢植えにするには変わっていますから」と良い、老婆は少年の言葉にむっとしたような顔をしたが何も言わなかった。
その顔に気づいた彼は、慌てて自分の言葉を打ち消そうとするけれども上手い言葉が見つからない。
けれども、彼は馬鹿なことをしたら謝らなければいけない、と両親から教わっていたので。
「ごめんなさい。馬鹿にするとか、そういうつもりはなかったんです」と言った。

「ふん、まぁいいさね。きちんと謝ったんだ。許してやる」

老婆はそう言うと、止めていた水遣りの手を再び動かし始めた。
その麦はそれはそれは真っ直ぐと伸び、青々として元気が良さそうであった。
少年は老婆に「きっと元気に育ちそうですね」と言うと、老婆はそんな事は無いさ、と返した。
何でも、麦も丈夫丈夫とは言われても矢張り植物で、手入れを欠かさないと枯れてしまうのだそうだ。
「大変ですね」というと、「大変さね」と返された。

その老婆は、A市には今時珍しい大きな日本家屋に一人で住んでいた。少年はたまたま覗き込んでいた、と言う按配だ。
そして、老婆と話している内に気づいた事だが、あたりには沢山の麦の鉢植えが置いてあった。
どれもこれも、丁寧に手入れされているらしく、時折萎えているものもあったけれども、押しなべて健康であった。

「見せもんじゃァ無いよ、ささと帰りな。茶なんて出さないからね」

今度は少年がむっとする番だった。だが、老婆はこう続けた。

「超高齢化社会なンだ。老人だって社会に甘えてばっかじゃ駄目。なら、子供が社会に甘えっきりで良い理由も無いじゃろう」

少年はむっ、とはしたが確かに老人の言葉は的を得ていた。だが、そのままでいるつもりも無かった。
ばっ、と勢い良く振り返ると「ジュース買って来てあげる」そう言い置いて走り出した。
近くにあった自動販売機で、彼が一等好きなオレンジジュースを買い、振り返って先ほどの家に戻ると、
縁側に座っていたのは老婆では無く、若い娘だった。
「さっきのお婆ちゃんは?」と少年が矢張り鉢の世話をしている彼女に話しかけると、「奥に引っ込んじゃった」と返された。
それは彼にとってひどく残念な事だったが、その娘は彼に「お婆ちゃんにきっとジュースを渡してあげる」、と言った。
462老婆:2007/12/02(日) 14:45:19 ID:oNVr36/r
それが、彼の覚えている限り六十年も前の事だった。
この後の事は至極単純で、その娘と軽くお喋りをし、手を振って分かれたのだと思う。
良くは覚えていない。何故なら、彼がその家を見つける事は二度と無かったからだ。

そうして、老人となった少年は今、布団を被り天井を見つめていた。
時刻は日もまだ覚めやらぬ頃だ。年老いた彼の身には秋口の冷気は少々辛かったけれども、その日は酷く体が軽く感じられた。
体を起こすと、なんとは無しに昨日逝ってしまったばかりの妻と共に、春が来る度愛でた桜の花が咲く庭を見た。
今だ子供達とも暮らしてはいるが一人で見る桜は随分と寂しい、そう思った。しかし、それも一瞬だった。
ぼんやりと太陽と闇とが攪拌された光景の中に、何時かの老婆が居たからだった。
そして、彼女は重く、頭を垂れ穂を実らせた麦の鉢植えを抱えていた。
更に言えば、正座した彼女の膝辺りには空になったジュースの空き缶があるのだから、少し可笑しくなった。

「久しぶりですね」

そう、少年が言えば、

「久しぶりじゃな」

そう老婆が返してきた。
ことり、と敷居を隔てた板張りの縁側に置かれた鉢植えの音が妙に大きく響いた。
その腰にはきらりと短い草刈鎌が挿してあった。勿論、それをどう使うかなど老人には解り切っていた。
解りきっていたけれども、もう少しばかり老婆と話がしたかった。

「麦、良く育ったみたいですね」
「うむ。少々、虫や病気で苦労した時期もあったが、良く実った」
「妻の麦は、さぞ美しかったですか?確り(しっかり)と収められましたか?」
「勿論じゃ」
「麦の種はきちんと又植えられますか?撒かれないままに捨てられませんか?」
「間違いなく、狂い無く植えようぞ」

うん、うん、と老人は感謝でもするみたいに何度も何度も繰り返し頷いた。
老婆が言った。「何時かの礼をしたい。心残りなぞ無いかえ?」
老人は少しばかり考えて答えた。
「妻は、子供が産めない体でした。今の子供達も立派に育ちました。彼らも勿論私の子です。ですが、それでも彼女との子が欲しい」
老婆は少しばかり難しそうな顔をしたけれども、頷いた。
老人は何度も何度も頷いてありがとうありがとうと礼を述べた。

老婆は礼を繰り返す老人に向かって、刈り取る前に一言。

「確かにこれで借りは返した。いや全く、世の中坊やみたいな人間ばかりだと助かるんじゃがな」
463老婆:2007/12/02(日) 14:47:35 ID:oNVr36/r
死神って以外と義理堅いらしいね。後、どっかで農耕神の一側面と聞いてこんな小品を書いてみた。
ヤマナシ・イミナシ・オチナシ、おまけにエロも無いブツでスマヌ。
464名無しさん@ピンキー:2007/12/02(日) 14:49:40 ID:hfoWCDC1
 山口県岩国市の怪談で、加藤某という人が夜道を歩いてたら小坊主が出てきて「加藤殿はちんちろり」と言われて、
 豪胆な加藤某は負けじと「そう言う者こそちんちろり」と言い返した。
 そのまま言い合いをしながら家に到着すると、門の屋根の上から小坊主が顔を覗かせて「さても強い者じゃ」と言って去っていた。
 以来、同市では何かを言い返すときは「そう言う者こそちんちろりー」と言い返すようになった、という話がある。
 (日本妖怪大事典『ちんちろり』の項、参照)

 きっと本当は小坊主じゃなくて『ちんちくりんのロリっ娘』だったから略して「ちんちろり」だったに違いない!
 そして、肝の据わった男を伴侶とするために、こんなイタズラのようなことをして――

 …………すまん。今日の新聞に山口県岩国市の『錦帯橋』のことが載ってたから、そのせいで変な電波を受信したらしい。
465名無しさん@ピンキー:2007/12/02(日) 15:39:38 ID:WawS3uaO
466名無しさん@ピンキー:2007/12/02(日) 17:30:57 ID:d3e6nxUl
乙!
あんま見たことのない死神像で楽しめた
ていうか死神がどんどん若返って、最期はロリ娘が迎えに来るんだと
思ったのは俺だけでいい
467名無しさん@ピンキー:2007/12/02(日) 19:59:09 ID:4UFoD6to
>>460
俺が知ってるのはマンガ版。
あとがきマンガでラミアの繁殖についての質問に、
人間の男から子種をもらうって描いてあった
468名無しさん@ピンキー:2007/12/03(月) 14:51:35 ID:GOgs3N0d
でも妖怪とか人外って寿命やたらと長いからポンポン孕む必要無いんじゃないかと思ったり
469名無しさん@ピンキー:2007/12/03(月) 15:30:55 ID:RCOy+iYY
その辺は書く人の設定次第だから何とも。人外だからといって長寿設定である必要はないしね。
470名無しさん@ピンキー:2007/12/03(月) 16:53:05 ID:86MElVyV
半妖(*´Д`)
471名無しさん@ピンキー:2007/12/03(月) 22:29:55 ID:eQJaHzG7
このスレペットかつモンスターでそれでいてエルフのうえロリっ娘はあり?
472名無しさん@ピンキー:2007/12/03(月) 22:32:29 ID:0QAYV3OJ
人外ならなんでもアリさ
473名無しさん@ピンキー:2007/12/04(火) 00:02:24 ID:5jz9vk7s
ナイアさんって何歳なんだろう?
474名無しさん@ピンキー:2007/12/04(火) 16:29:47 ID:XriDbNxs
>>473
女性の年齢は聞くべきではないよ。
475名無しさん@ピンキー:2007/12/06(木) 01:11:25 ID:sxkZ8eCM
人外の中にはそんなのを気にしない種族もいます
476名無しさん@ピンキー:2007/12/06(木) 01:17:14 ID:ofJrh5Cu
気にしないっていうかぁ
もう気にしようとしても気にしきれないっていうかぁ

そんな感じぃ、みたいなぁ?
477名無しさん@ピンキー:2007/12/06(木) 01:27:53 ID:7ONEXOQG
付喪神なんて100歳以上がデフォだしな
478名無しさん@ピンキー:2007/12/06(木) 01:33:38 ID:2u29j7hB
前に書いてたんだよなぁ・・
刀の精霊と霊感少年のアホな日常を・・・
479名無しさん@ピンキー:2007/12/06(木) 01:51:09 ID:d8If1NWO
逆に寿命が短い妖怪っていうと、
花の精とか春が来ると溶けてしまうタイプの雪女とかかなぁ
480名無しさん@ピンキー:2007/12/06(木) 03:29:45 ID:UYuTA0Nn
まぁ人間と同じくらいの寿命の人外がいてもいいと思うけど。話も書きやすいし。
481名無しさん@ピンキー:2007/12/07(金) 22:53:09 ID:JzJm0rlg
雪女に中田氏して「熱・・・・・」とか言わせるシチュは燃える。孕ませならなお良し。
482名無しさん@ピンキー:2007/12/07(金) 23:23:24 ID:bZ9KkALW
雪女には、子宮に孕んだ生命の炎ですら危険。
自身の身体が内側から溶かされていく痛みに耐えながら、
それでも彼女は愛する人との子を産もうとする。自らの命を懸けて。


という鬱シチュエーションを思いついてしまった・・・鬱だ死のう。
483名無しさん@ピンキー:2007/12/08(土) 00:20:03 ID:ZCc3QoU/
日本むかしばなし久しぶりに見て思ったんだが
なぜおとぎ話のお礼は物品なのかと小一時間(ry
484名無しさん@ピンキー:2007/12/08(土) 14:48:03 ID:wgtCQAAf
子供向けだからだよ
浦島太郎は本当は乙姫とやりまくりの話だったらしいし
鶴の恩返しとか雪女とか、描かれないだけで性生活がちゃんとあったわけだし
485名無しさん@ピンキー:2007/12/08(土) 15:51:02 ID:G0XBXorw
そういや雪女を風呂に入れたら溶けちゃったって昔話があるよな。
男が風呂入った後Hしようと思ってたとしたらがっかりしただろうな。
486名無しさん@ピンキー:2007/12/08(土) 19:16:14 ID:XpoMSIHq
雪女さんそのものが解けた風呂だぜ?
487名無しさん@ピンキー:2007/12/08(土) 21:51:06 ID:P2fhRlTU
さようなら雪女
こんにちは水女
488名無しさん@ピンキー:2007/12/08(土) 21:59:12 ID:aaJCD0/Z
『まつろわぬ者』も遂に完結か…
489名無しさん@ピンキー:2007/12/09(日) 03:08:34 ID:p73/TQgC
人間と妖怪が共存する町で妖怪と人間を取り持つ家業の主人公

雪女の同級生から「お前を見ると体が熱くなる、頭もぽぉーっとするし
このままでは私は溶けてしまう、だから消えてもらう」と氷の刃を投げられる
最終的に雪女が主人公に惚れていると自覚し、事に及ぶが
「溶けちゃうっ!…溶けちゃうよぉ…」と言う、そんな話
490名無しさん@ピンキー:2007/12/09(日) 03:09:24 ID:OgJVu14g
491名無しさん@ピンキー:2007/12/09(日) 17:00:31 ID:dKgyLYgG
雪女モノは昔書きかけて放置しっぱなしだなぁ。
492名無しさん@ピンキー:2007/12/09(日) 17:25:58 ID:KZnC7Lij
さあ、早く続きを書く作業に入るんだ
493名無しさん@ピンキー:2007/12/09(日) 18:13:51 ID:0lzYYBUI
くなさんは腕は立つが「、」と「。」の打ち方が独特なんだよな。それも味か。
494名無しさん@ピンキー:2007/12/10(月) 21:43:06 ID:scTgvVt1
昔999で雪女がラーメン食べようとして、
箸当てたら凍って食べれなかったって話があったような。
495名無しさん@ピンキー:2007/12/11(火) 22:29:19 ID:PQe9Ihel
おまいらにちょっと聞きたいんだが

雪女の種族にも男と女がいる
ってのと
雪女は母系遺伝で雪女の血を引く女性が雪女になる

ってのだったらどっちが良い?
496名無しさん@ピンキー:2007/12/11(火) 22:44:49 ID:w/1WTuLR
>>494
確か、そんな話があったね
「アンドロメダの雪女」だったかな・・・
なつい

>>495
下の方は、雪女遺伝子を持つ人間の女性が、
雪女(別種族)に進化(変化)するという事?
497名無しさん@ピンキー:2007/12/12(水) 05:41:54 ID:xJHQ74Ue
>>494
ラーメン凍ったら、そのままかき氷にすれば良くね?
498名無しさん@ピンキー:2007/12/12(水) 06:31:02 ID:RtSJQeK6
>>497
めちゃくちゃまずそうだな
499名無しさん@ピンキー:2007/12/12(水) 08:44:12 ID:IjDfxpXo
白く固まった油脂が…胸焼けどころの話じゃねえ。
500名無しさん@ピンキー:2007/12/12(水) 12:05:17 ID:q7NHLpfX
雪女はやっぱりアイスクリームとかかき氷が好きなんだろうか。

>>496
人間男×雪女で子作りした場合男の子なら人間として生まれ、女の子なら雪女として生まれてくるってことでは
501名無しさん@ピンキー:2007/12/12(水) 15:59:59 ID:UcBNsXrI
ゆーゆーはくしょの雪女の一族がそんな設定だったな
男の子は父親の血統を引く
502名無しさん@ピンキー:2007/12/12(水) 16:45:32 ID:zYHrn1N9
雪女が、かき氷食べてキーンてなってるところ 萌える
503名無しさん@ピンキー:2007/12/12(水) 17:25:19 ID:uK6BYG9W
寒いのが苦手な雪女とか超萌える
504名無しさん@ピンキー:2007/12/12(水) 18:59:47 ID:ayECZT4p
雪女を液体窒素で凍らせた人思い出した
505会話形式エロ無し小ネタ by唐突に(ry:2007/12/12(水) 19:30:06 ID:Mo+yEIZx
「あー、寒っ! 何よここ最近の寒さはっ!?」
「……言ってもいいか?」
「あによ? 寒いんだから、くだんない事言ったら怒るわよ?」
「お前、雪女だよな?」
「……すぅ」
「怒るなっ! 大きく息を吸うな! 氷の吐息で俺を凍らそうとするなっ!」
「ふはー……で、何を今更当たり前の事言ってんの、あんたは?」
「いや、だって、雪女だったら寒くないんじゃないかなぁ、と」
「なんで雪女だったら寒くないのよ」
「え? そりゃ、雪女なんだから寒くないだろ? 自分も冷たいわけだし」
「………………すぅ」
「だから怒るなっ! 大きく息を吸うなっ! 氷の以下略っ!」
「ふはー……」
「ほっ」
「あのねぇ、あんた? なんであたしがこんな寒い目に遭ってるか、わかってんの?
 他ならぬあんたの為でしょ? なんでそこら辺わかんないの、あんたは?」
「え、あ、お……俺の為?」
「……はぁー」
「なんでため息っ!?」
「悲しさの余りため息も出てくるっちゅーねん。あたしの手、あんたいつも握ってるよね?」
「……あ、ああ。そ、そうやって改めていわれると、なんか照れるな」
「照れるなっ! ……で、その握ってるあたしの手、冷たい?」
「いや、別に」
「確かに、雪女ってあんたがイメージしてる通り、普段から体温が零度近いから、
 普通だったら寒さなんて感じる事無いのよ」
「あ、やっぱりそうなんだ」
「手だって握れば冷たいし、抱き合ったら凍死物よ……普通は」
「……つまり、お前は普通じゃないって事?」
「何か言い方がむかつくんだけど。やっぱ凍っとく?」
「つつつつつつつつまり、お前はスペシャルなんだな!?」
「……言いなおす言葉の選択に疑問符が浮かぶんだけど、誠意はわかったから
 よしとしとくか……ま、その通りよ。あたしはスペシャルなの」
「なんで?」
「……はぁー」
「またため息っ!?」
「ここまで言ってまだわかんないの? ……なんであたしは……はぁー」
「……あ」
「気づいた? ホントに、何というか、鈍いわよね、あんたって」
「そういう事、できるんだ……」
「できるわよ。でなきゃあたし達雪女が、どうやって人間と子供残せるって言うの?
 やる事やろうとしたら大事な所が凍傷よ?」
「確かに、俺のは凍傷にはならなかったな」
「……バカ。デリカシーってもんがないの、あんたには?」
「いや、お前がそういう事言い出したんだろ?」
「それに乗るなって言ってんの! そのくらい気遣いなさい!」
「……無茶苦茶だー」
「と、とにかく……わかった?」
「お、おぅ。お前がなんで寒がるのかはわかった」
「よろしい。……で、まあ、こうしてあたしは寒がってるわけなんだけど?」
「寒がってる理由についてはよくわかったよ」
「寒がってる わ け だ け ど ?」
「……ど、どうすれば?」
「……はぁー」
「またまたため息っ!?」
「さっさとあたしを抱きしめて、寒がってるあたしを暖めなさいって言ってんの!」
「へ、へい親分!」
「誰が親分よっ! ……あっ」
「……色んな意味でにぶくてごめんな」
「……ホントよ……ばか」
                                                   おわり
506会話形式エロ無し小ネタ by唐突に(ry:2007/12/12(水) 19:31:32 ID:Mo+yEIZx
ここまで投下です。

人間と連れ合う雪女は、きっと体温とかを人間に合わせて
変化させていて、逆に寒がりになったりしてるんじゃないか、
>>503を読んで思いついた一発ネタです。
507名無しさん@ピンキー:2007/12/12(水) 20:06:52 ID:/GgvPXnX
>>506
萌えた。

体温調節可能って考え方、面白いな。
雪女といえば自分1人で子孫を残せる(ほぼクローン)か
男の下半身が霜焼けになるかぐらいしか聞いたことなかったから
508名無しさん@ピンキー:2007/12/12(水) 23:53:47 ID:tVdmD8z/
俺の中でベスト雪女と言えばいたくぁさん
509名無しさん@ピンキー:2007/12/13(木) 00:17:47 ID:ux9mMxvh
雪女が周囲を凍り付かせることができるのは、周りの熱を吸収しているからという理屈で、
人里に降りてきた雪女が周りの熱を吸収しまくって、灼熱の太陽のように体温が上がってしまった
という漫画を昔、小学生新聞で読んだ気がする。
510名無しさん@ピンキー:2007/12/13(木) 07:52:38 ID:hPS2rbk2
雪女でエロゲの瑠璃色の雪を思い出した俺が来ましたよ
511名無しさん@ピンキー:2007/12/13(木) 09:30:25 ID:mSOveO24
人間に比べれば体温低いけどそこまで差があるほどじゃないくらいが書きやすいかな。
ヤった次の日に男が風邪をひくのはデフォで。
512名無しさん@ピンキー:2007/12/13(木) 10:04:42 ID:kGs8OSkE
>>508
読み返したくなったじゃないか…
513名無しさん@ピンキー:2007/12/13(木) 22:07:39 ID:aWOlty0Y
>>508
kwsk
514名無しさん@ピンキー:2007/12/13(木) 22:19:35 ID:aWOlty0Y
スマン自己解決。
515名無しさん@ピンキー:2007/12/13(木) 23:05:41 ID:aFBUAeUd
萌えクトゥルフという分野があるんだな
世の中は広い
516名無しさん@ピンキー:2007/12/14(金) 01:01:02 ID:BSKZtqDW
そもそも出展はここじゃないか
517名無しさん@ピンキー:2007/12/14(金) 20:43:50 ID:AVGerKGw
昔読んだ童話に、雷と天狗と河童それぞれにせがれの男の子のへそ、ほほ、しり
をよこせと恐喝されたおとっつあんの話があったんだ。

このスレなら鬼娘、天狗娘、河童娘になるんだな…夢が広がるなぁ
518名無しさん@ピンキー:2007/12/14(金) 23:11:04 ID:Yt2QhYxr
>>517
広げる方向を間違えるとこうなるような。
ttp://society6.2ch.net/test/read.cgi/gline/1185888598/
519名無しさん@ピンキー:2007/12/15(土) 04:34:25 ID:y7PPsGQu
>>518
久しぶりに見たww
520名無しさん@ピンキー:2007/12/16(日) 21:06:26 ID:uSlLRzLq
異形系はちょっと書きづらいのがなぁ・・・
521名無しさん@ピンキー:2007/12/17(月) 11:37:50 ID:RrZbe1cf
ほしゅ
522名無しさん@ピンキー:2007/12/19(水) 12:13:06 ID:99QXySB7
>>520
異形バッチコイ
523名無しさん@ピンキー:2007/12/20(木) 19:58:46 ID:zg8Ny2am
浜辺のようにも、異世界の荒野のようにも見える非現実で電子な景色を背景に
二つの人影が追いかけっこをしている。追われるのは住人、追うのはとあるオニャノコだった。
「貴方は私を、…ヒトじゃなくても私を選んでくれるの?」
人型のようでいてその実不定形な存在の彼女は走りながら話しかける。
「いや、…君のことはとても言葉に言い表せないぐらいには好きだよ」
かなりの速度で逃げ続けながらも、住人は息も乱さず答える。
「―じゃあなんで、逃げるのよ?」
「いやまあ、ね、子供たち〈長編〉の顔〈続き〉が見たくてね。
そうだ、ねえ、人外女子〈スレタイ略〉さん」
「なによ?」
「君をほしゅだ」
住人は立ち止まってオニャノコを抱き締めた。
彼らのその後は知れない。


追われるものは………終われ。
524名無しさん@ピンキー:2007/12/20(木) 23:28:24 ID:aAgbMMsj
快楽天に掲載されてた吹雪に待つ女みたいな女が好きです
525名無しさん@ピンキー:2007/12/23(日) 22:58:44 ID:wmQ3RJXU
季節も流れも無視して初投下。
32レスいきます
526メリーさんに関する一考察 1/32:2007/12/23(日) 23:00:33 ID:wmQ3RJXU
ピロロロロ…ピロロロロ…ピロロロロ…
 ある夜、その電話は突然、俺のケータイの着信音であるシンプルな電子音をかき鳴らした。
電話とは得てして突然かかってくるものだが、俺は今故郷を離れた地で私立探偵をやっている身だ。
とはいっても別に何か悲惨でハードボイルドな身の上があるわけではなく、まぁ話せば少々長くなる
経緯があってこんなとこで開業するはめになったんだが、特に重要ではないのでここでは省略する。
 とにかく、だからご近所付き合いはあっても親類やケータイ番号を交換しているような親しい友人
は近場にいない。
仕事用の固定電話ならともかくプライベートのケータイでは、数年前に機種変更してから数えるほど
しか通話していない。
そんなわけで営業時間も終わった午後9時ごろ、一人自宅兼事務所で書類整理をしている最中だった
俺は、たかが電話の着信ごときにひどく驚いてしまった。
 まさか親に何かあったかと慌てて番号を確認するが、全く見覚えが無い数字の羅列。

ピロロロロ…ピロロロロ…ピロロロロ…

 無機質な着信音は鳴りつづける。そーか、かつて「キャッチ・デストロイア」の名を欲しいままに
したこの俺に迷惑電話たぁいい度胸だ。「かんずめ男しゃく」並に笑い死にさせてやるぜ。
俺はそんな軽い気持ちでにやりと笑うと、通話ボタンを押した。

ピッ

「はいもしもし。」
「…もしもし…わたし、メリーさん…。」
応答したのは、妙に幼い印象を受ける、電話越しのくせによく通る、

少女の声。
…一瞬、思考が真っ白になった。

「…え、ちょっ!ちょい待て!ほんとに」
「…今、駅前公園にいるの…。」
聞きなれない、しかし妙に懐かしさを覚えるその少女の声は俺を完膚なきまでに無視し、

ガチャン プッ ツー…ツー…ツー…

自分の居場所だけを伝えると、一方的に切れた。
 切れた後も、俺はケータイを耳に当てたまま、しばしボーゼンとしていた。

あまりのことに呼吸の方法を忘れ、息が苦しい。
ケータイを持つ手がわなわなと震え、液晶画面がぴたぴた顔に張り付く。
口元がぴくっぴくっと痙攣するのが自分でもわかる。
額が汗ばんできた。

メリーさんが…『あの』メリーさんが俺のところに…?

嘘、だろ? そんなこと…

どっと心の奥底から、感情が溢れ出る。理性はあまりにも激しいその波を押さえきれず、
次の瞬間、
それは叫び声となって俺の口から。
527メリーさんに関する一考察 2/32:2007/12/23(日) 23:01:04 ID:wmQ3RJXU








「いやっほおおおぉおおぉぉ!!!!」



万感の思いをほとばしらせた。


528メリーさんに関する一考察 2/32:2007/12/23(日) 23:01:25 ID:wmQ3RJXU
§\§


 俺が『メリーさん』の怪談を初めて聞きかじったのは、小学生のころだ。
 クラスメイトに怪談話の妙に上手いやつがいて、昼休みにはそいつの席の周りに
皆して群がり、きゃーきゃーギャーギャー言いながらその語りを拝聴するのが
一時期俺たちの組の習慣と化していた。
そしてそいつのレパートリーにこの話は含まれていたのである。

 覚えのない相手からの突然の電話。こちらの意思に関係ない訪問。
構える暇もなく近づいてくる恐怖。そして一旦は安心した後に待つ、
背筋の凍るような台詞…。

 そいつの朗読力もあいまって、この話は純粋かつ多感な少年だった俺の心に
深く深く彫りこまれてしまった。
はっきり言ってその晩から暫く俺は、電話がかかってくるたびに首をすくめる、
テレビの音量を上げすぎる、オマケつきお菓子のオマケを口に放り込む、
スペシウム光線のポーズを左右間違えるなど、あからさまな挙動不審に陥った。
当時うちでは電話番はなぜか俺の係だったので、真っ先に電話に出なければならなかったのだ。
うちでメリーさんの餌食になるのは確実に俺。しかも電話は田舎の家特有の暗い廊下の途中に
設置されてたもんだから、怖さも倍増だ。
 しかし、だからといってきちんと電話に出なければ母親に怒られる。母の怒りは恐ろしい。
具体的に言うと大魔神が腕を交差するとハニワ顔から三億円事件顔に変身するくらいに恐ろしい。
俺は葛藤した。メリーさんは怖いが母親も恐い。どっちに転んでも待っているのは恐怖。
母の恐怖は底は知れているものの確実に来る。メリーさんの恐怖は来るかどうかわからないが、
来てしまったらどうなるか予想できない。究極の選択。


 そんなとき、俺はふとあることに気がついた。母の恐怖は起こってしまえばどうにもならないが、
ご機嫌を伺ったり自分の行動に気をつけていれば起こさずにすむ。メリーさんの恐怖だって、
同じように何か予防策があるんじゃないか?と。
 俺は必死になってメリーさんについて調べ始めた。それからの数週間は、
いままで見向きもしなかった図書室を利用したり、件の怪談少年を始めクラスメイトや学校の先生、
姉に友達のお兄さんお姉さん、
近所のおばちゃん、さらにはお巡りさんや道行くおっさんなんかにまでこの怪談や幽霊、
妖怪について相手が引くほどの情熱でもって聞きまわって情報を集め、ひたすらにメリーさん
予防策・対抗策を頭の中で練っては崩し練っては崩し、の繰り返しだった(宿題そっちのけで
やったんで結局母には怒られたんだが)。
 今思えば、これが今の職業を目指すきっかけになったとも言える。この行為を通して俺は、
物事に潜む真実を自らの手で調べ上げる面白さを知ったのである。探偵なんて覗き見趣味の下衆で
アコギな商売、と思う奴らも多いとは思うが、血の滲むような調査とオーバーヒートするほどの
思考の末に真実を掴み取った瞬間の喜びは、何物にも代えがたいものがあるのも事実なのだ。
ま、滅多にないんだけどな。

529メリーさんに関する一考察 4/32:2007/12/23(日) 23:01:55 ID:wmQ3RJXU
 そんな今の俺にとっての原点ともいえるメリーさんからの、あのころはいつのまにか心待ちに
さえしていた存在からの電話がかかって来て、心踊らないわけがない。
ようやく俺の考察を試すときがやってきたのだ。

 ところでメリーさんだが、そうしてせっかく対策を練ったにもかかわらず、当時は結局待てど
暮らせど俺の家に電話をかけてくることはなかった。俺が聞きまわった範囲でも実際にメリーさん
からの電話を受けた
ことのある人間はいなかったし、結局怪談は怪談に過ぎなかったのか、とそのころは思い、
小学校を卒業するころにはすっかりメリーさんのことは忘れ去っていた。ただ、
その後もふとした瞬間にそのころの記憶が蘇ることがたまにあり、
その度に俺の『メリーさん理論』は当時の最新の知識と思考でもって補強されてきた。
今や対処法にとどまらず、メリーさんの起源からメリーさんのアイデンティティー、メリーさん
の正体、メリーさんの哲学、メリーさんの支持政党、メリーさんの得意料理、メリーさんの
夏休みの朝のラジオ体操の出席率まで、メリーさんのことなら何でもカバーした総合理論と
化している。後半はもはや妄想だとかいうツッコミはナシだ。
 ふふ、この俺の理論の前にメリーさんなど恐るるに足らず。かかってこいやぁ!

 まあ、さっきの一回だけではイタズラの可能性もあるが、プライベート用のケータイに
少女からイタ電がかかってくる心当たりはあまりない。例えば友人ですでに娘持ちのやつも
いるにはいるが、まだハイハイも満足に出来ない年であそこまで流暢にしゃべれるわけがない。
かわいがってる甥がクラスメイトあたりとつるんでやってるという線もあるが、
あいつら姉家族は両親と田舎暮らしでこのあたりにやってきたことはない。
イタズラならすぐにボロを出すだろう。
どっちにしろ、次の電話が来ればはっきりと…

ピロロロロ…ピロロロロ…

お、来た来た。    ピッ
530メリーさんに関する一考察 5/32:2007/12/23(日) 23:02:19 ID:wmQ3RJXU
「ほいほい。」
「…もしもし…わたし、メリーさん…今、ラーメン屋台の前にいるの…」
「!…ほほう。ところで」
ガチャン プッ ツー…ツー…ツー…

 あら、切れちゃった。つれないねえ。こちとら10ウン年待ち続けた身だってのに。
しかしこれでハッキリした。間違いなく本物だ。
 駅前公園からここまでのルート上にあるラーメンの屋台といったら、大通りを外れた脇道
(この辺りの地区への知る人ぞ知る近道だ。街灯も少なく車がすれ違えない程度の幅だが、
ほぼまっすぐここまで来れる。)を下って約100mの所にある、古い住宅地の共同駐車場
という恐ろしく辺鄙な場所で18:00〜22:00ごろにやってる「花咲亭」しかない。
営業許可ちゃんと取ってんのかな、あそこ?
 スープの味が控えめに言っても独特で、開けっ広げに言えば味がするようなしないような
何とも前衛的な風味と、薔薇やらハイビスカスをブレンドしたというまたなんとも
形容しがたい香りのスープを昔から変えないこの店の店主は以前、どーもそのせいで
大通りから追放されたらしい。花屋の大旦那である店主ゲンさん(57)いわく、
「俺が悪いんじゃねェ、時代が俺に追いついてねェんだ!」そうだが、いや、
それはむしろ周回遅れというのでは…。
それでも辞める気配がないということは、ちょくちょく客が来ているということなのだから、
いやまったく人間の嗜好ってわけわからん。
 まあそれはともかく、この事務所への地元の人間しか知り得ない近道やドマイナーな
屋台を知っている以上、電話の主が人間なら、彼女はこのあたりに土地勘のある地元の
少女ということになる。ここら辺の地理によっぽど精通してない限り、
あんな道を使おうなどとは思いもよらないだろう。
しかし前述の通り、俺のケータイ番号にかけてくる可能性のあるこの年頃の地元の少女
になど、まるで心当たりがない。つまり、こんな芸当のできる人間は存在しないはずなのだ。

そう、人間なら。

 さて、ここらでひとつ、俺のメリーさんに関する考察を一部回想してみよう。
今までに考えたのを全て思い出し検討する時間はちょっとなさそうだが、
「メリーさんの正体」と「その対処法」についての部分は、大まかにいうとこうだ。
531メリーさんに関する一考察 6/32:2007/12/23(日) 23:02:46 ID:wmQ3RJXU
 そもそもメリーさんの正体とは何なのか。そしてなぜこんなことをするのか。
巷に流れるメリーさんの都市伝説には、大きく分けて三つのタイプがある。
それぞれについて考察してみよう。
一つ目は人形型。捨てられた人形が、持ち主(というか捨て主)に対して〜というやつだ。
俺は、このタイプが元祖・メリーさんなのではないかと考えている。メリーさんの都市伝説
が噂され始めた時期は詳しくは不明だが、恐らく1970年代、
それこそ「友達の友達」の知り合いの家まで電話網が普及したころであろうことは想像に
難くない。当時の日本は高度経済成長真っ只中。ゴミの廃棄量は加速度的に増加し、
当然捨てられる人形だって百体やそこらではすまなかっただろう。
その中から元持ち主へ復讐を企てるやつが出ても全く不思議はない。

 しかし、ただ単に捨てたはずの人形いつのまにか家に帰ってきました、
じゃあ使い古された凡庸な怪談と変わらず復讐には足りない、と考えたやつがいたのでは
なかろうか。せいぜい数年人間に使われただけの人形では、たとえ怨念による補正が
プラスされても、せいぜいしゃべったり自力で歩くことができる程度。遠距離の
テレパシーで元持ち主を脅かすなんて芸当はこれまではできなかった。
しかし媒介するものがあれば?当時普及した電話網は全国どこへでもどこからでも
つながっている通信用インフラ。これに思念を媒介させれば、弱いテレパス能力でも
遠方と意思疎通が可能なのではないか。
 すなわちメリーさんとは、現代消費社会と情報化によって引き起こされた悲劇…
というには少々大ゲサかもだが、そう考えると辻褄が合う気がしないでもないではないか。
実際、少々俺たちより上の世代の人間に『自分がはじめて聞いたメリーさんの話』の内容を
聞くと、多くは人形のメリーさんの話を挙げる。いや、あくまでも俺調べだが。

532メリーさんに関する一考察 7/32:2007/12/23(日) 23:04:36 ID:wmQ3RJXU
 実際、電話を使う、という脅迫方法は中々に効果的といわざるを得ない。
手紙や電報と違って、瞬間的にダイレクトに意思を伝えられ、しかも姿が見えないという
電話の特徴と、どこからでも思念を送れるという霊的能力。2つが合わさることで、
その効果は二倍以上にふくれあがっている。しかも文明の利器の代表格である
電話が前時代的な人外に利用される、といった異様さまでもプラスされる。玄関や自分の
背後など、ありえない所からかかってくる電話。夜中の部屋に響く幼女の声。
切っても切っても次々かかってくるコール音。俺は例の怪談少年や
稲川順二みたく上手くは語れないが、メリーさんの恐怖の根源はそんなところに
あるんじゃなかろうか。まあ、ケータイ電話の登場で、最初の『ありえないところから』
ってのは現代ではそうでもなくなってしまったが。
 そしてこの方法の注目すべき特徴は、軽いテレパス能力と数メートル単位の
テレポート能力があれば誰でも可能というお手軽さにある。真似しようと思えば、
ちょっとした人外には誰でもできそうなのだ。

そろそろ次に移ろう。

 二つ目は幽霊型。メリーさんは幽霊である、とするタイプだ。この場合、
彼女は殺人や交通事故の被害者で、その犯人または見殺しにした人間に恨みを晴らしに
やってくる。幽霊タン…じゃない幽霊譚の典型で、三つのタイプの中で一番わかりやすい。
 幽霊は、恨みを晴らし成仏するため行動するものである。
有名なメリーさんの都市伝説を再現してやることで、より効果的に相手をビビらせる
ことができる、とふんでいるのである。つまり、彼女はメリーさんの模倣犯なのだ。

 さて、以上の二つは、正体や原因こそ違え、誰か特定の人間に恨みを晴らすために
行動しているという点で共通している。つまり、『メリーさん』の恨みを買わないよう、
強く正しく逞しく、清く貧しく美しく、
ついでにNHKに受信料払って国民健康保険払って生きていれば、
恐れることは何もないのである。ノンフィアー・ノンペイン。
もしそーゆーことに心当たりがあるなら、自業自得とあきらめてくれ。
え、メリーさんが間違い電話してきたら?…うーん、ま、そういうこともあるさ!

533メリーさんに関する一考察 8/32:2007/12/23(日) 23:05:01 ID:wmQ3RJXU
 しかし。

 問題は三つ目の型のメリーさんだ。彼女の正体は…不明。いやほんと一切不明。
取り付く島もなしに、不明。体験者たる「友達の友達」の家に何の前触れもなく
メリーさんからの電話がかかってくるところから話は始まるのだ。
メリーなんて外人の知り合いはいたかしら、とアルツの入り口を心配してるうちに
外人ならぬ人外メリーさんに背後を取られることになる。
 この場合、前者2つとは違いメリーさんの行動律はまるで読めない。
誰でもメリーさんの餌食になりうる。次は自分かもしれない。このタイプには、
そんな恐怖がつきまとう。
そのせいか、現在、普通「メリーさん」の話といえばこの第三型を指す。

534メリーさんに関する一考察 9/32:2007/12/23(日) 23:05:22 ID:wmQ3RJXU
ピロロロロ…ピロロ ピッ
「へーい。」
「…もしもし…わたし、メリーさん…今、タバコ屋さんの角にいるの…。」
「気ィつけろよ〜。」
ガチャン プッ ツー…ツー…ツー…

 あの近道を抜けたとこか。しかしヤケに時間かかったな。
子供の足でも10分かからんはずだが…。
まさか食ったのか?食ってたのかあのラーメンを!?
 まあいいか。とっ捕まえた暁には、ぜひ感想を聞きたいもんだ。
 俺はそもそも捨てる人形を持っていない。強いて言えば子供のころに
遊んでたゼットンのソフビが実家にまだあるはずだが、たぶん
捨てられてはないと思う。てか勝手に捨ててたら俺の方が実家に化けて出るぞ。
一緒に呪おうなゼットンよ。…今度実家に帰ったらこっちに持って帰るか。
恨みを買うほど親しい女の知り合いに至ってはこっちから欲しいくらいだコンチクショウ。
 そんなわけで、今俺のもとに迫り来ているメリーさんはこの第三型で間違いなかろう。
 それでは行動律や理由が読めない以上、この第三型メリーさんには何の対処のしようもない
ということだろうか。
 おそらくはこのメリーさんも先の第二型メリーさんと同様、第一型(オリジナル)
の模倣犯だろう。そしていつのまにか背後に現れる以上、彼女もまた人外であることは
間違いない。ただし目的がハッキリしないため、そこは想像してみるしかない
(第一、二型のメリーさんが成仏しきれずにさまよっている場合も考えられるが、
ここでは割愛する)。通常の場合、知らない相手から電話がかかってくるのはどういった
ケースだろうか。
535メリーさんに関する一考察 10/32:2007/12/23(日) 23:05:53 ID:wmQ3RJXU
 その一、勧誘。家庭教師とか保険とか。しかしメリーさんは特に何か要求してくるわけ
じゃない。せいぜい玄関開けさせるくらいか。
 その二、犯罪。例えばサギ。オレオレ。しかし人外が口座持ってるのか?
または他人の家を襲って金を奪う。仮に人外が社会生活してるんだったら、
人間以上に大変だろう。ならそんな危ない橋は渡らないんじゃないか。
第一、相手の背後に来られるなら、わざわざ電話しないでこっそり奪えばいいではないか。
 その三、イタズラ。…これはあるかもしれない。人外って結構イタズラ好きだし。
メリーさんの話の特徴といえば、電話を使うこと。この新しいツールによる怪談を
知って、イタズラ好きなヤツらが飛びつかないわけがない。
実際に自分たちでメリーさんを演じて人間をビビらせてやろうと画策するのは案外自然な
ことなんじゃないか。
 イタズラということは、命を奪う気はヤツらにはあまり無いということになる。
イタズラついでに魂とかを喰らうとかいうこともあるかもしれんが、
それだってあくまでもツマミ食いであって、本気ではない。
こちらが抵抗すれば被害を防げる可能性はある、はずだ。
 しかし正体がわからないのでは、やはりメリーさんそのものに対処するのは難しいだろう。
それに仮にメリーさんの正体がわかりやすい弱点を持つわかりやすい妖怪、例えば吸血鬼や
鬼ならニンニクに十字架、豆などで弱点を突けるが、「ひょうすべ」みたいなマイナーで
弱点がはっきりしないやつだったら正体が判明したところで無意味だ。
電話聞いただけで一般人と吸血鬼とひょうすべを聞き分けられるやつがいるとは思えんが。
 それならばメリーさんそのものではなく、その攻撃から身を守ることを考えればいい。
ここで重要なのは、彼女はいかなる攻撃をしかけてくるのか、ということ。
さっきも言ったように、メリーさんは別に被害者を殺すわけではないのだろう。
現に話が伝わってるということは、被害者が生きている証拠だ。
しかしメリーさんの話は必ず、被害者の背後から彼女の電話がかかってくる…という
場面で終わっている。
その後のことは杳として知れない。ここから推測するに、
被害者はこの後にあったことを覚えていない、
あるいは思い出したくないんじゃないだろうか。
後者の場合はこの話そのものを話さず忘れようとするだろうから、やはりこの話の直後
にメリーさんの攻撃を受けて記憶を飛ばされた、と見るべきだろう。
 記憶を飛ばすような攻撃というと、相手を気絶させるか、霊的な力でマインドコントロール、
記憶操作、あるいは単に眠らせる、といったところか。うん、ようやく具体的になってきた。
536メリーさんに関する一考察 11/32:2007/12/23(日) 23:06:25 ID:wmQ3RJXU
ピロロロ ピッ
「やっほー。」
「…もしもし…わたし、メリーさん…今、石段の下にいるの…。」
「…そうか。ガンバ」
ガチャン プッ ツー…ツー…ツー…

 うーむ、せっかくのエールも無視ですかそうですか。あの個人的に『ハートブレーカー』
の称号を与えた百数十段ほどの急な石段は、下からこの事務所のある高台の地区へ
昇るためのものだ。感覚的にはむしろ「登る」方だな。今は傾斜の緩い車道も通って
いるが、直線距離ではこちらのほうが断然短く、下るときには俺もよく利用する。
しかしわざわざ登るようなやつは、元気の有り余ってる小学生以外はこの辺にも皆無だ。
意外ににチャレンジャーだな、メリーさん。応援してるぞ。ファイト!
登りきればもうここまで100mもないぞ!
メリーさん、ダメだ、疲労に呑み込まれたらダメだ!君のウワサが、俺を今まで支えてくれた!
…君の怖さが俺を怖気づけてくれた!石段は乗り越えられる!
メリーさん…諦めるなぁあーっっ!!!

 と、無駄に熱くなって見てるだけじゃ始まらない。この説が正しいって言える勇気があればいいんだ。
話を戻すと、物理的な力で失神を狙うメリーさんが相手の場合は、単純に全身、特に腹や頭部、
首なんかを防具で固めておけば問題なかろう。まあこっちも動きづらいので、返り討ちは難しい
だろうが。
 しかし霊的な力で攻撃されてきた場合は、魔方陣とか呪文とか護符とか、こっちもそういう
霊的なもので防御する必要がありそうだが、現実問題としてマニアか退魔師でもないかぎり
そういうものをとっさに使えるとは思えない。というかそんなのが普通に使える一般家庭は怖すぎる。
つまりその場合、前もって準備していない限り手の施しようがないのである。
 だが、実は俺は今までの電話から、少なくとも今かけてきているメリーさんは霊的能力で
ナニヤラする可能性は低いと見ている。なぜなら
537メリーさんに関する一考察 12/32:2007/12/23(日) 23:06:47 ID:wmQ3RJXU
ピロロロロ…ピロロロロ…

って早っ!    ピッ

「ほいほい。」
「…もしもし…わたし、メリーさん…今、アパートの前にいるの…。」
…なんとまあ、前の電話から2分とたってないよ。アパートってのは石段を登って
こちら側にある学生寮だろう。あそこは4軒隣だし、次はもう玄関かな。

ガチャン プッ ツー…ツー…ツー…

とか考えてるうちに切りやがった。
 しっかし、たったこれだけであの石段を息ひとつ切らさず登りきるとは。
まさに人間業じゃない。車で車道をすっ飛ばせばできないこともなかろうが、
この距離なら確実に走行音でわかるだろう。
 でもそんな驚異的身体能力があるなら、今までだってもっと怒涛の勢いで迫って
有無を言わさずビビらせればいいはず。スピード感はメリーさんの恐怖の重大な要素だ。
怨恨にしろイタズラにしろそうしない理由はない。
となるとやっぱり霊的パゥワーで石段をショートカットしたのか。
さすがにあの石段はメリーさんにもキツかったと見えるな。
ありゃ、『霊的能力でナニヤラする可能性は低い』って見積もりがはやくも
前提から崩れ去っちゃったよ。うーむ、ちょっと不安になってきた。
 まあどっちにしろ、俺は自分にできることをするまでだ。一部否定されたとはいえ
考察の大筋は違ってはいないだろう。
もはや考察のし直しをしている時間はないし。俺はいそいそと準備にとりかかった…。


…準備そのものは数分とかからず終わった。若干の不安は残るが、致し方ない。
外れたら、ま、正にメリーさんに翻弄された人生、てとこかな。

538メリーさんに関する一考察 13/32:2007/12/23(日) 23:07:10 ID:wmQ3RJXU
ピロロロロ… ピッ
「もしもし。」
「…もしもし…わたし、メリーさん…今、事務所の前にいるの…。」
「…いいかげんにしろぉっ!」
ピッ

うんうん、やっぱりここはこの台詞がお約束だよな。事件発生→ゴルゴムの仕業だ!
がないと感じ出ないのとおんなじだ。
 さて、事務所の戸のカギはまだ閉めていない。開けてくれ、という催促のある
タイプのメリーさんでも勝手に入ってくるだろう。次が勝負だ。
絶対とっつかまえて正体解明だ。失敗するわけにはいかん。
命が危ないからじゃない、次にいつチャンスが来るかわかったもんじゃないから、な。
 机から離れ、左右後ろに十分な空間を確保しつつ仁王立ちになり、時を待つ。

……

539メリーさんに関する一考察 14/32:2007/12/23(日) 23:07:55 ID:wmQ3RJXU
ピロロロロ…

来た。
いよいよ俺の考察力が試される時。

     ピロロロロ…

念のため後ろを振り返ったが、背後にあるのは見慣れた事務机だけだった。

          ピロロロロ…

きっちりスリーコール待ってから、落ち着いて通話ボタンを押す。

ピッ

「…はい。」
「…もしもし…わたし、メリーさん……。」
「…」
「…今…」
「…」
ごくり。

「…あなたの後ろにいるのぉ!」

直後、側頭部に衝撃。



§\§



 人間の年寄りは頭が硬い。昔からのやりかたにこだわり、新しいのは毛嫌いするヤツが
多いのは万国共通だ。
 思考能力がある以上、人外も同じじゃなかろうか。いくらイタズラ好きといっても、
電話を使うなんてナウい方法は若い人外だからこそ思いつくイタズラ、という気がする。
メリーさんが大抵は幼女または少女の姿なのもうなずけるというもんだ。
 人外の中でも特に妖怪変化、ツクモガミの類は、「物」から生まれる。
典型的なのは唐傘や提灯オバケなんかだ。前述の第一型(オリジナル)のメリーさんも
その一種と考えられるな。若い人外ということは生まれてから間もない人外、
つまり依り代となる「物」が最近できた人外、ということになる。
540メリーさんに関する一考察 15/32:2007/12/23(日) 23:08:18 ID:wmQ3RJXU
しかも、コイツはかけてきた電話を自分から切るとき、「ガチャン」という
「受話器を置く」音を毎回立てていた。つまりコイツは思念波を電話線に媒介させて
いるのではなく、かといって手軽にケータイを使うでもなく、
第三のある方法で電話してきていたのだ。こんなことをするワケは、
テレパス能力が極端に弱いからか、あるいは―――
    ・・・・
「―――こういう電話そのものが依り代か、ってとこだよな、『メリーさん』?」
 目の前に悔しそうにしりもちを付いたままの姿勢で座り込む少女に話しかける。
人間なら14、5歳といったところの雰囲気だ。細身の体にバスかタクシーの
運転手のような長袖の黒いズボンと制服にワイシャツ、ネクタイを着こみ、
同じような黒い帽子が乗っかったおかっぱ風の黒髪を生やした頭部前面では、
大人の階段をのぼりつつある色白の愛らしい顔が、居心地の悪そうな表情を
浮かべていた。
 幼めの声から幼女を想像していた俺にとっては正直意外だ。
一般にメリーさんのイメージは西洋風の幼女だが、それはあくまで第一型の
人形メリーさんから来たイメージなのだろう。目の前の『メリーさん』が純和風な髪に
顔立ちなのは、彼女が、いや彼女の依り代が日本生まれだからか。

「ねぇ、それ返してよ!あたしのなんだから!」
メリーさん(仮名)がわめいて、手を突き出してくる。
「おーっと下手に動くなよ。こいつに万一のことがあったらどーなるか、
一番よくわかってんのはお前だよな?」
 俺はぽんぽんと小脇にかかえた彼女の依り代を軽くたたきながら言ってやった。
それだけでぐ、とメリーさん(仮名)は押し黙り、しばらく伸ばした手を
見つめたあと、悔しそうにひっこめた。

 その依り代とは、肩掛け紐の付いた弁当箱3、4個分はあろうかという
箱の上に、ボタンが並んだ受話器が据え付けられた装置――ショルダーホン。
自動車電話サービスの一環として1985年9月に当時民営化された
ばかりのNTTが発売した、国産第一号の持ち運び可能な移動式電話。
いわばケータイ電話のご先祖様、というわけだ。
541メリーさんに関する一考察 16/32:2007/12/23(日) 23:08:45 ID:wmQ3RJXU
その名の通り肩から下げて使う本体は、重さ実に3kg。
とてもじゃないが持ち運ぶ気にはなれんね。
「…今、なーんか失礼なこと考えなかった?」
「うんにゃ、ぜーんぜん。」
事実じゃん。
「…絶対考えてたぁ〜っ」
お、イジケとる。
「いきなり背後から頭にこんな鈍器ぶつけてくるような人外に失礼なんて
言われたかぁないね。ヘルメット被ってなかったらタンコブじゃすまなかったぞ。」
「うっ…」
あ、ぎくっ、て擬音が聞こえてきそうなリアクションでまた黙った。
 この失礼娘は、電話の直後に俺の左側頭部をショルダーホンをぶん回して
殴りつけてきたのである。
 相手の正体が予想できればこっちのもの。年齢の若い人外は、
まだそれほどの霊力は持ち合わせていないはず。
となると物理的攻撃に訴えてくる可能性が高い。ショルダーホンの人外なら、
最も簡単で効果的な物理攻撃は
依り代であるショルダーホンそのものによる撲殺しかありえない。
そこで俺は衝撃に備えあらかじめバイク用のヘルメットを被っておいたのだ。
ヘルメット以外は特に防具は身に着けていなかった。
後ろから物を振り回して気絶狙いで殴る以上、横っ腹よりは頭を狙ってくるに
違いないと踏んだのだ。そのおかげで身軽でいられ、衝撃から立ち直ってから
素早く彼女から武器兼本体を奪い取ることができた。
 何だか前提からしてあやふやな綱渡り理論だが、メリーさん自体があやふやな
存在なんだからそこらへんはしょうがない。結果オーライだ。
自分の本体で殴っていいんか、とは思うが、彼女にとっては体の一部、
手で殴るのと同じ感覚なのだろう。
「それにしても随分と原始的な方法だな。こんなメリーさん聞いたことない。」
「…ほっといてよ!あたしだってわざわざあんな変なの被って電話する
変わりもんは初めてよ!!」
もはや泣き出す寸前だ。よっぽど悔しいんだろうなぁ。ひひひ、満足満足。

542メリーさんに関する一考察 17/32:2007/12/23(日) 23:09:09 ID:wmQ3RJXU
「で?あたしを捕まえてどうするつもりッ!?けーさつに突き出すんなら
無駄だと思うわよ!」
半分自暴自棄。見掛けによらず案外ナマイキだなこいつ。電話口では
一人称『わたし』なのに。
それでも妙な動きを見せようとはせずにしりもち座りの姿勢を保っているのは、
やっぱり自分の本体に万一のことがあってはならないからだろう。
「いやなに、別に叙霊しようとか現代史博物館に売り飛ばそうとか
そんな気はないよ。昔っからメリーさんってのには興味があってな。
せっかく来てくれたんだしこの機会にちょいっとおしゃべりでも、
と思ってさ。」
彼女に目線を合わせるように俺も床に座り込みつつ、言う。これは本当だ。
「…しゃべったら返してくれる?」
「逃げないんなら。」
「…ふーん。」
左上に視線を寄せつつ思案顔。
「ま、いいか。あたしも別に忙しいわけじゃないし。」
案外簡単に折れてくれた。

「ところで何て呼べばいい?」
「えーと………別に神様として名前があるわけでもないし、そのまんまメリーでいいよ。」

 メリー(さっそく呼び捨てで使わせてもらう)との会話で、色々とわかった。
まず彼女の正体だが、やはりショルダーホンのツクモガミとか精霊とか妖精とか呼ばれる、
アニミズム的な類のものらしい。ただ、特定のショルダーホンではなく、
この世に存在するショルダーホン全てを司るものであり、正確にはツクモガミとかとは
区別されるという。何だか微妙に勢力弱そうだな。あんまりはっきりしないんで、
ここでは『精』と呼ぶことにしよう。そのショルダーホンの精であるところのメリーは、
あんまり人々がショルダーホンを使ってくれないもんだから仕事がなくて退屈で、
契約者の勧誘がてらメリーさんのイタズラをやっていたそうだ。そりゃ重いもんなぁ、
と言ったらにらまれた。それにしても想像その一も当たってたとは。
電話業界じゃ昔は威張ってた公衆電話の精も最近ではすっかり落ち目で、
よく一緒になって電話ボックスで愚痴言い合ったりしてクダをまいてるそうな。
「お互いに世知辛い世の中よねぇ」とは彼女の言。いくつだお前。
あ、85年生まれだからもう20ウン歳か。俺とそう変わらんな。外見も口調もまだ子供だけど。
 最初の方こそ警戒してたものの、こっちが特に何もするわけではないとわかると案外
フレンドリーにしゃべってくれている。もうお互い気を張る必要もなさそうなので、
俺はショルダーホンを彼女に返すことにした。

543メリーさんに関する一考察 18/32:2007/12/23(日) 23:09:47 ID:wmQ3RJXU
俺はショルダーホンを彼女に返すことにした。

 俺のケータイににかけてきたのは、ただ単に適当に押した番号が偶然俺のケータイ番号に
該当していたかららしい。
「いっつもそうしてターゲット決めてるのか?」
「うん。時々は広告とかタウンページも見るけどね。」
自分の本体たるショルダーホンを返却されて安心したのか、人間と面と向かって
会話するのが新鮮なのか、今の彼女ははっきり楽しそうな顔をしている。
「それってさ、東京から北海道とかにかかったらどうするんだよ?何百メートルかごとに
一晩中かけ続けられたらさすがに誰だって電話線引っこ抜くぞ。」
「ふふん、そこんとこは大丈夫。やろうと思えば一瞬でつくから。」
「は?」
「実はねぇ、あたし、どんなに離れてても電話かけた相手のうしろに瞬間移動できるのよねぇ。」
ちょっと得意そうに、えっへんと胸を張る。外見相応に控えめなサイズだ。
「…それ、ショルダーホンと関係なかねぇ?」
「それがさぁ、メリーさんやってたらいつのまにかできるようになっちゃった。」
あっけらかんと言ってのける。
「……」
「相手が電話出たらさ、電話線とか基地局とか通して、何っかこう、相手の場所が頭に
ビビビってくんのよね、あたし電話だし。その力で電話相手の場所探すの繰り返してたら、
いつのまにか、ね」
 うむ、俺の考察、やっぱ危なっかしかったな。もしこいつが瞬間移動能力でなく
念力殺人能力に開眼してたら、今ごろ俺はあの世で頭に三角巾つけてじいちゃんばあちゃんと
思い出話に花を咲かせてただろう。
それにしてもお前はともかく電話の頭ってどこだよ。
「まあけっこうお腹減るからあんま頻繁には使えないけどね〜。」
「…待てよ。それって応用したら背後にいく途中の場所にも行けんのか?」
「お、するどいっ。あの階段登るのキツそうだったから今回もやってみたんだ。」
だから妙に早かったんだな。
「で、なんで一気にうしろに行かないかというと…」
「その方が相手がビビるから、だろ?」
「あっ、もー、先に言わないでよ〜」
ほっぺたをぷぅ、と膨らませた。まだ幼さの残る顔に妙に似合ってて、あんまり微笑ましい
もんだからついつい笑ってしまうと、彼女もつられて噴き出した。しばしお互いくすくす、
にやにやと笑い合う。なんかいいな、こういうの。
最初のぶーたれ顔に比べれば大分打ち解けてきたかな。
「まあなあ、迷惑電話くらいならイタズラでまだすむけどな、ショルダーホンで殴るのは
ちっとやりすぎなんじゃないか。頭ってのは急所の塊みたいなもんだ。
あんなもん当たり所が悪かったらヘタすると死んでもおかしくないぞ。」
あれはちと危険だ。ちょっと空気も和んだことだし、ここらでやんわりクギを
さしておこうと思って言ったら、
「えぅ…そうなの?」
 笑い顔から一転、メリーは顔に驚いたような色を浮かべる。
「ん?ああ。大概は大丈夫だとは思うけどな。」
「そっか…。人間って案外もろいんだねぇ。そうかー。ちょっとビックリさせる
つもりだったんだけどな〜。」
544メリーさんに関する一考察 19/32:2007/12/23(日) 23:10:15 ID:wmQ3RJXU
「…は?」
「いやさ、どうせけーやくせまるんならインパクトあったほうがいいと
思ったんだけど…。どーりでみんなけーやく前に気ぃ失っちゃうわけだ。」
うんうん、と納得顔でうなずくメリー。
「おい、ちょっと待て。殴ってたワケってそのためだけなのか?」
「え、そうだけど?あたしチビだし、何かビックリさせないと舐められるじゃない。」
「…今までずーーーーっと気づかなかったのか?」
「だって人間と向き合ってしゃべったことないんだもん。なんかみんな疲れてるのかな―
って思ってて。」
こいつ…何ちゅう視野塞狭な…。というか、インパクトあれば別に殴るんじゃ
なくてもよかったんか。
「…せめてこれからは足払いくらいにしときなさい。」
「はーい。」
何か疲れた。そんな気まぐれで行動してたなんて。俺の考察が当たったのは結局マグレ
みたいなもんじゃないか。長年それなりに真面目に考えてきた俺の立場は?
このメリーがこの世で唯一のメリーさんってわけではないだろう。
しかし探偵としてこういうのは自信をなくす。はぁ〜あ。
 ため息をついたら顔面に跳ね返ってきて、頭の違和感に気づいた。そういや
メリーとの話しに夢中でヘルメット脱ぐの忘れてた。ずぽっとヘルメットを取る。
メリーは「あ、やっと気づいた」てなかんじの顔でおもしろそう。
うう、何か少し恥ずかしい。
 そういや、直前までメリーと通話してたケータイはどうしたっけ。
ヘルメット越しなんで随分やりにくかった。殴られた後手にしていた覚えはない。
考えつつ俺の床の上を目で探して気づいた。
 床の上にあおむけに転がった俺のケータイは、上半分が真っ二つに折れ、
液晶画面が粉々に割れた無残なムクロをさらしていた。
かのレアカード「さかれたムルチ」のごとく。
おそらくメリーがショルダーホンで殴ったときに直撃したのだろう。
そういえば、めしょばきっ、とイヤな音がした覚えがある。あちゃー。
「あ…ご、ゴメン!!」
メリーも今気がついたらしく、とっさに謝っている。さすがに器物損壊まで
働く気はなかったらしい。
ペコペコ頭を下げてくるメリーを、俺は宥めすかし、とりなした。
わざとじゃないんなら別に怒りはしないさ。

545メリーさんに関する一考察 20/32:2007/12/23(日) 23:10:40 ID:wmQ3RJXU
§\§


 とりあえず床の片付けを手伝わせた。液晶画面の破片に気をつければどうということは
なく、運転手服の上ご丁寧に手袋(さすがにドライバーズグローブじゃなかった)まで
してるメリーにその辺は任せた。派手に壊れたのは画面だけだし、
こういう場合は量販店まで持ってけば復旧できるのかな。
と明日の予定について思案していると、
「…ねぇ。」
尖った破片をとりあえずワレモノ用の缶にしまい終えたメリーが、上目遣いに
おずおずと切り出してきた。
こうして立って並んでみると、彼女の背丈は俺の胸くらいまでしかない。あんまし
大男とは言い難い俺の体型を考えると、けっこう小柄なほうなんだな。
そんな風なことを考えてる沈黙を肯定ととったのか、彼女は続きを話す。
「じゃあさ、あたし使ってみない?」
まだ少々すまなさそうな、しかしその実期待に満ちたキラキラ(野望に満ちたギラギラ?)
した目で。
「は?『じゃあさ』?」
「だーからぁ、ケータイ壊しちゃったし、お詫びも兼ねて変わりにあたしを使うのは
どうかな、って」
 なーるほど、あつかましくも後釜におさまろうというわけか。ちゃっかりしてるな。
まあヒトを背後から殴って連続傷害事件起こされるより健全だし、話だけでも…
「いきなり使えと言われてもな。具体的な料金プランを聞こうか。」
「けーやく料とか基本料はサービスしとくわ。電話代のほうは6秒10円…」
ダイヤルQ2エロサイトかお前は。
「…のところを、なななーんと!キャンペーン中につき途中で通話が切れたらタダ!」
俺の顔色を見てとっさにプランを変更してきたが、それも正直微妙だ。通話が終わったら
わざと地下通路にでも入ればタダパケできそうだが、そんなもんがそう都合よくあるはずもない。
 俺が怒る前の大魔神のような気の抜けた顔のままでメリーを見ていると、
「…あー、もうっ!わかったわよ。じゃあ出血特大大大っサービスで電話代全額タダでどう!?
あたしが肩代わりしとくからっ」
おお、かなり頑張ったな。しかしそれはいいかもしれないな。電話代ほかが一切無料。
つまり完全にタダで電話。
546メリーさんに関する一考察 21/32:2007/12/23(日) 23:11:03 ID:wmQ3RJXU
すごい。メールは一応PCでも事足りるし、重量を我慢すればかなり魅力的…
「…ん?待て。料金はまぁいい。肝心の電話本体のスペックはどうなんだ?」
「え?えーと…待ち受け時間が8時間、くらいかな?通話はがんばれば40分は……」
「使えねぇっ!」
朝に電源入れたら午後4時には切れる計算だ。おちおち遠出もできん。
「しょ、しょーがないじゃん初期型なんだから!」
「やっぱこの話は無かったことに…」
くるりと背を向けてみる。慌ててさささっと前に回りこむメリー。
あまりの必死さにこみ上げる笑いをこちらも必死にこらえる。
「そ、そそんなこと言わずにさぁ、ね?ほら、持ち運んでれば筋トレになるし…
振り回して武器にできるし…」
「その付加価値は正直苦しいぞ。」
「えーと…あ、あとあたし車の運転もちょっとならできるよっ!」
「いや俺バイクだし。」
通話以上にあんま使わないけどな。あといくらそんな格好してても、その外見じゃ犯罪だ。
「じゃあ…うーんと…家事手伝い、とか…」
「どうでもいいが、だんだん電話から離れてる気がするのは気のせいか?」
もはや電話でなくとも、働ければいいらしい。目的がすり替わってるぞー。
イタズラしてるよりは生産的でいいけどね。
「むぅ〜〜〜……」
 もうアイデアも尽きたのか、頭を抱えて口を一文字に結んでうなるメリー。
さあどう出る?このくらい説得できなきゃ世の中渡っていけんぞ?
 そのまま旧型移動体電話の精はしばらく故障したCPU冷却ファンみたいな音を
喉から発生させていたが、急に顔を上げ、
「…よし!」
と気合をいれるやいなや、肩から下げた自分の本体から受話器を取り上げると、
おもむろに番号をプッシュしはじめた。
数字をひとつひとつ確認するような押し方からすると、相手は決まってるらしい。
逃げる気か?と思った瞬間。
547メリーさんに関する一考察 22/32:2007/12/23(日) 23:11:31 ID:wmQ3RJXU
プルルルルルルル… プルルルルルルル… プルルルルルルル… 

背後の事務机の上の固定電話からの呼び出し音が、部屋に響いた。
目の前ではメリーがニヤニヤしながら受話器を耳にあてている。
…番号はたぶん事務所の看板のを覚えてたんだろうが、何のつもりだ?
使ってくれない腹いせに今度は腹でも殴る気か?さっき反省してたし
もう頭はやらんだろう。そういうことするような恥知らずな子じゃないと思う。
じゃあさっき言ってた足払いか。どっちにしろ、これは彼女からの挑戦だ。
受けない手はない。
 イマイチ意図を掴みかねるまま、メリーから目を離さないよう後じさりしながら
机に近づき、受話器に手をかける。メリーを見たまま体を机に対し直角にもっていき、
わざと後ろの空間を確保。挑戦を受ける、という合図だ。大丈夫、いくら人外
とはいえ相手は子供の背丈。その上、手の内もわかってるんだ。
避けられないほうがどうにかしている。そう自分に言い聞かせ、
背後に全神経を集中しつつ、受話器を取った。

ガチャッ
「はい。」
「…もしもし…わたし、メ

548メリーさんに関する一考察 23/32:2007/12/23(日) 23:12:03 ID:wmQ3RJXU
視界からメリーが消えた。

「どうゎっ!?」

 突如、体のバランスが崩れた。いや体調が悪くなったのではなく、
物理的に体の支えが外れたのだ。
足を払われた、と頭が認識したときには、すでに俺の背中は床と激しすぎる
感動のご対面を果たしていた。
あまりの感激に一瞬呼吸困難におちいり、咳き込んで思わず目をつむる。
まさか裏をかいてお約束台詞の途中で仕掛けてくるとは。
俺のマニア心理を利用しやがってぇ〜。

のしっ

 次の瞬間、腹の上に何かが馬乗りしてきて、思わずむせた。
こんな平日の営業時間外の夜中にまだ開けっぱなしの入り口から依頼人が来たのでなければ、
乗っかってるのはメリー以外にありえん。
身長にしては少々重たい。さすがはショルダーホン。
「…何の、つもりだ…」
 まだ背中が感動の余韻覚めやらぬせいで、苦しいしゃべりになってしまう。
目もつむったままだが、これは単になんとなくいやな予感がするからである。

「何って、いまどき貴重な契約者候補取り逃がすわけにいかないじゃん。だからぁ…」
目蓋ごしにも、メリーがにやぁっと笑ったのがわかる。
「…ろーらくしちゃおうと思って♪」
活字でなくとも明らかに語尾に音符かハートマークのついたセリフ。予感的中。
命の危険は幾分か減ったが、怖がってつぶっててももう意味ない。覚悟を決め、
恐る恐る目を見開く。

 一瞬、いきなり光を浴びたせいで目がハレーションを起こしたのかと思った。
視界の先にあったのは、
そのくらい眩しい、メリーの一糸まとわぬ色白の裸身。

「…っていつのまに全裸!?」
 俺が足払いくらってからのしかかられるまで2秒もなかったぞ?
メリーは答える替わり、得意げにくいくいっと親指で数メートル先の自分の元いた位置を
指し示す。そこには、彼女が来ていた運転手服が、折り重なるようにして脱ぎ捨てられていた。
まるで着ていた中身の人間だけが消滅したかのように。
「…なるほど。体『だけ』瞬間移動させたのか。」
「奥の手は残しておくもんでしょ?」
ウインク。顔半分全部動いててあんま上手じゃない。第一その純和風な顔じゃあんまり
似合わんと思うぞ。
549メリーさんに関する一考察 24/32:2007/12/23(日) 23:12:27 ID:wmQ3RJXU
「あのなあ、お前が裸でのっかってるくらいで大の大人がどうにかなるとでも…」
そう言って俺はメリーをひょいと抱えて起き上が…れなかった。なぜか今の今まで気が
つかなかったのだが、俺の両足はいつのまにやら足首をぐるぐる巻きにされていたのだ。
それもショルダーホンのコードと肩掛け紐で。恐らくショルダーホンをぶん回して
足払いをし、その勢いで巻きつけたのだろう。たったそれだけの拘束なのに、
麻縄できつく縛られたみたいに全く足が動かせない。
腕のほうも、倒れたときに思わず投げ出して机の淵にぶら下がっていた固定電話の
受話器のコードで、これまたバンザイの格好で手首からぐるぐる巻きだ。
こちらもとても動かせそうな状況ではない。だからなぜこれだけで?
「だってあたし電話なんだもーん。」
「いやそのセリフで全て許されんのか!?」
くそ、これも含めて奥の手、というわけか。というか思考を読むな。
「許されるも何も、こーなったら手段は選ばないわ。
あたし無しじゃ生きられない体にしてやるんだからふふふふふふ……」
アヤシイ目を向けてくる。ヤバイ。超ノリノリだよコノ人。さっきから思ってたんだが、
コイツ思い込みが意外に激しい上に周りが見えてない。まあノリがいいのは嫌いじゃないし、
単純で扱いやすそうなのはいいんだが、思いつきはもう少し熟考してくれたまえよ。
せめて見た目相応のおしとやかさがあればなあ。
 なんて暢気に構えてる場合じゃない。このままでは俺の貞操がまずい。
慌てて体をよじってメリーを振り落としにかかってみるが、手足が満足に動かせない
今の状況では、腹筋あたりが無駄に疲れるだけだった。
「抵抗しても無駄よん。さーて、始めましょっか。口じゃそんなふうにツッコんでても、
コッチはもう限界みたいだしー」
 俺のほうを向いたまま後ろに手をまわし、服越しに俺の股間を指先でつつつっと撫でるメリー。
ところでそのニヤケ面は妖艶な微笑のつもりか?俺が抵抗やめたのはそれが無駄だとあきらめた
からであって、別にお前に欲情したワケじゃないやい。
 …と、強がってはみるものの、うう、しかしああ言われて否定できないのが悲しい。
確かにメリーの指摘どおり、俺の息子は既にかなり窮屈な状態で、今にもズボンを内側から
突き破らんとしているのだ。しみ一つない白磁のような肌。
小ぶりだが、桜色の先端がさりげなく自己主張したしっかり存在感のあるお椀型の双丘。
あまりくびれはないが柔らかでなめらかなお腹のまん中では、おへその窪みがいいアクセントを放っている。
そして俺の腹にまたがってかき開かれた健康的な両足の間に除く、薄めの、茂みと…
そういったモノを目の前に置かれて、ヘンな気を起こさないほうがどうにかしてる。
ムリして冷静ぶって意識しないようにしてんだよ。俺だって健康な青年男子なんだ悪いかチクショウ。
 とか心中誰ともなしに毒づいてるうちに、いつのまにやらメリーは後ろ向きに跨りなおし、
ズボンのチャックをカチャカチャいじっている。…悔しいが背中のラインも綺麗だった。
そして一気にチャックが下ろされ、待ってましたとばかりに飛び出る我が愚息。
お父さんはそんなふうに教育した覚えはないぞ。いやむしろここは正常に機能してること
を誉めるべきなのか?

550メリーさんに関する一考察 25/32:2007/12/23(日) 23:13:06 ID:wmQ3RJXU
「じゃ、早速…あむ」
いきなりメリーが愚息を口に含む。あ。あったかい、と思った次の瞬間、

びびっくぅ!!「ひぅぁあっ!?」

と背筋に電流が走った、ような感覚に教われ、メリーを乗せたまま背中が跳ねた。
同時に素っ頓狂な声が口から漏れる。メリーの舌がいきなり敏感な部分に触れたらしい。
それに気を良くしたか、メリーはソコを集中的に舌でねぶりはじめた。
一舐めごとに ビクッ ビクッ と同じ感覚が背骨を突き抜け、
その度に俺の口からは情けない声が上がる。思いのほか小さな両手は軸にそえられ、息子を優しく撫でまわす。
嗚呼、自分でもそんなとこ感じるなんて知らなかったぞ。もうお婿にいけない…。
 メリーはそれに飽きると、今度はらせん状に舌を巻きつけては戻しを繰り返したり、
口ごと上下させながら吸ってみたり、と口技を様々に思いつくままにやってるとしか思えない出鱈目な
順番で繰り出してきた。動きが変わるたびに俺が「くぁっ!」「んんぁあ!?!」
とひときわ大きなあえぎ声を漏らしたのは言うまでもない。…仕方ないだろ、
こういうの免疫ないんだ。ああ恥ずかしいったらありゃしない。女々しいとか言わないでくれ。
思考は一見冷静そうでも、本当はわざとこういうこと考えてないと意識が飛びそうなだけなんだ。
「お、おいっ、やめふはぁっ!」
無駄だと諦めてたはずの抵抗が思わず口から漏れかけるが、メリーの舌による急所上の急所への一撃で
それさえも封じられる。絶対わざとやってるな…
 じゅぷ、じゅぷっ、と股間から粘着質のような、吸い付くような音がリズミカルに聞こえる。
この位置では表情が見えないが、いったいどんな顔して…あ、いかん意識したらもうええとそれにしても
何でこんなに手馴れてるんだこの外見で。意外と経験豊富なのか。えーと電話だけに口頭には自信ありってか。
えーとそれからああつまり…駄目だ。意識をそら、す思考のネタがも、うない。
や、ばい、だめだ、目の前のメリーの、小さ、い、尻のことと、か考えてち、ゃ、
意し、

き、、が、も、、、、、
、、、
「……うあぁああぁあぁぁああああぁーーーっ!!!!?」

…やっちまった。メリーの口内に、俺は勢い良く精を叩きつけてしまっていた。
「んうんっ!?むうん…ぐむぷっ、むごくっ」
どくっどくっと放出が続く。
メリーは突然のことに多少驚いたようだが、落ち着き払って俺の精を全て口で受け止める。
全て出終わるとようやく口から息子を解放し、口の中身はごくっと飲み込んでしまった。
「んむ、こくん…ぷはっ、…ふふ、意外と持ったねぇ。そんな顔して意外に経験アリ?」
「…それはこっちの台詞だろうが……意識をそらすのは…得意技なんだよ…」
一旦俺の上から降りて、ぐったりとする俺の顔を除きこみつつ、メリーはいたずらっぽく言ってくる。
俺は見ただけでそんな風だとわかっちまう顔してるのか…自分じゃ結構それなりだと思っとったんだが
なあ…。

551メリーさんに関する一考察 26/32:2007/12/23(日) 23:13:35 ID:wmQ3RJXU
 それにしても、自分でしたとき以上に疲れる。こっちは両手足拘束でマグロ状態だってのに。
「えー、それでは続いて〜…」
 まだこっちは息も治まってないのに、ノリのよすぎるメリーは再び向かい合わせに跨りなおすと、
手をついて腰をあげ、自分の秘所をいつのまにやら俺本人より早く回復した息子にあてがい…
「い、いやちょと待て…まだ息が…」
「『おかけになった電話番号は、現在使われておりません。』」
自然と俺の顔をを覗き込む姿勢になっているメリーは、あの聞くと妙にがっかりする声のモノマネ。
聞く耳なしですかい。
「だいたいさー、さっきから嫌がる理由なんてないんじゃない?こーんなカワイイ娘が自分から
してくれるんだよ?」
「そんな無体な…確かに見様によっては美味しい状況だけどな、俺はその…初めてはな、
愛し合う人とアレだ、こうもっと静かにゆっくりと、だな…」
「へぇ…乙女チック〜〜♪」
「乙女チック言うなぁぁ!」
ああ、すっかり立場が逆転してる…
「…初めて、かぁ…」
「ん?」
「な、何でもない!さっさといくよっ!!」
言うや否やあてがった腰をメリーは一気に沈めた。
ずぬっ
「え、や、そうじゃなくてうあ、あ、うおぁあぅあ!?」
「ん…くうっ!…んあああぁぁっ!!!」


さて、こっからの行為は全て回想バージョン、つまり後から解説をいれたものだ。
これ以上俺の思考を生で書いてても見苦しいだけだからな。

せまい。
第一印象はその一言だった。まるで息子の先が全方位から押しつぶされるような感覚、
と言えばいいだろうか。
そのままずぶっ、ずぬぬっ、と息子は少しづつ俺の目の前でメリーに飲み込まれていき、
暖かさを感じる面積、押しつぶされる、いや締め付けられ、擦れ合う快感が増してくる。
しかも、さっきと違ってこの位置からは、メリーとの行為が丸見えなのだ。
ハッキリ言ってさっきの行為とは興奮がまるで違う。
いつもより俺の息子も成長しているようだ。
「ううっ…いっ…キツ、い……」
そのせいかさすがにメリーも苦悶の表情を浮かべているが、それでもやめる気はないらしく、
尚も体重をかけ続ける。ずぢっ、ずっ、っと彼女のあまり濡れていない膣内に、ゆっくり
俺の息子が収まっていく。
そしてこつん、と中でつかえる感触。どうやら奥まで入ったらしい。

552メリーさんに関する一考察 27/32:2007/12/23(日) 23:13:59 ID:wmQ3RJXU
「ふぅっ…」
しかし、メリーはそこでため息をつくと、顔をうつむけ、そのまま動きを止めてしまった。
俺は狼狽した。自分のモノが入っていくところをじっくり見せ付けられた後でこれは、
はっきり言って生殺しだ。
両手が動かせないのがもどかしい。動かせていたら、俺は我を忘れて彼女の腰を掴んでピストン運動を
強制していたに違いない。
「なぁっ、…どうした、んだ?」
「…え?あ、いやちょっと疲れちゃって…」
慌てたような笑顔で手をぶんぶん振りながら答えるメリー。あからさまに怪しい。
…そういえばコイツは、自分を使ってもらうために俺を「ろーらく」しようとこんなことを
やっているんだったな。そうか、ということはこれは焦らしプレイか。俺が続きを懇願するまで
やってやんない、ってわけですか。ふっ、これまた稚拙な。この俺がこんな見え見えの手に
引っかかると思ってんのか!?

「頼むお願いだプリーズ続きしてくれ正直我慢できん助けてお願い神様仏様めりー肩掛電話守大明神様ぁ!」

 …見事に引っかかった。てへ。繰り返すが、この部分は回想だ。実際の時の俺はそこまで冷静な
思考力はとっくに遥か300万光年の彼方だった。それにもう失われし貞操は返ってはこない。
もう楽しまなきゃソンだ。我ながら切り替えは早いほうだと思う。意志薄弱とも言う。
「う、あ、ウン…ソコまで言うんなら…ちょっと待ってね…。」
何か無理難題をふっかけてきたりさらなる焦らしをかけてくるのがこういうときの定番だが、
俺に乞われたメリーは意外にもあっさりと了解してくれた。…?
「よっ…んむむ…」
さっきとは逆にずず、と息子がメリーの中から脱出を図る。しかし脱出成功直前に
再び体重をかけられメリーの体内にずちゅんと勢い良く逆戻りをはたした。
「おうっ!」
「んああっ!」
俺とメリーの嬌声が同時に上がる。そのまま息子を膣内から解放しては捕縛、
を幾度も繰り返しているうちに、次第にメリーの中は水気を帯び、それに従い
動きはスムーズになってゆく。
「はあっ…はぁっ…どう?んぁあっ、…気持ちいいっ…?」
「うっ……はあ…ああ、…こい、つは…くあっ!」
 はっきり顔を上気させ、荒い息遣いのメリー。
 もはや初期の緩慢な動きとは比べるべくもない勢いでずちゅっ、ずちゅんっと目の前で
水音を立てる結合部。まるでそこから快楽の波が、電波のように目に見えない波が俺の全身を
包み込んで波打っているかのようだ。流石は電話。
 その快感に操られ、俺もいつのまにか自ら腰を突き上げていた。手足が使えないので
反動がつけづらく、突くたび普段使わない筋肉がメリーと同じぐらい悲鳴をあげている。
しかしもはや自分の意思ではどうにもならない。
勝手に腰は突きあがってしまう。早くも俺はメリーに篭絡されてしまったのか?

553メリーさんに関する一考察 28/32:2007/12/23(日) 23:14:24 ID:wmQ3RJXU
なんてのは後付けの考えで、そのとき俺はメリーからさらに快楽を得る事意外は何も
考えることができない状態だった。
「んあああぁあぁっ…・はぁああ!…いいっ…いいよぉ!!それいいいぃ!」
「くぅう…ぐっ…、も、もうっ、…俺ぇっ!…」
童貞の悲しさ、もう限界だ。
「あはぁ…いいよっ…思いっきしきてっ……!!」
そういうメリーもかなり切羽詰まった表情だ。もしかすると…
「く・・い、行くぞぉおおおお!」
メリーが腰を落とすときを狙い、こちらも最後の抵抗とばかり突き入れる。
瞬間、俺の息子は爆ぜ、メリーの胎内と俺の思考を白濁させた。
「ううううぅぅっ…・!」
「ん…いっ、いいいあああぁあああああああああぁ〜〜〜っっ!!」
そしてメリーもまた。内壁をきゅうううっとしぼらせ、天井に向かい雄叫びをあげた。

余韻に浸る間もなく、どっとさっき以上の疲労感に襲われる。
はぁはぁと呼吸が苦しい。最中には夢中で自分でもまるで気がつかなかった。
行為中は快楽に覆い隠されていたのだろうか。今になってやっと自覚した。セックスって
こんなスゴイもんだったのか。このためならなんだってしたい気分になれる。
篭絡ってのも馬鹿にできん手段だな、
なんて今更のように考えている俺は、ストレートかつせせこましい侵略作戦に
少々毒されすぎなのかもしれない。
メリーは達したときの姿勢そのままに、ゆっくりと顔を天井から正面に戻してきていた。
呆然とした表情のメリーは小刻みに震えているようだ。
こいつもさすがに疲れたか。そう思った矢先。

「す…」
メリーの顔がとたんに生気を取り戻し、

「…すっっっっごぉ〜〜いっ!!」

いやむしろ、さっきよりも生き生きとした表情で、感嘆の叫びをあげた。
「……は?」
「まさかこんなスゴイなんて!ねぇ、もっとやろ!?」
「…え、いやだから、俺はもう」
「『おかけになった電話番号は、現在使われておりませ〜ん。』」
「無視っ!?…あ、やめろ、そそそんなこれ以上はあああアッー!」

554メリーさんに関する一考察 29/32:2007/12/23(日) 23:14:48 ID:wmQ3RJXU


§\§


ここから後は思い出すのも疲れる。
「…あのな、確かに男ってのは基本的にはこういうこと好きだし、
されると嬉しいもんだよ、でもな…」
 数分かけて呼吸を整え、コードによる拘束はすでに解けているのに立たない足腰を何とか
起こし、今は再び運転手服を着て床に座りこんでいるメリーに膝を突き合わせて正座する。
「や り す ぎ だ 。」
ゲッソリした顔してんだろうなあ、俺。あのあとメリーは、俺の制止を完全に無視し
何度となく俺の上で跳ね続けた。
しかもイク度に俺は異常な疲労感に襲われるのに、メリーの方はなぜかかえって元気に
なっていくのだからたまらない。俺は全然動いてないのに疲労困憊で息も絶え絶え、
メリーはあんなに動いたのに元気ハツラツというものすごい理不尽状態。
結局都合11、2回はイかされてしまった。最後のほうはもう呼吸ができずに窒息寸前で、
イった瞬間、俺の魂は昇天しかけた。いやホント喩えでも何でもなく、
ほわーっと肉体から精神体が起き上がって頭に三角巾を装着しにとりかかっていた。
メリーが慌てて足の拘束をほどいてショルダーホンで精神体の腹をぶん殴って
体に戻してなかったら、今ごろあの世のお花畑でじいちゃんばあちゃんとオバQ音頭で
盆踊り大会の真っ最中だったろう。
「ごめんない……」
さっきまでの積極的すぎる彼女はどこへやら、しゅんとしおれている。
「精気があんまり凄かったから…つい、調子に乗っちゃって…」
「精気?」
「…あたしみたいなヒトたちでもさ、動けば精力を消耗するから食べ物とかから
補給するもんなの。でもいつでも食べ物にありつけるわけじゃないし、あたしみたいな
依り代が取られるとヤバイのは下手に盗みとかして
捕まっちゃったらよくないじゃない。だからさ、人間の精気を直接吸い取る
こともあるんだ。最初やったみたいに。ああやるとあなたの精気を吸い取っちゃうの。」
ははぁ、性交を通じて、か。道理で疲れるわけだ。
「なるほど。てことは今までは気絶させた被害者から…」
「うん、どうしてもひもじい時は、ね。あと気づかれないように冷蔵庫あさったり
サイフからお札を2、3枚…」
「うわせけぇ!」
むぅ、想像その二もあながち間違いじゃなかったか。その倫理観はどうなんだ一体。
「仕方ないじゃない。この格好じゃおちおちバイトもできないし。人間社会で食べて
いくのも大変なのよ。」
ちょっと疲れたような顔でふう、とため息。
「…人外も結構苦労してんだなぁ。やけに手馴れてるわけだ。」
俺が納得しかけると、メリーが少し慌てた様子で何か言いかける。
「あ、え、ええと…それは…」
「ん?」

555メリーさんに関する一考察 30/32:2007/12/23(日) 23:15:11 ID:wmQ3RJXU
「…勘違いしないでね。その、口では何度もしたことある、けどさ。あっちのほうは…
は、初めて……だったん…だから…」

言ってるうちに恥ずかしくなってきたらしく、顔を真っ赤に染めてメリーは
うつむいてしまった。
「え!?あれで?」
あの絶倫でか?そんな馬鹿な……待て、そういえば確かに思い当たる節はあることはある。
始めの挿入時、こいつは奥まで入った後、しばらく動きを止めていた。俺は焦らしてるのかと
思ったが、本当は痛みを耐えていたのか。やけにあっさり了解したし。
確かにそう考えると辻褄は合う。人外に処女膜があるのかどうかは知らないが、無くとも
あんなに濡れてない秘所に初めての挿入はきつかろう。口では今までいわば食事のために
やってきたのだから、それで濡れないのも当然か。
「…何ていうかさ、こっちはあたしを使ってくれる人と最初に、とか、何となく思ってて…
やったことなくって。その…けっこう…気持ちよかったし……口でするときよりずーっと
吸収効率いいなんて…知らなくって…あんな、に…」
 伏し目がちにメリーは続けた。時々詰まるのは、初めてであそこまで乱れてしまったこと
への羞恥のせいもあるのだろう。しかしそれ以上に、しゃべっているうちに
落ち込みムードに入っていた、というのが大きい。体はエネルギーで満たされているはず
なのに、口調には元気がなくなっていく。そらそうだ。
篭絡、要するにエッチなことして気に入られようとしてた相手をリアル昇天させかけたんだ。
せっかく使ってくれるかもしれないチャンスを、自分で台無しにしてしまったのである。
「あたし……電話は中途半端っ…だし、…重たいし…悔しいんだよっ!…
…ケータイはみんな使ってくれるのにっ!あたしのことは誰も彼も!そりゃ…もう古い型だから
しょうがないっ…け、どっ、…」
 呟きに嗚咽が混じる。まずいな。心の堤防が決壊しかかって自分を卑下し始めている。
思い込みの激しい気性だ。一度壊れたらどうなるかわかったもんじゃない。

しょうがないな。
「…なぁんだ。お前もヒトのこと言えないじゃないか。」
「…え?」
「『乙女チック〜〜♪』。」
「は?」
最初、何でそう言われたかわからなかったらしい。
「…え、いや、その、それは、あ、こ、こ、言葉のアヤで〜!!…」
『初めて』に対する言及だと理解した途端、また顔に羞恥の割合が増え、両手をバタバタ
させながら慌てている。
「うあ、っだ、大体ね〜、一応女の子のあたしはこういうこと言ってもいいの!男だったら
キモチワルイだけでしょーが!」
がーっと八重歯剥き出しの怒ったような顔で追撃をかけてくる。
「…うん、それでいい。元気になったみたいだな。」
「え…」
556メリーさんに関する一考察 31/32:2007/12/23(日) 23:15:37 ID:wmQ3RJXU
固まるメリー。一発で戻っちまうとは、やっぱ単純だ。
 女の子が落ち込んでたら元気付けなくっちゃな。男として。
 顔を覗きこみ、眼の端の涙をぬぐってやる。
「ある人のおばあちゃんによるとな、『人生とはゴールを目指す遠い道、重い荷物は捨て、
手ぶらで歩いたほうが楽しい』そうだ。初めてなら仕方ないさ。ずっと悔やんでちゃ
始まんないし、つまんないだろ?次から気をつければイイんだよ。」
帽子をとってくしゃっと頭を撫でる。
「で、でも…できるかな…」
「できるよ。さっきだってちゃんと足払いに変えてたじゃないか。お前なら変えられるよ」
メリーさんに関する考察には自信のある俺が言うんだ。安心していい。昇天しかけの
ときはまあ仕方ない。理由があるなら怒る理由はこっちにはないよ。
「…あれ?え、次、って…」
はっ、とした顔。気づいたようだ。
「ま、気持ちよかったのは事実さ。それに人手の一人もほしいと思ってたところだったんだ。
今日もとっちらかった資料を一人で整理中だったしな。電話としちゃあ正直イマイチだが、
助手、ってことなら考えないでもない。どうだ?」
 それにな、探偵になるきっかけを作ってくれた『メリーさん』と一緒に仕事するのも
悪かぁないだろ?
「い、いいの?あたし…」
うなずいてやる。
「三食充電付き。こちらとしちゃあ大歓迎だ。」
ぱぁっと顔を明るくするメリー。
「…うん!…それじゃ、よろしくお願いします!!」
満面の笑みを浮かべると、ぺこっと頭を下げた。顔の横にかかった黒髪が、ふわっと揺れた。

 そして。


そのまま、やおら傍らのショルダーホンの受話器を取り、番号をプッシュするメリー。
あや、また?

557メリーさんに関する一考察 32/32:2007/12/23(日) 23:16:00 ID:wmQ3RJXU
プルルルルルルル… プルルルルルルル… プルルルルルルル…

固定電話が鳴る。
目の前のメリーは、満面の、幸せそうな笑みのままだ。
怪訝に思いつつ、肉体的に重い腰を上げて電話に出る。


ガチャッ
「…はい?」



「…もしもし…あたし、メリーさん……………。今、あなたの後ろにいるの。」


ぎゅっ、と腰のあたりに、何かが抱きついてきた。


558メリーさんに関する一考察 32/32:2007/12/23(日) 23:17:25 ID:wmQ3RJXU
以上です。
このスレのメリーさんブームにつられて自分でも書きたくなり
何か新しい旋風を巻き起こせないかと思ってメリーさんについて真面目に考えてたら
こんなんできた。
俺の閃きなんてこんなもんです。
書き終るまで2ヶ月かかってちゃあなぁ・・・
エロなんて飾り状態です。エロい人でなくてもそれがわかります。
番号ミス、重複失礼しました。
559名無しさん@ピンキー:2007/12/23(日) 23:26:42 ID:c4+CsgDJ
かわいいじゃないか!!!
560名無しさん@ピンキー:2007/12/24(月) 03:14:55 ID:jLDZ5iGb
メリーさんがけなげでかわいい上に考察に思わずうなってしまった
GJ!!!
561名無しさん@ピンキー:2007/12/24(月) 08:23:46 ID:kN0JaSdU
ちょっと乙女ちっくになってくる!
562名無しさん@ピンキー:2007/12/24(月) 12:40:43 ID:EeGsxOhu
ぐだぐだな考察がなんかいいなw
GJなんだぜ
563名無しさん@ピンキー:2007/12/24(月) 14:22:42 ID:k9HpmviL
『メリー』クリスマス!! 『メリー』クリスマス!!!!!
564名無しさん@ピンキー:2007/12/24(月) 16:00:49 ID:7uvhDAT8
565名無しさん@ピンキー:2007/12/24(月) 16:42:38 ID:9cCu2D5V
ちょっと、NTTにショルダーフォンの在庫ないか確認してくる。
566名無しさん@ピンキー:2007/12/24(月) 17:20:30 ID:YsYN4r99
NTT窓口「今日は妙な問い合わせが多いわね…」
567ショーもない小ネタ:2007/12/25(火) 00:25:31 ID:Ts64LYOH

「もしもし、私メリーさん。今、あなたの後ろにいるの…」

「残念、それは俺の残像だ」

「なっ! いつの間に私の後ろに!」

「いいのかい? 俺はメリーさんだって食っちまう男なんだぜ」

「アッーーーーーー」
568名無しさん@ピンキー:2007/12/25(火) 01:20:43 ID:aTNdc8Gp
ショルダーフォン型メリー「ふっ、計画通りw」
569名無しさん@ピンキー:2007/12/25(火) 09:17:06 ID:QvxsJ6k3
>>567
アベさぁぁあぁあぁん
570名無しさん@ピンキー:2007/12/25(火) 12:19:54 ID:ZHtkMuQf
>>558
すでに何度も読み返してしまうほど、GJ!
こんな可愛すぎるメリーさん、見たことないわ!!
571名無しさん@ピンキー:2007/12/26(水) 04:22:29 ID:kOsLVFkI
プルルルルルルル…
ガチャッ
「あ、なんだって?ああ、メリーさんなら俺の横で幸せそうに眠ってるけど、それが何か?」
ガシャン!
572名無しさん@ピンキー:2007/12/26(水) 06:43:58 ID:oj9h7n7Z
>>558
メリーさん、GJ!
自分の中でメリーさんのイメージが、「ショルダーフォン抱えた閻魔あい」っぽいのに書き換えられた
573名無しさん@ピンキー:2007/12/26(水) 17:01:54 ID:h4VsSfiM
緊急事態らしいから浮上保守
574名無しさん@ピンキー:2007/12/26(水) 18:13:34 ID:AUDJPsNf
あげ
575名無しさん@ピンキー:2007/12/26(水) 23:31:13 ID:4kWK6HLl
保守
576名無しさん@ピンキー:2007/12/26(水) 23:31:17 ID:07Z4b0Nz
あげ
577名無しさん@ピンキー:2007/12/27(木) 01:36:52 ID:ysxSvZg6
エロパロ板も荒らされてるのかよw
578名無しさん@ピンキー:2007/12/28(金) 00:31:12 ID:hcSxXlFc
出遅れたけどメリーさん読んだよ。面白かったっすGJ!
電話でうっかり撲殺とか可愛いなぁ。
5日くらい覗いてなくて一気に伸びてたからここも爆撃食らったのかと焦ったよ。
579名無しさん@ピンキー:2007/12/28(金) 15:06:48 ID:ps/4cbmi
メリーさん可愛いよメリーさん
580名無しさん@ピンキー:2007/12/29(土) 19:02:51 ID:giFw8pJs
猫又の娘さんはこたつで丸くなる季節だな
581名無しさん@ピンキー:2007/12/30(日) 21:44:42 ID:rZn6i5Dy
今椅子に座ってる俺の脚の上で
丸まってる双子の猫…
擬人化しねぇかなぁ。
582名無しさん@ピンキー:2007/12/30(日) 22:10:04 ID:8A3dM8k2
双子の猫うp
583>>581こうですかわかりません!:2007/12/30(日) 23:35:24 ID:vPZuo/J6
「にゃーにゃー」
「……何にゃーにゃー言ってんだか。馬鹿みたい」
「だって猫にゃんだから、にゃーと言うものなんじゃないかにゃ?」
「はぁ……普通に人間語喋れるようになったんだから、そんな必要は無いの」
「でも、御主人様は喜んでくれるにゃ」
「あのねぇ、お姉ちゃん。なんで私達が頑張って猫又になったかわかる?」
「……にゃ?」
「小首を傾げないっ! ……復讐の為でしょ? その復讐の相手喜ばせてどうするのっ!」
「妹は真面目にゃにゃー」
「……あのねぇ」
「でも、御主人様は、それは誤解だって、ちゃんと話してくれたにゃ」
「えっ!?」
「自分が行った時にゃ、お母さんはもう死んでたって言ってたにゃ」
「……何? 話したの、私達の事? 全部?」
「にゃ」
「っ……信じらんないっ! 馬鹿みたいじゃなくて、馬鹿なの!?」
「にゃ?」
「だから小首をかしげるなっ! ……そんなの、ホントの事言うと思ってるの?
 もし本当だったら、なんであの人の手は、お母さんの血で真っ赤に染まってたの?」
「……それはにゃ、御主人様がお母さんを」
「とにかくっ!」
「にゃうん!?」
「私は、あの人を許さないからっ! 復讐して、痛い目に遭わせてやるんだからっ!」
「……妹」
「お姉ちゃんは……お姉ちゃんは、あの人と仲良くしてればいいのよっ! 裏切り者っ!」
「……わかったにゃ。好きにするといいにゃ」
「え……」
「けど、いつかお前にもわかるにゃ。御主人様が、本当にいい人だって事がにゃ」
「……………………馬鹿ぁっ!」
「あ、どこ行くにゃ?」
「散歩よっ! 付いて来ないでねっ!」

「というようなことがあったにゃ」
「仕方が無い奴だな、お前の妹も」
「御主人様は、身寄りのなくなった私たちを拾ってくれた恩人にゃというのににゃ……」
「……ま、仕方無いさ。大事な物を失くして、それをすぐ受け入れられる人間ばかりじゃない。
 ゆっくり、誤解は解いていくさ」
「御主人様は、やっぱり優しいにゃ! ……にゃ?」
「あれ……?」
「にゃーむ……」
「……アイツ、だよな?」
「猫モードで寝ぼけてるみたいにゃ」
「にゃーぅ……にゃっ」
「あ」
「……この子も、本当はわかってるのにゃ、きっと」
「膝の上で丸くなって……可愛いな」
「……にゃ」
「じゃあ、私もそこで丸くなってもいいかにゃ?」
「ああ、構わんよ」
「しのびにゃー……にゃっと」
「……ちょっと重いな、二人分は」
「乙女に重いは禁句ですにゃよ?」
「はは、悪かった」
「……やっぱり、御主人様は暖かいにゃ」
「……にゃぅ」
「この子も、そう思ってるみたいにゃ」
「……そっか」
「じゃ、私もおやすみにゃ……」
「ああ、おやすみ」
「にゃ……ぅ……」
584名無しさん@ピンキー:2007/12/30(日) 23:47:46 ID:MoptR/6F
重いのは乳が…と妄想して一人もだえている…
585名無しさん@ピンキー:2007/12/31(月) 05:45:06 ID:UjDoJUsc
どてら来て炬燵に入って蜜柑食ってる猫耳娘とか萌える
586名無しさん@ピンキー:2007/12/31(月) 20:29:39 ID:ACS102S6
つ橙
587名無しさん@ピンキー:2007/12/31(月) 20:46:33 ID:MKDEU6+e
>>585
猫にミカンを食わせようとするとはなんというサドだ
588続・毛羽毛現之事:2007/12/31(月) 21:55:56 ID:PBwezFQH
 無表情で無口な同居人が増えてからも俺の生活は平穏無事なままだった。
 『白蛇伝』よろしく、退魔師とか他の妖怪からちょっかいを出されたり、理不尽な別離で終わりかと思っていたのだが、それは杞憂だったらしい。
 事件と言えば、彼女の顔が取れたことくらいだ。
 詳しい経緯は省くが、ふとした拍子に彼女の『顔』が落っこちたのだ。デスマスクみたいだと思っていたが、本当に仮面だったらしい。
 (しかし、痛覚があることやキスしたときの口腔内の状態、表情のわずかな動きを考えると一概にただの仮面とも言えないのだろうが)
 仮面だったのもビックリだが、ポロッという擬音が似合いそうなくらい簡単に落っこちたのにはホントに驚いた。
 幸いというか何と言うか、落ちた顔を彼女に渡してやるとすぐに元通りになったが、その一件で用心深くなったのか彼女の仮面は二度と外れていない。
 その際、珍しく彼女が慌てたような恥ずかしいような動きをしていたのが非常に印象深く、とても可愛らしかったのでもう一度顔を外してみたかったのだが……実に惜しい。

 話は変わるが、俺には小泉九十九というどこぞのヘルンさんみたいな名前の知り合いがいる。その名前のせいか、こういうオカルトなどには詳しいヤツで霊感もあるらしい。
 そんなテキトーな理由から、彼女との同居生活にあたって俺はそいつに助言を仰ぐことにしたのだ。
 百聞は一見にしかず、ということで彼女といっしょに小泉のところへ行くことにしたのだが道中、周囲から不思議がられたりすることはなかった。
 そのことを小泉に伝えると、どうも彼女は『認識阻害』というか、そういった魔力を持っているのだろう、との返事が返ってきた。
 彼女のありのままの姿は確かに視えているのだが、普通の人間にはそれを異常とは思えないようになっているのだろう、とのことだ。
 次に判ったのが、彼女の正体だ。彼女は幽霊ではなく、いわゆる妖怪で『毛羽毛現』とかいうらしい(幽霊と妖怪がどう違うのかは、説明されたがよく判らなかった)
 小泉が差し出したいくつかの本――『水木しげるの妖怪百物語 日本篇』や『日本妖怪大事典』など――には彼女によく似たマルチーズみたいな変な毛の塊が描かれていた。
 なんとも胡散臭い気がしたが、ほかに手がかりもない。俺はとりあえず小泉の言葉とそれらの資料を信じることにした。
 なぜなら、資料通りに俺は病気になったからだ。
 症状としては、陰茎が物凄く痒くなった。
 病院で診てもらったところ、なんかの菌に感染してたらしい。
 先生の話では、早期発見だったため外用薬と内服薬だけでよかったが、もし発見が遅ければ『切り落とさなければいけなかった』とか。
 なにを、とは言わない。察してほしい。

 ――教訓:排水口はけっこう汚い。いわんや、そこから出てきたものも。

 そんなあまりにも手痛い失敗を犯した俺は、彼女を毎日入浴させたり、日向ぼっこさせるなどして清潔になるように心血を注ぐことになった。
 強い決意のもと、断固たる態度で彼女の清潔さを保ってきたのだ。
 『そうだ、私は(私だけは)彼女を汚したりはしない。彼女を不潔にさせもしない。常に清潔に保つように心がけねばならないのだ。彼女を洗髪し、常に深遠なきらめきを求め続けよう』
 なんて標語を書いて壁に貼り、毎朝5分間拝んでいたくらいである。
 そんなこんなで苦節3ヶ月弱。
 ようやく医者からも完治との言葉をもらえた俺は、病院からの帰途を躍るような足取りで急いでいた。
589続・毛羽毛現之事:2007/12/31(月) 21:57:13 ID:PBwezFQH

「ただいま!」

 帰ってきた勢いもそのままに、なかば乱暴に玄関のドアを開ける。
 俺が帰ってくるのを何らかの方法で察知していたのだろう、上がり框には既に彼女が居た。
 相変わらず、うっすらとした笑顔で凍りついた仮面のような顔だ。一つの表情から変わらないのであれば、これもある種の“無表情”と言えるだろう。
 不意に彼女が「おかえりなさい」と言ったような気がした。
 彼女は音声を発するということがないから、おそらく俺の思い込みによる幻聴だろう。
 だが、彼女は無表情で無口ではあるが、感情の表出がないわけではない。
 うまく言葉には出来ないが、細やかな仕草一つ一つが言語以上に雄弁に語るのだ――それこそ、幻聴が聞こえるほどに。
 身体言語(ボディーランゲージ)とは、よく言ったものだと思う。
 そんなことを考えていると、いつの間にか彼女が足元まで近づいてきて俺を不思議そうに見上げる。
 そして今度は「どうしたの?」という幻聴が聞こえた。

「ん〜? 何でもないよ。ただ君は可愛いなって思ってさ」

 古人曰く、可愛い子にはチューをあげろ。
 俺は少し身を屈めると、彼女の右頬に唇を寄せる。彼女は右目を閉じ、くすぐったそうに身をくねらせた。
 唇を離し、彼女をひょいと抱え上げる。そして靴を脱ぎ捨てて、ベッドへ直行した。
 ポーンと彼女をベッドに放り投げると、一度軽く弾んで横たわる。彼女は俺の突然の行動に少し驚いたようだった。
 そんな彼女に覆いかぶさるようにして、今度は唇に口付けをする。
 初めは、優しく触れるだけのキス。一度離して、今度は深いキス。
 今は視覚などという触れもせずに全てを解った気にさせる感覚は不要だ。眼を閉じて彼女に触れている部分――唇に、舌に、全神経を集中させた。
 口唇の襞一つ一つ、歯の一本一本を味わうように、じっくりと舌を絡ませる。鋭敏になった今の舌ならば、彼女の味蕾の数すら数えられそうだ。
 おずおずと開かれた歯列をくぐり抜け、口腔内へ舌を滑り込ませた。舌と舌が絡み合い、唾液と唾液が交じり合う。
 彼女の唾液が、まるで蜜のように甘く感じるのは果たして俺の昂揚した神経の感じる錯覚なのだろうか。彼女も俺の唾液を、甘く感じているのだろうか。
 軽い酸欠と心地好さにフワフワしはじめた頭で、茫洋とそんなことを考える。
 ひとしきり彼女の口腔を貪った俺は、そっと唇を離す。口戯の余韻は、透き通った階梯となって二人を繋いだ。
 目の前には、青白い彼女の顔。
 最前と何も変わらないように見えるが、よく見れば――本当によく見れば――彼女の頬がちょっとだけ上気し、死んだ魚のような眼も、幽かに潤んで輝いているのが判る。
 ふと、彼女の眼がわずかに動いた。どうやら何かを見つけたらしい。首に相当する部分が伸びて死人のような麗しい顔が近づいてくる。
 そして俺の顎から口角へと、花びらのように小さく愛らしい舌を這わせた。どうやら、口の端からだらしなくこぼれていた唾液を舐め取ったらしい。
 彼女は舐め取った唾液を、まるでソムリエがワインを飲むように口の中で転がしてじっくりと味わい、飲み下した。
 嚥下音すら、可愛らしい。
 そんなことを思っている間にも、彼女の下半身は触手――繊毛といったほうが正しいのだろうか――を伸ばしてズボンのファスナーを下ろし、俺の陰茎を露わにする。
 外気にさらされたソレはすでに屹立し、先端は先走りで卑猥に輝いている。
590続・毛羽毛現之事:2007/12/31(月) 21:58:18 ID:PBwezFQH

「……もう、挿れていいか?」

 返事代わりとばかりに、彼女がゆっくりと浸蝕するように俺の下半身を包み込んでいく。
 体を小さく断続的に痙攣させながら俺の陰茎を飲み込んでいくのがとても愛しく思うが、もどかしくも思う。
 ――だから、腰を動かして一気に根元まで埋没させた。
 その瞬間、彼女は体を丸め、右のツインテールを噛んで何かを堪えるような格好で大きく痙攣した。

「……もしかして――イっちゃった?」

 返事もなく、ただ彼女は口を小さく開閉しながら、ふるふると体を震わせている。
 彼女が俺のモノをゆっくりと包み込んでいたのは、一気にやるとイってしまうからだったようだ。どうやら自分だけイクのが嫌だったらしい。
 人はそれをどう思うかは知らないが、少なくとも俺はそんな彼女の態度がとても健気に見えて、愛しさを感じた。そしてそれに伴う嗜虐心と征服欲も。
 気がついたときには、俺は彼女を抱き寄せて起こし、腰を振っていた。
 絶頂の余韻も抜け切らぬうちに乱暴に突き上げられ、イヤイヤと頭を振っていたが快感に流されて次第に抵抗は消えていった。
 焦点のない瞳が、さらに焦点を失って散大し、青白かった顔が紅潮して色白な人程度にまで血色を見せている。
 そして今や彼女の絹糸のような髪一本一本が蠕動し、蠢動し、胎動していた――俺を射精させるために。
 考えても見てほしい。
 無数の髪がただ俺を射精するため、ただそれだけのために活動している様を。
 その動きが与える快楽に、ただの人間が抗えようはずもない。
 だから、断じて俺は早漏ではない――と思う。そう信じたい。

「…くっ……俺、そろそろ……!」

 俺の言葉に、彼女が頷いた、ように見えた。
 彼女も絶頂が近いのか。それとも、胎内に出して欲しい、ということだろうか。
 ――多分、両方だ。
 一層激しさを増すストロークに合わせるように、彼女の痙攣と蠕動も激しさを増す。
 法悦へと、一気に昇りつめていく。
 そして――
591続・毛羽毛現之事:2007/12/31(月) 21:59:24 ID:PBwezFQH

「――――………!!」

 彼女は体を反らし、ひときわ大きく痙攣して俺のモノを絞めつけた。
 その瞬間、俺の頭も真っ白になった。
 後頭部を思いっきり殴られた時でも、ここまで目の前が真っ白になったことはない。
 それほど凄まじい衝撃が神経を駆け抜けたのだ。

「俺…もっ……!」

 彼女の胎内へ、欲望をブチ撒けた。
 病気になって以来、オナ禁3ヶ月分のそれを一滴残らず搾り出そうとするかのように、彼女の内は断続的な蠕動と収縮を繰り返している。
 二度目の絶頂は、彼女の魂をどこか遠くへと押しやるほどのものだったらしい。
 瞳は開ききって完全に焦点を失い、笑ったまま凍りついた口の端からは、つぅーとヨダレを垂らしている。
 脱力して開きっぱなしになっているのは瞳孔と口だけではないようで、涙腺も弛緩して止めどなく涙が流れている。
 そんな、だらしないとすら思えるような様子が、たまらなく愛しく、そして艶っぽかった。
 右手を彼女の左頬を包むように添え、親指で涙を拭ってやりながら、右目の涙は啄ばむようにキスして、舌で拭う。

「……やっぱり、君は可愛いな」

 まだ小さく震える彼女の身体をそっと抱擁し、額に口付けるようにして髪に顔を埋めた。
 シャンプーの爽やかな香りと彼女の甘い薫りが入り混じった、かぐわしい馨りが鼻腔に充満する。
 天女が羽衣を纏うように、彼女はそれを纏っていた。シャネルNo.5だって目じゃない。
 彼女の頭を撫で、髪を梳き、存分に肺腑を薫香で満たす。
 肉体と本能はまだ彼女の体を欲していたが、精神と理性はこの微睡みにも似た心地好い時を過ごすことを欲している。
 時間はいくらでもある。夜はまだ長い。
 俺は精神の望むまま、この心地好い時の流れに身を任せることにした。



 オワリ
592名無しさん@ピンキー:2007/12/31(月) 22:05:12 ID:PBwezFQH
 以上です。
 見てのとおり今回は『毛羽毛現之事』の続きです。143氏の『かなりストレートな励まし』を胸に頑張ってはみましたが……相変わらずの稚拙さに加え、遅筆で申し訳ない。
 こんだけ書くのに3ヶ月……エロって、小説って、難ちいネ。いや、語彙が少ないド素人のクセに無口無表情&異形っ娘でいこうなんてムチャするほうが悪いのか……。
 前作にGJをくださった皆様、そして今作を読んでくださった全ての人に、『All good medicine』
593名無しさん@ピンキー:2007/12/31(月) 23:24:00 ID:zmtEkH73


来年が人外スレにとって良い年でありますよう
594名無しさん@ピンキー:2007/12/31(月) 23:26:05 ID:Qlsl7Ewy
まさかあれの続きが読めるとは!GJ!
パイプの掃除は大事ですねw
今年の最後に良いものが読めました。
2008年も素敵な人外っ娘に会えますように。
595 【1749円】 :2008/01/01(火) 00:23:29 ID:g2LWuRgy
ラミアさんにお年玉
596小ネタ・メリーさんのいるお正月:2008/01/01(火) 19:56:22 ID:up2PiRux
「明けまして」
「きんがしんねん、がしょ〜!!」
スッコケた。そりゃもう見事に。こけましておめでとうござい。
「違うっ!」
「え?新年のあいさつってこうでしょ?」
「いや完全なる間違いってわけでもないがな、流れを読め、流れを!」
「はーい。」
俺はお約束を外されるのはイヤだ。だれかさんにちょっとしたトラウマももらったしな。
まったくどんな生活してきたんだコヤツは。これくらい常識だろ?コモンセンスだろ?ハヤテだろ?
「いやー、大先輩のゆーびんの精さんに教えてもらったもんだからさ〜。こないだお昼ご飯たかったとき。」
「セコッ!」
「いーじゃん、彼女けっこうお金持ちだし。…そーいえばそのとき『民営化がぁぁぁ…ゆうちょの不透明ヘソクリがあぁぁぁぁぁぁ……』とかわめいてたけど、何だったのかな?」
「…いや、そっとしといてやれ。」

§\§

今日のメリーは黄色の振袖。姉の小さい頃のを送ってもらった。元々和風ないでたちなんで中々によく似合う。
…それでも肩からショルダーホンを離さないのは、精としてのプライド故か。
側面にミニ門松取りつけて正月をアピールしているが、そのセンスはちょっとどうかと思う。
「さーて。正月だし事務所も休みだ。ひとつ正月らしい遊びをするとしよう。」
「えーと、お正月らしい…っていうと帯を引っ張ってぐるぐる回って
『あ〜れ〜お代官さま〜』ごっこ、とか?」
「…なぜにそういう知識は豊富かな。まあそれも面白そうではあるが、今回はコレ、
カルタ取りだ。」
「四人合唱」
「それはカルテット。」
語源らしいけど。
「じょーだんじょーだん!カルタぐらい知ってるよ〜。」
「ホントだろうな。…二人しかいないからタイムアタックでいこう。メリー先に取るか?」
「おっけー。負けないわよ〜!」
ぐいっと腕まくり。…ショルダーホンが邪魔でまくれない。しぶしぶ傍らにとすんと置くメリー。
『ショルダーホンとしてのプライド<気合』の不等式が成立した瞬間だ。
597小ネタ・メリーさんのいるお正月:2008/01/01(火) 19:56:43 ID:up2PiRux

「いくぞー。『そ』んなこと、おれがしるか!」
「ん〜…あ、はいっ!」
だこんっ!

「…次『ひ』とーつ、ひいきはぜったいせず」
「えーと…あった!」
どごんっ!

「…『わ』かさってなんだ?ふりむか」
「これっ!」
ずどんっ!

「…『お』つかれさん」
「…それだっ!」
どすんっ!
「おてつき。それは『お』んどぅるるらぎったんでぃすか、だ。」
「何で同じ平仮名が二枚もあんのよ!?」
「知らん。それよりな…」
「?」
「…いいかげんショルダーホンたたきつけて取るのやめてくれ。床が抜ける。」
すでにメリーがたたきつけた床からは、ぷしゅうううぅ、とヤバそうな煙だか水蒸気だかが
噴き出している。
「あれ、カルタってこうやるんじゃなかったっけ?テレビじゃ見つけたらバシッて…」
嗚呼、予感適中。
「………悪いがその認識は致命的に間違ってるぞ。手でやりんしゃい手で。」
「はーい。」

§\§

その後も追羽根をショルダーホンの強烈スマッシュで顔面にぶつけられたり、年賀まわりを
メリーさん能力でやろうとするメリーを必至で引き止めたり、年賀状配達に例の郵便の精さんが
やってきて郵政癒着の裏舞台とその甘い汁について延々とグチをメリーともども聞かされたり、
そんなこんなで強烈に疲れる俺たちの正月は過ぎていくのだった。

とべ・こんちぬえど?
598メリーさん作者:2008/01/01(火) 19:57:54 ID:up2PiRux
謹賀新年です。
前回は初書きにもかかわらず多くのご声援をありがとうございました。
自分で書いてみてたったひとつのGJの力の偉大さを思い知りました。
元旦にふと思いついたんで今回はエロなし小ネタです。
やっぱしエロはハードル高いっす。
>>592
GJ!
けうけげんのキモ可愛さ(注・大いなる誉め言葉のつもり)が大好きです、このシリーズ。
この十分の一でもエロのオリジナリティの才能が欲しい…。
599名無しさん@ピンキー:2008/01/01(火) 23:16:49 ID:jWVhZ3pe
600名無しさん@ピンキー:2008/01/01(火) 23:27:19 ID:9MavT7Ic
GJです。メリーさん可愛いなぁ。
そういえば次スレの準備を始めるにはまだ早いでしょうかね。
601名無しさん@ピンキー:2008/01/02(水) 00:07:56 ID:fPU1PxWa
478だしそろそろいいんじゃね?
602名無しさん@ピンキー:2008/01/02(水) 01:16:17 ID:nFNtveGj
ならば立てるか
603名無しさん@ピンキー:2008/01/02(水) 01:30:10 ID:nFNtveGj
次スレ立てました

【妖怪】人間以外の女の子とのお話23【幽霊】
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604名無しさん@ピンキー:2008/01/02(水) 11:13:39 ID:yC+ZFRKR
我が家の猫はもう女性で言えば完熟なお年頃。
最近椅子に座る俺の足の上によく乗ってくる。
小さい頃は俺が触る事すら許さなかったのに
今じゃ撫でると軽く足に爪たててくる。


なにこれ
605名無しさん@ピンキー:2008/01/02(水) 12:18:16 ID:fPU1PxWa
>>603
乙!
606名無しさん@ピンキー:2008/01/02(水) 13:53:12 ID:HRmzOk0H
ツンデレってやつだな
607名無しさん@ピンキー:2008/01/02(水) 21:11:52 ID:dRE9XTNq
>>603
乙です。
608名無しさん@ピンキー:2008/01/05(土) 16:32:11 ID:xZeNYbzd
埋め
609名無しさん@ピンキー:2008/01/05(土) 16:39:54 ID:ass9uk1Y
>>604
幼少
「アンタなんか…ご主人さまって、認めてやんないんだから」

成長後
「…は、はやく、もっとなでなさいよっ!」

と見た
610名無しさん@ピンキー:2008/01/07(月) 16:16:49 ID:vjMRqSLy
611名無しさん@ピンキー:2008/01/09(水) 18:17:03 ID:zsomavpk
埋め埋め
612名無しさん@ピンキー:2008/01/11(金) 14:27:43 ID:Yw059DdE
埋める
613名無しさん@ピンキー:2008/01/13(日) 23:37:39 ID:JtB17NfH
埋め立て や ら な い か ?
614名無しさん@ピンキー:2008/01/14(月) 08:45:50 ID:ef5HGX0y
× や ら な い か ?
○ や ら な い か
615名無しさん@ピンキー:2008/01/15(火) 03:07:55 ID:BdQvJ09D
ウホッ!
616名無しさん@ピンキー:2008/01/15(火) 23:21:29 ID:OxDvMc2O
>>614
?つけないのか。勉強になった。
617名無しさん@ピンキー:2008/01/17(木) 03:47:45 ID:/uQSSv9L
618名無しさん@ピンキー:2008/01/18(金) 19:08:04 ID:nKFNb/Ew
整理してたら、昔某スレで書いた雪女のSSの残骸が出てきた。
619名無しさん@ピンキー:2008/01/18(金) 20:00:28 ID:WjJoCiFu
坂上田村麻呂が羨ましいぜ
美人の鬼を手篭めにしてるんだぜ

埋め
620 ◆i00Aq69qlQ :2008/01/18(金) 20:26:35 ID:AddsMovr
スペース余ってるそうなので、小編投入いきます

『天井裏から、愛を込めて。』

閑話 「妖怪 天井下がり」
6211/2 ◆i00Aq69qlQ :2008/01/18(金) 20:28:40 ID:AddsMovr
今朝も寝起き早々、その状態だった。
「んっ……ん……」
俺の家で暮らしている妖怪の少女が、今目を覚ましたばかりの俺のペニスを口に咥え、
一心不乱に舌を絡ませている。寝起きの寝フェラ。
彼女がウチにきて以来、俺が家にいるときには、ほぼ毎朝の恒例行事だ。
(ふぁぁ……。それにしても、上手くなったな。さがりの奴)
彼女は妖怪、天井下がり。破れ天井に住み着いて、
その家の住人を驚かせたり悪戯を仕掛けたりするだけの、害のない妖怪だ。
さがりという名前は、とある山奥の廃寺で彼女と出会ったとき、俺が付けてやった。
(おおお……)
さがりは舌先を小刻みに震わせて、裏筋の一番敏感な部分を刺激する。
しかしこちらが際どいところまで高まってくると、
まるでそれを読み取ったかのように、すっと刺激を変えてくる。
緩やかな動きで、優しく全体に舌を絡ませるような愛撫。
そしてまた、こちらが物足りなさを感じ始めるタイミングに合わせて、
感度の高い鈴口を攻め始める。
すぐには終わらせない。しかし、刺激を途切れさせることもない。
断続的に男の性感を高めていく、巧妙な焦らしのテクニックだ。
(まあ、コツを教えてやったのはこの俺だが)
それにしても、わずか数ヶ月の間にこの上達。やっぱり天性の何かがあるんだろう。
寝ている相手に対する「悪戯」は、妖怪天井下がりの種族特性ともいえる行動なわけだし。
「ケーイチ……きょうもこのまま、するの?」
このままする、というのは、つまりこのままお口で抜いてもらうという意味。
俺が狸寝入りを続けて彼女の愛撫に身を任せるのはいつものことだから、
黙っていればそれが肯定のサインになる。
フェラチオからの口内射精には、セックスとはまた違う、たまらない快感があるものだ。
征服感と充足感がない交ぜの。何度させても、飽きることがない。
「いいよ……してあげる」
さがりは俺のペニスを大きく咥え、吸い立てる。
締め付けるような唇の感触と鈴口を刺激する舌先の動きに、俺は急速に高まっていく。
さがりも、もう焦らそうとはしない。立て続けに、強い刺激が、来る。
俺は射精感に身を委ね、そのまま気持ちよく、さがりの口の中に精を放った。
「んっ……ん……」
射精が完全に終わるまで、口を離そうとはしない。恍惚の表情を浮かべて、
さがりは出されたものを飲み込んでいく。
普通の女の子にとってはかなり辛い行為のはずなので、
それは無理にやらなくてもいいと、言ってはあるんだが。
こちらが寝ている時、つまり天井下がりとしての本領を発揮しているときの彼女は
何しろ大変に積極的なので、こういうことも嬉々としてやってくれるのだ。
だいたい、寝フェラなどという行為にしたところで、
別に何も俺が御主人様気取りでやらせているわけではないぞ。
初対面の時からずっと、向こうが自発的にやっているのだ。
というか、止めても聞いてくれない。
眠っている相手に悪戯を仕掛けるのは彼女にとって本能にも等しい行為だから、
やめさせようがないのだ。
試しに居間のソファで寝てみたこともあったが、
所詮一つ屋根の下なので結果は変わらなかった。
どうしてもというなら、彼女を置いて余所に住むしかないだろう。
そしてもちろん、俺にはそんなつもりは毛頭ない。
「おはよう、さがり」
「あっ、おはよ。ケーイチ」
俺が体を起こして声をかけると、
さがりは急にもじもじとして、シーツで体を隠してしまう。
6222/2 ◆i00Aq69qlQ :2008/01/18(金) 20:29:05 ID:AddsMovr
さっきまで一糸まとわぬ姿で積極的にご奉仕に励んでいたというのに。
こちらがはっきりと「起きました」という態度を示すと、
天井下がりの積極性は、たちまち消えうせてしまうのだ。
そうなってからの彼女は、どちらかといえば臆病な性格で、
人並み以上の恥ずかしがりやである。
今さら、見られたくらいで照れることもないだろうに。
「どうしたー?隠れるなよー」
そう言いながら俺も一緒にシーツの中に潜り込み、暖かく柔らかな彼女の体に手を回す。
「ひゃん」
片手で陰裂に触れると、さっきまでこちらからは何もしていなかったというのに、
そこは熱く潤っていた。
「さーがーりー。してる最中、何を期待してたんだ?一人でこんなにして」
「にゃあ……やぁん」
右手の中指をそこに差し込み、ほぐすように掻き分けてやる。
あまり前戯に時間をかけない時の、下準備。朝っぱらからするときには、
じっくりと愛し合う長い夜の時間とは、また違ったやり方があるものだ。
濡れているときでも、多少は慣らしてやったほうがいい。
そうでないと、相手が処女でなくても痛みを感じさせてしまうことがある。
それに、指先に感じられる襞の感触というのは、性感とは別の意味で、いいものだ。
窮屈に絡みつく狭い秘洞の中の、複雑な凹凸を俺は指でこすり上げていく。
はっきりと中の構造が分かる。指先で性器を犯し、
その全てを自分の知識に変えていく、征服感。
この体のこの感触を知っているのは、この世界で俺だけなのだ。
そしてその淡い満足感は、早くこの中にペニスを入れてこすり立てたいという衝動を促していく。
「あ、んっ……ひゃぅん……ケーイチ……するの?さっき、したばっかりだよ?」
その通りだが、これからすることと、さっきしたことは違うのだ。だから、いい。
「する。ほら、もうこんなだ」
俺は、再び屹立したペニスをさがりの体にぐいと押し当ててやる。
「わぁ……ケーイチ、またげんき」
「そうさせているのは、お前だ。はい、下向いてー」
俺はさがりにうつ伏せの姿勢を取らせ、膝で立たせて、後ろから陰裂にペニスを当てた。
「あっ……ふぁ……」
そしてそのまま、腰を進めて侵入していく。暖かく潤ったそこは、待ち焦がれたかのように俺を迎え入れる。
「あん、あんっ、やぁ……ケーイチぃ……」
さがりの甘い声が、心地よく俺の頭の芯を痺れさせていく。
避妊具は、付けていない。たとえ0.01ミリの壁であっても、
それははっきりと何かを阻害してしまうものだ。
直に触れ合う粘膜と粘膜の感触は、たまらない刺激を与えてくれる。物理的にも、感情の面でも。
「やっ、だめ……ケーイチ、ケーイチぃっ……!」
さがりの中の奥の部分、一番深いところで、俺は欲望を解き放った。
コツン、コツンと、俺の精がさがりの最奥を叩く。
相手は人間の女の子ではないんだから、別に構わないだろうという気持ちが半分。
……万一のことがあっても、こいつになら俺の子を産ませるのも悪くないか、という気持ちが半分。
「はぁ……ふぅ」
ぱたりと枕の上に倒れ込むさがりに身を寄せて、俺はほっぺたにキスをしてやる。
「えへへっ……」
俺の体に頭を預けて、さがりは幸せそうにまどろむ。
623名無しさん@ピンキー:2008/01/18(金) 20:59:58 ID:RrJCK3HF
>>622
GJ!

アレだな、こう、恥ずかしがり屋だったり甘えん坊だったりする女の子は破壊力二割増しだな。
624名無しさん@ピンキー:2008/01/18(金) 22:53:04 ID:+bwf0iFl
キタワァ!
さがり可愛いなぁ…
625名無しさん@ピンキー:2008/01/19(土) 01:37:57 ID:51NyZSLQ
かあいいなぁ。
うちの天上からは、つるべ落とししか。

>>623
破壊 カニ 割増し
こうみえた。
626名無しさん@ピンキー:2008/01/19(土) 05:48:04 ID:BKLfoSto
古寺に棲む蟹っ娘が謎かけすると申したか
627名無しさん@ピンキー:2008/01/19(土) 15:16:05 ID:o/NQOOT3
>>626
答えられなかったら息子とお稲荷さんをハサミギロチンと申したか
628名無しさん@ピンキー:2008/01/21(月) 21:08:07 ID:eaYmJCAy
「上は大火事下は大水、な〜んだ?」
見ると蟹っ娘は真っ赤な顔でもじもじとふとももをこすり合わせている!

だな>謎蟹合戦
629名無しさん@ピンキー:2008/01/22(火) 09:00:39 ID:3JGBHdnu
>>628
そこは考えるふりしてたっぷり焦らしてやるんだな
630名無しさん@ピンキー:2008/01/25(金) 21:46:26 ID:IIVxYlYx
むめ
631名無しさん@ピンキー:2008/01/26(土) 09:10:42 ID:UfY0R/jY
>>628
>「上は大火事下は大水、な〜んだ?」
オタリーマン読んでて噴いた
632名無しさん@ピンキー:2008/01/26(土) 14:10:41 ID:t/iENf7V
産め
なんかけっこう容量余ってるなー埋まるのに時間かかりそうだ。
633名無しさん@ピンキー:2008/01/26(土) 21:44:53 ID:feA8r3RY
          ♪
                ∧_∧ ♪
            ♪  (´・ω・` )キュッキュ♪
             ____○___\ξつヾ____
           /δ⊆・⊇ 。/†::† /δ ⊆・⊇。 /|
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634名無しさん@ピンキー:2008/01/27(日) 18:08:24 ID:0VJgoRQX
だからといって大型AA連投して埋めるのは品が無いからやるなよ?
635埋め:2008/01/28(月) 15:44:35 ID:WD1wkKnj
と言う訳で、天窓を目一杯開けて、ポケットの奥底深くから掴み出した
旧い蝋石の欠片で、暗い床一面へと鮮やかに描き出された月の影法師を
囲みつつ、大型AAならぬ73番目の魔方陣を描いてみる。
 そのついでに、夢の中で聞き覚えた戯れ歌なんぞを小さく口ずさめば。

「……ひぃゃぁぁ、ぶにっ!!!」

 一瞬で辺り一面を覆い尽した銀紫色の、微妙に温泉っぽい香りの煙を
掻き乱しながら、目の前に具現化したソレは、いきなり床に激突していた。
……しかも、顔面から。

「おーい、生きてるかー?」

 一応、指に付いた蝋石の粉をズボンで丁寧に拭ってからしゃがみ込み
ぴくぴく痙攣してる後ろ頭を軽〜く突っついてみたものの。

   
  へんじがない、ただのしかばねのようだ。


「……んー、デスマスク取れるかな」

 以前、ちんけな賭けに負けて、自分自身のライフマスクを取る羽目に
なった時、結構大変だったので、良い素材が手に入ったら、是非とも
『全身型どり』に挑戦してみたいと密かに思っていたので、正直嬉しい。
 
 で、念の為、癖の無い長めの黒髪が指の隙間を流れ往く感触を楽しみつつ
小さな頭部全体と、不思議な感触の薄物越しにだけれども、華奢な肩口から
尻たぶに至るなだらかな背中の感触を、丁重に撫ぜ廻してみたけれど、幸い
変な突起物の存在は確認出来なかった。
 耳の上部が幾分尖り気味な所さえ除けば、ごく普通の人型生物っぽい。
只、仰向けにしてみると、額にこそデッカイ瘤が出来てしまっているのだが
上半身から下腹部に至る造作に、服の上から想像していた以上にメリハリが
無い事も判明してしまい、少しガッカリした。
 
『型から抜きやすい』という観点から鑑みれば、幼児体型と言うヤツは
大変良い条件なのかもしれないのだけれど、あまりに見栄えが貧相なモノを
例えコレクションの隅っこにでもあろうと態々加えてしまうのも、なんか
いじましい気がする。
 
 それでも確認の為に某所を弄ってみると、ちくちくする感触が全然無い。
コレは益々、型に押し込む直前の『下準備』の手間が省ける逸品だ!!! と
ほくほくしながらより一層詳しく調べる為に、抱き上げてベッドへと運ぶ。
 よくよく考えてみれば、成長半ばにある未完成品を自分自身の
全身全霊を傾けて、自分好みに育て上げるのも、粋な趣味人に許された
嗜みの一つだろうし。

 ふと、窓から見上げた月が何時の間にか『3つ』に増えているのに
気が付いたが、太陽が3倍の大きさになるより全然、実害は無かろうと
あっさり無視する事にした。

 それよりも、俺をうっとりと見つめてる少女の金色の瞳が妖しく輝いて
口元からちらりと覗かせた真珠色の牙を煌かせながら、俺の喉元へと
埋め込む様の方が遥かに美しく……。
636埋め:2008/02/02(土) 16:21:43 ID:sKA5WHr3
「ん……くっ、くふ……ん、ぅ……あっ!? な、に、コレっっ!!!」

 俺の喉元に喰らい付き、勢い良く溢れ出した熱い液体を何の躊躇いも無く
啜り上げた途端、少女の表情は絶対的強者が哀れな生贄へと賜る余裕綽々の
嘲笑から一転、驚愕の表情を経て、容易く陶然とした笑みへと書き換わる。 
 そして、欲望によってとろりと熱っぽく蕩けた表情を隠そうともせずに
小さな桃色の舌でぴちゃぴちゃと猥雑な音を高く響かせて、俺の首筋から
顎へと、丁重に舐め上げ始めた。


  そもそも、『吸血』という行為は、性的興奮を伴う疑似SEXなのだが
  特に俺の体液は、『人間以外』の異性にとって、怖ろしく性質の悪い
  働きをしてしまうモノらしくて……。


「ふぁぁん! あつい……よぉっ!! もっとお、もぉっと、くださぁ……いっ!!!」

『魅了』したはずの相手に対して寧ろ自らが激しく『欲情』させられている事に
全く気がついていない下僕が、ふんふんと鼻を鳴らしながら媚甘える子犬の仕草で
主人の唇を切なげに甘咬みしつつ、更なる愛撫を強請る。
 あまりのくすぐったさに根負けした俺が渋々口元を緩めた瞬間、すかさず
柔らかな舌が性急に捩じ込まれ、強引に口内を彷徨い始めた。
 上唇の裏側を執拗に突付く一方で、ちろちろと小刻みに歯茎をなぞりながら
熱心な御奉仕に冷淡な俺の舌を絡め取ろうと、それは忙しく動き回る。
 が、唾液を啜り飲む事を学習した途端、益々嬉しげに頬染めて、喉を鳴らし
一心に貪ってきた。
 流石にちょっと息が苦しくなってきたので、上気してる頬を両手で柔らかく
挟み込み、態と音を立てるようにして唇を離す。

「……ふぁ、なんでぇ? ……ぁ、ひぃ、やぁぁっ!!! ごっ、ごめんな……さ……ぃ」

 恨みっぽい上目使いで睨みつけてきたのを冷たく見返し、今も尚、もじもじと
擦り合わせ続けている細い脚の間を強引に膝頭で割り開いて、ぬかるんだ股間を
じゅぶじゅぶと弄ってやる。
 主人を差し置き、一人勝手に浅ましく快感を貪っていた事にやっと気付かされた
下僕が目元まで真っ赤に染めて、おどおど許しを請う様を、鷹揚な笑みで受け流し
華奢な顎を強く掴んで、金の瞳を真正面からしっかり覗き込みながら……。 

「“名前”は?」
「は……ひ? な、まぇ? ん……とぉ『ヴィーヴィル』って、いーます……ぅ」
「いや、オマエ自身の“真の名前”」
「んーーーー、ぅう? ……あぁぃ、まぁだ……ないんれ……すよぉ。ますたぁ」
「……うーわー、“ミント”かぁ!? ……初めて見たよ」


  どうも、反応に余裕が無さ過ぎると思ったら、コイツ“初物”だったのか。
  これは、本当に躾甲斐が有るよなぁ……とか思いつつ、早速調教開始。


 まず手始めに、メリハリが非常に侘しい胸の存在をそれでも健気に主張してる
頭頂部を、薄物越しに軽く摘まみながらやわやわとこねくり回す。
 壊れかけ寸前のにまにま笑いが一層激しくなった頃を見計らい、爪を立てて
強めに捻り潰すような勢いで揉み上げてやると、悲鳴と言うにはあまりにも
切ない声を上げて、ほっそりとした体が俺の腕の中で跳ね回った。
 そこに有るのは最早、仮初めの姿を維持する事も放棄して、コウモリの翼の腕と
ワシの足、毒蛇の長い尾は勿論、額の縦に割れた小さな裂け目の中で、紅く輝く
ざくろ石さえ略奪者の目の前に堂々と晒しながら、処理しきれぬ快感に合わせて
びくりびくりと震えつつ、涙と涎を垂らし続けるしか出来ない体。 
637埋め:2008/02/02(土) 16:23:57 ID:sKA5WHr3
かつては、大地母神として信仰されていた事も関係あるらしく、どちらかと
いえば、虐められて感じるタイプらしい。
 なーんて事を、かなり良い加減に煮え立ってきた頭の片隅でぼんやり考えてたら
何度か瞬きが繰り返された金の瞳の奥底で複雑な感情が閃いて、激しい喘ぎ声の
合間から、困惑が滲む言葉が漏れ始めた。
 
「……ぅそよぉ、嘘っ、こんな筈無……、うぁっ、ん……ぐぅっっ!!!」
「歯立てたら、縊り殺すぞ」

 まだ何か言い募ろうとした口内に、半立ち状態の欲望を無理矢理捻じ込んで
黙らせる。
 反射的に仰け反ろうと動く少女の小さな頭を両手でがっちり固定して、性急に
喉の奥深くへ向けて、腰を激しく突き入れた。

「んぶっ、んっ、んぐぅっ、うぅっ……、んんんんんっっっ!!!」

 決して認めたくないナニカを締め出すかの様に、固く閉じられた瞳は程なく
艶っぽい光を溢れさせて、開かれる。
“初物”に相応しいぎごちなさで、もたもたと動かされた舌は、それなりの
快感を主人にもたらしながら、早速褒美を堪能し始めた。
 その口の端からベッドの上へ、泡立ちながら交じり合わされた俺の先走り汁と
彼女の唾液が、雨の様に降り注ぐ。
 暫くソレを黙って眺めていた俺の顔を仰ぎ見ながら、少女が又、泣きそうな顔で
鼻を鳴らして、更に深く咥え込もうと奮闘する。

「ん、勿体無いよなぁ……、止めるか?」
「ぁ、むぅっ! んんーーーっ!! ぅぶ、ぶうぅっ!!!」
 
 一瞬で真っ青になり、口内で大きく痙攣し始めた熱い塊を濡れた唇できつく
締め付けながら、ふるふると頭を振って、必死で哀願する様が、いとおしい。

「……嘘だよ」

 にっこり笑いながら、親指の腹で優しく額の裂け目の両脇を撫で上げてやると
ほにゃりと解れた柔らかい笑みが返ってきた。
 それを見た途端、切羽詰った快感が俺の背筋を駆け上がり、手荒く少女の口内から
引き抜いた欲望は、跳ね上がりながら辺り一面を汚し尽くす。
 大量の白濁液を何度も顔面で受け止めさせられた後、ずるずると力なく俺の胸に
頬寄せた少女の額の真ん中で、ざくろ石だけが月の光を反射して鈍く輝いていた。




今更、前戯の必要も無い位、完璧に出来上がってしまってる秘所の入り口を
それでも最初なんだから……と幾分遠慮がちに指一本で浅く擽ってやったのだが
案の定、微かな反応しか返ってこない。
 
「あー、もし壊れちゃったら……面倒見てやるから、勘弁しろよっ!!!」

 一応正式な契約になるであろう『言霊』を、一方的に耳元で囁いてやってから
遠慮会釈無しに、灼熱の塊でぬかるみの中心を一気に刺し貫いた。
 まん丸に見開かれた目尻から、次々吹き零れる涙を舌先で丁寧に掬い上げて
悲鳴を上げる事すら忘れたかの様に、只開け閉めを繰り返しているだけの口内へ
軽い口付けを繰り返しながら、何度も何度も流し込んでやる。
638埋め:2008/02/02(土) 16:32:00 ID:sKA5WHr3
やがて、涙の運搬から開放された俺の舌が、彼女の額の裂け目を解し緩めるという
新しい役目を堪能し始めた頃には、小さな体に張り巡らされていた余計な力も抜けて
きつく絡み付いてくる秘肉を少しずつ割り開きながら、更なる奥底へと進む動きも
苦痛だけでなく、快感を沸き立たせる好ましい行為として歓迎されるようになった。
 只、コウモリの翼の腕やワシの足では、俺の体にしがみ付くのが上手くいかなくて
代わりに毒蛇の長い尾できつく俺の太ももを締め上げるのは、正直頂けないのだが。

 
  と、微かな抵抗感を感じ、慌てて腰を止める。
  眉を苦しげに寄せて、浅く忙しない呼吸を繰り返すだけの
  少女がすがりつくような視線を投げかけて、声も出さずに
  『キ・テ』と喘いだ。

 
 なんとか正気に返った時、俺の体の下でもみくちゃになって気絶している少女の
秘所からは、薄紅い混合液がとぷとぷと静かな音を立てて溢れてた。
 とりあえず、又それに栓を打ち込んで、ゆっくりと上体を抱き寄せ、素早く落とす。
『ひゃんっっっ』と甘えた嬌声を高く上げて還って来た少女を激しく突き上げながら
のろのろ記憶を辿ると……。

 なんか、気を失う寸前に『オマエは、一生、俺の、性欲処理道具だっ!!!』とか
大声で喚いた様な覚えが有る。
 しかも、目の前で嬉しげに鳴き続けている少女と『ワタシを孕ませるまでは
絶対、他の誰も召喚しない』なんて“約束”を交わして……。

「……こりゃ、嵌められたかな……」
「あん! あぁんっっ!! ますたぁっ、“名前”、くださぁいぃぃぃっ!!!」
「……んー、コレが終った、ら、なっ!!!」

 三つの月の光を反射して、真珠色に煌く少女の牙をねっとり舐め上げつつ
自分の名付け親としてのセンスを考察しようとしたのだが……、危うく尾っぽで
縊り殺されかけて、中断させられた。



……まさか、子供を儲けた今現在でも、うっかり、『おい』とか『ちょっと』と呼びかけて
その度に、ベッドの上で絞め殺されかける羽目になろうとは、思わなかったなぁ……。
639名無しさん@ピンキー
>>638
GJ!!
名前呼ばないと怒るのか。可愛いなあ。

コウモリの腕とオオワシの脚、ヘビの尻尾って何だ?キメラかな。