【妖怪】人間以外の女の子とのお話13【幽霊】

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1名無しさん@ピンキー
幽霊妖怪天使に悪魔、ロボットだってエイリアンだって何でもOK!
オカルト・SF・ファンタジー、あらゆる世界の人間以外の女の子にハァハァなお話のスレです。
これまではオリジナルが多いですが、二次創作物も大歓迎!
多少の脱線・雑談も気にしない。他人の苦情を勝手に代弁しない。

<前スレ>
 【妖怪】人間以外の女の子とのお話12【幽霊】
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1112711664/l50

<保管庫>
2chエロパロ板SS保管庫
http://sslibrary.gozaru.jp/
 →「オリジナル・シチュエーションの部屋その5」へどうぞ。
2名無しさん@ピンキー:2005/06/17(金) 02:43:46 ID:OrhlcOUY
<過去スレ>
【妖怪】人間以外の女の子とのお話11【幽霊】
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1105867944/
【妖怪】人間以外の女の子とのお話10【幽霊】
http://idol.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1102854728/
【妖怪】人間以外の女の子とのお話9【幽霊】
http://idol.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1099739349/
【妖怪】人間以外の女の子とのお話8【幽霊】
http://idol.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1093106312/
【妖怪】人間以外の女の子とのお話7【幽霊】
http://idol.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1088018923/
【妖怪】人間以外の女の子とのお話6【幽霊】
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1084053620/
【妖怪】人間以外の女の子とのお話5【幽霊】
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1077123189/
【妖怪】人間以外の女の子とのお話4【幽霊】
http://www2.bbspink.com/eroparo/kako/1072/10720/1072019032.html
【妖怪】人間以外の女の子とのお話3【幽霊】
http://www2.bbspink.com/eroparo/kako/1065/10657/1065717338.html
【妖怪】人間以外の女の子とのお話U【幽霊】
http://www2.bbspink.com/eroparo/kako/1047/10479/1047959652.html
人間じゃない娘のでてくる小説希望(即死)
http://www2.bbspink.com/eroparo/kako/1046/10469/1046994321.html
3名無しさん@ピンキー:2005/06/17(金) 02:44:41 ID:OrhlcOUY
<関連スレ>
かーいい幽霊、妖怪、オカルト娘でハァハァ【その10】
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1116162418/l50
【獣人】亜人の少年少女の絡み【獣化】
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1118598070/l50
【亜人】人外の者達の絡み【異形】
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1098260654/l50
ロボット、アンドロイド萌えを語るスレ:α2
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1078822739/l50
触手・怪物に犯されるSS 5匹目
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1110097458/l50
猫耳少女と召使いの物語5
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1113392192/l50
魔法・超能力でエロ妄想 その2
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1093667653/l50
魔女っ娘&魔法少女で萌エロ
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1091865265/l50
4名無しさん@ピンキー:2005/06/17(金) 03:40:00 ID:r88EjUoB
>>1
5名無しさん@ピンキー:2005/06/17(金) 06:49:11 ID:U7yJvjPr
オツカレ
6名無しさん@ピンキー:2005/06/17(金) 09:37:37 ID:YRIUPqxX
>>1
おつ ほしゅ
7放課後の吸血鬼41:2005/06/17(金) 11:55:17 ID:OrhlcOUY
少女の身体を覆う邪魔な布切れを、ビリッと鋭い爪で切り裂き、乱暴に剥ぐ。校舎の暗がりの中に、真紅の斑に染められた、少女の裸身が白く浮かび上がる。
その白い肌に、ツッと爪で赤い線を引く。朱線は見る間にジワリと太くなり、タラリと流れる。
我慢できず、ハアハアと息を荒げて、全身でその紅の美酒を味わうために、そのまま全裸で覆い被さる。
ペタッとした生温かい濡れた感覚と、それに続くふにゃっとした少女の柔らかい肉の感覚。
足を絡め、腰をすりつけ、腹をこすり、胸を押しつけ、腕で抱きつき、頬に舌を這わせる。
ヌルリと身体が滑るたび、ズルリと身体か擦れるたび、ビリビリと痺れるような快感が、背中を駆け登る。
「あっ」
思わず喘ぎ声を上げ、仰け反る。ゼエゼエと息が荒い。
さらなる快感を得る為、抱きつき、摺り寄せ、擦り続ける。その度に合わせた箇所からゾワッとした快感が、波紋のように全身に広がる。
血が、紅くて熱くて濃い血が、少女の美と若さと命のエキスが、肌に塗りこまれ、染みこんで行く。
キモチイイ。
少女から吹き出る命の泉は、次第に量を、勢いを、熱を失ってゆく。しかしそんな事にも気付かずに夢中でギュッと抱きしめ、ヌルヌルと身体を擦り、ペロペロと舐め、血に塗れ、血に狂い、血に酔いしれ、血と一つになる。
「あっ、あっ、あっ、あぁぁぁぁぁっっっ」
やがて絶頂に達し、想いを声にしてほとばしらせ、くたりと果てる。それとともに、血の宴に酔う心も減り、弱まり、冷めてゆく。
ようやく満足できた。
そこで初めて、ふうっと大きく長く息を吐き、我に返った。
8放課後の吸血鬼42:2005/06/17(金) 12:51:34 ID:OrhlcOUY
南の空からは、満月に足りない月が凍てついた光を投げかける。
暗く冷たいその明かりの中、いずことも知れぬ山中に、古びた木造校舎が、死んだように静かに佇んでいた。
もはや通う生徒もなく、灯される明かりもなく、しーんと静まり返り、ただ朽ちゆくだけのはずのそこに、微かな気配があった。
影に、暗がりに、闇に、ハアハアと微かな息遣いが、サラサラと僅かなな衣擦れが、ミシリミシリと忍ぶ足音が、密かに満ちる。人影もないのに、ときおりボソボソと囁き声すら聞こえる。
不意に、その押し殺した静寂が破られる。それまで囁いていた影が、暗がりが、闇が、サッと静寂へと潜む。
押し殺した静寂を破り、ズカズカと進んでゆくのは、チグハグな取り合わせの二人の少女。
他に灯りのないギシギシと軋む木製の古い校舎を、真理華はボールを手に捧げ持ち歩いく。肩をいからせ、一歩ごとにブンと蹴るように足を投げ出し、ダンと踏み降ろす。
その後から美奈萌は、ポタポタと水を滴らせながらペタペタとついて歩く。
「ほんっっっと。な〜にが、こんな小娘が二人で大丈夫なのか、よ。これだから世間知らずの妖怪は嫌なのよね。妖怪(ひと)を外見で判断するなんて」
妖怪の実力と実年齢は往々にして比例するが、逆に外見年齢と実年齢は、大抵は一致しない。
「そもそも、復讐を急ぐ必要なんてあるのかしらね。急いては事を仕損じるっていうし、もっと慎重にチャンスを待つべきなのよ。どうせ時間はたっぷりあるんだし。
 まったく、仕事でなきゃ、あんなのと関わりたくないわね」
口も無いのに、ベラベラと悪口雑言を吐きまくる。
9放課後の吸血鬼43:2005/06/17(金) 12:51:53 ID:OrhlcOUY
「アイツ、キライ」
美奈萌が、死んだような表情のままポツリと呟く。
「でしょ? でしょ? まぁったく、ワガママで、タカビーで、自己中心的で、自分勝手で、口うるさくて…、ほぉ〜んと、やになっちゃう」
「近親…憎悪?」
固まったような表情のまま、ぼそりとそう呟く。結構辛辣だ。
「ちょぉっと、美奈萌ちゃん。それ、どういう意味ぃ?」
拗ねた口調で、体ごとグルリと後を向く。首が無い以上は全身で振り向くしかないのだ。
「あたしのことも、嫌いなの?」
ボールを両手で抱えたまま、ヒョイと背伸びをする。頭があれば、目の高さを精一杯合わせようとする行動だ。首が無い分、どうしても足りないが。
「真理華ちゃんは……好き。…やさしいから」
そのどんよりと死んだような目からは、真理華と同じで表情は読めない。
「ありがと、美奈萌ちゃん」
ボールを左手で持つと、髪がびしょ濡れなのも気にせずに、美奈萌の頭をなでなでする。相も変わらず無表情のまま、その頬だけがポッと桜色に染まる。
美奈萌も、真理華の両肩の間の空間に手を伸ばして、何も無い宙でナデナデと手を動かす。
「え〜と…?」
もしそこに顔があるなら、困惑した笑顔を浮かべたかもしれない。
「お返し…。真理華ちゃんに…、なでなでしてもらうと…、気持ち…いいから…」
「ありがとう。美奈萌ちゃん」
ボールを足元に置いて、身体が濡れるのもかまわず、ギュッとだきつく。顔が無い以上、そうでもしないと感謝の気持ちを表現できない。
「とにかく、復讐に手を貸すって約束しちゃったんだから、協力しなきゃね。
 ま、上手くいけば真紀を片付けられるわけだし、失敗してもあたしらに被害はないだろうし、やるだけやらせようよ」
10放課後の吸血鬼44:2005/06/17(金) 12:55:10 ID:OrhlcOUY
真紀は布団の中で、とろとろとまどろむ。
岩手の高校で女郎蜘蛛と出くわした時の事だ。
なんとか女郎蜘蛛を追い払った後、襲われていた二人――いつも一緒につるんでいた典子と美千代――の戒めを爪でスパッと切る。
二人は、きゃあっと悲鳴を上げて逃げ出す。
――違う。実際は怯えた目でこちらを見ていたものの、大人しく誘導されて下校した――
思わず、二人にすがるようにスッと伸ばした手には、鋭い爪。はっとして自分の姿を見ると、肌は血の気を失ったままで、床には影もない。
――違う。実際はすぐに人間の姿をとった――
その真赤な爪からは、ポタリポタリと血が滴り、口からもタラリと血が流れる。手も、顔も、制服も、全てがベッタリと赤黒い血に染まっている。
――違う。実際は自分は血に染まってなんかなかった――
気がつけば、周りにはざわざわとした黒山の人だかり。
――ああ、そうか。これはいつもの夢だ――
群集はすべて、見知った顔からなる。忘れる事もできない、様々な転校先で親くなった人々。かつては親しかった人々。
ボクの正体を知って怯えた目で離れていった、かつての親友。露骨に無視するようになった元カレ。悪の妖怪から助けたのに罵声を浴びせてきた教師。刃物を持って向かってきた優しかった先輩。恐慌をきたした憧れてくれた後輩。そして助けきれなかった犠牲者達。
血塗れの少女が先頭になり、漣のように、口々に罵声を、糾弾を、誹謗を、中傷を浴びせてくる。もはやわーっと交じり合って、一つ一つの言葉が判別できない。
そして雨の様に、押し寄せる波の飛沫のように、次々と石や空き缶や、ゴミが投げつけられる。
夢だとわかっていても、何度も見た夢でも、居たたまれなくなってボクは逃げ出す。
気がつけば、薄暗い急斜面の雑木林に逃げ込んでいた。もう、人は追ってこない。
それでもボクは先へ進む。何度もズルリと滑り、バタリと転び、それでも必死に斜面を登っていく。
――そろそろだ――
真紀の行く手、坂を登りきったところに、雑木林が切れて星々の輝く夜空が見えてきた。
――そろそろ来てくれる――
11放課後の吸血鬼45:2005/06/17(金) 13:08:41 ID:OrhlcOUY
あとちょっとで坂を登りきる。あとちょっとで暗く足のもつれる雑木林を抜けて、満天の星空の下の野原に出られる。
あと一歩のところでズルッと足を滑らせる。あわててバランスを保とうともがくが、足元がザラザラと崩れゆく。
後を振り向くと、そこはぽっかりと開いた暗黒の奈落。一度落ちたら、二度と這い上がれぬ闇の世界。
――いつも、ここで“サンドイッチの女神様”が現れて、助けてくれる――
不意にピカッと光が射した。坂を登りきった野原の向こうから、日が昇り、旭光で正面から真紀をキラリと照らす。とても眩しい。
――何? こんなのは初めてだ。いつもなら夜のまま、輝く星々の下に出るはず――
足元はズブズブと沈み行く。でも、今日に限って女神様はまだ現れない。
振り向けば、奈落の底から手を伸ばし、ボクに掴みかかろうとする、かつて倒してきた妖怪達。口々にボクに呼びかけ、招く。
このままでは奈落へ落ちてしまう。引きずり込まれてしまう。あいつらの、血に飢えた凶暴な妖怪達の、仲間に引きこまれてしまう。
やはり、ダメなのか。ボクみたいな吸血鬼は、闇の住人は、罪深い生き物は、光の下へ出る事は許されないのか。
もうだめだ、そう諦めた時。輝きの中から力強い手が、ギュッとボクの手を掴んでくれた。
――サンドイッチの女神様?――
しかし現れたのは、逆光の中にスックと立つ“野兎の騎士”。臆病なくせに、弱いくせに、ボクを力強くグイッと引き上げて、抱き寄せる。
輝ける朝日の中、間近になったキラキラした澄んだ黒い目が、そっと優しく微笑んだ。
12放課後の吸血鬼46:2005/06/17(金) 13:12:33 ID:OrhlcOUY
気がつけば、朝。目覚ましよりも少し早い。
窓から燦々とさしこむ光の中で、真紀は身体を起こし、ほっと一息吐いてから呟く。
「これって、やっぱり……だよね」
頬を赤らめつつ、ぽりぽりと頭を掻く。
それなりに恋愛経験はあるし、自覚が無かったわけじゃないが、こうまで露骨な夢を見てしまうというのは…。
“中沢哲晴”という名前をグサリと深く刻み込まれて、その痛みに心臓がトクンと暴れる。心地良い痛みだった。

ファミレスで話し合っている時に、真紀の漆黒の瞳がキラリと輝いた。その光に胸を射すくめられて、ドクンと心臓が跳ねあがる。
それ以来、彼女の事を想うたびに哲晴の胸はドキドキする。
吸血鬼の魅了の術。そうチラッと頭をかすめるが、それなら自覚があるはずがない。術をかけられていると自覚すれば、効果は半減するだろうから。
「これって、やっぱり……だよね」
初恋の経験が無いわけではないが、声をかけることもできずに、ただの憧れに終った。身近で話せる相手へのこの手の感情は、未だ未知のものだ。
哲晴はもんもんと三度目の眠れぬ夜を過ごした。
13放課後の吸血鬼47:2005/06/17(金) 13:24:49 ID:OrhlcOUY
翌日、哲晴はそわそわと昼休みを待つ。別に休み時間に顔を合わせる事もできるのだが、秘密の用件なわけだし、そもそも自分の気持ちを自覚してしまった以上、人前で会うのは非常に気恥ずかしい。
授業中も気もそぞろで、休み時間は昼に時間をあけるために早弁を済ます。そして待ちに待った昼休み、哲晴は南棟の屋上への階段を駆け上る。
南棟は教室のある北棟と違って、屋上に天文部の天体観測所があるので、通常は鍵が開いている。
かなりのスペースを空調設備や貯水タンクなどの設備が、ゴチャゴチャと埋めているので居心地は良くない。
煙草を吸ったり、不純異性交遊なんぞをやらかす不心得者がいないかどうか、時々教師が見回りに来る程度で、昼飯を食いに来る酔狂な生徒もいなかったりする。
4階の仮教室から渡り廊下を通り、階段を駆け上がり、哲晴がガチャリとドアを空けると、昼の陽射に照らされた屋上は、ガランとしている。どうやら先についたようだ。
幸い天体観測所も無人のようだ。金網のフェンス越しに、そわそわとグラウンドを眺めながら待つことしばし、再びガチャリとドアが開いた。
「ごめん。遅くなって」
恐らくは走ってきたのだろう、はあはあと息を弾ませながら、開口一番、真紀はそう謝る。陽光の下で見る、頬を薔薇色に上気させた人間状態の彼女も眩しい。
「いや、今来たところ」
と、答えてから、何かデートの待ち合わせみたいだと心の中で呟き、心の中で赤面する。
「あはは、なんかデートみたいだね」
一方真紀は、ニコッと笑ってそれをストレートに口に出す。哲晴が本当に赤面する。
そしてそのままフェンスの前、すぐ隣に並んで立つ。正面から見つめられ、哲晴の頬がカッと熱くなる。
14放課後の吸血鬼48:2005/06/17(金) 13:27:17 ID:OrhlcOUY
「で、哲晴クン。早速本題に入るけど、協力っていうのは、この街の高い建物を教えて欲しいって事なんだ」
そう言って、フェンス越しにグラウンドや、その向こうの町並みをじっと眺める。
「あの女郎蜘蛛はね。ビルとかの、高い建物の間に糸を張って巣を作るんだ。だから、巣を張れそうな場所を、教えてほしいんだ」
「ええと…。そんなに目立つ事をして、騒ぎになったりしないのかな?」
哲晴が疑問をぶつける。
「うん。それなんだけど。“人払いの結界”っていう術があってね。あの女郎蜘蛛は、その術で周りの人間の意識に影響して、自分の周囲から注意を逸らさせる事ができるんだ。
 ほら一昨日、ボクの転校初日、ウチのクラスの野口の噛まれた時だけど、キミは結構遅くまでトイレ掃除してたでしょ。あれは多分、結界の影響でウチのクラスから遠ざけられてたからだよ。
 それから、昨日もなかなか4階の教室に戻れなかったよね。あれも、アイツがあそこで食事してたからだよ」
そう言われば、思い当たる。昨日、いつも教室で待っている二人の事を、なかなか思い出せずにいた。多分教室から注意を逸らされたせいで、教室に関する事を、一時的に考えられないようにされてたのだろう。
「だから、この街の人々も、すぐ頭の上に蜘蛛の巣が張ってあっても、誰も気付かないし、気付けない。結界の中から、直接何かされるまでは、ね」
町並みのどこかにいる女郎蜘蛛を、ギンと睨みつけるように、一瞬険しい表情をする。
あのバケモノがすぐ傍に潜んでいても気付けず、一旦巣の中に攫われたら、叫んでも誰にも気付かれない。眼下の平和な町並みをじっと眺めながら、哲晴はぞっとした。
「おまけに、普通の術なら10分もすれば解けちゃうけど、――ほら、昨日キミも結局は、教室に戻れただろ?――巣に張ってあるのは半永久的で、妖怪にも効くくらい強力なんだ」
15放課後の吸血鬼49:2005/06/17(金) 13:58:36 ID:OrhlcOUY
「じゃあ、どうやって…」
真紀を見ると、彼女は遠くの町並みを見たまま答える。
「元々意識を逸らすだけだからね。自覚すれば、何とかなるよ。
 まず、怪しい所を虱潰しに調べるんだ。実際に出向いて、歩きまわって、ね。それで行った場所を、しっかりと憶える。後で少し離れてから、地図を見て、憶えているところだけチェックする。
 もしそれで、憶えて無い場所があれば、それが意識を逸らされた場所、つまりは結界のある場所だよ」
真紀がこちらを向くと、瞳がキラッと光った気がしてドキリとする。
「だから、怪しい場所をピックアップするのに、この街に詳しいキミが必要なんだ」
最後の一言だけなら、とてもうれしい、などとつい妄想してしまう。
「…気の遠くなる作業だね」
それを悟られないように、つとめて冷静に呟く。実際、ここからざっと見るだけでも、ビルやマンション、銭湯の煙突に、送電線の鉄塔などが数多く見える。
「まあね。ただ、ある程度は搾りこめるよ」
彼女はひょいと、形の良い自分の鼻を指差す。
「ボクは本性を現せば、犬並に鼻が効くからね」
言うが早いか、その瞳がサッと真紅に染まり、反対に肌は赤みを失う。そして鼻をさしていた指からはニュッと爪が伸びる。
「例えば、キミが早弁で食べたのは、…海苔とご飯…うん、おにぎり。具は…鮭と明太子とシーチキンマヨネーズだね」
形の良い鼻をヒクリと動かす。
「当たり。へぇ…すごいね」
哲晴の感心した声に、ニッと得意げに笑う。
「それから……」
くんくんと匂いを嗅ぎ、不意にはっと息を呑む。
「あ、何でもない…。ただの…、ただの、嗅ぎ間違い」
白磁器のような頬が、ほんのりと桜色に染まる。
16放課後の吸血鬼50:2005/06/17(金) 13:59:47 ID:OrhlcOUY
「…あっ、太陽、平気なのか?」
哲晴が、はっと気付く。
本日は晴天。秋も深まり多少肌寒くはあるが、日は燦燦と照っていて、屋上には哲晴の影がくっきりと映っている。
「心配してくれてありがと。でも、大丈夫。ボクは日光は平気なんだ」
ニコッと微笑みながらパサッと軽く髪を掻き上げ、フェンス越しに太陽を仰ぎ見る。陽射を受けて瞳が紅玉のように、肌が磨かれた大理石のように、漆黒の髪が黒曜石のように、キラキラと輝く。映画のワンシーンのようだ。
「何かあるとしたら、せいぜい、体力が人間並に落ちるくらいだよ」
思わずポーッと見とれているうちに、屋上の影がスウッと二人分に戻った。
「ええと、ごめん。実は友達待たせてるんだ。それで、教室に戻らないと。
 …ほら、今、人目を引くのはまずいだろ。だから、続きは放課後。…ええと、駅の南口でね」
真紀は、ここから駅の反対側の出口、昨日のファミレスのある側を指定する。
「じゃあ放課後、待ってるからね」
パチッとウインクをすると、真紀は妙にそわそわと階段を下りていった。
今のはかなりキた。心臓がバクバク言ってる。多分、顔は真っ赤だろう。
冷静に考えてみると、ひょっとしたら、手玉に取られているというか、便利に利用されてるというか…。でも、きっと向こうも悪くは思ってないと思う。
そう、哲晴は都合良く結論付けた。
17放課後の吸血鬼51:2005/06/17(金) 14:06:53 ID:OrhlcOUY
階段の途中でピタッと足を止め、胸に手を当ててポツリと呟く。
「ああ、驚いた…」
胸がドキドキして、頬がポッと薔薇色に上気しているのは、走ったせいだけではない。
さっき間近で嗅ぎ当てた、哲晴から漂ってきた微妙な分泌物や汗の匂い、その意味するところは“好意”。
「よかった。哲晴も…」
胸の奥がじんわりと暖まる。十年以上も高校生活を続けてれば、それなりに経験もあるが、それでもこの感覚は毎回新鮮だ。
正体を知った上で良好な関係を続けられる人間、これは人間社会で暮らす妖怪にとっては貴重だ。特にそれが恋愛関係ともなれば尚更だ。
千載一遇のこのチャンスを逃がす理由はない。もっと仲をすすめるために、今まで以上に積極的にアタックしよう。
不意にズクズクと犬歯が疼く。痛みではない。何かをガブッと噛みたくなる、そんな衝動だ。
「いけない、いけない」
両頬をパンと張って、牙から意識を逸らす。急いで教室に戻らなくては。
哲晴との仲は、いずれはばれるだろうし、そのうちばらして公認になるつもりだ。でも今の関係が“事件”と密接に関わっている以上、片付くまでは野次馬が群がるのは避けたい。
2階まで下りると、にやけた顔をいつもの社交の笑顔に戻して、ガラリと戸を開ける。
「お待たせ〜」
「あ、おっそ〜い」「もう、食べ終わっちゃうよ」「いいじゃん、いいじゃん。どうせ食べ終わってもダベるだけだし」
「ごっめ〜ん。で、何の話してんの〜」
鞄から弁当を取り出して、よくある少女の口調で、昨日のTVドラマについての話題に加わる。
18名無しさん@ピンキー:2005/06/17(金) 21:32:25 ID:9vKSmEqq
今日はここまで・・・かな?

それにしても、投稿と新スレ立てを同時にこなす人は初めて見た。
ともあれ乙ですた。
19名無しさん@ピンキー:2005/06/17(金) 22:59:25 ID:PSW5dxYR
即死回避乙
20名無しさん@ピンキー:2005/06/17(金) 23:38:29 ID:YRIUPqxX
乙です
21血を吸う彼女:2005/06/18(土) 01:48:07 ID:44p8G+bd
放課後、机の中に手紙が入っていることに気付いた。
用件は簡潔に言えば『話があるから図書室に来い』
一目で男のものでないとわかる綺麗な字でそんな手紙をもらったら、行くしかないだろう。
自慢にもならないがこれまで生きてきて女性に好意を持たれたことなどおそらく皆無。
行かないわけがない。

この学校の図書室は暗くて面白みがなく、誰も寄り付かない。一年以上この学校に通っているが、この部屋に来るのは始めてであった。
そんな薄暗い図書室の一番奥の棚の前で、その女の子は待っていた。
腰の辺りまである長い黒髪と小動物のように保護欲をそそる気弱そうだが可愛らしいその顔。上履きの色から一年生だと分かる。
こんな子が俺に用事なんてあるはずもないのだが、この部屋に俺とその子以外には誰もいないのも事実。俺はその子に近づいていった。
「あ、先輩…来てくれたんですね…」
俺が来たことに気付き、その子はおどおどと見た目から受ける印象そのままの態度で言った。
どうやら手紙の主はこの子で間違いないようだ。
そこで俺は思い出した。この子がそうだ。クラスの連中が四月ごろ話していた、ありえないほどに可愛い新入生。
最近はあまり話題に出てこないから忘れかけていたが、この子がそうだ。
確か名前は…
「曲常、理(まがつねことわり)…」
「それ、わたしの名前ですね…知っていてくれたんですね…嬉しい」
俺が思わず名前を呟くと、曲常はうれしそうにはにかむ。
「それで、なんの用?」
内心ドキドキしながらも冷静を装い俺が尋ねると、その子は一瞬ビクリと振るえてから、ゆっくりと口を開いた。
「あの……怒らないでくれますか?」
「ああ、怒らない怒らないだから早く言ってくれ」
「あ……ごめんなさい…わたし、こういうこと言うの初めてで…その…緊張していて…」
こっちだって女の子にこんな所に呼び出されるのは初めてでビクビクしているが、そんなことが言えるはずもない。
彼女は下を向きながら、勇気を振り絞るようにして、ぎゅっとスカートの裾を握り締める。
「先輩…好きです……」
22血を吸う彼女:2005/06/18(土) 01:50:54 ID:44p8G+bd
「っ………!!!」
口から心臓が飛び出すかと思った。
何度か妄想したことのあるシチュエーションだし、そのつもりでここまで来たが、現実になるとやはりびっくりする。
「それで…ですね…先輩…」
びっくりしている俺を尻目に、彼女はまだ話を続ける。
「先輩…キス…していいですか?」
曲常は耳まで真っ赤にしながら、そう言った。
「キス…キスねぇ…あぁ、キス!?」
俺の頭の処理能力が追いついていない。
「今…ここで…?」
俺の問いかけに曲常は恥ずかしそうにコクリと頷き、
「わたしとじゃ…嫌ですか…」
泣きそうな顔になる。
「全然、全然そんなことはないけど…」
「じゃあ…してくれますか……」
恥ずかしがっている割に、曲常は強情だ。
しかし、どこをどれだけ考えても俺に断る理由など微塵もなかった。むしろこっちからお願いしたい。
「わかった…」
と無理して気取った返事をする。
曲常は心の底から嬉しそうなそれでも真っ赤な顔をしながらも、俺の肩に手を置き、俺を真っ直ぐに見つめてくる。
彼女の柔らかそうな唇から、かすかに潤んだ瞳から、目が離せない。
「恥ずかしいですから…目、瞑っててもらっても…いいですか?」
言われるがままに俺は目を閉じる。
「…それじゃ…いきます…」
そう宣言して、曲常は俺に顔を近づける。目を瞑っていても、彼女の呼吸が段々と近づいてくるのが分かる。
彼女の唇が、俺の唇に触れそうなほどに近づき、そこで躊躇するかのように止まる。
死にそうだ。
少しして、彼女に動きがあった。
が青臭くて甘ったるい世界に浸れたのはその瞬間までだった。
なぜなら彼女の唇が触れたのは、俺の唇ではなく、俺の首だったから。
23血を吸う彼女:2005/06/18(土) 01:55:09 ID:44p8G+bd
かぷり。
「は?」
状況が理解できず混乱しているうちに、彼女は俺の頚動脈に、歯を突き立てた。
血がちゅうちゅうと吸われているのが分かる。
「!!っ」
逃げようとするが金縛りにでもあったかのように身体が動かない。
「ん、んん…」
曲常が悶えるような声を上げる。
なんとか視線を下げると、彼女の頬がさっきまでのような恥ずかしさではなく、快楽の赤に染まっていくように見える。
「んぅ…んん」
切なげな息が彼女の口から漏れてくる。
それを聞いたからか、それとも血を吸われること自体が実は気持ちよかったのか、俺の愚息は固くなり彼女の下腹部に当たっていた。

しばらくすると、曲常は満足したのか俺の首から唇を離す。
血と唾液が糸を作り、切れる。
きっと血を吸われたためだろうか、眠い。どうしようもないほど眠い。
俺はその場で足元から崩れ落ちて、寝た。
そのときに微かに見えた曲常の髪の色は、黒ではなく輝くような金色をしていた。
24血を吸う彼女:2005/06/18(土) 02:00:01 ID:44p8G+bd
「先輩、起きて下さい」
重い。誰かが俺の上に乗っているようだ。
頬を叩かれた痛みと、優しくも冷たい声に起こされて気付く。
はて、いつの間に寝たのだろうか?
「やっと起きてくれましたね…」
横になっていた頭を動かさずに見えるのは漫画や映画でしか見たこともないような高そうな家具ばかり。
はて、ここはどこだろう?
「…ぱい……か?」
誰かの声が聞こえるがそんなことはどうでもいい。ここがどこかのほうが問題だ。

「先輩!聞いてますか!?」

マウントポジションを取っていた奴が俺の顔を掴みぐいっと、正面を向かせる。
その人はセーラー服姿で金髪の女の子。
はて、この子は……あれ、曲常だ…なんで金ぱ……
と、俺はそこで思い出した。この俺の上でマウントポジションを取っている少女に、血を吸われたことを。
「うわぁああぁっ!!」
逃げ出そうとするが、この可愛い顔した吸血鬼に動く気配はなく、ただ手足をばたつかせることしか出来ない。
「暴れないでください」
彼女が俺の首に手をかけると、その手足動かすことができなくなった。
「くぬう」
頑張って動かそうとしたが、ミリッ、と骨が悲鳴を上げる。逃げられない。
「やっと大人しくなってくれましたね…」
「俺を…どうするつもりだ?」
恐れおののきながら、訊いてみると、曲常は身体を倒し、唇が触れ合うほどに顔を近づけて答えた。
25血を吸う彼女:2005/06/18(土) 02:04:10 ID:44p8G+bd
「先輩には、わたしのお弁当になってもらいます」
「お、おべんとう!?」
「ええ、そうです。お弁当です」
つまりあれか俺はおにぎりや冷凍のコロッケや唐揚げになるということか?
などとアンポンタンなことを考えていたがそういうわけではなかった。
「つまりですね、先輩からはお昼休みや夕ご飯が無い時に、血と…」
曲常はそっと右手で夕方噛み付いてきた場所に触れ…
「精液をもらいます。」
そして左手を俺の股間に伸ばした。
今気づいたが俺は今下半身はトランクス一枚しか穿いていない。
というか待て。
「せ、精液!?」
言いたいことはいろいろあったがなんとか言えたのはこれだけだ。
この子が吸血鬼なのは非現実的ではあるが理解できた。というか体験した。しかし精液?何故?
「わたしのパパは吸血鬼なんですけどね…ママは淫魔なんですよ」
俺の疑問に答えるように曲常は言った。
「だから、血だけじゃなくて…精液も必要なんです」
言い終えると同時に、曲常は学校にいたときには考えられないような淫靡な笑みを浮かべ、俺の股間をトランクス越しにまさぐりだした。
いまいちよく分からない理由だが、動くことができなのでどうすることも出来ない。
「う、うわ…」
初めて女の子に触られたということもあり、あっという間に勃ってしまう。
「先輩、まだ触っただけですよ…なのにもうこんなに硬くして、恥ずかしくないんですか?」
曲常はいたぶるように言いながら、お尻を中心にして身体を百八十度旋回させ、両手でトランクスを脱がした。
勃起したために少しだけ皮のむけた俺の愚息が現れる。
曲常はその皮をむき、亀頭を撫でながら言った。
「先輩、仮性包茎だったんですね…そのくせこんなに大きくして…何考えてるんですか…」
言い終わりフッと息を吹きかける。
26血を吸う彼女:2005/06/18(土) 02:07:14 ID:44p8G+bd
「う、うわ」
思わず声をあげた俺を曲常はいじめまくる。
「気持ちいいんですか?先っぽがぬるぬるしてきましたよ。ちょっと弄っただけなのに…」
「い、言うな…」
「何が言うなですか、先輩なんて…今日告白してきたばかりの相手にいじめられて、感じてる…変態のくせに」
曲常は亀頭を指先でつまみ、こすりだす。
「う、うわぁぁ」
「ほら、もう出ちゃいそうなんですよね?ビクビクしてますよ。普段弄られないから、先っぽが、気持ちいいんですよね?」
「う…あぅ……」
「ちゃんと答えてください。」
俺が答えられないでいると曲常は亀頭をつぶれるほどに強く握る。
「いっっ!…そう、です…気持ち…いい…です…」
思わず敬語になる。
「ふふ…先輩、ホントに変態なんですね…そういえば、さっき血を吸われたときも、ここ大きくしてましたよね…変態」
曲常は立ち上がり俺を蹴り転がしてベッドから落とす。
「こんなスケベなおちんちんに触ってたら手が汚れちゃいますし、変態さんにはこっちのほうがお似合いですよね。」
曲常は指に付いた先走りの汁を舐めながらベッドの端に腰掛け、黒の靴下を穿いた足で俺のモノを軽く踏みつける。
「ほら、どうですか?先輩…先輩みたいな変態さんは…足でいじめられるのがいいんですよね?」
裏筋をしたから上へとなぞりながら曲常は言う。
「そ…ん…なことはな…」
「ありますよね…嘘ついちゃ駄目ですよ?先輩…さっきより硬くしてるじゃないですか…」
曲常の顔を見ると、興奮してるのか顔が上気していて、それがほんの少しだけ恥ずかしがっているようにも見えた。
「先輩なんて…変態ですよ…こうやって後輩にいじめられて喜んでるマゾです…」
亀頭を、靴下を履いた両足で撫でながら、曲常は俺を蔑む。まるでそれによって自分自身を勇気付けているかのように感じられる。
「お…い……れ…」
「なんですか?先輩…聞こえませんよ」
「片方だけ、靴下脱いで…ほしい…」
27血を吸う彼女:2005/06/18(土) 02:11:03 ID:44p8G+bd
俺自身にもなんででたのか分からない言葉に曲常は陶酔しきった表情を変えることなく答えた。
「本当に…変態ですね先輩は…なに命令してるんですか?」
言いながら、段々と足の力を強くしていく。
「うぁぅっ…」
「そんな頭の悪い変態さんにはおしおきですよ」
曲常は右の靴下を脱ぎながら左の足で引っ張るようにして皮をむいた。
「えい」
素足になった右の指でカリのあたりを挟むようにしてしこしことこする。
「そんなに足が気持ちいいんですか?おちんちんビクビクしてますよ」
カウパーでぬるぬるになった足が、ぬちゅぬちゅと卑猥な音を立てる。
「うっ…も、もう…」
「イッちゃいそうなんですか?変態の先輩は足でされて…イッちゃうんですね?」
もはや答えることも出来ずコクコクと頷くしか出来ない俺を、曲常は左右の足で激しく責める。
「出しちゃえ、変態」
ぎゅっ、と少し強めにカリを刺激され、俺は射精した。
ほんの少しだけ曲常の黒い靴下を白くすることが出来たが、曲常が足で角度を変えたせいで、ほとんどが俺自身にかかった。
「ふふ…いっぱい出してくれましたね」
口の辺りにかかった精液を曲常は舐め取り、軽くキスをしてくれた。
鼻に来る青臭い匂いのするファーストキス。哀れ俺。
そんな哀れな俺に曲常の書けた言葉は
「ごちそうさまでした…」
だった。
28血を吸う彼女:2005/06/18(土) 02:15:37 ID:44p8G+bd
「俺は…弁当じゃなかったのか…」
部屋の隅にきちっと多端であった制服をガサゴソと着ながら、なんとなく言ってみる。
「ごめんなさい…晩御飯が…なにもなくて…」
「ああ…なるほど…」
納得してドアのほうに歩いていく。
「先輩、どこ行くんですか?」
帰ろうとする俺に曲常が言ってきた。
「帰るんだけど…」
「どこに帰るんですか?今日からここが先輩の家ですよ」」
ビクビクしながら答えたが、曲常は許さない。というか待て、今なんて言った?
「先輩の家には伝えてありますから…」
「はぇ?」
「先輩は今日からわたしと暮らすんです」
事態の飲み込めていない俺に構わず、曲常は付け加えた。
「それに言いましたよね?先輩はわたしのお弁当になってもらうって…お弁当が他人の家に置いてあるのはおかしいでしょう?」
そんな筋の通っていないことを言われても困る。吸血鬼なんかと一緒にいたら殺されるかもしれない。俺は歩き出そうとしたが、また動けなくなった。
曲常は俺にだんだんと近づいてきて、俺を後ろから抱きしめた。
「先輩…行ったら…駄目です…………殺しちゃいますよ」
最初は悲しそうな声で言ったのは、一片の慈悲も存在していない、冷たい言葉。
というか待てと殺すって何事かと。
「こんな変態といっしょにいたらどうなるかわからないぞ」
情けないことこの上ない言葉だが逃げるためなら何でもしよう。
「知ってます……先輩は…変態ですけど血も精液も、美味しいですし、…それに………それに…」
少しの沈黙の後、曲常は学校にいたときと同じ、おどおどとした弱い声で言った。
「先輩のこと…好きですから…」
泣いているのか声が震えている。
「だから…一緒にいてくれないと…嫌です、悲しいです……だから…殺します」
泣きながらそんなことを言う曲常が、なぜかとてもかわいらしく感じられた。我ながら頭がおかしいのではないかと思う。
しかしよく考えてみれば、多少問題はあるが可愛い後輩と一つ屋根の下。しかも何故かはわからないが俺のことが好き(らしい)。断る理由など微塵も存在していなかった。
俺は、結局この家に住むことにした。

29名無しさん@ピンキー:2005/06/18(土) 02:20:08 ID:buKTMTNJ
今夜は吸血鬼祭りですな、GJ!
30名無しさん@ピンキー:2005/06/18(土) 09:14:08 ID:QGebBls8
終 と言わず続きキボン
31名無しさん@ピンキー:2005/06/18(土) 13:31:20 ID:FuqeUfty
続きお願いします。
32名無しさん@ピンキー:2005/06/18(土) 15:56:04 ID:vb84M075
吸血鬼マジで良いよ… とりあえずGJ!
33名無しさん@ピンキー:2005/06/18(土) 16:32:26 ID:WlxfFDKA
アリステイルみたいだな
34名無しさん@ピンキー:2005/06/19(日) 03:21:36 ID:6B2BSBj1
『トミノの地獄』

姉は血を吐く、妹は火吐く、可愛いトミノは宝玉(たま)を吐く。
ひとり地獄に落ちゆくトミノ、地獄くらやみ花も無き。
鞭で叩くはトミノの姉か、鞭の朱総(しゅぶさ)が気にかかる。
叩けや叩けやれ叩かずとても、無間(むけん)地獄はひとつみち。
暗い地獄へ案内をたのむ、金の羊に、鶯(うぐいす)に。
皮の嚢(ふくろ)にゃいくらほど入れよ、無間(むけん)地獄の旅支度(たびじたく)。
春が来て候(そろ)林に谿(たに)に、くらい地獄谷七曲り。
籠(かご)にや鶯(うぐいす)、車にゃ羊、可愛いトミノの眼(まなこ)にや涙。
啼(な)けよ、鶯(うぐいす)、林の雨に妹恋しと声かぎり。
啼(な)けば反響(こだま)が地獄にひびき、狐牡丹(きつねぼたん)の花がさく。
地獄七山七谿(ななやまななたに)めぐる、可愛いトミノのひとり旅。
地獄ござらばもて来てたもれ、針の御山(みやま)の留針(とめばり)を。
赤い留針(とめばり)だてにはささぬ、可愛いトミノのめじるしに。

35名無しさん@ピンキー:2005/06/19(日) 09:14:48 ID:F9NaFEAW
オカ板からトミノ引っ張ってきた悪い子は誰かな〜♪
先生怒らないから素直に手挙げなさ〜い
36名無しさん@ピンキー:2005/06/19(日) 10:29:42 ID:w5CPebUn
ハイ!先生、質問でーす( ・_・)ノ
オカ板てなんでせうか?知識の薄い自分に教えて下さーい!
37名無しさん@ピンキー:2005/06/19(日) 10:33:30 ID:F9NaFEAW
文化コーナーのオカルト板ことだよ
38名無しさん@ピンキー:2005/06/19(日) 10:42:16 ID:F9NaFEAW
でトミノってのは音読すると不幸が起きるといわれている文章
知識の浅いw5CPebUnクンは
罰としてトミノ大声で10回音読しなさ〜い♪
39名無しさん@ピンキー:2005/06/19(日) 11:08:41 ID:ebNyfGQb
お禿様の笑顔が頭に浮かんでとてもじゃないですが音読できません
40名無しさん@ピンキー:2005/06/19(日) 11:34:09 ID:w5CPebUn
>>37>>38
ご教授さんくすー
言霊みたいな感じなのか…

そんなこと聞いたら絶対音読は遠慮しますw
41名無しさん@ピンキー:2005/06/19(日) 12:01:11 ID:txillJ4A
自分も>39と同じで
お陰で皆殺しとか、全滅とか、鬱展開とかよぎってそれどころじゃないんですが…
42名無しさん@ピンキー:2005/06/19(日) 12:30:35 ID:F9NaFEAW
大丈夫、
音読しても隣の受験生が嫌がらせしてくる程度。怖がるから不幸が起きるんだよ
43名無しさん@ピンキー:2005/06/19(日) 12:54:23 ID:OxVlS69x
ガンダムの原作者がどうかしたのかと思ったよ
44猫書いてる人:2005/06/19(日) 16:22:05 ID:ZhcwQo+B
自分のHPに猫の話のっけたんですけど……
どうしましょう? ここにアドレス書いて大丈夫でしょうか?
45名無しさん@ピンキー:2005/06/19(日) 16:35:33 ID:ebNyfGQb
大丈夫かどうかって意味では何の保障も出来ないので、txt化してどこかにうpした方がいいんじゃないかとは思う。
46猫書いてる人:2005/06/19(日) 16:47:41 ID:ZhcwQo+B
はい、2chエロパロ板SS保管庫のアップロード掲示板に投稿いたしました。
ちなみにこれです

ttp://www.degitalscope.com/~mbspro/userfiles_res/database/481.txt

今回エロ無いし、短いです。すいません
47名無しさん@ピンキー:2005/06/19(日) 16:49:26 ID:w5CPebUn
アド載っけるのは危ないが是非読みたいのでうpお願いしま
48名無しさん@ピンキー:2005/06/19(日) 19:07:34 ID:OqJMzIG8
できればここにUPお願いします。
他所だと後で保管庫に収録されない恐れがあり、せっかくのシリーズに欠けが出る事になります。
49猫書いてる人:2005/06/19(日) 19:13:46 ID:ZhcwQo+B
ではここにアップさせていただきます
でも今回、短いし、エロ無いですよ
50猫の話5:2005/06/19(日) 19:14:26 ID:ZhcwQo+B
 これは、鈴音さんと暮らし始めてまだ一週間くらいのお話。
「♪〜♪〜〜♪」
「……」
 ご機嫌に朝食の後片付けをしている鈴音さんを、僕はぼんやり見つめている。
 今日は、僕が大学に進学して新しい生活を始めて、
 そして、鈴音さんという猫の妖怪さんと一緒にくらすようになって最初の休日だった。
 今日まで、大学の入学式だったりガイダンスだったり、
 あと、新しい生活に必要なものを鈴音さんと二人で買い足したりと結構どたばたした日々だったから、
 朝からこうして、二人っきりでゆっくり過ごすのはたぶん今日が初めてじゃないかな……。
「……」
 うわ……何か緊張してきた……。
 恥ずかしいというか、身体がむずがゆい。
 鈴音さんのような美人と二人っきりだなんて初めての経験である。
 初めてといったら、僕の初めても鈴音さんに……ってそうじゃなくてっ!!
 いや、まあ……昨夜鈴音さんと2回目をイタシてしまったものだから……
 昨夜の鈴音さん……すごかったなぁ……えへへ……
 ああ……考え事がどんどんあさっての方向にいっちゃう……
 脳みそを程よく蕩けさせて、僕は馬鹿みたいに呆けていた。
 やがて、洗い物を終えた鈴音さんが、僕の隣にちょこんと正座する。
 ちなみに言うと、洗濯その他、全て終わってたりする。
 もともと一人暮らし用の部屋だし、鈴音さんほどの家事上手だとあっという間に終わってしまう。
 で、和服に割烹着の鈴音さんが、僕の横でニコニコしながら僕を見つめている次第でして。
「……」
 うう……無償に罪悪感が沸いてくる……。
 鈴音さんに何かをしてもらってばっかで、僕は何もしてないじゃないか。
 そもそも僕は自立の修行を志して一人暮らしをするつもりだったのに、
 このままじゃ、依存するだけの情けない男になってしまうっ。
 やっぱり、その……鈴音さんにはっきりと……
51猫の話5:2005/06/19(日) 19:15:58 ID:ZhcwQo+B
「陽一さま?」
「うわぁ!?」
 いつのまにか、ほんの目と鼻の先に鈴音さんの顔があった。
「す、鈴音さんっ!?」
 こう間近に顔を寄せるのはちょっと勘弁して欲しい。
 すごく、その……恥ずかしい……。
「な、な、何?」
「あの……何かお悩みのようですけど、どうかされましたか?」
 あうぅ……そ、そんな顔されると、僕としてはいたたまれないんですけど……
 罪悪感というか、申し訳なさがチクチク、チクチクと……
「あ、あのね、鈴音さん」
「はい、何でしょう?」
 嬉しそうに答える鈴音さん。
 その表情がとても綺麗で、その瞳はとても澄んでいて、
 僕は、口ごもってしまう。
「えっと……その……」
 言うんだ、長野陽一。
 こういうのははっきり言わなくちゃダメだ。
「あ……あのね……」
「……」

「もう……僕のこと構わないでもいいよ」

「……え?」
「あ、あのね、やっぱりね……どう考えても鈴音さんに
 ここまで色々してもらうのはちょっとおかしいって言うか……」
「……」
「べ、別に迷惑とかそんなんじゃ、なくて……むしろすごく感謝してるけど……
 いくらネコ……お祖父さんの遺言だからって……やっぱりその……」
52猫の話5:2005/06/19(日) 19:16:34 ID:ZhcwQo+B
 鈴音さんには鈴音さんの人生(猫生?)があるわけだし
 初めて会う男に、何もあんな……え、エッチなことまで……
「あ、あの……もちろん、これでお別れとか、そんなんじゃなくて……。
 あ……あんな事までしちゃった以上、責任を取るのは男として当然なわけで……」
 しどろもどろに言い募るんだけど……
「ええっと……とにかく……ああもう、なんて言えば……って鈴音さん?」
「……」
「鈴音さん? 鈴音さんっ!?」
 鈴音さんが後ろを向いて背中を小さく丸めて、悲しげに震えている。
「あの、鈴音さん? もしもし?」
「……ですね……」
「な、なに?」
「……私は……いらない娘なんですね……」
「そんなんじゃないですってっ!!」
 なんか、何時の間にか部屋が暗くなってるし
 鈴音さんのとこだけスポットライトみたいに照らされてるし!
 どこからともなく悲しげな音楽が流れてくるし!!
「あのですね、勘違いしないで欲しいんですけど……」
「……道の片隅の段ボール箱に捨てられて、冷たい雨に打たれて、寂しく泣き続ける運命なのですね……」
「しませんしません、そんなこと!!」
 その姿を想像してみる……。
「そんな鈴音さん見たら、0.5秒でお持ち帰りしますよっ!!」
「……」
 鈴音さんが、僕を潤んだ瞳で見つめてくる。
 ……うはぁ……
 やばい……ヤバイです……
 こんなすがるようなひたむきな瞳で見つめられて何も感じなかったら、
 哺乳類の雄を止めるべきだと思います。
「す、鈴音さんっ!!」
 たまらず鈴音さんを抱きしめる僕。
53猫の話5:2005/06/19(日) 19:17:38 ID:ZhcwQo+B
「あ、あのね、鈴音さん。僕は、その……鈴音さんを嫌いになったとか、そんなんじゃなくて……
 鈴音さんに助けてもらってばかりの情けない男になりたくない、というか……」
「……」
「ああ、もう、そんな顔しないでっ!
 分かったからっ。もう、鈴音さんの好きにして良いですからっ!!」
「……本当ですか?」
「ええ、もう、鈴音さんに全てお任せいたしますっ」
「はいっ、ではそうさせて頂きますね♪」
 むぎゅぅっと嬉しそうに僕を抱きしめる鈴音さん。
「す、鈴音さん!?」
 鈴音さんの着物越しでも分かるたゆたゆな胸が、
 思いっきり僕の顔に押し付けられる次第で……
 あうあうぁぁ〜〜〜……
 ………………………………
 前略、母上様
 僕は大学進学一週間にして、堕落の坂を転がり落ちそうでございます……

 その夜、僕は精神的にかなり疲れてしまったので、早く寝入っていた。
 ちなみに、鈴音さんもすぐ横で寝ている。
 ……いや、本当は鈴音さんの分の寝具も買うつもりだったんだけど
「私は……構いませんけど……」
 なんて艶めいた視線で言われてしまっては、ねえ……
 でも、えっちぃ事はしてません。まだ2回だけです。
 ゲフンゲフン
「……陽一さま?」
「な、何でもないよ。おやすみ、鈴音さん」
「……はい」
 目を閉じても鈴音さんの匂いとか温もりとか、息遣いが伝わってくる。
 えっちぃ気分にもなるけど、それ以上に落ち着くというか、安堵感の方が強く感じる。
54猫の話5:2005/06/19(日) 19:18:14 ID:ZhcwQo+B
「……鈴音さん」
「……ん」
 鈴音さんの胸に顔を埋める。
「……」
 そういえば……
 本当は今日、鈴音さんにいろいろ訊きたかったのに……
 いくら遺言だからってどうしてここまで僕に尽くしてくれるのかな、とか
 鈴音さんは、本当に僕なんかと一緒にいても良いの、とか
 そのつもりだったのに、何だか分からないうちに有耶無耶になってしまった……
 ま、いいか……いずれちゃんと……訊くと、して……
「……」
 僕は鈴音さんに抱かれながら、あっという間に深い眠りに落ちていった……。
 そんなだから

「……」

 鈴音さんが静かに身体を起こして

「……」

 猫の瞳で、一晩中僕の顔をじっと覗き込んでいるなんて
 夢にも思わないのであった……。
55書いた人:2005/06/19(日) 19:18:46 ID:ZhcwQo+B
次は、エロるつもりでございます
56名無しさん@ピンキー:2005/06/19(日) 19:31:56 ID:OqJMzIG8
素早い反応ありがとうございます。
う〜ん。萌えですな〜。
57名無しさん@ピンキー:2005/06/19(日) 20:36:04 ID:F9NaFEAW
鈴音さん可愛いよ鈴音さん可愛いよ。
先生大満足♪
GJ!!
58名無しさん@ピンキー:2005/06/19(日) 22:21:27 ID:w5CPebUn
鈴音さん…あまりにも良すぎですよ。このシリーズ書き続けて下さい(´ー`)b
かなりGJ!
59名無しさん@ピンキー:2005/06/20(月) 21:11:24 ID:G1Huc9PM
そーいやこのシリーズ、人死にもバトルもないんだよな。
またーりと和むのはそのせいか。

これって要約すると、[怪我しているお爺ちゃんを助けたら、「是非孫娘の婿に」と言われた]なんだよな。
60名無しさん@ピンキー:2005/06/20(月) 23:52:55 ID:G1Huc9PM
エロの魅力は次の要素に分かれる。
・キャラ(外見+性格)
・プレイ(ドコを+ナニで)
・シチュ(元々の関係+Hに至る展開)

人外だと通常に加えてこんなのを楽しめる。
・キャラ(外見)
 猫耳、尻尾、羽、角、下半身が蜘蛛・蛇・触手・不定形、等々
・キャラ(性格)
 無感情、無常識、等々
・プレイ(ドコを)
 触手、不定形の局部、等々
・プレイ(ナニで)
 魔除けでのSM、人体では耐えられないようなモノ、等々
・シチュ(元々の関係)
 敵対、弱肉強食、共生、等々
・シチュ(Hに至る関係)
 発情期、食事・補給、等々

魔法やガジェット等と同じく、非現実がイイ、ということだろうか。
61放課後の吸血鬼0:2005/06/21(火) 02:06:59 ID:Zkr8rRpW
事の起りはこうだった。
「今日、どうする?」
夕方、掃除を終えて戻ってきた教室で、哲晴は待っててくれた友人二人に尋ねる。放課後の教室は、ガランとして残っているのは二人だけだ。
哲晴が当番のトイレ掃除を頑張ったせいである。
別に掃除が好きだとか、生真面目というわけでもない。ただ目の前にやる事があると、つい没頭するタイプなのだ。
「とりあえず、ゲーセンでも行きましょうか?」
さっきまでの横口とのプロレスごっこでズレた眼鏡をクイッと直しつつ、小柄な西根恭一が提案した。
「え〜、なんか新作入ってるか? オレあんま金ねーから、新作とかねーとやだぞ」
ヒョイと鞄を掴んで、坊主頭の丸々とした巨漢の横口和也が答える。
「じゃあ、どうしようか」
金をかけないとなると、本屋かコンビニで立ち読みか、誰かの家に集まるかのどちらかだ。しかし本屋だとさすがに長時間はいられないし、家に行くのには時間がかかる。
となると、いつもみたいに結局はここで駄弁るくらいか。そしてそれは採用された。
やがて暫く駄弁ってから、ポツリと呟く。
「なんか最近、こうして駄弁ってるだけの事、多くないか?」
勉強、スポーツ、趣味…とくに何か熱中するものが見つからず、のんべんだらりと日々を過ごしている。彼女でもできれば、恋愛に熱中するかもしれないが、生憎と色恋沙汰とは無縁だ。
とりあえず、目の前に具体的な“やるべき事”――トイレ掃除とか――が提示されればやるが、進学とか学校生活とかの漠然としたものだと、どうも今一つやる気が出ない。
昨日も、一昨日も、一昨昨日も、その前も、ただ何となく何をするでもなく、同じような日々を過ごしている。
62放課後の吸血鬼0:2005/06/21(火) 02:07:21 ID:Zkr8rRpW
「そーいや、そーだな。オレも部活やめちゃったし」
闘争本能が足りないから柔道部を辞めた、と以前横口はそう言ってた。
「ですね。他にやる事もないですし…」
もとから帰宅部の西根が続ける。
多分、明日も、明後日も、明々後日も、周囲で同じような“日常”が続く限り、たぶん同じような日常を繰り返してしまうだろう。
それなりの速度は出るが、周囲の風を受けてその方向に進むだけの帆のある筏。そんな宛ても無い漂流者のような気分だった。
「あ、そうそう、刺激が欲しいのなら、実は一つ面白い話がありまして」
西根は、鞄の中からファイルを取りだし、そこに挟んでいた1枚の紙を見せた。ビッシリと文字の印刷されたそれは、どうやら新聞記事のコピーのようだった。
「これ、17年前の新聞なんですが、面白い記事がありまして」
西根の口から語られたのは、17年前にこの町で猟奇殺人事件があったということだ。遺体からは大量の血がなくなっていたという。
「へえ。でも、それが?」
哲晴は怪訝そうな顔をする。
「どこが面白れぇんだよ。キモいだけじゃんか」
西根はそこでニヤリと笑う。
「そこなんですよ。実は殺されたのは、この学校の女子生徒で、しかも調べたところ、場所はこの教室の前でなんですよ」
「おい、ちょっと待て」
哲晴は気味悪そうに廊下の方を見る。
「ゲッ、ここかよ…」
横口も顔をしかめる。
63放課後の吸血鬼0:2005/06/21(火) 02:08:29 ID:Zkr8rRpW
「どうですか?
 今まで普通に生活していた場が、実は凶悪な殺人事件の現場だったんです。
 つまり、平和な日常と殺人事件という非日常、これらは一見対極の様に見えて、それはほんの薄皮一枚で隔てられていたに過ぎず、その仕切りは、今こうして突然破れるわけですよ。
 ね、そう考えるとなかなか面白いでしょ」
ニッと得意げに語る。
「やっぱ、キモイだけじゃんかっ」
横口が西根の頭をペシリと引っぱたく。身長差があるので、叩くのに丁度良いみたいだ。
「なんか、気味悪くなってきたな」
「そうだね…」
「では、帰りましょうか。薄暗くなった殺人現場なんて、正直気持ちのいいものじゃありませんしね」
「テメェの仕業だろーが」
三人とも意見は一致した。それぞれの鞄を抱えていそいそと1階に向かう。
昇降口についたちょうどその時、哲晴は不意に思い出した。
「あ、やべ。宮崎に借りたCD、教室に忘れた」
放課後の人気の無い校舎はガランとしてて、昼間の賑わいとのギャップでかなり寂しい。
しかも、日は西に傾いたせいで、校舎には光が入りづらい。そのせいでたった今歩いてきた廊下は、薄ぼんやりと影に包まれていて、不気味な雰囲気を漂わせている。
「はい、行ってらっしゃい」
「達者でな〜。骨は拾ってやるぞ〜」
カパッと靴箱を開けつつ、二人は答える。気味の悪い教室に戻るのは御免だ、という事だ。
「はっくじょーも〜ん」
そういう声を残して、哲晴は2階の教室へ向かってダッと駆け出す。

日常と非日常の差はほんの紙一重で、奇奇怪怪な魑魅魍魎蠢く日々は、すぐそこでパックリと顎を開いて待ち構えている。哲晴はまだ、それを知るはずもなかった。
64名無しさん@ピンキー:2005/06/21(火) 23:18:58 ID:r/fshWHR
まだ続いてんのこの話?
飛ばしてるからてっきり終わったと思ってた

早く終わればいいのにね
65名無しさん@ピンキー:2005/06/21(火) 23:23:49 ID:10gX99Rp
例のだから以後透明あぼんよろ
66名無しさん@ピンキー:2005/06/21(火) 23:32:37 ID:JxRuH8fb
さて、吸血鬼の人も無事に帰還されたことだし、
そろそろ妖魔&百鬼のスレでも立てますか!




はあ、自分に書く力さえあれば…
67名無しさん@ピンキー:2005/06/21(火) 23:41:46 ID:gv8AscUB
>63のシリーズを続けても良いかどうか、民主的に多数決を取ろうよ。
【No】
 エロじゃない・ツマンネ・前スレで蔑ろにした等々の理由で、出ていけ!死ね!二度と来るな!
【Yes】
 「はげ山も枯れ木の賑わい」っていうからいいんじゃないの?
 見たくなけりゃ透明あぼんすれば済むんだし。

では↓からドゾー
68名無しさん@ピンキー:2005/06/21(火) 23:47:02 ID:t4WmF1B/
というわけで、羽衣の天女ネタをキボン
69名無しさん@ピンキー:2005/06/22(水) 00:02:19 ID:EqWP8AN0
というわけで、ろくろ首ネタをきぼん
70名無しさん@ピンキー:2005/06/22(水) 00:04:16 ID:D9gxlhIf
>>69
ひとりクンニで自分を慰めるろくろ首娘?
71名無しさん@ピンキー:2005/06/22(水) 00:05:46 ID:1bLE9m6s
>>65
残念でした
本物は俺だ
72名無しさん@ピンキー:2005/06/22(水) 00:32:32 ID:pXU5lTyX
>>70
いや、そう具体的に思いついて言ったわけではないんだがw
だけど想像してみるとなかなか…萌えるかも
いやむしろデュラハン娘と首を入れ替えt(ry
73名無しさん@ピンキー:2005/06/22(水) 00:38:45 ID:D9gxlhIf
つまり、長い首筋全てが性感帯のろくろ首娘ということで。
74名無しさん@ピンキー:2005/06/22(水) 23:40:52 ID:MlNesrWI
首が飛ぶタイプのろくろ首の性感帯はどこよ。
…継ぎ目とか?
75名無しさん@ピンキー:2005/06/22(水) 23:50:17 ID:av6rJ2YK
首の継ぎ目にある(?)喉〜食堂からペニス突っ込んで口から先端が覗く生首フェラとか。

うん、ちとグロいが俺的には許容範囲。
76名無しさん@ピンキー:2005/06/22(水) 23:56:39 ID:AwotQ9fe
>首の継ぎ目にある(?)喉〜食堂から
首が飛ぶタイプは断面に穴のたぐいは無いよ
つるつるで何やら文字が書いてある
断面同士を接触できないようにして一日だったかな、経ったらアウト
77名無しさん@ピンキー:2005/06/23(木) 00:10:18 ID:3+htBGvg
プチャラティ?
78名無しさん@ピンキー:2005/06/23(木) 00:17:03 ID:QytcMkhR
>>76
そうか、まぁ見えてたらホントにグロいしなw

あと今気が付いたが俺が言ってたのってまんま貫通型オナホだ
79名無しさん@ピンキー:2005/06/23(木) 01:00:58 ID:FWxQVxMo
>76
夜が明けたら、だったはず。

というか、どうも首が飛ぶというと、チョンチョンを思い出してしまう今日この頃。
80名無しさん@ピンキー:2005/06/23(木) 01:12:05 ID:OXFWJnDT
>>79
>首が飛ぶ
漏れが思い出すのはイブラリン。

まさか、「胃ぶらりん」がネーミングの由来だったとは(w
81名無しさん@ピンキー:2005/06/23(木) 01:43:25 ID:D/3RO1SH
>チョンチョン
佐賀の方言じゃセックスの意味なんたげどな。

他の地方の人「あの妖怪は何だ?」
佐賀の女の子「ゴニョゴニョ…」
他の地方の人「え…なんだって? はっきり言えよ」
佐賀の女の子(半泣きで)「い、言えません」
82名無しさん@ピンキー:2005/06/23(木) 02:17:10 ID:D/3RO1SH
なんかクルものがあったので、
阿部公房『人魚伝』
ttp://sunset.freespace.jp/aavideo/shortshort/200/277.htm
83名無しさん@ピンキー:2005/06/23(木) 02:48:22 ID:7LFGQauU
食べ残しちゃうなんてはしたない人魚たんだな。
というより全部破片を人魚たんに食べてもらえばよかったのに。
人魚が綾波だったのを見て、吹くと同時になんとなく納得してしまった。
84名無しさん@ピンキー:2005/06/24(金) 01:27:52 ID:hYyiOIQX
今更だが「3-306様: -狂骨ネタ-」がイイ!
シチュとか、キャラよりも、独特のプレイが気に入った。
溶解・同化プレイなんて、非常に珍しい。
85名無しさん@ピンキー:2005/06/24(金) 15:07:48 ID:e8G61igH
 私の名前はサクヤ。
 こんなことを言うと驚かれるかもしれないけれど、ろくろ首と呼ばれる妖怪です。
 私は生まれて12年目だけど、ちょっと恥ずかしい経験もしてるの。それを教えてあげるね。
「んっ。ゃっ。だめぇ」
 その日は朝からオマタがむずむずしちゃって、学校を休んでベッドで寝ていました。
 それでも、全然治らなくて、どうしたのかなって、手をあててみたの。
 そうしたら、すごく気持ちがよくて、手の動きが止まらなくて。
「ぁぅぅ、ふぅ、んっ」
 これが、発情なのかな。
 ろくろ首のお母さんとお稲荷さんのお父さんのハーフの私。
 お父さんは狐だから、娘の私にも発情があるんじゃないかって教えてくれた。
 恥ずかしいことじゃなくて、当たり前のことだって教えてくれたけど。でも、やっぱり恥ずかしいよぉ。
「ぁぅ。だめ、指だけじゃ…でも、ペンとかは痛いし…あ、そうだ」
 私はゆっくりと首を伸ばす。
 今はまだ自分の身長と同じくらいしか伸ばせないけど、今日は十分。
 パンツを降ろし、自分のオマタを見る。
「うわぁ…こんな風になってるんだ」
 自分のがこんな風になってるなんて初めてしりました。
 ドキドキしながら、ペロって舐めてみる。
「ひゃぅっ」
 しょっぱくて変な味で、でも…すごく気持ちがよかった。
 何度も何度も自分のオマタを舐めって、なんどもおしっこもらしちゃって。
 その日以来、私は発情期が来るたびにそうやって自分で舐めてるの。
 えへへ。サクヤの恥ずかしいお話。どうだったかな?
 じゃあね、ばいば〜い
86名無しさん@ピンキー:2005/06/24(金) 16:22:49 ID:X9p3TAhB
GJ!!
続編キボンヌ
87名無しさん@ピンキー:2005/06/24(金) 20:31:54 ID:fHmpbAln
(・∀・)ニヤニヤ
88名無しさん@ピンキー:2005/06/25(土) 01:22:15 ID:vDfpY0PQ
>>85
小ネタっぽいけど楽しい
89名無しさん@ピンキー:2005/06/25(土) 05:26:24 ID:SvYfd/B5
妖魔夜行の百物語みたいだw
さらっと読めていいかも
90猫書いてる人:2005/06/26(日) 00:29:20 ID:v1ENLzO1
とりあえず、導入部分だけ投稿いたしますです
91猫の話6:2005/06/26(日) 00:29:54 ID:v1ENLzO1
 とある、いつもの朝。
「それじゃ鈴音さん、行ってきますっ」
「はい、行ってらっしゃいませ、陽一さま」
 鈴音さんに見送られて、元気に家を出る僕。
「あ、そうだ」
 思い出したことがあって、僕は立ち止まった。
「ごめん、言い忘れてたことがあった」
「はい?」
「その……今日は大学の仲間と飲み会があるから、夕飯はいらないです」
 申し訳なさそうに言うと、鈴音さんは笑顔で
「そうですか。私の事は気になさらずに、御学友の皆様と楽しんできてくださいね」
「ん〜……やっぱり、出来るだけ早く帰ります」
 鈴音さんはちょっと苦笑を浮かべた。
「分かりました。では、気をつけてお帰りくださいね」
「はい、じゃあいってきまーす」
 早く帰ると言ったとき、鈴音さんちょっと嬉しそうに見えた気がした。
92猫の話6:2005/06/26(日) 00:30:16 ID:v1ENLzO1
 それから……
 二次会を断り、ほろ酔い気分で家路につく僕。
 良い具合にアルコールが回っているものだから、しょーもないことばかり考えてしまう。
 まあ、考えることといったら鈴音さんの事ばかりだけど。
 ……鈴音さんて、お酒飲めるのかなぁ……。
 昔話で、妖怪がお酒を飲んで酔っ払ってるうちに退治
 なんてのを読んだ事があるから、妖怪もお酒に酔うとは思うけど……。
 ……どうなんだろう?

「……」

 ……確かめたい!!
 いや、別に、決して、鈴音さんを酔わせて不埒な行為をしようなどとは思っておりませんですよ。
 ただ、ちょっと酔って頬を赤く染めた鈴音さんが見たいだけですよ。
 そんでもって、ちょっとガードが緩くなった鈴音さんが見たいだけですよ。
 そんでもって、そんでもって……
「……」
 うへへへへぇ〜〜♪
 バンバンとすぐ横にある薬局のカエルさんをぶっ叩く僕。
 アルコールが脳みそを侵食しちゃったようです。
 うん、そう、アルコールのせい、お酒のせい、お酒って怖い怖い♪
 僕は、鼻歌交じりにスキップしながら、途中にあるコンビニでお酒を買い込むのであった。
93猫書いてる人:2005/06/26(日) 00:32:10 ID:v1ENLzO1
……私、アホな子です
いや、まあ、とりあえずキーワードは『またたび』と言っておきます。
本当は『発情期』とどっちにしようか迷ったのですが……
両方書けとか?
94名無しさん@ピンキー:2005/06/26(日) 02:17:09 ID:3tdhr1zW
まず今の続きキボンヌ

95名無しさん@ピンキー:2005/06/26(日) 02:44:36 ID:JRMhAIG7
できれば両方読みたいですが…もはや無理は言いません。


続きをお願いします!
96駄目人間と天使7 ◆I3tGz4xJ9E :2005/06/26(日) 04:20:30 ID:lohQQ8C6
「はい」
という声という声と同時にオレの口元に朱色の箸に挟まれたモヤシと豚肉の炒め物が運ばれる。
因みに箸を握っているのはオレじゃない。
妹だ……
よんどころない事情から、利き手を怪我しているという事にしてから続く我が家の食事風景だ。
オレの手を見た妹は「下手に右手で不器用に箸を使われてこぼされても困る」だのと言って強引にオレの世話を焼き始めやがった。
最初はすぐ腕も直るつもりだったから黙って妹のやりたいままにさせておいたが、正直この状況が続くとベアトリスの視線が痛い気がしてくる……
天使はどうか知らないが、多分、恋人のこの状況を快く思う奴は居ないと思う。
かといって肉類の臭いが駄目な菜食主義のベアトリスに頼むと、肉好きのオレまでしばらく草食にならざるをえない。
ならば別に妹の下らない意見を却下して、自分で食べれば良いんじゃないか?
多分、誰もがそう思うだろう。
オレもそう思う。
……が、残念なことにオレは情けない兄貴世界ランカー確実な妹を怒らせるのが恐いという駄目兄貴である。
結局、オレはその日もベアトリスの目を気にしながらも、妹を無碍にすることが出来ず夕食を終えてしまった。
97駄目人間と天使7 ◆I3tGz4xJ9E :2005/06/26(日) 04:21:41 ID:lohQQ8C6
「はい」
という声という声と同時にオレの口元に朱色の箸に挟まれたモヤシと豚肉の炒め物が運ばれる。
因みに箸を握っているのはオレじゃない。
妹だ……
よんどころない事情から、利き手を怪我しているという事にしてから続く我が家の食事風景だ。
オレの手を見た妹は「下手に右手で不器用に箸を使われてこぼされても困る」だのと言って強引にオレの世話を焼き始めやがった。
最初はすぐ腕も直るつもりだったから黙って妹のやりたいままにさせておいたが、正直この状況が続くとベアトリスの視線が痛い気がしてくる……
天使はどうか知らないが、多分、恋人のこの状況を快く思う奴は居ないと思う。
かといって肉類の臭いが駄目な菜食主義のベアトリスに頼むと、肉好きのオレまでしばらく草食にならざるをえない。
ならば別に妹の下らない意見を却下して、自分で食べれば良いんじゃないか?
多分、誰もがそう思うだろう。
オレもそう思う。
……が、残念なことにオレは情けない兄貴世界ランカー確実な妹を怒らせるのが恐いという駄目兄貴である。
結局、オレはその日もベアトリスの目を気にしながらも、妹を無碍にすることが出来ず夕食を終えてしまった。
98駄目人間と天使7 ◆I3tGz4xJ9E :2005/06/26(日) 04:30:01 ID:lohQQ8C6
夕食のあと、自室に戻り一人になったオレは、漫画雑誌を読むでもなく片手に弄びながらごろ寝し、
「まずいよな…」
呟く。
オリビアを助けた時の一件も有るし、ぶっちゃけ
「いつベアトリスに見限られてもおかしくないような気がする」
「いつ、どころか未だに三下り半突き付けられておらぬことが奇跡であるな…」
「うぉっ」
オレは思考の途中で突然、背後からかけられた声に驚き思わず声を出す。
「大袈裟じゃな」
そのオレの反応に愉快そうにカラカラと笑いながら、オレの反応に対して背後の声はコメントする。
「ベリアス……
 気配も無く他人の部屋に立ち入らないでくれよ」
オレは振り返りながら声の主に軽く無駄な抗議をする。
そう、あくまで無駄な抗議でしかない……すでにオレは諦めて辞書からプライバシーという文字は削除している……
そんなオレの心情をまったく気にかけてくれる様子もなく、
「ところで茶は出ぬのか?」
相手はベッドに腰をかけながら、図々しい事この上ない事をぬかしてくれる。
「メンドイから嫌」
せっかく自室でまったりしてるんだから、茶を煎れる程度の作業だけでも動きたくない。
オレは正直に簡潔に答える。
99駄目人間と天使7 ◆I3tGz4xJ9E :2005/06/26(日) 04:30:48 ID:lohQQ8C6
「うまい茶を煎れてくれば、機嫌が良くなって悩める青少年に余が直々に相談に乗ってやるやも知れんぞ」
うまい茶ってところが、果てしなく図々しい……
ベアトリスを愛称で呼ぶところを見ると色々と彼女について知ってそうなんだが、知っているからと言って良いアドバイザーになるとは限らない。
むしろ、悪化しそうな予感がビンビンする。
相談にあまり意義が無いと判断したオレは、
「ほったっといて下さい……」
と答えると、床にごろりベリアスからそっぽを向きごろ寝する。
「ぐっ」
ベリアスに背を向けた瞬間、ごろ寝したオレの背中に鋭い痛みが走る。
蹴りが入ったらしい。
「余は茶が飲みたいと言っておるのだ」
蹴った足でそのままオレの背中をぐりぐりとしながら、低く押さえた静かだが迫力のある声で
「はやく煎れてこぬか」
と続ける。
いろんな意味で弱いことの哀しさを噛みしめながら、オレは背の痛みから逃れるために仕方なく、立ち上がるとお茶を煎れに部屋を出た。
100駄目人間と天使7 ◆I3tGz4xJ9E :2005/06/26(日) 04:39:30 ID:v5cy5KsS
15分後、
結局、お茶を煎れたオレはベリアスと向かい合って妙なひよこを型どった形の和菓子をお茶受けにお茶をすすっていた。

「貴公は何をやらせてもうまいのう」
役に立たなくても愚痴れば少しは楽になるかもしれない。
そう思ってお茶を飲みながら、話したオレの話を聞き終わったベアリスはお茶を一口口に含み、それを味わうとお茶受けをかじると一息つく。
因みに二杯目だ。適当に煎れた一杯目は口もつけてもらえずにオレの頭にかけられた。
「…それはどうも」
オレ適当に相づちを打ちながら、自分の分を口に3分の1ほどの欠けらになった自分の分を放り込む。
その欠けらが丁度、喉を通ろうというタイミングを見計らったかのようにベリアスは次の言葉を紡ぐ。
「女性を口説くのもな……」
「ぐほっ…うんぐ」
一旦、話題を変えてからの、その不意打ちの言葉に喉にひっかかりかけた欠けらをオレは無理やりお茶で流し込み飲み込み、
「口説いた覚えはあまり無いんだけど」
開口一番に極めて冷静を装ってその言葉を否定した。
「冗談だ」
その様子は逆に雄弁にオレの慌てを語ったらしく、ベリアスは前言を冗談としつつも、オレの様子を見て満足そうに微笑む。

「しかし…な」
また一口、ベリアスはお茶を飲み。
言葉を続ける
「オリビアのことならばともかく…
 妹に関してトリシアは何も言えんからのぅ」
「はい?」
意味が判らず出たオレの言葉を無視して、勝手にベリアスは言葉を続け、
「トリシアは真面目だし、何より自分の気持ちを殺す子じゃからな……」
最後にオレに言うというより何か独り言のように呟くと、残ったお茶を飲み干し立ち上がろうとする。
101駄目人間と天使7 ◆I3tGz4xJ9E :2005/06/26(日) 04:48:50 ID:v5cy5KsS
「ちょっ、タンマっ!」
ベリアスがお茶の最後の一口を飲み干す前に呟いた言葉が気になり、オレは思わず立ち上がり窓から出ようとする彼女の小さな手を握って止める。
「なんじゃ?」
オレに手を握られ止められたベアリスは振り向きながら問うてくる。
どうやら、聞けば話してくれる気はあるらしい。
「いや…なんで妹に対してベアトリスは何も言えないんだ?」
普通、余程じゃなければ妹がどうこう文句は言わないだろうし、
その言葉は特に気にする事じゃない。
……はずだけど、妙に気になったオレは彼女にそう聞いてみた。
「どうしても聞きたいか?」
「まぁね…」
「で…あるか」
「でありますとも」
やけに念を押すな、そう思いながらオレは彼女と言葉を重ねる。
「では教えてしんぜよう。
 なに、大した話でない」
と前置きした彼女は、ちょこんとその場に座るとコホンと咳払いをして、
「貴公の妹は神から反逆した兄を追い落とした褒美に、人である間の貴公に唯一の特別として側に居れるはずの許しをもらっておる。
 結ばれることのない兄妹そのかわりの特権、しかも神の許可付き。
 本来はここに居らぬはずの上に、天界では貴公を奪ったトリシアは文句は言えると思うか?」
……って?
「ちょっ待て、となると美迦も……?」
オレの口から生じた疑問が即座に言葉として出る。
「ふむ、貴公と同じだ」
その疑問の意を解したベリアスは、その問いかけに頷く。
102駄目人間と天使7 ◆I3tGz4xJ9E :2005/06/26(日) 04:51:36 ID:v5cy5KsS
「はあ…」
またそのパターンか……
芸がないってのは良くないなぁ。
思わず、ベリアスの言葉に頷きながらオレの口からため息が洩れる。
「ところで」
そんなオレの疲れた心情とは真逆に弾んだ声でベリアスが話を続ける。
「悪魔は天界の秘密を教えるのに代償を貰うわけだが?」
「へ?」
彼女の口から出た代償という、予期せぬ言葉に間の抜けた声が漏れる。
「当然であろ?
 余は聞きたいかとしっかと確認しておるぞ」
オレの予想外を無視し、ベリアスは言葉の通り当たり前だという風体で、下からこちらを見下ろすという器用なポーズを取っている。

その自信有りげな様子は、肝心な部分が説明不足だとか道理の通る余地が感じられない……
オレは仕方ないから、代償とやらが何か聞いてから逃げるなり、ベアトリスを助けに呼ぶなり何なり考えよう(それにしても、逃げるだの助けを呼ぶだのしか具体的な選択肢が無いのは情けない……)と考え、彼女に聞いた。
「…で、代償って?
 ちょっと聞いただけなんだから、地獄行きは無しだぜ」
「む…ぅ」
さすがに冗談のつもりで言った言葉に残念そうに唸る彼女の様子に不安になる。
「おいおい…さすがにそりゃ図々し過ぎだろ?」
「わ…解っておるわ!余を馬鹿にするでない!」
オレの突っ込みに過剰に反応する所が余計に怪しい…
が、いつまでも引きずっても仕方ないので、改めて聞き直す。
「じゃあ、なんだ?」
103駄目人間と天使7 ◆I3tGz4xJ9E :2005/06/26(日) 04:54:24 ID:v5cy5KsS
「ふむ…それなのだが……な」
オレの言葉にそれまでの態度を一変させ、彼女が小さな顔をうつ向かせて口ごもり始める。
その彼女らしからぬ態度に怪訝に感じ、声をかけかねたオレの手が唐突に彼女の小さな手に握られる。
「ど…どうしやあした?」
彼女のその行動に反応して反射的にオレが呟いた声に顔を上げ、ベリアスが口を開く。
「余を愛でよ」
「な…何を急に?」
「急ではないわ、たわけ…
 再会してからずっと…余は貴公に気持ちを隠してはおらぬ……」
唐突な言葉に聞き返したオレに彼女は呟くと、唇をきゅっと結んで再びうつ向いた。
その言葉を聞きよくよく記憶を巻き戻すと、確かにそうかもと思う。
最初に会った時などは、いきなり唇を奪われている。
オレはうつ向いた彼女を改めて見た。
その姿はいつもの小さな姿に無駄に威厳を漂わせた魔王でなどでなく、告白への返答に脅える普通の少女のものであった。
「ベリアス?」
その普段との差異に、彼女の存在を見失いそうになったオレはそれを確かめるために彼女の名を呼び、思わず握られた彼女の手を引き寄せそうになるが、オレの動きはそこで止まる。
「解っておる。貴公が好いておるのはトリシアだからな……
 解っておるのだ…だが、余は貴公の短い人としての時間が終わればもう会えぬかも知れん……
 それどころか次、会う時は敵味方やも知れん…だとすれば、余は今しか思いを遂げられない…そう思うと……」
彼女の声は最後の方は小さく消え入りそうだった。
「……ベリアス」
その彼女のか細さが不安になったオレは彼女の言葉が終わる前に、握られた手を引き寄せそっと抱き締めてしまっていた。
「わ」
その行為にに驚いたのか、彼女に口から小さく声が洩れる。
104駄目人間と天使7 ◆I3tGz4xJ9E :2005/06/26(日) 04:57:20 ID:v5cy5KsS
「小っちゃいんだな」
つい思いもよらず動いてしまったことに動揺したオレの口から誤魔化すように取り留めにない言葉が出る。
「……小さいと駄目か?」
その言葉を、彼女はおずおずとオレを見上げて不安そうなままに聞き返してくる。
好みとしてはオレはお姉さん属性なのだが、
「いや、そんな事はない」
自然と流されるまま、彼女の不安を否定する答えが口から出る。
その言葉を聞くや否や、
ベリアスはにこりと微笑むとするりとオレの腕の中から抜け、顔は赤いままながらも今までの態度を一変させ、胸を張り
「ならば、余に全て任せるが良い」
と一言言うと、オレを抱き締め返してきた。
そして、
「おい…」
その行動に反応し、声を出す間も無いオレの目の前にストレートの紫色の光沢のある髪が迫ってきて、
小さなベリアスの唇がオレの唇に重ねられた。
「うん…んん…」
ベリアスの薄めだが、ひたすら柔らかい唇はそのまま何度もオレの唇についばむように重ねら離れる。

彼女の顔が僅かに離れことで視界が開け、今の彼女の状況が目に映る。
なんだか妙にふわふわした抱き心地だと思ったら、彼女の背にコウモリのようなベアトリスやオリビアと比べると体の大きさに比例するのか随分と小さな羽が生え、
ぱたぱたと羽々たいて彼女とオレの身長差を埋めていた。
「……可愛いなソレ」
105駄目人間と天使7 ◆I3tGz4xJ9E :2005/06/26(日) 05:00:35 ID:v5cy5KsS
ベアトリスやオリビアのように人間の大きさ相応の翼と違い、
ディフォルメされたようなベアリスの小さな羽に対する率直な感想が洩れ、
その言葉に反応した、ムスっとした表情でオレの顔を睨み口を開く。
「余を馬鹿にしておらんか?」
「いや、そんなことはないよ。
 ただ可愛いなって思っただけで」
「この姿では仕方ないか…」
彼女の自分の言葉に対するオレの答えを聞くと、ため息と同時に呟きを吐き出し、
「ならば、その体に認識を改めさせるしかあるまい」
ため息の時に下を向いた彼女の赤い瞳が再びオレを見据えた時にギラリと輝いたかと思うと、
彼女はふわりと自分の体を浮かすと再びオレの唇を奪った。

それは先ほどのついばむような優しいキスでなく、
深い深い唇の柔らかい感触を自在に弄び、歯茎をなぞり、
舌を絡め唾液をすする濃厚な貪るような口付けが何度も繰り返される。
「…ぅん…くうっん」
彼女の熱い吐息が熱い口内をくすぐる度に、それに従って頭に血が登り興奮が高まっていく。
106駄目人間と天使7 ◆I3tGz4xJ9E :2005/06/26(日) 05:07:48 ID:2eSwWpEe
その興奮に突き動かされ、オレが彼女の口付けに応え始めると、
それを待っていたように、今度はオレに抱きついていた彼女の手がオレのシャツの中に入り込み背中をまさぐり始める。
「…ぅ…おいっ」
背中を柔らかく這う指の感触は、オレが自分がされることに慣れてない事を差し引いても異常なほどオレの神経を甘く刺激し興奮を引き出していく。
その刺激に驚き思わず唇を離し抗議するオレにベリアスは、
「余は見た目で誤解されておる認識を改めさせると申したであろう?」
とその反応に満足そうに微笑み、
三度、自分の唇をオレの唇に重ねるとまくり上げたシャツを片手で器用に脱がし、
その間にも彼女の残った手はオレの体を這い回りその通った道に甘い刺激を刻み込んでいく。

その甘い刺激が序々に自分のものにうずうずと溜まっていくのを感じて、これはマズイ…このままでは、決定的に主導権をベリアスに握られてしまう。
そんな物は自分には無いと思ってた男としてのプライドか、
それとも自覚は無いけど、素性が素性だし悪魔に対して反発でも有るのか、
とにかく何とかせねばという焦燥感をオレが感じ始め、こちらからも手を出さねばと火照り鈍くなった手を動かし彼女の腰に手を回そうとした時。
「……こ…こんなに大きいのか……?」
と、オレのGパンに手をかけた彼女の口から洩れた声に気構えていたオレの気合いが抜ける。
だって…悲しいけど、修学旅行の風呂などの経験からオレの大きくない…むしろ小さいとは自覚している……
それに対してその反応。
107駄目人間と天使7 ◆I3tGz4xJ9E :2005/06/26(日) 05:12:53 ID:iV18hQTh
その声の後、彼女の手がそれまでオレをリードしてたとは思えないほどにたどたどしくなりズボンを半ば下ろした状態で、
「……ごくり」
と息を飲むと止まってしまう。
「もしかして…はじめてなのか?」
その様子に違和感を感じたオレが女に問いかけると、
「違うぞ!」
彼女は慌てて否定し、
「…ただ、男は……」
と少し小さな声で付け足す。
「……女性経験は豊富ってことですか……」
張ってた気持ちをスカされたせいか、止めのオチがついた所で特に面白いわけでもないのに言葉とともに笑いがこぼれる。

「わ、笑うことは無いではないか……
 単に男のモノがそこまで大きくなるとは思っておらなんだから不意を突かれただけで……」
ベリアスは本気で自信があったのだろう、
それだけに予想外に対する動揺が声にありありと出ている。
ここで、予想外のことは起こるもの…と余裕ぶっこいてくれれば海兵隊隊長並の風格が出るのだろうが、残念なことに魔王様にその余裕は無いらしい。
などと、下らないことを考えていたのが顔に出ていたのか、
「貴公以外の男が相手では余は嫌であるから、なれば可愛い女の子を愛でるしかあるまい!!」
ついにキレたのか、ベリアスは少し強めの語調で何が何だか解らない論理を展開し、
止まっていた手を再び動かすと、一気にオレのズボンを引き下ろしオレを左腕を押さえながら押し倒す。
108駄目人間と天使7 ◆I3tGz4xJ9E :2005/06/26(日) 05:19:24 ID:cNhyFEEG
「……これを入れるのだな」
オレを押し倒したベリアスは、オレの太股のあたりに跨り腰を降ろすと、その体制のままトランクスの縞模様の布地でテントを作っているモノを乱暴に取り出し、
それを握ったまま残る手で、自分の胸元の黒いレースに手をかけボタンを外すと胸元を大きくはだけた。
その動作を見ながら、オレは太股にずんと乗った彼女の重さに不意に不安を感じた。
彼女は初めてでその重さがモロに挿入にかかる騎乗位でしようとしているのだ。
「まさか、このままするつもりじゃない……よな?」
経緯的に女性優位な体勢にしたい気持ちは判るが、それでも心配になって滑るように出たオレの言葉に、
ベリアスは微笑みで答え、オレの手を掴むとまだ固さの目立つ膨らみかけの胸へ誘う。
が、顔は微笑んでいてもその目は笑ってない。
どうやらオレが心配の言葉をかけたことで余計にご機嫌を損ねたらしい。

オレはそれ以上は口をつぐむ事にして、
せめて感じててくれれば少しはマシになるだろうと思い、
彼女の胸に誘われた手を動かしはじめる。
軽く触れた指がぷにゅんとめり込み、彼女が声を洩らす。
「や……ふぁん」
小ぶりな彼女の胸は乳房こそないが肌の柔らかさに、更にふくらみかけの固さを残した心地よい弾力を兼ね備えていた。
109駄目人間と天使7 ◆I3tGz4xJ9E :2005/06/26(日) 05:23:20 ID:cNhyFEEG
更にオレは指先を立て、爪の先で彼女の右胸の表面を滑らせた。
桃色に染まった白い肌に爪の後を追うように白い筋が着いて行きそして、その白い筋はすぐになめかましく赤く変色していく。
「はむぅ…くぅ……」
彼女はオレの爪が滑り引き出す快楽に、洩れる声を息と共に飲み殺し、
「…その調子でしっかり奉仕を…んっ続けるが良い……
 ぅん…代わりに今、余が……」
唐突に腰を上げ、押しつけるように座っていた為にぐっしょりと濡れ彼女のゆでたまごのようなつるりとした無毛の秘裂を、
半ば露出するほどにずれた白いショーツを彼女はその細い指で横にずらし完全に秘裂を露出すると、それを興奮しいきり立つオレのモノに押し当てる。
くちゅり……
と二人の粘液が触れ合う音がし、同時に
「…っん」
「…くぅ…ん」
二人の息を飲む音が重なり、
その音が完全に沈黙した瞬間、彼女は
めり…みぢみぢ……
と音が響くほど、無理やり体重を一気にオレのモノで自分を刺し貫く。
110駄目人間と天使7 ◆I3tGz4xJ9E :2005/06/26(日) 05:27:31 ID:cNhyFEEG
「…ッ」
一気におこなわれた無理な挿入に、オレのモノは狭い彼女の内壁にこすれ余った皮はめくれあがり、彼女の中の処女を引き裂いた時にひっかかり尿道が左右に引かれめくれ先端に鋭い痛みが走り、オレは反射的に奥歯を噛みしめる。
しかし、彼女に比べたら全然マシだ。
「はぁ……ぁっ…あっあ…あぁ…っう」
見上げた視線の先に映った彼女は、一気に奥まで刺し貫かれた苦痛に、
紅潮した頬に脂汗をしたたらせながら、叫びそうなのを歯を食いしばり必死に耐えるが、呼吸のために食いしばった歯が緩む度に声が洩れ出ている。
その様子に
「もう、や……」
つぐんだはずのオレの口から「もう、止めようか?」という言葉が出かかるが、
オレは度重なる学習からそれよりも彼女に負担の大きいこの体勢を何とかしようと、上体を起こし彼女の脇に腕を回し羽の付け根の下で抱き支え、腰を引き繋がりを浅くする。

「っ…くっあっ」
その時に、抜かれるモノが破れ絡みついていた彼女の膜を再びえぐり、それに反応して彼女の口から苦悶の呻きが洩れる。
オレは苦悶の呻きが洩れたその口を優しくキスで塞ぎ、
ゆっくりと両腕に抱き締めた彼女の身体を抱き上げ、加減が調節できる彼女が下になる姿勢に変えていく。
「ぅうう…ぅんっ」
その動きを察したのか、こんな状況にも関わらず腕の中で彼女はキスで口を塞がれたまま抗議の呻き声をあげる。
しかし、さすがに痛みで力が入らないのか抵抗に力がこもっていない。
オレはその抵抗にならない抵抗を無視すると、そっと彼女を横たえゆっくりと腰を動かしはじめた。
111駄目人間と天使7 ◆I3tGz4xJ9E :2005/06/26(日) 05:31:18 ID:cNhyFEEG
まず入り口近くまで戻したモノで彼女の呼吸に合わせてゆっくりと少しつづ動かして、強引に引き裂かれオレを迎え入れたため開き切らすに痙攣する入り口の襞を撫でるように刺激していく。
「あぁ…ぅん」
さすがに性感自体は発達しているのか、
彼女はそれに簡単に反応し、彼女が声を洩らすたびに純潔の血のぬめりに更に粘度のある潤いが滑るオレのモノ絡み着いてくる。
その潤いを潤滑油にオレはゆっくりと再び彼女の中にモノを押し戻す。
「っあ…っん!」
再び中をえぐられる感触に彼女の口から苦悶が洩れる。
オレはその声の度に、彼女の痛みを紛らわせるために動きを止め口付けし、みみたぶ、首筋、鎖骨と唇と舌を這わせる。
「ぅくん…はぁぅん」
その愛撫に彼女が甘い吐息を吐き、身体から力が抜けた瞬間を見計らい注挿を再開する。

「はぁ…あん」
彼女のつぶつぶがモノの頭を刺激する天井、吸い付くような奥、襞が絡み着く入り口、そして、痛いほどに締め上げる全体。
あっけなく終わりそうになる自分を抑えながら注挿を繰り返すと、
ようやくに彼女の声が、痛み以上の快楽を感じ始めたことを表し甘さを含み始める。
「ふあぅん…あああっ…くぅん」
注挿のたびに強くなるその声は、モノに与えられる温かい感触以上にオレを刺激し、あっさりと耐えられる限度を超えてしまう。
「…っもう」
オレは食いしばった歯の隙間から、辛うじてそれだけの言葉を短く押し出し、抜く間もなく彼女の中に果てた。
112駄目人間と天使7 ◆I3tGz4xJ9E :2005/06/26(日) 05:35:54 ID:cNhyFEEG
ー・ー・ー・エピローグ・ー・ー・ー

彼女の中に放出し、そのままの姿勢で荒げた呼吸を整えるオレの口をそっと彼女の唇が塞ぐ。
口内に甘い彼女の熱い息が彼女の荒い呼吸に合わせて強く吹き込まれ、それに誘われるようにオレは彼女の口内に舌を伸ばした……
「ーーーーーッ」
瞬間、オレは彼女に、口の中に進入し舌を噛みつかれ声にならない叫びを上げることになった。
ワケが判らず慌てて舌をひっこめ唇を離すと、彼女は落ち着いたままわざわざ服装を整えて立ち上がり、オレを見下ろし、
「余に全て任せよ、と言ったはずであるな?」
と不機嫌そうな目でオレを睨み、言葉を続ける。
「余のことを思いやって故にそれで許すが、その代わり次こそは余の好きにさせるのだぞ」
オレは彼女に見下ろされ、その威圧感に思わず頷きそうになる寸での所で聞き捨てならない言葉が混じっているのに気付き聞き返す。
「次?」
その一言に、彼女はあっさりと
「当然であろう?
 一度とは言うてはおらんし、余はずっと貴公を思い続けて来たのだ、まだまだし足りぬ」
その言葉の通り、当然という態度で答えた彼女は
「ちょっと待て…」
と口を開いたオレを無視し、反論は聞かないとばかりに窓から身を乗り出すと小さな羽をパタつかせ夜の闇へと消えて行った。
(もっとも隣の家に帰っただけだろうけど)

……相談して問題解決どころか新たな問題を作ってしまったオレを残して……
113名無しさん@ピンキー:2005/06/26(日) 05:38:23 ID:2OPXP6kT
GJ!ああ、萌死にそうだ。
114名無しさん@ピンキー:2005/06/26(日) 05:38:52 ID:R4M6k+BK
リアルタイムキター     張ぐっじょぶ!
1153トン ◆I3tGz4xJ9E :2005/06/26(日) 05:46:24 ID:cNhyFEEG
おはようございます。
久しぶりの投稿となります。
が……いきなりですが、最初の文を二重投稿してしまったので>>96は見なかったことにお願いします。
116名無しさん@ピンキー:2005/06/26(日) 13:00:24 ID:ig79V6O+
猫の人&3d氏
キターーー(゚∀゚)ーーー!!

<ーーー!
ところで、ひでぼんの著者は大丈夫だったのか?
ーーー>
117名無しさん@ピンキー:2005/06/26(日) 13:39:15 ID:4U0ya3fP
<!--ところで、これが正しいコメント枠です。-->
118名無しさん@ピンキー:2005/06/26(日) 17:23:06 ID:Xv6qy+3p
おまいらKANAは読んだか?
すげぇ萌えた
119名無しさん@ピンキー:2005/06/26(日) 22:32:59 ID:vP+3d9Eq
>118
小説化もした、GUMの打ち切り漫画か?
このスレ的にはいいかもね。
120名無しさん@ピンキー:2005/06/27(月) 00:37:03 ID:zsN4N043
>猫書いてる方
りょ…両方とか俺も書いてみたり…いや、無理しない範囲で。

>3dさん
GJ
次がある宣言、信じて次待ってますよー
121名無しさん@ピンキー:2005/06/27(月) 00:58:15 ID:MGidbM+G
>ろくろ首
小松左京(日本沈没の人)の作品で「ハイネックの女」というのがある。
常にハイネックの服ばかり着ている女を恋人にした男。
実は彼女は抜け首で、首にその印である痣がついていたのだった。
男は彼女によって抜け首の仲間にされてしまう。

これを都市伝説化したものがあり、「赤いマフラーの女」という。
相手が「幼なじみの少女」で、首を隠すのが「赤いマフラー」で、理由が今にも「首がもげそうな深い傷」で、長年秘密にしてたのだが結婚後にようやく明かすという話だ。
明かした途端に首がもげてしまって終わりという話や、後日彼も青いマフラーを巻いて一緒に暮らすバージョンなどもあるそうだ。

首を切断された少女。
魔法使いか何かが、彼女を哀れんで条件(あるいは期限)つきで首を繋げる。
繋げた部分を隠すために、マフラー・チョーカー・スカーフ・ハイネック等を常に首に巻く。
条件は傷を他人に見せてはならないとか。
見られたため別れるが、それは死という永久の別れ。
異類婚姻譚(○○女房とかの類)のバージョンになってしまう。
物悲しくするか、怪奇にするか、どちらも可能。

そういえば、手塚治虫の作品でタイトルは忘れたがこんなのがあった。
マヤだかインカだかで生贄として首を切られる少女。
最後に神に不満を祈ると、期限つきで幸せな生活を与えてもらえる事になる。
少女は、記憶を失ったまま現代へ現れる。
彼女を手塚治虫が拾い、アシスタントの青年と恋に落ちる。
やがて何年かの幸せな生活を体験した後、姿を消す。
元の生贄の直前の状態に戻され、首を切られて生贄にささげられる。

別に抜け首系でやらなくてもアリか。
女版フランケンシュタインの怪物(フランケンシュタインは博士の名←コレ重要)とか。
「赤いマフラーの女」はこれに幼なじみ属性が加わるのがミソ。
そう言えば、1スレに幼なじみの吸血少女と…、てなネタがあったね。
122名無しさん@ピンキー:2005/06/27(月) 01:00:06 ID:MGidbM+G
>妖魔夜行の百物語みたい
●わたしリカちゃん
就職を機に引っ越したOL。
荷物のなかから見つかったリカちゃん電話にかけてみる。
「わたしリカちゃん。呪われて三本脚になっちゃった」
人々の噂する“捨てられたリカちゃん人形の怨念”が実体化したのだった。
すると、お定まりの近づいて来る予告電話が…。
逃げても、公衆電話にかかってくる。
やがて三本脚のリカちゃんがその姿を現す。
無数のリカちゃん人形によって拘束されたOL。
が、そこに追いついたのは普通の二本足の等身大リカちゃん人形だった。
スカートをめくり、パンツを下ろすと中央の三本目の足は人形サイズであった。
服を破かれ、それでレイプされるOL。
人形サイズの三本目の脚は男性のそれより細いが、自在に曲がるので中を掻き回される。
しかも処女の彼女にとってはかなりキツイ。
膝で折り曲げて長さを半分にして倍の太さで挿入とかも。
やがて、三本目の脚を等身大に膨らませる。
「いやぁぁぁっ、裂けちゃう」
「アハハハハッ、裂けちゃえ」
そこへ助けに入る赤い足の山姥。
かくして三本脚のリカちゃん人形は、オーナーのコレクションに加わりましたとさ。
123名無しさん@ピンキー:2005/06/27(月) 01:01:05 ID:MGidbM+G
●美少女ファイル
ある女子高生の持ち物の中に、美少女ファイルという冊子がある。
何人分もの同年代の少女の写真と様々なパーソナルデータ。
最後のページには少女自信の名前が。
気味悪くなって捨てても戻ってくるし、破壊は不可能。
そしてその度に彼女のデータが増えて行く。
やがてある夜、ついに全部のデータが揃った時、本が襲いかかる。
ページが切り離され、宙を舞い、襲いかかる。
服を切り裂き、少女の素肌に貼りつき、ミイラのようにする。
あらゆるページが手の様に掴み、口の様に噛み、性器のように挿入する。
やがて少女が絶頂に達して果てると同時に、少女の包みは収縮して本の形になる。
最後のページには、新たな写真が加えられている。

●彼氏は水妖
夏、一人の女子大生が汗をかいたので、大学近くに住む彼の家へ行く。
風呂場からいびきがする。覗いて見ると水を張った浴槽からいびき。
栓を抜いて待つこと暫し、排水孔から逆流する。
水面が、青年の顔となる。
「ぶはっ。いきなり流すなよ」
「あっついから、水浴びに来たんだよ」
「…ったく、近いからって来るなよな…。
 じゃあ上がるから、ちょっと出ててくれないか?」
脱ぎ始める彼女。
「いいじゃん、一緒に水浴びしようよ」
アメーバ状の彼とそのままプレイ。

スレ違いですね。
以上、続きが書けなくて書いたチラシの裏でした。
124名無しさん@ピンキー:2005/06/29(水) 09:04:25 ID:iLWNRFkt
>>122-123
ネタ投下乙
125名無しさん@ピンキー:2005/06/30(木) 00:31:54 ID:oaNxi7kP
放課後の学校に出没する幽霊の少女。
たまたま出会って仲良くなる少年。
生前の記憶を持たない彼女、あらたな思い出を作ろうとする少年。
幽霊の能力で過去の学校生活の幻影を出し、二人でそれを体験する。
二人きりの体育祭・プール開き・文化祭・合唱コンクール・etc…
次第に深まる二人の絆。
しかし、二人に迫る暗い影とは…。
126名無しさん@ピンキー:2005/06/30(木) 00:54:05 ID:114FuuLD
ああそれものすごい泣けそう
127名無しさん@ピンキー:2005/06/30(木) 01:55:32 ID:oaNxi7kP
1.ミステリー
アルバムなどから、少女の過去を探る少年。
少女の正体は、過去に殺された女子生徒だった。
犯罪の発覚を恐れる犯人(教師)の魔の手が少年に迫る。
少女が姿を現し、犯人はパニックになり無力化。
かくして事件は解決し、少女は成仏する。
二人は涙の別れを経験する。

2.妖魔夜行
少女は、学校怪談から生まれた妖怪だった。だから過去を持たない。
やがて、少女の存在の影響で学校中の怪談が実体化してくる。
やがてスカウトの為に黄昏学園と暁学園がやってきて、学校は超常の戦場と化す。
少年を守る為に少女はその力を振り絞る。
想いが実体化して生まれた学校怪談達に対して、妖怪の存在しない学校の風景を投射して否定する。
戦いの中、力尽きて消滅する少女。
2-1
やがて少年は卒業するが、その時撮った学校の写真に偶然少女が写っている。
学校への想いから生まれたのなら、また生まれることもある。
優しく微笑む少女の姿に、涙を流して喜ぶ。
2-2
やがて何年かたち、少年は教師となって学校に赴任する。
そして放課後の教室で、二人は再開する。
128名無しさん@ピンキー:2005/06/30(木) 01:58:26 ID:oaNxi7kP
3.トラウマ
ポルターガイストとかの形なき存在からの攻撃に遭う少女。
次第に思い出されるいじめられっ子だった少女の過去。
過去のトラウマが、彼女自信の無意識の念力等で攻撃してくるのだ。
やがて少女は、いじめっ子達の幻影に立ち向かい、打ち勝つ。
満足して成仏する少女。
実は彼女は生霊だで、本体は新人女教師。
トラウマを克服した彼女は、少年と恋に落ちる。

4.霊界戦記
少女はかつて悪霊に殺され、その悪霊を打つ為に戦っているのだった。
彼女は激しい戦いの末、記憶を失っていたのだ。
悪霊の襲撃の中、少年の霊能力が目覚める!
霊能力があったから、ただ一人少女を見つけることができたのだ。
二人で力を合わせて、悪霊を倒す。
しかし、その過程で少年は命を失う。
二人は、連れ立って霊界へと旅立つ。

5.エコエコアザラク
オカルト部が幽霊の存在を嗅ぎつけてくる。
やがて、少年に行きつき、それを捕らえる。
オカルト部を支配しているのは邪悪な黒魔女だった。
少女は霊的に学校を支配しようとして、それに引かれてきた浮遊霊だった。
魔術vs幽霊の超常バトル。
少女は辛うじて勝つが、力を使い果たし、また、満足して成仏する。
129名無しさん@ピンキー:2005/06/30(木) 02:09:20 ID:oaNxi7kP
整理しよう。
1.少女の正体は?
 1.元々学校とは無関係な浮遊幽霊
 2.なんらかの理由で学校と関わりのある地縛幽霊
 3.生き霊
 4.妖怪「幽霊」

2.事件(敵)とは?
 1.殺人者等の悪意・敵意ある人間
 2.元々少女とは無関係な超常的存在
 3.少女と何か密接な繋がりのある超常的存在
 4.偶発的な事件・事故

3.結末は?
 1.少女の成仏による悲恋
 2.少女の蘇生・復活・転生(幽霊・生身双方とも)
 3.少女が幽霊のまま残る
 4.少年も死んで霊界で結ばれる
130名無しさん@ピンキー:2005/06/30(木) 22:47:07 ID:k3OmnxjQ
粗筋だけ提示されてもなあ…
131名無しさん@ピンキー:2005/06/30(木) 23:00:11 ID:j+mBIBLA
あらすじよりキャラ設定だけの方が書きやすいんじゃなかろうかって気はするなぁ。
132名無しさん@ピンキー:2005/07/01(金) 01:28:44 ID:zvgfrg9o
【始まり】
放課後、誰もいないはずの教室に入ると、そこに彼女がいた。
最近校内で噂される女子生徒の幽霊。時代遅れのセーラー服に、長い髪、この世ならざる白く透けた美しい姿。窓の外を見ているので、後向きだ。
「君は…」
あまりにも幻想的な風景に、俺は相手が幽霊だと言うことも忘れて、思わず声をかけてしまった。

【その1】
「きゃっ」
あろう事かその幽霊の少女は、突然叫ぶと机をすり抜け、三つ編のおさげ髪をなびかせて、床の上を滑るように飛んで逃げ出した。
おいおい、待てよ。驚くのは俺の方じゃないのか? そう思う間もなく、彼女は教卓の後に隠れてしまった。
そして、恐る恐る怯えた目でそっと頭を出して、こちらの様子をうかがう。が、目が合うとまたきゃっと小さく叫んで再び教卓の後に隠れる。
なんか、これじゃアベコベだ。とりあえず埒があきそうもないので教卓の後に回りこむと、彼女はうずくまってガタガタと震えていた。
「あのさ。別に何にもしないから、出てきてくれないかな」
133名無しさん@ピンキー:2005/07/01(金) 01:29:04 ID:zvgfrg9o
【その2】
「やあ。君か」
彼女はクルリと振り返り、それに合わせてカラーとスカーフとポニーテールの髪がフルと揺れ、フワリとスカートが舞う。そしてこちらをじっと見つめて、口元を微かに綻ばせる。
「教室の写真でも撮りに来たのかな?」
え、こいつ。何でそんなことを。そう思う間に、その自信に満ちた笑みは、俺の心臓をドキンと射抜く。
「な、なんでそんな事を」
「ふふっ。僕は何でも知っているよ。姿を消して学校中を見てまわってるからね」
そう笑うと、机を通り抜け、スウッと床の上を滑るように飛び、俺の眼前に近寄った。

【その3】
しかし、彼女は気付いた様子はない。俺はデジカメを構えて、足を忍ばせてそっと近寄る。今まで腰まで届く長い黒髪しか見えなかった後姿から、角度が変わったのでその横顔が見えた。
寂しげに校庭の部活を眺めるその目からは、光る雫がポロッと滴っていた。その雫は俺の心の奥にポタリと滴った。
「ねえ、君」
俺は多少遠慮がちに、彼女に声をかけた。あ、と小さく声を上げて、慌てて指で涙を拭い彼女は振り返った。泣いているところを見られて、バツが悪いみたいだ。
「その、もし良かったら、俺に涙のわけを教えてくれないかな。…その、女の子が泣いてるのを見ると、ほっとけないタチなんだ」
134名無しさん@ピンキー:2005/07/01(金) 01:29:20 ID:zvgfrg9o
【その4】
「あっちゃぁ〜。ま〜た見つかっちゃった」
彼女は軽くウェーブのかかった髪を揺らして振り向くと、てへっと舌を出して照れ隠しに笑う。
「ね、ね。今ここであたしを見た事、内緒にしてくれない?」
彼女は両手を合わせてパチッとウインクして、俺に頼む。トクンと俺の心臓が高鳴る。
「う、うん。いいけど」
俺が勢いに負けて、思わず同意してしまうと、彼女は幽霊らしからぬ陽気さではしゃいだ。
「やったーっ。ありがとう。実はさ、あたしドジなんで、しょっちゅう見つかってばっかりなのよね。あんまし噂になるのはいやなのに。
 でも良かった〜。見られたのが優しそうな人で」
なんかこう、ピンクのマシンガン、そんな雰囲気だ。

【その5】
「見ましたね〜」
束ねた髪を振り乱しながら、彼女クワッと宙を飛び俺の眼前までやってきた。その剣幕に押されて、思わず二三歩下がってしまった。
彼女は俺の間近で、端整な顔に髪を一筋口の端に掛けてジッと睨む。研ぎ澄まされた刃物の様に、怖いがとても美しい。
と、突然彼女は顔を赤らめ――幽霊なのに――ちょっと身を引く。どうやらあちらも顔が間近だという事に気付いたらしい。その上、それに慣れてもいないようだ。
「いいですか。あたしの事は黙ってて下さい」
慌てて体裁を取り繕って、言いきる。
「さもないと?」
真面目で大人しそうな娘だ。だから、ちょっとからかってみたくなる。
「…意地悪はやめてください」
彼女は憮然とした顔をする。
135名無しさん@ピンキー:2005/07/01(金) 01:40:49 ID:zvgfrg9o
これは試しに作ってみたキャラをSS形式で書いたもので、小説ではありません。
完結だの続編だのは考えておりませんし、また仮に書くとしても最初から全部書きなおします。
136名無しさん@ピンキー:2005/07/01(金) 03:38:18 ID:bvpDRPhQ
あらすじ書かれるとそれ以上そのネタでSS書こうなんて気にならないんじゃないの?
それどころか同じネタでは書きにくくなるので一種のネタ潰しにもなりうる。
題材だけ提示してストーリーは職人の裁量に任せたほうがいいと思うんだが。
137名無しさん@ピンキー:2005/07/01(金) 05:27:50 ID:DiJNnDHB
つかSSにしてから投下汁
「書けない」と言うならヤメレ
138稲庭風 ◆w/StCIWXqw :2005/07/01(金) 10:19:38 ID:cx9uH0qq
オリバ ナガリオ゙ ムッタギヅ!

− ヘルス「妖華」 −

[ミウ]

 スピーカーから、大音量でJ−POPが流れていた。
 サークルのOB連中に「童貞が許されるのは小学生までだろうが!」とかよくわからないことを言われ、
半ば強引にこの店に放り込まれてから、どれだけの時間が経ったのかはよくわからない。
 ボーイさんの会員証を持っているかとか、女の子は指名するかとか、そういう質問にどう答えたのかもあやふやなまま、
「いかにも」な店内で長椅子に腰掛けてから、僕の膝はひっきりなしに上下に揺れて、いくら止めようと思っても止められなかった。
 周りを落ち着きなく見回していると、隣に座って新聞を読んでいるオジサンと目が合う。
 その目がちょっと笑ったような気がして、僕はいたたまれなくなってうつむく。

「お待たせしました。7番の番号札のお客様」

 パーマにヒゲのボーイさんが待合室へやってきて、控えめな声で言った。
 7番……ぼ、僕だっ!?

「は、はいっ!」

 弾かれたように立ち上がって返事をすると、待合室に一瞬微妙な空気が流れた。
 また、さっきのオジサンが、新聞から目を上げてニヤっと笑う。僕は赤くなってうつむくしかなかった。

「……ご案内いたします。こちらへ」
「はい……」
139稲庭風 ◆w/StCIWXqw :2005/07/01(金) 10:21:47 ID:cx9uH0qq
 声も体も小さくして、僕はボーイさんの後について店の奥に向かった。
 すごく狭い通路を、薄着の女の子や、その子を連れた男の人が早足に歩いていくのが時々見える。
 そういう光景も、なんだか現実感がない……。
 やがてボーイさんが部屋のドアを開けると、そこには女の子がひとりいた。
 ショートカットで可愛らしい感じの、小柄な体にスケスケのガウンみたいなものを着たその子は、
僕の前までやってくると、にこっと笑った。さっきからどきどきしっぱなしの僕の胸が、さらにどきんと高鳴る。

「ミウでーす。よろしくお願いしまーす」
「こ、こちらこそっ」

 僕の声が裏返ったのを聞いて、彼女がくすっと笑う。自分の顔が真っ赤になっているのがわかったけど、どうしようもない。恥ずかしい……。

「それじゃ、ご案内しまーす」
「あ、は、はいっ」

 ボーイさんと二言三言話したあと、彼女は僕に手を差し出した。ど、どうすればいいんだろう!?
 僕が固まっていると、彼女が僕を見上げてほんの少し首を傾げる。その仕草が可愛らしくて、僕は衝動的にその手を両手で握り締めていた。

「きゃっ!?」
「えっ!? あ、す、すみませんっ」
「あ、ううん……。それより早く行きましょ、お客さん」

 慌てて離した僕の腕を、優しく取る彼女。柔らかい体と、見た目よりある胸が押し付けられて、また頭の中が真っ赤になるような感じがした。
 どこをどう歩いたか覚えてないけど、彼女に連れられて、あまり広くはない部屋に入ると、彼女は腕を解いて僕のほうを振り向く。

「それじゃ、改めてよろしくお願いしますね。聞いたと思いますけど、ウチはお店ルールのほかに、私たちにも個別のルールがあって……」
140稲庭風 ◆w/StCIWXqw :2005/07/01(金) 10:23:52 ID:cx9uH0qq
「え、る、ルールって?」
「え?」

 僕が聞き返すと、彼女はびっくりして目を丸くした。だけどルールなんて……聞いてないと、思うんだけど……。

「井戸さん、説明しませんでした? 本番禁止とか、制限時間60分とか、そういうの」
「あの、井戸さんって?」
「あ、ごめんなさい。井戸さんっていうのはさっきの黒服さんのことですけど……本当に聞いてません?」
「え、あ、ああ、そう、そういえば、聞いた気がする……そんなこと」

 確かに、会員証渡されたあとに、そういう話をしたような、しないような……緊張してて覚えてないけど。

「んーっと……いいや。脱いでもらいながら、もう一回説明します。時間始まっちゃってるし……」
「あ、そ、そうか。60分だっけ……」
「うん。脱いだものはこっちにどうぞ……。あ、そうだ。名前、なんて呼びましょうか?」
「え、名前? あの。矢島です。矢島耕介……」
「あ……ええと。それじゃ、矢島さん、かな? あ、そうだ、それと……あたし、普通に喋ってもいいですか?」
「じゃ、じゃあそれで……。普通? ああ、敬語はいいです。なんだか堅苦しいし」

 手が震えてなかなか外れないシャツのボタンに四苦八苦しながら、僕はうなずく。彼女はにっこり笑うと、
柔らかくて温かい手で彼女は僕の手をそっとどけて、代わりにボタンを外してくれた。

「ありがとう……」
「どういたしまして。……ええっと、ああ、ルールだっけ。とりあえず……制限時間は60分、本番と暴力はナシ。それから……」
「あ、ごめん。本番って?」
「ええ? 本番って言ったら本番……その、セックスそのもののことでしょ?」

 訊ね返すと、彼女はちょっと面食らった顔でそう答えた。そういえば、先輩にそんなタイトルのを見せられたことがあった気がする。
141稲庭風 ◆w/StCIWXqw :2005/07/01(金) 10:26:09 ID:cx9uH0qq
 そのあと、また笑った彼女は、さっきより自然な気がした。ちょっと僕も余裕が出てきたのかな?
そんなことを思っていた僕に、彼女がシャツを畳みながら言った。

「矢島さんて、最近珍しいタイプね。さっき手握られた時もびっくりしたけど……」
「そ、そうかな……」
「うん。うちみたいなマニアックなお店来るのに、変なぐらいウブだと思う」

 ま、マニアックなのかな、ここって。先輩に連れてこられただけだからよくわからないんだけど……。
 ベルトを外してズボンを脱ぐ。なんだかそれを見られているのは、妙に気恥ずかしかった。そのことを告げると、
彼女はくるっと僕に背を向けて言う。

「あ、ごめんなさい。でも急いでね。時間もったいないし……」
「は、はい」

 妙に足に絡みつくジーンズを籠の中に放り込んで、シャツと靴と靴下を脱ぐ。パンツに手をかけて下ろしたとき、
僕のものとは違う衣擦れの音がした。反射的に顔を上げると、目の前には白くて丸いお尻。思わずそれを食い入るように僕が見つめていると、
彼女が両手でお尻を隠して首だけ振り返った。少し目元が染まっている。

「やだ。なに? お尻マニアなの? 矢島さんって」
「あ、いえ。すみません……本物の女の子の裸、見るの初めてだから……」
「えぇ? 嘘っ。じゃ、矢島さんって童貞!?」

 くるんっ、と、彼女は今度は全身で振り返ると、パンツ脱ぎかけの僕と視線を合わせるようにかがみこんだ。ふわっと甘い女の子の香り。
うわ、おっぱいがふるんって揺れて……!

「じゃ、あたし矢島さんの初めての人になるんだ。……へぇー……」
「へぇー、って……?」
142稲庭風 ◆w/StCIWXqw :2005/07/01(金) 10:26:52 ID:cx9uH0qq
「あ、ごめんなさい。童貞で亜人ヘルス来た人って初めてだから……ちょっとびっくりっていうか」

 亜人というのは、20年ぐらい前に突然現れた異形の人々で、体のいろいろな場所が人間じゃない動物になっていたり、変わった能力を
持ってたりする。今じゃそんなに珍しい存在でもないし、物心ついたころには普通に周りにいたから、特に気にもならないけど……。
 でも、なんだか彼女のほうは、妙にうれしそうだ。

「……どうしたの?」
「んっふふー。あたしね、一回筆下ろしってやってみたかったの。じゃ、始めよっか」

 言いながら、彼女は僕の手を引いてシャワーのほうへ行くと、お湯を自分の手にかけながら、レバーを微妙に動かし始める。
 そして、ん、と、小さくうなずくと、僕の足に少しお湯をかけた。

「大丈夫? 熱くない?」
「あ、はい。もうちょっと熱くてもいいぐらい……」
「じゃ、これぐらいがいいかな。……よいしょっと」

 ちょっとぬるめのお湯をふたりの体にかけたあと、お湯が出たままのシャワーヘッドをフックにかけて、彼女は両手にボディソープを絞った。
 それをお湯で軽く伸ばすと、彼女は僕の胸に両手をくっつけて、ぬるぬると洗い始めた。ゆ、指先が微妙に動いてるのが、くすぐったいみたいなぞくぞくするみたいなっ……。

「ぴくぴくしてる。かっわいー。……あ、時間内無制限だから、我慢しないで何回でもイってね」
「は、はいっ……。あ、あの、僕はなにをすればっ……」
「いいわよ、そのままで。初心者マークの人は、プロに任せなさいって」

 くすくすっと笑いながら、彼女は僕に抱きついてくる。うわ、柔らかいっ……!? 女の子って、こんなに柔らかいんだ……。
 僕が感動していると、彼女は僕に抱きついたまま、ゆっくりと僕の背中に回った。ボディソープのぬるぬるが、柔らかく僕の体にこすり付けられる。
 その中に、なんだかこりこりっとした感触があった。彼女は僕の胸とお腹に手を置いて、背中におっぱいをこすりつけるように体を上下させている。
143稲庭風 ◆w/StCIWXqw :2005/07/01(金) 10:28:03 ID:cx9uH0qq
「んふぅ、んぅ……」
「あ、あの……はぅっ」

 彼女の手が胸を撫でた時、ほんの少しぞくっとする感触が走った。同時に下もつかまれて、途端にこみ上げてくる射精感に、反射的に息が詰まる。

「え、どうかした?」
「い、いえ、あ、ぅあ、ちょっ……!」

 訊ねながら、彼女の手は僕のをにゅるにゅるゆっくりしごいていた。やば、ひ、人の手ってこんなに気持ちいいのっ!? イ、イっちゃうってっ。

「あら、もう降参?」
「は、はいっ、すみませんっ。も、もうだめですっ……!」
「んー……。矢島さんって、最高で一日何回出したことある?」
「え、あ、さ、三回ぐらいっ……?」

 急にされた変な質問に、切羽詰っていた僕は適当に答えた。確か中学生のころ、そのぐらいしたことがあるような気がする。
 それを聞いた彼女は、僕の背中におっぱいをくっつけて、ぎゅっと僕に抱きつき、こんなことを言った。

「そっか。じゃ、大丈夫だよね。後も控えてるから一回ヌいちゃお」
「え? あ、はうぅあっ、あっ、うあぁあっ!!」

 根元から先っぽに向かって彼女の手が絞り上げるように動くと、目の前が真っ白になった。腰ががくがくして、初めて自分でやった時みたいに、
凄い勢いで精液が吹き出す。わけがわからないぐらい気持ちよくて、射精が終わるまで息をすることもできなかった。やがてドクドクがおさまると、
彼女がもう一度だけ根元から先っぽに向かって僕のを絞り上げる。中に残っているのまで搾り出される感覚。

「うぁは……っ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁっ……」
「もう、矢島さん腰引きすぎー。そんなに気持ちよかった?」
「はぁ、はぁっ……え……あ。は、はい……わけわからなくなってました、すみません……」

 言われて我に返ると、僕は彼女の腰を背後の壁に押し付けるぐらいに腰を引いて、両手で彼女の手首を掴んでいた。
 慌てて彼女の手を離してまっすぐに立とうとしたけど、腰にうまく力が入らない。よろけた僕を彼女は慌てて支えながら笑った。
144稲庭風 ◆w/StCIWXqw :2005/07/01(金) 10:29:08 ID:cx9uH0qq
「そんなに気持ちよくなってくれると、なんだかうれしいなあ……。あ、お湯かけるねー」
「あ、はい……」

 ちょっとまだぼーっとしたまま答えた僕の体に、ぬるめのシャワーがかけられる。ゆっくり丁寧にボディソープを落としながら、
彼女は僕の顔を覗き込んで楽しそうに訊ねた。

「矢島さん、下の名前なんだっけ?」
「え……? 耕介ですけど……」
「そっか。じゃ、今の間だけ耕介君って呼んでもいい?」
「は、はい。別に……」
「ありがと。それじゃ耕介君、そこのマットの上にうつぶせになって、ちょっと待っててくれる? あ、滑るから気をつけてね」

 ざあっ、と、お湯をマットにかけると、彼女は洗面器にもお湯を溜めて、そこに何かボトルの中身を搾り出してかき混ぜ始める。
 僕は、素直に彼女の言うことに従って、マットの上にうつぶせになった。柔らかいような硬いような微妙な感触で、お湯のせいかほんのり温かい。

「耕介君、ローションかけるよ」
「あ、はい……」

 返事をするのと同時に、背中から腰に向かってとろとろと温かいものがかけられた。続いてすぐに、体の上に彼女が覆いかぶさってくる。
 うっとりするような柔らかさと、ちょうどいい重み。それが、石鹸よりさらに気持ちいいぬるぬるに包まれてこすり付けられると、思わず溜息がもれた。

「さっきよりもっと気持ちよくするから、楽にしててね……」

 耳元で囁かれると同時に耳にキスされて、ぞくっと背中が震えた。ぬるっと彼女が体を滑らせると、柔らかい重さが背中の上を移動する。
 太腿やお尻の上が時々くすぐったいのは、彼女の毛がこすり付けられているせいだろうか。と、彼女が今度は肩にキスをした。
 そして、そこからぬらーっとした感じのものが、背筋を滑り降りていく。ぞくぞくぞくぞく、背筋の震えが止まらないっ……!

「くはっ、は、う、は、ふっ、は……」
「声出しても大丈夫よ耕介君。そのほうがあたしも燃えるし……」
145稲庭風 ◆w/StCIWXqw :2005/07/01(金) 10:31:11 ID:cx9uH0qq
「だ、だけどっ……!」

 そんなのは恥ずかしすぎる。女の子に体を舐められて声を出すなんて、そんなことは……。
 背中や腰を嘗め回したあと、彼女が僕の背中の上でぬるぬると方向転換をして、太腿の裏やふくらはぎを舐めても、僕は必死に我慢した。
 おっぱいを僕の足にこすりつけながらかかとをなめ、足の指までしゃぶられて、だんだんわけがわからなくなってくる。

「うあ、は、うっ、くぅ、ううっ……」
「もう、耕介君ったら、我慢しないでいいって言ってるのに……。ようし、こうなったら意地でも声出させるからね」
「は、うっ……!?」

 ぬるっ、と、僕の背中の上で彼女がまた体を滑らせた。一瞬遅れて、ぐいっと僕のお尻を彼女が割り開く! ちょ、ちょっ……!

「そ、そこはっ、そんなところっ……! 汚い……!」
「大丈夫大丈夫。さっき全部洗ったじゃない。本当は有料なんだけど、今日はサービス……って言うか意地かな。ふふ、受けてみろ耕介君。ミウのアナル舐めだぁ!」
「まっ、うあおあっ!?」

 ふざけた調子で彼女が言った次の瞬間、ぬらっとした感触が信じられないところを襲った。そして、同時に信じられないぐらいの変な衝撃が、僕の背中を駆け上る。

「うあっ、は、あ、おああっ、うあ、ううっ、おおうっ……!」
「んっ、ふっ、んふぅんふ、んんっ、んふぁん……」

 変な気持ちが、出す穴であるはずのところから体の奥へ強制的に潜り込んでくるような感じだった。
 ぬるぬるのマットの上で体が勝手に反り返って、声が出るのを抑えられない!

「あうおっ、ああっ、ああああっ!」
146稲庭風 ◆w/StCIWXqw :2005/07/01(金) 10:32:05 ID:cx9uH0qq
「んっ……ふ、ぷぁは……」
「うぁ……くはっ」

 しばらく後、彼女が顔をあげるのと同時に、僕はマットに突っ伏した。さっきイったときよりも息が荒くなって、頭がぼーっとしてる……。
 朦朧状態の僕をひっくり返しながら、彼女は少し恥ずかしそうに笑って言った。

「あっはは。ごめん耕介君、ちょっとやりすぎた? あたしったら意地になっちゃって……」
「はぁ、はぁ、いえ……」
「でも耕介君って我慢強いねぇ。あたしの舌でリップされてるのに、本当に声出さないんだもん」
「え……?」

 まだぼんやりとしてよくわからないけど、彼女の言葉がなんとなく心にひっかかって、僕は思わず声を上げた。
 ぬるぬるっ、と、体を滑らせて僕の胸の上に乗ると、彼女は僕の目の前で大きく舌を出す。僕のよりも少し厚くて、端のほうへ行くに従って
薄くひらひらした感じになっている舌。と、その舌先から、いきなりにゅうっと2本の何かが伸びた!?

「うわっ……!?」

 びっくりして目を丸くする僕の前で、うにうにとその2本の触手だか角だかわからないものを少し蠢かせた後、彼女は舌を引っ込めると、屈託なく笑う。

「びっくりした? あたし、舌がウミウシの要素持ってるの。ウミウシ知ってる? なめくじみたいな形なんだけど、住んでるところは海で、ずっと綺麗な生き物」
「あ、う、うん……見たことはないけど……」
「そうなの? ペットショップとかに売ってるから、一回見てみて。慣れると結構可愛いよ? 体に乗せても、リップはしてくれないけど」
「そ、それは……うあっ、は……!」

 ぬるっ、と、体を引くと、彼女は舌を出して、ぺとりとそれを僕の乳首の上に落とした。さっき背中にされていたときよりもそれは強烈に吸い付いて、
吸い上げるような動きまで伴ってくる。同時に、彼女の指先はぬるぬると腰やわき腹、太腿あたりを這い回り、下腹では僕のをぬるぬるとこね回してっ……!

「あうううっ、で、ま、またっ……また出るっ……!」
147稲庭風 ◆w/StCIWXqw :2005/07/01(金) 10:33:05 ID:cx9uH0qq
「ん……」

 僕が悲鳴を上げると、彼女は動きを止めて体を起こした。ぬちゃ、と、音を立てて、僕と彼女の体の間にたくさんの糸が引く。
 僕のものは触れられてもいないのにびくびくと震えて、本当にもう決壊寸前だった。でも、そこでやめられると、その分せつなさがこみ上げてくる。

「はあっ、はあっ、も、もう……」
「うん……でも、手の次がお腹じゃ、ちょっと寂しいし……。やっぱり、せっかく見せたんだから、あたしの舌味わって欲しいもん」

 言いながら彼女はまた舌を出すと、後ろに下がって僕の股間に顔を伏せていく。そして、両手で軸を握ると、先っぽに舌をかぶせた。
 筆舌に尽くしがたいほどいやらしい感触が、ぬらりぬらりと僕の先っぽを包み込んで弄ぶ……っ!!

「はおうっ……! うあっ、はっ、お、あああうっ……!」

 そこから快楽を直接流し込まれているような感じだった。彼女の舌が動くたびに腰が勝手に跳ね、僕のものは激しく脈打つ。射精してしまわないのは、
根元をぎゅっと押さえられているせいだろうか。やがて、彼女は舌で僕のものを完全に包み込むと、顔を前後させ始めた。

「んっ、んー……っ、んーっ、んふー……っ」

 ビデオで見たのより、ずいぶんゆっくりな動き。でも僕のはぬるぬるに包み込まれ、締め上げられ、吸い上げられて……っ。

「うわっ、はっ、あ、ぐ、うわぁああっ!!」

 爆発した僕のを、彼女の舌が吸い上げる。さっきの手と比べ物にならないぐらいの勢いで僕のものは脈打って、大量の精液を吐き出した。
 もしかしたら、彼女に吸い出されているんじゃないかと思うぐらいの量を、僕が彼女の口の中に注ぎ込んだ後、彼女はにゅるにゅると顔を引いて、
大きく口を開けてみせる。そこには、彼女の舌と、たっぷりの精液。ぴちゃぴちゃとそれを舌で彼女がかき回すと、口の端からそれが少しずつこぼれる。
やがて口を閉じ、彼女がそれをこくりと飲み込むまで、僕はそれから目を離せなかった。

「ぷぁ……いっぱい出たね、耕介君。それじゃ、すぐできるみたいだし、筆下ろししよっか。もう15分しかないし」
148稲庭風 ◆w/StCIWXqw :2005/07/01(金) 10:34:44 ID:cx9uH0qq
 舌なめずりしたあと口を拭うと、彼女は僕の上に覆いかぶさるように四つんばいになって言う。
 僕のものは、彼女が言うとおり、いつの間にかすっかり回復していた。それを彼女は優しくつかんで、ゆっくり腰をそこに下ろし始める。
 え、えっ!?

「あ、あのっ!?」
「ん? なに? ……操立ててる人とかいる?」

 僕が驚いて声を上げると、彼女はぴたりと動きを止めて首をかしげた。でも、もう先っぽは熱くて柔らかい何かに触れている。
 とくん、とくん、と、そこが脈打っていることすら感じられるほど敏感になった先っぽ。だけど……。

「本番って、だめなんじゃ……」
「大丈夫よ。監視とかされてるわけじゃないし、黙ってればバレないから」
「で、でも」
「……いいでしょ?」

 触れ合った部分が熱い。心臓が、ものすごく高鳴っていた。それに合わせて、がちがちに張り詰めたものが脈打ち、ほんのわずかに彼女の入り口を擦って、
小さく粘りつくような音を立てている。じっと僕を見つめる彼女の目は切なそうに潤んでいて……僕は、ひとつ、うなずいた。

「んふ……んああぁっ、は、んんんんっ……」
「う、あっ、はぅううっ……!」

 うなずき返した彼女が腰を沈めると、僕のものは柔らかく粘りつく熱いぬかるみの中に飲み込まれていった。彼女はぺたんと僕の腰の上に座り込み、微笑んで訊ねる。

「はあっ……。耕介君、卒業おめでとう……。どんな気分?」

149稲庭風 ◆w/StCIWXqw :2005/07/01(金) 10:35:29 ID:cx9uH0qq
「どんな、って……その……っ、き、気持ちいいです……」
「どんな風に?」

 僕の腰の上に両手を付いて、彼女が僕に顔を近づける。その時の彼女の表情は、どきっとするほど色っぽかった。微妙に脈打っている彼女の中で、
僕のものは暖かさに包まれて、同じように脈打っている。呼吸に合わせて中がゆるゆると収縮しているのも、強烈じゃないけど気持ちいい。

「その……なんだか、包まれてるみたいで……。ちょっと、感動っていうか……」
「ふうん……。ふふ、あたしも気持ちいいよ。おもちゃのサービスはたまにあるけど、本物は久しぶりだし……」
「そ、そう……うわっ、あっ!?」

 彼女が気持ちよさそうに目を細めると、ぎゅっと僕のものが奥へ絞り上げられた。腰の奥からみんな引き抜かれそうな快感に、僕はまた声を上げてしまう。

「はぁっ……。それじゃ動くね、耕介君……」
「は、はい……。あ、くっ……!」

 彼女がゆっくりと腰を上げると、ただ入れただけの時には意識しなかった襞が、僕のものをこすり上げていく。今度こそ根元から引き抜かれそうな快感。
 三回目じゃなかったら、たぶん今ので出てたな……。そんなことを思っていると、すとんとまた彼女の腰が落ちてくる。

「んっ、んぁ、あ、んうっ……」
「うぁ、はっ、く……!」

 目を閉じ、唇を少し開いて喘ぐ彼女は、すごく綺麗だった。上下、という感じだった腰はだんだん弾みがついて、リズミカルに僕の上で跳ね始める。
 柔らかい襞が僕をしごき下ろし、絞り上げる感触に、急速に高まる僕。

「はっ、あひっ、んっ、ふ、くぅ、んんっ!」
「あぅ、くっ、は、ミ、ミウさん、僕、僕もうっ……!」
「あっ、や、だめっ、あたし、あたしもうちょっとっ、もうちょっとだからっ! ……ひんっ!」
150稲庭風 ◆w/StCIWXqw :2005/07/01(金) 10:37:44 ID:cx9uH0qq
 切羽詰った掠れ声で言いながら、彼女は自分の茂みの中に指を滑り込ませると、高い悲鳴を上げた。
 僕のほうはとにかく歯を食いしばって、彼女の気持ちいい感触に耐える。だけど、彼女の中はだんだん細かく締め上げてきたりで、僕をどんどん追い詰めた。

「だ、だめですっ、僕、本当にもう、ミウさんっ!」
「ひうっ! あっ、あっんあっ! いいっ、いいよっ、出してっ、残ってるの全部ぶちまけてっ! あたし、それでたぶんっ……!」
「は、はぃうあっ、く、は、ぅううううっ!!」

 もう三回目なのに、僕のものは血管が切れそうなほどの射精の脈動を起こして、彼女の奥に精を吐き出した。
 短時間に何回も出したせいか、少しひきつれるような痛みもあったけど、それ以上に気持ちいい。
 注ぎこむごとに、彼女は悲鳴を上げて震えていた。それに見とれていると、急に彼女の中が強烈に収縮する。

「あっ、あっ、あつっ、熱いっ、くぅん、んんんんんんーっ!!」
「あぅ、お、くぁああっ……!」

 たくさんの小さな柔らかい手に握り締められているみたいな不思議な感覚に、僕も彼女と一緒に悲鳴をまた上げた。一瞬遅れて、僕の上に彼女が倒れこんでくる。
荒い息を吐きながら、彼女は僕にキスをしてくれた。目を閉じてそれを受け止めると、口の中に彼女のあの舌が忍び込んでくる。

「んっ、んふ、ぅ……っ」
「んぁ、はぅ、む……」

 絡み付いてくる舌が、僕の口の中で踊る。遠くでタイマーの音を聞きながら、僕はそのキスに酔っていた。
151稲庭風 ◆w/StCIWXqw :2005/07/01(金) 10:41:01 ID:cx9uH0qq
 その後は急いでシャワーを浴びて、服を着た。正直、どうしたのかはあんまり覚えていない。彼女と腕を組んでお店の入り口まで行って、お金を払って……。
 そして、僕の手の中に残ったのは、白いプラスチックの会員カードと、彼女の名刺。
 財布の一番奥に入れているそれを見るだけでも、腰の奥が疼いて大変なことになるけど、バイト学生の給料じゃ、あんなところへはそうそう行けない。
 もう一回行く日を夢見て、僕は今日も額に汗している……。

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 とりあえず以上。冗長スマン。
 じゃ。
152名無しさん@ピンキー:2005/07/01(金) 12:37:51 ID:BrvQsHEI
なにこのかわいい風俗嬢
GJって言葉しか出ねぇよ
153名無しさん@ピンキー:2005/07/02(土) 00:49:30 ID:bCc4GAmC
人外要素が舌だけでもイイ(・∀・)!!…と感じることが分かった。GJ!
154ほしをみるひと:2005/07/02(土) 21:45:35 ID:Q4djIMBO
「ずいぶん待たせてくれるものだな」
二人が四階に上がると、先ほどの女性のあきれた声が右手の教室から聞こえてきた。
その教室(3−A)の後部ドアは開きっぱなしになっている。件の相手はそこにいるようだ。
「この教室の中では休戦だ、少なくともそちらから手を出さない限りは。さあ、交渉を始めようか」
教室の中は無数の水晶で埋め尽くされていた。階段で見たものとは違う透明な結晶越しに差し込む夕日を浴びて、先ほどの女性が机に浅く腰掛けていた。
すらりとした長身に女性らしい曲線を描くプロポーションと、すっきりと通った鼻梁、完璧な左右対称を描く顔に尖った頤。切れ長の目はキツイ印象を与えるが、それすらも凛々しさを感じさせる。
加えて背中までの長髪の黒、抜けるような肌の白、形の良いくちびるの赤のコントラストが女性の存在感をくっきりと浮き立たせていた。
ひとことで言うと、美女。
だが、夏箕はそんな女性をろくろく見てはいなかった。視点は彼女の背後、まるでショーウィンドウのような水晶柱に釘付けになっていた。
一見幻想的な舞台背景のように見えた「それ」は、次の瞬間にはそんな生易しい幻想を打ち砕いていた。

なぜ、ショーウィンドウのように見えたのか。
それは内部にマネキンを抱え込んでいたからである。

へたり込む男子生徒、泣き叫ぶ女生徒、傍の人を盾にしようとする生徒、もっとも窓際に寄っている教師。
口をあけた魚人、手を伸ばす魚人、後ろから押し倒された魚人、それを踏み台に飛びかかろうとしている魚人。
人が、バケモノに、追い回されている。
子供の定番の悪夢が具現化したような阿鼻叫喚の惨劇が、ケースの中のヒトガタによって再現されていた。
だが、これは本当にマネキンなのだろうか。はためく衣服の裾も、引きつった表情も、今まさに滴り落ちようとする魚人の唾液も、作り物とは思えないほど生々しい。
我知らず、夏箕ののどが鳴る。
「どうした、早く入って来い、立ったままでは落ち着いて話ができない」
美しい女性は、「それ」を背にして無造作に二人を差し招いていた。
155ほしをみるひと:2005/07/02(土) 21:46:36 ID:Q4djIMBO
「なつみ、入ろ」
音色がそっと背を押す。
冷凍庫の内壁にへばり付いた氷塊のような足元の水晶をよけながら、夏箕は教室に入った。音色が続く。
入り口の敷居をまたいだ瞬間、音色は訝しげに眉をひそめた。だが、そのまま教室に入る。
それを見た女性は一瞬、ほう、と感心したような顔を見せ、唇の端だけを吊り上げてほくそえんだ。
それを見た夏箕の背筋にゾクリと衝撃が走る。
造詣の美しさゆえに禍々しさすら感じさせる女性の笑みに腰が引けていた。
「まあ、その辺に腰掛けてくれ。まずは自己紹介、か?」
女性はそんな夏箕には目もくれず、音色を見ながら顎をしゃくった。あたりには乱雑に机と椅子が散乱している。それを好きに使え、と指図しているようだ。
適当に腰掛ける。
「先に、聞いていいか」
気圧されまいと夏箕が問いかける。それでも声の震えは隠し切れなかった。
「これ、アンタがやったのか、この、中に入っているのは」
「人間とインスマウス人だ」
こともなげに言い放つ女性。インスマウス人とはどうやら半魚人のことらしい。その、人もバケモノもまるで野菜や果物であるかのような口調に夏箕はかっとなった。
「アンタ人間だろ?人もバケモノも見境なしで皆殺しかよ!」
対する女性は煩わしげにため息を吐く。
「落ち着け一般人、モノには順序がある。人に名を聞くのだから先に名乗ろうか。私は玻璃。さる組織の異能者だ」
「俺は・・・」
「一般人に用は無い」
玻璃は夏箕を見ようともしなかった。ただ音色をじっと見ている。
「ボクは音色。お察しのとおり人間じゃないから」
音色も簡潔に名乗る。どこを見ているのか分からない散漫な目つきは内心を掴みづらい。
一応、自己紹介は終わった。もっともただ名乗っただけだが。
互いに手札をさらすことを避け、相手を見極めようと目を光らせあう。
友好的とは言いがたいファーストコンタクトだった。
156ほしをみるひと:2005/07/02(土) 21:47:16 ID:Q4djIMBO
「では、本題に入ろうか。お前は何ができる?」
玻璃の問いはいたってシンプルだった。―お前は役に立つのか―ただ、それだけ。
「それは夏箕に聞いたほうがいいんじゃない?ボク、嘘をつかないなんて約束して無いもの」
音色の目がすっと細くなる。玻璃の一直線に切り込む問いを、はぐらかす形でいなす。
部屋の温度が下がった。
「ほう、貴様の『手を組みたい』相手への礼儀とはそういう態度なのか、これだから薄汚いバケモノは」
「勘違いしないで、そう言ったのはあくまで夏箕、ボクはそれに従っただけ。
ボクとしては、うるさい小物にうろちょろされると目障りだから、先に潰しておければそれで十分なんだよね」

―てめーが這いつくばって舎弟にしてください言うんなら考えてやるよ。調子こくなよこのボケ。喧嘩上等。シメるぞゴルァ―
二人のやり取りはまさにこれである。弱みを見せたほうが負けの相手を呑んで掛かる態度。

互いが互いに接触をもった理由は「相手がよくわからない勢力」だったからであり、「放って置くと何をされるかわからない」という警戒心ゆえである。
だから「下手に暫時同盟を組んで寝首を掻かれるよりも、さっさと始末しておいたほうが良い」そう判断したのも無理からぬことである。
ましてや、気に食わない相手側がそんなそぶりを見せたのならば、ふたりには戦わない理由などない。

音色がじりじりと爪先に力を入れる。玻璃もまた机から離れてすっと立ち上がった。視線と戦意ががっちりと絡み合う。
キイィィィンという耳鳴りがし、乱立する水晶もビリビリと震えだす。
一発触発の空気が夕暮れの教室を包み込んだ。
後はただ、開始の合図を待つだけだった。
「音色は魚を分解して黒い穴に放り込むことができた。あと、俺を担いで一瞬で一階から二階へ運んだ。その時羽が生えてたな。」
ただ、ここにはもう一人、空気の読めない男がいた。
腕を組んで首をかしげながら、ふたりの間ではとっくに終わっていた話題を蒸し返す夏箕。あくまで真剣だ。真剣に回想していたため、場の空気に気付いていない。
「な、なつみぃ・・・」
戦闘態勢をスカされて、がっくりと崩れ落ちる音色。同じく相手が気勢を崩したせいで唖然として見つめる玻璃。
一瞬で場が白けた。
157ほしをみるひと:2005/07/02(土) 21:48:40 ID:Q4djIMBO
「どうした音色、なにつんのめってるんだ?緊張してたのか?お前らしくないぞ」
ぽんぽん、と音色の震える肩を叩く夏箕。その声と仕草にはいたわりと気遣いが満ちていた。
・・・だからこそ、気まずい。「敵対関係ほぼ決定の相手の前で和んでる場合じゃないってわかんないのなつみ!」という言葉すらしゃべれないほど、気まずい。
「もしかして『俺がびびってまともにしゃべれないんじゃないか』って緊張してたのか?俺に説明しろ、って言ったのお前だぞ、
せっかく音色の役に立てる大事な場面なんだから、たとえバケモノと一緒に人間まで殺っちゃう女相手でも、びびってばっかりいられないからな」
にっ、と笑って見せる夏箕。

これはあれですか、何かの罰ゲームですか『一度つまずいたバナナの皮でもう一回転ぶ』って奴ですか?
ああ、嫌女が呆然としているのがわかるよぅ。
音色はもう、うつろに笑うしかできない。

「大丈夫、人間と人外でも、儀式の阻止っていう目的は一致しているんだ。話し合えばきっと分かり合えるさ。
弱い俺でもお前の手助けができるんなら、結界とか張れる超能力者と組めればきっと勝てるさ・・・ちょっと悔しいけどな」
照れ臭そうに、でもしっかりとした口調で語る夏箕。
音色はすでに口の端から魂が出てしまっている。

いやなんというか、今から殺しあうところだったんですけど!あと、聞いてるこっちが恥ずかしいんですけど!
っていうか玻璃とかいうヤツ、こっち見てクスクス笑ってるんですけど!

「でもほら、手を握っててやることぐらいはできるぞ俺でも。
お前が悪いヤツじゃないってことも、いくらでも証言してやれるから。
あと、どんな時でもお前の味方だって、そう決めたんだ」
そういって音色の手を握る夏箕。

『一度はずしたネタを再度丁寧に説明されたら、聞いているほうが恥ずかしい』
なんというか、まあ、そういう状態である。
158ほしをみるひと:2005/07/02(土) 21:49:17 ID:Q4djIMBO
重ねて言うが、夏箕は真剣であり、悪気もからかいも一切ない。思わず青臭いセリフが混じってしまうぐらい本音で語っている。
だからこそ、気まずい。励まされ(?)ている音色も、それを見ている玻璃も赤面モノである。
戦場の空気を、一般人の感覚が押し潰した。そんな説明がしっくり来る現象だった。
――空気読めよ、このすっとこどっこい。
ふたりの戦闘少女の胸中は、図らずも一致していた。

「ひとつ、訂正しておくが」
幾分柔らかくなった口を玻璃が開く。
「私は誰も殺してはいない。あの能力は、あくまで結晶化を行い中身を封じるものだ。中で皆生きてるよ」
意識がなければパニックを避けられるし、事後処理を簡略化もできるしな、そう付け加える。
―そこの男に免じて休戦にしてやる―玻璃の態度はそう語っていた。
「自身の能力」という伏せカードを自ら表にして見せることで、譲歩を表現する。
「結界の専門家、ね。なら提案なんだけどさ、学校を取り囲んでいる結界に穴を開けられないかな。そこから、生き残りを逃がす」
―まあ、そっちがその気なら、いいけどね―音色は椅子に座りなおし、意見を述べた。
玻璃は訝しげに眉をひそめ、答えを返す。
「少なくとも三つの点で却下。第一に危険すぎる。一般人を多数抱えて移動するとなれば当然目立つ。そこを襲撃されたらひとたまりもない。
移送回数を増やすのも同様の理由で論外だ。音色とかいったな、お前は催眠や瞬間移動はできないのか」
「今のボクには催眠は無理。移動は・・・一人を抱えるのが精一杯だね。それに、こんな重そうなのは無理」
乱立する水晶柱を見ながら答える音色。そうか、とうなずく玻璃。そのまま説明を続ける。
「第二に不確定すぎる。勘違いさせて悪いが、私は別に結界の専門化というわけではない。外壁をこじ開けられる保証はないな」
平然と言い放つ玻璃。内容に威厳はさっぱりないのに態度はやけに偉そうだ。
「できません、って胸を張ることかよ」
思わずジト目でツッコむ夏箕。それを尻目に玻璃は、
「第三の理由は回りくどすぎることだ。直接大本を叩くほうが早い」
と、強気に微笑んだ。
159ほしをみるひと:2005/07/02(土) 21:49:52 ID:Q4djIMBO
「何か補足なり訂正なりはあるか、音色とやら」
そういって、じっと音色の顔を注視する。
「アンタにその自信があるのなら、それでもいいよ」
音色はどうやら不満げだ、不承不承という感じでうなづく。
「待ってくれ、中の人の命に別状はないのか、長時間このままだと後遺症が出たりは?敵を探しているうちにココが襲われたりはしないのか?
念のために外の結界とか言うのを外せるか調べたほうがいいんじゃないのか」
夏箕が音色を気遣うように見やりながら口を挟んだ。
その内容を聞くうちに玻璃の表情が険しいものへと変わってゆく。
「お前、まさか本当に一般人なのか?そこの人外と契約を交わした魔道師の類ではない、と」
「いやだから、俺は無力な一学生だってば。音色とはここで会って助けられて、『手伝ってくれたら命は助けてやる』って言われて同行してるんだけど」
あっけらかんとした回答を聞いて、玻璃はため息をついた。
「何にも知らないんだな。いいか、結界は敵が張ったものだが、ある意味こちらにとってもメリットはあるんだ、それは・・・」
「そんなことより、アンタはボクに協力してくれるの?」
気色ばむ玻璃に音色が言葉を滑り込ませた。一見何気ないが、どこかひやりとしたものを孕んだ口調。
二人の女はじっとにらみ合った。
「・・・いいだろう」
先に目をそらしたのは玻璃だった。
「そこの一般人、夏箕とか言ったか。ソイツが心配でもある、同行しよう」
「・・・それはどうもありがと」
音色の口調もそっけなかった。
「じゃあ、少なくとも今は仲間って事でいいよな。よろしく頼むよ、玻璃」
ひとり夏箕だけが、ほっとしたように笑いかけていた。
160ほしをみるひと:2005/07/02(土) 21:50:43 ID:Q4djIMBO
三人、正確には一人と二人はこの順番で部屋を出、そのまま中央階段を下りた。
「詳しい打ち合わせはしないで良いのか?」という夏箕の問いに、「先に見せたいものが三階にある」とぶっきらぼうに言った玻璃がさっさと歩き出してしまったのだ。
そのまま北校舎へと歩いていく玻璃、やや遅れて続く二人。
無言でひたすら先を進む玻璃に二人はますます遅れだし、校舎の中ごろまで来た時、堪り兼ねて夏箕は口を開いた。
「なあ待ってくれ、見せたいものってなんだ、もう少しゆっくり歩いてくれてもいいんじゃないか」
その声に玻璃は足を止め、くるりと後ろを振り向く。
「ここらでいいだろう。はじめようか」
夏箕には何を言っているのかさっぱり意味がわからない。代わりに音色がスッと前に踏み出し、夏箕を背後にかばった。
「なつみ、コイツさっき『協力してくれるのか』っていうボクの問いに『同行する』って答えたでしょ。・・・つまり、そういうコト」
音色はやや腰を落とし気味にし、いつでも飛びかかれるように身構える。
玻璃は無造作に立ち尽くすだけだったが、その視線は射抜くように鋭い。
夏箕はただ、うろたえていた。
「待ってくれよ、争う理由なんてないだろう。敵は半魚人とその元締めじゃないか」
「理由はある」
玻璃は夏箕をちら、と見やった。すぐに音色へと視線を戻す。
「音色、お前は何故、生徒を逃がすことにこだわった?あの部屋の出入り口にはエルダーサインを仕込んである。インスマウス程度では進入できん。気付かなかったとは言わせないぞ」

エルダーサインとは『旧神の印』とされる歪んだ五芒星の形をした石である。由来となる「旧神」の詳細は掴めてはいないが、ある程度までの「外から来るもの」に対しては絶大な効果を持つことが経験上わかっている。
玻璃は会談の場をあの教室にしたことで、二人の力量を探っていたのだった。
161ほしをみるひと:2005/07/02(土) 21:51:21 ID:Q4djIMBO
「夏箕、君と音色が印を踏み越えてきたときは、内心小躍りしたものだよ。エルダーサインをものともしない異種を従えた魔道師が同盟を申し込んできた、とね。
実際君は度重なる私の挑発にも己を失わず、あくまで協力をしよう、争いを避けようと働きかけてきた。外側の存在と交わった者としては異例と言っていい良心的な人物だとわかったよ。
・・・もっとも、見ていて少々気恥ずかしかったがね」
玻璃は小さくわらう。それは夏箕とさして年の違わない、普通の少女のような、前回の禍々しさとは無縁の笑みだった。
笑みを収め、言葉を紡ぐ。
「だが、君が音色を支配していないというのなら話は別だ。そのバケモノは上の一般人を餌にして敵をおびき出そうとしていた。
加えて以後の行動決定に際し重要な要素となりうる『あの部屋の安全性』を君に説明もしなかった。
断言していい、君はソイツに利用されている。だまされていると言ってもいい。
立場と戦力が明らかな敵と、味方を装い巧妙に取り入る未知数の第三勢力。果たして危険なのはどちらだろうね。
・・・私には人の世を守る人間として、無知で善良な一般人を保護する義務がある。
これが君に見せたかったもの、事実、だ」
夏箕の目の前で、音色の背が小刻みに震えていた。
夏箕はその背中に、手を添えることはできなかった。

「で、見せたいものって、それだけなの」
その言葉を吐き出したとき、音色の震えはもう収まっていた。
「もうひとつあるな。バケモノ、お前にあの世を見せてやるよ」
それはこの上なくきっぱりとした宣戦布告だった。
ひんやりとした空気が、霜でも降りやしないかというほどに冷えていく。
「なつみ、壁際までさがってて。・・・ケガしたくないでしょ」
音色は振り向かない。目配せすらしない。玻璃の言葉を否定しない。
中でも三番目の事態は夏箕をひどく動揺させた。
一歩、二歩、とよろめくように壁際へと後ずさる。

どん

夏箕の背が壁に触れたとき、音色は動き出していた。
162ほしをみるひと:2005/07/02(土) 21:53:04 ID:Q4djIMBO
夏箕から見て、二人の距離は約10メートル、飛び掛るには一息では遠い間合いと言えた。
かといって、音色が背負っているリュックからフルートを取り出し、吹き鳴らすことができるほどの余裕があるとも思えなかった。
とするならば、飛びずさって間合いを広げるか、あるいは開き直って全力で距離を詰めるかしかないだろう。
夏箕は、できたら音色はこのまま逃げて欲しかった。
音色に怪我なんてして欲しくないし、自称『人の世を守るもの』を打ち倒したり―それは人間と敵対するものである、という何よりの宣言である―して欲しくなかった。

そして音色は、後者を選んだ。

対する玻璃は立ったまま動こうとはしない。仕掛けてくるのを待ち受けるつもりのようだ。
彼我、7メートル。
その地点で空気が変わった。キィン!という硬質の音と共に音色の身体が青く透明な結晶に覆われる。それは上の階で見たオブジェと全く同じものだった。
だが、それも一瞬のこと。
再び響いたキィィン!という耳の痛くなるようなカン高い音と共に、音色を被っていた水晶膜は剥離し、粉々になり、キラキラと輝きながら消えていった。
「ボクにそんなの効かないよ!階段でも失敗したでしょ!」
勝ち誇るような音色の叫びを聞いた夏箕は、ああ、やっぱり階段で感じた冷気は音色の嫉妬のせいだけではなかったんだな、と納得した。

ヒュン

音色の叫びに重なるように、風切音と銀光が走った。身を深く沈めた音色の頭上を尖った何かが通り過ぎる。
玻璃を見ると、振り切った空の右手と、振りかぶる左手に刃先を挟まれたナイフが見えた。
一体いつの間に取り出したのか、と思うまもなく、第二投が、伏せる音色に放たれる。
163ほしをみるひと:2005/07/02(土) 21:53:40 ID:Q4djIMBO
ダンッ

クラウチングスタートの姿勢から、音色は全力で踏み切る。その跳躍は迫るナイフの上を通り過ぎる形での回避、前進の動作となり、ナイフは空しく廊下に突き刺さった。
改心の一手に見えた音色の跳躍。だが、一体どこに隠していたのか、玻璃の手にはまるで手品か魔法のように新たなナイフが現われる。そのまま投擲。
新たな銀光は、両足が完全に地から離れている音色へと迫った。

バサッ

人間には回避不能の投擲は、人外には必中とはなりえなかった。音色の背から生えた漆黒の翼が空を打ち、その身をより高く、天井付近まで押し上げる。
ナイフは三度空を切った。
そのまま音色は玻璃へと突撃する。差し渡し三メートルの翼長は狭い廊下の幅一杯に広がっているため、一見狙ってくれと言わんばかりだが、その実命中は絶望的である。
直線的に飛来するナイフは当たり判定が小さいのだ。ほんのわずか軌道からずれることができれば、それだけで無効化できる。幅こそ大きいがそこはスリムで小柄な音色である、
空中での自在な機動が可能であれば、高度を変えるだけで完全回避が可能なのだ。
なにより、これ以上の投擲を許すつもりはない。
人外の翼は先ほどのナイフに勝る速度で空を駆け、眼前へと迫った目標への直接攻撃を可能にしていた。拳を構える。
「甘いよ人間!」

ゴッ

鈍い音が、廊下一杯に響いた。
164ほしをみるひと:2005/07/02(土) 21:54:18 ID:Q4djIMBO
「か・・・はッ」
蛍光灯をぶち割り、天井に貼り付けの形でめり込んだ少女は、肺の中の空気を残らず吐き出していた。
蜘蛛の巣状のひび割れの中心から、剥離した建材の破片と一緒に舞い落ちた音色は、力ない翼で精一杯の後退をはかり、どうにか再び距離をとった。
先ほどの出来事を思い出す。
獲った。そう思った瞬間、玻璃の眼前の床がせり上がるようにして石柱が生み出され、凄まじい速度で自分にぶち当たってきたのだ。
膨大な質量、馬鹿みたいな硬度(推定硬度7)、嘘みたいな速度の合計は自分を天井に叩きつけ、めり込ませた。人間だったら内臓破裂で即死だっただろう。
「甘いのはお前だ、化け物」

ガチン

「ぎゃん!」
音色の足元から硬い音が跳ね上がり、右足が火でも付いたかのように熱くなる。
熊どころか恐竜でも捕まえられそうな大きな歯が、がっちりと右ふとももをくわえ込んでいる。
肉が爆ぜ骨も歪むほどの圧力に、悲鳴を抑えられなかった。
(いつのまにこんな仕掛けを・・・!)
その時気が付いた、廊下のナイフが透明であることに。真っ赤に染まっているからわかりにくかったが、熊取り罠もまた、色がない。
「内に取り込めないのなら、結界そのものをブチ当てればいい」
左右の壁がせり出すように音色に迫る。色のない代わりに側面がギザギザしているのは、挟み込む獲物を磨り潰すためだろうか。飛びずさろうにも、足が動かない。

ぐしゃり

せめて身を庇う様に包まった翼ごと、音色は壁に挟み込まれた。
音色の背中側の天井に、がっしりとした輪が生まれ、そこから透明な鎖が伸び、大きな三日月形の刃が産まれる。
ポオの小説に出てくるようなペンデュラム。
透明な刃は、そのまま振り子運動を描いて音色へと迫っていった。
165ほしをみるひと:2005/07/02(土) 21:55:01 ID:Q4djIMBO
「音色!」
廊下に突如発生した透明な隔壁はみるみるうちに赤く染まってゆく。夏箕は思わず駆け寄ろうとした。
「来・・・ない・・・で・・・なつ・・・み・・・あぶ・・・な・・・い・・・よ・・・」
切れ切れの声が彼の足を止める。驚き立ち止まる夏箕の耳に、

♪〜♪・・・♪、♪

歯の間を漏れ出る吐息のような、かすかな音が聞こえてきた。口笛だった。
その音を聞きながら、夏箕の中で何かモヤモヤとしていたものが、はっきりとした形を取ろうとしていた。
また、その音にあわせるように目の前の隔壁に亀裂が入っていく。ピシ、ピシと言う音がもどかしいほどの速さで聞こえ、ひびだらけの隔壁は内圧に堪えかねるようにガシャンと砕け散った。
だが音色の足が未だ挟まれたままだ。罠にもひびが入っているが、まだ壊れてはいない。そして振り子は今も彼女に迫っている。

♪、♪?♪。・・・♪!

ようやく罠は崩れ去る。だが、振り子はもうすぐそこだった。翼も、足もぐしゃぐしゃで動こうにも動けない。
それ以前に音色にはもう、力なくへたり込む事しかできなかった。
背中から刃に突き刺されることは無くなったが、きっと代わりに頭を串刺しにされる。刺さったなら慣性の法則に則って揺れ続ける振り子に耐え切れずに細い首は引き千切られ、
頭は振り子に刺さったままぶらぶらと揺れては自分の胴体を見下ろすことになりそうだ。

ざしゅっ

胸の悪くなるような鈍い湿った音と共に、真っ赤な飛沫が高く高く跳ね上がった。
166ほしをみるひと:2005/07/02(土) 21:56:03 ID:Q4djIMBO
音色の背に重い衝撃が走り、直後地面に投げ出される。新たな赤がじくじくと身と衣服を浸す。
だが、予想された激痛はやってこなかった。
「バカな、何をしている、夏箕」
「ぐぅぅぅぅゥっ」
「なつ、み?」
玻璃の驚愕と身にのしかかる重みの立てたうめき声が、音色に現状を理解させた。
あの時一瞬立ち止まった夏箕は、すぐに気を取り直して音色の元へ走り、そのまま彼女を押し倒して庇ったのだ。
しかし、振り子を完全によけ切ることはできず、その背は大きく切り裂かれていた。
「なつみ、だいじょうぶ?夏箕ッ!」
音色の声が尻上がりに跳ね上がる。身をよじって立ち上がろうとするが、その動きは夏箕の震える腕に阻まれた。
力強く、抱きしめる。
「カッコよく音色を庇って、みようとしたけど、ちょおっと、失敗したかな・・・痛ェ」
「な、なにいってるんだよ!なにやってるんだよぉ!」
「お前っ、頭は付いているのか!ソイツはお前を利用していたバケモノなんだぞ!」
「だからどうした」
仔犬を庇う親犬のように、夏箕はしっかりと音色を抱え込んで離さない。そのまま重傷とは思えない力強い視線と声を、玻璃にむかって叩きつける。
「俺はすでに三回、コイツに救われてるんだよ。人外でも、利用されてるとしても、俺はコイツの味方だって決めたんだ」
「それは人が牛やブタを世話するのと変わらん理由だ!餌をやり、住処を与え、成長を喜ぶ。とって喰う為にな!目を覚ませ、夏箕」
「俺は正気だ」
激高した玻璃の侮蔑的なセリフにも、夏箕は動じなかった。
刻一刻と流れていく血と、痺れと共に冷えていく身体にあらん限りの力を込めて、腕の中のぬくもりを抱きしめる。
「一般人ごときが世迷言を!バケモノ一匹庇って死ぬかッ。さっさとそこをどけ!ソイツにトドメをくれた後手当てをしてやる、くだらんゴタクはその後だっ」
「一般人一般人言って、見下してるんじゃ、ねえよ・・・」
夏箕の背中の傷は骨が覗くぐらい深い。当然大量の出血と激痛を伴っているわけで、未だ意識を保っていることは奇跡に近い。

『そんなどうしようもないことよりも、今、やりたいことをやり遂げたい。』
夏箕の壮絶なまでの意地だった。
『やってほしいことは、その時になればわかる』
その時とは、今のことだと思った。
167ほしをみるひと:2005/07/02(土) 21:56:43 ID:Q4djIMBO
「守ってくれなんて、誰もお前に頼んでねーんだよ。命だけ助けられたって、意味ねぇんだよ。
俺だって死にたくはないさ。まだ、やりたいことなぁんにも見つけてないからな。
生きたいから生きるんじゃない。やりたいことやって生きたいから生きるんだよ
・・・お前のほうこそ、おれのことを水槽の金魚とカン違いしてるんじゃ、ないのかよ・・・」
玻璃が頭を殴りつけられたように、よろめいた。
「なにを・・・なにを・・・いう、か・・・」
「確かに俺は弱いさ、アンタから見れば無能だろ。でもな、生き様って言うのには、強いも弱いもねーんだよ。
脅されたぐらいで、騙されたぐらいで、オタオタするのは無様ってもんだ。
なんと言われようと、俺は音色の味方をする。
それがたった一つの、俺にとっての、真実、だ」
「なつみ、もぉいいよ、手を離してよ、死んじゃうよぉ・・・」
腕の中の音色が涙声をあげる。夏箕は玻璃の事など一顧だにくれず、組み伏せる音色だけを見つめた。
夏箕はもう、整備不良のロボットのようにぎくしゃくとしか動かない右手を、泣きじゃくる音色の頭にのせる。
失血により冷え切った体の中で、腕だけがあたたかい。
「ボクがなつみを利用してるって、もうわかったんでしょ。なんで、なんでココまでするのさ・・・」
「もう、助けてもらったから。ほら、一人ぼっちって、けっこう、アレだろ。
お前がバケモノでも、さ、ひとりぐらい、傍にいるヤツがいても、いいんじゃ、ない、かって、おも・・・って」
今現在襲われていて、命も風前の灯で、もうしゃべることすら満足にできなくても、夏箕は笑っていた。
腕の中のぬくもりだけを見つめて、何かを成し遂げた男の顔で幸せそうに。
がくりと、首を折った。
168ほしをみるひと:2005/07/02(土) 21:58:04 ID:Q4djIMBO
「なつみ?なつみっ!」
「・・・くっ」
拘束の緩んだ音色は、もう動かない夏箕の身体を揺さぶる。自分の命を狙う玻璃なぞいないかのように、ただ必死で一心に。

「どんな時でも味方をする」と言って自分を利用した人外を庇った人間と、
逃亡の機会をほっぽり出して泣きながらそんな馬鹿な人間をゆする人外。
玻璃だけが孤独だった。

その事実が、彼女をよろめかせる。一歩、二歩と後ずさらせる。
「待ってて、助けるから!絶対ぜったい死なせないから!」
使命に従って動いているだけの自分と、命より生き様を取った男と、そんな男に取り縋る人外。
何故だかひどくうらやましく、そして惨めだった。
「だってそうでしょ、『できる限り助ける』ってやくそくしたもん!それに、なつみ今言ったよね?傍にいるって!
なのに、逝っちゃったりしたらうそつきだよっ!ヒドイよっ」
限界だった。
玻璃の中の何かが叫んでいる。
もう、こんなモノは見たくない、と。
「うわああぁぁぁああぁっ」
叫び声をあげて、玻璃は逃走した。
169ほしをみるひと:2005/07/02(土) 21:58:38 ID:Q4djIMBO
足音が階下に遠ざかり、気配が察知できなくなるぐらい離れたのを確認すると、音色の顔から一切の表情が消えた。
そしてあれほど重傷だった翼と右足の傷は溶けるように消えて行き、飛び散った血も瞬く間にもとの身体に戻る。
「『釣魚』第二段階:終了。計画はBルーチンへ移行。前フェイズ分の時間調整を開始。遂行に問題はなし。
・・・まだまだ青いね、人間の守護者」
そう呟くと、ニタリと血も凍るような微笑を浮かべた。
だがすぐにその表情を消し、夏箕の下から這い出すと、彼の頭をそっと自らの膝に乗せて、一転した暖かい苦笑交じりに夏箕の頭を小突く。
「まったく、誰も捨て身で庇えなんて頼んでないよ、勝手に勘違いしちゃってさ。おかげで計画を変更だよ、なつみのバカ。
・・・死なせないよ、ぜったい」
そして表情を引き締め、夏箕を抱き上げると、傍の教室に入り扉とカギを閉めた。

♪〜〜〜♪♪〜〜〜♪

しばらくして、あたりに穏やかで安らぐようなソプラノのハミングが響き始めた。
170ほしをみるひと:2005/07/02(土) 21:59:55 ID:Q4djIMBO
痺れたように冷え切った身体を、何かがやさしく取り巻いている。
ひとつはかすかな振動であり、凍えて疲れきった細胞の一つ一つを穏やかに揺さぶっている。失われた活力が揺り起こされ、沸々、ふつふつと沸き起こってくる。
もうひとつは背中に感じる温度と摩擦であり、ゆっくりと往復するたびに、火でも着けられたような熱さと、どうしようもないむず痒さが背骨を伝って駆け上ってくる。
最後のひとつは左頬に感じる暖かさと甘やかな気配であり、ずっと昔に感じたことがあるような、だが決定的に違っていることが不思議とわかる感触とにおいだった。
癒されている、そして護られている。
理屈を抜きにして、そう信じさせる平穏だった。
あまりに幸せすぎてもう死んだものと思っていたが、次第に背中の痒みが我慢できなくなり、うめき声と共に身をよじってしまう。
瞼が開く。
横向きの視界に広がる机とイスの足の群れ、左半分(体感的には下側)は黒い何かに遮られており、皮膚と鼻はソレが温かくて柔らかくていいにおいがすることを伝えてくる。
視界を右(同じく上側)に転じる。
艶やかで滑らかそうな黒い何かがかけ布のように身体に覆いかぶさっており、先端が褐色の黒い棒が背中を這い回っている。
それが動くたびに背中がズキズキと痛み、その痛みは次第に痒みへと変わり、やがて消えていく。
その時、目が合った。
こちらを見下ろし、にっこりと微笑む音色。
「おはよ、なつみ」
要約しよう。俺、楠木夏箕は顔を右に向けたうつ伏せの姿勢で音色に膝枕されている。
「だいじょうぶ?からだ、動く?」
「う、う・・・」
「いたいの?どこ、背中?」
「うつ伏せで膝枕はマズいだろぉーっ!」
絶叫。
アレはフツー仰向けで後頭部と言うフィルターを挟むから「気になる異性の股間と超接近♪」という嬉しハズカシイ状況もぎりぎりオッケェなのであってダイレクト顔はなんと言うかリミットブレイク!
というか、
「足、音色の足大丈夫なのかよ!」
「きゃっ」
がばりと身を起こすとそのまま音色の右ふとももを両手で掴んで引き寄せる。
171ほしをみるひと:2005/07/02(土) 22:00:39 ID:Q4djIMBO
音色がこてんと仰向けに引き倒されてかわいい悲鳴を上げるが意識の外。すべすべの小麦色の太ももを撫で回して検める。
「ちょ、ちょっとなつみっ、は、あんっ・・・そこ、ダメ・・・っ・・・」
「ざっくりイッて骨とかもやられて・・・あれ?」
結果傷ひとつなし。スカート越しとはいえ、こんな柔らかくて気持ちいいものを枕にしていたとは。うらやましいぞ、気絶中の俺。
そこで気が付いた。
まくれ上がった短いスカートの中、白い下着に限りなく近い太ももを両手で撫で回す、俺。
翼も足も投げ出して、ぎゅっと握った拳を自らの胸元に当てて赤い顔をしてこっちを見上げる、音色。
もしかしなくても、俺、押し倒してます。

「ごっごごごご、ゴメン!」
「えと、あの、もう、だいじょぶ、みたいだね」
慌てて身を離すと、音色はゆっくりと身を起こし、座りなおした。
音色の私物と思しき、口がバッテンの擬人化うさぎとネコ柄のレジャーシートの上で、赤い顔をして向き合う二人。
「ねんのため、腕とか回してみて」
「ああ・・・ちょっと背中突っ張るけど、大丈夫、指まできちんと動くよ」
一通り身体を確かめ、微笑む音色に報告する。そう言えば、大事なことを言ってなかった。
「ありがとう、音色。また、助けてもらっちゃったな」
「どういたしまして。でも、もうあんな無茶、しないでね」

肌をあかく火照らせたまま、音色は身を起こす。頭が左右にぶれかけるのを、力を込めて食い止める。
「ね、なつみ。ボクの話、聞いてくれる?」
しゃべることで、フラつく視界と意識を誤魔化しながら音色は夏箕をじっと見据える。
小さくうなづいて続きを促す夏箕に、音色は静かに語り始めた。
今「ここ」で起こっている出来事についての説明となる、
長い長い話を。
172ほしをみるひと:2005/07/02(土) 22:01:51 ID:Q4djIMBO
「いきなりだけど、さ。キミは世界っていうものを、どんなものだと思ってるかな。
漠然としすぎて、よくわからないと思う。
なつみならきっと、家族のこととか、学校のこととか、日常的なことしか、わかる範囲のことしか思い浮かばないんじゃないかな。
でも、それこそが世界の姿なんだよ。
「認識」こそが世界を形作っているものなんだ。
君たちの言葉では、量子論っていうのかな?この世の全ては確立の雲とでもいう曖昧なものであり、認識するという行為により曖昧な雲ははっきりとした形をとる。っていうやつ。
今のこの世界はその中に存在しているモノたちの「世界はこういうものなんだ」っていう思いによって成り立っている。
互いが互いを、合わせ鏡のように認識しあう事によってかろうじて成立しているんだ。
え?それがどうした、って?
少し考えてみて、もしも支えあう二人のうち、片方が力を抜いたらもう片方はどうなるかな?
そう、つられて連鎖的に倒れてしまう事になる。
今ココで行われているのは、まさにそのための儀式。
『バケモノ?外から来るもの?そんなものいるわけないじゃないか』という共通認識を破壊する為に、あってはならないモノを呼び出す。
「ないはずのもの」が「目の前にある」事を認めたら、それは「実は有った」事になって、それまでの常識を書き換える事になる。
それを繰り返すうちに、世界はいずれその有りようを完全に変える。いつになるのかはわからないけれどね。
何でそんな事をするのか、って?
今のボクは「この世界の常識」に合う存在として成立しているから、「外」のことを正確に表現することはできないけれど、
あえてひとことで言うなら、「ソレ等」はそういう存在だから、そうしている。となるかな。すごく曖昧な言い方だけれど、ね」
173ほしをみるひと:2005/07/02(土) 22:02:57 ID:Q4djIMBO
――例えるならば、それは大洋に浮かぶ投げ出された樽。
――外の水を内に染み入らせない強固な防壁。なぜなら樽とはそういうものだから。
――取り囲む海も波も徐々に樽を侵し、腐らせ、弱らせる。
――其処に害意はなく、悪意もなく、敵対心もない。
――だが、樽が樽であり、海が海であり、波が波であるかぎり、
――いつか樽は腐り、壊れ、海の藻屑と消えることになる。

――たとえ樽の中の空気が外海に憧れたとしても。

夏箕は、そんなイメージで音色の話を受け入れていた。
174ほしをみるひと:2005/07/02(土) 22:04:10 ID:Q4djIMBO
長い話を語った音色はその身を大きく揺らめかせ、手を突いて上体を支えた。
ため息を吐くと背後の椅子に腰掛け、背もたれにぐったりと寄りかかってどうにか身体を保つと、再び口を開く。
「玻璃が言った『敵の結界のメリット』って言うのはこの事。今、この学校は常識から外れてはいるけれど、同時に世界の認識の外にあるから世界の有り様を変化させはしない。
事が成就する前に内部をきれいに掃除してしまえば、結果的には『おかしなことは何もなかった』ことになるの。まあ、生存者がいるかぎりは少しは常識が書き換わっちゃうのかな?
で、ここからが本題なんだけど、
『有ってはならないもの』はこの世界の常識とは相容れないものだから、世界からの圧力を常に受けているの。
気圧を例にしてもらえるとわかりやすいかな?『普通の』一気圧の中に突如真空が生じたらどうなる?周りから凄い勢いで空気が押し寄せてくるよね。
で、発生した『有り得ないもの』が有り得ないものであるほど、周囲からの圧力が強く感じられるわけ。
ついでに、ここは一時的に世界から切り離されているとはいえ、まだこれまでの常識に引きずられているから、圧力は存在している。
・・・そろそろわかったかな?」

音色の呼吸は荒くなっており、火照っていた頬は今では地肌の色と相まって不気味なほどの土気色をしている。
冷や汗もびっしりとかいており、脱力した身体を背もたれに預けるようにして、ようやくの事で意識を保っている有様だった。
175ほしをみるひと:2005/07/02(土) 22:04:42 ID:Q4djIMBO
「俺を助けたせいなのか」
背中の傷痕がずきりと痛む。
あんな重傷は自然治癒しない、普通。
夏箕の声は苦悩で震えていた。いたたまれなさに立ち上がり、俯く。
だが、音色は力なく、だがはっきりと首を振った。
「ううん。遅かれ早かれこうなるのは計算に織り込まれてたの。『多分途中でガス欠になるだろーから、現地調達で何とかしろ』って指示されてたから」
全くひどいよね、そういって音色は笑った。
「だからこれは夏箕のせいじゃない。帰る時に貰う予定だったものを、すこーし早く貰うだけだから。
・・・おかげで最大級のイレギュラーを乗り越えられたんだから、なつみは胸を張ってていいんだよ」
「どうすればいい?どうやったらお前を助けられる?」
無力な拳を血の出るほど握り締め、問いかける。
夏箕の声はもう悲鳴といってよかった。
音色はつっと視線を脇へずらし、頬をうっすらと染めながら、
「現状に置けるかりそめの存在の衰弱の原因は、核となる『イレギュラー』への世界からの恒常的な圧力による負荷と同時に、
絶えず存在しているが、特異な能力の発現により瞬間的に高まった内圧と、増大した『異常反応』に対する世界からの外圧による
外殻部分へのプレス作用的な圧搾の結果である生命力減退による存在の危機である。
有効な対策としては外殻の補修、特に減退した生命力の補充が挙げられる。
端的に言うところの『シールドへのエネルギー補充』により耐久力の回復/向上を行うことは耐圧の意味だけではなく、
『異常反応』を世界から隠蔽することによるステルス作用も見込め、結果として減圧を行うことも可能であり、二重の意味で効果的ということができる・・・」
と、奇妙なまでにシステマチックな説明をとうとうと垂れ流した。
176ほしをみるひと:2005/07/02(土) 22:05:25 ID:Q4djIMBO
当然、夏箕には良く分からない。
「いやだから、仕組みじゃなくて『俺がなにをしたら良いのか』をはっきり、しっかり、わかりやすく言ってくれよ!エネルギー補充ってどうやるんだよ?」
「・・・わかんないの・・・?」
「わかんないから聞いてるんだってば、早く教えてくれ、そんなにフラフラしてるお前は見てられないッ」
「・・・どんかん・・・」
ちいさなつぶやきは夏箕には届かなかった。
「もう一度、聞こえるように言ってくれ。もうこれ以上、しくじりたくはないんだよ。
・・・お前を助けたいんだ。
ただの足手まといはもういやなんだよ・・・」
じれったさと申し訳なさで、夏箕の声はよじれきっていた。
そんな有様を見て、音色は意を決したように唇を開く。
「ボクのことを、抱いてください」

この上なく厳粛な雰囲気で告げられた言葉は、夏箕の予想を大きく裏切っていた。
「・・・は?・・・」
彼としてはこう、命に関わる深刻な儀式――たとえば心臓を抉り出すとか脳みそを啜られるとか魂を齧らせろ、とか――を予想していたのだ。
怖くないといったら嘘になる。でも、音色に救ってもらった命を投げ出すのだから、笑って死んで見せる。とか覚悟を決めていたのだ。
それが見事にスカされて、一瞬思考が停止してしまっていた。

――ポイントはきっちり抑えつつも、その解釈は斜め上方をカッ飛んでいる男、楠木夏箕。17歳、童貞。結構純情。
177ほしをみるひと:2005/07/02(土) 22:06:51 ID:Q4djIMBO
そんな夏箕の停止を音色はどう受け取ったのか、
「そっそうだよね!いきなりこんなこと言われても困るよねイヤだよね!
こんなバケモノでムネもちっちゃいチビのくせに羽が生えてて黒い女気味が悪くて抱けないよね!」
と大慌てで一息にまくし立てた。背中ではバッサバッサとせわしなく翼がはためく動揺っぷりだ。
「いや・・・」
「でもでも、ボクにはなつみしかいないんだもん!いないからだけじゃなくってなつみがいいんだもん!
ボク言っておいたよね『それはボクに絶対必要なことで、できれば、夏箕にしてもらうのがいいと思ってる』って!
あのときイヤって言わなかったって事は『さんきゅ』って言ったってコトは『いいよ』ってコトだって、そう思ってたんだもん!」
「その・・・」
そもそも「聞くな」っていったのはアンタでしょーに、という突っ込みが夏箕の喉まででかかった。
だが俯き加減の音色にはそんなことは見えもしない。前髪で目を隠したまま。ぎゅっと両手を膝の上で握り締めて、叫ぶ。
「バカだと思ってくれていいよ!たかが一介の探査プローブに毛の生えたみたいな小物がちょっと優しくされて舞い上がってるだけだって!
調査と介入の為に即席で組まれた三流人格が色に狂ってはしたない事口走っただけだって!」
叫びながら自分の意思を必死に鼓舞していたらしい。
きっと顔を上げ、潤んだ瞳で夏箕を見据える。
いや、見据えているかはよくわからない。
潤んだ視界には夏箕の表情などマトモに写ってはいないのだから。
178ほしをみるひと:2005/07/02(土) 22:07:26 ID:Q4djIMBO
「ねい、ろサン?」
「でもねでもね!なつみはボクとケーヤクしたんだからイヤだなんていう権利ないの!やんなきゃダメなの!
だってケイヤクっていうのは互いに交わした取り決めであって決められてないことを抜け道的に利用するのはありでも内容を反故にするのはルール違反なの!
『道案内とか?おとり・・・かなぁ?あと・・・・・・いろいろ』って言う条件でケイヤクしたなつみはボクのいうこといろいろ聞かなきゃダメなのっ!」
・・・そもそもイヤだなんて言ってないんですが〜、という言葉を挟む隙すらない音色の謎論理マシンガントークだった。
というか、これは詐欺の論理だ。
彼女が一息ついたところで口を挟もうとした夏箕だが、結果としてその機会を脱してしまった。
「だから見て、なつみ。頑張ってその気にさせるから。たとえ一時の性欲処理でもいいから、ボクを、抱いてください・・・」
という急速にしおらしくなった台詞と共に、音色がスカートを捲り上げたからだった。
179ほしをみるひと:2005/07/02(土) 22:08:21 ID:Q4djIMBO
羞恥と不調のせいかぎこちない動作は、かえって焦らすような煽情さを醸し出していた。
そろそろとまくれ上がっていくスカートの裾の下から、輝くような太ももがじりじりと顔を出す。
濡れ光る汗に夕日を照り返す滑らかな少女の大腿部は、膝上までの黒ニーソックスとの対比もまぶしく夏箕の目を吸い寄せた。
やがて、白いショーツが顔を覗かせる。飾り気のない白は清楚なただずまいであると同時に、小麦色の地肌の色を引き立たせており、
結果としてうら若い少女の瑞々しい肉体を強調してもいた。
「はぁ・・・っ」
スカートを腰まで捲り上げ終えた音色の吐息は、体調不良のせいだけではない悩ましい響きがあった。
上目遣いに、夏箕を見る。
じっと注がれる少年の視線と、制止されないという事実を糧に(実際、夏箕は文字通り目を奪われているだけなのだが)
萎えそうになる意思を無理矢理掻き立てて、両手を胸元へとやった。
しゅる、とスカーフを解く。
衣擦れの音がやけに大きく響いた。
「ね・・・みてて・・・」
ぷち、ぷちとブレザーのボタンを外していく。
衣服の前あわせがはらりと開き、大量の冷や汗で地肌が透けて見えるワイシャツが露わになった。
「んっ、んっ、んっ」
ぷち、ぷちとワイシャツのボタンを外していく。
指先が震えてうまく動かない。だが、そのもどかしさこそが期待と羞恥を焦らし、高めてゆく。
やがて引き締まった下腹部、形の良いへそが見え始め、ショーツとそろいの白いブラジャーが外気に触れる。
「・・・んっ、んっ」
ぷちん、と最後のボタンが外される。
そして、しどけなく着崩された半裸の音色が完成する。
180ほしをみるひと:2005/07/02(土) 22:09:06 ID:Q4djIMBO
だらしなく垂れ下がったブレザーと半透明のワイシャツは、肌を隠すというより強調する役割を果たしており、
緩く首に巻かれた布切れに成り下がったスカーフがまるで首輪のようにも見え、見る者の興奮をいやらしく煽った。
そんなからだのうえを、音色の震える指が這い回る。
ぎこちないほどじりじりと、だが止まる事無く確固として這い回る指が、夏箕の視線を誘導していく。
わき腹の布地から、形の良いへそを経て、下へ。
スカートを乗り越え、ふとももへ彷徨いかけ、とうとう股間の布地へ。
「ふ・・・うっ・・・ッ」
しゅっ・・・しゅる・・・しゅるっ
大仕事をやり遂げたように一息つくと、そのまま指を動かしだす音色。
ため息は吐息へと変化した。
「はっ・・・はっ・・・はっ・・・はぁっ」
しゅる、しゅるしゅる・・・くちゅっ
柔らかいものが布を擦る音は、いつしか水音へと変化していた。白いショーツが秘部を透けさせてる要因は、もう汗だけではない。
その頼りない布地をぐいぐいと押し付けながら、褐色の指が舞い踊る。
「はぁぁ・・・あっ、はっ、はっ、は・・・ぅッ」
音色の背がぐっと反り返り、翼がビクビクッ!と震える。指が特に敏感な場所に触れたせいらしい。
「な・・・つみ・・・みて・・・なつみぃ・・・」
涙と脱力感によりゼロにも等しくなった視覚の代わりに、敏感になっていく肌に熱い感触が走る。
下から湧き出してくる快感と、その場所に突き立つように注がれている視線の圧力だった。
(見てる。なつみがボクの恥ずかしいトコロ、見てくれてるよぉ)
くちゅくちゅという水音に混じって、ごくり、という誰かが唾液を飲み下す音を聞いたとき、気が付くと音色は満足気に笑っていた。

淫猥で、かつ満足げで、でもやっぱりちょっぴり気恥ずかしい。

そんな笑みと共に、一段と強くなった甘い疼きに身を任せた音色は、左手を股間に残したまま、濡れた右手をじりじりと胸へと這い登らせる。
181ほしをみるひと:2005/07/02(土) 22:10:45 ID:Q4djIMBO
冷え切った肌に熱い滑りと視線を感じながら、右手は小振りな胸へとたどり着いた。
「はぁぁあうッ・・・はッ、ハッ、はぁぁん・・・!」
もう細かい制御のきかない指は、ブラのカップごと乳房を握り締めてしまう。固めの布地に尖りたった乳首がぎゅっと押し付けられ、瞼の裏に火花が散った。
「だめ、だめダメェっ」
ガクンガクンと仰け反る上体。ほっそりとしたくびと形の良いあごの裏が夏箕の眼前で翻るたびに、大きく開けられた口の端からは涎が糸を引き、突き出された舌が淫らに踊った。

「やぁぁっ、こんなの、こんなの・・・ッ」
カラダが心と頭の思い通りにならない。本当はここまで激しくするつもりなんて無かったのだ。
初めはもっとこう、かわいらしくちょっとだけ頬を上気させて瞳を潤ませながら『なつみ・・・きて・・・』とか誘うつもりだったのだ。
なのに、もう止まれない。
左手の指はせっせと下着を透けさせる為の摩擦運動を繰り返し、右手は痛いほどに胸を圧し揉む。
痛みと快感が跳ね上がるたびに後ろめたさと羞恥が津波のように押し寄せてくるが、
それから逃れるように指がまた忙しく働き出す。
「やっ、ぃやぁぁ、やあぁぁぁっ!」
活力を失い冷えていく体、反比例して加熱する脳髄。熱病に冒されたような欲情の中で、ひとつの推論がかたちを取り始める。
欲情は、認めがたい現実からの逃避。認めがたいのは、夏箕を騙し、利用している後ろめたい現実。
後ろめたいと、思う理由は・・・?
「ひぅ・・・ん!」
182ほしをみるひと:2005/07/02(土) 22:11:17 ID:Q4djIMBO
逃避を続ける左手が、敏感な肉芽を押し潰す。ふたたび眼裏がスパークし、推論が一瞬途切れた。
一瞬の虚脱の後、ぐつぐつと煮えたぎる脳みそは、より一層少なくなったリソースを必死に展開し、推論を再開する。
探査プローブが観察を怠ることは許されない(右胸から強い刺激、意識遮断、再起動)
なぜならばそれこそが存在理由(声帯暴走、音声強制カット)だからである。
介入用人格は目的遂行用の為『だけ』に生成されるものであり(陰部への進入による神経反乱、鎮圧)
そのためには周囲の全存在を利用『しなければならない』(脳下垂体、情報氾濫、修正不可)
ああ、そうか。
衰弱の中で状況をなんとか纏め上げ、分析しようとするたびに、まるで反乱を起こすように、しかも際限知らずに高まる快感。
だとすると、逃げ出したい現実とは、意識と行動のアンビバレンツ・・・
絶頂。
「なつみ・・・ゴメンね・・・」
意識のブラックアウトと同時に到達した認識が、音色にそう呟かせていた。
その時、芯の抜かれた身体は椅子から転げ落ち、頭が大きな弧を描きながら床に向かって真っ逆様に吸い込まれていった。
183ほしをみるひと:2005/07/02(土) 22:11:52 ID:Q4djIMBO
夏箕は音色の痴態に我知らず引き寄せられていた。魅入られていたという表現がしっくり来るだろう。
とさり
夏箕の腕の中にすっぽりと納まった少女の身体は、か弱くちいさく、そしてじっとりと重かった。
体重そのものはそう重くは無いのだろう。しかし、自重を支えるということを全くしていないため、重みがずっしりと両腕にのしかかってきたのだ。
加えて全身が冷たい汗でびっしりと濡れそぼっており、たっぷりと液体を吸い込んだ布地が重量感豊かな手ごたえを伝えてきている。
だが、「あの時」とよく似た感触は、冷え切ってカチカチと震える音を立てる歯音と、細かく途切れない震えの二点だけで決定的に異なっていた。
それでも、ぐっしょりと濡れた重くて冷たいヒトガタは、少年のこころの中にある、古くて分厚いかさぶたを容赦なく引き剥がすに足る衝撃を与えてきた。
目の前でいきなり激しい自慰行為を始めた少女の痴態に欲情を掻き立てられ吸い寄せられた、それは紛れも無い事実である。
だが、夏箕を音色の元へと引き寄せたものはそれだけではなかった。
激しく身体を弄(まさぐ)り、引き絞るような嬌声を上げ続けた少女の姿は、堪えきれない悲嘆を声にならない声で切々と訴えているように感じられ、身につまされるものがあったのだ。

夏箕は両親の葬儀には参列していない。
「小さな子供が親の骨なんて拾うもんじゃない」という祖母たちの気遣いにより、儀式からは遠ざけられたのだ。
彼につかめたのは、家から抜け出して向かった事故現場に供えられていた花束だけだった。
大きかった父母とは比べ物にならないぐらいちっぽけで頼りない花束。
そのギャップを抱きしめながら号泣し、両親がいなくなったことを否定できないという事実を受け入れた過去の自分に通じるなにか、
例えるなら底の抜けたコップにありったけの水を注いで穴を埋めようとして、結局それが叶わないことを限界の中で認める、的なやるせなさが感じとれたのだ。
今の音色には、その頼りない物体すらない。自分のからだしか無い。
そしてその手応えすら失われようとしている。

見捨てられる理由はなかった。
184ほしをみるひと:2005/07/02(土) 22:12:46 ID:Q4djIMBO
「な・・・つ、み?」
体温が伝わったせいか、夏箕の腕の中で音色が目を覚ます。冷えた身体に染み入る体温が心地良いのか、くすぐったそうに笑った。
「・・・あったかい」
立て膝の姿勢でいわゆる「お姫様抱っこ」をしている二人は、肩と腕、お尻と腰、膝裏と腕で身を接している。
その真ん中の接点が、夏箕の状態を音色に伝えていた。
「ぁは・・・ボクで、よくじょー、してくれたんだね。カタくなってるの、わかるよ・・・」
そういって身をよじる音色。何枚かの布地越しに身体を擦りつけ、欲情をさらに煽ろうとする。その波に溺れようとする。
「コレだけ貰えれば、それで、じゅうぶん、だから。身体だけ、ちょっと貸してね」
「阿呆」
「ふぎゅっ」
返答は鼻への指による圧迫と同時だった。
「お前、嘘ヘタすぎ」
「むーむーっ」
抗議のうなり声を上げる音色の鼻をそっと開放し、夏箕は彼女を諭す。
「くだらない遠慮禁止、何がほしいか、もう一度いってくれ」
「えねるぎーのほきゅう。それだけ、だよ」
そっと視線をはずし、すねたように音色は言った。
「・・・俺のアレは純粋な愛情が無いと立たないんだけど」
「・・・・・・・・・・・」
大嘘である。
夏箕のペニスは音色の痴態を見てギンギンにそそり立っている。それを現在進行形で体験中である。
185ほしをみるひと:2005/07/02(土) 22:13:21 ID:Q4djIMBO
ついでに『純粋な愛情』があるかどうかすら疑わしいと夏箕自身で思っていたりする。
そもそも馴れ初めからして『死にたくない』と『利用したい』な二人である。そこに命の危機による吊橋効果、フラッシュバックによる自己憐憫もしっかりと混じっていることに気付いている自分がいた。
音色にしたところで、その認識にいたるのは容易だった。そもそも媚態というものは相手の意思を誘導する為に仕掛けるものだ。
今の夏箕の発言は自分の心理操作の産物だと言い得る。手練手管で獲物を捕らえ、存在の維持に当てる仕掛けが収穫を迎えた。ただ、それだけのことだ。
・・・今思い描いている願いは単なる錯覚に過ぎない。

自分すらもだませない嘘。
でも、だまされたい嘘。
そして、だまされてもらいたい嘘。

『行為者の意思は何よりも優先される。』
これはふたりの共通認識だった。

「もっかい、言うね」
「ん」
「なつみのぜんぶを、ボクにちょうだい。お返しに、ボクのぜんぶを、なつみにあげる」
「わかった」

そっと目をつぶる音色の、皓歯が覗くくちびるに、自らのそれを重ね合わせる。
互いに吐いた見え透いた嘘のうしろめたさを忘れてしまうほど、甘美な接触だった。
186なかがき:2005/07/02(土) 22:14:14 ID:Q4djIMBO
皆さん、お久しぶりです。
六月なのに30℃を越える真夏日だったり、その後に大雨来たりでなんか大変な毎日が続いてますが、いかがお過ごしでしょうか?
僕はピンチです。
「日焼けによる下着のラインの眩しい元気系長耳ツインテール胸なしボクッ娘」にハアハアしてたら六月終わっちゃいましたTT
挙句に今回もエロ無いし。
たかがぱんつ一枚脱がすのに100kbもかかってるし!
というわけで次回は音色のぱんつ脱がすところからです。こんどこそエロスを!

あと、ようやく今回設定に関わるキーワードでました。
凄まじい亀レスですが、前スレ202さん、貴方の予測した通りのジャンルです。
現段階ではいくつかの描写に違和感があるかもしれませんが、シリーズ完結までには説明つく(ハズな)ので、もうちょっとお待ちください。
・・・って、すでに見て無い可能性高そう・・・スンマセン、オソクテ・・・
187名無しさん@ピンキー:2005/07/02(土) 23:56:13 ID:s5xCQzYa
とりあえずGJ!

が、クトゥルフファンの端くれとして言わせてもらえば、アレを「インスマス人」というのはいただけない。
半魚人になりかけだが、まだ人間として通用するのが広義の「インスマス人」(教義ならさらにインスマス在住のみ)
完全に半魚人はもはや「ディープワン(深き者)」と呼ぶ。
ま、どーでもいいチラシの裏なんだけどね。
188名無しさん@ピンキー:2005/07/03(日) 01:23:26 ID:YAUaMmNH
>136
>あらすじ書かれるとそれ以上そのネタでSS書こうなんて気にならないんじゃないの?
>1
>他人の苦情を勝手に代弁しない。

>それどころか同じネタでは書きにくくなるので一種のネタ潰しにもなりうる。
前スレの「ささがにの糸」を知らんのか?
本当に面白ければ、誰がどんなストーリーを書こうがそのネタを取り出してうまくアレンジして使うだろ。
使われなかったら? それは最初から面白くないネタって事だ。
よって、その心配は杞憂だね。

>137
OK、OK。持ちネタをSSにしたんで、余計な前振りナシにいきなり投下する事にしよう。
189通い妻は、血塗れの:2005/07/03(日) 01:24:26 ID:YAUaMmNH
ノックの音がした。
草木も眠る丑三つ時、ここは農村の外れにある古い小屋。とりあえずの生活設備一式が揃っている、八畳一部屋の水上幹夫の現在の家。紆余曲折の後、ようやく手に入れた安住できそうな場所だ。
寝起きで幹夫がボンヤリしてると、再びノックの音がした。今度は呼びかける声もする。
「ミキちゃ〜ん。早く入れてよ〜」
美奈子だ。まったく懲りもせず、今夜も来たな。
俺は左手でドアを開け、正面に立つ奈美子の顔面に右拳を叩きつける。
グシャッ。
「ぎゃふっ」
カチューシャで止めたショートカットの髪を振り乱し、美奈子は二三歩よろめく。
「痛いよ。ミキちゃん」
ドカッ。
気のない抗議の声を無視して、俺は薄い黄色のキャミソールを着た彼女の腹に、蹴りを叩きこむ。
「ぐっ」
呻いて腹を抑える。追い討ちで、裸足の脚に脚払いをかます。
ズデン。
彼女は、剥き出しの地面に大の字に倒れた。
家の前は、土が剥き出しの広場で、三方を夜闇と同化した黒々とした森に囲まれている。残る一方も、道とその向こうの畑。灯りは遥か遠くに農家のそれが見えるのみ。
一応、人目はないが、念の為だ。美奈子の両足をそれぞれ掴む。
ズルリ、ズルリ。
日々の農作業で鍛えられてきたたとはいえ、人一人はそれなりに重い。とりあえず引きずって家の中に引き込む。
「わ〜い。ミキちゃんのお部屋だ〜」
今までのが全く効いてないかのように、能天気な声を上げる。
ドサッ。
彼女の身体を、乱暴に畳の上に放り出す。
「あててててて」
190通い妻は、血塗れの:2005/07/03(日) 01:27:29 ID:YAUaMmNH
痛みの声すら、能天気さを引きずっている。だから俺は無言のまま、彼女の腹に全体重を込めたエルボードロップをかました。
「ぐ……、ぶっ……」
今度は腹を抑える余裕もなく、大きくのけぞる。大分効いたらしく、白目をむいて痙攣している。口から唾液だか胃液だかを少しこぼす。
多少の汚れはかまわない。どうせ…。
ガラリ。
彼女の回復を待たず、押し入れを開ける。彼女のために用意しておいた道具を取り出す。
まずは棒。木の枝から末端を適当に払って、丁度木刀ほどの大きさにしたものだ。
さて、どこを狙おう。さっきから腹に2発もくれてやったんだから、今度は…。
決めた。顔だ。
さっきのパンチで左頬が多少赤く腫れているくらいで、まだ綺麗だ。早速棒で、突きをくれる。バランスよくするために、右頬に。
ドブッ。ゴキリ。
「がっ…」
獣のように言葉にならない声を出し、畳に血を垂らして白い欠片を吐き出す。力を入れすぎて歯が折れたようだ。
美奈子の血を見て、俺は興奮する。殺戮の本能というより、一線を越えてしまった感覚だ。
「う゛…ミ゛ギぢゃん…」
美奈子は抗議するでもなく、俺を見つめる。俺はその視線に絶えられず、美奈子の泥に汚れたキャミソールの胸元に手をかけ、一気に引き裂く。
ビリリッ。
そのまま、チューブブラも毟り取る。赤くつんと尖った乳首にプルンと揺れる豊かな胸。俺が何度もしゃぶり、揉みしだき、顔をうずめた柔らかな膨らみ。
美奈子の目に期待の光が宿る。
ガブリ。
俺は美奈子の期待を超えるため、右胸に噛み付いた。そのまま歯を突き立てていく。
ブツッ。
その感触とともに、口の中に血の味がする。思わず、唾と共に彼女の顔に吐き捨てる。
ペチャリ、ペチャリ。
口元に貼りついたそれを、彼女はうれしそうに舐める。俺はむかついて立ちあがり、その顔を踏みつける。
「ぐぶっ」
191通い妻は、血塗れの:2005/07/03(日) 01:28:51 ID:YAUaMmNH
靴でないのが残念だが、足を上げるとそれでも鼻血を流していた。ひとまず顔はもう良いだろう。
今度は、錐を取り出す。今日初めて使う事にしたものだ。
ズッ。
「いっっっっ」
まずは、右の太腿。以外と深く刺さったみたいだ。血がトクトクと流れる。続いて一突き、もう一突き。次々に右腿に真紅の点を刻んでゆく。その度に美奈子は身を捩り、涙を流し、悲鳴をあげるが、抵抗はしない。
ただ刺すだけでは芸がない。
ブスッ、ブスッ。
「ひっ、痛っ」
今度は、左腿に錐を刺す。趣向を変えて、パチンコ台の影響で北斗七星を描いてみた。
段々面倒になってきた。
ズドッ、ズドッ、ズドッ。
今度はスピードを上げて、脛から足の方にかけて、浅くその分数を増やして錐を付き立てる。
飽きてきたので、次に移る事にした。日頃から手入れをしている愛用のナイフを取り出す。
ブツッ
脛を掴むと、一気にアキレス腱を切断する。まず右、次に左。
「…!」
美奈子は声にならない叫びをあげ、身を捩る。が、決して逃れようと暴れる事もなければ、俺を責める言葉も出さない。それどころか「やめて」だの「助けて」だのは決して口にしない。全く見上げた根性だ。
刃物はとりあえず置いといて分厚い俎板を出。その上に血塗れの足を裏が上になるように乗せる。準備は完了。今度は鈍器だ。金槌を持ち出す。
グシャッ。
右足の小指に、思いっきりハンマーを振り下ろした。
「ぎぃやぁぁぁぁっ」
続いて、薬指、中指、人差し指、その度に美奈子は押し殺した叫び声を上げる。親指は流石に叩き潰すのに苦労した。
192通い妻は、血塗れの:2005/07/03(日) 01:29:28 ID:YAUaMmNH
量こそ多くはないものの、服に、壁に派手に血飛沫が飛び散っている。畳は、すでに一面血の海だ。
結構重労働なので、俺の息もあらい。一休みしながら次の手を考える。
爪は…、俺にとって見てるだけで痛々しいのでやめにする。では、そろそろホンバンに移ろうか。
うつ伏せになっていた美奈子の身体を仰向けにする。痛いだろうに、それでも彼女は目を瞑り、歯を食いしばり、大人しくされるがままになっている。健気な奴だ。
再びナイフを取ると、先ほど噛んだ右胸に、横からナイフを付き立てて、そして力を込めて引く。
ザクリ。
血を吹出しつつ、乳房が大きく裂け血を溢れさせる。そのままナイフを動かし、なんとか切断する。切り落とした肉片なぞは、痛覚がないので興味はない。その辺にほっぽり出す。
「えへへ。うれしいな。ミキちゃんが、あたしを見てくれる」
懲りもせず、その言葉を口にする。本当に驚嘆すべき一途さだ。
ズプッ。
「ぐ…、ぎっ」
その涙にぐしょ濡れになった、真っ直ぐな眼差しの右目に、指を突き立てる。意外と硬い。膣でもいじるかのように、指で中を引っ掻きまわす。そしてなんとか眼球を引っ張り出す。
ミリリッ、ブチッ。
そんな感触をさせて、視神経が切れた。
隻眼になりつつも、じっと俺を見つめている。ただただ愛しげな眼差しで。そのいじらしさに免じて、一度だけキスをしてやる。
「…あ、ミキちゃんの、キス。うふふっ…嬉しいよぉ…」
それ以上何か言わないように、その口を手にした眼球で塞いでやる。
「ほら、返してやるから味わって食えよ」
その眼球を口の中まで押しこんでやると、さすがに咀嚼はしないものの、言われた通り大人しく咥える。
直接的・肉体的な苦痛意外は、何でも愛情の証しとでも考えているのだろうか?
193通い妻は、血塗れの:2005/07/03(日) 01:30:14 ID:YAUaMmNH
続いて、パンツの股のところを掴んで、引っ張る。
「痛っ。いたたたたっ」
今更ながら痛がる。いや、常識的な痛みに、ようやく常識的な反応ができたのだろうか?
じきにパンツが破れると、局部があらわになる。薄く、縮れた毛に包まれた、艶やかな赤い唇。俺が何度も愛し、挿入した陰部。
そのクリトリスは膨らみかけている。
「こんなので感じやがって、このヘンタイ」
そういいつつ、空いている左手でその根本の筋を優しく撫で上げる。暫く続けると、そこは完全に膨らんでくる。
ゾリッ。
ナイフで、周囲の皮膚ごとそれをそり落とす。右乳房と同じくその辺に捨てる。
「ぁひぃぃぃひぃぃぃぃぁっ」
美奈子は声を押し殺して喚く。そろそろフィニッシュだ。
「がっっっっっ!」
ナイフを膣に浅く突き立て、そのまま身体の中心線に沿って、ゆっくりと引いて行く。肉は柔らかいようで、切り裂くのに結構力が要る。
美奈子は、必死で痛みをこらえ、切り裂き安いように、身体を動かさないようにしている。
両手でナイフの柄を持ち、下腹部から臍を過ぎた辺りまでを、とりあえず切り裂く。腹圧で腸がはみ出、こぼれ落ちる。
ナイフを置き、その湯気すら立つ血塗れで温かく柔らかいものに両手を突っ込み、思う存分揉みしだき、引きずり出す。
しばしその温かく湿った柔らかな感触に、我を忘れていじりまくる。と、最初は荒かった彼女の息が、弱く、途切れがちになっているのに気付いた。
いかんいかん、まだ最後のそれをしてない。
先ほどの俎板を取り出すと、仰向けにした彼女に枕として敷いてやる。美奈子はすでに、意識が朦朧しているようで、これといった反応は見せない。
「美奈子。今、楽にしてやるからね」
もう耳に届いてないだろうが、彼女にそう語りかけて、俺は大振りの鉈を取り出した。
ヒュン…ゴッ。
鈍い音と共に、彼女の顔と頭は西瓜のようにザックリと割れる。血とともに脳漿が飛び散り、白っぽい脳味噌まで見えた。
すると、彼女の姿は薄れていった。割れた頭も、顔も、それに続く首も、右乳房を失った胸も、腸をはみ出させた腹も、血塗れの脚も、切り落とした乳房も、クリトリスも、血飛沫も。後には、何一つ残らない。
彼女の訪問前と同じ、殺風景な部屋に、今使われた汚れ一つない道具だけが転がっていた。
これで、今日の分は終了した。
194通い妻は、血塗れの:2005/07/03(日) 01:32:15 ID:YAUaMmNH
彼女とは、大学のサークルで知り合った。
サークルとは言っても、名目上はスポーツサークルだがその実ただのナンパ系な遊びグループだ。笑顔がとてもステキだったので、新歓コンパで声をかけ、意気投合し、それ以来付き合うようになった。
今までの俺の男女交際と言えば、高校の時のグループ交際がだけで、その時も特定の相手というのはいなかった。だからその時が始めてのまともな男女交際で、俺はすっかり舞いあがっていた。
美奈子にとってもそうだった。
そして当然ながらしばらくラブラブな日々が続いた。互いに親元を離れての一人暮しなのを良い事に、互いの部屋に入り浸り、日がな1日ベッドの上で愛し合った。
今では思い出すのも恥ずかしい、ハートマークつきのペアルックでの登校なんて事もし、ケイタイの待ちうけ画像を二人で撮った画像にした。
もちろん、毎週末にはデートをして、映画や食事、水族館、美術館なんかにも行った。
が、次第に俺の熱は冷めていった。別に美奈子を愛してないわけじゃない。ただ、多少冷静になって辺りを見る余裕が出てきたのだ。そうなれば当然、バカップルぶりにも気付き自粛するようになる。
しかし、美奈子は違った。付き合い出した頃のラブラブっぷりを維持して、俺にもそれを要求する。
さらに、テストやレポート締めきりの前日など、かまってほしくて邪魔をする。俺は彼女の事が、だんだん鬱陶しくなってきた。
やがて、俺のつれない態度に彼女の態度は変質した。必要以上に俺に付きまとうのだ。俺だけが履修してる講義にも一緒に受講し、潜りこめないゼミなんかではずっと入口で待ちつづけた。
バイト先のファミレスでも、コーヒー一杯で俺がバイトを上がるまで何時間も待ちつづけ、俺の家で完全に同棲状態になった。
恋人同士とはいえ、ストーカーのような執拗な付きまといに、俺もいい加減辟易し、周囲の視線も痛い。
さらに彼女は、俺にも同等の事を要求するのだ。他の女は見るのを禁止するどころか、友達からの電話すら切ってしまう。
俺はむかつき、ついにキレてしまった。
195通い妻は、血塗れの:2005/07/03(日) 01:32:46 ID:YAUaMmNH
手近にあった置物、彼女とのデート記念に買ったものだが、現在では彼女の態度ですっかり見たくもない邪魔な記念物となったそれで、彼女を打ち据えたのだ。
気がついた時には、手が真っ赤に染まって、かつて愛した彼女の顔はすっかり原型をとどめぬ赤い塊となったのだった。
俺は自分のした事に、あのステキな笑顔を浮かべる顔を完全に壊してしまった事に、彼女を二度と物言わぬ肉塊に変えてしまった事に、恐ろしくなった。
そして後はお定まりの行動。深夜車のトランクに彼女を、いや彼女だったモノを詰めて翌朝早くに山奥に埋めた。
それからが、悪夢の様な日々の始まりだったのだ。
翌晩、深夜2時。草木も眠る丑三つ時、誰かが俺の部屋のチャイムを鳴らした。死体の始末で完徹して、ようやくうとうとと眠りについた俺は、寝ぼけたままドアを開けた。
そこに彼女はいた。生前と変わらぬ綺麗な顔のまま、あのステキな笑顔を浮かべて立っていた。
俺は一瞬で眠気も覚め、ただ立ち尽くしていた。殺した記憶と、今見ているもの、どちらが夢なのかわからず混乱していた。
「今晩は。ミキちゃん」
美奈子はいつもと変わらぬまま部屋に入る。
「あっ。またお皿そのまんまにしているぅ」
いつもの甘えた口調で、台所で洗い物をした。
混乱して呆然としている俺は、ふと自分の手を見た。昨夜スコップを握って出来た肉刺がある。
じゃあ、あれは現実のはずだ。でも、これは、この目の前で俺の世話を焼いてくれている美奈子は…。
やがて俺は気を失ってしまったのか、気がつくと昼。すでに日は高く上っている。いつの間にか布団で寝ていた。
夢? ではない。台所の洗い物は片付けられ、朝食の準備までしてある。
196通い妻は、血塗れの:2005/07/03(日) 01:33:23 ID:YAUaMmNH
まさか、生きてた?
俺は車をかっ飛ばして、山の中の美奈子を埋めた場所へ向かった。地面は昨日のまま、一度掘り起こされて埋めた様子だ。俺は、おそるおそるそこを掘り返してみた。
死体は、あった。
昨日のままキャミソールを着た、昨日のままの、いや、死後硬直が解けて腐敗が始まり、すっかり死人色の肌をした、完全な死体だ。
俺は、背すじに不気味なものを感じて死体を埋め戻し、家に帰った。
翌晩も、彼女は深夜に俺を訪れた。
締め出そうとも考えたが、彼女は何故か、埋める時に身元隠蔽の為に回収したはずのカギまで持っていた。そして、やり残していた家事を片付けてくれた。
「て、てめぇ。誰だ?」
俺は、震えながら問い詰めた。
「やっだなぁ。何言ってるのよ。自分のカノジョに」
美奈子は何の屈託なく笑った。その何でもなさに、却って俺はぞっとした。
頬を抓れば痛いし、朝に家事はなされているので夢ではない。
俺は毛布をかぶってガタガタと震えていると、家事を終えた美奈子はその傍に座って、いつもの調子でたわいのないお喋りをしてくる。俺は気の狂いそうな一晩を過ごした。
やがて、彼女は夜明けと共に消えてしまった。
翌晩、俺は遠出をしていた。道端に車を止めて、寝ていると窓がノックされた。彼女だった。
俺は、車を急発進させて逃げ出した。しかし、車を止めるたびに彼女は追いついて、車の窓をノックする。
パニクった俺は、何度目かについに彼女を轢いた。すると、それっきり彼女は出てこなくなった。
俺は安らかに車の中で眠りについた。
しかし、彼女は翌晩も現れた。その次の夜も、その次の夜も。俺が逃げ出しても、美奈子は必ずいつのもにか追いついている。
彼女を殺したことがばれる心配があるので、誰にも明かせない。だから、助けも呼べないし、必ず夜は一人でいなければならない。
197通い妻は、血塗れの:2005/07/03(日) 01:33:45 ID:YAUaMmNH
俺は引越し、学校も辞め、各地を転々とした。美奈子から逃げる事は出来なかったが、罪や美奈子の事がばれることは防げた。
そして、俺はついに学んだ。彼女を追い払う唯一の手段を。それは彼女を殺す事。彼女を殺せば、美奈子はいなくなる。その晩だけ。
やがて俺は、後継者不足に悩む農家の手伝いという今の職業についた。
小屋を一軒借り、そこで一人暮しをする。そして毎晩来る美奈子を殺すのだ。心の平穏の為に。
ここは山の中で周囲に人気はなく、殺人がばれぬように人付合いも最低限しかしないので、俺の異常な生活がばれる心配はない。
殺しの手段は、始めは心臓を一突きしたり、紐で首を締めたりして即死させていたのだが、段々とそれまでの過程も楽しむようになり、そしてそれは日に日にエスカレートしていった。
今では殺す前に、
美奈子は、俺に対して怒りもせず、恨み言も言わず、毎晩毎晩従順にいたぶられ、殺され続けている。恐らくは満足しているのだろう。
俺が美奈子の事だけを考え、美奈子中心の生活をさせることで、俺を独占するという妄執を満たせているのだから。
俺もいつしか、美奈子を憎しみや恐怖でなく愛情を以って切り刻むようになった。ここまで俺を思ってくれるんだ。流石に悪い気はしない。
コンコン。
「今晩わ〜。ミキちゃ〜ん」
彼女の、幸せそうな能天気声がする。俺も、満面の笑みを向かえつつ、彼女を迎え入れる。
さて、今日はどんなことをしようか?
198名無しさん@ピンキー:2005/07/03(日) 05:20:17 ID:3btiwuzQ
>188
まあ、なんだ。グロ描写アリとか一言書いておいた方が良かったと思うよ。
俺は猟奇・ホラーOKなのでなかなかに楽しめたけど。
199名無しさん@ピンキー:2005/07/03(日) 07:03:09 ID:RuYK1HmV
グロだけどこのクソ暑い季節にホラーをありがとう
GJ
200稲庭風 ◆w/StCIWXqw :2005/07/03(日) 07:33:25 ID:x7nFKV29
>152-153

 GJをありがとう。見てくれた方の、その一言の感想が励みになります。

 またなにか思いついたら投げ込みにやってくるので、よければその時も見てやってください。

 じゃ。| ・w・|ノ
201名無しさん@ピンキー:2005/07/03(日) 09:56:00 ID:RWPtFWmV
今スレの作品群は漏れを萌え死にさせる気ですか?

GJッ!!
202名無しさん@ピンキー:2005/07/03(日) 10:48:51 ID:49DfyZ6n
富江?
203名無しさん@ピンキー:2005/07/03(日) 22:33:08 ID:yKWwbZNj
SS保存庫でひでぼんの書見て来ましたが…ここは良スレですね。
204名無しさん@ピンキー:2005/07/04(月) 00:31:05 ID:hH1X9Tiu
盛り上がってるところ悪いけど

>188
漏れは>136>137に同意。
つーか、>135では誘い受けにしか読み取れなかったよ。
>189以下でSSにしたからそんなつもりは無かったのかもしれないけど
「ささがにの糸」とは状況も違うしさ
205名無しさん@ピンキー:2005/07/04(月) 00:31:57 ID:hH1X9Tiu
sage忘れスマソ…人の事言える立場じゃないな
206名無しさん@ピンキー:2005/07/04(月) 00:33:00 ID:CbvgHTTH
まあいいじゃないか。経過はともあれ萌えるSSになった。それで俺は十分。
207通い妻は、血塗れの:2005/07/04(月) 00:39:30 ID:5aEN+SrV
>197の
『今では殺す前に、』の後が抜けていたので追加です。
『今では殺す前に、じっくりと手間暇をかけ、最低でも1時間以上彼女に付き合うようになった。』

>198-199
自分で書いといてなんだが、このスレで肯定的な意見がでるとは思わなかった。
ありがとう。
208名無しさん@ピンキー:2005/07/04(月) 00:47:43 ID:jAIA1/iW
殺しても殺しても蘇る少女というとやはり富江を連想するな

1、殺しても蘇る
2、切り刻むと分裂して増殖する
3、それぞれの富江はお互い殺しあう
209名無しさん@ピンキー:2005/07/04(月) 01:08:22 ID:SRNLILkR
>208でアラーキーチックなのを連想してしまった。

「無駄無駄無駄ァ!富江は富江以外で破壊する事など不可能!」
「しまった――!! 増えてるッ! 富江は切り刻むと分裂するのかッ――!!」
「貴様も富江使いならば分かるだろう……我々は殺し合わなければならないッ!!」
210名無しさん@ピンキー:2005/07/04(月) 01:17:17 ID:jAIA1/iW
>>209
ワロタw
追加…まだあったっけ?

4、富江の細胞を体内にいれると肉体が「富江化」して意識を乗っ取られる。

211名無しさん@ピンキー:2005/07/04(月) 07:09:19 ID:Xke5Lrb9
富江って最初誰かわかんなかったがあのホラーマンガか
確かに連想する
212名無しさん@ピンキー:2005/07/04(月) 07:55:15 ID:e/dJ6LdP
なんだ、この流れは…

テラワロスww
213なかがき:2005/07/04(月) 09:03:33 ID:rVke39Bs
>>187

ご指摘に感謝を。
た、たしかにインスマウス面していないインスマウス人など、
東京に無い東京ディズニーランドやカニの一切れも入っていないカニかまも同じ!
あの時は栗本薫の「魔界水滸伝」読みながら書いてたせいっぽいです。やっちゃいました。

以後「半魚人」で統一しときマス。
214名無しさん@ピンキー:2005/07/04(月) 20:07:40 ID:6Rv1uFco
>>213
その例えはつまりそれらの存在を容認しているのか?
215名無しさん@ピンキー:2005/07/05(火) 00:31:41 ID:l7himrXH
富江作者出身地の隣町に住んでるよ。
つーか本屋に直筆の富江イラスト入りサイン色紙が。
216某880 解き放たれた想い〜メデューサ1〜:2005/07/05(火) 00:36:42 ID:6DiU8Bh/
本来の妖精学者……本家ケルト地方の妖精学者は、
イメージで言えば「僧侶」とか「仙人」のような生活をしており
人々から奇妙な、おそらく妖精の仕業と思われる難事件の相談を持ちかけられると
蓄えた知識の一部を授け助ける、といった者達の事を言う。
ハッキリ言えば、俺は妖精学者を名乗ってはいるが、本家の生活とはほど遠い。
館に住み、肉を食べ、妖精だけでなく妖怪や悪魔達とも親しい。
更に、最近では「妖性学者」だとか「妖に精を与える学者」だとか……いや、強く否定できないが……
ともかく、本家の方々から見れば俺は異端どころか全く別の者に見えるはずだ。
特に、本家の方々から見て信じられない事を俺は今している。
妖精学者とは真逆の存在。敵対すべき者達と言っても良い、魔女達と俺は話し合っている。
「理論上は、これで大丈夫なはずだがのぉ」
魔女の一人が、ドイツから届けられたサングラスを手に持ち話し始める。
「ルビーの魔力は存分に引き出されておるな。「呪い」を封じ込めるには充分だと思うが……」
もう一人の魔女が、サングラスのレンズに使われているルビーを触りながら魔力鑑定を行い、その結果を口にした。
「確証はない……と?」
俺は三人の魔女に向け疑問を口にする。そして三人は黙って頷いた。
「なにせ、呪いが呪いじゃ。お主のおかげで緩和されたとはいえ、かの女神アテナの呪い。わしらでは計り知れぬ」
もっともだ。彼女達の知識は……使われる方向に問題があるとしても……非常に豊富で頼りになるが、
それは俺や彼女達「人間」レベルでの話。
まあ、悪魔レオナルドの加護を受けた彼女達魔女を「人間」として良いかは疑問だが、
少なくとも女神の呪いとなれば、我々の範疇をとうに超えている。
「まあ、成否の確認はすぐに出来るがの」
彼女達特有と言っていい、引きつる下卑た笑いが漏れ出す。
「これを、愛しいメデューサにかけさせて見つめて貰えばええ。なに、美女に見つめられるなら石になっても本望じゃろ?」
「おーおー、それはそれは醜い石像が出来上がるの。なに、骨は拾ってやるで、安心せい」
「石になっては骨も拾えんぞ?」
ヒャッヒャッヒャッ……と、申し合わせたような笑い声が室内に響く。
人ごとだと思いやがって……だがしかし、彼女達の言う事は間違いではない。
217某880 解き放たれた想い〜メデューサ1〜:2005/07/05(火) 00:37:53 ID:6DiU8Bh/
メデューサの持つ石化能力中和。
その方法として俺がアメリカのヒーローコミックを見て思いついた解決策が、このサングラス。
コミックでは、目から熱光線が出続ける主人公が
レンズ部分にルビーを使用したゴーグルで光線の出力を調整していた。
メデューサの石化能力は、視線による呪い。
視線を合わせた途端に、相手を石化してしまうという物だ。コミックの光線とは全く違う物。
だが、ルビーとゴーグルというアイデアは使える。
そう思い、俺は魔女にルビーが持つ魔力の可能性を聞き出し、
それを参考に、ドイツに住むドワーフたちの協力でサングラスを作って貰った。
そのサングラスが完成し、ドイツから届けられたのだ。
この理論は、あくまで俺のアイデアから始まった事。根拠は正直ほとんど無い。
故に、最終的には「人体実験」しか無いのだ。
むろん、贄となるのは俺しかいない。
まあ……万が一失敗した場合の保険は用意してある。用意してあるが……。
「ところで青年。今日は特別に「石化出張治療サービス」が格安で提供できるが、どうじゃ?」
「おお、それは便利。して、その御値段は?」
「なんと、三人相手に「たった」三日三晩の相手でOK!」
「ほー、それはそれはお得じゃのぉ」
「今なら精力剤三日分もサービス!」
どこのテレショップだお前ら。
とりあえず石化については心配ないが、「命」の保証はないなぁ……などと俺は頭をかかえてしまう。
「なに、いくらわしらでもルビーの魔力生成に手は抜いておらん。いずれにせよ試すしかあるまい」
そこは彼女達の言葉を信じるしかない。
「……じゃあまー、とりあえず行ってくる」
魔女達の住処を離れ、俺は屋敷へと足を向けた。

*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*
218某880 解き放たれた想い〜メデューサ1〜:2005/07/05(火) 00:38:59 ID:6DiU8Bh/
メデューサは今、屋敷の一室に居を構えている。彼女はギリシャからアルケニーと共にこちらへ移り住んでいるのだ。
しかし、屋敷を自由に徘徊できないでいる。
他の住人や来客と出会い頭に見つめ合ってしまう、という事故を防ぐ為に。
それでも彼女は、今の生活に満足しているという。
暗い洞窟の奥底で一人寂しく生活していた頃に比べれば。そう彼女は言った。
とはいえ、そもそも彼女がこのような生活を強いられているのは
全て女神アテナの一方的な嫉妬によるもの。彼女は犠牲者に過ぎないはず。
不憫でならない。そんな彼女をどうにかしてあげたいとあれこれ手を尽くしている。
今回のサングラスが上手くいけば、彼女の自由はかなり取り戻せる事になるだろう。
「本当になにからなにまで……感謝の言葉も、もはや出尽くす程でございますが、まだまだ足りませんね」
サングラスを手に取り、メデューサは頭を垂れている……と思われる。
俺はまだ、彼女の姿を直視していない。背中越しに彼女の言葉を聞いている。
「いや、まだ早いよ。成功するかどうかはこれからだから……」
そう、これからだ。俺は装った冷静な言葉とは裏腹に、
早鐘のように高鳴る鼓動をどうにか沈めようと必至になっている。
石化しても大丈夫なように、保険はかけてある。
とはいえ、やはり石化されるのは正直怖い。
それでも彼女の為ならば……これも妖精学者の仕事なのだから。
「……どうぞ」
短く、準備が整った合図がなされた。
いよいよ、いよいよだ。
俺はゆっくり振り返る。視線は、下に向けたまま。
まず、彼女の下半身……蛇の胴が見えた。
そして蛇と人との境目となる腹部に視線が移り、徐々に上へと上げられる。
何も身につけていなかった、ボリュームある胸部で一瞬視線が止まるが、すぐに少しずつ上へと映す。
綺麗に整った顎が見えた。潤んだ唇が見える。気品ある鼻筋が見え、そして……
219某880 解き放たれた想い〜メデューサ1〜:2005/07/05(火) 00:39:38 ID:6DiU8Bh/
「……あの、大丈夫ですか?」
俺は固まっていた。
いや、石化したわけではない。
赤いサングラス越しでも判る、美しい瞳に魅入られていたから。
こんなにも綺麗な瞳は、そう見た事はない。
彼女の瞳にはまだ魔力が残っている。人を魅了する魔力が残っているとしか思えない。
女神アテナが嫉妬した女、メデューサ。その理由が今判った気がする。
美しい。本当に彼女は美しかった。
髪の毛は無数の蛇になっているままだが、
それすら彼女の魅力を全て損なわせるには至らない。
むしろ何か、人にはけしてあり得ない魅力すら髪の蛇からも沸き立っているのではとさえ思う。
「……ああ、大丈夫。うん、石化は……無いみたいだね」
やっとの事で、俺は言葉を絞り出した。
魅入られたまま、俺は彼女の呪いを封じられたかどうかの実験をしている最中である事すら一瞬忘れてしまっていた。
「ああ……本当に、本当に……うぅ」
彼女は両手を口元に当て、はらはらと涙を流し始めた。
今彼女は生きた人間と視線を合わせている。
神話の時代を飛び越えるほど長きにわたって彼女を苦しめていた呪縛が、解かれた瞬間だった。
涙は止め処なく溢れている。だがそれを拭おうとはしなかった。
もう、片時も視線を外したくない。涙で視界が揺れる中、彼女は俺を見つめ続けていた。
そして俺も、彼女の瞳に釘付けになっている。
見つめ続ける二人。時すら止め、悠久の中見つめ続けている。そんな錯覚すら感じる程長い長い間見つめ続けた。
それでも石化はしない。しかし俺は動けなかった。
そんな俺に、彼女の方から寄り添ってきた。
両手を伸ばし、俺の頬にあて、顔を恭しく近づける。
「見ている……瞳を、見ているのですね私は……」
彼女の問いに答えようとした時、俺はそっと瞳を閉じてしまった。
唇に温もりを感じたから。
「……人がこんなにも温かいものと、久しぶりに実感しました」
微笑むその笑顔は、まさに女神のよう。
俺は彼女に笑顔を取り戻してあげられた。こんなにも嬉しい事は他にない。
220某880 解き放たれた想い〜メデューサ1〜:2005/07/05(火) 00:40:54 ID:6DiU8Bh/
「お礼を兼ねて……お願いがございます」
不意に、彼女が申し出てきた。
「抱いて……下さいませんか? どうか、人の温もりを思い出させて欲しいのです」
断る理由など何処にあろうか? 俺は返事をする代わりに、今度は自分から唇を重ねていった。
「んっ……」
軽く重ねられた唇から、蛇のように舌を伸ばし彼女の唇へと割って入れる。
待ち受けていた彼女の舌と絡ませ、湿った音を響かせる。
「あっ……んふ……」
吐息が時折彼女の口から漏れる中、
互いの舌はまるで蛇同士が絡み合うようにせわしなく動き、しかし密着したまま離れない。
二人は自然と、抱き合っている。俺の手は彼女の後頭部へと回っていた。
そこには、無数の蛇が待ちかまえている。
だが構うことなく、俺はその蛇の群れへと指をかき入れた。
普通に髪の毛を指ですくうように、指の間に細い蛇たちを挟み軽くなでる。
噛まれる事はなかった。むしろ、蛇特有のぬめり気が指に心地良い程。
感触だけの判断だが、蛇たちも心なしか撫でられ喜んでいるような気がする。
「あっ! んん……」
俺は指と舌の感触を名残惜しみながらも離し、舌と唇はそのまま首筋に吸い付いた。
そしてゆっくりと肌から唇を離さずに、下へと移動させていく。
「ああ、そこは……んっ!」
ふくよかな胸。唇はその先端にまで到達し、舌は頂をチロチロと舐め回す。
そしてもう片方の乳房には、俺の片手。その手の上には、彼女の手も重ねられている。
「いっ……あん、はぁ……」
俺の手よりもむしろ、彼女の手が強く強く握られている。
彼女の手から伝えられる要求に従い、俺は大きく派手に乳房を揉みほぐす。
一方唇と舌は、細かく敏感に刺激を与える。
「はあ……ん、ああ!」
左右全く対照的な刺激が与えられ、彼女の喘ぐ声も短く切られるようになってきた。
221某880 解き放たれた想い〜メデューサ1〜:2005/07/05(火) 00:42:16 ID:6DiU8Bh/
身体を支えていた腕にかかる重みが徐々に増してきた。立っているのが辛くなってきたようだ。
俺は掛かる重みに逆らわぬよう、ゆっくりと彼女を寝かせていく。
それと同時に乳房を掴んでいた手を離し、人と蛇の境目へと動かした。
そこには、しっとりと濡れた秘所が。
「ああそこに……そこにあなたの「蛇」を……」
もう迎え入れる準備は整っている。
だが、逸る気持ちを抑え、俺はまずもっと細い「蛇」を一匹、探り入れる。
「あはぁ!」
くちゅ、という湿った小さい音は、彼女の喘ぐ声に消された。
俺は指を一本、入り口の探索に向かわせている。
軽くなで回すだけでも、次々と奥から蜜があふれ出る。身体はもう、待ちきれないようだ。
「お願い致します……もう……もうこれ以上、切なくさせないで……」
そして心も、待ちきれない。
むろん、俺も。
指を離し、俺は腰を持ち上げゆっくりと彼女の腰の上へと動かす。
自分で自分の「蛇」を掴み、進むべき所へと導いた。
まるで蛇だけが石化したかのように固い。ここまで固くなっている事に自分で驚いている。
「ああ!」
俺は一気に腰を下ろした。その時、俺は何か「引っ掛かるもの」を感じた。
「え?」
この感触は、もしかして? いやしかし、そんなはずは……
「ふふ……今驚かれている通りですわ」
チラリと繋がったままの「結合部」を見る。そこからは、大量の蜜と同時に鮮血が混じっていた。
「ありがとうございます。私を「女」にしていただいて……
さあ、このまま私にどうぞ至極の「快楽」を……」
疑問は残る。だが、今それを考える時ではない。
彼女を「女」にした責任を果たさなければ。
222某880 解き放たれた想い〜メデューサ1〜:2005/07/05(火) 00:42:47 ID:6DiU8Bh/
「ああ! ん、はぁ……ん、んん、ふあっ、ああ!」
とても初めてとは思えぬ程、彼女の「中」は良く滑り、程良く締め付ける。
俺は初めてだという危惧を忘れ、無我夢中で腰を動かした。
その腰に、彼女の下半身……蛇の胴が乗せられる。
「いっ、ん、あっ!……ん、んん、はぁっ、いい!」
彼女の腕が俺を抱き寄せ、豊かな胸がつぶれている。
腰に乗せられた蛇の胴は、その重みでより奥へ奥へと俺の蛇を送り込もうとする。
「いい、行きます、わた、私、初めて、なのに……いい、あっ、いき、行きます!」
俺ももう限界だった。より一層二人は密着し、しかし腰は激しく動き、
頂点へと二人で駆け上がろうともがいた。
「ん、あっ、いあっ! はぁっ、い、いく、いきまっ、はっ、んはぁ、あ、あっ、はあぁ!」
奥へ流される、白濁の液。二人は抱き合い結合したまま、しばし動かなかった。
「ありがとうございました……これほどの喜び、もう私には与えていただけないものかと……」
女性の喜びを知る前に、呪いをかけられた悲しきメデューサ。
そんな彼女の呪縛を解き、喜びを与えてあげられた俺はなんと幸せ者か。
だが……
「あの、さ……」
俺の言葉は、彼女の唇で遮られた。
「野暮は申さないで下さいませ。さあ、宜しければ今一度私に至極の歓喜を……」
今度は俺から彼女の言葉を遮り、そして二人の腕は強く強く互いを抱き寄せていた。

*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*
223某880 解き放たれた想い〜メデューサ1〜:2005/07/05(火) 00:43:18 ID:6DiU8Bh/
「おや、色男。入り用は精力剤じゃろ?」
ヒャッヒャッヒャッ……と、待ちかまえたかのように魔女三人が俺に笑いかけた。
俺はサングラスが上手く機能した報告をしに、魔女達の住処に訪れていた。
メデューサに自由を取り戻してあげられたのも、間違いなく彼女達の協力あっての事だから。
「……まあ、先に礼を言わせてくれ。ありがとうな」
妖精学者とは敵対関係にあるはずの彼女達。
しかし俺にとって彼女達は、仲間だ。
例え、普段あれやこれやと「イタズラ」される仲だとしても。
「いやしかし、なかなか良い「もの」を見せて貰ったのぉ」
ん?
「それにしても驚いたぞ。彼女が「初めて」だったのはわかっとったが、ああも感じるとはのぉ」
んん?
「そこはほれ、あの娘も一人が長かったのぉ……「一人遊び」もお盛んだったんじゃよ。
身体だけは出来あがっとった、というわけじゃ」
んんん?
「そんなあの娘が最初に選んだのが、こやつか。
ヒャッヒャッヒャッ、それはもう「癖」になって止められなくなるのではないか?」
んんんん?
「おーおー、その通りじゃろうて。じゃから、四度もやりおったわけじゃろう?」
ちょっと待て……何故知っている?
「お前ら……まさか……」
見れば、三人が囲んでいる丸テーブルの中央には大きな水晶玉。
あれは遠見の水晶……遠方の様子をのぞき見する為の水晶。彼女達御用達のアイテム。
「ルビーの魔力生成はわしらが行ったんじゃ。その魔力を水晶で探るのは容易いな事じゃて」
「なーに、お主の「やる事」などお見通しじゃて。これも魔力生成の代金と思うてゆるせ」
「もう見た後じゃて、許すも何もあったものではないがのぉ」
ヒャッヒャッヒャッ……三人の笑い声が室内に木霊する中、俺はその場にガックリと膝を着き手を地に付けていた。
敵だ。やはり魔女は、妖精学者にとって敵でしかない。
俺は諸先輩達の警告を改めて思い知った。
224某880:2005/07/05(火) 00:53:52 ID:6DiU8Bh/
以上です。

いつもの事ですが、
そもそも神話から考えると何故生きているとか、
そんなに長生きしてるのかよとか
そーいう事は考えないのがエロい大人ということでよろしくw

余談ですが、「蛇娘」ならロールミー、と思ったのですが
書いてる途中で、体位的に無理があるか? と思ったので断念してしまいました。
機会あれば、次こそロールはしっかりさせたいな

>稲庭風さん
GJ!いい舌っすね。
むしろ一部分だけだから強調されるエロがあって良かったです。

>ほしをみるひと
スレ的な事を考えるとエロ無しが続く事に焦ってらっしゃるみたいですが
個人的には、じっくり書いて欲しいです。
でも、パンツから先も期待してますw
225名無しさん@ピンキー:2005/07/05(火) 00:59:30 ID:GaZwSe0B
>>224
リアルタイム キタ―――(゚∀゚)―――!!!!
もうね、GJですよGJ。
ロールは無かったけど十分に人外エロスを補給できますた。

ところでサングラスで眼力を押さえられるなら、カラーコンタクトでもOKなんジャマイカ?
226名無しさん@ピンキー:2005/07/05(火) 01:06:48 ID:MvospjMV
貴様!!
少し明るい未来のある俺を萌え殺す気か?
そうとしか思えんぞ
GJ
227名無しさん@ピンキー:2005/07/05(火) 01:29:51 ID:K0GuA4RT
GJ!
>そもそも神話から考えると何故生きているとか、
同じゴルゴン三姉妹のエウリュアレーとか、ステンノーとかの姉貴ではどうでしょ?

魔女とのやりとりも良いですね。こう、キャラが立ってて。

しかし、まとめサイトも複数あるってのはちと困ったもんですな。
過去スレの分も纏めて読めるのは、有志の方には感謝しておりますが…。
それが複数に分散してるのはやや不便なのも確かで。
おまけに、同一シリーズを複数スレにまたがらせると余計に…
テーマが違うならまだしも、重複に近いスレなわけだし…
228名無しさん@ピンキー:2005/07/05(火) 01:33:45 ID:oR2KHoe3
GJ!!先達の言うことは聞かんとねw
 
……今更だが、富江て凄いよな……
229名無しさん@ピンキー:2005/07/05(火) 03:24:49 ID:K0GuA4RT
>204
つーか、SSが欲しけりゃ自分で書けばいい(マリー
自分で書けないんだったら、無闇と他人にも強要するべきではない。
どちらにせよ、SSがなくともネタがある分だけ何もないよりはマシじゃないのか?
と思うが。
230只今遠距離恋愛中:2005/07/05(火) 03:27:18 ID:K0GuA4RT
毎週金曜日は、鼎優治(かなえゆうじ)が心待ちにしていた日だ。夜になると、遠距離恋愛中の5つ年上の彼女、松永薫子がやって来るからだ。
その週の仕事が終ると、彼女は転勤先から、大学に通うために優治が一人暮しているアパートまで、車をかっとばして来る。そして優治は、二人分の夕食の用意をして待つ。
彼女は職場では仕事ができる女で通っている。しかし…

それは、まだ優治が高校生の頃だった。
とある土曜の昼、下校途中の優治が近所の公園を通りかかった時だった。ベンチの前にスーツ姿の若い女の人が倒れていた。化粧っ気のない顔には細く弧を描く眉、肩にかかる長い髪も染めもパーマもない、黒いストレートだ。
「あの、大丈夫ですか?」
心配になって声をかけると、彼女は大きめの目を半開きにして一言、
「…おなか…、すいた…」
それが二人の出会いだった。ロマンもへったくれもありはしない。
なんとか起こしてベンチに座らせると、慌てて近くのコンビニでレトルトのお粥――空腹で荒れた胃を考えての事だ――と惣菜を買ってくる。優治がコンビニでチンしたそれを、彼女は猛然と食べだした。
途中での追加分も含めて五杯分のご飯とそれに見合うおかずを平らげて、やっと彼女の腹の虫は治まった。
ようやく人心地ついた彼女は、行き倒れの訳を説明した。曰く、仕事が忙しくてしばらくは会社に泊り込み、ロクにご飯も食べてない、と。
なんとか歩けるようになりはしたものの、ふらつく彼女が心配で、優治は彼女――松永薫子と名乗った――を送って行った。いやまあ、下心がないと言えば嘘になるが。
公園からすぐの彼女のアパート――部屋2つに台所とユニットバス――は、一言で言えばゴミ溜めだった。
231名無しさん@ピンキー:2005/07/05(火) 03:28:06 ID:K0GuA4RT
床一面覆う、食いかけのスナック菓子や飲みかけのペットボトルと、脱ぎ散らかした服。台所には洗ってない皿や茶碗と、レトルト食品の空容器。いたる所に埃が積り、万年床の煎餅布団はジメッとしていた。
「あの〜、松永さん。本当にここに住んでいるんですか?」
念の為確認した。いや、表札は「松永薫子」だし、彼女の鍵でドアは開いた――ぐったりしている薫子に代わって開けたのは優治だ――し、彼女の部屋だと言うことは間違いないが。
「うん〜。そうだよぉ」
彼女は、気だるそうに答えて、ゴミの隙間を器用に歩きながら部屋に入る。
「折角来たんだから、入りなよ」
いくらなんでも、それは無防備では? というか、女として人として、こんな部屋に初対面の男――いくら少年とはいえ――を入れるのに抵抗はないんだろうか?
「あ、その辺のゴミをどけて適当に…、あ、いいや、布団の上に座ってていいよ」
そう言いつつ、家主は先に布団の上にドカッと座る。ちなみに胡座だ。ミニではなくともスカート姿の女性がやるべきではないような…。
辺りを見れば、下着もそのまんま放置してある。優治はあわててそれから目を逸らす。
「あの、今日は散らかってるようなので、失礼します」
「ん〜。別に〜。いっつもこんな感じだよ?」
恐ろしい事を、さらっと言う。
幸いな事に、優治の家は両親が共働きだったので、小さい頃から家事一般が得意で、そして困ったことに、人並み以上の親切心を持ち合わせていた。
会って間もない相手の部屋を、いきなり掃除をする非礼は承知していたが、この部屋はそんな礼儀なんぞは超越した場所だ。
彼は部屋の片付けを提案し、彼女は二つ返事で承諾した。眠いので手伝えない、という条件付で。
かくして、夕暮れまでには床を埋め尽くすゴミとレトルト食品は分別されてゴミ袋に詰められ、茶碗は綺麗に洗われ、衣類は洗濯されて干され、積もった埃は一層された。
ちなみにその間、他人に部屋を引っ掻きまわされても平気で寝ている図太さは、掃除機の音すらものともせずに、彼女を眠り続けさせた。ちなみに、彼女は着替えもせずにそのままの格好だったりする。
232名無しさん@ピンキー:2005/07/05(火) 03:28:51 ID:K0GuA4RT
日暮れが近づいてから、ようやく薫子は目を覚まして開口一番、
「あれ? …ここどこ?」
キョロキョロと見まわすが、すぐにはそこが自分の部屋だとは理解できなかったようだった。
「うっわーっ。ここ、ホントにあたしの部屋ぁ? 嘘みたい」
感心して、部屋を一通り見てまわる。ユニットバスもトイレもすっかり綺麗になっていたりする。
「うーん。こりゃすごい…、まるで別の部屋みたい…」
と、台所にある湯気を立てている鍋釜に気付く。
「あ、お口に合うかどうか判りませんが、とりあえず夕食作っておきました」
「うっわぁ。ありがとぉ」
鍋の蓋をとり、
「あ、肉じゃがね。好物なんだぁ〜。あれ? 材料ってどしたの?」
冷蔵庫には、すでに食物の残骸と化したものしか残ってなかったはずだ。
「オレが買ってきました」
「お金は?」
「オレが出しましたけど」
「え、それじゃ悪いよ。ちょっと待ってて」
部屋に戻ると、座卓の上に置いてあったバッグから財布を取り出し、一万円を取り出す。
「はい、材料費。おつりは掃除代って事で」
「え、いいですよ。オレ、別にそんなつもりじゃ…」
「こーら。大人に対してそんな遠慮はしない。キミはそれだけのことをしたんだから」
そう、諭すように万札を握らせる。
「あと、一緒にご飯食べていってよ」
「え、でも…」
「ね、お願い。一人じゃ寂しいからさぁ」
年上の綺麗なお姉さんにそう言われたら、悪い気はしない。そうして一緒に食卓を囲みながら、話題は自然に互いの事になる。
優治は近くに住む高校生で、両親が共働きで小さい頃から家事をしていた事を話した。
薫子は高卒後一人暮しを始めたOLで、雑貨を扱う小さな商社に勤めていた。小さい会社なので職種が分かれきっておらず、彼女は営業から在庫管理、仕入れ先の選定まで一通りこなしていた。
その結果として仕事が忙しくなり、元々家事が苦手なのもあって、こんな惨状は珍しくないそうだ。
「ね、アルバイト代わりに、時々家事をしてくれないかな?」
彼女はそう提案した。
このまま彼女を放っておいたら、そのうち病気になりかねない。かくして彼は、その親切心から週に一二回、彼女の様子を見に来て一緒に夕食を摂る事になった。
そうして、二人の交際が始まった。
233名無しさん@ピンキー:2005/07/05(火) 03:30:54 ID:K0GuA4RT
優治が薫子のもう一つの面、有能なOLとしての面を見るのは付き合ってから暫くたってからだった。
少し遠出して買物に出かけた彼が、偶然街中で薫子と出会ったのだ。
「あら、ユージ」
同僚の女性と一緒にいた薫子は、普段とは違って髪をきちんとセットし、化粧もして表情も凛々しく、いかにも年上の女性に見えた。普段家にいる時ははだらしなく、全然そうは見えないのだが。
「あ、薫子サン」
「え? ひょっとして、この子が噂の彼? 家事万能で薫子の生命線の」
事情を聞いているらしい彼女の同僚が、好奇心に目を輝かせる。
優治は喫茶店に入って少し薫子らと話をした。もっぱら同僚の質問攻めだったが。
その間の薫子の態度は、外見どおりハキハキとしゃべり、キリッとした大人のものだった。
「ねえ、薫子って一部の隙もないキャリアウーマンみたいな感じだけど、家でもそうなの?」
かなり親しげな同僚も、家での彼女の姿は知らないらしい。ということは優治は恐らく、彼女が気を抜いて甘えられる、数少ない相手の一人ということだ。優治は適当に誤魔化して答えつつ、それに気付いた。
以来、二人の関係は現在まで続く。
途中、薫子は転勤で街を離れる事があったが、二人の関係はそのまま遠距離恋愛となった。彼女がしょっちゅう車で優治を迎えに来てはデートをし、また――相変らず――家事をやってもらったりした。
やがて優治が地元ではない大学に受かり、一人暮しをするようになると、今度は薫子が彼の元へ通うようになった。金曜の夜に来て、日曜の夕方に帰るのだ。
優治の家に行くからといって、普通の遠距離恋愛の交際になったわけではない。相変らず家事が苦手な薫子は、来る時に1週間分の洗濯物を持ち、帰りに洗ってもらった洗濯物とタッパーに詰めた料理を持ち返るのである。
234只今遠距離恋愛中:2005/07/05(火) 03:32:11 ID:K0GuA4RT
そうして今、彼女がやって来る時間になったのだ。
すでに9時を過ぎて夕食には遅いが、優治は軽く腹に入れて薫子を待ち、一緒に夕食をすごすことにしていた。
しかし今日はやけに遅い。バラエティー番組を見ながら優治はそう思った。
薫子は、毎週金曜は7時までに仕事を切り上げ、その後車をかっとばす事2時間。いつもは9時、遅くても10時には着くのだが、もうそろそろ11時だ。遅れる時はいつも、9時頃には電話があるはずだが…。
そうして待つことしばし、やがて向かいのパーキングに車が停まる音がした。あの乱暴な車の停め方は聞きなれた薫子のものだ。
やがてドアのチャイムが鳴り、続いてガチャガチャと鍵を開ける音。
「ただいまぁ」
いつもの脱力したような、優治への甘えがなせる声とともに、薫子が入って来た。彼女は「今晩は」ではなく「ただいま」という。
「ユージ、遅くなってごめぇん」
入ってくるなり、薫子は手を合わせて謝る。
「あ、気にしないでよ。お疲れ様、薫子さん。ちょっと待っててね。今、ご飯温めなおすから」
そういう優治に、
「あ、いいのいいの。…実は済ませてきたから」
と薫子。
優治としては、ちょっと不満である。薫子さんが、彼の料理をいつも美味しそうに――というかまともな食事をしないための半ば飢餓状態で――食べてくれるるのが、楽しみだったのに。
「じつはさ、ちょっと急な用事ができて、朝までにこっちを出て戻らなきゃならないのよ」
申し訳なさそうに説明する。
「そりゃ、随分急じゃないか。なら、いっその事、今日はそのまま向こうにいれば良かったのに」
「だってぇ。折角の金曜でしょ? どうしてもユージといたいから、こっちに戻って来たんだもん」
年上という事を忘れそうになる甘えっぷりで、そう答える。と、薫子は身体を摺り寄せてくる。
235只今遠距離恋愛中:2005/07/05(火) 03:33:23 ID:K0GuA4RT
「な、何ですか? 薫子サン」
「ね、しよ? ユージ」
薫子さんはたまにこういう積極的なことがある。ストレスが溜まっているとか、生理周期の影響とか、TVとかで恋愛映画を見たとか。それにしても、今日のは積極的というか性急な気がする。
いつもは夕食を食べて、少しのんびりして、多少のアルコールが入ってから切り出すのに。
「じゃあ、シャワー浴びてくるから…」
「そんな事より、今すぐしようよ」
本気で性急だ。こんな事は初めてだ。
「戻る前に、ね?」
惚れた女(ひと)から、寸暇を惜しんで求められるってのは男妙に尽きるわけだが…。そう思っていると、そのまま体重をかけられて、一気に押し倒される。
「かか、薫子さん…」
薫子は年上で、優治の初体験の相手で、いろいろと手ほどきをしてくれた相手だ。大抵は彼女にリードされる事になるのだが、こう強引なのも珍しい。
「ね、いいでしょ。ユージ。遠く離れた所にいたわけなんだしさ」
年上とは思えないくらい、可愛らしくねだってくる。
優治もこの1周間、毎日メールをやりとりし、薫子に逢いたい気持ちを高まらせてきたのだ。いやなわけはない。
そして、二人は肌を交えた。今日は、いつにもまして濃厚だった。
ゴムもつけず――安全日だとか――に、いつもより激しく、いつもはあまりやらないプレイもする。そして薫子はそれを何度も求め、果てるとシャワーを浴びて一休みした後、また求めてくる。
優治がいつしか記憶も定かでなくなり、ぐったりと疲れた頃、ようやく薫子は優治を開放してくれた。

気がつくと朝だった。すでに日は高い。電話のベルが、うるさく鳴っている。
布団の隣に、薫子さんの姿はない。浴室にも気配はない。見れば、卓袱台の上の昨日の夕食にも手をつけていない。
いつもの薫子なら、どんなに急いでいても優治の料理を食べるチャンスを逃がすはずはないのに、これは珍しい。
あいかわらす、電話は鳴り続けている。優治は、これ以上相手を待たせるのも失礼だし、薫子さんがいないならということで、パンツも履かずに電話に出た。
相手は警察だった。
236只今遠距離恋愛中:2005/07/05(火) 03:34:20 ID:K0GuA4RT
薫子さんの乗った車が事故に遭い、運ばれた先の病院で息を引き取った、ということだった。
何度も確認したが、それは疑い様のない事実だった。持ち物からの連絡先に、優治の電話番号があったというのだ。
ガツンと殴られたような衝撃を受け、目の前が真っ暗になり電話の声が急に遠のいた。気がつくと、とっくに電話の着れた受話器を持ったまま、呆然とその場に座りこんでいた。
涙が止めどもなく流れ、泣きじゃくり、嗚咽を漏らした。
最愛の人を、最も親しい人を、総てを許せる人を、自らの半身にも等しい人を、永遠に、永久に失ってしまった。二度とあの笑顔を、声を、温もりを、心を感じることができなくなってしまった。
そのまま崩れてしまいそうな優治の心を、その奥底で、確かな、温かい、しっかりとしたものが支えていた。
それは、彼女の愛。永遠の、揺るがぬ、不滅の、なにものにも勝る、強く確かな愛。
なぜなら、警察の伝えた薫子の死亡時刻は昨夜の11時前。彼女は、それでも優治のところにやって来てくれたのだ。

そう、それは十万億土の彼方からの、究極の遠距離恋愛。
237名無しさん@ピンキー:2005/07/05(火) 11:17:58 ID:xZD9G5rn
せつNeeeee!
でもGJ!!
238名無しさん@ピンキー:2005/07/05(火) 15:11:16 ID:xeGf+UhL
マテマテ!!彼は死んだ彼女とセックツしたの?

読解力のない俺に教えてエロい人
239名無しさん@ピンキー:2005/07/05(火) 15:34:37 ID:N/LvjkkA
>>230
GJ…・゚・(つД`)・゚・。
240某880:2005/07/05(火) 23:39:36 ID:6DiU8Bh/
>225-228
GJ書き込みサンクス

>ところでサングラスで眼力を押さえられるなら、カラーコンタクトでもOKなんジャマイカ?
素材がルビーのカラコンって、目に入れたらかなり痛そうじゃないかな? と思って除外しました。
まあ、そもそもルビーでレンズが作れるのかとか言われると…
そこは、卓越したドワーフの技術という事で納得して下さいw

>同じゴルゴン三姉妹のエウリュアレーとか、ステンノーとかの姉貴ではどうでしょ?
一応俺設定では、二人はギリシャにいたままですが
この後に、サングラスを二人に送っている事にしています。
そのお礼をしに二人がギリシャから…というのもありか?w

>テーマが違うならまだしも、重複に近いスレなわけだし…
とはいえ、微妙な差で棲み分けがされているのも事実で。
その為に
>おまけに、同一シリーズを複数スレにまたがらせると余計に…
を回避する為に、俺は裏サイトを作ったので、そちらで我慢して下さい。
241名無しさん@ピンキー:2005/07/06(水) 00:35:16 ID:7nKC7kmg
真逆(まさか)
242230:2005/07/06(水) 02:16:36 ID:qQwo6c0J
>只今遠距離恋愛中
「通い妻は、血塗れの」のグロ抜きしたのを発端に、「菊の約束」をベースに「てんぷら」の主役カップルを引用して作り上げた泣きストーリーです。
短時間で書き上げたせいで荒が多いので、まとめサイトの管理人様、厚かましいこととは存じますが、もしよろしければ以下の部分を修正していただけませんでしょうか?

>申し訳なさそうに説明する。
>「そりゃ、随分急じゃないか。なら、いっその事、今日はそのまま向こうにいれば良かったのに」
の部分を以下の分に差し替え
――――――――――――――――――――――――――――――――――
薫子は、優治に手を合わせる。そういう理由ならしかたない。
「別に怒ってないですよ。薫子サン」
「ありがと。ほんと、家事が苦手なあたしが、今まで病気らしい病気もせずに、健康に過ごせたのは、ユージのおかげだから。いっつも感謝ているわ」
改まってそう言われると、ちょっと恥ずい。照れ隠しに話題を逸らす。
「でも、そりゃ随分忙しいじゃないか。なら、いっその事、今日はそのまま向こうにいれば良かったのに」
今までに何度か、仕事が忙しくて金曜に来れずに土曜に来た事もある。
――――――――――――――――――――――――――――――――――

>そして薫子はそれを何度も求め、果てるとシャワーを浴びて一休みした後、また求めてくる。
の部分の後に以下の文を挿入
――――――――――――――――――――――――――――――――――
その間、薫子は何度も「ユージ、大好き。愛してる」と繰り返し語りかける。優治も「オレも…、オレもだよ。薫子サン…」と答え、口付けを交わす。
――――――――――――――――――――――――――――――――――

>優治がいつしか記憶も定かでなくなり、ぐったりと疲れた頃、ようやく薫子は優治を開放してくれた。
の部分の後に以下の文を挿入
――――――――――――――――――――――――――――――――――
「ユージ、大好き」そう薫子が呟くのを聞きながら、優治の意識は闇に沈んでいった。
――――――――――――――――――――――――――――――――――
243名無しさん@ピンキー:2005/07/06(水) 23:18:16 ID:iZMIt7Od
やはり「てんぷら」の主人公カップルだったんですね。
あの漫画好きで読んでいるのでそうかなと思ったのですが。
244230:2005/07/07(木) 21:35:15 ID:FwD8a2YQ
まとめサイトの管理人様。修正ありがとうございます。

さて、とりあえずネタも切れたんでぼちぼち執筆を再開しますか…
245名無しさん@ピンキー:2005/07/09(土) 22:06:08 ID:kwHKocUH
>>230
ちょまっおまっ
しんみりさせる曲聞いてるときにこんなせつねー話を(つД`)
246名無しさん@ピンキー:2005/07/10(日) 00:37:28 ID:0zuqpbvg
>227
あっちはオカルト
こっちは人外

>只今遠距離恋愛中
「中」って事で和もうと思ったら、掛かるのは「只今遠距離恋愛」全部にですね
せつねえええ
247名無しさん@ピンキー:2005/07/10(日) 21:37:22 ID:MQ9yoJpR
悪魔っ娘はこっちでおk?それともオカルト娘スレ?
248名無しさん@ピンキー:2005/07/10(日) 21:49:45 ID:5d3C0g13
正直、どっちでもいいから投下キボン
249名無しさん@ピンキー:2005/07/10(日) 21:53:47 ID:MQ9yoJpR
了解。まだ完成してないので1週間以内に何とかします。
250名無しさん@ピンキー:2005/07/11(月) 00:08:58 ID:sPdT2uVk
期待
251名無しさん@ピンキー:2005/07/12(火) 00:19:44 ID:jM944VTm
>246
>あっちはオカルト
つまり、霊能者・巫女・シスター・尼・魔女などもOKですか?
252名無しさん@ピンキー:2005/07/12(火) 00:36:25 ID:t4028eof
>251
向こうの>1を嫁
>ここは幽霊、妖怪、妖精、魔女っ子からはては異次元人まで
>オカルティックな存在の幼女、少女、娘、女性にハァハァするスレッドです。
253名無しさん@ピンキー:2005/07/12(火) 00:56:22 ID:jM944VTm
ええと
あっち:「幽霊・妖怪・妖精等の存在自体が非科学的」+「魔女等のそれにかかわる」女の子
こっち:「幽霊・妖怪・妖精等の存在自体が非科学的」+「宇宙人とかのSF的非人間」女の子
でいいのか?

「魔法・超能力でエロ妄想」とか「魔女っ娘&魔法少女で萌エロ」とか、オリジナルものは重複部分が結構あるな。
254名無しさん@ピンキー:2005/07/12(火) 01:10:09 ID:nKs3E+nu
とりあえず、このスレでは人間以外のあらゆる女の子を受け付けてるから、
迷ったらこっちにお願いしますってことで。
255名無しさん@ピンキー:2005/07/12(火) 01:15:21 ID:7x+xQNrE
そこはほら、
保管庫とか見て全体的な作風ってか傾向ってかを調べて判断すればいいんじゃないかな
256名無しさん@ピンキー:2005/07/12(火) 01:33:50 ID:jM944VTm
>254
オケ

ところで、卓ゲー板のGBスレで見つけた「スライムイーターさん」
微グロなんであれなんだが、このスレ住人ならOKか?
ttp://monster-girl.homelinux.net/up/No_1014.jpg
257名無しさん@ピンキー:2005/07/12(火) 01:55:28 ID:EBiejZqM
14レス使用で投下します
コテトリつけてますので、気に入らない方はあぽ〜ん推奨

※注意事項は特にありません


『港にて』
258名無しさん@ピンキー:2005/07/12(火) 01:56:03 ID:EBiejZqM

 雨音に混ざって届いたのは、女の悲鳴。
 それを聞くやいなや、戸川文宏は走り出していた。走りながら傘を畳もうとする
ものの、片手しか使えない為に上手くいかないようだ。右腕を吊る三角巾が濡れき
った頃、体を支えにどうにか閉じる事が出来た。
 防波堤に当たる波の音を掻き分けて、水溜まりを跳ねる足音が響く。右と左でリ
ズムが異なるのは、左足を引き摺っているせいだろう。
 コンテナの間を抜ける文宏が、右目だけで辺りを見回す。左目を覆った包帯は、
頭や首筋にまで伸びていた。雑に切ったような髪からシャツに雨が流れ込んで、袖
から覗く包帯も濡らす。しかし、それら一切が気にならないらしく、文宏は必死に
気配を探り続けた。
 錆びの浮いたコンテナを回った時、優等生じみた文宏の顔に確信が浮かんだ。右
踵で制動をかけ、左手奥へと向かって速度を増して行く。
 その先。積まれたコンテナで出来た路地裏に、幾つかの影が見えた。
 女らしき人影が押し倒され、複数の者に取り囲まれている。喉にひっかかったよ
うな女の悲鳴を聞き、文宏が怒声を張り上げた。
「やめたまえ、君達!」
 文宏は一斉に振り向いた者達を前に、思わず足を止めかけた。
 半魚人。
 ぬめっとした、魚そのものの顔。青緑の蛙じみた体は、腹部だけ別の生き物のよ
うに白くなっている。鱗で覆われている事からも、人とは呼べない代物だろう。そ
れはまるで、人の姿を魚の形へと冒涜的に整形したようだ。
 だが、文宏の気勢を削いだのは姿形では無い。魚屋でもこうはいくまい、という
程の強烈な魚臭さだった。
 それでも、倒れているのは間違いなく人間の少女なのだ。恐怖に強張った顔で、
引き裂かれた服へ涙を流し続けている。文宏が魚臭さを我慢するには、充分な光景
だろう。
「半魚人に日本の法律が適用されるのか、僕は知らない。しかし、女性に暴行を加
えようという者を見過ごす訳にはいかないのだよ」
259名無しさん@ピンキー:2005/07/12(火) 01:57:11 ID:EBiejZqM
 不自由な体ながら、大きく振った傘と共に文宏が躍りかかる。少女に唾液を垂ら
していた半魚人へ一撃を加え、庇うように立ちはだかった。周囲を警戒しつつ、足
下の少女に声を掛けようとして、
 殴り飛ばされた。

 かなり派手な音と共に、コンテナへ文宏の体が叩きつけられる。そのまま地面に
落ちた文宏へと、半魚人達の嘲笑うような声が降りかかった。
 どこかを切ったのか、包帯の下の傷口が開いたのか。文宏の体から流れた血が、
雨に流されて水溜まりに糸状の模様を作る。焦点の合わない目へ、次第に瞼が落ち
始めていく。
 しかし、霞む視界に少女の泣き顔が入ると、文宏は目を見開いた。
 歯を食いしばって、腕や肩を支えに起き上がろうとする。その動きは、ぐしゃぐ
しゃになった傘が見えても止まる様子は無い。全身を激痛が襲っても、左腕に力が
入らず肘から先が震え続けていても。額を地面に押しつけ、体を曲げ、必死で立ち
上がろうとする。
 そのうち、半魚人達の嗤い声もぴたりと止んだ。そんなに死にたいなら、死なせ
てやろう。言葉にこそしなかったが、雄弁にそう語る足音が文宏に近付いて来る。
 ぴちゃ、ぴちゃり。
 文宏の前で、水掻きのある鉤爪は止まった。前ヒレを振り上げたのか、空気を裂
く音がする。覚悟を固めた文宏に、場違いな物が聞こえた。
 口笛。
 同時に半魚人は飛び退がったようで、遠くで水が大きく跳ねた。文宏が地面に顔
を摺りながら見ると、少女の周りにいた者達も距離を取ったようだ。威嚇の唸り声
を発しながら、身を寄せ合っている。
 何事だろうか。ぼんやり思い浮かべた文宏に、上から声が掛けられた。
「少年、尋ねても良いかな。君じゃ、あの半魚人どもに勝ち目無いの、分かってる
わよね?」
「だろうね。今は怪我だらけだが、万全の状態でも相手にはならないはずさ」
「それならば、考えられるのは一つだけか。あそこの女の子が、少年の恋人なのね。
キタミールの末裔は、しばしば個人的感情が論理的行動を上回るものだから」
260名無しさん@ピンキー:2005/07/12(火) 01:58:27 ID:EBiejZqM
「いいや。彼女とは面識も無いし、そもそも名前すら知らないよ」
 上の声が考え込み出した頃、起き上がろうとした文宏がバランスを崩した。仰向
けに転がって息を吐きながら、彼は声の主と向かい合う事になった。
 浮いた樽の上に、白衣を着た若い女が腰掛けていた。
 樽から生えた翼が羽ばたく度に、幾つかの房に束ねた髪が揺れる。後ろ手に二本
の腕をついた女は、胸の前で組んだ腕で肘を支え、口元に手をやっている。
 彼女の変わった容姿が気になるようで、文宏はその疑問を口にした。
「なぜ白衣なんだい?」
「科学者だからよ」
 言われてみれば、そうかもしれない。そんな風に納得した文宏とは異なり、彼女
の抱えた謎は解消されなかったようだ。しばらく考えた後、お手上げというように
彼女は五つの掌を上へ向けた。
「降参。良かったら教えて貰えないかしら。少年がなぜ、自分の命を危険に晒して
まで、あの娘を助ける必要があるのか」
「簡単な事さ」
 文宏は体を半回転させ、両手両足をついて再び起き上がろうとした。
 右腕のギブスが泥水を吸って黒ずみ、手足を伝って血が流れ出す。だが青い顔を
しながらも、文宏の目は半魚人達を睨み続けていた。
「彼女が、助けを呼んだからだよ。反抗する力が無かろうと、自分に出来る精一杯
の事をした。彼女より戦える僕がそれを聞いた以上、放っておくわけにはいかない
じゃないか」
「放置したとしても、少年に損失があるとは思えないわ」
「ところが、あるんだ。『僕はあの時、助けを呼ぶ声を無視したんだな』と一生思
い続けるなど、僕には耐えられない事なのさ」
「それは少年にとって、死以上の恐怖なのね」
 頷いた文宏へ向け、白衣の女が口笛を吹いた。からかう物では無く、様々な意味
が篭められているようだったが。文宏には生憎と、口笛で会話するような習慣は持
ち合わせていなかった。
 どうにか立ち上がった文宏だが、よろけてコンテナに片手をつく。その目線の辺
りまで降りてきて、白衣の女が彼に提案した。
261名無しさん@ピンキー:2005/07/12(火) 01:59:42 ID:EBiejZqM
「取引しない?」
「内容によるだろうね」
「あの下衆どもは、私の敵でもあるの。皆殺しにするつもりで来たんだけど、少年
の理由が気に入ったからね。譲ってあげても良いわ」
「それはどうも」
「本題はここからよ。少年の力では、あの下衆どもに敵わないわ。大宇宙で最も知
性に劣る連中だけど、無駄に力だけはあるからね。そこで、私から少年に贈り物が
あるの」
 にっこりと微笑んだ女が、薬のカプセルを取り出した。
「正義の戦士、シャ=ガースとなって戦うのよ!」
「胡散臭いな」
「待って。今なら怪我も全て治してあげるという、豪華おまけつき。更にセットで、
栓抜きやラジオなど十の機能がついた万能ボールペンもあげるわ」
 必死に訴える白衣の女に、文宏が冷めた目を向ける。彼女には悪気が無いどころ
か、親切心に溢れているようだ。どうせこのまま半魚人どもに挑んだところで、返
り討ちに合うだけだろう。頷こうとした文宏は、一体の半魚人が踊りかかって来る
のを見た。
 上空で一回転した半魚人が、鋭い爪を翳して落下して来る。身構える文宏の隣で、
白衣の女が苛立たしそうに口笛を吹いた。
 樽から発射された光線が、半魚人の白い腹に大きな穴を開ける。余波で吹き飛ん
だ半魚人は、コンテナに何度か体をぶつけながら地面に落ちた。痙攣を続ける半魚
人の体は、あちこちが奇妙な方向に曲がっているようだ。
「どうかな?」
 にこにこと尋ねてくる彼女に、文宏は頷く事しか出来なかった。

 雨水を口に含んだ文宏が、白衣の女に渡された薬を飲み込む。興味津々で見守る
女に気付いて、彼の不安は増すばかりだった。
「そういえば、まだ名前を聞いて無かったな。僕は戸川文宏。君は?」
 返ってきたのが口笛だけだったので、文宏は首を傾げた。
「ああ、ごめんなさい。私の名前、少年には発音出来ないわ」
262名無しさん@ピンキー:2005/07/12(火) 02:00:45 ID:EBiejZqM
「不便なのだな」
「そうね。なら、ユリとでも呼んで。昔、私の故郷に侵入した殺人鬼が、私達を海
百合みたいだと言ってたそうだから」
 不吉な名前だとかは思わないのだろうか。そんな文宏の感想は、口から出す事が
出来なかった。
 両腕が、関節では無い部分から折れ曲がる。続いて足も同じように曲がり、肋の
一本一本が服の下で脈を打ち始めた。それに伴う激痛が、文宏の口から苦悶の声を
上げさせ続ける。
「なるほど、痛覚は残ったままなのね」
 冷静に観察するユリを、恨みがましそうに文宏が見る。そんな彼へ、ユリは舌を
出して釈明した。
「ごめんなさい。その薬、人体実験した事無いのよ。そもそも、シャ=ガースはこ
ういう方法で作るものじゃないから。私独自の研究だけに、まだまだデータが足り
ないのよね」
 まあ、大丈夫だと思うわ。そう締め括られても、文宏の痛みが減るわけは無かっ
た。
 のたうち回る文宏と、その記録にかかりきりのユリ。無防備な彼らを見て、半魚
人達は視線と短い言葉を交わした。呼吸を合わせた半魚人達が、ユリに向かって飛
び掛かっていく。
 左右に別れながら半魚人が迫るのに対し、背中を向けたままのユリが短く口笛を
吹いた。左の先頭の数体が光線に焼き払われ、後の者の足が止まる。
 続いてユリは、右の半魚人達へと光線を発射した。樽から複数の光が伸び、半魚
人の頭や腹を撃ち抜きながらコンテナに穴を開ける。熱せられた鉄で蒸発した雨が、
細い水蒸気となって立ち上っていた。
「これだから、貴様らは気に入らないのよ。見て分かるでしょ、今は大事な実験中
なの」
 言い終わるのも待たずに、右の群れで生き残った半魚人が飛び掛かる。呆れたよ
うな溜め息を吐いて、ユリが彼らを焼き払った。
「邪魔するなと言ってるじゃない。なんで、そんな簡単な事も分からないわけ?」
263名無しさん@ピンキー:2005/07/12(火) 02:01:48 ID:EBiejZqM
 ヒレを失った半魚人から、錆びた鉄を摺り合わせたような声が洩れた。ユリとの
斜線上に立ちはだかった他の者達が、気遣うような声を掛ける。仲間に肩を貸して
貰いつつ、怪我した半魚人も起き上がった。
 右と左に離れた仲間同士、何やら言葉を交わしていた。撤退すべきか、戦うべき
か。迷う彼らの中で、一体の半魚人が死骸となった者達へ皆の視線を促した。
「さあ、頑張りなさい。少年の努力が、科学史に偉大な一歩を記す事になるのよ。
心配しなくても、少年の名前も残されるわ。もう少し、あと少し耐えるのよ、フミ
ヒロ」
 興奮して五本の腕を振り回すユリを見るうち、半魚人達の覚悟も固まったらしい。
頷き合った彼らは、コンテナの上下に散った。大きく跳んだ一群は、路地の向こう
で反転して戻ってくる。三次元を活かした包囲網のどこにも、逃げ場など無い。
 だが、ユリは面倒臭そうに溜め息を吐いて、樽を浮き上がらせた。コンテナの上
にいた半魚人達は、瞬時に作戦を変更して飛び掛かった。
「科学の進歩を邪魔する者は、例え誰が許しても我々が許さないわ!」
 叫び声と共に吹かれた口笛に従い、樽が低い唸りを上げた。
 ばさっと大きく開いた翼の下で、無数の光線が閃く。前後左右に乱射される光は、
半魚人達へと無茶苦茶に降り注いだ。
 魚の目を射抜かれた者が、続く一撃に頭の半分を吹き飛ばされる。前ヒレを左右
ともに失った者の腹へ、二度三度と光線が浴びせられる。頭を無くして落ちていく
者は、地面に着く前に全身をばらばらに撃ち砕かれた。
 まるで花火工場の事故のように、派手な光の乱舞が終わった後。半魚人は一体残
らず、その生命活動を停止させていた。
「下らない事に時間取らせるんじゃないの、まったく」
 ユリは忌々しげに吐き捨てると、藻掻く文宏の下へと降り立った。
 全身、頭蓋骨までぐにゃぐにゃに脈動する文宏が、痛みに耐えかねて転げ回る。
目を輝かせて見守るユリの前で、破裂した文宏の皮膚が流体状の塊に変化した。
「成功よ!」
 ユリが興奮して叫ぶと、不定形だった文宏の体が収まった。
264くなさん ◆DAYgAM2ISM :2005/07/12(火) 02:03:42 ID:EBiejZqM
 大きく喘ぎながら、文宏が立ち上がる。いや、それは既に『文宏だった者』と言
った方が正しいのかもしれない。自分の体を見回す彼に、きらきらと目を輝かせた
ユリが宣言した。
「それこそが、科学の生み出した完璧なる戦士。シャ=ガースなのよ」
「どこも変わってないように見えるが?」
 目に見える変化といえば、怪我が治っている事だろうか。変化の途中でギブスが
外れたらしいが、右手は違和感無く動くようだ。屈伸運動をしてみても、左足が痛
む事も無い。崩れた包帯を外すと、文宏の左目は自然に開いていた。
 そんな文宏に、ユリは含み笑いを洩らしながら告げた。
「素人さんは、これだから。少年も戦う中で、我々の科学力を思い知る事になるわ。
その後でも同じように言えるか、今から楽しみね」
「と、言われても」
 戸惑いながら辺りを見回す文宏に構わず、ユリが大きく腕を振った。
「さあ、シャ=ガース! 科学の力を、あの呪わしい海産物どもに見せつけるのよ」
「だからだな」
 ノリの悪い文宏へ、ユリが口を尖らせる。しかし、どんな顔をされようが、文宏
にも言いたい事があった。
「半魚人ども、既に倒されてるみたいなんだが」
「なんですって!」
 慌てて周囲を見回したユリも、その事実に気が付いた。
 瓦解したコンテナのあちこちで、半魚人達が息絶えていた。原型を留めている方
が少ないくらいで、ほとんどが既にただの肉片だ。ヒレや鱗などが散らばり、焦げ
た内蔵が骨と共に点在する。その光景を見るうち、ユリはさっき自分がした事を思
い出してきた。
「盲点だったわ。邪魔を止めようとしただけで、全滅させてしまうだなんて。我々
の科学技術の進歩が、連中を雑魚にしてしまっていたのね」
 肩を落とすユリの横で、文宏は困ったように髪を掻き上げた。何か声を掛けよう
として、荒い息遣いに気付く。そこで、事の発端となった少女を思い出した。
265くなさん ◆DAYgAM2ISM :2005/07/12(火) 02:05:35 ID:EBiejZqM
 妙な事態の連打に、すっかり忘れかけていたのだが。文宏が見ると、少女は起き
上がれないでいるようだった。服を裂かれて半裸なのだから、雨に打たれるのは良
くないだろう。彼女の泣き声に促された文宏は、近付こうとして崩れ落ちた。
 激しい動悸に、シャツを掴んで蹲る。熱を持った肌は、雨をものともせずに火照
り続ける。荒い息に閉じていられなくなった口から、意味不明の音が洩れた。
「てけり、り」
 そして何より、下半身に集まった血流が文宏を苦しませる。漲った怒張はジーン
ズを突き上げ、痛みすら感じさせていた。
「どうやら変身後すぐに、副作用が現れてしまったようね」
 立ち直ったのか、腕を組んだユリから冷静な声が掛けられた。
「猿や犬での実験では、しばらく時間がかかったけれど。その辺が人との差なのか
しら、興味深いわ」
「副作、用?」
「そう。後天的にシャ=ガースになった者は、元の種としての保存本能が高まるの
よ。簡単に言えば、性欲が強くなる。さっさと発散するのね、放置すると知性まで
犯されるわよ」
「ここで、自己処理しろ、って言う、のか」
「それは奨められないわね。動物実験では、交尾以外ではどれもが死んだから」
 文宏は何か言おうとしたらしいが、腰の辺りを中心に海老のように跳ねた。熱い
息と共に、意味不明の声を吐き出す。
 だが、ユリには意味が伝わったようだ。肩を竦めた彼女は、遠くで横たわる少女
を指差した。
「相手なら、あの娘がいるじゃない。心配は無用よ。少年の体液を雌の性感帯に垂
らしてやれば、相手はすぐに発情するから。元が半魚人どもの解析結果、というの
が気に入らないけど。副作用への対処が必要な以上、仕方ないわね」
「てけり、り」
「助けた代金だと思えば、構わないでしょ。少年も知性体なんだから、道徳観も分
かるわ。でもね、どうせ姦らなければならないのよ?」
 踏ん切りがついたのか、文宏が立ち上がる。ユリへと向ける彼の目に、迷いは残
っていなかった。
266くなさん ◆DAYgAM2ISM :2005/07/12(火) 02:06:28 ID:EBiejZqM
「そうそう、それで良いの。ほら、早くしなさい」
 ユリが樽の上から、さあやれ、ほらやれと急かす。頷いた文宏は、目的地に向か
って歩き始めた。その股間で、ジーンズが陰茎の形に突っ張られている。苦しさに
耐えかねた文宏がベルトを外すと、トランクスごと怒張が弾け出た。
「ここで脱ぐのは、まだ早いんじゃないかしら。あ、なるほど。歩き難さを解消す
るには、良い案ね。それより、なんでこっちに向かって来るの?」
 目的地は向こうだと言いかけたユリの口を、文宏は自分の口で塞いだ。

 深く舌を差し入れ合った口から、いやらしい音が漏れる。休み無く動き続けるう
ち、文宏は息が苦しくなってきた。
 空気を求める文宏が離れようとしたが、背中に回されたユリの腕が引き留めた。
頭を捩ろうとしても、がっちりと首を固定された上に後頭部も押さえられている。
文宏は鼻を広げて荒い息を繰り返した後、ユリの肩を何度も叩いて引き剥がした。
 大きく口を開いた文宏が、必死で呼吸を行う。その間も、彼の舌はユリの舌に絡
め取られていた。
「息が、出来ないでは無いか」
「馬鹿ね。口が塞がってるなら、耳から呼吸すれば良いでしょ」
「そんな簡単にいけば、苦労はしないさ」
「フミヒロはシャ=ガースなのよ。そのくらい、なんでも無いわ」
「急に言われたところで、僕も困る」
 ユリは頬を上気させながら、文宏の顔を掌で挟み込んだ。彼の舌に自分の舌を密
着させ、溢れる唾液を飲み下してゆく。二人の間から零れた分は、雨と共にユリの
体を濡らしていった。
 胸元に流れ落ちた唾液が、ユリの乳房にまで辿り着く。その途端、彼女は身を反
らして甲高い声を出した。
「どうしたのさ」
 心配気に声をかける文宏の手を掴み、急くようにユリが引っ張った。
 シャツのボタンを飛ばして、文宏の指が乳首に触れる。甘い声を上げたユリは、
渇きを埋めるように文宏の口に吸い付いた。
267くなさん ◆DAYgAM2ISM :2005/07/12(火) 02:07:20 ID:EBiejZqM
 雨や潮の匂いさえ掻き消すほど、濃厚にユリの汗が匂い立つ。陰茎が下着越しに、
柔らかい太股や下腹に擦れる。文宏は興奮に脳髄を灼かれつつも、舌で舌を押して
距離を取った。
「急に、人が変わったみたいだぞ。そんな、淫乱には見えなかったのに」
「言ったでしょ。フミヒロの体液は、雌を発情させるって。私の口と胸は、もうフ
ミヒロの物なのよ」
「てけり、り」
「ほら。口先だけ、理性ぶってても駄目」
 ユリが覗き込んだ文宏の目は、ぎらつきながら女を求めていた。一応、会話が成
立しているようだが。実際のところは、右から左に抜けて文宏の頭には残っていな
いだろう。
 文宏の下着を、ユリが引き下ろす。弾け出た陰茎は、太く筋を立てながら脈打っ
ていた。
 二つの手でユリに掴まれながらも、腰が押し出される。先端に掌を当ててユリが
止めると、今度は彼女の手を使って摩擦を味わい始めた。三つの掌に包まれる感触
に、文宏の顔が次第に緩んでいく。
 ユリは熱い吐息を洩らしつつも、彼の陰茎を力いっぱい握りしめた。急所を押え
られた文宏の動きが、低い声と共に止まる。
「もう。動物実験で皆死んだ、って教えたのも忘れてるじゃない。とにかく、少し
落ち着いて貰わないと話も出来ないわ」
 仕方なさそうな口振りなのだが、期待に潤んだ瞳では実感に乏しかった。
 一つの手で陰茎を押え、二本の手で素早く下着を脱ぎ始める。残りの二本の腕の
うち、一方は文宏の頬や顎の辺りを撫で続け。もう一方の手が、絡めた舌から零れ
る唾液を掬い取った。そのまま下腹部に伸ばした指を、陰唇や陰核に触れさせる。
 やけに子供っぽい悲鳴を上げて、ユリの腰が崩れた。涎と涙が流れるが、下腹部
はその比では無い。あっという間に靴下まで垂らしながら、尚も溢れ続けていた。
 がくがくと震えるユリの背中を、文宏が抱き締める。意外に優しい光を放つ瞳を
見て、ユリは彼にしがみついた。
「お願い、お願いっ」
 文宏の陰茎が宛われると、待ち侘びたように陰唇が吸い付いてくる。ユリの腰を
掴んだ文宏は、躊躇いも無く一気に突き入れた。
268くなさん ◆DAYgAM2ISM :2005/07/12(火) 02:08:17 ID:EBiejZqM
 破瓜だったのか、貫かれた痛みにユリが声を上げる。だがその間も、快楽に喘ぐ
息が収まる様子は無かった。
 文宏の陰茎が根元まで入り、二人が完全に繋がる。
 耳元で響く甘い喘ぎ声、先に触れる喜んでいるような子宮口。腕の細さのせいか、
胸の柔らかさのせいか。それとも単に、前戯で高まっていた為か。奥まで入った文
宏は、そのまま吐き出していた。
 どくっ、どくどくっ
 ユリは膣内へ浴びせられる度に、嬌声を出して全身を震わせた。腕全てに両足ま
で使って、文宏に抱きついてくる。
 文宏の射精が収まると、ユリは満足気な笑みで頬摺りした。
「これで、中も子宮もフミヒロ専用になっちゃったね」
「どういう意味だ、それは」
「他の雄では、満足出来ない体にされたって事よ。あの呪わしい海産物どもなら、
分からないけど。少なくとも私は、あんな塵と寝るくらいなら死を選ぶわ」
 ユリに促されるまま、文宏が唇を合わせる。その間も、彼の陰茎は硬度を保ち続
けていた。
「あ、ちょっと待ってね」
 四本の腕を彼に絡ませたまま、残った手でユリが樽を手招きする。ふわふわと近
付いてきた樽は、ユリの口笛を合図に光線を放った。
 半魚人どもを殺した鋭い光では無く、穏やかな優しい光だ。二人の下腹部へ当て
られた光を浴びながら、文宏は暖かさを感じていた。しばらくするとユリが手を振
って、樽を下がらせた。
「これで良し、と。治癒も済んだから、思いっきり動いて良いわよ」
「よく分からないのだが。治療したという事は、やはり処女だったのか」
「研究に忙しくて、恋なんかしてる暇が無かったからね。私もまさか、こういう形
で初体験するとは思わなかったけれど」
 自嘲気味に笑うユリへ、文宏は何か言ってやりたかったようなのだが。腰を蠢か
し始めた彼女のせいで、そんな考えはどこかに吹き飛んでしまった。
「てけり、り」
「とりあえず、満足するまで吐き出して。話は、あんっ……その後、ね」
269くなさん ◆DAYgAM2ISM :2005/07/12(火) 02:09:17 ID:EBiejZqM
 文宏の突き上げに言葉を切らされ、ユリは嬉しそうに目を細めた。艶っぽく唇を
舐める舌を、文宏が吸い取る。伝い流れた唾液は、美味しそうにユリが喉を鳴らし
て飲んでいった。
 拓かれたばかりの膣は狭く、往復する度に文宏の陰茎をきつく締める。そしてそ
れも、充分以上に溢れる潤滑液が快楽だけを味合わせた。
 内壁を摺りながら引いていくと、一点でユリの体が悦びに震える。押し込んだ時
には、子宮口を自ら触れ合わせて甘い声が漏れた。
 注挿が繰り返される度に、二人から余計な思考が剥がれ落ちていく。
 互いの体を味わう事に集中しているせいか、些細な変化にもすぐに気付いたよう
だ。文宏が口付けると、望みの叶ったユリが喜んで迎え入れる。舌を絡ませながら、
子宮口を押し上げた陰茎は精液を吐き出していった。
 どくんっ、どくどくどくっ
 一度目より激しい噴射を、文宏はユリの腰を抱き寄せて流し込み。ユリは彼の後
頭部、首、背中、脚に絡みついて流し込ませた。

「言ったでしょ。シャ=ガースの体液成分は、半魚人どもを元にしたんだって」
 樽の上に乗って運ばれながら、ユリが文宏に説明を終えた。文宏は情報を整理し
ようと、思案顔をする。ユリと繋がったままなので、どうしても深刻味に欠けるの
だが。
 そうしているうちにも、半魚人に襲われていた少女に近付いて行く。雨も上がっ
たせいか、生々しい音だけがコンテナに反響していた。
 少女は閉じた瞼に涙を浮かべながら、胸を揉みしだき続ける。もう一方の手は陰
核や陰唇に当てられ、激しい水音を紡ぎ出す。時折、勢い良く愛液を噴き出すのは、
イっているのだろう。しかし、何度達しても自慰が止まる様子は無かった。
 それどころか、勢いは増すばかりのようで。半開きの口から漏れる切なげな吐息
が、雄を誘い続けていた。
「治療法は無いのか?」
「あったら、フミヒロに彼女と姦れなんて言わないわよ。とにかく、あの娘は放っ
ておいたら死ぬの。それだけは理解しておいて」
「半魚人はなんだって、こんな事をしてるのさ」
270くなさん ◆DAYgAM2ISM :2005/07/12(火) 02:10:16 ID:EBiejZqM
「繁殖期だからじゃないかしら。雌の数が足りないと、連中は陸に上がって女を攫
うのよ。雄が足りない時は、男をね」
 真っ赤な顔をした少女が、苦しそうに大きく喘ぐ。腰に張り付いたスカートの残
骸や、手首まで粘液に濡れきっているのだが。そこまでイき続けても、満たされる
事は無いようだった。
 性欲半分、同情半分で見ながらも、文宏は決心が着かないらしい。
 しかし半身は正直で、媚態を晒す少女に屹立が増している。それを感じたユリが、
膣から彼の陰茎を引き抜いて突き飛ばした。
 樽から落ちた文宏は、なんとか少女の体を避けて両手足を着いたのだが。まだ湯
気が立つような陰茎は、瑞々しい太股に当たっていた。気配に目を開いた少女は、
相手が男と知って懇願する顔になる。しかし、開いた口は嬌声を洩らすばかりで、
言葉にならずにいた。
「死なせたくないなら、姦ってあげなさい」
 ユリを見上げた文宏は、陰茎が柔らかく包まれるのを感じた。
 痙攣し続ける腰を必死に動かして、少女が股を合わせようとしている。指で開い
た陰唇に先端を触れさせたものの、腰を上げて埋める事が出来ないようだ。ぼろぼ
ろと涙を流す彼女を見るうち、文宏の自制は弾け飛んでいった。
 荒々しく突き入れられ、ようやく少女は満たされたような笑みを浮かべた。
 逃がすまいとでもいうように抱きつくものの、消耗しきって力が入らないらしい。
不安そうに震える唇を奪い、文宏がしっかりと彼女を抱き寄せた。
 それで少女は安心しきったように力を抜き、与えられる快楽に全てを委ねた。幸
せそうに開いた口から、大きな喘ぎ声が溢れる。まけじと結合部からも、陰茎の動
きに合わせて愛液が迸った。
「流石に、もう聞こえないと思うけど。その娘、単なる性欲じゃなくて繁殖欲に支
配されてるから。体液だけじゃ、対処療法にしかならないわ」
「どういう意味さ」
 返事があって驚いたようだが、ユリは余り表に出さずに続けた。
「言葉通りよ。もっとも、子宮の精液を絶やさなければ死ぬ事は無いから、その点
は安心して良いわ」
 そして、付け加えるようにユリが言った。
271くなさん ◆DAYgAM2ISM :2005/07/12(火) 02:11:40 ID:EBiejZqM
「私の相手も忘れちゃ駄目よ」
「精力もつのか、僕は」
「心配いらないわ。我々の科学力に任せておきなさい」
 喜んだものだか哀しんだものだか、迷うような顔で文宏は腰を振り続ける。その
うち段々と、行為に没頭し始めた。少女の甘ったるい嬌声と、文宏が洩らす声が次
第に合わさっていった。
 二人の交わりを観察していたユリが、組んだ腕に肘をついて呟いた。
「どうやら、知性の欠落は無かったようね。フミヒロの性格ならば、敵になる事も
無いでしょう」
 そこまでは満足そうだったものの、ユリは渋い顔になった。思い悩むように、口
元に当てた指でリズムを取り始める。
「問題は、戦闘能力の確認が出来てない事、か。これに関しては、次の機会を待つ
しか無さそうね。奴の眷属どもが、キタミールの末裔に手を出す限り。フミヒロは
戦おうとするだろうし、私のデータも揃っていく……いずれ、神官様の悔しがる顔
も拝ませて貰うわ」
 不敵な笑みを浮かべるユリは、ぞくっとするほどの妖しい魅力に満ちていた。
 もっとも。男女の交わりの音が響く傍で、膣口から精液を垂らしながらなので。
いまいち、格好良さに欠ける部分はあったが。


272くなさん ◆DAYgAM2ISM :2005/07/12(火) 02:12:32 ID:EBiejZqM
・・すみません、言っておきながら途中までコテトリつけてませんでした

やっぱ眠い中で投下しちゃ駄目ですわな
明日遅番ですが、大人しく寝ますわorz
273名無しさん@ピンキー:2005/07/12(火) 02:17:56 ID:jM944VTm
どうも、1週間ぶりのまともなエロ作品、リアルタイムで楽しませていただきました。
なかなかエロくていいっすね。両手に花となったフミヒロの続編もぜひ読みたいです。
にしても、「ユリ」「樽」「シャ=ガース」「てけり・り」、ひでぼんの書の作者さんみたいに萌え擬人化ですか。
ただ一つ難を言えば、導入での主人公の性格とか、ちょいアレな気がしますが…
274名無しさん@ピンキー:2005/07/12(火) 13:06:42 ID:leu07SxN
GJ! ユリさんイカス。今後も期待してます。
以上、まさかこっちでくなさん氏のSSを見ようとは…と思ったBFスレ残党でした。
275名無しさん@ピンキー:2005/07/12(火) 22:12:50 ID:3EOz6jLW
ビッグ・ファイア団スレだと!?
276名無しさん@ピンキー:2005/07/12(火) 23:50:20 ID:oONbZkOf
ここで書いてみようと思って練っているネタ

男性の人格を持つ少女。
彼女はある事件に巻きこまれて記憶喪失になり、その時特殊な能力を得る。
彼女はその能力を駆使して、同じく超常の力を振るう者達と戦う。
彼女を、親しい少年や超常の力を持つ仲間が支える。
やがて、記憶を失う事件の原因となったものに立ち向かう。

こうして書くと、ナニを読んだか一目瞭然だ(w
277名無しさん@ピンキー:2005/07/12(火) 23:50:49 ID:oONbZkOf
なんかいい吸血鬼モノはないか…

チビで童顔で、でも妖艶な色気を持っててボンキュッボンで、
黒マントの下は水着に近い肌もあらわな黒い服で、
性格は女王様的で、威厳と気品を持ち支配的だが一応は慈愛も持ち合わせている。
それらの性格は付け焼刃ですぐに剥がれるドジっ娘、などでは決してない。
そんな吸血鬼に噛まれてぇ。
もといそんな吸血鬼に噛まれる話を読書きしてぇ。

以上、チラシの裏でした。
278名無しさん@ピンキー:2005/07/12(火) 23:51:52 ID:oONbZkOf
これ忘れてた
「パツキンでツインテールで青系の瞳で」
279くなさん ◆DAYgAM2ISM :2005/07/13(水) 00:19:30 ID:yCLAFU3/
レス下さった方ども〜

続き、っても有名どこは大概ひでぼんで姦ってますから
ニッチ狙うと、アザ、クトル、イース・・ああ、イースはいけそうですね
ま、そのうちって事で

>BF
ああなったら最早笑うしかw
280名無しさん@ピンキー:2005/07/13(水) 02:58:48 ID:kIIRqL6v
>>277-278
激しく同意します
281名無しさん@ピンキー:2005/07/13(水) 10:16:00 ID:vT182IkN
元ネタワカンナス
282名無しさん@ピンキー:2005/07/13(水) 11:46:38 ID:eVI/njqi
元ネタないんじゃない?
単に>>277の趣味だと思うんだけど
283名無しさん@ピンキー:2005/07/13(水) 19:03:57 ID:OLlQaesl
ネギまのエヴァかと思った
284名無しさん@ピンキー:2005/07/13(水) 19:32:54 ID:OLlQaesl
くなさん氏GJ!!
参考で他に有名でやってないキャラ
ヒプノス、ハスター、イスの偉大なる種族、トゥールスチャ、ラーン=テゴス、ウボ=サスラ等…
出演しているけどやってないのも意外に。
あと別にかぶってても大丈夫の気が…擬人化なので自分のイメージで
285名無しさん@ピンキー:2005/07/13(水) 21:37:29 ID:9x6QGF+l
>283
そーなんだよなー。アレと被っちゃうんだよな。
286ある人魚の一生 ◆WmvQVwDatU :2005/07/13(水) 23:20:04 ID:QJIMvVT6
人魚ネタで小ネタを投下します。
エロという点では直接的な絡みはない上、若干鬱っぽい展開なので嫌いな方はご注意ください。
一応まとめてあぼーんしやすいよう、トリップを付けます。
287ある人魚の一生 ◆WmvQVwDatU :2005/07/13(水) 23:21:15 ID:QJIMvVT6
身体が上昇していく感覚に、私は目を覚ましました。
私が入れられているのは、身体より2回りほど大きいだけの水槽です。
上昇する身体はすぐに水から出て、そのまま身長の3倍ほどの高さにまで到達しました。
もちろん私に空を飛ぶ力はありません。
人間と同じ上半身には羽などありませんし、魚と同じ下半身では水の中を自由に移動はできても、空中ではそうはいきません。
といっても、今の私は水中ですら動くことはできませんが。
頭の上に挙げた両方の手首と、首と、胸下と、尾びれにはめられた枷。
それらによって、私は背後にある1枚の板に身体を縛り付けられています。
その板を運ぶためについている上部の棒が、今度はその板に水平移動を開始させました。
目的地は部屋の隅にある漏斗のような部品を持つ装置。
その漏斗の上まで移動すると、板の動きはそこで停止しました。
滴り落ちた水滴が、漏斗の中央の穴に吸い込まれていきます。
そして、胸下の枷が動き始めました。
この胸下のものだけは、他のものとは違って動きを封じる以外の役目を持たされています。
枷が下半身に向けてスライドしていくと、ぽっこりと膨らんだお腹が圧迫されました。
その圧迫に追い立てられるように、お腹の中のものが移動していく感覚があります。
私の、卵たち。
新しい命を産み出す行為に伴う、本能的な喜びが込み上げてきました。
この卵たちが孵ることはないと頭ではわかっていても、それでもこの喜びだけは何度この強制産卵を経験してもなくなりません。
水から出たせいで、だんだん苦しくなってきました。
頭の中が白くなって、卵が身体の中を通り抜けていく感覚だけが確かなものとして感じられます。
お腹の枷は繰り返し上下にスライドし、最後の1つまで卵を搾り出していきました。
そして、強制産卵を終えた私は再び水槽に戻されます。
288ある人魚の一生 ◆WmvQVwDatU :2005/07/13(水) 23:22:05 ID:QJIMvVT6
あの日の私は、初めての産卵を前にして舞い上がっていました。
大事な身体なのだから大人しくしていなさいという周囲の忠告も無視して、国の外まで出かけていたのです。
私たちの国は女王様のお力によって守られていて、出入りできるのは私たち人魚だけです。
だから、国の中にいる限りは安全でした。
なのに、私は外に出てしまったのです。
本当に、浮かれていて周囲が見えていない馬鹿な娘でした。
愚かな行為は、人間の網にかかってしまうという結果に繋がりました。
むりやり水中から引きずり出されました。
周囲を囲む3人の人間。
人間には雄と雌という区別があると聞いたことがありました。
私たちの上半身は、人間の中でも雌の方にそっくりだというのです。
確かに私の上半身と、その人間たちの上半身が違うことは、その人間たちが身体に巻きつけた布の上からでもわかりました。
つまりは彼らは雄に分類される人間なのでしょう。
私には彼らの言葉はわかりませんでしたが、顔の部品は同じなため、その表情からある程度感情を読み取ることはできました。
肌は浅黒く、がっしりとした体格の彼らは、私を見て驚き、何事かを相談しはじめました。
人間は愚かで野蛮な生き物だと聞いたことがありました。
なんでも、人間の中では私たちの肉を食べると老いることがなくなると言われているそうです。
馬鹿な話です。
確かに人間は私たちよりはるかに短い年月しか生きられないそうです。
だからといって、寿命の長いものの肉を食べたら自分の寿命も伸びるなんて、短絡的にも程があるというものです。
しかし、向こうの言葉がわからないのと同様、私の言葉も彼らにはわからないでしょう。
その噂が間違いだと、説明することはできません。
289ある人魚の一生 ◆WmvQVwDatU :2005/07/13(水) 23:23:54 ID:QJIMvVT6
そうこうしている内に、水から出たせいで苦しくなってきました。
加えて、これから人間に殺され食べられるという恐怖が私を苛みます。
そんな肉体的、精神的な負荷に、私の身体に異変が起こりました。
本来ならまだ少し先のはずだった産卵が、突然始まってしまったのです。
死の予感が、子を残そうとする本能に働きかけたのかもしれません。
初めて卵が産卵管を通り抜けていく感覚に、私は網の中でビチビチと跳ね回りました。
それを見て私が逃げようとしていると思ったのか、人間たちが3人がかりで押さえ付けに来ます。
屈強な人間たちを撥ね退ける勢いで尾びれを振り回しながら、最初の1つが身体の外へと出ていくのを感じました。
人間たちは驚いたように目を見開いて、私のそこを見つめます。
その視線を感じながら、私は次々に卵を産んでいきました。
母になる喜びと、それを野蛮な人間たちに見られているという恥ずかしさで、頭がどうにかなりそうです。
ようやく全ての卵を出し終えた時には、私はもう指一本動かせないほど消耗していました。
そんな私の目の前で、人間の内の1人が信じられない行動を起こしました。
卵の1つを摘み、あろうことか口に入れたのです。
彼の顎が動き、プチッという音がしたのが、私の耳にはっきりと聞こえてきました。
そしてその中身を飲み下した後、彼が浮かべたのは紛れもなく笑顔でした。
すぐに2つ目に手を伸ばし、口に放り込みます。
それを見ていた他の2人も、彼の真似を始めました。
私の初めての卵たちが、全て彼らの胃に収まるまでにそれほどの時間は必要ではありませんでした。
そんなものを見せ付けられるくらいなら、自分の肉を生きながら削ぎ取られて食べられる方がマシだったかもしれません。
肉体的にも限界が近づき、そこを絶望に追い討ちをかけられ、私の意識は遠くなっていきました。
もう目を覚ますことはない眠りだと、そう思いながら私は瞼を下ろしたのです。
290ある人魚の一生 ◆WmvQVwDatU :2005/07/13(水) 23:26:20 ID:QJIMvVT6
結局、私のその予想は現実のものとはなりませんでした。
次に目を覚ますと、海とは比べることすら失礼なほど狭い生け簀に入れられていました。
こうして、私は人間に飼われることになったのです。
色々なことをされました。
それこそ肉を削ぎ取られる痛みも経験しましたが、どうやら肉の方は人間の口には合わないようでした。
それでも不老長寿のために我慢して食べているようでしたが、しばらくして、通常通り老いていくことに気付いてからは肉を取られなくなりました。
けれど、不老長寿の夢はなくなっても、人間たちは私を解放してくれませんでした。
私の卵は、それほどまで人間を虜にしていたのです。
しかし私の卵は1年に1度しかできません。
それが不満だったのか、少しでもその周期を短くしようと身体の色々なところを調べられたり、得体の知れない薬も使われました。
それらが功を奏したのか、いつからか1度産卵を終えてから次の卵が成長を始めるまでの感覚が短くなりました。
産卵周期という、命の根源的な部分を歪められていくのです。
自分の身体が人間の都合のいいように作り変えられていくことに、私は絶望しました。
291ある人魚の一生 ◆WmvQVwDatU :2005/07/13(水) 23:26:57 ID:QJIMvVT6
数を増やそうとしたのか、卵の一部を食べずに残しておくこともありましたが、その試みは失敗に終わりました。
それは私にしてみれば当然の結果です。
私たちの卵が孵るためには、産んだ後に女王様の祝福を頂かなくてはならないからです。
この仕組みは私にとっては幸いでした。
卵を食べられるのは苦痛ですが、子どもたちに同じ苦しみを味あわせることを想像すれば、まだ我慢ができたからです。
そういった仕組みや、私たちの国がある場所を聞き出す目的で、人間の言葉を覚えさせられもしました。
言葉を覚えた私は、知っている範囲のことを教えてあげました。
どうせ私は、その祝福の際に具体的に何が行われているのかや、
国を守っている壁がどんな仕組みで人魚とそれ以外を区別しているかなど知らなかったからです。
それらは代々女王様だけが知っていることとされていました。
もしかすると側近の方々くらいは知っているかもしれませんが、一般人の私がそれらを知る由はありません。
それでも、産んでから女王様に預ければちゃんと卵は孵りますし、私たち人魚は理屈を知らなくても自由に出入りできるのですから生活に問題はなかったのです。
292ある人魚の一生 ◆WmvQVwDatU :2005/07/13(水) 23:29:53 ID:QJIMvVT6
しかし、それを説明しても人間は信じてくれませんでした。
私がそれらを知っていながら隠しているのではないかと、様々な方法で聞き出そうとしてきます。
それでも最初の内は、私がたった1人しかいない貴重な存在ということで、万が一にも殺してしまわないよう加減がされていました。
もちろん、それが加減されていた行為だったということに気付いたのは、その後のもっと酷い行為の中ででしたから
実際それをされている最中は、人間がどうしてここまで残酷な行為を思いつくことができるのかわかりませんでした。
けれど、何度も繰り返し行われた拷問によって、私の生命力は少々のことでは尽きないとわかると、あっという間にその内容がエスカレートしていきました。
捕まって間もない頃与えられた肉を削ぎ取られる痛みなんて、この頃に与えられた肉体的苦痛に比べれば大した事がないものだと知りました。
そんな日々が続き、私に会いに来る人間の顔ぶれも随分変わっていきました。
その移り変わりの早さを見ていると、人間がことさら長生に執着するのもしかたないのかもしれないとすら思えてきたある日、
私はずっと過ごしてきた生け簀から別の場所に移されました。
293ある人魚の一生 ◆WmvQVwDatU :2005/07/13(水) 23:32:21 ID:QJIMvVT6
それが今、私がいるこの水槽です。
屋外にあった生け簀と違い、コンクリートと呼ばれるものでできた壁に囲まれた、この部屋にある水槽が私の新しい家でした。
ひどく狭いこの水槽では泳ぐどころか身体の向きを変えることすら困難で、入れられた直後は困惑しました。
けれどそれはいらない心配でした。
すぐに枷付きの板に拘束され、動けなくされたのですから。
ここに来てからは、人間には1度も会っていません。
昼も夜もないこの部屋の中で、動くことすらできないままに睡眠と覚醒を繰り返し、卵がある程度成長すると部屋の隅の機械に向けての産卵を強制される。
それが私の全てでした。
食事は口からではなく、針のついたチューブで一方的に栄養を流し込まれることで代用されます。
耳が捉えるのは、水を循環させるためのポンプの音だけ。
全てが自動化されたこの部屋の中で、私は完全に卵製造装置の一部として、これからも長い長い時間を生きていくのでしょう。
やはり、私は人間が長生を望む気持ちがわかりません。
長く生きるということは、それだけ長く苦しみが続くということなのに。
294ある人魚の一生 ◆WmvQVwDatU :2005/07/13(水) 23:33:30 ID:QJIMvVT6
ここまでです。
295名無しさん@ピンキー:2005/07/14(木) 00:15:10 ID:BCmylgJw
いいんでねえの?     私は好きだなこう言う感じ
296名無しさん@ピンキー:2005/07/14(木) 00:33:37 ID:uz9sDS9x
も、萌えねぇ・・・。鬱になるよ・・・。
297名無しさん@ピンキー:2005/07/14(木) 00:46:46 ID:YPi7X4cV
ごめん…
激しく鬱になる…orz
298名無しさん@ピンキー:2005/07/14(木) 00:57:37 ID:0wPHLydk
なかなか良い出来ですが、少々もの足りません。
フレドリック・ブラウンの昔から下半身魚ではエロシーンは期待できないのはともかく、できれば本当に一生を書いて欲しかった。
まだ海にいた頃の楽しい日々。これを適度に書く事で、現在の悲惨な境遇を引き立てさせるスパイスになります。
次に、彼女の絶望的な日々の末の最期。これで、今後助かるかもしれないという一縷の望みすら消えてまうわけです。
あとはできれば肉を削ぐ方法とか拷問の具体的描写も欲しいです。

ま、助けられてハッピーエンドになっても、それはそれで萌えられるのでいいんですが。
299名無しさん@ピンキー:2005/07/14(木) 01:03:23 ID:btZ6/0bj
人魚との濡れ場描写のあるエロゲっつーと
「CAL」とか「夢幻夜想曲」とかあったな
普通に下半身が使えない特殊なシチュがいい
300名無しさん@ピンキー:2005/07/14(木) 01:31:25 ID:w2k1CWb2
人魚は前についているのだろうかそれとも後ろに付いているのだろうか?
301名無しさん@ピンキー:2005/07/14(木) 02:23:24 ID:8hJAoJ84
魚が普通に泳ぐ向きは人間でいうとうつぶせ?
でもって交尾や産卵の時の性器の位置から…やっぱり前つきかな。
302名無しさん@ピンキー:2005/07/14(木) 02:25:19 ID:KYI8LXZz
前というか後ろというか下じゃないか?答えになってないな。

>>287
話の繋げ方がすごい上手いと思った。性欲は喚起されないが、うんw
303名無しさん@ピンキー:2005/07/14(木) 16:22:30 ID:wAqP4kyZ
ぬけはしないが萌えた。GJ。
304別の人魚の場合 ◆WmvQVwDatU :2005/07/14(木) 17:51:34 ID:gyWS0I2N
同じく人魚ネタで、今度は逆に自ら望んで人間といた人魚の話です。
305別の人魚の場合 ◆WmvQVwDatU :2005/07/14(木) 17:52:00 ID:gyWS0I2N
水底に身体を横たえて、わたしは1つの足音を聞いていた。
人間にはあって、わたしにはない足という器官が、地面を打つ音。
その足音が、わたしが唯一知っている人間である彼のものではないことはすぐにわかった。
彼のものに比べて1つ1つの足音がかなり弱い。
彼の足音も、ここ数年は以前に比べて随分小さくなっていたけれど、それよりもさらに小さい音だ。
その理由は、この足音の主が体重の軽い人物だからというのもあるだろうけど、それに加えて一歩一歩慎重に足を踏み出しているからだろう。
そのことは連続する音の間隔がかなり長い点からもわかった。
水面を見上げても光は見えない。
ここは海岸沿いにある洞窟で、しかも今は夜なので、明かりを持ってこなければ足元さえもまともに見えないはずだ。
大方、何かの気紛れで入り込んだ人間なんだろう。
別に入口を塞いであったりするわけではないので、たまに彼以外の人間が入ってくることがある。
そういう時はこうやって水底で息を潜め、勝手に出ていくのを待てばいい。
ここに住むようになってから何度も繰り返してきたことだ。
不意に足音が乱れ、続いて少し大きな物音が聞こえた。
それに付随して聞こえてくるのは小さな悲鳴。
足を滑らせて転んだというところだろうか。
彼の声に似てしわがれた、けれど彼のものより高めの声。
あまり聞いたことがない感じの声だった。
ここに来る人間のほとんど、特に1人でくるような人間は昔の彼のように若い男性が多い。
彼の声が年老いてしわがれたことと、人間の声は男性より女性の方が高いことから想像すると、
この足音の主は年老いた女性ということになるのだろうか。
珍しい客だった。
306別の人魚の場合 ◆WmvQVwDatU :2005/07/14(木) 17:52:22 ID:gyWS0I2N
布と石が擦れる音の後、再び足音が聞こえ出した。
今度はさっきまで以上に慎重な足取りになっているのがわかる。
ただ、それが徐々に近づいてきていることにわたしは不審を覚えた。
この洞窟に、老婆が明かりも持たずに何の用事なのか。
転びながらも、なお奥に向かってくるということは、何か確固たる目的があるのではないだろうか。
そんな思いが、わたしの中にその老婆が誰かということに関して1つの予想を打ち立てた。
やがて洞窟の1番奥、わたしがいる場所の水辺で足音が止む。
続く言葉にわたしの予想は確信に変わった。
「セオさん、いらっしゃいますか?」
人間の中では彼しか知らないはずのわたしの名前を呼ばれ、わたしは浮上を開始する。
彼からは、自分以外に顔を見せてはいけないと言われていたし、わたし自身、今この瞬間まではそんなことをするつもりはなかった。
それでも、その老婆がわたしの予想通りの人で、しかも彼女がここに来てわたしを呼んだのなら、隠れているわけにはいかない。
水面から頭だけ出すと、水辺には予想通り1人の老婆が立っていた。
この暗闇では向こうからこちらは視認できないらしく、わたしを探して首を左右に動かしている。
「ここよ」
彼に教えてもらった人間の言葉で、自分の場所を知らせる。
彼女がこちらに顔を向け、けれどおおまかな方向はわかってもはっきりとは見えてないのか視線は定まらない。
307別の人魚の場合 ◆WmvQVwDatU :2005/07/14(木) 17:53:25 ID:gyWS0I2N
「ごめんなさい。明かりをつけていいかしら?」
「いいけど、持ってるなら、どうして今まで使わなかったの?」
懐から彼も使っていた懐中電灯というものを取り出しながら問う彼女に、わたしも疑問を返す。
使っていれば転ぶこともなかったかもしれないのに。
「驚かせたらいけないと思って」
そう言って彼女は懐中電灯のスイッチを入れ、それを天井に向けた。
天井に反射した光に間接的に照らされて、洞窟の中が多少明るくなり、ようやく彼女の視線がわたしのものと正面から交わった。
懐中電灯をこちらに向けないのは、気を遣っているからだろう。
確かに直接向けられるのはあまり気分のいいものじゃない。
ここに来るまで使わなかったことといい、優しい人間のようだ。
そのことも予想はできていたけど。
「はじめまして、私は……」
「由佳、でしょ?」
「私のこと、知ってらっしゃるの?」
わたしが彼女の名前を知っていたことに、彼女は驚いているようだ。
「武志の話に出てきたから」
「そう、あの人が……」
彼女はそう言って微笑んだ。
すごく柔かなそれは、わたしの心にあった彼以外との会話への緊張を解きほぐされるような笑みだった。
308別の人魚の場合 ◆WmvQVwDatU :2005/07/14(木) 17:54:42 ID:gyWS0I2N
「突然来てごめんなさいね。あなたに伝えなくてはならないことがあって……」
そこで彼女は一旦言葉を止めた。
わずかな沈黙。
その言葉の続きがなんなのか、彼女の名前と同様、わたしには想像ができていた。
たぶん彼女の口からは言いにくいことだろう。
だから、わたしは自分から言うことにした。
「武志が、死んだのね?」
彼女の表情に、サッと陰が落ちる。
それは言葉よりも雄弁な肯定だった。
最期に武志がここに来たのは3ヶ月ほど前。
人間にしては長生きしたけど、それでもそろそろそんな日がくるだろうとは思っていた。
思ってはいたけど、それでも実際にそうなってしまうと胸の中にぽっかりと穴が開いたような喪失感が広がっていく。
309別の人魚の場合 ◆WmvQVwDatU :2005/07/14(木) 17:57:56 ID:gyWS0I2N
「あなたのことは随分前から知っていたの。あの人から聞いたのは、もう60年くらいは前になるかしら」
彼女のその言葉は、わたしには意外だった。
てっきり死が近づいて、自分ではここまで来れなくなった彼が、最期に彼女に伝言を頼んだんだと思っていたからだ。
60年前というと、確か彼が大学とかいうところに行くとかでこの町を離れた頃。
「ああ、あの人が悪いんじゃないのよ。私がむりやり聞き出したんだから」
彼がわたしのことを他人に教えていたことで、わたしが気を悪くしたと思ったのか、彼女が慌てて弁解する。
それでも、彼女は確かに彼にとって特別な存在だったはずだけど、わたしのことを話すというのはやっぱり意外だった。
それが表情に出ていたのか、彼女は苦笑いを浮かべながらその時のことを話し始める。
「あの人がこの町を離れる直前、私は彼に告白したの。
 幼い頃からずっと一緒にいて、それまでも大切な存在だって思っていたけど、離れ離れになると思ったら幼馴染という関係だけでは不安になったのね。
 彼が家族とうまくいっていないのは知っていたから、長期休みになっても帰省しないだろうと思ったし、
 そもそも卒業してもこの町には戻ってこないだろうと思っていたから」
昔を懐かしむ口調。
彼も年をとってからは、そんな風に話すことが多くなっていたことを思い出す。
もう聞く事はできないけど。
310別の人魚の場合 ◆WmvQVwDatU :2005/07/14(木) 17:58:43 ID:gyWS0I2N
「だけど、振られてしまってね。でも普通に振られただけなら、まだ諦めることもできたかもしれないのだけど、
 断るときのあの人の理由が嘘だってわかってしまったのよね。なんだかんだで長い付き合いだったから。
 いくらもっともらしく聞こえるものでも、嘘の理由なんかで私は私の気持ちに片を付ける事なんてできないって、本当の理由を問い詰めたの。
 教えてくれないなら死んでやるとまで言ったわ」
「人間は、自分で死ぬの?」
わたしにはよくわからない感覚だった。
わたしたち人魚は少々のことでは死ねないから、自分で自分を殺すにはどれくらいのことをすればいいのかわからない。
「そうね、あの時は結構本気で言ってたわ。若気の至りといっても言い訳にしかならないけれど。
 でもね、さすがにその気迫があの人にも伝わったのか、ようやく教えてくれたのよ」
「でも、そんな話、信じることができたの?」
人間は基本的に人魚の存在自体を知らないはず。
彼もおとぎ話の中だけの存在だと思ってたって、昔言っていた。
「確かに、にわかには信じ難い話だったわ。なにせ、人魚に恋をしているから君とは付き合えない、ですものね。
 でも、逆に荒唐無稽過ぎて信じることができたという感じかしら。
 あの状態で、あの人がそんな突拍子もない嘘を言うはずがないもの」
彼女の、彼に対する想いが伝わってくる穏やかな声音だった。
311別の人魚の場合 ◆WmvQVwDatU :2005/07/14(木) 17:59:21 ID:gyWS0I2N
「ところで、こちらまで来てくださる? あの人から預かっているものがあるの」
「それなら、あそこで話しましょう」
水辺の中、わたしが指差した場所には、人間が座るのにちょうどいい大きさの石がある。
水の中にはわたしが座るための石もある。
彼とはいつもそこで話していた。
そこまで移動して上半身まで水から出ると、同じく移動してきた彼女の視線がわたしの胸に向けられた。
「あら、それは……」
わたしの胸には人魚の国にいた頃には着けていなかった、水着というものが存在している。
彼がくれたものだ。
人間は身体を隠す習慣があるらしく、彼から見ると裸のわたし――特に人間の女性と同じだという上半身――は目のやり場に困るらしい。
そんなことを説明しながら真っ赤になって、これを渡してくれたのだ。
実際にはあれから何回か取り替えたから、あの時の物ではないけど。
それを説明すると、
「ええ、知っているわ。なにせ、それは私が買ってきたものですもの」
「あなたが?」
「あれはあの人が大学に行って、最初の夏だったわね。帰省した彼が言ったのよ、水着を買ってきてくれないかって。
 最初はよくわからなくて、どうして自分で買いにいかないのって聞いたら、
 自分のものではなくて、あなたに渡すための女性ものの水着だって言うの」
「それで、買ってきたんだ?」
「いいえ、どうして私が恋敵へのプレゼントを買ってこないといけないのよって引っぱたいてやったわ」
その時の感触を思い出したのか、彼女は手の平に視線を落とす。
「でも、これはあなたが買ってきたものだって、さっき」
「ええ、少し時間がたって落ちついて考えてみれば、彼がそれを頼めるのは私しかいないというのはわかったから結局ね。
 彼自身が買いに行くのは恥ずかしいだろうし、あなたの存在を知らない他の人に女性ものの水着を買ってきてくれなんて頼めるはずないものね。
 内容はともかくあの人に頼られてるというのは悪い気分ではなかったし、それで借りを作れればという考えもあったわ。
 それに、彼が他の女性の裸を見ているというのは、あまり嬉しくなかったから」
打算的な女でしょうと、彼女は続けた。
312別の人魚の場合 ◆WmvQVwDatU :2005/07/14(木) 18:00:19 ID:gyWS0I2N
「はい、これ」
彼女が差し出した拳の下に手の平を差し出すと、そこに小さな固いものが落ちてきた。
それは1つの指輪。
差し出したわたしの手の指にはまっているものと、全く同じデザインの指輪。
「他の人の手前、指にこそはめていなかったけれど、いつも肌身離さず持っていたわ。
 これはあなたに渡す方がいいだろうと思って、今日は突然お邪魔したの。
 彼が亡くなったことも伝えないとと思ったしね」
「……ありがとう」
それはわざわざ届けてくれた彼女と、ずっと大切に持っていてくれた彼への感謝の言葉だった。
開いていた手を閉じる。
手の中で2つの指輪が触れ合って小さな音を立てた。
「何かお礼したいけど、わたしはあなたにあげられるものは何も……」
わたしが持っている中で彼に関係するものは、水着と指輪くらい。
水着なんてもらっても嬉しくないだろうし、指輪はさすがにあげることはできない。
「それなら、話を聞かせてくれないかしら? 彼とあなたの話を」
「そんなことでいいの?」
わたしがこの指輪を届けてもらったことで感じた嬉しさと、彼との思い出を話すことが釣り合うとは思えなかった。
むしろ彼女にしたら、彼とわたしとの思い出なんて聞きたくないんじゃないだろうか。
「私には見せてくれなかったあの人の姿を聞けるなら、そんなこと、ではないわ。
 実は、今日はそれを期待してきた部分もあるしね」
なにせ打算的な女だからと、彼女は悪戯っぽく笑った。
彼の子どもの頃を思い出させる彼女のその笑みを見ながら、わたしは彼とのことを思い出していく。
それは難しいことじゃない。
彼と会えない時間、何度も繰り返した行為だったから。
313別の人魚の場合 ◆WmvQVwDatU :2005/07/14(木) 18:03:42 ID:gyWS0I2N
プロローグはここまでです。
一応続くという予定です。
314名無しさん@ピンキー:2005/07/14(木) 18:13:22 ID:BCmylgJw
うん、良い感じ。 
315名無しさん@ピンキー:2005/07/14(木) 20:44:00 ID:F38qTUUi
小ネタ投下。つってもコピペだけど。


ある日、俺は午後になったあたりから体に妙な違和感を感じていた。
しかし霊感の「れ」の字もない俺は、体調でも崩したか程度に思っていた。
道行く人がたまに俺のほうを見てびっくりするあたり、顔色が非常によろしくないのかもしれない。
こういうときは酒を飲んで早く寝るに限る。
コンビニで引きつった顔の店員から酒を買い、その日は10時前には寝た。翌朝、しっかり寝たはずだが体の違和感は消えていない。
朝の準備を済ませた後でふと昨日は携帯を朝かばんに入れたっきりで、一度も出さずに寝てしまったことを思い出しあわててチェックしてみた。
・・・・・・・留守電12件、しまった、誰か緊急の用事でもあったのか、とりあえず再生せねば
「私メリーさん、今○○駅にいるの」
「私メリーさん、今○○大学の前にいるの」
「私メリーさん、今○○教室の前にいるの」
「私メリーさん、今あなたの後ろにいるの」
「私メリーさん、さっきからあなたの後ろにいるの」
「私メリーさん、あなたの後ろにいるんですけどー、もしもーし」
「もしもーし、メリーさんですよーいい加減気づいてくださーい」
「メリーです・・・取り憑いた人が鈍すぎるとです・・・めりーです・・・」
「うー、一日一回くらいは後ろ見るもんでしょ普通!」
「ほらほら、あのおじさんとかめっちゃ私のこと見てるよ」
「な、なんでうつ伏せで寝るの!いいかげんこっちみなさいよ・・・」
「えぅ・・・ぐすん・・・・メ、メリーです、この録音きいたらでいいので後ろみてください」
俺は背後の気配を確認すると、振り向かないで家を出て大学へ向かった。
その日俺の背後には、半べそかきながら後ろをついてくる少女がいたらしい。
316名無しさん@ピンキー:2005/07/14(木) 23:27:47 ID:j13TyqEs
>別の人魚
良いっすね、このフリだと回想型でしょうか
それ聞きながらのン十年の嫉妬とかイイなあw

>ネタ張ってる奴
なんだ、例の当番だったのか
どうせメリーさんコピペすんなら全裸の方が上質だろ、カス
317名無しさん@ピンキー:2005/07/15(金) 03:30:39 ID:LD7nVRiC
当番違うーよ。他スレで見かけて面白かったから貼っただけだーよ。
318名無しさん@ピンキー:2005/07/15(金) 04:37:30 ID:wi97qzdK
よくわからないけど>>316>>315>>317?)に謝罪した上で全裸云々とやらをコピペすればいいと思うんだ。
319名無しさん@ピンキー:2005/07/15(金) 06:22:04 ID:/CbbCMRB
謝罪?なにゆえ?
320名無しさん@ピンキー:2005/07/15(金) 07:38:52 ID:dhaur5tg
よし、代わりに俺が謝ろうじゃないか。

321名無しさん@ピンキー:2005/07/15(金) 09:27:54 ID:efUx8rxW
提出したものがもれなく誉められるのは小学校まで
322名無しさん@ピンキー:2005/07/15(金) 10:25:12 ID:Yi8PxSb8
>>315
萌えた。
俺もその手の呪いの電話がかかってきたらそれで行ってみよう
323名無しさん@ピンキー:2005/07/15(金) 11:13:09 ID:H77LMDan
やべ。泣きべそで後をついてくるメリーさんに萌え。
324名無しさん@ピンキー:2005/07/15(金) 16:13:15 ID:ok7Nv8yl
>322
そして、忘れた頃に振り返ってしまって死ぬのがホラー。
泣いて謝るので、肉体で手を打つのが鬼畜モード。
泣いているのを慰めて、優しさで口説き落とすのが萌えモード。
泣くに任せるのがギャグ。
325名無しさん@ピンキー:2005/07/15(金) 23:22:41 ID:6UryfNvb
2番目カモンЩ(゚Д゚Щ
326名無しさん@ピンキー:2005/07/16(土) 01:00:21 ID:svIvytrq
>>324
4番目をプリーヅ
327名無しさん@ピンキー:2005/07/16(土) 01:07:21 ID:ZQ25pr6l
>317
そうなん?なら、正直スマンカッタ
いや、職人潰しに見えたもんだからさ

>318
全文長いからURLね
http://hobby7.2ch.net/test/read.cgi/occult/1108303575/21-25
328名無しさん@ピンキー:2005/07/16(土) 01:11:13 ID:svIvytrq
>>327
正直、>>315の方がよっぽど萌える
329名無しさん@ピンキー:2005/07/16(土) 01:17:20 ID:ZQ25pr6l
>328
それは悪かったw
いや、>316で口調がキツイ理由は上の通りね
330メリーさんのお話:2005/07/16(土) 01:33:35 ID:KyjES3CJ
大学の食堂でカレーうどんを啜っていると、ポケットの中の携帯が震えた。
何事かと引っ張り出してみれば、ディスプレイには非通知の文字。
――またか……
俺は少々げんなりしながら通話ボタンを押した。
相手が誰か分かっているだけに、挨拶も投げやりだ。
「はいよ。何?」
……返事は無い。
おかしい。いつもならお決まりのセリフが飛び出してくる筈なのに。
もしや、こちらの想像していた相手ではなかったのだろうか。
そんな疑念がちらっと脳裏を過ぎった。
――瞬間。
『もおおぉいい加減にしてええええええええええッ!』
耳元と、そしてすぐ背後から甲高い悲鳴が上がった。
思わず携帯を落としかけて、慌てて両手で持ち直す。
「お、おい、いきなり大声出すなよ。ビックリするだろうが」
『そんなの私の知ったこっちゃないわよ!
どうして! どうして! どおおぉして! 後ろを振り向いてくれないのーっ!』
「どうしてって、そりゃあ……決まってんじゃん」
『何よ! 何が決まってるのよ!』
「お前、『あの』メリーさんなんだろ?
振り向いたら殺されるか呪われちゃうんだろ?」
“メリーさん”と言えば、割と有名な怪談だ。
何の前触れも無く電話が鳴り、それに出ると女の子の声で、
『私、メリーさん。いま貴方の後ろに居るの』と言われる。
そうして後ろを振り向いてメリーさんの姿を見たが最後、呪われるか殺されるかしてしまうのだ。
俺だってそんなのはただの嘘っぱちだと思っていた。
だが――三日前。
331メリーさんのお話:2005/07/16(土) 01:34:18 ID:KyjES3CJ
その電話が俺の携帯にかかってきたのだ。
女の子の声で『私、メリーさん。いま貴方の後ろに居るの』と。
流石にその時は背筋に寒気が走った。頭が混乱して、額に脂汗も浮かんだ。
いけないとは知りつつも、思わず後ろを振り返りかけて――ふと、気付いた。
怪談では『後ろを振り向いてメリーさんの姿を見る』とお仕舞いなのだと言われている。
だったら、ずっとメリーさんを見ないでいれば助かるのではないか、と。
何の根拠も無い考えだったが、それは見事に的中していた。
以来この三日の間、呪われる事も殺される事も無く――
俺はひたすら後ろを見ない様に生活を送っていた。
「俺は呪われたくないし、死ぬのもゴメンなんだよ。絶対に振り向いてなんかやらないぞ」
『うぅ〜……じゃあ、呪わないし殺さないから。だから私を見てよ〜』
こちらの決意が伝わっているのか、携帯越しのメリーさんに先刻までの勢いはない。
それどころか哀願する様な鼻声になっている。
しかし、俺は騙されない。
同情心を誘っておきながら、振り向いた途端に殺す積もりでいるに違いない。
「ふん。そんな声出しても無駄だ。見え透いてるんだよ」
『見え透いてるなんて……非道い……私、ほんとに……』
「だから騙されないって。大体、何もしないってんなら俺がお前を見る必要なんてないじゃないか」
『必要あるから言ってんでしょうが! この鈍チン!』
「……やっぱり芝居だったか」
『…………あ』
ぽつりと間抜けな声が漏れる。
案外、メリーさんの頭は軽いのかもしれない。
俺はわざとらしく大袈裟に嘆息してみせた。
「んじゃ、それしか用がないならもう切るぞ。
今日は午後一で講義があるから、さっさと昼飯食べないと間に合わないんだ」
『ああー! ま、待って! 切らないで!』
332メリーさんのお話:2005/07/16(土) 01:35:31 ID:KyjES3CJ
「……何だよ?」
『お願い! お願いだから私を見て! そうしないと――』
「そうしないと?」
『そうしないと、他の人にとり憑く事ができないんもん!』
「ふ〜ん……」
成る程。だから俺が振り向かなくてもずっと着いて来ていた訳だ。
ただ、そうなると――厄介な事になってくる。
メリーさんが何処かへ行ってくれるのは望むところだが、彼女を見れば俺が死んでしまう。
ならば……
「じゃあ、一つ取引しないか?」
『取引?』
「そう。お前を見てやるその代わりに、俺を呪わないし殺しもしない。どうだ?」
『……』
沈黙。
その間は逡巡か、或いは何か思惑があるのか。
俺がどちらか判断する前に、メリーさんが言った。
333メリーさんのお話:2005/07/16(土) 01:36:03 ID:KyjES3CJ
『分かったわ。貴方には何もしない』
「誓うか? 絶対に何もしないって」
『誓う。ぜっっったいに何もしない』
「……よし」
正直なところ、ちょっと心拍数が上がっている。
メリーさんは「誓う」と言ったが、
相手は幽霊(いや、妖怪か?)なだけに確実に安全だと言う保証はない。
だが、恐怖心と共に、それと同じくらいの好奇心もあった。
俺は携帯を耳に当てたまま恐る恐る――背後を振り向いた。
『ああ……やっと……』
感極まった様な、震えた声が耳朶を叩く。
もっとも、俺はそんなもの聞いてはいなかった。
そこに居た少女の姿に、全神経を持っていかれてしまった。
まるで西洋の人形みたいなはっきりとした目鼻立ちに、白蝋の様な瑞々しい肌。
背中の中ほどまである柔らかそうな蜂蜜色の髪は緩いウェーブを描いてさわさわと揺れている。
ドレスみたいなワンピースに包まれた身体は風が吹けば飛ばされそうなほど華奢で……
こんな可憐な少女が恐怖の怪談の主人公だなんて、とてもじゃないが信じられない。
334名無しさん@ピンキー:2005/07/16(土) 01:38:32 ID:KyjES3CJ
ついカっとなって勢いだけで書いてしまった。今は反省している

展開なんて何も考えてません。脳内保管してください
っていうか人外のスレなのに思いっきりメリーさん人間の容姿だし、しかも俺の趣味入ってるし
まあ、その・・・ゴメン
335名無しさん@ピンキー:2005/07/16(土) 01:39:03 ID:nIJq8CuE
キタ━━━( ゚∀゚ )━(∀゚ )━(゚  )━(  )━(  ゚)━( ゚∀)━( ゚∀゚ )━━━!!!!
GJ!
続きは寝ながら妄想するぜ!
336名無しさん@ピンキー:2005/07/16(土) 15:38:23 ID:FJwexqZi
序に俺も
キタ━━━( ゚∀゚ )━(∀゚ )━(゚  )━(  )━(  ゚)━( ゚∀)━( ゚∀゚ )━━━!!!!

続きをキボンヌしても宜しいですか!?(´Д`)ハァハァ
337名無しさん@ピンキー:2005/07/16(土) 15:52:23 ID:PJ6aSVBj
スイカじゃないの?(エ
338名無しさん@ピンキー:2005/07/16(土) 15:53:53 ID:PJ6aSVBj
スイカじゃないの?(エ

……スンマソm(_ _;)m
339名無しさん@ピンキー:2005/07/16(土) 17:59:03 ID:lfYcBt3Z
え〜っと GJメリーさん萌え続きキボン、と言ってみる。
340名無しさん@ピンキー:2005/07/16(土) 23:23:13 ID:lXkeS9F0
放置プレイ、キタ━━━━━(゚∀゚)━━━━━!!!
色々な意味でw

「そして、彼女はいなくなってしまった
 以来、俺の頭の中には彼女の姿が住み着いている
 ・・ああ、これがメリーさんの呪いだったのか」

てオチが浮かんだので、とりあえず書いてみた
341名無しさん@ピンキー:2005/07/17(日) 00:17:17 ID:y8hZ5mLF
>333
勝手に考えた続き

メリー「ふっふっふ。ようやく振り返ってくれたわね。じゃあ早速、お命頂戴!」
俺「こっ、こら待て。嘘だったのかよ」
メリー「ふっふっふ。信じる方がお間抜けなのよ」
俺「このやろー」(掴みかかり、2人とも倒れ、押し倒す形)
メリー「きゃっ。どこ触ってんよの」(右手が左胸を…)
342メリーさんのお話:2005/07/17(日) 10:30:17 ID:465yyivI
「う、うぅ……これで、これでやっと開放されるのね……」
俺が言葉を失っている間に、メリーさんはその蒼穹を思わせる色彩の瞳に涙を溜めながら呟く。
「いま思えば、こんな強情な馬鹿男に憑いたのが不覚だったわ……
そうとさえ知っていれば……クソぅ、この私が三日も無為な時間を過ごすなんて……」
「……」
「おっと、こうしちゃいられないわね。さっさと次のカモを探さないと」
じゃ、そういう訳で――と、そそくさと立ち去ろうとするメリーさん。
俺はその小さな頭をむんずと掴んだ。
「ちょっと待て、コラ」
「い、痛い痛い! 何すんのよ!? 離しさないよぉ、このアホぉ!」
メリーさんが腕を滅茶苦茶に振り回し、ぎゃあぎゃあと非難の声を上げる。
時折、彼女の手が当たるのだが、その非力さと言ったらその辺の女の子とまるで変わらない。
「さっきから馬鹿とかアホとか……年上に対する口の利き方を教わらなかったのか、お前は」
つい数分前まで有った恐怖心は何処へやら。
俺は躾の悪い子供を説教する様な気分でメリーさんの頭を圧迫していた。
「うっさいわね! なんで下劣な人間如きにンなこと言われなきゃいけないのよ!?」
「お前……」
「約束通り殺さないでやったっていうのに無礼極まりないヤツね!
いい加減にしないと、私を怒らせるとどういう事になるか、
これでもかってくらい思い知らせてやるんだからぁ!」
「ほう?」
身の程をわきまえない生意気な子供を粛清してやるのは大人の義務だ。
――ほんの少しだけ、思いのほか可愛らしくて非力なメリーさんを前に嗜虐心が疼いたというのもあるが……
兎に角、俺はメリーさんの頭から手を離すや否や、
拳を固めて彼女のこめかみを万力の様に挟み込んだ。
「あ、え? ち、ちょっと、まさか……そんな……」
俺の意図を察したのか、メリーさんが目に見えて戦慄する。
343メリーさんのお話:2005/07/17(日) 10:30:53 ID:465yyivI
だが、もう遅い。
彼女のこめかみに添えた拳を、間接部を突き立ててぐりぐりと締め付けてやった。
「か……あ……い、たいぃ……」
「どうだ。ちったぁ反省したか?」
「あ、ああぁ……あう、うぅ……ううぅ……」
雨に打たれる捨て猫の様にメリーさんが呻く。
彼女は苦しげに身を捩りながら、俺の手を弱々しく叩いて抵抗にならない抵抗をした。
が――
「ほれ、さっさと謝れ。そうすれば許してやるぞ」
「……」
はたとその抵抗が止まり、そして呻き声も止んだ。
どうしたのだろう?
不審に思って手を離すと、メリーさんはその場にへなへなとへたり込んでしまった。
「えう……う、ぐ……ぐすっ……」
「あ、あれ?」
泣いている。まるで虐められた子供みたいに目を擦りながら。
「えぐ、う……ひっく……うぅ……」
意識していたよりも加減が出来ていなかったのだろうか。
無論、俺としては単に懲らしめようとしただけで、泣かす積もりなんて毛頭無かった。
それだけに、思いっきりうろたえてしまう。
「ご、ゴメン。そ、そんなに痛かったのか?」
「ひっく……ううっ……」
「ほ、ほら、もう泣くなよ。周りに人だっていっぱい――」
ふと。
そこまで言って、今更ながら気付く。
ここは大学の食堂だ。当然、昼食時には人で溢れかえっている。
俺はそろりと顔を上げて、辺りを見回した。
344メリーさんのお話:2005/07/17(日) 10:31:28 ID:465yyivI
やはり――居た。
それも一人や二人。否、数えられる人数じゃない。
何十人と言う学生が、俺を遠巻きに白い目をして眺めていた。
中には眉を顰めて仲間内で何やら囁き合っている連中までいる。
それはそうだ。
俺はいい歳した大学生で、メリーさんは(人間じゃないけど)どう見たって十代前半から半ば。
傍目には、幼児虐待以外の何物でもないだろう。
「え、え〜っと……あ、あはははは……
ほ、ほら、いいコだなあ。よし、じゃあお兄さんとちょっと外に出ようか〜」
俺は体の良い愛想笑いを浮かべ、メリーさんの肩を抱きながら早足で食堂を後にした。
そう。背中に冷たい視線をちくちくと感じつつ……



俺はメリーさんを連れてキャンパスを歩き回り、
人気の無い一角にベンチを見つけるとそこに腰を落ち着けた。
その頃にはどうにか彼女が泣き止んでくれていたのは、不幸中の幸いだったかもしれない。
もっとも、
「信じられない……悪夢、悪夢だわ……
この私が、こんな男に公衆の面前で恥をかかされるなんて……」
泣き止んだら泣き止んだで、
それから延々と小言とも愚痴ともつかない事を一人ごちり続けているのだが。
「嗚呼、これじゃあ私は幽霊の面汚しじゃない……こんな筈じゃなかったのに……
こうなったらもう……この醜態を見た人間を皆殺しにするしか……」
「……あのさあ」
「何よ」
流石にうんざりしてきた俺が声をかけると、メリーさんは不機嫌そうに半眼を向けてきた。
345メリーさんのお話:2005/07/17(日) 10:32:00 ID:465yyivI
当人としては威圧している積もりなのだろうが、はっきり言って可愛いだけだ。
「メリーさんってさ、幽霊なんだろ? どうして幽霊がそんなに体面なんて気にすんだよ」
「下等な人間には分からないでしょうけどね、私達には矜持ってもんがあるのよ!
私達はね、人間どもから否定され、排斥され、あまつさえ娯楽の対象にされてるのよ!
こんなの、許される事じゃないわ!」
彼女は一頻り喚くと、昂った心中を鎮める様に大きく息を吐いた。
握り締めた拳を震わせ、自らの胸を押し当てる。
「だからね、私達は人間どもに復讐しているのよ。
自分達が一番偉いと勘違いしている下等動物に恐怖を撒き散らしてやるの。
そして、思い知らせるの。その脆弱さを、その矮小さを。
そう……徹底的に諦観と絶望の淵にまで追い込む様なやり方でね」
そう言って、メリーさんは顔を歪めた。
俺には、彼女の言葉にどれだけ深い意味があるのかは分からない。
しかし――そこから伝わってくる憎悪と赫怒だけは、何故かひしひしと感じ取れた。
「じゃあ、どうして俺を殺さなかったんだよ」
口にしてから「余計な事を」と思ったが、もう遅い。
メリーさんはこちらを振り向くと、不思議そうに首を傾げた。
「おかしな事を訊くのね。殺されたいの?」
「んなワケないだろ。でも、そんなに人間を憎んでるなら、
口先だけの取引なんて反故にして俺を殺しちまいそうなもんじゃないか」
「そんな思考回路だから下等だと言うのよ」
メリーさんは鼻を鳴らし、その顔に似合わない大人びた苦笑いをしてみせる。
「さっき話したでしょ。私達は人間なんかよりずっと誇り高いのよ。
少なくとも私は、裏切りや欺瞞はしない。人間との約束でもね」
「そう、か」
「ええ。そうよ」
やはり、分からない。
346メリーさんのお話:2005/07/17(日) 10:32:24 ID:465yyivI
元々、人間と幽霊なんて相容れない存在なのかもしれないが。
それでもメリーさんの胸の内はさっぱりだ。
「……それにしても、妙な感じだわ」
俺が密やかに悶々としていると、メリーさんがぽつりと呟いた。
「憎むべき人間と話してるっていうのに、何故だかとても気分が軽い」
「今まで人と会話した事なかったのか?」
「無いわ。私を見た相手は、必死に逃げるか、泣いて赦しを乞うか、大抵そのどちらかだもの」
どっちにしても殺すんだけど、とメリーさんは付け加えた。
「虚しくないか、そんな事してて」
また思った事が口に出てしまった。
ひょっとして俺の心と口の間には電話線が繋がっているんじゃないだろうか。
後悔より先に、そんな馬鹿な考えが脳裏を過ぎる。
「その言葉は傲慢な人間だからこそ吐けるものだわ。
復讐こそが私達の存在意義だもの。虚しいだなんて、微塵も思わない」
冷え冷えとした口調で言うメリーさん。
「……それも、悲しいな」
一瞬――どうして、俺がそんな事をしたのか、自分自身でもよく分からなかった。
もしかしたら、壊れてしまいそうなメリーさんの横顔に魅入られてしまったのかもしれない。
或いは他の自覚できない理由があったのかもしれない。
何にせよ、気付いた時には彼女の頬のそっと手を差し伸べていた。
掌に伝わる感触は少し冷たいが、柔らかさは人間の女の子とまるで変わらない。
「な――っ!?」
メリーさんが蒼い目を見開く。
俺は露わになったその瞳を真正面から見据えた。
「ちゃんとこうして触れられるし、こんなに人間らしくて可愛いっていうのに。
その気にさえなれば、人間として楽しく暮らす事も出来ると思うよ」
「……」
メリーさんは凍りついた様に硬直しているが……
しかし、その白い頬にかすかな赤みが差すのを、俺は確かに見た。
347名無しさん@ピンキー:2005/07/17(日) 10:35:21 ID:465yyivI
楽しかったので続きを書くことしますた
人外要素なくて申し訳ないけど、これにエロ加えて完結させたら消えるんで勘弁してください
マターリとやるんで、職人さんは俺に構うことなく投下するのがあれば投下しちゃってください
348名無しさん@ピンキー:2005/07/17(日) 11:23:59 ID:vKpB4M/V
幽霊って元・人間なんじゃないっけ。なんかまるで別種族みたいな口ぶりだけど。
349名無しさん@ピンキー:2005/07/17(日) 11:33:07 ID:xBxH3BUT
ぬぉぉぉぉ!!!!
萌え〜
GJGJGJGJ!!
350名無しさん@ピンキー:2005/07/17(日) 13:03:13 ID:jGXINrbo
現役でなければ総て良し!萌えGJ、と言っておく。
351名無しさん@ピンキー:2005/07/17(日) 13:05:26 ID:fbr94YM1
いやいやいやいや!
なんですかこれ…相当イイよ(´▽`)
続きが待ち遠しぃ
ぐっじょー
352名無しさん@ピンキー:2005/07/17(日) 14:55:08 ID:3JqJKBGw
いいねぇ。GJ。
353名無しさん@ピンキー:2005/07/17(日) 20:59:15 ID:0Rbsyxdk
強いのか弱いのかわかんねーなメリーさんww
萌えたGJw
354名無しさん@ピンキー:2005/07/17(日) 21:07:52 ID:y8hZ5mLF
>人外要素なくて申し訳ないけど
無いと物足りないかもしれないが、決して必須ではない。
そんなことよりも、萌えたり、エロかったり、面白かったりするほうが大事だ。
355某880 伝えたい事〜アルケニー2〜:2005/07/17(日) 23:05:30 ID:6wtnlvVr
「糸が足りない?」
私から持ちかけた相談。それは深刻なものだった。
深刻なものなのだが、彼がこの意味を理解するまでには少々時間が掛かった。
「そう、糸。元々慢性的に不足がちだったけど、このままだと私が干からびるわ」
私は今、服飾関係の仕事……デザインはもちろん、機織りも裁縫も全て自分でこなす手工芸の服飾デザイナーという「職」についている。
私のデザインセンスは……まあ自分で言うのもなんですけど
あの「戦馬鹿」の女神に嫉妬される程……まあ、この話はさておき
元々「機織り娘」としてもデザインセンスに優れていた。
そのセンスは服そのもののデザインにも当然影響し、そちらだけでもかなり評判が良い。
自画自賛。でも、これは事実。
けれど、私の真価はデザインだけではない。
機織りの技術もかなりものもで、あの……いや、それはいいとして
私が織り込む布生地はとても品質が高い。
いえいえ、技術だけの問題でもない。
私が織る布生地。その生地に使われる糸が優れているから。
その糸とは、私自身が生み出す「アルケニーの糸」なのだから。
「最近、スキュラやモーショボーから服を作るよう頼まれてるみたいだけど……そのせいか?」
糸が足りない。その原因として彼が思いついたのは、単純に需要と供給のバランス。
「あーら、モーショボーはまだしもスキュラの注文が多いのはどうしてかしらねー」
私はじっとからかうように……多少嫉妬の色も交えつつ……彼を睨み付けた。
案の定、彼は余計な事を口にしたと顔をしかめている。
モーショボーが最近、「コスプレ」を披露する相手が出来たらしく、あれこれと服を私に頼んでくるようになった。
それは彼に直接関係ない話なのだが
スキュラがねだる「衣装」に関しては……少なくとも見せる相手が彼である以上、無関係ではない。
356某880 伝えたい事〜アルケニー2〜:2005/07/17(日) 23:06:09 ID:6wtnlvVr
「ま、彼女達の服は「普通の生地」で作ってるから関係ないわ」
私が服を作るパターンは、大きく分けて二通りある。
普通の生地で作る場合と、自らの糸で織り込んだ布を使って作る場合。
デザインした服の試作品を製作する時や
スキュラ達のような個人的な頼みを聞き入れて作る場合は、普通の生地を使う。
この場合は当然、糸不足と何ら関係はない。市販の生地を買ってくれば良いだけだから。
もう一方、私の糸を用いた生地で服を作る時。こちらが今回の糸不足に直結する問題となっている。
私の糸には、「妖力」が込められている。
当然その糸から作られる布生地にも、そしてその生地で作られる服にも、妖力が込められる。
この妖力によって着ている者にどのような影響を与えるかは、「着ている者」と「状況」によって異なる。
とはいえ、役目としては「保護」が主だった効果となりやすいのだけれども。
それでも妖力が込められた服となれば、それ相応の価値と需要がある。
「すると……やはり俺からの注文が多すぎるって事か……」
私が受ける注文は、彼に頼まれて制作する形が最も多い。
妖精学者として依頼者などを保護する際、
私の作った服を貸したり与えたりする為、彼が私に服の制作を依頼するのだ。
「と言っても、数を減らすわけにもいかないでしょ?」
私も彼も、作る服に利益は求めていない。
生産数に限度がある以上、本当に必要な人の為だけに作る必要がある。
そんな「必要な人」の数を減らせ、というわけにはいかない。
「だから、糸そのものの生産力を上げるしかないわけよ」
足りないなら作ればいい。言うが易いがこれはとても大変な事。
「そりゃそうだけど、どうやって? お前の身体に負担をかける事になるならあまり賛成できないぞ?」
心配そうに私を見つめる彼の視線が、ほんの少し嬉しかったりする。
「大丈夫よ。ようは、効率性を高めるって話なの」
私は聞きかじった知識を、得意げに披露し始めた。
357某880 伝えたい事〜アルケニー2〜:2005/07/17(日) 23:06:52 ID:6wtnlvVr
「私の糸……というより蜘蛛の糸は、蚕の糸と同じで「フィブロイン」というタンパク質で出来ているの」
蜘蛛と蚕、そして他の昆虫が作る糸のほとんどは、同じ「フィブロイン」を主成分として作られている。
つまり私の糸は妖力を抜きに考えた場合、絹糸と全く同じ性質がある事になる。
タンパク質はそもそもアミノ酸を主体としており、それはフィブロインも例外ではない。
その為糸を多く生産したいのなら、この「フィブロイン」を構成するアミノ酸を多く摂取すれば良いのではないか、というのが私の考え。
「理屈はそうなんだろうけど……とりあえずそれなら、日々の食事に気を付けるって話だろ?」
彼の言う通り、基本的には食事に気を使い、出来る限り効率よく必要なアミノ酸を摂取するように心がける事になる。
この件については、既にシルキーやニスロクには相談済みで、実行中である事を私は彼に告げた。
その上で、私は彼にしかできない相談を持ちかける。
「食事だけだと、やはり微々たる物なのよね。そこで、もっと効率よく接種する方法は無いかって相談したのよ」
誰に? という問いかけを無視し、私は一本の薬瓶を取り出した。
「これはね、「男性特有の排出物」をフィブロインに必要なアミノ酸を含んだタンパク質に変える薬。特別に調合して貰ったの」
誰に? と再び問いかけられた事も当然無視し、私は薬瓶を彼に手渡した。
「それを飲んで、その……ね。判るでしょ?」
「いーや、判らない。つーか、ちゃんと説明してくれよ」
話の流れから察しているのだろうが、彼は断固説明を求めた。
まったく、流れとかムードとか、そういうのがあるでしょうに……いや、彼の不安も判るんだけど。
「いつもの三人組」
「やっぱりあいつらか……」
358某880 伝えたい事〜アルケニー2〜:2005/07/17(日) 23:07:25 ID:6wtnlvVr
三人組と言うだけで通じる、この薬を調合した張本人達。
本来なら妖精学者とは敵対するはずの、魔女と呼ばれる三人の女性達である。
彼女達は魔力,魔法に関する知識が高く、そしてその活用技術も卓越している。
その為今回の薬のような、普通ならあり得ないような物まで作り出してしまう。
ただ彼女達はイタズラ好きで淫乱。そんな性格が妖精学者である彼をことある事にからかってしまう。
その為、彼は魔女に対する警戒心がやたらに高い。
高くなるのも当然かなと……伝え聞いた「イタズラ」の数々を思い起こし、私は苦笑いを浮かべる。
しかし、彼女達は自分達の「仕事」にプライドを持っており、作り出す物に絶対の自信を持っている。
なにより、彼女達の「根」は善良……のはず。
「まあ……「害」はないんだろうけど……」
彼女達の性格を良く知っている彼は、薬瓶を手にしながら空いた手で頭をかいている。
「そもそもさ、どーして「男性特有の排出物」を変化させる薬なんだよ」
「さあ? 「アレ」もタンパク質から出来ているからじゃない?」
私はとぼけた。理由は明白だから。
あの魔女達が作る薬に間違いはないが、しかし真っ当な薬など作りはしない。
そこが彼女達の「娯楽」でもあるから。
だからこそ、彼はそこに「不安」を感じ、そして私は「期待」を感じていた。
「……判った。まあこれで君の助けになるなら……じゃあ、その……今夜、な」
僅かに頬を赤く染め、軽く咳払いした彼は薬瓶を握りしめながら部屋を出て行った。
私はそれを、ごめんねー、よろしくねーとすまなそうに見送りながら、心中で高らかに歓喜の声を上げていた。

*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*
359某880 伝えたい事〜アルケニー2〜:2005/07/17(日) 23:08:42 ID:6wtnlvVr
夜になり、彼が私の部屋へ訪れた。
高鳴る鼓動が聞かれやしないかと心配になる程に、私の胸は激しくなっている。
それを悟られないようにと、私は落ち着いて言葉を選ぼうと躍起になっている。
「あっ……もう飲んできた?」
結局気の利いた言葉が一つも浮かばない。
当たり障りのない事務的な事しか言えなかった自分を心中で罵倒する。
いつもこうだ。もっと素直になれたらといつも思う。
思いはするが、それを実行できた事など一度もない。
それだから、こうして毎回「口実」を作って彼を部屋へ呼びつける事しかできない。
私だってもっと、その……「良いムード」で始めたいというか、その……
ともかく、口実なんか無くても、その……
ああ、心で言葉を思い浮かべるだけでも照れてしまう私が、口に出来るはずもないか。
今回の糸不足の件も、その深刻さよりもこれを口実にと考えた自分に、嫌気さえ感じる。
感じながらも、やはり心躍る自分もいて、そして今は、そんな心を躍らせている自分が勝っている。
「えっと……一応説明するわね」
興奮と心の葛藤を表に出さないよう冷静さを装い、確認の意味も込めて「魔女の薬」についての説明を始めた。
「飲んできて貰ったあの薬は、あなたの……「アレ」の成分を変化させる薬であると同時に、「量」を増やす成分も入っているの」
「え、量?」
後半部分は初耳だと、彼は尋ね返してきた。
「うん。彼女達の話だと、効果は一晩三回分らしいの。その三回で出る量が、通常よりも多くて、初回よりも三回目がより多くなるらしいのよ」
どれほどの量になるのかは私にも想像できないが、なんとなくその光景をイメージしてしまい
私は頬が急速に熱くなるのを感じた。
360某880 伝えたい事〜アルケニー2〜:2005/07/17(日) 23:09:26 ID:6wtnlvVr
「それで、その「摂取」も出来れば順番通りにやって欲しいらしいんだけど……」
私の顔は、ますます紅潮していく。
「最初は……ここ」
私は今開いている口を指さす。
「次が……「あそこ」で……」
今度は指こそ差さないが、曖昧な言葉だけでも伝わったはずだ。
「最後が、その……」
言い辛い。流石に、これは言葉にし辛い……。
「えっと……も、「もう一つの穴」って……事?」
流れで何となく察していた彼が、私に代わって口にする。私は黙って頷いた。
「あの、は、初めてだけど、その、たぶん……大丈夫、だから……」
もう彼の顔を正視できない。私は真っ赤になった顔を下に向けてしまう。
私も魔女達から説明を受けた時は耳を疑った。まさか「あっち」でだなんて……。
彼女達の話によれば、摂取する量を考えると「三点」から吸収すべきだというのだが……本当だろうか?
おそらく、半分は本当で、半分は……彼女達特有の「イタズラ」だろう。
彼女達は何も、彼ばかりにイタズラするわけではない。私だってターゲットにされる。
それを覚悟した上で相談したのだから文句など無いけれど……やはりここまでは予測していなかった。
これも、口実になると期待した私への天罰だろうか?
まあ、私は神なんてこれっぽっちも信用していないけれど。
「と、とにかく始めましょう。じゃ、ベッドに座って……」
私はうつむいたまま、彼にベッドへ腰掛けるよう指示をする。
そして上半身だけ着ていた服を即座に脱ぎ捨て、顔を下に向けたままベッドに向かった。
361某880 伝えたい事〜アルケニー2〜:2005/07/17(日) 23:09:59 ID:6wtnlvVr
「あっ……もうこんなに……」
下を向いたままだったから、彼の顔を見るよりも早く彼の肉棒が先に目へ飛び込んだ。
その肉棒は既に膨張しており、今にも一回目を射出してしまいそう。
「ごめん、薬飲んでそれなりに時間経ってるものね……」
かなり辛そうだ。私は詫びの言葉を短く述べるとすぐに、彼の肉棒を口に含んだ。
「んっ」
彼が軽く呻く。私はすぐに、唇を離した。
「我慢しないでね」
目的はあくまで彼の肉棒から放たれる「アレ」の摂取なのだから、我慢する必要はない。
それでも、我慢してしまうのが男心なのだろうか? 私の憶測でしかないけれど。
それとも、少しでも私の唇と舌を楽しみたいと思ってくれているのだろうか?
だとしたら……私は短い間だけでもと、舌を激しく動かし唇で肉棒を何度も擦る。
「んっ……ちゅ……くちゅ……ちゃ……んふっ」
唇越しに、ピクピクと肉棒が脈打つのが伝わる。
舌先はくぼみの周囲を舐め、舌の奥で肉棒の先端をぐいぐい押し込む。
舌全体に、独特の「味」が広がっていく。
味覚的には美味しい物ではなく、むしろ多少塩気を感じるのだが、何故か私はこの「味」が好きだ。
彼の物を包んでいる。この感触と行為に、酔っているのかもしれない。
「んっ、もう……」
「あん、いいよ、出して……んっ、くちゅ……」
より激しく、私は頭を動かしていく。
その頭に彼が軽く手を添える。まるでもっともっとと急かすように。
362某880 伝えたい事〜アルケニー2〜:2005/07/17(日) 23:10:31 ID:6wtnlvVr
「くっ!」
「んっ!」
喉の奥に、勢いよく放たれる白濁液。
「んっ、けほっ!」
聞いていた通り、普段よりも量が多い。判ってはいたがあまりの多さに私は全てを飲みきれずにむせてしまった。
そうしている間にも、ドクドクと流れ出る液。
勿体ないとでも思ったのか、私は咳き込みながらも出来る限り受け止めようと
掴んでいた肉棒を顔に向け、顔面にたっぷりと白濁液を注がせた。
「あっ、ん……凄い量ね」
ねっとりとした液を顎からしたたらせながら、私は手に付いた白濁液を舐め取った。
美味しい。
たぶんこれだけを舐めて美味しいとは感じないのだろうが、今の雰囲気が至極の味へと変えているのだろう。
私は顔にこびりついている分も指ですくい、そして舐めていった。
「これ以上の量を出すとな……ん、あっ!」
「えっ? おい、大丈夫か?」
急激に、喉の奥から胸元にかけて、激しい「熱」を感じ、私は喉元を抑えて呻いた。
熱は次第に下へと広がり、胃にまで到達し、そして徐々に全身へと広がっていく。
間違いなく、原因は彼から放たれた白濁液。
何故? 薬の調合に失敗していた?
いや……失敗はしていない。これは初めから仕掛けられていた「効能」だろう。
「はぁ、はぁ……だ、大丈夫……」
私は息を荒げながら、心配する彼にこの原因となる「憶測」を話す。
363某880 伝えたい事〜アルケニー2〜:2005/07/17(日) 23:11:14 ID:6wtnlvVr
「やられたわ……はぁ、あの薬、ほら、前にストラスがあなたに盛った、「あの薬」と同じ成分が……はぁ、たぶん、だけど……」
「あの薬って……あれか!」
以前、彼は堕天使ストラスにとんでもない薬を盛られ、
彼が知らないところで一人の小さな妖精に「とんでもない事」をさせる事になった事件があった。
男性が服用すると、男性の「アレ」を強力な媚薬にしてしまうという薬である。
実はストラスからその薬を分けて貰ってはいたが、使うきっかけが掴めないままになっていた。
それをこんな形で飲む事になるなんて……。
そういえば、魔女達は「あそこでの行為」に際して心配いらないと言っていたが……こういう事だったのね。
「ねえ……はぁ、はぁ、もう、我慢出来ないから……」
息を荒げ、私は全身が薬の成分に犯され、そして思考も性欲に乗っ取られた事を自覚しながら、
激しく彼を求めていた。
「私のはもう、はぁ、こんなだから……」
彼をベットに座らせたまま、私は後ろ足二本で床を踏み、残った前足四本でベッドを踏み身体を支え、足と大きな腹の付け根にある私の秘所を見せつけた。
そこはまるで、先ほどの白濁液を吹き掛けたかのようにねっとりと濡れていた。
「入れるわよ……」
私の言葉を受け、彼は自分の手で肉棒を支え固定させる。
彼の肉棒も、あれほど大量の白濁液を出したばかりとは思えぬ程に、再び大きく膨張していた。
「あんっ!」
「くっ!」
私の中に、彼の肉棒を貫かせる。
それだけで、二人ともいってしまいそうだった。
いや、彼はともかく私は軽くいってしまった。
二人とも、薬のおかげで身体が敏感になっている。軽い刺激も数倍の快楽となって全身を駆けめぐる。
364某880 伝えたい事〜アルケニー2〜:2005/07/17(日) 23:11:44 ID:6wtnlvVr
そんな状態なのにもかかわらず、いやそんな状態だからこそなのか、私は激しく腰を振り、彼の肉棒を何度も何度も貫かせる。
「いっ、あ、はあっ、ん、いい、あ、あん、あ、はぁ、きもち、い、いい」
ベッドの片側に二人分の体重。その上で激しく動いたらベッドがひっくり返りそうだ。
それでも私は激しく激しく、床とベッドに置かれた足に力を入れ、お大きなお腹を揺すり腰を動かす。
いつの間にか、私は中間の足二本で彼の胴を、そして二本の腕で彼の頭をかかえていた。
「くっ、ふぐ、く、苦しい……」
彼の頭は、ちょうど私の胸のあたりに来ている。
彼の頭をかかえると、顔を胸の谷間に埋めさせる形になり、彼は息が出来なくなってしまう。
彼の抗議がどうにか私の耳にはいる。私は腕の力を弱めるが、謝罪する余裕まで無かった。
「いあ、ん、あっ、いい、の、いい、あ、そこ、なめ、ん、なめ、て、もっ、ん、あん、いい!」
謝罪もしない私の態度を叱るどころか、彼は自由になった顔を今度は自分から胸に近づけ、そして乳頭に吸い付いてきた。
腕を私の後ろに回し、抱きつくようにして胸を吸い舐める彼。そんな彼の頭に私は手を乗せ、もっともっととせがむ。
「きもっ、ち、きもちっ、いい、ん、あ、いい、の、いい、あ、い、そ、いく、いくっ!」
彼を抱く真ん中の足に力が入る。私乗せに回された彼の腕にも力がこもる。
「あ、い、も、もう、ん、いっ、いく、ん、いっ、いくっ!」
私の足と彼の腕が、二人をぎゅっと引き寄せる。
より二人が密接している場所。そこは双方の敏感な物が交じり合っている。
ビクビクと彼の肉棒が脈打ち、ドクドクと私の中へと快楽の証を注いでいく。
見えてはいないが、私の中から彼の白濁液は溢れているのが判る。溢れた液がお腹を伝わっていくのを感じるから。
「沢山出てる……沢山出てるよぉ……」
息を荒げながら、私は事実を口にする事で精神的快楽を得ようとしている。
私は、彼が私の中に放ってくれた事そのものを快楽だと感じている。
彼が私の中に。それだけで幸せになれる自分がいる。
その一方で、貪欲な私はまだまだこの幸せを望んでいた。
365某880 伝えたい事〜アルケニー2〜:2005/07/17(日) 23:12:17 ID:6wtnlvVr
「次……お尻、お尻にぃ」
始める前は、口にするのも恥ずかしがっていた「お尻」という単語。
それを私は躊躇無く口にしている。
そんな事に後から気付き、恥ずかしさを覚えながらも、私は次の欲求に耐えられなかった。
まだ繋がっていたいと後ろ髪引かれながらも、私は自分の腰を彼の腰からどけ、そしてクルリと器用に反転する。
座ったままだった彼はベッドから腰を上げ、後ろ向きになった私のお腹を両手で持ち上げる。
「さすがにこのままじゃまずいな」
持ち上げた私のお腹を一度下ろし、彼は私と彼のでぬるぬるになっている肉棒を手で拭い、そのぬめった液を手に取った。
「ちょっと濡らすよ」
そう言って彼は、置かれたままの私のお腹……いやその先端となるお尻に手を伸ばす。
「……ん?」
不意に、戸惑いの声が上がる。私は彼が何に戸惑っているのかを察し、助言する。
「下の穴、そっちがお尻の穴だから。そこに、早くぅ」
私のお尻には糸を出す穴もある。お尻の穴がどちらなのか、彼は判らなかったのだろう。
私に指摘された彼は、ぬめった手で私のお尻の穴をなで回し始めた。
「んっ! あはっ」
初めて感じる、お尻からの快楽。
初めてなのに、こんなに感じるものなのだろうか?
薬の効果によるものなのは判っている。けれど、こんなに気持ちいいなんて……。
「ひやっ!」
なで回すだけだった手。そこから一本の指が私のお尻の穴へと入ってくる。
それだけで、私は快楽の衝撃が脳天にまでビリリと到達してくる。
でも、指だけじゃ……。
「もう、いいから……ね、入れて、入れてよぉ」
これほど大胆に彼を求めた事なんか、今まで無かった。
肉欲に支配されているからとはいえ、ここまで素直に、ストレートに、求めるなんて……。
366某880 伝えたい事〜アルケニー2〜:2005/07/17(日) 23:12:48 ID:6wtnlvVr
一皮むけばこんな物か。
肉欲に心を乗っ取られている中で、僅かに残っていた思考が私を罵った。
素直になれないと悩んでいた自分なんて、一皮むいてしまえばこの通りなんだ。
「あぁっ!」
悲観的な思考も、彼の挿入で消し飛んだ。
彼は両手で私のお腹を持ち上げながら、激しく腰を動かしている。
「あ、ん……い、いいよ、これ、も、きもち、いいっ!」
私はお尻を彼に預けよがりながら、両手で自分の胸を激しく揉んでいる。
少しでも快楽を得ようと、私の腕は胸を激しく揉み続ける。
快楽の為? そうかもしれないが、そうではないような気がする。
彼が後ろにいる以上、私から彼には触れられない。そんな寂しい私の腕は、自分の胸を揉む事しかできない。
寂しい。快楽に溺れながら、心のどこかで寂しさを感じていた。
気持ちいいのに、何故?
「ね、ねぇ、おねが、い……こえ、こえだして、ね、よんで、わたしを……」
そうだ。私は彼を求めている。
肉欲に溺れ支配されながら、私は彼に抱かれる事をずっと求めている。
間違いなく、今私を後ろから抱いてくれているのは彼。
だけれども、お尻からでは彼の姿は見えず感触も伝わらない。その寂しさが私には耐えられなかった。
「アルケニー……アルケニー、好きだ、好きだよ」
ああ、彼の声がする。好きだと言ってくれている。
彼も普段は、好きだなんて言ってくれやしない。でも今は、今だから、彼は私に愛を囁いてくれる。
「アルケニー、好きだ。今だけで良いから、俺の事も愛してくれ……」
今だけで良いから。彼の口癖だ。
多くの女性に愛を囁いてきた彼は、他の女性と同じように私にもその口癖を囁く。
嫉妬は……する。だけれども、それ以上に私は嬉しかった。
彼の言葉は口癖でも、真実だから。
愛してくれている。私はそれを今実感している。
367某880 伝えたい事〜アルケニー2〜:2005/07/17(日) 23:13:19 ID:6wtnlvVr
「うん、うん、わたしも、あいして、る、から、ずっと、あいしてたか、ら、ん」
今だけから言える言葉。私は今まで言えなかった言葉を、恥ずかしげもなく、高らかに語る。
「いまだけで、いいか、ら、あなたも、あいし、て、わたしを、ね、あい、して、あっ、すっ、すき、すきだから、ん、あんっ、い、いい、すき、きもち、いい!」
快楽の為だけじゃない。薬の為だけじゃない。
私は彼への愛を快楽へ、快楽を愛へと何度も巡回させていく。
「アルケニー、いいよ、俺も気持ちいいから、好きだから、そろそろ、ある、アルケニー!」
「うん、すき、わたしも、すき、いい、きもち、いい、すき、いい、あっ、いく、すっ、いっ、あっ、い、あぁ!」
愛の証が大量に注がれてくるのを私は実感しながら、意識が遠くなっていくのも同時に感じていた。
愛に包まれながら。

*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*
368某880 伝えたい事〜アルケニー2〜:2005/07/17(日) 23:13:51 ID:6wtnlvVr
目が覚めた時は、ベッドの上だった。
ベッドの脇では、彼が心配そうに私を見つめていた。
「あっ……」
軽く声を上げた途端、私は急速に顔が紅潮していくのを実感し、思わず布団の中に顔を隠してしまった。
「あの……と、とりあえず、大丈夫そうだね」
私の反応に戸惑いながら、彼は布団にくるまる私に声をかけた。
私はと言えば、恥ずかしくて返答も出来ないまま。
「あの、なんだ……あの薬はちょっと、「度」が過ぎるな。糸の問題は別の方法を考え……」
「ダメ!」
折角の「口実」が無くなる! それに慌てた私は布団をはねのけ起きあがり、彼に抗議してしまった。
「って……いや、その、ね。ちょっと「イタズラ」が過ぎるけど……一回やれば彼女達だって気は済むでしょ。ちゃんと調合した薬を作って貰えば大丈夫よ」
咄嗟の言い訳ではあるが、私の推測におそらく間違いはない。
今回の事は……まあどこかで「見ていた」と思う。あれだけの現場を見せてしまったのだから、満足してくれなければ困る。
それに彼女達、「根」は善良なはずだから……。
「……まあ、君がそこまで言うなら構わないけど……」
腑に落ちない点はあるのだろうが、あまり難しい顔をされるのはこちらとして面白くない。
そんなに、私との……その、夜を一緒に過ごすのが嫌なの? そう勘ぐってしまいそうだから。
「ただこれだけは約束してくれ。あれだけ激しい事になるんだから、身体にだけは気を使ってくれ。
そもそも、糸を身体に無理してまで大量に生産する事だって、本当に大丈夫なのか判らないんだから」
ああ、彼は私の身体を気遣ってそんな顔をしていたのか。それが判ると、今度は逆に嬉しくなる。
「大丈夫よ。無理は絶対にしないから」
私は彼を安心させようと微笑んで見せた。
そんな私の顔を見て、彼が頬を赤らめている。反応が可愛らしいなんて言ったら、怒るかしら?
「それとさ、糸の事なんだが……」
指で頬をかきながら、彼が一つの「意見」を述べてきた。
「俺の服、あっちの量を減らせばいいんじゃないか?」
言われてしまった。あえて私から口にしなかったのに。
369某880 伝えたい事〜アルケニー2〜:2005/07/17(日) 23:14:22 ID:6wtnlvVr
今彼が着ている服は全て、それこそ下着からコート類に至るまで、私の糸を使って作られている。
妖精学者である彼は、妖精や妖怪,悪魔ですら「友」として接しているが、全ての者達が友として接してくれるわけではない。
だからこそ、彼には常に「保護」が必要。全ての服に私の糸を使う必要がある。
「服なんてさ、2,3着くらいあれば充分だろ。そんなに沢山必要ないしさ……」
これだ。私は頭に手を当て軽くかきむしる。
元々服に執着もファッションセンスの欠片もない彼は、「着られれば充分」というスタンスでいたらしい。
「ダーメ。何度も言ってるでしょ? 妖精達を相手にするのと違って、人間相手は印象が大切なんだからね」
だが妖精学者としての活動は、当然人間が相手になる事もある。あるというより、その方が多い。
そうでなくとも見てくれがあまり宜しくない彼が、社会的に信用される為にもファッションは重要なのファクター。
それを理解できないから服に無頓着なのだろうけど……。
「そもそも、このアテナをもひれ伏させたデザイナーを前に、そういう事は言わないの!」
ひれ伏されるどころか呪いをかけられたわけだけど……まあそれはさておく。
「いや、まあそうなんだろうけど……」
「そうなの! いいから、その事は任せて!」
変なところで優柔不断なくせに、変なところで強情だ。
「判ったよ……とにかく、無理はしないでくれよ?」
納得はしていないが、これ以上は何も言えないと彼は反論を避けた様子。
まったく、ちょっとは気付いてくれても良いんじゃな? 私は鈍い男に腹を立てていた。
彼に恥をかかせたくない。そういう女心を察してくれても良いと思うが……彼では無理か。
私は心中で溜息をついた。
それともう一つ。私にとって彼の服を作る事自体が幸せなんだという事も気付いて欲しい。
私の服が、彼の為に、彼の保護になるなら、私は枯れたって糸を絞り出し服を作りたい。
そんな気持ちを素直に伝えられないから、察して欲しい。
なんて……さすがにこれは都合が良すぎる。私は又心中で大きく溜息をつく。
370某880 伝えたい事〜アルケニー2〜:2005/07/17(日) 23:14:53 ID:6wtnlvVr
「それとまあ、その……あの薬を使うなら、なんだ、今度から日程とか、ある程度決めるか?」
急に話が戻り、私は戸惑いながらまた頬を軽く染めてしまう。
「あっ、うん……まあそれはまた後で……」
言葉は濁しているが、私は声高々に歓喜したい気持ちでいた。
口実付きとはいえ、彼と一緒にいられる日が増える。こんな嬉しい事はない。
「じゃ、「あいつら」には俺から伝えとく……つーか、俺も色々言いたい事あるからな」
苦々しい顔つきで、遠くの「天敵」を睨んでいる。
またいじられないと良いけどと心配はするが、口にはしなかった。
「それじゃ、おやすみ」
挨拶を最後に、部屋を出て行こうとする彼。
「あっ!」
私は咄嗟に声を出してしまった。
彼は私の声に反応して立ち止まり、戻ってきた。
「いや、ううん、なんでもない……」
もっと気の利いた言葉はないの! 私は結局普段通りの自分に戻っている事を腹立たしく感じていた。
あれだけ素直に口に出来た言葉も、もう恥ずかしくて言えない。
ここで言いたいのに、素直でない私からは言えなかった。
「……俺じゃ説得力ないかもしれないけど……好きだよ。おやすみ」
軽く頬に触れる、彼の唇。そして部屋を出て行った彼。
私は、「私も」と何故すぐに言えなかったのかと自分を攻め立てながら、
布団にくるまり何度ももんどり打っていた。
371某880:2005/07/17(日) 23:24:11 ID:6wtnlvVr
以上です。
>347さんのお言葉に甘えて、投下しちゃいました。

文中だけではちょっと人外要素をイメージし辛いと思いますが
よーく考えると体位的に人外なはずなので、ちゃんとイメージが伝わると良いなぁ

>347さん
ぶった切っちゃといてなんですが、続き楽しみにしております。GJ

>人魚の方
どちらの話も俺は好きです。GJ
ダーク系も萌えも書けるなんて羨ましい。

>くなさん
このスレに投下してる身のくせに、クトゥルフはちょっと疎いのですが
それでも萌えました。GJ
372名無しさん@ピンキー:2005/07/17(日) 23:58:42 ID:FSVIWJZ4
今日の今日まで蜘蛛は尻の穴から糸を出すと信じてた・・・
ま、それはともかく
もぅ、純情乙女のアルケニーさん可愛いな畜生!
GJっす!

>人外要素と絵面
冷静に考えると、濡れ場よりも布団に潜り込んだりするとこの方が凄い気がw
373名無しさん@ピンキー:2005/07/18(月) 00:27:38 ID:8qif6WR7
>メリーさん
続いてるwあなたは良い人です
幽霊物というか、>348のように異種族物っぽい底流はやっぱ伏線なんすかね

>某880さん
相変わらずエロエロですな
冷静に客観視してる一人称も、実は被虐趣味の一つなのかw
とか思えて面白かったです

休日だけあって、皆さん筆が進むようで
俺も書けたんですが、流石に今日の投下は遠慮しておきます
374名無しさん@ピンキー:2005/07/18(月) 00:42:38 ID:xTdtIj0D
素晴らしいですよ。エロいし面白いし
思いっきり惚れておいて素直じゃない・・・いや、不器用なのか・・・両方かな?
兎に角、そんなアルケニー萌えました
375名無しさん@ピンキー:2005/07/18(月) 00:47:46 ID:EkypxDA2
この流れに乗り>>28の続きが来ることをかすかに期待しているおれがいる
376名無しさん@ピンキー:2005/07/18(月) 03:49:53 ID:Q/4AU3Gz
>>370
蜘蛛女かわいいよ

「蜘蛛女のキス」て映画があったのを思い出した。どんな内容かは知らない。
377名無しさん@ピンキー:2005/07/18(月) 03:55:09 ID:fVkZAZnL
↑たしかB級ホラーだったと思うが、ちがってたらスマソ
378名無しさん@ピンキー:2005/07/18(月) 13:31:43 ID:dt+9Ypdu
↑全然違う
テロリストとホモが獄中で愛し合う話
主演男優はアカデミー賞をとっている
詳しくはぐぐってくれ
379名無しさん@ピンキー:2005/07/18(月) 15:32:10 ID:e+jONvZ4
ウホッ!
380名無しさん@ピンキー:2005/07/18(月) 16:59:21 ID:QAsfbasL
ホモはイヤ---------!!!!!!
381名無しさん@ピンキー:2005/07/18(月) 19:24:55 ID:kccQ7rVd
人間としての尊厳を奪われるくらいなら殺せとか言えばいいのにwww
382名無しさん@ピンキー:2005/07/18(月) 20:00:11 ID:5S5f3HM5
>>371
最高ですよ!
いつも読ませてもらってますが、エロさといいキャラといい全部良いですねぇ…GJです


そしてまたまた続きをお待ちしております
383くなさん ◆DAYgAM2ISM :2005/07/19(火) 00:07:23 ID:bEgjD7uI
今回は早かったんですが、次回はだいぶ先になりそうです
次は、蟹さんか象さんの予定
ニッチだと行き詰まりそうなので、今後は開き直り決定

18レス使用で投下します。注意事項は特にありません
気に入らない方はあぽ〜んドゾ


G'HARNE FRAGMENTS
『図書館にて』
384くなさん ◆DAYgAM2ISM :2005/07/19(火) 00:08:34 ID:bEgjD7uI

 とっつき難い。島津直子の印象を聞かれた知り合いは、大半がそう答えるだろう。
 社交性も持ち合わせているから、周りから浮くような事は無いものの。機嫌が悪
い時の冷徹な眼差しは、他人に気後れを与える効果が抜群だった。
 少し切れ長の大きな目が、無言でじっと見る。これを向けられた方は、後ろ暗い
ところが無くても落ち着かなくなってしまうのだ。一緒に下校中の女生徒達も、ず
っと腫れ物に触るような態度で接していた。
「おや、直子君じゃないか」
 その為、無神経に掛けられた声に、彼女達は肩をびくっと震わせた。
 横道から沸いた文宏が、下駄でも履いているような歩き方でやってくる。爽やか
な優等生といった笑顔と態度なものの、何かが間違ってるような印象があった。
「奇遇だね。僕も、今帰ってきたところなのさ」
 親しげに近寄って来る文宏と、そっぽを向いて無視を続ける直子。板挟みにあっ
た女生徒の一人が、不機嫌さを増す友人に恐る恐る尋ねた。
「知り合い?」
「そう。家庭教師の戸川さん」
 少し間を置いて返事した後、直子は文宏の顔を見ないまま口を開いた。
「往来で話し掛けないで下さい」
 微塵も容赦の無い言葉に、場の空気が凍り付く。顔を見合わせる女生徒達へ、ま
るで空気を読めていない口笛が聞こえた。
「手厳しいねえ」
「だから、声を聞きたく無いと言ってるんです」
 直子は地面を睨みながら、絞り出すように鋭く言う。引き結ばれた口、強張った
肩、白くなるまで握り締められた手。彼女の態度を見た友人達は、事情が分からな
いなりに頷き合った。
 だが彼女達が何かをするより先に、直子が深い吐息混じりに挨拶した。
「ごめん。悪いけど、ここで」
「あ、うん」
「ちょっと待って」
 頷いた女生徒を押し退け、他の少女が直子に近付くと。ひどい忍耐をしているよ
うな直子へ、真摯な顔で囁いた。
385くなさん ◆DAYgAM2ISM :2005/07/19(火) 00:09:35 ID:bEgjD7uI
「何かあったら、何時でも良いから電話して。私達に出来る事なんて、たかが知れ
てるけど。それでも、困ってるんだったら遠慮しないで」
「違う違う。別に、そういうのじゃないから」
 直子は気が抜けたように笑うと、文宏を先導して歩き始めた。
 充分以上に距離を取って、少しでも文宏が近付くと鋭く制する。つかつかという
怒ったような足取りを、友人達は困惑顔で見送っていた。
「ま、一つ分かった事といえば。ここ最近、島津の機嫌が悪いのは、まず間違いな
く彼のせいだろうね」
「でも、なんだろう。話し方とか、ちょっとアレだったけど。清潔そうだし、あそ
こまで毛嫌いする理由は分からないかな」
「あれじゃない? 家庭教師って言ってたし、教え方が厳しいとか」
「それかもね。嫌そうだったけど、ああして一緒に行ってるわけだから」
 心配そうではあったが、話したところで結論は出そうもない。遠ざかる二人の背
中を暫く見送ってから、女生徒達も帰路に着いた。

 小走りに進む直子の後ろを、文宏も遅れないように歩いていた。直子は時折、立
ち眩みでも起こしたかのようによろめき、ガードレール等に手を着く。それでも休
む事はせず、ひたすら前へ足を運び続けた。
 進む度に、周りの景色は文宏の馴染み深い物になっていく。彼の住むアパートが
目に入った頃、短い悲鳴を上げて直子が電柱に両手を着いた。
「具合が悪いのならば、手を借りるべきだと思うがね」
「触らないで!」
 文宏が見かねて伸ばした手は、悲鳴と共に振り払われてしまった。何事かと通行
人から向けられる視線の中で、所在なげに文宏は自分の手を見る。自嘲が浮かびか
けたが、直子の背中が視界に入って再び後を追い始めた。
 直子はアパートの外壁や手摺りを伝いながら、二階にある文宏の部屋へ向かう。
ドアの前に辿り着くと、壁に額を預けて荒い呼吸を繰り返した。
「少し待っていたまえ。すぐに、薬を持ってこよう」
 急いで鍵を外した文宏が、靴を脱ぎながら部屋へ上がろうとする。だが、後ろか
ら引っ張られた為に、玄関口で倒れ込んでしまった。
386くなさん ◆DAYgAM2ISM :2005/07/19(火) 00:10:57 ID:RBtXAMxb
 受け身を取る彼の耳に、ドアの勢い良く閉じる音が聞こえる。
 音の大きさに振り返ったのだが、文宏は口を塞がれて何も言えなかった。直子が
首筋にしがみつきながら、余すところなく唇を合わせてくる。その舌はねっとりと
彼の舌を追い回し、どこまでも吸い付いてきた。
 掬い上げるように文宏の舌をなぞり、伝う唾液を飲み下す。口内の激しい動きの
せいもあって、二人の周囲は互いの鼻息で溢れていった。
「帰ってくるなり、凄いわね」
 呆れの篭められた声の主へ、文宏がぼんやりとした目を向けた。
 それはまるで、空中を揺らぐ海百合だった。星形の頭が突き出した奇怪な樽が、
無数の触手を蠢かせて漂っている。ゆっくりと着地した樽は、五つの翼を胴に空い
た襞へと吸い込んだ。
「ああ、そうそう。音が外に漏れる事は無いから、心配しなくて良いわよ。今日、
データを取ってみたんだけど。この部屋でロケットを打ち上げても、外には何も聞
こえないから」
 答えられない文宏達を前に、やれやれと星形の頭が左右に振られた。
 樽の縁に五本の手がかけられ、中から白衣を着た女が現れる。頭へ手をやってヘ
ルメットを取ると、ユリは汗の浮いた顔で息を吐き出した。
 有機結合型船外活動服。
 樽はそういう名前らしいが、平たくいえば『宇宙服のような物』だとユリは説明
していた。ユリ達にとって地球の環境は適しているものの、極地での活動には欠か
せない物らしい。
「助けが必要かしら?」
 近寄りながら問いかけるユリに、文宏が戸惑いを浮かべたままで頷く。だが彼女
が尋ねたのは、涙目で頷いている直子の方だったようだ。
 直子は片手で文宏にしがみつき、もう片方の手で彼のベルトを外そうとしている。
しかし、バックルが鳴るばかりで作業は全く進んでいない。ユリがベルトに手をか
けると、直子は安心したように両腕を文宏へ巻き付けた。
「フミヒロも、自分で脱いであげれば良いのに」
「いきなり押し倒された僕が、そんな余裕を持……んんっ」
 文宏が唾液まみれの口を開けられたのは、ごく僅かな時間だけだった。再び塞が
れた直子の口によって、舌の動きが封じ込められる。
387くなさん ◆DAYgAM2ISM :2005/07/19(火) 00:11:54 ID:bEgjD7uI
 前後で挟む体が柔らかいせいか、文宏も直子の舌を求め始めていた。
 ユリは文宏を抱え込むようにして、五本の腕を伸ばす。ベルトを外しながら、文
宏と直子の服も脱がせていった。
「興味深いわ。似たようなシャツなのに、男より女の服の方が脱がせ易いなんて。
私が雌性体だから、慣れてるせいなのかしら。それとも、フミヒロを脱がせる事に
は興奮して、ナオコに対してはそれが無いからかな」
 冷静ぶって口にしているものの、ユリの息遣いは荒くなってきていた。
 胸を顕わにされる直子は、開かれゆく文宏の胸元に熱い視線を送る。ユリの手が
フロントホックを外すやいなや、自分の胸を擦り付けるように触れ合わせた。
 続いて文宏のズボンが下着ごと下ろされ、陰茎が現れたのだが。粘液の伝う直子
の太股に触れたそれは、まだ全開の状態では無かった。
「どうしてですか?」
「いきなりは無理というものさ」
 文宏の答えに納得した様子を見せず、直子は片手をスカートに突っ込んだ。ず
ちゅっ、とたっぷり水気を含んだ音がする。彼女の脚を下りてきた下着は、幾筋も
の糸を引いていた。
「私はこんなに、欲しくてたまらないんですよ」
「安心して良いわよ。それ見たら、フミヒロも高まってきたみたいだから」
 彼の陰茎に手を添えて、ユリが色っぽい笑みを浮かべた。
 それを聞いた直子は、嬉しそうに下着を脱ぎ捨てる。さっきよりも増えたような
涎が、とめどなく彼女の太股を伝った。直子が文宏の腰にまたがると、スカートの
下から熱い愛液が陰茎とユリの手に降り注いだ。
 漏らしているような量は、すぐに文宏の股間をびしょ濡れにさせた。ぬめりの良
くなったユリの手淫に、陰茎は一気にその屹立を増していく。
「ああ、ううっ。はあっ、あう、く」
「狙いは私が定めておくから、そのまま腰を下ろしなさい。早く済ませてくれない
と、私の番が遅くなるでしょ」
 感謝するように頷いて、直子が定まらなかった腰から力を抜いた。ユリは直子の
脇腹を四本の腕で支えながら、文宏の亀頭を膣口へ潜り込ませた。
 触れただけで、直子の中から涎が溢れ出る。ユリが腕を離すと、文宏の陰茎は膣
の中へと吸い込まれていった。
388くなさん ◆DAYgAM2ISM :2005/07/19(火) 00:13:06 ID:bEgjD7uI
「あ、はあああ……」
「入る度に熱くなるようだな、直子君の膣内は」
「ちがいま、す」
 少し舌足らずに甘えた口調で、直子が文宏の首にすがりついた。
「もう、いい加減に覚えて下さい。私は、文宏さんのモノなんですよ。他人行儀な
呼び方じゃなくて、呼び捨てでお、願いします」
「覚えるも何も、今初めて言われたように思うのだが」
「ず、っと言えなかったんです。シて貰ってる時は、ことばにならなくて」
 二人が睦言を繰り返す間に、ユリの手によって文宏の上半身は裸にされていた。
膝の辺りで引っかかっているズボンが、間抜けさを際立たせるようだ。
「直子、でいいのかい?」
「ふああっ、くあっ」
 名前を呼ばれただけで達したらしい。ぎゅっと締まった膣が、陰茎を圧迫しなが
ら更に奥へと導く。亀頭が子宮を押し上げる感触に、直子は肩を震わせて小さくイ
き続けていた。
 文宏の背中では、ブラを取り去ったユリが胸を擦り付け始めた。
 彼女達の手足に絡みつかれ、柔らかい感触に包まれる。左右の耳へは、別々の吐
息が熱っぽく流し込まれている。
 前後から漂う女の色気によって、文宏の脳髄が痺れていく。愛おしげな直子の潤
んだ瞳を見たのが、我慢の限界となった。
「あう、んっ、はあっ」
「すまないとは思、うがね。僕も、もう抑えが効かないんだ」
「いいえ、いいえっ! 嬉しいです。私で気持ち、良くっ、なって下さい」
「それなら遠慮無しに、たっぷり味合わせて貰うよ」
「好きなだけっ、ああっ」
 喜色満面で吸い付く直子を、文宏も興奮した顔で吸い返した。激しく振り合う腰
に合わせ、上下から大きな水音が響き渡る。
 だがそれも僅かの事で、直子は口を離して喘ぎ声を上げ始めた。文宏は再び口付
けようとして、後ろから伸びてきた腕と唇に遮られる事になった。
「私も控えてるんだから、忘れちゃ嫌よ」
 笑みを浮かべて頷き、文宏がユリにもう一度キスをした。
389くなさん ◆DAYgAM2ISM :2005/07/19(火) 00:14:16 ID:bEgjD7uI
 力の抜けた直子を床に倒して、その上に文宏は覆い被さった。絡んでくる膣に分
け入り、子宮口をつつく。腰を引きながら、離すまいと纏わりつく襞を存分に感じ
る。一往復にかかる時間は短い物なのに、直子の体は様々な反応を返してくれてい
た。
 彼の背中に張り付いたユリは、少しの隙間も許さないように四本の腕を絡める。
残ったもう一つの手で、袋を優しく揉んでおり。彼女の陰唇が触れた部分は、それ
と分かるほどに濡れていった。
 潰れる四つの乳房、撫でる七本の手、しがみつく四本の足。前後を覆った柔らか
くて滑らかな感触に、文宏の思考は溶かされていく。
 直子の華奢な肩を掻き抱いた彼は、腰の動きを更に激しくした。
「もう、そろそろ」
「来てっ、来て下さい! 私の子宮へ、思う存分っ流し込、ふああっ」
「ああ。溢れるほど、たっぷり注ぐからな」
「嬉しいっです。文宏さんの赤ちゃん産みたいん……んああっ。お願いしますっ、
私を孕ませて下さい!」
「てけり、り」
 彼女の言葉に導かれるように、文宏が最も奥へと突き入れる。根元まで呑み込ま
れた陰茎は、子宮口を押しながら精液を迸らせた。
 どくっ、どくどくどくっ
 尾を引く高い声を上げ、直子の背中が弓なりに反った。伸びた体に従い、膣内も
余計な窪みを無くして精液を迎える。勢い良く放たれた分が全て子宮に流し込まれ
ると、大きく息を吐いて直子は床に倒れ込んだ。
 余韻に浸りながら蠢く腰が、陰茎に残った子種を搾り取っていく。一滴残らず子
宮へ送るように、直子の膣は奥へ奥へと収縮を続けていた。
 荒い呼吸を整える文宏と直子は、視線が合うと触れるようなキスを交わした。
「ほら、休まないの」
 休息を取らせる気が無いのか、ユリが文宏に密着させた腰を揺り動かす。まだ硬
度を保った陰茎が、充分以上の熱を残した膣の中を掻き回し始めた。
「ユリさん。少しぐらい、休ませて下さいよ」
「そうだ。僕はともかくとして、直子には休息が必要だろう」
390くなさん ◆DAYgAM2ISM :2005/07/19(火) 00:15:17 ID:bEgjD7uI
「別に構わないわよ。私が姦ってる間、二発分注がれてなくてもナオコが我慢出来
るなら」
 ユリが言い終わるか終わらないかのうちに、直子が腰を大きく揺らし始める。文
宏の意見を聞く気は無いのか、二人して口を塞ぎにかかった。
 しかし、どうしても言いたい事があったらしい。文宏は彼女達を引き剥がすと、
不満そうな顔へ、玄関の床を叩きながら提案した。
「そろそろ、ベッドへ移らないか?」

 場所を変えた後、直子に二度目を出してからユリと二回戦を行い。更に一度ずつ
姦って、二人は満足したらしかった。
 ユリは膣内に陰茎を収めたまま、体重を文宏へ預けている。直子は文宏の腕に両
腕を絡め、彼の肩に甘えるように擦り寄っていた。呼吸が落ち着いてくると、辺り
に満ちた匂いに気付かされる。それはまるで、汗が引くのに従って、性臭が濃くな
るかのようであった。
「ところで、直子。さっきの態度は何だったんだ?」
「さっき?」
 二人の女から、異口同音に同じ疑問が出た。
 気にしていた自分はなんだったんだ、と文宏が苦笑しながら。戸惑う二人、主に
経緯を知らないユリに向かって説明を始めた。
 玄関を潜った後が嘘のように、帰り際に声をかけたら顔も向けなかった。聞かさ
れるうちに思い当たったらしく、直子は半笑いを浮かべて頷いていた。
「嫌われたか、と思ったのだけどね」
「ごめんなさい。文宏さんの顔を見たら、シたくなっちゃうんです。声を聞くと、
背筋がぞくぞくっとしますし。触られたりなんかしたら、人前でも自制出来なくな
っちゃいそうで」
「それ本当?」
 横から口を挟まれても、不満そうな顔は見せなかったのだが。考え込むユリを見
て、直子は首を傾げた。
「ええ。ここに帰ってくるまで我慢するの、とっても大変だったんですよ」
「日常生活に支障が出るのでは、放っておくわけにはいかないわね」
391くなさん ◆DAYgAM2ISM :2005/07/19(火) 00:16:19 ID:bEgjD7uI
「と、言われましても。どのみち、文宏さんの子供を妊娠したら、支障は出ると思
ってましたし」
「変化が周りから分からない場合、人間関係に軋みをもたらすわ。現にフミヒロは、
ナオコに避けられていると感じたわけよね」
 ユリの誘導する先に気付き、直子が慌てて首を振った。
「遠慮します」
「呪われた海産物どもに発情させられる犠牲者は、この先もきっと出るわ。それを、
いちいちフミヒロが姦ってたんじゃ追いつかなくなる。何か、対策を練る必要があ
るでしょうね」
「なんだ、良かった。変な薬の実験台にされるのかと思ってました」
「変な、とは失礼ね」
 実験台にする気はあるのかよ、と直子は半笑いになった。
 ユリ達の科学力は、確かに人類より先に行っているのだが。より正確に言えば、
斜め上をぶっちぎった代物なのだ。
 瞬間湯沸かし器の場合、水がお湯でなく全て水蒸気と化したり。洗濯機だと、T
シャツのプリントや染料まで消し去る。除湿器は部屋中の物から水分を奪い、加湿
器はインスタントコーヒーすら液体に変えた。
 嫌な流れを断ち切るべく、直子は新たな話題を探したが。咄嗟に思いつかなかっ
た為、とりあえず元の話題に戻してみた。
「さっきの私、そんなに変でした?」
「そうだな。まるで、別人のようだったよ」
「今後は、そういうものだと諦めてやって下さい。あ、ところで。別人みたいと言
われて気になったんですけど、同じクラスの渡辺葵って娘が最近変なんです。ひょ
っとして、半魚人の犠牲に遭ったんでしょうか」
「詳しく聞かせて貰えるかしら」
 食いついたユリに、これで実験は遠ざかりそうだと、ほっとしながら直子が話し
出した。
「渡辺って、ろくに授業も聞かない奴だったんですけど。二週間くらい前から、真
面目に授業を受け始めて。放課後も、図書館に入り浸っているそうなんです」
「それを聞くだけだと、単に真面目になったとも考えられるな」
392くなさん ◆DAYgAM2ISM :2005/07/19(火) 00:17:09 ID:bEgjD7uI
 文宏の指摘に、上手く説明出来ないもどかしさが直子に浮かぶ。何度か言いかけ
ては止める事を繰り返したが、整理しきれないままで続けた。
「態度もおかしいんです、おしとやかになっちゃって。本人は、心境の変化だと言
ってますし。周りも、私を含めて納得してたんですが……ごめんなさい、やっぱり
気のせいかもしれません」
「面白そうね」
 だがユリは興味を引かれたようで、腕組みに頬杖というポーズを取った。
 なかなか知的でサマになっていたものの。膣に文宏の陰茎をくわえ込んだままで
は、いまいち知性に欠ける格好だった。

 満面の笑みを浮かべた直子が、文宏と腕を組んで街を歩いていた。
 出会って一週間にはなるものの、デートらしき物をしたのはこれが初めてなのだ。
それ以前に、学校以外で彼の部屋を出るのも久々だろう。白衣の女が後ろに続いて
いようと、浮かれる直子は初々しかった。
 ユリは白衣の下に腕を三本隠しているものの、周りは少し好奇の目を向けた。五
つに結わえた髪型も特徴的だが、町中の白衣が不可解だからだろう。
「こういうの、ちょっと憧れてました」
「へえ。まあ僕も、白衣の女を連れてぶらつくなんて経験は無いな」
「違いますよ」
 軽く拗ねて見せた後、図書館の入り口へ向かいながら直子が振り返る。何かを言
おうとしたらしいが、ユリの持つ物への疑問が先に立った。
「ところで、それ何なんですか?」
 長さ十数センチ、直径二センチ強の金属製の円筒。片手で軽く運んでいる事から
も、重い物では無いようだ。よく研磨された表面が太陽光に反射し、虹色の輝きを
放っていた。
「多分、必要になると思ってね」
「半魚人対策なのかい?」
「違うわ。ま、すぐに分かるわよ」
 勿体ぶるように言い残して、ユリが図書館に入っていった。
393くなさん ◆DAYgAM2ISM :2005/07/19(火) 00:17:38 ID:bEgjD7uI
 平日の夕方だからか、館内は閑散としたものだ。まばらな人々は、子供から老人
まで多様な顔ぶれだったものの。咳払いだけで大きく響くような、しんとした静け
さに満ちていた。
「目撃情報によると、こっちの方です」
「その言い方じゃ、まるで幽霊か宇宙人のようだね」
 文宏の茶々に同意しながら、直子は一行を先導する。小説や雑誌のコーナーでは
なく、専門書の並んだ一角へと。
 そこに、彼女はいた。
 容姿として、特に変わったところは見られない。濃いめの茶色い髪は、二本の筋
を引くように明るい茶色の部分がある。はっきりした印象の目や口元が、確かに図
書館とは場違いな印象を与えた。
 テーブルについた渡辺葵の両脇に、うずたかく本が積まれている。どっしりした
装丁の本ばかりで、大学のレポート程度では使わないような代物もあった。
「あら、島津さんではありませんか」
 直子に気付いた渡辺が、優雅な会釈をしてきた。
 普段からテラスでお茶会をやっているような、品のある仕草だ。ありふれた制服
と茶髪が、洗練された物に見えるほどの。
「えっと、こんにちわ」
「はい。ごきげん麗しそうで何よりです。それで、どうかなさったのですか? こ
こにある本で必要な物があるなら、お持ち下さって構いませんよ。流石に、全てだ
と困りますけれど」
 軽いウィットを混ぜつつ、まるで嫌味の無い微笑みを浮かべる。
 変ですよね、と直子は同意を求めたのだが。文宏には、目の前の少女のどこが変
なのか、まるで分からなかった。
 頼りにならない様子を見て、直子がユリへと目を移す。彼女は白衣に両手を突っ
込んで、にやにやと口元を歪ませていた。
「てっきり、芋虫か蟹だと思ってたんだけど。円錐だったのね」
「科学者というのは、どうしてこう無粋なのでしょう。まあ、エルダーシングと行
動を共にしているところを見ますと。そちらの男性や島津さんに隠し立てしても、
仕方ありませんわね」
394くなさん ◆DAYgAM2ISM :2005/07/19(火) 00:18:03 ID:bEgjD7uI
 今読んでいる場所へ、栞代わりに筆箱を置くと。渡辺葵の姿をした『何か』は、
軽く礼をしながら向き直った。
「わたくしは、イスの種族のレア・トバと申します」
 それだけで説明を終えたようだが、文宏にも直子にも何も伝わらなかった。小首
を傾げた彼女がユリを見て、二人とも知らないのを了解した。
 少し考える間を挟んだ後、レアは二人へと語りかけた。
「私どもは主に精神だけで旅を行い、様々な場所で研究をしております。大半が歴
史学者ですので、主に学ぶのは各地の歴史でしょうか。わたくしは、この星のこの
時代に興味がありましたから。こうして、渡辺葵さんの体をお借りしているのです」
「借りる、って。渡辺はどうなったのよ」
「御心配無く」
 詰め寄ろうとした直子へ即答したレアは、柔和な笑みと共に続けた。
「渡辺さんには、私の体に入って頂いています。お客様ですから、仲間が不自由な
思いはさせていません」
 本当かと直子に目で尋ねられ、頷いたユリが口を開いた。
「入れ替わっている間に、危害を加えられる事は無いらしいわ。敵対している者が
相手だとしても、変わらないそうだしね。こいつの用が済んだら、ナオコの友達も
戻ってくるわよ」
「信用して頂けましたか?」
 直子は頷きかけたところで、文宏に引かれて床を転がった。
 机の下から飛び出した緑色の塊が、ほんの少し前まで彼らがいたところに降り立
つ。攻撃を躱された怒りで、獰猛な唸り声を上げながら文宏を睨む。潜んでいた半
魚人は一体だけでは無かったようで、本棚の隙間から次々に沸き出して来た。
 ユリは短く舌打ちして、白衣のポケットから取り出した石を周囲へ投げた。通路
を滑った五つの石は、それぞれを頂点とした五角形の位置で正確に止まった。
 ぶん、と機械的な音を立てながら、石に描かれた五芒星が発光する。次の瞬間に
は、石で区切られた外は真っ白なだけの空間と化した。さっきまで図書館の一部だ
ったのが嘘のように、周りの気配が完全に途絶える。慌てて体当たりした半魚人は、
白い空間によって弾き返されていた。
 半魚人の反応を見ても。どうやらこれは、周りへの被害を避けるというより、増
援を来させない為の処置なのだろう。
395くなさん ◆DAYgAM2ISM :2005/07/19(火) 00:18:25 ID:bEgjD7uI
「やられたわね。忌まわしい海産物は私が引き受けるから、フミヒロ達はあいつの
相手をお願い」
 レアと名乗った女は、この騒ぎにも悠然と椅子に腰掛けていた。
「奴は、上品ぶったイスじゃないわ。おそらく、イェーキュブとかいうゲスどもよ。
周りのクズは、呼び寄せたそいつを封じない限り、いくらでも沸いてくるでしょう
ね」
「そう言われても、どうすれば良いのさ」
「姦り倒して。奴がイけば、体との同調性が下がるだろうから。ナオコはタイミン
グを逃さず、これを操作して」
 円筒の底部カバーをスライドさせると、ユリは赤いスイッチを示した。頷いた直
子は、放られた円筒を両手でしっかりと抱え込んだ。退路を断たれた半魚人と、役
割を確認し終えた文宏達。
 それぞれが、じりじりと立ち位置を移動させていく。
 一体が跳び上がったのを合図に、半魚人達は一斉にユリへと襲いかかった。迫り
来る半魚人達を見下しながら、彼女は笑って口笛を吹いた。
 ユリの頭上の空間が、奇妙にぶれる。激しい光の渦が巻き起こった後、一斉射を
終えた樽が降下を始めた。目線の高さまで来た樽の翼を掴んで、ユリがその上へ身
軽に飛び乗る。樽から辺りを見下ろす彼女に、半魚人の恨みの篭った視線が集まっ
た。
 どれもが大なり小なり傷を負い、倒れた者も少なくない。攻撃に集中し過ぎたせ
いで、躱す事もままならなかったのだろう。
 両者が睨み合う間に、文宏と直子がレアの元へ辿り着く。逃げようともしない彼
女を、二人は机の下へと押し倒した。

 よほど自信があるようにも思えたのだが、レアはあっさりと快楽に堕ちた。
 短い水音を連続させながら、文宏とレアが互いの口内を貪っていく。レアは喉を
伝う唾液を味わい、どんどん鼻息を荒くさせていった。
 間近に見守る直子が、かたかたと鳴る金属筒へ不気味そうな視線を向ける。だが、
震えているのが自分の手だと気付いて、抑え込もうと深呼吸を繰り返した。
「弱いわね。しょせん貴様らなど、科学の前には塵に過ぎないわ」
396くなさん ◆DAYgAM2ISM :2005/07/19(火) 00:18:46 ID:bEgjD7uI
 ユリの怖い笑い声に続き、爆発音と振動が届いてくる。質の悪い焼き魚に似た、
食欲が減退しそうな臭いも漂う。気を紛らわせようと目の前の光景に集中すれば、
興奮で下腹部が熱を持つ。
 恐怖と性欲。そのどちらにも没入出来ない状況に、直子の内心は愚痴で満たされ
ていった。
「味覚器官を触れ合わせているだけなのに、頭が熱くなってきます。記録では知っ
ておりましたが、キスというのは不思議な味がするのですね」
「どんな味なのかな」
「張り裂けそうなくらい、甘酸っぱいもので胸が満たされておりますわ。不可思議
な習慣だと思っていたのは、わたくしの不明でした。この星の人間が、こうした行
為を好むのも当然ですわね」
 苛々していた直子は、場違いなまでに幸せそうなレアへ鋭く告げた。
「ふざけないで。好きな人とするから、舌を絡めるだけでも気持ち良く感じるのよ」
「それも大概、ふざけた意見だと思うけどね」
 文宏のツッコミに、彼女は口を尖らせる。だがそんな二人には構わず、深く納得
した顔でレアは言った。
「では、わたくしは貴方が好きなのですね」
 レアが再びキスを求めるところへ、肉のひしゃげる音が降ってきた。
 笑うような声と共に、光線が煌めき続いていた。床に叩きつけられた魚の頭と目
が合ってしまい、直子が泣き笑いで天井を見上げる。しかし机の下にいる為、間近
な暗がりに圧迫感を味わっただけだった。
「あんっ、とても熱いですわ」
 荒い息を吐き出しながら、レアがシャツのボタンに手をかける。身動きでバラン
スを崩した彼女は、文宏の膝の上へ座り込んだ。
 くちゅり
 捲れ上がったスカートの下で、水分を吸い過ぎた下着の感触が文宏へ伝わる。当
惑するレアと対照的に、確信に満ちて文宏は手を伸ばした。肉感的な太股を伝うと、
いくらも進まずに彼の指は濡れていった。
 文宏が布越しに指先を滑らせると、背筋を反らしてレアが息を吐く。震える肩を
縮めながら、彼女は怯えたような目を彷徨わせた。
「なんですの、これ」
397くなさん ◆DAYgAM2ISM :2005/07/19(火) 00:19:07 ID:bEgjD7uI
「感じてるんだよ。洪水のように、溢れてきてる」
「ああ、愛液ですのね。わたくしの秘所が、貴方を迎える準備を整えたという事で
すか。ようやく、分かった気がしますわ。さっきから胸が苦しいのは、ここを埋め
て頂いていないからですね」
 下着をずらしたレアが、指先で陰唇を開く。とろとろとした涎が流れ、文宏のズ
ボンへと落ちていった。
 湿ったズボンが肌に張り付く感触は、不快感どころか快感だけを文宏に味合わせ
たようで。突き上げる陰茎によって、股間の生地が痛々しいほどに突っ張られてい
た。
「お願いですわ。どうか、私の膣内を貴方でいっぱいにして下さいませ」
「てけり、り」
「あら、まるでショゴスのような声を出されますのね」
 のんびりしたレアの感想は、押し倒された事で続けられなくなった。
 ずるっと下着を引き抜いた文宏が、自分の体でレアの股を割る。下ろしたズボン
から陰茎が飛び出すと、彼女自身の指で開かれた陰唇へ入っていった。
「う、ああっ」
 レアが歓喜の声を上げながら、両手足を文宏へ巻き付ける。背中ごと尻を抱え込
んだ文宏は、応じるように荒々しく突き入れた。
「これですわっ。私が求めていたのは、貴方との結合だったのですね」
「気持ち良いかい?」
「勿論で、ん、あんっ……これ、はとっても合理的ですわ。生殖行為が快楽を与え、
ふああっ、なんて素晴らしいんでしょう」
 陰茎の形を確かめるように、レアの腰は蠢いていた。
「私は今ま、で間違っていました。知識とは、記録だけを調べても、本当の理解は
出来ないのですね。体験して初めて、その本質に触れる事が出来るのですわ」
 激しい腰の振りによって、辺りに水音が響く。至近で浴びせられる直子だが、興
奮する余裕は無かった。机の外での戦いは激しさを増し、半ば崩れた半魚人が床に
点在しているのだ。
 軽傷の者は当然のように立ち上がり、重傷の者も無理にでも体を起こす。壮絶な
挑み方をする半魚人へ、含み笑いと共にユリが言った。
398くなさん ◆DAYgAM2ISM :2005/07/19(火) 00:19:28 ID:bEgjD7uI
「何度やっても同じ事よ。力任せの貴様らでは、私に掠り傷一つつけられないわ。
過去に我らが不覚を取った時のように、圧倒的な数の差があればともかく。十や百
で私に挑むなんて、自殺志願としか言えないわね」
 なんと嘲られようとも、半魚人達は戦いを止めようとしなかった。
「げ、げ、が、うが=なぐる、だぎゃ」
「ぎゃ、ふんぐるい、ぎゅ、ぎょ」
「来なさい。数の違いが、戦力を決定する要素では無い事を教えてあげるわ」
 ユリの口笛を合図に、戦闘は再び激しさを増す。だが机の下では、肌を打ちつけ
合う音の方が大きく響いていた。
「どうかっ、どうか私に教えて下さいませ」
「何を、ふう、教えろと言う、んんっ」
「生殖の、本質をです。あなたに、受精させて欲しいんですっ。そうしたら私、何
かが分かるような気が、あふっ、するのですわ……あんっ」
 レアの言葉のせいか、文宏の腰使いが更に勢いづいた。
 びくっと脈打つ陰茎を感じて、レアの膣も奥を膨らませて待ち受ける。期待に震
える子宮口に触れ合ううちに、陰茎の先端が大きく膨張した。
「だ、めだ。僕はもう、くうっ」
「どうか、どうか存分に注いでくださいませっ。ああ、分かってきました。こうし
て繋がる間にも、くあっ、どんどん貴方を好きになっていますわ。だから、こんな
にも貴方の子供を孕みた……いっ、いいです。だめ、もう何も考えられませんっ」
「イくよ!」
 声も無く喘いだレアが、何度も首を縦に振る。彼女の太股を抱き寄せて、文宏は
思い切り精液を吐き出した。
 どくんっ、どくどくっ
 床に広がった髪に顔を埋めながら、残らず子宮へ流し込んでゆく。下になった少
女は、半開きの目でぼんやりと彼を見るものの。その腰は、射精を促すような円運
動を続けていた。

 余韻に浸る男女の横で、直子が虹色に発光する円筒を見つめる。赤いボタンは押
したものの、成功したのか失敗だったのかも分からないのだ。
「もう、手を離しても大丈夫よ。良くやったわ」
399くなさん ◆DAYgAM2ISM :2005/07/19(火) 00:20:05 ID:bEgjD7uI
「どうなったんです、これ」
「十一次元における極小単位での振動が、特異な……つまり、吸い込んだのよ」
 ユリに金属筒を渡すと、ほっとしたように直子が肩の力を抜いた。
「それじゃ、成功したんですね。あ、半魚人達は?」
「片付けたわ。もっとも、こいつの尋問が終わるまでは安心出来ないけれど」
「渡辺は、大丈夫なんでしょうか」
「こいつが入っていた体の主の事なら、心配いらないみたいよ」
 金属筒でユリが示す先に、文宏と繋がる制服姿の少女が見えた。さっきと変わら
ない光景のようだが、近寄ってみると直子にも違いが聞こえてきた。
「あんた誰よ。ていうか、なんであたしに突っ込んでるわけ」
「渡辺葵君、だね。話すと長くなるから、とりあえず離れようか」
 文宏が抜こうとしたのだが、脚を回した葵によって引き留められた。
 戸惑う文宏以上に、葵が混乱した様子を見せる。文宏が再び腰を引きかけると、
またしても葵が体ごとついてきた。同じ事の繰り返しではなく、今度は少女の口か
ら切なげな吐息が漏れた。
「うわ、あたし中に出されてない? ちゃぷちゃぷって、音がしてる。すっげえ、
やらしいんですけど」
「そんなに腰を動かされたら、僕も我慢しきれないんだけどね」
「いきなり犯しといて、何言ってんのよ。あたしが図書館で整理……て、ちょっと
待って。あんっ、だめ、なにこれ。こんなに感じてるの、あたし初めて」
「あんたが体を乗っ取られてたから、文宏さんが戻してくれたの」
「島津?」
 急に現れた知り合いの顔に、葵は驚いたようだ。頷き返した直子が、二人を引き
剥がそうとしながら言った。
「もう終わったんだから、離れなさいよ」
「それじゃ、ここって地球なんだ。でもおかしいな、帰る時には記憶を消すとかな
んとか、ふあっ」
 葵は考えながらも、腰の動きを速めていく。上下動に捻りを加えながら、膣全体
で舐め回しているようだ。どうやっても外れない足を前に、直子は意地になって力
を加える。
 それすらも刺激に変えて、葵と文宏は息を荒げていった。
400くなさん ◆DAYgAM2ISM :2005/07/19(火) 00:20:39 ID:bEgjD7uI
「あたしん中が、すっごい掻き回されてる。文宏さん、だったっけ。それじゃ、あ
たしを助けてくれたんだ」
「といっても、こうして役得を味わっただけだけどね」
「お礼、しなくちゃね。あたしの事、好きにしていいよ。いつでもどこでも、シた
い時にシていいから。中に出したいなら、くあっ、子宮から溢れるぐらいに、いっ
ぱいにしちゃって!」
「あんたね。それのどこが、お礼だって言う、んっ」
 直子は文宏に口を塞がれて、しばらく不機嫌そうなふりをしたものの。すぐに自
ら腕を絡め、積極的に応じ始めた。
 邪魔が無くなった葵は、目を閉じて陰茎を深く味わっていった。
 その喧噪へ苦笑しながら、ユリが机の上に腰掛ける。二本の腕で支えた金属筒を
操作すると、外壁が透明となって内部が見えた。筒が傾けられ、黒っぽい液体がゆ
っくりと流れる。
 液体は何らかの生命体らしく、不自然な波打ちを起こしている。体の一部を触手
のように伸ばすと、外壁にへばりついた体表面が脈打った。
「さて、聞かせて貰おうかしら。まずは、お前が何者なのか」
「何者と言われましても。先程申し上げたように、イスのレア・トバですわ」
 円筒につけられたスピーカーから、女の声が流れる。特徴の無い電子合成音だが、
彼女の冷静さは充分に伝わってきた。
「言えないって事ね。ま、お前が誰でも構わないわ。問題なのは、連中に私達を襲
わせた理由よ。この前の報復なら話が早いけど、それ以外となると見当がつかない
の。返答次第では、解放しない事もないわよ」
 条件が良かったのか、答えが簡単だったのか。今度は、すぐに返事があった。
「無関係ですわ」
「つまり、前の報復では無い、と」
「違います。私が彼ら、ディープ・ワンとは関わりが無いと言っているのです」
「下らない言い訳は、募集してないわよ。だったら、連中が襲いかかって来た時、
なんで平然としてたの。お前が手引きしたのでなければ、説明つかないでしょう」
「呆れましたわね。合理性を欠くどころか、単なる言いがかりをなさるとは。もう
少し、冷静になって考えてごらんなさい。あの時、私が動かなかった理由なんて、
一つしかありませんわ」
401くなさん ◆DAYgAM2ISM :2005/07/19(火) 00:21:03 ID:bEgjD7uI
 そう言われて、ユリも思い返しながら考えてみた。結界を張る前にも、逃げる機
会はいくらでもあったのだ。こうして掴まっておきながら、出来る事。すぐに、足
止めだという可能性が浮かんだ。
 緊張を走らせた彼女へ、金属筒から躊躇いがちに正解が告げられた。
「腰を抜かしておりました」
「ちょっと待て」
「お恥ずかしい話なのですが、荒事とは無縁でしたから。あの方が助けて下さらな
かったら、巻き添えで大変な目に遭っていたかもしれません」
 罠にしては、確かにまるで苦戦しなかった。ユリ達を不利な状況へ追い込むなり、
油断するよう仕向けられてもいない。そもそも、図書館へは呼び出されて来たので
も無いのだから。
 それに何より、どの可能性よりも一番筋道が通りそうな答えだった。
「もしかして貴女、本当にイス族のレア・トバさん?」
「自分が自分自身である事を証明するのは、とても難しいのですね。これは別に、
体験したくもありませんでしたが」
 慌てて態度を改めたユリが、レアに平謝りに謝った。
 ただ、どれだけ誠意があろうとも。机の下から響く艶っぽい音の中で、金属の円
筒に謝罪する姿は、間の抜けたものにしか見えなかった。


402名無しさん@ピンキー:2005/07/19(火) 00:24:11 ID:4+SIX7O6
GJ
403某880:2005/07/19(火) 00:56:03 ID:auSCqBYD
GJ下さった皆様、サンクスです。

>372さん
>冷静に考えると、濡れ場よりも布団に潜り込んだりするとこの方が凄い気がw
いや、俺もそう思ったけどそこは流そうとw
まあ無理ではないというか、寝る時はうつぶせでも仰向けでも大丈夫かなと。
今のところ、アルケニーは騎乗位系ばかりになるので
仰向けの体位とかもやらせてみたいなとか考えてたりもしています

>蜘蛛女のキス
ぐぐってみたら
>「触ってもいい?こんな風に触ってもいい?こうしても?あたしに撫でられて、気持悪くない?
>よかったら、あたしに好きなことしていいわよ…」
という一文が。
これってホモ側の台詞なんだろうけど
強引にモンスター娘さんだと脳内変換すると萌えるw

>くなさん
リアルタイム
キター―――――(゚∀゚)―――――ッ!!
GJっす。一話でエロシーンが2回もあるとはやりますな。
前半はなんかツンデラか?と思わせてなんか萌える。
2回目相手が冷静なのに萌える
そして三人に増えたのね。続き期待しております。

それはそうと、やはりクトゥルフ系は勉強しないとダメだなぁ俺
404名無しさん@ピンキー:2005/07/19(火) 01:11:59 ID:kna/l8oL
一瞬ツンデレかと思ったw
エロかったです。GJ
405名無しさん@ピンキー:2005/07/19(火) 01:51:33 ID:vGvEx6Xl
むう、猟奇スレに投稿してたらいつの間にか続きが。
読みたいが生憎と時間が無い。
しかたない、明日の楽しみに取っておこう(TT)
406名無しさん@ピンキー:2005/07/19(火) 08:21:58 ID:OcoFwKvb
>くなさん
レアでトバ・・・あのイースってやっぱりイスにインスパイアされてたんでしょうか?

淫語の系統が孕ませ系ってこのスレにあんまりなかった(と思う)んで結構新鮮でした。
えちぃです、GJ!
407名無しさん@ピンキー:2005/07/19(火) 18:18:30 ID:nY1pM4Rw
>>406氏と重なりますが

>>くなさん
えーと、「レア・トバ」さんって、まさか双子の姉妹がいて名前が「フィーナ」だっ
たり、お仲間に円錐のてっぺんが
真っ赤で、名前が「アドル」ってのがいたりはしませんよね?

#「イス族(イース族)」だけに(w

それはともかくGJ。
408くなさん ◆DAYgAM2ISM :2005/07/20(水) 00:12:18 ID:YaGDclpK
レス下さった方ども〜
ツンデレぽいのは狙いですが、今後生かせるかは不明す

クトゥルフ「風味」ですから、これを予備知識にしなければ問題無いかと
むしろHRハーレム物なので、そういうの嫌いな方はスルーして下さい

>レア・トバ
あ、食いついてくれる人がいたw
「Y'S」「YITH」とスペルが違うので、スタッフが意識してたかは知りませんが・・
私のは意識しましたw
409名無しさん@ピンキー:2005/07/20(水) 01:46:33 ID:u20yK46j
Ysはフランスだったかの海中都市の名前で、これが元ネタだったはず<鬼畜王アドル
410名無しさん@ピンキー:2005/07/22(金) 00:19:43 ID:8kzwxZMq
>
Ysはフランスであってるよ。

YSとおんなじ位(素晴らしい)街 →パリ(Par・is)だって、昔ふしぎ発見でやってた。
411名無しさん@ピンキー:2005/07/22(金) 00:36:30 ID:9EzJ6+Zn
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%91%E3%83%AA
>パリをこよなく愛する日本人である早川雅水は、自著の中で「パリ」の語源を
> Par 「等しい」+ Isis 「(エジプトの女神)イシス」と説明しているが、間違いである。

らすぃ。
412名無しさん@ピンキー:2005/07/22(金) 00:46:31 ID:CbO+UFqc
パリとセックルするSS待ちか?w

そういやイシス物って見た事無いな
エジプト神話でざっと浮かぶの、「死者の書」「トート」「オシリス」
ぐらいだから、当然っちゃ当然なんだが
413名無しさん@ピンキー:2005/07/22(金) 00:57:49 ID:8kzwxZMq
イシスってオシリスの嫁でホルスのママンでなかったけか?

411からすると漏れの知識は妖しいかも知らんけど。
414メリーさんのお話:2005/07/22(金) 07:00:29 ID:wA3O/IHg
そうしたままどれだけ経っただろうか。
ほんの数秒にも、或いはたっぷり数分にも思えた。
不意に――何がきっかけだったのかは知らないが――メリーさんが、はっと息を呑んだ。
「ばっ、馬鹿にしないで! 人間として過ごすだなんて、反吐が出るわ!」
弾かれた様に俺の手を叩き落して立ち上がる。
彼女はそのまま二、三歩ほど後退り、右腕を薙ぎ払った。
「不愉快だわ! 馴れ馴れしく知った様な口利いて!」
その瞬間。
雰囲気が、一変した。
寝苦しい真夏の夜の様な空気が周囲に満ちる。
今度は額と言わず、全身から嫌な汗が噴き出した。
ヤバい。上手く表現できないが、兎に角ヤバい。
第六感とでも言うべき何かが激しく警鐘を鳴らしている。
それなのに、俺ときたら意思に反して指先一つ動かない。
「人間のくせに……人間のくせにいぃ!」
風も無いのにメリーさんの金髪がざわざわと揺らめき、その瞳が瞬く間に鮮血色に染まってゆく。
丁度それと同時だった。
まるで耳の中で金属同士を擦り合わせる様な凄まじい耳鳴りがした。
気が狂わんばかりの騒音に思わず耳を塞ぐが、
そんな事などお構い無しに大音響は俺の脳髄を揺さ振ってくる。
「不愉快よ! その言葉も仕草も! 何もかもが不愉快だわ!
お前なんかに私達の――私の何が分かるっていうのよ!」
メリーさんがヒステリックに叫んだ。
すると、今度は急に喉が締め付けられ、全く呼吸が出来なくなってしまう。
さながら不可視の巨人に首を絞められているみたいだ。
俺はよろめいた拍子に無様にベンチから転げ落ち、
滑らかなアスファルトに這い蹲りながら得られない酸素を求めて喘いだ。
415メリーさんのお話:2005/07/22(金) 07:01:29 ID:wA3O/IHg
「あはははっ! 苦しい? 苦しいの? どう? 死にたくない? 死にたくないでしょ?
だったら地面に頭を擦りつけながらその戯言を詫びなさい!
泣き喚きながら弱小生物らしく命乞いしてみせなさいよ!」
意識が朦朧としてくる。
実際、メリーさんの甲高い声も遥か彼方のものの様に聞こえた。
だが決して彼女の言う通りにはするまいと、それだけは決意していた。
ただ、じっと。深紅の瞳だけを見つめて。
「……そう。その気は無いのね。
じゃあ、そうやって苦しみながら死んじゃいなさい!
他の人間みたいに私を恐れ憎しみながら死んじゃえばいいんだわ!」
絶対的な死の宣告。
やはりメリーさんは化物だ。俺の発言は軽率だったかもしれない。
だが――
それらに偽りは無かった。
彼女が可愛いと思ったのは本当だった。
彼女が人間としてでも楽しく暮らせればいいと思ったのは本当だった。
彼女が復讐の為に人を殺すのを悲しく虚しい事だと思ったのは本当だった。
だから――俺は、メリーさんに向ける視線に恐れも憎しみも孕ませない。
彼女が人間を憎むのは、人間が彼女を憎んでいるからだと思う。
恐怖や憎悪の対象となり、ただひたすら疎外され、時には嘲られる。
そんな事は人間でさえ耐えられないのに、人間でない彼女が耐え得る事が出来るだろうか。
否。断じて否。
確かに彼女はこうして超常的な力で人間を殺せる。
しかし、その心は人より幼く弱い。
今までの言動からしてそれは明らかだ。
我侭で癇癪持ち。短気で喧嘩っ早い。子供と同じ……否、下手をすればそれ以下だろう。
それなのに、メリーさんは幾万もの悪意をその小さな身体に浴びせられてきた。
416メリーさんのお話:2005/07/22(金) 07:02:08 ID:wA3O/IHg
彼女が幽霊という存在であったばかりに。
未成熟な心はどれだけそれに蝕まれてしまったのだろうか?
そう思った時、俺は恐れも憎しみも捨てた。
多くの悪意が彼女の心を創り上げてしまったのなら、
一人ぐらい憐れみを与えて殺されてやる馬鹿が居てもいいではないか。
(そう、だろ……? ま、欲を言えば……もうちょっと……遊びたかったけど、さ……)
誰にともなく俺は胸中で一人ごちた。
そうして、意識が途切れる――
「……どう……して……?」
――直前。
メリーさんが不可解な現象でも目にしたかの様に、呆然と呟いた。
「どう、して? 貴方、死ぬのよ? 私に殺されるのよ?
どうして私を恐がらないの? どうして私を憎まないの?」
はたと耳鳴りが止み、首を締め付けていた奇怪な力も消え去った。
俺は陸に上がった水難者の如く、欠乏していた酸素をひゅうひゅうと吸い込む。
途端に嘔吐感が込み上げたが、こんな場所で吐瀉するわけにもいかず、
喉元まで出かかった何とも形容し難い味を涙目になって飲み下した。
畜生。こうなる事が分かっていたらカレーうどんなんか食べなかったのに。
「分かんない……人間なんて、死んだって構わないのに……殺したって何とも思わないのに……
どうしてお前みたいな奴を殺せないの……? 分かんない、よぉ……」
メリーさんが頭を抱え、ワンピースが汚れるのも構わずに跪く。
「分かんないよぉ……何にも、分かんない……よぅ……」
その様は、広大な森に迷い込んで怯えている風にも見えた。
自分が何処に居るのか、何処へ向かっているのかも分からず、斜陽と共に濃くなる闇に震えている。
そんな、ただ儚く脆い存在に。
俺はどうにか呼吸を整えると、小さな身体を更に縮こまらせているメリーさんに歩み寄った。
「わ、わた、し……ど、どうしたら……こんな、こと……い、今までなかった、のに……」
417メリーさんのお話:2005/07/22(金) 07:02:47 ID:wA3O/IHg
戸惑いに滲む空色の瞳が俺を見上げてくる。
メリーさん自身には全く理解できていない様だが、
俺には何となく彼女が俺を殺せなかった理由が分かる気がした。
彼女は、人の悪意に対して怯懦の念を抱いていたのだろう。
――『私達はね、人間どもから否定され、排斥され、あまつさえ娯楽の対象にされてるのよ!』
――『だからね、私達は人間どもに復讐しているのよ』
その幼さ故に過敏で繊細。その幼さ故に冷酷で陰惨。
だからこそ自分に悪意を向ける人間を躊躇いも無く殺す事が出来たのだ。
気に入らない人形の首を捻り切ってしまう様に。
「いいんだよ」
彼女の心は悪意と言う名の土壌に種のまま埋まっている。
だが、まだ根は張っていない筈。俺を殺せなかったのだから。
きっと……救い出してあげられる。
「それが普通なんだ」
少々陳腐ではあるかもしれないが――俺にはこれしか思いつかなかった。
膝を折って彼女に目線の高さを合わせ、ゆっくりとその細い身体を抱きしめる。
川の様に言葉を連ねるよりはこの方が建設的に想いを伝えられるだろう。
……嗚呼、そうか。そうだったんだ。
こうして冷感な人間味の無い身体に触れて、改めて思い知った。
俺はメリーさんに心を奪われてしまっている。
ついさっきまで彼女に殺されかけていたと言うのに。我ながら驚くほど盲目的だ。
たとえそれが幽霊の呪縛だったとしても、それならそれでいい。
この悲しくも愛おしい少女になら呪われようが殺されようが構うものか。
「……」
腕の力を緩めて少し身体を離すと、メリーさんは無言のまま物問いたげな視線を投げかけてきた。
俺が何をしたいのか推し量りかねているのだろうか。
だとしたらメリーさんにこの手の経験は無いのかもしれない。
418メリーさんのお話:2005/07/22(金) 07:03:24 ID:wA3O/IHg
まあ、幽霊にも人間みたいに愛情や恋慕と言った概念があるのかどうか、そこからして疑問だが。
それでも、この想いは知ってもらいたい。
俺は一文字に結ばれたメリーさんの唇に、素早く自分の唇を重ねた。
「んっ……んん!?」
突然の事に驚いたのか、メリーさんがリスの様な目を更に大きく見開く。
何やら言おうとしているらしいが、口を塞がれているので意味を成さない声が漏れるばかりだ。
俺はたっぷりとその柔らかな感触を味わってから、おもむろに顔を離した。
すると、それを待ちかねていた様に彼女は深々と息をついた。
「なんだ。息、止めてたのか?」
「アンタがいきなり口を塞ぐからじゃないの……」
何処と無く突き放した語調だが、そこに勢いはなく、むしろしおらしさすら醸し出している。
メリーさんは落ち着かない様子で目を伏せ、自らの胸を抑えた。
「そんなことより……私に何をしたの?」
「何を、って……」
「胸の辺りが、ヘンだわ。上手く言えないけど……凄く、苦しくて……締め付けられるみたい」
メリーさんが顔を上げ、俺を見つめてくる。
その瞳の蒼色が僅かに揺らいで見えるのは単なる錯覚だろうか。
「ねえ、私に何をしたの? これは一体何なの?」
俺はその疑問には答えずに再び口唇を交えた。
今度は先刻の様なソフトなキスではない。
上唇を吸い、その端から端までを軽く舐ってから彼女の口腔へと舌を滑り込ませる。
乱雑にはならない程度の力加減で歯を押し退け、やはり小さな舌を探り当てた。
「ん……あ、むぅ……」
メリーさんの喉の奥から苦悶とも法悦ともつかない喘ぎが漏れる。
そういえば、彼女はさっきも息を止めていた。もしかして今もそうなのだろうか。
俺は文字通り目と鼻の先に在るメリーさんの顔色を窺った。
「む、あ……んん……」
419メリーさんのお話:2005/07/22(金) 07:04:03 ID:wA3O/IHg
薄く上気した頬。目尻に溜まった涙。切なげに寄せられた眉根。
まるで媚態を帯びた人形だ。一つの芸術の如き艶やかさがある。
そんな少女の口内をこうして貪っているのだ――
改めて認識すると、抑え難い興奮が心の奥底を突き上げてくるのが分かった。
それまで以上に激しく――良く言えば情熱的に――悪く言えば暴力的に――舌を絡ませる。
「んああっ……は、むぅ……」
舌を送り込み、或いは吸い込み、どちらのものでもなくなった唾液で喉を鳴らす。
実際にそんな味がする筈がないのに、飲み下した液体はやけに甘ったるく感じられた。
一頻り舌を絡め合ってどちらからともなく唇を離すと、
濃密な接吻の余韻を残すかの様に透明な橋が架かり、そして切れた。
「――はあぁ……」
陶然とした半眼の焦点は曖昧なまま、メリーさんが桃色に染まった吐息を漏らす。
そこには聞いている方がぞくりとするほど妖艶な響きがあった。
「やっぱり、ヘン……頭がぼんやりして、身体が熱くなってる……」
濡れた唇にその綺麗な指先を添え、確かめる様な口調で呟くメリーさん。
かなり扇情的な仕草なのだが、果たして彼女自身に自覚は有るのか無いのか。
「でも――心地良いわ。貴方もそうなのかしら?」
「ああ」
だったらもっと余計に心地良くなってみたいか。
流石に恥ずかしくてそんな台詞は言えないが、その代わりにもう一度メリーさんを抱きしめる。
確かに、暖かい。
どうせならもっと熱く、お互いに浮いてしまうほど熱くなりたい。
そんな思いに駆られ、俺はメリーさんを抱き上げてベンチに座らせた。
「ん……あ……」
啄ばむ様に口づけし、徐々に唇を下げてゆく。
喉元を少し強く吸ってやるとメリーさんはびくりと身体を震わせた。
「はっ、あんっ……ふあぁ……っ」
420メリーさんのお話:2005/07/22(金) 07:05:03 ID:wA3O/IHg
一段と高くなる甘い声。
どうやら首への刺激に弱いらしい。
そうと知った俺は調子に乗って何度も吸ったり舌先で舐めたりした。
その度に彼女は可愛らしく震え、色づいた声を上げる。
「んっ……あぁっ……」
俺は愛撫を続けながらワンピースの裾に手を差し入れた。
指で滑らかな足を辿り、その付け根へと触れる。
柔らかな恥丘に、ぴったりと閉じた割れ目の感触がダイレクトに伝わってきた。
(――って、下着穿いてないのか!)
予想外の事に思わず唖然としてしまうが、すぐに気を取り直して手を動かす。
そこは産毛さえ生えていない様なつるりとした触り心地だった。
僅かに熱を帯びた秘所に人差し指を差し込んでみる。
「あっ、ふああぁ!?」
その瞬間、メリーさんが嬌声と共に大きく首を反った。
露わになる病的なまでに白い喉。外見に似合わない官能的なパーツだ。
だが、俺はそれよりも指を締め付ける力の強さの方に気を取られていた。
まだ半分程度しか入れていないというのに、そこはぎゅうぎゅうと俺の食指を挟み込んでくる。
「はあっ……あぁ、ああ……っ」
圧迫感に抗って間接を折ったり、或いは変則的に出し入れする。
その甲斐あってか、彼女の中から熱い液体が溢れてくるのが分かった。
これなら大丈夫だろうと判断し、更に中指も加えて秘所を掻き乱す。
膣内を拡げる様に手を回転させると、
メリーさんは口元から涎を垂らしながらあられもなくよがった。
ふと、そうしている間に、ぬるぬるとした彼女の内側にあって僅かにざらついた部分が指を掠めた。
「くぅ、ああ……あああああ――ッ!」
そこを重点的に擦ってやると、メリーさんが一際高い声を上げて四肢を突っ張った。
程無くして、くたりと糸が切れた人形の様に脱力する。
421メリーさんのお話:2005/07/22(金) 07:05:58 ID:wA3O/IHg
「は、あ……はあ、はあ……」
どうやら、達してしまったらしい。
彼女は浅く早い息を吐きながら虚ろな瞳を何処かへ向けている。
と――その蒼い瞳から透明な雫が零れた。
俺はそれを唇で拭い、秘所から指を抜いた。
「あ、ん……」
ただそれだけでメリーさんは腿を痙攣させ、悩ましげな吐息を漏らす。
ワンピースの中から白日の下に姿を現した俺の二本の指はぐちゃぐちゃに濡れていた。
それを見たメリーさんが恥ずかしげに俯く。
「可愛いよ」
赤く染まった彼女の耳元で囁くと、
「いじわるぅ」
舌足らずな声音でぽそっと言われてしまった。
俺としては率直に褒めた積もりだったのだが。
「……ったく」
捻くれていると言うか、子供っぽいと言うか。
俺は小さく苦笑し、可愛らしく頬を膨らませているメリーさんの頭を撫でた。
「なあ」
「……何?」
「俺は、君の事が好きだ」
静寂が降りる。
この告白を彼女はどう思っているだろう。
「君はどうだ? 俺の事が好きか?
もしそうでないのなら、これ以上の事はしたくないんだ」
更に沈黙。
メリーさんの答えがどちらにせよ、「好き」か「嫌い」かをその口から聞く必要がある。
それまでは俺も黙っている積もりだった。
422メリーさんのお話:2005/07/22(金) 07:09:59 ID:wA3O/IHg
「……」
まるで文字盤の針を止めてしまった様だ。
呼吸も。風も。何気なく拾える些細な音さえも。
何も、無い。
「……」
やがて――
「……分からないよ……」
ぽつりと、メリーさんが呟いた。
「分からない、けど……止めないで欲しい。続けて欲しい。そう思う。心から」
「そうか……」
残念では、ある。
だがそれが答えである以上、これより先の行為に及ぶわけにはいかなかった。
俺はメリーさんから手を離し、彼女の隣に腰掛けた。
「こういうのは、欲求だけでやってしまうモンじゃないんだ。
嘘も掛け値も無しにお互いを『好き』って居える関係じゃないと駄目なんだよ。
だからこれ以上は出来ないし、するべきじゃない」
言い切って、メリーさんに向き直る
「でも、俺は君にそういう感情を教えてあげたいんだ。
人間が持ってるのは悪意だけじゃない。きっと君にもそれが分かる筈だ。
もし君さえ嫌でなければ――それまで、俺の傍に居てくれないか?」
嗚呼、まるで初恋の相手に想いを伝える気分だ。
否。あの時よりもずっと緊張しているかもしれない。
俺は背中に汗を流しながら、じっとメリーさんの返事を待った。
「……馬鹿ねえ」
不意に、メリーさんが口元に薄い笑みを浮かべた。
ベンチから立ち上がり、ゆっくりと歩を進める。
「何を勘違いしているのかしら。この下等動物は」
423メリーさんのお話:2005/07/22(金) 07:11:19 ID:wA3O/IHg
くるりと彼女が振り返る。
スクリーンの一齣の様に、金髪が軽やかに宙を舞った。



「ん……」
浅い眠りが途切れる。
一瞬、頭が混乱して――すぐに合点がいった。
あれは昔の光景だ。
昔、と言ってもほんの一年ほど前の事だが。
「どうかしたの?」
俺が動く気配を感じ取ったのか、耳元で聞き慣れた尋ねてくる。
目を向ければ、同じベッドの上に横たわった蒼い瞳の少女がこちらを見つめていた。
毛布で裸の胸元を隠し、心なし憂わしげな表情を浮かべている。
俺はそんな彼女を安心させる様に微笑んだ。
「いや、何でもない。ただちょっと、夢を見てたんだ」
「夢?」
「ああ。お前を初めて見た時の夢」
あの時の事は今でも鮮明に覚えている。
会話の一字一句たりとも忘れてはいない。
「なあ」
その光景を思い出しながら彼女に声をかける。
あの時、彼女は振り返って言った。
『貴方に頼まれなくたって、それを教えてもらうまでずっと貴方に憑いてやるんだから』
結局、幽霊の少女は人と交わり、あらゆる事を知った。
無論、綺麗なものだけを見た訳ではない。
正も負も区別無く人間の持ち得るもの全てを彼女は見た。
424メリーさんのお話:2005/07/22(金) 07:11:58 ID:wA3O/IHg
その上で――彼女はこうして俺の腕に頭を預けている。
「俺の事、好きか?」
「な、なんでいきなりそんなこと訊くのよ!」
「どうなんだ?」
繰り返し問うと、彼女は頬を染めながら目を背けた。
「す……好き、だけど」
消え入りそうな声でそう言い、またもや心配そうにこちらを向く。
「どうしてそんなこと訊くの?」
「何となく訊いてみたかったから」
真意は適当にはぐらかしてしまう。
彼女は納得しかねる表情を見せたが、頭を撫でてやるとくすぐったそうに目を細めた。
俺は、きっとこの少女に呪われている。
彼女はこの一年、まるで成長する気配を見せなかった。
恐らく俺がどれだけ老いようとも――いつか永劫の眠りについたとしても、このままで在り続けるだろう。
俺だけが人間としての性ゆえに死へと辿り着くのだ。彼女一人を残して。
それは耐え難いほど悲しい事だ。
永遠の世界で俺は永遠に孤独でいなければならないのだから。
もし彼女に出逢わなければ、死をこれ程までに恐ろしく感じる事はなかった筈だ。
愛せば愛した分だけ……まだ遠い筈の終焉が、恐い。
でも――それでも――
「俺も愛してるよ」
これだけは、変わらない。
限りある時間の中で、精一杯、彼女を想い続けよう。
永遠に少女の小さな胸に刻まれる様に……
425名無しさん@ピンキー:2005/07/22(金) 07:16:43 ID:wA3O/IHg
>>422
×俺が動く気配を感じ取ったのか、耳元で聞き慣れた尋ねてくる。
○俺が動く気配を感じ取ったのか、耳元で聞き慣れた声が尋ねてくる。
ごめんなさい。不注意ですた・・・orz

上で指摘された「幽霊」という言い回しですが、
辞書を辿っていくと「妖怪」とか「怪物」とかいう意味もあるみたいです
ここではそういう意味だと思ってください
誤解のないよう「妖怪」と言わせようとも思ったのですが、どうも語感が気に入らなかったので「幽霊」にしました

で、この話はこれで終わりますが、また面白そうなネタがあったら何か書かせてもらうこともあるかもしれません
ではまたその時までノシ
426名無しさん@ピンキー:2005/07/22(金) 07:17:44 ID:wA3O/IHg
422じゃねえorz
訂正部は422じゃなくて423です。度々スマソ
427名無しさん@ピンキー:2005/07/22(金) 07:27:46 ID:6+8S/76f
GJ、人と人以外の恋愛について悲しくも美しい部分をいろいろ再確認できた感じです。
>>425
中国における「鬼(キ)」がいわゆる死霊・幽霊の類であったにもかかわらず日本では「オニ」という別のものに変化させられた事例もあるとおり、その辺はある程度作者さんの定義づけを優先して問題ない部分だと思います。
428名無しさん@ピンキー:2005/07/22(金) 12:30:08 ID:AAZzrQ1U
GJ!
429名無しさん@ピンキー:2005/07/22(金) 20:20:35 ID:9dOLmjF8
GJですた。
主人公、男前だなぁw

>>413
旦那のバラバラ死体を継ぎ合わせて復活させようとしたりしてたはず。
よく覚えてないけど。
430名無しさん@ピンキー:2005/07/22(金) 20:56:52 ID:cWUZTPP7
>イシスってオシリスの嫁でホルスのママン
オシリスの妹でもあったらしい。
エジプト王家じゃ近親婚なんて珍しい話じゃないし。

>幽霊
死霊と同義語に扱われているので、幽鬼(おぼろげな魔物)とかってのは?
431名無しさん@ピンキー:2005/07/22(金) 22:08:33 ID:XXGp5j5j
ネタ、ストーリー、キャラ、オチ全てにおいてGJでした!!
ただ…ベッドシーンの所が見たかったり…
432名無しさん@ピンキー:2005/07/22(金) 23:22:07 ID:mqHdXuwg
>425
最後がちょっと切ないですが、いい話でした。乙です。

>429-430
元々はオシリスの弟にセトってのがいて、彼はオシリスの持つエジプトの王位を虎視眈々と狙ってた。

さらにセトの奥さん(イシスの妹)がオシリスに横恋慕して、宴会のどさくさに紛れてイシスに化けて
オシリスとエッチしちゃったのが切っ掛けで、セトが完全にブチ切れてオシリスを殺そうと決意した。

で、セトはオシリスを騙して棺の中に閉じ込めて、そのまま川に流したのだけど、
それをイシスがどうにか発見して、こっそりと遺体を隠していた。
……まではいいのだが、イシスは何を血迷ったのか、オシリスと死姦してホルスを製造してしまった。

ところがその事実を知ったセトは、怒り狂ってオシリスの遺体を14分割して
エジプト各地にばら撒いた上に、生まれたばかりのホルスを毒蛇に噛ませて殺そうとした。

しかしイシスは根性で14分割されたオシリスを探し出してくっつけ合わせて、
アヌビスから借りた怪しい薬を使ってオシリスを蘇らせた。

一方ホルスは太陽神ラーによって蛇の毒を抜かれ、無事成長して叔父であり父の仇であるセトを滅ぼしましたとさ。

でも、オシリスは一度死んでしまった身なので、地上の王には戻れず、冥界の番人となったそうな。


などと長々書いたけど、神話の定番としてところどころ説が入り混じってますので、どれが正しい正しくない、ってのはないようで。
中には、ホルスが太陽神ラーになったとか言う話もあるので、どれがどれだか……って、萌えとほとんど関係無い話ですな。
433名無しさん@ピンキー:2005/07/22(金) 23:25:31 ID:taGV1XA9
確かセトってホルスに追い込まれた時
こうなったらってことでホルスを手篭めにしようとしたんだよな。
勿論、ウホッな意味で。
434名無しさん@ピンキー:2005/07/23(土) 00:26:27 ID:UBXri0lz
そこでセトかホルスの性別を、おにゃのこにしてしまえば万事解決。
個人的にはホルスが年下の男のコのほうが……ハァハァ
4359-128@サボり中:2005/07/23(土) 02:06:21 ID:9Fb613xJ
>>432
解説ご苦労様。ちょっと補足していい?「神話の定番としてところどころ説が入り混じってますので」のあたり特に。

当時のエジプトは都市国家制で神官団が権力を握っていました。
(○●町はオシリス派、隣の●●町はイシス派、そのまた隣の○×町はセト派といった具合)
で、トーゼンのように権力争いをしていたわけです。
その方法とはズバリ

最萌えトーナメント1nエジプト(仮称)

まあ、要するに「ウチの神様はこんなに凄いぞ、隣のヤツなんてメじゃないぞ」っていうのを神話の形にして宣伝してたんですな。
デフォルメするとこんな感じ。

「妻を満足させつつ息子にこづかいも遣れてカバよりいいオトコなオシリスこそエジプト一ィィィ」
「タフでワイルドこそオトコの魅力ゥ!女の助けなしにやっていけない縫合ミスでチ○ポぶらぶらしてるようなヤツよかマシだぜウチのセト神エライねェーイシスさんこっちこない?」
「夫に全てを委ねて甘える貞淑な妻も、場合によっては『アナタゴメンなさい。でも、三河屋のセトさんのほうがおっきくて気持ちイイのぉ』なNTRもいけますイシスさまラブッ!」
「いいからとっとと権力禅譲して隠居しろやアンタら。というわけで責めも受けもやれるショタッ子ホルスたんハアハア」

※ あくまでイメージです。実際は武力と生産力と権謀作術をつかってました。

で、全エジプトで一番ハアハア来た(注:あくまでイメージです)神を信仰している神官団と癒着していた王族のヒトがガンダム・ザ・ガンダム・・・もといファラオになります。
このファラオが曲者。
ファラオが決まると「ウチの神様はいかにしてかっこよく勝ったか」をロコツなまでに「唯一の正しい神話」として喧伝するわけです。
そしてオソロシイことにこれはファラオが死ぬたびに繰り返され、神話は幾度となく上書きされたのでした。
オシリス派の土地・時代ではセトは邪神となり、セト派の土地・時代からみればオシリスは目の上のタンコブになり、そのたびにイシスのイメージも変化します。
あるときは気心の知れた貞淑な妻、あるときはネクロフィリア、あるときは魔術師、あるときは息子すら道具扱い・・・時代が下ってイギリスではあくまにもなったり・・・
はっきり言って別人です。属性がはっきりしません。スケロクさんもびっくりです。
演劇の流行で幾らエピソードを追加しても「とりあえずゼウスはエラくてエロイいいじゃん」なギリシアをちょっとは見習って欲しいものです。

まとめるとエジプトにおいては「神話の定番:説入り混じり」は他の土地よりも短い期間に恣意的、かつ背反的に何度も繰り返されたものであり、
故にエジプトの神話伝承を調べる場合には、資料がどの派閥のモノなのかをはっきり区別しないと矛盾の山でワケわかんなくなるんで注意しましょう。
つまり、「イシス物を書く」場合にはどの目線でイシスをイメージするかにより「ふたりエ○チ」にも「臭○」にも「おし○(by NHK)」にもあとなんか母子相姦物にもなりうるってことで。

よーするに、「ホルスは実は王子として育てられた王女。叔父にひん剥かれてDieぴんち」もエジプト的にはアリってことでw
436名無しさん@ピンキー:2005/07/23(土) 13:12:51 ID:HTjRZ9MP
>>435
オマエ、ホント、アタマ、イイナ

(…もしかして、イゴさんですか?いえ、解説が…w)
437名無しさん@ピンキー:2005/07/23(土) 20:16:01 ID:dd/rBnKW
>432
>しかしイシスは根性で14分割されたオシリスを探し出してくっつけ合わせて、
「イシス様、オシリス様の遺体の一部を見付けました」
「ご苦労様。で、どの部分かしら?」
「(ry
438イゴーロナク:2005/07/24(日) 01:19:59 ID:FdiMIamK
>>436
それが私の事を指されているのでしたら…
私にはエジプト神話に関するこのような深い造詣はありませんよ。
こんなに早いサイクルで神話が変遷していたというのは初耳でした。
>>435における9−128師の解説は非常に勉強になりました。
「人外萌え」はその最初期において既に、波乱に満ちた流行り廃りを伴うという、
華やかに激しく生きるバラのさだめに生まれた命だったのですね。

>>437
私の記が確かならば、バラバラにされて捨てられたオシリスの身体のうち、
ご立派な一物はナイルの川魚に食べられてしまって回収できなかった、
というエピソードもあったような。
仕方なくイシスは象牙か何かの模造物で代用したらしいです。
世界最古の張形かもしれません。
439名無しさん@ピンキー:2005/07/24(日) 01:37:30 ID:9gzGUfwU
ギリシャのウラヌスも一物は切り落とされて水の中だし、
人間ってそういうネタ昔から好きなんだなぁ・・・
440名無しさん@ピンキー:2005/07/24(日) 04:04:09 ID:HjNHS8Vb
イゴさんって、「あの」イゴーロナク氏のことデスカ?
私はそんな大物じゃないですよう。
本人降臨してるし。
私はパチモンですw

すいません、「急な入れ替わり云々」は少々サバいってます。
ただ、一応の根拠はあります。その証明として挙げられるのが「ピラミッド」です。
「赤いピラミッド」や「屈折ピラミッド」という言葉はご存知でしょうか?
これにまつわる
・これは「出来損ないピラミッド」であり(いや違う!という説もありますが)当時、科学技術は各教団ごとの秘伝だった。
 >で、各教団は仲の悪いものもある。>ピラミッド技術を持つ教団の支持を取り付けられなかったファラオは正確な三角錐型の墳墓を作れなかった。
説を思いっきり拡張したものです。
だからホントにコロコロと上下が入れ替わってはいませんでした、多分、おそらく。
でも、「神話の上書きを繰り返した」ことはホントです。ラー時代では太陽の船の舳先でアポフィスを退けていたのはセトでした(ラー派はセト派と仲がよかった)。
でも、オシリス派が台頭しいてくるとその役割はウプアウト/アヌビスに取って代わられ、セトはホルス強姦未遂者に追いやられてしまいました。
それだけでなく、「新しく台頭したファラオが自分の出身地でのみ信仰されていた神を即位時にエジプト全土に広めた」りもしました。
それによりそれまで有力であった神がわきへ追いやられたり、新興神が彗星のように消えてまたもとの位置へ戻ったりしていました。
・・・イメージ的には「くんずほぐれつのドタバタ」より「何度もパッチやエラッタが出るエロゲーもしくはTCG」みたいな事を何千年も繰り返していた、といったほうが正しいかもしれません。

ただ、地域間格差のほうはホントです。ラーはが没落し、下エジプトでオシリス派が台頭しても、
上エジプトでは太陽の船の舳先にいたのはウプアウト/アヌビスではなくセトでした。
(スーダンに近いあたりでは豹を信仰していても他所ではそんな風習全くなかったり、とかもあり)

まとめると「速いサイクルで何度も〜はフカシ入ってる。でも、各地域で「ウチのが正しい」とする説は並立していたのはホント」ってことでお粗末。

※ 主な資料は青心社の「エジプト神話」ですが、TVの特番やクイズ番組などによる補正がしこたま入っています。
441名無しさん@ピンキー:2005/07/24(日) 22:20:14 ID:kv9s42r6
そう言えば、クトゥルー神話の邪神ニャルラトテップも、色々とエジプトと
因縁があったっけ。自分自身も「黒のファラオ」や「顔の無いスフィンクス」
とかいう化身になることがあるし、ラヴクラフトの短編にも「そんなときに、
エジプトからニャルラトテップがやってきた」って一文があったような。

ひでぼんの書の作者さんは、ニャルラトテップをドジっ子黒メイドに擬人化
したが、俺的萌えニャルラトテップは色黒ツンデレエジプト女王様です。
442名無しさん@ピンキー:2005/07/24(日) 22:45:44 ID:RTrM4UsB
エジプトはぬこを大事にする文化なのでぬこ大好きなラブクラフトが傾倒しても無理はない
443名無しさん@ピンキー:2005/07/24(日) 23:26:11 ID:YO46lUe/
>ニャル・エジプト
つ[カルネテルの黒き死者]
444イゴーロナク:2005/07/25(月) 00:39:26 ID:G57+v91x
>>441-443
エジプトとクトゥルフ神話との結びつきには、
ラヴクラフトとジャンプ漫画の登場人物のように殺しあって友情を深めた、
ロバート・ブロックの功績が大きかったと思いますが、
その辺はスレ違いなのでイゴは「クトゥルフ神話萌えスレ」の方へどぞー。

[ショゴス] クトゥルフ神話萌えスレ 7 [でちゃうぅぅ!]
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/ascii2d/1121354878/

時間があれば「クリーチャー・コンパニオン」から、
クトゥルフ神話とエジプトに関するコラムを抜き出しておきますので。

>>440
私も大物ではありませんよ。
たとえ「THE」がつくとしても、せいぜいSIMPLE2000シリーズ並みです。
445名無しさん@ピンキー:2005/07/25(月) 00:56:45 ID:BDILvQdj
スレ張ってくれたのだから向こうで聞くべきなのかもしれないが

クトゥルフを手っ取り早く(←ここ大事)知るのに
オススメの資料本ってなんですかね?
「クトゥルフ神話図説」「モンスター図説」というのがホビジャから出ているのは知っているんだけど
手に入れようにも、ヤフオクじゃプレミアつきすぎてて手が出せないし。
TRPGのルールブックとかでもいいのかね?

いや、原作を読めって話なんだろうけどさ
446名無しさん@ピンキー:2005/07/25(月) 01:17:48 ID:aEHB8lvX
>>445
クトゥルフ神話ガイドブック(新紀元社)とかどうだろう。
…や、日本人作家のクトゥルフ作品って感じの章のトップにデモンベイン持ってきちゃう系統の本だけど。
447名無しさん@ピンキー:2005/07/25(月) 01:27:38 ID:xsoT9AtY
>>446
普通持ってくるんだったらF&Cの「ネクロノミコン」だよな。
448名無しさん@ピンキー:2005/07/25(月) 01:32:50 ID:RryRsYX0
>クトゥルフ神話ガイドブック
「アリシア=Y」と「アスタロト外伝」(「地底の足音」もなかったかな?)がないけど、
総合的な資料としてはお勧め。
学研からムー系で「クトゥルフ神話辞典」とかいうのも出てたのがお勧め。
(これには漫画系クトゥルフ作品が載ってない。漫画系最高峰の邪神伝説シリーズは同じ学研から出てるというのに!)
449イゴーロナク:2005/07/25(月) 02:05:37 ID:G57+v91x
450名無しさん@ピンキー:2005/07/25(月) 21:15:19 ID:8k8OIBT1
>>446
ネクロノームは載ってないのか
メカは人外(ウミユリ)の技術の結晶でかっこいいぞ
メカはな
メカは
451445:2005/07/26(火) 00:20:45 ID:hHXNcFxA
>446-449
参考にします。
とりあえず「クトゥルフ神話ガイドブック」は入手しやすそうなので
ここから手を付けてみたいと思います。
TRPGのルールブックが最近出てたから、それ絡みで出たのかな、この本

その前に、最近矢/野/健/太/郎のクトゥルフのコミックをオクで落札したばかりなので
それを読むのが先になりそうだ
452名無しさん@ピンキー:2005/07/26(火) 11:26:53 ID:nDi1Z6y0
>>450
朝松氏の紹介の項でちょっとだけ触れられてた。
…でも、ニライカナイよりも扱いが軽いってのはどうすればいいんだ。

あと、邪神ハンターには言及するのにシャドウプリムを無かった事にする朱鷺田氏に萌えてみたり。
453名無しさん@ピンキー:2005/07/26(火) 19:11:30 ID:61Ha/rVn
「ニャルラトテップ」って発音すると気付きにくいですが、
「ニャルラトホテプ」と発音してみるとエジプトのファラオにインスパイアされているのがピンと来ます。
「〜ホテプ」という単語はエジプト特有のものです。
「アメンホテプ」とかね。

>>451
>矢/野/健/太/郎のクトゥルフ
Call of cthulhuは初めの二ページで大爆笑でした。

じりりりん・・・がちゃ
「もしもし、どちらはんでっか?」<ツァトゥグァ
「わしや!」<クト

Call of cthulhu=「クトゥルフの呼び出し」
ボカーン
454名無しさん@ピンキー:2005/07/26(火) 19:44:01 ID:UucxWbTb
まぁそろそろクトゥルフはクトゥルフ板…じゃなかったスレでやってくれ。
455名無しさん@ピンキー:2005/07/26(火) 20:47:56 ID:Zj+klE6G
>>454
カテゴリはどこがふさわしかろう>クトゥルフ板
456名無しさん@ピンキー:2005/07/26(火) 21:12:42 ID:biIJpPQ4
普通に神話板あるけどね・・・
まあ多少の雑談は気にしないってあるし
457名無しさん@ピンキー:2005/07/26(火) 21:49:13 ID:UucxWbTb
>>455-456
クトゥルー神話、および原作者についてのスレならSF板にあるよ。
と言っても、このスレから興味を持ったなら>>449のスレに行くのが妥当だろうけど。
もう夏休みに入ってるんだし、専用のスレでもないのに特定の話題に傾倒してるとそれに難癖つけてくる厨房もまた出没するかもよ。
スレ違いなのは事実だし、自衛はするに越したことはない。
458名無しさん@ピンキー:2005/07/27(水) 00:36:56 ID:l7RiDDBl
んじゃネタ振り

日本じゃ夏といえば幽霊だけど、外国の幽霊シーズンっていつかね?
つか、ポルターガイスト、首無し、半透明の実体
ぐらいしかイメージ沸かないが、有名な怪談みたいなのあるんだろか
459名無しさん@ピンキー:2005/07/27(水) 00:40:44 ID:DNXx3Hta
やっぱりハロウィーンじゃないか?
でもあれ幽霊に限らずだからなぁ。
460名無しさん@ピンキー:2005/07/27(水) 01:27:24 ID:oRlg/vYq
ぼくドラキュラ
461名無しさん@ピンキー:2005/07/27(水) 05:44:36 ID:lRUyN4k2
>460
そんな詐欺があったな
4年間で400万を一人の女の人から騙し取ったとか

どう考えても「かわいそうな子を養ってあげてた」としかおもえないんだが
きっと周りの人が誤解して通報したんだろうなぁ
462名無しさん@ピンキー:2005/07/27(水) 07:33:34 ID:DHu2JwKR
>>458
外国に幽霊シーズンは無いよ
いつも噂になった時がシーズンだからね
463名無しさん@ピンキー:2005/07/27(水) 12:06:27 ID:vH2gO693
「外国」っつー表現はどうかと思うが…。ロシアとかだとむしろ冬の方が妖怪類が出そうな希ガス。
あんまり知らんが。
464名無しさん@ピンキー:2005/07/27(水) 12:57:12 ID:DHu2JwKR
外国のドラキュラ、フランケンシュタインはただの創作
ウーウルフ、ポルターガイスト
悪魔等は宗教の教えに逆らったらこうなるという戒め
だから外国には幽霊シーズンはない、こわいもんが来たら怖がる
ただそれだけだよ
465名無しさん@ピンキー:2005/07/27(水) 16:27:05 ID:VZcpi1Tf
>>461
これか。
ttp://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050724-00000833-reu-int
…まぁ信じやすい人もいるんじゃないかな。
466名無しさん@ピンキー:2005/07/29(金) 00:34:58 ID:Kn4kKCA2
重傷を負った吸血鬼の少女が、近くに事故った車をみつける。
前部座席の夫婦は死亡、後部席の少年は瀕死の重傷。
少女は夫婦の死体から血を飲んで回復し、返礼として少年を助ける。
他に行き場のない少女は、そのまま成り行きで天涯孤独となった少年と同居する。
気位が高くてツンツンした性格で、「お前の両親の血で命を取り留めたから、その礼として面倒みてやってるんだ」が口癖。
でも、かいがいしく少年の世話をしたり、心を許したりしている。
でもって、割烹着やエプロン姿でお玉片手に台所に立って、それを見られると照れ隠しに怒る。←ココ重要

基本となる登場人物はあっても、ストーリーが全然思いつかないし、シリウスの吸血鬼ものに引っ張られてしまう。
以上、もてあましているネタなんで、リサイクルに出しました。使える方がいましたら、どうぞ。
467名無しさん@ピンキー:2005/07/29(金) 02:09:52 ID:Kn4kKCA2
なんかこう、隙を見せたら噛みつかれたり心臓に杭を刺されたりする、そんな緊張感のあるカップルってのもやってみたいが…上手く纏められない。
468名無しさん@ピンキー:2005/07/29(金) 20:20:44 ID:9sS/1m+u
質問
ケルト神話OK?
いや構想では藤島女神様系なんだけど…
469名無しさん@ピンキー:2005/07/29(金) 21:04:38 ID:PKlC4jkW
とりあえずダメとは言わない
470名無しさん@ピンキー:2005/07/29(金) 21:13:07 ID:cwfBN81v
タイトルと>>1を読む限りダメな理由は無いと思います。
471名無しさん@ピンキー:2005/07/29(金) 21:26:50 ID:9sS/1m+u
OK、製作に取り掛かるぜ
このスレ初めてだから製作しながらローカルルールとか調べておく
よろしくお願いするぜ

んじゃ、バイエルンの試合があるんでまた明日。
472名無しさん@ピンキー:2005/07/29(金) 23:39:21 ID:vwT9Fmfi
>467
参考資料として提出しておく
つ「ハニーブラッド」by虹夢
詳しくはタイトルと二次元ドリームでググレ

…途中からお決まりのグチョグチョエロだがオチはツンデレ風味だぞw
473名無しさん@ピンキー:2005/07/30(土) 00:02:19 ID:i8V7MNy2
>472
おう、ありがとう。(「椎名百貨店」と「ブライツライト・ホーリーランド」を片手に)

>471
>ローカルルール
人外っ娘が出てきて萌えかエロがありゃOKだと思うよ。
474名無しさん@ピンキー:2005/07/30(土) 00:08:18 ID:WL46kpNk
あとクトゥルフ知らない香具師らのために解説入れてくれ
475名無しさん@ピンキー:2005/07/30(土) 00:35:22 ID:mZwdxAkq
>>474
ケルト神話=北欧の伝統的神話
クトゥルフ神話=小説からスタートした世界設定(言い換えれば近代発生した神話)

ケルト神話≠クトゥルフ神話

とりあえずクトゥルフ神話がわかってないのはよく伝わったが、全く関係ないから安心しる。
476名無しさん@ピンキー:2005/07/30(土) 00:39:16 ID:i8V7MNy2
神話も、クリエイター達の間に浸透したせいで、いまやディープなオタの必須知識になりつつある。
ttp://homepage1.nifty.com/clio/index.html
ttp://www.geocities.co.jp/Milkyway-Kaigan/2115/index.html
ttp://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AF%E3%83%88%E3%82%A5%E3%83%AB%E3%83%BC
477名無しさん@ピンキー:2005/07/30(土) 00:52:45 ID:3fUZYqth
>ケルト神話=北欧の伝統的神話
これだと、更に勘違いしそうなので捕捉

ケルト神話=アイルランドとウェールズ(イギリス、グレートブリテン島南西部の半島状の地域)を中心に語り継がれた神話
        ティル・ナ・ノーグ(常若の国)に住まうダーナ神族を中心にした話

北欧神話=ノルウェー,スウェーデン,デンマークを中心とした、主にバイキング達によって語り継がれた神話
       オーディンやロキ,トールといった神が登場する

間違ってたらゴメン
478名無しさん@ピンキー:2005/07/30(土) 01:02:44 ID:i8V7MNy2
放課後。
「やあ、今日どうします?」
掃除の後、例によってCDショップを冷やかしにでも行くか?と問う西根と横口。
「ごめん、今日も用事があるんだ」
そう、哲晴は手を合わせる。折角のチャンスだし、人々に害為す物の怪退治への協力なのだ。個人的にも一般的にも、そっちの方を優先すべきなのは明らかである。
いぶかしげな表情の横口が、ふと何か思いつく。
「…そうか、用事があるならしゃあねぇな。まぁ頑張れや、その用事とやらを」
横口は西根を連れて商店街の方に向かった。彼がニヤリと意味ありげな表情をしたのは、誰も気付いて無い。
日が傾く中、駅前に着く。人通りの向こうに見え隠れして、真紀がすでに待っていた。
真紀の身体は女らしい凹凸には欠けてスラリと背が高く、表情も普段は心なしか凛々しい。ズボンを履いて髪を短くすれば、きっと男と間違われるだろう。
しかし、制服姿で両手で鞄を持ち、駅前の時計のすぐ下でソワソワと楽しそうに手首の内側の腕時計などを見るさまは、いかにも女の子女の子している。
しばしぼうっと見とれていると、向こうがこちらに気付いた。ニコッと微笑んで人込みをスルリとすり抜け、スタスタと足早に近づいてくる。
「やあ。来たね」
例によって、男っぽい口調だ。
「ごめん。待たせちゃったかな?」
とりあえず詫びる。
「ううん。ボクも今来たところ」
真紀がニッと笑って、さっきの逆転が行なわれる。もっとも笑顔がキラキラと眩し過ぎて、哲晴には流石に続く台詞までは出てこないが。
「え〜と、まず何をすれば…」
「そうだね。まずは昨日のファミレスに行こうか。そこで、地図を見てもらいたいんだ」
ひょいと何気なく手を伸ばして、ギュッと哲晴の手をとる。急に手を握られて、哲晴の頬がカアッと赤くなる。
「さ、行こう」
タタッと軽やかなステップ踏み、先を歩く。急に引っ張られたので、バランスを崩して二三歩たたらを踏む。
「あ、それから」
クルリと振り返る。もう頬の朱は引いている…と思う。
「実は今日、そこで、今回一緒に調査をする仲間と会って欲しいんだ」
目的の重要性を考えて、二人きりじゃないのは残念だ、という言葉はグッと飲み込む。
「あ、吸血鬼じゃないよ。大丈夫、他の妖怪だよ」
その一瞬の沈黙を誤解したのか、真紀はニコッと付け加える。
479放課後の吸血鬼:2005/07/30(土) 01:03:34 ID:i8V7MNy2
二人は昨日と同じのファミレスに入る。昨日と違ってまだ空は明るく、今日は入店は二人一緒だ。
昨日と同じくまだ早い時間なのでガラガラの店内の、奥の窓際の席に座る。ただしそこは昨日とは違って4人席だ。
哲晴が指示された窓際のソファに着くと、今日は真紀もその隣にちょこんと座る。ちょこっと腕を動かせば、触れてしまうほど近い。
「えっと…」
心臓がドギマギする。顔には…多分出て無いと思うけど。
「あ、ほら、地図見るから、その…、向き同じ方がいいよね」
あたふたと鞄から街の地図を取り出す真紀の頬は、微かに朱がさしている。
「あ、うん…、そうだよね」
納得したような事をいいつつも、頬が熱くなるのがわかる。真紀を正視できずに、カクンとうつむき加減になる。つられて真紀もそうなる。
すぐに水を持ってきた来たウェイトレスに、真紀はオレンジジュース、哲晴はコーラを注文して追い払う。文字通り水を差されたせいで、一応は頬の熱が下がる。
気を取りなおして、テーブルにバサリと地図を広げる。地図には赤で高いビルを表す点がポツポツと打たれ、所々が緑の線でグルッと囲まれている。
赤が高いビルで緑が調査済みのエリア、注文したジュースが運ばれてきてこれ以上邪魔者が来なくなってから、そう真紀は説明した。
「で、哲晴には、高い建物を教えて欲しいんだ」
一呼吸おいて、冷えたコップを手に取る。
「具体的に言うと、10階建てくらいのビルとか、周りより突出した建物とかだね」
ツッと口を尖らせて、ストローに口をつける。代わりに哲晴がストローから口を話す。
「あ、うん。じゃあ」
真紀はジュースを一旦置くと、地図と一緒に取り出した蛍光ペンセットをヒョイと差し出す。
「お願いね」
まずは、ざっと地図を眺める。駅前や繁華街には赤点がポツポツと記され、さらに緑の囲いがすでにグルッとある。となれば、そこから離れた住宅街だ。
コップを片手に地図にポツン、ポツンと赤ペンで印をつける。10分程後、今まで点を打たれてなかった範囲にポツリポツリといくつかの点が打たれる。
「う〜んと。僕がわかるのはこれくらだね。あんまり役に立てそうもないけど…」
漏れが無いかどうか、今一度地図全体をグルリと見渡す。一応、思いつく限りは全部書いたはずだ。
「じゃあ、説明お願いできるかな?」
真紀は手をついて、地図の上にヒョイと身を乗り出す。長く艶やかな髪が、バサリと下がる。
「あ、ゴメン。ちょっと待ってて」
真紀はポケットから青いゴム紐を取り出すと、パチッと髪を縛ってポニーテールにする。
初めて見る真紀の白く滑らかなうなじが、妙に艶めかしい。あわてて、バッと視線を地図に移す。
「えっと、ここには銭湯の煙突がある…、あと、ここには新築のマンションが…。
 あ、そうだ。ここには送電線の鉄塔があったっけ」
哲晴がグルリと視線をさ迷わせて、赤ペンを探す。哲晴が見付けてサッと手を伸ばすのと、真紀も見つけて手を伸ばすのは、同時だった。
ピトッと指先が触れる。静電気に弾かれたように、二人してパッと手を離す。
「あ、ご、ゴメン」
「あ、ううん。ボクこそ」
再び二人とも顔をポッと赤らめ、うつむき加減に視線を逸らす。
一瞬、間を置いてから、真紀がそっとペンを手に取って哲晴に渡す。うつむいたままで。
「あ、ありがとう」
こっちも差し出されたペンを受け取る。同じくうつむいたまま。
「え〜っと、じゃあ続きだけど、良いかな?」
そうして暫く説明を受けてから、ようやく真紀が口を開いた。
「うーん。こうしてみると、やっぱり住宅地なんかは、漏らしてるが多いな…。しかも、それぞれが離れてて調べるのに手間取るし。
 ボクに人払いの結界が使えれば、本性のまま、街中を虱潰しに調べられるんだけど…」
腕組みをして考え込んでいた真紀が、ヒョイと顔を上げ、出入り口の方をむいてヒラヒラと小さく手を振る。
「あ、来たよ」
真紀の視線を辿ると、腰まで届く長髪をバレッタで留めた微笑む美少女と、背の低い眼鏡をかけたショートカットの元気そうな少女。
480名無しさん@ピンキー:2005/07/30(土) 01:10:59 ID:i8V7MNy2
本日はここまでです。
お久し振り(一月以上経ってるよ…orz)の放課後の吸血鬼です。

ここ一月ばかり、カンフル剤というか起爆剤というかがなくて、なかなか進まずにいました。(いままで使っていたアニメ月姫は、見過ぎて食傷気味になってしまいました)
ただ、SS自体はちょこちょこ書いてました。
猟奇スレにサーラの冒険のSS書いたり、ラノベ板のソードワールドスレで黄金の車輪のSS書いたり、卓ゲー板のソードワールドスレで通常武器無効モンスターのSS書いたり、ここでも幽霊話を二話程書いてます。
えーと。できれば8月中に完結するよう頑張ります。以上。
481霜ノ関 ◆EWgLYoRkiM :2005/07/30(土) 01:38:31 ID:MG99+e7E
深夜の道を力なく歩く少女は、一瞥しただけでわかるほど憔悴していた。
「血の……匂いがする……近い?」
だが、敏感な鼻で血の匂いを嗅ぎつけた途端、疲れきった顔に生気が戻る。
「これで……助かるかも……しれない……」
一縷の望みを血の匂いの源に託し、少女は最後の力を振り絞って歩き始めた。
このまま大量の血が存在しているであろう場所に辿り着ければ、助からないこともない。
少女は吸血鬼と呼ばれる存在だった。それも、吸血鬼達の中では名門として知られる家の出だった。
本来ならば常に力強く在るべきである名家出身の吸血鬼がなぜ憔悴しきった面持ちで
夜の街を歩いているかということだったが、それは単純な話だった。
彼女はまだ、狩場を持っていないのだ。少女は日本に来てまだ日が浅いため、他の吸血鬼が
縄張りとしていない狩場を見つけられないでいるのだった。
「……事故現場……私に……死者の血を啜れと、いうのか……」
果たして血の匂いを放っていたのは、ガードレールに突き刺さった一台の乗用車だった。
運転席側のドアを突き破って車体に刺さり、助手席側のドアから突き抜けたガードレールには
赤黒い肉片と血液が付着している。
確認しなくてもわかるが、前部座席にいた者は既に死んでいるだろう。即死だったかもしれない。
だが、問題はない。死んだ直後の血液ならば、まだ生命力は残っている。
「……宵闇の貴族たる私が……死者の血を啜るのか……」
少女はがっくりと膝を突き、突きつけられた選択に苦悩した。
生き延びて誇りを失うか。誇りを守って死ぬか。
どちらもおいそれと選べる選択肢ではない。だが、選ばないという選択肢はなかった。
迷い続けていれば、体力が尽きるか他の人間が集まってくるかして死ぬことになる。
「………た……け…て…だ…れか」
そんな時、吸血鬼の聴覚でも完全には聞き取れないほどの弱々しい声が響いた。
声の主は後部座席にいるようだった。生き残りがいたのだろうか。
「誰か……いる……のか…?」
これは好都合だった。瀕死の重傷を負っているとはいえ、一応は生者には違いない。
死人の血を啜るのに比べれば、まだ幾許かの名誉が保たれるというものだった。
「……ぃ…た……ぃ……お…や、じ……かぁ…さ……」
後部座席に倒れていたのは、少女よりも幾らか年長に見える少年だった。
腕は関節ではない所で曲がり、口からは赤黒い血を垂らしている。
目の焦点も合っていない。意識も朦朧としているようだ。
「……お前の…血を…」
最早、身動き一つできない少年に向かって屈み込み、少女は首筋に顔を近づける。
だが、あとほんの一センチで唇が接するというところでその動きが止まる。
少女は小さく、悔しそうに呟いた。
「駄目だ……できない……」
数分もすれば命の灯が消えるとはいえ、まだ生きている相手、特に自分と同年代の少年にトドメを指すのは躊躇われる。
これまでにも多くの人間の血を吸ってきた彼女だったが、誰かを殺めたことはなかった。
吸血行為とは即ち、血に含有される生命力の吸収を意味する。
既に自分の生命を維持するだけの生命力もない少年から血を吸えば、絶対にそれがトドメとなる。
吸血鬼に似合わぬ優しさを持つ彼女には、とてもではないができなかった。
482霜ノ関 ◆EWgLYoRkiM :2005/07/30(土) 01:39:04 ID:MG99+e7E
「…どう、すれば……」
少女は再び苦悩した。
少年の血を吸えば自分は助かるし、死者の血を啜るという不名誉を免れることができる。
だが、それをすれば少年を殺すことになってしまう。しかし、放っておいても少年はどのみち死ぬ。
助かりたい。しかし、殺したくもなければ死者の血を啜るのも嫌だった。
「……がっ……は…」
答えの出ない煩悶に終止符を打ったのは、少年の苦しげな吐息だった。
赤黒い血混じりの咳をする彼は、今にも死にそうに見えた。
「お…前、しっかり、しろ……!」
少女は決心した。
このままでは少年が死んでしまう。見殺しにするのは嫌だった。助けよう。
少女は得心した。
死に瀕している者を救うために進んで自ら泥を被ることは、決して不名誉なことではない。
むしろ、弱者のために誇りをも投げ捨てることこそが、真の意味での高貴さというものではないか。
「待って、いろ……今、助けて…やる…」
少女を意を決し、前部座席に座っている男女の死体に口をつけた。
無理矢理に自分を納得させたとはいえ、屈辱感は消えない。
彼女は込み上げてくる不快感に耐えながら傷口に牙を突き立て、死者の血を啜った。
「……よし。今、助けてやるぞ。名も知らぬ少年」
血に含まれた死者の生命力の残滓を吸収して回復した少女は、少年の身体に触れた。
完全に力を回復させた少女にとって、人間の貧弱な肉体を癒すことなど簡単だった。
触れている掌から生命力を活性化させる波動を放ち、肉体の損傷をある程度癒す。
命に関わる傷を塞ぎ終えた途端、見計らったかのように救急車のサイレンが聞こえてきた。
「……人間共が来たか。あとはあの連中に任せるとしよう」
まだ完全に傷を癒したわけではなかったが、既に命に別状はないほどに回復している。
残りの軽微な怪我は人間の医者に任せておけばいい。
救急車が到着するのと入れ違いに、少女は霧となって事故現場から消え去った。
「うわ、こりゃ酷いな……って、今、誰かいなかったか?」
「馬鹿、寝言ほざいてる場合か! 早く、怪我人を運び出せ!」
「おい、前の二人は駄目だが、後ろの奴はまだ生きてるぞ! おーい、お前ら手伝え!」
救急車から出てきた救急救命士達が、事故現場の悲惨さに辟易しながら怪我人を搬送していった。
483霜ノ関 ◆EWgLYoRkiM :2005/07/30(土) 01:39:44 ID:MG99+e7E
「……えっと、君、誰?」
病室で眠っていた俺が目を覚ますとベッドの横に、見た事もない、
しかしどこかで見たような印象のある綺麗な女の子が立っていた。
女の子は驚いたような表情のまま、硬直したように俺の顔を見下ろしている。
「もしかして、その、他の患者さんか?」
俺が最初に目を覚ました時にはこの病室には何人かの看護婦さんと医者がいて、俺達一家が
事故に遭ったことと生き残ったのが俺だけだったということを沈痛な表情で説明してくれたが、
その時は他の患者はいなかった。あれから、また誰か運び込まれてきたのかもしれない。
「……ふん、元気そうだな」
俺を見下ろして冷たく言い放つ少女は、しかし言葉とは裏腹に安心したような表情を浮かべている。
「あのさ……」
全く答えてくれないので意を決して話しかけようとしたが、少女は背を向けてしまった。
「邪魔をしたな。では、さらばだ」
そのまますたすたと歩き出す。しかし、さらばと言っておきながら、彼女はドアに向かわなかった。
彼女が向かった先にあるのは、半開きになっているドアだった。まさか、飛び降りる気なのだろうか。ここは五階だぞ。
「私のことは気にするな」
少女が窓枠にすらりと伸びた長い足をかけながら、ちらりと俺の方を見て言った。
どうやら、本当に飛び降りるつもりらしい。放っておくわけにはいかなかった。
「ま、待ってくれ! ちょっと待ってくれ!」
俺はベッドから上体を起こして少女を呼び止めた。
何とかして引き止めねば。目の前で自殺されるのは何とも後味が悪すぎる。
「何だ?」
少女が訝しげに振り向いた。刺激しないように話しかけて何とか思い留まらせなければならないとは
思いつつも、何も話題が浮かばない。黙っているわけにもいかないので、俺は苦し紛れに言った。
「な、なぁっ、君、俺と会ったことないか?」
今時、ナンパでも使わないようなくだらない言葉だったが、他に思いつかなかったのだから仕方がない。
しかし、明らかに外したにも関わらず、少女は驚いたように目を見開いて俺を見つめていた。
「まさか……記憶が残っていたのか……? しかし、ほとんど死に掛けていて意識などなかったはず……」
少女はぶつぶつと呟いている中に、気になる言葉を見つけた。死にかけていて意識がない、という言葉に
疑問を抱いたその瞬間、俺の脳裏に病院に運び込まれた直後に見た夢の記憶が蘇った。
夢の内容は、後部座席で倒れていた俺の前に美少女が現れ、不思議な力で助けてくれるというものだった。
「まさか……まさか、あれは夢じゃなかったのか!?」
医者が言っていた「あの状況でこの軽傷というのは本来有り得ない」という言葉を思い出し、俺は愕然とした。
「……意識があったとは、な」
少女は失敗してしまった、というような表情を浮かべて俺に向き直った。
「君は……何者なんだ…?」
掌を当てるだけで傷を治してしまうような力を持った女の子だ。普通の人間ではないだろう。
「まさか君は……」
ゆっくりと深呼吸しながらの俺の言葉に、少女が息を呑んで表情を強張らせる。
「魔法少女か!?」
484霜ノ関 ◆EWgLYoRkiM :2005/07/30(土) 01:40:18 ID:MG99+e7E
「え…魔法……」
どうやら正解だったらしく、少女は言葉に詰まったように口を開閉させた。
「や、やっぱり魔法少女だったのか……」
それにしても、魔法少女が実在するとは知らなかった。世界にはまだまだ知らないことがたくさんある。
そう思ってしみじみと頷いていたら、怒鳴られた。
「だ、誰が魔法少女だ! お前、私を愚弄するつもりか!?」
色白な頬を真っ赤にした少女が、顔の前で握り拳を作って震えている。怒らせてしまったようだ。
しかし、正直な話、不思議な力を使う女の子など魔法少女くらいしか思いつかないのだから仕方がない。
「ち、違うの……?」
その剣幕に少しビビりながら恐る恐る訊いてみると、傲然と胸を張った少女は腰に手を当てて声高に答えた。
「私は誇り高き吸血鬼の中でも特に高貴な宵闇の貴族だ! そのようなわけのわからないものと一緒に……あ」
しかし、最後まで言い終えることはなく、慌てた様子で口を閉ざしたきり黙り込んでしまった。
正体を明かしてはいけない決まりでもあるのだろうか。だがそうなのだとしても、急に黙られると俺としては困る。
「え、えーと、どうしたんだ?」
黙ったまま見られ続けるのも嫌なので、とにかく会話を再開させるように努める。
「……驚かないのか? 怖くないのか? というより、お前、私の言ったことを信じているのか!?」
そうしたら、突然近寄ってきた少女に両肩を掴まれ、前後に揺さ振られた。
華奢な外見の割りに、この間俺に絡んできた不良よりも余程強い力だった。
「い、いや、だ、だって、さ、た、たす、助けて、くれくれたじゃなないかか!」
どう足掻いても揺さ振るのを停められそうもないので、舌を噛む恐怖に耐えながら答える。
助けてくれたから驚かないし、怖がらない。不思議な力で助けてくれたから信じる。
そういう意味を込めて、俺はできる限り簡潔に答えたのだった。
「……そ、そうか。ふん、たかが人間のくせに肝の据わった奴だな」
答えを聞いて肩から手を離した少女は、僅かに驚いたような表情を浮かべている。
俺が怖がらなかったことがそれほど意外だったのだろうか。こんなに可愛い子を怖がるはずがないのに。
それとも、俺がすんなりと信じたことが意外だったのだろうか。命を助けられても信じないような奴はそういないだろうに。
そういえば、何で命を助けてくれたのだろうか。別に知り合いでもなかったはずだ。
「……あ、そういえば、君は俺を助けてくれたんだよな。ありがとう。でも、何でだ?」
疑問に思ったので訊いてみることにした。
「しょ、消耗した力を回復するためにお前の両親の死体から血を吸ったら後部座席に
死に掛けのお前がいて、たまたま、そう、たまたま力が余っていたから助けてやっただけだ。
感謝なら、大量の血を流して死んだことによって血の匂いで私を呼び寄せた両親にするのだな」
少女は照れているのか僅かに頬を赤くしながら、早口で一息に言い終えた。
「ではな! 今度こそ、さらばだ!」
そのまま、窓に向かって走り出そうとする。もう帰ってしまうのだろうか。もう会えないのだろうか。
「待ってくれ!」
一抹の寂しさが心をよぎり、気がついたら少女を呼び止めていた。
485霜ノ関 ◆EWgLYoRkiM :2005/07/30(土) 01:40:50 ID:MG99+e7E
「……今度は何だ?」
苛立たしげに俺のことを睨みながらも、少女は窓の前で止まってくれた。
吸血鬼というだけあってなかなか怖い目つきなので、早く用件を済ませることにする。
「あ、あのさ……さらばだ、ってどこかに帰るんだよな? その、よかったらどこに住んでるか教えてくれないか」
我ながら馬鹿な質問だということはよくわかっている。
普通の女の子でも答えてくれることが少ないのだ。吸血鬼の女の子が答えてくれるはずもない。
「……そのようなことを聞いてどうする?」
と思っていたら、少し警戒するような表情を浮かべた少女は、
意外なことに話の持っていき方次第では答えてくれそうな雰囲気だった。
「いや、ほら、その、改めてお礼とかしたいしさ……」
だが、惜しいことに俺には上手く話を持っていく話術がない。
案の定、けんもほろろに断られてしまった。
「いらんと言っているだろう。私は余裕があるからお前を助けただけだ」
しかし、ここで引いてしまっては駄目だ。ここで引いたら、もう会えないのだ。
こんなに可愛い女の子と二度と会えないというのは、かなり惜しい。俺は必死だった。
「それじゃ俺の気がすまないんだ!」
単刀直入に懇願した。話術などない以上、本音で話すしかない。
「だから、どこに住んでるのかくらい教えてくれ!」
俺は黙り込んだままの少女にしつこくしつこく懇願した。
そうやってしつこく頼み込んでいたら、いい加減に根負けしたのか少女は言った。
「……私は日本に来たばかりで、家がない。だから、お前を招くことはできない。納得したな?」
うんざりしたような表情で一息に告げると、少女は再び窓枠に足をかけた。
やはり飛び降りるのだろう。少女の足に力が籠もるのがわかった。
ジャンプの直前、俺は少女を呼び止めた。これで三回目だった気がする。
「だから、待ってくれってば!」
「…………今度は何だ!? いい加減にしろ!」
突然呼び止められてバランスを崩したらしい少女は、窓枠に手をかけて体勢を整えながら
俺のことを怒鳴りつけてきた。少し短気すぎる気もするが、気持ちはわかる。
「さっさと用件を言え!」
大分怒っているようだった。こうなったら、余計なことを言わずにさっさと言ってしまおう。
気を落ち着けるために深呼吸してから、俺は少女に向かって祈るような気持ちを込めて言った。
「……じゃ、じゃあ、俺の家に来ないか!?」
486霜ノ関 ◆EWgLYoRkiM :2005/07/30(土) 01:41:22 ID:MG99+e7E
「……な、何だと?」
面食らっている様子の少女を見て、俺は失敗を悟った。
よく考えてみなくても、明らかに年頃の女の子に対して男が言うべきことではない。
俺は慌てて訂正した。
「い、いや、だから、やましい気持ちとかじゃなくてさ……! そう、親父と母さんが死んで、
俺、独りになっちゃったんだよ! だから、その、急に一人になるのは寂しくてだな……」
段々と声が小さくなっていく。言いながら、自分が墓穴を掘っていることに気づいたからだ。
これは「今日、俺んち寄ってかない? 親いないから二人きりだぜ」と言っているのと大して変わらない。
こんなことを言われて素直に頷く女の子はまずいないだろう。
絶対に駄目だと思って一人で絶望しかけていたのだが、少女の反応は予想したほど悪くはなかった。
「……い、いや、しかし、しかしだな。私はついでにお前を助けただけだし……世話になるようなことは何も……」
戸惑ったようにぶつぶつと呟いている彼女は、決して嫌がっているようには見えない。
むしろ、俺の家に同居する理由がなくて残念そうにしているようにすら見える。
となれば、彼女は世話になるに足る理由さえあれば、何の引け目も感じずに家に来てくれるのだろう。
俺はここで勝負をかけることにした。ただし。少し変化球気味の頼み方で。
「俺が君に家に来て欲しいと思ってるんだ!」
俺は極力真面目な表情を作って言う。
「何で私がお前の要望に従わなくてはならんのだ!」
一瞬だけ頷きかけた少女だったが、すぐに表情を改めて勢いよく首を振る。
「君は俺の両親が死んだおかげで助かったんだろ。その分だけ、俺達一家に借りがあるんじゃないか?」
「……そ、それはそうだが……」
やり口が汚い上に死んだ両親に申し訳ないが、込み上げる罪悪感を堪えながら更に続ける。
「だったら、その借りを返すために俺と暮らしてくれよ!」
幾ら、この美少女吸血鬼に会えなくなるのが嫌だからと言ってここまでするとは、我ながら腐った奴だと思う。
だが、自分の人間性を貶めるようなことをしたおかげで、俺は少女が俺と暮らさざるを得ないという具合に
話を持っていくことができたのだから、人間性くらいは妥当な代価だとは思う。
「……わ、わかった。では、お前の家にしばらく厄介になってやる。いいか、借りを返すまでだぞ!」
怒りによってか苦悩によってか照れによってか知らないが、少女は顔を真っ赤にしながら傲然と胸を張って俺に答えた。

こうして、俺と吸血鬼少女との共同生活が始まることとなったのだった。
487霜ノ関 ◆EWgLYoRkiM :2005/07/30(土) 01:41:54 ID:MG99+e7E
>>466
エロなしの試供品だが、こんな感じだろうか?
488名無しさん@ピンキー:2005/07/30(土) 01:57:09 ID:xBbwwf1l
489名無しさん@ピンキー:2005/07/30(土) 01:58:11 ID:xBbwwf1l
失敗
>>487
うん、GJ
今宵は吸血鬼祭りですね
490名無しさん@ピンキー:2005/07/30(土) 02:14:29 ID:ywWj+vt1
>487
うひょー

あんた上手いなあ。
キャラもいい感じに動いてるし、続きが是非読みたいでアリンス。
491名無しさん@ピンキー:2005/07/30(土) 02:39:50 ID:1F3c6MyU
>>487
  _  ∩
( ゚∀゚)彡 吸血!吸血!
 ⊂彡
492名無しさん@ピンキー:2005/07/30(土) 04:52:00 ID:GJhIMHqj
>>477
神話に関しては、分類は民族単位で示した方が良いかも。
ケルトと北欧だと、まず民族自体が違う。
んで、カソリックに駆逐、或いは組み込まれるようになる年代も、だいぶん違う。

ケルトが北欧に影響を与えてるとこはあるけど、その逆は無いしね。
493名無しさん@ピンキー:2005/07/30(土) 09:59:58 ID:MBGgDDVl
>487
これは良いツンデレの気配がしますね
494名無しさん@ピンキー:2005/07/30(土) 10:45:54 ID:hyoYd79d
>>478
放きゅの人、復活乙です。
>>487
ツンデレGJ。


ここのスレの人は神話とか詳しそうなので…

神話・伝説系事典サイト「幻想図書館」(昨年閉鎖)にかわるものを、ということで
オカルト板や民俗・神話学板住人有志がwikiで事典を編集してます。
…が、なかなか作業が進んでおりません。誰でも編集・加筆訂正ができるので
そういう方面に興味をお持ちの方はぜひ。
(編集などの内容・書式は規定に従って下さい。詳しいことは会議室スレで)

【 Fantapedia 】
ttp://www1.atwiki.jp/occultfantasy/

そうだ幻想事典を作ろう Fantapedia会議室 II
http://hobby7.2ch.net/test/read.cgi/occult/1118072941/l50
495名無しさん@ピンキー:2005/07/30(土) 23:40:13 ID:x/80Kb2e
神話事典か…
確かにあると便利ですね
496名無しさん@ピンキー:2005/07/30(土) 23:51:37 ID:LBGTGadQ
あげていいれふか
497名無しさん@ピンキー:2005/07/30(土) 23:51:59 ID:vFKISpBu
>霜ノ関 ◆EWgLYoRkiM氏
有難う。そしてお疲れ様です。
いやあ、あの粗筋からよくぞまあこんな萌えなものを作ってくれました。
さて、個人的には良い作品というものは、魂に訴えかけて他の作品の起爆剤となるもの、と考えております。
そんなわけで、今までストーリーが全然思いつかなかったのに、放きゅそっちのけで、ついこんなものを作ってしまいました。
498名無しさん@ピンキー:2005/07/30(土) 23:54:30 ID:vFKISpBu
「いい気になるな。この人間風情めが。我々にとって人間などは、ただの血を絞り取る家畜も同然だ」


「勘違いするな。お前達人間など、ただの家畜に過ぎない。
 世話をするのも、人間が乳を搾るために牛を飼い、卵を取るために鶏を飼うのと一緒だ」


食事
「ふん。家畜の世話をするのは飼い主の勤めだ。ただそれだけだからな。いいからとっとと食え」
絆創膏を巻いた指を後ろ手に隠す。


掃除
「家畜の健康を維持するためには必要だからに過ぎない。それに、ここは私の住処でもあるのだ」


姫と対峙する、拳銃を構えた長髪の白人女性
「不殺の姫。お噂はかねがねお聞きしておりましたわ」
「ふん。貴族の末裔の遊んで暮らせるお嬢様が、わざわざ吸血鬼ハンターとはな。狐狩りにでも飽きたのか?」
「貴族の義務ですわ。人々の払う利子や配当を受けるのは、いわば税を受けるようなもの。
 ですから、税によって暮らす税を払う民草を守るのは、貴族として当然の勤めです」


白骨馬に跨る剣を携えた骸骨が姫と語らう
「久しいな。お嬢」
「その名で呼ぶのはおやめ下さい、髑髏の王よ。して、何用か。まさか今更刺客ではありますまい」
「忠告に来た」
499名無しさん@ピンキー:2005/07/30(土) 23:55:57 ID:vFKISpBu
従者と語らう幼き姫
「ねえ。なんでジョゼフはむかしよりも元気じゃなくなってるの? 髪もだんだんと白くなるし」
「これは白髪ですよ。姫様」
「白髪? あ、わかった『びょうき』なんでしょ。死んじゃったカナリヤみたいに」
「いいえ姫様。これは『老い』でございます」
「老い?」
「はい。この世の生けとし生ける者は、総て老いを免れません。姫様のようなご一族を除いて」


王と姫
「父上、何ゆえジョゼフを殺したのですか! あの者は長年よく尽くしてくれた忠義者ではありませんか!」
「たわけ。儂が知らぬとでも思うてか。お前がジョゼフから家畜どもの事をいろいろと聞きだしているのを。
 上に立つ者として、下々の者を知るのは良い事だ。じゃが、上に立つが故に共感することは許されん。
 その程度も分からぬお前ではあるまい」


兄と妹
「ごちそうさま。お兄様。とっても美味しかったわ」
「お前に喜んでもらってよかったよ。わざわざ『家畜』を1匹潰して搾り取った甲斐があるってもんさ」
「…『家畜』を?」
「そう。アリスだよ。お前のお気に入りだったろう? この前も、血が美味しいって言ってたし」
「ひ、酷いわ。お兄様。アリスは私の友達です!」
「おいおい、人間相手に何言ってるんだよ。それに、あれは元々僕の家畜だろ」


姫とメイド
「ふう。ご馳走様、マリー。いつも新鮮な血をありがとう」
「いいえ。姫様に喜んでいただければ幸いです」
「ねえ、マリー。あなたと私の間だから、正直に答えなさいね。
 あなたは、私に血を吸われるのが嫌じゃないの?」
「いいえ。むしろ感謝しております。姫様が私をお傍に置いてくださるおかげで、弟達が飢えずにすんだのですから」


幼き姫と骸骨
「ねえ、髑髏の王様。なんでお父様やお兄様は、人間を嫌うの? 人間がいなければあたしたちは生きていけないのに」
「それはな、多分、似すぎているからだろう。我輩のように完全に違う姿ならばともかく、お嬢ちゃんと人間はよくにているだろう?
 だから、同じに見られたくなくて、一生懸命違うものだって言ってるんだよ」
「ふぅん。変なの。似てても別にいいじゃない。似てた方が、お友達になれるんだし」
「ははは。お嬢ちゃんにも、いまに分かる日がくるよ」
500名無しさん@ピンキー:2005/07/30(土) 23:58:01 ID:vFKISpBu
姫と男女
「マリー。信頼していた私を裏切るとはね」
「お許し下さい、姫様。私はどうなっても構いません。どうかジョンだけは」
「ダメだ、マリー。俺が食いとめている間に」
「ええいうるさい。我が館に忍び込んだその男の度胸に免じて、見逃してやろう。
 これ以上、貴様らに煩わされるのはまっぴらだ。どこへなりと行け」


王と姫
「もはや子供でもあるまいに、もう少し不死なる一族としての誇りを自覚し、家畜どもと馴れ合うのはやめよ」
「何が『不死の一族』ですか。そもそも私達の発祥は、『チカラ』を持った人に過ぎないではありませんか」
「言うな! 忌まわしきルーツを」


兄と妹
「いいか。僕達『不死の一族』は、死を超越した『チカラ』を持っている。
 それだけでも、死すべき定めの総ての生き物より高貴な存在なんだぞ」
「はっ。何が死を超越ですか。
 死を受け入れられずに未練がましく現世に残り、冥府から追放された呪われた存在に過ぎないのではないですか」


兄と妹
「なぜ、なぜマリーを…。マリーは私の家畜です。私がどうしようと自由ではありませんか」
「いいか。我々は貴族だ。貴族は名誉を重んじる。
 そして家畜ごときが貴族の館から逃げ出せたとあっては、貴族の沽券に関わる」


王と姫
「もはやお前を、我が一族と認める事はできん。どこへなりと失せよ」
「望むところですわ、父上。その程度で私の意思を変えられるとでもお思いでしょうか」
「ならば、当家に関わる総ての領民、総ての貴族にお前の『追放』の告知をする。
 総ての狩場において、お前は1日以上の滞在を許されない。滞在すれば負い立てられ、狩られる。
 お前を匿う者は、我が一族に対する反逆とみなされる。
 お前の前途に、将来に災いあれ」
「どうぞ、御自由に」


姫と骸骨
「気丈なことよな。優しき姫よ」
「何のご用でしょうか。髑髏の王よ」
「そうつれなくするな。善意からの忠告だ。
 気をつけよ。お主の一族を恨む者、憎む者がその矛先をお主に向けるであろう。
 早々に国を離れるがよい」
501名無しさん@ピンキー:2005/07/31(日) 00:00:00 ID:A8XGbpup
夕暮れ時にて。
「ええい、あいつめ。人間のくせに生意気な。こんどきちんと調教してやる。
 さて、今夜はあいつの嫌いな鯖の味噌煮にしてやるかな」


刺客と姫
「ほう。この国にはこの国の、我等の種族以外には我等以外の独特の、そんなテリトリーがあると思っていたが、まさか兄上の手の者に襲われようとはな。
 世間とは思ったよりも狭いものじゃな。
 さて、命は助けてやるから、訳を述べよ。私の気が変わらぬうちにな」


人を狩る者とそれを狩る者
「妙な動きがあるかと思いましたら。あなたがらみだったのですね」
「頼む。人の守護者を自認するなら、力を貸して欲しい」
「おやおや、妙な事の2乗ですわね。いったいどういうことなんですの?」


王子と骸骨
「しばらくぶりですな、髑髏の王よ。して、何用か?」
「何、暇つぶしだ。たまには人間と語らいたくてな。そちらの牢に一人の人間がいると聞いたが」
「しかし…」
「案ずるな。逃がしたり殺したりはせん。それとも、我輩と剣を交えるかね?」


少年と骸骨
「少年よ。そう怯えるでない。我輩は汝に危害を加える者ではない。
 それより感じぬか? 自分の運命が他の者によって良いように操られる憤りを」
502名無しさん@ピンキー:2005/07/31(日) 00:02:07 ID:A8XGbpup
再会
「痛むんだよ。お前にやられた傷が」
「我が兄上とは言え、ずいぶんと下衆な真似を」


決闘
「兄上。剣術は私の方が上だという事をお忘れですか?」
「おのれ、かくなるうえは…。動くな。動けばこいつの命はないぞ」
「どこまでも下衆な…」


「何故…? そうか、貴様の仕業か、髑髏王」
「その通り。約束は逃亡と殺害の禁止であって、剣術の教授は含まれておらん」
 決して筋が良いとは言えぬが、必死な分教え甲斐のある生徒だったぞ」
「おのれ、たかが家畜ごときに」
「そもそも貴族の地位とは、己が武力で勝ち得た物。
 貴族を名乗るなら、せめて人間相手にそれを実証してみよ。青二才」


「ふ、家畜の割になかなかやるではないか。見直したぞ。
 ……もし、……もしよければ、私と、呪いを分かち…
 な、何をする!」
「俺は君の家畜なんかじゃない」
「ふん。たかだか瀕死の弱虫を一人倒したくらいで、ずいぶんと態度が大きくなったものだな。
 来い。教育してやる」


「私の負けだ。さあ、止めをさせ。むしろお前に殺されるなら本望だ」
スパッ、ポタポタポタッ。
ゴクリ。
「なぜ、血を…」
カランッカラカラカラッ
「違う。俺は君を殺したいんじゃない。俺を一人前に見て欲しかったんだ」
「…ええい。この鈍感め! お前の頭は帽子掛けか。
 何ゆえ私がわざわざお前と暮らしたと思う。
 何ゆえ私がお前の世話を焼いたと思う。
 何ゆえ私が不死の呪いを分かち合いたいと言ったと思う」
「え、それって」
「これ以上、女に恥をかかせるな」
見詰め合い、唇を重ね…
「本当は、同族となってからのつもりだったのだが…、最早そんな事はどうでも良い。
 私が好きなのは、今のお前なのだ」

以下濡れ場。
503名無しさん@ピンキー:2005/07/31(日) 00:03:48 ID:CULG95RL
で?
504名無しさん@ピンキー:2005/07/31(日) 00:20:36 ID:Qiby3CLf
いいジャマイカ。
505名無しさん@ピンキー:2005/07/31(日) 16:23:18 ID:sAidYRP+
おいも好きでげす
506名無しさん@ピンキー:2005/07/31(日) 18:37:56 ID:1fCNhytb
このハイライトをちゃんとSSにしたらかなりの大作傑作になる悪寒
507霜ノ関 ◆EWgLYoRkiM :2005/07/31(日) 19:36:05 ID:AEOw+Hym
「それにしても驚いたわぁ。まさか、あれだけの事故でこの程度の怪我だなんて……」
吸血鬼少女が事故現場で助けてくれたおかげで単なる打撲で済んだ俺は、検査のためにと一日だけ
入院させられ、検査が終わって異常がないことをが確認されると、まるで追い出されるように退院することを決められた。
病院ロビーでの見送りは、担当の看護婦さんが一人いるだけという寂しいものだった。
奇跡的に助かった少年として報道陣に囲まれたいとは思わないが、担当医くらいには見送って貰いたいとは思う。
「幸助くん……これから大変だろうけど、頑張ってね」
自分には関係のない不幸を背負った人間に対する無責任な同情の声を背に、僕は病院を出た。
「遅いではないか」
病院を出た直後、横合いからいかにも待ちかねたというような響きの声が聞こえてきた。
振り向くと、そこには腰に手を当てて仁王立ちするのがお気に入りらしい吸血鬼少女がむくれていた。
「三時には終わると言っていたくせにもう五時だぞ……今更ながらに恐ろしくなって逃げたのかと思ってしまったではないか」
しかし、遅刻を責める口調と表情の中には、俺がちゃんと現れたことに対する安堵も混じっている。
「あ、ごめんごめん。ちょっと長引いちゃって……」
よく知らない人間と待ち合わせることの不安と、相手が現れた時の安心感は俺にもよくわかる。
吸血鬼というのも案外人間味があるものだと思いつつ少女に歩み寄って謝ったのだったが、
しかし、よく考えてみると、吸血鬼のくせに随分と人間味がありすぎて胡散臭い気もする。
特に、夏休みの真っ最中の今はこの時間でも日が出ている。
吸血鬼のくせに日中から外を出歩いている辺りが胡散臭い。
「なぁ、ところでさ……君は吸血鬼なのに、何でこんな時間から外を出歩けるんだ?」
疑問に思ってむくれたまま俺を見上げている少女に訊いてみると、よくぞ聞いてくれたとばかりに
お世辞にも大きいとは言えない胸を張り、自慢げに語り出した。驚いたことに、機嫌が治っているようだった。
「ふん。誇り高きローゼンベルガー家の娘たる私にとっては造作もないことだ。我が一族には、お前達人間が
想像しているような弱点などないぞ。日光はもとより、ニンニクも、水も、白木の杭も、火炎も効かぬし、
鏡に映ることもできる。招かれなくとも自由に家屋に侵入もできる。どうだ、驚いただろう?」
世間一般で認知されている吸血鬼の弱点を幾つも並べ立てて誇らしげに語る少女の様子は
十八になったばかりの俺から見ても幼い子供のように思え、何となくからかってみたくなってくる。
同意を求めてくる少女に向かって、ちょっと質問をしてみることにした。
「確かに凄いけど、十字架とかはどうなんだ?」
あまりにもメジャーな弱点なのに挙げていないというのが少し怪しい。
「う、うるさい! 余計なことに興味を持つな! もういい、さっさとお前の家に連れて行け!」
効果は絶大だった。一瞬で顔を真っ赤にした少女は、悔しそうな表情を浮かべるとぷいと顔を背け、
俺を置いてさっさと歩き出してしまった。かなり苛立っているようで、なかなかの早足だった。
本当に置いていかれた挙句に迷子にでもなられたら困る。俺は咄嗟に少女の手を掴んで引き止めた。
「あ、待てってば! 俺んち知らないだろ?」
「え……なっ…!?」
掴んだ瞬間にびくりと震えたものの反射神経がいいらしく即座に握り返してきた少女の小さな手は、
流石はアンデッドモンスターの一員というべきか少しひんやりとしていた。
「な、な、な、何をして……!」
少女はまだ怒っているのか、頬を赤く染めたまま掴んだ手と俺の顔とを交互に見ている。
こういう時に女の子をなだめる方法が即座に思い浮かぶほどの経験もない上に、
病院の真ん前ということもあって少しずつ通行人から好奇の視線が向けられ始めている。
「だから……俺の家がどこにあるか知らないだろ? 案内するから、ついてきてくれ」
このままここにいても泥沼に陥るだけだと気づいた俺は、なぜか騒いでいる少女を引っ張って
そそくさと病院前から立ち去った。
508霜ノ関 ◆EWgLYoRkiM :2005/07/31(日) 19:36:41 ID:AEOw+Hym
「……ふん、私をエスコートしたかったのならば、最初からそう言えばいいのだ。
素直にそう言えば、私もエスコートされてやるに吝かではなかったものを……
それをあんなに強引に引っ張りおって……まったく粗忽な男だな、お前は」
俺に手を引かれて歩きながら、少女がぶつぶつと呟いている。
じろじろと通行人に見られているのが恥ずかしいらしく、頬を赤らめ、ちらちらと救いを求めるように
俺のこと見てくるが、誰もが目を見張るほどの美少女なのが悪いのだから自業自得としか言い様がない。
「……手を握られた時は…正直、その、驚いたぞ……突然だったからな……」
「あ、ああ。ちょっと余裕がなかったから……あー、驚かせてごめんな」
ぶつぶつと文句を言いながら恨めしそうな涙目で俺を見上げ、少女は通行人達の視線から
身を隠すために俺に寄り添っている。本人が俺を風除けくらいにしか思っていないということはわかっているが、
やはりこういう状態だと周囲からもそういう目で見られるわけで、俺としても顔が赤くなるのを止められない。
「……あ、えっと、あのさ……」
寄り添って歩きながらの沈黙が心に重いので、何とか話題を見つけるべく声をかける。
具体的な話題を考えるのは話しかけてからというのは俺には無謀な気もするが、この際仕方がない。
「えっ、あ、な、何だ?」
俺の手を掴んだまま俯いていた少女が、弾かれたように顔を上げる。何を慌てているのか、よくわからない。
もしかして、寝ながら歩いていて話を聞いていなかった、とかそういうオチだったりするのだろうか。
「えっと、あのさ、名前、教えて欲しいんだけど……ほら、考えてみたら、自己紹介とかしてなかっただろ」
黙ったままでいると少女が「用もなく話しかけるな!」などと怒り出しそうなので、ふと思いついたことを言ってみる。
しかし、よく考えてみると相手の名前も知らずに同居を決めたというのは、結構問題があるかもしれない。
親父と母さんが生きていたら「もっとよく考えろ」と説教されるだろうな。
そんなことを考えながら、何やらしみじみと考え込んでいるらしい少女の答えを待つ。
「そうだな……私とお前は、まだ互いの名も知らぬ者同士だったのだな……」
淡い苦笑を浮かべた少女は、相変わらず偉そうながらも少しはにかんだ様子で名乗った。
「ラウラ・フォン・ローゼンベルガーだ。
私のことは、特別に……そう、特別にラウラと呼び捨てにすることを許してやる。感謝しろ」
取り敢えず頷いてみせたが、少し疑問に思う。
日本ならばともかく外国では名前で呼び合うのが普通のことと思うのだが、なぜ感謝しなければならないのだろう。
ふと浮かんだ疑問は、同じくふと浮かんだ答えで打ち消された。
今になって思い出したが、ラウラは吸血鬼の世界では貴族階級らしいのだ。吸血鬼同士でも敬われる立場に
あるのだから、俺のような人間に呼び捨てを許すというのは破格の好意だと考えられるかもしれない。
「あ、ああ。ありがとう。俺は七瀬幸助。俺のことも幸助でいいよ」
特別扱いをして貰っていると考えれば、ラウラの尊大な物言いだったとしても自然と嬉しくなる。
深い意味はないのだとしても、可愛い女の子に特別扱いして貰えることほど男にとって嬉しいことはあまりない。
「そうか……幸助というのか。幸助……幸助か……ふむ……わかった。これからは幸助と呼ぶぞ」
それほど珍しい名前でもないはずなのだが、ラウラは口の中で何度も俺の名前を呟いている。
外国から来たというラウラにとっては、日本人の名前は物珍しく聞こえるのかもしれない。
509霜ノ関 ◆EWgLYoRkiM :2005/07/31(日) 19:37:13 ID:AEOw+Hym

「ほう、ここが幸助の家か。何だ、貧相な兎小屋ではないか」
俺の家を見ての開口一番がこれだというのは、予想はしていたが頭に来る。
確かに貴族だというラウラから見れば二階建ての建売住宅など兎小屋かもしれないが、流石にこれは頭に来る。
安っぽい兎小屋かもしれないが、それでもこれは親父が必死で働いて買った家だ。
「親父が汗水垂らして買った家を馬鹿にする権利があるのかよ」
「あっ……!」
反射的にラウラの手を振り払った俺の口をついて出た声は、自分でも驚くほど静かで、驚くほど冷たいものだった。
自分でも制御できない口が勝手に冷たい怒りを吐き出し、ラウラに叩き付けていく。
ただ、俺の心に渦巻いているのは、親父が遺してくれたものを馬鹿にされた怒りだけではなかった。
「……すまな」
俺はラウラが何かを言おうとするのを遮って続けた。
「確かに凄い家の出のお前にとっちゃ、こんなのは兎小屋や犬小屋と変わらないだろうさ」
親父が遺してくれたものを馬鹿にしたのがラウラだという悲しみの方を、より俺は覚えていた。
「でもさ、だからって俺の親父が俺達家族のために働いてくれたことを馬鹿にするなよ。何様のつもりだ」
淡々と言い終えて、俺は気づいた。誇り高いというか負けず嫌いというか微妙なラウラが、
ここまで言いたい放題に言われても何も言い返してきていないということに。
見れば、ラウラは俯いたまま黙っている。ラウラも悪意を持って兎小屋と言ったわけではなく、
単なる感想として兎小屋という言葉を使っただけなのだろう。
全面的に俺が悪いとまでは思わないが、些細なことに過剰反応してしまったことは事実だということも
わかる。言い過ぎたことを謝ろうとも思う。
だが、ラウラが黙ったまま俯いていることによって何だか拒絶されているような気分になってしまい、
どうしても一歩踏み出す勇気が出ない。
重苦しい沈黙が俺達二人の間に流れる。
何か気の利いた一言でも言えれば雰囲気も変わるのだろうが、生憎と俺にそんな話術はない。
これが恋人同士だとかそういう親しい間柄ならばキスやハグの一つもすれば和むのだろうが、
俺達はほんの一日前に知り合ったばかりで名前もつい先ほど知ったという程度の仲でしかない。
どうすればいいかわからずにおろおろする俺と、何を考えているのか読めないが悔やんでいるには
違いない様子のラウラの間で、胃が痛くなるような沈黙が続いた。
結局、動いたのは俺だった。
俺が強引に掴み、俺が先ほど振り払った小さくか細い手を再び掴む。
「ラウラ……」
「あっ……!」
手と手が触れ合った瞬間、ラウラが小さく声を上げて驚いたように手を引こうとしたのがわかった。
やはり、俺はラウラに拒絶されている。しかし、ここで引くわけにはいかないので逃げようとする手を強引に掴む。
510霜ノ関 ◆EWgLYoRkiM :2005/07/31(日) 19:37:49 ID:AEOw+Hym
「……離せ。私に触るな」
手を振り払おうとしながら顔を上げたラウラの表情の意味はよくわからない。何かを堪えているようだが、それは怒りか悲しみか。
どちらにせよ、些細な一言に対してあれだけのことを言われれば傷つくというものだろう。
ただ、俺は罪悪感を覚えながらも安心した。
その気になれば簡単に俺の手を振り払えるラウラが本格的にそうしようとしていないということは、拒絶されているわけではない。
これが本格的な拒絶に変わる前に、話を聞いて貰える内に、言うべきことを言っておかなければならない。
「……ごめん。言い過ぎた」
掴んだままのラウラの手が一瞬だけ震え、抵抗が止まった。
「君が深い意味を込めて言ったんじゃないことはわかってた。それなのに、過剰反応して……ごめん」
こんなことしか言えない自分が恨めしい。子供のような謝り方だとしか言えない。
これでは絶対に閉じかけた心を開くことはできないだろう。
もう何も言えなくなった俺は、口を閉ざしたままラウラの表情を窺った。
ラウラも黙ったまま俺を見ている。呆れているのかもしれないし、失望したのかもしれない。
名前を教えてくれた時のラウラが浮かべたはにかんだ表情が脳裏をよぎり、余計に悲しくなる。
これから一人でどうやって暮らしていくかまで考え始めたその時、ラウラが俺の手を握り返してきた。
冷たいはずの手なのに、なぜだかとても温かく感じる。
「え……?」
「……わ、わかれば、わかればいいのだ。私は幸助と違って心が広いから、特別に許してやる。
その代わり、もう二度とあのような冷たい態度を私に対して取るなよ!」
予想外の反応に慌てる俺に対し、ラウラは目にゴミでも入ったのか乱暴に目元を袖で拭ってから
知り合った時と同じような尊大だがどこか安堵しているような態度で告げてきた。
「……ありがとう、許してくれて」
上から見下ろすような偉そうな物言いだったが、そんなことは関係なしに心が楽になった。
「な、何だ。何をにやけている? 怒ったかと思えば笑い出すとは、よくわからない男だ」
ラウラが戸惑ったような目で俺を見てくるが、自然と顔が綻ぶのを止められない。
だから、普通ならば絶対に言えないような恥ずかしい台詞も自然に言うことができた。
「君が俺のことを許してくれたのが嬉しいんだよ」
「なっ……真顔でそういうことを言うな!」
あまりに恥ずかしい台詞にラウラが目を見開いて呆れているのも、今は全く気にならない。
両親が死んだ翌日にこんなことを思うのは申し訳ないし不謹慎だが、本当に今日はいい日だ。
「いつまでも玄関前にいるのも何だし、さっさと家に入ろうぜ」
しっかりと握り返してくるラウラの手を掴んだまま、俺はラウラを連れて帰宅した。
511霜ノ関 ◆EWgLYoRkiM :2005/07/31(日) 19:38:28 ID:AEOw+Hym
「ここがトイレと風呂場。風呂は水の無駄遣いさえしなければ好きなように入っていいよ」
玄関から近い順に家の間取りを説明しておくことにした。
「ああ、わかった……そういえば、日本では浴槽に湯を溜めてゆっくりと浸かるのだったな」
「へー、よく知ってるな。じゃあ、湯船に石鹸とか入れないのもわかってるよな」
「当然だ。私を誰だと思っている」
小さな胸を張って得意げな様子のラウラは、流石は名家のお嬢様というだけあって雑学じみた教養が豊富だった。
「この先にあるのが居間と台所で、この階段を上ると寝室があるんだ」
トイレと風呂場を通り過ぎた所に二階への階段があり、そこには寝室がある。
「向かって右が親父達の部屋だけど、遺品とかの整理があるからまだ入らないで」
手を引かれているラウラに対して何のしがらみもなく説明できる辺り、
俺は親父達が死んだという事実を淡々と受け止めることができているのかもしれない。
それどころか、ラウラに家の中を紹介するのが楽しくて親父達のことを忘れそうになっている辺り、
俺も大分薄情な人間なのかもしれなかった。
「で、こっちが俺の部屋。中、見るか?」
「あ、いいのか? おい……」
返事を待たずに部屋の扉を開け、ラウラを中に引きずり込む。
女の子を部屋に上げるなどというのは初めての経験だから、俺も少しはしゃいでいるのかもしれない。
「……これが幸助の部屋か」
「ちらかってて恥ずかしいけど、まぁ、俺の部屋」
無反応なのも困るが、興味深げにじっくりと見られても恥ずかしい。
「ほう、本がたくさんあるのだな。ふむ、芥川にゲーテに……無節操な蔵書だな」
本棚を覗き込んでラウラが笑う。同年代に比べて読書量が多いのは密かな自慢だ。
「ん? こちらのは何だ……」
密かに得意になっていたら、本棚を覗き込んでいたラウラが机の裏に何かを見つけたようだった。
その瞬間、血の気が引いた。そうだ、机の裏にはあれがあった。
「あっ、待て、そっちは……」
慌てて止めようとしたが、もう遅かった。
「何を後生大事に隠して……な、な、何だっ、何だ、これは! こ、ここ、このような猥褻な……!」
数冊の雑誌を机の裏から引っ張り出したラウラは、表紙を見るなり顔を真っ赤に染めた。
「そ、それは、その、えーと……」
まさか、完全無修正女子高生写真集だなどとは口が裂けても言えない。
「……幸助。その、お前は、ああいや、男はみな、ああいうのが好きなのか?」
頬を染め、俺から視線を逸らしたラウラがぼそぼそと呟いて問いかけてくる。
やはり、女の子には理解しがたいものなのだろう。だが、巨乳女子高生は男のロマンだ。
「あ、当たり前だろ、巨乳が嫌いな男がいるもんか」
その瞬間、ラウラが物凄い力で写真集を握り潰した。
「こ、こんないかがわしいもの、私がこうしてくれる!」
ラウラの掌が赤く発光し始めた。まさか、炎でも出して燃やすつもりだろうか。
「あああっ、ちょっ、ちょっと待ってっ、頼むからやめっ……」
「問答無用!」
俺の秘蔵の品はラウラの手の中で灰にされた挙句、窓から外にばら撒かれた。
「……ラウラ、もう、下に戻ろうか。居間とかを案内するよ……」
これ以上の被害を出さないため、むすっとしているラウラを部屋から連れ出した。
512霜ノ関 ◆EWgLYoRkiM :2005/07/31(日) 19:39:00 ID:AEOw+Hym
「まぁ、そんなに怒らないでくれよ……」
ソファにふんぞり返ったままむくれているラウラに、何とか機嫌を治して貰おうとあれこれ話しかけてみる。
「お、お前が悪いのではないか! あんないやらしいものを……思い出すのも汚らわしい!」
良家のお嬢様というだけあって、ラウラは随分と潔癖な女の子だった。可愛いことは可愛いが少し扱いにくい。
「いや、あれは男の子の夢だから……」
俺を睨むラウラの目が余計に険しくなってきたので、慌てて話題を変えることにした。
「な、なぁ、それよりも、さ。ちょっと早いけど飯でも食わないか?」
まだ六時過ぎだが、この時間から夕飯を食べる家もあるから別に構わない。
母さんはいつも数日分の食料を冷蔵庫に入れているから、有り合わせのもので何か作れるだろう。
「夕食? 幸助はもう腹が減ったのか?」
どうやら、ラウラはまだ空腹を感じてはいないらしい。失敗だったか。
「いや、幸助が食べたいのなら、私は別に構わないぞ」
そう思ったら、俺の意思を尊重してくれるつもりらしい。よし、それならば決まりだ。軽く蕎麦でも茹でるとしようか。
「あ、私のことは構わなくていいぞ。私は吸血鬼だからな。
普通の食べ物を食べられないこともないが、実際に栄養を摂るとしたらやはり血液が最も適している」
なるほど。そういえばラウラは吸血鬼だった。人間らしくてついつい忘れてしまっていた。
取り敢えず、ラウラが食べないというのなら俺はカップラーメンでいいだろう。
問題はラウラの食事だ。まさか、勝手にそこらで人間を襲って来いとも言えない。
「じゃあ、俺が飯食い終わった後で俺の血を吸ったらどうだ?」
仕方がないので、俺が人肌脱いでやることにする。話に聞く限りでは吸血=死ではないらしいし、別に構わないだろう。
「え……い、いいのか?」
ラウラは信じられない、といった表情を浮かべて俺を見ている。自分から血を捧げる人間が珍しいのだろうか。
「その代わり、吸い殺さないでくれよ?」
「あ、当たり前だ! 幸助のことを殺すなどと、そのようなことをするはずがない!」
軽い冗談のつもりだったのに、真っ赤になって主張してくるのはなぜだろう。もしかして、図星だったのだろうか。
吸血許可をしたことを少しだけ後悔しないでもないが、ラウラが嬉しそうな顔をしているならそれでいい。
「じゃ、俺はカップ麺でも食うから、ちょっと待っててくれ」
台所に向かってヤカンで湯を沸かす。一人分の湯なのでものの数分で沸騰した。
「カップ麺というのは、乾燥した麺を湯で戻すというあれか?」
「ああ、それそれ」
「確か不健康な生活の温床になっているという話だったな」
「ああ、確かにな。しかし、よく知ってるな、お嬢様のくせに」
俺がそう答えると、ラウラは少し考えてから言った。
「……カップ麺もほどほどにしておけ。お前のような男の唯一の取り得は健康だけなのだからな」
ボロクソに言われて腹が立たないでもないが、一応は心配をしてくれているようだったのでよしとする。
「はいはい、わかったわかった…っと、そろそろいいかな」
無駄話をしていたら、あっという間に三分が過ぎた。早速、食べるとしよう。
「……ふう、最近のはなかなかボリュームがあるな」
最近のカップラーメンは値段が高いものが多い分、スープも含めれば量も相当な量がある。
体格の割りに少食だと言われる俺には少し量が多かったようだ。どうにも腹が膨れて苦しい。
「……ん?」
向かいのソファに座っているラウラから視線を感じたので、そちらを見てみる。
俺が食べている最中もちらちらと視線を送ってきていたのだが、もしかして、ラーメンが欲しかったのだろうか。
513霜ノ関 ◆EWgLYoRkiM :2005/07/31(日) 19:40:09 ID:AEOw+Hym
「どうしたんだ? ラーメン食いたくなったのか? 欲しいなら作るけど、どうする?」
仮にも名家の出なのだから、自分から催促するのは抵抗もあるだろう。
そう思ったので、親切なことに俺の方からいるかどうかを聞いてやることにする。
「違う! わ、私の食事はどうなっているのかと、そのことをだな……」
その場に起立して否定したラウラは、そのすぐ後で恥ずかしそうにもじもじし始めた。
貴族の令嬢らしいので、やはりそういうのは嗜みだとかそういうのがあって言いにくいのだろう。
「あ、ああ、血ね……」
先ほどは何でもないように提案したが、やはりいざとなると怖い。
当然だ。同じ血を吸われるのでも、相手は蚊などとは格が違う、正真正銘の吸血鬼だ。怖くない方がおかしい。
「…ふん、やはり怖くなったようだな」
逡巡していたら、ラウラが見透かしたような表情を浮かべた。失望や悲しみも混じっているようだった。
「いや……心の準備ができてなかっただけだ。もう準備はできた」
そんな切なそうな表情を浮かべる美少女から食事を取り上げるようなことは、俺にはできない。
俺はラウラを手招きした。
「死なない程度に吸ってくれ」
「……うむ。私に任せておけば大丈夫だ」
その「間」に少し不安が残るが、考えてみれば蚊に血を吸われるのを少し凶悪にした程度のことだ。過剰に怖がる必要はない。
「ところで、どこから吸うんだ? 手首か?」
俺が座っているソファに乗っかり、俺の膝に座るような状態になるほど近づいてきたラウラに、ふと疑問を感じた。
「いや……首だ。そこの血が最も美味い。だから、首を傾けて吸いやすいようにしろ」
吸血鬼が首から血を吸うのには絵的な美しさだけでなく、実益上の意味があったとは驚きだ。
「ん、そうだ。そのくらいでいいな。で、では、いくぞ」
「お、おいっ」
そうするのが最も適しているとは思うが、背中に腕を回された挙句に密着されるというのはどうにも気恥ずかしい。
少し冷たいが充分に女の子の柔らかさを感じさせる身体の感触が、また何とも悩ましい。
頬と頬が触れ合うほどの距離にあったラウラの横顔がこちらを向く。
514霜ノ関 ◆EWgLYoRkiM :2005/07/31(日) 19:40:41 ID:AEOw+Hym
「う、うるさい。こうしないと吸いにくいのだ! それよりも! まったく、気の利かない男だな!」
頬を真っ赤に染めたラウラは、涙目になりながら俺のことを睨んでいる。
「頭と背中に腕を回して支えて、私が血を吸いやすいようにしろ!」
「えっ……や、でも、それはな……」
要するにそれはキスシーンでよくある、互いの身体をきつく抱き締め合うという構図だ。
俺としては非常に嬉しい反面、かなり恥ずかしくもある。ラウラにとっては不愉快なだけだろう。
食事一つにそこまでの手間と忍耐を強いられるとは、吸血鬼というのもなかなか大変そうだ。
「い、いいからっ! いいからさっさとしろ! 手間をかけさせるな!」
「わ、わかったから怒るなよ!」
躊躇っていたら、涙目のラウラに怒鳴られてしまった。耳が痛くなってきたので、大人しく言われた通りにする。
「……あ、気持ちいい」
華奢な背中は引き締まっている割りに柔らかいし、何と言っても絹糸のような髪の手触りが別格だ。
「こ、こらっ! 幸助はただ支えているだけでいいのだ! よ、よ、余計なことはするな!」
ついつい撫でてしまい、頬をこれ以上ないほど赤く染めたラウラに叱られてしまう。怒る仕草も可愛いが、やはり耳が痛い。
「……で、では、いくぞ。い、今から吸うからな。暴れるんじゃないぞ」
緊張した声と共に首筋に熱い吐息が吐きかけられる。それだけでわけのわからない快感が生まれ、背筋がぞくぞくしてくる。
柔らかく湿った何かが首筋に押し当てられる。唇だろうか、それとも舌だろうか。どちらにせよ、気持ちいいからそれでいい。
「し、仕方ないだろう。こうして舐めておかないと傷が痛むのだから!」
言い訳するような呟きが聞こえてくる。何だかよくわからないが、吸血鬼も大変だ。
ちくりという小さな痛みが首筋に走る。唇らしきものが押し当てられ、吸われているような感覚が伝わってくる。
「……ほう、これはなかなか…ん、幸助の血だからか。無性に美味い。ああ、これほどの美味は初めてだ……」
うっとりとした様子のラウラが吸いながら何かを言っているのが聞こえるような気がするが、血というよりも
活力を吸われているような気分になっている俺には何のことだかよくわからない。何だか、段々と意識が遠のいていくような気がする。
「あぁ……幸助、美味いぞ、お前の血はとても……幸助!? どうした、幸助! しっかり……ああっ、頼む、死なないでくれ!
幸助、幸助っ! 死ぬなっ、頼むから、お願いだから、死なないで……!」
血相を変えたラウラに肩を揺さ振られるのを感じながら、俺の意識は闇へと消えた――
515霜ノ関 ◆EWgLYoRkiM :2005/07/31(日) 19:41:30 ID:AEOw+Hym
好評だったので続きを書いてみた。
それにしてもツンデレは難しい。
果たしてこれでちゃんとツンデレになっているのか疑問だ。
以上。
516名無しさん@ピンキー:2005/07/31(日) 19:53:44 ID:g8EWJ8qj
>515
コレだ!!!

コレが我々の待ち望んでいたツンデレなのだ!
517名無しさん@ピンキー:2005/07/31(日) 21:12:39 ID:fpVLRul9
>503
よろしかったらどうぞ。楽しめたら幸いです。
楽しめなかったら? すまんが諦めてくれ。

>504-506
ありがとうございます。
が、現在手一杯なので、残念ながら未完のままでしょう。

>507
しまった。俺はとんでもない奴に元ネタを提供してしまったかもしれん。
俺の吸血鬼なんかより遥かに萌える。
518名無しさん@ピンキー:2005/07/31(日) 21:13:09 ID:fpVLRul9
「ふん、ここらで良かろう。出て来い。隠れているのは分かっているぞ」
「姫ともあろう御方が、買物袋片手に夕食の買出しですか。腑抜けたものですな」
「もはや我は一族より追放された身。よって姫にあらず。庶民の暮らしをしても構うまい」
「いえいえ、あなたはやはりご一族の一員に過ぎません。我恨み重なる一族のねっっっっ」


人の狩人とその狩人と少年
「なぜその少女を庇うのなのですか。彼女は人の生血をすする闇の住人ですわよ」
「違う。彼女はそんな邪悪な者なんかじゃない。現に、今までだって」
「ですが、貴方を家畜呼ばわりしてますわ。所詮は闇の住人の、それも最も業深き貴族である事に変わりはないのですわよ」


少年と少女
「何の用だ」
「君が一人で戦いに行くのに、ほっとける訳ないじゃないか」
「いい気になるな、家畜風情が。手負いの私にすらあっさりと負ける程度で、何かの力になれるとでも思うのか」


少女一人
「そうだ、去るが良い。私に関わると災いに巻きこまれる。我が身が『追放者』なれば。
 ……もう、私に関わる者が死ぬのには、耐えられないから……」


闇の狩人と骸骨
「信じられませんわ。まさか、頭蓋と胸骨と腰骨を破壊したのに、まだ動けるなんて…」
「ふむ。この命中精度に、我輩に射線を読ませぬ腕前、すばらしい技量だ。その技量を見込んで頼みがある。
 『不殺の姫』とは、既に会ったであろう。彼女に会い、場合によっては助力してくれまいか?」


二人の姫
「後ががら空きだぞ。よくそんな実力で、不死者の狩人などをやってられたものだな」
「あら。足手まといがいなければ、後を取られるような場所に留まったりしませんわ」
「私が足手まといだと?」
「ええ」
銃声
「忍び寄る敵にも気付かない程鈍いのでしたら、十分足手まといですわ」
「ふん。これで貸し借り無しだぞ」
519名無しさん@ピンキー:2005/07/31(日) 21:25:59 ID:b65xvpZq
出来れば一つの纏った小説にしてくだはい
520名無しさん@ピンキー:2005/07/31(日) 22:28:03 ID:+njRSPFo
エロシーンが見当たらないことについて
521名無しさん@ピンキー:2005/07/31(日) 23:27:47 ID:jzfx7MGe
>>515
GJ!!これぞツンデレだ!
522名無しさん@ピンキー:2005/08/01(月) 00:56:52 ID:U3E0xrDj
>>515
好いツンデレ、好い吸血ですた。
激しくGJ!
523名無しさん@ピンキー:2005/08/01(月) 01:23:27 ID:s/igk37J
ラウラ可愛いよラウラ

日に日にげっそりしていく幸助と、それを心配する友人とか
精のつくものを食べさせようと料理なんかしてみるラウラとか、そーゆーのきぼんぬ
524名無しさん@ピンキー:2005/08/01(月) 01:40:27 ID:dgDXJ/Br
増血剤でマッチポンプ。
525名無しさん@ピンキー:2005/08/01(月) 04:11:42 ID:GPCdJy0k
ケルト書くいうてた者ですけど、
間延びしていく上にエロや萌えの欠片すらありませんやばいです

上げるにしてもきりのいいところまでにしてからにしますのでもう暫しお待ちください

まさか自分がこんなに遅筆だとはorz
526名無しさん@ピンキー:2005/08/01(月) 04:11:53 ID:JMKptwTu
鬼め・・・
いや、吸血鬼だからまんまになっちゃうか
527名無しさん@ピンキー:2005/08/01(月) 15:21:10 ID:5z2taPbP
猫又の青年と魔女っ娘のラブコメを書きたいなぁ。
528名無しさん@ピンキー:2005/08/01(月) 16:20:23 ID:rh2micqS
>>515 GJ!

幸助の血を吸い過ぎて血相を変えるラウラが最高っす。
529名無しさん@ピンキー:2005/08/01(月) 17:40:03 ID:rQUW2LjM
ツンデレの上に天然か・・・萌え死ぬZE
530名無しさん@ピンキー:2005/08/01(月) 19:24:32 ID:jhkgfMVE
人間以外の女の子とのお話を見てるみんなぁ〜
げんきぃ〜?
おにいさんはねぇ〜〜
も う だ め ぽ
萌え死ぬ
531名無しさん@ピンキー:2005/08/01(月) 20:20:53 ID:fgQg0XAL
・・・猫の人は帰って来ないのかな
532名無しさん@ピンキー:2005/08/01(月) 20:34:03 ID:04cS9Vyc
個人的にあの猫の話はかなりツボだったんだけどな…
533名無しさん@ピンキー:2005/08/01(月) 20:59:04 ID:RlFF2h/6
人間の男の子&人間以外の女の子小説
人間以外の男の子&人間以外の女の子小説
人間以外の男の子&人間の女の子小説
人間の男の子&人間の女の子小説

このスレ的にはどこまでが許容範囲ですか。
534名無しさん@ピンキー:2005/08/01(月) 21:03:08 ID:H/vMT6bn
>>533
人間以外の男の子×人間以外の男の子
かねぇ…つーかスレタイ良く嫁
535名無しさん@ピンキー:2005/08/01(月) 21:43:13 ID:mjeb/oa2
>>534
厳密に言えば人間の男の子&人間以外の女の子小説じゃないのかなあ。
人外×人外は
【亜人】人外の者達の絡み【異形】
ttp://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1098260654/

投下する神様のお気に召すままなのが一番なんだけれども。
536名無しさん@ピンキー:2005/08/01(月) 21:55:32 ID:s/igk37J
>533
・人間以外の男の子&人間の女の子小説
俺的にコレはセーフかも。
537名無しさん@ピンキー:2005/08/01(月) 22:31:55 ID:q7ogwqjO
定期的に繰り返されるから何だかなー。
投下する方の判断次第なんだから、板の流れとか読んでくれとしか言えないのがもどかしい。
538名無しさん@ピンキー:2005/08/01(月) 23:22:01 ID:P0swIgX6
いやでもさ、
この問答が繰り返される=知らない人間が定期的に来ている=新規参入者流入順調=板活性not停滞の証明
って考えたら、そう悪いことでもないんで無いかい?
前向きにとらえましょ、なるべく。
539名無しさん@ピンキー:2005/08/01(月) 23:42:21 ID:S0fwahMd
すくなくとも1を読めば、スレの趣旨や趣旨と違うものの行き場がわかる。
540名無しさん@ピンキー:2005/08/02(火) 00:09:08 ID:Y4VnCpFg
>534
ちょっと待て。
どさくさに紛れて何を許容してるんだw
541名無しさん@ピンキー:2005/08/02(火) 00:11:21 ID:xVNAyyqp
>>540
何を言ってるんだ君は…エエエエエエ
542名無しさん@ピンキー:2005/08/02(火) 01:40:43 ID:LeGNhvve
ああ、「ほしをみるひと」や「猫の話」、「妖精学者」の続きが読みたいです。
作者の方、続きをプリーズ。
543名無しさん@ピンキー:2005/08/02(火) 03:06:53 ID:g4PRdzGY
解離性同一性障害の少年の主人格×少女の副人格

みたいな実体の無い女の子とのエッチも可?
544名無しさん@ピンキー:2005/08/02(火) 03:19:02 ID:tEPed128
>>539
>すくなくとも1を読めば、スレの趣旨や趣旨と違うものの行き場がわかる。

>>1 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2005/06/17(金) 02:43:07 ID:OrhlcOUY
>>幽霊妖怪天使に悪魔、ロボットだってエイリアンだって何でもOK!

なんでもいいんですね
545別の人魚の場合 ◆WmvQVwDatU :2005/08/02(火) 05:11:28 ID:vV8u4ns5
>>312の続きを投下します。
546別の人魚の場合 ◆WmvQVwDatU :2005/08/02(火) 05:14:45 ID:vV8u4ns5
初めて武志を見かけたのは、彼がまだ7歳の時。
当時はまだ人魚の国で暮らしていたわたしは、満月の晩だけ外に出て色々なところに行って好奇心を満たしていた。
そんな中で偶然この近くの砂浜を訪れ、彼を見かけたのだ。

海面から頭だけを覗かせると、夜の砂浜に1人で立っている子どもがいた。
その視線は真っ直ぐこちらに向けられていて、わたしは子どもとはいえ人間に見つかってしまったと思い、慌てて海に潜って岩陰に滑り込んだ。
人間は野蛮で残酷な生き物だって聞かされていたから。
何とか逃げ出せたものの捕らえられて酷い仕打ちを受けたことがある人魚の話を聞いて、その日は眠る事もできないくらい怯えた事もある。
けれど、しばらくその岩陰に隠れていたけど、海面の方に別の人間が集まってきている様子はなかった。
不審に思ってもう1度、今度は別の場所から頭を覗かせると、砂浜の子どもはさっきわたしがいた方向をまだずっと見ていて、今わたしがいる方なんて見ていない。
そこで、どうやらあの子どもはわたしを見付けたわけじゃなかったということがわかって安心した。
もしそうなら、わたしを見失ってキョロキョロしているのが普通のはずだから。
その日は、それだけだった。
変な子どもだとは思ったけど、それだけだった。
547別の人魚の場合 ◆WmvQVwDatU :2005/08/02(火) 05:20:35 ID:vV8u4ns5
次の満月の晩、またわたしは砂浜までやってきて、そこでまた、あの子どもを見付けた。
今度は彼がそこから立ち去るまで見ていようと思ったけど、いつまで経っても彼はそこから動こうとしない。
結局空が白み始めたところで、わたしは諦めて国に帰った。
明るくなってしまえば、他の人間に見つかってしまう危険が高くなるから、それ以上はそこにいられなかったからだ。

その次の満月の晩も同じことを繰り返した。
その次も、その次も。
自分でもどうしてそこまで彼のことが気にかかるのかわからないまま、それでも満月の度にこの砂浜を訪れることが1年近く続いた。
今にして思えば、わたしは彼の瞳に興味を持っていたんだと思える。
顔のパーツは人間と人魚で違いはそんなにないから、表情は読み取ることができた。
寂しげで、けれどそれを無理矢理押し隠そうと目尻に力を込めたもの。
彼は毎回ではないけど、かなりの確率で砂浜に来ていた。
その内に、彼は満月の晩以外も来ているのだろうかという疑問が湧いてきた。
だけど、わたしが国から出ていいのは、満月の晩だけと決められている。
外には危険がいっぱいで、本来ならそれすらもあまり周囲からいい顔をされていないのだ。
少し悩んで、結局わたしは今から考えれば満月以外の晩に国を出るより、はるかに無茶な行動に出た。
彼の寂しげな瞳が、話に聞いていた野蛮で残酷だという人間像とはどうしても重ならなかったが故の行動。
「……キミ」
砂浜に近づき、慣れない人間の言葉で、その子どもに語りかける。
いつかこんな日が来るかもしれないと、自分でも思っていたのかもしれない。
もちろん人間と話すのなんて初めてだったけど、周囲には内緒で、わたしは人間の言葉を勉強し始めていたのだ。
他の人魚は見向きもしないけど、人魚の国にも一応人間の言葉についての資料は存在している。
まだそこから幾つかの言葉を覚えただけだけど、それでも何かがわかるかもしれないと思った。
548別の人魚の場合 ◆WmvQVwDatU :2005/08/02(火) 05:22:22 ID:vV8u4ns5
「――!?」
突然声をかけられた彼が驚いて周囲を窺っている。
夜だから、人間にはこちらが見えないんだろう。
だからわたしは声でこちらの場所を報せる。
「ココ」
「――――!?」
ようやくわたしを見付けた彼が何かを言ったけど、早口だったせいでうまく聞き取れなかった。
「ユックリ、ハナス。
 ワタシ、ニンゲン、コトバ、ワカラナイ」
「人間の言葉って……」
『人間』と『言葉』という知っている単語だったので、今度は何とか聞き取れたわたしは、自分の正体を明かすために、水面から跳ね上がった。
空中にいたのは一瞬だけど、今日は満月の晩だから、予めわたしの方を見ていれば下半身が見えたはずだ。
「ワタシ、ニンギョ」
「人魚……?」
「ホカノニンゲン、オシエル、ダメ」
「え、あ、うん」
人間は普通人魚の存在を知らないらしいから、さすがに驚いているのか彼は素直に首を縦に振る。
この仕草が人間の中では肯定を意味するものだということも資料にあった。
「えーと、あ、あっち、あっちに、行こう」
彼がある方向を指差しながら、あっちという言葉を繰り返す。
彼の示した方向にある岩壁には、それなりの大きさの洞窟が口を開けていた。
そこには海水も入り込んでいるらしく、そこでなら確かに他の人間には見つかりにくそうだ。
もちろんそこに閉じ込めるつもりかもとは思ったけど、たぶん彼はそんな事しないだろうし、他の人間が潜んでいても人魚の鋭敏な感覚なら見抜けると思った。
だから、わたしはその洞窟に向かって泳ぎ出し、それを見た彼もそこへ移動し始める。
549別の人魚の場合 ◆WmvQVwDatU :2005/08/02(火) 05:24:03 ID:vV8u4ns5
洞窟の奥でわたしと彼は向かい合っていた。
「キミ、イツモ、クル」
「……え?」
「ワタシ、マンゲツ、ヨル、ココ、クル。
 キミ、イツモ、イル」
「見てたんだ……」
「マンゲツ、チガウ、ヨル、イル?」
わたしのたどたどしい質問に、彼は首を縦に振った。
肯定だ。
「ナゼ? キミ、コドモ。
 コドモ、ヨル、イエ、イル」
まだ自分の身が守れない内は、危険の多い夜はあまり出歩くべきではないというのは、人魚も人間も同じだと思った。
「僕は家に――――」
最初の僕や家はわかったけど、続きがわからない。
それを察したのか、彼はもう1度、わかりやすいようにゆっくりと言い直してくれる。
「僕が、家に、いるの、親が、ゆるさないんだ。わかる?」
今度は言葉はわかったけど、その理由がわからなかった。
「オヤ、ユルサナイ、ナゼ?
 オヤ、コドモ、スキ」
人間にはわたし達と違って、父親と母親という2人の親がいるらしいというのは知っていた。
人魚はそれで言うと母親だけで――ある意味では、全ての人魚にとって女王様が人間でいう父親に当たるのかもしれないけど――、
それでも、その辺が違っていても親にとって子どもが大切なのは変わらないはずなのに。
「僕の、親、本当の、親じゃないから」
寂しげに夜の海を見つめていた瞳。
その瞳に宿る寂しさをさらに深くしながら、彼はそう言った。

それからは毎回満月の夜になると、この洞窟で彼と朝まで話すようになった。
お互いの名前も教え合い、1年もするとだいぶ彼の言葉もわかるようになってくる。
550別の人魚の場合 ◆WmvQVwDatU :2005/08/02(火) 05:27:22 ID:vV8u4ns5
今日も洞窟の底で彼が来るのを待つ。
そうしていると、やがて彼の足音が近づいてくるのが聞こえた。
「武志」
「セオ、僕が呼ぶまで出てきちゃいけないって何度も……」
「足音で武志だってわかる。
 他の人間とは間違えない」
そんないつものやりとりを終えて、水辺にお互いが腰掛けるのにちょうどいい石がある場所に行く。
ただ、ああは言ったものの、今日の彼の足音は少しだけ違っていた。
その変化は初めてと言うわけじゃないから、その原因はわかっているけど。
「また、されたの?」
「え? ああ、セオには隠し事できないなぁ。
 でも大丈夫だよ、兄さん達は本気では殴ったりしないから」
彼は今、元々自分の家族じゃなかった人達と暮らしているらしい。
頻繁に夜の砂浜に来ていたのも、理不尽なことで怒られてその罰として家を追い出されていたせいだ。
暴力も振るわれるらしく、今日の彼の足音は痛む部分を庇いながら歩くせいでわずかに乱れていた。
「こんなこと本人達に言ったらまた殴られるけど、家の仕事の手伝いは兄さん達より僕の方が全然手際いいから、僕が動けなくなったりはしないように上手く手加減してくれるんだよ」
彼は笑いながら言うけれど、それはひどくおかしいことだと思う。
人魚は種全体の中で見ても争いごとなんて滅多にしないのに、人間は家族の中ですら暴力を振るうのだ。
彼の場合、本当の家族ではないらしいけど、それでも一緒に暮らしているならやっぱり家族だとわたしには思えた。
それを聞くと、人間は野蛮で残酷だと聞かされていた話が、やっぱり本当なんだと思えてきて少し悲しい。
人間が全部、そんなんじゃないということも、今では知っているけど。
そして、その日もいつものように朝までお喋りして、いつものようにわたし達は別れた。

けれど、次の満月の晩、わたし達はいつものように会うことができなかった。
わたしがあの洞窟に行けなかったから。
人間に会っていることが周囲にばれてしまって、わたしは国から出ることを禁じられた。
551別の人魚の場合 ◆WmvQVwDatU :2005/08/02(火) 05:30:17 ID:vV8u4ns5
ということで、出会い編はここまでです。
次回投下できるのがいつになるかわかりませんが、内容は武志が高校生の頃の話になるかと思います。
552名無しさん@ピンキー:2005/08/02(火) 08:12:50 ID:2OFUTdSz
ちょっと質問。
少年×人狼少女の話はココに落とすんですか?

似たようなスレが多いんで解らないんですけど…orz
553名無しさん@ピンキー:2005/08/02(火) 08:25:40 ID:wGxT2410
極端な話、どこでもいいです。どこでも歓迎されるはず。
貴方が落としたいと思ったところに落とすのがベスト。
554名無しさん@ピンキー:2005/08/02(火) 13:10:33 ID:8SfD8xPs
むしろカモン
555名無しさん@ピンキー:2005/08/02(火) 14:19:18 ID:XZs5JPwC
期待
556名無しさん@ピンキー:2005/08/02(火) 19:11:53 ID:/AO2YFAf
>>552
その少年が人間だったら、ここでいいのでは。
557名無しさん@ピンキー:2005/08/02(火) 21:45:44 ID:lVj4IpEc
今までROMってた俺でもなんか書いてもいいかな?
最近自分で話書く事に興味が出てきたんだ
558名無しさん@ピンキー:2005/08/02(火) 21:47:46 ID:Vc39SHPq
おう、萌えるのを一発頼むぜ!
559名無しさん@ピンキー:2005/08/02(火) 22:18:48 ID:XZs5JPwC
期待
今週は悶えまくりそう
560名無しさん@ピンキー:2005/08/02(火) 22:32:06 ID:lVj4IpEc
>>558-559
でも幸せな話書いたところで( ´_ゝ`)フーンで終わりでしょ?
561名無しさん@ピンキー:2005/08/02(火) 22:34:07 ID:Vc39SHPq
面白ければ感想くらい書くさ
562名無しさん@ピンキー:2005/08/02(火) 22:40:14 ID:XZs5JPwC
萌えられればGJ
これ風水の法則
563名無しさん@ピンキー:2005/08/02(火) 23:01:20 ID:oAresnSf
lVj4IpEcはいつものアレだぞ・・・
564名無しさん@ピンキー:2005/08/02(火) 23:21:04 ID:Vc39SHPq
いつものあれって?
565名無しさん@ピンキー:2005/08/02(火) 23:27:04 ID:XZs5JPwC
夏房
566名無しさん@ピンキー:2005/08/02(火) 23:29:50 ID:f5/zXUYc
幸せな話しか書いた事がない俺様が通りますよ

少なくとも俺はここでGJして貰った事はあっても
( ´_ゝ`)フーンなんて反応された事はないね
ま、難癖付けて書く気がないなら、ずっとROMってなさいってこった
567名無しさん@ピンキー:2005/08/03(水) 00:17:11 ID:PJXDUnzt
このスレに不幸な話ってあまり無いような気がするが
568月下逢瀬:2005/08/03(水) 00:43:21 ID:ddl4jfej
その青年は狩人だった。もう先祖代々百年以上も森の傍でそれを生業にしている。
そして彼、いや彼の家系には宿敵がいた。人狼。そう呼ばれる異形の怪物だった。
森の奥に棲み、時折夜に家畜を襲う。稀には、夜に森の奥くに入り込んだ迂闊な人間を餌食にしたりもする。
彼の先祖は宿命のように代々人狼と戦い、命を落としていた。
人狼も彼と同じく一族を成しているらしく、先祖達によって幾度と無く退治されてきたが、今も姿をあらわす。
毎月一度、満月の夜には両者は死闘を演じる。半ば馴れ合いの様でもあるが、一瞬たりとも気を抜けない、本物の死闘だ。
森の中で、彼は銃を手に人狼を追跡する。もし気を抜けば、反撃させて父の様に命を落とすだろう。
幼い頃から昼の森を遊び場にしてきた彼にとって、夜とは言え森の中は庭も同然だ。それは敵にとっても同様だ。むしろ棲みかである分より熟知しているだろう。
幼い頃友達と登った樹の脇を過ぎ、戦ごっこで城とした岩を乗越え、初恋の少女と出会った泉で水を飲み、一息つく。
やがて東の空が白む、今月も決着がつかぬまま勝負が終った。
あれは森の守護神だ。初恋の少女はそう言っていた。
彼女は森の民だった。街とは殆ど交流を持たず、昔ながらの森の恵を中心真にした自給自足の生活を送る連中だ。
ならば俺の一族は、森の動物という恩恵を受けつつ、神に銃を向ける反逆者なのか。
幼き日にそう尋ねた青年に対して、少女はこう答えた。満月の戦いは神の許諾なのだと。
守護神は、森の獣に代わって狩人に反撃をしているのだと言う。
狩人は森の中で一休みしてから、昼頃に家に向かう。と、無数の斧の音が響いてくる。
村の樵ならば、こんなに沢山はいない。不信に思い、道を外れてそちらの方へ向かった。
そこでは大勢の作業員が樹を切っていた。話を聞いてみると、ここに大規模な製材所を作るのだという。
その晩から惨劇が始まった。人狼が製材所を襲撃し、当直の作業員を虐殺したのだ。おそらくは、大量の伐採を森を汚すものとして裁きを下したのだろう。
以来、製材所の持ち主である富豪は様々な用心棒を雇ったが、その総てが犠牲となった。
かくして、人狼のエキスパートとして青年に白羽の矢がたった。
そして夜、満月の晩でなかったためか人狼の力は弱く、青年の放つ銀の銃弾で易々と撃退できた。
569月下逢瀬:2005/08/03(水) 00:45:04 ID:ddl4jfej
人狼は森の奥の粗末な家に戻った。日が昇り、その姿は全裸の若い娘へと変じる。
はぁっと大きく息を吐き、肩の傷口を押さえた。
彼女は月齢で体調が異なり、満月の夜にそれは最高潮となる。しかし狩人はそんなものに影響されない。満月の夜にようやく互角な相手だから、他の晩では勝てるわけがない。
激痛で気が遠くなりつつも、彼女はその傷口を愛しげに見る。それは狩人の、幼き日に泉で出会った初恋の相手の絆でもあるのだ。
何代にも渡り、互いに殺しあった家系だ。いまさら初恋が成就できるとは思わない。ならば、せめて月に一度死闘を演じることが、彼の心を捉える唯一の手段だなのだ。
そして、いずれはどちらかがもう一方の命を絶つ。この思いはそういう形でしか決着をつける事ができない。
彼女は薬草と包帯で手当てをすませ、次の満月までの半月ひたすら回復に努めた。
しかし次の満月の夜、森の中に彼の姿はなかった。昼間歩きまわった匂いをすらしない。
自分が死んだと思ったのかもしれない。そう考えて、その晩は村の鶏小屋を襲って生きている事を知らしめた。
が、それからも青年は姿をみせなかった。昼間、森の中で狩りをしている気配もない。
まさか青年の身に何かが、そう考えると居ても立ってもいられず、昼間に人の姿で森を出た。
村人と違って製材所の人間は、森の民に余計な偏見を持たずに普通に対応してくれる。そしてそこで知ったのは、愕然とする事実だった。
狩人は、製材所の富豪に気に入られその一人娘と結婚して婿養子となり、街に住んでいるのだという。
娘は狂乱した。
狩人はいずれはどこぞの女と結婚し、子孫を残すだろう、今までと同じく。それは子孫を残すためなのだと割りきって我慢できる。
だが、狩人であることを、満月の夜に自分と二人きりの時間を過ごすことを、やめる事は許せなかった。
互いに愛し合った過去を持ちつつも、歴代の禍根により結ばれぬ宿命にあるならば、その禍根を捨て去る事は許せない。
満月の晩。娘は狼となり、森を出た。既に何日もかけて、昼間のうちに富豪の家は突き止めてある。
煌煌と輝く満月の下、人狼は館に忍びこんだ。すぐに、彼と彼女から彼を奪った泥棒猫の寝室を嗅ぎ当てる。
そっとドアを開けると、二人はぐっすりと眠っている。人狼の気配に気付かぬとは、現役の狩人の頃には信じられぬ腑抜けぶりだ。
まずは、この泥棒猫の始末だ。一気に鉤爪を振り下ろし、その頭を砕く。間違い無く即死だ。
ようやく、彼が目覚めた。隣で寝て居た女の死を知り、半狂乱になってわめく。いいぞ、思う壷だ。
彼女が悠々と館から出るころには、青年は銃を手にした狩人に戻っていた。満月よりもぎらぎらと輝く、殺意に燃えた瞳だ。
これでもう、彼は二度と彼女との死闘を忘れる事はないだろう。
さあ、二人きりの逢瀬の始まりだ。
570名無しさん@ピンキー:2005/08/03(水) 00:48:31 ID:ddl4jfej
二人の愛は殺し愛!
てなわけで、不幸な話です。
元ネタの高橋葉介の漫画まんまなわけですが、人狼を女に変えて愛情ゆえとしてみました。


そーいや一本木蛮のマンガで、満月の夜になると女になる狼男ならぬ娘男ってネタがあったな。
いや、ただの雑談だけど。
571名無しさん@ピンキー:2005/08/03(水) 00:54:04 ID:hkdzvBxB
TWWで見た気がする。
572名無しさん@ピンキー:2005/08/03(水) 00:55:13 ID:JwDKQcN0
>568
うはー
上手いなあ。
もっと長くしたの読みたい。
573名無しさん@ピンキー:2005/08/03(水) 10:58:18 ID:4qAq2Xsc
>568
GJ! 燃えて泣けた。
でも誤字がところどころあるんで、投下する前にいったん落ち着いて推敲した方が……と思う。
574名無しさん@ピンキー:2005/08/03(水) 16:16:47 ID:FdjNqGzd
>568
当然、続きがあるんだよね?
575霜ノ関 ◆EWgLYoRkiM :2005/08/03(水) 19:55:13 ID:4367uVRX
瞼が物凄く重い。意識が覚醒しているのに目を開けることができない。
それというのも、頭の下にある枕の冷たさと柔らかさが心地よすぎるせいだった。
心地よい布団と枕は人間の睡眠欲を呼び覚まし、人間の身体を眠らせるものなのだ。
「……ん…………」
何とか睡魔の追撃を振り切り、瞼をこじ開ける。正面には心配そうに俺を見ているラウラの顔が見えた。
俺を吸い殺したら約束を破ったことになってしまうので、俺が死ぬことによって嘘つきになってしまうのが心配だったのに違いない。
その中に、純粋な意味での心配が混じっているように思えるのは、そうであって欲しいと願う俺の妄想だろうか。
「……おはよう」
寝惚け眼を擦りながら、一応は礼儀として殺人未遂犯に対して挨拶をする。
正面のラウラの顔が天井を背景に見えているということは、俺は仰向けに寝かされているのだろう。
ひんやりと冷たく柔らかい枕は恐らくアイスノンか何かで、ベッドになっているのはソファだろう。
背筋や首筋が湿っている気がするのは、きっと寝汗をかいたせいだろう。
壁にかけてある時計を見れば、もうすぐ日付の変わる時間だ。だいたい、五時間ちょっと寝た計算になる。
「……あ…………目覚めたのか……」
俺の挨拶を聞いたラウラは一瞬だけ目を見開き、溜息を漏らした。
安堵によるものなのか呆れによるものなのかということに関しては、思考と視界に睡魔による靄がかかっている俺にはわからない。
ただ、それが俺の無事を喜んでいるせいで出た溜息だと嬉しい、というくらいのことは思う。
「ああ、うん、起きたけど……」
相手が俺の顔を覗き込むように身を屈めていることにいつまでも甘えているわけにはいかないので、
相変わらず重い瞼を擦りながら身を起こそうとし、予想以上に力が入らないことに気づく。
起き上がりかけて失敗するとラウラに余計な心配をかけるかもしれないので、誤魔化すように動かした手に
引っ掛かったソファの背もたれらしき柔らかいものに手をかけ、一息に身を引き起こそうとした。
「わっ……!」
背もたれに手をかけた瞬間、ラウラが悲鳴を上げて身じろぎした。俺が急に動いたので驚いているのだろう。
なぜか頭の下の枕も一緒に動いているが、俺は特に気にすることもなく力を込めた。
「え……?」
その瞬間、驚愕と恐怖の入り混じった表情を浮かべたラウラが俺に向かって近づいてきた。
それと同時に動き出した枕から頭が滑り落ち、重力が一瞬にして消失したのを感じた。
どうやら、背もたれを掴み損ねたせいでソファから転げ落ちかけているようだ。ラウラが俺に焦ったような顔で
俺に近づいてきているのは、きっと俺を助けようとしてくれているのだ。
枕から滑り落ちてからソファからの転落までの間に、俺はこれだけのことを理解し、推測した。
我ながら、危険が迫ると頭脳が鋭敏になるものだとつくづく思う。
「なぁっ、何をする……!?」
好意を無にしてはいけないと思って全力でラウラに抱きついたら、なぜか彼女は上擦った悲鳴を上げて硬直し、
そのまま俺と一緒に落下した。
最初、俺は咄嗟に身体を捻って受身を取ろうとした。しかし、普通に両肘をついて受身を取ったのでは、
胸に抱き込んでいるラウラを床に叩きつけた挙句に押し潰すことになってしまう。だからといって、今から身体を捻り直すのも
時間的に無理な話だ。考えあぐねた挙句、俺はラウラの後頭部と背中に腕を回してクッション代わりにし、
両脚で彼女の下半身を抱え込んで手と同じく彼女のためのクッションとなることを選んだ。
「ぐぅっ……」
華奢なラウラといえども一人には違いなく、受身を取ることすらできなかった俺は二人分の体重を負ったまま
床に叩きつけられた衝撃が両手足に集中したことにより、目の前が真っ白になるほどの激痛に襲われた。
だが、不幸中の幸いとはまさにこのことで、俺の目論見通り、ラウラには一切の衝撃が及んでいない。
576霜ノ関 ◆EWgLYoRkiM :2005/08/03(水) 19:55:57 ID:4367uVRX
「ラ、ラウラ、だ、大丈夫……?」
全面的に俺が原因となって引き起こされかけた事態とはいえ、腕の中にすっぽりと収まってしまうほど華奢なラウラが
床に叩きつけられるという事態を回避できたことに安堵した俺は柔らかくていい匂いのする身体に未練があったものの上体を起こし、
呆然とした表情で見上げてくるラウラの手触りがいい髪を撫でる。
「……ラ、ラウラ?」
反応がない。
もしかして脳震盪でも起こしたのだろうかと戸惑いながら、今は顔の両脇についている手を頬に当てて軽く揺する。
テーブルとは大分距離もあるし俺の腕でしっかりと衝撃を吸収したはずなので頭をぶつけたなどということはないはずだが、
状況が状況だけに心配にもなる。なかなか反応しないラウラの様子に深刻なものを感じて背筋が寒くなったが、
僅かに顔を動かしたラウラと目が合ったことによって、その悪寒も呆気なく消え去った。
「………な、何だ、意識があるんじゃないか。心配させないでくれよ……」
ほっと一安心して安堵の溜息を漏らしたのだが、どうにもラウラの様子がおかしかった。
ラウラは黙ったまま、じっと俺の顔を見つめ続けている。もともとが非人間的なほど整った顔立ちだけに、
無表情のままじっと見つめられると何とも形容しがたい威圧感がある。
彼女はその表情を維持したまま無言でずりずりと俺の下から這い出し、まだ這い蹲ったままの俺の首近くに顔を寄せてきた。
「………幸助」
ぼそりとラウラが呟く。ラウラの意図を勘違いして危険な目に遭わせてしまったことを責めているのだろう。
この近距離で怒鳴られるとまた耳が痛くなりそうなので、先に謝っておくことにする。
「あ、これは、その……ごめ」
「この、この……この大馬鹿者が!」
遅かった。ラウラの怒声は俺の謝罪を遮って俺の鼓膜を直撃した。耳鳴りがする。
「大馬鹿者! 色魔! 変態! けだもの! いきなり何をするのだ!?」
ラウラは俺の耳元で怒鳴り続ける。綺麗な瞳に涙が浮かんでいることが、彼女の怒りと悲しみを雄弁に物語っている。
「信じて……信じていたのに……! お前が、お前が、いきなりこのようなことをする男だったとは……!」
大粒の涙をぼろぼろと零しながら、ラウラは泣きじゃくる子供がするように俺の身体のあちこちを小さな拳で何度も叩いた。
「もっと、もっと時間をかけて……互いを知って……親しくなって……互いの想いを育んで……それから……!」
吸血鬼の貴族だということが想像もつかないほど弱々しい拳で、ラウラは何度も俺のことを叩いた。
「ラウラ……」
おぼろげながらも、俺はラウラがなぜ怒り、なぜ悲しんでいるのかを今頃になって理解した。
ラウラはほんの一日前に知り合ったばかりの男の言葉を信じてその家にまでついていった結果、一切の承諾もなしに
突然押し倒されるという最悪の形で裏切られたのだった。普通の女性でも貞操の危機を覚える状況なのだから、
お嬢様として大切に育てられてきたらしいラウラならば、なおさら恐怖と怒り、そして嫌悪感を覚えるだろう。
我を忘れて俺を罵倒するほど怒るのも無理はないし、涙を「目にゴミが入った」と誤魔化しそうなほど
プライドの高い彼女が俺の前で涙を流して悲しむのも全くおかしな話ではない。
俺は全く意図することなく寝惚け眼で行動した結果、ラウラが示してくれた信頼を全て裏切ってしまったのだった。
落下の衝撃で完璧に目が覚めた今になって、全てが理解できた。
577霜ノ関 ◆EWgLYoRkiM :2005/08/03(水) 19:56:30 ID:4367uVRX
俺に心地よい眠りを与えてくれていたひんやりとして柔らかい枕というのは俺が意識を失ってからずっと付き添って
くれていたのだろうラウラの膝枕で、俺が起き上がろうとして掴んだソファの背もたれというのはラウラの肩か何かだったのだろう。
ラウラにしてみれば、責任を感じて看病していた相手が目覚めたと思った途端、突然に引き倒された挙句に
がっちりと全身を拘束されて組み敷かれたのだ。相当な恐怖と精神的苦痛を彼女は感じたことだろう。
全く、弁解のしようがない。
「……人間などを信じた、私が愚かだったのだ」
先ほどまでとは打って変わって静かに呟くラウラの目に、怒りの色はもうない。あるのは、悲しみだけだった。
ラウラの様子はあまりにも儚げで、あまりにも危うげで、とても声などかけられはしなかった。
「……………お前のような男、八つ裂きにする価値もない」
人間が無力で愚かな蟻を見るような表情で俺を見たラウラの身体から靄が立ち上り、徐々に輪郭を失っていく。
吸血鬼は霧となって消え去る能力を持つというから、きっとそれなのだろう。ラウラは、俺の前から姿を消すつもりなのだ。
「待っ」
そうと気づいた瞬間、俺は無意味だと半ば知りつつもラウラを引きとめようと手を伸ばしたが、その手が届くことはなかった。
「……触るな、下種……!」
汚いものを見てしまった時のような嫌悪感と不快感に満ちたラウラの表情を見た途端、俺の手は行き場を失った。
そうだ。傷つけてしまった相手が俺の近くから去ろうとしているのを止めるのは、単なる身勝手だ。
身体のほとんどを霧と化したラウラは、最後に一滴の涙を零して俺の前から消え去った。
「……俺は馬鹿だ…どうしようもない馬鹿だ……」
俺はそのままふらふらと床にへたり込んだ。こういう事件が起こった場合、ドラマではすぐに主人公が恋人を
追いかけることになっているが、ドラマの主人公でもなければ彼女の恋人でもない俺に追いかける資格があるはずもない。
俺とラウラは偶然に出会って偶然に別れるという、ただの行きずりの縁しか持っていなかったのだ。
第一、あれほどまでに傷つけてしまった以上、俺の顔を見て、俺の声を聞くだけでも苦痛に違いない。
なおさら、追いかけることなどできようはずもない。
「……俺は、本当に馬鹿だ」
理屈で理解していてもそう簡単に諦めきれるものではない。つまりは、理屈のわからない馬鹿だ。
行動するのに相応しいと思える理屈がなければ行動に移すことができない。つまりは頭でっかちの馬鹿だ。
何か諦めるきっかけがあれば、何か追いかけるのに相応しい理由があれば、俺は選ぶことができる。
「………いきなりだったもんな……どうしようも…………ん?」
自分を納得させるために言った言葉が呼び水となって、行動するに足るある理由が脳裏に浮かんだ。
考えてみれば簡単なことだった。どうしてこのことに真っ先に気づかなかったのか。
俺には追いかける資格など端から存在しない。あるのは、追いかける義務だけだった。
「いきなりで、何も言えなかった。謝ることも、できなかった……俺は謝らなきゃいけない!」
三段論法めいた順序で理論武装した俺は、吸血の影響によってか精神的衝撃によってかで弱った身体に
鞭打って立ち上がり、玄関へと向かった。
ラウラは吸血鬼で、夜は吸血鬼の時間だ。
高い運動能力と併せて霧と化して移動する能力を持つ彼女にただの人間である俺が追いつける道理もないが、
それでも両脚が動く間は彼女を追いかけなければならない。
いや、脚が使えなくなれば手を使って這えばいい。手が駄目になったら転がればいい。
俺の身体に動かせる部分がある限り、俺にはラウラを探す義務があった。
578霜ノ関 ◆EWgLYoRkiM :2005/08/03(水) 19:57:33 ID:4367uVRX
「あ、あの、すみません……! 十四歳くらいの外国人の女の子を見かけませんでしたか!?」
深夜の町を何の当てもなしに走り回り、見ず知らずの通行人達にラウラのことを尋ねる。
「何だね、君はぁ! そんなこと、私達が知っとるわけないだろぉ!」
酔っ払ったサラリーマンの集団に尋ねたら、いかにも迷惑だという素振りで追い払われた。
「ぷっ、何それナンパ? あんたみたいなぱっとしない奴なんてどうでもいいからあっち行って」
俺よりも確実に一学年は下の女子高生に声をかけたら、ナンパと間違われて相手にもされなかった。
「何ぃ、外国人の女の子? おい、君、何かの犯罪に関わっているんじゃないだろうな。
だいたい、未成年だろう。こんな時間に出歩いていいと思って……あ、おい、こら、待て!」
思い切って街を巡回中の警官に話しかけてみたら、雲行きが怪しくなってきたので走って逃げた。
「はぁ!? そんなガキなんて知るかよ。今時のガキは進んでるしよ、どっかでウリでもやってんじゃねえのぉ?」
殴られるかもしれない恐怖を押して同年代のチンピラ風の少年に訊いてみたら、嘲笑された。
「外国人の娘? ああ、それならうちの店にいるよ! ほら、試しに楽しんでってよ!」
風俗店の客引きに呼び止められたので駄目元で訊いてみたらやはり駄目で、強引に店に連れ込まれそうになった。
結局、誰も俺のことなど助けてくれなかった。
いつからこの街の人間はこんなにも不人情になったのだろう。
いつから俺は他の人間が力を貸してくれるのを当然と思うようになっていたのだろう。
誰の力も借りることができないまま当てもなく街を走り回りながら、俺は泣きたくなってきた。
真剣に頼み込んでいるのに聞き入れてくれないばかりか嘲笑すらしてくる街の住人達に。
そして、頼めば力を貸してくれて当然だと思うようになっていた傲慢な自分に対して。
「く、糞、脚が……」
闇雲に走り回ったせいで、両脚が疲労のあまり棒のようになってしまった。堪らず、手近な電柱に寄りかかってへたり込む。
こんな所で立ち止まるわけにはいかないというのに、俺の両脚はなかなか再び動こうとはしてくれない。
焦りと苛立ちが心を支配しかけたその時、座り込んだ俺を見下ろす人影が現れた。
「君かね? 外国人の女の子を探しているという少年は」
その人は長身で痩せ型、そして顔色が悪いということを除けば至って平凡な中年のサラリーマンだった。
だが、その平凡なサラリーマンが俺にとっての救いの神になるかもしれない。俺は勢い込んで立ち上がった。
「は、はい、そうです! 何か、ご存知なんですか!?」
「ああ」
俺の勢いに苦笑しながら、サラリーマンは真っ直ぐに俺がこれから向かおうとしていた先の道を指差した。
「君が探している娘かどうかは知らんがね、向こうの角を曲がった辺りで見かけたよ。今なら、まだいるかもしれんね」
どうやら、俺は人間を嫌いにならなくて済みそうだった。世の中にはいい人もいるのだ。
「あ、ありがとうございます!」
俺は礼を言うのもそこそこに、彼が指し示してくれた方へと全速力で駆け出した。
ラウラに会えるかもしれないというだけで、俺の脚は再び動き出したのだった。
579霜ノ関 ◆EWgLYoRkiM :2005/08/03(水) 19:58:09 ID:4367uVRX

「こ、ここは……まさか……」
サラリーマンの指示に従って向かったその先に広がっていたのは、俺達一家が全員揃っていた最後の場所だった。
先ほどの道からこの場所には出られないはずだったが、そんなことは俺にとって些細な問題に過ぎない。
「あ、ああ……嫌だ……何で、何で、こんな所に……」
流石に俺達の車の残骸は撤去されてはいたが、無残に破壊されたガードレールに、割れ砕けた窓ガラスの破片、
未だにアスファルトにこびりついている血痕などの細かな、しかし確かに存在する事故の痕跡は完全には片付けられておらず、
見る者が見れば一目でそれとわかる事故現場がそこにはあった。
俺はそれを見た瞬間に猛烈な吐き気を感じ、口と腹を押さえて蹲った。
あの日の記憶が、それを拒絶する俺の意思とは無関係に蘇っていく。
事故が起きたあの夜は、仕事仕事と家にいないことが多かった親父が珍しく休暇を取り、家族揃って
近場の海に出かけて思う存分楽しんできた帰りだった。
「久しぶりの家族サービスだ」と笑っていた親父の顔と「幸助ももうすぐ大人ね」と嬉しさと寂しさが
ない交ぜになっていた母さんの顔が自然と思い出される。
事故が起きたあの瞬間のことは、よく憶えている。
あの時、親父はハンドルを握りながら
「お前もあと二年もしたら二十歳か。そうなったら、俺とビールでも飲もう」
と心の底から楽しみにしているのがわかるほどに顔を綻ばせていた。
あの時、母さんはそんな親父の言葉に
「もう、貴方ったら。幸助にお酒の味なんて教えないでくださいな」
と冗談めかして笑いながら応じていた。
俺にはあの時の会話の一言一句が正確な記憶として脳裏に焼きついている。
二人の最期の瞬間も、断片的にではあるが覚えている。
親父が叫び声を上げながらハンドルを切ったのが始まりだった。
見かけに似合わず優しい親父のことだから、野良猫でも避けようとしたのだろう。
その急激な方向転換によって車体は激しくスピンしながらガードレールに突撃し、出来の悪い冗談のようなことが起こった。
運転席と助手席を結ぶ直線にガードレールの延長線が重なった瞬間、一直線にガードレールが車体を貫通したのだった。
その時、回転する車内であちらこちらに身体をぶつけて薄れゆく意識の中で、俺は見た。
ドアを突き破ったガードレールが親父の身体を真横から貫通し、そのまま母さんの身体も引き裂いていくのを。
真っ白なガードレールが一瞬で真っ赤になるのを。恐怖に引き攣っていた二人の顔から表情が消えるのを。
唯一の救いだったのが、二人とも苦痛を感じるだけの間もなく楽に死ねたことだろうか。
「う……うげぇぇ……ぇっ、ぇっ……!」
吐き気を堪えきれず、俺は血痕が染み付いたアスファルトの上に胃の中身を残らずぶちまけた。
一旦吐き始めると、もう止まらない。息が続く限り嘔吐が続き、息切れして息を吸い込んだ直後にまた再開される。
中身がなくなっても、胃液が喉を駆け上ってくる。喉の痛みと口内に残る味と情けなさに、俺は嘔吐しながら嗚咽した。
どれほどの時間、胃の中身をぶちまけ続けただろうか。ふと、誰かが背中をさすってくれていることに気づいた。
小さくて冷たい、優しい手だった。事故現場での記憶が途切れる寸前にも、この手の感触があった。
脊椎反射で誰の手だかわかった。
「ラ……ウ、ラ……」
口の端から胃液を垂らしながら振り向き、俺は背後に佇む少女の名前を呼んだ。
580霜ノ関 ◆EWgLYoRkiM :2005/08/03(水) 19:58:44 ID:4367uVRX
「お前、このような所で何をしている?」
厳しい表情を浮かべて、ラウラは俺を見下ろしている。
「そ、の……言い、たいこと、が、あって……」
まだはっきりと喋れる状態ではないので上手く喋ることができないのがもどかしい。
「……奇遇だな。私も同じだ。私もお前に言いたいことがある。だが、まずはお前からだ」
どこまでも厳しい視線に促され、俺は喉から込み上げる胃液の臭いに噎せ返りながら口を開いた。
「お、俺、は……き、君に、あ、謝り、たいと思って……ここ、まで、来たんだ……」
ラウラは唇を真一文字に引き結んだまま、俺の話を聞いている。
「いきなり、あんなことをして、ごめん………俺には、そ、れ、しか言え、ない……」
遂に言うことができた。遂に言い終えてしまった。
「……言うことは、それだけか?」
黙って頷く。俺にはもうラウラと一緒にいる理由と資格がなくなった。
これ以上一緒にいて、彼女に不愉快な思いをさせるわけにはいかない。
俺は全身全霊を込めて立ち上がり、歩き出そうとした。
「どこへ行く」
「言いたい、ことを……言わなきゃ、なら、な、いことを、言えた、から、俺は、帰る……」
「……私の話を聞かずに帰るつもりか?」
驚くべきことにラウラは俺の前に回り込み、凛とした目で真っ直ぐに俺を見上げてきた。
「私はあれから、考えた。本当に、お前がけだもののような男なのか。
本当に、お前が、その、淫らなことを考えて、あのようなことをしたのか……」
一言一言の意味を自分で確かめるような調子で、ラウラは訥々と語り出した。
「……答えは、否だった。あの時は怒りと動揺に決め付けて飛び出したが、落ち着いた今ならば
わかる。お前は、あの時、私が怪我をしないように、庇ってくれただけなのだろう?」
ラウラは厳しい視線を和らげ、確認するような表情を俺に向けてくる。
俺は真っ直ぐな視線に耐えられず、顔を逸らした。
「……確かに、そうだ。その、つもり、だった。でも……」
「……でも?」
訝しげな表情を浮かべるラウラに促され、俺はあの時に思ったことを包み隠さず語った。
俺を信じてくれたラウラを再び裏切ることになるが、言わないわけにはいかなかった。
「……俺は、あの時、エロいことを考えなかった、わけ、じゃな、いんだ……抱き締めた、時、
少しだけ、エロいこと、考えてた……」
まるで懺悔だった。いや、懺悔よりも酷い。懺悔は許されることが前提だが、これはその逆だ。
心が重く沈みこんでいくのを自覚しながら、俺は俺の言葉を聞いて何かを考え込んでいるらしいラウラが、
口を開いて何かを言ってくれるのを待つ。
ラウラは口の端に僅かな笑みすら浮かべ、言った。
「……ふん、だからどうしたというのだ」
俺は耳を疑った。潔癖そうなラウラなら、ここは笑う所ではなく怒る所だろう。
ラウラは顔を僅かに赤くして俺から目を逸らしながら、一息に言い放った。
「血を吸ってわかったが、お前は実に健康な男だ。健康な男が私のような美しい女に触れて、
全く、その、何も感じないなどということがあるはずもなかろう! ゆえに、特別に不問に処す! 異存はないな!?」
ラウラは俺から目を逸らしつつ、しかし傲然と胸を張って俺に向かって手を差し出してくる。
いきなりなので意味を理解できずにおろおろしていたら、顔を赤くしたラウラに一喝された。
「馬鹿者、何をしている! 女が手を出しているのだ。男がそれを取らなくてどうする!? さっさと私を家まで連れ帰れ!」
恐る恐るその手を取ってみる。ラウラはそれでいいのだという風に満足げな顔で頷いた。
自然と涙交じりの笑みが浮かんでくる。俺はラウラに許して貰えたらしかった。
「じゃ、じゃあ、その、一緒に帰ろうか」
「……うむ。お前と一緒に帰ってやる」
おずおずと手を引いて歩き出した俺に、ラウラは静かに微笑みかけてくれた。
581霜ノ関 ◆EWgLYoRkiM :2005/08/03(水) 19:59:41 ID:4367uVRX
身持ちの堅いお姫様をどう落とすか悩みつつ、次回に続く。
次回かその次辺りで話が一段落する予定だ。
582名無しさん@ピンキー:2005/08/03(水) 22:07:51 ID:u04VuNd9
>霜ノ関 ◆EWgLYoRkiM氏
ナイス、雨降って地固まる。
さて、このまま濡れ場でしょうか。それとも一波乱ありでしょうか。
次回が待ち遠しいです。

個人的予想
サラリーマン=実は敵対するアンデッド、とか
事故の原因=車道に飛び出したラウラを避けようとした、とか
…どうも好みの伝奇バトルや泣き系に走ってしまう。
583名無しさん@ピンキー:2005/08/03(水) 22:12:04 ID:u04VuNd9
>572
設定を練った上で全面書きなおしになりますな。
すいません。現在、放課後の吸血鬼で手一杯なのでムリポ。

>573
すいません。思いつきを2〜3時間でロクに推敲もせずに書きました。

>574
残念ながら続きはありません。
もし続きをするなら全面書きなおしだと思います。

さて、(「シートン動物記 狼王ロボ」を取りだし)
舞台は19世紀から20世紀初頭のアメリカ、森の多い地域の牧場。
青年は牧童(カウボーイ)兼、代々続く狼狩人。
娘は狼をトーテムとするネイティブのシャーマン。
狼狩りは無条件で正義扱いの雰囲気。
娘の一族は白人に土地を奪われ、トーテムの狼を殺されて白人を憎んでいた。
青年と娘は互いに初恋の相手で初体験の相手で、時々逢引している。
青年の父が娘の父(先代シャーマン)を撃ち殺し、代替わりした娘がその仇を討つ。
双方とも親を失った事で、否応も成しに家長となってそれぞれの社会の慣習に流され、疎遠になる。
ヨーロッパの狼男じゃないので満月との関連性が薄れるが、満月の晩には精霊の力が強まるので、
呪術一般が強まり、シャーマンはトーテムに変身する術を使える、という設定にする。
あ、オカルト娘スレ向きになっちゃうな…、まあいいか。
ラストは…致命傷を負った狼が娘の姿に戻って彼の腕の中で死ぬとか、彼氏を殺してその骸を前に泣き崩れる娘とか…、まあ書いてきゃそのうちいいのを思いつくだろう。

さて、今の所書く暇はないんで、一部でも全部でも、使いたい方は御自由にどうぞ。
584名無しさん@ピンキー:2005/08/04(木) 03:33:08 ID:gnJmp7LX
>581
ラウラいいねえ。幸助もよく動いててイイ。
続きが待ち遠しいよ
585名無しさん@ピンキー:2005/08/04(木) 22:28:15 ID:GETyNPIm
>ロボ
家畜を荒らす狼を捕らえてみたら、実は人狼or魔術師or狼に育てられた少女。
主人公の動物学者を自分に勝った勇者として求婚してきたり、
捕らえた荒くれどもに暴行されてるのを助けたら求婚してきたり、
でもって関係を結んじゃうと「狼は一夫一婦制を守る貞淑な動物だ」とか言われる。
586名無しさん@ピンキー:2005/08/04(木) 22:33:40 ID:AZ3q1BKX
>>585
それイイな。
ああくそう、俺に文才があったなら、あったならッ!
587名無しさん@ピンキー:2005/08/04(木) 22:33:56 ID:nOpKfTcw
実はロボだったとか。。。しまった、エロが無ゑ!!
588霜ノ関 ◆EWgLYoRkiM :2005/08/04(木) 22:37:56 ID:iEY/Onxf
>>585
そのネタ貰ってもいいか?
589名無しさん@ピンキー:2005/08/04(木) 23:05:15 ID:GETyNPIm
>588
どうぞ。
こちとら放課後の吸血鬼で手一杯なので、使っていただければ幸いです。
590名無しさん@ピンキー:2005/08/05(金) 10:09:18 ID:8VtT7B5H
>>588
>>568の続でそれのネタを使ってみてはどうでしょうか?
とネ申に意見を申し上げてみる。
では、ガンガってきださい。ワクテカしながらまってます。
591なしれ ◆IIES/YYkzQ :2005/08/05(金) 22:09:08 ID:YFtbtEvi
11-740です。ずっと数字コテというのもアレなんで、コテ&鳥を名乗ってみます。

以下、悪魔ッ娘(姐)もの。いつも以上に煩悩だけで構成されているので、その点はご容赦を。
あと、いわゆるニプルファック(乳にチムポを突っ込むというファンタジィ)ものなので、
そういうのが苦手な方はIDなり鳥なりをNGワードにして下さい。
592召喚(1) ◆IIES/YYkzQ :2005/08/05(金) 22:14:09 ID:YFtbtEvi
「‥‥ISECHIROS ATHANATOS AGLA AMEN‥‥悪魔よ我に力を!!」
 部屋いっぱいに描かれた六芒星と怪しげな文字。その前でやや小柄な少年がおどろおどろしい響きの
呪文を長々と唱え、最後にそう叫んだ。
‥‥沈黙。
‥‥‥‥沈黙。
‥‥‥‥‥‥沈黙。
「だめか‥‥今度こそ本物だと思ったんだけどな‥‥」
 内藤竜司(16)はがっくりと肩を落とした。その手には古色蒼然たる書物。半年前に、家族で中欧へ
旅行に行った時、立ち寄ったプラハの古書店で求めたものだった。数ヶ月かけて最低限必要な箇所を解読し、
こんどこそ悪魔の召喚を成し遂げられると信じていたのだが。
「はぁ‥‥他の箇所も全部読まなきゃならないのかな‥‥。」
 彼はへたり込んだ。高校生らしからぬ童顔には疲労がにじみ、がっくりと落とした肩は失望のほどを
雄弁に語っている。
 悪魔の召喚は彼にとって中学生以来の目標である。
 最初はいいかげんな通俗書のおまじないもどきで満足していたが、執着が昂じて本格的に悪魔召喚を
目指すようになったのだ。必死にラテン語を学び、血のにじむような努力のすえギリシャ語さえ
首っ引きながらもどうにかこうにか読むようになり、ことあるごとに妙な本を買いあさるようになった。
おかげで小遣い・バイト代はもちろん、金持ちの親戚に恵まれたはずの彼のお年玉貯金もとうに底を
尽いている。 実は彼の目的は悪魔の力を借りずともどうにかできるようなことだったのだが――こういう
努力をする暇があるなら。
「ふぅ‥‥片付けなきゃ。――あれ?」
 ふと気がついた。自分の描いた魔法陣と、本に書かれているそれがほんの少し違うことに。
少年が慌てて魔法陣を修正し、再び詠唱にとりかかったのは言うまでもない。

 部屋の照明が突如消え失せ、闇がすべてを包み込んだ。暗がりに魔法陣が蒼白く浮かび上がり、
その中央に闇がわだかまるのが感じられた。少年の足はがくがくと震え、その顔は緊張と喜びで
いびつにひきつる。
 凝集する闇が徐々にはっきりと形をつくりはじめた。うずくまる人間のような形をとったかと思うと、
それはすぅっと立ち上がる。
「‥‥小さきものよ‥‥我を呼びしは汝か‥‥」
 影は低く唸るような声を発した。少年の身体がびくりと震え、だがそれにより彼は自らのなしたことと、
なすべきこととを思い出した。
「あ、悪魔よ、父と、子と、せ、精霊の名において、汝の名を明らかにせよ‥‥!」
「くっくっ‥‥我が名はレギア‥‥昏き快楽と淫欲の使者‥‥」
 悪魔が名乗ると同時に、床の六芒星は青く激しく輝き、その姿をはっきりと映し出した。
 浅黒い肌に漆黒の髪、蝙蝠のような翼。こめかみからは雄牛のような二本の鋭い角が生えている。
瞳に紅い光を宿し、薄ら笑いを浮かべた唇からは鋭い牙が覗き、なめらかな曲線に富んだ肢体は、
レザーのような素材で要所要所が覆われているだけ。
 ――女だった。

「で、では悪魔レギアよ、汝に命――」
「あん? お断りだよ」
「――!?」
 先ほどまで時代がかった口調で声を発していた悪魔は、いきなりそっけなく断った。
 だが本には「悪魔が言うことを聞いてくれない時は、十字架などで脅してみると良い。
ただし必ず成功するとは限らないので自分の責任でどうぞ(訳:内藤竜司)」とあった。
気を取り直し、左手に聖書、右手に十字架を持って少年は強い口調で言う。
「悪魔よ、神の御名において命ずる。我が命に従――」
「お断り、って言ってんだろ‥‥。せっかくこっちの世界に出てこれたんだ、ガキのお守りなんてごめんだよ」
 悪魔は両手を組んで大きく伸びをした。薄い衣装から張りのある肉の双球があふれ出そうになる。
「ぼ、僕の命令を聞け!」
「うるさいな」
 ドンッ!!
 何気なく片手をかざしたかと思うと、召喚者は部屋の壁まで吹き飛ばされていた。
593召喚(2) ◆IIES/YYkzQ :2005/08/05(金) 22:15:17 ID:YFtbtEvi
「‥‥っぐぅ、うう‥‥――ひっ、そ、そんなっ‥‥!!」
 痛みに歪んでいた顔が凍る。悪魔は魔法陣から、その外へ出つつあった。ブーツに覆われた右脚が、
その線から踏み出す。蒼白い光がパリッ、パリッと火花をあげた。脚がその境界を難なく越えると、
全身がするりと魔法陣の外へ出る。電光がバリバリと激しくひらめいたが、彼女はそれを意に介さない。
結界を兼ねた魔法陣が用なしになった瞬間、照明が明るさを取り戻した。
「ふふふ、どうしたの? 結界を破られたのがそんなにショックかい?」
 悪魔は意地の悪い笑みを浮かべる。
「そんな‥‥そんな‥‥一番強力な結界を張ったはずなのに‥‥」
「ああ、そう。どうりで火花が派手なはずだ。だけどこんなのは術者の能力次第なんだよ、坊や。
まぁ坊やが大魔導士だったとしても、あたしを押し込めておけたかどうかは知らないけどね」
 肩をすくめて笑ってみせる。
「ほんとだったら力不足のガキなんて食い殺されても文句は言えないんだよ、そこんとこをわきまえな。
‥‥とにかく、呼び出してくれてありがと。じゃあね」
 くるりときびすを返すと、窓を開け放ち、そこから身を乗り出す。黒い翼を広げ――
「ま、待て! 待って!!」
「あん? 何よ。命令は聞かないと言ったでしょ」
「う‥‥ううっ‥‥」
 悔しさに涙がにじむ。せっかく苦労して召喚したのにこのざまとは。
「‥‥泣かれてもねえ‥‥。ふん、まあいいよ。呼び出してくれたお礼だ、言うだけ言ってみな。
‥‥聞いてやるかどうかは知らないけど」
 口は悪いが案外気の良い悪魔だった。

 一気に元気を取り戻した少年は、派手な容貌の悪魔に自分の望みを語った。
どういうわけか、語れば語るほど女悪魔の顔がゲンナリしたものになってゆく。
「‥‥ってことなんだ。お願い、力を貸して!」
「‥‥はあぁぁぁ‥‥」
 盛大な溜息。
「‥‥やっぱり、だめ、かな‥‥。」
「‥‥いや、その‥‥。ええと、つまり、あんたは、惚れた相手を振り向かせるためにあたしを喚んだ、
‥‥ってこと?」
「‥‥うん」
 やる気のカケラもない顔で問い返すレギアに、真っ赤な顔でうつむく少年。
「で、もう一回聞くけど、その佐々木まほちゃんだかは深窓の令嬢でもなけりゃ、今をときめく
芸能人でもなくて、高校の同じクラスの子、なんだっけ?」
「‥‥‥‥うん」
「竜司」
「はい?」
「このバカ」
「ぐぅっ」
 言われてしまった。内心、こんな努力をするより当たって砕けた方が早いとは気付いていたが、
それでも悪魔がこれほど「人間的」だとは思っていなかったから、自分の臆病さを隠したまま願いを
叶えることができるかと思っていたのだ。彼としては、コンピューターに命令するような気分だった
わけだ。
「‥‥それにしてもこんなガキに、しかも乳臭い恋愛相談でこのレギア様が呼び出されるとはねえ。
欲の強さは力に影響を与えるだろうけど、仮にも高級淫魔のあたしがガキに呼び出されるなんざ初めてだよ」
 悪魔はうんざりした調子でぼやく。
「‥‥え? 淫魔‥‥?」
 少し驚いたように魔導士もどきが顔を上げる。
「――愛の渇望をかなえる悪魔じゃないの?」
「ハァ? 最初に言ったろ、『昏き快楽と淫欲の使者』って。愛なんざ管轄外だよ、あたしは」
「そんな‥‥えぇっ? ――も、もしかしてっ!!」
 あわてて魔導書のページをめくる。‥‥あろうことか虫食いのせいでページがくっついていた。
かぶりつくように「新たなページ」を読むと、そこにはどうしようもないことが書かれていたのだ。
594召喚(3) ◆IIES/YYkzQ :2005/08/05(金) 22:17:20 ID:YFtbtEvi
「ええと‥‥『愛に関するところのものである渇望を、かなえるための悪魔召喚については
以上に書いたところの述べたとおりであるが‥‥』」
「ああもう、まどろっこしい読み方してんじゃないよ。あたしに貸しな――
んー、『‥‥だけど愛ってのは神サマの野郎が管轄してるから悪魔に頼んでも無理っぽい。
だから肉体的に愛をかなえる方法を書いといた。楽しませてもらえよ』だってさ。
‥‥要するにあたしとヤれ、って書いてあるんじゃない?」
 「‥‥な、なんだそれ‥‥」
 竜司は呆然とつぶやいた。
「――ぷっ。っくくく‥‥あっはははははは!! 何やってんのよ坊や。あはははは!!
あんたほんとにバカだねー‥‥あーお腹痛い‥‥くっくっ‥‥」
 レギアはしょげかえる背中をばんばんと叩きながら笑い転げる。
 ――が、突如我に返ったように竜司の目を覗き込み、ささやいた。
「ねぇ竜司。あんたの想いは、愛なの? 欲望なの? ‥‥ふふふ、欲望だよねぇ?
悪魔に頼ってでもモノにしようっていうんだから、それこそ強烈な欲望よねぇ?」
 にやにやと笑いながら、ぶっきらぼうな口調がうってかわって、ねっとりと甘く毒々しい声になる。
「その子をどうしたいと思ってたの? 抱きたかったんでしょう?
あんたのチンポで、その子のマンコをブチ抜いてやりたかったんでしょう? 貫いて、かき回して、
ヒィヒィよがらせて、ドロドロに、めちゃくちゃにしてやりたかったんでしょう?」
「そ、そんな‥‥僕は‥‥!」
 悪魔は獲物を見つけた黒豹のようにじりじりと迫る。竜司は床にへたり込んでずるずると後退するが、
赤くらんらんと燃える瞳が、卑猥な言葉を紡ぐ唇が、竜司の心を追いつめ、絡め取ってゆく。
「おねえさんがその想い、かなえてあげようか? あんたの内に渦巻くどろどろした熱情、
あたしが解放してあげようか?」
「ちがう! そんなんじゃない!」
 大きくかぶりを振る。
「くっふふふ‥‥嘘ばっかり。じゃあどうしてココはこぉんなにカタいのかしらねぇ?」
 しなやかな指先が少年の股間を襲いかかる。悪魔の妖気にあてられたのか、それとも言葉とは裏腹に、
悪魔の言葉と肢体に魅せられたのか、そこは確かに張りつめている。
「っく! ちがう、やめろ‥‥くぅっ!」
 たとえズボン越しであってもうぶな少年が淫魔の指先に勝てようはずもなかったが、早々に声が出る。
「我慢しなくていい‥‥もっと喘いでごらん‥‥。
ほら、あんたの欲望の権化はこんなにふくれあがってるよ‥‥ふふふ‥‥きもちいいだろう?
欲望に溺れるのは最高にきもちいいんだよ‥‥。感じるのは恥ずかしいコトじゃない、
あたしにすべてをゆだねてしまいなさい‥‥」
 優しく、だが決して母性を感じさせない言葉を紡ぎ続ける。濃色の唇は残酷な笑みを浮かべ、
その内には舌が淫らに蠢いているのが見て取れた。
「ああっ、やめろ、やめ‥‥くふあぁっ!」
 涙さえ浮かべて悶える。そして冷たい指先が甘く亀頭をつまんだ瞬間、張りつめてテントを作っていた
肉棒が白い粘液を噴出した。びく、びく、と腰が跳ね上がるたびにズボンのシミが大きくなってゆく。
「ほぉら、イッちゃった。きもちよかったんでしょう?
いやだとか言いながら、ほんとはおねえさんの指に溺れてたんだよねぇ?
‥‥かわいいよ、坊や。食い殺したくなってくる‥‥ふふ、おいしい」
 ズボンの布目からしみ出してくる粘液を指先ですくいとり、それを見せつけるように唇に運ぶ。
強烈な絶頂感からさめやらぬ少年は、悪魔が何を囁いたのかさえ分かっていなかった。だが、焦点の
定まりきらない眼でその卑猥な仕草を見つめていると、再び下腹部に血液が集まり始めているのを感じた。
「あらあら、しょうがないねぇ。もっともっときもちよくなりたい?
ふふふ、じゃあ、生で見せてもらおうかな‥‥」
595召喚(4) ◆IIES/YYkzQ :2005/08/05(金) 22:18:47 ID:YFtbtEvi
 にっ、と笑うとレギアはするすると竜司の衣服をはぎ取ってゆく。
「どれどれ‥‥ふふ、少し皮かぶってる。ま、いいよ‥‥きれいに洗ってるみたいだし。
‥‥んー。だけどどうかなぁ? せっかくだから『ひとつふたつ上の男』とかいうヤツにしてあげようか?」
 まるで男性週刊誌の広告記事のようなことを言う。
「ふふ‥‥安心しなよ。あたしは悪魔‥‥手術なんて野暮なことはしないよ。
見ててごらん‥‥んっ‥‥どう?」
「え?‥‥うあっ! ちょっ‥‥くぅっ!!」
 びちゃ、じゅるっ、じゅるり。
 有無を言わせず、真っ赤な舌が少年のそれを舐め上げる。そしてそれを口内に含み、引き出し、
甘噛みし、吸引する。唇に呑み込まれ、口内で巧みにもてあそばれるたびに、ぬめり、ざらつく熱い感触が
神経を焼く。
「あ、ああ‥‥すごい‥‥――!? なっなにこれ、や、やめ、‥‥うぅっ!」
 竜司は困惑した。熱く激しい刺激に加えて、未知の感覚がそこに沸き起こっている。もちろん口による
愛撫の刺激も初めてだったが、そんなものとは根本的に異なる刺激。快感を受容する部分そのものが
ふくれあがり、熱を帯び、それによってさらに快感が増加してゆく。だが、勃起するのとは断じて
異なる感触。あってはならない感触に、脳が警告を発している。
「んっふ‥‥うんっ‥‥ぷはぁ。くふふ‥‥いい感じになってきたよ‥‥見てごらん」
 快楽の嵐が弱まり、悪魔の声に気付いた竜司はおそるおそる目を開けた。
 ――目を疑った。
 自分の股間を見た。反り返り、びくんびくんと震えて舌の感触を恋しがるそれは、どうあっても
見慣れたものではなかった。勃起時で長さ14センチ、亀頭のカリに皮がかぶっていたそれではなかった。
「な、なんだよこれ!?」
「んふふ。言ったでしょ、あたしが包茎を直してあげたんだよ‥‥喜びなよ、こんな立派なのを
持ってるやつは少ないよ?」
 確かにその通りだろう。赤黒くグロテスクな色になったそれは、もう普通のサイズとは言えなかった。
長さは元の二倍近いだろう。皮は完全にむけ、がちがちになった亀頭が鎌首をもたげている。竿の根元に
あるホクロだけが、かろうじて前と変わらない点だった。
「んふふふ‥‥うれしい? でっかいチンポは思春期の男の子にはあこがれでしょ。
あん、だけどこれじゃ日本の女の相手はできないかな? あはは、ゴメンねぇ。
おねえさんの好みだけでサイズを決めちゃったよ」
 しらじらしい苦笑。何が起こったのか理性で理解しきれていない竜司は茫然自失になってしまい、
レギアの説明にも上の空だ。
「さぁ、チンポもいい感じになったところで、そろそろ本格的にイイコトしてあげようか?」
「‥‥ちが‥‥う、ちがう! 僕はこんなことをして欲しいんじゃない!
僕は佐々木と恋がしたかっただけで‥‥!!」
「‥‥。まだ反抗するの‥‥?」
 悪戯っぽい視線が急に冷めゆく。
「しかたないね。悪魔を呼んで欲望を満たす、ってことがどういうことなのか、じっくり教えてあげるよ。
いい? 泣いてもわめいても、あたしの快楽を味わってもらうよ、坊や。
ふふ‥‥そうだね、小手調べに胸を楽しませてあげる」
 そう言うと、衣装の胸を覆っている部分――というよりも、乳首をなんとか隠している部分――を
左右に押し広げた。ぶるん、と巨大な乳房があふれ出す。それは張りと艶が満ちているにもかかわらず
柔らかさを湛え、しかも圧倒的な重量感を誇っていた。バランスの良い乳輪から、やや大きめの乳首が
ツンと突き出ている。
「ふふ‥‥でっかいでしょ? たっぷり楽しませてあげるよ。‥‥坊や、パイズリって分かる?」
「し、知らない、だからもう――」
 ほとんどうわごとのような反抗はやはり指先で封じられた。
「ふぅん‥‥知らないんだ。ほんとかなぁ? まぁいいや。だったらあたしがほんとのパイズリを
教えてあげる。人間がやるようなままごとじゃなくて、本物をね‥‥」
 くすくすと笑いながら自分の両乳首を人差し指と親指で挟み、ほぐすように捻って刺激する。
596召喚(5) ◆IIES/YYkzQ
「淫魔ならではの芸当なんだから、ありがたく思いなよ? んっ‥‥」
 つぷり。
 レギアの細い人差し指が、それぞれの乳首の先端に食い込む。そして――
「んくっ‥‥ふぅっ。見てごらん‥‥ここ、中に突っ込めるんだよ‥‥」
 指先がめり込んでゆく。第一関節、第二関節、そしてとうとう根元まで乳首に突きささる。
しかし血が出る気配もない。そのまま乳房を両手で揉みながら、さらに中指を乳首にあてがい、
同じように突き挿す。二本の指で乳首を貫き、ぐちっぐちっとかき回す。
「見て‥‥ここに坊やのチンポ、突っ込ませてあげるよ。ふふ、きもちいいんだから‥‥」
 乳首に挿した中指と人差し指を広げ、その穴を見せつける。中は肉色の孔が開いているようだ。
「ほら‥‥中がひくひくしてるの分かる? 入れていいよ、ほぉら」
 淫魔の割に気分に飲まれやすいのか、レギアの顔は心なしか上気している。そしてその孔に目が釘付けに
なっている竜司の股間に手を伸ばし、巨大サイズとなったそれを左の乳首の孔にあてがい――挿し込んだ。
「うわぁっ!‥‥あ、あ、くぅうっ!! な、なんだこれ、ああっ!!」
「んふぅっ‥‥はぁっ。入った‥‥どう? おっぱいの中、すっごくイイでしょ?
ああっ‥‥奥まで挿して‥‥んんっ‥‥」
「うあああっ! す、すごいっ‥‥!! こ、これ‥‥がっ、パイズリ、な、の!?」
 仰け反り、女のように喘ぐ竜司の脳が沸騰する。最初の指による刺激や唇と舌の愛撫など
忘れてしまいそうになるほどの快楽。しかも彼の予備知識では挿入するなどあり得ないはずの所に、
信じがたい大きさになった自分の性器が飲み込まれてゆく。倒錯的でしかも甘美な快感。魂の契約や
魅了の術に頼るまでもなく、彼の心は堕ちつつあった。
「そうだよ‥‥これが‥‥ああっ‥‥ん‥‥ほんとのパイズリ‥‥悪魔のパイズリだよ‥‥。
もっと奥までねじ込んでごらん‥‥そう、根元まで――ああっ!
くぅっ‥‥坊やの、でかいから、あたしもきもちいい‥‥ああ‥‥ぅ」
 吐息を荒くしながら、貫かれた乳房を揉みしだく。肉穴と乳肉との両方が余すところなく竜司の剛直を
刺激する。それだけではなく、まるでその乳房の中が生きているかのように動き、固い肉棒が奥へ奥へと
誘い込まれてゆく。
「はぁ、はぁ‥‥きもちいいでしょ‥‥だけどこのままだと動きにくいね‥‥立ってごらん。
そう、腰をつかって突いて――あはぁっ! そう、ああっ、突いて‥‥うふふ‥‥イイよ‥‥」
 覆い被さるようにして胸を犯させていたレギアは、乳房を貫かせたまま立て膝になり、竜司を立たせて
そのままピストン運動を促した。竜司はそれに応えて夢見心地のまま腰を前後に動かす。乳房の中から
粘液が溢れ、肉棒が前後するたびにそれが乳首から滴り落ちてゆく。挿入されていない方の乳房にも
竜司の指を差し込ませると、何も言わないままにその指先が彼女の乳房の中を犯してゆく。
「あふっ‥‥あ、あ‥‥初めてのわりに、おっぱいの犯しかた、分かってるじゃない‥‥っ。
‥‥そう、かき回して‥‥んっ。‥‥あん、腰をとめないで、突いてよ‥‥ああっ!」
 ぐちっ、じゅくっ。母乳ではない液がさらに分泌され、湿った音を立てる。一方の乳房に巨大なペニスが
肉の誘いに応じて突き刺さり、名残惜しげにまとわりつく乳房から引き抜かれ、次の瞬間には再び奥まで
突き刺さる。もう一方の乳房には竜司の指が三本もねじ込まれ、肉の穴をぐちゅぐちゅとかき回し、
乳房全体を揉みしだく。乳首からは透明な蜜がとろとろと垂れ、竜司の肉棒、指、手のひら、そして
レギア自身の身体を濡らしてゆく。
 しばらくピストンを繰り返すと、今度は少年自身がさっきと反対の乳房に、ぶちゅりという音と共に
逸物を突き入れた。
「あはぁっ! いいよ、調子でてきたじゃない‥‥あ、あ、すごい、奥まで刺さってる‥‥っ!
き、きもち、いい、でしょ? あぅ、だめ、あたしまで感じそう‥‥!
はぁっ、イキたくなったら、中で出しても、い、いいよ――くああっ!!」
突如嬌声を上げて悪魔がのけぞる。挑発的に嗤っていた眼が熱を帯び、熔けたような笑みを浮かべた。
「うあっ、レ、レギアっ‥‥きもちいいの? ここ? ううっ、僕もいいよ‥‥!!」
喘ぎながらも腰を動かし、召喚した悪魔の乳房を丹念に貫く。竜司はレギアの肥大した乳首を
そこに挿入したペニスごと握りしめ、隅々までえぐるように突き上げた。本能のおもむくままに。